堀裕子「福井で人気のさいきっくサキュバスです!?」モバP「えっ」
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3: ◆FreegeF7ndth[saga]
2020/06/07(日) 22:57:49.36 ID:l/v3zoKYo
「俺、ユッコとオーディションで初めて会った時『サイキックアイドルってなんです?』って聞いたと思う」
「……たぶん、そうですね。正直、プロデューサーからは、事あるごとに、そう聞かれてるので、
 別の場面と記憶がごっちゃになってるかもしれませんけど」

 私のプロデューサーは、サイキックアイドル・堀裕子を担当して、その路線で活動させているのに、
 サイキックに対しては、ファンよりよほど眉に唾をつけてかかってくる。

「そうそう。俺はユッコに手を変え品を変え、しつこく、しつーこくサイキックアイドルについて聞いてる。
 サイキックアイドルってユッコより前は、ちゃんと売れた人いないから……
 まさか、いまどき清田益章の真似をさせるわけにはいかないし」
「きよたますあき?」
「どうしても気になるんならスマホで調べなさい。その程度でじゅうぶん。
 昔の流行りだから、ユッコのお父さんお母さんのほうが俺より詳しいと思う」

 私はプロデューサーの『しっかり考えてるところ。頼もしいと思う』の言葉の追及に戻ることにした。

「じゃあ、サイキックアイドルに話を戻すが……
 キャラにしろ、パフォーマンスにしろ、今までにないものは、手探りで作り上げていくしかない。
 だから俺の考えが、ユッコのイメージがズレすぎてないか、絶えず確認しなきゃならない」

 それは思い当たるふしがイヤというほどあった。

 私も、嬉しいことにサイキックアイドルとして名前が売れてきて、
 残念なことに私のことをインチキとかバカにしてきたり疑ってきたりする人の声もちょっと増えてきた。

 けれど、そういう人よりも、誰よりも、何度も「サイキックって何?」とプロデューサーは問いかけてくる。
 テレパスが使えれば早いのにな、と思うぐらい。

 ……もしテレパスで済んじゃったら、今みたいなやり取りがなくなっちゃうのかな。それは……。

「ユッコは俺の質問に……ときどき答えられなかったりブレたりはあるけど、一度もごまかしてない。
 ちゃんと自分で考えてる。だから、俺が仕事を持ってきても、ユッコは責任を持って引き受けることができる」
「……いやいや、自分のことですよ? 当たり前じゃありませんか」

 プロデューサーは表情も声音も真剣そのものだった。
 なんだか、オーディションで初めて会った時を思い出す。あの時のプロデューサー、正直いって怖かった。
 私はすごく緊張しちゃって、スプーン曲げどころか、スプーンを握ってるだけが精一杯だった。

「その当たり前をサボりっぱなしの人がいっぱいいるんだ。大人にさえ。少なくとも、芸能界とその周りには。
 あんた俺のお客さん気取りか? って言いたくなる。言わないけど。
 その考えなしに漬け込んで余分に儲けさせてもらうこともあるから……
 それに比べたら、ユッコは頼もしいよ。比べるのが失礼なぐらい」

 そんなプロデューサーが……え、え?
 愛嬌があると言われたときより、嬉しさとムズムズが両方ともふくらむ。

「でも、私……ちゃんと考えてる、なんて褒められたこと、ないです。それこそ、親にだって」
「はぁ? それはいけない。俺がお父さんお母さんへ『褒めてあげてください』って言っておく」

 プロデューサーがガチャガチャとパソコンのキーボードを叩く。
 まさか、私の親にメールでも打ってるんじゃないでしょうね……?

「ぷ、プロデューサーって、お酒の後の寝付きが悪くてお悩みなんですよねっ」
「そうだな……ふぁあぁ……あぁ、すまん」

 プロデューサーはあくびを噛み殺しながら、眠気を払うように首をぶんぶんと振った。

「私、さいきっく催眠術の訓練もしてるんですっ。ちょっと試してみませんか?
 うまくいけば、プロデューサーもスヤスヤと……」
「……本当に寝てしまうかもしれないぞ?」
「だから、寝かせてあげようって言ってるんですー!」

 私は、オフィスチェアよりは寝やすそうなソファにプロデューサーを引っ張って座らせ、
 プロデューサーの瞳をじっと見つめながら、視線がかち合う真ん中に右手人差し指を立てた。

 ……爪、もっと丁寧にヤスリをかけておけばよかったかな。



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