【ミリマスR-18】舞浜歩の抱えたトラウマを上書きする話
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7:オーバーライト 6/19[sage saga]
2021/03/14(日) 00:23:49.24 ID:Xw+hWuzl0
 二人目の師匠との別れはあまりにも突然で、あまりにも無感動だった。サウスブロンクスどころか、マンハッタン島にも歩は近づかなくなっていた。ブルックリンのハイスクールと自宅とを、怯えて往復する日々が続いた。

 ストリートから遠ざかって生きがいの喪失を覚えていたある日、体育の授業で特別講師として招かれてきた男の顔を見て、歩に稲妻が落ちた。セントラルパークの師匠だった。特別授業が始まる前からボロボロと涙を零す歩へにこやかに話しかける彼は、後光の射した神様だった。

 詳細は話さなかった、というよりもその時は記憶から抜け落ちていたが、魂を注ぎ込んでダンスに打ち込めていないことを、授業の中で少し見ただけで、師匠は看破していた。そんな歩に師匠は、自分がダンサーの他に副業で勤めているスクールを紹介してくれた。ブロードウェイダンスセンター、通称BDC――タイムズスクエア駅のすぐ近くにあるダンススタジオだった。通うのには当然費用がかかるが、自分が担当するレッスンに参加する分には、そして、レッスンの中で合格を出せるだけのパフォーマンスを発揮できたならば、費用を負担しても構わない……と彼が申し出てきた。

 歩には明確なタイムリミットがあった。日本に帰る日は一歩一歩近づいてきていた。このままアメリカでの滞在を続けたい思いは当然あったが、それは叶わなかった。ダンススクールの最終日、近日中にアメリカを離れなくてはならないとたどたどしい英語で伝えようとする歩に耳を傾け、彼は一つの封筒を差し出した。不合格として師匠へ何度か支払った授業料が、全額歩の手元へ戻ってきたのだ。

「いつかアユムのステージを見せてくれ」。最後に師匠は確かにそう言っていたのだと、歩は信じていた。

帰国する直前ちらりと見かけた新聞に、見覚えのある顔が映っていた。サウスブロンクスのあの男だった。アメリカに来て初めて、歩は自ら新聞を購入した。性暴行の現場を押さえたNYPDによって逮捕、その後複数の性暴行の罪で起訴されている、というニュースだったらしいことを、歩は電子辞書を片手に何とか解読した。そこまで分かると、手近にあったゴミ箱に歩は新聞紙を放り捨ててしまった。


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