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朋也「麻雀部か……」照(……あんぱんっ) - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) :2012/11/02(金) 23:05:38.84 ID:MG5hJ/X2o
CLANNAD X 咲-Saki-

所謂クロスオーバー作品
苦手な人はそっ閉じして、どうぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1351865138
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 23:07:59.85 ID:kHKaZMqno
前にvipで立ってたアレ?
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/11/02(金) 23:13:00.37 ID:MG5hJ/X2o
(……寒い)

《降り積もる雪が、身体を覆ってゆく》

(……非道く……寒い)

《抱きしめる力を、強める》

(腕の中の体温が、失われてゆく)

《抱きしめたものからは、一切の力を感じない》

「……汐」

《胸の中の彼女は、ぴくりとも動かない》

「……汐……!」

《娘は、雪のように冷たくなっていた》

「汐……汐……汐……っ!」

「……っ」

「……誰か……汐を……」

「誰か……汐を……」

《娘の頬が、涙で濡れる》

「誰か汐を!!!助けてください!!!!!」

《雪は、降り積もる》





《時は、うつろう》






《世界は、変わる》






.
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/11/02(金) 23:16:11.78 ID:MG5hJ/X2o

――――6月某日、麻雀部部室内――

菫「……照に好きな男が出来た?」

亦野「ええ、そうみたいですね」

淡「ええっ!?それホントなの!?」

菫「……あいつ最近少し様子がおかし――いや、おかしいのは元からか――と思ったらまさか好きな男とはな」

渋谷「……」ズズー

淡「っ、すみれんすごい!私全然気づかなかったよ!」

菫「ああ、最近のあいつは何かともの思いにふけっていたからもしやと思ったが……ってお前はいい加減先輩に敬語を使え、敬語を」

淡「ぐぬぬ、テルー検定一級を自負してた私なのに〜」

菫(聞いちゃいないな……)

菫「……それで亦野、なぜお前がそれを知っているんだ?」

亦野「今朝方あの人が相談してきたんですよ」

淡「ええー!私じゃなくてセーコにー!?なんじゃそりゃっ!」

菫「……こいつと同意見なのが癪だが、照も私に頼ってくれればよかったものを……」

渋谷「……」ズズー

亦野「二人に話すのが恥ずかしかったそうで――――あっ」

淡「あっ?」

菫「……亦野、ひょっとして照に口外禁止とか言われたんじゃないのか?」

亦野「あ、あははは……私もいきなりなことだったんで……つい、忘れて」

菫「……もう気にするな、今更後の祭りだ」

菫「しかしあいつも話すのが恥ずかしいって……ぽんこつのくせに羞恥心はあるのか」

淡「ぶっちゃけ私もすみれんにはそーいうこと相談したくないな〜」

菫「は?」

淡「だってスミレ恋愛疎そうだし。……ウブっぽい?」

菫「なっ!?わ、私はこれでもお前以外の部員からは頼れる姉さんと慕われているつもりなんだぞ!」

淡「したわれ……ぶふっ!」

菫「何が可笑しい!!」
5 : ◆BAGSDsqeLs :2012/11/02(金) 23:23:59.24 ID:MG5hJ/X2o
淡「だ、だって私達の間じゃースミレ絶対少女趣味だって言われてるもん!それが頼れる姉さん()……ぶふっ!」

菫「な…な…な…なっ!」

渋谷「……毎週欠かさずプリキュア見てそう」ボソッ

菫「!?」

淡「部屋に十個ぐらい熊さんのぬいぐるみ置いてそう」

菫「ぐぬっ!?」

亦野「…………」

亦野「運命の出会いとか私の王子様とかワリとマジで信じてそう」ボソッ

菫「…………」

淡・亦野・渋谷「「「……」」」

菫「おおおおまえらっ!人のことおちょくってるのか!!!!」

淡「いやぁ〜」

渋谷「ねぇ?」

菫「〜〜〜っ!!!……ま、亦野も!お前まで何を言って……っ!」

亦野「い、いやぁ、ここはノッておく所かなぁと」

亦野(赤面の先輩ちょー可愛いですし)

菫「ぐ……!お前らは本当に……本当に……!」

菫(本当に……本当に私が悔しいのは……!)

淡「『本当に悔しいのは全て当たってるってことだ』……と、スミレは考えている」

菫(全て当たってるってことだ!)

菫「……ハッ!」

菫「……」

淡「」ニヤニヤニヤニヤ

渋谷「」クスクスクスクス

亦野「……!」プルプルプルプル
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/02(金) 23:27:33.35 ID:aPDVnah7P
楽しみ(´・ω・`)
7 : ◆BAGSDsqeLs :2012/11/02(金) 23:33:37.89 ID:MG5hJ/X2o
淡「smileプリキュア……スミレだけに……ぷくく!」クスクスクス

菫「……」

菫「……よぉぉぉぉし!大星ァ!貴様卓につけェ!その喧嘩買ってやる!」

淡「上等だぁ!スミレなんか私の宇宙キターーー!なコズミックパワーでぶちのめしてやる!」

菫「はっ!私も貴様のそのどうしようもないアホ面をシャープシュートして涙目にしてや――――」

亦野「ふ、二人ともやめてくださいみっともない!」

淡・菫「「ああ!_?」」

亦野「今はまず照さんのことでしょう!!!!!」

淡・菫「「……」」

菫「ご、ごほん、そうだな、今はとにかく照のことだ」

淡「そ、そうだね!今はスミレにかまっている場合じゃないよ!」

菫「……お前、あとで覚えてろよ」

淡「そっちこそ」

淡・菫「「……」」

亦野「ふたりともっ!」

渋谷「……」ズズー


そんな訳で


菫「……で?……その、なんだ、亦野」

亦野「は、はい」

菫「え、えーっと、その、だな……て、照が」

菫「ててて照が好きになった奴は……そ、そのっ!どんな奴なんだ!?」

亦野(めちゃくちゃ動揺しとる)

渋谷(かわいい)

淡「私もそれすっごく気になるなぁ〜……あ!もしかしてこの学校の子?」

亦野「……ええ、大星の言う通りこの学校の生徒らしいです」

菫「なにっ!?」

淡「うそっ!」

亦野「え、ええ」

菫「そ、それで、そ、その男はどんな奴だ?」
8 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/02(金) 23:46:14.27 ID:MG5hJ/X2o
淡「一年!?二年!?三年!?」

亦野「あ、あー……それが、その」

菫「な、なにかまずいことでもあるのか!?」

淡「ひょっとしてすっごく悪い奴とか!?」

亦野「うっ」

菫「……本当なのか?亦野」

淡「そ、そんなー!」

亦野「……どうやらウチの学校の、不良生徒らしいんです」

菫「ふ、不良生徒?…………あー、もしかして、あの二人か?」

淡「うちの学校……不良……二人……あっ(察し)」

渋谷「……?」

菫「ん、渋谷は知らないのか?いるんだよ、名門校のウチにも不良生徒が……三年生に二人、な」

淡「不良ってほど悪い奴じゃないけどねっ!」

渋谷「……把握」

菫「ってなんだ大星、二人のこと知ってるのか?」

淡「うん、しょっちゅうつるんでるけど?」

菫「……ふむ、お前と仲が良いのならそこまでロクな奴ではない様だな」

淡「スミレみたいにからかい甲斐があるしね!」

菫「どう言う意味だそれは……そ、それで、亦野」

亦野「は、はいっ」

菫「それで……その……どっち、なんだ?」

亦野「どっち、とは?」

菫「て、照の奴が好きなのはどっちかって聞いたんだ!」

亦野「あー……」

淡・菫「「……」」

渋谷「……」ズズー

亦野「金髪じゃない方、らしいです」
9 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/02(金) 23:49:58.83 ID:MG5hJ/X2o
淡「えっ」

亦野「?どうかしたのか?大星?」

淡「あっ、えっ、いや、な、なんでもないよっ!」

菫「?……そうだ、それで当の本人――照の奴はなにしてるんだ?」

淡「テルーなら今日は家の用事で帰るって!」

菫「そ、そうか……ってなんでお前が知ってるんだ?」

淡「さっき帰るテルーに会ったからその時に」

菫「成る程」

亦野「それで、これからどうします?この話はやめて部活やります?」

菫「ふむ、そうだな……このまま考えても仕方ないし、部活を始め――――」

淡「あっ!ちょっとタンマ!」

菫「?なんだ大星、どうかしたか?」

淡「私これから出かけてくるねっ!」ダッシュ!

ガチャッ!バタン!

菫「は?お、おい待てっ!せめて行き先を言え!」ダッ!

淡「あーもーっ!私は今からその二人に会いに行くんだってば!」ジタバタ!

菫「はぁ?……なら私もついて行く、貴様一人だと何が起こるか解らんからな」

淡「ええー?いいよ別に、一人で」

菫「よくない!……第一お前が信頼を置いているとは言えそいつらはウチの不良生徒なんだ、だから私もついてくぞ」

淡「むーっ」

菫「……それで?その二人は何処にいるんだ?」

淡「そうだなぁ……この時間なら男子寮にいると思うよ」

菫「成る程男子寮か……ってお前!それは不味いだろ!」

淡「んー?なんでー?」

菫「女一人で!男所帯の男子寮に行くな!お前はバカか!」

淡「えー?大丈夫だよ別にー?あっちにはとってもこわ〜い寮母さんもいるし」

「……廊下で何を一体騒いでるんだ、貴方達は」

菫「え?……あ」

淡「あ!生徒会長ー!おはこんばんちわーっ!」

生徒会長「ああ、こんにちはだ、大星。それに菫さん」

菫「ああ、こんにちは」

生徒会長「……菫さん、確か二人は今の時間部活中ですよね?……何か起きたのですか?」

菫「あ、ああ。実は彼女が今から三年の不良2人組に会いに男子寮に行くと言っててな、私も心配なのでついて行こうと」

生徒会長「成る程あの2人に会いに……ですか。ふむ、すると大星もあの馬鹿二人とは仲が良いのか?」

淡「うん!お昼とかたまに一緒に食べてるよ?」

生徒会長「そうかそうか……うむむ、私も近頃は生徒会の仕事であいつと会っていないな……これは不味い」ボソッ

菫「?どうかしたか会長?」
10 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/02(金) 23:54:26.93 ID:MG5hJ/X2o
生徒会長「――――いや、気にしないでいただきたい……それと、あの二人に会いに行くのなら別に何ら問題はないでしょう」

菫「む、そうなのか?」

生徒会長「ええ……あの二人も――――一人は途方もない大馬鹿だがもう一人は良い奴だ、私が保証します」

菫「成る程、ありがとう」

生徒会長「それに男子寮と言ってもあそこにはあの人がいます、これと言って特に身の危険になることはないでしょう……なんでしたら私がボディーガードとしてついて行きますが」

菫「いや、生徒会長の手を煩わせるわけにはいかないさ」

生徒会長「ふむ、承知しました」

菫「……ああ、そうだ」

生徒会長「?」

菫「生徒会、頑張ってくれ。応援しているぞ」

生徒会長「……」

生徒会長「……貴方も念願の全国三連覇、果たしてください」

菫「言われずとも、わかっている」

生徒会長「……ふふ」クスリ

菫「……会長!」

生徒会長「?」

菫「また今度、買い物にでも付き合ってくれるか?」

生徒会長「……」

生徒会長「――――はい、喜んで」

菫「……」

生徒会長「……」

菫「それじゃあ、私はこれで……」

生徒会長「ええ、お気をつけて」

くるっ

すたすたすたすた……

淡「……ねぇ、スミレー」

菫「ん?なんだ?」

淡「スミレはかいちょーとトモダチなの?」

菫「ん?ああ、まあな」
11 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/02(金) 23:57:53.30 ID:MG5hJ/X2o
淡「ふ〜ん……」

菫「……なんだその目は」

淡「うんにゃ、ただ類は友を呼ぶってほんとだったんだなー、と思って」

菫「……ふむ、言われてみればアイツも私と少し似ているところがあるな」

淡「でしょ?」

菫「……」

菫(……まさかアイツとぬいぐるみ談義で仲良くなったとは言えまい)

淡「〜♪〜♪〜♪〜♪」

菫(まったくこいつも、ゆるいんだか鋭いんだかわからんな……)

淡「ほらほらスミレ!早く早く!」

菫「ああもうわかったから廊下を走るなっ!」

淡(……かいちょーさんも、可愛いものとか好きそうだよねっ!)

――十数分後・男子寮前――

菫「……と、言うわけで」

淡「着いたねぇ」

菫「よし、ならさっさと入ってお前の用事とやらを終わらせ――――ん?」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

菫「なんだ……この音……」

淡「!スミレっ!伏せて!」

菫「は?」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

屈強な男子生徒達「ひぃぃぃ〜〜〜っ!!!」┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

屈強な男子生徒達「うぎゃああああああっ!!!」┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

菫・淡「……」

淡「……ふぅ、なんとかしのげれたね」

菫「ふぅ……じゃない!なんだ今男子寮から激流のごとく流れ出てきた男連中は!!……あれは、ラグビー部か!?」

淡「あ、あはは、恒例行事だよ恒例行事〜きっとまた何かアホな事やって寮母さんを怒らせ――――」

「こらああああああああああっ!!!!!!」どがあんっ!
12 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/02(金) 23:59:36.36 ID:MG5hJ/X2o
淡「お、噂をすれば影だねぇ」

菫「うおっ!?」

「だぁぁぁもう!逃げ足だけは早いんだからあの馬鹿共――――って、あら?淡ちゃんじゃない?」

淡「寮母さん、うぃーっす!」

菫「ど、どうも」

寮母「そっちのは……ああ、麻雀部の弘世菫さん、で合ってたわよね」

菫「ええ、まあ」

寮母「ウチはここの寮母をやってる――――まぁ、気軽に寮母さんって呼んでくれていいわよ」

淡「くれぐれも年齢を聞いちゃ――――」

寮母「……」

ゴッ!

淡「あだっ!?」

寮母「……年齢が?」

淡「な、なんでもないです……」

菫「……この馬鹿が世話になってます」

寮母「ええもうあの馬鹿二人と揃って馬鹿三人よこうなったら……菫ちゃんの方こそこの子の面倒見るの大変でしょう?」

菫「ええ、それはもうそれはもう……上級生に敬語を使えと言っても聞かないしすぐ調子乗るし本当大変ですよ」

寮母「それに加えて麻雀も強いってもんだから困ったもんよねぇ」

菫「その通りです……」

淡「ふふん!高校100年生の私なら当然だねっ!」ドヤァ

寮母「……ホント、なんでこの子のあんなに麻雀強いのかしら……」

菫「全く謎ですね」

寮母「白糸台七不思議の一つにしてもいいんじゃないかしら?」

菫「ははっ、それは同感です」

淡「……二人ともしつれーすぎない?」

菫「お前が悪いんだろ!」寮母「あんたが悪いんでしょうが!」
13 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/03(土) 00:03:21.44 ID:hYlT0/5ho
淡「ひっどーい!」プンスカプンスカ

寮母「……それで?どうしてあんた達はこんなむっさいトコに来た訳?」

淡「えっと、それはねー!」

菫「この馬鹿があの不良達に会いたいそうです」

寮母「ふーん成る程ねー……と、言っても」

淡「?」

寮母「淡ちゃん、今日はあんたの目当ての奴はウチに来てないわよ?」

淡「ええー!?」

菫「……目当て?」

寮母「ああ、菫ちゃん。それがこの子――――むぐっ」

淡「あ、あははは!スミレは気にしなくてイイよっ!」

淡「それよりほらっ!用も済んだし部活行かなきゃ!部活!」ぐいっ!

菫「え、あ、おいこら引っ張るな!、そ、それじゃあ寮母さん!お邪魔しましたーーーっ!」

寮母「また暇な時いらっしゃい、少しはもてなすから」

菫「はいっ!」

ホラホラスミレハヤクハヤク!!
ダカラヒッパルナ!!

寮母「…………」

寮母「……まったくアイツも隅に置けないわねぇ」

寮母(……しっかしあんな可愛い子がせっかく訪ねて来てるって言うのにあの馬鹿何処いるのかしら?)

寮母(何時もなら馬鹿二号と一緒にココで自堕落してるはずなんだけど……)

寮母「……」

寮母「ま、あたしには関係ないか」

寮母「……さて、掃除掃除っと」

……
14 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/03(土) 00:05:00.55 ID:hYlT0/5ho

――――同時刻・某公園――――

「…………」

「……この公園も、少しは変わってるもんだな」

(こうして見ると見慣れぬ遊具が建っていることがわかる)

(この遊具達も五年の間に壊され、新しい代替物達が建つことになるのだろう)

「……」

「……五年、か」

(街が変わるには、十分すぎる時間だ)

(けれど――――)

「これは、変わり過ぎなんじゃないのか……?」

《後ろを振り向く》

「…………」

《視線の先には、見慣れたパン屋――――》

「……なぁ、渚」

《――――――ではなく》

「お前、どこ行っちまったんだよ……」

《ごく普通の、一軒家が建っていた》

「…………」

(……あの雪の日、俺が汐を抱えて家を飛び出したあの日から)

(俺は気づけば――――)

(数年の時を遡っていた)

「……」

「……いや、違うな」

「俺は……」

「世界を、渡ったのかもしれない」

《街中を歩けば、そこかしこに雀荘が開いていた》

《TVでは麻雀試合の中継が流され、大々的に取り上げられていた》

《彼の通う高校も女子麻雀部なるものが存在し、圧倒的な強さを誇っていた》

「麻雀……か」
15 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/03(土) 00:06:43.60 ID:hYlT0/5ho

(なんなんだ……これは)

(訳がわからない)

「……」

「……まぁ」

(どうでもいいか)

(別にこの世界とやらが麻雀が普及した世界としても俺にはなんら関係ない)

(なのに)

「……なんで」

「なんでお前がいないんだよ……」

「渚……っ!!」

《見知らぬ一軒家には、見知らぬ表札が掛かっていた》

「おっさんまで……早苗さんまで……」

「どこに……いっちまったんだよぉ……っ!!!!」

「……」

「……くそっ!」

《見知らぬ家――――その、表札を見据える》

「……」

《石造りのソレに彫られていた名は――――》

「……宮永、か」

(知らぬ名前ではない)

(この世界のこの町に数週間住んでれば、嫌でも聞く名字だった)

「全国女子高生の頂点、インターハイと言えばこの人、か」

(……正直、どうでもいい)

(ただ、今の問題は――――――)

「――――ん?」
16 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/03(土) 00:07:40.22 ID:hYlT0/5ho

《彼の鼓膜が、音を捉える》

(足音……?)

《人の、気配》

(……?)

《ちらりと、左を見る》

「…………」

《そこには――――》

(噂をすれば影、か)







《赤毛の少女が、立っていた》








《これが二人の――――二度目の邂逅》







.
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/03(土) 00:11:14.82 ID:E8w+7l1Fo
照死なないよね…?
18 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/03(土) 00:11:26.10 ID:hYlT0/5ho
全弾消耗。今日はこれにて

ぽんこつTELTELのお世話をするツンデレ朋也君とかすごくすばらだと思う(暴論)

それでは、失礼


※このスレッドは投下時のみageのsage進行で行います

19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/03(土) 01:14:54.58 ID:PBQ4dI410
これは面白そう
照と渚は中の人が同じでしたよね?
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/04(日) 19:44:12.03 ID:dCPPULjGo
記憶引き継ぎとは期待せざるをえない。
21 :大和民族 [sage]:2012/11/05(月) 01:41:39.02 ID:u1968s9S0
お〜
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/05(月) 07:39:27.11 ID:G/8fbv+ao
悲しみを背負う男は桜並木の奇跡に辿り着くのか。
それとも、新しい町で新しい幸せを見出すのか……

乙です。
続き楽しみにさせてください。
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/11/05(月) 15:36:29.96 ID:eTM1xlJAO
これ前にVIPで書いたよね?
速報でやり始めたのか
24 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:08:49.35 ID:sxpIVdQeo
ふぇぇ……書き溜めが進まないよぅ……

じゃけん区切りのいいとこまで落として行きましょうね〜
25 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/07(水) 21:11:04.22 ID:sxpIVdQeo
「…………」

赤毛の少女が、じっと見つめてくる

少女「…………」

「…………」

沈黙が、場を支配した

(気まずい)

少女「……」

「あー、その、なんだ」

彼が口を開いた時――――

少女「……!」

少女は僅かに身構え――――

少女「……っ!」

だっ!

――――走った!

「は?」
26 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:14:41.20 ID:sxpIVdQeo

ぱたたたたたた!

ぎぃっ

がちゃん!

「……」

少女は、恐ろしいスピードで一軒家へと消えていった

「……避けられた、のか?」

「……」

(……う)

(いくら不良と認知されてるからって、今のは少し傷ついたぞ)

(けれど、まぁ)

(これでこの場から立ち去れ――――)

きぃぃぃっ

「……ん?」

少女「……」じぃぃぃぃぃっ

ドアの隙間から、澄んだ瞳が覗いている
27 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:15:41.19 ID:sxpIVdQeo

「……」

少女「……」じぃぃぃぃっ

「……おい」

少女「!!」

がたたたんっ!

僅かに開かれた扉から、派手な音と共に少女がつんのめりながら飛び出してきた

少女「……!」アタフタアタフタ

少女は慌てふためいている

「……俺の顔に何かついてるか?」

少女「……え、えっと……その……」

「……?」

少女「こ、この前……」

「この前?」

少女「この前は……どうもありがとう」

「?……ああ、あの時か」
28 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:18:37.95 ID:sxpIVdQeo
「別に、大したことはしちゃいない」

少女「でも……助かった」

「……」

ふぅ、とひとつ息を吐く

少女「…………」

(……まいったな)

(やっぱり、気まずい)

「…………」

(いや、長居する必要はない――――か)

「……それじゃあ、俺はこれで」

「部活、頑張れよ」

くるりと踵を返し、歩き始め――――

少女「ま、待って……!」

――――ようとしたが

「……なんだ?」

慌てて駆け寄って来た少女が服の裾を掴んできたため、歩を止めてしまった
29 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:22:22.90 ID:sxpIVdQeo
少女「えと、その、あ、あぅ……」

少女は顔を伏せ、何かぶつぶつと呟いている

「あのなぁ、言いたいことがあるならはっきりと――――」

少女「な、名前!」

「は?」

少女「貴方の名前を、教えて欲しい……」

「名前ぇ?」

少女「そう、名前……」

伏せられた顔がこちらを向く

少女の澄んだ瞳が、彼を射抜いた

「……っ」

思わずたじろぐ

少女「……」じぃぃぃ

「……」

「……岡崎」
30 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:23:28.52 ID:sxpIVdQeo
少女「!」

朋也「……岡崎、だ。岡崎朋也」

少女「……っ!」

少女はなにやらこくこくと頷いている

朋也(さっきから思ってるが……随分と変なやつだ)

少女「えと、その……岡崎、私は――――」

朋也「宮永」

少女「!」

朋也「宮永照……だろう?知っているさ、そのぐらい」

照「えと、その……どうして?」

朋也「どうして?」

照「どうして、私の名前を知って……」

朋也「……」

がくっ、と肩を落とす

朋也(こいつ、素で言ってるのか?)
31 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/07(水) 21:24:17.09 ID:sxpIVdQeo
朋也「……あのなぁ、知ってるに決まってるだろ」

朋也「この町でお前の名前を知らない奴――――いや、この国で知らない奴なんてそうそういないぞ?」

照「……あ」

朋也「しっかりしてくれよ、チャンピオンさん」

ぽんぽんと頭をたたく

照「……!」

朋也「……」

照「……」

朋也「……それじゃあな、宮永」

朋也「全国、頑張れよ」

後ろを振り向き、今度こそこの場から立ち去る――――が

照「お、岡崎……っ!」

数メートルほど歩いた時、少女が叫んだ

朋也「……?」

歩みを止めちらりと後ろを見る
32 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/07(水) 21:24:47.19 ID:sxpIVdQeo
朋也「どうした?まだ何か用か」

一応不良として通っているのだ、これ以上自分と関わっても何の得もないだろう――――そんな思惑もあり、ついぶっきらぼうに返す

照「岡崎は……どうしてここに……?」

朋也(ここ?……ああ、成る程)

朋也「……別に」

照「……」

朋也「ちょっと、探し物をしてただけだ」

照「そ、そう……」

朋也「……見つからなかったけどな」

彼女に聞こえないほど小さな声で、ぼそりと呟く

朋也「……」

朋也「……それじゃな」


ーーーーこうして

ーーーー少女と青年の二度目の邂逅は

ーーーー淡白なまま、幕を閉じた



照「……岡崎……朋也、か」




.
33 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/07(水) 21:25:38.61 ID:sxpIVdQeo
全弾消耗。今日はこれにて
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県) [sage]:2012/11/07(水) 21:46:53.35 ID:tU5CZ6vUo
おつー
春原は出てくるの?
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/07(水) 21:59:30.15 ID:4SKyfsqO0
乙ー
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/07(水) 23:29:03.64 ID:0HKfUiF30

これは期待
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/08(木) 01:59:49.64 ID:v3NmPXzao
咲はずいぶん前に1巻の最初の方だけ読んだから誰が誰だかわからん
照って子が咲のお姉ちゃんだってのは調べてわかった

とりあえず期待
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/08(木) 23:37:00.64 ID:dI32glYr0
人生とは懐かしいな
期待
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/10(土) 09:13:08.28 ID:3Ccjlx1r0
記憶まであるのか
どうなるか分からんが期待
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/10(土) 09:40:17.58 ID:nAIyueTb0
なんだこれは?

期待するしかないじゃないか!!
41 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 21:52:22.33 ID:Sya+Hpgbo
開始
42 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 21:55:19.84 ID:Sya+Hpgbo
ーーーー十数分後、男子寮前ーーーー

朋也(……さて)

朋也(特に行くところがなかったからとりあえずはここに来たが)

朋也「……」

朋也(うーむ……)

朋也(思えば随分と灰色の高校生生活を送ってたんだな、俺)

朋也「……ん?」

「あら、岡崎じゃない」

朋也「……美佐枝さん」

寮母改め美佐枝「何時もみたいにあの馬鹿の部屋に自堕落しに来た?」

朋也「そんなところです」

美佐枝「……まったく、そんなんじゃいつまで経っても腐ったままよ?」

朋也「あいつの頭はとっくに腐ってますね」

美佐枝「あははっ、確かにもう手遅れねーーーーあ、そうだ」

朋也「……?」

美佐江「今日、アンタに会いにウチに来た娘がいたわよ」

朋也「俺に?……一体誰が?」

美佐枝「一年の大星淡ちゃんよ、知ってるでしょう?」

朋也「……ああ、あの金髪二号機ですか」

美佐枝「あんたも妙な奴に好かれてるわねぇ」

朋也「随分な物好きもいるもんですね」

朋也(こんな学校の落ちこぼれとつるんでも何の得もないだろうに)

美佐枝「…………」

朋也「?、なんですか、その目は」

美佐枝「別に?あの子も大変ねぇ……って思っただけよ」

朋也(訳がわからん)

朋也「……とりあえず、上がらせてもらいますよ」
43 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 21:59:14.52 ID:Sya+Hpgbo
美佐枝「ええ、ごゆっくり」

けらけらと笑いながらこちらに手を降る彼女

朋也(何なんだ一体?)

朋也「……」

朋也(別に、気にする必要もないか)

ーーーー数十秒後、乱雑な室内ーーーー

がちゃり

朋也「うわ汚っ!」

「急に来て第一声がそれっすか!?」

そう、自らの巣たる炬燵から顔を出して不気味な奇声をあげたのは、未確認生命体オオスノハラモドキーーーー通称スノハラだ

その特徴とも言えるフケまみれの濁った金髪を揺らしーーーー」

「聞こえてますからねぇっ!?」

朋也「……今奴が発した『キコエ=テマスカラネェ』とはスノハラ語で『わたしは馬鹿です』を意味しーーーー」

春原「もういいっす……」

朋也「なんだ、つまらん」

春原「っていうか僕ちゃんと毎日頭洗ってますから、フケまみれじゃないっすから!」

朋也「なら少しはこの鳥の巣みたいな部屋をどうにかしたらどうだ」

ゴミ、CD、漫画、ゴミ、ゴミ、服、etc、etc……

朋也(正直言ってめちゃくちゃ汚い)

春原「それはできないねっ」

ふっ……と髪を掻き上げる春原

朋也「……気持ち悪っ!」

春原「だからいきなりなんなんすかアンタはぁっ!?」

朋也「やべっ!つい口走っちまった!」

春原「絶対わざとですよねぇ!?」

朋也「うん」

春原「はぁ…………悪いけど、僕はこの部屋を片付けたりはしないねっ」

ふぅ、と息を吐き、テイク2を行う春原

朋也「……そりゃ、どうして?」
44 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 22:02:26.27 ID:Sya+Hpgbo
春原「これが僕のアイロンティーだからさっ!」

朋也「……」

春原「……」

朋也「……アイデンティティ、な」

春原「そうとも言うぜっ!」

朋也「そうとしか言わねーよ」

春原「ええっ!?」

朋也(ああもう……相手にするのも疲れた)

朋也「おい、足どけろ」

炬燵に足を滑らせ、蹴り飛ばす

春原「いだっ!?」

朋也「あとお茶くれ」

春原「だから何様ですかアンタはぁっ!?」


……こうしてまた、無為な時が流れてゆく






春原「そう言えばさ」

朋也「……なんだ」

春原「今日、淡ちゃんがココに来たらしいよ」

朋也「知ってる、美佐枝さんから聞いた」

春原「あ、そう」

朋也「って淡ちゃんってなんだ、気持ち悪い」

春原「え、別にいいじゃん。淡ちゃん一年なんだから」

朋也「鳥肌が立つからやめてくれ」

春原「理不尽っすねぇ!?」

朋也「……」

春原「…………で、でも淡ちゃんも物好きだよねぇ、こんな僕達とつるんでるなんてさ」

朋也「……そうだな」

たまに学食で鉢合わせた時昼食に付き合わされたり、昼休みにわざ三年ののウチのクラスに遊びに来たりしている
45 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 22:08:28.13 ID:Sya+Hpgbo
ひょっとして奴もこのコガネムシ同様未確認生命体なのか?

朋也(…………コンジキアワアワオオホシテントウーーなんつって、な)

春原「あ、もしかして」

などと天然生命体・オオホシの生態を考察していると、やっぱり春原がまた訳のわからぬことを言い始めた

春原「僕に会いにここに来たのかも」

朋也「は?」

春原「いや、淡ちゃんがさ」

朋也「……それはお前が麻雀で小鍛冶プロに勝つぐらいあり得ない確率だから安心しろ」

春原「え、ええー……で、でもゼロじゃないってことですよね!」

朋也「ごめん、やっぱりゼロだった」

春原「……」

せっかく人がポイズンシンキングしてたのに……と、春原

馬鹿丸出しである

朋也「……」

朋也(それにしても……)

朋也「大星淡、か」

確か彼女と始めて出会ったのは、俺がこの世界に紛れて少し経った頃

屋上でサボタージュを決め込もうとしたらそこでばったり、という訳だ

その後なんやかんやあってこうして腐れ縁が続いている

朋也(あいつ、何時もほわほわしてるな)

最初会った時も「空が綺麗だったから屋上でサボってる」なんて台詞を奴は言ってのけた

そのくせ学力は一年上位十名のうちの1人、麻雀では天下の白糸台高校の大将

天は人に二物を与えずという話はやっぱり嘘らしい

朋也「…………」

……そう
46 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 22:13:23.40 ID:Sya+Hpgbo
『白糸台高校』、だ

俺の記憶が確かならば、俺が通っていた高校は『光坂高校』

しかしこの世界では『白糸台高校』

学校の位置や校風、校舎の造りは全く同じな癖に、『名前だけ』違うのだ

朋也(だからと言ってこの世界に『光坂高校』が存在しないーーーー訳じゃあない)

……春原に聞いた話だと、この町――いや、東京には『光坂高校』は確かに存在するらしい

この町から電車で数本乗り継いだ先――――目と鼻の距離に、だ

……その『光坂高校』もウチと同じく麻雀の強豪校の様で、ウチとは対象的に男子が凄ぶる強く、なんでも『竜の光坂・虎の白糸台』と呼ばれているそうだ

聞いた話だと光坂の部長は校名よろしく『光る副露』の使い手らしいが、真偽の程は定かでない

朋也(……とりあえず今週末は光坂高校とやらに行ってみるか)

今はなんとしてでもこの世界の情報、そう、元の世界に戻るための情報を探さなけれーーーー

朋也「…………」

……戻って、どうする?

渚が逝って、守ると決めた汐もーーーー逝った

朋也「……っ!」

俺は、どうするんだ?

これから先、これからの未来で

渚のいない世界、汐のいない世界で

俺は、どうやって生きてゆけばいい?

……わからない

わかるはずがーーーー

「……っ……きっ……岡崎っ!」

朋也「っ!!」

春原「大丈夫?顔色悪いぜ?」

朋也「お前の顔を見たらもっと悪くなった」

春原「…………自分、泣いていいすか」

朋也「……馬鹿、冗談だ」
47 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/11(日) 22:13:59.16 ID:Sya+Hpgbo
春原「……」

朋也「……」

春原「……で?なんでそんなにメートルメンタルになってる訳?」

朋也「……それを言うならセンチメンタルだろ」

台無しだ

春原「……ぐっ!」

朋也「別にーーーー少し、考えてただけだ」

春原「……考えてた?」

朋也「ああ。これから先について、な」

春原「ふ〜ん……ま、別にいいんじゃない?そう複雑に考えなくてもさ」

朋也「はぁ?」

春原「未だ来ないと書いて未来と読むしさ!わからないんなら気にせず突っ走ろうぜっ!」

朋也「……お前にしては随分と正論を言うんだな」

春原「失礼な、僕は何時も正しいことしか言わないね!」

朋也「じゃあお前、『僕は嘘しかつきません』って言ってみろ」

春原「なにさ、藪から棒に……えっと、『僕は嘘しかつきません』」

朋也「……」

春原「これが一体どうし……ん?ちょっと待てよ?んん?んんん?んんんんん!?」

ボンッ!

春原は砕け散った

朋也「……ちょろいな、自己言及のパラドックスをクリアできない奴って」

春原「…………」

ぷすぷすと頭から煙を出しながらスノハラは炬燵に突っ伏している

朋也「……」

……でも、まぁ

悔しいが、こいつの言う通りだ

見えない未来に怯えたって何の意味もない

今はただ、前に進むことだけを考えよう

朋也「……ちょっと、センチメンタリズムに浸っちまったな」

らしくもない

朋也「……」

とっくにぬるくなったお茶を飲み干し、ひとりごちた


ーーーー自堕落な時が、過ぎてゆく
48 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/11/11(日) 22:14:55.19 ID:Sya+Hpgbo
終了
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/11(日) 22:15:44.71 ID:CKonKCYdo
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/11(日) 22:25:55.38 ID:R16wZCTAO
やっぱり春原は良いキャラだなぁ…乙
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/11(日) 22:35:11.64 ID:k8cKtPVz0
乙ー
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/12(月) 02:04:18.37 ID:5MdgjpdAO

光坂の部長って哭きの……
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/12(月) 08:08:24.30 ID:/ED1Z5NAO
>>52
???「あンた、背中が煤けてるぜ…」
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 08:30:50.27 ID:Zax9DxHLo
副部長が気になるな
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 15:22:11.13 ID:N5lHpJXDO
岡崎って乙女座じゃないよな?

某上級大尉みたいな……
56 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:30:43.13 ID:TbMQxEiUo
開始
57 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:34:19.50 ID:TbMQxEiUo
ーーーー翌日昼休み・中庭ーーーー

「前からずっと気になってたんだけどさ」

購買の戦争を勝ち抜き、掴み取ったカツサンドを頬張りながら、春原

「口に食いもん入れたまま喋るな、行儀の悪い」

春原「もぐもぐもぐ……ゴクン。……いや、どうして三年になって弁当を持ってくるようになったのかなぁ、と」

春原はそう言うと箸で俺の弁当箱を指差した

朋也「そんなのどうだっていいだろ」

軽く受け流し、ブロッコリーを頬張る

春原「ええ〜なんだよ、つれないぜ?」

朋也(……こいつの相手も疲れる)

……早い話、俺は毎日弁当を作っている

社会人として身についた習慣のおかげで早起きもそれほど苦ではなくなったし、昼食代も少しは浮く

わざわざ学食や購買の戦争に参加して無駄なエネルギーを消費する必要もない……今流行りんの省エネ主義と言う奴だ

それに弁当を作ることだって、汐のために毎日作っていたし少しは慣れてーーーー

朋也「……っ」

慣れ……て……

朋也「……」

「スキありぃっ!」

朋也「っ!?」

ーーーー突然、弁当の中の卵焼きが姿を消した

「……ん、おいしっ♪」

朋也「……」

電光石火とも言えるスピードで襲来した藍色の箸が、かっさらって行ったのだ

朋也「行儀が悪いぞ」

視線を動かすと、そこには我が自信作を旨そうに頬張る金髪少女の姿が

「〜♪〜♪〜♪〜♪」

コンジキアワアワオオホシテントウーーーー大星淡だ

淡「ごめんね、あまりにもトモヤのが美味しそうだったから、つい」

春原「おうおうおう、淡ちゃんやるじゃねぇの……岡崎、僕にもひと」

朋也「お前には死んでもやらん」
58 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:38:33.50 ID:TbMQxEiUo
春原「即答っすか!?」

淡「」プーックスクスクス

朋也「……」

べしいっ!

淡「いたっ!?」

朋也「お前もお前だ、勝手に人のモノを食べるな」

淡「けち!」

朋也「けちじゃない!それにお前は自分のがあるだろ!」

彼女の弁当ーー綺麗に彩られた、いかにも女の子らしいーーを指差す

淡「むぅ……」

頬を膨らませる大星

淡「!……ならトモヤ!」

朋也「あ?」

ちら、と彼女の方を向くーーーーと、同時に

朋也「むぐっ」

口内に、何かが突っ込まれた

春原「うへぇ」

朋也「……」

淡「これでおあいこだねぇ」

口いっぱいに、適度に焼かれた卵の甘みが広がる

淡「どう?おいしい?」

朋也「……ああ」

悔しいが俺より何枚も上手だった

淡「でしょ?自信作なんだ〜♪」

朋也「……」

こいつに恥じらいと言うかデリカシーはあるのだろうか

春原「あのさぁ……」

朋也「なんだ、春原」
59 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:40:09.16 ID:TbMQxEiUo
春原「前から気になってたんだけど、二人はどういう集まりなんだっけ?」

朋也「生意気な後輩A」

淡「面白い先輩A」

互いを指差しながら答える

春原「じ、じゃあ僕は?」

「「奴隷」」

春原「息ぴったりっすねぇ!」

朋也「いや、当然のことだし」

淡「右に同じ」

春原「この夜空コンビめぇ!」

朋也「……夜空コンビ?」

またこいつは訳のわからんことを

春原「だって、星と月じゃん」

朋也「はぁ?……いや、語呂悪いわ」

淡「でもヨーへーにしてはいいこと言うね!」

春原「でしょ?さすが淡ちゃん見る目があるねぇ!」

さりげなくけなされている

しかし春原は気づいていないようだ

朋也「……お前にしてはメルヘン過ぎる、−334点」

春原「……」

だー、と涙を流しながらアホは沈黙した

本当にこいつは泣いたり笑ったり喜怒哀楽の激しい滑稽な奴だ、見ていて飽きない

淡「はい、トモヤ!」

朋也「あ?……ってもういらねーよ!」

満面の笑みでアスパラのベーコン巻きを突き出してきた

淡「別に遠慮しなくていいよ?」

朋也「…………」

黙りこくり、視線で拒絶する

こんな中庭のど真ん中で一年にあーんされる不良など笑い話にもならない
60 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:42:34.75 ID:TbMQxEiUo
淡「むむ、つれないなー」

春原「あ、じゃあ淡ちゃん僕にも美味しそうなそれを一口――――」

淡「あむっ」

春原「くれるわけないっすよねー……」

淡「もぐもぐもぐもぐ……」

春原の要望を当然の如くスルーした大星はにっこにっこと旨そうに咀嚼している

確かに大星の弁当はそこらへんのコンビニ弁当じゃあ比べ物にならない程完成されていた

本当、この女は無駄にハイスペックだ……

淡「もぐもぐもぐ……ごくん……んん?どしたのトモヤ?そんなジロジロ見て」

朋也「べ、別に見てねーよ」

淡「ええー?絶対私のお弁当チラチラ見てたじゃん」

朋也「だから見てないって言ってるだろ」

淡「うそー?絶対見てたって。やっぱり食べたかったんじゃないのー?」

朋也「…………」

春原「んだよ岡崎もやっぱ食い意地張ってんじゃん……淡ちゃん、やっぱり岡崎より僕にその美味しそうなおかずを」

淡「あっ、そうだ」

春原「え?」

淡「明日から私がトモヤのお弁当作ってあげようか?」

朋也「……は?」

淡「だって食べたそうにしてたもん」

朋也「唐突に何また訳わからんこと言ってんだお前は」

春原「そうだよ」

朋也「このアホと同レベルだぞ」

春原「そうだよ……ってどういう意味っすか!?」

朋也「おいおい同じ事を何度も言わせるなよ、エネルギーの無駄だ」

春原「し、省エネ主義っすね……」

朋也「だろう?エコだろう?」
61 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:43:52.79 ID:TbMQxEiUo
淡「むむむー!すぐそーやってヨーヘイに逃げるの禁止!」

朋也「うっ」

……面倒臭くなると取り敢えず春原を貶す癖がバレたようだ

春原「逃げる?」

淡「そーだよ!いっつもめんどくさそーな時はヨーヘイいじくって茶を濁すんだから!」

春原「岡崎……」

朋也「いやいやいや、こいつから弄られキャラを取ったら一体何が残ると……って、なんだ春原、その目は」

春原「岡崎……お前……」

春原「お前ホモかよぉ!」

朋也「…………」

ぼっ!

春原「あぶむっ!?」

淡「ひゅーっ」

朋也「……」

取り敢えず、腹パンを叩き込んでおいた

朋也「おい大星、何あのアホに身の毛のよだつこと言わせてんだ」

淡「うん、ごめん……」

朋也「つったく……」

気を取り直し、弁当の残りに手をつけ始める

地面をのたうちまわる馬鹿一名はスルーだ

淡「で、トモヤはどんなおかずが好きかな?」

朋也「……それを聞いてどうするつもりだ?」

淡「?もちろん明日から全身全霊を込めて――」

朋也「作らなくていいからな」
62 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:44:42.64 ID:TbMQxEiUo
淡「むむ、いけずー」

朋也「いけずで結構」

淡「あっ、じゃあさじゃあさ、夜のオカズの方は――――」

すぱぁんっ!

淡「あいたっ!?」

朋也「真昼間っから何言ってんだこの助平!」

淡「……私はただ夕ご飯のメニュー聞いてただけなんだけどなぁ〜」

朋也「揚げ足を取るな!」

淡「オカズって聞いて変なこと考えるトモヤの方が――――」

朋也「……もういい、知らん」

大星のたわごとは耳を塞いで無視し、振り払うように弁当をかっ喰らう



梅干しの酸っぱさが、身に染みた
63 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/14(水) 19:48:57.51 ID:TbMQxEiUo
終了

CLANNADメンバーの麻雀能力考えてみるけれど、よくよく考えれば点数計算すらろくにできない素人の自分には闘牌描写なんて無理な話だぞー

……本当にどうしよう



おそらく次回は日曜日。レス頂けると励みになります。オナシャス!
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 19:52:00.33 ID:optuCthio


なんか流石に主人公の性格というかキャラ造形に古さを感じるな
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/14(水) 19:58:48.91 ID:TFXQPmKro
まぁ古いし
でも朋也主人公のクロス好き
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/14(水) 20:28:51.47 ID:33zkMcPgo


おもしろい
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 20:46:30.22 ID:TEJRuYOxo
おつおつ。
これ岡崎くんじゃなくて妖怪省エネなんじゃ。相方の声もそっくりだし。

あと、な阪関無
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 21:12:31.75 ID:iz3ADCWeo

日曜にはよならんもんか
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/11/15(木) 00:09:14.79 ID:CVpcBCsHo
期待してる
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/15(木) 08:19:06.34 ID:MX1BRRqAO
(お、Jか?)

闘配描写はあってもなくても問題ない。むしろ会話とイチャラブをじゅうs(ry

ともあれ乙
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 17:57:10.15 ID:pXTFasRqo
麻雀はなんやかんやで結果ありき、CLANNADメインで行くしか中目黒
一つの部活って事で。

72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長野県) [sage]:2012/11/15(木) 19:39:45.63 ID:Zd7YYSvAo
イイゾ〜このスレ〜(ゲス顔)
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/16(金) 20:20:15.48 ID:ZKXtvztAO
これはよいあわあわですな
74 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:10:54.77 ID:poOy3JDAo
開始
75 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:14:08.32 ID:poOy3JDAo
淡「と、ところでトモヤ。ちょっといいかな?」

昼食を食べ終え雑談――俺と大星が一方的に春原をいじり倒すいつも通りの――をしていると、不意にかしこまった様子で大星が訪ねてきた

朋也「なんだ、弁当の話なら遠慮しておくぞ」

淡「ち、ちがうちがう」

朋也「?だったら一体なんだ」

淡「え、えーっと……トモヤって、テルーと知り合いなの?」

朋也「テルー?……ああ、宮永のことか」

淡「そうそう」

春原「え、なに?なんの話?」

淡「ヨーへーには関係ないことだよ」

春原「ひどくないっすか!?」

朋也「春原はどうでもいいが……大星。その宮永がどうかしたのか?」

淡「うん。このまえテルーがトモヤの話してたから…」

朋也「ふぅん…」

春原「?宮永ってあの宮永照?岡崎、お前あんな奴とも知り合いなのかよ」

朋也「別に知り合いってほどのもんじゃねーよ」

淡「じゃあ何なの?」

朋也「何って言われてもなぁ…」

淡「どうやって知り合ったの?」

朋也「どうって言われても……ってなんなんだお前はさっきから」

春原「宮永センパイがそんなに気になんのー?」

淡「えっ、あっ、うん。そんなとこかなー」

朋也「……」

淡「ねね、なんでテルーと知り合いなの?どこで知り合ったの?私、気になりますっ!」

朋也「っ!」

ぐいっ!と顔を近づけてきた

思わず驚いて、身体を強張らせる

春原「……僕も気になるぜ、岡崎。この僕のナットウワークにもそんな情報なかったからねっ。この街の裏データベースと呼ばれる僕としてもぜひ知っておきた――――」

朋也「だああああっ!やかましいっ!お前らそんなに宮永が気になるのか!」
76 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:17:33.54 ID:poOy3JDAo
淡「うん」

春原「そうだよ」

朋也「…………」

淡「……」

春原「……」

朋也「……別に、ちょっと変な奴らに絡まれてたから助けてやっただけだ」

春原「変な奴?ははっ、なんだよそれ」

朋也「つってもただのチンピラだな……あと春原、お前は鏡見て来い」

春原「はぁ?なんでさ」

朋也「変な奴が映ってるから」

春原「……どう言う意味ですかね、それ」

朋也「どういう意味って……別に、自然の摂理だろ?」

春原「……」

淡「ヨーへーがどうしようもない変人なのは今に始まったことじゃないからどうでもイイとして」

お前も十分変人だろ

淡「トモヤ、チンピラってどーゆー事かな?」

朋也「あー、チンピラっつーか馬鹿だな」

淡「ばか?」

朋也「ああ、なんでもそいつら宮永に雀荘でボコボコにされたらしくてな」

淡「別にいつもの事だねー」

朋也「そう、お前にとってはいつもの話なんだよ……けどその馬鹿達ときたら」

春原「?その馬鹿達が?」

朋也「……訂正。春原並みに馬鹿な不良三人がな」

春原「別に言い直さなくてもいいから」

良心あるのかこいつ……という春原の呟きをシカトして続ける

朋也「宮永がイカサマしてるんじゃねーかって因縁つけてきたんだよ」

淡「えーなにそれ」

朋也「どうやら麻雀覚えたてのトーシローだったらしくてな、宮永がどんな奴か知らなかったらしい」

淡「あはははっ、ヨーへーの方がよっぽど頭いいねー」

春原「あ、淡ちゃん……!」
77 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:19:40.42 ID:poOy3JDAo
よっぽど嬉しかったのか、春原は感動で涙を流している

チンパンジーとオラウータンはどっちが賢いか並みの例えなのに……

あ、いや、春原と霊長類の方々を比べるのはあまりにも可哀想だ

霊長類が

春原「めちゃくちゃ失礼な事考えてませんか……?」

朋也「気のせいだろ」

春原「…………」

淡「それで、トモヤはどうしたの?」

朋也「ああ、そいつらに宮永について軽く説明したら顔真っ青にしてどっか行ったな」

春原「あははははっ!すっげーヘタレじゃんそいつら!」

「「……」」

春原「ん?どしたの2人ともそんなに僕のこと見つめちゃって。ひょっとして僕の格好良さにようやく気づいちゃった?みたいな?いやーまいっちゃうねぇ」

淡「その後は?」

朋也「その後って……別に、それっきりだ」

淡「それっきり?」

朋也「ああ、一言二言話して、それっきりだ」

春原「なんじゃそりゃ?……不良に絡まれた娘を颯爽登場して助けるなんてでっけーフラグなのにそれっきりかよ!」

……またアホが意味不明なことを言い始めた

朋也「……お前が何を言ってるかわからんが、こんな不良と話しても何の意味もないだろ」

淡「え?意味?あるよ?」

朋也「ごく一部の阿呆を覗いて」

淡「……それひょっとして私のこと?」

朋也「さて、どうだかな」

淡「むー」

……本当に、何故この金髪完璧天然大宇宙娘が学校のゴミの様な俺達とつるんでいるのか理解不能だ――――変人の思考を理解することなど、無理な話か

春原「ま、確かに岡崎みたいな不良狼とつるんでたってなんのいいこともないよねー」
78 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:21:43.57 ID:poOy3JDAo
朋也「……」

どぐしっ!

春原「不良は不良でも僕みたいなイケメ――――ふげえっ!?」

取り敢えず殴っておく

春原「な、殴ったね!?親父に殴られたことは……何度もあったけど!」

朋也「やかましい、トチ狂ってお友達にでもなったつもりか」

春原「おかしいですよ!オカザキさん!僕たち友達だろ!?」

朋也「……?」

春原「どうして『なに言ってんだこいつ』みたいな顔してるんですかねぇ!?」

朋也「いやだって……なぁ?」

淡「友達って言われても……ねぇ?」

「「ただの小間使いだし……」」

春原「……」

春原は、今日何度目かの涙を流した

高校生にもなって涙腺がゆるい奴だ

淡「でもさー」

朋也「あ?」

うにゃりうにゃりとタコ足の様に金髪を揺らめかせながら、大星

淡「トモヤってぶっちゃけ不良じゃないよね」

朋也「……は?」

いやいやいや、いきなり何を言い出すんだ、こいつは

朋也「どう見ても不良だろ?」

遅刻、早退、授業中の居眠りはもとよりサボタージュは当たり前、不良と呼ばずしてなんと呼ぶか

淡「だってトモヤやさしーもん」

朋也「やさしい?俺が?」

淡「めんどーみもいいしねっ!」

朋也「……」

……そう言われてみれば、思い当たる節はある

渚の演劇部再建、風子のヒトデ配り、ことみの友達探し

なるほど確かに他人からみれば十分面倒見がいいと言えるな
79 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:25:57.86 ID:poOy3JDAo
朋也「……別にただの暇つぶしだ」

淡「またまた照れちゃってー」

取り敢えず恥ずかしかったのでごまかしてみたが、効果は薄かったようだ

朋也「……」

……思えば渚との関係も暇つぶしから始まったのかもしれない

あるいは

この中庭であんぱんを頬張っていた彼女に、自分を重ねたのかもしれない

――――どうあれ、渚との思い出が俺にとってかけがえのないモノだと言うことに変わりはないのだが

淡「……トモヤ?」

朋也「え?あ、ああ。悪い、ちょっと考え事してた」

淡「……」

朋也「……なんだ、その顔は」

淡「最近トモヤ考え事してるのが多いよね?」

朋也「……っ」

淡「何か悩みでもあるの?私、力になるよ?」

朋也「――――――」

お前に関係ないだろ

……そう、出かかった言葉を飲み込む

まさかタイムスリップ――もとい、異世界の記憶がありますと馬鹿正直に言えるはずもない

朋也「……」

「どうせさぁ」

何を言う訳でもなく沈黙していると、復活した春原が言葉を挟んできた

春原「エロいことでも考えてたんじゃないの?」

が、流石はアホだ。ロクな事を言わない

淡「なーにヘンな事言ってるのかなヨーヘーは」

朋也「…………」

淡「…………ってちょっと待って」

沈黙を続ける俺に動揺したのか、大星が変な声をあげる
80 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:28:39.13 ID:poOy3JDAo
淡「え、えっと…その…まさか……本当に?」

朋也「……」

……いい機会だ

朋也「……ああ」

淡「っ!!」

たまにはこのナマイキ一年をからかってみよう

朋也「考えていた……」

淡「っ、へ、へー、そうなんだー」

朋也「大星……お前の事をな」

淡「や、やっぱりトモヤも男なんだ――――――ふぇ?」

朋也「……」

淡「えとえとえと、そ、それは一体どういう――」

朋也「考えていたんだ――お前との――――Hなこと」

淡「っ!!!」

ぼんっ!

と、ゆでダコの様に顔を真っ赤にする大星

……客観的にみれば今の俺はただの変態だが、滅多に見れない大星の慌てる様子を目にすればわりかしどうでも良かった

朋也「ああ、大星――――」

淡「ひゃ、ひゃいっ!」

すすす、と顔を近づけ、耳元で囁く

いつもいつも何処ぞの探究心旺盛古典部少女よろしく無駄に顔を近づけてくる大星への、ささやかな仕返しだ

朋也「抱きしめたいな――――大星」

淡「ふへっ!?」

朋也「この美しいブロンドヘアー、麗しい容姿――――まさに、眠り姫だ」

淡「あ、あうぅ……」

朋也「お前のためなら俺は阿修羅すら――天照大神すら凌駕する存在になれる――――嗚呼、やはり」

淡「う、ううう、ううう…」
81 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:30:01.74 ID:poOy3JDAo
朋也「やはり俺とお前は運命の赤い糸で結ばれているんだ――――――そう」

淡「…………」

何時もの飄々としたはどこへ行ったのか、今は借りてきた猫だ

すっかりおとなしくなっている

……よし、そろそろフィナーレといこう

朋也「この気持ち、まさしく――――」

淡「ま、まさしく?」

朋也「まさしく――――」

淡「……」ドキドキドキドキ

朋也「ドッキリだ」

淡「っ!!!!!………………え?」

朋也「…………」

淡「え?え?えっ?」

朋也「……馬鹿、何マジで驚いてんだ。全部冗談だって」

淡「じ、冗談……?」

朋也「そう、冗談」

淡「…………」

大星は黙りこくり、うつむいた

思いっきり動揺させられたのがそんなに悔しかったんだろう

……というよりあんな馬鹿げた台詞を吐く俺をみれば一発で冗談だとわかるだろうに

朋也「……」

春原の方を見る

きっと素晴らしくアホで愉快な笑顔を顔面に貼り付け、大げさなサムズアップをしていることだろう

――――と、思っていたが

春原「…………」

朋也「おい、なんだその目は」

何故か養豚場の豚を見る様な冷たい目で俺を見ていた

……てっきり大星の痴態に腹を抱えて笑っていると思ったが、俺の思い違いだったのか?

春原「岡崎……」

朋也「な、なんだよ」
82 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:30:53.51 ID:poOy3JDAo
春原「流石の僕でも今の岡崎の行動にはちょっと引くわ」

朋也「…………」

冷静になって、自分を見つめ返す

いたいけな少女に、セクハラまがいの事を囁く不良生徒――――

どうみても変態だった!

朋也「……うん、確かにやり過ぎた」

春原「……いいから謝っとけって」

朋也「……ああ」

くるりと向き直り、大星へ視線を映す

相変わらず、俯いたままだ

淡「……」

朋也「あ、あー、大星、その…だな……」

淡「……」

朋也「俺が悪かった。ちょっとからかい過ぎちまったみたいだ」

淡「……」

朋也「お前があんなに慌ててるの見るの始めてだったから、つい――――」

と、そこで

伏せられていた顔が、上がる

朋也「大星……!」

淡「…………」

大星は、笑っていた

そして

次の瞬間

朋也「……は?」

すぱぁん!

と、乾いた音が鳴り響き――――

朋也「っ!〜〜っ!?!?!?」

――――季節外れのひとひらの紅葉が

――――俺の頬に、浮かび上がった


結局その後

昼休みギリギリまで大星の機嫌を取っていたのは



……言うまでもないことだ
83 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/18(日) 20:33:27.11 ID:poOy3JDAo
終了。ちょっと調子乗り過ぎた感

そしてうーんこの牛歩展開

皆さん風邪には気をつけましょう

では、サラダバー
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/18(日) 20:37:10.86 ID:iP3t7Ctko

遅いしもどかしいと思い続けているが面白いから待つ
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/18(日) 22:23:24.63 ID:e0vR46eAO
フムン
期待
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 00:18:42.22 ID:getElXwmo
クラナドベースで見る分にはいいペースなんじゃね?
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/19(月) 10:49:03.63 ID:GC9fbYQS0
clannadしか分からんがおもしろいぞ
そのまま続けてくれ
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/19(月) 15:24:18.29 ID:enBOua8AO
乙。ネタをいくつも挟んで来るのがイイネ・

展開は丁寧に、どうぞ(意味深)
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 15:44:24.42 ID:cQCDJvggo
智代らしき会長がいるあたり、渚以外のクラナドヒロインは存在しているのかな?
今のところ杏ポジションは淡が確保してるっぽいけど。
90 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:14:41.62 ID:zWWDWi36o
開始
91 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:16:44.73 ID:zWWDWi36o
春原「さっきの話なんだけど」

昼休みも終了間際

ふくれっ面の大星を何とかなだめてーー明日から互いの弁当を交換する条件付きでーーひと息つき、さて午後はどこで惰眠を貪ろうかなどと考えていると、やはり春原が口を開いた

朋也「……なんだ。わかりやすく三文字に要約して話せ」

春原「えっと…って三文字なんて無理っすから!」

朋也「じゃあ黙れ」

春原「ぐっ!……っ、さっきの話だけど!岡崎が不良うんぬんって話!」

朋也「……」

……適当に喋らせておこう。疲れる

春原「それで思い出したんだけど、最近岡崎遅刻してないみたいじゃん」

朋也「それがどうした」

春原「いや、別に、ただ意外だなぁって」

朋也「ほとんど毎日遅刻してるお前とは、俺は違うからな」

春原「ぐ……だってしょーがねーじゃん、この季節は布団が僕を離してくれないんだからさっ!」

朋也「……この季節っつーか、お前にとっては1年間365日だろ」

春原「へへっ、まあそーなんだけどさ」

朋也「……」

こんな奴でも、数年後は立派な社会人として生きているのだからおかしな話だ……うん、人のことは言えんな

……って

朋也「……大星、なんだその顔は」

淡「いやぁ、意外だなぁ、って」

心底意外そうな顔で、大星は俺を見つめる

朋也「あ?」

淡「てっきりトモヤもヨーヘーみたいに毎日重役出勤してると思ってたんだけどな〜」

朋也「……ほっとけ」

淡「でも早起きはなんとやらって言うしね!良いことだよ!」

朋也「三文の得、か。……つーか毎日弁当作ってきてるんだから、早起きしてることぐらい予想はつくだろ」

淡「……あっ」
92 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:19:20.07 ID:zWWDWi36o
春原「良いねぇ、あの戦争に参加しなくてイイってのは……僕も作ってこようかな」

朋也「お前じゃ到底無理だな」

春原「……うん、僕も言っててそう思った」

いや、そこは否定しろよ

淡「んー、でも残念だなぁ」

朋也「残念?」

春原「なにが?」

淡「うん。トモヤが毎日遅刻してるんならさー」

淡「私が毎朝起こしに行こうと思ったのに」

朋也「……は?」

春原「うへぇ…」

淡「そしたらモーマンタイじゃん?」

朋也「大星」

淡「ん?」

朋也「ありがとな、早速見つけれた」

淡「?」

朋也「三文の得、って奴をな」

淡「……それ、どういう意味?」

朋也「わざわざ朝一番にお前の阿呆面を拝まなくて得した、って事だ」

淡「…………」

……恨みたっぷりの、ジト目で見つめてくる

春原「……」

何故か春原も一緒に

……うん

朋也「いや、常識的に考えて毎朝起こしにくる奴があるか!」

淡「ええー?そうかなー?」

朋也「そうだ!わざわざ俺みたいな不良を起こしにくる奴なんているわけーーーーーー」

……いた
93 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:22:06.99 ID:zWWDWi36o
朋也「……っ、ないだろ!」

淡「むむー」

脳裏によぎった生徒会長様を取っ払い、全力で否定する

大星は不満げだ

春原「あっ、じゃあさじゃあさ淡ちゃん。代わりに僕を起こしてくれない?」

春原「淡ちゃんみたいな可愛い子が起こしにきてくれるんなら遅刻なんてするわけーーーー」

淡「ヨーヘーの安眠を邪魔するなんて私にはできないよ!」

春原「ですよねぇ!」

朋也「どうせだから永眠しとこうぜ!春原!」

春原「ひどっ!?」

朋也「そうしたらもう学校行く必要もないじゃん?あの坂を登らなくても済むぞ」

淡「人生って坂道もついでにね!」

春原「いや登りますから!坂道!このはてしなく遠い男坂を!」

朋也「……」

おそらくこのサイレントナイトスノハラの人生は永遠に未完だろう

淡「……」

俺と大星、2人の哀れみの視線が春原を射抜く

春原「だーっ!もうっ!なんなんですかその目は!」

「「……」」

春原「……っ」

春原「あ!そ、そう言えばさっ!」

苦し紛れに

春原「淡ちゃん夏は全国大会だろ?すげーじゃん!」

春原が話題を変えようと試みた

淡「?そうだけど」

……部活嫌いのこいつがそんな話をするなんて、雨でも降るのだろうか

春原「俺と岡崎は部活なんて大っ嫌いだけど……淡ちゃんは別さっ!」

淡「……」

朋也「……」
94 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:24:39.02 ID:zWWDWi36o
昔の俺ならいざ知らず、今この俺は部活に嫌悪感など抱いちゃいない

渚との思い出が、俺に教えてくれているからだ

部活が生み出した、あの日々の幸せをーーーー

淡「……トモヤ」

朋也「ん?なんだ?」

しみじみと渚との思い出を思い出していると、大星がおずおずと話しかけてきた

淡「トモヤは私を、応援してくれる?」

朋也「そりゃ、まぁ、知り合いなんだ。当たり前だろ」

淡「ふーん……」

口に手を当て、考え込む

淡「トモヤが応援してくれるんなら100人力だ!この高校百年生の私の実力を見せてあげるよ!」

満面の笑みで、大星

春原「淡ちゃん、もちろん僕も応援するぜっ」

淡「ありがとう、ヨーヘー。トモヤと合わせて101人力だよっ」

春原「……僕はたったひとりですか?」

朋也「マイナスになるよりかはマシだろ」

春原「……」

……そう言えば、彼女とはあまり部活の話をした記憶がない

ひょっとして俺たち2人を気遣っていたのだろうか

……部活嫌いの、俺達を

朋也「……」

じぃ、と彼女を見つめる

淡「?私の顔に何かついてる?」

朋也「……いや、なんでもない」

……ま、気のせいか

淡「あ、麻雀で思い出したんだけどさ」

朋也「?」

淡「トモヤ、麻雀打てる?」
95 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:25:58.31 ID:zWWDWi36o
朋也「麻雀?」

春原「僕は打てるぜっ!」

朋也「……まぁ、多少はな」

淡「!じゃあさじゃあさ!」

大星の瞳に星が輝き、ぐぐいっ、と身体を押し出してきた

淡「今度打とうよ!」

春原「打つ?……ははっ、いいぜ、淡ちゃん!その喧嘩買った!」

淡「ねね、いいでしょいいでしょ?」

ずびしっと指を突きつける春原をアウトオブ眼中して、大星はしきりにこちらへ身を乗り出してくる

まるでじゃれつく犬のようだ

朋也「……おう、考えといてやるよ」

淡「ホント!?」

朋也「ああ」

ただし、打つとは言っていない

だいいち一年生で天下の白糸台の大将を務める彼女だ

勝てるわけがないし、こんな大事な時期にわざわざ素人と勝負する必要などない

とりあえず、はぐらかしておこう

淡「それじゃあーーーー」

朋也「それより大星」

淡「へ?」

朋也「教室に戻らなくてもいいのか?そろそろチャイムが鳴るぞ」

淡「え?……あっ」

大星が素っ頓狂な声をあげるーーーーと、同時に

朋也「ほら、な」

昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた

淡「ううー、時間立つの早いなー……あっ」

朋也「?」

淡「5時限目体育だった!急がなくちゃ!」

言うや否や、ダッシュで一年練へと走ってゆく大星

淡「またねー!トモヤ!あとついでにヨーヘー!」

途中くるりと振り返り、ぶんぶんと手を降ってくる

朋也「ああ、またなー」

春原「僕ついでっすか!?」

淡「……」

…金色の波が校舎へと消えてゆく

そんなある日の、昼下がり

これが今の日常だ

朋也「……」

空を、仰ぐ

朋也「……」

梅雨の間の青空が、静かに俺を見下ろしていた
96 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/21(水) 20:28:17.76 ID:zWWDWi36o
終了

カラオケイベントとかやりたいけどこの調子だといつになるのやら。これもうわかんねぇな
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 20:41:39.26 ID:cZ1lVS2+0
乙でーす 便座カバーネタを期待せざる得ない
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 20:42:08.93 ID:nvmwGBWDO

99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/21(水) 20:43:52.62 ID:qUFFeA2+o

遅いとは感じつつもチャッチャと展開進めるよりもこういう日常の掛け合いを大事にして欲しい
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/21(水) 20:51:17.46 ID:qAVq8fuAO
乙。日常会話を楽しみたいからこれでいいと思う(小並感)

けど岡崎はホモ、はっきりわかんだよね
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 14:35:32.10 ID:O1aWgpIxo
乙。
精神年齢高いだけあって安定してるな朋也。
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 17:53:04.09 ID:8WvG5b1xo
>>100
春原(ホモ)ルートあるしな
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/22(木) 18:26:34.36 ID:PiB5sLrio
岡崎「あ、その顔好き」で濃厚なキスするからな
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesage]:2012/11/23(金) 21:07:11.01 ID:En4Rzurm0
渚「(まぁじゃん!)」
105 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:00:31.64 ID:mPgYZ+geo
準備完了。当方に投下の用意あり
106 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:03:49.29 ID:mPgYZ+geo
担任の話ーー夏が始まり本格化する受験勉強についてーーが終わり、礼と共に長ったらしいSHRが終了した

今日の学校もこれにて終了だ

ある者はそそくさと教室を出て、またある者は友人達と雑談をし始めるーーどうやら先日のテストの結果についてのようだ

教室は放課後特有の喧騒に包まれていた

「ぬわああああっ、疲れたねぇーーー!」

隣の席に座り、ぐいっと身体を伸ばす馬鹿1名ーー春原だ

朋也「疲れた……って、お前は午後丸々寝てただろ」

隣から響くいびきがうるさいことこの上なかった

春原「あ、あはははは……ところでこれからなにするよ?」

朋也「そうだなー」

適当に街でもぶらつくか、ゲーセンでも行くか

うーむ……

春原「それと、夕飯もなにするよ?」

朋也「そうだなー……ってなんでお前と食う事が確定してんだよ、気色悪い」

春原「……うん、まぁ夕ご飯は置いておくとーーーーあっ」

朋也「?」

春原「そう言えばこの辺に美味いラーメン屋台が来てるらしいぜ」

朋也「屋台?」

春原「だから今夜食い行こう、な!」

朋也「……」

ラーメンか……うん、イイな

朋也「よし、その話乗った。たまにはラーメンも悪くない」

春原「だろ?……よし、それじゃー夜までーー」

朋也「もちろんお前のおごりな!」

春原「え?」

朋也「え?」

春原「……いや、そんな満面の笑みでサムズアップしても奢りませんからね!?」

朋也「……!!」

春原「なんであり得ねーもん見たかのような目をしてるんすかっ!?奢りませんから!ホント!!」

朋也「……チッ」
107 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:06:09.01 ID:mPgYZ+geo
春原「ああもう!とりあえず腹減るまでゲーセン行こうぜ!ゲーセン!」

朋也「お前の奢りでな」

春原「だから奢らねーよっ!!」

朋也「……チッ」

まぁ、たかるのはゲーセンについてからでいいか

隣でわめく金髪の雑音は気にしない

朋也「……」

がたっ

のらり、と気だるげに座り疲れた席から立ち上がり、鞄ーー中身はすっからかんのーーを掴む

春原「……むむぅ」

釈然としない顔で春原も続けて立ち上がる……って

朋也「お前、鞄はどうした」

春原「え?ああ、今日は忘れてきちゃった」

……呆れた

やっぱり今日はこいつとつるまず1人でテキトーに街でもぶらつくか

しかしラーメンも気になる。そう言えば久しく食っていない

こいつのおかげで今夜はすっかりラーメンの気分だ

朋也「……」

釈然としない気分で未だ喧騒に包まれる教室ーーの出口へと進む

扉の前で男子数名がダベっていたが、俺達2人が近づくのを見てそそくさと移動した

チラチラと脇目でこちらを伺っている

……うーむ

思えば随分とうっとおしがられてるもんだな、俺

まぁ進学校に巣食うガンみたいなモノだ

当然と言えば当然だろう

……そして、ふと

渚と出会う事がなければ俺はどうなっていたのだろうか

そんな事を考えてーーーー少し身震いした

今の自堕落な生活を続け、卒業し、職に付き、社会の歯車として生活する

親父とも和解せず、ただ働くだけの無機質な毎日
108 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:09:05.88 ID:mPgYZ+geo
渚と出会わなかった俺の未来

ーーもしかするとそれは、これからの俺の未来かもしれない

朋也「……」

がらっ!

思考を振り払うようにして、乱暴に扉を開く

最近はナーバスになりがちだ

どうかしてる

軽く自嘲してーーーー俺は、目にする

その、人物を

朋也「……なんか用か?」

視線の先

壁に背を持たれかけて立っていたのはーー

「ん?用?もちろんあるよっ!」

ーー金髪少女、大星淡だ

にこにこと人当たりの良さそうな笑顔を浮かべてひらひらと手を降っている

春原「おっ、淡ちゃんじゃん。どったの?」

俺の背からのそのそと春原が顔を出す

淡「ん、ちょっとねー」

春原「ふーん……あ、そだ。今から僕たちゲーセン行くんだけどさ、淡ちゃんもどう?」

最近ご無沙汰だったでしょ、と、春原

……。

どぐしっ!

春原「あだっ!?」

一発軽く叩く

春原「なにすんのさ!?」

わめき散らすアホ面を脇に挟みヘッドロックして囁く

朋也「馬鹿、お前昼の話忘れたのか」

春原「ひ、昼?」

朋也「部活だ、部活。今一番大切な時期だろうが」

春原「ああー……」
109 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:11:16.51 ID:mPgYZ+geo
淡「ねぇ、何話してるの?」

朋也「ん?あ、ああ、別に大したことじゃない」

淡「ふーん…?」

探るようなジト目で見つめてくる

朋也「それより、お前の方こそ何の用だ」

淡「あ、それはねー」

そこで言葉を切り、何やらうんうんと唸っている

朋也「おい、言いたいことがあるなら早く言ってくれ」

別に急いじゃいないが、じれったいことは嫌なのでせかす

淡「んーと……トモヤ?」

朋也「?」

淡「これから、ヒマ?」

かくん、と首をかしげながら訪ねてくる

いちいち動きが小動物くさい奴だ

春原「僕も岡崎も暇だぜー」

俺より先に、隣の金髪が答える

お前に聞いてねぇよ、と、とりあえず心中で突っ込んでおく

朋也「……ゲーセンに行く用事があるから暇じゃないな」

淡「……それをヒマって言うんじゃないのかな?」

朋也「……」

そんなモノ、人それぞれだと思う

淡「ねね、ヒマ?ヒマなんだよねっ?」

朋也「…だったらなんなんだ」

淡「♪」

ため息混じりでつぶやくと、大星は途端にその笑顔を一層眩しくさせた

みるからに機嫌がいい

淡「だったらさ!」

そんでもって、満面の笑みをずずいっと近づけてくる

眩しいことこの上ない

……そして

そのまま、大星は

淡「麻雀!打とうよ!」

そんな事を、言ってのけた
110 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:15:22.06 ID:mPgYZ+geo
朋也「はぁ?」

自分でもわかる程、間抜けな声を出す

いったいまた何を言っているんだこのタコ足金髪少女は……

淡「だからさ!麻雀打とうよ!麻雀!」

朋也「……お前とか?」

淡「うんっ!」

朋也「……はぁ」

淡「ねーねー、いいでしょいいでしょ?」

朋也「……」

淡「私はトモヤと打てたらウルトラハッピーだよっ!」

朋也「……」

淡「だからさだからさ!打とうよ!」

朋也「……俺にメリットがない」

おそらく焼き鳥にされて一方的に蹂躙されトバされるのが関の山だ

勇気と無謀を履き違える訳にはいかない

淡「メリット?……うーん、メリットかー…」

ふむふむと考え込む彼女

淡「!」

やがて何かを思いついたのか、その見た目空っぽの頭の上に電球を浮かべた

淡「じゃあさ、明日の昼休みに……」

朋也「昼休みに?」

淡「膝枕してあげる!」

朋也「……」

あきれ返る

ジュースおごるとかならまだしも膝枕とは……

いや、一年生の、それも女子に奢らせるなんてみっともなくて出来なーーーーうん、膝枕の方がヤバイな

淡「膝枕だよ!膝枕!女子高生の膝枕だよ!」

柔らかいよ!すべすべだよ!お昼寝したらきっと気持ちイイよ!と火星言語を喋る大星

春原「……僕には?」

淡「するわけないじゃん」

一蹴

そしてトドメに「麻雀打つつもりもないよ。弱そうだから」としっかりと付け加えて
111 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:18:00.01 ID:mPgYZ+geo
朋也「……」

淡「だからさー、一緒に打とうよ!麻雀!」

朋也「……本当に」

ぼそりと、つぶやく

淡「?」

朋也「本当に…お前と打てば…………膝枕をしてくれるのか?」

淡「っ!」

たじろぐ大星

淡「う、うんっ!してあげるっ!膝枕!この大星淡サマがしてあげるよっ!膝枕!」

ぱんっ!と胸を叩き、言い放つ彼女

廊下の窓から差し込む夕日のせいか、顔全体が朱色に染まっている

淡「だから打とうよ!麻雀!私の膝枕との、ギブ・アンド・テイク!」

朋也「だが断る」

淡「ナニッ!!」

朋也「この岡崎朋也が最も好きなことの一つは自分で(麻雀が)強いと思ってる奴に『NO』と断ってやることだ」

朋也「……っつーか膝枕してもらうなんてみっともなさ過ぎるだろーがっ!!!!!!」

べしっ!

淡「あいたっ」

壊れかけのブラウン管テレビにする様に、ホンワカしている金髪頭にチョップする

淡「むむむー…私と麻雀打ちたくないのー…?」

朋也「全国も近いってのに俺みたいなトーシロと打ってなんの得もないだろうが。時間の無駄だ」

春原「淡ちゃん、やっぱこんな奴より僕と打った方がーーーー」

淡「私はトモヤと打ちたいんだもんっ!」

春原「…………」

朋也「…………」

淡「……打ちたいんだもん」

うなだれる大星

……まるで自分がこいつを虐めてるみたいだ

心なしか周りからの視線が痛い

朋也「…………っ」

手持ち無沙汰になり、無意識のうちに頬を掻く

淡「本当に……ダメ?」

雨に濡れる捨て犬のような目で見つめてきた

朋也「……う」

よくよくよくよくよくよくしっかりと、しっかりと!まぶたをこじ開けて瞳に焼き付けて見てみれば、彼女はそこら辺のジャガイモ男達などコロッと騙せる容姿なのだ

思わずドキッとする

……っていかんいかん!俺には渚がいるっ!

朋也「っ!」

……ふぅ

呼吸を整え冷静になる
112 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:20:52.82 ID:mPgYZ+geo
「「…………」」

さて、どうするか、このままゲーセンに行くのも気が引けーーーー




「……何処かで聞いた覚えのある間抜け声がしたと思えば」




背後から、凛とした声が響いた

朋也「っ!?」

ぐるりと振り返る

そこに立っていたのはーーーー

「三年生のクラスに何の用だ?大星」

ーーーー1人の、少女

……『クールビューティー』を絵に書いたような、少女


そして


俺は彼女をーーーー知っていた

朋也「……弘世か」

名を、弘世菫

菫「……フン」

白糸台高校麻雀部が大黒柱

暴れ狂う虎が蹂躙し、逃げ仰せた獲物の息の根を止める、もう一匹

地に伏せ、息を潜め、静かに、迅速に、一瞬の内に命を刈り取る伏虎

白糸台高校麻雀部・次鋒

一寸の狙いも過たず、その獲物を射殺す様から付いた通り名がーーーー

『シャープシューター』


……そう


『シャープシューター』弘世菫……!!
113 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/25(日) 21:22:36.82 ID:mPgYZ+geo
終了。当方に退散の用意あり

全国編であの高校のあのキャラと絡ませたいとか色々考えてるんですけどいつになったらそこまでたどり着くんですかね……?

次の次には麻雀描写入るんじゃない?知らんけど。けんどクッソ適当だと思うから、ハイ、ヨロシクゥ!

では、これにて失礼
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 21:25:56.46 ID:u6d2Qd7DO

麻雀描写に関しては適当でいいんじゃない?
むしろキャラ同士の絡みをみたい
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sagesage]:2012/11/25(日) 23:27:21.56 ID:vRZuK7Ua0
機体してるから投げ出さないで
4649
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 23:31:35.84 ID:iU2vz0m3o
SSで麻雀描写こだわられても困るし、適当で良いと思うし
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/26(月) 00:25:18.31 ID:MYdRWnxAO
乙。うーんこの春原…やっぱりホモじゃないか(呆れ)

麻雀描写はパパっとやって終わりっ。それで大丈夫って一番言われてるから(適当)
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 08:36:19.30 ID:5Z7etP77o
乙。
まさか麻雀部に入部して目指す展開になるってわけじゃないだろうしね。
そうじゃないなら闘牌描写はあんまり気にしないでいいんじゃないかな。
観戦にしろ、朋也主観なら優勢劣勢くらいですむわけだし。
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 14:01:57.66 ID:rYB5Larbo


ちと朋也が子供っぽいかなとも思うが……学生のノリか?
スノハラの扱いが……(ノД`)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 14:01:57.65 ID:rYB5Larbo


ちと朋也が子供っぽいかなとも思うが……学生のノリか?
スノハラの扱いが……(ノД`)
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新潟・東北) [sage]:2012/11/26(月) 18:27:37.22 ID:W13iGtXAO
この寸止め感
そういえば初期の朋也ってこんな感じだったな
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 17:18:01.60 ID:GaY/aDDDO
ここでの朋也と父親の関係ってどうなってんだろ
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/28(水) 17:21:06.46 ID:bW04+epJo
朋也は中身は成長してるんだからあっさり解決しそう
いやでも朋也だしなぁ……
124 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 19:58:35.53 ID:RlKlcH31o
準備完了。当方に投下の用意あり
125 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:02:24.00 ID:RlKlcH31o
がっしりと腕を組み、仁王立ちで立っていたのは白糸台高校麻雀部次鋒・弘世菫

凛とした様子でこちらを見つめてくる

淡「あ、スミレー」

大星が意識を彼女に移す

淡「どうかしたの?」

菫「それはこっちのセリフだ……何故お前が三年の学級に来ているのかと聞いている」

淡「え?んっとねー…」

菫「……ひょっとして、その男に会いに来たのか?」

大星の返答を待たずに、弘世は言葉を紡ぐ

淡「当たりっ!」

菫「…………」

ハァーーーーーーと、こっちに聞こえてくるほど大きなため息を吐き出す弘世

どうやら彼女もこの金髪頭に手を焼いているようだ

少し親近感が湧く

菫「……あーー……岡崎と言ったか」

朋也「なんだ」

額に手を当てつつ、弘世

菫「済まないな、ウチの馬鹿娘が何時も世話になってて」

朋也「お、おう」

菫「……」

ハァ、とまた一つ大きなため息をつき、皺が寄った眉間をグリグリと押している

朋也「……あんたも、相当苦労してるみたいだな」

心の底から同情する

菫「まぁ、見ての通りさ」

弘世がーーつられて俺もーー横をちらりと見る

淡「???」

そこには相変わらずほんわかしている噂の一年女子の姿が

「「……ハァ」」

2人同時に、溜息

噂に聞いた限りでは堅物女だと思っていたが、意外と話せそうだ……大星淡と言う共通の話題のおかげで
126 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:05:04.96 ID:RlKlcH31o
菫「……それで、岡崎」

朋也「なんだ」

菫「何故この大馬鹿がお前に会いにーーーーって、どうした?」

朋也「え?あ、ああ、いや、先刻から気になってたんだが……」

俺の視線に違和感を持ったのか、弘世が訪ねてくる

そう、先程から少し……いや、大変気になる事があるのだ

それはーーーー

朋也「そのお前の横からはみ出てるのはなんだ?」

ーーーー弘世の脇から覗く

赤い、突起状のモノ

菫「え?……って、うおっ!?」

俺に言われて背後を確認した弘世が、仰天して横に飛び退く

大星「……あっ」

廊下の中央に立つ弘世ーーその背後に隠れていたモノを見て、大星が声を上げる

いや、モノではない

ヒトだ

「……っ!」

先程から弘世の背に隠れていた1人の人物ーーーー1人の、少女

白を基調とした白糸台高校の夏服に身を包み

赤みがかった髪を揺らす少女

その、少女は

群雄割拠の女子インターハイ個人戦

数々の戦いを勝ち抜き、見事頂点に登り詰めたーーーーチャンピオンにして白糸台高校麻雀部・先鋒

己に立ち塞がる獲物を喰らい尽くす、暴れ虎


「チャンピオン」「虎姫」「連荘機械」「赤髪」「てるてる」「王者」「コークスクリュー」「黄金回転」

彼女を呼ぶ名は数しれずーーーーだがその事実はただ一つ

『最強』

日本麻雀会が誇る高校生

インターハイと言えばこの人

その名を、宮永照

……そう

『チャンピオン』宮永照ーーーーーー!!
127 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:08:40.07 ID:RlKlcH31o
朋也「…………」

……なんて、仰々しいアオリを並びたててはみるものの

三人……プラス一匹の視線に当てられてビクついてる宮永を見ればそんな恐ろしい肩書きなど嘘に思えてくる

照「……っ!」

好奇の視線にたまらず宮永は動揺して、身体を揺らしーーーー

菫「うわっ!?」

ーーーーぱたぱたと走り、再び弘世の背へと隠れた

照「…………っ」

ちらっ、ちらっと僅かに顔を出してこちらを伺っている

心なしか、俺の方を執拗に

……そんなに恐いだろうか、俺の顔

そう言えば二回目に会った時もいきなり逃げられたっけ

……うーむ

朋也「……はぁ」

淡「アハッ♪」

ほんの少し傷ついた俺の硝子の心などいざ知らず、大星は能天気な声を上げる

淡「テルー、かーわいっ♪」

……相変わらずこいつは人生楽しそうだなぁ

照「ううっ……」

菫「おいっ、照っ、離れてくれ。暑いぞ」

たまらず弘世が宮永を振り解こうとするが

照「……っ」

ささささっ!

やっぱり宮永は弘世の影に隠れる
128 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:11:02.60 ID:RlKlcH31o
朋也「……」

……こうも怯えられては手持ち無沙汰だ

だから

とりあえず

朋也「おい春原、お前の野獣みてーな眼光で宮永が怯えてるだろ」

春原をいじる事にした

春原「はっ?」

朋也「だから今すぐ死んでさしあげろ」

春原「理不尽っすねぇ!?ホント!相変わらず!」

朋也「理不尽……?」

何訳わからん事言っているんだ

……まぁいい

朋也「それで、弘世」

菫「?」

朋也「今俺に何を聞こうとしたんだ?」

菫「ん、ああ……いや、なに。何故この馬鹿がわざわざこっちに来てるのか聞きたくてな」

朋也「…俺と麻雀が打ちたいんだと」

菫「麻雀?」

淡「あっ、そうだそうだ!トモヤ!打とうよ!麻雀!」

朋也「ほら、な?」

菫「…………」

弘世は呆れ返っている

朋也「……素人の俺と打ったってなんの得もないだろ?」

菫「それもそうだが……いいのか?あいつあんなにお前と打ちたがってるぞ」

視線をずらすと、ぴょんこぴょんこと飛び跳ね、大星が自己主張をしていた

朋也「……全国終わってからなら、いくらでも打ってやるさ」

そう、吐き捨てる

……すげー上から目線だ、俺。麻雀弱いのに

菫「……」

弘世は何も言わない
129 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:12:57.24 ID:RlKlcH31o
照「……」

宮永も相変わらず弘世の影に隠れて、チラチラとこちらを見てーーーーいない

顔を伏せ、なにやらぶつぶつと呟いている

どうかしたのだろうか

……まぁ、俺には関係ないか

朋也「……おい、春原!」

春原「あん?」

朋也「ゲーセン、行くんなら早く行こうぜ」

春原「お、おう」

春原を急かし、ここから立ち去るべく彼女達に背を向ける

朋也「……ああ、そうだ」

数歩歩んだところで立ち止まり、彼女達にふと思い出したように顔だけを向ける

朋也「全国大会、頑張れよ」

紛れもない本心であった

春原「もちろん僕も応援してるぜっ!」

柄じゃないけどね、と春原

……。

朋也「お前が応援したら台無しになるからやめてくれないか?」

春原「あんた僕に何の恨みがあるんだよっ!!」

朋也「冗談だ」

2割ぐらい

朋也「ほら、さっさと行くぞ」

春原「いだっ!?……っああもう!了解っ!」

ばしんっ!と春原の背中を叩き、下駄箱に続く階段の方へと歩き始める

こうして今日もまた、自堕落な時が過ぎてーーーーーーん?

朋也「……?」

背中に、違和感
130 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:15:33.18 ID:RlKlcH31o
とりあえず歩を止め、ゆっくりと後ろを確認する

朋也「……」

一番に瞳に映ったのはーーーー赤色

朋也「……おい、なにしてるんだ」

……服の裾が、掴まれていた

いつの間にかピッタリと後ろに立っていたーー

朋也「宮永」

ーー宮永の小さな手によって

照「……」

宮永の顔は伏せられていて、表情は確認できない

が、しかし

その手には俺の制服の裾がしっかりと摘ままれていた

朋也「……なんか俺に用か?」

照「!!」

びくんっ!

と、宮永の小さな肩が揺れる

伏せられていた顔がこちらを向く

潤んだ瞳が、俺を射抜く

先程の大星と同じ

まさに捨て犬の目だ

朋也「……」

照「……」

お互い、見つめ合う

宮永の澄んだ瞳には俺の顔が映っている

照「……わ」

朋也「わ?」

暫くの沈黙が続き、やがて宮永の小さな口から言葉が紡ぎ出される

照「わ、私も……」

そして、宮永は

小さな勇気を振り絞るようにしてーーーー

照「私も、岡崎と打ちたい…………っ!!」

ーーーーそんな事を、言った
131 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:23:31.79 ID:RlKlcH31o
朋也「……は?」

思わず素っ頓狂な声を上げる

照「……」

なおも彼女の瞳はこちらを見つめる

まるで俺の全てが見透かされているようだ

朋也「……今、なんつった?」

確認の意味を込めて尋ねる

もしかすると俺の聞き間違いかもしれないのだ

照「わ、私は」

朋也「私は?」

照「私は、打ちたいです」

朋也「打ちたいです」

照「麻雀を、岡崎と」

朋也「……」

英文の和訳のような返答であった!

……そしてどうやら、聞き間違いではないらしい

朋也「お前と、打つ?麻雀を?……俺が?」

照「うん」

朋也「……」

言葉に詰まる

こんな俺と打って一体なんの得がある……?

そして一体何が彼女を突き動かしているのだろうか

想像できない

照「……だめ?」

朋也「うっ」

ましてや

先程の大星のように、雨に濡れる捨て犬のような目で見つめられたとあっては

何も言えなくなるというモノだ

……こんな時どんな顔をすればいいのかわからない
132 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:25:19.61 ID:RlKlcH31o
菫「……おい、岡崎」

朋也「え?」

さてどうするかと硬直している俺に、弘世が声をかける

菫「私からも頼む、このぽんこつに付き合ってやってくれないか?」

朋也「付き合うって……麻雀にか?」

菫「ああ、そうだ」

菫「金髪のスカタンならともかく、普段はめったに自己主張しないこいつの頼みなんだ」

そう言うと弘世はポンポンと宮永の頭をたたく

菫「……駄目か?」

朋也「いや、駄目かと聞かれてーーーーーーもっ!?」

淡「……」

……気がつけば大星も眼下から俺を見つめていた

宮永と隣あってこちらを見つめてくる様は、まるで『拾ってください』と書かれた段ボールに収まる二匹の子犬だ

朋也「…………」

照「……」

淡「……」

沈黙が続く

朋也「……っ」

ーーーーやがて、俺は

突き刺さる視線に根負けして

朋也「……わかった」

朋也「その話、乗った」

そんな事を、口走った

「「!!」」

二匹の表情が、見てわかるほど明るくなる

淡「ホント!?ホントにホント!?」

朋也「本当だからそう手を降るな!」

俺の両手を掴んだ大星がぶんぶんと繋がれた手を上下に降る

淡「それじゃあーーーーーー善は急げだねっ!」

彼女がそう言うや否や、俺の身体はーーーー勢いよく引っ張られた!

朋也「うおっ!?」

淡「〜♪〜♪〜♪〜♪」

だっ!

受験の重圧に淀む廊下を、一筋の流星が駆け抜ける

……背後から廊下を走るなと弘世の怒号が聞こえてくるが

当然のように大星は疾走を止めはしない

その右手にしっかりと俺の左手を握って

朋也「……」

こうして今日の放課後の予定は

彼女達との麻雀に決定したのであった
133 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/11/28(水) 20:26:19.53 ID:RlKlcH31o
投下完了。当方に撤退の用意あり

俺語彙力低すぎィ!

俺将、阿知賀4巻淡一年生の先輩呼びに驚愕……なんてことだ……なんてことだ……

……大正義folks loreさんは本当に尊敬する。ぐう面白いから見とけよ見とけよ〜
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/28(水) 20:44:26.23 ID:GaY/aDDDO
乙!
てるてるかわいい(小並感)
135 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 20:45:00.93 ID:xxrbHCJ6o
春原の霊圧が消えた……!?
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 21:19:22.66 ID:8Yi0y8CN0
お疲れです 三麻じゃないなら四人目は春原なのかそれとも名前がまだ出ていないあの人なのか
137 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 21:36:57.12 ID:zYK32R5+o
岡崎照淡菫で4人だろう
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西・北陸) [sage]:2012/11/29(木) 02:33:38.05 ID:G28mig0AO
乙。テルテルぐうかわぐうかわアンドぐうかわ

これは春原がジョイナスする可能性が微粒子レベルで存在している・・・?
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 09:01:52.47 ID:WtgYAEpXo
遊びでもうちたくないんですがそれは

即空になるやろなあ。
でも羨ましいわ、朋也。
面倒見良いイケメン、そりゃ懐きますよ。
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) [sage]:2012/11/30(金) 21:49:43.80 ID:onp0P6tfo
CLANNADの声優がと咲のアニメに渚と風子以外に誰か出てたっけ?
141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 22:22:07.17 ID:a5AcJQEoo
白石稔とかいう風子親衛隊兼長野県大会実況アナ

白石で思い出したが白石涼・・・あっ・・・(察し)



柊勝平とかいうアニメで出番カットされたキンクリワカメの被害者
142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 22:37:34.18 ID:6h7c54awo
勝平は嫌いじゃないが、シナリオがクソ
143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/30(金) 23:29:07.63 ID:JVmunHn+o
杏が心置き無く朋也に行けるはずのシナリオは勝平シナリオだけだから割と好き
144 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:11:05.93 ID:qb5Py/Jfo
今夜は予定が立て込んでおりまするゆえ、何時も通りの時間帯には投下できませぬ

じゃけんちょっと早いけど投稿開始しましょうね〜
145 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:14:23.95 ID:qb5Py/Jfo
大星に引っ張られてたどり着いたのは白糸台高校麻雀部・『一軍用』部室

三年の間に新設されたらしいこの部屋は、やはり他とは違った真新しさを感じさせる

くるっと室内を見回してみると、設けられた全自動麻雀卓、そして他にも冷蔵庫など彼女達のために揃えられたであろう備品の数々が瞳に映る

流石全国二連覇ともなれば学校も費やす金が違うらしい

……そう言えば学校内には麻雀部二軍三軍用の練が別に設けられていた

つくづく恐ろしいものだ

淡「そんなに見回しても変なモノはないよ?」

朋也「……いや、この学校はどんだけ麻雀に金かけてるんだろうなと思ってな」

淡「確かにねー……あ、このソファーは私のお気に入りなんだー」

ソファーを見る

確かにそんじょそこらのものとは違い上質で柔らかそうだ。昼寝に最適だろう

朋也「……そう言えば」

淡「?」

朋也「お前は何故この高校に?」

今までなんとなく気になっていたことを尋ねる

朋也「やっぱり麻雀が強いからか?」

淡「家から近いから!」

朋也「ああそうかい……」

即答であった

淡「推薦ももらえたしねっ♪」

朋也「……お前、推薦入学か」

淡「うん、そうだよっ!……意外だった?」

朋也「いや、多分そうだろうと思ってた」

アホの子のこいつがまともに受験して進学校のウチに通る訳がないだろう

淡「結局推薦うんぬんより家から近いってのが一番の理由ーーーーあっ、そうだ」

朋也「?」

淡「トモヤ、今度私の家に遊びに来ない?」

朋也「断固辞退しよう」

淡「……別に即答しなくてもいいじゃん」

朋也「いや、悪い予感がしてだな……」

摩訶不思議なこいつの家だ

いったいどんな魔境なのやら
146 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:16:09.64 ID:qb5Py/Jfo
淡「とって食うってわけじゃないのにさー」

朋也「当たり前だ、食われてたまるか」

淡「むむー…………あっ、間違えた」

朋也「は?」

淡「私が食べられる方だったねっ!」

朋也「……」

ぽかっ

淡「いたっ」

朋也「……次そんな寝言言ったら本気で殴るぞ」

淡「軽いジョークだよ、ジョーク」

朋也「……」

デジャヴを感じるやり取りだった

淡「……そういうさぁ」

朋也「あ?」

淡「そう言うトモヤは何でこの学校に?」

朋也「……」

淡「やっぱり家が近いから?」

朋也「……まぁ、そんなところだな」

淡「ふーん」

今バスケの話なんてしても何の意味もないだろう、家から近いというのも間違ってはいない

淡「じゃあ今度トモヤの家に遊びに行ってもーーーー」

朋也「勝手に来たらどうなるかわかってるな?」

淡「ーーーーはい、遠慮しておきます」

俺の言葉に彼女は怯んだ

……こんな花の女子高生を、むさっ苦しい我が家に連れ込んだと親父が知れば、気まずいとかいうレベルじゃない

ただでさえ関係は最悪なのだ、これ以上悪化する必要はないだろう

朋也「……」

……親父とも、いつか和解しなくちゃな

淡「……トモヤ?どうかした?」

朋也「ん、ああ。なんでもない……それよりも」

淡「?」
147 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:18:01.33 ID:qb5Py/Jfo
朋也「いつまで手、握ってるんだ」

淡「え?……あっ」

先程からずっと、俺の左手は彼女の右手に握られている

汐とはまた違う手の感触が新鮮だ

淡「ご、ごめんねっ!」

ばっ!

とすぐさま手をほどく大星

頬を赤く染めている、少しは恥ずかしかったのだろうか

……やっぱり変なところで女の子っぽいやつだ

朋也「…………」

淡「…………」

……そして当然、気まずくなった

妙な沈黙が場を支配する

朋也「……」

そう言えば大星とふたりきりになるのはこれが初めてかもしれない

いつもは春原もセットでつるんでるのだ

そう考えるとちょっと恥ずかしくなる

中身はどうあれ、大星は自他ともに認める美少女なのだ

そんな彼女とふたりきりという状況に、男子高校生ー精神年齢20代後半ーが何も感じないはずがない

淡「…………」

大星は顔を伏せている……もじもじと、体を揺らして

……おかしい

俺の後輩がこんなに可愛い訳がなーーーーっていかんいかんいかん

落ち着こう、俺

そしてこの状況をどうにかーーーー


がちゃん!


朋也「!?」

……俺の祈りが通じたのか、沈黙を振り払うように部室の扉が開かれた
148 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:21:00.28 ID:qb5Py/Jfo
淡「……あっ」

中に入ってきたのは、ふたりの人物

「遅れました……」

「すみません、遅れましーーーーあれ?」

眼鏡の、人形のように大人しそうな少女と、短髪のボーイッシュな少女

……弘世と大星、宮永以外の残りの麻雀部レギュラーだろう

確か名前は……忘れた

「大星だけか?先輩達はーーーーげっ」

ボーイッシュな方が、俺をみるなり変な声をあげる

「お、岡崎先輩……ですよね?」

恐る恐ると、女

眼鏡の方はぼんやりとこちらを見ている

「う、ウチに何か用ですか……?」

朋也「こいつに連行されて来た」

淡「むぬっ」

隣に立つ間抜け面を掴み、人差し指でもちのような頬をつつく

「……ああ」

……どうやらその一言でボーイッシュは全てを察したようだ

「すみません、大星がいつもお世話になってて」

朋也「それはお互い様だ」

「はい……」

弘世の時も思ったが、彼女たちは相当大星に手を焼いてるらしい

無理もない話だ

こんなじゃじゃ馬、相手にしているだけで疲れる

「はぁー……で、大星。何故お前は岡崎先輩を部室に連れて来たんだ?」

ため息を隠そうともせず、女

「ん、それはもちろんーーーー」


がちゃん


朋也「……ん?」

大星の言葉にかぶせるようにして部室の扉が開かれ、三人の人間が入ってくる

弘世と、宮永、そしてーーーー

朋也「……なんでお前がいるんだ」

春原「いちゃ悪いっすか?」

朋也「悪い」

春原「……」
149 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:23:47.72 ID:qb5Py/Jfo
菫「こいつが俺の実力も見せてやるとやかましくてな」

朋也「別にほっといてもなんの問題もないぞ」

春原だし

照「岡崎の友達だから……」

朋也「…………」

聖人だ

春原「み、宮永……!」

春原は感涙の涙を流している

「あ、あの、弘世先輩……」

菫「む、どうした?亦野」

「どうして2人が部室に……?」

ボーイッシュな女ーーーー亦野が弘世に尋ねる

菫「ん、ああ。ウチの姫様2人が岡崎と麻雀が打ちたいんだと」

亦野「え?……ああ」

疑問を浮かべた亦野だが、すぐに何かを察し、何故か納得した

そして一言二言弘世から何か話を聞いて、俺の方を見る

亦野「……」

……見るからに変な表情になる亦野

「……ずずー」

それと、いつの間にか眼鏡の女ーー確か渋谷ーーは椅子に腰掛けお茶を飲んでいる

朋也「あー……そこの二年も妙に思ってるみたいだし、やっぱり俺達は帰らせてーーーー」

照「…………」

亦野の困惑を好機と踏み、そそくさと帰ろうとした俺を宮永の視線が射抜く

朋也「ーーと思ったけど麻雀打った方がイイよな、やっぱり」

彼女の瞳を見てしまえば、おいそれと家に帰る事など不可能だ

淡「!!うん!麻雀打とう!麻雀!」

……大星はすでに雀卓に座っていて、今か今かと待ちわびている

照「……」ぐっ

弘世「ああもうそう急かすな、席決めがあるだろう……」

心なしかちょっと張り切りながら宮永が、ため息をこぼしながら弘世が席につく
150 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:27:08.82 ID:qb5Py/Jfo
照「岡崎……」

朋也「あ、ああ」

宮永の視線につられて、おっかなびっくり空いた席に座る

朋也「……」

……雀卓の性能云々など詳しくは知らないが、座っただけで俺は目の前のソレがいかに高性能であるかを理解した

一体いくらするんだろうか、この台

つつ……と手のひらで側面を撫でる

朋也「……」

麻雀、か

確か記憶の中で最後に打ったのは……だいたい一年前だ

あの花畑の旅行の後、この街の雀荘で自身のけじめにと打ったのが最後だ

……。

あの五年間

渚の死から目を逸らし、汐から目を逸らし、腐り切った生活を続けていたあの五年間

たまの休みの日はいつも雀荘に浸っていた

彼女を忘れようと、無心に牌を打っていた

勝ったり負けたりの、時間を潰すためだけの麻雀だった

面白みを感じたことなど一切なかった

……。

……面白み、か

そう言えば、俺の記憶の中の最後の局はーーーー面白かった

何度も振り込み、アガることもできず、ただただ点棒をむしられた

だがーーーー楽しかった

楽し過ぎて、眩暈がした

自分のけじめという意味では……最高の局だった

朋也「……」

照「……岡崎?」

朋也「……悪い」

淡「?」

朋也「ちょっと最初は、後ろで打つのを見せてもらえないか?」

朋也「久し振りに打つもんだから、怖気ついてさ」

菫「ん、ああ。別に構わないが……」

朋也「ありがとう」

がたり、と席を立つ
151 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:30:17.65 ID:qb5Py/Jfo
淡「武者震いでもした?」

朋也「……ああそうだよ」

否定はしない

菫「それじゃあ岡崎の代わりにーーーー」

春原「」ガタッ

菫「ーーーー渋谷、入ってくれ」

渋谷「……」こくり

春原の俺が打つぜ!と言わんばかりの野獣の眼光を軽くスルーし、弘世は渋谷を指名する

そして改めて席決めが行われ、宮永、大星、渋谷、弘世の四人は卓についた

朋也「……」

さて、観戦な訳だが……誰の手を見ようか

……。

……うん、ここはやっぱり

朋也「……」

つつ、と歩きーー宮永の後ろに立つ

俺が背に立ったことに気づいたのか、宮永はその小さな肩を僅かに揺らした

淡「む、トモヤは私を見ないの?」

朋也「どうせ見るなら全国一だ」

淡「むむー……」

何が不服なのか、大星はむくれている
152 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:31:34.33 ID:qb5Py/Jfo
亦野「……あの」

朋也「?」

いつの間にか隣に立った亦野が、恐る恐る声をかけてくる

亦野「岡崎先輩、麻雀歴はどれくらいで?」

朋也「五年だ」

亦野「五年、ですか」

朋也「別に普通だろう?」

麻雀がインターハイが開催されるほどポピュラーになったこの世界では、珍しくともなんともない

小学生ですら雀荘に入り浸っているのだ(もちろんノーレートだが)

亦野「ええ、まあそうですね」

朋也「けど一年近く打ってなかったから……ブランクがあるな」

朋也「……もっともブランクなんてあろうがなかろうがあいつらには関係ないだろうけど」

亦野「あ、あははは」

空笑いをする亦野

運に大きく左右される麻雀でも、国内無敗の化物は存在するのだ

淡「スミレー早く始めようよ〜」

菫「ん、ああ」

淡「トモヤに私たちの力を見せてあげなくちゃね!」

照「……」

菫「そうか……それもそうだな」

大星が張り切った声をあげる。彼女にも麻雀部としての誇りはあるようだ

それに弘世も頷く

宮永の背からもどことなくやる気と言うモノが伝わってくる。気のせいかもしれないが


そして


菫「よし……ならば見せてやろう、チーム虎姫の打ち筋を!」


賽は、振られた






朋也「……案外ノリ、いいんだな」

亦野「ああ見えて結構可愛いモノ好きなんですよ」

朋也「へぇ」

菫「そこっ!聞こえてるぞ!」

弘世の怒号と共に、半荘戦が開始する

さて、全国最強。チーム虎姫の実力はいかほどか……!
153 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/02(日) 01:33:58.47 ID:qb5Py/Jfo
終了。
てるてるは愛玩動物、はっきりわかんだね

白糸台のペットな彼女とかいうSSマダックス(憤怒)
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 01:36:12.34 ID:bHahOjgCo
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 01:49:46.75 ID:jzuNuLTMo
咲組の名前の読み方がわからん
wiki見てもしばらくしたら忘れる
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 01:50:00.10 ID:86vlhtLTo
157 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 02:32:30.20 ID:htea9n9uo
亦野さん原作じゃ大変なことになってて目も当てられないけど
SSじゃ活き活きしてるな
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 09:12:05.66 ID:ftksGlh00
乙です
あわあわ可愛すぎる
159 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 17:14:47.48 ID:9iLE0YAJo
>>155
宮永照(みやなが・てる)

弘世菫(ひろせ・すみれ)

大星淡(おおほし・あわい)

亦野誠子(またの・せいこ)

渋谷尭深(しぶや・たかみ)
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 18:36:08.74 ID:OoRkySVjo
>>159
読みサンクス
161 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 18:41:33.30 ID:Y1ZEJuHAO
乙。テルテルの聖人っぷりに自分、涙いいすか?

スミレンがかませ犬になりそうなんですがそれは
162 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:35:46.13 ID:sV8SxCt8o
開始
163 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:38:23.78 ID:sV8SxCt8o
朋也「……」

半荘戦が終了した

対局の過程が何処かの誰かに吹っ飛ばされた気がしたが、多分気のせいだろう

淡「ぐぬぬぬ……」

菫「……ふぅ」

渋谷「……ずずー」

照「……」フンス

大星は、悔しがり

弘世は、一息付き

渋谷は、お茶を飲み

宮永は、どこか得意げだ

朋也「凄いな」

……終わってみれば、やはり高校生最強宮永がトップだった

鮮やかで、そして圧倒的な荒波のような五連続和了は思わず溜息がこぼれた。同時に身震いも

淡「トモヤー……トップ取れなかったよー……」

雀卓にうなだれながら、大星

朋也「……お前の純チャン三色は良かったと思うぞ」

東三局の三巡目リーチ、一発ツモの見事な純チャン三色

きっと大星も宮永と同じで、何か輝くモノを持っているのだろう

でなければ白糸台高校の大将など務まるはずがない

そしてそれは、亦野が注いだ紅茶を嗜んでいる弘世にも言えることだ

南二局五本場親の宮永の連荘

それを止めた弘世の一手

的確に宮永の字牌対子落としを見抜いた彼女の混一七対子はまさにシャープシュート

彼女はその一巡前に清一を拒否し、ドラ含みタンヤオ三色イーベーコーを手作りしていた宮永の余剰牌ーー白を狙い撃ったのだ

その時の弘世の手にアーチェリーが握られていた気がするが、幻覚かなにかだろうか?

菫「……ふぅ」

かちゃり、とティーカップを置く弘世

菫「……照」

照「……何?」
164 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:40:32.31 ID:sV8SxCt8o
菫「お前のコークスクリューの回転……何時もより凄かった気がするんだが」

照「多分気のせい」

菫「えっそれは……」

淡「テルーも私みたいに張り切ったんだよね!」

照「……」

無表情の宮永の頬が、僅かに赤く染まる

もしかして、部外者の俺たち二人に良いところを見せようとしたのだろうか?

……。

……やっぱり宮永が機械とかなんとかおっそろしい言われ方をしているのは納得できない

どう見てもタダノ小動物だろう、これ

いや、確かに宮永が淡々と連荘してる様子は恐ろしかったのだけれども

淡「オーラスとか特にだよ!なんなのあれ!」

……オーラス、南四局

おそらく今の対局での一番の見所だろう

菫「確かにあれはビビったな」

淡「南三でテルーがやけに大人しいと思ったらアレだよ!たかみー形無しじゃん!」

そう言えば

今もなおずずりとお茶を飲んでいる綾波系眼鏡少女、渋谷尭深はオーラスで役満を上がることが多いらしい

今の局でも、後ろに立っていた春原の表情を見る限り相当凄い手が入っていたのだろう

春原「そうだよそうだよ!渋谷ちゃん四暗刻大三元字一色テンパってたんだぜ?」

成る程、確かに凄まじい

渋谷「……ずずー」

和了出来なかったことを特に悔しがるわけでもなく、渋谷は茶をすすっている

……まぁ、相手が悪かったとしか言いようがない

照「……」

その相手の宮永と言えば、ぽりぽりといつの間にかクッキーを摘まんでいる。幸せそうに

朋也「……ホント、すげーよお前」

ぽんぽんと赤髮を撫で、思い起こす

あの宮永の和了をーーーー
165 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:42:52.06 ID:sV8SxCt8o


……。


南四局<オーラス>・四巡目


照「……ツモ」


ばらららららっ


一九19@H東南西北白発中

ツモ・@


照「役満」


……。


朋也「……四巡目で国士無双十三面、か」

叩きつけられたツモ牌はイーピン

その真円が今もなお、瞳に焼き付いている

照「岡崎……こそばゆい」

朋也「ん、ああ。悪い、つい」

妙に撫で心地がいいので、つい無心で撫でていた

……大星から強い視線を感じる

照「……岡崎」

朋也「?なんだ、宮永」

照「……凄かった?」

せめて主語をつけて言って欲しい

朋也「ああ、凄かった。身震いしたぞ」

照「……なら」

俺をじっ、と上目遣いで見つめる宮永

照「もっと、褒めて」

朋也「……」

言葉に詰まる
166 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:45:06.63 ID:sV8SxCt8o
照「……」

宮永はただじっと見つめている

……。

……成る程、そうか

そう言うことか

朋也「……」

……彼女は、名実ともに女子高生最強の雀士だ

恐れられ、崇められ、憧れられる、畏怖の対象だ

宮永が麻雀をして、勝つ

それはなんら不思議なことではない、当たり前のことだ

……だから

……彼女を褒めてくれる人間は、減ってしまったのだろうか

彼女の周りの人間にとって、彼女の勝利は当たり前の事なのだから

たとえ褒められたとしても、その次の期待が待っている

次の次も、そのまた次も……

朋也「……」

そうやって

『純粋に褒められる』

……その当たり前の事がほとんどなくなってしまったのだろうか

娘の成功を純粋に喜び、よくやったねと言ってくれる母親のような人間が、彼女のそばに数える程しかいなくなったのだろうか

……。

……。

……なんて

そんな事あるわけが無い

部活内に、町内に、全国に、彼女を応援している人は大勢いる

彼女は決して、一人じゃない

……と言うよりも

あんなに幸せそうにクッキーを頬張っている少女が、王者の孤独を感じている訳が無い

……うん

こんな事考えるのは宮永に失礼だ

朋也「……」

トンチンカンな思考を振り払う

そして、そのついでに

照「……ん」

赤い髪の毛を、ゆっくりと撫でた
167 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:48:51.05 ID:sV8SxCt8o

照「……♪」

目を細める宮永

……本当に、虎と言うよりもむしろ猫だ

猫耳なんて付けたら大層似合うことだろう

菫「……随分と懐いてるな」

変なモノを見るような目で、弘世

朋也「さぁ、何でだろうな……」

不可思議極まりない

……俺の父性って奴に反応してるとかか?……な訳ないか、アホらし

そして先程から

淡「…………」

大星の視線が痛い

多分、とっとと対局を再開したいのだろう

負けず嫌いの彼女らしい

照「……あっ」

ゆっくりと頭から手を離すと、宮永が変な声をあげる

と言うよりもこいつ、今にも寝そうだった

朋也「次は俺が打つーーーーーーんだよな?」

疑問交じりに、俺

淡「そうだよっ!」

菫「ああ、早くしろよ」

尭深「……」

がたっ

渋谷がゆったりと席を立ち、ソファーへと移動する。湯呑を大事そうに持ちながら

入れ替わりで、席につく

そしてその瞬間

朋也「……っ!」

ぞわり、と体に悪寒が走る

……先ほどは気付かなかったが、この卓について改めて、彼女たちから溢れ出る実力を感じたのだ

上級者との対局は卓に座っただけでその実力の違いを理解するとどこかで聞いたことがあるが、どうやら本当だったらしい
168 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:52:03.64 ID:sV8SxCt8o
朋也「……凄いな」

思わず、呟く

淡「?何が?」

朋也「いや、なに」

朋也「この卓に座っただけで、お前達の力っつーか、なんか、こう……オーラ?みたいなモノを感じてな」

淡「つまり、この大星淡サマから滲み出る凄さにびっくりしちゃった……ってことでいいのかな?」

朋也「……まぁそんなところだ」

大星の言い方は滅茶苦茶ひねくれているが、彼女からもただならぬ威圧を感じているのは間違いない事……非常に納得いかんが

淡「ふっふーん♪」

菫「ちょっとおだてられただけで調子に乗るのはお前の悪い癖だぞ、大星」

淡「む、これは余裕ってやつだよ!」

菫「……よろしい、ならばその自信って奴をへし折ってやろう」

淡「ええどうぞ?やれるもんならね?」

菫「……」

淡「……」

2人の間で、火花が散る

……うむ、切磋琢磨は素晴らしい事だと思う

などと心の中で溜息をつきつつ、ふと、対面の宮永を見る

照「……」

宮永の彼女達を見る目は……暇つぶしにつけたテレビ番組をとりあえず見てる。そんな感じだ

どうやら2人の刺々しい会話は日常茶飯事らしい

ぽけっ、としながらポッキーを小さな口で食べ、そして視線がこちらに移り、固定される

ぽりぽりと何とも可愛らしい音が口論に混じって聞こえてくる

とりあえず2人の話の邪魔をするわけにもいかないので、宮永を見てよう

……。

一袋の最後の一本が、彼女の口に運ばれる

照「……」

二袋目に手を伸ばし、開封ーーーーしようとしたところで

照「……?」

ひょい、と小さく袋を掲げる。首を可愛くかしげながら

いる?

瞳が語っていた
169 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:53:36.70 ID:sV8SxCt8o
朋也「……」

首を横に振る

照「……むぅ」

残念そうな顔を浮かべて、袋を開け、また黙々とポリポリし始める宮永

ひょっとしてお菓子大好きなのだろうか

クッキー☆食べてる時とか滅茶苦茶幸せそうだったし

……うん、女の子だし当たり前だよな

……。

ところで

朋也「いつになったら打ち始めるんだ……?」

菫「第一お前はーーーー」

淡「そう言うスミレこそーー」

「「ーーん?」」

朋也「……」

「「「…………」」」

菫「お、おほん!」

我に帰って、軽く咳払い。そして頬を僅かに染めながら、弘世

菫「す、済まないな。見苦しいところを見せてしまって」

菫「と、とりあえず打とう、そうしよう」

淡「そ、そうだねっ……よーし、トモヤっ!私の打ち筋とくと味わえ!」

グダグダだった

照「……」ゴッ!

そして宮永が何故か妙に張り切っている……気がする

朋也「……」

……さて

この俺程度の雀力で何処まで彼女達に対抗出来るか……

いや

そうする必要があると見たーーーー!!


半荘戦、開始ーーーー!!

170 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/05(水) 19:54:35.98 ID:sV8SxCt8o
投下完了。
麻雀描写はパパッと適当に書いて、終わりっ!ミスがないかすっげぇ不安ダゾ

なお次もワカメ先輩に活躍してもらう模様
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 20:06:32.82 ID:Hxqubw65o
おつかれさまー

てるてる可愛い。そして朋也くんが相変わらず朋也くんで安心した
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 20:24:46.49 ID:4Md8K7xY0
乙です
てるてるぐう可愛い(小並感)
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 20:41:39.93 ID:ZQakZCuDO
乙〜
てるてるはかわいい
はっきりわかんだね
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 20:52:13.93 ID:YVY9aYgAO
あわあわマジ愛らしい。
アプローチは朋也に届かないんだろうなと考えるとマジ切ねえ
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 23:48:48.64 ID:jRWOM4ZJo
乙。忘れがちだけどこの朋也、渚とか汐と過ごした記憶とかもってるんだよな……
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 00:20:34.45 ID:7VDvK1Juo

予測変換にやられたかな
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 07:33:37.01 ID:kQ8EGArLo
朋也に上級大尉、じゃなく中佐がちょいちょい混じる……
鈍感さはそこからきているに違いない。

とうとう朋也が阿修羅を凌駕する時が来たかっ!
フラッグファイターの意地、見せてもらおう!!
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 07:57:05.44 ID:DjfuDckAO
乙。お、ワカメゥー!

麻雀描写、すっきりしてていいゾ〜これ。次もヨロシクゥ!
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 09:22:28.11 ID:G25Oc0CIo
乙。
流石は中身は子持ちの精神、子供っぽい奴の相手はお手の物か。
逆を言えば、そこを脱しないとヒロインにはなれないから照も淡も今のところどっこいなわけだが。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 23:16:57.73 ID:LSmK4Roq0
この朋也はなにかに目覚めているな
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/07(金) 21:44:14.78 ID:C40r3+c4o
あわあわ能力解禁されたみたいやな
182 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 21:54:24.87 ID:/yKF1tiQo
開始。のよりプロ、可愛いですね
183 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 22:02:10.96 ID:/yKF1tiQo
一年ぶりとなる麻雀、その半荘戦が始まったーーーー



そして、数十分後



朋也「……」

そこには真っ白な灰になった俺の姿が

朋也「……ははは」

間抜けな笑い声がこぼれる

淡「〜♪〜♪〜♪〜♪」

照「……っ」オロッ

菫「……」

大星は、大層機嫌が良さそうに

宮永は、じっと……心なしか心配そうに

弘世は、哀れむように

三人の視線が俺に突き刺さる

菫「……岡崎のトビで終了、か」

朋也「……ま、当然の結果だな」

先程の半荘戦

一年ぶりのそれは見事に俺のトビで終了した

菫「しかし、なんだ」

朋也「?」

菫「この面子相手に南場まで持ったのは凄いと思うぞ?」

朋也「……そうかい」

どうせならトバずに終了ーーどちらにせよラスだがーーしたかった

いや、もっといい勝負をしたかった

あそこまで一方的に潰されたのであっては情けない

ちょっとは格好つけたいのだ、俺だって男なのだから

照「私も……岡崎は頑張ったと思う」

ぽつり、と宮永

朋也「……ありがとな」

そう言いつつ、上家の宮永の頭を撫でる

たとえ世事でも、素直に嬉しかった
184 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 22:04:33.74 ID:/yKF1tiQo
照「……ん」

本当、つい頭を撫でてしまう

淡「〜♪〜♪〜♪〜♪」

大星の陽気な鼻歌が耳に入り込んでくる

凄ぶる機嫌が良さそうだ

淡「ふっふーん♪トモヤ、トンじゃったねぇ〜♪」

朋也「……」

くすくすと笑いながら、大星

朋也「……ああ、おかげさまでな」

淡「そ・れ・も!この大星淡サマの和了でねっ♪」

朋也「……」

照「……」ムッ

どんなもんですか!と胸を張る大星に呆れつつも、むざむざトンでしまった自分を恥じる

そして何故か宮永が顔をしかめた

……軽い天狗になっている大星に不安を感じているのだろうか

だが、まぁ、しかしながら

俺をトバした大星の和了には度肝を抜かれた

朋也「……」


……。


南二局・四巡目

淡「ローン♪」

大星の抜けたような声が部室に響く

朋也「……は?」

牌を捨てたのは、俺

中を捨てたのは、俺

つまり、放銃

朋也「やっちまった……!」

淡「ふっふーん♪」

どやっ!

と、所謂ドヤ顔をしながら大星が手を倒す

その手はーーーー
185 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 22:10:00.59 ID:/yKF1tiQo


ぱたたたたたたたっ


東東南南西西北北白白発発中


ロン:中

朋也「〜〜っ!!!!」

……っ、これ……は!

役満……!

字一色……!

いや

違う……!

東南西北白発中の字牌のみで作られた七対子……!

そう……!

これぞまさに……ローカル役満のひとつ……!

その名をーーーー

朋也「大七星……!」


淡「アハッ♪」


……。


朋也「……はぁ」

思わず溜息がこぼれる

まさか二試合連続で役満を拝むことになるとは思いもよらなかった

それも国士無双十三面と大七星とかいう滅多にお目にかかれないヤツを、だ

何故か配牌が毎局死ぬほど悪かったとか、そんな言い訳通用しないほど彼女達の力は圧倒的だった

朋也「ホント、お前ら何者だよ」

淡「高校百年生だよっ!」ばばーん!

照「……?」

大星は胸を貼り、宮永は質問の意図が読めないのか首を傾げる

菫「その2人は人間離れしているからな……無理もない」

アンタのシャープシュートも十分人間離れしてるけどな

朋也「……あの時中じゃなく@を捨てておくべきだったか」

ついついたらればを言ってしまう

まぁどちらにせよ振り込んでいた気がすーーーー

春原「ああ、そうしても無駄だったねぇ」
186 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 22:14:02.86 ID:/yKF1tiQo

朋也「……は?」

久しぶりに口を開いたと思ったら、また何舐めたこと言ってるんだこの阿呆は

春原「そん時宮永、九連張ってたから」

淡「ほへ?」

朋也「……」

えっ、なにそれは

朋也「……マジか?」

春原「うん、マジマジ」

朋也「……」

思わず、宮永に視線を向ける

照「……っ!」

するとすぐさま、恥ずかしそうにして宮永は顔を伏せた

朋也「……どっちにしろダメだったってことか」

淡「うーん、流石テルー」

今回は私の勝ちだったけどね、と、大星

菫「お前、やっぱり今日は頑張り過ぎだ」

呆れ返っている弘世

それは二年2人組にも言えーーーーお茶の奴は何考えてるかわからん

春原「いや、頑張ってどうにかなるもんじゃないっしょ」

そしてなんと春原までもが呆れている

……まさにその通りだ

頑張って役満が作れたら苦労はしない

積み込みを疑うが彼女達がそんなテクを使うとは思えんし……そもそも全自動卓だ

菫「ま、まぁ、もう一度言うが、この面子に南場まで持ったのはかなり評価高いぞ?岡崎」

朋也「そーなのかー」

素直に喜べず、つい棒読みで答える

菫「ウチの二軍でも結構いいとこ行くんじゃないのか?」

淡「うんうんイケるイケる!」

照「……」コクコク

朋也「……素直に喜べん」
187 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 22:17:26.58 ID:/yKF1tiQo

淡「ご安心を、そんな事空がひっくり返るぐらいあり得ませんので」

菫「ああもう、お前と言う奴は本当にーー」

渋谷「ずずー……」

照「ぽりぽり……」

生意気な大星

頭を抱える弘世

二人をオロオロと見つめる亦野

マイペースに茶菓子を嗜む渋谷と宮永

とてもインターハイ二連覇しているチームには見えないメンバーだ

そして、唐突に

春原「さっ、てと」

腕まくりをしながら、春原

春原「それじゃあ岡崎の次はこの僕だねっ!」

どうやら自殺志願者らしい

春原「ふふふ、悪いけど僕は岡崎ほど簡単にやられたりはしないよ!」

春原「そう!この僕の力ならーーーー」

春原「勝てる……勝てるんだ……!」




十分後、雀卓に突っ伏し冷たくなっている春原が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った


そして俺は、東一局、そのしょっぱな見事にトんだアホを眺めながら、呟く

朋也「……チーム虎姫は、伊達じゃないってか」

宮永の右腕に、荒れ狂う竜巻が浮かんでいたーーーー
188 :御無礼、ミスりました [saga]:2012/12/09(日) 22:20:00.26 ID:/yKF1tiQo


菫「亦野、お前から見て岡崎の腕はどうだ?」

亦野「えっ?」

不意に話を降られ、亦野が硬直する

彼女は今の対局中ずっと俺の背後に立っていたのだ

亦野「えっ、と、捨て牌選択や危険牌の察知、オリ
など基本はしっかりと出来ていましたよ」

亦野「先輩の仰る通りウチでもそこそこいいとこ行けるんじゃないかと」

菫「ふむ、そうか」

朋也「そこそこってなんだ、そこそこって」

亦野「あ、あはは……ウチの部員も、二軍でも県代表クラスって肩書きがありますからね」

淡「トモヤに負けるようだったらあの子達もまだまだだよっ」

確かにその通りだ

春原「うっわ、上から目線」

淡「ふふん、一軍ですから」

菫「……そう言う奴に限ってぼっきり鼻折られるんだぞ?」
189 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/09(日) 22:20:31.69 ID:/yKF1tiQo

淡「ご安心を、そんな事空がひっくり返るぐらいあり得ませんので」

菫「ああもう、お前と言う奴は本当にーー」

渋谷「ずずー……」

照「ぽりぽり……」

生意気な大星

頭を抱える弘世

二人をオロオロと見つめる亦野

マイペースに茶菓子を嗜む渋谷と宮永

とてもインターハイ二連覇しているチームには見えないメンバーだ

そして、唐突に

春原「さっ、てと」

腕まくりをしながら、春原

春原「それじゃあ岡崎の次はこの僕だねっ!」

どうやら自殺志願者らしい

春原「ふふふ、悪いけど僕は岡崎ほど簡単にやられたりはしないよ!」

春原「そう!この僕の力ならーーーー」

春原「勝てる……勝てるんだ……!」




十分後、雀卓に突っ伏し冷たくなっている春原が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った


そして俺は、東一局、そのしょっぱな見事にトんだアホを眺めながら、呟く

朋也「……チーム虎姫は、伊達じゃないってか」

宮永の右腕に、荒れ狂う竜巻が浮かんでいたーーーー
190 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2012/12/09(日) 22:22:37.50 ID:/yKF1tiQo
終了。あーもう(投稿ミスで)めちゃくちゃだよ
淡ちゃん達の声優さんが発表されましたね。有名どころさんばかりでウキウキです


朋也「ちょっとこの2丁拳銃(エアガン)持ってくれないか?」

渋谷「断ります」
191 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/09(日) 22:40:50.85 ID:fTTCCNaEo
>>189
吉村と村田w
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 00:10:39.12 ID:S+0duKN+o
2回人間が生き返り死んだ。
これが奇跡って奴か……。
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 09:34:38.18 ID:xm8BMJtDO
>>192
ジョジョだったら聖人認定だな
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesage]:2012/12/10(月) 11:24:19.14 ID:lcjuZQ4Y0
??「人間をやめるぞー!」
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 19:26:04.90 ID:lgFC1XrAO
??「おれは人間をちょうえつするッ!」
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 21:45:51.34 ID:EN2OL/NAO
春原の遺体を集めるために日本縦断レースをせざるを得ないな
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 22:40:18.46 ID:S+0duKN+o
つまり春原は化物だという認識でよろしいか
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 22:42:58.88 ID:hVfw1m9lo
鳴き声はクケーーーーッ!だからな
199 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:47:27.60 ID:7bnrbXTZo
開始
200 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:49:11.63 ID:7bnrbXTZo
春原が起家の宮永の連荘で振込振込アンド振込して東一局で見事にトんだ数分後、俺は再び彼女達の対局を観戦していた

卓についているのは弘世、大星、亦野、渋谷の四人

宮永と言えば俺の隣に立ちじっと卓を見つめている

朋也「ふむん」

現在は南一局、半荘折り返し地点

仕掛けたのはーーーー二年・亦野誠子

亦野「ポン」

亦野「ポン」

亦野「チー」

亦野「……ツモです」

たんっ!

ツモ牌が叩きつけられ、手が倒される

朋也「おおっ」

見事な早鳴きの速攻和了だ

今の和了で早々に大星の親を蹴ることが出来た

そして今の和了ーーまるで獲物を引き上げるかのような淀みのない澄み切ったツモだ

朋也「流石は白糸台の一軍だな」

照「うん、誠子は鳴きが得意」

俺の感嘆に宮永が相槌を打つ

ちょっと誇らしそうに胸を張りながら

照「彼女は三副露したら数巡の間に必ず和了る事が出来る」

朋也「……成る程な」

……正直『三副露したら必ず和了出来ます』なんて言われても耳を疑うが、全国にはそう言った奇っ怪な打ち筋ーー能力と言った方が正しいかーーを持つ雀士も少なくはないのだ

この白糸台の二年2人組がいい例だろう

鳴くと和了れる亦野

オーラス役満の渋谷

宮永の連荘や弘世のシャープシュートは能力云々と言うよりも彼女達の実力……だと信じたい

大星?

いや、あんな異星人なんて知らんし
201 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:50:17.59 ID:7bnrbXTZo

照「……でも」

すぅ、と言葉を切り、宮永がつぶやく

朋也「?」

照「鳴きは和了へと近づけるけど……自分の手を縮めてしまう」

朋也「ん、まぁ確かにな」

食い下がりで点が安くなったり、初心者は役無しフリテンとかもやっちまう

照「だからーーーー」


亦野「ポン」

亦野「チー」

亦野「ポン」


菫「ロン」


どしゅっ!


亦野「……は?」


菫「倍満だ」


亦野「……はい」


照「ーーーー守りが薄くなる」

言ったそばから亦野が親倍を振り込み、ラス転落した

朋也「……うわぁ」

弘世の相変わらずのシャープシュートっぷりにため息をつき、亦野に同情する

照「それに、彼女はオリるときにスジに頼りすぎちゃうきらいがある」

朋也「で、ああなる、と」

照「そう」

この会話の途中にもさっきのお返しと言わんばかりに大星の跳満が亦野に直撃した

亦野の点箱はもうボロボロである

朋也「……」

そんで、いよいよオーラス
202 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:51:26.11 ID:7bnrbXTZo

ラス親は話中の亦野誠子

早鳴きの連荘でなんとかラス脱出したいところだ……が


渋谷「ロン」


亦野「……」


お茶少女、渋谷尭深の大三元が無残にもとどめを刺した

亦野のトビで終了である

朋也「あーもう滅茶苦茶だよ」

目の当てられない惨状に思わず顔を覆い、嘆息した

……今の亦野はまさしく数十分前の俺なので人の事は言えんが

照「あとで説教しなくちゃ……」

宮永も呆れているーーもっとも無表情な彼女なのでわかりにくいが

朋也「先輩としてどうだ?今のは」

照「全然ダメ」

朋也「点数で言うと?」

照「マイナス893点」

朋也「そいつは手厳しい」

照「全国も近いし、しょうがない」

来年の部長になるかもしれないのだから、と宮永

ぽけっとしているが、仲間思いのいい子なのだろう

ちょっと和みつつ、再び対極が終わった彼女達に視線を移すーーーーと

菫「〜〜〜〜」ガミガミガミ

亦野「〜〜〜〜」ペコペコペコ

弘世がくどくどと亦野に説教をしていた

やれスジがどうとかしっかりオリろとか色々聞こえてくる

この分だと話は長引きそうだ

それを察したのか大星がてくてくとこちらに寄ってくる

自分までとばっちりを受けるのは勘弁なんだろう

朋也「大変そうだな、亦野も」

大星「磨けばもっと強くなると思うんだけどねー」
203 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:52:17.33 ID:7bnrbXTZo

朋也「何様だ、お前は」

大星「淡様さ!」

朋也「……」

こいつの辞書に礼儀の2文字は書いてあるのか?

……菫先輩とかたかみ先輩とか亦野先輩とか言ってる彼女もなんだかなぁ

そして

朋也「……」

ふっ、と先ほどの凄まじい対局を思い出し、感慨にふける

きっと全国の舞台はあれ以上の熱戦が繰り広げられるのだろう

朋也「……本当」

照・淡「「?」」

朋也「強いんだな、お前達は」

淡「あったりまえ!私を誰だと思ってるの!」

照「それほどでもない……プロにはもっと強い人がいる」

ばばーん!と鼻を伸ばす大星と、謙虚に自分を卑下する宮永

どこか小動物みたいな二人の対象的な反応に思わず笑ってしまう

照「……?」

淡「むむっ、なに笑ってるのさ?」

朋也「なんでもねぇよ」

鼻頭を擦りつつ、誤魔化す

視線を彷徨わせなんとなく春原を探してみると、部屋の隅で渋谷と湯呑を抱えていた

なに和んでいるんだか

朋也「……俺も」

すぅ、と息を吸い、つぶやく

朋也「お前達みたいに打てたら、いいんだけどな」

淡「?そんなの簡単じゃん」

朋也「は?」

淡「びゃーっ!としてガッ!としてばーん!とツモればいいんだよ!」

朋也「……」

どこのNGSM監督だ、お前は
204 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:54:51.26 ID:7bnrbXTZo

朋也「んなの、無理に決まってるだろ」

淡「そうかなぁ?」

朋也「そりゃ確かに、宮永みたいに国士十三面和了出来たら楽しいだろうけど」

照「……っ」

朋也「……ホント、あの和了は凄かった。鳥肌が立ったぞ」

照「そ、それほどでもない」

先ほどと同じ事を言う宮永

心なしか頬を赤く染めている。照れているのだろうか

私は?私は?と大星も執拗に聞いてきたが適当にあしらっておく……本当に負けず嫌いな奴だ

朋也「いや、そんなことないって」

照「わ、私なんかまだまだ……それに」

淡「それに?」

照「あんな和了……本物の夜明けに比べれば程遠い」

朋也「?」

本物の夜明け?

一体なんのことだろうか

淡「でもさー」

疑問に思っていると、大星が言葉を挟んできた

淡「テルーより強い人なんてほとんどいないっしょ?」

照「そんなことない……小鍛冶プロや三尋木プロ、戒能プロに瑞原プロとたくさんいる」

淡「ふーん?」

挙げた面子が誰も彼も日本のトッププロであることが実に宮永らしい

照「所詮、井の中の蛙」

淡「カエルさん、ねぇ……テルーみたいなおっそろしいカエルさんなんていたらギャグだけど」

照「……」

顔をしかめる宮永

やはり調子に乗りやすい大星を不安に感じているのだろうか

そしてなにやらむんむんと考え込み

照「……岡崎は」

こちらに話を振ってくる
205 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:55:29.68 ID:7bnrbXTZo

朋也「ん?」

照「岡崎は、打ったことある?

照「私より、強い人と」

朋也「……」

ずいぶんと突拍子の無いことを聞いてくる

朋也「強い人、か」

子犬二匹は興味深そうにじっと俺を見つめている

宮永よりも強い人などそうそういない……何せ彼女は全国一位なのだから

朋也「そうだな……」

記憶を探りーー見つける

朋也「いない……と言えば嘘になるな」

淡「!」

照「!」

大星と宮永の顔が驚愕に染まる

淡「へ、へー」

照「……どんな人?」

朋也「そうだなぁ……」

つつ…と記憶の中のその男の特徴を思い描く

朋也「幽霊みたいな奴、だな」

照「え?」

淡「…なに訳わかんない事言ってるの?」

朋也「いや、冗談じゃなく本当に」

照「…むぅ」

朋也「気がついたら点棒全部むしりとられてたんだよ」

ついでに有り金も全部

朋也「強さっつーか、存在感が全くなくて、油断してたらいつの間にか、な」

淡「……それ、本当に幽霊と打ってたんじゃない?」

朋也「……」

あながち間違いではないのかもしれない

真夏だと言うのに全身黒づくめだったし

やはり本当に幽霊……?
206 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:56:12.68 ID:7bnrbXTZo

照「流石に幽霊には勝てない…」

淡「私も幽霊苦手!」

顔をしかめる二人

照「永水さん達ならまだしも…」

朋也「永水?」

照「……鹿児島の代表校。ちなみにシード校」

朋也「成る程」

淡「確かそこ、全員が巫女さんだったよね!」

いいよね、巫女服。一度着てみたいなと大星

朋也「巫女ねぇ…って巫女だから除霊って短略的すぎるぞ」

淡「え?しそうじゃない?除霊麻雀とか」

朋也「言いたい事はわからんでもないが……そもそも除霊麻雀ってなんだ」

淡「さぁ?」

朋也「……」

淡「お、おほん。と、ところで」

朋也「あ?」

淡「朋也はさ、見てみたい?」

朋也「何をだ」

頼むから解る様に話してくれ、解読するのにも疲れる

淡「それはもちろんーーーー私の巫女服姿だけど?」

朋也「いや全然」

淡「即答っ!?」

がくっ、とずっこける大星

朋也「…………ふむ」

別に大星が巫女服を着ようがメイド服を着ようが知ったことじゃない

しかし

しかしだ

それが渚や汐ならもうたまらない

ああきっと似合うことだろう。似合わないはずがない

赤と白の紅白に身を包む二人……嗚呼、素晴らしい!抱きしめたい!まさしく愛だ!
207 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:57:07.70 ID:7bnrbXTZo

淡「朋也?」

朋也「え?」

淡「……ひょっとして、今考えてたでしょ?」

すぅ、と息を吸い込みーー

淡「この私の!巫女服姿を!」

ーーばんっ!と胸を張る大星

朋也「……」

当たらずとも遠からずなのが悔しい

淡「……はっ!……ま、まさか私じゃなくテルーの方!?」

照「!?」

何も言わないーー呆れ果ててーー俺に、疑問を抱いたのか、また大星がトンチンカンな事を言い始める

急に名前を呼ばれたのか、宮永は動揺し、そしてチラチラと伺うようにこちらを見てくる

と、そこに

菫「……一体何を話してるんだ、お前達は」

説教を終わらせた弘世が歩み寄ってきた

淡「あ、スミレー」

朋也「話は終わったのか?」

菫「ああ、一応はな」

視線をずらすと、部室の隅で亦野がしょんぼりと縮こまっている。あの様子じゃ大層絞られたのだろう

淡「さって、じゃあ朋也!もっかい打とうよ!もう一回!」

亦野をたいして興味なさげに一瞥した大星は、こちらに向き直るとぐいぐいと俺の腕を引っ張った

まるで親に玩具をせがむ子供だ

朋也「と言ってもな…」

壁に掛けられた時計に目をやると、針は18時前

この部室に来てだいたい一時間が経過していた

朋也「……」

……そろそろ、か

朋也「……今日は」

照「?」

朋也「今日はもう、帰るわ」

淡「ええっ!?」

菫「む、そうか」
208 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:57:50.26 ID:7bnrbXTZo
朋也「あんまりここに長居するわけにもいかないだろ、あんた達も全国が近いんだし」

淡「ええー!?いいじゃんいいじゃん!もうちょっと遊ぼうよー!」

照「……」コクコクコク

駄々をこねる大星、それに頷く宮永

朋也「……あいにく今から用事があるんだ」

もちろん嘘だ

淡「むぅ…」

照「……なら、しょうがない」

朋也「……」

ほんの少し、罪悪感。

いやいやいや、今更だが不良生徒の俺がこんなところにいるのは不味いのだ、妙な噂でもされては彼女達に悪い

朋也「じゃあ、弘世。俺はこの辺で」

二人の視線をなんとか受け流し、部室からの退出を試みる

菫「ああ、それじゃあ」

朋也「ん」

軽く手を降り、部室の扉に手を掛ける……前に、春原を引っ叩いて帰るよう促す

春原「いだっ!?」

朋也「ほら、帰るぞ」

春原「ああもう、いいところだったのに……」

どうやら亦野と渋谷の三人でカード麻雀ゲームに興じていたらしい

傍目から見ても和気藹々とやっていて、なんか知らんがめちゃくちゃ和んでいた

適応能力だけは異様に高いのだ、この男は

春原「じゃね、尭深ちゃん、亦野」

次は負けないぜ!と春原

渋谷も湯のみを抱えてこくりとこちらに頷いた

亦野もぶっきらぼうに返す

朋也「……それじゃあな」

最後に一言、彼女らに別れを告げて、ドアノブに手を掛けーーーーようとしたところで

また

再び

背中に違和感
209 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:58:22.87 ID:7bnrbXTZo
朋也「……?」

数時間前にも感じた感触

確かこれは……

朋也「……宮永?」

首を動かし、背後を伺うと、この一日で見慣れた赤髪が瞳に映る

宮永の、綺麗な灼髪

朋也「……まだ、何か用か?」

……彼女は先ほどのように、俺の服の裾をつまんでいた

照「……ま」

伏せられた顔が、こちらを向く

可愛らしい唇から、言葉が紡ぎ出される

照「……また、今度」

朋也「?」

照「また、今度……来てくれる?」

朋也「え?」

照「遊びに……来てくれる?」

朋也「……」

照「……」

朋也「……ああ、わかった」

照「!」

ぱぁっ、と宮永の顔が明るくなる

照「……ほんと?」

朋也「本当だ」

暇な時に、たまになら、と、俺
210 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:59:02.57 ID:7bnrbXTZo

照「じゃあ……」

すっ、と宮永は俺の服の裾をつまむ右手を離し、ゆっくりと上に上げる

そのか細い小指をぴん、と立てて

照「……やくそく」

朋也「……」

左手を、差し出す

互いの小指が、交わる

照・朋也「「……」」



ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのーます



ゆーびきった



照・朋也「「……」」

照「……ふふっ」

朋也「……っ」

俺と彼女の間で、約束が交わされる

宮永は、嬉しそうにーーーー本当に嬉しそうに微笑んでいた

照「……じゃあね……岡崎」

朋也「……ああ」

わしゃっ、と宮永の頭を撫でて、囁く

朋也「またな、宮永」

照「……うんっ」

朋也「……」

きいっ、と扉を開け

俺と春原の二人は部室から退出した

白糸台高校麻雀部

彼女達はきっと、偉業を成し遂げてくれる事だろう

俺の胸には確かに、彼女達への期待が膨らんでいたーーーー
211 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/12(水) 17:59:38.59 ID:7bnrbXTZo
終了。
こ↑こ↓の妖怪御無礼と咲のスレも面白いから見とけよ見とけよ〜
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 18:49:52.60 ID:sW3p1gDno
女の子してるー
麻雀卓の上で魔王してる照さんはここにはいないんや!
213 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 18:58:48.72 ID:9LyAOOZi0
表情乏しいからね照はまだ原作進むの待たないとわからん
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 20:36:33.81 ID:7bnrbXTZo
おかしフリークってことは確かなんだよなぁ……
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 23:28:20.34 ID:4zFo9BA8o

しかし人鬼に目をつけられるとは朋也何やってんだ……
216 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 23:32:50.65 ID:rxd3XuKHo
妖怪御無礼に飛ばされてんのか朋也w
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 23:35:12.82 ID:sW3p1gDno
御無礼かよwwww気付かんかったwwwwwwwwwwwwww
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 07:25:29.10 ID:rLpWkgU3o
御無礼か、そうか……
そういや狂気の沙汰ほど面白い奴が朋也に
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 10:06:35.77 ID:WFZrpjyko
人生の分岐点に現れるからな、人鬼は。
ああ、だから今朋也はこうしているのかww
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/13(木) 10:19:56.63 ID:4VJmrIJHo
朋也もむこうぶちに逝ってしまうん?
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/15(土) 05:11:44.90 ID:qdWW7C0ho
こうしてヒロイン無双見てると、朋也がバスケで活躍してるところも見たかったなぁ。
照も淡も見とれるよ絶対。まあありえないことなんだけど。
222 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/16(日) 19:42:59.91 ID:I3ENjba8o
開始
223 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/16(日) 19:44:52.48 ID:I3ENjba8o
岡崎朋也が部室から退出してちょうど一分後、少女、大星淡はそわそわと体を揺らしていた

ちらちらと部室の扉を見ながら、そわそわと体を揺らしていた

菫(本日の残る部活動活動時間は残すところあと2時間弱、さて、どうするべきか…………ん?)

菫「……大星?」

彼の退出の後、弘世菫はすぐさま思考を切り替え、全国大会に向けての今日の練習メニューを組み立て直していた

が、しかし

淡「……」ソワソワソワソワソワ

明らかに普通でない様子の大星を不審に思い、つい声をかけてしまった

……そう、かけてしまった、のだ

弘世菫は知っている

大星淡は大抵ろくな事を考えていない事を

淡「スミレ!」

菫「なんだ?……今日は急な客人で少々練習メニューが崩れたんだ、その代わり今から下校時刻まではいつも以上にみっちりと練習をーーーー」

淡「私!朋也達を校門まで送ってくね!」

言うや否や

ばあんっ!

と、大星淡は流星の如きスピードで部室から飛び出して行った

……当然、菫の返答を聞かずに、だ

菫「……」

大星淡が電光石火で去っていった数秒後

菫はしばらく呆然としーーーー

菫「はぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ」

腹の底からため息をついた

頭に手を添え、やれやれと首を降る

四月からの数ヶ月で、体に染み付いた動作である

菫「まったくあの大馬鹿は本当にーーーーん?」

悪態をつく彼女はふと、それを目にした

菫「……照?……どうした?」

十数秒前の金髪少女と全く同じように、そわそわと体を揺らし、ちらちらと扉を伺う全国一位の少女を

照「な、なんでもない」

それより部活やろう、部活、と、照
224 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/16(日) 19:45:30.39 ID:I3ENjba8o

菫「……」

ぎくしゃくと壊れかけのロボットの様に雀卓に座る赤髪の少女を、弘世菫は優しい目で見つめていた

菫「……照」

照「な、なに?」

菫「……お前も、行きたいんなら行っていいんだぞ?」

照「ど、どこに?」

しどろもどろに返答する少女宮永

視線はあちらこちらを彷徨っている

菫「決まってるだろ?岡崎のところに、だ」

菫「お前も校門まで岡崎を送ってやったらどうだ」

照「で、でも部活あるし……」

菫「早くしないと、大星に取られるぞ?」

なんとも思わせぶりな台詞である

照「あう……」

菫「いいから行って来い、な?」

ばちこーん!と弘世菫は子犬の様に震えるかの女にウインクをした

その様子を見ていた二年2人組は思わず吹き出し、すぐさまきっ!と弘世の射抜く様な視線が突き刺さる

我ながら慣れないことをした、と弘世は心中でため息をつく

されどその目は母の様に穏やかに、眼前の赤髪の乙女を見据えている

照「う……」

菫「……」

亦野「いいんですよ?宮永さん」

亦野がぽんと、少女の小さな肩に手を乗せ、耳元で囁く

その瞳は優しかった

照「……い」

唇を僅かに噛み、小さな拳を握りしめ、宮永照は立ち上がる

照「行ってくる……!」

菫「ああ、行って来い」

ふっ、と弘世が微笑み、それに合わせてぱたぱたと赤髪の少女は部室を駆け、閉ざされた扉へと手をかける

そして


がちゃっ

きぃぃっ……


真新しいドアの蝶番の音と共に、彼女は一人の男の元へと駆けて行った

部室に残るのは、何処か清々しい三人組のみ
225 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/16(日) 19:46:19.94 ID:I3ENjba8o

菫「……さて」

菫「あいつ達が戻るまで、私達はサンマでもやっとくか」

亦野「……ええ、そうですね」

渋谷「そうしましょう」

菫「亦野」

亦野「はい?」

菫「私はお前を狙い撃ち続けるからな」

亦野「……いじめかなにかですか?」

菫「馬鹿者、教育と言え」

はははと軽く笑う弘世

部室内に亦野の大きなため息が響き渡った

渋谷尭深はと言えば、ただただ置物のようにお茶をすするのみ

そんな、放課後

白糸台高校麻雀部の、放課後……







朋也「……ん?」

春原と時折雑談を交わしつつ、下足箱へ続く廊下を歩いていると、背後から足音が聞こえてきた

不思議に思いちらと振り返るとそこには数分前に別れた金髪少女の姿が

春原「あり?淡ちゃん?」

朋也「どうかしたか?」

淡「ん、別に?……ただちょっと校門まで送っていこうかと」

朋也「別に必要ないから早く部活に戻ったらどうだ」

淡「えー、いいじゃん、つれないなぁ」

ぷんすかとむくれる大星

春原「はへ?」

と、そこに春原が変な声を上げる

視線の先は廊下の奥を見据えーーーーん?

朋也「……宮永?」

廊下の奥から、赤髪の少女がとことことこちらに近づいてきた
226 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/16(日) 19:46:57.79 ID:I3ENjba8o

朋也「どうした?お前もなんか用か?」

もしかすると俺、何か忘れ物でもしただろうか

照「えっ、と……見送りに」

朋也「……」

子犬が二匹に増えた

思えば今日何度彼女たちの視線に射抜かれたであろうか

朋也「……わかった」

はぁ、と息をつき、一言

朋也「なら、校門まで頼むな」

淡「うんっ!」

照「……!」コクコクコク

元気良く返事をする大星と、ゆっくりと頷く宮永

春原「校門までとはいわずさぁ、この際パーッと街にでも繰り出さない?」

楽しいぜぇ、と、春原

朋也「……」

とりあえず、チョップ

春原「いたっ!」

朋也「……お前、学習能力ないのか?」

がくしゅうそうちでも持たせてやろうか

……アホアホボケモンのスノハラモドキを手持ちに入れておく必要もないか

ボックス行き……いや、にがすで十分だ

春原「なにするのさ!?」

朋也「……」

ぎゃあぎゃあとわめく春原

隣できゃぴきゃぴと喧しい大星

半歩後ろをおどおどと歩く宮永

奇妙な四人組が、夕焼けに染まりつつある廊下を進んでゆくーーーー
227 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/16(日) 19:47:46.13 ID:I3ENjba8o
終了
本日は文量少なめです、御無礼
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 19:51:49.52 ID:NtM8VjqAO

照が小動物かわいい
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 20:12:28.69 ID:2m6BCwjQ0
高校100年生もくぁいい
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 20:35:07.82 ID:49MLEsvDO
結論:どっちもかわいい
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/16(日) 21:36:59.45 ID:oWLA0ekzo
かわうぃうぃ〜すばら過ぎまする!!
232 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:05:16.23 ID:3fayeRwRo
準備完了。撃てます
233 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:06:02.74 ID:3fayeRwRo

朋也「む」

ぽすり

と胸に妙な感覚

何かが俺にぶつかったようだ

場所は一階へ続く階段の踊り場

不意の出来事に思わず足を止める

そして視線を下に向けるとーーーー

腹部の位置に、黒い何かが

「っととっ!」

……そいつはばっ、と後ろに飛び退き

「これはこれは、失礼しましたっ!」

ぺこりとお辞儀をした

少々息を切らしている、おそらく急いで階段を駆け上がったところに俺とぶつかったのだろう

幸いにもその衝撃は小さいものだったが

そして

俺は

彼女を知っていた

朋也「……風子か」

風子「へ?……あっ!」

目の前に立つ小柄な少女ーーーー伊吹風子こと風子が素っ頓狂な声をあげる

風子「変な人ですっ!」

朋也「開口一番それかいっ!」

めちゃくちゃ失礼な奴だった

いや、それでこそ彼女らしいと言えばらしいのだが

淡「トモヤー、その子誰ー?」

大星が不思議そうに彼女を見つめ、俺に尋ねてくる

照「……」プルプルプルプル

宮永はと言えば俺の背に隠れてちらちらと風子の方を伺っていた

やはり彼女、相当な人見知りらしい
234 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:06:43.94 ID:3fayeRwRo

朋也「ああ、こいつはーー」

春原「伊吹風子」

俺が答えようとしたところ、それより先に春原が口を開く

春原「かなり変な奴だけどさー、まぁ悪い奴じゃないから安心してーーーー」

淡「ヨーへーには聞いてないから」

春原「あ、そですか」

俺も人の事は言えないが相変わらず春原に対する扱いが酷いぞ、大星

風子「変なひーー」

朋也「ああ?」

風子「岡崎さん」

再び人の事を変な人などと言おうとした風子を、睨みで言い直させる

変な人など春原でーー春原と大星で十分だ

朋也「なんだ」

風子「そちらの人たちはーーーーって頭が変な人が二人いますっ!?」

びしっ!びしっ!と春原と大星を指差しながら、風子

髪の毛的にも中身的にも間違ったことは言っていない

朋也「ああ、たまに分裂するんだ」

風子「たまになるんですか!」

朋也「ああ、地球外生命体スノハラモドキは分裂する」

風子「地球外生命体なんですか!」

朋也「そして片方がスノハラに、もう片方がオオホシにわずか数秒の分裂で完全変態する」

風子「変態なんですか!」

朋也「分裂し、分裂したスノハラとオオホシがまた分裂し、そしてまた分裂し、やがてはこの地球を覆いつくーーーー」

淡「……トモヤ?」

朋也「すまん、冗談だ」

何処かであったようなやり取りを交わしていると、大星がとんでもない目で睨んできた

風子「冗談…?」

淡「そ、冗談冗談。私はどこにでもいるごく普通の高校生だよっ」

風子「でもその頭の色はヘンだと思います!」

淡「しっつれーな!地毛だよ!地毛!」

ずずいっと大星は髪の毛を風子の顔にすり寄せた
235 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:08:09.13 ID:3fayeRwRo

風子「むむ?……ふおおっ!すごくサラサラでキラキラしてますっ!」

淡「むふふふ、でしょ〜?」

風子「はいっ!……こんな綺麗な髪の毛をヘンと言って……失礼しましたっ!」

ぺっこりん、と謝罪をする風子

変な奴だが意外にも礼儀はちゃんとしているのだ

淡「むふん、わかればよろしいっ!」

腕組みをして威張る大星

大層さまになっている

淡「……さて、と」

そして一息付き、風子の前で中腰になる

淡「私の名前は大星淡、よろしくね♪」

ばちこーん!と可愛らしいウインクをした

風子「伊吹風子です!」

元気一番、風子が返答し、自己紹介が始まる

淡「好きなものはーー楽しい事かな!」

風子「可愛いものです!」

淡「屋上!」

風子「海です!」

淡「うるさい人!」

風子「私もうるさい人です!」

朋也「はいはいそこまでそこまで」

このままだとよくわからんやり取りが延々と繰り広げられそうなので話に割り込む

朋也「……あと大星」

淡「?なにー?」

朋也「そいつ、俺と同じ三年だからな」

淡「ええっ!?」

やっぱり気づいてなかったか

まぁ無理もあるまい。下手したらウチの娘とそこまで変わらないように見えるのだから、彼女は

淡「……そうなの?」

風子「そうです!」

淡「せ、先輩だったんだー」

私一年なんだよ、と、大星
236 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:09:08.72 ID:3fayeRwRo
風子「なら淡ちゃんと呼びますね!」

先輩ですから!むふんっ!と、風子

淡「……うん、いいよっ!」

風子「風子の事は好きに呼んでください!」

淡「じゃあ……よろしくね、ふぅちゃん!」

風子「はいっ!よろしくですっ!」

お互いが笑顔を浮かべながら握手を交わした

風子「……っとと」

にっこにっこと笑顔を浮かべていた風子が何かに気づく

風子「岡崎さん、そちらの人はどなたですか?」

照「!!」

どうやら先程からずっと俺の背に隠れていた宮永に気づいたらしい

ビビクンッ!と小さく宮永の体が震える

朋也「ほら、お前も自己紹介したらどうだ」

小声で宮永に促す

照「でも…」

朋也「大丈夫だって、見た目通り人畜無害な奴だから」

照「……………わ、わかった」

朋也「よしっ、一発ギャグ入れてやるぐらいの意気込みで行けよっ」

照「ら、らーじゃ」

少しの沈黙ののち、宮永はゆっくりと俺の背から風子へと歩み寄った

照「えと、その……」

彼女はおどおどと慌てたのち、ゆっくりと深呼吸

意を決し

照「……こ」

小さな唇から、言葉を紡ぎ出す

照「こんにちわちわ、宮永照です」

風子「宮永さんですか!私は伊吹風子です!」

宮永の決死のギャグ(?)はスルーされた!
237 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:09:44.63 ID:3fayeRwRo
なんともいたたまれなくなったのか宮永は少ししょんぼりした、が、風子の天真爛漫っぷりにあてられたのかすぐにその顔に微笑みが宿った

そして

いきなり

淡「ごはぁっ!!」

大星が口中から紅い液体を吐き出した!

朋也「どうしたっ!?」

淡「いやちょっとさっき飲んだトマトジュースが逆流して……」

朋也「そ、そうか」

どうやら宮永の渾身のギャグ(?)に吃驚したようだった

騒がしい奴だ

そして意識を再び宮永の方へ移すと、何やら風子とおしゃべりをしている

早速仲良くなったらしい

宮永「……風子、部活は何部に入ってるの?」

風子「ずばり!美術部です!」

宮永「へぇ……」

風子「今もこうやって次の創作物の構想を練っていたところです!」

ぴっ!と挙手をしながら風子

風子「照さんは何部なんですか?」

照「……麻雀部」

恥ずかしそうに、宮永

つーか風子、宮永について知らないのか……

風子「麻雀部?……ああっ!」

照「っ!?」

急に声を張り上げた

風子「テレビに出てた人ですっ!」

照「??」

風子「私、宮永さんの試合見た事あります!最高にカッコ良かったですっ!」

宮永がかの麻雀全国一位少女と気がついたのか、興味心身興奮しまくりと言った様子で風子は声を荒げた

春原「今更気づいたのね……」

俺と同様に呆れかえる春原と

照「……ぁ、ありがとう」

ふいっ、と顔を伏せる宮永

耳まで赤くなっている、どうやら照れているようだ
238 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:10:33.96 ID:3fayeRwRo

淡「ねねっ、私は私はー?」

風子「あっ、そういえば淡ちゃんも出ていましたっ!」

淡「むむ、なんかついでみたい……」

風子「そんな事ないです!すごくすごかったですっ!」

淡「むふふふっ、そだよね?そだよねー?さすがでしょー?わたしっ!」

軽く落ち込んだ大星を風子がフォローするとすぐさま元気を取り戻した

相変わらず感情豊かな奴……

風子「……!」

きゃいきゃいと興奮する風子だが、突然何かを思いついたような顔になった

風子「ではっ!淡ちゃんと宮永さんの二人にはっ!お近づきの印としてっ!」

そしてごそごそと懐から何かをあさりーーーー


風子「こちらを差し上げますっ!」


木彫りの彫刻を、差し出した


照「?」

淡「これは……」

ずずいと無理矢理手渡された木彫りのーー星型のソレをしげしげと見つめる二人

照「かわいい……」

淡「うんっ、かわいいねぇー…」

そして、ほぅ、と溜息をこぼす

しばらくしげしげと手作りの彫刻を眺めて……同時に


「「この、ヒトデの彫刻」」


そう、言った


朋也「……は?」


思わずずっこける

朋也「お、お前らソレがヒトデだってわかったのか?」

淡「え、だってヒトデじゃん、これ」

照「うん…」
239 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:11:28.69 ID:3fayeRwRo

朋也「……」

ひょっとして初見でそう見抜けなかった俺が不味いのか?

確か渚もヒトデだとわかってーーーーあれ?

……一体何を考えているんだ、俺

風子と渚は面識がないだろうに

……?

まぁ、とやかく気にすることじゃないか

風子「ふぉぉぉぉぉおぉ……!!!!」

意識を切り替え風子に目をやると、なにやら興奮していた

両手で握りこぶしを作り、猛りを抑えるかのようにぷるぷる震えている

風子「す、すごいですっ!!!!!!」

ばっ!と思いっきり体を前に出して二人に迫るヒトデ少女

鼻息が荒い

淡「へっ」

照「?」

きょとんと首を傾げる二人

風子「これを初見でヒトデだとわかってくれたのはこーこお姉ちゃん以来です!感激です!」

瞳を細め、はわぁ〜っとトリップする風子

……そう言えば、この世界に迷い込んでから俺はまだ公子さんに会っていない

芳野さんとは先日出会って仕事に付き合わさせてもらったんだが……

まぁ、近いうちに会えるだろう、多分

風子「……はっ!」

今俺たちがこうしている間にも、電柱に登り街に光をともしているであろう芳野さんを思い描いていると、風子がようやくほんわか状態から抜け出してきた

風子「し、失礼しましたっ!ちょっとぼんやりしてましたっ!」

ぴしっ!と敬礼をしながら、風子

その様子を大星はによによと見つめていてーーーー

淡「ふうちゃんっ!」

風子「は、はいっ!なんでしょう!」

淡「抱きしめていい!?」

風子「はへ?」

淡「ふっ!」

風子「ほわぁっ!?」

風子の返答を待たずに大星は彼女を抱きしめた
240 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:12:17.42 ID:3fayeRwRo

淡「ふわぁぁぁ〜〜っ!ふうちゃん可愛すぎっ!持って帰りたい!巨人ファンになっちゃう!」

すりすりとそのまま頬ずりをぶちかます大星

風子「誘拐さんですかっ!こ、困りますっ!風子美味しくありません!」

慌てふためく風子

……今の大星と全く同じことをこいつは我が愛娘にしているのだから、滑稽な話だ





風子「あ、あのっ、淡ちゃんと宮永さんに一つお願いがありますっ!」

数分の大星の拘束からようやく逃れた彼女が、また急な話を切り出した

淡「ん?」

照「何?」

風子「えっ、と……弘世さんに伝言を頼みたいのですが……」

淡「?なんでスミレの名前が出てくるのー?」

風子「実は……」

すぅ、と深呼吸をし、風子はぽつぽつとしゃべり始める

風子「昔、危ないところを助けてもらったんです」

淡「へぇ?」

照「危ないところ?」

風子「はいっ」

そして

風子から聞いた話によると


……二年前の入学式の日に、事故に合いそうになったところを弘世に助けてもらったらしい


もし事故にあっていたらどうなっていたことか、と風子

朋也「……」

事故にあっていたら

……いや

彼女は、事故にあってしまったのだ

俺がいた世界で
241 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:12:52.25 ID:3fayeRwRo

朋也「……」

だが

ここは、この場所は


この世界は


俺の知る世界じゃない


俺がいた世界じゃない


渚と出会った世界じゃない


渚がいる世界じゃない


だから


過去も、変わってしまったのだ


朋也「……っ」


事故が未然に防がれたのは確かに喜ばしいこと

けれど

釈然としないものが、俺の胸の内に渦巻いている


朋也「……」


その後

風子としばらく会話を交わした後、俺達は再び校門へと向かった

思えばこれが、ヒトデ少女と二人の始めての出会いだった

……きっと、いい友人同士になってくれるだろう

俺はそう、確信していたーーーー
242 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2012/12/19(水) 18:13:48.78 ID:3fayeRwRo
終了、今日はこれにて
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 19:48:19.93 ID:WJbQhM3Qo
こーこお姉ちゃんはどっちのこーこちゃんかな?
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 20:24:43.83 ID:pLq/yCjMo
どっちでも俺得だからどちらでも構わん!
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/19(水) 20:31:51.01 ID:CNTiw4aDO
乙!
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 00:09:47.64 ID:hSe8QtyAO
乙。あわあわから猛兎魂を感じる

岡崎に現実を突きつけるのはやめちくり〜(棒読み)テルテルははやく岡崎を救って差し上げろ(迫真)
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 04:46:29.91 ID:/+X4zmu8o
照とあわあわにミックスジュース(意味深)はやめてさしあげろ
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 08:49:12.96 ID:p7haspzKo
なるほど、天然ならヒトデとわかるのか。
咲世界のキャラの大半がわかりそうだな…
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 17:54:53.98 ID:dSIxc+my0
CLANNADと咲、なんという俺得ss
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/12/20(木) 18:04:06.59 ID:dSIxc+my0
CLANNAD最近AF見終わって興味持ったけど放送終了から4年ぐらいたつから、もう話題に出ないと思ってたけど
結構出ててうれしかった。
251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 19:35:42.71 ID:k/v0eOMlo
sageようか
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 22:36:12.27 ID:lowaCLit0
>>250
>放送終了から4年ぐらい
え?いやいやそんな馬鹿な、え?
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/20(木) 22:38:12.76 ID:/+X4zmu8o
今の子供達は大山のぶ代ボイスのドラちゃんを知らない……!
254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/21(金) 14:17:12.00 ID:DFAPve3DO
のぶ代世代としてはわさびは嫌いじゃないけど未だに慣れないな
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 11:57:21.71 ID:nozDHkPLo
嫌いではないんだけど怖気がする
変に続けるくらいならさっぱりやめて欲しかった
256 : ◆BAGSDsqeLs :2013/01/02(水) 00:46:49.30 ID:96lj0Ne0o
明けましておめでとナス!
新年一発目、開始
257 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/02(水) 00:47:46.49 ID:96lj0Ne0o
風子と別れて数分後、俺たちは桜並木が続く校門にたどり着いていた

鮮やかなオレンジ色の夕焼けが俺達を見下ろし、千切れ雲が流れてゆく

朋也「ここまでで、いい」

俺は後ろについて来る二人ーーーー宮永と大星にそう告げる

淡「えー?もーちょい話してようよー」

朋也「えーじゃない、お前は部活があるだろ」

春原「おいおい岡崎、そりゃないんじゃない?」

一月先には全国が控えていると言うのに、緊張感はないのだろうか

朋也「……宮永も、ここまでありがとな」

何故か宮永の表情が優れていなかったので礼を言う

ついでに頭を撫でてやりながら

照「……うん」

気持ち良さそうに目を細めて、小さく頷く彼女

春原「じゃね、宮永ちゃん」

朋也「……それじゃ、またあしーー」

照「あっ」

別れの言葉を言う俺を遮るようにして、宮永が変な声をあげた

朋也「って、どうかしたか?」

素直に尋ねてみる

照「えっ……と…その……」

すると宮永はあたふたと慌てふためき、ごそごそと何かを探し始めた

照「こ、これ……!」

数瞬後、彼女は懐からそれを取り出し、俺につきつける

朋也「これは……」

この、長方形の物体はーーーー

朋也「携帯電話?」

人類が創りあげた文明の結晶、携帯電話であった

照「えと……その……」

こちらに突き出された彼女のか細い腕がぷるぷると震える
258 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/02(水) 00:49:40.56 ID:96lj0Ne0o

手に握られたオレンジ色の可愛らしいデザインのソレが、きらりと夕日に照らされ、光沢を発する

照「わ、私と、その、番号をーー「テルー」ーーえ?」

絞り出すように紡がれた宮永の声は、大星のため息交じりの声にかき消された

淡「トモヤ、ケータイ持ってないよ?」

照「えっ」

……俺が言おうとした言葉を、そのまま大星に言われてしまった

照「……」

そのまま宮永はじっと俺を見つめてくる……心なしか、不安そうに

照「……そうなの?」

朋也「あ、ああ、まあな」

別にあまり必要だとは思えなかったし、と、俺

照「……そう」

か細い声と共に宮永は瞳を伏せた

見るからにしょんぼりしている

きっと犬耳でもついていたらぺたんと垂れ下がっていることだろう


そして


朋也「……」

照「……」


気まずい


なんだか知らんがとにかく気まずい

朋也「……っ」

と、とにかく

何か話題はないか話題は…………ん?

朋也「……宮永」

照「な、なに?」

震え声になりつつも、宮永

そして俺はそいつを指差しながら、尋ねる
259 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/02(水) 00:50:47.03 ID:96lj0Ne0o

朋也「その、お前の携帯に付いてるそれって……」

照「……あ」

宮永が手に持つ携帯電話

オレンジ色のソレにぶら下がっている……ストラップ

まん丸お目々の、ストラップ


それは……


朋也「だんご、大家族か」


……だんご大家族の、ストラップ

照「!」

瞳をまあるくさせて宮永はびっくりしている

照「……知ってるの?」

朋也「そりゃ、あんだけ流行ればな」

だんご大家族

それは一昔前に流行ったマスコット

可愛らしいデザインで一世を風靡したマスコット

しかし流行が過ぎ去った今では過去の遺物そのものので

今だに身につけている奴なんて殆どいないだろう

朋也「……」


だが


俺にとってそのマスコットーーーーだんご大家族は、かけがえのない宝物の一つなのだ

俺の命よりも大切な、彼女達が大好きだったものだからーーーー

照「お、岡崎?」

朋也「え?」

しみじみと宮永のストラップを眺めていると、恐る恐る彼女が声をかけてきた

どうやら黙りこんでしまった俺を不安に思ったらしい

朋也「ん、ああ、悪い。ちょっとぼーっとしてた」

照「そ、そう…」

どこかホッとする宮永
260 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/02(水) 00:52:32.37 ID:96lj0Ne0o

淡「最近トモヤぼーっとしすぎだよ?……あ、それと」

声につられて大星の方を見てみると、先ほどの宮永のようになにやら鞄をまさぐっていた

淡「じゃんっ♪」

そして携帯電話を取り出し、俺に見せつける

淡「テルーと私の、お揃いなんだっ♪」

朋也「……」

……大星の携帯にも、だんご大家族のストラップが付いていた

可愛いよねーだんご大家族、と、大星

春原「でも今時だんご大家族なんてダサーーーー」

朋也「あ?」

淡「は?」

照「……」

春原「ーーくないっす、可愛いっす!」

失礼な事を言いかけた春原だが俺達三人の睨みに怯み、訂正する

宮永の目が冗談じゃなくマジに笑ってない、どうやら相当だんご大家族が好きらしい

……。

朋也「宮永」

照「?」

朋也「好きなのか?だんご大家族」

照「……うん」

こくり、と小さく頷く彼女

照「……大好き」

朋也「そっか」

……本当に

宮永は、何処か似ている

彼女に、何処か似ているーーーー

照「岡崎」

朋也「えっ、あ、ああ、なんだ」
261 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/02(水) 00:53:31.26 ID:96lj0Ne0o

照「……変?」

朋也「え?」

照「変、じゃない……?」

不安げに、彼女がこちらを見つめる

朋也「……変じゃない、変じゃないさ」

そう言って、俺は彼女の頭に手を添えて

朋也「お前らしくて、いいんじゃないか?」

ゆっくりと、撫でる

照「……ほんと?」

朋也「ああ、本当だ」

照「……」

俺の言葉を聞いて宮永は微笑む

感情表現の少ない彼女だが、俺にははっきりと解った

朋也「……」

そんな小動物さながらな彼女の様子を俺はしばらく見つめ、そして ーーーー

朋也「それじゃあな、宮永」

別れの言葉を、切り出した

照「……!」

ぴくり、と宮永の小さな肩が揺れる

照「……うん」

こくこくと彼女は小さく頷き

照「ばいばい、岡崎」

ひらひらと手を降った

どこかぎこちない微笑みが、印象的だった

淡「じゃねっ!トモヤ!」

また明日っ!と可愛らしく敬礼をしながら、大星

朋也「ああ、またな」

春原「またねっ!」

俺の横で春原が二本指を立てて手を上げる

ウインクをしているのが凄まじく気持ち悪い

……まぁいい、放っておこう

朋也「……」

そして俺たちは後ろを振り向き、彼女たちに背を向けーーーー歩み始める

夕焼けに染まる、坂道を

緑生い茂る、桜並木の坂道を

長い、長い、坂道を……
262 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/02(水) 00:59:23.52 ID:96lj0Ne0o
終了

滅茶苦茶更新遅れてすみません!許してください!なんでもしますから!
その割に分量少なくてすみません!許してください!(以下略)


あっ、そうだ(唐突)
渚ちゃん誕生日おめでとナス!
白糸台クリスマス番外編書こうと思ったけど時間なかったんや……すまんな

全国大会編まではまーだ時間かかりそうですね……

それでは、今年も4649オナシャス!センセンシャル!
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 01:18:25.85 ID:ov1WiLzWo

>>1のテンション高すぎでワロタ
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 01:25:15.96 ID:d6FxN+lr0
(テンション高くても)ええんやで(ニッコリ
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 01:27:07.77 ID:X4BNlLQOo

テンション武―な
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/02(水) 18:28:13.14 ID:QAqNwZ7AO
乙。ん? (来年のクリスマスじゃ)いかんのか? (ゲス顔)

岡崎テルテルの頭撫ですぎィ! なのがちょっと気になった(小並感)
267 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:23:42.08 ID:7rz4N0Dzo
開始
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 18:23:55.05 ID:Z40rd/Vuo
わぁい
269 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:25:01.63 ID:7rz4N0Dzo
朝。

小鳥達の小さな囀りと共に少女は目覚めた

「……」

むくりと寝ぼける体を起き上がらせ、睡魔の誘惑あふれる布団をまくり、朝の陽光を遮るカーテンをこじ開ける

「……っ」

朝日が彼女のあどけない顔に差し込み、その瞳を細めさせる

柔らかな日光は本日が晴天である事を彼女に告げていた

「……」

ごしごしと眠気まなこをこすり

ふぁ、と大きなあくびをひとつつき

そして再び柔らかな布団へ潜――――――る誘惑をなんとか跳ね除け

壁に掛けられた制服を、もそもそとナマケモノの様な動きで手に取る

そして

がちゃり、と

彼女は閉ざされた自室の扉を開けた


これが、少女の朝

インターハイチャンピオン、宮永照の朝――――





照「……」


数十分後、朝食を取り終えた彼女…宮永照は洗面台の前に突っ立っていた

こしゅこしゅと機械的に歯を磨き、鏡に映る自分の姿を見つめる

照「……む」

ぽふぽふと自慢の赤髪を撫で回し、寝癖の有無を確認

問題無しと解れば彼女は満足げに微笑みゆっくりと口をゆすいだ

寝癖がついてるところを彼に見られたら大変だ、と彼女は思う
270 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:26:25.44 ID:7rz4N0Dzo

照「……よし」

満足げに一つつぶやき,改めて鏡の前の自分を見つめる

寝癖……なし

目のクマ……大丈夫

お肌……問題無し

制服……シワ一つ無い

etc…etc…

……などなど様々なチェックをし終え、彼女は小さく呟いた

完璧、と


そしてその十数分後

宮永照はいつも通りの時間に自宅を出た

……忘れ物を母に指摘される時間も含めて、いつも通りの時間である

照「……」

今日はどんな一日になるだろう?

どんな事が起こるだろう?

今日も彼に会えるだろう?

今日も彼は部活に遊びにきてくれるだろう?

そんな事を考えながら、少女は学び舎への道を歩んでゆく

ある日の、朝

いつも通りの……されど、じわりじわりと変化する、朝――――――







照「……!」


学校へと続く長い坂道の入り口で、宮永照は確かに発見した

通学する生徒達に混ざる、その人影を

その、背中を

照「っ!」

とてとてと小走りし、生徒達の人混みをくぐり抜け、人影の――――彼の、十数歩後ろに歩み寄る

どうやら彼は少女の接近に気づいてないらしい
271 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:27:38.81 ID:7rz4N0Dzo

照「……」

声をかけようかと彼女は逡巡したが、気恥ずかしいので静観を選んだ

そして彼の背を見つめながら、歩く

彼の十数歩後ろを、歩く

とてとてと、気づかれぬように

てくてくと、見失わぬように

照「……」

宮永照は、彼の――――岡崎朋也の背中が好きだった

彼の大きな背中が好きだった

男は背中で語るとよく聞くが、彼の背中を見ると彼女はまさにその通りだと思わざるを得なかった

宮永照は、彼の優しい背中が好きだった

だからだろうか

彼女は不安に思うのだ

その優しい背中が、時折たまらなく小さくなるのを――――

照「!」

朋也「……」

不意に

彼が立ち止まった

つられて彼女も立ち止まり、まじまじとその背中を見つめ――――はっ、と気づく

……もしかして、後ろからつけているのを気づかれた?

照「!!!!」

急に気恥ずかしくなり、宮永照は顔を林檎の様に赤く染めてうつむいた

話しかけもせずこっそりついていくなんて、まるでストーカーではないか

きっと彼も変に思っているだろう

照「……?」

……穴に埋まってしまいたいほど頭を抱えている宮永だったが、彼がいつまでたってもこちらに振り替えらない事に疑問を覚えた

まじまじと彼を見るとどうやら青葉生い茂る桜並木を見上げているらしい
272 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:28:49.96 ID:7rz4N0Dzo

照「……ほっ」

と、彼女は安心して――――すぐさま、気づく

彼の、背中が

坂道を見上げる、彼の背中が

――――たまらなく、小さくなっている事を

照「……え?」

どうして

どうして、あの大きな背中が

あの父のような背中が

あんなにも小さくなっているの――――?

朋也「……」

岡崎の背中を見て、少女はごくりと息を呑んだ

……ここから彼の顔は見えないが

――――彼は、泣いていた

彼の泣く声は聞こえない

彼の背中は震えていない

彼はただじっと桜並木を見上げているだけ――――けれど

彼の背中は、泣いていた

照「っ!」

彼に声をかけなくては

少女はとっさにそう思った

そうしないと、今にも消えてしまいそうだったのだ

照「……」

ああ、声をかけなくては――――だが

……かける言葉が、見つからない

その一歩が、踏み出せない

小心者の自分を、彼女は憎んだ

…思考の堂々巡りが続く
273 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:30:28.49 ID:7rz4N0Dzo

照「……?」

そして、それを打ち破ったのは――――

朋也「……っ……ぁ」

彼の――岡崎朋也の小さな呟きであった

坂道を登ってゆく生徒達の雑踏の中でも、不思議とそのかすかな声を少女は聞き取ることができた

やがて呟きは単語へと、言葉へと、問いかけへと変化し、彼女に届いてゆく――――



朋也「この町は好きですか」

朋也「私はこの町が好きです」

朋也「――――けれど」

朋也「なにもかも、変わらずにはいられないです」

朋也「楽しいこととか、嬉しいこととか、全部」

朋也「――――全部、変わらずにはいられないです」 

朋也「それでも」

朋也「……この町が、好きでいられますか」



……宮永照は

彼のその問いかけが、彼自身に問いかけているものだと

自分に向けられた言葉ではないと

そう、直感した

照「……」

憂いをおびたその言葉に、彼女は何も言うことが出来なかった

……あと数歩歩めば、彼を抱きしめることが出来るだろう

彼の背中に抱きつくことが出来るだろう

けれど

その数歩が、踏み出せない

照「……」

たった数歩の距離の間に、堅牢な壁がそり立っていることを、彼女は実感した

そしてその壁を――――壊さなければならないと言うことも
274 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:32:28.79 ID:7rz4N0Dzo

照「……すぅ」

意を決し、大きく息を吸い込み

宮永照は、唇を開き――――


同時に


黄金色の風が、彼女の真横を駆け抜けた







眼前に広がっているのは、青葉生い茂る桜並木

そして、永遠に続いているかのような、長い長い坂道

朋也「……」

朝。

いつも通りに学校へと続く上り坂を上ろうとした俺は……思わず立ち止まっていた

朋也「……っ」

どこまでも続く坂道に、俺はあの日の出来事を思い出す

彼女と出会った日のことを思い出す

坂道で立ち尽くしていた彼女を思い出す……

朋也「……ぁ……っ」

無意識の内に、言葉を漏らす

その無意識を俺は拒むこともなく

ただただ脳裏に駆けめぐった、あの言葉を紡ぎ出す……

朋也「この町は好きですか」

それは、彼女の言葉

朋也「私はこの町が好きです」

275 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:33:36.01 ID:7rz4N0Dzo

彼女と初めて交わした、言葉

――――俺はあの日、あの時彼女のその言葉に何となく応えて

――――俺と彼女の物語は始まった

そんな、大切な、大切な、言葉達
 

朋也「――――けれど」


その言葉達は


朋也「なにもかも、変わらずにはいられないです」


今の俺には、余りにも重い


朋也「楽しいこととか、嬉しいこととか、全部」

朋也「――――全部、変わらずにはいられないです」 

朋也「それでも」

朋也「……この町が、好きでいられますか」


……何もかも変わらずにはいられない

その事実を、俺は痛いほど知っている

この町も、この坂道も、愛する彼女達も、変わらずにはいられなかった

楽しいこととか嬉しいこととか全部……全部、変わらずにはいられなかった……!

彼女は……彼女達は……!

皆、変わってしまった……!

変わってしまって……俺の側から消えてしまった……!

俺は変わることを、変わってしまうことを…ただ見ているだけだった!

何も出来なかった!

無力だった!
276 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:34:24.20 ID:7rz4N0Dzo

朋也「……」


……この町は嫌いだ

忘れたい思い出が染み着いているから

……けれど

忘れたくない思い出も染み着いている

忘れてはならない思い出も染み着いている

だから

この町を、嫌いになってはならないのだ

ならないのだ…………けれど

俺は、好きで居続けられるのだろうか

この町を

この坂を

この学校を


彼女達のいない、この町を


朋也「……」


薄暗い深海へと沈んでゆく俺の心を……


黄金の風が、叩き起こした







少女、宮永照の真横を駆け抜けた黄金色の旋風は、勢いを失うこともなく岡崎朋也へと激突した

そして数瞬後、その旋風――その少女は、見事にぴったりと岡崎の背に張り付いていた

「おっはよーっ♪トモヤ♪」

少女の名を、大星淡

朋也「ああ……おはよう」

白糸台高校麻雀部が誇るお転婆少女である
277 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:36:22.82 ID:7rz4N0Dzo

朋也「それと今すぐ背中から降りろ」

淡「えーっ、いいじゃーん、減るもんじゃないしー」

朋也「周りの視線が痛いんだよ!」

淡「はいはーい……」

渋々と彼の背から降りる少女、大星

淡「あ、テルーもおはよ!」

そして彼女はあんぐりと口を開け自らを見てくる少女――宮永照に元気よく朝の挨拶をかました

朋也「ん……ああ、宮永もいたのか、おはよう」

大星の言葉で宮永に気づいた岡崎が彼女に話しかける

照「お、おはよう…!」

その言葉に彼女は精一杯の勇気をもって答えた

ぷるぷると震え声だが、コレでも成長した方である

そして心の中で、一息

よかった、バレていない

こっそり後ろからついてきていましたなんて知られたら、恥ずかしくて死んでしまう

……そんな彼女の安堵を

金髪少女はいとも容易くぶち壊した

淡「テルーもいたのかっていうけどさぁ……」

朋也「ん?」

淡「テルー、初めから朋也の後ろにいたよ?」

照「!!!!!!」

朋也「は?」

淡「朋也の後ろを歩いてたの、カルガモの親子みたいにさ」

朋也「……気づかなかった」

岡崎はそう言いつつ話中の少女を見てみる

なにやら顔を真っ赤にさせて慌てていた

朋也「声、かけてくれりゃよかったのに」

はわわわ、としどろもどろになる宮永に言い聞かせる

照「は、恥ずかしかったから……」

朋也「そっか」
278 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:37:04.69 ID:7rz4N0Dzo

淡「テルーも別に遠慮しなくていいのにー」

朋也「お前は少しは遠慮しろ」

べたべたべたべたとうっおとしい、と岡崎

彼にとって大星はじゃれついてくる猫のような存在だった

ちなみに宮永は生後間もない子犬といったところだ

淡「あっ、そうだ」

嘆息する彼を尻目に、大星は何かを思い出し、その腰に持つ鞄をまさぐり始める

ちゃり、と鞄についたキーホルダー……だんご大家族のキーホルダーが揺れる

淡「はいっ!これ!」

やがて大星は鞄からそれ――――藍色の風呂敷に包まれた、長方形の物体を取り出した

朋也「これは……」

淡「お弁当っ♪」

弁当箱である

朋也「で?弁当箱がどうし――――うっ」

淡「……」

大星のジト目が、岡崎を舐め回した

朋也「……ホントに交換するのか?」

大星「モチのロン!」

約束だしっ!と、金髪少女

朋也「……」

にっこにっこと笑顔を振りまく彼女に根負けして、彼は鞄から弁当箱を取り出し、彼女に渡す

大星「〜♪」

先日大星の逆鱗に触れた彼は、彼女の命により本日から互いの弁当を交換することになったのだ


と、ここに


それに納得できない者が一人

 
照「…………」


白糸台高校麻雀部が誇るお菓子大好き娘、宮永照だ
279 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:38:07.44 ID:7rz4N0Dzo

朋也「ん?宮永、どうした?変な顔して」

岡崎が彼女の異変に気づく

照「……」


どうしてお弁当交換しているの?

どうしてそんなに仲がいいの?

どうして大星は岡崎の背中に抱きつけるの?

どうして岡崎は嫌がったりしないの?

どうして

どうして

どうして――――――


心の中に浮かぶ、数多の問いを、彼女は……吐き出さず

照「……ううん、なんでもない」

ただ、そう、答えた

朋也「ふぅん?……ああ、そうだ」

照「?」

宮永の返答を大して気にせず、彼は何かを思いついた

朋也「昼、宮永もいっしょに食べないか?」

照「え……」

淡「へぇ?」

その提案に宮永はまん丸と瞳を開き、直後

照「よ、よろこんでっ!」

両の拳を握りながら、即答した

朋也「よし、じゃあそう言うことな……さて」

一息つき、岡崎

朋也「早く行こうぜ、遅刻しちまう」

親指で坂道を指さし彼女達の背を押す

淡「おうっ!」

照「……うんっ」

……彼らは、登り始める

長い長い、坂道を
280 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:38:51.26 ID:7rz4N0Dzo


そして


宮永照は、思う



目の前を歩く彼が発した、あの問いを、その答えを



……この町は好きですか

……私はこの町が好きです

……けれど

……なにもかも、変わらずにはいられないです

……楽しいこととか、嬉しいこととか、全部

……全部、変わらずにはいられないです

……それでも

……この町が、好きでいられますか


照「……」

照「……見つければいい」

嬉しいことや楽しいことが消えてしまったら

次の嬉しいことや楽しいことを見つければいい

照「……」

……きっと彼は、無くしてしまったのだ

嬉しいことや、楽しいことを、無くしてしまったのだ


照「……」


……ああ


願わくば


願わくば


彼にとっての、嬉しいこと、楽しいことになりたい――――


彼にとっての、安らげる場所になりたい――――


彼の涙を、拭いてあげたい――――
 

照「……」


そんな事を、考えている……


長い長い坂道が、続いてゆく……
281 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/08(火) 18:47:51.64 ID:7rz4N0Dzo
終了。
バレで淡ちゃんの能力がわかったみたいですね、やったぜ。

それとどうでも良い話ですが最近(某スレで朋也君が熱唱していたので)ミスチルをよく聞いています
signとかHEROとかHANABIとかCLANNADに合っててGOOD
このスレ的にはヒプノシスあたり?

福岡ドーム……デデドン!(絶望)

それでは、これにて

282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 19:10:45.80 ID:Z40rd/Vuo
乙乙
テルー超頑張れ
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 19:27:51.75 ID:n0z6WRfDO
乙。
朋也が切ねえなぁ…
284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 20:31:53.56 ID:yiO3WwAPo

>べたべたべたべたとうっおとしい、と岡崎
お前はJOJOか
285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 20:45:50.31 ID:qdW6iSgjo
泣いてしもうた(´・ω・`)
286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 21:29:23.83 ID:l8JZ5+vZo
signの歌詞はアフターにぴったりだと思う 主に2番目が
287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/08(火) 23:55:10.11 ID:ia5oIr6Jo
失ったものがでかすぎて容易に前に進めないんだよな……
288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 23:32:40.97 ID:ht5ZY/a8o
追いついたー。
こんなおもろいスレに気付かなかったとは不覚。
289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 15:40:55.57 ID:ojJ8dQu7o
http://dl10.getuploader.com/g/yaruo_gazou/659/clannad+saki.jpg
下手くそだけど支援絵うp。
続きが気になりすぎて頭がWADAさんになりそう
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 18:57:34.87 ID:Bf774WxDO
支援乙!
淡〜!後ろ後ろ!
291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 19:14:24.96 ID:MeIF/MILo
ええな
292 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:33:28.31 ID:KNCwt7Rlo
>>289
ファッ!?なんだこれはたまげたなぁ……支援絵アリシャス!!

が、申し訳ないがぐう聖テッルをクッソ有害な淫獣ポジにするのはNG。もう許せるぞオイ!


開始します
293 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:34:25.80 ID:KNCwt7Rlo
朝の教室は生徒達の喧騒に包まれていた

とは言え流石は進学校、聞こえてくる話に受験の話題が混じっている

はなから受験なんて知ったこっちゃない俺は机に突っ伏し睡魔に従うだけだ

右隣の席は空席

やはりあの金髪は今日も今日とて遅刻らしい

「……くん……ざき…くん」

朋也「……?」

うつらうつらと船を漕ぐ俺だったが、ふと横合いからかけられた声に耳を傾けた

目をこすり、顔を上げる

「あの……岡崎くん」

……そこに立っていたのは、不安げにこちらを見る一人の少女

藤色のショートヘア、その右側頭部に結ばれた白色のリボンが小さく揺れる

朋也「藤林か」

少女の名を、藤林椋

我がクラスの委員長にして、かの暴君の妹だ

朋也「何か用か?」

椋「えと……これを」

そう言って藤林は一枚の紙を渡してきた

朋也「……進路調査?」

用紙の中央に、はっきりとした文字で印刷されている

椋「本格的に始まる受験戦争の前に、もう一度進路確認、だそうです」

と言っても、受験のじの字も考えたことのない俺にとってはタダノ紙切れだ

朋也「進路っつったってなぁ…」

椋「大学に限らず、なりたい職などでも構わないそうです」

朋也「将来の夢、って奴か」

小学校の卒業文集でもあるまいに

朋也「……藤林は」

椋「は、はいっ?」

朋也「藤林はどうなんだ、なりたい職業とかあるのか?」

椋「え、えっと…」

からかいを込めた俺の問いに藤林は真剣に考え込み、なにやらもじもじとし始めた

294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 22:35:22.25 ID:Ob9vz/YAO
待ってたで!
295 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:36:17.72 ID:KNCwt7Rlo

椋「えっと、ですね……その……えーと……」

朋也「……看護婦とか、似合ってるんじゃないか?お前に」

椋「!!」

俺の言葉に彼女が驚愕する

椋「ほ、本当ですかっ!?」

朋也「お、おう……ずいぶんと嬉しそうだな」

椋「は、はいっ、実は私、看護師になりたいんです!」

……実はもなにも、彼女は数年後立派に働いてるのだ、看護婦として

椋「それと、岡崎くん」

朋也「ん?」

椋「今は看護婦じゃなくて、看護師、ですよ?」

朋也「……どうでもイイだろ、そんなの」

椋「よくないです!」

……感情が高ぶったのか、それから藤林はとてつもなく熱心に看護師についての話を語り始めた

普段内気な彼女の意外な姿に俺は呆然とし、白熱する語りをただ黙って聞くのみ

そして

そんな藤林の熱弁を止めたのは――――



「クルルァ!岡崎朋也ァ!!!!」

朋也「うおっ!?」



――――他でもない彼女の姉だ


朋也「っ、何すんだ!」

高速で飛来した弾丸――――辞書を紙一重で回避し、俺は教室の扉の前で仁王立ちしているその女に向かって叫ぶ

「アンタまたウチの妹に何かしてたわねぇ!?」

つかつかとこちらに歩み寄り、俺の胸ぐらを掴む彼女

彼女こそ藤林椋の姉にして暴君、この学校を牛耳る悪代官、辞書を投げさせたら右に出るモノはないと評判の――――

藤林杏

……俺の悪友だ
296 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:37:51.01 ID:KNCwt7Rlo

朋也「し、してねぇよ!」

徐々に強くなる首の締め付けに抵抗しながら、なんとか反論を零す

椋「お、お姉ちゃん、岡崎くんはなにもしてないからっ」

杏「……本当?」

椋「本当だよっ!」

杏「ふ〜ん……ああ、そう」

藤林の言葉に納得したのか、杏は嫌々ながらも拘束を解いた

杏「なら、何の話をしてたのかしら?」

ゴホゴホと咳き込み呼吸を整える俺など眼中にないと言わんばかりに、杏は藤林に尋ねる

椋「えっと、この話を…」

杏「ん…ああ、進路の話ね」

おずおずと差し出された進路相談の用紙を見て納得する彼女

椋「そ、それでお姉ちゃん!」

杏「へっ?な、何?」

急に声を張り上げた妹に姉が困惑する

椋「お、岡崎くんが言ってくれたの……私、看護師似合ってるって」

杏「へぇ?」

朋也「……」

確かに俺は藤林に看護師が似合っていると言ったが、ああも嬉しそうに言われては……その……照れる

杏「アンタ、なかなか見る目あるじゃない!」

あっはっは!と笑いながら嬉しそうに背中を叩いてくる杏

ばしんばしんと相当の強さでぶち当たっており、恐らく俺の背中には立派な紅葉が浮かんでいることだろう

朋也「別に、なんとなく思っただけだって」

……そういえば

俺の『未来の記憶』、何かに活かせたりしないだろうか

例えば……金儲け、とかか?

……。

……イマイチ良い方法が思いつかんな

株だのなんだのは解らないし、宝くじなど覚えているはずもない

……今こんな事考えても仕方ないか
297 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:39:31.00 ID:KNCwt7Rlo

杏「なんとなく、ねぇ?」

ニヤニヤと含み笑いをしながら、杏

そしてこいつはそのにやけ面を直そうともせず――

杏「……じゃあ、私はどんな仕事が似合ってるかしら?」

そんな事を、聞いてきた

朋也「……」

……似合っている、か

考えてみたところで、答えは一つしか出ない

朋也「プロレス――――」

杏「あ゛あ!_?」

朋也「幼稚園の先生とか似合ってるんじゃないか?」

プロレスラー、と言いかけた俺の口を、杏の野獣の如く獰猛な眼光が塞いだ

そして慌てて言い直す俺

椋「!」

そして俺の回答に驚いたのは当人ではなく、その妹の方であった

椋「岡崎くんすごいですっ!正解ですっ!」

朋也「うおっ!マジかよっ!」

わざとらしく驚く自分

正解もなにも答えを知っている問題だ

杏「……やるじゃない、アンタ」

フン、と心なしか嬉しそうに杏が俺を小突く

よかったねお姉ちゃん!とその妹が喜ぶ

朋也「……」

……杏も、数年後には立派に働いているのだ

幼稚園の先生として

汐の先生として

杏「それで?」

朋也「……あ?」

脳裏に『彼女』の姿を思い描いていると、杏が何かを尋ねてきた

杏「そう言うアンタはどうなのよ」
298 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:40:32.49 ID:KNCwt7Rlo

朋也「どうって……何がだ?」

杏「決まってるじゃない、なりたい職よ、なりたい職!」

朋也「……」

椋「あッ、そ、それ私も気になりますっ」

ずいっ、と体を乗り出して、藤林

……俺なんかの話を聞いたって何の意味もないだろうに

とはいえこちらから振った話だ、真面目に答えなくては

朋也「……電気工、って所か」

「「電気工?」」

姉妹の言葉がハモる

さすが双子だ

朋也「ああ、電気工だ」

椋「電気工って……あの電気工ですか?」

朋也「ああ、あの電気工だ」

杏「電柱に登ってなんか色々したりするあの電気工?」

朋也「ああ、その電気工だ」

……なんか色々するってなんだ、えらい適当だなオイ

結構繊細な仕事なんだぞ

「「……」」

朋也「……何だよその目は」

杏「べ、別にぃ?何でもないわよ、気にしないで」

椋「す、素敵な仕事だと思いますっ!」

……。

朋也「……お前らもしかして土方だのなんだの馬鹿にしてんじゃないだろうな?」

杏「い、いやーねえ!そんな訳ないじゃない!自意識過剰よ!」

椋「そ、そうですよっ!私、素敵な仕事だと思いますっ!」

だらだらと額から汗を垂らす杏と、数刻前と同じ台詞を吐く藤林

朋也「……そうだろう、素敵な仕事だろう」

そして釈然としない顔で、俺
299 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:41:07.40 ID:KNCwt7Rlo

朋也「電気工はな,町に光を灯してゆく仕事なんだ」

薄暗い夜道を、未来を照らす仕事なんだ

途切れてしまった機械達に、再び命を吹き込む仕事なんだ

俺達が造った光が、人々の闇を払うんだ

暗闇の道に、進むべき道を切り開くんだ

哀しみの弔鐘を鳴り止ませるんだ

キルミーベイベーは復活するん

杏「わかった!わかったから!」

朋也「む、そうか」

俺の熱論を、杏がさえぎる

その後ろで藤林が空笑いをして、何とも言えない顔でこちらを見ている

椋「す、すごい熱弁ですね……でも、しっかり情熱は伝わりましたっ」

朋也「そうだろうそうだろう……それにな、藤林」

椋「?」

朋也「例え電気工でも、例え土方でも、例えサラリーマンでも、いわゆる社会の歯車だのなんだの言われる仕事でもな――――」

朋也「"家庭"があればそれで生きていけるんだ」

椋「か、家庭……ですか?」

朋也「ああそうだ、"家庭"だ」

例えば、一日の仕事を終わらせてヘトヘトになって家に帰ったとしよう

玄関を開けて、靴を抜いで、足を引きずりながら居間に座って、適当に買ったコンビニ弁当を食べて、風呂に入って、寝る

それでまた朝早くに起きて、朝食を適当に食べて、仕事に向かう

その繰り返しだ

だけど

"家庭"と言う存在があればどうなる?

一日の仕事を終わらせてヘトヘトになって家に帰る

玄関を開けて、靴を抜いで、愛する人――妻にただいまと言って、上着を受け取ってもらって、暖かな夕食が並べられた居間に座って、二人で――あるいは三人で夕食を食べる

風呂に入れば背中を流してもらったり、小さな背中を洗ったりする

寝る時は布団を並べて、おやすみと言いあって眠りにつく

朝起きれば、トントンと奏でられる包丁の音と、鼻腔をくすぐる朝食の匂いが目を覚ましてくれる

体を酷使する仕事の時間も、頭に、心に家族の姿を思い描けば苦痛なんて吹き飛んじまう

むしろ原動力になって、一層仕事に励むことができる

そう、家族って奴は何よりも――――

杏「はいはいはいはいストップストップ!!」
300 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:43:05.88 ID:KNCwt7Rlo

朋也「……なんだ、杏」

杏「なんだ、杏、じゃないわよ!何イキナリ語り始めてんの!」

朋也「いかんのか?」

杏「誰も悪いとは言ってないわよ……ただ、アンタそんなキャラじゃないでしょ」

朋也「……」

確かに

以前の俺は、家族だのなんだの語る人間では到底なかった

むしろ家族なんて糞食らえ、反吐が出る、そんな感じだ

自堕落全開一匹狼気取りの人間が唐突に愛とか妻とか言い出すなんて、ホラー以外の何物でもない

……いや、自分の事なのだけれども

杏「何?イメチェンって奴?」

椋「お、お姉ちゃん……」

あり得ないモノを見るような目で杏は俺を見つめる

朋也「……心境の変化って奴だ」

杏「ほとんど別人じゃない」

頭でも打ったの?ここに医者の卵が居るから診てもらえば?などと失礼な事をのたまう杏

妹の方は精一杯俺のフォローに務めている、健気な奴だ

朋也「……あ」

ふと、脳裏に1人の人物が浮かび上がる

「「?」」

朋也「あの人の影響も少しはあるだろうなぁ」
301 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:43:44.19 ID:KNCwt7Rlo

椋「あの人?」

杏「誰よ、それ」

朋也「芳野祐介」

二人の疑問に(別に隠す必要もないので)即答する

杏「へぇ、芳野祐介って人…………って芳野祐介!?」

椋「あ、あの芳野さんですかっ!?」

朋也「ああ、あの芳野祐介だ」

寝耳に水と言わんばかりに、二人が驚く……まぁ無理もあるまい

杏「ど、どーしてそんな有名人とアンタが知り合いなワケ?」

朋也「……あの人、この町で働いてるんだ」

朋也「そんでこの前、どう言う訳か芳野さんの仕事の手伝いをしてな、それから知り合いになったって訳だ」

杏「仕事って……」

椋「あ、もしかして電気工ですか?」

朋也「Exactly(その通りだ)」

流石は藤林、察しが良い

杏「……それでその伝説のシンガー芳野祐介に感銘を受けたアンタは、電気工になろうって決めた訳ね?」

朋也「そう言う事だな」

電気工と言う仕事に俺は少なからず誇りを持っていたし、それ以外の仕事に就いている俺など想像できなかった

杏「……単純ねぇ」

朋也「面倒な事は嫌いなんでな」

椋「で、でも、電気工なんて大丈夫なんですか?」

朋也「何がだ?」

椋「ほら、専門の知識とか必要じゃないですか、そのための学校に行ったりとか……」

朋也「ん、ああ、一応それなりの心得はあるんだ、その点は問題ない」

明日からだって働ける

働こうと思えば

杏「……んな技術、何処で身につけたのよ」

朋也「それは――――秘密だ」

言った所で信じるはずもない

椋「でも岡崎くんが電気工ですか……」

「「「…………」」」

杏「……不思議と似合ってるわね」

朋也「だろ?」

こちとら電工歴六年弱だ、舐めてもらっては困る
302 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:46:01.12 ID:KNCwt7Rlo

杏「ま、あのバカと違って未来を見てる分よっぽど好意的ね」

朋也「……褒めてるのか?」

未確認生命体SNHRを例えに使われても嫌味にしかならないぞ

訴訟も辞さない

杏「ええ、もちろん」

椋「わ、私応援してますからっ!」

本気なのか嘘なのかわからない顔で、杏

それとは対象的に、精一杯心を込めて、藤林

朋也「……ありがとな、藤林」

素直に礼を言う

……だが

そうしている間にも

彼女達と談笑をしている間にも

俺の頭の隅には、一つの問題が引っかかっていた

……それは、約束

あの人と交わした、約束

朋也「……ああ」

……結局

芳野さんに、返せなかったな……工具

朋也「……」

それが、心残りで

おそらく果たせないであろう、約束で

俺の心に確かにのしかかる、よどんだ濁りだ

杏「朋也?」

朋也「ん、あ、ああ、どうした」

杏「それはこっちのセリフよ、どうしたの?急に黙って」

朋也「……別に,気にするな」

朋也「それより教室に戻らなくてもいいのか?そろそろホームルームの時間だぞ?」

杏「え?……っ、やばっ!」

……その後、担任の登場と共に朝のホームルームが始まった

そそくさとクラスに戻る杏を眺めつつ,担任の話をなんとなく聞く

……進路の話であった
303 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:47:13.60 ID:KNCwt7Rlo

朋也「……」

電気工,将来、なりたい職業、大学、進学,卒業……

朋也「……」

目の前に続く未来へ目を凝らしても、ただ闇が広がるだけ

暗い、暗い、闇が広がるだけ

……きっと

俺が、未来を見ているとき

俺達が未来を、希望を、光を思い描いているとき

立ち塞がる未来もまた、俺を見ているのだ

深い、深い、深海の様な闇もまた、俺達を見ているのだ

朋也「……」

……どす黒い闇は、光を飲み込んだ

未来に潜む闇は、彼女達を飲み込んだ

朋也「……」

俺は、見つける事が出来るのだろうか

光を

輝かしい、光を

未知なる闇を消しとばす、太陽のような光を……

朋也「……はっ」




夜明けは、遠い
304 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/16(水) 22:53:06.00 ID:KNCwt7Rlo
終了

NIETZHE兄貴は凄い、はっきりわかんだね
ちなCのワイははようちゃちゃのん出したいですわ。ワカメ?知らん

次は一週間以上開けない投稿にしたい(小学生並の目標)

では、これにて


305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 22:53:46.66 ID:MdAIc01Co

感染ったか……
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 22:56:06.09 ID:W5w1tlTS0
渚以外ほぼいるのね 把握
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 00:09:19.99 ID:2hHfEJZFo
         ,, _
       /     ` 、
      /  (_ノL_)  ヽ
      /   ´・  ・`  l    >>1は一週間後復活するんだ。
     (l     し    l)    悲しみの弔鐘はもう鳴り止んだ。
.     l    __   l    君は輝ける人生の、その一歩を、再び踏み出す時が来たんだ。
      > 、 _      ィ
     /      ̄   ヽ
     / |         iヽ
    |\|         |/|
    | ||/\/\/\/| |
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 03:07:20.73 ID:UDg/0UFWo

舞ってる
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/17(木) 09:56:04.65 ID:ARWwsffZo
乙。
藤林もいるのか。是非杏と淡、椋と照をあわせてみたいな。
いや、照の場合はことみか?
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/18(金) 20:05:05.01 ID:7zQRuTxBo

ことみも麻雀始めたら……どうなるんだろう
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/01/18(金) 22:22:39.92 ID:zGUuPZ/N0

ことみはデジタル打ちとか似合いそう
312 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesage]:2013/01/21(月) 08:00:20.39 ID:GKsKzXCe0
>>289
一瞬衣に見えた…
幼女ゆうかゲフンゲフン
313 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:15:39.32 ID:j+0lqh9Vo
一週間以内に出来ましたか……?(小声)

出来ませんでした……

じゃオイ書けよオラァ!

開始します
314 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 23:16:35.06 ID:9W35/MB0o
待ってた
315 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:17:12.12 ID:j+0lqh9Vo

あれよあれよと言う間に三時限目が終了した

と言っても授業など俺にとっては馬耳東風、寝るかぼけっとしてるだけで時間は過ぎてゆく

幸い今までの日課は国語、体育、社会……比較的『わかる』教科だ

……まさか麻雀が『体育』として授業で扱われるとは…たまげたなぁ

最初はえらく困惑していたモノだ

今はすっかり慣れた……いや、慣れてないな

はっきり言って麻雀が野球並に普及している今の世界は異常だ

朋也「……ふぅ」

などと、くだらない思考を頭の隅に追いやり、とりあえず今のコトを考える

さて、次の授業、4時限目の教科は……

数学

数学だ

しかもVC

朋也「…………よし」

サボろう

……異国語の授業など受けても意味もない

思い立ったら即行動

そそくさと教室の後ろ―生徒達の雑談でざわめいている―を横切り、扉に手を掛ける

……ちらりと見てみたが、あの馬鹿はぐーすかとよだれを垂らして寝ている。呑気なやつだ

朋也「……」

がらっ!

扉を気怠げに開き、廊下に歩み出る

……さて、昼休みまでのこの一時間、何処で時間を潰してくれようか

……。

よし

あそこに顔出してみよう

朋也「……」

……脳裏に文学少女の姿を描きつつ、俺はゆっくりと歩を進めた
316 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:18:59.14 ID:j+0lqh9Vo







がららっ

扉を、開く

最初に瞳に入ってきたのは、均等に並べられた幾つもの本棚

そしてその本達を読むための幾つもの椅子と机

……俺は図書室に歩を運んでいた

朋也「ん」

隅の方を見やると、やはりというかなんというか当然のようにそれは存在していた

朋也「……」

俺は二三逡巡した後それ――――彼女に近づき、声を掛ける

朋也「おい、ことみ」

「……」

何も言わず、ただじっと本を読んでいるその様はまさに置物

朋也「おい、ことみ、ことみっ」

「……」

彼女――――一ノ瀬ことみは動かない

朋也「ことみ、聞いてるのかー?」

黙々と、黙々と分厚い本のページがめくられてゆく

ことみ「……」

朋也「……」

本を読んでいる彼女は、テコでも動かない

何度呼びかけても、読書をやめることはない

だが

朋也「……ことみちゃん」

ある呼び方をすれば

ことみ「……あ」

朋也「よっ」

ことみ「朋也くんなの」

彼女は覚醒する
317 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:20:42.12 ID:j+0lqh9Vo

ことみ「なにかごよう?」

朋也「いや、なにも……あえて言えば、サボりだな」

ことみ「……」

朋也「……なんだその目は」

ことみ「ダメなの朋也くん。授業にはちゃんと出るべきなの」

朋也「って言われてもなぁ」

ことみ「……」

絹綿のように柔らかな、されど確かにその存在を感じる非難の目が俺にぶつかる

たまらず俺は言葉につまり――――そしてとった行動は

朋也「あっ、そうだ。おいことみ」

ことみ「?」

話題の転換であった

朋也「今度また、お前の家遊びに行っていいか?」

ことみ「!」

俺の唐突な提案に、彼女は驚いたが

ことみ「うん、もちろんなの!」

すぐその顔に喜色をたたえた

朋也「そっか」

……この世界に俺が持ち込んだ記憶は、なにも渚との記憶だけではない

俺とことみが幼馴染だった記憶も、ちゃんとこの心の中に存在しているのだ

あの日の、アップルパイ

あの日の、バイオリン

あの日の、花壇、陽光溢れる庭

あの日の、彼女の父の書斎の出来事

あの日の、ことみとの再会

あの日の、バス事故

……あの日の、荒れ果てた庭

あの日の、花壇……渚達と元に戻した花壇

あの日の、スーツケース

あの日の、手紙

あの日の、ぬいぐるみ
318 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:21:57.59 ID:j+0lqh9Vo

朋也「……」

もしかするとそれは、忘れ去って思い出すこともなかったかもしれない記憶

掴む事がなかったかもしれない記憶

ことみとの、大切な記憶

……ぎこちないけど俺達は、再び幼馴染の関係を取り戻す事ができたのだ

ことみ「……アップルパイ、作っておくの」

朋也「ん、ああ、そいつはいい」

美味いんだよな、お前のアップルパイ、と、俺

その言葉に彼女は嬉しそうに微笑んだ

そして俺たちはとりとめのない会話をして、過ぎ行く時間に身を任せた

……だが

不意に,その雑談が途切れる

その原因は――――


ぐぅぅ


――――と盛大に鳴った俺の腹の虫である

朋也「……あ」

時計に目をやると,そろそろ4時限目が終わる時刻。つまりお昼時

「「……」」

少しの間、気まずい空気が場を覆う

そして直ぐことみが何かを察したのか、小脇から長方体の物体を取り出して、言った

ことみ「食べる?」



朋也「……」

……彼女が手に持っているのは、なるほどまさしく弁当箱である

綺麗に盛り付けられた具の数々、なんとも旨そうだ

朋也「ありがたく貰うぞ――――と言いたい所だが」

ことみ「?」

つ、とまさに卵焼きを摘もうとした俺だが、その指をとどめる

疑問に思った彼女が、こくんと首をかしげた
319 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:23:40.21 ID:j+0lqh9Vo

朋也「ことみ」

ことみ「な、なに?」

朋也「お前、昼休み用事あるか?」

その問いに、ことみは小さく首を横に振る

朋也「よしっ、じゃあお前も一緒に食べようぜ、弁当!」

ことみ「???」

……こうして

昼休み、彼女達と摂る昼食のメンバーに

一人の文学少女が追加された――――







昼休み、中庭

生徒達の憩いの場とも言えるその場所に、その一角に、俺達五人は座っていた

俺、ことみ、大星、宮永――――そして弘世

その他ゾウリムシが一匹

……ちなみに座っている場所は

大星・俺・ゾウリムシ

ことみ・宮永・弘世

と言ったところだ

朋也「……」

菫「む、どうした岡崎。私の顔に何かついているか?」

弁当――おそらくお手製の――をつつきつつ、弘世

……何故弘世がこの場にいるか?

その答えは簡単至極

今もちょこちょことおかずを咀嚼している小動物、宮永照のお守り、だそうな

朋也「いや、別になんでもな――「ねね!トモヤトモヤ!」――あ?」

俺の呟きにかぶせるように、横合いから大声をぶつけられる

淡「どう?どう?」

朋也「どうって……何がだ?」
320 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:26:28.02 ID:j+0lqh9Vo

淡「もう、とぼけないでよっ!そのお弁当だよっ!」

ずびしっ!と指差してくる

朋也「それは置いといて、だ……弘世」

置いとかないでよっ!と言う金髪女子はスルーする

菫「なんだ」

朋也「周りの視線、如何にかしてくれないか」

先ほどからぬるりとした視線達が俺を舐めていた

いや、まぁ、校内どころか全国でも有名な超高校級雀士娘が座って昼食を食べているのだ、注目を受けないはずがない……が

周りの好奇の視線に混じって、明らかに異質な視線を感じる

朋也「……」

脇目でその視線の方向――と言っても全方位360度だが――を見ると、こちらを見つめる女生徒がいた

その他の視線も、その主は皆女生徒であった

……大星の話によれば、どうやら全員麻雀部部員とのこと

そして

ゾウリムシ――もとい、春原のデータベース(笑)情報では、『宮永照を守り隊』なる集団がこの学校で秘密裏に組織されているとか

おそらく彼女たちがそうなのだろう

……風子親衛隊といい、以外とバカが多いのか、この学校

菫「ああ……」

弘世が俺の意図を察したのか、ぎろり、と眼光を鋭くし、ぐるり、とあたりを見回す

するとどうであろうか

ぬるりとした視線、その全てが蜘蛛の子を散らすようにかき消えた

菫「まったく……あいつらも本当に心配性だ」

後輩達の、我らが先鋒宮永に対する過保護っぷりに弘世はため息をつく

……弘世も人のことが言えぬくらい宮永を溺愛している気がするが、言わないでおこう

宮永を見ているとその溺愛する訳もわからないでもないし

……どこかほっておけないのだ、宮永は

いつもぼーっとしていて、あどけない

そう、まるで『彼女達』のような――――――

朋也「……」

……何を考えているんだ、俺は

321 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:28:04.91 ID:j+0lqh9Vo

朋也「……ふむ」

暗い思考を払うように、俺は今日の来訪者、ことみの方を見る

ことみは隣に座る宮永となにやら雑談を交わしている

どうやらお気に入りの本や作家についての話みたいだ

……最初はどうなることかと思ったが、仲良くなってくれたよう

大人しめで本が好きと言う共通点を持つ彼女達だ、波長が合うところもあったのだろう

照「?」

俺の視線に宮永が気づく

照「岡崎……なに?」

朋也「いや、ずいぶん楽しそうに話してると思ってさ」

照「う」

彼女の頬が朱に染まる。照れているようだ

ことみ「照ちゃん、とってもご本が好きなの。私とおんなじなの」

とってもとってもうれしいの、と、ことみ

照「ことみちゃんも、たくさん本知ってる。すごい…………今度、お勧めの本、教えてくれる?」

ことみ「喜んでなの」

ことみ「照ちゃんも、私にご本、教えてくれる?」

照「うん、もちろん」

本当に嬉しそうに、彼女達は笑いあった

朋也「……ん?」

和んだ気分で、再び弁当に手をつけようとした俺だが、その箸を止める

……宮永が、じっと俺を見つめていたからだ

春原「どしたの?照ちゃん」

俺の言葉を代弁して、春原

照「……」

宮永照は喋らない

ただじっと、俺を見つめている

ことみ「朋也くん」

朋也「ん?」

ことみ「そのお弁当、淡ちゃんが作ったもの?」

朋也「ん、ああ、そうだが…」

ことみのその言葉を聞いて、クケェーーーッ!とアホ原が奇声をあげる

やかましい奴だ
322 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:29:31.96 ID:j+0lqh9Vo

ことみ「とってもとってもおいしそうなの」

朋也「あー……まぁ」

淡「でしょでしょ!」

確かに旨い。そう言おうとした俺の口を、大星のよく通る声が塞ぐ

淡「この辺が自信作っ!」

ぴっ、と俺の手に持つ弁当箱――の卵焼きを箸で指差す……指し箸はマナー悪いぞ、大星

ことみ「私も、この辺が自信作なの」

そういうとことみも自分の弁当を見せる

淡「ほわっ、本当だ!」

春原「ねね、僕一口もらってもいいかな?」

ことみ「え、えっと…」

私も私も!と催促する二人に促されて、おずおずとことみがおかずを差し出す

不安げにしていたことみだが、おかずを旨そうに頬張る二人をみてその口元をほころばせた

そしてきゃいきゃいと騒ぐ彼らを見て、もう少し静かにできんのかと弘世がため息をつく

ことみ「……朋也くんも、食べる?」

朋也「ん、ああ、ならありがたく……む」

すす、とことみの弁当箱に箸を伸ばし――――やはりその手を止める

朋也「あー……宮永」

照「な、なに?」

……あいかわらず宮永は、俺を――――俺が持つ淡の作った弁当をじっと見ていた

朋也「欲しいのか?」

宮永「えっ?」

朋也「いや、大星の弁当が」

チラチラ見てただろ、と、俺

宮永「……う、うん」

ぎこちなく、宮永

そして俺は大星の了解を得て、宮永に弁当を差し出す

卵焼きをつまみ、ゆっくりと咀嚼し――――

照「……!!!!!」

彼女は、驚愕した

ぴん!と宮永のチャームポイントの角?が天を刺す
323 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:31:10.05 ID:j+0lqh9Vo

照「……やっぱり、美味しい」

そして彼女は、ほぅ……とため息をついた

やっぱり、と言う事はやはり大星と食べさせ合いっこなどしていたのだろう

朋也「だろ?……ホント、なんでこいつがこれだけのモノ作れるんだか」

淡「む」

俺の呆れ声に大星が顔をしかめる

ことみ「淡ちゃん、私ももらって良い?」

淡「もちろんっ!」

しかめた顔をくるりと笑顔に変え、即答する大星

そしてことみも弁当に箸を伸ばし、おかずをつまみ、咀嚼する

ことみ「とってもとっても美味しいのっ」

淡「むふっ、でしょ〜?」

春原「ねね、淡ちゃん、僕も――――」

淡「は?(威圧)」

春原「……」

春原の瞳から粥のような涙がこぼれた

菫「男がそう泣くな……」

春原「ふぇぇ…」

菫「……」

はぁ、と、弘世

……本当に姉御肌だな、彼女は

右手を額にあて、やれやれと首を振っている

そして視線の先には、弁当を頬張る大星が

淡「〜♪」

なんとも美味しそうに食べるモノだ

俺が作ったものであるので、妙に恥ずかしくなる

淡「ん?」

朋也「む」

しまった、視線に気づかれた

淡「心配しなくても朋也の弁当も美味しいよっ」

にへり、と、破顔する大星
324 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:33:24.24 ID:j+0lqh9Vo

照「…………」

純真無垢な彼女に俺は照れ、慌てて宮永の方に視線をずらすと、何やら彼女は顔を伏せ、ぼそぼそと呟いていた

そ、と耳を澄ます

聞こえてきた言葉は……

照「早起き、しなくちゃ…」

朋也「……早起き?」

照「!」

朋也「なんだ、宮永、朝弱いのか」

……うむ、朝布団にくるまりなかなか出ようとしない宮永。ありありと想像できる

照「え、えっと、その――――うん」

朋也「ま、誰でも布団は恋しいもんさ。そう恥ずかしがるもんじゃない」

仕事が休みの日はついつい汐と揃って昼近くまで寝てて――――いや、汐は早起きだったな。うん

ぼふぼふと布団越しにのしかかる小さな重みが懐かしい

照「……」

顔を伏せ、恥ずかしかったのかまた黙々と弁当を食べ始める宮永

そして

淡「あっ、そうだ。ねぇことみちゃん!」

また大星が唐突に何かを言い出した

ことみ「?」

淡「ことみちゃん、麻雀打てる?」

ことみ「麻雀?」

淡「うん、麻雀」

ことみ「えと……一応」

淡「ホント!?なら――――」

朋也「今日打とうよ、とお前は言う」

淡「今日打とうよ!…………ハッ!」

朋也「……わかりやすいんだよ、お前」

淡「むむー…」

菫「なんだ、またよからぬ事を考えてるのか,お前は」
325 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/01/25(金) 23:33:53.06 ID:j+0lqh9Vo

淡「よからぬことじゃないよ!」

ねね、打とうよ、麻雀!と大星がことみに詰め寄る

ぐいぐいと迫る大星にことみはビビっていた

ことみ「え、えと、その……」

しどろもどろになることみ

だが、それもつかの間

淡「それじゃ、放課後ねっ!」

ことみ「わ、わかったのっ」

数十秒後には、ことみと大星の間で麻雀勝負の約束が交わされていた

朋也「……」

ことみが麻雀、か

一体どんな勝負をするのだろう

嬉しそうにことみと会話する大星を見ながら、俺はそんなことを思うのであった

昼休みが、過ぎてゆく
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 23:36:25.73 ID:j+0lqh9Vo
おしまい

多人数の会話ムズ杉内。三人がやっとや……

あと最近モバマス始めました、そのうち汐エンド後悲しみを背負う朋也Pとか書きたいです。なお時間が無い模様

では諸君、サラダバー!
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 23:42:20.16 ID:9W35/MB0o

それも楽しみだが今はこっちが見たい
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/26(土) 04:34:48.10 ID:cUPcW3JFo
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/26(土) 09:39:59.01 ID:bpmPSboDO
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/27(日) 23:08:12.75 ID:ZGY/+1Jwo
このスレまた読み返してみて思ったんだけど
やっぱりCLANNADって人生だわ
サンキューイッチ
フォーエバーだーまえ
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/28(月) 00:02:18.32 ID:k8p3nimfo
いいね
いつも更新が楽しみでしかたない
ねこ
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/03(日) 07:20:23.04 ID:XwPDMC2AO
データベースさん……
333 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:20:49.16 ID:Doh66O9ro
久しぶりです。開始します
334 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:21:41.59 ID:Doh66O9ro
昼休みが終わり、午後の授業もつつがなく終了した

……まぁ俺の場合は寝るかぼけっとしていただけで時間はあっという間に過ぎて行ったのだが

朋也「……」

そして今

俺の目の前には大層立派観音開きの扉が立ち塞がっている

上を見上げると、そこには「麻雀部」と書かれたプレートが

朋也「……なんで俺まで」

何を隠そう俺は麻雀部へと足を運んでいたのだ

宮永にそのうち来るとは言った気がするが、いくらなんでも翌日は早過ぎる

それもこれも、俺が彼女のお守をすることになったのが原因だ

天才少女、一ノ瀬ことみのお守を

ことみ「……」

恐る恐る眼前の扉を見つめることみ

……昼休み、麻雀に誘われた彼女が、人見知りの彼女が付き添いとして俺を頼るのはぶっちゃけ予想可能なことだった

春原「なにしてんの?さっさと入ろうよ」

そうこうしているうちに春原――暇を持て余して勝手について来た――がことみを急かす
335 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:23:01.73 ID:Doh66O9ro

ことみ「……!」

その言葉に彼女は小さく肩を震わせ――――

こん、こん、こん、こん



小さく四回、ノックをした

直ぐに扉の向こうから凛とした声が返ってくる

弘世の声だ

そしてその言葉に従い、俺達は部室内に足を踏み入れた







部室にはすでに部員達――チーム虎姫、一軍全員が揃っていた

宮永大星亦野渋谷の四人が卓を囲み、その横に弘世が立ってこちらを見ている

……卓に座る四人は俺たちの入室に一瞥もせず、ただただ牌を打ち合っていた

凄い集中力だ


照「……ツモ」


数分ののち、宮永の透き通るような声と共に半荘戦が終了する

結果は宮永のトップ。次いで大星、渋谷、亦野の順

照「……いらっしゃい」

ぺこり

と、宮永がこちらに向き直り可愛らしく頭を下げ、大星がやほーと手を降ってくる

朋也「悪いな、待たせて」

春原「どもっ」

ことみ「き、今日は呼んでくれて有難う御座いますなのっ」

人見知りのことみ、精一杯の挨拶

亦野「えっと、貴方があの……」

渋谷「一ノ瀬ことみさん」

ガタリと立ち上がり、亦野と渋谷

朋也「……ほらっ、ことみっ」
336 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:24:03.94 ID:Doh66O9ro

ことみ「え、えとっ」

ことみ「はじめまして、3年B組の一ノ瀬ことみです。趣味は読書です。もしよろしければ友達になってくれると嬉しいです」

そう言って彼女はお辞儀をする

パーフェクトだ、ことみ


「「……」」


二年の二人はぽかーんと口を開けている

まぁ驚くのも無理はない

なにせあの校内一の天才少女にこんなことを言われたのだから

亦野「あ…えっと……2年の亦野誠子です!」

渋谷「同じく2年の渋谷尭深」

が、それも束の間直ぐに2人はことみに返答して、一言三言言葉を交わす

頭いいんですねだとか本好きなんですねとかそんな話だ

ことみは慌てながらもしっかりと彼女達の問いかけに答えていた

菫「あー……おほん」

と、そこに弘世が咳払いをする

菫「一ノ瀬さん」

ことみ「は、はいなのっ」

菫「改めてようこそ、白糸台高校麻雀部へ」

ことみに手を差し出す弘世は、一枚絵になりそうなぐらいキマっていた

校内に彼女のファンクラブが存在しているのも頷ける話だ
337 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:25:29.77 ID:Doh66O9ro

淡「うぇるかむっ!」

にぱっと笑顔を振り撒く大星


そんな彼女が次に発したセリフは


淡「――――なーんて挨拶はおいといて!」

淡「打とう!麻雀!」

紛れもない宣戦布告であった





大星の要望により、最初の挨拶だのなんだのをそこそこにして半荘戦が始まった

卓を囲んでいるのは大星、亦野、弘世、そしてことみ

俺はことみの背後に立ち、その打ち筋を見ることにした

起家は期待の新星大星淡

自信満々勇往邁進と言わんばかりにその瞳はきらきらと光っている

淡「さーて、私が起家だねぇ」

菫「早く打て、時の刻みはお前だけのモノじゃないんだ」

淡「ええわかっていますともっ♪」

ふふふっ、と軽く笑い――――俺の方を見つめ、右目でウインク

私の活躍!よーく見ててね!

碧色の瞳は語っていた


そして


大星の第一打――――――

たんっ!

朋也「げ」

春原「うへっ」

照「む」

大星が打ったのは、ピンズの@。イーピン

麻雀牌を横にして打ち、ちゃらり、と点棒――リー棒を卓上に出した
338 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:27:06.08 ID:Doh66O9ro

そう

横に、である

それ即ち、リーチ宣言

つまるところ――――――

淡「リーチっ!」

ダブル立直……!

春原「……たまげたなぁ」

朋也「ああ、中身はあんなのでも一軍なだけはある」

この生意気一年、最初っから飛ばしている

そして大星の開幕早々ブーストダッシュにことみ達他の三人も驚いていた

ことみ「!」

亦野「」

菫「……おい、まさかお前――――」

淡「ノンノン♪偶然だよ、偶然」

ちっちっちっと指を降る大星

朋也「……」

……偶然?

当たり前だ、ダブリーなど故意にやられてはたまったもんじゃない

……。

……いや、まさか

この少女は、それこそ故意に出来るかもしれな――――

……。

……な、訳ないよな

大星「それより」

菫「む」

大星「早く打ってよ?時の刻みはスミレだけのモノじゃないよ?」

ふふんと含み笑いをしながら先程の弘世と同じ台詞を吐く大星一年

どやぁ!と何処からか効果音が聞こえてきそうだ
339 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:28:38.56 ID:Doh66O9ro

菫「……こいつか?」

たんっ

ほんの少しの逡巡ののち,弘世が第一打を打つ

続けて亦野がツモり、牌を打つ――――――こともなく

大星「残念!そいつだっ!」

大星のロンが弘世を射抜いた

ダブリー一発である

菫「ぐ……!」

大星「まだまだだねっ!」

どややややっ!

朋也「……調子乗ってるなぁ」

照「それだけ実力があるからしょうがない」

自信があるのは結構なことだけれど慢心はよくない、と宮永は嘆く

ことみ「淡ちゃん凄いのっ」

亦野「私も負けてられないな……」

とはいえこれで親の大星の連荘、東一局一本場

この勢いのまま突っ切ることが出来るのか?

一位を独走することが出来るのか?

淡「出来る。出来るのだっ!」

……大星の妄言が俺の思考に入り込んできたところで、賽は振られた

雀卓がゴトゴトと音を立てる――――こともなく無音で洗牌し、山が積まれる

淡「んむっ」

たんっ!

配牌も終わり、大星の第一打――――は普通のオタ風切りであった

リーチは無し

春原「ちぇっ。ダブリーじゃないのかよ」

朋也「あのなぁ、そうそうダブリーがあってたまるか」

尭深「……」

照「……」

朋也「ん?」

渋谷と宮永が何か言いたげな様子でこちらを見ている

……言いたいことがあるならはっきり言えばいいものを
340 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:30:32.07 ID:Doh66O9ro

……。

……と、まあ

なんやかんやで5巡が経過した

今のところ彼女たちの捨て牌に異常は見られない

皆順調に手を進めている

朋也「進めてはいるんだが――――」

俺は、明らかな異常を感じていた

それは何か?

何処に潜む異常か?

捨て牌?

NON。先程も言ったように河は全くもって普通だ

大星一年?

NON。彼女は元から異常だ

春原?

NON。こいつは生まれ墜ちたこと事態が異常だ

では、何が異常か?

……答えは一つ

今もこうして、俺の目の前に座り、卓に着いている一人の少女

一人の天才少女

御存知、一ノ瀬ことみだ


ことみ「……」


たんっ


小気味いい音を立ててことみが牌を打つ

その行為自体は普通だ

何の変哲もない、普通の打牌だ
341 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:32:10.82 ID:Doh66O9ro

力任せに叩きつけたり、火炎を纏ったり、指で弾かれたわけでもない、ごくごく普通の打牌だ

ただ――――

彼女がツモって

打牌をする

……その間隔が殆どゼロに近い

ツモって、手牌に入れて

次の瞬間にはもう牌を打っている

つまりことみは――――ノータイムで捨て牌選択を行っている

……これは明らかな異常だ

普通、打牌の時は相手の手牌進行予想やそれによる危険牌、安全牌の取捨選択、テンパイにたどり着くための最短経路の選択など実に多くの思考を行う

つまり、一定の思考の後に牌を打つものなのだ

……どこかのアホのようにろくずっぽ牌効率を考えなければ話は別だが

だがそんな金髪野郎とは違い、ことみの捨て牌選択は完璧であった

……これが意味することは一つ

ことみはその脳内で瞬時に演算を行い、最適な捨て牌選択を行っている……!

……。

……まぁ、長々と考えてみたところで

彼女の頭の良さを知っていればその打ち筋を想像することは難しくないのだ

校内どころか全国でもトップクラスの超天才、一ノ瀬ことみ

彼女にとって複雑な捨て牌選択など朝飯前、むしろ得意中の得意といえよう

たんっ!

たんっ!

たんっ!

着々と牌が捨てられ――――そして二巡後

ことみ「リーチなのっ」

彼女の小さな口から、言葉が紡がれた
342 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/11(月) 02:33:07.27 ID:Doh66O9ro

春原「おおっ!」

牽制のリーチ

多面待ちの、和了り易い手だ

淡「む」

亦野「くっ……!」

菫「……」

皆一様に安パイを切っている

おそらく降りたのだろう

ことみ「……ツモなの」

そして二巡後、ことみは無事和了した

これで、大星の親が蹴られたことになる

朋也「やるな、ことみ」

ことみ「そ、それほどでもなの」

照「……徹底的な効率打法。私には真似できない。凄い」

朋也「……お前の連続和了も真似できないけどな」

ほぅ、と感心している宮永に突っ込む

淡「ぐぬぬ……」

渋谷「……淡ちゃん、これでも飲んで落ち着いて」

顔をしかめさせる大星の横に、渋谷がコトリとティーカップを置いた

どうやら全員分用意してくれていたよう。他の三人に、俺たちに透き通った紅色の紅茶を渡してゆく

気が利いた奴だ

菫「……次、始めるぞ」

ティーカップを置いた弘世の言葉、それを合図にまた賽が振られた

半荘戦。東二局の開始である
343 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/02/11(月) 02:35:01.26 ID:Doh66O9ro
終了
中途半端ですが、今回はここまで。闘牌描写(?)むず杉内

阿知賀編来月で最終回らしいですね、淋しいです

それでは

344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/11(月) 02:39:15.59 ID:l6sUE16X0
お疲れです。
阿知賀編はside storyみたいなところあるからねー 実際決勝は清澄の方で描写すれば事足りる
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/11(月) 03:34:07.26 ID:Dfb5w2CAO
乙です
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/11(月) 06:47:04.89 ID:VdWfGgJDO
乙〜
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/11(月) 09:36:22.71 ID:ee/idDG9o

あわあわ可愛い
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/11(月) 11:08:45.65 ID:O9pJFbYN0
乙です
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/12(火) 15:36:00.74 ID:RIenG9lJo
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/12(火) 19:48:03.75 ID:GK9AdRPAO
あんぱん!
うまし!
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/12(火) 19:54:26.47 ID:8jVNf0AXo
旨し!
あんぱん旨し!
352 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:13:28.60 ID:tcS61Sl1o
短いですが始めます
闘牌描写クッソ適当なんで変なとこあったら教えてください
353 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:15:15.94 ID:tcS61Sl1o
ことみ、大星、弘世、亦野の四人で囲んだ半荘戦。その東二局が開始した

前局の東一局一本場はことみの見事な超効率デジタル麻雀で大星の連荘を食い止め、この局も俺はことみの打牌に目が離せぬ所だ

それを知ってか知らずか、ことみの打牌は実に自信あふれる見事な物

彼女としてはこのまま流れに乗り和了を重ねていきたい場面である

――――――が、そうはさせてくれないのが白糸台高校麻雀部


菫「……ロン」

ことみ「!!」


ことみの捨てた牌に、弘世のロンが突き刺さる

倒された弘世の手と彼女の捨て牌を確認――――感じる違和感

六巡目に捨てた弘世の牌

牌効率を考えるならばあり得ない一手だ――――がその二巡後、つまり今

弘世は見事にことみから和了った

そう

ことみの抱えた余剰牌を狙った、針の穴を通すかのような単騎待ち――――

これぞまさに弘世菫の伝家の宝刀

朋也「シャープシュート……!」

菫「満貫だ」

ことみ「……はい」

ちゃらりと点棒が支払われ、次局が始まる

――――親の弘世の、一本場だ

……。

朋也「……ことみの捨牌選択も見事だったが」

春原「やっぱり弘世のアレも凄いよね」

朋也「ああ、そうそうできるもんじゃない……自分の腕によっぽど自信がなくちゃな」

春原「……この勝負、わからなくなってきたね」

朋也「麻雀だからな、何が起きるかわからないのは当然だ――――――が」

朋也「――――このまま二人がただ黙っているとは思えないな」
354 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:17:05.93 ID:tcS61Sl1o

……事実、次局

その二人のうちの一人が

白糸台のフィッシャーの異名を持つ彼女が

亦野誠子が

――――素晴らしい一本釣りを見せたっ!

亦野「ポンッ!」

亦野「ポンッ!

亦野「チーッ!」

亦野「……ポォォォォォンッ!」

亦野「……!」

亦野「……ツモッ!」

朋也「!!」

ホンイツ役牌白発……!!

しかもこの局のドラ表示牌は白……ドラは発

つまり……ドラ3……!

文句の無い!文句の無い一本釣りだ!

この勝負、いよいよ解らなくなってきた……!

朋也「彼女、確かに少し守りが薄い所があるが……」

照「それを補うかのような攻めの姿勢、それが彼女のスタイル」

春原「へっ、わかりやすくていいや」

チーム虎姫、攻撃特化のその名はやはり伊達じゃない

……伊達じゃない……が

我らが文学少女とて負けてはいない

朋也「……」

次局。東三局

親は先程ツモった亦野誠子

……くるりと卓を回って四人の手牌を見て回るが、どうやらやはり一番早そうなのはことみだ

おそらくスピード勝負でいえば彼女は四人の中でトップ……であろう
355 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:18:44.62 ID:tcS61Sl1o

俺が首を傾げるような捨て牌選択も、ことみはまったくのノータイム打ち

隣に立つ宮永ですら思わずため息をこぼしていたのだから、凄いものだ

――――そして、その十巡目


朋也「ん?」

ことみ「……」


淀みなく進んでいたことみの打牌が、ふと、途切れた

驚くことに彼女は――――捨て牌選択に逡巡している

数局見てきて、初めてのことみの長考だ

ことみの手は順子手。タンピンの形だ

……三色との選択を迷っているのか?

ぱっと俺から見て、捨て牌の選択は二つ

三色手を選ぶか、見限って直進するか、だ

朋也「うーん?」

しかしこれは……俺でもわかる

わざわざ三色を選ぶよりそのまま直進した方が牌の受け入れが広い――――つまり牌効率が良い

簡単な捨て牌選択で、何故ことみは詰まっている?

弘世の狙い撃ちでも警戒しているのか……?

朋也「……」

そんな、俺の疑惑とは裏腹に

ことみ「……リーチなの」

……三巡後、見事にことみは三色確定リーチを繰り出す

「「「!!」」」

三人、皆一様にオリを選択

結局その数巡後、ことみは難なくツモ和了した

したのだが……

朋也「……気になるな」

今の三色和了

ことみのこれまでのスタイルとは違う、半ば無理矢理地味たものだった
356 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:19:34.87 ID:tcS61Sl1o

……。

朋也「む」

そうこう考えているうちに洗牌が終わり、山が積まれ、配牌が始まる

東場の最後の親は、話中のことみだ

相手は最強を誇る白糸台。仮に5万点上回っていようとも油断はできない。出来るはずがない

この局、ことみの腕が試されるぞ……!

朋也「……」

たんっ

たんっ

たんっ

たんっ

静寂の部室に、ただただ牌を打つ音が響く

相変わらずことみの打牌は恐ろしく早いのだが――――――

今はそれよりも、俺の注意を引くものがひとつ

……ことみの背に立つ俺にも、ひしひしと伝わってくる気配

自身を射殺さんとする、突き刺すような殺気

……ことみの対面に座る、弘世から放たれた殺気

朋也「……ぅ」

間違いなく、狙っている

矢を引き絞り、狙いを定め、弘世菫は今まさに、ことみを狙っている


朋也「……やろうと思って、出来る事じゃないけどな」


相手の余剰牌の狙い撃ちなど、正確なヨミを行わなければ出来ない

……。

……そういう意味では、ことみの手牌は実にヨミ易い気がする

和了までの最短経路を突っ走るのだ

必然、捨て牌にもそれが出てくる
357 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:21:38.26 ID:tcS61Sl1o

朋也「……ナムアミだな、ほんと」

おそらく数巡と経たぬうちに――――――そら、打ってくださいと言わんばかりに不要牌が湧いた

テンパイまであとわずかのイーシャンテン

だが、駄目だ

それより先に、ことみは振り込んじま――――

ことみ「……」

たんっ!

朋也「う゛っ!?」

菫「!」

……回避した

100人が100人不要牌を切るであろう局面

誰だってそーする、俺だってそーするであろう場面

それを、彼女は、ことみは

見事に回避した……!

菫「……リーチ」

二巡後、射抜けぬと判断した弘世がリーチ

捨て牌を見る限り普通のタンピン系だが……狙い撃ちの為に牌を絞り込んでいたのだ

和了牌は少ないであろう、おそらく

……そして

リーチは、天才を凡夫に変える……!


たんっ

たんっ

たんっ

たんっ


ことみ「……ロンなの」

菫「……!!」

ことみのダマテンに、弘世の捨て牌が突き刺さった
358 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:22:10.34 ID:tcS61Sl1o

朋也「……僅かに」

僅かにこの局……ことみが一枚上手だった……!

これで東四局一本場はことみの連荘……!

この文学少女……

強い……!


……。


……。


だが

俺は、忘れていた

そいつの存在を

彼女の存在を

ふつふつと忍んでいた、奴の存在を

大星淡の存在を――――――!



次局。




宇宙が、誕生した。





.
359 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/02/19(火) 23:25:41.84 ID:tcS61Sl1o
終了。
つ、ついつい他作品の台詞を盛り込ませるのが私の悪い癖……?

淡ちゃんの能力流石ですね。でもなんだろう、咲さんに抹殺される未来しか見えない
まぁ可愛いからいいんですけどね!

時間ある時即興でバレンタイン短編書きたいです
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [ [sage]:2013/02/19(火) 23:40:06.73 ID:ysgCmRID0
お疲れです。まぁ咲は主人公だから
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 00:52:55.81 ID:cqStt9PV0
362 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/20(水) 00:58:18.42 ID:/TU3nY0bo
ダブリーしてカンして裏4つ乗せる能力とかw
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/21(木) 16:55:46.94 ID:pa9z1B4W0
てるてるがイマイチ目立たないな

ことみとあわあわにいいとこ持ってかれ照
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/21(木) 17:59:06.60 ID:yAjIutsAO
365 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/11(月) 00:06:13.74 ID:JbkbTWUDP
あわあわ
てるてる
366 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/03/12(火) 13:52:13.24 ID:ke9o/641o
開始。
本当久しぶりです、すみません。御無礼

祝!咲阿知賀編完結ッ!

この話は原作に沿うかちょっと弄るか考えるところです。なおそこまで到達するまで途方もない時間がかかる模様

367 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/12(火) 13:53:52.81 ID:ke9o/641o

考えてみれば、超目立ちたがりやの彼女の存在を忘れていた事はおかしな話だった

天上天下唯我独尊を地で行く彼女の、大星淡の存在を忘れていたのはおかしな話だった


東四局、一本場


山が築かれ、賽が振られ、配牌が始まる――――――その瞬間

新しい宇宙(そら)が生まれた――――!


「「「!!」」」


三人の顔が、俺の顔が驚愕に染まる

朋也「……」

……ああ

……錯覚だと、信じたい

……大星の背後から、ぐらぐらと黒ずむ何かが広がってゆく

きらきらと小さな光が瞬いている――――――これは

朋也「宇宙……?」

ことみ「朋也くん?」

朋也「え、あ、ああ」

ことみに声を掛けられ、はっとする

瞬間、大星の背の『宇宙』が掻き消えた

やはり目の錯覚だったのだろうか……

朋也「……」

気を取り直し、俺はちらりとラス親を務めることみの配牌を見る

朋也「ぐっ……!?」

親のことみの配牌は……

バラバラ……!

欠片も和了が見えない……クズ手……!

ラス親でこれは少々キツすぎる

鳴いて速攻といきたいところだが……それすらも遠い

遠い……が

彼女は、誰よりも

誰よりも疾く……和了へと翔ける……!
368 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/12(火) 13:54:40.79 ID:ke9o/641o

そして、十数巡後

ことみは……持ってきたっ!

和了の、形を……!


ことみ「リーチなの」

菫「!」

亦野「!」

卓上に、リー棒が出される

あの手

あのクズ手からことみは最短経路を突っ走り、見事ノーミスでテンパイに辿り着いた

天才的な計算能力がなければ不可能な技巧である

淡「……へぇ」

下家の大星が感嘆の声を上げる

きらきらと輝く瞳が、やけに眩しい

淡「ことみちゃん、やるじゃんっ」

そう言った彼女は――――笑っていた

楽しそうに、本当に、楽しそうに


淡「――――――でも」


笑っている

大星淡は、笑っている


淡「一歩、遅かったね」


ことみ「……え?」

淡「それ、ロンだよ」

大星のダマテンが、ことみに直撃した

文句無しのマンガン手であった

淡「さて」

淡「私の親で、南入だねっ♪」

さんさんと輝く笑顔を見せて、大星はたからかに宣言した

……。

……笑うという行為は、本来攻撃的なモノであり

獣が牙をむく行為が原点である
369 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/12(火) 13:55:45.07 ID:ke9o/641o

朋也「……ははっ」

朋也「どうなっちまうんだ、この試合」

……荒れ狂う、半荘戦

その南場が始まった――――





淡「ふんふんふふーん♪」

陽気な鼻歌が、大星によって奏でられる

半荘戦の南場

俺はことみの背に立ち、下家の大星を眺めていた

ゴトゴトと山が積まれ、賽が振られ、配牌が終わる

眼前にゆたりと座る、ことみの配牌は――――

朋也「……むぐっ」

――――前局と同じ、クズ手だ

上家の弘世、対面の亦野の顔色から察するに、あちらも相当に手が悪いらしい

鈍重な何かが、卓を包んでいた

そして

南一局、その一打目が打たれる

大星淡のか細い指先によって……!

大星「〜♪〜♪〜♪」

朋也「……え?」

たんっ!

と、叩きつけられた大星の捨て牌は

「「「!!」」」

横方向を、向いていた

淡「リーチっ♪」

まごうことなきダブル立直である

菫「っ、お、大星……お前っ……!」

亦野「『使った』のか!」

弘世が、亦野が、声を荒げる
370 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/12(火) 13:56:18.63 ID:ke9o/641o
ことみ「????」

そしてことみは、首を傾げている

無理もない

半荘戦でダブル立直を二回拝むことになるなど……滅多にないことだ

……。

……ん?

朋也「……いや、待て」

今、彼女は、何と言った?

亦野は、何と言った?

俺の耳が正しいのなら――――確かに

『使ったのか?』

……そう、聞こえた

朋也「……まさか」

亦野のその言葉と、この数日で目にした卓上の光景から俺は一つの仮説を導き出した

ソレは即ち

今まさに、立直を宣言した大星淡の

彼女の持つ

『能力』の、仮説である

……。

……麻雀とは、運が大きく左右する確率のゲームである

牌をツモり、切り、和了へと向かってゆく確率のゲームである

麻雀での『強さ』とは即ち、相手の牌を見通す観察眼や、テンパイ、和了へといかに短時間で辿り着けるかということである

しかし

だがしかし

俺が今立っているこの世界では、その『強さ』を格付けするもう一つのモノとして――――『能力』が確かに存在する

麻雀という確率の遊戯では到底起こり得ない、まったく『あり得ぬ』現象を、人は能力と呼ぶのだ

宮永の連続和了、弘世の余剰牌の狙い撃ち――シャープシュートは、彼女達が歩んだ道のその先に到達した、技術の究極点とも言えよう――――が

渋谷尭深のそれはどうであろう

信じ難い話だが……渋谷は戦いの最後を締めるオーラスにおいて、今迄の局で打ってきた第一打の牌がそのままそっくり配牌として戻ってくる
371 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/12(火) 13:59:41.11 ID:ke9o/641o

――――――見よ、彼女の配牌を!

永きの時を耐え、実った、爛々たる果実を!

その圧倒的な姿を!

……。

多くの雀士が望み、和了ろうと悶え苦しむ――――『役満』という一つの結果は、渋谷尭深にとって実に容易いモノである

嗚呼、彼女の《約束された配牌》を能力と呼ばずして何と呼ぼう

あれぞまさしく彼女のための時間、苦渋を耐え忍んだ彼女のための時間

そう、まさに――――――《収穫の瞬間―ハーベストタイム―》!!!!!!

……。

……オカルトと呼べる『能力』が存在するのならば、そのオカルトを見破る『オカルト』も存在するというのは難しい話ではない

宮永の《照魔鏡》なる『能力』がそうと言えるが――――その話はまた次の機会に取っておくとしよう

……問題は、大星淡だ

今、こうして、満足げにドヤ顔を披露している大星淡だ

……大星が放ったダブルリーチに、確かに亦野は言った

『使ったのか』、と

使うとは、何を使うというのか?

何を使ったというのか?

答えは簡単――――即ち、『能力』だ

大星は、自らが持つ『能力』を使ったのだ

おそらくその能力とは――――『ダブルリーチ』

そして、これはあくまで推測だが――――

……卓を覆う鈍重な"けはい"

その"けはい"に呼応するようにして、否、押さえつけられるようにして配られた、目を覆いたくなるようなことみの、三人の配牌

歪んだ"けはい"とは無関係と言わんばかりに炸裂する大星のリーチ、局の初めに大星から噴出した黒ずんだ空間(錯覚と信じたいが)……から、見て

大星は、ダブルリーチの他にもう一つの『能力』を持っている

そう、『相手の配牌を極端に悪くする』能力である

自らは電光石火と言わんばかりにダブルリーチをぶっ放し

相手は重苦しい配牌の中、守りに徹するのみ

……白糸台の大将に相応しい、唯我独尊たる『能力』だ

本人は大層楽しそうに笑顔を振りまいてはいるが、相手としては溜まったものではない

きっと大星を相手にする者にとって、彼女の笑顔は大鎌を持つ死神のそれと同じに見えることであろう

朋也「……えげつねぇな、まったく」

……大星は二巡後、さんさんと輝く太陽のような笑顔を顔にたたえ和了した

ダブルリーチのみの、ツモ和了である

……そして

これから

天から地に降り注ぐ流星群が、卓上に煌めくことになる
372 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/03/12(火) 14:00:24.12 ID:ke9o/641o






大星淡はただの一年生ではない








もっとおぞましい何かだ







.
373 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/12(火) 14:02:53.24 ID:ke9o/641o
終了。
岡崎君の地の文がたまにテンション高くなる気がしますが、多分気のせいです
374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/12(火) 15:53:48.88 ID:FkFAAI0Oo
乙。
朋也年齢を考えろ、お前精神年齢はおっさんだろうがww
375 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/12(火) 17:29:39.16 ID:BloXXARvo
おっさんだってな……たまには中学二年生になりたい時だってあるんだ!!
376 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/12(火) 18:08:15.05 ID:q+orH7VzP
朋也の尊敬してる「大人の男」は二人とも永遠の中学二年生だからな…
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/12(火) 21:05:32.97 ID:w2UmXK86o
>>376
おっさんは中二じゃない気もする
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/13(水) 09:39:20.07 ID:EyanW6w+0
一応朋也は元とはいえ子持ちだよな
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/13(水) 16:14:11.34 ID:QyImoETho
>>377
あの人は永遠の小学生だからな
380 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/23(土) 06:21:41.53 ID:UfOyVyPso
舞ってる
381 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:11:09.03 ID:PsGyjRpMo
開始します

今回話の都合上オリジナルプロ雀士?を出しますが、本編にはあまり関係ありません。ネタを入れないと死ぬ病です
382 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:12:24.47 ID:PsGyjRpMo

……長い、長い、半荘戦が終局した

結果は金髪おちゃらけ少女、大星の一人浮き

次いでことみ、弘世、亦野の順

ことみの超デジタル麻雀、弘世のシャープシュート、亦野のフィッシング闘牌でそれぞれ大星に奮戦したものの、彼女のダブリー配牌5シャンテン地獄には一歩及ばなかった

当の本人、大星は愉快そうにケラケラと笑い、勝利の美酒に酔っている

いや、はたして

これが勝利と呼べるのであろうか?

……。

照「……岡崎?」

顔をしかめていた俺に、宮永が声を掛ける

朋也「ん、ああ、あー……なんというか、凄いな、大星は」

とりあえず、率直な感想をつぶやく……卓上では二試合目――弘世と入れ代わりに渋谷が卓についた――が始まっていた

先程の局はずっとことみの後ろに立っていたので、一呼吸つくために部室の隅のソファーに座る

柔らかい弾力が心地よい

照「……淡は、強いよ」

ぽふり、と隣に座った宮永が、配牌を行っている大星を見つめつつぽそりとこぼした

朋也「見りゃわかるさ」

朋也「あの三連続ダブリー、えげつなさ過ぎる」

あれが大星の能力なのか、と俺

その問いに宮永は小さく頷く
383 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:13:54.71 ID:PsGyjRpMo

朋也「……」

……これは、その後ことみに聞いた話だが

ダブルリーチの出現確立は0.14%

それが三回連続で起こった……つまるところ、三連続ダブルリーチ

その確率は0.14の3乗……0.14×0.14×0.14で……およそ、10億分の3

この確率は……

隕石の直撃で自らが死亡する確率と大差ない……!

天文学的数字っ……!!

そんな、そんなあり得ぬ出来事っ……『能力』と呼ぶより他ないっ……!

強力な、あまりにも強力な、化け物じみた能力っ……!

けれど……

朋也「なんというか、大星のあの能力……」

菫「危なっかしい」

朋也「え?」

菫「危なっかしい……そうだろ?」

俺が言おうとしたことは、そのまま弘世に言われた

こちらに歩み寄っていた彼女は、そのまま俺の横に座り、ソファーに背を預ける

朋也「……ああ、危なっかしいんだ、あいつは」

危ういというか、なんというか……

……。

……宮永の持つ照魔鏡は、相手の能力を見破る能力だ

亦野の持つ能力は、三フーロの後和了牌をツモる能力だ

渋谷の持つ能力は、オーラスで役満を和了するための能力だ

大星の持つ能力は、ダブリーをぶちかまし、相手の配牌を曇らせる能力だ



……この世界には、ありとあらゆる能力が、異能が、確かに存在している



.
384 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:15:18.65 ID:PsGyjRpMo


ならば……


《能力を封じる能力》があっても……なんら可笑しくはない……!


むしろ……当然のことっ……!

強靭な槍があればっ……!

それを防ぐ堅牢な盾もあるっ……!

あるに決まっているっ……!

想像に難しくないことっ……!

……。

……もし

もし、だ

大星が、幾千を貫く槍を持つ、大星が……

己の振るう槍を防ぐ、どころか跳ね返すような盾を持つ、そんな打ち手と出会ったら……

彼女は、どうなる?

朋也「……なぁ」

照「?」

菫「なんだ」

朋也「宮永は、《能力を見破る能力》を持ってるって言ってたけどさ……」

朋也「《能力を封じ込める能力》を持ってる奴って、いるのか?」

照「……」

菫「そりゃ、な、もちろんいるさ」

朋也「やっぱり?」

菫「ああ」

といっても、私の知る限りでは数人しか知らんが、と、弘世

朋也「そいつと大星が打ち合って、大星の能力が消されたら……」

菫「相当ショックだろうな、奴にとっては」

朋也「だよなぁ」

あの自暴自棄自己中心的(思春期)自己依存症の少女だ

かーなーりひどいことになるだろう
385 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:17:16.50 ID:PsGyjRpMo

照「だから、近いうちにどうにかしなくちゃ」

全国の舞台にはそんな打ち手がいても可笑しくないんだし、と、宮永

……確かに群雄割拠の全国大会だ、ありうる話ではある

菫「ああ、そうだ」

朋也「?」

ふんふむとなにやら思案している宮永の横で、弘世が何かを思い出したような声を上げた

そしてツカツカと部室の隅――――本棚の方へと移動し、一冊の雑誌を持って返ってくる

朋也「それは?」

菫「御存知、ウィークリー麻雀だ」

朋也「ああー…」

ウィークリー麻雀……正式名称WEEKLY麻雀TODAYは、読んで字のごとく、麻雀について書かれた週刊誌だ

麻雀が野球並みに、いや、それ以上に浸透している《この世界》においては、それはそれは凄まじい発行部数を誇っている

毎号様々な特集が組まれ、多くの読者を楽しませている、老若男女に愛される雑誌だ

俺も春原の部屋に無造作に積まれていたものを何冊か読んだことがあるが、なかなか興味深い記事が多かった

菫「確かこの号に、その《能力を封じる能力》を持つプロについて書かれた特集が――――」

パララララと、ページをめくる弘世

俺は彼女に近づき、めくられてゆくページに目を向け――――ようとしたところで

照「……!!!」

がたたたっ!と急に立ち上がった宮永に封じられた

照「だ、駄目っ……!」

菫「……は?」

ぱたたたっと慌てて弘世に駆け寄る宮永

急な彼女の様子に、俺と弘世は目を丸くし――――――そして

ぱさり、と

弘世の手から、麻雀TODAYが地へとこぼれ落ちた

ご丁寧にページは開かれたままで、だ

そして

その見開きの記事が、そこに貼られていた写真が、俺の瞳に映る
386 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:18:08.03 ID:PsGyjRpMo

照「……!」

菫「……」

朋也「……」

朋也「……誰だコイツ」

そこに映っていたのは――――満面の笑みをたたえる、一人の少女だ

右手をピースし、その指の間に麻雀牌――イーピンを挟み、ポーズをとっている一人の少女だ

まぁ

早い話が

照「〜〜!!!!!!!!」

俺の横で、顔を茹で蛸のように真っ赤にしている――――インターハイチャンピオン宮永照の写真だ

照「っ!」

ばっ!

まさに電光石火なスピードで彼女は己が写っている雑誌を拾い上げる

照「み、見た?」

朋也「……」

照「……」

朋也「……そりゃもう、ばっちりと」

照「ううっ……」

どうやら全国大会特集の回が載っていた号を弘世は持ってきたらしい

菫「……相変わらずものすごい営業スマイルだな」

照「……」

菫「……」

朋也「……」

朋也「……あ、あー……まぁ、その……なんだ」

朋也「俺はやっぱり、いつも通りの宮永の方がいいと思うぞ、うん」

なんともいたたまれない空気になり、苦し紛れのフォロー、だが本音でもある

照「あぅ…」

それでもなお恥ずかしいのか、宮永は顔を伏せてしまった
387 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:19:57.17 ID:PsGyjRpMo

朋也「そ、それで?弘世が言ってたそのプロって奴は?」

菫「ああ、それはだな――――」

依然として頬を染めている宮永から雑誌を受け取り、ぺらぺらとめくってゆく弘世

数秒後、そのページが開かれた

どうやら、宮永のそれと同じく特集が組まれているようだ

何々……

朋也「夫婦(めおと)雀士特集?」

見開きの片方のページに、寄り添って立つ男性と女性の写真が貼られていた

大和撫子な黒髪の美女と、まさに大和男児ともいえる、きりりと顔立ちの整った男性であった

菫「この、右側の女性が――――」

朋也「《能力を封じる能力》を持つ雀士?」

菫「ああ、そうだ」

朋也「へぇ…?」

だが、しかし

写真の女性は、とても『そう』とは思えなかった

その見た目、雰囲気は、なんというか、そう、どんくさそうな、すごくどんくさそうな、ものすごくどんくさそうな、あぶなっかしいイメージ、とてもとてもプロには見えな――――

「なーに見てんの?」

朋也「うおっ」

ずいっと顔を突き出してきたのはすっかり大気と化していた春原だ

弘世の広げるページを覗き込んでいる

春原「へー、夫婦雀士特集?随分と変なのもやってるんだね、この本」

朋也「お前は存在自体が変だがな」

春原「うん、そうそう変変――――って何いきなり言ってんだよっ!?」

朋也「むしろ奇跡?」

春原「……」

まあ、とりあえずアホは置いておいて

朋也「この女性が、能力を封じる能力を持ってる、と」

照「うん、そう」

いつの間にやら宮永が復活していた

照「彼女は――――」

春原「しっかし夫婦で雀士ってのも凄いもんだねぇ」

宮永の声が環境音にかき消された
388 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:21:06.48 ID:PsGyjRpMo

朋也「……」

べしっ!

春原「いたっ!?何いきなりはたくの!?」

朋也「話の骨を折るな、馬鹿」

朋也「それで?宮永、彼女がどうし――――――宮永?」

照「……」

もごもごと、彼女の唇が動いていた

そしてそこから微かに聞こえてくる単語は――――――夫婦?

朋也「おい、宮永?」

照「!!」

照「な、何?岡崎?」

朋也「いや、だから彼女がどうしたんだって聞いてるんだが」

照「え、あ、うん、えーっと……その……」

菫「彼女の……伊月プロの『瞳』はな――――オカルトを《消し去る》んだ」

照「……」

朋也「……」

春原「……」

照「……私が言おうとしたのに」

菫「……意見を言うならはっきりと大きな声で、だ」

照「むぅ…」

朋也「あー、まぁ、それはおいて置くとして、だ……弘世」

菫「む」

朋也「消し去るってどう言うことだ?」

菫「……言葉の通りだ」

菫「彼女の瞳に見つめられた奴――――まぁ、一緒に同卓している三人はな……自らの能力の一切合切が、使えなくなる」

菫「使おうとしても、さながら紙風船のように弾けてしまうんだと」

菫「つまり彼女の瞳は――――ありとあらゆる幻想を破る、そんな瞳だ」
389 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:21:52.25 ID:PsGyjRpMo

春原「……それは、なんというか」

朋也「……凄いな」

宮永の話では、自らの能力を武器に《し過ぎている》雀士は少なくないらしい

大星のように、己の能力一本で敵を倒す雀士は少なくないらしい

そいつらにとって能力とはいわば自分自身であるのだ

その能力を発揮し敵を倒すことは、即ち自己の証明であるのだ

だが、一度能力が封じられた時――――彼女らはどうなる?

ただ信じる、『自ら』が、通用しない、発揮できない

『特殊』な麻雀を打っている者達を、『普通』の舞台に引き摺り下ろす

だが彼女らにとっては『特殊』こそが『普通』なのだ

きっと困惑し、恐怖し、慌てふためくことだろう

同卓した者の能力を完全に封じる――――能力を扱う、否、能力に『打たされている』者にとって、これほど恐ろしい能力はない

春原「つーかさぁ〜可愛ィーーーよなぁ〜っ、このコぉ〜〜」

朋也「……」

シリアスムードをぶち壊された

春原「りょうちゃんって言うの?可愛い名前だよねぇ〜」

……。

……ええい、もう何も言うまい

構うだけ無駄だ。無駄無駄

朋也「……」

卓の方から、大星の笑い声と、亦野の悲鳴が聞こえる

どうやら向こうは終わったようだ

ぱたぱたと大星が駆け寄ってくる

弘世はそれに合わせてぱたりと雑誌を閉じて、今の局の考察に向かった

そして雑誌を閉じる一瞬、瞳に映ったその女流プロの名前ーーーーそれが、やけに瞳に焼き付いた

朋也「……伊月龍プロ、か」

龍と書いて、りょう

……今にも消えてしまいそうな、おぼろげな雰囲気を持つ女性であった

390 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:23:21.28 ID:PsGyjRpMo







淡「トーモーヤっ!」

朋也「おうっ!?」

対局を終えた大星が、勢いよくタックルをかましてきた

あまりの勢いに思わず体制が崩れ、一緒にソファーに倒れこむ

朋也「危ないだろっ!」

本当にこいつは、糸の切れたタコだ

淡「ねね!トモヤトモヤ!どうだった?私!」

朋也「どうだったって……まずその前にどいてくれ」

淡「んー?」

今の姿勢、ソファーに倒れた俺に大星が倒れこんでいると言う、なんともまずい体制だ

子供――かのヒトデ少女と同等の精神年齢なので、別にこれと言って意識はしないが、重た――邪魔なものは、しかたがない

朋也「ほらっ、どいたどいた」

淡「わっ」

華奢な彼女の腰を掴み、ぐいと引き剥がす

菫「淡……」

ピクピクと額に青筋を浮かべている

淡「ね、ね、どうだったどうだった?」

が、そんな弘世の眼光もなんのその、ぐいぐいとこちらに詰め寄るのが大星淡という少女だ

朋也「あー……うん、まぁ、凄かったぞ」

淡「でしょ!?……ふふふ、どうだ見たかー!私の力!」

今日は久々に張り切ったんだもん!私!と、大星

朋也「最後のあれとかな、本当、驚いた」

最後のあれ――――大星、亦野、弘世、ことみで囲んだ半荘戦オーラス

その時の和了は、和了も、大星であった

彼女が和了った……ツモった役は、ダブルリーチのみ

391 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:25:36.03 ID:PsGyjRpMo


ダブルリーチのみなのだが――――そのドラ数は


……合計、16



……ダブルリーチ、ドラ16



この馬鹿げた出来事が起きたのは、まさに奇跡だ

大星はその局、これまでのように――これまでのように、などという表現は甚だおかしいが――ダブルリーチで第一打を放った

そしてその数巡後

彼女は、ツモった牌…東を――――暗カンしたのだ

その局のドラ表示牌は北、つまりドラ四枚を暗カンしたのである

これだけでも十分恐ろしいことであるが……大星淡がそこで終わるはずがない

暗カンによるリンシャン牌のツモ

そして――――新ドラの表示


……そう


大星の細い人差し指でめくられた新ドラ表示牌は……北


つまり、カンした四枚のドラ東は、さらに上乗せ、ドラ8へと化けたのだ


……そしてまた数巡後

彼女は見事にアガリ牌を掴み、ツモった



……普通の麻雀なら、そこで終わる


リーチして、ツモって、そして、裏ドラを見て、終わる

裏ドラ……リーチして和了り、王牌を崩し確認する新たなドラは、乗ってたらラッキーと呼ぶべき棚ぼたのようなものだ(上手い人はその裏ドラすらも予測するが)
392 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:26:21.31 ID:PsGyjRpMo


……。


……何度でも、言おう


大星淡は、普通ではない


大星淡が開いた裏ドラ……

王牌の下からせり上がったその表示牌は……


二枚とも、北だった


つまり、裏ドラは――――8個



ダブルリーチ



表8



裏8



計、18翻





文句無しの数え役満である





.
393 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/03/28(木) 00:27:36.69 ID:PsGyjRpMo

朋也「……」

淡「これでトモヤも、私をちょっとは見直したで――――――トモヤ?」

急に黙り込んだ俺を不振に思ったのか,不安げに大星はこちらを見つめてくる

朋也「……なぁ、大星」

淡「?なにー?」

朋也「お前さ、麻雀を打つのは…………好きか?」

俺のその問いに……

大星は、なんの迷いもなく……即答した



淡「うんっ!好きだよ!――――大好きっっ!!」



彼女が浮かべたその笑顔を

俺はただ、黙って見ている


大星淡


星のような強い輝きを持っている、彼女に、俺は


大気に削られ燃え尽きてゆく、強大過ぎる引力に引かれ地に落ちる、流星のような儚さを感じていた――――

394 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/03/28(木) 00:28:09.77 ID:PsGyjRpMo
終わり。(闘牌キンクリして)すまんな

スーパーお猿人シズノのフラグとして書いた能力を消す能力を持つプロの話ですが、ちょっと長かったかもしれません。プロのモデルがわかった人には100万ペリカ贈呈します(大嘘)

地の文がたまに福本る気がしますが、これもおそらくきっとたぶん気のせいです


あと私事ですが、先日京都に一人旅に行ってまいりました。泊まった宿はもちろんかの亀石楼です。いやぁ実にすばらでした!
395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/28(木) 00:38:30.03 ID:qNTrWuX5o
>>394
そげぶ乙
396 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/28(木) 00:49:19.06 ID:d+4g3PE3o
>>394
おつ
もしかしてバジリスクの姫様がモデル?
397 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/28(木) 09:54:10.08 ID:byiTRIOoo
乙。
しかしこいつら当たり前のようにオカルトありきで話してやがる…
いや、それいいだしたら今の朋也の存在がオカルトなんだけれども。
398 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/29(金) 01:04:52.52 ID:XuIHGfjgP
旦那の方は相手の能力が相手自身に帰ってくる能力持ってるのか……怖すぎる
399 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/07(日) 04:16:32.43 ID:I8z+5jDto
まだかね
400 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/04/16(火) 05:55:08.77 ID:d3W8HZHAO
>>396
朧さまか

天膳殿がまた死んでおられるぞ
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/08(水) 18:58:35.50 ID:ZikW5qdY0
まだかな~
402 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/05/09(木) 00:04:12.30 ID:jjx1GvPMo
生存報告。き、気長に待ってくださいませ…
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/09(木) 02:47:58.48 ID:DSv7CEM7o
りょーかい
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/09(木) 18:48:58.83 ID:XFjPQ1V4o
了解でーす
405 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/11(土) 14:19:51.98 ID:9YQEr6P4o
一応貼っとく

【運営から】 6/8から1ヶ月間書き込みのないスレッドは自動的にHTML化されます
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368247350/

今まで作者の生存報告が2ヶ月ないスレはHTML化されてたが
それ+読者の保守が1ヶ月ないスレもHTML化されるらしい
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesage]:2013/05/12(日) 09:23:37.98 ID:J1srhTL60
マジか…
407 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:10:56.69 ID:UxbblBrdo
開始
408 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:12:19.38 ID:UxbblBrdo
照「……ロン」

朋也「……!!!」

宮永の小さな呟きと共に、俺の死――――トビが確定した

清一三暗刻ドラ3などと言う訳のわからない和了だ

……大星弘世亦野ことみの対局が終わった後、何故か俺は宮永と卓を囲んでいた

朋也「ぐ……!」

対面に座る宮永の澄んだ眼が俺をじいっと見つめている

上家に座る弘世はなんとも哀れみを込めた表情を浮かべ、下家のすの…なんだったかな、まぁ、よくわからん金髪は顔面にこれまたよくわからん顔を貼り付けていた

朋也「……トビか」

自らのいたたまれなさから、つい呟きをこぼす

春原「へへっ、今回は生き残ったぜ!」

朋也「全局オリてたもんな、お前」

春原「三百三十四計逃げるが勝ちってね!」

菫「それを言うなら三十六計だろう…」

春原のアホっぷりに弘世が呆れる

……まぁ、何時もの事は置いておくとして

朋也「やっぱり強いな、宮永」

インターハイチャンピオンなのだから当たり前なのだが、そう言わずにはいられなかった

しかし、毎度思うが俺のような奴と打っても何の得もないだろうに……今日もあれよあれよと言う間に卓に座らされていた

何故だ?

朋也「伊達にチャンピオンを名乗っちゃ――――宮永?」

そして、俺の言葉に宮永は……
409 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:13:14.95 ID:UxbblBrdo

照「……」

ふいっ

と、顔を俯かせた

……。

朋也「おい、みやな――」

淡「じゃあトモヤ!私は私はっ!?」

朋也「……」

淡「私だよ私っ!ほらほらっ!」

ホラホラホラホラともうひとつのよくわからない金髪がアピールしてくる

先ほどの対局の時に彼女を(自称辛口批評の俺にしては)褒てはみたが、納得いかなかったのだろう

朋也「ああ、ああ、お前も凄かったよ、うん、すごいすごい。カナリスゴイ」

投げやりな返答。宮永に見事にすっ飛ばされた俺の心に、最終能天気彼女の相手はちと荷が重い
410 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:14:20.32 ID:UxbblBrdo

春原「しっかしよォ〜〜ーーー……」

朋也「?」

春原「照ちゃんもさぁ……もーちょい……ほら……なんてーの?」

照「……?」

春原「"手加減"……とか、してくれないのォ?」

朋也「……お前なぁ」

はぁ、と、溜息をつく

朋也「手加減されて勝っても、なんも嬉しくないだろうが」

春原「へっ?嬉しいよ?」

朋也「……」

やはりこの馬鹿、プライドなんてものは持ち合わせてないらしい

春原「だからさぁ、照ちゃんももーちょっとだけ手ぇ抜いて――――」

照「手加減は……」

春原「へ?」

照「手加減は……やだ」

春原「えっ、いや、なんでさ?ちょっとくらい――」

照「やだ」

春原「……」

宮永の明確な拒否――やだ、という単純なものだが――に、春原は黙りこくった

(卓外では)おとなしい、草食動物のような文学少女の彼女が、明確に拒否の言葉を放った

その彼女の様子に、俺は瞳をまるくする

……。

……まぁ

彼女はああ見えても全国インターハイの頂点、チャンピオンなのだ

あのぽけっとした顔の奥に、それはそれは物凄いプライドと言う奴を抱えているのだろう

朋也「春原」

春原「……」

朋也「お前、すげーみっともないぞ」

春原「……」

春原「……へっ。いいさ」
411 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:15:20.05 ID:UxbblBrdo
春原「それなら僕は――――――宮永!お前を倒すっ!自分の実力でな!」

ずびしっ!と人差し指を突きつける春原

春原「へっ、見てな。いつかそのスカした顔に――――」

朋也「春原」

春原「何さ!?」

朋也「ちょっと便所行ってくる」

春原「勝手に行ってればいいでしょうがぁ!」

なんで今言う必要があるんですか!と春原が叫ぶ

菫「……ところで、だ」

おほん、と、咳き込みつつ、弘世

その横では再び宮永達が卓に付き、対局を開始していた

朋也「ん?」

菫「一ノ瀬さん」

くるり、と、弘世がことみの方を向く

ことみ「!」

菫「ちょっと聞きたいことがあるんだが」

ことみ「な、なに?」

少々どもり声で、ことみ

やはり彼女に弘瀬の射抜くような視線は怖いものがあるのだろう

菫「えーっと、なんだ、一ノ瀬さんは……ネット麻雀を、してるか?」

朋也「……」

ネット麻雀

もしくは、ネト麻

読んで字のごとく、インターネットを利用した麻雀だ

……何度も言うが、俺が立っているこの世界、それはそれは麻雀が有名なスポーツとなっている

野球並みに、いや、野球以上にだ

当然、途方もない数のアカウント達が、日々電子の海で闘牌(たたか)っているのだ

…特A級のデジタル打ちをみせることみに、弘世も何か思うことがあったのだろう

ことみ「ネット麻雀?」

菫「ああ、ネット麻雀だ」

ことみ「たまになら、するの」

412 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:16:14.31 ID:UxbblBrdo

菫「……」

一瞬、弘世が黙り込む

菫「……ひょっとして」

ことみ「?」

菫「ひょっとして貴方は……ことみちゃんか?」

朋也「は?」

いきなり、なにを言い出すんだ、彼女は

菫「……」

朋也「……」

ことみ「……?」

沈黙

菫「い、いや、すまない。私が言いたいのはな――――」

ごほんと咳き込む弘世

菫「――――アカウント名の、話だ」

アカウント名?…………ああ、なるほど

菫「それで、もう一度聞くが……一ノ瀬さん」

菫「貴方は、『ことみちゃん』か?」

彼女の問いに、ことみは小さく頷いた

菫「……やはりか」

……つまるところ

ここでの『アカウント名』とはすなわち、ネット麻雀のアカウント名を指し、弘瀬は完璧デジタル打ちを見せたことみのアカウント名を聞いたのだ

朋也「で、弘世……その『ことみちゃん』ってのは、なんだ?」

菫「ああ、それはだな――――」

弘世曰く

『ことみちゃん』とは、とあるネット麻雀サイトのアカウントである

異常なまでのレーティング

異常なまでの完璧な捨牌選択

異常なまでのテンパイ速度

異常なまでの打牌スピードから、開発者が作り上げたコンピュータープログラムではないかと噂されているらしい

……まぁ、そのチート級アカウントの持ち主がたった今ことみだと解った訳だが
413 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:17:17.83 ID:UxbblBrdo

朋也「そんなに有名なのか、その、ことみのアカウントは」

菫「ああ、あの『のどっち』と同じ、ネット麻雀の『伝説』だよ」

……あののどっちと言われても、ネット麻雀をしない俺にとっては、なんのことだかわからない

話の流れから、その『のどっち』とやらも、相当有名なアカウントなのだろう

ことみ「のどっちちゃんとは、よく打つの」

菫「勿論、知ってるよ。いや、毎度毎度のあの凄い勝負、参考にさせてもらっている」

たいていのネット麻雀では観戦機能が搭載されており、他者のアカウントの対局を見る事が出来る……らしい

ことみクラスの高ランカー同士の対局ではそれはそれは凄まじい数の観戦者がカウントされている……らしい

後から、弘世に聞いた話だ

ことみ「それに……のどっちちゃんとは、今度、夏に会うの」

朋也「えっ」

……。

い、今、ぶったまげるセリフを……ことみは言ったぞっ。

朋也「あ、会う?」

ことみ「……」

こくり、と頷く彼女

朋也「会うって、それは、つまり――――」

オフ会、と言う奴か

朋也「……大丈夫なのか?」

見ず知らずの、顔も知らない人間と、あの、あの、あの、人見知りのことみがオフ会など……

ことみ「大丈夫なの」

俺の不安を察したのか、ことみは心なし不満そうに返答する

……まぁ、本人が大丈夫だといえばそれまでだが、やはり一抹の不安が……

菫「……心配性だな、お前は」

にやけているのか呆れているのかわからない、なんとも不思議な表情で、弘世

朋也「……弘世も、見ただろう?ことみの人見知りっぷりを。そりゃあ心配もするさ」

これでも幼馴染なんだから、と心の中でつぶやきながら、声を潜め弘世に囁く

朋也「それに、ほら、あれだ、ネカマ?って言うのか?……そんな奴らもいるだろうし」

菫「……」

菫「……おそらく、その心配は要らないだろう」
414 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:18:34.26 ID:UxbblBrdo

朋也「は?」

菫「実はだな、だいたいの検討がついてるんだ……その、アカウント『のどっち』の持ち主のな」

朋也「で、誰なんだ」

菫「そう急かすな……心配せずともその持ち主は女性だ」

朋也「……」

弘世のその言葉を聞いて、ホッとした

……。

……。

……いやいやいやいやいやいや

先刻から何を動揺しているのだ、俺は

これでは…これではまるで、彼氏が出来たと言う娘に対する父親のそれではないか

……。

朋也「……うっ!」

菫「き、急にどうしたっ!?そんなに汗をダラダラと流してっ!?」

朋也「い、いや、なんでもない、気にするな……それで?その『のどっち』についての情報、他にはないのか?」

――――汐に彼氏が出来たと報告される――そんな情景を想像し、筆舌し難い気分になった俺だが、なんとか会話の軌道を修正する

菫「あ、ああ。のどっちの正体、それはおそらく――――」

朋也「おそらく……」

ごくりと唾を飲み込む

俺は妙に緊張していた

菫「――――昨年のインターミドルチャンピオン『原村和』』だ」

朋也「原村和…」

どこかで聞いた事があるような無いような、そんな名前であった

……インターミドルチャンピオンなどと言う肩書きだ、知らずの内に耳に挟んでいたのだろう

菫「去年中学三年生だったから、今年は高校一年生――――そして」

菫「私達は、彼女と闘牌う可能性がある」

……闘う可能性?

……。

……ああ、成る程

朋也「…出場するのか、その、原村と言う奴も」

全国の高校雀士の猛者達が集うインターハイに――――
415 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:19:32.59 ID:UxbblBrdo

菫「ああ、そうだ」

菫「……個人、団体、両方でな」

インターミドルチャンピオン。相手にとって不足なし

弘世の眼は、戦士の眼をしていた

朋也「……ことみは」

ことみ「?」

朋也「ことみは、知ってたのか」

のどっちの、正体?について

ことみ「…知らなかったの」

朋也「……よくそれで会う気になったな」

溜息。

よほどそののどっちとやらと話が合ったのだろう

ことみ「あっ」

朋也「?」

ことみ「……言われてみれば、のどっちちゃんのアバター、和ちゃんにそっくりなの」

菫「そっくりと言うか、そのまんまだろう、アレは」

苦笑する弘世

後でそののどっちのアバターと原村和の写真を見せてもらったが、成る程、そのまんまだった

しかし天使の出で立ちとは、中々に少女めいているなぁ……

朋也「すると、夏に会うってことは……インハイの時か?」

菫「だろうな」

朋也「個人戦と、団体戦――――――で、どの県の代表なんだ?」

菫「長野だ。長野の――――清澄高校だ」
416 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:20:29.92 ID:UxbblBrdo

朋也「清澄高校…」

聞いたことのない名前だな

そう、俺が口にしようとした――――――その瞬間

がちゃん

と、『聞き慣れた』音が――――やけに強く、俺の耳に入り込んできた

反射的に、その音源へ視線を向ける

朋也「……?」

最初に眼についたものは、麻雀卓であった……卓上から察するに、卓決めが終わり、配牌が終わり、起家が第一打を打つ、その時だったのだろうか。

次に見たものは、そこに座る少女達――――大星と亦野と春原、それと宮永の四人

そして最後に俺の視線が向かった先は――――宮永の手元

ビシッ、と、綺麗に並べられているはずの手牌。その左半分が――――乱雑に、崩れていた

宮永の小さな手の周辺に広がる牌達が、自らの正体を晒している

……麻雀には見せ牌と呼ばれるミスが存在するが、これは見せ牌なんて話じゃない

朋也「……」

……配牌の時に手元でも狂ったか?

それで誤って、自分の手牌が崩れた――――

……ぶきっちょそうな宮永ならあり得る話だが、彼女は《インターハイチャンピオン・宮永照》。万に一つもあり得ない話だ

いや、しかし、弘法にも筆の誤りとも言うし……

朋也「……?」

菫「何やってんだあいつは…」

俺と弘世、二人の視線の先には、散らばった牌を素早く手牌に戻している宮永

怪訝な目をしつつも、俺と弘世は再びことみの話を聞き始めた

お互いの趣味が似ていた、とか、のどっちちゃんはぬいぐるみが好きらしい、とか、超高度な牌効率の談義についてだとかの話を喋ることみは、とても楽しげだ




――――そして




宮永の失態の理由(わけ)を俺が知ることになるのは、もう少し先のことだった――――



.
417 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/13(月) 00:21:29.50 ID:UxbblBrdo
終了。

今迄お待たせ?してすみませんでした。御無礼。
これからものんびり付き合ってくれると嬉しいです

文章こんな風にしたら良くなるよ。なんて意見があったら聞かせてください

最後に…………CLANNAD10周年おめでとうッッッッッ!!!!!
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 00:34:32.14 ID:ETogydTko
乙!おめでとう!
419 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 08:13:02.76 ID:adrnoYh30
宮永姉妹の謎が完全に明かされるのはいつになるやら乙です
420 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 08:17:14.68 ID:9w5ftdve0
>>1乙!
421 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 12:32:06.39 ID:VEVrgMBL0

宮永姉妹の謎が明かされないとこの話書きにくくなりそう
期待してるだけにそれが恐い
422 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/13(月) 12:41:14.03 ID:RCgn7eKNo
なんでや!阪神関係ないやろ!
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/14(火) 00:24:26.54 ID:qE+x6yeYo
>>421
一体何年後になるんですかね……?
424 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:22:03.18 ID:0lIjlDhEo
開始
425 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:24:02.05 ID:0lIjlDhEo

「そろそろ帰ろうぜ」

開始早々、ちょっとしたアクシデントがあった宮永達の対局を見届けた俺は、春原にそう告げた

「えっ」

「へっ」

「……!」

俺の突然の発言に、宮永と春原、それと大星の三人が驚く――――驚く必要があるのだろうか?

「えっ、いや、なんでさ?」

「もう半荘戦を数回は打ったんだ。そろそろ帰った方がいいだろ」

「僕はまだ打ちたいんだけど……」

「馬鹿、宮永達を何だと思ってんだ」

小声で、俺

インターハイ二連覇の超強豪高校、そのスターティングメンバー。

先日は大星に引っ張られ、今日はことみの付き添いとはいえ……流石に部外者がいつまでもここにいる訳にはいかない

それに……俺と春原は、『不良』なのだ

学校の落ちこぼれ共が今を時めく麻雀部に入り浸っていたとあっては、俺たちはともかく、彼女達がなんと言われるか……

「……ったく……わーったよ、帰るよ」

いい暇つぶしにはなったし、と、春原が吐き捨てる

「……トモヤ」

「あん?」

「ホントに…帰るの?」

大星の澄んだ眼が、俺を見ている

昨日も俺は、この目を見た
426 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:24:45.80 ID:0lIjlDhEo

「……ああ、帰るよ」

家に帰ったら――いや、春原の部屋に着いたら、これからの自分について、考えてみるのもありかもしれない

5年の年月を経たとはいえ、あれから少しは大人になったとはいえ――――俺は不良であり、落ちこぼれであり、子供であるのだ

……。

……よし


「弘世」

「……なんだ」

「悪かったな、付き添いとはいえ上がりこんじまって。……まぁ、なんだ、打てて楽しかった」

「……ああ、私も、いい気分転換にはなったよ

「そりゃ、どうも」

くくっ、と、軽く笑う

そして、つつっ、と、首を曲げ、彼女の方を向く

「ことみ」

「?」

急に自らの名を言われたことみがこちらを向き、何事かと首を傾げている

「つー訳で、俺達2人は帰るけど……お前はどうする?」

「…………もうちょっとだけ、いるの」

「ん、了解」

先ほどもことみは麻雀部の面々――――特に渋谷と宮永の2人と楽しそうに会話をしていた

人見知りの彼女が、ああまでリラックスして他人と会話を交わしていたのは良いことだ。いや、もう、彼女達はお互いに友と呼べる関係になったのであろう

文学少女同士気が合いそうであるし、それにことみの超絶デジタル打ちならば、宮永達の練習相手には相応しい。なんら問題はない
427 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:31:31.27 ID:0lIjlDhEo

「じゃ、そーいう訳で俺達はこれで――――」

帰らせてもらう。そう言いかけた俺だが、ふと口を閉じる

……見ていたのだ

……彼女が、俺を見ていたのだ

赤髪の彼女が、俺を見ていたのだ

「「……」」

「「……」」

「「……」」

「「……」」

長い、沈黙

……一秒か一分か十分か

しばしの時の後、宮永が小さな口を開く

「……またね、岡崎」

「……ああ」

またな、宮永

そう告げて、俺達は立ち去った


不良。チャンピオン。優等生。落ちこぼれ。全国一


見えないと思っていた壁は、確かに存在しているのだ


その壁が壊れる日は――――来るのだろうか
428 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:32:17.47 ID:0lIjlDhEo







「「……」」

学校を出たその後、俺と春原はいつも通りに馬鹿話をしながら、いつも通りに春原の部屋で寝転んでいた

けだるい、ぬるま湯のような感覚が俺の体を浸している

室内は、ぺらりぺらりと、本をめくる音が一定のペースで響くのみ

交わされる言葉はない――――そう思っていたが

ふと、帰宅途中コンビニで買った週刊少年誌を読んでいた春原が、その沈黙を破った

「今週のピンクダークの少年さァーーなんかすっげーことになってねーか?」

「……」

「……」

「……」

「……おい、岡崎、シカトかよっ!?」

「静かにしろよ春原……今インターハイの記事読んでるんだからよ」

「インターハイィーーー??」

ずいっ、と、俺が読んでいた雑誌を覗き込む春原

「って、これウィージャンじゃん」

ウィージャン……ウィークリー麻雀today

俺が開いていたその週刊誌では、インターハイについての特集が組まれていた
429 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:33:22.57 ID:0lIjlDhEo

先ほど部室で読んだものは女子の部の特集―――そして、今俺が手にしているコレは男子インターハイ……男子団体戦の特集が組まれていた

注目を集めている各県の選手たちが写真つきで掲載されている

ご丁寧に名前の横には通り名が書かれており、いかにそいつらが有名なのかを見せつけていた……そう言えば宮永もかなりの数の通り名を持っていたな

「何々……鹿児島先鋒妖怪点棒置いてけ、西東京代表臨海男子先鋒ミスターブシドー、岐阜県大将省エネ探偵……うへぇ、なーんか皆イロモノって感じだねぇ……」

「麻雀の競技人口は女子よりも男子の方が多く、魔窟だと聞いたが……その通りみたいだな」

小脇に書かれている選手の打ち筋を見る限りなんとも奇怪な奴らだ

他にも個人代表にはあの歌舞伎の名女形が……なんて載っている

いったいどうなってんだ、男子の部は……

「……岡崎」

「あ?」

「お前、こんな本買って帰るなんてさ、やっぱり……あそこにもうちょっと居たかったんじゃないの?」

「……んな訳、あるかよ」

「ふーん…」

「……なんだそのにやけ面は」

「別にぃ?なんでもないよ?な・ん・で・も」

「……」

腹立つ阿呆面をしばき倒したい衝動に駆られたが、此処で奴に手を上げれば負けのような気がして、必死に自制する

……。

……。

……もうちょっと、居たかった、か

「……アホらし」

頭の中のもやを振り払い、俺は再びぬるま湯へと体を沈ませた

心の隅に、微かな淀みを感じながら――――――
430 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:34:26.38 ID:0lIjlDhEo







「あっ、やべっ!」

どれだけ時間が経っただろうか、不意にアホ原が変な声をあげた

「もうこんな時間じゃねーか!」

そしてがたりと立ち上がり、どたどたと部屋から出て行く

「……どうしたんだ?」

奴の異常行動は元からだが、妙に気になった

「……ふむ」

読んでいた雑誌を閉じ、とりあえずアホ原の後を追うことにした

……。

「ふぅ、間に合った」

並べられた長机と椅子達、その一つに座った春原が安堵の声をあげた

一体どこに向かうのかと気になったが、どうやら男子寮の食堂に足を運んだらしい

「一体何が間に合ったんだ、おい」

「へへっ、いいから見てなって」

そう言うと春原は、手元に置いてあった長方形の物体――――――食堂に置かれた、薄型テレビ

そのリモコンを手に取り、スイッチを押した

瞬間、ブツリと音がして、テレビから映像と音声が垂れ流され始めた

……勝手に、使ってもいいのだろうか
431 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:35:31.52 ID:0lIjlDhEo

……。

まぁ、いいか、美佐江さんにしばかれるのはどうせこのアホだ

「おっ、始まるぜぇ」

「む…」

同時。

なにやら喧しい音が、流れ始めた

視線の先の画面では、やたらキラキラしたポップ文字が表示されている

どうやら児童向け番組のようだ

……あの、民放の、おにいさんだがおかあさんとかおとうさんだかのアレだ

こういう番組は以前汐と一緒に見ていた覚えがあるので、思わず注視する

懐かしい思い出に浸りつつ、俺は陽気な音楽に耳を傾けてしまっていた

……やがて画面が切り替わり、きゃいきゃいとした児童達の声と共に二人の男女が画面中央に現れた

うたのおにいさんとうたのおねえさんと言う奴だろう

うたのおねえさんの方はその御多分に洩れず、相当ファンシーな、イカレ……いや、少女趣味な格好をして画面内で飛び跳ねている

正直かなりキツイ格好だ……そして

ようやく俺は気づいた

「……なんじゃそりゃ」

この男女、所謂うたのおにいさんとおねえさんではない

……。

この世界の、歪み

この世界の、異常

この世界の、異質

俺の目の前に、再びソレが現れた

麻雀が浸透した、この世界の歪み……

……そう

この男女は――――――『牌の』おにいさん、おねえさんなのだ!

432 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:36:11.51 ID:0lIjlDhEo

『はっやりーーーーーーんっ!!!!!』

「はっやりいいいいいいんっ!!!!」

画面内のファンシーおねえさん?が叫ぶと同時、俺の隣に座る気持ち悪い金髪ゲテモノ生命体もまた、耳が腐るような奇声を発した

ふんふんと鼻息を荒くしている

「おい、何興奮してんだよ、気持ち悪い」

「いやっ興奮するっしょ!普通!見ろよ!あのおっぱい!」

ぐげへへへへ、気味の悪い笑い声

……成る程、確かにこの牌のお姉さんとやら、ものすごいサイズのおもち……もとい、胸をお持ちだ

春原が興奮するのも無理はない……いや、このアホはソレを拝むためだけにこうして食堂まで足を運んでいるのだ

「で、誰なんだ、このきっつい服着た女性は」

「はっやりぃぃぃぃぃんっ!!!!!」

駄目だ、聞いちゃいない

……しかし、どうもこの声、どこかで聞いたことがある気がする

……えーと


『はーい!良い子のみんなっ!こんにちはー!牌のお姉さんの瑞原はやりだよっ!』

『今日もお姉さんとお兄さんと一緒に!楽しく麻雀のルールを覚えようねっ♪』

『今日は新しいお友達のために!もう一回はじめっから始めるよっ!』


まぁ、いいか、おそらく気のせいだ
433 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:37:57.55 ID:0lIjlDhEo

それよりも……

「この番組、麻雀のルールを教えてんのか」

「はっやりぃぃぃぃんっ!!!世界一可愛いよぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

「……」

ドゴドゴドゴドゴドゴォッッッ!!!!!

「この番組、麻雀のルールを教えてんのか」

「ああそうだよっ!だから殴らないでくれませんかねぇっ!」

「?……サンドバックを殴らない訳にはいかないだろ?」

「ひどっ!?」

アホを弄ってとりあえずは気分を変え、画面に集中する

頭のネジが数本吹っ飛んだような格好とは裏腹に、牌のお姉さんは麻雀ルールをわかりやすく子供達に教えていた

可愛いイラストや実践を交えてなので、子供達にとっても理解できることだろう

……。

……成る程

こうしてこの世界は、麻雀が浸透して行くのだ

人々の心に、常識として、趣味として、遊びとして、深く、深く

……。

……やはり

やはり自分は、どうしようもなく異質な存在なのだ
434 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:38:36.62 ID:0lIjlDhEo

「……」

『よし!皆!今日のおさらいだ!』

「ん?」

沈んだ意識を持ち上げると、画面内で一人の好青年が声を張り上げていた

どうやら番組はそろそろ終わるようだ

早い。もうそんなに時は経っていたのか

『みんなー♪牌のお兄さんに続けて、はやりと一緒に言ってみようっ♪

……せーーーーのっ!』

『両面待ちはー?』

『『『しあわせのかたちーーーっ!』』』

『そうだ!立直をする時は皆!両面待ちだ!

両面待ちは和了目の多い、幸せの形だ!

皆はこの形をしっかりと覚えておくんだぞ!

波溜お兄さんとの約束だ!』


青年の――――牌のお兄さんの声に合わせて、児童達が合いの手を打つ

俺にとっては、何処か眩しい光景であった

彼女と一緒に見ていた日々は、数える程しかない


『それじゃあみんなー!また明日っ♪ばいばーーーーーーーーーーいっ!!!』

「ばいばああああああいっ!!!!……………………って、岡崎?どったの?」

「……ああ、いや……お前の気持ち悪さにドン引きしてただけだ」

「……」

ブツン、と用済みとなったテレビの電源が切れる

真黒の画面の中に、一人の金髪と一人の男が映る

男の顔は、俺の顔は……




――――――――酷く、歪んで見えた





.
435 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/19(日) 16:39:45.22 ID:0lIjlDhEo
終了。はやりんがゆかりん専用機と言う風潮、一理ある

今回は試しとして台詞の前の人物名を省きましたが、多分次回からは元に戻します、多分

6月10日にあの『たんぽぽ娘』が発売されるみたいですね
私は読んだことがなかったので、渡りに船、これを機に買う予定です
皆さんも財布に余裕があれば、是非

急に降っと浮かんだ時系列ガン無視の小ネタは如何すればいいんでしょうかね……
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 16:51:13.81 ID:VfbaOmt+0
乙でーす。まあ、口調で十分わかるけど
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 17:28:34.94 ID:JkjkNAY6o
書き留めて本編終わった後で出せば良いんでね、知らんけど
438 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 17:31:50.14 ID:G19KeTvUo
小ネタ、番外、と銘打って本編の区切りに投下すれば?
439 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 21:22:06.73 ID:XsEU2KRDO
え、首おいてけさんって中村ボイスなの?
440 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 22:20:47.30 ID:y10+pKlvo
ヒラコーがそんな妄想してたはず
441 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/19(日) 23:04:17.85 ID:0lIjlDhEo
>>339-400
HELLSING最終巻のオマケプロモビデオでめでたく中村ボイスがお豊につきました。首置いてけよ直政ぁ!
442 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/21(火) 11:57:43.71 ID:rIc1TRwj0
波溜お兄さん……だと……
443 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/21(火) 18:14:24.78 ID:9V2AQ3Ako
面白すぎる
早く読みたくて堪らん
444 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/05/27(月) 17:59:55.17 ID:SiV3kyeao
立先生が仰るには男子インターハイのチャンピオンは千里山の一年生最強泉ちゃんと同レベルと強いんだか弱いんだかよくわからない人になってますが、今作の男子チャンピオンはリンシャンドラ爆舐めプ死人のまるで何処かの麻雀漫画の主人公みたいなあの人です。開始します
445 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:01:03.69 ID:SiV3kyeao

時は、少し遡る

名誉図書委員の付き添いとしてやってきた2人の不良生徒が帰宅した数分後の麻雀部、部室内

男子生徒達が帰宅したのち、妙に可笑しな空気になった部室……その空気を振り払うように発せられた弘世の一声の元、再び対局が始められていた

やがてその対局……弘世菫、宮永照、大星淡、一ノ瀬琴美の対極も終了し、数十分を掛けて行われた検討も済んだ

今は数分間の小休止の時間である

部員達は各々紅茶を飲んだり、茶菓子をつまんだり、牌譜を見たりしている

そして、やはり

最初に口を開くのは、この少女であった

「トモヤ、帰っちゃったねぇ――――……」

大星淡である

ぱたぱたと両足を上下させ、ぐちぐちと呟き、頬を膨らませる

その様子に菫ははしたないだのとなんだのと突っ込みたくなったが――――今更どうこうできる訳ではなさそうなので止めた

「なぁんで帰っちゃったんだろーつまんなーいっ……」

「ほ、ほら、岡崎先輩には岡崎先輩の用事があるんだろ、きっと」

そう大星に言い聞かせるのは亦野誠子

この生意気一年生とそれなりに付き合ってきたと自負する彼女だが、こうまでぷーたれる淡を見るのは初めてだった

「そーかなぁー?そんなことないと思うんだけどなー」

大星淡としては、いつもいつも自堕落している彼ら――――彼に、可愛い可愛い高校百年生の自分と触れ合う事より重要な予定があるとは思えなかった

「お前は岡崎先輩の何を知ってるんだ…」

予定などあるはずがないと言い切った淡に、呆れる誠子
446 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:01:41.89 ID:SiV3kyeao

「何を?…………何をかぁ…」

何気ない誠子の呆れ声、だがその言葉を淡は意外にも重く受け取った

自分は、岡崎朋也の何を知っているのか?

……。

……思えば、知らない事はたくさんあった

「……」

……まぁ、とりあえず

「ねぇ」

今一番私が気になることを――――『彼女』に聞いてみよう

「ことみちゃん」

決断してしまえば、大星淡の行動は速い。速いどころか――――

「トモヤとことみちゃんって……どんなかんけーなのっ?」

決断したその時……既に行動は終了している

赤髪の少女が聞こう聞こうとうんうん唸っている内に、彼女はやってのけたのであった

「……?」

「だからかんけーだよっ、かんけー!」

「関係……」

ふむ、と、考え込むこと数秒後

「……幼馴染、なの」

照れ臭そうにして、彼女は答えた

「「……!」」

その時…宮永と大星の二人に電流走る……!

やけに目の前の天才少女と意中の彼が仲良さそうだと思ったら……まさか……まさか……幼馴染とは……

圧倒的じゃないか……!
447 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:02:21.42 ID:SiV3kyeao

「「……」」

ぶんぶんぶんっ!

絶望を振り払うかのように同時に首を振る超新星一年坊とインハイチャンピオン

待て、落ち着け、ステイステイ

確かに幼馴染と言うネームバリューは強力だ、圧倒的だ、神秘的だ

だが、だがしかし

昨今の書籍業界……むしろ幼馴染は主人公と結ばれぬ運命が多い……!

絶望するにはまだ早い……!

……と、やはり全く同時に金髪一年ダブル立直大宇宙銀河少女と赤髪三年コークスクリュー大渦旋風台風少女は結論づけた

そして、次に踏み込んだのは――――

「こ、ことみちゃんは」

意外にも、宮永照であった

震え声になりつつ、口を開く

「?どうしたの?照ちゃん」

「こ、ことみちゃんは……岡崎の……岡崎の……」

そして、彼女は、確信へと――――

「?朋也くんの?」

「あうぅ…」

「???」

が、ここでさらに踏み込めないのが宮永照と言う少女

限界が来たらしく、顔を真っ赤にして湯気を上げている

その姿を、もし麻雀部の一年生共が見たのなら……親衛隊の数がまたまた再び跳ね上がったことだろう

なんだ、この可愛い生き物は、と

そして結局、名誉図書委員の少女へと突き進むのは、流星乙女の彼女であった
448 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:03:04.38 ID:SiV3kyeao

「ことみちゃんは!」

「トモヤと!!」

「付き合ってるのッッッ!??」

清々しいほどの、直球ドストレート

「つきあっ…………ええっ!?」

「ね、ね、付き合ってるの?付き合ってないの?どっちなの?」

「わ、私と朋也くんは……」

「トモヤは!?」

「彼氏彼女の関係じゃ……ないの。幼馴染、、なの……ふつうの……」

ことみの言葉を聞いて、二人は胸をなでおろした

が、即座に後悔した

自分達はなんてことを聞いてしまったのだ!と

あのことみちゃんの様子……あの残念そうな様子……恋人ではないと言う、残念そうな様子……それを作った自分達……

……やってしまった

「「……」」

……ホッとする自分達に、嫌悪感を抱く二人

確かに、心の中ではホッとしているのだ、してしまっているのだ……
449 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:03:42.75 ID:SiV3kyeao

「ゴ、ゴメン…」

「ごめんなさい…」

「う、ううん、大丈夫、大丈夫なの…気にしないで…」

「「「……」」」

気まずい空気になる三人

「……いったいさっきから何を話してるんだ、お前達は」

それに呆れる、弘世菫

もちろん彼女、しっかりと聞き耳を立てていた。ガールズトークに憧れる年頃なのだ

「な、、なんでもないよ、、なんでも、あはははは…」

「そう、なんでもない…」

「うん、なんでもないの…………あっ」

「?どしたの?ことみちゃん」

「……ひょっとして、淡ちゃんと、照ちゃん……『も』?」

「「……」」

「「……うん」」

それで、話は終わった

変わりに、淡の標的は、さっ、と小言うるさいおせっかいシャープシュート先輩に変更された

「スミレ先輩、さっき私たちの話コソコソ聞いてたでしょっ?」

「なっ…」

赤面する菫

ちなみに亦野誠子、渋谷尭深の両名は優雅にお茶を飲んでいる

話に関わって面倒臭いことになるのは御免なのだ
450 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:05:03.40 ID:SiV3kyeao

「そ、そんなもの、聞きたくなくても聞こえるに決まってるだろう」

あれだけ大声でしゃべっていたのだから、と、菫

「へー?ふー?ほーん?なら話に参加しちゃったら良かったじゃないのー?、ねぇ?」

「せっかくせっかく弘世先輩のだぁいすきなガールズトークしてたんだからー」

「ほらっ、スミレも憧れてるんでしょ?ガールズトーク」

「誰それが好きーとか、私だけの王子様に会いたいーとか、付き合うなら告白はどっちからーとか、こーんな告白されたいーとか、あーんなシチュエーションであっついあっついキッスをされたいー、とか」

「いろいろ話したいんだよねー?なんせスミレって……しょ・う・じょシュミだからっ♪」

マシンガンの――いや、流星群のように降り注ぐ大星のトーク

これには流石の菫も――――

「……ふ」

キレた

「巫山戯てんのかァッッッ!!お前ッッッ!!!」

「いやっ、ふざけてないよ!マジマジ!真剣真剣!」

「〜〜〜〜ッッッ」

ぶるぷると拳を握りしめる菫

「わたしはただ、菫先輩とガールズトークがしたいだけですってーぇ」

「調子のいい時だけ敬語を使ってお前は本当に…」

「で?ないの?そーいう話。こんな告白されたいとかこんな素敵な出会いしたいとかさ」

菫の小言をガン無視し、じくじくと言葉を突き刺しまくる淡

しかしここで弘世菫、反撃に出る

「お前は…」

「んっ?」

「お前は……いや、まずはお前から話すべきだろう、ふつう」

「私ぃ?」
451 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:05:39.00 ID:SiV3kyeao

「そうだ、お前だ。

お前が、こんな出会いがしたい、とか、こんな告白がされたい、とか話すんだよ」

弘世菫、一転攻勢…と、思われたが

この程度、命短し恋せよ乙女な大星淡にとってはさした問題ではない

むしろ待ってましたと言わんばかりだ

「私は…そうだなぁ……もう出会っちゃったからその話はおいといて、告白はやっぱり向こうからの方がいいなぁー」

「ほ、ほう…?」

「こう、放課後の?校舎裏の木の下で?どーん!と告白っ!みたいな?」

「へ、へぇ…?」

「私は別にぜーんぜん告白されるなんて考えてなくて、うわ、なんだろー、わざわざ呼び出してどしたんだろ?とか思ってちゃって、遅れて行くわけ。で、油断してたところに、告白っ!」

「告白のセリフは…こう…ほら…そうだなぁ……

『好きだ!大星!俺と伝説になろう!!』

……みたいな?
で、二人はゴールイン!幸せなキスをして終了!……って訳だけど」

「ああ、わかった……もういい」

聞いた私が馬鹿だった。そもそも伝説ってなんだ伝説って

頭を抱え、はぁ、と弘世は溜息をついた

「……休憩は終わりだ、さ、打つぞ」

ひとしきり一年坊の跳ねっ返りっぷりに憂いた後、弘世菫は部員達に休息の終了を命じた

……こうして今日も、白糸台高校麻雀部の時間は過ぎてゆく

二人の少女が、寂しさを感じながら……
452 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/05/27(月) 18:06:25.16 ID:SiV3kyeao
終了。

私事ですが、先日知人に進められて『君は淫らな僕の女王』を購入しました
内容をろくずっぽ調べず、表紙だけ見て(お、少女漫画か?)Amazonポチーしたので度肝を抜かれました。たまげたなぁ……

小ネタで自制心がゼロになる淡ちゃんと照ちゃんを書いてみるのもいいかもしれませんね
453 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/27(月) 21:53:41.87 ID:k44P2VIk0
ことみが悲惨な回ですね
454 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2013/05/28(火) 03:48:34.81 ID:FqgQd4E4o
@ 人生=クソゲー
A CLANNAD=人生

@、Aより
CLANNAD=………
455 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2013/05/28(火) 14:17:40.65 ID:zMJfeQk/o


さぁ早く小ネタを書くんだお願いします
456 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/28(火) 14:34:35.06 ID:DByLDZRKo
コトミー
457 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/28(火) 21:02:40.27 ID:i7HhiaMyo
>>454
お前の人生≠朋也の人生
458 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/05/31(金) 21:08:04.97 ID:JuG6mrF20
このスレって照ルートなのだろうか……
淡にちゃ、チャンスを……ないか
期待してるからねー
459 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/05(水) 17:33:54.55 ID:7y6ptTlg0
>>454
クソゲー=人生ではないし、人生=クラナドじゃないから正しくは
@人生→クソゲー
Aクラナド→人生
だよな
マジレスすまん
イッチ、続き期待しとるでー
460 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/06/12(水) 21:55:01.57 ID:HI49SrSWo
生存報告。
もうしばらくお待ちを……
461 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/12(水) 22:06:41.81 ID:ViaIkR9so
待ってる
462 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/12(水) 22:11:22.44 ID:dHiWRK9uo
超舞ってる
463 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:52:33.02 ID:3a+zcw2Ho
遅れて申し訳ない。開始します
本日は少し長め
464 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:53:49.08 ID:3a+zcw2Ho
菫「……よし、じゃあ、今日の部活は終了だ。皆、お疲れ様」

弘世菫のその一言で、本日の麻雀部の部活動は終了した

部室の窓から見える、赤々と空を覆っていた夕焼けが、青暗くなっている

……夜が、近づいていた

淡「ふぃーーっ。今日もつっかれたー」

ぐいっとまだまだ未成熟の身体を伸ばしつつ、淡が声をあげる

亦野「ははは……」

その声に、牌譜を読んでいた亦野誠子は顔をあげ、呆れた顔でため息を付いた……が、このいかにもやる気なさげな一年が白糸台一軍のムードメーカーとなっているのも事実。

大会が近づき何かと気張ってしまうこの時期に、大星淡の陽気な声は、ある種の清涼剤となって亦野らを癒していた……たまに、というか、しょっっちゅううざったいと思う日もあるが、だ

一軍の五人――――本日彼女達を訪ねていた一ノ瀬ことみは既に帰宅していた――――はそれぞれ帰宅の準備をしている

今日打った牌譜を鞄に仕舞ったり、使用った麻雀牌をまとめたり……

そんな中

菫「ん?」

菫「……何してるんだ、照」

弘世菫の視線の先で、宮永照は何やらロッカー……部室に設けられた、掃除用具入れの前でゴソゴソとしていた

照「ちょっと……掃除しようと思って」

今日はちょっと、時間あるし……と、小さな両手に箒を握りしめた照が呟く

菫「……照」

照「な、何?」

菫「何度も言っているが……放課後の部室の掃除は、新入生の役目なんだ。お前はやらなくていいんだぞ」

……学校生活において、部活の基本的な雑用は、新人のひよっこ一年生達が受け持っている事が多い

この白糸台の麻雀部もそれは同じで、基本的な雑用――――牌譜の整理や収集、麻雀牌の洗牌、部室内の清掃などは全て一年生の部員達がこなしている……のだが

照「でも……」

心優しい少女にとっては、将来有望な新一年生達に貴重な練習時間を削ってまで雑用などをさせたくはないと言うのが本心である

三年生になって、一軍になって、全国最強となってそれなりの時間を過ごして来た照であったが、こうして時間を見つけては自分にも出来る雑用をして――――――

菫「頼むからやめてくれ、ホント。お前が掃除したらむしろ逆に一年の仕事が増える」

照「……」

――――いなかった
465 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:54:46.56 ID:3a+zcw2Ho

この少女、宮永照

なんというか……そう

どんくさくて

どんくさくて

ものすごくどんくさいのだ

掃除をしていて、更に掃除箇所を増やしてしまうことなど日常茶飯事である

照「……わかった、帰る」

渋々と、渋々と残念そうに掃除用具を戻す照

その様子を見て、弘世菫は思う

菫(……確かに、照の言いたいこともわかる)

菫(部室の掃除だとか、牌の洗牌だとかは、ふつー自分達でするべきだ、なにも一年にやらせる必要はない)

一度、その事――――雑用問題について、弘世菫は一年生達に言った事がある

別に、私達の分の雑用までしなくていいのだ

自分達の事は自分でするし、何よりお前達の貴重な時間を私達の雑用などに使わせたくはないのだ――――と


そして、返って来た答えは――――


何をおっしゃっているんですか、貴方は


――――で、ある

曰く

私達のようなひよっこ一年が、先輩達のために雑用が出来る事に、素晴らしい幸福を覚えているのだ

曰く

あの麻雀部一軍の部室に入れる機会など、掃除の際ぐらいしかないのだ、一軍の部室は私達にとってのピッチャーマウンドなのだ、憧れなのだ

曰く

私達からその誇りある仕事(ざつよう)を取り上げるなんてとんでもない!

……。

……とにかく彼女達一年生は、反対に反対した

466 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:55:32.07 ID:3a+zcw2Ho

菫(とんだ大馬鹿共だな、あいつらは)

一年達の態度――忠誠っぷりに弘世菫は呆れ返るしかない

同時に…『だからこそ』大きな忠義を受けているからこそ、この大会では負けられない、負ける訳にはいかない――と、再び決意を固めるのである。

強く、強く……


……。


そうこうしてる間に帰宅準備は終わった。

窓等の施錠を確認した弘世が、疲れ切った右腕で部室の扉を開く

亦野・渋谷「「お疲れ様でしたっ」」

……部室を出る順番は、弘世菫と宮永照の三年生2人組が先だ

何故なら――――



「「「「「「「「「「お疲れ様でしたッッッッッッ!!!」」」」」」」」」」



――――部室横に一列に並ぶ、数十人の部員達の出迎えが、待っているからだ

一糸の乱れもなく、皆が皆同じ角度で礼をしている様は、まるで極道の親分の凱旋のよう

もはや慣れ切ったと感じている弘世だが、やはりこんな仰々しい見送りなどされては顔が引きつるというものだ

ちなみに、その弘世の横をとことこと歩く赤髪の少女も、内心モヤモヤしている

もっと気楽にしてもいいのに、とか、ちょっと大げさすぎるよ、とかだ。

……そんな感情をちらりとも貌に浮かべないあたり、やはり宮永照もこの超待遇に慣れてしまっていた

恐るべし、インターハイチャンピオン

恐るべし、全国二連覇

恐るべし、白糸台高校麻雀部・チーム虎姫
467 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:57:08.30 ID:3a+zcw2Ho







部室を出た照と菫を見送る少女達の壁は、彼女達が階下へ降りるところで漸く途切れた

あとは下駄箱へ足を運び、長い長い坂道を下り、帰るだけだ

四方山話をしながら廊下を歩く照と菫――――その二人の前に

ふらりと近づく、影がひとつ

菫「……あ」

両手を背にあて、猫背の体でひょこひょこと歩み寄る老翁――――

彼こそ、天下の白糸台高校麻雀部の顧問のひとり

照「幸村先生」

白糸台高校古典担当教師、幸村俊夫である

幸村「……ほ、ほ、ほ」

やんわりと微笑う、幸村

温厚でいて良き理解者だと生徒、教師達に人気であるのは、彼のこういった何処か安心させる貌も理由の一つだろう

実際、弘世菫と宮永照の二人は、この老夫を学校に通う一生徒として尊敬していた


いや


彼女達は、生徒としてだけではなく――――雀士としても、彼を尊敬していた


468 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:57:50.67 ID:3a+zcw2Ho

……麻雀部の顧問を務める幸村教師。当然、指導の一環として菫と照は彼と卓を囲んだ事がある



結果は――――――――完敗であった



弘世菫の得意とする射抜きは悉く回避され

宮永照の得意とする連荘波状攻撃は、勢いづく間に安手で殺される

そして……宮永照の持つ、『照魔鏡』

映した相手の全てを見透かす技を持つそれには――――何も、映らなかった

何も、映らなかったのだ


……宮永照の記憶の中で、この魔鏡が効かなかった相手

それは、対局者に合わせて打ち筋を変える、固定のスタイルを持たない雀士――――と



己と圧倒的力量差がある、強靭な雀士である



…………ある企画で、彼女はかの小鍛冶プロと卓を囲んだ事がある

元世界2位。

アラフォーだのなんだのと弄られている小鍛冶プロだが、その実力はまさに本物……その経歴は、伊達ではなかった

宮永照の照魔鏡。その鏡は彼女には――――やはり、効かなかった

何も、映らない――――――どころか

ぴきり、と

または、めぎり、と

その表面に――――ひとつの傷が、刻まれてしまった


469 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:58:50.24 ID:3a+zcw2Ho

……イメージである、虚像である彼女の鏡に、傷だのなんだのと書いてしまうのは一寸考えてみても甚だ可笑しな話だ


……。


……言ってしまえば、《照魔鏡》は『宮永照』なのだ

宮永照の、《精神》なのだ

《魂》なのだ

……。

……もし

もしも小鍛冶プロに照魔鏡を使用ったのが宮永照ではなく、そこらの有象無象の雀士であったのなら……傷が付くだけでは済まなかったであろう

おそらくは――砕け散るだろう。完璧に、粉々に。欠片も残さずに

それはすなわち、魂の、精神の崩壊――――――死だ。

麻雀による死亡事故が少なくはない『この世界』

圧倒的な力――雀力を持つ雀士は、時として対局者を屠る。

……しかし、小鍛冶健夜程の特A級雀師と対局して『傷』だけで済んだのだ。流石はインターハイチャンピオンと言ったところである


……。


……話を戻そう

兎にも角にも、この幸村という男はかなりの雀士であり、また、生徒達の良き理解者であるのだ

余談だが彼の対局では『何故か』、白が5枚――――通常よりも一枚多く白が混入しているケースが多々あるが、その原因は未だ謎である

そんな我が部の顧問の登場に面食らった菫だが、とりあえずは口を開き彼に対応する
470 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/25(火) 23:59:29.11 ID:3a+zcw2Ho

菫「……何か、御用で?」

部活の話だろうかー――基本的な事務連絡は少し前に別の顧問へと行っていたが、まだ何か話すことでもあるのだろうか

やはり、迫る全国大会の話が濃厚――――

なんにせよ、しっかりと話を聞かなければ――――

そんな思案を広げる菫――――と、照

しかし、やって来た答えは……


幸村「今日……」

菫「……今日?」

幸村「……今日……あの馬鹿二人が、来たらしいの」


……予想とは大きく異なったものであった


「「……!!!」」

驚愕する二人

まさか、もう耳に入っていたとは…

一瞬、様々な思考を張り巡らせた二人だが、それもつかの間、即座に行動を起こした

菫「……何故、それを?」

弘世菫は、言及を

そして、宮永照は――――

照「……ごめんなさい」

謝罪を

……ぺっこりんとこうべを垂れる彼女は、何処か愛くるしい、小動物のような雰囲気を持っていた

その様子を見た幸村はふたたび、ほ、ほ、ほ、と笑った

幸村「誰も悪いとは一言もいっとらんわい…」

照「……え」
471 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:00:26.89 ID:5NVRV8RJo

菫「し、しかし、仮にも部外者を部室に入れたのは紛れもない事実です」

信愛なる先鋒……プラス生意気な大将の眼に負けてくだんの不良生徒達と超天才少女を部室に招き入れたが、考えてみても、インターハイが近いこの時期に全くの部外者を招いたのは不味い事だった――――弘世菫は、今更ながらにもそう思った

幸村「構わん構わん…偶には面子を変えて、気分転換を行うのも大事じゃ……」

勿論、そう頻繁に呼ぶのは不味いがの、と、幸村

不良生徒二人の人となりを十二分に理解している彼だからこそ、麻雀部員達と彼らの接触はさして大きな問題ではないと捉えた

幸村「……それで、どうじゃった?」

菫「…?」

幸村「打ったんじゃろう?彼らと。……で、どうじゃった?」

菫「え、ええ、それは――――――はい」

菫「金髪――春原の方は、まぁ、そこまででしたが……岡崎の方は、中々打てる方でしたよ」

ウチでもそこそこ上位には入るかと、と、菫は言う……中々打てると言っても、どうしても彼と彼女達の間には途方にもない壁があるのだ、が

満更でもなさそうに朋也の事を話す次鋒の彼女を、幸村は微笑ましげに見ていた

そして、ふと

幸村「彼奴も……変わったの」

そんな事を呟いた

菫「変わった?……ああ」

ちょっと考えて、菫は合点した

話中の人物、岡崎朋也――――なるほど,確かに彼は何処か変わった

幸村「男子三日会わずんば刮目せよと言うが――――これはこれは、驚いたわい」

くつくつと含み笑いをする幸村

その眼前で宮永照は思案していた……彼の変化について、だ。


照「……」


朋也と照が初めて会った時、如何にも彼は近づき難い雰囲気を持っていた

他者を拒絶する薄煙のような物を、彼は纏っていた……
472 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:01:02.38 ID:5NVRV8RJo



……だが



ある日を境に、彼は変わった



煙は晴れ、柔らかい感覚を彼から感じるようになった

角が取れた……とでも言おうか

人を寄せ付けない気配はかき消え、濁っていた瞳には、僅かながら温かいものが宿るようになった


兎に角、彼は変わったのだ


……朋也の変化について、宮永照は特に不思議に思わない

以前の彼も、今の彼も、変わらず『岡崎朋也』であることは心で理解している。

『頭』ではなく、『心で』理解している



しかし



だがしかし



彼女にとって非常に不味い事態が発生した



それ即ち――――彼、岡崎朋也の人気上昇である


.
473 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:01:36.92 ID:5NVRV8RJo

進学校である彼女の学校では、もとより不良生徒である岡崎朋也の注目は高かった

優良生徒とは真逆の不良生徒……それは白い羊の群れの中に、一匹の黒羊が紛れ込んでいるようなものである

悪評などはどうあれ、彼は――いや、彼達は目立っていたのだ

それに、不良だと言うことに加えて岡崎朋也の容姿も彼の知名度を上げる一因となった

……ぶっちゃけると、彼の容姿は中々に整っていたのだ

所謂イケメンと言う奴である

進学校通いの前ならえ右ならえと良い子ぶった娘達が、こそこそと、きゃあきゃあと噂するのは自明の理といえよう


その、学内でもそこそこの人気を持っていた――――ところに、彼の変化である


一匹狼よろしく灰色めいた眼が、急に柔らかな温かみを秘めるようになった

何時も不満げな、気怠げな顔が、急に柔らかくなった。時折ふっ、と物憂げな容子を見せるようになった


……大星淡と駄弁っている彼がふと、何とも言えない慈愛を帯びた顔を見せる様子が、遠方から目撃されてたりもする



まぁ、つまるところ――――――ギャップ萌えである



そのギャップ萌えで――――彼の人気は爆発的に上昇したのだ。水面下で、ひっそりと!


……娘達の中には、岡崎朋也ともう一人、童顔金髪の2人組を取り上げ、あれやこれやとあまりよろしくない空想を掻き立てる者も居たが、その事を宮永照は知る由もなかった

いや、知らない方が良い

知ってはならないであろう


……ともあれ


宮永照――――と、今は別所で一年生部員と駄弁っている金髪大将は、彼の人気の上昇に対して途方もない危機感を感じていた

ライバルは一人で十分――――2人の共通見解である

いや、分かってはいるのだ。ライバルがただの一人しかいない――訳はない事ぐらい、彼女たちには……

照「……」

そんなこんなのモヤモヤとした気分を隠しつつ、照はじっと幸村の話を聴いていた

話は変わり、来たるインハイについてのようだ
474 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:02:08.43 ID:5NVRV8RJo

今年の注目すべき高校

個人戦の強敵達

闘いにあたっての、心構え……などなど

多くの話にふむふむと時折相槌を打つ2人

この老獪は一見何も考えていないように見えて、実に的確なアドバイスを彼女たちに与えているのであった

コネクションもかなりのものを持っており、機会を縫って高段位の麻雀プロを呼んだりもしている

そんな頼れる教師の話を聞きつつ、弘世菫は思案していた

……最近気になっている部活の問題について、である


菫「あの…」

幸村「ん?」


彼女、自分の思ったことはすぐにハキハキと言うタイプであるから、今回の行動も早かった


菫「一年生について、少し、話があるんですが…」

幸村「ふむ…言ってみなさい」


そして菫は、自らの心中について喋った――――そう、先ほど話した雑用問題についてだ


菫「……と、言うわけです」

幸村「成る程の……新一年達の負担を軽くしたい、と」

菫「ええ、ウチも部員の数が多い分――――どうしても、彼女たちの負担が大きいので」

初心者のうちの一番大事な時に、きっちりと練習に励んで欲しいというのが、彼女の意見だった


幸村「……」


菫の提案に、幸村はふむ、と黙り込んだ

言うまでもなく、この問題について思案しているのである

475 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:02:42.66 ID:5NVRV8RJo

……そしてややあって、その口を小さく開いた


幸村「……外部の者に頼んでみるのはどうじゃ?」

菫「……はい?」

外部の者。それは一体どういうことだ?

疑問の顔を浮かべる菫

幸村「……麻雀部とは全く関係のない、他の生徒に雑用を頼むということじゃ」

ボランティアみたいなもの、と幸村は付け加える

菫「しかし、それは――――」

確かに、他生徒に声をかければ雑用を請け負ってくれる生徒も少しは出てくるだろう――――全国一位。校内の人気は凄まじいものだ。非公式だがファンクラブも組織されている程に

けれど――――ボランティアとはいえ、自主的参加とはいえ、無関係の他生徒を雑用に狩り出すなどみっともなさ過ぎるではないか


……そのような事を言おうとした菫

だが、その前に


幸村「……丁度、雑用を押し付けても、何の文句も言われん奴らがおるし…の」

幸村が、そんなことを言ってきた

菫「えっ」

照「……?」

雑用を押し付けても、何の文句も言われない人間

つまり……どういうことだ?と、困惑する二人

幸村「……他の教師からもあやつ等を甘やかすなと言われておったし――――良い刑罰が出来おったわ」

渡りに船だの、と、幸村

しかし、やっぱり菫と照の2人には目の前の老人が何を言っているのか理解できない

幸村「彼らも、草毟りよりかは麻雀部の手伝いの方がよっぽどいいと言うじゃろうて」

何やら独り合点し、にこにこと笑う彼――――まぁ、微笑んでいるのはいつもの事だ
476 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:03:30.48 ID:5NVRV8RJo

菫「え、と、一体何を?……雑用を押し付けてもいい生徒?」

幸村「なんじゃ、理解らんのか?」

菫「ええ、まぁ…」

幸村「ふむ…」

ちら、と顔を今度は照に向ける幸村

それに反応した照は、小さく首を横に降った

幸村「2人共…………今日、部室に誰が居たか、思い出せぬか?」


ここまで言わせるな、幸村はほとほと彼女達の察しの悪さに呆れた


「「――――――あ」」


そしてようやく、彼女達は合点した

幸村が先ほどから言っている「雑用を押し付けてもいい生徒」――――――

今日、部室内に居た生徒――――――



――――即ち、岡崎朋也と春原陽平の2人である



つまるところ幸村は、「厄介な雑用など、不良生徒達に日頃の不摂生の罰としてやらせればいい」と言っているのだ

菫「し、しかし、岡崎達に雑用を手伝わせるのと言うのは彼らに迷惑なのでは…」

幸村「構わん構わん」

あれやこれやと反論を述べる菫だが、それらの一切はひらりひらりと幸村に躱されてしまう

彼も、なかなかに意地の悪い男であった

477 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:04:01.19 ID:5NVRV8RJo

そして、そんな二人と隔離された少女――――照の心中は


照(……!!!!)


歓喜で、打ち震えていた

照(…………や)

照(やった……!)

引っ込み思案な彼女は、あの元気な大将さんのようにホイホイと『彼』と気楽に、頻繁に接することが出来ずにいた

であるから、照は彼女の積極的な性格を羨ましく思っていたし、こんな自分を変えたいと思っていた

次は、どうやって会おう?

どうやって、話そう?

どんな事を、話そう?

そんな事を考える――――けれど、機会が無い

彼に近づく、勇気がない



しかし――――機会は巡ってきた!



思わぬ幸村の提案に、照は心底喜んだ――――相変わらず、顔には全く感情を出さずに、だ

『彼』自身、どうやら自分たちの部室に足を運ぶ事を是としていなかった

ああ見えて心優しい彼は、自分達との交流で、麻雀部が悪評を被る事を懸念していたのだ

しかし、これで何の遺憾も無く呼ぶ事が出来る、話す事が出来る……!


……。


……彼からしてみれば、大変な、大変な雑用を押し付けられるのだ

嫌な事だろう、面倒な事だろう、大変な事だろう

だが、それでも……それでも宮永照は、喜ばずにはいられなかった

『喜ぶ自分』を嫌に思いながらも――――やはり、喜ばずにはいられなかった……
478 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:04:38.50 ID:5NVRV8RJo


……。


……。


岡崎、朋也


彼への、雑用依頼――――――

それを本人が知るのは、翌日の事となる……


そして


その本人は、今――――――


……。


……。



俺は、今――――――――自宅へと、辿り着いていた

……古い、借家の一軒家

くたびれた横開きの玄関を開け、ガラガラと寂れた音を屋内に響かせる

そして微かに聞こえる――――ブラウン管テレビの、雑音

あの人が――――親父が、帰っていた
479 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:05:11.98 ID:5NVRV8RJo

きっとまた、眠っているだろう

ボロボロになった身体を畳に預け、テレビの雑音をBGMにして

泥のように、眠っているだろう……

心を閉ざし、倦怠を抱きながら――――




『朋也くん』




築かれたソレは……途方も無く、高い……




大きな、おおきな、壁だった――――――




.
480 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/06/26(水) 00:05:41.19 ID:5NVRV8RJo
終了。
たんぽぽ娘は面白かったです。ほっこりした
481 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/26(水) 00:42:40.41 ID:E+lJed780
482 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/26(水) 00:46:28.07 ID:Vsik1Qxfo
久々に一気にきたなー、乙でした
以降の話も楽しみです
483 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/06/26(水) 17:16:36.44 ID:54D4uigBo
じいさん強すぎワロタ
484 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/07/12(金) 00:43:43.13 ID:RCBUIFMNo
生存報告
485 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/07/12(金) 04:04:57.03 ID:iPxgUXSjo
おう
486 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/03(土) 12:56:11.97 ID:AsOV6OF8o
続き待ってんぜー
487 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/08/07(水) 18:50:17.55 ID:aS+hLfrgo
生存報告
488 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/07(水) 18:52:29.57 ID:kNWxJCyYo
よし
489 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/07(水) 21:50:44.17 ID:1XH35AmAo
まっ照
490 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sagesage]:2013/08/14(水) 19:41:16.47 ID:eooTZx/I0
もう堕ちる?
491 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/08/14(水) 19:45:00.73 ID:iGw+HG24o
>>490
>>487で生存報告来てるからあと2か月持つだろ
492 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/03(火) 11:33:03.23 ID:V356TMx00
まだか
493 :以下、新鯖からお送りいたします [sagesage]:2013/09/08(日) 14:35:21.98 ID:Ho230cbM0
舞っ照
494 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/09/14(土) 01:50:59.23 ID:XqFibih50
月曜投稿予定
495 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/14(土) 11:08:08.45 ID:AQDJPHcro
よっしゃ
496 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/14(土) 14:05:47.67 ID:w3cqAQAOo
まっ照
497 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/14(土) 23:31:57.53 ID:NKOnpv1Ko
うひょー
498 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:32:11.86 ID:IZ2ZFs0uo

居間に入る。

朋也「……」

テレビから発せられる鋭い光が、室内を薄く照らしていた

その四角い箱の中では、よく解らない評論家だか専門家だか知らない奴らが、何か討論を広げている……

そして、そのBGMを背に受けながら――――ひとりの男が横に寝転んでいた

僅かながらのか細い寝息を立て、布団も敷かずに。

……雑音を垂れ流すテレビの電源を切り、俺は彼の……親父の体を揺すった

朋也「親父…こんなところで、寝るなよ…風邪、引くぞ…」

朋也「親父…起きろよ…」

揺する力を強めるが、まだ目覚めない

どうやら相当に深い眠りについているようだ

朋也「なぁ、父さん……」

「……ぅ」

そう思ったのも、束の間

親父が目を覚ました

やがてむくりと身体を起き上がらせる

そして俺が彼から感じたのは、隠しきれないほどの倦怠感……ぼろぼろなのだ、彼の身体は

「……おお」

眼鏡を掛け直しながら、彼が俺の姿を認める

か細く、かすれた声だ
499 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:33:21.25 ID:IZ2ZFs0uo

「これは、これは……」

朋也「……」

そして親父は、父さんは――――俺の名を呼ぶ

「…朋也くん」

朋也「……っ!」

……朋也『くん』

他人行儀のその態度が、今の俺たちの間に存在する壁だった

「は、は……また、朋也くんに、迷惑をかけさせたね…」

乾いた笑みを浮かべながらのそりと親父は立ち上がり、薄暗い部屋の外へと消えて行った

カラカラと引き戸の音がする。何処かへ出掛けたのだろう…

そして、立ち去る彼を俺はただ見ているだけだった

朋也「……」

……もう今の俺には、親父への憎悪はない

学生の頃感じていた途方もない嫌悪感は――――彼女との旅で、彼女のおかげで消し去る事ができた

そう、嫌悪感は消え去り、むしろ――――今の俺は、彼を尊敬しているぐらいだ

俺にとって父さんは、誇るべき人だ

5年も彼女から目を背けていた俺なんかよりも、ずっと――――

けれど

今の彼は、疲れ切っていた

……かける言葉が、見つからない
500 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:34:03.73 ID:IZ2ZFs0uo

俺は父さんに、どう接すればいい?

自ら壊した関係を、どう直してゆけばいい?

……。

変えてゆけるのだろうか、俺と彼との関係を――――彼女の存在なしに、どうやって変えてゆけるだろう

時の流れに、頼るしかないのだろうか

嗚呼、ああ

俺は一体、どうすればいい――――――?

その問いかけに応える者は、誰もいない







翌朝

昨日の薄暗い気持ちを振り払うように、俺は学校へ続く桜坂を登っていた

本日は土曜日

進学校よろしく休日に開かれる課外授業は慣れたとはいえ――と言ってもあまり真面目に授業を受けることはないが――辛いものがある

午後には放課になるのだが、それでも面倒なものは面倒だった

坂道を登っている他の生徒達も何処か気だるそうな様子だ

そして、当たり前のように

「さっきからそんなにむすっとしちゃってさー。どうしたの?」

大星淡が、俺の横に並びてくてくと歩いていた
501 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:38:16.66 ID:IZ2ZFs0uo

朋也「……別に、どうもしてねーよ」

淡「えー?嘘っ。絶対どうかしてるよー、今日のトモヤ」

朋也「……」

淡「ねねっ、なんかあったの?相談なら乗るよっ?」

朋也「だから、何もないって言ってるだろ」

ため息交じりに俺がそう言うと、それきり彼女は何も言わなかった

俺の様子から何かを察したのか、はたまた単に興味が失せただけなのか

……途切れた話を戻そうと、話題を探す

朋也「む」

そして、俺の目が捉えたのは、登校する生徒達中の、一人の女性徒――――

「む」

朋也「おはよう。……どうした?今日は一人か?」

麻雀部部長、弘世だった

しかし、その横に宮永の姿はない

菫「ああ、おはよう。……それと、あいつは寝坊だ」

淡「寝坊?テルーが?」

菫「ついつい昨夜遅くまで本読んでたんだと」

朋也「……」

なんとも彼女らしい話だ


502 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:38:55.09 ID:IZ2ZFs0uo

菫「もう少し待てば来るはずだが…待つか?」

朋也「ああ、そうしよう」

一人でこの長い坂を登るのは、少し寂しいだろうから

……そして待つ事数分、宮永が心なし早足でやって来た

照「お、おはよう」

淡「おはよーテルー!」

菫「おはよう」

荒れた息を整え、宮永がこちらを向く

照「お、岡崎も、おはようっ」

朋也「ああ、おはよう。……読書に夢中で夜更かしとは、また、随分とお前らしいな」

くすり、と笑いつつ彼女に返答する

照「っ!」

俺のその言葉に彼女は頬を染め、うつむき、即座にジト目で弘世を睨んだ

菫「……内緒にしろ、とは言われなかったからな」

照「…ひどい」

淡「うわー、テルー顔まっかー」

……。

朋也「宮永」

照「ふぇっ?」

朋也「俺も、寝坊なんてしょっちゅうだったんだ。恥ずかしがる必要は無いぞっ」

ぐ、と拳を握りながら、俺
503 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:40:09.15 ID:IZ2ZFs0uo

ちなみに例のあの男は今日も重役出勤のようだ

照「ち、ちがっ、そういう問題じゃ――――」

菫「いや、普通に恥ずかしがる事だろうが――――ああ、そうだ、岡崎」

照「う…」

しどろもどろな宮永に被せるようにして、弘世

菫「幸村先生が、お前…と、春原に話があるそうだ」

照「!!」

朋也「話?」

菫「そうだ」

……また、何かしたのか?俺

最近は授業も割とちゃんと出てるしお呼び出しがかかるような事はしてないはずだが――――まてよ

そういえば、幸村は麻雀部の顧問の一人じゃないか

朋也「……」

おそらく……

『不良が麻雀部に入り浸るんじゃない』

……そんな話だろう

無理もない。俺達は不良で、彼女達は学校の期待を背負う部員達なのだ

朋也「わかった。伝えてくれてアリガトな」

菫「何、気にするな。それに、後で校内放送で呼び出しがかかるだろうさ」

朋也「げ」
504 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:42:32.56 ID:IZ2ZFs0uo

慣れた事とはいえ、校内放送なんてみっともなさ過ぎる

これは始業前に一度幸村に話を聞きに行った方が良さそうだ。幸い始業まで時間もある事だし

淡「ぷぷーっ、トモヤ、またなんかやらかしたの?」

口元に手を当て、大星がにやけている

朋也「さぁな、心当たりがあり過ぎてどうも……そうだ、弘世」

朋也「その事について、話とかは聞いてないのか?」

菫「!!……い、いや、知らないな。何の事やらだ」

朋也「……」

菫「ま、まぁ、温厚な幸村先生だ。不安になる必要はないんじゃないか?」

朋也「…そうかい」

淡「あやしーねぇー…」

うわずった口調……明らかに知ってそうなフウだ。

やはり麻雀部関連の話が濃厚か…?

ここはまず、もう一人の方にも聞いてみた方が良さそうだ

朋也「宮永は、何か知ってるか?」

照「!!…え、えと、それは…その…」

菫「……」

照「し、知らない…」

朋也「そうか…」

どうやら弘世の重圧で宮永は萎縮したようだ

505 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:43:11.05 ID:IZ2ZFs0uo

しかし気になるな…二人の様子から麻雀部関連の話ってのは間違いなさそうだが…隠す理由は何故?

やはり想像通り『不良』の俺達の問題か……

むんむんと考え込んでいると、宮永は申し訳なさそうにしてしょんぼりと頭を垂れた

朋也「……」

そんな彼女を見て……

朋也「それにしても」

照「…?」

俺はついつい、呟いてしまった――――

朋也「お前、本当に猫みたいだな」

照「えっ」

菫「えっ」

淡「えっ」

朋也「……」

……。

……。

……うおおおおおッ!?

朋也「す、スマン!変な事言っちまった!忘れてくれ!」

何をいきなり、口走ってるんだ、俺……!

い、いや、思わず口が滑ったというか、ぽろっとこぼれたというか…

幾ら何でも、いきなり突拍子もなく女性にに『猫みたい』とはデリカシーに欠けている……
506 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:43:42.50 ID:IZ2ZFs0uo

……とは言え、そう思わず言ってしまう程、俺の目には宮永は小動物然として映っているのだ

照「え?あ、ぁ、ぁ、ぇ?」

当の宮永は急な俺の世迷い言に困惑している


そして――――


照「っ!」

朋也「あっ、おいっ宮永っ!」


――――ぱたぱたと、坂道を小走りで駆け上がって行った

朋也「……」

淡「……」

菫「……」

宮永に置いてゆかれた三人の、静かな静寂

菫「……岡崎」

朋也「……なんだ」

菫「今のは流石に、ないんじゃないか?」

朋也「いや、えっとだな、それは――――」

淡「まぁ朋也がああ言っちゃうのも無理ないねっ!」

朋也「――っ、そうそう!しょうがないだろ!口に出ちゃったものは!」

菫「……」

朋也「……」

菫「……まぁ、後で仲介ぐらいはやってやるさ。その代わり、後は自分でどうにかしろよ」

朋也「……すまない」
507 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:44:24.21 ID:IZ2ZFs0uo

淡「で、で、それでさっ」

菫「?」

淡「ね、朋也っ、私は?私はどうっ?」

朋也「は?」

淡「私だって!……どう思う?」

朋也「いや、すまん。意味がわからん」

淡「もーっ!私も、猫みたいに見えるかって聞いてるのっ!」

朋也「……」

淡「ね、ねっ。どう?どうっ?」

朋也「ああ…」

朋也「お前も、猫みたいだよ。本当に」

淡「本当っ?」

むふーーっ、と満足げに大星は息を吐いた

……よくよく考えれば、大星もいっぱしの少女。可愛い動物代表の『猫』のように言われて気分が良いのだろう

朋也「……まったく。虎というよりむしろ猫だよ、お前達は…」
508 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:46:47.34 ID:IZ2ZFs0uo

菫「虎姫、か」

俺のつぶやきに弘世は答えた

朋也「そう、虎姫だ」

菫「マスコミ連中は私達の事を虎姫だのなんだのと言うが――――正直なところ、悪い気はしないな」

朋也「そんなもんなのか?」

確かに普段から『お見せしよう!チーム虎姫の打筋を!な』んて言ってるんだ。気に入っていない訳がない

菫「そんなもんだ」

淡「虎だぞー!がおーっ!……どうっ?怖い?」

朋也「成る程…スゲー怖いな……それで、弘世」

菫「ん?」

朋也「どうしてお前らは『虎姫』なんて呼ばれるようになったんだ?」

想像するに、宮永の連荘や渋谷の役満のような圧倒的高火力を指してだろうか

菫「お前の想像通り、ウチのアレや尭深、そして非常に複雑だがそこの馬鹿の高火力麻雀を指して言われるようになったんだがな――――それともう一つ、理由があるんだ」

朋也「理由?」

淡「え、なにそれ?初耳なんだけどっ!」

菫「……虎姫というのは、ある都市伝説になぞらえて付けられた名前なんだよ」
509 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/09/16(月) 17:48:24.20 ID:IZ2ZFs0uo

淡「都市伝説?」

朋也「……一体どんな?」

菫「ああ、それは――――『暴虎』と呼ばれる雀士の都市伝説でな」

朋也「暴虎…」

淡「暴れるトラ?」

ずいぶんと仰々しい呼び名だ

菫「何でも、年齢性格諸々不明の『最強』の雀士らしい。

あの小鍛冶プロと同等…いや、それ以上の強さのな。

噂じゃ幽霊かも、なんて言われてる」

朋也「……」

元世界ランク2位の小鍛冶プロ以上――――成る程、確かに凄まじい

淡「ムムム、この大星淡サマを差し置いて『最強』だなんてっ!失礼しちゃうなっ!」

……。

朋也「とにかく、その『暴虎』ってのにあやかって、『虎姫』ってのが付けられた訳だな」

菫「そう言うことだ」

朋也「……今更だけど、随分と期待されてるんだな、お前達」

菫「当たり前だろう?何せ念願の全国三連覇がかかってるんだ」

淡「まっ!この私がいるから三連覇なんて余裕のよっちゃんだけどね!」

朋也「……はは、まったく、頼もしい限りだ」

ひょっとしたら本当に、彼女達は『インターハイ三連覇』という偉業を達成するのかもしれない

確かな期待が、俺の胸の中にあった

……。

朋也「……さて」

朋也「それじゃ、今日も一日……元気に頑張りますか」

淡「おーっ!」

そして俺たち三人は、長い長い坂道を登り始める……

……。

……。

……。

朋也「……あっ」



宮永に、どんな言葉を、かけようか



.
510 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/09/16(月) 17:49:23.08 ID:IZ2ZFs0uo
終了

修正箇所
>>392面前ツモ忘れ。失礼しました
511 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 19:01:56.78 ID:CbktTcTXo
乙ー
512 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 19:38:46.33 ID:c27nn01DO

おかえり
513 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/16(月) 21:37:39.85 ID:IllMGpivo

テルーあわあわ可愛い
514 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/17(火) 09:23:29.91 ID:9qwOTyfR0
乙ヤデー
515 :以下、新鯖からお送りいたします [sage]:2013/09/17(火) 19:38:48.31 ID:5O1FbzRHo
やっぱり面白い
516 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/01(火) 08:21:34.64 ID:G6Q/ym1x0
最高・・・それしか言葉が出ない・・・

けどっ!もし岡崎が渚を忘れて誰かとラブラブするなら僕はショックで気絶するだろう!
517 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/01(火) 16:30:16.16 ID:mq8PR1U30
>>516
清澄高校麻雀部所属古河渚とかやるんだろどうせ
518 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/06(日) 20:30:54.47 ID:cKDewuIYo
傀さんの影響がこんな所まで…
519 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/12(土) 02:03:27.93 ID:+ryifmLv0
渚は留年してるから大会は出場できないんじゃ
体弱いから京太郎みたいにマネージャー業やるのもなぁ
520 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/12(土) 09:46:58.35 ID:ullh+J/io
テルー
521 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/28(月) 01:18:04.13 ID:AqBN5dxjo
私待つわ
522 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/10/31(木) 16:58:12.96 ID:pfW2cuxjo
寒い日がやってきます。生存報告です
遅筆で本当申し訳ない
523 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/31(木) 17:33:20.94 ID:3joIcSO+o
生存報告乙です
524 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/10/31(木) 20:14:43.65 ID:i43bC0qxo
舞ってる
525 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/12(火) 03:10:09.25 ID:40pNmaB6P
待ち
526 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2013/12/01(日) 01:28:44.10 ID:m88Dlsbao
生存報告
527 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/01(日) 02:15:08.61 ID:3ATCCXm20
久しぶり
528 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/02(月) 16:46:07.28 ID:XQtc65+qO
待ってる
529 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/02(月) 19:57:17.03 ID:iuZ+kph6o
楽しみ
530 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/14(土) 16:07:54.38 ID:Y5jufIsno
まだかなー
531 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/12/20(金) 01:43:33.84 ID:TYBHwwjV0
突発小ネタ。次より行きます
532 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/12/20(金) 01:45:14.68 ID:TYBHwwjV0
「トモヤって身長いくつ?」

「は?」

突拍子もなく言われたその質問に、岡崎朋也は思わず間抜けな声を上げた

「だから、身長いくつ?」

「質問の意図が読めないんだが……何故そんなことを聞く?」

ため息交じりで彼は質問をしてきた張本人――――白糸台高校麻雀部大将を務める少女、大星淡に尋ね返す

部室内は先ほどまで熱い戦いが繰り広げられていたが、今は休憩中である

亦野誠子は釣り雑誌を読み、渋谷尭深は茶を啜る

弘瀬菫は牌譜に目を通し、宮永照はお菓子を頬張り読書にふける

そして大星淡はいつもの様に彼へとちょっかいをかけるのであった

「ほらっ、こんなの見つけてさ」

ひょい、と淡は手に握ったスマートフォンを朋也の顔に突き付けた。可愛らしくデコレーションされたソレの画面を見て、彼は目を丸くする

「これは…ツイッターか?」

画面に映されたのは、数億人のユーザー数を誇る超巨大ネットワークコミュニケーションツールであった。スマートフォンはおろか携帯電話すら所持していない彼であったが、その存在は知っていたのだ

「で、これがどうし…」

「文章読んで!文章!」

淡の催促に、朋也は再び視線を画面に目をやった

「……かなりあほらしい文章なんだが」

画面に映されていたのは、あるユーザーの呟き

5行足らずの単語の羅列に、彼はため息をついた

なにせその文章が


理想の身長差
キスしやすい身長差12cm
理想のカップル身長差15cm
合体しやすい身長差22cm
ぎゅっとしやすい身長差32cm


と言う、正直反応に困る内容だったからである
533 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/12/20(金) 01:48:45.72 ID:TYBHwwjV0

「えー、だって素敵じゃん?」

「そもそも、俺の身長を知ってどうなるってんだよっ」

「参考にすればいいじゃん!参考に!」

「おいお前ら、さっきから騒がしいぞ」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人に、注意の声が入った

白糸台高校麻雀部部長弘瀬菫のものである

二人の間に入った彼女はさっと彼らの方に向き直り、一体何をしているんだと訪ねた

「これだよっ」

十数秒前と同じようにして、淡は菫にスマートフォンを見せる

そしてまた十数秒前の朋也と同じような顔を菫は浮かべた

「な?反応に困るだろ?」

「ああ、まったくだ」

またこのバカは馬鹿なことを、と、頭を抱える弘瀬……だったが

「で、いくつなんだ?」

「は?」

一転、攻勢に出た

「いくつなんだ?」

「……」

「ほら、この際だ。知りたくなってな」

まさかの裏切りに顔を歪める朋也

「…173」

「173?」

半ば諦めて口走った彼のその数字に、話の元凶である淡が反応した

「それって菫より低いじゃん!」

「え?……んむ、言われてみればそうだなァ」

ちらと菫の方を見やる朋也

確かに彼女の方が僅かながら背が高かった

「まぁ俺の方が低いからってどーだこーだ言うもんじゃないだろ」

「ああ、岡崎の言うとおりだな」

くだらない話だ、と一笑に付す二人

「それで?俺の身長を知ってどうするんだ?身長差でも調べるのか?」

「もちろん!…えーっと、私が156cmだから…」

「17p差だ」

ひ、ふ、み、と指を折ってゆく淡に即座に助言する菫

案外この女、乗り気だった
534 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/12/20(金) 01:49:18.96 ID:TYBHwwjV0

「かすりもしないな」

「ああ、かすりもしない」

「うー…なーんかちょっと悔しいなっ!」

「いや、悔しいってお前…

自分とお前の間柄でキスだのカップルだの身長差がどうのこうのと
言って、もし嵌ってたらどうするんだ

気まずいッたらありゃしないじゃないか」

「え?そうかな?」

「普通そうだ」

どうも大星淡は自分にフレンドリーすぎやしないかと、そんなことを思う朋也。

だが彼は知らない

意外と彼女がマジに考えていた事に


「ほらっ、こんな話題はやめにして、練習するぞ練習っ!」


ぱんぱんっと手を叩きながら放たれた菫の鶴の一声に、悪友二人組は動かされるしかなかった

さってと、そんじゃいっちょ行きますか。と、再び雑用作業を始めるべく気合を入れなおす朋也

そして彼は思う


『彼女』とも、かすりもしなかったな。と


「ははっ。


……。


……笑える話だ」

「?どうした岡崎?」

「いや、なんでもない、こっちの話」

自分の呟きに反応した部長の声をはぐらかし、彼は自らの仕事へと没頭してゆくのであった

そんな部室の片隅で。


渋谷尭深は頬を染めつつ呟いた

22cm、と。


宮永照も呟いた

1cmは誤差、と。


そして


亦野誠子は今日もトんだ
535 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2013/12/20(金) 01:51:58.50 ID:TYBHwwjV0
以上。小ネタでした

以下、身長差調査結果

岡崎朋也 173cm

キスし易い身長 12cm

161cm 紫芝 菜月  狩宿 巴  辻垣内 智葉  南浦 数絵  小川 セリカ  戒能 良子  坂上智代

+1 杉乃 歩 鶴田 姫子  亦野 誠子  椿野 美幸  八木原 景子  門松 葉子  村吉 みさき

-1 江口 セーラ  宮永 照  巽 由華  堂山 ゆかり  一之瀬ことみ 藤林杏

185cm Megan Davin



理想のカップル 15cm

158cm 染谷 まこ 福路 美穂子 雀 明華 百鬼 藍子  能口 彩花 佐々岡 よし子

+1 白水 哩 水村 史織 大滝 桜子 宮沢有紀寧  藤林椋

-1 新井 ソフィア  車井 百花  森合 愛美  土屋 由理



SEX 22cm

151cm 花田 煌 渋谷 尭深 石戸 明星 獅子原 爽 依藤 澄子 志崎 綾 瑞原 はやり

+1 春原芽衣 松実 玄 二条 泉 桐田 凛

-1 伊吹風子 蒲原 智美 熊倉 トシ 小走 やえ 永森 和子



きゅっとしやすい 32cm

141cm 該当なし

+1鷺森 灼 

-1 Nelly Virsaladze
536 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 01:56:25.61 ID:8o5zT0Qno
乙です〜
小ネタ嬉しい
537 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/20(金) 02:18:11.18 ID:hfHVfuPRo

たかみーカワイイ
538 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/20(金) 12:08:07.45 ID:mzMo66uV0
たかみーエロい
539 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/21(土) 09:48:24.57 ID:HiCyZeMt0
投稿キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!


540 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2013/12/24(火) 22:30:19.12 ID:iSqZcxTy0
ダヴァン、ワロタ
541 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/12/24(火) 22:48:07.96 ID:IJMnQUolo
てるーの負け惜しみっぷりよ
542 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/01/02(木) 12:13:43.11 ID:lpEwyq+t0
あけ
おめこ
とよろ

今年もよろしくお願い致します
543 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/02(木) 13:09:57.39 ID:MZtteyPPo
あけおめです!
544 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/01/28(火) 02:47:36.53 ID:iGI09gs+0
生存報告
545 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/28(火) 03:02:29.95 ID:RBha197+o
把握
546 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/28(火) 19:42:35.93 ID:Mv4rnD3To
生存報告乙
舞ってる
547 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/02/16(日) 23:12:45.02 ID:UlkBWbiP0
生存報告
548 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/16(日) 23:15:22.90 ID:DPQfLJjGo
待ってる…
549 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/16(日) 23:31:37.17 ID:dmB9ULts0
待ってます!
550 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:03:09.45 ID:rojAyqUC0
開始
551 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:04:11.49 ID:rojAyqUC0
「失礼します」

始業前

俺は数回のノックののちに、閉ざされた扉を開いた

教室の――――ではなく

「む……岡崎か」

「よう、幸村先生」

――――生徒指導室の扉を、である

「弘世に、あんたが俺に話があるって聞いてな。全校放送で呼ばれるのも面倒だし、とりあえず来た」

「成る程、の。まぁ、正確にはもう1人呼んだんじゃが」

「…あいつは、いつも通りっすよ」

「全く、溜息が出るわい」

やれやれと言葉通りに幸村は溜息をつく

何時ぞやのようにあの馬鹿を叩き起こして来れば良かったか。

生徒会長様が阿保の為にまた出張ってくるのも馬鹿らしい話だし――――ま、この話は置いておこう

「それで、爺さん。話ってなんだ?」

「話?……ああ、それはじゃな」

始業が迫っていることもあり、彼は簡潔に俺に伝えた

「つまり…なんだ、また雑用って事か?日頃の不摂生の罰に」

「そう言う事じゃ」

「ふーん」

草むしり、教室清掃、諸々の教材運搬、俺にとっては相当の過去の事なのでおぼろげにしか覚えてないが、在学当時は結構な数の雑用に駆り出されていた記憶がある。
552 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:05:29.01 ID:rojAyqUC0

「で、どんな雑用だ?」

「麻雀部」

「成る程、麻雀部ね、はいはい………………え?」

……麻雀部?

「ウチも相当な数の部員がおるからの。一年生が練習と並行してやるより、完全な雑用担当の人員がおる方がよいと思うてな」

「……」

……今朝の弘世と宮永の言動の原因はこれか

どうせならあの時俺に話してくれればいいものを――――いや、そう言えばあの場にはもう1人の金髪のアレが居た。

騒ぎになるのも面倒だったのだろう。

流石弘世、いい判断だ。

だが、しかし

「……」

「岡崎?」

「え、あ、ああ。麻雀部の雑用?……一応理解はしたけど……いいのか?」

「?何がじゃ?」

「『不良』の俺達が『麻雀部』に関わってもいいのかって事だよ」

「……」

この際だし、かねてから懸念していた事を打ち明ける

そして、ふぅ、と幸村は一息

「なんじゃい、そんな事か」
553 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:06:28.89 ID:rojAyqUC0

「は?……いや、『そんな事』ってな。ほら、あれだ、俺たちみたいな不良が、天下の麻雀部と関わったら色々とマズイんじゃないのか?」

「……」

「マスコミとか、校内とかで、あるだろ、ほら、風評的な奴が」

「かっ、かっ、かっ、かっ」

「いや、なに笑ってるんすか」

「くくく、お前たちが『不良』?確かにそうじゃが…なに、他校の奴らと比べたら、お前らなぞ『おままごと』みたいなもんじゃ」

「……」

「そんな滑稽な杞憂をしとるとは……ほほほ、ちゃんちゃら可笑しいわい」

いや、こっちは真剣に言ってるんだが

「とにかく」

「あ、はい」

「雑用、頼んだぞ?」

「……」

「返事は?」

「……了解」

こうして

俺こと岡崎朋也と、春原陽平こと、未確認生命体AHO-HARAに、麻雀部雑用係の役職が追加された

そして時間は過ぎ去り――――本日の授業が終了した

「それマジ?」

「ああ、マジだ」
554 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:07:39.75 ID:rojAyqUC0
「え、雑用すんの?僕たちが?麻雀部の?マジかよ岡崎っ!」

「だからマジだって言ってるだろ」

あろうことか4限の開始と同時に学校にやってきた春原に、俺は事の顛末を語った

「いやいやいやいや……え?本当なの?マジなの?」

「……なあ、春原、2度同じ事を言わせるなよ。一度でいい事を二度言わなきゃならないってことは、そいつが頭悪いってことなんだからよ――――――あ!すまん!頭悪かったわ!お前!」

「あんためちゃくちゃ失礼っすね!」

ってか岡崎もどっこいどっこいだろ!?とツッコミが入る

「とにかく俺とお前が、麻雀部の雑用係に任命されたわけだ」

「う、うん。それはわかったけど。それで、いつからなの?」

「いつから?」

もちろん決まっている



「今日からだ」






どうやら話はすでに麻雀部員達に行き渡っていたらしく、早速俺たち二人には雑用が押し付けられた

資材の買い出し、牌磨き、牌符の整理などなど…流石は全国トップクラスの学校。

部員の数に比例して雑用の量もそれはそれは凄まじい事になっている。

ひーひーと肩で息をする金髪が視界の隅で蠢いているのを感じつつ、俺は何とか命じられた仕事をこなしていった。

そして今は麻雀部2軍の部室で、必死こいて汗水を垂らしている。

3軍、4軍と多くの部員を持つ麻雀部の2軍なだけあって、周囲から伝わる熱気の量は半端じゃない。

きっと、虎の名を冠する彼女達も今頃血みどろになって部活に励んでいる事だろう。

「やっはろーっ!トモヤっ!」


――――――と思っていたが、違った。


「……」

「…え、何その顔?私の顔になんかついてる?」

「大星」

「ん?」

アホみたいな挨拶と共に2軍の部室に入ってきた大星を、俺はため息で迎えた。

急な乱入者に部室内はざわめく――――事もなく。

ただただ眈々とあちらこちらで闘牌が繰り広げられている。

どうやら彼女の襲来は日常茶飯事らしい。
555 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:09:22.15 ID:rojAyqUC0

「お前、練習はどうした?」

他の部員たちに笑顔で挨拶を交わしていた大星に、俺は話を振る。

「えっ?……あー、ほら、あれだよ!あれ!」

また何か企んでいるのだろうか。

「用がないなら1軍の方に戻った方がいいと思うぞ」

「いやいやちょっとお手伝いをね!」

「手伝い?」

驚いた。まさか彼女の口からそんな単語が出るとは……だが

「生憎、お前にやらせることなんて何もないが」

「えーっ!そんなぁー!」

「ほらっ、冷やかしなら帰れ帰れっ」

しっ、しっと手を払う俺だが、彼女の方はそんなものどこ吹く風、そのまま2軍の少女達の対局を観戦し始めた。

一軍部屋に不在の彼女に頭を抱える部長殿の事を考えると、思わず溜息が出てしまう。

「まぁ、ひとしきり見ればあいつも帰るだろう」

そう決まりをつけた俺はひとまず金髪のアレを意識の外に放り、再び自分の仕事へと意識を集中させた。

だが、その集中した意識も、十数分ののちにあっけなく霧散する。

――――突如として湧いた部室のざわめきによって。







打牌の音が響く部室に、部員達のどよめきが走った。

牌譜に視線を落としていた俺は、一体何事だ、と顔を上げる。

卓に意識を集中していた部員達は皆、部室の扉に視線を向けていた。

静かに音を立てて開かれた扉。

そこに立っている――――赤髪の少女

「宮永?」

部員達の憧れ、全国の頂点がそこに立っていた。

「っきり……!!」

「いいから」

起立の号令をかけようとした部員を、宮永は抑える。

そして、そのまま続けて、と一言。

すると直ぐに張り詰めた空気は掻き消え、各々の部員が繰り広げる対局の緊張感が部室を覆った。

と言ってもあの宮永照が訪ねて来た事に動揺しているのか、ぎこちない動きで打牌してゆく少女達の姿がちらほらと見受けられる。

一瞬にして部室の空気を一変させた当の本人は、麻雀に励む部員達の姿をぐるりと見回した後、とてとてとこちらに近づいて来た。
556 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:12:44.73 ID:rojAyqUC0
「よう、どうした。あいつでも呼びに来たか?」

突き立てた親指を、麻雀観戦に興じている大星に向けながら、俺。

うん、そんな感じ。と小さく返し、宮永は俺の横に立った。

彼女の瞳は、じっと俺の手元を覗いている。

先ほどまで整理していた牌譜だ。

整理した牌譜をコンピュータに打ち出して行くのも雑用の仕事であるが、今日のところはこの膨大な量のアナログ媒体達をどうにかこうにか整えてゆく事しか出来そうに無い。

……今日のところは、と言ったが、一体いつまでこの仕事は続くのだろうか。

「やっぱり2軍なだけあって、打牌はすげーしっかりしてるな」

「皆基礎はちゃんと出来てる。立派」

先の事を考えるのは辞めにし、妙にぎこちない沈黙を払うべく俺は宮永に話を振る。

後輩達の評価をつらつらと述べる彼女はどこか自慢げだ。

そしてその後数分間に渡り俺たち2人は牌譜を話題に話を交わした。

この局にこの人がこう打ったのはこうこうこういう思惑があったからだ、とか。

この時にこの打ち方はちょっと悪手。こう打った方がよかったかも、とか。

リーチの捨て牌はこうこうこうだから、予想出来るあれそれそういう理由でこんな待ち。だからここはこの牌を打った。とか

宮永の説明は明確な理論に基づくもので、至極理解がし易かった。

流石は全国一位。当たり前の話であるが、強固に固められた基礎の土台の上に、彼女の強さが築かれているのだ。

そんな宮永の説明を注意深く聞く俺の耳に、わっ!としたどよめきが入り込んで来た。

察するに、どうやら何処かの卓で、誰かがいい手を和了ったようだ。

「何だ…?」

もてはやすかのような、歓声。

きゃあきゃあとした声達を意識の端に留めつつ、俺は宮永の講座に再び耳を傾けた。

…だが



「わぁっ!すごいっ!」



その言葉に、俺の全神経は反応するより他なかった。



「渚ちゃん、また一位っ!」






「!!!」

反射的に。

その音源に俺は顔を向けた。

宅を囲む部員達が、一人の女性を賞賛している。
557 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:14:48.12 ID:rojAyqUC0


……。



「……彼女は?」

「え?」

隣に立つ宮永に尋ねる。

「…渚さん?」

ぼそりとしたつぶやきのような声だったが、ちゃんと伝わったようだ。

「一年生の子だけど、実力はちゃんとある。……来年は1軍も狙えると思う」

水泳部と兼部しててあの強さだから、すごい。と、宮永。


「へぇ…」

俺と宮永の視線の先、にこやかに笑う件の少女…

その、容姿は。



『彼女』とは、似ても似つかぬものだった。







牌譜整理の際にその名前は目にしていたから、『彼女』では無い事は初めから分かっていた。

そう、わかっていたのだが……


『なぎさ』


……耳に侵入するたった三文字のその単語に、俺の全神経は過敏に反応した。
558 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:16:03.19 ID:rojAyqUC0

「……ん?」

複雑な心境で『彼女』の名を持つ少女を見つめていた俺だが、ふと、その少女に近づく金髪生徒Oに気づいた。

ふ、ふふふ、ふふふ、とこちらまで聞こえるような声の大きさで含み笑いをしている。

「あっははははは!見ぃてたよルーキーーー!!」

ずびしっ!と少女に指を突きつける生徒O……もとい、大星。

お前もルーキーだろう、と言うツッコミが口元まででかかったが、なんとか飲み込んだ。

「中々やるじゃない!」

それにしてもこの一年坊、かなりの上から目線である。

「ちょっと時間かかったけどね!」

どうやら自分ならもっと早く他の家をトバして終わらせていた。と言いたいらしい。

いよいよもってアレな奴だ。

今更の話だが。

「トモヤぁ、テルーっ!」

「え?」

「あ?」

少女に喧嘩?を売っていた大星が、急にこちらに手招きしてきた。

「この娘と一緒に打とうよ!今すぐ!」

……はぁ?

「イヤ、宮永は…と言うよりお前もだけど、1軍の練習あるし、俺は雑用だ」

「ふーん…」

大星らしい突飛な提案に困惑したが、気を取り直して辞退の意を伝える俺。

だがそこで引き下がらないのが、大星が大星たる所以だ。

「で、それが何か問題?」

俺の提案はやはりと言うかなんと言うか、あっさりと却下された。

王道を往く大星淡の独裁政権は半端ではなかった。

「おい、宮永もなにか言ってやれよ」

しかしここで終わる俺ではない。

即座に宮永にヘルプを要請。

真面目な彼女のことだ、きっと大星を説得してくれるだろう。


――――――と思っていたが、違った。


視線の先に彼女はいなかった。

首を動かし、大星が居座る卓を見る。

……なんとそこには、準備万端と言わんばかりにスタンバっている虎姫様の姿が!
559 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:17:28.44 ID:rojAyqUC0


「……」


で。


「ぐわああああああああああ!」


対局は終わった

もはやいつもの事のように、俺のトビ終了だ。

このやられ役、俺よりもアホ原の仕事のように思えるが……負けるものは負けるのだ、仕方が無い。

トップ終了の宮永、2位の大星、そして3位の…渚と呼ばれた、女生徒。

皆すっきりとした顔つきだ。

皆が皆麻雀という競技を楽しんでいるのだろう。

その姿が俺には眩しく見えた。

……。

……とまぁ、そんな訳で。

2軍の生徒の面倒を見る宮永と、やたらとちょっかい(?)をかけて来る大星を尻目に、その日の俺の仕事はつつがなく終了した。


そして、部活が終わった後……


いつの日かと同じように、俺と宮永、大星の3人は学校の坂道を下っていた。

ちなみにもう一人の金髪のあれは「はやりんが僕を待っている!」などとわめきながらそそくさと帰宅した。

なんともめでたい奴だ。

「ふーっ!今日も一日頑張ったーっ♪」

ぐいっ、とその体を伸ばしながら大星が言う。

実にいい笑顔だ。
560 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:19:42.24 ID:rojAyqUC0

「…明日は大人しくしてろよ。俺だって仕事があるんだ」

「おやっ?トモヤくん、さっそく雑用根性出してますなっ!」

感心感心!とこちらに笑いかける彼女。

そんなからかいを俺は勝手に言ってろと受け流す。

「しかし…」

「ん?何かな?」

「今日俺達と一緒に打ったあの子、かなり強かったな」

「渚ちゃんのこと?」

「ああ」

「ふふ、まぁこの大星淡サマの敵ではなかったけどね!」

胸を張る大星。

この少女は本当に、ふんぞり返る姿が似合っている。

「あの子、きっと強くなる」

「……へぇ」

高校生最強の彼女の太鼓判。

くだんの女生徒、やはり相当打てる奴だ。

1年で白糸台の2軍に入っているだけの実力はある……

「……」

ぼんやりと心に浮かぶ、あの一年の少女。

『彼女』と同じ名前を持つ、あの少女。

大星と同じ、黄金色のその髪が、やけに俺の心にこびりついていた……


「――――さ」


無意識の内に呟いたその名前は、誰の耳に届く事もなく……空へと溶けていった。
561 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/02/17(月) 00:22:21.04 ID:rojAyqUC0
終了。
遅れて申し訳ない
562 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 00:27:31.88 ID:XLcXYfKAO
お久しぶり乙
やっぱ渚はいないのか
563 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 00:31:54.79 ID:mttbBUZMo
乙です
564 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 00:35:03.05 ID:RhsPMwuLo
乙ですー
565 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/02/17(月) 00:57:48.28 ID:BaZQGwCm0
乙でした!
566 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 01:27:49.93 ID:u0Vc2qAEo
乙です
しかしこのあわあわはコンクリートの柱をぶん回しそうな性格してるな
567 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/02/17(月) 02:01:41.86 ID:rojAyqUC0
>>566
もちろん岡崎くんに盛大な愛の告白をしながら核弾頭を超電磁砲でぶっ放す事態は起こりませんので御安心を。

(毎話毎話ネタを)挟まずにはいられないな…いや、ええ本当、もう少し配慮します。ええ


乙ありがとうございます!
568 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/17(月) 02:14:24.41 ID:/lUnJXkko
投下来てたー!乙です!
569 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/03/02(日) 23:54:35.02 ID:9ZQUlHgW0
祝復活
570 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/02(日) 23:56:01.08 ID:0L0Q8C5fo
待ってる…
571 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 00:01:34.65 ID:CeVIDo3xo
来たか……!
572 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 20:28:22.97 ID:Kzf45tdAo
しかし面白いな
雰囲気がすごく本物っぽくて読んでて楽しくなる
573 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/16(日) 23:40:59.28 ID:QGcIcv320
age
574 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/17(月) 02:35:59.21 ID:GOImVetk0
annpann
575 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/17(月) 02:55:02.67 ID:A1Q7i/JEo
sageようぜ
576 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/17(月) 18:45:12.17 ID:GOImVetk0
矢田
577 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:11:17.06 ID:AoKdJ5c80
開始。
578 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:13:45.12 ID:AoKdJ5c80

雑談を交わしながら帰り道を歩く。

そして気づけばあたりはすっかりと暗くなっていた。

星がよく見える、綺麗な夜空が広がっている

「じゃっ!私はここで!またね!トモヤ!テルー!」

交差点の分かれ道で、大星が別れを告げた

「おう、また明日な」

「また明日」

ばいばい、と小さく手を振る宮永

大星もぶんぶんと手を振り返す

そして彼女は駆け出し、夜の闇の中へと消えて行った

「…いつも元気いっぱいだな、あいつは」

ほんの数ヶ月前まではまだ中学生の少女

溢れ出るエネルギー、と言う奴だろうか

彼女のはつらつとしたその姿が、やけに眩しかった

……考えてみれば、俺の心の年齢は20代後半

もう立派なオッサンだ。

青春まっさかりの彼女を眩しく感じるのも無理はない。

……。

……妙に、虚しくなった。
579 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:15:23.32 ID:AoKdJ5c80





そして。


大星と別れた後、俺と宮永の二人は帰路を歩いていた。

交わされる言葉は、少ない。

少し、気まずい。

……だが。

この気まずさ…この沈黙……決して悪くはない。

夜の静けさの中に響くただ2つの足音が、なんだか心地良かった。

そして、何故だろうか。

先ほどから妙に既視感を感じるのだ。

「……」

……ああ、そうだ。

俺は歩いていたのだ。

この道を、何度も何度も…

『彼女』と2人で…

「……」

ある時は今日のような、星空が綺麗な夜だった。

ある時は街がオレンジ色に染まった、夕方だった。

雨の日もあった。

風の強い日もあった。

太陽照りつける、夏の日もあった。

……懐かしい、記憶だった。

「岡崎」

「ん?あ、ああ、なんだ?」

想い出に浸っていた俺だが、隣を歩く宮永の声によって記憶の海から這い上がった

「……」

彼女の方に向き直ると、何やら立ち止まり、顔を伏せている。

もごもごと口を動かしているが、声が小さすぎて何を言っているのか聞き取れない

「おい、どうした?」

「!」

このままじゃ埒が明かない、と、俺は宮永に尋ねる
580 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:16:21.51 ID:AoKdJ5c80

すると彼女は、その小さな肩をぴくりと揺らしーーーー伏せていた顔をあげた

「「……」」

互いの視線が、ぶつかる

一瞬の、沈黙……そして

そして彼女は、その小さな唇を震わせて……言った

「つ」

「つ?」

「つ、月、が…綺麗です、ね……」

「……」

急にかしこまって、どうしたのだろうかと構えてみたが…

ただの世間話だった!

しかもなんだか、変に改まっている。

察するに彼女の方も、この2人きりの状況にぎこちなさを感じていたのだろうか。

「ん、ああ、そうだな…」

兎に角。

彼女から振ってくれた話だ。無視する訳にもいかない

視点の先を彼女から動かし……夜空へと向ける

「確かに…良い、月だな」

そこには、見事な月が浮かんでいた

優しく輝く月明かりが、俺達を包んでいる

「……」

……。

……ああ。

確か前にも、こんな月を見た事があった…

こんな月を、見上げた夜があった……

『彼女』と……

ふたりで……
581 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:17:04.69 ID:AoKdJ5c80





『朋也くんっ。お外を見てください』

ある夜、彼女がそんなことを言ってきた。

オンボロのアパート。そのベランダに乗り出して、柔らかな声で俺を呼んでいる。

『なんだ、どうしたんだ?』

風呂あがり。バスタオルで髪を揉み拭きながら、俺は彼女のそばに寄り添った

そして、彼女と同じように……空を見上げる

『おぉ…』

綺麗な満月が、夜空に浮かんでいた。

『綺麗な月だなぁ』

『ええ、凄く綺麗です……本当に』

お前の方が綺麗だぞ。

なんてキザなセリフは、とても言えない。

ただ彼女と過ごす時間が、たまらなく幸せだった。

『『……』』

そして二人、同じ夜空を見上げる……

今、この瞬間。この空を見ている人は何人いるだろう

そんな事を、考えながら。

『……朋也くん』

『ん?なんだ?』

夜空の星々、月の美しさ。

この景色を彼女と共有できること、その幸福を噛み締めていたのだが……不意に、彼女がこちらに向き直って、ゆっくりと口を動かし始めた

『朋也くんは、お月様です』

『えっ?』

……。

……いやいやいやいや

また急に何を言ってるんだこの娘は。

『ほら、名前にもちゃんとお月様が入ってます』

『……確かに、二つも入ってるな』

岡崎『朋』也。

今まで特に意識していなかったが、確かにそうだった。
582 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:18:21.87 ID:AoKdJ5c80

『そして、朋也くんがお月さまなら……』

ふぅ、とそこで彼女は一呼吸付き、そっと顔を伏せた

『私達は、海です』

膨らんでいるお腹を撫でながら、彼女はそう言った

『朋也くんは、私達をお空から見守っているんです』

『見えなくなる日もあります。でも、月はいつも、あの空にありますから…』

『……』

彼女のその言葉に、俺は何も言わず……ただ、肩を抱き寄せた。


そんな、冬が近づく、ある秋夜の出来事ーーーー


「……」


……彼女と歩いた夜道。

夜空に浮かぶ月。

その二つが、この俺を想い出の海に引きずり込んでいた。

……わかっているのだ。

いくら彼女を想った所で、二度と会うことが出来ない事は。

だが

それでも

思い出さずには、いられない。

……。

……ああ。

お前は俺を、月だと言った。

そして自分は海だ、と。


けれど、俺にとってお前は……海じゃない。


俺が月ならば、お前は……太陽だ。


空にさんさんと輝く、太陽だ。

太陽の光で、月は照らされる。

お前の光がなければ、俺は輝けない。
583 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:19:02.11 ID:AoKdJ5c80

……。

……なぁ

もし、もしも、奇跡が起こるのなら……

俺はお前に、会いたい。

手を握って、頬をさすり、髪を撫で、抱きしめたい。

もし再び、お前に会えるのなら…

もう…

俺は…

俺は……!


「俺は…死んでもいい……!」


「え?」


…真横から聴こえたその声で、俺は再び想い出の海から這い上がった


「「……」」

……しまった。

感極まって、思わず声に出していた。

「あ、ああ、いや、悪い。なんでもない」

なぜか妙に気恥ずかしさを覚え、そう慌てて付け足す

「う、うん…」

キョトンとした様子で、宮永。

……。

……いかん。

つい、感傷的になってしまった。

彼女と歩いた道、そして月。

この2つは俺を想い出の中に没入させるに十分な要素だった。

……のだが。

これは流石に、のめり込み過ぎだ。

近頃どうも、物思いにふけることが多くなっている。

随分と年寄り臭くなったのだろうか、俺は。
584 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:21:19.24 ID:AoKdJ5c80

……いや、それとも

ただ単に、女々しい人間なのだろうか、俺は。

思い返してみれば、月だの太陽だの、一体何処の三流ミュージシャンの台詞だ

とんでもなくクサい事を考えていた。

穴があったら入りたい。メチャクチャ恥ずかしい。



「「……」」



それからは。


特に会話が続くわけでもなく。


妙な雰囲気の中、宮永と俺の二人は帰路を歩いた。


そして


「じゃあ、私はここで…」

ある交差点で、宮永が俺に別れを告げた。

「ああ、またな。また明日」

「うん…また明日」

コツコツと離れてゆく、二つの足音。

……そしてふと立ち止まり、思う。

「……そう言えば」

宮永と別れたあの場所。

あの交差点。

それは……

「同じ、だったな」


遠い昔の帰り道。

俺が『彼女』と別れた場所と、全く同じだった。

「……ははっ」

暗い夜道に、ひとつの足音が静かに響く……

そんな、夜。

そんなある日の、帰り道……
585 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/22(土) 12:22:12.49 ID:AoKdJ5c80
終了。
586 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 12:31:52.91 ID:D64ktrTio

これからどうなるか楽しみだ
587 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 12:32:44.67 ID:nis1P9rlo

あれ、これテルーの中では告白成功、恋人関係成立してね?
588 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 13:07:10.43 ID:zvBipOo4o
乙です
589 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 18:59:04.66 ID:/SAHL7Sao

これからどうなるのか
590 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 20:36:05.51 ID:f0c+Qo650

どうすんだよこれ(震え声)
591 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 02:25:47.51 ID:7aRyrzd70

スゲー待ってたから泣いた
592 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/03/23(日) 21:41:24.82 ID:ntVocoRZ0
報告。

自分は咲絵等の収集の為、pixivを使用しています……が、話を書かない絵を描かない所謂ROM会員です。
このROM、と言う状況に近頃引け目を感じており……
と言う事で近日、本作をpixivに投稿してゆこうと思います

以上。
593 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/23(日) 21:55:46.12 ID:l6v4zEZYo
把握
594 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/24(月) 21:13:36.74 ID:Z/fCc7Rk0
おk
そん時はここにもアドレス張ってくれると嬉しいなって
595 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/25(火) 01:39:22.63 ID:gGAREUXn0
取り急ぎ。
http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id
596 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/03/25(火) 01:43:08.50 ID:gGAREUXn0
失敬。
http://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=3591975
597 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/25(火) 01:45:04.44 ID:gGAREUXn0
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id
598 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/03/25(火) 01:48:22.65 ID:gGAREUXn0
……ああもうミスだらけ。本当、すみません。
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3591975
599 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/25(火) 02:00:03.69 ID:mWhbdgfro
リンクありがとうございます
600 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/25(火) 03:06:19.16 ID:k5LGaEcI0
サンクス
601 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/03/25(火) 21:55:16.32 ID:gGAREUXn0
報告。

pixivに掲載完了しました。pixiv用のTwitterアカウント作成しました。

以上。
602 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/04/23(水) 13:15:50.70 ID:H84xLMQho
ほす
603 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/11(日) 00:01:44.37 ID:FIycclnQo
カン
604 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/05/11(日) 00:18:46.24 ID:FxBV9VW40
生存報告です。
605 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/11(日) 00:31:26.23 ID:eihxGcnao
把握
606 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/08(日) 10:53:34.00 ID:i0Vj8J6Fo
保守
607 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/06/16(月) 03:46:17.55 ID:e9zl3cALo
生存報告
608 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 07:11:08.54 ID:EEQEJbqwO
おう
609 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/16(月) 08:17:03.66 ID:owLQwN/no
待ってる…
610 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 20:35:40.15 ID:zx/cGO0tO
舞ってる
611 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/17(火) 22:16:39.99 ID:F0orCLe1O
このスレを見てやり始めたCLANNADが3週目に突入したわけだが
612 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/06/21(土) 12:41:01.52 ID:i0X6GjhL0
突然ですが宣伝です!

ここの屑>>1が形だけの謝罪しか見せていないため宣伝を続けます!

文句があればこのスレまで!

加蓮「サイレントヒルで待っているから。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401372101/
613 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/22(日) 13:20:30.75 ID:+614xcIXo
まだか、踊るぞ
614 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:13:25.28 ID:zjVMNOLO0
開始
615 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:14:53.73 ID:zjVMNOLO0

幸村から麻雀部の雑用に励むよう命じられ、俺と春原はどうにかこうにか仕事をこなしたーーーーその翌日の、朝。

「聞いたわよ」

登校早々、隣のクラスの鬼委員長こと藤林杏は神妙な顔で俺に詰め寄って来た。

「…何をだ?」

「あんた達、麻雀部の雑用係になったそうじゃない」

「……。」

予想はしていた事だが、俺たち2人が麻雀部の小間使いになった事実はどうやら校内に知れ渡っているようだ。

あの麻雀部にあの不良共が……。

とすれば、成る程、噂になるのも無理はない。

「どう言う風の吹き回しかしら?」

「どうって……別に、ただ成り行きで雑用をやるように言われただけだ」

俺がそう言うと彼女は怪訝そうに俺を見つめた。

「草むしりだの、教室の清掃だのが、麻雀部の雑用に変わったようなモンだ」

「今まで通り、俺は言われたことをやるだけだ。それでセンセー方の御機嫌取りができるってんなら、安いもんさ」

「アンタねぇ…」

そんなこと言うならもう少し授業を真面目に受けなさいよ。と、ため息混じりに、杏。

そして

「で、でも岡崎くん、前に比べれば、今はちゃんと授業受けてますっ」

先程から俺たちの話を聞いていた彼女の双子の妹が、そう付け加えた。

……確かに、『以前』に比べればそこそこ授業は真面目に受けていると思う。

が、サボる科目はサボるし、睡魔が来ればそれに従う。

善良な一般学生とはとても言い難いのがこの俺だ。
616 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:15:38.77 ID:zjVMNOLO0

……。

……もしも。

俺が目覚めた時が、この三年の春ではなく……一年の春、あるいは入学式のあの日だったなら、俺はどうしていたのだろうか。

……。

……考えた所で、意味は無い、か。





時が過ぎるのは早い。

午前の授業はつつがなく終了し、教室は昼休み特有の喧騒に包まれていた。

さて、今日の昼だが……

先日のように、宮永や大星達と昼食を採る予定はない。

春原はというと4限のチャイムが鳴るとーーいや、鳴る直前に教室を飛び出して行った。

おそらく購買に向かって行ったのだろう。

昔はよく俺も、あの購買の戦場に飛び込んで行ったものだ。

鞄から取り出した手製の弁当を見ながら、ぼんやりと過去を懐かしむ。

……俺は、今、その過去に生きているのだ

まったく、人生はわからないものだ。心からそう思う。

とはいえ、目先の問題はと言えば今この弁当箱をどこで腹に収めるか、と言ったもんなんだがーーさて

「……あそこでも覗いてみるか」





がらり

横開きの扉を引き、室内を一瞥すると、そこには1人の女生徒の姿があった。

この資料室の管理人こと、宮沢有紀寧である。
617 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:17:32.76 ID:zjVMNOLO0

部屋には彼女以外誰もいない。

どうやら今日は彼女の"お友達"は来ていないようだ。

「朋也さん?」

窓際の長机に座っていた彼女は、丁度朝食を採っているところだった。

「おっす」

軽い会釈をし、資料室に入る。

「珍しいな、この時間帯にここにいるなんて」

もちろん彼女には、学外だけでなく学内にも友人はいる。

その人達と一緒に教室で昼食を採っているのかと思ったんだが……

「ええ、今日はなんとなくここで昼食をと思いまして。いつもは友人たちと一緒なんですけど…」

……つまり俺と宮沢、お互いがなんとなく資料室に行こうと思い、偶然鉢合わせたという訳か。

「あら?そのお弁当……」

「ん?ああ、こいつか?」

彼女の視線が俺の右手に持つ弁当箱を捉えた。

「最近は自炊に凝ってるんだ」

俺は彼女の向かいの椅子に座り、弁当を開く。

机には俺と彼女、二つの弁当箱が並んでいる。

いかにも男っぽい中身のものと、いかにも女性らしい中身のもの。

見事に対照的だ。

そして、ふたりとも黙々とその中身を口に運んでゆく。

交わされる言葉は、ない。
618 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:19:23.13 ID:zjVMNOLO0

だが、こういう食事というのも悪くはないものだ。

誰にも邪魔されず、静かで豊かな食事……救われている、とでも言おうか。

もちろん友人達と談笑しながらの食事も悪くはない……が、たまにはこんなのも良い。

……。

昼食は慎ましく行われ、やがて俺の弁当は空になった。

我ながら、今日の出来は結構良かったと思う。

「ごちそうさま」

小さく合掌。

そしてがたりと、席を立つ。

「行かれるんですか?」

「ああ、元々ひとり静かに昼食を食べたいと思ってここに来たからな」

「へぇ、そうだったんですか……ふふ、私と同じですね」

そこから少しの談笑の後。

そんな訳だから、それじゃ、またな、と会釈をし、そのまま資料室を後にする。

コーヒーを一杯頼んでみるのも良かったが――今はなんとなくそんな気分じゃなかった。

「さて、残りの昼休みは何処で過ごすかな――――、っと」

「あそこで、いいかな」

ふ、と考え

頭に浮かんだあの場所に、俺は足を運ぶ事にした。





ぎいいいっ。

金属製の扉が、開く音。

そして顔に吹き込む、風

瞳に飛び込む、青空。

本校舎の階段を登ったさらに先、知る人ぞ知る学園の名スポット――――

――――屋上である。
619 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:20:17.18 ID:zjVMNOLO0

「ふぅ…」

梅雨の切れ間の快晴。

この青空ももう数日すれば薄暗い曇天に覆われるだろうが――とにかく、清々しい天気だった。

こんな天気の今日は絶好の昼寝日和だ。

幸い次の五限はちんぷんかんぷんさっぱりわからん数学だし、食後の昼寝と決め込む事にしよう。

丁度、昼寝にうってつけの場所がこの屋上に――

「ん?」

……。

……昼寝にうってつけのその場所には、既に先客が座っていた。

特徴的な、髪型。

燃えるような、髪の色。

チャンピオン、宮永照である。

「……」

彼女は背中を向けこちらに座っており、どうやら俺には気づいてない。

「宮永?」

声を掛ける。

「……」

が、彼女は気づかない。

5、6歩進み、彼女に接近する。
620 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:21:18.40 ID:zjVMNOLO0

……。

……ははあ、どうりで聞こえてない訳だ。

彼女の目線は下に向けられ、そこにある活字の群れに意識を集中させている。

そしてその両耳にすっぽりはまっている、二つのイヤホン。

音楽を聴きながら読書とは、随分優雅なモノだ。

クラシックか何かだろうか。

「よう、宮永」

読書の邪魔をするのも悪いと思ったが、ここで会ったのも何かの縁、彼女にわかるようにひょっこりと顔を出す。

すると……

「ひゃいっ!」

気の抜けたような声が、屋上に鳴った

「ああ、悪い。邪魔したか?」

「い、いや、別に……」

しゅばっ、と素早い動作で本を閉じ、ばばっ、と耳からイヤホンをもぎ取った彼女は、ちょいちょいと前髪を整えながらこちらに向き直った。

「岡崎は、どうしてここに?」

彼女が尋ねる。

そして俺は言う。そのセリフ、そのまま返す、と。

「……良くこうやって、この場所で読書をするの」

いい風が吹く場所だから、と、彼女。

「なるほど、ね。……まぁ、俺の方は、そうだな、ちょいと昼寝がしたくなったからここに来たんだが――そんな気は失せちまったな」

……座った彼女を見下ろしながら喋ってるのもなんだし、どっこいしょと彼女の右隣に腰を下ろす。
621 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:22:01.32 ID:zjVMNOLO0

ひゅう、と、やわらかな風が頬を撫でる。

うん、確かにいい風が吹いている。

お互いがちょくちょく足を運んでいたのに出くわしたのがこれが始めてとは、何だか変なものだ

……。

……そういえば。

「なんか音楽聴いてたよな?何聴いてたんだ?」

「!」

びくり、と肩を震わせる彼女。

「あ、いや、言いたくないなら、言わなくてもいい」

俺の言葉に彼女は頷き、再びその視線を本に落とす……。

「……き」

――――と、そう予想していたのだが。

「聴きたい…?」

おずおずとイヤホンを持つ手をこちらに差し出しながら、彼女はそんなことを言った。

「あ、ああ。……それじゃあ」

お言葉に甘えて。

差し出されたそれを、俺は右耳に押し込んだ。

「……」

それにしても、右隣に座ってる奴に右耳用のイヤホンを渡すとは……

やはり彼女、天然が入ってるんじゃなかろうか。

ちらりと目線を向けると、俺の右耳を伝っているコードは宮永の手元のMP3プレーヤーに伸び、そこからまた伸びるコードは彼女の左耳に伝っている。
622 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:22:50.60 ID:zjVMNOLO0

……ともあれ。

音楽が再生される。

さて、一体彼女はどんな音楽を嗜好しているんだろうか。

読書に合う音楽だから、ようわからんけどバッハとかモーツァルトとかベートーベンとかその辺りの……

……。

……。

「……成る程、こう来るか」

彼女に聞こえぬよう、小さく呟く。

ピアノソロから始まったこの曲は、バッハでもベートーベンでもモーツァルトでもなく、クラシックでもなく……


日本の某ロックバンドの某有名曲だった。


確かに、やわらかな風が吹くこの場所で聴くにはうってつけの曲だ。

呆気に取られる俺の耳に流れ込む曲は、丁度サビに差し掛かっているところで……


……そしてサビが始まり、絶え間無く注ぐ愛とはなんぞやとか、伝えることができなかった愛しさの意味を知ったりとかした。

……。

いや、まぁ。

宮永照が聴く音楽と考え、ちらりとこのアーティストを思い浮かべてはいたが……まさか当たるとは。
623 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:24:05.31 ID:zjVMNOLO0

「……どう?」

苦笑いを浮かべる俺に、彼女が尋ねる。

「どうと聞かれても…まぁ、確かに知ってる曲だよ、この曲は」

いい曲だと思う。

そこまでこのバンドに詳しいわけじゃないが、かなりの有名曲だと思う。

……。

……それに。

中々に、歌詞が染みる曲だ。

今の俺にとって、じわりと心に染み入る曲だ。

きっと、高校時代にこの曲を聴いてもここまで感動はしなかっただろう。

そんな曲だった。

「いい、曲だな」

ほつりと呟いた俺の言葉に、彼女はにこりと笑った


……。

……。


「……このバンドの曲を聴きながら読書って難しくないか?激しいロックな曲もあるし」

「ちゃんと読書用のプレイリスト組んでるから大丈夫」

「……あ、そう」

結局その日の昼休みは、宮永照謹製のプレイリストを聴きながら終わりを迎えた。

……今日の帰りは、CDショップに寄って帰るとするか。

そう考える、俺だった。
624 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/07/07(月) 19:25:03.21 ID:zjVMNOLO0
終了。
625 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 20:22:14.91 ID:5nPa3QJCo
乙です
626 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 21:39:50.90 ID:np/Hrg5Do
待ってた
元上司か
627 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 21:46:37.42 ID:uFh+6S2Qo

このSSもゆっくりと歩きだしたのかね
628 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/07(月) 23:55:12.90 ID:71TtqOtcO

これでしばらく生きていける
629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 00:06:53.16 ID:ATBvGIxJo
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7476330

http://www.nicovideo.jp/watch/sm12034940

http://www.nicovideo.jp/watch/sm6152498

http://www.nicovideo.jp/watch/sm17408766
630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 00:07:50.71 ID:lHVAibmyo
あわ〜
631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 01:18:44.63 ID:BnGK/YkXo
投下来てた!よかった!
632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 01:52:19.92 ID:VsKRMlHrO
この岡崎アームロック得意そうだな……
633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/07/08(火) 03:52:08.92 ID:SBiuplpp0
てるーwwwwwwwwwwww
634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 04:40:13.61 ID:zZSLZzPUo
乙です
635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/08(火) 23:29:16.26 ID:ATBvGIxJo
宮永TERUじゃねーか
636 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/07/13(日) 04:00:41.68 ID:hvUDveddo
土曜日の翌日に学校があると言う痛恨のミス。すんません、ほんとすんません…
非常に苦しいですが、翌週の月曜日と言うことでなんとか…
637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/13(日) 08:21:48.80 ID:dpzi9KGtO
報告乙です
待ってる
638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/13(日) 10:28:19.11 ID:mfzQFU4/o
待ってる…
639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/05(火) 11:23:12.88 ID:RWH0dpR30
支援
640 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/08/12(火) 04:39:56.96 ID:6KPLE8kqo
生存報告
641 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/12(火) 10:18:43.75 ID:tpWmIIKkO
把握
642 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/12(火) 11:12:51.62 ID:BgTRrSD9o
了解
643 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/08/17(日) 01:41:28.99 ID:1nVrFeSv0
こんな作品があったとは知らなかった。
続き待ってます
644 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/09(火) 16:13:06.33 ID:xd2aKn/ZO
待ってる
645 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 16:58:12.71 ID:tuvS+Mf70
開始。
646 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 16:59:00.41 ID:tuvS+Mf70

「なあ、春原」

「ん?何?」

放課後。

俺と春原は先日と同じように、雑用に励むべく麻雀部の部室に向かっていた。

「時間が吹っ飛んだような感覚……って、お前、味わったことあるか?」

「吹っ飛んだような感覚?どう意味だよ、それ」

「いや、どうも俺、昨日の記憶があやふやでな。例えて言うならまさに記憶が吹っ飛んだ、って感じなんだが」

「え、何、昨日なにをしてたか覚えてない訳?」

「そんなとこだ」

「んー、でも、僕もたまにそう言うことあるよ。現に昨日がそうだったし」

「昨日は昼過ぎに起きて、昼食食べて、3時過ぎにちょっと昼寝して、夕方に起きて、って感じだったからねぇ」

「……。」

確かにそんな一日を過ごしたら、記憶が曖昧なのも無理はない。

「昨日は一日中雨だったし、そうなったら寮で漫画を読むか寝るかぐらいしかやる事がないよ」

確かに昨日は土砂降りの雨が降っていた……気がする。

とにかく、記憶が霞がかっていて、曖昧だった。

ちょっとした、記憶喪失だ。
647 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 16:59:47.37 ID:tuvS+Mf70

「……。」

……何故だろう。

記憶喪失。

その単語が、妙に胸に引っかかった。





相変わらず、部活の練習は淡々と行われている

ひたすら打ち、打ち、打ち、対局が終わればその都度一手一手の検討をする。

インターハイが近づいているこの時期。

部員たちの顔つきも真剣そのものだ。

「岡崎」

「え?」

部活前自販機で買ったコーヒーを相棒に、ただ目の前に並べられた仕事を手際よくこなしていた俺に、麻雀部顧問のひとりである教師が声を掛けてきた。

どうやらまた一つ仕事が増えたらしい。


と、言う事で。


数分後、俺は二軍部室から三軍部室への物資運搬の為、部活棟の廊下を歩いていた。

廊下には夕焼けが射し込んでいて、あたりを橙色に染め上げている。

また、どこか遠くから、運動部のかけ声と吹奏楽部の楽器の音が響いていた。

廊下には人影一つない。閑散とした、どこか物悲しい光景…。

「……?」

……そして、ふと。

遠巻きに流れる部活の喧騒に紛れ、俺の耳に新たな音が入り込んできた。
648 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 17:00:48.34 ID:tuvS+Mf70

ああ

確か

この音は……

「ピアノの音…?」

かすかに耳に届いている、やわらかな旋律。

もう少し進んだ先にある、音楽室から聴こえてきているのだろうか

これは……。

……。

「なんか…」

「よく、わからんけど…」

「いい、音だな」

気づけば立ち止まり、普通に聴き入っていた。

ピアノのほのかな音色は、心地よく俺の耳に届いている。

何の曲だろうか。

エリーゼのために?ベートーベン?モーツァルト?

ま、きにしたところで生憎音楽はさっぱりわからんから、何の曲だかはわからないが……ただ、べらぼうに上手いと言う事はわかった。

そして、その音色に乗せられて、歌声が聴こえてくる。

ことりのさえずりのように綺麗な、凛とした少女の歌声だ。

こんな歌声を持つ人間は、きっと希にしか居ないだろう。

「……。」

廊下を歩き、目的地へと進む。

音楽室に、近づく。
649 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 17:01:38.94 ID:tuvS+Mf70

「……ん?」

音楽室の扉は、閉まっていた。

そして閉ざされた扉の前には、橙色の髪の女生徒が突っ立っている。

まるで、何かに串刺しにされたみたいに…。

……。

…そう。

心に強く残って、離れない……"何か"に。

串刺しにされたみたいに……突っ立ってる。

「……」

音楽が、響いている。

廊下を、歩く。

突っ立っていた女生徒が、俺に気づく。

彼女は、にこ、と、会釈をして、再び視線を音楽室に戻す。

音楽室の扉には小さなガラスが張られていて、そこから室内を覗けるのだが……女生徒が扉のゼロ距離真っ正面にいる。

中の様子はわからない。
650 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 17:02:20.31 ID:tuvS+Mf70

「……。」

少女の背後を、通り過ぎる。

一歩、二歩、三歩、四歩、五歩…。

うみのさざ波のように、静かに、ゆっくりと。

綺麗な音色が、陽だまりに咲く花のような彼女の歌声が、終わりを迎える。

六歩、七歩、八歩、九歩…。

背中から聞こえる、拍手。

……。

そうか。

きっと彼女は、心を、掴まれたのだろう。

人の心を掴む歌声と言うのは、ああ言う音の事を言うんだろう。

……。

放課後。音楽室。歌声。

とすると、合唱部だろうか。

……。

合唱部。

そうだ、合唱部だ。
651 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 17:03:01.01 ID:tuvS+Mf70

かつては演劇部を創立する際に、ちょっとした諍いがあったっけ。

何故かその後バスケ部と試合をする事になり、最終的には顧問を掛け持ちしてもらうと言う話になったのだ。

……なるほど。

あの歌声と、あのピアノの音色は、あの彼女のものだったのだろう。

名前は……そう、仁科。仁科りえ、と言ったか。

彼女はしっかりと、合唱部としての日々を過ごしているんだ。

……。

「……はっ」

今は、そんな事を考えてる場合ではなかった。

とにかくとっとと、この雑用を終わらせなくてはならない。

「急がないと、な」

ふとした音色との出会いの後。

俺はそそくさとその場を後にした――――

合唱部。

きっと、彼女達も、青春の道を歩んでいるのだ。
652 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/09/10(水) 17:03:34.80 ID:tuvS+Mf70
終了。
653 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/10(水) 17:46:58.61 ID:gdgPZ7p90
待ってた
654 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/10(水) 20:47:52.84 ID:jlMW70yDo

舞ってた
655 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/10(水) 21:04:13.33 ID:WdHbtnMdo
乙です
656 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/10(水) 22:29:29.11 ID:aoxNqVfro
おおおっ!
657 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/10(水) 22:35:17.07 ID:Ex9xbn1do
658 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/11(木) 08:47:57.57 ID:jFL8cfi5O
追いついた。すごく楽しみ
659 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/13(土) 20:59:39.58 ID:qw0EwN3PO
>ほのかな音色
>エリーゼのために
>ま、きにしたところで
>ことりのさえずり
>凛とした少女の
>きっと希にしか
>にこ、と会釈をして
>うみのさざ波
>陽だまりに咲く花のような

ゲイが細かい…
660 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/14(日) 03:56:41.63 ID:bkxfRgXLo
知りたくもなかったわそんなの
661 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/16(火) 03:46:46.92 ID:5UcN4msWO
すげぇ
662 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/03(金) 01:17:19.41 ID:dIzcWYJH0
支援
663 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2014/10/03(金) 07:44:39.09 ID:peSYWH6l0
早く来て
664 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/03(金) 11:25:52.66 ID:VU/COf8cO
しかしまあ文体変わりまくってんな
665 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/10/14(火) 15:23:56.20 ID:facWRQ6Ko
生存報告
666 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/14(火) 17:56:08.01 ID:0bl2+Zt6o
了解
667 :名無しNIPPER [sage]:2014/10/14(火) 20:30:02.92 ID:JDHVpr9AO
まっとるでー
668 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/11/01(土) 02:14:43.64 ID:BAInV+Olo
「とりっくおあ、とりーと」

「……ハロウィンは昨日だぞ、宮永。……いや違った。今日だったな。

それにそのコスチューム…ドラキュラか?」

「テルーだから、ドラキュラじゃなくてTERUキュラだね!」

「と、ともかく、とりっくおあとりーと。
おかしをくれなきゃ、い、いたずーーーー」

「ほい、クッキー」

「えっ」

「うっそ!トモヤ用意してたの!?」

「ハロウィンだしな」

「し、しかもこれ…手作り!?」

「岡崎……おかし、つくれるんだ…」

「クッキーぐらいしか作れないけどな」

「はぇ〜〜なんかめちゃくちゃ意外だよ」

「ああ、お前がそう思う気持ちはわかる」

「あれ?でもトモヤは甘いもの苦手って言ってたし……まさか、誰かに作ってたからとか?」

「…………。」

「「……ゴクリ」」

「……まぁ、そんなとこだ」


生存報告。&HAPPYハロウィン(一日遅れ)
669 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage ]:2014/11/01(土) 06:09:47.29 ID:uUKo5eN2o
670 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/01(土) 10:06:14.17 ID:F31ZMDipo
汐にか……
671 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/01(土) 12:27:12.02 ID:WevHL1PDo
乙です
672 :名無しNIPPER [sage]:2014/11/01(土) 15:28:20.96 ID:dt11iU0AO
おつー
673 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2014/11/02(日) 13:01:44.91 ID:TnRccxVvo
何気に今日でこのスレ立ってから2年になるのか
674 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/10(月) 14:21:52.87 ID:w6DnOVGtO
早いものだ


待ってるぞ
675 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/11/11(火) 15:50:07.49 ID:90j0xTkYO
「突然ですが」

「急にどうした、大星」

「今日はポッキーの日であります!」

「……道理で宮永のポッキー消費量がいつもより多い訳だ」

「と言うわけで」

「待て待て待て。それを口にくわえてこっちににじり寄って来てどうするつもりなんだお前は」

「え?どうするってもちろん…」

「冗談でもそんなことをするんじゃないっ」

(冗談じゃないのになぁ)


「照」

「何、菫」

「お前、さすがに食い過ぎ」

「だってポッキーの日だし」

「あとお前今日、部活中奴をチラチラ見すぎだ」

「……。」



生存報告。
676 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/11(火) 15:57:32.83 ID:vOEEGl1lo
乙ー
677 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/11/24(月) 22:56:29.70 ID:t+4N+kZY0
遅れたけど乙ー
678 : ◆BAGSDsqeLs :2014/12/07(日) 00:05:46.25 ID:Gf1vi2j+0
開始
679 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:07:19.53 ID:Gf1vi2j+0

「ふぅ…」

三軍の部活練へと資料を運び終えた俺は、二軍の部室に戻り、一息ついていた。

部室内に春原の姿は見えない。

俺とは別の仕事を言い渡されているのだろう。

「……。」

……先程までの忙しさから一変し、急に暇になっている。

この持て余している時間を、どう使おうか。

「……ん?」

ヒラリヒラリと空を漂っていた俺の視線は、あるものを捉えた。

二軍の女生徒達でひしめく部室。

その片隅に設けられているーーーー数台の、デスクトップパソコン。

「…よし」

思い立ってしまえば、あとは早い。

どっかとパソコンの前に腰を下ろし、電源を入れる。

最新鋭のPCなのだろう。特に待つ事もなく完全に起動され、デスクトップが浮かび上がった。

そこにある、ひとつのアイコンにポインタを移動させ……ダブルクリック。

そしてアプリケーションが起動される。

麻雀部のパソコンに備わっているアプリケーション……と来れば。
オンライン麻雀のソフト、であろう。

「さて、と」
680 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:08:47.95 ID:Gf1vi2j+0

アプリケーションを起動し、まず開かれたのはログイン画面である。

当たり前だが、俺はIDなるものを持っていないので、マウスを滑らせて『新規登録』を選択する。

表示された登録画面に沿って、情報を入力してゆき……そこでふと、手を止めた。

あらかたの項目は入力したのだが、最後に残るものがあった。

オンライン上で表示される、自分の名前ーーーーつまり、ハンドルネームを決めなくてはならないのである。

「ふむ…」

しばし考え込み、やがて俺は一つの名前を考えつく。

かたりかたりとキーボードを叩き、その名前を打ち込み……そして俺は、決定ボタンを押した。

登録が完了すると、元のログイン画面に戻る。

登録の際提示されたIDとパスワードを打ち込み、ログインボタンを押す。

直後。

小さなポップアップが表示され、簡素な一文が、俺を出迎えた。


ーーーーようこそ。大宇宙銀河さん。





『ロン』

機械的な男性の声が小さく響き、対局が終了する。

つい先程開始したネット麻雀、その記念すべき一回目の半荘を俺はトップで終える事ができた。
681 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:10:34.50 ID:Gf1vi2j+0

このアプリケーションは校内のサーバーと全国のサーバーを選択できるらしく、俺は後者をプレイしていた。

その対局者達の名前は……

『ドラゴン』 『ライオン』 『トキ』

……やはりこの中では俺のHNが浮きまくってる感が拭えないが、決めたものは仕方が無い。

オッサンのセンスを信じてこのまま続けるとしよう。

「対極は終わった。……んだが」

……この麻雀ソフトにはチャット機能がついているらしいが、なにぶん初めてなのでどうも気恥ずかしい。

とりあえず、『お疲れ様でした』とだけ残し、退席する。

……まだ時間はある。

ホーム画面に戻り、今度は校内のサーバーを選択する。

適当に卓が割れている部屋を探し……入室。

さて、ここは校内のサーバーだ。

群雄割拠の白糸台高校のサーバーだ。

気を引き締めてかからなければ。

せめて、一矢報いるぐらいはーーーー


『ARROW』 『フィッシャー』『TERU』


「……。」


何やってんだ、あいつら……
682 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:12:35.28 ID:Gf1vi2j+0





対局が終了する。

結果は、ラスだ。

射抜かれる事や釣竿に釣られる事はなかったが、地力の差により勝敗は歴然としていた。

今回のトップは名前を隠す気がさらさらない何処ぞの誰かのアカウント。

流石に格が違った。

先程と同じようにチャット機能を使い『お疲れ様でした』とだけ残しずこずこと退席する……流石にこのハンドルネームがオレだとバレる事は無いだろう。

そして再び、ホーム画面に戻って……それと同時に。

ざあっ!

と、俺の耳に、したたかに入り込む音があった。

窓から外を見れば、そこにあるのは黒々とした曇天。

バケツをひっくり返したような土砂降りの雨が、天と地を繋いでいた。

深い、深い、雨の音が、ただただ聞こえてくる。

六月の、梅雨本番の雨。

永遠を感じるような、絶え間ない雨音。

……。

……だが。

降り止まぬ雨など、無いのだ。

幾週かの時が過ぎれば、この梅雨も過ぎ去り、本格的な夏が訪れるだろう。

夏が訪れたのなら、一学期の終わりも近い。

学生にとっての青春。夏休みがやってくる。

それは彼女達にとって…あの全国大会が、学生最後の戦いが訪れると言う事なのだ。

高校生、最後の夏。

輝かしい、青春の輝き。

空を覆う暗雲が晴れた時、その煌めきが彼女達を待っているのだ。
683 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:14:39.05 ID:Gf1vi2j+0

……。

……そう。

この雨が止んだ時、彼女達の最後の夏がーーーー始まる。


……。


……。


……そして。


雨が、止んだーーーー









『ロン』

野太い、機械的な男の声が響き、対局が終了した。

「良しっ」

対局結果は、二位。

一位には届かなかったが、何とか三位との争いに勝つ事ができた。

ちょっと一息ついたあと、ささりとチャットウインドウを開く。

試合後の検討機能を使い、互いの牌譜を見て、同じ卓を囲んだ者達がそれぞれアドバイスを交わしはじめ……そして俺も俺なりに意見を出し、話に参加する。

今回はラスに終わった――――『White』の、俺の牌選択への指摘はかなり鋭いもので、成る程、と俺は思わず唸った。

次にこの――彼女か彼かはわからないが――『White』と対局すれば、おそらく俺は負けるだろう。

今回はたまたま運が良かっただけ。俺はそう直感した。
684 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:16:26.70 ID:Gf1vi2j+0
そして、この局で一位に輝いた『まふらー』なるアカウントの説明は懇切丁寧で分かりやすく、とても有意義な検討にする事ができた。……やがて、あらかたの検討が済み、ひと段落すると雑談が始まる。

取り留めもない四方山話だ。

しかしそれも長くは続かない。

頃合いになったのか、その場がお開きになる……その前に、マウスを操作し、三人にフレンド登録のメッセージを送信する。

袖振り合うも他生の縁。

このような充実した局が再び出来るのなら、それは良い事だ。

『まふらー』 『White』そして 『ハル』

三つのアカウントが、俺のフレンドリストに登録された。

「ふぅ…」

肩の力を抜き、息を吐く。

適当にマウスを操作し、自分のアカウント画面を開き、ぼんやりと眺める。

この麻雀ソフトに新規登録してそこそこの時間が経ったが、それに沿ってレートも僅かずつであるが上昇している。

日々の成果をしみじみと実感しつつ、なんとなく俺は彷徨っている視線を部室の窓へと向けた。

窓の向こうには、快晴が広がっている。

降り注ぐ日差しは強烈で、眩しい。

一歩部室を出れば、うだるような暑さが俺を襲うだろう。

この部室の完備された空調のおかげで快適に過ごす事が出来ているが……あまり部屋にこもり過ぎてはいけないだろう。

そう心の中でわかっていても、ここからはどうにも出たくなかった。
685 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2014/12/07(日) 00:17:14.51 ID:Gf1vi2j+0

それに、しばらく前はあの炎天下の中をあくせくと働いていたのだ。少しは涼んでも怒られまい

あの灼熱の地獄を思い出し、ぞわりと俺が背中に汗をにじませたまさにその時。

がらり

と、部室の扉が開かれた。

見ると、そこには多くの荷物を抱えた金髪の男が突っ立っている。

春原だ。

「ふぅ…」

どしゃりと麻雀部関連の備品を机に下ろしながら、奴は一息つく。

「いや、本当、この暑さにはまいるよ」

……。

「天気予報じゃ今日は猛暑日だって言ってたな」

「なるほど、どおりでねぇ……それより岡崎」

「あん?」

「あのジイサンが僕達2人に話があるってよ」

「…話?」

ジイサン……幸村が、俺たち2人に何の用だろう。

今日の雑用の大まかな流れは放課後直ぐに伝えられている。

急遽新しい雑用仕事でも舞い込んできたのだろうか。

「一体何の、話だって言うんだ?」

俺のその問いに、春原はゆっくりとその口を広げーーーー告げた。



「ーーーー合宿の話、だってさ。」


.
686 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/12/07(日) 00:18:15.94 ID:Gf1vi2j+0
終了。
687 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 00:30:34.72 ID:L0ttH0jxo
おっつ
688 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 00:31:45.54 ID:ZbroUUTjo
乙です
689 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/07(日) 01:46:08.99 ID:l1w1uzJro
超乙
690 :名無しNIPPER [sage]:2014/12/08(月) 04:25:34.13 ID:dVaqAAGAO
おつー
691 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/12/14(日) 22:26:41.67 ID:skJC6h/eo
「ねースミレ、今日の部活トモヤとテルーいなかったけど、二人ともどうしたの?」

「なんだ、聴いてなかったのか?」

「?」

「ふたりなら今日、ミラクルなミュージックをハントしに行ってるぞ。埼玉までな。」

「……ちょっと何言ってるか解らないんだけど」



生存報告です。
692 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/14(日) 22:36:35.68 ID:xafQ6Pnco
生存報告乙です
693 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/12/15(月) 10:17:37.72 ID:WdBapA5lo
「なぁ、菫。今朝から淡の奴が執拗にこっちをチラチラ見てくるんだが…何かあったのか?」

「そっとしておいてやれ」
694 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2014/12/24(水) 11:26:51.75 ID:Vr6JwPd0o
「ねぇ、トモヤ。今日はどうしたの?」

「……どうしたって、何がだ?」

「今日、テンション低いじゃん」

「テンション低い…って言われてもな」

「せっかくこうやって照の家でパーティーしてるんだから、もっと楽しまなきゃ!」

「いや、馬鹿みたいに騒いでるお前たちを見てたら逆に気分が落ち着いててな」

「でもっ、はしゃがないと損だよ?せっかく今日は年に一度のーーーークリスマス・イブなんだから」

「…………」

「……ああ、そうだな。…楽しまなくちゃ、損だよな」

「今日は、年に一度の………楽しい、楽しい、クリスマス・イブなんだから」



生存報告
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/24(水) 11:55:49.52 ID:eSNEvQdTo
乙です
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/26(金) 03:21:54.99 ID:z+YvvWAKO
続き待ってる
697 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/01/12(月) 20:48:23.81 ID:GvFIgVBuO
生存報告。
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/12(月) 22:37:02.57 ID:xWnpk4reo
生存報告了解
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/13(火) 08:13:23.29 ID:jYWiaZ5uo
待ってる
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/17(土) 03:03:34.95 ID:ifNXBR+j0
私待つわ
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/01/18(日) 00:06:37.77 ID:RDiT7wleo
いつまでも待つわ
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/18(日) 18:43:38.70 ID:kbeGgAaHO
たとえ
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/19(月) 00:34:43.83 ID:Fo1Qut1ko
あなたが
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/01/19(月) 23:06:16.18 ID:P1qfUJs1o
振り向いて
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/19(月) 23:54:23.67 ID:j22nExnDO
くれなくても
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/20(火) 01:33:07.07 ID:JDiC4iuGo
待つわー
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/01/20(火) 12:43:36.62 ID:8qAXwMc8O
いつまでも
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/01/27(火) 22:10:45.74 ID:nwsLuM4D0
待つのよー
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/02/11(水) 22:36:48.04 ID:fdB+I0i4O
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/12(木) 10:00:43.67 ID:CL0PJ5o8O
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/12(木) 12:06:26.31 ID:yUuuLFoOo
712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/12(木) 19:31:54.29 ID:GigkK53fO
713 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/02/22(日) 01:37:48.81 ID:yeqWw7cto
生きてます。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/22(日) 03:05:58.55 ID:OZ5XdMbco
報告乙
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/02/25(水) 18:10:09.91 ID:JBsRqfwoO
私、待つわ!
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/03/19(木) 19:19:03.77 ID:oLU99uWAO
はよ
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/03/28(土) 08:11:56.13 ID:lRCLfXkY0
保守
718 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/04/04(土) 15:18:24.96 ID:YvSA07KBO
生存報告。
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 15:35:56.09 ID:x9Mfh99fo
待ってる
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/04(土) 16:56:45.46 ID:vHrZzL2Mo
書く気ねえなら落とせよ
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/29(水) 00:44:14.23 ID:Viayz8Ofo
はよ
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/04/29(水) 07:14:34.49 ID:Ua2tVyOrO
ageんな[ピーーー]
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/05/30(土) 21:56:26.74 ID:4s07W+Dyo
ほしゅ
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/05/31(日) 23:59:10.24 ID:iyIUURVno
「弘世、今日は宮永のやつを見ないんだが、どうかしたのか?」

「ああ、あいつならなんでも10年越しの約束を果たす時が来たとか言って今日は休みだぞ」


始めます。
725 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:01:37.07 ID:1FR1HvLeo

「で、合宿の話がどうしたんだ、爺さん」

春原から伝えられた「お呼び出し」を受け、俺と春原の二人は顧問の幸村の元に足を運んでいた。

「……なに、大方予想はついておるじゃろ?」

「「……。」」

……合宿の話は、前から聞いている。

彼女たちにとっては、全国大会に向けた、最後の調整。

他の部員にとっては、己の能力を高める死闘の数日間。

幸村からは俺達二人が駆り出されることはないと聞いていたが…今回、呼び出されたと言うことは…つまり

「……合宿について行け…ってことですか?」

「うむ」

ゆっくりと、彼が頷く

「でも、ちょっと待ってくれよ爺さん。俺達2人は合宿の雑用を手伝わないって話じゃなかったのか?」

「予定が変わった」

彼はあっけらかんとした様子でそう言う。

……。

「…わかったよ」

「どうせ拒否権はないんだ」

隣の春原を見ると、奴も納得した様子の顔だ。

最も春原のことだ、大方女子だらけの合宿に参加できると内心小躍りしてるだろうが……まぁいい


「……それじゃ、頼んだぞ」


幸村はそう言うと、ゆったりとした歩みで何処かへ行った。

「「……。」」

……合宿、か。

「何だかまた、面倒なことになりそうだねぇ」

「……そうだな」

一体何が、待っているのだろうか。
726 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:02:46.97 ID:1FR1HvLeo






「ねえっ」

「…どうした?」

幸村の話が終わり部室に戻ると、大星が一目散にすっ飛んできた。

「なんの話だったの?」

「なんのって…合宿の話だよ」

「合宿?」

「……そうだ」

……しまったな。

今ここで、この話を言ったのはマズかったかもしれない。

非常に興味津々、と言った様子でこちらを見ている
727 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:07:31.72 ID:1FR1HvLeo

「合宿が、どうしたのっ?」

「それは…」

さて…どうしよう

「……幸村のジイサンに言われたんだよ」

「なんてっ!?」

「あー…ええと…」

「ねねっ、なんて言われたのっ?」

「俺と春原も、今度の合宿に雑用で参加しろ、ってさ」
728 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:18:23.36 ID:1FR1HvLeo

……言った。

言ってしまった。

「……えっ」

きょとんとした様子で、大星が聞き返してくる

「……。」

「……それホント?」

「ああ」

「トモヤ、来ないんじゃなかったの?」
729 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:26:38.59 ID:1FR1HvLeo

「そう……」

何やら納得した様子で呟くと、彼女はすっと、顔を伏せた

どうしたのかと大星を見てみると、ふるふると頭が小刻みに揺れている

そして……

「ぃやったっっ!!」

ぴょんっ!と飛び上がり、その小さな手のひらを宙に振り上げた

はたからみても、かなりのはしゃぎ様だ

と言うよりも…

どうして彼女はこうもはしゃいでいるのだろう…
730 :訂正 :2015/06/01(月) 00:28:09.65 ID:1FR1HvLeo

「俺もそう思ってたんだが、どうやら人手が必要なんだと」

「そう……」

何やら納得した様子で呟くと、彼女はすっと、顔を伏せた

どうしたのかと大星を見てみると、ふるふると頭が小刻みに揺れている

そして……

「ぃやったっっ!!」

ぴょんっ!と飛び上がり、その小さな手のひらを宙に振り上げた

はたからみても、かなりのはしゃぎ様だ

と言うよりも…

どうして彼女はこうもはしゃいでいるのだろう…
731 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:33:09.17 ID:1FR1HvLeo

「じゃっ!テルーにも教えてくるね!」

「私がどうかした?」

「にゃっ!?」

俺の話を聞いて、即座に踵を返そうとした大星だが、不意に後ろからかけられた声に肩を跳ねた

「?……なんの話を、してたの?」

不思議そうに、宮永が俺に訪ねてくる

「あー………それはだな…」

「トモヤ、合宿に一緒に来るんだって!」

「!!」

「……という訳だ」

「…そう」

じっ、、と宮永は俺を見つめている

「……」

やがて、小さく口を開き…

「お仕事、頑張ってね」

そう、言った

……。

「ああ、まかせとけ」

「へへー、頼んだよっ!」

「……もちろんお前らも合宿頑張れよな。ここが正念場なんだから」

「大丈夫、まかせて」

「おまかせあれ!って感じだね!」
732 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:39:13.04 ID:1FR1HvLeo

……。

……ふふ

この分だと、心配する必要はなさそうだな

俺は俺の出来ることで、彼女達を手伝ってゆけばいいさ

「あっ、そうそう!」

「?…どうした?」

「なら合宿の日までにさ、またみんなでカラオケ行こうよ!」

「……」

「…うん、私も淡に賛成」

「カラオケか…」

前に一度、チーム虎姫の彼女達と一緒に行ったな…

春原の野郎はボンバヘッ!と熱唱していたが…うーむ

「確かにカラオケはいいけどな…」

「けど?」

「宮永、俺にあれ歌えるこれ歌えるって聞くのはもうやめといてくれ」

「ええっ」

宮永になされるがままに彼女が選んだ曲をホイホイ歌っていたが…

後半俺しか歌ってなかったのはどうかと思う
733 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 00:40:06.71 ID:1FR1HvLeo

「えー、いいじゃん、かなり感情こもってて良かったよ?」

「さすがにあれだけ俺が歌ってるのはどうかと思うぞ…」

「……」

「宮永?」

「……あの人には敵わないけど、岡崎はすごい良い声で歌ってたのに…残念」

「……」

……。

「……まぁ、カラオケの話は置いておくとして、だ」

すっ、と息を吸い込み、改めて言い直す

「とにかく、合宿だ」

「おうっ!」

「うん、頑張る」

……。

……そう言えば

「合宿の日付は、ーーー日だったよな?」

「うん、そうだよ」

「もうっ、言ったそばからそんなこと言っちゃうー?」

「いや、ちょっと、ド忘れしてな…」

「しっかりしてよねっトモヤっ」

「わかってるよ」

……。

……うーん、それにしても。

ーー日かぁ……。

「……帰ったらすぐ合宿ってことになるな」

「?」

「帰ったら?」

ぼそり、と言った俺の呟きに、大星は言葉を返した。

……。

その日達は部活を休むことになってるのだ

彼女達に言っておく必要もあるか…

「ああ、いや、実はだな…」




「ちょっと旅行に、行ってくるんだ。」



.
734 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 01:06:44.92 ID:1FR1HvLeo
本日はここまでです
735 : ◆BAGSDsqeLs :2015/06/01(月) 01:17:45.59 ID:1FR1HvLeo
備考・カラオケでの曲達

1照・淡 だんご大家族
2菫 ここにしか咲かない花/コブクロ
3春原 ボンバヘッ!
4尭深 小さな手のひら
5亦野 全力少年/スキマススイッチ
6淡 CHERRY YUI
7朋也 HOWEVER/GLAY
8照 口唇/GLAY
9菫 あの太陽がこの世界を照らし続けるように/コブクロ
10春原 ボンバヘッ!
11尭深 時を刻む唄
12亦野 雫/スキマスイッチ
13淡 気分上々/mihimaru GT
14尭深 メグメル
15朋也 Missing You/GLAY
16朋也 Precious/GLAY
17朋也 SPECIAL THANKS/GLAY
18朋也 ずっと2人で…/GLAY
19朋也 Etarnaly GLAY
20朋也 カーテンコール/GLAY
21朋也 都忘れ/GLAY
22朋也 Satellite of love/GLAY
23朋也 遥か…/GLAY
24朋也 STREET LIFE/GLAY
25朋也 つづれ織り/GLAY
26朋也 君が見つめた海/GLAY
27朋也 夏音/GLAY
28朋也 pure soul GLAY
29朋也 SAY YOUR DREAM
30照 淡 だんご大家族

GLAYはCLANNADを彷彿とさせる曲が多いです
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/01(月) 02:15:48.75 ID:i82neTjKo
春原わろた
おつ
737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/01(月) 08:08:41.09 ID:baPnKAJ+o
乙です
738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/01(月) 08:10:13.89 ID:Lt8Sf8aSo

想像以上に朋也歌いまくっててワロタ
739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/01(月) 22:10:26.03 ID:6b6DKIx2o
おいおい再開しとるで!
嬉しいな!
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/06/15(月) 01:04:39.59 ID:EOo/RyMNO
>>659
映画見ててこれ思い出した
741 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/06/28(日) 14:46:36.90 ID:vo6bibLto
生存報告。
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/06/28(日) 17:16:25.84 ID:FTLLAWe3O
報告乙
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/07/14(火) 12:53:59.07 ID:L8gnM5LSO
744 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/07/18(土) 22:51:48.37 ID:3i3gbdVro
生存報告
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/18(土) 23:06:20.89 ID:DsSBxjueO
報告乙
746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/19(日) 14:12:13.51 ID:1uKIbwdto
このスレ>>1と報告乙の人と俺しかいないんじゃないかと不安になってくる
747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/19(日) 14:26:16.34 ID:gPU/U2Hso
そんなことはない


多分
748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/19(日) 14:48:50.96 ID:kQn1y65Oo
いるいる
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/19(日) 14:53:40.21 ID:FPgcCPB+o
おらんおらん
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/19(日) 14:55:18.00 ID:84swvxD6o
俺も居るぞー
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/19(日) 15:08:57.23 ID:Snk+7TP6o
俺もいるぜ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/21(火) 01:20:36.04 ID:bsHDRTFrO
貴様らどこから沸いて出たのだ
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/07/21(火) 01:24:42.86 ID:RIgOp+VQO
あげんじゃねーよksが
754 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/08/07(金) 01:01:55.14 ID:yagAnKW5o
生存報告。
755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 01:36:15.24 ID:5KepVRI2o
報告乙
756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/08/07(金) 01:58:43.45 ID:rAv4SCLMO
まーだかかりそうっすかね?
757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/08/29(土) 23:57:32.55 ID:9pGTK21j0
ほぼ三年前のスレがまだ現役とか驚愕せざるを得ない。
とりあえず今読み終わったので続きを期待しております。

積みゲのクラナドやんないとダメかなこれ
758 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/09/02(水) 23:57:46.69 ID:lBQwCTOKo
生存報告
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/03(木) 00:31:12.23 ID:LacX1pcuO
報告乙
760 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/10/01(木) 22:55:51.90 ID:obZhSAiMo
生存報告
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/01(木) 23:03:46.92 ID:DYs3cqLWO
報告乙
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/02(金) 02:45:35.59 ID:VcjDror4O
生きてるだけっぽい
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/02(金) 07:56:04.92 ID:8IVLUouIO
生存報告ばっかやん…
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/02(金) 09:44:22.13 ID:jU/w8iDyO
なぁに、生きてるってんなら続きがまだあるって事だ

気長に待とう
765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/24(土) 17:43:14.41 ID:/QXn7lz40
というか二つの生存報告のIDが別物wwwwwwww
766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 18:21:39.00 ID:D9pxF2xPo
>>765
767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 20:09:27.12 ID:Zl2oh6W0o
>>765
768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 21:59:23.19 ID:Y/UTCOxAO
>>765
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/24(土) 22:16:24.40 ID:fwx1T5+So
>>765
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/25(日) 16:42:54.67 ID:sEpWMK9EO
出直してこい
771 : ◆BAGSDsqeLs [saga]:2015/11/02(月) 23:36:19.94 ID:UO1YakJxo

……夢を、見ていた。

光に包まれた、夢。

幸福の、夢。

俺と彼女の、夢。

俺と彼女達の、夢……


……それは、穏やかな幸せの夢だった


「んむ…」

うっすらと、瞳を開ける。

寝起き眼に差し込む木漏れ日に、思わず顔をしかめる。

背中に感じるのは、柔らかな土の感触。


……そうだ、俺は眠っていたのだ


この場所で。


緑溢れる、この場所で。
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:37:33.41 ID:UO1YakJxo

「んーーーっ…」


凝り固まった、体を伸ばす。


……今日は、休日


麻雀部の雑用に駆り出されることもなく、久しぶりに俺は羽を伸ばしていた。

…腕時計を見てみると、針は11時を回っている。


「よっ」


立ち上がり、衣服についた土や草葉を払い落とす。

……この場所にやって来たのは10時を回る頃だったから

大体1時間ほど眠っていた事になる。


「ふぅ…」


耳をすますと、風に揺られる木々のせせらぎが、辺りから聴こえてくる。

病院に隣接するこの空間は、患者達にとって良い場所になっていることだろう。


……『病院』、か。
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:38:24.93 ID:UO1YakJxo


……。


……さて


「何を、するかな…」


休日。

9時頃に目が覚め…やることもなく

なんとなく町をさまよい、俺はこの場所にたどり着いた。

そして、森のせせらぎに身を任せ…気づけば軽い眠りについていたようだ

つらつらと、今後の予定について思い浮かべる

学校に行き、部活に顔を出す。…というのは何か違う。

…確か今日は外部からプロを呼んで対局するとか言ってたっけか

とにかくとして、わざわざ休みを貰ってるのに顔を出す必要もあるまい

というわけで次は…

春原の部屋…というのも、何か面白くない

資料室でコーヒーを1杯……まぁ、休日には彼女は居ないだろう

…いや、居るかもしれないが。とにかく除外。

「うーむ…」

はてさてどうするかと考え込み…

…やがてひとつの考えを導き出す
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:38:54.49 ID:UO1YakJxo


「そうだ」


彼女の家に、行ってみよう


あいつの、家に


あの少女の、家に


あの図書室の、少女の家に…



「…いや、アポもなしに行くのは不味いか?」

とは言え、連絡手段がないし家の番号も知らない

ううむ…

………。

……まぁいいか。


いつか、遊びに行く


その約束を、果たせばいい。


…考えがまとまったのなら、あとは行動に移すだけだ。


さぁ、この場から立ち去ろう。


この穏やかな、緑の空間から……
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:40:31.05 ID:UO1YakJxo


「ーーーーん?」


………考えが纏まり。

この森の外に出よう。そう思ったまさにその時…

俺の瞳は、人影を見た。

あれは……

姿から見るに、どこかの会社のOLか。

昼休みにこの場所に涼みに来ているのだろうか。

……。

……まぁ、どうでもいい

とにかく、歩くことにしよう…
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:41:49.39 ID:UO1YakJxo





ピンポン、と

簡素な電子音が鳴り響く

ややあって、ぱたぱたぱたと扉の向こう側から音がして…そしてガチャリと、扉が開かれた

「あっ…」

「よう」

なんとも気の抜けた顔で、図書室の天才少女こと…一ノ瀬ことみが俺を出迎える


「「………」」


出迎えてくれたのは良いのだが…何故か妙な沈黙が場を包んでいた


「……あー」

「その、なんだ」

「ちょっと今日、暇しててな?」

「いつか遊びに行くって、前に言ったし…」

「だから、それで…」

「朋也くん」

「あ、ああ、なんだ?」

「いらっしゃいなの」

「……ああ」

「……おじゃまします」
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:42:33.80 ID:UO1YakJxo

「あっ」

「…あっ?」

急に妙な声をあげて、どうしたのだろう

「……どうしたんだ?」

「今、お客様が来てるの」

「お客様?」

…それは悪いことをした

来客が来てるのなら、帰るしかあるまい

…む

玄関に脱がれてある靴は…あれは、女物?

…とにかく、来客が来てるのなら、また次の機会にするしか……
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/02(月) 23:43:02.93 ID:UO1YakJxo

「ことみちゃーん?」

「「!!」」

奥の方から、女性の声が聞こえてきた

そして、気配がどんどん近づいてきて…

なんだ

これは

一体

俺は、どうすれば……

「一体どうしたの……って」

「!!」

「あっ、お客様?」

ことみの後ろに、不思議そうな顔をして立っている女性…

その人を、俺は知っていた

その人は…

その人の名前は…

「瑞原、はやり…」

「はやっ?」
779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 00:11:12.45 ID:RLNPaUjyo
なんと
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 00:21:11.32 ID:QSprjnBio
生きとったんかワレェ!
おつ
781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/03(火) 00:42:37.32 ID:0rDncYME0
今日はもう終わりかな。おつー

まだ見てるぞ
782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 01:17:00.06 ID:cEMF/2+XO
乙ー
783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/11/03(火) 13:07:52.26 ID:DE+uRBH0o
784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/03(火) 17:55:12.96 ID:N8XSWPcuO
おつ!
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/04(水) 19:16:33.35 ID:b7/i2YC2O
久しいやけわれぇー
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/04(水) 20:26:27.37 ID:LYRBWuano
ひらがなみっつではやり
787 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/12/01(火) 08:09:28.66 ID:UNcRELNIo
生存報告
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 08:47:02.14 ID:oISURs3mO
生存報告乙
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/01(火) 11:29:55.59 ID:jU+9FnOro
生存乙
790 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2015/12/24(木) 20:59:28.75 ID:YEOxQm1go
生存報告
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/24(木) 21:32:49.47 ID:JqayG21CO
報告乙
792 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2016/01/19(火) 16:31:30.66 ID:p/jjAqrTo
生存報告
793 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 16:54:08.85 ID:bwfUDr5zO
報告乙
794 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/20(水) 02:06:19.85 ID:aIln8n2Ao
生存乙
795 : ◆BAGSDsqeLs [sage]:2016/02/13(土) 00:41:18.62 ID:lgyBlExWo
生存報告。
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/13(土) 01:53:42.97 ID:1BZcubp+o
報告乙
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/13(土) 08:15:57.40 ID:OCzU67TBO
生存報告乙
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:29:28.26 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:30:29.48 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:31:31.13 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:32:32.09 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:33:33.30 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:34:34.30 ID:HNiEJYdO0
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804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:35:35.27 ID:HNiEJYdO0
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805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:36:36.40 ID:HNiEJYdO0
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806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:37:37.37 ID:HNiEJYdO0
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807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:38:38.31 ID:HNiEJYdO0
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808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:39:39.49 ID:HNiEJYdO0
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809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:40:40.49 ID:HNiEJYdO0
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810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:41:41.47 ID:HNiEJYdO0
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811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:42:42.78 ID:HNiEJYdO0
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812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:43:43.76 ID:HNiEJYdO0
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813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:44:44.97 ID:HNiEJYdO0
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814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:45:45.96 ID:HNiEJYdO0
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815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:46:46.91 ID:HNiEJYdO0
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816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:47:47.81 ID:HNiEJYdO0
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817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:48:48.79 ID:HNiEJYdO0
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818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:49:50.14 ID:HNiEJYdO0
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819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:50:51.12 ID:HNiEJYdO0
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820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:51:52.07 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:52:53.04 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:53:53.98 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/22(月) 12:54:37.07 ID:a2y1xo91O
何か変なの沸いてるな…
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:54:55.01 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:55:55.99 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:56:56.93 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:57:57.85 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:58:58.88 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 12:59:59.86 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:01:00.82 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:02:01.78 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:03:02.72 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:04:03.83 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:05:04.78 ID:HNiEJYdO0
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835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:06:05.89 ID:HNiEJYdO0
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836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:07:06.88 ID:HNiEJYdO0
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837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:08:07.87 ID:HNiEJYdO0
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838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:09:09.07 ID:HNiEJYdO0
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839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:10:10.30 ID:HNiEJYdO0
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840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:11:11.30 ID:HNiEJYdO0
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841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:12:12.26 ID:HNiEJYdO0
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842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:13:13.35 ID:HNiEJYdO0
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843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:14:14.34 ID:HNiEJYdO0
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844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:15:15.30 ID:HNiEJYdO0
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845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:16:16.31 ID:HNiEJYdO0
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846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:17:17.24 ID:HNiEJYdO0
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847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:18:18.23 ID:HNiEJYdO0
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848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:19:19.15 ID:HNiEJYdO0
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849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:20:20.28 ID:HNiEJYdO0
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850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:21:21.21 ID:HNiEJYdO0
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853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:24:24.22 ID:HNiEJYdO0
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854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:25:25.15 ID:HNiEJYdO0
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855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:26:26.05 ID:HNiEJYdO0
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856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:27:27.01 ID:HNiEJYdO0
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857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:28:28.04 ID:HNiEJYdO0
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858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:29:29.05 ID:HNiEJYdO0
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859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:30:30.13 ID:HNiEJYdO0
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860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:31:31.16 ID:HNiEJYdO0
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861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:32:32.16 ID:HNiEJYdO0
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862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:33:33.17 ID:HNiEJYdO0
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864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:35:35.44 ID:HNiEJYdO0
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865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:36:36.37 ID:HNiEJYdO0
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866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:37:37.68 ID:HNiEJYdO0
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867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:38:39.53 ID:HNiEJYdO0
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868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:39:40.51 ID:HNiEJYdO0
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870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:41:42.58 ID:HNiEJYdO0
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871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:42:43.59 ID:HNiEJYdO0
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872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:43:44.62 ID:HNiEJYdO0
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873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:44:45.77 ID:HNiEJYdO0
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874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:45:46.81 ID:HNiEJYdO0
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875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:46:48.42 ID:HNiEJYdO0
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876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:47:49.53 ID:HNiEJYdO0
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877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:48:50.72 ID:HNiEJYdO0
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878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:49:51.78 ID:HNiEJYdO0
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879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:50:53.27 ID:HNiEJYdO0
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880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:51:55.05 ID:HNiEJYdO0
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881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:52:55.97 ID:HNiEJYdO0
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882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:53:57.25 ID:HNiEJYdO0
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883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:54:58.26 ID:HNiEJYdO0
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884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:55:59.22 ID:HNiEJYdO0
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885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:57:00.19 ID:HNiEJYdO0
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886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:58:01.16 ID:HNiEJYdO0
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887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 13:59:02.13 ID:HNiEJYdO0
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888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:00:03.08 ID:HNiEJYdO0
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889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:01:04.08 ID:HNiEJYdO0
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890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:02:05.00 ID:HNiEJYdO0
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891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:03:05.99 ID:HNiEJYdO0
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892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:04:06.97 ID:HNiEJYdO0
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893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:05:07.94 ID:HNiEJYdO0
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894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:06:08.89 ID:HNiEJYdO0
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895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:07:09.81 ID:HNiEJYdO0
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896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:08:10.81 ID:HNiEJYdO0
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897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:09:11.78 ID:HNiEJYdO0
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898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:10:13.07 ID:HNiEJYdO0
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899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:11:14.06 ID:HNiEJYdO0
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900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:12:15.02 ID:HNiEJYdO0
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901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:13:15.99 ID:HNiEJYdO0
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902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:14:16.93 ID:HNiEJYdO0
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903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:15:17.86 ID:HNiEJYdO0
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904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:16:18.83 ID:HNiEJYdO0
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905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:17:19.77 ID:HNiEJYdO0
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906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:18:20.72 ID:HNiEJYdO0
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907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:19:21.87 ID:HNiEJYdO0
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908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:20:22.85 ID:HNiEJYdO0
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909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:21:23.83 ID:HNiEJYdO0
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910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:22:24.99 ID:HNiEJYdO0
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911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:23:26.16 ID:HNiEJYdO0
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912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:24:27.22 ID:HNiEJYdO0
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913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:25:28.18 ID:HNiEJYdO0
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914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:26:29.10 ID:HNiEJYdO0
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915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:27:30.05 ID:HNiEJYdO0
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916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:28:31.04 ID:HNiEJYdO0
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917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:29:32.00 ID:HNiEJYdO0
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918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:30:33.18 ID:HNiEJYdO0
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919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:31:34.21 ID:HNiEJYdO0
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920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:32:35.26 ID:HNiEJYdO0
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921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:33:36.37 ID:HNiEJYdO0
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922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:34:37.30 ID:HNiEJYdO0
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923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:35:38.22 ID:HNiEJYdO0
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924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:36:39.15 ID:HNiEJYdO0
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925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:37:40.10 ID:HNiEJYdO0
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926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:38:41.10 ID:HNiEJYdO0
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927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:39:42.16 ID:HNiEJYdO0
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928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 14:40:43.15 ID:HNiEJYdO0
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990 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:45:25.81 ID:HNiEJYdO0
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991 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:46:27.13 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
992 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:47:21.49 ID:SOXWRxKsO
落ちたな
993 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:47:28.18 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
994 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:48:29.22 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
995 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:49:30.81 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
996 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:50:31.84 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
997 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:51:32.97 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
998 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:52:34.09 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
999 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:53:35.16 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
1000 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/22(月) 15:54:36.23 ID:HNiEJYdO0
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
1001 :1001 :Over 1000 Thread
   /.   ノ、i.|i     、、         ヽ
  i    | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ        |
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   iイ | |' ;'((   ,;/ '~ ゛   ̄`;)" c ミ     i.
   .i i.| ' ,||  i| ._ _-i    ||:i   | r-、  ヽ、   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
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 ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ                             
      ノヽ、       ノノ  _/   i     \
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