45:名無しNIPPER[saga]
2019/12/04(水) 23:54:47.24 ID:KiTgD4m20
僧侶「さすがに、これは」
勇者「祈ってやることしかできないよ、俺たちには」
僧侶「…………はい」
残酷な様で、実際にそうするしか無いことを彼女も理解している。
陰惨な死体なんてものはこのご時世幾らでも目に入ってしまう。
それが戦場ではなくたって、そこらの歓楽街を一歩裏へ行けば原型を留めないものがそこかしこ。
ましてや実戦経験こそ少ないとはいえ彼女は、僧侶だ。
教会には医師や魔術師に首を振られた末期の患者が数多く運びこまれただろう。
そういうことではなくて、これは、心の問題だった。
誰かと共に歩む普通の人がいて、誰にも看取られることなく屈辱と苦痛に苛まれて死んだ。
そして今やその死はただの事実であってそれ以上でもそれ以下でも無い。
その、省みられない現実が彼女を苛んでいるのだろう。
勇者「せめて何か装身具だとかがあれば町に持っていってやることはできるだろうけど、さ」
僧侶「…………」
勇者「…………」
僧侶「…………」
結局、彼女は自らを何かで奮い立たせて立ち上がった。
死者への祈りを捧げ、誰かの指に嵌っていた指輪をそっと摘み上げて。
それから一輪、儚げな笑顔を、一差し。
それは気安く触れるなんて許されない、不可侵の聖域。
あぁ、これを守らなければいけないんだ、なんて。
一瞬だけ、何か妙に面映い感傷に襲われた。
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