過去ログ - 【泣いたり笑ったり】能力者スレ【できなくさせてやる】
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2:以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします[sage]
2014/01/06(月) 20:18:39.49 ID:oihRBVXJo
【廃屋】

【――それは、いやに生活感の残る家だった】

【往年流行りのキャラシールが隅に貼られたガラス棚の中に、】
【伏せて置かれた什器が、最後に使用されたのは何時であったか】
【流しと冷蔵庫の間、半畳程の隙間、其処に首を吊った女性の死体が有る】

【荒れた日本庭園とも呼べない程度の小さな庭、苔むした岩と、壺の中で泳ぐ水黽】
【使い込まれて飴色になった木戸が開かれ、同色の廊下に綺麗な斜陽が差していた】
【軒下には忘れられた鉄製の古めかしい風鈴と、首を吊った男性の死体が有る】

【悪戯な暴力による穴と落書きの跡が襖に残る、雑然とした和室】
【淀んだ色の砂壁にカラフルなピンで止められた子供の絵、クレヨンで描いた「かぞく」】
【二十の円を形取る蛍光灯が嵌められた電灯の下、首を吊った子供の死体が有る】

【台所から和室までを繋ぎ、庭が望める廊下の隅に蹲る人物だけが、静かに呼吸をしていた】

――僕が此処に立ち入った理由を一言で表すなら、「類似点」だった。
世界から阻害されていく僕と、時間から見捨てられていくこの家。
そんな同族感情にも似た思いで立ち入れば……其処にあった光景は、全く異質な物だった。

【其処にいたのは、灰色のパーカーにジーンズという出で立ちの、酷く薄い印象の青年】
【癖毛のグレーの髪、伏し目がちな紺青の目、靴は履き古したスニーカー。土足のままだった】

……通報しなければならない。咄嗟にそう思ったが、同時に恐怖を覚えた。
何者が……こんな惨状を作り出したのか。其処に在ったのは怨恨か、或いは無差別か。
後者の方が恐ろしいと思った。何故なら、其れは一歩間違えれば、僕にも及んでいたのだから。

【小説口調の青年は、よく見れば片手に携帯端末を持ってはいたが、指先が震えており】
【感情の読めない貌は、其れでも確かに怯えているようだった。気が付いてしまったからだった】

【建物は古い。新聞も壁掛けカレンダーも過去を指している】
【死体だけが、ついさっき死んだばかりのように、無い筈の風に揺れていた】


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