158:名無しNIPPER[saga]
2021/07/12(月) 19:09:06.20 ID:AlPYWu6V0
久しぶりの水以外の飲み物に夢中になっていると男と目があった。
客人の前だと思い出し、咳払いをして姿勢を正す。
楓「失礼しました。それで、当方に本日は何用でしょうか?」
わかりきっているが、一応の礼儀として尋ねる。
男は最近楓の道場に顔を見せるようになった。
楓と歳はそう変わらないが、これでも社長であり、儲けもいい。
しかし、なぜそんな男が場末の剣術道場を訪れているかというと、
「津嶋さんにこちらを、と思いまして」
男ーー社長は楓に一枚の封筒を渡す。
かなりの厚みがあり、自立するだろう封筒。
楓は目を細めて、封筒を開けずに返した。
楓「社長、申し訳ありませんが、当方の考えは変わりません。何度足を運んでいただきましてもーー」
社長が剣道場に足を運ぶのは、寄付のためであった。
この社長は事前活動家としても有名で、多くの事業に寄付をしている。
文化振興にも熱心で、経営難に苦しむ楓のような道場にも多額の寄付をしている。
しかし、楓は社長の寄付を断り続けていた。
その理由はーー
楓「当方は経営が苦しいのは事実です。しかし、当道場の理念は変わりません」
楓は求められていた。
多額の寄付の代わりに、自分の親族の運営する民間軍事会社ーー傭兵への指導を。
最初は何もしてないのに、と寄付を渋る楓に、男がこっそりと割りのいいバイトとして紹介してもらった。
これも仕事の一環だと、むしろ男からの気遣いに感謝しつつ、足を運ぶ。
民間軍事会社といっても、国内ではただの警備会社だが、楓が通された部屋は外国人ばかりの荒事専門の男たちであった。
楓は即座に踵を返した。その理由はーー
楓「当方が学んだ剣道は、人を傷つける、殺めるものではありません。それと何回いらっしゃっても、そのような方とお付き合いのある会社の寄付はいただけません」
キッパリと楓は拒絶した。
楓は祖父から剣を習った。しかし、その剣で誰かを傷つけるためではない。
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