佐久間まゆ『太くて固くて大きくて電撃を発するもの』
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4: ◆3jMo9iZPSE[sage saga]
2020/12/24(木) 16:01:36.47 ID:p9Lr8j6Y0
 文香も、読書に集中するあまり、周囲の変化には気付かないことが多い。
 そのとき、文香が手にした本の残りのページ数は全体のおよそ6分の1程だった。物語はまさにここからクライマックスに入る。この地点で一度集中を解き、ひと息入れる。文香はこの瞬間が好きだった。文字しか映っていなかった視界に景色が戻り、少し埃っぽい匂いが鼻腔をくすぐる。耳にも音が入ってきて――まゆの存在に気付いた。
 まゆは両頬に手を当て、困ったように首を振りながら、なにやら声を発している。
 妄想にのめり込むあまり、独りごとをこぼしているだけなのだが、文香にはそれはわからない。もしや、自分はまゆから話しかけられていて、それを無視してしまっていたのでは? 文香はそう考えた。
 まゆはどこか困っているような様子だ。自分はなにか相談を受けているのかもしれない。文香はじっとまゆの声に耳をかたむけた。
 無意識にこぼれ出しているひとりごとである。他人に聞かせる前提ではない。その独白は理路整然とは言い難く、話の主旨をつかむことは極めて困難だった。
 それでも、文香はぽつぽつと発せられる言葉の断片を必死に繋ぎ合わせ、足りない情報を推測で補い、理解しようと努めた。そして、次のようなストーリーが紡ぎ出された。

『まゆは彼女のプロデューサーと恋仲であり、すでに深い関係にもなっている。まゆは子供を欲しがっているが、最近のプロデューサーは多忙のためかストレス性のEDに悩まされており、夜の営みをおこなうことが難しい』

 ――なるほど、と文香は心の中でうなずいた。
 そんなことを私に聞かされても、という思いは正直ある。しかしこれが他人には話しづらい悩みであることは、朴念人を自覚する自分でもわかる。まゆが恥を忍んで相談している以上、ここはなにかしらの助言を返すべきだろう。
 なぜ自分に相談したか、それは日頃から息を吸うように文字を追っていることによる、蓄積された知識をあてにしたに違いない。
 文香は頭の中にある書物の山を漁り、まゆの悩みを解決できる回答を探した。
 そして、見つけた。

 まゆの独白がひと段落ついたところで、文香は、「まゆさん」と静かに話しかけた。
 まゆがびくりと身を震わせて文香に目を向ける。
 文香は小さくうなずき、まゆに微笑みかけた。

「……スタンロッドを肛門に突っ込み、電撃を流すとよいそうです」


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