【ミリマスR-18】舞浜歩の抱えたトラウマを上書きする話
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10:オーバーライト 9/19[sage saga]
2021/03/14(日) 00:27:21.08 ID:Xw+hWuzl0
 自宅に向かうまでの間、歩は助手席で大人しくしていた。車窓から見える景色が見慣れたものになっていく。歩のためだからという大義名分をそれらしく自分に言い聞かせたが、女を家に連れ込むことに変わりはない。剥き出しのうなじや、パーカー越しでも分かる胸元の膨らみに視線が行ってしまう辺り、何をどう取り繕おうが男は所詮男だった。歩は歩で、コンビニで購入した物品の中身を、横目でちらちら気にしていた。

 あらかじめ誰かを招くことが分かっていれば、家の中はもう少し片付いているはずだった。アイロンをかける前のシャツや、乱れたベッドも朝のままだ。ゴミを今朝出しておいてよかった。

「思ってたより、汚くないね」
「あまり家にいないからな。っていうか、汚い部屋に住んでると思われてたのか」
「だ、だって、事務室のデスクとか凄いことになってるじゃん」
「あれは仕方ないよ。ひっきりなしに書類が来るんだから」

 体が半自動的にスーツのジャケットをハンガーに提げ、何も考えなくともネクタイがするする解けていく。冷蔵庫から取り出した麦茶を、とりあえずグラスに注ぐ。ソファーに腰かけ、壁のポスターや棚のCDに目を走らせてポニーテールをさらさら揺らしていた歩だったが、グラスを受け取るなり、すぐさま中身を飲み干してしまった。

「……ベッド、大きいんだね」

 歩が指さした先には、使う暇の無い給料で贅沢として買ったクイーンサイズのベッドがある。

「もしかして……さ。普段、一緒に寝る相手がいるの?」
「はは、いないよ。あのでかいベッドはいつも俺が独り占めしてるだけだ」
「そ、そうなんだ……」

 よかった、と呟く声が、微かに聞こえた。

 ソファーの上でクッションを抱えたまま、歩は麦茶のお代わりをひっきりなしにちびちび口にしている。隣に腰を下ろすと、サイドテーブルにグラスが置かれた。

「男の家に上がるのは、やっぱり抵抗があるか?」
「あ、いや、緊張してるだけ――ご、ごめん。やっぱり、ちょっと怖い……。えと、違うんだ、プロデューサーが怖いわけじゃなくて……」

 かつて男の家に、安心しきって立ち入った先で何があったか。それを考えれば無理も無かった。だが、物怖じしがちな歩が、お泊まりの希望を口に出すのに精一杯勇気を振り絞ったのだ。「やっぱりやめておこうか」なんて、俺からは言えなかった。


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