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暗殺者「スタバで待ち合わせ」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:11:40.73 ID:XvxBHigAO
暗殺者「スタバで」
女「スタバて」
暗殺者「スタバとstubberをかけた高度な」
女「黙れ」
暗殺者「はーい」


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クリスタ「かわいいだけじゃだめですか?」 @ 2025/07/19(土) 08:45:13.17 ID:AK1WfFLxO
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八幡「新はまち劇場」【俺ガイル】Part1 @ 2025/07/19(土) 06:35:32.67 ID:BGCulupRO
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【安価・コンマ】力と魔法が支配した世界で【二次創作】 @ 2025/07/18(金) 23:44:57.84 ID:Xc8IdKRvO
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どかーんと一発 @ 2025/07/18(金) 21:10:10.35 ID:CEsRuBor0
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冒険者育成学校 @ 2025/07/18(金) 01:36:01.28 ID:PkrtUMnv0
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たてづらい部!! @ 2025/07/17(木) 23:24:46.15 ID:o3A0TqwG0
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ゼンレスゾーン淫夢要素ゼロ @ 2025/07/16(水) 18:57:50.86 ID:RQSyJ1Qxo
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【ギルデッドエネミー】ウルフ「まるでじゃんけんだ」 @ 2025/07/16(水) 01:49:20.03 ID:ryYxoR/vO
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:13:19.99 ID:XvxBHigAO
暗殺者「本当はbackstubとかけてって言いたいけどバスタになるし」

女「黙ってないし」

暗殺者「パスタうめぇ」

女「すいませんもう一杯いただけます?」


暗殺者「ちなみにバスタとパスタが似てるのは意図せぬ偶然」

女「聞いてない」

暗殺者「こういう韻を踏みに行ったのかわかりにくい発言のツッコミづらさは異常」
女「うざい」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:14:47.70 ID:XvxBHigAO
女「てゆーかあんたさ」

暗殺者「なんね」

女「昔、初めて会ったときにはアサシンって自称しなかったっけ?」

暗殺者「せやね」

女「stubber関係ないじゃん」

暗殺者「あんま変わらないし」

女「バックスタブってか正面から切り結んできたじゃん」

暗殺者「そこはそれ、どこぞのソーサラースタッバーさんも基本真っ向勝負しかしないし」

女「誰だよ」

暗殺者「ちょっとネタが古すぎたかも知れんね」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:20:13.07 ID:XvxBHigAO
ウェイトレス「どゾ、オニオングラタンでス。それとエールになりまス」

女「はいよ、ありがと」

ウェイトレス「お皿下げますでス」

女「……っかぁ、しみるねぇ」

暗殺者「呑むわねぇ」

女「今日はアンタ持ちなんでしょ?
  ……てか、高山岳民訛りとか久々に聞いたなあ」

暗殺者「ああ、別にお金はいいんだけどね。
    ……とゆーか、高山岳民とかと話す機会があるのね」

女「ま、旅先でいろいろあるもんだよ」

暗殺者「山岳とか湖沼地帯は避けてるでしょ。適性がたりないーとか言ってたし」

女「そうなんだけど、いろいろあるもんなんだよ」

暗殺者「そういうもんかな?」

女「そー。アンタとの出会いもそのひとつ」

暗殺者「ところで実はこれファンタジーなんだぜ」

女「何さ急に」

暗殺者「メタ発言」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:26:26.85 ID:XvxBHigAO
暗殺者「場所はパブ『starvalley』からお送りしてます」

女「酔ってる?」

暗殺者「いんや。そもそも毒効かないし」

女「便利なような不便なような」

暗殺者「酔わせるのには便利だし、毒が無効なのもいいことよ。ただ酔ってはしゃげないのが残念」

女「普段から割りとはしゃぎ過ぎだと思うけどね。まあ、戦う人間としては有利なんじゃない?」

暗殺者「魔法耐性はマイナスいかってくらい酷いからそれでゲームバランスとってますし?」

女「凡そ不便な体のようで」

暗殺者「そーゆーのも含め自分ですし」

女「はいはい」

暗殺者「それに私は自分に酔えるからねー」

女「……」

暗殺者「ごめんこれは面白くなかった」

女「無理にボケるのやめたら?」

暗殺者「それは却下」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:29:11.97 ID:XvxBHigAO
女「てかさ」

暗殺者「なんね」

女「本題にそろそろ入って貰わないと。あたしツブれるよ?」

暗殺者「ツブれるってわかるなら控えたらいいのに」


女「やだ」

暗殺者「まあいいけど。そんときには介抱したげる」

女「やだ」

暗殺者「人のやさしさをむげに扱うのはやめようよ」
女「ヤだ」
暗殺者「その後にはしっぽりむふふと行きたいところですがな」
女「だからヤなんだって」

暗殺者「あ、一応私女の子です。いまどき流行りの百合ップルです」

女「違うだろ」

暗殺者「え、私女の子だよ? しかも処女。ヴァージン。希少価値。
    まあ子供産めない体質ですけど」

女「否定したのはそっちじゃねぇ」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:33:31.11 ID:XvxBHigAO
暗殺者「というか」

女「何さ」

暗殺者「そのボロくて染みだらけの服装、どうにかならない?」

女「マントはまだマシだと思う。」

暗殺者「外側だけ取り繕ってもなあ、ブーツとかホラ、裂けてるし」

女「金欠なのよ。旅をするにはお金が要るし」

暗殺者「けど服装くらいはさ」

女「だから一応買い換えるよ。
  基本的に街ごとに服を新調するようにしてるから」

暗殺者「あー、そうだったん?
    そういや、一応会うたび違う服を着古してるよね。ものの一月くらいで」

女「旅なめんな。まあ、平気そうな時にはスルーするけどね。
  したら次の街ではすごいことになんだけどさ。」

暗殺者「まあ、着替えって荷物になるしねぇ」

女「なんで、明日服は変えて、このボロとはおさらば」

暗殺者「捨てるの?」

女「そりゃね、古着とも言えないボロさだし」

暗殺者「それを着てるのは誰なんだか」



暗殺者「んー、下着……いや、マントで顔を拭いたりするし……」

女「あげないわよ、捨てるから」

暗殺者「お金は払おう」

女「……駄目です」

暗殺者「しゃあないか――」
女「買ったら古いのは燃やすか」

暗殺者「そんなっ!」

女「ゴミ漁りなんかさせないっての」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:36:53.35 ID:XvxBHigAO
女「ちょい食べ過ぎたかも」

暗殺者「そんながっつくからだと思います」

女「食える時に食っとかないと」

暗殺者「そんな食い詰めるほどではないでしょーに」

女「だって、旅の道中は携帯食とか狩った肉とかしか食べられないし」

暗殺者「野草や木の実の識別くらいできない?」

女「だいたい苦いか渋くてまずいじゃん」

暗殺者「塩とか使いなよ。あと煮るとか肉と合わせるとか」

女「まあ、したら多少マシだけど」

暗殺者「?」

女「街にいる間はうまい飯が食えるんだし、食べときたいでしょ。論点ズレてる」

暗殺者「……失礼」

女「まあ、いいけど。あ、エール追加。あと黒パン」

ウェイトレス「わかリましつァ」

暗殺者「うまい飯って言ったのに黒パン? 葡萄酒とチーズを」

ウェイトレス「はイー。」

女「チーズか、贅沢な」

暗殺者「そんな高い品でもないでしょうがよ」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:42:31.74 ID:XvxBHigAO
暗殺者「わざわざ黒パン?」

女「悪い? こっちのが食べ応えあるよ」

暗殺者「ただ固いだけじゃん」

女「腹持ちいいし」

暗殺者「消化悪いだけじゃんか」

女「そだけどさ、普段からツマミをなんでも頼めるよう身分ならともかくねぇ。
  安いものにする癖がついてて」

暗殺者「お酒が悲しむわよ、やっぱり相性って大事だもの。そもそもパンとエールってのがおかしい」

女「そうかなー。その組み合わせしたらもう何も食べられないくらいお腹にたまる最高の相性なんだけど」

暗殺者「それは私の言う相性と違う。……というか。」

女「?」

暗殺者「もう満足したの? いつもより慎ましいわね」

女「いいでしょ別に……少し太ったかなって。そんだけよ」

暗殺者「気にしないわよ?」

女「こっちが気にするのよ……」

暗殺者「それにそんだけ食べてちゃ今更なような」

女「気分の問題。ていうか大量に変わりなくても10皿と20皿はやっぱり違うの」

暗殺者「さいですか」

ウェイトレス「追加の料理トお酒をもちしましター」

女「はいはい、ありがとさん」

暗殺者「ありがとね。はい、チップ」

ウェイトレス「あの、もらえまセん」

暗殺者「そこの大食いがようやく満足したみたいでさ。
    今日は世話になったし。受け取って?」

ウェイトレス「あゥ、その」

店主「もらっとけ。んで今日はアがりな。もうすぐ食堂は閉じるからさ」

ウェイトレス「ハイ。……ありがと、です」

女「おー、カッコいいねぇ」

暗殺者「ふふ、惚れ直した?」

女「惚れてないから無理かナー」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:45:46.37 ID:XvxBHigAO
暗殺者「照れ隠しは無視するとして。店主さん、部屋の用意は?」

店主「済ましてるよ。案内しようか?」

暗殺者「それじゃ、この人の食後にすぐにでも」

女「部屋?」

暗殺者「酔ったでしょうし、この街にきてからまだ宿をとってないんじゃない?
女「あの「部屋を取ったから、話の続きはそっちで、ね?」

女「あー、やばいなー。おなかいっぱいでパンを食べる手が進まないなー」

暗殺者「じゃ、部屋に持って帰りましょうか? そのエールだけ飲みきってしまって」
女「……」

暗殺者「飲めない? なら私が代わりに片しちゃうわね」

女「それじゃ私「さ、行きましょ?」

女「……! わたしかえる――」

暗殺者「とうっ」

女「がフっ」

暗殺者「それじゃ、部屋に案内してもらえますか?」

店主「……はいよ」

女「――――」
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/19(日) 01:53:27.97 ID:XvxBHigAO
――――▼
暗殺者「さて」

女「……くびがいたい」

暗殺者「さて世界観説明のノルマも私たちの爛れた関係の紹介も終わりましたし」

女「……もうめんどくさいこいつ」

暗殺者「本題に」


女「お」


「ん、とりあえず仕事っすね」
「……はいはい、何するの?」
「とある業務の妨害。対象は私」
「……続けなよ」
「ギルド宛に依頼が来たんだけどさ、殺したら戦争の火種にでもなりそうなVIPをやっちゃえって
「私は関係ないからいいんだけどね。戦争しても。
「ってもさ。困るでしょ? 関所とか厳しくなると
「そ。まあ私たちが全力でやりあう速度についてける人間とか普通いないでしょ?
  適当に二人でラン[ピザ]ーして人目がなくなったら私が撤収するからさ
「そりゃ、ね。まあほら私もお金出すから依頼の二重取りだよ? 儲かるよ?
「わかった、ってのはわかったってことだよね。ありがと。だいすき。
 ふふっ……ごめんって。照れなくても、いや、うん、ごめんってば。痛いから。



暗殺者「それじゃ、契約は成立ということで」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/19(日) 02:30:48.37 ID:zc93XxdD0
デブ=ピザ saga推奨
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/24(金) 18:25:44.41 ID:MYhAQFjIO
これはかなり期待
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/25(土) 01:44:24.92 ID:ND4imLsAO
夜も更け。

ガス灯の明かりもなくなった街道。こんな時間にうろつくのは獣か狂人か、どちらかくらいなものだろう。
彼女は後者。星明かりをただうつろに眺め、ぽつぽつと呟く。
透けるような白い肌と赤い眼。吉兆も凶兆も孕む白子―アルビノ―の姿が月明かりに映える。わずかに色素の残る髪が完全な白化個体ではないように思わせる。
空への呟きは止まない。
野良猫がふらふらと歩き、横切っていく。間延びした鳴き声。彼女はそれに反応しない。
ふ、と視線が下がる。明確な方向に、明瞭な言葉を向けた。
「――」
跳躍する。三角跳びの要領で低い路地を跳び越え、屋根の上に着地。銀糸の刺繍のワンピースがふわりと舞った。
「身軽なのはいい事だな、白百合」
降り立った先の向かいの建物、先ほどまで彼女が見ていた方向から気だるげな声と共につぶてが放られる。
「――」
「そうじゃない。お前の今の立場を羨んでいるからな。嫌味くらい言わせろ」
つぶてを拾い上げ、紙を丸めて作られていたそれをほどく。
仕事について書かれたソレは、本来目の前の男がするべきものだ。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/25(土) 01:47:36.52 ID:ND4imLsAO
「……――」
「そうだな。困難は少ない。事後処理なんて知るところではない。
 用事が入ってな。別件に駆り出されたと言うべきか。
 ……そうだな。ただ、お前以外に頼む選択肢はないのさ。理解してくれ」
ため息。拒否はできない。それが出来るのは別件を抱えているときかワガママを通せる相手の時だ。今は、どちらでもない。
「――」
「……そもそも。お前はここで、何をするというのかな」
足音もなく、近づいてくる。
殺気はない。ただ一歩ごとに圧力が増す。
お互いの必殺の間合いよりわずか遠く。三歩の距離で立ち止まる。
「――」
「判っている、から。頼むのだろうが。」
「――」
そう。私の立場を守ってくれているのは彼だ。けれど、気分は悪い。
「お前が自由にしている損失を、印象的な仕事でぼかしてやろうという配慮じゃないか」
まあ、普段働かず仕事の妨害すらしているような私の印象を誤魔化すには、‘私にしか出来ない’をするのが最良なのだろう。
「――」
「交渉成立、かな。
 ……互いに生きてまた会おう」
「……はいはい。また、ね」
暗殺者としてではない別れの挨拶に、緊張を解く。
生きてまた、などと言うのは生存を優先しているかのようで。
殺しを済ますことこそを最良とし最優先とする暗殺稼業においてあまり口にするのは好ましくない。
仕事としてではなく個人としての関係に戻っての挨拶だというアピール、なのだろう。
「……まあ今回は平気でしょ」
恐らくは何事もなく片付くだろう仕事だ。何か予測を外す危険があるくらいでも構わない。


さて、忙しくなるかな。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/25(土) 01:50:35.33 ID:ND4imLsAO
――▽

女「――ふぁ、あ。……あたまいたー」

女「あれ。アイツ居ない?」

女「んむー……さぁて。っと」

女「とりあえず水浴びすっかな」トタトタ

女「おっちゃん、桶貸してー。あと、水場借りるよ」

店主「はいよ、水場にあるのを勝手に使ってくれ」

女「うーい」

ウェイトレス「あノ、たおるいりまスか」
女「――ん、ありがとね。その辺置いてて?」ガチャ

女「――♪―♪」ヌギヌギ

女「――♪―――つべたっ!」パシャン

女「うー、さむさむ。しかし汚いカッコはまずいからなー」

女「偉いさんに会うのはあんまし得意でもないんだけどな、仕方ない」

女「にしても、仕事ねぇ」

女「あたしの事を助けてくれてるのは素直に嬉しいんだけどなー、なんかなー」

女「……まあ、いいか。私はあいつを信じるのみ」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/25(土) 01:51:47.08 ID:ND4imLsAO
暗殺者「モトがいいからちょっと身綺麗にするだけで綺麗になるよねー。美人は得だねぇー」

女「どっから湧いた」

暗殺者「さぁねぇ?」

女「あー、まあ別にいいか。とりあえず服買い替えるからさ。経費寄越せ」

暗殺者「……必要かなぁ、ソレ」

女「この泥の染み付いた上着やら血の染みた手袋やらで信用を得られると思うなら不要かな」

暗殺者「浮浪者寸前だよね。旅人にすら見えない」

女「でしょ。どうせならいい服買いたいし、先払いってことでもいいからさ」

暗殺者「お金ないわけでもないでしょうに」

女「両替してないもん。ここら銀貨中心じゃん? 隣国の金貨と協会紙幣しかない」
暗殺者「また極端な。……紙幣替えたら?」

女「両替窓口って昼間しか開いてないからなぁ」

暗殺者「……しょうがないなぁ、ホラ、銀貨5枚渡しとこう」

女「ありがとー」

暗殺者「稼いでるくせにケチいよね」

女「……あたしの装備にどれだけ金がかかると思ってか」

暗殺者「半分以上趣味で散財してるでしょうが」

女「そうだけど!」

暗殺者「まあ、今回はフル装備にしなくても平気でしょ。相手は私だよ」

女「気を抜くと死ぬってことかと」

暗殺者「大丈夫だって。うっかり致命傷入れたらそこでやめるから」

女「致命傷ってことは死ぬってことかと思うのだけどー」

暗殺者「気のせい」

女「なんだ気のせいか」


女「……ん?」
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/25(土) 01:52:54.55 ID:ND4imLsAO
女「てゆか風邪ひく」ブルル

暗殺者「そんなヤワでもないくせに」

女「酒入れた翌日だし、気を付けないとさ」

暗殺者「ふむ」

女「てことで部屋に戻らない?」

暗殺者「んー、私はまだすることが」

女「そか」

暗殺者「なので、とりあえずコレ」ホイ

女「?」

暗殺者「資料をね。とりあえず調べた限りのあの家の情報。役に立てば幸いです」

女「ふーん……」

暗殺者「捨てるなよ。ゼッタイ捨てるなよ。読んでよ?」

女「振り?」

暗殺者「ちげぇ。……真面目なこと書いてるから捨てないで?」

女「ん、実際助かるから捨てないよ。ありがたく使おう」

暗殺者「とりあえず、今日か明日か。協会向けに依頼が来るので」

女「それを私が受領。内情を理解している私が出来レースに参加」

暗殺者「そのためにもちゃんと読んでね。まあ、大半は要らない情報になるんだけど」

女「読む気失せるなぁ。ま、了解。
  じゃあ私は服とか買ってから窓口行くよ」

暗殺者「ん、それじゃまたねー」

女「はいはい。また後で」
19 :1 :2012/02/25(土) 02:00:05.28 ID:ND4imLsAO
とりあえず投下終了。
需要は不明ですが基本的に週末に貯めたぶんを出します。ただ、キリがよければ平日も多分出します。つまりでき次第。
ほのぼの暗殺ギャグは難しそうなので安易な路線に突っ走ります。迷走ぶりをお楽しみください。
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 02:41:15.57 ID:VdihqcGEo
ほのぼのと暗殺って組み合わせがまずおかしいんだろwwww
期待してるよ乙
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 02:57:59.74 ID:0BsFq3lSO
ほのぼの暗殺ギャグ…これは流行る
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/25(土) 07:44:15.18 ID:a2s22Rblo
楽しみすぐるから、書きたい方向に突っ走れ!
期待期待
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/28(火) 17:47:49.88 ID:rexUDJvAO
露店商「よっ、姉ちゃん。固形食安いよー。買ってきなよ」

女「悪いね、また今度」

行商「はぁい、お嬢さぁん。干し肉買わなぁいぃ?」

女「間に合ってますー」

旅商人「水袋、牛のいいのが入ってるよー」

女「……さっきから私に寄って来るのはなんでこんな……」

細工師「お、そこのお嬢…(そっぽ向き)お兄さん、彼女にアクセサリーとか買わない?」

女「華麗にスルー」

女「……やっぱあれか、汚いカッコしてるからかな」

物乞い「ん、嬢ちゃん。金持ってるのにそんな格好はいただけねぇやな」

女「むぅ、そこまで? ……良く泊めてくれたな、あの店主」

女「ってか、そうだ。服屋知らない? 適当に銀貨4枚ありゃ一式揃うランクの」

物乞い「ん、随分高いな。……綺麗なってより強度とかが必要なのか?」

女「そーねぇ、紹介してくれたら60出すわ」

物乞い「金はあるんだろ。100くらい出してくれよ。口利きするからさ」

女「物乞いの口利きってもねぇ」

物乞い「まあまあ、ありがちな言葉で悪いが裏の顔役とかそういう立場なんだぞ。悪いようにはしねぇさ」

女「……じゃ、80ね」

物乞い「毎度あり。ついてきな」
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/28(火) 17:49:50.90 ID:rexUDJvAO
物乞い「ここだ。それじゃ、80な」

女「ん、おまけしようか。85」

物乞い「……ありがとさん。それじゃな」スタスタ

女「毎度ー」

トントン

女「やってるー? ……狭い店だな」

装具屋「あぁん? 旅の人かい。
    ……ウチは頑丈なのも軽いのもなんでもあるよ」

女「服一式とマント用の布と革手袋。
  ついでにベルトとか、いいのある?」

装具屋「安いのでいいなら布一枚で300ってとこかな」

装具屋「服はお前さんのサイズによるが、2000出せばそこそこの品を揃えてやるよ」

女「布は頑丈なの? 麻とかなら買うよ。200までなら」

装具屋「ん。麻は一枚で300なんだけどな。サイズはいいかい? これくらいだ」

女「ふむ。服も見せてくれる? まとめて買うからさ、安くしてよ」

装具屋「そのつもりの2000なんだがな。これ以上サービスしてやれん」

女「あ、口利きしてもらうの忘れてたけど、物乞いのおっさんに案内してもらったんだけどさ。それは値引きの理由にならない?」

装具屋「物乞い……あの人か」

女「? 何者なんだあのおっさん」

装具屋「ん、じゃあ安くしとくよ。……ところで」

装具屋「付与術つきの品を買わないか? 安くするよ」

女「む、見せてもらおっかな」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/28(火) 17:51:29.35 ID:rexUDJvAO
カランカラーン

ウェイトレス「おかえりなサぃ。昼食はいかがでスか」

女「ただいま。別にいらないかな」

女「ただいまー、っつっても誰も」

暗殺者「おかえりー」

女「……ん、出迎えどーも」

暗殺者「荷物多いね?」

女「けっこう久々に大きな町に来たからね。やっぱなかなか買えない品物が多いわ」

暗殺者「それと、その服。かわいい」

女「……かなり判断に困るんだけど」

暗殺者「誉め殺しってやつ? いや、率直な感想だったんだけどさ」

女「あんたにされたら本当に死にそうよね。油断したところを」

暗殺者「ちゅっと?」

女「ざくっと……って手に吸い付くな! タコか!」

暗殺者「残念、淫魔かなー」

女「こ、こら。指舐めなぃで、ってば、ゃめ」

暗殺者「んふふ、ちょっと苦いかなー? なんか薬草とか……違うな、解毒薬買ったのかなこれ」

女「ん、ちょ、やめなさ」

暗殺者「あ、薬指と小指だけ甘い。さては固形砂糖味見してたなー? ずるいぞー?」

女「こら、ほんと、やめっ」

暗殺者「んふふー。……指フェラしちゃえ、んむ」

女「っぁ、ひゃめ――やめい!」

暗殺者「んぐぶっ!?」

女「ったく、何すんの、よ、全く!」

暗殺者「ふ、ぐ、んんっ、ぉご、んぶふっ、ん、んむーっ!?」

女「……ったく。」

暗殺者「」

女「……おーい」

暗殺者「ちょっと目覚めそうになった」

女「」
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/28(火) 17:52:41.30 ID:rexUDJvAO
暗殺者「うー、口の中切れたかも」

女「我慢なさい」

暗殺者「にしても買い込んだもんだね」

女「久しぶりに大きな街に来たからねぇ。」

今日の戦果は守護布と鋼糸の混ぜてあるロープが主で、後はナイフとか研ぎヤスリとか。占めて4700。あと冒険服と旅装。こっちは3000。あとよそ行きのためのネクタイだとか。これがだいたい1000くらいで、色々合わせて10000以内に収めてみた。

暗殺者「おー、耐刃布だ。……ん、私の爪で切れないから安物ではなさそうだ。値切って1000ってとこ?」

女「そこまでやったら恥知らずでしかないでしょ。というか強度確認ぐらいはしてあるっての。斬ろうとすんな」

暗殺者「えー、いいじゃない。ナイフは使わないからさー?」

女「ほら、あんたで切り取らなくてもあげるから」

暗殺者「……リボン? これも対刃だ」

女「使いなさいよ。ありがたく」

暗殺者「え、あれ? くれるんだ、意外」

女「勝手に切られるより自分で切った方がマシだって気づいたのよ……」

暗殺者「……ふーん。へへ、プレゼント。はじめてかな」

女「ちゃうわよ」
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/02/28(火) 17:53:58.44 ID:rexUDJvAO
暗殺者「違わないよ。あなたから物をもらうの、はじめて」

女「ん……うん。それはそれとして。」

女「あんた、別に暗[ピーーー]る時に予告とかしないでしょ?
  なんであのお偉いさんは知ってたのかわからないんだけど」

暗殺者「漏洩したのかな? びびって外出を減らしたり外部からの接触を制限したり、そういうのをさせるのが主な目的って可能性はあるし」

女「殺せたらもーけ、って? 気に入らないね」

暗殺者「まぁ、ウチって実際守秘義務はあるけど緩いから。接触できる身分なら金を積めば依頼の有無や詳細を探れるのよ」

女「えらい雑ね」

暗殺者「世間を平和に保つには暗殺情報なんてのは漏洩させてるくらいでないとね。私ら本当に予告なしなら大国要人の首でトーテムポール作れちゃうし」

女「まあ、確かにちょっと兵役に毛が生えたような訓練しかしてないのとか種族的優位に依ってるようなのは紙屑同然だもんねぇ」

暗殺者「そんな簡単に要人が死に替わりするなら都市や国家が機能しないでしょ?各国の国家中枢や大規模組織はだいたいウチに間者じゃないけど一人二人くらいは暗殺者として置いてるし、案外簡単に知らせは行くんだよね」

女「[ピーーー]気がないなら私でなくて他の適当なやつとやり合えばいいような」

暗殺者「あなたくらいでないと殺しちゃうよ?」

女「あー、まあ。うん。」

暗殺者「あるいは私が死ぬ」

女「そっちが本音か」

暗殺者「化け物代表みたいな正義の味方が、まだ旅立ってなかったらこの国の領内にいるじゃない」

女「あー、まあ。多分今北上してるはずだから国境都市辺りかな」

暗殺者「他にも変なイレギュラーで死にたくないし。私に死んで欲しくないでしょ?」

 「えぇ、私はあなたを愛しているも「あたしが言ったみたいになってるからやめい」

女「……はぁ、確かに死なれたらやだし。もう前金ももらったからね、やったるわよ」
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/02/28(火) 19:05:15.76 ID:tm+QVxARo
投下終了かな?
乙!
>>12にもあったけど、
殺す や 死ね はメール欄にsagaで表示されますよ!
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/02/28(火) 20:40:24.53 ID:mn7cJ55IO
やばい、かなりおもろ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 20:26:32.27 ID:PENSfw7AO
――▼


夜は化物の時間、なんて表現が廃れたのはかなり昔の話だ。夜でも灯りの絶えない場所が増え、闇夜というべき暗さは失われつつある。

夜に化物が少なくなるなら、ソレはどこに行ったのか。日中、昼間、昼日中。昔の化物たちが立ち入ろうとしなかったその時間に、現在の化物は潜みだした。
――なんて。ただ化物と呼ぶものの内容が変わっただけの事だったりする。

「とか、気取ってみたりして」

案外詩人にでも向いているのかしら。私は人に話せないネタが多いけど、彼女の話なら楽しげでいいかもしれない。
目的を話さずに仕事を任せたのはちょっとだけ反省している。関所がどうとかまるで彼女のためであるかのように振る舞って、そして彼女は何も言わず騙されてくれた。
嘘はついていないけど、話しておくべき事を話していませんでした、なんて今更流行らない詐欺の手口だろう。
信頼があるから裏切れるってのも、大概歪んでるよなぁ。
「さて、仕事しなきゃ」
夜までに街の自警団や、傭兵だの冒険者だのがたむろする宿をチェックしておかないといけない。不測の事態を未然に防ぐ。これをしなくては暗殺者なんてのは仕事を10件も果たさぬ内に人生が終わってしまうだろう。

そんな間抜けをやらかさなくても、100の経験を積む前には消えてなくなるのだろうけれど。

銀の髪を2つに結い上げ、私は路地へと繰り出した。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 20:28:19.09 ID:PENSfw7AO

 ―▼


わたしは、弱くない。
残念ながら、弱くない。
人並みに弱ければ、簡単に消えてしまえたのに。
人並みに幸福を求めて生きて、いずれは死んだろうというのに。
天はわたしに二物も、それ以上の産物も与えた。
与えられていた事に気づくまでに経験した全てが、無意味になった。
「おい、嬢ちゃん。こんなうらぶれた場所に来るもんじゃねぇぞ?」
「そうそう、怖ぇおじさんにさらわれちまうからな、ハハハハ!」
下卑た笑いが反響する。こんな裏の奥まった路地でなら、確かに何があっても表には知れないだろう。

「ふ、ふふ? ふフふ――」

痴れた笑いがこだました。
ここは良い場所だ。外にはしばらく知れないだろう。何をしても。

「ふふ」

「なんだ、こいつもうイカれてんのかよ。どこかの売り屋から抜けてきたのか?」
「ただ足……腱が切れてねぇから多分ここいらじゃないな。モグリか?」
「おい、そりゃまずいだろ。ちっ、こいつ、何か身元のわかる――」
するり、人のすきまを抜けて。そのまま彼らを置き去りにした。
「あ? 畜生、逃げやがった――」
遠のく声。さて、まずは暮らすお部屋をみつけないと。
「ふ、ふふヒ、は、ハ――」
32 :tips [saga]:2012/03/04(日) 20:28:50.12 ID:PENSfw7AO
この都市の人口は、規模の割には少ない。規模を鑑みれば十万都市クラスなのだが、この街には約三万人程度の人口しかないという。〔スラムとかの層を足しても双方プラス一万程度だから大差ない〕
国境近くで交易がそれなりに盛んだが資源に乏しい土地で人口の流入が少ないことと魔術都市であるからだ。
魔術都市。
魔法使い、魔術師などと呼ばれる人間を中心として成り立つ都市の総称だ。そのタイプは様々だが、魔術の恩恵を受けるために人口過密になるか、逆な魔術の恩恵を寡占せんがために人口的には過疎に近付く。
この街には複数の魔術名家があり、それらが政治の中枢に関わっている。
今回の仕事の対象は比較的古い血統だが、近年政治に参入してきた家系で、現在の当主婦人が政治の場に参加している。
その婦人の警護があなたの請け負う仕事で、私の仕事はお察し下さい。
その他詳細については以下――
「ながっ」
一枚目の用紙の半分を読み終えた所で飽きた。また時間のあるときに残りは読もう。何はともあれ、件の婦人が住まう屋敷に向かうとしよう。
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 20:30:55.97 ID:PENSfw7AO
――▽


女「さて、来たのはいんだけど」

門番「しばし待て」

女「と、言われてすでに四半刻」

門番「協会からの方だと確証がとれるまで通せないからな」

女「はいはい、しかし門番って。古風なことしてるわよねぇ」

門番「まあ、我らの主人も今でこそこの都市の役人だが元々この家は単なる魔術の家系だったからな。そのころから雇っていた下男たちの働き口を残してくれたのさ」

女「ふーん。説明乙」

門番「興味なさそうだなおい」

女「まあねぇ、その辺は調べたし。暇過ぎて結局全部読んじゃった」

門番「?」

執事「お待たせしました」

女「お?」

執事「旦那様がお待ちです。」

女「旦那? 女性の方では?」

執事「街で執務をなさるのは奥方さまなのですがね。今回の護衛について依頼したのは旦那様なのですよ」

門番「ふん、調べが足りないんじゃないのか? 依頼人が誰かも理解してないなんてさ」

女「あー」
女(言われたままに受けたからなぁ。実際正規の依頼の方はそんなに見てないのよねぇ)

執事「門番君? あまりマナーのよくない発言ではないですか」

門番「……失礼しました」

女「いえ、構いません。事実ですから」

執事「そうですか。まあ参りましょう」

女「ええ、あまり待たせても良くないですからね」

門番「態度が違いすぎだろ……では、執事さん、よろしくお願いします」
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 20:32:33.43 ID:PENSfw7AO
女「不躾ですが、なかなかに広大な庭をお持ちですね」

執事「古くからの家系ですから。裏手の丘も旦那様の土地となっております」

女「ふむ〔の割には実験施設や書庫にあたる場所が屋敷の造りから見て取れないけど〕」

執事「古くはこの土地の地下にある洞穴で儀式術を中心として魔術を行使していたのですがね。最近はもっぱら魔科学による工業品を生業としておられます」

女「あぁ、道理でお屋敷に併設した施設がないわけですね」

執事「不明な点や不満はお申し付け下さい。救国級の方に警護をお任せするなどというのはなにぶん初めてのことでして、旦那様からも良いように配慮せよと」

女「あー……」

執事「英雄……いえ。英傑であられるあなたを信用しての事例ゆえ、内部の見取りなども説明は致しますが。魔術師の根城ですから、秘匿する部分もあることはご理解くださいませ」

女「あ、いえ。どういった形で仕事をさせて貰えるのかはわかりませんが、張り付く形を取れたらさほど影響がないかと」

執事「そうですか。しかし旦那様からどのような形態を求められるかわからないですからな。万全を期するためにも説明はのちほどさせていただきます」

女「ふむ、わかりました」
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 22:28:49.23 ID:PENSfw7AO
執事「旦那様、女さまをお連れしました」
当主「ああ、入れてくれ」

執事「はい。」

女「――っ。どうも、本日から警護にあたります女と申します。よろしくお願いします」

当主「……ふ、丁寧にどうも。当主だ、よろしく」

女「くくっ……ってかさぁ」
当主「ん? ……あぁ。お前は下がっていい」

執事「畏まりました。それでは失礼いたします」

女「……」
当主「……ぷ」

女「っはは!……似合わねぇー! アンタあの時の剣士じゃん」

当主「お前も大概敬語が似合わん。というか微妙に敬語あやしいからやめといた方がいいんじゃないか?」

女「ま、アンタの恩人であるところのこの私が下手にでるこたないよねぇ」

当主「あぁ? 腹が裂けてたのを手当てしたのは俺だろうがよ。俺は命の恩人ってやつだろ。多少は尊重しろ」

女「えぇー? ってかアンタ剣士だったじゃん。なんで魔術一族の当主なんよ」

当主「……そうだな。話そう。今回の仕事にも関わることだからな」

36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 22:31:15.67 ID:PENSfw7AO
当主「最後に会ったのはいつだっけ?」

女「変な口説き文句みたくなってんよ。ん……大体一年ちょい昔じゃない?」

当主「そんなもんか。……ウチはかなり昔から続く儀式術の家系でな」
「まあ、あれだ。家柄は立派だが財産は少ないみたいな家だったんだが、先代が……親父が、余所から魔機械やってる血統と結婚してさ。魔機械ってのは金になるからそれでかなり強力な家になったんだな。
「で、そんだけ実力をつけたから街の政治に参入して……ただ、それは母さんがやってる。親父は今の世界に詳しくない、割りと古くさい魔術師だからな。
「まあ、ここまでなら問題なかったんだが、最近発言力を増してきてな。敵も都市の内外問わず増えてきた。
「そこにきて、とうとう暗殺の話が持ち上がってきたわけだ。うちの都市で飼ってる内偵が確かめたから確定だ。
「残念ながらウチはさほど迎撃向きじゃないからな。いや、正確にはいつ襲ってくるかわからない相手に警戒を保つにはコストが高すぎるんだ、ウチの魔術は
「となりゃ、餅は餅屋……いや餅をよろず屋に求めたようなもんだが、お前みたいな強力な個人や少グループを新たに雇うほうが都合がいいんだよ」

女「……あたし別にサボりとかしないけどさ、英雄協会って強制力あんましないから。護衛が、死にたくないーって逃げる可能性もあるからね」

当主「まあ、その時はその時。時間くらいは稼いでくれるだろ?」

女「そりゃね。出会い頭に逃げ出すとかむしろ殺されに行くようなもんだし」

当主「まがりなりにも魔術師なんだ。時間さえ稼いでくれたら自衛できなくもない。だから暗殺者の質によっては逃げにかかっても構わん」

女「ふーん?」

当主「とりあえず、あとしばらくしたら母さんが帰ってくる。護衛をつけるとは言ってあるからな。しばらく楽にしていてくれ」
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/04(日) 22:36:47.65 ID:PENSfw7AO
女「……あんたの嫁が危ないんでない?」

当主「独り身だからな、問題ないよ。実際、親父は当主が面倒になって俺に押し付けるいい口実にしただけだし」

女「雜ねぇ。身内の危険だってのに」

当主「いや、正直母さんは下手なやつより強いからな。死なないとタカをくくってるのさ。……恐怖に震えて事態が好転するわけじゃないしな」

女「――そうね。どうせなら明るく振る舞う方がマシだわ」

女「それじゃ、実はお腹すいててさ。ご飯食べてていい?」ガサガサ

当主「ひとんちで干し肉とか出さないでくれよ。食事くらい出すさ、客人なんだから……加減はしろよ?」

女「ん、話がわかるねぇ。腹八分で我慢してやるよ」

当主「……お前の八分ってのは適当な食堂でいくらくらいだ?」

女「ん? 銀貨一枚くらい?」

当主「……ま、いいだろ。いいか、それは8人前〜10人前は賄えるからな」
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/03/04(日) 23:03:17.60 ID:PENSfw7AO
今週ぶん終了。他見てるとこのくらいの分量書き貯めてからの投下が多いので見切り発車を反省。ほのぼのギャグはどこだ。

なんか派手なことが出来そうだから魔法を絡めたけど、説明なしだとイミフで説明ありだと冗長という悲劇。

一応そろそろスペックを以下に。

女 ――→ちょっとどころじゃなく強い。
ただ燃費がちょっとどころじゃなく悪い。
スタイルは良いのだが女らしさが少ない。
気合入れたら美人。普段はそうでもない。

暗殺者――→今回のメインヒロイン。
兼、パートナー。兼、マネージャー。
化け物じみた強さと暗殺技能を持つ。
出番が思ったよりも少なくなってる。
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/06(火) 14:26:51.53 ID:/03QcHCho
消化不良気味
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/11(日) 23:11:55.59 ID:FnoYuUJAO
当主「……食うなあ」

女「? ねぇ、このスープまだある?」

執事「お持ちしましょう」

当主「本当によく食うな」

女「んー、おいしー。あ、ちょっとサラダボウルこっち寄越してよ当主サマ」

執事「どうぞ」

女「ありがとー」

女「んむ、美味しい。これ何のスープなんです?」

執事「あぁ、これはキジ肉を煮込んだスープですね」

当主「しっかし、よく食うよな!」

女「メインのこれは鹿肉ですかね? いや、これも美味しい」

執事「そうですね、裏山で先日猟れた鹿です。まだ召し上がりますか?」

女「催促したようですいません、それでは頂けますか?」

執事「旦那さまはいかがなさいますか?」

当主「いや、いらないよ……しかし、食うなあ?」

執事「食後のお酒やデザートなど、用意出来ております。いつでもおっしゃって下さい」

女「ん、お気遣いなく。とりあえず私に酒は不要ですよ。注意力を散漫にしていては務まりません」

執事「これは気が利きませんでしたな。ふむ、コーヒーはお好きですか?」

女「贅沢を言わせて貰うなら、紅茶か烏龍茶ですかね」

執事「それでは紅茶を」

当主「……無視してるんじゃねぇよ!」

女「おぅわ、びっくりしたー」
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/11(日) 23:14:29.30 ID:FnoYuUJAO
当主「いつまで食ってるんだよアンタは」

女「いや、だってあんたの親――ひいては護衛対象が来ないし」

当主「議会に出てるからな」

女「にしてもね、いつもなら昼前か少し過ぎたうちに一度帰るんでしょ?」

当主「あぁ、午前の議会の後はだいたい事務だからな。今日は特に午後に外での仕事はないはずだから帰ってくる、はずなんだが」

女「……うーん?」

……タタ……ドタドタドタ

女「なんか騒がしい……3人? かな。来るよ」

門番「失礼します! 緊急の報告が!」バタン!

当主「どうした? ……私兵! ……その、背中の」

門番「は……おい!」

私兵「……申し訳ない。……突如襲撃にあい「それはいい! 背中の……母さんは」

私兵「……息はあります……危険な状態……ですが」

門番「医者に見せるより治癒魔術を施した方が確実だと見て、こちらまで逃げてきたそうです」

当主「……すぐに親父を呼ぶ。執事!」

執事「は、すぐさま地下の準備を済ませて参ります」

夫人「……当、主」カハッ……

当主「すぐに治療します。気を確かに持って少しの間耐えて下さい……なあ、女」

女「ん」

当主「状況が変わった。母さんを死守してくれ。少なくとも完全に復調するか」

女「暗殺者が‘いなくなる’までは?」

当主「……ああ、とりあえず母さんの側から離れるな。俺は準備を済ます」

女「……」

私兵「……あなたが、英雄さまですか」

女「……ん」

私兵「私たち……私兵団、五名のうち、私以外……全滅しました。もはや、あなたに頼る他に、ない」

女「……」

私兵「アレは……銀色の髪に、赤黒い装束の……少女でした」

女「……」

私兵「あんな少女に、あんな動きが……出来るものなのか……」

女「…………」

私兵「……頼みます、あの方を――」ガク

門番「! おい!」

女「……気絶しただけだよ。死んではない」

門番「……そうか」

女「……何が起きた? 私たちの茶番劇はどこへ行ったのよ……」
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/11(日) 23:18:10.42 ID:FnoYuUJAO
――
――――


女「……」

当主「とりあえず外傷は治療した。経過をみないとわからんが毒薬なんかは塗り込まれていないはずだ」

女「……そう」

当主「……いきなりの事態で対処を決めかねてる、助言があれば助かるんだが」

女「あんたの下で働くのが今回の仕事だ……けどね。まぁ、命懸かってるしなぁ」

当主「……悪いが、キャンセルは」

女「しないし、出来ない」

当主「すまん」

女「いいよ。とりあえず、親父さんは今は?」

当主「今は結界を維持してる。治療後にすぐに展開した」

女「……無駄だからやめさせときなー」

当主「なんd「結界を作ってても、暗殺者からすれば消えたタイミングで乗り込めばいいし。そもそも力づくで破れる相手には無価値だろ」

女「あんたらが治す前に見たけど。ありゃ異常だ。馬鹿でかい刀を達人が振り抜いたのかってくらいの破壊力、肋骨を縦に両断するとか。化け物だ
「治療の最中、遺体が届けられたけどさ。見たろ? およそ人間業じゃない。親父さんの張った並みの結界じゃ、無駄だろ」

当主「なら、どうする? そもそも結界を破られると「言わなきゃわからんかね? この結界が邪魔になりうる」

当主「……すまん」

女「いいよ別に。結界を張るのは常識的な判断だし。ただ、えらくやり辛い結界だから」

当主「そうなのか? 俺は詳しくないからな。親父が張った結界がどんなもんかいまいちわからん」

女「とりあえず、結界の中には多分いない。あたしは外でちょっと探ってくるから」
当主「離れては困……大丈夫なのか」

女「即追撃してりゃ、あの私兵君が逃げてるのをまるごとミンチ。くらいはできそうな相手だよ。追撃がないのには、それなりの理由があるんだろ」

当主「……人目につくとまずい?」

女「多分ハズレ。だって逃げてる二人は相当目立ったろ。気付かれずってんなら有り得ない」

当主「なら…………示威行動、か?」

女「多分。だとしたらこれで暗殺騒動は終わりだね。少なくともしばらく政治復帰は困難だ」

当主「……むう」

女「違ったらマズいから今日は全力で警戒しとくよ。めんどいから見付けた時点で暗殺者は消すけど」

当主「……頼んだ」

女「あいさー。とりあえずこの結界、どこまであんの?」

当主「屋敷と、その周辺数メートルってとこだろう」

女「ん。じゃあちょっと外を見てくるよ」
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/03/12(月) 06:11:46.16 ID:FZunJhaAO
女「……」

女「……」

女「――いるんでしょ?」

暗殺者「ばれてら」

女「勘よ。気配には気づかなかったし」

暗殺者「そーなん?」

女「で?」

暗殺者「でって?」

女「あんた、何を隠してたの?」

暗殺者「……その質問はズルいからやめてよー。言わなくて良いことまで言うはめになるし」

女「……そうね。じゃ、質問。‘あんたがやったの?’」――――

暗殺者「‘No’だねぇ」――――

女「‘誰なのかわかる?’」――――

暗殺者「同じく‘No’」――――

女「‘想定外ってこと?’」―

暗殺者「‘……そうだけど、そうでもないような?’」―

女「……ん。今日はこれくらいで我慢しときましょうかね」

暗殺者「はー、しんどー」

女「っていうか、アンタじゃないなら何よアレ。巨人族?」

暗殺者「外見的特徴は聞いてない?」

女「銀色の髪の毛の少女」

暗殺者「ほら、その時点で違うじゃん?」
女「……一致してんじゃない」

暗殺者「ホラ私、銀髪の美しょ――あたっ! 痛いなあもう」

女「馬鹿言ってないで。違うのよね?」

暗殺者「【確認済み】でしょー?」
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/03/12(月) 06:12:51.11 ID:FZunJhaAO
女「じゃ、アレは?」

暗殺者「言ったらあなたが困るから」

女「言わない? 言えないではなく?」

暗殺者「さぁねー」

女「イラッと来るなあ……これからどうする? 貴方の仕事については」

暗殺者「……とりあえずプラン通り、かなぁ」

女「ポーズだけでもとらないとアンタはマズい……とか? でも、別の暗殺者っぽいのが居る時点でアレだけど」

暗殺者「雇われの悲哀ってやつかなー。背いても私の首が飛んてオシマイ。雇い主には影響なし」

女「空しいわよねぇ。私も似たようなところがあるし」

暗殺者「ま、そっちと違って首切られてからの心配はいらんけどね!」

女「? むしろ暗殺者だった奴が仕事探す方が大変じゃない」

暗殺者「いや、仕事できないとなったら首から上が吹き飛ぶのよ。このチョーカーで」

女「……」

女「死んでるやないかーい」

暗殺者「まあ、職探しは不要でしょ?」

女「そういう問題か」

暗殺者「終身雇用?」

女「文字通りではあるけども」
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) :2012/03/12(月) 06:17:38.84 ID:FZunJhaAO
女「とゆか」

暗殺者「なんぞ」

女「アンタ別に爆弾が至近で爆発したくらいなら耐えない? 絞殺とかならそれこそチョーカーぶった切ればいいし」

暗殺者「んー、これはあくまでもGPSみたいなもんでさ?」

暗殺者「そら確かに爆発はするけど外そうとした時とかくらいでね。で、コレが爆発してたりで無くなってたら私より怖いのが襲って来るわけよ。イコールで死亡?」

女「難儀ねぇ」

暗殺者「逆言えば命令に反逆しようが適当に失敗しようが怖いひとの気分次第で見逃されるのよね」

女「雑な……」

暗殺者「そのおかげでお互い生きてるんだし、まあ良いことだよ」

女「……そうかもねぇ」

暗殺者「でもまー、いつか殺さないとまずいのよ。どうやって死んでみたい?」

女「アンタに殺されたくないかなー」

暗殺者「却下」

女「はぁ……じゃ、あれだ。忙殺とか」

暗殺者「仕事をくれてやればいいのかしら、ソレ。カローシするくらい」

女「カローシて。悩殺……は、無理か」

暗殺者「はぁ? よ、ヨユーっすよ!」

女「えー、もう思い付かないな」

暗殺者「そこは何か考えようよ」

女「いやー、そんな出てこないよ?」

暗殺者「どれも死んでないやん! ……と最後ツッコミたいから三段オチにして欲しかった……」

女「なんかごめん」
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/03/12(月) 06:22:50.77 ID:FZunJhaAO
女「さてはて……」

暗殺者「例のやらせだけど……する?」

女「そう、ねぇ」

女「……近場にヤバいのいなさげだけど。襲撃犯って何をしたい何者?」

暗殺者「キチ野郎……もといキチ娘さんかなぁ、あたしで調べたけど、聞く?」

女「その単語で既にお腹いっぱいにくどいんだけど」

暗殺者「あー、とりあえず私で消すからあんまし気にせんといて?」

女「信じておくけどー、じゃあその間は待ち?」

暗殺者「……っかなー? まあ、別のが来ないように見張るくらいはしててよ」

女「別のって本来アンタでしょ? さらに別……?」

暗殺者「まあ、一応ね」

女「ダブルブッキングとかってあんのかね、あんたの職場」

暗殺者「基本ないけど」

女「ないだろ」

暗殺者「モグリはいるからね、どこにでも」

女「……そうねぇ。はぁ、憂鬱だ」
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 08:14:20.08 ID:ZJGtz6HIO
期待大
最初から改めてじっくり読んでみる
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/12(月) 14:46:07.51 ID:ueRGPIPDO
追い付いた

おもしろい
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/13(火) 18:23:36.57 ID:x40Pq4SIO
待てるから待ってる
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:35:18.75 ID:UOLnM3JAO
暗殺者「さて、っとぉ」スッ

女「?」

暗殺者「行くよ」

女「行くの?」

暗殺者「やるべき事が増えたからねぇ」

女「……そうね」

暗殺者「あなたは?」

女「ここで護衛。当然じゃない」

暗殺者「そ。護るべき人については?」

女「平気だとは思うけど……」

暗殺者「なんかあったらごめんね?」

女「それは私が見なかったのが悪いのではないかと」

暗殺者「あー……そりゃそう、だ」

女「なー?」

暗殺者「そうね。ま、あなたのせいにしましょ」

女「そ。私はあなたを信じたんだから。あとは任せてしまいなさい」

暗殺者「……行ってきます」タッ

女「ん。」

女「……ふぅ」


女「……早く戻った方がいいのか」



女「さてはて……鬼が出るか、悪夢を見るか、っと」

暗殺者「――それは私の決め台詞」

女「まだいる、むゅ?」プニッ

暗殺者「ふふふ、現役暗殺者の気配を絶つ能力を舐めんなよー?」ムニムニ

女「しばくど?」

暗殺者「我々の業界ではご褒美です」ムニムニ

女「……去ね!」

暗殺者「あたっ! じゃ……ホントに行ってきます。」

女「おう」
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:37:01.14 ID:UOLnM3JAO
――
――――

  「あー、まさか国境を渡れないなんてなぁ」

 「それもこれもあなたがお金を無駄にしすぎるからでしょ」

  「でもな、人を助けないのは間違いだろう? 僕の存在理由。レゾンデートルなんだ」

 「生活費くらいは残しなさいよ……」

  「レゾンデートルだからな」

 「あんたは教わった言葉を繰り返すのやめなさいよ」

  「でもそれが俺の――」
  「レゾンデートルではないだろう? 主よ」

  「」

 「反論はなし、私も賛同。この議題は終了しましたー」

  「うーむ。でもさ、こっちにも。どこにでもまだ困っている人は居るわけで」

 「そらそうだけど」

  「まぁ、魂の輝きを失われるよりはましか。その愚れ――愚直さこそが私を使う資格足り得る」

 「愚劣って言わなかったかお前」

  「言ったかもな」

 「上等だよ表でろやバターも切れなくしてやんよ」

  「やめろって。そろそろ街につくからさ。静かにしてくれよ」

 「はーい。……しかしまた来ることになるとはねぇ」

  「まあ、退屈はせんだろう。当主のやつが居る街だ」

  「きっと楽しい滞在になるさ」

御者(……さっきから一人で騒いで……不気味なやつだな……)
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:40:04.40 ID:UOLnM3JAO
女「……? なんか挟まったような」

当主「何を言ってるんだ……はあ」

女「ため息をつかない。心に因って呼吸を乱すようでは剣士にはなれんよー」

当主「ん? ……はあ」

女「聞こうや人の話は」

当主「……まあ言っておくべき事柄はまだまだあるが……お前わりとため息をつくじゃないか。人のことは言えん」

女「だから剣士にはなってないでしょ?」

当主「……はぁ。そうだな」

女「……で? 話しておくべき事ってのは?」

当主「あぁ、それについては親父……先代の当主に話して頂く。地下の施療部屋に案内するからついてこい」ガタッ ギィ

女「あんたの親父さんか。似てたりする?」トタトタ

当主「……俺は確かに顔立ちは似たけどな。親父は研究熱心な質だから俺にはあまり構わなかったし、少し前までは生活スタイルもかなり違ったから家族には見えないかもしれん」コツ コツ

女「ふーん? ……まあ、あんたと違って魔術の才能はホンモノみたいだけどさ」カッ カッ カッ

当主「悪かったな、半端者で」コツ コツ

女「いや、半端なのは悪くはないけどね。今こうして世継ぎをしてやろうとしてるんだし」カッ カッ カ

当主「…………着いたぞ」

女「だいぶ降りるかと思ったら、かなり浅いとこに施設をこさえてんだね」

当主「旧くからの部屋だから、な。最新の研究はもっと深くにある」
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:41:33.32 ID:UOLnM3JAO
当主「親父、入るぞ」ギィィ

隠居「おう。……どうも、隠居と言います。この度はご助力感謝します」

女「……ん、まあ。そう固くなさらず。私は本来頭を下げるような相手ではないんですから」

隠居「……そうですか。それじゃあ楽にさせて貰うよ」

当主「祭壇に座るなよ、親父……」

隠居「ん? ……まあ気にするな」

女「……研究熱心な方だと伺いましたがね。なんだか印象が違っていらっしゃる」

隠居「ははは、ここじゃあ私以外は何も出来ないからな。この祭壇には大した意味もない。集中を増すためにあるだけだ」

女「……はぁ」

隠居「むしろそこの足元の陣を下手に踏まないで欲しいかな。崩されたらうちの家内に影響が出かねん」

女「……っと、失礼」サッ

隠居「……まあ、だいたい治癒は終わった。医者に連れていかないとわからんがほぼ完治してる、はずだ」

当主「うん。でも親父、医者……か」

隠居「危険はあるが、毒があったらまずいだろ。暗殺者を相手にしてるはずだから」
女「あー……まぁ確かに」

隠居「翌朝には外に連れ出せるくらいにはなる。自力で歩いたりは厳しいだろうけどな。今晩はすまないが寝ずの番をしてもらう事になる」

女「了解です」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:43:04.64 ID:UOLnM3JAO
女「私はまあ、番をするとして……隠居様は」

隠居「うん? 私かね」

女「術式の経過などは見なくても?」

隠居「不要だな。施療の終了まで自動でやってくれるよう陣を組んだから」

当主「そんな便利なもんだったか?」

隠居「お前が知らんってのは正直どうかと思うが……なら一応見てろ。力を使いきったから私は寝る」

女「失礼ですが、寝室は?」

隠居「二階にある。西側の角部屋だ」

女「わかりました。何かあったらお呼びします」

隠居「それでは失礼」

女「……はい」

当主「ふう。母さんも心配だし術の経過を見るのもいいんだが……暇になりそうだ」
女「暇て。親不孝な息子だね」

当主「うるさいな。多分これ完了までに一夜かかるぞ」

女「……そんなほったらかしてて良いのか。すごい技術だわ本当に」

当主「……まあ、これは実際俺にでも扱えるくらいな術だからな。不都合があれば俺が調整するさ」

女「あたしにも出来そうやね、それ 」

当主「馬鹿にするなよ。お前の術才では無理だよ」

女「そか、残念」

当主「……ふふ」

女「何よ」

当主「久々にお前と話が出来るなと」

女「時間はいくらでもあるからねぇ。しばらく話でもしてようか」
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:43:46.23 ID:UOLnM3JAO

☆第3章「再来」

〜〜勇者スルストは魔術都市リエンに再び舞い戻った。
 緊張状態にある国境を渡るために許可証を得なければならないのだ。
 スルストは果たしてこの町でどんな事件に出会うのか〜〜

「〜〜夜のリエンは不思議と静かだった。数日前とは空気がまるで異なっている」
ミティアの流麗な言霊が響く。僕の冒険はいつの間にか第4集にまでなったようだ。
「そりゃ夜だからだろう。留まらずに通過しただけだからな」
いつも冷静な僕の相棒。でも突っ込みどころはそこなのか?
「さて、と。宿を取らないとな」
大通りを歩いて宿を探す。財布からしたら安宿にした方がよさそうだ。裏道も探したほうがいいかも知れない。
「……」
「……」
「宵の口だと言うのに町には生気がない。まるでこの夜にいるのは私たちだけであるかのような……」
アーリィだけが騒がしい。しかし本当に活気がない。酒場にも人はまばらだ。
「……少し妙だな。主よ、そこらの酒場ででも聞いて見るのが良いだろう」
「……何事もなければいいんだけどな」
僕のこの淡い期待は、当然のように裏切られた。
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/17(土) 19:46:20.80 ID:UOLnM3JAO
暗殺者「なんか違うの始まってる!」

黒衣「虚空に叫ぶな。狂人か貴様は。」

暗殺者「一応そのはずですよーぅ」

黒衣「……ふん。それよりもだ。」

暗殺者「あれ、どうするかなー」

黒衣「やれなくはないだろう?」

暗殺者「んー? や、殺すだけなら余裕なんだけどー」

黒衣「殺すな。アレは候補生にするつもりらしい。」

暗殺者「……や、無理でしょ。あのコ人間として会話が成り立つのかあやしいデスよ?」

黒衣「殺したら……わかっているよな。」
暗殺者「キルミーってね。死にたくないなー。まだ」

黒衣「俺が向かう予定もあったが、アレはかなり脆い。俺は吹けば飛ぶ雪を摘まめるような質ではないからな。」

暗殺者「私に出来るかってーと、実際」

黒衣「無理ならそれでも構わない。お前を処分する名目がたつ。」

暗殺者「……うー、最下層の現場はツラいなー」

黒衣「……これが上手く行けばアレの評価を変えられる。しばらく処分対象から外れるだろう。」

暗殺者「報酬がしょぼいよーな」

黒衣「……」

暗殺者「はいはい、やります。やればいいんでしょー?」

黒衣「……頼んだ。」

暗殺者「……てか、距離があるとはいえ相手も感度低いなぁ。とりあえずスタートの合図は、こっちだけでかけさせてもらおう」




暗殺者「……Go!」

闇が濃くなる。
夜が深まる。
カーニバルが、幕を開ける。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/03/18(日) 00:07:11.92 ID:Ow/5SnDAO
一応あらすじが決まって、起承転結の起まで終了。
ザッピングとかを目指しているものの、視点の変化を表しにくいですねぇ。

また来週来ます。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/20(火) 17:17:50.63 ID:7aOaYaego
あらすじ決まってるなら安心だなあ
完結まで応援してるぜ
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/25(日) 22:02:12.72 ID:/4gViXaAO
――
――――▼

距離70。
距離65、
距離57
距離50――!
懐からナイフを取り出し、勢いを乗せて投げつける。この距離からなら致命の威力。
かわして見せろ。そしたら貴女は私の獲物――

「っ、ヒッ!?」

突然の攻撃に対応してみせる少女。やるじゃあないか。ご褒美をあげなくちゃ。

「餌でなくて良かったわ、あなたが!」

閃く刃。照り返す白刃。距離寄せつつの七連投擲。急所狙い、全て必殺、これならどうか。耐えろよ獲物。楽しくやろう!

「ひはッ! ……はは、はぁ」

纏うドレスを千切りながら絡めとり、刃を無力化。すぐさま距離をあけにくる。狂人かと思ったがなかなかの判断だ。

「……っ、あなた。なに? あなた。わたしの、ころすひと?」

狂人というよりも、思考が幼稚なだけなのかもしれない。この少女なら、自らの保身や恐怖からの回避のために殺人をしてもおかしくない。

「私は、そうね。あなたを殺すかは知らないけど」

「ころすひと、ってのはあってるわ」

暗殺者ってのは、要はころすひとってことなんだし。

「やだ! やだやだ、ころすのされたくない、ばいばい!」

背を向け逃げ出す。……速いな、私より。
追撃の手段を考え、リスクの少ない選択肢を探す。
……ルートを予測して先回り、かな。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/25(日) 22:30:56.23 ID:FRWI5ddmo
C
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 14:57:09.75 ID:/ZdJGqhAO
しにたくない。
しにたくないんだ。
しななくていいんだ。
わたしはしっている。
私、走って、いる。
しなないために。しなないほうほう。

「っ、は」

のどがかわく。はしるからだ。体は今水分を求めている。もたない。持たないと騒ぐ。
追いかけて来ていた誰かは振り返っても見えない。諦めたのでは、ないのだろう。
でも時間はできた。

「っ、は。ははははは!」

目についた窓を叩き割る。灯りをつけているのが悪いんだ。人が居るって知らせたほうが、悪いんだから。

「へ? 何だいきなり……なんだよきみ、人の家になん

ことばがおわる。喉を裂いてしまうのは嫌いじゃない。断末魔を聞かずにすむのだから。

「――――!」

喉を貫かれた男が何か必死に訴えている。声が出ないからわからない。この口の動きは見飽きているから興味もわかない。
のどがかわいた。

「――、――!」

恐怖に顔が歪んでいる。のみものはどこだろう。瞳から生気が消えた。たべものもたべたい。さがそう。
追っ手は来ない。それならまだ余裕のあるうちに、食欲を満たしてしまえ。
いただきます。
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 14:58:56.71 ID:/ZdJGqhAO
「……かくして、炭坑に住まう呪竜は退治されましたとさ。ま、私は目を射る以外は何もしてないんだけど」

けらけらと笑いながら彼女は締めくくった。最近で一番派手だった仕事、とは言ったが竜と相対するほどだとは思わなかった。
つくづく、自分には才能がなかったと感じる。

「竜相手に喧嘩を売って、たいした手傷も負わずにいるってだけですごいがな。……ふふ」

「あー? 何笑ってんのさ?」

「いや、辞めて正解だったな。ってな」

命がいくつあっても足らないだろう。何枚も格下の俺には到底及ばない世界だ。

「……っはは! いいねぇ、気力だけじゃあ無理な世界ってのは確かだからねぇ」

俺の無力についてでなく、業界そのものについて笑っているのだとわかる。こいつはどうしても平等というか。無差別というか。

「……しかし、追撃がないな」

「籠城してるのに切り込むやつって大概だからねぇ」

つまらなさそうな瞳が、俺の母親を見ている。

「そりゃ、そうだがな」

そういう状況に強いのが暗殺者なんじゃないのか?

「……不安はもっともだけどさ。あたし自身はそれなりに気を張ってる。あたしの索敵が信じられないなら、あたしを雇う価値がないよ」

……おっしゃる通りで。
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:01:47.77 ID:/ZdJGqhAO
――☆

「〜〜闇夜に潜む死の香りが、恐怖を呼び覚ます。魂の消える残り香が風に運ばれてくる――」
「アーリィ」
「……だって、戻って早々に大事件だよ。私は貴方のサーガを紡ぐためにいるのだし」

まあ、そうだけど。そういう話を作るのは後でも出来るんだから黙って欲しい。命が軽く見られているようで嫌なんだ。

「しかし主よ。実際、死の気配が濃い。この町で今日いくつもの命が絶たれた事には違いはないぞ」
「……うん」

酒場で聞いた限りですら、白昼から10以上の死者が出たと言う。……恐怖から逃れるために酒に溺れる人もいた。
きっと、他の人たちは閉めきった部屋に隠れているのだろう。
殺人者の力を聞く限りなら、あまりに儚い抵抗だ。

「まあ、感知半径を拡げてみるよ。聞いた噂みたいのが出来そうなレベルのが何人いるかもわからないし」
「頼んだよ、アーリィ」
「主よ。しかし殺人者は小振りの錐のようなものを扱っていたと言うからな。呪具、魔法具ならレベルはアテに出来ん事を忘れるな」

相棒が口を挟んでくる。

「僕みたいに?」
「……まあ、広義にはそうなるが。主は別物だろう」

魔法具、オーパーツ、ロステク、ギフト。
表す言葉に枚挙のないそれらは、赤子に城を吹き飛ばすほどの力を与えさえする――手元の相棒もその仲間で、その中でもとびきりな存在だ。
相手がそういったものの持ち主ならば、肉体なんかの強さで測るアーリィでは見つけられない。

「ん、測定完了ー。とりあえず街一帯を探ったけどさ、だいたい3人くらいだね。あと、一歩か二歩及ばない程度のなら割りといるよ。規模が大きめの町なだけはあるね」
「そっか、ありがとう」
「どうする?とりあえず近場からコンタクトしてみる?」

それで出会うのが犯人であればよいし、違えば協力を求めればいい。……問題ないか。

「そうしよう。とりあえずその三人で一番近くに居るのは?」
「ん、ここから北に3キロってとこ」
「行こう。僕らがこの町の惨劇をここで止めるんだ」
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:03:28.03 ID:/ZdJGqhAO
――◇

突然に。
女の目付きが変わった。
……まさか、襲撃か。思わず今はもう持たないと決めたはずの剣を手が探る。
相手がどうあれ女ひとりに任せるつもりではいるが(少し情けない)、自分の身くらいは守れなければ話にならない。
そして、
女が。

「っ……うわぁ最悪」

心底嫌そうな顔をして机に伏した。
もーやってらんねーやー、みたいな風情で。

「どうした? ……まさか」

動揺を押さえ、問いかける。が。

「いや、危険はないよ……どころか多分見方によっては味方が増えたんだけどさぁ」

と、要領を得ない答えが返ってくる。詳細を尋ねても、シカトできそうならそれが一番ラクだよとしか答えない。

「……なんかなー、めんどくさくなるんだろなー」

ぶつくさと文句を言い、苦虫そのものみたいな顔をして(虫みたいだった、本当に。少し怖い)彼女は佇まいを正す。

「はぁ、最悪だ……まだこの辺りに居るのは聞いてたけどさ」
「さっきから何の話なのか見えてこないんだが?」
「……勇者」


は?
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:05:48.98 ID:/ZdJGqhAO
……は?

「吟遊詩人の良くやるネタのさ。勇者と伝説の剣とマスコットの鳥、居るでしょ」

……聞いたことはある。旅先でたまに歌われていた、世界を旅する勇者の話。
いわく、剣を抜けば城を両断し。
術才にも優れ、数々の魔法を操り。
伴する鳥は天の使いであるといい。
携えた刃は、神々からの授かり物。
そんな絵空事のようなのが実在するのだと、詩人たちは謡っていた。
それが近くに?

「……何も問題ないような」
「あるのよ。さっきまでかなり気合い入れて警戒してたから気づけたけど、あの鳥の感知網にかかったのに気付いたからにはあいつらがいつかこっち来るわ」
「いや、だから別に何も問題は」
「あいつら、大真面目に正義とか説くのよ……半端じゃなくうざったいけど我慢できる?」

確かに正義だなんだと言われるのは面倒な予感がするが、別に悪いことをするでもないし。気にしすぎなような。

「やあ! 見知った顔だってアーリィが言うから誰かと思ったら、君かぁ。久しぶりだね!」
『うぜぇ! ってかいきなりなんだ!』

思わず叫んだ。ハモった。

「〜〜かくて、勇者はかつての戦友と再会した、と。まだ生きてたのねバーバリアン」
「焼鳥にしたろかコイツ」

目が怖い。猛禽のようだ。

「焼鳥? 私を炎に閉じ込められるの?」

勇者とやらの肩から挑発している鳥が、噂のやつか。

「……クソ鳩。……あぁ、くそ。とりあえずコレが勇者一行だよ」

嫌気に満ちた、死人のような目をした女がわかりきったことを紹介してくれた。
……有り難みがないな。
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:09:38.70 ID:/ZdJGqhAO
――▼

「うへぇ、やっちまったー」

まさかの対象ロスト。……ってか、逆だけど。
人家に押し入り殺人を始められたら、こっちとしては対処に困る。
閉鎖的な死角の多い空間では、目撃者――例えば向かいの窓から見ていた人物なんかに対応できない。
周辺全殺し、ってのも立場上つらいし。何より手加減しにくい。逃げ場もない以上殺してしまう可能性が嫌でも高まる。

「どうしよ。あの小娘は果たしてどれだけ暴れる気なんだか」

昼の時点でけっこうな騒ぎなのだから、夜にさらに暴れられたらそこらの自警団だのが黙っていまい。あまり人の目が増えるのも……

「あ、別にいいのか」

自警団や正義気取りが騒ぎたてれば彼女はいずれ逃げざるを得なくなる。その後に潜伏先でってのも悪くない。逃げなかったら知らん。死体の山の上でやれば良いだけだろう。

「おい。」
「うぉう」

いつからいたんだ。相変わらず不気味だ。

「あくまで勧誘がお前の仕事だ。その手順は問わないがあまり顔の知れた人間は使いにくい。忘れるなよ。」
「勧誘ね。つまり引き込むのが仕事であって、私はそれ以上は求められてないじゃない」

戦わなくてもいいんだよね、一応。話が出来る状態ならそれでもいい。頷かせれば私の勝利なのだ。

「クライアントの意向を汲み取るのも技量のうちだがな。」
「私無能なんでわかりませんなあ」

とりあえず今日はもう深追いはするまい。この夜のうちにどれだけ死ぬのかわからないけど、戦場よりかは少ないだろう。
……帰って寝よう。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:11:33.80 ID:/ZdJGqhAO
――▽

女「つーかさ」

勇者「ん?」

女「わざわざ瞬移なんて使うな。結界の意味なくなっから」

鳥精「だって歩くと時間かかるでしょ、巻き進行しなきゃ」

女「巻くな。そんな理由で禁忌に触れるな」

鳥精「うるっさいなー、あんたの力を借りる予定だったけどやめとくかー」

女「そうしろー。こっちに利益のない慈善事業なんざ真っ平よ」

鳥精「ぐぎぎ、ホント腹立つ」

女「こっちだって苛つくの我慢してやってんのに何を抜かす」

鳥精「んだとぅ?」

女「あぁ!? なめてんのか」

当主「あー、鳥と戯れてるアホは置いといてだ。あんた、噂の勇者か」

勇者「ん、そうだね。世間ではそう呼ばれているらしいから」

当主「あの鳥精が協力とか言ってたが……外の殺人鬼のことで間違いないな?」

勇者「あぁ、僕らはその事件を解決したいんだ。だから、力を貸してもらおうかと」
当主「すまんが、先約だ。今は女はうちの護衛をやっているんでな。余所を当たってくれ」

勇者「……護衛? だけど君は自身を守るくらいの力は持っていそうだよ?」

当主「……俺じゃなく、あそこで寝ている母の護衛だよ。例の殺人鬼からかなりの重症を負ってしまってる」

勇者「なるほどね。……たしかに酷い怪我だ。アーリィ!」

鳥精「眼球くりぬいたろか……。ん、何?」

勇者「この人の母親がひどい怪我なんだ。頼める?」

鳥精「んー……まあ正義の行いだね。やろうか」

勇者「うん、よろしく」

女「あ」

鳥精「せーのっ、完 全 回 復!」

女「だーからー! 禁術をポカスカ使うな使わせるなってー!」


婦人「……んん、これは……傷が……?」
当主「母さん!?」

婦人「あぁ、当主。これはどうしたんだ? うちの人の治癒儀式ではこんなには……」

鳥精「勇者スルストの善意に感謝しなさい」

勇者「こら。そんな言い方……ともあれ、傷は完治させました。治って良かったですね」

婦人「……勇者?」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:15:57.98 ID:/ZdJGqhAO
――▽

婦人「事情はわかった」

女「えぇえー」

鳥精「はい。殺人鬼以外の襲撃の可能性もありうるとのことですが、いざとなれば瞬移で我々が駆け付けます」

勇者「その代わりに、女さんの力を借りたいんです。殺人鬼に立ち向かうには僕の力は不向きで」

婦人「えぇ、確かに街中でそんな力を行使されるのも見過ごせません。……女さん」

女「……はぁ」

当主「……依頼に追加だ。襲撃のあるまで勇者スルストに全面協力してやってくれ」
女「……うん」

勇者「また女さんと一緒に戦えますね。よろしく」

女「……」

鳥精「もっと嬉しそうになさいよ。勇者とパーティー組めるなんてそうないのよ?」
女「……わーい」

勇者「アーリィ、女さんはずっと護衛で気を張ってたんだ。疲れていても仕方ないさ」

鳥精「そうね。勇者様はなんて優しいのかしら」

女「……ねぇ」

勇者「?」

女「もう協力するのは構わないけどさ、プライベートは欲しいから。たまに一人にさせてもらうわよ」

勇者「そんな事か。もちろん配慮するよ。ただ緊急時には容赦なく呼びつけるからね」

女「あー、それは問題なし」

鳥精「ただ、あなたは瞬移の対象に出来ないからねー。ちょっと手間だからあまり離れないでね?」

女「……はいよ」

勇者「とりあえず今日は休もう。皆疲れているだろうし」

鳥精「客間はどこですか? 婦人さん」

当主〔ナチュラルに泊まるつもりだ!?〕

婦人〔勇者ってそういうもんなのかしら〕
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/03/26(月) 15:20:49.88 ID:/ZdJGqhAO
――
――――▽

女「……いるー?」

女「さすがに今は仕事中か……?」

暗殺者「居たりしてー」ヒョコッ

女「おわっ」

暗殺者「ふっふ、居ないと思ったら大間違い」

女「こっち戻ったって事は、やったの?」

暗殺者「いやしかし、勇者のやつめマジで沸くかー。めんどいねぇ」

女「例の殺人鬼はもう気にしなくていいのよね?」

暗殺者「ってかあれだよ、言ったら招くってやつだねきっと。下手なこと言ったら招かないかな。女が私に発情中ーとか」

女「‘やったの?’」キィィン

暗殺者「‘やってません、ハイ’」

女「うーわぁー、めんどくさっ」

暗殺者「ん、実際かなりめんどいね。これは」

女「私がやるの? 石畳剥がすらしい化け物と? 嘘だろ承太郎」

暗殺者「嘘だと言ってよって感じだね」

女「こんな事なら国境は密入国でどうにかすれば良かった」ハァ

暗殺者「……もはやそれが正解だったまであるね」

女「……」ハァ

暗殺者「……?」

女「問題を整理しよう」

暗殺者「大事だね!」

女「すべきこと。 1:国境を越える 2:婦人を護衛〔したフリ〕 3:殺人鬼の対処」

暗殺者「この際3以外は後回しだね」

女「3に対する懸念、ってか全体的な問題。 1:私が殺人鬼に勝てない可能性 2:勇者一行がうざい 3:暗殺者が勇者に見つかると殺される。 4:暗殺者が仕事をしてないと殺される。 5:暗殺者が殺人鬼と戦うと殺されうる 6:勇者一行が居るから八百長してたら横槍で暗殺者が死ぬかもしれない」

暗殺者「ほとんど私のことだね!」

女「もうあんたを殺せば早いのにねって思った!」
暗殺者「んな事狙ってきたら刺し違えに行くよ? 私が死ぬ前に貴女に死んでもらわないと」

女「だから死なせないように動くんでしょうが」

暗殺者「……生き残らせようとしてくれるんだね?」
女「だから、あんたは刺し違えに来るんでしょ。私が死にたくないの」

暗殺者「うん。そーゆーことにしとく」

女「で、どうすりゃいいと思う?」

暗殺者「諦めて死ぬ?」

女「却下」

暗殺者「割りと思い付きません!」

女「……正直詰んでるー?」


70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/03/28(水) 07:56:58.94 ID:0s+Cn6rIO
どんどん状況悪化してるなww
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:10:45.18 ID:giMcDbtAO
――▽

暗殺者「……あ」ピクッ

女「来るわね」

暗殺者「もーちょい話したいんだけどなー」

女「死にたくないでしょ?」

暗殺者「まだ嫌だね。んじゃ、ちょっと消えていよう」シュタッ

女「……」フゥ

カツ コツ

勇者「やぁ。少し寒いね」

女「夜中に外に出れば当然よね」

勇者「はは、手厳しいな」

女「……何?」

勇者「いや、君にしてもらうことをね。話しておかないとさ」

女「……まあ変にこじらすのも嫌だから受けたけどさ。私に期待しないでよ?」

聖剣「過度な謙遜はかえって身を滅ぼすぞ? 強さを偽るとろくな事にならん」

女「私の性質は理解してるでしょ? てか人前で話すなよ」

勇者「……まあ、なぁ」

鳥精「加護も受けられないようなあんただから頼むのよ」

女「……気にしてんのにさ」

鳥精「協会所属のくせして紋章を弾いたとか、伝説よねある意味」

女「るっさいよ変な落書きにされた癖に」

鳥精「[ピーーー]ぞ」

聖剣「……やれやれ」
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:11:47.46 ID:giMcDbtAO
女「……誘導、ね」

勇者「うん。とりあえず被害を押さえられるように人の少ない場所まで誘導を頼みたいんだ」

女「……場合によっては倒すよりも手間なんだけどな」

鳥精「やれるならやっちゃって。無理そうなら逃げていいし」

女「……呪具とか魔法具とかかも知れないって説明もらったけど、その場合それを引き剥がせばいいの?」

勇者「それでもいいよ。呪具とかに依存してたなら残るのは僕でも処理できる」



女「操られてた、とかかもよ?」

勇者「人を殺してたのに代わりはないじゃないか。変な事を言わないでよ」

女「……」

聖剣〔……すまんが勇者は区別はあるが差別はない。仲間でないなら殺人は殺人で購うだけだよ〕

女〔知ってるけど、これほどとはね〕

聖剣〔私を扱う上での必須事項なのでな、理解してくれ〕

勇者「頼むよ」

女「……まぁ、やるだけやるか」

73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:16:14.82 ID:giMcDbtAO
――
――――

暗殺者「朝っす。もとい夜明けです」

暗殺者「今日は女さんの寝室にお邪魔しています」

暗殺者「……くふ、ふふふ」

暗殺者「いくら警戒しようと本物の前では無力! 気配遮断ができてこれほど嬉しいこともない」



暗殺者「〜〜♪ って……鳴子とかあるし。室内だってのに用心深い」

暗殺者「さーてぇ、それでは寝顔を拝見……」

女 スヤスヤ

暗殺者「ふー、やっぱええわぁ。癒されるわぁー」

女 スヤスヤ

暗殺者「さて、それでは起きてもらいましょうかね」ゴソゴソ

暗殺者「枕元に刃物。首には鋼糸。慌てて飛び起きたり暴れたりしたら……ま、女なら死にはすまい」

暗殺者「んでは、目覚めのキスを――」チュ

女 ンムッ……スヤスヤ

暗殺者〔……起きない? いや、狸寝入り……ないな。嫌がるはずだし〕

暗殺者〔……もっと行けるか? ちょっと舌とか入れたり……無理かな〕

オーイ

暗殺者〔よし〕

オイコラ

暗殺者〔……とりあえず脱がそう〕シュルシュル

女 スヤスヤ

暗殺者〔起きない。奇跡か。ありがとうミラクル! ……ちょっとくらい触っても。フヒヒ〕

鳥精「……さすがにそろそろ人を呼ぶわよ?」ツンツン

暗殺者「ぅおぁあう!?」ガタッ

女「! 何ごと!?」ザクッ

女「ガフっ?……ひゅう、ひゅひゅ」ヒューヒュー

鳥精「はいはい完全回復完全回復」
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:17:46.21 ID:giMcDbtAO
暗殺者「すんません」

女「殺すぞ」

暗殺者「いやほんとごめん。まさかあれほど無警戒に寝てるとは……」

女「ていうか死にかけたぞ」

暗殺者「……ごめんなさい」

女「まあ、許すけど」

鳥精「ふー、効きの悪い相手に魔法連打するの本当は嫌なのよ?」

暗殺者「……」

鳥精「ひさびさね。まだこの女の命を狙ってる……わけ? 微妙だけど」

暗殺者「……」

鳥精「うぉい」

女「あ、ごめん。……えーと、そこの鳩がなんか言ってる。かくしか」

暗殺者「あぁ……とりあえずそうだよ、とだけ」

鳥精「そういや見えない聞こえないんだっけ? ……あんたら極端で面倒ね」

女「こいつには魔法はいくらでも効くから念話でもしてやってよ」

鳥精「ソレあんたには効かないから二度手間よね。いいけど」

暗殺者「……しかし、見張りを女につけるより当主一家につけりゃいいのに」

鳥精〔私らの目的は殺人者であって、あの人たちを守る必要はないからね〕

暗殺者「ひどい話だね」

鳥精〔しょうがないでしょ、文句あるなら処分にかけるわよ〕

暗殺者「それは嫌」

鳥精〔なら見過ごしなさい。私も一旦保留するから〕

暗殺者「見過ごすとは言わないわけか」

75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:19:04.41 ID:giMcDbtAO
女「……見逃してくれるわけ?」

鳥精「うちの英雄さまに見つからなければね。もし見つかれば素直に死ぬこと。文句は?」

女「んー、実際助かる。から良し」

暗殺者「なんだかなー、問題がひとつ減ったみたくなってるけど実際は改善されてないからね?」

鳥精「あの子、最近は以前にも増して正義に燃えちゃってねぇ……融通きかないのよ」

女「独善の間違いじゃないのー?」

鳥精「スルストの前で言ったら炭にするわよ」

女「……はいはい」

鳥精「純粋さを保つのも大変なんだからね……」

女「……」

暗殺者「んー、聞こえないってめんどくさい。せめて姿だけでも見えたらなー」

女「ってか、何で見えないのよ。前も声しか聞こえないとか言ってたけど」

暗殺者「ひとえに魔法耐性の低さのなせる業だね」

女「んー? そういうもんか」
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:20:56.79 ID:giMcDbtAO
暗殺者「三人寄れば文殊のなんとか」

女「女だからかしましいって気がしたけど、そんなでもないね」

鳥精「私の声が片方にしか届かないからじゃ?」

女「それ実際手間。両方同時に話しかけてよ」

鳥精「……やるか。〔かなり言葉あやしいになるだけど嫌よ〕」

暗殺者「おぉう、変な喋り」

女「……まあいいか。バカっぽいけど」

鳥精「〔あなたがすることを言ったのだから文句は駄目〕」

暗殺者「……これはこれで不都合?」

女「大事なことは個別に言ってもらえばいいのよ」

暗殺者「あぁ、二回言いました的なね」

女「違……わなくもないのか」

鳥精「〔それよりも話ことがないならやめる〕」

暗殺者「あー、確かに?」

女「あんたがそんなでどうすんのよ、今回の仕事についてあるでしょうが」

暗殺者「話すのかよ。いやあなたに話す分にはいんだけど」

鳥精「〔私はいないですと思って〕」

暗殺者「居るんじゃん」

女「放置して。っていうかこの鳩も役立つのは確かよ。あんただって仕事の邪魔する殺人者とか早く済ましたいでしょ?」

暗殺者「基本的にはねー」
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/01(日) 20:22:51.98 ID:giMcDbtAO
鳥精「〔慣れてきた〕」

女「えー」

鳥精「〔うるさい。あんたに反応返してたら嫌でも慣れます〕」

暗殺者「あー」

女「あーって何よ」

暗殺者「いや、私も元々はこんなに饒舌ではなかったような」

女「……そうだっけ」

鳥精「〔思い出話はいいからさ。そこの暗殺者ちゃんは何かに使えるのん?〕」

暗殺者「隠密性能ならそうそう負けないよー」

女「実際私もちょっと気付けない」

鳥精「〔ふむ。……あぁでもあなたを積極活用するとスルストに見つかるわ〕」

暗殺者「それは勘弁」

女「あいつの手前では適当に言葉を濁したけど、ぶっちゃけ誘導と策敵は得意分野だからね。私一人のが楽かなー」

鳥精「〔そか。使えないな〕」

女「そもそもあんたらは目につく人間全て利用しようとするのはどうにかならんのか」

鳥精「〔勇者一行ってそういうもんなの。諦めなさい〕」
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/01(日) 22:20:49.65 ID:giMcDbtAO
1レスが長い気がしたので1kbにしてみたら話がまとまらない。面白いSSを書く人はすげぇなあ。
とりあえず半端な区切りなんでさっさと続きを書きます。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(兵庫県) [sage]:2012/04/02(月) 04:44:00.39 ID:Rjp2PgDAo
おもろい
がんばれ
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/04(水) 07:53:26.57 ID:lZantBAIO
面白いSSはこのスレ
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/04/04(水) 10:30:11.94 ID:kB1RICKAO
暗殺者「……ま、私は私の目的のために動くとするよ」

鳥精「〔そうね、好きにやってもらった方が気兼ねなく対峙できるし〕」

女「殺してもいいけど、半端で取り逃がすのだけはやめてよ?」

暗殺者「愛されてないなー、くそう」

鳥精「……」

鳥精〔彼女、途中で起きてたわよ?〕ポソ

暗殺者「マジで?」

鳥精〔マジよ〕

女「?」

暗殺者「……へへへ。ちょっとやる気出た。勇者サマなんぞに会いたくないしそろそろ行くよ」

女「? ……行ってらっしゃい」

暗殺者「ん。じゃね」

鳥精「……さて、私たちもしばらくしたら行動開始ね」

女「一晩中まるっと放置したからちょっと被害が怖いんだけどね」

鳥精「その方が敵対しやすいでしょ?」

女「……歪んでるね、どうにも」

鳥精「無力感に苛まれるのは一般ぴーぽーがしてくれるからね。それに、これでも私たちなりの最速だから」

女「さいですか」
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/04(水) 10:31:53.70 ID:kB1RICKAO



当主「おはよう」

女「ん、おはよ」

隠居「おはよう……おや、勇者さんは?」

鳥精「あぁ、……外で聞き込み中? 早くしなさいよ? ……ま、すぐ戻るでしょ」

執事「一応、私兵をひとり連れてあります。昼までには戻るとのことで」

女「婦人さんは?」

執事「まだ部屋です。勇者さんが剣を置いて、これで火急の際には喚べると」

鳥精「それは私に瞬移させろって事か。……まぁ何事もなければいいなぁ」

女「一応私も、勇者が戻るまでは婦人のもとに居ましょう」

隠居「頼むよ。さすがに武器一本置いているだけだとは思っていなかったし」

女「……? 失礼ですが、把握されていなかったのですか?」

隠居「……」

当主「あぁ、一応ある程度の仕切りは俺が任せてもらってるから。知らせて無かったかもしれん」

女「そ。気を付けてよ。ノーガード放置っつーのはまずすぎるし」

当主「というか寝ずにいると言ってたお前が普通に寝てたのに驚いたよ」

女「私より感知の優れた、睡眠のいらない鳩が加わったから別にいっかなーと」

当主「確認くらいしろよ……雇い主の許可なくサボるな」

女「へいへい」

鳥精「というか私をあてにしないでよね」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/04(水) 10:33:51.00 ID:kB1RICKAO
――☆

勇者「外はうららかな陽気だなあ。いたましい事件のある最中だっていうのに」

私兵「……そうですな」

勇者「しかし、今確認された範囲で15人か。昨日の夜の時点で10以上の被害が出ていたことを考えたら想定より少ないね」

私兵「……はい」

勇者「どこに潜んでいるかはわからないけど自警団やギルドも動くらしいし、協会も仕事の発布をしたみたいだし。もしかしたら僕らの出る幕もないかな? なんてね」

私兵「そうですな」

勇者「まあ、やれる限りの事をしようか。アーリィの知覚できない相手っぽいからちょっと手間だけど」

私兵「……はあ」

勇者「無用な被害が出ないように、最善をつくさないとね」

私兵「……っ! ……えぇ、頑張りましょう」

勇者「被害のあった位置とか確認できないかな……行こうか」

私兵「そうですね」
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/04(水) 10:36:52.94 ID:kB1RICKAO
――
――――☆


勇者「ん。戻ろうか。どうも犯人は夜からほとんど活動してないようだし」

私兵「そうですな」

勇者「はあ、アーリィを連れて来るべきだったかな。少なくとも空から見渡すくらいはしてもらえたし――」

  「ひっ! な、なんだね君血塗れだぞ? まさか殺人鬼から逃げ ドサッ

勇者「――っ! まさかこんな日中から!?」ダッ

私兵「ま、待って下さい!」



少女「……こふ、こほ」

勇者「……君が、やったのかい。その足元のは」

少女「は、ふ。……のどが」コホコホ

勇者「答えてくれよ。返答次第じゃ穏便にはすまないけど」

少女「――?」

少女「あ、う、う。じゅる、ず、ずちゅ」

私兵「待っ……ひぃっ!?」

勇者「そんな事をするってことは、そういうことかな。残念だよ」

少女「……ぢゅ、ぢゅ、ちゅぴ」

勇者「君は許されない事をした。僕は、君を倒さなくてはならない」

少女「……っふ。けぷ」

勇者「召還! 聖なる剣の裁きを受けろ!」

鳥精〔……えぁぉわ! なんぞ!?〕
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/04(水) 10:38:06.89 ID:kB1RICKAO
鳥精〔なんぞ? ……発見した? 多分街中! ぶっぱなしたらまずいのわかってんのか勇者サマ!?〕

聖剣〔おい。なんにせよ向かわねばならんぞ〕

鳥精〔うーわー、街中だよ。どうするよ〕

聖剣〔制止はするし昔ほど短絡的ではない、とにかく送れ!〕

鳥精〔はいはい! たくもう!〕

聖剣「すまん、来て早々だが勇者のもとへ向かう」

女「はぁ? とりあえず了解」

婦人「……女さんは向かわせなくてよいですか?」

聖剣「……判断は任せる。好きにしてくれ」

鳥精〔行くよ? 遠隔転送!〕

聖剣「そちらの護衛も重要ではあるのだろ――

女「……行ったみたいね」

婦人「あなたを協力させる予定でいたのだけど、私の存在がネックね」

女「私の仕事はあくまであなたの護衛なんでね、協力せずに片付くならそれが最善なんですけど……」

婦人「私もあちらに向かいましょうか?」

女「ご婦人? そんなアグレッシブな方だったのですか?」

婦人「魔術の心得はあるのです。邪魔にはなりません。……やられっぱなしも嫌いでして」

女「……待機の方が楽なんですけどね」

婦人「あなたは見かけより臆病なのね」

女「たまに言われます」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/04/04(水) 10:41:22.32 ID:kB1RICKAO
婦人「で、行きますか?」

女「安全のためならあなたを殴って気絶させるのもアリかなとか計算しますがね」

婦人「あら怖い。計算の末に不都合な答えが出る前に出掛けるとしましょうか」

女「……はぁ。どうしても私の周りは勝手な人しか現れないようで」

婦人「失礼ね。あなたとあの鳥精を連れていった方がこの都市のためにつながるでしょう?」

女「はぁ。この際多少の危機でも放置しますよ? 隙を晒して死にたくないので」

婦人「ふふ、会ってわずかなのに命に代えてもなんて言われるより信頼できていいわ」

女「……やりづれぇ」

鳥精「邪魔するよ!」ヒュンッ

鳥精「や、聖剣を送ってからの対応を考えようかと思ってたけど話が早いや。南西7キロ先に勇者が居るから転送するよ!」

女「それ私は送れないじゃん?」

鳥精「……走れ!」イライラ

女「7キロとか遠いわ!」

鳥精「とりあえず増強の魔術くらいはしたるから、早く追い付きなさい」

女「しゃーないなー」

婦人「私は?」

鳥精「……私と共に来てもらいます。多少は気を払いますが防衛は自己責任です」

婦人「わかりました。……早くしましょうか」

鳥精「それじゃ、身体増強からの追風結界ー。んで、瞬間移送!」キュイン ヒュンッ

女「……っし。行くか!」
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/06(金) 07:42:56.91 ID:q08A2cBIO

禿げしく面白し
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/04/20(金) 09:54:29.81 ID:7/IszweIO
そろそろか?
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/10(木) 01:20:24.57 ID:LpG/DN0AO
社会にうちのめされて忘れてました、まあいい。
時間がとれなくもないから少しづつ進めよう……。
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/10(木) 21:03:58.91 ID:6MfQsmoIO
>>89
過酷な環境、同情いたします。
ずっとひたむきに帰還を信じてました。
一歩一歩でもお願いしまする。
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/17(木) 23:51:02.79 ID:GzjDxZXIO
そろそろ立ち直りつつあるかな?
待ってるぞい
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/25(金) 08:12:40.70 ID:+mI1VzVIO
wktkが止まらない
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:32:07.69 ID:8QO5GrkAO
――▼▽



暗殺者「ふひー。やっとこバトルパート開始ー」

女「ちょいちょい似たの挟んだけどね」

暗殺者「いや、ここから先はしばらく地の文章つきがメインで、ヘビーな展開に」

女「なる? 勇者なんてのいるけど」

暗殺者「アレはちゃぶ台返しみたいなもんだからね。リセットボタンでも可」

女「まあ、加減の効かないやつらだけど」

暗殺者「だから基本的には自分の力を使いたくないのかね。あの馬鹿以外は」

女「まあ、見りゃわかる」

鳥精「とはいえ、危険度がわからない聴衆からしたら、大体は‘さっさと使え’になるのよね。残念ながら」

暗殺者「まあ、見ないとわからないって。あぁいうのは」

暗殺者〔おまけパートなので見えるし聞こえます。便利〕

暗殺者「差し当たり説明不足なところを補足しとこうかと」

鳥精「描写不足よね」

女「一人称とか台本形式ってその立ち位置で既知の事項を説明しづらいのよ」

暗殺者「小説とかで無知なキャラが居る理由がよくわかるよねー」

女「完全に理解や知覚の及ばないところは疑問すら持てないし」

暗殺者「ねー」

鳥精「特にあなたが何してるのかあんまり描写されてないのよね」

暗殺者「……ねー」
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:33:01.48 ID:8QO5GrkAO
暗殺者「……バトルパート開始は?」

鳥精「スルーしたわね」

暗殺者「私の活躍チャンスだし、早めに行こうよ」

女「暗殺者ってスレタイなのに出番私より少ないしね」

暗殺者「一応他のやつらよりかは出番が多いけどね?」

鳥精「ぶっちゃけ進行報告係だけどね」

暗殺者「言うな」

女「……出番の水増しでもする? 日常パート足りなかったし」

鳥精「元々は数日の間、女と暗殺者の準備パートで事件は何日かしてからだったから……」

女「物語として見ると不要な部分だったから削られたわけで」

暗殺者「あたしらのゆるゆるライフの尺を削りすぎたよね」

女「知り合ってからけっこう経ったつもりでいたから今更暗殺者と話す内容がない」
暗殺者「ご無体な」

鳥精「暗殺と関係ないグルメトークとか旅語りをされてもキャラが活きてこないし」
暗殺者「ひどくない? 普通に行商から買った珍しいフルーツの話とかさせてよ」

鳥精「甘いものが好きとか要らない個性増やすと暗殺者としてのキャラが弱くなるし」

暗殺者「なんでこんな扱いが悪いのか」

女「まあ、バトルパートのダサさが改善されるまでは日常編に移ります」

暗殺者「私の時代きたる!」

95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:34:40.63 ID:8QO5GrkAO
女「ちわー」

店主「いらっしゃいませ。」

女「っとー、暗殺者ってのと待ち合わせてんですけど」

店主「……ああ、奥のテーブル席にいますよ。」

女「ども」

暗殺者「ん、来たね」

女「来てやったわよ」

暗殺者「とりあえずなんか頼んでやってよ」

女「ここって何があるの?」

暗殺者「コーヒー紅茶緑茶」

女「……ならコーヒーかな」

暗殺者「んじゃ、選びな」

女「……メニュー多っ?」

店主「……。」

暗殺者「産地とか挽き方とかで違う……らしいよ?」

女「あたしはそういったの区別できる舌を持ってないんだけど」

暗殺者「知らん」

女「えぇー」

暗殺者「私にもわかんないからさ。とりあえずエスプレッソでも、豆は適当に頼みなよ」

女「エスプレッソって量が少ないから好かん」

暗殺者「水分とる飲み物として見ずに嗜好品として見なさい。紙巻き煙草を量で判断しないでしょ?」

女「吸わないしなぁ。いいや、とりあえずアメリカンの……他はお任せで」

店主「……はいよ。」
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:36:45.56 ID:8QO5GrkAO
暗殺者「来てもらったのは他でもない」

女「何よ」

暗殺者「最近仕事で荒んできたから癒しが欲しくてさ」

女「……帰っていいかしら」

暗殺者「ぶー、いいじゃない少しくらい。生かしてやってんのはこっちだぞー」

女「はいはい。でも癒しって私からかなり遠いファクターじゃない?」

暗殺者「……わりと癒し系じゃない?」

女「自分から言うのも嫌だけどあんたの感性おかしいわよ」

暗殺者「えー」

女「本でも読んだら?」

暗殺者「知っていますか女さん。識字率ってやつ」

女「あー、読めないんだ」

暗殺者「……掲示板くらいなら」

女「なんか悲しいわね」

暗殺者「ってゆーか当然のように字が読めると思うなよー。共通語っても僻地じゃ文字は通じないしそんなもんだって」

女「ん、まあそうかも」

暗殺者「結構育ちが良かったりすんの?」
女「田舎の産まれってのは話したでしょうが。……学者崩れが住み着いててね。子供が少ないから皆その人に教わってた」

暗殺者「ふぅん? 熱心な」

女「田舎のガキは暇なのよ……」
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:40:09.42 ID:8QO5GrkAO
店主「どうぞ。」

女「……濃いような」

暗殺者「ぶっちゃけコーヒーは何を頼んでも勝手に見繕われるから」

女「……注文した意味は?」

暗殺者「お任せって言ったんだから文句ないだろ」

女「……」

暗殺者「飲めないなら私が貰おうか?」

女「んー、チビチビ行けば飲めなくはない」

暗殺者「そか」

女「……にがー」

暗殺者「でも香りはいいでしょ。私は飲めないけど」

女「ん……まあ、うん」

暗殺者「……はあ、癒されるわ」

女「だから、趣味がおかしいわよ」

暗殺者「いや、裏読みしなくていい相手と話す機会が少ないの。だからさ」

女「ふぅん? あんたの仕事なんてヤっちゃうだけだと思ってたけど」

暗殺者「その仕事を持ってくる連中との話がどうしてもね」

女「あー」

暗殺者「依頼人の素性やら関係やら説明されてもされなくても全部疑わないといつ死ぬかわからんからね」

女「罠にかけられるほど大物でもないでしょうに」

暗殺者「暗殺依頼が筒抜けだったりすると手間が10倍くらいになるのよ、したら注意力が薄れるし」

女「油断こそが戦士の最大の難敵だ、だっけか」

暗殺者「ん、それそれ」
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:42:45.81 ID:8QO5GrkAO
暗殺者「そういや資金は?」

女「わりと潤沢。装備替える時以外そんなかかんないし」

暗殺者「そっか。場合によってはいいお金になる情報をさ」

女「聞くだけ聞こうか」

暗殺者「……」

女「……」

暗殺者「この街に闘技場あるじゃん? そこのペットが逃げたんだってさ」

女「ふぅん。相変わらずの情報検索力……ってか盗聴?」

暗殺者「失礼な。仕事に万全を期するために情報集めればこのくらいすぐ知れるっての」

女「まあ、仕事については聞くまい。ペット探しか。それ、安い仕事っぽいけど」

暗殺者「いや、ペットの処分……トサツ?」

女「……」

暗殺者「逃げた先が下水道だから地上に出る前にやっちゃえってさ」

女「……一応、何の子供?」

暗殺者「えーと、森人族?」

女「……むしろ殺していいの? てか一応人権認められてる種じゃない」

暗殺者「違法に所持してるらしいし、表沙汰にしたくないんだってさ」

女「ヤだなあ。関わらないで済ましたい……」

暗殺者「ちなみに魂喰い種だってさ。地上に出ると洒落に「待て」

女「喰われる。わたしそれ喰われる」

暗殺者「やられるまえにやれ。と、えらいひとはいいました」

女「……はあ」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/05/30(水) 03:47:58.36 ID:8QO5GrkAO
女「はあ……それやっちゃえって、あんたが適任じゃない?」

暗殺者「裏の仕事とはいえ、闇の仕事ではないからねぇ。認知されたくない」

女「裏表も何も、一応私は表の住人なんだけどなぁ」

暗殺者「表沙汰になってから動くでもいいけどさ? 真っ先に狙われるような」

女「……この町を離れればいいのではないかと」

暗殺者「それもそっか」

女「危険といちいち向き合うのは本物の英雄だけでいいのよ……コーヒー頂いたら出よう」

暗殺者「ん、それもアリかな。多分誰かやってくれっからね」

女「そゆこと。……まあ、被害がでかくならないように祈るよ」

暗殺者「ん。町を出るなら西行き推奨ー」
女「?」

暗殺者「北方は今内乱で治安悪いし、南は戦火がいつ及ぶかわからんでしょ?」

女「……迂回は嫌いなんだけどなー」

暗殺者「急がばなんとやら、てね」

女「はあ、東は山越えだしまあ消去法か」

暗殺者「ま、実際流れ弾で死ぬようなタマでなし。好きにすりゃいいとは思うよ」

女「楽なルートってのは大概正解よ」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/05/30(水) 23:10:49.78 ID:6sT7BJ5IO
やっと来た!
ゆるゆるライフも好きなので、気の向くままで是非
あと、できれば投下は age 進行でないと…このスレずいぶん沈んでるから他に認知されないかも
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:23:14.00 ID:ZZy8t7hAO
女「ごちそうさま。代金はあの子からもらって」

店主「はいよ」

暗殺者「……いいけどさ」

女「まあ、貴重な情報ありがと。私も死にたくはないからさ。じゃあね」ガタッ

暗殺者「ん、行こうか」スック

女「……あたしは町を離れるんだけど」

暗殺者「奇遇だね、私も西の交易都市に用があってさ」

女「……誘導お疲れ様。ついて来られて困ることもないからいいけどね」

暗殺者「まあ、邪魔にはならないでしょ。そうと決まれば馬でも借りに行く?」

女「徒歩に決まって……いやまあ、代金そっち持ちならいいかな、この際」

暗殺者「ん、良いよ。その代わり私が選ぶけど」

女「まあそりゃ古馬でもなんでも別にいいわよ? 乗ればそんな変わらないし」

暗殺者「じゃ、タンデム出来る馬を」

女「前言撤回。私は歩くから」

暗殺者「えぇー」

女「どう乗ってもあんたを喜ばせるだけなのが癪に障る」

暗殺者「ちぇ、いいよそれなら歩くよ」

女「ん、無駄な出費は抑えないとね」

暗殺者「時間を無駄にもしたくないかと思うのだけど」

女「知らん」

暗殺者「さいですか」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/06/17(日) 02:24:40.63 ID:ZZy8t7hAO
女「さて、と」

暗殺者「私外で待ってるねー」

女「はいはい。とりあえず許可証か」

暗殺者「毎度ながら大変ねー」

女「そう思うならあんたも正規の手順で旅しなさいよ」

暗殺者「足跡残す暗殺者ってのもないよ」

女「むう」

暗殺者「それにそっちだって行商だのよりかは身軽じゃない」

女「まあねー」

暗殺者「じゃ、協会寄って出発?」

女「……今からだと発つのが夕方とかなんだよねー、どうすっかなー」

暗殺者「まあ、徒歩なら野宿は確定でしょ。歩いて2日かな?」

女「ほとんど移動せず野宿は無駄が多いからねぇ。泊まりたい」

暗殺者「リスクは野宿より上だよー?」

女「なんで野宿のが安全そうなのか……」

暗殺者「まあ、襲われると決まったわけでもないけどね」

女「あたしはこういう時にだいたい悪い目を引くのよ」

暗殺者「ははは」

女「……」

暗殺者「?」

女「悪い目代表はあんたよ?」

暗殺者「失礼な!」

女「そうでなきゃなんなのよ……」

暗殺者「……かわいい女の子に出会えてハッピー枠?」

女「……はいはい」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:26:41.11 ID:ZZy8t7hAO
暗殺者「否定されなかった。これはワンチャンあるでよ」

女「なにがよ」

暗殺者「わからいでか」

女「……行ってくるわ」

暗殺者「ん。いってらっしゃーい。西門の外で、またね」


……

女「はいはい」
女「ども。協会所属の――
女「ええ、最後の利用は――
女「ありがとうございます。それでは――
――

女「そんなこんなで北門に来たのだ」

暗殺者「そうキタか」ヒョコ

女「……何故いる」

暗殺者「逃げ切れると思ったの?」

女「……はぁ、いいけどね」

暗殺者「てか内乱のただ中に飛び込むの? 普段ならしないじゃん」

女「西に行くわよ。街道無視すればいいんだし」

暗殺者「素直に西から出りゃいいのに」

女「例の闘技場が西門への道中にあるのよ、そこらに留まってるとは思わないけどさ」

暗殺者「心配性だなー」

女「んな事言われてもね……実際、杞憂に終わりそうだったけど」

暗殺者「ん、じゃ行こうか」

女「仕切らない。あんたと行く理由なんざないんだからね?」

暗殺者「見張り立てて寝られるって幸せじゃない?」

女「……」

暗殺者「ね?」

女「……行こうか。」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:28:05.37 ID:ZZy8t7hAO
暗殺者「事件が起きると思った!? 普通に夜だよ!」

女「何かあっても困るでしょうが」

暗殺者「いやー、普通に街道に合流して近くの草原でテント張って。地味」

女「文句あるなら入らせないわよ」

暗殺者「うわ、ごめんって。……てか荷物多いとは思ったけど、テント常備してんだね」

女「宿代の捻出出来ない時にも使うからね、便利よ?」

暗殺者「……そんなお金ないなら普段から働きなよ。強いんだし」

女「無用な争いは嫌いなの」

暗殺者「そんなタチでもないくせに」

女「るっさい。はよ寝なさい」

暗殺者「ん。4時間交代でいい?」

女「そんなもんかなー。むしろ見張り立てずにガン寝してもいいかとすら思うけどさ」

暗殺者「まあ、町に近いしね。動物も火を焚いてるからそう来ないし」

女「リスクを減らせるならそれに越したこたないから、するけどね。時間は2・4・4で」

暗殺者「了解。じゃ、先に寝てなよ。あとは任せなさい」

女「一応言っとく。変なことしたら耳を削ぐからね」

暗殺者「怖っ」

女「真面目に見張るように」

暗殺者「……はーい」

105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:31:06.81 ID:ZZy8t7hAO
暗殺者「……ほんとに寝たか」

暗殺者「曲がりなりにも暗殺者の私を横につけて寝るとかいい根性してるなあ、ほんとに」

暗殺者「……イラズラしたら、多分起きるよなあ」

暗殺者「うーん。したら尋常ならざる反撃を受けそうでやだなあ」

暗殺者「そんなリスキーというか、損な取引きが確定したような事をする馬鹿なんていませんよ実際ね」

暗殺者「それはそれとして寝苦しいといけないから服をゆるめておこう」スルスル

暗殺者「……なんだろ、生活が不規則なはずなのに肌綺麗なのはズルいよなあ」

暗殺者「……って、服の中に短刀仕込んでやんの。怖っ」

暗殺者「むう、触りたいなんて考える馬鹿はいなくて良かった」

暗殺者「刃物抱いてて怪我したらいかんからね。どけとこうね」ポイッ

暗殺者「……」

暗殺者「……ヤれちゃう気がする」

暗殺者「……あれ? ヤれる?」

暗殺者「……つーかこれは誘ってるんだよな、きっと」

暗殺者「好きにしてっ(裏声)」

暗殺者「こんな声高くないなあ、好きにしてー(棒)」

暗殺者「まあ、据え膳はいただかねば―― バチッ

暗殺者「痛っあ!?」

女「……なん……何……?」

暗殺者「接触起動の罠とかひどくないっ!?」

女「……んぅ? ケモノ避けくらい要るから……あと蚊とか蛭とか。生物の体液に反応する結界もどきらしいんだけど」

暗殺者「おかげさまで舌がピリピリするんだけど」

女「何をしようとしてやがる」
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:33:23.33 ID:ZZy8t7hAO
女「死にたいの?」

暗殺者「すんません。マジすんません」

女「……いいけどさ。とりあえず私起きたしあんたが寝てなさい。」

暗殺者「はい」

女「……はぁ」

暗殺者「あ、あと一応……」

女「何」

暗殺者「私は受け入れ万端なんで、いつでもどーぞ」

女「絞(くび)るぞ」

暗殺者「殺し方がリアルなんすけど」

女「寝ろ」

暗殺者「は、すんません。暗殺者、寝ます」

女「ったく」

女「……焚き火弱いな、薪足してないし」

女「薪集めるかな、火が絶えはしないだろけど」

女「……」チラッ

女「……まあ、いっか」

女「起きたらこいつにやらせよう」

女「あー、ったく。……心配し過ぎだっての」

女「わざわざ注意されなくたって、護身くらいはできるんだからさ」

女「ほっといてくれても良いんだよ」

女「……街までは一緒にいてやるか」

女「……ふぁ、ねむ」

女「……」

女「結局あんまし寝てないし、いつ起こそうかな……交代、しなきゃ」

女「……すぅ」

女「……」
107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:35:40.71 ID:ZZy8t7hAO
暗殺者「朝かー」

女「……そうね」

暗殺者「いやはや、見張りって大変だよねっ」

女「……無事だったしいいでしょ」

暗殺者「まあねー? そうだけどー」

女「……ハッキリ言いなさいよ」

暗殺者「外で熟睡ってどうかと思うなあ」

女「ぐ」

暗殺者「野営は慣れてますみたいな風だったのに、見張りの交代もマトモに出来ないとか」

女「ぐぬ」

暗殺者「私が結局夜明けまで見張りしてたんだけど、なんでだろうなあ」

女「ぐぬぬ」

暗殺者「まあ、いいや。行こか?」

女「……そね。ここに留まる理由はないわ」

暗殺者「あと、ちょっと街道筋に様子見行ったんだけど。やっぱ昨夜は死傷者出たってさ」

女「……そっか」

暗殺者「まあ、死んだひとらには悪いけどナイス判断だね」

女「はぁ、それじゃその判断を活かすために。旅を続けますか」

暗殺者「旅をやめるなら次の街とかわりと平和でいいかもよ?」

女「……あんたは私を殺すって設定をどこかに忘れたの?」

暗殺者「……えと、油断しきった所でバッサリ?」

女「はいはい。行きましょか」

暗殺者「ん。……実際忘れてたわ。いかんねしかし」
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/17(日) 02:37:08.54 ID:ZZy8t7hAO
暗殺者「んー」

女「何?」

暗殺者「いや、どうしたもんかなと」

女「とりあえず街道に合流じゃない?」

暗殺者「んー」

女「? ……ここに居てもしょうがないしさ。行くわよ」

暗殺者「ん」

女「……」

暗殺者「ちなみにさ」

女「何」

暗殺者「例のやつ、まだ捕獲されてなくて、逃げてるんだってさ」

女「……」

暗殺者「西に逃げたのを確認したらしい」
女「北上しようか」

暗殺者「ん、それがいいかと」

女「てか、早く言いなさいよ」

暗殺者「いや、ヤバい奴なら多分そっちの知覚に引っ掛かるから反応待ちを」

女「ん、――別に周囲に大した力は感じないよ」

暗殺者「ふむ」

女「何、あんた実はそれの始末が仕事だとか?」

暗殺者「それなら言うよ、そうじゃないんだけどさ」

女「……でも無関係じゃないんでしょ?」
暗殺者「ま、そうなんだけど」

女「……上質のエサを町の外に置いてソイツを誘導、しかるのち本来の標的をってところか」

暗殺者「ご明さ、痛ぅっ!?」

女「しばくわよ」

暗殺者「しばいてから言うのやめようよマジで」
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/06/17(日) 02:48:30.14 ID:ZZy8t7hAO
女「何考えてんだか……」

暗殺者「いやさ、釣れたら美味しいのは確かなのよ。多分そんな強くはないし。ただ相性悪いから私はやりたくないなって」

女「こっちだって大概悪いわよ」

暗殺者「だけど射程不明の吸魂なんて私は見えてる地雷に突っ込むよりひどいし」

女「まあ、ねぇ」

暗殺者「ソレがいる可能性がある限り、あの町で仕事は出来ないのよ」

女「ふむ。……なら今はいけるんじゃない?」

暗殺者「例のが戻って来るリスクは残るから、微妙」

女「……始末してやればいいの?」

暗殺者「助かるかも」

女「いくら出すのか聞いてあげましょ」

暗殺者「ん、協会から報奨は出るよ?」

女「いくら出すの?」

暗殺者「えー、今は手持ちそんなに」

女「いくら出すの」

暗殺者「……物でよければ、銀のフルーツナイフとか」

女「武装じゃなく家具なのが笑いどころ? いいよ、了解」

暗殺者「んじゃお願いします。多分ちょっと気合い入れて魂垂れ流したらすぐ釣れるよ」

女「……最近安くなってるなあ、あたしの命。いいよ、やるよ」
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/17(日) 23:53:38.70 ID:SuWnkIwpo
おかえりおかえりー
そして多投下乙!!
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/06/22(金) 18:02:30.78 ID:FOXUb4TAO
女「さあ、ってと」

女「報奨が出るたって、登録してからでないと正規の手順踏んでないから割引かれるんだけどなー」

女「のんきに登録なんぞしたら、標的がどっか行くかも知れないし、急ぐしかないのかな」

――
――――

女「というわけで討伐完了」

  「早っ」

女「いや、すべては目撃情報をまとめてくれたあんたのおかげだよ」

  「はぁ、しかしあっけないですねぇ」
女「アウトレンジから弓、ってか機械弓で頭貫けばだいたいは死ぬからね」

  「フェアじゃないような気がしますけど」

女「正々堂々なんてしてたら命がいくらあっても足りないよ。文字通り」

  「……? まあ、とりあえず協会に首でも持っていきます? でかいですし全身は無理そうですよ」

女「そだね。あと一応油かけて燃やしとこうか」

  「何故わざわざそんな事をするんですか?」

女「あんたは質問しかしないね。魂喰い能力が死体に残っていないとも限らないだろうに」

  「あぁ、なるほど」

女「火の始末したら街に戻ろうか。案外楽な仕事だよ」

  「ちなみに、私の名前なんで表記ないんですか?」

女「本編に出ないからじゃね?」

  「メタい」
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/06/22(金) 18:03:28.75 ID:FOXUb4TAO
暗殺者「こっちの戦闘もカットで」

女「戦……闘……?」

暗殺者「スニーキングって結構神経使うんだよ?」

女「でも戦ってはないでしょ。むしろ良いことだけどさ」

暗殺者「暗殺者たるもの無駄な殺しはしないのよ」

女「私と会った時は死体の山を築いていたような」

暗殺者「そこはそれ、必要にかられて」

女「ふぅん……」

暗殺者「目撃されてると、もとい気配でも知覚されたらまずいからね。気付いたっぽいやつは端から全殺し」

女「スニーキングが聞いて呆れるわ」

暗殺者「いや、あれ全殺しになったのはひとえにあんたのせいだよ? アクティブソナーみたいなのが来たからであってさ」

女「私のせいにすんなよ……ってか、探知の仕手と他の連中が別物なのくらいはわかれよ」

暗殺者「だから、毎度言うけど私はさ」

女「アクティブな感知能力が皆無、ってね。いいけど」

  「あのぅ」

女「何」

  「この方は、どなたですかね」

暗殺者「暗殺者です。よろしく」

  「……」

暗殺者「ねぇ、目付きが気に入らないから殺していい?」

  「ひッ!! すいませんすいません」

女「脅さない。あんたそういうキャラじゃないでしょ」
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/06/22(金) 18:05:07.92 ID:FOXUb4TAO
  「えっと、私は識者といいます……」
暗殺者「ふぅん」

  「あ、興味はないですか、そうですか」

暗殺者「識者ちゃんの血は何色かすごい興味ある」

  「ひぃッ」

女「だーかーらー」

暗殺者「いや、そもそもヤバい話をする場所にこんないたいけなガキを連れてこなくても」

  「ガキ……ですか」

女「……それは、反省してる」

暗殺者「まあなんにしろ報酬は渡すよ。はい」ホイッ

女「ん。ありがと」

  「……へぇ。ホールマークの古い銀器ですね」

暗殺者「これであんたの首を」

女「しつこい。……アンティークってやつか。価値がわからん」

  「旧北国の王宮の印がありますから、その辺の品ですね。時期がよければ12000ってとこですか」マジマジ

女「そんな高い品……とは言わないよ。時期?」

  「ほら、北はその」

暗殺者「戦争紛争真っ只中。今文化財なんて集める暇はないんじゃない?」

  「他国からしても今こんな趣味の品を欲しがるところがあるかどうか」

女「……つまり、この重量の銀塊程度か」

  「個人で集めている物好きの金持ちが居れば……って感じですか。そんな買い手が見つからなければおっしゃる通りの値がつくかと」

女「……居ねぇよ、そんな知り合い」
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/22(金) 18:05:56.94 ID:FOXUb4TAO
暗殺者「でもほら、前に銀剣へし折れたじゃん。代用にでもしたら?」

女「果物とけだものは違うでしょうが」

暗殺者「斬れれば似たようなもんだって」

女「まあ、ないよりかはマシ……いや、そうか?」

暗殺者「まあまあ。とりあえず出ようよ。こんな街にずっと居るのもやだし」

女「一泊くらいしていくわよ。昨日野宿だったし」

暗殺者「まあ、それならそれでいっか。私もー」

女「宿は別にしてよ」

暗殺者「えぇー」

女「同じ宿を取ってもいいけど、私はその時点で街を出るからね」

暗殺者「ん、むう」

  「あれ? それ宿を取って街を出たら――」

暗殺者「多分宿にいるよ。今日は欺ける気がしないし、明日なら一緒に行っていい?」

女「まあ、良いでしょ。もともとその予定だったんだし」

暗殺者「やたっ。じゃあ私はあの喫茶店で宿を借りるから、被せないでねー」

  「?」

女「あっちが取った宿に後出しで泊まっていいがかりがつけらんないようにしたのよ。そんな手間かかることはしないっての」

  「……よくお互いを理解してるんですねぇ」

女「そんなんじゃないと思うけどね。さて、宿を探さないと」
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/22(金) 18:31:41.32 ID:FOXUb4TAO
女「ふぃー」

  「あの、私がご一緒していいんですか? 暗殺者さんは駄目なのに」

女「あんたさ、‘暗殺者’って言われて同じ宿に居たい?」

  「それは、怖いから遠慮したいですけど」

女「そゆことよ」

  「……はあ、そういうことにします」

女「あと、報酬の分配をしなきゃいけないし」

  「頂けるんですか?」

女「情報提供ってのは、ちょっとしたのならいちいち礼を言うのも手間だけどさ。かなり助かったからあるなしでかなり違ったと思うよ」

  「まあ、識者を名乗る以上は当然の行いですよ」

女「そう? まあいいや。識者なんて本編に関係ないし」

  「……わたし、便利なんですよ?」

女「便利すぎる、ってのもガンでしょ。あんたに聞いたらだいたいは答えが返ってくるし」

  「はあ。そんなもんですか」

女「まあその情報分、報奨の2割で1600でどうかな」

  「あはは、頂けると思ってなかったのでいくらでも構いませんが……ありがたくもらいます」

女「まあ識者なんて道楽みたいな職業名乗るくらいだし、金は持ってるんだろうけどさ」

  「それは開示不可ですねー」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/06/22(金) 18:33:24.30 ID:FOXUb4TAO
暗殺者「おはよー」

女「なぜいる」

暗殺者「鍵とか、意味あると思う?」

女「あー」

女「で、識者は?」

暗殺者「もう起きてたからいないよ。ダイニングにいるんじゃないー?」

女「あー、もう結構日が高いな。ご飯食べたら出よう」

暗殺者「通行証は?」

女「期日以内だからいけるでしょ」

暗殺者「ん。じゃあ待ってる」

女「一緒に食べないの?」

暗殺者「もう食べてきてるよ。昼には少し早いし」

女「それもそうかな。じゃ、待ってなさい」

暗殺者「はいはーい」

女「おばちゃん、朝ごはん」

料理婦「あんたねぇ。朝なんてもんじゃないよ。もう昼だっての」

女「じゃ、昼飯」

料理婦「昼は別料だよ」

女「ケチくさいなー。まあいいや、ちょうだい」

料理婦「ほら、肉と野菜の冷製サラダとホットサンドだよ」

女「おー」

  「あれ、起きたんですか」

女「おはようさん」

  「あ、昼御飯ですか。いいなあ」

女「朝飯を食べそびれたからねー」

  「勿体ないですね。美味しかったですよ。ボリュームもあったし……サンドイッチとローストビーフ、あとサラダ」

女「……」

料理婦「……余り物は活用しないとね?」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2012/06/24(日) 20:02:59.83 ID:GKVW0Rb2o
おつあげ!
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/06/25(月) 07:26:39.28 ID:3BLBf3zIO
読み返したら、かわいい女の子に出会えてハッピー枠にまたワロタ
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/07/04(水) 23:44:08.90 ID:J9rWq2SAO
――
――――

女「西門っと」

暗殺者「ん、ところで」

  「はい?」

暗殺者「なぜいる」

  「私も西に用事が……まずいですか」

暗殺者「まずいっつーか、何故連れてきた」

女「いや、もともと西行きの道中私と出くわしたらしいし」

暗殺者「……」

  「最低限の心得はあるつもりなんですが……」

暗殺者「そりゃ、ないなら一人旅なんてしないもんね。だからその心配はしてないけどさ」

女「行程が延びる、と」

暗殺者「わかってんじゃん。ならさ」

  「あの、えっ? 徒歩ですよね」

女「まあ、何かに追われてもいない限りは」

暗殺者「あんたさ、街まで何日で見てる?」

  「……馬か機械に頼って1〜2日、歩いて一週間くらい、ですかね」

暗殺者「私らなら、足で2日」

  「ぁぇ?」

女「地形とか気にせず野生動物の危険性も無視して街道外れの最短を行けるし、ペースも早いからね。別に普通の人に合わせてもいいと思うけど」

暗殺者「私が捕まりにくい理由にこの行進ペースもあるから、出来れば」

女「一人で行けば?」

暗殺者「ひどっ!」
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/04(水) 23:46:17.10 ID:J9rWq2SAO
  「……なら私だけ馬を借りたら」

暗殺者「それだと同じルートを行けないかなー」

女「……そもそもあたしら三人で行動する理由ってないからね?」

暗殺者「そだね、だから」

女「私は一人でも別にいいんだよ、揉めるくらいなら各自のペースに任せた方が平和だしさ」

暗殺者「えー」

女「あんたと同行する理由ないもん」

暗殺者「そりゃ……そうだけど」

  「……馬車でも借りますか?」

女「レンタル高いからなあ。乗り合いならまだしも」

  「あ、いえ。お金が大変なら私が出します」

暗殺者「何の利があるのさ、それ」

  「……もう少し女さんの話が聞きたい、では駄目ですか?」

女「私としては自慢話をするだけで楽が出来るなら文句はないけど」

暗殺者「……」

  「小さめの幌馬車を借りれば中は人目につきませんよ?」

暗殺者「配慮どうも。私も乗っていいってこと?」

  「お二人に随伴したいという立場ですし」

女「実はこいつが勝手についてきてるだけだったりはするけどね」

  「でも、暗殺者さんと足並みは揃えるつもりだったんですよね?」

女「……」

暗殺者「あれ、そういやそうだ」

女「……」

  「あれ、違いました? だから三人で行動できたらと思ったんですが」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/05(木) 00:22:56.27 ID:BGZfXGqAO
暗殺者「……ふふー」

女「……」

暗殺者「一緒に行く? へへへ」ニヨニヨ

女「捻じ切るぞ」

暗殺者「はいはい、ごめんねー」

  「で、馬車借りますか?」

女「んー」

暗殺者「?」

女「遠慮しとく。歩くよ」


  「え」

女「個人レンタルで馬車借りれるくらいなら余裕じゃない。私らは自力でいくよ」

  「……そう、ですか」

女「悪いね。ほら、行くよ」

暗殺者「あ、うん」

  「それでは、また」

女「おーぅ、またね」

  「……」

――
――――


暗殺者「? ロハなのに珍しいね、断るなんて」

女「人を守銭奴みたいに言わないでよ」

暗殺者「守銭奴ではないけどさ、利用できるものは利用する主義だと」

女「あー、それは、まあ。ただ利用される立場ってのも嫌いだからさ」

暗殺者「護衛がわりにされるって?」

女「そーいうのはお互い様だからいいんだけどさ。ほら、私らは珍しい人種じゃん」

暗殺者「確かに性的少数派は珍しいからね」

女「それはあんただけでしょ? あの子が識者ってことは私らみたいな希少例の弱点やらを考察されるかも知れない」

暗殺者「……一般的な魂術の使い手や暗殺者の対処って知れわたってない?」

女「同型いないくらいのキワモノでしょうが。お互い様だけど」
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/05(木) 00:24:15.21 ID:BGZfXGqAO
暗殺者「まあ、私は普通だよ? 暗器メイン、スニークキル」

女「あんたみたいなのはほとんどいないからね、弱点多いでしょ」

暗殺者「活かしどころ微妙だしね。実際適職を探したら暗殺稼業とかになりますわ」

女「軽業師とか向いてそうだけどね」

暗殺者「世の中の暗殺者全員に言えそうだけどね、それ」

女「あとは希少種として薬液浸けになるとか」

暗殺者「仕事じゃないじゃん」

女「欲しがる研究者はいそうだけど」

暗殺者「やだよ、命が惜しい。適職ってんならそっちは本当にこれしかないって感じだよね」

女「これでも昔は普通の酪農家だったんだけどなあ」

暗殺者「狩人まがいの事ばかりしてたって聞いてたけど?」

女「まがい物だって言ってるでしょ。あくまで家業は農家だもの」

暗殺者「私、そーいうの嫌いなんだよなあ。後継ぎとかって」

女「田舎じゃ後継がないと村の機能が崩れたりすんのよ。働き手がひとり減るだけで大変なんだから」

暗殺者「んー。都会産まれにはわかんない感覚だなー」

女「都……会……?」

暗殺者「む、あの城塞都市が都会でないとでも?」

女「いや、都会って言うには人がいなさすぎるでしょ。行商も旅人も避けてくし」
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/05(木) 00:27:07.92 ID:BGZfXGqAO
暗殺者「ストップ」

女「ん」

暗殺者「獣が集まってる場所があるね。方角からして水場とかではなさげ」

女「野犬が群れてるとかかね、方角は?」
暗殺者「まっすぐ行くとかち合う」

女「迂回で」

暗殺者「異議なーし」




女「野犬だけはねー、病気怖いからなー」

暗殺者「まあ、大概の獣は病気持ちの可能性があるから迂闊に関われないよねぇ」

女「浴びた血に寄生虫が居ましたとか怖すぎてやだし」

暗殺者「食べた肉に居たとかもあるね」

女「うぇ、私それが嫌だから肉は干さないと食べられないや」

暗殺者「焼いたらだいたい大丈夫だよ?」

女「昔焼いた肉でも食べて病気したのが居たからさ、ちょっとね」

暗殺者「ふーん? まあそもそも寄生虫が怖くては水も飲めないわけで」

女「水中の寄生虫は見えたらどければいいし」

暗殺者「そんな視力持ってるのそこくらいなもんだよ」

女「あんただって川の水飲むじゃない、変なの使って」

暗殺者「これは浄水装置っていう科学の品、そんな力押しみたいなやり方と一緒にしないで頂きたい」ゴソゴソ

女「浄水装置って砂利とかで隙間から濾過するんじゃないの? なにこの布詰めた瓶は」ヒョイ

暗殺者「それはちゃんと麻、綿、羊毛、絹ってだんだんときめ細かくした貴女の下着たちで」

女「……」

暗殺者「……だったらいいなって」

女「」ガシャン

暗殺者「あー、パンツ達が泥まみれにー!」
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/06(金) 00:30:13.39 ID:H55mJfD2o
相変わらず面白いなC
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 06:14:46.76 ID:H55mJfD20
追いついた!これはいい
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 11:29:57.59 ID:8A9GZl84o
>>124
Cってよく見かけるけど、どういう意味なの?
ぐぐってもキーワードが絞りきれなかったよ
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 11:37:26.21 ID:H0lgjy7so
>>126
4に円で支援だよ
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/06(金) 12:19:17.46 ID:n++Cad/lo
>>127
そういう事か!疑問が解けたよ、ありがとう!
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/07(土) 09:05:18.12 ID:19mF5m5Ao
安定のクオリティだと思うが、読者少ないみたいだな
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/07/07(土) 10:36:44.52 ID:19mF5m5A0
もっと読みたいな
131 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/09(月) 23:31:34.77 ID:vyilS+fAO

暗殺者「危険を避け続けるストーリーってどうなんだろねー」

女「危険を背負うのは唄の英雄だけで十分よ」

暗殺者「つまんないなー」

女「ならあんた一人で推定獣の群れに突っ込みなさいよ」

暗殺者「やだよ、危ないし。割りと迂回する時に風下から近づいたし正体わからない?」

女「死んでる狼」

暗殺者「……えと、動いてたよ」

女「多分昨日のアレが魂吸いきった生き物を傀儡に出来るとかなんでしょ……やだなあ」

暗殺者「うへー、怖っ」

女「私の不始末にされませんように」

暗殺者「禍根を絶たないの?」

女「嫌よ、危ないから」

暗殺者「ひどっ」

女「まあ、ガワが狼だから木っ端戦士でも対処出来そうだし」

暗殺者「確かに大事故にはならないか」

女「……そろそろ夜営の準備をしようと思うんだけど、いい場所はある?」

暗殺者「この辺はどこも変わらないね。野犬に注意ってくらい」

女「了解。じゃ、適当に場所を見繕うかな」

暗殺者「あの子には嘘言ったかな。今、行程の3割5分ってとこじゃない?」

女「夜まで休まず行けば着くでしょ。疲れるからしないけど」

暗殺者「まあ、向こうで会ったら訂正しとこう」

女「どうせしないでしょ」

暗殺者「まぁね」
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/07/09(月) 23:33:43.50 ID:vyilS+fAO

――

暗殺者「上手に焼けましたー」

女「はいはい、テント張ったわよ」

暗殺者「よし、食べよう」

女「頂きます」

暗殺者「ねーねー、乾パンに砂糖ついてないんだけど」

女「水飲めば?」

暗殺者「まあ、わりと綺麗な川だから汲んでも問題なさそうだけど」

女「魚に塩振るか……勿体ないかな」

暗殺者「ケチくさいなあ」

女「塩って高いときちょっと高いからさ」

暗殺者「香草だとかに比べれば安いもんでしょ」

女「そうだけどー」

暗殺者「貧乏性だなあ、それなりにお金はあるだろうにさ」

女「贅沢に使える金は持ち合わせてないの」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/09(月) 23:37:12.32 ID:vyilS+fAO
暗殺者「塩ってコスパ良いじゃん。純度99.7くらいだからほぼ塩分」

女「だから?」

暗殺者「値段なんて気にしなくても」

女「……海水塩だと少し下がるからね」

暗殺者「でも普段持ち歩いてるの岩塩でしょ?」

女「ちょっと揚げ足とっただけよ。海水塩は崩れるから保存しづらいし使わない」

暗殺者「まあ革袋に詰めてたら袋が塩味になってました、とかなりそうだよね」

女「布袋に詰めてたらいつの間にか袋が粉ふくしね」

暗殺者「……やったんだ?」

女「……岩塩なら使いたい量を削ればいいからね」プィッ

暗殺者「そだね」ゴリゴリ

女「……それは?」

暗殺者「ふふふ、知りたい?」

女「それは誰の何だろうね?」

暗殺者「貴女の岩塩ですっ!」ゲザァ

女「たく、油断も隙もない」

暗殺者「いーじゃん、使おうよ。使わせてくれたら黒胡麻あげるし」

女「好きなだけ使いなさい」

暗殺者「やった。味気ない魚って苦手でさー、塩味くらいつけないとね」

女「で、胡麻は?」

暗殺者「せっかちだなあ、食後にでもあげるよ。今は食べないでしょ?」

女「まあ、最上級の保存食だしね。勿体ないししばらく食べないよ」

暗殺者「ま、仕入れたの少し前だから早めに食べてね。――黒胡麻と黒胡椒を読み間違えた馬鹿は挙手な」

女「?」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/09(月) 23:38:16.72 ID:vyilS+fAO
暗殺者「ふぅ、ごちそうさま」

女「お粗末様」

暗殺者「まあ実際粗末だよね。焼き魚と乾パン」

女「文句あるなら外で寝ろ」

暗殺者「すいません、嫌です」

女「今日はもう一緒に寝るよ。賊が沸く場所でもないし、ここに水を求める獣もいなさそうだし」

暗殺者「そういうもん?」

女「ちょっと味違ったでしょ、ここの水」
暗殺者「……微妙」

女「……控えめに言っただけで普通気付けるくらい違うんだけどね、硫黄混じりなんだわ、これ」

暗殺者「上流に温泉?」

女「温泉かどうかはともかくすぐ上流に硫黄泉があるのはほぼ確定。まあ餓えた獣とかがふらっと来るのはこの際無視」

暗殺者「雑」

女「その程度警戒解かずに寝れば気付けるでしょうが」

暗殺者「ま、そだけどさあ」

女「そんなわけで寝るよ。おやすみ」

暗殺者「はーい。……温泉寄る?」

女「んな無駄な」

暗殺者「ちぇー。おやすみ」

女「はいはい、また明日ね」
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) [sage]:2012/07/10(火) 01:19:08.80 ID:LNxW+Gu1o
やっぱりいいね
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/07/12(木) 06:21:27.13 ID:CCqX1klAO
暗殺者「昼である」

暗殺者「……ひま」

暗殺者「……やっと来た」

女「行程の7割近くきてるよ。案外街道から外れてなくて良かった」

暗殺者「おかえり。昼御飯はできてるよー」

女「ありがと。火の管理が他人任せってやっぱ楽だわー」

暗殺者「まあ、いろいろお互い様だし」

女「感謝はすぐに伝える。人の道ってなそういうもんよ」

暗殺者「ふーん? まあ食べようよ。保存食を粥にしただけだけど」

女「充分。固い保存食とか自然のもの食べてると食べやすくした穀類ってごちそう同然だしさ」

暗殺者「逆に新鮮な川魚とか食べ飽きるからねー。市場でいくらするとか思っても連続はちょっと」

女「食べたら少し休んで出発して……夜までには着くね、これなら」

暗殺者「そだね。やっぱ長所を活かしあうコンビネーションって大事だよ」

女「あたしら実はワンダラーのが向いてたりしてね」

暗殺者「新天地の地図を作るとか? 確かに向いてるかも。転職する?」

女「冗談」

暗殺者「でも、見知らぬ土地にしか行きたくないんでしょ?」

女「見知らぬ土地と未開の土地には絶望的な開きがあるのよ。いつかの夜には宿で安心して寝れるって安心がないとさ」

暗殺者「まあ、キツいかな」
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/07/12(木) 06:24:52.31 ID:CCqX1klAO
――
――――

女「到着」

暗殺者「巻き展開きたわー」

女「ぶっちゃけ道々食べられる木の実むしりながら駆け抜けるって」

暗殺者「地味だしみみっちぃけども」

女「さて、初めて行く街ってやっぱり楽しみだなー」

暗殺者「流された。まあいいや、一旦ここでお別れですよ」

女「あ、そか」

暗殺者「関所まともに潜るわけにもいかんしね、街中で会いましょう」スゥッ

女「ん。またね」

女「……さて、新天地に訪れたんだし。浮かれ気分で物見遊山と洒落込みますか!」


――そんで。

  「ぶっちゃけこの街では女さんは事件に巻き込まれもせず私の実家でごろごろしてました。面白くもなんともない」

  父「まあ構わんよ」

女「……ぐだぐだ日常パートやるんじゃなかったん?」

  「思ったより面白くないんでカットです。さっさと本編行きましょう。てゆーか事件をスルーする日常ってかなりダサいです」

女「ひどっ」

暗殺者「それ私の決め台詞」

女「え?」

暗殺者「え?」

  「ぐだぐだだ……」
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/07/12(木) 06:40:24.95 ID:CCqX1klAO
省かれた日常パート一部



  「女さんの能力とかについて教え

女「やだ」

  「えー」

女「誰に知れていくかわからんのに弱点や欠点に気付くヒントをばらまいてたまるか」

  「この辺で女さんの能力解説とか挟まないとめんどくさいんですよー」

女「知らん」

――
――――

細工師「こ……これはまさしく私の師匠が作ったナイフ! いったいどこで!」

女「わからん。貰っただけだし」

細工師「そうですか……今は亡き師匠の作品、よろしければ譲って頂きたい」

女「いいけど、これ年代物のアンティークだって聞いたよ。あんたの師匠何歳だったのさ」

細工師「あぁ、ウチは骨董品の贋作師でもあるんで」

女「バッタモンかよ」

――
――――

女「桃はうまいなぁ……」モグモグ

暗殺者「……」ペリペリ

女「手がかゆくなるけど、我慢できる……うめぇ」モグモグ

暗殺者「……」ペリペリ

女「ほら早く次の剥いてよ」

暗殺者「……どうぞ」

女「うまうま」モグモグ

暗殺者「私はなぜ下女のような仕打ちを……」ペリペリ

女「明日はジャムを買おう……」モグモグ
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/18(水) 07:16:08.01 ID:qtZo8QLIO
やっと覗けたら来てたね
クオリティ高いから読んでて楽しみだよ
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/07/19(木) 07:28:06.41 ID:rayPyMpIO
>>133
読み間違え)ノ
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/08(水) 12:30:34.48 ID:QhPNH48IO
またお休みかい?
帰還をお待ちしています
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/08/28(火) 04:50:26.70 ID:PeRhs0dAO

女「……」―キィィン

女「……遠っ」

女「いやこれ、走るけどさ。間に合わないようにしか」

当主「相変わらず器用な奴だ」

女「……いや、あれ?」

当主「どうしたんだ?」

女「いや、状況にさ。流されてるから」

当主「護衛ってのは防衛する側だし、受け身になるのは当然なんじゃないか」

女「それだよ」

当主「ん? ……ああ。なるほどな」

女「あたしは護衛なんだ。屋敷に引きこもらされるならわかるけど」

当主「外に、攻め込む側になった」

女「なんかさ、やな思惑に乗せられてそうじゃない?」

当主「……例えば、どんな」

女「わからんよ。イレギュラーまみれなんだ、今回は」

当主「勇者か?」

女「それもあるけど、暗殺者? だかわからん狂人もだね。あたしの勘だとあれも本来の流れから外れてる」

当主「勘、か。あまりアテにしたくないな」

女「経験則に根ざす推理、でもいいけどね。暗殺者なら余計な殺しをしたとこまでは許容できるけど。今姿を隠さない理由はないんだ。異常だよ」

当主「なるほど。……でも、放ってはいられないだろ?」

女「それが最大の問題だよ……。不穏当な気配しかないのにさ」

当主「待ってるからさ」

女「……屋敷の守りを無くすって下策だよなあ。行くけど」
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/08/28(火) 04:52:07.06 ID:PeRhs0dAO

女「……」タッタッ

女「……てか、まずいな。状況が見えない」タッ タッ

女「暗殺者がなんか隠してるのは本来の目的についてだとして……あー、聞き出せば良かったかな」タンッ

女「婦人を襲ったやつの目的と行動理念がまるで掴めないからな……勇者と同時に退場しててくれたら楽なんだけど」

女「とりあえず行かないとね。放っといたらろくなことにならんから」タンッ

女「……とーおーいー!」タタタタッ
144 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/28(火) 07:06:24.10 ID:dh+P/i0IO
面白いよー
面白いよー
ガンガン書いてちょ!
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2012/08/29(水) 12:26:17.64 ID:dSulVexIO
楽しあげ
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/08/31(金) 06:08:47.55 ID:ff+CnWvAO
――
――――

少女「……っ」ギチギチ

女「……うへぇ」

勇者「……女か」

婦人「あら、遅かったですね?」

女「本当に強かったんですね、ご婦人。失礼ながら実力を過信していらっしゃるかと」

婦人「あら、厳しいお言葉ですわね」

鳥精「私がブーストしたとはいえ、やるもんだよ」

婦人「私の術は予備動作が非常に長いのが問題だったので……勇者さんが時間を稼いでくれましたから」

少女「……ぁ、う」

女「……しかし、こんなちっこいのがねぇ」

婦人「……しかし、実際かなりの力でした。そして、私はこの子に襲われています」

勇者「下手したら剣を抜くことになりそうなくらいには強かったよ。見かけで判断したら駄目だって言ってたのは君だろう?」
女「……ふぅん?」

鳥精「あんたが知らないうちに地力をつけてんのよ。馬鹿にしないで」

女「そ。……とりあえずこの子から話を聞きたいんだけどねぇ」

少女「……」フゥー コフゥー

鳥精(狂気に浸食されてるから、微妙かな)
女「……」

勇者「この子を裁く事は出来るんだろうか……」

女「……」

鳥精(いきなり断罪しないだけ進歩してるでしょうが)

女「……」

鳥精(はいはい、気を付けますよー)

婦人「……恐らく、彼女は呪物に浸食されていますね。解放出来れば話も出来るかと」

女「あれ、そうなの?」

婦人「私の専門分野なんで、信じてもらえますかね?」

女「てっきり素の狂人かと」

鳥精(ひどっ)
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/08/31(金) 06:14:04.07 ID:ff+CnWvAO
女「……呪いとか、あんまし好きじゃないんだけどね」

婦人「私たちみたいな人間からすれば日常的に関わる問題なのですが
  「ともかくも、この少女は呪具の影響を色濃く受けているようですね。
  「まあ、見てわかる通り。彼女の手に固く握られた刃物、これに強力な精神波を感じます。
  「解呪を私や隠居なら試みることも可能ですが、時間がかかりますし、その間無防備になります。
  「なので、別のアプローチとして。呪具の破壊を提案したいのですが」

鳥精「……バックファイアで精神が壊れたりしない?」

婦人「そうなったらそれが天の裁き、ということでは駄目ですか?」

鳥精「それは天の意思でなく人の力です」

女「破壊は構わないけどさ。まずはひっぺがせばいいの?」

勇者「よし、それじゃ……痛っ!」グチャッ
女「うわ、グロッ」

婦人「茹でた芋とかってあんな風に皮剥きましたよね」

鳥精「あーもー、結界内部に入って何を馬鹿なことしてんだか、治癒治癒」

女「尋常じゃない力だねしかし」

勇者「僕が、抜剣を『させねーわよ』……だよな」

女「……結界の範囲は?」

婦人「あら、やってくださいます?」

女「解呪の施行時間を参考までに伺いますが」

婦人「一週間はかからない、くらいですか。三日は欲しいです」

女「オーケー、やりましょう」
148 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/08/31(金) 06:18:02.26 ID:ff+CnWvAO
女「……まあ、結界内で立ち回り、ヤバくなったら逃げてりゃいいんでしょ。なんとかなるさ」

婦人「有効時間あと4分しかないですけどね」クスクス

女「……手足削いで尋問するのが楽なような」

鳥精「外道な振る舞いしてるとライセンス消されるわよ」

女「戒律と倫理にに触れるときた。……いや、しないよ? しない」

鳥精「人型の人造生物とかならともかく、本当に本物の人間だからね、我慢なさいな」

女「人道にのっとった結果として命を落とすリスクを負うのも大概だよなーって」

勇者「それが正義に生きるものの義務だよ」

女「……そーですか」

勇者「本来なら僕が切り結んで改心させたいけど……」

女「死にたきゃ止めないよ」

婦人「私は一応、解呪の準備に邸へ戻りたいのですが、経過を見届けたほうがいいかしら」

鳥精「いや、私が見届けましょう。緊急には魔術で対応しますし。勇者の護衛のもと、屋敷で待機してください」

女「ま、貴女を殺そうとしているかも知れない人物の前にいつまでもいさせるのはどうかと思いますからね。任せて下さい」

婦人「そうですか? では、よろしく頼みます」

勇者「アーリィ、何かあったらすぐに呼んでくれよ?」

鳥精「わかったわよ。あなたこそ婦人をちゃんと守りなさいよ?」
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/08/31(金) 06:21:17.19 ID:ff+CnWvAO
勇者「それじゃ」

婦人「また後程」

鳥精「……」

女「多少は周囲を省みる能力が身に付いたみたいだね」

鳥精「……でしょ?」

女「まあ、子育て頑張んなよ。私はなるべく関わりたくない」

鳥精「あんたのことを気に入ってるみたいだけどね」

女「近所のねーちゃんってくらいで頼むよ」

鳥精「あー、そんなんかもね」

女「……ありがとね、連中外してくれて」

鳥精「……」

女「多分だけど、私のツレがこの子に用があるみたいだからさ。事をややこしくしたくないし、助かる」

鳥精「なんのことかしらー」

女「……でさ、ちびっこ。本当に意志疎通は無理なのかな? お話できる?」

少女「……う、ぅ」

女「微妙ーな」

鳥精「まあ、それ破壊か奪取なさいな。かなり強力な干渉してそうだし。この子多分本来の地力はそんなでもないから。アイテムのブーストがかかってんでしょ」

女「ん、そうすべか」

鳥精「ってゆーか。私に反応したのがあんたと、あと誰だろな。この子、違うし」

女「誰でもいいよ、絡みがなけりゃ」

鳥精「確かに、面倒をこれ以上抱えるのはごめんよね」
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/08/31(金) 07:37:04.81 ID:QE0mpLcIO
お!
乙ん
めちゃ楽しいからペース上がれば人気出るし、今のままでも応援してるよ
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 18:58:20.16 ID:s4D1TA6AO
女「意味が判るなら頷くか目を閉じなさい。オーケー? ……微妙だなあ」

鳥精「結界だけど大部分ゆるんでるよ。多分手元のそいつが破魔とかそんなんだね。呪物の分際で」

女「うーい。……一応私はあんたをなるべく殺さず無力化に行くよ。という名目で全力で行くから
  ――堪えろ」ヒュッ

少女「……っ!」ガキィ

鳥精「おー、反応よし」

女「舐めた口聞く余裕あったら支援寄越してよ。結界が完全に解かれたらさすがに余裕な――っ」キンッ

ガキッ ギャリン ゴッ

鳥精「あはは、結界内部で競り負けてやんの。てゆーかあんたに支援とか燃費悪すぎだから嫌だ」

女「ふぅざけんなっ!」ドカッ

少女「……っ!」ズサァァ

鳥精「割と余裕ありそうなんだけどなー」
女「このままだと首か腿を狙うでしょ、殺すでしょ、まずいでしょ!?」キンッ

少女「――っ」ブォン ゴカッ

鳥精「急所狙いオンリー対腕力ごり押しって中々の良カードだよねー」

女「だー、もー!」タンッ

鳥精「魂の核に近いとこ……体幹とか以外なら治癒で誤魔化すよ。四肢の腱くらいなら繋ぐからやっちゃえ」

女「さっきするなって言ってたじゃんかー!」ガキッ ギンッ

鳥精「状況は変わるのだ」

女「そうですかっ!」ザシュッ!!

152 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 19:02:39.48 ID:s4D1TA6AO
女「やっ、とっ、くそっ」キンッ シュッ

鳥精「ねー、そろそろ本気出して無駄口叩くのやめない?」

女「なら話しかけないでっ、もらえるっ? 気が散る!」ガキィ ガツッ

鳥精(はいはい。これでいい?)

女「そういうんじゃねぇってわかってんだろうがよぉっ!」ガキィィン

鳥精「はははは」

少女「……っ、くっ」ボタ ボタッ

鳥精「……んー、押してるねぇ。いい感じ」

女「だあ、くそっ!」ビシュッ

少女「っあぁぁあ゛ぁ!」ザクッ

女「ふっ……ん!」グリッ

少女「――――!!」ドサッ

鳥精「うへぇ、残虐ー」

女「力量差がもう少しあればクリーンな勝負にしてやれるけどさ……回収させてもらうよ」ヒョイ

少女「……」

鳥精「とりあえず破壊?」

女「便利そうだし、解呪出来るなら自分のにしたいけどねぇ」

魔具(残念だがムリだよ)

女「……また喋る剣だよ」ゲンナリ

魔具(さっきのアレと同じに見るなよ、勘弁だぜ)

鳥精「……んー、インテリジェンスソードってなるべくなら非破壊なんだよねぇ」

女「歴史の証人になりうるからだっけか。まあとりあえず武器も奪ったし起こす? この子」

少女「……かえ、して」フラ

鳥精「起きてたりしてね」

女「……タフな意識してんなぁ、どう起こそうかと思ってたくらいなのに」
153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 19:05:54.29 ID:s4D1TA6AO
鳥精「てゆーか腱切ってるし動脈裂けてるのによく喋れるなあ」

女「私も大概酷いことしてるとはいえ、そのライトなノリってどうなんだろ」

少女「かえして、ください」

鳥精「案外理性的ね……大丈夫そうだし治すわよ?」

女「命の価値ってなんだろう」

鳥精「異議なしととるわよ、治癒ー」シュウゥゥ

少女「……? すごい、な」

鳥精「すごいでしょ、讃えなさい」フンス

女「あんたさ、このナイフ……短刀? 錐……まあこの刃物、ヤバい品物なのよね。返したらまた乗っ取られるわよ」

少女「……そんなことはない、ですよ」

鳥精「さっきまでのあんたの姿見たりしたら、信じるってのはないよね」

魔具〔嘘みたいに聞こえるかもしれんが本当だ、握らせろ。そうすればわかる〕

女「……んー」

鳥精「ちょっと、いいの?」

女「斬りかかってきたら次は思慮の余地なしってことで?」

鳥精「んー。大丈夫かなあ」

少女「――ありがとよ」

鳥精「やっぱ乗っ取られてるじゃない!」

少女「待てよ。今は穏便だろ、俺。そもそも俺はそーいう代物じゃねぇんだよ」

女「ふぅん?」

少女「黒衣のやべぇののせいだよ。説明は後ろのソイツにやらせろ」

暗殺者「……。やっほー」

女「あんたいつまで傍観決めてるのかと思ったら……」

暗殺者「たはは」
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 19:08:34.20 ID:s4D1TA6AO
暗殺者「いやはや、お疲れ様。いつから気付いてたの?」

女「あんたが気付かせに来た時からよ。戦闘中に気付く余裕はないし、その前は割りと本気で潜伏してたでしょ」

暗殺者「いやー、ごめんねー」

女「別にいいけどね。で、のこのこ出てきたからにはこの子に用事があるんでしょ」

暗殺者「別にその子にはないかな。その刃物が欲しいだけ」

少女「ん、俺が欲しいのは構わんが今はコイツ専用だ。他人が扱ってもただの棍棒でしかない」

暗殺者「……それは把握してる。だから刃物ついでにこの子も欲しい、のかな」

女「何だかな。アンタは割り込みしてきただけのくせにあんたしか知らない事情が多いのね」

暗殺者「知らなくていい……かもよ? 要らんことに首を突っ込むの嫌いでしょ」

女「んな馬鹿な。発端があんたな以上知ってないとまずいに決まってるわ」

暗殺者「……しょうがない。じゃあ、話そうかー」

少女「……すまんが、コイツが話したいそうだ」

暗殺者「うん?」

少女「――あなた、私に何かした人だ」キッ

暗殺者「……姿見せた記憶はないんだけどなぁ」

少女「夜に、攻撃された。あなたからで間違いない」

女「……あんた捕捉できるっつーのはすごいんじゃない?」

少女「……そのせいで、追われてる」
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 19:09:58.24 ID:s4D1TA6AO
少女「えっと……」

暗殺者「じー」

女「ガン見しない。あと口でじーって言わない」

少女「う。えっと」

女「このバカは気にしないで。あんたに危害を加えようとしたかもしれんけど、今は無害だよ」

少女「あ、はい。……わたし、あなたみたいな面白いひと、久しぶりに見ます」

女「はあ?」

少女「頭の中で、いろいろ考えて。外に出すことや中にひめる物の区別が、ふしぎ」

暗殺者「あー、まあ。わかる」

女「あ゛?」

鳥精「単純っぽいけどねー」

少女「あと、読み取りにくい。かも」

暗殺者「慣れたらいろいろわかって楽しいよ?」

鳥精「どうなんだかね、私は苦手なんだけど」

女「なんであたしのタチについて話する流れになってんのさ」

鳥精「いや、知らんよ」

暗殺者「どっちかってとネコっぽいよね」
鳥精「あー、猫科だね確かに」

暗殺者「……えと。まあ、いっか」

女「タチってな性質ってか、ああくそ。どう言っても曲解を許すなあこれ」

少女「……?」

女「てゆーか説明はどうした」

暗殺者「は、忘れてた」
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 19:11:59.27 ID:s4D1TA6AO
少女「――話が進まないから俺が話そう。お前ら、解体屋ボイジャーって知ってるか?」

女「あー、いたねそんなの」

暗殺者「何、また知り合い?」

女「ちゃうわよ。出先で会う危険人物とか軒並み知ってるのはむしろあんたでしょが」

鳥精「狂った傭兵の名前ね。10年だか20年だか前に討伐された」

少女「ふん、俺はただ自分の能力を遊ばせるのが嫌だっただけだ」

暗殺者「うん? この刃物なんで喋るのかと思ったら残留思念のせい? 知らん凄い人が術をかけたんだとばかり」

女「まぁ、凄いのは確かよ。刃物一本で人体から城塞まで解体したって逸話の人物だから」

鳥精「ヤバすぎるから殺された、ってのはよくある話よね。戰では英雄扱いだったんだけど」

少女「まったくだ、色んなものを見てきたが人間の心理ってやつは構造が掴めても解体できんからいかん」

暗殺者「まあ、その並外れた解体能力を買いたい……いや、わざとじゃないよ?」

女「はははは、ないすじょぉく」

鳥精「ファンキーアンドファニー」

暗殺者「……まあ、私に使われろってこったよ、畜生」

少女「無理だな」

暗殺者「専用とか言ってたしね」
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/06(木) 19:15:37.39 ID:s4D1TA6AO
暗殺者「専用ってか……思念の憑依かトレスか知らんけど私には真似出来ないってことだもんなあ」

少女「それ以前の問題だな。コイツは他人の精神波を受信・吸収し増幅する体質持ちだ。吸精だと意味合いが淫魔どもと被るから吸神……って呼んでる」

暗殺者「……あー、つまり解体能力は」

少女「既に俺ごとコイツの中だ。この棍は俺の精神を内から拾って形を成すためのスイッチだな」

暗殺者「うぬぬ」

女「なんか知らんけど、この子ごと力を借りるんじゃダメなの? 本人たちの意思もあるけどさ」

暗殺者「……いや、その予定はあったけど。自分で使えればそれに越したことはないし」

鳥精「そもそも貴女が何をする気なのかを私たちは知らないわけだけどね」

暗殺者「その辺は守秘義務で」

女『通じると?』キィィィ

暗殺者「いいえ。……ソレされるくらいなら話すよ。あーもー、うまくいかないなあ。気付かせずに終わらせたかったんだけど」

鳥精「今回はトラブルメーカーしかいないんだから無理でしょ」

暗殺者「トリックスターだと主張したいなあ」

女「ヒロイン気取りでなくて良かったわ」

鳥精「まあ突破力が個々で高すぎるからトラブルどこ? みたくなるのよね、実際は」

暗殺者「確かに、私らでどうにもならないって何だよって話だ」

女「手に負えない事件とかやだよ私は」

暗殺者「あははは、フラグっぽい」

158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/09/06(木) 19:20:46.78 ID:s4D1TA6AO
(中二設定盛りすぎたなあ……

また一月空いてたのは繁忙期だったからです。
とりあえずキリのいいとこまで進めたら日常パートをまた挟みます。
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2012/09/10(月) 00:49:24.97 ID:0XTy+9Gko
余裕ができたならsageずにどんどん投下しておくれ!
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/09/11(火) 07:06:41.73 ID:gj4fFESIO
中二でも良いから続きはよ!
あと過去作品スレ名教えろ下さい。
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/11(火) 19:47:29.82 ID:KCB0oTqAO
暗殺者「……」

女「どうしたのよ」

暗殺者「いや、マジでフラグっぽいなあと」

女「……そういやあんたの仕事を聞いてなかったわ」

暗殺者「ん。ざっくり言うとあの屋敷を粉砕するかんじ?」

鳥精「ふぅん?」

暗殺者「いやさ、この都市の中枢だとかに根を張ったやばめな結界が予知されたんだよね。該当しうるのはあの屋敷にいる婦人か隠居」

女「……多少の縁もあったから言いにくいけど、本人を両方ヤっちゃえば早いじゃない」

暗殺者「んー、それをしても結界の仕組みはまず間違いなく残るのよね、二人の能力の方向性からして」

女「……二人して儀式系統だもんなあ」フゥ

鳥精「当人だけ消しても肝心要の術式をほったらかしてたら誰が動かすかわからんからねぇ」

女「まあね」

鳥精「……で、城塞破りか。適材ではあるわね」

女「……どっちが本命(犯人)か知らんけど、その結界が使用されてないのは? 状況待ち?」

暗殺者「ん。どっちかってと条件待ち。結界が持つ効力が絶妙でねー」

鳥精「何に対するものなの?」

暗殺者「対魔神・神霊・自然霊結界」

鳥精「私アウトじゃない」

女「そね。でも逆を言うと人間とかには影響ないじゃない。まずいの?」
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/11(火) 19:48:37.99 ID:KCB0oTqAO
暗殺者「それがさー、一定以上の魂や精神や何かの強度……要は『物質的に』強い存在以外は全てその強さを撹拌されるシロモノでね」

女「撹拌……なんか嫌な響き。よくわからんし」

暗殺者「わかりやすいよ? 弱体化されて、散った力は結界の強化に宛てられて……ってかんじ」

鳥精「吸い上げるたびにその吸収力を増す? 最低のアリジゴクね」

暗殺者「無限機関とか? まあ、そんなんがあるんよ。維持出来れば魔神やら神霊やらの影響を無視出来るようになり、戦局を一手で変える魂や精神の強いのを無力化出来るマジ無敵の城塞都市が完成するわけで」

女「……もとがこの規模だからなんとも言えないけど。下手すると戦争の歴史が変わるわね」

暗殺者「ねー。それを恐れる連中はやはり居るわけさ」

少女「……話は見えたが。俺たちを巻き込みにかかるのはやめて欲しいもんだ」

暗殺者「場合によっちゃ、アンタの意識とか消滅するかもよ? 一人ぶんの意識量しか保てないかもだから」

少女「……さてな。その時はその時さ。その結界に溶けずに内から粉砕してやろうか?」

女「それ楽だわね」

暗殺者「発動させないのが目的なんだって。そんなんがうまく行く保証ないし」

163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/11(火) 19:49:31.39 ID:KCB0oTqAO
少女「――わたしは、みんなを失いたくないです。協力、します」

暗殺者「ん? あぁ、入れ替わったのか。ありがとね」

女「……協力とりつけたところで聞くけど。条件って?」

暗殺者「あーねー。謎」

鳥精「……むしろ条件と定めた根拠は?」

暗殺者「状況でいうならここで数ヶ月前の魔城事件や北の駐留軍が来た時とかに使えば良かったわけで」

鳥精「でかい事件に対処出来ずに出オチに終わらせたくなかったんじゃない?」

暗殺者「むしろデカブツに対応出来るのが持ち味の結界なんだし、小手調べみたく使っても効果が薄いよ。どんな品でも見せれば対策されるもんだしね」

女「威力誇示を兼ねての使用をしないとキツいだろうね。先を見ないならアリだけど」

鳥精「他所の戦争の状況なんかを睨んでるとか?」

暗殺者「北は拮抗してるからなー。そのセンで見てもいいけど」
164 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/09/11(火) 19:50:10.44 ID:KCB0oTqAO
鳥精「あたしらの話にこの子がついていけてない件」

少女「?」

暗殺者「まあ、別に困らないし」

少女「わたしの中に、頭いいひとも、いるので」

鳥精「んー……? むむう、中に何人いるのかわからんなあ」

少女「――一応言うとだ。俺たちは言ってしまえばこいつの演技に過ぎない。中身はコイツ一人だよ」

鳥精「多重人格とかとは違うんだ? なるほど……?」

女「つーことは……まあいいか」

少女「まあ、多重人格者と同じように見てもらって構わんよ。大差ないしな」

暗殺者「こっちは手伝ってくれればなんでもいいけどねー」

女「それじゃあ私たちの本来の仕事に戻る? ずいぶん横槍が入ったけどさ」

暗殺者「そだね。……他人がいるとこで話すのもなんだけど。八百長試合やろうか」
鳥精「……スルストに関わらせないようにすればいいのかしら」

暗殺者「話が早くて助かるよ」
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/09/11(火) 19:51:32.32 ID:KCB0oTqAO
投下ペースはかなりやる気次第ですが、また週1を目処に。

処女作だよ。過去とかないよ。
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) [sage]:2012/09/11(火) 19:53:17.42 ID:0KUw1OB/o
処女作でこれはなかなかな文才だ
もっと書こう
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/16(日) 20:57:22.56 ID:ti1jktNAO
女「じゃあ、私が拘束して無力化したって体で屋敷に向かって」

暗殺者「本来の襲撃者であるところの私が登場、切り結びつつ陣の中心を探す」

鳥精「襲撃の前に一件落着したって体で連れていくから、スルストの心配は不要よ」
女「さて、問題点は?」

暗殺者「結局陣の要がつかめてないし、破壊が本当に可能かがわからんのよね」

女「行き当たりばったりすぎる」

少女「壊せない心配は杞憂にしてやるさ。見付けるのは専門外だからなんとも言えないがな」

暗殺者「なんとかなるかなー。なればいいなあ」

女「殺し合いするでなし、死に直結しない仕事なんだからどうとでもなるでしょ」

暗殺者「いや、多分失敗したら消されるんだなー、これが」

鳥精「勤め人は大変ねー」

女「……いや、普通消されはしないから」

少女「……まあ、俺は普通ではなかったと納得しておこうか」
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/09/16(日) 20:58:49.88 ID:ti1jktNAO
女「とりあえず屋敷に連れてくことになったわけだけど」 テクテク

少女「……はい」

女「あんたの能力で、なんであの怪力が出せるのか疑問でさ。どうして?」

少女「えーと……」ポテポテ

女「解体能力をインストールしたのはこの際いいけどさ。純粋に腕力だけ見ても破格だったから不思議でね、技術だけじゃ追い付かないレベルだったし」

少女「少し前に、すごくこわい人に会ったんです。その人の、チカラなんだと思う」

女「ふむ……ちなみにさ。頭のいいのが中に居るって言ってたけど、他にどんな事が出来るのがいるわけ?」

少女「……なんで?」

女「話さないといけないのか、かね? 別に嫌ならいいよ。興味がわいたんだよ」

少女「……」テコテコ

女「……むう」テクテク

少女「ちょっと、数えきれない。です」

女「」



女「……いや耐えろ私。心を落ち着けるんだ。私が深く関わる人間、8割がた規格外。クールになれ」

少女「?」

女「あー、うーん。とりあえず、むやみにそのチカラを使わない方がいいわよ。解体屋さんどころじゃなく危険だわ」

少女「……はい。普段は本当に使わないです。こわい人の考えがしばらく写ってしまってて」

女「写って……いや、あってるのか」
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/16(日) 20:59:52.10 ID:ti1jktNAO
女「ん? じゃあ私もトレースされるのか?」

少女「……いえ。意識的にしたとき以外は外に漏れてくるレベルでないと影響ないです」

女「逆説……まあいいか。んー、どうなんだろ。私には害がないからいいか……いいのかな」

少女「?」

女「いやー、こっちの話。気にしなくてもいいよ」

少女「えと。一応わたしもわかってますよ? 自分について」

女「……そか。まあどこまでかは知らんが何年もその能力と付き合ってきたんなら当然かね」

少女「……そうですね。今まではこんなでもなかったんですけど」ゴソガサ

女「……何? その紙切れ」

少女「――どこぞの貸本屋でうっかり残留思念を吸われてなぁ。大魔術師にして稀代の天文学者であるわし、マスター・ピエトロのチカラを得たからには普通には生きられん」フンゾリ

女「……大魔術師がなんで春画に残留思念を残してんだか」

少女「好きだからだよ。恥じることもない、私の根源を成すものだ」

女「恥じろ」

少女「手厳しいな。君のようなのを屈服させるのが一番――……あと、えと。気にしないでください」

女「えー」

少女「変なひとですけど、頭はいいんです。いろいろ教えてくれましたから」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [saga]:2012/09/16(日) 21:01:18.19 ID:ti1jktNAO
女「……ふうむ」

少女「? どうしました?」

女「ボイジャー出せる?」

少女「……いいですよ? ――なんだよ」
女「あのさ、あんたが解体したものとかって具体的に語れる?」

少女「……記憶まであるのかって話なら、微妙な線だな。俺はあるし、あまりない奴もいるさ」

女「話が早くていいね。あんたのがさっきのより頭いいんじゃないかと思うわ」

少女「知恵と知識は別物だからなぁ」ハハハ

女「ついでに。アンタ魔術師だったりした?」

少女「……ふむ?」

女「この子の肉体の強度は並……少なくとも、まっとうな人間の範疇だからさ。魂が強いわけでもない。ならあの破壊力は魔術によるものだ」

少女「……俺の解体能力を魔術とすれば、魔術を転写できるって仮説に至るわけか」

女「そ。実際どうなの?」

少女「……ふうむ。そんな考察はした事がなかった。場慣れしてるやつは着眼点が違うな」

女「仮説に仮説を重ねた話になるけどねー」

少女「まあ、残念だがNOだ。俺も三元質で見るなら他より精神力に素養はあったのかもしれんがな。後継は育てられなかったし……俺の特性みたいなもんだったんだろう」

女「そか」

少女「ふん。聞くことはもうないか?」

女「んー……うん。ありがと」

171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山陽) [sage]:2012/09/16(日) 21:03:10.07 ID:ti1jktNAO
女「あー、着いちゃったな」

少女「……ですね」

女「めんどくさいなあ……何がめんどくさいって今するのもしんどいし、ほったらかした後の事件もめんどくさい」

少女「……勇者さん、と……? さっきの婦人さん、あと……」

女「ん? ああ、思念を感知するんだったか。多分屋敷の主人だねぇ」

少女「……そうなんですか? かなり困ってそうなんですけど」

女「妙な来客に疲れてるんだろ。私だってあの自称勇者の相手はやだし」

少女「……そんな悪いひとには見えなかった、です」

女「良し悪し以外の問題かねぇ。よい行いだからって皆を幸せにできはしないとか」

暗殺者「最大幸福を求めるなら、そんなには間違ってないとも思うけどね」

少女「……あ」

暗殺者「やぁ、打ち合わせでもと思ってさ」

女「なんかあるの? 話もまとまってきてるのに」

暗殺者「なんつーか……私のために言うだけだから申し訳ないけど。私の突入まで、必ず待って」

女「何を?」

暗殺者「ん? うーん」

女「……待つべきことがわからないと何をすればいいのか判断しかねるんだけど」

暗殺者「まあ、あれだ。判断を待ってほしいのかな、きっと」

女「……曖昧な指示だなあ」

暗殺者「頼んだよ。少なくとも勇者どくまで入れないし、私」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2012/09/17(月) 19:47:45.56 ID:uKuU5G4io
面白あげ!
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/19(金) 07:35:29.72 ID:umGORCeIO
また忙しい?
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/10/31(水) 17:26:57.75 ID:e3c8j+XIO
待っとるぞい!
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