980: ◆WEXKq961xY[saga]
2020/05/11(月) 21:12:17.05 ID:h3sMFQ6n0
『朱音の誕生日』
「ハーピバースデートゥーユー、ハーピバースデートゥーユー」
電気を落とし、カーテンを閉めたダイニングに、11本の蝋燭の火が揺れる。
「ハーピバースデー、ディア、朱音ちゃーん…」
手拍子のリズムが、にわかに遅くなる。
「…ハーピバースデートゥーユー…おめでとう!」
「はぁー…っ、ふっ!」
11本の火が、一斉に消える。家政婦が電気をつけると、別荘の広間に光が戻った。
テーブルの上には、イチゴやブルーベリー、メロンなどがたくさん乗ったホールケーキ。チョコレートの板には、白い文字で『朱音ちゃん、誕生日おめでとう!』と書かれている。
ケーキを囲むのは、私と妻と、家政婦一家、それに絵里と彼女の家族、そして今日の主役の朱音であった。朱音はケーキを目の前に、ぽかんとした顔で立っていた。
「朱音、誕生日おめでとう」
私は彼女の肩を抱くと、言った。妻も彼女の隣に立つと、家政婦が写真を撮った。
「はい、チーズ! …朱音ちゃん、笑顔笑顔!」
「う、うん…」
「朱音、どうした? 気分でも悪いのかい」
「ううん…その」
朱音は、きょろきょろと辺りを見回す。
豪華な料理。たくさんのプレゼント。大きなケーキ。そして、彼女を祝福する、たくさんの人々。その中には、かつて自分をいじめていた、八島絵里さえいる。
「誕生日って…こんなのなんだって…わたしのために、こんな…いいのかな、って」
「…」
私が何か言う前に、妻が彼女を抱きしめた。
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