塩見周子「大人」
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2: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/08/16(木) 01:08:31.66 ID:TF1khxEw0

これは夢だ、とすぐに気がついた。あたしがまだアイドルになる前だ、というのもすぐに分かった。明晰夢、というやつなのだろうか。けれど、あたしの心はどこかふわふわしている感じがして、体は思うように動かない。

ああ、これは、あたしがプロデューサーさんに声をかけられた日の夢だ。家出して、持てるだけのお金を持って、東京に来た日の夢だ。

あたしがアイドルになるきっかけの夢だ。

日はもう沈みかけていて、オレンジと紫を混ぜた色が空に広がっている。そのときのあたしは、この景色を綺麗だとは思えなかったことも、強く覚えている。

いつもの駅前で座り込んでいると、空は紫から黒色へ、街灯ののせいで星が見えない真っ黒へ移り変わっていく。ただそれを、ぼーっと眺める。

ただ時間を浪費していると、あたしは、知らないおじさんに声をかけられた。どろりと、目の奥に薄汚いものを秘めているおじさんだった。

絶対にそんなコトしたくないのに、言われるがまま、そのおじさんの後をついていく。嫌だって思っても、体が勝手に動く。いろんな人とすれ違うのが嫌になってきて、顔をうつむかせようとした。

そのときだった

「―――!」

男の人とすれ違った。あの人だ。この日、あたしに声をかけてくれたあの人だ。

彼は、あたしの方なんて一切見ずに、駅のホームに消えていく。今すぐ逃げ出して、彼の所に行きたい。あの日みたいに、彼と話したい。

けれど、あたしの体は、そんなあたしの心を無視して、うつむいたまま歩きつづける。あたしがどれだけ内側で叫ぼうとも、歩みを止めてくれず、おじさんの後を、ただ従順に付いていく。


そこから先の、泣きたくなるような行為の最中で、あたしは汗だくで目を覚ました



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