他の閲覧方法【
専用ブラウザ
ガラケー版リーダー
スマホ版リーダー
DAT
】
↓
VIP Service
SS速報VIP
SS速報VIP 過去ログ倉庫
検索
すべて
本文
タイトル
投稿者
ID
このスレッドは
SS速報VIPの過去ログ倉庫
に格納されています。もう書き込みできません。。
もし、このスレッドをネット上以外の媒体で転載や引用をされる場合は
管理人までご一報
ください。
またネット上での引用掲載、またはまとめサイトなどでの紹介をされる際はこのページへのリンクを必ず掲載してください。
【fate/5ds】遊星「聖杯戦争……か」【安価】 -
SS速報VIP 過去ログ倉庫
Check
Tweet
1 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/10(月) 23:54:47.05 ID:t9VLNnazo
「いけっ、シューティングソニック!」
「灼熱のクリムゾンヘルフレア!」
スターダストとレッドデーモンズの攻撃が拮抗する。
風と炎がぶつかり合う中間点から、赤い光が弾けてフィールドを包み込む。
「キングは負けん! スピードスペル! くっ、またか……!」
マーカーでも刻まれるような痛みが腕を襲う。だがこの程度、二人を止めるには至らない。
「くっ、この疼きは!」
「何だぁ、いったい!?」
赤い奔流がコースを舞う。
煌めく星のような白が、真っ赤なバラのような赤が、地獄の灰のような黒が、
限界を超える黄色が、仄かに波打つ青が、逆風を力に変える黒が、その龍の身体の中を流れている。
「これで終わりだ! ジエンドオブストリーム!」
「頼むスターダスト!そして、これこそが終幕になる! トラップカード、発動!」
龍が翼を広げた時、二人のDホイールが限界を超え、強制終了がかかる。
バイクの内部から己の内側から弾けた閃光がフィールドを呑みこむ。
爆発が収まったあと、壊れたフィールドで二人が向かい合う。
遊星の腕に輝く痣。だがそれよりも、ジャックにとって衝撃だったのは最後に遊星が発動したカード。
メテオストリーム。このカードが使われていれば、ジャックが敗北していた。
「こちらはネオドミノシティセキュリティ! 治安維持局の命令により拘束する」
SSWiki :
http://ss.vip2ch.com/jmp/1347288886
1.5 :
荒巻@管理人★
(お知らせ)
[
Twitter
]: ID:???
【 このスレッドはHTML化(過去ログ化)されています 】
ごめんなさい、このSS速報VIP板のスレッドは1000に到達したか、若しくは著しい過疎のため、お役を果たし過去ログ倉庫へご隠居されました。
このスレッドを閲覧することはできますが書き込むことはできませんです。
もし、探しているスレッドがパートスレッドの場合は次スレが建ってるかもしれないですよ。
ゼンレスゾーン淫夢要素ゼロ @ 2025/07/16(水) 18:57:50.86 ID:RQSyJ1Qxo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752659870/
【ギルデッドエネミー】ウルフ「まるでじゃんけんだ」 @ 2025/07/16(水) 01:49:20.03 ID:ryYxoR/vO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752598160/
■ 萌竜会 ■ @ 2025/07/15(火) 00:40:24.35 ID:LBAUOkqwo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752507623/
■ 萌竜会 ■ @ 2025/07/15(火) 00:39:16.20 ID:qbAcbrETo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752507555/
猫饅頭 @ 2025/07/14(月) 19:14:21.34 ID:1knELuPaO
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752488061/
(安価&コンマ)コードギアス・・・ @ 2025/07/13(日) 22:27:49.60 ID:9f2ER2kw0
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1752413269/
KU-RU-KU-RU Cruller!Neo @ 2025/07/13(日) 21:55:45.76 ID:YIcI6tEGo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752411332/
ひたむきに! @ 2025/07/13(日) 20:04:58.82 ID:YMv4024Yo
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1752404698/
2 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/10(月) 23:55:21.22 ID:t9VLNnazo
「つまり、聖杯戦争とやらに参加すれば、遊星とまたデュエルできるんだな?」
「ええ。いずれあなた様は必ず不動遊星と見えます。保証しましょう」
「召喚の儀式とやらの準備を始めるがいい」
ばさりと服の長裾を翻し、ジャックは長官の前を去る。
腕にはまだ鈍い痛みが残っている。令呪。伝説のデュエリストを使役する絶対命令権。
森羅万象ありとあらゆる願いを叶える魔法の器、聖杯。
古今東西のデュエリストを使ったファイティングデュエルの代理戦争。
老若男女より聖杯によって選ばれた者を結ぶ絶対遵守の呪いの契り、令呪。
いずれも興味は無い。ただ治安維持局に捕まった遊星と再度戦う舞台が用意されたから出ただけのこと。
「まあいい。キングの勝利に賞金はつきものだ。聖杯とやらも、ついでに貰ってやるとしよう」
靴音を廊下に響かせて、キングは悠々と歩みを進める。
3 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/10(月) 23:58:21.97 ID:t9VLNnazo
石板の立ち並ぶ間を抜け、厳重なセキュリティを経てエレベーターに乗る。
星の民の守る地。天へと続くかのような階段と、それを取り囲むように並ぶ柱。一室に広がる光は、あの龍を思わせる赤。
「さあ、どうぞ儀式を。キング」
「何のつもりだ。この、このカードは……!」
「強きデュエリストを呼ぶには、触媒が必要なのです。このカード、セキュリティに預けておくのでは役不足。私が回収しておきました。
星の龍を、星の地で、星の民の末裔が使うのですから、これ以上の台本はありますまい」
ジャックは舌打ちを返してそのカードを受け取り、階段から迸る光へとカードをかざす。
誓いを此処に。
我は弐拾壱の神と成る者、
我は零陸属の神を狩る者。
汝三大の言霊を纏う七天、
十二次元の果てより来たれ、四拾の繰り手よ!
現れたのは――
安価
>>4
1.フィール遊星/ライダー
2.Z-ONE/ライダー
3.パラドックス/キャスター
4.骸骨騎士/ランサー
聖杯戦争! それは伝説の痣を刻まれた召喚士たちの戦い! その第一幕が、今――!
4 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 00:05:54.72 ID:pdhvnN/To
2
5 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 00:25:13.95 ID:edmX8l69o
あえて形容するなら、アンモナイトのような。
白い歪な球形。その中で、食虫植物にとらわれた蟲のような不自然さで、仮面の男の頭が覗く。
「ッ!? か……」
ゴドウィンが息を呑む。ジャックからは死角の位置に立っているとはいえ、その狼狽ぶりは洩れた声から伝わった。
すぐさま姿勢を正して普段のように手を組むが、やはりその眼には驚きが残ったままだ。
「問いましょう。あなたが私のマスターですか」
ジャックを見つめる綺麗な青い瞳。ジャックと同じ方向を見て、違うものを想っていたあの眼を、先日不敗神話を覆した眼を、思い出した。
「何者か知らんが、幸運だったな。俺はジャック・アトラス。この聖杯戦争に勝利する男だ」
「ふっ……ふふふふ」
「笑いの感情は持っているようだな。安心した。このキングの戦いを特等席で見られるのだ。
最高のエンターテイメントを見せてやって、笑みの一つも零さんようでは遣り甲斐が無い」
その白い異形は空中に浮かび上がり、僅かに前に傾いて――礼をするように。
静かに、簡潔な挨拶を述べた。
「私の名はZ−ONE。名の知れた決闘者でなくて申し訳ない」
「問題無い。キングは一人でいい。もしファラオでも現われようものなら、味方同士で王座を奪い合うところだった」
ジャックが振り向いた時、ゴドウィンは既に姿を消していた。マイペースな長官には慣れている。
ジャックはまるで自身が部屋の主のように大仰に歩き、部屋を出て行った。
その後を浮翌遊していきながら、Z−ONEは眼を閉じて、戦いのこれからを想像する。
6 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/11(火) 00:38:50.20 ID:edmX8l69o
「Z-ONEといったな。俺はこれから街を走る。地理を覚えるのを兼ねて、付いて来い」
「わかりました。このネオドミノシティは始めてですからね」
霊体化。バウンスされたモンスターのソリッドヴィジョンが消えていくように、静かに、空に溶け込んでいく。
すっかり気配を消したZ-ONEの存在を、痣だけが軽い疼きでもって伝えている。
「そこにいるのか?」
「ここに」
しゃがれた声は、似ても似つかない。その異様な姿形も、何かの感情を捨て去った眼も、似ても似つかない。
だというのに、頭に浮かぶのは先日の敗北。試合としては中断だろうが、あんな終幕はキングには許されない。
嫌っているわけではない。苦手なわけでもないし、まして怖いわけでは断じてない。
ただ、あのサーヴァントを見ていると、落ち着かない。
頭にかかった靄を振り切るように、ホイールオブフォーチュンを走らせる。
ぎりぎりまでスピードを残してのドリフト。コースの劣化も気にせず豪快に旋回する。
ジャックの走行技術に耐えきれる強さとしなやかさは、シティに来てもこの一台以外に見つからなかった。
「入りが強引すぎます。もう少し、曲線を意識するといいでしょう」
やはり、どこか似ている。走っても走っても、ジャックの気分は晴れなかった。
朝焼けが作りかけのダイダロスブリッジに反射するまで、ジャックの走りは続いた。
7 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 00:46:34.11 ID:Heww4yEIO
超期待
あの中だとZONEが規格外すぎるな。
8 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 00:50:31.49 ID:edmX8l69o
顔にマーカーが焼き入れられた。呻き声は、ただの反射反応。熱いだけ。痛みを感じる余裕は無い。
痛いのは身体よりもむしろ心だ。
一人捕まれば、その周囲のものも襲うのがセキュリティのやり方だ。
マーサ。ラリー。みんな。サテライトで暮らす者は、みな多かれ少なかれ法を犯している。
サテライト民の出す孤児院許可願いなどろくに取り合われるはずもなく、あの家は現在違法……。
もし、自分のせいでみんなが苦しむことになったら……!
「なあアンちゃん! 不法侵入で捕まったんだって? あんたデュエルスタジアムにいたんだろ?
ワシ、そのとき近くにいてさ。いやー、凄かったよねー! 何と言ってもあの龍。聖杯伝説は本当だったんだ!」
護送車の中で話しかけてくる、小柄な老人。囚人らしい悲壮さは欠片も無い。
「アンちゃん、こんなとこにいていいのかい? これから始まるだろー? 聖杯戦争が!」
「聖杯、戦争……?」
妙にはしゃぐ老人を、セキュリティの男が睨んでいる。このままだと……
「アンちゃん知らないのかい? 伝説を呼び出して神代のルールで――」
セキュリティの男の口が開きかけたので、無理やり老人の口を押えて声を止める。
もごもごと動く老人はまるで事態を理解していないようで、マーサハウスの子供みたいだった。
9 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/11(火) 01:12:48.86 ID:edmX8l69o
矢薙老人のデッキを借りてのデュエル。芽生えた友情。あらたなる絆。
しかし鷹栖の独断で急遽別の牢に移される。長期収容者用の牢獄、重犯罪者の集う場は重い空気が立ち込める。
スターダストを取り戻すきっかけも、もうすぐ始まろうとしているという聖杯戦争も、手がかりはつかめない。
だが、牢の中での生活には、進展があった。
青髪の男、青山。他の囚人と違い、はっきりとした目的をもっているようだった。
終わらない刑期、ちょっとしたことで引き延ばされる無間地獄に諦め、牢獄内での格付けを唯一の楽しみとするような連中とは一線を隔している。
その彼が、計画を持ちかける。
「こっから出たいんだろう? こんなとこにおしこめられて、出たくない奴はいないからな」
夜も、この監獄は光が満ちている。囚人を監視するため。サーチライトによる安眠妨害などしったことではない。
鷹栖の作り上げた牢は、そういう場所。一度入れば出られぬ蟻地獄の罠。助けにきた仲間をも飲み込み、無数の穴に哀れなサテライト民を押し込んでいく。
その光から隠れるように部屋の隅に立って、青山が言葉を続ける。
「いっしょにいくかい?」
青山の計画が説明される。半年かけて作った抜け穴。仲間とともに吹き抜けから逃げ出す。
一時間だけのジャミングに希望を託した脱出計画。
「
>>11
」
1.あと二人、計画に加えたい。
2.その計画、乗った。
3.俺は別ルートでいかせてもらう。
/一日1、2安価程度のゆっくり進行になる予定です。選択肢に無いのを書かれても、展開が思い浮かべば採用するかもしれません。
/とりま今日はおやすみなさい。今度は完結できるといいなー。
10 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 01:13:22.43 ID:pdhvnN/To
1
11 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 01:20:46.65 ID:+DIW+ffMo
1
12 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 23:39:54.57 ID:edmX8l69o
「あと二人、計画に加えたい」
「氷室と爺さんか」
「ああ」
青山は快く受け入れる。そこには単なる善意だけではなく、打算が入っている。
この計画、あまり人数が増えては早期発覚の危険が増すが、数人の増員はむしろメリット。
脱出手段が確立していても、この牢獄の完全なセキュリティの中では安全なルートなど無い。
牢の外には出られても、街に出る途中で見つかる可能性が高い。
そのとき最初に追いつかれるのは間違いなく矢薙老人。そして仲間想いの遊星。遊星らの絆が、結果として青山の保険になる。
「二人に計画を伝えるタイミングはお前に任せる。だが脱走のチャンスは一度きりだ。いいな遊星」
「分かっている。俺は外に出て、やらなければならないことがある」
「当たり前だ。鷹栖のおもちゃとして一生を終えるなんて、まっぴらだ」
サーチライトの人工的な光が不定期に牢の鉄柵を照らす。
最後に自然光を浴びたのはいつだっただろう。窓の無い部屋の中、太陽はおろか星の光さえも見ることはできない。
「スターダスト……」
13 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 23:40:23.66 ID:edmX8l69o
鷹栖の横暴はいつものこと。しかし今回のそれは一段と酷かった。
「この囚人は重大な不正を働いた! よって連帯責任により、これより半年間のあいだ全囚人から自由時間を没収する」
幾度も殴られ、内側の血管が破れて膨れ上がった氷室の身体を、鷹栖はなおも蹴り続ける。
段々と弱々しくなっていく声を聞いているうちに、囚人たちの抗議の声もまた萎んでいく。
「この町に不要なゴミめらが……」
その場から音が消えたとき、遊星が動く。
「不要? この世に不要なものだと、一つとしてありはしない」
その低い声が、静まり返った監獄の果てまで行き届く。
遊星は鷹栖に向かって歩き出した。遊星の足音が響くたび、空気が重さを増していく。
カツ、カツ、カツ。遊星の覇気に気圧された鷹栖が息を呑み、一歩後ずさる。
それからわざとらしく咳払いを数回。鷹栖には結局、遊星と眼を合わせる度胸が無かった。
「これはこれは、サテライトの英雄どの。何のつもりでしょうかな?」
「俺とデュエルしろ。そして俺が勝ったら、前言を撤回し、氷室に謝罪しろ」
「ははーん。それで俺が英雄殿に勝ったときゃ……」
「一生、お前の言いなりになってやる」
抑揚のない遊星の声と、芝居めいた鷹栖の声が対照的だった。
「いいだろう、開始は8時30分からだ」
14 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 23:40:50.04 ID:edmX8l69o
それから鷹栖は、カード狩りを始めた。
囚人にカードは必要ない。たったそれだけの説明で、デュエリストの魂を踏みにじった。
「ああ、俺の薄幸の美少女が!」
「キックマンは、キックマンは俺だ! 俺なんだ! そいつを持っていくくらいなら、俺を拷問室に連れて行け!」
「瓦礫の王……! いずれ必ず助けにいくからな」
「水の踊り子ちゃん、長い間世話になった」
「くそっ、これまでトイレが調べられたことは無かったのに……」
「ああっ! ワシのデッキがー! ひどいよぅ」
阿鼻叫喚の地獄絵図。その中で声をあげずにいたのは、先ほどとは反対に、遊星一人だった。カードを1枚も持ちこめなかったからだ。
だが遊星はよく知っている。もっとも愛着のあるカードと引き剥がされる悲しみを。
「サテライトの英雄殿だけは許してやろう。デッキが無くてはデュエルはできないからなあ。がははは。
まさか自分のデッキも持たずにデュエルを挑んだなんてことは無いだろーう?」
15 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 23:41:18.94 ID:edmX8l69o
「すまねえ、遊星。俺のデッキも取り上げられちまった」
「アンちゃん、どうしよう……」
カード狩りのために、囚人たちは独房から外に出されている。
デュエルリングなどの開けた場所は囚人たちによってすでに埋め尽くされ、そこに入れなかった残りは狭い廊下に座り込む。
遊星たちも、狭い吹き抜け回廊にいる組の一つだった。
「この分じゃ、あの抜け穴も見つかっただろうな……」
「すまない青山、俺のせいで」
「ああ、まったくもって誤算だった。お前の仲間想いがここまでだとはな」
途方に暮れた遊星たちの間で会話は進まず。沈黙の中で鷹栖とのデュエルの時間が近づいていく。
氷室は床に拳を叩きつけ、矢薙は落ち着かなげに狭い廊下を往復する。青山は座り込んだまま動かない。
遊星を責めても仕方がないと分かっているから、イライラのやり場を無くしてこうなってしまう。
他の囚人たちが、遠巻きに遊星を睨んでいた。彼らもまた、遊星が悪いのではないと分かっていた。
分かっていたが、しかし理屈と感情は合致しない。
「お前のせいで、俺と3年間を共にしたディアンケトが! 俺の、俺の魂のライフを返せぇぇぇええ!」
「待て! 遊星に喧嘩を売りたいってんなら、この氷室を倒してからにしてもらおうか」
一人が遊星に向かって拳を振り上げるが、ボロボロのまま氷室が立ちはだかる。
腫れ上がった頬を動かして啖呵を切る氷室を、殴るわけにはいかず。行き場を無くした拳が、ゆっくりと時間をかけて落ちる。
「氷室ちゃん、格好良かったよぅ。まるで遊星を守るサーヴァントみたい……」
矢薙の言葉が不自然に切れ、それから動きが停止する。数秒立って、急に矢薙が跳びあがった。
「そうだ! サーヴァントだよ! サーヴァントを召喚するんだ! 伝説のデュエリストなら、必ずデッキを持ってるはずじゃないか!」
16 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/11(火) 23:42:47.92 ID:edmX8l69o
「爺さん、だが儀式のやり方は知ってるのか?」
「いやぁー、それがな、呪文は半分くらい覚えとるんだけど……」
「おいおい、半分で大丈夫なのかー?」
「いやぁ、それよりな。触媒が無いのが問題だよ。触媒さえありゃあ、多少手順何て適当でも平気だろうけど……」
議論は再び暗礁に乗り上げる。
だが今回は、沈黙では無く喧騒を伴っている分、先ほどよりは遥かに良い。
「とりあえずやるだけやってみればいいんじゃないか?」
「失敗してデッキももたない紛い物が出てきたらどうすんだ!」
「そのたびに棄却する……で、なんだっけ」
長い議論のはてに一瞬の凪が訪れる。意見が出尽くし、言葉が途絶えて。
そのとき、解決の糸口が提示された。
>>18
1.「実は俺、牛鬼だけは守りきったんだ。遊星、お前になら託せる」
2.「ワシの水晶どくろ、ボロボロにされちまったけど、こんなでも使ってもらえるかい?」
3.「なあ爺さん、触媒ってのは、モノじゃないといけないのか?」
4.「デッキ無しでデュエルし、鷹栖に勝利してみせる」
/部屋が蜂に襲われ、のーとPCだけもって退避 書きため投下終了、今日はこれでお終いです
17 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/12(水) 00:29:17.35 ID:JOZw05WNo
3
18 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/12(水) 00:43:29.48 ID:5z1wHpC/o
3
19 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/12(水) 03:10:36.71 ID:OX5icLxIO
触媒:蟹自身でフィールが高まる予感
20 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/12(水) 23:07:07.38 ID:5+GyzJLBo
「なあ爺さん、触媒ってのは、モノじゃないといけないのか?」
「ああ? モノ以外って何さ氷室ちゃん」
「俺はプライドも自由も栄光も、全てジャックに負けた時に失った。
だがそんな状態でもまだ希望が残ってると、遊星が教えてくれたんだ」
氷室が拳を目の前で握る。その腕を、矢薙の手が握る。遊星が手を伸ばす。
「絆、か……」
「よせ、恥ずかしいだろうが」
「ワシたちの心を一つにすれば、向かうところ敵無しだよ!」
「敵どころかデッキも無いがな。遊星、もうすぐ約束の時間だ。どうせ抜け穴は見つかっちまっただろうが、一応確認してくる」
「分かった。お前も、お前の仲間との絆があるからな」
21 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/12(水) 23:31:36.59 ID:5+GyzJLBo
「さて、どうする遊星? 三人で特攻して鷹栖を人質にでもするか?」
「いや、奴は俺にデュエルを申し込んできた。俺はデュエルで奴に勝つ」
遊星が立ち上がり、服をめくって僅かに輝きを放つ痣をさらす。
「お前のおかげで希望が見えた。絆だ」
「だけどアンちゃん、どうするんだい」
「触媒とは、サーヴァントをこの世に呼び出す引力。そのサーヴァントに縁のあるものほど好ましい。そういったな。
なら、英雄を英雄たらしめている想いの力が、触媒にならないはずがない」
「想いの、力……?」
「そうだ。ダイダロスブリッジから飛び立った男は、俺達に希望を与えてくれた。
そのDホイーラーが俺達の間で英雄と呼ばれる理由は、作りかけの橋でも、悲劇的最後でもない。俺達の中に残る希望だ」
「そうか! 俺達が呼び出したい英霊のことを強く想えば! その力が何よりも強い触媒になるってわけか!
だが、自慢じゃねえが俺は神話や伝説なんてろくにしらねえぞ……」
「伝説ならワシの出番じゃ! 二人のためにとっておきの話をしてあげるよぅ」
>>24
1.邪悪なる蛇神との戦いに身を捧げ、竜の化身となった精霊界の騎士の話
2.群雄割拠の異世界をあっと言う間に掌握してみせた、魔物を統べる覇王の話
3.燃え盛る炎の力を持って炎獄の竜を駆った古代ナスカの王族の話
4.99枚の黒きカードを操り、三世界の和平を成立させた創造の勇者の話
22 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/12(水) 23:32:57.24 ID:JOZw05WNo
2
23 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(千葉県)
[sage]:2012/09/12(水) 23:36:16.47 ID:EeaKsqkEo
1
24 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/12(水) 23:42:01.08 ID:9u/Be4zzo
3
25 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/13(木) 00:12:55.64 ID:ULbkBHA2o
「竜星王か、強そうじゃないか」
「竜星王、頼む、遊星の元に来てくれ」
「竜星ちゃん、遊星ちゃんと仲良くするんじゃ……!」
祈る様に手を組んで、三人は想いを一つにする。
その名を心の中で反芻するたび、痣が疼く。
弱火でじっくりと腕を焼き尽くすように、痣がじわじわと光を増す。
「竜星王……!」
「まだか、まだなのか!」
しかし、なかなかその時は訪れない。やはり想いだけでは無理があるのか。
痣の光は段々強まっているとはいえ、あの夜の決闘に比べれば蛍の光のように弱い。
「竜星王!!!」「竜星王!」「竜星王!」「竜!星!王!」
「!?」
囚人たちが、竜星王コールを始める。一際大きな声をあげているのは、青山だった。
遊星の視線に気づくと、サムズアップを返しながらより声を張り上げる。
『竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!
竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!
竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!竜星王!』
監獄の壁は、囚人の脱走を早く見つけるために音が良く響くようになっていた。
反響し、残響し、囚人たちの叫びは大きなうねりとなって場を呑みこむ。
カルトじみた熱狂が最高潮に達した時、赤い光が溢れ出す。
荘厳なる赤。それは炎の色。原始文明における力と知恵の象徴。
荒々しく揺れる炎は、倒すべき敵を黒き灰に変え、血を流すことなくして戦いを決める神秘の力。
「悪くない出迎えだ。キングに対する礼儀をわきまえているようだな」
ゆえに最強。ナスカ文明は、その力をもって神々の争いを代行してきた。
最強の決闘者は誰か。ネオドミノシティ民に聞けばジャックが、一般人に聞けば遊戯や海馬が、プロデュエリストに聞けばエドやカイザーといった面々が挙げられるだろう。
だがしかし、歴史学者は言うだろう。荒ぶる魂をもった竜星王こそが、最強の決闘者であると……!
「問おう。貴様が俺のマスターか」
26 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/13(木) 00:36:39.19 ID:ULbkBHA2o
「俺の名は、不動遊星。時間が無いんだ、デッキを貸してくれないか?」
「ふっふふふふふ。出会って最初の言葉がそれか。面白い奴だ」
黄金の装身具が浅黒い肌に良く映える。笑いながら遊星の前を通り過ぎていき、そしてマントを翻して振り返る。
「笑止! 俺のデッキは、先王が神より賜りしもの。易々と他人に触らせることができるものではない!」
遊星を指差した手の中に光の粒子が集まり、大剣を形作る。
四角い窪みと穴とが特徴的。その刀身がデュエルディスク。古代ナスカ、儀礼用宝剣デュエルブレードである。
剣をコンクリの地面に叩きつけ、高らかに、寛容に、王は宣言する。
「どうしてもというなら、その令呪を使用するか。あるいは……俺に一太刀入れてみせろ」
デュエルブレードがコンクリートにはっきりと傷跡を残していた。
>>29
1.令呪を使用する
2.ディアハ!!!
3.時間が無いんだ。あとで何でも言うことを聞いてやるから、頼む。
27 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/13(木) 00:38:18.22 ID:uOAElpJ40
2!
28 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/13(木) 00:39:47.12 ID:KMjI2lOYo
2
29 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/13(木) 00:46:42.48 ID:o7ebBkSdo
2
30 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/13(木) 01:06:35.43 ID:ULbkBHA2o
互いが互いの目を見つめ合い、不敵に笑った。
決闘者が二人。ならばそこにデュエル以外の結末があるはずがない。
氷室が矢薙の手をひいて、遊星と竜星王との間から身を退く。
「「ディアハ!!!」」
先に仕掛けたのは遊星。流れる様に距離を詰め、殴りかかる。
剣を持つ右手とは逆側、左側からのストレート。既に間合いは詰め切ってある。剣を振り上げる時間など無い。
クロスレンジにおいて重い剣は足枷。重心のずれが足技を使い辛くし、重い刃は前動作を必要とする。
竜星王は動けない。
「もらった!」
――というのは、常識の範囲内の話。英霊とは常識を超越したもの。
先ほどデュエルブレードでつけられた傷跡が、コンクリ全体へと広がっていく。
遊星の力強い踏込をきっかけに、罅がコンクリの橋全体を網羅する。
「な、なに……?」
足場が崩れ落ちる。竜星王の斬りつけた線から先が、崩落した。
かろうじて残った足場に手をかけてぶらさがる遊星の首元に、竜星王の刃が触れる。
「駄目だなあ、マスター……。貴様は俺を恐れている。
だから攻め急ぐ。周りの状況を見ずに、俺があえて作ってみせた隙に飛び込んでしまう」
すっと剣が離れる。竜星王は三歩後ろに下がり、遊星が断崖を昇るのを待っていた。
遊星が再び立ち上がれば、竜星王もまた剣を構える。
「あと二回だ。あと二回、貴様が失敗したならば……」
今度の立ち姿、隙が無い。どこから攻め入っても、あの大剣の射程に入ったが最後、切り裂かれるイメージしか見えない。
加えて後ろが無い。遊星、圧倒的不利……!
「その心臓、赤き竜への供物として貰い受ける」
31 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/13(木) 01:40:12.02 ID:ULbkBHA2o
遊星、動けない。初めて出会うサーヴァントの威圧感。空気が違う。
「たった一撃だ。俺にほんのちょっと、傷をつければいい。それで俺のデッキに触らせてやるのだ。破格の条件だろう」
気を抜けばやられる。眼を離せばやられる。動けばやられる。動かなければやられる。
時間が無いのは分かっているのに、頬を伝う汗を拭う暇すらない。
「どうした、来ないのか。マスター。ならこちらからいかせてもらうぞ」
光が集約し、そこにカードが生まれる。大剣に空いた穴にカードを嵌め込めば、遊星の背後に石板が現れる。
石板が輝き、中からモンスターが這い出してくる。
「いけっ、ツイン・ブレイカー!」
後背の空中から振るわれる剣を回避するために、前へと飛び込む。
だがそこはデュエルブレードの射程圏内。
「ツイン・ブレイカーは、相手が防御を行った場合、神速の連続攻撃ができる!」
ツイン・ブレイカーの三叉剣と、竜星王のデュエルブレードが、前後から遊星に襲い掛かる!
どちらも神速、分かっていても、その両方を対処するのは困難を極める。
「遊星!」
「アンちゃん!」
その瞬間、遊星が笑った。
手の中にはコンクリの欠片。足場が崩れた時、拾っておいた。
コンクリ片を投げ付ける! 攻撃の瞬間、もっとも無防備なときを狙っての投石。
特に戦闘力に優れた英霊、セイバーたる竜星王にその攻撃は通用しない。
蛇が襲い掛かるように、剣戟が瞬間的に軌道を変え、石片を弾きつつ遊星へと向かう。
僅かな軌道のブレは、むしろそれによって空を裂き、上へ向かったことで位置エネルギーを増す。
振り降ろされる瞬間には、何もなかった場合のそれを越える速度と威力を持っている。
しかし、コンクリ片を弾かれることさえも予想通り。
それによって、剣の軌道を誘導していた。
いかに反応不能の超速度と言えど、その軌道が分かっていれば防御は可能。
欠片を投げ付けた直後、遊星は空中にむかって拳を振るっていた。その先に、竜星王の剣の側面が来る。
竜星王の剣を捉え、殴りつけることに成功する。
だが誤算は、竜星王のパワーが、遊星の予想を遥かに越えていたことだ。
遊星のパンチをうけても剣はまるで影響を受けず、そのまま遊星の左肩を切り裂いた。
「う、ぐぁああああああああああああ!!!」
傷口から血が飛び出るよりも早く、背後からツイン・ブレイカーの剣先が迫る。
/今日はここまでで寝ます。おやすみなさい。
32 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/14(金) 00:11:41.58 ID:WMBNsKS+o
圧倒的フィールで構成された剣は、精霊界に存在するオリジナルのツイン・ブレイカーを上回る切れ味を誇る。
巨大な霊子一つで作られた、いわば精霊界の単分子ブレード。攻撃力とは別ベクトルに破壊力を研ぎ澄ませた、竜星王らしいソリッドヴィジョン。
空気の金切り声。剣先は音に迫る速さ。あと一秒と経たず、遊星は背中から一突きになる。
高すぎる切れ味ゆえ、突き刺さった直後は何も感じず、刃が引き抜かれてから思い出したように血が吹き出る。
そんな光景、竜星王にとっては日常茶飯事。
ただ一つ違うのは、力の差を理解し、絶望しているはずの相手。
その相手が、いままで斬り伏せた有象無象の決闘者とははっきり違い、どこか満ち足りた笑みを見せていた。
だから竜星王は、一枚のカードを発動した。
デッキは手足。カードは細胞。身体を動かすのに必要なのは意識することだけ。そこにかかる時間は、脳の電気信号の速度を越える。
カードのプレイは魂の反射反応。発動しようと思った時には既に効果処理は終わって優先権が移っている。
ツイン・ブレイカーの一閃が音速に匹敵するなら、カードの発動は雷速に超越するのだ。
一枚のトラップカードによって、ツイン・ブレイカーの動きが止まった。
「チェンジ・デステニー。モンスター1体の攻撃を無効にし、相手に選択肢を与える。
その片方、回復効果を使うがいい。肩の傷は手加減しておいてある。ツインブレイカーのパワーで回復すれば、痕を残さず癒せよう」
肩をおさえ、今なお流れ続ける血で右手を濡らしながら、遊星は竜星王をはっきりと見つめて宣言する。
「俺はチェンジ・デステニーの第二効果、相手プレイヤーへのバーンを選択する!」
「なにっ!?」
33 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/14(金) 00:25:34.76 ID:WMBNsKS+o
遊星の力では、竜星王には届かない。単純なデュエリストとしての腕を競っても、英霊と人の間の壁は厚いのだ。
ましてデッキ無しデュエルディスク無しの遊星が古代ナスカ最強の王と戦うなど、無謀を通り越して狂っている。
だがしかし、竜星王自身の力なら――。
「ぐっ……」
たかが800ポイント。されど800ポイント。確かに一太刀。自分では刃を持つことさえせず、遊星は相手に切り傷を負わせた。
王はその不敵で礼儀知らずの対戦相手をしっかりと心に刻み込んで高らかに笑う。
「頭を撫でやろうとすれば、その隙に噛みついてくるか。ふふ、ははははは、はーはっはっはッ!
俺の竜を思わせる身勝手さ、気に入った! 今回の聖杯戦争、勝者は俺と貴様に決まりだ」
古代では珍しいほどに鮮やかな真紅のマントを破り、その場に崩れ落ちた遊星の肩を縛って止血する。
遊星の手に自らのデッキを握らせて、キングは霊体化して消えていった。
「さあ、立ち上がれ。戦うべき敵がいるのだろう。守るべき民がいるのだろう。
ならば、その双方の上に立ち、余裕をもって笑ってみせよ!」
「そうだ、俺は……ッ!」
34 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/14(金) 00:53:59.77 ID:WMBNsKS+o
「サテライトの英雄殿はどうなさったのかな? まさかこわくなって逃げ出したわけじゃあないよなぁ!?」
デュエルリング上で下品に笑う鷹栖は、先ほど遊星と戦った古代人以上に、原始的で浅ましいように見えた。
時代を越え、人とデュエルとは進化した。だが人の心はまだ進化に追いついていない。
逆に言えば、太古の昔の決闘者とであっても、心を交わすことができる。
「はっ! せっかく奴一人だけはカードを取り上げないでやったというのに、奴一人カード狩りを逃れてのうのうと隠れたわけだ。
お前らも奴の正体がわかっただろう。奴は英雄なんかじゃない、ただのゴミクズだ! 良かったなァ! お前らのゴミクズ仲間が増えたわけだ」
「俺ならここにいる」
赤いマントで肩を縛り、それでもなお滴る血がマントの赤をより濃く、スカーレッドに染めていく。
氷室に支えてもらいながら歩く。矢薙が遊星の手を握り、しきりに先ほどの戦いを褒め称えている。
デュエルリングの前で、二人から離れて自力で一歩。前のめりに、倒れそうになる身体を支えて立つ。
「たとえ塵一つといえど、存在する以上そこには意味がある……。人のカードを勝手に奪い取るお前はゴミ箱にも劣る!」
傷自体はそこまで深いわけではない。圧倒的フィールをぶつけられて体の硬直が直らないだけ。
助けを借りなければデュエルディスクの装着さえ一人ではできないほどの消耗だが、精神力さえあればフィールによるダメージは緩和できる。
「鷹栖。約束の時間だ。決着をつけよう」
「な、何故お前がデッキを持っている!?」
「さあな。星からの贈り物かもしれないな」
「くっ、仕方ない。デュエルで叩きのめしてやる! このクズ野郎が、生意気にデッキなんぞ持ちやがって……!」
>>37
1.「「デュエル!!」」
2.「「ファイティングデュエル! サティスファクション!」」
3.「「ディアハ!!」」
4.「「ランニングデュエル! アクセラレーション!」」
/遊星&前世ジャック ジャック&コピー遊星とか安価らしかなぬ統一感……。
/ではおやすみなさい。このペースでゆっくりいくよー。
35 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/14(金) 00:54:40.67 ID:V11RK/6Ro
1
36 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/14(金) 00:55:19.89 ID:Bynq6ATz0
1
37 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)
[sage]:2012/09/14(金) 00:56:24.03 ID:UcbgWSPAO
2
38 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/14(金) 00:58:18.98 ID:SKHJDteIO
4
細かいことだけどシグナーの竜がカードになったのは現代じゃなかったっけ?
39 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/14(金) 01:16:46.03 ID:Bynq6ATz0
苦労してデッキ借りたのにファイティングデュエル・・・
この遊星さんは間違いなくダークシグナー
40 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/14(金) 17:34:56.08 ID:EaZwdcayo
このまま進んでルカルアの体は遊星とのファイティングデュエルに耐えられるのか(ゲス顏
41 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:53:29.37 ID:YKQbTuQeo
>>38
そういえばそうだったかもしれない。あーうー。
設定の差異については、Z−ONEさんが試行錯誤してる最中なので、本編と歴史が異なるということで脳内保管してくだしあ。
42 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:53:56.17 ID:YKQbTuQeo
ファイティングデュエル! それは格闘技とデュエルを組み合わせた総合芸術!
ある囚人が一枚のカードだけを手に脱獄した、大満足事件が起源と言われている。
一人とデュエルしながら同時に三人を殴り倒したとされる彼は、その後海に落ちて行方不明。……いや、正確には生死不明。
しかし模倣犯対策として、セキュリティでは格闘とデュエルを組み合わせた新式決闘の訓練が始まる。
このアクロバティックでエキサイティングな決闘はネオドミノシティを席巻。わずか一年でライディングデュエルに次ぐ人気を博した。
ファイティングデュエル。それはパワーの世界で進化したデュエル!
そこに命をかける伝説の痣を持つ者たちを人々は『5D's』と呼んだ……(呼ばない)
「「ファイティングデュエル! サティスファクション!」」
43 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:54:25.10 ID:YKQbTuQeo
「先攻は頂くぜ! 俺様のッ! タァーン!」
ドロー。それはフィールを一点集中させるのにもっとも適した瞬間の一つ。
鷹栖はその巨体からは想像できないほど身軽。重心移動の方法を心得ている。
軽い前傾姿勢を維持し、滑るように走る。重力を利用した、忍者などが好んで使う走法。
その特徴は、トップスピードの速さと方向転換の自在さにある。
決して無計画な暴飲暴食とは違う、計画されたトレーニングと定期的な食事によって合理的に配分された脂肪。
その柔らかさは並の人間にとっては邪魔にしかならないが、極めれば筋肉を超える稼働範囲でスピードの限界を突破する。
「くらえッ、グラヴィティ・ドロー!」
デュエル開始と同時に距離を詰め切り、フィールを集中させたカードで遊星の腹を裂こうとカードを振るう。
先手必勝。見た目とのギャップも相まって、初見殺しの確殺パターン。鷹栖はこの年で尚速さを増す肉体を誇ってニヤリと笑う。
速さとはエネルギー。質量とはエネルギー。掛け合わせて勝利に落とし込む。これをもって奥義、グラヴィティ・ドロー!
「……遅い」
しかし竜星王/セイバーの太刀を見た後の遊星にとっては、それでさえ止まって見える。
肩の痛みが残っているとはいえ、回避するだけなら余裕。タイミングを合わせて前に踏み込み、鷹栖の腹を突き飛ばして反作用で跳ぶ。
「な、なンだと……。俺のグラヴィティ・ドローが……」
44 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:55:26.05 ID:YKQbTuQeo
しかし体勢の持ち直しも、鷹栖走法の利点の一つ。
二人の間に距離が開いた状態は、カードのプレイに最適。
「糞っ! 俺はC・コイルを攻撃表示。効果を発動し、攻撃力を300ポイントアップ。カードを二枚伏せてターンエンド」
自分のターンに入る時は、距離を詰めて必殺の攻撃を放つ。
外れれば、攻撃時のスピードを利用して距離を離し、ボード面を固めつつターンを回す。
ファイティングデュエル発祥の地の長は伊達ではない。理想的戦略。超現実的肉体。
一手目をかわされても、鷹栖にはまだやりようがある。
「俺のターン、ドロー」
対する遊星は、鷹栖の機敏な動きについていけず、ドローフェイズを攻撃に活かせない。
平時であれば互角のスピードであったかもしれないが、やはり竜星王戦の傷が重い。
(相手の場には伏せカードが二枚、ここはダーク・リゾネーターをセットして様子見を……)
「何を考えている。マスター。相手の場のC・コイルは毎ターン攻撃力を上げる。どうせ倒すのなら、今破壊するに越したことはない」
慎重なプレイを取ろうとする遊星に、竜星王が言葉を投げかける。痣で繋がった二人の間にだけ通るパスを使っての念話。
霊体化した竜星王の姿は遊星にさえ見えず、その言葉は遊星にしか聞こえない。
けれど遊星には、竜星王の不敵な表情が想像できた。
(そうか。このデッキは、そしてこの英霊は……あいつに似ているんだ。ならッ)
45 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:56:14.06 ID:YKQbTuQeo
「おい」
「何だぁー? 命乞いならもう遅いぞ」
「いいや、命乞いをするのはお前だ。たった二枚の伏せカードで俺の攻撃を止められると思っているのか?
手札から魔法カード、ナイト・ショット。対象は……」
――その言葉。その語り口。すべてが武器となりチャレンジャーを追い詰める。
――故にキングに敗北はない。『ロード・オブ・ザ・キング-王の帰還』より抜粋。
「やはり伏せカードを眼で追ったな。俺は俺から見て右側のカードを選択する」
「くっ、俺は落とし穴を墓地へ送る……」
「ミラージュ・ドラゴンを召喚。バトルだ!」
効果処理には隙が生まれる。自分で使うカードならタイミングを調整することもできるが、相手の効果ではそうもいかない。
鷹栖がカードを墓地へ送る動作は十分に手早かったが、遊星の接近はさらに早かった。
「ミラージュ・ドラゴンの攻撃。」
「お、おれはトラップ……」
「ミラージュ・ドラゴンの攻撃宣言時、相手はトラップを発動できない。さらに俺のダイレクトアタック!」
ミラージュ・ドラゴンの突進がC・コイルを貫き、光の欠片に変えてばらまく。
飛び散る光は良い目くらまし。ミラージュ・ドラゴンのソリッド・ヴィジョンに隠れて接近した遊星が、鷹栖の腹を蹴り上げる。
重低音。鷹栖の巨体が宙に舞った。
(あの脂肪、加速だけではなく鎧としても機能するのか……!)
この局面、通常ならデュエルディスクで殴る。だが左肩を負傷した遊星は、デュエルディスクを攻撃に活かせないのだ。
蹴りでは鷹栖に致命傷を与えることはできない。柔らかな感触が足に伝わり、脂肪に衝撃が吸収されたことが分かる。
46 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:57:25.89 ID:YKQbTuQeo
姿勢制御・重心移動は鷹栖の得意分野。空中で回転し、その腹を下にして遊星に向かって落ちる。
遊星の攻撃を逆手に取った、鷹栖の巧みなボディプレス!
遊星に避ける暇は無い。いや、避ける必要など無い。
空中では体勢を変えることはできても、位置を変えることはできない。
空、それは鷹栖を閉じ込める監獄。鷹栖に、遊星の次撃を避ける手段は無い。
遊星にぶつかるまで約四秒。それだけあれば、次の攻撃を繰り出すには十分なのだ。
「メインフェイズ2、コール・リゾネーターを発動!」
デッキを開いてカードを探す。初めて使うデッキ、たとえジャックのデッキに良く似ているとはいえ、やはり手惑う。
「ほら、ここだ。デッキボトムから四枚目」
そんな遊星に、竜星王が手を貸してくれる。指先だけが実体化、カードを指し示す。
「さあ、絶対的パワーを見せつけてやれ」
「俺は、ダーク・リゾネーターを手札に加える!」
カードを手札に加える。その瞬間は、フィールをもっとも集めやすい。
ダーク・リゾネーター。ジャックを代表するカード。
攻めの起点にして守りの起点。攻防一体、調和をもたらす悪魔。
その一枚のカードに、遊星の力強いフィールが集まる。竜星王の指と遊星の指とが重なる。
一閃。落ちゆく鷹栖の厚い脂肪を切り裂き、ダークリゾネーターが血を飛ばす。
血の珠がカードに染み込むよりも、そのカードが作り出した風圧が鷹栖を吹き飛ばす方が先。
「ぐ、ぐわああッ!」
47 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:58:42.65 ID:YKQbTuQeo
「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンド」
渾身の一撃を決めても、遊星は慢心しない。
まだ鷹栖のライフは十二分。ライフが0になるか、意識レベルが0になるか、サレンダーが宣言されるまで、デュエルは終わらない。
事実、鷹栖は起き上がってきた。
「さ、サテライトのクズが、この俺を……! 許さん! グラヴィティ・ドロー!」
あらゆる姿勢から一瞬にしてトップスピードに駆け上がり、その体重をドローカードに集約して攻撃する。
今回はその攻撃に、血飛沫による目潰しが加わっている。これが本場にファイティングデュエル、グラヴィティ・ブラッドローだ!
咄嗟にデュエルディスクで防ごうとするが、肩の痛みが動きを鈍らせる。瞼を閉じて血飛沫から眼を守れば、訪れるは一瞬の闇。
(落ち着け。あの巨体は脅威だが、同時に弱点。動けば必ず風が起きる)
「熱だ。空気を伝わる奴の熱を感じ取れ、マスター」
48 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 01:59:34.33 ID:YKQbTuQeo
「そこだッ!」
風と熱。そのどちらも、遊星にとって親しみ深いもの。
肌を伝導し、魂を震わせる。トップスピードの鷹栖が巻き起こす風と熱は、D-ホイールのエンジンに匹敵する。
しかし左面からの攻撃、肩の傷が再び遊星の行動を遅らせ、カウンターに失敗。
鷹栖は直前で身をかわし、さらにデュエルディスクによる殴打を加えてくる。
「う、ぐっ」
かろうじて掠っただけだが、布で押さえただけの傷が悲鳴を上げる。
「ふっふっふ、英雄殿はどうやら負傷なされているらしい。
この監獄の中で許可なきファイティングデュエルは禁止されているのだが、お前さんも氷室のようにルールを破ったわけか?」
遊星の弱点を見つけ、鷹栖が余裕を取り戻す。
腹からの出血が下半身を汚し、傲慢な笑みが鷹栖の顔を汚す。壮絶な状態で鷹栖が攻めてくる。
「俺はC・リペアラーを召喚。効果でC・コイルを蘇生。レベル3、C・コイルでC・リペアラーをチューニング。
歩く堅牢なる監獄よ、その身で相手の自由を奪え! シンクロ召喚! レベル7、ナチュル・ランドオルス!」
デュエルディスクの横薙ぎ。狙うはやはり遊星の左肩。
左面へ左面へ回り込むように動いてくる鷹栖に対し、遊星は避けるのが精いっぱい。
「ふふふふふ、バトルだッ! ランドオルスでミラージュ・ドラゴンを攻撃! くたばれゴミめら」
「トラップカード、デモンズ・チェーン!」
「くっ、小癪な……。俺はこれでターンエンド」
49 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 02:02:23.30 ID:YKQbTuQeo
ドローはもっともフィールの集まる時。それはつまり、守りが手薄になることを意味する。
ドロー時の運命力を下げてでも防御を取るか、あるいは全力の攻撃で戦況をひっくり返すか。
劣勢時のドローは、その決闘者のファイティングスタイルが如実に表れる。
(こんな時、ジャックなら……!)
「俺の、ターンッ!」
(見える。油断した相手の隙。向かうべき光射す道が……!)
遊星の選択は、防御。鷹栖の追撃を右手のカードで受け流し、バックステップ。
だがそれは攻撃に移るための動作。
「ダーク・リゾネーターを召喚! レベル3、ダーク・リゾネーターでミラージュ・ドラゴンをチューニング!
風の叫びが木霊する! 真紅の翼よ! 大空を裂け! シンクロ召喚! エクスプロード・ウィング・ドラゴン!」
召喚エフェクトの順風を受けて、鷹栖へと走る。
「マジックカード、スタンピング・クラッシュ! お前の場のセットカードを破壊させてもらう! さらに相手に500ダメージ。
そして手札のフォース・リゾネーターを捨て、パワージャイアントを特殊召喚!」
「ぐ……、俺の炸裂装甲が……!」
「エクスプロード・ウィング・ドラゴンの効果。このカード以下の攻撃力を持つモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!」
キングフレアがランドオルスに襲い掛かる。攻撃力2400対2350。50の差を、絶対的差に変える効果。50が分ける王者と敗者のライン!
2350ポイントのバーン。爆風が鷹栖を呑みこむ。さしもの鷹栖のスタミナをもってしても、その攻撃を受けては倒せざるを得ない。
「パワー・ジャイアントの攻撃! さらに俺のダイレクトアタック!」
カードを使い切ったことで手札は0になった。右手を握りしめてストレートパンチを放つ。
左腕でのデュエルディスク殴りができないなら、右手で殴るまでのこと――!
「これで終わりだ。鷹栖!」
「何故、俺がこんな野郎に……! うぁ、がああッ――」
「お前の敗因は、絆を蔑ろにしたことッ!」
「いいやマスター。マスターが強かっただけのことだ」
50 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 02:12:19.43 ID:YKQbTuQeo
「な、俺が……左遷……!?」
「お疲れのようですから、休養を取ってもらおうと思いまして」
モニターの向こう、腹に包帯を巻いた鷹栖に、ゴドウィンは冷たい言葉を返す。
「ぐっ、俺が失脚するのはまだ分かる。だが何だってあのマーカー野郎を釈放するんだ」
「彼は囚人の反逆心に火をつける危険な存在です。しかしサテライトにいる限りはそれほど危険な存在ではありません」
「そんな人物を矯正する事こそ、強制収容所の意義のはずです」
「不動遊星の釈放の件は、後任への引き継ぎよりも優先してください。これは命令です」
ゴドウィンは反論を許さず、一方的に通信を打ち切る。
それからゆったりと振り返り、背後のキングに微笑んでみせる。
「どうなさいましたか、キング」
「遊星が、出てくるのか」
「ええ。近いうちに戦う機会も訪れましょう」
「ふっ、そうか……」
危険な笑みを浮かべ、ジャックは満足そうに部屋を出て行った。
向かう先はホイール・オブ・フォーチュン。夜のツーリングはもはや習慣と化していた。
エンジン音が心地いい。風は遊星を思い出させる。
「遊星……!」
アクセルを強く踏み込んで。暗い水面の向こうにあるサテライトを想像した。
51 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 02:23:35.75 ID:YKQbTuQeo
「マスター」
「何だ。走っている時は話しかけるなと言ったはずだが」
「申し訳ありません。ですが、サーヴァントの気配を感じます」
夜の街は静か。他に走る物も無し。
だからジャックは、Z-ONEの実体化を許していた。
ホイール・オブ・フォーチュンに苦も無くついてくる謎の飛行機械。
どこか懐かしい青い瞳。嫌いではない。言うなれば苦手。
そんな微妙な自分の気持ちを断ち切りたくて、ジャックはあえてZ−ONEを見る。射殺すほどの勢いで、Z−ONEを睨む。
「そうか。ついにお前のデュエルの腕を見る時が来たか……。それで、チャレンジャーはどこにいる?」
>>56
1.高級マンション屋上・トップス
2.屋外デュエルフィールド
3.セキュリティ・カード保管庫
/おやすみなさい。 ふぇぇ、鷹栖戦だけで大分疲れたよぅ。
52 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 02:25:21.80 ID:gZ8fZN1bo
おもしろいな、ファイティングデュエル。3
53 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 09:31:41.18 ID:JtJg6Y7SO
2
54 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 11:19:16.00 ID:eBxXJh4DO
1
55 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 13:35:16.73 ID:43h4m/Qt0
3
56 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 13:35:44.31 ID:doOv8py+o
3
57 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 13:35:45.91 ID:HjDvUhVIO
2
58 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 17:09:56.79 ID:YKQbTuQeo
>>40
やだなあ、幼女のマスターが弱いわけないじゃないですか。
安価次第では登場すらできない可能性も結構あるけど。
59 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/15(土) 17:10:46.41 ID:YKQbTuQeo
セキュリティ・カード保管庫。
犯罪の証拠品と、そしてセキュリティのエリート達にのみ使用を許される流通規制済みカードとが保管されている。
その中でも、特に強力なカードを集めた第一保管庫は、24時間体制でエリートデュエリストによって警備されている。
氷のような空気に包まれて、会話の一つも無く守られているセキュリティの最重要施設。
だが今夜は、静寂の代わりにエンジン音と熱気が保管庫周辺を包み込んでいた。
「シロッコの効果発動! これでシュラにブラストとシロッコの攻撃力が加算される。
攻撃力5500となったシュラで、ゴヨウ・ガーディアンを攻撃!」
「俺が敗れようと、セキュリティの正義は敗れない……! 今逃げても罪が重くなるだけだぞ!」
「うるせえ! ダメージ計算時、BF−月影のカルートを捨ててブラストの攻撃力を1400ポイントアップ!」
「ぐああああ!」
セキュリティの追っ手の大半は既に撒き、しつこく付きまとってきた数人も撃破。
その後もしばらく周囲を走ってセキュリティの追跡が途切れたことを確認し、クロウは集合場所へ戻る。
「お前が仲間になってからスリル感が激減だぜ。ついに第一保管庫まで攻略しちまった」
そこではクロウのパートナーが、盗んできたカードを一枚一枚確認している。
クロウを囮にし、英霊を本命として侵入させる。
使い古された囮戦術だが、霊体時は常人には見つからない英霊をつかえば、効果は絶大。
「ま、感謝はしてるぜ。今日の獲物も、欲しいカードがあれば自由にしていい」
クロウは自身の呼び出した英霊に労いの言葉をかけるのであった。
>>62
1.盗賊王バクラ/アサシン
2.ハサン/アサシン
3.闇マリク/ランサー
4.カイト/アサシン
60 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 18:01:55.42 ID:gZ8fZN1bo
1
61 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/09/15(土) 18:03:58.81 ID:F/PValpAO
1か3か迷うな……
1で
62 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 18:38:57.30 ID:+s/NUK7to
4や
63 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海・関東)
[sage]:2012/09/15(土) 22:22:16.59 ID:ZChAbDuAO
1で
あえて言わせて貰おう。おいッ!!(まともな)デュエルしろよぉぉぉ!!
64 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 22:57:46.51 ID:YKQbTuQeo
カイトか。ちょっとZEXAL見てなかった分まとめて見てくる。
その間俺のファンサービス(過去作)でも読んでいてくれ。カイト使い捨てになりそうも気もするけど。
http://logsoku.com/thread/hayabusa.2ch.net/news4vip/1345906908/
65 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/15(土) 23:22:14.87 ID:HNIzzkIro
おもしろかった
また5D's単体で書いてほしいな
66 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/16(日) 01:11:46.13 ID:9aQc/coAO
とりあえず、
星竜王じゃね?
あと伝説の男と星竜王別な気が
そしてファイティング・デュエルってなんだよwwwwww
67 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/16(日) 23:42:14.97 ID:Pyvk0C2Mo
>>65
とりあえず当面はこのスレ一本だけど、気が向いたらやってみるー。
>>66
ふぇぇ、素で名前間違えたよぅ。星竜王さま許して。あーうー。あーうー。
バーニングソウルさんにも星竜王にもジャックの前世っぽい示唆があった気がしたので一緒にしてみました。デュエル時と平時で見た目が変わるとか良くあること。
ナスカでのことはあんまり掘り下げられなかったので良く分かんないんですよねー。
解釈間違ってたら、Z-ONEさんの歴史改変のせいだと思えばいいと思うよ。
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/16(日) 23:43:04.97 ID:Pyvk0C2Mo
セキュリティの保管庫周辺は、見通しの良い開けた場所になっている。
D−ホイールで逃げようにも、エンジン音ですぐにばれてしまう。増援がくれば面倒だ。
だからクロウとカイトは一度追っ手を撒いてから敷地内に戻り、今は使われていない旧倉庫区域にいた。
「特に目ぼしいカードは無いな。俺のデッキはシンクロとはあまり相性が良くない。
それより、今日は少し仕込みをしておいた。もうすぐ来るはずだ」
「あ? 来るって何がだ?」
「他のサーヴァントが、だ。オービタル、後は任せた」
そういってカイトは姿を消す。単なる霊体化よりもさらに隠密性の高い光子化。
クラススキルの気配遮断はそう得意ではないが、それとは別に持つフォトンの力で身を隠す。
「カシコマリ! 作戦はオイラが説明するデアリマス!」
かくかくしかじか。クロウは子供っぽい期待に胸を膨らませる。
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/16(日) 23:43:39.02 ID:Pyvk0C2Mo
その前へやってくるのはホイール・オブ・フォーチュンに乗ったジャックと、実体化したZ−ONE。
Z−ONEの襲来にさえセキュリティが動かないところを見ると、完全にセキュリティは機能が麻痺しているようだ。
D-ホイールを止めて飛び降りるジャック。
倉庫から歩いて出てくるクロウ。
「クロウか」
「ジャック!? どの面下げて俺の前に出てきやがった。
聞いたぞ。セキュリティをけしかけてデュエルを中断させ、遊星のデッキを奪ったんだって!?」
「なっ、誰がそんなことを!」
「そんなことは関係ねえ! お前、また遊星を……!」
Z-ONEが気配を感じたという場所へ行ってみれば、そこにいたのはクロウ。そして謂れの無い中傷。
だがキングの動揺は一瞬。王の善悪とは別に、王座そのものに向けられる敵意を、ジャックは何度も経験してきた。
「そうだ。その通りだ!」
「チッ。それもキングだからか?」
「愚問だな。だが答えてやろう。そう、キングだからだ!」
遊星はサテライトでつまらない仲間たちと遊ぶ日々に満足してしまっていた。
クロウは子供たちの世話役に自分を縛りつけてしまい、身動きが取れなくなっていた。
そんな宝の持ち腐れが、ジャックには許せない。
力ある者には戦う義務がある。真に力ある者を欠いたまま選別される王に何の意味があるというのか。
サテライトで、シティのキングのデュエルを見ながら、ジャックはずっと不満と疑問を抱いていた。
すなわち、俺の方が強いのではないか、と……!
だからジャックは退屈な日々を、手段を選ばず破壊する。さらなる満足を求めて!
「ジャック……てめぇ……!」
「まあ、そんな貧弱なサーヴァントしか呼び出せないようでは、結果も見えているがな」
指差す先にはオービタル7。外殻を開き戦闘形態へと移行していく様子はなかなか迫力があるが、やはりZ-ONEに比べれば格の差は歴然。
「オイラを馬鹿にすると痛い目を見るデアリマス!」
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/16(日) 23:44:34.84 ID:Pyvk0C2Mo
先行していたジャックへと飛びかかるオービタル7。かろやかに回避するジャック。
続くドリルの一撃を見切って前進、オービタルの横をすり抜けてクロウへと走りだしたところで。
「誰から聞いたのか、とさきほど尋ねていたな」
飛来するは赤く輝く十字架。銀河を内包した光子結晶。
ギャラクシークロス
カイトの罪と贖罪との象徴、銀河十字。それが手裏剣のように飛んでくる。
「なにっ!?」
紙一重で飛び退いたジャックに、オービタル7のドリルが襲い掛かる。
ジャックのマントが破れ、勢い余ったドリルが地面を抉り取る。
「答えてやろう。俺だッ!」
ジャックにかわされた銀河十字が、一回転して戻ってくる。
その先に、光子が集まり人を形作る。音より早い光の速度。光子化の解除まで、必要な時間はコンマにも満たない。
銀河十字を手に取り、ジャックへと駆け抜けるカイト。
対するジャックは、ドリルによって地面に縫い付けられたマントが邪魔になり、回避できない。
「サーヴァントの相手はサーヴァントがするが習い……。マスター、ここは私が」
その十字の一振りを、超大な機械腕が薙ぎ払う。Z-ONEの追加パーツ!
71 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/16(日) 23:45:00.31 ID:Pyvk0C2Mo
何度振り払われても、磁力でもあるかのようにカイトの手元に戻ってくる銀河十字。
それを苦も無く振り払うZ-ONEの機械腕。
スペック的にはZ-ONEが優位に立っているが、オービタルに気を払い、ジャックを守る形になっているZ-ONEは攻めきれない。
ジャックにはドリル攻撃を避ける程度の身体能力はあっても、英霊カイトの攻撃を避けきるのは難しい。
時折Z-ONEとジャックを軌道上に捉えて飛んでくる銀河十字は、Z-ONEでなければ防御できない。
「カイトさま!」
だが膠着状態は、オービタルの叫びにとって終わりを告げる。
何度も回避され続けたドリルがまたも地面を穿ち、それによって大地がついに限界を迎える。
地面が裂ける――!
その瞬間に合わせ、クロウがデュエルアンカーをZ-ONEに投げつける。
サティファクション時代に愛用していたものとは異なる、青く発光するワイヤーアンカー。
フォトンの力を借りたワイヤーはその内部に異なる物理体系を内包する。
「捕まえたぜ! ジャックのサーヴァント!」
たとえZ-ONEといえども、逃れることは叶わない。
いや、試すことさえできない。ワイヤーが絡みついた青い金属棒は、モーメントに直結する重要部品。
生半可な衝撃では壊れないよう設計されているが、負担をかけるのはリスクが重い。ゆえにZ-ONEはクロウから離れられない。
72 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/16(日) 23:47:13.41 ID:Pyvk0C2Mo
裂けた地面の片側にクロウとZ-ONE。もう片側にジャック、オービタル7、カイト。
サーヴァントとマスターとが戦う変わった布陣。
これこそがカイトの計画。
アサシンは対マスターに秀でたサーヴァント。
オービタル7はサーヴァント同士の戦いでは蚊帳の外。しかし対マスターでなら数の利を十二分に活かせる。
加えてクロウのデッキは高い対応力を持っている。サティファクション時代、リーダーに受けた手ほどきから、ワンキル対策も十分。
どんなデッキであろうと、たとえサーヴァントであろう、数ターンなら持ちこたえる自信がある。
クロウがZ-ONEに負ける前に、カイトがジャックを倒す――!
卑怯ではない。だが決して正道ではない。
私義と公義の間で揺れながら法を犯す二人が選んだ戦略がこれだ。
「サーヴァントが相手か。いいだろう。実は俺も戦ってみたいと思っていた」
「その言葉、後悔させる暇も与えん! オービタル!」
「カシコマリ!」
「最近緊張感が足りないと思ってたところなんだ。遠慮なく来いよ、デカブツ!」
「相手が誰であろうと、手加減はしません。私には目的がある!」
ジャックとカイトのデュエル
>>74
クロウとZ-ONEのデュエル
>>75
1.デュエル!!!
2.フライディングデュエル!
3.ファイティングデュエル!
4.ディアハ!!!
73 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/16(日) 23:48:01.79 ID:rlUQj0nTo
2
74 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/16(日) 23:54:41.70 ID:qTblOAGDO
3
75 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/09/17(月) 00:10:15.49 ID:jLROqAIyo
2
76 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/17(月) 00:12:14.29 ID:PmQs+/yIO
2
77 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/17(月) 01:51:28.10 ID:A7b5e9YAO
だからデュエルをしろよwwwwwwww
常に浮翌遊してるZ-ONEはフライング余裕だろうけど光の翼がないブラック・バードじゃ飛行できるのせいぜい数秒なんじゃ……
78 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:12:00.32 ID:UKkY+fJ4o
「デュエルモード、フォトンチェンジ!」
「カシコマリ!」
オービタルの体内から放出されたデュエルディスクがカイトの腕に装着される。同時にカイトの身体が光子に包まれる。
光子固定。制御機構の構成。左目が青く縁どられ、瞳が赤く染まる。ナンバーズハンターの戦闘形態。
漆黒の衣装が純白へと変わるのは、決戦の意思の表れ。宵闇に隠れるのではなく、月光に溶け込むアサシン!
「随分と手の込んだファンサービスだが……生憎観客を沸かせるのは俺の仕事だ」
ジャックは動ぜずに5枚のカードを引き抜く。
オービタルの突進を合図にデュエルが始まる。
「「ファイティングデュエル! サティスファクション!」」
「俺の先攻! ドロー!」
カイトは跳び上がってデッキに手を付け、ドローと共に大きく身を沈める。
急激な高低差は、相手の視界から一時的にカイトを消し去る。死角から引き抜かれたカードがジャックを襲う。
身体をバネにしての踏み込みはパワーとスピードの両面を強化。これぞアサシンのドロー!
だがしかし、ジャックはオービタルの腕を掴んで動きを止め、オービタルを盾にする。ドローの刃は届かない。
カイトはドローによる斬撃を諦め、オービタルごとジャックを蹴りつけて反動で下がる。
79 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:12:38.46 ID:UKkY+fJ4o
「焦っているようだな。よく相手を見ないからこういうことになる。そんなにクロウが信用できないか?」
立ち上がってきたオービタルがジャックへと襲い掛かる。ジャックはその場で身を屈める。
ジャックの背という眼隠しが消えたことで、オービタルの目の前に銀河十字が出現。カイトへと戻る途中の銀河十字がオービタルへ飛んでいく。
オービタルがあわてて回避する間に、ジャックはオービタルの横へ入って回し蹴り。硬い金属板を僅かに凹ませる。
常に観客を意識してのエンターテイメントデュエルによって培った広い視野が、ジャックのデュエルを今支えている。
しかしその間にカイトはカードプレイを進めていく。
「手札からフォトン・スラッシャーを特殊召喚! さらにフォトン・サテライトを通常召喚!
フォトン・サテライトの効果発動。スラッシャーとサテライトのレベルを5に変更する」
「レベル変更効果……ライトニングチューンからのシンクロ狙いか!?」
「あいにくだが、俺の心に同調できる奴はもうハルトだけだ。
俺はフォトン・スラッシャーとフォトン・サテライトをオーバーレイ!
銀河の果てを翔るスバル、今こそ我が下で舞い踊れ! エクシーズ召喚、セイクリッド・プレアデス!」
カードプレイを終えたところで、戻ってきた銀河十字を再度ジャックに投擲。
身体全体を使って回転をかけた投法は、フォトンチェンジと相まって今までの倍以上の初速を誇る。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
80 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:13:19.84 ID:UKkY+fJ4o
「黒いカード、だと……!? ふっ、なかなかのサプライズだ。俺の舞台に相応しい!」
エンドフェイズの一刹那を利用してカイトが再度ジャックに肉薄する。そのスピード、先ほど投げられた銀河十字を追い抜くほど。
軽い一撃なら入れられただろうに、あえてそのままジャックを通り越して反転。
ジャックのドローフェイズの隙を突き、完全な一撃を取るためだ。
「序盤の一撃必殺は観客に受けん。俺がキングのデュエルを見せてやる」
銀河十字がジャックに迫る。それをジャックは、左手で掴んだ。
その手を守るのはD-ホイール用の手袋のみ。値の張る高級品といえど、そもそも防具ではない。当然破れ、燃える。
「馬鹿なッ! 光子に焼き尽くされたいのか!?」
「この程度の熱、この程度の刃。我がレッド・デーモンズの炎に比べれば、煙草の吸殻のようなものだ!」
ついに刈り取るべき獲物に出会った銀河十字の四端が赤熱する。
躍動する赤さは煙草の点火後を思わせなくもない。しかし立ち上る煙は、ジャックの肉が焼けた痕。
「うおぉぉおぉおお!」
銀河十字を手にして周囲を薙ぎ払う。銀河十字を墓標のように地面に突きたて、ジャックのターンが始まる。
「俺のターン! ドロー!」
まだ左手からは煙が燻っている。明らかに重傷。しかし左手がデュエルディスクを支えられさえすればデュエルを続けられる。
右手は健在。ドローに支障はない。キングの右手はカードを手にする。引き抜く。洗練された動作はいかなる状況であろうと狂わない。
「バイス・ドラゴンを特殊召喚! ダーク・リゾネーターを通常召喚! ダーク・リゾネーターでバイス・ドラゴンをチューニング。
王者の鼓動、今ここに列をなす。天地鳴動の力を見るがいい! シンクロ召喚! 我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
「ならばこの瞬間、セイクリッド・プレアデスの効果発動。オーバレイユニットを一つ使い、カードを一枚手札に戻す」
「見慣れないカード、この俺が警戒していないとでも思ったか! 速攻魔法、禁じられた聖杯! 効果を無効にし、攻撃力を400アップさせる」
「その聖杯で満足していればいいものを……!」
レッド・デーモンズのフィールは常人の域を幾らか超越する。基本戦闘力で特に劣るアサシンが相手なら、十分通用する。
雄々しき肉体から発散されるフィールが、カイトとオービタルを威圧し、その動きを止めている。
「バトルだ! レッド・デーモンズの攻撃! 灼熱のクリムゾン・ヘルフレア!」
レッドデーモンズの体内で醸成された地獄の炎が、プレアデスを焼き払った。
さらに有り余るフィールがカイトの身体に熱を感じさせる。
(100のダメージでこれか。直撃は避けたいところだな)
「俺はこれでターンエンド!」
81 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:14:25.64 ID:UKkY+fJ4o
「そのカード、貴様の魂だそうだな」
「そうだ! 我が覇道の象徴、強力無比のパワー! このレッド・デーモンズこそ我が魂!」
「ならば狩らせてもらおう、お前の魂ごと! いくぞオービタル!」
「カシコマリング! オービタルステップ!」
カイトが直線でジャックへと向かい、その間を縫うようにオービタルがカイトの死角をカバーしつつ追随する。
カイトは最後の一歩で大きく加速し、眼にもとまらぬ速度でジャックの背後を取る。
オービタルは最後の一歩で大きく地面を踏みつけて跳躍。カイトの足音を隠しつつ、前後からジャックに襲い掛かる。
「俺のターン、ドロー!」
カイトのドローカードがジャックへ。真空の疾走は無音。
オービタルのドリルがジャックへ。虚空を穿つは機械音。
ジャックはデュエルディスクでドリルを受け止め、身体を回しながら右手で大きく背後を薙ぐ。
ジャックの腕にカードが突き刺さる。ドローによってフィールを集中されたカードは血くらい弾く。すぐに引き抜けば汚れはしない。
「ファイティングデュエルは初めてか? 随分と分かりやすい攻め方だったぞ」
「何故俺の速度に追いつける……!?」
「俺が追いついたんじゃない。お前が追いついたんだ。お前は臆病だからな、背後から来ると分かっていればやりようもある」
外殻が砕かれたデュエルディスクが不安げな音をたてる。じりじりと電流が走り、火花が散る。
右手から流れる血を手札に落とさないため、ジャックは右手を上げる。勝鬨を上げる王のように。
82 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:14:53.55 ID:UKkY+fJ4o
「この、狂人めっ。俺は手札からアクセル・ライトを発動! デッキから銀河の魔術師を特殊召喚する!」
デッキから引き抜いたカードで再度ジャックに斬りかかる。
だがジャックはこれまた分かっていたようにデュエルディスクをカイトの初動より早く目の前にかざし、防御を終えている。
デュエルディスクのカードゾーンが弾け跳ぶ。砕けた破片がジャックの頬を掠める。
「銀河の魔術師をリリースし、デッキから銀河眼の光子竜を手札に加える」
さらに軽やかなカード捌きからの第二撃。銀河眼の光子竜を手に、ジャックへの追撃。
デュエルディスクがバターのように切り裂かれる。
「通常魔法、フォトン・サンクチュアリ! フォトン・トークンを二体特殊召喚!」
現われるソリッド・ヴィジョンに身を紛らわせ、オービタル7が体当たりを仕掛けてくる。
既にボロボロのデュエルディスクを盾にすれば、残ったカードゾーンも破壊される。
ジャックのデュエルディスク、残りモンスターカードゾーン2つ、魔法罠カードゾーン2つ。フィールド魔法、使用不能。
「俺は二体のフォトン・トークンをリリースし、銀河眼の光子竜を特殊召喚!」
地面に突き刺さった銀河十字を抜き取り、カイトは高らかに宣言する。
銀河十字を空へと投げれば、ビッグバンのごとく銀河が展開される。
「闇に輝く銀河よ、希望の光になりて我が僕に宿れ! 光の化身、ここに降臨! 現れろ、銀河眼の光子竜!」
天空より現れたギャラクシー・アイズが、レッド・デーモンズを見下ろして咆哮する。
83 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:15:22.48 ID:UKkY+fJ4o
「バトルだ! 銀河眼の光子竜でレッド・デーモンズ・ドラゴンを攻撃!」
「攻撃力は3000同士、相打ち狙いか」
「俺はギャラクシー・アイズの効果発動! バトルするとき、互いのモンスターを除外する!」
「なっ、何の意味があるというのだ」
光の粒となって二体の龍は消えていく。零れる光の雨がジャックの足元の血の海に反射する。
「俺はトラップカード、異次元からの帰還を発動! ライフを半分払い、除外されたギャラクシー・アイズを特殊召喚する!
バトルだ! 破滅のフォトン・ストリーム!」
その血の海の中から、銀河を孕んだ瞳がジャックを見つめ、次の瞬間には足元から飛び出してくる。
巻き上げられた風に体勢を乱したジャックへと、光子の奔流が殺到する。
3000ポイントもの直撃、まして英霊の一撃。受けて立っていられるはずがない。
「う、ぐあああああああああ!」
ジャックの視界の全てが白に染まり、次いで意識をも白濁させる。
ふらりと倒れていくジャックのデュエルディスクのカードゾーンを、オービタル7のドリルが完全に破壊した。残るのは、デッキと墓地のみ。
84 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 00:24:59.53 ID:UKkY+fJ4o
「もはやお前に勝機は無い。サレンダーし、聖杯戦争を降りろ。そうすれば命までは取らん」
バトルフェイズ終了時、舞い戻るべきカードゾーンが無いレッド・デーモンズのカードを、カイトの掴みとった。
「ふっ、何を言う……。まだ俺にはデッキがある。カードがある。カードが引ける限り、俺はまだ負けてはいない」
消えたレッド・デーモンズの思念が宿ったかのように、ジャックは雄々しく立ち上がる。
眼には不屈の闘志を宿して。ジャックは命を賭す覚悟で、デッキに手をつける。サレンダー? 否! それは間違いようも無くドローの構え。
「なぜ立ち上がる。もはやデュエルディスクは破壊された。お前に勝ち目など無い」
「我が魂を下賤な手で触ったこと、今から謝っても遅いぞ。さあ、エンドフェイズを宣言しろ。俺が直々に天罰を下してくれる」
「罪の重さには慣れている。懺悔の用意ならできている。だがそれは全てが終わり、ハルトに幸せを送ってからだ!
エンドフェイズ、ギャラクシー・アイズは除外される。さあ、お前のターンだ」
「俺の、俺の――!」
カードを引き抜こうとした瞬間、カイトのひじ打ちがジャックの腹を直撃。
カウンターの形の一撃はジャックに残された体力を奪い取り、再度ダウンを取る。
衝撃で右腕の傷が痛み、出血がひどくなる。
赤い血だまりが広がっていく様にレッド・デーモンズの炎を想起しながら。
ジャックは、動かない体が不満で仕方ない。
>>88
ジャックは
1.最後の闘志を振り絞って立ち上がった。
2.赤く染まりゆく意識を手放した。
3.令呪でZ-ONEを呼んだ。
/今日はここまでー。カイト編のカード焦ってチェックしたけど大丈夫だろうか。ミスがあったら言ってね! 修正はしないけど反省はするよ!
85 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/18(火) 00:26:27.58 ID:lKfIYmuqo
1
86 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/18(火) 00:31:31.00 ID:ly6BKzeBo
1
87 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/18(火) 00:32:50.81 ID:744J4qrn0
死亡フラグな気もするがジャックらしい1で
88 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/18(火) 00:37:14.63 ID:xmtgfqOMo
1
89 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/18(火) 02:35:28.55 ID:4VFC7T4AO
だからデュry
ディスク破壊とか無茶苦茶すぎるだろwwwwwwwwww
もうドロー時のフィールで倒すしかないだろこれ
90 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 23:16:58.27 ID:UKkY+fJ4o
「何故、何故立ち上がる。既に勝敗は決したはずだ」
それは意思の力というよりも本能に近い。
生まれながらに荒ぶる魂を秘めた男は、立ち止まることを知らない。
「俺の――ッ! ターン!」
もはやその瞳に目の前の光景は映っていない。
心の原風景、燃え盛る炎、逃げ惑う人々。かつてない熱気に包まれて肌が皮膚が眼が喉が痛い。
閃光は終わりではなく始まりで、理性をかなぐり捨てた群衆は見たことが無いほど精力的だった。
――炎は命だ。人生とは燃やすもの。ならば俺は、赤く熱く誰よりも力強い炎となってやる。
そのとき、崩れゆく建物の音よりも、意味を成さぬ人の叫びよりも、遥かにはっきりとした雄叫びを聞いた。
ゼロ・リバースの日に聞いた竜の雄叫びが、ジャックの脳内に再び響き渡る。
91 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 23:17:42.95 ID:UKkY+fJ4o
「ドロぉおおおおおおおおお」
「何をしている、避けろオービタル!」
「か、カシコマリ!」
既に死に体のジャックにスピードは無い。パワーさえ無い。ただ気迫が尋常ならざるだけ。
避けるのは容易。反応の遅れたオービタルでも、十分余裕をもって射程の外に出られた。
これまでのデータから導き出したオービタルの結論は正しい。ジーニアスの傑作は伊達ではない。
オービタル7が下がった場所には確かに斬撃は来なかった。
そう、斬撃は。
「こ、これは!? カイト様! こいつ……!」
オービタルの装甲板が歪な形に変わり、煙を上げている。
瞬間的に膨大な熱量を受けた、その結果である。
「スタンバイフェイズ!」
手の中のカードが赤く輝く。腕の痣が赤く輝く。
手札は四枚。ボードアドは物理的にゼロ。問題無い。立ってカードを引くことさえできればデュエルは続けられる。
「メインフェイズ!」
パチ。火花が散る。
「バトルフェイズ!」
パチパチ。火の粉が舞う。
「メインフェイズ2!」
正式名称を手札シャッフル。手札パチパチ、といった方が分かりやすいだろうか。
決闘錬金学において、デッキとは未知なる可能性の坩堝。ドローとは不確定性の確定にして箱猫殺しの大魔術である。
ならば手札は何なのか。最高の錬金術師と評される融合使いは言った。手札とは星幽子にしてルートマテリアル。
彼の決闘哲学は、一部の例外を除き全てのモンスターが融合素材となった「終焉のGX」の日をもって完成する。
「エンドフェイズ!」
ドローが最もフィールの高まる一瞬であることを疑う余地は無い。だがドローフェイズにしかチャンスが無いというわけではない。
手札シャッフル。それは王道にして基本。シッティングデュエルの大会へ行けば、多くの決闘者が手札シャッフルを行っている事だろう。
フィールを高める機会の少ないシッティングデュエル界は、本能的に手札シャッフルの力を知っていたのだ。
手札シャッフル。それはあらゆる状況下で可能な錬金術。
1ターン手札シャッフルを続けたところで一度のドローにすら叶わないが、確かに手札は力を生むのだ。
92 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 23:18:35.33 ID:UKkY+fJ4o
「手札シャッフルだけでこれほどの力が生み出せるものなのか……!?」
ジャックの手札が音を鳴らすたび、火の粉が散る。
エンターテイメントも極めれば芸道となる。一秒間に十回以上。
一回一回の力は弱くとも、これだけ重なれば無視できない火力となる。熱はさらなる熱を呼び、火が連なり炎を作る。ジャックを取り巻く炎の壁!
「くっ、俺のターン。ドロー!」
ジャックの周りに飛び交う赤い閃光に隙間は無く、カイトは距離を取らざるを得ない。せっかくのドローも攻撃に活かせない。
「手札からフォトン・リザードを召喚! 効果発動! これで終わりだ、俺は二枚目のフォトン・スラッシャーを手札に加える」
ならモンスターを並べてライフで止めを刺す。至極真っ当な発想だが、しかしジャックはその上を行く。
手札を一枚引き抜いて、墓地へ。
「俺は手札から増殖するGを捨てる!」
手札シャッフルからの手札誘発。フィールドを介さずに最大限に力を高める一手!
「くっ。自分フィールドにモンスターがいないとき、このモンスターは特殊召喚できる。現われろ! フォトン・スラッシャー!」
「そして俺の、ドロー!!!」
ジャックのドローの軌跡が黒煙となって残る。ドローの向かう先にはカイト。
「届けえええ!!!」
爆発的燃焼が風を起こす。ジャックを助ける順風。
足の筋肉が限界まで凝縮され、解放される。体内で脂肪がエネルギーに分解され、熱が血管を貫いて巡る。
それはまさに生きた炎。
――炎は命だ。人生は燃やすもの。ならば俺は……!
93 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 23:19:02.81 ID:UKkY+fJ4o
「はぁ……はぁ……はぁ」
「カイト様! ご無事で!」
「所詮ただの人間だ。俺の敵ではない」
銀河十字がジャックの腹を貫通していた。高熱は血を流すことさえ許さず、傷口を焼いて尚赤熱する。
銀河眼をあえて除外したのはこのため。任意に使える飛び道具は、ファイティングデュエルにおいて極めて使い勝手がいい。
ただ勢いだけで突っ込んできたジャックに銀河十字を命中させるのは、ワイトの骨を折るより容易い。
「立ったままなお俺を睨みつけるか……。よかろう。お前の止めはこのレッド・デーモンズのカードで直々に下してやる。
すまなかった。こうなるのであれば、初めから殺す気でいくべきだった」
突進する体勢のまま固まったジャックの首を裂こうとし、レッド・デーモンズのカードを取り出す。
一度姿勢を低くし、足をバネに跳び上がる技法は、カイトの本気の一撃。
背中から足先へ、流麗なラインを描いての跳躍から、今まさにカードが振るわれんとして。
「チッ」
カイトの姿は光の中へ消えた。
94 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/18(火) 23:23:42.10 ID:7uGTNvjyo
パチパチェ
95 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/18(火) 23:35:08.77 ID:UKkY+fJ4o
ちょっとTF時械神調べて来るので今日はここまで。パチパチは怖いので嫌いです。
安価スレなのに安価が出ないなんて良くあること。とりあえず次回はわりと普通なデュエルになるかなー?
96 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/18(火) 23:36:13.45 ID:lKfIYmuqo
乙
時械神対BFがまともなデュエル……?
97 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/18(火) 23:56:24.71 ID:JWh+3URIO
十代さん何やってんですか……
ジャックはまだリタイアじゃないのか?
98 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(福井県)
[sage]:2012/09/19(水) 00:13:08.89 ID:24AuHSlJo
おのれパチラー!
あれなんなんだろうな気分悪いしマナー的にもどうかと思うのに基本みたいになってるし
99 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(神奈川県)
[sage]:2012/09/19(水) 01:25:16.97 ID:6RutTs9do
パチパチする元キングとかシュールすぎんだろ…
100 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/19(水) 02:35:27.33 ID:sYX/o8NAO
この頃はまだキングだろいい加減にしろ!
まさかパチパチとは思わなかったわ
ファイティング・デュエル危険すぎだろ
よく死人が出ないな…
101 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/19(水) 22:21:24.03 ID:OmUjZ1ASO
フィールのムクロ戦思い出した
「攻撃翌力が0でもフィールは与えられる」ってやつ
102 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:07:37.41 ID:xOyMy3NMo
初めて乙って言ってもらえた気がする。わーい。
>>100
超上級者同士の試合だからデンジャラスなのであって、一般のファイティングデュエルはここまで危険ではないはず。
でもスタンディングデュエルですら死ぬときは死ぬので、ファイティングデュエルで死人が出てないわけなかった。
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:08:56.45 ID:xOyMy3NMo
「「スピード・ワールド2、セットオン!」」
「スピード・ワールド2。アサシンの持ってたスピード・ワールドΖとはまた別のカードなのか……」
あえて飛行能力の中途半端なブラック・バードでこのデュエルを受けたのには理由がある。
スピード・ワールド。その共通能力は、スピード・スペル以外の魔法の制限。
カードプールが狭まれば、コンボの数は減り、速攻性も下がる。結果としてワンキルが起こりづらい。
もともとクロウはサーヴァントとの力の差を理解している。このデュエルの目的は、アサシンカイトがジャックを倒すまで時間を稼ぐこと。
ならば0ターンキルフィール負けもありうるファイティングデュエルや、多彩なワンショットのあるスタンディングデュエルは下策。
スピードの世界での決闘が、結果的に時間稼ぎにうってつけと言う皮肉な結論の下での選択。
「フライングデュエル!」
「ライディングデュエル!」
「「アクセラレーション!!!」」
104 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:11:13.46 ID:xOyMy3NMo
スタートは同時。クロウとZ-ONEが走り出す。
一人は大地を。一人は天空を。それぞれ異なる場所を駆けながら、その目指す先は等しく勝利の栄光。
道なき道を拓くことこそ決闘疾走の本質。この遮蔽物の少ない地において、フライとライドは等価。
「良かったのですか? 私の拘束を外してしまって」
「ああ! てめぇは途中でデュエルを放棄するような奴じゃねぇ! その眼を見れば分かるぜ」
二人の目の前に大きな鉄柵が現れる。このカード保管庫の敷地を区切る境界線。
Z-ONEはただ高度を上げさえすれば越えられるが、クロウはそうもいかない。
「アサシン! ピアスン! 力を借りるぜ!」
そこで出るのがフォトンアンカー。無限の強度を持った光子の糸なら、D-ホイールを支えることも可能。
クロウの投げたフォトンアンカーが鉄柵の頂点に絡みつく。
エンジンを全開に。アフターバーナーが噴火する。細かな運転テクニックが生み出すジャンプが、バイクにあるまじき高みへと飛翔する。
後部に展開される翼こそブラック・バードの名の由来。黒き鳥は空を穿つ!
「うおおおおおおぉぉおおおお! いっけぇえええええ!」
片手でフォトンアンカーを引っ張りながら最大加速。タイヤの空転音も聞こえないほどの気合を入れて、クロウは飛ぶ。
105 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:12:01.93 ID:xOyMy3NMo
第一コーナーの存在しない無辺際の地平。
ならば先に柵を越した方が先攻を取るのは自明の理。互いに柵をして最後の加速へと入る。
「ぬぅっ」
Z-ONEの進路に割り込む形でブラック・バードが飛んでくる。Z-ONE、退避。
先に柵を越えたのはクロウ。空中からの滑空を行いながらターンに入る。
「よっしゃ! 俺の先攻だ、ドロー! 俺は手札からライオウを攻撃表示で召喚! カードを二枚伏せてターンエンド!」
「では私のターン、ドロー。自分フィールドにモンスターが存在しない時、このカードはリリース無しで通常召喚できる」
「いきなりレベル10のモンスターだと!? インチキはカードサイズだけにしろよ! しかも特殊召喚じゃなく通常召喚だって!?」
瞳を模した脚部の上に、人の顔が映る鏡。鎧と一体化した身体に、そこから飛び出す光の翼。
およそ人には想像しえぬ造形こそ、このモンスターの神のたる証拠。
ただその場に通常召喚されるだけで、その威圧感がフィールドを包み込む。
「私は時械神カミオンを召喚。バトルです」
「攻撃力0で攻撃だと!? チェーンはねえが、どういうつもりだ」
「時械神カミオンの戦闘によっては私にダメージは発生せず、時械神カミオンは戦闘及び効果で破壊されません。カミオンの攻撃!」
ダメージは無い。だが土石流のソリッドヴィジョンが織り成すフィールは精神に直接衝撃を与える。
「カミオンが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手モンスター1体をデッキに戻し、相手に500ポイントのダメージを与える」
しかしその精神ダメージすら前座。ライオウがデッキに戻れば、クロウの身体の内側からフィールが爆発する。
人は体の外面を鍛えることはできても、内部を鍛えるのは難しい。内臓を振り回されるような悪寒。
度重なるセキュリティの拷問を受けてきたクロウでも、これは堪えた。
「ぐっ、うぁああああッ。なっ……なかなか、良いフィールしてやがるぜ……!」
「私はこれでターンエンド」
106 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:14:26.13 ID:xOyMy3NMo
Z-ONEの攻撃を受けて、ブラック・バードが空中で乱回転する。
「クソッ」
時械神の強大な力を受けて乱れたD-ホイールの体勢を立て直すために力を込める。
地面はすぐそこに迫っている。着地までにD-ホイールを立て直せねばクラッシュは必至。
「ならアサシンとッ、そしてお前の力を貸してもらう。鉄砲玉のクロウさまをなめんなよ!」
サティスファクション時代の特攻隊長の経験が生きる。
最初に突入するのはクロウの役目。デュエルアンカーでまず一人を拘束するのがその第一目標。
一人捕まえてしまえば、残りは戸惑ってその場で動けなくなるか、あるいは焦って足並みが乱れ、後詰めの遊星やジャックに捕まる。
初動が肝心なのはデュエルも制圧戦も同じなのだ。デュエルアンカー武術こそサテライト制覇の影の立役者。
チーム・サティスファクションでデュエルアンカーの扱いにもっとも長けているのは、クロウ・ホーガンである。
「へへっ! 俺もフライングデュエルとしゃれ込むぜ!」
フォトンアンカーをZ-ONEに向かって投げ付ける。異常なまでに伸びる糸は、異世界技術と天才の頭脳が生んだ奇跡の賜物。
Z-ONEの超大なデッキケースの側面をぐるぐる巻きにし、Z-ONEの後に追随する。
ボートにロープを繋いで水上を走るデュエルをウェイクボーディングデュエルと呼ぶ。
今宵クロウが走るのは空中。ウェイクフライングデュエル、アクセラレーション!
107 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:16:57.39 ID:xOyMy3NMo
「俺のターン、ドロー! ビンビン来てるぜ! やっぱデュエルはこうでなくっちゃ!」
アンカーが絡みついたのが腕や本体であれば、大きく振り回してクロウのドローを邪魔する手もあったろう。
だがデッキとはデュエリストの魂。デッキケースを揺さぶることはできない。
クロウはそこまで計算してフォトンアンカーを投げていたのだ。
(だが時械神カミオンは破壊できない。ミラフォも奈落もゴドバも通用しない敵。俺のカードだけじゃ勝てねえ)
「俺はカードを一枚伏せ、モンスターをセット。ターンエンドだ」
「私のターン、ドロー。時械神カミオンは、スタンバイフェイズに私のデッキに戻ります」
「おお! やっぱそんだけ強い効果ならデメリットくらいあるべきだよな! 分かってるじゃねえか」
「私は手札から時械巫女を特殊召喚。このモンスターは私の場にモンスターが存在しない時、特殊召喚できる。
さらに時械巫女をリリースして効果発動。デッキから時械神を一体手札に加えます。私はザフィオンを選択。そのままザフィオンを召喚」
現われるのは水の時械神。クリスタルの身体。女神を映す水鏡。流線型の手と翼。
瞬く間にしゃぼん玉で宙を埋め、やがて一斉にしゃぼん玉が崩壊すると、出来た霧の中へ霞んでいく。
「へっ、またお出ましってわけか。だがもうチートカードに好き勝手にはさせねえ。ネオドミノシティのデュエル環境は俺が守る!
エフェクト・ヴェーラーの効果発動! その野太い声の女神の効果を無効にしてもらうぜ。見た目と声の詐欺、許せねえ!」
そう、クロウだけのカードでは時械神相手は半ば詰み。だが今のクロウのデッキには、盗んだばかりのカードと、カイトのカードが入っている。
セキュリティが認めた第一級のカードと、英霊の操るカード。その力があればクロウはまだ戦える。
「エフェクト・ヴェーラーの効果は1ターンのみ。次のあなたのターンでは耐性は復活します。望みの無い延命に意味はありません」
「これで終わりだなんて誰が言ったよ? 俺はセットされたBF−大旆のヴァーユをリリースし、ゴッドバードアタックを発動!
俺自身のセットカードと時械神ザフィオンを破壊するぜ! さらにチェーンして破壊対象のカードを発動! 八汰烏の骸! カードを一枚ドロー!」
108 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/20(木) 00:20:53.61 ID:xOyMy3NMo
時械神カミオン
効果モンスター(TF6オリジナル)
星10/地属性/天使族/攻 0/守 0
このカードはデッキから特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚する事ができる。
このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードの戦闘によって発生するお互いへの戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手のフィールドに存在するモンスターを1枚を選択してデッキに戻し、相手ライフに500ポイントダメージを与える。
自分のスタンバイフェイズ時、このカードはデッキに戻る。
時機神ザフィオン
効果モンスター(TF6オリジナル)
星10/水属性/天使族/攻 0/守 0
このカードはデッキから特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚する事ができる。
このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードの戦闘によって発生するお互いへの戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手のフィールドに存在する魔法・罠カードを全て持ち主のデッキに戻す。
自分のスタンバイフェイズ時、このカードはデッキに戻る。
時械巫女
効果モンスター(TF6オリジナル)
星1/光属性/天使族/攻 0/守 0
このカードは通常召喚できない。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に特殊召喚する事ができる。
このカードをリリースする事で、自分のデッキから「時械神」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
デュエル展開を考える方がファイト展開考えるより疲れるという。遊戯王のルール難しいよぅ。
そして安価とは……。
109 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/20(木) 00:36:53.24 ID:VtMudkTIO
シグナー竜全て持つ終盤の遊星でもギリギリで勝てたZONEにクロウじゃ無謀だな。
110 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/20(木) 02:30:43.86 ID:Mee7zdQAO
LOAS(リミットオーバーアクセルシンクロ)を用いてやっとだしな
カミオンの原作効果はメタイオンの完全上位互換で酷かった
ところで今更だがカイトのデュエルアンカー赤じゃね?バリアンの力のはずだが……
111 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/20(木) 22:05:57.40 ID:9Y82SPwJ0
アニメ効果じゃないから勝機はあるな
112 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:09:54.44 ID:oRG+o2RHo
>>110
ふぇぇ、確かに赤かったよう。フォトンアンカーじゃなくバリアンカーが正しかったかー。あーうー。
113 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:10:25.80 ID:oRG+o2RHo
「どうだ、これが俺の結束の力だ! 一枚一枚の力では勝てなくても、絆の力が神をも倒す!」
「時械神を一体倒した程度で何を勘違いしているのですか? 時械神は互いに繋がり合う10のモンスターからなるテーマ。
たとえあなたがエフェクト・ヴェーラーとゴッドバードアタックのコンボをあと二回決めたとしても、時械神は半分も倒せません」
「だがお前の場は空。次のターンで4000ポイント分のダイレクトアタックを決めればいいだけの話だぜ!」
「ならば私はカードを二枚セットし、ターンエンド」
超大なカードが宙に叩き付けられる。まるでそこに地面があるかのような音を立て、カードはZ-ONEを中心とした慣性系に入った。
常にZ-ONEと一定の距離・位置を保ったまま伏せカードが空を飛ぶ。その位置、Z-ONEの斜め下に追随するクロウから裏面が見えそうで見えない。
「二枚セットってことは最低一枚は前のターンから持ってたってことだよな?
あえてカードを伏せなかったのは、まさかゴッドバードアタックを警戒してたって言うのか!? いや、あの時俺の見せたカードはライオウのみ……」
「何をよそ見をしているのです? さあ、あなたのターンです」
伏せカードを盗み見ようとするクロウに気付いたのか、Z-ONEが急降下。
セットに気を取られていたクロウは対応が遅れ、フォトンアンカーによって振り回される。
揺れるブラックバードにしがみ付いて風圧をやり過ごす頃には既に一分以上が経過している。
「プレイヤーに許された思考時間は三分。三分以上の遅延行為はターン放棄と見做されます」
「んなことは分かってる! 俺のターン!」
114 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:11:40.91 ID:oRG+o2RHo
「さあ、いくぜ。ドロー! 俺は手札からBF−蒼炎のシュラを召喚! さらに場にブラック・フェザーがいれば、こいつが特殊召喚できる!
来い、BF−疾風のゲイル! そしてレベル3のゲイルでレベル4のシュラをチューニング!
黒き旋風よ、天空へ駆け上がる翼となれ! シンクロ召喚! BF−アーマード・ウィング!」
「攻撃力2500。それではワンショットキルはできませんよ?」
「さらに俺は、Sp-デッド・シンクロンを発動。こいつはスピードカウンターが5つ以上で使えるスピードスペル。
墓地のチューナーと非チューナーを一体ずつ除外し、そのレベルに等しいシンクロモンスターをシンクロ召喚扱いで特殊召喚する!」
「私はチェーンしてリビングデッドの呼び声を発動。墓地に眠る時械神ザフィオンを特殊召喚!」
「俺は墓地のゲイルとシュラを除外。我が身に眠る心の闇よ! 黒き暴風となりて全ての敵を打ち払え! 現れろ! ダーク・ダイブ・ボンバー!」
黒翼の武装兵、黒き爆撃戦闘機。空での決闘に適した二体のモンスターがクロウのフィールドに現れる。
それぞれクロウの左右に付き、その身体で風避けの盾となってクロウの飛翔を手助けする。
「この瞬間、手札からトラップ発動。このカードはフィールドに時械神が存在する時発動でき、相手がシンクロ召喚を行った時に手札から発動できる」
「手札からトラップだとぉ!?」
「女帝の冠の効果、フィールドのシンクロモンスター1体に付きカードを2枚ドローする。私はカードを4枚ドロー」
空中から見えないフィールドへと叩き付けられるカードが風を巻き起こすが、二体のモンスターに守られたクロウの疾走は乱れない。
二体がクロウの後ろに回って力強くその羽根で空を叩けば、生まれた疾風がブラック・バードの翼を支えて持ち上げる。
空へと駆け上がり、Z-ONEと同じ高度、同じ目線の高さを獲得する。ついにクロウは自身の力でフライングデュエルの世界へ入門する。
今ここに雛鳥は巣立ち、漆黒の翼はついに空を知ったのだ。
フォトンアンカーが一度弛み、そしてちょうどいい長さに自動調整される。
「俺は勝つ! 勝って自由を手に入れる!」
115 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:13:09.71 ID:oRG+o2RHo
ダイダロスブリッジは希望の象徴だった。
誰の称賛も期待せず、誰の理解も必要とせず。ただその信念のために戦った男。その周りにはやがて仲間が集まった。
彼が誰よりもサテライトの心を深く理解していたからだ。そう、まるでクロウの友ピアスンのように。
だから伝説の男は最後の時、間違いなく空を飛んだ。飛んでいなくてはならない。
クロウは空に憧れた。空は自由であるはずだから、自由を求めれば空とピアスンに近づけると思った。
それは禁じられた砲撃。禁じられているからこそ、クロウはその一撃に希望を見出す。
「俺はダーク・ダイブ・ボンバーの効果発動! アーマード・ウィングをリリースし、効果発動!」
「ヴァーユの効果で孤高のシルバー・ウィンドを特殊召喚し、全モンスターをリリースすれば総バーン量は4400。
まさか本当にワンショットを決めに来るとは……。私はダーク・ダイブ・ボンバーの効果にチェーン、ハネワタを使います。
このカードを手札から墓地へ送ることで、このターン私は効果ダメージを受けない」
だが渾身の一撃すらZ-ONEには届かない。手札を投げ打ってのワンショットが、たった一枚の手札に止められてしまう。
ダーク・ダイブ・ボンバーによって射出されたアーマード・ウィングは、ハネワタにぶつかって跳ね返されてしまった。
「ちっ、エンドフェイズ、デッド・シンクロンの効果で特殊召喚したダーク・ダイブ・ボンバーは除外される。ターンエンドだ」
116 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:15:48.94 ID:oRG+o2RHo
ここまでの攻防、一見すると互角に見えるが、アドバンテージの差がはっきりと表れてきている。
Z-ONEの手札は5枚。さらにセットカードが1枚と、時械神ザフィオン。対するクロウの手札は1枚、セットカード1枚。それも腐ったミラーフォース。
スピードカウンターは次のZ-ONEのターンで互いに6。Z-ONEのライフは4000、クロウのライフは3500。
「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズ、時械神はデッキに戻ります。メインフェイズへ突入」
「まずい、あれだけの手札、スピード・ワールド2のバーン効果だけで大ダメージもありうる……!」
「私は永続罠、虚無械アインを発動。1ターンに1度、手札の時械神を捨ててドローできる。
私は時械神メタイオンを捨て、カードを1枚ドロー。そして手札から時械神サンダイオンを召喚」
十字の形をした鏡に映る豪胆な男。鋭角的な鎧は金色に輝く。一際大きな時械神は、クロウの視界に収まりきらない。
「攻撃力4000!?」
「サンダイオンでダイレクトアタック。このモンスターは相手に戦闘ダメージを与えられず、戦闘後相手に2000のバーンを行う」
視界が真っ白に染まる。強大過ぎる衝撃は人の精神を壊してしまう。だから時として脳はダメージをシャットダウンしてしまう。
ハンドルを握る手の感覚が遠のき、身体から際限なく熱が零れていくのが熱くて冷たい。
平衡感覚が飛んでしまい、空と地面の判別すらつかないままD-ホイールごと錐揉み回転。
アクセルを踏んでいる実感すら遠く、そもそも空でタイヤを回す意味など無く。
「ぐ、うぅッ! この程度……はぁ……はぁ……なんてことッ……ねぇ!」
痛みを感じていないのが逆に危ない。感じれば意識が飛ぶと、理性ではなく身体が判断したということ。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド」
117 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:18:12.60 ID:oRG+o2RHo
「俺のターン……ぐっ!?」
手が震えてカードが掴めない。手どころか全身が震えている。
「時械神の力に身体が耐えきれなかったようですね。これ以上は無理です」
「無理なんかじゃねぇ! カードが引ける限りデュエルは続く!」
「引けるのですか?」
――「この戦いに勝つ方法は二つ。相手サーヴァントを倒すか、相手マスターを倒すか」
――「アサシンのお前はマスター狙いでいくんだろう?」
――「ああ。俺は相手マスターの魂ごと令呪を奪う。構わんな?」
(アサシンはデュエルに勝ったら相手の魂を奪うと言っていた。少なくとも奪った令呪を使い切るまで解放はしない、と。
なら他のサーヴァントがマスターに勝った時も同じことになる可能性が高い……)
「ならッ! ここで俺が負けたら、子供たちはどうなるってんだよ!」
1.令呪でアサシンを呼ぶ!
2.手が使えなければ口を使うまで!
3.こうなったらD-ホイールで体当たりするしかねぇ!
118 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/21(金) 00:19:11.05 ID:AIASVQlwo
2
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/21(金) 00:19:17.31 ID:OjnIG7L0o
2
120 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/21(金) 00:19:36.22 ID:wn7bvit20
1
121 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:19:40.93 ID:oRG+o2RHo
安価出し忘れたごめん。
>>123
1.令呪でアサシンを呼ぶ!
2.手が使えなければ口を使うまで!
3.こうなったらD-ホイールで体当たりするしかねぇ!
122 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/21(金) 00:20:45.38 ID:oRG+o2RHo
瞬間的にレスがついてて焦った。再安価出しちゃったしそっちの方で。
123 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/21(金) 00:47:14.09 ID:wn7bvit20
時間空いてるしいいのかね? 1で駄目なら安価下
124 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/21(金) 01:01:17.53 ID:A3do6cmIO
DDB出した瞬間ゾーンにクロウ殺して欲しいと願った。ガチで
125 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/21(金) 02:16:45.89 ID:tWKlHF5AO
>>112
あくまで推測だけどね
オービタルの動力源であるバリアライトが赤い事、「時の訪れ、現れし3つの太陽」の回に出現した赤い太陽がバリアン界のものだということ、フェイカーがバリアンに力を借りていたこと
まぁこれだけあれはほぼ確定だろうけど
ちなみに目を覆うタイプのDゲイザーもバリアンのものね
バリアンに命を救われたトロン一家とカイトのDゲイザーが同じだったことから
126 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/21(金) 22:33:06.56 ID:oRG+o2RHo
パラディオスは自分で破壊してもドローできると思ってたけど勘違いだと気付く→展開修正→ビッグ・アイはカイトが回収してたと思ってたけど勘違いだと気付く→絶望
>>125
Dゲイザーが無いとソリッドヴィジョン見えないみたいだし、ZEXAL仕様のデュエルディスクって5D’s世代のデュエルディスクと互換性あるのか不安。
まあフィールを高めればどちらにせよ実体化するよね多分。
127 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 01:56:50.74 ID:BGre5dyvo
「俺は絶対に負けない! 俺のためにも、アサシンのためにも!」
令呪。それは絶対の命令権。あらゆる常識を飛び越えて命令を遂行させる切り札。
マスターの力量にもよるが、その命令はサーヴァントの能力を超えることができる。
「次のドローで強欲な壺を引け」と命じれば、たとえデッキに入っていなくてもドローしうるのが令呪の力。
「来てくれ! アサシン!」
ゆえに、たとえ超速飛行を経た先の場所だろうが、クロウの言葉一つでカイトは空間を跳躍する。
「チッ。あと一手で勝てたというのに」
「来てくれたか!」
「何を言っている。令呪まで使って呼んだのはお前だろう。早く状況を説明しろ」
変形したオービタル7を背負い、機械の翼でクロウに並走する。
ブラック・バードに寄り添っての精密飛行。迫りくる風の中でも小声での会話が可能なほどオービタルはブラック・バードに接近している。
作戦会議は手短に。カイトは一度クロウから離れ、その後で右手にエネルギーを集中する。
「このデュエル、勝つぞ。フォトン・ハンド! ドロー!」
いかにオービタルといえど、飛行中のD-ホイールに直接手を付けてのドローはリスクが高い。
だがフォトン・ハンドなら正確にカードをだけを掴み、かつフィールを高めることができる。
128 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 01:57:54.83 ID:BGre5dyvo
「どうやらこのデュエル、まだ神は俺たちを見放していないらしい。オービタル、本気でいくぞ!」
「カシコマリ!」
カイトはオービタル7を体から離し、ブラック・バードに飛び降りる。
そしてクロウの手からフォトンアンカーを毟り取り、Z-ONEとの連結を解除する。
「まったく、使いすぎるなと言っておいただろう。光子の力は人を傷つける」
オービタル7にフォトンアンカーを絡めてフォトンアンカーを収縮させる。
アンカーの力とオービタル自身の推力、それに重力を加え、オービタルが衝撃波を発するほどのスピードで突っ込んでくる。
落ちていくブラック・バードとオービタルが衝突するのは地面間際。
「俺はオービタル7とブラック・バードをオーバーレイ! エクシーズチェンジ!」
二機は地面にぶつかることなく、ただエネルギーの爆発によって砂煙を巻き上げる。
煙の中から飛び出した超速飛行物体こそが、二機の合体形態。
ブラック・バードのいささか脆い羽根をオービタルが補強し、より揚力を得やすいフォルムに変えた。
モーメントを接続されたオービタルの推進器は出力を著しく増し、一挙に空へと駆け上がる。
オービタル7によるオートパイロットに入ったことで、クロウはカードプレイに専念できる。
「俺はSp-エンジェルバトンを発動! ここからが正念場だ。マスター、全力で引け」
飛行に最適化されたオービタル・バードにカイトが乗るスペースは無い。
羽根にしがみ付きながらクロウの手を取ってドローを助ける。
「ああ! ここまでしてもらってサレンダーなんてできるわけねぇぜ! うぉぉぉおお! ドロぉぉぉ!」
129 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 01:59:46.95 ID:BGre5dyvo
瞬時に頭の中を過る勝利への道筋。光射す道。
(このカード、遊星なら……!)
「エンジェル・バトンの効果、2枚ドローして一枚捨てる。俺はD.D.クロウを捨てる! さらに手札から増援を発動! 俺はジャンク・シンクロンを手札に加える!」
「自分フィールド上にモンスターが存在しない時、このモンスターは特殊召喚できる。マスターの手札からフォトン・スラッシャーを特殊召喚!」
「俺はジャンク・シンクロンを召喚! 効果発動!」
「墓地からレベル1モンスター、D.D.クロウを特殊召喚。見せてみろ、シンクロの力を」
一つの盤面で行われる二人の共闘。食らいついてくる風を気にも止めずにカイトがプレイできるのは、光子の賜物。
身体の大部分を光子化し、カードの中の精霊の力にフォトン・ハンドで触れることでカードを場に出す。
「俺はレベル1のD.D.クロウに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング! シンクロ召喚! アームズ・エイド!」
「ならば私は手札から二枚目の女帝の冠を発動。相手の場のシンクロモンスター1体に付きカードを2枚ドローする。私は2枚ドロー」
Z-ONEの大型カードが巻き起こす風さえも、オービタル・バードの加速力には追いつけない。
風の上をなぞるように飛べば、荒れ狂う風も加速の助けとなる。
130 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 02:04:26.41 ID:BGre5dyvo
「アームズ・エイドの効果発動! 装備対象は、時械神サンダイオン!」
「サンダイオンは戦闘ダメージを与えられませんが、戦闘破壊は可能。
自爆特攻によってアームズ・エイドの効果を使い、バーンダメージで私を倒そうということですか。
フォトン・スラッシャーと、墓地シンクロされるシルバー・ウィンドが破壊されれば、4800ポイントのダメージ……」
「そうだ! 時械神は確かに無敵に近いチートカード。だがその力を逆手に取れば……!」
「ならば私は手札からエフェクト・ヴェーラーを墓地に送り、アームズ・エイドの効果を無効とします」
Z-ONEのすぐ後ろにまでついたところでの手札誘発。その風さえも乗り越えて、二人と一機はZ-ONEを追い越す。
早く速くよりはやく。モーメントが生み出す無限のエネルギーは燃料を度外視した加速を可能にする。
「それさえも可能性の銀河の中、発見済みの星屑に過ぎん! 俺はアームズ・エイドとフォトン・スラッシャーでオーバーレイ・ネットワークを構築!
暗き無限を駆ける騎士よ、光の刃で闇を切れ! エクシーズ召喚! 輝光子パラディオス!」
「墓地のヴァーユでアーマード・ウィングをチューニング! 吹きすさべ嵐よ! 鋼鉄の意志と光の速さを得てその姿を昇華せよ!
シンクロ召喚! これがオレの、もうひとつの翼! 出ろっ! BF−孤高のシルバー・ウィンド!」
「そしてパラディオスのオーバーレイ・ユニットをすべて取り除き、効果発動! サンダイオンの攻撃力を0にし、その効果を無効にする!」
パラディオスの振るう剣から放たれた光が、サンダイオンの姿を半透明に変えていく。
光とはもっとも速いもの。光の世界から見れば、何もかもが止まって見える。その効果さえも、攻撃さえも、光子から見れば静止している。
「バトルだ! 俺はパラディオスで!」
「シルバー・ウィンドで!」
光を目指して果てしない飛行を続けるオービタル・バードが、上空からZ-ONEに対して急降下。
パラディオスとシルバー・ウィンドの刃が交錯し、同時に振り下ろされる!
「「攻撃!!!」」
131 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 02:05:06.47 ID:BGre5dyvo
パラディオスの放つ光が陰り、サンダイオンが闇に包まれていくのと、攻撃が命中するのは同時。
「速攻魔法。Sp−月の書を発動。サンダイオンを裏守備表示に変更」
月は光を受けるもの。だが同時に光から逃れるものである。
サンダイオンを包んだ闇は一瞬ながら、それによって光子の拘束から解き放たれたサンダイオンは本来の耐性を取り戻した。
二刀を受けて無傷。サンダイオンがクロウとカイトの行方に立ちはだかる。
「な、なんだと……」
「サンダイオンが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、効果発動。相手に2000ポイントのダメージを与える」
二回目のサンダイオンの効果発動。一度受けただけで手が震え出すほどの攻撃。
発動宣言だけで体の芯が怖気付き、視界を染める光と共に恐怖が心を染めていく。
「う、うあああ、あ、ァアアア――!」
完全な白と、完全な絶望と。
クロウのライフは0となった。
132 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 02:08:13.96 ID:BGre5dyvo
時械神サンダイオン
効果モンスター(TF6オリジナル)
星10/光属性/天使族/攻4000/守 0
このカードはデッキから特殊召喚する事はできない。
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードはリリースなしで召喚する事ができる。
このカードは戦闘及びカードの効果では破壊されない。
フィールド上に表側攻撃表示で存在する
このカードの戦闘によって発生するお互いへの戦闘ダメージは0になる。
このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、
相手ライフに2000ポイントダメージを与える。
自分のスタンバイフェイズ時、このカードはデッキに戻る。
女皇の冠
通常罠(TF6オリジナル)
自分フィールド上に「時械神」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合に発動する事ができる。
相手フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体につき、自分のデッキからカードを2枚ドローする。
相手フィールド上にシンクロモンスターが特殊召喚された時、このカードは手札から発動する事ができる。
虚無械アイン
永続罠 (TF6オリジナル)
1ターンに1度、手札から「時械神」と名のついたモンスター1体を捨てることで、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
Sp−デッド・シンクロン(アニメ版)
通常魔法
自分用スピードカウンターが5つ以上ある場合に発動する事ができる。
自分の墓地から、シンクロモンスターカードによって決められたシンクロ素材モンスターをゲームから除外し、
そのシンクロモンスター1体をシンクロ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。
Sp−エンジェル・バトン
通常魔法(WCS2010)
自分のスピードカウンターを4つ取り除いて発動する。
自分のデッキからカードを2枚ドローし、
その後自分の手札を1枚墓地へ送る。
Sp−月の書(WCS2011)
速攻魔法
自分のスピードカウンターを2つ取り除いて発動する。表側表示でフィールド上に存在するモンスター1体を裏側守備表示にする。
スピードスペルってWCS版だと効果変わってたりするんですね。エンジェル・バトンが重い。
デッド・シンクロンとか変更を知らずにアニメ版でやってしまった。
やっぱりファイティングデュエルより普通のデュエルの方が書くの難しい。スタンディングデュエルとか多分死ねる。
133 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 23:34:47.53 ID:BGre5dyvo
決闘に敗北したマスターの末路は一つ。
死、令呪の剥ぎ取り、魂の奪取、方法は多々あれど聖杯戦争からの脱落に他ならない。
「さあ、渡してもらいましょうか。あなたの令呪を」
Z-ONEの巨大な腕な左右からオービタル・バードに迫る。
初めに風を起こし、次いで影を落とし、二重に警告を発しているにも関わらず避けきれない。
それはハイエナの狩りに良く似ている。相手に見つかってからが勝負。
集団でじわじわと包囲網を縮めていき、確実に相手を仕留める。そう、自分の存在を気づかせた時点で既に勝負を決しているのだ。
時械神デッキも同じ。速攻1killは無い。けれど着実に相手を追い詰めていく。
デュエル終了時、手札7枚、虚無械アイン、時械神サンダイオン。デュエル開始時を上回るアドバンテージ。
これがZ-ONEの力。
「逃げろオービタル!」
「カシコマリ!」
右腕が上から下へと薙ぎ払い、避けるまでも無く風圧で流されたオービタル・バードに左手が迫る。
急上昇で難を流れたと思った先には、手を広げた右手が待機している。
「俺はまだ倒れるわけにはいかない。ハルトォオオオオオ!」
オービタル・バードを蹴って跳躍。作用で無理やりオービタル・バードの軌道を変える。
カイトは空中で二本のデュエルアンカーを繰り出し、Z-ONEの腕を拘束する。
青き光は科学の力。嫋やかにして俊敏。フォトンアンカー。
赤き光は異界の力。艶やかにして剛健。バリアンアンカー。
「デュエルに敗北したのはクロウ・ホーガンであってアサシンではない、そういうことですか……」
Z-ONEの右腕が落下していくカイトに向かう。左腕に巻き付いたフォトンアンカーが収縮、張力でカイトが移動、回避。
暗い空を貫く二本の光線が踊る。機械腕と繋がれた糸が振動を伝え、Z-ONEの動きを素早く察知。糸が伸縮しカイトが素早く避ける。
134 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 23:36:56.91 ID:BGre5dyvo
「いいのか? お前のマスターを放っておいて。既に半殺しだが、今すぐ手を施せば助かるはずだ」
「それは先ほどのデュエルのアンティを受け取ってからにしましょう」
空中の落ち葉をカード投げで切る、という修行がある。
迫れば空気の振動が落ち葉に伝わり、ふわりと回ってカードをかわしてしまう。簡単に見えて奥深い。
この修行に挑んだ決闘者は不射の射、消札法、空間切断、多重次元屈折攻撃などの玄人スキルにたどり着いた。
柔軟に伸び縮みする一対のアンカーを駆使し、カイトは縦横無尽に空を舞う。
捕らえようとするZ-ONEの腕が次第にグルグル巻きになり、動きが鈍くなっていく。
Z-ONEの巨大な腕からすればカイトなど一枚の枯れ葉に等しく。だからこそ、その手は届かない。
「非道は承知している。敗者が対価を払うは宇宙の真理。だが今はまだ渡せない」
「そろそろ限界……仕方ありませんね。いずれマッチ二戦目、ということにしておきましょうか」
Z-ONEの周囲の空間が発光、風が弾けて無差別に不可視のハンマーシュートを叩き付ける。
真空が剣の舞を始め、濃すぎる空気が光を歪め、Z-ONEの姿が揺らぐ。
その中心で、Z-ONEの心中だけが凪いでいる。速さの極致、クリアマインド。
白く淡くて美しく、軽やかで細やかで鮮やかで。刹那を走る則天去私。
瞬間、Z-ONEは消失した。
「今、一瞬だけカードが見えたが……あれが奴の宝札か?」
135 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/22(土) 23:38:35.78 ID:BGre5dyvo
シティの無法地帯、ダイモンエリア。
酒瓶が転がり、新聞紙が飛んでいく。絵に描いたような退廃。
酒臭い男たちが女を巡ってファイティングデュエルを始め、赤ワインと血が混じって地面を汚す。
地面が濡れれば、シッティングデュエルの輩があわててカードを回収し始めて、遅れてレアカードが汚れれば第二のファイトが始まる。
ここはそんなデュエル地獄。酒と煙草と女とデュエル。人が生きている間に味わえる愉悦は、およそ全てここにある。
「監視対象者はダイモンエリアへ移動」
「了解。先行して張っておく」
「ターゲットを確認、監視を続行する」
セキュリティの監視を引き連れて、遊星はダイモンエリアへやって来た。
サテライトとは違う絶望。強制労働も再教育プログラムも無く、自由をアルコールで喰い潰していく人々。
遊星は、目的を持ってこの地獄に来た。氷室の言葉が道標。
>>138
1.「ダウンタウンのブートレグという店に雑賀という男がいる」
2.「金融業者のガロメという男がクラッシュタウンでの求人を担当している」
3.「アンチノミーという男が自作D-ホイールを扱っている」
4.「カーリーという女が刑務所での話を買ってくれるはずだ」
136 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟県)
[sage]:2012/09/22(土) 23:50:18.15 ID:G8FTCZ8Co
3
137 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/23(日) 00:01:54.10 ID:OypvSGMIO
3
138 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/23(日) 00:02:17.24 ID:LQ4qbnADo
3
139 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/23(日) 23:41:50.73 ID:Wc/WsQxuo
「アンチノミーという男が自作D-ホイールを扱っている。刑務所に入る前に金を渡しておいた。
俺の名前を出して合言葉を言えば協力してくれるはずだ。忘れるなよ、合言葉は――」
デッキもD-ホイールも失った遊星に残ったものは、この言葉のみ。
裏寂れた路地裏に入り、さらに角を曲がって狭い道へ。
入り組んだ道を進み、人気が消えていくにつれて、追跡者の足音が露わになる。
「やはり、つけられているか」
一度立ち止まってから、堰を切ったように走り出す。角を曲がると同時に跳躍。
壁を蹴って二段ジャンプ、壁沿いのパイプを掴んで空中に身を置く。
星竜王が実体化して走ることで足音を残し、遊星が上へ逃れたことを隠す。
追っ手が遊星に気付かず行ってしまってから、足音の反響音が完全に消えるまで息を押し殺す。
遊星が慎重に地面に降り、やがて霊体化した星竜王が戻ってきた。
「こんな姑息な真似をしなくとも、正々堂々と蹴散らしてしまえばよかろうに」
「すまないセイバー、だが再逮捕の口実を与えるわけにはいかない」
140 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/23(日) 23:42:19.65 ID:Wc/WsQxuo
「ここにアンチノミーが……」
外側からは煉瓦造りに見えるが、扉を開けてみれば中には分厚い金属扉。
扉に内臓されているらしきスピーカーから、声が聞こえてくる。
「不動遊星。早かったな」
「何故俺のことを知っている。氷室はまだ出所してないはずだが」
「そうか、氷室仁がいたな」
「リミッター解放、レベル5。レギュレーターオープン。スラスターウォー……」
「いや、合言葉はいい。入れ、遊星」
ガスの抜け出るような音、開いたのは扉ではなく、その横の壁。壁がスライドし、階段が現れた。
緩やかな階段が長く続く。配線が剥き出しの壁、排熱が直に通路に流れ出ていくらか蒸し暑い。
透明なコードの中を光が流れ、壁の内と外を行ったり来たりしながら迷路のように壁面を埋め尽くす。
機能性を無視して完成を優先したらしき施設。
廊下を歩いて出た先には、巨大な空間が広がっていた。
作業灯があちこちに取り付けられ、光のグラデーションが幻想的だ。
「不動遊星。不動博士の息子で、トップス生まれのサテライト育ち。現在はD-ホイールとデッキを失っている」
「何故そこまで知っている。アンチノミー、お前は何者なんだ」
「サーヴァントはもう呼び出したのか? まだなら儀式を手伝ってやろう」
「質問に答えろ、アンチノミー」
奥からアンチノミーが姿を現す。ヘルメットを外し、青い髪と瞳を晒す。
「私はお前を導く者だ」
アンチノミーはそれだけ言い残して背を向ける。しばらく歩いて振り返り、遊星についてくるよう促した。
141 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/23(日) 23:44:18.03 ID:Wc/WsQxuo
作りかけのD-ホイールやデュエルディスク、大きな石版が転がっている。
似ているようでわずかに違う光景が続き、歩く者の距離感を失わせる。
「遊星。お前のD-ホイールは中央保管庫、デッキは第一保管庫にあったが、先日第一保管庫が賊に襲われた。デッキは賊に手に渡っている」
「何!?」
「まずはD-ホイールを取り戻せ。その間に私が保管庫を襲った犯人を調べておく」
「何故俺のことをそこまで……」
アンチノミーは答えない。自然と会話は途切れ、沈黙の中で二人は歩き続ける。
ようやくアンチノミーが足を止めたのは、奇妙な形のD-ホイールの前。
巨大な一輪から伸びる流線型。青を基調とした冷たいカラーリング。乗り手の負担や技量を考えずただ速さを追求した機体。
「デルタイーグルだ。自分のD-ホイールを取り戻すまで、君にはこれに乗ってもらう」
「美しい……」
「中央保管庫のセキュリティシステムは突破済みだ。だが今出れば追っ手に気付かれる。今日は休んでいくといい」
手に持っていたヘルメットをデルタイーグルのコックピットに置いて。
アンチノミーは奥に見える通路を指し示す。その先に休める場所があるらしい。
142 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/23(日) 23:47:04.08 ID:Wc/WsQxuo
「待て」
星竜王が実体化し、デュエルブレードを構える。アンチノミーを睨みつけ、構えを少しだけ変える。
人工照明がブレードで跳ね返り、アンチノミーの目を眩ませた。歴戦のならではの技。
同時に星竜王の剣がアンチノミーの首の皮だけを斬り、血を滲ませる。
「マスターはともかく、俺はお前を信用していない」
「流石は遊星、セイバーを引き当てていたか」
「貴様はずっとそうだ。肝心な質問には一切答えない。信用できるはずがない」
「悪いが、答えるわけにはいかない。信用できないなら出て行ければいい。外まで何の手出しもしないと約束する」
アンチノミーは直に剣の冷たさを感じながら、まったく動揺した様子を見せない。
遊星が星竜王を止めるまで、デュエルブレードとアンチノミーは微動だにしなかった。
「デュエリストなら、言葉よりも優れた相互理解の仕方があるだろう?」
「いいだろう。どちらが相手になる?」
>>146
1.遊星:ファイティングデュエル
2.セイバー:ファイティングデュエル
3.遊星:デュエル
4.セイバー:ディアハ
143 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/23(日) 23:58:10.79 ID:UPQozODwo
2
144 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/09/24(月) 00:15:41.08 ID:1hlt3+Ue0
3
145 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/24(月) 00:52:14.31 ID:5G6ohmGDO
1
146 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/24(月) 00:54:00.56 ID:mHUVdU2To
3
147 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(大阪府)
[sage]:2012/09/24(月) 02:14:27.55 ID:fec/O0oco
ここに来てやっとデュエルが……
148 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/24(月) 12:49:43.11 ID:vpfLbqAAO
やっとちゃんとしたデュエルか……
ってか合言葉ライブラかよwwwwwwww
149 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/25(火) 01:24:36.88 ID:SixRbujFo
ふぇぇ、デュエル書けないよぅ。とりあえず書いたところちょっとだけど投稿しておこう。毎日更新は維持したい。
150 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/25(火) 01:25:03.41 ID:SixRbujFo
「マスター。使え」
デュエルブレードが床に突き立てられる。荒々しく直立する剣は伝説を思わせる。
岩から引き抜いた剣は王の証。ならば超未来金属を割って己が王座とする規格外の宝剣は、使い手に何をもたらすのだろう。
「ソルナタイト合金のタイルが貫かれるとは……。すまないが、できれば今後は施設を壊さないでもらいたい」
「このデュエルの結果次第だ。信用できないと判断すれば、俺は容赦しない」
遊星が剣に手をかけるが、抜けない。両手を使い、両足を突っ張って、しかし抜けない。
星竜王は遊星に手を貸そうともせずその様子をただ眺めている。我が子を千尋の谷へ突き落す獅子のような眼で、見ている。
「ぐっ……!」
一度手を離し、荒く深呼吸。遊星は再度デュエルブレードに挑む。
近代の剣に比べれば荒削りな作り。だが武器として必要な部分は良くできている。柄が手に吸い付く。少し膨らんだ柄は持ち手に配慮した形。
形式にとらわれた剣とは違う。斬るためではなく勝つための武器。分類こそ宝剣だが、その実は純粋な戦闘用仕様。
「デュエリストにとって、剣とは何だ?」
「決闘者の剣……?」
デュエルブレードの刃面が照明の光を分解して美しいスペクトルを作り出す。
まるで生きている様な艶めかしさ、瑞々しさ、猛々しさ。優れた芸術作品には魂が宿ると信じられていたのも頷ける。
「聞いたことがある。カードが剣ならば、デュエルディスクは盾」
「何だそれは」
「カードが剣ならば、デュエルディスクは盾。ならば、右手のカードにプライドを。左手のディスクに魂を宿せ。デュエルキングの言葉だ」
「カードにプライド、ディスクに魂、か」
遊星、三度目の挑戦。剣の前で眼を閉じて、祈る様に手を組んで柄を握る。
「今の俺にデッキは無い。今の俺にD-ホイールは無い。だが俺にはまだ残っている!」
おとぎ話のようにするりと抜け出たりはしない。重量はどこまでも現実的で、殺人的。
筋肉が軋み、噛みしめた歯が痛い。ゆっくりと、着実に。剣は動き出して。
随分と深く突き刺さっていたことを知りながら、剣はやがて引き抜かれた。
151 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/25(火) 01:25:49.57 ID:SixRbujFo
「さあアンチノミー。デュエルだ」
「随分と重そうだが、大丈夫か?」
「分かっているなら早く始めてくれ」
「「デュエル!!!」」
柄の底にある穴にメインデッキを差し込めば、刃が応えるように光輝く。今は失われた決闘工芸。
剣を構えてカードを引き抜けば、自然とこのデュエルブレードを片手持ちにする必要が出てくる。今は失われた超重量級の決闘盤。
「安心しろ。私の戦いは速い。私の先攻、ドロー」
手をデッキに添え、デュエルディスク本体を動かしてのドロー。隻腕決闘者が生み出したワンハンドドローの発展形。
ドロー時は斬撃という先入観を逆手に取って肘打ちやデュエルディスク薙ぎに繋げる戦術は、まだあまり知られていない。
しかしその素早く攻撃的なドローフェイズは、アンチノミーがファイティングデュエルの経験者だと如実に語っていた。
「モンスターをセット。ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!」
対する遊星のドローはぎこちない。片手で剣を持つだけで精一杯。
カードを引けばふらつき、手札を確認しながら剣を杖代わりに寄り掛かる。
「俺は手札からコアキメイル・ドラゴを召喚。バトル。コアキメイル・ドラゴで守備モンスターを攻撃!」
「TG サイバー・マジシャンの守備力は0。このまま破壊される」
「TG? 知らないモンスターだな。俺はカードを2枚伏せ、維持コストとしてバイス・ドラゴンを公開。ターンエンドだ」
「サイバー・マジシャンが破壊され墓地へ送られたエンドフェイズ、デッキから他のTGをサーチできる。私はラッシュ・ライノを手札に」
カード捌きの差は歴然。デュエルブレードに振り回される遊星。軽妙にデッキを回転させ始めるアンチノミー。
152 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/25(火) 01:34:09.37 ID:ebYgTlaIO
アンチノミーと遊星が共にいられるよう願う。
153 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/26(水) 00:00:31.95 ID:a04T8aGjo
「私のターン。ドロー。手札から光の援軍を発動。デッキの上からカードを三枚墓地へ送り、ライトロードの下級モンスターを手札に加える」
通常のドローであれば右手で引き、カードを確認し、そして右手を動かしてカードを使うか手札に加えるかする。
しかしアンチノミーのドロー法は、左前の姿勢からデュエルディスク本体を引いてのドロー。引くと同時にカードを傾けて確認。
続いてデュエルディスクと右手を交叉させつつ相手に正対する姿勢を取る。左手を有効利用したドローフェイズは通常の2倍速。
引いたカードをそのままデュエルディスクに叩き付けて発動。ドロー後のラグは限りなく少なく、ほとんど無拍子に近い。
「ジェインは攻撃時2100のアタッカー、ライコウはリバース時に破壊効果だったか。加えるならこのあたりか?」
「私は調律、TG ギアゾンビ、ワン・フォー・ワンを墓地に送り、ライトロード・ハンター ライコウを手札に加える。モンスターをセットし、ターンエンド」
その高速ドローからまったく迷いなくカードを選び取った。まったく澱みの無いプレイ。スピードを研ぎ澄ませた決闘。
「さあ遊星、君のターンだ」
エンド宣言を受け、遊星は剣を持ち上げて構える。ただそれだけで重労働。汗が頬を伝い落ちる。
王者の剣を扱うにはパワーも、経験も、魂も足りない。
154 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/26(水) 00:01:07.86 ID:a04T8aGjo
「俺のターン、ドロー。くっ……」
デュエルブレードを握るのに左手を使う以上、手札を持つのは右手しかない。腕で持つデュエルディスクとは根本的に扱い方が異なる。
遊星を苦しめるのは重みだけではなく、この差も大きい。手札を持った手でドロー・プレイするというのはいくらかコツがいる。
まずカードを使う際は、手札から落とすようにしてデュエルブレードの窪みに入れる。そのためには刃面は地面と水平である必要があり、剣を持ち続けることを避けられない。
親指と小指を用いてのドロー、人差し指と中指を用いて手札からカードを抜きだす。慣れ合いプレイは時間がかかる。
「俺は手札からフレア・リゾネーターを召喚。さらに永続魔法、共鳴破。リゾネーターを使ってシンクロを行う度、相手カードを破壊できる!」
「たった1枚の伏せモンスターを恐れ過ぎだ。それはキングの戦い方ではない……」
「フレア・リゾネーターでコアキメイル・ドラゴをチューニング! 風の叫びが木霊する! 真紅の翼よ、大空を裂け! シンクロ召喚! エクスプロード・ウィング・ドラゴン!
フレア・リゾネーターの効果で攻撃力300アップ。さらに共鳴破の効果、セットモンスターを破壊する!」
「クリッターが破壊されたことにより、デッキからジャンク・シンクロンを手札に加える」
「ライコウじゃない!?」
「この程度、初歩的なトリックにすぎない。どうした遊星、プレイングに隙があるぞ」
「くっ、エクスプロード・ウィング・ドラゴンでダイレクトアタック!」
ソリッド・ヴィジョンがアンチノミーを襲う。熱風が渦を巻きながら歩く。内側に取り込んだ塵は燃え上がり、炎の刃が回る。
アンチノミー、これを受けてやはり不動。顔色一つ変えずにやり過ごす。2700ポイントのダメージ。
「この程度か?」
「ターンエンドだ」
155 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/26(水) 00:04:50.38 ID:a04T8aGjo
「私のターン、ドロー」
そこからのアンチノミーの動きは、何度も練習し尽された演武のように美しかった。
一つ一つの動きが連なり、無駄無く一点へ向かって収束する。人札一体の境地。
「ジャンク・シンクロンを召喚し、墓地のサイバー・マジシャンを蘇生。さらに手札からドッペル・ウォリアーを特殊召喚。
ドッペルウォリアーをジャンク・シンクロンでチューニング。TG ハイパー・ライブラリアン。手札からTG ギアゾンビを特殊召喚。
サイバー・マジシャンで手札のラッシュ・ライノをチューニング、二体目のライブラリアン。1ドロー。さらにギアゾンビでドッペルトークンをチューニング。
フォーミュラ・シンクロンを特殊召喚し、カードを3枚ドロー。グローアップ・バルブを捨ててワン・フォー・ワンを発動しアンノウン・シンクロンを特殊召喚。
アンノウン・シンクロンとドッペルトークンでフォーミュラ・シンクロン。3枚ドローし、TG ワーウルフを特殊召喚。ワーウルフとフォーミュラでシンクロ。
TG ワンダー・マジシャンを特殊召喚し2枚ドロー、セットカードを破壊。ワンダー・マジシャンとライブラリアンでシンクロ。TG ブレード・ガンナー。1ドロー」
アンチノミーの動きの一切が脳を素通りする。無拍子、全ての行動が連なったプレイは全体で一つであるかのように錯覚してしまう。
遊星が我に返った時には、発動タイミングを酷く逃した奈落の落とし穴がワンダー・マジシャンによって破壊されていた。
「遊星。これがシンクロを超えたシンクロ、アクセルシンクロ。スピードの先にあるもの!」
「スピードの先に、あるもの……!」
「私は死者蘇生を発動し、墓地からライブラリアンを特殊召喚。ライブラリアン2体をフォーミュラ・シンクロンでチューニング。
リミッター解放、レベルマックス! レギュレーターオープン・オールクリアー! 無限の力よ! 時空を突き破り、未知なる世界を開け!
GO! デルタアクセル! カモン! TG ハルバード・キャノン!」
今回もまったく反応できない。フェイズ移動と同じくらいに自然なものとしか認識できない。
心と透明にし、デュエルそのものと融和するあり方は、東洋決闘哲学の理想。
絶望も満足も無く、挑む相手は速度の壁。ゆえに対戦相手としての属性を失った本来の相手は動けない。
デッキと一体となった舞踏は見る者すべてを魅了し、優先権すら逃れられない。セットされた禁じられた聖杯はもはや使い時を失っている。
「バトルフェイズ、ハルバード・キャノンの攻撃! ブレード・ガンナーのダイレクトアタック!」
「あああああッ!」
156 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/26(水) 00:11:39.43 ID:a04T8aGjo
後ろに倒れていく遊星の身体を星竜王が支える。剣を握る遊星の手を上から覆い、切先をアンチノミーへ向ける。
「アクセルシンクロか……。俺はかつて同じ技を使う者と会ったことがある」
「なに?」
「そいつは俺を騙し利用しようとしていたが、信念のある良い決闘者だった。結論は保留だ、アンチノミー」
剣は消え、星竜王は遊星を背負って奥へと向かう。
遊星の身体の重量をまったく感じさせない歩みは、けれど何か思案するように途中で一度止まった。
「クリアマインドとは何なのだ? その力は何のためにある?」
答えを待つでも無く、星竜王は施設内の休憩室へと行ってしまった。
その後ろ姿をずっと見つめ続けていたアンチノミーは、星竜王の姿が消えてようやく息を吐き出す。
デュエルディスクを外し、身体をほぐして、深呼吸。
「トップクリアマインドのその先へ到達すれば、分かるのかもしれないな……」
157 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/26(水) 00:13:41.32 ID:a04T8aGjo
やっぱり普通のデュエルなんて書けなかった。ごめんなさい。
今後もこの感じでよく分からないインフレが続いていく予定です。さてぃすふぁくしょん。
158 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/26(水) 00:37:23.29 ID:0HbERFmIO
乙
アニメ遊戯王らしい。
アクセルシンクロモンスターはスタンディングだとOCG効果でDホイールだとアニメ効果?
159 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/27(木) 00:34:26.53 ID:NtRC10IDo
基本的にOCG化されてるものはOCG仕様で出す予定です。
160 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/27(木) 00:41:22.57 ID:NtRC10IDo
全方位から襲い掛かる空の機皇隊。スキエルとスキエル・アインが空を埋め尽くし、太陽すら見えない。
頭の中で光射す道を組み上げる。飛びかかってくるスキエル・アインの間に見えた細い道。
D-ホイールから広がる赤い翼が大きく羽ばたき、スキエルの群れへと突っ込む。
急ターンで前を塞ぐスキエル・アインを避ける。横から突っ込んできたスキエルに合わせて引き、相対速度を0に近づける。
逆回転で空転させていたホイールをスキエル・アインの側面に乗せて走ることで、スキエル自体を盾にして距離を稼ぐ。
D-ホイールの軌道上に集まってブロックしてくるスキエル・アインを見て急速方向転換。同時にモーメントエネルギーを主砲に充填。
ぐるりと回り光学遊星砲を地面に向かって撃つことで上空へ逃れる。
機皇の群れを抜け、太陽を背に空へと駆け上がる。D-ホイールが陽光を受けて輝き、その走った跡こそが光射す道となる。
リミッター解放レベルマックス、エネルギー充填率インフィニティキュービック。遊星砲、フルチャージ。
「光射す道となれ! シューティングスター・カノン!」
光の刃が太陽光と共に降り注ぎ、機皇帝を薙ぎ払う。強大過ぎる光は見る者の瞳を焼く。ヘルメット越しでも直視は危険。
だが眼を瞑っていても、その先の勝利は明確にイメージできる。
スキエルたちの爆発が連鎖し、煙の中で爆音が木霊する。飛び散った部品が黒い雨のよう。
高熱を帯びて飛ぶ鉄片が射程外にいたスキエルまでも貫き、もはや一機も逃れられない。
「勝った! 遊星が勝ったんだ……!」「不動遊星!」「英雄の再来だ!」「遊星!」
赤い翼で風を掴み、D-ホイールは颯爽と空を駆ける。
161 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/27(木) 00:41:48.50 ID:NtRC10IDo
「夢にまで遊星を見るとはな」
ベッドから起こした身体が随分と重い。靄がかかったような頭の中に、まだ遊星砲の光の残滓が残っている。
額に手を当てると、少し熱がある気がした。
「アトラス様!!! よかった……! 本当に良かったです……!」
「ええい、大声を出すな。頭が痛い」
「も、申し訳ありません」
広い部屋を落ち着いた照明が照らしている。ジャックの知らない部屋だ。
床は不自然なまでに綺麗に光り、調度品は小さな机と椅子が一組のみ。窓は見当たらない。部屋が広いだけ寂しさが際立つ。
小机の上の花瓶を見ると、生けられた花が萎れ始めていた。
「俺は、何日眠っていた……?」
「今日で六日目になります。本当に、もうお目覚めにならないのかと……」
「ここはどこだ」
「ゴドウィン長官がご用意された場所になります。マスコミを警戒して、人目につかない場所を特別に手配したそうです」
「分かった。下がれ」
俯いて唇を噛み、けれど何も口答えはしないまま、狭霧はその場で踵を返す。表情は誰にも見せない。
床をヒールがつついても、ノブを回してドアを開けても、音は小さい。建物の構造によるものだが、気力が削がれるようで狭霧は好きでない。
気を使わずとも、ドアを閉めるのに音はしない。小さく頭を下げ、上げた時には扉が閉じている。
162 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/27(木) 00:42:14.93 ID:NtRC10IDo
「ライダー。いるか」
「Z-ONEと呼んでいただきたい。私のことを知る者に、私の名を隠す意味はありませんから。
私の場合、敵にクラスを教えるよりは真名を使った方がリスクが少ないのです」
静謐な大部屋は、Z-ONEの持つ雰囲気に良く合っている。
ゆっくりと回転するZ-ONEは何かのオブジェのよう。部屋に溶け込んでいる。
「この線は何だ?」
ジャックの身体からZ-ONEへと伸びる半透明な線を手に取って聞く。
「それは私からあなたへと流れるエネルギーです。私が持つ自動回復の力を一部マスターに振り分けました」
「ふむ……」
「ご不満でしたか?」
「いや、そこではない。……そのマスターというのをやめろ。このネオドミノシティでは誰もが俺をキングと呼ぶ」
「ではキング、と」
「俺はもはやキングではない。だがキングとして振る舞う義務がある。真のキングとなる確信がある。
だからそれまで、お前は俺をジャック・アトラスと呼べ。」
「分かりました。ジャック」
手を握りしめ、開いて、再度握りしめて。気を失う前の感覚を思い起こす。
何か掴めそうだった。身体の中に光が灯った気がした。
「俺のデッキは……机の上か」
163 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/27(木) 00:44:29.78 ID:NtRC10IDo
手札シャッフルと一人回しを終え、デッキ調整を始めてから早一時間。ジャックは悩んでいた。
レッド・デーモンズ・ドラゴンはアサシンに取られたまま。デッキにフィニッシャーと欠いている。
レッド・デーモンズを出すためのカード、レッド・デーモンズを守るためのカード、レッド・デーモンズを強化するカード。
レッド・デーモンズがあって活きるカード、レッド・デーモンズを出す前に場を整えるカード、レッド・デーモンズの攻撃を通すためのカード。
ジャックのデッキの中心はレッド・デーモンズ・ドラゴンだ。それを欠いては回らない。
「遊星……」
代わりに机の上に出された一枚が、スターダスト・ドラゴン。
「スターダスト・ドラゴンを使うのであれば、それに合わせて構成を変える必要があります。私の予備カードで良ければ力になりましょう」
「いや、まだ主軸に据えるかどうか悩んでいる」
昔はよく、遊星やクロウ、鬼柳と共にデッキ構築談義をしたものだった。
――デュエルとは、モンスターだけでは勝てない。魔法だけでも、罠だけでも勝てない。すべてが一体となってこそデッキが完成する。
そう言った翌日には鬼柳が魔法オンリーの大逆転クイズデッキを作って来た。対抗してクロウがフルモンスターのデッキレシピを作り上げた。
遊星はバトルシティの過去の記録からフルトラップデッキが決勝大会に出た事実を見つけ出した。
デッキ構築に必要なのは調和だ。だが調和の形は一つではない。一枚のカードから繋がる世界はいくらでもある。
「だが俺に必要なのはキングのデッキ。常に上に立ち、常に相手の先の行くデュエル」
スターダスト・ドラゴンをエクストラデッキの一番上に置く。デッキから不要なカードを抜きだし、残ったカードを整理していく。
「Z-ONE、カードをよこせ」
164 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/27(木) 01:53:55.56 ID:pgIf4VEIO
そうなるとアクセルシンクロをライディングでする意味が薄れる事に……
165 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/27(木) 12:41:07.24 ID:Zh9AdGiAO
スキエルの件クッソワロタwwwwwwwwwwなんでスキエルしかいないんだよwwwwwwww
ところでフィール使ってるのに決闘竜は使わせないのか?
166 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/27(木) 20:20:44.13 ID:nMdC0E4IO
漫画版じゃなくてアニメ版だからだろ。
ジャックじゃスターダストは使いこなせないだろうな。
使役する龍が異なるのもそうだけど、サテライトを捨てることで絆を捨てたジャックにクリアマインドは到底不可能。
167 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/27(木) 21:02:59.54 ID:Zh9AdGiAO
>>166
ここでレッド・デーモンズの代わりにレッド・デーモン使う展開って燃えね?
168 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/28(金) 01:26:46.61 ID:2pHf0Z0no
>>164
アクセルシンクロはライディングでこそ活きるからたぶん問題無い。
>>165-167
いつから決闘竜が出ないと錯覚していた?
展開次第では出るかもしれない。
169 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/28(金) 01:27:22.07 ID:2pHf0Z0no
遊星の肩の傷はもう塞がっているが、激しいデュエルをするにはまだ不安が残る。
傷が治り切るまではアンチノミーの提供してくれた場所で身体を休めることになった。
「この機構は電熱効果を利用することで遊星粒子の伝導率を上げるためにあるのか?」
「いや、それは副次効果だ。オーバーフローを避けつつエネルギーの再利用を行うこと自体に意味がある」
共に過ごしていれば雑談が始まるのは当然。そしてD-ホイールに話が飛ぶのも当然。決闘者が二人いれば決闘がおきるというくらいに当然だ。
「そうか、副流フィールが粒子に干渉することで疑似的に十代-星幽子理論が成立するのか」
「呑み込みが早いな。そうだ。電磁シールドによる遮蔽がバッテリーリサイクルにも繋がり、モーメント半径を縮小できる」
二人は液晶モニターを前にアカデミックな対話に耽り、遊星が熱心にメモを取る。
基本的にはアンチノミーが解説に回っての講義形式を取っているが、時に遊星のふとした発言の検証から共同設計が始まることもある。
こうして遊星とアンチノミーは充実した日々を送っていた。
だが、その陰で暇を持て余した男がいた。
「38、39、40……!」
本日7セット目の40連続ドローを終え、息一つ乱さない。
セイバーである星竜王にとって剣は体の一部と同じ。素振りドロー程度で疲労を感じることはない。
「脾肉の嘆とはこのことよ。燃え滾るような決闘を望んだはずが、まだ一度も英霊と刃を交えていないとは」
英霊の身体は、運動せずともデュエルマッスルが衰えることは無い。剣士としての絶頂期の肉体を維持し続ける。
だが逆に言えば、それはこれ以上肉体を鍛えることができないことも意味する。
これ以上のパワーを求めるなら、精神面・構築面の強さを追い求めるしかない。
しかしデッキを失ったマスターとはフリーデュエルすらままならず。
アンチノミーは「アクセルシンクロの本質はライディングデュエルにある。遊星にあまり誤った先入観を与えたくない」と言ってデュエルを拒む。
欲求不満を抱えたまま、星竜王は施設を徘徊する。
170 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/28(金) 01:30:53.47 ID:2pHf0Z0no
「石版、そしてアクセルシンクロ。やはり似ている」
無造作に置かれた石版の縦横比は黄金長方形に近い。
絵柄もカード名もテキストも空白だが、そのデザインはデュエルモンスターズのものに他ならない。
「まあいい。どちらにせよ勝ち進めば分かることだ。さて今回はライダーか、アーチャーか、キャスターか」
空白の石版を撫でる。冷たい感覚が、ドローで暖まった体に心地いい。
想い馳せるは宿敵。聖杯戦争における星竜王の目的。
後転とび、石版に向かってデュエルブレードを振るう。紙一重で表面に届かない刃はただ空だけを斬る。
「しかし、まったくもって暇を持て余す……」
その後もしばらく、星竜王は石版を傷つけないように剣を振るい続けた。
斜めに一刀、身体を回転させて周囲を払い、正面に振り下ろして即座に飛び退く。元の位置に戻り、また別の形で剣を振り、また戻る。
特に型や剣舞をやっているわけではなく、ただ気の向くままに剣を振り回すだけ。
なのにそこに美しさが現われるあたり、カリスマの成せる技か。
171 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/28(金) 01:31:23.95 ID:2pHf0Z0no
「セイバー、何をしているんだ?」
「ただの素振りに過ぎん。石版は勿論、床にも傷は残してはいない」
会話に区切りがついたのか、遊星が一人でやってきた。
しばらく何も言わずに星竜王のデュエルブレードの使い方を見ていたことを、星竜王は知っている。
配下の者の視線を気にして、理想的王の在り方を追求した星竜王は、視線に敏感なのだ。
「マスター。そろそろ聞いておくとしよう。お前は聖杯に何を望む?」
「実は、特に願いはない。俺は聖杯のためではなく、ただ鷹栖と闘うデッキのためにお前を呼び出した。
相手が攻めてこないのであれば、他のマスターと闘うつもりは無い。やりたい事はあるが、聖杯に頼る必要はない」
「そうか。願いが無いというのは好都合だ」
「どういう意味だ?」
星竜王はしばらく間を置いて、遊星の瞳を見つめる。炎のように燃える視線で、遊星の眼を射抜く。
遊星が目をそらさないことを確認して、星竜王は口を開いた。
「この聖杯戦争、誰が勝とうと幸せな結末など訪れない。そういうことだ」
それだけ言って、星竜王は背を向け、歩いて行ってしまおうとする。
何か重いものを感じさせる背中に、遊星はあわてて声をかけた。
「待て、セイバー。肩の傷は癒えた。これから外に出ようと思う。ついてきてくれるか?」
「よかろう」
言葉には出さないが、もう一つの点についても星竜王は好都合だと判断した。
聖杯を求める者は、必ず残るマスターを倒しにくる。望もうと望むまいと闘いは避けられない。
ならば身を隠して無駄なリスクを避け、その間に他のサーヴァントの潰しあいを待つのは合理的だ。
星竜王の趣味ではないが、勝つために己を殺すのも王の務めだと解している。
星竜王は遊星のあとに付き従って歩く。
172 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/28(金) 01:32:20.37 ID:2pHf0Z0no
「まずは低速から、コーナーを曲がる感覚を確認していけ。私のデルタイーグルはカーブの癖が強い」
「分かった。まずは尾行の警戒も含めて周辺を回ってみる」
アンチノミーからヘルメットを受け取りながら返事をする。
D-ホイールに乗るのはジャックとのデュエル以来だ。遊星号が恋しいが、それと同じくらいにデルタイーグルへの期待が大きい。
付き合いの長い者にしか分からないだろうが、遊星は微笑を浮かべていた。
一方で星竜王は不敵な表情を隠そうともせず、時折笑い声を上げる。
「それでマスター。今回は何が目的だ?」
>>175
1.まずはD-ホイール奪還だ
2.デッキの行方を追う
3.クリアマインドをもっと知りたい
173 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/28(金) 01:36:18.40 ID:IfTfDCtIO
3
174 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/09/28(金) 01:52:38.01 ID:nEbP3WgAO
2
175 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/28(金) 02:10:53.07 ID:saYerLBfo
1
176 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/28(金) 07:50:49.80 ID:zDI8e0hAO
どうせ出るのは煉獄龍なんだろ?わかってるよそれぐらい
177 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 01:22:57.36 ID:ZWm2UWako
>>176
他の竜もワンチャンあるっちゃある。閃光竜とか選択肢次第で出る機会あった。
178 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 01:24:02.44 ID:ZWm2UWako
「まずはD-ホイールを取り戻す」
「うむ。遊撃戦は機動力が物を言うからな」
「侵入ルートはアンチノミーが計画してくれた。あとは実行あるのみだ」
モーメントを起動し、デルタイーグルに飛び乗る。
アンチノミーに合わせて調整してあるのか、遊星の身体には少し窮屈に感じる。
「遊星、注意を怠るな。マーカーのジャミングが安定しているのはこの周辺だけだ」
「分かってる。お前のD-ホイールを傷つけない程度に楽しんでくるさ」
駆動音を聞くと雑念が消えていく。風は心を洗ってくれる。
「凄い設備だな……」
ダイモンエリアの奥の奥、計画性の無い建築が生んだデッドスペース。
その床が持ち上がり、開いた穴からデルタイーグルが飛び出す。
狭い直線の先には壁だけ。分かってはいてもヒヤリとする。
車体を持ち上げ、補助輪で緩やかにスピードを落とす。
一つだけの主輪は壁に当たり、地面と変わりない動きで登り始める、そのまま壁を走って廃ビルの屋上に出る。
一度デルタイーグルを止め、街を見下ろす。
眠らない街、ネオドミノシティ。中心部ではネオンサインの光が霞み、D-ホイールのライトが道路を駆け巡る。
止まることを知らず、無秩序に、けれど枠の中を蠢く光。生物の体内を思わせる。サテライトを貪って肥大化するモンスター……。
ネオドミノシティの夜景の中、既に消灯してしまった中央保管庫は見えず。
近くの海馬コーポレーションビルで大雑把に位置を確認してデルタイーグルを走らせる。
エンジンをフルにかけてビルの上から飛び降りる。前方のビルに対して、再度車体を傾けて車輪で衝撃を受け止めることで壁に着地、疾走。
独立した単車輪がエネルギーを受けて逃がすことで、この無茶な運転が可能になる。強靭な素材と精緻な設計とが作り出した超未来級D-ホイール。
179 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 01:26:29.68 ID:ZWm2UWako
「風が重い」
その最新の理論・素材・技術は、全てD-ホイールの速さのために費やされている。D-ホイーラーの負担を度外視しているのだ。
速すぎるがために空気が質量を帯びて圧し掛かってくる。音速の壁とは違う、急激な加速度がもたらす重さ。
加速時だけではなく、ブレーキを掛けた時も体が軋む。スピードの調節能力が高すぎる。僅かな力の入れ具合で大きく動きが変わる。
傷が治るまで乗せてもらえないのも頷ける。ただ乗っているだけで体力が削れていく。初めての操作が傷を負った状態では、到底乗りこなせない。
「カーブに癖がある、か。カーブどころか全てが特徴的じゃないか」
この速さだ。わざわざ追っ手を気にせずとも、ただ速く走るだけで大抵の相手は振り払える。
体力消費がきつい。大体の感覚を掴んだところで、あとは一路保管庫を目指す。
際限ない加速と減速、限界知らずの機動力、無辺際に伸びていくトップスピード。
これならどんな場所でも道を見いだせる。身体の疲労と裏腹に精神が高揚する。
「マスター。お楽しみのところ邪魔することになるが……サーヴァントの気配がある」
「なに?」
それは目的地の保管庫がすぐ前に見えてきたときだった。
>>179
1.双子
2.満足
3.ルドガー
4.ボマー
>>181
1.遊戯
2.マリク
3.カイザー
4.十代
180 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 01:27:30.55 ID:ZWm2UWako
ふぇぇ、また安価ミスったよぅ。 最近進行速度落ちてる気がするけど多分気のせい。
>>181
1.双子
2.満足
3.ルドガー
4.ボマー
>>184
1.遊戯
2.マリク
3.カイザー
4.十代
181 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/29(土) 01:44:47.01 ID:G7cLwgnto
2
182 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/29(土) 02:19:31.07 ID:wQ1wvEjAO
ksk
183 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/29(土) 03:02:35.31 ID:g3oSmDsHo
ksk
184 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/29(土) 03:03:54.74 ID:EmiZBXDKo
2
185 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/09/29(土) 15:03:13.17 ID:wQ1wvEjAO
閃王光(何故か変換出来ない)竜の効果ってよくわからないんだよな
フリーチェーンの誘発即時効果だったらかなり場持ちいいカードになるがもし「フィールド上のカードを破壊する効果」が発動した時カード1枚に破壊耐性を与える効果だったら目も開けられない事になる
186 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 22:51:03.32 ID:ZWm2UWako
「な、なんだ!?」
デルタイーグルの進行方向に大量のカードが飛んでくる。デルタイーグルの機動力ならかわすのは造作も無い。
だが一度かわしてもなおカードが遊星の後を追ってくる。
「デルタイーグルの速度についてきている……!」
カードの束から一枚が飛び出し、回転しながら遊星の右横へつく。ふいにカードは遊星の首元へ向かって一直線に飛んでいく。
そう機敏な動きではない。デルタイーグルを減速させればかわせるかと思ったが、しかしカードも同時に減速して遊星を狙う。
D-ホイールと同一の慣性系にあるかのような奇妙な動き。遊星は車体と共に身体を傾けてカードを避ける。
次は二枚。遊星の左右に付き、同時に二枚が遊星に狙いを定めて飛んでくる。
試しに急加速をかけてみるが、やはりカードも同時に速度を増し、遊星との相対速度は変わらない。
今度は身体を前に倒し、D-ホイールの前部に腹這いになる体勢で回避。
「セイバー、これはサーヴァントの襲撃なのか?」
「十中八九そうだろう。これほどの精密操作、キャスターかランサーのサーヴァントの可能性が高い」
「槍兵が念動を使うのか?」
「ああ。決闘用の武装は数多くあるが、俺が知る限り槍型決闘盤は生まれなかった。形状上、槍にカードを置けばカードが曲がってしまうからな」
話している間にも、第三波が襲い掛かる。前後左右に四枚のカード。一秒の狂いも無く、同じタイミングに同じ速度で遊星に飛んでいく。
今回は前方の一枚が僅かに低い。さきほどと同じやり方では回避しきれない。
「代わりに槍は呪術を用い、カードを自由に動かし、カードから手を離すことで槍術と決闘の両立を成した。元より直線形は力の放出に向いている。
今の世でも、大型モーメントは円柱形をしているだろう? それと同じだ。力の捻出、整形、操作には槍型が適している。槍とは刃を持った魔導杖だ」
話しながら星竜王がフィールを爆発させる。純粋なるパワーの波に流され、カードは跳ね返されていく。
カードから見えない力が引き剥がされ、そして爆発する。強大なエネルギー同士がぶつかればさらなる力が解放されるのだ。
D-ホイールを二台、正面衝突させるようなもの。速さと速さがぶつかり合い、二台は吹っ飛び、モーメントが暴走することだろう。
それと同じだ。星竜王のフィールが、カードを操っていたエネルギーを爆発させる。
「この感じ、古代エジプトの闇の力のようだ。やはりランサー、千年ロッドか」
力の爆発が後背のカードの群れまでも巻き込み、瘴気の中でカードの群れが遠ざかっていく。
爆発は当然遊星の方にも振りかかるが、星竜王はそのままフィール放出を続けることで既に防御を終えている。
目標のエネルギー構成を見極め、フィールで相手の力を引き剥がし、さらに術の中枢を刺激することで完成する技。
187 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 22:52:21.96 ID:ZWm2UWako
しかしそれで終わりではなかった。カード群は爆発の中から抜けだし、ちりちりと縁を焦がしながら遊星の前に立ちはだかる。
一枚一枚に込められた力は弱い。おそらく動かすだけで精一杯なのだろう。カードの統率は乱れ、いくつかは落ちていく。
いつ向かってくるのか分からない状況、遊星は目前のカードから目を離せない。
強い風が頬を撫でる。先ほどの攻防でD-ホイールに伝わった振動が遊星を揺さぶる。それでも目の前のカードに対する集中は切らさない。
急加速による振り払い、今度は成功し、数枚のカードが速度変化に対応できず後方に消えていく。
次の瞬間、カードの群は急に左右に分かれて道を開け、目の前にはセキュリティの保管庫のドアがあった。
加速が仇になり、ブレーキは間に合わず。デルタイーグルの急停止はドアを突き破ってからになった。
流石は未来の技術。衝突で傷ついたのはドアの方だけで、デルタイーグルには傷一つついていない。
意外に軽かった衝撃に息をつく。衝撃で金属片が飛び散るだろうと予期して閉じた眼を開く。
「デュエル……」「でゅえる」「デュエル!」「でゅ……える……」「デュエル」「でゅーえる」
そこには、虚ろな目をしたセキュリティの隊員がいた。デュエルディスクを腕につけ、空中でカードを引く動作を繰り返している。
「操作の対象はカードだけではない。やがて人をも操る闇のアイテムが生まれた。ランサーのサーヴァントは、千年ロッドの所有者であることが多い」
決闘ゾンビと化したセキュリティから遊星を庇うように星竜王が前に立つ。
手には一振りの決闘剣。相手は少なく見積もっても30人以上居るだろう。
「これだけの人数を操れば、どうせ画一的な動きしかさせられまい。操り人形が何人いようと、俺の敵ではない」
星竜王が剣を振る。その円の動きに合わせて柄から、カードが飛び出す。
これこそデュエルブレードの扱い方。左手の剣で相手を斬り、同時に飛び出したカードを右手の指で挟みこんで右手でも相手を斬る。
重量の乗った左の斬撃は勿論のこと、左手の力が乗ったカードを右手で取ってさらなる加速をつけた右の斬撃は音速に迫る。
左のパワー、右のスピード。さらに小回りの利く右の動きは、状況に応じて防御にも活かせる。攻防一体、異色の二刀流決闘術。
一瞬にして、近くに寄って来たセキュリティが二人斬りつけられた。根元から決闘盤を切断され、闘う術を失った二人はその場に崩れ落ちていく。
188 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 22:53:04.08 ID:ZWm2UWako
「俺のターンだ。カードを二枚セットし、禁止令でサイクロンを宣言。さらに手札から……」
「バトルロイヤルルール、俺のターン。手札からチェイス・スカッドを召喚」
「チッ、早速割り込みで俺のターンを強制終了させてきたか。マナーの悪い奴らだ」
バトルロイヤルルール。尋常の決闘では用いられない決闘様式。
本来は軍勢同士のぶつかり合いで用いられる。しかし今日では、数の利を活かして敵を強襲するデュエルギャングが好んで使う。
少数精鋭のチームサティファクションが流れを変えるまで、デュエルギャングの決闘といえばバトルロイヤルだった。
バトルロイヤル、それはサテライトの無法決闘の象徴。セキュリティが忌み嫌う外法の戦いである。
「セイバー、俺も……」
「この程度、手助けは無用だ」
「バトル」
生気の無い声でバトルフェイズへ移行する。その瞬間、キングが動いた
「トラップカード、スクリーン・オブ・レッド。相手は攻撃宣言ができない」
多人数を相手に、一枚のカードを攻略するのに一枚のカードを使っていては勝ち目が無い。
相手、という大きな括りで動きを止めるスクリーン・オブ・レッドはバトルロワイヤルに向いている。
「ターンエンド」
「バトルロイヤルルール、俺のターン。手札からゴロゴルを召喚。ターンエンド」
「バトルロイヤルルール、俺のターン。手札からサーチ・ストライカーを召喚。ターンエンド」
バトルロイヤルの起源は軍の闘いである。それは星竜王の良く知るところ。
この決闘に、数自体を駒として使い、いつ相手ターンに割り込むかを計算して指示を下す戦略級決闘の面影は無い。
しかしそれでも、これはバトルロイヤルルール。星竜王が研究し尽くした決闘様式なのだ。
189 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 22:53:30.69 ID:ZWm2UWako
「バトルロワイヤルルール、俺のターン。手札からモンスターをセット。ターンエンド」
「バトルロワイヤルルール、俺のターン。手札からゴロゴルを召喚。カードをセット、ターンエンド」
誰一人として、スクリーン・オブ・レッドを破壊できない。
その理由は星竜王の禁止令にあった。サイクロン宣言が恐ろしいまでに刺さっていたのである。
禁止令でのサイクロン宣言に至った理由は2つ。
セキュリティがカードを押収し、そのカードでデッキを強化する集団であること。すなわちカードが十分にあることを知っていたから。
次にセキュリティが千年ロッドによって操られていることを知っていたから。
汎用魔法罠除去として、サイクロンほど名の通ったカードは大嵐くらいのものだ。
しかし大嵐は味方のカードをも破壊する。バトルロイヤルには向いていない。
――星竜王はそれを逆手に取り、荒野の大竜巻に黄金の邪神像や歯車街などを配下に大量に持たせ、大嵐で奇襲をかけたことなどもあったが。
さらに少しテクニカルなところで砂塵の大竜巻、荒野の大竜巻などが魔法罠除去としてある。
だが操られて簡単な動きをするだけの洗脳奴隷に、そういったカードを使いこなすことはできない。
分かりやすい強さをもったサイクロンが手元にあれば、当然サイクロンを起用する。
「バトルロワイヤルルール、俺のターン。手札からカードを2枚セット。ターンエンド」
「バトルロワイヤルルール、俺のターン。手札からサーチ・ストライカーを召喚。ターンエンド」
「これがセイバーの力……!」
「そうだ。これがキングだ!」
スクリーン・オブ・レッドは破壊されない。
その間に星竜王の剣が次々と対戦相手のデュエルディスクを破壊していく。
相手の決闘盤を踏み台にジャンプし、足からのフィール放出で相手のデュエルディスクを壊しつつ反動で跳び上がる。
上空から落ちる勢いをデュエルブレードに集約し、床を叩き割ることで小さな地震を起こして相手の体勢を崩す。
よろめいた相手の間を縫って走り、矢継ぎ早にデュエルディスクを壊していく。
190 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/09/29(土) 22:56:58.32 ID:ZWm2UWako
星竜王を倒すのは無理とみたか、セキュリティの標的が遊星に移る。
数にものを言わせて突撃してきたうちの一人が星竜王の剣戟を逃れ、遊星の前にたどり着く。
「バトルロイヤルルール、俺のターン。魔導戦士ブレイカーを召喚」
「トラップカード、スキルドレイン!」
数枚のサイクロン以外の除去すら止める。相手の数の利は完全に封じ切った。
ライフ消費の時ですら星竜王のフィールが弾け、敵を襲う。遊星の前でセキュリティの一人が痙攣し、倒れた。
「マスター。俺一人ならなんとでもなる。だがマスターを守り切るのはきつい。先にいけ」
デルタイーグルを顎で示して言う。この先の目的に到達しろ、と。
「サーヴァントの気配は外だ。ここへ近づいてきている。俺をここで足止めし、大量の決闘奴隷と共に俺を倒すのが目的だろう。
ならマスターは玄関口より奥にいてもらった方が安全だ。早くいけ」
「分かった」
デルタイーグルが走り出す。その疾走が作り出す衝撃波で数人のセキュリティを吹き飛ばし、階段の側面の壁を走って奥へと進む。
吹っ飛んできたセキュリティをデュエルブレードの腹で受け止め、横から迫る別のセキュリティに向かって投げ捨てる。
ぶつかりあった二人が嫌な音を立てて倒れた。
「セイバー、頼んだぞ」
「案ずるな。こんな雑兵ども、サーヴァントとの決戦までに身体を暖めるサンドバッグにしかならん」
遊星は薄暗い通路の向こうへと消えていく。星竜王はすぐに振り返り、背後の敵を切り付けた。
191 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/30(日) 02:17:35.92 ID:pvs8XqRIO
デュエル超人がヤバすぎるな
192 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/09/30(日) 23:44:15.54 ID:02+UaDajo
エクシーズ無しアイドラ無しの満足さんの戦い方が分からない。→ラーの活用法が分からない。ふぇぇ、詰んだよぅ。とりあえず苦し紛れに何か書こう。そうしよう。
193 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/01(月) 01:30:30.36 ID:dlS1GQBJo
遊星が行ってしまった後、妙にはっきりとした足音が聞こえてくる。
激戦あるいは一方的な殲滅で絶え間なく轟音が響いているにも関わらず、耳元に直接伝わるような奇妙な響き方で足音がする。
音の発信源が分からない。音の大きさは不規則に変わり、方向も掴めない。
「姑息な真似を。早く出てくるがいい」
既に大部分のセキュリティは倒している。死屍累々、零れ落ちたカードが地面に散らばり、足の踏み場すら少ない。
地面に突き刺さったデュエルディスクがまるで墓標のよう。この戦い、既に半ば終わって戦場は侘しさを漂わせ始めている。
しかし凄惨さなこの風景、一人として死人もいなければ、重症者もいない。決闘盤破壊による忘我、脳震盪による気絶、そしてフィールショックだけ。
「俺のッ! ターン!」
星竜王の二刀流ドロー、剣が目前の敵の決闘盤を叩き割り、ドローカードが空を裂いて真空を作り出す。
細い真空であれば、そこから生まれるのは斬撃。いわゆる鎌鼬となる。だがカードの裏面で大きく長方形の真空を作り出したなら。
そこから生まれるのは空気の槌。カードを持った手から斬撃では無く打撃が生まれることとなる。
空気のハンマーが右面のセキュリティ隊員の顎を打ち、脳を揺らす。決闘盤を振るおうと身体を引き絞った体勢のまま、ぐらりと前に倒れ伏す。
「バイスドラゴンを特殊召喚! スキルドレインにより、攻撃力は下がらない。さらにパワー・ブレイカーを召喚! 攻撃! カードをセットしてターンエンド!」
フィールの乗った攻撃宣言は、ライフ以上に相手の精神力を削る。ライフは半分も削れていなくとも、フィールによるワンショットキルが成立する。
「強いね。これがセイバーか」
「力あっての王。ナスカの星導者が受け継ぐ剣は飾りではない」
声のする方を振り返るが、そこには誰もいない。死角となった背後を守るために反射的に剣を後ろにむかって振った時、星竜王の視界が回った。
視界が揺れる。吐き気がこみ上げ、気味の悪い足音が幾重にも耳朶の内で反響する。
歪んだ音は、墓守の一族に伝えられてきた技法。墓を暴く者を闇に葬るための暗殺術。
だが精神操作の力を得たランサーが使えば、それは心の扉に傷をつけるための道具に変わる。
「だが受け継いだものの重さなら、王家の秘を受け継いだボクも負けられない」
194 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/01(月) 01:31:01.50 ID:dlS1GQBJo
高い対魔力を有すセイバーを完全に操ることはできないが、精神攻撃自体は可能。
星竜王がよろめいたところをすかさずセキュリティ隊員が攻める。
「俺のターン、ドロー。ジュッテ・ナイトを召喚し、サーチ・ストライカーをチューニング! 氷結界の龍 ブリューナク!」
残るセキュリティ隊員の動きが変わる。
これまで多人数を同時操作するために簡単な動きだけをさせていたが、数が減り、また操者が現れたことで動きが人間らしさを帯びる。
「ブリューナクの効果を発動! 手札を1枚捨てて禁止令を対象に取る!」
「俺はブリューナクの効果にチェーン、強制脱出装置でブリューナクをバウンスする!」
二人のコンビネーションによる除去。タイミングを完全に合わせ、二人は決闘盤を振るう。
星竜王が身を屈めれば、二人の決闘盤は互いにぶつかり合う。火花を飛ばしつつ、互いの力を利用して素早く飛び退く。
「カウンタートラップ、リ・バウンド! 強制脱出装置を無効にし、ゴロゴルを墓地へ送る!」
星竜王はデュエルブレードで火の粉を振り払いつつ立ち上がる。
「遊びはここまでだ! エクステンド・フィール・バニッシュ!」
遊星を襲ったカード群の刃に対して見せた技。相手の力を剥ぎ取り、起爆剤に変えて反撃する。
相手の込めたエネルギーが強ければ強いほど、その威力も跳ね上がる。
星竜王自身を対象とした千年ロッドの力が反転し爆ぜる。セキュリティたちに取りついた邪念が連鎖的に燃え上がる。
闇の力を媒介とした爆炎は冷たい。心の底をかきまわし、思考をかき乱して散らかす闇の爆風。
黒い風が吹き去ったあと、立っているのは竜星王とマリクだけだ。
195 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/01(月) 01:35:08.25 ID:dlS1GQBJo
「この程度の雑魚どもでは、時間稼ぎにしかならん」
「そうだろうね。この絶妙な弱さが、時間稼ぎにうってつけだった」
「なに?」
「もう少し強かったなら、君はマスターへの余波も気にせず初めからさっきの技で一掃していただろう。
もう少し弱かったなら、とっくにこいつらはやられていただろう。ボクは時間稼ぎのために弱さを演出したんだ」
デュエルブレードと千年ロッドを突きつけ合い、互いに相手を牽制する。
力ある者同士は、特殊能力だけでは決着をつけることはできない。
「ボクのマスターは復讐にご執心でね。君のマスターとの一対一を望んでいる。
復讐の空虚さはボク自身良く知るところだけど、かといって他人の言葉で止められるものじゃない。だから手助けしてあげようと思ってね」
「俺とマスターを引き離すのが目的だったというわけか」
「その通り。マスターが満足するまで、君はボクが引き受ける」
「構わん。俺の役目はサーヴァントからマスターを守ること。一決闘者がマスターに挑戦したいというのであれば、止める必要も義理も無い」
マリクが千年ロッドの頭を持って引き抜く。柄の部分を外せば、短剣が現れる仕込み杖。
右手にウジャト眼のついた短剣を、左手に先端の尖った杖を。周囲にカードを浮かべて、剣・槍・札による三種の刃が星竜王を狙う。
「このまま会話で時間を潰すのが僕の望むところだけど、そうもいかないんだろう?」
「ああ。俺はマスターの勝利を疑っていないが、マスターの闘い方には興味がある。貴様との一戦は手早く終わらせてしまいたい」
「良いマスターに恵まれたようだね。やはり僕のマスターの復讐心は、矛先を誤ったものなのかな」
「復讐、復讐と。くだらぬことに拘りおって。男の戦いに理由は要らん。王の戦いに私情は要らん。さあ、決闘を始めよう」
>>196
1.ファイティングデュエル
2.デュエル
3.ディアハ
4.フライングディアハ
196 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/01(月) 01:47:43.78 ID:bdJ8fZKvo
4
197 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/01(月) 02:03:54.90 ID:efvnFG1DO
フライングディアハwwwwwwアクセラレーションwwwwww
198 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/01(月) 08:18:40.48 ID:EKhru36IO
ラーはアニメ効果じゃないとまとめな運用は無理
199 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/10/01(月) 11:15:25.77 ID:Hfe6T5lAO
レッドデーモンズはドラゴンウィングの痣だから飛行は可能だろう
ドラゴンウィング対ゴッドフェニックスか……
200 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/01(月) 12:40:17.04 ID:QMHGVVlAO
フライングディアハwwwwwwww混ぜすぎwwwwwwww
ディアク(一撃疾走)は無いのか?
星竜王って翼の痣だったっけ?
シグナーの祖と星竜王は別の存在だぞ
星竜王も頭長かったけどシグナーの祖はもっと長い
201 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 00:39:05.22 ID:i1gzLHvqo
ワンショット・ランもやってみたいけど、どう考えても一瞬で終わるし、鯖にデュエルさせないのはもったいないかなー、と。
202 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 00:39:40.20 ID:i1gzLHvqo
「出でよ最高神、ラーの翼神竜!」
「なっ!?」
屋内でのフライングディアハでは、あまり大型のモンスターを召喚しては小回りが利かない。
そう思って星竜王はバイス・ドラゴンのカードを手に取っていたが、マリクの召喚宣言でカードを持ち替える。
相手が三幻神を使うなら、生半可なカードでは太刀打ちできない。直前での持ち替え、考える暇は無い。選ばれたカードは当然あの一枚。
「我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!」
「「フライングディアハ!!!」」
赤と黒。それぞれ軍人と僧侶を意味すると言われる色は、王の配下に相応しい。
黒くしなやかな尻尾を星竜王が掴むと、尾が跳ね上がり、それによってレッド・デーモンズの肩に星竜王が掴まる。
だが、敵の騎乗モンスターが見当たらない。
建物は既に消灯後。暗闇に隠れているのかと見回したが、どこにも見当たらない。
そもそも神クラスのモンスターなら、召喚されただけで相応の重圧を周りに与えるもの。見失うことはあっても、気づけないことはありえない。
セキュリティと闘っている間に日が暮れつつあり、玄関口と窓から入る赤光だけが頼り。
薄暗い室内でマリクを睨みつける。
「俺にレッド・デーモンズを使わせるために謀ったか」
「まさか。ラーなら既に、君の頭上にいる」
マリクの千年ロッドが指差す先を見た瞬間、閃光が瞳を焼く。まるで太陽を見たよう。眼を閉じずにはいられない。
黄金色に輝く真円はまさしく太陽だった。
マリクがヒエラティックテキストを読み上げることで、ラーはスフィアモードからバトルモードへと変形する。
千年ロッドの一振りで浮遊するカードたちが隊列を組み、ラーとマリクとを繋ぐ直線を作る。
もう一度千年ロッドを振れば、カードが段を作り上げ、階段が出来上がる。
「ぐ……この威圧感。三幻神の頂点は伊達では無いということか」
星竜王が目を閉じてその上から手で押さえている。ラーの光を間近に見た代償は、サーヴァントであっても安くは無い。
レッド・デーモンズが動けない理由はそれだけではない。ラーの放つ迫力、周囲を呑む神威がレッド・デーモンズを押しつぶしているのだ。
203 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 00:40:13.26 ID:i1gzLHvqo
階段を上がり切り、マリクがラーに騎乗する。
ラーがレッド・デーモンズと同じ高さまで降りてくれば、夕陽の中で千年ロッドとラーの身体とが美しいグラデーションを織り成す。
バーガンディ、スカーレット、アッシュローズ。猩々緋、茜、朱鷺、唐棣色。木蘭、桧皮、蘇芳、桜。
赤い虹色を身に着けた黄金の竜が、その喉を開く。歌うためではなく、命ずるためでもなく、相手を喰らうためでもない。
「ディアハにターンの概念は無い。そちらが動かないなら、ボクからいかせてもらう! ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
それはただ焼き尽くすだけ。太陽の光はただ平等に降り注ぐもの。
敵を破壊するにはあまりにも過ぎた力。平等なる殲滅は、勿論目前の敵を焼き尽くすだけでは飽き足らず。
建物の窓に罅が入り、高熱でガラスが溶け出し、タイルは熱膨張で互いを圧迫し合い破裂する。
光と光と光と光。マリク自身の視界さえも真っ白に染まったまま、元に戻るまでにしばらく時間がかかる。
だから建物が崩壊していることを知ったのは、身体を撫でる冷風によってだ。
「やりすぎたかな……」
「やりすぎだ。貴様は俺の闘争心に油を注いだ」
レッド・デーモンズは青いエネルギー壁を展開して光の余波を防いでいた。
「トラップカード、シンクロン・リフレクトだ」
「トラップは事前に空間に仕込んでいなければ発動できないはず。まさか僕が攻撃を仕掛けるまで動かなかったのは……」
「いや、あれは実にきつかった。俺もトラップを伏せるのが精一杯だった」
星竜王のフィールによって具現化したバリアは巨大。玄関ホールの半分以上を取り込むほどの大きさだ。
気を失ったセキュリティたちもその中に入ることでなんとか生き延びている。
発動タイミングの僅かなズレによって浴びた一瞬の光だけで、数人の肌が水膨れを起こし、また数人は表皮が壊死するまでになっていたが。
「シンクロン・リフレクトの効果、我が魂への攻撃を無効にした後、相手モンスターを破壊する!」
バリアの色が黄金に変わり、小さな球へと収束する。ラーの摸倣。球形に切れ込みが入り、ラーを簡易化した形となって本物のラーへと飛ぶ。
だがシンクロン・リフレクトの体当たりは、ラーに傷一つつけることなく終わる。
「最高位の神であるラーに、下級魔法及び罠は通用しない!」
「うむ。俺もこの程度の攻撃で終わるとは思っていない」
ラーの攻撃で消え去った天井部を抜け、二竜は空へとフィールドを移す。
黄泉へと帰ろうとする本物の太陽に代わり、太陽神が夕空を真昼に変える。
204 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 00:41:26.05 ID:i1gzLHvqo
周囲にカードで覆いを作って風避けにしているマリクと違い、もろに風圧を受ける星竜王は右手でレッド・デーモンズに掴まっている。
ラーの前で立ち止まることを避け、周囲を飛び回ることでゴッド・ブレイズ・キャノンを撃たせない戦法。
パワー型のレッド・デーモンズが速さに軸をおいた戦いをするのは苦しいものがあるが、そこは星竜王の経験がカバーする。
マリクの視線やラーの翼の動きなどから、次の行動を予測する。未来を翔ることでレッド・デーモンズがラーの速度を上回る。
「コアキメイル・ドラゴの攻撃!」
「拷問車輪! 攻撃は無効となり、さらにコアキメイル・ドラゴを拘束!」
「ちぃ! 仕方なし。自害せよ、コアキメイル・ドラゴ!」
ラーは機動面においてレッド・デーモンズに遅れを取り、レッド・デーモンズは飛翔で手一杯で攻撃に移る余裕が無い。
互いにメインモンスターが攻撃に活かせないため、戦いは決定力を欠き、膠着状態に陥っている。
「ぐっ……!」
右手をレッド・デーモンズに掴まるために使っているため、星竜王は左手一本での戦いを強いられている。
デュエルブレードを振ることで柄部分に収納されたデッキからカードを飛ばす。
カードゾーンを経由せずにカードが使用できるディアハだからこそできる片腕での戦い。
だがやはり空中でのカード捌きは難しいのか、飛ばす先のミスも目立つ。
戦場から離れた場所でモンスターを実体化させてもいたずらにバーを削るだけ。空中には裏をむいたままのカードが増えていく。
「ボーガニアンを召喚、こいつは遠隔攻撃によって600ダメージを与えることができる」
「三騎士の一角たるランサーがちまちましたバーンに頼るとは情けない」
「ボクはただ勝利への近道を選んでいるだけだ。卑怯と言いたいなら言えばいい」
星竜王は王道のビートダウン使い。魔法と罠で相手のリソースを削り、モンスターの攻撃で勝負を決める戦術。
だが絶え間ない飛翔によってラーの射線から逃げ続ける必要に迫られた今、空間にセットしておく罠が使えない。
死角の無かったはずの防御に綻びが生じ、マリクのバーン戦術を止められない。
ラーの背中に乗ったボーガニアンは、ラーの背後に向かって矢を構えることで攻撃範囲をカバーする。
ラーの攻撃を避けようとすれば、ボーガニアンの矢が襲い掛かる。
「ボーガニアンの特殊能力! 地獄送りのボーガン!」
レッド・デーモンズは紙一重でかわすが、マリクはまだ止まらない。
「さらにもう一体のボーガニアンを召喚!」
205 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/02(火) 01:19:33.87 ID:I74lszDAO
表の人格が……、ラーを操っている……!
206 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 23:19:21.56 ID:i1gzLHvqo
>>205
何かおかしかった? 表マリクの時点でデッキに入ってるみたいだし、使えるはずかな、と。
fate知識も遊戯知識も不安なのでいまいち自信がもてない。
あと表マリクの話し方に悩む。状況と相手とで口調変わるっぽくて難しい。
207 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 23:20:48.49 ID:i1gzLHvqo
「ボーガニアンの攻撃! 地獄送りのボーガン!」
レッド・デーモンズの正面を向いて召喚されたボーガニアが、ボーガンを発射する。
レッド・デーモンズは180度転回、マリクに尾を向けてボーガンの射線上を駆け抜ける。ぎりぎりのところで降下し、ボーガンを回避。
振り返ってラーとの距離を測ろうとしたところに、マリクの次撃が来る。
「第二射! もう一体の地獄送りのボーガン!」
「迎え撃て、アブソリュート・パワーフォース!」
地獄の炎に包まれた手が矢を掴む。へし折るまでも無く、握られただけでボーガンの矢は燃え尽きる。
「だけどその体勢、もう次はよけられないはずだ」
振り返った直後、レッド・デーモンズの僅かな硬直を捉えての攻撃。今からではかわし切れない。
レッド・デーモンズのブレスで対抗すれば、その間にラーが振り返って必殺の一撃を飛ばしてくるだろう。
「仕込みマシンガン! 君がばら撒いたカードの分、マシンガンを連射する」
仕込みマシンガンの銃弾が四方八方へばら撒かれる。誤射では無い。これはそういう効果。
兵器にあるまじきコミカルな色合いの銃身は360度回転で周囲を無差別に攻撃する。
そのうち星竜王のカードにぶつかった弾が物理法則を無視した跳弾によってレッド・デーモンズへと進路を変える。
大量の弾が空中に無造作に放り出され、跳ね返って一点へと集まっていく。
それはハイエナの狩りに似ている。彼らは散開して索敵し、見敵の直後に集合して包囲を敷く。あとは輪の中の獲物を全方位からの攻撃で仕留めるだけ。
ただ違う点は、仕込みマシンガンの銃弾が恐ろしく速いことだ。ハイエナは無血勝利を至上とし、時間をかけて狩る。
銃弾のスピードからすれば、跳弾までの距離の差など誤差の範囲。すべての弾が星竜王に殺到する。
マリクによるチェックメイト。
「甘いわ!」
レッド・デーモンズが止まった場所に浮かぶ、一枚のカード。
星竜王があらぬ方向へ投げてしまったうちの一枚が、表になる。
「俺が投擲を誤ったとでも思っていたか?」
「なんだと……!」
「トラップカード! クリムゾン・ヘル・フレア!」
相手の魔法・罠による効果ダメージを無効にして倍返しにするカード。相手の力を利用して爆発力を高める性質は、星竜王の奥義に通じる。
すなわち、エクステンド・フィール・バニッシュ。EXランクのフィール放出スキルは、条件さえ揃えば宝札級の力を発揮する。
フィールが空間を掌握する。全ての銃弾はその制御を奪われ、物理的に崩壊してエネルギーの塊に成り下がる。
星竜王がデッキから解放したカードは20枚以上。銃弾の雨は人一人を殺すに申し分火力を誇る。
数値にして4000以上のエネルギー。さらに外殻を取り払われたことで、破壊力が倍増する。
208 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 23:22:38.76 ID:i1gzLHvqo
星竜王のフィールが無規則に暴れ回るエネルギーを抑え込み、誘導していく。
レッド・デーモンズの口の前にエネルギー球が出来上がる。今にも弾け飛ぼうとする不安定な球。
熱と呼ぶには理解を超えた存在。もはや小型の太陽と呼んでもいいだろう。
「やれ! レッド・デーモンズ・ドラゴン! 灼熱のクリムゾン・ヘル・フレア!」
星竜王の宣言。レッド・デーモンズの灼熱のブレスがエネルギー球を押し流す。
背に夕日を背負い、赤く輝く小太陽を、太陽の神に向かって放つ。
三世界の接近でもない限り見られない、三太陽の邂逅。
「神を屠るのは慣れていてな……」
太陽と太陽がぶつかり合い、赤い光が縦横無尽。極度に熱せられた空気は陽光を歪め、煙が晴れてもなお向こうを見渡せない。
星竜王は勝利の手ごたえを感じつつ、気を緩めずに蜃気楼の向こうを睨む。
だが既に異変は始まっていたのだ。
ラーの生み出す陽光と、天然の夕陽が混ざってできる均衡。地は赤く、空は明るい。
それはラーが破壊されれば無くなってしかるべきものだ。
だがクリムゾン・ヘル・フレアの後も、空はまだ真昼の明るさを保っている。
「出し惜しみし過ぎたかな。今一この時代の感覚に馴染めなくてね」
まだ揺らめく空気のレンズの向こう側に、人影が立っている。
その足場は輝く黄金の球体。見間違えようもない、ラーのスフィアモード。
「ヒエラティックテキストにより、真なる姿を現せ! ラーの翼神竜!」
神の威圧。一度見てしまった以上、変形が完了するまで動けない。
マリクへのダイレクトアタックは無理。距離を取ることさえ許されない。
神官の祝詞と神の降臨を座して見守ることしかできないのだ。
数秒後、ラーはバトルモードへの移行を終える。ボーガニアンが消えた以外、これまでと変わりない姿。
神の身体には傷跡一つなく、神々しい輝きを帯びた翼が広がっている。
209 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/02(火) 23:26:09.38 ID:i1gzLHvqo
召喚終了時は当然ラーの正面に星竜王とレッド・デーモンズが位置することになる。
「ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
神の召喚による硬直が解けると同時に回避行動に移ったが、余波だけで相当な光量の攻撃。気を抜くことはできない。
羽根を縮め、空気抵抗を最小にしての滑空を選択。軌道は尾で修正する。この速さでいけばラーの攻撃からも逃れられる。
「ボクはもう一体のラーの翼神竜を召喚する。神の降臨にひざまずけ!」
「な……」
レッド・デーモンズの動きが止まった。
滑空状態で硬直に入れば間違いなく地面にぶつかって自滅していた。
直前で翼を広げ、これまで自身が手に入れた加速を自らの身体で受け止めて無理やりブレーキをかける判断は的確なものだ。
神の威圧は、防御能力の延長にある。動きを止めるとはいっても、無意識のうちに行われる滞空動作までは止められない。
ラーのゴッド・ブレイズ・キャノンの範囲外に逃れきれなかったことで、無量の光がレッド・デーモンズを覆う。
「三枚目のラーだと!? どういうことだ」
宝札を複数枚持った英霊は珍しくない。複数の英霊が同一の宝札を持つこともある。
だが世界に一枚しかない神のカードを、一人の英霊が複数枚所持することはありえない。星竜王の驚きももっとも。
だが星竜王は驚きを抑えて冷静に対処するだけの精神力を備えている。
「君こそラーの攻撃を受けてそれだけの体力が残ってるなんて、どういうわけだい?」
レッド・デーモンズを庇って浮かぶ、音叉を持った悪魔。ゴッド・ブレイズ・キャノンの到達より早く、ダーク・リゾネーターが召喚されていた。
戦闘破壊に耐性を持つダーク・リゾネーターが盾となり、ラーの攻撃を受け止めたのだ。
「たまたま近くにあったカードから雑魚モンスターを出して壁にしたわけか。運がいいね」
「運? 違うな。宙に浮かぶカードはすべて、俺が計画的に配置したもの。これらは剣にして盾。お前を閉じ込める檻だ」
「この状況で随分と強気なことを言うね」
「当然だ。王が弱気なようでは誰も付いてこない」
新たなに現れたラーが口を開く。光が集う。ゴッド・ブレイズ・キャノンの砲撃準備。
「フォース・リゾネーターの効果! レッド・デーモンズの攻撃に対する魔法罠を封じる!」
そのラーを無視して、レッド・デーモンズはマリクの乗ったラーに向かって飛んだ。
熱せられた空気は軽い。上昇気流が飛翔を手助けする。
「何のつもりだ!?」
「二回のゴッド・ブレイズ・キャノンを経験したことで、その力の性質、構成、火力曲線を始め力点速度骨格魔力フィール。全て理解した」
猛スピードで飛ぶレッド・デーモンズだが、マリクの乗るラーに到達するよりも、ゴッド・ブレイズ・キャノンの到達の方がなお早い。
「神を屠るのは慣れていると言っただろう? 勝負だ! エクステンド・フィール・バニッシュ!」
フォース・リゾネーターの効果で、他のカードの干渉は断ち切った。あとはラーの力と星竜王の技を比べるのみ。
210 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/02(火) 23:26:16.95 ID:jAlIzlnIO
fate知識はあんまり必要ないかも。とりあえず令呪無くなったら契約切れるなんて風潮あるけどマスター権は失われない。
神のカード操るには千年アイテムに関わりのある人物。更にラー起動には古代神官文字を唱える必要がある。
表マリクは条件備えてる。そもそも闇マリクなんてイレギュラーないなら表マリクがラー操ってたんだから。
211 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(新潟・東北)
[sage]:2012/10/03(水) 08:01:15.77 ID:ugF5Gx0AO
乙
セリフから察するに闇マリク消滅後っぽいし、表がラーを完全に操ってても不自然じゃないと思う
そもそもファラオの記憶の扉を開けた後なら神のカードもただの強力なモンスターカードになってるみたいだし
212 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/03(水) 12:36:08.87 ID:w1fe7icAO
乙
原作で表が一度もラー操ってなかったから新鮮に感じただけだ
3枚目ってどういう事?スフィアモードに戻って防御したんだと思ったんだが、あそこでもう2体目出してんの?
213 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/04(木) 01:25:43.20 ID:/pelaW3Wo
表がラーを操ってても問題無いようで良かった。
>>212
クリムゾン・ヘル・フレアで一体沈められて、直後に新たなラーに乗り換えてます。確かにここら辺は説明不足ですねー。
やはり推敲無し毎日更新の限界なのだろうか。読み返すと誤字とか良く分からない表現とか恥ずかしい。
214 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/04(木) 01:26:34.03 ID:/pelaW3Wo
どんな技であっても、精霊界の存在がこの世に顕現する際には力場の基点がある。
正確に狙い打ちさえすれば、粒子一つ一つを崩壊させることができるというのは理論上はそう難しいことではない。
そう、理論上は。
星竜王のフィールが炸裂する。量としては多くない。神に力押しで対抗するなど無謀、今必要なのは繊細な技術だからだ。
ラーの力を丁寧に撫で、激しく揺さぶり、誘導し融解させ、暴走させて走狗に変える。
ゴッド・ブレイズ・キャノンを最小限のフィールで防御し、どころかそのエネルギーを加速に転用する。
神の炎を全て背後に受け流し、その反作用でレッド・デーモンズが超速で飛び抜ける。
「アブソリュート・パワーフォース!」
レッド・デーモンズの拳が真っ赤に燃える。霊界の炎は温度ではなく概念。
炎属性でも炎族でもなく、ならばその手の炎は焼き尽くす意思そのものに他ならない。
太陽の一面は恵みをもたらす。だがレッド・デーモンズの炎は破壊だけしか生まない。
ラーの力をジェットエンジン代わりにした飛翔は一瞬。レッド・デーモンズの手がラーを掴む。
破壊するにはまだ力不足であっても、距離を詰めさえすれば星竜王にとっては十分。
「いくぞランサー。お前の槍術、見せてもらおう」
レッド・デーモンズからラーへと飛び移る。デュエルブレードの一閃が奔った。
215 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/04(木) 01:27:00.88 ID:/pelaW3Wo
マリクの操るカード群が動き、デュエルブレードを受け止める盾となる。
硬質な金属音が響く。かなりのレベルのエンチャントで補強されている証拠。
デュエルブレードで再度切り付けるも、カードが刃全体を受け止めて弾き返す。
その直後にマリクが千年ロッドで突いてくる。デュエルブレードを起点にして空中へ飛びあがって前転、マリクの後ろへ。
振り返りざまに横薙ぎに斬りつければ、再度カードの盾が阻む。そのままカード群が星竜王の腕に絡みつく。
マリクが短剣で切りかかるのをバックステップで回避すれば、地面から足が離れたのを見計らって千年ロッドの突きが来る。
身体を後ろに大きく反らして千年ロッドをよけ、そのまま千年ロッドを蹴り上げて空中一回転、ラーの翼に着地する。
「強力なカードの頼る分、身体能力は低いとでも思ったかい?
「なかなかの技量だ。だが俺のフィール能力は貴様とすこぶる相性が良い」
着地際を狙ってカード群が殺到、マリク自身は翼の付け根に立つことで星竜王の逃げ場を塞ぐ。
ラーの羽ばたき、星竜王の足場が揺れる。星竜王は平然として、己が技の名を呟いた。
「エクステンド・フィール・バニッシュ」
それが加速に使えるのは、先ほどゴッド・ブレイズ・キャノンを受け流した時のとおり。
星竜王の腕に張り付いたカード群が、星竜王に飛来するカード群が、フィールの奔流で爆ぜる。
全身の筋肉をデュエルブレードを振る動きだけに使う。ラーを蹴って足を進める動きさえも、その力を腕に乗せることを第一に。
鍛え上げられた筋肉が内から爆ぜ、練り上げられた魔力が外で爆ぜる。二重の爆発が星竜王を運ぶ。
一刀、渾身の一撃はしかし、それ以上の速度でマリクの元に舞い戻ったカードの壁によってまたも弾かれる。
エクステンド・フィール・バニッシュに巻き込まれても、カード群には傷は僅か。
「ふむ。二重に魔力を込めていたというわけか。俺は第一層を剥いだだけ、第二層が爆発を防いだ、と」
「鋭いな。ラーの攻撃への対応速度といい、並じゃない観察力だ」
「ふん。刃を合わせれば大抵のことは分かる」
千年ロッドの反撃を左手のデュエルブレードでそらし、続く短剣に対しては右の手刀で相手の手首を打ち付ける。
マリクの手から、ウジャト眼の短剣が零れ落ちた。
216 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/04(木) 01:28:38.09 ID:/pelaW3Wo
そこから星竜王の猛攻が始まる。両手でデュエルブレードを握り、一刀ごとに相手のカードの纏った魔力を壊していく。
第一障壁の剥がれたカードは後ろに送り、万全の体勢のカードが全面で刃を弾く。マリクの巧みなカード捌きがデュエルブレードを弾き続ける。
だが星竜王に狙いはそこにこそあった。
弾かれると同時、爆ぜた魔力が刃を運ぶ。相手の魔力を全て利用し、一撃ごとに加速する。
もはや弾かれたのか、それとも次の攻撃のために刃を引き戻したのか判別もつかないほどに、速い。
星竜王が前面に集中しているとみて、落ちた短剣を操って背後から突き立てようと試みるが、
星竜王はそれさえ一瞬で反転して斬り伏せ、マリクに向き直って攻撃を続けた。やがて残像が見え始める。
それをなんとか防御できてしまうのが、マリクの命取り。もっと早く諦めて一撃くらっていれば、まだ取り返しがついた。
だが防御するたびに力を持っていかれ、反対に星竜王は速くなる。今カードの盾を止めれば、一撃でやられるのは間違いない。
かといって相手に反撃しようとすれば、カードの盾を操る精度が落ち、やはりやられる。
「なら……」
「サレンダーなら認めてやってもいい」
カードの盾がついに崩れる。次の一撃、もはやどこから打ちこんでくるのか見えない。
「ボクごと攻撃しろ! ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
空中で戦いを見守るだけだったもう一体のラーが、口を開く。
勿論そこから出る言葉など無い。熱と光が集まって、その先にはマリクと星竜王の乗ったラー。
217 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/05(金) 00:49:04.81 ID:N0LoHuMDo
切れるカードの一つとして自爆があることは大きなメリットになる。
互いに狙っているのは勝利。引き分けは互いにとっての敗北。自爆とは、相手に勝たせないということ。
ただ倒すのではなく、自爆手段を封じた上で勝たなければならない。
自爆スイッチはメインデッキに入れるものではなく、サイドでチラ見せするもの、とは往年の全日本チャンプインゼクター羽蛾の言。
「ちっ、エクステンド・フィール・バニッシュ!」
必殺のチャンスを捨て、ラーの攻撃に対応する。
ゴッド・ブレイズ・キャノンの全てを足元のラーにぶつける。
ある程度時間的な長さをもったエネルギーを、瞬間的な爆発に変える。立体を点に近づけ、力を凝縮し直すのだ。
溜めが長く、また余熱を含めて時間的空間的に広範囲を攻撃するゴッド・ブレイズ・キャノンは格好の獲物。
破壊力の増加は2倍や3倍程度ではない。エクステンド・フィール・バニッシュで反射した際の破壊力は、およそ10倍に達する。
神の攻撃をこの至近距離でぶつければ、ラーが破壊されるのも当然。
黄金の炎が重なり合い、神が砕けてパズルのピースとなって空に散り、消える。
瞬く間に小さくなり、存在感を無くしていく神の断片は、輝く粉雪のようだった。
「今一度受けてみて分かったが……」
剥ぎとった力で爆風を防御・誘導し、空中でレッド・デーモンズ・ドラゴンと合流する。
「これは神ではないな?」
ラーが完全消滅する頃には、既にマリクも新たなラーに騎乗を終えている。
先ほどゴッド・ブレイズ・キャノンを撃ったのとはまた別のラー。四枚目のラーである。
218 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/05(金) 00:49:36.48 ID:N0LoHuMDo
「分かっているならもう隠す必要も無いか。その通り、これらは全てラーのコピーカードだ。
この時代の技術は凄いね。まさかヒエラティックテキストによる力の解放まで再現されているとは思わなかった。
ただの決闘者が手に取れば、ただの弱小モンスター。けれどボクが使う時、これは限りなく本物に近い偽物となる」
「やはり。神にしては何かもの足りないと感じていた」
再び相対するレッド・デーモンズとラーの翼神竜。
一度視線を合わせた後、レッド・デーモンズはマリクの乗ったラーの周囲を時計回りに旋回する。
残るもう一匹のラーは、そこからいくらか離れたところで滞空を続けている。
「物足りない、か。結構無茶苦茶やったつもりだったんだけど」
「力の密度が足りん。いくら俺と言えど、神の技をこれほど簡単に見切れるものか」
ラーの威圧感は通常のモンスターを遥かに超えている。その力は召喚時の威圧に苦しんだ星竜王自身良く分かっている。
だがその召喚時の特殊効果こそ、偽物の証拠。召喚が無効にされず、召喚時に他の効果を受け付けない特性をディアハ的に再現したもの。
本来の神には備わっていない、コピーカードだけの特徴なのだ。
「燃費は良いし、能力的も本物の相互互換と言ってもいいんだけどね。ところでいつ気づいたんだい?」
「シンクロン・リフレクトで攻撃が無効になった時から疑っていた。本物の三幻神に罠は通用しない。
お前の詠唱で覚醒したラーの耐性効果、おそらく下級魔法・罠の無効化ではなく、破壊の無効化であろう?」
「そもそもラーに違和感を覚えていなければ、ラーの特性を知りつつシンクロン・リフレクトを発動することなんてないはず。
つまり君は、ボクが最初にラーを召喚したときから違和感を感じていたわけだ。つくづく恐ろしい……」
「顕界から数日でこれほど多くのコピーカードを調達したお前の慧眼こそ称賛に値する」
「量産されてるようでね。簡単に手に入った。グールズにこの技術力があれば、あのときリシドが倒れることは無かったかもしれないのに」
219 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/05(金) 00:50:09.95 ID:N0LoHuMDo
「さあ、種明かしが済んだところで、再開といこうか」
「望むところだ」
「ラーの攻撃、ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
空中に滞空していた、もう一体のほうのラーが攻撃態勢に入る。
星竜王はレッド・デーモンズと共に少しばかり位置を移動。この程度の距離では回避はしきれないが、そもそも回避が目的ではない。
「トラップ発動、次元幽閉!」
神の耐性が破壊に対してであることは既に看破済み。空間に開いた穴がラーの攻撃を呑み込み、そのまま拡大を続けてラーそのものを呑みこむ。
ここにきて、星竜王が空中に設置した無数のカードが意味を持ち始める。
「ならもう一撃、ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
トラップ発動後にすかさず次なる攻撃が入る。これも普通に回避しようとすれば手遅れになるが、星竜王に抜かりはない。
また少し移動して、カードを発動する。空中でバランスよく配置されたカード群が、いかなる場所でも万全の防御を生む。
「強制脱出装置! 俺自身を退去させる!」
強制脱出装置による射出で、レッド・デーモンズは大きく距離を稼ぐ。
大きく羽ばたいて旋回、ラーの後ろを取る。口を開いて反撃にでようとしたところで、マリクの妨害。
「ラーの翼神竜を召喚!」
レッド・デーモンズの目の前にラーが現れ、行く手を阻む。
ヒエラティックテキストの詠唱でモードチェンジを始め、召喚時効果でレッド・デーモンズの動きを止める。
マリクは詠唱しつつラーと共に飛び、レッド・デーモンズの横に回り込む。
「二体のラーの攻撃、ゴッド・ブレイズ・クロス・キャノン!」
マリクの乗ったラーが側面から、もう一体のラーが正面から。神の炎の十字砲火。
滑空による回避に入った星竜王に、さらにマリクが追い打ちをかける。
「さらにラーの翼神竜を召喚!」
ラーの召喚時効果で動きを止め、神の攻撃を確実に当てにくる。
飛翔中に急に動きを封じられたレッド・デーモンが体の制御を失い、空中のダーク・リゾネーターにぶつかる。
戦闘破壊耐性を持ったダーク・リゾネーターはなんか生き延びているが、これで直後の神の攻撃に対する盾としての力は失った。
ダーク・リゾネーターの破壊耐性は1ターンに1度だけのもの。これ以上の攻撃には耐えられない。
「トドメだ! セイバー!」
とぐろを巻いた炎が二方向からレッド・デーモンに迫る。
狙いは少し外れているが、大威力は少しの誤差など無視してレッド・デーモンズを焼き払うだろう。
220 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/05(金) 00:50:40.89 ID:N0LoHuMDo
「バリア・リゾネーターの効果を発動! ダーク・リゾネーターは破壊されず、俺はダメージを受けない!」
「凌がれた!?」
金色の炎を全て受けとめ、ラーの攻撃が途絶えたところで、その中に浮かぶレッド・デーモンズが超然と姿を表す。
「さらに俺は、クリムゾン・ヘル・セキュアを発動!」
「なんのつもりだ。ボクにセットカードは無い……!」
「俺は俺が伏せた十六枚の魔法・罠を全て破壊する! エクステンド・フィール・バニッシュ!」
レッド・デーモンズの吐き出す炎が空中を赤一色に変える。
それはモンスターにダメージを与えることはなく、ただ魔法・罠だけを壊していく。
炎が走ったあとで赤と青の誘爆が相次ぎ、やがて混じって紫色へ。既に日は落ちているというのに、紫立ちたる雲が空を埋め尽くす。
そうして、壊れた魔法・罠の力が解放され、暴走し収束し、すべてマリクとラーを襲うエネルギー波に変わる。
フィールによって破壊されたラーの力さえも取り込んでエクステンド・フィール・バニッシュの爆発はなお勢いを増す。
――「運? 違うな。宙に浮かぶカードはすべて、俺が計画的に配置したもの。これらは剣にして盾。お前を閉じ込める檻だ」
全方位から襲い掛かる衝撃は、マリクのカードの盾をもってしても防ぎきれない。逃げる場所は無く、守る術も無い。
宙に浮かぶカードは、そのすべてが剣となり、マリクを閉じ込める檻となって勝負を決める。
「ぐ、ぐああああああああァ!」
「なかなか楽しめたぞ、ランサー」
紫の煙が風で飛ばされていく。黄金の塵が消えていく。
勝負は決した。ラーの消えた夜空はもとの暗さを取り戻していく。
221 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/05(金) 01:03:57.88 ID:N0LoHuMDo
デルタイーグルの縦に長い構造は、細い通路を曲がるのが難しい。曲がりきれないことはないが、カーブの度に細心の注意を払う必要がある。
高すぎる機動性と加速力と相まって、微妙な差が即クラッシュに繋がる超危険機。
急速スピンで揚力を得てデルタイーグルの先端を浮かし、縦に壁に張り付いて回転、単なるカーブのたびに命がけの曲芸運転をする羽目になる。
だが速さへの挑戦はいつだって命がけ。その程度ですくむ遊星ではない。
遊星はこの速度を心から楽しんでいた。さらにアクセルを踏み込んで、カーブに挑戦する。
曲がり切った達成感と、もはや誰もついてこれないだろうという優越感。
その双方をあざ笑うかのように、狂ったようなスピードで遊星を追ってくるD-ホイールがあった。
青を基調とし、血管のように不気味な赤のラインが入ったデザイン。
奇妙なエンジン音のように聞こえるものは、笑い声が多大に混じっている。
「ヒーハハハハッハアッハ!」
「お前は……鬼柳。生きていたのか」
「ヒャーハハハハハッ! 待ってたぜ、ゆーせぇぃ! さあ、デュエルだァ!」
「待て、何故お前がここに……。いや、それより、俺はD-ホイールを……」
「うるせぇ! 俺の心にはもはや言葉は届かねェ! 俺を満足させられるのはてめぇとのデュエルだけだ!」
>>222
1.アンチノミーのデッキ
2.星竜王のデッキ
3.その場で組む
>>224
1.ファイティングデュエル
2.ライディングデュエル
3.ウェスタンデュエル
4.ワンショットラン
222 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/05(金) 01:04:51.16 ID:QktMGaKao
3
223 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(チベット自治区)
[sage]:2012/10/05(金) 01:05:35.91 ID:jSsnYoZLo
ksk
224 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/05(金) 01:06:00.40 ID:5g3YNS37o
3
225 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/05(金) 01:09:51.81 ID:N0LoHuMDo
安価出すと読んでくれてる人が結構いることが分かって安心する。
そしてIFの回し方は未だによく分からないし、その場で組むについても何も考えてないという。
クリムゾン・ヘル・セキュアが相手のカードだけ破壊なのは分かってましたが、ジャックっぽいカードでフィニッシュにしたかったので。
ディアハなんてそんなものだよね多分。なんかクリボーの石板が増殖したりするし。
226 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/05(金) 01:29:41.16 ID:l4k6+dCIO
俺ルール宣言で全て解決するから大丈夫
このスレは毎日チェックしてるよ
ネオドミノシティがいい感じにカオスだ
227 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(和歌山県)
[sage]:2012/10/05(金) 05:50:35.27 ID:s5hk1k/f0
乙
魔法オンリーの大逆転クイズ使ってファイティングデュエルってどんな絵面になるんだろう
228 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/05(金) 22:23:04.83 ID:N0LoHuMDo
>>226
わーい。毎日見てくれてるなんてありがとうございます。
レスがもらえると本当に安心します。
>>227
そういえばそんな回想もありましたねー。大逆転満足もワンチャンあるのかー……。
あえて相手のフィールを受け続けて攻撃を見切り、完全な隙を見つけて物理攻撃しつつの大逆転クイズでチェーンを許さずに確[
ピーーー
]るとかじゃないでしょうか。
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/06(土) 01:10:30.12 ID:tzyfcl3Jo
明らかにマシンスペックで劣る鬼柳のD-ホイールがデルタイーグルに付いてくる。引き離されるどころか距離を縮めてくる。
前方のマシンが生み出す気流を利用し、風の隙間を走ることで後方から押し流されてくる空気で加速を得る。
高等プレイングテクニック、ライディングストリーム。それによってマシンスペックの差を埋めているのだ。
「鬼柳。デュエルなら後で受けてやる。だから今は……」
「今だ! 俺が何百日てめぇのことを想ってきたか分かるか!? それが俺の前を走ってる。
ここでデュエルしないでどぉーするってんだ、遊星! 早くデッキを出せ!」
「俺には時間が無いんだ。分かってくれ、鬼柳」
「そうか、お前はスピードが大好きだったもんなァ。いいぜ、やろう。一瞬で魂まで焼け焦げる、鉄砲玉のようなデュエルをよぉ!
ちょうどもうすぐ夕陽の下弦が地平線に触れる。ウェスタンデュエルなら文句はねぇだろ?」
「くっ……。闘うしかないというのか」
デルタイーグルのスピードは並ではない。ライディングストリームだけでは埋めきれない。
その間を詰めるには、熟練の技術や、天性の才覚や、あるいは超未来の制御プログラムといったものが必要だ。
しかし鬼柳にはそのいずれも無い。ファイティングデュエルの源流たる彼は、ライディングデュエルにはまだ疎い。
その鬼柳が遊星へ肉薄するために用いたのは、狂気。
異常なまでの機動力を誇るデルタイーグルと、同じレベルまでスピードを維持してカーブに挑戦する。
鬼柳の判断基準は、遊星に近づけるかどうかだけ。安全に曲がり切れるかどうかは完全に思考の外。
時折少し失敗し、外装を歪めながら、鬼柳は一回ごとに無茶苦茶な挑戦を乗り越えて遊星に近づいていく。
その鬼柳の執念が、遊星を観念させた。
デルタイーグルの速さをフルに活かせば、鬼柳を振り払うことも可能だろう。
しかしそうすれば、おそらく鬼柳は暴走し、死ぬ。
「受けてやる!」
「ヒャッハー! これでようやく満足できる!」
230 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/06(土) 01:13:03.72 ID:tzyfcl3Jo
アンチノミーから通信が入ったのは、ちょうどブレーキをかけようとした時だった。
「遊星、目の前の扉に突っ込め! システムをハッキングしてこれから扉を開ける。速度は落とすな。加速しろ」
「!?」
「説明している暇はない! 車体を傾けろ、完全には扉を開けるには時間が足りない」
眼を閉じて、雑念を振り払って加速する。
空気層が質量を増し、撫でるようだった風が肌をかき破らんばかりに強く吹く。
「逃げるのか、ゆうせぇええええッ!」
眼を開ければ、まだ開き切っていないゲート。その下端の隙間へD-ホイールを押し込む。
デルタイーグルのブレーキなら、それから減速してもまだ間に合う。
風圧が部屋の中を荒らし、ダンボール箱の中からカードが飛び出して部屋の中をひらひらと回りながら落ちてくる。
急加速からの急停止を終え、床のタイルから煙が立ち上る。
「絶対に逃がさねぇ! 俺と、俺とデュエルしろおぉぉぉぉぉ!」
遊星のD-ホイールが止まったところで、遊星に向けてデュエルアンカーが投げ付けられた。
通常のものより一回り大きく重い枷が、遊星の左腕に巻き付く。
次の瞬間、瞳を焼く閃光が踊り、次いで鼓膜を突き刺す轟音が歌う。
どこまでも暴力的でありながら、どこか優雅さを残した蹂躙。
玄関ホールでのゴッド・ブレイズ・キャノンの影響が、建物全体に伝わったのだ。
さきほどまで走っていた廊下に罅が入り、瞬く間に割れ目に変わり、廊下が崩れ落ちる。
デルタイーグルの急加速で引き離された鬼柳はまだ廊下の上。天井だったのか床だったのかも分からないくらい粉々になったコンクリと共に落ちていく。
「うおぉぉぉおぉ! 遊星! ゆぅせえええええええ!」
閃光のために眼をつぶらずにはいられなかった遊星でも、崩落音を聞けば状況は分かる。
鬼柳の叫びと、腕にかかる重圧。遊星は迷うことなくデュエルアンカーを引っ張った。
231 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/06(土) 01:14:01.34 ID:tzyfcl3Jo
「う、ぐ……ぁ」
デュエルアンカーが鬼柳のD-ホイールに絡まっており、遊星の腕にかかる負担は半端ではない。
「デュエルブレード修行で筋肉がついたおかげだな」
部屋の前の廊下は完全に崩れ落ち、扉の一歩先は空中。
その真下で、鬼柳とD-ホイールがデュエルアンカーに支えられている。
決闘が終わるまで決して外れないのが売りのサティスファクション特製アンカーはこの状況でなおびくともしない。
しかし遊星の腕が軋み出していた。身体全体を扉の横の壁におしつけて両手でアンカーを引っ張るが、鬼柳を引き上げるには足りない。
「遊星、なぜ」
「友を助けるのに理由がいるのか?」
「俺を裏切っておきながら、何をいまさら!」
「違う、あれは……!」
憎しみに満ちていた鬼柳が、ふと思い出したように朗らかに笑った。
鬼柳の手が、彼自身のデュエルディスクに向かう。
「鬼柳! 諦めるな! 俺が絶対に引き上げる!」
「このデュエルアンカーはウェスタンデュエル用に設定してあってな。光を感知するシステムがついている」
「この状況で何の話だ」
「ウェスタンデュエルでは、夕日が沈めばデュエルは終わりだ。たとえライフが残っていようと、光が感知されなくなればデュエルは終わる」
「鬼柳!」
「その時点でライフの多い方が勝ちとなるが、ライフが同じなら引き分けだ。二人ともアンカーの爆薬で吹っ飛ぶことになる」
「だから何だ! 夕日が沈む前に俺がお前を救う!」
「俺はてめぇを絶対に許さねえ。お手々繋いで仲良く地獄行きなんてまっぴらごめんだぜ。俺は一人でいかせてもらう」
サティスファクションのデュエルアンカーは、決闘が終わらない限り決して外れない。
外す手段は一つ。決闘を終わらせること。
鬼柳の手が、デッキの上に伸びる。その意味するところは、サレンダー宣言。
サレンダーが行われれば、鬼柳のライフは0となり、アンカーが外れる。
「俺はお前のサレンダーを拒否する! これは俺の正当な権利のはずだ」
「サレンダー拒否なんてなァ性根の捻じ曲がった決闘者がやることだ。俺はとことんお前が嫌いになったぜ」
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/07(日) 01:37:07.72 ID:CBjaFKoWo
遊星の全身から汗が流れる。頬を伝う汗が眼に入るのはまだいい。
だが手のひらの汗でデュエルアンカーが滑れば、D-ホイールと鬼柳の重みを支えられず、二人とも一巻の終わりだ。
手のうちの汗は、心の緊張がもたらすもの。そう聞いていた遊星は、眼を閉じて心を落ち着かせようと努力する。
「なあ鬼柳、覚えているか。俺達がサテライト統一を目指していたころ。チームエーリアンとの闘いを」
「あの頃は良かった。俺はお前を信頼していた。何の疑いもなく、ただ目の前の目標だけを追い求めていられた」
「今は、悩んでいるということか?」
「ああん?」
「お前は、まだ心のどこかで俺を信じている。だから苦しい。そういうことじゃないのか?」
「はっ。ちげえよ、復讐を誓った相手に支えてもらってる我が身が情けないだけさ」
星竜王のような、荒ぶる魂の力があれば。きっとこの程度、片手で引っ張り上げられる。
アンチノミーのような、揺るがなき境地に至れば、きっとこの程度、表情一つ変えずに落ち着いて少しずつ引き上げていくのだろう。
(力が欲しい……)
そう、あの時も、遊星は同じようなことを思っていた。
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/07(日) 01:37:51.87 ID:CBjaFKoWo
「みんな揃ったようだな! ジャック、クロウ、遊星」
「わりぃ、子供たちがなかなか離してくれなくてさ。いやー、自立させなきゃとは思ってんだけどよー」
「言い訳など不要だ。弱き者のために上に立つことは何も悪いことではない」
サテライトに無数にある廃墟の一つ。四方の壁が厚く、盗み聞きの心配が少ない場所だった。
鬼柳はそんな場所を見つけるのが上手かった。空間に対する勘が鋭いのだ。
相手の根城の穴を見つけ、相手の逃げる先に回り込み、あえて少し逃げさせることで敵をばらばらにする。
鬼柳には天性のものがあった。
「さあ、始めようか。満足しようぜ」
その言葉には、人を惹きつける魅力があった。
『サティスファクション!!!!』
だから四人は、その日も夜を走る。
まずはクロウが先行するのがサティスファクションスタイル。
愛用のサティスファクションアンカーを携え、クロウは夜に消えていく。
234 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/07(日) 01:38:25.81 ID:CBjaFKoWo
チームエーリアンのトップは未だ判明していないが、その構成員はかつてサティスファクションに破れた連中が大部分を占める。
復讐心で集まった烏合の衆。数こそ多いが統率は取れていない。その分、リーダーを倒しても戦いが終わらない可能性が高い。
少数精鋭のサティファクションにとっては、特に厄介な相手。新興のグループだが軽視はできない。早めに叩く必要がある相手。
メンバー達はサティスファクション打倒を目標にしていると予想され、サテライト統一前の最大の強敵だと認識されていた。
一度サティファクションと戦って敗れた面々は、クロウの役割を知っている。
クロウに集中し過ぎれば、他の三人に蹂躙される。その敗北のイメージを持っている。
だから逆に、クロウは普段とは違う役目を担った。
クロウが突入すれば、逆に周囲に注意を払うはず。鉄砲玉の進路を遮るものは無い。
なら、クロウが単独でエーリアンのトップを倒す。ヘッドを失った組織は多かれ少なかれ混乱するもの。そこを一気に攻め立てる。
「クロウ、見事やり遂げたようだな」
「いくぞ、俺達の満足はこれからだ」
クロウのデュエルディスクを通じてシグナルが送られる。クロウが成功した証。
三人は互いに視線を交わしあい、同時に駆け出す。
大規模な廃工場。予め傷をつけておいた外壁にデュエルディスクを突き立て、壁を打ち砕く。
出来た穴に飛び込み、すかさずカードを投げる。過たず電線を切り裂いたカードは、その電流で焼け焦げた。
元からあった照明設備は既に壊れ、工場内を照らすのは簡易照明のみ。
発電機から長いコードを伸ばして広い工場内全体を照らしている。
その主要コードが切断されれば、一瞬にして暗闇が周囲を覆う。
「!?」
意気揚々と飛び込んだ鬼柳の腕に、デュエルアンカーが巻き付いた。
235 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/07(日) 01:44:42.03 ID:CBjaFKoWo
「このアンカー……間違いねえ。どういうことだ」
工場内は暗く、光は鬼柳たちが空けた穴から差し込む月光のみ。
雲が風で流されたのか、急に明るくなった月明かりに照らされた向こうには、クロウがいた。
「デュエル……スタンバイ……」
鬼柳と眼を合わせることすらなく、クロウはカードを五枚引いて構えた。
「俺は別段裏切りを責めるわけではない。だが判断を誤ったな、クロウ」
「クロウ。どうしてお前が……」
困惑する遊星とジャック。
鬼柳は何も言うことなく、軽く笑ってデュエルディスクを構えて、カードを引いた。
「遊星、さっき俺が切った配電コード、直せるか?」
「技術的には可能だが、敵の妨害を考えると難しい」
「なら問題ねえ。おそらく動いている敵は極少数だ。ジャックと組んで発電機を目指せ」
月は再び雲間に隠れ、宵闇が視界を覆い尽くす。
ジャックが戸惑うことなく前に飛び出していったことをその足音で知り、遊星も後を追って駆け出した。
疑問は絶えないが、そういう時は身体を動かしていた方が楽だ。
地形は刹那の月明かりで大雑把に見えただけ。そのイメージを想像で埋め、瓦礫や廃材を避けて走る。
飛んできたカードを弾くような音が響く。ジャックがカード手裏剣を防御したのだ。
「よく反応できるな」
「熱だ。動けば熱が伝わる。精神の熱と、肉体の熱。キングは自ら戦地に赴かずとも、戦況を把握しているものだ。
しかし妙だな。人はたくさんいるようだが、熱い敵意を持った奴が少なすぎる……」
236 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/08(月) 01:29:16.70 ID:yxmyRRLXo
「「デュエル!!!」」
「ドロー。モンスターをセット。リバースカードをセット。エンド」
「お前がセットスタートか。ヴァーユかミストラルにゴドバってとこか?」
話しかけても返事は無い。光の無い中では表情を伺うこともできず。光の無いクロウの眼が鬼柳に見られることはない。
「まあいい。俺のターン、ドロー。成金ゴブリンを発動し、1枚ドロー。デーモンの宣告。500払って一時休戦を宣言。
ちっ、はずれか。こう暗くちゃ見えねーだろうから一応言っとくと、風魔手裏剣だった。1枚セット、強欲なカケラを使ってターンエンド」
「ドロー。シュラを反転召喚。ゲイルを特殊召喚。ゼピュロスを通常召喚」
「既に俺はお前がBF使いなのを知ってる。シュラセットに意味なんてねえ。しかもそのゼピュロス、今引いたカードじゃなかったよな」
「バトル。ゼピュロスの攻撃」
「速攻魔法、皆既日蝕の書。全部裏側にして、エンドフェイズに3ドローをくれてやるぜ」
「エンド」
抑揚の少ない声、粗の目立つプレイング。鬼柳は確信を深めていく。
「俺のターン、ドロー。500払ってデーモンの宣告。一時休戦を宣言。ビンゴ! 一時休戦で互いに1ドロー。
さらに成金ゴブリン。1ドロー。強欲で謙虚な壺。俺は黄金色の竹光を選択。アームズ・ホールで折れ竹光をサーチ。
シュラに折れ竹光を装備し、黄金色の竹光で2枚ドロー。カードを1枚セットしてターンエンド」
既に手札に既に手の中には大逆転クイズがある。風魔手裏剣がある。
一方のクロウは、速攻でのビートダウンに重きをおいた形に調整されている。大逆転満足に対抗する術は少ない。
「ドロー。黒い旋風を発動。ブラストを召喚。カルートをサーチ。バトル。ゼピュロスの攻撃」
「おいおい、一時休戦で俺はダメージを受けねえぜ?」
「ゲイルの攻撃。ブラストの攻撃。シュラの攻撃。ターンエンド」
「エンドフェイズ、スケープ・ゴートを発動。さあ、俺のターンだ」
既に手の内に大逆転クイズはある。先ほどの強欲で謙虚な壺で、風魔手裏剣を選択していれば準備は整っていた。
アームズ・ホールで自律行動ユニットを選択、次ターンでデーモンの宣告とともにライフを払えば、ライフ調整も捗る。
そもそも皆既日食のタイミングも早かった。大逆転クイズと風魔手裏剣で殺せる場を整えることを意識していないようなプレイング。
クロウのプレイングも怪しいが、鬼柳のプレイもどこかおかしかった。
まるで、大逆転クイズで勝つつもりが無いような。
237 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/08(月) 01:29:51.36 ID:yxmyRRLXo
「ドロー! 強欲なカケラを墓地へ送り、2枚ドロー! デーモンの宣告で黄金色の竹光を宣言。失敗だ、成金ゴブリンを墓地へ。
そしてエネミー・コントローラーを発動。トークンをリリースし、ゲイルをもらうぜ。そして暴走する魔力を発動。
お前のフィールドのモンスターを全て破壊する! ゲイルで羊たちをチューニング。やっぱ相手の心に触れるにはこれが一番だぜ。
太陽神より放たれし氷の槍よ、今こそ魔の瞳を貫け! シンクロ召喚! 氷結界の龍 ブリューナク!」
シンクロ召喚の光に呼応するように、電灯の光が戻る。
「思った通りだ。巷で噂のデュエルゾンビは、チームエーリアンの陰謀だったってわけだ」
鬼柳が指差す先、クロウの額には、トレードマークともいえるM字マーカー。その中央に、気味の悪い白い出来物のようなものがくっ付いていた。
光を浴びると、酸でものが溶けるような嫌な音を出しながら収縮していく。
「手札の大逆転クイズを捨て、ブリューナクでデーモンの宣告をバウンス。再発動で俺は黄金色の竹光を宣言。来たぜ、黄金色の竹光。2枚ドロー!」
「バトルだ。俺のフィールでお前を解放してやる!」
翼を畳んで身体を伸ばしたブリューナクを、鬼柳が掴む。手札を持った右手は添えるだけ。
全身を回すようにして力を手元に集め、ブリューナクを空へと投げる。
「ブリューナクでダイレクトアタック! アイシクル・スペクトル!」
ブリューナク。光の神ルーが持っていたとされる伝説の槍。投げれば相手を倒して手元に戻ってくるという必勝の魔具。
鬼柳が投じたブリューナクは、空中で羽ばたき、クロウへと進路を変えた。
クロウが避けようとする動きを見せるが、鬼柳はデュエルアンカーを引っ張って動きを妨害する。
「いけぇ! ブリューナク!」
ブリューナクは流れるような動きでクロウの前へと飛び、そして額のA細胞を食い千切って反転、地表すれすれを飛んで鬼柳の下へと戻った。
倒すべき敵だけを倒し、持ち主の下へと戻る。この場にこれほど相応しい武器があるだろうか。
「う……ァ……俺は……」
「クロウ! 信じてたぜ!」
238 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/08(月) 01:31:01.08 ID:yxmyRRLXo
「すまねえ、鬼柳。敵幹部らしき奴を倒したんだが、その後この白いのが飛んできて……」
「反省会はあとだ。まずはこの決闘を終わらせる!」
「このデュエル、決着がつけばデュエルディスクが使えなくなる。責任とって俺がサレンダーするぜ」
「待て。この後の戦い、お前の力が必要だ。黙ってみてろ。俺がお前を救ってみせる」
遊星とジャックが走って戻ってくる。
その後から、生気の無い眼をした決闘者が何人も追ってきている。
「ほらな。こいつらを倒すのに、戦力は一人たりとも欠かせねえ。さ、終わらせちまおうぜ。一時休戦、続けて手札抹殺を発動」
「何をするつもりなんだ、鬼柳」
「さらに魔法石の採掘。手札を二枚捨て、手札抹殺を回収。そのまま発動するぜ。さあ、7枚ドローしろよ
さらに黄金色の竹光で2枚ドロー。カップ・オブ・エース! よし、表だ。2枚引くぜ。でもって魔法回収! 手札抹殺を手札に加える。
手札抹殺を発動! 無の煉獄、1枚ドロー。もう一度無の煉獄。」
「鬼柳。お前のやろうとしてること、分かったぜ!」
「デーモンの宝札を除外し、天よりの宝札を発動! 自律行動ユニットで、お前の墓地のメタモルポッドを蘇生。皆既日蝕の書!」
鬼柳のデッキは3枚。クロウのデッキも3枚。
「さあ、ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー! 手札からBF-暁のシロッコを召喚! バトルだ!」
「メタモルポッドの効果発動!」
239 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/08(月) 01:52:03.49 ID:Q++QfaIAO
シュラセットwwwwwwww
240 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/09(火) 01:55:21.48 ID:GIrCXXEZo
足音、足音、足音。サテライトで重宝されている作業靴の硬い足音や、入手の容易さから良く見かける繊維靴。
シティの女しか使わないような高いピンヒールが鋭い音を響かせ、ウェスタンデュエリストが好むブーツの拍車が回る。
足音の波に呑まれ、クロウと鬼柳を繋いでいたデュエルアンカーが地に落ちる音は聞こえない。
「鬼柳、どうする? 外にもいるみたいだ。逃げ切れそうにないぜ。俺が囮になるか?」
「何言ってやがる。百人以上を相手にする機会なんてそうそうねえぜ。ここで満足しないでいつ満足するってんだ」
「はっ。お前が言うと冗談に聞こえないぜ」
ジャックがカード手裏剣を撃ち落としつつ合流してくる。明かりがついた途端に敵の反撃は一気に苛烈になり、ジャックは汗だくで息を切らしている。
「ふん。俺の辞書に敗走は無い。当然全員倒すしかあるまい」
「だがこの人数、バトルロイヤル形式で勝てる相手じゃない。ここは戦略的撤退を考えるべきじゃないか?」
「らしくねえな遊星。弱気なこと言ってんじゃねえ。俺達サティスファクションは無敵のチームだ。聞け、俺に策がある」
穴から外に出れば、想像を上回る人数が鬼柳たちを包囲していた。
暗い中で時折飛んでくるカード手裏剣はなかなかの脅威。ジャックが撃ち落とすのも限界がある。
背後に壁を置いたまま、壁伝いに少しずつ移動を試みるが、その間にも続々と虚ろな決闘者が集まってくる。
遊星が前に出てジャックをカバーしようとするが、上手くいかない。
弾いたカードが後方の鬼柳とクロウの方へ流れて行ってしまったり、十枚超のカード群を弾く際にパワー不足で体勢を崩したり。
「遊星、お前にはパワーが足りん。何より周りが見えていない。無理をするな」
「だが……」
「ほら、早くデッキ整備を終えて俺を楽にしてくれ」
ジャックの声に余裕が無いのは明らか。デッキを渡してくれたジャックの信頼に応えるため、遊星は急いでデッキを弄り始める。
「基本パーツは説明した通りだ。あとは俺達でなるべく墓地にモンスターを溜める」
「ああ。でもって俺さまがコンボを始動させるってわけか! わくわくしてきたぜ!」
「大まかな構成はできてるのか。よし、細部の調整は任せてくれ」
ジャックは既に限界に近い。むしろ、とっくにラインを超えている。
飛んでくるカードの枚数は増える一方。デュエルを始めるまで止まることは無く、その全てを弾くなど常人にできることではない。
一撃。弾いたカードにフィールを込め、ビリヤードのようにカード同士をぶつけ合わせる。
周囲にフィールを発散し、細かい軌道を調整。空間そのものを掌握し、相手のカードをも盾にする。
消耗は尋常ではない。相手のフィールを相殺し、その上で自らのフィールを上乗せする。
単純に考えて相手の倍以上の速度で消耗していく捨て身の戦法。
だがその中で、ジャックは無尽蔵に闘志が湧き上がるのを感じていた。
「生きるとは燃えること。ならば俺の魂が燃え尽きるまで、俺は決して屈することはない!」
一際大きくフィールを放出し、相手の攻撃を大きく吹き飛ばす。
ジャックの咆哮が夜に轟いた。
241 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/09(火) 01:55:47.42 ID:GIrCXXEZo
「完成だ。さあ、満足しようぜ」
「すまないジャック、もっと早く終わらせてやりたかったんだが」
「ようやく……ぐっ、身体が温まってきた……ところ、だ」
「じゃ、体が冷えねえうちに前座を頼むぜ。主役はこのクロウさまだから忘れんなよ」
「「デュエル!!」」
「「デュエル!!」」
ジャックと遊星。クロウと鬼柳。二人一組になって並み居る決闘ゾンビに向かっていく。
変則タッグマッチの始まりだ。
「俺の先攻、ドロー! 手札から魔法カード、手札断殺! さらにコール・リゾネーターでダーク・リゾネーターを手札に。
ダーク・リゾネーターを捨てパワー・ジャイアントを特殊召喚。墓地のダーク・リゾネーターとフォース・リゾネーターをデッキに戻し、リゾネーター・エンジン!
俺はキャノン・ソルジャーを手札に加え、召喚する! カードを1枚伏せてターンエンド!」
「俺のターン、ドロー! 手札からボルト・ヘッジホッグを捨て、ワン・フォー・ワン! デッキからアンノウン・シンクロンを特殊召喚!
ジャックの伏せた王宮の鉄壁を発動! これで場は整った。ボルトヘッジ・ホッグを蘇生! キャノン・ソルジャーでリリース! ファーストショット!」
簡単な無限ループだが、王宮の鉄壁で除外が封じられている今、D.D.クロウでは止めれない。
無限の弾丸と共に二人が駆け抜ける。一撃一撃のフィールが重く、一回キャノンソルジャーの弾丸を受けた相手はしばらく倒れたまま。
倒れた人々の山がバリケードのように高くなり、後続の決闘ゾンビが援軍に来る道が無くなっていく。
「まだまだだ! 第43打!」
242 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/09(火) 01:57:23.12 ID:GIrCXXEZo
「こちら太陽系侵略部隊ソルジャー。司令部、応答せよ」
「こちらアンモナイト」
「撤退許可を申請する。ゴルガーを起動し、可及的速やかな退却を行いたい」
「状況を説明せよ。ジャパニーズは征服しきったとの報告があるが、他国が動いたか?」
「ちが、いえ、違います! 悪魔が! 悪魔が!」
「クロウ! どうやらあれが親玉らしいな」
「ああ! 俺は究極封印神エグゾディオスを召喚! 墓地のモンスターをデッキに戻す! そしてサンダー・ドラゴンを捨て、ブリューナクの効果!
愚鈍の斧を回収して、コアキメイル・デビルの効果を有効にする。さあ、A・ジェネクス・バードマンと星見獣ガリスの30連打をくらいやがれ!」
「ソルジャー、応答せよ! ソルジャー、応答せよ! 馬鹿な、ネオドミノ地区だけでも3000のA細胞保有者がいたはず……」
「ソルジャーに代わり、ヒュプノ。我が軍は壊滅した。最後に、上層部に一つ伝えてくれ……」
「俺は愚鈍の斧でコアキメイル・デビルの効果を無効化! ブリューナクでエグゾディオスを手札に戻す。
ジャックの鉄壁により、エグゾディオスは除外されず、手札に戻るってわけだ! 墓地のモンスターを全てデッキへ。
サンダー・ドラゴンを手札から捨て、デッキから2枚のサンダー・ドラゴンを手札に。さらにもう一度捨てる。
俺のデッキに混じった鬼柳のサンダー・ドラゴンを手札に。ブリューナクでエグゾディオスと愚鈍の斧をバウンス! ガリスバードマン、ファイア!」
「サティスファクションだけは敵に回すな……う、ぐあああああ! エーリアン万歳!」
「まさか、ワンターンスリーサウザンドキルだと……!? ありえない、地球の決闘者は化け物か……」
243 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/09(火) 01:59:26.14 ID:GIrCXXEZo
こうして地球は一つのデュエルギャングによって難を逃れた。
洗脳されていた時のおぼろげな記憶をもとに伝えられた英雄譚は、遠くクラッシュタウンにまで流れていく。
その過程で尾ひれがつき、サティスファクションは正しく伝説となった。
いわく、ライフが0になっても戦い続けた、オゾン層まで飛んで行って宇宙船を撃ち落とした、全身黄金に輝いてカードを創造した、など。
自由に空を飛び、互いにテレパシーで通信しあい、一度のドローで万を超える宇宙人を失神させる。理想の英雄。
そんな自由奔放な満足同盟像は、エーリアン事件で疲れ切った人々の心を虜にし、サティスファクションは熱狂的人気を博す。
これがのちに、大満足事件を世界に伝え、ファイティングデュエルの隆盛を生み出す一因となったことは周知の事実であろう。
しかし、当のサティスファクションメンバーは満足していなかった。
(クロウ、最後には頭の出血が酷いことになってたな。俺がブリューナクをもっとうまく投げてやれれば……。
人は両手に一つずつしか望みを掴めないと聞く。俺は片手に満足を、もう片方で手札を持ち、結果としてクロウを守れなかった。
ならもう手札なんかいらねえ。俺は片手で満足を掴み、そして仲間も守り切る……!)
(俺の力が足りないせいで、遊星にフォローをさせてしまった。あいつは技術とスピードが専門。俺のような壁役をさせるべきではない。
俺が、俺の役目をやり切れなかった。傍目に見ても分かるほど憔悴してしまうようでは王は名乗れん。王とは常に余裕を持つもの。
どんな逆境も逆転劇に変え、エンターテイメントにするパワー。それが俺に必要なもの……!)
(注意不足で操られちまうたあ情けねえ。子供たちに自慢話をせがまれても、こんなこと言えるわけねえ……。
遊星は一晩でエグゾディオスのコピーを作ってくれた。ジャックは身を張って俺たちを守り、鬼柳は逆転の策を考えた。
その中で、俺だけが足手まとい。一人では弾けられねえ不発弾グレイモヤ……。ならせめて、最大級の爆薬、ガチカードを詰め込んでやる!)
(俺にもっと力があれば、ジャックは俺を庇うことなく走れた。クロウを信じ切っていれば、電線を直すミッションのタイムは飛躍的に上がったはずだ。
スピードだけでは足りない。そう、速くあるために強くある必要がある。心身ともに、もっと強く。クロウを疑ったのは俺が弱かったからだ。
そんなことはもう二度と繰り返さない。俺は俺の信じた光射す道を走り抜ける。もっと早く、そのために強く……!)
244 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/09(火) 02:03:12.57 ID:GIrCXXEZo
そろそろ一ヶ月になりますねー。ここまで読んでくれてありがとう。
毎日更新がきつくなってきたので、これからはちょっと更新スピードが落ちるかもです。
その分ちょっとは見直しをしたいなー、とか思ってます。デーモンの宝札、みたいな意味分からない誤字は流石にアレ。
245 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/09(火) 02:47:26.68 ID:iBLDYUwAO
乙。満足捨てろよと言いたくなるが満足捨てたら鬼柳じゃないな
クロウの犠牲は仕方ないな
てか話がだいぶ意味不明になってるんだけどwwwwまじで宇宙人来襲してたのかよwwwwwwww
246 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/09(火) 22:54:21.73 ID:EVvBuhVDO
3000キルだからライフ12000000削った計算?
いったい何ループすればいいんだ……
247 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/10(水) 12:40:24.72 ID:Xm4VuD7AO
ボルトヘッジホッグを射出するだけの簡単なお仕事です
248 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/10(水) 12:53:06.13 ID:GrZr2KeAo
遊星のデュエルディスクを拘束したデュエルアンカーだけが鬼柳の命綱。
「何悩んでやがる。俺を捨てて進めばいいだろ、あの時と同じように」
デュエルアンカーに引っ張られる勢いでデルタイーグルの座席から引きずりおろされた時、既に身体を打ちつけ、背には擦り傷ができている。
デュエルアンカーを掴む手は強く握りすぎて皮が擦り剥け、デュエルディスクの装着部が腕を締め上げて鬱血が始まっている。
もう長くはもたないと、遊星自身がよく分かっていた。
「俺はあのとき星に誓った。決して仲間を見捨てない。決して仲間を疑わない。そして、決して諦めないと」
「だがお前は俺を裏切った」
「違う。信じてくれ、鬼柳」
「俺はな、てめぇに復讐するためだけに悪霊の手を借りたんだ。今さら復讐をやめるわけにはいかねぇんだよ」
引き上げることを諦め、デュエルアンカーを掴んでいた右手を外す。左手を支えるだけならいくらか楽。
遊星の手元に手繰り寄せられていた分のデュエルアンカーが落ち、鬼柳の身体が少し落ちる。
「ならそれでいい。デュエルをしよう。お前と分かり合う方法は、もはやそれしかない。だから、生き残ってデュエルをするんだ」
肩の関節がおかしくなりはじめ、痛みが絶えない。
血の巡りが悪くなった手が腫れている。手の感覚が遠い。
限界まで力を込めているはずなのに、自分ではそれが分からない。
右手で左手の甲に爪を立て、手に痛みが残っていることに安心する。別の痛みがあれば、肩の痛みから気が逸れる効果もある。
途切れないように、千切れないように、自分を確かめて。遊星はデュエルアンカーを離さない。
(力が欲しいと、思った。そしてそのために努力した。デュエルの腕が上がったかは分からない。多少筋力はついたはずだ。
スターダストも、D-ホイールも、デッキも奪われた。だが希望だけは誰にも奪わせはしない。全て取り戻す。ジャックとの絆も、鬼柳との絆も)
「そうだ。俺には絆がある。それは誰にも断ち切ることのできない力。俺は絆で道を切り開く!」
>>251
1.セイバーが教えてくれたパワー
2.アンチノミーが見せてくれたスピード
3.チームサティスファクションで築いた友情
249 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/10(水) 12:56:20.45 ID:WF5rK9bUo
3
250 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/10(水) 13:17:51.66 ID:+LmjRHlSO
3
251 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/10(水) 13:18:29.99 ID:zgSuwVdIO
繧ゅ■繧阪s3
252 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/10(水) 14:24:54.87 ID:ResUOfbbo
3
253 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/12(金) 01:20:55.29 ID:Mgienwjbo
昔から鬼柳は空間把握に優れていた。
敵のアジトを探りだし、構造の脆い部分を見つけて、死角からの侵入ルートの確立をやってのける。
その鬼柳なら、きっと今回も抜け道を見つけだす。そこに賭けた。
「遊星!」
「ああ!」
「「デュエル!!!」」
遊星がデュエルディスクから引き抜いた5枚のカードが、フィールを纏って尖鋭なる刃となる。
初期手札がコンクリの壁を引き裂き、その摩擦でブレーキをかける。
勿論フィールが切れればただのカード。二人と一台を支えられるのは一瞬だけ。
「俺の先攻! ドロー!」
その一瞬をとらえて、鬼柳がターンに入る。。ウェスタンデュエルにおける先攻は、先にカードを引き抜いた方。
遊星によってスタートする作戦でありながら、鬼柳によるリードが必要となるシビアなドローフェイズ決定を切り抜け、鬼柳が引く。
アンチノミーが見せたのと同じリバースドロー法。
デュエルディスク自体を引くドロー法は、フィールをデュエルディスクに集めることが可能。
鬼柳の決闘盤がコンクリの壁を貫く。粉塵を散らし破片を落とし、決闘盤が壁を穿った。
落下中の不安定な状態でこれほどのフィールを練る集中力は勿論のこと、正確に弱い場所を見つける眼もまた脅威。
老朽化して脆くなり、そして倒壊によって普段以上の重力を受けた一点は決闘盤によっていとも容易く砕け散る。
「俺はカードを5枚セットし、インフェルニティ・リローダーを召喚!」
手札を使い切ったことで自由になった手で、壁に空いた穴に手をかける。
今度は鬼柳が支えとなる番。
「うおおおおぉぉおぉ!」
「いけぇ! 遊星!」
落下していく遊星が、鬼柳のD-ホイールのハンドルを掴む。
腕一本で身体を持ち上げ、D-ホイールに乗り込む。
エンジン音が響き渡り、車輪が回る。絶壁をとらえてD-ホイールが垂直に走る。
「掴まれ! 鬼柳!」
「おう!」
鬼柳が壁の一部を砕いたことで、均衡を失った壁面がさらにボロボロと崩れる。
二人の前に大きなコンクリ片が落ちてきた。
「インフェルニティ・リローダーの効果! 手札が0枚のとき、カードをドローできる!」
鬼柳のドローカードがコンクリを真っ二つに斬り捨てる。
「引いたカードはインフェルニティ・デーモン。よって遊星に800ダメージだァ! ターンエンド!」
壁を走り抜け、屋上へ。二人はD-ホイールを降りて向かい合った。
既に日は暮れているが、マリクの操るラーが代わって太陽光を降り注いでいるため、まだデュエルアンカーが爆発する恐れはない。
「このモンスターは一体」
「ランサーの操る神だ。心配すんな、てめぇとのデュエルの邪魔はさせねえ」
「セイバー……。いや、今はこのデュエルに集中する!」
「そうだ、来い遊星」
254 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/13(土) 21:39:28.51 ID:hgXOgvqAO
リアリストの英霊は同じリアリストの虚淵になるんだろうな
255 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/14(日) 01:25:27.31 ID:b1BGxpRAo
遊星がデッキを作った部屋にあったカードは、カテゴリ別に仕分けられたもの。
高レアリティなものや、伝説級のコピーカードもあったが、どうにも汎用性に欠けるものばかり。
(俺の運命力ではこのデッキは回しきれない。もって3ターンといったところ……)
「どうした、遊星。お前のターンだ」
手札は悪くない。デッキは危ういバランスながら、遊星に答えてくれている。
なら遊星もデッキを信じるのみ。デッキトップに手をかけ、カードの脈動を感じながらドローフェイズに入る。
「速攻で決める! 俺のターン、ドロー! フィールド魔法をセット、もう一枚セット。
歯車街が破壊されたことで効果発動。デッキから古代の機械巨竜を特殊召喚する」
「トラップ発動。奈落の落とし穴!」
「まだまだ。フィールド魔法を表に。ハーピィの狩場! そして炎舞−「天玉磯」! デッキから剣闘獣ラクエルを手札に加える。
さらに手札からBF-蒼炎のシュラを召喚。バトルだ! シュラでリローダーを攻撃!」
「次元幽閉を発動。シュラの効果は厄介だからな。通さねえ! だが一体どういうデッキなんだそりゃあ」
「驚くのはこれからだ。速攻魔法、スワローズ・ネスト。シュラをリリースし、デッキから霞の谷のファルコンを召喚。炎舞−「天玉磯」を戻して攻撃!」
ファルコンの剣がリローダーを一刀両断する。狩場によって200アップをうけたファルコンの攻撃力は2200。鬼柳に1300ポイントのダメージが通る。
アドバンテージもライフも鬼柳の戦い方にとってはそう大切なものではない。ボードアドはトップ次第でいつでも回復できる。ライフは投げ捨てるもの。
鬼柳を動揺させたのは、まったく構築の読めない遊星のデッキだ。もともと鬼柳は構造把握に秀でている。
これだけカードを見て、なお構築が分からないなど、そうそうあることではない。
デッキとは決闘者の魂。ならば遊星の心はどうなっているというのか。
スターダストのダイレクトアタックを受ければ諦めがつくのではないか、満足できるのではないか、そう思っていた鬼柳はこの事態に困惑した。
「チッ、随分と攻めが速いな。お前らしくないぜ、遊星」
「いいや、これが俺のデュエルだ。ターンエンド」
256 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/14(日) 01:26:14.24 ID:b1BGxpRAo
「エンドフェイズ、トゥルース・リインフォース。デッキからインフェルニティ・リローダーを特殊召喚。
そして俺のターン、ドロー! インフェルニティ・デーモンを召喚し、カードを1枚セット。リローダーの効果発動。
デッキからカードを1枚ドローする。引いたカードはインフェルニティ・ブレイク。よって俺は500ダメージを受ける。
こいつをセット。ヒャッハー! ハンドレスコンボはこれからだ! ターンエンド!」
「俺のターン、ドロー! 炎舞−「天玉磯」を発動し、剣闘獣ダリウスを手札に加える。休息する剣闘獣を発動」
「そこだァ! カウンタートラップ、インフェルニティ・バリア!
そんなバイト先で頭下げるジャックみてぇなちぐはぐなデッキ、手札交換がなきゃ回るはずねぇだろぉ?」
「ぐっ……。なら手札からラクエルを通常召喚。バトルだ!」
「インフェルニティ・ブレイク! 墓地のバリアを除外し、霞の谷のファルコンを破壊する!」
「ラクエルでリローダーに攻撃!」
「二枚目のインフェルニティ・ブレイクを発動。一枚目のブレイクを除外し、剣闘獣ラクエルを破壊する!」
「メインフェイズ2! 墓地のシュラとファルコンを除外し、ダーク・シムルグを特殊召喚! ターンエンド!」
一見鮮やかなプレイングに見えるが、遊星の運命力は既に限界に近い。
初期手札は使い切り、手札はダリウス1枚のみ。大量のカテゴリが混ざったデッキから有効札を引くのは難しい。
残る運命力を総動員しても、あと1回のドローが限界。次のターンで勝てなければ競り負けるだろう。
「お前がパーミッションを使うとはな。鬼柳、変わったな」
「そっくりそのままお返しするぜ。何を想ってそんなデッキを使う」
「境界を超えて結束するモンスターたちは、俺の信じる絆の結晶。俺の理想だ!
サテライトとシティ、競い合うデュエルギャングとセキュリティ、そしてモーメント反対派と推進派。
この街は多くの対立を抱えている。だが同じ人である以上、分かり合えるはずなんだ。このデッキのように!
鬼柳、俺はお前を理解したい! そして俺を理解してほしい!」
「そんな無茶苦茶なデッキをつかっておいて、理解してほしい、か」
「お前とさえ分かり合えないのなら、この世に絆など無いのだと認めてもいい。だが、お前なら必ず分かってくれる。鬼柳、お前のターンだ!」
途切れそうなロープを必死で支える戦いは、まだ終わってなどいない。
ただその手に持つものが、デュエルアンカーから見えない絆に変わっただけ。
いまにもほどけ出しそうなバランスを抑えつけ、遊星はそのカテゴリ混成デッキを駆る。
257 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/14(日) 01:27:25.48 ID:b1BGxpRAo
「4だ」
「悩んだわりに普通だな」
「遊星は安定感のあるローレベル気味デッキが好きだったからな。ましてこんな危なっかしいデッキ、上級は抑えているはずだ。
かといって事故が怖い構成で長期戦を狙ってくるとは考えづらい。下級による速攻ハイビートを志向している感があった。どうだ、遊星」
「実のところ、このデッキのレシピは頭に入っていない。深く考える余裕なんて無かったからな」
「なら尚更、お前の素が出るってもんだ」
遊星は一枚一枚、カードを鬼柳に見せてめくっていく。
「さあ、答え合わせといこうか」
1枚目、ゴッドバードアタック。2枚目、ライトロード・ビースト ウォルフ。3枚目、剣闘獣の檻 コロッセウム。
そして4枚目、E・HERO プリズマー。鬼柳の推理は見事命中した。
「プリズマーを墓地へ。ウォルフを特殊召喚する」
「当たったったってのにこれかよ。趣味が悪いぜ」
「さらにダリウスを通常召喚」
「奈落の落とし穴、だ」
「バトルフェイズ、ウォルフでリローダーに攻撃! ターンエンド!」
遊星のライフは500。鬼柳のライフは400。共に少しの間違いで死ねる崖っぷち。
遊星の場のハーピィの狩場、鬼柳のセットした大革命返しが機能していないことを考えれば、アドバンテージはほぼ互角。
空には2体のラーが舞い、天上の決闘もまた終わりが近づいている。
降り注ぐ太陽光が干渉し合い、地面に落ちる遊星と鬼柳の影が幾重にも重なり合う。
破壊されたラーの破片が乱反射する光が美しく、二人の舞台を照らしていた。
258 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/14(日) 01:27:55.78 ID:b1BGxpRAo
「俺のターン、ドロー。手札からインフェルニティ・リベンジャーを召喚。
リベンジャーでデーモンをチューニング! シンクロ召喚、A・O・J カタストル!」
「流石鬼柳。この状況でも逆転のカードを引いてくるか」
「デーモンやガンに比べりゃあ物足りないくらいだ。バトル、カタストルでウォルフを攻撃。ターンエンド」
遊星に残ったのは炎舞と狩場のみ。運命力は限界に近く、狙ってのデステニ―・ドローは無理だ。
あとはただデッキを信じてカードを引くのみ。
「俺のターン、ドロー! モンスターをセット。ターンエンド」
遊星は表情を変えずに引いたカードをそのままセット。鬼柳と視線を合わせてターンを終える。
「俺のターン、ドロー! カタストルで守備モンスターを攻撃!」
「セットモンスターはライトロード・ハンター ライコウ。カタストルを破壊する!」
「くっ、トップ勝負がやりたいってか?」
「いいや、これでお前を倒す! 鬼柳、デュエルアンカーの爆破装置を切るんだ。このライコウで、俺はお前に勝つ!」
「やはりお前のデッキは俺には分からねェ。俺とお前は理解し合えなかったってことだ。殺せるもんなら殺してみろ。俺はそれで構わん」
「デッキからカードを3枚墓地へ送る! 1枚目、Sinサイバー・エンド・ドラゴン! 2枚目、ヴォルカニック・バックショット!
頼む鬼柳、爆破設定を切るんだ! 鬼柳ぅううううう!」
「ヴォルカニック・バックショット。墓地へ行った時、相手に500ダメージを与えるカードか。つくづくよく回したものだ」
「今ならまだ間に合う。俺が三枚目のカードを墓地へ送る前に、爆破設定を切るんだ。俺達はこんなところじゃ満足できない!」
「満足、か。ならお前に殺されることこそ満足だ。俺が勝ったところで、聖杯を使うのは悪霊だ。誰も満足なんてできやしねえ。さあ、やれよ遊星」
デッキトップに手をかけたまま、遊星の動きが止まる。言葉を尽くして鬼柳を説得しようとする。
だが鬼柳はかぶりを振り、ただトドメの一撃を促すだけだった。
「やれよ、遊星」
死を覚悟した鬼柳の顔は、不思議と満足感に満ちていた。
生まれ落ちたばかりの子供のように無垢。何の邪念も無く目の前のデュエルを楽しむ顔だった。
遊星は動けない。
259 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/14(日) 01:44:05.99 ID:b1BGxpRAo
今更だけど題名はfate/star lightの方が綺麗だった気がしなくもない。
>>254
もしかしてロットンさんがやってきた修行って……。
決闘小説家のサーヴァントかー。シェークスピアみたいな能力は扱いづらいな。
260 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/14(日) 03:45:31.69 ID:+f+ZqMuAO
4ってなんだ?なんか1個飛んでね?
261 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/14(日) 08:09:36.59 ID:lp5Vvr8SO
もしかして名推理発動した?
262 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/14(日) 09:15:40.00 ID:b1BGxpRAo
あ、やっちゃった。
>>256
と
>>257
の間に1つ抜けてます。
「俺のターン、ドロー。手札の月の書を捨て、因果切断を発動。ダーク・シムルグを除外する」
ハンドレスを防止するインフェルニティの天敵、ダーク・シムルグすらあっさりと除去される。
これが真っ当に組まれたリローダー・パーミッションと、その場で組まれたいわゆる紙束の差。
「リローダーの効果発動。カードをドローする。引いたカードは奈落の落とし穴。よって俺は500ダメージを受ける。
バトルフェイズ、二体のモンスターでダイレクトアタックだ! 喰らえ遊星、俺の怨念をぉ!」
「ぅ、ぐァああああ! だが、感じるぞ鬼柳! お前のフィール! その中に残る絆を!」
「はっ。絆を抱いて爆死しやがれ。カードをセット、ターンエンド!」
もてる力を総動員し、遊星はデッキに手をかける。暴れ馬のようなデッキだが、その分パワーは十分。
逆転の可能性はまだこのデッキの中に眠っている。
「俺のターン、ドロー! 俺はマジックカード、名推理を発動する!
お前は昔から構成把握が得意だった……。見せてくれよ、名探偵鬼柳の推理を」
鬼柳は額に手を当ててしばらく考え込む。
顔を伏せた鬼柳の表情はうかがい知れず。ただ思考時間が流れていく。
「お前はいつだって俺たちのことを真剣に考えてくれていた」
「俺はいま、遊星を殺すために考えてるんだぜ?」
「ああ。だがこの瞬間にこそ、俺達は分かり合える。デュエルってのは、そういうものじゃないか」
263 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/14(日) 21:22:00.83 ID:+f+ZqMuAO
鬼柳シュラの効果警戒してたけどたぶん他のBF入ってないよね
264 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/21(日) 01:50:32.19 ID:FvVrhmuNo
「俺は俺が伏せた十六枚の魔法・罠を全て破壊する!」
連鎖する爆発は空中に留まらず、フィールの波に触れたフィールは瞬時に爆ぜて次なる波を生む。
この場で行われている決闘は、セイバーとランサーのものだけではない。
ならばそのもう一つの決闘もまた、爆薬となりうる。
そのフィールの性質は炎。デュエルモンスターズの全てを燃料源にして燃える地獄の炎。
熱は気流を作り、逆巻くフィールが吹きこんで力の方向を制御する。真に力ある者は他者の力をも自由に繰る。
エクステンド・フィール・バニッシュ。
(まあいい。この程度で死ぬならば、どちらにせよ聖杯戦争には勝ち残れん)
星竜王のフィールが遊星と鬼柳のデュエルに触れた。
地は大口を開け、空気が牙を剥く。熱が空間を支配し、一瞬にして戦場は燃え上がる。
足場は崩れて二人は落ちる。同時に周囲の壁さえも崩れ落ち、同じ速度で落ちてくる。
熱風はひと撫でで肌を焼き、かゆみと痛みの境界線上、破損した組織から染み出た成分で肌が腫れ上がる。
「遊星!」
鬼柳がデュエルアンカーを引っ張って遊星を引き寄せる。
空中で出来たのはそれだけ。フィールの嵐の中で動くには、二人とも決闘に集中し過ぎていた。
不意打ちの攻撃に対応できず、鉄筋コンクリートの中に飲み込まれる。
265 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/21(日) 01:51:38.05 ID:FvVrhmuNo
「鬼柳! 鬼柳!」
遊星が起き上がった時、まだデュエルは終わっていなかった。
プレイヤーが死ねばデュエルは終わり、デュエルアンカーは外れる。鉄骨とコンクリの中に埋まって遊星の動きを封じるアンカーは、遊星にとって希望だ。
「ぅ……遊星……。俺はこんな結末じゃ満足できねぇ。俺を殺すなら、デュエルで殺せ」
ラーが破壊されたことで、周囲は急速に暗くなっている。空を舞い散る黄金色の粉雪が消えれば、ウェスタンルールによってアンカーが爆発する。
加速的に明度を下げていく視界。コンクリ片を掘り起こす作業さえ厳しい。
「遊星! 俺の望みは、サティスファクションのラストデュエルを終わらせることだった。そのために舞い戻った。
やりきれない最期をやり直すために、俺は魂を売った。逃げるなんてゆるさねぇ。今度こそ、満足させてもらう」
「鬼柳! 鬼柳!」
「このデュエルで分かった。お前は一人よがりな満足のために、自分を捨てようとしただけ。俺と同じだ」
「鬼柳、違うんだ。俺達は二人とも間違っていた。仲間を救うのは、自己犠牲なんかじゃない!」
「そうだ。だから遊星、その手で三枚目のカードを墓地に送るんだ。俺が残した呪いだと思って、一生苦しみやがれ」
「俺には、誰も救えないというのか……!」
ラーの欠片が消え去る直前、遊星はその手で三枚目のカードを墓地へ送り、ライフが0となった鬼柳のデュエルアンカーは爆発した。
266 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/21(日) 01:54:19.48 ID:FvVrhmuNo
爆発で鬼柳の上に積み重なった鉄筋コンクリートが吹っ飛び、鬼柳の身体が露わになる。
胸と腕は爆発で肉を持っていかれ、骨が露出している。焼け焦げた筋肉の間から覗く煤けた白には、生気の欠片も感じられない。
鬼柳の死体が、起き上がった。
「我が手札よりインフェルニティ・ゼロを守備表示で特殊召喚する。このモンスターはライフが0になるときのみ特殊召喚できる。
このモンスターがフィールドに存在する限り、我はライフが0となっても敗北せず、このモンスターは戦闘では破壊されない。
我がダメージを受ける度、インフェルニティ・ゼロにデスカウンターを置き、カウンターが3つ溜まったとき、このモンスターは破壊される」
「何だ、何が起きているんだ」
「我がターンはこれにて終了である」
黒く染まった瞳で遊星を見つめる鬼柳。そこには何の感情も見受けられない。
これまで悩み、苦しんできた色は消え、しかし清々しささえも残っていない。恐ろしいまでの、無。
胸から血が滴り落ち、白い骨と紅い血と黒く焦げた肉と、エジプトの国旗のような色合が冗談のよう。
力の入っていない体はいまにも崩れ落ちそうで、立つために最低限の部分のみに力を入れた体勢は操り人形を思わせる。
「3分立ってそれでもターンが始まらないようのであれば、再度我がターンに入らせてもらう」
「お前、鬼柳じゃないな……?」
「いかにも。我は冥界よりの使者。契約に基づき、この男の身体貰い受ける」
空間に溶け込み、デュエルを覆い尽くすおぞましいフィール。
血管の内側から身体を圧迫する闇。魂と身体の隙間にバールのようなものを差し込むが如き蹂躙。
サティスファクションの闘いが無ければそれだけで倒れていた。
サティスファクションの経験があったからこそ、何をすればいいか分かる。
サティスファクションの絆があるからこそ、まだ闘える。
「鬼柳を助けるためには、デュエルを続けるしかない……!」
267 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/21(日) 02:04:55.63 ID:FvVrhmuNo
相手の場のモンスターはインフェルニティ・ゼロ一体のみ。互いに手札は無し。
ここで剣闘獣を引けば、共通リクルート効果でムルミロを出してゼロを破壊、デュエルに勝利にできる。
「俺の、ターンッ! ドロー!」
だがこのデッキは、遊星の運命力のリミットを既に超えている。
「俺は手札から……。剣闘獣ムルミロを召喚。バトルだ」
バー
デッキと魂が乖離する。カードに触れる度にデッキの軋む音が耳奥に響く。
「インフェルニティ・ゼロは戦闘では破壊されない」
デッキ構築とは、軽々しく行えるものではない。
その場でデッキを組む刹那派のメタデッカーでさえ、核か潤滑油のどちらかは使い慣れたものを用いる。
ストラクチャーデッキから取り出したばかりのサイクロンよりも、生死を共にしたツイスターを優先するべきなのは明らか。
デッキの瞬間構築を行えるのは、構築屋を初めとする特殊技能持ちだけである。
これまで一度も触れたことの無いカードで、安定性に欠けるデッキを組むなど、狂気の沙汰。
ここまで回せていただけでも奇跡に近い。拾ったカードと慣れ親しんだ遊星ならではの技。
「バトルフェイズ終了時、ムルミロをデッキに戻して効果発動」
(あのセットカードはここまでまったく動きを見せていない。ピンポイントカウンター、アヌビスの裁きか何かか?
リローダーは手札が0でなければ動けない。魔法・罠ゾーンを圧迫するようなカードは採用しづらいはずだが……。
因果切断を見るに、他にサンダー・ブレイクなどの手札コストを要するカードを入れていればハンドレスは維持できるか)
「思考時間は……」
「分かっている!」
(鬼柳は俺を待ち伏せしていた。なら同様に俺の持ち物、デッキがあった保管庫の方もチェックしていてもおかしくない。
俺のデッキを持ち出したのが鬼柳なら、あのセットがスターライトロードの可能性も。なら最善のプレイは、ここでベストロか?
いや、落ち着け。鬼柳は公正な勝負を求めていた。それにランサーの能力なら、そもそも事件の発覚すらしない)
「俺は剣闘獣ベストロウリィを守備表示で特殊召喚。お前の場に唯一残ったセットカードを、破壊する!」
「よかろう。大革命返しを墓地へ送る」
「俺はこれで、ターンエンド!」
268 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/21(日) 02:11:58.95 ID:8pzpFnyDO
もう寝るって時に初遭遇とか頑張れお休み
269 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/23(火) 01:03:51.00 ID:e7CB6LO+o
「我がターン。ドロぉおおおおお」
黒い瘴気がデッキを包み込み、その膜を切り払うようにドローが放たれる。
視界を埋め尽くす黒が飛散し、そして溶けていく。
空気が重みを増し、遊星の身体にのしかかる。呪詛が肌を侵蝕し、掻痒感が全身に広がる。
だが痒いのは初めだけ。次いで無数の蟲が肌を食い破るような錯覚を起こす。
悪霊のドローフェイズを、遊星は歯を噛みしめて耐え忍んだ。
怨念に満ちたフィールが遊星を襲う様をじっくりと眺め、長いスタンバイを経てメインフェイズ。
「手札からリバースカードをセット。ターンエンドである」
そのターンは意外なほどあっさりと終わった。
「俺の、ターン! ドロー!」
剣闘獣を引きさえすれば、ガイザレスが作れる形。大革命返しを破壊した今、ガイザレスの効果が通る可能性は高い。
だが、やはり、歯車がかみ合わない。デッキが、カードが、身体が、決闘が。全てが重くのしかかる。
「剣闘獣ベストロウリィを攻撃表示。バトルだ」
「トラップカード、インフェルニティ・フォース。ラクエルを破壊する!」
一挙手一投足に合わせて暗黒のフィールがまき散らされる。
血が沸騰して内側から身体が焼き切られるような感覚の中、遊星はこのターン引いたカードを発動する。
「速攻魔法、スワローズ・ネスト! ベストロウリィが破壊されなければ蘇生効果は適応されない。
俺はベストロウリィをリリースし、デッキから聖鳥クレインを攻撃表示で特殊召喚する! 1枚ドロー、セット、ターンエンド!」
270 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/23(火) 01:04:19.76 ID:e7CB6LO+o
「我のターン。ドロおおおおおおおお!」
ドローフェイズ。デッキを包み込んだ球はドローと同時に爆ぜ、周囲を無差別に、平等に汚染する。
遊星の視界が一瞬真っ暗になり、そして闇は消えていく。
「メインフェイズ!」
鬼柳の姿をしたソレの一挙手一投足のたびに、遊星を暗黒のフィールが襲う。
「終末の騎士を召喚。効果を発動」
遊星の視界に、ドローフェイズに包みこまれた闇が焼き付いて離れない。
閉じた瞼の裏側で無辺際の黒が広がっている。鉄の意志をもって眼を開けても、すぐに瞼が落ちてくる。
「デッキよりDT ナイトメア・ハンドを墓地へ送る」
デュエルアンカーに絡まったD-ホイール。鬼柳を助けるための挑戦でフィールを使った。
バランスの崩れたデッキを回すために運命力を使い果たした。
暗黒のフィールに襲われて精神力をすり減らした。
それでも遊星は地面に刺さった鉄骨を背に、体重を預けてなんとか立ち続ける。
「我はこれにてターンエンド」
あっさりとしたターンだったが、遊星に与えたダメージは甚大だ。
「お……おれの、俺のッ! ターン!」
必死に開いた眼で、一瞬カードを捉えて引いたカードを把握する。
あとは眼を瞑っていても、自然と動ける。カードプレイは体に染み込んだ動作。
「手札から、モンスターをセット!」
「ほう。眼に希望の色が見えた。良いカードを引いたと見える。ライコウか何かか?
よい、よい。これからその希望をへし折ってやれるとは楽しみだ」
「俺の希望はこれからだ。バトルフェイズ、クレインで終末の騎士を攻撃!」
「ダメージが発生したことにより、インフェルニティ・ゼロにデスカウンターを1つ置く」
「ターンエンド!」
271 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(静岡県)
[sage]:2012/10/23(火) 17:55:13.33 ID:zH/OKFbro
頑張れ
272 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/23(火) 20:15:51.01 ID:e7CB6LO+o
「ふふふ……我がターン。ドロぉおおおおおお!」
デッキを闇が包み込む過程が省略される。
それはデッキを自分のものに書き換える動作。相手への直接攻撃とは別の、準備動作。
今や全てのフィールは攻撃に向かい、遊星の身体の奥深くまで闇が根を張る。
全ての熱が吐き出され、身体は一瞬の炎獄ののち、エネルギーを使い果たした身体は死人のように冷たくなる。
「我が墓地にはリローダー2体とデーモン、リベンジャー、カタストル、ナイトメア・ハンド、終末の騎士の七体が存在する。
よって手札より終わりの始まりを発動。リローダー2体、リベンジャー、カタストル、終末の騎士を除外し、カードを三枚ドローする」
それはインフェルニティに入るカードではない。
リローダーパーミッションはパーミッションでありながらライフに制約を負うデッキ。中期戦を想定した戦いが基本。
そして手札を0にするために魔法・罠が多くなり、墓地にモンスターが溜まることは少ない。
終盤までは使えない終わりの始まりは、魔法罠ゾーンを圧迫するためにハンドレスを阻害しかねず、採用は決してありえない。
「手札より魔法カード、死者蘇生。墓地のナイトメア・ハンドを特殊召喚。
このモンスターが特殊召喚された時、手札よりレベル2モンスターを特殊召喚する」
その動きは、もはやインフェルニティではない。
「闇の仮面を特殊召喚。そしてレベル10のナイトメア・ハンドで、レベルの2の闇の仮面をダークチューニング。
漆黒の帳下りし時、冥府の瞳は開かれる。舞い降りろ闇よ! ダークシンクロ! いでよ、ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン!」
かつてとある決闘者が、異世界におけるレベル差別を是正するために、レベルをもたないモンスターを生み出そうとした。
最高の錬金術師の名に違わぬ才能をもった彼は、二つの道を見出した。
一つ。古代エジプトにおける究極奥義、バーとカーの融合。語り継がれし力に着想を得て生み出されたランク。
そしてもう一つがダークシンクロ。幽世と現世と繋ぐマイナスレベルである。
その過程において生まれたシンクロが低レベルモンスターに可能性を与えたために、ダークシンクロが世に出ることは無かった。
しかし彼の死後も冥界の扉は開いたまま。悪霊の顕現はたやすくなり、以後の聖杯戦争の周期は著しく短くなった。
「手札より魔法カード、おろかな埋葬。デッキより地縛神 Ccapac Apuを墓地へ送る。
そして我はワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの効果を発動。地縛神 Ccapac Apuを除外し、その力を得る。
我はいまここに蘇りし! 刮目して見よとは言わぬ。ただ静かに瞳を閉じ、我の代わりに冥界へ落ちるがよい」
ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの全身の目が開き、黒い光を解き放つ。
眼から出た光線が空中に絵を描く。ナスカの地上絵、巨人の図。輝く闇がかの封印の陣を描き、その力を呼び覚ます。
百の瞳が静かに閉じられたのちも、光はそこに残り胎動する。龍が羽ばたいてその光に飛び込み、そして終末の騎士をすり抜けて遊星へ向かう。
「ワンハンドレッド・アイは直接攻撃効果を得た。バトルだ。貴様にダイレクトアタック! 残念だったなぁ、セットモンスターは踏まん」
「トラップ……発動。和睦のッ使者!」
「だがフィールは受けてもらう!」
最後に残った力で遊星は和睦の使者を発動する。だがダメージは通らずともフィールは有効。
遊星はついに倒れた。受身を取ることさえできず、瓦礫の作る凹凸が背中に痛く。その痛みさえさらなる痛みで霞んでいく。
「余興といえど手心は加えぬ主義でな。我が最強の一撃をもって、その魂を完全に砕かせてもらう」
遊星の瞳は閉じられ、その眼球は闇をのみ写す。限界に至った体は冥界に魂を譲り渡そうとしていた。
「ランサー。貴様が集めた人柱、今こそ我に捧げよ。
リバースカードオープン、闇次元の解放。除外された地縛神 Ccapac Apuを特殊召喚する!」
ワンハンドレッド・アイの飛び去った後で、奇妙な、石造りの心臓のようなものが鼓動を始めている。
いつしか、周囲は完全な闇に閉ざされ、あたりに散らばっているはずの瓦礫と鉄骨ですら見えない。ただモンスターとプレイヤーだけがはっきりとある。
273 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/23(火) 20:16:16.46 ID:e7CB6LO+o
ラーを破壊されて自由落下に身を任せていたマリクを、レッドデーモンが咥え上げる。
地上に降りたマリクはデッキを差し出したが、星竜王はそれを断った。
「受け取れセイバー。ボクのアンティだ」
「いや、マスター達の闘いが面白そうなことになっている。せっかくだ。お前も見物していけ」
「なに……?」
倒壊した建物の残骸の上、二人のサーヴァントは決闘の行く末を見つめていた。
鬼柳が立ち上がり、暗黒のフィールにデュエルが支配されていく様を見ていた。
「セイバー。何のつもりだ。マスターを捨てる気か」
「この程度で倒れるようならそれもいいかもしれんな」
「セイバー! ボクはボクのマスターを助けたい!」
「ならん。出ていくようなら今勝者の権利を行使し、アンティの提出して消えてもらう」
「くっ……! お前は何を考えているんだ!」
神と人の差。遊星は暗黒のフィールを受け続け、ついに倒れた。
274 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/23(火) 20:17:44.57 ID:e7CB6LO+o
「ランサー。貴様が集めた人柱、今こそ我に捧げよ。
リバースカードオープン、闇次元の解放。除外された地縛神 Ccapac Apuを特殊召喚する!」
鬼柳の眼が、片方は倒れた遊星を見つめたまま、もう片方だけがぐるりと回ってマリクを睨む。
闇に包まれた球が一点で開き、その向こうにマリクが立っている。
「お前はボクのマスターじゃない」
「初めからこの男など我が蘇るための道具にすぎぬ。聖杯戦争への参加を望んだのは我の方だ」
「だがボクが力になりたいと思ったは鬼柳京介だ! 彼はボクだ! 彼を裏切ることはボク自身を裏切ることになる!」
「英霊となりながらつまらぬことに拘りおって。ならばよい。令呪をもって命じる。我に贄を捧げよ」
マリクは呻き声をあげて抵抗し、そして自らの肩に千年ロッドを突き刺した。
骨の間を抜けて貫通した千年ロッドの先から血がしたたり落ちる。
「ほう。令呪に抵抗するとは」
「千年ロッドの力は精神操作。ボクは今ボク自身に誓約を加えた。お前には決して従わないと……!」
>>277
1.「重ねて命じる。我に贄を捧げよ」
2.「令呪をもって命じる。自害せよ、ランサー」
3.「ならばデュエルで従わせるまで!」
275 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/23(火) 20:22:35.49 ID:aFaKtqago
3
276 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関西地方)
[sage]:2012/10/23(火) 20:32:44.62 ID:qfhBtcCf0
1
277 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/23(火) 20:46:23.44 ID:l92WojFR0
3
278 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/10/23(火) 20:49:37.99 ID:e7CB6LO+o
ようやく満足編が終わるかと思ったらまたデュエルか……!
>>263
ゼピュロスゲイルは入ってると思うんだ。というかゼピュロス使おうかと思ってたら遊星が倒れた。
>>268
>>271
ありがとう。頑張ってる。
279 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/25(木) 17:42:07.91 ID:t1ac+K0DO
「ストラクから抜いたばかりのサイクより生死を共にしたツイスター」に感動してツイスター入れようと思ったけど
よく考えるとツイスターと生死を共にした経験はなかった
280 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/10/27(土) 20:11:57.97 ID:UNhx0RF0o
こんなもの書いてました。
http://p-amateras.com/text/10837
281 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(東海)
[sage]:2012/10/29(月) 04:20:50.13 ID:2zPPA/iAO
腕吹っ飛ぶってハッタリじゃなかったのか
満足神コピーした百眼ってエンドフェイズに死なね?まぁそもそも百眼の効果がOCGアニメごちゃ混ぜのよく分からない効果になってるわけだけども
アニメ効果だとコピー効果にコストは無いし、OCG効果はレベル6以下しかコピー出来ない
282 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/03(土) 23:11:17.56 ID:9qwDgYPgo
>>281
ふぇぇ、アニメ百眼って除外しないで全部の闇の効果コピーできたのかー……。
これはやってしまった。どう修正するべきか分からない状態だから百眼の出番はこれっきりにするか……。
ギャラクシー・クイーンズ・ライトにチェーンギブ&テイクでレベル下げて素材五体クェーサーの補助にする未来なんて無かった。
283 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 23:11:47.54 ID:9qwDgYPgo
「ここは……」
四方八方どこを見ても真っ暗闇。それでいて自分自身と、そのD-ホイールだけははっきりと見える。
暗黒の世界の中を、遊星は走っていた。
いくら走っても代わり映えの無い景色は、徐々に間隔を狂わせていく。
どれだけの時間走ったのか、どの方向に走っているのか。そもそも本当に前に進んでいるのか。
地面からD-ホイールへと伝わる振動も鈍ければ、風もほとんど感じられない。
爽快感に欠ける疾走を、疾走とは飛ばない。
次第にアームハンドルの握りが甘くなっていき、スピードが落ちていく。
もっとも、アクセルが本当にスピードに影響を与えているのかさえ、この世界では定かではないのだが。
デュエリストの精神とD-ホイールのスピードとに関わりがあるという話に、未だ科学的説明はなされていない。
しかしD-ホイーラーであれば、理屈抜きで納得できることだろう。
全方位に万遍なく漂う闇が、スピードと共に、遊星の心が擦り減らしていく。
284 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 23:12:16.18 ID:9qwDgYPgo
どれほど走り続けただろう。それは突然現れた。
「その戦車に乗った状態が、お前のありのままの精神か。なるほど良い戦士だ」
周囲の平たい黒とは一線を隔す、重厚な黒。奇妙な紋様を描く青光のライン。
超大な体はおぼろげに人影を模ったもの。闇の向こうから、黒い巨人が姿を現した。
「だがその魂、我が糧にさせてもらう」
巨人の右腕が伸びてくる。
遊星号を加速させて回避すると、遊星の後背の地面を掴んで右腕が戻ってくる。
遊星の上で、それまで黒い地面であったものが、泥のように粘着いた液体となって落ちてくる。同時に巨人の左腕が迫る。
「何がどうなっているんだ!」
黒い泥が遊星号を包み込む。粘性の液体が身体の動きを束縛し、泥に視界を阻まれて前が見えない。
大きくカーブを切って遠心力で振り払おうとするが、泥はD-ホイールにまとまわりついたまま静かに地面へと垂れていくのみ。
カーブがたまたま回避行動に繋がり、巨人の左腕が地面に落ちる。前のめりな姿勢となった巨人は、そのまま倒れ込んでボディプレスと仕掛けてきた。
視界を奪われた遊星は巨人の攻撃に反応できない。
285 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 23:13:14.16 ID:9qwDgYPgo
「人の男に手を出すなんてはしたないわよ? そういう趣味でもあるのかしら?」
一陣の風が、遊星号の泥を吹き飛ばす。遊星号を吹き飛ばす。巨人をも吹き飛ばす。
浅黒い肌にオレンジ色のボディペイント。スレンダーな身体の上に黒い薄布をまとった女性。
その背からは、翼の骨格だけを模ったような黒い線が飛び出している。女の身体よりも大きな黒い羽根。
「ボウヤ。あんな大きいだけが取り柄の奴なんか気にすること無いわ。あなたはテクニックで勝負するタイプでしょ?」
風に流されて空中で制御を失う遊星号。女が空を飛び、遊星号に追いついて後部にしがみ付いてくる。
弧を描く後部のテールに身体を密着させ、抱きしめるようにして身体を固定。その背の翼が遊星号を飛翔させる。
翼の一羽ばたきで遊星号は上空へ舞い上がり、二度目の羽ばたきで吹っ飛んでいく巨人の頭上を飛び越していく。
「何故我と敵対する。もうすぐその男は死に、デュエルは終わる。そのあとであればお前も楽に契約を結べように」
「ここで終わらせたらもったいないじゃないの。もうちょっとでフィニッシュなのよ?
それにあなたのサーヴァントは既に負けているわけだから、ボウヤを私に差し出してくれるわけないじゃない。
マスターを殺し切ってセイバーを消し去る以外、あなたが聖杯戦争を続ける方法なんてないんだから」
「ふん。顕界すらまともにできていない小鳥風情が囀りおって」
一度地に落ちた巨人が立ち上がり、空へ向かって手を伸ばす。山が隆起していくように、ゆっくりと。
女の翼が空気を薙ぎ、遊星号の高度があがる。しかしそれに合わせる様に、巨人の腕もまた長く長く伸びていく。
巨人自体が大きくなっているのか、それとも距離感が狂っているのか。どれだけ高く逃げても腕は迫り続け、眼下の巨人はなお大きい。
「お前は一体誰なんだ」
「あら心外ね。誰でも知ってるスーパースターのつもりだったんだけど、私の翼に見覚え無いのかしら」
「悪いが後ろを見る余裕が無くてな」
「ふふっ。ごめんあそばせ。じゃ、ちょっと激しくいくから」
言葉通り、翼が大きく羽ばたいた。後ろへ反り、そして前へ。翼が遊星号を包み込んでは解放し、その都度高く高く舞い上がる。
286 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/03(土) 23:26:55.55 ID:9qwDgYPgo
「さ、気分はのってきたでしょ? これは戦いなんだから、ちゃんと武器を持っておかないと」
「武器……?」
「そう。あなたの一番大切なもの」
遊星号のモニターが相手フィールドを映している。フィールド魔法、闇。地縛神 Ccapac Apu。巨大化。
デュエルディスクが輝いている。どうしてこれまで気付かなかったのか不思議なほど強く、デッキが遊星を呼んでいる。
「来い、スターダスト……」
だがそのエクストラデッキに、スターダスト・ドラゴンのカードは無かった。
「あー、もう変なとこで律儀なんだから」
地響きが空気にまでも干渉する。巨人がジャンプした。前方に立ちはだかる巨人。急な滑空への移行が遊星号を揺さぶる。
空気の層が遊星号をあらゆる方向から責め立て、錐揉み回転が巨人のわきの下を潜り抜け、急上昇から円を描いて体勢を立て直す。
その過程でデュエルディスク部分に強く頭を打った遊星の身体が、力無く後ろに倒れていく。
女の手が遊星の眼を覆う。耳元で響く言葉がぐるぐる回り、何を言っているか分からない。
ただその手の冷たさが気持ち悪かった。
287 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/08(木) 23:12:05.69 ID:SX8ihfmvo
頭が回る。真っ暗な世界をさらに濃い闇が回る。
周囲の黒をあざ笑うかのような深い深い黒が、染み込んでくる。
「女を侍らせておいて先に寝ちゃうなんて男が廃るわよー? さ、もーちょっとがんばろっか」
遊星の身体が意識せずして動く。いつの間にか、遊星号は空中を走っていた。
空に奔る光のライン。ナスカの地上絵を模った閃光が宙に道を作る。
光の上は存外に走りやすい。抵抗は少なく、しかして確かな硬さを持つ。車輪への負担を最小にしたまま、加速もカーブも自由自在。
闘うためのフィールド。それは完璧なコース。
後ろから迫る巨人の腕を、急加速で避ける。前からもう一方の腕。コースの前後から巨人の手のひらが迫る。
「気にしないで、そのまま突っ込んで」
コース自体が傾く。加速、加速。風の無い世界でも、三半規管を通じて加速度が感じられる。
傾斜の激しくなった光の道から、遊星号が飛び出した。
向かってくる巨人の腕に飛び移り、腕に沿って急降下。巨人の頭部に向かって駆け降りる。
「その調子よ。やっちゃいなさい」
自分の意思で動いているのか、それとも体が勝手に動いているのか分からない。
女の羽ばたきと重力エネルギーが遊星号に未知なるスピードを与える。ただ速さが、加速度が心地いい。
足場としての役割を無くした光の地上絵が高度を落とす。無限の光量を吐き出しながらの降下は、轟風を伴ったヘリの降下の如く豪快。
事実それは単に仕事を無くして地面へ戻っていくための動きではないのだから。
巨人の周囲を光の地上絵が取り囲む。光が収束する。黒一色であった世界を朱光が染め上げて、オレンジの光が巨人の両腕を拘束する。
遊星を捕まえようと空に伸ばされた両手が、光の円環によって捕まった。いまやそれは遊星号のための格好のレーン。
遊星号が加速する。加速する。加速する。
288 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/08(木) 23:12:47.22 ID:SX8ihfmvo
千年ロッドの短剣部分を引き抜く。刃の薄い発光はすぐに静まり、後には周囲の闇に良く似合う鮮血の色のみ。
短剣部分を杖に戻せば、溢れた血が短剣の仕込まれた部分から流れ出る。
「我に刃向うか。愚か者めが。聖杯が欲しくないのか」
鬼柳に憑いたソレが、マリクに闇の塊を投げ付ける。
マリクの視線に合わせてマリクのカード達が展開し、盾となって攻撃を止める。
マリクが肩から千年ロッドを引き抜き、その先を鬼柳に突き付ける。
「ボクはかつて、復讐に取り憑かれて己を見失ったことがある」
「恨みこそもっとも強いエネルギー。死者を現世に留めるほどの力。人の原動力である。
恨みは過去形とは成りえない。心の蓋の下で増殖肥大するのみ。何故復讐を捨てようとする。
復讐は復讐を生む。それは無限の力。無限の器たる聖杯をもって叶えるにそれほど相応しい願いは無い」
「違う。人を現世に留めるのは絆の力だ。僕は絆で生きるファラオを見た! 彼に救われた! だから今度は、僕が救う!」
「絆とは苦痛を分かち合うもの。複数人で共有した闇が軽く感じられているだけのこと。絆とは闇の温床に他ならぬ。
なればこそ、貴様の闇! 共有してやろう! 心の底をさらけ出せ、ランサー!」
289 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/08(木) 23:16:27.02 ID:SX8ihfmvo
鬼柳が走る。一歩、二歩、三歩。異様に歩幅の長い走りによって距離を詰めきり、デュエルディスクでカードの盾を叩く。
自身のカードによって死角になっているはずの全面からの攻撃。だが音に注意すれば対応は可能。
マリクの前面の盾が左右に分かれ、カウンターの形で千年ロッドが突きだされる。心臓に向かって一直線。
同時、鬼柳の足が足元の瓦礫を穿つ。打ち砕かれた破片が飛び散り、千年ロッドを弾いて軌道を逸らす。闇に包まれた足元が見えているかのような動き。
破片は鬼柳自身の身体にも突き刺さった。骨が剥き出しの胸に刺さるコンクリ片が痛々しい。
また足技は千年ロッドを逸らし切るには力不足。鬼柳の脇腹を掠めた千年ロッドは、確かにその先端の左側に鬼柳の血を重ね塗りしている。
千年ロッドのウジャト眼の左右から突きだした円錐形は、肉を抉るためのものなのだ。
一方のマリクも、デュエルディスクによる殴打で大ダメージを受けている。自らの千年ロッドでギアスと共に突き刺した左肩。
その左肩に追いつきをかける形で打撃が入った。千年ロッドで内部が傷つき、デュエルディスクの打撃で外部が傷つく。
悪霊に屈しない、という千年ロッドによる誓約が無ければ左腕が使用不能に陥っただろうほどのダメージ。
「このまま戦い合えば、共倒れになりかねないぞ」
「決闘者を従わせるなら、やはりカードをもって征すが上策か」
急な動きが鬼柳の瀕死の身体を苛んでいる。筋肉の柔軟性の限界を超えた走り。決闘盤の振り下ろしと同時の足技。どちらも負担が大きい。
デュエルアンカーの爆発を受けた左手首の肌がデュエルディスクの装着部と擦れあい、皮が剥がれ落ちている。
セイバーとの戦いがマリクは消耗している。周囲に浮遊するカードの枚数は、遊星に奇襲をかけた時の半分以下。
コピーカードとはいえ神。操るには相応の力を必要とした。精神的、肉体的に疲労が激しい。気を抜けばいつ意識をなくしてもおかしくない。
290 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/08(木) 23:19:47.22 ID:SX8ihfmvo
「ならばデュエルで従わせるまで!」
鬼柳の右腕に闇が凝縮してデュエルディスクを作り上げる。
刺々しいデザインだが、真黒のデュエルディスクは周囲の瘴気に溶け込んでその境界線が見えづらい。
左腕に遊星とのデュエルに使用していたデュエルディスク。右腕に暗黒のデュエルディスク。決闘盤の二刀流である。
「望むところだ! 僕はこのデュエルに、僕自身と僕の支配下のセキュリティ隊員の魂を賭ける!」
「良きかな。我はこの決闘に、我自身の魂を賭ける」
本来なら死に至るほどの傷を無視して身体を無理矢理に操っているため、動きに制約のかかる地縛神。
自分自身を突き刺した傷がまだ癒えておらず、左肩から流れ出た血で黒いマントが濡れて肌に張り付いているマリク。
フィールドはもはや完全に瘴気包まれ、互いの姿以外は見通せぬ闇の中。
崩れた瓦礫によって不安定かつ障害物の多い足場は、視覚によっては捉えられず、危険性を大きく増している。
それ自体が闇の塊。周囲に纏った闇で姿を隠す地縛神。墓守の黒衣によって闇に紛れ込むマリク。
満身創痍。互いに枷をはめられた状態での決闘、始まりである。
>>293
1.デュエル!!!
2.ワンショットラン!
3.ファイティングデュエル!
4.ディアハ!!!
291 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/08(木) 23:27:30.56 ID:4iDLLXzoo
1
292 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
(関東・甲信越)
[sage]:2012/11/09(金) 00:02:41.70 ID:UCF2mz2AO
3
293 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/11/09(金) 00:43:22.78 ID:sMxxXQ88o
4
294 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/28(水) 00:02:22.57 ID:X0zr4YQgo
「「ディアハ!!!」」
動き出すのは地縛神が早い。彼が選んだのは彼自身たるCcapac Apuと既にフィールドにいるワンハンドレッド・アイ・ドラゴン。
新たなカードを出すまでも無く、遊星とのデュエルで使用していたモンスターを流用してのスタート。
マリクが使うモンスターを決めていたとしても、間に合うはずなどない。
だからマリクは召喚を後回しにして、闘いの開始と同時にワンハンドレッド・アイの攻撃に備えた。
地縛神 Ccapac Apuの効果を得ているワンハンドレッド・アイはモンスターを無視して決闘者に攻撃を仕掛ける。
本来ならモンスター自体が盾となるはずの召喚行為だが、今のワンハンドレッド・アイを前にしては隙を作るだけ。初撃を捌かずして召喚は行えない。
マリクは千年ロッドを構えてワンハンドレッド・アイの攻撃を待つ。
「深淵を覗き込め! ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの攻撃! インフィニティ・サイト・ストリーム!」
翼を広げ、百の瞳が黒く輝く。はばたき。風が砂塵を巻き上げる様は闇の中では見えず。
マリクの目に砂が入り、思わず目を閉じる。百の邪眼から光線が放たれる。
光の速度を超えるものなどそうそうありはしない。サーヴァントといえど物理法則の根本を越えることは叶わず。
だが発射される前に射線上から逃げれば回避は可能。銃器型決闘盤の流通した現代においては基本スキルだ。
反射的に飛ぶことで光速の攻撃を避けるのは見事。だが足場の見えない闇の中での跳躍だ。マリクは着地に失敗して体勢を崩す。
足場がぐらつく。足が落ちる。体が落ちる。その隙を逃すはずもなく、次の一撃が来る。
「他愛ないぞランサー」
地縛神の力を得た攻撃は対象物以外を通り抜ける。モンスターを盾にすることはできない。
体勢を崩した瞬間を狙い打った一撃に対して回避行動を取る余裕は無く、また既にダメージの多いマリクが一撃受けることは致命的。
そのまま召喚に足る精神集中を行う余裕を与えられずに連続攻撃を受ける未来は明らかだ。
百の瞳すべてがマリクを映し、発光によって網膜の中のマリクを消し去る。それは次の出来事を予告しているようだった。準備動作は一瞬。
「ボクは痛みを知っている」
「安心するがいい。完全な闇に呑まれた後、痛みに悩む必要などなくなるのだから。インフィニティ・サイト・ストリーム!」
そのかわされるはずの無い光撃が、かわされる。
「人を痛めつけることを学ぶ時、最短の学習法は己の身体を使うことだ。ボクは人の壊し方を知っているし、壊れないラインを知っている」
万力魔神バイサー・デス。対象の頭を締め上げる拷問モンスターの一体。空中に浮遊する万力。
マリクは自身の頭をバイサー・デスで締め上げ、バイサー・デスの浮遊能力で地面すれすれに浮遊することで転倒を回避。
バイサー・デスを操って空中を飛ぶことで攻撃を回避したのだ。
295 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/28(水) 00:03:20.26 ID:X0zr4YQgo
「苦しみを除くことは万人の目標のはずだ。何故わざわざ安らかなる眠りを拒み、自らを苦しめる」
「ボクの墓守としての役目は王の眠りを守ることじゃない。王の目覚めを助けることさ」
バイサー・デスに振り落とされないためには、それだけ頭を強く締め付けて固定する必要がある。
頭蓋が砕けるや否やの臨界点。常人ならとうに気を失うことの苦痛。
それをもろともせず、マリクはバイサー・デスによる浮遊で地形のデメリットを打ち消して闇の中を駆け抜ける。
相手に向かって突進、ハンドレッド・アイによる迎撃射撃にすぐさま反応し、宙返りしたマリクの下を光線が突き抜けていく。
軌道をバイサー・デスに任せたマリクに空中と地上の区別は無い。華麗な回転と同時の前進。
「だからボクは、マスターの目を覚まさなくちゃいけない!」
回転を力を乗せて、千年ロッドの殴打。それを鬼柳の右腕が受け止める。骨を犠牲にしたそれを防御と言っていいものか。
攻撃を止めたことで攻守は逆転する。鬼柳の蹴り。上空へ逃れるマリク。
鬼柳は蹴り上げた足と対照的に上半身を逸らし、そのまま逆立ちになって両腕で身体を支え、そして腕の力で跳躍する。
既に折れた右腕といえど、地縛神が操る分には筋肉さえあれば十分なのだ。鬼柳自身の体重と筋収縮が骨をさらに細かく砕いていく。
空中にまで襲い掛かる鬼柳に対して、マリクはその場で回転。今も頭部を締め上げているバイサー・デスを鬼柳にぶつける。
まったく受身を取れずに鬼柳がふっ飛ばされた後、ワンハンドレッド・アイの光線がマリクを打ち抜いた。
二重の撃墜音。二人の決闘者が瓦礫に埋もれて落ちる。
鬼柳の身体は始め腕を使って身体を起こそうとし、右腕が上手く動かないことに気付く。
骨折などそう大きな問題ではない。地縛神による操作は人体構造を乗っ取るのではなく、無機物に対するサイコキネシスに近い。
骨など動きを束縛する要素でしかなく、筋肉はただのブースター。
極論心臓が止まっていようが、それが現世での依り代として機能するなら決闘に支障はない。
「それが千年ロッドの能力だ」
「ほう。そういえば人体操作は貴様の得意分野だったな」
ダメージを与えると同時に、相手の身体の自由を奪う。一般人が相手なら打撃一発で完全支配が可能。
相手が相応の実力者だったとしても、短時間・一部分の操作なら可能。短剣部分を突き刺せれば支配力はさらに高くなる。
先に立ちあがったマリクの千年ロッドが倒れたままの鬼柳を追撃する。
296 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/28(水) 00:04:00.91 ID:X0zr4YQgo
千年ロッドはデュエルブレードによって弾き返された。
「なっ!? 何をする、セイバー!」
反射的にカード群を操って星竜王に雨と注ぐ。
達人は紙で割り箸を切るという話は余りにも有名。ならば決闘者がカードを手にしたなら人肉程度切れぬはずがない。
生前に非合法の手段をもってカードを奪いカードを模造したマリクのカードプールは英霊の中でも一級の量。
先の一戦で疲弊しているとはいえ、相手を挽肉にするのは十分な量がある。
「ちっ。返答を待たずに手が動くのは戦士としては結構なことだが、やはりお前は王の器ではないな」
弾幕を避ける方法は大きく分けて二種。点で細かく避ける方法と、面で大きく避ける方法。
だが点で避けるにはマリクのカードは多すぎ、面で避けるには初速を得るための時間が残されていない。
星竜王は三番目の方法としてフィールの奔流で前線のカードを吹き飛ばし、振り返ってデュエルブレードを投擲。
闇の中に突き刺さったデュエルブレードが、そこにある障害物を知らせ、星竜王のジャンプの道標となる。
デュエルブレードの突き刺さった瓦礫を右足で蹴ってブレーキをかけ、デュエルブレード引き抜くことをもって終了。
その後ろに連なるカード群は掠りもしない。
「落ち着けランサー。お前は戦うべき相手を間違っている」
「そうだ。ボクにお前と戦っている暇は無い。どけ、セイバー!」
手数ではマリクが上。飛来するカード群を避けた星竜王に、追いついてさらなる攻撃を加える。
左手で引き抜かれた短剣で浅く切り込むが、デュエルブレードの振り上げによって短剣が弾き飛ばされる。
マリクの蹴りに対しては星竜王も蹴りをもって返し、互いに膝をぶつけ合うことで相殺。まだマリクには千年ロッド本体による攻撃が残っている。
満を持しての攻撃。本命の千年ロッドによる下段からの薙ぎ。金色の杖は自体が発光することで目くらましとなり、光る闇は人を侵蝕する。
「エクステンド・フィール・バニッシュ!」
相手が力を込めていればいるほど狙い球。千年アイテムの闇の力とて例外ではない。
輝く闇は弾け飛び、反転するエネルギーが凝縮する。千年の闇の逆流。
マリクの千年ロッドの力を利用したフィールがマリクをふっ飛ばす。
その直後、マリクのいた場所をワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの光線が貫いた。
「みろランサー、あれがお前の戦うべき相手だ」
千年ロッドのエネルギーを奪ったフィールが拡散する。
地縛神の張りめぐらした闇と、いくらか色合いを変えた別種の闇。黒と黒が重なり、千年ロッドの闇が消えていく瞬間に浮かびあがるのは地縛神のコア。
石造りの心臓。波打つごとに周囲の闇を深め、闇の中に隠れていく。
エクステンド・フィール・バニッシュの過ぎ去った後では、闇の中に消えてしまいもう見ることはできない。
「地縛神の、本体……!」
「そうだ。これ以上あの死にぞこないを攻撃すれば、本当に死ぬぞ」
それだけ言って、星竜王はマリクの前から消える。先ほどと同じ、デュエルブレードで闇の中を探ってからのジャンプ。
三回のジャンプを経由して、星竜王は遊星の元へ向かう。
297 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/11/28(水) 00:04:51.79 ID:X0zr4YQgo
「地縛神か。確かに、ディアハに参戦していたあれの存在を忘れていた」
鬼柳の身体が向かってくる。時折奇妙に高いジャンプや回折を交えつつの疾走。闇の主である地縛神が闇を見通しているからだ。
それを視界の端に捉えつつ、マリクは千年ロッドの先を闇の向こうにのばす。
先ほど星竜王が明らかにした地縛神 Ccapac Apuの居場所だ。
「ボクとしたことが」
「ふむ。貴様よりも我を脅威と見做し貴様を手助けするそこな剣の英霊の戦略眼は見事である。
一方で、自らでは我を見つけることすらままならぬ貴様のふがいなさ。この一戦が終わった後、貴様を従えるよりもセイバーと組むが上策かもしれんな」
既に千年ロッドによる一時支配は切れている。
走りながら長台詞を息継ぎ無しで言い終えた鬼柳の口から涎が流れ落ちた。
人とは思えぬ見た目。鬼柳の脳へ伝えられる肉体の要求は一切省みられることなく、急な長い呼吸は今度は喉を傷つける。
完全にモノ扱い。乗り捨てるのを前提としているかのように、生物としての性能の限界のラインで酷使し続けている。
「インフィニティ・サイト・ストリーム!」
光線は闇を照らすことなく、むしろ闇の中で射線が見えづらい。
転回。旋回。ワンハンドレッド・アイ・ドラゴンの咆哮音は確かに目印にはなるが、常に警告を発してくれるほど優しくはない。
緩急をつけ、俄かに法則を作っては乱し、暗黒の光線はマリクを襲い続ける。
だからマリクは動き続けることで不意打ちを避ける。初めから飛行を続けていれば、咄嗟の攻撃も加速で対応できる。
マリクが前進した後で、それまでマリクがいた空間に光線が収束していく。空中
「見切ったぞ。ワンハンドレッド・アイの攻撃は視線による攻撃。一点に集中する攻撃は高威力と引き換えに範囲が極めて狭い。
避けるのは難しくない。直前で少し動くだけで百の光線は全て的を外れていく」
298 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/08(土) 20:37:28.91 ID:rvDeuU0AO
まだかなまだかなー
299 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/12(水) 02:30:23.54 ID:OLQb3WDUo
ワンハンドレッド・アイの光線が後方に流れて行く。あとは一直線に進むだけ。
頭を拘束する鉄塊は茨の冠の如く。紙一重で的を外し背後の空間へと集中する光は後光の如く。
「まだ不完全な核なら、千年ロッドの一撃でいける……!」
槍とはつらぬくもの。長さを活かして自分のリーチから一方的に攻めるというのは副次的な選択肢でしかない。
その長さは力強く突くためのもの。その形状は最小の力で最大の伸びを得るためにある。
相手の急所を見抜き、一点・一撃によって勝負を決めることこそ槍の究極形。
「千年ロッドよ! 千年の戒めを解き、今こそ闇を縫い付けろ!」
千年ロッドの特性は操作。短剣部が浮かび上がり、闇のエネルギーを接着剤としてロッドの先に着く。
長大な槍。非物質を柄として持つ槍は、長さを得ても重さを増すことはない。
質量による打撃力など不要。切れ味さえあれば力の大きさは問題にはならない。槍使いに必要なものは眼力とコントロールだ。
剣に比べて重心を掴み辛く扱いに難しい槍だが、その重さはむしろ使い手の力を補強するもの。真の槍使いは重みになど頼らない。
「確かに人は心に闇を抱いている。けれど、それは光に比べれば小さな点にすぎない」
「逆だ。初めに闇があり、闇が世界を作った。破滅の光の方こそ、世界に空いた穴のようなもの。
闇は何も壊さない。ただ受け入れて創造するだけだ。貴様とてそれは知っていよう?」
「だとしても、闇に頼った時、人は大切なものを見失ってしまう。マスターにやり直す機会をくれたことには感謝しよう。
でもそれまでだ。マスターをお前の道具なんてさせない。鬼柳京介には戻るべき場所がある」
300 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/12(水) 02:31:03.91 ID:OLQb3WDUo
千年ロッドの先端が伸びる。胎動する石の心臓は闇に隠れているが、その闇の濃度分布が位置を示している。
同じく闇を力として扱う者だからこそ、この暗闇の中にあっても目標を見つけられる。
「一撃必殺、ワンターンキルこそがラーの、千年ロッドの真の使い方! くらえ、悪霊!」
頭蓋を締め上げるボルトの痛みも気にはならない。マリクの勝利はいつも痛みの中にある。
リバイバルスライムを神にライフ1000を払ってのゴッドフェニックス。神にライフを捧げての神との融合。
マキュラを囮に罠を使う戦術。オベリスクの攻撃を受けてメタルリフレクトスライムから神スライムを作る戦術。
マリクによって、ライフとは勝利のために利用するべき資源に過ぎない。初期ライフ4000のうち3999までは勝つための道具。
時間が圧縮される。バイサーデス自身が生み出す推力に、闇の伸ばして突き進む穂先の速度が加わる。一秒ごとに勢いを増す。
それでいて千年ロッドの刃はミリメートル単位でもずれることなく単純明快な等加速度運動を続けている。
千年ロッドはあと一秒後には地縛神に届き、その後コンマを経ずして貫通する、はずだった。
「人の身の視野などそんなもの。闇の奥を見つめているつもりで視界を闇に囚われているに過ぎん。
盲目な鳥を落とすなど造作も無いことよ。やはり貴様より、あのセイバーの横取りを考えた方が得策か」
喋る鬼柳の口から涎が落ちる。バイサーデスの頂点を濡らす。マリクは確かに百眼龍の隙をついたが、鬼柳の身体はフリーだったのだ。
華麗さとは程遠い、単なる自由落下。身体全体を使っての妨害工作。音と立てて骨を砕き、鬼柳の肉体を道具としてマリクの軌道を大きく乱す。
バイサーデスの尖った部分に突き刺さった鬼柳の腕が離れない。共に落下すれば鬼柳の身体ごと容赦なく百眼龍の攻撃が来る。
航空戦力を手放す選択の半分はマリク自身の意志によるものであり、もう半分は物理的な衝撃がもたらした結果だ。
バイサーデスが急にはずれたことで頭に掛かっていた圧力が急に消える。急激な圧変化が脳と思考をかき乱す。
だが痛みには慣れている。マリクは落ち着いて、事前に考えてたようの動くのみ。
301 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/12(水) 02:31:39.06 ID:OLQb3WDUo
瞳を閉じて闇の中に潜伏していたワンハンドレッド・アイ・ドラゴンが羽ばたく。
巨大物の飛行はそれだけで大気をかき混ぜて風を起こす。落ちるマリクを吹き飛ばし、反撃の隙を与えないのが狙い。
目が開く。光る。百の瞳はそれぞれ独立して秩序なく開き、四方八方を写す。瞳の輝きの中に周囲の風景は消え、光線の用意が整って。
空間は光に包まれ、闇の中から爆発した光が視界を白く埋め尽くす。
「馬鹿な。何故このタイミングでラーの、それもオリジナルを呼ぶだと!?」
世界に一枚、太陽と同じく唯一無二の最高神。しかしその光はあまりに慣れ親しまれているために、周囲の動きを止める副次効果は無い。
ワンハンドレッド・アイの輝く闇も、石造りの心臓が生む深淵の闇も、その光の前では無力。
周囲は漂白されたように真っ白に染まり、その無地のキャンバスの中で神が圧倒的な存在感を誇示する。
だが遅い。神の召喚後にはヒエラティックテキストを詠唱する必要がある。資格無き者にラーは従わない。
満を持して放たれるワンハンドレッド・アイの光線とマリクの詠唱の速度、どちらが早いかなど考えるまでも無い。
墓守の一族に受け継がれた高速神言詠唱をもってしても、言葉が光に追いつくはずもない。
点に向かって放たれる百眼からの光。全天を覆う太陽神の光。
だがそれよりも早いものがあった。マリクが放った千年ロッドである。
尖った先端が未だ真球のまま君臨するラーに突き刺さる。否、刺し穿つ。
神とて点レベルでは弱い部分を持つことは、地縛神に対する刺突を必死で止めた相手の姿勢が良く教えてくれる。
槍使いの本質は、急所の一点を貫くこと。槍撃の極み。ラーに弾かれることなく、千年ロッドが黄金の球に刺さる。
千年ロッドが突き刺さった一点から、太陽神が割れる。刃に込められた力が球体の中を伝導し、神の姿が展開される。
大きく広げられたラーの翼が、百眼龍の光線を弾き飛ばす。光の量・質共に違いすぎる。ワンハンドレッド・アイの攻撃は神にかすり傷一つつけられない。
ラーの翼神竜が降臨した。
302 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/12(水) 02:32:05.98 ID:OLQb3WDUo
ワンハンドレッド・アイとマリクとの間にはラーがそびえ立ち、迂回しなければマリクへの追撃は不可能。
鬼柳の身体はバイサーデスに刺さって身動きが取れない。
神の翼の端を掴んでよじ登りながら、マリクの詠唱が終わる。
「僕はいかに相手の攻撃を凌ぐかより、いかに自分のターンで勝つかを考えるタイプでね」
神が吼える。空気が変わる。揺れる。空気中の分子一つに至るまでが神を賛美し、月明かりさえもひれ伏して雲間に隠れる。
「この戦い、最初から最後までずっとボクのターンだ」
地縛神の作った闇は消え去り、瓦礫の山が広がっている。無骨な舞台であったそれも、鉄骨がラーの放つ光を反射する度に豪奢な黄金色に染まっていく。
黄金の炎が膨らむ。飛び散る火花は黄金のインゴットなどより遥かに美しい。
もし芸術の心得がある者なら、この瞬間のために何トンの金塊を捧げても惜しくないと評することだろう。
「ラーのダイレクトアタック。ゴッド・ブレイズ・キャノン!」
互いに命すらも道具とする非情な決闘者。だからこそ決着がつく瞬間の両者は傷だらけで、だからこそ勝者と敗者を分ける一線が重い。
303 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/12(水) 02:36:07.87 ID:OLQb3WDUo
D-ホイールが巨人を貫いたあとで、その穴が見る間に塞がっていく。
「女と連れ添って戦場に立つのは感心しないな。守るべきものは近くに置くべきだ。
だが共に血飛沫を浴びるほどに近くでは意味がない。もっともソレは守るべきものなどではないがな」
「何よ、ちょっと。良いところなんだから邪魔しないでよ。人の恋路を遮る奴は地獄に落ちるわよ?」
「それは大変だ。死後を貴様と共に過ごすなど耐えられん。やはり貴様は封印しておかなくてはな」
何も無い空間から星竜王の声が響く。直後、デュエルブレードが空間を裂いて切り込む。
豪快にして鮮烈。真っ暗な中に空いた穴から、紅蓮の炎が漏れてくる。
「セイバーか!? これは一体どういうことなんだ」
穴からデュエルブレードがもう一閃。それを避けるために女は翼を広げて空中に躍り出る。
熱を帯びて輝くデュエルブレードは、遊星号よりもなお赤い。その一振りは空気中に熱を放出し、空気に歪みを与える。
穴の向こうから伸びた太い腕が遊星を掴む。引っ張り込む。
「ばいばい坊や。また会いましょう?」
女の投げキッスは熱い空気のレンズの向こう側。
遊星の意識は再び落ちていく。
304 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
:2012/12/12(水) 04:58:26.14 ID:CDl5CgkI0
遊星投げキッスで落ちんなよwwww
305 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/17(月) 20:46:56.46 ID:GBz2Xy5C0
この女って誰だ? エアトス?
306 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/27(木) 01:02:10.84 ID:Cf6ivj9Jo
「はい、阿久津でございまーす! ええ! あの件ならしっかりと調べ回しておりますとも!
データは万全です! 現代風の姿でラーを操る決闘者、ランサーの正体は掴んだもどうぜ……え?」
携帯端末を手にしたまま、阿久津の回転は止まった。
目を見開いて、次につぶって。ただ治安維持局長官の言葉を聞き続けた後、阿久津は無言で通信を切った。
「所業無常、万物流転。地位も名誉も回るもの。とはいえこんなに急とはねえ……」
ゴドウィン長官の説明は不親切なことこの上無かったが、その内容を簡単に説明すれば次のようになる。
すなわち、シティ内部での異常発熱・閃光発生現象はモーメントの臨界事故として処理され、責任者である阿久津を罷免する、と。
ラーの降臨した場所が大型モーメントと別箇所なのは明らかだが、モーメントが時を同じくして回転数を増していただろうことは確認せずとも予想できる。。
遊星粒子の性質上、大型モンスターの召喚には影響を受けざるをえないのだから。
ゼロリバースの傷は大きい。大型モーメント施設を完全に信用している男など、この阿久津を除けば数人いるかどうか。
反論したところで、ゴドウィン長官の手に握りつぶされるのは目に見えている。
だから阿久津は、迷いなく自決を選んだ。この国の切腹文化は今なお健在だ。潔く消えさえすれば、大抵のことはうやむやにできる。
キーボードを叩き、文章をまとめていく。論文敬語など考えなくていい。伝える内容は単純明快だ。
今回のことはあくまで阿久津個人のミスであり、モーメントの理論に問題は無いのだと、だから研究を続けて欲しいと。ただそれだけの内容。
ゴドウィン長官は真実を知っているし、またモーメントの有用性も分かっている。何しろ同じ研究チームにいた仲だ。
阿久津の命を代償にすれば、モーメント研究の継続は絶対にやってくれるだろうと思った。思いたかった。
人が進化したかは分からないが、遊星粒子を用いたシンクロ通信が情報伝達のスピードを上げたのは間違いない。
阿久津のメッセージは一般市民に広く公開され、そしてその時には阿久津は世を去るのだ。
ロープの準備は終わった。電灯にひっかけて、作った輪っかに首を通せばしまるように作ってある。
足台に何をつかおうか考える自分が滑稽で、しかしなかなか決まらなくて。
悩んだ末に、大量の白い紙を積み上げて足台とし、縄に手をかけた。
307 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/27(木) 01:02:58.67 ID:Cf6ivj9Jo
幼少期の経験が未来を決定づけるのは珍しいことではない。
多くの場合、それは父親と見に行ったプロリーグのデュエルであったり、たまたま学校で読んだ三沢博士の伝記漫画であったり、そんな子供らしい接触だ。
だが阿久津の子供心を魅力したのは、モーメントだった。
彼はいわゆる天才であり、デュエルアカデミア中等部のクラス文集に「召喚時優先権を用いない場合の相対性決闘論の再構築について」を載せようとするような子供だった。
現代物理学を独学で修めた後の彼は遊城十代の著作に傾倒し、オカルト志向の中からいくつか科学的に発展の余地のあるものを選び出し、そして初めて挫折を知った。
半分以上は十代に責任があるだろう。精霊と錬金術を当たり前のものとした彼の理論は、科学性など欠片しかなく、再現性など欠片も無く、ただ魅力的かつ無責任な飛躍だけが目立った。
十代は発明家兼冒険家であり、科学者ではない、というのが世間一般の感想だった。彼と親しい者は彼が錬金術師であることを知っていた。十代を希代の科学者だなどと考えたのは阿久津だけだったかもしれない。
阿久津は世間一般とは一線を隔す天才だった。十代の着想の凄まじい先進性に気付くだけの才能があった。
この時からずっと、阿久津の頭の中では無限の螺旋が回り続けるようになる。それは永久機関。互いを食い合う二匹の蛇であり、混ざり合う二体の魔物。今の言葉でいえば、モーメントである。
しかしその理論をはっきりと形に成すまでには才が足りないのが悲劇だった。
デュエルアカデミアを常に不気味な独り言と共に過ごし、時に壁に文字を書き出したりする阿久津を、人々は三沢二世などと皮肉ったものだ
308 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/27(木) 01:03:55.25 ID:Cf6ivj9Jo
好成績を残してノース校から本島に移り、自ら進んでオシリスレッドを選んだ。
島中を練り歩き、精霊の井戸や温泉異空間を探し回った。ハネクリボーのカードを無限回収し、HEROを組んだ。
けれど阿久津には、精霊を見る方面の才は欠片も無かった。
常識の範囲内を出ない天才は、学業をおろそかにしたために成績を落とす。
彼はそんな自分を十代に重ねるほど自信家でもなかったし、かといって自分の目標を疑うほど臆病でもなかった。
決闘物理と錬金学、決闘論基礎などの成績に支えられてなんとかアカデミアを出た阿久津は、しばらくその日暮らしの生活を続けた。
初めに手をつけた道路工事は、思考に必要な体力まで使い切ってしまうために早々に打ちきった。
コンビニバイトでは、たびたび思考に集中し過ぎてしまい、しばらくしてクビになった。
塾講師や脱走ペット探し屋、デッキ診断屋などを転々とし、一時はストリートデュエルで名を馳せたこともあった。
不動博士によるモーメント構想の話を知ったのは、酒場でデッキ診断をやっていた時のことだった。
ストリートファイト界が黒薔薇の魔女への恐怖で萎縮し始め、それでも阿久津の名はある程度の知名度を誇っていた、そんな頃。
「もっと軽いモンスターを入れて、回転力を上げるべきですよ」
「回転回転ってお前、不動博士みたいだな」
そんな一言が、闇の中で燻っていた阿久津にとって光明となった。
309 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/27(木) 01:07:31.46 ID:Cf6ivj9Jo
直接不動博士の研究室に向かった時の阿久津は、まるでクラッシュタウンから脱走してきた囚人のようにボロボロだった。
擦り切れて色合いのよく分からなくなった布きれをまとい、デュエルディスクは旧アカデミア仕様の骨董品。
厳重なセキュリティをどうやって突破したのかは、阿久津自身でさえ覚えていないという。
彼は結局、モーメント理論の樹立には何も貢献してはいない。全ては不動博士の元で進んでいた。
彼は最終段階によってようやく研究チームに入り、やったことと言えば最終調整の手伝い程度なものだ。
だがしかし、阿久津は信じている。モーメントをもっとも深く理解していたのも、もっとも熱く想っていたのも、この阿久津だったと。
モーメントこそが、阿久津が長い間考えていたものであり、そして遊城十代の提唱していたものだったと、信じていた。
回転。進化するエネルギー。無限にして永遠となりうる力。阿久津はモーメントに、これまで夢の中で描いてきた全てをみた。
ゼロ・リバースの時、阿久津は不動博士から言われた言葉を忘れない。
「これからのモーメントを、頼む」
それは研究員全体に対して言った言葉だ。阿久津に対して特別に言ったものではない。
だが阿久津の胸には、その言葉が深く深く刻まれている。一生忘れまい、と施設から足早に走り去りながら己に誓ったのだ。
310 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/27(木) 01:07:58.92 ID:Cf6ivj9Jo
首の圧迫感は案外少ない。意識が遠いところにあって、痛みも苦しさもほとんど感じない。
走馬灯は一瞬だと言うが、主観の中では相当長かった。部分部分では現実よりも重く色濃く再生され、早さの密度が狂った記憶が頭に痛い。
「復讐せよ」
だからそれは、自分の声なのか、他人の声なのか、よく分からなかった。
「お前には権利がある」
暗いのは目を瞑っているからか、部屋の電気を消しているからか。
「お前にも機会をやる」
違う。こんな深い闇は、デュエルアカデミアの井戸の底にすら無かった。
「さあ、俺と共に」
頭が痛い。それは寒さで凍えるよう。
手が痛い。それは熱さで焼けるよう。
「聖杯を」
――
311 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2012/12/27(木) 01:10:58.51 ID:Cf6ivj9Jo
縄からぶらさがったまま、阿久津は回っていた。くるくる。くるくる。
その眼が、突然開く。腕を伸ばして縄を掴み、その上の電灯を掴む。
電灯が割れる。元から光は消えている。砕け散った電灯のガラス片は何も映さない。
縄が落ち、身体が落ちる。ガラス片で肌が切れる。
「さあ、復讐の時だ」
真っ暗な部屋の中、阿久津は立ち上がる。
その手には、三角の令呪が刻まれていた。
「お前の」「私の」
「復讐すべき相手は――」
>>314
1.ゴドウィン
2.ジャック
3.遊星
4.クロウ
312 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/27(木) 01:13:02.77 ID:2/UqDreqo
4!
313 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/27(木) 01:19:20.86 ID:E9oCeDFAO
1!
まさか阿久津が出てくるとは……
しかもダグナーで
314 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/27(木) 01:25:53.15 ID:3HLnDUWd0
1!
アスラピとコカパクはすでに出てるし、
首つり繋がりで語りかけてるのはチャルアか?
315 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/27(木) 01:26:43.90 ID:XvKuOz8So
1 ゴドウィン!ゴドウィン!
316 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2012/12/29(土) 11:15:22.10 ID:2I4scRyAO
>黒薔薇の魔女
ん?
アキは2代目って事か?
それとも伏線か
317 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/30(水) 23:40:47.74 ID:vEHbL01Wo
「そうだ! ゴドウィンだ。ゴドウィンなんだ。私がこんなところで首吊る羽目になったのも!
未だに私が学歴で差別を受けるのも! 不動博士があんなところで死ぬことになったのも!
休暇が取れないのも! 予算が取れないのも! 全てレクス・ゴドウィンが悪いんだ!」
その場で地団駄を踏めば、首吊りの足台代わりにしていた紙束が空中に飛び散る。
「運命の歯車を狂わせたのは、ゴドウィンなんだ!」
阿久津の心の中をどす黒いものが侵蝕していく。どこから聞こえてくるのか分からない声がずっと囁き続けている。
阿久津の思考の糸をその声がほぐしていく。深く考えられない。とりとめのない思考の欠片が泡のように浮かび続ける。
心の論理性が崩れていく。それが気持ちいい。ずっと思い描いていたはずの夢が心の海の底に沈んでいく。それが落ち着く。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
散らばった紙が床を埋め尽くしている。机の上のボールペンから手に取り、インクの管だけを抜き取って無造作に振り回す。
ミ タ セ ミ タ セ ミ タ セ ミ タ セ ミ タ セ
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ」
飛び散った黒インクは蛇のようにとぐろを巻き、空中で図形を作ってから紙の上に着地し、そのまま染み込んでいく。
「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
電球の割れた部屋。床に散らばる紙の上にきずかれる魔法陣。
セ ッ ト
「―――――Face-down」
――
318 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/30(水) 23:50:38.22 ID:vEHbL01Wo
「チャレンジャーが待っている。行く他あるまい」
「お待ちください。今出るのは危険です。せめて表に出るのはアサシンが倒れてからにしてください」
「アサシンが敗退しても、それを知ることができなければどうする。他五体の英霊の宝札全てを集めた敵を待つというのか?」
「治安維持局の情報網をもってすれば、サーヴァントの戦闘を見落とす心配などありません」
「その言葉、せめてクロウの行方が掴んでからにしてもらいたいものだ」
モニター越しの会話を打ち切り、部屋のドアの前に立つ。
ノブの無い半自動式のドアは、本来は人が前に立つだけで開くものだが、ドアは沈黙したままだ。
「ゴドウィン、開けろ」
「なりません。キング、落ち着いてください。サーヴァントを連れて行けばあなたがマスターだと悟られます。
サーヴァント無しではあなた様の身が危険にさらされます」
「会場は俺のファンで満員だ。たとえサーヴァントの気配を感じても、マスターを絞り込むことはできまい。
ゴドウィン、貴様何か俺に隠しているのではないか?」
「滅相もございません。私はただ聖杯を手に入れるために、万に一つの隙も作りたくないのです」
319 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/30(水) 23:53:49.21 ID:vEHbL01Wo
「Z-ONE。ドアを開けろ。俺はまだキングをやめるつもりはない」
何も見えない空間。霊体化したZ-ONEを存在を、ジャックだけが感じることができる。
広い部屋に対して調度の少ない部屋だが、Z-ONEの存在によって息苦しいまでの圧迫感が部屋を包み込んでいた。
「ふむ。ドアを開ける、というのは少々難しいですね。私の使うカードでは火力が高すぎます」
「そうか。ならいい」
デュエルディスクをつけた左腕を胸の前に構え、デッキトップに手をかける。
中指と人差し指でカードを挟む持ち方は安定感と引き換えに速さとキレを持ったドローを生む。
カードとカードが擦れ合う音は、通常の凛としたものではなく、何か重いものを振るったような音。
「俺のッ! ターン! ドロー!!!」
カードが引き抜かれた。胸の前に構えたデュエルディスクから、斜め前へと引き抜くドロー。
右手の前腕部だけで完結したドローは使う部位が少ないために威力が低い一方で、一瞬で最大速に達してドローを終えることができる。
前動作もほとんど無く、不意打ちとしての使用が主。パワーよりもスピードに優れたドローである。
「……何もここまでやらずとも、私には扉を壊さずに外に出る術があったのですが」
「実戦で使う前に試し切りがしておきたかっただけだ」
物理的な火力でいえば、このドローの威力は低い。しかし、現実に目の前の金属扉は切り裂かれている。
モーメント開発の先駆け、世界一とも称されるネオドミノの技術の粋を集めた扉が、ばっさりと。
熱したナイフでバターを切ったあと、というありがちな喩えが良く似合う。
溶けだした金属が床に水滴を落とす。扉全体に伝導した熱は早くも冷え始め、扉の形を歪めていた。
まだ赤みを残した扉をデュエルディスクで軽く突くと、扉はいともたやすく崩れ落ちる。
「いくぞZ-ONE。出口まで案内しろ」
「分かりました。ジャック」
320 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]:2013/01/30(水) 23:54:34.63 ID:vEHbL01Wo
ジャックのいる建造物の外。堅牢な外壁には、何か巨大な刃物で切り裂いたような大きな傷が広がっていた。
途中で切れて火花を散らす電線の束。あらぬ方向へと光を飛ばすケーブル。
その壁の中へと伸びる機械の腕を辿れば、そこには白いフレームのロボットがいる。
斬り込まれてできた外壁の隙間にケーブルを伸ばすオービタルと、それを見守るカイトだ。
ジャックが部屋を抜け出すのと時を同じくして、アサシン組が侵入を試みていた。
「おおっ! 急に防衛システムの処理速度が低下したでアリマス!」
「何かトラブルでもあったか。まあいい、システムを復旧される前に乗り込むか」
「防衛システムの乗っ取りは30分までなら完璧でアリマス」
「まずは全域のロックを解除。施設内の監視カメラに割り込んで俺の様子を見ておけ。
交戦が始まったら、施設のシステムを逆利用して俺を援護しろ。任せたぞ、オービタル」
「カシコマリ!」
その場での跳躍。一歩で姿を消し、二歩で加速する。英霊の身にとっては些細な距離など無いに同じ。
オービタルをハッキングのために残し、カイトは一人で建物の入口に立つ。
ドアの前に立てば、カードキーも指紋認証も仕事を忘れ、すぐにドアが開く。
オービタルのシステムハックが上手くいっている証拠だ。
アサシンは正面から敵地に入っていく。
既に数日の調査で、この施設が機密保持のために人員を最小限にしていることは判明済み。
確実にいるのはジャック・アトラスのみ。その側近らしきピエロと女は来る日も来ない日もある。治安維持局長官が来ることは稀。
また聖杯戦争の情報収集をしている科学者が数人いるようだが、これも非戦闘員と見ていい。
目標以外と鉢合わせする可能性は極めて低いと、事前の調査で結論を出している。
だからカイトは、暗殺者にあるまじき堂々とした振る舞いで建物の中を進んでいく。
上下左右、どこを見ても白。ともすれば床と壁と天井との区別を見失いそうなほど綺麗な白一色。
いかなる技術の産物か、人が少ないにも関わらず汚れはまったく見られない。
自動ドアは音も無く静かに開いてカイトを迎え、カイトの後ろでまた静かに閉まっていく。
どこに仕掛けられているのか一見しただけでは分からないが、監視カメラが死角無くカイトの様子を捉えているのだ。
だからオービタルがタイミングよく扉を開けていける。
「古い時代のアサシンが相手ならそれで良かったかもしれんが。相手が悪かったな、ライダー。
この街の電子情報網は掌握済みだ。ランサーとセイバーの情報、ありがたく見せてもらった」
白い通路の中を歩くカイトは、真っ黒な装束を纏って。
隠れる気など微塵も無いアサシンは、まだ見ぬ相手に向かって独り言を呟きながら通路を曲がる。
321 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/02/02(土) 10:54:38.07 ID:WDeqAb6SO
もはやデュエルがリミッターと化してる
Gガン思い出した
322 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[sage]:2013/03/11(月) 22:45:22.80 ID:ePy9gnLx0
まってる
290.09 KB
[ Aramaki★
クオリティの高いサービスを貴方に
VIPService!]
↑
VIP Service
SS速報VIP
専用ブラウザ
検索
Check
Tweet
荒巻@中の人 ★
VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By
http://www.toshinari.net/
@Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)