塩見周子「シオヅケサトウヅケ」
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10:名無しNIPPER[saga]
2020/07/06(月) 23:47:34.28 ID:a0+/0AZa0
(手ぇ、おっきい、指、ゴツゴツして、力、つよ……)
 そのことに、指を絡めてしまってから気付く。金髪の振る舞いはまるで紳士が淑女へ行うエスコートであり、その実野獣が獲物を巣に持ち帰る習性の一動作である。どうしてだろう、腰に手を回されるより手を握られる方が、もう戻れない場所へ連れて行かれそうな気がする。ドアが開く。縦に長く、横に広く、それでいて部屋数はごく少ない、白く静謐な廊下。住んでいる者の地位がおのずと知れるが、当然ながらその人間性までもを保証するものではない。
 広がる余熱に足の運びを取られつつ、なんとか金髪に歩調を合わせる。一瞬前まで劣情をほしいままにしていたとは思えない堂々たる歩みに思うところもあるが、今更それを言っても仕方あるまい。どの道、今夜引き返すことも決してない。
「はあ、はっ、ふう、ふ……ぅ」
 僅かなよろめきを押し隠して進む。
(今夜は、何、されんのかな。また、ナカ、ゴリゴリほじくられて……縛り、するのかな。イヤイヤ言っても堪忍してくれなくて、溺れるくらい、タネ付け……っ、)
 一歩踏み出すごとに一歩セックスに近づくという事実は、時そのもののように止まることはなく、周子の思考もそこに集約してゆく。淫蕩な記憶がきゅうきゅうと周子の脳を溶かしてゆく。もう何度も繰り返したはずなのに、一度も慣れることのない大きすぎる感情。10回のライブより1000回の収録より、一晩のセックスでカラダとココロに刻まれる跡の方が深く、広い。今夜もまたカラダの外に中に残される痕跡。外のアトは仕事に響くから、絆創膏でも隠せる程度。その代わり、内側につける痕跡は、一生掛かってもきっと消えない。

「どうぞ」

 ああーー気がつけば部屋の前。扉はすでに開けられ、勝手に電気が点いて、促されるまま、飾り気のない玄関に足を踏み入れて、

ーーバタンっ、

 閉ざされるドアの音を背中で聞いて、

ガチャ、

 


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