【モバマス】 和久井留美「富士そばには人生がある」
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[sage saga]
2019/02/22(金) 12:19:33.24 ID:+K0KOsmIO
「お待たせしましたー。カシラの赤と白と、レバーと赤ウインナーフライでーす」
「ありがとうございます。あ……、追加で生一つお願いします」
「かしこまりましたー」
はあ、私は一体何をやっているのかしら――
空腹を満たすため繰り出した新宿。
人で溢れる歌舞伎町方面の出口を出て、アルタ前から路地に入る。
あれもこれもと決めあぐねて、偶然目にとまった立ち飲み屋の赤ちょうちんへ夜光虫のようにひかれていった。
「お待たせしました、生ビールでーす」
「ありがとうございます」
狭い立ち飲み屋。地下のフロアへ通され、同じく窮屈なカウンター席の隅で串焼きを肴にビールを流し込む。立ち飲みと謳っているが、それは一階のフロアのみで地下は座れるらしい。
目の前は壁……。いわゆる花金の夜はどこへ行ってもグループばかりだ。この店を見てもおひとり様は私くらい……。新宿という土地柄のせいもあるが、それにしても少し居心地が悪い。
(ただ、この喧騒はかえって好都合かもしれないわね……)
私はあまり人混みが好きではない。進学を機に地元を出て、そうしてそのまま東京で就職してずっと都内にいた。
当初は東京に対する憧れはあった。しかしこの人混みと都会特有のドライな気質になかなか順応することができず、ホームシックのような状態に陥った時もある。
ただ一回りしてそれに慣れると、踏み込んで干渉してこないこのドライな街にかえって安心する自分もいて――
歓喜、絶望、悲哀、醜悪、そういった感情がひしめくこの新宿という場所ならなおさらだ。曲がりなりにも芸能人な自分がいたとしても、誰一人として気に留める人はいない。まあ、単純に知名度がないのかもしれないが――もちろん最低限伊達眼鏡をかけたり帽子を被ったりと変装はしている。
「すみません、生一つお願いします」
気付くと中ジョッキが空になっている……。
スマートフォンを置いて虚空を仰ぐ。すきっ腹に近い状態でアルコールを入れたせいか回りが早い。じわじわと全身に染み渡るアルコール、上気して火照る体、ふわふわとした浮遊感……。
「お待たせしました、生でーす」
「すみません、もつ煮込みと串焼きのネギを二本、あとメンチカツを……」
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