過去ログ - 【オリジナル】「治療完了、目をさますよ」【長編小説】
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天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:02:50.80 ID:gCTWDI1i0
右脇腹で爆ぜた眼球は、ベットリとガムのように病院服に張り付き、次いでアメーバを思わせる動きで、ざわついた。
それが爪を立てた子供の手の形になり、汀の服をむしりとろうとする。
彼女は、口の端からよだれをたらしながら、しかし楽しそうにそれを払いのけ、また飛んできた眼球をくるりと避けた。
『お願いだからやめてくれ、汀。患者のトラウマを広げたいのか!』
13
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:03:48.16 ID:gCTWDI1i0
「分かってる。分かってるよ」
『分かってないから言ってるんだ。汀、早く中枢を』
そこで汀はイヤホンのスイッチを切った。
そしてゴロゴロと地面を転がる。
以下略
14
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:09:01.91 ID:gCTWDI1i0
◇
一瞬視界がホワイトアウトした。
次いで彼女は、狭い、四畳半ほどの真っ白い、正方形の部屋に立っていた。
以下略
15
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:10:24.23 ID:gCTWDI1i0
大きさは一般的な成人男性程だろうか。
どこにも継ぎ目がない、つるつるな表面をしている。
頭髪はない。耳も見当たらない。
汀は無造作にその前に進み出ると、腰を屈めて、頭を小さな手で掴んだ。
以下略
16
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:11:02.56 ID:gCTWDI1i0
汀は興味を失ったように頭を離した。
マネキンは緩慢に動くと、また頭を膝の間にうずめた。
「そんなに目が気になる?」
以下略
17
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:11:45.60 ID:gCTWDI1i0
「馬鹿ね」
汀はにっこりと笑った。
そしてマネキンの前にしゃがみこんだ。
以下略
18
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:12:24.44 ID:gCTWDI1i0
そして眼球に、両手の親指を押し付ける。
「じゃあ見なきゃいいよ」
マネキンは痛がる素振りもみせず、ただ微動だにせず硬直していた。
以下略
19
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:12:59.68 ID:gCTWDI1i0
眼窟から、どろどろと血液が流れ出す。
「私がそれを、許してあげる」
マネキンの手が動き、汀の首を掴んだ。
以下略
20
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:14:06.84 ID:gCTWDI1i0
マネキンの手がだらりと下がり、糸が切れたマリオネットのように足を広げ、壁にもたれかかる。
汀は拳を振り上げると、眼球がつぶれたマネキンの顔面に、何度も叩きこんだ。
血液が飛び散り、その度にビクンビクンと、魚のようにマネキンが震える。
やがて汀の病院服が、転々と返り血で染まり始めてきた頃、彼女は荒く息をつきながら、動かなくなったマネキンを見下ろした。
以下略
21
:
天音
◆E9ISW1p5PY
[saga]
2017/05/06(土) 15:15:06.89 ID:gCTWDI1i0
◇
「……と言うことで、旦那様は一命を取り留めました」
眼鏡をかけた、中肉中背の青年が、柔和な表情でそう言った。
以下略
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