塩見周子「シオヅケサトウヅケ」
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9:名無しNIPPER[saga]
2020/07/06(月) 23:46:15.25 ID:a0+/0AZa0
 ーーその声で鳴かせて、ひとつ実績を解除したとでも思ったのか。
 金髪の手は次に、周子の太腿の正面に回り、それぞれ両のポケットへ差し入ろうとしてくる。機能性は無く、ほぼ装飾に過ぎないポケットはあまりに窮屈で、ソテツのように浅黒く逞しい指先は半分も入らない。
「んっ、っ、う、だめだって、ばぁ……ん」
 その、指先が、カリ、こりっ……ッ、と、硬いデニム生地の奥を引っ掻く。当然ながらポケットの底では、周子の秘匿された領域には到底届かない。が、熱の篭ったその空間を他人に弄られるというのは、想像以上の戸惑いを周子にもたらした。
 カリっ、カリっ、スリスリ、スリ……ィ、
「ね、だめだって、ね、ここじゃ、ぁ、」
 エレベーターには当然監視カメラがあり、その回線の先には警備が常駐する管理室に繋がっているはずである。だが、そこの警備員が画面を見ていようがいまいが警報が鳴らされることはない。通報ボタンが押されるか、あるいはまさに本番をおっ始めたのならまだしも、エレベーター内で男女が絡み出したくらいではーーたとえその片方が未成年者であろうとーー舌打ちこそすれいちいち割って入ることなどないのである。
「ね、せめて、っ、部屋まで、うう、んっ、」
 強張った顔をなんとか取り繕い、周子はやんわりと金髪の腕を抜こうとする。手首に巻きついた硬質な時計に触れる。と、金具の隙間にネイルが取られ、一瞬痛い思いをする。
 途端、すっ、と金髪の指がポケットから抜かれた。同時に、上昇を続けていたエレベーターが静止する。
 金髪は、何事もなかったかのように周子の隣に立ち位置を戻し、だらりと垂れ下がった少女の腕に手を添えてくる。隙に付け入るそのあまりの自然さに、周子は反射的に指を絡めてしまう。


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