【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【2頁目】
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729: ◆QhFDI08WfRWv[saga]
2021/02/26(金) 20:13:31.12 ID:i2IEf3Bco
3年前、陽乃は護るために力を得て多くを失い、けれども必死に守れるだけを守った。
まだ小学生の小さな手を伸ばし、
取りこぼしてしまったいくつもの命を目の当たりにして傷つきながら、苦しみながら
それでも、今やれるだけのことをやろうともがいて、もがいて――そうして、生贄になれと捧げられた。
仲の良かった従姉妹が目の前で喰い殺され、庇ってくれた父が殺され、
ただ一人、母だけしかその手の中には残らなかった。
命懸けで母を守り、戻った世界は陽乃を受け入れなかった。
それは、陽乃が多くの命を取りこぼしてしまったからだ。
目の前で頭部をかみ砕かれた女性を救えていれば、
伸ばされた手を取り引き出すことが出来ていれば、
もう少し早くたどり着き、人間を食い荒らすバーテックスが落ちるよりも先に手を打てていれば
きっとそうはならなかったはずだ。
陽乃「っ……」
それは無理な話だ。
出来たかもしれない。なんて話ですらない。
努力と運があっても、それはどうしようもなかった話だ。
たった一人で四国という、一人には広すぎる地を駆けまわっていたのだから。
けれど――化け物を殺せる化け物にはそれが出来たはずだと誰かが言った。
なぜ、どうして、と……恨みが生まれた。
生贄を拒み、母と共に生き残ったことが人類への裏切りとされ、
それこそが惨劇の引き金であると言われ、憎まれ、疎まれ、死を願われるようになった。
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