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マミ「今日も紅茶が美味しいわ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 14:56:23.95 ID:VanRBjpeo

マミ「やっぱり働いたあとの一杯は格別ね」

QB「夜間にカフェインを取り過ぎるのはおすすめしないよ。いつものことだけど」

マミ「平気よ。いつものことだもの」

QB「……。まぁ、君がいいのなら、いいんだけどね」

マミ「そうよ。女の子のティータイムに口を挟むものじゃないわ」

QB「そういうものかな」

マミ「そういうものなの」

マミ「……あぁ、美味しい」
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VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
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にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 14:57:30.76 ID:VanRBjpeo





   第一話  シナモンは香りが強い




3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 14:58:27.37 ID:VanRBjpeo

マミ「キュウべえ、おかわりは?」

QB「遠慮しておくよ」

マミ「もう? まだカップ半分しか飲んでないじゃない。クッキーも少ししか」

QB「もうお腹いっぱいだよ」

マミ「男の子なんだから、もっとしっかり食べなきゃだめよ」

QB「僕に人間の基準を求められてもね。まずサイズの違いを考えてくれないと」

マミ「ちゃんと食べないから大きくならないのよ?」

QB「僕はこれ以上大きくならないよ」

マミ「わがままばっかり」

QB「全部事実だよ。どうしろっていうのさ」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 14:59:40.27 ID:VanRBjpeo

マミ「……クッキー、美味しくなかった?」

QB「うん? いいや、美味しかったよ」

マミ「ほんとう?」

QB「嘘なんか言わないさ。いつもとは違う風味だったけど、とても美味しかったよ」

マミ「そ、そうよね。今日はシナモンを入れてみたんだけど、」

QB「それは最初に聞いたよ」

マミ「……」

QB「……?」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:00:38.70 ID:VanRBjpeo

マミ「キュウべえのいじわる」

QB「そういうつもりはないんだけどな」

マミ「そういうデリカシーのないこと言ってると、女の子に嫌われちゃうわよ?」

QB「……。それは困るね」

マミ「でしょう?」

QB「うん。魔法少女の契約が結べなくなる」

マミ「……」

QB「ん?」

マミ「……もういいわ」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:02:08.57 ID:VanRBjpeo

マミ「ハァ……やっぱりあなたって、人間とは違う生き物なのね……」

QB「そりゃそうさ。僕は契約の獣。それ以外の何物でもないよ」

マミ「そうなのよね……」

マミ「最初見たときは天使かと思ったのに……」

マミ「そうじゃなくても、すごくかわいい子だと思ったのに……」

マミ「それがこんな生意気なわからず屋さんだったなんて! いちいち理屈っぽいし!」

QB「残念だったね」

マミ「……」

マミ「……まぁ、いいわ」

マミ「そんなあなたのこと、私はやっぱり好きだもの」

QB「……」

マミ「そろそろ寝ましょうか」




7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:03:52.78 ID:VanRBjpeo

マミ「さ。おいで、キュウべえ」

QB「また一緒に寝るのかい?」

マミ「いや?」

QB「僕は構わないけど、生き物を抱えて寝るにはそろそろ蒸す季節なんじゃないかな?」

マミ「熱と温もりは全然別なの」

QB「どう考えても同じだよ」

マミ「気持ちの問題ってことよ。いいからほら、いらっしゃい」

QB「ま、君がいいならいいけどさ」

マミ「照れちゃって」 クスッ

QB「……」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:05:06.84 ID:VanRBjpeo

マミ「おやすみ、キュウべえ」

QB「おやすみ、マミ」

マミ「……」

QB「……」

マミ「……」

QB「……」

マミ「……」 クンクン

QB「……」

マミ「……キュウべえ?」 ムックリ

QB「どうしたんだい?」

マミ「ちょっと口、開けてみて?」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:06:15.74 ID:VanRBjpeo

QB「いいけど……」 アーン

マミ「……」

マミ「……」 クンクン

QB《何をしているんだい?》

マミ「!?」 ビクッ

マミ「……もう、いきなりテレパシーで話しかけないでよ」

QB《しょうがないじゃないか。この体勢で口を動かしたら、君の鼻を噛んじゃうよ》

QB《それで、何をしているんだい?》

マミ「口臭チェックよ」

QB《口臭チェック?》
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:07:36.92 ID:VanRBjpeo

マミ「キュウべえ。あなた、ちゃんと歯を磨いた? シナモンの香りがするわ」

QB「磨くわけないじゃないか」

マミ「……」

マミ「なに当り前みたいに言ってるの! ちゃんと磨きなさい!」

QB「必要ないよ。僕は虫歯にはならない」

マミ「歯磨きしない子はみんなそう言うんです」

QB「大丈夫だってば。どんな種類の細菌もウィルスも、この身体には棲んでいないんだから」

マミ「でも……そうだとしても、匂いが残ってるじゃない」

QB「そりゃ、さっき食べたばっかりだしね。でもあともう一時間もすれば消えるはずだよ」

マミ「だからって……なんだか気持ち悪いわ」

QB「それじゃあ逆に聞くけど、マミは魔法少女の姿のときに着ている服を洗濯したことはあるかい?」

マミ「そんなの……あるわけない、けど」

QB「それと同じさ」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:09:03.08 ID:VanRBjpeo

マミ「つまり、魔法できれいにしてるってこと?」

QB「人間が問題にする種類の汚れや臭いとは、最初から無縁だ、ってことさ」

マミ「ふーん……」

QB「納得してくれたかい?」

マミ「うーん……まぁ、それはわかったけど……」

QB「他に何か?」

マミ「そんな話、初めて聞いたわ。もう何年も一緒にいるのに」

QB「聞かれなかったからね」

マミ「……」

QB「それに、そんなことを気にした子は今までいなかったよ。君が初めてだ」

マミ「……何よそれ。それじゃ私が、変な子みたいじゃない」

QB「個性的では、あるね」

マミ「いじわるっ」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:10:14.64 ID:VanRBjpeo

QB「そもそも、マミ。君は今まで僕に歯磨き道具を用意してくれたことなんかなかったじゃないか」

マミ「……」

マミ「……あぁ」

QB「そういうことだよ」

マミ「も、もう! わかったわよ! でもやっぱり気になるから口だけゆすいできなさい!」

QB「どうしてそうなるんだい?」

マミ「イヤだっていうなら一緒に寝てあげないわよ!」

QB「僕は別にそれでもかまわないよ」

マミ「いいから行ってきなさい! コップは私の使っていいから!」

QB「やれやれ、わかったよ」



QB「まったく……わけがわからない」 トコトコ




13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:11:20.74 ID:VanRBjpeo

BD特典のドラマCDに触発されて書いた
反省なんてあるわけない

一応続きます
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/08(日) 15:12:34.17 ID:VanRBjpeo

ってゆーかマミQいいよね
ほっこりドス黒い気持ちになれるよね
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/08(日) 15:17:39.22 ID:mVo8iYKco
最近ほむべぇがお気にな俺
乙っち乙まど
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 17:26:23.90 ID:UOIZMvCIO
乙っちまどまど
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:39:44.88 ID:vxez3NkSo

>>15-16
ありがとう


第二話の準備ができました

その前に一応補足
時系列的にはまどかたちと出会う一年前ぐらいな感じを想定してます
オリキャラなんかも出る予定
ってか今回出ます

それでは投下
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:41:01.34 ID:vxez3NkSo



マミ「さて……放課後か。今日もパトロールに……」

モブA「巴さーん」

マミ「え?」

モブA「ねえ、今日ヒマ?」

モブB「私たちこのあとお茶しに行くんだけど、巴さんも来ない?」

マミ「え、でも……」

モブA「いいじゃん、たまには一緒に遊ぼうよ」

マミ「うーん……」

マミ(おととい、昨日と続けて当たりだったから、確率的には今日は大丈夫だけど……)

マミ「ちょっと待ってもらえるかしら。バイト先にメールで聞いてみるわ」

モブs「はーい」
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:41:57.51 ID:vxez3NkSo





   第二話  魔法少女の貴重な休息




20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:44:14.32 ID:vxez3NkSo

マミ(携帯を出して……アラームを二分後にセットして……)

マミ《……キュウべえ、いる?》

QB《――いるよ。なんだい、マミ》

マミ《あなたのわかる範囲でいいんだけど、魔女の気配は近くにあるかしら》

QB《ちょっと待って》

マミ「……」

モブA「ってゆーか、巴さんってアルバイトなんてしてたんだ。ねぇねぇ、どんなところなの?」

マブB「あ、私も聞きたい。マック? ファミレス?」

マミ「いいえ。知り合いの方の事務所で、宛名書きとか書類届けのお使いとかをしてるだけよ。
   私に接客業なんて、むりむり」

モブA「えー、そんなことないよー。エプロンドレスとかすっごく似合いそうなのに」

モブB「でも考えてみれば私たちまだ中学生だもんね。普通のお店は無理かも」

マミ「ふふっ、そうね」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:45:59.55 ID:vxez3NkSo

QB《――マミ。今のところ、魔女の気配は見当たらない。100%の保証はできないけどね》

マミ《わかったわ。……それじゃあ、今日のパトロールは一時間ぐらい遅らせてもいいかしら?
   クラスのお友だちに誘われちゃったの》

   ヴーン ヴーン ブーン

マミ(おっと)

QB《いいんじゃないかな。息抜きは大事だ》

マミ《ありがとう、キュウべえ》 パカ カチカチ…

マミ「ん、大丈夫みたい。でも向こうの人達に悪いから、一時間ぐらいでいいかしら?」

モブA「一時間かー……それじゃホントにお茶ぐらいしかできないなー」

モブB「仕方ないわよ。また今度ゆっくり行けば」

マミ「ええ。お詫び、っていうのも変だけど、紅茶の美味しいお店を知ってるから案内するわ」

モブA「おおっ。それは期待しちゃおっかなー」

モブB「うん、楽しみ」


22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:47:36.47 ID:vxez3NkSo

   キャッキャウフフ

マミ「あ……そろそろ時間だわ。行かないと」

モブA「え、もうそんな経っちゃった?」

モブB「あっという間だったわね……」

マミ「ごめんなさい。お会計、これで一緒に払っておいてもらえる?」

モブA「任せて。ってか、ケーキも紅茶もすっごく美味しかったよ。ここはいい店だー」

モブB「教えてくれてありがとう、巴さん」

マミ「どうしたしまして。レジのところに置いているクッキーもおすすめだから、よかったら」

モブA「うん。じゃあまた、今度はゆっくり遊ぼうねー」 ブンブン

モブB「また明日学校で」

マミ「ええ。また明日」

   カランカラン…


23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:48:41.86 ID:vxez3NkSo

マミ《お待たせ、キュウべえ》

QB《もういいのかい?》

マミ《いいのよ。そんなに長いことサボるわけにはいかないわ》

QB《そうかい。ま、君がいいならいいさ》

   テテテテテ… ストッ

QB「それじゃ行こうか」

マミ《ええ。キュウべえは、どの辺りを見張ってくれていたの?》

QB「駅の南、橋よりこっち側だよ」

マミ《じゃあ、北の方から廻ってみましょう》




24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:50:10.85 ID:vxez3NkSo

マミ「ふぅ……ただいま、っと」

QB「結局。魔女にも使い魔にも当たらなかったね」

マミ「そうねえ……」

マミ「……いいえ、それでいいのよ。魔女なんか出ないに越したことないわ」

QB「そうは言っても、ここのところグリフシードを拾っていないじゃないか。そろそろ当たらないと」

マミ「まだ平気よ。……いえ、というかキュウべえ」

QB「なんだい?」

マミ「その考え方は危険よ。グリフシードはあくまで副産物。目的にしちゃいけないわ」

QB「ソウルジェムの浄化を軽視する方がよっぽど危険だよ」

マミ「駄目よ」

QB「……」

マミ「魔女から街の人たちを守る、それが一番大事なの。
   魔法が使えなくなる危険から自分を守ることは、あくまで二の次でなければならないわ」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:52:36.43 ID:vxez3NkSo

マミ「魔法少女は、機械じゃないの」

マミ「普通の人間とは違うモノかも知れないけれど、心まで無くしてはいけない」

マミ「少なくとも私は、そうありたいと願うわ」

QB「……」

マミ「だってキュウべえ、考えてもみて?」

マミ「護るべき人たちのことを忘れて、自らが永らえるためだけに獲物を狩り続ける……」

マミ「そんなもの、魔女と何も変わらないじゃない」

QB「……」

QB「そうだね。そのとおりだ」

QB「魔法少女は常に、自らが魔女に堕ちる危険をはらんでいる」

マミ「……」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:54:03.54 ID:vxez3NkSo

QB「マミ」

マミ「なぁに、キュウべえ」

QB「僕も長いこと、色々な魔法少女を見てきたけれど、君ほどの信念を持った子は稀だったよ」

マミ「……そう」

QB「その高潔さは、かつて『英雄』や『聖女』と呼ばれたような子たちに匹敵するものだ」

QB「君ほどの魂の持ち主に出会えたことは、奇跡とも呼ぶべき幸運だと僕は思うよ」

マミ「……」 クスッ

QB「嘘でも、冗談でも、お世辞でもない。本当にそう思う」

マミ「ありがとう。でも、そんなんじゃないわ。私は英雄でも聖女でもない」

マミ「ただの『魔法少女』よ」


27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:55:00.13 ID:vxez3NkSo

マミ「……キュウべえ、こっちに来て」

QB「なんだい?」

マミ「素敵なことを言ってくれたお礼に、あなたを幸運で包んであげる」

QB「? どうやって?」

マミ「抱っこしてあげるってことよ」

QB「なんだ、いつもやってることじゃないか」

マミ「贅沢いわないの。――えいっ!」

QB「うわっ」

マミ「あったかーい」

QB「そりゃどうも」

マミ「ふふっ。…………でも、私自身はあまり幸運ではないわよねぇ……」

QB「何がだい?」

マミ「今日誘ってくれた子たちのこと。もったいないことしちゃったなぁ……」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:56:16.07 ID:vxez3NkSo

QB「いいって言ってたじゃないか」

マミ「そんなの強がりに決まってるでしょ、ばかっ」

QB「……」

マミ「あーん! 女の子同士でお茶会なんて久しぶりだったのにー!」 ジタバタ

QB「ちょ、マミ、締って」

マミ「それぐらい我慢しなさい! 男の子でしょ!」

QB「正確にはどっちでもっキュイイ」

マミ「ハァ……あの子たち、また誘ってくれるかなぁ……私から誘って、来てくれるかなぁ……」

QB「……。僕でよければ付き合うよ」

マミ「……」

マミ「いつもやってることじゃない」

QB「まぁね」




29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/09(月) 19:57:43.80 ID:vxez3NkSo



マミさんはぼっちじゃないよ!
出会って間もないまどかさやかをしっかりエスコートできたマミさんがぼっちなわけないよ! たぶん!

というわけで第二話おわり
次も近日中に



魔女とかどうしよっかなぁ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 20:01:05.38 ID:8w6bsGmIO
>>1乙!
マミさんが可愛すぎて胸が苦しい……
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/09(月) 20:08:39.85 ID:vLqKkkrpo
お疲れ様でした。

マミさんは多分、魔法少女化以降クラスメイトからは絶妙な距離感を保った付き合いを
しているのではないかと・・・・・・・・・。それ以前は普通に付き合いをしていたとは思いますが。
確かに、彼女は可愛いですね。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/05/09(月) 20:37:37.80 ID:mViORShI0
乙ー

マミさんがぼっちじゃない…だと…!?
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/09(月) 20:57:31.67 ID:LgNR5hKno
細かいようだけど魔女になるのは知らされてないんじゃないかな、知って発狂したくらいだし
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/09(月) 21:42:41.97 ID:DBmZRNbVo
>>33
魔女化を知ってるような描写なくね?
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/09(月) 22:25:39.70 ID:BPakkZv10
>QB「魔法少女は常に、自らが魔女に堕ちる危険をはらんでいる」

事実はゲロしてるけど、マミさん自身が魔女を欲望の象徴として扱った直後なだけにそうはとられないという
いつもは大事なことに限って言わないだけのキュゥべえにしては割と高度なレトリックだな
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2011/05/09(月) 22:28:49.31 ID:LgNR5hKno
>>25
魔法少女が最終的に魔女になると知ったときの錯乱した時の様子やら話の流れから
原作では魔女になる可能性があると知らなかったと思われる
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/09(月) 23:00:20.45 ID:KnWwpOAio


マミさん可愛いよマミさん
QB、随分マミさんに優しいじゃないか
さっさと魔女堕ちしてくれた方がありがたいだろうに
そんなQBに和んだ
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/05/09(月) 23:01:58.45 ID:DBmZRNbVo
>>35も少し触れてるけど
それはマミが「自分のためだけに魔女を狩るんじゃ結局魔女みたいなもんじゃない。
魔法少女はみんなを守るために戦わなきゃ」
って言ってるだけだろ・・・
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/10(火) 01:05:27.73 ID:Gb21irwao

最近のQB待遇のよさは異常
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/10(火) 01:43:59.72 ID:WAl4xKcko

1です
なんでいきなり増えてんだお前らびっくりしたじゃないか
人がいるなら「ぼくのかんがえたまじょぼしゅう」とかやっちゃうぞ


一応補足
>>25については、おおむね>>35の言ってる通り
マミさんは改心前の杏子みたいなのを想定してるだけで真相には気付いてません
QBの思惑をもう少し詳しくいうと、
「よっしゃ言質取らせたぜ、これでいざという時に『だから言っただろう?』と絶望を煽れるぜ」
みたいな感じですかね。滅びろクソが
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/10(火) 15:49:41.58 ID:MZHAFhXvo
乙乙。いい感じだ
アラーム設定してカムフラージュしてるマミさんがぼっち上級者みたいでちょっと笑った
ってお前マミQ好きなんじゃないのかよwwwwwwQB自体は嫌いなのかwwww
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/11(水) 13:59:19.14 ID:UhUXheSP0
面白いなぁ、続き楽しみにしています!
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:12:59.72 ID:kWroeCGwo

1です

>>41
オタ的な嗜好として「キュウべえ」というキャラクターは大好きだが、
その行いは人として許せんし受け入れられん、みたいな

では第三話行きます
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:14:44.00 ID:kWroeCGwo



  『キヒィィィィィィィィィ……』

   シュウゥゥゥ…

マミ「ふぅ、厄介な魔女だったわね……でも」

   ――コロン

マミ「その甲斐はあった、かな?」

QB「マミ、怪我は大丈夫かい?」

マミ「平気よ、あとで治すから。それよりその子の様子はどう?」

QB「気を失っているだけだよ。転んだときの擦り傷が少しあるけど、問題はないと思う」

マミ「そう。よかった」




45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:15:43.02 ID:kWroeCGwo





   第三話  Prego!




46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:17:14.65 ID:kWroeCGwo

少女「……ん……う、ん……?」

マミ「気がついた?」

少女「え……?」

少女「ここ……公園? あれ? 私、どうしてこんなところに……」

マミ「そこの芝生に倒れていたのよ、あなた」

少女「そう、なんですか……?」

マミ「ええ。覚えてないのかしら」

少女「はぁ……あ、痛」

マミ「膝を擦りむいてるわね。ちょっと待ってて、水飲み場でハンカチを濡らしてくるから」

少女「あ、はい……あの、ところであなたは?」

マミ「私? 私はただの通りすがり」




47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:18:40.48 ID:kWroeCGwo

少女「えっと、お世話になりました……」

マミ「本当に病院に行かなくて大丈夫?」

少女「はい、たぶん……それじゃ失礼します」

マミ「気をつけてね」

   テッテッテッテッテ…

マミ「……」

QB「よかったのかい? 何の説明もしなくて。彼女、君のことを不審がっているようにも見えたよ?」

マミ「無理もないわ。別におかしな反応じゃない」

QB「……」

QB「確かに、ありえない反応ではなかったけど」

マミ「私の方も、ちょっと余裕ぶりすぎだったかも知れないわね。
   人が倒れて怪我してたんだから、もうちょっと慌てたように振る舞えばよかったかしら」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:20:07.47 ID:kWroeCGwo

マミ「何にしても……彼女は何も覚えていないし、あなたのことも見えていなかったんでしょう?」

QB「そのようだったね」

マミ「だったら、説明したところで信じてもらえないわ。逆におかしな人だと思われるだけ」

マミ「普通の人は、こんな世界のことは知らないままでいた方がいいのよ」

マミ「あなたたちが魔女の存在を大々的に訴えたりしないで、隠れるように活動しているのだって、
   同じような理由なんでしょう?」

QB「……」

QB「そうだね。そんなことをしてみたところで、僕らにとっていい結果になるとは思えない」

マミ「そうよね……」

QB「……」
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:21:45.31 ID:kWroeCGwo

マミ「……どうにかして、みんなに魔女の危険を知らせることはできないかしら……」

QB「……。難しいと思うよ」

マミ「あなたたちも、やっぱり色々と試してきたの?」

QB「ああ。魔法少女のシステムは、僕らがこれまでに積み重ねたさまざまな試行錯誤の結果さ。
   これが一番効率がいいというのが現時点での結論だね」

マミ「そっか……せめてキュウべえだけでもみんなに見えてくれたらいいのに」

QB「……。色々なことが変わるだろうね、もしそうなったら」

マミ「ええ」 クスッ

QB「……?」

マミ「まず第一に、私にはこんな素敵な友だちがいるって、みんなに自慢できるようになるわ」

QB「マミらしい考えだね」

マミ「ふふっ」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:23:28.37 ID:kWroeCGwo

マミ「……さて、今日はもう終わりにしましょうか」

QB「いつもよりだいぶ早くないかい?」

マミ「ごめんなさい。でも今日は、ちょっと疲れちゃったから」

QB「別に責めてるわけじゃないよ。さっきの魔女も手強かったし、無理することはないよ」

マミ「ありがとう、キュウべえ」

QB「どういたしまして」

マミ「……」 クスッ

マミ「それじゃ、お買い物して帰りましょうか。今日はゆっくり回れそう」




51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:25:04.14 ID:kWroeCGwo

店員「いらっしゃいませー」

マミ《キュウべえは何が食べたい?》

QB「なんでもいいよ」

マミ《それが一番困るのに……》

マミ《あ、リンゴが安いわ。そういえばしばらくアップルパイは作ってなかったっけ》

QB「晩ごはんには向かないんじゃないかな」

マミ《そんなわけないでしょ》

QB「まぁ、マミが食べたいのなら反対はしないけど」

マミ《そうじゃなくて、夕飯にするわけないでしょ、ってことよ。これは今度のおやつ用》

QB「ああ、なるほど」

マミ《まったくもう》


52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:26:20.73 ID:kWroeCGwo

マミ「ん〜……」

マミ《……ねぇ、キュウべえ。お味噌ってまだ残ってたかしら?》

QB「さぁ?」

マミ《頼りにならないわね。これだから男の子は》

QB「そう言われてもなぁ」

マミ《まあいいわ。今日は使わないメニューにして、なかったら明日買うことにしましょう》

QB「そうだね」

マミ《久しぶりに和食もよかったけど……仕方がない、中華でいいか》

QB「そういえば、紅茶がそろそろ切れるって言ってなかったかい?」

マミ《それはいつものお店じゃないと》

QB「ふ〜ん」


53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:27:24.38 ID:kWroeCGwo

マミ「〜♪」

マミ《やっぱり早い時間だと色々残ってていいわね》

QB「明日からも早めに切り上げるかい?」

マミ《そういうわけにはいかないわよ》

マミ《今日は特別。……あの女の子を助けることができた、ご褒美みたいなものかしら?》

QB「まぁ、君がそういうなら」

店員「お次にお待ちのお客様ー、どうぞー」

マミ「あ、はい」

   ピッ
   ピッ
   ピッ…

店員「1,218円になりまーす」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:28:27.02 ID:kWroeCGwo

店員「1,300円からお預かりしまーす。82円のお返しでーす。袋はお付けしますかー?」

マミ「お願いします」

店員「ありがとうございましたー」

マミ「……」 テクテク

マミ「……」 ドサ、ゴソゴソ、ゴソゴソ

マミ「……」



マミ「……どういたしまして……」 ボソッ



QB「? 何か言ったかい、マミ?」

マミ《なんでもないわ》 ニコ




55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/11(水) 19:29:17.78 ID:kWroeCGwo

以上

しまった紅茶飲んでねえ
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/11(水) 19:30:49.98 ID:VUcRkFdHo
お疲れ様でした
57 :5533年 :2011/05/11(水) 21:57:06.33 ID:5AKEuBNAO
おつまみ
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/11(水) 21:59:36.18 ID:mLBBU1LVo
乙。
QBとの会話にものすごい齟齬を感じる…
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 00:15:36.99 ID:Vlq/lXZP0

相互に異質すぎてなんでもない会話も手探りで、そういう関係を積み重ねてきた雰囲気が俺にはとてもいい
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 07:55:20.31 ID:6qBP8cDIO
かみ合ってない会話がリアルだな
QBにとっては、この会話も、ソウルジェムが本体だってばれたときの会話も同じようなものなのかな
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/12(木) 08:05:28.53 ID:TXd0GtvIO
乙っちまどまど
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/12(木) 19:44:00.68 ID:ZrvnDbP7o
乙マミ
和やかな雰囲気だけどQBの本性知ってるからギギギってなるぜ…
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:01:15.01 ID:pSU8VOl9o

>>62
まさにそれを狙って書いてるからなあ


さて、1です
投下
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:02:10.48 ID:pSU8VOl9o



マミ(明日は終業式……明後日から夏休み、か……)

マミ(できれば一日ぐらいおばさまたちに顔を見せに行きたいところだけど……あら?)

マミ(ロッカーに封筒が……何かしら?)

マミ(……!)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……ラブレター、だわ……)

マミ(……どうしよう……断らなきゃ……)




65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:03:30.68 ID:pSU8VOl9o





   第四話  恋の魔法はまだ使えない



66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:04:50.75 ID:pSU8VOl9o

マミ「うーん……」

A子「巴さん、お昼一緒に食べよう」

B子「あ、私も……どうしたの?」

マミ「ううん、なんでもないわ。お昼ね。どこで食べる?」

A子「食堂行こうよ。冷房入ってるし」

マミ「そうね。屋上や中庭は、この時期はちょっとね」

B子「混んでないといいけど」




67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:06:20.52 ID:pSU8VOl9o

   ガヤガヤガヤ

A子「むぅ……巴さんのお弁当、いつもきれいだよねー」

マミ「なぁに? あらたまって」

A子「だってさー、自分で作ってるんでしょー? 見るたびにすごいなって思っちゃうよ」

マミ「好きだからやってるだけよ。もう慣れてるし、大したことないわ」

A子「またまたー。ないことないって。慣れるまで続けられないんだから、普通は。
   それにこれ全部手作りでしょ? 冷凍食品とか使ってないんでしょ?」

マミ「それはまぁ。……でもああいうものって、あまり使いたくないのよ」

A子「どうして?」

マミ「ん〜……、だって、冷凍食品でもいいなら、お弁当を買ってもいいわけでしょう?」

A子「え? ……まぁ、うん」

マミ「そうしたら今度は購買でパンと野菜ジュースでも買った方がよっぽど簡単だし、
   さらに言うなら毎日学校でじゃなくてスーパーで買いだめした方が安くつくでしょう?
   そんなふうに、一つ緩めたら緩むところまで緩みきっちゃうと思ったら、ね。
   最終的には、サプリメントとゼリー飲料で三食をすませる毎日よ? ゾッとしちゃう。
   それを思うと、少し早起きしてお弁当を作るぐらい、なんてことないわよ」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:07:37.00 ID:pSU8VOl9o

A子「……」

B子「……」

マミ「……あら?」

A子「あ、いや、なんていうか……普通そこまで考えないというか、中学生離れしてるというか、
   むしろ逆にものすごく中学二年生っぽいというか……とにかく凄いですね」

B子「なんで敬語……?」

マミ「……ごめんなさい。一人で喋りすぎちゃったわね」

A子「いや、うん。あ、いや。ちょっと面白い話だったよ」

マミ「そう? なら、いいんだけど」

A子「先を見据えてるって感じで、いいと思う。やっぱり将来のこととかも考えてるんだ?」

マミ「将来……?」

A子「うん。……あれ?」

マミ「将来、か……あんまり考えてないわね……」

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:09:37.77 ID:pSU8VOl9o

A子「え、マジで? さっきの計画性は食べもの関係限定ですか?」

マミ「そういうわけじゃ……怪我とか病気とか、不測の事態への備えなら考えてるけど……
   将来の夢とか、そういうことはちょっと。自分には関係ないことのような気がしちゃって」

A子「……いや、関係はあるでしょ。私もあんまり考えてないけど」

マミ「そう……なのかしら……」

B子「……」

A子「……巴さん?」

マミ「――あ。……ごめんなさい。私、また……」

A子「ん、うん。OK。巴さんの意外な一面って感じでむしろOKだよ」

マミ「……あなたも、ごめんなさい。私、考えることが変に走っちゃう癖があって……」

B子「え? あ、いや、私は別に……」

マミ「でも、さっきから全然喋ってないから……」

A子「あー、そっちは放っといていいよ」

マミ「え? でも」
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:11:12.78 ID:pSU8VOl9o

A子「いーんだってば。彼氏とケンカ中でへこんでるだけだから」

B子「ちょ」

マミ「まぁ……」

B子「い、いいから。私のことは気にしないで、巴さん」

A子「それとも興味ある?」

マミ「えっ」

B子「やめてって、ば……?」

A子「お? ちょい反応アリ? そーいや巴さん、浮いた話とかないよね。美人なのに」

マミ「えっ? そんな、私は別に、ないわよ?」

A子「あー、やっぱり何かあるんだ。聞きたいな、巴さんの恋バナ」 ニマッ

B子「……」 チラ、チラ

マミ「えっと……」

マミ(…………言っていいのかしら?)




71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:12:20.01 ID:pSU8VOl9o



   カチャリ

QB「それで、どうしたんだい?」

マミ「……話したわ」

QB「うん」

マミ「…………応援されちゃった」

QB「ふぅん? 応援されるべきは差出人の男性の方だと思うけど」

マミ「……」 ジトッ

QB「なんだい?」

マミ「そういう問題じゃないわよ……」

QB「というと?」

マミ「だから……恋っていうのはそういうものじゃないの。もっとこう……」

QB「?」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:13:52.65 ID:pSU8VOl9o

マミ「なんていうかつまり……そんな簡単に、どっちがどうとか言えるようなものじゃないのよ。
   もっと繊細で複雑なことがらなの」

QB「……」 モグモグ

QB「そうみたいだね。人間の恋愛感情は複雑すぎて、僕には理解できない」

マミ「またそんなあっさり……」

QB「事実さ。でも、気を悪くしたのなら謝るよ」

マミ「ハァ……」

   ゴロン

QB「……」 モグモグ

マミ「……」

マミ「……ねえ、キュウべえ」

QB「なんだい?」

マミ「あなた、本当にわからないの? あなたにも同じ種族の仲間がいるんでしょう?」

QB「仲間というか、全員 “僕” だからね」

マミ「……」

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:15:12.93 ID:pSU8VOl9o

QB「前に話したよね? 僕らは意識も記憶も、全員が同じものを共有している。
   経験に基づく細かな個体差もあるにはあるけど、人間のそれと比べたら無いに等しいよ」

QB「だから選ぶ理由も意味もない。そもそもの繁殖方法が違うから、必要すらない」

マミ「……やめて……」

QB「君たちの知る他の生き物たちと比べたら、確かに異質に映るかも知れない。だけど」

QB「危険と隣り合わせの魔法少女に付き添うモノとしては、極めて合理的なつくりだと思うよ」

マミ「やめて!」 ガバッ!!

QB「……」

マミ「……そんな言い方、やめて。自分を使い捨ての道具みたいに言わないで」

QB「……」

QB「しかしね、マミ。それが僕ら、契約の獣の在り方なんだ。否定されても困るよ」

マミ「っ……」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:16:45.41 ID:pSU8VOl9o

マミ「……ごめんなさい」

QB「いや、責めてるわけじゃないんだ」

マミ「……」

QB「むしろ、僕こそすまなかった。言いたかったことと少しずれてしまったよ」

マミ「言いたかったこと……?」

QB「僕では恋愛相談には乗れない、ということさ」

マミ「……」

マミ「ハァ……」

マミ「あぁ、もぅ……………………どぅしよぅかなぁ……」

QB「迷っているね」

マミ「……そういうわけじゃないわ。ただ……どう言って断るかなって……それだけよ」

QB「断るのかい?」

マミ「……ええ」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:19:16.58 ID:pSU8VOl9o

QB「どうして?」

マミ「どうしてって……私、魔法少女なのよ? 恋人なんか、作れるわけないじゃない……」

QB「いや、そんなことはないよ」

マミ「……え?」

QB「魔法少女と恋人付き合いの両立は、確かに難しいようだけど、決して不可能ではないはずだよ。
   実際にそれをなした、あるいはなしている子の例はいくらでもある」

QB「異性との出会いや、意中の相手との交際や結婚を契約の対価にした子も大勢いるしね」

マミ「……」

QB「もちろん、君と同じ考えの子も同じぐらいいるから、どちらが正しいという話でもないけど」

マミ「……」

マミ「……その子たちは……」

QB「うん?」

マミ「その子たちは、幸せになれたの……?」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:20:38.16 ID:pSU8VOl9o

QB「……」

QB「何をもって幸せとするかは人それぞれだけど……」

マミ「……」

QB「当人が思い描いた 『幸せ』 を掴んだ子も、ちゃんといるよ」

マミ「そう……」

QB「……」

マミ「……好きな人が、できて、」

QB「うん?」

マミ「恋人になって、結婚して……子供を産んで、家庭を築いた……そんな魔法少女は、いるの?」

QB「ああ、いたよ」

マミ「……」

マミ「……過去形なのね」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:22:07.37 ID:pSU8VOl9o

QB「……。それは、」

マミ「いいの。わかってる」

QB「……」

マミ「おなかに赤ちゃんを宿しながら勝てるほど、魔女との戦いは甘くなんてない」

マミ「少なくとも私にそんな真似ができるとは思えない。わかってるわ」

QB「……」

QB「僕を恨んでいるかい?」

マミ「どうかしらね」 クス

QB「……」

マミ「……冗談よ」




78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/15(日) 19:23:41.14 ID:pSU8VOl9o



モブAとモブBがそれぞれA子、B子にランクアップしました
だからどうした!


とうわけで四話目終了です
ラブレターの結末は次回へ持ち越し(あるいはどうせ断るに決まってるので省略)

子持ちの魔法少女はアレね、公式でいるよね、クのつく人
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 19:26:11.33 ID:iLKnoeopo
お疲れ様でした。
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/05/15(日) 21:14:53.46 ID:2jtV+Zrbo
乙っちまどまど!
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/15(日) 22:19:06.21 ID:hU52+CpJo
乙 マミさん切ねぇ
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/15(日) 22:36:21.21 ID:xiRtHMabo
乙乙
たまにこういう日常が挟まってるSSを見ると和むな
でも本編中に出てきた別の時代の魔法少女って有名人本人とは明言されてない気がするから
単に「古代エジプトっぽい人」「古代日本っぽい人」「異端審問に掛けられて火炙りにされた人」
でしかないって可能性もあるよな
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/15(日) 23:13:39.56 ID:3bOisAE2o


有史以来魔法少女を作ってきたんだからいろんな人がいただろうなあ
QBの言ってるように幸せを掴んで魔女化するまえに殺された奴もいただろうし
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/15(日) 23:15:32.64 ID:3bOisAE2o


有史以来魔法少女を作ってきたんだからいろんな人がいただろうなあ
QBの言ってるように幸せを掴んで魔女化するまえに殺された奴もいただろうし
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/15(日) 23:18:22.34 ID:3bOisAE2o


有史以来魔法少女を作ってきたんだからいろんな人がいただろうなあ
QBの言ってるように幸せを掴んで魔女化するまえに殺された奴もいただろうし
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/15(日) 23:24:00.96 ID:eQBs13vno
ID:3bOisAE2o


どんなに書き込みが遅くても連押しはダメ、ゼッタイ
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/15(日) 23:27:17.71 ID:Y6cjXURTP
大事なことも三度まで
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/05/15(日) 23:35:29.55 ID:V8sJuKAVo

魔法少女って子供埋めるのかねそういえば
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/15(日) 23:56:23.81 ID:3bOisAE2o
やっちまった
反省する
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:05:00.46 ID:a78uVSfzo

第五話

今回は戦闘シーンとかあるので字の文はいります
あと、今回出てくる使い魔と魔女(こっちは次回)はオリジナルです
あと、技名のイタリア語は語感重視で意味はわりと適当です
あと、今回も紅茶飲んでません

そんじゃスタート
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:06:24.95 ID:a78uVSfzo



   何が起きたのか、わからなかった。

   ただ、熱くて、狭くて身動きが取れなくて、そして痛かったことを覚えている。
   何かが破裂する音を耳元で聞いた。

   何も考えられなかった。

   ただ、熱いのがイヤで、狭いのも動けないのもイヤで、何より痛いのがイヤだった。

   それでも何も考えられずに、私はただ叫んでいた。

   助けて。

   助けて。

   助けて、と。

   そして、




















   《――それが君の願いだね?》



   そして私は、天使の声を聞いた。





92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:08:01.94 ID:a78uVSfzo





   第五話  鋏とリボン 前編





93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:09:13.68 ID:a78uVSfzo



マミ「ごめんなさい」

少年「……そ、か」

マミ「…………ごめんなさい」

少年「いいよ。……いいんだ。こっちこそごめん。時間取らせて、悪かった」

マミ「……」







マミ「はぁ……」

マミ「…………ちょっと、格好いい人だったな……優しそうだったし……」

QB「そう思うなら受ければよかったのに」

マミ「っ!?」 ビクッ

マミ「のぞ――」

マミ《……覗きなんて、趣味が悪いわよ》
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:10:30.82 ID:a78uVSfzo

QB「それは悪かった。君の選択を見てみたくてね」

マミ《興味本位ってことじゃないの、それ》

QB「そうとも言うかな」

マミ《まったく……》

QB「ところで、どうして断ったのか聞いてもいいかい?」

マミ「……」

マミ《だめ》

QB「それは残念」

マミ《あなたがもう少し大人になったら教えてあげるわ》

QB「……。一応、君よりだいぶ年上なんだけどね」




95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:11:37.95 ID:a78uVSfzo

マミ《それじゃあ、行きましょうか》

QB「パトロールかい? こんな日ぐらい、休んでもよさそうなものなのに」

マミ《下手な気を使わなくていいの》

QB「加減が難しいなぁ」

マミ《そういうこと言うのはもっと駄目》

QB「……」

マミ《……まぁ、先にお買い物を済ませて、一旦帰るぐらいなら、いいかな》

QB「そうだね」




96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:12:52.41 ID:a78uVSfzo





マミ「……使い魔が二匹、か」

QB「今日も外れだったね」

マミ「小さいけど当たりよ。誰も襲わせずにすんだんだから」

QB「そうだったね」

マミ「……帰りましょうか」




97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:14:41.85 ID:a78uVSfzo





マミ「……今日も使い魔だけ、か……」

QB「昨日やこの間と同じやつだね」

マミ「やりにくいったらなかったわ……刃物の身体なんて、相性最悪じゃない」

QB「確かに、リボンではね。まるでジャンケンだ」

マミ「どうにかしたいところね……」

QB「難しいよ。一度固定された能力を変更するのは」

QB「気持ちはわかるけどね。君の魔法は、威力の高さを差し引いても燃費が悪すぎる。
   これまでどうにかなっていたのは、はっきりいって、元々の素質と運に恵まれたおかげだ」

マミ「……」

QB「そろそろ厳しいんじゃないかい? ソウルジェム」

マミ「……そうね」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:16:48.53 ID:a78uVSfzo

QB「だから少しはペース配分を考えて……と言ったところで、君は聞き入れてはくれないか」

マミ「……」

マミ「……ええ、そうね。聞き入れないわ」

マミ「妥協はしない。絶対に緩めない」

QB「フゥ……」

マミ「まったく、本当にキュウべえはいつまでたっても女心を理解しないんだから」

QB「少しは理解できてるつもりなんだけどな」

マミ「ぜんぜんダメ。逆効果よ、そんなこと言われたら。余計に意固地になっちゃうじゃない」

QB「そうだね。君はそういう子だ」

マミ「何よ、偉そうに」 クスッ
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:18:10.08 ID:a78uVSfzo

マミ「……けど、確かに少し、焦りを感じるわね」

QB「無理もない。むしろそれが普通だよ」

マミ「次か、その次の魔女がグリフシードを落とさなかったら……私もいよいよ引退、かな」

QB「……」

QB「そうだね。君とはずいぶん長かったけど、そろそろお別れかも知れない」

マミ「……」

QB「……」

マミ「……ねえ、キュウべえ」

QB「なんだい、マミ?」

マミ「もしそうなっても、私のこと、ちゃんと覚えていてくれる?」

QB「もちろんさ。
   君だけじゃない。今までに契約した魔法少女のことは、僕は全部覚えているよ」

マミ「そう……」

マミ「……だったら、怖がることは何もないわね」

QB「……」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:19:25.73 ID:a78uVSfzo





QB「……………………」





101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:21:10.48 ID:a78uVSfzo

QB「ねえ、マミ」

マミ「ん……なぁに、キュウべえ?」

QB「実は、僕はまだ、君に言ってないことがあるんだ」

マミ「……なにかしら」

QB「ソウルジェムが濁り切ってしまったときのことさ」

マミ「……」

マミ「……どうして、今それを?」

QB「終わりが近付いていることを先に示唆したのは君だよ」

マミ「……」

QB「君は、ソウルジェムの性質と、これが魔法少女の力の源であるという事実から、
   『濁り切ると魔法が使えなくなる』 と解釈しているよね。
   僕はこれまで、その誤りをあえて看過してきたけれど、今ここで訂正しよう」

マミ「……待って」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:22:51.94 ID:a78uVSfzo

QB「だめだ。最後まで聞いてくれ」

マミ「違うの! これを見て!」



   ポゥ…



QB「これは……」

マミ「ソウルジェムが反応している……しかもこのパターンは、間違いないわ。
   この間から出現している使い魔たちの親玉よ」

QB「……」

マミ「向こうね……行くわよ、キュウべえ!」 ダダッ

QB「やれやれ、なんてタイミングだ」 タタタッ




103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:24:32.14 ID:a78uVSfzo


   ポゥ… ポゥ… ポゥ…


マミ「廃ビル……ここね」

QB「これは……」

マミ「どうしたの?」

QB「人間においだ。それも複数」

マミ「……! 急ぐわよ!」




104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:26:51.78 ID:a78uVSfzo


        ◆


   『キィー』
   『キキー』

マミ「急いでるっていうのに……」

   結界に入るなり、使い魔の群れに行く手を阻まれた。
   その姿は刃物。
   ハサミにナイフ、包丁、カッター、鉈にカミソリ、のこぎり、さらには日本刀まで。
   さまざまな刃物を束ねたような体を揺らし、細い二本の足でひょこひょこと歩み寄ってくる。

マミ「悪いけど、道を空けてもらうわよ!」

   魔力を練り、リボンを形成。
   群れの中心に向けて解き放つ。

マミ「――拘束〈レゴ〉!」

   数匹をまとめて縛り上げる。
   いつもならこのまま振り回して、別の群れにぶつけるところだけれど、
   刃物が相手ではそうもいかない。
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:28:39.85 ID:a78uVSfzo

   だからすかさず魔力を流し込み、

マミ「――点火〈フォーコ〉!」

   瞬間。
   バァンと破裂音が鳴り響く。
   リボンの先端が爆発し、使い魔たちを木っ端みじんに打ち砕いた。

   が、安心するのはまだ早い。
   まだ十分に長さの残るリボンを手放し、さらに跳躍して距離をとる。
   なぜなら、

   ――カッ!

   バババババババババババババババババババババババババババンッ!!

   先端から根元まで、全て弾け切るまで爆発は止まらないから。



   これが私の武装。爆ぜるリボン――〈ナストロ・ヴルカーノ〉。



   もちろん、余りも無駄にはしない。
   跳ぶ方向と手放すタイミングを計算すれば、他の標的もちゃんと爆発に巻き込めるのだ。
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:30:15.42 ID:a78uVSfzo

   そして、展開と拘束、点火と離脱を二回ほど繰り返したころには、敵は一掃されていた。

QB「お見事」

マミ「ふぅ……キュウべえ、捕えられた人たちは、どっち?」

QB「向こうだ」

   相棒が鼻先で示した方角に目を凝らす。
   洞窟の中を思わせる結界は薄暗く、遠くまでは見渡せないけど、言われてみると確かに
   そちらから何か聞こえてくる気がした。

   キュウべえを肩に乗せ、駆ける。



QB「それにしても……どうしてリボンなんだろうね?」

マミ「え?」

QB「君の武器さ」

マミ「……何よ、今さら」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:31:41.37 ID:a78uVSfzo

QB「いや、前々から疑問ではあったんだけどね」

QB「縛り付け、自由を奪った上で焼き殺す――その “手順” については理解できる。
   契約したときの状況を考えればね。
   あのとき君が抱いていた “死” のイメージは、まさにそれだっただろう?」

マミ「……」

   契約したとき。初めてこの子と出会ったとき。
   もう三年ほど前になるか。
   家族で出かけたドライブの途中、大規模な交通事故に巻き込まれた。
   両親は即死。
   辛うじて生きていた私も、シートに挟まれ身動きが取れず、炎に巻かれようとしていた。
   死ぬんだな、と思った。

   死にたくない、と思った。

QB「だけどどうして、リボンなんだろうね?」

マミ「キュウべえ」

QB「なんだい?」

マミ「あなたって、たまにひどく無神経だわ」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:33:07.48 ID:a78uVSfzo

QB「……。気に障ったかい?」

マミ「ええ、とっても……――拘束〈レゴ〉!」

   『キギッ!?』
   『ギィー!!』

   道すがらにいた使い魔を絡め捕る。
   跳びこしざまに点火。爆風を背に受け、加速に充てる。

QB「それは悪かったね」

マミ「別にいいわよ。それより方向は?」

QB「……。左手だよ」

マミ「よし」

   行く先からの物音が大きくなってきている。

マミ(いえ、これは……獣の吠え声のような……)

   心に浮かんだわずかな疑問は、カーブを抜けて開けた場所に出たところで、解けた。
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:34:41.28 ID:a78uVSfzo



   「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

   「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!」

   「きえええええええええええええええええええええええええええええ!!」



マミ「なっ……!?」

   獣ではなく、人間だった。
   だけどその有様は、まるで獣のようだった。

QB「これは……人間同士で殺し合っているのか……?」

   叫び声とよだれを撒き散らし、理性を失った瞳で、凶器を手にして、互いに互いを傷付け合う人びと。
   その数は六人。
   大人の男性が三人。
   若い女性が二人。
   そして、

QB「……みんな魔女の口づけを受けてる。凶暴性か攻撃性を引き出されているようだ」

   私と同い年ぐらいの――いや、同い年の少年が、一人。
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:36:16.97 ID:a78uVSfzo

マミ「うそ……」

QB「マミ? 何をやっているんだ。早く止めないと」

   キュウべえの声も半ば頭に入らない。
   目の前の光景が信じられず、だから逆に目が離せなくなっていた。

マミ「……」

QB「マミ! どうしたんだ!」

マミ「……」

QB「一体何を見て…………あ」



少年「ああああっ! うおあああっ! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」



QB「あれは……君が振った、例の少年じゃないか」

マミ「っ……!」

   本当に。
   この子はたまに、ひどく無神経だ。





111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/19(木) 19:36:54.90 ID:a78uVSfzo

つづく!


あーやっぱアクション入れると長くなるなー

マミさんの武器が原作と違うけど気にしないでね
後編で調整するから
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/19(木) 19:50:52.47 ID:ZhZpMDOjo
一体何を企んでいるんだ、QB
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/19(木) 23:51:02.71 ID:zsv0cJPjo


QBさん、とどめを刺そうとしたのか?
あぶねー獣だな
でも自分が振った相手が魔女の口づけ受けてるとかも結構クルだろうな
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/19(木) 23:54:41.65 ID:bJ6yqMTwo
乙!
あーマミさんは可愛いなぁもう
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/20(金) 01:31:34.46 ID:HG0b+cbt0
爆発するリボン=燃え上がる車の中で焼かれる記憶――その反転/イメージカラー=黄色/生きるため→『戦力』となった少女
ひとつの連想>マミ「ボクをいじめないでーーっ!!」

116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 13:55:27.21 ID:paFekokho

>>115
ごめん元ネタわかんない


はい、1です
誰だよSSWikiの粗筋にに「ほのぼのSS」とか書いたの
すんげえ投下しにくいじゃねえか
するけど

第六話、後編いきます
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 13:57:28.61 ID:paFekokho



   キュウべえは、たまにひどく無神経なことを言う。

   『どれだって同じだろう?』
   『どうしてそんなことを気にするんだい?』
   『わけがわからないよ』

   そんな言葉を聞くたびに、腹が立ったり、白けたり、悲しい気持ちになったりする。
   私はこの子と、本当に心を通わせられているのかと、不安になる。

   だけど、今回は、



QB「あれは……君が振った、例の少年じゃないか」



   その無神経さに救われた。


118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 13:58:11.45 ID:paFekokho





   第六話  鋏とリボン 後編





119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 13:59:38.44 ID:paFekokho

   気配を追って飛び込んだ結界の中で見た光景。
   それは魔女に魅入られ正気を失い、凶器を手にして互いに殺し合う六人の男女の姿だった。
   その中の一人は、確かに、
   終業式の前日に、私にラブレターをくれた、あの少年だった。

マミ「っ……!」

   そんな受け入れがたい現実を、時間差で突き付けられたことによって、
   私は辛うじて我に返ることができた。



マミ「――拘束〈レゴ〉!」



   瞬時の判断で魔力を構築。
   左手から無数のリボンを解き放ち、暴れる彼らを縛りつけ、抑え込む。

マミ「はっ!」

   同時に一足で彼らとの距離を詰め、全員に素早く当て身を食らわせ昏倒させると、
   私は慎重にリボンをほどいた。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:01:09.79 ID:paFekokho

   倒れこむ六人。

   一拍遅れて、冷や汗が流れた。

マミ「ハァ……」

   爆ぜるリボン。
   私の唯一の武装。魔女を殺すための凶器。
   他に方法がなかったとはいえ、こんなものを人間に巻きつけるなんて、正気の沙汰じゃない。

マミ「――いえ。今はそれよりも治療を……、……?」

   呟きつつ、一歩彼らに歩み寄りかけ、奇妙なことに気がついた。
   みんな完全に気を失っているはずなのに、それぞれの凶器を持った腕だけが、
   痙攣するように動き続けている。

マミ「これは……」

QB「使い魔だ」

   足元から、キュウべえの声。

QB「彼らの手にしている刃物、これ、魔女の使い魔だよ。ばらけて単一の刃物になっているけど、
   まだ生きているみたいだね」

マミ「なんですって……!?」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:03:23.03 ID:paFekokho

   それは、つまり。
   意図的だというのか。
   ただ狂気を垂れ流しているのではなく、人間同士が殺し合う状況を、わざと作り上げていると。

マミ「……許せない!」

   食いしばった歯の隙間から呻きが漏れた。

   ――同じタイミングで、背後で巨大な気配が持ち上がる。

マミ「出たわね……」

   振りかえる。
   蟹――そう見えた。
   だけどよく見るとだいぶ違う。
   二メートルはある巨大な鋏が、全部で三つ。それがウニのような刺だらけの胴体から生えている。
   鋏の魔女、といったところか。嫌な感じだ。

   『……』

   目が合った。

   そう、直感した。
   一見したところどこにも目玉などついていないのに、舐め回すような視線を感じた。

   やはりこいつは、観ている。
   私を、キュウべえを、そして倒れている人たちを。

   早く殺し合いを再開しないかと、期待に満ちた目で見つめてきている。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:04:55.13 ID:paFekokho

   つまり、すぐに襲ってくるつもりはない、ということか。
   なら先にこっちを済ませよう。

   倒れている人たちに向き直る。
   みんな出血がひどい。ギリギリだ。
   その身体に直接魔力を流し込み、止血し、傷をふさぎ、さらに血を補う。
   治癒魔法。
   癒しの祈りをもって契約した私が、最も得意とする術だ。
   心理的なトリガーとしての呪文すら必要としない。

少年「――」

マミ「……」



   『――こっちこそごめん。時間取らせて、悪かった』

   『ああああっ! うおあああっ! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』



マミ「っ……」   
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:06:45.73 ID:paFekokho

   全員、全快の数歩手前ぐらいまで癒したところで、ひとまず止める。
   あとは終わってからでいいだろう。

マミ「……待たせたわね。でも、もうショウは終わりよ」

   リボンを伸ばし、倒れている人たちの持つ凶器――使い魔の残骸に巻きつけ、奪い取る。
   そのまま一つに束ねて、魔女へと投げる。

   点火。そし爆破。

   『ヂイイイイイイイイイイイイイイイイイイ――!?』

   魔女が大げさな悲鳴を上げる。
   そう、大げさだ。見たところ大したダメージはない。驚いただけなのだろう。

   なるほど、それはそうだ。

   容易に想像がつく。
   この魔女にとって “攻撃” とは、他者が別の他者に向けるものでしかなかったはずだ。
   自身はただそれを眺めるだけ。

   だけど、それも今日まで。

マミ「思い知りなさい。あなたが今までしてきたことを」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:08:00.23 ID:paFekokho

   リボンを放つ。
   ねらうのは鋏。
   あの無数に生えている刺もどうやら刃物のようだから、きっと簡単に切り裂かれてしまう。
   そもそも胴体は大きすぎて縛るだけでも一苦労だ。

   だから突き出た鋏をねらう。
   胴体との接続部分に巻きつけて、

マミ「点火〈フォーコ〉!」

   爆破で、もぎ取る。

  『ヂギャ!?』

   すかさず別の一本で、噛み合わされた刃を絡め取り、振り回し――突き刺した!



  『ヂャァアアアアァァァァアアアアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』



   よし。
   さすがにこれは手ごたえあり。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:09:41.18 ID:paFekokho

   魔女は奇声を撒き散らし、巨体を揺らしてのたうちまわる。
   表層からいくつもの刺が抜け落ちて……

マミ「――違う?」

   あの刺は、やはり刃物で、しかしただの刃物ではなかった。
   使い魔だ。

   産み落としたのか、鎧代わりに纏っていたのか、どちらかは知らないけれど。
   ぽろぽろと零れ落ちたそいつら “だけ” がこちらに向かってくる。

マミ「……」

   不快感に顔がゆがむ。
   どうやらこの魔女は、この期に及んでも自分が戦う気はないらしい。

   が、そんなことを気にしている場合でもない。
   リボンの防壁を展開し、跳びかかってくる使い魔の何割かを弾き、残りを絡め取る。
   投げ返し、点火。

   爆発。爆発。爆発。――不発。爆発。不発。

  『ヂュィィィィィィイイイイイイイィィィィィィィィィィイイイイイイイイイィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイィィィィ!!!』

   悲鳴を上げて魔女がもだえる。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:11:12.65 ID:paFekokho

   だけど、やはり大して効いていない。
   私のリボンは途中で断ち切られると魔力を注げないため、何発かは不発に終わってしまった。
   そもそも一発あたりの効きが弱い。
   当たったら当たったで新たな使い魔が次々と生み出されるし、はっきりいって切りがない。

   もっと強力な一撃が欲しい。
   しかし私の武器はこれだけだ。鋏ねらいも、警戒されてしまって上手くいかない。

   どうすれば……



QB「――マミ! 危ない!」



マミ「え――」



   ――――ズバッ!


127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:12:31.23 ID:paFekokho

マミ「っ!!」

   キュウべえの声とほとんど同時に、背後から切りつけられた。

   衝撃で前方に転がされながら、反射的に傷の具合を探る。
   右肩。
   そう深くはない。
   瞬時に治癒の魔力を巡らせて止血。

   けど、一体いつの間に後ろに――――

マミ「――えっ!?」

   顔を上げて、瞬間、思考が止まった。

   倒れていた人たちが起き上がっていた。

   虚ろな目をして、手に手に武器を――魔女の使い魔を持たされて。

   彼らに、斬られたのだ。



マミ「っっっ……!!」



   止まった思考が、一気に沸騰した。
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:14:09.31 ID:paFekokho

   この魔女は。
   この魔女は、どこまで。

   どこまで人を弄べば気が済むのか。



マミ「――拘束〈レゴ〉!!」

   再び、彼らをリボンで拘束。
   爆発物で人を縛る。やはり、凶器の沙汰だが、要は点火さえしなければそれでいいのだ。
   そんなふうに割り切ることも、今ならできた。

マミ「許さない……」

   こんな気持ちで敵を見るのは初めてだ。
   こんなにも魔女を憎いと思うなんて、初めてだ。

   呪いから生み出され、自らもまた人を呪うことしかできない “彼女たち” のことは、
   むしろ憐みの対象だった。
   それはこの魔女に対しても例外ではない。

   だけど、これはだめだ。
   こんな呪い方は、絶対にだめだ。

マミ「あなただけは――絶対に許さない!」


129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:15:53.61 ID:paFekokho

マミ「……キュウべえ、下がってて」

QB「マミ? 何をする気だい?」

マミ「いいから、できるだけ離れていて。上手くいく自信はないの」

   言い捨て、こちらからも距離をとる。
   血止めの魔法を全身に巡らせる。
   こうすればいくら斬られても致命的な出血は避けられる。この際、使い魔は無視だ。

   目を閉じる。

   魔力を練り、リボンを形成。
   だけどこれでは足りない。だけど私にはこれしかない。

   ならば答えは一つ。

   一本で足りなければ二本。二本でもだめなら、五本。
   それでも及ばないなら、十本。二十本。五十本――百本。必要なだけ紡ぎ出す。

   そして束ねる。

   束ねる、束ねる、束ねる。束ねる。
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:17:24.09 ID:paFekokho

   重要なのはイメージだ。
   破壊の力を一点に凝縮し、無駄に拡散させることなく一方向にのみ解き放つ。

   そのために必要なのは、道。
   エネルギーに指向性を与えるための、逃げ場のない通り道。

   薄いリボンを幾重にも重ね、螺旋状に巻きあげて、鋼の硬度を実現させる。

   それを、前へと、敵へと伸ばす。
   逆に、力の起点は手前に集める。

   

QB「マミ、それは……」

   キュウべえの珍しい――本当に珍しい、驚きに上ずった声。
   それを聞いて、私は成功を確信した。

   目を開く。

   はたしてそれは、顕現していた。

   破壊の権化。
   重厚にして長大な、超広口径の、マスケットライフルが。
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:18:39.13 ID:paFekokho

   『――ヂュイィ!?』

   異変を察知したのか、魔女が悲鳴を上げる。
   だけどもう遅い。
   今さら逃げても間に合わない。

   『ギッ!?』
   『ギキキ!!』
   『ギィー!!』

   使い魔たちが、主を守るべく、折り重なって防壁を築く。
   だけど、足りない。
   その程度の壁では防げない。

   照準、セット。

   醜悪な鋏の魔女。
   感謝する。
   あなたがいたから実現できた。
   これが私の新しい力。

   食らいなさい。

   至高の一撃。



マミ「――――〈 ティロ ・ フィナーレ 〉!!」









132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 14:18:43.68 ID:YdeQKdTBo
トライアルマミさん



他の作品ならOP流したくなる展開だな
コネクトはちょっと戦闘には合わないだろうなぁ
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:19:36.44 ID:paFekokho



QB「……驚いた」

QB「本当に、驚いたよ。マミ」

QB「君はまだ伸びるというのか」

QB「通常、一年ももてば長生きと呼ばれる魔法少女の世界の中で、その三倍近くを
   生き延びているだけでも稀有だというのに」

QB「君は、その上さらに成長を遂げたというのか」

QB「……」

QB「おもしろい」

QB「実に興味深い」

QB「さっきは終わりが近いなんて言ったけど、撤回しよう」

QB「君とはまだもう少しだけ、長い付き合いになりそうだよ。巴マミ」


134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:20:37.69 ID:paFekokho














135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:22:27.05 ID:paFekokho


        ◆


マミ「おはよう」

A子「おはよー。ねえ、登校日とか死ねって思わない?」

B子「朝から何言ってるの。――おはよう、巴さん」

A子「だってなんで夏休みに学校なんか来なきゃなんないのさー…………お?」

B子「え? ……あ」

   ガヤガヤ
   ワイワイ
   キャッキャ
   テレテレ

A子「おお、英雄殿のご登校だ」

マミ「……英雄?」

A子「あれ? 巴さん、知らない? なんかチンピラから女の人を助けたんだって、あの男子」

マミ「ああ……あの噂ね」

B子「しかも三対一だって。勇気あるよね」

A子「絡まれてた女の人二人も加勢したって話だけどね。ま、それでも凄いか」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:23:53.33 ID:paFekokho

マミ「……」

A子「ってかさ、これも噂で聞いたんだけどさ。彼って、例の、巴さんに……の人だ、って……」

マミ「…………ええ、まぁ」

B子「ええっ? 本当だったんだ……」

A子「うわーやっぱりかー! 受けてりゃ今ごろお姫様だよ、もったいない!
   てか今からでもOKしてきなよ! 向こうも絶対期待してるって! 英雄ゲットできるって!」

マミ「……ううん、やめておくわ。今さらそんなみっともないことできないもの」

A子「ええー? もったいないと思うけどなぁ……」

B子「うん。私だったらたぶん未練持っちゃうなぁ」

A子「実際あんたは彼氏とヨリ戻したもんね。ケッ」

マミ「ふふっ」



少年「――本当に、よく覚えてないんだよ。でも、ありがとう。ははは」



マミ(……もう、大丈夫よね……)




137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:26:35.69 ID:paFekokho

以上
甘酸っぱい恋の物語と見せかけたティロ・フィナーレ誕生秘話でした
見せかける必要あったのか?

なんていうかですね、
もはや完全にネタと化している『ティロ・フィナーレ』を、どうにか格好よく描きたかったんですよ
だってお前らだって思ったはずだ
スゲェって、カッコイイって、二話を見たときは思ったはずだ! 違うか!? 違ったらごめん!



最後に私的魔女図鑑



 −−−−−

鋏の魔女。

その性質は惰弱。
苦痛や困難を何より恐れ、それゆえに、無関係な他者同士の争いを好む。
眺めているだけなら自分が傷つくことは決してないから。
閉じ合わされた鋏は二度と開くことなく、もはや重りでしかない。
きっと生前は、他人の痛みを進んで引き受ける心優しい魔法少女だった。

鋏の魔女の手下。その役割は凶器。
触れた人間の攻撃衝動を引き出し、自らが武器となることで争いを助長する。
刃物としての切れ味は、あまり良くはない。

 −−−−−



我ながら悪趣味だと思う
では、また次回
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 14:27:13.72 ID:YdeQKdTBo
乙でした
やっぱマミさんかっけぇ

ところでSSwikiってなんでしょう?
よろしければURLを貼っていただきたいのですが
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 14:27:41.77 ID:jDG7y5RDo
お疲れ様でした。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/22(日) 14:29:45.33 ID:paFekokho

ありがと

>>138
これ
http://ss.vip2ch.com/ss/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/22(日) 14:30:15.68 ID:YdeQKdTBo
>>140
ありがとうございます
こんなんあったんすね……
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/22(日) 14:34:49.28 ID:PlxPXK4no
乙ー
面白かった!
マミさんかわいいよマミさんぅぅ!
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 02:08:58.60 ID:lgTHMjXQ0
二話を見たときは? 今でもかっこいいと思ってるぜ!
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/23(月) 08:04:45.38 ID:JNK/MEvIO
乙ー

あれマミさんとQBの甘酸っぱい恋の話では無かったのか…
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/24(火) 00:25:21.43 ID:ZNASht+go


え、ティロ・フィナーレは格好いいだろ。
何言ってんの?

マミさんは「正義の魔法少女」たらんとしてる人だからこういう魔女は癇に障るだろうなあ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/24(火) 17:03:17.81 ID:S5GgTLuIO
乙っちまどまど!
マミさんのセンスはガチやで
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:20:43.90 ID:mDBv0ahqo

第七話行きます

なんかまた前回までの続きっぽくなっちゃった
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:21:31.50 ID:mDBv0ahqo



マミ「――点火〈フォーコ〉!」

QB「……」

マミ「……」

QB「爆発しないね」

マミ「というか、マスケットになっちゃったわ。魔力を込めたら」

QB「ふむ……」

マミ「……」

   バン!

   ……カチッ。カチ、カチッ。

マミ「で、一発しか撃てない、と。結局使い捨てなのね」

QB「マスケット銃というのは本来そういうものらしいね。さすがに本体ごと捨てはしないだろうけど」

マミ「うーん……弾丸の再装填もできないみたい」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:22:30.23 ID:mDBv0ahqo

QB「魔力の消費についてはどうだい?」

マミ「そうねぇ…………だいぶ軽くなってる気もするけど、まだよくわからないわ。
   リボンのときは長さによってまちまちだったから、戦い方次第だと思う」

QB「そうか。なら、戦闘の型を練り直さないといけなくなるね」

マミ「どっちにしろそれは必要よ。使い勝手がまるで違うもの」

   シュイーン

マミ「ふぅ……パワーアップできたと思ったんだけどなぁ。これじゃあ実質的にレベルダウンじゃない」

QB「上手くいかないものだね」

マミ「まったく、ね。……ん?」

   ポツッ

   ポツッ、ポツッ、ポツポツポツポツ…

マミ「あ……」

QB「雨、だね」


150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:23:10.24 ID:mDBv0ahqo





   第七話  雨の日に誓いを立てる




151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:24:10.63 ID:mDBv0ahqo



   ザーーーーーーーー…………………………

マミ「……本降りになってきたわね」

QB「ああ」

マミ「困ったわ。傘なんて持ってきてないし……すぐに止んでくれるかしら?」

QB「……」

QB「無理みたいだよ」

マミ「え?」

QB「雨雲は西の方までずっと続いてる。少なくとも夜までは止みそうにないね」

マミ「……見えるの?」

QB「ああ。――といっても、“この僕” にはもちろん見えないよ。西の方にいる個体から
   情報をもらったのさ」

マミ「……………………そう」

QB「……。君は、そんなにこの話が嫌いかい?」

マミ「そういうわけじゃ……」
152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:25:31.43 ID:mDBv0ahqo

マミ「……あなたたちの在り方を否定する気はないわ。でも、そのことを言うときの
   キュウべえって、自分を使い捨て扱いしてるみたいで……それがイヤなの」

QB「無駄に使い潰すつもりはないさ」

マミ「……必要だったら?」

QB「それが必要なら、そうする」

マミ「……」

マミ「……」 ギュッ

QB「マミ?」

マミ「……」 ギュウ…

QB「マミ。そんなに抱きしめられたら、ちょっと苦しいよ」

マミ「……その『苦しい』って感覚も、他のあなたたちに伝わっているの?」

QB「え? いいや、さすがにそんな細かいことまではやりとりしてないよ」

マミ「そう……」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:26:38.66 ID:mDBv0ahqo

QB「……。君がそうしてほしいというのなら、他の僕らにも伝えるけど」

マミ「やめて」

QB「わかった。まぁ、そんなことをしても意味があるとは思えないしね」

マミ「ええ。少なくとも私は、嬉しくはないわ」

QB「そうかい」

マミ「あなた一人が知っていてくれれば、それでいいの」

QB「……。よく理解できないけど、君がそれでいいのなら」

マミ「ええ。そうして」

QB「……」

マミ「……」



154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:27:24.78 ID:mDBv0ahqo



   ザーーーーーーーー…………………………

マミ「……本当に、止む気配がないわね」

QB「そうだね」

マミ「どうしよう……」

QB「僕としては、走って帰って、それから身体を温め直すことをおすすめするよ」

マミ「うーん……」

QB「……」

マミ「……」

マミ「あ、そうだわ」 ピコン

マミ「――変身!」

   シュイーン、キラッ

QB「? 何をする気だい?」

マミ「まぁ見てて」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:28:11.94 ID:mDBv0ahqo

マミ(……イメージ……)

マミ(……中心に鉄の棒……芯に据えて……骨組みを伸ばして……リボンを張る……!)

   ――パッ

マミ「できたわっ」

QB「へぇ……これは、傘、かい?」

マミ「ええ! ……ちょっと、不格好だけど」

QB「……不格好、というか」

マミ「……」

QB「柄の部分がマスケット銃そのままだね」

マミ「い、いいじゃない」

マミ「――ほら、ちゃんと雨も防げるし」

QB「引き金に指をかけたら危ないんじゃないかな」

マミ「だ、大丈夫よ。気をつけるから」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:29:02.87 ID:mDBv0ahqo

マミ「それじゃ、行きましょ」

QB「え?」

マミ「え?」

QB「いや、その格好のまま街中を歩く気なのかい?」

マミ「あ……」

QB「……」

マミ「へ、変身解除っ」 シュイーン

マミ「よ、よしこれで」



   ザーーーーーーーー…………………………



マミ「……」

QB「……まあ、そりゃ、消えるよね。傘も」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:30:02.99 ID:mDBv0ahqo

マミ「うぅっ……」

QB「しかし、これは……ふーむ……」

マミ「何よ。言いたいことがあるならはっきり言ってよ」

QB「ああ。どうやらマミの魔法は、進化や成長を遂げたというのではなく、ようやくあるべき形に
   完成した、ということなのではないか、と」

マミ「え? えっと……どういうこと?」

QB「リボンのまま点火しようとしても、銃以外のものを作ろうとしても銃になるということは、
   つまりそれがマミの中に眠っていた力の本来の形だということさ」

QB「君たちが使える魔法の種類は、大きく分けて三つ。
   攻撃魔法と、防御魔法。そして治癒や身体強化などの補助魔法」

QB「この三つは、それぞれ異なる形をとって表われるのがほとんどだ。
   だけど君は、攻撃も防御も、まったく同じリボンで行っていた。
   攻防一体型――前例もいくらかいるから、てっきり君もそうだと思っていたんだけど……」

マミ「そうではなかった、と?」

QB「恐らくね。まだ仮説だけど、君は防御魔法を無理やり攻撃に転用していたんじゃないかな。
   魔力を暴走させることによってね。そう考えれば、あの燃費の悪さにも納得がいく」
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:31:04.62 ID:mDBv0ahqo

マミ「つまり……私は、今さらようやくスタート地点に立った、ということ?」

QB「そういうう言い方もできるだろうね。
   でも逆に、スタート地点に立つことすらなく、合わせて数百体もの魔女や使い魔と戦い、
   勝利し続けてきた、とも言える」

マミ「……」

QB「素直に称賛に値すると僕は思うよ」

マミ「そう、なのかな……」

QB「ああ、自信を持っていい。
   君は、以前からかなりの強さを誇る魔法少女だったけど、こうして本来の力を手にした今、
   これからの努力次第では、歴代――とまでは行かなくても、現役最強も夢ではないだろう」

マミ「そんな……私は別に……」

QB「それはつまり、誰よりもたくさんの未来を守ることができるようになる、ということでもある。
   これは君が求めていることにも近いんじゃないのかい?」

マミ「……」

マミ「そうね……それは、素敵ね」

QB「ああ。素晴らしいことだ」

マミ「……未来、か……」
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:32:47.44 ID:mDBv0ahqo

マミ「……ねえ、キュウべえ」

QB「なんだい?」

マミ「もし、あの鋏の魔女がグリフシードを落としてなかったら、私はやっぱり、終わってたのよね」

マミ「ソウルジェムが、完全に濁り切って」

QB「……」

マミ「もし、仮に、そうなってたら……キュウべえ、あなた、あの直前に何か言いかけてたわよね?」

QB「……」

マミ「……」

QB「あのとき、ああ言いかけたのは、判断ミスだったと思ってる。
   君の持つ可能性を見誤っていたんだ。もう余計なことは言うべきではないと、今はそう思う」

QB「だけど、君が聞きたいというのなら、話すよ」

マミ「……」

マミ「……いいえ。いいわ、言わなくて」

QB「そうかい」
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:33:52.13 ID:mDBv0ahqo

マミ「実は、だいたいわかってるのよ」

QB「え?」

マミ「本当は、もっとずっと前からね。なんとなく想像はついてたの」

QB「……」

マミ「ヒントは十分にあったわ。
   恋愛感情を理解できないあなたが、どうして恋の祈りで契約できるのか。
   どうして、祈りの内容が魔法少女それぞれの能力に影響を及ぼすのか」

マミ「願いを叶えているのは、契約者自身の魔力なんでしょう?
   あなたはそれを引き出して、扱い方を教えてくれているだけ。違う?」

QB「……。不公平だと、そう言いたいのかな?」

マミ「ううん、そんなことが言いたいんじゃない。あなたには感謝しているわ。ただ……」

QB「ただ?」

マミ「……私の祈りは、延命。魔法の力で生きながらえた」

マミ「そんな私が魔力を使い果たすということは、つまり……ってね」

QB「……」
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:34:46.47 ID:mDBv0ahqo

QB「そうか……」

QB「それが、君の出した答えなんだね」

マミ「恨んではいないわよ。あなたがいなければ、私はとっくの昔にそうなっていたんだもの」

QB「……」

QB「マミ、君は――そう理解した上でなお、戦い続けるというのかい?」

マミ「ええ」

QB「どうして?」

マミ「あら、あなたがさっき言ったことじゃない」

QB「……。何か言ったかな」

マミ「言ったわ。そうすれば、より多くの人の未来を守ることができるって」

QB「……」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:35:41.70 ID:mDBv0ahqo

マミ「……ただ、ね」

QB「なんだい?」

マミ「ええ……ただ、一つだけ、お願いがあるの」

QB「僕にできることなら」

マミ「じゃあ……そのときには、あなたにそばにいてほしい」

QB「……」

QB「ああ、いいよ」

マミ「本当?」

QB「嘘なんか言わないさ。契約の願いはすでに叶えてしまったから、ただの口約束になるけど」

QB「終わりのときは、僕は君のそばにいる。
   君の最後の言葉を聞いて、そして僕からも、君への最後の言葉を贈ろう」

マミ「……ありがとう、キュウべえ」

QB「いいや」

QB「お礼を言うのは、こっちの方さ」




163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:36:27.86 ID:mDBv0ahqo

以上

このあとマミさんは結局走って帰って、キュウべえと一緒にお風呂で温まりました
自分で言っててむぎぎってなるぜ
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/27(金) 21:37:07.39 ID:mDBv0ahqo

あと、







マミ「見て見てキュウべえ! 魔法で紅茶が出せたわ!」

QB「補助魔法……なのかな?」



みたいなことが後日あった的な感じ
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/27(金) 21:48:11.54 ID:wZcVhSEso
乙!
このキュウべえにはマミさんと仲良くなってもらいたいぜと思う反面、
あえて原作通りの外道ってのもなかなか良いな……と思う今日この頃
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/27(金) 21:49:36.51 ID:ntRxBd1Ho
乙カレー空間


良い感じにQB一匹に依存してるから本編通りにマミっちゃいそうな気もするけど……
どうなるかはお楽しみだね
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/05/27(金) 22:21:29.54 ID:glxShxJ/o


マミさん、真実はもっと残酷だよ
しかし貴方が知っていればそれでいい、といわれたQBは原作通りだと……
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/05/27(金) 23:14:15.80 ID:oOsZxi+Do
なにこれ超面白い
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/28(土) 00:02:00.99 ID:/MldVSrto
お疲れ様でした。
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/30(月) 09:03:39.59 ID:pGD8f1uIO
乙っちまどまど!
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 03:46:18.52 ID:TfH4A1QF0

紅茶はあれだよ、補助魔法(家計)
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/05/31(火) 18:43:31.92 ID:ZPeXn5rPo
1です
投下じゃないです
アンケートというかアイデアの募集というか、そんな感じ

まず、今のところ以下を消化済み

・QBとお茶会
・クラスメイトとの絡み
・一般人救出
・QBと買い物
・ラブレターをもらったでござるの巻
・オリジナル魔女
・ティロ・フィナーレ誕生秘話

で、今後やることがほぼ確定してるのが、

・杏子と接触
・オリジナル魔法少女
・初めての魔女退治(契約直後の話)

なんだけど、「マミさんの日常/過去バナ」として、他になんかやることってある?
ひとまず次回の投下まで意見募集
※ちょっと詰まってるので今週末以降になるっぽい
※必ずしも採用するとは限らない
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/05/31(火) 20:34:04.46 ID:TH/qTUJV0
>>172
杏子と接触に一票
マミさんの恋バナとしてはマミさんに助けられた別の少年が魔法少女の事を知りマミさんを慕う様になるとか…
思いつきかつボツネタでスマン
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 20:36:27.44 ID:cXHhSluQ0
マミさんテスト勉強編なんていかが?
QBから見て人類の基礎知識や学習内容がどう映るかでマミさんとの掛け合いをやると面白いかなって
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/05/31(火) 22:17:30.32 ID:JjUimcPto
進路の事で悩んだりするのもいいんじゃない
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/05/31(火) 23:03:18.49 ID:9OmEAsmro
お菓子作りに全力を出してみた
みたいな
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/01(水) 00:00:42.94 ID:K+pT9sxF0
逆転ほーむらん!
テスト勉強で煮詰まっていきなり大量にクッキーを作り出すマミさん

QB「大切な試験の前に何をやっているんだい?まったくわけが分からないよ」

な話とか
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/01(水) 23:51:49.13 ID:ih2Gha6Co
>>173-177
ありがとう

テスト勉強とお菓子作り(という名の現実逃避)、よさそう
使わせてもらいます


まだ募集は続けるので何かあれば言ってみてね
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/02(木) 01:42:34.46 ID:TNW9O0GF0
マミさんロシアンティーに挑戦

マミ「・・・・・・ジャムを入れ過ぎたわ・・・・・・」

QB「きゅっぷい」
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:30:13.56 ID:vr1MJOnKo

思ったより早く整ったので投下!

第八話!
オリキャラが出るよっ!
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:30:53.55 ID:vr1MJOnKo



   カチャリ

マミ「ふぅ……」

QB「……」 モグモグ

マミ「……」

QB「……」 チビチビ

マミ「今夜は……」

QB「うん?」

マミ「……今夜は、月が綺麗ね……」

QB「……。ああ。中秋の名月、というやつだね」

マミ「……こんな日は、思い出すわ。彼女のこと」

QB「彼女というと……“ユリ” のことかい?」

マミ「ええ……あの日もこんなふうに、綺麗な満月だったわね……」


182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:31:24.18 ID:vr1MJOnKo





   第八話  満ちる月





183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:32:03.73 ID:vr1MJOnKo

   ◆
   (一年前)



マミ「これで止め――点火〈フォーコ〉!!」

   バン――ババババババババババババババババババババババババババンッ!!

   『ギュォォォォォ……!!』

   シュウゥゥゥ…

マミ「ふぅ……一丁上がりっと」

QB「お疲れさま。マミももうすっかりベテランだね」

マミ「……そうね、だいぶ慣れてきた気はするわ」

   シュイーン

マミ「あ……もうすっかり夜になっちゃってるのね……」

QB「日が落ちるのが早くなってきたね」

マミ「…………月が綺麗ね……」


184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:33:03.18 ID:vr1MJOnKo

マミ「ねぇ、キュウべえ。この街には本当に、私以外の魔法少女はいないの?」

QB「うーん……そうだね。素質がある、というだけの子なら何人かいるんだけど、
   エントロピーを凌駕するだけの願いを抱いているかとなると、なかなかいないね」

マミ「……どういうこと?」

QB「素質があるだけではだめなんだよ。
   素質、すなわち魔力に火をつけるだけの強い強い願いの力がないと、契約はできないんだ」

QB「飛び抜けて大きな、それこそ歴史に残る聖人クラスの魔力でもあれば話は別だけどね」

マミ「ふぅん……」

QB「だから、マミ。悪いけど、まだしばらくは君一人で――」

QB「……」

マミ「……どうしたの? キュウべえ」

QB「いや、これは……噂をすれば影、というやつなのかな」

マミ「え?」

QB「呼ばれたよ。たぶん、この先の公園だ」

QB「素質と、それに見合う願いを抱いた魂が、現れた」

マミ「……!」


185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:34:03.41 ID:vr1MJOnKo



   キィコ… キィコ…

少女「……」

少女「……ハァ……」

マミ「こんばんは」

少女「え……?」

マミ「お月見ですか? でも、こんな時間に一人だと危ないですよ」

少女「……誰ですか、あなた?」

少女「……ううん、誰でもいい……放っといてください」

QB「そうはいかないよ」

少女「えっ?」

QB「君には悩みが――叶えたい願いがあるはずだ。僕はそれを叶えてあげられる」

少女「え、え? なんですか、それ?」



QB「だから僕と契約して、魔法少女になってよ!」


186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:35:03.22 ID:vr1MJOnKo

少女「……」 ポカーン

マミ「こーら、ダメでしょキュウべえ。もっとちゃんと説明しなさい」 コツン

QB「きゅっ。……痛いよ、マミ」

少女「あ、あの。なんなんですか、ソレ? 生き物? ってゆーか喋ってる……?」

マミ「ごめんなさい、順を追って説明しますね。
   まず、私は巴マミ。市内にある見滝原中学の、一年生です」

少女「え……と、年下?」

マミ「そうみたいですね」 クスッ

マミ「そして、この子はキュウべえ。魔法の国からの使者、みたいなものだと思ってください」

QB「よろしくね」

少女「あ、うん。よろしく……」

マミ「じゃあ、次。あなたは?」

少女「……ユリ、よ。宮古ユリ」

マミ「そう。それじゃあ、宮古さん」

少女「『ユリ』」

マミ「え?」

少女「『ユリ』って、呼んで。私はたぶん、もうすぐ『宮古』じゃなくなるから」

QB「どういうことだい?」

少女「…………両親が、離婚するの」


187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:35:52.82 ID:vr1MJOnKo

マミ「そうですか……お父さんが仕事を……」

ユリ「うん。そのせいで……つい、さっきよ。もう離婚するしかないって、はっきり言われて……
   それで私、思わず、家を飛び出しちゃって……」

QB「なるほど、それをどうにかしたい、というのが君の願いだね?」

ユリ「……」 コクリ

ユリ「私は……離婚なんかして欲しくない!
   お父さんともお母さんとも、お兄ちゃんとも、離れ離れになんかなりたくない!」

マミ「……」

ユリ「ねえ、キュウべえだっけ。あんた、なんでもお願い、叶えてくれるんだよね?」

QB「ああ、そうだよ。君は十分にその条件を満たしている」

ユリ「だったら――」



マミ「――ま、待って!」


188 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:36:52.42 ID:vr1MJOnKo

ユリ「え、マミちゃん。なんで止めるの?」

マミ「いえ、あの……もう少しよく考えませんか? 命懸け、なんですよ?」

ユリ「それって、魔女とかっていう化け物と戦わないといけないって話?」

マミ「……はい」

マミ「でもそれ、マミちゃんもやってるんだよね? それも小学生の時から。だったら私にだって」

マミ「それは……」

QB「ユリの言うとおりだよ、マミ」

マミ「キュウべえ……」

QB「確かに危険なことだ。命の保証なんてとてもできない。
   だけど魔法少女には、魔女と戦うための力がちゃんと与えられるんだ。
   よほど強力な相手でもない限り、互角以上に戦えるはずさ」

QB「君がそうだったように、ね」

マミ「……」

QB「どうしたんだい、マミ? 君だって一緒に闘う仲間を欲しがっていたじゃないか。
   それにユリの願いは、君にこそ共感できるもののはずだろう?」

マミ「っ……」
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:37:52.31 ID:vr1MJOnKo

マミ「ユリさんの気持ちは、確かにわかるわ……私だって、家族と…………」

ユリ「……マミちゃん?」

マミ「でも、それでも……命懸けなんです!」

マミ「祈りの力で家族といられるようになっても、
   そのためにユリさんが死んだりなんかしたら、なんの意味もないじゃないですか!」

ユリ「……!」

マミ「お願いです、ユリさん。せめて一日……いいえ、今夜一晩だけでも、よく考えてください」

ユリ「マミちゃん……」

マミ「魔女との戦いは、本当に大変なんです。痛いし、怖いし、遊ぶ時間なんかもないんです。
   キュウべえの言うとおり、一人じゃ嫌だって泣いちゃうぐらい、辛いんです……
   後悔なんかしないって、決めてますけど、でも…………」

ユリ「……」

マミ「……ユリさん。あなたには、考えるだけの余裕があるんです。あなたはまだ選べるんです」

マミ「例え離れ離れになっても……死んじゃったりしたら、本当にもう、二度と会えない……」

マミ「お願いです。どうかよく考えてください。どうか……」

ユリ「……」


190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:38:52.67 ID:vr1MJOnKo

QB「どういうつもりなんだい、マミ?」

マミ「……」

QB「君が何を考えているのか、僕にはわからないよ」

マミ「……言った通りよ。ちゃんと考えて欲しいだけ」

QB「フゥ……」

QB「君の言葉には、確かに一理ある。だけど同じぐらい、ユリも正しいと僕は思う。
   それに何より、一晩程度じゃあ、きっと何も変わらないよ」

マミ「そうかも知れないわね……ええ、これは私のわがままよ」

QB「……」

マミ「キュウべえ、今日は、ユリさんと一緒にいてあげて」

QB「別にかまわないけど、どうして?」

マミ「いいから。彼女も、まだ色々と聞きたいこととか、あるはずよ。答えてあげて」

QB「……。わかったよ。じゃあ明日、学校が終わったらさっきの公園で落ち合おう」

マミ「ええ」


191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:39:33.68 ID:vr1MJOnKo



   ガチャ、バタン

マミ「……ただいま……」

マミ「……」

   シーン…

マミ(誰もいない……当りまえだけど、ずいぶんと久しぶり……)

マミ(……)

マミ(とりあえずお風呂に入って、お夕飯を作って、それから……)

マミ(……紅茶は、今日はもう、いいや)







マミ(ふぅ……)

マミ(……おやすみなさい)


192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:40:13.68 ID:vr1MJOnKo



マミ(……)

マミ(……)

マミ(……ベッドって、こんなに広かったっけ……)

マミ(それに、ちょっと寒い……毛布出そうかな……)

マミ(……いいや。面倒くさい)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……キュウべえ……)

マミ(あの子がいないだけで、私、こんなに……) ジワ…

マミ「っ……」 ゴシゴシ

マミ(ううん、違うわ。今日だけ。今晩だけよ。明日になったら……)

マミ(……そうよ。明日になったら、仲間ができる)
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:40:52.82 ID:vr1MJOnKo

マミ(私はもう一人ぼっちじゃない)

マミ(隠し事なんか、何もしないで済む、本当の友達ができるの。だから……)

マミ(……)

マミ(……最低だわ、私)

マミ(あんなこと言って、引き止めたくせに、結局はユリさんが契約してくれることを望んでる……)

マミ(……)

マミ(……でも)

マミ(仕方ないわ。……そうよ。仕方がないのよ)

マミ(私の願望だけじゃない。ユリさんは明らかに乗り気だった)

マミ(だから、仕方がないのよ)

マミ(それに……それに、命の危険からは、私が守ってあげればいい)

マミ(攻撃は大雑把だけど、防御と治癒は得意だもの)

マミ(ええ、そうよ。守れるわ。絶対に守れる……)
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:41:43.12 ID:vr1MJOnKo

マミ(……)

マミ(……ユリさんは、どんな魔法少女になるのかな……)

マミ(……剣とか、似合いそうだな……槍とか……鉄砲なんかも、いいな……)

マミ(……ふふ……魔法のステッキ、なんてのも、意外と似合うかも……)

マミ(……ちゃんと連携できるかな……私のリボン、危険だから……気をつけないと……)

マミ(……パートナー……)

マミ(……嬉しいな……)

マミ(……)

マミ(……そうだ……明日は、早起きして……)

マミ(……ケーキを……焼いて…………キュウべえと……三人で……)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……………………)




195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/03(金) 22:42:13.60 ID:vr1MJOnKo

つづくよ!
一話一話がどんどん長くなるね!
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 22:45:52.99 ID:nzRCLe4Mo
マミさん……乙でした
せめて彼女との別れが辛い物でありませんように
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/03(金) 22:49:18.47 ID:IwzBZEDOo
お疲れ様でした。

切ないなぁ・・・・・・・・・。
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/04(土) 05:22:05.59 ID:cIDGm5UQo
マミさんマジ寂しがり
まだ子どもだから仕方ねーよな
199 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/05(日) 15:54:48.16 ID:62YL5YJto
乙っちまどまど!
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 21:12:36.87 ID:12Scx6eE0
今更ながら発見マミマミ。
続きwktkしてますマミマミ。
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 21:53:32.97 ID:edO39CxRo

問い:満ちた月は、そのあとどうなるでしょう

投下
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 21:54:20.66 ID:edO39CxRo



   キーンコーン カーンコーン

   ガヤガヤザワザワ

マミ「よし――」 ガタッ

モブA「あ、巴さん。今日これから……」

マミ「ごめんなさい! 先約があるの!」

   タッタッタッタッタ…

モブA「……」

モブB「……」

モブA「……まぁ、そんな気はしてた」

モブB「朝から浮かれてたもんね、巴さん」

モブA「男、かな?」

モブB「……かも」


203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 21:55:16.56 ID:edO39CxRo



マミ「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」 タッタッタッタッタ

マミ(昨日の公園。昨日の公園。昨日の公園。昨日の――)



QB《――マミ。聞こえるかい、マミ》



マミ「――!?」 ズザザッ!!

マミ《――キュウべえ? どうしたの?》

QB《待ち合わせ場所の変更だ。
   昨日の公園から、西に500メートルぐらいのところにある、建設中のビルに来て》

マミ《い、いいけど、どうしたの? ……まさか》

QB《そのまさかさ。魔女じゃなくて使い魔だけどね。たぶん、昨日の狩り残しだと思う》

マミ《わかったわ》 ダッ

マミ《ところで、ユリさんは?》

ユリ《一緒にいるわ。現場にね》

マミ《え……》
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 21:57:39.49 ID:edO39CxRo

マミ《え、え? ユリさん? どういうことですか?》

QB《聞いた通りさ。現場に展開された結界の中に、僕とユリは一緒にいる》

マミ《そんな……嘘でしょう? そんなに離れてたら、テレパシーの圏外……》

QB《ユリの特性だね。不和の解消……すなわち結束の祈りで契約した彼女には、
   広範で強力なテレパシー能力が備わったんだ》

マミ《もう契約したの!?》

QB《ああ、夕べのうちにね》

ユリ《ごめんね、マミちゃん》

マミ《い、いえ、別に……それより、逃げてください!
   使い魔が相手だからって、契約したてのユリさん一人じゃ危険です!》

QB《僕もそう言ったんだけどね。巻き込まれている一般人もいるんだよ》

マミ《なっ……!?》

QB《妊婦さんだ。しかも気を失っている。とてもじゃないけど、ユリ一人じゃ運べないよ》

ユリ《そういうこと――おっと、危ない》

マミ《……!》
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 21:58:42.59 ID:edO39CxRo

マミ《ユ――いえ、キュウべえ。ユリさんは今、戦ってるの?》

QB《ああ。だから話しかけるなら僕の方にしてくれると助かるよ》

マミ《大丈夫なの!?》

QB《そうだね。僕の見たところ、すぐに殺されるということは、とりあえずなさそうだ》

マミ《そう……》

マミ《……サポートしてあげてね。絶対に無理はさせないで》

QB《わかっているさ。君も、必要ないとは思うけど、念のため急いでくれ》

マミ《ええ!》

   ポゥ…

マミ(身体能力強化!)

マミ(夕べの魔女の使い魔なら、確かに致命的な相手じゃない……でも、絶対じゃない)

マミ(少しぐらい、人に見られても構わない)

マミ(最速で、駆け抜ける……!)


206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 21:59:53.25 ID:edO39CxRo



マミ「ハァ……! ハァ……! ハァ……!」

マミ(建設中のビル……ここね)

マミ(……魔力の反応がない……ということは)

マミ《ユリさん! キュウべえ!》

QB《マミ……もう来たのかい》

ユリ《早かったわね、マミちゃん。裏手にいるわ。右の方から回り込めるから》

マミ《わ、わかりました》

ユリ《もう終わってるけどね》

マミ《え……》

ユリ《だから言ったでしょう? 大丈夫だ、って。意外と楽勝だったわよ?》

マミ「……」

マミ「ハァ……よかった……」


207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:00:56.28 ID:edO39CxRo

マミ「ユリさん、キュウべえ」

ユリ「や、マミちゃん。一日ぶり」

マミ「はい。……その人ですね」

妊婦「――」

ユリ「うん。表に運びましょう。一応、救急車かな?」

マミ「そうですね」







ユリ「さて……ごめんね、心配させちゃって」

マミ「いえ、いいんです。無事ならそれで」

ユリ「あと、忠告も無駄にしちゃって、ごめん。
   昨日、あのあと、帰ったあとさ。また言い合いが始まっちゃって、我慢できなくて……」

マミ「そうですか……」
208 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:01:56.49 ID:edO39CxRo

マミ「……でも、いいんです。昨日はあんなこと言いましたけど、私も本当はこうなることを
   望んでたんです」

ユリ「そっか。そう言ってくれると、気が楽だわ」

ユリ「でも、すごいねキュウべえって。みんなすぐにケンカをやめてくれて、
   お父さんの仕事も、朝になったらもう決まってたんだよ。本当ありがとうね、キュウべえ」

QB「お礼を言う必要はないよ。こっちにも見返りのあることなんだから。
   魔女退治、がんばってね」

ユリ「うんっ!」

マミ「私も手伝います。コンビで、一緒にがんばりましょうね」

ユリ「あ……」

マミ「? どうしたんですか?」

QB「ああ、マミ。それなんだけどね」

マミ「え?」

ユリ「……」

QB「ユリはこの街を離れることになったんだ」

マミ「え……」
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:03:23.48 ID:edO39CxRo

QB「彼女の父親の再就職先がね、ちょっと遠いんだ。引っ越さないといけない」

マミ「そんな……」

QB「両親の故郷らしい。より円満な家族生活を送れる環境に、ということだと思う」

ユリ「……私も、別に、そんなことまで望んだつもりはなかったんだけどね……」

マミ「……そう、ですか……」

ユリ「ほんとにごめんね、マミちゃん。コンビは組めなくなるけど……でも心配しないで。
   向こうにも魔法少女の人がいるんだって」

QB「ああ、強くて面倒見のいい子だよ。マミほどじゃないけど、キャリアもある」

マミ「そう…………なら、安心ですね」

マミ「それで、いつ、発つんですか?」

ユリ「明後日……」

マミ「え……そんな、どうして、そんなに……」

QB「運命に干渉するというのは、そういうことなのさ。多少の無理はどうしても出る」

マミ「……」

ユリ「えっと……そんな顔しないで、マミちゃん。
   今日と明日はまだ一緒に街を回れるから、魔女が出たら、よろしくね?」

マミ「っ…………はい」


210 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:04:31.77 ID:edO39CxRo



マミ「……」

ユリ「……」

QB「結局、魔女も使い魔も出なかったね」

マミ「……そうね」

ユリ「……」

ユリ「ごめん。私もう、行かないと」

マミ「はい……」

ユリ「それじゃ、マミちゃん。元気でね」

マミ「ユリさんも。がんばってください」

ユリ「うん。電話する。メールも」

マミ「はい」

ユリ「じゃあ……ばいばい」

マミ「さようなら」

   タッタッタッタッタ…
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:05:37.61 ID:edO39CxRo

マミ「……」

QB「残念だったね、マミ」

マミ「仕方ないわよ……」

QB「……」

マミ「……キュウべえ。あなたは、ユリさんについて行ってあげて」

QB「どうして? 見送りなら、君も一緒に来ればいいじゃないか」

マミ「引っ越し先まで、よ。放っておくわけにはいかないでしょう? 私は一人で大丈夫だから」

QB「そういう意味か。でもその必要はないよ。向こうにも僕はいるんだから」

マミ「でも…………え? 『僕』?」

QB「ああ、そう言えばこれはまだ話してなかったっけ」

QB「僕ら契約の獣はね、全ての個体が同じ、一つの意識と記憶を共有しているんだ。
   この『僕』も、向こうにいる『僕』も、どれも同じ『僕』だから、ついて行く必要はないのさ」

マミ「え……え? え?」

QB「理解できないなら気にしなくていいよ。別に大したことじゃない」

マミ「……」

QB「それじゃあ、帰ろうか。今日はもう魔女も出ないだろう」

マミ「え、ええ……」




212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:06:26.20 ID:edO39CxRo





   第九話  欠ける月





213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:07:25.39 ID:edO39CxRo

   ◆

マミ「……」

マミ「……」 チラ

QB「……ん? なんだい、マミ?」

マミ「え? えっと、その……」

マミ「……お茶、おかわりは?」

QB「遠慮しておくよ」

マミ「そう……」



マミ(ユリさんのテレパシー能力は、本当に、桁外れに優れているらしい)

マミ(“自分”が何人かで中継すれば、この部屋からでも話ができるとキュウべえは言った)

マミ(でも……この子をそんなふうに使うなんて、嫌だ)

マミ(それにこの時間なら、きっと家族と過ごしているわよね……)
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:08:42.56 ID:edO39CxRo

マミ(……)

マミ(ユリさん、元気にしてるかな……)

マミ(向こうにいる人とちゃんと仲良くできてるかな……)

マミ(どんな魔法少女になってるのかな……)

マミ(キュウべえでさえ『珍しい』と言っていた、あの大きなハサミを武器にして、
   どんなふうに魔女と戦ってるのかな……)

マミ(いつかまた……会えるといいな…………)



マミ「……」

QB「……」

QB「……」 モグモグ




215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:09:45.28 ID:edO39CxRo



以上
なんかヒヨコにフライドチキン食わせてるみたいな気分
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/06(月) 22:10:26.87 ID:edO39CxRo

ちなみにこれは伏線でした

>>121
> 鋏の魔女、といったところか。嫌な感じだ。
                   ~~~~~~~~~~~
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/06(月) 22:12:40.73 ID:qDt0bIzt0
乙でした

> 鋏の魔女、といったところか。
泣くしかないな・・・
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/06(月) 22:45:30.57 ID:DxZsbQu2o
お疲れ様でした。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/06(月) 23:13:58.62 ID:8EB88ldio


> 鋏の魔女、といったところか。嫌な感じだ。

……え?
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/07(火) 00:27:30.14 ID:OJEWYxDwo
oh...
せめてもの救いは気付かずに逝かせてあげたことか……
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/07(火) 01:11:13.24 ID:9JV0jf9F0

なんという伏線…
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/06/08(水) 00:08:34.27 ID:ith+Djtf0
なるほど、結束の祈りの対価としての絶望は、不和の強制というわけか
親が仲良くなった描写がないのも怖いな……あんこパパんとこの信者みたいになってたり……
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/12(日) 00:41:36.14 ID:+gSfk+0c0
やっと追いついた!
セリフとか間とかすごくうまい…
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/06/12(日) 02:58:26.93 ID:lIuj/sgQ0
普通は一年持たないとか言ってたもんな。
あとなんとなくだけど、鋏の魔女からは『虐待を受けた』とか『孤独』とか、そんな印象を受けたんだが、そこまで不幸じゃなかったのなら良いんだけど。
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:18:14.75 ID:eqG/yXgno

>>222,224
細かいところまでは決めてないっすねぇ
御想像にお任せ、ということで


それでは投下
リクエストでもらったテスト勉強の話
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:19:14.82 ID:eqG/yXgno



マミ「……」 カリカリ

マミ「うーん……」

マミ「……」 カリカリカリ…



マミ「辞書辞書……」

マミ「……」 パラパラ…

マミ「……あぁ、こっちね……」

マミ「……」 カリカリ



マミ「……」 カリカリカリ ペラ カリ…カリカリカリ…

QB「マミ。そこ、綴りが間違ってるよ」

マミ「え?」

QB「castle。ss じゃなくて st だよ」

マミ「ああ……ありがとう、キュウべえ」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:19:52.13 ID:eqG/yXgno





   第十話  挑戦するという意味





228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:21:42.43 ID:eqG/yXgno

マミ「それにしても、キュウべえの発音はキレイね」

QB「必要だからね」

マミ「そっか。魔法少女は世界中にいるんだものね」

マミ「ハァ……それに比べて、私たちはどうしてこんな勉強をしなくちゃいけないのかしら」

QB「仕方ないよ。君たち自身が決めたルールだ」

マミ「……大人が勝手に決めたことだもん。私知らないもん」

QB「それはその通りではあるけどね。
   しかしその大人たちだって、その時々の先人が定めたルールに従っていたんだ」

QB「そして先の世代の子供たちも、恐らくは今の君たちが定めるルールに沿って
   生きることになる。そうやって続いて行くんだよ」

マミ「……」

マミ「だからって、こんなのやっぱり役に立たないわよ。
   どうして日本の英語教育って単語と文法ばっかりなのかしら」

QB「そう言うわりには、君はいつもイタリア語の単語を熱心に調べてるよね?」

マミ「あ、あれはいいのよ。とにかく、もっと発音やリスニングに力を入れてくれないと
   実際の会話で使えないわ」

QB「そうかな? そんなことないと思うけど」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:22:38.86 ID:eqG/yXgno

マミ「どうしてよ? 喋れなきゃ話にならないわ。筆談ってわけにはいかないじゃない」

QB「確かに、少し昔ならそうだけど、現代では文書の交換も主流になりつつあるじゃないか」

マミ「どこの世界の話をしているのよ。もしかしてあなたの故郷?」

QB「違うよ。インターネットだよ」

マミ「え? ……あ!」

QB「単語と文法を身につければ、掲示板で世界中の人と話ができるんじゃないのかい?」

マミ「それは……」

QB「それは?」

マミ「そ、それは…………関係、ないわよ」

QB「どうして?」

マミ「どうしても! それより――ちょっと休憩しましょう。お茶にしましょう」

QB「……? ……まぁ、君がそうしたいなら」


230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:23:52.51 ID:eqG/yXgno

マミ「ふぅ……」

QB「……」 モグモグ

マミ「――でもやっぱり、納得いかないわ」

QB「何がだい?」

マミ「英語教育の在り方よ。単語の綴りが少し間違ってるぐらい別にいいじゃない。
   要は意味が通ればいいんでしょう?」

QB「僕に言われても困るけど……一文字違いで全然別の意味になる単語だってあるよ」

マミ「そうだけど、例えばさっきのキャッスルはキュウべえには通じたわ」

QB「まぁ、確かに」

マミ「英語だけじゃなく、そういったケアレスミスで減点されるのって、なんだか理不尽だわ」

QB「うーん……それはたぶん、採点する側の都合だろうね」

マミ「え?」
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:25:29.66 ID:eqG/yXgno

QB「ケアレスミスか、間違って覚えているのか、なんて、見ただけではわからないだろう?
   一人ならともかく大勢を評価するなら、基準は曖昧でない方がスムーズだ」

マミ「…………理不尽だわ」

QB「そうだね。僕も、どちらかと言えばマミの意見に賛成だよ。
   学校のそれに限らず、人間の作るシステムは無駄な部分と無理な省略が多すぎる」

QB「総じて言えば、思慮が浅く短絡的だ」

マミ「……?」

QB「人類全体がもっと長期的な視野を持ってくれれば、僕らとしても助かるんだけどね」

マミ「えっと……キュウべえ?」

QB「……」

QB「……なんでもないよ。僕らも僕らで、面倒なルールに縛られているのさ」

マミ「そうなの……」

QB「マミのやりたいようにすればいいと思うよ。君の言うとおり、
   テストでの成績が悪かったからといって実際に通用しないとは限らないんだ」

マミ「うん……」
232 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:26:41.77 ID:eqG/yXgno

マミ「……そうね。でもやっぱり、成績を落とすわけにはいかないわ。
   援助してくださってるおばさまたちにも申し訳が立たないもの」

QB「そうかい」

マミ「ええ」 クイッ ゴックン

   カチャリ

マミ「さて――それじゃあもうひと頑張りと行きますか」


233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:27:56.82 ID:eqG/yXgno





マミ「――ふぅ。今日の分、終了っと」

QB「お疲れさま」

マミ「ありがとう、キュウべえ」

QB「別に何もしてないけどね、僕は」

マミ「ふふっ。……けどやっぱり、以前と比べるとだいぶ楽になったわ」

QB「そうだね。去年の辺りまでは、もっとずっとバタバタしていた覚えがあるよ」

マミ「そうよねぇ……」


234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:29:21.17 ID:eqG/yXgno

   ◆

マミ「……」 ゴソゴソ バタバタ

QB「……」

マミ「……」 バタバタ ゴソゴソ

QB「ねえ、マミ」

マミ「ん……なぁに、キュウべえ?」

QB「どうして急に部屋の模様替えなんて始めたんだい?」

マミ「……」

マミ「いいじゃない。気分転換よ」

QB「テスト勉強はいいのかい?」

マミ「だから、その気分転換よ。これが終わったらちゃんとやるわ」

QB「……」

QB「まぁ、君がいいというのなら、いいんだけどね」


235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:30:19.24 ID:eqG/yXgno

   ◆

マミ「……」 カリカリカリ

マミ「……うーん……」

マミ「……」 カリカリカリカリ、カリ…

マミ「……」

   シュイーン

マミ「……」

QB「マミ? 急にソウルジェムを取り出したりなんかして、どうかしたのかい?」

マミ「魔女が出そうな気がするわ」

QB「……。反応はないようだけど」

マミ「出そうな気がするの。行くわよ、キュウべえ」

QB「……」

QB「まぁ、反対する理由もないけど」


236 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:31:12.64 ID:eqG/yXgno

   ◆

マミ「〜〜♪」 チャッカチャッカチャッカチャッカ

QB「あれ? マミ、お菓子を作っているのかい?」

マミ「ええ。シブースト、フランスのお菓子よ」

QB「ふぅん。ずいぶんと手間のかかるものを選んだね」

マミ「あら、詳しいのね?
   そうよ。パイ生地を焼いて寝かせて、土台を焼いて冷まして、カスタードとメレンゲを
   少しずつ少しずつ混ぜ合わせて、仕上げのキャラメリゼは焼きごてで焼いて」

QB「うん」

マミ「今はメレンゲを作ってるところ♪」

QB「へえ」

マミ「安心してね? キュウべえの分もちゃんと作ってあげるから」

QB「そうかい。ありがとう」

マミ「……」 チャッカチャッカチャッカチャッカ

QB「……」

マミ「だ、大丈夫よ。ちゃんと勉強もしているわ」

QB「何も言ってないじゃないか」


237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:32:00.54 ID:eqG/yXgno

   ◆

マミ「うぅ……なんてひどい点数……」

QB「残念だったね」

マミ「……もっとちゃんと勉強していれば……」

QB「十分にやるだけのことをやった上での結果だろう? なら受け入れるしかないよ」

マミ「うぅ……」

QB「次また頑張ればいい」

マミ「……ごめんなさい……」

QB「うん? どうして僕に謝るんだい?」

マミ「い、いえ。間違えたわ。ありがとう、キュウべえ。励ましてくれて。次はがんばるわ」

QB「おかしな間違いだね。どういたしまして」


238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:32:56.31 ID:eqG/yXgno

   ◆

マミ「ふふ……そんなに昔のことでもないのに、懐かしいわね。今となってはいい思い出よ」

QB「そうだね」

マミ「……あのころはテストのたびに現実逃避して、挙句に世界を呪ったりしてたのよね……」

QB「……」

マミ「ダメよね。希望を振りまくはずの魔法少女が、呪いを抱いたりなんかしたら」

QB「……」

QB「いいや、駄目だなんてことはないよ」

マミ「え?」

QB「魔法少女といえど、ものの考え方や価値観は普通の人間と変わりはないんだ。
   何かを呪いたくなることだって当然あるさ」

QB「少なくとも僕は、君たちのそんな感情の動きを禁止しようなんて思わないよ」

マミ「……そう」
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:33:50.92 ID:eqG/yXgno

マミ「でも、やっぱりよくないわ。魔法少女は夢と希望の象徴でいなくっちゃ」

マミ「それに、少なくとももうテストのせいで呪ったりなんかしないだろうから、大丈夫」

QB「そうかい」

マミ「そうよ。今の私には強い味方が付いてるんですもの」

QB「あぁ、あの新しいテキストのことだね?」

マミ「ええ。通信講座は塾なんかと違って好きな時間にできるのがいいわね。
   魔法少女にはぴったりだと思うわ。
   中身も、教科書に合わせて要点をまとめてくれているし」

マミ「始めてよかったわ。進研ゼミ」





240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/12(日) 16:34:38.87 ID:eqG/yXgno

以上

久々のほのぼの
最初はこういう系統を目指してたはずなんだけどな……


というかいつのまにかwikiの粗筋が修正されてて笑ったw
別に文句言ったわけじゃないのにw
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 16:35:44.35 ID:FYEp90aFo
お疲れ様でした。

ここへきて進研ゼミですか・・・・・・・・・。
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/12(日) 16:37:06.52 ID:nCCco4tjo
乙です


また懐かしい物の宣伝を……
この営業マン!インキュベーター!
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 17:00:36.66 ID:p11BYYwlo
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/12(日) 17:52:24.05 ID:hi7h5V9m0
乙でしたー
マミさんの年齢相応な反応が可愛らしいです!
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/13(月) 00:19:10.84 ID:qYvWRz/vo

進研ゼミwww
テストの前って部屋が片付いちゃうよね
なんでだろう
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/06/14(火) 16:54:02.60 ID:ejgZNJaAO
お、投下あったのか。
進研ゼミワロタww

マミさんかなり勉強できそうなイメージだけどテスト前の自分みたいな行動してて吹いたわw
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 19:55:18.99 ID:wtNOGC0To

投下
今回は長め
途中で切るとこ見つからんかった
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 19:56:24.96 ID:wtNOGC0To



   楽な相手だった。

   砂漠を模したような結界内は、障害物がなく走りやすかった。
   ぎゃあぎゃあとやかましいだけの使い魔は、槍の一薙ぎで蹴散らせた。
   親玉の魔女も、図体はデカいくせに笑えるぐらいノロマだった。

   結界に入って、ものの数分。
   ほとんど何の苦労もなく、アタシの槍はヤツの脳天をぶち抜いた。

   それと同時に、ヤツの触手もアタシのドテっ腹をぶち抜いた。

杏子「あ……?」

   気がついたときには、世界は真っ黒で。



   痛みも何も感じなくて。





   ああ、これでようやく楽になれるんだな、と、そんなことを思わせてくれる相手だった。





249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 19:57:14.32 ID:wtNOGC0To





   第十一話  魔女と魔女





250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 19:58:14.36 ID:wtNOGC0To



   だからこんなのは、おかしいんだ。

   もう一度目を覚ますなんて、おかしいんだ。
   腹の傷がふさがってるなんて、おかしいんだ。
   こんなにもふかふかのベッドに寝かされてるなんて、どう考えてもおかしいんだ。

杏子「……なんで……」



   「――あら、目が覚めたのね」

   声がした。

   ちらりと目を向けると、アタシと同い年ぐらいの女が一人。どこかで見た顔だ。
   上体を起こしながら、さりげなく辺りも見回す。

   清潔な部屋。
   洒落た感じの家具や小物類。
   窓の外の景色は、もう夜になっているようでわかりづらかったが、視点が高い。
   マンションの上階だろう。

   金のある人間の棲家、だな。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 19:58:52.59 ID:wtNOGC0To

   「起きて大丈夫なの?」

杏子「……誰だ」

   端的に尋ねると、そいつは左手を掲げて見せた。

   中指に、見覚えのある銀の指輪がはまっている。さらに爪にはシルシもあった。
   つまり同業者。
   なるほど、だいたいわかった。

   「巴マミよ。あなたは?」

   問い返してきた。
   が、アタシは答えず、そいつの斜め後ろを見やる。

杏子「聞いてねぇのか。そいつから」

   猫のようなウサギのような、ぬいぐるみのような白い生物がそこにいた。
   契約の獣。キュゥべえ。
   アタシを今の生活に叩き落してくれた、ある意味で全ての元凶。

   ……なんてのは、逆恨みか。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 19:59:40.97 ID:wtNOGC0To

マミ「……あなたが死んでたなら、そうしたわ。
   でも生きてたんだから、本人から聞きたいじゃない? 名前ぐらい」

杏子「……」

   チッ。

杏子「……佐倉杏子だ」

マミ「そう。佐倉さん、身体の具合はどう?
   目に見える傷は一応全部ふさいだけど、どこかおかしかったら遠慮なく言って?」

杏子「……いや。どこも悪くねぇ」

マミ「そう、よかった。何か食べる?」

杏子「……とりあえず、水だけくれ。ノドが渇いた」

マミ「わかったわ。待ってて」





杏子「……」 ゴクゴクゴク

マミ「ねぇ、佐倉さん」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:00:35.08 ID:wtNOGC0To

杏子「プハッ……なんだ」

マミ「あなた、隣町の魔法少女なのよね?」

杏子「隣? ……ってか、そういやここ、どこだ」

マミ「え? あ、ああ、そうね。ここは見滝原市よ」

杏子「見滝原……」

QB「君が倒れていた林のこっち側――君から見れば 『向こう側』 だね」

杏子「……」

   くそ、やっぱりか。
   巴マミ。
   なんか聞いたことがある気がしたんだ。

   魔法少女同士のネットワークなんてものはほとんどない。少なくともアタシは絡んでない。
   それなのに噂が入ってくるという時点で、その異常のほどが知れる。

   三年にも渡って、一つの街をたった一人で、使い魔まで全て狩って護ってるっていうバケモノ。

   まともに遣り合っても勝てる相手じゃねぇな……
   どうするか……
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:01:10.71 ID:wtNOGC0To

   幸い、こいつの方には遣り合う気はないようだ。今はまだ。
   と、なると。
   速攻で行くしかねぇな。

杏子「……」

   コップをベッドサイドに置いて、おもむろに指輪をジェムに戻す。
   さて、上手く隙を……

杏子「――ん?」

   待て。なんで輝きが戻ってるんだ。

杏子「おい」

マミ「なぁに?」

杏子「お前か、これ」

マミ「ジェムの浄化? ええ」

杏子「……どういうつもりだ。貴重なグリフシードを、他人なんかのために使うなんて」

マミ「困ったときはお互いさまよ。それに、使ったのはあなたのグリフシードだし」
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:01:59.28 ID:wtNOGC0To

杏子「あ? んなワケあるか。ストックは切れてた」

マミ「嘘なんかじゃ……」

QB「そのとおりさ、嘘じゃない。マミが使ったのは、倒れていた君のそばに落ちていたものだ。
   状況から見て、君と相討ちになった魔女が落としたんだろうね」

杏子「チッ……そうかよ」

マミ「……」

QB「随分と不満そうだね、杏子」

杏子「テメェは――」
マミ「キュウべえ。やめなさい」

QB「……」

杏子「……」

マミ「ごめんなさい、佐倉さん。どうやら私は、あなたの誇りを傷つけてしまったようね」

杏子「……」

マミ「……どうすれば、償えるかしら」
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:02:42.08 ID:wtNOGC0To

杏子「……」

マミ「……」

   チッ。

杏子「……後ろ、向け」

マミ「え?」

杏子「聞こえただろ。後ろ向いてろ」

   繰り返すと、ヤツは訝しみながらも素直に背を向けた。
   お人好しだ。
   そして、バカだ。
   やっぱ噂なんて当てにならない。こんなのが “見滝原の女王” だってのか。

   握りしめたままだったソウルジェムから槍を伸ばす。

杏子(別に変身しなくたって魔法は使えるんだぜ?)

   ま、殺すつもりはないけどな。
   ただしばらく、この絶好の狩り場と、現役最強とやらの座を貸してもらうだけだ。

   返すかどうかは、テメェ次第だけどな――!


257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:03:43.91 ID:wtNOGC0To





















杏子「……」

マミ「……」

杏子「……な、」

マミ「ふぅ……」
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:04:23.71 ID:wtNOGC0To

   嘘だろ。
   止められた。

   私の槍は、音もなく一瞬で伸びてきた黄色いリボンみたいなのに絡め取られて、
   完全に固定されてしまった。

   マジかよ。
   しかも、コイツ。
   背を向けたまま、それをしやがった。

マミ「そんな顔しなくても、別に後ろに目がついてたりなんかしないわよ」

   そして静かに言いながら。

マミ「それにしても……銃を出せるようになってて助かったわ」

   これまたいつのまに出現させていたのか、銀色の長銃を掲げて見せた。

   マスケット銃、というヤツか。
   その、細かな装飾が施された銃身の中の、わずかな隙間のような平面の向こうに。
   どこか憐れむような、ヤツの目が。
   確かに映り込んでいた。

杏子(冗……談、きついぞ、バカヤロウ)

杏子(ペルセウスじゃねぇんだ。鏡越しの標的なんて、まともに捉えられるわけねぇだろうが。
    どんだけ遠近感狂うと思ってんだ)
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:05:18.76 ID:wtNOGC0To

マミ「さて……理由を聞かせてもらえるかしら」

   ヤツが半身になって、こちらを向く。
   今さらになって冷や汗が流れる。

杏子「ハッ……わかりきったこと聞くんじゃねぇよ。グリフシードの数は限られてんだ」

マミ「……」

杏子「ライバルを助けようとするテメェの方がどうかしてるのさ」

マミ「……」

   なんか言えよ、ちくしょう。
   質問したのはそっちだろうが。

杏子「……あんたのことは聞いてるよ、巴マミ。使い魔まで残らず狩ってんだってな」

マミ「……それが、何か悪いのかしら」

杏子「悪いさ。テメーみたいなヤツを見てるとイライラするんだよ」

杏子「街のみんなを守るだぁ? 思いあがるんじゃねぇ!
    人が何を考えて、何を本当に欲しがってるかなんて、誰にもわかりゃしねぇんだ!」

マミ「……」

杏子「他人なんかのために命張って、それで何の得があるってんだ……!」
260 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:06:10.39 ID:wtNOGC0To

マミ「……」

マミ「あるわよ。得をすることなら」

杏子「へぇ? なんだよ。言ってみろ」

マミ「魔女から人を助けたあとはね、紅茶とお菓子が美味しいの」

杏子「……は?」

マミ「逆に助けられなかったときは、紅茶もご飯も美味しくないし、夜もぐっすり眠れないの」

杏子「……」

   なに、言ってんだ。こいつ。

マミ「理解できないかしら? でも、食事と睡眠――人が生きる上で大事なことよ?」

杏子「知るか! 好きに食って好きに寝りゃいいじゃねぇか!」

マミ「それができたら苦労はしないわ」

マミ「助けた結果、逆に恨まれることになったとしても、見殺しにするよりはずっと気が楽。
   そういう性分なのよ」

マミ「逆に言えば、助けたあと、その人がどうなるかまでは責任は負えないわ。
   あくまで私は、私自身の気の済むようにやっているだけよ」

杏子「……」 ギリッ

   ふざけやがって……
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:06:47.03 ID:wtNOGC0To

マミ「……あなたのことも、聞いているわ。佐倉さん」

杏子「……あ?」

マミ「隣町では乱暴な手口の空き巣や、ATM荒らしなんかが頻発しているんですってね。
   さらに、使い魔に襲われる人が他の地域よりも明らかに多いとか」

杏子「……だったらどうだってんだ」

マミ「……」

マミ「……改めてくれないかしら」

杏子「嫌だね」

マミ「……」

杏子「テメェと同じさ。アタシの魔法はアタシのモンだ。アタシのためだけにしか使わない」

杏子「もう二度と、他人なんかのために使うもんか……!」

マミ「そう……」

   シュル…

杏子「!」

   リボンが、ほどけた。
   槍が自由になる。
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:07:38.95 ID:wtNOGC0To

   一瞬迷ったが、ひとまず今は収納する。
   ヤツもリボンと銃を消した。

杏子「……なんのつもりだ」

マミ「力づくをするつもりはない……それだけよ」

杏子「チッ……」

マミ「私だって偉そうなことは言えないわ。この見滝原の外のことは、どうしようもないと
   切り捨てているんだもの」

マミ「それに何より、キュウべえがあなたを咎めようとはしていない」

杏子「……」

マミ「だけどせめて、使い魔に人を襲わせることだけはやめてもらえないかしら?」

杏子「……」



マミ「だってそんなやり方――魔女と何も変わらないじゃない」



杏子「っ……!?」
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:08:14.54 ID:wtNOGC0To

杏子「アタシが……魔女だと……!!」

   シュイン――ジャキン!!

マミ「!?」

杏子「取り消せぇ!!」



   ――ガキィィン!!



   気が付いたら、変身して、飛び出していた。

   槍を突きだし、マスケットの銃身で受け止められていた。ヤツも変身を終えている。
   リボンが伸びてくる。

杏子「甘めぇ!」

   逆に切り裂く。

マミ「っ!」
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:09:15.72 ID:wtNOGC0To

杏子「ハッ! 薄っぺらなんだよ! テメェの言葉と同じでなぁ!」

   勢いに乗せて袈裟斬りに振り下ろす。
   止められる。
   ならばと連続で突きを繰り出す。
   防がれ、弾かれ、受け流される。

マミ「待って佐倉さん! 何を急に――」

杏子「うるせぇ!」

   当たらない。
   だがヤツも防戦一方だ。
   狭い――いや、そこそこ広いが、所詮は屋内。あっという間に壁際まで追い詰める。

マミ「くっ!」

   そこまで来て、ようやくの反撃。腰だめに構えての発砲。

   が、避けるまでもなかった。
   弾丸は大きく逸れて、背後の壁に着弾。穴を穿つ。

杏子「どこ狙ってやがる!」

   それとも、この期に及んで威嚇のつもりなのか。どこまでも舐めた野郎だ。
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:09:55.98 ID:wtNOGC0To

   何がみんなを守るだ。

   何が自分はそれで満足だ、だ。

   挙句の果てに、アタシを魔女だと?

   ふざけるなよ……親父と同じことばっかり言いやがって……!!



杏子「――うらァ!!」

   その手から銃を弾き飛ばす。

   こいつは潰す。
   アタシの全てを賭けて否定してやる。

マミ「くぅ……!」

杏子「――!」

   が、流石は現役最強といったところか。
   ほぼノータイムで新たな銃を召喚。今度は両手に一丁ずつ。
   さらにリボンが、左右と上から迫ってくる。

   五点同時攻撃。
   対するこちらの武器は槍。防ぎきれない。
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:10:25.71 ID:wtNOGC0To




   ――そう思ったか?




267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:11:29.59 ID:wtNOGC0To

杏子「甘めぇんだよ!」

   瞬時に魔力を注ぎ込み、槍を――『ほどく』。

   一本の長い棒だった柄が、鎖で繋がれたいくつもの短い棒へと別れる。

   多節槍。
   正式な名前は知らないが、三節棍をさらにバラしたような形なのでそう呼んでいる。
   これがアタシの武器の、真の姿だ。

杏子「――ハァッ!!」

   全方位に向けて振り回し、五方向からの攻撃を全て同時に叩き落した。
   リボンは千々に引き裂かれ、銃弾は弾き返され壁と床の穴になった。

マミ「……!」

   驚きに目を見開いたヤツの間抜けヅラに満足感を覚えつつ、
   再び、すばやく長槍の形に戻すと、穂先を喉元へと突き付けた。

杏子「……舐めんな。ただの槍じゃねぇんだよ」
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:12:20.61 ID:wtNOGC0To

マミ「そうみたいね……でも、」

   ……ん?
   どうしてコイツ、笑ってやが――る!?

マミ「私もなの」

   腕が。
   足が。
   槍が。
   視界の外から伸びてきたリボンに、絡め取られた。
   動けない。

杏子「なっ――後ろ!?」

   どうにか首だけで振り返る。
   そして見た。
   アタシを縛るリボンが、壁と床に穿たれた弾痕から生えているのを。

マミ「私のこの銃も、弾も、全てリボンでできているのよ」

   言いながら、ヤツもマスケットを 『ほどいた』。

   言葉通りそれはリボンへと変化し――いや、戻り――アタシへと伸ばされる。
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:13:14.49 ID:wtNOGC0To

杏子「テメェ……」

マミ「ごめんなさいね」

   首に、巻きつけられた。締まる。

杏子「ッ――」

マミ「本当はこんなことしたくないんだけど……意識を落とさせてもらうわね」

   なんでだよ。

マミ「できるなら、貴方とは仲良くしたい。少なくとも敵対はしたくない」

   ふざけんなよ。

マミ「目が覚めたら……そしてその気になれたら、もう一度会いに来て」

   お前みたいなやつが、なんてそんなに強いんだ。

マミ「――おやすみなさい」

   なんで――


270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:13:44.28 ID:wtNOGC0To














271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:15:22.54 ID:wtNOGC0To



   『……』

   ん……?

   なんだよ、親父。また新聞見て泣いてんのか?

   『……交通事故だそうだ……何人もの人が亡くなっているよ……』

   そっか。

   『私の教えが受け入れられても、それでも救われない人はいる……』

   ……事故じゃぁ、どうしようもないよ。

   『だけど……たった一人だけ、生き残った子がいるみたいなんだ』

   ん?

   『ほら、見てごらん、杏子。お前と同い年の女の子だよ』

   へぇ、そりゃよかっ…………え? こいつは……

   『しかもほとんど無傷だそうだ。まさに奇跡だよ。神さまは見てくださってるんだね……』

   待って。違うよ、親父。こいつは違う。そんなんじゃない。

   こいつも私と同じなんだ。神さまなんかじゃない。アタシと同じで、アイツと契約しただけなんだ。

   『神よ……どうかこの子に、祝福を……』

   なんでだよ。

   やめろよ。

   同じなのに、なんでそいつにだけ祈るんだよ。アタシのことはあんな風に言ったのに。

   なんでだよ。

   なんで、なんだよぉ……!


272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:15:58.32 ID:wtNOGC0To





杏子「――っ」

   そうしてまた、目が覚めた。

杏子「……ここは……」

QB「君の父親の教会――かつてそうだった場所さ」

杏子「っ!?」

   声に振り向くと、白い獣がいた。

QB「おはよう、杏子」

杏子「……どういうことだ」

QB「何がかな?」

杏子「なんでアタシはここにいる。あれからどうなった」
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:16:45.14 ID:wtNOGC0To

QB「マミが君を気絶させて、ここまで運んだ。それだけさ」

杏子「……」

QB「この場所のことは、聞かれたから僕が教えた。秘密だとは言ってなかったよね?」

杏子「……」

   チッ。

QB「それと、君を締め落とす直前にマミが言っていたことは、ちゃんと聞こえていたかい?」

杏子「……うるせぇ」

QB「聞こえていなかったのなら改めて伝えるように言われているんだけど――」

杏子「うるせぇ! 消えろ!」

   掛けられていた毛布を投げつける。

QB「おっと」

   キュウべえはひらりと身をかわす。

QB「やれやれ……わかった、退散するよ。でも一つだけ」

QB「マミの方から会いに来るつもりはないそうだ。再会はあくまで君次第だ、とね」
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:17:21.58 ID:wtNOGC0To

QB「それじゃあ、さようなら。用があったらいつでも呼んでくれ」

杏子「……」

杏子「……待て」

QB「なんだい?」

杏子「……」

杏子「……アタシは、魔女か?」

QB「……」

QB「いいや、君は魔法少女さ。今も昔もね」

杏子「……」

QB「……。じゃあね」

杏子「……」

杏子「……」

杏子「……」

杏子「……くそったれが……」


275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:18:19.46 ID:wtNOGC0To

   ◆

マミ「はぁ……お部屋がボロボロ……」

マミ「……下の階の人に、変に思われてたらどうしよう……?」

QB「ただいま、マミ」

マミ「あ……おかえりなさい、キュウべえ。佐倉さんの様子は、どうだった?」

QB「問題なく目を覚ましたよ。ただ、君の希望は叶えられそうもないね」

マミ「そう……」

QB「残念だったね」

マミ「仕方ないわ……」

QB「……」

マミ「……ねぇ、キュウべえ」

QB「なんだい?」

マミ「買っておいたケーキなんだけど……あなた、二人分、食べる?」

QB「遠慮しておくよ」

マミ「……」

マミ「……そこは任せてって言ってよぉ、ばかぁ」 グスン




276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/16(木) 20:19:16.28 ID:wtNOGC0To

以上
杏子が弱すぎると思われるかも知れませんが、
マミさんの手の内を知らないならこんなもんだと思います
予備のGSもないしね
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/16(木) 20:24:19.46 ID:f8ldAskPo
278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/16(木) 20:25:57.28 ID:CXn8nu96o
お疲れ様でした。
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/06/16(木) 20:27:06.11 ID:cqnHT98ko
乙乙
あんこちゃんあんあん!
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/16(木) 20:29:16.50 ID:VwPGHf7no
マミさんマジ聖女
281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/16(木) 20:51:42.41 ID:1mNHNS+Po

この出来る子なマミさんがマミられる姿を想像できない
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/16(木) 23:26:34.61 ID:0HrUSbVYo

まぁどのルートのマミさん前史なのかはまだわからんしなぁ
いやぁ、おりマミさんは強キャラでしたね
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/16(木) 23:54:21.21 ID:OQg32fsho

流石マミさん、貫禄の強さ!

>QB「いいや、君は魔法少女さ。今も昔もね」
でも未来は魔女なんですね、死なない限り
わかります
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/17(金) 00:37:45.91 ID:dgnTCtFao
乙。このスレのマミさんからは後光が差してるわ…

>>282
でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/17(金) 01:29:52.07 ID:E7mHI5QFo
乙っちまどまど!
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/17(金) 20:20:11.76 ID:Zlv5hkmqo
乙でした。ほんと毎回面白いなぁ

>>283
ぐはぁそういうことか
QBめ…
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:42:13.93 ID:rclvwvqko

投下
オリキャラあり、地の文・独自設定多め
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:43:05.49 ID:rclvwvqko



QB「やあ。こんばんは、巴マミ」

QB「おっと、声を出す必要はないよ。頭で考えてくれれば僕にはちゃんと通じるから」

QB「夜の病院でお喋りするのはマナー違反だろう?」

QB「僕の方は普通の人間には見えないし聞こえないから問題ないんだけどね」



QB「それじゃあ、改めて――僕の名前はキュゥべえ。はじめまして、と言っておくべきかな?」

QB「……覚えていてくれたのかい? うん。確かに君は、既に『僕』と一度会っているよ」

QB「お礼を言う必要はないさ。
   君が今そうして生きているのは、あくまで君の中に眠っていた素質のたまものなんだから」

QB「それに、君にはこれから働いてもらうことになるしね」

QB「そうさ。つまり君は――」



QB「――僕と契約して、魔法少女になったんだ」





289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:43:42.52 ID:rclvwvqko





   第十二話  最初の一週間





290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:44:12.75 ID:rclvwvqko


   Lesson 1. とりあえず変身してみよう


291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:45:14.59 ID:rclvwvqko

   ◆

   一日目は、そうして終わった。

   二日目も、午前中は検査に費やされた。
   結果はもちろん、何の問題もなし。なさすぎて逆に不安がられたほどだった。
   だけどやっぱり異常はないので、そのまま退院。
   親戚夫婦――おじさまとおばさまに連れられて病院を後にする。
   駐車場を抜けて、おじさま所有の白いセダンの脇に立つ。

   何もなかった。そこまでは。

   気分は重かったけど、異変と呼べるようなものは本当に何もなかった。
   だけど。
   車の後部座席に乗り込んで、シートに身を沈めたところで、言い知れぬ不安に襲われた。
   続けて、おじさまの手でドアが閉ざされた瞬間、猛烈な吐き気が込み上げた。
   こらえきれずに、ぶちまけた。

   そのあとのことはよく覚えていない。
   おばさまたちの話によると、私は、

   『いやだ』
   『出して』
   『助けて』

   その三つの言葉を叫びながら、めちゃくちゃに暴れ始めたらしい。
   完全な錯乱状態で、車から引きずり出されると同時に気を失った、と。
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:46:41.35 ID:rclvwvqko

   心的外傷ストレス障害。

   ものの十分ほどで病院に逆戻りした私に下された診断だ。
   そのまま再入院とあいなった。
   今にして思えば、ちょっとしたスピード記録だったんじゃないだろうか。

   ともかく、そうして私は、車に乗ることができなくなった。
   走っているところを外から眺めたり、映像を見せられたりするだけならなんともない。
   狭さでいえば同じぐらいのトイレの個室も平気。バスや電車にも耐えられた。

   要するに、普通の生活は問題なく送れる。
   ただ、車にだけ乗れない。

   だけどそのために、両親の葬儀に参列することができなかった。
   さらに、おばさまたちの家へ居候する予定も白紙になってしまった。
   車がないと何もできないような立地らしいのだ。
   行ったことがないので具体的にはわからないけど、とにかくそうらしい。

   かくして私は、元に家に。
   もはや父も母もいない、見滝原のマンションに戻る以外になくなったのである。

   もっとも、それはまだもう少し先の話。
   今はまだ、病院での日々が続く。

   三日目と四日目の半分はまた検査に費やされて――四日目の夜。

   病室の、窓の外に、白いあの子が現れた。


293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:47:48.19 ID:rclvwvqko

   ◆

QB「やぁ。こんばんは、マミ」

マミ「あなたは……」

QB「大変だったみたいだね。車に対するトラウマか……正直、想定外だったよ」

マミ「……」

QB「ところで……それは、何を見ているんだい?」

マミ《……「マジカル・アルティ」 っていうアニメのDVDよ。おばさまが借りてきてくれたの》

QB「ふぅん」


   『――私のお友だちは返してもらうわ!』

   『――あなたたちみたいなのに、負けるもんですか!』


マミ《……ねぇ、キュウべえ。私もこういうことを、すればいいの?》

QB「なるほど。さっそく魔法少女の勉強というわけか。熱心だね」

QB「そうだなぁ……これと全く同じというわけではないけど、共通点は多いね」
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:48:46.94 ID:rclvwvqko


   『――アルティマ・シュ――――トッ!!』 ドカァァァン


マミ「……」

マミ《私にも、本当にあんな魔法が使えるの? 車にも乗れないような弱い子なのに?》

QB「弱くなんてないさ。君からは充分に強い魔力を感じるよ。天才的と言っていい素質だ」

マミ「て、天才? 私が? 本当に?」

QB「声が出ているよ」

マミ「ぁ……」

QB「もちろん、本当さ。なんだったら試してみるかい?」

マミ《試す?》

QB「病室だと流石にまずいね。屋上に行こうか」

マミ《う、うん》


295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:49:39.54 ID:rclvwvqko

QB「それじゃあ、ソウルジェムを出して?」

マミ「うん」 ゴソゴソ…

マミ「はい」

QB「指輪から、元の宝石の形に戻してごらん? 念じればできるはずだよ」

マミ「わかったわ」

マミ「……」

   シューン…

QB「よし。それじゃあ次は――」

マミ「ね、ねぇ、キュウべえ」

QB「うん? なんだい、マミ?」

マミ「この……ソウルジェム? って、ずっと持ってなきゃいけないんだよね?」

QB「そうだよ。肌身離さず持ち歩いてほしい。無くしたりしたら大変なことだ。
   それは君の、魔法少女としての魂そのものだからね」

マミ「で、でも、私まだ小学生だし、こんなの持ってたら怒られないかしら?」

QB「……。なるほど、それでポケットに入れていたのか。マミは用心深いんだね」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:50:41.69 ID:rclvwvqko

QB「でも大丈夫だよ。大人がソウルジェムに関心を持つことはないんだ。
   そういう魔法が掛けられているからね」

マミ「そうなの?」

QB「ああ。正確には大人だけじゃなく、子どもでも素質がないと認識することはできない」

QB「君の言うとおり、昔は大人に取り上げられるケースも多くてね。安全ためのプロテクトさ。
   ただし君の方から『ここにある』と教えてしまうと普通に見えてしまうから、気をつけてね」

マミ「う、うん。わかったわ」

QB「よし。さぁ、それじゃあ変身してごらん?」

マミ「どうやるの? 掛け声とか、呪文とか、あるの?」

QB「いいや、念じるだけでいいよ。でもその方がやりやすいのなら、何か唱えてみてもいい。
   そういうスタイルをとっている子も大勢いる」

マミ「大勢? 魔法少女って、たくさんいるの?」

QB「ああ。世界中にね」

マミ「ふぅん……」

マミ「そっか……仲間が、いるのね……」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/22(水) 00:50:43.51 ID:loczDswfo
リアルタイム遭遇か……!
298 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:52:04.29 ID:rclvwvqko

QB「この街にもいるよ。さっそく明日にでも紹介しよう。
   魔法少女という存在について、彼女たちからもいろいろと話を聞くといい」

マミ「ええ。ありがとう」

QB「それじゃあ改めて――変身してみようか」

QB「悪い魔女と戦う、戦士としての自分の姿を思い浮かべて、そう在るようにと念じるんだ」

マミ「う、うん……」

   ポゥ…

マミ「……」


   シュィーン――――キラッ!!

   パァァァ…


マミ「……ん……」

マミ「……! これが……」

QB「うん、上手くいったね。おめでとう――魔法少女、巴マミの誕生だ」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:53:27.95 ID:rclvwvqko

マミ「……」 キョロキョロ、チラチラ

マミ「これが、そうなの? 恰好は確かにそれっぽくなってるけど……」

QB「うん、素晴らしい魔力を感じるよ。間違いなく君は、百人に一人の逸材だ」

マミ「そ、そんな……」 テレテレ

マミ「……でも、どうして私なんかが?」

QB「魔法少女としての潜在力は、背負い込んだ因果の量で決まるんだ。
   きっと、君があの事故の唯一の生存者であることが関係しているんだろうね」

マミ「え……」

QB「普通ならとても助からないはずの状況の中で、必然として生き延びた。
   今の君は、あの場で死んだ他の人たちの因果をも受け継いでしまっているんだろう。
   例えば、事故がなければ、君はあの親戚の夫婦と出会うこともなかったかも知れない。
   それは本来、君の両親のどちらかに絡んでいた因果のはずだからね」

マミ「それって……だったら、あの事故は私のせいで……?」

QB「いいや、逆だよ。
   君のせいで事故が起きたんじゃない。事故があったから今の君になったんだ」

マミ「……」

QB「受け取り方は君次第だけど、それだけの才能を腐らせるのは勿体ないと僕は思うな」
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:54:37.21 ID:rclvwvqko

マミ「……」

マミ「私は……」



   ――ポゥ…



QB「――!」

マミ「え……? なに、この感覚……?」

QB「……。それは、魔女の気配だ」

マミ「魔女って……え?」

QB「君のソウルジェム――今は髪飾りの一部に変化しているけど、それが反応している。
   魔女の気配を捉えると、そうなるんだ」

マミ「そ、それってつまり……」

QB「ああ、近くにいる。――敵が」

マミ「……!」
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:55:31.98 ID:rclvwvqko

QB「どうする?」

マミ「ど、どうするって……どうすればいいの?」

QB「行って、倒す。それが魔法少女の使命だ。だけどいきなりの実戦は危険も大きい」

QB「どちらにしても、決めるのは君だよ。君が決めなくちゃいけない」

マミ「……」

マミ「もし……私が行かなかったら?」

QB「恐らく、誰かが襲われて、犠牲になる」

マミ「そう……」

   ギュッ…

マミ「――行くわ」





302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/22(水) 00:56:24.68 ID:rclvwvqko

以上

というわけで、今回から「マミさんレベル1編」に入ります
全部でたぶん四回か五回になる予定
マミさんスタターパックとでも呼んでくれ
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/22(水) 01:00:00.53 ID:F72+9Dq2o
乙 こういうの待ってました、良いよイイヨー



……そういえばまどマギにはもう一人、ずっと入院してたキャラが居たよね
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/22(水) 01:03:03.74 ID:loczDswfo
乙!
幼いマミさんもかわいいよマミさん
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/22(水) 01:04:03.98 ID:HTcHdO3ho
お疲れ様でした。
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/22(水) 01:09:35.43 ID:UoJ9Gtoyo
乙です
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/22(水) 01:59:51.64 ID:omn3o3vk0
乙でしたー
しかしひょんな所でアルテマシュートが
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/22(水) 06:38:48.60 ID:d8TM4mKFo
乙。こういうのを待ってた!!
続きも期待してる!
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/22(水) 08:03:47.89 ID:ISAxOg/Ro


マミさん、魔法少女になるってところか
そして相変わらずQBが原作仕様でワラタ

> それは君の、魔法少女としての魂そのものだからね」

これがそのままの意味だと勘づける人はまずいまい
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 08:59:11.50 ID:l2E5YsgDO
「それが君の、武士としての魂そのものだからね」つ刀
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:40:32.47 ID:P358bNAyo

>>303
あー、この病院は見滝原じゃないんだ
ドライブに出かけた先で事故ったなら搬送先も地元の病院ではなかろうよ、とね

投下
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:41:01.78 ID:P358bNAyo


   Lesson 2. 実際に魔女を倒してみよう


313 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:42:03.51 ID:P358bNAyo

   ◆

   キュウべえの先導に従って走る。
   辿り着いた先は、古い集合住宅だった。
   その敷地内の小さな公園の、砂場の上に、それは浮かび上がっていた。

   不可思議な形の紋様。結界の入り口だと彼は言った。
   ここから先は別世界だと。
   意を決するまでには十数秒を要した。

   息を整え、紋様をくぐる。
   とたんに、ソウルジェムを通して感じていた魔女の気配が、一気に濃くなった。
   軽いめまいを覚える。
   しかしそれ以上に、周りの景色に圧倒された。

   狂ったおもちゃ箱。

   一言で表すならそんな感じだ。
   着せ替え人形、クマのぬいぐるみ、プラスチックのシャベル、積み木、ミニカー……
   でたらめな大きさにリサイズされたさまざまなおもちゃがそこら中に散らばっていて、
   そしてそのどれもが欠損させられていた。

   ミルク飲み人形は顔がつぶされ、おままごと用のフライパンには大穴が開けられて、
   ゼンマイ仕掛けのワンちゃんは四肢をもぎ取られていた。

   だけど生理的な嫌悪感を抱いている暇はなかった。
   なぜなら――それらが一斉に襲いかかってきたからだ。
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:44:10.99 ID:P358bNAyo

   一も二もなく逃げ出した。
   落ち着いて、とキュウべえは言ってくれたけど、とても無理だった。
   とっさに彼を抱えていたことは幸運だったと言える。

   ぬいぐるみの爪をどうにか避けて、おはじきの雨をかいくぐる。
   ドミノの駒を飛び越えて、指人形を突き飛ばす。
   逃げて、逃げて、逃げて、逃げた。

   今にして思えば、無意識のうちに身体強化の魔法を使っていたのだろう。
   必死に走っておもちゃの群れを振り切って、途中に見つけた狭い通路に飛び込んだ。
   ここなら大型のおもちゃは入ってこれまい。その事実に、ようやく少しだけ安心する。
   だけど一つだけ大きな問題があった。

   一本道だ。引き返せない。

   魔女を倒せば結界は消えて元の世界に帰れる。きっとこの先にいるはず――
   キュウべえはそう言った。
   それはつまり、後ろのバケモノたちの親玉と戦わなければならないという意味でしかない。
   二度目の覚悟には数分を費やした。

   通路の先には扉があった。
   色は真っ黒……いや、焼け焦げていた。目の高さには何かの文字。
   それは見たこともない文字で、あるいは文字ではなく、ただの模様だったのかも知れない。
   いずれにせよ、読めなかったし、読みたくもなかった。

   もはやキュウべえに言われるまでもなく理解できた。
   この向こうに “魔女” がいる。
315 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:45:11.13 ID:P358bNAyo

   さらに数分をかけて息と気持ちを落ち着かせると、私は扉を押し開けた。
   一歩中に踏み入って、まず最初に、耳がその存在を捉えた。



   『オオオオォォォォォォォォ――――……』



   泣き声。
   重いのか低いのかよくわからない、とにかく耳障りな声。

   腕の中でキュウべえが小さく呻いた。苦しげな顔だ。
   耳の大きな彼には余計にこたえるのだろう。

   部屋の中央に目を向ける。
   声の主はそこにいた。

   あれは、なんと形容すればいいのだろう。

   マリア像、に似ていなくもない。
   だけどそう呼ぶには醜悪に過ぎた。
   目算で三メートルあまり。節くれだった腕の中に、生々しい屍肉のような赤子を抱いている。
   そして血の涙を流しながら、耳障りな声で哭いている。

   聖母を冒涜するかのようなその姿は、なるほど、魔女と呼ぶにふさわしい。
316 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:47:03.72 ID:P358bNAyo

   怖かった。
   逃げ出したかった。

   他のおもちゃたちみたいにすぐに襲ってくることこそなかったけれど、おぞましいその姿と
   泣き声は、私の意志を萎えさせるのに十分だった。

   それでも踏み止まれたのは、あの子がいたから。

   腕の中の小さな温もりが、私に勇気と闘志を与えてくれた。

マミ「……キュウべえ。離れていて」

   彼を、そっと足元に降ろし、促す。
   目の前の異形を見据える。
   とても醜い。この世に在ってはならない存在だと、心の深い部分で思う。

   魔女とは、呪いから生まれる存在。

   あの子の教え。
   漠然とした表現だったけど、こうして目にしてみると、よくわかる。

   子を亡くした母の嘆き。

   恐らくはそれだろう。それが、たぶん何人分か寄り集まって、形を為した。
   集合住宅という立地からして、何らかの悲劇の連鎖が起きたとも考えられる。

   ならば、ここで断ち切らなければ。私が終わらせてあげなければ。

   気付けば震えは止まっていた。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:48:10.16 ID:P358bNAyo

   深呼吸を一つ。

   さて、何はともあれまずは武器だ。
   戦うための武器。身を守るための武器。それがなくては始まらない。

   魔力を練る。
   変身の時と同じ要領で、イメージして、念じる。



マミ「――はぁっ!!」



  両手を前に突き出して、気合い一閃。
  瞬間、左右の掌から黄金の光がほとばしる。
  光は帯となり、魔女へと向かってまたたく間に伸びて、その胴体に巻きついた。
  それは強くしなやかな、リボンの形をとっていた。

マミ「これが、私の魔法……」

   しかし感動している暇は、やはりなかった。
   既に戦いは始まっていたのだ。

   こちらに無関心に泣き続けるだけだった魔女も、流石に攻撃を受けてまで黙ってはいない。
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:49:00.55 ID:P358bNAyo

   『オオオオオオォォォォォォォォ――!!』

   激しく身をよじって暴れ出す。
   たまらず引っぱられて、体勢を崩す。
   そこへ、これまでに倍する “声” が来た



   『ォ――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!』



マミ「うぁ――きゃあ!?」

   耳を押さえる間もなく――弾き飛ばされた。

   衝撃波。
   一定以上の力を備えた “音” は、もはや暴力と化す。
   両手のリボンは引きちぎられて、私自身は背後の壁に叩きつけられた。

マミ「う、うぅ……」

QB「――ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙――!!」

マミ「……! キュウべえ!?」

   まずい。
   これは、私に対しても危険な攻撃だけど、彼にとってはさらに致命的だ。
   少なくともその可能性がある。
319 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:49:52.25 ID:P358bNAyo

マミ「キュウべえ! あなたは逃げて!」

QB「……ぐうぅ……うぁぁぁぁ……マミぃ……!」

マミ「っ……!」

   駄目だ。聞こえていない。
   前足で両耳を押さえたまま、うずくまって動かない。

   リボンで防壁を張ることも考えたけど、そんなもので “音” を防げるわけがない。

   ならば。

マミ「――やあぁ!!」

   再び、手からリボンを放つ。
   今度は魔女の、顔に向かって。

   『――――――――――――――――…………ッッッッ!!?』

   巻きつける。
   途中で防げないなら、出どころを――口を、塞いでやればいい。

   『……ッ!! ……――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!』

マミ「っ……!」

QB「う、ぁ……? マミ……?」
320 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:50:58.81 ID:P358bNAyo

   キュウべえの悲鳴が止まった。
   よかった。上手くいったらしい。

   ただ……そうして安堵した瞬間、二の腕の皮膚が音を立て弾けた。

マミ「い゙ぁっ……!!」

   音の、破壊的な振動が、リボンを通してダイレクトに伝わってくる。
   腕のあちこちで皮が裂け、血がにじむ。
   血液全体が沸騰しているかのような感覚。

QB「マミ……マミ! 何をやっているんだ! 早く手を――」

マミ「だめ、よ……そんなの……っ!」

QB「マミ……」

   大丈夫。
   たぶん見た目ほどに痛くはない。変身しているせいか、不思議なほどに痛みは小さい。
   だから耐えられる。
   少なくともキュウべえが苦しんでいる姿を見せられるよりはずっとマシ。

   それに――それに。

   私はもう、魔法少女だから。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:51:56.13 ID:P358bNAyo

   そう。
   アルティのように、みんなを守る戦士になったんだ。
   お父さんやお母さんの命を受け継いだんだ。

   だから。


   (―― 私のお友だちは ――)
       「キュウべえのことを、傷つけさせはしないわ!」
                     (―― 返してもらうわ!――)

   (―― あなたたちみたいなのに――)
               「魔女なんかに、私は負けない!」
                         (―― 負けるもんですか!――)

   その思いを胸に、叫ぶ。



   「アルティマ……シュートおおおおおおおおおおおおおおおお――っ!!!!!」







322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:52:27.43 ID:P358bNAyo















   バアァァァンッ!!





   「――え?」






323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:53:38.69 ID:P358bNAyo



   ……結論から言うと、この渾身の魔法によって、私は魔女を倒すことができた。

   ただ、誤算が二つほど。

   一つは、リボンが爆発したこと。
   私としては、あのアニメの主人公がやっていたように、光線というかエネルギー波というか、
   そういった感じのものをイメージしたのだけれど、実際はそうはならなかった。
   解き放った魔力は空中ではなくリボンを直接つたって走り、先端で破裂したのだ。
   これによって頭部を破壊された魔女は、溶け崩れるようにして消滅した。

   そこまでは、まだよかった。
   そこからが、もう一つの誤算だ。

   リボンの爆発は先端だけにとどまらなかった。
   根元まで――つまり私の手元まで、爆竹のように連鎖爆発を起こしたのである。

   手を離すのはぎりぎりで間に合ったけど、衝撃で吹き飛ばされてしまい、
   またしても背後の壁に叩きつけられた私は、そのまま気を失った。

   目が覚めたときには結界は消えていて、私は元通りの砂場の上に横たわっていた。

   上から顔を覗き込んでいたキュウべえが、大丈夫かい、と聞いた。
   うん、と答えたけど、実際は全く大丈夫ではなかった。

   頭のてっぺんから足の先まで、全身のそこここがズキズキと痛い。
   その一方で、爆発に一番近かったはずの両腕の感覚が、ない。
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:54:45.10 ID:P358bNAyo

   自分はいったいどうなってしまっているのか。
   もしかしたらこのまま死んでしまうんじゃないのか。

   そんなことをぼんやりと考えていた。不思議と怖いとは思わなかった。



   「――うわぁ、ズタボロじゃん。グロっ」



   そんな私に投げかけられた、突然の声。
   続いてキュウべえの顔が目の前から消えて、その姿が視界に入る。

   黒。
   闇に溶け込むような、真っ黒なセーラー服。風に揺れる赤いリボンタイ。
   それが、二つ。

QB「……君たちか。来るとは思ってなかったよ」

   思い出した。
   彼は確かに言っていた。この街にいる魔法少女のことを――『彼女たち』 と。

   日付は変わり、五日目になっていた。




325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/23(木) 19:55:47.03 ID:P358bNAyo

以上

俺が書く「戦闘後のマミさん」が必ず怪我をしてるのはなんでだろうね
しかもどんどん酷くなる
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 20:33:12.93 ID:V7uJSCiso

それは愛だな
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/23(木) 20:34:17.75 ID:EsyfCvOuo
乙です
怪我したマミさんは大好物なんでもっとやってください
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/23(木) 22:23:14.38 ID:IdqP5Zv9o

マミさんは怪我して伸びる子だから問題ない
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/23(木) 22:25:31.09 ID:Xo5OJ8/bo
お疲れ様でした。

・・・・・・・・・・・・。
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/23(木) 23:07:55.29 ID:YmuHl+q70
乙でしたー

>闇に溶け込むような、真っ黒なセーラー服。風に揺れる赤いリボンタイ。
…もしや委員長??
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/23(木) 23:08:32.63 ID:8ANjGzLWo
乙っち乙マミ!



リボンで爆導索、大砲で光弾か 今さらながらこのSSのマミさんマジ試作三号機
そして……アルティマが何故使われなくなったかが気になる
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/24(金) 01:31:17.31 ID:n048popFo
乙です
戦えば傷がつく、当然のことだ
まだ完成してないしね!
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/25(土) 02:35:03.09 ID:SLvV0/+Jo
乙っちまどまど!
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 20:37:23.63 ID:1WXR7DM60


アルティマってダサいもんな
ティロじゃなくてそのままアルティマだったらマミの評判はどうなってたんだろうな
335 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/25(土) 23:23:06.94 ID:THP5M1HOP
FFTAの最強技アルテマショットとかあったから
そんなにダサいとは思わなかったけどな
336 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/25(土) 23:24:53.54 ID:gfrLCcqUo
FFにはアルテマウェポンってのもあるもんね




あんまり関係ないけど仮面ライダーレジェンドアークの必殺は「ウルティマデッドエンド」だねマミさん
今にして思えば奴の翼はほむほむウィングみたいだね
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:46:52.83 ID:tU4ywx07o

投下
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:47:41.45 ID:tU4ywx07o


   Lesson 3. 先輩の話を聞いてみよう


339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:48:48.85 ID:tU4ywx07o

   ◆

   五日目。

   お見舞いのおばさまたちもホテルに帰ったあとの夕刻。
   病院の屋上から、私は、オレンジ色に染まる街の景色をぼんやりと眺めていた。
   この景色も今日で見納めだ。

マミ「ねぇ、キュウべえ」

QB「なんだい、マミ?」

マミ「……あの人たちの言うこと、聞かなきゃだめなの?」

   あの人たち。
   夕べ、魔女を倒した後の公園に現れた、二人の魔法少女。
   佐木ハルカさんと、三園カナエさん。
   市内の同じ高校に通う一年生だと、そう名乗った。

   悪い人たちではなかった。
   戦いで傷ついた私の体を治してくれたのもあの人たちだ。

   だけど、あれは……


340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:49:49.42 ID:tU4ywx07o



   ◆

マミ「あの……ありがとうございました」 ペコリ

ハルカ「別にいいわ。代わりにこれ、もらうから」

マミ「え?」

ハルカ「なに? 文句あるの? ここは私たちの縄張りで、おまけに怪我まで治してあげたのに」

マミ「い、いえ。そうじゃなくて……なんなんですか、その黒いの?」

ハルカ「え?」

ハルカ「……って、はあっ!?」

QB「……」
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:50:34.30 ID:tU4ywx07o

ハルカ「ちょっとキュゥべえ、あんたどういうことよ。グリフシードのこと教えてないの?」

QB「教えたよ。ただ彼女は今回が初めてだから、実物を見たことがないだけさ」

ハルカ「……あっそ」

マミ「……?」

QB「マミ、あれはグリフシード。
   前にも説明したとおり、ソウルジェムの輝きを維持するために必要となるものだよ」

マミ「あれが……」

ハルカ「返さないわよ」

マミ「え? あ、はい……」

QB「……」

ハルカ「……なによ、キュゥべえ。何か文句あるの?」

QB「いいや。魔法少女同士の問題に僕が口を出すことはないよ。
   お互いに納得しているならなおさらさ」

ハルカ「……フン」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:51:25.55 ID:tU4ywx07o

QB「ただ、それとは別に一つお願いしたいことがあるんだ?」

ハルカ「……お願い? あんたが?」

QB「ああ。マミにアドバイスをしてあげてほしい。魔法少女の先輩としてね」

ハルカ「アドバイスぅ……?」

ハルカ「……」 チラ

カナエ「……」

ハルカ「……ずいぶんと優しいこと言うじゃない。そんなにその子が特別ってわけ?」

マミ「え……?」

ハルカ「最初はこんな小さな子を引っ張り込むなんて、って思ったけど、納得だわ。
    よく見りゃ大した魔力じゃない。私たちみたいな雑魚とは違うってわけね」

QB「それは違うよ。むしろこうするのが通例なんだ。頼める相手がいるときは頼むのが、ね」

ハルカ「よく言うわ……香奈枝のことは放ったらかしにしたくせに!」

QB「……」

QB「頼める相手が誰もいないときは、そうなるよ。巡りあわせが悪かったんだ」

ハルカ「あんたのそういうとこ、ほんとムカつく……!」
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:52:09.47 ID:tU4ywx07o

   吐き捨てるように言って、佐木さんはキュウべえから目をそらす。
   どうやら彼女は彼のことを嫌っているらしい。
   三園さんの方も……こちらはむしろ、怯えているようにも見えた。
   どうしてだろう。
   こんなにも可愛くて、優しいのに。
   おかげで、逆に私の方が彼女たちを嫌いになりそうだった。

ハルカ「……まぁいいけど、見返りはあるんでしょうね?」

QB「ないよ」

ハルカ「…………ふざけてんの?」

QB「ふざけてなんかいないよ。見返りを用意できないからこそ 『お願い』 なのさ」

ハルカ「話にならない……」

カナエ「……」

カナエ「……」 クイッ

ハルカ「ん? なに、香奈枝?」

カナエ「……」 ボソボソ

ハルカ「うん。……え?」
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:53:07.23 ID:tU4ywx07o

カナエ「……」 ボソボソ

ハルカ「……わかってるわよ。でもさ、」

カナエ「……」 ボソボソボソ

ハルカ「それはそうだけど、だからって、」

カナエ「……」 ボソボソ

ハルカ「……………………ああ、もう。わかったわよ……ったく、あんたって子は……」

カナエ「……」 ニコ…

マミ「……」

   なんだろう、この会話。
   キュウべえに対するのとは正反対に甘ったるい声でささやく佐木さんと、
   彼女にぴったりとくっついて耳打ちする三園さん。
   仲睦ましいとも言えるはずの光景が、なんだかとても――気味が悪かった。


ハルカ「ハァ……いいわ。やってやるわよ。アドバイスだけでいいのよね?」

QB「待ってくれ。できれば君だけではなく、カナエの方からも教えてあげてほしい」
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:54:20.34 ID:tU4ywx07o

ハルカ「は? なに言ってんの? 香奈枝は――」

QB「わかっているよ。彼女が君としか会話ができないことは。
   ただ、君も見ていて知っているかもしれないけど、マミの武器はリボンなんだ」

ハルカ「……だから?」

QB「カナエの武器によく似ているだろう? だから実演して見せてあげられないかと思って」

ハルカ「お断りよ」

QB「……。しかし、」

ハルカ「しつこい! この子にそんな、無駄な魔力なんか一切使わせない。これだけは譲れないわ。
    見本が欲しけりゃクモ男の映画でも見せとけばいいのよ」

QB「……」

カナエ「……」 ボソ…

ハルカ「ダメよ。こればっかりは、あんたが何と言おうとダメ」

カナエ「……」

QB「……。わかったよ。僕も無理強いはできないしね。アドバイスだけお願いするよ」

346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:55:22.77 ID:tU4ywx07o

QB「マミも、それでいいかい?」

マミ「え、あ……うん」

   正直、どっちでもよかった。
   というより、はっきりと気乗りがしなかった。
   “魔法少女” のイメージからほど遠く、病んだような雰囲気をまとう彼女たちから
   何かを学びたくなんてなかった。

   実際、その教えの内容は酷いものだった。



347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:56:27.98 ID:tU4ywx07o



ハルカ「使い魔は無視しなさい。
    向かってくる奴や邪魔してくる奴以外は放っておくの。魔力の無駄だから」

ハルカ「大事なのはグリーフシードよ。できることなら常に最低一つはキープしてなさい」

ハルカ「人助けなんて十年早いわ。まず自分。何より自分が生き延びること。全てはそれからよ」

ハルカ「いざ戦いとなれば無傷とはいかない。だけどジェムさえ無事ならどうとでもなる」

ハルカ「ところで、ソウルジェムの特性については……聞いてないよねぇ?」

ハルカ「……え?」

ハルカ「……ふーん。へーえ。聞いてるんだ。……それでよく平気な顔してられるよね」

ハルカ「……ハッ。安全、安全ね。そりゃ確かに安全だわ」

ハルカ「まぁいいわ。わかってるなら――ソレだけはなんとしても守り抜きなさい」

ハルカ「いざとなれば手足の一本ぐらいくれてやればいい。どうせまた生えてくるんだから」

ハルカ「その気になれば、首を落とされたって生きてられるかもよ? アハハ」


348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:58:27.37 ID:tU4ywx07o

   独善的で排他的。
   とてもじゃないけど聞くに堪えなかった。
   特に最後のは、冗談にしても趣味が悪すぎる。

   だけど我慢して、終わりまで聞いた。
   お礼を言って、平和的に別れた。
   せっかくキュウべえが頼んでくれたのを台無しにしたくはなかったから。

   だけどそれでも、抵抗感が消えたわけじゃない。
   私だって、当時でもうすでに高学年。創作と現実の区別ぐらいはついていた。
   だけどあんなのが “魔法少女” の現実だなんて。
   そんなの、私は、

   私は……


349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:59:13.47 ID:tU4ywx07o





350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 20:59:44.70 ID:tU4ywx07o


   Lesson 4. 目標を設定してみよう


351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:01:01.75 ID:tU4ywx07o

   ◆

QB「そうだね。ハルカの言ったことの、その全てを守る必要はないよ」

マミ「え?」

QB「マミ。君は、魔法少女とはどういうものだと思う?」

マミ「えっと……『アルティ』 みたいなのだと思ってたけど……あれはお話だし……
   でも、佐木さんたちみたいなのは、何か違うと思う。だから――」

QB「……」

マミ「……よく、わからないわ」

QB「そうだね」

QB「実は、僕も明確な答えというものは持っていないんだよ」

マミ「えっ?」

QB「前にも言ったけど、魔法少女は世界中に大勢いる。そして、その中の誰ひとりとして、
   他の誰かと同じだっていう子はいないんだ。
   もちろんある程度の共通点はあるし、分類することもできる。
   でもそれも、どこで線を引くかによって結果は大きく変わってしまう」

QB「そんな中から、これが正解だと一つを選ぶなんて、不可能なのさ」
352 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:01:57.74 ID:tU4ywx07o

マミ「で、でも、そんなのおかしいわ。魔法少女はあなたが生み出しているんでしょう?
   それなのに、理想もなく、勝手にやってればいいなんて、変よ」

QB「いや。理想なら、あるよ」

マミ「だったら、それを教えてよ」



QB「生きていてほしい」



マミ「……!?」

QB「魔女に殺されて終わるなんてことなく、望むままに魔法を使って、生きていてほしい」

QB「僕が魔法少女に何かを望むとすれば、それだけだよ」

マミ「……」

QB「極端なことを言えばね、そのためになら魔女との戦いさえ放棄してもらって構わないんだ」

マミ「え……?」

QB「マミ。君も、敵わない相手だと思ったら逃げてもいいんだよ」
353 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:03:19.07 ID:tU4ywx07o

マミ「どうして……そんな……キュウべえ……」

QB「もちろん、普通はここまで言わないさ。でも君の場合は少し例外……」

QB「いや、特別と言うべきかな?」

マミ「特別……?」

QB「そもそもの契約がほとんど事後承諾に近く、合意を得たとは言い切れないというのが一つ」

QB「加えて、あの自爆まがいの攻撃方法だ」

QB「昨日はどうにか生き延びられたけど、次はどうなるかわからない。
   それなのに無理に戦わせたりなんかしたら、お互いに奇跡と命の無駄撃ちで終わる恐れが
   大きい。そんなことになるぐらいなら、とね」

マミ「でも、でも……だったら魔女はどうするの? 放っておいたらあなただって困るんでしょう?」

QB「困らないよ」

マミ「え……え?」

QB「魔女が襲うのは人間だけだ。僕らは別に困らない」

マミ「そんな……だったらどうして、あなたはこんなことを……」

QB「それが正しいことだと判断したからさ。世界と、その未来のためにね」

マミ「……」

マミ「正しい、こと……」
354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:04:24.86 ID:tU4ywx07o

QB「……。話が逸れたね」

マミ「え?」

QB「ハルカの教えについてさ」

マミ「あ……う、うん」

QB「彼女の在り方は、魔法少女は生きるべきという一点に限っては、肯定できるものだ」

QB「ただ、少しばかり極端すぎる」

マミ「極端……?」

QB「ああ。自分たち “だけ” が生き延びればいいと考えてしまっているんだ。
   これは少数のために多数を切り捨て、現在のために未来を擦り減らす考え方だ。
   僕らの思想とはズレがある」

QB「彼女の言いつけを全て守る必要がないというのは、そういう意味さ」

マミ「そ、そう……」

マミ「……そうよね。そうよ。あんなのは絶対、間違ってるわ」

QB「僕としては、間違いだとまでは言えないけどね。守るべき部分もあるだろうから」

マミ「……『命を大事に』?」

QB「そういうこと」
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:05:24.87 ID:tU4ywx07o

マミ「……」

マミ「私は……」

QB「君がどういう魔法少女を目指すかは、君の自由だし、君にしか決められないことだ」

QB「だけど焦る必要はないさ。魔法の練習をしながら、ゆっくりと決めればいい」
   
マミ「……いいえ」

QB「うん?」

マミ「魔法の練習はちゃんとするわ。でも、どんな魔法少女になるかは、もう決めた」

QB「……。君は話を聞いていたのかい? 焦ることは――」

マミ「焦ってなんかないわ。私がなりたい “魔法少女” は、一つだけなの」

QB「……」

マミ「だから――キュウべえ。私と契約をやり直して」

QB「……」

QB「――え? いや、そんなの無理だよ」

マミ「契約は不完全だって、あなたが言ったんじゃない。だから完全にやり直させてよ」
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:06:59.93 ID:tU4ywx07o

QB「無理なものは無理だよ。確かに手順は完全と言いにくいものだったけど、契約そのものは
   問題なく済んでいるんだ。やり直しなんて不可能さ」

マミ「だからその、手順を完全に踏ませてよ」

QB「だから無理だと……」

マミ「別の願いを叶えてなんて言わないわ。形をなぞるだけでいいの」

QB「……」

マミ「真似ごとでいいの。ねぇ、あなたは契約のとき、普通ならどうやるの?」

QB「……。相手の願いを聞いて、それを叶えてあげるから魔法少女になってって、言うよ」

マミ「じゃあ、そう言って?」

QB「……わけがわからないよ。そんなことをして何の意味があるんだい?」

マミ「いいからっ」

QB「フゥ……わかった。セリフを言うだけでいいんだね?」

マミ「うん」

QB「じゃあ……最初から」
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:08:03.88 ID:tU4ywx07o

QB「『こんにちは、巴マミ。僕の名前はキュゥべえ。今日は君にお願いがあって来たんだ』」

マミ「ふふっ、そこからなんだ。――『ええ、こんにちは。よろしくね』」

QB「……。『君には、僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ』」

QB「『僕は君の願いをなんでもひとつ、叶えてあげられる。どんな奇跡でも構わない』」

QB「『その代わり、君は、魔女という怪物と戦わなくてはならない』」

QB「『その定めを受け入れてまで、叶えたい願いがあるのなら、さぁ――聞かせてごらん?』」

マミ「……」 スゥ… ハァ…



マミ「私は――生きたい。生きて、その命を正しいことに使いたい」



QB「……」

マミ「……キュウべえ?」

QB「あぁ、うん。『――契約は成立だ。君の祈りはエントロピーを凌駕した』」

QB「――と、ここでソウルジェムを取り出す。交わすべき言葉はこれで全てだ」

マミ「そう……」
358 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:08:48.46 ID:tU4ywx07o

   シュイーン

マミ「……」

マミ「……」 ギュッ…

マミ「ありがとう、キュウべえ」

QB「……。やっぱり、わからないよ。こんなことに意味があるとは思えない」

マミ「これはね、キュウべえ。誓いなの」

QB「誓い?」

マミ「ええ。これで私は、私自身の意思で、正式に魔法少女になった」

マミ「だからあなたは負い目なんて感じなくていい。戦わなくていいなんて、もう言わせない」

QB「……」

QB「なるほど……」

マミ「とにかく、そういうことだから。これからよろしくね、キュウべえ!」

QB「ああ、よろしく」





359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/26(日) 21:11:18.45 ID:tU4ywx07o

五日目終了

……なんだろうな、このやっちまった感
マミらせるよりもエロいことするよりも遥かに酷いことをさせてしまった、ような


あと、キュゥべえは魔女化することを「死」とは考えてはいないということでどうか一つ
本編でクリームヒルトのことを「今のまどか」って言ってたし
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/06/26(日) 21:14:34.73 ID:zC0t+B3AO
乙乙

たしかに死んだらエネルギー回収できないもんね
魔法少女から魔女だし、「成長」でもしっくりくる
しかし拘束魔法にクモ男、か……
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/26(日) 21:16:19.19 ID:C4NZEvDuo
ここのべぇさんは一番「それっぽい」んだよなぁ
本当の事しか言わないし……


あぁ畜生、引きちぎってやりたい(褒め言葉)
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/26(日) 21:16:29.60 ID:IQdm5S3To
乙。
マミさん、「忠言耳に痛し」、ですぜ
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/26(日) 21:19:56.98 ID:DTDbdhBXo
お疲れ様でした。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/06/26(日) 22:37:12.49 ID:+YJ3X75Oo
アニメ本編の時間軸通りに進むなら確実にバッドエンドか・・・
やるせないな


マミさんが魔女に殺されたのはQB的にはやっぱり痛手だったのかな
それともまどかがいたからもうどうでもよかったとか・・・
いずれにせよやるせないな
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/26(日) 23:12:40.43 ID:LMgQGUHYo


マミさんの気高さと優しさは世界にとって貴重だけど
世界はそんなに優しい仕組みを用意していないってのが虚淵世界だよな

このQBを見るといつもこういう言葉を思い出す
「物は言いよう」
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/26(日) 23:13:57.97 ID:LMgQGUHYo


マミさんの気高さと優しさは世界にとって貴重だけど
世界はそんなに優しい仕組みを用意していないってのが虚淵世界だよな

このQBを見るといつもこういう言葉を思い出す
「物は言いよう」
367 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/27(月) 02:46:10.52 ID:IknHwm8oo
乙っちまどまど
このQBは原作みたいだ
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/27(月) 03:03:35.81 ID:uTqagQtEo

この2者の認識の違いが原作らしくて哀しいな。
マミさんはQB信頼し過ぎだよ。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:39:34.71 ID:Hyl84B0Mo

投下
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:40:12.44 ID:Hyl84B0Mo



   Lesson 5. 休息はしっかり取ろう


371 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:41:31.08 ID:Hyl84B0Mo



   だけれど、現実は厳しかった。

   正しく生きること。
   その困難さは、当時小学生だった私の想像をはるかに上回っていた。

   友達に嘘の言い訳をした。
   私的なことに魔法を使った。
   酷い怪我を何度も負った。

   助けた人から、逆に奇異の視線を向けられたり、罵倒されたりした。
   おばさまたちが雇ってくれたお手伝いさんに八つ当たりをした。
   魔女退治を言い訳に宿題をさぼった。

   助けられたはずの人を助けられなかった。
   仲間のはずの魔法少女と傷付け合った。
   守るべき範囲を狭めて、その外のことは切り捨てた。

   数え上げたらきりがない。
   呆れるぐらいたくさんの挫折と後悔を味わいながら、
   自分は “アルティ” にはなれないのだと何度も思い知らされながら、
   それでも挫けることなく今まで戦い抜くことができたのは、

   ――やはり、あの子のおかげなんだと思う。


372 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:42:22.55 ID:Hyl84B0Mo

   ◆

マミ「……ん……」

   六日目は、退院と各種の手続きと、半日がかりの帰宅で終わった。
   そして今は、七日目の朝。
   私は、一週間ぶりに自分の部屋の自分のベッドの上で、目を覚ました。

マミ「……」

   かすかな違和感があった。
   だけど何がおかしいのかは分からない。
   半分寝ぼけたまま、自動的に部屋を出て、廊下を歩き、リビングへと足を踏み入れた。

   私は、朝が弱い。
   起きてから脳が活性化するまでにかなりの時間を必要とするのだ。
   だから、

マミ「……おはよぉ……」

   何も考えず、習慣のままに。
   挨拶が口を突いて出た。

マミ「……?」

   違和感が増す。
   そして気付く。その正体に。
373 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:43:23.82 ID:Hyl84B0Mo

   静けさ。

   誰もいないことによる無音。挨拶への返事も聞こえてこない。

   当り前だ。
   この家にはもう、父も母もいないのだから。
   二度と帰ってくることはないのだから。

マミ「……――!」

   目が覚めた。

   ここ一週間に起こった非日常に押されて、意識の隅に追いやられていた事実が、
   急速に実感を伴って胸いっぱいに広がった。
   喉の奥から、込み上げてきて、止まらない。

マミ「――ひぅっ」

マミ「う」

マミ「ぅあ、あ」

マミ「あ、あぁ、あぁぁぁ」

マミ「あぁ――ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:44:12.74 ID:Hyl84B0Mo

   泣いた。

   この一週間で、私はもう、何度も泣いていた。
   だけど心から、本当に泣いたのは、これが初めてなのだと思う。

マミ「ああああああああっ!! ああああっ!!」

マミ「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

   膝を折り、拳を床にこすりつけて、涙と鼻水をぼたぼたとこぼして。
   泣いて、泣いて、泣いて、泣いた。

マミ「うあああっ! おどうざん!! おがあざぁぁん!! うああああああああああ!!」

   パジャマの胸元を握りしめ、愛しい人たちを求めて叫ぶ。
   だけど、いない。
   何も感じ取れない。
   ここにあるはずの、あの事故と契約によって取り込まれたという、彼らの運命の残滓。
   それを感じ取ることができない。

   からっぽだった。

   身体の中から、何もかもが、根こそぎなくなってしまったようだった。

   がらんどうな私の中に、悲しみだけが満ちていた。


375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:45:03.47 ID:Hyl84B0Mo

   この日が休日だったのは幸いだった。
   休日のドライブからちょうど一週間後だったのだから、当然といえば当然だったけど。

   お昼のちょっと手前ぐらいに、涙はようやく止まってくれた。

マミ「……」

マミ「……うぅ……」

マミ「ぐすっ……」

マミ「……」

マミ「……」

マミ「……」









   「落ち着いたかい?」
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:45:59.08 ID:Hyl84B0Mo

マミ「――!?」 ビクッ

QB「やぁ、マミ」

マミ「キュウ、べえ……?」

QB「うん、僕だよ。ところで落ち着いたのなら早速で悪いんだけど――」

マミ「キュウべえ! キュウべえぇっ!!」

   ギュウッ!!

QB「きゅいっ!?」

マミ「キュウべえっ! わたし、わたしぃ……!」

QB「マ、マミ……くるし……」

マミ「うわあああああああああああああん!!」

QB「――――……」


377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:46:50.45 ID:Hyl84B0Mo



QB「やれやれ、潰されるかと思ったよ」

マミ「ご、ごめんなさい……」

QB「いいや、いいよ。こうして無事だったわけだし」

マミ「……」

QB「それに、来るタイミングを間違えちゃった僕にも落ち度はあるわけだし」

マミ「……そんなこと」

マミ「……私は、嬉しかったわ。あなたが来てくれて、本当に嬉しかった」

QB「……。そうかい」

マミ「うん」

QB「まぁ、君がいいというのなら、それでいいさ」

QB「ところで、気分は落ち着いたようだけど、体調の方は問題ないかい?」

マミ「え? あ、うん。別に――」

   グゥ〜……
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:47:46.17 ID:Hyl84B0Mo

マミ「あ……」

QB「……」

マミ「……っ!」 カァァァッ!!

QB「お腹がすいているのかい?」

マミ「そ、そんなこと……!」

   グゥ〜……キュルル

マミ「……〜〜〜〜ッ!!」

QB「恥ずかしがることじゃないさ」

マミ「うぅ……」

QB「見たところ、朝食もまだなんだろう? 待っているから先に済ませてしまうといい。
   僕の方はそう急ぐ用事でもないからね」

マミ「……」

マミ「……」 チラッ

QB「うん? なんだい?」
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:48:38.69 ID:Hyl84B0Mo

マミ「その……キュウべえはもう、朝ごはん、食べちゃった……?」

QB「……」

QB「いいや。ちょうど食べ損ねたところさ」

マミ「ほ、ほんとに?」

QB「嘘なんかつかないよ」

マミ「だったら……だったら、もしよかったらなんだけど、キュウべえも一緒に、食べない?」

QB「……。そうだね、それじゃあご馳走になろうかな」

マミ「……!」 パアァァッ!!

マミ「ありがとう! すぐに準備するわ!」 スタタタタッ

QB「……」

QB「どうしてこっちがお礼を言われるんだろう?」


380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:49:59.58 ID:Hyl84B0Mo



マミ「ごちそうさま」

QB「ごちそうさま」

マミ「ふふっ、お粗末さまでした」

QB「美味しかったよ。マミは料理が上手なんだね」

マミ「そ、そうかな……。だったら、ねえ、食後のお茶もいかがかしら?」

QB「いいね。いただくよ」

マミ「ありがとっ。じゃ、お湯沸かすからちょっと待っててねっ」

QB「うん」

QB「……。やっぱり、こちらがお礼を言われる理由がわからないな」


381 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:51:20.44 ID:Hyl84B0Mo



マミ「……こうやって、少し蒸らすのがコツなの」

QB「ふぅん」

マミ「さん、にぃ、いち……――よしっ」

   コポコポコポ…

マミ「さ、召し上がれ」

QB「いただきます」

QB「……」

マミ「……」

QB「……うん。おいしいよ」

マミ「ほんとう?」

QB「だから、嘘なんか言わないさ。これだけ本格的なものを飲んだのは久しぶりだよ」

マミ「そう。よかった。これはね、おかぁ――さん、に…………」

マミ「……」

マミ「……お母さんに、教えてもらったの」
382 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:52:23.84 ID:Hyl84B0Mo

マミ「……」 グスッ

QB「……」

マミ「……ごめんなさい。大丈夫だから」

QB「そうかい」

マミ「うん……」 ゴシゴシ

マミ「それでその、えっと……何か、用事があって来たのよね?」

QB「ああ。少し……いや、かなり、かな。残念な報告がある」

マミ「……なに?」

QB「昨日の去り際に交わした約束を、果たせなくなった」

マミ「え? えっと……この街の魔法少女を紹介してくれるって、あれのこと?」

QB「ああ、それだ」

マミ「……何かあったの?」

QB「彼女は死んだよ」
383 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:53:48.65 ID:Hyl84B0Mo

マミ「へ……」

QB「今日の未明だ。魔女と相討ちになった」

QB「三体の魔女を道連れに、自爆した」

QB「彼女のもとで魔法の練習をしながら、という話は、無理になってしまったよ」

マミ「そ、そんな……」

QB「この街には霊脈――魔女の通り道のようなものだけど、それがいくつかあってね。
   その一部がここ数日で活性化して、通常より多くの魔女が出現していたんだ。
   彼女はそれに対処しきれなくなった」

QB「幸い、今はもう落ち着いているけど、魔女はまだいくらか残ってる」

QB「はっきり言って、新人の君にはかなり厳しい状況だ。
   近くの街に応援を呼び掛けてはいるけど、来てくれる保証はない」

QB「……どうする?」

マミ「ど、どうする、って……」

QB「……」

マミ「……」
384 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:55:06.35 ID:Hyl84B0Mo

マミ「ええと…………その、人は、どんな人だったの?」

QB「……」

QB「とても無口な子だった」

QB「カメラが好きで、口を開く代わりにシャッターを切るような子だった」

QB「彼女の部屋の壁にはこの街の風景写真が何枚も貼られている」

QB「中には僕を撮ろうとして失敗したものもある。僕は写真には写らないからね」

QB「失敗作をなぜ貼るのかと聞いてみたけど……明確な答えは得られなかったな」

QB「人間のやることはわからないよ」

マミ「……」

QB「それ以外には、特筆すべき点はないね。魔法少女としては平均的だった」

マミ「……仲、悪かったの?」

QB「どうだろうね。何しろ本当に喋らない子だったから。
   彼女が僕のことをどう思っていたのかは、今となってはもう、確かめようもない」

マミ「キュウべえは、悲しくは、ないの? その人が死んで」

QB「……。そう、見えるかい?」

マミ「……ごめんなさい」
385 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:56:00.88 ID:Hyl84B0Mo

QB「謝ることはないさ」

QB「ただ、そうだなぁ……僕のことは知らないけど、この街のことは好きだと言っていたよ」

マミ「……守ろうと、していた?」

QB「きっとね」

マミ「……」

   ギュッ…



マミ「――じゃあ、私が後を継ぐ」



QB「……。いいんだね?」

マミ「ええ。どこまでできるかわからないけど、決めたんだもの」

QB「わかった。僕もできる限りサポートするよ」

マミ「……ありがとう、キュウべえ」


386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:56:47.82 ID:Hyl84B0Mo

   ◆

   キュウべえ。
   私の愛しいあの子。

   たまにちょっぴりイジワルで、デリカシーの足りないところもあったけど、
   それでも彼は、私の大切なお友だちで、
   恩人で、仲間で、家族で、パートナーだった。

   あの子がそばにいてくれたから、私は今日まで戦い抜くことができたんだ。

   だから、

























   だから私は、あの女を許さない。
387 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:57:34.52 ID:Hyl84B0Mo

   黒い魔法少女。

   暁美ほむら。



   あの女だけは、絶対に許さない。





388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/29(水) 23:58:19.28 ID:Hyl84B0Mo

以上
号泣シーンを書いてるときにヤバいぐらい興奮してた俺はもうだめかもしれない

さておき、レベル1編はこれにて終了、次回から最終章に入ります





マミ「そう。始まりが終わり、終わりが始まるのよ」

QB「なんで言い直したんだい?」
389 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 23:59:22.20 ID:CC4NupAxo
乙っち乙マミ


……そうか、本編マミさん前史だったか
390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/06/29(水) 23:59:33.83 ID:+d6N4Ai5o
お疲れ様でした
391 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 00:41:25.18 ID:+wnCur1Ho

ひそかにおりこの時間軸だと期待してたが…
そうか…最終週(本編)の時間軸だったか……
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/06/30(木) 01:30:46.88 ID:bB6g0mY3o
乙っちまどまど!
面白いよ、過去を知るのは面白いよ
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/06/30(木) 01:36:13.37 ID:t/OvUdXBo


最初の方は何事も上手くいかないだろうし、本編のマミさんになるまで色々失敗したんだろうなあ
QBさん、仕事してただけなのにマミさんのハートをがっちりキャッチか
クソっ!クソっ!
394 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/06/30(木) 23:03:42.56 ID:nD1GFqXRo
うわあ……このマミさんがマミられるとか、信じたくないでござるぅ……

ところで、
>>379
>マミ「その……キュウべえはもう、朝ごはん、食べちゃった……?」

>QB「……」

>QB「いいや。ちょうど食べ損ねたところさ」

マミさんのソウルジェムをか、このゲス野郎が
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/06/30(木) 23:57:31.17 ID:dTcjc4+ko
>>394
ちゃうちゃう
カメラの子に付いてた個体が自爆に巻き込まれて消しとんじまったから
その死体を喰えなかったってこと
わかりにくかったかね
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/03(日) 02:35:12.30 ID:I9L9z1RNo
むしろそこはカメラの子の魔女化エネルギーのほうがゲスっぽいぜ
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/03(日) 23:59:17.13 ID:nX02hXZ0o
>>395
なんだ
てっきり泣いてるマミさんを見て、
「やった! こんなに早く絶望してくれるなんて、嬉しい誤算だよ!」
とでも考えてやがったのかと
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/04(月) 22:34:08.49 ID:5tD26aPpo
それは考えてやがっただろうがね

ついでにいうと、濁り切る前に泣きやんじまったから顔を出したら喜ばれてしまって
「ちくしょうタイミング間違えた!」とか思いやがったんだろうがね、
それとこれ、エネルギーの回収とカロリーの摂取は別のことだと解釈しておりますゆえ


追伸
明日ぐらいに十三話を投下できるかなぁといった状況
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:43:49.50 ID:sCoB9TV+o

投下
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:44:37.31 ID:sCoB9TV+o



マミ「〜〜♪」

   シャッシャ シャッシャ
   ブォォォォー…

   ――クルリンッ

マミ「うん、今日もばっちり」

マミ「それじゃあ、キュウべえ。行ってき――あら?」

QB「……」

マミ「キュウべえ? この寒いのに、ベランダなんかで何をしているの?」

QB「……。マミ」

マミ「う、うん。なぁに?」

QB「今日、学校が終わったら、パトロールの前に少し話がある」

マミ「なに? どうしたの?」

QB「霊脈が開いた」



QB「この街に、ワルプルギスの夜が来る」


401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:45:05.92 ID:sCoB9TV+o





   第十三話  既知の脅威と未知の希望





402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:46:00.52 ID:sCoB9TV+o



   カチ、カチ…

マミ(『ワルプルギスの夜』……これね)

マミ(えっと、なになに……? 『ヨーロッパで広く行われる行事のこと』)

マミ(『ドイツでは、ヴァルプルギス・ナハト、あるいはヘクセン・ナハトと呼ばれ、
   “魔女の夜” を意味する』)

マミ(『その夜には、魔女による宴が開かれる』)

マミ(……)

マミ(魔女たちの宴、か……なんとも不吉な響きね)

マミ(そして、霊脈)

マミ(魔女の通り道、だったかしら)

マミ(……嫌な予感しかしないわね)

マミ(恐らくは、百鬼夜行のようなもの。この街の先代魔法少女を圧殺したという、それ)

マミ(私一人で、どうにかなるの……?)


403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:46:58.37 ID:sCoB9TV+o



QB「無理だ」

マミ「……」

QB「君一人では勝てないよ」

マミ「で、でも、私のことを現役最強だってあなた言ったじゃない。
   それって今活動してる魔法少女の中で私が一番強いってことでしょう?
   なのに無理だっていうの?」

QB「ああ。無理だ」

マミ「そ……」

QB「マミ、君は台風を倒せるかい?」

マミ「え?」

QB「火山の噴火や、地震、津波などでもいい。そういった災害を一人でどうにかできるかい?」

マミ「そ、そんなの……無理だけど……」

QB「そういうレベルの相手なんだよ、“彼女” は」

QB「あれはもはや災害だ。実際、一般人には災害として認識されるしね」

マミ「え? ど、どういうこと?」
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:48:01.06 ID:sCoB9TV+o

QB「歴史に名を残している大災害のうちいくつかは、“彼女” によって引き起こされたものなんだ。
   ここ百年以内でいえば、イタリアの南端を襲った津波や、インドの大竜巻などがそうだ」

マミ「ま、待って? 三年前は、そんなの何も……」

QB「……」

QB「そうか、なるほど。すまないね。どうやら勘違いさせてしまったらしい」

マミ「……え?」

QB「三年前に起こったのは既存の霊脈の 『活性化』 だ。これによって起こったことは、
   君が推測したとおり、魔女の大量出現。百鬼夜行というのは言い得て妙だよ」

QB「対して今回は、これまでになかった道が新たに開かれた」

QB「“彼女”――ワルプルギスの夜のための専用トンネルがね」

マミ「……」

QB「『ワルプルギスの夜』 というのは、“彼女” につけられた便宜上の呼び名だよ。
   その正体は、もはや僕らにもわからない」

QB「複数の魔女の集合体じゃないかと思ってはいるけど……まぁ、不明だね」
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:49:11.09 ID:sCoB9TV+o

マミ「でも、どうしてそんなものが……」

QB「悪いけど、それもわからない。
   霊脈というものについても、僕らも全てを把握しているわけじゃないんだ。
   ただ、これまでに観測されたデータから見て、間違ってはいないはずだ」

QB「遅くとも半年以内に、必ず来る」

マミ「半年……」

QB「半年以内、だよ。楽観視しすぎないようにね」

マミ「楽観なんて……」

QB「……」

マミ「どうにか、ならないの? 出てくるのがわかっているなら、例えばその穴をふさぐとか」

QB「……。できなくはない。前例もある」

マミ「だったら!」

QB「ただし、どこかよそに噴き出すことになる。抑え込まれた反動で、さらに強力になって」

マミ「……」

QB「この街 “だけ” を守るなら、それが最上手だろうね」

マミ「うぅ……」
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:50:26.98 ID:sCoB9TV+o

マミ「どうすればいいの……?」

QB「逃げることだよ。それが最善だ」

マミ「そんな! 街の人たちを見捨てろって言うの!?」

QB「……。現在の人類の科学なら、表われる災害を事前に察知することができるだろう。
   政府が避難命令を出すはずだよ」

マミ「だからって……!」

QB「何度も言うけど、君一人では勝ち目はないんだ。きっと絶望する間もなく殺される」

QB「実際にそうなった子を僕は何人も見てきた。無駄な戦いを挑むぐらいなら、
   住民の避難誘導に当たった方がまだいくらかましだろう」

QB「さいわい、他の魔女と違って “彼女” はずっと居座るわけじゃない。
   放っておいても長くて一昼夜で消えてくれる」

QB「そして勝てない限り、君が矢面に立ったところでその結果は変わらない」

マミ「……」

QB「……。まだ時間はあるんだ。街の人を上手く逃がす方法でも考えようよ」

マミ「……」

QB「仲間を探すのもいいかも知れない。一人じゃ無理でも、二人、三人なら、あるいは」

マミ「……」
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:51:48.28 ID:sCoB9TV+o

マミ「……キュウべえ、あなた、さっきから 『勝てない』 って言ってるわよね?」

QB「……。君のプライドを傷つけるつもりはないよ。ただ――」

マミ「そういう意味じゃないわ」

QB「……。じゃあ、何が言いたいんだい?」

マミ「『勝ち』にこだわらないならどうなの? ってことよ」

QB「……」

マミ「確か、この街の先代は、魔法少女としては平均だったのよね?」

QB「……。ああ」

マミ「そんな彼女が、最後には三体の魔女を一度に倒したのよね?」

QB「……。マミ、待つんだ」

マミ「……」

QB「駄目だ。そんなことは考えないでくれ」

QB「そんなことをさせるために、僕は君を魔法少女にしたわけじゃないんだ」

マミ「つまり、できるのね?」

QB「……」
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:52:56.42 ID:sCoB9TV+o

QB「マミ」

マミ「止めないで」

マミ「止めるなら、他の方法を示して。私じゃなく、街を守る方法を」

QB「……」

QB「そうじゃない。雨の日の約束を覚えているかい?」

マミ「――え?」

QB「君が魔法少女としての最後を迎えるときは、僕はそのそばにいるという、あの約束だ」

マミ「それは……」

QB「僕は守るつもりだよ。たとえその “最後” が、どんな形であろうとね」

マミ「っ……!」

QB「僕は忘れない。君も覚えておいてくれ」

マミ「キュウべえ……」

QB「まだ時間はあるんだ。他の方法を考えよう」

マミ「……」


409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:53:27.12 ID:sCoB9TV+o





410 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:54:19.94 ID:sCoB9TV+o



   カチャカチャ

   コポコポコポ…

   カチャリ

マミ「いただきます」

QB「いただきます」

QB「……」 モグモグ

マミ「……」

マミ(あれからもうかなり経つけど……まだ他の方法は見つかっていない……)

マミ(仲間集めも、全く進んでいない)

マミ(近くの街にいる魔法少女たちに応援を呼び掛けてみてはいるけれど、手ごたえはない。
   みんな自分の居場所を守るので精いっぱいらしいから)

マミ(新しい魔法少女の勧誘も、できていない……)


411 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:56:04.95 ID:sCoB9TV+o

   ◆

QB「さしあたって、候補者は一人だ」

マミ「たった一人……?」

QB「ゼロじゃないだけマシだよ。魔法少女としての潜在能力は平均程度だけど、
   祈りの内容と君のサポート次第では、十分な戦力になってくれると思う」

QB「もっとも、それでも勝てる見込みは低いんだけどね」

マミ「契約は、すぐにできるの?」

QB「いや、まだそれだけの願いを抱いてはいないんだ」

マミ「そう……」

QB「今のうちに挨拶だけでも済ませておければいいんだけど……
   あいにく、僕の立場で急かすことはできないし、助言するのもルール違反だからね」

マミ「……どこかで偶然に出会う、とかは?」

QB「それを意図している時点で偶然とは言えないよ」

マミ「そっか……そうよね」

QB「さて、どうしたものかな」

マミ「……」

QB「……君は、どうすればいいと思う?」


412 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:56:59.65 ID:sCoB9TV+o

   ◆

マミ(どうすればいいの……?)

マミ(その子に、早く仲間になって欲しいとは思うけど、
   それはすなわち平和に生きている女の子を戦いに巻きこむということでもある)

マミ(それも、尋常ならざる戦いに)

マミ(……早い方がいいという、キュウべえの意見も理解はできる。
   早く契約すれば、それだけ余裕を持ってワルプルギスの夜に備えることができる)

マミ(だけど……もし彼女が 『逃げたい』 と言い出したらどうするの?)

マミ(そう。契約したって、魔法少女だからって、一緒に戦ってくれるとは限らないのよ)

マミ(ユリさんや佐倉さんがそうだったように……)

マミ(……)

マミ(今日は16日だから……あれからもうそろそろ四ヶ月。危険域、と言っていい……)

マミ(やっぱり、私が命を懸けるしか……)

マミ(……考えることを、いかにキュウべえを出し抜くか、に切り替えるべきかしらね……)


413 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:57:42.04 ID:sCoB9TV+o

マミ「ふぅ……」

   カチャリ

マミ「ねぇ、キュウべえ……」

マミ「……」

   シーン…

マミ「キュウべえ? ――あら?」 キョロッ キョロキョロッ

マミ「……キュウべえ? どこにいったの? ねえっ?」 ガタン

マミ(さっきまで一緒に朝ごはんを食べていたのに……)

マミ(どうして? あの子、どこに行っちゃったの?)

マミ「キュウべえ? ――キュウべえ!」









QB「――こっちだよ、マミ」
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:58:21.12 ID:sCoB9TV+o

マミ「あ……」

マミ「もう、キュウべえったら……びっくりするじゃない」 スタスタスタ

   ガラリ

マミ「ベランダなんかでいったい、何……を…………」

QB「……」

マミ「え? まさか」

QB「……」

マミ「嘘でしょう? まさかもう、来るっていうの? “ワルプルギスの夜” が……」

QB「……」

QB「いいや、違う」

マミ「そ、そう……」 ホッ

マミ「でも、だったら何をしているのよ? 紅茶、まだ残ってるわよ?」

QB「……」

マミ「……キュウべえ?」

QB「わからないんだ」
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 20:59:17.57 ID:sCoB9TV+o

マミ「え?」

QB「ああ、わからない。こんなことは初めてだ。いや、そもそも起こるはずがないんだ」

QB「この国の社会情勢からして、こんな人間が存在する余地はないはずなんだ」

QB「仮にあったとしても、こんな急に発生するなんてことは有り得ない」

QB「どこかで因果が捩じ曲がったとしか考えられない。本来はそれも有り得ないのに」

マミ「きゅ、キュウべえ?」

マミ「どうしたの? 何を言っているの?」

QB「……」

QB「マミ、向こうを見てごらん」

マミ「向こうって……住宅街の方よね?」

QB「何か感じないかい?」

マミ「え? えっと…………別に、何も感じないけど?」

QB「そうか……流石に、この距離で潜在的な魔力までは感知できないか……」

マミ「……どうしたのよ、キュウべえ? いったい向こうに何があるっていうの?」

QB「……」

QB「一国の女王や救世主に匹敵……いや、それすら凌駕する、桁外れの魔力が観測された」
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 21:00:00.10 ID:sCoB9TV+o

マミ「……?」

マミ「えっと、つまり……誰か凄い人が来た?」

QB「違う。彼女はずっとこの街にいた。急に跳ね上がったんだ」

マミ「……そんなことが起こり得るの?」

QB「起こり得ないから混乱しているんだよ。何が何だか、わけがわからない」

マミ「……」

マミ「……ほんとう。珍しいわね、あなたがそんなになるなんて」

QB「初めての経験だよ。君たちに出会ったときでさえこれほどまでには驚かなかった」

マミ「そ、そうなの……」

QB「……」

マミ「……ワルプルギスと、何か関係があるのかしら?」

QB「わからないよ。そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない」

QB「……。いや、そうだね。その可能性は高い」

QB「正確には、現時点ではそれぐらいしか考えられない」
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 21:00:47.95 ID:sCoB9TV+o

QB「それに……そうか。そうだ。そうだよ」

QB「まだわからない。わからないけど……調査結果次第では……」

マミ「……?」

QB「マミ」

マミ「え? え、ええ。なに?」

QB「もしかしたら、どうにかなるかも知れない」

マミ「……なにが?」

QB「決まってるだろう! ワルプルギスの夜だよ!」

QB「この彼女が契約して、魔法少女になってくれれば……!」

マミ「……! まさか――」

QB「そうさ!」



QB「倒せるかも知れない――あの厄介な舞台装置を!」





418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/05(火) 21:01:58.60 ID:sCoB9TV+o

以上

はい、これにて本編と接続(コネクト)とあいなりました
ほむほむまで行かんかったなぁ

べぇさんがワル夜を厄介扱いしてる理由は>>406
貴重なエネルギー源を何人もダメにされたからってことで
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 21:03:44.24 ID:UR4mnBljo
お疲れ様でした。
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/05(火) 22:30:13.73 ID:NeZ492APo
絶望する間もなくって言ってるしな
繋がったなー乙っちまどまど!
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 22:51:47.79 ID:XcIfJCBqo
乙マミ


べぇさんにまどかを感づかれてしまった……後数週間もするとお菓子の魔女戦か……?


いよいよ、今日の「その時」がやって参ります(CV:NHK・松平アナ)
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/05(火) 23:05:21.38 ID:WlFmQUQ/0
何度見てもこの話は面白いな

次も期待してます
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/06(水) 00:08:52.04 ID:4yd30WBYo


つまりほむらが過去に戻った時点でいきなりまどかの因果律パワーが跳ね上がるということか

しかしQB、ワルプルギスの魔女の素になった魔女(たち?)もお前が作った魔法少女だろうにw
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/06(水) 00:48:15.61 ID:X2Vk3xe0o
乙ー
結末を知っているだけに読むのが苦しくなってくるなぁ
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2011/07/07(木) 21:00:19.48 ID:7pGqlZnS0
>>407>>408
キュゥべえが『心』から喋ってるのが、なんとも……
クソ、打ん殴りてえ
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:47:02.03 ID:0a4kVArZo

投下
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:47:44.84 ID:0a4kVArZo



QB《――この子たちだよ。見えるかい?》

マミ「ええ……」


   『たまご焼き、もーらいっ♪』

   『ああっ。さやかちゃん、ひどーい!』


マミ「この映像……キュウべえ、あなた窓から覗いたの?」

QB「そうだけど?」

マミ「あまり関心できたことじゃないわよ。……で、どっちがそうなの?」

QB「桃色髪の方だよ。もう一方の彼女にも素質はあるようだけど」

マミ「でも、本当に接触してしまっていいの? ルール違反って言ってなかった?」

QB「まぁ、特例だね。あの途方もない魔力係数の調査は、どうしたって必要だ」

マミ「そう……。じゃあ、行きましょうか」


428 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:48:21.13 ID:0a4kVArZo





   第十四話  異変は続く





429 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/10(日) 21:49:05.22 ID:axiZJwu3o
待ってました
430 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:49:26.86 ID:0a4kVArZo

   テクテクテク…

マミ「それで……何かわかったの? この子について」

QB「いいや、残念ながらまだ何も。むしろ調べたことでわからないことが増えちゃったよ」

QB「異変は彼女――鹿目まどか一人にだけじゃなく、その周囲にも及んでいるらしい」

マミ「というと?」

QB「まず、さっきテレパシーで見せた映像の中の、もう一人の少女。
   美樹さやかというんだけど、以前の彼女には魔法少女としての素質はなかったんだ」

マミ「それが……今はある?」

QB「ああ」

QB「まぁ、それ自体は有り得ないことじゃない。何かのきっかけで急に素質が芽生えるのはね。
   彼女は鹿目まどかと親しいようだから、“引っぱられた” 可能性もある」

マミ「なるほど……」

QB「うん。だからそっちはまだいいんだけど……もう一つあるんだ。
   これがまた輪をかけて不可解な問題でね……」

マミ「……なんなの?」
431 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:50:21.03 ID:0a4kVArZo

QB「今日、二人が所属しているクラスに転校生が来た」

マミ「転校生? ……ああ、そういえばクラスの子が噂してたけど……それがどうかしたの?」

QB「魔法少女だった」

マミ「え……」 ピタ

QB「……。マミ、歩こう」

マミ「……え、ええ」 …テク、テクテクテク

QB「……」

マミ「間違いないの?」

QB「間違いない。体育の授業で身体強化の魔法を使っているのを見たよ」

マミ「また覗き……? それに、その子も何をしているのよ……」

QB「そんなことは問題じゃないよ。問題なのは――僕が彼女を知らないってことさ」

マミ「知らない?」

QB「正確には、全く知らないというわけじゃない。
   魔法少女候補としてチェックを入れておいた中の一人だからね」
432 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:51:29.54 ID:0a4kVArZo

QB「名前は暁美ほむら。半年ほど前に見たとき、彼女は東京にいた。
   そのときは素質があるというだけの、どこにでもいるただの女の子だった」

QB「それなのに、いつの間にか魔法少女になってしまっている」

マミ「……あなたたちの誰かが契約したんじゃないの?」

QB「忘れたのかい? 僕らは記憶を共有しているんだ。
   この僕が知らないってことは、他のどの 『僕』 も知らないってことなんだよ」

マミ「……」

QB「彼女は、僕と契約していない。それなのに魔法少女になっている」

QB「いったい何が起こっているんだか……」

マミ「うーん……」

マミ「……あなたたちの他にも魔法少女を生み出す存在がいる、ということかしら」

QB「ないよ。……少なくとも、僕の知る限り、そんな存在はいない」

マミ「……」

QB「……けど、確かに、それぐらいしか考えられないのも事実だね」

マミ「そう……なら、ついに “機関” が動き出したのね……」
433 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:52:17.52 ID:0a4kVArZo

QB「“機関”? なんだい、それは?」

マミ「……ううん、ただのジョーク ///」

QB「……」

マミ「ごっこ遊び的な、ね……一回言ってみたかったの……///」

QB「冗談を言ってる場合じゃないんだけどなぁ」

マミ「ごめんなさい……」

QB「別にいいよ。それより、この暁美ほむらだけど」

マミ「うん」

QB「さっきから後をつけてきている」

マミ「え?」 ピタ

マミ「……どこ?」 チラリ

QB「右後方、200メートルぐらい。こちらからだと影になっていて見えないね」

マミ「……」

QB「行こう」

マミ「ええ……」 …テクテクテク
434 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:53:28.05 ID:0a4kVArZo

マミ「……」 テクテクテク

QB「……」

マミ「……付いてきているの?」

QB「ああ。魔力の気配が、ぴったりと付いてくる」

マミ「……困ったわね。ケーキは四人分しか用意していないのに」

QB「……。その程度の困りごとで済めばいいんだけどね」

マミ「ハァ……そうね。何が狙いなのかしら」

QB「考えられるのは、とりあえず三つかな」

マミ「……私か、あなたか……でなければ、前にいる鹿目まどかさん?」

QB「そうだね」

マミ「私やあなたはわかるけど、どうして彼女に?」

QB「わからないよ。ただ、彼女は学校でも鹿目まどかに近付くような動きをしていた」

マミ「そう……」
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:54:24.28 ID:0a4kVArZo

マミ「どうするべきかしら?」

QB「そうだね……仮に、彼女の目的が攻撃的なものなら、このまま鹿目まどかたちと
   接触してしまうのは危険かも知れない」

マミ「じゃあ、まず彼女の方に話を聞く?」

QB「そうしてみるか。とりあえず、僕だけで行ってみるよ」

マミ「どうして?」

QB「魔法少女同士だと、いきなり戦闘になる恐れがある。君にその気がなくてもね」

マミ「……。そう、ね」

QB「マミは鹿目まどかたちを見ていてくれ。接触するかどうかは……任せるよ」

マミ「わかったわ。気をつけてね」

QB「うん。……一応、応援も呼んでおこうかな」

マミ「応援?」

   タタタタタッ

マミ「あ……行っちゃった」

マミ「まぁいいわ。こっちはこっちで、することしないとね」
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:55:20.78 ID:0a4kVArZo





店員「いらっしゃいませ」

マミ「ダージリン、お願いします」

マミ「……」 チラ

   「――」 キャッキャ

   「――」 ウフフ

マミ(お友だちとお茶会か……関係ない子もいるみたいだし、さすがに乱入は無理ね)

マミ(……はぁ、羨ましいなぁ)

マミ(三年生になって、いつものあの子たちともクラスが別れちゃったから、もう長いこと
   ああいったこととは御無沙汰なのよね……)

店員「お待たせしました」

マミ「ありがとう」
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:56:15.22 ID:0a4kVArZo

マミ(……)

マミ(……契約をさせたら、彼女たちからもああいった時間を奪うことになる)

マミ(けれど、そうしなければ、彼女たちを含めた多くの人が不幸に見舞われる)

マミ(だったら選択の余地なんてない)

マミ(……)

マミ(……だけど、それは本当に “正しいこと” なの?)

マミ「……」

マミ「……」 ズズ…

マミ「……」

マミ(……イマイチね。たぶん、ちょっと蒸らし過ぎてる)

マミ「ふぅ……」 カチャリ
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:57:05.12 ID:0a4kVArZo

マミ「……」 チラ

   「――」 キャッキャ

   「――」 ウフフ

マミ「……」

マミ「……」 カタン

マミ「……」 スタスタスタ

マミ「すみません。お会計、お願いします」

マミ(考えがまとまらないわ。ちょっと外の空気でも――)



   ――ポゥ…



マミ「――!?」

マミ(魔女の気配……!)

マミ(……まったく、色んなことが次から次へと……忙しい日ね!) タタッ


439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:58:05.47 ID:0a4kVArZo



   バン!

   バンバンバンバン!

マミ(……私の役目は、この街を守ること)

   『ミ゙ッ』
   『ミ゙ミ゙ッ』

   バンッ!

マミ(私を生み、育んでくれたこの街を)

マミ(父と母から受け継いだ因果の力と、キュウべえが繋いでくれた命を使って)

マミ(街の外のことを見捨ててでも、守り切る)

   バンバン! バンバン!

マミ(それが私の、魔法少女としての在り方)

マミ(誰に強制されたわけでもない、私自身が私のために決めた生き方)

マミ(そのために、何をすべきか。何をするのが正しいことなのか)

   ――バァンッ!

マミ(それを見定めないといけないわ)
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 21:59:44.95 ID:0a4kVArZo

マミ「ふぅ……」

   シュイーン…

マミ「――!」

マミ「結界が消える……まだ魔女は倒していないはずなのに……」

マミ「まさか、例の正体不明の子が……?」

   ポゥ…

マミ「……いえ、気配はまだ残ってる。移動しただけ、か」 ホッ…

マミ「……」

マミ(今、私、安心した?)

マミ(倒すべき魔女がまだ生きていることを、喜んだ……?)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……)

マミ(……そうか……わかったわ。私は……)

マミ(この手で守りたいんだ。この手で……倒したいんだわ。“ワルプルギスの夜” を……)
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 22:01:07.50 ID:0a4kVArZo

マミ(だから、ためらっていた)

マミ(彼女――鹿目まどかさんに契約してもらうのを、躊躇していた)

マミ(自分にできないことができてしまう……そんな存在が生まれることを、恐れていた)



   『――彼女がいれば、どうにかなるかも知れない!』



マミ(……嫉妬していたんだわ、私……)

   シューン…

マミ「ふぅ……」

マミ「――なら、もうためらってはいられないわね」

マミ「そんなくだらない理由であの子の念願を邪魔するなんて、その方がよっぽど耐えられないわ」

マミ「それじゃあ気を取り直して――」

マミ《キュウべえ、聞こえる?》

   《……》
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 22:01:56.85 ID:0a4kVArZo

マミ《……》

マミ《……? キュウべえ?》

   《……――て……》

マミ《え? なに? なんて言ったの?》

   《……》

   《……たすけて……》

マミ「――っ!?」

マミ《キュウベえ!? どうしたの!? 何があったの!?》

   《……たすけて……》

マミ(くっ……! 聞こえていないの? なら、直接行くしか……) ダッ



   《助けて…………まどか……》



マミ(え――?) ピタ
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 22:02:31.23 ID:0a4kVArZo

マミ「……キュウべえ?」

   《……》

マミ「『まどか』って……どうして……」

   《……》

マミ「私がいるのに……ここにいるのに……」

   《……》

   《……まどか……》

マミ「どうしてそんな……他の子を、呼ぶの…………?」





444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/10(日) 22:03:03.69 ID:0a4kVArZo

以上
445 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/10(日) 22:04:58.55 ID:4E5kEuWeo


嫉妬するマミさんか
いつもマミさんは重いな
だがそれがいい
446 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/10(日) 22:06:31.36 ID:P10bkXRdo
うむ、マミさんこそ頼られたい魔法少女No.1


乙マミ
447 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/10(日) 22:09:19.86 ID:ui6pAIG1o
お疲れ様でした。
448 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/10(日) 22:15:24.23 ID:s9hj4X1Ko


だってマミさん、都合のいい女やもん
449 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/10(日) 22:28:09.06 ID:VPOoMUC6o
乙っちまどまど!
動いたな…!
450 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/10(日) 22:29:54.34 ID:axiZJwu3o
oh...
451 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/10(日) 22:33:20.56 ID:oURN5G/C0
このマミさんお持ち帰りしたいんだがどうしたらいいんだろうか……


続き期待して待ってます
452 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:30:39.18 ID:iqdV3hsio

投下
今回は短め
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:31:20.22 ID:iqdV3hsio



   『ミ゙ーッ』
   『ミ゙ミ゙ッ』
   『ミ゙ィーッ』

さやか「く、くるなっ! くるなあっ!」

まどか「さやかちゃん……っ!」



   ――バンッ!



   『ミ゙ッ!?』

まどか「え……?」

   バン! バンバンバン!

さやか「こ、今度はなに?」

マミ「危ないところだったわね、あなたたち」

マミ「でももう――大丈夫よ」 ニコ


454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:31:50.33 ID:iqdV3hsio





   第十五話  new faces





455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:32:37.80 ID:iqdV3hsio

さやか「あ、あなたは……」

マミ「私は――」

QB「……うぅ……」

マミ「――!? キュウべえ!!」 ダッ

まどか「きゃっ?」

マミ「ひどい怪我……いったいどうして……」

まどか「あ、あの。この子のこと、知ってるんですか?」

マミ「……ええ、私の大切なお友だちよ……」

まどか「え、えと、この子、いじめられてたみたいで……」

マミ「……。そう」 ジャキッ

まどか「え?」

さやか「ちょ、何を――」



   バァンッ!!


456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:33:56.93 ID:iqdV3hsio



   『ミ゙ーッ!?』 パチューン



まどか「……へ?」

さやか「あ! あれ、さっきの!」

マミ「まだ残っていたみたいね」

さやか「な、なんかまたいっぱい来た! なんなの、あれ……?」

マミ「ごめんなさい、話はあとで。今は下がっててもらえるかしら?」

さやか「あ、は、はい」

まどか「……っ」 コクコク

マミ「キュウべえも、もう少しだけ我慢してね? すぐに治してあげるから」

QB「……」
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:34:45.34 ID:iqdV3hsio

   『ミ゙ィッ』
   『ミ゙ミ゙ッ』
   『ミ゙ッ』

マミ「一気に終わらせる……――整列〈アテスタ〉!」



   ザッ――ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッ!!



さやか「うわっ! 銃が……」

まどか「いっぱい……」

マミ「―― 百丁斉射〈ティロ・チェント〉!!」



   ――ッバアァァァン!!





458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:36:12.63 ID:iqdV3hsio



   パァァァ…

QB「……」 シュゥゥゥ…

さやか「……! 傷が……」

まどか「すごい……」

マミ「キュウべえ……」

QB「……う、ん」 ピクッ

   ――ピョコン

QB「フゥ……助かったよ、マミ」

さやか「喋った!?」

マミ「よかった……まったく、心配したんだから」 ダキッ

マミ「……」

マミ(あれ……?)

さやか「……あの、いいですか?」

マミ「えっ? ……あ、え、ええ」
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:37:09.94 ID:iqdV3hsio

さやか「えっと……とりあえず、あなたはいったい……」

マミ「そうね。まずは自己紹介かしら」

マミ「私は巴マミ」

   シューン…

さやか「変身した!? ……いや、変身を、といたの?」

まどか「あ……その制服……」

マミ「そう。見ての通り、あなたたちと同じ、見滝原中学の生徒よ。ちなみに三年生」

マミ「そしてこの子はキュウべえ」

QB「よろしくね、鹿目まどか。そして、美樹さやか」

さやか「ど、どうしてあたしたちの名前を?」

QB「今日は君たちにお願いがあって来たんだよ」

まどか「おねがい?」

QB「そうさ。君たちには、僕と契約して魔法少女になって欲しいんだ!」
460 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:37:50.92 ID:iqdV3hsio

まどか「まほ、う……?」

さやか「なに、それ?」

マミ「また……もう、キュウべえ? もっとちゃんと説明しなさいって、前にも――」



   「待ちなさい」



マミ「――!」 バッ

まどか「ほ、ほむらちゃんっ?」

さやか「転校生、あんた……」

マミ「……」

マミ「そう、あなたが暁美ほむらさんね」

ほむら「……」 ピク
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:38:48.86 ID:iqdV3hsio

マミ「魔女は逃げたわ。すぐに追えばまだ間に合うでしょうけど」

ほむら「用があるのはそちらの獣よ。渡しなさい」

マミ「……」 ピク

マミ「なるほど、つまりあの怪我はあなたがやったのね」

マミ「そんな相手に、大切なお友だちを、はいそうですかと渡すと思う?」

ほむら「……」

マミ「退きなさい。この上、無関係な彼女たちを巻き込んでまで遣り合おうというのなら――」

ほむら「……」

マミ「……容赦は、しないわよ?」

ほむら「……」

さやか「……」 ゴクリ

まどか「……」 オロオロ

ほむら「……鹿目まどか」
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:39:31.39 ID:iqdV3hsio

まどか「は、はいっ!」

マミ「……」

ほむら「私が言ったことは覚えているわね」

まどか「う、うん。でも……」

ほむら「ならいいわ。その人――巴マミの話を聞けば、意味も理解できるでしょう」 クルリ

まどか「え……」

マミ「……?」

ほむら「くれぐれも、軽はずみな真似はしないでちょうだい」 カツン

   カツン、カツン、カツン、カツン……

さやか「行っちゃった……? なんなの、アレ?」

まどか「ほむらちゃん……」

QB「……」
463 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:40:34.38 ID:iqdV3hsio

マミ「鹿目まどか、さん?」

まどか「えっ? あ、はい」

マミ「彼女、暁美さんがあなたに言ったことってなんなのか、教えてもらってもいいかしら?」

まどか「え、えっと、それは……」

さやか「……」

さやか「なんか、家族や友達が大事なら、自分を変えようと思うな、とかなんとか」

まどか「さやかちゃん!?」

さやか「いや、だってこっちの人の方が信用できそうだし。
     それにあたしらに話したぐらいだし、喋るなって言われたわけでもないんでしょ?」

まどか「それは…………、うん……」

マミ「自分を変えるな、か……キュウべえ、どう思う?」

QB「うん。魔法少女になることだと考えて、間違いないんじゃないかな」

マミ「そうね……」

まどか「……」
464 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:41:22.73 ID:iqdV3hsio

まどか「あ、あの……」

マミ「ん?」

まどか「なんなんですか? その、魔法少女、とかって……」

さやか「ってゆーかイロイロわけわかんないんですけど。
     さっきの気色悪いお化けとか、その喋ってるヌイグルミみないなのとか……」

マミ「あら、ごめんなさい」

マミ「……そうね。あの暁美さんの言いなりになるみたいで少し癪にさわるけど、
   最初からそのつもりではあったし」

まどさや「「……?」」

マミ「あなたたち、今から時間、あるかしら? 説明する――いいえ」

マミ「説明を、させてちょうだい」





465 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/15(金) 00:42:25.76 ID:iqdV3hsio

以上

うーん、ずっとマミQの二人芝居ばっかりやってきたから人数が増えると勝手がわからん
特にまどかが扱いづらすぎる
466 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 00:44:14.79 ID:ZOhJU6pYo
お疲れ様でした。
467 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/15(金) 00:51:40.58 ID:2q1RJI1Lo


マミられるまであと○日……!
468 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/15(金) 01:01:35.38 ID:Q7gmV4Pdo
乙!


いや、ほむらが本編よりもそっと軟化してるみたいだし
これはもしかするともしかしちゃうかも
469 :なすーん [なすーん]:なすーん
                     __        、]l./⌒ヽ、 `ヽ、     ,r'7'"´Z__
                      `ヽ `ヽ、-v‐'`ヾミ| |/三ミヽ   `iーr=<    ─フ
                     <   /´  r'´   `   ` \  `| ノ     ∠_
                     `ヽ、__//  /   |/| ヽ __\ \ヽ  |く   ___彡'′
                      ``ー//   |_i,|-‐| l ゙、ヽ `ヽ-、|!  | `ヽ=='´
                        l/| | '| |!|,==| ヽヽr'⌒ヽ|ヽ|   |   |
  ┏┓  ┏━━━┓              | || `Y ,r‐、  ヽl,_)ヽ ゙、_ |   |   |.         ┏━┓
┏┛┗┓┗━━┓┃              ...ヽリ゙! | l::ー':|   |:::::::} |. | / l|`! |i |.        ┃  ┃
┗┓┏┛     ┃┃┏━━━━━━━.j | l|.! l::::::ノ ,  ヽ-' '´ i/|  !|/ | |リ ━━━━┓┃  ┃
  ┃┃    ┏━┛┃┃       ┌┐   | l| { //` iー‐‐ 'i    〃/ j|| ||. |ノ        ┃┃  ┃
  ┃┃   ┃┏┓┃┗━━━.んvヘvヘゝ | l| ヽ  ヽ   /   _,.ィ ノ/川l/.━━━━━┛┗━┛
  ┃┃  ┏┛┃┃┗┓     i     .i  ゙i\ゝ`` ‐゙='=''"´|二レ'l/″           ┏━┓
  ┗┛  ┗━┛┗━┛    ノ      ! --─‐''''"メ」_,、-‐''´ ̄ヽ、              ┗━┛
                   r|__     ト、,-<"´´          /ト、
                  |  {    r'´  `l l         /|| ヽ
                  ゙、   }   }    | _|___,,、-─‐'´ |   ゙、
                    `‐r'.,_,.ノヽ、__ノ/  |  |      |、__r'`゙′
                            |   |/     i |
                             |          | |
470 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/15(金) 03:42:35.58 ID:sz0eAyuxo
乙っちまどまど!
471 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 12:10:10.76 ID:DVhiJ9M/o
乙ー
オリジナル展開で俺得展開来るか……?
472 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/15(金) 13:42:55.04 ID:snp+F5BpP
本編世界に極めて近い並行世界だと思ってる
473 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 20:21:13.76 ID:URThUZLUo
ここからどうなるかが期待だな
474 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:35:33.32 ID:Y7FSLY7Jo

ならば応えよう
答えになるかどうかは別として

投下
475 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:36:26.19 ID:Y7FSLY7Jo



   ガチャ

マミ「独り暮らしだから、遠慮しないでくつろいでね」

さやか「わ……」

まどか「素敵なお部屋……」

マミ「ありがとう」 クス

マミ「飲み物を用意するわ。紅茶しかないんだけど、いいかしら」

まどか「あ、はい」

さやか「ごっちゃんです」

マミ「ふふっ」


476 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:36:55.26 ID:Y7FSLY7Jo





   第十六話  お茶会/黄昏





477 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:37:37.59 ID:Y7FSLY7Jo



まどか「魔女退治……」

さやか「代わりに願いをなんでも一つ、か……なるほど。だから 『契約』 ってわけですか」

マミ「そういうことね。あなたたちには、どんな願いでも叶えられるチャンスがある。
   でもそれは、死と隣り合わせなの」

まどか「ふぇ……」

さやか「んー、悩むなぁ」

QB「……。とりあえず、説明はこんなところかな」

マミ「そうね。……」

マミ「――え?」

まどか「え?」

さやか「ん?」

QB「どうしたんだい、マミ?」
478 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:38:41.20 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「どうしたじゃないわよ、キュウべえ、まだ肝心なことを言っていないじゃない」

QB「というと?」

マミ「決まってるでしょう! “ワルプルギスの夜” のことよ」

QB「……」

まどか「わる……」

さやか「……ぷる?」

マミ「ワルプルギスの夜――伝説級の最大の魔女の名よ。
   街一つを吹き飛ばすほどの力を秘めているらしいわ。それがもうすぐ、この街に来るの」

さやか「なっ……!」

マミ「あなたたちが今から魔法少女になるのなら、確実にそれと出会うことになる」

まどか「えぇっ!?」

さやか「ちょ、なんでそんな大事なことを言わないのよ!」

QB「……。確かにワルプルギスの夜の名前は出さなかったけど、僕は言ったじゃないか。
   まどかならどんな魔女が来ても苦もなく倒せるだろうね、と」

QB「“彼女” も魔女であることには変わりはないし、重ねて言う必要もないかと思って」
479 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:39:37.37 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「理屈は、わかるけど……」

さやか「だからって、そういうことはちゃんと言ってよ!
     ……うわー、なんだろ。なんかあんたのこと、急に胡散臭く見えてきたんだけど」

マミ「ご、ごめんなさいね、美樹さん。この子、見ての通り人間とは違う生き物だから、
   私たちの感覚とは少しずれてるところがあって……」

さやか「はぁ……」

QB「僕としては、まどかの素質を見たあとでは “彼女” なんて大した問題とは思えなくてね。
   それだけまどかが優れた魔法少女候補だということだよ」

さやか「ってゆーかソレが一番信じられないんだけど。だってまどかって本当に普通の子だよ?
     そりゃすごく良い子だけど、運動なんかはむしろ苦手な方だし」

まどか「う、うん……」 コクコク

QB「運動能力や、ヒトとしての優劣は大して関係ないよ。魔法少女としての潜在能力は、
   背負った因果の量で決まるんだ」

さやか「いんが……?」

QB「他者とのかかわり、世の中に与える影響のことさ。これが大きいほど強い魔法少女になる。
   君たちにもわかりやすい例でいうと、政治家の娘なんかがそうだね」

QB「あるいは、一国の女王や救世主。まどかはそれすら凌駕しているけれど」
480 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:40:29.65 ID:Y7FSLY7Jo

さやか「いやいやいやいや、何言ってんの。それじゃ余計におかしいでしょ」

QB「そう。おかしいんだ」

さやか「――は?」

QB「まどか。むしろ僕の方こそ君に聞きたい」

まどか「え? え?」

QB「君から感じられる魔力がここまで大きくなったのは、実はつい最近のことなんだ」

まどか「そ、そうなの……?」

QB「ああ、一週間ほど前だよ。正確には、先週の水曜日の朝」

QB「何か心当たりはないかい? どんな些細なことでもいい。聞かせてほしい」

まどか「え、えぇと……えと……」

QB「……」

まどか「…………特には……」

QB「……」

QB「そうかい」
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:41:49.79 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「キュウべえ、無理よ。こっち側のことをついさっき知ったばかりの子にそんなふうに言っても
   混乱させるだけだわ」

QB「……。そうだね」

QB「ごめんね、まどか。無理を言っちゃったね」

まどか「ううん、ううん。わたしこそ、役に立てなくて」

マミ「いいのよ、鹿目さん。気にしないで」

まどか「は、はい……」

マミ「……本当に、気にすることはないのよ?」

まどか「え?」

マミ「あなたの秘めている力は、確かに大きなものよ。こうして向かい合うと、ぼんやりとだけど、
   私にも感じられるわ」

まどか「はぁ……」

マミ「だけどね? だからといって、あなたに責任はないの」

まどか「そう、なんですか?」

マミ「そうよ」
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:42:52.07 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「『大いなる力には、大いなる責任が伴う』――それはそれで当然のことだけれど、
   それはあくまで力を振るおうとする場合の話」

マミ「むしろ、妙な責任感から無理に力を使っても、碌なことにならない場合の方が多いわ」

マミ「美樹さん、あなたもよ。
   あなたたちには、今日見たことを全て忘れて、普通の生活に戻るという道もあるの。
   それを忘れないで」

さやか「はぁ……」

まどか「……はい」 コクリ

マミ「まぁ、どちらにしても今すぐに決める必要はないわ。むしろゆっくり考えてね?」

さやか「う〜ん……ですけど、何をどう考えたらいいのか……」

マミ「そうね。いきなり多くのことを、一度に言いすぎちゃったわね」

QB「なら、実際に現場を見てみるというのはどうかな?」

マミ「え?」

さやか「現場?」

QB「まどか、さやか。君たちはマミに付き添って、実際の魔女退治の現場をその目で
   見てみるといい。話を聞くだけよりは理解が深まると思うよ」
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:43:43.57 ID:Y7FSLY7Jo

まどか「え……?」

さやか「ふむ、なるほど」

マミ「……そうね。確かに、見てもらうのが一番手っ取り早くはあるわ」

QB「決まりだね」

まどか「え? え?」

マミ「だけど、危険よ。一般人を結界の奥深くまで連れ込むなんて、何が起きるか……」

QB「君が守ってあげればいいじゃないか」

マミ「っ!? そ、そんな簡単に……」

QB「……。いつも僕のことを守ってくれているだろう? それと同じようにすればいいのさ」

マミ「それは……」

QB「それにいざというときは、僕と契約することで、最悪の事態だけは避けられる」

QB「――もっとも、そうなるのは、君たちにとっては不本意な結果かも知れないけれど」

さやか「あはは。まぁ、そうだね」

まどか「えぇと……」
484 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:45:06.82 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「……」

QB「……。どちらにしても、マミ、これは君にとっても有益な話だよ」

マミ「……どうして?」

QB「もしまだ君が、街を守るためにワルプルギスの夜と戦うつもりでいるのなら、
   何かを守りながら戦うという経験はきっと役に立つ。
   “彼女” の破壊の力は、災害として現実の世界にも表われるんだから」

マミ「……」

QB「……」

マミ「……そう、ね」

マミ「美樹さん、鹿目さん。あなたたちも、それでいいかしら?」

さやか「あー……あたしは望むところっすけど」

まどか「えっと……わたしなんかがいたら、邪魔になっちゃうんじゃ……」

さやか「怖いなら素直にそう言いなって」

まどか「えぅ……」
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:46:24.08 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「じゃあ、見学は美樹さんだけということね。さっそく明日からでいいかしら?」

さやか「はい」

まどか「……」

まどか「や、やっぱりわたしも行きますっ!」

マミ「……無理しなくていいのよ?」

さやか「そうだぞー、まどか。ただでさえあんたは争いごととか苦手なんだし」

まどか「で、でも……やっぱり、わたしも……」

マミ「……」

マミ「わかったわ。――魔法少女体験コース、お二人様ご案内、ね」

さやか「はいっ」

まどか「よ、よろしくおねがいします!」

マミ「こちらこそ、よろしくね。あなたたちのことは全力で守るから」

マミ「それじゃあ、今日はこれでお開きにしましょうか。もう遅いし、送っていくわ」


486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:47:15.42 ID:Y7FSLY7Jo



さやか「じゃ、あたしココですんで」

マミ「そう。じゃぁ、また明日ね、美樹さん」

まどか「さやかちゃん、ばいばーい」

さやか「うーい、またあしたー」 ブンブカ


487 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:47:56.49 ID:Y7FSLY7Jo



まどか「……」 テクテク

マミ「……」 テクテク

マミ(それにしても……) チラリ

QB「……」

マミ(……キュウべえ、どうして鹿目さんの肩に乗っているのかしら)

QB「ねえ、まどか」

マミ「……」 ピクッ

まどか「ん……なぁに、キュゥべえ?」

QB「今日は君の家に寄らせてもらっていいかな?」

まどか「え?」

マミ(え……?)
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:48:51.09 ID:Y7FSLY7Jo

まどか「別にいいけど……あー、でもパパやママがなんて言うか……」

QB「その点は平気だよ。僕は普通の人の目には見えないから」

まどか「そうなの? だったらまぁ、大丈夫だと思うけど……でもどうして?」

QB「君もまだいろいろと聞きたいことがあるんじゃないのかい? 答えてあげるよ」

マミ「……」

まどか「そっか。……でも、さやかちゃんに悪いかも」

QB「もちろんさやかにも時間を取るさ」

まどか「ん〜、じゃあ……えっと、マミさん。いいですか?」

マミ「え、ええ。もちろん私は構わないわ」

QB「決まりだね」

まどか「うん。よろしくね、キュゥべえ」

QB「こちらこそ」

マミ「……」


489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:49:36.50 ID:Y7FSLY7Jo



まどか「あ、ここです。わたしの家」

マミ「……素敵なお家ね」

まどか「えへへ……それじゃあ、失礼します。行こ、キュゥべえ」

QB「お邪魔するよ」

マミ「あ……」

マミ「……」

マミ「ちょ――ちょっと、待ってもらえるかしら?」

まどか「え? なんですか、マミさん?」

マミ「その……ちょっと、キュウべえと二人で話しておきたいことが、あるのよ……」

まどか「はぁ……」

QB「……。僕は別にかまわないよ」

   ピョーイ

QB「まどか。君は先に戻っていてくれ。あとで直接君の部屋にお邪魔するよ」
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:50:29.06 ID:Y7FSLY7Jo

まどか「いいけど、場所、わかる?」

QB「君の魔力をたどるさ」

まどか「そ、そっか。それじゃあ、またあとでね。マミさん、失礼します」

マミ「ええ、また明日」

QB「……」

QB「それで、マミ。話って?」

マミ「えぇ……」

マミ「大したことじゃないんだけど……ちょっと、気になって……」

QB「……」

マミ「……」

マミ「少し、歩きましょうか……」


491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:51:19.80 ID:Y7FSLY7Jo



マミ「えっと……」

マミ「……あなたが、暁美さんに襲われた時のことだけど」

QB「ああ……あれは参ったよ。まさかいきなり撃たれるとは思ってなかったからね」

マミ「撃たれた? 彼女の武器も銃器なの?」

QB「……。それがよくわからないんだ。拳銃のように見えたけど……
   気がついたときにはもう、撃ち抜かれていた」

マミ「……」

マミ「……?」

QB「話というのはそのことかい? なら、残念だけどそれ以上のことはわからないよ」

マミ「い、いえ。そうじゃなくて」

QB「だったらなんだい?」

マミ「それは……」

QB「……」

マミ「……ねぇ、キュウべえ」
492 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:52:19.97 ID:Y7FSLY7Jo

QB「うん」

マミ「どうしてあのとき、鹿目さんに助けを求めたの? ――私にではなく」

QB「……」

マミ「言ってはなんだけど、彼女では助けにならなかったはずよ?
   いくら素質が大きいとはいえ、まだ契約していないんだから」

QB「……。だから、その契約をしようと思ったのさ」

マミ「え……?」

マミ「な、何を言っているのよ。そんな、襲われてる状況で契約なんて……」

QB「そんな状況だからこそだよ。『僕のことを助けたい』 と願ってもらうつもりだったんだ」

マミ「……なんですって?」

QB「まどかは、性格ゆえか環境ゆえか、ごく些細な望みすら抱いていないようだった」

QB「しかしその一方で、一定以上の “善良さ” を備えていると見受けられたからね、
   助けを求めれば、『そうしたい』 と願ってくれると思ったんだ」

マミ「な……」

マミ「何を、言っているの、キュウべえ……?」
493 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:53:42.77 ID:Y7FSLY7Jo

QB「何って、君の質問に対する答えだよ。――上手くいくと思ったんだけどなぁ」

マミ「キュぅ……」

QB「実際、何かしらの願いを抱えてもらうところまでは成功したんだよ。
   だけど生憎と僕の方が、それを聞き出せる状態じゃなくなってしまったんだ。
   まったく、勿体ないことをした」

QB「まぁ、暁美ほむらが今後も僕を狙うつもりでいるのなら、まだチャンスはあるだろう」

マミ「……っ!」



マミ「――何を言っているのよ! キュウべえ!」



QB「……」

マミ「そんな、そんなの、おかしいわ。そんなのはダメよ」

QB「……。どうしてだい?」

マミ「だってそんな、罠にはめるみたいな遣り方、間違ってるわ」

QB「暁美ほむらが僕を襲ったのも、魔女の使い魔が現れたのも、偶然だよ。
   僕が意図したことじゃない」
494 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:55:13.94 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「そういうことを言ってるんじゃないわ! どうしてわからないの!?」

QB「……。わからないよ。何をそんなに問題にしているんだい?」

マミ「彼女は、鹿目さんは、心から心配してあなたを助けようとしたのよ?
   その気持ちを踏みにじるようなことを、あなたはしようとしたの!」

QB「まさか。逆だよ。その気持ち――助けたいという意思を無駄なく活用するための
   もっとも効率的な方法だよ」

マミ「……!?」

QB「それに、守護の祈りで契約すれば、高い確率で守りに特化した魔法少女になれる。
   まどかならきっと、ワルプルギスの夜からもこの街を完璧に守り抜いてくれるはずさ」

QB「マミ、これは君の希望にも沿うことだろう?」

マミ「……」

QB「……? マミ?」

マミ「あ、あなた……」

QB「どうしたんだい、マミ? 顔色が悪いよ?」

マミ「どうしちゃったの、キュウべえ……今日のあなた、どこかおかしいわ」
495 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:56:02.15 ID:Y7FSLY7Jo

QB「僕はいつも通りだよ?」

マミ「おかしいわよ! ワルプルギスの夜のことを隠そうとしたり、
   一般人を魔女退治に連れ出そうなんて言いだしたり……」

QB「……。ワルプルギスの夜については言う必要がなかっただけだし、
   見学についてだって、君も納得したじゃないか」

マミ「違う……違うわ……」

マミ「普段のあなたなら、そんなことは絶対に言わない……」

QB「そうかな? 昨日と今日で、ルールや行動指針を大きく変えたりはしていないよ?」

マミ「そういう、ことじゃ……」

QB「……。わからないな。君はいったい、何にそんなにこだわっているんだい?」

マミ「それは……」

QB「……」 ジー…

マミ「っ……」

マミ(……目を逸らしちゃった……何をやっているの、私……)

マミ(……でも、違う。何かが変だわ。“この子” は何かが、いつもと違う……)
496 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:56:42.27 ID:Y7FSLY7Jo

QB「……。まぁ、言いたくないなら別にいいけど」

マミ「……」

QB「もう行っていいかい?」

マミ「……ま、待って」

マミ「一つ。あと、一つだけ」

QB「……。なんだい?」

マミ「……」

マミ「……さっき、鹿目さんたちと一緒に出したお茶、だけど……」

QB「うん」

マミ「お、美味しかった……?」

QB「……」

QB「うん。美味しかったよ」

マミ「そ、そう? 本当に?」

QB「もちろん本当さ」

マミ「そう……」 ホッ…
497 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/19(火) 21:57:14.84 ID:BRx0pZbmo
胸が苦しくなるな
胸苦
498 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:57:30.00 ID:Y7FSLY7Jo











          . . . ..... . .. .. .
QB「でも――それがどうしたっていうんだい?」












マミ「……ッッ!?」


499 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:58:55.67 ID:Y7FSLY7Jo

マミ(うそ……)

マミ(そんな……)

マミ(こんなの、違う……)



   『――気がついたときにはもう、撃ち抜かれていた』
                             (貫通している傷なんて一つもなかった)

マミ(違うわ……)


   『―― 一応、応援も呼んでおこうかな』
                    (“応援” なんて、どこにいるの?)

マミ(この子は……)


   『――フゥ……助かったよ、マミ』
                 (抱き心地が、いつもと違った)


マミ(……キュウべえじゃ、ない……!)

500 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 21:59:47.39 ID:Y7FSLY7Jo

マミ「……まさか……」 ズ…

マミ「……そんな、そんなこと……」 ズリ…

QB「……。マミ?」

マミ「ひっ――!」 ズザザッ

QB「……。やっぱり、おかしいのは君の方だよ。どうしてそんなふうに距離をとるんだい?」

マミ「う、あ……」

マミ「あぁ……あ――」







マミ「あなた………………………………………………………………誰なの?」






501 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 22:00:21.88 ID:Y7FSLY7Jo





QB「……」



QB「へぇ」






502 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/19(火) 22:01:13.87 ID:Y7FSLY7Jo

以上

ひゃっはー、やっと一番書きたかったシーンが書けたぜえー
503 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:02:10.14 ID:hFRdVPy9o
お疲れ様でした。

吉と出るか凶と出るか・・・・・・・・。
504 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/07/19(火) 22:02:31.08 ID:sGK/qRZAO
と……鳥肌……
505 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/19(火) 22:03:46.02 ID:BRx0pZbmo
そういや同じ個体でも微妙に差異があるんだっけ
ということは前の個体はそれなりに優しかった方なんだな……
しかし怖すぎ笑えない

506 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/07/19(火) 22:05:12.85 ID:OBMvvD1Eo

前の個体はわずかに精神疾患なQBさんだったのかね
507 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/19(火) 22:05:55.69 ID:4L3TGcgOo

ここから>>387につながっちゃうのかな?
508 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 22:09:36.44 ID:Qdcxvigro
乙マミ


ずいぶんあけっぴろげでオブラートに包む事を知らんべぇさんだな、結構個体差あるのか
509 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 23:05:23.72 ID:Lh3/lFzTo
なんという超展開
510 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/19(火) 23:25:46.56 ID:Eb/0WvYDO
ちきしょう目が離せなんだ
初っ端から全部読み干しちまった
511 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/19(火) 23:32:25.75 ID:40u3V2qX0
>>506
そう思うとほむらに軽く殺意を覚えるな
もうマミのパートナーはいないのか……
512 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/07/19(火) 23:45:56.28 ID:fxx1+sLIo
単純にマミの事理解してたからじゃないの
513 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/19(火) 23:55:33.49 ID:+pcfxAJoo


あーあ、気づいちゃった
前振りはあったからなあ……
とはいえ以前のQBも少なからず狡猾なところがあったと思うよ
一対一だと分かんないことが色々あるってことで
514 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/20(水) 00:55:48.36 ID:fhZ68tjwo
乙っちまどまど
昔からずっといたもんなー
記憶だけ持ってるが、体験してない個体になっちまったー
515 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/20(水) 02:22:50.49 ID:qwzR5x1O0
>>511
前のQBのが言葉のすれ違いを上手く利用してたり印象操作がより巧みだっただけで
パートナーシップなんて成立してなかっただろ
正直前のQBのが遥に残酷なことしてたしほむらはむしろよくやったと思うww
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/20(水) 11:59:02.60 ID:OtWDwhlAO
いきなりホラー。
恐すぎワロタw
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/20(水) 23:18:56.68 ID:oX0eLZhYo
「君に殺されるのは二度目」、か
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/21(木) 18:12:52.51 ID:cc+GBAFDO
ここで終わりって事かい?
だとしたら乙
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/21(木) 19:29:48.89 ID:ULRpa0uyo
アニメでもマミの友達だったという初代QBは登場前からほむらに殺されてるわけだから謎が多い
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [saga]:2011/07/22(金) 20:22:15.79 ID:UKIDfDLAO
QB「莫迦め、キュゥべぇは死んだわ!」
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/07/22(金) 20:23:41.56 ID:UKIDfDLAO
sage付け忘れた……。
522 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/22(金) 21:56:42.27 ID:Cc32fI5Jo
>>112
ラブクラフトかよ


あれの主人公も最後は宇宙と一体化したよなそういえば
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/22(金) 21:57:08.41 ID:Cc32fI5Jo
安価ミス……>>520宛がなんで>>112になるねん
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/07/23(土) 01:34:15.69 ID:84aekoSIo
  -─フ  -─┐   -─フ  -─┐      l     ー──ァ         l     ー──ァ    
__∠_   /  __∠_   /     ─┼─       /       ─┼─       /       
  /    /⌒ヽ   /    /⌒ヽ   ─┼─     __/___/_  ─┼─     __/___/_ 
  (         |   (         |   _|   / ̄ ̄/   /     _|   / ̄ ̄/   /   
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|     -┼─       |        |  _  l    |    ヽ    |    ヽ     |  _.   ├─┼─┤    __
|        | ─-    ├─┐    ̄| ̄ ヽ |    |      l   |      l    / ̄   └─┴─┘   ̄  ヽ
|       |        /    |    |   │     |     |   |     |  (         , l  ヽ        |
\_/  |  ヽ__   /  ヽ/     |   ヽl      し       し       ヽ__  /  ヽ___,ヽ     _ノ
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/07/23(土) 20:35:57.84 ID:VowUDIPMo
初めてきたが、あっという間に最後まで読んでしまった。
キュゥべえがどんな対応をするか楽しみだww
526 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/07/24(日) 13:06:27.83 ID:Bj/nitw20
……え、終わり?終わりじゃないよね?終わらないよね?
こっから真相に気付いたマミさんとやや軟化したほむほむが和解して
協力してワルプルギスの夜に挑むんだよね?
このままマミられて終わったりしないよね?
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/07/24(日) 17:21:28.98 ID:GQJg7lsYo
>>515
それでも前のエネルべぇさんの方がなんかこう、マシな気がするよ。
そこはかとない気遣いや誠実さみたいなモンがあった気がする。

それはマミさんに対するものではなく職務上のものかもしれないけど、
今の個体みたいな強い異物感というか拒絶したい感じを受けるものじゃなかった。
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2011/07/24(日) 18:56:51.16 ID:R/lnbhv30
>>515
それなりのコミュニケーションを取ってる気になってたマミさんにその理屈は通用しないのが問題ですな
『あの』キュゥべえはもういないんだから
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:09:19.72 ID:K7Rgyj3So

気合い入れた部分に反応がたくさんあるととても嬉しい
スレ立ててよかったって思えます。感謝



補足

一つ言えるのは、旧QBと新QBは、本質的には何も変わらないということ
どちらであってもワル夜のことは隠そうとしただろうし、紅茶を重要視したりもしなかったはず

まぁ、雰囲気とか空気とか気配とか、そういった漠然としたものを根拠とした
対マミさん用のノウハウは、漠然としすぎてて他の個体に伝えられなかったため
旧べぇの死により失われた、ということはあるかも知れません

けどそれよりも、優先順位が まどか>マミさん になったことの方が変化としては大きいと考えます
そうなったタイミングもまどか発見時なので、個体による差異とは言えない、と
そんな感じ
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:10:03.39 ID:K7Rgyj3So

では投下
531 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:11:08.76 ID:K7Rgyj3So



QB「ああ。確かに “この僕” は、三時間ほど前まで君のそばにいたのとは別の個体だよ」

QB「そちらは暁美ほむらに撃ち殺された」

QB「だけど、それがどうしたっていうんだい?」

QB「……」

QB「わからないなぁ」

QB「もう何度も説明しただろう? 僕たちは一つの意識と記憶を共有しているって。
   身体は別でも中身は同じさ」

QB「君だって服を着替えたぐらいで別人扱いされたら困るだろう?」

QB「それに、君と契約したのだって、君のそばにいたのとは別個体だったんだよ?」

QB「ほら、どれだって同じだろう? どうしてそんなことを気にするんだい?」

QB「わけがわからないよ」

QB「……」
              . . . ... .
QB「死体かい? もう片付けちゃったよ」


532 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:11:49.53 ID:K7Rgyj3So





   第十七話  魔法少女体験コース





533 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:12:29.92 ID:K7Rgyj3So



マミ「う、うぅぅ……」

マミ「キュウべえ……」

QB「なんだい?」

マミ「っ……」

マミ「……あなたじゃないわ……」

QB「僕もキュゥべえだよ」

マミ「違う! 私のキュウべえはあの子だけよ!」

QB「……。“君のキュゥべえ” なんていやしないよ。僕は君に所有された覚えはない」

マミ「……ッ!?」

QB「君のそばにいたのは、君がそうして欲しいと言ったからだ。
   魔法少女やその候補者の要望には可能な限り応えることになっているからね」

マミ「やめて……」

QB「しかしね、マミ」
534 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:13:13.90 ID:K7Rgyj3So

マミ「やめて!」

マミ「その顔で……その声で! 私の名前を呼ばないで!」

QB「……」

QB「それは、少し困るなぁ。まどかたちの見学のときに、会話に支障が出る」

マミ「っ……!!」

QB「何がそんなに不愉快なのかはわからないけど、我慢してもらえないかな?」

マミ「……」

QB「……」

マミ「……わかったわ」

マミ「でも、私と二人のときは、名前を呼ばないで」

マミ「……ううん。まず、できるだけ二人きりにならないで」

QB「ふむ……まぁ、それならいいか。わかったよ」
535 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:14:00.17 ID:K7Rgyj3So

マミ「……」

QB「……」

QB「それじゃあ僕はもう行くけど、気をしっかり持っておくれよ?」

QB「いま君に終わられると、まどかとの契約が難しくなりそうだからね」

   トエトテトテ…

マミ「……」

マミ「……」

マミ「……」



   『――終わりのときは、僕は君のそばにいる』



マミ「……うそつき……」


536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:14:39.63 ID:K7Rgyj3So





537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:15:25.48 ID:K7Rgyj3So



マミ「……」

まどか「……」

さやか「……」

QB「……」

さやか「あの、マミさん?」

マミ「えっ?」

さやか「どうしたんですか? なんか……黙っちゃって」

マミ「あ……ご、ごめんなさい。少し考え事を、ね」

さやか「はぁ……」

マミ「本当にごめんなさい。えっと、その……人を連れての魔女退治なんて初めてだから、
   いろいろと考えちゃって」

さやか「あぁ……なんかすみません」

まどか「あの、お邪魔でしたら、やっぱり……」

マミ「ううん、大丈夫よ。もうだいたい考えはまとまったから。ごめんね、不安にさせちゃって」

マミ「それじゃあ――魔法少女体験コース第一弾、張り切っていってみましょうか」
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:16:29.62 ID:K7Rgyj3So



マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に、魔女探しは足頼みよ」

マミ「大きな道路や喧嘩が起きそうな歓楽街は、優先的にチェックするの。
   あとは、自殺に向いてそうな人気のない場所ね」

マミ「――来たわ。強い魔力の波動……向こうね」


マミ「魔女の口づけ……やっぱり、この人も魔女に魅入られたんだわ」

マミ「さて、今日こそ逃がさないわよ」


マミ「バットに魔力を付与したわ。気休めだけど、身を守る程度の役には立つから」

マミ「鹿目さんは、引き続き “その子” を抱えていて。離さないようにね」

マミ「……『キュゥべえ』、あなたは周囲の警戒を」


マミ「いたわ」

マミ「見て。あれが魔女よ」


マミ「心配ご無用」

マミ「未来の後輩に――あんまり格好悪いところ見せられないものね!」



マミ「――ティロ・フィナーレ!!」


539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:17:32.34 ID:K7Rgyj3So



マミ「ふぅ、あの女の人も大丈夫だったみたいだし……うん。ざっとこんなところね」

まどか「ふわぁ……」

さやか「ところで、その黒いのって何なんですか?」

マミ「これはグリフシード。魔女の卵よ」

さやか「タマゴっ!?」

QB「この状態なら危険はないよ。むしろ役に立つ貴重なものだ」

マミ「そうよ。――見て」

   シューン

まどか「あ……えっと、ソウルジェム、でしたっけ?」

さやか「え、でも、なんかだいぶ色が違ってません? 昨日はもっと明るかったような……」

マミ「これが魔法少女の力の源だという話はしたでしょう?
   力――つまり魔力を消費すると、こんなふうに輝きが失われて、黒く濁ってくるの」

マミ「そしてその濁りを取り払うのに必要なのが、このグリフシード」

   シュウゥゥゥ…
540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:18:59.84 ID:K7Rgyj3So

さやか「おお、キレイになった」

マミ「そう、これで私の魔力も元通り。これが魔女退治の見返りってわけ」

まどか「……それ、濁り切るとどうなるんですか?」

QB「……」

マミ「それは……魔力の枯渇を意味するわ」

QB「まぁ、魔法少女を続けることはできなくなるね」

さやか「なるほど……でも、一回でそんなになるものなんですか?
     さっきの、かなりヤバげな色してませんでした? どす黒いってゆーか」

マミ「いいえ。……まぁ、魔法の使い方にもよるけど、今ぐらいのレベルの魔女だと、
   補給なしでも3、4回は戦えると思うわ」

マミ「ただ、昨日あなたたちと別れたあとに、ちょっとあって」

さやか「そうなんですか……思ったより忙しそうですね……」

まどか「……」

マミ「……あと、魔力の消費だけじゃなく、恨みや憎しみと言った負の感情を抱いたりすると、
   それも濁りとなって溜まってしまうから、覚えておいてね」   
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:19:48.47 ID:K7Rgyj3So

さやか「え? それは、どうしてですか?」

マミ「……」

QB「……。そういうものだからさ」

まどか「へ?」

さやか「そういうものって……そんな言い方、なんか無責任じゃない?」

QB「ソウルジェムの運用は、魔法少女自身の責任で行われることだよ?」

さやか「いやいやいや、そういうことじゃなくてね――」

マミ「無駄よ、美樹さん」

さやか「え?」

マミ「昨日も言ったでしょう? “その子” は、人の心が上手く理解できないの」

さやか「は、はぁ……」

マミ「……私は、これは戒めだと思っているわ」

さやか「イマシメ?」

マミ「ええ」
542 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:20:40.12 ID:K7Rgyj3So

マミ「『清い心を保て』、『魔女を倒して人々を救え』」

マミ「そんなふうに、魔法少女として正しくあるようにと、常に囁いてくれているの」

さやか「お……おぉ、なんかカッコいい」

まどか「う、うん」

マミ「ふふ、ありがとう」



マミ「――ねぇ? あなたもそう思わない?」



さやか「え?」

まどか「マミさん?」





   ――カツン
543 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:22:00.68 ID:K7Rgyj3So

さやか「あっ! あんた!」



ほむら「……」



まどか「ほむらちゃん……」

さやか「なんで、いつから……」

マミ「最初からよ」

さやか「え?」

マミ「学校を出てからずっと、彼女は私たちの後をつけていたわ」

マミ「そうよね? 暁美ほむらさん?」

ほむら「……」

さやか「うわ、マジで? ストーカーじゃん……」

まどか「……」
544 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:23:04.51 ID:K7Rgyj3So

マミ「――で、どう思うかしら?」

ほむら「……」 ファサ…

ほむら「不愉快ね」

マミ「……」 ピク

ほむら「もしあなたの言う通りなら、私たちはまるで魔女を狩るための奴隷だわ」

ほむら「……いいえ。心の中で舌を出す自由さえないのだから、奴隷以下ね」

さやか「なっ……!」 ムカッ

マミ「……そう。あなたも、“そう” なのね」

ほむら「……」

マミ「あなたもこれが目当てなのね。グリフシードだけが」

ほむら「……」

マミ「でも、お生憎さま。これはもう限界よ。これ以上穢れを吸いこんだら魔女が生まれてしまう」

ほむら「……そのようね」
545 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:24:11.29 ID:K7Rgyj3So

さやか「……」

まどか「……」 ハラハラ

ほむら「なら、さっさと処理させたらどう?」

マミ「……」

マミ「そうね。―― 『キュゥべえ』」 ポイ

QB「うん」 パカ

   ――スポッ、パクン

QB「きゅっぷい」

まどか「え……?」

さやか「た、食べちゃったの?」

QB「これもまた、僕の役目の一つだからね」

まどか「大丈夫なんですか……?」

マミ「もちろん。私は 『キュウべえ』 が同じことをするのを四年間見てきたけれど、
   おかしなことは何も起こらなかったわ」

マミ「まぁ、初めて見たときは私も驚いたけどね」

まどか「はぁ……」
546 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:25:19.39 ID:K7Rgyj3So

マミ「――暁美さん」

ほむら「……」

マミ「あなたの求めるものはここにはないわ。だからもう――」



マミ「私の前から、消えてくれないかしら」



まどか「……!」 ゾクッ

さやか「ま、マミ、さん……?」

マミ「……」

ほむら「大した剣幕ね。あなたらしくもない」

マミ「……まるで私のことをよく知っているような口ぶりね」

ほむら「さぁ……どうかしら」

マミ「……」

マミ「いいえ。知るわけがないわ」 ジャキッ
547 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:26:10.98 ID:K7Rgyj3So

さやか「ちょっ!」

まどか「ま、マミさん!?」

ほむら「……」

マミ「そうよ。知っているわけがない」

マミ「知っているなら、あんなことができるはずがないのよ……!」

ほむら「……」

さやか「マ……」

まどか「……」 オロオロ

ほむら「……」

ほむら「……」 チラ

まどか「ひっ……」

ほむら「鹿目まどか」

まどか「な、なに……?」
548 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:27:06.08 ID:K7Rgyj3So

ほむら「この空気に耐えられないと思うなら、それはあなたが戦いに向いていないという証拠よ。
     考えを改めなさい」

まどか「あぅ……」

マミ「……それを決めるのはあなたじゃないわ」

ほむら「ええ。あなたでもないわね」

マミ「……」



マミ(この子……いったい何者なの?)

マミ(この距離で魔法仕掛けの武器を向けられて、微塵の動揺も見せないなんて……)

マミ(隙のない物腰に……それに何より、あの目つき)

マミ(冷たく、暗く……なんの感情も読み取れない。まるで氷のよう)

マミ(いったい何を見続ければこんな目ができるようになるの?)

マミ(とてもじゃないけど、キャリア半年未満とは思えない……)


549 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:27:47.56 ID:K7Rgyj3So

ほむら「……、フゥ……」

マミ「……」 ピク

ほむら「無駄に争うつもりはないわ。お望み通り、消えてあげる」 クルリ

   カツン、カツン、カツン……

マミ「……」

まどか「……」 ホッ…

さやか「……あの、マミさん」

マミ「……」

   シュイーン

マミ「ごめんなさい。結局、みっともないところを見せちゃったわね」

まどか「い、いえ。そんな」

さやか「何かあったんですか? 転校生と……」

マミ「……気にしないで」
550 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:28:30.78 ID:K7Rgyj3So

さやか「いや、でも、」

マミ「何も言わないで」

さやか「……」

マミ「……ごめんなさい。でも、聞かないでほしいの。あまり触れられたいことがらじゃないから」

さやか「……すみません」

マミ「いいのよ。わかってくれれば」

さやか「……」

まどか「……」

マミ「さて――」 クルリ

マミ「それじゃあ、帰りましょうか。送っていくわ」

さやか「……はい」

まどか「……」

QB「……」


551 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:29:00.21 ID:K7Rgyj3So





    ゴポ…





552 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:29:58.94 ID:K7Rgyj3So



    ◆

まどか「――殺された?」

QB「うん」

QB「あまり正確な表現じゃないけど、“この僕” の前任者だったと、そう思ってくれていい」

QB「マミのもとで、四年近く、同居する形でずっと一緒に過ごしていた」

まどか「えっと……つまりマミさんは、その人と契約して魔法少女になったの?」

QB「ヒトではないけどね」

まどか「そうなんだ……」

QB「マミとはとても良好な関係を築いていた。――つまり、仲が良かった」

QB「彼女の言葉を借りれば、かけがえのない存在、だそうだよ。
   片時もそばを離れたがらなかったし、最後の瞬間まで共にいることを望んでいた」

QB「言葉は悪いけど、依存していた、とすら言えるね」

まどか「……」

QB「それが、暁美ほむらに殺された」

まどか「……!」
553 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:30:55.58 ID:K7Rgyj3So

QB「マミにとって彼女は、友達の仇というわけだね」

まどか「そっか……だからマミさん、あんなに……」

QB「……」

まどか「で、でもなんで? どうしてほむらちゃん、そんなこと……」

QB「理由はわからない」

まどか「……」

QB「彼女はいきなり攻撃してきたんだ。警告も威嚇も何もなかった。まさに問答無用さ」

QB「まぁ、その後の言動から、だいたいの想像はつくけどね」

まどか「……」

まどか「……つまり、わたし?」

QB「ああ。君を、魔法少女にさせたくない。そういうことだろうね」

まどか「そんな……」

QB「だけど、だからこそ君には早く契約して欲しいと思う。
   魔法少女になってしまえば、暁美ほむらも諦めてくれるかも知れない」
554 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:31:40.61 ID:K7Rgyj3So

まどか「……そうかな? 逆に怒らせちゃうんじゃ……」

QB「なってしまえばこちらのものだよ。まどかなら最強の魔法少女になれるだろうからね」

まどか「……」

QB「……。それに、これはマミのためでもある」

まどか「マミさんの?」

QB「そうさ。友達を失った彼女は、新たな心の支えを求めている。
   これには普通の人間よりも、共に戦える魔法少女の方がふさわしいだろう」

まどか「それは……キュゥべえじゃダメなの?」

QB「駄目だね。昨日、はっきりと否定されちゃったよ」

まどか「そっか……」

QB「それらを抜きにしても、ワルプルギスの夜のこともある。
   “彼女” を打倒してこの街を守ることができるのは、まどか、君だけなんだ」

まどか「……」

QB「まぁ、まだ時間はある。ゆっくり考えて、願いが決まったらいつでも言ってよ」




555 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/24(日) 21:32:11.39 ID:K7Rgyj3So

以上

まだ終わらないけどもうすぐ終わるかな
あと三話ぐらい
556 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/24(日) 21:33:26.18 ID:/4/M7uWyo
お疲れ様でした。

ほむほむさんが藪をつついたら蛇が出てきた・・・・となりそうですな・・・・・・。
557 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/24(日) 21:34:38.53 ID:Cp6YzL6Vo



今のところほむさん完全に墓穴だな
内心冷や汗たらたらに違いない
558 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(四国) [sage]:2011/07/24(日) 21:35:00.65 ID:PdN5mSbAO
乙乙

終わる、ということは……
まあこの精神状態だと本編通りになあ
559 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/24(日) 21:42:16.61 ID:gWwpOWaXo

マミさん、QBはAIBOやファービーみたいなもんなんや
560 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/24(日) 23:14:59.73 ID:pVpy1ntt0

QBにとっては優先順位がまどか>マミさんになっていても十分マミさんを特別視してそうな感じだな
まどか>>>マミ>>>>>超えられない壁>>>>>>他魔法少女
みたいな

マミさんは拒絶しちゃったけどQBにとっては旧QBみたいな小さい所までの気遣いというか行動がただ無いだけでマミさんとの距離を変えたわけではないんだろうな
561 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/24(日) 23:27:12.88 ID:8ijwSARxo
QBの腹黒さを垣間見ながら、まどかやさやかへの魔法少女への勧誘は辞めないわけだなマミさん
もうワルプルほっといて逃げろよ。でないとホントに加害者側に回っちまうぞ
562 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/25(月) 03:25:15.53 ID:rKNODww3o
乙っちまどまど!
一人になったから寂しいのもあるんだろうね
563 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/07/25(月) 11:02:33.84 ID:TykrUoBAO

朝から気が滅入った(讃辞)
564 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/25(月) 13:01:28.85 ID:Ofb/8baoo

ところでグリフシードじゃなくてグリーフシードじゃねと思ったけどどっちが正しいのか俺にはわからない
565 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/07/26(火) 00:22:36.75 ID:uku8+UKAO
終わってしまうのがもったいないくらい面白い。
俺も面白いSS書いてみたいなぁ
566 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/07/27(水) 00:38:35.85 ID:PmzqkfgDo


ああ、マミさん、君はやっぱりマミられるのか
567 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/28(木) 00:37:37.74 ID:TvC8bfwh0
キーポイントはまどかかな。本編通りせずに外す気がする。
568 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/28(木) 20:46:27.61 ID:FmL1OpVA0
本編でも思ったが、QB殺しは墓穴を掘っているだけとしか思えない(8話でまどかが契約しようしたのを最終手段として殺したのは別だが)。
QBを殺した結果、ほむらはまどかやさやか、マミさんから危険人物認定されることになる。
特にマミさんからは「見逃してあげる」と口調は穏やかだが怒りを向けられることになる上に当然信用されないため、3話で縛られることになる。

この話ではマミさんから殺意を向けられた上にまどかが魔法少女になる口実や大義名分を与える結果になってしまっている。
569 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/28(木) 21:13:39.21 ID:xqR5Pi8eo
だって魔法少女にさせないためにはそもそも魔法少女の存在を知られないことがベストでしょ
QBに説得が通じるわけ無いんだからサックリSATSUGAIするのがいいんだよ
ただまどかにバレ無いことが絶対条件だから原作1話では墓穴ってのは合ってる
570 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/28(木) 21:18:30.46 ID:2TGkcFKso
そもそも一号さんを殺しておかないと転校前にまどかが契約しちゃうんじゃなかったっけ?
あれ?そういえば本編ではQBが死んだのは1話じゃなくて本編前なんだっけ
571 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/28(木) 21:45:37.94 ID:FmL1OpVA0
QBにまどかの存在をしられた時点で接触を防ぐのはほぼ不可能、たとえ100匹殺そうが換わりはいくらでもいる。

たしか1週目ではまどかはネコを助けるために契約したんだっけ(ドラマCD後付だけど)、ようは契約する動機付けを無くせば良いだけ事。
572 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/28(木) 21:51:18.92 ID:xCVsGVkHo
まどかの周囲は地雷だらけだからな

さやかが契約するとまどかの契約はほぼ避けられない
さやかは上条の腕の件があるから契約する可能性が高い

さやかを避けられてもマミのことを知ればマミにあこがれて契約する可能性がある
573 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 03:44:46.08 ID:ODnwY2eMP
助けてくれの意味があれだと信じて疑わない
574 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 12:57:16.45 ID:kYI0WecT0
このマミさん、キュウべえと呼んでるんだな
例外が2人きりじゃない>>538>>545
何か隠されてそうで気になって仕方が無いぜ
575 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/29(金) 13:00:18.75 ID:kYI0WecT0
おっと個体が変わったせいで変えたってことかな
連投スマン
576 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/07/29(金) 17:52:16.57 ID:NBuAOpa2o
おおホントだ!同レス内で他のキャラはキュゥべえってちゃんと言ってるからミスでも無さそうだな
577 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/29(金) 22:49:53.47 ID:70WFCGG9o
うはー読んでて心が痛い…
続き読むのが怖いよ
578 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/07/29(金) 22:52:07.41 ID:FzScRV3+o
しかし発音のやり分けが難しそうだなwwwwww
579 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/07/30(土) 01:17:01.16 ID:VbPbdQWZo
>>574
ぶっちゃけ表記ミスだけど、個体に対するマミさんなりのこだわりってことにした
発音は気にすんな



>>564
こちらも表記ミス
グリーフシード が正しい
途中で間違いに気付いたけど表記の統一を優先させております

>>568
QBの注意をまどかから逸らしてほむら自身に向けさせるため、という解釈
自分が「正体不明」であることを承知していて、まどかの魔力係数の極端な増大に気付いてない状態なら
有効な手段と考えてもおかしくはないはず
というか当SSではそういう設定です
本文で語ることもないだろうからここで言っちゃう



てか筆が進まん
今週中の投下は無理くさい
580 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/30(土) 03:15:35.13 ID:gi5xHflQo
やっと追いついた。乙です。
本編にオリジナルを織り交ぜて、見事に紡がれているのには感動しました。素晴らしいです。
完結目指して頑張って下さい。楽しみに待たせてもらいます。
581 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/30(土) 16:23:54.60 ID:7xLLsETC0
>>579
>QBの注意をまどかから逸らしてほむら自身に向けさせるため、という解釈
自分が「正体不明」であることを承知していて、まどかの魔翌力係数の極端な増大に気付いてない状態なら
有効な手段と考えてもおかしくはないはず

ほむら自身に注意を向けさせて警戒させるという事は、当然彼女が関わっている人物(まどか)にも自然と注意がいく事になるわけで、結局まどかの存在がバレてしまう事になる。
それにたとえ陽動がうまくいった所で一時しのぎに過ぎない上に、QB殺しをすればマミさんに伝わる事になり彼女から危険人物として警戒される事になる。
どう考えても、メリットは皆無でデメリットだけしかない。
582 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2011/07/30(土) 18:30:56.97 ID:6i5Shsm/o
俺はアレが最善手、というよりあれ以外の方法取りようがないと思ってるけど
マミと共闘しながら二人の契約止めようとしても最初はともかく時間が経つと何でそんな契約させないようにするのって思われる
転校してきたばかりで信用が薄いのは三週目を見ればわかるとおり
次第に疑いの目を向けられるようになるんじゃないかな
583 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/07/31(日) 02:40:20.20 ID:eZ9+PmRyo
QB退治が愚策ってのはあってると思う
ただほむらは不器用な性格だ(と俺は思ってる)から
ほむらにとっては、障壁が一番少ない方法だと解釈してる
>>582の二行目以降も、もとからリア充だったら可能だけどほむらだからな
584 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/07/31(日) 10:51:14.43 ID:SwQ4DkfQ0
QB殺しは最終手段に留めておいて、とりあえず1週目のまどかの契約動機のネコを助けて、後はなるべく多少疑われるても敵を作らないように動くのが無難だと思う。
585 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/31(日) 18:18:45.50 ID:SRgKoiqbo
まどか殺せばすべて解決
586 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県) [sage]:2011/07/31(日) 20:17:41.47 ID:tUC8SJRI0
QB狩りの発覚が悪影響だったのは確実だけど
QBを狩って接触させないのは取りうる策として悪く無いと思う
4週目はそういったまどかへの接触を阻止してワルプルまで
まどかは魔法少女について殆ど知られないことに成功してるっぽいし

本編ループでQBがまどかに助けを求めた
あるいはまどかがそれを聞ける圏内にいたこと(それだけまどかの魔翌力係数の増大していた?)
がイレギュラーだったという可能性もあるんじゃないかと
587 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/01(月) 00:53:01.45 ID:eFjAEdDQ0
4週目のまどかはQBにワルプル戦まで存在をしられなかったかどうかは
本編で少しか描写されていなかったから微妙だが、
ワルプル戦までまどかの存在が発覚しなかったしても、
結局はワルプルと言う最大の大義名分や口実を元にQBがまどかに契約を迫る事になる。

魔法少女化へのリスクをまどかに教え込んだ方が抑止力なると思う。
ただマミさんに、ソウルジェムが本体になって肉体は抜け殻になるは別に良いけど、
魔法少女が魔女化するは時期とタイミングを誤ると大変な事なる可能性があるのが注意点だが
彼女が10話で無理心中をしようとしたのは後輩のさやかが魔女になる所を見てしまったからだと思うし、おりこでゆまの説得で立ち直ったし、メンタルケアさえしっかりすればどうにかなると思う。
588 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 02:04:04.41 ID:M2YVSSjwo

まぁ、アレだな
中途半端に設定語りなんぞするもんじゃないな

>>579はあくまで俺個人の解釈でありこのスレ独自の設定であり、
それが正解で有効な手段だなんて言うつもりはありません

というかそもそもこれ、「ほむらが上手いことやる話」じゃないしなぁ
そういう方向で突っ込まれても答えは用意できないわけで
申し訳ないんですけども、そういうことでどうか一つ


追記
明日・・・・じゃなくて今日か。今日には投下できると思います
589 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:17:56.55 ID:M2YVSSjwo

では投下
590 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:19:16.99 ID:M2YVSSjwo



   コツ、コツ、コツ…

マミ「……」

   シーン…

マミ(ジェムに反応はなし……)

マミ(夕方に美樹さんたちの前で倒した使い魔は、どうやら完全な “はぐれ” だったみたいね)

   シューン

マミ「ふぅ……」



   ――カツン



マミ「……」

マミ「ハァ……またあなたなのね」

ほむら「……」
591 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:19:49.03 ID:M2YVSSjwo





   第十八話  暁美ほむら





592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:21:14.06 ID:M2YVSSjwo

ほむら「わかっているの? あなたは無関係の一般人を危険に巻きこんでいる」

マミ「彼女たちはもう知ってしまったのよ。無関係じゃないわ」

ほむら「だとしても、あなたは二人を魔法少女へと誘導している」

マミ「それが面白くない、ってわけ?」

ほむら「ええ、迷惑よ」

ほむら「特に――鹿目まどか」

マミ「ふぅん……そう。あなたも気付いているのね、彼女の持つ素質に」

ほむら「……あの子にだけは、契約させるわけにはいかない」

マミ「あなたの決めることじゃないわ。彼女はキュウべえに選ばれたのよ」

ほむら「あの獣にこそ、誰かを選ぶ権利なんてない」

マミ「……」

マミ「わかってないのは、あなたの方よ」

マミ「権利を持っているのは私たち。彼らはその使い方を教えてくれているだけ」

マミ「あなたもその権利を行使したからこそ、今のあなたになったのでしょう?」
593 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:22:18.37 ID:M2YVSSjwo

ほむら「……」

マミ「……いえ、あなたは彼らとは無関係なのだったかしら?」

ほむら「……」 ピク

マミ「『キュウべえ』 が言っていたわ。あなたと契約をした覚えはないって」

ほむら「……」

マミ「……」

マミ「ふぅ……」

マミ「なんにしても、完全に無関係な人間なんて一人もいないわ。特に今のこの街にはね」

ほむら「……?」

マミ「“ワルプルギスの夜” ――聞いたことはあるかしら?」

ほむら「――!」

マミ「……知ってるみたいね」

マミ「そう。それがもうすぐこの街に来る。対抗するには、鹿目さんの力が必要なのよ」

ほむら「……させないわ」

マミ「……」
594 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:23:33.62 ID:M2YVSSjwo

ほむら「あの子には、戦わせない」

マミ「……あなた、何者なの? どうしてそこまで鹿目さんにこだわるの?」

ほむら「……」

マミ「……」

マミ「……まただんまり、か。まぁ、いいわ」

マミ「あなたみたいな他所から来た人にはわからないでしょうけど、私はこの街が大切なの。
   何を賭してでも守るつもりよ」

マミ「だけど、他人の命まで捧げようとは思わない」

マミ「鹿目さんのことも守ってみせるわ。だからもう、放っておいて」

ほむら「……」

マミ「ワルプルギスが来るまで、遅くともあと二ヶ月。……実際は、たぶんもっと早い。
   死にたくなければ今のうちにこの街を去りなさい」

ほむら「……。いいえ」

マミ「物わかりが悪いのね。見逃してあげると――」

ほむら「そうじゃない」

ほむら「二ヶ月もない。あと三週間よ」
595 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:24:39.27 ID:M2YVSSjwo

マミ「――……なんですって?」

ほむら「正確には、あと十九日。時刻は夜の七時から九時のあいだ」

マミ「何を……」

ほむら「場所は西側の工業地域。……最初から周囲に人がいないことだけは幸いね」

マミ「何を言っているの? どうしてあなたが、そんなこと」

ほむら「見てきたからよ。この目でね」

マミ「見てきた……?」

ほむら「そうよ。私は――」



ほむら「…………私は、未来から来た」



マミ「……!?」

ほむら「あの獣が私のことを知らないのがその証拠よ。
     本来の時間軸では、この時点の私はまだ魔法少女になっていなかったから」
596 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:25:48.56 ID:M2YVSSjwo

ほむら「私が契約したのは、“ワルプルギスの夜” 襲来の翌朝」

ほむら「瓦礫の山と化した街の中心で、鹿目まどかの遺体のそばに座りこんでいた私の前に、
     あいつが現れたの」

マミ「……」

ほむら「まどかは私の友達だった」

マミ「……」 ピク

ほむら「転校してきた私を親身になって世話してくれた、たった一人の友達だったのよ」

マミ「……」

ほむら「私はまどかを守りたい」

マミ「……」

ほむら「ワルプルギスの夜は私が倒す。でも、」

ほむら「あなたも、この街を守りたいのなら――お願い。力を貸して」

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……そう」
597 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:27:06.18 ID:M2YVSSjwo

マミ「あなたにも大切に思う人がいるのね……」

ほむら「……! 信じてくれるの?」

マミ「そんなわけないでしょう」



   シュルルルル――――ギシッ!!



ほむら「なっ……きゃあっ!?」

マミ「……フン」

ほむら「な、何を……!」

マミ「何を、ですって? 呆れたわ……。今みたいな話で本当に騙せると思ったの?
   まったく、舐められたものね」

ほむら「くっ……! 嘘なんか……!」 ギッ ギシッ

マミ「無駄よ。その鎖模様のリボンは拘束に特化している。素手なんかで千切れやしないわ」

ほむら「っ……」
598 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:28:24.32 ID:M2YVSSjwo

マミ「……まぁ、辻褄はあっているわね。あの子があなたを知らなかったことも、
   あなたが私たちのことを知っているふうだったことも、今の話なら説明はつくわ」

マミ「でもやっぱり、デタラメよ」

ほむら「嘘じゃないわ! 本当よ!」

マミ「ならなぜ鹿目さんの契約を阻むの? 守りたいなら自衛のための力を与えるべきでしょう?」

ほむら「そ、それは……」

マミ「ほら、答えられない」

マミ「私の考えでは――あなたは、『キュゥべえ』 ではない他の何かから力を得た。
   そして鹿目さんもそちらに引き込んで、彼女の力を自分たちのものにするつもりでいる」

マミ「と、そんなところじゃないかしら?」

ほむら「違う! 他の何かなんていないわ!」

マミ「なら、理由を言ってみなさい」

ほむら「だからっ、それは……!」

マミ「……」

ほむら「くっ……!」

マミ「フン……」
599 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:30:09.01 ID:M2YVSSjwo

ほむら「……ま、」

マミ「『ま』?」

ほむら「まどかは…………彼女の力は、大きすぎるのよ。その魔力は人の身に収まらない。
     解き放っては……ワルプルギスの夜と出会わせてしまっては、いけないの」

マミ「……。出会わせたら、どうなるっていうの?」

ほむら「……ッ」 ギリ…



ほむら「そうしたら、あの子は……………………魔女に、なってしまう」



マミ「……」

マミ「魔女に? 鹿目さんが?」

ほむら「そ、そうよ……」

マミ「……」

ほむら「す、全ての魔法少女がそうなるわけじゃないわ。まどかの強すぎる魔力が、特別で。
     だからそれをさせないために、私は――」

マミ「ふふっ……」

ほむら「――!?」
600 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:31:32.04 ID:M2YVSSjwo

マミ「何を言い出すかと思えば……語るに落ちたわね」

ほむら「え……?」

マミ「あなた、さっき言ったじゃない。彼女の亡骸のそばに座り込んでいた、って」

ほむら「……ッ!」

マミ「鹿目さんは死ぬの? それとも魔女になるの? どっち?」

ほむら「それは――どちらもありうるの! 私が過去に戻ったのは今回が初めてじゃない!
     死んでしまう未来もあれば、魔女になってしまう未来もあるの!」

マミ「またそんな都合のいい……」

ほむら「本当なのよっ……!」

マミ「……だとしたら、またおかしなことになるわよ?」

ほむら「え……?」

マミ「過去に戻るのが初めてじゃないって、それじゃあ今回は何度目なの?」

ほむら「……じゅ、十二回目よ」

マミ「それだけ繰り返した中で、鹿目さんを街の外に逃がそうとは考えなかったの?
   出現日時も場所もわかっているのに?」
601 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:32:31.72 ID:M2YVSSjwo

ほむら「……やったわ、それも。まどかだけじゃなく、彼女の家族も逃がした」

マミ「ふぅん」

ほむら「だけど、ワルプルギスの夜に破壊しつくされた街のために、結局契約を……」

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……それで?」

ほむら「それで、って……」

マミ「ワルプルギスの夜が去ったあとなら契約して魔法少女になっても問題ないはずよ。
   “それ” と出会うからまずいのでしょう?」

ほむら「あ……」

マミ「ハァ……」

ほむら「――っ!」

ほむら「……お願いっ、信じて……!」

マミ「信じられると思う?」
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:33:39.41 ID:M2YVSSjwo

マミ「……そもそもね、私を納得させられるような事情があなたにあるなんてこと、
   私は最初から信じるつもりはないの」

マミ「特に、大切な誰かを守りたいなんて……」

マミ「そんな想いを抱えている人間に、あんなことができるはずないじゃない……!」

ほむら「……? 私が何をしたっていうの?」

マミ「……」 ピク

   キィーン…

ほむら「ぐぅうっ!?」 ギリギリギリッ

マミ「『何をした』?」

マミ「『何をした』、ですって?」 キィーン…

ほむら「うぁあああっ!!」 ギリギリギリギリッ
                               . . ..
マミ「驚いたわ……嘘つきなだけじゃなく、そこまで人でなしだったなんて」

ほむら「う、ぅう……!」

マミ「それとも、あの子を――キュウべえを殺したのは自分じゃないとでも言うつもり?」
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:34:51.49 ID:M2YVSSjwo

ほむら「キュゥ……べえ……?」

マミ「……」

ほむら「何を言っているの……? アレはまだ、生きて――」

マミ「“アレ” はあの子じゃない。別の個体よ」

ほむら「!?  あなた、あいつらの在り方を知って……?」

マミ「馬鹿にしないで。当然よ」

ほむら「なら、わかるでしょう? 一匹潰したぐらいでは――ぐっ!?」

ほむら「うぁあああああああああああっ!!」 ギリギリギリギリッ

マミ「……」

マミ「……ふっ」

マミ「ふふ、ふ、ふふふふふふふふふふふ、ふ……」

   シュイーン――キラッ!

マミ「潰した?! 潰したですって!?」 ジャキッ!!

ほむら「!?」
604 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:35:54.42 ID:M2YVSSjwo

マミ「よくもそんな言い方ができるわね! あの子を何だと思っているの!?」

マミ「人間じゃなくても、在りようが違っても、ちゃんと心を持った生き物なのよ!?」

マミ「それを、どうして……どうしてそんな……っ!」

ほむら「ち、違うわ!」

ほむら「アレに心なんてない! あなたは騙されてるのよ!」

マミ「――ッ!」

マミ「黙りなさい!!」

   シュルルル――パシッ!!

ほむら「むぐっ!?」

マミ「言うに事欠いて……」

マミ「あの子の命を奪っただけでは飽き足らず、そんな侮辱までするなんて……」

マミ「あの子がどれだけ優しかったか! あの子がいてくれて、私がどれだけ救われたか!」

マミ「それを知りもしないで……っ!!」

ほむら「ンンッ! ンーッ!」 ギリギリギリ…
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:36:48.79 ID:M2YVSSjwo

マミ「――ハァ、ハァ、ハァ…………」

ほむら「ッ! ……ーッ!」

マミ「……」

マミ「……」

マミ「……」

ほむら「ッ……、…………?」

マミ「……あなた、似てるわ」

ほむら「? ……?」

マミ「私が初めて倒した、あの “子供部屋の魔女” に。今のあなた、そっくりよ」

ほむら「……」

マミ「あの魔女も、耳障りな騒音を撒き散らして、キュウべえを傷付けてくれたから、
   そうやって口を塞いでやったのよ」

マミ「……」

マミ「そう…………あなた、魔女だわ」

ほむら「――!?」
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/02(火) 21:37:01.31 ID:iz4fbMeMo
ほむらにとってはとんだとばっちりだろうな
607 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:38:49.87 ID:M2YVSSjwo

マミ「身勝手な理由で人を傷つけて、惑わして、貶めて……」

マミ「暁美さん。あなた、魔女そのものよ」 シュンッ…

ほむら「……ッ」

ほむら(? ……マスケットを、消した?)

マミ「――レゴ〈拘束〉」

   シュルルルル――パシッ

ほむら「ッ!?」

マミ「……どうしてまた別のリボンを巻くんだ、って思った?」

マミ「『未来から来た』 なら知らないでしょうね……このリボンは私のかつての武器よ。
   銃が使えるようになるまでは、これで魔女と戦っていたの」

マミ「〈ナストロ・ブルカーノ〉……日本語にすれば、火山帯、ってところかしらね」

マミ「名前の通り、爆発するわ」

ほむら「!!?」

マミ「あの魔女も、これで顔から焼き殺してあげたわ」

マミ「危ないから封印してたんだけどね……今なら、また使えそうな気がする」
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:39:48.03 ID:M2YVSSjwo

マミ「そういえば……本来そういうものなのよね、魔女狩りって」

マミ「魔女は磔にして焼き殺すのが、古来からの……そう。正しいやり方」

マミ「……そうよ。これは正しいことなのよ」

マミ「魔女は殺す……殺さなきゃいけない……」

マミ「魔女……私たちの、敵……」

マミ「キュウべえの……――カタキ!」

ほむら「……っ!!」

ほむら(まどか……ッ!!)













609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:40:36.22 ID:M2YVSSjwo




















ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「……、……?」

ほむら(……生きて、る?)


610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:41:39.42 ID:M2YVSSjwo

マミ「……」

マミ「……うっ」

マミ「う、うぅぅ……ううっ……」 ――ペタン

   …パラッ

ほむら「ひゃっ?」 ドサッ

   シュウゥゥゥ…

ほむら「……え?」

マミ「う……ぅ、う……」

マミ「……できるわけ、ないじゃない……」

マミ「あの子は……キュウべえは、言ったのよ! 魔法少女には生きていて欲しいって!」

マミ「魔女を殺すことなんかより、ただ生きていてくれればそれでいいって!」

ほむら「な……っ!?」

マミ「それなのに! それなのに……っ!」

マミ「……殺せるわけ……ないじゃない…………」

ほむら(あいつ……!) ギリ…
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:42:39.87 ID:M2YVSSjwo

マミ「うっ、ううっ、うっ、うぅぅ、うぅ……」

ほむら「……」

ほむら「……巴マミ」

マミ「……」 ピク

マミ「何も言わないで」

ほむら「……」

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……お願い。この街から出て行って」

ほむら「……」

マミ「……お願いよ」

マミ「……あなたがいるって思うと、私、この街を守れない……」

ほむら「……」




612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/02(火) 21:43:09.30 ID:iz4fbMeMo
まあ魔法少女に死なれたら魔女化しないからエネルギーを回収出来ないからな
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:43:58.50 ID:M2YVSSjwo



   ◆

   ドアを開け、閉め、鍵をかける。
   ただいま、と呟いて、返事がないことに気付いて、我に返った。
   帰ってきていた。
   家に、いつの間にか。

マミ「……」

   廊下を歩いて、リビングに入って、そこで身体から力が抜けた。
   ラグの上に横たわる。
   何もしたくない。
   何も考えたくない。

マミ「……」

   ふと、視線が定まる。
   サイドボードが目に入る。ガラスの戸棚が目に入る。仕舞われているモノが目に入る。
   飴色の瓶。
   毎年お父さんの誕生日に、数滴ずつ紅茶に入れて飲んでいる、ブランデー。

   それが、目に入る。

マミ「……」

マミ「……………………」





614 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/02(火) 21:45:14.80 ID:M2YVSSjwo

以上



ってかそーいや12話に出した魔女の私的図鑑を忘れてたなぁ

まぁいいや
だいたい描写した通りだし
615 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 21:46:48.52 ID:2tVAAKbyo
お疲れ様でした。

どうなることやら・・・・・・・。
616 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 21:48:27.81 ID:m+6GOtaao
乙マミ


……先代キュゥべえさんがプロすぎたな
マミさん、すっかり篭絡されちまって
617 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/02(火) 22:01:34.38 ID:IlcbBxzZ0
今のマミさんがいるのはQBさんのおかげだからな。QBに個体差があるなんてほむらでは絶対気づけません。
618 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/02(火) 22:34:04.45 ID:VKre2kw50
まったく、マミにこんなにも想われるキュゥべぇは罪な男だぜ。色々な意味で
619 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/08/02(火) 22:38:56.10 ID:gm+9TQR90
正確には個体差じゃなくて経験差だろうしなァ…
気付くも何も知りようがない
ああ救われないこれぞまどマギ…
620 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/02(火) 22:42:56.26 ID:7aX0EmuIo
本編の2体目と3体目を見る限りある程度の差はありそう
2体目はとにかく誉めて契約をとろうとする姿勢が強く
3体目は相手に事実を突きつけて絶望させ魔女にさせようとするスタンスととっている
621 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/02(火) 23:26:19.62 ID:HZf6IL+Ko
乙っちまどまど!
マミさん……キュゥべえに騙されてる!
622 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/03(水) 00:23:31.98 ID:Za9HuinAO
マミさん…マジで哀れだ…
QBに利用されて何も知らずに結局は「独りぼっち」のまま死亡か…
マジで救われねぇ…
623 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/03(水) 00:41:45.07 ID:XOpILpYxo
ちょっと待て、酒ってまさか……それはまずいぞ!これはいかんぞ!
624 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2011/08/03(水) 00:53:30.33 ID:F2rtalf90

気が滅入った(賛辞)
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/03(水) 23:15:52.56 ID:6pEosnuTo


信じる気がない人に何を言っても無駄だよな……
マミさんは信じる気がない

とはいえ、QBに心がないってのは失礼だよな
心のあり方が人間とは違うだけだろうし
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/03(水) 23:40:14.60 ID:A+sQ7p0g0
本編でもそうだが、ほむらが信頼関係を構築するのを怠ったツケを払わされているだけだけど、
他にも色々と墓穴を掘っているし…。
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage]:2011/08/05(金) 11:06:01.52 ID:8tjKFNIT0
3周目で仲間だろうと撃ち殺しているのがマミでしょ。
仲間を欲しがっていたがその仲間すら信じられずに自分のちっぽけな自我が大切な人なんだよ。

まあ本編でほむらが冷淡で上から目線な態度とっていたのは
ワルプルギス戦でまどかが自分のために契約させないためだと推測されるけどな。
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/05(金) 12:44:11.09 ID:ThlKJEeu0
>>627
まあ3週目のアレは色んな事が重なってパンクした結果だろうし仕方ないかなとも思える
本編のさやかといい、つくづくまどかって「不幸の連鎖」が多い作品だよな

下3行は同意
仲良くなってしまった結果が4週目とかおりこ週なんだろうし、それを防ぐためだろうね
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/05(金) 20:16:16.98 ID:9hRMCP9Ro
まどかの性格ってやっかいだよな

それを考えるとまどかにとっては一週目が理想の死に方だったのかも
今まで自分に自信を持てなかったけれど
誰かを助けるために命を捨てたっていう
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/05(金) 22:15:14.17 ID:Xdgcwh5B0
3週目のアレは状況が重なった結果
パニックに陥った(行動自体は冷静なのが恐ろしいが)だけだろうし
時間がたてば持ち成した可能性は高いと思う(絶望して魔女化しなかった)。

>>628
別に仲良くなっても良いじゃない?仲が悪るかろうと、どのみちワルプルで契約するだろうし
おりこ週の場合、単にツメを誤っただけだし。
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/08/07(日) 03:22:06.63 ID:6gBSKIhFo
乙!
マミさん…愛が重いぜ。
正直、今回のは映像つきで見てみたいww
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/07(日) 05:34:38.20 ID:dj1cbnAEo
>>629
身も蓋もない言い方をすると、
それが納得できなかったほむらが契約して時間を戻したのはまあいいとして、
その都度自分が気に食わない結果になったから何度もループしたのは
完全にほむらのわがままだよな。
それをQBに突かれたら魔女化しかけて、結局またまどかに助けてもらった。
ほむほむマジ手のかかる子可愛い。
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:00:37.32 ID:jWnBZRE2o

投下
イッツァクライマックス

長めなんで途中で休憩とります
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:01:56.48 ID:jWnBZRE2o



   三日が経過した。
   私は日常を送っている。

   つまり、朝起きて、学校に行って、放課後はパトロール。
   四年前から始まった魔法少女としての日常を、一人でこなしている。
   一人で。

   鹿目さんや美樹さんとは、会えば話ぐらいはするけれど、行動を共にはしていない。
   魔法少女体験コースは終了した。
   今の時点で教えられることはもうないから。
   これ以上のことがらは、彼女たちが契約してからでないとあまり意味がない。

   けれど――私はそれまで、もつだろうか。

マミ「……」

   あの日以来、急速に濁りつつあるジェムを眺めながら、クッキーをかじり、紅茶をすする。
   美味しくない。
   焼き加減も、蒸らし時間も温度も完璧。
   なのに以前ほど美味しくない。

   そのことが、悲しくて、だけど同じぐらい安心できた。



   呼び鈴が鳴ったのは、そんなときだった。


635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:02:26.62 ID:jWnBZRE2o





   第十九話  お菓子の魔女 前編





636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) [sage]:2011/08/07(日) 15:02:55.42 ID:EFgnLUDfo
期待
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:03:26.26 ID:jWnBZRE2o



   走る。
   オレンジ色の街並みを、ひた走る。

マミ「病院か……最悪ね」

まどか「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

マミ「『キュゥべえ』 にも、処理はできなかったのね?」

まどか「ハァッ、ハァッ……は、はい……」

マミ「……」

   ダメだ。
   つい苛立ってしまった。鹿目さんの、足と受け答えの遅さに。
   それは仕方のないことなのに。

   病院の敷地内に、孵化しかけのグリフシードが刺さっていた。
   友達のお見舞いに行った際に見つけた。
   今は美樹さんが、『キュゥべえ』 と共に見張っている。

   玄関先でそう説明してくれたとき、彼女はすでに息も絶え絶えだった。
   病院から私の部屋まで、よほど急いでくれたのだろう。
   そして、今も走っている。
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:04:27.00 ID:jWnBZRE2o

   携帯番号ぐらい交換しておくべきだった。どうにも私はその手のことに気が回らない。
   次からは気をつけるようにしよう。

   次があれば、ね。今はそれよりも――

マミ「――……」

   ほんの一瞬、ジェムに意識を集中させる。身体能力強化――完了。

マミ「鹿目さん。手を」

まどか「え? あ、はい……――きゃあっ!?」

   伸ばされた腕を掴んで、引っぱり上げて、そのまま横抱きに抱きかかえる。

まどか「ま、マミさ――」

マミ「喋らないで。舌を噛むわよ」

まどか「あぅ……///」

   いわゆるお姫様だっこの体勢。
   できるだけ裏道を通るつもりではあるけれど、それでも多少は人に見られるだろう。
   しかし恥ずかしいのは我慢してもらう。

マミ「首に手をまわして。しっかりつかまって」

   だってそれこそ、仕方のないことだから。


639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:05:06.31 ID:jWnBZRE2o



   ◆

マミ「付いたわ。もう降りて大丈夫よ」

まどか「あ……はい……」

マミ「……ちょっと無茶しちゃったかしら?」

まどか「い、いえ。大丈夫です」 フルフル

マミ「そう、ごめんなさいね。――で、場所は?」

まどか「あ、あっちです。裏手の、自転車置き場のある方」

マミ「オッケー。行くわよ」

まどか「はいっ」


640 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:06:14.00 ID:jWnBZRE2o



マミ「ここね」

   鹿目さんの言葉に従い裏手に回ると、駐輪場に面した壁に、既に結界の入り口が
   出来上がっていた。
   正面に立ち、テレパシーで呼び掛ける。

マミ《『キュゥべえ』、状況は?》

QB《まだ大丈夫。すぐに孵化する様子はないよ》

   想像していたよりも呑気そうな声が返ってきた。
   安心――とは別の感情が浮かびかけるが、今はそれどころじゃない。押し込める。

まどか《さやかちゃん、大丈夫?》

さやか《平気平気。退屈で居眠りしちゃいそう》

QB《むしろ、迂闊に大きな魔力を使って卵を刺激する方がマズい。
   急がなくていいから、なるべく静かに来てくれるかい?》

マミ《わかったわ》

   確認はもう十分だ。ひとまず念話を切る。
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:08:10.44 ID:jWnBZRE2o

まどか「よかった、間に合って……」

マミ「無茶し過ぎ、――って怒りたいところだけど、今回に限っては冴えた手だったわ。
   これなら魔女を取り逃がす心配もないし」

マミ「それじゃあ……、……」

   行きましょうか、と言いかけて、気付いた。
   考えてみれば、鹿目さんが付いて来る必要はないのだ。

   でも、今さら来るななんて言っても納得してくれるかどうか。
   だったらどうして連れて来たのかと思われるだろう。

   そう、ここまで連れてくる必要も、なかった。家で待っていてもらえばよかった。

マミ「……」

   まぁ、魔女も生まれたてのものなら危険もそれほど大きくだろうしないし……それに、
   『キュゥべえ』の言っていたこともある。

まどか「……マミさん?」

マミ「なんでもないわ。行きましょう」

   誰かを守りながら戦うという経験は、きっと私の役に立つ。

   彼も、決して正しくないわけじゃない。
   まだ心が未熟で、物事の善し悪しや人の気持ちというものを上手く理解できないだけで。

   だって、あの子と志を同じくする仲間なんだから。   
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:09:23.29 ID:jWnBZRE2o



   結界の内部は、甘い匂いで満ちていた。

まどか「……これ、全部お菓子ですか?」

マミ「そのようね」

   キャンディー、ドーナツ、チョコレート。イチゴのケーキにクリームサンドのビスケット。
   色とりどりのさまざまなお菓子が薄暗い空間を埋め尽くしている。
   どれもでたらめに大きい。匂いどころか見た目だけで胸焼けしそうだ。

まどか「なんで、こんな……」

マミ「さぁ、ね」

   また、ところどころに医薬品の類も混ざっている。
   向こうで山になっているのは、ジェリービーンズだろうか。それとも薬のカプセルだろうか。

   難病の子供でも入院しているのかも知れない。
   その辛さ、恨みつらみが寄り集まって魔女が生まれた、といったところだろう。

   そういえば私も、入院中はお菓子なんかろくに食べられなかったっけ。

マミ「……。あまり考えない方がいいわよ」

まどか「え?」
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:10:22.56 ID:jWnBZRE2o

マミ「魔女の考えることなんか理解できるわけないし……仮に理解できたとしても、辛いだけよ」

マミ「どのみち、倒さなくちゃいけないんだから」

まどか「……」

   気味悪げ、また物珍しげだった面差しが、憂いを帯びる。
   やっぱり彼女は向いていないのかも知れない。
   優しすぎる。

マミ「ねぇ、鹿目さん――」

   言いながら振り返って、その言葉と動きが途中で止まる。
   顔から表情が消えるのが自分でわかった。

まどか「え……?」

   鹿目さんも同じように振り返って、同じように固まった。
   小さな肩がギクリと震えるのが見えた。

ほむら「……」

まどか「ほむら、ちゃん」

   暁美ほむら。

   頭の中で、何かが切り替わったような、気がした。
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:11:38.77 ID:jWnBZRE2o

マミ「言ったはずよね。街から出て行ってって」

   まぁ、別に期待はしていなかった。
   彼女の家族構成は知らないけれど、例えば私と同じように一人暮らしだったとしても、
   中学生がそうやすやすと棲家を変えられるとは思っていない。

ほむら「ここの魔女からは手を引いて。危険なの」

マミ「……」

   だけど、私の前に姿を現すというなら話は別だ。

マミ「ここの魔女というと――いま、あなたの後ろにいるヤツかしら?」

ほむら「え……」

















   パンッ
645 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:12:56.07 ID:jWnBZRE2o

   軽い発砲音。
   続いて、

ほむら「ぅ――?」

   ドサ、と、暁美ほむらが倒れ込む。その背中にさらに一発。

ほむら「ぅあっ!? な――に、を……」

まどか「マミさんっ!?」

   二人分の驚愕が向けられる。
   動揺は特にしなかった。

マミ「非致死性の麻痺弾よ。死にはしないわ」

   他にも炸裂弾や煙幕弾など、弾丸のバリエーションはそれなりにある。
   これはグリフシードを巡っての争いや模擬戦など、対人用に準備しておいたものだ。
   それなりに集中が必要なので佐倉さんのときは使えなかったけれど。

   しかし、さっきの妙な感覚のおかげか。
   まだ変身すらしていないのに繰り出すことができた。

まどか「だ、だからって……」

   鹿目さんがうめく。
   だけど悪いけど、今は後回し。
646 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:14:18.25 ID:jWnBZRE2o

マミ「油断したわね、暁美さん」

ほむら「……」

マミ「撃たれないと思った? 前回殺されなかったからって」

ほむら「っ……」

   睨まれる。
   が、まったく迫力というものを感じない。

マミ「あなた、弱いわ」

ほむら「……ッ!」

マミ「まったく、とんだ見掛け倒しよ。ただ目つきが悪いだけじゃない」

マミ「その程度の実力で、よくもワルプルギスの夜を倒すなんて吠えられたものね」

ほむら「くっ……」 ギリ

   背を向ける。

マミ「寝てなさい。帰りに中和してあげるわ」

   使い魔の行き交う結界の中で、それまで生きていられれば、ね。
647 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:15:26.80 ID:jWnBZRE2o

マミ「それじゃ――行きましょうか、鹿目さん」

まどか「……。はい……」

ほむら「待、ち……なさい……!」

   そんな必要はない。

ほむら「待ち……おねがい、待って……!」

ほむら「ここの、魔女は……」

ほむら「……これ……までの……ものとは、わけ、が……」

マミ「……」

マミ「……」

   声が途絶えた。麻痺が喉まで回ったか。

   まったく、どこまでも馬鹿にしてくれる。
   私が魔女相手に油断したことなんて、一度だってありはしないというのに。


648 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:16:25.16 ID:jWnBZRE2o



   奥へと進む。

マミ「……」

まどか「……」

   沈黙。
   鹿目さんは何も言わない。
   私も、使い魔をやり過ごすための指示を出す以外には、何も言わない。

   チョコプレッツェルの林を抜けて、氷砂糖のドアをくぐる。
   ずらりと並んだベットに寝転ぶジンジャーブレッドマンを横目に見ながら、さらに奥へ。

マミ「……」

まどか「……」

   そのままずっと続くかと思われた沈黙は、少しだけ意外なことに、
   鹿目さんの方から破られた。

まどか「あの……マミさん」

マミ「……。何かしら」

まどか「えっと、その……」

マミ「……」

   ため息をひとつ。
649 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:17:20.80 ID:jWnBZRE2o

マミ「暁美さんのことなら、何も言わないで欲しいわ」

まどか「あ……」

マミ「あなたの前で暴れてしまったことだけは少し反省しているけど、やったことそのものを
   顧みるつもりはないの」

マミ「既に同じことを一度やっているし、彼女が私の前に現れるなら、何度だってやってやるわ」

まどか「……」

   再度の沈黙。
   扉をくぐる。
   板チョコレートでできていたらしく、少しべとついた。ハンカチを取り出してぬぐう。

まどか「そうじゃなくて……いえ、それもあるんですけど……」

マミ「……なに?」

まどか「その……」

まどか「わたし、キュゥべえから聞いたんです。キュゥべえの前の子が、ほむらちゃんに、その……」

マミ「……」

   余計なことを。
   デリカシーのないところはあの子と変わらないのね。
650 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:18:37.18 ID:jWnBZRE2o

マミ「なら、わかるでしょう?」

   私がどれだけあの女を憎んでいるか。

まどか「いえ、あの、でも」

マミ「……鹿目さん」

   足を止める。
   振り返らない。

マミ「何か言いたいのなら、できるだけ言葉を選んでちょうだいね?」

マミ「私……あなたに八つ当たりみたいなこと、したくないの」

まどか「……」

   振り返らない。
   深呼吸の音が聞こえた。

まどか「……マミさん」

マミ「なに」

まどか「わたし、キュゥべえにもう一つ聞いたんです」

マミ「何を?」
651 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:19:26.06 ID:jWnBZRE2o





まどか「わたしの願いで、マミさんのそばにいた子を生き返らせることはできるの? って」





652 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:20:28.09 ID:jWnBZRE2o

マミ「――っ!!?」

   振り返る。
   目が合った。
   それは真剣な眼差しだった。

まどか「できるそうです。……わたしが心から願えれば」

   目を見開く。
   言葉が、頭の中で繰り返される。

   生き返る。

   生き返らせる。

   戻ってくる。

   つまり、

   あの子に、キュウべえに、もう一度、逢える……?

マミ「ほ……」

マミ「ほんとう、に?」

まどか「はい」
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:21:25.52 ID:jWnBZRE2o

マミ「……」

まどか「どう、ですか?」

マミ「……ッ!」

マミ「ま――待って。待って、待って待って。だめ。だめよ、そんなの」

まどか「え……?」

マミ「それは、もちろん――でも、だめよ! そんなことにあなたの願いを使うなんて!」

まどか「『そんなこと』 なんかじゃないです」

マミ「っ……!」

マミ「ま、待ってってば!」

マミ「私、言ったわよね。人のために願いを使うなら、自分の望みをはっきりさせなさいって」

マミ「“それ” を願って、あなたはどうするの? 何を得るの?」

まどか「わたしは……」
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:22:39.22 ID:jWnBZRE2o



まどか「願いごとについて、わたしなりにいろいろと考えてみたんです」

まどか「マミさんには、考えが甘いって怒られるかも知れないんですけど……」

まどか「わたしって、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて」

まどか「きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって」

まどか「それがイヤでしょうがなかったんです」

まどか「でもマミさんと会って、誰かを助けるために戦ってるの、見せてもらって」

まどか「同じことが、わたしにもできるかも知れないって言われて」

まどか「何よりも嬉しかったのはそのことで」

まどか「だからわたし、魔法少女になれたら、それで願いごとは叶っちゃうんです」

まどか「こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら」

まどか「それが、一番の夢だから」


655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:23:51.24 ID:jWnBZRE2o

マミ「……」

   私の “忠告” どおり、慎重に言葉を選んでくれたのだろう。
   たどたどしく語られたその願いは、



   『――私は、生きたい。生きて、その命を正しいことに使いたい』



   私の祈りに、どこか似ていた。
   似ているようで、全く別の、はるかに貴い祈りにも思えた。

マミ「それは……大変な願いよ」

マミ「ええ、甘い考えだわ。私も同じようなことを考えたけど、無理だった。
   ぜんぜん上手くできなくて、何度も失敗して、何人もの人を目の前で魔女に殺されて……」

マミ「もう、どれだけの挫折を味わったのか、思い出せない」

まどか「でも、それでもマミさん、がんばってくれてるじゃないですか」

まどか「そんなマミさんに、わたし、憧れてるんです」

マミ「憧れるほどのものじゃないわ……」
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:25:36.85 ID:jWnBZRE2o

マミ「鹿目さん、あなたも見たでしょう? さっきの私を」

マミ「ううん、あなたが見てたからあの程度で済んだの。
   あなたがいなかったら、私……彼女に何をしてたかわからない」

まどか「それは……」

   鹿目さんが言葉に詰まる。

まどか「……そう、ですね。ああいうのは、イヤです。見たくないです」

   当然だ。

   ――と、そう思ったのだけれど。

まどか「でも――わたしの祈りがキュゥべえに届いたら、もうあんなことする必要なくなりますよね?」

マミ「……!」

まどか「そうなったら……ほむらちゃんのこと、許してあげられませんか?」

マミ「……」

   この子は。

まどか「えっと、その。ほむらちゃんは……言ってることは、よくわからないこともあるし、
     やったことはもちろん悪いことですけど、悪い子じゃないと思うんです」
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:26:41.81 ID:jWnBZRE2o

まどか「なんて言ったらいいか、わからないんですけど……すっごく一生懸命っていうか」

まどか「だからたぶん、どうしてもそうしなきゃいけない理由とか、あったかも……とか」

まどか「い、いえ。それでももちろんダメなんですけど、そこは、わたしが。願いで」

   この子はどこまで、優しいのか。

マミ「……鹿目さん」

まどか「あ、は、はい」

マミ「……それは、わからないわ。彼女を許せるかどうかは」

まどか「マミさん……」

マミ「わからないの。あの子が大切っだって気持ちが、いなくなった今でも消えないように……
   暁美さんに対するこの嫌な感情も、そう簡単になくなってくれるとは思えないの」

まどか「……」

マミ「……、でも」

まどか「え?」

マミ「努力は、してみるわ」

まどか「マミさん……!」
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:27:41.24 ID:jWnBZRE2o

   私の答えに、鹿目さんは澄んだ笑顔を浮かべてくれた。
   こちらの心まで暖かくなるような、素敵な笑顔だった。

マミ「……」

   もしかしたら。
   もしかしたら、暁美さんの言っていたことは本当なのかも知れない。
   他はともかく、鹿目さんを守りたいという部分だけは、本当なのかも知れない。

マミ「……でもね、鹿目さん」

まどか「なんですか?」

マミ「やっぱり、あなた自身にも見返りは必要だと思うの」

まどか「あー……」

   すると、困ったような顔。

マミ「私から何かお礼を返してもいいけど……もらうものが大きすぎて、何も返せないわ」

まどか「いえ、いいんです」

マミ「でも……」

まどか「だってお礼をするのはこっちですから」

マミ「え?」
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:28:45.22 ID:jWnBZRE2o

まどか「マミさんは四年間も、ずっとこの街を魔女から守ってくれてたんですよね?」

マミ「え、ええ……」

まどか「わたし、そんな人がいるなんてぜんぜん気付きませんでしたし、思いもしませんでした。
     でも、確かにマミさんやその子がいたから、わたしの今はあるんだと思うんです」

まどか「もし二人がいなかったら、わたしや、パパやママや……弟とか、さやかちゃんに仁美ちゃん、
     そういうわたしの周りの人たちが今みたいに無事じゃなかったかも知れませんから」

まどか「だから、そのお礼です」

マミ「……鹿目さん……」

   なんてことだろう。
   なんて子なんだろう。
   涙が出そうになる。
   ソウルジェムの濁りすら浄化された気分だ。

   お礼、と差し出された手に手を伸ばし――



   《――マミ!》



   ――たところに、『キュゥべえ』 の念話が割り込んだ。
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:31:01.09 ID:jWnBZRE2o

QB《グリフシードが動き始めた! 孵化が始まる!》

マミ「……まったく、無神経なところもそっくりなんだから」

QB《何を言ってるんだい? いいから急いで!》

マミ「オッケー、わかったわ」

   指輪をジェムへ。
   魔力を練り、想起する。『悪い魔女と戦う、戦士としての自分の姿』。

   ほとばしった金色の光りが全身を包み込み、制服がどこかへと消えうせる。
   代わって、ブーツにスカート、ドレスシャツにコルセット、
   指抜きの長手袋と、羽付き帽子が次々と現れ、身に纏われる。

マミ「今日という今日は速攻で片付ける!」

   同時に、結界内の空気が震えだす。
   私の魔力を察知した使い魔たちが一斉に動き始めたのだろう。
   目を向けると、行く手から十数匹の群れが迫ってきていた。

   銃を召喚。様子見の第一発。

   弾丸は群れの真ん中を貫き、射線上にいた何匹かを撃ち抜いた。
   よし。
   ここの使い魔も例にたがわず耐久性が低い。これなら十分いける。
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/07(日) 15:31:52.62 ID:4bj7PFf6o
これは……
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:31:58.20 ID:jWnBZRE2o

マミ「行くわよ、鹿目さん」

まどか「は――はい!」

   伸ばされた手をとり走り出す。

   胎動から孵化までは、だいたい二分ぐらい。
   普通ならまず間に合わない。よくてギリギリだ。
   ましてや一般人である鹿目さんを連れているのだし。

   でも、それがどうした。

   今の私は普通じゃない。
   絶対に間に合わせてみせる。

マミ「――跳ぶわ」

まどか「あ、え?」

   返事はともかく、握り返してくる感触があった。
   それを信じて、跳躍。

まどか「ひゃっ――」

   空中で体勢を組み替え、小脇に抱える形に持っていく。
   敵は前方斜め下に十一体。

マミ「――整列〈アテスタ〉!」
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:32:56.99 ID:jWnBZRE2o

   呼び出すマスケットは……五つ。

   狙いを定め、それぞれをそれぞれのタイミングで、撃つ――撃つ、撃つ、撃つ、撃つ!

   『ピキャッ!』『キーッ!?』『ジャッ!』『キュエッ!!』

   悲鳴が重なる。
   そうして再び着地したときにはもう、敵は残らずチリと化していた。

   一発の射線上に数匹が重なるよう狙った結果だ。

   『ミ゙ッ!!』
   『ヂギッ!』

   おっと、伏兵。
   左右と正面から一匹ずつ、三匹。

   空いている左手に召喚した銃で、やや速い右の一匹をまず射抜く。
   その反動を利用して、正面と隣の二匹に銃身で打撃を食らわせる。

   今度こそ、一段落か。

マミ「……」

   周囲を見渡す。
   よし。近くにはいない。
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:34:17.82 ID:jWnBZRE2o

まどか「あ、あの……」

   と――鹿目さんの声。
   目を向けると、右の小脇に身体を抱えられながら、恥ずかしそうに身を縮こまらせて
   こちらを見上げてきていた。

マミ「あら、ごめんなさい」

まどか「あぅ……」



   鹿目さんを降ろし、再び手を引いて走り出す。

   次々に湧いてくる使い魔をやはり一度に数匹ずつ射抜き、
   撃ち終わった銃は打撃武器として利用する。
   バラけている標的はリボンでひとまとめに縛り上げ、大口径で一掃する。

   鹿目さんのことも忘れない。
   ときには背後にかばい、ときには物陰に隠し、ときにはリボンで吊って空中に逃がす。
   決して無理はさせることなく、しかし余計な動きもさせないように。

   撃って、打って、縛って、投げて。

   完成間近のパズルのように、面白いほど動作が繋がる。

   そしてここの魔女を倒せば、そのときは――
665 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:35:35.18 ID:jWnBZRE2o

   変身のときに確認したが、ジェムの濁りはそのままだった。
   それはそうだろう。
   気分一つでどうにかなるなら苦労はしない。

   だから無駄なく魔力を振るう。
   最小の労力で最大の効果を叩き出す。

   効率性と合理性。
   それは、あの子が最も大事にしていたこと。

   賛成しきれない部分もあったし、そもそも口に出して説いてくることもなかったけれど、
   その無言の教えは私の中で確かに貯えられて、生きている。

   ああ。
   体が軽い。
   こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めてだ。

   仲間ができる。
   街を守れる。
   あの子が、帰ってくる。



   だから――もう、何も怖くない。


666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:36:40.87 ID:jWnBZRE2o

   気付けば、最後の扉はもう目の前。
   ここまででかかったのは100秒と少し。魔力の残りも、きっとギリギリなんとかなる。

マミ「鹿目さん、大丈夫?」

まどか「は、はいっ」

マミ「よし」

   扉を、開く。







さやか「マミさん! まどか!」

まどか「さやかちゃん!」

マミ「二人とも、お待たせ」

QB「気をつけて! 出てくるよ!」


667 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:37:11.93 ID:jWnBZRE2o





668 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:38:46.84 ID:jWnBZRE2o



   『――……』

QB「……。これは、また」

マミ「ずいぶんと極端なサイズね」

   敵を見上げて、思わずつぶやく。
   まぁ、どんな相手だろうが関係ない。

マミ「せっかくのところ悪いけど、一気に決めさせて――」

   マスケットを召喚。
   まずは胴体に牽制の一発。

マミ「……もらうわよ!」

   同時に跳躍し、距離を詰める。反撃の暇なんか与えない。

   掃射でもって足場を壊し、バランスを崩したところに遠心力を乗せたフルスイング。
   壁に叩きつけ、休むことなくさらに銃撃。一発。二発。三発。

   『――……』

   ここまで抵抗らしい抵抗はない。しかし油断も容赦もしない。
   地に落ち、倒れ込んだその頭部に、銃口を押し付けての零距離射撃。
   撃ちこんだ弾丸をリボンに戻し、その胴体に巻きつけ、持ち上げる。
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:40:19.31 ID:jWnBZRE2o

さやか「やったぁ!」

マミ「ふふっ」

   歓声を挙げる美樹さんに微笑んで返す余裕すらあった。

   縛り上げた敵を見上げる。
   ぐったりと動かないけれど、まだ生きている。結界が消えないということはそういうことだ。

マミ「――再装填〈リ・カーリカ〉」

   手の中や周囲の撃ち終えたマスケットもリボンに戻し、ひとまとめにして再び束ね上げる。
   出来上がるのは長広口径。

   私の、至高の一撃。



マミ「ティロ……フィナーレ!!」



   放たれた弾丸は、狙いをたがわず、敵の胴体のど真ん中を貫いた。

   よし、これで……















さやか「――マミさん!」
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:41:16.26 ID:jWnBZRE2o

マミ「え……?」



























671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 15:42:40.12 ID:jWnBZRE2o

はい休憩
672 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/07(日) 15:44:56.86 ID:4bj7PFf6o
なんちゅータイミングでwwww
乙!
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/07(日) 15:50:32.00 ID:PbBc5Lbto
おかしい>>671が見えない


674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 15:51:51.85 ID:PJU77k+Oo
なんて鬼畜な>>1なんだ……
675 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/07(日) 16:03:54.38 ID:P5Xvp4Zmo
なんちゅうとこでアイキャッチ仕込んでくれるんや……
なんちゅうとこで……乙
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 16:37:44.36 ID:RdvGXIFV0
うぁぁぁぁぁ・・・
>>1てめぇそれでも人間か?

・・・ごめん乙。じっと待ってる。
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:38:21.23 ID:jWnBZRE2o

僕は途中で休憩をとるって、きちんと言ったはずだよ?
そのタイミングについては、説明を省略したけれど

んじゃ再開
678 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:39:20.75 ID:jWnBZRE2o



   ◆

ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「……」



ほむら「……、ん……?」

ほむら「――!?」

ほむら「これは……」


679 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:40:27.25 ID:jWnBZRE2o



   ◆

   声に、振り返ったときにはもう。
   目の前まで迫っていた。

   がば――と、抱きしめられる。



マミ「み……美樹さん?」

さやか「すごい! すごいよマミさん!」
         . . . .
さやか「あんな大きいのを一方的にやっつけちゃうなんて!」

さやか「あたし、あたし……! 見た瞬間、ダメかと思っちゃったよぉ……」

マミ「……」

さやか「ありがとう、マミさん……恭す――病院を守ってくれて、本当にありがとう……!」

マミ「美樹さん……」

   涙目になってはしゃぐ彼女を、頭をそっと撫でてなだめる。
              . .
   確かに今の魔獣は、かなり大きかった。
   病院だけあって苦しんでいる人や弱気になっている人が多いのだろう。
   通常の倍以上という、極端なサイズになっていた。

   平均か、少し小さめのものしか見たことのないこの子では、絶望してしまうのも無理はない。
680 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:41:38.01 ID:jWnBZRE2o

マミ「……」

マミ「……?」

   ふと、周囲を見渡してみる。
   何もない。
   何の変哲もない、病院裏の駐輪場だ。風が柔らかくそよいでいる。
   結界はもちろん消えている。

   それなのに、なんだろう。
   違和感がある。

マミ「……ねぇ、美樹さん」

さやか「ん、なんですかマミさん?」

マミ「えっと…………誰か、もう一人いなかったかしら」

   そんな気が、したのだけれど。

さやか「もうひとり?」

   美樹さんは首をかしげる。

さやか「いませんよ、そんなの」

さやか「あたしは今日は一人です。こっち絡みに仁美を巻き込むわけにはいかないし……
     ってゆーか、ここに来るときはたいてい一人なんで」
681 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:42:37.15 ID:jWnBZRE2o

   一人。
   私も彼女も、それぞれ一人。

   だとするなら。   

マミ「私……どうやって、ここに……?」

さやか「はい?」

マミ「……」

さやか「あたしが電話で呼んだから、来てくれたんですよね?」

マミ「……」

   そう、か。
   いつだったかの教訓を生かして、出会ったその日に番号を交換したんだった。

さやか「あの、マミさん?」

マミ「……。ごめんなさい、私の勘違いだったわ」

マミ「そうよね。私とあなたと、二人だけだったわよね……」





QB「僕もいるけどね」
682 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:43:44.21 ID:jWnBZRE2o

   足元から、そんな声。

マミ「……」

   一瞬だけ視線を落として、すぐに逸らした。
   何故だか、逸らしてしまった。

QB「何の話だか知らないけど、そんなことよりも、早くソウルジェムを浄化した方がいい。
   かなり濁っているじゃないか」

マミ「……」

   言われてみれば。
   なんだか酷く消耗しているような気がする。魔力はむしろ節約気味に使ったはずなのに。

マミ「えぇ……そうね」

   ジェムの穢れを取り払うもの。グリフシードは、すぐそこの地面に落ちている。
   拾うために、腰を落とし、身をかがめた。そのとき。
   柔らかな風がほほを撫でた。

   同時に、何かが鼻をくすぐった。

マミ「……」

   ほんのりと甘い、やや癖のある香り。

   元をたどって、首を回した。
683 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:44:41.64 ID:jWnBZRE2o

マミ「……」

マミ「……」

マミ「……」

QB「……。どうしたんだい、マミ? そんなにジッと見て」

マミ「……香りが……」

QB「香り?」

マミ「シナモンの、香りがするわ」

QB「あぁ、そりゃ、さっき食べたばかりだからね」

マミ「……食べた?」

QB「……。マミ、本当にどうしたんだい?」


    . . . . ... . ... . . . .. . .. . . . .. . ... . . .
QB「君が焼いてくれたクッキーだよ。さっきまで二人で食べてたじゃないか」



マミ「…………!!」
684 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:45:36.59 ID:jWnBZRE2o

マミ「……」

マミ「……キュウべえ……?」

QB「うん。なんだい?」

マミ「あなた、『キュウべえ』 よね?」

QB「……。見ればわかるだろう? 四年近くも一緒にいるのに、何を言っているんだい?」

マミ「キュウべえ……」

QB「え? ちょっと」

QB「グリフシードはそっちだよ。僕を抱き上げてどうしようっていうんだい」

マミ「キュウべえ……!」

QB「ま、マミ……苦し……」

マミ「あぁ……キュウべえ……キュウべえだわ……」

QB「……」
685 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:46:31.46 ID:jWnBZRE2o

   キュウべえが、そしてたぶん美樹さんも、困っている。
   私自身も困惑している。

   この行動は何なのか。この感情はどこから来たものなのか。

   わからないけど、だけど。
   今はこうしていたい気分だった。

マミ「キュウべえ……」

   懐かしい。

   そんなはずはないのに、何故だかそう感じるこの抱き心地。
   今は一秒でも長く味わっていたかった。



QB「……」

QB「わけがわからない……」





686 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/07(日) 16:48:14.74 ID:jWnBZRE2o

以上

ふー、二番目に書きたかったシーンもこれで完了
何が起こったのかは、まぁ、わかってもらえると思います



ってゆーかアレだね
今回が実質的な最終回ですね

あとは「後編」でほむらとの決着を、「最終話」でその後のマミさんを描いて完結です
八月中に終わるかどうか、って感じ
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/07(日) 16:54:29.10 ID:P5Xvp4Zmo
乙!



そうか、円環の……
本編をなぞって終わりかぁ……寂しいけど
ラストまで楽しみに待ってます
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/07(日) 17:41:37.29 ID:UE1OaA0so
お疲れ様でした。

・・・・・ふむ。一安心ですね・・・・・・・。
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 17:57:52.63 ID:RdvGXIFV0
まずは乙!それにしても、書き込んで1分経たず投下されてた件

しかしこれ、マミさんが幸せになれそうでうれしいんだが
ほむらにはつらい事になりそうだなぁ
690 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/07(日) 19:36:34.39 ID://K0lP0Go
こんなタイミングで書き換えられたらほむほむどうしようもなくなるな
マミのせいでまどかの力を受け継げなさそうだし、時間停止も残るか怪しいし
691 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/07(日) 20:09:21.15 ID:BSQs1btho
これは本編で書き変わった後の
魔女による死が無効になった所から
書いているのではないだろうか?
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/07(日) 22:29:43.41 ID:4bj7PFf6o
マミさんが死亡フラグを立てたと思ったら因果律が改変されていた
何を言っているのかわからねーと思うが俺も何がなんだかわからねぇ
頭がどうにかなりそうだった……
まど神様とか円環の理とかそんなチャチなもんじゃあ(ry
693 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/08(月) 02:02:33.00 ID:f3Ah9u8Go
最終話の改変によって生じた時間軸の一部なのか、
新たなタイミングで介入が起こってさらに世界がシフトしたのか
ともかく続きが楽しみだ
694 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/08(月) 02:09:34.57 ID:cODjDtZUo
最悪バッドエンドも覚悟してたがこれは…
695 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/08(月) 02:53:08.61 ID:UD737EKVo
乙っちまどまど!
予測しないでゆっくり待ってるよ
696 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/08(月) 11:54:36.55 ID:NB6gNOGto


まどかが女神に見えた
本編クライマックス的な意味じゃなくて
697 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/08(月) 19:08:49.02 ID:ZYmiAWOzo

まさかの展開に安堵
さてこの後ほむらとさやかはどうなるのか…
698 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/08/08(月) 20:16:47.40 ID:JG/SFbl50
何が…起こった…?
…あれか、ふしぎなことがおこったのか
699 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/09(火) 01:22:25.75 ID:6bMRyJTPo
ホントにまどかが浮かばれないよ……
700 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/09(火) 19:18:44.21 ID:+NUHPyGJ0
マミさんがおぼろげに誰かいたことを覚えているのが
ハッピーエンドのフラグだと信じたいけど
まどかが元に戻ることないだろうしどうなるのやら
701 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:33:56.48 ID:6gqj6i3Eo

投下
702 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:35:09.91 ID:6gqj6i3Eo



マミ「キュウべえ……」 スリスリ

QB「……」

QB「……さやか」

さやか「……え? あ、うん。なに?」

QB「どうやらマミは、記憶の混濁を起こしてしまっているようだ。ちょっと危険な状態だよ」

さやか「その言い方もどうかと思うけど……」

QB「他にどう言えっていうんだい。とにかくこのままじゃ危ない。君がジェムを浄化してくれ」

さやか「あ、あたしが?」

QB「そこのグリフシードを拾って、マミの髪留めに当ててくれるだけでいい。危険はないよ」

さやか「う、うん。わかった」


703 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:35:46.92 ID:6gqj6i3Eo





   第二十話  病院の少女 後編





704 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:36:38.62 ID:6gqj6i3Eo



さやか「よいしょ……キューブもまたでっかいね。ますます “種” って感じしないわ」

QB「右側だよ」

さやか「うん。――えー、マミさん。当てますよ? 動かないでくださいねー、っと」

   コツン

   ――シュウゥゥゥ…

さやか「おぉ、取れてる取れてる」

マミ「ん……」



マミ(あぁ……穢れが取り払われていく……)

マミ(心が軽くなっていく……)

マミ(でも……なんだろう?)

マミ(それと同時に、何か他のものも失われていくような……)












   ――カツン
705 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:37:34.66 ID:6gqj6i3Eo

マミ(……)

マミ(……何かしら、今の音)

マミ(背後で、何か、硬いものが地面を打ったような。例えば――そう)

マミ(靴音)



マミ「……!!?」 バッ



さやか「うわっ?」

QB「きゅっ?」

さやか「ちょ、マミさん? どうしたんですか、急に振り向いたりなんか、して……」

マミ「……」



ほむら「……」


706 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:39:49.10 ID:6gqj6i3Eo

さやか「げ」

マミ「あなたは……」

ほむら「……」 ピク
     . .. . . . . . . . ..
ほむら「知っているの? 私のことを」

マミ「え……」



マミ(……あれ?)

マミ(なんだろう。今、なんだかすごく、嫌な感じがしたのだけれど)

マミ(いや――それよりも、この子)
                          . . .. . . .. . .. .
マミ(長い黒髪をカチューシャでまとめて、赤いセルフレームのメガネをかけた女の子)

マミ(どこかで見たことが……見たことが?)


            . . . . . .. .
マミ「……い、いいえ。知らないわ」

ほむら「……」
707 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:40:47.72 ID:6gqj6i3Eo

ほむら「……そう」

マミ「……」

さやか「あ……あー、えーと、うちのクラスの転校生ですよ! 先週、転校してきて!」

マミ「転校生?」

さやか「そうです! そう! えっと――暁美、さん、だったよね?」

マミ「え? ちょっと、美樹さん?」

さやか「あたし、ホラ! 同じクラスの美樹さやか! って、もう一回言ったっけ! あはは!」

ほむら「……」

さやか「それで、その……ぐ、偶然だね! こんなところで! ……何してるの?」

ほむら「……それはこっちのセリフなのだけど」

さやか「へ?」

ほむら「あなたたちこそ、何をしているの?」

さやか「え? なにって、別に」

ほむら「何をしていたの?」
708 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:41:35.57 ID:6gqj6i3Eo

さやか「いや、だから」

ほむら「……そっちの人の、妙な恰好は、なに?」

マミ「え? …………あ」

マミ「あああっ!?」


マミ(……み、美樹さんっ。どうしよう。魔法少女の格好、見られちゃったっ) ヒソヒソ

さやか(……って今気付いたんですかっ? あたしさっきからソレで慌ててるのにっ) ヒソヒソ

マミ(……ご、ごめんなさい。やっぱり、今さら元に戻るのはダメよね?) ヒソヒソ

さやか(……そりゃそうですよ。とにかくなんとか誤魔化してみますから) ヒソヒソ


ほむら「……」

さやか「え、えっと、これは、その……ね? つまり、そう! コスプレ!」


マミ(……ちょ、美樹さんっ!?) ヒソヒソ

さやか(……だ、だってっ。それぐらいしか思いつきませんよっ) ヒソヒソ

マミ(……私そんな趣味ないわよっ) ヒソヒソ

さやか(……他にどう言えってんですかっ。ってかもう言っちゃいましたよっ) ヒソヒソ


ほむら「……」
709 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:42:54.03 ID:6gqj6i3Eo

ほむら「コスプレ、ね」

マミ「ち、違うの。そうじゃなくて、これは」

ほむら「だったら――」



ほむら「――さっきの白い巨人は、なに?」



マミ「え……」

さやか「な……」

ほむら「……」

さやか「て、転校生、あんた……今なんて……」

ほむら「白い巨人。そう言ったわ」

ほむら「やたらと大きかったけど、あれもコスプレだったというのかしら?」

マミ「あなた……見えたの?」

ほむら「『見えた』……?」
710 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:43:46.76 ID:6gqj6i3Eo

QB「……。“アレ” は、『魔獣』 と呼ばれる存在だよ」

ほむら「……、?」

マミ「キュウべえ、もしかしてこの子……」

QB「いや……」

ほむら「……」 キョロキョロ

ほむら「……」

ほむら「もしかして、“それ” が喋ったの?」

QB「そうだよ」

ほむら「……」

QB「僕の名前はキュゥべえ。君は、暁美ほむらだね」

ほむら「……!」

ほむら「名前を……」

QB「ああ、知ってるよ」

ほむら「……」
711 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:44:47.10 ID:6gqj6i3Eo

QB「名前だけだけどね」

ほむら「……」

ほむら「なら、“これ” のことは?」 スッ…

さやか「え?」

マミ「……!? その指輪は……!」



   シュイーン、キラッ!!



ほむら「……」

マミ「……」 ポカーン

さやか「……」 アングリ

QB「……。『魔法少女』――だね」
712 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:45:40.86 ID:6gqj6i3Eo

さやか「え――ええええええええっ!? 転校生が!? マジで!?」

マミ「え? え……? だったらどうして、魔獣やキュウべえのことを知らないの……?」

ほむら「……?」

ほむら「それって、なんなの?」

QB「本当に何も知らないのかい?」

ほむら「だから聞いているのでしょう。答えて」

QB「……。魔法少女とは、『魔獣を狩るもの』 さ。僕と契約を交わすことで誕生する」

ほむら「契約?」

QB「ああ」

QB「僕は君たちの願いを、なんでも一つ叶える。その代償に、魔獣と戦ってもらう。
   そういう契約だ」

ほむら「……交わしてないわ、そんなもの」

QB「……。だろうね。僕も、君と契約した覚えはない」

マミ「え?」
713 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:46:41.52 ID:6gqj6i3Eo

ほむら「……」

さやか「ど、どういうこと? あんたと契約しなくても魔法少女ってなれちゃうの?」

QB「そんなはずはないよ。……ないけど」

マミ「キュウべえ……」

QB「こんなことは初めてだ。わけがわからない」

ほむら「……」

ほむら「そう……」

   …パシュッ

さやか「あ、戻った」

QB「とにかく、この状況で僕が言えるのはそれぐらいだ。ねぇ、ほむら」

ほむら「……気安く呼ばないで」

QB「……。暁美ほむら」

ほむら「……」

QB「今度は君の話を聞かせてもらえないかな。いつ、どうやってその力を手にしたんだい?」
714 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:47:53.79 ID:6gqj6i3Eo

ほむら「……」

QB「……」

ほむら「……」

ほむら「……わからない」

マミ「え?」

さやか「ちょ、わからないってアンタ」

ほむら「わからないものはわからないのよ……!」

マミ「……」

ほむら「……気がついたのは、半月ぐらい前だけど……それ以前からだったかも知れない」

ほむら「とにかく、いつの間にか。この指輪だけが手の中にあったの」

ほむら「使い方だけはなんとなくわかった。でも、使い道と使える理由がわからない」

ほむら「こっちの方から何か、懐かしい気配を感じた気がしたんだけど……」

QB「……」

ほむら「無駄足だったみたいね」 クルリ
715 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:48:44.43 ID:6gqj6i3Eo

さやか「なっ……」 イラッ

ほむら「……」 スタスタスタ…

マミ「あ……」

マミ「ま、待って。……半月前、って言ったわね?」

ほむら「……」 ピタ

ほむら「ええ」

マミ「なら、確かめたいことがあるの。指輪をジェムに――宝石の形に戻してみてくれないかしら」

ほむら「……」

   シュイーン…

ほむら「これでいいの?」

マミ「ええ、ありがとう。……やっぱり、かなり濁ってる」

ほむら「……?」

マミ「キュウべえ、グリフシードはまだ使えそう?」
716 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:49:47.57 ID:6gqj6i3Eo

QB「……。うん、いけると思う。でも、」

マミ「私のはもう十分よ。美樹さん、貸して」

さやか「あ、はい」

マミ「暁美さん、これを」 ポイ

ほむら「……」 キャッチ

ほむら「これは?」

マミ「やっぱり、それも知らないのね……
   その宝石、ソウルジェムに触れさせるの。そうすれば色が元に戻るわ」

ほむら「……何のために?」

マミ「それは――、……」

マミ「……それを説明するには、少し込み入った話が必要になるわ。
   だから今はまず、やってみてくれないかしら。悪いようにはしないから」

ほむら「……」

さやか「……なんだってのよ……知らないなら黙って言うこと聞けっての……」 ブツブツ

マミ「美樹さん。ダメよ、そんな言い方」

さやか「むぅ……」
717 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:50:34.66 ID:6gqj6i3Eo

ほむら「……」

ほむら「フゥ……わかったわ」 コツ

   シュウゥゥゥ…

ほむら「……、……、……」

ほむら「確かに、綺麗になったわね。――それで?」

QB「その前に、それは返してもらえるかい?」

ほむら「……、……」 ポイ

QB「ありがとう」 パカ

   ――スポッ、パクン

QB「きゅっぷい」

ほむら「……!?」

さやか「おー、驚いてる驚いてる」

ほむら「な……なんなの、その生き物は?」
718 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:51:36.50 ID:6gqj6i3Eo

マミ「暁美さん。それも含めて、全部説明するわ。
   でもいつまでも立ち話もなんだから、もしよければ今から家に来ない?」

ほむら「……」

マミ「時間がないなら明日以降でもいいわよ。美味しいお茶とお菓子もつけるわ」

ほむら「……」

ほむら「わかったわ。――でもね、」

マミ「何かしら」

ほむら「……食べ物に釣られるわけじゃないわよ。そこは勘違いしないで」

マミ「……」

マミ「え、ええ。わかってるわ」



マミ(なんだ……意外と可愛い子じゃない)


719 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/08/12(金) 14:51:45.42 ID:SQHy//cAO
やっぱりマミさん天使や
720 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:52:26.35 ID:6gqj6i3Eo



   ◆

ほむら「……」

ほむら「これが……私の魂……?」

QB「……」

さやか「やっぱそこかー……。あたしもソレが引っ掛かってるんだよねー……」

マミ「……気持ちはわかるわ。私も、そのことを知ったのは契約した後だったから」

ほむら「……そうなの?」

マミ「ええ。仕方がないことだといえばそうだったんだけどね。
   事故で、悠長に説明なんか受けていたら死んでいた、なんて状況だったから」

ほむら「……」

マミ「ちなみに、その状況から助かりたい、というのが私の祈り」

ほむら「そう……」
721 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:53:23.59 ID:6gqj6i3Eo

マミ「もちろん、普通なら事前に全て教えてもらえるわ。美樹さんはそうだった」

さやか「うん」

ほむら「……」

ほむら「キュゥべえ、と言ったわね」

QB「ああ」

ほむら「“これ” で身体を操作するというけど、それはどの程度までできるの?」

QB「個人差があるから、一概には言えないね。
   全くの別人に変身できる子もいれば、身体が丈夫になるだけって子もいる」

ほむら「……」

ほむら「……」 カチャ、スッ…

   キィーン…

さやか「? 何やってんの、メガネなんか外して?」

ほむら「……」 キョロキョロ

ほむら「……なるほど」

さやか「無視かい」
722 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:54:18.09 ID:6gqj6i3Eo

マミ「まさか……今、視力を?」

ほむら「ええ。便利なものね」

マミ「……」

ほむら「最近、なんとなく体調が良かったし。もしかしたらと思ったのよ」

マミ「驚いたわ。あなた、強いのね……」

ほむら「別に……貧弱でままならなかったこの身体に、嫌気がさしていただけよ」

QB「そういえば、君はずっと入院していたね」

ほむら「……」 ピクッ

さやか「え? そうなの?」

QB「僕らは魔法少女の素質を持った子を求めて、世界中を探し回っているんだ。
   だから君のことも、ある程度は知っているよ」

QB「もっとも、肝心の契約したときの記憶は、やっぱりないわけだけど」

マミ「もう、キュウべえ……人のプライバシーをそんな軽々しく……」

ほむら「……あなたとは、仲良くなれそうにないわね」

QB「気に障ったなら謝るよ」
723 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:55:20.89 ID:6gqj6i3Eo

ほむら「フゥ……まぁいいわ」

ほむら「そうよ。心臓の病気でずっと入院していて、最近ようやくマシになったところ。
     だからこのソウルジェムとやらについては、とりあえず納得したわ」

QB「それはよかった」

ほむら「だけど……濁り切ったら消滅するというのは、本当なの?」

マミ「ええ、そうらしいわ。私も美樹さんもまだ実際に見たことはないけど」

さやか「あんたマミさんに感謝しなさいよ。さっきの色、かなりヤバかったんだから」

ほむら「……。そうね」

ほむら「ありがとう、巴マミ。感謝するわ」

マミ「気にしないで。困ったときはお互いさまよ」

ほむら「けれど、これが魂なら、消滅するということは……」

QB「死ぬということだね」

ほむら「……」

さやか「だからもうちょっとオブラートに包めっての」
724 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:56:19.46 ID:6gqj6i3Eo

QB「それをやると何故か、あとから 『騙された』 と言われてしまうんだよ。
   騙すという概念からして僕には理解できないのにね」

さやか「ハァ……」

マミ「……」

ほむら「あなた、よくこんなのと一緒に暮らしてられるわね」

マミ「い、良いところもたくさんあるのよ? それになんと言っても、命の恩人だし……」

ほむら「……そう」

マミ「……お、オホンッ」

マミ「ちなみに、ソウルジェムの黒化によって訪れる最期のことは、魔法少女のあいだでは
   『導かれる』 と言われているそうよ」

ほむら「……?」

マミ「何者かに、ということじゃなく……そうね。この宇宙を支配する法則のようなものかしら」

さやか「円環の理、でしたっけ」

マミ「ええ」
725 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:57:11.14 ID:6gqj6i3Eo

マミ「光と闇、善と悪、希望と絶望、祈りと呪い――
   それら相対となるものが互いに繋ぎ合わされて形を為す、一つの輪の中に、ね」

ほむら「円環……」

ほむら「……、……えん、かん……?」

さやか「うん?」

マミ「……暁美さん?」

ほむら「っ……」

ほむら「……、……、…………」

ほむら「……なんでもないわ。少し――」

さやか「少し?」

ほむら「…………何かが引っ掛かったような、気がしただけ」

マミ「何か思い出したの?」

ほむら「いいえ。……そうかも知れないけど、消えてしまったわ」

マミ「そう……」


726 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:58:24.15 ID:6gqj6i3Eo



ほむら「それでは、そろそろ失礼するわ」

マミ「あら。もう?」

ほむら「ええ。もう話は終わったのでしょう?」

さやか「でも、あんたとキュゥべえの記憶が消えた原因、まだわかってないじゃん」

ほむら「考えて答えが出る問題とは思えないわね。
     今日のところは手掛かりが見つかっただけで良しとしておくわ」

マミ「まぁ、あなたがいいならそれでいいけど……」

QB「……」

さやか「キュゥべえは気になんないの?」

QB「気にはなるけど、僕が知らないことなんて他にいくらでもあるからね。
   今すぐに危険があるというわけでもないし、この問題だけに固執する理由はないよ。
   本人がいいと言っているならなおさらさ」

さやか「あんたって、ホントに……」

ほむら「フン……」
727 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 14:59:11.25 ID:6gqj6i3Eo

QB「ただ――」

ほむら「心配しなくても、魔獣退治とやらは引き受けるわ。私だって死にたくはないもの」

QB「そうか。ならいいさ」

ほむら「それじゃあ――明日から、よろしくお願いするわ、先輩」

マミ「え……」

マミ「え、えぇ。任せて。できる限り力になるから」

ほむら「ありがとう」

マミ「……」

さやか「……」

さやか「えーと、じゃあ、あたしも帰る。時間も時間だし」

マミ「そう。二人とも、気をつけてね」

ほむら「ええ」

さやか「おじゃましましたー」

   ガチャ
   バタン


728 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 15:00:02.91 ID:6gqj6i3Eo



   ◆

マミ「ふぅ……」

   なんだか疲れた。
   今日一日でずいぶんといろいろなことが起きたような気がする。
   実際はそうでもないはずなのに。

マミ「……」

マミ「……」

マミ「……」

   ……っと、いけない。ぼぅっとしてしまった。

   テーブルの片付け、夕飯の支度、学校の宿題。やるべきことはまだまだある。
   一人暮らしは忙しいのだ。

マミ「――んっ」

   ほほを叩いて気合いを入れる。
   さて、まずはテーブルから。
729 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 15:01:05.44 ID:6gqj6i3Eo

   カップとソーサーをお盆にまとめて、お皿に残っていたクッキーを口に放り込む。
   シナモンの甘い風味。

マミ「……」

   キッチンに運んで、洗い桶に浸けておく。
   洗うのは夕飯のあと、まとめてでいいだろう。

   ……それにしても、なんだったのだろう。
   病院でのあの妙な感覚は。
   どうして私は、あんなわけのわからない行動を取ってしまったのだろう。

   あの子の言った通り、単なる意識の混濁だったのだろうか。
   確かに、それ以外には何もないとは思う。
   でも、それだけじゃないような気もする。

マミ「……」

マミ「……キュウべえ……」







QB「なんだい?」
730 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 15:02:03.60 ID:6gqj6i3Eo

マミ「え……」

QB「どうしたんだい? ぼぅっとして」

マミ「な、なんでもないわ。それより、早かったわね」

QB「まだ遠くには行ってなかったからね。
   暁美ほむらが置き忘れて行ったメガネは、確かに本人に届けたよ」

マミ「そう。お疲れさま」

QB「お安いごようさ」

マミ「……」

QB「……?」

マミ「……ねぇ」

QB「なんだい?」

マミ「えっと……」
731 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 15:02:38.44 ID:6gqj6i3Eo



マミ「……おかえりなさい、キュウべえ」

QB「……」

QB「ああ。ただいま、マミ」





732 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/12(金) 15:03:40.39 ID:6gqj6i3Eo

以上

Q.前編と後編でタイトル違うんだけど
A.まど神さまのおぼしめしです

Q.ほむほむの記憶がないのはなんで?
A.本編ではさやか消滅の時点ではまだカチューシャだった
  つまりそれまでは思い出せてなかった、という解釈です



というわけで、次回は最終回! マミるよ!
733 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/12(金) 15:05:03.07 ID:R0yGGYAIO
乙ですが、最後の一文

((((;゚Д゚)))))))
734 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/12(金) 15:09:30.41 ID:23MbJUOao
乙でした


> マミるよ!

何・・・だと・・・
735 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2011/08/12(金) 15:12:14.94 ID:h0V2mJRAO
ま、マミるの!?
ここまできてマミるの!?
736 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/12(金) 15:13:53.85 ID:NMbL96d6o


>というわけで、次回は最終回!

から先が読めない
737 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟県) [sage]:2011/08/12(金) 15:23:41.09 ID:RDR+AzJyo
しれっと恐ろしいことを言っていきおったでこの>>1
738 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/12(金) 15:24:28.72 ID:fAzXyZkOo
まぁほむらが思い出したらジェムごと頭ぶっ飛ばしそうだな。そりゃマミるわ
739 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2011/08/12(金) 18:00:28.53 ID:vmAvt4K/o
マミるのはマミさんとは限らないだろ魔獣かもしれん
740 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/12(金) 18:29:24.87 ID:scR76yudo
乙っちまどまど!
741 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/08/12(金) 22:27:39.12 ID:LKGeIyOQo
>>732
つまり、さやかが消えないとだめってことじゃないですかーやだー!
742 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/13(土) 21:49:40.67 ID:njukBl8o0
マミってほしくないけど
仮にマミっても女神まどかと会えそうなのが救いかな
743 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/14(日) 02:07:05.97 ID:A0uMx9CK0
>>741
なるほどさやかがマミれば辻褄は合っちゃうなww
744 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/14(日) 02:37:44.01 ID:mtR3IUr6o
ほむらの記憶どうなるのかなぁ
戻ったら戻ったで殺し合いルートしか見えないが
745 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/16(火) 02:37:24.51 ID:hfFs22CXo
ま、マミんのかよ……
Oh……
746 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/17(水) 00:56:05.35 ID:wApk/8gbo
戦い抜いてその果てにならまだちょっと救いはあるかも
まど神の救済もあるし……あるよね?
747 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:31:50.24 ID:qWjAzS6io

投下
748 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:32:47.52 ID:qWjAzS6io





   最終話  巴マミの死





749 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:34:07.72 ID:qWjAzS6io



   廃墟だった。

   ビルは崩れ、橋は折れ、公園は木々に埋もれ、明かりは一つも見えない。
   広く造られた幹線道路だけが、辛うじて形を残しているばかり。
   冷たく降り注ぐ月の光が寒々しさを助長する。

   だけど、それでも。
   積み重なった瓦礫の高さが、公園跡の敷地の広さが、幹線道路の幅と長さが、
   在りし日の街並みを思い起こさせる。

   そう、ここもかつてはそれなりに栄えた都市だった。
   私もそのころの姿を知っている。訪れたこともあるし、住んでいたことさえあった。
   良い街だった。
   そう思う。

   だが、今は動くものとてない、ただ風が吹き抜けるだけの廃墟だ。



   ――否。

   動くものなら、いる。
   私と、そして――白いローブをまとった姿の、聖職者めいた異形たち。

ほむら「……こんなになっても、まだ魔獣は出るのね」

   翼を広げ、飛翔する。
750 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:35:38.68 ID:qWjAzS6io

   私の魔力を察知したのだろう。
   何かを探すように彷徨っていた四体の魔獣が、一斉にこちらを振り仰ぐ。
   節くれだった指を掲げ、攻撃の構えを見せる。

   だが――

ほむら「遅い」

   弓を召喚。矢をつがえ、放つ。

   それで終わった。

   解き放たれた一条の光は軌道上で四つ又に分かれ、魔獣どもを同時に射抜いた。
   白い巨体が溶けるように消え失せる。
   さらに、モノクロだった光景が元の色を取り戻す。すなわち、結界が解けた。

ほむら「……」

   着地し、翼をしまう。

ほむら「……呆気ないわね」

   独りごち、周囲を見渡し、気配も探ってみたけれど、やはり何の反応もなかった。
   本当に今ので終わったらしい。

   とりあえず、勝利の報酬、キューブ状のグリフシードを拾う。   
751 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:37:25.41 ID:qWjAzS6io

   それにしても解せない。
   敵の数は少ないし、そもそも最初から弱り切っていたようにも見えた。
   これならわざわざ応援に駆け付ける必要なんてなかったんじゃないだろうか。

   首をかしげた――その瞬間、



ほむら「…………――!!?」



   総毛立った。

   気配に、肌が泡立ち、全身の産毛が逆立った。バネ仕掛けのように振り返る。

   恐怖ではない。
   警戒でもない。
   これは、歓喜だ。

   私を構成する全ての血が、肉が、魂が。
   “あの子” の存在を捉えたことに、喜びを爆発させている。

   放心は一瞬。
   次の瞬間には再び翼を広げ、最初からトップスピードで馳せていた。



ほむら「まどか……っ!!!」


752 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:38:49.59 ID:qWjAzS6io



   ◆

ほむら「……」

   その場所は、やはり、廃墟だった。
   砂埃がつもり、コンクリートは風化し、剥き出しの鉄骨は錆びにまみれていた。
   だけども辛うじて、人が一人隠れられるだけのスペースができていた。

   その場所に、横たわる人物が一人。

   服装は泥と埃に汚れ、みすぼらしい。
   美しかった金の巻き毛も、色あせ、ほつれてしまっている。

   けれど、眠っているようなその表情は、確かな充足と安らぎに満ちていた。

   「――」

ほむら「……間に合わなかった、か……」







QB「そうだね」
753 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:40:02.23 ID:qWjAzS6io

   その獣は、いつの間にか、背後に。

ほむら「……」

QB「……遅かったじゃないか、暁美ほむら」

   この廃墟に似つかわしくない、真っ白な毛並みの尻尾を揺らし、彼は言う。

ほむら「……」

   どうしてだろう。
   感情なんてないはずのその声が、落胆の色を帯びている気がした。

QB「マミは逝ってしまったよ。君たちの言う、“円環の理” の向こうに」

ほむら「……」

QB「残念だよ。君があと一分、早く来てくれていれば……」

QB「……いいや、いい。
   来てくれただけでも助かるよ。僕一人ではマミを弔うことすらできないからね」

ほむら「……」

QB「……。手伝ってくれるだろう?」

ほむら「……ええ」
754 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:41:23.86 ID:qWjAzS6io

   改めて、彼女の亡骸に目を落とす。
   そして――ようやく気付いた。
   その場に似つかわしくない、もう一つのものが落ちていることに。

   つややかな白磁のティーカップ。

ほむら「……?」

   振り返ってみると、彼のそばにも同じものがもう一つ。
   こちらには中身が――真紅の液体が、湯気を立たせて揺れている。

QB「……。マミだよ」

   私の視線を受けてか、彼はぽつりとつぶやいた。

QB「彼女が最後に出してくれたんだ」

ほむら「……」

   なるほど。
   言われてみれば確かに、かすかだけれど彼女の魔力を感じる。

   しかし当の本人が逝ってしまったのに残っているというのは、どういう奇跡なのか。

QB「……わけがわからないよ。僕は、そんなつもりで言ったんじゃないのに」

QB「こんなことさえしなければ、君が来るまでもっていたかも知れないのに」
755 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:42:15.85 ID:qWjAzS6io

ほむら「……そう」

QB「……そうさ」

ほむら「なら、早く飲んでしまいなさい。冷めてしまうわ」

QB「……。そうだね」

ほむら「……」

QB「……」

   ぴちゃぴちゃ、と、液体を舐める音が小さく響く。

ほむら「……」

QB「おいしいよ」

ほむら「そう」

QB「そうさ。マミの紅茶は、いつだっておいしいんだ」

ほむら「……そう」

QB「……そうさ」


756 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:43:59.90 ID:qWjAzS6io



   ◆

   街じゅうを歩きまわって、使えそうな木材を掻き集めた。
   十分な量がそろったころにはもう、東の空は白みかけていた。

   ついでに探してみたけれど、やはり生きている人は残っていないようだった。

   つまり彼女は、守り抜いたわけだ。最後まで。
   ……最期まで。



   街を見下ろす高台――かつて中学校の校庭だった場所に穴を掘り、
   集めた木材で即席の祭壇を組み上げて、彼女の遺体を横たわらせる。

QB「すまないね、余計な力を使わせてしまって」

ほむら「大したことないわ、これぐらい」

   既に何度もやった作業だ。
   もっとも、この環境で一人でというのはそれなりの重労働だったが。
757 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:45:13.38 ID:qWjAzS6io

ほむら「お別れは済んだ?」

QB「とっくに」

ほむら「……」

QB「……。今さら何を言えっていうんだい。
   マミの魂は消滅してしまったんだ。ここにあるのは本当の意味でのぬけがらさ」

QB「それに、もし仮に声が届くのだとしても、僕にその資格があるとは思えないよ」

ほむら「……あなた以上にふさわしい人なんていないわ、もう」

QB「よしてくれ」

ほむら「……」

QB「……。僕は 『ヒト』 じゃない」
758 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:46:19.23 ID:qWjAzS6io

ほむら「あなた……」

QB「……。なんだい?」

ほむら「さっきから話していて違和感があったのだけど、もしかして……」

QB「……」

QB「どうだろうね」

ほむら「……」

QB「僕らの定義では、このレベルの精神のブレは平常の範囲内に入るんだけど」

QB「……けど、マミだけでなく君にまでそう感じさせてしまったのなら……」

ほむら「……彼女は、なんと言っていたの?」

QB「……。最近優しくなった、と」

ほむら「そう……。彼女がそう言ったのなら、きっとそうなんでしょうね」

QB「そうなのかな、やっぱり」

ほむら「ええ。きっと」

QB「そうか」

ほむら「ええ」
759 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:47:32.87 ID:qWjAzS6io

   しばしの沈黙が流れた。

   太陽は完全にその姿を現していた。
   朝日が彼女を髪の毛を照らし、記憶の中と同じ綺麗な金色に染め上げていた。

   それからまたもうしばらくの沈黙を挟んで、彼が言う。

QB「……兆候は、少し前からあったんだ」

ほむら「……」

QB「二年前かな。この街に、マミを除いて最後まで残っていた一群が、
   最年長の老人の死をきっかけに他所に移っていったときからだ」

QB「それ以来マミは、言葉の端々に死を匂わせるようになった」

ほむら「……」

   二年……

QB「そうなると必然的に、僕の方もそのときのことについて考えざるを得ない」

QB「そうしているうちに、僕は僕の記憶の中に奇妙な欠落があることに気がついた」
760 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:48:38.68 ID:qWjAzS6io

QB「あれは……マミと出会って、三年が過ぎたころだ。雨の日だった」

QB「僕はマミと一つの約束をしたんだ」

QB「自分が死ぬときは僕に傍にいて欲しいと、彼女は言った」

QB「そのとおりにすると僕は返した」

ほむら「それは……」

   呟いて、先ほどの場所があった方へと視線を飛ばす。

ほむら「……守られたのでは、ないの?」

QB「半分だけね」

ほむら「半分?」

QB「続きがある」

ほむら「……」

   視線で促す。

QB「『終わりのときは、僕は君のそばにいる。
   君の最後の言葉を聞いて、そして僕からも、君への最後の言葉を贈ろう』」

QB「そう、約束したんだ」
761 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:50:26.52 ID:qWjAzS6io

QB「マミの最後の言葉は聞いた。だけど、僕からは贈れなかった」

QB「約束した、その時点で、何を言うかは決めていたんだ」

QB「そのはずだったんだ。そういう記憶ならある」

QB「なのに、不思議なんだ。肝心の “言うべき言葉” が思い出せない」

QB「どれだけ記憶を探っても、推測を重ねても、『これしかない』 と決めていたはずの
   その言葉が、どうしても見つからないんだ」

QB「……見つからなかったんだ。最後まで」

ほむら「……」

QB「……。君との件については、叶えた願いの効果によるものということで決着がついた。
   具体的にどんな願いだったかはともかくね」

QB「だけどこれは、これまで僕らの知り得たどんな理論を持ってしても説明できない」

QB「ただ一つ、精神疾患を除いて」

QB「“感情” は、どんな不条理な記憶改竄でも引き起こす――そうだろう?」

ほむら「……」
762 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:51:40.55 ID:qWjAzS6io

   ……なるほど。

   そう思った。
   私には、見当がついた。
   というより、知っている。彼の中で――いや、この世界で、何が起こったのか。

   もしその約束というのが、改変される前の世界でも交わされたものだとするならば、
   答えは簡単だ。

   きっとこいつはこう言うつもりだったのだ。
   ソウルジェムが濁り切ることで最期を迎える彼女に。

   君はこれから魔女になるんだよ、と。

   そうすることでより深い絶望に突き落とし、多くのエネルギーを得ようとしていたのだろう。
   こいつらはそういう奴らだ。

   もっとも、だとするならこの彼にも改変前の記憶が一部とはいえ残っていることになる。

   ……まぁ、そういうこともあるのだろう。
   いずれにしても、

ほむら「……そうね」

   わざわざそれを教えてやる必要は、ない。
763 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:53:06.74 ID:qWjAzS6io

QB「……。だから、仕方なく別のことを言ったんだ。マミが最も喜ぶであろう言葉をね」

ほむら「……」

   ああ……そういうことか。

ほむら「それで、紅茶なのね」

QB「……」

QB「ああ、そのとおりさ」

QB「マミの紅茶は美味しかった。もう飲めないのは残念だ――そう言ったんだ」

QB「本心だったよ。だけど、最後の魔力を使ってまで出して欲しいなんて、
   間違っても思っちゃいなかった」

ほむら「……」

QB「君たちのやることは、本当にわけがわからない」

ほむら「……そうかも知れないわね」
764 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:54:10.90 ID:qWjAzS6io

QB「……。それにしても、よくわかったね」

ほむら「長い付き合いだもの。あなたとも、彼女とも」

QB「なるほど」

ほむら「確か……もう、300年ぐらいにはなるかしら」

QB「プラス14年だよ。君と出会ってからはね」

ほむら「……よく覚えて……いえ。よく数えていられるわね。
     カレンダーなんてもうずいぶん前に機能しなくなってるのに」

QB「まぁ、そのぐらいはね」

QB「ちなみに、マミと出会ってからは、318年になる。318年と、58日」

QB「それだけ長いあいだ、同一の個体が一人の相手とともに過ごした例は他にない」

QB「だから、まぁ……前例のない不具合が起きたとしても、不思議ではないかな」

ほむら「318年……」
765 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:56:15.60 ID:qWjAzS6io

   318年。

   一口に言ってしまえば簡単だが、実際、人にとってそれは途方もない長さだ。

   普通の人生、4〜5回分。
   幼木が神木と呼ばれるようになるほどの時間。
   人類がその数を、最盛期の十分の一以下にまで減らすのに、充分な時間。

   そのあまりにも長すぎる年月を、
   彼女はただひたすらに、人々を魔獣から守るための戦いに費やしていた。

   誰よりも多くの魔獣を屠り、手にしたグリフシードの数は100万を超える。
   その大半は他の魔法少女のために使われた。

   後進の育成にも力を注ぎ、彼女に送り出された少女は四桁を超える。
   その九割以上は、彼女より先に逝ってしまったけれど。

   世界各地を飛び回り、彼女に守られたことのない都市はもはやない。
   “ワラキアの夜” と呼ばれる魔獣の大量出現も、七度に渡って乗り越えた。

   生きながらにして伝説と呼ばれ、また 『女王』、『聖母』、『守護天使』 など、
   さまざまな称号で一部の一般人にまで語られた。
   中には、なんの皮肉か 『魔女』 なんて呼ぶ輩もいたけれど。

   そんな、あらゆる意味で最高の魔法少女。

   巴マミ。

   それが彼女だ。
   ……彼女、だった。それなのに。
766 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:57:25.16 ID:qWjAzS6io

   二年。
   たった二年だ。

   この街から人が消えたという、ただそれだけのことが、
   その短い期間で彼女を擦り潰してしまった。

   別に世界中から人間がいなくなってしまったわけではない。
   むしろここ十数年は再び人口が増え始めている。

   だから、相棒を連れて他の街に移り住むことだってできたはずだ。
   彼女ならどこに行っても歓迎されただろう。

   だというのに、彼女はこの地に留まり続けた。

   思えば昔からそうだった。
   請われればどこへでも出向いたが、自分から積極的に街を出ることはしなかった。
   たとえ短い期間でも街を空けるときには必ず他の魔法少女を代理に置いた。
   どれほど遠くへ行っても、そこで気まぐれのように仮暮らすことはあっても、
   最後には結局ここへと戻ってきていた。

   そんなにも大切なものなのだろうか。

   “帰るべき場所” というものは。

   ……わからない。
   私には、よくわからない。
767 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:58:25.99 ID:qWjAzS6io

ほむら「……」

QB「まぁ、その記録も、すぐに君が追い越してしまうんだろうね」

QB「少なくとも、君があと四年のうちに死んでしまうとは、僕には思えない」

ほむら「……そうね。そんなつもりはないわ」

QB「……」

ほむら「私は、生きてもう一度あの子に逢うの。死ぬ間際なんかじゃなく」

ほむら「そしてできることなら、あの子をこの世に呼び戻す」

ほむら「それを成し遂げるまでは、死ぬ気はないわ」

QB「……」

ほむら「……」

ほむら「……そろそろ、始めるわよ」

QB「……。ああ」
768 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 21:59:40.54 ID:qWjAzS6io

   手にした棒きれの先端に火を点け、祭壇の隙間に挿し入れる。
   小さな火種は瞬く間に燃え上がり、彼女の身体を包み込む炎となった。

QB「……」

ほむら「……」

QB「よく燃えるね。この街に燃料になるものなんて残ってなかったと思ったけど」

ほむら「そんなものは使っていないわ」

   ファサ、と髪をかきあげる。
   この癖だけはどうにも治らない。

ほむら「ただの魔法よ」

QB「……。なるほど」

   全てが灰になるまで、10分、といったところか。



ほむら「……」

QB「……」

QB「そういえば、一つ気になってることがあるんだ」

ほむら「? ……何かしら」
769 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:00:38.81 ID:qWjAzS6io

QB「君が会いたがっている、神さまになったという少女のことだけど」

ほむら「まどかが、なに?」

QB「……。いや、それさ。名前を確認しておきたかった。『まどか』 というんだね?」

ほむら「ええ」

QB「そうか。……なら、やっぱり違うな」

ほむら「何が?」

QB「……。マミがね、最後の最後、こと切れる寸前に、誰かの名前を口にしたんだ」

ほむら「……」

QB「僕の知らない名前だった。だから、もしかして、と思ったんだ」

QB「もしかして、君の言っていた通りにその子がお迎えに来たのかな、と」

QB「でも、『まどか』 じゃなかったよ」

ほむら「……」

ほむら「『鹿目さん』」
770 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:02:00.62 ID:qWjAzS6io

QB「――!?」

   ぽつりとつぶやいた私の声に、彼が勢いよく振り返る。
   相変わらずの固定された無表情だけど、なんとなく驚いている様子がわかった。

QB「どうして……」

ほむら「『鹿目まどか』――あの子のフルネームよ」

ほむら「彼女は、親しい相手でも名字で呼ぶ人だったでしょう?」

QB「……」

ほむら「……そういえば私、あの人に名前で呼んでもったことってあったかしら……?」

QB「神さまに、名字があるっていうのかい?」

ほむら「当然よ。もともとは普通の女の子だったんだから」

QB「……」

QB「……そう、か……」

ほむら「信じる気になった?」
771 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:03:05.09 ID:qWjAzS6io

QB「……」

QB「そうだね。他ならぬ、君とマミの言葉だ。有力な仮説として考慮に入れさせてもらうよ」

ほむら「……疑り深いのね」

QB「そうかな?」

ほむら「そうよ」

QB「ふむ……」

ほむら「……」



   祭壇は燃えている。
   今はまだ、原形を保っている。
   もう少しすれば崩れ始めるだろう。

   よく晴れた朝の光の中で、その炎はあまり目立たない。

QB「……。もし、本当に 『まどか』 がいるのなら、」

ほむら「ん……?」

QB「一度会ってみたいものだね。話が聞きたい」
772 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:04:11.53 ID:qWjAzS6io

ほむら「フン……」

   思わず、鼻を鳴らす。
   気軽に言ってくれたものだ。

ほむら「なら、試しに死んでみれば?」

QB「え?」

ほむら「あなたは魔法少女でもないし、ソウルジェムも持ってはいないけど、
     もしかしたら何かの気まぐれで逢いに来てくれるかも知れないわ」

   もちろん、冗談だ。
   皮肉でもある。

   そんな簡単に逢えるわけがない。
   逢えてたまるものか。
   私でさえ、稀にかすかな気配を感じ取るのがやっとだというのに。

QB「……」

ほむら「……」

QB「そうだね。それじゃあ、やってみようかな」

ほむら「ふふっ……」

   今度は、笑いが漏れた。
   どちらだと受け取ったのかは知らないが、まさか乗ってくるとは思ってなかったから。
773 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:05:11.21 ID:qWjAzS6io

   どんな顔で言ったのか、見てやろうと思って振り返る。
   そんな私の目の前を、彼は、

   ひょい、と。

   横切った。

ほむら「……え?」

   それはまるで、親しい相手の肩にでも飛び乗るような軽やかさで、そして実際に、
   着地点は巴マミの肩のあたりだった。

   けれども “そこ” は、燃え盛る炎の真っただ中で――



ほむら「な――何をしているのよあなたは!!」



   叫ぶ。

QB「た――しん――ばっ――ったのは、――じゃな――か」

   何か答えが返ってきたが、よく聞き取れない。
   当り前だ。火に捲かれた状態でまともな声など出せるものか。
774 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:06:23.07 ID:qWjAzS6io

   火。

   そうだ。
   火を――火を消さなければ。

   しかし、その考えに至ったときには既に手遅れだった。
   次の瞬間には祭壇は音を立てて崩れ始めていた。中心に向かって陥没するように。
   そうなるように組み上げたのだから当然だ。

   だが、そのせいで、二人の姿はもう確認できない。
   自然の崩壊以外には動きもない。
   それにインキュベーターの身体は、もともと脆い。

   手遅れだ。

ほむら「……」

   茫然と立ちすくむ。

   いったい何が起こったのか。

   全てを間近で見ていたにもかかわらず、そんな疑問を抱いてしまう。

   理解が追いつかない。
   まさに、あっという間のできごとだった。
775 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:07:13.76 ID:qWjAzS6io



   炎は、想定通り10分ほどで燃え尽きた。

   あとには灰しか残らなかった。



776 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:08:14.20 ID:qWjAzS6io



   ◆

ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「どういう、つもり?」

   問いかける。
   答えは、



   「言葉通りだろうね」



   あった。

   振り返る。

   こいつらは殺してもすぐに別の個体が現れる。
   自殺の場合も同じらしい。
   便利なことだ。
777 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:08:58.49 ID:qWjAzS6io

ほむら「……どういう意味?」

QB「だから、言葉通りさ。ためしに死んでみたんだよ」

ほむら「……」

ほむら「どうして、そんな……」

QB「君が言ったことだろう?」

ほむら「っ……」

   そんなつもりはなかった。
   ただの冗談だった。
   それなのに。

QB「気に病むことはないさ。彼はどのみち死ぬ予定だった」

ほむら「……」

ほむら「……?」

   待て。

ほむら「『彼』?」
778 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:10:16.77 ID:qWjAzS6io

   どういうことだ。
   こいつらは全体で一つのはず。それがなぜ三人称を使う。

QB「接続が切られたからね」

ほむら「……」

QB「君も見て、感じたんだろう? 彼の精神は感情に汚染されていた。
   その自己診断に基づいて、必要最低限を除いた全てのリンクが切断されたのさ」

QB「だからもう、『あれ』 は 『僕』 じゃない。ただ一体の 『キュウべえ』 だ」

ほむら「……」

QB「もちろん、『まどか』 に会えたのかどうか、その結果もわからないよ。
   ま、君がそれらしい反応をしていないのを見る限り、無理だったんだろうけどね」

ほむら「……」

   確かに、私は何も感じなかった。
   それどころじゃないぐらい動転してはいたけど、“来た” のなら気付かないわけかない。

QB「いや、そもそも本当にそんなつもりで死んだのかどうかも疑わしいかな」

ほむら「え……?」

QB「他にも遣りようはあったってことさ」
779 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:11:25.67 ID:qWjAzS6io

QB「『僕』 が死んだのなんてこれが初めてじゃない。
   もちろん、今のように魔法少女と共に死んだケースもたくさんある」

QB「だけど、その中でそれらしい何かを見たことなんて一度もない。
   そんなことは彼にだってわかっていたはずだ」

ほむら「なら……」

QB「さぁ、何故だろうね」

ほむら「……」

   わからない。

   ……わけでは、ない。
   理由なら思い当たる。
   人間の場合ならそれで間違いないだろう。しかし……

QB「ま、なんだっていいさ。さっきも言ったけど、不具合を起こした個体は死ぬ決まりだ。
   同じことなら巴マミの手向けにするのも悪くはない」

QB「彼女も喜んでるんじゃないかな」

ほむら「っ……」
780 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:12:35.35 ID:qWjAzS6io

ほむら「……そんなわけないでしょう」

QB「そうなのかい?」

ほむら「そうよ。あの人がそんなことを望むはずがない」

ほむら「“彼” には、生きていて欲しいと、そう願ったはずよ」

QB「……。なるほど、そうかも知れないね」

ほむら「そうよ……」

QB「でも、無理だよ」

ほむら「……」

QB「決まりは決まりさ。他の個体にまで汚染を広めさせるわけにはいかないんだ」

QB「彼の死は確定事項だった。固定されたその状況の中で、この結果は、
   人類の価値観と照らし合わせてみても、悪くないと言えるんじゃないのかい?」

ほむら「……」

ほむら「そうね……少なくとも、お前に食い殺されるよりは、救いのある死に方だわ」
781 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:14:05.96 ID:qWjAzS6io

QB「だろう?」

ほむら「……」

ほむら「フン……」

   まぁ、いい。
   納得ができないというわけでもない。
   これでよかったと感じている私も確かにいる。

   彼女と “彼” は二人で一つだった。
   きっとどちらが欠けても駄目だった。
   300年かけて、そこまでの関係になれたのだ。人間と、インキュベーターが。

   そういうことなのだろう。

   なら、それでいい。




782 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:15:16.92 ID:qWjAzS6io



QB「……さて、それじゃあ僕はそろそろ行くよ。君はどうする?」

ほむら「まだ残るわ。彼女の遺品を回収しないと」

QB「ああ、弟子の子たちに配るんだね。それは僕には手伝えないな」

ほむら「そうね。……その方がいいわ」

QB「……?」

QB「ま、いいか。それじゃあまたね、暁美ほむら」

   そう言うと、そいつは消えた。

   私も、二人の遺灰にもう一度だけ目礼をささげて、その場を後にする。

ほむら「……さようなら、先輩」

   またいつか会いましょう。





783 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:16:50.87 ID:qWjAzS6io



   かつて、見滝原と呼ばれた街があった。

   今はもうない。

   その地に生まれ、その地に生きて、その地を守り抜いた一人の少女がいた。

   今はもう、いない。
























   ――けれど、



784 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:17:49.68 ID:qWjAzS6io





   私たちは、忘れない。






785 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/08/17(水) 22:18:50.37 ID:qWjAzS6io

以上
おしまい



あー、終わった終わった長かったー

えー、
細かいあとがきとか裏設定とか、語りたいことはいろいろあるけどまた今度にしますわ
質問とかあればできるだけ答えるので書いといて

んじゃまた
786 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/17(水) 22:33:58.51 ID:jCMK8PrB0
本当にお疲れ様です。
787 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/17(水) 22:41:04.00 ID:e6VJBDDeo
乙彼様でした
最後まで街を守りきったか、マミさんも重ねて>>1さんもお疲れ様でした
788 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/08/17(水) 23:02:31.88 ID:FYhWKpeno
お疲れ様でした。

彼女たちの旅路がよきものであらんことを・・・・・・・・。
789 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/17(水) 23:09:16.75 ID:P+Kzk4Fko

なんか想像してたよりかは幾分幸せな最後で良かった……
790 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/17(水) 23:58:28.44 ID:wApk/8gbo
お疲れ様でした
最後まで戦い抜いて守りたいものを守り抜いたマミさんは、
満足してまどかの元に導かれていったのかな
でもマミさんを殺したのはやっぱり守るべき人たちを失った
「孤独」なのかと思うとやりきれない
791 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/18(木) 00:15:33.02 ID:NFgtMs/lo
お疲れ様でした
なんだこの、悲恋物の映画を見た後のような、でもハッピーエンドのような……
とりあえずこの『キュウべえ』は良いヤツなんだな、いや本当、良いヤツだわ
ほむほむはなんだかんだで気の合う相棒にも先立たれてまぁ、なんだ……

とにかく、お疲れ様でした!
792 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2011/08/18(木) 00:33:36.12 ID:E19PMgCAO
お疲れ様でした

合掌
793 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 00:48:59.24 ID:YDa74CRbo
良い話だった!乙
794 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/18(木) 01:45:12.05 ID:U7EeifA6o
乙っちまどまど!
マミさんとキュゥべえは最高の友達で
ほむらとマミさんとキュゥべえは最高の仲間だったんだね
795 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/08/18(木) 01:59:07.90 ID:AyQ2xKyKo
こんなに終わるのが惜しいSSを読むのは久しぶりだ…乙
欲を言えば改変後から死ぬまでの空白の時間も見てみたいな
特に精神疾患QBの変化とマミさんのやり取りとか
796 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/18(木) 02:27:56.74 ID:FwtaXxvuo
マミの我侭で世界改変とか原作より救えないな

ほむらはまどかを思い出してるのに300年もの間、マミを恨まずにいたっぽいって事は
何があったか思い出せないくらいにまでまどかに記憶をいじいじされちゃってるのかね
797 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/18(木) 02:35:50.55 ID:NFgtMs/lo
水を差すようで悪いが、あんたもしかして酷い勘違いしてないか
798 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/18(木) 02:49:43.92 ID:u6vxJWMEo
マミさんの最期の言葉は、たぶん同じようなことをみんな想像してると思うけど、
>>1はそういうストレートな考えで書いたんだろうか?
799 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/18(木) 07:28:05.16 ID:0EVNyqoz0
>>796
お前が文章理解力がなくて
マミさん嫌いなのはよく分かった
800 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/18(木) 12:01:29.56 ID:+9VSWMXz0
お疲れ様でした
鎮魂歌、貼っても良いかな

http://www.youtube.com/watch?v=0QEa4TiHDBA&NR=1
801 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/18(木) 15:27:26.49 ID:0EVNyqoz0
>>796
なんかみたことあるレスの仕方だと思ったら
毎回話が投下されるたびにマミさん呼び捨てにして貶してる奴か
802 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2011/08/18(木) 15:31:28.31 ID:8GFbVtNgo
完結乙。
マミさんの最期と、追い腹を切るQBに泣いた。

しかし300年以上も生きたマミさんか……
最終的には心が擦り切れたかもしれないけど、
幸せな人生だったと信じたいね。
作者もマミさんもお疲れさまでした。
803 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県) [sage]:2011/08/18(木) 18:33:48.99 ID:kWdiUUffo
乙!
なんか本編最終回と同じような虚無感が…共に闘う仲間は全て逝ったが戦い続ける。
ってのはキツイな。
それにしても300年か。杏子はどうしたんだろ?
804 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/18(木) 22:35:00.15 ID:TYGbyghi0
しかしこのSSのQBさんはデレるまで永かったな。
805 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/08/19(金) 00:45:26.81 ID:PzYHVMB7o
お疲れ様でした

……鳥肌たった
キュウべえは300年以上かけて固有の魂らしきものを持ったのか
806 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/19(金) 22:56:09.78 ID:r4FxE6nk0
最後までまどマギらしい物語だった
本当に乙です!!
807 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/19(金) 23:40:30.33 ID:k2j3Gr1k0

「マミる」とか書かれていたときはどうなる事とか思ったけど
良い意味で期待を裏切ってくれた。

このマミさんは一片の悔いなく逝ったんだろうな…。
それにしても300年以上戦い続けるとは、英霊にでもなれそうだな。

ところで仮に300年以上生きたマミさんが魔女化したらどうなるんだろう?
ワルプル以上にヤバそうだな(300年以上も生きれば因果の量が凄い事になるだろうし)。
808 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/08/20(土) 16:43:36.59 ID:KycaYEMao
完結お疲れ様でした!
809 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/26(金) 09:51:46.37 ID:NW9NeEsr0
お疲れ様でした
しかし、あの展開でマミるってのはやめてくれ・・・心臓に悪いww

そして後を追ったキュウべえの最後のセリフが気になる・・・
810 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/08/26(金) 20:16:11.29 ID:rZQNYgxT0
「試しに死んでみればって言ったのは君じゃないか。」
最後の台詞はこれが妥当かな。
811 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/28(日) 23:22:35.99 ID:T8HVFdOpo
まだ読んでる途中だけど、とりあえず乙
原作愛を感じる貴重なスレですな
812 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/08/29(月) 01:13:49.24 ID:e36AKY5Bo
読み終わった。
おもすれーーー
数あるまどかSSの中でも断トツに好きだわ。
お疲れさま
813 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/03(土) 19:29:06.59 ID:o6NPbP8po



さや「完結きねんー」

あん「夏の大あとがき祭りー」

さや「わー」

あん「わー」

さや「司会進行はワタクシ、“一応の出番はあったけど見せ場は全くなかった” 美樹さやかとー」

あん「“見せ場はマミに食われてその後も結局出番がなかった” 佐倉杏子でお送りしまーす」

さや「わー」

あん「わー」

さや「どんどんぱふぱふー」

あん「……」

さや「……」

あん「なんだこれ」

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
814 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:30:08.62 ID:o6NPbP8po

さや「ん、だから後書きなんでしょ」

あん「後書きっつってもさ」

さや「えーと、本文に仕込んだり仕込み損ねたりしたネタとか、制作裏話とか、
   そーゆーのを好き勝手に書いていく、要は作者の自分語りだね」

さや「その手のモノが嫌いな人は見なければいいと思うよ」

あん「いや意味はわかるんだけどさ」

さや「じゃあ何よ」

あん「なんでアタシたちなんだ?」

さや「あたしが聞きたいっつーの」

あん「えー……」

さや「ちなみに作者が杏さや好きだから、というわけではないみたい」

あん「あーそう」

さや「ま、要するにアレでしょ。さっきさせられた自己紹介の通りに
   本文でロクな扱いじゃなかったあたしたちにせめてもう少し喋らせてあげよう、的な」

あん「ありがたくって涙が出るね」

あん「ま、なんでもいーや。とっとと初めてとっとと終わらせようぜ」

さや「そうだね」

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
815 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/03(土) 19:31:13.65 ID:o6NPbP8po



さや「じゃあまず第一話――の前に、マミさんについて」

あん「このスレの主人公だな」

さや「といっても細かいことは各話の解説でやっていくから、今の段階で言えるのは
   基本スペックぐらいだね」

あん「あぁ、なんかかなり強めに設定されてるらしいじゃねーか」

さや「うん。攻守ともに強力で、魔力の総量も平均を大幅にオーバー。
   補給なしでも一カ月ぐらいは余裕だってさ」

あん「チート過ぎんだろ」

さや「あんたじゃ勝てないわけだね」

あん「くそっ、露骨に贔屓しやがって」

さや「一応、『人助けを重ねた』=『多くの人の生死に関わった』=『因果が増大した』
   って理屈があるらしいよ」

さや「それとさ、作者は別にそれほどマミさん大好きってわけでもなかったみたい」

あん「って、おい」

さや「……と、後書きに書いて読者をがっかりさせるつもりだったけど、
   なんか書いてるうちに本当にマミさん大好き好き好き大好きになっちゃったらしいよ」

あん「……はぁ」

さや「今では立派にマミさんマミマミ、とのこと」

あん「意味わかんねえ」

さや「そう? あたしはなんとなくわかるけど」

あん「……そーいやオマエは元祖マミマミストだったな」

さや「えっへん」

あん「褒めてねーし」

さや「ちなみに、杏さやは割と本気でどーでもいいらしい」

あん「その情報がどーでもいーよ」

自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
816 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:32:14.24 ID:o6NPbP8po



あん「んで、次はQBか?」

さや「そうだけど、こっちも特に語ることはないみたい」

さや「基本的に原作準拠で、話の流れ次第で適宜肉付け・捏造をちょくちょくと、って感じ。
   なるべく原作と矛盾しない範囲でね」

あん「ふーん」

さや「強いて言うなら、マミさん家に棲みついてるって点が独自かな。
   作者は、原作では同居まではしてない、と解釈してるみたいだから」

あん「そりゃまたどうして?」

さや「なんとなく、だって。『おりこ』 やドラマCDからの印象だとか」

あん「これといった根拠はないってか」

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817 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:33:50.14 ID:o6NPbP8po



さや「ではいよいよ本文について解説していくよ。まずは第一話」

あん「やっとか」

さや「これはまぁ、基本設定の紹介だね」

あん「描かれているのは主にマミとQBの関係性についてだな。
   二人は例のマンションに同居していて、夜はいつも一緒に寝ている、と」

さや「引き千切ってやりたい」

あん「落ち着け。えー、それと、
   QBはその無感情な本性を無理に隠したりはしておらず、自然体で振る舞っている。
   マミの方も、そんなものだと、人間とは違う価値観の生き物なんだと理解していて、
   受け入れた上で好意をもって接している、と」

さや「そういう設定のお披露目と、あと、《 》 のカッコはテレパシーだよっていう書式の説明も」

あん「要はチュートリアルか」

さや「そう、それそれ」



さや「あーそれと、シナモンは別に伏線でもなんでもなかったんだってさ。この時点では」

あん「そうなのか?」

さや「らしいよ。単純に癖のあるフレーバーってことで出しただけだったって」

あん「なんでそんなモン出す必要があるんだよ」

さや「それはもちろん、マミさんに↓のセリフを言わせるためでしょ!」



> マミ「歯磨きしない子はみんなそう言うんです」



あん「……このセリフが、なんだってんだ?」

さや「萌えるじゃん!」

あん「……」

さや「まさにマミさん! お姉さん! って感じで萌えるじゃん!」

あん「あー、うん。そうだな」

さや「そうなのさ!」

あん(うぜぇ)

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818 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:35:11.13 ID:o6NPbP8po



さや「続いて第二話。モブキャラ登場」

あん「クラスメイトとの交流か。けどマミってぼっちなイメージあるらしいじゃん」

さや「マミさんがぼっちなわけないでしょ! あんたの方がよっぽどぼっちじゃん!」

あん「ちっ……慣れ合う必要がないだけだよ」

さや「フン」

さや「でもまぁ、実際この程度の交流はあったと思うよ。一歩引いた感じではあるし」

あん「わからんでもないけどな」

さや「ちなみにモブA&Bのモデルはあたしとまどかなんだって」

あん「ふーん」

さや「言われてみれば、って感じ?」

あん「かもな」

さや「それと、知り合いの事務所でアルバイトってうのはもちろんフェイク。
   夜に繁華街なんかを歩いてるのを見られたときのための言い訳、ということらしいね」

あん「表の顔があるヤツは大変だな」



さや「後半はささやかな議論を呼んだ、『魔法少女の在り方について』」

あん「QBがサラっとゲロってやがるが」

さや「だけどマミさんは気付かないんだよね。話の流れ的に無理もないと思うけど」

さや「ちなみに、QBにあそこまで言わせるかどうかは投下直前まで悩んだらしいよ」

あん「へぇ。で、結局言わせてみたわけだ」

さや「キャラと合ってなかったかも、って少しだけ後悔している、とのこと」

あん「どうせ削ったら削ったで後悔してたんだろ」

さや「一理ある」

あん「つーか、なんかこの手の噛み合ってない会話が多いよな、全体的に」

さや「このSSの 『売り』 の一つらしいよ。少なくとも作者はそのつもりだったとか」

あん「ふーん」

さや「そして! QBを抱えて足をバタバタさせるマミさん! かわいい!」

あん「はいはい」

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819 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:36:21.98 ID:o6NPbP8po



さや「どんどん行くよ。第三話」

あん「このサブタイトル、どういう意味だ?」

さや「Plego=プレーゴ。イタリア語で、日本語の 『どうも』 ぐらい汎用性の高い言葉らしいね。
   この場合は 『どういたしまして』 の意味で使ってるんだって」

あん「あぁ……なるほどね」

さや「やっぱマミさんも感謝されたいとか思っちゃうときもあるってことだろうね……」

あん「そのぐらいの方が人間味があっていいさ」

さや「あんたもわかってんじゃん!」

さや「そう! マミさんは天使! だけど歳相応の女の子でもあるんだよ!」

さや「ああ! あたしが慰めてあげたい!」

あん(うぜぇ……)

さや「ってかこの名無し女も礼ぐらい言いなさいっての!」

あん「そういうエピソードなんだろ」

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820 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:37:23.68 ID:o6NPbP8po



さや「第四話! ラブレターをもらったでござるの巻!」

あん「なんだよこの小っ恥ずかしいサブタイは」

さや「『魔法少女モノ』 っぽいでしょ」

あん「ぽすぎて恥ずかしいっつってんだよ」

さや「まぁね。ただ、作者は気に入ってるらしいよ」

あん「マジでか」

さや「全体的に、それっぽく、かつありきたりじゃないサブタイトルにしたかったんだってさ。
   コレはその条件を一番満たしてるとかなんとか」

あん「ふーん」

さや「実際に成功したかどうかは読者の皆さんの判断に任せます、とのこと」

あん「ってか、『まどか』 に彼氏ができてるんだが、いいのか?」

さや「あくまでモデルだし。いいんじゃないの?」

あん「さいで」

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821 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:38:35.09 ID:o6NPbP8po

さや「でも実際どうなんだろ? 魔法少女って子ども産めるのかな?」

あん「産めるんじゃねーの? 身体の作り自体は人間と同じなんだし。
   マミを見る限り、成長が止まるってわけでもないんだろーし」

さや「おっぱい!」

あん「……オマエも十分大きい方だろーが」

あん「ただまぁ、妊娠期間中のグリーフシードの確保がネックなんだろーな」

さや「だよねぇ。生まれてからもしばらくは手が掛かるだろうし」

あん「そっか。やっぱ無理くさいな」

さや「切ないねぇ」



あん「てか、マミはこの時点でQBが群体だってこと知ってるんだな」

さや「流石に三年も一緒にいればそれぐらいは、って解釈だってさ」

あん「知っててよくあんなに仲良くできるもんだ」

さや「その辺はアレらしいよ。
   マミさんの心境は、『おまえら』 が 『ロボ娘』 に対して思うのと同じなんだって」

あん「誰だよ」

さや「量産型でも感情がプログラムでも、いつかきっと心で繋がれるはずだ、的な」

さや「嫌悪感よりも同情とか母性本能の方が刺激されるんだろうね」

あん「悪いがアタシにはさっぱりわからん」

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822 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:39:23.71 ID:o6NPbP8po



さや「続いて第五話。前回のラブレターを引っ張って、さらに待望の戦闘シーンが!」

あん「待望なのか?」

さや「待ってた人もいるんじゃない?」

あん「そーかも知んねーけど……なんだかなぁ」

あん「ところで、なんで武器変更したんだこれ?」

さや「んーと、まず原作の1〜3話を見返して、銃をリボンから作ってるっぽいのに気がついた
   ってのがまずあって、それプラス、投下したときにも書いてるけど
   〈ティロ・フィナーレ〉を格好良く描きたかった、だって」

あん「なるほどね」

あん「確かこれ、書いてたのは 『基本魔法はリボン』 って設定が公開されるより前だよな?」

さや「うん。ドンピシャリだったから驚いたらしいよ」

あん「まぁ、すごいのはアニメ本編の描写の細かさであって、作者ではないけどな」

さや「ですよねー」

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823 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:40:17.95 ID:o6NPbP8po

あん「癒しの祈りで契約したから回復が得意、とか書いてるしな」

さや「修正したい個所ランキング第一位だそうな」

あん「リボンなのは死のイメージから、とかも言ってるな」

さや「あ、それについては否定させる予定だったみたいだよ。えっとね……」



> マミ「リボンなのは、きっと私が “女の子” だからよ」

> QB「魔法少女はみんな女の子だよ?」

> マミ「ハァ……キュウべえ、あなたって本当、女心がわからないのね……」



さや「そんな感じの会話を後編で書こうと思ってたんだって」

あん「ふーん」

さや「うん」

あん「……いや、わかんねぇよ。女だったらなんだってんだ?」

さや「そこは、まぁ……なんとなく少女趣味っぽいことを言わせとけば読者が勝手に
   解釈してくれるだろう的な思惑があったとかなかったとか」

あん「舐めてるな」

さや「舐めてるよね」

あん「だから削ったってか?」

さや「それもあるけど、このセリフを挟む流れが作れなかったって方が大きいみたい」

あん「あっそ」

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824 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:41:25.51 ID:o6NPbP8po

あん「ってか、燃費が悪いってのはなんだ? 一か月長持ちの大容量じゃなかったのか?」

さや「芳香剤じゃないんだから……。えーっと、悪いのは技の燃費だね。
   ドラクエに例えれば、メラやメラミは使えなくてメラゾーマしか撃てない状態」

あん「なにそれひどい」

さや「あくまで例えね、例え。要は魔力量も大きいけど消費量も大きいってこと」

あん「ふーん」

あん「ところで、このレゴだのフォーコだのってのは?」

さや「見ての通りの 『技名』 だけど。別に厨二要素ってだけじゃなくて、ちゃんと意図があるみたい」

あん「っつーと?」

さや「いくつかの動作をあらかじめ名付けておくことによって、以降の戦闘シーンで
   いろいろと省略できるんだってさ。
   技名を羅列するだけで 『素早く的確に動いてる様子』 を、なんとなく表現できたりね」

あん「ふーん」

さや「原作脚本の虚淵先生も使ってる技法だよ。『浄火の紋章』 のガン=カタ描写が有名かな」

あん「有名……なのか?」

さや「いいじゃん」

あん「いいけど……」

あん「ってか、『フォーコ』 ってどっか別のSSでも見た覚えがあるぞ」

さや「テキトーにググって見つけたイタリア語らしいからね、かぶることもあるでしょ」

あん「ふーん」

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825 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:43:08.15 ID:o6NPbP8po



さや「はい、続いて後編の第六話」

あん「オリジナルの魔女か」

さや「鋏の魔女。だけどそのハサミは使用不可能な重りでしかない。詳しくは>>137

あん「なんか見掛け倒しっつーか、普通に弱くねぇかコイツ?」

さや「その分、一般人を傷付けることに特化してるよ。
   マミさんの逆鱗に触れて覚醒させるには、単純に強いよりこういうタイプでしょ」

あん「うーん、わからんではない」

さや「一応、使い魔に斬られた(触られた)ことで攻撃衝動が引き出されて、
   そのせいで武器がリボンから銃へと変化した、っていう理屈もつけてあるらしいよ」

あん「って、術にハマっちまってんじゃねぇか。努力とか根性とかじゃねーのかよ」

さや「そういう皮肉なんだろうね。誰にも気付いてもらえなかったみたいだけど」

あん「しっかし、それで銃に目覚めたんだとしたら、改変後の世界ではどうやったんだ?」

さや「それは、アレよ。書いてある通りマミさんは魔女に対しては多少の同情があったんだけど、
   魔獣に対してはそれは無くて、むしろ明確な敵意すら抱いてたわけ。
   だからまぁ、戦ってるうちに自然に目覚めたんじゃないかな、ってことらしい」

あん「ふむ……確かに、銃が本来の武器ってことになってるし、筋は通るか」

さや「後付けだけどね」

あん「おい」



さや「あともう一つ、QBの動きについて」

あん「前編ではカラクリをバラして魔女化させようとしてたけど、
   マミにはまだ可能性があることに気付いて余計な口出しはやめることにした、と」

さや「そうだね」

あん「それはわかるんだが、どうしてあそこで止め刺そうとしたんだ?」

さや「それはだから、もう伸びしろがないと判断したからでしょ。
   それと、このままじゃゆっくりと穏やかに落ちてしまう、って思っちゃったから」

さや「精神にも位置エネルギーがある、とかなんとか、QBが言いそうなことじゃない?」

あん「よーわからん」

さや「作者もあまり突き詰めて考えてはいないみたいだよ」

あん「とことんテキトーだな」

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826 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:44:35.71 ID:o6NPbP8po



さや「次は第七話、最終回にも使われた約束の話」

あん「この時点で既に最終話まで決めてたってことか?」

さや「それがよく覚えてないんだってさ。割と早い段階で決めたみたいではあるんだけど」

さや「ちなみに一番最初は、QBがまどかの因果増大を察知したところで終わる予定だったって」

あん「本編に続く、ってか」

さや「『前日譚』 としてはその方が正解だよね」

あん「wiki の粗筋書いてくれた人にはホント申し訳ないことしてるよな」

さや「『ほのぼのSS』 が 『前日譚SS』 になって、今は 『前日譚ほのぼのSS』 だもんね。
   全くの嘘でもないけど実態を正しく表してもいない」

あん「ま、いーんじゃねーの? 原作だって似たような詐欺やってたんだし」

さや「だよね。むしろあの粗筋でグッジョブだよね」

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827 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:45:43.26 ID:o6NPbP8po

あん「あとは……QBのネットワークにも軽く触れてるな。感覚までは共有してないのか」

さや「それはそうでしょ。皮膚感覚は別個になってないとまともに動けないと思うよ。
   一匹がダメージ受けたら全員が痛がるとか、無理でしょ。生物として」

あん「なるほど」

さや「でもたぶん、データベース的なところに情報として記録はされるだろうと解釈してるって。
   ある個体が受けた痛みを別の個体が追想するってことなら普通にできるってことだね」

あん「ふーん。じゃあ、マミに抱きしめられた感触も結局共有されたのかね?」

さや「どうだろ? コレを使って個体を見分ける、って案もあったらしいけど」

あん「ぽしゃったわけだ」

さや「みたい」



あん「ところで、ジェムの終わりについて、マミが妙な解釈してやがるが」

さや「そういう考えに至っちゃったから、QBに深く追求することもなかった、ってことみたい」

あん「つくづく都合のいい女だな」

さや「……マミさんへの侮辱はこのさやかちゃんが許しませんぞ」

あん「へーへー、悪かったよ」

あん「けどマミってそういうとこあるだろ。自己完結しがちっつーか」

さや「むぅ……」

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828 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:47:15.43 ID:o6NPbP8po



さや「続いて八話と九話。二つに分ける予定はなかったらしいから一緒にやっちゃうよ」

あん「オリジナルの魔法少女か」

さや「宮古ユリさん。名字はマミさんの中の人繋がりで、名前は、まぁ、百合ってことで」

あん「ハサミってことは、コイツの設定は3〜4話の時点でできてたってことでいいのか?」

さや「ううん。ハサミの魔法少女ってことだけはその時点で決めてたけど、
   それ以外は書きながら考えたんだって」

あん「ふーん。……あの願いでどうしてハサミになるんだか」

さや「そういうアンタは、その願いでどうして多節槍なのよ」

あん「ぬ……」

さや「作者は、武器と願いはあんまり関係ないと解釈してたんだってさ。だからマミさんも」

あん「ああいう捏造設定になった、と」

さや「捏造と言えば、契約の条件についても一つ入れてあるね」

あん「素質だけじゃなく、強い願いがないと契約できないっていうコレか。
   わからんではないな。
   オマエもマミもほむらも、願いを抱いたタイミングでQBが近付いてきてる」

さや「素質がある子をマークしておいて、願いを察知し次第駆け付ける、ってイメージかな。
   これだと本編時間以前にまどかと接触してないのも説明できるしね」

あん「それはいいけど、なんでマミはコイツの契約を引き止めたんだ?」

さや「書いてある通りでしょ。
   まぁ、仲間ができることへの心の準備ができてなかった、ってのもあるんじゃないかな?」

さや「あと、このマミさんにはQBがいるから原作ほど仲間ってものに執着してないんだって」

あん「ふーん……って、それ結構重要な改変じゃね?」

さや「どこかで説明を入れようと思ってはいたらしいんだけど……」

あん「そーいや、このユリはQBのこと 『キュウべえ』 って言ってるな」

さや「この時点ではまだ表記ミスを利用することは思いついてなかったんです。とのことです」

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829 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:48:27.83 ID:o6NPbP8po



さや「続いて第十話」

あん「進研ゼミか」

さや「あー、なんかみんな笑ってたけど、作者としてはギャグのつもりはなかったみたい」

あん「はぁ? あんな思いっきり “オチ” に使っておいてか?」

さや「うん……単純に、マミさんの勉強が安定したことの種明かしのつもりだったんだって」

さや「進研ゼミとかの通信講座が魔法少女に向いてるっていうのは本気で思ってるらしいよ。
   だってアレって、『部活も勉強も諦めない』 みたいな売り文句じゃん?
   部活を魔法少女活動に置き換えるのは、そう無理のある話でもないでしょ」

あん「うーん……いや、アタシ触ったことないからわかんねえわ」

あん「ところで>>246も言ってるが、マミって勉強できそうなイメージじゃないのか?」

さや「それだと話が転がらないんだってさ。せっかく貰ったアイデアなんだし、ね。
   てか、リアルに考えたら勉強する時間はなかなか取れないと思うよ、実際」

あん「ふーん」

さや「あと、サブタイトルの元ネタは進研ゼミ小学講座の表紙に書かれてた一文だそうで」

あん「なんて書いてあるんだ?」

さや「『チャレンジ』 は 『挑戦する』 という意味です、って」

あん「まんまだな」

さや「それと、シブーストというお菓子については、『手間のかかるお菓子』 でググって
   出てきたものを使っただけで、作者は食べたことどころか見たことすらないとのこと」

あん「またテキトーな」

さや「まぁそんなわけで、アイデアを提供してくださった皆様には、改めてお礼を申し上げます。
   ありがとうございました」

あん「ありがとなー」

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830 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:49:19.38 ID:o6NPbP8po



さや「さて……第十一話。お待ちかねのあんたの出番だね」

あん「唯一の、な」

さや「拗ねない拗ねない。作者も一応考えてあるってさ」

あん「何を?」

さや「あんたの出番。外伝を予定してるらしいよ。空白の三百年の、その一部分」

あん「……ほほう」

さや「佐倉杏子は如何にして死んだのか!」

あん「またそんなのか!」

さや「じょーだんジョーダン。ま、あくまで予定。予定は未定、ってことで」

あん「ふざけやがって……」

さや「でも、まだ書き始めたところだけど、あんたがメインになるのはほぼ間違いないってさ」

さや「もしかしたらハーレム展開もありかも!?」

あん「……むしろ嫌な予感しかしねえよ」

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831 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:50:43.26 ID:o6NPbP8po

さや「――で、十一話だけど、まずは冒頭の魔女からかな」

あん「砂漠の魔女だかサボテンの魔女だか、そんな感じのヤツだったな」

さや「例によって細かいことは決めてないそうです。
   触手によるカウンターが、そういう性質だったのかただの偶然だったのかも未定」

あん「そんなヤツにアタシは負けたのか……」

さや「なに言ってんの。向こうは死んであんたは生きてるんだから、勝ちでしょ」

あん「マジにトーシローだなテメェは。
   ソロでやってるアタシが、深手を負わされて、回復のあてもないまま意識飛ばされたんだぞ。
   向こうが死んでようが偶然で生き延びようが、負けっつうんだよそういうのは」

さや「……と、まぁ、当スレのあんこちゃんはこのような考え方なのでございます」

あん「キョウコだ馬鹿やろう」

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832 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:52:22.35 ID:o6NPbP8po

さや「でさ、マミさんの魔女観とあんたのトラウマがかちあってたりとか、
   マミさんの事故をあんたら親子が新聞で読んで知ってたりとか、
   面攻撃への対応が 『おりこ』 へのオマージュというかむしろパクリの域だとか、
   いろいろあるけどその辺はまぁ置いといて」

あん「置いとくのかよ」

さや「なんか、この話のあんたって、地味に死にたがってない?」

あん「……」

さや「やっぱアレかなー? 悪いこととかいっぱいやってたのも、
   実は誰かに裁いて欲しかったからとか、そういう系だったりしちゃうのかなー?」

あん「うぜぇ……」

さや「ってことは図星?」

あん「……知るかよ。仮にそうだとしても、んなもん作者の妄想だろ」

さや「あー、それを言われるとどうしようもないかな」

あん「フン……」

さや「でもま、いーじゃん。生きてたんだからさ」

あん「……」

さや「……? 杏子?」

あん「……よかったって思うのか? お前は」

さや「へ? ……あったりまえじゃん。死んでた方が良かったっていうの?」

あん「どうだかな。ただ……」

さや「……」

あん「お前が……壊れちまったのは、少なくともそのきっかけになったのは、アタシだ」

あん「アタシが余計な手出しをしなけりゃ、お前は使い魔相手にそれなりに経験を積んで、
   魔法少女としてそこそこ上手くやれてたかも知れない」

あん「……違うか?」

さや「違うよ」

あん「っ……」

さや「絶対違う」

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833 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:53:23.62 ID:o6NPbP8po

あん「……なんでだ」

あん「そりゃお前はそう言うだろうとは思ったよ。内心どう思おうととりあえず否定するって」

あん「でも、なんでそんな、即答できるんだよ……!」

さや「なんでって……だって、違うし」

あん「違わねーだろ! 事故でもなんでもない、アタシは潰そうとして潰したんだ!
   途中でヘタれちまったけど、最初は混じりっけなしに潰そうとしてたんだ!」

あん「どう考えてもアタシのせいだろうが!」

さや「いや……杏子。あんた、忘れてるでしょ」

あん「何を!」

さや「ワルプルギスの夜のこと」

あん「そん――、……」

さや「ワルプルギスの夜」

あん「……」

さや「どのみち死んでたよ。マミさんが死ぬぐらいなんだし」

あん「……」

さや「……」

あん「……」

さや「『あたしのせいだろーがっ』」

あん「やめろっ!!///」

さや「いやーあんこちゃんマジ聖女だわ」

あん「こんの……っ!///」

さや「ってかさー、コレ後書きだよ? いきなりシリアス入るのとかやめてくんない?」

あん「あーっ、もう! 悪かったよ! 全部アタシが悪かった!」

さや「わかればよろしい」

あん「っ……!」

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834 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:54:20.86 ID:o6NPbP8po

あん「ハァ……」

さや「ふふん」

あん「ってか」

さや「うん?」

あん「お前、なんか変わったよな。妙に落ち着いてるっつーか、飄々としてるっつーか」

さや「あぁ……まぁ、うん。まどかのおかげでいろいろふっきれたしね」

さや「さやかちゃん解脱モードと呼んでくれたまえ」

あん「あーそー」

さや「うん。そんじゃ後書きに戻る……前に、ちょっと休憩入れよっか」

あん「了解です、さやかちゃん解脱モードさま」

さや「ちょ、マジで呼ばないでしょ。しかも 『さま』 とか」

あん「へっ」

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835 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 19:54:52.43 ID:o6NPbP8po

というわけで休憩

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http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314546216/
836 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/09/03(土) 20:00:39.92 ID:EFnbZvDOo
乙!
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837 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:22:33.89 ID:o6NPbP8po



さや「はい、休憩終わり。次は第十二話、マミさんレベル1編でっす」

あん「おー」
                        .. . ..
さや「『君は、僕と契約して魔法少女になったんだ』」

あん「過去形で言われるとこれほど絶望的な言葉もないな」

さや「だよね。でも反応なかったからヘコんだんだってさ」

あん「知るかよ……」

さや「ま、それは置いといて」

あん「どういう意図なのか、コレだけ五部構成なんかになってるな」

さや「ねー。コレさえなければ全25話でちょうど2クール分になってたのに」

あん「ま、今さら言っても仕方ねぇさ」

さや「だね」

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838 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:24:15.26 ID:o6NPbP8po

あん「しっかし今回は捏造設定多すぎだろ」

さや「仕方ないじゃん。マミさんの過去って公式じゃほとんど情報ないんだから」

あん「そりゃそうだが」

さや「ま、見て行ってみようよ。捏造その一。親戚のおじさまおばさま」

あん「四話冒頭の 『おばさま』 ってコレか?」

さや「みたいだね。原作で転校生が言ってた 『遠い親戚』 のことでもあるよ。
   車がないと不便すぎる場所に住んでいて、車恐怖症(その二)になってしまったマミさんは
   そちらに預かってもらうことができなくなりました」

あん「魔法少女としちゃその方が助かるよな。
   夜間の外出を制限されるってだけでも相当のハンデになっちまう」

さや「つまりそのための設定だよね。だから多少の無理には目をつぶりましょう」

あん「いいけどさ……」

さや「続いてその三、劇中劇 『マジカル・アルティ』」

あん「割とスタンダードな魔法少女モノっぽいな。若干バトル寄りみたいだが」

さや「原作三話の絵コンテに記載されていたという 『アルティマシュート』 を元ネタとした、
   当SS内でのアルティマシュートの元ネタという設定、とのこと」

あん「わざとわかりにくく言ってんだろ」

さや「その四、ジェムにかけられた人避けの魔法」

あん「コレはわかんねーな。何のためなんだ?」

さや「何のためっていうか、原作十二話にジャンヌ=ダルク(っぽい人)が出たじゃん」

あん「火あぶり直前っぽかったアレか?」

さや「そう。にも関わらず手にはソウルジェムが。……普通に考えて没収されない?」

あん「なるほど、そういうことか」

さや「あと普通に、マミさんに限らず小学生なら尻ごみしそう、ってのもあったみたい」

あん「大して意味のないところばっかりこだわる作者だな」

さや「捏造その五。マミさん強さのヒミツ」

あん「事故のせいで因果が増大したってか。まぁ、わからんでもない理屈だが」

さや「意図としては、箔をつけたかったっていうのと、
   QBにマミさんへの関心を持たせるため、とかがあるらしいよ」

あん「ふーん」

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839 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:25:17.86 ID:o6NPbP8po



あん「続いてレッスン2、デビュー戦。まずは魔女についてか?」

さや「いえす。こっちは魔女図鑑も作ってあるよ。ハイッ」



私的魔女図鑑 vol.2

子供部屋の魔女。その性質は悲哀。
死んだ我が子の肉を腕に抱き、血の涙を流して泣き続ける母の像。
その泣き声は聞く者の心を狂わせ、ときに物理的な破壊力を持って壊す。

子供部屋の魔女の手下。その役割は防衛。
魔女本体、ではなく、その腕に抱かれた赤子に近付く者を許さない。
さまざまな玩具の姿を模しており、その身体は例外なく欠損している。



あん「またえらく悲惨くさい魔女だな。抱いてるのって本物の赤ん坊の死体かよ」

さや「キャラメイクも難産だったらしいよ」

あん「『も』 ってお前」

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840 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:26:11.00 ID:o6NPbP8po

さや「まずマミさんのリボンが通用するような相手じゃなきゃダメじゃん?
   その時点でいきなりつまづいたみたい」

あん「うん? ……あぁ、そうか。刃物系が軒並み使えないんだな」

さや「ビンゴッ。カマイタチとかウォーターカッターなんてのもあるから水や風系もダメ。
   他にも炎とか、酸なんかの溶かす系も。氷も厳しいかな」

あん「だから、“声”?」

さや「そういうこと。コレならQBにもダメージが行くから、守るためっていう戦いの動機づけを
   マミさんに与えることもできる、と」

さや「それと、あんたも感じたように悲惨な背景が透けて見えるのも重要なポイントだね」

あん「なんでだ?」

さや「最初にこんなのに当たったら、魔女ってものについて深く追求する気なんか失せるじゃん」

あん「あー……」

さや「とまぁ、そんなこんなで、難産だっただけに作者も気に入ってるみたいだよ。
   子供部屋の、ってネーミング含めてね」

あん「おもちゃの魔女、って感じだけどな。どっちかって言ったら」

さや「それは 『おりこ』 で使われてたしー」

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841 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:27:15.91 ID:o6NPbP8po



あん「んじゃ続いてレッスン3。オリジナル魔法少女二号と三号だな」

さや「佐木ハルカさんと三園カナエさん。セーラー服の魔法少女コンビ!」

あん「なんかコイツらのことは、詳しく設定固めてそうな感じがするが」

さや「そうだね。契約の願いから末路まで、大まかにだけど考えてあるってさ」

さや「まず……速攻でバレてたけど、“委員長の魔女” の元の人たちのつもりだそうです。
   名前の元ネタは、名字が声優のささきのぞみさんから」

あん「……誰?」

さや「『らき☆すた』 のアニメでパトリシア=マーティンってキャラを演じた人、らしい」

あん「パトリシア、ね。ストレートなんだか回りくどいんだか。
   で、名前の方は、空のイメージで 『はるかかなた』 ってところか?」

さや「またまたビンゴッ。『かなた』 だと漢字の字面が気に入らなかったから変えたらしいけど」

あん「そーいや相方だけは 『香奈枝』 って漢字で呼んでるのな」

さや「『キュウべえ/キュゥべえ』 と同じような感じだろうね。
   ちなみにハルカさんはQBのこと 『キュゥべえ』 って呼んでるよーん」

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842 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:28:32.40 ID:o6NPbP8po

あん「で、どっちが魔女の本体?」

さや「カナエさんの方。魔女化のきっかけはハルカさんが魔女に殺されたこと」

あん「あー、見るからに共依存って感じだしな。わかるわかる」

さや「まず、カナエさんがクラスメイトからのイジメをなくして欲しいと願って契約したんだって。
   そしたらイジメてた連中がみんな操り人形みたいになっちゃって」

あん「……固有魔法は、アタシと同系統かね」

さや「誰にも相談できない。QBは気味が悪い。ついでに魔女も襲ってくる。
   嫌になって手首を切っても何故か死ねない」

あん「そこでジェムの正体に気付いたわけか」

さや「で、いよいよ絶望しかけたところに現れたのが――転校生のハルカさんなのでした」

さや「異様なクラスメイトたち。ただ一人まともっぽいけど何かに怯えてるカナエさん」

さや「何度か問い詰めた結果、彼女は真相を知るわけです。同時に、自身の素質のことも」

あん「……何を願ったんだ? まぁ、だいたいわかるが」

さや「お察しのとおりだよ。クラスメイトを元に戻すこと」

あん「どつもこいつも……」

さや「まぁまぁ」

あん「何も得られず、戦って絶望する運命だけが残されたわけだ。やってらんねぇな」

さや「一応、お互いのことを手に入れた、ってことで納得してるみたい」

あん「……二人ともそっち系ってか」

さや「イエス。共依存百合。作者の大好物」

あん「今までで一番いらねー情報だよそれ」

さや「あたしもそう思う」

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843 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:29:31.21 ID:o6NPbP8po

さや「閑話休題。武器は、カナエさんが “糸”。ハルカさんは投げナイフと近接格闘」

さや「カナエさんの糸で敵の動きを封じつつ足場を作って、ハルカさんが直接攻撃、
   というのが基本戦法らしいね」

あん「ふん……楽勝、ってのはちょっと難しそうだな。ま、遣りようはあるさ」

さや「なんでいちいち戦うことを考えるかなあんたは」

あん「うるせー」

さや「あ、そーいえば。最初に遭遇する魔法少女には別の案もあったらしいよ」

あん「……シャルだのロッテだのって名前だったりするんじゃねーだろーな?」

さや「ううん。あんた」

あん「は?」

さや「だから、あんた。佐倉杏子から教えを受けるという案」

あん「いやいやいや。前の話とめっちゃ矛盾するだろそれ」

さや「だから、十一話は破棄して書きなおそうかなぁと、そう考えた時期もあったんだって」

あん「……」

さや「どっちが良かったか迷ってる顔だね」

あん「うるせー。で、なんでボツったんだ」

さや「既に書き上げてた十一話がもったいなかったからに決まってんじゃん」

あん「……あーそう」

さや「でもドラマCDの3を聞いて、どうせ間違えるならそのぐらいやった方がよかったかなと
   最近また後悔がぶり返してるとか何とか」

あん「知るか」

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844 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:30:38.32 ID:o6NPbP8po



さや「レッスン4。インキュベーターかく語りき」

あん「……本性を知らなかったらイイハナシダナ―とか思えるのかね」

さや「実際マミさんはそう思っちゃったわけで」

あん「けどまぁ、あの見た目でこの喋りだからな。無理もねぇよ。アタシも似たようなもんだったし」

さや「しかも小学生だもんね」

あん「ガキは大人より嘘や悪意に敏感、なんて言うけど、
   そんなのは利害が絡まないときだけだ。甘い餌ちらつかされたら簡単に飛びつくさ」

さや「QB『やっぱり小学生は最高だぜ!』」

あん「やめろ」

さや「で、マミさん再契約(のマネゴト)と」

あん「馬鹿が……」

さや「もうアワレで見てらんない!」

あん「……お前が言うな、お前が」

さや「へ?」

あん「誰も望んでない、いらない責任を、勝手に、簡単に背負いこもうとする。
   そうしなきゃ正しいことをしてるって実感できないんだろ?」

さや「……」

あん「よく似た師弟だよ、お前らは」

さや「むぅ……」

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845 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:31:36.35 ID:o6NPbP8po



あん「んじゃ次、5な」

さや「ん。ここは、霊脈と見滝原の先代についてかな」

あん「マミが魔女化しなかった理由も必要だろ。一週間補給なしで、戦闘して重傷も負って、
   その上あんだけ大泣きしたんだ。これで無事って流石に不自然だろ」

さや「うーん、作者の中では辻褄は合ってるらしいんだけどね」

さや「戦闘って言っても使った魔法は大技一発と身体強化ぐらいだし、
   怪我の治療もハルカさんがやってくれたわけだし。
   それに大泣きしたのも、この涙はどっちかって言ったら前向きな涙なんだろうし」

あん「え、なに? マミのヤツ嬉し泣きしてたのか?」

さや「んなわけないでしょ! マミさんどんだけ腹黒幼女なのよ!」

あん「えー? だって」

さや「だからさ……つまり、大声で泣くのってストレス発散になるじゃん。要するにそれよ」

さや「絶望の涙じゃなくて、通過儀礼としての涙。悲しみを受け入れるための涙なんだよ。
   お葬式みたいなもんだよ」

あん「……よくわからん」

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846 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:32:47.97 ID:o6NPbP8po

さや「いいけどね……じゃあ次。霊脈」

あん「ハノカゲ版に登場した単語だな。なんかワルプルギスと関係があるっぽかったけど」

さや「迎撃のために最低二か所のソレを押さえる必要がある、って転校生が言ってるね。
   そこから妄想を広げて、魔女の通り道ってことにしたみたい」

あん「ま、フツーの発想だな」

さや「ちなみに、遠くの街で生まれたはずの “鋏の魔女” が出てこれたのはコレのおかげです」

あん「どーせそれも後付けなんだろ?」

さや「ううん? 霊脈と魔女については割と早くに考えてたんだってさ。
   マミさん以外に魔法少女がいなかった見滝原に魔女が出続けることの説明にもなるしね」

あん「ふーん」

さや「あとは先代魔法少女なんだけど、QBが語った以上のことは特に決めてないってさ」

あん「ふーん。……なんかずげー変人だな」

さや「QBの端的な語り口でも人となりが伝わるよう、わかりやすい個性を付けたんだそうな」

さや「ちなみに外見は、黒髪ショートに縁の目立たないメガネを装備。
   『ゆるゆり』 の結衣がアニメの五話で披露したコスプレ姿がドンピシャリ、らしい」

あん「なんでこいつだけ外見設定あるんだよ」

さや「さあ……?」

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847 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:34:12.45 ID:o6NPbP8po



さや「さて、いよいよお待ちかねの最終章。第十三話」

あん「サブタイどおり、ワルプルギスの予告とまどか発見の話か」

さや「マミさんがワル夜のことを、たぶん携帯使って調べてるけど、
   これはドラマCD1へのオマージュだね。そっちで転校生が調べてたのと同じ内容だわ」

あん「で、霊脈の設定をさらにいじくってあるみたいだが」

さや「活性化と新規開拓の違いなんかはかなり苦し紛れの後付けらしいよ。
   やっべ先代殺すのに霊脈使っちゃったよどうしよう、みたいな」

あん「なんだかな……」

さや「ただ、QBが霊脈に詳しくないってことについては、ちゃんと考えた設定みたい。
   詳しくないっていうか、魔女がらみのことにはあんまり興味がないんだろうね」

あん「エネルギー採ったらあとは用済みってか」

さや「あと、自分で書いておきながら納得のいかない点が一つあるらしい」

あん「なんだ?」

さや「自分の結界に引きこもってるはずの魔女を、先代はどうやって複数同時に倒したのか」

あん「……無責任な話だなオイ」

あん「ところで、魔法少女候補が 『一人』 っていうのは」

さや「まどかのことだね。転校生のループが重なってないこの時点では、
   あたしにはまだ素質はなかったってことなんだと思う。
   転校生はまだこっちに来てなかったんだろうし」

あん「まぁ、原作本編とも一致するか」

あん「……しっかしなぁ」

さや「なに?」

あん「いや、これ」



> QB「倒せるかも知れない――あの厄介な舞台装置を!」



あん「QBもたいがい厨二だよな」

さや「はっはっは」

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848 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:35:10.01 ID:o6NPbP8po



さや「巻いて行くよ。十四話、接触直前のマミさんのアレコレ」

あん「冒頭のこれ、テレパシーでお前らの映像を送ってるってことだよな?」

さや「うん。原作十一話でまどか相手にやったのと同じ。たぶん」

あん「ふむ」

あん「……ってかさ、アタシ前から気になってたんだけど」

さや「ん?」

あん「願いで過去に戻ったのって、ほむら以外にはいなかったのかね?
   何かをやり直したい、なんて、人の抱く願いとしては割とスタンダードだと思うんだが」

さや「あー……」

さや「作者もそれは悩んだらしくてね。普通に考えたらいなかったはずはないんだけど、
   だとしたらQBの原作での振る舞いとそぐわない。
   過去に一人でもいたなら思い当たらないはずがない、ってね」

あん「だろ?」

さや「だから、いなかったという設定にするけど明言は避ける、という方針で行くことにしたってさ」

あん「つまり保留か。ヘタレめ」

さや「で、QBが殺されて新しいのに入れ替わり、と」

あん「まどかタスケテーってか。マミに聞かれるとは思わなかったのかね?」

さや「わかんない」

あん「あっそ」

さや「えーっと、あとは……読者からガン無視されたマミさんの厨二ごっこだけど……」

あん「……次、いくか」

さや「そうしよう」

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849 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:36:11.80 ID:o6NPbP8po



さや「第十五話、ニューフェイシズ!」

あん「新顔、の複数形。新キャラ登場ってことか。まどかとほむらとお前と」

さや「あとキュウベエも新だね。……死んだね!」

あん「はいはい。えーっと、内容は原作一話の終盤、プラスアルファってところか。
   だいたいの流れは同じだけど、セリフがいくつか追加されてると」

さや「うん。まずマミさんがQBを心配する描写が入ってる」

あん「原作ではスル―してたよな」

さや「スルーではないでしょ。『QBを助けてくれたのね』 って言ってるじゃん」

あん「リアクション薄すぎるだろ。『大切なお友だち』 じゃねぇのかよ」

さや「むぅ……」

あん「作者が、原作では同居まではしてない、って思ったのも、こういうのがあるからか?」

さや「ああ、うん。それもあるね」

さや「でも確かにマミさんの性格を考えると不自然な反応なんだよねー原作は。
   神秘性を強調したかったのかな?」

あん「むしろ胡散臭く見えるぞ。三話の放映まではマミ黒幕説が有力だったのも
   これが原因の一つなんだろうし」

さや「うーん……単純に尺が足りなかっただけなのかな?
   それとも、実は作者の解釈以上にドライな関係なのか。
   ドラマCDや 『おりこ』 でもそんな感じだし」

あん「知らねー。――けど」

さや「けど?」

あん「ここが考察の場じゃないのは確かだ」

さや「……そうだった」

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850 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/09/03(土) 21:36:34.77 ID:/4sjPSAb0
乙でした…

正直これでマミマミストに対して泣くなって方が無理じゃボケェェェェ!
泣いたわ! 街を守り切って死んだとか泣いたわ!
その後結局マミさんを殺したのは魔獣ではなく孤独ってなってより泣いたわ! 大泣きしたわ!
こんな素晴らしく泣ける話を書く>>1はGJの刑に処す!
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851 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:37:26.11 ID:o6NPbP8po



さや「さて、いよいよ最大の見せ場、QB入れ替わり発覚編。第十六話でございます」

あん「急にホラーになったよな」

さや「反応も上々だったよね。作者も何度も書き直した甲斐があったと思うよ」

あん「そうなのか?」

さや「うん。最後の3〜4レスは三日ぐらいかけて弄くり倒したってさ」

あん「ふーん。ご苦労なこった」

さや「で、仕込んだネタについてですが」

あん「まずこの変なサブタイはなんなんだ」

さや「いくつかの意味を含んでるらしいよ。まず、文字通りにシチュエーションと時間帯。
   次に、日常の象徴である 『お茶会』 の 『黄昏』、つまり平和な時間の終わりだね。
   さらに、『黄昏』 の語源の 『誰そ彼』 が、マミさんの最期のセリフにかかってる」

あん「……わかりづれぇ」

さや「ですよねー」



あん「ところでQBが言ってる 『政治家の娘』 ってもしかして」

さや「美国織莉子のことかって? さぁ、どうかな。
   そうかもしれないけど、この時間軸ではこの人は契約してないっぽいし」

あん「そうかい。無駄に思わせぶりやがって」

さや「誰も気にしてなかったんだし、いーじゃん」

あん「また身も蓋もない」

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852 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:38:49.67 ID:o6NPbP8po

さや「それよりも、コレよ」



> マミ「『大いなる力には大いなる責任が伴う』――」



あん「コレが? ……って、うん? なんか聞き覚えあるような」

さや「うんうん、有名だもんね。とある映画のに出てくるセリフなんだけど、
   予告編でも使われてたから見てなくても知ってる人は多いんじゃないかな」

あん「んー? ……あー、思いだした。スパイダーマンか」

さや「せいかい!」

さや「つまりマミさんは、なんだかんだいってハルカさんも言うことを、
   全部じゃないにしてもちゃんと聞いてたってことなんだよ!」

あん「ふーん」

さや「素直なマミさん! かわいい!」

あん「……ふーん」

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853 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:40:19.14 ID:o6NPbP8po



さや「続いて十七話。魔法少女体験コース」

あん「とか言う割には1レスでサラっと流しやがったな」

さや「主題じゃないからね。まぁ、いいサブタイトルが思い浮かばなかったんでしょ」

あん「魔女や使い魔の描写も一切ないし。
   実はこれゲルトルートじゃなくてイザベラなんです、とか言っても通じるんじゃないか?」

さや「言われてみれば」

あん「別になんだっていいけどさ」

あん「ところでこの冒頭のQBのセリフ、六話の冒頭のと一部同じになってるが」

さや「ああ、そっちははっきり意図してやったらしいよ。
   どのQBも同じだってことの表現なんだって。例によって気付かれなかったけど」

さや「ちなみにやっぱり伏線じゃなくて、単なるネタの再利用」

あん「さいで」

あん「しっかし……前回もそうだったけど、この新しいQBは無性にキモいな」

さや「だねぇ。作者的には、特にここがって言えるほどの違いは意識してないらしいけど。
   喋り方を気持ち幼めにしてるかなーってぐらいで」

あん「そーなのか。でもキモいわ」

あん「てか、その割にはマミに止め刺そうとはしないのな。せっかく絶望しかけてたのに」

さや「それはまぁ、本人も言ってる通りまどかとの契約を優先したんだろうね。
   『先輩魔法少女』 がいた方が契約しやすいってのはその通りだろうし」

さや「それに、この件に限らずQBは絶望の後押しとかは基本的にしないんじゃないか、
   っていうのが作者の考えらしいよ」

あん「そりゃまたどうして?」

さや「作為的でない方が純度の高いエネルギーが採れそうな気がする、だってさ」

あん「……下衆な発想だな」

さや「あたしもそう思う」

あん「ま、いいや。
   それで、魔女化フラグとまどかの願いの伏線を張って次回に続く、と」

さや「じゃあ次行ってみようか」

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854 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:41:44.69 ID:o6NPbP8po



さや「十八話。VS転校生の回」

あん「VSってか一方的になぶっただけだろ。しかも不意打ち」

さや「イメージ映像は原作十話の 『みんな死ぬしかないじゃない!』 をご参照ください」

あん「言われんでもそれが浮かぶと思うが」

あん「それにしても、前回は銃口を向けて、今回は縛って締め上げてと、
   行動が順調にエスカレートしてやがる」

さや「この調子じゃお菓子の魔女のところで殺しちゃうんじゃ? ……と思わせるのが
   作者の狙いだったそうな」

さや「ってゆーか言い忘れてたけど、このあたりの原作との微妙な違いは、
   展開を読ませないようにするためなんだって。
   別にそのままでも独自展開を予想してくれると思うんだけどね、二次創作って時点で」

あん「ふーん……まぁ読者の反応見る限り成功してたっぽいし、いいんじゃねえの?」

さや「うーん」

さや「というか喜々としてマミさんをいじめてた作者がさやかちゃん的に許せないんですよ」

あん「知るか」

さや「ちなみに縛られる前後の転校生の語りなんだけど、
   これは 『作者ならこう説得する』 っていうのの一例なんだそうだよ」

あん「思いっきり失敗してるじゃねえか」

さや「いやそれは……マミさんの精神状態がアレだし……」

あん「まぁ……確かに、まどかは魔力が強すぎるからダメ、っていうのは悪くないかもな。
   別に嘘をつかずにいる必要はないわけだし」

さや「あたしはそれでも信じないけどね! だって転校生だし!」

あん「……」

さや「ジョーダンだよジョーダン……」

あん「……次行くぞ。この、ループが十二回目ってのはどういうことだ」

さや「あー、それはテキトーだってさ。定説の五回は少なすぎると思ってるから、って」

あん「なんだ、それだけか」

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855 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:42:43.57 ID:o6NPbP8po

さや「そして、『未来から来た』 転校生に、過去の武器を振るうマミさん!」

あん「戦略としちゃ妥当な線だな。既に縛ってる相手にやる必要はねーだろーけど」

さや「うん。別のシチュで使えばよかったかもって後悔してるらしい」

あん「思い付きで書くからだ」

さや「……ってかさー、このシーンさー」

あん「うん?」

さや「QBのあの言葉があったから転校生は生き延びられたんだよねぇ?」

あん「あぁ、そうだな」

さや「で、アイツがいなくなると芋づる的にまどか魔女化確定で人類滅亡なわけで」

あん「……まぁ、そうなるだろうな」

さや「つまり、世界はQBに救われたってことだね! やったね!」

あん「……」

さや「……」

あん「釈然としねぇ」

さや「あたしも全く同意見だけど、QBのことも否定しきれないってのが作者の考えで、
   そういうところも描きたかったらしいから」

あん「別にいいけどさ」

あん「で、ラストのブランデーについてだが」

さや「鳥かごの魔女フラグだね。あの魔女ってお酒に目がないって設定だから」

あん「それはわかるんだが、つまりこれはブラフだったのか?
   それとも魔女化展開も有り得たってことなのか?」

さや「もちろんブラフ。不安を煽るだけ煽って豪快にブン投げたかったらしい」

あん「とことん思わせぶりな野郎だな……」

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856 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:44:09.81 ID:o6NPbP8po



さや「さて、いよいよ問題の十八話だね」

あん「これってつまり、まどかにシャルロッテが消されて、その代わりに魔獣が出てきた
   ってことでいいのか?」

さや「少し違うね。
   えーっと、ほらココ。>>667に妙な空白があるじゃん。これがいわゆるキンクリなわけ」

あん「……は?」

さや「だからね。まず、>>666のすぐあとにお菓子の魔女が普通に出てきて、
   マミさんは原作どおりに殺されちゃったの」

あん「え」

さや「で、同じく原作どおりに転校生がこれを倒して、それから原作4〜12話があって、
   あたしもあんたもやっぱり死んじゃったの。でないとまどかがあの願いに辿りつけないから」

あん「……」

さや「そうして世界が再構成されて、魔女のいない歴史が紡がれた。
   私たちが知ってる歴史とはだいぶ違うものになりそうな気がするけど、
   そこはSFでよくある 『修復作用』 ってヤツかな。それか、まどかがどうにかしたのか」

さや「とにかく、だからマミさんも生まれて、事故に遭って魔法少女になって、
   あたしともどこかで出会って、体験コースもやって、
   そしてあるときあたしからの電話で病院に魔獣が出たと呼び出されて――と」

さや「それだけのことがこの空白の中で起こってたってことらしいよ。省略されてるだけで」

あん「……」

あん「――え? ってことはつまり、マミが戦ってるこの相手は、」

さや「魔獣だね。>>668以降、どこにも 『魔女』 なんて書いてないでしょ?」

あん「『魔獣』 とも書いてねーよ! それに結界張ってるし!」

さや「このスレの魔獣は張るんだよ、たぶん。実際最終話でも張ってたし。
   ってか書いたらバレちゃうじゃん。休憩挟む意味もなくなるじゃん」

あん「そもそもあの休憩がなんだったんだよ!」

さや「それは……悪趣味?」

あん「……あーそう」

さや「というかね、あたしは思うんだけど」

あん「……なにが」

さや「あのタイミングでのブツ切りは、むしろ生存フラグだと」

あん「……そーですね」

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857 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:45:29.94 ID:o6NPbP8po

さや「仕込んだネタについて。まずは麻痺弾かな。転校生に撃ったやつ」

あん「弾丸のバリエーションね。確かに 『おりこ』 では炸裂弾なんて使ってたな」

さや「初期プロットでは普通の弾で普通に足を撃ってたそうです」

あん「どっちでもいいが、ほむらはどうやって使い魔を乗り切ったんだ?」

さや「ここの使い魔ってチーズにしか関心ないし。静かにしてりゃやり過ごせるよ。
   で、必死こいて回復させたけど間に合いませんでした、と」

あん「なーんか無理があるような」



さや「そして、QBの教えを胸に戦うマミさん」

あん「相手がヤツじゃなきゃ熱くなれる展開なんだろうが……」

さや「QBの効率主義ってガン=カタの基本理念に通じるところがあるよね」

あん「知らねーよ」



さや「そしてそして、一話のネタの再利用。シナモンの香りでQBの生存に気付くマミさん」

あん「『生存』 ってのも 『気付く』 ってのもなんか違わねーか?」

あん「ってか、そもそもなんで記憶が残ってんだよ。ジェムの濁りまで引き継いでるし」

さや「それはまぁ、転校生の身に起こったのと同様、『単純な奇跡』 ってヤツかと」

あん「納得しがたい」

さや「いーじゃん。仮にも主人公なんだから、奇跡の一つや二つ」

あん「いいけどさ……」

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858 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:46:52.62 ID:o6NPbP8po



さや「で、十九話。ぶっちゃけた話、消化試合だよね」

あん「見せ場は全部前編で消化って、明らかにペース配分を間違えてるよな」

あん「ところで、なんだ? マミのこの円環についての妙な解釈は」

さや「適当にそれっぽい理屈を付けてみただけらしい」

あん「またそんなかよ」

さや「あとはー……転校生の見た目についてかな」

あん「メガネはわかるが、髪を降ろしてるのはなんでだ?」

さや「どっちつかずな感じを出したかったんだって。行動を読みづらくさせるために」

さや「あと、メガネはQBを一旦退席させるためにも使われてるね」

あん「ただいま、おかえり、か……」

あん「なるほどね。確かにこりゃ、『ほむらが上手いことやる話』 じゃねーわ」

さや「そう、あくまで 『マミQ』 のスレなのだよ。そして紅茶」



さや「ついでにってゆーか、まどかの願おうとしてたことも一応全部かなってるんだよね。
   前のQBは戻ってきて、転校生と敵対する理由もなくなった」

あん「代わりに本人が消えてるけどな」

さや「いやー、直接ああ願ってたよりは良い結果じゃない?」

あん「そりゃそうかも知れんけど」

さや「だからまぁ、いいんじゃないかな」

さや「ただ一つ後悔してることがあって、マミるって予告しちゃったこと」

あん「いっぱい反応してもらえてんじゃねーか」

さや「いや、これについてばっかりで、本文への感想がほとんど、さ……」

あん「あー……」

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859 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:48:00.62 ID:o6NPbP8po



さや「さて、いよいよ最終話。マミさん故郷に死す」

あん「なんで300年も経ってんだよ」

さや「大都会見滝原が無人の廃墟になるにはそのぐらいかかるんじゃないかなー、だってさ」

あん「また適当な」

さや「初期のプロットでは見滝原じゃなくて、世界のどこかってことだったみたい」

あん「なんで変えたんだ?」

さや「ここまで描いてきた 『街を守ること』 に対する強いこだわりを無駄にしないためだろうね」

あん「なるほど、わからんではない」

さや「あと、最初は普通にマミさん視点の予定だったんだって」

あん「ん? ってことは、二人の最後の会話とかも?」

さや「うん。かなり細かいところまで考えてたって」

あん「なんでなくしちゃったんだよ。読者が見たかったのはそこじゃねーの?」

さや「それが……書いてるうちに、なんとなく、って……」

あん「ふざけてんのか」

さや「いやいや。まずね? 前半をマミさん、後半を転校生に語らせるプロットを作って、
   肉付けしてるうちに後半がどんどん伸びて行って……
   そんな中で、マミさんパートは少なめにした方が雰囲気出るんじゃないかとか
   思っちゃったのが運の尽きというかなんというか」

あん「……最終的に、いっそなくしちまえ、ってか」

さや「そうみたい」

あん「いーけどさー……せめてマミの最期の言葉ぐらいは出せよ。質問も来てるし」

さや「はい。えー……、>>798氏へ。
   お察しの通り、ストレートです。ストレートでシンプルな、感謝と愛情の言葉でした、と」

さや「……こんなもんで?」

あん「……アタシに聞かれてもな」

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860 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:48:48.07 ID:o6NPbP8po

あん「ついでに他の質問にも答えとけ」

さや「はーい」



さや「>>803氏。
   杏子については外伝で。ただ、マミさんたちほど長生きはしてないそうです」

さや「>>807氏。
   作者にも想像がつかない、と。ぼんやりと、クリームヒルト以下ではあるかなぁ、と」

さや「>>809氏。
   >>810氏が言ってくださってるもので正解です」



さや「……えーっと、明確に質問なのは以上かな?」

あん「だな」

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861 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:50:21.32 ID:o6NPbP8po

あん「しかし300年かー。やっぱ最年長記録だったりするのか?」

さや「ううん。完全に裏設定らしいけど、生きた長さではマミさんは一位ではないんだって」

あん「ほう。まだ上がいるってのか」

さや「そう。例えば十二話に出てきた佐木ハルカさんが、この時点でまだ生きてるとのこと」

あん「オリキャラかよ。二次創作でやっちゃっていいのかそれ」

さや「だから完全に裏設定なんだってば」

あん「ってかそいつは魔女に殺され……ては、いないことになったのか。世界改変で」

さや「そういうこと。でも相方のカナエさんは運命には逆らえなくて導かれちゃってます。
   で、それ以来ずーっとお墓を守ってるんだって。だからマミさんみたいに有名じゃない、と」

あん「自縛霊かよ。……そーいや、ほむらの方の評判はどうなってんだ?」

さや「それはやっぱり、マミさんと双璧って感じかな。ただしある時期から今のスタンスに
   移っちゃって、だから最期を看取った魔法少女の数がとんでもないことになっちゃって、
   おかげで最近では 『死神』 とか 『堕天使』 とか呼ばれがち、みたいな」

あん「まどかと生きてもう一度会う、か。あいつらしいっちゃらしいかな」

さや「『あの子の守った世界を守る』 ってだけで十分だと思うんだけどねー。あの転校生だし」

さや「ちなみに長生き云々については、こんなシーンが入る予定でした↓」

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862 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:51:33.65 ID:o6NPbP8po

   ==========

ほむら「……そういえば、やっぱり彼女や私は長生きな方なのかしら」

QB「そうだね。単純に魔法少女を続けた長さでいえば、君たちは十番目ぐらいかな」

ほむら「へぇ……。なら、一位は?」

QB「君も知っていると思うよ。この国ではそこそこの有名人だからね」

QB「本当の名前は 『みつ』 といったかな。平安の後期から江戸中期まで、
   尼僧として847年を生きた。各地に目撃情報が残っている」

ほむら「……」

ほむら「まさか……」
                                  ヤ オ ビ ク ニ
QB「やっぱり知っていたか。そう――君たちは、『八百比丘尼』 と呼んでいるね」

ほむら「……その人は、どんな願いを?」

QB「それは言えないな。他の子の願いを僕の口から漏らすのは、ルール違反だ」

ほむら「……そう」

   ==========

あん「……」

さや「物語的に全く必要ないのでカットしたらしい」

あん「厨二すぎるからの間違いじゃないのか」

さや「否定はしない」

さや「ついでに言うと、宝永の大噴火はこの人が魔女化したせい、なんて妄想も」

あん「へー……」

さや「他の長生き魔法少女については特に決めてないらしいよ。
   そもそも 『十番目ぐらい』 ってしてるのも、
   この面子だけだと上位が日本人だらけになっちゃうからって、それだけの理由だから」

あん「ふーん……」

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863 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:53:01.03 ID:o6NPbP8po

さや「あと、カットと言えばもう一つ。一番最後は魔女図鑑で締めるって案もあったんだって」

あん「はぁ? 魔女なんてどこにいるってんだよ」

さや「見てもらえばわかるよ。はいコレ」

   ==========



   東の魔女。

   その性質は守護。

   この魔女は、世界の改変を成し遂げた神ですら消すことができない。



   ==========

あん「……マミのことか、これ?」

さや「そういうこと。最後まで悩んだらしいけど、実際に投下した方が競り勝ったわけだね」

あん「……そーいや、魔女とも呼ばれた、ってほむらが言ってたな」

さや「伏線だけが残ったわけです」

あん「うーん……」

さや「みんながあんまりマミるマミる騒ぐから、
   そんなにマミるのが嫌ならいっそ魔女らせてやろうか、ってことらしいんだけどね」

あん「やめといて正解だよそれは」

さや「ですよねー」

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864 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:54:25.07 ID:o6NPbP8po

あん「しっかし……300年も生きたマミが、たった4匹の魔獣に負けるかね?」

さや「4匹じゃないよ。もっといっぱいたくさん、例えば100匹ぐらい出て、その残党がアレ」

あん「はぁ?」

さや「既に弱り切ってるっぽいって転校生が言ってたじゃん」

あん「わかんねえよソレだけじゃ」

さや「ん、まぁ。でもそうじゃないにしてもさ、この群れを呼び込んじゃったのって
   マミさん本人なわけだし。精神的にもキツかったと思うよ?」

あん「……そうなのか?」

さや「他に人いないじゃん」

あん「そっか……そうだな」

あん「守るべき相手もいなくなって、ついには自分が敵を呼び寄せるようになっちまって。
   それでいよいよ参っちまったってわけか」

さや「そういうことだね。
   悲しいけど、マミさん自身が満足ってゆーか、納得できる最後って、他になかったと思う」

さや「ああ、もう自分はいなくなってもいいんだな、ってさ」

あん「……アイツの考えそうなこったな」

さや「あぁ、マミさん! せめてあたしが付いててあげたかったよ!」

あん「QBがいただろQBが」

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865 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:54:57.99 ID:o6NPbP8po

さや「ちなみのちなみに、あたしは原作通りの場所と時間で導かれてます」

あん「だろうな」

さや「え?」

あん「これだよ。十八話の」



> さやか「ありがとう、マミさん……恭す――病院を守ってくれて、本当にありがとう……!」



あん「ぼうやの名前も言い切れないようなヘタレっぷりじゃあ、当然そうなるだろうな」

さや「ぐっ……!」

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866 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:55:57.60 ID:o6NPbP8po



さや「んー……、うん。こんなもんかな」

あん「お、やっと終わりか。長かったな」

さや「長かった長かった。本文のどの話よりも長かった。何回かに分ければよかったかもね」

あん「一回で十分だよ、こんな楽屋ネタ」

さや「確かに」

あん「んじゃ、最後の締めの言葉でもいっとけ」

さや「はーい。……っていってもこればっかりは作者に直接言わせなきゃね。
   というわけで作者ー、出てこーい」

















QB「やあ」

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867 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:56:59.34 ID:o6NPbP8po

さや「……」

あん「……」

QB「うん? どうしたんだい、二人とも」

さや「いやいやいや。あたしは作者を呼んだんだけど、どうしてあんたが出てくんのよ」

QB「彼と君たちを、表立って接触させるわけにはいかないからね」

あん「はぁ?」

QB「最後の締めの言葉ぐらい、作者本人が言うべき――それはそれで外せない礼儀だろう。
   しかしね、それ以上に、二次創作の場で作者とキャラクターを絡ませてしまうというのは
   侵してはいけない禁忌なんだよ」

さや「それは……」

あん「わからんでもないが……でもなんでお前なんだよ」

QB「僕が適任だからさ。誰かの言葉を過不足なしに伝えるという役割においてはね」

さや「むぅ……」

あん「いやしかしだな、ここっていわゆる 『まど界』 だろ? お前が来ちゃだめじゃん」

さや「おおっ、ナイス杏子! そーだそーだー、淫獣は帰れー」

QB[ふむ……」

QB「なら逆に問うけど……」

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868 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:57:54.93 ID:o6NPbP8po

QB「――いつからここが 『まど界』 だと錯覚していた?」

さや「なん……」

あん「だと……」

QB「下手なパロディはさておき、ここが君たちの言う 『導かれた先』 だなんてことは、
   ここまでの説明において一度も書かれてはいないよ」

QB「まぁ確かに、物語世界の 『一つ上の領域』 という点では、鹿目まどかが辿り着いた場所と
   同じではあるけどね」

さや「だ、だったらここはなんだってのよ!?」

QB「それはだから、『後書き』 だろう? 君たち自身が言っていたことじゃないか」

さや「……」

あん「……まぁ、そうだな」

さや「ちくしょう!」

QB「さて、コントはもう終わりでいいかい? 仕事を済ませてしまいたいんだけど」

さや「けっ……。へーへー、さっさとやれ。そして帰れ」

QB「何をそんなに怒っているんだか。……まぁいいや。えーっと――

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869 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 21:59:11.90 ID:o6NPbP8po



   はい、作者です。
   まずは、ここまで長々とお付き合いいただきましたこと、厚く御礼を申し上げます。

   また、感想を下さった皆様、
   意見を下さった皆様、
   労いの言葉を下さった皆様、
   そしてスレを開いて読んでくださった全ての皆様に、心からの感謝を。

   スレ立て当初は十数話程度のつもりだったこの話が、
   800レス、20話の大台に乗ることができたのは、間違いなく皆様のおかげです。
   本当にありがとうございました。

   また、後書き内でも書きましたが、外伝を新たに製作中です。
   公開時期は未定。場所は、恐らくこのスレでは足りませんので、新スレを立てます。
   そちらもお付き合いいただければ幸いです。

   」



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870 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 22:00:20.72 ID:o6NPbP8po

QB「以上だよ」

さや「はいはい、お疲れ」

さや「では最後に、作者の過去作でも晒しておこうかね」



マミ「始まりの魔女……?」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1300/13007/1300799725.html

まどか「お、起こったことをありのままに話すよ!」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1303/13032/1303218731.html

ほむら「ああ! まどに! まどに!」
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1304/13044/1304408355.html



さや「上から順に、『QBの作り方』『ぼくのかんがえたさいしゅうかい』『ほむQ漫才』
   となっております」

あん「タイトルと噛み合ってるのが一つもないな」

さや「一番下は誤字が酷いからまとめサイトで見た方がいいかも。
   テキトーにぐぐってねー」

あん「そんじゃ帰るか」

さや「はーい」

あん「じゃーなー」

さや「ばいばーい」







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871 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2011/09/03(土) 22:01:12.00 ID:o6NPbP8po

ノシ


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872 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/09/03(土) 22:08:28.58 ID:EFnbZvDOo

始まりの魔女もあんただったか…あのSFチックな描写には濡れた覚えが
お疲れ様でした
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873 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2011/09/03(土) 23:08:03.54 ID:SAbK0RmJo

最高のマミキュゥだった、ありがとう
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874 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/03(土) 23:17:19.73 ID:oNDXDt1/o



設定とプロットの練りが凄いよ……
やっぱり>>1さんは一流だよなぁ、俺なんか……足元にも及ばねぇや
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875 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/03(土) 23:17:33.08 ID:jaL+Hjyko
お疲れ様でした。
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876 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/09/04(日) 01:23:20.65 ID:rCETqtglo
読んで損した、敢えて感想を言うなら
VIPとかで書いたほうが信者ばかりじゃなくちゃんと意見言ってもらえるんじゃないかな
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877 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/04(日) 01:50:59.83 ID:qbXxgxWSO
乙!
いいキュウマミだった!

次回作も楽しみにしてるぜ
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878 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東) [sage]:2011/09/04(日) 01:54:41.82 ID:TPkhWv4AO
同じ書き手として羨ましい才能。乙!!
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879 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(三重県) [sage]:2011/09/04(日) 08:48:59.22 ID:njlb7Gyj0
一介の書き手として貴方を目標に頑張りたいと思いました乙
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880 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/04(日) 09:40:37.90 ID:obk3uhG80
レベルEとのクロスの続きが気になってしょうがないんだが
作者は焦らしプレイがお望みなのか

……ふぅ

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881 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岡山県) [sage]:2011/09/04(日) 20:44:56.79 ID:4eCayjbHo
後書き乙でした。
最終話は何度読んでも泣けるわ。

まぁ ほむら「ああ! まどに! まどに!」 を読んだら余韻は台無しでしたけどねww
(声に出して笑っちまった、部屋で良かったよ)
882 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 00:24:32.93 ID:UgO7cwVCo

クオリティ高いスレだった
883 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/05(月) 20:14:07.69 ID:G78dB2RJo
言い訳終わったのか、外伝なんかいらんよ二度と書かないほうがいい
ほむほむ聖人君子すぎわろた、それかよっぽどのアホだ
何かあったら殺しに来るようなのと折り合いなんて普通つけれんわ
叶えられる願いは一つの筈なのにまどかの願いがなんか変なことになってる
元のマミさんはかわいいけどここの巴マミは最悪だった

叩きたければ叩けばいいけど、あの内容で褒め称える内容のレスばかりなのは気持ち悪いのは理解しろよ
884 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2011/09/05(月) 21:08:59.66 ID:2FAV+pvTo
マミさんはかわいい
だけ読んだ

それはともかく大作乙
忘れてる部分もあるから時間が出来たらゆっくり最初から読み直すわ
885 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2011/09/05(月) 23:08:42.97 ID:UDFFlXwpo
>>883
これは非常に高度な暗号文だな
なんやかんやあって解読すると「お疲れ様でした」になる
886 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/05(月) 23:23:28.76 ID:b39TNG8No
まあ読者も色々だからな
読解力もセンスも千差万別
他とは一味違う関西さんだっているわけだ

空気悪くなったのは残念だけど、面白かったよ
こんな場末のSSで「信者」なんて言葉を持ち出されたのは、もはや誉め言葉だろ
お疲れ様
887 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2011/09/06(火) 07:18:41.80 ID:yPFmhqps0
>>883
あいたたたた・・・
888 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/06(火) 14:37:07.31 ID:BShMeyB7o
実に乙
やっぱこういう説明はいいものだ、普通に読んでただけでは全然気づけなかったぜww
889 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) :2011/09/14(水) 13:53:17.76 ID:XrkYUvCUo
読み終わった
本当に最後に用意した言葉って「魔女になるんだよ」だったのかな……
ほむほむの予想が外れてて欲しかった
890 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(高知県) :2011/09/14(水) 13:54:39.09 ID:XrkYUvCUo
読み終わった
本当に最後に用意した言葉って「魔女になるんだよ」だったのかな……
ほむほむの予想が外れてて欲しかった
891 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/17(土) 02:34:25.34 ID:CX4Ej7bOo
なにこれすげー面白かった
乙でした
892 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(福岡県) [sage]:2011/09/17(土) 19:14:10.63 ID:ZP4XY/LC0
>さや「イエス。共依存百合。作者の大好物」

今度飲みに行こうぜ
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