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梓「最後の花火に今年もなったなー」 -
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1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
:2011/06/12(日) 20:59:42.16 ID:kTga5cfAO
【プロローグ】
わたしはこの街ではじめて打上げ花火を見た。けれど、それはわたしにとっては眩しくて、うるさいだけだった。
「花火は小さなお星さまだよー」
あの人はそう言った。確か、二人で夜空を見上げていた時だったはずだ。
あれから、もう4年がたってしまった。
時は過ぎる、誰をそれをとめることはできない。
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
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4日も埋まらないということは @ 2025/07/22(火) 00:48:35.91 ID:b9MtQNrio
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クリスタ「かわいいだけじゃだめですか?」 @ 2025/07/19(土) 08:45:13.17 ID:AK1WfFLxO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752882313/
八幡「新はまち劇場」【俺ガイル】Part1 @ 2025/07/19(土) 06:35:32.67 ID:BGCulupRO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752874532/
【安価・コンマ】力と魔法が支配した世界で【二次創作】 @ 2025/07/18(金) 23:44:57.84 ID:Xc8IdKRvO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752849897/
どかーんと一発 @ 2025/07/18(金) 21:10:10.35 ID:CEsRuBor0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752840609/
冒険者育成学校 @ 2025/07/18(金) 01:36:01.28 ID:PkrtUMnv0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752770160/
たてづらい部!! @ 2025/07/17(木) 23:24:46.15 ID:o3A0TqwG0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752762285/
ゼンレスゾーン淫夢要素ゼロ @ 2025/07/16(水) 18:57:50.86 ID:RQSyJ1Qxo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752659870/
2 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:01:57.02 ID:kTga5cfAO
【第一部】
打上げ花火が上がる音が聞こえる。わたし――中野梓はカーテンを開き、外を眺める。地上から打ち上げられた緑色の閃光が空に向かっていき、そして破裂した。ドーンという音がして、大きな花が空に咲く。それが終わるか、終わらないかのうちに次の花火が上がり、見ている者を飽きさせない。
部屋に置いてあるテレビの天気予報は夏の終わりを告げていたが、この街はいっこうに落ち着く気配を見せず、それどころか異様な盛り上がりを見せていた。
それもそのはず、今日はこの街最大のイベントである花火大会の日だった。その内容といえば、花火を上げ続けるだけの単純なものだったが、花火の量が多く、そこに出店や出し物が加わり、国内でも有数の花火大会となっていた。
3 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:03:46.24 ID:kTga5cfAO
街のほうもこのイベントに力をいれていて、この日は街中の学校や会社が休みになるほどだった。
まあ、わたしには関係ないんだけどね。
わたしは3ヶ月前に勤めていた会社をやめた。理由は大したことじゃない、ただなんとなく嫌になってしまったのだ。そこにあの人の影響があるか、と訊かれればノーとは答えられないだろう。
幸い、わたしはお金を使うことも遊びに行く友達もなかったので、貯金がそれなりにはあった。だけど、それもそう長くはもたないはずだ。結局はまたどこかに勤めなければならない。充電期間なんだ、と純に言ったら笑われた。
4 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:05:11.72 ID:kTga5cfAO
純はこの街で唯一、わたしが気軽に話せる人間だった。わたしは人恋しくなると、純の家に突然押し掛けることにしていた。多分、純にすれば迷惑このうえなかっただろうなとは思う。純はわたしと違い、たくさんの友達がいたし、わたしはその人たちとうまく関わることができなかった。だから、わたしが純の家にいるときはひどく面倒な思いをしたはずだ。
5 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:10:49.62 ID:kTga5cfAO
わたしはそんなことを考えながら、なにとなしに部屋を眺めてみる。アパートの1部屋、わたしの世界のすべてだ。
小さなテレビはどこかの誰かのニュースを淡々と流していて、その横に毎日、狂ったように弾いているギターがある。わたしは部屋の中央に座っていて、リモコンでテレビを切り、ラジカセのスイッチを押す。すぐに『I want you』とボブディランのしわがれた声が流れ出す。少し、やるせない。
6 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:12:53.81 ID:kTga5cfAO
ふと、部屋の片隅に置いてある電話機が目に入り、それと同時に、昨日純から電話がかかってきたことを思い出す。普段電話なんてこないから、よく覚えていた。
『梓!元気にしてる?』その時の純の声はなぜか嬉しそうだった。
「どうしたわけ、そんな嬉しそうにしてさ。なんかいいことがあったの?」
『う〜ん。どうだろ…。どう思う?』
「さあ、知らないよ」わたしは答えた。
7 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:15:22.24 ID:kTga5cfAO
『そんなことよりさあ、梓死なないでよ!』
「はっ?どういう……」
『だって、梓さーなんか仕事も辞めてもううつ病患者みたいになってるじゃん』
「…なってない」
『とにかく!生きてれば絶対いいことあるから』
「わかってるよ、わたし死ぬつもりないし。自分から仕事辞めたくらいだしね」
『うん、その方がよかったよ。梓はもっとビックなことをするやつだって』
「何それ、皮肉?」
『違うって、信用しなさい、わたしが保証する』
「信用できない」
『ひどっ!』
8 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:20:25.67 ID:kTga5cfAO
「まあいいや、バイバイ。はじめてセールス以外の人からかかってきて、電話も喜んでると思う」
『……また会えるよね』
「ぷっ、何それ」わたしはつい吹き出してしまう。
「まるでわたしが引っ越すみたいじゃん」『……うん』
「大丈夫だってー。また会えるよまた会える。自殺もしないしね」
『約束だからね!』
「わかったって。これでもわたし、約束だけは破ったことはないから」
『じゃあね、応援してるから!!』
「うん、一応エールもらっときます」
そう言ってわたしは受話器をおく。わたしは一つ嘘をついた。約束を破ったことはあった。最も大事な約束を―。
9 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:26:18.93 ID:kTga5cfAO
わたしは立ち上がって、外へ出る準備をする。聞こえてくる音だけで、色とりどりの花火が上がるさまを想像できた。
人混みは好きじゃない。だけど、あの人がいるかもしれないという予感がしていた。ただ、その予感はいつもこの時期になると感じるものでもあった。つまり、わたしはあの日からずっと、あの人に会いたいと強く願っていたんだ。
今も、目を閉じればあの人の姿を瞼の裏に思い描くことができた。あの人はあの時と同じ笑顔で……あの時と…あの時と……
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/12(日) 21:27:24.66 ID:/BbihJpIO
まなつのーピークがーさったぁー
11 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:46:31.63 ID:kTga5cfAO
【第二部】
あの人にわたしが会ったのは、四年前、蒸し暑い夏の終わりだった。わたしはその頃は別の町に住んでいて、なんとなく行った散歩帰りにいつもの道をいつものように1人で帰っていた。すると道端でギターを弾いている女の人がいた。それがあの人だったのだ。
わたしはなんとなく興味がわいて、そこへ寄ってみた。そして、見惚れた。ギターを弾く姿やその音色、歌声、表情、どれをとっても美しくて、気づくとわたしは三時間もそこに座って歌を聞いていた。
12 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:47:47.08 ID:kTga5cfAO
「お客さん、今日はもうおわりだよ〜」
お客さん?そこでわたしは気づく、これは商売だったのだ。ちゃんとお金を入れる箱も置いてある。わたしは気が動転していて、こんなまぬけなことを言った。
「学割って効きますかね?」
13 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:49:28.68 ID:kTga5cfAO
あの人はわたしがお金をほとんど持ってないことを聞いても、怒ったり、つかみかかったりはしてこなかった。
「そっか、こんなかわいい子なのに、なかなかやるねぇ」
「えっ、いや、ホントにすいません」
「えへへ〜冗談だってー」
「あの、明日もここにいます?その時に代金は…」
「うーん、しばらくはいると思うけど。でも、気にしないでよっ。別に君みたいな子から、そこまでしてお金取ろうとは思わないしね」
「じゃあねー」とあの人は言って、置いてある寝袋を持って、公園に向かって歩き出す。
14 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:55:44.31 ID:kTga5cfAO
「ちょっと待ってください」気づくとわたしはその人を追いかけて、肩に手をかけていた。
「どーしたの?」
「まさか、その公園で寝るんですか?」
「そーだよ」あの人は何か問題があるの、という顔をしている。
「女の子が1人で危ないですよ」
「大丈夫大丈夫、いつもこうだからね」
「で、でも……わたしが大丈夫じゃないですよ」
そう言って、わたしはその人の腕を引っ張る。
「ちょっ、ちょっと、どこに連れていくのさ」
「わたしの家です。その…代金の分だと思ってくれればいいですよ」
すると、あの人はニコッと笑顔を見せて言った。
「女の子に誘拐される可能性は考えてなかったよ」
つられて、わたしも笑った。
15 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 21:59:39.73 ID:kTga5cfAO
家についた頃には、もうかなり遅い時刻なっていた。というのも、あの人がアイスを食べたいと言い出したからだ。
汚くて恐縮ですが、とわたしはあの人を家に上げる。
「今思ったんだけど、親に怒られない?」「親はいないです。事故で…」
「あっごめん…」
「大丈夫ですよ。わたしが小さいころですし」
「そっか…」
あの人は悲しそうな顔を見せたが、ムードを変えるためか、すぐに明るい声を出した。
16 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:14:55.00 ID:kTga5cfAO
「そうだっ!わたしたちまだお互いの名前も知らなかったね」
そして、指先を自分のほうに向けた。
「わたしは唯っていうんだ」
「唯ですか…いい名前ですね」
「天上天下唯我独尊の唯だよっ」
「長いし、面白くないです」わたしは冷ややかな目を向ける。
「ちょっと、ひどいよ!君には年長者に対する敬意はないのっ?」
「年長者ですか?なんか変です」
「これでも、わたしは国中を渡って歩くミュージシャンだよっ」
「誰も人いなかったじゃないですか」
17 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:21:07.29 ID:kTga5cfAO
「き、今日は調子が…」
そう言って、わざとらしく腹を押さえる。「ホントですか?唯先輩?」
わたしは学校のくせで、先輩と呼んでしまった。
「またひど……って先輩?えへへ〜先輩って呼ばれてるー」
「先輩って呼ばれるのがそんなに嬉しいんですか?」
「だって、わたし学校行けなかったし。だから先輩って呼ばれてみたかったんだあ」「そうですか…」
地域によっては学校がなかったりするという話は聞いたことがある。自分だけが特別不幸なわけではないということだろう。
18 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:23:22.44 ID:kTga5cfAO
「それよりさ、君の名前はー?」
「ああ、わたしですか。わたしは梓っていうんですけど」
「あず…さ、どっかで聞いたような」
唯先輩は少しの間考えるようなそぶりをし、言った。
「あっわかった!あずにゃんだあー」
「あずにゃん?」
19 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:27:19.20 ID:kTga5cfAO
「うん!昔ね飼ってたんだけど、逃げちゃったんだよね〜」
そんな縁起でもない名前、とわたしは言いたかったたが口には出さない。
「また会えたねー」
唯先輩が抱きついてくる。
「いきなりなんですかっ」
唯先輩に抱かれると暖かくて、心地よい。
わたしは人違いだ、と指摘しようと思ったが、気をきかせてこう言った。
「猫違いですよー」
「それを言うなら、犬違いだよっ」
唯先輩はなんでもないように言う。
「それは絶対おかしいです」
普通犬に、にゃんって名前つける?
こうして、わたしと唯先輩は一緒に暮らしはじめた。
20 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:30:31.28 ID:kTga5cfAO
唯先輩がわたしのところにいたのは、たった二週間程度だった。その二週間はあっと言う間に過ぎてしまったが、その間には、よくこれだけの短い時間に入りきるよなあと驚くほどのたくさんの思い出がつまっていた。
21 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:34:40.46 ID:kTga5cfAO
唯先輩はわたしがギターを弾けることを知ると、すぐにわたしを引っ張りだし、一緒に弾かせた。ギターを人前で弾いたことないわたしは最初こそひどく緊張したものの、すぐに慣れてしまった。多分、横で楽しそうにギターを弾く唯先輩を見て、緊張するのが、バカらしくなったのだろう。
唯先輩とギターを弾くのは、他の何より楽しかった。わたしのギターの音と唯先輩のギターの音が重なり、そこに唯先輩の声が加わって、ひとつの歌になる。その感覚がわたしは好きだった。まるで、肩に翼が生えてどこまでも飛んでいける、そんな気がした。
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福岡県)
:2011/06/12(日) 22:35:03.98 ID:3wsWJZl60
続けたまえ
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)
[sage]:2011/06/12(日) 22:47:31.84 ID:coyLd1AAO
唯あず分の補給を……!
24 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:49:00.50 ID:kTga5cfAO
「唯先輩はすごいですよ。こんなに人が集まるなんて」
連日、たくさんの人がわたしたちの演奏を聞きに来てくれた。そう言うと、唯先輩はジーとわたしのほうを見つめて言った。
「いつもはこんなに人来ないんだよーきっとあずにゃんパワーだ」
唯先輩はその言葉の響きを気に入ったのか、あずにゃんパワー♪あずにゃんパワー♪とメロディをつけて繰り返している。
25 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:52:24.79 ID:kTga5cfAO
「そういえば、唯先輩って恋愛とかの曲って作んないんですか?」
わたしは前から少し気になっていたことを尋ねてみる。
唯先輩とわたしは、2人が知っているような有名な曲をいつも演奏しているのだけど、ときには、唯先輩が作ったオリジナルの曲をわたしが練習して、演奏することもあった。
唯先輩の曲はどれも明るい曲で、なんだか変な歌詞だった。
「そーかなあ、よくないかなー?」
「いえ、別にいい曲ですけど…ただ、なんでかなあと」
「だってー、そういうのよくわかんないし、生まれたときから一人だったからかなー」
「ああ」
26 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 22:58:22.71 ID:kTga5cfAO
わたしはこのままだと話が暗いほうに転がりそうだぞ、と思ったのでわざと言った。「だって、‘ごはんはおかず’ですよ」
ぷぷっ、とわたしは笑う。
「わらわないでよっ!あずにゃんのバカぁー」
唯先輩は意味も流れもなく、抱きついてくる。
27 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:03:01.94 ID:kTga5cfAO
思い返せば、唯先輩はことあるごとに抱きついてきた。それはちょうど某大国が何かと理由をつけて、どんどん他の国に軍隊を派遣していくのと似ていた。その理由は朝がきたからだったり、カラスがいたからだったり、なんでもありだった。わたしも口では「やめてくださいよ」なんて言ったりしていたが、嫌な気はしていなかった。
ただ、人前でも変わらず抱きついてくるのは恥ずかしかった。観客なんかも面白がって、口笛を吹いたり、歓声をあげたりするから困る。一度なんかはほっぺたにキスをされたこともあった。さすがにやりすぎだと思う。もう一回してくれないかなーと思ったりもしていたんだけどね。
28 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:06:37.20 ID:kTga5cfAO
唯先輩はよく自分が行った場所の話をしてくれた。わたしがその話を聞くのは大抵、2人で星をみあげながらアイスを食べているときだった。
わたしたちは毎日のようにそうしたのだけれど、唯先輩の話は尽きることなく、それでいて面白かった。例えば、それは、海で演奏していたら蟹に足を挟まれた話だったり、雪が3メートルも積もった町の話だったりした。
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2011/06/12(日) 23:12:21.36 ID:7L7+bVm/o
何年経っても思い出してしまうなー
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2011/06/12(日) 23:16:12.56 ID:gl/7/hbSO
>>22
上から目線で物言うなボケ
>>1
に失礼だろ
31 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:23:36.27 ID:kTga5cfAO
唯先輩はよく自分が行った場所の話をしてくれた。わたしがその話を聞くのは大抵、2人で星をみあげながらアイスを食べているときだった。
わたしたちは毎日のようにそうしたのだけれど、唯先輩の話は尽きることなく、それでいて面白かった。例えば、それは、海で演奏していたら蟹に足を挟まれた話だったり、雪が3メートルも積もった町の話だったりした。
32 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:25:21.83 ID:kTga5cfAO
だから、あの日もわたしたちは唯先輩が最近行った町の話をしていた。
「それでね、その町で花火大会があったんだけど…」
「…花火って何ですか?」
「あずにゃん、花火知らないの?」
「はい、恥ずかしながら」
「夏と花火いえば、花火じゃん!」
唯先輩は「夏は花火、梓のころはさらなり」と枕草子の真似事をする。
33 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:26:57.86 ID:kTga5cfAO
「だから、花火って何ですか」
「花火っていうのはねー」
唯先輩は花火を思い出しているのか、目をつぶり、少しして言った。
「花火はね小さなお星さまだよー」
「…星ですかー」
わたしにはよくイメージできなかったが、夜空にたくさんちりばめられている星を見て、花火もきっときれいなんだろうな、とは思った。そして、なんだか損をしているような気持ちになる。
34 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:29:40.91 ID:kTga5cfAO
「唯先輩はいつから、そうやっていろんなところを旅してるんですか?」
「うーん、よくおぼえてないけど15歳くらいじゃないかな」
「すごいですね」
「そんなことないよ。これがわたしには普通だったし」
うらやましい、とわたしは思う。けれど、もう一人のわたしが「あんたには到底ムリだね、こんな小さな町でさえうまく生きていけないじゃん。びびってるんでしょ?失うのは怖いよね」と言うのも聞こえた。
35 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:30:25.56 ID:kTga5cfAO
「唯先輩はいつから、そうやっていろんなところを旅してるんですか?」
「うーん、よくおぼえてないけど15歳くらいじゃないかな」
「すごいですね」
「そんなことないよ。これがわたしには普通だったし」
うらやましい、とわたしは思う。けれど、もう一人のわたしが「あんたには到底ムリだね、こんな小さな町でさえうまく生きていけないじゃん。びびってるんでしょ?失うのは怖いよね」と言うのも聞こえた。
36 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:31:40.35 ID:kTga5cfAO
「ときどき、ひどく寂しくなるんですよ」わたしはぽつりと話はじめる。
「誰もいなくて、それなのに誰かが消えてしまいそうで……唯先輩にはそういう時、ないですか?」
唯先輩はちょっと首をかしげて言う。
「寂しいと思ったことはないなー。あっ、一度だけあずにゃんが逃げちゃった時は寂しいというか、悲しかった」
「……そうですか」
37 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:33:07.28 ID:kTga5cfAO
「あずにゃん!寂しいならこの唯先輩に抱きついてもいいんだよ」
そう言って、唯先輩は両手を広げる。
「遠慮しときます」
「強がるな、あずにゃんよ」
唯先輩は笑って、わたしの肩に手を置いた。何かが切れたような気がして、気づくとわたしは唯先輩に抱きついている。泣くまいと決めていたのに、涙をおさえることができなかった。
唯先輩は何も言わずに、ただただ、わたしを抱きしめてくれた。
38 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:37:38.83 ID:kTga5cfAO
唯先輩といられる最後の日、朝から唯先輩はどこかに出掛けにいっていた。最後の日くらい一緒にいたかったが、これはこれで自由な唯先輩らしいなとも思った。
唯先輩が帰ってきたのは、結局、夕方になってからだった。
「まったく、どこ行ってたんですか」
「えへへ〜ごめーん。おわびにギュッってしてあげる!」
「お断りですよ」
逃げるようなそぶりをしてみたが、あっけなく捕獲された。
「わたしはあずにゃんがどう逃げようと絶対抱きつくからねっ!!」
「やれやれ」
39 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:39:07.10 ID:kTga5cfAO
「それで、なんで出掛けてたんですか?」
「ああ、それはねー」
唯先輩はわたしの手を引っ張り、外に出た。空はもう暗くなりはじめていて、星もちらほら顔をみせている。
「これを探してたんだ」
そう言って唯先輩が取り出しのは、たくさんのカラフルな棒が入った袋だった。
「ジャーン、花火だよっ」
「これがですか」
40 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:40:40.65 ID:kTga5cfAO
「ほら、開けてみてよ」と唯先輩が言うので、まさか爆発するわけでもないだろうが、わたしはおそるおそる袋を開いた。わたしは中から一本を取り出して言う。
「こんな細いのも花火なんですか」
「線香花火だね!それは最後のお楽しみだよー」
41 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:41:56.89 ID:kTga5cfAO
こんなひょろひょろしてるのが最後のお楽しみなんて花火も大したことないな、と思う。そして、その予想はすぐに外れた。
唯先輩が持っている花火の先端に火をつける。花火は赤っぽい光を発した。唯先輩が手をくるくると回すと、それにあわせて、光も円を描く。しばらく、わたしはそれに見惚れる。
42 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:43:09.44 ID:kTga5cfAO
「ほらっ、あずにゃんもやりなよっ」
そう言って、唯先輩はわたしに花火を手渡し、火をつける。ゆっくりと紙が燃え、やがて黄色い光が飛び出した。少しして、光の色が緑にが変わり、わたしは驚く。
「…きれい」
わたしは呟いていた。
「でしょー花火はきれいなんだよ」
唯先輩はまるで自分が花火を発明したかのように誇らしげだ。
43 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:44:51.10 ID:kTga5cfAO
「でも、星という感じはしないですけど」「ああ、それは打上げ花火のこと。さすがに今日は持ってこれなかったけど」
「でも、この花火もすごくきれいですよ。それにしても花火にもいろんな種類があるんですね」
「そうだよー。じゃあ、これは知ってる?」
わたしが知らないのを知ってて唯先輩は言う。唯先輩がわたしに手渡したのは、小さい輪っかが重なった花火だった。
44 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:46:12.98 ID:kTga5cfAO
「じゃあ、わたしが火をつけたら下に落としてね」
唯先輩が輪っかの先端に火をつける。わたしは言われたとおりに手を放すが、それは下に落ちてそのままだった。
「何もおきな…わあっ!!」
いきなり下の輪っかが光を放ち、暴れだした。
「あはははっ」
「もうっ!なんですか」
わたしは唯先輩のほうをにらむ。
「いやーごめんごめん、あずにゃんがあまりに予想どおりに驚くから」
「うるさいです」
「あれはネズミ花火って言うんだよ。あずにゃん、猫さんだから喜ぶかなーって」
「…あずにゃんは犬じゃないんですか」
「そうだった」
45 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:48:02.69 ID:kTga5cfAO
わたしたちはすごい勢いで花火を消費していった。三本とか一斉に使うから当たり前だ。気づくと、唯先輩が持ってきた4つの袋はほとんど空になっていた。
「あとはお楽しみだけですね」
わたしは紐みたいなそいつをつまみ上げる。
わたしは花火が減っていくにつれ、どんどん寂しさを感じていた。だって、花火が終わったら唯先輩とはさよならだ。
「よーし、やっと線香花火君の出番だよ」唯先輩は線香花火の遊び方をわたしに説明する。
「なんだか地味ですね」
46 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:49:21.99 ID:kTga5cfAO
「やってみれば、わかるって」
線香花火に唯先輩が火をつける。パチパチという音とともに閃光がほとばしる。線香花火だけにだ。
わたしのほうはすぐに落ちてしまったが、唯先輩のは長い間光り続けている。線香花火の光はなんだか切なくてわたしの胸をきゅっと締め付ける。
「あずにゃん弱いねー」
「次です。次」
47 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:51:48.37 ID:kTga5cfAO
結果をいえば、一回しかわたしは唯先輩に勝てなかった。
気づくと、残りの花火は一本になっていた。最後の、一本だ。
「…これで最後ですね」
「うん、最後は一緒に持とうよ」
わたしたちは一緒に1つの花火を持つ。パチパチという音が悲しい。わたしの心を占めているのはすでに切なさだけだった。花火の光がこれまでになく輝いて見える。
皮肉にも最後の線香花火が一番長くもった。それはまるで永遠に続くかのようだった。だけど、それは落ちる。永遠なんて、ない。
「さよなら」
唯先輩が呟く。わたしは聞こえないふりをした。
48 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/12(日) 23:55:41.36 ID:kTga5cfAO
わたしたちはほとんど無言で花火の片付けをした。唯先輩はあらかじめまとめてあった荷物を手にし、ギターケースを肩にかける。
「またいつかここに来るよ」
「ずっと、待ってますよ」
「それともさ……ううん、またね、あずにゃん」
唯先輩は手を振って、そして歩き出す。途中で一度振り向いたのがわたしにも見えた。
わたしは唯先輩が完全に見えなくなってから泣いた。目を閉じると、まだ、最後の線香花火の光が瞼の裏に焼き付いていた。
49 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:05:03.31 ID:GRzMm0CAO
【第三部】
多分あのとき唯先輩は、一緒に来ない?と言おうとしたんじゃないかと、わたしは今では思っている。
いや、あの時だってわかっていた。じゃあなんでわたしは何も言わなかったのか。つまり、それがわたしの弱さだったんだ。人間、誰しも弱さを抱えている。オーケー、正直になろう。わたしは恐れてたんだ。
もう傷つきたくなかった。わたしは自分の孤独な世界を守るだけで精一杯だった。
50 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:06:37.65 ID:GRzMm0CAO
だから、わたしはあの町を引っ越してしまった。別に自分からそれを望んだわけじゃない。あの町ではどうしても就職先を見つけられなかったし、働かなくてはそのうち生きていけなくなっただろう。
でも、あれは唯先輩との約束だった。唯先輩はきっとあの町に来るはずだ。でも、わたしはいない。
それでも、今、わたしは唯先輩に会いたいと願ってしまう。もし、唯先輩に会えたのなら、今度は変われるんじゃないかな、と思う。信じたいと思う。会いたいと思う。
51 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:07:39.29 ID:GRzMm0CAO
わたしは気合いを入れるため大きく息を吸い込み、ゆっくりと玄関のドアを開ける。
そして、見た。
わたしは目の前で起きていることが信じられず、何度何度も目をしばたたかせる。だけど、目の前のそれは消えない。
「唯…先輩?」
52 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:10:47.39 ID:GRzMm0CAO
「あずにゃーん。会いたかったよ」
唯先輩は言うなり、飛び付いてくる。唯先輩はあの時と同じで、暖かく、心地よく、そして懐かしい。
「な、なんで」
わたしは唯先輩に会うのをずっと期待していたくせに、いざその時になると動転して、何がなんだかわからなくなっていた。
ただ、あのことを謝らなくてはいけない、とは思い、なんとか言葉を紡ぐ。
53 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:13:00.81 ID:GRzMm0CAO
「あ、あのときした約束守れなくて……」唯先輩はしぃーというようにわたしの唇に人差し指をあて、代わりに言った。
「わたし、言ったよ。わたしはあずにゃんがどう逃げようと絶対抱きつくからって」
そして唯先輩は、笑って続ける。
「ちょっと時間、かかちゃったけどね」
わたしも、笑う。
54 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:14:00.81 ID:GRzMm0CAO
「大きな花火だね〜」
今、わたしたちはわたしのアパートのベランダにいた。空に咲く花火を見上げている。
「唯先輩、どうしてここにわたしがいるってわかったんですか?」
「えへへ〜実はね、わたしずっとあずにゃんを探してたんだよ」
「恐縮です」
わたしは頭を下げる。
55 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:15:43.72 ID:GRzMm0CAO
「それで、この街で大きな花火大会があるのを聞いて、あずにゃんとした花火を思い出してここに寄ったんだ。それで昨日なんだけど、あのあたりでギターを弾いてたんだ」
唯先輩はその場所を教えようとするが、この街は広い、多分、わたしの行ったことない場所だろう。
「そしたら、なんと!もふもふした髪の子が来て、『唯さんですか?』って聞かれたんだよ。わたしもそんなに有名になっちゃったかあーと思ったね」
「そういうのはいいですから」
「あずにゃん、焦っちゃっダメだよ。それで、『そうだよ』って言ったら、その子がね『梓がよく話をしてますよ』って言うんだよー」
56 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:17:01.22 ID:GRzMm0CAO
「それは純じゃないですか」とわたしは言う。
「へぇー純ちゃんって言うんだ。その純ちゃんがね『梓に会ってください』って頭を下げるから、わたしもよくわかんないから、とりあえず『わかったよっ』って答えたんだ。あずにゃんを探してたわけだし」
「それで、どうしたんですか?」
「純ちゃんが紙に住所と地図みたいなのを書いて、『梓をよろしくおねがいします』って、それを渡してくれたんだ。」
そこで、唯先輩は一呼吸おいて続ける。
57 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:20:18.80 ID:GRzMm0CAO
「それと、純ちゃんからの伝言を頼まれたんだ。『これからもよろしく』だって」
わたしは純がわたしのことを迷惑に思ってるとばかり思っていた。けれど、違った。わたしはバカだ、と思う。
唯先輩はわたしのほうを見て、ニコニコと笑っている。
「あのさ、ずっと言いたかったことがあるんだ」
「何ですか?」
「一緒に来ない?」
「もちろん…行きますよ」
58 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:21:35.66 ID:GRzMm0CAO
わたしは部屋に行き、旅に出るための準備をととのえる。その間、唯先輩はギターを弾いて、新曲だという曲をいくつか歌ってくれた。わたしはそこで、あることに気づいた。
「あれっ、そういう曲も歌うことにしたんですか?」
「…わたし、あずにゃんに会えなくなってすごく、すごく寂しかった。寂しくなったのなんてはじめてで、どうしたらいいかわかんなかったよ」
「…唯先輩」
59 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:23:14.67 ID:GRzMm0CAO
「そしたら、どんな歌作っててもさあずにゃんの顔が浮かんでくるんだよ。だから、こんな曲になっちゃった」
わたしは顔まで真っ赤になって、照れくさいから、こう言った。
「あんまりうまくないですね」
「あずにゃんのバカぁー」
そう言って唯先輩が抱きついてくる。
60 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:25:00.57 ID:GRzMm0CAO
わたしは準備を終え、荷物を持ち、ギターを背負って、部屋を出た。外だと花火の音がよりいっそう、大きく聞こえた。先に出ていた唯先輩がこちらに向かってくる。
「やり残したことはない?」
「はい、大丈夫です」
「そっかあー」
61 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:26:44.79 ID:GRzMm0CAO
「あの、でも、またここに戻ってくることがあってもいいですか?」
「もっちろん!わたしも純ちゃんと友達になりたいな。あのもふもふはかわいい」
「そんなセンスしてるから、犬に、にゃん、とか平気でつけるんですよ」
「それは…あずにゃんはにゃんって鳴いたんだよ」
わたしたちは声を合わせて笑った。
62 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:28:00.42 ID:GRzMm0CAO
「じゃあ、そろそろ行こうか?」
「そうですね、行きましょう」
そう、行かなくちゃならないんだ。
わたしの決心が揺らぐ前に、最後の花火が終わる前に。
夜空にはたくさんの花火が、まるで星のように輝いていた。
63 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:31:12.62 ID:GRzMm0CAO
【エピローグ】
わたしたちは、すでに街から出て、街から、ずいぶん離れたところまできていた。
花火大会はクライマックスをむかえていて、少し遠いがわたしたちにも、たくさんの花火が上がるのが見える。
わたしたちは立ち止まって、その花火を眺めていた。すると、それまで上がっていた花火が止み、この花火が最後だな、とわたしは思う。
最後の花火は空を横切るように一直線に上がっていき、そして、消える。
64 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:33:13.06 ID:GRzMm0CAO
「あれっ」
わたしはつい、声を出している。
「あー、消えちゃったねー」
不発だったのかなとは思ったけど、なんとなく聞いている。
「どうしたんですかね」
「うーん、宇宙に行ったんじゃないかな」「宇宙?」
「うん!わたしたちには見えないけど、今も宇宙を飛んでるんだよっ」
唯先輩は自信たっぷりに言う。
65 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:35:18.08 ID:GRzMm0CAO
わたしは一直線に宇宙の闇に向かっていく花火の姿を想像する。まるで今のわたしみたいだ。
すると、もう一人の自分が馬鹿じゃないの、と言ってくるのに気づく。
「だいたいさ、あんた、このままうまくいくと思うわけ?みんな花火みたいにすぐに消えちゃうよ」
わたしは、冷ややかな目を向けてくるそいつの肩に手を置いて言った。
「強がるな、あずにゃんよ」
66 :
名無しNIPPER
[sage]:2011/06/13(月) 00:38:25.80 ID:GRzMm0CAO
わたしはもう一度、真っ暗な宇宙に向かって飛んでいく、打上げ花火について考える。きっと、それは楽なことじゃない。
けれど、わたしたちは二人だ。
満天の星空の下を、わたしと唯先輩は並んで、二人で歩いていく。
67 :
名無しNIPPER
:2011/06/13(月) 00:45:22.09 ID:GRzMm0CAO
これでおしまいです。
読んでくださった皆さんありがとうございます。
参考に
http://www.youtube.com/watch?v=9Q677iWDdXY
フジファブリックていうバンドの『若者のすべて』という曲です。
知っている人がいて嬉しかったー
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西・北陸)
[sage]:2011/06/13(月) 00:47:17.65 ID:stygS2kAO
乙
良かったよ
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2011/06/13(月) 21:44:44.63 ID:Z9p5++rAO
乙!
面白かった!
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2011/06/14(火) 16:47:26.29 ID:B/rX6YWE0
乙乙
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