【ミリマスR-18】舞浜歩の抱えたトラウマを上書きする話
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3:オーバーライト 2/19[sage saga]
2021/03/14(日) 00:21:18.66 ID:Xw+hWuzl0
 資料を見ていた歩が、顔を上げた。

 露出やお色気の絡む話になると途端に恥ずかしがる歩だったが、今日は違った。真っ直ぐにこちらを見つめる吊り目の視線には血気がある。

「……やるよ、アタシ」
「本気か?」
「うん」
「無理をすることはない。今回はこちらから交渉を持ち掛けることができるんだ。お願いされる立場なんだから」
「それでもだよ。だってこれって、一種のチャレンジだろ? す、すごく恥ずかしいけどさ……自分の都合のいいように変えてもらうなんて逃げみたいで、アタシは……そっちの方が嫌だ」

 歩が、金色のメッシュが入った前髪を指に巻き付けている。

 それから彼女は、かつての自分が衝動的にボイストレーニングを抜け出してしまったことを引き合いに出した。「苦手だから」「うまくいかないから」「自信が持てないから」と言い訳してできない自分に目を瞑っていたら、失敗しないが、進歩もない。弱い自分を弱いままにしているのが我慢ならない。歩は静かに、だがきっぱりとそう告げた。

「あのさ……自分で言うのもなんだけど、アタシの歌、上手くなったよね?」
「ああ、ファンレターでもよく書かれてるし、間違いないな」
「諦めずにブチあたってみればさ、何かしらいい結果になるって信じたいんだ。何が、って言われると分からないけど、もっとこう……何て言えばいいんだろ。とにかく、自分の成長に繋がると思うんだ」

 多少の言い淀みこそあれ、歩の言葉には一本の筋が通っている。弱気になりながらも壁を乗り越えようとする意志が、カップを逆さまにして紅茶を飲み干す姿に表れていた。

「分かった。じゃあ、このオファーを受ける方向でいこう。先方にも、歩の意向については伝えておく。もしかしたら、全く別の要因で脚本が変わる可能性はあるけどな」

 歩は頷いた。カップをソーサーに戻し、タオルで口元を拭ってから、「あのさ」と話を切り出そうとした。

「……ちょっと確かめたいことがあるんだけど、いい?」
「ん、何だ?」

 ガタッと椅子が鳴った。ゆっくり立ち上がった歩は椅子をしまい、後ろにぽつんと置かれたソファの上に横たわった。ポニーテールの髪が、ひじ掛けに広がっている。

「えっと……こう、上から覆いかぶさる感じに」

 突然何を言い出すんだ。ああ、早速ベッドシーンのフリだけでもやってみようということだろうか。


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