568: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/04/29(水) 12:56:09.28 ID:wDxkEIx/0
「…ちょっと待っていなさい。その前に」
私は一度ベッドを降りると、部屋の中を隈なく観察した。入り口にカメラマンを仕掛けていたのだ。部屋の中にも、何かあるかも知れない。
ところが、意外にも部屋の中にそれらしきものは見当たらなかった。自分ならどこに仕掛けるか、長年の経験と勘を元に、仕掛けられそうな場所を一通り探ってみたが、一つも無い。
やや困惑しながらベッドに戻ると、リュイアは退屈そうにベッドにうつ伏せになって、足をぶらぶらさせていた。
「ごめんよ、待たせたね」
私は上着を脱ぎ、彼女の隣に横になった。
ポケットからスマートフォンを取り出し、動画サイトを開く。
「…テレビは観てるかな」
「Televisoreは…少し?」
「これは観たことあるかな」
再生して見せたのは、朱音の好きな『プリティ☆メイジー』の第一話。それを見た瞬間、リュイアが目を輝かせた。
「これ! わたし観てる!」
「そうか。実は、うちの娘も好きでね…」
肩を寄せ合い、小さな画面に目を凝らす。触れ合う肩や首筋から、ほのかに甘い香りが漂ってくる。
私は、その小さな肩に腕を回した。
「…」
触れられても、リュイアは気にせず画面を見つめている。
更に手を伸ばし、彼女の手に触れた。
「…」
小さな、柔らかい掌を、指先で挟んだり、つついたり。しばらく続けていると、彼女が握り返してきた。
番組が終わると、私は尋ねた。
「手遊び歌とか、君の国には無いのかな?」
「てあそび…?」
「例えば…『グーチョキパーで何作ろう』、とか…『幸せなら手を叩こう』」
すると、リュイアが「ああ」と頷いた。
「Se sei felice e tu lo sai batti le mani…」
歌を教えたり、教えられたりしながら、手を叩いたり、触ったり、指を絡めたり。
ある時、彼女の手を取って言った。
「可愛らしいおててだね。食べちゃいたいくらいだ」
すると彼女は、右手を差し出して言った。
「はい、召し上がれ」
「いただきます。…む」
口に含んだ彼女の指は、温かくて、ほんのり塩辛い。舌で舐め回すと、リュイアはケラケラと笑った。
私も手を差し出すと、負けじと彼女も人差し指にしゃぶりついた。
「ん…んっ…」
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