561: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/29(水) 09:34:13.21 ID:wDxkEIx/0
「あっ、待て」
「…」
少女が立ち止まり、首をこちらに向ける。
「帰るところはあるのかね」
「あるよ。言っとくけど、親もいるから。じゃ」
そう言うと彼女は、さっさと歩いて行ってしまった。
…
金曜日。人と会う約束があると妻に伝えておいて、私は例のアパートに来ていた。神鷹会の連中が働いていれば、もうパパラッチは排除されているはずだ。
エレベーターに乗り、事前に言われていた部屋の前に向かう。
インターホンを押すと、中から声がした。
”はい?”
「私だ」
”お待ち下さい”
数秒待って、扉が開くと、中から70代くらいの女が顔を出した。
「お待たせしました。どうぞ」
靴を脱ぎ、部屋に入る。玄関の先は台所と居間になっていて、ソファには同じくらいの歳の男が、座ってテレビを見ていた。
男はこちらに気付くと、ゆっくりと頭を下げた。
「どうぞ。この先に」
指差す先は、一枚の木のドア。
「…お二人は、一体?」
「昔トラメスロさんと、少し。我々のことはどうでもいい。さあ」
「…」
促されるまま、ドアを開け、中に入った。
そこは、一間の子供部屋であった。家具は可愛らしいデザインで統一されており、壁には何かのキャラクターのポスターが貼られている。一般的な、さほど広くない部屋の大部分を占めているのが、中央に鎮座する天蓋付きのキングサイズベッドであった。ピンク色のレース付きカーテンをめくると、中に彼女がいた。
「…っ」
首元で切り揃えた銀色の髪。小麦色に灼けた肌。白い薄手のネグリジェに包まれた、細い身体…
「…ん」
少女が、目を開けた。薄っすらと覗く瞳は、赤。
「Buon giorno…こんにちは」
「やあ」
ベッドの上に、恐る恐る膝を乗せる。
「あなたが…zio e zia…言ってた」
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