3: ◆Try7rHwMFw[sage]
2020/02/10(月) 21:22:46.50 ID:7rXyh9rYO
#
「ただいまあ」
玄関からお兄ちゃんの声が聞こえてきた。私はシチューの火を止めて迎えに行く。
「お帰り、お兄ちゃん。……今日はどうしたの?」
「また……失敗しちゃった」
お兄ちゃんは涙目でしょぼくれている。身長183センチのお兄ちゃんが下を向いてる姿は、まるで熊さんみたいだ。
私は穏やかに微笑んでみせた。
「今日はどうしちゃったの?」
「おつりの計算間違えて、店長に叱られて……可愛い女の子のお客さんがいたから声かけたらビックリして怖がらせて、それで店長にまた叱られて……
本当に俺、毎日叱られてて、本当にバカだ」
「ううん、いいんだよ。お兄ちゃんはお兄ちゃん。それに、失敗しようと思って失敗しちゃったわけじゃないんでしょ?」
「うん……でもいつクビになるか……」
「大丈夫だよ!お兄ちゃん、美味しいケーキ作れるでしょ?
そんなことより今日はお兄ちゃんの大好きなビーフシチューだよ!」
「あっ、本当だ!!しずく、料理上手いもんなあ」
屈託なく笑うお兄ちゃんの手を引いて、私はその唇にチュッと口付ける。
「ありがと、お兄ちゃん。じゃあ、準備するね」
私はまたキッチンに向かう。振り返ると、お兄ちゃんはいつも通りリビングのソファーでテレビを見始めた。
見るのはEテレの幼児向け番組だ。「いい大人なんだから」と言っても、「これがいいんだ」とお兄ちゃんは言ってきかない。
私は鼻歌を歌いながら鍋をかき混ぜ、シチューを小皿に取った。……うん、美味しい。腕によりをかけただけはあったかな。
シチューはできたからサラダを準備しよう。それに、ご飯もよそわなきゃ。
ぎゅっ
火を止めて食器棚に向かおうとした私は、背後から抱き締められた。
95Res/84.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20