529: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/26(日) 22:26:37.00 ID:HdGjBJqV0
昼食を終え、午後にどうするか思案していると、突然携帯電話に着信が来た。
「!」
携帯電話はいくつか所持しているが、これは暴力団員など『裏』の通信に使うものだ。私は書斎に引っ込むと、通話を始めた。
「もしもし」
”御大、決着が付きました”
「! そうか」
”ご報告とお詫びをと思い、一席設けております。本日、よろしいですか”
「…分かった」
私は通話を切ると、深く溜め息を吐いた。これで午後の計画は全ておじゃんだ。やれやれ…
…
夕方。家の前に、黒塗りの車が停まった。
「すまないね、急な仕事が入ったんだ」
「なるべく早く帰ってきてくださいね…?」
妻に見送られながら、車に乗り込んだ。
ハンドルを握るのは、黒スーツを着込んだ中年の男。何度か顔を見た、暴力団の運転手だ。
「急にお呼び立てしてしまい、申し訳ありません」
「これっきりにして欲しいものだ」
「もちろんです。…」
やがて車は、街を離れて一軒の高級料亭に入った。
店に入ると、中は貸し切りになっていて、広い座敷にスーツ姿の男たちがずらりと並んで正座していた。
「! 御大、お疲れ様です」
「お疲れ様です!」
「おつかざっす!」
「…」
私は敢えて仏頂面でその列の前を通り過ぎると、上座に胡座をかいた。
女中たちが、料理を載せた箱膳を持って次々に入ってきた。
準備が整うと、一人の男が立ち上がり、言った。
「この度は、若頭の3代目神鷹会組長への就任、並びに…」
上座近くに目を向け、続ける。
「…関東猪狩組の新設、並びに初代組長のご就任を儀にお集まりいただき、誠にありがとうございます。御大におかれましては、お忙しい中ご足労いただき、感謝の至りでございます」
私がこういった連中とつるむのには訳がある。
義務教育、勤労、納税…表向き、全ての国民は平等で、何かしらの形で社会に奉仕するものだ。しかし、その枠から外れる者……有り体に言ってしまえば、『教育がまるで意味を為さず、凡そ真っ当な勤労ができず、納税など以ての外』という人種が、どうしても存在する。そういった手合は放ってくと社会の害にしかならないので監視を付ける必要があるのだが、その役割を彼らが担っているのだ。
必要悪、などと言い訳するつもりはない。ただ、躾のできない野良犬に首輪を嵌め、鎖を握り、どんな形であれ役割を与える存在として、私、と言うより警察が、彼らの存在を必要としているのだ。
「では、まず3代目より挨拶を」
…
宴会の最中、2人の男が私の目の前にやって来た。一人は巨大なトランクを抱えた下っ端で、もう一人は上等なスーツを着て、自信に満ちた表情を浮かべた50代くらいの男であった。
「…神鷹会の跡目争いは、君の独立という形で決着したわけだ」
「ええ。今後ともどうぞよろしく」
笑みを浮かべて男がお辞儀する。
その後、新しい組織の構成や、縄張りの位置について確認すると、男がふと切り出した。
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