堀裕子「福井で人気のさいきっくサキュバスです!?」モバP「えっ」
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27: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/06/07(日) 23:19:23.84 ID:l/v3zoKYo

※※

「プロデューサー、これを見てくださいっ! ……どうです? 太古から伝わるぱわーを感じませんか?」
「これは……バウムクーヘン? バウムクーヘンって、丸くなくても焼けるんだなぁ」

 プロデューサーと二人きりの面談室で、私は実家から送ってもらった丸岡屋のバウムクーヘンを取り出した。
 普通のバウムクーヘンと同じように生地を多層にして焼き上げているんだけれど、
 変わっているのは、なんと輪型じゃなく長方形になっているところだ。

「ふっふっふ……福井県といえば、だいなそー! 恐竜ですよっ。
 福井の小学生はみーんな恐竜博物館に社会科見学で行って英才教育されるんです。もちろん私も!」

 なんでも、バウムクーヘンを焼く芯棒がいきなり壊れてしまって、
 生地がもったいないからと四角い型に入れて焼いて売ってたら、福井の地層のなんだかにそっくり!
 ってことで、恐竜の骨の焼入れをいれて発掘気分まで味わえるお菓子なんだとか。

 プロデューサーとの個人面談まであと何日か数え始めた時、私はこのお菓子を持ち込むことに決めた。
 恐竜は人並みに好き。芯棒が偶然に壊れて生まれた、っていう由来は特別に好き。
 そういう……せれんでぃっぷ? なところ、さいきっくと似た匂いを感じるから。

「見掛け倒しじゃないですよ。味もほろほろ優しい甘さで美味しいんですっ」

 ……福井でほかのだと、羽二重餅とか、五月ヶ瀬とか、渋いお菓子ばっかりで、それだと、ねぇ。
 贈答品というか手土産というか、かしこまった雰囲気が出ちゃうから。

 ただ、私のそういう趣向や、生地を一層一層と手間暇かけて焼き上げられたバウムクーヘンも、
 プロデューサーにとっては上の空のようだった。

「じーっ」
「じーっ……て、口で擬音を言うやつがいるか」
「おいしいですか?」
「おいしい。気を抜くとパクパク食べすぎてしまいそうだ。
 ふつうより、甘さが丸いと言うか、マイルドというか。三温糖でも使ってるのかな?」
「ぶぶーっ。惜しいですね。三温糖どころか……ええぇと、その、阿波の和三盆らしいです!」

 バウムクーヘンの味が伝わっていようがいまいが、私は心地よかった。
 作ってくれた人には申し訳ないけど……。

 だって、その原因は明らかに、目の前にいる私だから。




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