632: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:17:59.87 ID:JuXJT1NJO
優花里さんの遺体を背負ったまま、道中たまたまIV号を発見した。そのことは非常に幸運だったが、IV号はいつも見慣れた姿とはかけ離れたものだった。辛うじて黒森峰の追撃を逃れたのであろう。砲塔には大きな穴が開き、車輌は傷だらけだ。シンボルのアンコウのマークもかなり傷が入っている。しかもそれが路上のど真ん中で停車している
中にはまだ生きている人が、仲間がいるのか。背負ったまま駆け足で近づく
車体の上に登り、エンジンの上に一旦優花里さんを腰掛けさせ、その穴から車内を覗く。その中も、これまでの練習で見慣れた姿ではなかった。車内には血痕が一面に散らばり、砲手席にいなければ華さんとは分からない遺体、その奥に操縦席の計器に身体を預けた麻子さんがいる。二人ともピクリとも動かない
「麻子さん生きてますか!麻子さん!」
そのうち生きている可能性がある方に向け、声を張り上げる。何度かそれを繰り返し半ば諦めかけていたところで呼びかけが通じたのか、計器から頭を少し浮かせた麻子さんが、額から太い血の筋を作りながらこちらを振り向く。戦車服の背中の部分は大きく黒ずんでいる。私の袖とは色が完全に別物だ
出血多量。背中と頭を足せば、相当量になるだろう
「ああ……お婆ぁ、なるほどね」
「凄い出血です。傷を見せてください!」
そう呼びかけながら、優花里さんの遺体を穴の周りの棘で傷つけないように注意して運び込むことに腐心している時点で、優先云々の問題でないことを私は示してしまっている。そしておそらく、その通りだ。
「いや……いい、モルヒネを打ってる。それより……行き先を言ってくれ」
予想通りの反応をして麻子さんは身を更に起こし、息を吸い込み椅子を調整して両手で操縦桿を強く、力強く握る
「早く……命の保っている内に。その為に戻ってきたんだ……」
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