過去ログ - 【オリジナル】「治療完了、目をさますよ」【長編小説】
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1
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:48:49.50 ID:gCTWDI1i0
GWということで、過去書いて完結した小説をまったり投稿していきます。
24話完結の、かなりの長編です。
ジャンルはサイコホラー。
残虐表現を多く含むため、一応R18指定とします。
まったり低速投稿なので、気長にお付き合いください。
また、投稿途中でも普通に討論など書き込んでいただいてOKです。
ワイワイ楽しんでいただけると嬉しいです。
地の文多め、普通の小説形式です。
2
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:51:43.75 ID:gCTWDI1i0
◇
第1話 劣等感の階段
◇
以下略
3
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:52:45.07 ID:gCTWDI1i0
常軌を逸した空間。
普通でははかりえないような、そんな空間に、彼女は平然と立っていた。
年の頃は十三、四ほどだろうか。
長い白髪を、背中の中心辺りで三つ編みにしている。
可愛らしい顔立ちをしているが、その表情は無機的で、何を考えているのか分からないところがあった。
以下略
4
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:54:30.65 ID:gCTWDI1i0
穴は、肉の床が崩れ、内部に人間の体内に似たものが見える。
丁度食道を内視鏡で見るかのような感覚だ。
奥は曲がりくねって深く、よく分からない。
彼女は耳元に手をやった。
以下略
5
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:55:58.36 ID:gCTWDI1i0
「ついたよ。この人の煉獄の入り口」
『OK、それじゃ、攻撃に遭う前にそこに入って、記憶を修正してくれ』
マイクの向こう側から、まだうら若い青年の声が聞こえる。
以下略
6
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:56:54.91 ID:gCTWDI1i0
返事をせずに、彼女は周りを見回した。
いつの間にか、地面の肉質にも眼球が競り出して、
プツリ、と所々で音を立てながら、奇妙な汁を撒き散らしていた。
それら全てに凝視されながら、汀と呼ばれた少女は、
以下略
7
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:58:12.66 ID:gCTWDI1i0
「見つかっちゃった」
子供がかくれんぼで鬼に見つかった時のように軽い言葉だったが、
マイクの向こうの声は一瞬絶句した後、キンキンと響く声を張り上げた。
以下略
8
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 14:59:11.01 ID:gCTWDI1i0
その目は、声に反して笑っていなかった。
足元の眼球をブチュリと踏み潰し、彼女は両手を開いて大声を上げた。
「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」
以下略
9
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:00:15.28 ID:gCTWDI1i0
裸足のかかとが、肉壁にめり込む。
パンパン。また手を叩く。
瞬間、その「空間」自体がざわついた。
ぎょろりと空に浮かぶ眼球が、こちらを向く。
以下略
10
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:01:11.06 ID:gCTWDI1i0
汀は軽い身のこなしで、まるで曲芸師のようにくるりと後転してそれを避けた。
彼女が着ているものは病院服だ。
右から眼球が飛んできて、左の壁に当たって爆ぜる。
以下略
11
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:02:06.39 ID:gCTWDI1i0
『遊ぶな!』
怒号が聞こえる。
今までぼんやりしていた表情は、まるで別人のように生き生きと輝いていた。
しかし、次の瞬間、眼球が一つ汀の脇腹に食い込んだ。
以下略
12
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:02:50.80 ID:gCTWDI1i0
右脇腹で爆ぜた眼球は、ベットリとガムのように病院服に張り付き、次いでアメーバを思わせる動きで、ざわついた。
それが爪を立てた子供の手の形になり、汀の服をむしりとろうとする。
彼女は、口の端からよだれをたらしながら、しかし楽しそうにそれを払いのけ、また飛んできた眼球をくるりと避けた。
『お願いだからやめてくれ、汀。患者のトラウマを広げたいのか!』
13
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:03:48.16 ID:gCTWDI1i0
「分かってる。分かってるよ」
『分かってないから言ってるんだ。汀、早く中枢を』
そこで汀はイヤホンのスイッチを切った。
そしてゴロゴロと地面を転がる。
以下略
14
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:09:01.91 ID:gCTWDI1i0
◇
一瞬視界がホワイトアウトした。
次いで彼女は、狭い、四畳半ほどの真っ白い、正方形の部屋に立っていた。
以下略
15
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:10:24.23 ID:gCTWDI1i0
大きさは一般的な成人男性程だろうか。
どこにも継ぎ目がない、つるつるな表面をしている。
頭髪はない。耳も見当たらない。
汀は無造作にその前に進み出ると、腰を屈めて、頭を小さな手で掴んだ。
以下略
16
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:11:02.56 ID:gCTWDI1i0
汀は興味を失ったように頭を離した。
マネキンは緩慢に動くと、また頭を膝の間にうずめた。
「そんなに目が気になる?」
以下略
17
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:11:45.60 ID:gCTWDI1i0
「馬鹿ね」
汀はにっこりと笑った。
そしてマネキンの前にしゃがみこんだ。
以下略
18
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:12:24.44 ID:gCTWDI1i0
そして眼球に、両手の親指を押し付ける。
「じゃあ見なきゃいいよ」
マネキンは痛がる素振りもみせず、ただ微動だにせず硬直していた。
以下略
19
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:12:59.68 ID:gCTWDI1i0
眼窟から、どろどろと血液が流れ出す。
「私がそれを、許してあげる」
マネキンの手が動き、汀の首を掴んだ。
以下略
20
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:14:06.84 ID:gCTWDI1i0
マネキンの手がだらりと下がり、糸が切れたマリオネットのように足を広げ、壁にもたれかかる。
汀は拳を振り上げると、眼球がつぶれたマネキンの顔面に、何度も叩きこんだ。
血液が飛び散り、その度にビクンビクンと、魚のようにマネキンが震える。
やがて汀の病院服が、転々と返り血で染まり始めてきた頃、彼女は荒く息をつきながら、動かなくなったマネキンを見下ろした。
以下略
21
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:15:06.89 ID:gCTWDI1i0
◇
「……と言うことで、旦那様は一命を取り留めました」
眼鏡をかけた、中肉中背の青年が、柔和な表情でそう言った。
以下略
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