【安価とコンマ】剣と魔法の世界で姫と結ばれたい9
↓ 1- 覧 板 20
776: ◆gEU9La026k[saga]
2021/09/20(月) 22:44:20.22 ID:5djU/GNZ0
――
「ちっ……!」
小さく舌を打ち、ベルゲは空になった瓶を投げ捨てる。
「……」
無理矢理にその中身である薬品を飲まされた女王カタリナ。
しかし彼女は然程それを気にもせず、ベルゲの背後で未だ混乱した様子の森国の兵士達を見つめ続けていた。
長い間捕虜とされていた彼らが無事であったということは、素直に嬉しいと感じることができていた。
目立った外傷も無く、劣悪な環境で過ごしてきたのではないと思えるくらいには、身なりも綺麗だ。
しかし、それだけで公国の捕虜待遇が優れていると判断するほど、彼女は愚かではなかった。
自分に対してもだが、このベルゲという将軍はとにかく他国の者への評価が著しく低い。
過去に森国や鉄国と何かあったのかもしれないが、それだけでその国の民を全て否定することは許されない。
確かに出会った公国兵のほとんどが粗暴、野蛮な存在ばかりであったが……
全てがそうではないということを、カタリナは知っていた。
自分に攻撃を躊躇ったアッシュに、ジークと共に助けに来てくれたらしい癖毛の少女。
探せば、きっともっと沢山いるだろう。森国を滅ぼされたからといって、公国まで滅ぼしてしまうのは間違っている。
だが、目の前のこの男は……
「ぬうぅぅぅ……!」
女王の心中など知る由も無く、ベルゲは焚いていた香も乱雑に扱う。
その姿に兵士達は怯えるが、彼はそれも気にも留めない。
苛立っている理由は実に簡単なもの。
――カタリナに、自分の薬が一切効かない――
焚いていたのは媚毒の香。予め解毒薬を飲んでいるベルゲ本人には聞かないが、部屋の中にいる雌も雄も性欲を曝け出す筈だった。
兵士達も抑えているようだが、息は荒くケダモノの気配を漂わせている。間違いなく影響を受けている。
だというのに、目の前の女は一切動じていない。
恥ずかしがり胸や局部を隠す仕草も見せずに、どこか憂いを帯びた瞳で見つめているだけ。
ならばと排卵誘発の効力も加わった媚薬の原液を丸々飲ませたが、ぴくりとも反応を示さない。
知る者は極一握りだが、カタリナは夫であるソウキの手で長年忘却の薬を飲まされ続けていた。
それに身体が順応し、元々の体質も相まってカタリナの身体は、薬毒を受け付けない強靭なものへと変貌していた。
まさか、実の夫から強力な薬を飲まされ続けているなどとは、常人ならば考えつかない。
そしてソウキとベルゲ、この二人の薬の精度にも差があったのが大きい。
確かにベルゲは公国では稀有な将。医療や薬学に果ては回復魔法に武術と有益な技術と知識を持っている。
しかしソウキは戦えない代わりに何かができないかと模索し、薬学に辿りついた。
自然に溢れ、様々な素材や魔法が存在する恵まれた環境であった森国。そこにソウキ本人の探求心が加われば……
薬の扱いにおいて、ベルゲが敵わないというのも当然の結果だろう。
「くっ……!」
いきなり出端を挫かれたベルゲは、苛立たしげに石畳を強く踏みつける。
まさか、優れた公国の民である自分が、戦えない森国の王に一点に置いて負けているなどとは、夢にも思わずに。
1002Res/580.37 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20