67:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:07:51.97 ID:X8w2p+8S0
「嘘なんだが……」
「なんでしょう?」
「……すまん、こういう時って何を思うのが正解なんだ?」
堪らず教えを乞うた。俺の人生経験からでは、彼女が望む回答を導き出せない。それこそ逆立ちしたって無理なものは無理。加減乗除を知らない人間に複雑な方程式が解き明かせようはずもないのだ。
68:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:08:36.92 ID:X8w2p+8S0
「上杉さんは、難しく考えすぎなのかもですね」
「そうか?」
「はい。綺麗なものを見たら綺麗。美味しいものを食べたら美味しい。面白い話を聞いたら面白い。それで全然良いんです」
「発展性が……」
「応用問題ばかりじゃないんですよ、世界は」
69:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:09:05.68 ID:X8w2p+8S0
「たとえばほら、こんなのはどうです?」
近くにあったしゃれた髪飾りを手に取って、頭に重ねて見せる四葉。それに対して、どうですかと言われれば。
「しっかり着用しないあたりに売り物への配慮が見える」
70:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:09:37.99 ID:X8w2p+8S0
感じたことをそのまま言ってみたけれど、それでもまだ答えがひねたものになっているらしい。こうなると、もはや彼女の裁量に俺の価値観を合わせているだけにも思えてくるが。
「女の子がかわいいものを身に着けているんですよ?」
「似合ってる?」
「惜しい! ニアピン賞です。でも、もっともっと単純なの、ありません?」
71:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:10:11.63 ID:X8w2p+8S0
「…………かわいいな、それ」
「はい!」
ようやく俺から引き出せた言葉にご満悦なのか、花のように笑う四葉。誘導尋問だろと文句の一つも言ってやろうかと思っていたが、こうも幸せそうな顔をされると、毒気を抜かれてしまってダメだ。
72:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:10:39.07 ID:X8w2p+8S0
「で、今のは結局何点だったんだ?」
「合計して今日の終わりに発表する手筈ですので」
「繰り上がりには注意な」
酷い忠告だが、四葉なら冗談抜きでやりかねないミスだ。それに対して彼女は「オブラートに包むのとはまた別です!」とぷっくりむくれていた。相変わらず、他人の心情を推し量るのは難しい。
73:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:11:04.76 ID:X8w2p+8S0
「じゃあ、お会計してくるのでちょっとだけ待っててください」
「買うのかそれ?」
「はい。褒めてもらったので」
ほとんど褒めさせられたのだけれど、そこは関係ないらしい。
74:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:11:40.08 ID:X8w2p+8S0
「……今度があるなら、もうちょいストレートに感想言うわ」
「おおっ、ポイント稼ぎに来てますね?」
「うっせ」
リボンの片耳を、型崩れしない程度の力で引っ張る。彼女はまるでそこにまで触覚が通っているような様子で「あうー」と目を瞬かせるが、当然リボンは肉体から独立した機構なので無視した。いつものように少しだけ手直しは加えたけれど。
75:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:12:05.65 ID:X8w2p+8S0
「今度、今日中に来ると良いなあ」
「いくらなんでもペースが早えよ」
そうなったらそうなったで、どうせ俺は二の脚を踏んでしまうのだろう。ためらっている自分の姿だけははっきりと思い描けて、情けなさに苦笑した。
76:名無しNIPPER[ saga]
2019/02/01(金) 21:12:42.09 ID:X8w2p+8S0
落ち着いた店の中に、これまた落ち着いた音楽が流れている。世代が違うからさっぱり分からないが、こういう場所に流れているのは数世代前に流行ったジャズだと相場が決まっているので、そんなもんなんだろうと思うことにする。残念なことに、世代直撃の音楽ですら俺には良く分かっていないけれど。
しかし、そんな適当な認識なりに、今響いている曲がいわゆる名曲の類であることは分かった。音量の割に思考の邪魔をしないし耳障りでもないので、BGMとしてはこれ以上ない代物だろう。
「で、ここでは何をするんだ?」
「喫茶店なんですから、喫茶するんじゃないでしょうか?」
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