621: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/05/02(土) 18:03:48.72 ID:zgxg9aiy0
「わたし…料理がしてみたい、です」
そう朱音が言い出したので、初めて妻と朱音と私の3人で、スーパーに買い物に出た。
「人参と、玉ねぎと、じゃがいもと…」
「肉は何にしようか」
メニューはカレーライス。料理初心者の入門であり、家族団欒の象徴、だと私は思っている。ただ、実際に作って食べるのはもう久し振りだ。
「ルゥは甘口にしましょうね」
材料を見繕っていると、突然朱音が小さく悲鳴を上げた。
「! どうした」
「…ぁ」
妻の背中に隠れ、向こうを指差す。その方向を見て、気付いた。
そこには、八島絵里がいた。何と、絵里も母親らしき女と一緒にいて買い物の最中であった。
「や、やしま、さ…」
「大丈夫だ」
私は、励ますように言った。
「きっと、心を入れ替えたんだよ。…学校には来ていないのかな」
「うん…」
「次に会う時には、変わっているだろう」
断言するように、朱音に言う。
絵里の方は、私には気付いていない。声をかけることもない。却って面倒なことになるだけだ…
…
「切る時は、猫の手で…」
「よい…しょっ」
妻とキッチンに立つ朱音を、少し離れて眺めている。実は数分前に、密かに家政婦に電話を掛けておいた。もしもの時は助けを求めるかも知れないと伝えてある。
幸い、その必要はなさそうだ。
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