怪異探偵ソリィバレッタ「赤いドレスは血の先触れ」
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143:おれを ◆MVS19SfNUQ[sage saga]
2022/03/05(土) 11:45:39.26 ID:z8WhOIbA0
探偵事務所。鍵をかけて『本日休業』の看板を出したまま、応対室のソファーに腰をおろす。
窓からは明かりの灯った向かいのビルが見え、こちら側の暗がりを僅かながら淡くする。

バレッタ(同調動作、始め……霊気探知…開始…)

彼女の痕跡。かすかな霊気を辿る。
以前の彼女なら感知できるものは何もなかったが、今や怪異のなりかけであるために、微量ながら特有の霊気を足跡のように残してくれるのだ。

バレッタ(…とらえた!)

掴んだ霊気を取り込み、解析。自分の霊気を分解、割り出した霊気パターンをなぞるように再構築。
一時的に同質の形を得て、自分を他の誰かであるように誤認させる擬態怪法術。いわば不正アクセスである。

この方法はできれば避けたかった。加減を間違って構築箇所を誤れば自我喪失の危険を伴うからだ。他人のアイデンティティを奪う倫理の問題も─これはあまり気にしていないが一応─ある。
何より他者を知り、同調し、同一化するのだ。妙な感化を受けないことの方が少ない。

視界が歪む。認識が変わる。音が。匂いが。感覚が。
床の感触を失い、汗や唾液を失い、呼吸を失い、温度や痛みを失い、鼓動と脈拍を失い、骨や内臓の、肉体の実感を失い──


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