過去ログ - 【オリジナル】「治療完了、目をさますよ」【長編小説】
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22:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:15:52.14 ID:gCTWDI1i0
「視力?」

信じられないといった顔で女性は一旦停止すると、白衣を着た青年に掴みかからんばかりの勢いで大声を上げた。

「目が見えなくなったということですか!」
以下略



23:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:22:12.86 ID:gCTWDI1i0
「まぁ……後は区役所の社会福祉課にご相談なさってください。こちらが、ご主人が今入院されている病院です。面会も可能です」
「先生!」

女性が机を叩いて声を張り上げた。

以下略



24:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:23:00.87 ID:gCTWDI1i0
「ですから、それから先は私達の仕事の範疇外ということで。誓約書にありましたでしょう。命のみは保障いたしますと」
「それは……」
「脳性麻痺の疑いもありませんし、植物状態になったわけでもありません。ただ、『目が見えなくなった』だけで済んだという『事実』を、
私は貴女にお伝えしたまでです」
「…………」
以下略



25:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:24:09.18 ID:gCTWDI1i0


散々喚き散らした女性を軽くあしらい、診断室を追い出した青年は、息をついてカルテをベッドの上に放り投げた。

八畳ほどの白い部屋だった。
以下略



26:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:25:33.05 ID:gCTWDI1i0
部屋の隅には車椅子が置かれ、端の方にパラマウントベッドが設置されている。
上体を浮かせた感じで、そこに十三、四ほどの少女が目を閉じていた。
テディベアの人形を抱いている。
腕には何本も点滴のチューブが刺されている。
青年はしばらく少女の寝顔を見つめると、白衣のポケットに手を入れて、部屋を出ようと彼女に背を向けた。
以下略



27:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:26:19.03 ID:gCTWDI1i0
青年は振り返ると、一つため息をついて口を開いた。

「汀、もう寝る時間だろ」
「隣が煩かったから」
「悪かったよ。もう寝ろ」
以下略



28:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:28:12.39 ID:gCTWDI1i0
そこには快活そうな表情はなく、げっそりとやせこけた、
骨と皮だけの少女がいるばかりだった。

汀は、上手く体を動かすことができない。
下半身不随なのだ。
以下略



29:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:29:20.12 ID:gCTWDI1i0
「今度は何を買ってくれるの?」

汀がそう聞くと、圭介は軽く微笑んでから言った。

「3DSで欲しいって言ってたゲームがあるだろ。あれ買ってきてやるよ」
以下略



30:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:30:07.63 ID:gCTWDI1i0
彼は頷いて、ベッドの脇にしゃがみこむと、汀の手を握った。

「薬は飲んだか?」
「うん」
「無理して起きなくてもいいからな。目を覚ましたらブザーを鳴らせ」
以下略



31:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:31:10.72 ID:gCTWDI1i0


その「患者」が現れたのは、それから三日後の午前中のことだった。
夏の暑い中だというのに長袖を着た、女子高生と思われる女の子と、その母親だった。
圭介は、座ったまま何も話そうとしない女の子と、青ざめた顔をしている母親を交互に見ると、部屋の隅の冷蔵庫から麦茶を取り出して、紙コップに注いだ。
以下略



32:天音 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2017/05/06(土) 15:32:19.76 ID:gCTWDI1i0
何より彼女の両手首には、縄が巻きつけられ、がっちりと手錠のように動きを拘束していた。
女の子の目に生気はなく、うつろな視線を宙に漂わせている。
圭介はしばらく少女の事を見ると、彼女の頬を包み込むように持って、そして目の下を指で押した。
反応はない。

以下略



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