モバP「他の誰にも」
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5:名無しNIPPER[sage]
2018/11/19(月) 01:46:52.73 ID:7D4niVl1O


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 あないになったらあかんえ?

 それが、ボクの母の、塩見に対する評価だった。

 界隈の評判もそう違ったものではなかった。


 高校に入って少しすると、髪型が変わった。次に校外で見かけた時にはその耳にピアスが光っていた。

 当時のボクはそれを根拠に、塩見の人間性までも否定した。彼女との距離を、こちらから勝手に無限に置いた。

 そして、彼女を独善的に底辺へ貶めたボクは、上に立ったつもりで、そのくせ、頭の片隅では気になって仕方なかった。


 高校三年になって、ボクを含めた周囲が受験勉強に辟易している時も、塩見の様子は変わらなかった。

 あたし家継ぐから勉強いらへんー、って言葉が、ざわついた教室内をすり抜けて何度か耳に入った。その無神経に関しては今でも彼女が悪いと思っている。

 当時余裕のなかったボクは尚更で、せいぜい痛い目を見ろと思った。


 いつかの放課後の教室、クラス委員でプリントをまとめていたボクに、声を掛けてきたことがある。


 何してん? 

 ひとりでへーき? 


 上着のポケットに手を突っこんだまま聞いてきた彼女に、いらへん、とだけ言って背を向けた。

 ボクの心音が彼女へ届かない距離まで離れる必要があった。

 これまで通りに嫌える距離まで一刻も早く逃げたかった。

 
 


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