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【上条浜面】とある四人の暗部組織【一方垣根】 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:32:02.99 ID:xCcOSsdDO


※原作の設定を甚だしく崩しています

※カップリングは特にありません

※たまにグロいシーンがございます。苦手な方はご注意ください

質問がある方はドシドシどうぞ

時間的には原作一巻の前、七月の中旬辺りです
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:22:39.08 ID:AZ8P+2+I0
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にゃんにゃん❤ @ 2024/03/26(火) 22:21:04.83 ID:AZ8P+2+I0
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2 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:33:57.81 ID:xCcOSsdDO



居場所なんて、存在しなかった。
逃げ道なんて、存在しなかった。
拠り所なんて、存在しなかった。

常に孤独。当たり前になった日々。
友達は皆、事実を知った自分を畏怖して離れていく。
学校で一言も話さない毎日。
それは外に出ても変わらない。
寧ろ、状況は悪化。



『この疫病神っ!!』



何処を歩いても、聞こえる声。
木霊が鳴り止む事は無い。
石や空き缶やゴミを悪霊を祓うように投げつけて、自分に命中したら、人々は歓喜していた。

生まれ持った性質。
“災い、天災を引き寄せる”。

自分に関わった人々は何も悪い事はしていないのにも拘わらず、“不幸”になっていく。
3 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:35:10.09 ID:xCcOSsdDO



『こらっ、その子と関わっちゃ駄目よ!!』



大人も自然と自分を避けていく。
化け物を見る目で軽蔑する。
市街を歩いただけで、大袈裟に騒ぎ出す大人達も居た。

地震が起こるとか、強盗に入られるとか、堤防が破壊して洪水が生じるとか、様々な事柄を。
大人気なく自分を追い払おうと目の色を変え、叫んで蔑んで。


テレビ局の人々に悪フザケで撮られた事も有った。
非道行為と批判され、未放映のまま映像は処分したらしいが、真実かどうか定かではない。

唯一の味方である身内が、揃ってテレビの人達に激昂した記憶がある。
その時の自分には何を言っているか判らなかったけれど、両親は物凄く恐い顔だった。
4 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:36:45.88 ID:xCcOSsdDO

事件が起きたのは、小学低学年の時。
思わず逃げ出して、深夜になっても帰らないで河原に膝を抱え込む。
抑え切れなくて、耐え切れなくて、怖くなって……どうしたらいいか判らなくなってしまった。

このまま、何もする訳でもなく、孤独のまま消えてしまいたい。
……幼い自分は、そう思うようになった。



『こんばんは』



声と共に現出した奇妙な人間。

全身が緑に包まれた衣服を纏う。
膝まである長い銀髪。
男にも女にも大人にも子供にも聖人にも囚人にも見える……『人間』。



『だれ……?』

『アレイスター=クロウリー。
君に興味を覚えた人間さ』



アレイスターと名乗る人間は、手を差し伸べてきた。



『君の噂はかねがね。どうだい、学園都市に来る気は無いかい?』

『……行ったら、“壊れて”しまうよ?』

『懸念は無用。そんな柔に出来てはいないさ』



それに、と人間は畳み掛ける。



『学園都市には、君と同じような境遇の子供達が沢山存在する』

『僕と……同じ……』

『どうかな? 歓迎しよう』



―――それが、自分を変える切っ掛けだった。
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/08(金) 07:36:58.46 ID:BLeMBuJAO
総合で書いてた人か?
なら期待
6 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:37:39.82 ID:xCcOSsdDO





―――――――――――――――




拝啓。お父様、お母様へ。
最近は著しく蒸し暑くなり、海開き日和ですが、如何お過ごしでしょうか?
本日は、暫く連絡を絶って音信不通な事もあり、今回筆を取らせて頂きました。
学園都市の生活も早数年、貴方達の息子、上条当麻は今日も元気に―――



「リーダー、何やってんだ?」



と。彼の直筆両親宛手紙は、真横に座る人間の横槍によって中断される。

ココは第七学区の飲食店。珈琲に五月蝿い仲間の一人もお気に入りの店。
四人用のボックスに座るのは、周囲から際立つ容姿の少年が四人。
7 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:38:45.62 ID:xCcOSsdDO



上条「仕事の時、お前の不備で予想以上に物的損傷した始末書だよ」



ツンツン頭。下は黒い制服のズボン。上は黒いタンクトップ。
とある高校に通う一年生。
なのに堂々と煙草を嗜む少年。
彼の名前は『上条当麻』。



垣根「はあ!? 寧ろ破壊しまくってんのコイツじゃね?!!」



金髪の頭。薄赤いスーツを纏う。
上の前のボタンは全部開け放って中から白いワイシャツとTシャツを曝け出す。
ホストを彷彿させる格好。
それが彼のスタイルだ。
彼の名前は『垣根帝督』。



一方「黙れ。人のこと指差してンじゃねェよメルヘン野郎。目障りだ」



白髪の頭。真っ赤な瞳。
下は白いズボンを穿いて、シャツ上に黒いジャケットを着衣。
珈琲を嗜む姿は何処か貴族の様。
彼の名前は『一方通行』。



浜面「てかよ、仕事と聞いて来たのに、こんなノンビリしてて良いのかよリーダー?」



ボサボサの金髪。
特に特徴は無いダボダボのズボンに、肘まで袖を捲ったジャージという姿。
ドリンクを片手に前へ腰を掛ける“リーダー”に問う。
彼の名前は『浜面仕上』。
8 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:39:40.78 ID:xCcOSsdDO

彼らは学園都市の暗部組織。
作戦を練るリーダー上条当麻。
主戦力で特攻する一方通行。
同じ主戦力で遊撃の垣根帝督。
車など雑務をこなす浜面仕上。

四人で構成された集団。
メンバーはリーダー直々の選抜。
話によれば、学園都市統括理事長アレイスターに直接許可を取りに行ったという経緯が存在するらしいが、実際の所は誰も知らない。

ともあれ目立つ四人。勿論悪い意味で。
他の客や従業員から浴びる視線は決して良い物ではなく、恐れや脅えと言ったマイナスなものばかり。
しかし彼らは全然気にせず、お構い無しの様子で飲食店を満喫する。



上条「問題ねえよ。今日中に終わらせれば上層部の連中は文句言って来ない」

浜面「今日中って、そんな時間が掛かる仕事なのか?」

上条「いんや別に。至って直ぐ終わる。所詮、上条さん達の障害にも及びませんのことよ」

浜面「ふーん……つーか、放っておいていいの? これ」



ピッと指差す方向には、垣根帝督と一方通行。
未だ二人の口争いは続いていた。
9 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:40:17.87 ID:xCcOSsdDO
彼はどうでもいいようにシッシッと手を払う。



上条「ほっとけ。一方通行は兎も角、垣根に構ってたらキリが無い」

垣根「上等だこのモヤシがぁッ!!」



その直後。一方通行に煽られて腹を立てた彼が、勢い良く椅子から立ち上がる。
反動で机が揺れ、垣根の肘が上条のドリンクに当たったのだ。



垣根「あ」



と呟いた時には既に遅く。
慣性の法則でドリンクは零れた。

―――上条がさっきまで書いていた手紙に。

烏龍茶が手紙を呑み込み、文字が滲んで紙が濡れて……使い物にならなくなってしまった。
上条はピタリと停止し、微動だにしない。凝視する視線の先には手紙。

暫し静寂と沈黙が訪れる。



一方「……はァ、だからテメェは三下なンだよ」



心底呆れたように溜息を吐いて続けたセリフが、止まった時間を動き出す引き金。
上条は銜えた煙草を灰皿に起き、横に座る垣根に向き直って、首根っこを捕らえる。
10 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:41:41.36 ID:xCcOSsdDO

その行動の意味を理解する彼は明確に狼狽。
一瞬で背筋に焦りの汗が流れ、大洪水中だ。両手を上条に突き出し、彼の憤りを宥めようと必死に抗う。



垣根「ま、待てリーダー落ち着け! ていうか落ち着いて下さい。話し合えば判り合える、人類皆兄弟ッ!!
そうだろ? リーダー? 俺達仕事仲間であり親友じゃないか。
暗部組織だからどうした俺達仲良し万歳三唱ォ!! もはや身も心も一心同体だぜ!」



首を掴まれたままの状態で弁明。
しかし上条当麻は依然と変わらない。

当然、垣根は動揺の色が出る。
リーダーの空気が全く弛緩しないのだ。これは非常に拙い。



垣根「……い、いやっ!! ごめん!! 俺が悪かった、申し訳ありませんでした!! この身に有り余る行動を致しました事を認めますっ。
だからお願い許してっ、止めてっ、離してっ、僕を一人にしてっ!!」



反省の様子は皆無。
救いの余地無し。
上条はそう判断をする。



浜面「無駄だと思うぞ? 言わなくても判ってると思うけど」

一方「究極の自業自得だボケ」



他の仲間も、助ける気は絶無。
これで彼の逃げる道は封鎖された。



垣根「は、薄情―――」

上条「歯ぁ食い縛れよ」



不敵な笑みを浮かべると、右手の拳を振りかぶり、





上条「自粛の文字を学べ馬鹿野郎」
11 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:53:01.56 ID:xCcOSsdDO









―――――――――――――――
12 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:53:57.84 ID:xCcOSsdDO



垣根「畜生ぉ……何で俺だけ……」



リーダーの右ストレートが頬へ綺麗に決まった彼は、膝を抱え隅っこの方で文字通り拗ねていた。
自分だけが殴られて、共に騒いでいた一方通行は咎められない理不尽な現実に嘆く。
と言っても、それはあくまで垣根帝督の中であって、実際に一方通行が騒いでいたかと言うと、……答えは言わずもがな。

リーダーこと上条当麻は垣根の様子を気にも留めない。発言に干渉さえしない。
どうせ直ぐに立ち直ると判り切っているからだ。
勘違いしないで欲しいが、彼は別に垣根が嫌いな訳では無い。
ただ、すこぶる扱いが面倒なだけ。それに尽きる。



一方「……上条。そろそろ仕事内容を説明してくンねェか? 珈琲が切れちまう」



静かに珈琲を飲んでいた一方通行が、上条へ口を開けた。
13 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:55:43.68 ID:xCcOSsdDO
問われた本人は再び煙草へ手を付けようとしたが、彼の放った言葉によって手が停止。
そのまま片手は空中に泳がせず、顎へ運ぶ。



上条「んー……一方通行が言うんだ。しょうがない、始めるとしますか」

垣根「何でこう俺と第一位の扱いが愕然と差が出るんだ……。そこんトコどう思うよワトソン君?」

浜面「単純に垣根が騒いだり面倒事を起こさなきゃ、リーダーも普通に接するだろ。今みたいな発言をしなければ」

垣根「くっ……!! レベル0のくせに正論過ぎて何も言えねえ!! こうなったら『第一位とリーダーはホモ疑惑』っていう噂を―――」

上条・一方「ブチ殺すぞ」



二人は特に表情も変えずに一言。
目線も合わさず感情が籠もって無い分、背筋に迸る恐怖が増大。
14 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:56:38.66 ID:xCcOSsdDO
だがそれは周囲の一般客と店員だけ。矛先を向けられた垣根は全く効き目が無い様子。

だからこそ上条は頭を抱える。
自粛を知らないので、懲りる事が無いのだ。それも今更であるのだが。



上条「……まあいい。とりあえず依頼の紙を―――ん?」



垣根に構っていたら話が進まない。
なので彼は取り合わない形で、ズボンのポケットに手を突っ込み……疑問を発した。



上条「……」



反対ポケット。尻部分のポケット。
はたまた傍らに置いた学ランの全てのポケットや懐を探る。
だが何も出て来ない。
15 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:57:39.93 ID:xCcOSsdDO



上条「……」

一方「……」

垣根「……」

浜面「……」



静まる静寂の中。
リーダーは人差し指と親指を顎に添える。瞳を閉じ、考え込む。
たっぷり数十秒。



上条「……」



そしておもむろに灰皿に置いた煙草へ手を伸ばす。
口に銜えて思いっ切り吸い、硝子越しに青空を眺めると、



上条「ふーっ……」

浜面「『ふーっ』じゃねえよオイィッ!!?」

垣根「なになにっ、依頼の紙を無くしたのか!!」

一方「はァ……」



焦りつつツッコミを忘れない浜面に対し、却って垣根は至極嬉しそう。
今度は一方通行が頭を抱える番。
16 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:58:52.72 ID:xCcOSsdDO
何と表現したら良いのやら、四人の中では所謂『恒例のアレ』だそうだ。
つまり上条当麻の性質、不幸スキルが発動した模様。
しかも厄介な事に何時何処でかは不明。もはや打つ手無し。



上条「まぁ……アレだ。お前ら探して来い。俺はここで待っといてやるから」



腕を組み、シレッと彼は言い放つ。……自分勝手極まり無かった。
勿論、他のメンバーは反論を叩く。



浜面「うっわ!? 自分の責任を俺達で補うつもりだぞ上条の野郎!! 人間じゃねえ!! 悪魔か!? 鬼かッ!!? ウニ星人かぁッ!!!?」

垣根「人の事言っておいてコレかよっ!! そんなんだから何時まで経ってもウニのカツラ被ったような、ダサい髪型してんだよ!! 女の子ドン引きだぞ!!」



……いや、前言撤回しよう。
彼らが放った言葉は反論の類ではない。ただの悪口だ。
17 :977 [saga]:2011/04/08(金) 07:59:54.09 ID:xCcOSsdDO
勢いに任せた二人の口は一言多いとか文句を言うとか、そういうのでは無く、一切無関係な上条の容姿に就いて罵っているだけ。

メンバーの中でも比較的気の短い一人でも在るのだから、当然の如くその言葉に素直に反応する。





上条「―――んだとコラ?」





リーダーが瞳を開けた時には既に、ソファーに座っていた二人は……忽然と姿を消していた。

黙ったまま飲食店の出入り口へ視線を移す。ソコには浜面と垣根が全速力で逃走する様子が在る。
流石、長年連んでる親友。自分が憤る前提で罵倒を浴びせたらしい。
そう言う所は随分と頭の回転が速いので、明らか無駄な所で才能を浪費していること間違い無い。
もう少しその部分を仕事に回してくれたらと上条は切実に思う。

心の底から溜息を吐き、席を立つ。



一方「東に二十三度。四百メートル範囲内だ」

上条「あいよー」
18 :977 [saga]:2011/04/08(金) 08:01:24.43 ID:xCcOSsdDO


浜面と垣根の逃走を謀った居場所、では無い。
そんな些細で下らない事に一方通行は能力は行使しない。そもそも二人に使ってやる能力何て持ち合わせていない。

四人のリーダー上条当麻は学ランを着衣。指貫タイプのグローブを嵌めてサングラスを掛ける。
アレイスターが用意した彼専用の戦闘スタイルだ。

彼は飲食店から出ると一方通行の助言、東を向く。
東は二人が逃げた方向でもあるし―――失った紙の方向なのだ。



上条「鬼ごっこにしちゃぁ乏しい。ゴールが逃げる迷路ゲームだなこりゃ」



不敵な笑みを漏らす。
言葉の矛先は『敵』へ。
19 :977 [saga]:2011/04/08(金) 08:02:42.56 ID:xCcOSsdDO

もう依頼は始まっているのだ。
紙を奪った張本人こそ、今回の依頼内容の敵。浜面は車を調達、垣根は先に敵グループを追う。
一方通行はお休み。上条はリーダーとして締めに回る。



上条「俺達から情報を奪おうと画策したのは良いが、爪が甘い。
テーブルの下に盗聴器なんざバレバレだっつーの」



紙は囮。まんまと敵は自分達の作戦に嵌った訳だ。
飲食店で四人の会話は演技ではない。寧ろ日常茶飯事の会話。
急に切り替えスイッチが入ったのは、一方通行の演算が終了して特定が出来たから。







―――ただ、それだけの事。







こうして闇に堕ちた四人の一日が始まった。


……しかし。後に彼らは、この平和な日常が劇的変化を遂げる事を思い知る。


夏休みまで、僅か一週間。
20 :977 [saga]:2011/04/08(金) 08:04:39.44 ID:xCcOSsdDO
投下しゅーりょーです

とりあえず総合の分は投下いたしました
続きは時間が空くか、学校から帰ってきてからです

ではでは
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage ]:2011/04/08(金) 08:29:54.76 ID:5/JkvY9c0
ヴェントの次はこれかよ……
977さんすご凄いな
暗部上条さんでの再構成か。しかも最強すぎる面子とか

それじゃあ上条さんとアイテム4人or5人の兄弟姉妹再構成は俺がもらっていきますね
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/04/08(金) 09:13:58.95 ID:D8DM9c1K0
ヴェントの人か 乙
こっちもすげえおもしろい
期待して待ってます
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 16:34:42.96 ID:+UOTqBeZ0
期待
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 19:57:33.76 ID:zPDvmInIO
上条さんがリーダーとか、コンボイ並みの安定感だな
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/08(金) 20:31:22.53 ID:Hyx2EL9Y0
上条が麦野みたいになったら浜面がとめないとな


期待
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(奈良県) [sage]:2011/04/08(金) 20:33:12.11 ID:35iWYpNko
これは面白そうだ
期待
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/08(金) 20:59:16.91 ID:3csF9CMg0


期待
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/08(金) 22:00:37.47 ID:TBfOfppeo
このメンツならアレイスターがくだらない事しようとしても
簡単にプラン潰せそうだな
C
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) :2011/04/09(土) 00:17:37.21 ID:BWKOXOHAO
確かに、この世界のアレイスタ―はろくでもないことは考えてないのかもな…上やん誘って学園都市に入れたわけだし
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/09(土) 00:33:01.61 ID:P92hdYiLo
乙乙
>>1は出来る子 期待してる
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/04/09(土) 00:33:41.94 ID:Op2a6i+/0
総合SSスレで見たな…

設定が斬新で楽しみだ
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 00:35:52.72 ID:J0xtAvcR0
上条さんと一方通行のコンビがクール過ぎてカッコよい!
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/04/09(土) 00:40:48.35 ID:jBhYwTww0
乙 総合で見たヤツだな これは期待

ってけどなんかポジション的に「アイテム」っぽくね

上条→麦野
一方→滝壺
垣根→絹旗
浜面→フレンダ

しゃべってる内容は垣根がフレンダっぽいけど
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/09(土) 00:53:32.70 ID:aAfzEt3g0
>>15>>16三蔵「おい」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 01:33:25.98 ID:B1eoCGKY0
この暗部組織強すぎるだろォ

俺も入れてw
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 01:34:58.62 ID:sn4bAzJUo
腐女子ホイホイじゃねぇかw
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/09(土) 05:00:54.79 ID:+ehgYSjco
>>34
ずいぶんと懐かしいネタだなww
理解した瞬間ちと笑ったわwwww
38 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:14:41.82 ID:qY5aRypDO
投下しますねー


やっぱり学校が始まると、更新ペースは前回のスレより遅延するみたいです…orz
39 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:16:56.76 ID:qY5aRypDO


路地裏。薄汚れた、穢れた道。

表通りを跨ぐ人々が決して踏み入れる事は無い通り。
武装無能力集団(スキルアウト)が主に行き来する、敷かれたレールの上を走る事を自ら止めた者、又はねじ曲げられて進めなくなった者。様々存在。



―――一般人が踏み入れてはならない……そんな道。



少し、広い場所。
黒いビニール袋が散乱。
ゴミ置き場として使う所。

ソコに、ゴミとは違う物。
赤とは程遠い黒っぽい色。
仄かに香る臭いは慣れた悪臭。



『物』は……人間。
『色』は……血。
『悪臭』は……血の臭い。



全身が血に染まった人間は分断、串刺し、風穴。
色々な有り様で転がっていた。
40 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:19:15.39 ID:qY5aRypDO
一人は胸中に細いパイプが壁へ串刺しにして、人間噴水を築く。
一人は首から下を分断し、ジグソーパズルでも不可能な肉塊に変貌。
一人は全身のあちこちに、直径三pの風穴が幾つも空いていた。

全員で何人なんて判りやしない。
何故ならそれぞれ“人間の原型とは懸け離れている”のだから。



男「たっ、たたた、助けてくれ……っ。金なら、金なら幾らでもやるからっ!! お、お願いだ……」



衣服の襟を掴んで壁に押し当てる。
敵グループの統率する人間。
自分より遥かに図体が大きいはずなのに、酷たらしい惨状を目の当たりして精神も貫禄も崩れ去ったらしい。
41 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:21:02.36 ID:qY5aRypDO
襟を掴む上条当麻は無表情で、男を凝視。
冷酷なる目で。残酷なる瞳で。



上条「お前さぁ、勘違いしてねぇか?」



感情など、籠もって無い。
確認作業をするように。
籠もって無いからこそ、喉元に刃物を突き付けられる錯覚を感受。

錯覚は精鋭された殺気。
表情は、狂いきった笑みへ。



上条「暗部何て腐敗に堕落を重ねた場所で生きてるくせに、なに救いを求めてる訳?
ハハッ!! 何人も人間を殺してきて助けてくれ? 随分と都合が良いんだなぁ〜」
42 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:22:47.37 ID:qY5aRypDO



男は言葉を詰まらせる。
みっともなく涙や唾液を垂れ流す。命乞いをする自分と、今まで自分が殺して来た人間を重ねてしまったのだ。



上条「俺達を殺すつもりで狙ったんだろ? じゃあ喚くんじゃねぇ。黙って殺されろ。暗部(ここ)はそう言う世界だ」



拳銃を携えるもう片方の手で、銃口を男の額に添える。
弾丸を装填して、上条は告げた。







上条「―――じゃあな」
43 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:24:33.06 ID:qY5aRypDO




―――――――――――――――




学ランを脱ぎ捨て、サングラスを外す。
依頼終了。見事達成。その合図だ。
彼は身を翻し、血と肉で埋もれた小さな場所から立ち去る。



垣根「うぃっすリーダー」



空から残党の始末をしていた垣根帝督が、六枚の翼を生やして上条の隣に降り立つ。
彼は言葉を発さず、ぶっきらぼうに片手を上げる動作で、垣根に応答。

満足したのか、無垢な少年のように笑みを浮かべると、水が入ったペットボトルを上条に渡す。
44 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:26:38.65 ID:qY5aRypDO
受け取った彼は、首を傾けた。



垣根「『血浄水』さ」



有り様を察した垣根が述べる。
調子良く指をくるくる回し、



垣根「服に移った血生臭い悪臭、肌にこびり付いた血を完全に流し落とす水。すっげー便利だろ?」

上条「マジか、サンキュ」



躊躇無くキャップを空け、頭から水を被る。
垣根はペットボトルをケラケラと笑いながら指差し、



垣根「まあ唯一のデメリットで、被ったら鶏糞臭くなるけどな」
45 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:31:03.62 ID:qY5aRypDO

上条「……」



ピタリと静止。
彼は無言で浴びるのを止めると、自らのポケットに手を忍ばせ、



垣根「じょ、冗談だって。軽いジョークに決まってんじゃんか?
だから拳銃を仕舞おう。な? 物事は穏便に行くべきさこれ大切」

上条「ったく……」



再びペットボトルを逆さまにして、水を流す。
返り血を浴びた髪をもう片方の手でわしゃわしゃと掻きつつ、上条はリーダーとしての役目で問う。



上条「浜面と一方通行は?」

垣根「浜面はココを抜けて直ぐにワゴン車で待機。第一位は会計を済ませて先に帰ったってさ」

上条「ん、了解。お前は浜面と車で帰ってて良いぞ。俺はやる事残ってるし」

垣根「えーっ!? リーダーも一緒に帰ろうぜぇ? 何だよ用事って、すっぽかせよ」

上条「馬ぁ鹿。ガキみてぇな駄々こねんな。気持ち悪い。それに逃げると色々五月蝿えんだよ」
46 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:34:15.36 ID:qY5aRypDO



使い切ったペットボトルを垣根に押し付け、吐き捨てるように彼は言い放った。
至極億劫そうに溜息を吐く。

その有り様を見て、垣根は得心したとばかりに頷き、透かさず拳を作って悔しがる動作を露骨に表現。



垣根「くそぅ、また幼馴染みかよ。何時も何時も俺達の時間を奪いやがって……!!」

上条「幼馴染みっつーか、腐れ縁な? それと『俺達の時間』ってそういう言い回し止めろ。キモイ」

垣根「いーや、アレは幼馴染みだろ? 確か……小学生からずっと一緒だったんだっけ?」

上条「……残念な事にな」

垣根「ひっでぇ言い方。性格は難有りだけど、顔は将来性抜群じゃん。絶対美人になるね」

上条「だから何だよ。アイツが美人になろうが、“この世界”に居る俺にとっちゃ、どうでもいい」

垣根「じゃあ俺達の仲間に歓迎してやれば?」



何気無く放った発言だが、垣根は失言だったと悟り、悔恨する。
何故ならば……リーダーが目を一瞬だけ細めたのだ。
瞬きの間に戻っていたが、垣根は看過していない。
47 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:36:17.49 ID:qY5aRypDO

その動作には意味がある。
弱音や情けない姿を一切見せない上条当麻が唯一、心が揺らいだ時。



上条「……馬鹿が。あんな自分勝手なヤツ、雑用にもなんねぇよ」



そしてこのセリフも、幼馴染みに対する優しさの裏返しである事を……垣根帝督は知っている。

上条当麻という人間は残虐冷酷非道だ。
敵と認定した場合は逡巡無く、出し惜しみもせず殺す。



―――“例外”を除いて。



それは自分だったり。
一方通行だったり。
浜面仕上だったりと。
必ず彼の中にも『基準』が有るはずなのだ。
48 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:42:24.46 ID:qY5aRypDO

自分達はたまたま当て嵌っただけ。
もし進む道を踏み誤っていたら、少なくとも自分は生きていない。

当初から上条に従順だった訳じゃ無く、寧ろ初対面は“最悪”と言って良いほど悪かったりする。
勿論喧嘩をふっかけ、上条に持てる実力を発揮して戦いを挑み、垣根帝督は激昂した。



何が解ると。

俺の苦しみを。

初対面のテメェに。



八つ当たりには間違い無い。
御門違いなんて百も承知。
でも。向ける怒りの矛先が違えど……自我を見失った己を、抑える事は出来なかった。

それ程、傷付いた過去が有る。
ぐずぐずに壊れた昔が存在する。
どうしようも無くなって、自分でも道が視えなかった時があった。

確証は皆無だがおそらく、垣根だけでは無い。
一方通行も浜面仕上もだ。
49 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:46:32.28 ID:qY5aRypDO

絶望の淵から引き上げてくれたのは、上条当麻だった。
もしあの局面で出会えていなかったら、『今』は無かった。

今の日常が平和かと聞かれれば、決して率直に頷く事は出来ない。
だけど。
垣根帝督にとって仲間と過ごす日々は、『掛け替えの無い日常』という確固たる真実だから。


故に上条当麻は優しい。
表面は残虐冷酷非道だが、根底に有るのは必ず優しさ。
ただ、それを何かの切っ掛けで心の奥底へと閉じ込めてしまったのだ。

理由を彼は語らない。
必要が無いと感じているのだろう。実際、その通りだった。
しかし、上条の様子を判別出来た時、垣根は考え直した。

暗部に救いは存在しないと上条当麻は述べる。
正論だ。反論する余地など何処にも無い。
未来永劫、救われる事は皆無。
50 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:48:08.33 ID:qY5aRypDO











―――だけど、それじゃ……可哀想だ。







―――何か悲しみを背負って生きる。








―――『リーダー』が。
51 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:49:40.14 ID:qY5aRypDO


同じ窮地に陥ったからこそ判る。
あの顔は悲しみを背負った人間の表情だ。

ならば救ってやりたい。
自分の時のように。
心の底から穏やかな笑みを浮かべるまで。



浜面「よっ、遅かったな」



ワゴン車の扉を開けると、浜面が話し掛けてきた。
垣根は適当に返事を返すと、助手席に乗り込む。



浜面「んあ? リーダーは乗らないのか?」

垣根「これから用事だとよ。女の子とイチャイチャタイムさ」

上条「阿呆。んな良いもんじゃねぇよ」



扉越しに彼のツッコミが入り、さっさと行けと言わんばかりに手を二回払った。
52 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:52:24.88 ID:qY5aRypDO
状況を理解した浜面はポツリと呟く。



浜面「お邪魔虫はどっか行けってか」

垣根「そーゆー事」



上条の言葉を聞く間も無いまま、車を走らせて街に消えて行った。
残ったリーダーは、頭を掻いて溜息を吐く。



上条「……口数の減らない野郎共だ」






―――だから、垣根帝督は託すのだ。






上条「で? お前は俺に一体何の用な訳?」






―――現在、上条当麻を救える可能性を秘めた唯一の存在。






美琴「何よご挨拶ねぇ。そんなに私と会うのが嫌?」






―――上条当麻の幼馴染み、御坂美琴に。
53 :977 [saga]:2011/04/09(土) 06:57:26.93 ID:qY5aRypDO
しゅーりょーです


何か、質問があるならば言ってくださいね

ではでは
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 07:05:20.78 ID:e2mTqpjxo
おおう、ここで切るのか……
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 07:05:52.26 ID:VNfai2kZ0
お気に入り決定だぜェ この野郎ォォ!
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 07:07:24.53 ID:/TMWJ3350
乙!キャラ的or立ち位置的には

三蔵⇒一方通行
悟空⇒禁書(もしくは打ち止め)
八戒⇒海原
悟浄⇒垣根

って感じだけどな。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/04/09(土) 07:09:29.33 ID:HQRFO+wAO

美琴の強姦NTR処女喪失はありますか?
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage ]:2011/04/09(土) 07:41:02.85 ID:EwhpLxrO0
やっぱ美琴はそういう立ち位置になるんだな

これって一巻だけの再構成じゃないよね
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 08:48:44.48 ID:B1eoCGKY0
これはインデックスでるのか?
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 09:42:36.61 ID:/uYB2MJIO
こういう話だし美琴がヒロインとは正直予想してなかったわ
なんか海原辺りが出張ってきそう
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/09(土) 09:48:25.53 ID:PbQfPP6AO
追い付いた
総合の時から待ってた、お気に入り余裕でした支援
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/09(土) 11:41:58.65 ID:+ehgYSjco
>>56
俺は

三蔵⇒上条
悟空⇒浜面
八戒⇒垣根
悟浄⇒一方通行

ってイメージだわ
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/04/09(土) 12:09:13.07 ID:aAfzEt3g0
三蔵=上条
悟空=垣根
八戒=
悟浄=一方通行
ジープ=浜面
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/09(土) 12:31:08.78 ID:+3YekgILo
最遊記、詳しくないので某人形劇で脳内再現される……
カトちゃんは誰?
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/04/09(土) 13:08:02.47 ID:BWKOXOHAO
ジ―プとか…浜面ェ
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/09(土) 14:56:18.61 ID:6GU49i+Eo
>>60
同じく
この調子で再構成は難しそうだとは思ってたが予想外だった
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 21:50:41.07 ID:B1eoCGKY0
グループ名はなんなの?

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/09(土) 21:53:15.69 ID:dNiOp/Alo
ハーレム
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/09(土) 23:45:13.14 ID:TNKT4Fcao
>>1
まったくもって俺の自分勝手な要望なんだけど>>1の名前977じゃなくて1とか適当なコテとかにしてくれないか?
特定の文字に恐怖するっつー病気みたいなもんもっててびくびくしながら見るの堪えるんだわwwwwww

イヤなら見るなかもしれないけど見たいんで頼みます
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/10(日) 09:31:59.58 ID:PS0Ik/vL0
>>68 腐臭がするなww男だらけの上条ハーレムwwww

>>69 911じゃあるまいし。お前の名前気に入らないから変えろって……
71 :977 [sage]:2011/04/10(日) 09:38:30.89 ID:MRfBB9Kmo
>>69
オラァ!
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/04/10(日) 14:55:18.49 ID:u2peBrJAO
スレ立ってたー
次の投下楽しみに舞ってる

黒のタンクトップにツンツン頭って、なんか既視感があると思ってたが、ヒイロェ…


まあ正直>>1が名前をどうしようと>>1自身の勝手だわな
たしかに、「>>1」と呼ぶべきか「>>977」と呼ぶべきか紛らわしくはあるけれど
73 :977 [saga]:2011/04/10(日) 18:46:15.16 ID:ZGyXNHbDO

質問や疑問に答えていこうと思います


>>57さん
レイプ物は書こうと思えば書けるんですが…その場合、自分が耐えれそうに無いんでorz
その代わり主人公格を精神的に追い詰めるのは大好きなんで


>>58さん
それは一巻だけじゃなく二巻や三巻も再構成するよね、的な意味ですか?
なら、しますよ。出来る限り


>>59さん
勿論です


>>67さん
今後話題に上りますので


>>69さん
なら、最初と最後だけ名前を表す事にします。それで頑張って下さい

名前は別に977でも>>1のどちらでも構いませんので、読者の皆様の気分次第にお任せ致します


後、美琴さんの立ち位置は意味あっての事です
まぁ光の世界の方が動かしやすいというのもあります

それに、一番最初に記述した通りカップリングは特にありません
垣根さんが最後述べたように、『現在』なので
カップリングはあったとしても上条さん以外です


では投下します
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 18:51:18.59 ID:ZGyXNHbDO





一方通行は夢を見ていた。


自らの記憶を辿る夢。


日溜まりの中で生きる自分。


人生で一番輝いていた時。





『兄さんっ』





親も居ない自分に唯一存在する妹。

周りが化け物扱いする中、妹だけは自分を兄として家族として接し、慕っていた。
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 18:54:02.69 ID:ZGyXNHbDO


太陽に負けない程、弾けるような笑顔を浮かべながら何度も何度も自分を呼ぶ彼女が印象的だった。

プレゼントした花のヘアピンも目を輝かせて受け取り、間髪を容れず抱き付かれたのもまた、大切な一時。





『例え周りの人達が怯え敬遠しても、私にはたった一人の優しくて格好良い兄さんですからっ』





幸せだった。
共に過ごすだけで、幸福を感受。

妹が幸せならば何でも良い。
妹の笑顔のためなら、どんな困難にも立ち向かえると信じていた。

彼にとってこれ以上求めるものは何も無かったはずだ。



















―――“幸せは長くは続かない”と言ったのは、誰だろう?
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 18:57:04.69 ID:ZGyXNHbDO



我が妹はその命を落とした。
病気で死んだのならどれだけマシだったか。


事故で死んだのならどれだけ私怨し易かったか。






『おうおう、漸くお兄ちゃんの登場か? だが残念な事に、ちぃーっとばかし遅かったなぁ』

『にい……さ……ん』

『何、やってンだよ、オマエ……?』






―――いずれ一方通行は相対する。






『そう悲愴な顔すんなよ。実験で死んだ人数はコイツだけじゃねぇ、被験者の半分以上は逝っちまった。
……まぁ? 言うなれば“運が悪かった”ってこったな』






―――苦痛の記憶を刻む羽目になった、憎悪のド真ん中で忌々しい宿敵。






『に、ぃ……さ……―――』

『百合、子? ……百合子ォォォォッ!!!!!!』






―――決して赦す事の無い、己が歩む道を復讐に覆われた原因。






『木ィィィィはァァァァらァァァァァァァァァァッッ!!!!!!!!!!!!』






―――木原数多に。
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 18:58:55.68 ID:ZGyXNHbDO



―――――――――――――――



一方「……」



目覚めは……最悪だった。

吐き気を催し、咄嗟に口元を押さえて堪える。
夢の内容の所為で余計に気分が悪い。思い出したくもない事を想起したので無理も無いだろう。
嘔吐し掛かった胃液を無理矢理飲み込んで、焼けるような感覚が喉を汚染。



一方「……チッ」



舌打ちを鳴らす。どうやら吐き気と共に寝汗をかいていたらしい。

億劫だが、いい加減に対処を思考。

上半身の寝汗は反射で弾き飛ばし、ぐっしょりに濡れたシャツは外出の際に風のベクトルを操って乾かす。以上。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:01:56.80 ID:ZGyXNHbDO

自分の中で決断を下し、上体を起こす。
髪をガシガシ掻きながら、傍らに置いていた携帯へ手を伸ばして時間を確認。



一方「四十分しか経ってねェのか……」



熟睡に至らない仮眠程度。
正直まだ寝足りないが、中途半端に睡眠を取った為なのか却って目が冴えた。
おそらく上条達が仕事を終えた頃だろう。
呼び出しが皆無だから四人で何処か行く予定、って訳じゃ無さそうだ。

未だに夢の内容が彷彿する。消えない心の蟠りがこの上なく鬱陶しい。
振り払う手段として、行き付けのコンビニへ赴き珈琲を買いに行こう。―――その時だった。



一方「……?」



携帯に電話が着信。バイブは無しだ。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:06:42.33 ID:ZGyXNHbDO
仕事の際に鳴る可能性を踏まえた上で、メールや電話が着信されても画面に表示だけのサイレントマナーモード設定にしている。
……蛇足だが、垣根はワザと解除してるらしい。ただの馬鹿なのか上条に構って欲しいだけなのか、定かでは無い。


話を戻そう。


一方通行も電話が着信するぐらいでは訝しまない。
彼が怪訝を覚える要素―――『非通知』なのだ。

眉を潜めて暫く眺めるも、怖々と通話ボタンを押して耳に添える。



『どうも。一方通行?』



老いた人数の声色。
そして一方通行の頭脳では、電話相手の正体を既に見破っていた。

実に単純明快。連想ゲームの感覚だ。

一方通行の名を知る且つ電話番号を関知。逡巡無く電話を掛ける。
しかもわざわざ遠回しな連絡の取り方……もうお判りだろうか?
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:08:38.10 ID:ZGyXNHbDO



一方「何処ぞの腐った研究者が、俺に一体なンの用だ?」

老人『ふむ。理解が迅速で助かる。こちとら年を喰った老いぼれのジジイ。長く喋るのは疲れるのでな』

一方「ハッ! ロートル共は長話好きってのが定番じゃねェのか? まァ、どォでもいいけどよ」

老人『“レベル6”というモノに興味はないかね?』



彼は、目を細めた。

キーワード自体なら小耳に挟んだ事はある。超能力者を超越した存在―――『絶対能力者』。
だが実際問題、どうせ都市伝説だとか有り得ないとか決め付けていて、一方通行は絶対に信じ込む事は無い。
何故ならば自分が学園都市の頂点なのだから。
『ベクトル操作』と言う反則的な能力を有するが、それで尚、レベル6の境地に辿り着けない。

以上の上記を踏まえ、絶対能力者は存在しないと推し量っていたのだ。
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/04/10(日) 19:09:02.82 ID:lwO9CXYy0
ここの一方さん妹思いの超イケメンだなぁ。
こういう一方さん大好きだ。
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:10:14.75 ID:ZGyXNHbDO

しかし、現在。

電話越しの老人は、そのキーワードを放った。
レベル6に興味はないかね―――絶対能力者に君臨する気はないか? と。



一方「……内容を言ってみろ」



生涯で、自分の脳を研究し弄くって来た研究者の人間達は、必ず何処か“オカシかった”。


変にトチ狂ったヤツ。
精神がイカレてるヤツ。
頭がわいてそうなヤツ。
性根や根性が腐ったヤツ。


とりあえずマトモではない連中ばかり。今まで関わった実験の内容も常識を覆す事柄が多々。

どうせ今回も普通では無い。
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:12:27.59 ID:ZGyXNHbDO



老人『樹形図の設計者によれば、レベル6へシフトするのは君だけしか居ないと叩き出しておる。
128回『超電磁砲』を128種類の戦闘パターンで殺害する事での』

一方「……」



ほら、予測通り。
矢張り自分に話し掛ける人間など、『あいつら以外』は正気の沙汰じゃない。

超電磁砲……確かリーダーの幼馴染みだったはず。
そいつを128回別々の手段で殺せ? 馬鹿野郎。自分に死ねと言ってるようなものだ。



老人『だがのぅ、超電磁砲を128人も複数の確保は不可能じゃ。ソコで急遽用意されたのが“妹達”』

一方「妹達?」

老人『クローンじゃよクローン。素体を御坂美琴とする、超電磁砲量産計画の妹達』

一方「……ハッ」



……どうやら、学園都市は相当“あいつ”を敵に回したいらしい。
思わず鼻で笑ってしまう程に。
常軌を逸する所の話では無さそうだ。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:15:29.94 ID:ZGyXNHbDO

一方通行は思考に耽る。
元より実験に加担する気はハナから無い。
以前の自分ならば食い付いていただろう。強さを求めて。


しかし、今は違う。


より強さの高みを求めた所で、我が妹の百合子が還って来る訳じゃ無い。
何の罪も無い人間を無差別に比喩無しに八つ裂きした所で、心に澱めく『悔恨』や『復讐』が晴れる訳じゃ無い。

木原数多を捜せる手段にはならない。
木原数多を誘き寄せる方策にはならない。



―――残るのはただ悲しみと後悔だけ。



自分も何処かで理解していて、何処かで否定していた。
こんな方法では何も見出せないと説得する己と、いずれ必ず木原が来ると可能性を諦めない己。
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:20:03.28 ID:ZGyXNHbDO

自我や自身を抑え切れないくらい、暴走を繰り返していた時があった。
そんな己を完膚無きまでに薙ぎ倒し、目を覚まさせてくれたのは上条当麻だ。
彼のお陰で今の自分が居る。なのに恩を仇で返す真似が出来るはずがない。



一方(アイツの耳にも入れておいた方が得策か? それとも様子を窺うべきか……)

老人『―――という事だが、どうだね?』



何時の間にやら話は終わったらしい。
元々答えが決まっている一方通行は単刀直入に言葉を放つ。



一方「断る。ンなモンに興味ねェンだわ。それと上条当麻っつー男には気を付けな。この男にバレたら命の保障はねェぞ?」

老人『ふむ……そうかい。残念だ』



最後まで聞かずに通話を切る。
時間の無駄だと判断したのだ。

これで、相手の脳内に上条当麻という人名を刻み込み、僅かながらに警戒心を持たせる事が可能。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:21:56.33 ID:ZGyXNHbDO

もし上条当麻を知り抜いている場合、名が出て来た時点で動揺を隠せないはず。

しかし電話の爺は至って普通。
つまりは知らない。故に躊躇は無い。

ソコが一番恐ろしいのだ。何を仕出かすか予想が付かないから。



一方「一応釘はさしたが、どォ手を打って来るか……とりあえず明日集合する時、アイツに伝えとくか」



―――――――――――――――



老人「ふむ、断られるとは計算外だの」



白衣を見に包むデスクにもたれて座る初老の人間。
蓄えた白髭は何処か凛々しさがあった。
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/10(日) 19:24:18.10 ID:ZGyXNHbDO
言葉とは裏腹に余裕を感じさせる態度は、目の前に佇む若い研究員に疑問を抱かせる。

だが、老人は若い研究員の疑問に取り合わないように、命令を飛ばす。



老人「『絶対能力進化実験』は続行するんだ。被験体が拒むなら、強制的に参加させるまで。
00001号を一方通行に送り込み、戦闘を開始させるんじゃ」

研究員「は、はいっ」

老人「それともう一つ」



間髪容れずに畳み掛けた。
人差し指を立て、老人は口元を吊り上げ、薄く狂笑を浮かべる。



老人「御坂美琴とコンタクトを取れ。以前から考案されていた“例の実験”を勧めておくこと」

研究員「え……で、ですが、アレは脳によるダメージが甚大な為、破棄されたんじゃ……?」

老人「心配は無用。統括理事長の許可も取っておる。彼女が拒んだ場合、“それなりの手段”を用いてもよいとな」

研究員「か、畏まりました。では直ぐに『猟犬部隊』に協力要請の手配致します」



パタパタと退室する研究員。

部屋に漂うのは老人の狂った笑みと―――虚空の中で微かに聞こえるクククッと喉を鳴らす怪しい笑い声だけ。
88 :977 [saga]:2011/04/10(日) 19:27:45.24 ID:ZGyXNHbDO
投下しゅーりょーです


ではでは
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/10(日) 19:46:40.46 ID:nlcFB/iMo
乙乙
百合子たん…
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/10(日) 20:15:00.38 ID:52DVlkFX0
乙。次回も気になるな・・・
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/10(日) 21:20:27.58 ID:Of7sh24So
ww
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/04/10(日) 22:06:54.89 ID:lSAnVjCG0
ヴェントの人と聞いて

C
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) :2011/04/10(日) 22:07:35.10 ID:x9RU4uy60
続きを・・・続きを早よ書いてぇ!!
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岐阜県) [sage]:2011/04/11(月) 19:09:38.57 ID:Z4jcbg4Q0

>主人公格を精神的に追い詰めるのは〜
あ、上条さんにフラグ立った
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/11(月) 20:55:39.25 ID:EbW3HJ5ro
続きが気になるぜ
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/11(月) 23:02:44.96 ID:3ybxXHgS0
いまんとこ御坂がヒロインじゃないから安心した
97 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:08:32.79 ID:ASAJP9DT0
昼に投下しようと思ったら、まさかの繋がらないパターン

学校から帰って来てようやくです
てか更に何故か携帯から投下できない…

パソコンから投下します
98 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:11:27.96 ID:ASAJP9DT0

御坂美琴は路上に佇んでいた。
憂いを漂わせる面持で、物寂しさ感じる視線を辿ったその先、彼女が求める人物は……居ない。
閑寂なる“彼”の名残だけが、彼女を占める。



美琴「……」



行き交う人々に逆らうように立ち尽くし、美琴は呆然と彼が喧騒に消えた先に視線が釘付け。
胸元で両手をキュッと柔和に握り、彼女の心は惑いの檻に閉じ込められていた。




―――それは、先刻の事。

99 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:12:44.67 ID:ASAJP9DT0




上条当麻は彼女の功績に殊勝し、溜息を吐く。
今居る場所は御坂美琴の学校へ行くルートでは無い。
つまり、彼女の能力を応用した『レーダー』で自分の現在地を突き止めたのだ。
右手で打ち消してるはずなのだが、美琴の証言によれば消されているので逆に判り易いとの事。

彼にとっては迷惑極まりないのは確かである。
……でも、上条の纏う雰囲気の刺が和らいだのは、気のせいじゃない事も確か。



美琴「何してたのよ? 路地裏に入って怪しいわね」

上条「別に。何時もの不幸スキルが働いて、スキルアウトに追い掛けられていただけですよー」



疲れた疲れた、と言わんばかりに両手を存分に伸ばした。
彼女は上条の言動に疑問を抱かず、彼の下へパタパタと近寄って行く。
100 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:14:29.55 ID:ASAJP9DT0


上条「……んだよ、近寄ると不幸が移っちまうぞ?」

美琴「アンタって何時も黒のタンクトップ姿よねー。他に服持ってない訳?」

上条「無視かよオイ」



取り合わない美琴は彼の腕に自分の腕を絡ませると、ぐいぐい引っ張って前方へ指差す。
無垢な少女は上条に対して、お姉さんのような振る舞いを示唆。



美琴「ほらっ、そんな暗い色ばっか着てないで、もっと違う明るい色な物を買いに行きましょ? 美琴さんがアンタに似合う服をあげるわよ」

上条「……はぁ」



―――それを彼は、払った。

101 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:16:42.80 ID:ASAJP9DT0



美琴「ちょ、ちょっとぉ!?」



戸惑いの声を上げるも、上条は聞く耳も持たないで彼女に背を向ける。
ポケットに手を突っ込むと、何も告げずに彼は歩き出した。

当然、御坂美琴は制止の声を呼び掛けるが……口が動かない。



上条「―――言ったはずだよな」



顔だけ僅かに振り向かせ、彼女を一瞥。
鋭い目筋に籠められた殺気。
視線に全てを凝縮した刃は、御坂美琴が怖じ気付いて無意識に停止する程、恐怖を駆り立てた。
様子が一変した上条の姿は、幼馴染みである長い付き合いの中でも、彼女にとって初めて見る一面。

“ようやく”見せてくれた上条当麻のもう一つの顔。その片鱗。
102 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:18:43.00 ID:ASAJP9DT0





上条「俺に関わんなっつってんだろ。例え美琴だろうと、いい加減容赦しねぇぞ」



去る直前の時、『美琴』と呼んでくれたのは……自分が知っている上条当麻の根底に宿る“優しさ”だと、信じたい。




―――そして、現在に戻る。




黒子「おっねぇっさま〜」



突如、御坂美琴の腕に絡み付くように腕を回すツインテールの少女。
彼女を慕う後輩、白井黒子だ。

とりあえず無言で額へ結構強めにチョップを叩き付け、鈍い音を奏でる。
伴って額を抑え、呻き声を漏らし路上でのたくる後輩の姿。

103 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:20:18.96 ID:ASAJP9DT0

美琴は何時もの事だと呆れ混じりの溜息を吐いて、我が後輩の腕に留めた腕章を発見。
それは彼女がジャッジメントの証。普段は付けていないが、仕事中の際には必須らしい。
故に、



美琴「黒子、アンタが居るって事は、やっぱりこの辺りで何かあったの?」



彼女の呼び掛けに、身悶えていた白井がピタッと停止して反応を示唆。
額をさすりつつ、立ち上がって美琴に返答する。



黒子「その、“やっぱり”って言葉が少々引っ掛かりますが……まあいいですの。
どうせ何時もの殿方にお姉様は夢中なのでしょうし」

美琴「なっ……!? ち、違うわよっ!! ただ、ちょっと気になっ―――」

黒子「この近辺に悲鳴が聞こえてきたと、報告を受けましたの」



彼女を遮り、白井は畳み掛けた。勿論故意で。
104 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:22:18.59 ID:ASAJP9DT0
ツインテールの髪を手で研ぐし、



黒子「即席でわたくしが派遣命令が下り、赴いたという訳ですの」

美琴「ふぅーん……やっぱり、か」



再び、視線を街並みへ戻す。
美琴の思う人は居ない。
それでも、自然と上条を追うように目を移すのは、彼に対する心の色の表れか。又は別物か。

白井黒子は彼女の心境を容易に汲む。意中の殿方……上条当麻を思い悩んでいるのだろう。
彼とは何度か美琴との関わりで対面を交わしている。
どうやら我が尊敬する先輩との間柄は、小学生の頃に出会った幼馴染みらしい。

だが上条当麻の態度は、その関係を感じさせないほどの粗雑で乱暴な扱い方。
寧ろ嫌悪を示し、美琴を遠ざける発言ばかり。


本当に、もはや“ワザと”としか思えないくらいに。

105 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:24:16.01 ID:ASAJP9DT0



黒子「お姉様……お言葉ですが、もう諦めなされる事を提案しますの。こうも突き放されてばかりでは、ただの鼬ごっこでしか無いですの」

美琴「……違う、違うのよ」



彼女は俯き加減で首を横に振り、必死に否定した。
その様はさながら自己に語り掛けるように。



美琴「アイツは……昔のアイツはもっと、優しかった。
でも……中学校に入って直ぐの時、今みたいな感じになって……」



中学生の時、彼の身に“何か”あったのは間違い無い。

そうでなければ、街を歩く人々より人一倍優しかった幼馴染みが。
老若男女関係無く困っているならば絶対に放って置けない彼が。


―――あんな冷酷な瞳で人を見るはずが無いのだ。
106 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:25:51.42 ID:ASAJP9DT0

路地裏から出て来た理由でもそう。
スキルアウトから逃れていた? 確かに上条当麻ならば有り得ない話ではない。
では……何故自分が彼と遭遇した時には既に、追手を撒いてる?

毎回だ。一度や二度ならず、自分の指だけでは足りない程に。
上条当麻は自分と遭遇する際は必ずスキルアウトの追手から逃れている。
まるで“自分の都合を合わせて”事を終わらせているかのように。

知っているさ。
彼が隠し事をしてるぐらい。
己では想像も付かない“何か”を。
抱えている何かを誰かに預けられないレベルの域に達し、己自身を傷付けるしか道は残されていないのだろう。

この予測が的中かどうか何て、実際問題どうでもいい。
ただ、何かしら抱えているならば……彼の背負う荷を軽くさせたいと思うのは、我が儘だろうか?



黒子「そうですの……」



彼女は得心したと言わんばかりに優しく微笑みを浮かべ、美琴の下から離れる。

107 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:27:25.63 ID:ASAJP9DT0



黒子「お姉様がそこまで仰るんですの。わたくしに反論の余地はございませんの」

美琴「黒子……」

黒子「では! 白井黒子は警邏に戻りますのでっ。お姉様もなるべく早急に自室へお帰り下さないな?」

美琴「ふふっ、りょーかい」



彼女は片手をヒラヒラ振って応答。
途端、白井黒子の姿が一瞬で失せた。能力である『空間移動』を行使したのだ。

最後まで見送った御坂美琴は踵を返す。
めげずにもう一度彼と接触しようと足を踏み出す……その直前、



美琴「……あれ?」



気付いた。言ってしまえばようやく。
しかし彼女は少々遅過ぎた。
黒子との会話に夢中で気付かなかったのだ。




―――周りに誰も居なくなっている事に。
108 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:28:58.06 ID:ASAJP9DT0


喧騒で包まれていた街並みは、閑寂な風景へと変貌を遂げる。
人は勿論。車も通らない。
掃除ロボさえ見当たらない。
何が起きているか判らないが、まずこの場から離れる事を優先すべきだろう。

……でも、記述通りもう既に遅いのだ。



「電話で一々要件を訊いても時間の無駄だ。答えは『拒否』って決まってんだからよぉ。
なら手間掛ける面倒な事せず、最初から“それなりの方法”を取った方が効率が良いに決まってる」



車が停車する音と、同時に男性の声が背後で響き渡る。
美琴は自然と発していたレーダーにも引っ掛からずに背後へ掻い潜ったのもあり、慌てて振り返った。

ソコには白衣を羽織った長身の男。
とても研究者とは思えない、顔面に刺青が彫ってある。



美琴「誰よ。アンタ」



険しい表情を隠さず剥き出し、ピリピリとした感覚が辺りに迸り始めた。
明らかな警戒の色を露骨に示して後退り。

109 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:30:55.45 ID:ASAJP9DT0

髪の先端から発した紫電が空気を灼く。威嚇行為だ。
これ以上近付こうものなら電撃で灼くぞ? と。

だが、男は臆しない。
寧ろ窺うように薄く笑って、パチンと。指を鳴らした。



―――直後、異質な音が辺りを奏でる。



美琴「っっ!!!?」



彼女は咄嗟に両手で頭を抱えるように耳を塞ぐ。
足元がふらつき、歯を強く噛み締めた。顔色は全く優れない。

頭の中で駆ける激痛に対して、必死で耐え凌いでいるのだ。
脳を引き裂かれるような、今にも意識が吹っ飛ばされてもオカシくはない頭痛が美琴を襲う。



「特定の音波で演算能力を邪魔する俺特製レベル5用の『AIMジャマー』だ。一切の猶予も許さねぇから、相当効いてんだろ?」



口角を吊り上げて笑みを浮かべる。
足を進め、着実に御坂美琴との距離は縮んでいく。

頭痛の所為で電撃は出せない上、意識を保つのに精一杯な彼女に、反撃の術は用意されなかった。



「まあ、諦めるこったな。今回は何やら上の連中もうるせえんだ。ガキィ相手に構ってる余裕も、悪りぃんだけどねぇんだわ」



男は美琴にスプレーを翳す。



「―――じゃーな、良い夢見ろよ」
110 :977 [saga]:2011/04/13(水) 20:32:54.05 ID:ASAJP9DT0
投下しゅーりょーです
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/04/13(水) 20:34:10.34 ID:9jrOAC7wo
乙乙
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/13(水) 23:24:59.74 ID:hAAe6Q8DO
乙!
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/14(木) 01:10:13.52 ID:ATN+RFqDO
一方通行がシスコン繋がりで八戒?
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/04/14(木) 02:04:00.24 ID:Ch8Ms2FJo

ここの上条さんは美琴攫ったらそげぶじゃ済まないな…
星になるで済めばいいが
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/14(木) 02:16:39.07 ID:PDZgm411o
木ィィィ原ァァァァァくゥゥゥンンンンキター

超蛇足なんだけど、「てにをは」がおかしい部分がちょこちょこあるのがちょっと気になるんだよな
二次熟語を多用したり助動詞をなるべく省く文体は好きなんだけど、それって普通の文体以上に主語とか目的語に気をつけないとおかしくなっちゃうのよな
でもそんな>>1を私は応援してる。がんばって。次も期待してる
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/15(金) 01:42:25.09 ID:ujE7S//v0
待ってる
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/04/15(金) 18:55:40.50 ID:XAW5joNAO
土御門と青ピまだかな…

グループと全面対決が見たいにゃ〜
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 15:20:42.40 ID:PtaLcotv0
青ピいらねーだろ
なんでそんな暗部物に青ピ出したがる奴おおいの?
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/16(土) 15:45:02.21 ID:KCS2tSA5o
設定が何もなくて謎キャラだから好きなように使えて書きやすいんだろ
120 :977 [saga]:2011/04/17(日) 02:53:30.88 ID:Mbd+Ji6DO
書けましたので投下しまーす
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 02:59:41.30 ID:Mbd+Ji6DO



―――翌日。



彼ら四人は先日同様、第七学区にある行き付けの飲食店に居た。
今回の収集理由は仕事ではない。
寧ろ仕事は無く休日のはずなんだが、単に暇だからという理由で、各々が集まっただけに過ぎない。
別にリーダーが、垣根がメールで集合を掛けた訳でもないのだ。

このような状況は過去に何度もある。休日なんだけれども、何故か自然と足が赴く。
あの年がら年中面倒くさい言ってる一方通行までもが、足を運ばせるほど。
四人とも全員、口喧嘩に留まらず能力戦闘を繰り広げそうになるも、何だかんだで仲が好いのだ。
“喧嘩するほど仲が好い”とは良く言ったものである。



垣根「……リーダーってさあ」



今まで浜面と他愛ない話題で盛り上がっていた垣根が、ふと上条を見つめて呟いた。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:01:03.50 ID:Mbd+Ji6DO

突然、話の的が自分に移り意表を突かれたからか、黙々と咀嚼していたランチのご飯が、喉に詰まった。
二、三回程度咳き込んで、辛うじて喉に通す。



上条「なんだよ?」



垣根はテーブルに肘を付き、手の平に顎を乗せると、何処となく述べる。



垣根「今でこそリアルウニ坊主みてえな頭してっけど、髪型と服装を整えれば格好良くなるんじゃね? 俺よりも」

上条「結局は遠回しの自慢じゃねえか。死ね」

一方「頭ン中までメルヘンとか救いよォがねェな。死ね」

浜面「羨ましいんだよ。死ね」

垣根「オイ待てテメェら。無駄に僻むなっ。俺の心はズタズタだぞ! ブロークンハートだぞこの野郎!!」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:03:47.18 ID:Mbd+Ji6DO

上条「ブロークンハートって大体が似合わねえのに、垣根だと違和感無いのが凄い腹立つな」

一方「っつーか、キメェ」

浜面「いっそ滅んじまえ」

垣根「何なんだよぉっ!! 一々俺の言動拾って、理由も無いまま四面楚歌とか理不尽じゃね!?」

上条「理由は自分にあるだろ。気付けよ阿呆」

一方「常識が通用しねェとかほざくヤツが理不尽語ンな。馬鹿が」

浜面「全てに於いて俺より優ってるんだからこれぐらい被れ。悔しいんだよ畜生」

垣根「だーッ!! あー言えばこー言いやがって!! つか最後の浜面ァ!! テメェはさっきからただの『嫉妬』じゃねえか!!」

浜面「うるせえ!! 垣根には判らんだろうさ。鏡で自分の顔を見る度に思い知る現実をッ!!
何時か現れてくれるお姫様を待ち続けるしか無いんだぞコラァ!!」

上条「二人共うっせえぞ。話題の本筋ドコ行ったんだよ」

浜面・垣根「そもそもの始まりはリーダーでしょおっ!?」

一方「……下らねェ」

上条「ほら、一方通行を見習え。下らないの一言で切り捨てやがったぞ」



……と、こんな風に。
端から見ればコントの光景以外何物でもない会話を繰り広げる四人。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:06:43.29 ID:Mbd+Ji6DO
これが彼らの日常。とても暗部の一員とは思えない、平和な日々。
掛け替えのない毎日。



垣根「だって普段でもその格好なんだろ?」

上条「まあな。何時狙われても対処が可能なようにこの服装で一貫してる。慣れちまったのもあると思うが」

浜面「なんだっけ? 一応意味があるんだよな?」

上条「そ。血がこびり付いても目立たないようにする為。誤魔化せるからな」

垣根「何かしらリーダーは便利道具を携えてるよなー。その吸ってる煙草も本物じゃねえんだろ?」

一方「上条用に複造されたニコチンを含まねェ煙草。……つっても、煙草と呼ンでいいのか謎だがな」

上条「煙で相手の動向を探る。俺らに殺意を抱いた途端、煙が敵の位置を示す。って感じか? まあどっちにしても高性能極まりないけど」

垣根「俺をも驚愕に値する非常識っぷりだな……ん? 待てよ。つーことは、仕事を多少ノロノロやっても―――」

上条・一方「いい訳あるか」

垣根「チッ」

浜面「ま、妥当だな」



話題に上ったが、上条当麻が所持する道具に無意味な物は存在しない。
煙草にしろ。サングラスや指貫タイプのグローブにしろだ。
全部それぞれの性能を携えている。
性能の説明はまた後ほど。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:08:21.37 ID:Mbd+Ji6DO

上条はランチを食べ終えると、ポケットから小銭を取り出してテーブルに置き、席を立つ。

伴い全員の視線が一斉に彼に向いた。
学ランを羽織って、気怠そうに上条は答える。



上条「先に帰らせてもらう。浜面とやらなきゃならねえ雑務が残ってんだ」

浜面「え、もう行くのか!? まだ俺、食べ終わってねえよっ」

上条「さっさ食え。何時までもチンタラチンタラしてっからだ」

浜面「んーっ!!」



取り合わず出入り口に向かう上条を目に、ステーキを口内へギュウギュウに放り込む。
もはや言葉になってない意味不明な言語を発しながら、急いでリーダーを追い掛けて行く。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:10:07.25 ID:Mbd+Ji6DO

残された二人は、しばしその背中に視線が釘付けな状態に。
垣根は眼球を動かして、一方通行を一瞥。



垣根「……雑務ってなんだろな?」

一方「なァ、一つ訊いてもいいか?」

垣根「無視かよっ。テメェのそういう所はリーダーに似てるよな……」

一方「どっちなンだよクソメルヘン」

垣根「チッ……んだよクソモヤシ」















一方「『絶対能力進化実験』っつーイカレた実験を知ってっか?」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:11:15.49 ID:Mbd+Ji6DO




―――――――――――――――




―――およそ、数十分後。



浜面は公園のベンチで、ぐったりと横たわっていた。
額から滴る汗からは仕事の辛さや疲れが垣間見える。
肩を上下に揺らして呼吸する様子は息切れの模様。
片手で顔を覆い尽くし、虚空にぼやく。



浜面「くっそ、これ絶対に、雑務じゃねえ、よ……」

上条「浜面」



横たわった浜面に向かって、リーダーの声が飛んで来た。
僅かに顔をそちらに向け、悠然と地に立つ彼の姿を確認。
上条の両手には缶ジュースが一本ずつ握られている。



上条「ほら、報酬品だ」



その内の一本を浜面に投擲。
特に慌てる様子も無いまま、顔を覆ってる手とは逆の手で缶ジュースをキャッチ。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:12:49.86 ID:Mbd+Ji6DO
上体を起こして缶ジュースの側面を見ると、『ヤシの美サイダー』と記されていた。



浜面「これ炭酸じゃねえかっ。何で投げたんだよ……」

上条「イヤがらせ」



くくくっ、と喉を鳴らして嫌な笑みを放つ。
出来るだけ缶ジュースとの距離を置いて飲み口を開けようとする浜面の隣へ、ドガっと豪快に腰を落とす上条。



浜面「あんだけの重労働で稼ぎがジュースの一本ってのもどうかと思うけど……なっ」

上条「じゃあ戦利品」

浜面「うっわ、案の定溢れ出したし……てか、ドコが戦利品だドコが。敵なんて一人も居なかっただろ」



炭酸が飲み口から噴き出すも、収まった頃を見計らい、口を付けて渇いた喉に潤いを通す。

リーダーを一瞥すれば、缶ジュースから口を離して、何故か眉間を顰めていた。
彼の視線を追って辿ると……浜面もようやく気付いた。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:15:19.31 ID:Mbd+Ji6DO



上条「……珍しいお客さんだ。何時もはココに美琴が来るから警戒していたんだが……」

黒子「……」

上条「さすがに後輩が単独で尋ねて来るとは思ってなかったな」



白井黒子。表情から焦りの色が窺え、血色は好ましくない。
息切れも激しく、目の隈はくっきりと浮かび上がっていた。



黒子「やっと、見付けましたの……ッ!!」



声を震わせ歯を食い縛り、ズカズカと早歩きで上条の下へと近付いていく。

対する上条は逃避を見せる動作は皆無。
寧ろ落ち着いた様子でジュースを口にして、一気に飲み干す。



上条「それで? 常盤台のお嬢様が凡人の俺に一体なんのご用かな? まさか美琴に唆されて―――」

黒子「お姉様がドコに行ったかご存知で?」
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:16:54.00 ID:Mbd+Ji6DO



詰め寄りながら彼の言葉を遮る黒子は、焦燥に駆けられている事が見て取れた。

故に彼女は躊躇いが無いだろう。
元凶なら排除。無関係なら看過。
例え、尊敬する先輩の幼馴染みであろうと敵ならば牙を向ける。
……その有り様を、彼は容易に察知した。
何故なら彼女の片手が戦闘態勢に入る直前の構えを取っている。

上条当麻は肩を竦め、首を振った。



上条「知らねーよ。大体、アイツが突拍子もなくどっか出掛ける程度、今に始まった事じゃねえだろ?」

黒子「……昨日からですの」



ボソリとした呟きに、上条は目を細めた。伴って口をも閉ざす。



黒子「寮監によれば、定期的に行く施設に赴いているとの連絡を承ったそうですの」

上条「なんだ、解決してんじゃん」

黒子「ですが、ありえませんの」
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:19:43.40 ID:Mbd+Ji6DO



彼女は懐から携帯を取り出す。
トントンと指で携帯を叩き、



黒子「お姉様は研究施設に赴く際は必ずしも、わたくしに声をお掛けになるか携帯にメールが入るはずですの」

上条「……」

黒子「……胸騒ぎがしますの。貴方が知らないようであれば、立ち去りますので」

上条「……知らねーよ。美琴がどうしようとどうなろうと、俺には関係無い。
お前が勝手に真相を突き止めて、救い出すやら事件解決やら好きにしてくれ」

黒子「……っ。そうですの、少しでも協力や心配なさるかと思った、わたくしが愚かでした。
やはり和解は不可能ですわね」

上条「なんだ、今更気付いたのか? 俺は初対面の時から判ってたけどな」

黒子「失礼しますッ!!」



逆鱗に触れたのか、最後は声を荒げて、白井黒子の姿が失せた。
自身の持つ『空間移動』を引き起こして、移動したのだろう。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:25:48.24 ID:Mbd+Ji6DO

今まで聞くだけに留まっていた浜面は、リーダーを睨む。



浜面「いいのかよ。助けに行かなくて」

上条「……」

浜面「幼馴染みなんだろっ! もしかしたらアッチは上条の助けを求めてるかもしれねえんだぞ!?」

上条「……」

浜面「リーダーは教えてくれただろ。少しでも可能性があるならそれに全力を注げ。不可能なら可能を見出して状況を覆せ、って……」

上条「……」

浜面「取り返しの付かない事態に陥る前に、動くべきじゃねえのかっ!! 後で後悔するのは上条だぞ、リーダーッ!!」



彼の必死な叫びにとうとう諦めたのか、上条は頭をガシガシと掻いて盛大に溜息を吐いた。
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:29:24.55 ID:Mbd+Ji6DO

上条「……はぁ、別に美琴を助けたいから動くんじゃねえぞ。ちっとばかし確認する事があるからだからな」

浜面「リーダー……っ」

上条「一方通行と垣根は呼ぶな。研究施設の一つぐらい、俺らで片を付ける」

浜面「上等ォ! 無能力の底力を見せてやろうぜ!!」

上条「トラックを用意しろ。貨物自動車並みの大きさだ」

浜面「おうっ!!」



命令を聞き終え、全速力で駆けていく。
何故、上条よりやる気がマックスなのかは謎。
浜面も浜面なりに何かしら理由があるのだろう。それ以上は彼も考えるのを中断。

もっと思考すべき点が存在するからだ。

上条は走り去って行く浜面の姿が完全に消えるの確認して、見極めた後、誰に語る訳でもなく言葉を漏らす。



上条「研究施設、ねぇ……」



実に不穏な響きだ。
第六感が働いて告げている。
白井黒子が胸騒ぎを起こすのも無理はない。
自分でさえ嫌な予感がするのだから。
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:32:26.90 ID:Mbd+Ji6DO

おもむろにポケットに手を突っ込み、携帯を取り出した。
電話帳のグループ検索から、『友人』に類別されている一番目を引き出し、発信ボタンを押す。

耳に添えると、時間を置かないまま『相手』が電話に出た。
片方の口角を吊り上げて、彼は調子良く喋り出す。



上条「よお、随分と久しぶりじゃねえか。アレイスター?」

アレイスター『上条当麻か。確かに、君とこうして会話するのは何年ぶりだろうか。
どんな用事かな? 数少ない君からの申請の言及だ。可能ならば聞き入れよう』



男にも女にも、若年にも老人にも聞こえる声の持ち主。
学園都市統括理事長、アレイスター=クロウリー。



上条「いやあ、今回は懇願じゃねぇんだわ。ちょっと確認したい事があってな」

アレイスター『ふむ、何かな?』

上条「美琴に何をしやがった?」





―――沈黙が、訪れた。
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:35:54.55 ID:Mbd+Ji6DO

アレイスターは彼の質問に返答を出さず、押し黙ってしまった。
考え込んでいるのか。
言葉を選んでいるのか。
はたまた何も言えないのか。
定かではない。

その有り様に「黒か……」と上条は心の中で呟く。



上条「アンタは俺にとって数少ない友人。だから出来る限り疑いたくはねぇんだが……美琴の後輩から聞いちまってな? 今、研究施設に居るらしいじゃん」

アレイスター『…………』

上条「俺の経験上、不穏以外何ものでもないな。直感が告げてやがる。
あぁ、信憑性を求めちゃいけねーぜ? 直感が答えだからな。“俺”を知ってんなら判るだろう?」



それになぁ、と溜息を混じらせ、畳み掛ける。



上条「契約しただろ。あの日。忘れたとは言わせない」

アレイスター『……嗚呼。覚えているとも。明確にな』
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:37:53.53 ID:Mbd+Ji6DO

上条「俺の身体を勝手に使って構わない。脳を弄くろうが、発明した試作品の実験になろうが、アンタがやりたいようにすればいい」



例え世界が滅びるために行使されようと。
例え戦争の最前線に駆り出されようと。
例え何千と人殺しを繰り返そうと。
例え“光”の道を歩めなくなろうと。

アレイスターの好きにすればいいと、彼は述べた。



上条「……だが、『代わりに俺が護ると人間、又はその人間に通じる友人には手を出すな』って決めたよな?」



例えば幼馴染みの御坂美琴。
両親や従姉妹だってそう。

浜面仕上や垣根帝督、一方通行だって含まれる。
白井黒子だってその対象。

これが上条当麻とアレイスターの間で結ばれた契約。等々の元で決めた条件。



上条「それを、こうも容易く破るつもりか?」

アレイスター『ふむ……すまないな。私の許可も及ばない範囲の場所で、勝手に行われているらしい』



見え透いた嘘を、と上条は思う。
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/17(日) 03:41:27.31 ID:Mbd+Ji6DO
レベル5級の人間が研究施設へ送られるなんて、統括理事会の許可が下りない限り絶対に不可能。

しかし、その点を深く問い詰める時間も無さそうだ。
何故なら、もうそろそろ浜面が貨物自動車に乗ってやって来る頃。
時間的にメールか電話が入るだろう。



上条「そうかい。じゃあ美琴の居場所は? どうせ把握済みなんだろ」

アレイスター『……○×学区の“――”研さ』

上条「ッチ……結構厄介な所じゃねぇか」



彼は立ち上がり、道路に向かって歩み出す。



上条「アレイスター、これだけは言っとく」

アレイスター『……なんだね』









上条「例えアンタだろうと、『みんな』に手を出すつもりなら―――俺はテメェの命(幻想)をブチ殺すぞ?」









精鋭された殺気を込めて。
一般人なら身体が震え上がり、腰が抜けてもオカシくないレベルの殺意を、声だけに凝縮。

闇の闇の闇の更に深淵なる闇を潜った上条当麻ならではの方法。
喉元に刃を突き付けるように、命を刈り取るぞ? と。




アレイスター『ふむ、肝に銘じておこう』

上条「その言葉、信じるぜ」




これにて、二人の通話は終了した。
138 :977 [saga]:2011/04/17(日) 03:45:56.03 ID:Mbd+Ji6DO
しゅーりょーです

今回はセリフを多めにしました
セリフだけで表現って難しい…

こんなに量が多くなったのも、久し振りな気もします



ではまた次回でお会いしましょう
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/04/17(日) 03:52:13.02 ID:78PKhxAv0

☆と友人な上条さんぱねェ
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/17(日) 10:14:00.93 ID:dnnYWNr3o
ラストへの伏線を敷かれたような気がした。
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/17(日) 10:30:03.74 ID:T+/KGXZAO

逆さまに浮きながら電話してる☆想像したら吹いたw
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/04/17(日) 14:51:01.30 ID:haJwl4wR0

この上条さんは誰相手まで対等に戦えるのか・・・
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2011/04/17(日) 16:15:09.70 ID:aPmxJbvY0
>>141 アニメ見てみな
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/17(日) 17:47:55.87 ID:bj8eXl3IO
むしろビーカーの外にある携帯が鳴ってビーカーからザバッと上がってタオルで手とか顔とか拭きながら通話する姿を幻視しま
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/17(日) 18:03:47.35 ID:wmKvRZGAO
>>144
想像してワロタwwww
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/17(日) 22:23:59.08 ID:CcausYu10
>>144
シュールすぎるwwww
147 :977 [saga]:2011/04/23(土) 07:06:01.52 ID:ND6h8qUDO
やっと書けましたー


長かったつもりが短いし
一週間近くかかったくせにクオリティ低いし、どーゆーことなの…


投下しまーす
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:13:11.17 ID:ND6h8qUDO



―――とある研究施設。



広大な空間。
実験用の場所。

端正に並ぶのは、幾つも設置された大人一人分が入る程度のカプセル。
側面の底には何本も太いコードが接続していてカプセルと繋ぐ先は、付近に計測機のような箱型の装置が備え付けられていた。

どれも不動で微動だにしていないが、たった一機だけ淡い光を放ち、作動中のカプセルがある。
付近に備え付けられていた計測機も、夥しい量の数字が画面を駆けて行く。

カプセルの中に居るのは一人の少女。
学園都市で七人しか居ないレベル5、その第三位に君臨する常盤台中学所属の女の子。




『超電磁砲』で名を馳せる―――御坂美琴。
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:15:46.76 ID:ND6h8qUDO


彼女の口元には酸素マスク。
睡眠薬を投与されているのか、瞼は閉じられ、寝息を立てていた。

頭を覆うのは帽子のような物。
帽子に無数の配線が伸びている。
それは遠隔操作で脳に様々な情報や電気信号を送る事が可能な電極だ。



老人「如何かね? 彼女の様子は」



白衣を羽織る年老いた人間。
蓄えた白髭が貫禄を醸し出す。
実験用の空間をガラス越しで見下ろすように設計された別室にて、科学者である老人は御坂美琴を眺めていた。

老人の他に、白衣姿の若い男女が合計五人。
それぞれキーボードを打っていたり、モニター画面に映る数字と手に持つ資料を見比べていたり、機材を運んでいたり。
各々の役割を果たす。



研究員「至って異常は見られません。脳の数値も正常レベルです」



ひたすらキーボードを打っていた男の研究員が、問いに応じた。
正面に向き直ってないのは敬意を蔑ろにしてる訳じゃなく、目の前のモニター画面から目を離せないため。
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:17:45.18 ID:ND6h8qUDO

それを承知の上なのか、老人は何も咎めない。
寧ろ背中で手を組み、一層笑みを濃くする。



老人「実験開始に当たって差し支えは?」

研究員「現在の所、状況は安定しておりますので、実験の支障はありません」

老人「ふむ、そうかい」



満足そうに頷き、蓄えた白髭をさすって老人は告げた。



老人「ならば早速、開始といこう」

研究員「最終チェックの方はどうなさいます?」

老人「構わん」

研究員「了解致しました。『強制段階上昇実験』を始めます」



キーボードから手を離して、近くに設置された赤いボタンを押す。
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:21:34.16 ID:ND6h8qUDO

途端に御坂美琴の頭を覆っている電極が、点滅を繰り返す。
次第に点滅は無くなっていき、常時光が点ってる状態になった。
それは、あらゆる情報と電気信号を脳に送り込んでいる証拠。


この実験の内容は、外部から無理矢理に脳へ必要な知識や電気信号を被験体に流す。
人間の手によって色々な知識と刺激を蓄えた脳は、強引に演算能力や超能力を以前より格段とシフトアップさせる。



謂わば“強制的レベルの上昇”だ。



被験体のメリットは能力向上。
デメリットは甚大な情報量と凄まじい電気信号が故、脳への負担。
情報量はさして問題は皆無。
危険なのは凄まじい電気信号。

脳の命令は全身に伝わる。
だから電気信号を外部から脳へ送って、筋肉とか血管や神経など。
様々な影響を与えて能力向上に必要最低限な事柄を起こす。
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:23:44.82 ID:ND6h8qUDO
しかし、それは腕や脚の血管に直接電極を突き刺す訳ではない。
全て頭脳からの命令であり、重荷は一点に集中される。

結果として、現在に至るまでの被験体、『置き去り(チャイルドエラー)』は失敗に終わっていた。



……死という名の、失敗を。



故にこの実験は破棄。
二度と行われる事なく永久凍結する……“はず”だった。

だが学園都市が誇るスーパーコンピューター、『樹系図の設計者(ツリーダイアグラム)』が叩き出した計算によって、それは覆される。



―――学園都市最強の電撃使い、超電磁砲の御坂美琴ならば可能だ、と。



端から聞けば、馬鹿げた話。
それでも命中率100%の機械が導いた答え。
ハズれる事は無いだろうと、上の学者達が判断をしてしまうのも無理もないかもしれない。
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:25:05.44 ID:ND6h8qUDO



美琴「……っ」



僅かに彼女の表情が歪む。
軽い痛みを堪える時に浮かべる顔だ。
にも拘わらず美琴が目を覚まさないのは、何らかの睡眠薬を投与されているからか。

パチッと。微かに紫電が迸った。

己の意志に反する能力発動は、暴走の証。……けど、暴走とは言い難い微弱な電流。
今の所は上条が言う“漏電”だろう。



老人「ふむ……出力を上げなさい」



うっすら笑みを浮かべ、命令を掛ける。
研究員は頷くと、レバーを握って、徐々に上げていく。

伴って再び電極が点滅を繰り返す。以前より確実に迅速なスピードで。
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:26:19.41 ID:ND6h8qUDO



美琴「が……ぁっ」



耐え兼ねぬ痛みが声となり、吐息のように漏れた。
苦痛の色が一段と際立つ。

彼女は眉間を顰めて、額には汗さえ滲んだ。
漏電も激化している。



研究員「置き去りの限界点を突破致しました」



資料を持っていた女性が、全員に聞こえる程度に声を張り上げて報告。
モニターに映し出された駆け巡る数字を老人は一瞥すると、更に残酷なる命令を放つ。



老人「よし、出力を」



……が、それは最後まで続かない。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:28:50.42 ID:ND6h8qUDO
老人自身が止めたくて止めた訳ではない。ともすれば研究員が首を振って拒否を示した訳でもない。




―――空気が振動する程の爆音と、研究施設が震動させる程の地響きが彼らを止めたのだ。




当然、何が起きたのだと研究員は純粋に狼狽する。
互いに顔を見合わせ、事実を確かめ合い不安を共有し合った。

一方の老人。顔色から特に焦りの色は感じられない。
寧ろ何処か澄ましたような表情。汗の一つもかかずに冷めた瞳で辺りを見渡す。
まるで、探し物をするように。







『どぉも〜、元気にしてるかなークズ野郎共』
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 07:34:48.04 ID:DJU8a6cao
むむむ
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:34:53.82 ID:ND6h8qUDO



突如として、美琴を映す一つのモニターが完全にブラックアウト。
代わりに響くのは若い少年の声。
とても“光”の道を歩んでいるとは思えない……背筋を凍らす声色。

老人は目を細くする。
頭の中で最優先と後回しを判断しているのだ。



『判っちゃぁいると思うが、さっきの音の原因は俺だ。よろしく。
さて? 歓喜しろ。わざわざこの俺がテメェらに向けて、豪華なプレゼントを送り付けてやろうじゃねぇか』



クククッ、と喉を鳴らして、畳み掛ける。



『俺と出会ってしまったらぁ? ハイサヨナラこの世界〜、って事。どうだ。実に単純明快で、もはやゲーム感覚だろう?
現世を選ぶか天国逝きチケットを貰っちまうか……どっちを選択するかはテメェらの好きにすればいい。
……あぁそうそう。施設の護りに徹している“猟犬部隊”には頼らないこったな。チームを二つに分けていたらしいが、文字通り“潰して”おいた。言っても運良く生き残った残党程度に過ぎねぇな』



つーことで!! と声を張り、区切りを付けて彼は告げた。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/23(土) 07:37:14.68 ID:ND6h8qUDO

















『“リアル鬼ごっこ”のスタートだ。
精々獲物のように這い蹲って、無様に逃亡劇を繰り広げて俺を楽しませてくれ』
















―――恐怖の時間が、幕を開ける。
159 :977 [saga]:2011/04/23(土) 07:42:54.27 ID:ND6h8qUDO
しゅーりょーでございやす


妄想全開ですみません


声の人は言うまでもありませんね
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 07:49:35.49 ID:TRH8k4ADO
乙!!

続きが楽しみです
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 07:50:13.14 ID:uKLzDFDK0
えっ、声の人はシルバークロースさん?
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/04/23(土) 07:52:04.51 ID:OFdXs7kAO
投下中にレスすんじゃねえよクズ
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 07:53:45.03 ID:uKLzDFDK0
>>162
161の俺?
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 08:29:22.94 ID:TRH8k4ADO
>>160の俺?
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2011/04/23(土) 08:30:24.29 ID:id5eJSHJo
>>156のことじゃね?
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 08:33:08.85 ID:uKLzDFDK0
>>164
161だがお前のリいいな!根性あんじゃねえか
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 12:00:17.70 ID:DJU8a6cao
>>162いつレスしようと同じだろ仕切んな


じゃあこのスレではROM専でいます
>>1スレ汚しすまん
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/23(土) 16:13:11.51 ID:tncfm3tL0
まあ確かに投下中のレスは「読み手にとっては」邪魔だったりするからな
仕切るも何もごもっともな意見なんだがそれよりも>>1乙を優先させるべきだろ
ウニ上△
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 17:44:52.30 ID:dTQW7IXDO
俺明日からタンクトップ着るわ
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/23(土) 19:41:06.01 ID:BFjtAeIoo
>>169
こんなところに
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/04/23(土) 20:47:10.37 ID:CYLCUUN00
超乙
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/04/23(土) 23:26:50.60 ID:MW/LVp2t0
乙! オラ読者! いやー、世の中には面白すぎるスレがあるんだなー!
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/23(土) 23:40:33.36 ID:mue92sMAO
>>172
ageンなよォ、クソッたれがァ…

半年ROMりやがれェ!!
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/23(土) 23:41:40.79 ID:mue92sMAO
>>172
ageンなよォ、クソッたれがァ…

半年ROMりやがれェ!!
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/23(土) 23:42:39.99 ID:mue92sMAO
>>172
ageンなよォ、クソッたれがァ…

半年ROMりやがれェ!!
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/23(土) 23:43:40.78 ID:hoZNm7Kdo
これだからAUは
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 23:44:40.23 ID:i5E2ykfW0
大事なことなので2回言いました。
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/23(土) 23:48:29.20 ID:i5E2ykfW0
すみません…

三回でした。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 00:07:14.93 ID:BmOy/YSg0
>>173-175
三重投稿とか
三年ROMれ
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/24(日) 00:12:48.05 ID:k1Z0USGDo
>>172-175
精神と時の部屋にブチ込まれて扉ブッ壊されても文句言えないレベル
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 00:55:17.29 ID:bAudvM/DO
面白すぎるスレですわい
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 01:34:25.12 ID:quYZrIV1o
エゲレス製ですかの
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 04:00:26.56 ID:DBBYhTXlo
いや別にはさんであっても無問題だろ
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 04:17:42.85 ID:qVJJEmtk0
なんでもいいけど上条以外のキャラにも焦点あてろよ
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/24(日) 04:46:53.63 ID:5BLvRVxN0
自分の禁書で好きなキャラトップ4がメインだと? 期待せざる得ないじゃないか!
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/24(日) 05:09:46.52 ID:inwMahSW0
皆さんが言っている「ヴェントの人」って
ヴェントが上条に背中をうんぬんする話の事ですか?
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/04/24(日) 05:10:15.71 ID:inwMahSW0
皆さんが言っている「ヴェントの人」って
ヴェントが上条に背中をうんぬんする話の事ですか?
188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/24(日) 10:32:22.67 ID:Ep7Mtq5Ko
フィアンマ探しに行ったら上条さんを好きになった話だな
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/24(日) 17:58:25.18 ID:5BLvRVxN0
組織の名前は何だろ?
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/24(日) 18:31:14.92 ID:l/g3UtmEo
ハーレムかヒーローだろ
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(鳥取県) [sage]:2011/04/24(日) 18:59:10.80 ID:mAdN4nC3o
>>190
垣根がハーレムだと・・・!?
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/24(日) 19:01:04.09 ID:WdfBqXyho
DTでどうか。

自称ダーティ
他称童貞
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/04/24(日) 21:56:00.26 ID:+MW/2npK0
むしろ「ヒールズ」とかは?悪役的な意味で
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/24(日) 21:57:57.66 ID:4hQaEd8so
パッケージとかでいいんじゃね?
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/25(月) 01:26:32.81 ID:tmd7taMA0
イマジンブレイカーでi パシリでp アクセラレータでa ダークマターでd 合わせてIpad(アイパッド)なんてどうだ?
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/25(月) 01:57:05.88 ID:fGiB/1Fro
以外にしっくり来てワロタw
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/04/25(月) 02:04:44.81 ID:fGiB/1Fro
俺はなんぞやの影響でチームとかメイトとかパーティーが浮かぶな
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/25(月) 02:22:38.72 ID:IJp/UuAIO
>>197
メイトだと上条さんの呼称がリーダーじゃなくて店長になるな
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/25(月) 20:11:14.93 ID:bJakdgMr0
グループとかスクールってなんか名前の由来あったっけ
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/25(月) 20:57:59.00 ID:Us+HOpCO0
カロリーメイト?
201 :17600 [sage]:2011/04/25(月) 22:38:08.85 ID:tmd7taMA0
うますぎる!
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/26(火) 15:14:31.35 ID:sD7pmeBIO
>>201
他スレのネタ持ってくる人って・・・
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/26(火) 17:42:42.66 ID:vJvMbh790
>>201

だがそのノリはよかったいいセンスだ
204 :203ミスったぜ [sage]:2011/04/26(火) 18:43:50.93 ID:vJvMbh790
>>201

だがそのノリはよかったいいセンスだ
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(徳島県) [sage]:2011/04/27(水) 01:45:26.92 ID:jvqD6Q9jo
大事なことなので
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 09:41:16.88 ID:9AYcN04IO
二度言いました
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/28(木) 11:58:41.85 ID:Gn08MzlYo
みつを
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/04/28(木) 18:30:05.01 ID:ff/2GSAQ0
>>207
何故みつをwwwwwwww
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/04/29(金) 10:34:51.52 ID:GyBohBXho
みつき
210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/04/29(金) 13:10:56.12 ID:6D1RKBxK0
<<209 海原光貴のこと?
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/04/29(金) 13:29:24.44 ID:n9K4VygGo
みつきまうす
212 :伸びが凄くてハシャいでる977です [saga]:2011/04/30(土) 07:37:34.83 ID:i5jtxp0DO
書けましたので、もうすぐ投下します

もうすぐというのは色々ゴタゴタがございまして…、全くどーゆー事なの

でもまあ10分もかかりませんので

すぐに戻ってきます
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 07:48:21.86 ID:i5jtxp0DO



「はっ……はっ、はあ……ッ」



白衣を羽織る若い男は走っていた。息づかいは甚だしく荒い。
走り方や体力など後先を考えてない、ひたすら無我夢中に足を必死に動かすだけの作業だ。

そんな彼の顔色は恐怖に染まってる。
全身から噴き出す汗は運動からの類じゃなく、畏怖によるモノ。


際立つ悪寒。粟立つ戦慄。


身体が火照る事は決してありえない。駆け抜けているのにも拘わらずだ。
頬を伝う汗は冷凍したように冷たい。肌は更に温度を失っていく。



「あんな怪物に、勝てる、はずが、ない……ッ!!」



底冷えする恐怖とは、こういうのを指すのだろう。
あまりの残酷的過ぎる現実に泡を吹いて卒倒してもオカシクはないのだ。
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 07:53:20.50 ID:i5jtxp0DO

知らない方が幸せとは良く言ったものだと思う。
今ほど、この瞬間ほど、己の聡明さを呪った事はない。

気付きたくなかった。
感づきたくもなかった。
気付かない事がどれほど楽か。
感づかない事がどんなに幸か。





―――今、身を持って実感した。





無知な方が幸福だった。
無意味に『闇』を潜っていた所為か、誰よりも逸早く察してしまったのだ。
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 07:59:10.81 ID:i5jtxp0DO


ほんの、些細な噂の話である。
闇の中でも結構知り渡った噂。

それは四人で構成されたグループだと言う。
中でも、最も危険人物と称されている人間。
リーダーの役割を受け持ち、極悪非道の残虐冷酷な男。


第一に関わるな。
第二に敵対は止めておけ。
第三に遭ったら諦めろ。


もし、何らかの繋がりで関わりを持ってしまっても、必ず敵対だけはするな。
殺意を抱いた瞬間、全力で逃走に徹しろ。“ヤツら”は数分も経たない内に来るぞ。
遭遇した場合、命は落としたに等しい。寿命は短いと思え。

“ヤツら”に狙われた、上層部に反逆を謀る暗部の小組織は数知れず。
死を齎した数と比例する事から、学園都市の闇の中では畏怖で馳せた有名な話。



(あの声は、間違いない……っ)



グループでリーダーを務める史上最恐の男。
捕まったら最後、待ち受ける運命は……言うまでもない。
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:06:00.28 ID:i5jtxp0DO

だからこそ死ぬ訳にはいかない。
絶対に生き延びてみせるんだ。
こんな所で人生に終末を付けてたまるか。


故に若い男は懸命に走り続ける。
生きるために。
終わらせないために。
例えどれほど無様であろうと。
例えどれほど滑稽であろうと。
生命を引き替えとするならば、どんな情けなくたって構わない。

いいではないか。みっともなく生きる事に必死になっても。
気を緩めば訪れるのは死。それに比べれば、己の醜態なんてクソ喰らえだ。



「着いた……!」



彼の目的地。エレベーター。
それはこの研究所で、地下へ繋がる唯一の手段。
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:08:38.05 ID:i5jtxp0DO

猟犬部隊は正面玄関と裏口を見張っていたと聞く。
対してヤツは『潰した』と述べた。生きていても偶々にしか過ぎなくて残党程度だと。
ならば正面玄関と裏口から逃走を謀るのは得策ではない。
ココの研究所は外へ繋がる出入り口は正面玄関と裏口しか存在しない。

しかし、仮定で何らかの事故が起きて火事が生じたり、今みたいに圧倒的な力量を持つ襲撃者など。
あらゆる場合を想定して、緊急用の脱出口を作っているのだ。それこそが地下への道。
隣の学区へと結び、地上に出る事が可能な、彼に残された生存の道。



「くそッ。まだなのか……!?」



現在、彼が居る階は三階。
エレベーターは地下一階。

たかだか三つ上るのを待つだけ。
にも拘わらず人間の意識とは不思議な物で、何故か遅いと感じてしまう。
故、彼は苛々してしまって、エレベーターのパネルを何度もカチカチと押す。

一刻も早く逃げ出したいという衝動が抑え切れなくなり、行動で露わになっている証拠。
焦燥感の檻に囚われた蝶は、行く先を遮るように四方八方へ広がる茨の花園を掻い潜る。
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:11:19.18 ID:i5jtxp0DO


ピン、と。奏でた音はエレベーターが到着した知らせ。
鉄の壁が開くと、彼は即座に駆け込んで『閉』のパネルを勢い良く叩いた。


意識的な問題で、至って変わらないはずなのだが、扉が閉まるその数秒の時間。
彼にとってはスローモーションのように見えて、流れる光景が至極歯痒い。

何時現れるか判らない怪物が、もしかしたら僅かな隙間でも手を突っ込み、無理矢理に扉を開けるかもしれない。
……という恐怖が支配し、スローモーションの現象を引き起こしているのだ。






―――そして。






―――扉は小さな重い音を立て。










―――閉ま…………った。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:13:30.72 ID:i5jtxp0DO



「―――は、ぁ……はっ、はっ」



たった数秒間。エレベーターの扉が閉じるまでの間、呼吸機能を失っていた。
とても長く。永く感じた。まるで一分以上、息を止めていた錯覚。
それも恐怖故か。
はたまた別の事柄か。


心臓の鼓動が甚大な音を奏でるのが、とても邪魔くさい。
手を添えずとも伝わる心拍数が、この時ばかりはもとがしかった。

ゆっくり深呼吸を繰り返して、己自身を落ち着かせる。
十分に安定を取り戻すと、彼は地下一階へのパネルに手を伸ばした。

それでもやはり、手は微かに震える模様。
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:16:09.83 ID:i5jtxp0DO


ガコンと揺れ、エレベーターが動き出す。
地下へ向けて一直線に下りて行く。


とりあえず『ヤツら』と遭遇は無かった。第一関門突破だ。
しかし安堵の息を漏らすのも束の間。ココからが果てしなく長い。

地下一階へ到達するまでの区間、人生で最も気の遠くなる寸時。






――――二階。






「早く。早く……ッ!!」



現在の階層を表すモニターを凝視。
またしてもパネルをカチカチと押すのを繰り返す。
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:19:09.76 ID:i5jtxp0DO

コメカミから零れた冷や汗が、四方の密閉された狭い空間の床に染み込む。
一瞬安心を覚えたからといって、完全に身の安否を保証された訳じゃない。
この施設から脱出成功した上、ようやく彼は恐怖の檻から解き放つ事が出来る。

僅かな振動音が密閉された箱型の空間を響かせた。






――――二階……ピン。






エレベーターが―――止まった。



「は……?」



声にもならない。
母音が抜けきった息が漏れた。
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:22:11.46 ID:i5jtxp0DO

何が起きて、どうしてこうなったか、……全くもって理解が追い付かない。

目標地点は地下一階。
停止した地点は二階。

エレベーターが止まった訳?
そんなもの知るはずがない。
順に沿って按じていこう。
答えは必ず存在する。


まず自分は地下一階のパネルしか押していない。
謂うなれば『閉』を触れた程度。
何をどう間違っても二階のパネルを押せない。誤った操作も皆無。
手が滑ったとしても甚だし過ぎる。もはや芸人魂が宿ったコントだ。


では何故? どういう理由?
エレベーターが停止するには三つの手段が考えられる。

一つ。エレベーター内部から二階のパネルを押す事。
けれど彼は触れてもいない。故に却下。

二つ。火事や爆発、何らかの事故が起きた場合には通常のエレベーターは危険を懸念し、緊急停止命令が作動される。
だが、最初の爆音以外はこれといって特筆すべき事故は起きていない。



そして、最後の三つ。

二階に“誰か”が居て、エレベーターのパネルを押した可能性。
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:25:12.70 ID:i5jtxp0DO








―――緩慢と、扉が、開かれる。








もしも、もし仮に。



二階に『ヤツら』が居て。



パネルを押したとしたら。



扉の前で立ちはだかるのは……、




「う、あ……」




ぞッ!!!! と。
背筋に悪寒が迸る。
同時に汗が噴き始める。

脚が尋常じゃない程、震え始めた。
ガクガク振動する足で、辛うじて一歩。また一歩。後退していく。

次第に彼の背はベッタリと壁に押し付けられた。
それでも尚、必死に未だ後退して行きたいのか。体を後ろへ押し出そうと足を前へと踏みつけている。
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:29:16.05 ID:i5jtxp0DO




「ひ―――!」




仮定として。



扉の先に居るのが。



『ヤツら』だったとしたら。



自分は……。







―――彼を気にせず左右に扉は開かれていき。







闇に包まれた廊下をランプが広がるように照らし。






影は―――







「っ」








―――無かった。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:30:24.82 ID:i5jtxp0DO



「は、はは。な、んだよ……驚かせやがって……」



腰が抜けて、床にへなへなと座り込む。

密室された空間であるから、逃げる手段は用意されない。

だから。
本当に一瞬だけ。
死の覚悟をしたのは偽り無き事実。



「……とり、あえず。エレベーターを……」



壁に手を付いて立ち上がり、パネルを目指す。
たった数センチの距離。
手を伸ばせば届く僅かな間隔。

なのに、こんなにも遠いと感じるのは緊張の糸が切れた故か。
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:34:39.51 ID:i5jtxp0DO

ゆっくりと、『閉』のパネルを押す。
開いているだけで、恐怖で圧縮されそうになる。既にトラウマの域だ。

低い動力音に伴って、鉄の扉が廊下との区間を遮断するように、閉じられていく。
密室の状態になれば、またあの妙に重たい圧迫した空気を耐えねばならない。

完全に扉が締め切り、ガコンと再び一度だけ揺れて、地下一階へ向けて落下する。
ちょっと疲れたので、壁に体重を預けてもたれようとした―――その刹那だった。



「……?」



彼は怪訝する。
意味不明な現象が起きたからだ。

視線は変えずに感覚の問題で、両手を握り締めて拳を作り、緩慢と戻す。
動作を何度も繰り返して……やっぱり、謎は解けない。

両手は腰の下辺りに力無くぶら下がっている。よし、間違いない。
異常も見られないし、何処か悪いという訳でもない。



では……これは一体なんなのだろう?












視 界 の 真 横 か ら 伸 び て い る 腕 は ?
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:35:51.79 ID:i5jtxp0DO




























「―――みぃーつけた♪」





















―――耳元で、絶望の音が囁かれた。
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/04/30(土) 08:38:47.88 ID:i5jtxp0DO




エレベーターが地下一階へ辿り着いた時。




ただただ扉が開閉を繰り返す有り様だけが残った。




四方の空間は何故か、全て真っ赤に染まっていたと謂う。




赤黒い色に。




そして何故か……『人』は存在しなかったと謂う。
229 :977 [saga]:2011/04/30(土) 08:44:44.78 ID:i5jtxp0DO
しゅーりょーでございやす


ゴールデンウイークですね
休みの日ですね
用事が無い日は小説書き放題ですね


ちなみに、自分は投下中にレスされても構わない派です
投下後の雑談も、行き過ぎない程度ならオッケーです

そのレスを見て977は、ニヤニヤしていますので
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 08:54:22.08 ID:Hi8UlUVIO
>>1
次の投下まで舞ってる
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/04/30(土) 09:38:55.96 ID:gFNk/w7AO
乙乙
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 10:02:39.61 ID:osLzlOHIO
乙〜
続き待ってます!
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/04/30(土) 10:23:51.31 ID:Ibdz4Djh0
舞ってる
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/04/30(土) 10:47:57.05 ID:3xkTFVgY0
おつっす
面白いなぁ
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/04/30(土) 11:34:39.64 ID:ExGZDGN9o
軽くホラー映画だなww
236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga]:2011/04/30(土) 16:09:35.74 ID:puG3HtFF0
やっと追いついたぁ、超続き待ってマース♪
237 :e :2011/04/30(土) 17:20:58.28 ID:FXJTSIbI0
まってるー
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/04/30(土) 17:47:23.52 ID:+3J+NIzDo
乙です 今追いつきました!
続き待ってます
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/05/01(日) 00:11:43.89 ID:LG77W05w0
うひょおおぉぉ!キテたー!
乙です!
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/01(日) 02:05:56.13 ID:CCOBkFodo
今日知った。面白いです
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/01(日) 21:13:20.65 ID:rQVXKavIO
久々に良いのに出会っちまったぜー
242 :977 [saga]:2011/05/04(水) 07:51:38.04 ID:L3z25IsDO


投下していきまーす
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 07:55:47.19 ID:L3z25IsDO



老人「君は、行かないのかね?」



“ゲーム”が始まって五分は経過した。
開始直後、各々が脱兎の如く逃げ去る中、未だ部屋に残ったのは二人だけ。

後ろで手を組む老人は、他の研究員とは異なって雑務をこなす一人の研究員に問い掛ける。
対する彼は至って冷静にキーボードを打ち続け、カチッと『Enter』キーを押すと、立ち上がった。



研究員「どうやらこの施設の電力を操るコントロールが支配されたようです」



ガラス越しに御坂美琴を眺めて、停止していたカプセルが再び作動をし始めたのを確認。

満足げに頷き、老人へ体ごと向き直る。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 07:57:48.20 ID:L3z25IsDO



研究員「実験室とココだけ違う電力を扱っていたのが幸いしました。
    これで実験が再開可能です。我々も迅速に事を済ませて逃げましょう」

老人「……“事”とは?」

研究員「決まってるじゃないですか。“実験”ですよ」



にっこりと、微笑んだ。
何を当然なことを、と言わんばかりに。



研究員「出力を最大にして結果が得ることが可能ならば、我々の勝利ですし。我々がその状況を目視出来ずとも、問題はありません」

老人「ほう。何故そう思うのかね?」

研究員「この実験に関わっている施設が、まさか“一つだけじゃない”なんて、襲撃者も予想外でしょう。
    出力を最大にした時の脳の状態、数値は全て関連の施設へ送られます。だから例え我々を殺害しようと、実験が最終段階まで進んでしまえば敗北は有り得ないのです。
    ……敢えて言うならば、映像が保存不可なのが、唯一の敗北でしょうか?」



片手の人差し指を顎に添え、首を斜めに傾げた。
その間も微笑みは止めない。
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 07:59:38.96 ID:L3z25IsDO
表情の裏側に隠された、黒い部分は言動によって垣間見える。
何処か“狂っている”瞬間を見せるのは、研究者の証か。

黙って聞いていた老人は口角を吊り上げて、レバーに手を伸ばすと、握り締めた。



老人「なかなかの考察。儂ら同様、相当性根の腐った物を持っておる」

研究員「恐縮です」



言葉を最後に―――レバーを最大にした。




―――――――――――――――




サングラスを外し、ブレザーを脱ぎ捨てて黒いタンクトップ姿をした上条当麻が居た。



上条「……はぁ」



一度溜息を吐くと、彼は女子トイレを一瞥。
何故か入り口付近まで大量の血が迸った現状。

床を見れば指が数本、腕が一本、“転がって”いる。
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:01:33.89 ID:L3z25IsDO

つい先刻、白衣を纏った女性研究員を始末した所。
最期の直前、無様に命乞いを懇願してきたが……相手が悪かったと言えよう。
彼にその意味はなさない。『敵』と認識された時点で、既に遅いのだから。



上条「……」



ズボンのポケットへ手を伸ばして、携帯を取り出す。
電話帳から引き出されるのは『友人』の類別。メモリ番号で表すなら『6』番目。

二回ほどコールが鳴り、コールが途切れると共に相手が出た。



浜面『うぃー。リーダーお疲れっす』

上条「覇気がねえぞ。声をもっと張れ」

浜面『俺にワザと敵に見付かれと言うのかっ!? そういうのは垣根だけにしてくれ……』

上条「良し。その反応を聞く限り本物だな」



彼は納得したと頷く。
電話の奥でグチグチ言ってるが無視。
これが上条当麻のやり方だから。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:05:52.77 ID:L3z25IsDO

万が一の時に備えてこういう他愛の無い会話をする。
一瞬の言葉を紡ぐ詰まりや、僅かな口調の違和感を瞬時に見定めるのだ。
敵に捕まってしまったとか、すぐ側に接近しているとか状況は様々。
身内の連中に限って捕まる事は無いだろうが、可能性は状況によって変化するので否めない。
浜面には一応、拳銃を持たせているとは言え、確認作業は必須。

単純な戦力の差は仲間達と比べれば甚だしく低いものの、武器の扱いスキルとなれば一方通行や垣根、上条さえも凌駕してしまう。
例え初めて手にする銃器でも、物の数分で掌握する程。



上条「大体始末を済ませた。足音も聞こえなくなったし、そろそろ本命か?」

浜面『ちょっと待てよぉ……んー……ん? 後二人ぐらい反応が残ってるぞ』

上条「んだよ、まーだ生き延びてやがんのか」
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:10:11.22 ID:L3z25IsDO



浜面にはこの施設の電力を操る、コントロール室に行ってもらっている。
なので映像もモニターに映し出されているため、何処に『敵』が居るかは常時上条の携帯に渡って行く。

受信の様子は皆無で、足音と気配を感じないものだから、居ないと推測。
電話してみれば、まだ残ってると来たもんだ。


正直、怠いの一言。


終わりと思い込み電話を掛けたので当然だろう。
帰る準備万端でいざ帰ろうとした時に、上司から残業を告げられたように怠い。

上条はもう片方の手で頭をガシガシと乱暴に掻く。
至極億劫そうに瞳を瞑して、神経を研ぎ澄ませた。
依然のまま、浜面に要求を示す。



上条「……地図を提供しろ。三分で潰す」

浜面「了解。今からメールで」



だが、彼の言葉は最後まで続く事は許されない。










―――あああああああああああああああああああああああッッ!!!!!!










上条・浜面「!!」




―――突如、彼らの耳に断末魔の叫びが響いたのだから。
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:11:50.35 ID:L3z25IsDO



彼は目を見開き、神経を研ぎ澄ませていた精神も強制的に中断。
勢い良く振り向いて、声の方へ凝視する。

聞き覚えのある声色。
とても聞き慣れた、探し求めていた……声。



上条「み、こ……と……?」



御坂美琴。彼の幼馴染み。
必ず護ると決めた数少ない人間の一人。
その人が今、悲鳴を上げている。

何故? 痛いから?
何故痛い? どういう理由?

ここは研究施設。
彼女は何の用事で運ばれた?




―――実験?
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:15:43.04 ID:L3z25IsDO



浜面『オイ上条ッ!! 今の――リーダ――なじ―――』



彼の言葉は次第に雑音が混じっていき、ブツッと切れた。
携帯画面を見れば、圏外になっている。

上条は訝しむ。ココは学園都市。
外と中では十年以上の技術力の差がついていると言われた、世界一最先端の街。
そんな場所で圏外なんて、到底有り得はしない。
どんな場所でも電波が行き届くはず。
それこそ、電波妨害など施さなければ不可能な話。



バチッ!! と天井が弾けた。



天井を仰ぐと、幾つもの電流が線に沿って迸っている。
その電流で大方、予想が付いた。

携帯を電波妨害で圏外にさせる程の能力者は……上条当麻が知る中で一人しか居ない。



上条「……嫌な予感しかしねぇなぁオイ」



姿勢を低くして、駆け抜けて行く。
有り様はさながら忍者だ。
少しでも風の抵抗を受けずに、素早く走れるかを開発した結果。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:17:54.83 ID:L3z25IsDO

浜面と連絡は取る事は不可能。
施設の地図も無し。電波妨害が生じているので、サングラスも無意味。


もはや知識と直感の二つしか頼りにならない。


天井で迸っている電流は、おそらく美琴によるモノ。
この調子だと施設中に電流が巡っているだろう。
故に『電流が強く弾いてる』ほど、彼女が居る部屋に近付いているという事。
その道を選んでいけば、必ず彼女が運ばれた実験室へ辿り着ける。



上条「美琴……っ」



上条当麻にとって、御坂美琴は護るべき存在である。
だがそれは、彼女に限った事ではない。

一方通行。
垣根帝督。
浜面仕上。

この三人もその対象。
彼が魂に護ると誓った人間。
傷付けようものなら、容赦は絶無。体の原型は留めないと思え。

中でも美琴は、最も彼が気を付けねばならないと感じている人物。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:24:54.67 ID:L3z25IsDO
何故なら、彼女は身内のグループメンバーと違って『闇』を知らない。
干渉していなければ、存在さえ関知してないだろう。

自分達と相違で、御坂美琴という人間は『光』の道を歩む者。
それ故に、『闇』に対して自らの身を護る手段を持ち合わせていないのだ。


学園都市第三位?


そんなもん関係ない。『闇』ではミジンコのようにちっぽけだ。
実際問題、現在捕まってしまっている。三位なんて謂う称号は、ココでは役に立たない。



だからこそ、上条当麻は遠ざけていた。

美琴は現在の彼みたいに血が滲むような地獄の訓練を受けた人間ではない。
何時何処で、“自分と関わりを持っている”という理由だけで狙われる可能性は否めないのだ。
一方通行や垣根帝督に浜面仕上なら、安否を気遣う必要性は皆無に等しい。
彼らは『闇』に属する強い人間。
そんじょそこらの野郎共では相手にならない強さを所有している。



でも、御坂美琴は違う。
儚くて弱い、優しい人間。



だから上条は冷たく接し、突き放していた。故意で。
そうすれば諦めて自然と離れていき、知り合う前の他人と同類の縁になる。

……結果的に言えば、その努力は悉く無駄に終わっているのだが。
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:29:41.01 ID:L3z25IsDO


故に。上条当麻にとって彼女の存在は唯一の不利な点でもある。

御坂美琴=彼の弱点なのだ。

曲がり形にも二人の間柄は幼馴染み。付け加えて補足すると彼女は『光』の人間。
『闇』の人間ならば冷静に対処可能な事柄も、『光』の人間である彼女には到底不可能。

現状がそれを示唆。
実際に美琴は囚われている。
そうなると必然的に、上条当麻が出て来る羽目になってしまう。

どんな卑怯な手も行使する『闇』は躊躇わない。
彼を誘き出すためならば確実に美琴を狙うだろう。




―――正々堂々なんて綺麗事は狗に喰わせとけ。

―――んなご立派なご意見様は、『闇』に住むクズ共に要らない。




……そんな感覚。
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:32:56.20 ID:L3z25IsDO
勿論、上条も否定はしない。
己自身もクズに違いないから。
大切な幼馴染みを傷付けてばかりの、極悪最低な人間。

だからこそ、他者が彼女を傷付ける事を許さない。
美琴をダシに使わずとも、真っ正面から突っ込んで行ってやる。
拳一筋で叩き潰してやる。

しかし、やはり『闇』は非情だ。
その決意や意志を無視するように彼女を狙うのが目に見えている。




―――それを阻止するため、アレイスターとの契約があるのだ。




上条当麻が心を許す人々に対して、弊害が生じる真似は決してしない。
何者かがこの契約を犯した暁には、重き罰を受け、未来永劫マトモに日常を過ごさせはしないだろう。

代償となるのは上条当麻の身体だけ。
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/04(水) 08:36:01.26 ID:L3z25IsDO


この契約があるからこそ、彼は安心しきっていた。

一方通行や垣根帝督に浜面仕上……身内のグループメンバーなら何とかなるだろうと、心の何処かで余裕はある。

しかし御坂美琴の場合、“意識を正常にさせる”自信が無い。
彼女が『光』に属する人間だから余計。





上条「美琴ッ!! 大丈、ぶ……か……」





―――故に、





美琴「が、ア……ッ!!」





―――全身から電撃を放出する彼女の有り様を目にした時、己の意識が遠のいて行く気がした。
256 :977 [saga]:2011/05/04(水) 08:40:06.95 ID:L3z25IsDO
しゅーりょーでございやす


ゴールデンウイークも残り僅かですね
では皆様、よい日をノシ
257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 08:41:39.18 ID:xCSoGRvIO
ここで切るか…
乙です!
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/04(水) 08:42:15.56 ID:Nv87pknN0
超乙です!
更新たのしみにしてますぜ
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(香川県) [sage]:2011/05/04(水) 08:58:05.28 ID:BB+c9adP0
乙です!
続きが楽しみだー
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/04(水) 09:26:06.65 ID:iuaeYr/9o
天井が弾けただと
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/04(水) 09:56:15.93 ID:TY3tpdQh0
↑てんじょうだろww
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(石川県) [sage]:2011/05/04(水) 10:29:18.18 ID:g4tkiXvMo
替えの効かないLevel5を使い潰す実験ってどうなんだ。
実験や研究を最優先する壊れた科学者程そういうとこにだけは
気を使いそうなんだが。

今回の件は美琴はどうでも良くて上条さんが目的なら納得いくけど、
現状だとむりやり鬱展開にもっていきたいだけに見えるから
これからどうころがすか気になるな。
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/04(水) 11:03:52.80 ID:1oZ57Damo
>>1
替えがきかないって事は真実無いんだろう。
15巻で博士が言ってたろ?いろんな問題を抜きにしてCanかCan'tかで言えば前者みたいだし。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/05/04(水) 19:11:56.28 ID:nlU5wNSd0
おっつー
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/04(水) 19:14:32.33 ID:3/9f/IhH0
とりあえず>>152を前提に考えれば、成功することが前提で行われている実験なんだろうなと思った。
だから研究員もLV5を使い潰すと言う感覚が無いんじゃないかな。
勿論今までの研究データからもう一度LV5を作れると思っている可能性も否定できないが。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/04(水) 20:41:35.06 ID:pkL2OkxAO
267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/05(木) 01:42:27.16 ID:KvG6pbbQ0
>>262 level.5なんて簡単に作れる
大事なのは価値のある能力かそうで無いかだけ
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/05(木) 02:41:31.29 ID:7c/kUVKmo
美琴ができることって、手軽さや効率を度外視すれば科学技術で代替できるものばかりだから、あまり重要視はされてなさそう
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/05(木) 07:06:51.05 ID:HeVrBOBko
>>268
逆だ
手軽さや効率を突き詰めるための方法論が美琴の能力内にあると考えられてるから
価値が見いだされてレベル5の3位って位置に置かれてるんだよ
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 16:11:36.73 ID:T4PMCua/o
電気使いってベクトル操作の次くらいに便利そうだもんな
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/05(木) 19:28:12.26 ID:0eNSMrkV0
>>270お前ていとくん忘れてんじゃねぇよ
ていとくんもかなり便利なはずだ……きっとおそらくたぶん……
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/05(木) 21:40:48.73 ID:T4PMCua/o
>>271
冷凍庫もSSだと色々便利な物作ったりしてるけど、本編だと常識が無いだけじゃないですか
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/05(木) 23:58:53.21 ID:3eBtyUWWo
能力としての格付けは、4位までしか機能してないと思われる。
1,2,3位はどう考えても★のプラン順。1位がAIMの入出力装置。2位がAIMの法則、性質調整?3位がAIMの拡散と連携。
3位に関してはMNWだけど、超電磁砲ありきだし。よかったねむぎのん!じっしついちいだよ!
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/06(金) 14:59:16.66 ID:rC/x2b6X0
じっしついちいwwwwww
その発想はなかったwwwwwwww
やったねむぎのん!
275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/06(金) 21:44:03.78 ID:x3Q7ZA8AO
でも多分むぎのんって一番どうでもいいレベル5だよね

第一位第二位は言うまでもなく第三位は電気系万能だし第五位は珍しい精神系万能だし第六位は正体不明だし第七位は意味不明だし
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(宮城県) [sage]:2011/05/07(土) 00:04:27.21 ID:jMesauxAo
>>275
0次元むぎのんを忘れるな
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/07(土) 00:10:53.72 ID:81jkQChg0
てめ、むぎのんはアレだよ、眼福を与えてくれるからすごく必要だよ。
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/07(土) 00:46:55.10 ID:6AWgF7Mbo
自称セクシー系担当だからな
279 :977 [saga]:2011/05/07(土) 01:38:46.91 ID:TDkpp1VDO
夜中に投下だぜー!!


では、寝落ちしないよう頑張って投下していきまーす
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:43:00.97 ID:TDkpp1VDO



最初の出会いは、些細なものだった。
けど今のご時世としては、至極珍しい。

小学生の時の話。
当初、自分のレベルは1。

夜遅く布団に頭まで潜って、両手の平からパチパチと静電気を起こすのが、日課だった頃。
もっとレベルを上げて頑張れば、夜空に瞬く星を作れるんじゃないかと夢を抱いていた幼い時分。


学園都市でも、小学生低学年で能力者というのは極めて稀少。
一つの学校を探ったとして、原石を含めて何らかの能力持ちの小学生は、一年生と二年生の中でも一人。
若しくは居ない。比較的に言えば、小学校低学年は無能力者の方が多い。
有していてもレベル1にも及ばない、レベル0程度。

だからこそ、レベル1の自分は周りから飛び抜けて優秀で、大人達からは賞賛を称えられていた。

幼い自分には何を言っているか、少し意味が解らなかったけれど、誰かの役に立てると知って、嬉しかった覚えがある。
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/07(土) 01:43:35.12 ID:NmmB67gAO
いえーい
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:44:54.86 ID:TDkpp1VDO


その反面、苦い日常が存在。


能力に優れている所為で、自分に嫉妬心が芽生えてしまう小学生も多々存在。
幼い子供にはよくある話。羨ましいとか腑に落ちない瑣末な感情。

スポーツが抜群に出来たり、勉強が周りより群を抜いていたりと。
何か一つずば抜けて優秀でクラスの皆から目立つと、「あいつ調子に乗りやがって」やら「ちょっと出来るからって」……その他諸々。

女の子だから、という理由もあったかもしれない。
少なくとも男子群には余程気に食わない話だったらしい。
故に。筆箱を取られた事もあったし、スカートをめくられもした。


簡潔に言えば所謂、『イジメ』。


今思えばとても可愛らしい。
成長したからこそ破顔一笑する。
どちらかというと、『悪戯』の表現の方が良いかもしれない。
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:47:33.42 ID:TDkpp1VDO

けれど当初の自分は、それが凄く嫌で堪らなかった。

何で私だけこんな事をされなきゃいけないの? と心の奥で疑問を浮かべ、涙を流した日もあった。

どうしたらいいか判らなくて、判らなくて判らなくて……泣く事しか出来なくて。






『何やってんだよ、おまえら!!』






―――そんな時だ。


―――私を“護る”ように彼が声を掛けてきたのは。
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:49:47.65 ID:TDkpp1VDO



後に聞いた話。
彼は二つ上の上級生らしい。
何の能力も持たない、無能力者。

なのに彼は立ち向かってきた。
相手は下級生とは言え、数は明らかに不利な状況。



『関係ないよ。目の前で泣きそうになってるのに、放って置けるわけねえじゃん』



何を当然な事を、と言い放つ彼の姿は、自分にとって眩しい存在に見えた。
到底追い付けそうにない、でもその背中に並びたいという激情が、心を満たしていく。


その日を境に、休み時間の間や放課後は必ず彼の後を追い掛けるようになった。


さながらヒヨコのように。服の裾を摘む有り様は、端から見たら兄妹。
彼も邪険にして追い払う所作はやらない。
寧ろ照れ臭そうな仕草を垣間見せて、受け入れてくれた。
何時しか、自分は彼に特別な感情を宿す。




―――『恋』という感情を、上条当麻に。
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:52:25.39 ID:TDkpp1VDO

恋の感情を抱く頃には、自分のレベルは1から3に上昇していた。

能力審査でレベルが上がる度に彼が頭を撫でてくれて、「凄いじゃねーか。よく頑張ったな」と。
褒め称えてくれるのが何より嬉しくて。
先生やクラスの皆が幾ら賛辞を送ったとしても、彼のように心が歓喜の示唆は無い。

上条当麻から褒めて貰える事に意味がある。
だからこそ心が躍り、自然と顔が綻びを起こして、笑顔になれる。
次の段階への意欲が湧き、気力を奮い立たす事が出来る。

もはや、自分にとって彼は掛け替えのない存在になっていた。
今の称号である第三位も、彼が居たからこそ。













……尤も。レベル5に君臨する頃には、彼は既に“変わって”いたのだが。













上条当麻が突如変わり果てたのは、自分が五年生の時。
中学校に入学した途端、彼は忽然と姿をくらました。
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:55:12.95 ID:TDkpp1VDO

学生寮にも、学校にも、スーパーにも、公園にも居ない。
あまつさえ三機ある監視衛星にも引っ掛からない。
どの場所、学区に居るか全く以て解らない。

警備員(アンチスキル)に捜索願いを要請した事もあった。
でも、返ってきた応えは自分が望んだものじゃなく、対極の位置に属して、尚且つ想定外を含めた返答。



『○月×日、御坂美琴の言及による、上条当麻の捜索要請の件。“受諾不可”』



要請を受け持った部隊を率いるリーダーの話によれば、何故か『上』からの圧力を被ったらしいのだ。
『上』の情報だと、一ヶ月もすればじきに上条当麻は姿を現す。
そして今まで通り変わらない日々を過ごすだろう、と。


正直に言えば納得いく訳がない。


だけどその時の自分は、安堵して胸を撫で下ろした。
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:57:17.53 ID:TDkpp1VDO

どうして学園都市の『上』がそう言ってきたかは理解が出来ない。
しかし、どうでもよかった。
何故なら学園都市のお偉いさんが述べた文章なんかより、“上条当麻が生きている”という正鵠な点が、己自身を支配したから。


確かに。確かにだ。


彼が何処に居るのか判らないし、何で詳細情報を寄越さないとか腑に落ちない点は数多ある。
それでも、生きている事には変わりない。
今後彼が姿を現すか不明、と告げられたのならば流石に憤りを露わにするが、必ず戻って来るのだ。


僅か一ヶ月の間。短いようで長い時間。

寂しいと感じる日もあるかもしれない。
会いたくて会いたくて仕方無くて、みっともなく泣いてしまう日だってあるかもしれない。
彼を求めて捜し歩き、見付けられなくて落ち込んでしまい、学校を休んでしまうかもしれない。


でも、再会を果たした時。
また褒めてもらえるように。
頭を撫でてもらえるように。

頑張ろう。
精一杯振り絞って。

彼は何の隔たりや偏見も持たず接してくれる。
積み重ねてきた努力を認めてくれて、まるで自分の事のように喜んでくれる。

だから……頑張ろう。

















―――その願いは、虚しくも打ち砕かれる事を知らずに。
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 01:59:14.67 ID:TDkpp1VDO


一ヶ月ぶりに見る彼は、以前に比べて随分と成長を遂げていた。

良い意味でも。悪い意味でも。

逞しく鍛え上げられた肉体は黒のタンクトップに覆われ、細身な体系でありながら露出した腕の筋肉は強靭。
身長も5pほど伸びている。相当厳しい訓練でも受けていたのだろうか? 真実は定かではない。

後ろ姿が視界に映った瞬間、胸が躍り上がって頬を赤らめた。
ただ純粋に格好いいと心に浮かんだから。
惚れ直すというのは、こういうのを指すのだろう。






『……美琴か』






―――そんな思考は、彼が振り返ったと同時に吹き飛んだ。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:01:29.14 ID:TDkpp1VDO


低く、ひたすら低い声。
変声期を迎えた訳じゃない。
本人もワザと発してはいない、漏らした声が自然と低かっただけの話。

でもそれは、友達や家族で放たれる声色ではない。
どちらかと言えば“敵”に向けられる敵意の音域。
威嚇行為同然の、『来るな』と遠回しに告げられたかのような剥き出しの意志。



そして最も驚愕を露わにして、恐怖に駆られた原因は彼の“瞳”だった。



鋭い目筋。何もかもを見抜き射抜く眼差し。
冷酷冷淡冷血冷厳冷然冷徹、極寒の如き冷たい視線が自分を貫く。

喉元に刃を添えられて、一寸間違えば“死”に繋がる殺気とはまた違う。
凝縮された“冷たい”という文字が、自分の背中へ直接的に衝突して迸った気がした。

口が動かなくて、足が動かなくて、手が動かなくて、思考が動かなくて。
全てが動かず、まるでそれぞれの役割を忘れて機能が停止してしまったかのように。



“これが、あの当麻?”と。

頭の中で反芻するばかり。
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:05:05.34 ID:TDkpp1VDO



『リーダーっ!』



彼の隣には、自分の代わりに三人の男が居た。


白髪で周りから際立つ奇抜な男。
金髪で服装がホストのような男。
金髪で何処にでも居る不良の男。


常に上条当麻と肩を並べて、親密に会話を交わす彼らが、羨ましくて仕方無かった。
底冷えする恐怖を感じた自分と違って、彼の眼差しを何とも思わず話せる三人が妬ましくて仕方無かった。











―――ずっと追っていた彼の背中が、更に距離を広げた気がした。











近付けるどころか離れて行く現実に、絶望を感じざるをえない。


どうすればいいのだろう?
どうすれば、どうすれば……。


イヤ違う。悩んでどうする。
自分のすべき事は煩悶じゃない。

『彼の背中に追い付く』ことだ。

離れたからどうした。
追い付けなくなった訳ではない。

解決を見出す手段はいとも簡単で、単純明快。
距離が空いたなら縮めればいいだけだ。


走って走って走って走って走って走って走って走って走りまくって。
駆けて駆けて駆けて駆けて駆けて駆けて駆けて駆けて駆け出して。

必死に、一生懸命に、精一杯に、一心不乱に突っ走って。
何時か絶対に追い付いてみせる。

三人の男と同様に、彼と肩を並べて、また“あの時”のように!!
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:07:54.31 ID:TDkpp1VDO




―――――――――――――――




レベル5に君臨して、そろそろ一年半。
あれから三年経って、お嬢様学校と名高い常盤台中学の二年生に。

相変わらず冷たい眼差しを自分を射抜く様子は改善されないが、慣れてしまい、気にしなくなった。
以前と比べれば至って普通に喋れているし、触れる事だって可能。



……彼は好ましく思ってないようだが。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:09:58.99 ID:TDkpp1VDO








上条当麻の背中を追い掛けて。



かなりの距離を、走ったと思う。



三年近くほど、懸命に。



結構な間隔を詰めただろう。





まだ。
走らなければ。
いけないのだろうか?

まだ。
この伸ばした手は。
彼に届かないのだろうか?





何時になったら。
前へ前へ進む。
足を止めればいいのだろう。

何時になったら。
彼の下に。
たどり着けるのだろう。
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:15:27.90 ID:TDkpp1VDO















………………と。















―――もしかしたら。















……み……と。














―――すぐ傍まで。
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:16:19.53 ID:TDkpp1VDO












…………こ……と。

















―――近付いるかもしれない。


















……み……こ……。

















―――ほら、手を伸ばせば。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:16:53.18 ID:TDkpp1VDO












































「――――美琴ッ!!」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:18:13.93 ID:TDkpp1VDO



呼ばれた気がした。
頭が、とても疲れている。

眠たい。休みたい。

でも、呼ばれた。
それも愛しい人の声で。

ずっと、追い掛け続けてた。
追い求めていた人の……声。




美琴「と……ま……?」




うっすらまぶたを開ける。

辺りは薄暗い。光が少ないおかげで、視界は眩しくなかった。
代わりに覆い尽くして補うのは……この世で一番愛する人。
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:19:31.13 ID:TDkpp1VDO



上条「美琴……大丈夫か?」



いつもの冷めた感じは消え、『昔のように』穏やかな雰囲気をまとい。
心の底から心配する瞳で……見つめていた。



美琴「あ……」



手は、彼の手と繋がっている。
握られている。握っている。

当麻に手が―――届いている。


ずっと。ずっとずっと。
追い掛けてきた。
求め続けてきた。
熱望して渇仰した。

伸ばせども伸ばせども。
決して届かなかった。
彼の背中は遠すぎて。
触れることすら出来なかった。


でも。


やっと。ようやく。
彼の背中に追い付いた。
掴んだ。
遠かった存在に手が届いた。
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/07(土) 02:20:12.20 ID:TDkpp1VDO



美琴「やった……」



努力が報われた気がした。
顔が自然と綻びる。

今この時ばかり、歓喜と感じたことはない。
あまりの嬉しさに涙を浮かべてしまいそうだ。

微弱でしか入らない力を振り絞って、上条当麻の手をできる限り強く握り締める。

どんな事があっても離さないように。
置いてけぼりを食らわないように。

もう……彼が離れて行かないように。








美琴「一生……離して、やらないからね……」
299 :977 [saga]:2011/05/07(土) 02:25:43.03 ID:TDkpp1VDO
以上しゅーりょーです


今回は完全に美琴さん視点
さらに8割ぐらい地の文というね…疲れましたけど、楽しい

一人称を“自分”にすべきか“私”にすべきか迷ったところ、まあ自分でいいかなと



次回は、このスレでは初めての戦闘シーンです

上条さん…
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 02:27:27.50 ID:Rxsf7MqPo
乙!
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/05/07(土) 02:28:42.83 ID:wiB0++zA0
乙!
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/07(土) 02:31:08.10 ID:dDPjEis80

とりあえず救出成功?みたいだけど脳にダメージが残ってそうで不安だぜ…
ようやく報われた雰囲気なのも嫌なフラグに思えてしまう
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/07(土) 02:40:42.76 ID:g1ydxO+oo
今は素直に喜んでおけって。
1乙
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [saga]:2011/05/07(土) 09:44:51.64 ID:yjWb2s2S0
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 12:00:15.64 ID:frObozfio

面白い!実に面白い!
なのに、細かい文法で引っかかるなー…。
ともあれ一乙
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/07(土) 12:14:17.52 ID:mqFJpSpAO
乙乙

相変わらず上手いなあ
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 14:09:44.18 ID:Bv4uYJ/N0

おもしろい
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/07(土) 19:33:42.78 ID:7BdIgRbK0
おつおつ
美琴の心情がまた切ない…想いが報われてほしい
確かに脳のダメージがありそうで怖い…
次回は上条さんブチ切れかな?wktk
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 21:19:39.83 ID:kFSTHNiDO
俺の目に狂いは無かった
このスレは面白い
こっから先上条さんの戦闘に期待
つーか上一未浜で更に上琴(?)とか俺得すぎて鼻血出そうだ
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 21:48:33.53 ID:u9LOoY8DO
ここからハイパー処刑タイムです
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/07(土) 22:02:58.20 ID:qjfjR6CDo
個人的には昏睡状態になってしまう超絶鬱展開を覚悟してたけど違うのかな
油断は出来ないけど
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/08(日) 00:29:38.27 ID:DZHlSGvAO
ここの上条さんは幻想殺しの力って持ってるんですか・・・?
313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/08(日) 00:35:32.08 ID:F9x5tZAAO
なかったら上条さんの存在意義の80%はうしなわれる希ガス
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/05/08(日) 00:40:56.53 ID:DZHlSGvAO
ですよねぇ〜
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/08(日) 06:30:50.36 ID:SDMU/I2Io
このスレ相変わらずおもろいなー
だからこそ、なおさら言葉の選び方と文法がおかしいところが目立つんだよな…
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/05/08(日) 10:07:39.35 ID:PtzAWgQUo
たしかに語句の誤用が多いのはかなりひっかかる
他じゃ見ないような誤用だからなおさら

でもおもしろい
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/05/08(日) 15:41:28.35 ID:G91v4MsAO
語句の事はもう許してやれよ
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/05/08(日) 16:07:13.98 ID:TimeAjqYo
誤用はご容赦ください
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/08(日) 17:14:12.73 ID:GGuNPekho
>>318さりげなく駄洒落w
320 :977 [saga]:2011/05/08(日) 20:30:37.28 ID:96vE9dPDO
語句、ですか…orz

一方「SS書いてンだ」を見て独学に励んだ結果がこれです



では、投下します
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:34:40.36 ID:96vE9dPDO


実験室は静寂で占めていた。
耳を澄ませば、僅かに響く息遣い。
虚空に漏れる御坂美琴の寝息だ。

相当疲れたのか。彼女はぐっすりと安息の一時を迎えていた。
顔色に苦は感じられない。
とても安らかで、仄かに笑顔を浮かべている。




上条「……」



彼女を救った張本人、上条当麻は美琴が眠りに付いて尚、未だに頭を優しく撫でていた。
まるで羽毛を撫でるように、丁重に扱う。

睡眠を取る彼女の寝顔は、彼を信頼しきっているからこそ。
穏やかに眠れるのは、彼を信用しきっているからこそ。

故に御坂美琴は上条当麻に身を預けて、顔を綻ばせて静かに休める。
彼女が目指していたゴールに到着した安心感もあるのだろう。
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:36:43.65 ID:96vE9dPDO


彼の表情は優れない。
眉間を潜め、目を細くさせていた。

もう片方の手には、美琴の片手と繋がれている。
スベスベして柔らかい、女の子の手だ。

傷一つ無い。身体も心も。
そんな、無垢な彼女。

……なのに。



上条「……何で」





―――美琴がこんな酷い目に遭わなくてはならない?





何も悪い事をしていないのに。
ただ、今を精一杯生きてきただけなのに。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:40:05.12 ID:96vE9dPDO

まだ中学生だ。無垢な少女。
意地っ張りでしつこくて、言うことを全く聞かない甘えん坊なヤツ。
何年も冷たく突き放してきたが、諦めてへこたれること無く、上条の傍に居た護るべき存在。


そんな彼女が、傷付いた。
よりによって『闇』の連中に。


赦せるか? ―――否。赦せるはずがない。
少なくとも“この施設”に居るクズ共は。



「上条当麻」



声が彼の耳に届く。
美琴から手を放し、立ち上がると踵を返して振り返る。

十メートル以上離れた場所に、複数の人間が武器を携えて佇んでいた。
目を配らせる限りでは、五人。
五人中三人は、能力者だろう。
何故ならなにも装備はしていない。


残る二人は厄介だ。
駆動鎧(パワードスーツ)を着込んでいる。身に包むことで身体能力を外側から漠然と上げる機械。

種別はHsPS-15。
通称『ラージウェポン』。
全長2.5メートルほどで、青と灰色の特殊な迷彩を施されている。
頭に当たる部分が巨大で、胸部が膨らんでいるため、ドラム缶型の警備ロボットを被ってるようにも見える。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:42:39.40 ID:96vE9dPDO

とても人間一人に対する処置ではない。それも無能力者に。
彼らはおそらく『猟犬部隊』の残党。



男「聡明な君なら状況を察せれるはずだ。今の立場、どちらが優位か一目瞭然だろう」



内の一人が、上条に向かって歩き出す。
物腰は悠然としていて、冷静に周囲の分析する頭脳を持ったタイプだ。



男「無鉄砲に突っ込む要員として用いられたトラックも無ければ、裏口で設置したトラップ型の爆弾も無い。
  今の君は丸腰。素直にこちらの言う事を聴いた方が無難で、頭が良くないか?」

上条「……」

男「黙って拘束されろ。貴様が抵抗しなければ、こちらも危害を与えるつもりもない」



二人の間は僅か三メートル。

近付かれても、上条は微動だにしない。
何故なら彼の頭の中では、全く別の事柄が駆け巡っているから。




―――そして。




―――上条当麻の脳内で、もつれ合った様々な糸がピンと筋を張って、一本の線になった時。
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:45:11.03 ID:96vE9dPDO



上条「……ハハ」



僅かに笑った。
そして五人全員が思った。

恐怖のあまり、おかしくなってしまったのか? と。

その予想はある意味で間違いではなく、実際彼は『オカシク』なった。
笑いに伴って、上条が洗練された殺意を放つ。対峙する男へと、奥にいるクズ共へと。



上条「ハハハ……アッハッハッハッ!」



顔を手のひらで隠し、隙間を抜くように声が漏れる。
笑みは、狂笑へと変わる。



上条「アハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハハハはハハハハハハハハハハハハ」



どうしようもない程の憎悪が声となった。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:47:54.37 ID:96vE9dPDO

彼は狂笑する。
ケタケタと笑い。
クククと笑い。
ハハハと笑い。
ゲラゲラと笑う。

視界の全てがモノクロになっていく。
肌に感じる感覚が全てだった。

上条の心の中で、呟かれる。
『誰か』が、告げる。
無意識ではなく、有意識で。




“悪としても胸を張れ”。


“闇の世界を突き進んだとしても、それでも光を救って見せろ”。


“進むべき道が周りと違うからといって、それを恥じるな”。


“闇の奥にいることを誇りに思えるような、それほどの黒となれ”。




―――既存のルールはすべて捨てろ。



―――可能と不可能をもう一度再設定しろ。



―――目の前にある条件をリスト化し、その壁を取り払え。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:49:41.73 ID:96vE9dPDO



上条当麻は口角を吊り上げて、嗤う。












―――コ、ロ、ス。












彼が唇を動かした。



男「ひっ……!!」



莫大な殺気と絶大な恐怖に駆られた男は、一歩後退してたじろぐ。

先刻の威勢は何処へやら。
もはや面影も存在しない。

だが、辺りの空気が一変した気がするのは確か。
特に上条当麻を中心に『何か』が豹変を遂げている。

体の芯から死を感じて、自らの危険をゾワリと身を震わせ察知した。
咄嗟に彼は逡巡せず能力を行使する―――その直前。










“ぞぷり”、と。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:52:29.39 ID:96vE9dPDO



男「ぁ……?」



何が起きたか、解らない。
どうなってるのかも、解らない。
現状の把握が、出来ない。
理解が不可能に近いほど、頭が回らない。

視界に映る景色。上条当麻。
彼は目と鼻の先まで接近していた。
三メートルあった距離を一瞬で。

動体視力とか、五感とか、関係がない。
“反応できなかった”のだから。



男「……?」



腹部に違和感を感じる。
下を向くと、奇妙な光景が広がっていた。





―――腕が伸びているのだ。





一本の腕が、腹から伸びていた。





血塗れた腕が、腹を貫いていた。












上 条 当 麻 の 腕 が 男 の 体 を 貫 通 し て い た 。
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:54:08.50 ID:96vE9dPDO


ザクリ、という生々しい肉質が。
ドロリ、とした穢れきった血液が。

浴びなれた液体。
腕に伝わる感触。
体に刻んだ鼓動。

そのどれもが、楽しくて愉しくて悦しくて仕方なかった。

狂えばいい。
笑えばいい。
望めばいい。
堕ちればいい。
消えればいい。
終わればいい。

ナニカガオワッテコワレテウマレテ、ナニカガウマレテコワレテオワッテ。



上条「ハハハ……クッ……クク。
…………はッハア―――!」



滲むような苦しみに埋もれて、得た笑みだった。
手にしてしまった感情だった。

多分、狂っていた。
そんな“エガオ”を浮かべながらも……間は、一瞬。






ただ、“ぞぷり”……と。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 20:55:36.86 ID:96vE9dPDO

そう、ほんの一瞬。
踏み出した瞬間を見切れた者は、後方にいる四人の中には一人も居ない。
鮮やか過ぎる手並みに、制止の声が掛かることすらない。



男「が……はッッ!!!?」



四人の我は、その掠れきった声によって再び取り戻す。
音の発生源は数メートル先。
上条の眼前に存在する男のソレ。

意識した途端、迅速に駆けて行く感覚。尋常ではない痛みが彼を襲う。

上条は貫いた腕をゆっくりと引き戻し、血を吐き出しながら倒れる男を冷たく睨む。
意識を失い最期を迎えた彼に軽く目をやり、唾を吐き棄てる。



上条「次は……テメェらの番だぜぇ?」



くしゃりと顔が歪み、狂笑。
四人を射抜く瞳は……淡い光を放つ。

禍々しい邪悪な黒い色をした『陽炎』が上条の両目に立っていた。
何時もの瞳は、変貌して淡く邪悪な輝きを宿す。
331 :977 [saga]:2011/05/08(日) 20:59:24.06 ID:96vE9dPDO
しゅーりょーです

今回はあるシーンを引用させてもらいました
前回と比べて短いですが…
332 :作者です [sage]:2011/05/08(日) 21:06:39.74 ID:FKRWdJ8+0
乙です。
こちらも参考にしています。
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/08(日) 21:18:56.72 ID:2T2DupQA0
乙!
この>>1の書く上条さんはブチ切れ具合が最高だな
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/08(日) 22:26:03.88 ID:NFgOcMCto
乙!
335 :はっぱ [sage]:2011/05/08(日) 22:32:27.19 ID:DZHlSGvAO
乙です
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 11:57:51.33 ID:sK4as7BEo
一瞬ポルナレフになった
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/05/11(水) 23:29:15.19 ID:pE4+ye3AO
擬音とかの使い方が不自然

グロく見せようとしてるのは分かるけど同じ擬音を何回も使ったり地の文を変に凝った風にしたりすると逆に面白みがなくなる
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/12(木) 21:15:23.70 ID:YKXHQbvAO
さすがやでぇ……



遥か高みにおるでぇ……
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/13(金) 01:29:44.29 ID:tCi9zlVM0
なんとなく話の雰囲気から「助けたと思ったらいつの間にか死んでいた」なんじゃないかと思ったが、違ったか。
340 :977 [saga]:2011/05/15(日) 02:07:42.97 ID:gUGvHzpDO
Q1、このスレの上条さんはどのくらい強いんですか?

A1、未測定。己の目で確かめよ



さて、投下します
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 02:10:04.75 ID:gUGvHzpDO


その時。ようやく駆動鎧を身に包む一人が身体の硬直が解けたらしく、上条の頭に銃口を向けた。

しかし彼は臆さない。
汗の一滴も垂らさず、焦りの色がこれっぽっちも見えない。



上条「なぁ、知ってっか? 相当な訓練を受けたヤツは一発の弾丸程度、いとも簡単に避けれんだぜ?」



“BANG”と。
実験室の虚空に銃声が響く。

学園都市製の銃器と弾丸。
鉄の壁など、ちょっとやそっとの障害ぐらいでは進行の妨げにならない。
破壊力は規模も甚大さもケタが違う。

直撃の場合、命の保障は皆無だ。



上条「まあ? 最近は武道をやってたら、たま〜に躱すヤツもいるみてぇだけどな」



―――それを、彼はいとも簡単に避けた。
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 02:12:30.15 ID:gUGvHzpDO



突き抜けた弾丸は、遙か遠くにある壁へ着弾。
轟音が辺りを奏で、甚だしく砕けて壁を穿った。

引き金を引いた敵が驚愕を露わにする余地も与えないまま、上条はまくし立てる。



上条「大体よぉ、根本的にテメェらは勘違いしてんだよなー」



銃弾が破壊したお陰で飛来してきた、手頃の良い壁の破片を拾い上げる。

一見して視ればただの鉄の塊。
だが、今の彼にとっては凄く役に立つ武器に変貌を遂げる。



上条「人数だと有利だから必然的に自分達の勝利ってかぁ? オイオイ、随分嘗められたもんだな。俺が何年『アイツら』のリーダー務めてたか知った上の口振りか?」



駆動鎧の一人は上条当麻の言葉を取り合わない。
再び銃器の矛先を彼に向けて、標準を合わせる。着弾点は上条の心臓。

「あはっ」と上条は嗤う。
悦しそうに“エガオ”を放つ。
犬歯を剥き出して笑う様は、さながら血に飢えた獣。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 02:15:56.19 ID:gUGvHzpDO

彼は手首を軽く払うように鉄の塊を上空へ放り投げた。



上条「そもそもだ。傍若無人で唯我独尊のプライド高き一位と二位に対して、無能力者の俺に従順してんのは何故か?」



弧を描いて舞った鉄の塊は上がる所まで上がると、重力に従って落下していく。
落下地点は上条の眼前。くるくると空中を慣性の法則で回り続けるソレを彼は―――



上条「至ってシンプルな話さ。アイツらを超越する実力を持ってるだけのコト」



―――『左』の拳で殴り付けた。



刹那。上条当麻の左拳から一筋の閃光が駆動鎧に向かって煌めいた。
数メートルという距離は、音速以上で迫る閃光の前では『無』に等しい。

謂うなれば児戯にさえも乏しいほど。

この程度の隔離は一秒にも満たない時間の間に到達する。
そして尚且つ、その速度に駆動鎧を覆った程度の人間が動体視力で反応できるかと聞かれれば……不可能だ。


故に、




―――ッッ!!!!!!




一筋の閃光は、駆動鎧を貫いた。
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 02:22:15.43 ID:gUGvHzpDO

突き抜ける絢爛たる光は流星の如し。

数秒遅れて室内に爆音が轟く。
縦に地響きが鳴り、ビリビリと空気が震動を起こす。
更に空気中の水分が灼かれ水蒸気が生じる。

爆音の起源は駆動鎧。
丁度中心に閃光が貫通して、間髪容れず爆発が勃発したのだ。
駆動鎧を被った人間は爆発の煽りが完全に消え失せても……姿を現さない。
跡に残ったのは散乱した機械の破片以外、何も無かった。


しかし、残された三人が注目する点はソコではない。
上条当麻から放たれた“一筋の閃光”。閃光の正体は射出された鉄の塊。
それは判る。目視したのは初めてだが、『データ』として見た事があったから。

だけど『データ』は……、



上条「俺の『超電磁砲』だ。ってか、やっちまったなオイ。弾がデカかったか。
   “中身”ごと消炭になっちまってんじゃん。ま、どーでもいいけど」

「貴様、その能力は……ッ!!」



能力者の一人は歯を軋ませて戸惑いの声を上げる。
当然だ。『超電磁砲』と言えば第三位の御坂美琴が所有する必殺技。
音速を超える威力は絶大。電撃使い最強を誇る名は伊達じゃない。

拘わらず、“無能力者”である目の前の男は容易く放って見せた。

この事象に疑問を覚えないはずがない。
困惑して問い掛けてしまうはずだ。
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 03:34:16.76 ID:gUGvHzpDO

それに対して、上条当麻は「あひゃっ」と吹き出す。
あまりにも馬鹿らしい言葉が聞こえた気がして殊の外笑いがこみ上げてしまい、耐えきれなかったのだ。



上条「ハハハハ!! 違う違うそうじゃねーよ」



ひとしきり笑った後、彼はズボンのポケットを探り、指貫タイプのグローブを取り出す。



上条「能力とか演算なんていう“ちっぽけなモン”じゃねぇんだよ。
   『コレ』はそんな底辺に存在する代物じゃない。まず次元が違い過ぎる」



ピッタリに嵌めると、感覚を確かめるように緩慢と拳を作り、再び指を広げて手の平へ。
二回ほど繰り返して、逆の手も同様に拳を作って手の平へ戻す。

作業が終了したのか、上条は不敵な笑みを浮かべる。
邪悪な陽炎が立つ瞳は残された三人を射抜いた。

全員の背筋に鮮明な悪寒が走った。
意識を失ってないのが不思議なくらい、殺意を浴びた。

彼の瞳。その奥。
ギラギラと光る目の淵。
奥の奥の奥の奥の奥から。





―――『何者』かに、睨まれた。





『上条当麻』とは異なる誰か。
睨まれた時間は、ほんの一瞬に過ぎない。
だけどその一瞬の内に恐怖を感じたのは間違いなくて。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 03:35:30.47 ID:gUGvHzpDO



上条「普段は使わねぇけど、特別サービスだ。絶賛特売中だから甘んじて受け取れよッ!!」



体勢を低くして、勢い良く踏み出した。
相対する両者の隔たりは僅か数メートル。

但し『猟犬部隊』の残党は銃器や能力を有していたり、どちらの戦況が有利不利かは明らかである。
……相手が一般の人間ならば。



最後の駆動鎧を覆った人間は即座に銃器を構えて、引き金を引く。
銃器の名称は鋼鉄破り(メタルイーターMX)、『バレットM82A1』。
二千メートル先の戦車を爆破した功績がある対戦車ライフルだ。
それに無理矢理連射機能を追加した鬼畜物。
威力が強大すぎ、安物のヘルメットであれば発射時の反動で粉砕してしまう程。大人でも扱いが難しいと言われている。

そのための駆動鎧。
足りない部分は補い、甚大な反動を吸収する手段を選んで反動を無にする。


連続で銃声が鳴り響き、幾つもの弾丸が絶え間なく射出されていく。
一つ一つの弾が、一撃必殺を誇る刃。
人体に着弾した場合、例え一発でも弾け飛んでしまうだろう。

しかしながら上条当麻という人間は、




上条「―――遅ぇよ。ドコ狙ってやがんだ?」




それを、すり抜けてしまうのだ。
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 03:37:56.10 ID:gUGvHzpDO

無尽蔵に発砲する中、上条にとっては障害にもならない。
あっという間に駆動鎧の懐へ潜り込んだ彼は、強く左手で拳を作る。

拳を放つ直前、不敵な笑みを浮かべてこう呟いた。






上条「……“すごいパーンチ”」






告げ終えると、駆動鎧の胴部に下から上へ掬うように拳を振り上げる。
機械の鎧だ。力の限り殴打すれば骨が砕ける事すら否めない。

故に―――けたたましい音が響いた。
しかし上条当麻の拳からではない。殴打した駆動鎧の胴部からだ。
まるで空のペットボトルを握り潰したように変形する。

だがそれも一瞬。

突然、駆動鎧はおびただしい速度で奥の壁まで突っ込んでいった。
壁が砕ける破壊音が轟く。

能力者の一人が血相を変えて目で追うと、駆動鎧『だった物』が転がっていた。
もはやスクラップ状に結末を終えた成れの果てとしか思えない。



上条「オラ、まだ終わってねぇぞ」



―――そして上条当麻の戦法で一番恐ろしい点は、気付かないうちに目と鼻の先まで接近する事だ。
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 03:39:47.38 ID:gUGvHzpDO



振り抜かれた『右手』の拳は確実に能力者の一人の顔面を捉えた。
頬に向かって渾身の一撃を打つ。

意識が削がれ、沈んでいくヤツを目に上条は攻撃の手を止めない。
腰に手を回し、拳銃を掴んで銃口を定める。……その時、



「う、動くな……っ!」



心の中で舌打ち。
イイ気分で済ませていたのに、邪魔されて苛立ったからだ。

拳銃を構えたまま視線だけを動かして一瞥。
腕を震わせながらも手を翳して、完全に怖じ気づいた最後の一人になった能力者の姿があった。

上条当麻は口角を吊り上げる。



上条「お前は、“能力を使えない”」

「っ、なな、何言って―――」

上条「これは明言さ。“動くことすら出来ねぇ”よ」



瞳の色は絶対的な自信の色。
何もかもを見透かすような眼差し。
その全てが怖ろしくて堪らない。
その全てが闇の深さを象徴しているみたいで仕方無かった。

尚且つ圧倒的な威圧感や存在感が、能力者の余裕を押し潰す。
伴って腕の震えが激しさを増す。


そして何より―――能力が使えないコトに、畏怖を感じる。


演算も終了している。
寸分の狂いも無いはずだ。
いつ発動しても変ではない。

早くしてくれ。
時間は限りなく少ないんだ。
相手はソコまで寛大な心を持つ人間じゃない。

早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く―――ッ!!
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 03:48:13.99 ID:gUGvHzpDO



上条「使えねぇだろ? 動けねぇだろ?」



くくくっ、と喉を鳴らして笑う。

彼は拳銃を仕舞って緩慢と足を運ばせ、近付いてくる。
一歩。また一歩。
着実に二人の距離は縮む。
踏み出す度に辺りを奏でる足音が、己の死へのカウントダウンに聞こえなくて。



「う……あ……」



逃げたくて。
逃げたくて逃げたくて。

無様でもいい。
情けなくてもいい。
みっともなくてもいい。

ただ、生きたい。

どんなに滑稽でも。
どんなに嘲笑されても。

ひたすらに生きたいだけ。


なのに―――足が動かなくて。



上条「ほら……“闇に堕ちろ”よ」



視界が霞む。思考が働かない。
全部の機能が失われていく。

視覚が。聴覚が。嗅覚が。味覚が。触覚が。感覚も全て。



     落
        ち
           て
              。
          堕
      ち
   て

    落
       ち
           て
              い
            く
         。
     堕
 ち
        て
             い
          く
       。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 03:48:56.66 ID:gUGvHzpDO








       闇
       に
       堕
       ち
       て
       い
       く
       。
351 :977 [saga]:2011/05/15(日) 03:54:26.99 ID:gUGvHzpDO
投下しゅーりょーです

あっぶねぇぇぇ…
一瞬寝てしまった←←

見てた人ごめんなさい



そしてー


Q2、上条さんは一体何の能力者ですか?

A2、のちのちと。ちなみにレベル5の能力は『三回』使いました
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/15(日) 03:56:04.96 ID:9i/IElyP0
上条無双乙
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2011/05/15(日) 03:58:08.04 ID:LdR/ljal0


そぎーと御坂となんだ??
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 03:58:09.22 ID:qVFELbCbo
乙!
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 04:04:07.49 ID:7wXNM0Z2o
闇条さんKAKKEEEEEEEE!!!!!
続きが超気になる!乙でした!!
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 06:15:53.53 ID:Vjfi5vuSO
>>353

心理掌握じゃね?
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/15(日) 09:03:13.24 ID:dpLP0BCAO
レベル5、しかも詳細不明な軍覇の能力も使用可能だと…
多分制限もあるだろうが、なんというチート
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 09:25:23.51 ID:99LRnwllo
心理掌握って何か限定条件なきゃ最強すぎるよね
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) :2011/05/15(日) 10:18:57.05 ID:bnovmwwAO
相変わらずの誤用っぷりにわろた
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/05/15(日) 10:55:15.16 ID:2hGTrm+AO
面白いんだけどなんか読みづらい
名詞で切るべきとこじゃないのに切っちゃってるし
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 11:17:10.08 ID:OY9xLSEDO
俺定額歴だから読んでて何がおかしいのか分からない
ただ面白いという事だけ分かる
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 12:03:36.83 ID:NslZQ2BIO
失礼なんだろうとは思うがおれは脳内で読みやすい様に変換してる
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/15(日) 12:43:29.22 ID:pDrwp77bo
そういう文体だと割り切って読んでる
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 13:24:08.64 ID:VK36C7Oa0
なんていうか上条さんじゃなくてもいいような。面白いけど
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 13:33:26.89 ID:NhRnFB8to
>>363
現状容姿以外はほぼ全とっかえだしな
まあそのうち上条さんらしい地金がみえてくるかも

木原くンが乗り移っていって笑ったww
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 13:34:15.36 ID:NhRnFB8to
↑安価ミス。>>364

あと忘れてた。乙!
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 14:29:05.95 ID:F57h/m0F0
右手は、幻想殺し 左手は、幻想殺しで今まで消した異能の力を使うことができる力か?
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/15(日) 14:39:26.32 ID:pDrwp77bo
それだとあまりにも強すぎないか?

打ち消した回数だけ行使できる、とか。
せめて、回数制限を。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/15(日) 16:26:33.38 ID:jH0nSLVEo
多分、回数制限あるから『3回』って回数書いたんじゃないか?

それにしても面白い。
乙!
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/05/15(日) 21:29:18.90 ID:CzWR1mqJ0
>>345で上条さんの声が阿部さんじゃなくて藤原さんボイスに変換されたんだが
371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 21:39:03.97 ID:dQ0GzvlV0
>>370
俺は野原ヒロシボイスで再生された
372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2011/05/15(日) 21:40:14.03 ID:85z+YKmF0
>>345で睨んだ「何か」ってやっぱり中条さんなのか
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/05/15(日) 21:41:46.08 ID:YukUBwJF0
>>370
どうでもいいけど俺の名字藤原なんだぜ

乙。俺は特に違和感感じなかったぞ
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 21:44:05.81 ID:qDMqH5lzo
乙!

木ィィィィィィィィィイ原くゥゥゥゥゥゥゥゥゥウン!は一方通行に嬲り殺された後上条さんに乗り移りましたwww
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 00:25:53.53 ID:UPZOzy3po
むしろ、上条さんが木ィィィィィィィィィイ原くゥゥゥゥゥゥゥゥゥウン!を吸収してるような...
まさか他のLevel5も!?
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/16(月) 20:30:54.09 ID:nXF9ZHWIO
面白いSS書いてるんだからもっと丁寧に書け。もったいない
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 04:15:45.68 ID:nrRn0rfjo
☆に体弄られて上条さんがチート条になっちゃったw
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 16:31:21.83 ID:wgJRC1MIO
これだけ面白いと同時に、これだけ文章の下手なSSは珍しいwww
せめて形容詞、名詞、動詞は理解した上で書いてくれwww
面白いのに途中で残念な気持ちになるわ

とはいえ、なんか最初のころに比べたら誤用減った気がする
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/17(火) 18:22:22.65 ID:e693wsUIO
別にそんな気にすることでもなくない?
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/05/17(火) 18:29:02.73 ID:/Qkia+6Xo
気になったら、脳内変換で乗り切ろう
381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/05/18(水) 14:08:00.49 ID:xkP7eGBAO
ていとうこ君まだ〜
AA略
382 :977 [saga]:2011/05/21(土) 09:50:16.92 ID:IXtN0zRDO
Q3、語句の誤用について多々コメントがございますが、どのように思いますか?

A3、改善は試みていますが、不快なら見ないことを勧めます
   所詮977ですからね、期待はしちゃダメです。文章力も上がらなければクオリティも上がらないでしょうし



では投下しまーす
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 09:53:20.43 ID:IXtN0zRDO


目の前に広がる光景は真っ白な天井だった。

朦朧とした意識の中で覚醒していく思考に浮かぶのは、疑問の一言。
視界を覆い尽くす白い天井は生涯で初体験とも言える情景。
まさかマジマジと『白』だけを見つめる日が来るとは誰が予想しただろう。
だがしかし寝起きでこんな下らない事を真剣に考えてふけるというのも変な話。

彼女……御坂美琴が眠りから覚めた瞬間である。



美琴(私……)



―――なにしてたんだっけ?


頭の中で何回も反芻される文字。
何度も何度も呟いて、されども答えは浮かび上がって来ない。

過去を振り返ろう。
悩んでばかりでは仕方ない。
こういう場合は発想の転換が必要なのだ。
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 09:55:41.20 ID:IXtN0zRDO

記憶が断片的で途切れていたり曖昧だったりするが、確か昔の夢を彷徨っていた気がする。
上条当麻との出会いから現在の経緯まで走馬灯のように振り返って、必死に彼の背中を追いかけていた。

届かないと思っていた背中。
並べられないと甘受した肩。
遠過ぎた存在に挫折を感じざるおえなかった。


けど。―――その幾重たる努力の積み重ねが、全て報われる瞬間が訪れたのを噛み締める。


掴んだんだ。彼の手を。
届いたんだ。彼の背中に。
並べたんだ。彼の肩と。

あの穏やかな微笑みを絶対に忘れない。
一瞬でも見せた優しい雰囲気を嘘とは言わせない。



「気が付いたかい?」



意識外から突然、自分ではない誰かの声が耳に届く。
よって思考は当然ながら中断。
少々不満が残るが、僅かな時間でも八割ほど思い出すことが出来たので及第点。
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 09:57:49.39 ID:IXtN0zRDO
上体は起こさずに顔だけ声の方へ向けると、白衣を羽織った医者が扉の前に立っていた。

しかし、御坂美琴の現在の脳内状況はそれどころじゃない。
正確に言えばそれどころじゃなくなった。

彼女の視線はただ一点に注がれる。
今まさに瞳からは『キュピーン』と響きそうな有様。



冥土帰し「……ふむ。異常は無さそうだね? あの少年が連れて来たもんだから当初はどんな患者かと身構えていたけど、特に何事も無く済んで良かったよ」



そこで彼女はハッとする。「あの少年」というキーワードに冷静さを取り戻して思考が復活したのだ。
もし頭の隅をよぎった少年ならば、また新たに彼の事情を知る人物が現れたことになる。

しかも相当彼の性質を熟知している口振り。
美琴が何もせずに黙っていられるはずがない。



美琴「あの、少年って……?」

冥土帰し「おや、君はあの少年と幼馴染みだと聞いてるんだがね。違ったかな?」



疑心が確信へと変わる。
幼馴染みはこの世に一人しか居ない。

ついさっき自分の中で話題に上った最も愛する人―――上条当麻。
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 10:01:42.65 ID:IXtN0zRDO



美琴「当麻のこと……知ってるんですか?」

冥土帰し「知ってるも何も、彼はここの常連さんだからね。これでも相当『彼の事情』を知ってるつもりさ。三年ほど前から、ね」

美琴「三年前……!」



―――三年前。ちょうど上条当麻が行方をくらました時。



美琴「お願い、です。当麻の……当麻の何を知っているんですか!? 教えて下さい! お願いします!!」



美琴はゆっくりと上体を起こして、ベッドから身を乗り出してすがるような勢いで懇願する。
“常盤台の『超電磁砲』”なんていうプライドは投げ棄て、頭を下げた。

確かに自分は上条当麻の背中に手が届き、肩を並べたかもしれない。
けれど、それは彼が後ろに振り向いて自分に手を差し伸べたに過ぎないのだ。
未熟で無知な己への情け。上条にそんなつもりは更々無いだろう……が。
現実問題として考えれば自分が『上条当麻』という人間と肩を並べるなど到底ありえないのだから。


実際、彼を変える切っ掛けとなる“中学一年生時代の一ヶ月間”を知らない。


居場所。
何が起きたか。
どういう理由で。
秘匿されていた訳。

一から十まで全部。
何も知らされず、何も教えられず。無知なまま過ごしてきた。
親族ならまだしも幼馴染みの間柄だけで事情を知ろうなんて、差し出がましいかもしれない。


だけど! そうだとしても!


やはり知りたいのだ。
一ヶ月という空白の時間を理解してようやく同等なのだ。
その上で……彼が担っている負担を軽くやりたいのだ。

どれほどの深い底だとしても。
例え奈落の底に堕ちていても。
引き上げてみせる。絶対に。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 10:05:34.95 ID:IXtN0zRDO



冥土帰し「…………そうか」



彼女が何度も懇願を繰り返し頭を下げる姿を冥土帰しは黙って耳を傾けていた。
しばらく続いて沈黙が訪れた時、閉ざしていた重く固い貝のような唇を開ける。
それとは対極に瞼が深く考え込み思考にふけるように閉ざされていく。



冥土帰し「彼は君でさえ、事情を話していないんだね……」



口振りは何処か「やはり」といった、まるで予想が付いてたと言わんばかりの話し方。
医者の物言いに違和感を感じた美琴は顔を上げる。

しかし既に冥土帰しの姿は無くて、この部屋にある窓ガラスに歩み出していた。



冥土帰し「残念だけど僕が知ってる限りの情報は教えられないんだ。僕から述べても意味はないからね」



空を見上げて雲を眺める。
思い描くのは今もなお学園都市を目標も無いのに放浪し続ける上条当麻。



冥土帰し「彼は君に対して散々酷い事を言っただろうね? でも悪く思わないでほしい。彼とて本意では無いだろうからね」

美琴「じ、じゃあせめて! 何で当麻はあんなに変わっただけでも―――」

冥土帰し「何を言っているんだい?」



言葉を遮った冥土帰しは雲を眺めるのを止め、振り返って美琴に視線を移す。
潤んだ瞳。今にも涙が零れ落ちそうなほど目尻に溜まっていた。
上条当麻を心の底から心配した人間だからこそ出せる涙であり表情だった。

その有様に優しげな微笑みを浮かべると、一言一言噛み締めるように述べる。



冥土帰し「彼は何一つ変わってないよ。これは確信を持って言えるね」



―――そのセリフがあまりにも衝撃的で、動けなかった。
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 10:09:01.42 ID:IXtN0zRDO


あんなに優しかった人が何事も突き放して、冷たく変わり果ててしまったのに?
ガラリと別人みたいに一変してしまった人が『何一つ』として変わってない?


何で判るの? と問い掛けたかった。
ありえない! と反論を叩きたかった。


でも……言えなかった。
喉まで来ていた問い掛けや反論は声になる一歩寸前のところで飲み込んだ。
それは例え反論ではなくて同意だとしても、どんな言葉が浮かぼうとも声に出す事は許されなかっただろう。



だって―――この人は嘘を付いていないのだから。



微笑みを未だに自分へ放つ医者は全く偽りない事実を明言してることを物語っている。
目の前にいる人物は幾度に渡って、肉体的にも精神的にも重い病気を患った患者を診てきたはずだ。
だからどんな言葉を掛けたら患者が不安がるとか、どんな顔をすれば安心感を覚えるとか、この人は知り尽くしている。

故、こんなに優しく微笑んで心を穏やかにしてくれる人が自分に虚言を吐くわけない。
見つめる眼差しが作為を施した絵空事なわけない。



冥土帰し「それに僕はあれほど人間らしい人間を見たことがないよ。今回の件に関しても、あの少年のおかげで君は脳に何の後遺症は残らずに済んだ。もはや奇跡だね?」



「むしろ」と区切って、再び窓へ体を向ける。
今度は見上げないで病院の玄関前へと視線を下ろした。
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 10:11:59.29 ID:IXtN0zRDO



冥土帰し「彼の方が重傷だね。放っておけないくらいに」



―――今日二回目となる衝撃を御坂美琴は受ける。

どういう事か声を荒げて問いただす直前、冥土帰しが半歩横に移動して美琴を見た。
“こちらにおいで”と促しているのだ。半歩横にズレたのは隙間を作るため。

そして彼女は気付く。
何故空を仰がず冥土帰しは玄関前を見下ろしたのか、必ず意味が存在するのだ。



美琴「当麻……!」



例えば―――その玄関前に上条当麻が居たりするとか。



覚束ない足取り。何度もふらついて、今にも倒れそうである。
ときおり右手で頭を押さえて立ち止まり休憩。この動作を一通り繰り返す。

とても頼りない状態を目にして、美琴は助けに行きたい衝動に駆られた。



冥土帰し「行ってあげたらどうだい?」

美琴「え……い、いいんですか?」

冥土帰し「勿論だとも。むしろ行ってあげてくれ、彼のためにも」

美琴「―――はいっ!」



踵を返し、パタパタとスリッパが音を立てながらこの部屋を去っていく。
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 10:15:03.41 ID:IXtN0zRDO
完全に美琴の姿が消えて辺りが無音で占めるなか、冥土帰しは声に出さず心の中で思う。



冥土帰し(……どうやら、『アレ』を使ったようだね)



『アレ』……上条当麻の『左手』を指す。



冥土帰し(行使は控えるように釘を刺しているんだけどね……無理もないか)



己の知りうる医学をもってしても解明することの出来ない彼の『左手』。
何の能力かもレベルも詳細は一切不明。『左手』に関する全ての情報は明かされていない。

但し、上条自身は『左手』についてキーを掴んでいる素振りを見せた事も確か。



冥土帰し(それに……)



チラリと玄関前を一瞥。そこには走って上条を追い掛ける御坂美琴の姿。



冥土帰し(脳波の数値が『今も』異常だったにも拘わらず、彼女はこうして元気に居られる……不思議なことが多いね)



一般常識を語るならば美琴の脳波は現在も異常で、昏睡状態に陥ってもオカシくないレベル。
なのに彼女は至って健康体で走れるほど。何か“裏”があるのではと訝しむのも当然と言える。
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/21(土) 10:16:56.02 ID:IXtN0zRDO



冥土帰し(けれどまあ)



―――今は良いんじゃないかと冥土帰しは思う。



彼女が走る姿。
非常に健気だと感嘆する。
きっと今までもあんな風に彼の背中を追ってきたのだろう。
冷たく突き放されても諦めずに過ごしてきたに違いない。
おそらく誰よりも上条当麻の側に居て、誰よりも長く時間を共にしたはずだ。

願おう。そんな彼らの平和を。

いつまでも平穏に暮らして。
何事もなく過ごせる日々を。
心の底から願い続けよう。






―――現在、7月19日。
392 :977 [saga]:2011/05/21(土) 10:28:29.80 ID:IXtN0zRDO
しゅーりょーです


グダグダがスゴいですねorz


そしてー


Q4、他のメンバーの出る率が低いようですが?

A4、これでいいんです。どんどん増えていきます
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 10:29:34.80 ID:5YpRRraIO
乙!健気な美琴可愛いな
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/21(土) 12:50:10.25 ID:iX23V9on0
まさか脳の負担の代わりをしてるのか?
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/05/21(土) 13:23:13.37 ID:lF2snKmAO
直死の魔眼と同類とみた たぶんだけど自分が見て右手で触って経験したことある能力なら脳をフルに使って演算して左手から放出 する能力じゃなかろうか…
右手で触るだけじゃ意味ないはずだし

でないと昏睡までいかないと思われ
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/05/21(土) 15:48:57.21 ID:Zoye0xzro
てか何で上条さんソギー知ってんだろうなあ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/21(土) 17:29:20.44 ID:9NBSJovuo
神の左手悪魔の右手
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/21(土) 21:51:32.65 ID:cTM9O5XV0
やっぱりどのSSでもカエルさんはカッコいいな
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 02:24:37.31 ID:e5oA98G+0
これって上条さんていうか俺条さんだな。
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/22(日) 21:31:08.80 ID:k9YyL7GDO
アウレオルス(通称ヘタ錬)編の時の上条さんを想像した

イメージとしてはそんな感じかな
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) :2011/05/26(木) 17:28:49.15 ID:GK0I8V4j0
これ上琴期待していい
402 :977 [saga]:2011/05/28(土) 10:50:05.53 ID:3gymAq1DO


短いですが、投下します
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 10:51:53.96 ID:3gymAq1DO


公園。とある高校生が通学路として頻繁に訪れる何の変哲もない場所。
自販機の隣にあるベンチに腰を落とすのは、周りから一際目立つ金髪コンビ。

片やホストのような男。
片や不良のような男。



垣根「“二万通りの戦闘でレベル6にシフトアップ”ってか……随分と安上りじゃん」

浜面「…………」

垣根「世の馬鹿共が食い付いてきそうな三流店舗のキャッチフレーズみてぇだな浜づ……オイ?」

浜面「……zzzzz」

垣根「アホ面晒して寝てんじゃねーよ!」



天誅!! と言わんばかりに手に持っていた資料で浜面の額を強めに叩く。
小気味よい音が響いて、資料の下からは苦痛の呻き声が漏れた。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 10:53:14.30 ID:3gymAq1DO

至極億劫そうに顔面に押し付けられている資料をどかすと、まだ少し眠いのか、豪快なあくびをした。



垣根「オハヨウ浜面君。目覚ましレベル1の効果はどうかな?」

浜面「……嫌な予感しかしねぇけど……1って事は上があるのか?」

垣根「その通り! 正解者の君には特別サービスで『目覚ましwith未元物質』をプレゼント!!
   ―――これでも喰らって怠けた体を起こしやがれぇ!!」

浜面「だろうと思ったよちっくしょー!! 大体、徹夜で仕事だったんだからちょっとは寝かせろーッ!!」



空中の至る所から野球ボールの大きさをした青色の球が出現。
そよそよと浮かぶソレは『水の塊』。空気中の水分を未元物質が手を加える事によって起こる現象。

背筋にゾクッ!! と悪寒が走るのを浜面は感じ取った。
もはや無意識だが、とっさに前方へ飛び跳ねて転がり込む。
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 10:56:04.84 ID:3gymAq1DO

そして間髪を容れず浜面に向かって水の塊は飛来する。
着弾点はベンチ。妨げもなく進行していた水の塊がベンチに触れた途端―――弾けた。
まるで浴槽をひっくり返したかのような質量の水がベンチを襲う。



浜面「こんな所でガチとか馬鹿じゃねぇのォォォォおおおおおおおッ!!!?」

垣根「ハッハー!! 俺に常識が通用すると思ってんのかあ?!」



彼らが繰り広げるのは全力逃走という名の鬼ごっこ。
但し、気絶レベルの攻撃を一方的に放つ垣根に対して、抵抗の余地すら与えてくれない現状に浜面は全速力で逃げて嘆くばかり。
もはや両者ともども当初の目的を忘れているのは言うまでもない。




―――15分後。




垣根「チッ、逃げ足だけは早いんだよなアイツ」



公園のベンチから街路へステージは変わる。
瞳をこらして周りを注意深く見渡すが……見当らない。どうやら人混みに紛れ込んだらしい。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 10:58:28.82 ID:3gymAq1DO

浜面は一度でも姿を見失えば捜し当てる事は不可能に等しい。
さすがは現役のスキルアウト。
街の地図を暗記しているので、区域ごとに逃走経路の見出す方向を知り尽くしている。
おそらく次に遭遇する場面は、大抵翌日とかリーダーから収集が掛った時。

垣根はもう一回大きく舌打ちを鳴らし、頭をガシガシと乱暴に掻く。



垣根「……俺を一人にしやがって。明日アイツの飯にタバスコぶっかけて悶え苦しませてやる」



拗ねるように吐き棄てる。
大半は自業自得なのだが、自覚がところ垣根らしい。

ある一部の人達から見れば今の彼の姿は驚愕もの。
笑みを浮かべることすら無い……クールで頼れる存在だと慕われていた。
しかし現在は、イタズラが大好きそうな笑みを放ち優しいオーラを纏う少年。

過去を知る者からすればギャップの差違に驚きを隠せないだろう。
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:00:05.16 ID:3gymAq1DO






「リーダー……?」






―――故に。






垣根「ぁん? ……お前」






―――『彼女』は垣根を見て驚いた。






心理定規「久しぶりね。また会えて嬉しいわ」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:05:08.01 ID:3gymAq1DO




―――――――――――――――




路地裏。普段人気が少ない通りで、スキルアウトが集まる無法地帯。
光が差し込まない暗い道で一際目立つ人物が一人。

色素が無い真っ白い髪。
雪のように透き通る白い肌。
鋭い目筋の奥に宿る赤い瞳。



一方通行「―――なるほどなァ。たとえ俺が実験を拒ンでも強制イベントだったってわけかよ。
     優先順位の基準がトチ狂ってやがる。まァ今更かもしンねェが」



一方通行と相対するのはゴーグルを装着した少女。
手には身長に似合わない強大な銃器を携えている。

少女とは初対面だ。
けれども初対面ではない。

ただ外見は何度も目撃したことがあって、中身が全く別物なだけの極めて単純明快な話。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:08:24.10 ID:3gymAq1DO



「言葉の意味を理解しかねます。それはミサカに対する愚痴ですか? とミサカは健気に問い掛けてみます」



『ミサカ』と名乗った。

少女は御坂美琴と瓜二つ。双子と言われても違和感がないくらいそっくりである。
それもそうだろう―――少女は御坂美琴のクローン体なのだから。



一方通行「ンなシケたもンじゃねェよ。単なる悪態さ。学園都市上層部の連中どもの先行きがな……」



ぐったりした様子で盛大に溜息を吐く。

一瞬、理解ができず頭を傾げた少女だが無意味と悟ったのか、取り合わないように銃器を両手で構えて銃口を一方通行に向けた。



00001号「そうですか。では第一次実験を開始します。とミサカは催促させます」
410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:09:57.78 ID:3gymAq1DO




―――――――――――――――




浜面「なんとか、撒いたな……」



肩を上下に揺らして息切れするもどうにか追っ手から逃れたことを知り、浜面は安堵の息を漏らした。
額から流れた汗を拭って辺りに注意を巡らせ、警戒心を解かない。
垣根のことだ。急に姿を現してもオカシくはない。



浜面(むしろ空から降って来て奇襲かけてきそうだもんな)



ありえなくはない話だから恐ろしい。
僅かに背筋が凍るように震え上がった。
411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:14:23.49 ID:3gymAq1DO



浜面「うわー……冗談に聞こえないのがすげぇよ」



感嘆したと同時に頭を振って邪念を取り払う。



浜面「やめだやめだ! 第一そんなこと言い出したらキリ無いしな」

「何がだ?」

浜面「うおぉぅっ!?」



背後から前触れもなく声が掛られて、ビックゥ!! と飛び上がってしまった。
しかも思いの外驚いたらしく訳の判らない素っ頓狂な声を上げるしまつ。


つい反射で身構えたが、その構えはすぐ解かれる。
声をかけた人物が垣根ではなくて自分の知り合いだったからだ。
……いや、『知り合い』程度では済まない。上条と出会う前はよく三人で連んでバカ騒ぎしたものだ。
時にはアンチスキルの皆さんにお世話になって(特に緑のジャージを着た巨乳教師)、それはそれは掛け替えのない日々の連続。

現在も第七学区のスキルアウトを取り纏めるリーダー。



浜面「―――駒場!」

駒場「……元気そうで何よりだ」



駒場利徳。服部半蔵を含めた三人で過ごした仲間。
412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:22:37.25 ID:3gymAq1DO




―――――――――――――――




今日はいつも以上に不幸な日だと上条当麻は思う。


昨晩。休暇なのにも拘わらず“仕事”が入ってメンバーを収集。
全員しぶしぶ承知して、いざ取り掛ればこれがまた厄介な内容だったことを知る。
結果的に仕事の収拾がついたのは小鳥のさえずりが聞こえ始めたころだった。

垣根は何故かテンション上昇中で、眠たくて仕方ない浜面を引っ張っていき退場。
一方通行は缶コーヒーを買いに行ってから帰宅するらしく、いつものコンビニに足を運んだ。

そこでタイミングを見計らったように掛ってきた電話が、上条の眉間のしわを寄せるものだった。
『上条ちゃーん馬鹿だから補習ですー♪』と。
上条が通う高校のクラスの担任で不老不死という噂の持ち主、月詠小萌。

無言で露骨に嫌な顔を表現していたら、『今スゴく嫌な顔をしてますねー?』と付け加えてきた。



上条(……美琴といい先生といい、何でこう人の行動を読むんだ。俺ってそんな単純?)



思考で疑問を浮かべつつ布団を両手で抱え、ベランダに向かう。
413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:24:29.43 ID:3gymAq1DO
何やら停電が起きたらしくて洗濯するのは不可能なので、せめて布団を干す選択に。
今日の天気は快晴日和という『布団を干すには持ってこい!』と言わんばかりの晴れっぷり。
太陽が差す光線があまりにも眩しい。



上条「雨が降る可能性も否めねーよなぁ」



今日はあくまで“普段以上に不幸な日”だ。
確証は無い。言ってもただの直感。
信憑性なんてあるわけがない……が。




上条「…………」

少女「…………」




―――目の前で白い修道服を着た少女を見たら、あながち間違ってはない気もすると上条はから思う。
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/28(土) 11:27:42.88 ID:3gymAq1DO





少女「……ぉなか」





ベランダに干されていた少女は小さく呟いた。
顔を上げて上条を見ると、縋るような可愛らしい瞳で告げる。




少女「おなか減った」

上条「……はあ?」




結構本気で漏らした心底の声だったりする。





―――7月20日。これが少女と上条との出会いであり、歯車が動き出す瞬間だった。
415 :977 [saga]:2011/05/28(土) 11:33:20.69 ID:3gymAq1DO
しゅーりょーです

ではでは
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 11:40:04.00 ID:JjdUWjM40
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 12:17:24.44 ID:32DnFa7ho
色々と始まりまくったな
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/28(土) 12:19:30.17 ID:VmQJM2jqo
なに…?記憶破壊フラグだと…?

そんな鬱フラグそげぶしてやる乙!
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/05/28(土) 12:47:01.51 ID:QUjlG4og0
原作の記憶破壊って御坂にはダメージ少ないけど……
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/05/28(土) 13:22:24.39 ID:o9iacvCAO
インさんのイメージは
ヒロインの一人<記憶の破壊者な感じなのか?


てか魔術サイド入るんだな……作者が大変そうだ
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/05/28(土) 13:24:08.37 ID:Uy9yk6WAO
超展開キタコレ
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 14:01:45.44 ID:kluSsYXJ0
魔術サイド難しいだろう
まあ期待してる
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/28(土) 16:18:26.08 ID:X4M1tt9P0
あれ?…あれ??どゆこと??
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/05/28(土) 19:46:18.05 ID:RaB7qumr0
あかにわらゅオさはなみなたまソあかあたなイ
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/05/28(土) 21:16:24.48 ID:FEHRf32AO
ステイルも神裂さんも殺されそうで怖い
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/28(土) 23:45:30.17 ID:/PbPgL6ko
インさん出た瞬間残念感が…
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/29(日) 00:53:53.26 ID:Xhz4YltY0
うおおおおお心理たん!心理たんではないか!!!
428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/29(日) 03:00:54.28 ID:+LDGj1wRo
原作上条さんは執着してるけど第三者から見ると疫病神ということが良く分かった
429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 10:25:43.85 ID:SBKPYV+So
ステイルマジで殺されんぞ
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/29(日) 11:39:11.96 ID:ntTwlBo30
つか、上条さんの記憶消えたら他のメンバーどうするんだ。
原作通りに垣根はスクール、一方通行はグループ、浜面はスキルアウトorアイテムに行くことになるのか?
上条さんの記憶戻す手段を探すために。

あと、もし記憶喪失した場合それを美琴が知ったら、美琴も暗部落ちしそうで怖い。
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/29(日) 15:36:58.60 ID:ZqKGTESA0
美琴はしばらく出番なしで
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/01(水) 14:10:33.62 ID:vE3NxUY30
ステイルさんと神裂さんのご冥福をお祈りします
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/06/03(金) 23:42:10.70 ID:2nr/RH/AO
上条(悪)
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/06/03(金) 23:42:41.11 ID:2nr/RH/AO
上条(悪)
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/06/04(土) 13:45:34.05 ID:JrmP+GG4o
懐かしいな。
最強の上条さん
436 :977 [saga]:2011/06/05(日) 02:15:17.36 ID:G+oluWhDO
投下していきまーす

何気に魔術サイドは難しいけれど好きだったりするので、書いてて楽しいです
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 02:22:39.25 ID:G+oluWhDO



少女「おなか減ったって言ってるんだよ?」

上条「…………」

少女「おなか一杯ご飯を食べさせてくれると嬉しいな♪」



にっこり微笑んで懇願した。
残念ながらベランダに干されて吐く場面ではないし、セリフでもない。
端から見たら奇妙なことこの上ない光景である。

故に絶対関わりたくないと思った上条当麻は以下の行動を取る。



上条「……」



ベランダに繋がる窓を閉めて、



上条「……」



鍵を閉めて完全にシャットアウトした。
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 02:26:14.99 ID:G+oluWhDO



上条「良し」

少女「待つんだよ! 全っ然良くないかも!! この仕打ちあんまりじゃないかなっ!?」

上条「うるせー。帰れ」

少女「こんないたいけな女の子を放っておいて、しかも締め出すなんて酷すぎるかも!」

上条「黙れ。帰れ」

少女「君には迷える子羊を助けようって気はないのかな!?」

上条「帰れ」

少女「むぅぅぅぅうううううううううううう!!!!」



干された状態から身を乗り出して窓をドンドン! と強めに叩くシスター。
必死に救命を求めるも、上条の心は至って閉めきったままだ。

その時、ぐぅ〜と少女のお腹が鳴る。
窓越しからでも聞こえた音は少女がいかに食欲に飢えているかを露呈していた。
体に力が入らなくなったのか、ヘナヘナと崩れ落ちる。



少女「せ、せめてご飯だけでもぉ……」

上条「……はぁ。ったく」



肩を落として溜息を吐く。
窓の鍵を開けると、踵を返してキッチンへと向かった。

少女はすぐに上条の意図を理解し、目を輝かせるほど満面の笑みを浮かべてピョンピョン跳ねながら部屋に入る。
内心、実は良い人なのかも? と少女は考えたがご飯が優先的に上なので、すぐさま除外。
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 02:29:20.63 ID:G+oluWhDO



上条「何でこうなっちまったかなー……」



あぐらをかいた膝に肩肘立ててドコとなく彼は呟いた。
目の前では山盛りの野菜炒めをガツガツとひたすら口内へ放り込む少女。
まるで大食い競争の出場者並みの食いっぷりに呆れてものも言えない。
一体その小柄な体のドコに入るというのか。人体の神秘に近いものを見ているかもしれない。



上条「……で? テメェはなんでベランダに引っ掛かってたわけ? あれか、自殺未遂者か?」

少女「もしそうだとしたら豪快すぎる飛び降り方かも」

上条「そりゃそうだわな。正論だ」

少女「マンションを飛び移ろうとして失敗したんだよ。体勢を崩されたのがいけなかったのかも」

上条「馬鹿だろお前」

少女「……君の言葉ってなんだかスゴく胸にくるかも。感情がこもってないから余計に」

上条「どーも。誉め言葉にしか聞こえねえな」


少女「むー……」
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 02:31:04.80 ID:G+oluWhDO



頬を膨らませて腑に落ちないことを少女は示す。
一見すれば可愛らしい姿かもしれないが、盛りに盛った野菜を平らげる大食いと考えてしまえば『可愛らしさ』なんてひと欠片もない。



少女「そもそも私が悪いんじゃないもん。背中を撃たれたから体勢が崩れちゃったんだもん」

上条「はあ? 撃たれただあ?」

少女「うん。追われてるからね」

上条「…………へー」



つまんなそうに。
興味なさそうに。
どうでもいいように。

考えるわけでも思いふけるわけでも心配をかけるわけでもなく。
膝に肩肘立てたままの状態で、ただ、無表情で呟いた。



少女「むぅ。そこまで興味なさそうにされると、知ってほしい事情じゃないのに悔しいんだよ……」

上条「だって実際その通りだからな。面倒ごとはあんまし関わりたくねーんだ」



『第一、俺じゃあるまいし』という言葉は心に留めておく。
必要のない事柄は言わない方が得策だ。
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 02:33:46.46 ID:G+oluWhDO
更に言うならば余計な詮索や関わりを持つのもしない方がいいのだが、



上条「……」



チラッ、と窓から見える外を一瞥。



上条「―――既に遅いのかもしんないけどな」

少女「みゅ? なにか言った?」

上条「いんや、何も」



まぶたを閉じて深く思考にふけるのを中断。
もはや遅いかもしれないが、本当の意味で関わってしまったのならば臨機応変に対応すればいいだけの話。
『あっち』にその気があるかどうかの事になるとまた別問題になるが……。

けれど、今判ることは一つ。



上条(どうやら、コイツが追われてるってのは本当らしいな)

少女「あ! 自己紹介がまだったね!」



見事に余すことなく完食し終えた少女は両手の平を合わせると、目をキラキラ輝かせながら上条に詰め寄ってきた。
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 02:35:57.58 ID:G+oluWhDO



インデックス「私の名前はインデックスって言うんだよ! 魔法名は Dedicatusa545 『献身的な子羊は強者の知識を守る』って意味だね」

上条「……」



上条の顔が歪む。
「何言ってんのこの子? ありえねー」と言わんばかりに。



インデックス「さっき追われてるって言った理由だけど―――私は『禁書目録』だから」



上条は歪んだ顔をやめない。



インデックス「私の持っている10万3000冊の魔道書、それが“連中”の狙いだと思う」



上条は歪んだ顔をやめない。



インデックス「“連中”っていうのは魔術結社だよ」



上条は歪んだ顔をやめ―――



インデックス「むぅぅぅううううううう!! さっきからなに!? そのいかにも信じられません的な顔は!!」

上条「いや、だって、なあ? 科学の街である学園都市で、んなこと聞かされたら誰だってこんな顔するって」

インデックス「むー!! じゃあ君は魔術を信用しないっていうのかな!?」

上条「信用してあげられることもないけどさー……とりあえずまあ、良い病院を知ってるからそこに行きませうか?」

インデックス「やっぱり馬鹿にしてるんだよ!! まだ会って間もないけど、君ってスゴく嫌な人なんだね!!」
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 03:53:52.74 ID:G+oluWhDO



腕をブンブン振り回して怒りを表現するインデックスと名乗る少女。
その有様に上条は重い溜息を吐く。
今更ながらに思うが、どうやら自分は相当面倒くさい人間と関わってしまったらしい。
部屋に入れたことを本当に本当に今更だが悔やむ。
やはりあの時にベランダから突き落とせばよかったのか……。



インデックス「魔術はあるもん魔術はあるもん魔術はあるもん!!」

上条「あーもう! うっせぇなこのガキが! じゃあそれを証明してみろってんだ!」






―――結果。






インデックス「…………」

上条「なんでこうなるかねー……あ、こんな所にも歯形が」



お互いの理念を証明するために修道服を右手で触れ、当然なのだが幻想殺しの効果で『教会』破壊してしまい、インデックスが素っ裸に。

怒ったインデックスに体中を噛みつかれる羽目に陥る。
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 03:56:18.83 ID:G+oluWhDO
彼女は絶賛布団にくるまって落ち込んでる模様。



上条(……しかしまあ、このガキの言ってた魔術ってのは、本当みてえだな)



幻想殺しが反応したということは彼女の言うことはあながち間違ってはいない事を示唆。
この世に科学とは『別の法則』で生み出される“力”が存在するということ。



上条(そして)





―――その事実をアレイスターが知らないはずがないということ。





インデックス「どうしたの?」



ひょこっと上条の視界にインデックスの顔が映る。
先ほどの怒りの剣幕はドコへ行ったのか、微塵も感じさせない心から心配する顔で上条を覗いた。

コロコロ表情が変わるやつだと思う。『光』に住む人間だからか。



上条(『光』か『闇』かで判別するあたり、上条さんは末期だ……)

インデックス「どうしたのかな? 思いつめた表情をしてるかも」

上条「いやあ、その針のむしろで外を出歩くと考えたら気の毒でな」

インデックス「……やっぱり君ってイジワルな人なんだよ」



頬を膨らませて告げると、プイッとインデックスは踵を返して玄関へ向かう。
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 03:58:30.54 ID:G+oluWhDO



上条「帰るのか?」

インデックス「うん。長居すると君が狙われちゃうからね」

上条「んだよ、かいがいしく心配してくれるのか? ガキが一人前みてぇに」

インデックス「もちろん、巻き込みたくないもん」

上条「……随分とその件に関わるとあっさり引くんだな。食いもんの時はがっついて来たのによぉ」

インデックス「……じゃあ」



少女は両手を後ろで組み、










インデックス「私と一緒に地獄の底まで付いてきてくれる?」










上条「…………っ」

インデックス「―――ばいばい!」



タッタッタ、と軽快な足音を響かせて立ち去っていく。
残された上条は駆ける少女を追いかけるわけでもなく、呆然と玄関に目線が釘付けにされていた。

一瞬でも言葉が詰まってしまった。
いや、出せなかったのだ。



上条(あのガキ……)



最後に見せた顔。
儚い中にも僅かな『闇』を悟らせるドコか寂しげな様子。
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/05(日) 03:59:35.14 ID:G+oluWhDO

瞬間的にもインデックスは『闇』を匂わせる態度を取った。
しかし少女は『光』の道を歩む人間であるはずだ。
『闇』を感じさせる時なんて無い、と自負できるほど。

じゃあ何だ?
インデックスは『光』と『闇』を使い分けているとでも言うのか?



上条「……」



ふざけた話だ。
反吐が出るほど馬鹿げている。
そんなはずがない。

単に自身が気付かなかっただけだろう。
あの可憐な少女に対してそこまで深読みする必要は皆無だ。

但し、



上条「だとしたら、科学の『闇』をそれなりに知ってる俺よりも、あのガキはもっと『深い』世界の部類に属する人間になっちまうけどな」



チラリと携帯を一瞥。
そろそろ学校に行かなければ小萌先生による対面補習の時間に間に合わなくなってしまう。

遅刻をすれば間違いなく青髪ピアスや土御門に「今度は何人フラグ立てたんじゃワレェ?」と尋問を羽目に。
そして100%の確率で小萌先生が涙を浮かべるしまつ。もはやテンプレである。



上条「つーか今更考えたところで、あのガキをどうこうできるわけじゃねーし……ってか、もう行っちまったしな」



カバンを掴むと重たい腰を持ち上げて立つ。
第一、今日は仕事が無いくせに予定がぎっしり詰めてあるためインデックスのことを考察する余裕は一切無い。

これも何かの運命。彼女には何処か遠い所で幸せになることを願おう。
447 :977 [saga]:2011/06/05(日) 04:06:29.88 ID:G+oluWhDO
しゅー…りょー…ですorz

どぅも、寝オチに定評のある977です


インデックスさんの登場ですね!
美琴もインデックスも五和もヴェントも好きな自分にとっては大好物ッ

とまあこんなテンションでいったわけですが、また寝オチという二番煎じもいいところです、ハイ
大丈夫、次こそは…!


ではでは
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/06/05(日) 04:11:49.10 ID:pwbBPo9xo

二度あることは三度あるですねわかりますん
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 07:49:18.26 ID:uU9NA1Ypo
上琴になるの?どうなるの?
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 08:37:07.74 ID:pI/wfSuDO
なんか魔術サイドがからむとつまんなくなるよね
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 08:47:22.20 ID:0Z3lfOBDO
>>449
カップリングは特になしと書いてある
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/05(日) 08:56:14.39 ID:fdJ1pK+AO
>>450
なら見なけりゃいいじゃん
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/06/05(日) 10:58:16.72 ID:oRX7fBvf0
いつも乙
楽しんでまふ
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 11:19:29.07 ID:pJmiNbzPo
まぁ原作でも魔術サイドは微妙だったからな
フィアンマ編に入ってからはおもろかったけど
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 12:32:05.31 ID:pqQ1pKCB0
おれてきには魔術サイド面白いと思うけど
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/05(日) 12:42:07.12 ID:0ilg/10go
原作は面白いと思うけど、アニメは魔術サイドつまらないな
やっぱ科学サイドよりも演出がショボイからだろうか…

基本的に会話で引っ張って棒立ちで戦闘だし
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/06/05(日) 13:49:38.28 ID:Fo1CNHAAO
魔術サイドはフィアンマ編しかつまらないからな

なにはともあれ乙!!
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/06/07(火) 02:34:31.99 ID:6Ryc2SB/o
フィアンマ編のみ面白いという意見には激しく同意
それ以外の魔術編はちょっとついていけね

そして乙
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/06/07(火) 12:58:43.39 ID:z8l9YzRAO
イギリス編面白かっただろうが
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/07(火) 15:04:12.16 ID:mlu7VruAO
スレチな話題になりつつある
自重して投下を待つ
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 01:51:42.48 ID:y8/grop1o
イギリス編が一番つまんなかったわい
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/08(水) 16:06:05.11 ID:8IR6ND/2o
魔術サイドが面白くないって言う人がどうしても某キャラ厨に思えてしまう
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/08(水) 22:38:40.23 ID:XD6SJf4Qo
そういう事言わない
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 00:00:01.50 ID:3Clz6O5to
一時期話題になったアンチで荒らしの関西さんか
465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 09:56:20.22 ID:xS6F6VOEo
インデックス厨のインデックスアンチは美琴厨であるという固定観念
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 10:08:29.66 ID:gKxFHQxqo
なんかアンチスレみたいになってるぞ
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/06/09(木) 10:30:12.65 ID:Xb0SselAO
スレチな話題になりつつある
自重して投下を待つ
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 11:51:14.78 ID:X4qdKaPto
お前ら黙って待ってろよ

新しいの来たかと思っただろ
469 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/09(木) 22:09:16.77 ID:cx6LIZ+eo
>>465
え?
美琴厨の美琴アンチはインデックス厨であるという固定観念
じゃない?
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:19:22.67 ID:XDW7MabIO
インデックスも美琴も可愛い。
なんでそんな簡単な真理に辿り着けないんだろう?
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:21:08.10 ID:2j6XxuWDO
いい加減にしろ
キャラ厨同士のくだらない抗争をそれ以上持ち込むな
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/09(木) 22:46:06.92 ID:gKxFHQxqo
触れるなよ
触れるから拗れるんだって
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/09(木) 22:46:58.28 ID:3Clz6O5to
自称神はお帰りください
474 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage]:2011/06/11(土) 14:02:49.73 ID:IAzCtH1R0
来そうにないな
475 :977 [saga]:2011/06/12(日) 08:11:40.15 ID:W/n9QXmDO
投下しますねー


食蜂操祈……出そうと思えば出せるけど性格と口調が判らないから出せないorz
476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:13:22.63 ID:W/n9QXmDO



―――セブンズミスト。



小萌先生との個人授業(青ピと土御門も可)は何の差支えも起きなく進んで、時は西日が差しかかる放課後。
上条当麻は多くの若者が集うセブンズミストに補習の帰り道に寄っていた。

もちろん彼一人だけで来ていない。
そもそもセブンズミスト自体初めてだというのに服を買う目的であるのならば尚更一人では行きにくいだろう。
周りに溢れんばかりの学生達を見て、上条は複雑な心境を漏らす。



上条「場違いのような場違いじゃないような……曖昧な感覚に上条さんは囚われていますよ……」

美琴「何さっきからブツブツ言ってんの。ほらっ、早くしないと置いてっちゃうわよ!」

上条「はいはい今行きますよ、っと」



上条の前を歩くのは脳のダメージも完治して見事病院から退院した御坂美琴。
あまりの凄まじい回復力に冥土帰しも驚愕を露わにしていた。
477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:15:09.42 ID:W/n9QXmDO

病院と言えば、二人がこんな所へ買い物に出掛ける理由を作ったのも丁度昨日だったりする。
あの時は確か『アレ』の副作用で頭痛が生じていて、ちょっと休憩に入ろうとするその瞬間、美琴の声が聞こえてきたのだ。
何度か会話を交わし、仕方なく久しぶりに二人で買い物をすることになったという、大して内容も存在しない経緯があるだけ。

特筆で上げるならば、



上条(……『三回』。三回でこのザマか)



たかが三回。言うても三回。
三回だけで初期段階の“頭痛”が起きた。それが己の命取りとなる。

右手に宿る幻想殺し。
これは上条自身の能力。アレイスター曰わく本来の力はこの程度ではないらしい。
そして美点と欠点を兼ね備える左手。その能力の詳細は不明。
何故なら……これは上条当麻に宿る能力ではないから。
上条の中に潜む“もう一つ”の存在が有する能力。
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:17:54.39 ID:W/n9QXmDO
そもそも研究所で五人と戦闘を行ったのは意識的な問題で言えば上条ではない。
勘違いをしかねないので補足すると、上条にあの戦闘の記憶はあった。
何をやらかしたのかを寸分の狂いもなく明瞭に覚えている。


ただ、上条当麻の身体を動かしていたのは“もう一つ”の存在なだけの話。



上条(ったく、参るぜ。左手を使った回数と時間に応じて俺自身が食い潰される、か。……堪ったもんじゃねーな)



掻い摘んで言えば、『乗っ取られる』という事。
誰かなんて言うまでもない。

今もこうしてる内にもしかしたら侵蝕は弊害も無く進行しているかもしれない。
ほら、気付けばすぐそばまで、








―――ッッ―ッ――ッッッ。










上条「…………」

美琴「どうかした? 今スッゴく暗い顔してるわよ」

上条「いや、何でもねえよ」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:20:05.56 ID:W/n9QXmDO



いけない、と上条は邪念を振り払うように頭を振る。
深く考えれば考えるほど取り込まれやすくなると判っているのに、自分の頭は言うことを聞いてくれず思考にふけってしまう。

悪い癖だ。せっかく気分転換に美琴と出掛けているというのに。
これでは存分に楽しもうとしてる彼女に対して失礼極まりない。



上条(そう言えば……)



美琴にも不可思議な点が存在していた。
彼女は脳に後遺症を残していてもオカシくはないほど、いやむしろ残っていなければ異常なほどダメージを被っていたはず。
にも拘わらず御坂美琴は現在もこうして元気な姿で日常を送っている。なぜ?

冥土帰しの話によれば美琴が目を覚ました時、『目を覚ませる状態ではないのに目を覚ましている』と自ら明言していた。
脳科学では絶対に起きない現象。これが俗に言う“奇跡”なのか?



上条(……いや待て、そもそも美琴は何の実験を受けてやがった?)



原点に回帰しよう。
彼女がそうなってしまった起因。

―――『強制段階上昇実験』。

元は脳に必要以上の物を送り込んで演算能力を基に様々な数値を上げていき、強制的にレベルアップというトンデモ実験。
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:22:02.51 ID:W/n9QXmDO


その理論を覆してみよう。
もし。本当に仮定としての話。





―――もしもその理論が間違ってなかったとして、そもそも実験は『置き去り』対象ではなく御坂美琴“専用”の実験だとしたら?


―――もしも実験の結果がこうなることも推測されていて、美琴にレベルの上昇ではなく何らかの現象が起きるとしたら?


―――もしも上条当麻が実験を阻止する『前提』で計画されていたとしたら?





上条(だからこそ、あの時あえてアレイスターは俺に見え見えの嘘を……?)



だとすれば全ての辻褄は合うかもしれない。
あの騒動そのものがアレイスターが描く通りの画策だとしたら。



上条(オイオイ、シャレになんねーよ。……じゃあ今日ベランダに干されてたあのガキは―――)

美琴「無視すんなやコラーッ!!」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:23:05.57 ID:W/n9QXmDO




―――――――――――――――



少し時間をさかのぼり、丁度昼下がりの時間帯の頃。



浜面「ふーん、無能力者狩りね……」



いつもとは違うファミレスに浜面と駒場は居た。
隣とは壁で隔たれたボックステーブル席に面と向かう形で二人は座る。
浜面は片肘をテーブルに乗せてメロンソーダをいじりつつ、駒場の言葉に応答する。

『無能力者狩り』という言葉に引っかかりを覚えないはずがない。
自分でも眉間にシワが増えたことが判るほど、表情を変化させたと思う。



駒場「……ああ。最近では至って頻繁に仲間が被害にあったと報告を受けている」

浜面「その助けた女の子はどうしたんだよ? 保護者が迎えに来てくれたとか?」

駒場「……いや、今は半蔵が車で送っている。心配は必要ない」

浜面「マジか。半蔵にも会いたかったけど、まあ仕方ねえな」

駒場「安心しろ。アイツにそう伝えておく……」
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:24:03.21 ID:W/n9QXmDO



薄く微笑む駒場だが、浜面の顔色は全く優れない。
彼が懸念するのは違う点にある。



浜面「なあ、駒場」

駒場「……なんだ?」

浜面「その『無能力者狩り』……どうするんだ?」

駒場「……当然、止めさせる」



だよなぁ、と浜面はうなだれた。
駒場の性格からして放っておけないのは想定していた。
それは問題ない。むしろ自分も手伝いたいところだ。

しかしだ。

あまりマズい方向に事が進むと『上』の連中が黙ってはいない。
そうなると暗部に依頼がくる可能性が否めないのがとても危険なのだ。
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:25:01.50 ID:W/n9QXmDO



浜面「俺もできるだけ協力するけど、目立つ行動取ると駒場が狙われるから注意してくれよ?」

駒場「……ああ。判っている」



一応釘はさしておいた。
駒場の事だから理不尽な事件が起きれば聞かなくなるのは目に見えている。
半蔵か自分が居れば制止が可能だが居ない場合はどうしようもない。

万が一を考えてリーダーにも頼み込んでみよう。
何もせず自然と騒動が鎮圧してくれれば一番なんだが、現実問題たやすく運んではくれない。
ならばできる限り事を大きくしないよう最善を尽くすまで。



駒場「……ん?」



駒場の視線が浜面から外れた。
浜面の斜め後ろ、各々の席に繋がる通路へと移っている。
知り合いでも見つけたのだろうか?
興味本位で浜面は体ごと振り返って彼の視線を追う。
すると表情がポカンとするほど、浜面は驚愕を示した。
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:25:48.29 ID:W/n9QXmDO

自分達の方へ向かって歩いてるのは先ほど話題に上った半蔵。
驚きを示唆するのはその隣に並ぶ少女が二人。
一人はふわふわした金髪に細い手足、色白い肌に透き通った青い瞳。まさしく『人形のような』という例えの似合う風貌。
もう一人はその少女を成長させた姿で二人は凄く似ていた。



駒場「……どうした?」

半蔵「いやな? 送りに行ったんだがよ、この子の姉がどうしても礼を言いたいって聞かなくてさ」



苦笑いを浮かべる半蔵。
そんな彼を余所に呼ばれた少女は一歩前に出て、口を開く。



「結局、この人の言う通りお世話になったらしいからお礼を言いに来たって訳よ。これぐらい常識でしょ?」

駒場「……まあ、そうだな」

「駒場のお兄ちゃん! にゃあ」
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:26:47.22 ID:W/n9QXmDO



姉の脇からにょきっと妹の顔が出て来た思いきや、駒場を『お兄ちゃん』と呼び出した。
浜面は内心、羨ましさで悪態をついてしまうが駒場が非常に困っている様子なので、まあいいやと自分を落ち着かせた。



浜面「とりあえず積もる話もあるだろうし、座ったらどうだ?」

「いいの? じゃあ座らせてもらうって訳よ」



姉の方が浜面の隣に腰を落とす。
追随するように妹と半蔵が駒場の隣に。



フレンダ「自己紹介させてもらうわね。私はフレンダ。フレンダ=セイヴェルンって訳」



視線で妹を促して、



フレメア「私はフレメア。フレメア=セイヴェルン。にゃあ」
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:28:13.61 ID:W/n9QXmDO




―――――――――――――――





時は戻って、ピンとエレベーターが鳴る。
目的の階に到着を知らせる独特な音と共に箱型の個室は扉を左右に開いていく。
若干フラフラと覚束ない足取りで上条当麻は自室を目指していた。



上条「疲れた……」



結局、怒らせた代わりに買い物に散々付き合わされて荷物係に徹する一日に。
あれ以降おかげ様で思考にふける余地はドコにも無かった。

仕事が無い日で良かったと心の底から思う。正直さっさと眠りたい。
ただでさえ補習で精神的に削られているというのに。



上条「ん?」



自分の部屋まで残り後僅かの所で彼は進む足を止める。
自室に繋がる玄関扉の前、ドコかで見たことがある『白い布』がうつぶせで横たわっていた。
487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:29:32.36 ID:W/n9QXmDO

しばらく白い布を一点に凝視していたが、盛大に溜息を吐くと上条は再び足を運び出す。



上条「ったく、腹ぁ減ったから帰ってきたのかあ? 俺はテメェのご主人様じゃねーぞ」



屈んでインデックスの肩を揺らす。
しかし彼女はピクリとも反応を示さない。

上条が頭を傾げて訝しんでいると、鼻の奥に刺激を与える臭いを感知した。
普段ならば嗅ぐはずがない……彼にとってはとても慣れた血腥い臭い。



上条「……横っ腹に斬られた痕か。オイオイ、帰ってくるにしても面倒になってからとかは止めよーぜ。
   アンタもそう思わね? ―――魔術師さんよぉ」



立ち上がって踵を返す。
ついさっき自分が通った帰路に二メートルを越す長身の男が、壁に身体を預けて佇んでいた。
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:30:23.32 ID:W/n9QXmDO

黒い神父服。
赤くて長い髪。
タバコを口にくわえる。
毒々しい幾つものピアス。
右まぶたの下にバーコード。



「……いつから気付いていたんだ? 一般の学生に見せるほど油断をした覚え何てないんだけどね」

上条「最初からだ。ってか、もう一人の方じゃねーんだな。つまんね」

「待て。何を言っている? 僕は一度も連れが居るとは―――」

上条「バカが。みみっちい頭じゃ理解できねえんなら、もういっぺん言ってやる。『最初から』だ」



人差し指を立てて、上条は告げる。
表情は上手く都合が運んだことを喜ぶように不敵な笑みを浮かべて見せた。
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 08:31:24.00 ID:W/n9QXmDO



上条「このガキが俺の部屋に入ってきたあたりで視線と殺気ぐらいは感じ取れてた。ド素人丸出しで目も当てられねぇ。
   つまりテメェらの行動は残念ながら上条さんにはバレバレってことなんだな。不幸なことに」

「……っ」

上条「で? ここまで言っておいて何だけどさ、一応お互いに名乗ってようぜ。自己紹介ってのぁ外国でも大切だろ?」

「……」

上条「俺は上条当麻。学園都市に住むただの高校生さ」

ステイル「……そうだね。ステイル=マグヌス、と名乗りたいところだけど。ここはあえて“Fortis931”と言っておくよ」



ステイルはくわえたタバコを指で挟み、空中へ放り投げる。



ステイル「僕は君の推測通り魔術師さ。ソコにいる彼女を保護にしに来た者。―――炎よ(Kenaz)」



―――タバコが炎へ変貌する。
490 :977 [saga]:2011/06/12(日) 08:33:49.60 ID:W/n9QXmDO
しゅーりょーです


上条さんと浜面さんの話へと移っていこうかしら
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 08:52:56.03 ID:iyOjGDuDO
盛り上がってまいりました
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 09:14:47.71 ID:Khe1dtbLo
ステイルさん終了のお知らせ
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 09:34:13.87 ID:CliF7t1co
黙祷を捧げておこうか
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/12(日) 10:00:47.00 ID:iC+gsoKAO
骨は拾ってやるよ
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 10:10:44.17 ID:Kin3qg1ko
エンヤ婆
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/12(日) 11:09:40.43 ID:COZDzHMy0
イノケンさん出す暇もなく終わるんだろうな
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 11:52:40.40 ID:vuKySqEt0
ステイルお前のことは忘れない
498 :!ninja [sage]:2011/06/12(日) 12:40:31.05 ID:gWvODiT/o
ステイルェ・・・
499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 14:10:49.28 ID:WjTDXq9qo
次のレスではもうタケコプターになって倒れてるんだろうな
500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福島県) [sage]:2011/06/12(日) 19:02:25.99 ID:aSIxEtf6o
お前らステイル馬鹿にすんなよ!
ステイルはDBのヤムチャ並に重要なキャラなんだよ!
501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北陸地方) [sage]:2011/06/12(日) 19:12:10.58 ID:xOcvhfDoo
ヤムチャいないほうが神龍の願い事が無駄にならないだろ?つまりそういうことだ
502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/06/12(日) 23:56:10.22 ID:Rbfc96V0o
いくらこの上条さんに瞬殺される気配があるからってヤムチャ扱いするのはやめたげてよぉ
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/06/13(月) 07:14:50.08 ID:ucy38rVAO
ステイルは普通に強いはずなんだがな・・・

いかんせん周りがチートすぎる
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/13(月) 09:14:16.26 ID:uw4L93hto
書き手ですら上条VSステイルの戦いを目前に控えているにもかかわらず
次回は上条と浜面のお話ですって言っちゃってるわけだからなぁ
ステイルさん瞬殺確定でしょ
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/06/13(月) 19:37:42.07 ID:0lKnpBtAO
超乙

>>504
今回みたく同時進行で進んでくっていみじゃないの?
506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 11:59:06.11 ID:uUL2WMz0o
ステイルさんの期待値の低さは異常
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/14(火) 17:25:05.78 ID:GFtvlf9so
チっ...ステイルリーチかよ...当たる訳ねー...
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) :2011/06/14(火) 18:54:21.51 ID:KG59rOYAO
いいね!いいね!最高だね!最高におもしれェよ!
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 08:11:36.01 ID:3g2KP3ODO
>>508
そういうのいいからsageろAU
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 20:31:23.03 ID:sQEiWYmz0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308041605/#footer
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/15(水) 20:44:37.08 ID:WY878/8AO
>>510
他スレで宣伝してんなよカス
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/15(水) 20:52:05.19 ID:sQEiWYmz0
すまん
513 :977 [saga]:2011/06/20(月) 01:22:04.77 ID:jQvExq9DO
さて、投下しますね

やっぱり学校があるとだんだんペースが落ちていくのは必然なのか…
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:24:14.45 ID:jQvExq9DO



炎は烈火の如く上空に向けて燃え盛っていき、空気を灼いていく。
魔術で生み出した火炎はあっという間に周囲の気温を上昇させていった。



ステイル「僕らの間では真名を名乗ってはいけないという風習があってね。正直、僕にとってはどうでもいいんだけど」



声に伴って炎がステイルの片手に収集し始める。

弧を描いて螺旋状に集まる炎を目にしても上条は臆さない。
むしろ無表情で冷めた目線をステイルに送るだけ。



ステイル「どちらかと言うと―――殺し名、かな?」



不敵な笑みを浮かべて豪快に炎を携えた片手を振りかぶり、




ステイル「―――巨人に苦痛の贈り物を」
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:25:33.36 ID:jQvExq9DO



鞭のようにしなる灼熱の火は炎剣の如く。矛先を上条に向けて獰猛な牙を剥き出し襲い掛かった。
視界を覆い尽くす猛火に対して上条当麻は動かない。ただ呆然と立つだけに止まる。



―――轟音と共に通路が火炎で埋まった。



ステイル「ふぅ……やり過ぎたかな?」



困ったな、とポリポリ頭を掻く。
出会い当初の言動を考えて骨が折れると踏んでいたが、意外にもあっさり片が付いたことに肩透しを食らった。
放った言葉が言葉なだけに奇妙に感じるのは深読みだろうか?



ステイル(ハッタリか? にしてはやけに感が良すぎるけ―――)

「オイ、こんなもんか?」



カーテンを開けるように炎が引き裂かれた。
摂氏3000度の炎の中から無傷の上条当麻が姿を現す。
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:27:32.50 ID:jQvExq9DO

ステイルはその有様に露骨に狼狽を示唆する。
自慢の炎を魔術も使わずそれも無傷で済ます。
いとも簡単に対処したこの男に僅かながら恐怖を覚えた。



上条「大体、このガキの修道服をブッ壊したのだって俺なのによ。ちったあ警戒しやがれ、能無し」



ステイルはハッとして想起する。
インデックスが身に纏っている修道服は何をされても効かない法王級の防御結界。
しかし相方が放った一撃はインデックスを捉えてダメージとして血を流した。
何故? 答えは単純で単に『防御結界が破壊されている』だけの話。

ようやく今起きている現状を理解したステイルは軋むほど強く歯を食いしばる。



上条「じゃあ次はこっちの番でいいんだな?」

ステイル「……偉大なる始まりの炎よ―――」



上条が構えた途端、ステイルは口を静かにうごめかせる。
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:29:11.45 ID:jQvExq9DO
当然上条にも何を言っているかは聞こえた。でも言葉の意味は判らない。

おそらく魔術を実行するための呪文だろうと安易な憶測を立てる。
あながち間違ってはいないはずだ。
何故なら炎がステイルの足元から沸々と噴き出しているのだから。



ステイル「その名は炎、その役は剣」



彼は歯を剥き出して、告げる。



ステイル「顕現せよ! 我が身を喰らいて力と為せ!!」



これまでとは比べ物にならないほどの甚大な灼熱の炎がステイルを包み込み、……爆音が轟いた。



ステイル「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!!!!」
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:31:00.71 ID:jQvExq9DO



彼の背後に現すのは巨大な人の形をした炎の集合体。
ステイルを護るように包み込んで対峙する上条を睨んだ。

殺意を向けられた上条は目を細くする。
ステイルとの戦闘で初めて厄介なものが出てきたと判断がつき、思考を働かせ対抗策を見出しているのだ。



ステイル「殺れ、イノケンティウス!」



強大な腕が前へ動き出す。
メラメラと盛んに大気を焼く猛火が一歩、また一歩と上条に向かって這い続けて近付いていく。

飛び散る火の粉がドアノブに触れて―――溶けた。
その状況に上条は目筋を一層鋭くさせて、イノケンティウスをジッと見据える。



上条「……ふんっ」



イノケンティウスの腕が自分に触れる瞬間、右手を振るう。
当たり前だが先ほどの炎剣と同様に引き裂くように消滅する……が。



上条「!」



幻想殺しの効果で分散したイノケンティウスの欠片が床に落ちるその時。
突然全部の欠片が軌道を変えて一点に集中し始めた。



そして―――イノケンティウスが復活を遂げた。
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:32:58.17 ID:jQvExq9DO



上条(何度でも蘇るのか、厄介ですこと)



チラリとステイルを一瞥する。
彼は上手く事が運んでいるので安堵したのか、余裕の表情を浮かべていた。



上条(……魔術のことなんて全く理解できないし判らねぇ)



あんな大食いのガキのために命を棄てるなんざ更々無い。
ご飯を提供しただけで即死級の攻撃をされるなんてまっぴらだ。

でも、




美琴『当麻っ』




インデックスと美琴を重ねてしまうのは、ドコか二人が似ているからだろうか?



上条(―――いいぜ。この際もうヤケだ。弱点が何人と増えようとどうだっていい。知ってやろうじゃん、『世界』ってやつをよ)
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:34:20.24 ID:jQvExq9DO



イノケンティウスの片手に十字架を象った炎が現れる。
紅蓮に燃える十字架を握ると上条に振りかざした。

とっさにバックステップで十字架のリーチが届かない場所へ回避。
無闇やたらに右手を振り回しても再生されるだけ。十字架だって直感にすぎないが再生するはず。



上条(俺の予想が正しけりゃ魔術っつーのも必ず“法則”や“理論”があるはずだ)



彼はそれを彷彿する場面に何回も出くわしている。

例えばインデックスの修道服という名の『教会』。
彼女が言うには布地の織り方、糸の縫い方、刺繍の飾り方まで全てが計算されているらしい。
強度は銃で撃たれても包丁で刺されても平気だという。
科学では決してありえない。
だからこそ魔術はそれを成す。

ステイルだって同じ。
呪文を唱えて炎をさせる。
もはやゲームのファンタジーさながら。



上条(でも、絶対それだけじゃねーよなぁ。ベラベラと言うだけで火を起こせんなら誰だって出来るし……)



問題点はソコ。
口頭だけなら小学生にだって可能。
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:36:22.01 ID:jQvExq9DO



上条(もっと他に……何か)



ステイルが身に包む修道服に何か魔術を起こす施しが?



上条(そもそもこれほど騒いでんのにアンチスキルに通報されねぇのが奇妙すぎる。
   ……ってことは人の注意を寄せ付けない魔術もあんのかよ万能じゃねーか)



だとすれば、



上条(―――範囲指定の可能性が高いな。だったら仕掛けるとすれば……この寮か)



ならば話は早いと懐に忍ばせておいた拳銃を取り出し―――遠くにある火災警報機に向けて引金を引いた。
響く警報機に伴って寮に設置していた消化装置であるスプリンクラーが働いて、散水する。



ステイル「相当頭が切れるね君は。何を思ってスプリンクラーを作動させたのかは知らないけど、3000度の炎の塊が鎮められるとでも?」

上条「ちげーよ。そっちの方は狙ってない」

ステイル「……なに?」



上条は不敵な笑みを浮かべる。
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:42:29.72 ID:jQvExq9DO



上条「テメェが扱う魔術の方さ。この寮に仕掛けたヤツの、な」

ステイル「っ!」

上条「俺には魔術なんて判らねえよ? でもインデックスやお前を見て大体把握できた。
   要は方式を基に組み立てて現象を起こす、ってな感じだろ? だったらこの炎のバケモノだって何らかの方式に基づいてるに決まってる。
   じゃなけりゃ口で喋ってハイ召還、なんて随分と安上りだしな」



まだ最初にブッ放した炎ならまだしも、と肩を竦ませる。



上条「どんなモンか判らねえけど、ソイツを壊すために起動させた。まぁ正直カケなんだけどな」

ステイル「……本当に頭が切れる男だ。うちに欲しいくらいだね」



おもむろに懐へ手を突っ込んでステイルが取り出したのは、一枚のカード。
怪訝な様子で目を細めていると状況を察したのか、ステイルの口が開いて言葉を紡ぐ。



ステイル「ルーン。『神秘』『秘密』を指し示す二十四の文字にして、ゲルマン民族より二世紀から使われる魔術言語で古代英語のルーツとされている」



イノケンティウスを流し目で見て、



ステイル「こいつに幾ら攻撃をしようと意味は無い。辺りに刻んだ『ルーンの刻印』を消さない限り何度でも蘇るさ」

上条「掻い摘んで言えば本体じゃないってことか」

ステイル「その通りだ。刻印はコピー用紙を使っているんだけど……残念だね。トイレットペーパーじゃないんだよ。水に濡れた程度で消えてなくなるもんじゃない!」



キッと上条を睨んだ。
手を前に突き出して、ステイルは再び告げる。



ステイル「殺れ! 今度こそ必ず仕留めるんだ!!」



しかしそれは叶うことは無い。
何故なら―――イノケンティウスが崩れていったから。
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:43:32.21 ID:jQvExq9DO



ステイル「イ……イノケンティウス……?」



崩れ落ちて原型も留めないほどグズグズに陥ったイノケンティウスを目にステイルは戸惑う他無い。
ボンッ! 小さな爆発が生じて消滅していくイノケンティウスの有様が信じられなくて仕方がない。
何が起きて何でこうなっているのかが全く理解が追いつかなかった。

それもそうだろう。

コピー用紙は雨ごときで消えるわけがないのだ。
だけどイノケンティウスは目の前で何らかの手によって崩れていった。



上条「このカケ、俺の勝ちだな?」



パシャ、と散水で溜まった水を弾く。上条が一歩前へ歩いたからだ。



上条「確かコピー用紙に刻んだって言ったよな? 何で刻んだかは知んねぇけど、もしインクとかなら落ちんじゃねーの?」

ステイル「そ、んな……バカな……ッ!!」
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:44:21.12 ID:jQvExq9DO



パシャ、と一歩前へ。



上条「これが現実だ。テメェの幻想は既にブチ壊されてんだよ」



パシャ、と一歩前へ。



ステイル「あ……灰は灰に!」



パシャ、と一歩前へ。



ステイル「塵は塵に……!!」



パシャ、と。とうとうリーチの範囲内に足を踏み込んだ。
犬歯を剥き出しにして上条当麻は笑みを浮かべて―――右手を強く握り締め拳を作る。
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:48:38.56 ID:jQvExq9DO







『私と一緒に地獄の底まで付いてきてくれる?』







正直な所、どうでもいい。
少女が思う『地獄』なんて。
根本的に哲学を語る気は皆無。

ただ上条当麻が言いたいのは一つだけ。
地獄はもはや見飽きている、と。






『知った風な口利いてンじゃねェぞ三下ァッ!! オマエに、オマエなンかに……ッ!!』






『……オーケー、ここまでイラついたのは第一位以来だ畜生が。無能力者ごときが俺の気持ちを解ってたまるかよ』






『ああそうだよ!! 俺は所詮スキルアウトさ。ダメで落ちこぼれな学園都市のクズだ。一人の女の子も護れない最っ低なヤツなんだよッ!』
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/20(月) 01:50:13.53 ID:jQvExq9DO



様々な“地獄”を見てきた。

本人達がどれほどの苦しみを背負い。
どれほどの悲しみを噛み締めてきたか。
赤の他人である自分には到底理解できないだろう。
人によって地獄の深さは異なる。
悲しみの大きさも受けた傷もまたしかり。
だから幾ら図々しく踏み込んで気持ちを汲んでも、本人にしか解らないものもある。

その光景を上条当麻は何度も目撃している。
嘆き、叫び、慟哭するその姿を。


だからこそ言える。“地獄”なんて―――







『一生……離して、やらないからね……』







上条「―――見飽きてんだよ!!」



彼の拳がステイルの頬を確実に捉える。
拳を振り抜いてステイルが宙を舞い、地面へと叩き落とされた時にはステイルは動かなくなっていた。
527 :977 [saga]:2011/06/20(月) 01:59:22.33 ID:jQvExq9DO
しゅーりょーです


一巻にちょっとずつ浜面の話を織り交ぜていくか決めていこうかな、っていう事です。
ややこしい発言をしてすいません

同時進行は厳しいところですが…時間があればなぁ
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 02:03:09.58 ID:JsFbuihDO
まあステイルさんよく頑張ったよ

ステイルさん倒す手順もうちょっと原作と違えてもよかったかも
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/20(月) 02:25:10.61 ID:ozFJLG7F0
フレメアでてきていたのか…
そんな設定で大丈夫か?
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 02:56:53.12 ID:ES3gw87DO


次が待ち遠しい
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 10:58:48.44 ID:Db3KTmZIO
乙!
続き待ってます!
532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 11:49:30.85 ID:nC4UEsgTo
ステイルさんの顔面ぐしゃぐしゃか
533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/20(月) 12:22:45.20 ID:2Cmf/P0To
銃[ピーーー]るかと思ったわwwww
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/20(月) 17:26:48.01 ID:foyOV/1Y0

面白いよ
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/20(月) 20:29:42.64 ID:AZfma0mAO
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/25(土) 00:10:16.76 ID:WANof3jTo
面白いんだけど、なんか読んでて恥ずかしくなってくる
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 03:09:01.05 ID:T1ElPxc6o
厨二SSってのは大抵そんなもんだ
538 :977 [saga]:2011/06/27(月) 01:28:39.09 ID:N2vOuaQDO
投下しまーす

明日は学校なのでペースアップでいきます
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:30:45.62 ID:N2vOuaQDO



夜の帳が降りる宵の口。
街灯と月明りが暗闇に染まった学園都市を照らす。
車や人影は少なくまばら。賑やかな朝とは打って変わって静謐な街へと変貌していた。

そんな街中を浜面仕上は一人で歩いていた。
ついさっきまでファミレスのメンバーで話題に華を咲かせていたが、時間が迫ってきたという理由で解散の方向へ。
まだ幼いフレメアが居たことも含まれるだろう。夜更かしは禁物だ。



浜面「……」



ただ、気掛りで悩む事柄が一つだけ存在。
それは彼が今手にしてジッと見つめる先にある……携帯である。
画面に映るのは電話帳の『フレンダ=セイヴェルン』という名前。
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:31:52.55 ID:N2vOuaQDO

妹を助けた駒場でもなければファミレスまで車で案内した半蔵でもない。
たいして何もしていない会話が弾んだ自分だけにメールアドレスを交換した。しかも半ば強制的に。



浜面「これは……まさかのモテ期到来か?」



ちょっと浮かれた気分でも構わないと思う。
なにせ女の子からメールアドレスを交換だなんて初めての経験だから。

だがその反面。些か不安な所も存在。
忘れてはならないのは、自分はあくまでも『光』に属する人間では無いこと。
場の流れや雰囲気もあって交換してしまったが、こうもたやすく教えて良かったのだろうか?



浜面「せっかく教えてもらったのに怪しむなんて最悪だな俺……」



だけど油断はできない。
いつドコで狙われるか判らないのだから。
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:33:27.49 ID:N2vOuaQDO



浜面「ってか、これって上条にバレたらシバかれる可能性があるんじゃ……ん?」



突然携帯がカラフルに点滅する。
振動は皆無。上条の言付けの通りにバイブは無しのサイレントマナーモードにしてあるのだ。
点滅する色でメールか電話か判別できるようになってるが、どうやら電話の様子。

しかも『上条当麻』から。



浜面「……マジで?」



さっき話題に上ったばかりの人物からまさかの電話。
もしかして自分の服に盗聴器とか遠くから監視しているとか、実はこっそり覗いていて全部事情を把握した上で説教の電話を?
上条当麻ならやっても否定できないのが怖い。むしろ自ら進んで行いそうだ。

これは出た瞬間に謝罪の言葉をかけるべきか?
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:41:08.02 ID:N2vOuaQDO

おそるおそる通話ボタンを押して、彼は即座にバッと頭を下げた。



浜面「リーダー、すまん! お願いだから給料は下げないでくれー!!」

上条『……何言ってんのお前?』

浜面「俺が注意もせず簡単に他人とメアドを交換したから、罰として給料を下げるって……」

上条『おーおー、すっげえ妄想スパイラルだな。残念ながら上条さんもソコまで冷たくありませんのことよ? そもそもメアド交換なんて好きにすりゃいいじゃねーか』



あれ? と予想外の返答に浜面は呆然としてしまう。
己の中では上条が出すであろう返答は既に決まっていたので驚愕するのは無理もない。



浜面「じゃあ何の用なんだ? リーダーが仕事関連以外で電話なんて珍しい」

上条『いやあ、なに』



電話越しでも彼の表情が思い浮かぶほど声色は緊迫していて、それでもドコか楽しそうに話す。



上条『ちょっくら車用意して他の二人連れて第七学区に来てくんね?』
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:42:05.34 ID:N2vOuaQDO




―――――――――――――――




上条当麻は大通りの十字路を歩いていた。
月が照らす道路には車も人も通らなければあまつさえビルに明かりすら無い。
目を配らせてコンビニを見れば居るはずの店員も居ない。
宵闇が占める街並は静寂に満ちていて、ただ一定の間隔で響く足音と吹き抜けていく風の音だけが残っていた。



上条「ここまで静かだと逆に奇妙だな」



インデックスは今、小萌先生の自宅に預かってもらっている。
なにやら脳開発を受けた学生では魔術を行うことはできないらしい。
不可能、という訳ではない。
学園都市の学生でも魔術は可能らしいが、その結末は必ず『死』に至るだけの話。
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:42:58.64 ID:N2vOuaQDO

故に何の開発を受けていない小萌先生ならば可能なわけだ。
インデックスの治療は小萌先生に任せて自分は“本番”に向かおうのである。
浜面への電話は念のため。用心するに越したことはない。



上条「さーて、骨が折れる戦いの予感。不幸センサーは警報機並みに鳴ってるぜ……」



とか言いながら顔がニヤケてしまうのは自分がワクワクしてるからだろうか?
楽しみで仕方ないと考えてしまうのはこれからの敵が絶対に『強い』と確信してるからだろうか?

ステイルとの戦闘は言わば前哨戦に過ぎない。
前置きや据膳と例えれば判りやすいかもしれない。どちらにせよ上条はその程度にしか思っていないこと。

チラッと視線だけ左手に送る。
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:43:44.09 ID:N2vOuaQDO



上条(左手は……)




――――ズキッ。




上条(……ッ、使えるわけないか)



僅かに眉間にシワを寄せて苦い表情を浮かべた。
もとより左手に期待は無い。
そう易々と使っていいものではないし、侵蝕が進んで歯止めが効かなくなったら元も子もないから。
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:45:15.38 ID:N2vOuaQDO



「勇敢ですね。特筆する得物も持たずにたった一人で戦場に立ち向かうその心意気、立派です」



十字路の大通り。その中央に長大な刀を携えて佇む一つの人影。
一方通行や垣根に劣らない奇抜な格好をした背の高い女性が立っていた。

月光の下に君臨するは上条当麻が捜し求めていた大物。
明らかに彼女の周りの空気が違えば放つ殺気でさえケタ違い。
例え一瞬だったとしても殺気だけで上条に恐怖を覚えさせた魔術師。



神裂「神裂火織と申します」

上条「上条当麻だ」

神裂「神浄の討魔(上条当麻)ですか、良い真名です」



薄く微笑むと細くさせた目で上条を凝視。
それに上条は訝しむ。敵に対して『微笑む』行為に。
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:46:57.95 ID:N2vOuaQDO
弱者に浮かべる嘲笑を含む不敵な笑みとはまったく別物。
神裂が放ったのはとても優しくて温かい敵意を感じない包まれるような笑み。
でも、瞳が語る決意と覚悟は本物で。視線からヒシヒシと伝わる殺気は格別で。



神裂「ステイルと戦ったのなら言うまでもありませんね。……可能ならば魔法名を名乗る前にインデックスを保護したいのですが」



長大な刀に手をかけて構えを取った。
上条との距離は僅か数メートル。一歩踏み出して薙ぎ払っても普通は決して届かない。
しかし相手は魔術師。油断はならない。
何か小細工を仕掛けているかもしれないのだから。
彼女と同じく上条が戦闘の構えを取る―――その刹那。



―――突如として吹き抜ける暴風が上条を襲い、更にアスファルトが曲線を描いて破壊されていく。



ゴドン! と発電モーター機のプロペラが上条の隣に落ちた。
驚愕を露わにするヒマも無いまま一瞬で起きた事に上条は黙って見ているしかなかった。
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/27(月) 01:49:06.69 ID:N2vOuaQDO

目を配らせてプロペラの切断面を注視。
砕くとか破壊した様子は無くて刃物でスッパリ断ち切った跡が残っている。
続いてアスファルトに視線を移す。
獰猛な獣が残した爪痕のように『七つ』の引き裂かれた斬撃。



上条(コイツの攻撃……一瞬のうちに七回も斬撃が……)

神裂「もう一度問います。彼女を保護したいのですが」



冷たい瞳で彼女は繰り返した。
悠然と佇む姿は余裕の現れを示す。

それを上条は……嘲笑う。



上条「好きにすれば?」



告げられたその瞬間、余裕で塗り固められた神裂の表情が音を立てて崩れていくのを目の当たりに見る。
549 :977 [saga]:2011/06/27(月) 04:32:33.18 ID:N2vOuaQDO
全部投下しゅーりょーして寝オチってどーゆーことなの…



また次週!
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/27(月) 12:43:32.23 ID:SAmZqGjMo

神裂戦は展開が読めんな
551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 16:47:58.32 ID:VaQRYb+IO
乙。やっと追いつたぜ

美琴の中にも何か居るんだろうな
552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 19:38:34.00 ID:y2xLZTjN0

上条さんは神裂をどうやって倒すのか気になるな
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/29(水) 19:59:09.40 ID:TM+UDELk0
無双ばかりでも萎えるしな


神裂さんカッケー
ここの上条さんは「神浄の討魔」って感じじゃないな
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/06/30(木) 13:55:15.88 ID:NT+Z6O1AO
たまには無双があってもいいだろ
555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/07/03(日) 09:56:17.89 ID:FIjmqRY00
>>553
むしろ、神上到魔って感じだよな
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/07/04(月) 17:58:53.68 ID:kiFlWeMDO
昨日見つけてやっとここまで読めた…
これからも楽しく読ませてもらいます

>>1乙です
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/07/14(木) 15:22:28.38 ID:nz7tQLEs0
>>1まだか〜?
もう2週間経ってるぞー、
せめて生存報告だけでもお願いします
558 :977 [saga]:2011/07/16(土) 03:38:35.00 ID:b/zkTloDO
生きてます!ご安心を!!
ちょっと学校の合宿があり、色々忙しかったもので書けなかったのです…orz

長らくお待たせしました
投下をさせていだきます
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:44:38.07 ID:b/zkTloDO



神裂はワイヤーを操って『七閃』を繰り出す。
七つの斬撃は曲線を描いて上条当麻を襲う。

手のブレは単なるフェイク。刀の斬撃ではなく、指を巧みに操作して編み出すワイヤーの斬撃。
この種を目前の少年には明かしていない。
所有する手品を自ら進んで種をバラす手品師は居ない。それと一緒だ。
だけど、



上条「よっ、と」



―――何故か、上条当麻に『七閃』が当たることはない。



神裂「くっ……!?」



それどころかワイヤーの斬撃を潜り抜けて迅速なスピードで確実に迫ってきている。
一歩先に進めば斬撃の餌食なのに必ず彼は寸前で進行方向を変えて隙を抜ける。

報告を受けている右手は使ってこない。
ステイルとの戦闘では右手を決め手と防御に使い圧倒したと聞いているのに、上条当麻は使わない。

いや、そんなことよりも、



上条「おらよっ!」

神裂「ふっ!」




―――どうして『聖人』である私と肉弾戦で対等以上に渡り合えている?
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:45:43.01 ID:b/zkTloDO



世界に20人と居ないと言われる、生まれた時から神の子に似た身体的特徴・魔術的記号を持つ人間。
偶像の理論により『神の力の一端』をその身に宿すことができる。
人間の基本能力の脚力、腕力、耐久力、反射神経、聴力、視力に於いて圧倒的能力を発揮する。

それが『聖人』。

対するこの少年。魔術を打ち消す不思議な能力を右手に宿す接近戦が主な戦法の一般人。
ステイルの情報によれば『高校生とは思えない場馴れの雰囲気、とっさの判断力と敵を分析する冷静さを兼ね備えている』とのこと。
接近戦ならば相性が良い。
武道に長ける自分にとってはこの上なく好都合なほど。
敗北する要素なんて微塵も存在しなかった。
実戦してみても腕力や脚力、移動速度は遥かに自分の方が上回っている。

なのに。雲泥の差が存在するほど自分の方が実力は凌駕しているのに。
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:47:35.52 ID:b/zkTloDO



神裂「……本当に、何者なんですか。あなたは」



鞘に刀身を納めたまま七天七刀を薙ぎ払って上条当麻との距離を取り、間合を広げた。
研ぎ澄まされた薙ぎ一閃でさえ上条はバックステップで免れる。
それも直撃する寸前で。



神裂「筋力こそ劣るものの反応速度は私と同等。もしくはそれ以上です」



口元から垂れる血を拭い、一寸呼吸を整えて上条に問いかける。
彼も同様に血を拭い、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。



上条「近接戦闘は得意な方なんですよ、でもアンタも得意と見れる。正直な話、肉弾戦でここまで苦戦したのはアンタが初めてだ」

神裂「私もですよ。斬撃が当たらないと思えば、打撃でさえ決定的なダメージは与えられずかわされてばかり。その回避方法を学んで会得したいほどですね」

上条「それはそれは至極光栄ですこと。じゃあ教えてやるから一旦のされてくんね?」

神裂「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」



お互いに笑う。一歩も引かない姿勢に何か感じるものがあったのだろうか。
ほぼ互角で立場がまったく異なる二人だからこそ通じたのかもしれない。
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:50:22.12 ID:b/zkTloDO



神裂「―――ッ!」



一気に上空へ跳躍すると鞘に納めたままの刀をかざす。
急降下に伴って大気をも断ち切らんとばかりに振り下ろした。
その一連の動作は一瞬。
慣性の法則や重力を無視する、上条当麻にとって理解不能な原理で超越した速度。



上条「っ」



しかしそう簡単にやられる彼でもない。
振り下ろされる刀から僅かに身体をサイドへずらすことで直撃を逃れる。

容易くこなしているように見えて、結構限界ギリギリのラインの境目に立ってたりするのだ。
純粋な『力』ならば神裂に及ぶことはありえない。何だか原理からして違う気がするから。

だったら『力』で勝負しなければいいだけの話。

正直『左手』を使えないのが一番の痛手。
予想を遥かに超える怪物が相手、しかも異能をまったく繰り出さずに肉弾戦を好む。
必然的に『右手』の意味はなさない。異能を打ち消す能力だからだ。



上条「!?」



神裂の刀がアスファルトに触れる直前、彼女の姿がブレた。
常識範囲を越えた移動速度に上条は驚愕と動揺を隠しきれない。
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:53:15.18 ID:b/zkTloDO
こんな非常識な現象はマンガの世界だけと思っていた。
学園都市も十分マンガっぽい世界だが、そんなファンタジーでメルヘンなヤツは一握りである。





―――突如、上条は背筋にゾワリと悪寒を感じた。





とっさに振り返りながら腰に忍ばせてる拳銃を引き抜いて、銃口を背後に向けた。



上条「……」



その瞬間、上条は静止する。
しかし静止したのは彼だけではない。



神裂「……」



背後に回り込んだ神裂もまた、ピタッと指一本動かさず静止していた。

両者が止まる理由は単純明快。

拳銃の銃口が神裂の額に向けられて。
鞘に納まった刀が上条のコメカミまで迫っていたから。
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:55:19.78 ID:b/zkTloDO



上条「……」

神裂「……」



空気が張り詰めるさなか、二人の視線はバチリと交差したまま。
妙な汗がコメカミを伝っていき、雫となって滴り落ちアスファルトにとけ込む。

静寂が訪れて、一秒が果てしなく長く感じる錯覚を味わう二人は吹き抜ける風にさえ反応を示さない。
一分か二分かはたまた三分か。本人達にはとても長い時間を置いたあと、神裂が重い口を開ける。



神裂「一つだけ……聞いてもいいですか?」

上条「……なんだよ」

神裂「あなたは好きにすればいいと言いました。私達がインデックスを保護しようが好きにすればいいと」



上条は眉をひそめる。
彼女が続ける言葉を予測できてしまったから。



神裂「じゃあ何故、邪魔をするのですか? どうして……私達の前に立ちはだかるのですか?」



いや、



上条「んなもん決まってんだろ」



それ以外にも理由はあって、



神裂「……?」



もとより何故彼女は、



上条「そんな情けねぇ顔で、あのガキに会わせてやれるかよ」




―――今にも泣きそうな悲しい表情をしている?
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:57:23.69 ID:b/zkTloDO




凄くつまらない様子なのに。
だけど何処かとても辛そうで。



神裂「……っ!」



面食らったように酷く驚いた彼女はとっさに口元を片手で押える。
そんな神裂に目もくれず上条は口頭を止めない。



上条「シケた面ぁ晒しやがって、どうせテメェ本気出してねーんだろ? 何か理由あんのか知らねえけど」



盛大に溜息を吐いて、彼は睨み付けた。



上条「どうだっていいんだよ。そっちの事情なんざ。あのガキを保護したきゃあ俺をブチ殺してから行きやがれ」




―――カチャリ、と。拳銃に弾丸を装填した。




神裂「ッッ!!!?」



急激に背筋から死の危険を感じた彼女は銃口からなるべく逸らすように首を反らす。
首の骨に心配をかける余裕は無い。かけれるほどの時間は存在しなかった。
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 03:58:40.59 ID:b/zkTloDO
銃声が辺りを轟かせ、刹那の如く突き抜ける弾丸はポニーテールの髪を僅かに掠める。
コンマ一秒の戦い。
一瞬の遅れも許されないのだ。



神裂(しかし、この少年に魔法名を名乗るわけには―――がっ!!?)



いつ放ったのか。上条はもう片方の手で神裂の鳩尾へ拳を入れる。
めり込むように突いた一撃は重くて、神裂の体力を著しい勢いで削いでいく。



神裂「こ、んの……ッ!!」



それでも決して屈さないのが彼女である。
例えどんな攻撃を喰らって体が崩れ落ちそうになっても、こんな所で倒れるわけにはいかない。
体を全体から芯まで気力だけで奮い立たせ―――足を踏ん張った。



上条「ごぁっ!?」



コメカミから狙いが逸れた刀は上条の脇腹へ反撃。
ゼロ距離から殴打したはずなのに振りかぶった勢いと同様の威力を誇っていた。
根本的に力だけの差だとこれほどまでに違いが明確に出るかと上条は実感する。
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:00:24.64 ID:b/zkTloDO

上条が刀の殴打を喰らって怯むその一瞬、更に神裂は流れるように追撃の膝蹴り。
凄まじい威力だった所為か上条は体ごと飛んでいき、ビルの壁に激突。
背中を強打し呻き声を上げようとするが、それは声にも乏しい掠れた音が漏れた。



神裂「―――ッ!!」



すかさず彼女は迅速に反応してアスファルトを蹴って駆け出す。
寸分の余地も与えないまま追撃を繰り出して決着をつける気だ。

……その時、上条の虚ろだった目が急に見開かれる。

神裂を見る眼差しは確かな光を宿していて、まだ諦めないという意志が伝わってくる。
BANG! と轟く銃声。上条が向かって来る神裂に発砲したからだ。
しかし先ほどのようなゼロ距離からではない。故に彼女にとって一発の銃弾をよけることは造作に無いのだ。



神裂「ッッ!!!?」



……が。

銃弾をよけた途端、頬に衝撃を受けて視界が揺れる。
突如の出来事により受身を取れないまま衝撃の反動で、五メートル以上の距離をノーバウンドで飛んでいく。

ズキズキ痛む頬は無視してバッと顔を上げて前方を目視。
そこには振り抜いた拳を突き出す上条当麻の姿。
肩を揺らし息を切らせながらも彼は口角を上げて不敵な笑みを漏らす。



神裂「弾はフェイントですか……」



どれほどの戦術を所有しているのか、計り知れない彼の潜在能力に神裂は驚愕を隠しきれない。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:05:09.39 ID:b/zkTloDO
もはやロンドンでは十本の指に入る自分の実力を越していると明言しても過言ではない。

強い。惰弱で無力な己よりも。
何も出来なくて、ただ虚しく見ていることだけしか許されなかった自分よりも……。








『私……忘れないよ。かおりも……ステイルも! ぜったい忘れないから……っっ!!』








―――だけど。




神裂(強いから、どうしたというのですか……!!)



あの時。『インデックス』に最後の別れを告げたあの日。
この身に受けた悲しみ。
どうする事も出来なかった。
絶望しか存在しない結末を見届けること以外、何も出来なかった。

それに比べれば今の現状なんて―――!



神裂「……何も知らないあなたに、負けるわけにはいかないのです」



ボソッと。悲哀の感情を織り交ぜて言う。
刀の柄をより強く握りしめて敵意の眼差しで決意を表明をした。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:07:23.58 ID:b/zkTloDO

独り言のように呟かれたソレは上条にも届いていた。
「何も知らない」というありきたりなキーワードで彼は何となく状況を把握した。
どうやら『インデックスの敵に回らなければならない』理由があるらしい。

故に、



上条「なおさら腹が立つんだよ……ッ!!」



反吐が出るほど。
ツバを吐き棄てたくなるほど。
上条当麻は腹の底から湧き上がる憤りを晴らすようにアスファルトを蹴って拳を振るう。
初めて対峙した時から感じてはいた。漂う雰囲気や匂いは熟知するぐらい知っているものだ。

似ている。非常によく似ている。

己が辿る道が誤りだということは承知の上、進む足を止めない。
決して自分が冒してきた行為と歩んできた人生は正しくはない。
胸を張って威張れるような立派に大成を果たす人間じゃない。
無知で無力。これに尽きる。
何も知らず知らされず現実を目の当りにして、何の力も無いが故に目前の幻想も守り抜けなくて。

無力だから、たった一つの幻想も護りきれない。

何度も歯を食いしばって血が滲むほどの努力を積み重ねてきたところで、現実は何一つ変わりはしない。
それでも譲れない物があるから、例え敵に回りこむ事になったとしても。
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:08:42.74 ID:b/zkTloDO



上条「―――ッ!!!!」



……その生きる有様が、自分に似ている。

まるで自分の姿を鏡で写しているようだ。
自分と同じようにきっと彼女の中にも、ブチ壊す事が不可能な現実が存在しているはず。
だからこそ神裂に譲れない物があるのも判る。



上条「……だよ」




―――しかし。




上条「……何のためにテメェは力を付けたんだよ」




―――だからこそ上条は言いたいことがある。
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:09:26.48 ID:b/zkTloDO




神裂「はい……?」



間合を十分に取ってから刀を低く構え、横薙ぎに大気を斬り裂くその寸前、神裂は思わず手を止めて意表を突かれたように目を見開いた。
あまりにも想定外の言葉を告げられたので、言い返す余地も無ければ反論の言葉も浮かんでこない。



上条「テメェらにどんな事情があるのか知らねーし、知りたくもない。人のプライベートにズカズカと入る図々しいタチでもねぇ」



けどなっ! と力強く叫ぶ。
訴えかける口振りで彼は続ける。

結局、上条にとって神裂が何を抱えているかなんてどうでもいい。
その生き様を含めてほとんどが自分に似ているからこそ、腹が立つ。ただそれだけ。



上条「言っておきたいことがある」



同族嫌悪もいい所。
だけど自分に似ているからこそ言いたいことがある。



上条「テメェのその力。一体何のために付けたんだ?」



己がそうだったから、彼女達に歩む道を踏み間違えてほしくない。

人生なんていつ何が起きるか判らない。
もしかしたら明日には自分のように『闇』に陥るかもしれないのだから。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:12:34.82 ID:b/zkTloDO



上条「テメェはッ!!」



勢いよくアスファルトを蹴って駆け出す。
一瞬で間合を詰められたことに危険を感じた神裂は即座に刀を構える……が、刀が抜けることは決してない。
抜けさせないために彼の左手が柄へ手をかけ押さえつけているのだ。

そのまま突撃した勢いを殺さずに右手の拳を神裂の顔面目掛けて振るう。
間一髪反応を示した神裂はとっさに刀から片手を離して拳を受け止めた。

しかし上条は気にせずに言葉を紡ぐ。



上条「テメェは力があるから仕方なく人を守ってんのか……?」



その言葉に神裂火織が驚愕を感じたと同時、心にグサッと痛感したのは言うまでもない。
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/16(土) 04:15:08.98 ID:b/zkTloDO



上条「違うだろ!? 守りたいモノがあるから力を手に入れたんだろうが!!」



れっきとした理由は必ずある。
自分もそうだったから。
強くなると天に誓う直前、一体なんの為に強くなると事を決めて、






『当麻っ』






―――一体その手で誰の笑顔を守り通したかった?




上条「力を手にする意味を!!」



頭突きを繰り出して、神裂が一寸怯んだ隙に一歩だけ下がる。
右手を振りかぶるための距離を作ったのだ。



上条「履き違えてんじゃねぇぞおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」



咆哮と共に振り抜かれた拳は神裂の頬を確実に捉えた。
渾身の一撃を喰らった彼女は立ち上がることなく、地面に仰向けの状態でのされる。



上条「はっ、はっ……―――」



そして彼もまた、力が抜けたかのように膝から崩れ落ちて……意識を失った。
574 :977 [saga]:2011/07/16(土) 04:19:28.32 ID:b/zkTloDO
投下しゅーりょーです


ではでは、自分は寝ます
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 04:21:11.23 ID:muQs+QrBo
生身で聖人相手に勝利とかTUEEEEEE
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 08:22:10.79 ID:OD6Ol/Xj0
いや大量殺人者に説教されましても……
全然説得力無いし、ピンとこない
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 09:13:35.97 ID:RXmOIVsDO
別にこの上条さんは義をなそうとして正論振りかざしてるわけじゃないからなぁ
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 12:57:46.75 ID:h684Fg0p0

次も期待してる
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/16(土) 14:21:26.22 ID:+qNfdmgAO
今回の説教は同族嫌悪からきてるからなあ
>>1
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [saga]:2011/07/16(土) 15:02:46.65 ID:8sY3XFk60
>>1
ここの上条さんはレベル5より強いからな
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 17:19:36.89 ID:k+Upnnyoo
乙です
この上条さんなら神の右席戦もだいぶ楽だなぁ
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/17(日) 09:19:21.88 ID:0IZrObEio
アックアはさすがに無理だろうけどな
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/17(日) 21:58:06.29 ID:ciUQA/LM0
左手あるからアックアも負けんじゃね?
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/29(金) 12:37:53.64 ID:EbWwRdTH0
早く書けよー二週間経ってるぞー
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage saga]:2011/07/29(金) 15:28:07.93 ID:3Q8+SxaK0
ドラゴン?
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 15:53:36.79 ID:tEd+NWxA0
来たかと思ったら……
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [saga]:2011/08/01(月) 07:58:40.67 ID:5bEUrOCn0
こねえな
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/01(月) 09:43:28.72 ID:f7f7dhk20
>>1め、まさか逃走した訳ではあるまいな?
589 :977 [sage]:2011/08/02(火) 20:18:19.84 ID:Q4yF1lzDO
逃走は絶対にしません
必ず完結させます

ただ書く時間が少なすぎて区切りまでいかないのですorz

もう少しで投下に至るので!
本当にすみません
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/03(水) 02:12:31.96 ID:hWwEqnQko
生存報告してくれるだけいいと思うよ
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/03(水) 13:56:55.36 ID:Ef5G19WXo
いったいどんな上条さんかと思ったら>>1条さんだったでござるの巻き
592 :977 [saga]:2011/08/05(金) 07:03:59.98 ID:0DnLbYnDO
投下していきます
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:06:15.07 ID:0DnLbYnDO



上条当麻。神裂火織。
二人の死線を巡る激闘に終止符が打たれ、ほんの一時に過ぎない静寂が訪れて、ただただビルの隙間を突き抜ける微風が場に残る。
空に浮かぶ月が覗く今宵、死闘を繰り広げた二人の精鋭者が残した跡地に足を踏み入れる者は一人としていな、




―――コツ。




……いや、居た。人払いの術式を施したこの場に足を踏み入れる者が。
しかもその者は魔術師。神裂と同じくインデックスを保護をしに学園都市へやってきたルーンの使い手。

赤い髪。
黒い修道服。
毒々しいピアス。
名はステイル=マグヌス。
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:08:07.04 ID:0DnLbYnDO



ステイル(……本気を出していないとはいえ、聖人の神裂でさえ相打ちか……どうりで僕じゃ適わないはずだ)



心の中で悪態をついて呆れたように嘆息を漏らした。
上条当麻という少年の計り知れない潜在能力に僅かながらも恐怖を覚える。
全力で挑んでないとはいえ、それでも神裂に匹敵する実力者。
恐怖を覚えるのも無理はないだろう。



ステイル(とりあえず神裂は回収するとして)



チラリと路上で倒れている上条を見下ろす。



ステイル(……なんなら今すぐタバコに火をつけて、押し付けてもいいんだけどね)



所謂根性焼きというやつだ。
けれど、どうにもタバコを吸う気分になれないのもしかり。
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:10:07.00 ID:0DnLbYnDO
それにタバコを押し付けるぐらいなら、炎剣で焼き払う方が心に残るわだかまりも晴れるだろう。

……と、そこまで思考すると彼は頭を大きく横に振った。



ステイル「いけないね。目的を履き違えてる。門違いもいいところだ」



目的はあくまでインデックスの保護。
上条当麻の殺害ではない。



ステイル「でも、彼をどうにかして運ばないと駄目なのも確かなんだけどね」

「懸念してるトコ悪ィが、それは問題ねェよ」




―――ドンッ!!!! と。




突如頭上から声がしたと思えば、空を仰ぐ前に地面が大きく揺れる。
まるで小さい隕石が落ちてきたかのようにアスファルトがいとも簡単に砕けてクレーターが生じた。



ステイル「なんだ……?」



彼が見たものを一言で表すと『白色』だった。
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:11:38.60 ID:0DnLbYnDO
髪の色は白。素肌の色も白。服装でさえ白。
全部が白色で染まった少年がクレーターの中心で悠然と立っていた。
あれほどの衝撃を起こしたのにもかかわらず少年は無傷で済ます。



「……」



チラッと一回だけステイルの方を一瞥。
しかし少年は何も告げずに無言のまま踵を返すと、上条当麻へ向かって歩き出した。



ステイル「待ちなよ。せめて何者かぐらい名乗ってほしいね」



すかさずステイルは制止の声をかける。
本来なら深く追究せず放っておいた方がいいのだろう。こちらに害を与える素振りは見られないのだから。
上条当麻に近付くということはおそらく彼の関係者か、或いは仲間か。
どちらにしても、上条当麻を引き取ってくれるのならば手間が省けて万々歳なのだ。

しかしステイルが止める理由が関係してくると話は異なる。

そもそもだ。今ここら一帯は誰も居ないはずで、居られないはず。
何故ならステイルが施したルーン魔術の一つである『人払い』を発動させているのだから。



「あァ? オマエみたいな三下に名乗るほどの名前なンざ持ち合わせてねェよ」



背を向けたまま顔だけを振り返らせて、至極億劫そうに吐き捨てた。
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:13:39.56 ID:0DnLbYnDO

眼中に無くあしらわれた扱いにステイルは心底から溜息を吐く。



ステイル「……学園都市っていうのは異色の人間の集まりなのかい」



あえて口にしたのは嫌味のつもり。
小さくボソッと呟かれたソレは当然、白い少年の耳にも届いていた。
だけど少年は取り合わない。無視を決め込んで上条の下へ歩み寄る。―――その時、



「おいおい、そんなモヤシみてぇな腕で担げんのかぁ? 一方通行さんよ」



―――フワリと。純白の輝きを放つ一枚の羽根が舞い落ちる。



ステイル「……ッ!?」



顔を見上げるとそこには驚愕の光景が広がっていた。
天使の象徴である純白の翼を背中に携えた新たな少年が頭上高く飛んでいた。



一方「うるせェよバカキネ。オマエはそこらの泥に埋もれてろ」

垣根「んだよせっかく人が心配してやってんのに」

一方「心配じゃなくて嫌味の間違いだろォが」

垣根「ひねくれちゃあイケないイケない。人のご厚意を無駄にしてるぜお前」



チッチッチ、と指を振りながら地上へ華麗に着地。
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:14:58.61 ID:0DnLbYnDO



垣根「リンゴ三個分以上の重い物は持てません! とか言っても通じそうな腕してんもんな」

一方「ンなことほざくヤツはテレビの中の連中で頭がぶっ飛んでる野郎だけだ」

垣根「違いねぇ。逆にテメェがそんなこと言ってたら寒気が走るっつーの」

一方「言ってろメルヘン野郎」

垣根「うるせぇよ中二病野郎」



互いに互いを罵り合うも、何故か顔は笑っていた。
理由は定かではない。二人にしか通じ合わない何かがあるのかもしれない。



垣根「しかしまぁ……」



垣根は体を翻してチラリと一瞥。
下から神裂を流してステイルで視線が止まる。
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:18:44.65 ID:0DnLbYnDO



垣根「上条が言ってた敵ってのぁ恐ろしいほどに奇抜なヤツらだなオイ。
   露出狂サムライガールにやさぐれた不良神父かよ。常識が通用しない俺でも笑っちまうぜ」

一方「ホストみてェな格好をしたヤツが、背中に天使の翼生やして空から降りてくるっつーのもなかなか滑稽だがな」

垣根「うるせぇッ。人がマジメに話を進めようとしてるのに横槍入れんじゃねぇよ!」

一方「普段からフザけてっから締まらねェンだよボケ。柄じゃねェことすンな」



火を噴くような勢いで垣根は食い付く。
それを一方通行は冷静に一つ一つツッコミを入れる。

ドコからどう見ても漫才にしか見えないのは気のせいではないだろう。
実際、ステイルはそうとしか見えなかった。



ステイル「……遊びに付き合ってるほど、僕もヒマじゃないんだけど?」



シビレを切らしたらしく、苛立ちを織り交ぜて問う。
未だに言合いを繰り広げていた二人もステイルの呟きを皮切りに、顔付きを真剣なものへ変える。



ステイル「もはやどうやってココに来たとか聞かない。それよりそこで倒れているヤツは君達に任せていいんだね?」



顎をくいっと上げて指す。
目で追わなくても垣根と一方通行には誰を示しているのか判る。
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:21:47.15 ID:0DnLbYnDO



ステイル「僕は僕の身内を回収する。もしそうだとしたら大助かりなんだけどね」



溜息を吐いて肩を落とした。

全部聞き終えた垣根は不敵な笑みを浮かべて……鼻で笑う。



垣根「当然だろ。おそらく上条もこのために浜面に電話したんだろうし、はなからテメェらなんざ眼中に無ぇよ」



吐き棄てるように言葉を告げて、彼は踵を返して上条の下へ向かう。
一方通行はその様子を横目で目視すると、やれやれと言わんばかりに肩を竦ませた。



一方「まァ、そォいうこった。癪な話だがコイツの言う通りなンでな」


追随して垣根と同様に上条の下へ再び歩き始めた。



ステイル「言われるまでもない、か……」



ついに我慢ができなくなったのか、懐からタバコを取り出して口にくわえ、火を付ける。
頭の中で「一本だけ吸って、さっさと引き下がろう」と思考を固める。






「待……って、下さい……っ」






―――が、固めたばかりの思考はその言葉によって崩壊する。
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:25:51.73 ID:0DnLbYnDO



一方「あン……?」



全く聞き覚えのない初めて耳にする声に一方通行は思わず立ち止まって振り返った。
すると彼は目を見開いて驚愕を示す。



神裂「……っ」



刀の切先を地面に突き立てて杖のように扱い、自らの身体を支える。
顔色は決してよくない。今にも倒れそうなほどだ。
満身創痍の彼女が意識を取り戻すことができたのは純粋な気力。



一方「大したもンだ。上条の拳を何発も喰らっときながら意識を回復させるとはなァ。捜してもそォそォ居ねェよ」



素直に賞賛の言葉を贈る。
少なくとも上条当麻の本気の拳を受けてもなお、意識を取り戻して再度立ち上がった人物は知る限りでも片手で数えれる程度。
グループの内で挙げるなら浜面だけだ。
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:27:50.61 ID:0DnLbYnDO



一方「で? どォするってンだ? まさか、ンなボロボロの体で再戦を挑もうとか思っちゃってるワケですかァ?」

神裂「……違います。あなたを打ちのめしたところで、ソコの少年に敗北を喫した事実は変わりません」



ゆっくりと顔を横に振った。
今ココで一方通行や垣根を倒しても意味が無い、と。



神裂「そんなことよりも一つだけ聞かせて下さい」



彼女の瞳が一方通行を映す。
すがるように神裂は懸命に立ち上がった。

神裂にとって勝利や敗北とか勝者や敗者なんてどうだっていい。
それよりも。そんな些細なことよりも。
たった一つだけ。



神裂「彼は……過去に何か辛い思いをした経験があるのですか?」



告げた言葉にかすかでも、一方通行の眉間にシワをよせたのは間違いなかった。
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/05(金) 07:32:03.53 ID:0DnLbYnDO

でも彼は応答を出さない。口は堅く貝のように閉ざされたままだ。
神裂もそれ以上は口を開かず一方通行が答えるのを待つ。

しばらくの間、お互い硬直状態が続く。
すると観念したのか、一方通行は盛大に溜息をついて肩を落とした。



一方「……俺も詳しくは知らねェ。そもそもアイツはなンも語ろォとしねェし、こっちとしても聞く気はさらさら無いからな」



億劫そうに述べ始める。
固く目を閉じて記憶をさかのぼり思い出すように。



一方「ただ言えるのはテメェの推測通り、アイツに『なンかあった』のは確かだ。それを一目で見破ったことは素直に凄いと思う」



彼は神裂に背中を向け、今度こそ歩き出す。



一方「まァ、正直どォでもいいがな。何かあっても上条は上条のままだ。変わりはねェよ」



最後に呟いた言葉は神裂へ向けてなのか、単なる独り言なのか、定かではない。
604 :977 [saga]:2011/08/05(金) 07:34:08.90 ID:0DnLbYnDO
投下しゅーりょーです
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 07:35:26.61 ID:4IO9WEvBo
乙乙
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 08:52:18.39 ID:FSJBkX1DO
乙!
待ってた
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 08:53:00.49 ID:wRDcESZDO
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/05(金) 09:24:53.42 ID:+FO3jCxc0
乙っす〜
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/05(金) 09:31:06.07 ID:BdE/YQHU0

いいねえ、浜面さり気にすごいやつ
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 11:13:23.89 ID:7XJNBgT9o
乙!
この4人の掛け合いが楽しい
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 12:28:38.66 ID:SxZFnDtTo
なんかこいつらかっけーwwww
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/05(金) 19:28:30.74 ID:sqkpgfMUo

浜面すげぇ
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/08/05(金) 21:21:40.97 ID:/cWaX3RZ0


さすがは世紀末帝王HAMADURAだなwwwwww
614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 22:39:59.44 ID:OZKyqY+E0
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 22:39:59.98 ID:OZKyqY+E0
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 22:39:59.69 ID:OZKyqY+E0
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/06(土) 17:45:37.29 ID:jlgKSOtAO
ステイルが神裂は全力じゃない全力出してない強調しすぎだと思ったんだが現実逃避の伏線か?
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/06(土) 17:57:24.76 ID:Jvo4/c080
乙!
短くても許されるほどの面白さだな
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/08/06(土) 20:35:45.07 ID:vdP/c5lj0
乙!
かっけえ
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(京都府) [sage]:2011/08/07(日) 07:36:08.95 ID:shi/FTJoo
>>617
相手が天使でも全力はださないやつだからじゃね?
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2011/08/09(火) 09:24:34.41 ID:xus19Vcu0
てか、本気出すと自分の身も危ないから出さなかったんじゃなかったけ?
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/16(火) 02:42:25.71 ID:0EJxdGUk0
一週間だね
でも応援してる
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) :2011/08/20(土) 15:10:42.99 ID:km2W8pVT0
続きが気になる
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/20(土) 16:01:16.86 ID:9CS4sW0AO
>>623
作者がキタと思って私みたいに期待する人がいます
ageないでください
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/20(土) 17:54:52.69 ID:2XYi0UX/0
>>623ぞぷり
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/21(日) 07:21:53.25 ID:4vfKByYa0
それにしても最近投下遅いな
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2011/08/22(月) 20:11:01.67 ID:LPtAVwg+0
来ない
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/22(月) 21:03:45.19 ID:CLTTAMiAO
>>627 sageろよ
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/08/23(火) 01:28:24.13 ID:p0FVMgGo0
知能が低いからsageれないんだよ
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/23(火) 01:50:29.40 ID:mWAJ48aPo
投下してください
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/23(火) 17:54:31.74 ID:iepPJ4wGo
専ブラぐらい使えばいいのに
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 02:44:05.24 ID:EL/XJJXSo
だとしてもsageるのはマナー
633 :977 [saga]:2011/08/24(水) 08:02:13.90 ID:dx66JS7DO
投下します

遅い割に投下量が少ないのは言われるまでもありません
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:04:30.00 ID:dx66JS7DO



まだ太陽も昇らない深夜。
誰もが就寝につき、街灯の明りでさえ消えてしまっている時間帯。

そんな中、月詠小萌の自宅であるボロいアパートにワゴン車が停まっていた。
二階へ繋がる階段に腰を落とす少年が一人。手摺にもたれ掛って缶コーヒーを手にする少年が一人。



垣根「……どう思う」

一方「なにが」



今の今まで鍵をくるくると回して弄んでいた垣根が唐突に問いかけた。
コーヒーを喉に通しつつ一方通行が気怠そうに返答する。



垣根「リーダーの事に決まってんだろ」

一方「ンなこたァ判ってる。上条に対して何をどォ思うのか、っていうのを聞いてンだ」

垣根「あのリーダーが人に気を掛けたこと」
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:05:08.76 ID:dx66JS7DO



ようやく聞き入れる気になったのか、空へ向いていた視線が垣根に移った。
相変わらず垣根の目が行く先は弄くっている鍵にだが、構わずに彼は再度問う。



垣根「珍しいと思わね? 第三位以外に優先対象が居るなんてさ」



先程、浜面が運転するワゴン車で上条は意識を取り戻した。
そして予想外だったのが自宅へ送ってもらうのではなく、インデックスが傷を癒すためにお邪魔している小萌宅に行け、と上条が命令した事。
自身の回復よりも彼女の安否を気遣ったのだ。



垣根「しかも見た限り外人で神様を信じてるようなシスターじゃん」

一方「……結局何が言いてェンだ」

垣根「リーダーの特別扱いとかなにそれ羨ましい」

一方「だろォと思ったぜクソッタレが……」



心底から嘆息を漏らしてガックリと肩を落とす。
636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:09:27.15 ID:dx66JS7DO
やはりこの男からマジメな話が聞ける事は到底ありえない、と再確認する一方通行だった。

そんな彼の心境を知らない垣根はケラケラと笑い、



垣根「ま、珍しいとは純粋に感じてるぜ? けど別に悪いとか思っちゃいねーし、むしろ良い事だと思ってるからな」

一方「今さっきオマエ羨ましいとかホザいてたじゃねェか」

垣根「気にすんなよ。いつものことだろ?」

一方「…………」



正論すぎて一方通行は何も言い返されない。
垣根の言動を世間一般的に言えば開き直りでしかなかった。自覚があるからこそタチが悪い事この上ない。
しかもその性質を一方通行は理解しているからこそ、声を怒鳴りあげる行為は体力の浪費でしかない事も判っている。
何故ならこの男は言ったって効かないのだから。



一方(悪循環しか生まれねェのかよ……)



溜息ばかり吐いている気がするのは、気のせいでは無いだろう。
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:10:57.37 ID:dx66JS7DO



垣根「あの銀髪シスターが第三位に続く上条を支える存在になるなら万々歳さ。……それよりも」



カシャッ、と鍵を握りしめて弄くるのを止めた。
不敵な笑みを浮かばせながら一方通行と視線を合わせ、垣根は言う。



垣根「俺が気に掛けてんのは、この事をアレイスターの野郎が知ってるのかどうかの点さ」

一方「……!」



僅かに一方通行の目が細くなり、眉をひそめた。
「アレイスター」という単語に敏感に反応してしまったのは、仕方のない事。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:12:56.19 ID:dx66JS7DO
垣根は更に笑みを濃くし、



垣根「むしろ知ってなきゃ可笑しいだろ。学園都市を統括するご偉いさんが不法侵入者の動向を」

一方「オイ、その不法侵入者ってのァ……」

垣根「あの銀髪シスターさ。一応バンクに名前と詳細が載ってやがったが、ありゃぁ捏造されたニセモンだな」

一方「……するとなンだ。仮にオマエの言う通りだとして、っつー事はあのガキは『上』の連中から黙認されてるってワケか?」

垣根「ビンゴ」



ピッと人差し指を一方通行へ指して、片目を閉じてウインクを放つ。



一方「ンなVIPなお客様が上条と接点を持ったンだから『上』が看過するはずがねェと、そォ言いてェンだな?」

垣根「ああ。だがアレイスターの野郎が何らかの対応策を講じる様子は見られない。……となると」

一方「上条とあのガキの接触そのものが『上』の狙い、ってか」

垣根「その通り。まあ、アレイスターが目論んでる『プラン』が関与してくるかって聞かれたら知らねぇけど」



肩を竦ませて首を横に振る。
情報が足りないが故にこれ以上先の推測は難しい、と言わんばかりに。




垣根「―――でも」




刹那。一向に変わらない口調だが、明確に垣根をまとう空気が張り詰めた。
垣根もそれを自覚していて底意地の悪い笑みを浮かべる。
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:15:41.43 ID:dx66JS7DO



垣根「ここまで言っておいて、更に『プラン』って発言までしたにも拘わらず、アレイスターの野郎からの『ご挨拶』が何も無いという事は……俺達の憶測もあながち間違っては無さそうだぜ?」

一方「…………」



話題が話題なだけに、最先端の技術が行使されて首が落ちても可笑しくないレベル程度の話はしていたはずだ。
それこそ無理矢理にでも会話を中止にさせるくらいの事をしてきても変では無い。
電話でもいい。「度を超えた詮索は自らの命を落とすぞ?」的な警告が取締役からあっても構わなかった。

しかし、それも無い。



浜面「悪い! 遅くなったっ」



カンカンカン! と二階から浜面が慌ただしく駆け下りてきた。
上条との色々な用事をようやく済ませてきたらしい。

これを皮切りに緊張の糸が解けたのか、周囲の空気も二人の強張った表情も弛緩する。
緩やかになったものの、垣根は不敵な笑みを崩さない。
その意図は一方通行に先ほどの話題の重要性を示唆するためなのか、定かではないが一方通行はそう捉えた。



垣根「とりあえずだ、一応テメェも警戒しておいた方が良さそうだぜ。何を仕掛けてくるか予想が付かねぇからな」



もちろん俺も、と付け加えて彼は立ち上がる。
640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:16:36.26 ID:dx66JS7DO
一方通行の返事を聞かないまま浜面の肩に腕を回した。



垣根「よっし浜面ぁ、ちょっと付き合え。行かなきゃならない所があるんだ」

浜面「はあ? 何で俺が巻き込まれないと……」

垣根「つべこべ言ってんじゃねぇよ。俺は自動車の運転なんざ出来ないんだよ」

浜面「おもっくそパシリかよっ! だったら能力使えばいいじゃねえか!!」



近所迷惑という事を知らないのか。全く遠慮無しに騒ぎながらワゴン車に向かう二人。
なんだかんだで垣根から車の鍵を受け取るあたり、仲の良さが垣間見える。



垣根「……あ」



ふと、足を止めた。
顔だけ一方通行の方へ振り返ると、彼は純粋無垢な少年のような笑顔を放った。
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:17:37.16 ID:dx66JS7DO












垣根「安心しろ。俺達四人は永久不滅だ」












その言葉だけを残して、二人は闇に消えていく。
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:19:10.98 ID:dx66JS7DO




―――――――――――――――




一方「……ったく」



ワゴン車が完全に消えてから彼は再び缶コーヒーの中身を喉に通す。
まるで嵐のように騒ぐだけ騒いで勝手に過ぎ去っていった二人に嘆息すら出ない。


『安心しろ。俺達四人は永久不滅だ』


一方通行の脳裏に反芻されるのはそのセリフばかり。
何だか己の心境を見透かされた気がして癪ではあるが、垣根の言う通り不安を抱いていたのも事実。
いつまでも平穏な関係が続くはずが無い、と。
だからこそ垣根が告げたセリフに微かではあるが、不安が取り除かれた。
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:20:33.31 ID:dx66JS7DO



一方「馬鹿野郎が……当然に決まってンだろ」



出る言葉こそ皮肉だが、表情は自然と笑みを浮かべてしまう。
純粋に嬉しかった気持ちが露呈したのだ。

そう。苛む必要は無い。
自分を含む四人……『俺達』は永久不滅なのだから。
例え何があろうと裂かれる事のない親友なのだから。



一方「まァ俺達を裂こうものなら逆に五体を八つに裂いてやるがな」



クククッ、と喉を鳴らす。
垣根に似た底意地の悪い笑みを浮かべるその表情は、心の底から楽しんでること間違いないだろう。
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:22:22.66 ID:dx66JS7DO
どんな闇を掻い潜ってきた者でも震え上がらせる瞳を宿す第一位は、残り僅かのコーヒーを飲み干す―――その時。





―――突如としてけたたましい音が辺りを響かせた。





一方「!!」



突然鳴り響いた轟音に一方通行は思わず手をピタッと止めた。
何よりも彼が気に留めたのは轟音がしたその方向である。



一方「上条が居る部屋じゃねェかッ!!」



缶コーヒーを背後へ放り投げて階段を駆け上って行く。
投げる際に一瞬で演算をし、ゴミ箱に入るようベクトル操作できたのは彼故になせる技。

二階まで上がると、見えた物はもはや原型を留めていないスクラップ状の玄関の扉だった。
しかもその扉は上条が居た担任の部屋の物。確信する心に浮き出てくるのは焦燥感。
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:24:42.96 ID:dx66JS7DO



一方「……ンな発泡スチロール感覚で破壊してンじゃねェっつーの」



冷静にツッコミを入れるも焦りの色は全く消えない。
手摺に引っ掛かっている扉を蹴飛ばして何の躊躇もせずに部屋に突入する―――が、一方通行は足を止めてしまう。
コメカミには一滴、たった一滴にしか過ぎないが冷や汗が滴る。

そこには上条の姿があった。
もちろん銀髪シスターの姿も。
何の変わりも無い。数十分前と同じ風景のなか、唯一違う点。






「―――新たな敵兵を確認。戦闘思考の変更戦場の検索を開始―――現状、『上条当麻』の破壊を最優先します」






―――確実に銀髪シスターの様子が異常という点。

放つ殺気は第一位の足を思わず止めてしまうほど。
闇の中を捜してもそんなデタラメな殺気を放つ人間は少なくとも居ない。



一方「オイオイ、こりゃァ厄介っていうレベルじゃ無くなってきてンだろ……」



苦笑しか浮かべない現状に、彼は嘆くしかない。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/24(水) 08:26:35.06 ID:dx66JS7DO
投下しゅーりょーです

ではまた
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方) [sage]:2011/08/24(水) 08:56:03.43 ID:J6+T2bGKo
648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 08:57:45.90 ID:VIc86ugYo
おつ
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 10:42:54.28 ID:4JERHMvH0
乙である
妹達はまだであるか
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/24(水) 12:11:57.72 ID:zh+JlFsNo

ペンデックスとの対決で記憶を失うのは誰か?
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) :2011/08/24(水) 13:41:49.39 ID:xJCZUbqP0
垣根がフラグを建ててしまった・・・
652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 15:36:44.44 ID:UXx69aG40
乙!
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/24(水) 20:31:42.57 ID:8wsa6fwIO
垣根ェ……
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/25(木) 02:15:08.16 ID:6t+4gEEEo
相変わらず面白過ぎる・・・
655 :名無し :2011/08/26(金) 13:51:04.03 ID:4W5cUJmIO
自分のペースでいいから書いてくれ。
待ってる(´Д` )
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/26(金) 13:54:34.38 ID:rOdxzzOAO
>>655

作者かと思ったら…
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/08/26(金) 15:22:11.30 ID:XAGvwMZAO
>>655
sageろって
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/26(金) 17:53:13.55 ID:6cZfGsgDO
>>655
低能がレスしてんじゃねーよ
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/26(金) 23:54:39.99 ID:7k13YuoU0
>>655
半年間ROMってろ
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 00:06:56.78 ID:BEvj6rA/o
>>655
おまえss速報はじめてか? メール欄にsage入れて力抜けよ
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/27(土) 00:42:43.13 ID:5j/GzJ7Lo
お前ら怖いよ
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/08/27(土) 01:57:05.32 ID:BgHpS4AAO
>>661

sageるのは基本だろ 注意するのは当然だろ
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/08/27(土) 01:57:38.95 ID:BgHpS4AAO
>>661

sageるのは基本だろ 注意するのは当然だろ
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2011/08/27(土) 01:58:19.53 ID:BgHpS4AAO
>>661

sageるのは基本だろ 注意するのは当然だろ
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 02:12:32.75 ID:BEvj6rA/o
>>661
こんなんあいさつみたいなもん
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 02:13:13.82 ID:BEvj6rA/o
>>661
こんなんあいさつみたいなもん
667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/27(土) 02:37:49.80 ID:Ee3WeHjAo
とか言いながらエラーの対処も分からないなんてwww
668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 02:43:35.47 ID:BEvj6rA/o
>>667
ID変えてきたのか? いまさら煽りとか恥ずかしいぞ
>>655>>661じゃないなら黙ってろ
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/27(土) 03:08:38.49 ID:Ee3WeHjAo
図星突かれて顔真っ赤で荒らしに反応www
やばいwww夏休みすぎるwwwww
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 03:12:40.21 ID:BEvj6rA/o
>>669
つーことはお前は>>665>>661なんだな?
恥ずかしい奴だ 荒らしに反応って言ってる時点でお前の発言の正当性は無い
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 03:16:05.60 ID:BEvj6rA/o
>>665じゃなくて>>655だった
恥ずかしい発言をしたのは俺ということになってしまった
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 07:01:07.92 ID:MFDB1HPDO
来たかと思ったら無駄話かよ
673 :!ninja [sage]:2011/08/27(土) 07:50:49.56 ID:7H3HvZeso
ああ、臭い臭い
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/27(土) 10:47:23.07 ID:TVJjbFHY0
>>673
その名前欄はネタなのか癖なのか
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 10:54:58.84 ID:DqaaSTCzo
>>674
完璧に悪癖だ
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/27(土) 10:59:31.82 ID:vwE5l2Fbo
2chブラウザ使ってるとあげさげなんて気にならないt思うんだが
むしろ新着レスの数で判断しないか、普通
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/27(土) 13:35:24.11 ID:5j/GzJ7Lo
>>676
うん、それが言いたかった
無駄レス多かったらそういう人が困るんだよ
一度目欄sageって言えば分かる

ルール違反なのは否定しないけどね
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 02:30:48.00 ID:8ALk6UuIo
夏もそろそろ終わりだというのに・・・
香ばしいなぁ
679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 02:48:06.67 ID:rq/t1m/fo
だからといって香ばしさをとめる事はできぬ悲しさよ

ほかの二人はともあれこの上条のこぶしを受けて立つ浜面すげえ
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 04:25:30.70 ID:xWHEDNlpo
ほかの二人よりは頑丈に思えるけどそこで耐えちゃうHAMADURAイケメン
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/05(月) 23:49:07.46 ID:qoeeUmsCo
投下をし・・て・・・く・・・・れ・・・・・・・・
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/09/10(土) 15:09:46.69 ID:pIsBktBw0
待ってる
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/10(土) 23:48:40.94 ID:DR8CtM510
頑張れ
684 :977 [saga]:2011/09/15(木) 02:11:53.41 ID:ThqOTNeDO
投下いたしますね
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:14:45.86 ID:ThqOTNeDO



―――窓の無いビル。



部屋というのも言い難い出入り口が存在しない広大な空間。
通路もエレベーターも空間に往来する道が全く無い場所。
存在するのはただ一つだけ。
中央に床から天井まで繋がってそびえ立つ、培養液で満たされた巨大なビーカー。
中に浮かぶのは、男にも女にも大人にも子供にも聖人にも囚人にも見える……『人間』。

アレイスター・クロウリー。

学園都市の頂点に君臨する統括理事会長。
数年前に膝を抱えて座り込み茫然自失としていた上条当麻を学園都市に誘った張本人。
以来、上条当麻とは友人関係の間柄。
686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:16:24.93 ID:ThqOTNeDO



アレイスター「…………」



原理は判然としないが、彼は逆さまに浮かんでいた。
考え事だろうか、まぶたを閉じて何やら思い詰めたように難しい顔をしている。

……と思いきや、何故か顔を綻ばせて不敵な笑みを浮かべた。
ゆっくりとまぶたを開けていき、視界に一人の人間を映す。



アレイスター「何の用かな? わざわざ私の所まで足を運ぶとは、君にしては珍しい」



カツ、と空間にかわいた音が響いた。
一定のリズムで鳴り続けて、伴って次第に音量が大きくなっていく。
アレイスターが浮かぶ巨大なビーカーに近付く影が一つ存在している。

しかしアレイスターは笑みを濃くするだけで影の進行を遮らない。
攻撃しないと見定めてるのか、それとも既に敵と見なしていないのか、定かではない。
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:18:15.76 ID:ThqOTNeDO



「テメェの事だ、どうせ判ってんだろ? 俺がココに来た理由なんてよ」



金髪の頭。薄赤いスーツを身に包む。
前ボタンを全開にして中のワイシャツとTシャツをさらけ出す砕けた着こなし。
ホストを彷彿させる格好をする男―――垣根帝督。



垣根「俺と第一位の会話、全部筒抜けだったんだろ?」

アレイスター「ふむ……だったらどうするかね?」

垣根「別に」



垣根帝督は嘲笑う。本当に心の底から馬鹿にするように鼻で笑って見せた。
よりによって学園都市を作った統括理事会長に対して。



垣根「俺が言いてぇのは知ってるくせに白を切るなっつってんだ」



かと思えば至極嫌そうな表情で吐き棄てる。
眉をひそめてギロリとアレイスターを睨み、殺意を放つ。
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:20:37.28 ID:ThqOTNeDO



アレイスター「根拠は?」



だがアレイスターの余裕は消えない。
殺意のこもった鋭い視線をも取り合わず、気にせずに話を進めた。

それを垣根は悟り、心の中で舌打ちをする。



垣根「いつドコに居ようと俺達の行動を把握するために、何か訳判んねえ機械使って監視でもしてんだろ?」

アレイスター「……まったく、先程の推測といい。君は一体ドコまで把握済みなんだね?」

垣根「さあな。けど上条の足元にも及ばない事だけは判るぜ?」



上条に比べたら自分なんて雲泥の差だろう。
今こうして己が知りうる知識を使って推測を立てたとしても、上条はその遥か先を見通している。



アレイスター「君が言いたい事は大方見当がつくが……仮に私の考えが君の想定通りの内容ならば―――」

垣根「テメェの首を切り落とす」
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:22:59.33 ID:ThqOTNeDO



アレイスターが言い終える前に彼は遮って告げた。
十分な殺気を込めて、出来るだけ感情を無くして。



垣根「統括理事長なんて関係ねぇよ。一切躊躇わず寸分の狂いも無くブチ殺してやる」

アレイスター「わざわざ物騒な言葉を吐かずとも承知しているさ」



どんな悪人も震え上がらせる殺気すら、アレイスターは軽くあしらう。
第二位という称号を持つ垣根帝督に対して余裕の表情でサラリと流す有様は、まるで喚く子供をあやす大人さながら。
きっとそれは一方通行ですら変わらない。
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:24:12.91 ID:ThqOTNeDO
アレイスターにとって第一位や第二位の称号なんて、関係が無いのだろう。
起こす行動全てが児戯に等しいのだ。






アレイスター「だけども未元物質」






優しく、しかしドコか嘲笑って。
扱いが子供をあやす大人であれば語りかける言葉もソレと同じで。






アレイスター「君の想定する最悪の結末を迎えたとして……自身に決定権など存在しない事は、君がよく判りきってる事じゃないのかね?」






―――だからこそ、告げる言葉は残酷で。
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:27:02.00 ID:ThqOTNeDO



垣根「……っ!」

アレイスター「『素養格付』を嗅ぎつけた君ならば当然理解は可能だろう? そういう風に出来てる事を」



『素養格付』。確かに知っている。
希望や憧憬で日々を送る少年少女に絶望という名の現実を叩き込む事が出来る意味を持つ。
今までの努力を無残な事にも切り捨てて水の泡にしてしまう言葉。
何故アレイスターはその話題を持ち出したのか、彼は迅速に気付いた。

つまりアレイスターはこう言いたいのだ。
「君がどれほど努力を重ねて阻止しようとしても結末は一切変わらず、無駄に終わる」……と。



垣根「テ、メェ……!!」



彼は目の色を変えて激昂を露わにする。剣呑とした空気に極度の緊張が走り始めた。
今にも火蓋が切られんばかりの張り詰めた空気は、垣根を中心に流れた。

垣根がその一歩を踏み出す―――直前、






「待て」
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:28:32.41 ID:ThqOTNeDO



突如背後で呼び止める制止の声で、垣根は進む足を止めた。
それはある意味助かったのかもしれない。
もし感情の赴くまま行動を移せば、自分を抑制する事はおそらく……出来なかっただろう。
きっと能力を思うがまま操って攻撃していたに違いない。それだと絶対に取返しがつかない事になるから。



垣根「あ?」



でも自分にとって『怒り』という感情を抑え込むのは、未だに至難の業。
一方通行同様、相当短気な性格をしている事には間違いないのだから。

故につい怒気がこもりがちの声色で返すあたり、改善はまだまだ必要だ。



「ヤツの専売特許とする安い挑発だ。感情に任せて乗せられるとヤツの思うつぼだぞ?」



ボタンを全開にしたアロハシャツを着た金髪サングラスの男が立っていた。
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:29:34.19 ID:ThqOTNeDO
男の視線は垣根には向いていない。
サングラス透き間から垣間見える鋭い目筋はアレイスターを射抜いていたから。



垣根「……誰だよテメェ」

「そんな事はどうでもいい。顔が割れたんだから後で幾らでも調べれば済む」



それよりも、と男はサングラスを親指と中指でクイッと上げて畳み掛ける。



「この場は俺に任せて、お前は上条当麻の下に向かえ」

垣根「はあ? テメェ何言って―――」

「場所は第七学区の病院だ」

垣根「無視してんじゃ……待て、今何つったお前?」
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:30:48.99 ID:ThqOTNeDO



とても不可解な言葉を聞いた気がする。
理解が出来なかったからこそ、聞き返してしまう。

男は溜息でも吐くかのようにゆっくりと向き直って、垣根と視線を合わす。



「第七学区の病院。そこに上条当麻は居る……重傷らしい。早く行ってやってくれ」



ほんの僅かな一瞬だけ男の声色が優しい物になったのは、上条当麻を心から心配してるからだろうか?



垣根(こいつ……)



彼は悟る。もしかしたらこの男も上条の友人関係なのかもしれない、と。
だからこそアレイスターに怒りを感じて、この場へやってきたのだろう。
わざわざ上条当麻に起きている現状を自分に知らせに……ここまで。
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:32:02.87 ID:ThqOTNeDO



垣根「チッ……わあったよ。行けばいいんだろ行けば」



露骨な態度は「ありがとう」という感謝の裏返し。
ぶっきらぼうな彼は不器用であるが故、素直な気持ちを言葉にするのは非常に難しい。

垣根は一度、アレイスターを一瞥する。
何一つ変化が無い。ただ薄く笑みを浮かべる姿。
追究の目的で訪れたつもりだったが、もはや垣根にはアレイスターから事実を暴かす手段を持合わせていない。
だとすれば彼が今するべき事は一つ―――ココはおとなしく退く事だろう。

彼はアレイスターから顔を背けて踵を返す。
腑に落ちないのが本音だったりするが、ひとまず引き上げるべきなのも確か。
とにかく病院に向かおう。話はそれからだ。
金髪の男を調べるのも、今後の事について考えるのも。
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/15(木) 02:33:10.44 ID:ThqOTNeDO



「…………」



男は口を貝のように閉ざしたまま、目筋を鋭くさせた視線をアレイスターに送り続ける。
背後から足音が消えるのを待っているのだ。
アレイスターの方も口を開かずにひたすら薄い笑みを浮かべるだけ。



アレイスター「ふむ……」



足音も消え、辺りが沈黙で占め初めていたその時。
男が言葉を発する直前、予想外にもアレイスターが先に口を開けた。
親指と人差し指を顎に添えて、わざとらしく考え込む動作をする。
割に浮かべる表情は楽しくて仕方ないと示唆していて。



アレイスター「今宵は客人が多いな。それもこちらから呼んだ覚えの無い者ばかり」



口角を吊り上げて笑みを濃くする。





アレイスター「さて、一体どうしたのかね? ―――土御門元春」
697 :977 [saga]:2011/09/15(木) 02:37:25.34 ID:ThqOTNeDO
投下しゅーりょーです
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 02:51:38.81 ID:Tw7p5Ndro
来た!投下来た!これで勝つる!
色々な思惑が交錯しててオモシロス
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 07:26:24.14 ID:k6kdSfpDO
乙乙
ずっと待ってた!
やっぱり面白いなー
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 09:44:01.12 ID:ofzApAJgo
相変わらず面白いし
続きが気になる
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/15(木) 17:00:41.88 ID:CKVb80y10
読み返してたら来てた いちおつ
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/15(木) 17:39:03.42 ID:0QzZHcCfo

待ったぶん嬉しい
703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(田舎おでん) [sage]:2011/09/30(金) 11:05:26.26 ID:mYrAey3I0
待ってる
704 :977 [saga]:2011/10/03(月) 01:44:34.20 ID:9yBzihZDO
さて、今夜の投下の時間です
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 01:48:32.03 ID:9yBzihZDO





―――第七学区、とある病院。
706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 01:50:27.13 ID:9yBzihZDO



時刻は夜明け前。と言っても廊下は僅かな明かりだけで、薄暗い暗闇で覆われている。
歩く患者は当然居ない。静まり返った通路のなか、垣根帝督は歩いていた。
静寂な事は間違い無いのだが、白衣のまとった看護師や医師が妙に慌ただしいのは、おそらく気のせいではない。
きっと大怪我を負った患者が運ばれたからだ。



垣根「……チッ」



自然と歩む足が速くなるのを自覚する。
廊下に反響する足音が一層焦燥感を駆り立てた。
誰が運ばれたのか判るからこそ焦りを感じるのは仕方ない―――と理解していても落ち着く事が出来ないのは本当に歯がゆい。
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 01:53:53.13 ID:9yBzihZDO
一方通行とは連絡が付かない。
院内だから電源を切っているのだろう。
……もちろんリーダーとも。



垣根「ここか」



玄関先で看護婦から説明された部屋へたどり着いた。
確かに扉の横に部屋番号と『上条当麻』の名前が書かれている。
垣根は微かに眉間をひそめるも、ためらうこと無くスライド式の扉を開け放った。


飾り気の無い真っ白い一人部屋の個室。白い天井に白い壁に白い床。
半分だけ開いた窓の隙間から入ってくる柔らかい微風がカーテンをなびく。
ベッドの側には台があり、上には一つの花瓶が置かれていた。
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 01:55:13.68 ID:9yBzihZDO

彼の視界に二人の人物が映る。
一人はベッドで仰向けに横たわった黒髪の少年。
一人は近くの椅子に腰をかけてベッドを見つめる白髪の少年。
垣根が真っ先に向かったのは白髪の少年―――一方通行の方へだ。



垣根「オイ」

一方「……」



呼ばれて初めて気付いたかのように一方通行は視線だけを垣根へ移す。
だがすぐに視線は元の位置へ戻された。

垣根は溜息を吐いて呆れた口調で言う。



垣根「随分と意気消沈してんのな。天下の第一位様がどういう風の吹き回しだぁ?」

一方「……」



とりあえず喧嘩を売るような言回しで煽ってみたものの、リアクションは皆無。
これは重症らしい。あの短気な第一位が乗らないどころか反応すら示さないのは初めてだ。
どうしたものか、と垣根は人差し指でコメカミ辺りを掻く。
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 02:00:20.42 ID:9yBzihZDO



垣根「……とりあえず」



顔だけベッドに向ける。
そこには頭と右手に包帯を巻いた上条当麻が居た。



垣根「容体は? どういう状況だ?」

一方通行「……側頭部に重い打撃だけで別に呼吸困難に陥ってる訳じゃねェから、命に別状はねェンだってよ」

垣根「んだよ、慌てて駆け付けなくても―――」

一方通行「ただ」



彼は垣根の言葉を遮る。
室内に響き渡った声は続かず、一拍呼吸を置くように間を開けた。
高々数秒にも満たない僅かな時間だとしても感覚は長く感じて、緊迫化した空気を生み出した。






一方「打ち所が悪かったのか、記憶を失ってる可能性が高ェって……」






一方通行から紡がれる言葉は緊迫化した空気に相応しい内容だった。
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 02:01:26.10 ID:9yBzihZDO



垣根「……」



彼は無言で一方通行の胸ぐらを掴み、目の前まで引き寄せた。
怒っていないと言えば嘘になる。
けど、記憶喪失の可能性が否めない点について八つ当たりをしようって訳じゃない。
垣根帝督が言いたいのはもっと別の事。



垣根「テメェが居て……コレか?」



結局彼が言いたいのはたった一つなのだ。



垣根「第一位様が事故を最小限に抑えた結果がコレなのか?」

一方「…………」



一方通行は答えない。
うつむいて視線を合わそうともしなかった。
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 02:04:33.15 ID:9yBzihZDO

その有様に垣根は強く歯を食いしばる。
あまりにらしくない第一位の姿に込み上げる感情を抑え切れそうにない。

怒号を上げて叱咤する直前、彼は気付く。



垣根「お前、その右手……」






―――一方通行の右手に包帯が巻かれている事に。






一方「反射はなンでか知ンねェけど効かなかった。むしろ貫通しそォだったな」



右手を見つめながらその時の状況を思い出すように言う。
若干顔つきが険しくなったのは己のパーソナルリアリティが破られからだろうか?



垣根「……だとして―――ぶっ!!?」



彼の言葉は最後まで続かない。
まさに横やりといった感じで告げ終える前に強制終了させられたのだ。

ポスン、と床に落ちた病院の枕によって。
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:20:46.55 ID:9yBzihZDO



「ぎゃあぎゃあうるせー。怪我人をいたわる気は無いのかテメェら」



事の現状を理解する前に一方通行や垣根には馴染んだ声が届く。
二人は鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべてしばらく停止した後、緩慢と顔を声がする方へ向けた。

コメカミや背筋にジトリと汗が一滴通過した気がした。
何故ならさっきまで話していた話題の中心人物―――上条当麻がベッドから上体を起こしていたから。



垣根「……」

一方「……」



僅かに漏れた空気が出るだけで彼らは言葉が続かずに絶句してしまう。
言いたい事は山ほどあるのにも拘わらず、何を発していいか判らなくなってしまって戸惑うばかり。
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:22:01.19 ID:9yBzihZDO



上条「なんだそのふ抜け面は? 死人を見るような目で見やがって」



嘆息でもつくように呆れ果てた口調で吐き棄てた。
後頭部をガシガシと乱暴に掻く姿はいつもの上条当麻そのものだった。
そんな彼を見て二人はハッと我に返る。
未だに動揺が隠せないのが現状だが、垣根はおずおずと尋ねる。



垣根「上条……お前、記憶は……?」

上条「……」



彼は眉間にしわを寄せて目を細め、






上条「何訳判んねーこと言ってんですかね、俺のグループに所属する第二位の垣根帝督さんは」






―――自然と顔が綻ぶのを感じ取る。
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:22:56.66 ID:9yBzihZDO



垣根「な……なん、だよ驚かせやがって!」

上条「んだよ? テメェは俺が死ぬとでも?」

垣根「いやいや、このクソ第一位が煽って―――」

一方「俺は一言も“絶対に”とは言って無いンだがな。勝手に自分の中で殺したのはオマエ」

垣根「おまっ!?」

上条「よし減給な」

垣根「ちょっと待ってくれよーッ!! 今月ピンチなんだってば!?」

上条「いや知らねえよ」

垣根「ちっくしょお!! オイ第一位表出ろやコラァ!!」

一方「うるせェ」

上条「やかましい」

垣根「いつもの感じで嬉しいが素直に喜べねえ!!」
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:23:42.36 ID:9yBzihZDO




―――――――――――――――




日も昇り、人影が増えてるもののまばら。
窓から覗くとそこには病院の玄関前で健気に遊ぶ少年少女達。
賑やかにワイワイと聞こえてくる幼い声色は心を穏やかにしてくれる。

しかし上条当麻は子供に目もくれず青空を見つめるばかり。
起こした上半身に受ける微風は柔らかく優しい。
おそらく今日一日は晴れだろう。空から香る雨特有の匂いがしなかったから。



上条「……」



カーテンをなびき、髪がそよぐ。
顔色から窺える印象は憂い。
ドコか寂しそうで、はたまたドコか泣きそうで。
先ほどの騒がしさから一変、室内は静寂が占める。
妙な空気を醸し出しているのはソレもあるかもしれない。
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:25:16.49 ID:9yBzihZDO



「言わなくてよかったのかい?」



その空気を破るかのように上条ではない声が室内に響いた。
危険性は無い。何故ならこの声の持ち主を知っているから。
だからこそ安心しきって応えることが出来る。



上条「何をですか?」



彼は空を見つめたまま返答した。
虚ろな瞳は蒼い空を映し、先が視えなく果ての無い無限の蒼に意識は溺れる。



「僕に白を切っても意味が無いと思うんだけどね」



それもそうだ、と上条は納得。
顔だけを振り返ればカエル顔の医者―――冥土帰しが立っていた。



上条「ちょっとした上条さんの悪戯心ですよ?」

冥土帰し「その悪戯心に僕は何度悩まされてきたんだろうね?」

上条「あはは……」
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:27:38.13 ID:9yBzihZDO



誤魔化すにも程遠い苦笑を浮かべる彼に冥土帰しはやれやれ、と首を横に振る。



冥土帰し「……本当は覚えていない記憶が存在するんだろう?」

上条「……」

冥土帰し「君が自ら言ったじゃないか。『中学校入学からの一ヶ月が思い出せない』、と」



それはつまり―――上条が暗部入りしたきっかけ、一方通行と垣根と浜面の出会いを忘れてしまっている、という事。



上条「……よかったんじゃないですか?」



それでも彼は、微笑みを浮かべた。



上条「その一ヶ月の記憶を永遠に取り戻すことが出来ないとして、今後の生活に支障が出るわけじゃない。
   確かにアイツらとの出会いを忘れてしまったのは悲しいけど、だからといって友人関係が途絶えるわけでもない」

冥土帰し「……」

上条「それに―――」



上条当麻は満面の笑みを浮かべる。
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/03(月) 03:30:21.52 ID:9yBzihZDO
















上条「―――俺達の絆はこんな程度で崩せるモノじゃありませんから」
719 :977 [saga]:2011/10/03(月) 03:35:09.78 ID:9yBzihZDO
投下しゅーりょーです
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 04:52:36.07 ID:Zzk//0Lf0

そして上条さんかっけぇマジかっけぇ
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/03(月) 05:25:13.64 ID:L96Dxd35o
こうつなげてきたかー
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/03(月) 05:59:39.02 ID:ZH4XQm19o
乙です。
全記憶喪失ではなくて一部喪失ですんだとはいえ、
重要な部分ですからね。
続きを楽しみにしています。
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/10/03(月) 08:55:43.53 ID:tOfhcmmz0
もしかして、アレイスターとの取引内容も忘れてるのか
だったらヤバくね?
724 :VIPにかわりまして統括理事会がお送りします [sage]:2011/10/03(月) 12:14:23.32 ID:YTMyS+aR0
とある魔術の禁書目録劇場版公開決定!!!!!
更に新約とある魔術の禁書目録3巻は12月10日に発売決定!!!
劇場版の詳細は10月11日発売の電撃文庫マガジンで!
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/03(月) 16:25:26.67 ID:mo3gmVN60
乙!
726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/10/03(月) 18:17:53.41 ID:Pyj7lyM/o
細かいツッコミで恐縮ですが、失ったのは「暗部入りしたきっかけ、出会いの記憶」とありますが、ここ直近の記憶などはどうなのでしょう?
もし作中で明かすのであればスルーして頂いて結構ですので。
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/03(月) 20:54:21.00 ID:sbfE0YjMo
>>726
どう考えても覚えてるだろ

一ヶ月って明言してんだから
728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/07(金) 00:17:43.90 ID:aZCXBrjJ0
続き気になる・・・
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) :2011/10/09(日) 21:57:18.87 ID:rAdYFW8j0
おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!まだかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!>>1いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2011/10/09(日) 22:14:42.51 ID:/KszWqfa0
>>729
ageんなks、>>1には>>1の事情があんだよ、
それにsageろ、sageるのはここでの最低限のマナーだぞ
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/10/10(月) 01:10:17.20 ID:VismAI2Ro
>>730
最低限のマナー ってのは違う。
そのスレの>>1の方針にもよるけど、ただ暗黙のルール化してるだけ。
もしそこの>>1が投下時にageるなら、それが投下の合図になるからageない方が無難ってだけ。
後、一時期は荒らしが頻出したから目をつけられない為に、ってのはあったけど、最近は荒らしが出ないからそこまで躍起になる事は無いだろ。

まあ、sageた方が何方かと言えば良いとは思うけど
732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/10(月) 12:34:10.18 ID:4JPAO9Wro
そもそもあからさまな荒らしなんだからスルーするべきだと思うの
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/10/11(火) 13:13:32.02 ID:L0Kj1IX70
sageるの忘れてた。すまぬ。
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/15(土) 21:56:51.07 ID:/Y8WTnWP0
まだか?
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/10/16(日) 13:54:15.22 ID:HVLw9WZu0
まだかぁぁぁぁぁぁぁ
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2011/10/16(日) 15:00:02.93 ID:wS6WOCn/0
少し静かに待てないのか厨房
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/10/16(日) 15:03:20.34 ID:N4eDgiQAO
>>735

ROMってろ
738 :977 [saga]:2011/10/17(月) 02:05:18.37 ID:bRfzQyiDO
呼ばれてないけど勝手に現れる977です!投下の時間です!

※深夜なので若干テンションがオカシいのであしからず

今日は果てしなく短いです
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:06:51.30 ID:bRfzQyiDO



大きな事も無く順調に治療が進んで、無事に上条当麻が退院して数日。
とんだ夏休みの幕開けとなったが、おそらく彼らが送る日常は大して変わりはしないだろう。

例えインデックスを引取り実質『女の子と同棲生活』という事になったとしてもだ。
きっと上条の一日はさして変化は無い。



浜面「……で? その子は今ドコに居るんだ?」

上条「とりあえず留守番。困ったら先生の家に行けって言ってる。もしくは電話」

垣根「羨ましいの一言に尽きるぜ」

一方「さっきからオマエそれしか言ってねェぞ」



彼らは現在いつものファミレスには居ない。正鵠に言えば居られなかったのだ。
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:09:22.28 ID:bRfzQyiDO
何故なら時間帯は昼時、故に大概の飲食店は混んでいる状況になる。それが災いして彼らの特等席に先約が居たのだ。
どうして四人がその席にこだわるかはさて置き、先約の客に垣根帝督が睨みを利かしたのは言うまでもない。

閑話休題。

四人は上記の理由で仕方なく別のマクロナルハンバーガーという飲食店に移動していた。
特に今日は仕事が無いため良かったものの依頼の連絡が来ていた場合、場所が場所なだけに声を潜めなければならなくなる。
断言しよう。確実にそれは不可能だ。



垣根「だってよ? 女の子だぜ? お! ん! な! の! こ!」

上条「……何が言いたい?」

垣根「モテたいと主張する」

浜面「何言ってんだ容姿はいいくせに」

垣根「気付け浜面、寄ってくる大抵の女共はリーダー狙いだ」

浜面「そういうことか……!!」



この垣根帝督という騒ぎ出す男が居る限り。
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:12:42.23 ID:bRfzQyiDO
だからこそ、いつものファミレスでいつもの場所じゃなければならないのだ。

―――垣根帝督と言えば。

記憶の断片をたどって思い出した所によると、今と昔では断然と性格が相違している……らしい。
らしい。そう、『らしい』のだ。
当時の記憶を失っているためどんな様子だったか判らない。ただ、どうやら変われたのは自分のお陰のようだ。



上条(変われた……か)



断片的な記憶破壊の関連性で、最近とても重要な事柄に上条当麻は気付いたことがある。
それは己を変えたキッカケを作る『一ヶ月間の自分』が居ない重要性。

何が重要かお気付きだろうか?

『一ヶ月間の自分』が居ない……変わったキッカケが無くなったという事は、“過去”と“現在”の自分しか居なくなるという事。
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:14:38.86 ID:bRfzQyiDO
それはつまり―――



上条(昔と今、両方の観念が俺の中にあるってことになる)



無垢だった過去の自分を消すはずの『一ヶ月間』が失ったため、過去と現在の自我が存在。言わば二面性だ。
良く言えば過去の己を取り戻した事になるが……、



上条「現実はそうはいかねえよなー……」

一方「なンか言ったか?」

上条「いやなんも」



仕事だとしても暗部でこなしていった依頼の数々を昔の“上条当麻”は許せない。
しかし今の“上条当麻”は仕方無い感じて、そうせざるをえない理由があるのも事実。
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:17:50.08 ID:bRfzQyiDO
そもそも『一ヶ月間』に起きた事情が色々ありすぎて、ソレをインデックスの件で失っているんだから救いようが無い。
上記で述べたそうせざるをえない『理由』すら、もはや忘却のかなた。
どうやら一方通行達や美琴ですら知らない超機密情報らしい。



上条(とにかく絶対に思い出せない以上は八方ふさがりの打つ手無しな訳だから……のらりくらりと暮らしていくしかないよなー)



結局は思い出す事は無いのだ。間違いない。
逆に考えて、ヘタに記憶を取り戻そうと行動に移せば自分の性質上、危険な不幸を招きかねない。
だったら何もせずに時間の流れるままに身を任せた方が無難。

―――しかし過去と現在の観念の違いに葛藤して懊悩する日が来ることも、確かな話。

『一ヶ月』を消失している限り一生付き合っていく物。離れる事は決して無い。
どう対処するかも思考を巡らせていかなければならない。
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:19:23.07 ID:bRfzQyiDO



店員「すいませんお客様。ただいま大変混んでいますので相席をよろしいでしょうか?」



ん? と一斉に四人全員が振り向けるとソコには女性の定員と、



「…………」



いかにも世界に絶望したかのような表情を浮かべた女の子が隣に居た。
年は上条と同じくらいなのだが……何故だか大都会の学園都市では一際目立つ巫女の姿をしていた。

店員は一度軽くお辞儀をすると、スタスタと仕事に戻るため去っていく。
四人が何も発さず呆然としている間に事が進んだため、取り残された全員に妙な空気が漂う。



『…………』



沈黙が訪れて気まずさが占める始末。
垣根がアイコンタクトで「どうすんだよ?」と知らせるが構ってやらないと決め込んでいるのか、無視を続ける上条達。
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:20:19.49 ID:bRfzQyiDO

だけどもラチが明かないと判断したのだろう。
通路側に座っていた上条が窓際に詰め寄り透き間を作る。
巫女姿の女の子に座るように催促させたのだ。



上条「とりあえず座ったらどうだ? あんたが良ければの話だけど」

「……」



フラフラと覚束無い足取りで上条の隣に腰を下ろす。
途端に顔面からテーブルへ突っ込むというなかなかシュールな有様を描いてみせた。



上条「あー……名前は?」

「姫神」



顔を埋めたまま彼女は答える。
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/10/17(月) 02:21:08.36 ID:bRfzQyiDO










姫神「私の名前は。姫神秋沙。魔法使い」
747 :977 [saga]:2011/10/17(月) 02:30:00.15 ID:bRfzQyiDO
投下しゅーりょーです


2巻に突入なんですけども、残念ながらココからは浜面の話なので姫神さんの出番はあまりありません
でも出さないのは流石にと思い、最初の方を書きました
書くときに気付いたのが、原作2巻を友達に貸したままだというあーわわわ
曖昧な感じになってしまいました。姫神ファンの皆様すいません
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/17(月) 02:31:35.28 ID:YsCwpmjdo

上条さんちょっとややこしいけど、どうなるのかな
姫神ちゃんキター!

非女神と真っ先に変換されたのは内緒
749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/17(月) 02:37:44.37 ID:jK10WrMU0
乙そして2巻ということはアウなんとかがでるのか?
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/17(月) 13:04:04.72 ID:5KuslHlX0
乙!
続き楽しみにしてるよ!
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/10/17(月) 17:16:32.11 ID:CK+/NUfxo

このメンバーでヘタ錬とかかわいそう
752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東) [sage]:2011/10/17(月) 19:02:11.90 ID:lyr1MFXAO
ヘタ錬フルボッコwww
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2011/10/17(月) 20:24:19.72 ID:jIDwqT3AO
何か言おうとして上条さんに銃で瞬殺されるイメージが湧いた
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/18(火) 01:53:26.84 ID:ta68glLqo
ヘタ錬能力は強いんだからこのスレではもうちょっとだけ健闘させてやってくれww
755 :名無しNIPPER(栃木県) [sage]:2011/10/18(火) 04:23:57.75 ID:eDIA5XHAO
「睨みを利かせる」の使い方おかしいだろ(笑)
756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/29(土) 14:36:58.08 ID:W8mpvTKDO
待ってる
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/10/29(土) 20:52:29.97 ID:QY2cVlWL0
俺も待ってる
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 00:03:15.25 ID:N23yfVre0
わたくしもですの
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/10/30(日) 01:40:15.73 ID:+0RBMeyM0
Trick or Treat
てなわけで舞ってる
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(岐阜県) [sage]:2011/11/03(木) 22:53:07.63 ID:pOi7Ip2jo
待ってます
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 06:29:26.34 ID:0oB3pbae0
まだか?せめて生存報告だけでも……
762 :977 [saga]:2011/11/05(土) 08:59:05.06 ID:TM0/+3ODO
投下しまーす
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:04:51.46 ID:TM0/+3ODO



浜面「はぁ……やっと抜け出せた」



上条当麻が率いる暗部グループの一員、浜面仕上はマクロナルハンバーガーではなく外を歩いていた。
姫神秋沙と名乗る少女は上条達に任せて、彼は待ち合わせで目的地へと向かう途中だ。

と言うのも浜面には元々用事があったりする。
それも駒田や半蔵関係では無いのだから、なお彼にしては至極珍しい話。
更に補足説明するならば、その待ち合わせ相手が最近知り合った女の子だということ。



浜面「垣根に知られたら多分、ただじゃ済まねえだろうな……」



多分ではない、確実だ。
冒頭の安堵の声はコレに繋がる。
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:06:03.93 ID:TM0/+3ODO
おかげで密会みたいな形になってしまったのは仕方あるまい。



「浜面ー!」



ん? と顔を上げると、およそ十メートル離れた場所に自分の方へ向かって大きく手を振る少女の姿があった。
見覚えがある服装で、聞き覚えがある声色。
まさに自分と待ち合わせをしていた人物―――フレンダ=セイヴェルンだ。

浜面は自然と微笑みを浮かべて軽く手を振った。
返答に気付いたフレンダはパタパタと駆け寄って、



フレンダ「遅かったじゃない。レディーを待たすなんて、結局何してたって訳?」

浜面「いや……ちょっと、な」
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:08:23.04 ID:TM0/+3ODO



困った様子でコメカミを人差し指で掻きながら彼女から目をそらす。
それもそうだろう。
飲食店で雑談をしつつ抜け出すタイミングを見計らっていたら巫女姿の女の子に絡まれました、なんて口が裂けても言えない。

そんな心境に至る事を知らないフレンダは、不審な動きをする浜面を目を細めて見つめるばかり。
しばらく凝視していたが盛大に溜息を吐くと、クルッと舞うように踵を返した。



フレンダ「ま、別にいい訳よ。無理に話す必要なんて無いしねー」

浜面「言ってもいいんだ、いいんだがなー……」

フレンダ「何でためらってるかは知らないけど、結局どうでもいい訳よ」
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:11:45.49 ID:TM0/+3ODO



彼に背を向けたまま歩き出す。
まるで「付いて来なさい」と言わんばかりに。
浜面は戸惑いつつも促されるようにフレンダの横に並び、彼女に問う。



浜面「そう言えば出掛けるってのは聞いてるけど、一体ドコに行くんだ?」

フレンダ「あれ? 言ってなかったっけ?」



キョトンとした表情で首を傾げ、



フレンダ「そりゃあセブンズミストしか無いって訳よ」




―――――――――――――――




浜面「……にしても」



彼は辺りを見回す。
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:13:17.10 ID:TM0/+3ODO
周りはポロシャツにカッターシャツ、無地のプリーツスカートやチェックのスカート、更にはカーディガン。
様々な色に配色された何種類の衣服が並べられていた。
そう。ここはファッションセンスフロアの『学生服コーナー』である。

フレンダは無我夢中に眺めたり、手に取って鏡の前で自分と重ねてみたりと買物を満喫の様子。
対する浜面の手にはフレンダが持っていたカバン。
ようやく彼女が自分を呼んだ趣旨を理解した気がする。



浜面「そりゃそうだよなー……」



天を仰ぐ。やはり現実は甘くないという事だろう。
リーダーみたいにモテる事は不可能なのか……、
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:14:52.60 ID:TM0/+3ODO



浜面「いやきっと上条がオカシいんだよそうに決まってる」

フレンダ「さっきから何ブツブツ言ってる訳?」



ハッとして振り返ると、フレンダがいつの間にか浜面の傍らまで近付いていた。
目を細くさせた上に声は明らかに冷めた感じで発せられた。
……引いている事は間違いなかった。



浜面「なに、社会は厳しいなと改めて確認してたのさ」

フレンダ「意味判んないだけど」

浜面「……疲れてるんだ、気にすんな」



学生服コーナーから外れて通路の端に配置してあるベンチに腰を掛ける。
フレンダのカバンを隣に置き、嘆息を吐くように言う。



浜面「ちょっと俺はここで休んでるから、お前は好きなだけ見るなり買うなりしてこいよ」

フレンダ「……結局、仕方ないって訳よ。荷物持たせてるんだからあまり歩かせるのもアレだし」
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:17:06.31 ID:TM0/+3ODO



やれやれと肩を竦めて、浜面に背を向ける。
彼女なりに気を遣ったのだろう。



浜面「……」



フレンダが行ったのを見送ってから、肩の力が抜けたように息を吐いてうなだれた。
下を向いた視線の先。右腕。
視線が止まった右腕だが、意味も無く見ている訳では無い。


注目しているのは……右腕の傷。


手首から肘にかけて一線の深い傷。
決して消える事の無い傷。
ソレは戒めであり、罪科でもある。
浜面が過去を生きた証。刻んだ歴史の彷彿。
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:19:14.77 ID:TM0/+3ODO
浜面が常に自身に言い聞かせるのは、「俺は未熟者だ」という言葉。
故に彼は決して驕る事が無い。
己は無能だと理解しているからこそ、尚更そう思う。

しかしながら彼は上条当麻が率いるグループの一人。間違い無く、確かな実力を持った強い存在。

戦う技に優れているから強い訳ではない。
戦う知恵に秀でているから強い訳でもない。
『闘う』事への覚悟を持つから、信念を捨てないから、強いのだ。
何より過去の経験が、その想いを一層強固にする。



『逃げて。ここは私に任せて。……大丈夫、絶対に帰るから』



―――無力は、罪だと知った。
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:20:39.13 ID:TM0/+3ODO



フレンダ「……浜面! ……浜面っ!」

浜面「……え? あ……ど、どうした?」



頭上から響く少女の声に反応する。
聞き慣れた声なので、すぐ誰か判った。



フレンダ「何ボーッとしてるのよ。結局、もう用事も住んだし行くって訳よ」

浜面「おう……」

フレンダ「? どうした訳よ?」

浜面「いや、こっちの話だ。たいした事じゃねえよ」

フレンダ「ふーん。そ」

浜面「なあ、フレンダ」

フレンダ「なに?」



何か言いたいのに、言葉が視えない。

質問の言葉か、謝罪の言葉か、それすら判らぬ自分が歯がゆい。
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:21:55.44 ID:TM0/+3ODO



浜面「……いや、すまん。何でもねえ。行こうぜ」



踏み出す一歩が辛くなくなったのはいつだったろう。




流れ続ける血の痛みを気にしなくなったのはいつだったろう。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [saga]:2011/11/05(土) 09:23:58.14 ID:TM0/+3ODO










乗り越えられるようになるのはいつだろう?














774 :977 [saga]:2011/11/05(土) 09:26:10.37 ID:TM0/+3ODO
投下しゅーりょーです

こんな感じで浜面クンの話でいこうかと
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/05(土) 10:03:32.64 ID:8ICCeyZDO
まってた!
776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(北海道) [sage]:2011/11/05(土) 12:13:40.70 ID:OdpvSpzAO
乙!
待ってたよー
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(九州) [sage]:2011/11/05(土) 13:13:25.82 ID:AdMwVvwAO
おつ(^ω^)

久しぶり〜
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(長屋) [sage]:2011/11/05(土) 15:08:44.38 ID:T7P3xWJ+0
乙!
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です)(兵庫県) [sage]:2011/11/05(土) 16:25:33.49 ID:dI+BD5Y70
乙!
続き楽しみにしてる!
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/06(日) 03:07:34.07 ID:hXpqHxjs0

なるほどアウなんとかは裏の方でやられるのか……
合掌……
781 :977 [saga]:2011/11/20(日) 10:00:33.62 ID:cWsHayPDO
短いながらも投下させていただきますっ
782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:02:41.93 ID:cWsHayPDO



―――第七学区、ファミレス。



買い物を終えた二人はとあるファミレスで休憩を兼ね、デザートのパフェを頼んでいた。フレンダが。
決してパフェが目的で入った訳ではない、とフレンダは語る。
実際の所どうなのかは判らずじまいではあるが、浜面にとってそんな些細な事はどうでもいい。

それよりも彼がもっとも気掛りな点。

パフェの横にまるでおつまみを添えるように置いてあるサバ缶もさることながら、このファミレスが普段上条達が集まる常連の店であるという事。
浜面にとって言えば後者の方が危険性を感受していたりする。主に垣根とか垣根とか垣根とか。
783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:04:53.34 ID:cWsHayPDO



浜面「随分と空いてきてるし……来ない事を祈るしか無いな」

フレンダ「ん? なんか言った?」

浜面「いや、何も」



来るな来るな来るな……!! と心の中で念仏のように唱える有様は、もはや執念すら感じられた。
フレンダは彼がそんな心境に至る事を察するのは不可能だが、とりあえずさっきから上の空なのは悟っていた。
先刻からジッと浜面を見据えているが……どうやら気付いてない様子。
女の子と二人っきりで出掛けていると言うのに、デリカシーに欠ける失礼極まり無い行動な事には間違い無いだろう。

パクッとスプーンで掬ったクリームを一口。



フレンダ「!」



スプーンをくわえたまま、彼女はある事を思い付く。
口の中のクリームをたっぷりと味わって、飲み込んで言葉を発する。
784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:06:30.43 ID:cWsHayPDO



フレンダ「浜面、はーまづら!」

浜面「……え? な、何か言ったか?」

フレンダ「私の話、さっきから聞いてないでしょ?」

浜面「う……」

フレンダ「結局、図星って訳よ」



やれやれ、と肩を竦めて首を横に振る。
もちろん彼女はパフェとサバを食する事に夢中だったので、眺めてはいたが一言も話し掛けてはいない。
おそらくフレンダの内心では、底意地の悪い笑みを浮かべていることだろう。

まんまと罠に引っ掛かった浜面は「参ったな……」と言わんばかりに後頭部を右手で掻く。
よもや見抜かれていたとは思うまい。そしてまさか嘘だとも。
785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:09:08.47 ID:cWsHayPDO



フレンダ「何に気を取られてるかは知らないけど、さすがに失礼と思う訳よ」

浜面「……だな、すまん」

フレンダ「まあ別に私は気にしないからいいんだけどねー」



言い終えてサバを一口。
あくまで白を切るつもりらしい。



浜面(……仕方ねえ)



彼は腹をくくる。
仲間に目撃された場合は状況に合わせて対処する。決めた!

そんな臨機応変に行動へと移せれば一番良いのだが、自分がそこまで融通が利くとも思えないのも確か。
しかしもう半分ヤケだ。垣根なんか知らない。
彼女との食事を存分に楽しもうではないか。
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:10:45.75 ID:cWsHayPDO

……だが急に割り切ると言っても困ったもので、途端に話題が見つからなくなり沈黙が二人を占める。
非常に気まずい空気が漂い始める中、思考を固めた浜面がおずおずとその沈黙を破った。



浜面「……そう言えばよ、今日は何で俺を誘ったんだ?」



必死に絞り出した結果がこの質問。
彼にしてみれば頑張った方だと思う。丸。



フレンダ「んー、そうねぇ……」



彼女は親指と人差し指を顎に添えて、深く目をつむり考え込む。
時折うーんと唸り、ひたすら思考にふけってしまうフレンダ。

予想以上に彼女が真剣に考えてくれるのはとても嬉しいのだが、浜面は驚きを隠せない。
彼にとっては一言二言で返せる何気ない質問だったりするのだ。
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:12:43.91 ID:cWsHayPDO



浜面「そ、そんな悩まなくたっていいんだぞ? 単純で構わないんだから」

フレンダ「じゃあ単に荷物持ちが欲しかったから、以上」

浜面「極端ッ!! 要約し過ぎだろ!?」

フレンダ「何よー、ワガママねぇ。結局、荷物持ちが欲しかった一言に尽きる訳よ」



浜面は頭を抱える。むしろ融通が利かないのは彼女かもしれない。
尤も、その反応を見て楽しんでいない場合に限るのだが。

くくくっ、と底意地の悪い笑みを浮かべて浜面を眺める様子は、悪戯が大好きな子供さながら。
やっと己の立場と事態を把握して、彼は情けない表情をさらすと、窓ガラスに体ごと向けた。



浜面「チクショー……こんな扱いは垣根だけで十分だっての……」
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:13:34.32 ID:cWsHayPDO



男としての立つ瀬が無いのを感じて、とても惨めで切なくなる。
けれどもこの状態のまま続かせる訳にもいかないのも事実。

一旦心を落ち着かせよう。
自分は動揺しすぎなのだ。

ゆっくりと深呼吸を繰り返して窓ガラスから見える情景を眺め、穏やかにさせる。
行き交う人々、微風に揺れる木々にそびえ立つビル。更には窓ガラスに張り付く銀髪シスター。



浜面「―――ん?」



冷静になった所で、彼はようやく目の前に広がる光景を認識した。
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:17:04.80 ID:cWsHayPDO





インデックス「パフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェパフェ」






―――ベッタリと窓ガラスに張り付き、よだれを垂らしながらパフェに夢中の銀髪シスターが居た。
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/11/20(日) 10:18:50.28 ID:cWsHayPDO



浜面「お、おぉう……」

フレンダ「何かこういうのホラーゲームで見た気がする訳よ……」



辛うじて漏れた言葉。
二人ともどもあまりにも酷い姿になり果てた少女の姿にたじろぐ以外に他無かった。
浜面の場合、名乗りはしなかったものの一度は顔を見合わせているので、苦笑を浮かべるしか道は無い。

だがそれは仕方ないだろう。

何せ初めて会った時の第一印象からは、このような印象は見受けられなかったのだから。
791 :977 [saga]:2011/11/20(日) 10:21:49.79 ID:cWsHayPDO
投下しゅーりょーです

本来はもう少し長くなる予定だったんですが、また遅れてしまいそうなんで

ではまたっ
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(北海道) [sage saga]:2011/11/20(日) 11:00:30.08 ID:50Y4Di4I0
>>1乙です!
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/20(日) 13:31:04.58 ID:R5KnIVFW0
インなんとかさん何やってんですかww
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/20(日) 23:26:18.55 ID:fIezN/Ico
おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉつぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/11/20(日) 23:35:38.81 ID:a1xPIQtDo
パフェお腹いっぱい食べさせてくれると嬉しいな
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(兵庫県) [sage]:2011/11/21(月) 18:47:38.79 ID:emKzDsAT0
>>1
不覚にも吹いたwwwwww
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/11/22(火) 05:35:56.06 ID:RAHzKPr1o

なにこれホラーwwwwwwww
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(空) :2011/11/30(水) 23:06:03.30 ID:0o+0Kp5w0
逃げてーーー〜ヽ(・∀・)ノ
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(東海) [sage]:2011/11/30(水) 23:22:37.14 ID:+JPnoG4AO
>>798
ageんなカスが
[ピーーー]よ
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage]:2011/11/30(水) 23:27:14.85 ID:X2ALbtEoo
最近
誰かがageる→あ?氏ね

の流れが自演に見えて仕方が無い
流せばいいのにね
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 02:11:01.87 ID:0CG0ZK+Ro
流したらまたそいつは繰り返す
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/01(木) 03:17:10.56 ID:Z9/mOGYi0
構って二度と繰り返さないならいいんだけどねぇ
もう12月か
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 07:05:12.27 ID:VbtfUk1jo
それ以前に専ブラくらい使えばいいのに
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/02(金) 08:46:34.15 ID:DBXJra6Eo
使っててもウザいもんはウザいしマナーだし
805 :977 [saga]:2011/12/05(月) 01:10:02.89 ID:jOxZI8JDO


投下しまーす

相も変わらず短いでございやす
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:11:38.67 ID:jOxZI8JDO



インデックス「ありがとうなんだよ! ありがとうなんだよ!」

浜面「……」

フレンダ「おー、見る見るうちに減っていく」



彼女は感謝の意を述べて食べるという器用なマネをしながら、甚だしいスピードでテーブル一杯に並べられた品を片付けていく。
もはや噛まずに飲み込んでいるのではないか? と彷彿させるほど。

驚愕の光景に二人は思わず手を止め、釘付け状態に陥っている。
フレンダに至っては、さっきまで黙々と口に運んでいたパフェを自らインデックスに差し出し、現状を楽しんでいた。
しかしサバ缶は譲らなかった。
やはりこだわりがあるのだろうか?



浜面「でだ、イマイチ状況が飲み込めいから聞くが……何してたんだ?」

インデックス「おなかが空いたからとうまを捜し求めて、学園都市をさまよってたんだよ」

浜面「オッケー、簡潔な答えをありがとな。そして言わせてくれ……だろうと思ったよっ!」
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:12:47.71 ID:jOxZI8JDO



予想通りすぎる返答に彼はツッコまざるを得なかった。
そして明確に言えるのは浜面の中で着実に第一印象が崩れ始めている事だ。
だが、それはさして問題は無い。
むしろ難儀なのはこのテーブルに並べられた品を全部、『浜面持ち』である事。もちろんパフェも。



浜面(一応、足りるけど……俺の懐はいち早く先取り冬仕様になるな。金銭的な意味で)



現在の季節は夏まっ盛りにもかかわらず、彼の財布は寒冷期を迎えるのは間違いない。
トホホ、とがっくり首を項垂れる浜面の背中からは哀愁を漂わせていた。
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:14:16.57 ID:jOxZI8JDO
そんな意中である事など知る由も無いインデックスはテーブルに並べられた品を全て片付けると、満足げに笑顔を放った。



インデックス「ごちそうさまー!」

浜面「ったく、ほら、口の端に食べかすが付いてんぞ」

インデックス「んー」


心の底から嘆息を漏らし、財布をしまって別のポケットに突っ込んだ。
残念ながらハンカチは無いので手頃にあったポケットティッシュを取り出し、優しく撫でるように拭き取ってあげる。

この一連の動作を見て、フレンダは疑問を投げかけた。



フレンダ「随分と手慣れてると思うんだけど、存外に女遊びが激しい訳?」

浜面「ねえよ。っつーかそこは気を遣える男って解釈して欲しかったんだが……」
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:21:19.57 ID:jOxZI8JDO



半分嘘で半分真実である。
ただ女遊びが激しい訳じゃ無く、過去に大切な人が『居た』というだけの話。
それに伴ってあたかも慣れているように見えるだけの事。

何気無い返答にも思えるが、実は内心、必死に平然を取り繕っていたりする。
例え一瞬でも、脳裏によぎった『光景』が未だに焼き付いているから。
即答は自分でも知らない内に沸いた焦りの裏返し。
無意識で拒否反応を起こしているのか、まるで払拭するかのよう。

愚鈍な己が犯した人らしく有り人らしく無い愚かな罪。
でも、誰も彼を責める事はなかった。半蔵も。駒場も。上条も。
確かに浜面がとった行動は許されるものではないだろう。
実際、浜面は後悔に苛まれていた。
その度に懺悔を繰り返した。
心から詫び、涙もボロボロと流した。
みっともないと思いながらも地面に泣き崩れる日もあった。

当然こんなもので償えるとは到底思えはしない。
だけど判らなかったのだ。
謝る程度の事しか愚かな己には判らなかった。



浜面(……この温もりさえ感じる資格なんてねえのに、な……)



彼は、長くは続かないであろう平穏を味わう。
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:22:38.41 ID:jOxZI8JDO
いつドコで、この日常が崩壊されるか判らない。
だからその最後の時まで気を抜かないよう注意しつつ、日々を過ごす。





―――その、最後の瞬間までに『彼女』を見付けれる事が出来たなら良いのだが……。





インデックス「君は確かこの前とうまを運んできてくれた人だよね!」



思考にふけっていた頭は、少女の明るい声によって現実に戻された。
浜面に向けてニコッと満面の笑みを浮かべるインデックスの姿。
太陽さながらの目映い輝きを放つ笑顔に彼は何かを感じ取る。
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:23:48.09 ID:jOxZI8JDO



浜面「覚えてたのか、すげえな。一度しか会ってないのに」

インデックス「当たり前かも、私の完全記憶能力は見たものは全部覚えちゃうんだから!」



胸を張って威張る。
行動全てに頬が緩んで微笑を浮かべてしまうような少女。
上条が、自らの側に置く理由を今、理解した気がする。



インデックス「私は、インデックスって言うんだよ?」

浜面「浜面だ。浜面仕上」

インデックス「はまづら! よろしくなんだよ!」



少女の目線がフレンダへ向いた。
対象が変わったのだ。
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:25:31.65 ID:jOxZI8JDO
ギョッと思わずたじろぐ。
片方の口端をヒクつかせて苦笑。
目を輝かせるインデックスが何を求めているか読めるからこそ、退いてしまった。

浜面はやれやれと息を吐き、顎をくいっと動かして催促させる。
自己紹介してやれ、と。



フレンダ「……フレンダ=セイヴェルンよ」

インデックス「よろしくなんだよ!」



辟易されたように言う彼女に対し隔てる事も無くインデックスは返す。
満足したのか、再び興味の対象は浜面へ向く。
だが彼は嫌な素振りを一片たりとも出さない。
すぐさま『物事を聞く態勢に移る』様子を見ると、やはりフレンダからすれば手慣れているようにしか見えないのだ。
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:27:37.99 ID:jOxZI8JDO



インデックス「はまづらはとうまと仲良しなの?」

浜面「仲良し……っつーか、親友なんだと思うぜ? 自分で言うのも何か恥ずかしいけど」

フレンダ「ホントに。キモイ訳よ」

浜面「うるせっ」

フレンダ「ていうかそのとうま? って人と浜面は今に至る経緯はなんなの?」

浜面「……んなもん聞いてどうすんだよ」

フレンダ「結局、何となくって訳よ」

浜面「…………」



彼は気恥ずかしそうに顔を逸らし、ポリポリと頬を掻く。
インデックスも興味津々のご様子で、テーブルから身を乗り出して待機していた。
より一層、気恥ずかしさは増す。

二人の視線が集中するなか、逃げ切れないと判断した浜面が口を開いた。











浜面「何もねえよ、ただ情けない男の話さ」
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [saga]:2011/12/05(月) 01:28:27.13 ID:jOxZI8JDO







―――時は、何年も前に遡る。
815 :977 [saga]:2011/12/05(月) 01:32:44.80 ID:jOxZI8JDO


投下しゅーりょーです


ではー
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です) [sage]:2011/12/05(月) 01:33:08.60 ID:jbLsoZADO
817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(熊本県) [sage]:2011/12/05(月) 01:53:06.92 ID:FA0uErv50
超乙です!!
818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(福岡県) [sage]:2011/12/05(月) 06:27:10.46 ID:wjTFNusr0
過去編楽しみです。
819 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/12(月) 21:00:02.75 ID:IZIkor6T0
超浜面の超過去楽しみです!!!
820 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 22:43:00.13 ID:CUbNwPSAO
>>819

sageない偽者は超黙ってて下さい。

口調もミスしちゃってて、超恥ずかしいとは思わないんですかね。
821 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/12(月) 23:37:38.25 ID:nkbxK1o/o
喧嘩はよくないよ!ってミサカはミ(ry
822 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/18(日) 16:52:58.71 ID:Hl3WgLpT0
浜面の過去か〜

Σ(゚д゚ )浜面の過去だとぉ!?

超気になります!
823 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/26(月) 16:49:12.79 ID:WR5hcnqAO
なりきりとか他者から見ればキモいだけだからやめろ
824 :977 [saga]:2011/12/27(火) 02:17:09.04 ID:9I0TE1LDO
熱や風邪に襲われて随分と遅れてしまいました
風邪は現在進行形ですが、もう治りますのでご安心を


では投下します
825 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:22:51.03 ID:9I0TE1LDO




___Episode:浜面仕上






826 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:24:11.89 ID:9I0TE1LDO



とある所に少年が居た。
何事に対しても不器用で、あまり目立つようではない至って普通の男の子。
だけど誰よりも優しくて機械を弄るのが大好きな少年だ。



少年の名前は浜面仕上。



そんな少年の側にはいつも少女が居た。
基本的に口数は少なくマイペースで、少年と同じくあまり目立つようではない女の子。
だけど誰よりも少年を気遣い、側に居て支え続けてきた少女だ。



少女の名前は滝壺理后。
827 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:28:31.51 ID:9I0TE1LDO
二人の間柄は幼馴染み。
小さい頃からの付き合いで、共に過ごした時間は親より確実に長いほど。
帰る時も一緒。遊ぶ時も一緒。お昼寝の時も一緒。
学校でも同じ。登校も一緒。休み時間は一緒。昼休みも一緒。下校も一緒。

常に隣には少年が、少女が居た。
当り前になっていたのだ。
だが、その『当り前』がどれだけ大切か、どれほど重要なのか。
少年は身をもって知ることになる。


運命の日は小学六年生の後半の頃。


周りがドコの中学校に行くだの行きたいだの、とても忙しい時期。
当然、二人とも避ける事は決して出来ない通らなければならない道。
しかし無能力者である少年にとって、興味が一切持てない話だった。
何故ならどの中学に行こうが、自分に降り掛かる言葉は「落ちこぼれ」だけなのだから。
故にどうでもいいと重く捉えず、軽くあしらっていた。


けれど少女の方は、そうはいかなかった。
828 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:31:30.95 ID:9I0TE1LDO



『君、その能力を他人のために使いたいと思わないかい?』

『……おじさんは誰?』

『私は能力を研究しているんだ。君の持つ能力は人を助ける事が出来るかもしれない。そのために私に君の能力を研究させてくれないか?』



少女のレベルは2。
将来有望な価値ある存在。
そして極め付きが至極稀な能力。
成長を続ければレベル5も夢ではない。
そんな喉から手が出るほどの人材を、学園都市の飢えた研究者達が放っておくはずが無い。



『やめとこう滝壺。この人達スゴく怪しいし、知らねえオッサンに付いて行く必要なんか無いって』



実験に貪欲な狂信者は躊躇う事を知らない。
判りやすい比喩で言えば、どんな事に対しても手段を選ばないのだ。
829 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:33:28.69 ID:9I0TE1LDO



『残念だが君には用事が無いんだ。その子とお話がしたいから、悪いけどおとなしく帰ってくれないかな?』

『……!』



説得しようと気持ちが高ぶっている少年はとにかく、冷静故に少女は気付いた。
それは少女が能力者だったからかもしれない。
または少女が相手の動きをよく見ていたからなのかもしれない。





―――先頭に立つ研究者の背後に並ぶ人間の一人が、懐からナイフを取り出したのだ。





『はまづら逃げて、お願い』

『は? 何言って―――』



ゴッ!! と。
830 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:35:58.86 ID:9I0TE1LDO
少年の側頭部で、何か鈍器なような物で殴打する鈍い音が響いた。
慣性の法則により少年の身体が傾き、およそ数メートルアスファルトを転がっていく。
突如起こった事態に訳が判らないまま、少年はうつぶせの状態から顔をゆっくりと上げる。



『う……な、何が……』

『オイ小僧』



頭上に響く野太い声と共に、スッと目の前にナイフを突き付けられた。

幼く知識が浅い少年にも突き付けられたソレの危険性を迅速に感知する事は可能だった。
恐怖が己を覆い尽くす中で、少年は辛うじて声の持ち主の顔を直視する。
自分より遥かに身長が高く、がたいの良い屈強な体の姿をした男が、気付かない内に接近していた。
……一対一の真剣勝負したところで、とても殴り合いで適うはずが無い相手。



『出来れば手荒い真似はしたく無いんだが』



少年の腕を掴み、






『―――仕方ねぇよな』






手首から肘に一閃、ナイフで切り裂いた。
831 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:37:09.91 ID:9I0TE1LDO



『う、あ……あああああああああああッ!?!?!?』



血が噴き出す事は無い。
ただ、ダクダクと流れるだけ。
テレビで見るような鮮やかな色はしていなかった。
赤黒く濁った、初めて見る色。
痛みはある。しかし、それ以上に未だかつて味わった事の無い激しい“熱”が襲う。

動揺と戸惑いだけが明らかで。
恐怖がより一層に増すばかりで。



『死にたくないなら消えな。小僧に構ってるヒマはねぇんだ』

『うぁ……あ、あぁ……っ』



泣きじゃくる少年に向かって冷酷に告げる。
だけどソレは、男が少年に対する最後の情けであり最終警告だ。

この場を去るならば見逃そう。
けれども留まる場合は容赦しない。
832 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:39:56.47 ID:9I0TE1LDO

究極の選択肢を迫られた少年は、告げられた言葉の意味を正確に理解はしていなかった。
だがそれは仕方が無い事。何故なら少年は恐怖のあまり、思考能力を失っていたのだから。
そんな少年にも瞬時に判った事が一つ。



(こ、このままココに居たら死ぬ……ッ)



でも、と。
少年の残り僅かな理性が、“逃げる”という選択肢に至らせず、踏み止まっていた。
本当なら目前の恐怖から逃げ出したくて堪らない。
どれだけ情けなくても、どれ程みっともなくても、逃げ出したかったのだ。

でも、今ココから逃げたら滝壺はどうなる?
欠けてはならない大切なモノを無くしてしまう気がした。
今まで過ごしてきた日常が。
何事も無く送ってきた平穏が。
二人で共に笑い合った幸せが。
……終わりを告げてしまいそうだった。


助けるんだ。俺が、助けるんだ。
滝壺を、俺が―――ッ!





『……大丈夫』





少女は暗い不安な表情を浮かべるが、それも一瞬だけ。
すぐにいつものように温かく、優しい微笑みに変わる。





『逃げて。ここは私に任せて。……大丈夫、絶対に帰るから』
833 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:41:06.74 ID:9I0TE1LDO










―――気が付けば、走り出していた。
834 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:42:29.37 ID:9I0TE1LDO



走る途中、何度も躓いて倒れそうになるが、少年は走り続ける。
溢れる涙を拭うこともせず、必死に足を運ばせて進んでいく。
ドコに向かっているかは少年にも判らない。
もしかしたら、ひたすら恐怖から遠ざけるように逃げているだけかもしれない。
アスファルトを踏み鳴らして。
ガムシャラに走り続けて。




―――悔しい。




素直にそう思う。自分の無力さに苛立ちを覚える程に。
このやる瀬無い感情に少年はただただ歯を食いしばる。
走り続けているのはソレらを払拭したいからなのかもしれない。
835 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:43:55.20 ID:9I0TE1LDO



『……ちくしょう……ッ』



どうしようもない後悔の念が声となった。
幼いながらに受けた屈辱は少年に大きな影響を及ぼす。
己がどれ程、精神面でも力でも弱いか理解した。
許せなかった。負けてしまった自分が。力でねじ伏せる思考を持つアイツらが。

そして何よりも、滝壺の見え透いた嘘と判っているはずなのに、逃げてしまった自分が……一番許せなかった。










『ちくしょォォォォォォォォォォォおおおおおおおおおおッ!!!!』










―――――――――――――――
836 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:46:14.61 ID:9I0TE1LDO



浜面「ん……」



パチパチ、と焚火の音がする。
次第に数十人の人間が楽しそうに騒ぐ声も。

朦朧とする意識の中で、徐々に浜面仕上は目を覚ます。



浜面(ココは……?)



うっすら目を開けると、少し離れた場所で数十人の男が焚火の周りで談笑していた。
焚火と言っても小さな炎だ。
騒ぎに至る程ではない。

刻々と時間が経つにつれ、ようやく意識がハッキリしてきた浜面は、記憶を思い出して状況を把握。



浜面(そう、か。寝ちまったのか俺……)
837 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:48:14.96 ID:9I0TE1LDO



夕方頃に川沿いの高架橋の下で、友人を集めて小規模のキャンプファイヤーをする事になっていた。
自分も途中まで手伝っていたのだが、休憩を取ろうと地面に腰を下ろし橋脚に背中を預けた……ところまでは覚えている。
どうやらそのまま寝てしまったらしい。
西日が差していた夕暮れも、現在では月が顔を出す時間帯。

疲れているのだろうか? だとしても、



浜面「……とても疲れが取れそうな夢じゃ無かったな」



むしろ気分が悪い。
夢の所為もあるかもしれない。

久し振りだった。
こんな鮮明に想起したのは。
当初こそは毎晩のように悪夢のごとく見ていたが、最近は全く来なくて落ち着いてたはずだ。
838 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:49:45.34 ID:9I0TE1LDO



浜面「今になって見るもんじゃねえだろうよ……」

「目を覚ましたか?」



頭を抱える浜面の頭上から声。
顔を上げると、ソコには昔ながらの付き合いである友人―――駒場利徳が立っていた。



浜面「駒場か……いやすまねえ、手伝わずに寝ちまった」

駒場「……気にするな。疲労して睡眠を取っているのに起こすのは、野暮というものだろう?」



首を横に振って言う。
キャンプファイヤーの準備をしていて疲れた訳では無いと、駒場は見破ったのだ。


―――浜面に起こった悲劇の顛末を知っているからこそ、言える事。
839 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:52:24.95 ID:9I0TE1LDO



浜面「はは……そう、だな」

駒場「……どうした? 顔色悪いぞ」

浜面「ちょっと、な。懐かしい“夢”を見ちまってよ」

駒場「……“夢”、か」



意味深な発言と駒場は受け取る。
ただの夢では無さそうだ。
憶測が正しければおそらく……。

結論に至る前に浜面は立ち上がった。
短い睡眠を取ってた所為か、首をポキポキと鳴らす。



浜面「目覚ましついでに飲み物買ってくるとするか……何か要るか?」

駒場「……いや、遠慮しとこう」

浜面「うぃー、んじゃあ行ってくるわ」



彼はヒラヒラ片手を振り、自動販売機に向かって歩いていく。
背中から漂わせる雰囲気は、まだ一向に取れぬ疲れか、或いは眠気によるモノか、若しくは―――、



駒場「…………」



緩慢と目をつむる。
考え込むように。祈るように。
浜面の事情を知る故、己は干渉することが出来ない。
何故なら駒場利徳という人物では彼を救うことが不可能だから。
初めて本人の口から聞かされた時、すぐに悟った。
従来付き合って来た仲だからこそ、いち早く気付いたのかもしれない。
それは半蔵も同じ。きっと二人が如何なる言葉を掛けたとしても、浜面仕上を救えない。
840 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:55:54.43 ID:9I0TE1LDO



だから……願う。



必ずや浜面という男を助けることの出来る人物が現れる事を。
自分のやれる範囲が願う事だけなんて、本当は凄く歯がゆい。
親友を思うがために、何かしてやりたいと思うのは当然の事。
もし、他の事柄で役に立てるならば拒んだりはしないだろう。
だからこそ、



半蔵「おーい! 駒場ー! ちょっと手伝ってくれー!」

駒場「……今行く」





―――その日まで、願い続けよう。
841 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 02:58:28.61 ID:9I0TE1LDO




―――――――――――――――




浜面はいつも通る公園まで歩いていた。
自動販売機は仲間達が居るところからすぐ近くにあるのに、彼はわざわざこの公園を選ぶ。

実は少し目覚めに歩きたかっただけの話。
丁度公園にはロシアンルーレット並みに面白い飲み物がある。
上手く引き当てば一瞬で眠気が吹っ飛んで行くだろう。



浜面「あっれ、小銭が無い……まあ、千円でいいか」



何気なく財布から千円を取り出す。
ウィーッと機械音と共に千円を入れて、どれを選ぼうとする……が、



浜面「…………ん?」
842 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 03:00:31.55 ID:9I0TE1LDO



一向に飲み物のボタンが光る傾向を見せない。
それどころか千円の表示すらされない。

……浜面の中で、嫌な予感を感知した。

確かに今までは札ではなく、小銭だけだった。
千円や五千円、ましてや二千円など入れた事は無い。
故障という訳でも無さそうだ。
つまり、



「飲まれたっぽいな」

浜面「あぁ……最悪なことにそうみた―――は?」



と。
彼の思考は止まる。

首だけ横を見ると、同じ年ぐらいの少年があたかも当然のように立っていた。
ツンツン頭に黒いタンクトップ、ドコかの学生である証明のズボン。
少年は変わらない調子で続ける。
843 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 03:03:17.51 ID:9I0TE1LDO



少年「コイツは小銭じゃねえと欲しい物を出してくれないワガママ姫なんですよ、全く」

浜面「……ってことはお前も?」

少年「二倍の値段で」



やれやれ、とでも言うように肩を竦めた。
少年は一歩下がって、不敵な笑みを浮かべる。




少年「だからな、こうして―――」




構えを取り、片足を振りかぶって、




少年「―――躾する必要があるんだッ!!」




自動販売機の側面を思う存分、蹴り上げた。
844 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 03:10:30.87 ID:9I0TE1LDO



少年「ほら。ジュース。ランダムで悪ぃけど」

浜面「あ、あぁ」



呆然。その一言に尽きる。
突如隣に現れたと思いきや、自動販売機を蹴り上げて飲み物を強制的に出した、異様な人間。
圧倒されつつも受け取るが、微かに受け取っていいものか疑念が残る。
なかば一方的なため、浜面の状況は辟易の域である。

そんな意中である事を知る訳が無い少年は、片手を腰に添えて体重移動しながら口を開く。



上条「まあ気にせず貰ってくれ。不幸な上条さんからのささやかなプレゼン―――」



……が、少年の言葉は最後まで続かない。
何故なら、





ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!





上条・浜面「ん?」
845 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 03:11:33.40 ID:9I0TE1LDO



サイレンの音が聞こえるやいなや、公園の入り口に大量の学園都市を清掃するバケツ型掃除ロボ。
一、二、三……数えるのが面倒になる程、続々と掃除ロボが二人に向かって走行中。

二人は明らかにマズい雰囲気に背中からダラダラ汗が流れ出る。
とっさに上条の方を見れば、口角が引き吊り、苦笑を浮かべていた。
浜面は理解する。これはこの男でさえ予想外の状況なのだろうと。





気付けば二人は初対面にもかかわらず、仲良く全力で走っていた。
846 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [saga]:2011/12/27(火) 03:15:22.21 ID:9I0TE1LDO



浜面「うおおおおおおおおおおおおおおおッ!?」

上条「クッソ不幸だーっ!! 今日は大丈夫だと思ったのにぃぃぃぃ!!」

浜面「今日は!? ってことは何度か同じ目に遭ってんのかよ!!」

上条「うるせぇ! 飲まれるぐらいならタダの方が良いに決まってるだろ?!」

浜面「何だよその理屈ワケ判んねえから!! むしろ傍観者だったっつーのに巻き込まれて追われるなんざ堪ったもんじゃねえぞ!!」

上条「残念残念だ残念でしたの三段活用!! ジュース持って一緒に逃げてる時点でテメェは既に共犯者なんだよっ!!」






―――これが、のちに親友となる二人のファーストコンタクト。
847 :977 [saga]:2011/12/27(火) 03:18:03.45 ID:9I0TE1LDO
投下しゅーりょーです
今日はいつもより長めでお送りしました


では、また来年!
848 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 03:30:45.19 ID:3jEvnpYc0
まってた待ってた超舞ってた。1乙。
超舞ってる
849 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/27(火) 05:25:04.21 ID:Tgz5CHbz0
いいなあ…俺もこうゆう友達との出逢いしてみたいなあ

>>1
850 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) :2011/12/27(火) 11:59:12.43 ID:VtTHk+qv0
1乙
結局待ってたって訳よ♪
851 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/28(水) 12:24:43.93 ID:OmGonmrAO
>>1
この地点で暗部にいるかどうかはわからないが、上条さんはやっぱり不幸なんだなww
852 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/29(木) 00:57:12.47 ID:N2VCooBr0
乙! 
浜面すきだわぁ
853 :SS寄稿募集中 SS速報でコミケ本が出るよ(三日土曜東R24b) [sage]:2011/12/30(金) 12:34:33.33 ID:YsviTBVp0
乙!
待ってましたよ!
854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/01/11(水) 10:48:21.00 ID:kwgo34Xno
855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(九州) [sage]:2012/01/11(水) 16:41:19.02 ID:wvDS/x2AO
関西テメェェエエエエエエエエエエエエエッ!!!!!!
856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/11(水) 18:53:01.10 ID:9AqxBzqoo
>>854
ageとかなめてるンですかァ?
愉快に素敵に釣られちまったぞ、オマエはァ!
857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/21(土) 19:24:59.30 ID:5aNAEfEDO
舞ってる
858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 19:17:06.87 ID:fED8QF2V0
明確な意思を持って、あげ
859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 19:18:42.18 ID:fED8QF2V0
下がってたしwwwwwww
860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/01/22(日) 21:31:23.19 ID:jEhGe0gBo
気持ちが悪い
861 :977 [saga]:2012/01/23(月) 01:23:14.10 ID:pNjf1p9DO
というワケで投下します
862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:25:05.98 ID:pNjf1p9DO



―――翌日。



浜面は第七学区のとある駐車場に居た。
“居た”と言っても、彼の今の状況は何分表現し難いものがある。

何故なら“居た”という表現には程遠いのだから。
車と車の間に身を潜め、時折辺りを見回す行動を取る彼の姿は、もはや不審者以外の何者でもない。
誰が目撃しても警備員に通報するだろう。
実際、浜面は通報されても仕方が無い事を現在進行形で行っていた。
今手に持つのは針金、ハサミ、等々。お判りにいただけただろうか?



そう―――車の盗難だ。
863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:27:21.47 ID:pNjf1p9DO


小さい頃から物を弄るのは好きだった。
分解しては仕組みを知り、構築しては達成感を得ていた。
故に中学一年生にして機械系に滅法強く、学校の工作や技術といった科目では常に成績トップだったりする。
純粋に趣味として遊んでいたから。

だが現在は違う。これは役割。
どれほど屈強で強靭な肉体を持つ駒場でも、どれだけ冷静で聡明な作戦を謀る半蔵でも。
“物を弄る”という分野では浜面に到底及ばない。
武器の扱いに関しても、ロックを解除する事でも卓越した才能の持ち主。
車ごときのロックなんて何のその、弱冠にして神業的なピッキングテクニックの前では児戯に等しい。



浜面「いっつ……」



そんな彼も今日は不調気味。
片手で太ももをさする。
両足の筋肉から痛みが生じる―――所謂、筋肉痛というヤツだ。
864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:30:41.88 ID:pNjf1p9DO

昨日の夜、初対面の少年と街中を全力疾走をしていた所為だろう。それも理不尽な理由で。
あれだけの掃除ロボの数だ。撒くのも一苦労。
止まる事は許されないが故に走り続け、結果この状態に至る。
ジュース一本にまさか多大な代償が必要になるとは、誰が予想するだろうか。
これこそまさに神の悪戯。

少年とは分岐点で二手に分かれ、それ以降会う事は無かった。
正直な話、文句の一つや二つ言いたい所。
しかし残念な事に叶わぬ願いなのだが。



浜面「そもそも、これ以上の面倒は御免被るからむしろ会いたくねえんだがな、っと!」



警報機の反応に触れないよう用心しつつピッキングを行っていた。
語尾に力を加えた理由。とうとう車のロックを解除したのだ。
865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:33:20.75 ID:pNjf1p9DO

浜面は軽く伸びをする。



浜面「とりあえず駒場と半蔵を迎えに行っ……」



道具を懐に仕舞い、立ち上がって車を開けた途端、彼の言葉は止まった。
故意や意図的に続けられなくなったのではない。
自然と無意識で声が出なくなったのだ。
眉間のシワも一本増えた気がするのは、おそらく間違いでは無いだろう。
『絶句』という言葉はまさに今の現状を表すのだと思う。



浜面「は? いや、ちょ、まっ……はぁ?」



結局行きつくところは疑問系。
もはや言語機能すら失わなれかけていた。



「ん……あぁ?」



そしてまさか、訳の判らない日本語となってしまった疑問系に返事があった。
声は車の中から。それも運転席。
866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:38:32.90 ID:pNjf1p9DO
人が居たのだ。運転席と助手席を跨いで寝転び、就眠していた様子。
キチンと確認せずピッキングを行った浜面も不注意なのだが、中に居た人物が想定外過ぎて、この場から去る事すら頭に無かったらしい。

黒のタンクトップ。
ウニみたいなツンツン頭。
筋肉が締まった逞しい体格。
しかし自分より小さい身長。
……見覚えがあり過ぎて逆に困る。

しかも昨日の晩。
同じように全力疾走していた。
共に掃除ロボから逃げるため。
別れてから二十四時間すら経っていない。



上条「んあ?」



その時、バチリと二人の視線が交差する。
867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:40:14.40 ID:pNjf1p9DO



浜面「……」

上条「……」



訪れたのは沈黙と、何とも言えない気まずさ。
お互い無言になれば、僅かな動作すら行わなくなった。

運命とは数奇なモノだ。
時に残酷で時に滑稽である。
劇的な出会いを交わした二人は、またこうして邂逅する。



上条「よ」



あまりにも耐え難い空気に痺れを切らした上条が上体を起こして、ぎこちない挨拶を述べる―――その時だった。
起き上がる拍子に彼の右手が、盗難や強盗対策用の“遠隔操作可能の防犯ブザー”に触れてしまったのだ。




結果。
868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:41:28.05 ID:pNjf1p9DO






















ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!! 




















―――つい最近、同系統のサイレンの音を聞いた覚えがあるのは、気の所為だろうか?
869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:43:47.75 ID:pNjf1p9DO

繰り返すが、運命とは数奇なモノである。
これを必然と捉えるか偶然と捉えるかは千差万別だ。
それでも、もし神様が居たとして、二人に告げる言葉はこの一言に限る。

“一度ある事は二度ある”と。



「全く……朝っぱらから元気有り余ってよろしい事だが、少しは時間を考えて欲しいじゃん?」



ビクッ! と二人の肩が揺れた。
昨晩耳にしたサイレンの音では無い、明らかに自分達に掛けたであろう人間の声。
何故か無駄に辺りに響いた声は、ドコか喜びが含まれていた。

そして浜面は、この声に凄く心当りがあった。
幾度か顔を合わせた事もあればスキルアウトでお世話になった事も。
何より決定的なのは直接言葉を交わし、声を聞いた事があるからだ。



浜面「アンチスキル……!」



途端に踵を返して彼は全力疾走。
ほぼ無意識で足が動いたあたり、本能が危険と感知しているのだろう。
870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:45:15.01 ID:pNjf1p9DO

もはや振り向いて誰かなど顔を確認するまでも無い。
いや、する余裕なんて無いのだろう。
浜面の判断が正しければ、今の内に距離を広げとかないと……必ず捕まる。
そんじょそこらに居るアンチスキルとは訳が違うのだ。
レベル3の能力者までなら鉄拳制裁で抑える事が可能な時点で、意味が判らない。



「そこの二人止まらんかーッ!! おとなしく捕まるじゃんよー! 男なら男らしく立ち向かったらどうじゃん!?」



当然のごとく追い掛けているみたいだが、声はまだ遥か遠い。
逃げ切れる可能性は十二分ある。
路地裏を有効活用し、巧みに曲がり角などを利用すれば撒く事が出来る。
スキルアウトのおかげか、道や短縮ルートには相当詳しくなった。



浜面(あんたに止まれと言われて素直に聞くヤツなんて一人も居ねえ―――ん?)



ふと、浜面の思考が止まる。
全力で走りながらも首を傾げ、親指と人差し指を顎に添えた。
アンチスキルの発言に不可解な点があったからだ。
言ってしまえば、彼はようやく気付いたのである。
今まで気付かなかったのは、鈍感というか周りを見ず一心不乱というか。





―――二人? と。
871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:47:35.04 ID:pNjf1p9DO



浜面は顔だけを横に向け、



上条「……ッ!!」



固まった。顔だけ。



浜面「……いや……何でお前、俺と一緒に走ってんの?」



無表情のような呆れたような真っ白になり兼ねない表情だったが、すぐさま我を思い出し元に戻ると、問う。
同じく全力疾走の上条は大層必死なのか、食ってかかった。



上条「何でってあのままアソコに居たら俺が捕まっちまうだろ!?」

浜面「あの車の持ち主お前じゃねえのかよ!?」

上条「当たり前だろっ! テメェと同様、盗んだ物だよコンチクショウ!! 第一上条さんには車を買うような経済力はありませんのことよ!」

浜面「まだ盗んでねえよ!? ったくあーもー! 何でまた巻き込まれなきゃなんねえかなぁ!! しかも同じ人物によお!!」

「私を前にしてそんなセリフ吐ける勇気があるとは良い度胸じゃんよーッ!!」

上条・浜面「すいませんっしたー!」
872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:49:51.25 ID:pNjf1p9DO




―――――――――――――――




浜面「はあ、はあ、はっ……ぉえ」

上条「ふぅ、何とか……振り切ったみたいだな」



路地裏に身を潜める二人の姿。
もう走れないと主張するように浜面は地面に腰を落とし、酸素を求め大きく深呼吸していた。
準備運動も無しにいきなり全力で走った為か、吐き気を催す始末。
それに対して上条だが、汗は出ているものの、息切れは微塵も感じられない。
浜面自身も運動神経は良いとまでには至らないが、“まあ出来る”程度。
スタミナにも自信はある。なのにこの男は……、



上条「お前も上条さんに劣らず不幸なヤツなんだな。俺が勝手に巻き込んでるだけかもしんねーけど」
873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:51:18.06 ID:pNjf1p9DO



そう言うと上条は浜面の隣に同じく腰を落とす。
疲れてる自分とは正反対に澄ました表情で言われムッとし、言う。



浜面「お前、あんだけ走っといて息切れ一つ無いとかバケモノかよ……」



遠回しな嫌味だ。皮肉の口振りは己がこの男より劣っているという卑下。
身長は自分の方が断然と高い。
手の大きさだって、おそらく足のサイズだって負けやしない。
なのに……自分より優れている。
頭ではイケない、と判って自制心を保とうとするが思考がついて行かない。
何かしら理由を付けて卑下をするあたり、もうそろそろ末期だろう。



上条「そういうお前こそ、十分過ぎるほどバケモノだと思うぜ?」



彼はケラケラ笑いながら、



上条「全力疾走で俺とほぼ互角に渡り合えたのは、お前が初めてだしな。『あの二人』でさえ……いや、だからこそか? スタミナ切れが早いのなんの、流石の上条さんも呆れちゃいましたよ」
874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:52:47.84 ID:pNjf1p9DO



理解が出来ない単語が幾つか出てきた。
そこまで明言する訳でも無く、ただ浮かぶだけ浮かばせておいて何事も無かったように濁して霧散させたのだ。
浜面はそれに気付きもしない。しかし当然の事。
濁らせた結果、深く追及をしなければ干渉も然り。
「昔、友人と同じような羽目にあったのか?」と頭の隅によぎるだけ。

上条は右手を差し出す。



上条「上条当麻だ。改めてよろしくな」

浜面「……浜面仕上、こっちこそよろしく」



同様に右手を差し出し、握る。



上条「……ん? なあ、どうしたんだこの傷?」



そして、気付いてしまった。
右手首から肘にかけて一線の傷に。

未だ消えない彼の傷は……“あの日”の証。
875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:55:37.27 ID:pNjf1p9DO

目に焼き付けた記憶。
決して忘れる事が無い映像。
一つ一つ、鮮明に覚えている。

研究員の顔も。
背後に並ぶ人間も。
近付いてきた男も。
野太い声も。
急激に襲われた頭の痛みも。
動揺と戸惑いで覆う恐怖も。
突き付けられたナイフも。
掴まれた時の腕の感触も。
赤黒く濁った血の色も。
初めて味わった焼けるような熱も。
最後に告げた……彼女の言葉も。

指の動きから、眉の動きも。
発言の一つから息遣いや呼吸まで。
一から十まで全て、記憶に刻んだ。

復讐も私怨も後悔も悔恨も、あらゆる感情を押し殺して天に誓った。
必ず―――捜し出してみせると。
どんな茨の道だろうと、泥沼の世界だろうと、強くなって……強くなって強くなって、絶対に!

















上条「どうした?」

浜面「……え? あ、いや……何でもねえ」
















―――その声に、我に返った。
876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 01:56:33.29 ID:pNjf1p9DO


傷を見て、“あの日”を無意識にふけてしまっていた。
昨日夢を見たばかりだったので尚更。

誓いの想いは心に当然残っている。
だが、手掛かりが無いのも確か。
幾ら手当たり次第に当たった所で、闇雲では意味をなさない。
どうしようも無いから心の蟠りは消えず、溜まるばかり。



上条「……くくっ、ハハハッ、あっはははははは!」



突然、喉を鳴らして笑ったと思えば、大声を上げて笑い出した。
まだあのアンチスキルが近辺に居るかもしれないという懸念は、どうやら無さそうだ。
無論浜面は目を丸くする。訳が判らず対応に困り果て、依然と握手を交わしたまま。



上条「あー、悪い悪い。ちょっとな」



ひとしきり笑った後、理解したと言わんばかりに「なるほどなるほど」と何度も頷く。
877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/01/23(月) 02:00:15.19 ID:pNjf1p9DO










上条「……“あんた”が選んだ理由、頭の悪い上条さんでも判った気がするぜ」
878 :977 [saga]:2012/01/23(月) 02:09:54.45 ID:pNjf1p9DO
投下しゅーりょーです

最近、投下が遅くなりつつあって、誠に申し訳ありません
こんなgdgdなのに待ってくださる皆様に感謝感激でございます

完結に向けて頑張りますので、今年もよろしくお願いします


ではまた次回
879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/01/23(月) 02:24:38.61 ID:Qutyb6iG0
乙なんだよ!
さっさとご飯と続きを要求するんだよ!!
880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2012/01/23(月) 07:52:43.76 ID:2H28yiZAO
乙〜
遅くなっても待ってるぜ
881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/05(日) 18:34:47.23 ID:mxGUU5HQo
おーい
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/02/06(月) 01:36:18.66 ID:d74IPclj0
待ってる
883 :977 [saga]:2012/02/16(木) 02:08:25.80 ID:mnJa8asDO
今夜もやって参りました、ひっそりと投下の時間です

本来なら先週の月曜に投下するはずがトラブルで今になりました

そんな訳で今回は短いです
ご了承お願いします
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:14:19.53 ID:mnJa8asDO



上条「大体、車盗んだところで運転出来るのか?」

浜面「人の事言えないだろっ。……まあ、そこんとこ抜かりはねえよ。車の運転ぐらいとっくに修得してる」

上条「へぇ……誰が監督を執ってたんだ? まさか教習所の人とか言わないよな?」

浜面「当たり前だろ! だとしても門前払い食らうに決まってる。独学だよ独学! そういう上条はどうなんだよ?」

上条「馬鹿野郎。あんな薄っぺらいカードで証明されると思うのか? 上条さんは断固否定しますよっ」

浜面「いんや? 必要なのはカードじゃない、技術だ」

上条「仰るとおりで」



浜面と上条は路上を歩いていた。
あれから幾分が経ち、アンチスキルが周りに居ない事をしっかりと確認してから、今に至る。
……その間にも上条が平らな道で転けたり足をブツケたりと、様々な不幸が彼に降り懸かっていたが割愛。
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:18:00.12 ID:mnJa8asDO

何気なく感じる二人の会話。
だが忘れてはいけない、彼らはまだ正真正銘の中学生である。
内容が内容なだけにアンチスキルに通報され、補導が否めない。
少し考慮すればこの答えに達するはずなのだが……前回の反省を全く生かせない二人。
もはや悔悟の色すら見えない始末。

そんな上条当麻と浜面仕上は会って数時間のはずなのにも拘わらず、既に打ち解け合っていた。
浜面も当初こそは壁を作り隔てていたが、話していく内に心を開きつつある。



浜面「ってかよ、お前こそあの車で何してたんだ?」

上条「……いやー、ちょっと友人から頼み事されましてですね。済ましたのは良いものの、終わったのが朝方でさ?」

浜面「あー、大方話が読めた」

上条「ま、そういう訳ですよ」
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:20:39.99 ID:mnJa8asDO



予想外に体が疲れていたのだろう。
自宅に帰る余地も無く睡魔が襲われたに違いない。

どんな頼み事か些か気にはなったが、あんだけ全力疾走した後だ、軽い頼み事でない限り引き受けない。
するとだ、軽い頼み事であるならわざわざ車を必要とするだろうか? それも盗んでまで。



浜面(……考え過ぎか。人の事情に介入するほど、俺はお節介でもねえしな)



ほんの小さな引っ掛かりを追究する程、自分は上条という男に情を移してはいない。
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:21:58.07 ID:mnJa8asDO








「ちょっと……ッ、止めてください!」
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:27:48.20 ID:mnJa8asDO



声。少女の声だ。
不穏な空気が漂う声色。

思わず二人は足を止める。
路地裏へ繋がる丁度曲がり角。その奥に、少女が居た。

太陽光が差し込まなくて闇に食われたように、少しばかり視界が悪い。
故に少女の姿がぼやけている。が、見えない訳では無いという曖昧な境目。



「そんな嫌がらなくてもイイだろー? 俺達と遊ぼうぜぇ?」



男性の声。おそらく成人だ。
それも少女を囲むように何人も。
明らかに穏やかな雰囲気は流れていない。

構図と言葉から二人は理解した。
学園都市ではよくある風景。
通報を受けて駆け付けるアンチスキルも至って珍しくはない。
しかし。唯一普段と違うのは、表か裏かの差。
人が行き来するか否かの問題である。
場所は路地裏だ。人は普通、通るはずがない道。だから目に留まらない。
偶然、耳にした自分達は幸か不幸かどうかは定かではない。

予測を立てるとすれば、このまま少女を放って置くと男達に……その先は言うまでもない。
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:32:06.88 ID:mnJa8asDO



上条「どうする?」

浜面「……何が?」

上条「声を聞いちまったもんは仕方ないだろー? だから浜面はどうするのかを上条さんは聞きたいんですよ」

浜面「どうするったって……お前は?」

上条「言ったら俺も言う」

浜面「言ったもん勝ちかよ……」



心底困ったように頭を掻く。
浜面仕上はこういうどちらかの選択肢を迫られるのは苦手な方。
性格からの問題で、優柔不断や己を卑下する事から来ている。
例えば友人と遊ぶ場合、場所や何をするか決める時に「どうする?」と問われると、「どうする?」と逆に聞き返すタイプ。
「何でもイイよ」っと返したりと、流れに身を任せてたり、相手に主導権を委ねる性格。
現代の若者にありがちだが、決して悪い事ではない。
相手の意見を尊重する事は素晴らしい美点。
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:43:01.32 ID:mnJa8asDO


でも、一つ言うとすれば。
浜面の場合はどんな時もなので、“自己主張が無い”のだ。

それはもはや逆に欠点でもある。
ここぞ! という運命を変える究極の選択を決める場面に出くわした時、彼はきっと躊躇う。
必ず明確な『迷い』を見せる。
直感で行動を移す事はあろうとも、自らの思考を重ねた判断は彼にとって難しい。

「俺なんかが行った所で」とか「どうせ」とか「仕方無い」とか。
言葉の羅列を並べ、ドコか自分の中で辻褄を合わせて、本音を抑えて、自分を納得させている。



浜面「……」



今の現状が実の証拠。
浜面の思考は迷走中だ。
足を止めたが最後、決めなければならない。

助けに行くのも、知らん振りするのも彼の自由。
でも仮に助けに行ったとして、どうする? 自分に何が出来る?
あっちは複数人。こっちは上条を入れても二人。タイマンならまだしも、明らかに不利な状況。
勝てるかどうかも危ういというのに、あっちが温和しくするとも限らない。
相手側が能力者の場合は? 無能力者である自分に勝機など、やって来るのか?





そもそも少女を助けて―――俺の何になる?





行っても四方からフルボッコを食らうだけ。
別に何の得にもならない。損ををするだけ。
だったら踵を返し、先に足を進めた方が賢明だろう。



浜面(そうだ。その方がいいに決まってる)



自分は漫画やアニメに登場するような主人公に何かなれない。
老若男女構わず、困っていたら助けるなんてヒーローの真似は不可能だ。
そんな行動力を持ち合わせていなければ、強大な敵に立ち向かう度胸すら無い。
せいぜい自分はやられ役の情けない脇役。人を食い物にしか出来ないような人間だ。
誰かの為に一生懸命になれるのは容易くは無い。保身が第一なのだから。
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:44:20.40 ID:mnJa8asDO











―――所詮、無能力者(俺)なんて、そのものさ。
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:47:37.95 ID:mnJa8asDO



上条「……俺は」



未だに決断が曖昧な浜面を見兼ねてか、上条は一歩、路地裏へ進む。
その様は打って変わった雰囲気を纏う。
瞳はギラギラと輝き、目筋はまるで別人のように鋭く一変。
不敵な笑みを浮かべつつ緩慢と口を開け、



上条「正直面倒事を自ら被るなんて嫌だし、最近は人助けさえ判らなくなってきた……けどな」



また一歩、進む。



上条「向こうからやって来るトラブルは仕方ねーや、と思うぜ? 可能なら避けて過ごしたいけど」



また一歩、



浜面「いや、待てよ。行動と発言がまるで一致しねえって! それじゃお前が言う、自ら面倒事に首を突っ込んでんじゃ―――」

上条「何言ってんだ?」



歩みを止める。
だけど振り返らない。
背中を向けたまま、言葉は続く。

何故だろう。顔は見えないはずなのに。
不思議と上条の表情が手に取るように判る。
彼は確実に依然として、不敵な笑みを浮かべてるに違いない。
893 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/02/16(木) 02:49:09.27 ID:mnJa8asDO



















上条「上条さんはこっちの道を通りたいと思っただけですよ? 別に“自ら巻き込まれに行く”訳じゃないので悪しからず」

















浜面は悟る。

「あぁ……この男は強い」と。
澱んでいる己よりも、ずっと。
894 :977 [saga]:2012/02/16(木) 02:51:48.92 ID:mnJa8asDO
投下しゅーりょーです

ではまた
895 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/02/16(木) 05:18:46.54 ID:IpsGzdUDo
乙!
896 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2012/02/16(木) 13:36:13.69 ID:gvruUwYL0
乙!
やっぱ上条さんすげえかっこいいな…
897 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/02/16(木) 15:46:09.65 ID:5jtQ0iGro

上条さんハァハァ
898 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/16(木) 21:28:41.14 ID:m4Gg/+nco

一気読みしたけどこれ面白いな
899 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/16(木) 23:50:19.26 ID:gjhcFHvto

初めて読んだけど素晴らしいと思う
900 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/02/17(金) 01:08:15.04 ID:d8UVZHwEo
やだ この上条さんマジイケメン/////
901 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/02/26(日) 03:40:47.76 ID:FNZ5qRpso
まだかいの
902 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/02/26(日) 04:57:51.00 ID:GD5lWgDNo
影上条さんかっこいい・・・
903 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/02/27(月) 18:33:13.73 ID:2qqsF5IAO
待ってるよ
904 :977 [saga]:2012/03/01(木) 02:38:25.60 ID:l401OfzDO

投下しまーす

寝たらごめんなさいorz
905 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:40:50.21 ID:l401OfzDO



浜面「強いんだな、お前……」

上条「違う違う、こいつらが連携をしなかっただけさ。単独で来てもワンパターンになるだけだし」



余裕があったのか、すらすらと分析した結果を述べる。
浜面は瞬く間に薙ぎ倒された男達の有様を横目に、「よく言える」と心の中で悪態を吐いた。

もはや作業に近いほど、手際の良さだった。
例え能力者でも、武器を所持していても、少女を人質に取っても、上条当麻の前では意味をなさなかったのである。
まさに臨機応変。この言葉がもっとも相応しい。
自衛隊やアンチスキルの訓練でも受けてきたんじゃねえか? と自らの目をも疑った。
906 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:42:13.42 ID:l401OfzDO

中学生というレベルを凌駕しているのだ。
だけれどその戦い方はまるで未曾有。
アンチスキルが得意とする対能力者や対人用でも無い。
ともすれば能力を使ってる訳でも無ければ、路地裏で繰り広げる喧嘩の動きでも無い。
本当に通行の邪魔をする男達を払いのけるように。
手並みは鮮やか。無駄な動きは無くスムーズ。

この華奢な体のドコにそんな体術が備わっているというのか。
デタラメに鍛えたこの肉体や路地裏で学んだ喧嘩と違って、綺麗に整えられた筋肉と身体に叩き込まれた戦術。

こんな所でも、無能力者の間でも比べられてしまうのか。
ただでさえ能力者と無能力者で区別されているというのに、その無能力者の中から更に比べられるというのか。
落ちこぼれから、より格下を決められるのか。
落ちこぼれの下はなんだ、負け犬か、屑か、ゴミか。


……せめて、






上条「能力者だったら良かったのに、とか?」
907 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:44:17.04 ID:l401OfzDO

浜面「……!」

上条「何で? って顔してんな。別に上条さんはゲームの主人公の仲間のように『MPを消費して相手の思考を読む!』とか、そんな魔法は持ってませんよー」

浜面「いや判ってるさ。けど……なんで……?」

上条「ん」



ビルの壁にもたれる上条は、見向きもせずクイッと指を立てて示す。
方向を辿れば窓ガラスがあった。

多少の埃が窓ガラスに被っているが、自分の顔が映る程度は支障無い。
意味が解らず、首を傾げつつもジッと窓ガラスに映る自分を眺めていると、





上条「お前の顔に書いてるだろ? 『俺にもこんな力があれば……』ってな」
908 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:45:34.15 ID:l401OfzDO


















―――あぁ、本当だ。






―――顔が、物語っていた。






―――澱んだ瞳も、何もかもを諦めたような表情も、全部。全部。
909 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:49:20.01 ID:l401OfzDO



力が抜けていくように膝が折れ、緩慢と両膝が地に付く。
頭をビルの壁に添える。何故だか自然と、笑いが込み上げてきた。

同時に……涙も。

滝壺の言葉に甘えた“あの日”は悲しみで泣いたはずなのに。
どうしてかは判らない。悲しくないのに……涙が、溢れてくる。

自分があまりにも情けなくて?
自分がどうしようもなく弱くて?
自分が未だに過去の事を引きずっているから?



浜面(いや……違う)



そうだ。そんな事ではない。
でも答えが見付からないのも事実。
もっと単純に。簡潔に。
例であげたような細かい部分じゃない。
前の段階の話で……。










あ……そうか。

ようやく気が付いた。




“変わってない”からだ、俺。




『あの時』から何一つとして。

滝壺を失った日から今の今まで。
910 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/01(木) 02:50:23.06 ID:jW4zmhZAO
待ってた
911 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:52:06.28 ID:l401OfzDO


鍛え上げたゴツゴツの肉体は意味をなさない。
何故なら、迎え撃って護れるように鍛えたはずが、その使う場面の道を避けているのだから。
使われない物は張りぼてと同じ。
外見ばかり囚われて、己に染み付いた中身を見失っていた。



上条「……箱の中の猫だな」



唐突に上条が言葉を発した。
静かに話す物腰は、ドコか普段とは違う何かを感じさせる。
浜面は顔を向けずとも、そっと上条の方へ意識を集中させた。



上条「箱の中に居る猫が、死んでいるか生きているか、確率は半分。しょうがないさ。実際に箱の中を“見てない”んだから」

浜面「……何が言いたいんだ」

上条「お前も同じって事だよ。どれだけ屈強な体を持っていても、強いか弱いかで言うなら、半分の確率だろ?」

浜面「……」

上条「ま、何があったかは知んねーけど。しっかし報われねえな」

浜面「何がだよ……」

上条「だってそうだろ?」



例え、上条の言うことが正しかったとしても。
例え、自分は猫で言うなら死んでいるか存在だとしても。
例え、どんなに自分の存在を馬鹿にされても。





上条「お前の心に、強くなりたいと誓わせたヤツは無駄に終わってる訳だろ? 報われねーよ」





―――彼女を侮辱するような言い方だけは、許せなかった。
912 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 02:57:11.40 ID:l401OfzDO



浜面「……!!」



彼は上条の胸ぐらを勢いよく掴むと、そのままビルの壁に押し当てた。
畳み掛けるようにもう片方の腕を振り上げる……が、止まる。
強く握り締めて作られた拳は、僅かに震えるだけで振り下ろされなかった。
浜面はただギリギリと歯を食いしばり、怒りの表情と同時に“躊躇い”の色を見せるだけ。



上条「……どうした? 殴るんじゃなかったのかよ?」

浜面「……」

上条「今の俺は殴られてもオカシくはない事をお前に言ったんだ。ほら、殴れよ」

浜面「っ」

上条「結局はだろ。テメェに度胸が足りないからいつまで経っても、『ソコ』に居るんじゃないのか?」

浜面「ああああああああああああ!!」



ゴッ!! と。
ようやく振り下ろされた拳は吸い込まれるように上条の頬へ。
内に秘めていた感情が、上条の指摘を引金に剥き出しとなる。



浜面「ああそうだよ!! 俺は所詮スキルアウトさ。ダメで落ちこぼれな学園都市のクズだ。一人の女の子も護れない最っ低なヤツなんだよッ!」
913 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 03:01:49.12 ID:l401OfzDO



これまで様々な葛藤に苛まれてきた。
懊悩する日々。答えが見えないどころか希望の光すら照らされない。
一向に手掛りが見つからず遣る瀬無い毎日が続くだけなのである。



浜面「は、はははっ!! はっははははは!! 結局そんなモンなんだッ!! 無能力者ってのぁ」



爆発した感情は次第に“笑い”に変わる。
決して良い方の“笑い”ではなかった。
どちらかと言えば、嘲笑に近い。
己を嘲笑し、狂い始めている。

懐に手を突っ込み、取り出したのはハンターナイフ。



浜面「その程度なんだよぉっ!!」







勢いよく駆け出して―――ナイフを薙ぎ払った。







浜面「……っ!」

上条「やりゃあ、出来んじゃねえか」







―――しかし、







上条「勝手に自分の限界を決め付けてやるなよ。出来る出来ないの判断で行動を起こしてんじゃねえぞ!」







―――上条当麻という男は、強かった。
914 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 03:10:27.50 ID:l401OfzDO



上条「大事なのはテメェの気持ちだろ? 俺の想像が付かないぐらい『助けたい!』って、強く願った思いなんだろ?」



ナイフを受け止め、いなす。
血が混じった唾を吐き捨て、彼は立ち上がり浜面と相対する。

完全に決まった打撃のはずなのに、本気で殴ったはずなのに、のされず立ち向かう上条の姿に思わず後ずさり。
だけど言葉を話すこの口は達者で。
まるで出任せを口走るようで。
嘯いてけしかけるようで。



浜面「仕方ねえだろ!! 俺は能力者でも無ければ、テメェみたいに強くも無いんだ!! 誰もがそう簡単に―――」

上条「誰が強くなれと言った?」



嘆く浜面を遮るように、上条は言葉を紡いだ。



上条「履き違えんなよ? 俺は何もテメェに強くなれとは言ってねえ」



浜面は一歩、引き下がる。



上条「強くなる必要がドコにある? 弱いとダメな理由がドコにある?」



また一歩、下がる。



上条「強いとか弱いとか、そういう事じゃない」

浜面「だまれ、よ……」

上条「自分が助けたいと心から願ったヤツを、希望が有るか無いかなんて関係なく、正しいか正しくないかじゃなく!」

浜面「黙れって言ってんだろォ!!!!」

上条「ソイツだけでも救い出す事が出来るヒーローになってみろよ!!」



浜面が防御体勢に入るが……もう遅い。
上条は一瞬で間合を詰めると―――屈託の無い不敵な笑みを浮かべた。





上条「一発は一発だよな?」
915 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 03:11:26.83 ID:l401OfzDO



渾身の力を振るい、拳を放つ。
まるで鋼の堅さを誇り、研ぎ澄まされた一撃は弾丸の如く。
決して未熟ではない。だが、中学生が繰り出すとは到底思えないプロの域。
素人が喰らえば、一瞬で意識を刈り取られる事は間違い無い。

もちろん、浜面とて例外では無い。
同様に意識を失って、地面に倒れてもオカシくはなかった。



―――だけど、








浜面(たき……つ、ぼ……)









―――彼女に対する思いが、浜面を繋ぎ止めた。
916 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 03:15:15.77 ID:l401OfzDO



あの日、俺は絶望を知った。
大切な人を失う気持ちを知った。
ドラマや漫画でしかありえない事が現実で起こるのを、初めて知った。

悔しかった。
涸れるほど涙も流した。
不甲斐無い気持ちで一杯だった。
そして、誓った。
絶対に強くなってやると。
アイツらに負けないくらいに。

……誰のため?

決まってる。
自分のためじゃない。
滝壺理后という少女のためだ。
強くなって。強くなって。
強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く強く。

……何故?

当然、護るためだ。
保身用のためじゃない。
滝壺理后という少女のためだ。
未だドコかに囚われているはずの彼女を―――救い出すためだ。



なのに。今の俺は……。
どうしようもなく情けない男。
卑下ばかりで、一歩踏み出そうともしなかった。






―――あぁ……そうか。






何だか、判った気がする。
上条が言っている事も。
これから何をすべきなのかも。

本当はずっと前から気付いていた。
上条に言われるまでもなく、心のドコカで認めていた部分はあった。
ただ、ソレを俺は拒んでいたのかもしれない。

怖くて。恐ろしくて。
もう傷付くのが嫌で。

もしかしたら右腕の傷に、俺はトラウマを覚えていたのかもしれない。
だから必死に自分の身を守ろうと、根も葉も無い言訳を並べていたのかもしれない。



浜面(お、れは……)



そう。ただ。純粋に。







―――彼女の傍に、居たかっただけなんだ。
917 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/01(木) 03:18:37.31 ID:l401OfzDO



上条「……ビックリだな」



口から垂れる血を手の甲で拭い、思わず言葉を漏らし、驚愕を示す。
仰向けに崩れ落ちた浜面の意識が、まだ保たれていたからだ。

朧気に瞳を半目だけ開け、ボーっと空を眺めていた。
視線の先にあるのが青空でも、浜面は空を視ていない。
映しているだけで、視ていない。
まるで悟りを開いたかのような。



上条「あの二人でさえ、だらしねえ顔を晒して伸びてたっつーのに」

浜面「……なあ」



聞こえるか聞こえないか曖昧の声が、浜面から紡がれる。
ほとんど掠れていたが、上条の耳にはハッキリと届いた。



浜面「俺……まだ、前に進めるかな……?」



例えぼんやりと、誰に向かってではなく、自分自身に問い掛けているものだとしても。

上条は同じように空を眺め、微笑む。







上条「ああ。もちろんだ」







浜面は緩慢と薄く笑みを浮かべ、まぶたを閉じる。



浜面「そっか……よかった」



目尻から一粒の涙が流れる。
キラリと光る雫は、一際輝く姿を見せた。
きっとそれは、悲しみから生まれた物ではない。
心の奥底から溢れ出た、彼の『喜び』の表れだろう。



―――浜面仕上がようやく一歩前進した褒美として、神様が捧げてくれた証かもしれない。
918 :977 [saga]:2012/03/01(木) 03:22:08.71 ID:l401OfzDO


投下しゅーりょーです

浜面の過去は今回で終わります
次回からは現在へと戻ります

ではまたー
919 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/03/01(木) 09:39:21.02 ID:isMjtkkfo
乙ー。
920 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国・四国) [sage]:2012/03/01(木) 12:07:02.77 ID:oibgk06AO

説教の仕方も中学生とは思えないぜ上条さん
921 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/01(木) 15:38:59.10 ID:u3EyYKoH0

上条さんイケメン過ぎるだろ…
922 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/05(月) 21:56:57.01 ID:R378PDoJo
乙ー

続きが読みたい。
923 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/07(水) 05:41:36.51 ID:nh3wssiOo
次スレ立ってる?
924 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/03/14(水) 02:50:20.27 ID:2iDo87X8o
ありゃりゃ?
925 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/03/14(水) 22:33:15.50 ID:rbgZ6Engo
まだか
926 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(空) [sage]:2012/03/15(木) 06:47:43.65 ID:P4k7dEaxo
終わっちゃった?
927 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2012/03/18(日) 10:16:27.13 ID:jBCoiAOi0
ゆっくり待ってます
928 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/19(月) 01:48:22.63 ID:e1W6eZcqo
乙ー
やっと追いついた
浜面過去編面白いな
むぎのんと絹旗がどう絡むか期待
929 :977 [saga]:2012/03/20(火) 02:49:57.05 ID:N/Lfm4yDO
投下しまーす
930 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 02:51:22.98 ID:N/Lfm4yDO



浜面「―――とまあ、この後は土下座を何回もして、ようやく仲間に入れてもらい、今に至る訳だ」

インデックス「……なんだか、はまづらと私の扱いの差がありすぎて、言葉も出ないんだよ」

浜面「別に感想なんか求めてねえよ。ベラベラと話すような内容でもないし」

インデックス「むぅぅぅ……やっぱりとうまは女の子に対してだけ『S』なのかな? じゃないと酷過ぎるかも!」

浜面「少なくとも『M』ではない。断言できる」



尤も、それは上条に限った事では無いのも確か。
のちに出会う親友であり戦友である二人は、少なくとも『ド』が付くのは間違いない。
ただし片方は、自らボケの立ち位置に赴いているので定かではないが。



―――ちなみに、彼らの初対面を一言で説明するならば、“最悪”である。
931 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 02:53:15.13 ID:N/Lfm4yDO




―――――――――――――――




浜面『し、失礼しまぁ―――』

『だーかーら! 言ってんじゃねぇか!』

浜面『うぉっ!?』

垣根『目玉焼きには醤油が一番だ、これだけは断じて譲らねぇぞ?』

一方『何言ってやがるンですかァ? 目玉焼きに合う調味料はソースに決まってンだろ? それ以外は邪道でしかねェよ』

垣根『おーおー? 言ってくれんじゃねぇか天下の第一位様はよお?
   んな屈折しまくったモンばっか食ってるから、いつまでたってもクソモヤシのまんまなんじゃねぇか? えぇ?』

一方『オマエこそありきたりな王道しか走らねェから、しょォもないファンタジーな翼が生えンだろ? さっさと天国行けよ気色悪ィ』

垣根『……なんだとクソ中二病野郎が?』

一方『……ンだとこのクソメルヘン?』

浜面『あ、あのー……?』

一方・垣根『あ゛ぁッ!!!?』

浜面『ひぃぃっ!!!?』




―――――――――――――――
932 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 02:55:23.25 ID:N/Lfm4yDO



今でこそ懐かしいと思えるが、第一印象+初対面と考えたら最悪極まりない。
初めて上条の言う『二人』と顔合わせにして、今後付き合っていく仲間なのだが……正直、



浜面(恐怖以外に何も残らなかったよなー……)



彼がそう思うのも無理もない。
恐怖という概念を頭に直接叩き込まれたようなものだから。

曲がり形にもスキルアウトとして生き、様々な怪物を目にしてきた。
主に駒場とか駒場とか駒場とか。
だが、その二人は次元が違う。
特別図体が大きい訳じゃなく、屈強な筋肉がある訳でもない。
歴とした“殺気”をぶつけられたのだ。
往来する一般人に浴びせれば卒倒する一級品。
そんな代物を味わってなお、冷汗と後退だけで済んだ自分は、まだマシな程度かもしれない。

……しかし、もしあの時に上条の仲介が無ければ、自分は五体満足で居られなかったと、しみじみに思う。
933 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:00:30.20 ID:N/Lfm4yDO



浜面(まあ、確かに色んなゴタゴタはあったけど、少なくとも上条のおかげで今の俺が居る訳だし)



“過去”を乗り越えられたかを聞かれれば、肯定する事は出来ない。
卑屈や劣等感も昔より幾分改善されつつあるが、やはり身体に染み着いているのも確か。
だけどあの時に上条と出会っていなかったら、自分はおそらく、あのまま変わらずにもっと堕落していた。

変われたかなんて、判らない。
前進しているかなんて、判らない。
自分で判る事は限られてる。
気付くのはいつも己の欠点ばかり。



―――でも、今が充実していることは間違いないのだ。
934 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:02:17.94 ID:N/Lfm4yDO

それ故に浜面仕上は恐れている。
いつか必ず来るであろう、自分自身に『壁』が立ちはだかる事を。
学園都市という……『闇』を。
彼は少なからず、その片鱗を己の目で認識し、身を持って体験しているのだ。



浜面(あんなの……実際はぬるいんだろうな。今『俺達』のやってる事の方が、よっぽど残酷だ)



浜面は吟味する。
この思考は自分だけではなく、おそらく垣根や一方通行、上条も感付いているはず。

幾日か前。垣根から聞いた話によれば、何やら統括理事長の目論見が密かに実行されつつあるらしい。
警戒が必要だと、いつもの『おふざけモード』は皆無のマジメな眼差しで。
表情こそ垣根は笑みを浮かべていたが、夜の青空を映す目は、真剣そのもの。

ココ(学園都市)は決して甘くない。
その内、必ず俺達の邪魔をするために仕掛を施すだろう。
だから油断は禁物だ。常に万全の状態で構えておけ。

……そう、垣根は告げた。
935 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:04:05.26 ID:N/Lfm4yDO



浜面(……学園都市がどんな手段を講じてくるか判らない。でも、垣根の言う通り邪魔は入るはずだ。
   少なくとも、俺が滝壺を救い出す時は多分、簡単にはいかない。絶対に……)



覚悟はとっくに出来ている。
闘う覚悟も。闇に立ち向かう覚悟も。
どんな強大な敵だろうと、今度こそ逃げずに留まってみせる。

時には恐怖心を抱くかもしれない。
時には歴然と差が付いた戦闘力に絶望を覚えるかもしれない。



でも、“逃げない”。



恐れても負けそうになっても、どんな事があっても、逃げない。挫けない。



『ソイツだけでも救い出す事が出来るヒーローになってみろよ!!』



―――リーダーがくれた、この言葉がある限り。
936 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:05:34.71 ID:N/Lfm4yDO



フレンダ「…………」



各々が言葉を発する中、金髪の少女はただ一人、口を閉ざしていた。

まん丸の大きい目を細くさせ、思い詰めるように、ひたすら浜面を見るだけ。

果してその意は何なのか、謎は深まるばかり。






















インデックス「やっぱり納得いかないんだよおおおぉぉぉぉ!!!!」



インデックスは悶えるばかり。
937 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:07:22.93 ID:N/Lfm4yDO




―――――――――――――――




BANBAN!! と辺りに銃撃音が響く。
薄暗い路地裏の細い道、人の目も耳も届かない場所。
火薬の臭いと不穏な空気が漂うなか、そこに……少年と少女が居た。

少女はなりに似合わない身の丈ほどの銃器を抱えていた。
多少の息切れと、覚束無い足取りで。



一方「いい加減、諦めたらどォだ?」



一方の少年は、至極億劫そうに呟いた。
頭をガリガリと掻き、片目を閉じた状態で少女と相対する。
少女より遥かに余裕の色が窺えた。
敵視すらしないと言わんばかりに。



00001号「まだ、です……、とミサカは……っ!!」



しかし少女は全く取り合わない。
強気な言葉を皮切りに、少年との間合を詰めようと、一気に駆け出した。
938 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:08:30.48 ID:N/Lfm4yDO

対する一方通行は露骨にチッと舌打ちをする。
その姿は融通の利かない弟や妹をあやす、お兄さんさながらだ。
彼はリズムを取るように軽く、片足で地面を叩いた。



―――突如、近くに置いてあったバケツ型のゴミ箱が、勢いよく少女目掛けて転がり始めた。



だけど予測範囲内だったのか、少女は難無く軽快にジャンプでかわす。
この程度の障害では少女の勢いを落とす妨げにはならないのだ。

……ゴミ箱の蓋が少女の額に激突するまでは。



00001号「あぅっ」

一方「……はァ」



意外と心の底からついた溜息だったりする。
何しろほぼ毎日だ。“これ”は。
939 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:10:57.94 ID:N/Lfm4yDO

勝手に命を落としかねない戦闘を持ち込まれ、一方的に攻撃されている。
言うまでもなく一方通行に戦闘意識は無い。敵とすら思ってないのだから。

もはや何度目か覚えてすらない。
第一次実験と彼女が述べた時が、既に懐かしいほど。



一方「……」



何にしても、あしらうのもそろそろ限界だ。色々な意味で。



一方「なァ、本当によ、いい加減諦めてくれませンかねェ?」

00001号「……っ」



輝きを宿さない虚ろの瞳が、彼を映した。
その瞳も含め、一体どこまでが『虚構』で、一体どこからが『真実』なのか、定かではない。



00001号「ミサカは、ミサカ達は、ただの実験の為に造られた人形に過ぎません。とミサカは呟きます」

一方「あン……?」

00001号「何の為に生まれ、何を糧として生き、何が必要なのか。ミサカ自身には存在しません」

一方「……」

00001号「それらは全て、白衣を羽織った人達に求められてきました。ミサカは命令に従ってるだけなのですよ。とミサカは何故か、ふと思った心情を吐露します」



人々に当然あるだろう“理由”が、少女には無い。
940 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:18:51.95 ID:N/Lfm4yDO
母親のお腹から生まれていない。
少女の誕生に周囲の人々が歓喜した訳でも無い。


理由があるとすれば―――この実験で、一方通行に殺される為だけに生まれただけ。


殺される為に生まれ、殺される為に命令通り動き、殺されるしか選択肢が無い戦闘を行って……。
『生きていく』という人生は無くて、徹頭徹尾『死』の運命。



一方「……チッ」



ばつが悪そうに踵を返した。
そのまま乱暴に頭を掻きながら、彼はこの場を去っていく。

様子に気付いた少女はすかさず制止の声をかける。



00001号「ま、まだ終わっていませんよ! とミサカは立ち去ろうとする一方通行を呼び、止め……」



少女の言葉は最後まで続かない。
何故なら唐突に少女はゆっくりと倒れたのだから。

一方通行は状況を知った上で歩む足は止めず、心配するどころか見向きもしなかった。
そもそも少女が倒れた原因の元は彼であるから、意に介すはずも無いだろう。
941 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 03:20:14.67 ID:N/Lfm4yDO



一方「ったく、世話ァ焼けンぜ……」



うんざりと表現するように肩を落とし、誰が一目で見ても判るほど、嫌そうな面持である。



一方「あーあ、俺は一体いつからこンなお人好しになったンですかァ? 柄じゃねェ。柄じゃねェよなァ……」



誰かの影響を受けて取った行動ではない。
だからと言って、自らの意志で動こうとしている訳でもない。

ただ、








―――兄さん!








……何故か、妹と少女の姿が、重なってしまった。

ただ、それだけである。
942 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/03/20(火) 05:46:11.08 ID:PMExMWAVo
乙…?

リアルタイムで遭遇できた〜
943 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 06:22:07.50 ID:05nESLo6o
百合子か?
やめてくれよ?
944 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/03/20(火) 07:13:34.10 ID:JmfMnDYAO
寝落ちかな?いちおつ

>>943
やめてくれよとかやめようぜ
945 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/03/20(火) 08:26:28.14 ID:N/Lfm4yDO



―――余談。




病院。とある一室。



浜面「……え、また入院したのか?」

上条「右腕を危うく持ってかれそうになったな、うん。いやー、流石の上条さんも焦りましたよ」

浜面「右腕って……は? じゃあ、その右肩の包帯はもしかして……」

上条「お前の想像する通りだと思うが?」

浜面「…………」

上条「…………」

姫神「要するに。彼の右肩から先は。切断されたという事」

上条「いや待て、ちゃんとあるからな? 上条さんの右腕はありますよー? ココの医者にくっ付けてもらったお陰だけどさ」

姫神「その時点で。既におかしい」

浜面「は……はあああああああああああああああああああああああッ!!!!!!??」

上条「うるせーよッ! 音量を消音から、いきなりマックスにすんじゃねーよ!! 鼓膜破れっかと思ったじゃねえか!!」

浜面「いや、だって、はあ!? 意味判んねえよ! 上条って本当に人間か?!」

上条「当り前だろっ、むしろ敵の方が人間じゃない気がして仕方がないんですけど……」

浜面「いやいや! 右腕が切断の過程はもういいけどさ、“くっ付けた”って何だよ!?」

上条「知らねー、俺が聞きたいぐらいだっつーの。どんな技術をしてんだか上条さんには全く理解が出来ませんよ」

姫神「学生の私達に理解しろと言う方が。よっぽど難しいと思うけど」

上条「かもな」

浜面「意味判んねぇ……現実的に考えてありえないって絶対……」

上条「深く考えるなって。きっと俺達には一生判んねえさ。命あるだけ良かったと思えば、それで良し!」
946 :977 [saga]:2012/03/20(火) 08:30:04.54 ID:N/Lfm4yDO
寝落ちです。マジすいませんorz

とりあえず投下しゅーりょーです


ようやく妹達編、かな?
947 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海) [sage]:2012/03/20(火) 10:16:21.55 ID:6bKFcTuAO
>>943
百合子死んでんじゃん
948 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 10:55:29.97 ID:AedxT1Yfo
それ以前に、
百合子は>>76で登場しているのに、900過ぎてから何言ってんだって感じだが
949 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/03/20(火) 12:36:36.79 ID:BcwNir/40
乙!
950 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 13:03:27.92 ID:JWvkFAZi0
951 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/03/20(火) 18:44:58.65 ID:1EAmTc5c0
乙!
952 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 19:49:44.37 ID:WbBk9f3b0

そーいや百合子いたのな
妹達を一人でも殺しちゃったら自分の命が危なくなるからなー
953 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/21(水) 08:11:29.04 ID:ND1LCA7m0
いや皆ヘタ錬さんに何か言ってやれよ
954 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/21(水) 08:45:33.36 ID:Z+MHE8960
ヘタ錬さんはこの上条さんの腕を斬れただけで上出来だろう
955 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/03/21(水) 16:28:11.33 ID:BxmnCu8AO
!?

本当だスゲエ
956 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/03/22(木) 12:36:05.88 ID:EEvY/1VJ0
さて…>>1
次スレどうするのかな?
957 :977 [saga]:2012/04/04(水) 02:11:55.16 ID:IDF86etDO

どうも、こんにちは

投下の時間がひっそりとやって参りました
958 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:16:35.01 ID:IDF86etDO



この世は本当に荒んでいると思っていた時期が、自分にもあった。

物や者の何もかも全てが、醜く見えて、汚く見えて、歪んで見えて……そんなどうしようもない時があった。

『憎しみ』に包まれた自分は、復讐という執念に囚われ、己の心までも食い潰していった。






結果、作り上げたのは弱くて幼稚な“俺”。






まるで、玩具を買ってもらえなくて駄々をこねてる子供みたいに。
自分しか見えていないし、自分以外を見ようともしなかった。
人の事など考えようともしない、なんと愚か事か。

今だからこそ思う。下らない、と。
冷酷な笑みを浮かべて一笑するのは、とても簡単だった。
959 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:18:27.03 ID:IDF86etDO

上条に言うと必ず「そんな事は無い」と断言される。
その意を上条は語らない。聞いても答えてはくれなかったのだ。
だが意味は伝わらずとも、言いたい事は理解した。
『俺に聞かず、自分で意味を見つけろ』と言いたいのだろう。

最愛の妹を失い、“守る者”が居なくなった今、何が出来ると言うのか。



一方「……いずれ、俺にも判る日が来るのかねェ」

「何がですか? とミサカは独り言を呟く一方通行に問いかけてみます」



頭上で淡々とした声が、一方通行の耳に届く。
目で見ずとも、判別は十分に容易い。何せココの所、この声を毎日聞いているのだから。



一方「オマエとは永遠に無縁の話だ。答える必要なンざこれぽっちもねェよ」

「つっけんどんな返答ですね。あなたが人付き合いが出来ず、孤独な生活を送っている姿が垣間見えます。とミサカは露骨に皮肉を述べます」

一方「……露骨にしてる時点で、皮肉とは言わねェンだよ」



彼はようやく、しかし気怠そうに、缶コーヒーに落とした顔をゆっくりと上げた。










00001号「否定はしないのですね。とミサカは即答します」










そこに……少女は居た。
960 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:24:01.16 ID:IDF86etDO

場所は第七学区の公園。
一方通行はベンチに腰を落とし、買ったばかりの缶コーヒーを飲んでいた。

現在の時期は夏まっただ中。
サンサンと降り注ぐ陽光と、地面に立つ陽炎が一層、夏という季節を実感する。
学生の身分であれば夏休みの時期だが、一方通行は学校に所属していない。
その代わりに彼には『仕事』がある。最近、不定期気味だが。

故に仕事が無い日は特にする事も無いので、のんびりぐうたらに限る……が。
近頃、一方通行の日常に支障を脅かす存在が現れた。



00001号「それにしても、この気温と日差の中で一つも汗をかかないとは、全世界の女の敵ですね。とミサカは真っ白な第一位に悪態をつきます」



―――この娘である。
961 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:25:16.21 ID:IDF86etDO

基本的に彼は上条達以外と会話をしない。
敵として対立する人間は、学園都市で三桁は越えるだろう。
だけど一方通行を『一人の人間』として接し、悪意ではなく好意の気持ちで近寄る人間は一握りだ。



一方(コイツの場合、悪意なのか好意なのか全く判ンねェがな……)

00001号「……だんまり、ですか? とミサカは先程から口を閉ざす第一位を促します」



いささか、しょんぼりと口振りが沈む。
一切感情に起伏を起こさず皮肉を捲し立てていた少女が、ほんの少しだけ、落ち込み出した。
一方通行は目を見開きつつも、平然と軽口を叩く。



一方「つーかよォ、今日は一体なンの用ですかァ? 見た所、いつも持ってる武器は無いよォ―――」

00001号「実験は」



少女は言葉を遮る。
公園に響き渡るほどの声量は、静かな沈黙を呼んだ。

一拍。一秒にも満たないであろう、僅かな間を置いた。
それは少女が勇気を振り絞るためか、一度深呼吸をして心を落ち着かせるためなのか、きっと本人にしか判らない。



00001号「実験は……中止になりました」



繰り返し、紡いだ。
まるで一方通行に問いただすように。
反面、自分自身に語りかけるように。
962 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:27:37.21 ID:IDF86etDO



00001号「これでミサカ達は晴れて自由の身です。白衣を着た人達が、どうするかを検討中らしいですが。
     とミサカは昨晩知らされたミサカ達の結末を懇切丁寧に説明します」

一方「……よかったじゃねェか。殺される以外に選択肢が増えてよォ」

00001号「一方通行」

一方「あン?」

00001号「何故、ミサカ達を助けたのですか? あなたの仕業ですよね。とミサカは追及します」



少女は“仕業”と言う。

“お陰”ではなく、“仕業”と。


その言い草に彼は目を細める。
全てが『虚無』で占める少女に、微かな感情が込められた気がした。
『感情というプログラムは組み込まれていない』と、研究施設を襲った際に耳にした。
963 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:28:40.50 ID:IDF86etDO

万が一、組み込んで“自我”を持ってしまったら。
限りない可能性の中で、反乱意識なるモノを宿してしまえば、それだけでも実験に支障を及ぼすだろう。
危険性を減らすため、必要最低限の技術や知識だけをインストールしているのだ。


過程を経て少女達の「人格形成」が完成される。


だが、今目の前に居る少女はなんだ?
これは立派な『感情』ではないのか?



一方「……余計なお世話だった、ってか?」

00001号「いえ、ただ疑問に思ったので尋ねたまでです。とミサカは未だ答えない第一位に密かに苛立ちます」



とすれば急に無感情に戻った。
感情の起伏が激しいと言うより、乏しいながらもスイッチのON/OFFの感じだ。
964 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:32:35.67 ID:IDF86etDO



一方「べっつにィ? 元々『絶対能力者』に興味は更々無かったし? 大体こっちは断ってンだぜ? キッチリと断ってるンだぞ?
   な・の・に! しつこく付き纏とってくるわ、鬱陶しいこと極まりねェンだよクソッタレが。……イイ加減ウザってェから追い払った。それだけの事だ」

00001号「わざわざミサカ達に生きる方を選択させてまで、ですか? とミサカは問いかけます」

一方「勘違いすンじゃねェよ。オマエは運良く巻き込まれて助かっただけだ。何を好き好ンで命を狙ってきたヤツの事を助けなきゃならン。アホらしい」

00001号「……」

一方「ただまァ、オマエ言ったよな? 何の為にって」

00001号「……? はい、確かに言いました。とミサカは唐突に意味不明な発言をする一方通行に疑問を覚えます」

一方「これから探して行けばいいンじゃねェのか? その“理由”ってヤツをよォ」



彼はぶっきらぼうに吐き捨て、気怠そうに立ち上がったと思えば、少女に背を向けて歩き出した。
向かう先はすぐ近くにあるゴミ箱へ。
ガゴン、と缶コーヒーを捨てる。外見に似合わず律儀な面を見せる一方通行である。
965 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:33:58.57 ID:IDF86etDO



一方「オマエの『人生』だ。好きにすりゃァいい。誰にも縛られなくなった訳だしな」

00001号「ミサカの、『人生』……」

一方「そォだ。オマエだけのモンだ。俺やあのクソ共がギャーギャー言う資格なンざ持ってねェ」



ヒラヒラと手を軽く振って、再び歩みを進めた。







一方「じゃァな」







その言葉だけを残し、一方通行は去っていく。
ポツンと立ち尽くす少女を置いて。
966 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:39:28.85 ID:IDF86etDO

もう関わりを持つことは、きっと無いだろう。
二万人のクローンをどうするかは知らない。知ったことではない。
そもそも自分は赤の他人に手を差し伸べるほど、『善人』でもない。
人の人生に干渉し、良い方向へ影響を与える人間なんかじゃ……ない。


そんな余裕は初めから無いのだ。
自分の事で手一杯。“アイツ”をどうやって殺してやろうか? という思考で、頭が一杯なのである。

いかなる手段を用いて? 腕をもぐか? 足は刈り取るか?
胴はどうする? 腹部か胸辺りに穴でも空けとくか?
内部もやっとくか? 血管を破裂させるか? 臓器は幾つ潰しておく?

髪の毛も引きちぎってやろう。
目玉も両方くり貫いてやろう。
皮膚も剥いでやろう。
骨も粉砕してやろう。




何もかも。全部。余すこと無く。

徹底的の死を。
徹頭徹尾の地獄を。

悪魔に魂を売れないなら、“俺”が悪魔になって殺してやる。




正直、呪いに近いモノを感じる。
そう言われれば納得する自分が居るからだ。

零度の鎖に囚われ、自由を奪われ羽ばたく事が出来なくなった蝶。
焦燥と私怨に縛られている己には、お嬢ちゃんと戯れてるヒマは無い。
967 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:42:21.14 ID:IDF86etDO



一方「……」

00001号「……」



構ってるヒマは無いのだ。



一方「……」

00001号「……」



構ってるヒマは、



一方「……」

00001号「……」



無いのだが……、



一方「……はァ、オイ」

00001号「はい、なんでしょうか。とミサカは返答します」

一方「どォして付いてくンだよ」



公園を出て、自宅の学生寮へと歩き出したのはいい。そこまでは良かった。
しかし、公園で呆然と佇んでいた少女が、いつの間にか一方通行の後を追随するように付いて来てるのは訳が判らない。
968 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:43:57.84 ID:IDF86etDO

彼も気付きながら放っておいたが、流石に痺れを切らし、声をかけてしまった。
気のせいだと信じたいが、このまま放っておいたならば、自宅まで付いて来そうだから。
挙句の果て、部屋に上がり込んできそうだったから。
杞憂に終わって欲しい、と一方通行は切に願う。



00001号「言いましたよね? ミサカの人生はミサカの『物』だから好きなように生きろ、と。とミサカは確認します」

一方「あァ、確かに言ったが……」

00001号「だからミサカは好きなように生きる事にしました。現在の行動はその現れです。とミサカは答えます」

一方「……悪ィけどよォ、ンな遠回しに言われても理解のしよォがねェンだが」

00001号「判りませんか?」

一方「……?」













00001号「ミサカはあなたと共に生きていく事を盛大に明言します! とミサカはどうだと言わんばかりに胸を張ってみます」












一方「―――」




―――今、この娘は何と言った?
969 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:46:06.18 ID:IDF86etDO



一方(待て待て待て待て待て待て待てッ! 落ち着け。落ち着くンだ。そォだ第一位の俺が慌ててどォすンだコノ野郎。
   学園都市随一の頭脳の持ち主だぞ? こンなオシメの替えも知らねェよォなガキに動揺されンな……ッ!!)

00001号「因みにミサカは『学習装置』で大体の知識はインストールされてるので、オムツぐらい替えれますよ。とミサカは出来る子アピールをします」

一方「勝手に人の心を読まないでくれますゥゥゥゥゥッ!!!? ってかそっちのオシメの事じゃねェよ! 比喩だっつーの、比喩ゥ!」

00001号「後半にかけて心の声がだだ漏れでしたよ? あれほど大胆に言ってる人も、そうは居ませんが。とミサカは一方通行に羞恥の事実を報告します」



どうやら少女の企みは、一方通行の予測を遥かに上回っているようだ。
部屋に上がり込むのはまだ可愛い方だった。
少女は思考は斜め上にブッ飛んでるらしい。



一方「……あ゛ー、とりあえず心の声が口に出てたっつーのは、もォいい。今はどォだっていい」

00001号「いいのですか? 今の内に対応策を練っていた方が―――」

一方「いいンだよォ! そンな事は幾らでも対処出来ンだよおおおおおッ!!」

00001号「何をそんな熱くなっているんですか。とミサカは急に悶えるように叫び出す一方通行に引いてみます」
970 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:47:38.01 ID:IDF86etDO



息が段々と荒々しくなっていく一方通行に対して、少女は一歩後退する。
髪の毛を掻きむしりそうなほど、今の彼は葛藤に苦しんでいた。



一方「なンでそォいう結果に至った?」

00001号「ミサカがあなたと共に生きる事への決断ですか? それとも何故自分は心の声を漏らしてしまったのか、ですか?」

一方「後者じゃねェのは判りきってるくせに聞いてるよな? なに? オマエ馬鹿なの? なァ馬鹿なンだろ?」

00001号「冗談に決まってるじゃないですか」

一方「だろォと思ったぜクソッタレがあああああッ!!」

00001号「むしろ生き生きしてるように見えてきました。とミサカは達観します」






十分後。






一方「……」

00001号「落ち着きましたか? とミサカは背中を優しくさすりながら答えます」
971 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:48:45.61 ID:IDF86etDO



一方通行は頭を抱えて段差に腰を落としていた。
その隣に少女も同じように座る。

その有様は、ある者から見れば大笑いしてしまうほど滑稽で、ある者から見れば和んでしまうほど微笑ましいのである。



一方「……なンか、すまねェな。取り乱しちまってよ」

00001「いえ、家主の癇癪ぐらい受け入れなければ、同居者として失格ですので。とミサカは遠回しに寛大な心を持っているアピールをします」

一方「……」



この娘は本気なのだと、さり気なく再確認された。
励まされているのに何だか逆効果を発揮してるような気がする。それものし掛かる感じに。

本当に馬鹿なんだろうか。
それともただの阿呆なんだろうか。

どちらにせよ、貶してることには間違いない。
972 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:49:33.87 ID:IDF86etDO



一方「……なァ」

00001号「はい」

一方「確かに俺はオマエに好きに生きりゃイイと言った。だからオマエがドコで生きよォと何しよォと構わねェ」

00001号「はい」

一方「何で俺だ」



一方通行にとって一番の謎は、何故この少女は自分を選んだのか? という点。
少女がたとえ誰の家に居候しようと、何をしようと勝手にすればいい。
そこに干渉するような差し出がましいマネは一切しない。誓ってやる事だって出来る。
なのに、なのにだ。何で自分なのかと。
よりにもよって殺害対象であった“俺”?



00001号「あなたはミサカにとって、『個人』を与えてくれた人です」



ピタリ、と。
頭を掻いていた彼の手が、停止する。
973 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:52:46.01 ID:IDF86etDO



00001号「ミサカの人生はミサカの物だと。他者が介入して、レールをねじ曲げるマネは不可能だと。
     ミサカ達ではなく、あくまで『ミサカ個人』の思考で生きていけ、とあなたは言ってくれました」

一方「……」

00001号「あなたがそう言ってくれなかったら、ミサカはあなたの後を付いて行きません。ミサカが初めて、自らの意思で“こうしたい”と思えたんです。
     それもこれも、一方通行のお陰です。一方通行がミサカの『人生』与えてくれたようなもの。だから、共に生きたいと思ったのです。とミサカは自身の心中を吐露します」

一方「……」

00001号「……ダメ、ですか。とミサカは顔を落とします」



正直これは半分脅迫だと、一方通行は居もしない神様に向かって心の底から呟く。



一方「……はァ〜あ」



わざとらしく盛大に溜息を吐くと、彼は気分の所為であろう重い腰を上げ、立ち上がる。
すると、そのまま歩き出した。未だ段差に腰を落としたミサカを放っておいて。
974 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/04(水) 02:54:25.45 ID:IDF86etDO



00001号「あ……」



突然、何も言わずに行動を起こす一方通行に少女は戸惑いを隠せない。
何と声を掛けたらイイのか、思わず彼の服を掴もうとして止めた片手が、宙をさまよう。



一方「来ねェのか」



そんな少女の様子を察したのか、彼は歩くのを止め、顔だけ振り向いて呼びかけた。
当然だが、少女は聞き返す。



00001号「え……?」

一方「言ったろ。勝手にしろ、って」



諦めたようにやれやれ、と首を振り、再び前を向く。



一方「好きにしろ」









―――少女が言葉の意味を理解するのに、時間はそうかからなかった。









00001号「―――はい! では好きにさせてもらいます。とミサカは一方通行の背中を追います」



軽快な足音を鳴らせながら一方通行の隣に並ぶ少女の顔は、僅かに綻んでいたという。
975 :977 [saga]:2012/04/04(水) 02:59:16.31 ID:IDF86etDO


投下しゅーりょーです

妄想は膨らむばかりな自分です
バトルはもう少しばかり、後ですかね。早く書きたいものです


ではでは
976 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage saga]:2012/04/04(水) 03:11:15.26 ID:RgKSuprW0
乙乙
一方と垣根はまだ過去話やってないからなー
特に原作で関わりのなかった上条と垣根をどう絡ませていくのかに期待
977 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/04/04(水) 04:30:04.82 ID:rBuGjiUl0
乙!

これは良い…
良い…
978 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 08:48:00.21 ID:eGMHUTqSO
け、欠陥通行だと…!?

GJ!
979 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 12:10:35.01 ID:Sre02Re80
980 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/04/04(水) 18:23:04.13 ID:atn/987W0
乙、超乙
もはや個性持ちすぎの00001号さんなのであった
981 :977 [saga]:2012/04/09(月) 02:09:01.51 ID:3ebek6iDO
このスレ最後の投下です

ちょうどスレを立てて一年が経ちました
一年でようやく埋まるってどうよorz
982 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:09:59.53 ID:3ebek6iDO






―――その頃、第七学区のとあるファミレスにて。
983 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:11:36.56 ID:3ebek6iDO

時間は昼時。尚かつ夏休み。
故、安くて簡単に満腹になるという手頃な条件を満たすファミレスは、学生で大盛況である。
夢を追い続ける若し学生の賑やかな様子は何と華やかなことか。



上条「……」

垣根「……」



―――そんな中、何故か一触即発の緊張感を放つ、一組の客が居た。

片はツンツン頭の高校生、上条当麻は目を閉じ、腕を組む。
片はホストを彷彿する格好の青年、垣根帝督も以下同文。
984 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:13:06.37 ID:3ebek6iDO

基本的にツッコミとボケの立場に位置する二人(本人の意志は皆無)。
その二人がココまで真剣に悩む光景は至極珍しい。



垣根「なぁ、リーダー。最近の悩みの一つなんだけどよ」

上条「ん?」

垣根「何で俺らって、何もしてねぇのに怖がられたり警戒心を持たれんだろうなー……」

上条「じゃあまず無差別に人を睨むのを止めればいいと上条さんは思います、ハイ」

垣根「トゲがある危険な男に女の子は惚れる、って言うじゃん?」

上条「テメェの思考レベルは中学生かッ!!」



……いや、前言撤回しよう。

いつもと変わらない光景だった。



上条「大体、お前の意味判んねえ行動の所為で、とばっちりを喰らう俺達の身にもなれってんだ」

垣根「なんだよ、上条はモテたくねぇのかよ!」

上条「結局そこに行き着くのな……もはや上条さんの手には負えませんのことよ」

垣根「心配するな。自覚はある」
985 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:14:34.60 ID:3ebek6iDO



一方通行や上条当麻にとって垣根帝督という男は言うまでもなく、頭を抱えたくなるほど厄介なこと極まりない存在だ。
良い意味や悪い意味とかではなく、“ダメ”な意味で。

垣根は何事に対しても洞察力や思考能力がとても優れている。それも、一方通行を凌駕するほどに。
そのくせして、わざと悪ふざけやボケで雰囲気をブチ壊し、トラブルを引き起こす。
本来は出来る男。なのにやらないで自分が楽しむ方を選ぶのだ。
その上に周りを巻き込んでしまう、とことんどうしようもないヤツ。



上条「お前ほど『トラブルメーカー』なんて汚名が似合うヤツ、見たことねーよ」

垣根「フッ、やめろよ。リーダーからお褒めの言葉を貰うなんて、テレちまうぜ?」

上条「……」

垣根「いやせめて無視だけは止めて下さいホントにお願いしますってリーダーッ!!!?」

上条「……」

垣根「やめてッ、そんな冷めた目で俺を見ないで!」



判っている。ああ、判っているとも。
この男の場合は相手にしないと、余計にウルサいことを。
986 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:18:42.51 ID:3ebek6iDO

相手にしてやっても至極面倒だというのに、相手にしなければ更に面倒くささは倍増される悪循環。
それ故に上条が覚えた垣根専用の対処法が二つある。

一つ。垣根がようやく反省する物理的の“粛正”を下す。
二つ。



垣根「オーケー。上条が俺をスルーするっつーのが常識なら」

上条「はぁ……しょうがねえなもう……」

垣根「俺の未元物質に常識は通用―――」

上条「『絶対能力進化実験』」

垣根「!」



―――それなりに“意味”を持つ言葉を叩き込む事である。
987 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:19:33.49 ID:3ebek6iDO



垣根「……へぇ? 既にリーダーの耳に入るほど、情報は回ってんだ?」



しかし彼の余裕は消えず、底意地の悪い笑みを隠さない。
態度こそ依然とフザケたものだが、特有の視線は眼差しは真剣。
……この目で、今まで何を見抜いてきたか。計り知れないだろう。



上条「いくら上条さんでも、街中であんだけ噂されてたら誰でも気付くっつーの」

垣根「へ? 噂?」

上条「そっちを知らねえのかよっ! ……何でも、女子学生の間で『誰かさん』のクローンが居るとか」



“誰かさん”という言葉を強調したのは、きっと故意だ。
あえて御坂美琴を口にしないのは、周りを考えてのこと。
ファミレスを埋め尽くさんばかりの学生。その中で『超電磁砲』の異名を持つ彼女を知らない学生は、なかなか居ないだろう。
988 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:22:23.34 ID:3ebek6iDO

だからこそ、口にするのを伏せた。
垣根も意図を読み、しいて事柄に触れない。



垣根「第一位や浜面が呼ばれず、俺だけが呼ばれた理由とクローンの関係性はあったりする?」

上条「ありも大ありだ。ま、これを読めば判るさ」



学生カバンの中から薄っぺらい資料を取り出し、垣根に渡す。
垣根は手に取ると、一枚目の冒頭の部分に思わず目を細めた。



垣根「『謎の侵略者(インベーダー)からの施設防衛戦』……?」

上条「本来は俺らへの依頼じゃない。ある人に頼んでもらって、内容をそのまんま完コピしてもらったんだ」

垣根「二十基ある内、既に十八基は『発電能力者』によって襲撃されて壊滅……って」



一度、顔を上げて上条を見る。
この後続く言葉は口にせずとも伝わったようで、上条は片目をつむったまま軽く頷く。
『発電能力者』が誰なのか、言うまでもないだろう。

そして襲撃に遭った施設がどういう物で何に関わっているかも、また同じ。
989 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:23:23.35 ID:3ebek6iDO



垣根「なーるほど、な。……で? リーダーは俺にナニを求めてんだ?」

上条「その言い方やめろっ、気色悪ぃわ!」

垣根「ハッハッハー! リーダー甘いぜ、そういう思考転換する方が悪いって―――ん? オイ待てよ」



笑みから一変。
親指と人差し指を顎に添え、眉間をひそめて垣根は問いかける。



垣根「なあ、元々この依頼は俺らのじゃないって言ったよな?」

上条「ああ、言った」

垣根「じゃあその元々この依頼を受けたのは、誰なんだ……?」



別段と注目すべき点ではない、と捉えるかもしれない。
だけどよくよく考えてみれば、着眼点はソコじゃなかった。
990 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:24:14.52 ID:3ebek6iDO

十八基も施設を壊滅に陥って、それでも尚、『謎の侵略者』なのか? と。
違う。そんな訳がない。
必ず気付いているはずだ。
侵略者の正体ぐらい、見破れないなんて事はありえない。

判明した上で誰かを明らかにせず、不明瞭のまま依頼。
第三位とマトモに対峙する事が可能で、尚かつ相打ちになる存在。



上条「……」



黙って懐からペンを取り出す。
静かに先を走らせ、文字を書いていく。

そこには、こう書かれていた。



垣根「……第一位じゃねぇけどさ、結構かったるぃな。アイツの性格上の問題的に」





―――『アイテム』と。
991 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 02:30:52.48 ID:E9mNbSeBo
今更だが上条さん初期と比べて性格大分原作寄りになったな
992 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:31:26.86 ID:3ebek6iDO



上条「安心しろって。直接関わる訳じゃないからさ」

垣根「本当だな? 信用するぞ? 信用していいんだな? 信用しちゃうぜ?」

上条「三段活用、ってな。ただ垣根には、二人がドンパチやってる隙に調べて欲しいだけ」

垣根「その調べて欲しいことって?」

上条「それこそ資料に書いてあるから見ろ。俺ばっかりに頼ってないで」

垣根「へいへーい」



ぶつくさ愚痴りながら、肩肘付いて億劫そうに目を通していく。
真面目に読まず、適当に文字の羅列を見ていくだけ。

上条は溜息を吐く。
やはり、どう足掻いても垣根のおフザケモードは抜けきらないようだ。
もう少し、本当にもう少しだけ、自粛や反省という言葉を頭の中に入れて欲しいと願うばかり。



上条(……まあ、垣根にそんな言葉が備わってたら、こんな苦労する事もないんですけどねー……。ハハッ、あっれーおかしいな目頭が熱い)

垣根「なあリーダー」

上条「何でせうか、人がせっかく感傷に浸っているというのに」
993 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:32:12.60 ID:3ebek6iDO











垣根「本当は、リーダーが乗り込みたいんだろ?」
994 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 02:41:37.96 ID:3ebek6iDO

上条「―――っ」



……本当にこの男は、人をよく見ていると思う。



垣根「今までずっと俺達の『世界』に踏み入れないよう、上手い事かわしながらあの子に取り繕ってきたんだろ?」

上条「……」

垣根「その子が上層部の野郎共に使われ、ましてや事柄に気付いて食い止めようと一歩踏み込む手前まで来てやがる。
   ……ジッとしてれるはずがねぇよな。コッチに入ってしまえば、後戻りは余程の事がない限り不可能だ。だからリーダー自らこの件を片を付けようとした。けど―――」

上条「今回ばかりは、アイツの前で上条さんの出る幕はないんですよ」



垣根を遮り、紡いだ。
肩を竦ませてまるで自嘲するように。



上条「万が一遭遇した場合の事を考えて、俺はダメだ。一方通行なんてもっとな。浜面は心配は無いけど、流石に今回は力不足かもしれない」

垣根「それで俺の出番、ってか」

上条「アイツが逆上して襲って来ても安心はある。浜面だと殺されかねないからな」

垣根「使い勝手もいいとこじゃね?」

上条「内心は喜んでるくせに、よく言うぜ」

垣根「あ、バレてたか」

上条「当ったり前だッ、何年一緒に居ると思ってんだか」

垣根「へへっ、まあ任せとけって! この垣根様がスムーズ&スマートに終わらせてみせるからよぉ!」

上条(……ぜってー無理な気がするのは、俺だけかな……?)



きっとそれは一方通行や浜面が聞いても、上条の意見に同意なのは間違いないだろう。




―――――――――――――――
995 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/09(月) 06:50:53.83 ID:IOH2ZRIao

次スレか?
996 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 08:53:23.69 ID:3ebek6iDO








「んぐんぐ」
997 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 08:54:52.10 ID:3ebek6iDO



二人の会話をこっそりと耳にする少女が居た。


黒髪のお団子頭を左右に揃えた、中学生ぐらいの小柄の少女。


もぐもぐと頬張るのはパフェだ。





「うん、うん。分かっているよ、数多おじちゃん」
998 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 08:55:42.01 ID:3ebek6iDO






何度も頷いて、さながら自分に言い聞かせるように。


だけど少女の純粋な瞳からは“楽しみ”や“歓喜”といった、プラスの方向の気持ち。


気が狂ってる訳でもない。


会える事を純粋に心の底から嬉しそうに。
999 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 08:56:44.61 ID:3ebek6iDO







「本当に、本当に辛いけど、『木原』ならこうするんだよね」








そして、とても可愛らしい笑顔を浮かべた。
1000 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/04/09(月) 08:57:22.04 ID:3ebek6iDO























「当麻お兄ちゃん……へへへ」
1001 :1001 :Over 1000 Thread
                     ___, - 、
                    /_____)
.                    | | /   ヽ || 父さんな、会社辞めて小説で食っていこうと思うんだ
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                   (/   ⊂⊃  ヽ)        /  ̄ ̄ ̄ \
                   !   \_/  !        ( ( (ヽ     ヽ
                   ,\ _____ /、       | −、ヽ\     !
   ゝ/  ̄ ̄ ̄ \     /. \/ ̄\/   .\     | ・ |─ |__   /
   / _____ヽ    |  |  _┌l⊂⊃l  |  |    ┌ - ′  )   /
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    ヽ、  ┬─┬ノ / ̄ ./            ヽ- 、\    /   ̄ ヽ\
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白髪の男「エルフのメスガキ?」 @ 2012/04/09(月) 05:07:04.01 ID:Iv4+7Zg8o
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嫁宣言して60分以内にお断りされなければ結婚避難所 @ 2012/04/09(月) 03:53:22.36 ID:fKang9rXo
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京太郎『部長!大事なお話があります!』 <br> <br> @ 2012/04/09(月) 02:52:54.77 ID:2uzNWHoAO
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