333: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/19(日) 19:01:15.20 ID:Kh3sFDp50
「おいこら、このアマぁ!!」
「!」
男の怒号に、女の悲鳴。私は駆け出した。
辿り着いたのは、あるアパートの非常階段。派手なシャツを来た男と、ネグリジェ姿の女が揉み合っている。
「おい、何をしている!」
追いついた警官が状況を把握し、声を張り上げた。
「! サツが…」
踊り場からこちらの姿を認めて、男が怯んだ。私は階段を上がると、2人のところまでやって来た。
「何の騒ぎだね」
「助けて! この男が、アタシを殺そうと」
「うるせえ! ヒトのシマで勝手に商売しやがって」
「やめろ!」
警官が割って入る。男は舌打ちした。
「商売とは、売春かね」
「ああ。この辺で、ショバ代も払わねえで勝手に立ちんぼしてやがった」
「仕方ないでしょ! もうスッカラカンで、家賃も払えないってのに、おまけに…」
「近頃、この辺は物騒なんだ。君も知っているだろう。これ以上面倒を増やさないでくれるか」
「…」
男は、不服そうに身を引いた。
「ひとまず、この女は署で話を聞こう」
「待って!」
女が叫んだ。
「そしたら煌良が…」
「キララ?」
警官に聞き返されて、女ははっと口を塞いだ。私はその時、少し前に見た名前を思い出していた。
「星ノ瀬…」
「っ…」
「…署まで連れて行け。私は適当にタクシーで帰る」
「は、はぁ…」
警官は軽く頭を下げると、女を連れてその場を去っていった。
残された私に、男が怪訝な目で向けた。
「おっさん、一体…」
「若いの、相手を量るまでは口の聞き方に気を付けたまえよ」
私は、一枚の名刺を投げた。そこに書かれた名前と肩書を見た瞬間、男の顔が青ざめた。
「もっ、申し訳ありやせんしたっ!!」
汚いコンクリートに土下座する。
「御大とはつゆ知らず、とんだご無礼を…この際、指を」
「もう、いい。それより、この度の騒動が決着したら、必ず私に話を通せ。そう、君たちの大将に伝えろよ」
それだけ言い残すと、私は男に背を向け、歩き出した。
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