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ブラスター・ブレード「我が手を取れ、恐れるな」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 02:56:35.49 ID:8NvcNBcc0
ヴァンガードのユニットがそれぞれ扱ってるヴァンガードのキャラのペルソナっぽくなってる話

カードゲームはしません。ヴァンガードでリアルファイト(?)はします

ペルソナって単語はほぼ出ません。ペルソナのキャラも出ません

クロスオーバーでペルソナとは関係ない某作品のキャラ達がちょろっと出る予定

話の元はペルソナ2罪罰を参考にしてます

上記の理由で設定・展開が色々カオス

SS投下初めてなので色々至らない点や文章が読みにくかったりするかもしれません
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パンティ「ガーターベルト大丈夫かー」ストッキング「血が止まらないわー」 @ 2025/07/26(土) 02:27:49.65 ID:OmgbeFOdO
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うんち @ 2025/07/25(金) 23:18:36.55 ID:tsEvWZe2o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1753453115/

天龍「イキスギィ!イクイク!ンアーッ!枕がデカすぎる!」加賀「やめなさい」 @ 2025/07/25(金) 19:40:58.85 ID:LGalAgLLo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1753440058/

(安価&コンマ)コードギアス 薄明の者 @ 2025/07/23(水) 22:31:03.79 ID:7O97aVFy0
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ご褒美にはチョコレート @ 2025/07/23(水) 21:57:52.36 ID:DdkKPHpQ0
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ビーノどっさりパック @ 2025/07/23(水) 20:04:42.82 ID:dVhNYsSZ0
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コナン「博士からメールが来たぞ」 @ 2025/07/23(水) 00:53:42.50 ID:QmEFnDwEO
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4日も埋まらないということは @ 2025/07/22(火) 00:48:35.91 ID:b9MtQNrio
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2 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 02:58:03.05 ID:8NvcNBcc0
「――チ、アイチ!」

「……え?」

「どうしたんだよ、アイチ。ぼーっとして」

「HRとっくに終わってみんな帰っちまったぜ?」

「えっ、あっ、あれ?」


 ふと我に帰る。つい先刻、本日最後の授業が終わったと思っていたら、気付かぬうちにHRまで終わっていたらしい。

 今、この教室にいるにはもう友人の森川と井崎、そしてアイチの三人だけのようだった。


「さっさと俺達も帰ろうぜ」

「ごめん。今日はこの後マーク先生のところに行かなきゃだめなんだ」

「あっ、そっか。今日の二者面談アイチの番だったんだな」

「うん。遅くなるといけないから森川くんと井崎くんは先に帰ってて」

「それじゃあしょーがねぇな」

「また明日な !」


 そうして森川と井崎も教室から出ていってしまうとアイチ一人の静かな空間が出来てしまう。


(それにしても――)


 鞄の中にまだしまい込んで無かった残りの教科書やノートを詰めながらアイチはふと考えを巡らせる。
 
が、すぐに頭を横に大きく振って席を勢いよく立ち上がった。


(考え事する前に先生のところ行かないと)


 ただでさえさっきまで呆けていたせいで時間をとってしまったのだ。早く進路指導室まで行かなければとアイチは教室を出て足早に廊下を歩いていく。
3 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 02:59:49.50 ID:8NvcNBcc0
 とはいっても、進路指導室はアイチのクラスからそう遠い位置にある訳ではない。
 一分もかからないうちに辿り着くと、その扉をコンコンと二度ノックする。中にはもう先生がいる筈だ。

「どうぞ」

「失礼します。遅くなってすみませんでした」

「イエイエ。ささっ、そこの椅子に掛けて下サイ」


 聞き慣れた少し怪しげな日本語と共に迎えてくれた外人教師はアイチに座るよう促す。

 ぺこりと一度頭を下げて、アイチは言われるままに先生と机を挟んだ向かい側のパイプ椅子へと控えめに腰を下ろした。


「さて、さっそく本題に入りましょう。まずは先導くんの今の成績についてからですが――」


 こうしてアイチの二者面談は始まった。

 中学三年生――受験生であるアイチにとって、この面談は大事な意味をもつものであった。
 今は教師と二人だけだが、また後に親を交えた面談も待っている。
 今日はその前の軽い打ち合わせみたいなものだろうか。
 親が自分にどういう進路を望んでいるのかアイチはまだよく理解していないのだが、自分の希望している進路をここではっきりと伝えておかなくてはならない。しかし。


「――それで、先導くんはもう行きたい学校は決まっていマスか?」

「いえ、それが……まだ……なんです」

「そうですか……まだ焦る時期ではないと言いたいところですが、具体的な目標がなければ対策の立てようがないですからね。うかうかしている訳にもいかないですよ?」

「はい……」

「まあ、先導くんの今の成績ならどこの学校でも問題は無さそうですが」

「あ、ありがとうございます」


 アイチの成績が記されているプリントに目を配らせながら先生は言う。
 だが、そこから一息置いて、声色に少し変化が現れた。
4 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:01:34.62 ID:8NvcNBcc0
「その事については特に問題はありまセン。ただ先導くん、最近あまり授業に集中出来ていないようですね?」

「え、……」

「ぼーっとしている事が多いように見えます。……何か悩み事でも?」

「あ、あの……」


 そう問われるとアイチは急に俯いてしまい膝の上で両拳を固く握りながら動かなくなった。
 少しの間そのまま沈黙が続く。
 アイチの口が金魚のように時折小さくぱくぱくと動いているが、そこから漏れているのは空気だけだった。
 それを見かねてか話を切り出した先生自らがそれを終わらせるべく言葉を続ける。


「なにか相談したい事があったら何時でもききますからね」
「……はい」
「それじゃあ、今日はもういいですよ。気をつけて帰って下サイ」
「ありがとうございました。……失礼します 」


 アイチはここに来た時と同じようにまたぺこりと頭を下げて、先生と視線を合わせられないまま進路指導室を後にし下駄箱へととぼとぼ向かっていく。
 そして小さく溜息を吐くのだった。


(先生に相談しても良かったかな。でも……)

 頭の中で先生に言われた事を思いだしているとまた自然と溜息がこぼれていた。
5 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:04:26.76 ID:8NvcNBcc0
(自分でもよくわからないんだよね。なんなんだろうな、あれ……)


 アイチを悩ませているもの。教室でぼーっとしていた原因。最近授業に集中出来ない理由。
 それは全てある『声』の所為にあった。

 そのある『声』はある日突然聞こえてくるようになった。
 頻度はそう多くはないのだが、朝、昼、晩、平日、休日と時間を問わずにふとした瞬間に何者かの『声』を耳にするのだ。

 初めのうちは家族や友達の誰かに自分が呼ばれているのかと思っていた。
しかし、傍にいる人間に声をかけたか尋ねてみても違うと言うし、一人きりの時でもその声を聞く事があったのだ。
 そしてそれは、どうにも今までに聞いた事のあるような気がしてならない。
 それがまたアイチの頭を悩ませる原因だった。

 そしてさらに困った事に、アイチは現状でその『声』をただ漠然と『声』だとしか認識出来ていない。
 つまり何を言われているのかが解らないのだ。
 それは、とても遠くから語りかけられているような、日本語しか知らないのに英語やドイツ語で喋られているような、一概には現せない不思議な感覚でとてももやもやしているという訳だ。


(疲れているのかな……)


 三年生になってから塾の時間も増えた。受験の時期も、そう遠い事ではない。それなのにきちんとした目標も持てていない。
 色々な事が積もりに積もってストレスになっているから幻聴なんか聞いてしまうのかもしれない。

 色々な考えが頭の中を支配しているが、突然アイチはぴたりと足を止めた。
 そしてぐるりと辺りを見回す。


「ここ、どこだろう……」


 どうやら考え事のせいで周囲に注意がいかず、何時もの通学路から大きく離れた場所を歩いてしまっていたようだ。かなり重症である。
 人通りが少ない訳ではなく、どことなく見た覚えのある景色のような気もしたが、自宅へ帰るにはこちらの方向とは別だという事だけははっきりと解るので引き返そうとしたその時。

 ふと、目の前にある店の中へと視線が行く。それに合わせてアイチの動きも止まる。
 その先には店のウィンドウを隔ててアイチの友人達二人の姿があった。
6 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:05:55.16 ID:8NvcNBcc0
「森川くんと井崎くん……?」


 学校帰りの寄り道だろうか。二人ともまだ制服を着ているのがぼんやり確認出来る。
 二人ともこんな場所で何をしているのだろう。
 アイチはその場から一歩下がるとその店の看板を見つめて声に出して読み上げる。

「カードキャピタル……」


“――――”


「ッ……!?」


 その瞬間、アイチはまた正体不明の『声』を聞いた。
 それは今までの中で一番強烈で頭の中に直接響くようなものだったが、それにも関わらずはっきりとした言葉では伝わってこない事に変わりは無かった。
 軽い頭痛を覚え、一瞬立ち眩みしそうになるがなんとか体を支えると、アイチはそのまま店の自動ドアを開けて店の中に入っていった。
 まるでその『声』に誘われるように……。
7 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:08:22.12 ID:8NvcNBcc0
「いらっしゃい」


 次にアイチが聞いた声は間違いなく人間の声だった。落ち着いた女性の声。
 声のする方向にはレジカウンターがあり、そこの店番なのか髪の長い女性が座っている。
 そして何故かカウンターの上には猫が小さく丸まって寛いでいるのが見えた。

 女性は大人っぽく見える容姿だったが、エプロン下のブラウスが何処かの学校の制服のようで少なくとも学生である事がうかがえた。
 アイチよりひとつふたつ年上と言ったところだろうか。
 女性は少しの間、アイチの顔を見つめていたのだが、視線をすぐに落としてしまう。
 どうやら本を読んでいたらしい。


「初めて見る顔だね」


 ぱらりとページをめくりながら女性が静かに呟いた。
 アイチは自分の事を言われているのだというのに気付くのに遅れて、返事に一瞬戸惑ってしまっていた。


「あっ、あのっ、はい」
「アンタも噂聞いてやってきたの?」
「噂?」
「そっ、まあ色々あるけど……たとえば、奥にいる連中が聞いたのみたいな」


 奥。そう言われて自然と向いたその場所を見て、アイチはようやくこの店がなんの店なのか理解する事が出来た。
 テーブルが置かれたスペースに向かい合って椅子に座る二人の人間とそれを立って囲む数人の人間。
 テーブルの上には小さな束が二つ。
 そしてこの店の名前という情報がアイチに答えを導いてくれる。


「そっか、カードショップか!」
「何? アンタ知らないで入ってきたの?」


 店員の女性に鋭い視線を向けられる。それ以上は口にしなかったが、『ただの冷やかしならとっとと帰りな』という意志表示が色濃く映っていた。
 そんな女性に気まずそうに苦笑を浮かべるアイチだったが、テーブルを囲む人間の中心から聞こえてきた大声でびくっと体を跳ねさせた。
8 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:09:50.73 ID:8NvcNBcc0
「だあぁぁぁーっ! 負けたああぁー!」


 それはアイチのよく知る声だった。


「も、森川くん!」


 どうやら今カードで対戦していた人間の一人が森川だったようだ。そしてその後ろには様子を観戦していたのか井崎が立っていた。
 そしてそもそもこの店に入る最初のきっかけはこの二人だった事もアイチは思い出した。

「お、アイチじゃん」
「井崎くんも。二人ともこんなところに遊びに来たりしてたんだね」
「……こんなところ?」


 また店員の鋭い視線がアイチに刺さる。一瞬焦るが、その空気を壊すように森川が再び叫んだ。


「噂の野郎に会う前にこんなクソガキに負けるなんてえぇぇぇ!」
「井崎くん、その噂っていうのは一体なんの話なの?」
「ああ、それがさ……」
「あれ……エミさんのお兄さん?」
「え?」


 急に話を遮ったのは森川でも井崎でもましてやアイチでもなかった。
 森川が『クソガキ』と呼んださっきまで森川と対戦していた少年だった。しかし。


「えっと、君は……」
9 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:11:27.17 ID:8NvcNBcc0
 エミというのはアイチの妹の事だ。
 この少年はどうやら妹とアイチの事を知っているようだったが、アイチの方は……


(えっと……会った事はない筈、なんだけど、でも……)
「なんだよ、アイチ。このクソガキと知り合いだったのかぁ?」
「クソガキじゃねぇ! 俺には葛木カムイって名前があんだよ!」
「カムイくん……そっか、エミが言ってたカムイくんって君の事なんだね」
「えっ! エミさんがお兄さんに俺の事を!? 嬉しいなあ、ウエヘヘヘ……」
(確か最近変な男の子と知り合いになったって言ってたけど)
「そこ、うるさい!」


 またも店員に一喝されると流石に騒いでいた森川達も黙りギャラリーの人間も散り散りになっていき、殆どの人間が退店して残ったのは店員と猫を除けばアイチ、森川、井崎、カムイの四人だけになってしまった。
10 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:13:12.61 ID:8NvcNBcc0
「改めまして。葛木カムイです。お兄さんのお話は妹さんから聞いてます。エミさんとはその……なかっ、仲良くさせて貰って……貰って……」


 先程森川に怒鳴っていたような態度とは真逆に礼儀正しく挨拶するカムイであったが、それはエミの話題になった途端また急変してしまう。
 顔を赤くして体を妙にくねくねさせている姿はどことなく気持ち悪かったが、その原因が解らないからか、それともその態度自体に気付いていないのか華麗にスルーしてアイチも自己紹介をする。


「先導アイチです。エミがいつもお世話になってます」

「そっそんなお世話なんてっ! むしろこっちがというか、一生お世話されたいというかっ……!」

「あの、それで、噂話っていうのは一体……?」

「え? ああ……それがですね、この店に最近凄腕のヴァンガードファイターが現れるようになったって噂がまことおしとやかに囁かれてまして」

「まことおしとやか?」

「えと、まことしやか、かな?」

「そうそう、それ! で、本当かどうか確かめにやってきたんだけど、いないうえにそこの奴が絡んできて……」


 ジロリと森川を見るカムイ。
 それにつられるように睨み返す森川。
 小学生相手に大人気ないぞーと苦笑する井崎。
 その輪の中で一人、アイチは不思議そうに首を傾げた。
11 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:14:44.88 ID:8NvcNBcc0
「えーっと……ヴァンガードファイターっていうのは……?」

「ヴァンガードをやる人間の事ですよ。お兄さんは知りませんか? ヴァンガードってカードゲーム」


 そう言ってカムイが自分の持っているカードの束…デッキをアイチに見せつける。


「学校だとこういうのやってる奴あんま見かけないもんなあ」

「俺様は生まれもってのヴァンガードファイターだからずっと昔からやってるぜ!」

「ヴァンガード……」


“――お前ボロボロだなあ”


「……っ!?」

「ん、どうしたアイチ?」

「お兄さん?」

「いやっ、なんでもないよ……!」


 一瞬、ほんの一瞬だけ、妙な映像がアイチの脳裏に浮かんだ。
 ヴァンガードという単語を聞いた瞬間に。

「……ヴァンガード。僕はそんなもの知らない、筈」


 今まで勉強ばかりでカードゲームなんてものに触れる機会はなかった。なかった、筈。

(でもなんだろう……この感じ。頭になにか引っかかるような)

「アイチなんか顔色悪いぞ、大丈夫か?」

「う、うん……」


 井崎の心配する言葉にアイチは返事をするのだが、心ここにあらずというような感じだった。

 さっきから妙な感覚に襲われてばかりでアイチは混乱していた。

 今日はもう帰ってゆっくり休んだ方がいいかもしれない。

 そう考えていると、店のドアの開く音と店員のいらっしゃいという声が聞こえてきた。
12 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:16:13.72 ID:8NvcNBcc0
「ちーっす」
「こいつの連れだよ、アンタ達の噂している例の奴は」
「ん? 何?」


 状況が解らず首を傾げる新たな来店者だったが、どうやら今までの話を聞いていたらしい店員のその言葉に真っ先に食いついたのは当然のようにカムイだった。


「えっマジっどこっ……って、こいつ一人じゃん」

「だから何の話だよ?」

「最近この店で無双してるアンタの連れの事だよ。……なんだ、今日は一緒じゃないの?」

「あーアイツね。今日は来てねぇよ。学校にもな。つーか、もうこの店に来ないかも」

「ええー!? なんでだよ! 詳しく聞かせろよ!」

「……なんなの、こいつら」

「さあ?」


 事情がまだよく飲み込めていない来店者に店員は興味なさそうにそっけなく返事をする。


「まあ、別に隠す理由もないからいいけどな。とりあえず自己紹介しとくか。俺は三和。後江高校の一年な」


 来店者――三和が自己紹介をすると他も続けて簡単に自己紹介をする。

 そして本題は続いた。
13 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:17:33.01 ID:8NvcNBcc0
「で、お前らが探してる奴は俺と同じ高校の奴なんだけど、なんか最近様子がおかしくてさ」

「様子がおかしい?」

「そ。この店に初めて来たのは二週間くらい前の筈なんだけど、それから毎日通い詰めるようになったと思ったら、ついこの間店を出た後なんだか急に“こんなんじゃない”とか言い出して」

「なんだそりゃ?」

「訳わかんねぇだろ? だから俺も突然どうしたんだよって聞いてみたんだけどだんまりで遠く見つめちゃってさ」

「もしや厨二病とかいうやつか……」

「ははっ、そうかもしんねぇなー。なんかここ最近で急に雰囲気変わったし」

「それでその人……ええと」

「……あー、名前か。そういや言ってなかったな。ソイツの名前――」


 と、三和が喋ろうとした瞬間だった。



 外から今まで聞いた事もないような大きな音が響いたのは。

14 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/06(火) 03:19:26.53 ID:8NvcNBcc0
今日はここまでです
明日か明後日またきます
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/06(火) 16:10:33.96 ID:kENi4zmDO
ヴァンガードSSとか俺得。支援。
16 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/06(火) 23:53:45.41 ID:tsrtmo5U0
 何かと何かが衝突したようなその音とほぼ同時に店内がミシミシと音を立てて揺れる。


「なっ、なんだ!? 地震か!?」


 その衝撃に怯え森川や井崎などはすぐにテーブルの下へと身を隠してしまう。
 それからほどなくして聞こえてきたのは悲鳴。店内ではなく外からだった。


「っ!? この声……もしかしてシンさん?」


 最初に反応したのは店員とその近くにいる猫だった。
 猫は先程までカウンターでじっと丸くなっていた筈なのに、今のただならぬ雰囲気に興奮しているようで急に店の外へと飛び出していってしまう。
 それを追いかけるように店員も走って外へ行ってしまった。
 ばさりと床に落ちた本の音で、その場に固まってしまっていたアイチとカムイははっとなる。


「あっ……店員さん!?」

「さっきの悲鳴も、この店の人だ! 何があったんだ!?」

 猫と店員の姿が消えてしまった事でアイチ達もいてもたってもいられなくなる。
 「待て」という三和の言葉も聞かずに、彼らもすぐに状況を確認したくて不用意にも彼女らについていってしまった。
 そこに広がる光景が想像を絶するものだとも知らずに。
17 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/06(火) 23:56:24.72 ID:tsrtmo5U0
「何……これ……」


 現場はカードキャピタル脇の路地、ベンチが一つ置かれている休憩スペースがある場所だった。
 そこで目にしたのは、放りだされたダンボール箱、その中から零れ散乱しているカードのパック、その傍で倒れている男性の姿、そして……


「シンさん!」

「ミ、ミサキ……来たらダメです! 早く店の中のお客と一緒に避難を……!」

「で、でも……これって何……? どういう事なのっ…!?」


 店員――ミサキはその場を見てますます混乱していた。
 足元にいる猫は毛を逆立てて、シンと呼ばれた男性の倒れている場所の更に奥を睨んでいる。


「店員のお姉さん! 一体どうし……た……」


 次にその場に駆け付けたのは足の速いカムイだった。
 そして、ミサキ同様に、現状を理解出来るどころかただその場を見て呆然と立ち尽くしてしまう。


「カムイくん待って! 一人じゃ危険だよ! ……カムイくん?」


 そして遅れてやってきたアイチはまずそんなカムイの様子に疑問を抱く。
 よく見るとカムイの体が小刻みに揺れている。震えている。
 そのカムイの腕がゆっくり上がると、前方へと人差し指が伸びる。
 それと同時に、その先へとアイチは顔を傾けた。
18 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/06(火) 23:58:47.53 ID:tsrtmo5U0
 アイチがまず見たものはミサキと同じく散らかったダンボールとその中身と倒れる男性だった。
 そして、倒れている男性の近く……アイチ達がさっきまでいた店の壁に妙な違和感を覚えてその一点を見つめた。
 壁に何かが生えている。いや、……埋まっている? 刺さっている?
 アイチはそれがなんなのか理解するまでに少しの時間を要する事になった。 


「あれ……ボール?」


 アイチがそれをボールだと思うまでに時間をかけたのには理由がいくつかあった。
 まずそれは、形が普通の球状をしていなかった。
 楕円の象ったそれは、サッカーやバレーで使用するようなものではなくどちらかというとアメフトボールに近い物だった。
 だが、それにしても少しおかしい。
 そのボールの色は緑色をしていたのだが、何故か少し発光しているように見えたのだ。
 それに加えて何故か刺のようなものまで周りにいくつもついている。
 ああ、それなら仮に壁にあるものがボールだったとしても刺さっているのに納得がいくかも。
 ……うん、でも、壁にヒビが入る程の力で投げられて、刺さってるって……あれ……?

 そう、アイチもまた、現実を受け止め切れずにいたのだ。
 そのとどめが、壁に刺さったボールを手にした主の姿だった。
19 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/07(水) 00:01:59.96 ID:yN0xnQlX0
 この場に更に人がいただなんてアイチはこの時まで気付かなかった。
 暗がりの奥から、それは全部で三人分の影が、唐突に現れる。
 明るみに出てきた人物達はこの場に随分と不似合いな格好をしていたが、そのボールを手にするにはとても相応しい出で立ちだった。
 それがまたなんとも奇妙な空間を作り上げている。

 その人物達はラグビー選手の恰好をしていた。
 何故カードショップの隣でラグビーの練習を?
 ここには十分な広さのグラウンドもなにもないのに……。

 ……いや、そもそも『人物達』という形容があっているのかどうかさえアイチには解らなかった。
 だって、目の前のそれらは自分達と同じような肌の色を持っていないのだ。
 両目は赤く輝き、ボールと同様の緑色の皮膚に、特徴的な形の鼻をしている。
 アイチの持つ知識の中で『それ』を的確に表現しようとするなら、ファンタジーの世界に出てくるゴブリンというのが一番正しいのかもしれない。
 しかし、そんなものが実在するだなんてアイチには信じられなかった。


「あ、あれ、もしかして『スパイクブラザーズ突撃部隊』じゃ……でも、なんで……」


 震えた声でカムイがそう呟く。
 しかし、その問いに答えるものはここには存在せず、そのかわりにいたのはおよそ人には見えない怪物がボールを構える姿だった。
20 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/07(水) 00:04:37.35 ID:yN0xnQlX0
「え……」
「なっ……嘘だろ……!?」
「アンタ達、早く逃げて……!」


 アイチ達が反応するよりも早く、怪物が手に持つボールを彼らに向けて猛スピードで投げつける。
 ああ、やられる。そう感じた刹那。


“――を――れ”

「!?」


 強い鼓動共に、アイチはあの『声』を聞いた。
 はっきりとその言葉を聞いた。


“我が手を取れ、恐れるな―!”

(何……? 一体、誰なの……!?)

“我は汝、汝は我。我は汝の心の海より出でしもの―”

 体が、胸が、燃えるように熱い。
 何かが自分の身から浮き出てくるような感覚がアイチを襲う。そして『声』は訴える。

“さあ、我の名を呼べ、先導者よ。我が名は―”

「立ち上がれ、僕の分身……ブラスター・ブレード……!」
21 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/07(水) 00:08:58.71 ID:yN0xnQlX0
 その掛け声と共にアイチの体からアイチであってアイチでない何者かが具現する。
 それは白い甲冑を身に纏った剣士。
 アイチの頭上に浮き上がるそれは、高速でアイチ達に向かっていた筈のボールを瞬く間に真っ二つにしていた。
 そこに一同の視線が集まるのは無理もない話だった。


「お兄さん、それは……!」
「アンタ、一体……」


 カムイとミサキはそれ以上言葉を失う。
 それは、言葉が見つからないというのも勿論あったが……。
 何よりも、カムイとミサキもアイチとはまた別の『声』を聞いて驚愕していたからに他ならなかった。


「え……アシュラ・カイザー……?」
「CEO……アマテラス……」


 そしてそれらはまた顕著する。彼らに導かれて。

 アマテラスの持つ鏡の光と、アシュラ・カイザーの攻撃が、目の前の三匹の化け物を粉砕するのにそう時間はかからなかった。


 そして、突如眩い光に包まれる。
 何もかもが唐突だった。
 だから、意識が体を離れ、どこか別の場所へと引っ張られていくのを拒む術を、彼らが持つ筈は無かった……。
22 : ◆kJCm.rf/1E [sage saga]:2011/09/07(水) 00:12:13.01 ID:yN0xnQlX0
時間がないのでここまでです
書きためはしてあるので時間がある時に投下しにきます
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/07(水) 13:05:31.21 ID:ZKQavSgBo
これは俺得スレ
期待してる
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2011/09/07(水) 21:15:26.69 ID:UCzgiwcMo
いいイメージだ
期待
25 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:27:50.66 ID:Qb7+wUrQ0
 ――まるで海の中を泳いでいるようだった。
 足が地につかない。
 それどころか、自分の姿形、その存在がやけにぼんやりとしていて、何かの拍子に吹き飛んでしまいそうな感じさえする。
 上手く動けない。ただ流れに身を任せてそこを漂っているだけ。
 けれど不思議と息苦しくはない。むしろとても心地よい。
 このまま目を閉じて、何時までもこうしていたい気分になってくる。
 どんどん意識が遠くなる。消えていく……。





“――まだ出来ないのか?”

(……え……誰……?)

“思い描け、自分自身を。さあ――”




――イメージしろ――!

26 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:29:40.89 ID:Qb7+wUrQ0
「気分はいかがかしら? 先導アイチくん」

「……!?」


 名を呼ばれて反射的に目を見開いたアイチがいた場所はカードキャピタルでもその外でもなく、不思議な青い部屋の中だった。
 両隣にはミサキとカムイもいる。

 そして三人の目前には一人の女性が静かに佇んでいた。


「っ、シンさん……シンさんは何処!?」

「落ち着いて、戸倉ミサキさん。葛木カムイくんも、私の話を聞いて欲しいの」


 その声を聞いて自分の名を呼んだのはこの女性なのだとアイチは確信する。


「あの、どうして僕たちの名前を?」
「覚えてないのかしら、あなた達自身が教えてくれたのよ」
「俺にはそんな覚えないけど……」
「なんなの、アンタ。私達をどうしようっていうの? ここは一体何処なの?」


 鋭く睨みながらミサキは向かい側の女性に詰め寄る。
 女性はそんなミサキに物怖じする事なく落ち着いたままゆっくりと口を開いた。


「あなた達の質問に全部答えるには今は時間が足りないみたい。だから許す限りで簡単な説明だけするわ」


「ようこそ、意識と無意識の狭間へ」
27 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:32:32.08 ID:Qb7+wUrQ0
「意識と無意識の狭間……?」

「そう。私はここの番人でスイコと申します。以後お見知りおきを」


 そう言って、スイコと名乗る女性は深々と頭を下げる。


「あなた達とこうしてここで会うのは二度目……いえ、もしかしたらそれ以上の可能性もあるけれど、それも覚えていないのかしら」

「いえ……」

「全ッ然」

「私も知らないよ」

「そう。でも、さっきまであった事は流石に覚えているわよね?」

「さっきまでの事って」

「あれは夢じゃないっていうの?」


 路地で妙な怪物が現れ襲われた事。
 そこに“何か”が現れまるでアイチ達を守るようにそれを蹴散らした事。


「ええ。あれは間違いなく現実に起こった事よ。そしてこの空間も私の存在も夢ではないわ」


 神妙な面持ちでスイコは頷く。
 だからと言って、はいそうですかとすぐに返事をする事は三人には出来なかった。


「でもあれってヴァンガードのカードに描かれてるユニットじゃねーか!」

「私達を襲ってきたのも守ってくれたのも、ね」

「あれはただの映像なんかには見えなかった! どうしてこんな現象が起きているんだよ!」

「もしかして、あなたの仕業なんですか……?」


 食ってかかるカムイやミサキと違って怯えた表情でアイチは問う。
 少しの間スイコは沈黙した。
28 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:35:46.26 ID:Qb7+wUrQ0
「どちらとも言えないわね」

「なんだよそれ……!」

「……答えようによってはただじゃおかないよ」

「あなた達のヴァンガードを呼び覚ますきっかけを作ったのは私というだけよ。戸倉ミサキさん、貴女の店を襲ったあれは別の意志によるもの。色々な、ね」

「いまいち話が見えないんだけど」

「あの、僕達のヴァンガードって言うのは……」

「文字通りあなた達が呼び出したヴァンガードの事よ。あれは言い換えればもう一人のあなた達なの」

「もう一人の……?」


 アイチは思い出す。『あれ』も確かにそう訴えていた。

“我は汝、汝は我”


「人には色々な一面が存在する。その一面が具現化したものがあれだと思えばいい。あなた達を導く者でありあなた達が導くもの」

「導く者――ヴァンガード」

「あなた達はこれからあなた達の運命と戦わなければいけない。あなた達かどう答えを導くか……それを見守るのも私の役目の一つ」

「何勝手な事言ってるの? そんなのいい迷惑だよ」


 ミサキはスイコから顔を逸らす。
 カムイも事情を全部飲み込む事は出来ていないようだ。


「あなた達が今ここで納得出来なくても時間は待ってはくれないの。じきに思い知る事になるわ。……今日はもうここまでね。あなた達の事、待っている人がいるわ。聞こえてこない?」

「え……?」


 スイコに言われてアイチ達は青い部屋の中を見回す。


「私も私の仲間もあなた達のすぐ傍にいるわ。あなた達が私達を望めば、PSYと書かれた青い扉が開く――そこで待っている。もっと話が聞きたいのならばいらっしゃい」


 それじゃあまた、近いうちに。
29 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:38:35.61 ID:Qb7+wUrQ0
「……お。目が覚めたか、アイチ!」

「平気ですかミサキ!?」

「ついでにクソガキもな 」

「ん……ここ、は……?」

「シンさん、私……」

「頭がくらくらする……」


 アイチ達は気を失いその間にカードキャピタルの中に運ばれていたらしい。
 外傷は特に無かったのだが三人とも脳味噌が軽く揺さぶられているかのような気分を味わっていてお世辞にも平気と言えるような状態ではなかった。


「そういうシンさんは平気なの?」

「私は軽い擦り傷が出来たくらいですから大丈夫ですよ」

 そう言って笑いながらシンは既に手当済みの絆創膏が貼ってある手をひらひらさせる。
 かけている眼鏡はフレームが歪んでしまったのか無理矢理補強してあり、顔にも傷跡が残っていたりして、見た目にはアイチ達よりも重傷に見えたが、気を失ったりまではしなかったようで本人が言うように大丈夫そうであった。


「ねぇ、アンタ達、覚えてる……?」

「……青い部屋の事、ですか?」

「スイコって人とか、運命がどうとか……やっぱりあれ、夢じゃないのか?」


 みんなが揃って同じ夢を見ていたなんてそんな事がある訳ない。
 この妙な共通認識に三人は気持ち悪さを感じずにはいられなかった。
30 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:41:23.68 ID:Qb7+wUrQ0
「で、結局外で何があったんだよ」

「俺達が駆けつけた時にはもう店員のおっさんは怪我してるしアイチ達はぶっ倒れてるし……」


 森川と井崎の訝しげな表情とその言動からすると、どうやらアイチ達の奇妙な体験自体は目撃していないようだった。
 しかし、あんな奇怪なものを見ずに済んだのだから、彼らは幸せだったのかもしれない。


「えーっと、皆さん! 今日はもう遅いです。親御さんが心配するといけないですから、おうちに帰りましょう!」


 そうやって、アイチ達が答えを窮する前に話題を逸らしたのは意外な事にシンだった。
 ごまかしているのがばれているなんてものではない怪しい態度だったが、半ば無理矢理森川と井崎と三和を追い出してから彼は三人の方へくるりと振り向く。
 そして内緒話をするように小さく囁いた。

「君たち二人とミサキには話があります」

「え……」

「さっきの事について、だよね?」

「はい、そうです」


 彼もまた事件の目撃者で当事者だ。
 スイコの言うところのもう一人のアイチ達……彼らのヴァンガードの姿だって見ているだろう。
 その事についてどう説明したらいいのか……。


「とは言え、今日はもう遅い事は確かです。アイチくんとカムイくんも、もうおうちに帰った方がいいでしょう。詳しい話はまた明日、という事で構いませんか?

「……はい」
「お、おう」
「ミサキはこれからちょっと口裏合わせの相談に乗って下さい」
「ああ、店の外のあれについてね。どうやって父さん達をごまかすの?」
「だからその相談に乗って下さいってば……。店長夫婦が帰ってくるまでになんとかしないと」


 そう言って頭を抱えるシンに溜息をつくミサキ。
 一体シンが何を話したいのか何を考えているのか予測は出来なかったが、とりあえずまた明日ここに来るしかないようだ。

31 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:44:18.93 ID:Qb7+wUrQ0
 カードキャピタルを後にすると、家の方角が一緒なのかアイチとカムイは並んで帰路を辿っていく。
 しかし、愉快にお喋り出来るような雰囲気が生まれる筈も無かった。


「明日、あのおっさんにどう説明すりゃいいんだろ……」

「ありのままの事を話してもきっといい顔はされないだろうね」

「俺だってまだ何がなんだかさっぱりなのに」

「僕もだよ。たぶん、ミサキさんって人もそうだろうね」


 カムイがぐしゃぐしゃと自分の髪の毛をかきむしる。
 頭がどうにかなってしまいそう……いや、もうなってしまっているのかもしれない。

 そんなぐちゃぐちゃな気分を二人は抱えていたのに、それを無視するような底抜けに明るい声が前方から響いてきたのはすぐの事だった。


「よっ、お二人さん!」

「アンタは」

「三和くん?」

「奇遇だな。俺も家がこっちなんだ」


 そう言って笑顔を見せながら声をかけてきたのはさっきまで一緒にいた三和だった。
 シンに店を追い出されてからすぐに帰ってしまったのだと思っていたが……。


「まあ、奇遇っていうか、お前達を待ってたんだけどな」


32 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/07(水) 22:48:20.19 ID:Qb7+wUrQ0
 家の方向は本当にこっちだけど、と笑顔のままで三和は二人に近付く。
 三和は親しみやすい雰囲気を纏ってはいるが隠す事なくアイチ達を待ってたと発言した事で、逆に二人に僅かの警戒心を生んでしまう。

(絶対にさっきの事を言及する気だ!)

(ど、どうしましょう、お兄さん!)


 店にいた時は表に出していなかったが、シンの露骨な態度のせいもあって三和もかなり気になっていたのだろう。それは当然と言えば当然だ。
 明日はきっと学校で森川や井崎にも質問責めにあうかもしれない。いや、きっとなるだろう。
 それならば信じて貰えるかというのは別にしていっその事話すだけ話してしまった方が少しは気が楽になるのかもしれないではないだろうか?
 その後の事は……うん、その場で適当に考えればいいや。

 そういう考えに至るとアイチはなんだかもう馬鹿らしくなって自棄になりかけていたのだった。


「あっあのねっ三和くん! 実は……」

「お、お兄さん!?」

「あーうん、わかってんよ、大体は」

「……え?」

「は?」


 わかってんよ。
 って、何を……!?

 思いがけない三和からの言葉に二人とも動きを止める。
 が、三和はそれをも理解している上なのか、構わずに言葉を続けた。


「だから、今は俺の理解が間違ってないかだけ知りたい。簡潔に、イエスかノーで答えてくれればいい」





「――お前らも呼べるんだろ? ヴァンガードを」

33 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/07(水) 22:52:12.86 ID:Qb7+wUrQ0
今日はここまでです
見てくれてる人達ありがとう
なれなくて改行とか色々変な事になっててごめん
みにくかったり質問とかあったら言ってくれ
ではまた明日
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/07(水) 23:51:08.29 ID:lx+7BcXDO
ミサキさんの両親は生存してるのか。
続きが気になる。乙
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/08(木) 08:34:04.80 ID:sH9B0swmo
乙!
やはり三和はラスボスか?wwwww
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2011/09/08(木) 09:57:54.03 ID:hXJBtCaAO
この三和君は大手スーパーチェーン店長の息子か。中の人的な意味で
37 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/09(金) 00:47:35.41 ID:Qrpxy5h50
>>36
この話は2を元にしてるんだけど、ジュネスネタはそのうち入れるかもしれない。というか、入れたい

投下いきます
38 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/09(金) 00:52:00.71 ID:Qrpxy5h50
「お前ら――」

「――も?」

「……」


 三和の声からはさっきまでの底抜けの明るさが消えていた。
 笑顔は真剣な表情へと変わり、何処にでもいそうな普通の高校生男子に見える筈だった彼が唐突にまったくの別人になってしまったような気がして、アイチとカムイは無意識の内に三和から一歩身を引く。

 三和の言っている言葉の意味は、どう考えてもアイチ達が経験した現象の事を指しているようにしか聞こえない。
 更に言ってしまえば、アイチとカムイだけではなく――他の誰かもヴァンガードを呼べるという事を知っているととれる言葉だ。
 アイチ達が知る限りでは、同じ経験をしている人物というと後はミサキだけしかいない。
 三和の言うお前ら『も』が指すものは、彼女の事なのか。

 それとも――


「っ……!」

「なん、だ……!?」

「!」


 次の瞬間、アイチとカムイは頭のてっぺんからつま先まで響くような大きな鼓動を感じる。
 体が、震えている。
 それは、恐怖を感じているという意味ではなく、自分の中の何かのふるえ……。
 アイチ達のヴァンガードの声の無い訴えを覚えたのだった。

 そしてそれはどうやら……三和も一緒だったようだ。

39 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/09(金) 00:54:56.37 ID:Qrpxy5h50
「……そっか」


 三和は目を伏せて僅かに頷いた。
 どうやら彼は『それ』を答えだと受け取ったらしい。
 そしてアイチとカムイもまた同様に理解する。

 三和も自分達と同じく、もう一人の自分を呼べる者だという事を。


「三和くん……」

「お前、一体何者なんだよ」

「……んー」


 三和はカムイに問われると、こめかみに人差し指を当てながら眉を寄せる。


「同業者……っていうのはちょっと違うか。お前らと同じ立場に置かれてる、としか言いようがねえなあ」


 どうやら答える言葉を選んでいたらしいが、彼としてはしっくりくる言葉が浮かんでこなかったとみえる。


「外ででかい音がして二人が店員のねーちゃんと出ていって少ししてからか。さっきみたいな……共鳴っつーの? あれを感じてさ。もしかしたらーって思ったらビンゴだったみたいだな」

「三和くんはあれがなんだか詳しく知ってるの?」

「……さあ? なんなんだろうな」

「っんだよ、使えねーな!」

「だから言っただろ? お前らと同じ立場に置かれてるとしか言いようがないって」


 まともに話せそうな相手を見つけたと思ったら、三和も認識としてはアイチ達とそう変わらなかったようだ。
 とは言え、他にもそういう人間がいたのだという事にアイチは少しの安心を覚え、それと同時にヴァンガードというものの存在の意味に疑問を深めるのだった。
40 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/09(金) 00:58:07.68 ID:Qrpxy5h50
「明日またあの店に行って今日あった事、話すんだろ? それに俺も混ぜて貰っていいか?」

「三和くんも?」

「ああ。そこで俺が今知り得ている事、全部話す。そんな大した事でもないんだけどな。でも、あのねーちゃんにも聞いて貰った方がいいだろ? それだけ伝えようと思ってさ」


 そう言って三和は携帯を取り出し今の時間を確認する。


「やっべーもうこんな時間かよ! じゃ、お先に! お前らも気を付けて帰れよー?」


 その後の三和はもう、普通の男子高校生の顔に戻っていて、そこから一目散駆けて行ってしまった。


 カムイと途中で別れ、家に帰ってきたアイチを迎えたのはいつも通り母と妹だった。
 のほほんとしておかえりなさいと言う母に、いつもより帰りが遅かった事で心配していたらしい妹の怒る姿を見て、アイチはこの場所は自分の知る日常とかけ離れていないのだと安心する事が出来ると自室に入るなり制服のままベッドに伏してしまった。


(今日は本当に疲れた……)


 そのまま瞼を閉じ、どっと押し寄せてきた疲労や眠気と戦いながら、脳裏にぼーっと浮かんでくる白い剣士の姿にその名を無意識に呟く。


「ブラスター・ブレード……か」
41 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/09(金) 01:04:03.61 ID:Qrpxy5h50
 カムイ達は自分らが呼びだしたあれをヴァンガードのユニットだといっていた。
 カードショップの店員やデッキを持つ彼らにとってはそれは馴染みあるものだっただろう。
 だが、アイチにとってヴァンガードというものは今まで関わりなんて何もないものだったのだ。
 そんなものが急に、何故、自分の分身などという形で現れたのか……彼にはまったく心当たりがない。
 ……ない、筈だった。それなのに。


(なんでだろう……なんだか凄く、懐かしい響きな気がしたんだ……)


 考えれば考えるほどに、アイチの中に疑問が増えていく。
 
 体が汗ばんでいるのを感じ、ふと少しの泥で滲んだ自分の制服の袖に視線がいくとアイチは余計に気分をさっぱりさせたくなってくる。
 夕飯の前に風呂に入ろうかと考え、そこでようやく体を起こして制服から着替えを始めるのだが、上着を脱いだ瞬間に胸ポケットに入れていた生徒手帳を床に落としてしまうのだった。
   
 ああ、何やってるんだろう。拾うのめんどくさいなあ……。

 余計な行動を増やしてしまった事に心の中で溜息を吐きながら、頁の開いた生徒手帳に手を伸ばす。
 ――そこでアイチは覚えのないものを目にした。


 生徒手帳の頁と頁の間に――白い剣士の描かれたそれはあった。


「ブラスター・ブレードの……ヴァンガードの、カード……!」
42 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/09(金) 01:07:48.91 ID:Qrpxy5h50
短いけど時間がないのでここまで
次の投下では>>1に書いてあるクロスオーバーがあるかもしれないので注意です
じゃあまた次回
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/09(金) 20:22:03.09 ID:KXiGlJ3L0
ブラスター・ブレードって聞いて、真っ先にテッカマンのほうを思い浮かべちまった
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/09(金) 21:29:58.54 ID:m+IFxH6no
テッカマンブレードのブラスターボルテッカーか
45 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 02:51:58.59 ID:2DVkqzWr0




 その夜は結局よく眠る事が出来なかった。
 安息の場だと思っていた我が家で――正確に言えば、自分が今まで肌身離さず持っていたものの中に、当たり前のように紛れていたあるカード……ブラスター・ブレードを見つけてしまったからに他ならない。
 アイチは何故生徒手帳の中にそんなものが挟まっていたのか……まったく心当たりがないのだ。
 ただの見間違いでないか手に取ってきちんと確認しようとも思ったのだが、持っていない筈の物があるという事実を正面から突き付けられてしまったらそれを受け入れられる自信が今のアイチの中には存在していなかった。
 完全に精神が摩耗し切っていた。そうなってしまう程に、今日は一日の中で色々な事がありすぎたのだ。

 結局、そのまま急いで生徒手帳を閉じると入れていたポケットの奥深くへとねじ込んでしまった。
 そんな事をしたところでなんの解決にもならない事は十分に解っていたのだが……。

 その後は、ろくに夕食も口にしないまま、頭まで毛布を被って寝ようとしたのだが、瞼の裏に今日の記憶がまるで映画のように延々と映し出され、何時の間にか朝を迎えていたという訳だ。



 次の日の学校では予想通り森川と井崎からカードキャピタルでの事をこれでもかという程聞かれた。
 自分でもよく理解しきれていない事を安易に喋るのはやはりよくない事かもしれないと考えると彼らには今のところはごまかしておくしかないという結論に至ったアイチだが、残念な事に彼はこういう時の上手いかわし方を心得ておらず、そのせいもあってこの話題から興味を逸らす事は出来ないまま一日中(主に森川から)問われ続ける事になってしまった。
 不幸中の幸いだったのは、この日の放課後が森川と井崎の二者面談の日であったという事だ。
 彼らにはなんだか悪い事をしているような気にだんだんなってくるがここで考えていても仕方ないのでアイチは昨日言われた通りにそのまま真っ直ぐカードキャピタルへと向かう事にする。
 全てはそこで告白するなり相談するなりすればいい。例のカードの事もその時に話してみようとアイチは決意を固めた。

46 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 02:54:44.77 ID:2DVkqzWr0
 辿り着いた店の前には既にカムイの姿があった。
 荷物を持っている様子は特に見受けられない。学校が終わって一度帰宅してからここに来たのだろう。
 しかし何故かその場で俯いたままなかなか動こうとする気配がなかった。


「カムイくん?」

「っ、お兄さん!」

「どうかしたの?」

「いや、あの。……」


 アイチの声に一度顔を上げたカムイだったが、すぐにまた俯いて黙ってしまう。昨日のような威勢の良さが今の彼には無かった。
 改めてどうかしたのかと尋ねようとした時、そこへ遅れてもう一つ人影が現れる。

「なんだよ、今日休店日なのか?」

「三和くん! ……あ、本当だ」


 制服姿でアイチ同様に学校から直接この場にやってきた様子の三和はショップの入り口を指差す。
 そこには「臨時休業」と手書きされた札がぶら下がっていた。


「そっか、だから店の中に入れなくて困ってたんだね」

「え? ……あっ、はい。そっ、そう、です! ……」


 カムイはそう言ってぶんぶんと頭を縦に振って返事をするのだがどこか歯切れが悪かった。
 もっと何か他に別の理由もありそうな気がするが、とりあえずそれ以上は聞かない方がいいだろうかと思っていると、最後にミサキがこの場に到着する。

47 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 02:56:49.97 ID:2DVkqzWr0
「アンタ達、早かったね」

「ミサキさん、こんにちは」

「ちわっす」

「よ、店員のねーちゃん」

「……。なんで、アンタまでいんの?」


 昨日ここに呼ばれていない筈の三和がいるのを見て、ミサキは彼の方を睨みつける。
 だが、その反応はすぐに一変する事になる。


「っ! ……もしかしてアンタも」

「そういうこと」


 どうやら、アイチ達が三和に感じた共鳴をミサキも感じ取ったらしい。
 それでもまだ多少信じられないといった風な複雑な表情を浮かべていたが、今ここでする話題でもないと思ったのかそれ以上は黙っていた。


「あんなとこで待たせて悪いね。シンさんはもう中にいる筈だよ。見ての通り営業自体は休みだから、私らだけでゆっくり話が出来ると思う」


 そう言ってミサキは本来自動ドアである筈のそれを手で横にスライドさせて開ける。
 どうやら電源が入っていないだけで鍵自体はかかっていなかったようだ。
 
 そこにはミサキの言う通りシンが居たのだが……。

48 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:00:00.41 ID:2DVkqzWr0
「なんだよー! ごまかさなくてもいーじゃんか!」

「いや、あのですね……あなたの言うような事実は……」

「そんな事言って煙に巻こうとしてもダメだかんな! ボクにかかれば言い訳出来ない情報くらい……」


 シンに誰かが詰め寄っている。
 自分の事をボクと言っているその人物だが、ショートカットの髪型ではあるものの女性用の学生服を着ていた。
 声もどう聞いても女の子だ。
 アイチとそう年の変わらない感じに見えるボーイッシュなその子は、アホ毛をぴこぴこと揺らしながらシンから何かを必死に聞き出そうとしているらしい。


「シンさん、その子誰?」

「あ、ミサキ! アイチくん達も!」


 アイチ達はもちろん、ミサキもそれが誰なのかは知らないようで、絡まれているシンは相当困った様子だった。


「とにかく、本日休店日なので、今日のところはお引き取り下さーい!」

「ちょっ、ちょっとー!」


 女の子の背中を無理矢理押して店から追い出すその姿は、昨日森川達に誤魔化して帰らせたのとよく似ている。
 女の子を外に追いやると、シンは自動ドアの鍵をかけて念の為なのかダンボール箱をその前に置いて完全に入口を封鎖してしまった。


「ふぅ、しつこかった……鍵はかかっていた筈なのにどうやって入って来たんだか……」

「ねえ、さっきの子、なんだったの? もしかして、昨日の他の誰かに見られてたとか……」

「え? ああいや、そういう事ではないです。これから皆さんにお話ししたい事に若干関係している事ではありますけどね」

「……?」


 シン以外の人間はその場で首を傾げていたが、とりあえず椅子にかけるよう促されると言われるままにそれぞれ適当な場所へと腰を落ち着ける。

49 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:03:11.73 ID:2DVkqzWr0
「本題に入る前に改めて軽く自己紹介しておきますね。私は新田シン、この店カードキャピタルの店員です」

「……あれ? 店長さんじゃないんですか?」

「はい。店長はこの子、戸倉ミサキさんのお父さんです。ミサキは私の姪にあたります」

「……よろしく」

「それで……えーと、三和くんもいるのは……」

「ああ、コイツもそうらしいから、シンさん構わず続けて」

「そう、ですか」

「え、ミサキさん、もしかしてもうシンさんに僕達の事を……?」

「軽く説明しただけ」

「ええ、それについてはまた後にして、私がまず話したいのは昨日襲ってきたこれに関する事です」


 シンは従業員用のエプロンのポケットから一枚カードを取り出すと、それをそっとテーブルの上に置いた。
 それは、シンの言う襲ってきた怪物……スパイクブラザーズ突撃部隊が描かれたカードだった。
 昨日とは違ってちゃんと本来通り平面上に存在している。


「皆さんは最近この界隈で流れているある噂を耳にした事はないですか?」

「噂ですか?」

「この店に限った事では無いんですけどね……どうやら、この街のカードショップに売られているカードが実体化するらしいという噂が流れているんだそうで」

「あ、オレ聞いた事ある!」

「俺もこの店で客が話してるのを聞いたような記憶があんな」

 カムイと三和には聞き覚えがあるらしい。
 そういえば、昨日アイチが来店した時、ミサキが言っていた事をアイチも思い出す。

“アンタも噂聞いてやってきたの?”
“そっ、まあ色々あるけど……”

 その言葉は例の凄腕ファイターの話だけを指している訳では無かったという事だ。
50 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:05:23.87 ID:2DVkqzWr0
「どこからそんな現実味に欠ける話が出回ったのかまでは解らないんですけれどね。でも実を言うと……私はああして実体化したユニットを見たのは昨日が初めてではないんです」

「嘘っ……そんな話、私初めて聞いた!」

「はい、私も誰かにこうして話すのは初めてです」

「マジで……!?」

「ふーん、だから俺達自身もあんなの呼びだせるっていう与太話みたいなの聞いてもあまり驚いてないって訳か」

「まあ、そうかもしれないですね」


 驚いているミサキとカムイにあくまで冷静な三和とシン。
 アイチはどちらかというと前者側の気分と同じであった。


「見た事があるとは言っても、今までのはふっと一瞬姿が浮かび上がっただけですぐに消えてしまうようなものだったんですけどね。だから、昨日あんな風にはっきりと姿を現したものが突然襲い掛かってきたのにはびっくりしました」

「もしかして、さっきの女の子は昨日の事とはまた別にカードの実体化について聞きにきたとか……ですか?」

「あー……いえ。実はまたなんだか新しい噂が広まったみたいで。なんでもあの子はカードキャピタルで本物の武器が売ってるとか耳にしたらしいですよ」

「はあ? 武器ぃ!?」

「それはまたなんというか……物騒な話ですね」

「なにそれ、くっだらない……」

「ハハッ、もうここ何屋なんだよ」


 これには流石のシンも参っているようで苦笑を浮かべている。
51 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:07:00.23 ID:2DVkqzWr0
「とまあこんな感じで最近いたるところで都市伝説めいたものから嘘にしか聞こえないものまであらゆる噂が流れているようなんですよね」

「そうだったんですか……」

「本来ならこんな話真に受けるような人間そうはいないと思うでしょう? ところがこの色々な噂について調べ回っている探偵さんがいるんです」

「探偵って、シンさん……」

「またなんだか胡散臭い話だなー」

「そっ、そんな事言わないでくださいよ! 一応、私の知り合いなんですから」

「ますます胡散くせーかも」

「えええー……君達の例のアレについても有力な情報を持ってそうなんですけど……」

「っ、本当ですか!?」


 シンの言葉に真っ先に食い付いたのはアイチだった。
 他の三人も顔色が少し変わる。

52 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:09:01.41 ID:2DVkqzWr0
「はい。だからその事については、私よりも彼に相談した方がいいと思いまして。これから訪ねてみたらどうでしょう」


 シンはエプロンのポケットからまた何かを取り出す。
 それは住所と地図の書かれた小さな紙切れだった。


「場所は小林探偵事務所。所長の小林オペラくんという青年がそうです。私の名前を出せば通じると思いますよ」


 シンはその紙切れをミサキに手渡した。


「本当は私もついていってあげたいところなんですが、まだやる事が残っていましてね。この近くですからミサキ、みなさんに案内をよろしくお願いします」

「わかった。昨日のお父さん達への言い訳の件も含めて、これで貸し二つだね」

「そ、そんなあ……」

(昨日は結局どうやってあれを誤魔化したんだろう……)


 こうして一同は場所を小林探偵事務所へと移す事にするのだった。
53 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:11:46.23 ID:2DVkqzWr0
 シンに渡された紙切れに書かれている場所はミサキによるとここから歩いて15分ほどの距離らしい。
 だから移動している際に少しくらいなら何か話す事は出来た訳で。


「あの、三和くんが知ってる事っていうのは、結局なんの事なのかな」

「ん? ああ、そういえばその為に来たんだっけか」

「ったく、忘れてんなよな」

「ハハッ、悪ぃな」


 ミサキの少し後方をアイチ達は歩きながら、昨日聞けなかった事について再度三和に尋ねてみる事にする。


「最近な、俺達みたいな連中が増えてる気がすんだ」

「え……?」

「なっ、なんでそんな事がわかんだよ!」

「共鳴だよ。俺、同類の人間が近くにいると感じやすいみたいでさ。今までも街中歩いてるとたまに俺以外の気配を感じる事があったんだけど……最近それが頻繁に起こるんだよ」

「なにそれ……」

「わかんねえけど……この街で何か起きようとしてる、いやもう起きてるのかもな。あの店員のおっさんの話も合わせると」

「……」
54 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/10(土) 03:14:09.03 ID:2DVkqzWr0
「ま、これから訪ねる探偵サンとやらに聞けば少しは何かわかるかも……――ッ!」


 そう言いかけて、三和の足が急にぴたりと止まった。
 そして後ろを振り返ったかと思うと辺りをキョロキョロと見回し始める。


「三和くん、どうしたの?」

「お前らは感じなかったのか?」

「は? 何が?」

「まさか……」

「共鳴、だよ。しかも、この感じは……」


 三和は急にその場を駆けだす。
 アイチ達はそれに驚いて見失わないように急いで彼を追いかけた。

 辺りを見回しながら5分ほど三和は走ったが、息が切れたのか諦めたのか足をその場で止めて大きく肩を落とし膝に手を付きながら屈み込む。
 そしてそこに遅れてアイチ達も辿り着いた。


「三和くん、足速いよ……」

「っていうか、探偵事務所こっちじゃないし」

「なんだよ。どうしたんだよ」


 三人も息を切らせながら三和に問う。彼は少し黙った後、息を吐いて呟いた。


「……俺、もう一人知ってんだよ。ヴァンガード、呼べる奴」

「えっ……」

「そいつが今、近くにいたんだ。姿は見えなかったけど……間違いない」

「誰なの、ソイツ」

「みんなも話は聞いてるだろ。……『噂』の凄腕ヴァンガードファイター様だよ」
55 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/10(土) 03:19:13.76 ID:2DVkqzWr0
今日の投下はここまでです
話がなかなか進んでない気が…

>>34がふれているように、ミサキさんの両親は存在しています
だからシンさんはここでは「店長」ではなく「店員のおっさん」になる訳でややこしく感じるかも



次回は小林探偵事務所編
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2011/09/10(土) 07:22:58.37 ID:kWsMGWBN0

ペルソナは知らないけど面白そう。
あとネタバレになるけど、三和君は十月に本気出すらしいよ。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/10(土) 09:52:20.20 ID:1mAF8o3SO
>>1はペルソナ1、2はやってないの?
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/10(土) 11:05:12.91 ID:mjMBOdFDO
タカヤ兄さんじゃないのか。
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/10(土) 11:14:49.97 ID:xBXhbLrVo

別作品ってあれかよwwwww
60 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/11(日) 02:02:51.80 ID:DVw9oRQI0
テッカマン知らなかったけど気になったから調べたりしてたらこんな時間になった


>>56
そう言ってくれると凄く嬉しい。一応ペルソナ知らなくても読める作りにしているつもりだから
本編での三和の活躍は地味に期待しているところだから楽しみだ

>>57
1は一周やった後ディスクが何故か起動しなくなってからやってない
2は罪のPSP版も買ったし今でも繰り返し遊んでる
逆に3は序盤で積んで4はアニメ始まる前にやってみようとつい最近購入してプレイしてるとこ


投下いきます
61 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:05:51.21 ID:DVw9oRQI0
「マジかよ、ますますソイツに会ってヴァンガードファイトしてみたくなったぜ!」

「今はそんな事言ってる場合じゃないでしょ。でも、その話が本当ならアンタのその知り合いもこれから一緒に連れて行くか、そうでなくても一度私達も会ってみる価値はあるかもね」

「三和くんの、友達が……」

「……アイツが俺の事、友達だと思ってるかどうかはわかんねーけどな」


 何処か自重気味に聞こえるその言葉は三和らしくないものだった。


「ねーちゃんの言う通り、今こんな事になってる以上アイツとも一度会う必要があるとは思うんだけど……今日も学校に来てなかったし、連絡先も知らねえんだ。携帯持ってないみたいでさ」


 もう一度深い溜息を吐き髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きながらどうしたものかと三和は思案する。


「そもそもアイツにはまだはっきり打ち明けてすらいねぇんだよなあ……ヴァンガードのこと。アイツにしたって、俺が勝手に共鳴感じただけで、直接教えて貰った訳でもねえし」

「え、どうして?」


 昨日はすぐに知り合ったばかりのアイチとカムイに打ち明けてきたのに、少なくとも自分達よりは付き合いが長い筈の三和の知り合いには言っていないというのはどういう事なのか。


「それは。……、いや、それよりアイツの所在がわからないなら今は探偵所に行く方が先だろ」

「あっ、ちょっと! そっちじゃなくてこっちだってば!」

「おっと、いけね」


 結局のところそれ以上の情報は語らないまま、探偵事務所へと向かう最中の三和は急に口数を減らしてしまった。
 三和の態度はまだ何かを隠しているようにも見えたが、そうずけずけと聞けるほどアイチ達はまだ互いに仲が良いという訳でもない。
 皮肉にもヴァンガードという存在だけが、今の彼らを繋げているだけに過ぎないのだ。

 そうこうしているうちに、アイチ達は目的地の目の前まで辿り着く。
62 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:09:46.58 ID:DVw9oRQI0
 小林探偵事務所は街中から少し外れた雑居ビルの二階に存在していた。
 お世辞にもあまり綺麗な建物とは呼べないその中へと彼らは恐る恐る足を進める。
 立て付けの悪そうな木造の扉には薄汚れたプレートがつけてありマジックで「小林たんていじむ所」と可愛らしい丸文字で書かれていたのでこの場所で間違いは無い筈なのだが、そのミスマッチさが妙な怪しさを演出していた。
 チャイムか何かないのだろうかと扉の周りを確認してみるがそれらしきものは見当たらなかったので、躊躇いがちに扉をノックしてみる。
 中からの返事は……無かった。
 もう一度さっきよりも強く扉を叩いてみるが、結果は同じだった。


「留守なのかな」


 試しにノブを捻ってみる。
 するとギギギと軋んだ音を立ててその扉は開いた。


「不用心だね」

「誰かいるけど気付いてないだけなんじゃねーの?」

「あの、失礼しま……、えっ!?」


 中の様子を探ろうと完全に扉を開いた時、彼らを出迎えたのは……煙と何かが焼ける匂いだった。


「なっ、火事か!?」

「誰か! 誰かいるんですか!?」


 アイチ達は慌てて呼びかけながら室内をぐるりと見渡す。
 火の元と逃げ遅れたりしている人間がいないかを必死に探すと、部屋の隅にその両方は存在していた。
 煙が発生している何かの傍で、人影が全部で三人、屈みこんでいる。


「だっ、大丈夫ですか!?」


 急いで救出しようと駆け寄ったアイチ達だった。が、彼らがそこで目にしたのは……



 七輪だった。
63 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:12:21.37 ID:DVw9oRQI0
「コーデリアさーん、まだですかあー? 私、もうお腹ぺこぺこですぅ」

「ダメよ、シャロ! まだ十分に焼けてないんだから。エリーは味付け出来そうなもの用意した?」

「……みりんが……少しだけ、ありました……」

「よし、じゃあ出来あがったらちゃっちゃと食べちゃいましょう」

「いいんですか? ネロがいない間にこんな……」

「いーのよ! あの子この間私がこっそり買い置きしてたお菓子勝手に全部食べちゃったんだから」

「……おいし、そう……」


 そこには三人の少女が仲良く七輪を囲んでたまねぎを焼いている姿があった。
 その目は何処か血走っていて、近くまできたアイチ達の存在にはまだ気付いていないようだった。
 よほどたまねぎを焼くのに集中していると見える。


「……。ねえ、ちょっとアンタ達!」

「ふぇ? ……わあああああ!?」


 見かねてミサキが大きく声をかけると、ようやくその三人の少女は気付いて振り返る。
 そして、あまりにも驚いたせいか、勢い余って七輪の網とその上に乗っかっていたたまねぎを全部床の上にぶちまけてしまった。


「あああああ! たまねぎが! 久し振りのごちそうがあぁー!」

「大丈夫です! 三秒ルールが適応されます! 急いで拾いましょう!」

「あう、熱い……」

「話を聞けってば……」

「あ、あはは」

「焼いただけのたまねぎがごちそうって」

「ねえ、私ら小林オペラさんって人に会いに来たんだけど、何処にいんの?」

「え?」


 小林オペラ。
 その名を口にした途端、三人の少女の騒ぐ声がぴたりと揃って止まる。

64 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:14:56.28 ID:DVw9oRQI0
「あっ、もしかして、依頼にいらっしゃった方ですか!」

「依頼っていうか……新田シンの紹介でここに来たんだけど、もしかしていないの? その小林さんって人」


 見た限り、この部屋にはこの三人以外はもう誰もいないようである。


「新田さん……あっ、小林先生が言ってた人達って」

「どうやらこっちの人達の事だったようね」

「そうみたい……です……」

「僕達の事、知ってるんですか?」

「はい! 小林先生はただいま不在ですが、お話はうかがっています。どうぞ、こちらへかけてください」


 ちょっとボロいですけど、とアイチ達はところどころ穴のあいた長椅子へ座るようにすすめられる。


「先程はお恥ずかしい所を見せてしまってすみません。私達は、小林先生のお手伝いをしている者です。シャローック・シェリンフォードと言います」

「コーデリア・グラウカです」

「エルキュール・バートン……です」

「えと、本日は街中を騒がせている噂について、そしてヴァンガードの事を聞きにいらっしゃった……それで間違いないですね?」

「は、はい、そうです」


 先程あれだけ騒ぎ立てていた落ち着きの無い少女達は一変して『仕事』をする表情へとなっていた。
 「小林先生のお手伝い」という事は彼女達も探偵か、あるいは助手と言う役割を担っているのだろう。

65 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:17:41.60 ID:DVw9oRQI0
「まず、こちらの調査結果を簡潔に述べますね」


 そう言ってシャーロックと名乗った少女は紙の束を隣にいるコーデリアという少女へ手渡した。


「最初はこの街に蔓延している多々ある噂がもたらしている現象についてです。俄かには信じられないかもしれませんが……現在、ただの噂話がその域を超えて現実となってこの街の各所で目撃されているようなんです」

「噂が、現実に……!?」

「お話を聞いた限りでは、あなた方はもうその体験をされているんじゃないですか?」

「……! じゃあ」

「はい、カードが実体化するという噂は今では既に真実へと昇華されて何処ででも起き得る現象になっている、という事です。しかも実体化したそれらは最近になって人を襲うようになり始めた」

「それ、危険とかいうレベルじゃねーじゃん!」

「やっぱり、この街でもう得体の知れない何かが起こってるって事なのか」

「どうしてそんな事になっているのかという原因については現在まだ調査中です。教官……ここの所長の小林が特定に急いでいるところです」

「そんな、夢みたいな事……」


 薄々勘付いている事ではあった。
 しかし、他人からほぼ断定されるように言われた噂の現実化という事実に、アイチ達はショックを隠す事が出来なかった。


「でも、その危険と立ち向かえる術をあなた方は持っている訳です」

「それがヴァンガードって事なの?」

「はい、そうです。実体化してるユニットと呼ばれるものも皆さんのヴァンガードも原点は同じカードゲームから生まれているものな訳ですから」


 ミサキの言葉にコーデリアは力強く頷く。
66 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:20:58.83 ID:DVw9oRQI0
「そのヴァンガードというものについてですが、この現象についてはどうも今の噂の実体化というものよりも随分前から発現が確認されているようですね」

「それはカードゲームの方を指している訳ではなく……?」

「もちろん、もう一人の自分だというあなた達の力の事です。この能力が覚醒する条件については諸説あるようですが……この資料には最有力だと思われる説が一つ書かれています。皆さんは『先導者様』という遊びをご存じですか?」

「場所によっては『キューピッド様』『ペルソナ様』……色々と呼び名が変わるみたいなんですけど、この地域ではその名前がポピュラーみたいです。どうやら未来の自分や、理想とする自分の姿が見られるというオカルトっぽい遊びみたいですけど」

 ちなみに私は知りませんでした、とシャーロックは首を横に振った。

「話ではヴァンガードを呼べる人間の殆どはその遊びをしたのがきっかけとなっている事が多いらしいのです」

「先導者様ぁ? その遊び、確かに夢の中ではやった事あるような気がするけど……」

「夢……!?」


 初めにカムイがそう言い、次に過剰な反応を見せたのがミサキだった。


「ミサキさん……?」

「あ、いや……なんでもない。アイチはやった覚えある?」

「えっと、どうかな……小さい頃の事はよく覚えてないし。三和くんは?」

「……」


 三和は腕を組み椅子にもたれながら目を伏せて暫く黙っていた。


「……いや、どうだったかな。俺も覚えてねーや」

「……」


 ミサキも俯いてしまい、四人に沈黙が訪れる。
 それを破ったのはコーデリアだった。

67 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/11(日) 02:27:47.11 ID:DVw9oRQI0
「……そうですか。今のところ解っているのはこのくらいです。お役に立てたかわかりませんが」

「いえ、ありがとうございます」


 アイチは深く頭を下げた。
 しかし、その頭を再び上げるだけの気力が中々振りしぼれなかった。


(今、街の中では危険な事が起こっていて、それに対処出来る力を持っていると言われても……)


 だからと言って自分達にどうしろというのか。
 身を守る術としては一般人よりも長けているのかもしれないが、本当にただそれだけである。
 アイチ達の現状理解は三歩進んで二歩下がっただけのような感じであった。
 


 この世界は今どうなっているというのだろう。
 世界はアイチ達に何を望んでいるというのだろう……。



「なあ、噂でどうにかなるっていう状況ならさ、ユニットの実体化を打ち消すような噂を流せばどうにかなるんじゃねーかな」


 カムイがいい案を思い付いたというように手を上げて発言する。


「それは……その、難しいみたい……です」


 それをあっさり否定したのが今まで大人しくしていたエルキュールだった。


「一度インパクトのある噂が広まってしまった以上、それを上回るインパクトのある噂でない限り世間で影響は出ないだろうというのが先生の意見です」

「とは言え、やってみる価値がある事に変わりはないというのも教官の意見です。ですから、私達は実験的にその噂操作を行ってみようかと思っているところなんです」

「噂操作、ですか?」

「はい。先程言われたようなユニットの実体化を防ぐような噂を広める事はまだ無理でしょうが、小さくてもそれに対抗出来るような有利な噂を可能な限り少しずつ広めてみるんです。私達も皆さんも、まだ噂の現実化というものに対して半信半疑ですから、その確認の意味も兼ねて」

「そこで一つ、私から提案があるのです!」


 突然、勢いよくシャーロックが手を上げて起立する。
 その目はどこかきらきらと輝いていて純真さが宿る色を持っていた。
 そして彼女はあどけなくこう告げるのだった。




「まず手始めに、カードキャピタルを本物の武器屋にしてみちゃいませんか?」
68 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/11(日) 02:29:29.32 ID:DVw9oRQI0
今回の投下はこれで終わり
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 10:58:07.94 ID:M1MM9nqZo
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/11(日) 19:27:19.85 ID:uQSkl+xm0

三和くんのペルソナ(?)は決まっているの?剣玉だったらいやだな・・・・
あと20日経てば三和君の使うユニットが分かるからそれまで待ってほしい。
そういえば、ここのミルキィはゲーム版?他のブシキャラも出るの?
71 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/12(月) 01:36:56.97 ID:MrAsYQ+K0
>>70
書き始めた時は漫画版のを参考にしようかと思っていたけど、アニメでもファイトするかもと解ったからまだ保留にしてる
アニメでも漫画と同じユニット使ってたらもうそれにするしかないけど…

ミルキィに関してはほぼアニメの知識しかないんでそれを参考にしてるけど、ここでは彼女達のトイズは元に戻ってる感じ
話の内容が内容なので彼女達もそんなにふざけた感じにはならないとは思うけど、たぶん
他のブシキャラの登場予定は特になし


投下いきます
72 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/12(月) 01:40:02.95 ID:MrAsYQ+K0
「ちょっ、ちょっとまって! なんで武器屋にする必要がある訳!?」

「え? 一般人でも実体化した凶悪な怪物に対抗できるようにする為の手段のひとつとしてどうかと思ったんですけど……ダメですか?」

「それで仮に本当にうちの店を武器屋にしたとしても、警察に銃刀法違反なんかで捕まるのがオチに決まってるじゃない!」

「その辺も大丈夫ですよ! 私達、警察の人に知り合いがいますから大丈夫なようにそこでも噂を広げて貰えれば……」

「そんな簡単に言わないで」


 シャーロックの案にミサキはすぐ反対の意思を見せる。
 カードキャピタルは彼女の家族が経営している店だ。ただでさえおかしな事が起こっているのに、身近な場所で物騒な噂が本当になってしまうなんて耐えられないというのは当然の反応だろう。


「シャロのいう本物の武器っていう発想はちょっと無理があるかもね。ネタとして面白味はあるからすぐに広まりそうではあるけど、本物の武器がある事で悪用されて他の事件が起こらないとも限らないし」

「あうう、でもぉ……」

「何かもっと普通に持っていても不思議でない物とかで……」

「……あ」


 この話の流れにあまりいい顔していなかった筈のミサキだが、コーデリアの言葉に突然何かを思いついたように声を上げた。
73 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/12(月) 01:42:59.63 ID:MrAsYQ+K0
「近々店にVFグローブってのが入荷するみたいなんだ。ヴァンガードファイター向けのアイテムで。詳しい用途はよく知らないんだけど、それを噂で上手くどうにかする事って出来ないかな。武器とまではいかなくても、それを持ってカードを扱っていれば影響がでないとかさ」

「それはいいかもしれませんね。少なくともカードを扱っている人間への被害は最小限に食い止められるかも」

「そう都合よく事が運ぶかはわからないけどね。それくらいなら私も文句はないよ」

 ではそういう方向でいきましょうと話がまとまると、一同は深く息を吐いた。
 ミサキの考えついた事は急場凌ぎではあるかもしれないがとりあえず今はこれで様子を見てみるしかない。
 もっと根本からの解決策がこれ以上酷い事にならない内に見つけられればいいのだが……。


「私達の方でもまだこれから色々調べてみたりします。これ、うちの事務所の連絡先ですので、何かあればここに電話して下さい。もちろんこちらも重要な手掛かりを見つけられればそちらに連絡しますので」


 一通りの話を終えたので事務所から立ち去ろうとすると、シャーロック達から小さなメモ用紙を渡される。
 そこには探偵事務所の扉にあったのと同じ可愛らしい丸文字で数字がかかれていた。
 小林探偵事務所の電話番号だ。
74 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/12(月) 01:46:14.10 ID:MrAsYQ+K0
「この事件はまだまだ謎に満ちています。でも、諦めなければきっと解決の糸口は見えてくる筈です。皆さんの持っている力はもしかしたらその鍵になるのかもしれません」

「僕達が……」

「そうです。無理に協力してくれとは言いません。でも、もしこの街を守る為の有力な手掛かりが見つけられれば私達にも教えて欲しいんです」

「シャーロックさん達はどうしてそこまで?」

「決まっています。この街が好きだからです。そしてこの街の人達を守りたいからです。……実は、私達にもちょっとした能力があるんです。だから何か起こっているのを知りながら黙って指をくわえてるだけなんて嫌なんです。私達の力でも何か出来る事があれば……」


 少女達は強い意思と強い力を瞳に映しながらアイチ達を見る。
 そこには揺るぎない決意があった。


「……またアイチさん達に会える日が来る事があれば、私達も心強いです。今日はお気をつけて帰ってくださいね」


 アイチ達は無言で頭を下げシャーロック達に見送られる。
 
 徐々に遠ざかっていく小林探偵所を振り返りながらアイチ達は三人の少女の瞳を思い出す。


「結構いい子達だったね」

「最初はなにしてんのかと思ったけどな」

「七輪でたまねぎだもんなー」

「結局小林さんって人には会えなかったし、また改めて話を聞きにいってみるのもいいかもしれない」


 意外な所で協力者を得たアイチ達の心には少しの安らぎが戻っていたのだった。
 そして、この街に本当の平穏が早く戻ってくる事をアイチは祈っていた。




 一方、場所は戻って小林探偵事務所。


「それにしても今日はお客さんがいっぱいきましたねー」

「そうね。でも、あの人達の前に訪ねてきた人にせっかく美味しそうなたまねぎ貰ったのに、ダメにしちゃったわね……」

「もったいない……です……」

「たっだいまー! ……ってぇ、なにその七輪! なにそのたまねぎ! ボクに内緒でうまそうなもの食べようとするなんてズルイぞ!」

「げっ、ネロ」

「主犯はどうせコーデリアだろー!? まだお菓子の事根に持ってんの? バッカじゃない?」

「なっなんですってぇー!」


 そこにはもう、さっきまでの真面目な彼女達の姿は何処にもなかった……。

75 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/12(月) 01:49:38.74 ID:MrAsYQ+K0
「さて、これからどうすっか」

「みんな一度うちの店に寄る?」

「さっきの事、店員のおっさんに報告した方がいいだろうしな」


 カードキャピタルにまた顔を出しに行こうかという話になっていた時。
 アイチは別の事を考えていた。


(……まだ、行くべき所がある。あの人の話も、もっと聞いておきたい。あの人は僕達が望めばいいと言っていたけど、でもそれってどういう……)

「お兄さん?」

「どうした、アイチ? 腹減ったか? よっし、じゃあ、あのおっさんになんか集ろうぜ!」

「あのね……」

「う、ううん! なんでもないんだ。……?」


 今の考えを他の皆に咄嗟に誤魔化そうとしたその時――ふと目に映った薄暗い路地の奥に、アイチはぼんやりとだが何かが青白く光るのを見た。
 思わず足を止めてしまうと、それに倣って三人もそこで立ち止まった。


「なんだろ、あれ……」

「アイチ?」

「ちょっと、何処行くの!?」


 その光に誘われるが如く、アイチは路地の中へと踏み入っていく。
 カムイとミサキと三和もそれを追いかけない訳にはいかなかった。


(気のせいじゃない、それにこの感じは……)


 ――アイチは昨日体験した心地よい浮遊感に似たものをまた僅かに覚えていた。
 それは路地の奥へと進んでいくごとにじわじわと強くなっていく。
 鼓動が徐々に高くなっていく……。

 アイチが辿り着いた先はただの行き止まりだった。しかし――
 他の三人もその場に揃った、その瞬間。


「あ……!」


 ただの行き止まりだったその場にぼんやりと青白い光が昇る。
 ぼやけたそれは次第にはっきりとその姿を現し――
 ついにアイチ達の前にその存在を見せたのだった。


「扉、だ」


 突然現れたのは、扉。
 ――PSYと書かれた青い扉だった。
 そしてそれは音もなく開き、アイチ達を一瞬で飲み込んだ――
76 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/09/12(月) 01:54:27.68 ID:MrAsYQ+K0
今回はここまで

>>71に書いてあるように、三和のユニットがどうなるのか解らないっていうのもあって、これからしばらく投下する時の一度の文章量が減るかもしれない

ではまた
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/09/12(月) 18:06:55.05 ID:mHSiczMDO
櫂くんのポジションが気になるな
78 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:08:47.33 ID:zWo8GfgN0
 やはり気のせいでは無かった。
 扉の向こう側の世界は……昨日、アイチ達が見たのと同じ青い空間。そこにまた何時の間にか迷い込んでいた。

 ……いや、アイチ自らが望んでやってきたのだ。

 意識と無意識の狭間へと。


 ただ、昨日訪れた場所とは微妙に雰囲気が違っている。
 昨日のは、ただ延々と青くぼやけた世界がそこにあって、狭いのか広いのかという認識もよく出来ずとても殺風景な場所だったと記憶しているのだが……今いるところではある程度の距離感も掴めるし、何よりも周りに光と共に何かが浮かんでいるのが見えた。

 それでも、あの時感じたのと同じ心地良い浮遊感が今もまたアイチ達を優しく包んでいるのだけは変わらない。


「うっわ、なんだよここ」

「この感じは……」

「ここ、スイコとかいう女がいた場所と同じなの?」

「……多分、そうだと思うけど」

「残念ながら半分あたりで半分はずれってとこかな」


 急にアイチ達四人のものとは違う五人目の声が部屋に響いた。
 ――女の子の声だ。

 部屋の奥の方から二人分の影が現れる。
 一人は金髪ロングで少しきつそうな面立ちの子で、もう一人は小柄な身なりで巻いた茶髪を二つに縛っている。
 スイコの姿はそこにはなかった。

79 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:11:08.85 ID:zWo8GfgN0
「ようこそPSYへ」

 茶髪の女の子が愛想良く笑いながらアイチ達を歓迎する。さっきの声はこっちの子のようだ。
 対して、金髪の方は口を結んだまま睨みつけるようにアイチ達へと視線を向けていた。


「あの、あなた達は?」

「私はレッカ。ここ、PSYの住人だよ。そしてこっちは――」

「……コーリン」

「スイコさんのお知り合いなんですか?」

「そ、仲間だよ。ここは昨日あなた達がスイコと会った場所と質は同じだけど別の空間なの。ちなみにスイコは今ここにはいないんだ」


 すぐ傍にいると最初に言ったその当人がこの場にいないというのはなんとも適当な話だと思ったが、これでスイコとの出会いは夢でなかったという事が断定できたも当然の事だった。
 だからアイチはすぐに思っていた事をスイコへ言う代わりに彼女達へとぶつける。


「あの、僕、聞きたい事があって……」

「ま、大体予想はついてるけど……何かな?」

「今、街で起こっている事件と僕達の力は何か関係性があるんですか?」





「僕達の力はこの事件を解決するのに役に立ちますか?」

80 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:14:53.93 ID:zWo8GfgN0
 レッカとコーリンはアイチの言葉を聞いて互いに視線を合わせた。
 カムイ、ミサキ、三和も無言でアイチの方を見つめる。
 そして……誰よりも先に口を開いたのはさっきまであまり反応を見せなかったコーリンだった。


「それは違う」

「そんな……じゃあ、何故こんな……」

「お前達の力は役に立つとか立たないとかそういう次元の話じゃない。この事件は、お前達でなければ解決出来ない。お前達が解決するしかないんだ」

「……はあ!?」

「それ、どういう事? 私達以外にもヴァンガードを呼べる奴っているんだろ? そいつらにも協力して貰ってどうにかしろって事?」

「確かにヴァンガード使いは他にも探せば周りにいるだろうな。交渉次第で戦力になって貰う事も出来るだろう。でも、この街に起きている今の現象はお前達が止めなければいけない」

「どういう意味なんですか?」

「そんなのは自分の胸に聞け。お前達自身が一番よく知っている筈だ」

「僕達が知ってる……?」

「ちょ、ちょっと、コーリンってばー!」


 コーリンの態度を見て、慌ててレッカが仲裁に入るかのように話に割って入った。
81 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:17:11.10 ID:zWo8GfgN0
 コーリンは眉を寄せ不機嫌そうな態度で再び口を結んでしまう。
 レッカは苦笑しながらごめんねと一度謝った。


「コーリンの言い方が悪く聞こえたかもしれないけど……でも今の話は忘れないで欲しいの。あなた達にとって、とても重要な事だから」


 レッカはそこから表情を変え、アイチ達に対して改めて向き直った。
 幼いその少女は真剣に訴えようとしている。
 この街の中に蔓延る危険の意味を――。


「虚像に囚われてはダメ。真実から目を逸らしてはダメ。あなた達が自分自身と向き合う勇気をもたなくちゃダメなの。あなた達のヴァンガードが意味しているのはその為の手段の一つなのよ」


 しかしレッカの言葉はとても抽象的で、アイチ達にはその意味を理解する事は到底出来そうになかった。


「スイコも言ってたでしょ? ……直にわかる時がきっとくるよ。あなた達が運命から逃げさえしなければ、ね」

「もし、その意志があるならば。立ち上がり進む覚悟が持てたなら……『噂』を追え」


――『黒い亡霊』を追え――!

82 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:21:33.70 ID:zWo8GfgN0
 コーリンの声を耳にしたのを最後に、アイチ達はあの青い空間から元居た路地へと戻っていた。
 行き止まりのそこにはもうPSYと書かれた扉は存在しない。
 しかし確かにあの場所での記憶は四人が全員きちんと持っていた。


「なあ、オレ達自身がこの事件を解決しなきゃいけないとかって話……何処まで信じりゃいいと思う?」

「さあね。でも、あのねーちゃん達が嘘言ってるようにも見えなかったしな」

「……あの言い方だと、まるで私達が原因みたいな意味にもとれるけど」

「でも、そんな心当たりは……」


 レッカとコーリンの話を思い出しながら四人はその場で暫くの間考え込む。
 正直なところ質問に対して答えを貰ったというよりも更に別の問題を突き付けられたと言ってもいい状況だった。
 ……ただ、彼女達が言う事をそのまま素直に受け止めるとするなら、その答えはもうアイチ達が持っているという事になるようだ。
 だから、解らないのは『それ』を何処に仕舞い込んだのかという点になる訳だが……。


(向き合う勇気……立ち上がり進む覚悟……か)

83 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:24:18.85 ID:zWo8GfgN0
 アイチは制服のポケットにねじ込んだままだった生徒手帳を恐る恐る取り出した。
 ――そこには昨日、目を背けてしまったカードがまだある筈。
 自分の目で見たものが幻でないのならまだそこに……。

 震える指がその頁をゆっくりと開いていく。
 アイチにとってその間はとても長い時間に感じられたが、実際のところそれは割と一瞬の出来事だった。
 そしてそれは、白日の下に再度晒される。


 見間違いでもなんでもない。認めなければならない。
 そこに確かに存在するものを。

 アイチの瞳が映すそれは


“――ほらよ、こいつをやるよ――”

「ブラスター・ブレード……」


 白い甲冑を身に纏った


“――そいつは結構強い剣士なんだぜ!――”

「僕の、分身」

“――イメージしろ! その剣士のように強くなった自分を!――”


 アイチの視界が急に歪んだ。
 そして、ぽたりと。それはカードの上に一滴落ちる。


「お兄さん?」

「オイ、どうしたアイチ」

「なんで泣いてるの?」

「あ、あれ……?」


 言われて初めて気付く。
 アイチの瞳からは何時の間にか涙が零れていた――


(まただ。この懐かしい感じは、一体……)


 ただ朧気に感じる『懐かしい』という思いがアイチを責めたてる。
 けれどそれ以上の事は……何もわからないのだ。
 記憶がとても曖昧で、なにが懐かしいのかが思い出せない。


(僕は、何かを忘れているの……?)
84 : ◆kJCm.rf/1E [saga]:2011/09/13(火) 01:27:52.84 ID:zWo8GfgN0
今回はここまで
コーリンちゃんの口調よくワカンネ

ではまた次回
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/09/14(水) 18:33:24.55 ID:/1X1FLdn0

コーリンの口調はこんなに男勝りじゃないよ
たとえば、>>80の「お前たちのところ」じゃなくて「あなたたちのところ」のはず。
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(岩手県) [sage]:2011/09/25(日) 23:55:47.11 ID:qvTKXJC/o
アニメの三和くんはかげろう使いっぽいな
ここの三和くんのペルソナは何になるんだろ
87 : ◆kJCm.rf/1E [saga sage]:2011/10/01(土) 15:46:37.47 ID:3GqkLLWh0
>>85
おkわかったありがとう。今後気をつける




三和のファイトもみれたし近々投下再開します
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(仮鯖です) [sage]:2011/11/04(金) 13:53:00.50 ID:TwaCD5qRo
そして1ヶ月
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