白雪千夜「名前をつけるなら」
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4: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2020/03/16(月) 01:45:26.13 ID:faqEAmx60

翌日。所用があり、遅くまでレッスンが長引いた。時刻は9時。お嬢様はちゃんと食事を取られただろうか。先ほど連絡した限りは大丈夫そうだが

「……ん?」

すきま風が通るような音がする。しかしそれが規則的で、かつ湿った音であると知り、寝息だと把握する。この時間、事務所に残り寝息を立てるような人間など一人しかいないだろう

明かりが落ちて、暗くなった部屋を忍び足で進む。踵から着地するようにして、音を消しながら歩いた。……なぜ私は、起こさないように注意を払いながら歩いているんだ? いますぐたたき起こして机に向かわせてもいいだろうに

寝息の元、ソファの上を見下ろす。ブランケットを被った、プロデューサーの姿があった。スーツの上着は見当たらない。きっと脱いだのだろう

もぞもぞと、寝返りを打つ。ブランケットに隠れていた右手が出てきた

「…………」

銀色に輝くものがあった。それが右手薬指にはめられる意味を、知らないわけではない。知っているから、余計に胸がざわつく。昨日まではしていなかっただろう、これは。ああそうか、私に言ったからか? プロポーズ前の前哨戦に、ペアリングでも送り合ったのか? 彼女に相談して、まずはという形で。妄想の域を出ないが

ラベリングして仕分けたハズの感情が再燃する。小分けにしたものが全部纏まって、私の身体の隅々まで行き渡った

その黒い感情が、私を突き動かした




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