【モバマス】 和久井留美「富士そばには人生がある」
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11:1[sage saga]
2019/02/22(金) 12:24:06.84 ID:+K0KOsmIO

 私は一体、何をしてきたのだろう。


 こうして酔っている時でさえ、ふと我に返るとそういった言葉が脳裏に浮かぶ。


 自分を中心に世界は回らない、自分は選ばれる人間ではない。


 そう気付いたのはいつだったか。
 学生時代の部活動だったか、はたまた職場の中であったか。
 
 自分は表に立てる人間ではないのなら、せめて誰かを表舞台に立たせるような人間になろう――そう思って裏方に徹するようになった。


「お待たせしましたー。もつ煮込みとネギ二本、メンチカツでーす」
「ありがとうございます。あ、生一つお願いします」
「かしこまりましたー」


 そうやって、いつの間にか秘書という職務に就いていた……。
 いわゆる丸ノ内のOLになって、事務職に就いて、ひたすらPCとにらみ合いを続けていた日々……。とある役員秘書が諸事情で退職されて、そこでなぜか平社員の私に後任として白羽の矢が立った。秘書検定だとかそういう資格を持っていた影響かもしれない。


「お待たせしましたー、生でーす」
「ありがとうございます」


 追加のビールを煽る……。酒に強いという自負はないけれど、何故か今はすいすいと酒が入っていく。


(君のせいだ。どうしてくれるんだ――申し訳ないが、解雇とさせてもらう)


 ああ、今でも思い出す……。
 秘書という職務に就いて、周囲の人間からは羨ましがられた。しかし、実際就いてみるとそれは幻想であった。
 山のように積み重なる書類を捌き、役員のスケジュールを管理し、来客に対応し、時には助言役を任されることもある。


 当初の私はやりがいを感じていた……。誰かを表舞台に立たせる、その裏方になることができると。
 しかし、実際は裏方役というよりかは使い走りだった。
 着任当初は気鋭があって将来性のある役員だと思った。蓋を開けてみると「重役の息子、お坊ちゃん、コネ」といった背景を持つ人間なのだと痛感した。前任秘書が退職した理由もなんとなく窺い知ることができた。


 そうして、自身の職務を放棄し私に全てを押し付けた役員に解雇を言い渡される。後になって知ったことだが、自分のミスを私の不手際として言い触らしていたらしい。


「ご馳走様でした」
「ありがとうございましたー!」


 思い出すつもりはなかったのだが、酒を煽っているうちに嫌な思い出ばかりが脳裏を過る……。
 これ以上まずい酒にしたくなかったので居酒屋を出た。






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