中野五月「あいまいでぃすたんす」
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230:名無しNIPPER[saga]
2019/03/21(木) 20:00:08.92 ID:hStTkcAZ0
 あの人の帰りがあんまり遅いのが気になって、心当たりを探りに行ったのが発端。この前と同様に肩を大きく落としながら職員室から出てきた彼を見つけたときには、もうその後ろに三玖が迫ってきていた。
 自分でもどうしてか分からなかったけれど、見てはいけないものを見るような気分になって、とっさに体を物陰に潜めた。会話が聞き取れるぎりぎりの距離から息を殺して盗み見る姉の横顔は、普段自分に見せるものとは趣が全く違っていて。
 警戒心の欠片もなく弛緩し、ほんのり上気した頬は、それはもう誰が見ても一発で看破できるくらい、恋する乙女のそれで。

『みっけ』

 ついでに言えば、声音までもが平時よりも半音上がっていて。
 その大きな感情を一身に受けている彼は、いつものぶっきらぼうな調子で、なんでもないように取り合う。
 けれど、二人の距離感は、私と彼の距離感よりもはるかに近いことが、なんとなく読み取れてしまった。
 息遣い。視線。声のトーン。そういったコミュニケーションの素地一つ一つが、明確に私に向けられるものと違うのが、本能的に、直感的に、理解できてしまう。
 それに気付いたとき、なぜだか無性に心臓の下のあたりが痛んだ。心がこんな場所に格納されていることを、生まれて初めて知ったように思う。



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