2: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2020/03/21(土) 01:58:22.33 ID:AoPUJLA90
隣の少女は無言だった。昨日までは寒かったのに、今日はすっかり春らしい気候で、冬服だと首下に汗が滲む。しかし夜になれば話は変わり、昼間のツケが帰ってくるかのように今の服に感謝をした
電灯が等間隔に灯っている。星空の下と、電球の下を繰り返しながら歩いた
「……寒いな。何か買っていくか? コーヒーでも、ココアでも」
少し先に自動販売機が見えた。ホットコーヒーなりココアなり、かじかみかけの手を温めようと少女に提案する
「……うぅん、大丈夫。早くプロデューサーの家に行きたいし」
少女はそう言いながら断った。
プロデューサー、と呼ばれた瞬間に胸が締め付けられた。俺はアイドルのプロデューサーで、この少女の担当をしていて、まだ未成年の彼女を家に連れ込もうとしている。砂糖が溶けきってない、ドロドロのコーヒーみたいな思考が脳内を埋める
自分の事をどうしようもないクズだと自称し、自宅までの道を彼女と歩いた
「……めぐる」
彼女の名を呼んだ。前を向いたままだったので、彼女の金色の髪は視界の端っこにしか入らない
「何、プロデューサー?」
彼女の手は温かかった。冷えた指先が、柔らかい熱に包み込まれる。ほら、変装していると言っても、前に事務所に来た阿久井徳次郎さんみたいな記者にすっぱ抜かれたら、と言いかけて止めた
「……いや、めぐるの手が、暖かいって思って」
代わりの言葉を吐いた。少女はふふっと吐息を溢した。そのまま、身体の側面と側面がくっついた。歩くときに出す足が同じになった
夜になればまだ寒い、とはいえ彼女がいるならば冬服でなくてもよかったのではと思った
28Res/35.39 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20