お兄ちゃん、一緒にバカになろ?
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70: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/02/16(日) 23:15:26.07 ID:yTBCC42FO
「お兄ちゃんっ!!!!」

気絶しているお兄ちゃんに駆け寄る。藤原警視が、銃をしまった。

「この、人殺しっっっ!!!お兄ちゃん、しっかりしてよおっっっ!!!」

「……殺人者が何のジョークかな。第一、僕は殺してないぞ」

「……え」

「僕が使ったのは、この『テーザーガン』だ。強力なスタンガンの一種、と思ってもらえばいい。
何度も当てれば死ぬだろうが、一発だけなら気絶で済む」

彼はもう一度、銃を見せた。確かに、刑事ドラマで見るそれとは全然形が違う。

「それにしても驚いた。あの状態から息を吹き返すどころか、攻撃までしてくるとは。
君の叫びが届いた、としか考えようがないな。……彼の君への愛は、本物だったということか」

「……お兄ちゃん……」

お兄ちゃんはすうすうと寝息を立てている。確かに、死んではいないようだった。

「……話を元に戻すか。僕のもう一つの目的は、君だ。君は、3人殺している。
少年法に照らしても、長期懲役は避けられまい。もし君が成人なら、死刑は確実だ。……が」

藤原警視が、床に落ちていた「痴呆薬」を取り上げた。

「逮捕はしない。この薬によって3人が死んだという因果関係の立証は不可能に近いんだ。
何せ、体内に吸収されると即分解されるという代物だ。証拠が残らないんだよ。だから逮捕はしない。
ただ、君は人を殺めている。その落とし前は付けなきゃいけない。
そして、何より僕の存在を知ってしまった。僕の存在は基本的に国家機密でね。絶対に知られちゃいけないのさ」

「……だから、殺すの」

藤原警視が目を閉じた。

「……いや。君がもう少し凶悪なら、この場で殺してたと思う。だが、付き合っていくうちに君という少女自体は、至って真っ当な子だと知った。
ただ、磯崎雄太に対する愛情が肥大化し、その愛情を守るためにありえない手段を手にし、実行してしまったというだけで」

彼がまた、大きな溜め息をついた。

「そして、君の生きる理由は、磯崎雄太に他ならない。彼がもはや手遅れと知ってなお、君がまともに生きられるとは思えない。
多分、自死を選ぶだろう。確かに、彼はこのまま行けば君によって殺される。その事実に、君が耐えきれるとも思えない。
……本来、こういうケースでは君を精神病院に入院させるんだ。控えめに言って、一生自由のない生活を送ってもらう。
だが、それはある意味死より厳しく、残酷だ。だから、君に選ばせようと思う」

「選ぶ……?」

「そうだ。まず、磯崎雄太の意識を一時的に戻すことはできる。殺しの道具として、僕は『アイスキャンディ』に類する薬を持っている。
適量を使えば、気付け薬にもなる。もちろん、その反動で彼は死ぬが……少しの間なら、彼と会話することは可能だ。
その後、君がどうするか。罪を背負って一生涯を懺悔に費やすのが、一番望ましい。だが、そうでない道もある」

「そうでない道……」



「ああ。それは、君も『痴呆薬』を飲むことだ。つまり、一緒にバカになって、一緒に死ぬ」






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