6:名無しNIPPER[sage]
2018/11/19(月) 01:48:24.48 ID:7D4niVl1O
彼女は本当に何もしないまま卒業の日を迎えた。少なくとも、ボクの知っている限りでは。
ボクは地元の志望に通うこととなった。秀才、と持て囃された。
嬉しさはもちろんあった。努力が報われたこと、報われるだけの努力をしてきたこと、それが認められたと思ったから。
だけどボクは、賞賛と期待の言葉を存分に浴びながら、横目で、ひとり淡白に教室から出て行く塩見の姿を追っていた。
なんの努力もしていなくて、相応の結末を見た筈の女子のことを、ずっと。
それからしばらくして、燃え尽き症候群とまでは言わずとも、高校の時分に比べれば明らかに薄味な大学生活に身を浸し、かつての存在をようやく忘れ始めたころ――何気なく見たテレビの画面のすみに、塩見の姿を捉え、目を疑う。あんな豆粒くらいの出番に気づいてしまったことが、まるで彼女との再会を待ち望んでいたかのようで、ひとり、いらだった。
チャンネルを変えられなかったことが、今でも、苛立つ。
だが気付いたのはボクだけかと思っていたら、すぐに同輩中の噂になった。それも悪い方へ。在学中の彼女の振る舞いに不満を持っていたのはボクだけでもなかったらしい。
数十人の自称元カレ。ゴシップ以下の醜聞に付け足される尾鰭。悪し様に語られる来し方行く末。
それとも、それとも校内事情に疎かったボクが知らないだけで、全ては本当だったのだろうか。
誰が言ったかもわからない、脱いだら買ってやろうという下卑た物言いによって生まれた感情に、ボクは今でも名前を付けられないでいる。
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