中野四葉「まにまにりぽーと」
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16:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:24:23.76 ID:gUiBlRD20
「卵が割れるだろ」
「必要経費よ」
「まだ未購入だってのに……」
それでも離れてはくれないらしくて、なおも腕をホールドされたまま、生鮮売り場やら野菜売り場やらを巡る。忘れかけていたがこれはそもそも我が家のための買い物なので、自分の目的物も手に取っていかなければならない。
17:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:25:06.56 ID:gUiBlRD20
「そういえばさ」
「なんだよ?」
「私さっき、あんたが大学行く前提で話しちゃったけど、そういうのって考えてるの?」
「問題のある仮定はそっちの方じゃないだろ」
「いや、これは割と真面目な話」
18:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:25:41.39 ID:gUiBlRD20
「知ってるとは思うが、ウチに俺を道楽で進学させられるほどの余裕はない」
「まあ、なんとなくはね」
借金は伏せてあるが、それにしたって切迫した懐事情については既にバレバレだ。そんな中、なんとなくで四年間も家の負担にはなれない。進学するなら、明確な理由が要る。
それが今の俺にあるかと問われれば、答えに窮する。『いつか役に立つように』は明確な理由足りえない。
19:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:26:16.92 ID:gUiBlRD20
「だから、ギリギリまで考える。何をしたいかとか、何が出来るかとか」
「人の進路ばっかり気にして自分の将来設計がすっからかんなところとか、すごいあんたらしいわね」
「うっせ」
奨学金に頼ればどうにかならないこともない。だけど、それだって一応は借金の部類だし。
20:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:26:50.65 ID:gUiBlRD20
「ま、最悪路頭に迷った時は私が養ってあげるから安心して」
「迷わねえからお前も安心しろ」
こういう場面での軽口は、素直にありがたかった。今までに色々あったが、そこで培われた信頼の一端を見ることが出来たように思えるから。邂逅から一年、忙しない毎日を駆け抜けてきたが、走った後にはちゃんと道が出来ている。この事実が救いになるかどうかは、今はまだそこまで分からないけれど。
21:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:27:26.78 ID:gUiBlRD20
「あんた向きの仕事、私は一つ思いつくけどね」
「なんだ?」
「秘密。こういうのって、自分で気づくのが大切なんじゃない?」
「そういうもんか?」
「あんただって、最初から答えは教えないでしょ」
22:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:28:01.70 ID:gUiBlRD20
「前途多難だ……」
「頑張りなさいよ。頼りにしてるんだから」
そうだった。俺の双肩には、五姉妹の未来ものしかかっている。ここでダウンするのはあまりに早すぎるだろう。
もうひと踏ん張り、だ。
23:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:28:36.96 ID:gUiBlRD20
「手間賃」
引き止められてイートインスペースに座らされると、二乃にホットココアを手渡された。特売の卵で得た利益が消し飛んでいる気がしたが、もらえるものはもらっておくことにする。……だけど、その前に。
「ほれ、毒見」
24:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:29:12.13 ID:gUiBlRD20
「ん」
何事もなく二乃が数口飲み干して、ちょっとだけ容積が減った缶をこちらに返してくる。当たり前だが、何かが盛られてはいなかったようだ。
「もちろん薬は入ってないわ」
25:名無しNIPPER[ saga]
2019/01/29(火) 21:29:38.97 ID:gUiBlRD20
「……そういえば間接キスは初めてよね」
「新たに倒錯した性癖に目覚めるな」
「喉渇いたからもう一口ちょうだい」
これはやべーぞと、一気に残りを飲み干した。炭酸ジュースでなくて良かったと一安心だ。
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