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垣根「本当の意味で」フィアンマ「世界を、救う」(安価スレ) - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/07(水) 19:33:52.62 ID:6TeA/FLAO


◆H0UG3c6kjA改め◆2/3UkhVg4u1Dです。


このスレは

フィアンマ「…天使…?」垣根「それじゃ、安価旅行に洒落込むとしようぜ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1349056988/

の設定を引用しています。


・右方のフィアンマさんと垣根帝督くんが純粋な魔神から世界を救うお話

・時間軸曖昧、捏造新約

・基本はほのぼの進行…だと思われます

・キャラ崩壊注意

>>1は(安価スレの割に)遅筆




※注意※
当スレのフィアンマさんは女性です。
安価次第で著しく展開が変わります。
ホモスレ等になる場合があります。
エログロ展開の可能性があります。
小ネタを挟む可能性があります。

感想・内容から離れすぎない範囲での雑談はお気軽にどうぞ。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1352284432
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小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:25:33.60 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459533/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:23:40.62 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459420/

2 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/07(水) 19:35:19.69 ID:pYypQOn90


沢山の人々が、力を合わせて世界という名の砂の城を作った。
長い時間をかける内、その砂の城は段々と形が崩れていった。
とある人が優しい教えを説き、あなたがたはこの城を愛で作ったのだと言った。
世界のとある人々はその発言に賛同し、慕い、砂の城は愛で出来ているのだと思った。
やがてそのとある人は、そんな城の中の人々の考えによって殺された。
殺した人々はその過ちを悔い、教えを長く伝えようと沢山の本を書いた。
それからも、沢山の人が愛や義理、優しさで出来ているのだと、世界の構成を伝えた。
調べたのか、思ったのか、それはわからないけれど。

崩れかけている城の土台をしっかりしなければ、と少女は思った。
生きる目的の無い彼女は、きっと素敵な砂の城に直すのだと考え。
人々に城を直させるには、まず自分がやってみせ、そして直させようと思ったのだ。
彼女は一生懸命に努力し、世界という名の砂の城を綺麗に作り直そうとして―――失敗した。
神様はそんな彼女を見捨てず、とある不幸な一人の少年と出会わせる事で、愛という小さな世界を創らせる。

彼女が一生懸命がむしゃらに砂の城の歪みを直そうとしたことで、城はまた少し崩れてしまった。
周囲の人は丁寧に城を作り直し始める。
また綺麗なお城を作ろう、と、力を合わせて修復と追加を。



『大事に大事にして、凝りに凝って、皆で協力して、とてもいい作品が出来た時』
『皆が歓声をあげる直前で『ぶち壊す』。…その時の驚愕と絶望感に溢れた顔を見るのが、最高に楽しい』

砂の城の歪みを直そうとした少女に向かって、根本の歪んだ少女はそう話した。
彼女にとって、世界という大きな城でさえ、所詮は砂の城。


「……私は、この世界が愛おしい。だから、この世界を壊す」


救世主になりきれなかった少女は生み出しかけた絶望よりも更に濃厚な。
完全なる絶望を世界にもたらそうと、魔神は酷薄に笑んだ。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/11/07(水) 19:35:20.78 ID:6TeA/FLAO
+
4 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/07(水) 19:35:42.70 ID:pYypQOn90


みゃーん。
甘く鳴く白いふわふわとした子猫を抱え、フィアンマは視線を彷徨わせていた。
じろり、と睨めつけるような視線を向け、垣根は盛大にため息を漏らす。

垣根「…オーケー、話をしようぜ」

フィアンマ「……」

垣根「確かにここは一応ペット可のホテルだが、」

流れるような金髪を横で緩く括った彼女は、垣根の呆れたような視線から逃れるべく顔を逸らす。
彼は肩を落とし、手を伸ばしてわしゃりと子猫の頭を撫でた。
子猫はうなうなと甘えた声を出して垣根の手のひらに頭を擦りつけて甘えている。

垣根「……どうせ手触りが良かったから拾ってきただけだろ、お前」

フィアンマ「…コイツが勝手について来たんだ」

垣根「振り払えよ」

フィアンマ「……」

フィアンマは悪びれず、猫を自分の顔の前に持ってきて「にゃー」と言う事で誤魔化そうとしている。
そんなかわいこぶったって駄目に決まってんだろうが、と垣根は彼女の頬を摘んだ。

フィアンマ「………離ひぇ」

垣根「お前が猫捨ててきたらな」

フィアンマ「可哀想じゃにゃいか」

垣根「可哀想で済んだら保健所要らねえんだよバカ」

フィアンマ「……せっかく名前も付けたというのに」

垣根「どんな名前だよ」

フィアンマ「コットンキャンディー」

垣根「綿飴…そのまんまだなオイ」

フィアンマ「zucchero filatoでも良いぞ」

垣根「つまるところ綿飴だろうが」

猫をあやし、フィアンマは海よりも深そうなため息を漏らす。

フィアンマ「…どうしても駄目か」

垣根「…、>>9
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) [sage]:2012/11/07(水) 19:35:43.75 ID:6TeA/FLAO
+
6 :小ネタ:喪失  ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/07(水) 19:36:16.74 ID:pYypQOn90

《設定引用元スレ>>980から分岐の記憶喪失ルート》




降り注ぐ羽は垣根帝督の体に、優しく降り注ぐ。
全ての戦闘から救済するように、ふんわりと、祝福するように。
指先一つ動かせなかった彼は、自然の摂理へ沿って、それを受ける。
『意味記憶(知識)』、『エピソード記憶(人格)』、『技能記憶(演算)』。
神が自らの身許まで導いたのは、彼の中枢を構成する人格。
奇跡など、起こる筈も無かった。そんなに、世界は優しくなんか無い。


フィアンマは神浄の討魔に救われ、病室に居た。
彼女が入院しているのではなく、垣根を見守る為に。
見舞い客用の椅子に腰掛ける彼女は、どこかぼんやりとしていた。
もう一つの椅子には、彼女を守り通し、垣根を病院まで運んだ青年が座っている。
彼の名はオッレルス。魔神になり損ねた、哀れで優しい魔術師。

垣根帝督は、目を覚ました。
夕暮れ時のことだった。
そして、彼と彼女を見上げ、不思議そうに首を傾げる。
自分の素性についての説明を受けても、垣根帝督として生きてきた思い出の無い彼は、不可解そうな様子だった。
彼はフィアンマとオッレルスを見比べ、共に金髪である彼等に、思いついたかのように問いかけた。

「…カップル?」
「……いや、違うよ」

悲痛な思いでオッレルスがそう答える。
内心は掴みかかりたい気分だったが、今の垣根に罪は無い。
彼女は、あらかじめ宣言していたように、振舞う。




「…私は、…わたしは…貴方の、…恋人です」
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 19:48:48.77 ID:pdaL6j8SO
スレ立て乙。楽しみだ
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 19:57:20.22 ID:pdaL6j8SO
Ksk
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(山口県) :2012/11/07(水) 20:17:01.56 ID:91qupBGs0
ksk
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/07(水) 20:20:25.38 ID:/iUzwpuw0
いつ死ぬかわからねぇんだぞ
11 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/07(水) 20:34:00.59 ID:pYypQOn90
《記載し忘れましたが、連続取得・連投行為は良識の範囲内でご自由に》


垣根「…、いつ死ぬかわからねぇんだぞ」

現実を突きつけることで、垣根は彼女を諦めさせようとした。
フィアンマはしばらく考えた後、猫を甘やかす。
垣根は彼女の頬から手を離し、再度捨てて来いと促した。

垣根「適当に路地裏に放って…、走るか瞬間移動してくれば良いだろ」

フィアンマ「……」

垣根「…フィアンマ、」

しびれを切らしたように呼ぶ垣根に対し、フィアンマは渋々といった様子で頷いた。
そして、里親を探すと言い張ると、ホテルを出て行った。リハビリをしっかり行った彼女は、現在普通に歩けている。
上条によって救われた以上もう彼女の体に悪意の籠った術式は存在しないが、果たして大丈夫だろうかと垣根はため息を漏らす。
この長いような短いような期間で、彼女は彼の中で割とか弱い女の子だという認定に変化した。
何度も命を賭けて助けたからだろう。もはや、離れるだけで気が気でない。

垣根(…病んでやがる)

心配しすぎでは、執着し過ぎでは、と自らを窘め、垣根はため息を漏らす。
今日は何度もため息をついてしまっている。幸せが逃げる一方だ。

垣根(アイツが目も当てられないブサイク且つ性格も最悪でチートどころじゃねえ強さを持ってたらな…)

それなら何の心配も要らないのに。
だが、そんな人間とも呼びたくないクリーチャーを自分が好きになるとは思えない。

垣根「…どうしたらアイツは俺だけ好きでいるんだ…?」

充分好かれてはいるし、自分だけが愛されているだろう自信もあるが、何となく彼女の性格は移り気な気がする。
被害妄想にも似た思いをそうした台詞で出力し、垣根はぼふりとベッドへ仰向けに倒れた。
恋愛相談を出来る友人など居ない。トールはそれに入るかもしれないが…いかんせん、あまり連絡しない。

エイワス「>>13




《今日は寝ます。スレ立て早々すみません、お疲れ様でした》
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 20:35:38.76 ID:pdaL6j8SO
Ksk
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/07(水) 20:49:36.57 ID:8dZTCS2p0
安心したまえ、彼女の一番はお前で固定されている
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/07(水) 21:33:50.36 ID:pdaL6j8SO
乙。
15 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/09(金) 19:50:55.60 ID:2glKMR0z0

エイワス「安心したまえ、彼女の一番はお前で固定されている」

垣根「ふーん。なら良いが…、…どこから湧いてきやがった」

エイワス「強いて言えば壁といったところか」

垣根「壁…。…重要な時には放置の癖にこの野郎」

エイワス「私には危険というものへの興味が無いのでね」

垣根「……」

はー、と小さくため息を漏らし、垣根は毛布を被る。
眠気は無い為、ぼんやりと天井を見上げた。
まったくの他人と過ごすことには慣れている為、エイワスの存在に威圧感を感じ取ることはない。
単純に、垣根は神経質と無神経を使い分けられる人間というだけなのだが。

垣根「…」

ぼんやりと天井を見上げた後、目を閉じた。
彼女が無事帰ってくると良いのだが、と思いつつ。





一方。
彼女はというと、子猫を抱えたままとある人物と対峙していた。
一方的に敵意を持たれている。ような、気がする。

フィアンマ「……」

猫「にゃー」





フィアンマと対峙している人物(1名。禁書キャラ名)>>+2
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 19:51:48.01 ID:qnEcsgxSO
Ksk
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/09(金) 20:43:24.50 ID:0+FIzam40
ヴェント
18 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/09(金) 20:59:47.32 ID:2glKMR0z0

ヴェント「……、」

フィアンマ「………」

現在のフィアンマは、金の、腰にまで届く長髪である。
長い髪を顔の横で緩く留めている。
服装も今までよく纏っていたスーツではなく、赤を基調としたものではあるものの、ワンピース。
腹部でコルセットをきつめに締め付け、女性的なシルエットを形作るものだ。
その為、今の彼女を見て『右方のフィアンマ』とわかる人間はまず居ないだろう。
ましてや、威圧感をまとっているのならばまだしも、子猫を抱えている穏やかそうな様相だ。
しかし、それでも目の前の女性にはバレているかもしれないな、とフィアンマは思う。
何しろあの前方のヴェントだ。そう易易とその目を誤魔化せまい。

ヴェント「…、」

フィアンマ「……」

回れ右しようか、と足を一歩動かしたところで、ヴェントが発言する。

ヴェント「>>20
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/09(金) 21:41:57.06 ID:Rz4J5xKN0
なんで誰も加速しない
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 21:45:56.58 ID:qnEcsgxSO
…アンタ、随分イメチェンしたねフィアンマ。

警告…、とでも言えばいいのかね?私さー、今、とある組織にいんのよ。リーダーはオティヌスって奴なんだけどさ
……アンタさ、もし、今度年が明ける日に死にたくないなら、今のうちに宇宙にでも逃げた方がいいよ

あのキチガイリーダー曰く、その日、『カーニバル』が始まるんだって。
21 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/09(金) 21:57:54.16 ID:2glKMR0z0

ヴェント「…アンタ、随分イメチェンしたね、フィアンマ」

フィアンマ「…紆余曲折、色々とあってな」

ヴェント「そ。…警告……、とでも言えばいいのかね?」

フィアンマ「…警告?」

ヴェント「私さー、今、とある組織にいんのよ。リーダーはオティヌスって奴なんだけどさ」

オティヌス、という名前に、フィアンマは不快感を堪える。
世界を壊すことは砂の城を壊すことと同義、楽しい、と笑った、あの歪んだ少女を思い浮かべて。
ヴェントは、冷静な表情で言葉を続ける。
冷酷に見えて情に篤い彼女は、フィアンマを元同僚として、それなりに思いやってくれているのかもしれない。

ヴェント「……アンタさ、もし、今度年が明ける日に死にたくないなら、今のうちに宇宙にでも逃げた方がいいよ」

フィアンマ「…突飛だな。何をするつもりだ?」

ヴェント「ん…あのキチガイリーダー曰く、その日、『カーニバル』が始まるんだって」

フィアンマ「カーニバル―――謝肉祭?」

ヴェント「そうそう。それも、パンケーキ食べるとか、そういう次元じゃ無しに、ね」

気をつけようが無いだろうけど、と言い残して、彼女は路地裏に消える。
『カーニバル』。謝肉祭。
古くはゲルマン人の春の到来を喜ぶ祭りに由来し、キリスト教の中に入って、一週間教会の内外で羽目を外した祝祭を繰り返し、その最後に自分たちの狼藉ぶりの責任を大きな藁人形に転嫁して、それを火あぶりにして祭りは閉幕するというのがその原初的なかたちであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自分たちの狼藉ぶりの責任を大きな藁人形に転嫁して、火炙りにして祭は閉幕。


その語源に嫌な予感を覚えながら、フィアンマは再び歩く。
宇宙にまで逃げなければいけない、ということは、全世界中を巻き込んで何かをするつもりなのだろう。
内容から察するに、もはや反転術式どころの騒ぎではない。



無事里親を見つけ、子猫を任せたフィアンマは、ホテルに戻ってきた。
部屋の中から、会話をする声が聞こえ、入ることを躊躇する。






垣根と会話している人物(1名、禁書キャラ名)>>+2
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 22:11:55.62 ID:qnEcsgxSO
Ksk
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/09(金) 22:45:21.41 ID:N0Iq6zVc0
オティヌス
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/09(金) 22:46:04.09 ID:N0Iq6zVc0
ごめんなさい
間違えたオッレルスだ
25 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/09(金) 23:01:23.84 ID:2glKMR0z0

オッレルス『…という訳で、…こちらとしては戦力を集めたい』

垣根『戦力、ね。…俺を巻き込むってことは、フィアンマも』

オッレルス『…出来れば巻き込みたくは無いが、…どのみち、世界中が巻き込まれる。彼女の実力から考えて、協力してもらう他無いだろう』

垣根『……、』

オッレルス『…俺だって気は進まない』

そんな会話を聞き取り、フィアンマはその聴覚でもって垣根の会話相手が誰かを推し量る。
そして、よく見知った相手だと判断すればもはや躊躇は無く、扉を開けた。

フィアンマ「…俺様は姫か何かか」

巻き込みたくないだの、気は進まないだの、まるでこれでは自分がヒロインではないか、とフィアンマはため息をつく。
予想通り、会話していた男二人はフィアンマを見、苦く笑った。
正直、コルセットワンピースに長い髪を緩く留めている姿は姫と呼んでも差し支えないからである。
とはいっても、そんな事を言っている場合ではなく。

フィアンマ「…ところで、何の話だ。…『カーニバル』の件か」

オッレルス「>>27
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 23:16:42.84 ID:qnEcsgxSO
Ksk
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/09(金) 23:55:58.74 ID:qnEcsgxSO
誰もとらねーので


?カーニバル?…まだ4月には遠いんじゃないか?…ああ、何か二人でやるのか

まぁ、それはそれとして。
今日俺がきたのは、頼みがあって。最近オティヌス達がかなり活発に行動している。…それこそ、世界各地でね。
どうも、部下を派遣して、紛争の火種や、戦争の激化誘導をしたりしているみたいだ。
この間はわざわざ北極や南極の基地でまで大暴れしたそうだよ…
また何か録でもない事をしでかす前に協力してくれないか?
28 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/10(土) 00:15:28.22 ID:VMPYgnoO0

オッレルス「? カーニバル? …まだ4月には遠いんじゃないか? …ああ、何か二人でやるのか」

フィアンマ(オッレルスが掴んでいないということは、まだ準備期間か…)

ツッコミを入れようかどうか迷い、フィアンマはひとまず黙って話を聞く。
元々彼女はツッコミキャラではないからだ。

オッレルス「まぁ、それはそれとして。今日俺がきたのは、頼みがあって」

フィアンマ「…頼みか」

オッレルス「最近、オティヌス達がかなり活発に行動している。…それこそ、世界各地でね」

フィアンマ「…、」

オッレルス「どうも、部下を派遣して、紛争の火種や、戦争の激化誘導をしたりしているみたいだ」

フィアンマ(ヴェントは、…科学サイドに関する紛争であれば、容赦なく活動する、か…嘘ではなさそうだな)

オッレルス「この間はわざわざ北極や南極の基地でまで大暴れしたそうだよ…」

フィアンマ「…なるほど、それが謝肉祭の準備―――狼藉か」

オッレルス「? …それで、頼みなんだが。また何か録でもない事をしでかす前に、協力してくれないか?」

フィアンマ「…構わん。…今日、前方のヴェントに接触した」

オッレルス「前方のヴェントに?」

垣根(誰だ)

一人話題についていけていない垣根に少々申し訳なさを覚えながらも、オッレルスに対して説明を続ける。

フィアンマ「…ヤツは今、オティヌスについているそうだ」

オッレルス「…実力から考慮すれば問題は無いが、…そうか。それで、何か君に忠言を?」

フィアンマ「あぁ。…年明けに『カーニバル』がある、と。…語源…昔の祭については、詳しく知っているだろう」

オッレルス「だからさっき…、…しかし、四月ではなく、年明けに?」

フィアンマ「年が明ける日に、だ。…あくまで『カーニバル』は名称だろう。必ずしも謝肉祭を利用した術式とは思えん。だが、少なくともその戦争の手回しは布石だろうな」

オッレルス「……わかった」

垣根「…年明けに何かあんのか?」

フィアンマ「年が明ける日に大事件を起こす、という犯罪予告を受けた」

垣根「嘘の恐れがあるだろ」

フィアンマ「あるとも。だが、嘘をついているかどうかはわかる」

部下として長年ヴェントを扱ってきたフィアンマには、彼女が嘘をつく時の特徴がわかる。
なので、嘘ではないと、情報として受け入れた。

フィアンマ「…具体的にはどうすれば良い。戦地に行って壊滅させてくる訳にもいかんだろう。戦争の仲裁をしに行っても、ヤツ等はまたすぐに火種を作る。直すよりも壊す方が易いように、堂々巡りの鼬ごっことなるのが関の山だ。協力は構わんが、案はあるのか?」

オッレルス「…ひとまず、……>>30





《今日は寝ます。
このスレとは関係無いですが、フィア神スレの書きためが出来ました。
お疲れ様でした》
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 00:19:34.35 ID:Q/FdBj/SO
乙ー。楽しみにしてるんだよ
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 00:24:19.82 ID:NWs3N2mv0
虐殺
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 11:46:55.45 ID:Q/FdBj/SO
>>ツッコミを入れようかどうか迷い、フィアンマはひとまず黙って話を聞く。
元々彼女はツッコミキャラではないからだ。

もしツッコミキャラならどうツッコんだのか
32 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/10(土) 13:43:10.85 ID:XLTkUFFC0
>>31様 フィアンマ「二人で何をどうやるというんだ。四月ではないこと位わかっている」(ぺちこーん) オッレルス「痛っ」》


オッレルス「…ひとまず、……虐殺」

垣根「」

虐殺、という単語に寒々しいものを覚える垣根の様子に気づかず、フィアンマは聞き返す。

フィアンマ「虐殺?」

オッレルス「言葉にし難いが、…戦争の温和な仲裁が意味をなさないのなら、脅迫するしかない」

フィアンマ「…なるほど。…暴力的だな」

オッレルス「俺もそう思うよ。…まぁ、その役割は俺が負うか…。…オティヌスの所在地についての情報を集め、教えて欲しい。ヤツが回ったということは、戦争の火種が蒔かれていったということだからな」

フィアンマ「…わかった。連絡は、傍受の恐れが低い通信術式で良いか」

オッレルス「構わないよ」

伝えるべきことを全て口にしたオッレルスは、それでは、と立ち上がり、部屋から出る。
彼を視線で見送ったフィアンマはドアのオートロックが閉まったのを見届けてから垣根に視線を移す。
垣根はというと、顔を青くして頭から毛布をかぶっていた。

フィアンマ「、…どうした」

垣根「……>>34
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 13:51:26.15 ID:Q/FdBj/SO
Ksk
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 15:58:11.08 ID:NDA5ATRDO
大丈夫なのか?納得してるか…………とか
おだやかな話じゃないしオッレルスって奴の事も
35 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/10(土) 16:08:25.70 ID:XLTkUFFC0

垣根「……大丈夫なのか?」

フィアンマ「何の話だ」

垣根「納得してるか…………とか」

虐殺という単語に反応していたのかと思いきや、そういった訳ではなく。
あまり考え込まずにフィアンマが快諾したことや、前回のオティヌスの卑劣な仕掛けを思い出して憂鬱になっていたようだ。

垣根「穏やかな話じゃないし、オッレルスって…奴の事も」

フィアンマ「…奴は何かを救う為であれば何にも頓着しない男だ。恐らく…特に、自己犠牲は。上条当麻とはまた違うが、…脅迫の役目は引き受けると言ってくれたんだ、その辺りは任せる。俺様と帝督がやるべきはあの魔神の動向を調べることだ。…悩んで引き受けても、もし仮に引き受けなかったにしても、俺様も、お前も巻き込まれていたよ。…曰く、全世界を巻き込んで何かするようだからな」

ベッドに腰掛け、フィアンマは垣根の髪を触る。
垣根は起き上がり、毛布を脇に避けると、彼女を抱きしめた。
気弱な性格でないとはいえ、愛する人間を幾度も危険に晒して喜べる訳が無い。

垣根「…俺がもう少し強かったら違うのにな」

フィアンマに頼らずとも、自分ひとりがオッレルスに協力すれば魔神を倒せる。
そこまでの実力があれば、もう決して彼女を危険に晒すことなど無いのに、と垣根は目を伏せた。

フィアンマ「……俺様はか弱い姫ではない。守られる側にあるべき人間でもない。むしろ、帝督を守るべき立場に居る。…いや、この力があるからやらなければならないという理論は、また怒られるか」

戦時中の上条当麻の言葉を思い出し、フィアンマは苦く笑う。

フィアンマ「……もし不安なら、帝督は立ち向かわなくても良い。魔術に精通しているのは俺様の方だし、ヤツも帝督狙いでくることはまず無い」

垣根「、…」

フィアンマ「心配するな。もうヘマをして捕らわれるようなことはせんよ。…死ぬのは、怖いか」

垣根「>>37
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 17:37:54.93 ID:Q/FdBj/SO
死ぬのは、恐い。お前と二度と会えなくなる事が、恐い。

でも、逃げて、お前が傷つくのはもっと、恐いボソボソ
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 21:35:40.64 ID:Q/FdBj/SO
……なぁ、もういいんじゃねぇか?オティヌスが何をしでかそうが、世界中が、どこの誰がどうなろうが!ほっときゃいいじゃねぇか!
逃げて逃げて、シェルターにでもなんでも引きこもればいい。
オッレルスが何とかしてくれるかも知れないじゃねーか…

頼むよ…また、もし、お前があのクソ野郎の標的にでもされたら……ッ!
38 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/10(土) 22:18:20.39 ID:l+5xz4Bw0

垣根「……なぁ、もういいんじゃねぇか?」

垣根が心底から恐れているのは、自分を含む世界の誰の死でもない。
ただ、彼女が、フィアンマが死んでしまう、ただそれだけを恐れているのだ。
死ぬに限らず、フィアンマが傷つくことが嫌なのだ。
余程特殊な趣味を持っていない限り、恋人には幸せでいてほしい。
傷つかないでいて欲しい、辛い思いをして欲しくはない。

垣根「オティヌスが何をしでかそうが、世界中が、どこの誰がどうなろうが! ほっときゃいいじゃねぇか!」

フィアンマ「……、」

何百人死んでも、何千人死んでも。
垣根帝督にとって重要なのは、自分にとって価値があるかどうか。
その中でも、フィアンマだけは、自分が初めて愛おしいと思った人間だけは、どうやったって代わりが利かない。
自分の世話を看ている研究者は優先的に助けた、それは打算があったから。
そんな研究者は代わりが居たから、命を賭けてまで助けようと思ったことは無い。
でも、自分が好きだと思ったこの少女だけは違う。手放したくなど、ない。

垣根「逃げて逃げて、シェルターにでもなんでも引きこもればいい。オッレルスが何とかしてくれるかも知れないじゃねーか…」

希望的観測。
否、絶望的観測。
自分達だけでも助かろうというのは、ひどく利己的な感情だ。
だが、本当に、本当に何かたった一つを大切にしようとしたら、人は利己的になる。

垣根「頼むよ…また、もし、お前があのクソ野郎の標的にでもされたら……ッ!」

思い出すのは、彼女が『神の如き者』に作り替えられた時のこと。
人生であんなにも神経をすり減らした瞬間は無かった。
誰かの為に必死になるだなんて、自分がそうなるだなんて、考えたこともなかった。
垣根帝督という少年は、基本的に格好をつけることを望む。
その彼がなりふり構わず逃げようと言う時点で、これこそが彼の本当の本音だということが正直に表現されていた。

フィアンマ「…駄目だ」

垣根「ッ、何で! …やり方は乱暴だったかもしれねえ。だが、世界はお前の救済を拒絶して破滅に進んだ。こんな世界、これ以上守って何になるんだよ」

フィアンマ「、…」

彼女が何度も自問自答してきた言葉だった。
自分が一生懸命に救おうとした世界。
守ろうとした世界、上条当麻が守った世界。
垣根の言う通り、ここで逃げ出してひきこもれば、助かる可能性は、あるが。

『……誰だって、戦って良いんだ。たとえ世界を敵に回してでも、これだけは命を懸けて守りたいと、そう認めたもののために』
『世界なんかどうだっていい。…俺は、世界が壊れるのを止めに来たんじゃねえ。お前を取り返しに、ここまで来ただけだ。お前を殺したら、それこそ本末転倒の大馬鹿野郎だろ』

フィアンマ「…俺様は、また間違えるのかもしれないな」

けれど、欲張らずにはいられない。
平和な世界と、垣根帝督と過ごす未来と、フィアンマはその両方が欲しい。

垣根「…、」

フィアンマ「…俺様は、逃げない」

この世界を"救ってやる"んじゃない。
自分と、彼の為に"救う"。
"救わなければならない"から、でもない。

フィアンマ「…確率を擦り減らせばすり減らす程、俺様が生き残る可能性は高まる。…それが、この身体に宿る『奇跡』だ。……だから、逃げない。隠れない。俺様は戦う。世界を、放っておくわけにはいかない。…だが、それを帝督に強制しようとは思わない」

ごめん。
呟いて、フィアンマは視線を逸らす。
魔術師という生き物は、そう簡単に生き方を変えることは、出来ない。

垣根「…………>>40

39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/10(土) 22:30:24.79 ID:Q/FdBj/SO
Ksk
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 12:16:34.75 ID:/DUU5VYSO
…お前がそう望んで、決めたんなら、お前が大事な俺は、最大限助けなきゃならなくなるじゃねーか…結局強制だっての。ハァ

……ちょっと、でかけてくる。
41 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 12:46:41.98 ID:4HbBkDwM0

垣根「……………お前がそう望んで、決めたんなら、お前が大事な俺は、最大限助けなきゃならなくなるじゃねーか…結局強制だっての」

はぁ、とため息を吐きだし、垣根は目を伏せる。
何を言っても、彼女には届かない。
自分が彼女に無事で居て欲しいと思うのと同じ位、彼女は世界を守りたいのだ。
ならば、自分がどう口を挟んだところで、無駄だろう。
もう一度、ごめん、と謝罪したフィアンマに、垣根は首を横に振って立ち上がる。

垣根「……ちょっと、でかけてくる」

フィアンマ「…あぁ」

彼女の返事を聞き、垣根は部屋から出た。
オートロックで鍵がかかる音を背にして、彼は俯く。
絶え間無い無力感が、胸の中を占めていた。
別に要求するつもりは無い。が、自分は世界には勝てないということがわかった。
自分は彼女が生きていれば世界なんてどうでもいいのに、彼女にとってはそうではないのだ。

垣根「……」

憂鬱にふらつく足取りを感じながら、ホテルから出る。

『…俺様は、また間違えるのかもしれないな』

垣根「…そう、思うなら。…逃げろよ、…バーカ…」

人一倍傷つくことが怖い癖に。
そして、そんな彼女を取り巻く運命がどこまでも残酷なことを、知っている。

垣根「…クソッタレ」

自己犠牲の精神が、いくら何でも強すぎる。
どうして、もっと利己的に生きられないんだ。
だが、そんな彼女だからこそ、自分は惹かれたのかもしれない。
愛とは欠乏、持っていないものを相手に捜すこと。
だから、彼女がまったくもって自分と同じような思考回路だったのなら、きっとただの友人に過ぎなかったのだろう。

垣根「……」






垣根はどうする?>>+2
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 12:48:08.49 ID:/DUU5VYSO
Ksk
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 13:08:58.13 ID:/DUU5VYSO
色々んなとこブラブラ遊び歩く
44 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 13:29:02.42 ID:4HbBkDwM0

垣根(気晴らしするか)

適当に歩いて、遊んで気を紛らわせよう。
そう考え、垣根は歩き始める。
ふらりと寄った屋台で食べ物を購入してみたり、酒場に酔って酒を呑んでみたり。
イタリアでは16歳を超えていれば酒を飲んでも問題無い為、垣根は割とやりたい放題だった。
とはいえ、昼間から泥酔するというのはいただけないので、ある程度身体の内側を弄ってアルコールを分解しながら、だが。
途中呑み勝負を仕掛けられたものの、肝臓という概念の無い垣根にとって、幾らでも酒は飲み干せた。
飲んだ先からアルコールを分解していたので、彼の身体からは今非常にアルコール臭が漂っている。
ただ、その代わりにその酒場の男達には気に入られたので、今度も酒を呑む時はあそこにしよう、と垣根は決めた。



四時間ほど放浪した後、垣根はホテルに戻ってきた。




フィアンマは室内に居るor居ない>>+1
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 13:47:29.38 ID:/DUU5VYSO
おらんでー
46 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 13:57:52.49 ID:4HbBkDwM0

鍵を開け、中に入る。
室内には誰も居なかった。
彼女もどこかへ出かけたのか、それとも、何らかの危険に晒されているのか。
せめて街中へ出かけている程度でありますように、と願いながら、垣根は準備をする。
携帯電話は持っていないので、連絡を取るには通信術式を使うしかないのだ。

垣根「……」

準備を終え、しばらく待つ。
一方的なこれは、彼女だけでなく、周囲の物音も聞き取れるようになっている。
だから、もうしばらくすれば彼女の周囲の様子だけでもわかる筈なのだ。

垣根「……」

待つ。
一秒、二秒、…十秒。
短い時間が永遠のようにも感じられる。
しばらく待って、ようやく通信に成功した。

垣根「…今何処に居んの?」

フィアンマ『>>47
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/11(日) 14:07:53.85 ID:ZOWBaauOo
星を観てる
48 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 14:11:30.82 ID:4HbBkDwM0

フィアンマ『星を観てる』

垣根「星? まだ夕方じゃねえか」

フィアンマ『もうすぐ陽が落ちる。見られない訳ではない』

垣根「……」

彼女の周囲はいたく静かだ。
何か、脅されている様子も窺えない。
フィアンマは元来星空が好きなので、空を眺めて時間を潰していてもおかしくない。
ふとホテルの部屋、その窓から空を見てみる。
目は悪く無い筈なのだが、あまり空を見て過ごした事が無かったからか、わからない。
どの辺りにどんな星があるのか思い出せない。

垣根「…俺も行って良いか?」

フィアンマ『>>49
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 14:16:00.47 ID:/DUU5VYSO
勿論。場所はそのホテルに一番近い丘の……オッレルス、今抱きよせるのはやめプツ
50 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 14:35:46.62 ID:4HbBkDwM0

フィアンマ『勿論。場所はそのホテルに一番近い丘の……オッレルス、今抱きよせるのはやめ』

何となく嫌な予感がする。
オティヌス関連の時とは違い、悪意ではない嫌なことである予感。
一番近い丘のどの辺りかはわからないが、どうやらこのホテルの周辺であるらしいことは理解した。
そこまでわかれば、後は上空より探せば一目瞭然である。



外に出、飛行していた垣根は丘を見やる。
寄り添う二人の金髪の男女は、思っていた以上に早く見つかった。
酔いは冷めたし、醒ましたので、幻覚ではない。
姿を現す前に、二人の会話を聞く。
ストーカーか何かのようで自分が気持ち悪いとは思うが、垣根は彼女の恋人なのだ。
それくらいの権利は与えられて然るべきである。
話しているのは、真面目に凝り固まった話題ではなく、世間話のようだ。
フィアンマが空の一部分を指差した。何故かは不明だが。
そんな彼女の手を、オッレルスが軽く握る。

フィアンマ「…不貞を犯すつもりは無い」

オッレルス「犯させるつもりは無いよ」

フィアンマ「……」

強い拒絶を示す訳でもなく、フィアンマは星を眺めた。
段々と陽が暮れてきた為、垣根の目でも見える。

フィアンマ「…幾度も命を賭けさせて、すまなかった」

オッレルス「構わない、自分の意思でやったことだ」

フィアンマ「…お前が如何に俺様の為に何かを犠牲にしようと、…心変わりはしない。だから、報酬が無い。…それでも、お前は俺様を守るつもりなのか」

オッレルス「ん、…>>51
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 14:49:42.63 ID:/DUU5VYSO
君が好きだからね…

君が決して俺に靡いてくれるとも、この想いが絶対に叶わない事も…理解しているよ…
でも…せめて『これ』ぐらいは許してくれないか?報酬だとか不貞ではなく、せめて親しい間柄間でのコミュニケーションだと思って欲しい。
52 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 15:01:39.41 ID:4HbBkDwM0

オッレルス「ん、…君が好きだからね…」

フィアンマ「……」

『……誰だって、戦って良いんだ。たとえ世界を敵に回してでも、これだけは命を懸けて守りたいと、そう認めたもののために』

好きだから守る。
その発想自体は理解出来る。
現に、恋人である垣根もそういった論理で自分を守ろうとしてくれる。
でも、垣根には愛情というものを返せる。

フィアンマは非常に生真面目な性格をしていた。
完全な善意や好意は、受け取った分をどうにか返そうとしてしまう。
論理的に生きていては窮屈だろうに、と思いながら、オッレルスは決して繋いでいる手を恋人繋ぎへは変えずに、言葉を紡ぐ。

オッレルス「決して、君が俺に靡いてくれるとは、思っていない。この想いが絶対に叶わない事も…理解しているよ…」

好きだから、愛おしいから、垣根から奪う。
それは感情的で、オッレルスの実力から考慮すれば出来ない事ではない。
今までだって、フィアンマを救って垣根を見捨てる機会は幾度もあった。
垣根を遠まわしにでも殺害し、あるいは見捨て、傷心のフィアンマに付け入れば恋人関係にだってなれるだろう。
そんな大人の打算を思い浮かべない訳ではない。だが、決して実行しようとは思わない。
たとえ恋人になれなくても、好きな相手が幸せに生きていられるのなら、その全てに守る価値がある、と。
魔神になり損ねた哀れで優しい魔術師は、思っているから。

オッレルス「でも…せめて『これ』ぐらいは許してくれないか? 報酬だとか不貞ではなく、せめて親しい間柄間でのコミュニケーションだと思って欲しい」

フィアンマ「………」

フィアンマが垣根を選び、そして幸せだと言うのなら。
自分を選んで欲しいとは思わない、そのまま幸せでいてほしい。

他の人間を好きになればいいのに、と彼女は思った。
自分のような罪人の為に、誰も彼も報われない戦いをしてくれると思うと、泣きそうだった。

フィアンマ「…、…ん」

少し悩んで考えた後。
フィアンマは、少しだけ体勢を崩して、オッレルスの頬に軽く口づけた。
不貞行為ではない。頬へのキスは、親愛のキス。愛情ではない。

オッレルス「……、」

フィアンマ「……一度に二人の人間を同位に愛せない人間で、…ごめん、なさい」

オッレルス「…いいんだ。…俺は、そんな君が好きなんだ」

息を潜めていた垣根は、口ごもる。
どう出て行くべきか、タイミングを見失った。




垣根はどうする?>>+1
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 15:43:42.21 ID:/DUU5VYSO
コッソリ帰る
54 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 16:20:05.28 ID:4HbBkDwM0

あからさまな浮気というか、そういった流れであれば出て行ったが。
ここはむしろ口を出さない方が良いと、垣根は判断する。
加えて、オッレルスと一緒に居るのであれば、彼女の身の安全はほとんど保障されたようなもの。
悔しくはあるが、彼の実力は本物だと、垣根は認めている。
音を立てず、声を出さず、垣根は静かに帰宅した。
自分が彼女と結ばれたことで欲しいものを得られなかった男の為に。
彼女も嫌がっている訳じゃない、だから。
フィアンマの時間をあげても良いじゃないか…と、思ったから。




フィアンマ「…そういえば、結局帝督は来なかったな」

オッレルス「疲れたんじゃないか? もう少ししたら、帰った方が良い」

フィアンマ「あぁ」

背後、少し遠くに垣根が居たことを知っていて、オッレルスは言わない。
余計なことを言って彼女に罪悪感を持たせたくなかったし、もう少し時間を拘束していたかったからだ。
恐らく、先程の会話を聞かれて、それで去ったのだろう、とオッレルスは正しく判断している。
もう少し、もうしばらくだけ話して、安らいで。
未練は振り切って彼女をホテルに帰そう、と、彼は思った。


ホテルの入口まで送られ。
オッレルスと別れたフィアンマは、中に入った。
垣根は不機嫌そうな体でもなく、ベッドへ仰向けに横になったまま、暇そうに天井を見つめている。

垣根「お帰り」

フィアンマ「…ただいま」

垣根「……」

フィアンマ「…簡単に見つけられただろうに、来なかったな」

垣根「…>>55
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 16:33:50.92 ID:/DUU5VYSO
あー、ちょっと疲れが出て寝ちまってた。悪い。
56 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 16:55:27.20 ID:4HbBkDwM0

垣根「…あー、ちょっと疲れが出て寝ちまってた。悪い」

フィアンマ「…そうか。…疲れは取れたのか?」

垣根「多少はな。やっぱ羽目は外すモンじゃねえな」

腑に落ちない様子で言葉を返すフィアンマに対し、垣根はそう雄弁に誤魔化した。
あの場所に居た、と真実を告げても、きっと何の意味も無い。
自分の恋人が他者の頬に口づけていたのを見ていた垣根だが、その心に怒りは無かった。
むしろ、そうやってむやみに嫉妬しないことが愛なのかもしれない。
恋人の意思を尊重し、自分の感情よりも現実を優先させ、恋人を傷つけないようにする。

垣根「……」

フィアンマ「……」

フィアンマは少し悩む素振りを見せた後、垣根に近づいた。
そして手を伸ばし、彼の服を握る。
直接手を握らないのは、先ほどまで他の男の手を握っていたという負い目からだろうか。
ちょうど垣根の体に跨る形で座り、彼女は彼と視線を合わせた。
長い長い金の髪が、揺れる。

フィアンマ「…お帰り」

垣根「ただいま。……、」

フィアンマ「…酒臭いな。呑んできたのか」

垣根「ちょっとな」

フィアンマ「……やけ酒か」

自分の決心が垣根を落胆させたことを自覚している彼女は、そう問いかけた。

垣根「>>57
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 17:46:27.37 ID:oaqXZ9+DO
あぁ…?そんなんじゃねーよ、頭じゃ分かっててもなんつーか胸の奥が苦しくなる時があってなぁ、まぁちぃっとつまらないストレスを洗い流しただけさ
58 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 17:57:02.31 ID:sza2rTQ80

垣根「あぁ…? そんなんじゃねーよ、頭じゃ分かっててもなんつーか胸の奥が苦しくなる時があってなぁ、まぁ、ちぃっとつまらないストレスを洗い流しただけさ」

フィアンマ「…、…そう、か」

やけ酒であることは否定しないが、別にフィアンマの態度やスタンスのみではない。
知らず知らずの内に溜め込んでいたストレスを発散したかったというのも、多少は、ある。
少なくとも、垣根は何事も彼女のせいにしたくはなかった。
ましてや、彼女の性格を把握していればそうもなる。

垣根「星綺麗だったか?」

フィアンマ「一番良いのは寒い冬の晴れた日だが、今日もなかなか綺麗だった」

垣根「良かったな」

手を伸ばし、垣根は彼女の頭を撫でる。
大人しく撫でられながら、フィアンマはぐしりと目元を擦った。
長時間空を眺め、ほとんど瞬きをしていなかった影響で、少々目が痛む。

フィアンマ「…そういえば、食事のことを失念していた。夕飯はどうするか」

垣根「んー、>>60

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 18:10:48.90 ID:/DUU5VYSO
Ksk
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/11(日) 18:13:49.62 ID:D3Mz0Kka0
外に食いに行くか
61 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 19:06:35.20 ID:8vXWsXsR0

垣根「んー、外に食いに行くか」

適当に、と付け加え、垣根は彼女を退かせて立ち上がる。
フィアンマもその考えに同意すると立ち上がり、欠伸を噛み殺した。
ゆるりと伸びをした彼女に対し、垣根は手を差し出す。
フィアンマは少し考えた後、素直に手を握った。
そのまま、指を絡ませて恋人繋ぎへと変える。
髪の乱れを指で少し直し、楽しそうにはにかんでみせる彼女の笑みに穏やかな癒しを覚えつつ、垣根は外に出た。
先ほど、ほとんど自暴自棄な気分で外出した時よりも、ずっと楽しい。


どれにしようかな、といった本当に適当な選び方で店を選択し。
それなりに食事を終えて、二人はホテルに戻ってきた。
お互い遊んでいたせいで、今日はあまり体力が残っていない。
体力や気力を無理やり絞り出すのは戦闘の時だけで良い。

ぼふ、とベッドに倒れた垣根の様子を眺め、フィアンマは首を傾げた。

フィアンマ「寝るのか?」

垣根「んー、寝る…」

フィアンマ「そうか」

垣根「お前も寝れば」

フィアンマ「俺様はまだ寝ない」

垣根「ん…」

眠る垣根の身体に毛布をかけ。
フィアンマは疲れながらも眠気の無いまま、ベッドへ座ったまま退屈を持て余す。

ふと、垣根がむにゃむにゃとのんきに寝言を漏らした。

垣根「…>>63…」
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 19:08:52.72 ID:/DUU5VYSO
見えっなぁいっなぁにもぉっ!捨ててしまおっおー
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 19:11:42.39 ID:oaqXZ9+DO
俺だって…守れる…
64 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 19:24:45.73 ID:8vXWsXsR0

垣根「…俺だって…守れる……」

フィアンマ「………」

どうして、誰も彼も自分のような人間を助けようとしてくれるのだろう。
守ろうとしてくれるのだろう、わからない。

フィアンマ「…お前は、何もしなくていい」

怖い思いも、辛い思いも、痛い思いも、全部自分だけでいい。
垣根が傷つけられる必要はどこにもない、とフィアンマは思う。
魔術というものに引き込んだのは実質自分であり。
垣根が傷つくと知っていて、術式の行使を止めない。
治療ですぐ治るからだとか、そういう問題ではなく。
つまり、守ってもらうことに無意識下で期待しておきながら、それを望まない、意識と無意識の齟齬に、フィアンマは苛立ちを覚える。

フィアンマ「…守って欲しい訳じゃない」

それなら、守らなければ。
たとえ、取った剣によっていつか滅ぼされるとしても、垣根を守る為に剣を取らなければ。
また、救われる訳にはいかない。自分がやらなければ。
みだりに他人に甘えるのは怠惰だ、大罪だ。



そんな風に、一人自分を追い詰める少女の様子に気づくことなく、少年は眠り続けた。




垣根が目を覚ますと、フィアンマは少々不自然な体勢で眠っていた。
ベッドに上体を預けて眠っている。
自分の隣で眠るかと思っていたのだが、と首を傾げ。
時計を見れば、午後九時半。少々寝過ぎた感は否めない。





垣根はどうする?>>+2
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 19:29:58.24 ID:/DUU5VYSO
毛布かけてやる
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 19:44:09.17 ID:oaqXZ9+DO
とりあえずTVを見てみる
67 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 20:00:46.87 ID:8vXWsXsR0

とはいえ、まだ空腹は感じていない。
そのままだと身体を痛めるぞ、と思いながらも彼女を起こす事無く、垣根はテレビのリモコンに手をかけた。
テレビのスイッチを点けると、流れ始めたのは臨時ニュース。
何でも、いたるところで連続して傷害だの、殺人だのが流行っているそうだ。

『憎いのなら、嫌いなら、殺せ。その全ての罪は、確実に消せる』

どの国の人間もそんなことを言って。
加害者側はそう言って、にこにこと笑むのだとか。
気味が悪いと同時に、各国の警察は超巨大規模宗教か何かを疑っているそうだ。
精神鑑定をしても、大概は責任能力があり。

垣根「…魔術か」

それとも、暴力などでの扇動だろうか。
続いて流れるのは、戦争や内紛についてのニュース。
ここ最近死者の数が非常に増えている。
マスコミも混乱しているらしい、ひとまずイタリアは報道規制を敷いていないようだが。

フィアンマ「……ん」

垣根「はよ。身体痛めてねえ?」

フィアンマ「…問題無い」

垣根「そっか」

フィアンマ「…ニュースか」

垣根「傷害事件とか、殺人事件の数の急激な増加。加害者の自供内容の酷似。…オティヌス教だな」

フィアンマ「……>>69
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/11/11(日) 20:05:09.87 ID:EJdLMf6Y0
哀れだな、これをされている人間もしている人間も
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 20:21:48.20 ID:/DUU5VYSO
恐ろしいな…伝染する宗教は最早病なのではないのか
70 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/11(日) 20:39:39.32 ID:8vXWsXsR0

フィアンマ「……恐ろしいな…伝染する宗教は最早病なのではないのか」

垣根「…それ、お前が言うのかよ」

フィアンマ「十字教の教え自体はまともだ。それを曲解して戦争が起こる。…だが、今全世界で起きている悲惨な事件の数々は魔神によって打ち立てられたものだろう。……、…『憎いのなら、嫌いなら、殺せ。その全ての罪は、確実に消せる』 。…『カーニバル』か」

垣根「…この前から気になってたけど、何でカーニバル?」

フィアンマ「カーニバルの元のイベントは、ゲルマン系からきている。働いてきた一年間の狼藉、つまりは罪を人形に押し付け、燃やして浄化する」

垣根「……それ、そのまま術式に出来そうだな」

フィアンマ「出来るとも。現に、やろうとしているんだろうな。その押し付ける相手が何なのかはわからんが、今以上の混乱を…」

垣根「…オティヌスの野郎は何しようとしてんだ。年明けって決まってるんだろ。これ以上の世界の破壊なんか出来るのかよ」

フィアンマ「…世界の歪みを正すのと同じ要領だ。そちらはまだ完成していないが」

垣根「…なるほど」

世界の各所に変化をもたらすことで、世界全体を変えようとする試み。
流しそうめんのようなもの。山の上からそうめんを流すには、まず竹と水を用意しなければならない。
逆に言えば、竹でレールを敷終われば、後はそうめんを流すだけ。
年明けまでに、オティヌスはオティヌスなりに世界を壊す術式を完成させるのだろう。
何が起きるのかはわからない。
かつて神が起こした大水のような出来事か。
ありえる。十分な程に、ありえてしまう。

垣根「…オッレルスに言うべきか、これ」

フィアンマ「…ニュースなら見ていそうだが…>>72

71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/11/11(日) 20:42:37.59 ID:EJdLMf6Y0
すぐに動いてくれるとは思えんな
72 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/11(日) 20:44:09.64 ID:8vXWsXsR0
《今日は寝ます。お疲れ様でした。安価下でお願いします》
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 20:48:22.61 ID:/DUU5VYSO
一応は伝えようか。

乙ィヌス
74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/11/11(日) 20:51:42.78 ID:EJdLMf6Y0
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/11(日) 21:33:26.59 ID:oaqXZ9+DO
乙でした〜
76 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 17:32:29.23 ID:ChfrlkDO0

フィアンマ「…ニュースなら見ていそうだが…一応は伝えようか」

垣根「術式組むか?」

フィアンマ「いや、俺様がする。帝督が身体を痛める必要は無い」

空腹だ、と告げて、フィアンマは簡易的な通信術式を組む。
遠まわしに食事を要求された垣根は少し悩んだ後、簡易キッチンへ移動する。
買い揃えた覚えの無い材料がいくつかあったが、彼女が購入したのだろうか。
背後で彼女が会話する声を聞きながら、垣根は何を作ろうかと悩む。

フィアンマ「…という訳だ」

オッレルス『大体は掴めた。ありがとう』

フィアンマ「…風邪は引いていないか?」

オッレルス『大丈夫だよ』

親しげだ、と垣根は思う。
もしかすると、自分と一緒に居るより、オッレルスと一緒に居る方がフィアンマは幸せなんじゃ―――思いかけて、徹底的に否定する。

垣根「……、」

気分を切り替えることにした。






朝食に何を作る?(料理名)>>77-78
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/12(月) 17:33:42.38 ID:3i+QUs700
フレンチトースト
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 17:47:14.67 ID:TbEwZbfSO
目玉焼きベーコン、ウインナー、サラダつき
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 17:49:39.36 ID:TbEwZbfSO
垣根「寝とられの予感ッ…」チナミダ
80 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 18:18:21.75 ID:ChfrlkDO0

垣根(…適当に作るか)

昼も近いので、さほど手の込んだものを作る必要も無い。
そう考え、垣根はサラダを作り始める。
生野菜だと少々食べづらいので、温野菜サラダを少量。
ウインナーを炒め、その肉の油を使ってベーコンを炒めて油を増やし、目玉焼きを作る。
ベーコンエッグとウインナー、温野菜サラダ。
メインはただのトーストにしようかどうか迷い、甘いフレンチトーストにすることに決めた。
砂糖を溶かした甘い牛乳に食パンをしっかりと浸し、綺麗に洗ったフライパンへとバターを敷く。
充分バターが溶け馴染んだのを確認してから、砂糖牛乳に浸しておいた食パンをそっと置いて焼く。
焼いている内に甘い匂いが漂い、適宜ひっくり返せば、朝食が完成した。
部屋に漂う甘い良い匂いに反応しながら、フィアンマは通信を切った。
オッレルスと会話することは必要であり、不快とは逆の場所にあるが、恋人の相手をしている方が楽しいのは当然のことだ。

垣根「飯これでいいか?」

フィアンマ「あぁ。ありがとう」

穏やかに礼を言い、席に着く。
世界中が混乱しているからといって、自分達までもが混乱する必要は無い。
そもそも、憎んでいる人間などいないのだから。二人だけは、ブレない。

フィアンマ「……ん、」

美味しい、と薄く浮かべられた微笑みに、垣根は表情を和ませる。
自分が嫉妬に駆られるなどということは、きっと、無いだろう。





…………きっと。






具体的に飛び回る役目はオッレルスが引き受けているが為に、二人はやることが無かった。
なので、暇を持て余した二人は外へ出た。
比較的イタリアが平和なのは、ローマ正教の影響が強いからだろうか。

フィアンマ「何処に行くんだ?」

垣根「>>82
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 18:27:14.84 ID:TbEwZbfSO
Kskちゃん
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/11/12(月) 18:30:00.40 ID:VbpTlciM0
ちょっと散歩するだけだ
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/12(月) 18:30:01.28 ID:IOJJafTjo
話題の日本人が所属してるチームのサッカー観戦
84 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 18:48:53.84 ID:ChfrlkDO0

垣根「ちょっと散歩するだけだ」

フィアンマ「そうか」

垣根「別にまだ疲れてねえだろ?」

フィアンマ「そこまで体力が無い訳ではない」

侮るな、と肩を竦める彼女の手を引いて、垣根はゆっくりと歩く。
この期間でイタリアの眺めにも随分と慣れた。
一般人達はフィアンマが戦犯などと知らないから、警戒する必要も無い。
警戒すべきは魔術師だが、バチカン市国方面へ行かなければそうそう遭遇することも無い。

散歩で体力を微妙に消費した二人は、船に乗る事にした。
自分達で漕ぐタイプの船である。
水の上に浮かぶ船に腰掛け、フィアンマは髪を下ろす。
怜悧な印象を受ける程に整った彼女の横顔を見ながら、垣根は緩やかな時間の流れに身を委ねる。
時折、ちゃぽんという水の音が聞こえるだけで、無音。周囲に人は居ない。

フィアンマ「…入水自殺には、ロマンがあると思わないか?」

垣根「…何だよ、急に」

フィアンマ「…世間話だよ」

船の上でする話題ではないような、と思いながら、垣根は言葉を返す。

垣根「……>>86
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 18:51:37.06 ID:TbEwZbfSO
Ksk
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [sage saga]:2012/11/12(月) 19:12:33.06 ID:VbpTlciM0
確かにな。……だけど俺はしようとは思わない
87 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 19:23:09.30 ID:ChfrlkDO0

垣根「……確かにな。……だけど、俺はしようとは思わない」

フィアンマ「…そうか」

少しだけつまらなそうに笑って、フィアンマは水面に視線を落とす。
石を投じれば波紋が生じるであろう、透明な水。
水底を見つめながら、フィアンマはしばらく黙った。

垣根「……」

フィアンマ「……」

垣根「……」

フィアンマ「…澄んだ水は美しい」

垣根「陽が出てれば尚更な」

フィアンマ「………」

細い指先が、水面に触れる。
小さな波紋が生まれ、広がっていくそれを、彼女は眺めた。
何を考えているか、読めない。

フィアンマ「…無理心中は日本人の文化だったか」

垣根「…まぁ、そうだな。…どっちかっていうと、ヨーロッパは後追いの方がポピュラーじゃねえの」

フィアンマ「そうだな」

垣根「…、…入水自殺、してえのかよ」

フィアンマ「…どっちだと思う?」

問いかけに問いかけで返しながら、彼女は濡れた指を袖で拭いた。
ドレスのような形状の服、細い肩を流れる金髪は、陽の光を浴びて輝いている。

垣根「…>>89
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 19:37:50.16 ID:TbEwZbfSO
Ksk
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 19:47:39.19 ID:TbEwZbfSO
んー、ちょっと憧れる、くらいだと思いたいね

ちなみによ、もし、やるんなら誘えよな?俺は日本式のが好みだから
90 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 19:58:56.18 ID:ChfrlkDO0

垣根「…んー、ちょっと憧れる、くらいだと思いたいね」

フィアンマ「……」

垣根「ちなみによ、もし、やるんなら誘えよな? 俺は日本式のが好みだから」

フィアンマ「『俺はしようとは思わない』んじゃなかったのか?」

垣根「お前がやるんなら話は別だ」

言って、彼女を水から遠ざけるように、垣根は腕を掴む。
そして、ぐいと自分の方まで引き寄せると、そのまま抱き寄せた。

垣根「…だから、勝手に置いて逝くなよ」

フィアンマ「……、」

約束は出来ないな、とフィアンマはぼんやりと思う。
自分は一度、殺されているべきだった人間だ。
だから、精一杯生きようと前向きになれない部分がある。
露出されている白い肩に、垣根の手が触れる。
とても温かかった。この温もりを守る為なら、生きられる。

この温もりを守る為なら、死んでもいい。

垣根の肩に頭をもたれ、フィアンマはゆっくりと息を吐き出す。
死んだところで何になる、と自分へ言い聞かせた。
けれど、生きていたところで何になる、とも、心中で呟いてしまう。
時折、数年に一度程度、こうした自殺願望に襲われることはある。
わかっているのなら、もういい加減に慣れてコントロールしなければ。

垣根「…さて、そろそろ寒いし、戻るか」

フィアンマ「…そうだな」

船を漕いで元の場所へ。
垣根に手を引かれ、彼が向かう方向へと歩く。
こうして二人で穏やかに過ごしている時間の一秒一秒が、彼女の幸せを構築する。

フィアンマ「……ところで、お前の誕生日はいつなんだ」

垣根「あん? …、>>92
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 20:00:33.36 ID:TbEwZbfSO
Ksk
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 20:27:10.40 ID:TbEwZbfSO
12/31
93 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 20:47:47.76 ID:ChfrlkDO0

垣根「あん? …、12月31日」

フィアンマ「…そうか。…問題が片付かん限り、今年も落ち着いて祝えんな」

垣根「最悪、来年祝えば良い事だろ。…別に祝われなくても問題無いけどな」

フィアンマ「祝うべきだろう。19だぞ?」

垣根「20ならともかく、19なんて微妙だろ」

首を傾げ、垣根は彼女の歩調に合わせて歩く。
フィアンマはというと、首を横に振った。

フィアンマ「…重要なのは数字じゃない。誕生日だ」

垣根「…俺が歳取るの嬉しい訳?」

フィアンマ「…それだけ長く、俺様と一緒に居たということだろう。嬉しくないと思うのか?」

垣根「…、」

相手を長く見てきた、という記念の思い。
なるほど、と思いつつ、垣根は思い出したように言う。

垣根「祝うってことは、今年はともかく、来年はプレゼントか何かくれるんだろうな?」

フィアンマ「帝督が欲しい物を用意してやる」

垣根「ふーん?」

何でも? と問われ、何でも、と彼女は応えた。
ホテルの部屋に戻り、垣根はベッドに座る。
フィアンマは垣根の隣に座って、一息ついた。

垣根「欲しいモン決まった」

フィアンマ「何だ?」

垣根「>>95
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 20:55:01.88 ID:TbEwZbfSO
Ksk
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 21:35:06.03 ID:TbEwZbfSO
結婚式したい
96 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/12(月) 22:36:05.77 ID:f/4hZWDg0

垣根「結婚式したい」

フィアンマ「…結婚式?」

垣根「そ。…まぁ、呼べる奴は限られ過ぎてるけどな。お前も俺も親居ないし、友達ってやつもロクに居ないし」

フィアンマ「…そんなことでいいのか?」

垣根「? 何が」

フィアンマ「結婚式は女が主役になりがちなものだろう」

垣根「……、」

フィアンマ「…神に誓わずとも、」

垣根「神様に誓うんじゃねえよ。自分達に誓うんだ」


『ゆめ、…ゆめ……自分の、家族がほしい』
『…家族、か』
『……かきねの、ゆめは』
『あん? 俺?』
『俺の夢、ねえ。…お前の家族になること』
『…けっこん?』
『結婚。…別に、今すぐって訳じゃなくて、あくまで夢な』
『……よくない』
『あ? 何で』
『…わたしは、あんまりかわいくないから、だめ』
『あんまり、ってのが何ともいえねえな。安心しろ、可愛いから』


垣根(…それに、可愛い女の子に、"お前と結婚する"って、遠まわしにしろ、言っちまったしな)

きっと、覚えていないだろうけれど。

垣根「何だよ、何でもくれるんだろ?」

フィアンマ「……」

垣根「…そんなに嫌なのかよ? 別に籍云々までは言ってねえ。式挙げて勝手に誓いたいだけだ」

フィアンマ「…、>>98
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 22:53:32.51 ID:TbEwZbfSO
Ksk
98 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/12(月) 23:14:20.81 ID:f/4hZWDg0
《今日は寝ます。お疲れ様でした
安価下でお願いします》
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/12(月) 23:27:15.10 ID:TbEwZbfSO
乙。そういやねーちんスレはいつ頃たつんだってばよ?安価↓
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 06:19:02.97 ID:E4ICNsnDO
私は…私は嫌だ、結婚式というものは大事なものだぞ?…誕生日の祝いなどではなく二人の…そのあ、愛というものを尊重して行われるべきだ、だからそれは別にするとして他にないか?
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 06:19:34.06 ID:E4ICNsnDO
遅ればせながら乙でした〜
102 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/13(火) 18:56:24.97 ID:YAso3NMM0
>>99様 とりあえず、オレフィア会話スレが終わってからを予定してます》


フィアンマ「…、私は…私は嫌だ、結婚式というものは大事なものだぞ? …誕生日の祝いなどではなく二人の…その、あ、愛というものを尊重して行われるべきだ、だからそれは別にするとして…他に、ないか?」

垣根「…悪態つこうかと思ったが可愛いから勘弁してやるよ。………他に、ねえ」

もごもごと口ごもり気味に、且つ、素の中の素とも言える一人称で言われ、またそんな発言内容に小さく笑って、垣根は考える。
金で欲しいものは今まで欲しいがままに手にしてきた。
そもそも、金にものを言わせれば手に入るものを彼女に求めようとは思わない。
かといって何か直して欲しいところも無い。家事は申し分無いし、性格の相性も悪くないのだから。
ここで結婚式をゴリ押ししてもあまり意味は無いだろう。
口ぶりからして、いつか二人の意見が合致した時に行うのだろうから。

フィアンマ「……」

垣根「…物?」

フィアンマ「…まぁ、物の方が用意し易いな」

垣根「>>104
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 19:20:02.76 ID:f8hctdVSO
Ksk
104 :幻想御手 [saga]:2012/11/13(火) 19:22:01.09 ID:9OR/21H00
結婚指輪か?
105 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/13(火) 19:27:59.71 ID:YAso3NMM0

垣根「結婚指輪か…?」

フィアンマ「俺様から欲しいのか?」

垣根「俺から贈った方が格好はつくんだろうが、俺は祝われる立場だしな。…お前、前にペアの物が欲しいとか言ってただろ」

フィアンマ「…だからか」

垣根「別にお前がペアの物欲しがってたからってだけじゃねえ」

誓いを立てる前に、物品で結ばれた気分になるのも悪く無い。
そう考えた垣根の発言にきょとんとしながらも、フィアンマは拒否することなく頷いた。
垣根が欲しがっているのならばそれを贈りたい。
彼女は男性として生きてきた期間が長い為、男が指輪を贈るべきだとか、そんなこだわりは持っていないのだ。

フィアンマ「…手を出せ」

垣根「手?」

言われるままに手を差し出す。
そんな彼の左手薬指を触り、フィアンマは黙々とサイズを測った。

垣根「……」

フィアンマ「…どんなデザインが良い? 希望はあるか?」

口元を緩ませ、穏やかな笑顔でフィアンマは問いかける。
少し考え込んで、垣根は言葉を返した。

垣根「>>107
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 19:44:46.51 ID:f8hctdVSO
あんまり派手じゃない方がいいかな…普段つけるやつだし、術式とかを壊さないやつがいい。
ただ材質には拘りたい

シンプルかつ少々武骨、しかしシャープさを失わない、頑丈で綺麗な色がいい
107 :再戦の声 [saga]:2012/11/13(火) 19:47:24.63 ID:9OR/21H00
お前の選んだものなら何でも受け取るよ
108 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/13(火) 20:01:44.05 ID:YAso3NMM0

垣根「お前の選んだものなら何でも受け取るよ」

フィアンマ「何だ、希望は無いのか」

垣根「どれが術式に悪影響が俺はよくわからねえからな。お前に任せる」

のんびりと笑みを返し、垣根は彼女に一任することにした。
フィアンマはこくりと頷き、さてどうしようかと悩む素振りを見せた。
どのみち『問題』が片付かなければ、その指輪を贈れるのは来年末。
ゆっくり考えればいい、と思いながら、垣根はそのまま手を握る。
やる事も無く、どうしようもなく退屈で、彼女と二人きりで、喧嘩をしていない。
この状態が、垣根帝督にとって、今一番の幸せだ。
来年末にプロポーズもしよう、と思いながら、フィアンマは繋いだ手を離さずに考える。

フィアンマ「…兎にも角にも、まずは目の前の障害を払うか」

垣根「年明け前に阻止出来りゃいいけどな」

果たしてそこまで進展するのだろうか、と思いながら。
垣根はため息を呑み込んだ。




翌日。
少々の進展でもあったのか、オッレルスから通信術式が仕掛けられた。
もしやオティヌスの居場所でもわかったのか、と思いながら、フィアンマは通信を受ける。

フィアンマ「何か進展があったのか?」

オッレルス『>>110
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/13(火) 20:10:24.40 ID:9OR/21H00
ksk
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 20:13:39.90 ID:f8hctdVSO
あー、いや、進展と言えば進展だが、悪いニュース、かな…

先刻、オーストラリア、カナダで同時に暴動が起こされた。言うまでもなくオティヌス達だ…

正直、奴等の狙いがさっぱりわからない…恐らくはカーニバル関連の術式なのだろうから、現場に行ったりして、術式や儀式場、魔術的記号なんかを全力で探してみたが、何もないんだ…
111 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/13(火) 20:35:02.04 ID:YAso3NMM0

オッレルス『あー、いや、進展と言えば進展だが、悪いニュース、かな…』

フィアンマ「悪いニュース、か。話せ」

オッレルス『先刻、オーストラリア、カナダで同時に暴動が起こされた。言うまでもなくオティヌス達だ…』

フィアンマ「…それはわかるが」

オッレルス『正直、奴等の狙いがさっぱりわからない…恐らくは『カーニバル』関連の術式なのだろうから、現場に行ったりして、術式や儀式場、魔術的記号なんかを全力で探してみたが、何もないんだ…』

フィアンマ「…魔術記号の一片も無い、だと?」

オッレルス『一応、その場の物を組み合わせて魔術記号を作れるかどうかやってみたが、不完全過ぎて話にならないものしか作れない』

フィアンマ「……、」

不完全過ぎて話にならない。
というと、本当に欠片クズのようなものばかりなのだろう。
魔術の知識を極め過ぎて魔神になりかけた男が魔術記号を創り出そうとして失敗したのだ、最早そこには何も無いのだろう。

ふと、フィアンマはふと疑問を覚える。

・・・・・・・・・
そこには何も無い?


世界地図を思い浮かべる。
カナダに被害。ロシアにも被害は既にもたらされている。
オーストラリアの真上には、インドネシアや日本などの国々。
もし、三点で世界を包囲出来るような術式を組むとしたならば、自分はどうする?
『ベツレヘムの星』を作るべく聖別に自ら出向いた時のことを思い返す。
少しずつ変えていくことで、囲み、そう、まるでリバーシのように、全てを囲む発想をした。

フィアンマ「…待て」

オッレルス『…?』

フィアンマ「……、」

思い出したように、彼女はテレビを点ける。
グリーンランド全体が燃やされていた。原因不明の、国家規模の大火事。

フィアンマ「…恐らく、奴等の次の狙いはアルゼンチンだ」

オッレルス『…まさか、』

フィアンマ「…てっきり謝肉祭という意味でのカーニバルだと思っていたのだが、…違う。基準は、『神の怒りによる大洪水』だ」

カナダ、ロシア、グリーンランド、オーストラリア、アルゼンチン。
ちょうど全ての名前がある国を囲むようにして、暴動。
かつて神は、世界全域の人間の様子が目に余るとして、大水にて世界を洗い流した。
それ以来神話上の本物の神は人を罰しないと約束したが、それは十字教でのこと。
オティヌスは暴動や災害を起こし、世界中に悪意を直接振りまいた上で、大水で洗い流すつもりなのだ。
それは、自らが神となる恐ろしい所業。そして、恐ろしい考え。
魔術をそのようなことに使っても何も生み出しはしないから、どんな魔術師とて使わない手段。
だが、オティヌスにとって『神罰による大洪水』は、砂の城目掛けて水のたっぷり溜まったバケツをひっくり返すような程度の話。

と、通信に一人、割入った。
警戒する二人に対し、フィアンマにとって聞き覚えのある、しかし吐血しているかのようにくぐもった女の声が、聞こえた。

ヴェント『ハァーイ、元気ー?』

オッレルス『…これは、前方のヴェントか』

ヴェント『元、だケドね』

フィアンマ「…お前は『グレムリン』…いや、オティヌス勢力側だろう。通信術式など、……年明けという話ではなかったのか? 準備が早すぎる。というよりも、このままではお前の憎む科学のみならず、全ての文明が破壊されるぞ」

ヴェント『ハッ。文明を破壊しかけたアンタがそれ言うのも妙な話ね、フィアンマ。なんて、イヤミ言ってる場合じゃないか。年明けの予定だったんだよ、本当は。……>>113
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 20:55:41.53 ID:f8hctdVSO
Ksk
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 20:56:08.28 ID:f8hctdVSO
アタシが、奴等の狙いの1つをひっくり返してやった…からね。準備が間に合わなくなったのさ…年明けではね。だから、奴等大急ぎで準備し始めたよ…ざまぁみろ…

あと、アタマイイあんただから、洪水の術式に気づいてるだろ?…けど、それはカーニバル、第一段階。まだ、あるんだ、世界中の血の紋を刻んだのは、『洪水』から、どんどん別の術式に変換するためなんだ…
いいかい?『カーニバル』は全部で三段階。最初に『神の洪水』、次に『天使達』、最後は……『藁人形が選ぶ、『方舟か消滅か』。今、オティヌス達は、木原一族提供の宇宙ステーションにい……
114 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/13(火) 21:13:01.42 ID:YAso3NMM0

ヴェント『ハッ。文明を破壊しかけたアンタがそれ言うのも妙な話ね、フィアンマ。なんて、イヤミ言ってる場合じゃないか。年明けの予定だったんだよ、本当は。……アタシが、奴等の狙いの1つをひっくり返してやった…からね。準備が間に合わなくなったのさ…年明け、ではね。だから、奴等大急ぎで準備し始めたよ…ざまぁみろ…』

オッレルス『……』

フィアンマ「……」

オッレルスも、フィアンマも気づいていた。
人が死ぬところを見てきた魔術師であれば、大概が気づく。
前方のヴェントは今、呪いの術式に苦しみながらも、自分達にヒントを与えてくれていると。

ヴェント『あと、アタマイイあんただから、洪水の術式に気づいてるだろ? …けど、それはカーニバル、第一段階』

フィアンマ「…第一、段階」

ヴェント『まだ、あるんだ、世界中の血の紋を刻んだのは、『洪水』から、どんどん別の術式に変換する為、なんだ…』

フィアンマ「…続けろ」

ヴェント『いいかい? 『カーニバル』は全部で三段階。最初に『神の洪水』、次に『天使達』、最後は……『藁人形が選ぶ、『方舟か消滅か』。今、オティヌス達は、木原一族提供の宇宙ステーションにい……』

その続きを更に何か、最後まで続けようとして、バタリと倒れる音、そして、通信が途絶えた。

彼女は科学サイドを憎んでいて、それが逆恨みだと知っていた。
ここでフィアンマ達に何も伝えずにいれば、世界中の文明が破壊されるとはいえ、科学サイドはまず確実に消えるのに、それでも伝えてくれた。
たとえどんなに復讐心に駆られていようとも、彼女は十字教の修道女だったのだ。
憎しみに駆られ、全てを破壊しようとは思わなかった。
憎い科学を残すことになっても、この世界に生きて欲しいと願えたのだ。

オッレルス『…罠だとは、…思いたくないな』

フィアンマ「…ヴェントが虚偽の情報を掴まされていない限り、今の話は全て真実だろう」

弟の仇討ちの為なら何だってする。神様の、暖かな法則で世界が満たされますように。
そう願い生きてきた彼女がこの局面で嘘をつくとは、フィアンマは思えなかった。
彼女がどこにいるのかはわからない。恐らく、死んでしまったことだろう。

フィアンマ「…『神の洪水』で大水にて世界を洗い流し、それでも生き残った人間を『天使達』…天使の召喚で一掃。…それでも尚残った人間が居たら、『方舟か消滅か』―――恐らく、二人に一人が助かる術式だろう。予測するに、殺し合いをして、勝利者のみを生かすか…絶望を煽る為に逆か」

オッレルス『何にせよ、大量虐殺どころの話じゃないな』

フィアンマ「…宇宙ステーションと言いかけていたが、宇宙飛行という訳ではないだろう。あの魔神は手応えを好む。……俺様はアルゼンチンに向かう。お前はどうする」

オッレルス『俺もそうするよ』

その相槌を最後に、通信を切る。
全てを聞いて、理解した垣根は沈黙のままに彼女を見つめた。

フィアンマ「…帝督」

垣根「…何だよ」

フィアンマ「…話は聞いていただろう。帝督は、……此処でイタリアや、周辺諸国の人間達を出来る限り守ってくれ」

いうなれば、戦力外通告。

強力とはいえ、所詮『光を掲げる者』『闇堕つる者』程度の術式しか持ち合わせない、ましてや能力者、魔術を使う度に身を削る垣根帝督と。
『神の右席』―――『右方のフィアンマ』として全ての上に君臨してきた、カンパーナ=フェリーチと。

確かに、こう見れば垣根の存在は、足手まといかもしれない。
だが、彼女が来るなと言う意味は違う。悪意は無い。
愛しているから、死ぬ恐れの低い場所に居て欲しいという、想い。

フィアンマ「…何、第一段階はもう不可能かもしれんが、第二段階は食い止める」

垣根「…>>116


115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 21:16:44.28 ID:f8hctdVSO
Ksk
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/13(火) 21:19:54.57 ID:P5yifp/f0
ID:f8hctdVSOの安価が壮大過ぎていい内容が
思いつかない
よってkskst
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 22:38:42.55 ID:f8hctdVSO
俺も、行く。
118 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/13(火) 22:58:14.74 ID:YAso3NMM0

垣根「…俺も、行く」

フィアンマ「…足手まといだ」

冷たい口振り。
意図的なそれは、垣根にとって、むしろ痛々しく見えた。

垣根「…俺を置いていくな」

フィアンマ「……安心しろ。俺様は、すぐ戻る」

嘘だ、と彼は思う。
だって、彼女の指先は震えている。
瞳は絶望に満たされている。

フィアンマ「…すぐ戻るよ」

彼女は。
発言とは、対極のことを考えている。
たとえ自分の命が消え失せようと、この世界を救わなければならない。
上条当麻が救ったこの世界を、踏みにじらせる訳にはいかない。

一度目、銃で撃ち殺される筈だった。
二度目、『ベツレヘムの星』と共に死ぬ筈だった。
三度目、アレイスター=クロウリーに腕を斬られ、失血死する筈だった。
四度目、『神の如き者』に乗っ取られ、垣根に殺してくれと頼んだ。

今までだって、何度も死ぬべき機会はあったのだ。
それでも生き続けたのは、垣根帝督という存在や世界を守る使命感の為でもあり。



―――夢と理想と幻想に溺れて死にたいと、願ったから。


垣根「……行くって、言ってんだろうが」

フィアンマ「……」

垣根「…、…そんな簡単には死なねえよ」

ゾンビナメんな、と言って、垣根は小さく笑う。
そして、彼女を三秒間程抱きしめる。
これが最後の抱擁にならないよう、願いながら。




アルゼンチンに到着して。
平行移動の恩恵を受けるべくフィアンマに横抱きにされていた垣根は地面に両の脚で立ち、まるで城のように存在する宇宙ステーションへ目を向けた。
第一段階を乗り切る為に用意されたのだろう。
木原が関わっているとなれば、強度はその辺りの衛星の比では無い。
そんな白い箱のようなものの中から、一人の少女が出てきた。

隻眼の魔神、オティヌス。

オティヌス―――オーディンは、北欧神話の主神にして、戦争と死の神。
ちょうど、平和と愛と生を司る『神の子』―――フィアンマと対極に存在する少女。
嵐の神の名すら冠する彼女の遥か頭上には、暗雲が立ち込めていた。

オティヌス「遅かったな。もう『準備』は済んでしまっているよ。これからパーティーの予定だ」

フィアンマ「…随分と悪趣味だな」

オティヌス「お前がかつてやろうとしたことと、さほど変わりは無いよ」

フィアンマ「…一緒にするな」

儀式場は恐らく、ステーションの中。

オティヌス「……さて。マリアン、相手をしてやれ」

言うなり、白い箱から、少女が現れる。
垣根と実力が拮抗していた、『黒小人』。

オッレルス「…俺はオティヌスの相手を、垣根帝督は『黒小人』の相手を」


フィアンマはどうする?>>+2
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) [sage]:2012/11/13(火) 23:24:34.96 ID:twk43egZ0
軽く聖なる右を振って マリアン を潰す
その後垣根とオティヌスを倒しにかかる
120 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/13(火) 23:25:40.48 ID:YAso3NMM0
《今日は寝ます。お疲れ様でした

安価下でお願いします》
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/13(火) 23:32:18.81 ID:f8hctdVSO
乙ですねー安価↓
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 11:27:40.24 ID:2T/C69MSO
遠くの方で既に暴動が起き始めている事、マリアンに刻まれている、以前はなかったタトゥーから、オティヌス、マリアンの『意識不明』、『睡眠』、『負傷』、『死亡』が発生した場合にも最後の血の紋が刻まれる事に気づく
123 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/14(水) 14:51:35.65 ID:PhISkWrE0

一人特攻しようと考えたところで、フィアンマはふととある事実に気がつく。
第二段階の開始に際して必要な暴動が、遠くながらももう起こってしまっていることに。
ゆっくりと視線を動かし、黒小人と魔神の少女の身体を見る。そして、その肌に独特のタトゥーがあることを認めた。
防御術式と、術式の開始を兼ねた―――生贄術式とでも言おうか。
勿論、そんなことに気付いたとて、オッレルスと垣根を止めることは出来ないし、そもそも彼等は反撃するのが普通で。
しかし、その反撃で彼女達を殺せば。意識を刈り取れば。眠らせれば、傷つければ。
第二段階までの準備が、済んでしまう。

「待っ……!」

遅かった。
最初に襲いかかったマリアンに対し、垣根は能力と術式の併用で彼女の身体を貫いた。
木原加群の死亡以来、生きる事に対し一生懸命になれなかったマリアンは、自分が傷ついたことで作戦が上手く進むことを、喜ぶ。

「げほっ、…」

最後の血の紋が半分刻まれる。
オッレルスの攻撃に対し、オティヌスはほんの少ししか抵抗しなかった。
それによって、血の紋がもう半分埋まる。
完成した。第二段階の準備が済んだのだ、当然ながら、第一段階が始まる。
ざああ、と雨が降り始める。魔神は、痛みにほんの少し表情を歪めながら、嘲笑した。

「…良い、働きだ」

恐ろしい勢いの雨。暴動を起こしていた人々は、その暗雲の向こうから現れた存在に恐怖する。
かつてフィアンマが支配していた『神の力』どころの話ではない。
『神の如き者』と『光を掲げる者』を除く、大天使達。
即ち、『神の火』、『神の薬』、『神の力』。
そして彼等の目的は、座への帰還だけでなく…人々へ神罰を、神に代わって代行すること。
福音書に綴られた、最後の審判のような光景。神々しくも、恐ろしい。
フィアンマはそんな天使達を見上げ、右腕を振る。右肩からいつの間にか顕現していた『聖なる右』は、主の意思のままに動いた。
十字教の中でも、新教(プロテスタント)の中の幾つかの新興教派では"archangel"を『天使の長=天使たちを統べる天使を越えた存在』と解釈し『神の如き者=天国にいる『神の子』と見なしている。
故に、その理論を用いれば、フィアンマは天使達に対し、絶対的な力を有する。




―――全ての天使を、彼の前にかしづかせる。そして、彼の人には、その権利がある。



彼女の力の前に、天使達は倒れた。ただそれだけのことでも、津波が起きている。犠牲者が出る。
大雨の中、強力な一撃を見舞わせた彼女の『聖なる右』は、もがいて消えた。空中分解。
その背後で、魔神は指先を動かす。『魔術と狡知の神(オーティヌス)』は、必要以上の破壊と悲劇を望む。

振り返る。防御、間に合わない。眼前に迫る槍。鋭い刃には、魔術的な意味も篭められている。
オーディンが槍を投げる。それ自体が、神話的事実の大幅な応用。
マリアンと拮抗している垣根は、彼女まで届かない。動けたのは―――魔神に相対出来る、唯一の男。

「が、…ッ、……げほ、…は…」
「……、…どう、して」

『北欧玉座』の発動すらも間に合わないと判断したオッレルスは、ただ、シンプルに彼女の前へ出た。
そんな彼の体を、槍は残酷に貫く。当然、オッレルスとてただの人間だ。吐血するし、死にもする。
赤黒い体液を撒き散らしながら、歯を食いしばって足を止める。
呆然としながら、フィアンマはオッレルスを見た。肩に触れている手の温度が、下がっていく。

「……オッレル、ス…?」
「…怪我、は…ない、か。…よかった…」
「……何で、…俺様を庇った…」

心臓から腹部にかけて槍で貫かれ、生きられる人間は居ない。
段々と喪われていく生命を実感しながら、呟くような低い声で、答えた。

「……>>125
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 15:14:46.22 ID:2T/C69MSO
Ksk
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 15:39:21.39 ID:2T/C69MSO
俺の行動原理は、いつだって君の幸福のためだよ

…愛している。カンパーナ。
126 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/14(水) 16:07:26.87 ID:PhISkWrE0

「……俺の行動原理は、いつだって君の幸福のためだよ」

薄く笑みを浮かべたその口端からは、生々しく赤い血液がこぼれ落ちる。
言葉を失うフィアンマの金の髪を撫で、自らの緋で汚してしまいながら、自分の死がもはや絶対不可避であることを理解した男は、最期にこう言い遺した。

「…愛している。カンパーナ」

本名を教えた覚えは無かった。
膝からくずれ落ちる彼の身体を咄嗟に支える彼女の頭に、とある出来事が浮かぶ。
ずっと忘れていた出来事が。

幼い頃。
うっかりと、風に煽られたばかりにフードを無くして。
あまりこの赤い髪を見られたくない、と泣きそうになりながら捜したこと。
やがて、一人の少年がソレを手に、興味深そうな表情を浮かべているのを、見つけて。

『…それ、』

うまく声が出てこなかった。
返してもらえなかったらどうしよう、という感情がこみ上げ、泣きそうになり。
彼はそんな自分の様子に何かを感じ取ったのか、穏やかに言葉を紡いだ。

『…これは、きみの?』

泣いてしまわないように我慢して我慢して、こくりとだけ頷いた。

『わたしのもの、』
『そっか』

修道服の一部でのフードを返す条件にと、名前を教えた。

『かんぱーな、か。かわいいなまえだね、おぼえておくよ』
『うん。…あ、…えっと、…あなたの、なまえは?』
『おれは――――』

理由の無い一目惚れじゃなかったのか。
自分も彼も、ずっと前からお互いを知っていたのか。
ならば、もう少し会話をするべきだった。しておくべき、だった。

「――――。…ありがとう」

自分の本名を呼ばれ、表情を和ませて。
そして、力が抜けた。何の夢でも幻想でもなく、右方のフィアンマの腕の中で、オッレルスは息を引き取った。

「……………」

無言のままに、一度だけ、フィアンマはオッレルスを抱きしめる。
そして、その場に横たわらせた。立ち上がる。赤いスーツは血まみれになり、やや黒く染まっている。

「目障りな出来損ないだったが、死ぬ時は案外あっさりとしていたな。つまらないものだ」

隻眼の少女はそう笑って、嘲笑して、再び槍を現出させる。
垣根は迷って、殺さずに、マリアンの意識のみを刈り取った。
残るは第三段階。藁人形が選ぶ、『方舟か消滅か』。殺し合いの火種。

「…魔神」
「何だ?」
「…貴様に、善意と正義の恐ろしさを教えてやる」

再び彼女の右肩から、巨大な腕が現れる。その手が握っているのは、光の剣。
そんな彼女を支え守るべく、垣根も隣に立つ。
オティヌスはマリアンに視線をやり、殺してしまおうかと首を傾げた。
今の彼女に計画性など何も無い。全てを破壊することに遊興を感じているだけ。



フィアンマはどうする?>>+2

垣根はどうする?>>+4
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 16:18:17.94 ID:2T/C69MSO
Ksk
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/14(水) 16:42:53.25 ID:slon7D880
垣根と力を合わせて巨大な剣をより強力に振りおろす
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 16:59:56.05 ID:2T/C69MSO
Ksk
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/14(水) 17:00:56.44 ID:jnA0S7KA0
未元物質で銃をつくる
131 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/14(水) 17:31:02.19 ID:PhISkWrE0

未だ激しく雨は降り続けている。
垣根は無言のままに、一度だけオッレルスに目を向け。
その死体の惨状に唇を噛み締め、銃を創り出した。
未元物質によって形作られたその銃は、垣根の手によって使われる時のみ、無限の銃弾を得る。

「…俺様が先陣を切る。援護を任せられるか」
「問題ねえよ」

そう返事をした垣根の様子は、変化していた。
黒と金の混じった銃、髪。赤みを帯びた瞳。
銀の剣を握って『光を掲げる者』となることをやめたのは、垣根が完全に神に反逆することを決めたからか。
装填をする必要は無い。ただ引き金を引けば、この銃は起動する。
そして、人間が創り出した力の象徴―――そして、未知の物質を防ぐ術式は、基本的に存在しない。

第三の腕に巨大な光の剣を。
右手には、黄金の剣を。

一度『神の如き者』をその身に宿した彼女は、『神の右席』に居た時よりも知識を深め、術式を増やした。
第三の腕に握られた神の如き者の剣は、悪意の強さに呼応して力を増す。
右腕に握られた神の如き者の剣に模したそれは、善意の強さに呼応して力を増す。
かつて自らを敗北せしめた善意の力を手に、フィアンマは一歩踏み込んだ。
一気に間合いに入った彼女の剣を、オティヌスは槍で受け止める。
そして、『聖なる右』から振り下ろされた長大な剣は魔神としての、説明の出来ない強大な力で受け止めた。
そんな魔神に対し、垣根は冷徹に引き金を引く。反応が遅れた。銃弾は、彼女の脇腹へ突き刺さる。

「ッぐ…!」

オティヌスは身体を動かし、角度を変えてフィアンマの腹部目掛けて槍を突く。
脇腹を突かれ、血液を吐きだしながらもフィアンマはその動きを止めない。
黄金の剣を振り下ろし、その一撃は魔神の肩へ、食い込む。

「っ、げほ、ぅ」
「っぐ、が…ああああああああ!!」

久しい痛みに叫び声を漏らしながら、魔神は『死者の軍勢』を呼び寄せる。
木原加群、マリアン=スリンゲナイヤー、『グレムリン』に属していた有象無象の魔術師達。
剣を引いて、彼女は一歩後ろに下がる。そして、垣根の隣に立った。
大規模術式、防御用の強大な術式、槍の現出。
大量に魔力を消費したオティヌスの呼び出した『死者の軍勢』は、銃弾を三発も喰らえば死ぬ。

「埓があかねえな、コイツ等」

舌打ちし、垣根は銃を撃つ。
腕は重いし、マリアンとの戦いで体力を消費してはいたが、ここで諦める訳にはいかない。
倒れてもまだまだ数のある『死者の軍勢』。死体を盾にしながら、オティヌスは自らの治療をしていた。
引き金を引く垣根の腕を、フィアンマが握る。そして、垣根は銃を消し、彼女の手を握った。
二人で一つの黄金の剣を握り。『神の如き者』と『光を掲げる者』の恩寵を受ける少年達は、魔神を見据える。
黄金の剣の重みと太さが変わった。『聖なる右』は力を譲渡するかのように、姿を消す。
世界に散らばる善意の総量に応じて強さを増す、『神の如き者』の聖剣。
その背後に背負うのは聖なる炎。右方のフィアンマの名に沿うる、魔術記号。
形のみ禍々しき剣の切っ先は、天にも届く。オティヌスは、一歩後ずさった。

     ラグナロク
そう、『神々の最終戦争』において。
                                 フェンリル
口を開けば上顎が"天にも届き"、目や鼻からは"炎を噴き出して"いる『終焉の獣』こそが、主神オーディンを呑み殺したのだ。
豪雨に消されることなく燃え盛る炎。フィアンマが後ろに下がった時、ルーンによって構成したもの。

「「これで、終わらせる」」

意志を籠め、振り上げた剣は下ろされる。
『死者の軍勢』は当然ながら倒され、盾としての機能をロクに持てないままにただの死体へと戻る。
何ら守る者の無くなった魔神は、立ち向かうことも出来ないまま、射程圏から一瞬、逃亡した。
第三段階を、時間を経て実行する筈だった宇宙ステーションが、見る影もなく破壊された。
その破片は大きく、山を削り、崖を作る。

「……フェンリル…、…よくも、この私に合わせてきたものだ…」
「…次は外さんぞ。倒されるか、諦めて術式の全執行をやめるか、そのどちらかだ」

魔神の少女は、隻眼の少女は、先ほどより余程大きな槍を現出させ、構えながら、歯ぎしりをした。

「…>>133
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) [sage]:2012/11/14(水) 18:02:21.01 ID:EdCxD53q0
ksk
133 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/14(水) 18:03:46.36 ID:PhISkWrE0
>>131
×木原加群、マリアン=スリンゲナイヤー、『グレムリン』に属していた有象無象の魔術師達。   
○木原加群を含む、『グレムリン』に属していた有象無象の魔術師達。 
×呼び出した『死者の軍勢』は、銃弾を三発も〜 
○呼び出した『死者の軍勢』は弱く、銃弾を三発も〜

誤字過多とルビズレすみません…恥ずかしい


安価下でお願いします》
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 18:04:15.77 ID:2T/C69MSO
私が仕掛けた全術式はほとんどオートだよ……術式媒体は暴動や紛争等の『狼藉』だからな。
だから、洪水は止まらんし、天使達も、時間が立てばいずれは。第三段階はあのステーションが潰れたから無理だが

ふざけやがてクソッタレども…よくも、まぁ、祭りの大部分を台無しにしてくれたもんだ…
本来なら、第ニ段階も、天界とlink、テレズマを無限供給する、カバラに描かれた巨大な天使達を召喚するつもりだったのに…あのバナナめ。

台無しにするのは、滅茶苦茶にして、ゲラゲラ笑うのは、わ・た・し・の、専売特許だろうが。

もう、なりふりかまってられるか。少々早いが、カーニバル、最終段階『閉幕』を発動してやる。

135 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/14(水) 18:29:48.79 ID:PhISkWrE0

「…私が仕掛けた全術式はほとんどオートだよ……術式媒体は暴動や紛争等の『狼藉』だからな。だから、洪水は止まらんし、天使達も、時間が立てばいずれは。第三段階はあのステーションが潰れたから無理だが」

玩具を取り上げられた幼い子供が、親に殺意にも似た怒りを覚えるように。

「ふざけやがって、クソッタレども…よくも、まぁ、祭りの大部分を台無しにしてくれたもんだ…」

恋人を寝盗られた人間が、相手方を殺してやりたいと思うように。

「本来なら、第ニ段階も、天界とリンク、『天使の力(テレズマ)』を無限供給する、カバラに描かれた巨大な天使達を召喚するつもりだったのに…あのバナナめ。十字教スタイルへ勝手に変えやがって…、」

子供を殺された親が、加害者へ怒り狂うように。

「台無しにするのは、滅茶苦茶にして、ゲラゲラ笑うのは、わ・た・し・の、専売特許だろうが」

絶対のギャンブラーが勝利の確信を得ていたにも関わらず、惨敗した時のように。

「もう、形振り構っていられるか。少々早いが、カーニバル、最終段階『閉幕』を発動してやる」

怒りと敵意と怨念と殺意と、そうした全てを綯い交ぜた悪意。
大きな槍は、未完成で不完全ながらも『主神の槍』を真似たもの。
『激怒する者』らしく、理不尽な怒りを宿し、死の神は隻眼を覆う眼帯を取り払う。
そして、自らの眼窩へ手を突っ込んだ。あまりにも常軌を逸した行動に、フィアンマは眉を潜める。

魔神としての強大な力以上に。
50%と50%の均一な可能性を捨て、確実に世界を破壊する為に。
血まみれの、隻眼に嵌っていた霊装を、八つ当たり気味に彼女はフィアンマへ投げる。
それを受け取り、フィアンマはその『瞳』を見た後、ポケットへとしまいこんだ。
倒すことだけが目的じゃない。フィアンマには、その先だって目標になっている。

ぬかるむ大地。
豪雨は一層激しさを増し、目の前が見えなくなっていく。
雨の幕の向こう、魔神は―――魔神をやめた少女は、世界と共に滅ぶ為に、槍へ雷を落とす。

「…帝督。…俺様の夢を。…『右方のフィアンマ』の夢を、叶えてくれるか?」

剣を二人で握り直し、彼女はそう問いかけた。
垣根は、まるで用意していたかのように、言葉を返す。

「当たり前だろうが。……此処で、本当の意味で」
「世界を、救う」

最終段階。全てを破壊した後、何ら残らないように、破壊者が施した仕掛けが発動される。
『終焉の獣』の要素を取り入れ混ぜた『神の如き者』の聖剣を、今一度振り上げる。



全てを壊す為の槍と、全てを救う為の剣がぶつかり合い      そして。








オティヌスは、倒れていた。
雨が目に入って涙が出そうになった。しかし、顔を動かす気力も、体力も無い。
垣根も同じように、魔力を精製したが故に疲れ果て、倒れていた。まだ、立ち上がる気力が無い。
一人、戦場で、ふらつきながら立っているフィアンマは、ふらふらとオッレルスに近寄った。屈む。
そして、右手を翳す。彼女の周囲には、第二段階で凶行を働く筈だった大天使達が鎮座している。

「      」

右手を翳したまま、何事かを呟いた。『神の子』の奇跡は、死者すら蘇らせる。
大量の『天使の力』を周囲の大天使から引っ張ってくる要領でオッレルスを蘇らせ。
彼女は槍の突き刺さった彼の左の眼窩に、オティヌスが放棄した『瞳』を押し込んだ。
そして、地面に何かを書く。雨は、先ほどよりも勢いが減退していた。
生ぬるい血液が手を汚したことを感じながら、地面より生まれた『木』を見上げ、彼女は『天使の力』を加工して縄を作った。一定時間で切れる縄。
その縄をオッレルスの首にかけ、木の枝にくくる。槍で貫かれ、片方の瞳を失った男。彼の口の中には、雨水が溜まっていた。
そして、それを彼は飲んだ。







《携帯が使えない影響でセルフ支援不可・イーモバイルの為連続投稿出来ないので支援の1レス、どなたかお願いします》
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/14(水) 18:36:13.66 ID:jnA0S7KA0
うん
137 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/14(水) 19:08:56.35 ID:8CkKVoKX0

魔神。
主神オーディンの逸話について、このような話がある。
ユグドラシルの根元にあるミーミルの泉の水を飲むことで知恵を身に付け、魔術を会得する。
片目はその時の代償として失ったとされる。
また、オーディンはルーン文字の秘密を得るために、ユグドラシルの木で首を吊り、グングニルに突き刺されたまま、九日九夜、自分を最高神オーディンに捧げたという。
この時は縄が切れて助かった。
この逸話にちなんで、オーディンに捧げる犠牲は首に縄をかけて木に吊るし槍で貫く。

槍で貫く行程は、殺された時にしていたので、省略される。
雨水は、泉の水の代わり。
『木』に括られたオッレルスは、主神オーディンと同じ。
そしてこの縄は、九分で切れることになっている。九日九夜の代わりだ。
『瞳』が馴染めば、オッレルスは最早『オッレルス』でなく、オーディンを名乗って良い。
何万年に一度あるか無いかの、魔神になれる好機。それがこのような近年で行われるのは奇跡的だが、フィアンマはそれを臆せず行う。
自分を守る為に死んでくれた男を、魔神へするために。

オッレルスを蘇らせ、魔神にする術式を組む為に、『天使の力』は消費され、フィアンマも多大な生命力を喪った。
そして、彼女はオティヌスに近づく。
『閉幕』の術式さえ阻まれたオティヌスは、絶望と憎悪に駆られながら、ふらりと立ち上がった。

「…私は伏線を敷いてきた。…全てをやり遂げてきた。……奪う側の人間は、私であるべきなんだ」

言って、オティヌスはフィアンマを睨む。
唐突に地面が揺れた。垣根は立ち上がるも、その揺れにまともに立つことが難しい。
能力者として魔術を使い、傷ついた身体を癒すべく演算し、垣根は疲れ果てていた。
そんな彼に頼ることは無く、フィアンマは右拳を握り締めた。
自分を倒した上条当麻が、どんな困難な状況でも強大な敵へ立ち向かったように。

「…『原典』にも、どこにも書いていなかったことを。…お前が、確かめてみればいいと言ったものを。俺様は、沢山見たよ、上条当麻。…やっぱり、お前が正しかった」
「そうで、なければ…ならなかったのに、」

痛む身体を引きずって、救世主と魔神だった少女は、向かい合う。
フィアンマは右拳を握ったまま、走り出した。地面が揺れるが、構わず。
オティヌスは逃げずに、地面へ魔術記号を脚で綴った。赤い光が放たれる。

「だから、このくだらない幻想ごと、俺様は―――救う」

拳がオティヌスの頬へ食い込むと共に、最後の術式が発動した。
地面が割れていき、オティヌスは呑み込まれる。自殺をするつもりなのだ。
落下していく最中、空中で、フィアンマは左手を伸ばし、オティヌスの身体を抱きかかえる。
殴られ、生命力をほとんど使い切り、体に力が入らないオティヌスは抵抗出来なかった。
垣根は噎せながら走り、落ちていく彼女の右手首を掴む。少し滑り、手を握った。

「何、してやがる…!」

フィアンマもオティヌスもそれぞれの体重は軽いが、二人同時となると重い。
垣根の声に、手を握られたまま、彼女は顔をあげる。気付けば、雨は止んでいた。
全てが終わり、救われた世界の中。この穴に堕ちれば、死ぬことだろう。

「…今なら、わかる。…どうして、上条当麻が、俺様を生かそうとしたのか。……だから、俺様も同じことをする。………本当に、本当に。世界で一番正しいことを、する」 
「そんなヤツ、見捨てろよ…!」 
「駄目だ。……この世界に、…死んでいい人間なんて、一人も居なかったんだ」

強情な彼女に、垣根は泣きそうな顔をした。
どうして、せっかく世界を救えたのに、勝利したのに、敗者と共に死のうとするのか。

「…帝督。許してくれ」

言って、フィアンマは真っ直ぐに垣根を見つめる。
垣根は泣きそうな顔のまま、涙声で怒鳴る。

>>139
138 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 19:12:42.04 ID:2T/C69MSO
Ksk
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 19:20:56.45 ID:fd/JredDO
嫌だ
今一言聞いて諦められるかよ
お前が死ぬなんて絶対に嫌だぞ
140 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/14(水) 19:29:13.30 ID:8CkKVoKX0
《安価指定が出ていない時には適当なレスで良いので支援をお願いします。22日にはセルフ支援に戻れます》



「嫌だ…! 今一言聞いて諦められるかよ!! お前が死ぬなんて絶対に嫌だぞ」

垣根の泣き顔に困った顔をして、フィアンマは手を握り返さない。力を込めない。
二人分の重みに、削られきった体力ながらも何とか耐えきる垣根を見つめ、フィアンマは口を開く。
崖、或いは穴の底からは、地獄の業火と言っても問題無いような、炎の燃え盛る音が聞こえる。

「どうして、俺様が『右方のフィアンマ』に選ばれたか、わかった。…多分、炎で浄められる為だったんだ。そんな、運命だったんだろう。……帝督」
「…何、だよ」
「…私を、幸せにしてくれて。……本当に、ありがとう」 
「ふざ、けんじゃねえよ! 何最期みたいな言い方してやがる!!」

死なせない、と、垣根は手に力を再度籠める。
フィアンマは、緩く首を横に振る。

「…、」
「お前は生きるんだよ。俺と一緒に生きるんだ。まだしてないことが山ほどあるだろうが。一人でやれってのか、冗談じゃねえよ」

握っている手が、震える。体力の限界が近い。もう、垣根帝督は、倒れてしまいそうだった。
指が解けていく。
垣根は必死に力を籠めるが、否応なしに手は解けていく。
やはり、彼女が力を籠めようとしていないからだ。 

「俺は、…俺は、世界なんかどうだっていいんだ。…本当に、ただ…お前が、笑ってくれてれば、幸せ、なんだよ…!」
「……、」


ごめん。


一言の呟きを、謝罪を残して。
たったそれだけの言葉を残して、彼女の手は空を切った。
自ら、垣根の手を放した。

手を伸ばす、指が掠る―――もう、届かない。 


「、ッ」

どこか、満足そうな笑顔で、彼女はかつての純粋な魔神と共に堕ちていった。
垣根は、どうして彼女が笑ったのか、最後までわからなかった。かつての彼女が、上条当麻が何故笑ったのかを、まったく理解出来なかったように。 

「…嘘、だ」 

呟く。

この言葉が真実になればいいのに。
だが、事実は変わらない。

自分は彼女の手を放してしまった。
彼女は地獄の奥底へと堕ちていった。

「…うそだ、…」





141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 19:30:46.01 ID:2T/C69MSO
嘘だ!!!!!
142 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga !red_res]:2012/11/14(水) 19:39:39.63 ID:8CkKVoKX0


『…手は、…繋がないのか』
『…何でもない』
『…ん、』

『……素は、…どれだったかな…演じすぎて、わからなくなった』


『……楽しいな』
『今の生活のことだ。…何に縛られることも、気負わされることも無い』


『…、私は…私は嫌だ、結婚式というものは大事なものだぞ?』
『…誕生日の祝いなどではなく二人の…その、あ、愛というものを尊重して行われるべきだ』


笑ってくれるだけで、心地良かった。
何でも出来るような万能感に駆られる程。
手を繋いだ温かさが、好きだった。
照れる彼女が、嬉しそうに笑う彼女が、好きだった。

好きなのに。


どうして、  自分は 手放した?



「あ、あ……う、あ」


穴は閉じる。
彼を残して、フィアンマは消えた。
あの燃え盛る炎の中、今は苦しんでいるのだろうか。

『…もふもふ』
『もふもふしてるのが好きなんだろ』
『…ん、…だいじにする』
『なまえ、あるの?』


自分を最も幸せにしてくれる人間の手を、どうして放してしまったのだろう。


「あ…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」


143 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 19:50:03.98 ID:2T/C69MSO
If you lose me somewhere and your tears are in the air


I will ring a bell until you feel me by your side
144 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga ]:2012/11/14(水) 19:58:52.95 ID:8CkKVoKX0

一週間経過した。
フィアンマによって完全な魔神となり、生き返ったオッレルスは、シルビアと共にアパートメントにて垣根の面倒を看ていた。
ほとんど廃人同然に、垣根は暮らしている。基本的に食欲が無いのか、食事に関心を示さない。

垣根「……」

オッレルスだって、悔しかったし、悲しい。
だが、ここでオティヌスを憎むことも、垣根を見捨てることも、フィアンマは喜ばないだろうと思ったから。
せめてフィアンマが帰ってくるまで垣根を生かす為に、オッレルスは、オーディンは一生懸命に世話をしていた。
絶望的な確率で、彼女が死んでいる恐れは非常に高いが、それでもオッレルスはフィアンマが死んだとは思わない。

オッレルス「…少しでも食べてくれないか」

垣根「…食欲が無えんだよ」

オッレルス「……、…」

垣根「……、」

死にたい、とまでは言わないものの。
暗い表情で視線を下へ向ける垣根は、まるで別人のようだった。

オッレルス「…彼女はきっと生きている」

垣根「…ありえねえだろ」

オッレルス「どうして、そう思うんだ?」

垣根「…逆に聞くが。お前は、何でフィアンマが生きてると思えんだよ。…炎が下で用意されてる、深い穴の中だぞ。落下の衝撃で死んでも、炎に燃やされてもおかしくねえ。オティヌスの野郎が殺したかもしれねえ。……どうして、フィアンマが生きてるなんて夢みたいな事言えんだよ」

お前大人だろ、と言われ、オッレルスは口を噤む。
二十秒程考えて、口を開いた。

オッレルス「…>>146
145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 20:01:36.95 ID:RVprXmlIO
彼女を、・・・「奇跡」を、信じている
146 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 20:18:27.32 ID:2T/C69MSO
…ふむ。『彼女を信じているから』…では納得しないか、君は。

『彼女が生きている』…そう考えた方が、思ってる方が、生きてて楽しいからだよ。
俺が沈んでも誰かが喜ぶわけでもないし、彼女が帰ってくるわけでもない。俺自身も辛いまま。誰も得しないならしない方がいい。

俺は、君の言う通り『大人』だからね…狡い感情のコントロールをしてるのさ


安価↓
147 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 20:52:49.56 ID:fd/JredDO
大人だから…………って訳でも無いが頭で考えるなら今諦めるめる理由は無いと思うよ
それに俺達は何かを決め付けられる程には世界を知らない
彼女が幸せを持って居た世界と、「世界を救う力」って奴も捨てた物では無いみたいだしね
148 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga ]:2012/11/14(水) 21:09:49.68 ID:8CkKVoKX0

オッレルス「…大人だから…………って訳でも無いが、頭で考えるのなら、今諦める理由は無いと思うよ」

垣根「…、」

オッレルス「それに、俺達は何かを決めつけられる程には世界を知らない」

垣根「……」

オッレルス「彼女が幸せを持って居た世界と、『世界を救う力』って奴も捨てた物はんあいみたいだしね」

『世界を救える程の力』。
それを有しているからこそ、彼女は死んでないと信じられる。
それらを抜きにしても、世界に無知である自分達が何かを絶対にそうだと決めつけられる理由など無いのではないか。
垣根を説得する為でなく、あくまで自らの持論をそう話したオッレルスの瞳には、絶望が無い。

オッレルス「…死者を蘇らせ、俺を魔神にしてくれた程の優秀な魔術師が、たかが焼かれたせいで死ぬとは、思いたくないな」

垣根「…ただの空想じゃねえか」

オッレルス「人はこれを、希望的観測と呼ぶよ」

垣根「…希望、ね。…くだらねぇな」

鼻で笑い、垣根はそっぽを向く。
オッレルスの持論に感化され、多少元気が出たようだ。








一方。
地獄の底で、傷ついた元魔神の少女を魔術的に治療しながら、フィアンマはため息を吐きだした。
落下してすぐ、『聖なる右』で自分達を炎から守り、その地獄の業火を支配下に置いた上で、消し去ったのだ。
以来、真っ暗な空間で、さてどうやって空腹を満たそうかと思案しながら、彼女は少女を看護しているのだった。

フィアンマ「…寒くも暑くも無いだけ、まだマシといったところか」

オティヌス「……何故私までも助けた」

長時間フィアンマと居たからか、その瞳に憎悪は無かった。
存在するのは、純粋な疑問の様。あれ程の凶行を犯し、フィアンマを垣根から引き剥がした自分が憎くはないのかと、そう言わんばかり。
悪意に悪意で手向かわないのは十字教の鉄則なのだが、オティヌスはそう話されても首を傾げることだろう。
かといって説明するのも面倒だな、と思いながら、フィアンマは言葉を返す。

フィアンマ「>>150
149 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 21:12:20.79 ID:2T/C69MSO
Ksk
150 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/11/14(水) 21:52:26.62 ID:jnA0S7KA0
理由なんて無いさ。
当たり前のことをしただけだ
151 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 21:54:41.64 ID:2T/C69MSO
>>150メル欄にsageを入れろ。新参なら初めてきた人スレを見てからレスのがいいよ
152 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga ]:2012/11/14(水) 22:14:20.01 ID:8CkKVoKX0

フィアンマ「理由なんて無いさ。当たり前のことをしただけだ」

オティヌス「…当たり前?」

フィアンマ「以前の俺様であれば、迷わずお前を見捨てていただろうが。…上条当麻を見ていて、真似したくなったんだ。誰一人、死者を出さないで解決する、そんな夢のような方法を」

オティヌス「…その幻想で危うく死にかけたというのに?」

フィアンマ「…俺様は今まで、リスクから逃げ果せてきた、小娘だった。命を賭ける勇気の無い、臆病者だった。俺様が真にすべきことは、こうしてリスクを大きく設定した後、成功を得ることだったんだ」

オティヌス「…理解出来ないな」

フィアンマ「されようとも思っていない」

自分が正しいと思ったことをする。
上条当麻に諭される前から、彼女はそんな人間だった。
ストックホルム症候群にも似た親近感…とまではいかないものの、彼女に対し敵意の薄らいだオティヌスは、無理やり納得することにした。

オティヌス「……私は外に出たら、また同じようなことをするかもしれないぞ。魔神を辞めても、凶行を果たせない訳じゃない」

フィアンマ「その時は、また止めるだけだ」

オティヌス「非効率的だ」

フィアンマ「俺様もそう思うが」

それでも、強欲に求め、足掻き、理想を掲げて生きた少年が全てにおいてボロボロになっても成功を納めたことを、フィアンマは知っている。
自分が救われたように、オティヌスを救おうとするのも、また当然のことだった。

この世界に、死んでいい人間なんて一人だっていない。
たとえそれが悪人でも、どうしようもなく救いがたい最低の人間でも。
命さえあれば前を向ける、幸せに満たされる瞬間を知り、悪行に意味など無かったのだと、理解出来る。

落下の衝撃で骨折したか細い少女であるオティヌスの身体を抱き上げ、フィアンマは再び歩き始める。
だいぶ疲れているし、空腹だったが、それら全てを温かく満たし癒されたいのであればここから出るしかない。

フィアンマ「……、…」

エイワス「やあ」

フィアンマ「…優雅に寛ぎやがって」

守護天使は、そこに居た。
何ともあっさりとした様子、明るい態度。どうやってここまで来たのか。
本物の守護天使を前にして言葉を失う元魔神を抱え直し、フィアンマは疲れた様子で問いかけた。

フィアンマ「知識を授けろ」

エイワス「それが私の興味を惹くことであれば」

フィアンマ「引くとも。惹かせてやる。…此処から出る方法を教えろ。或いは、この限りない空腹を満たす方法を、人間を傷つける以外の手段において」

エイワス「>>154






《今日は寝ます。支援ありがとうございました。
お手数ですが、またお願いすると思います。またその時はよろしくお願いします。
お疲れ様でした》

153 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/14(水) 22:15:10.35 ID:WtmGknRY0
大丈夫。その内勝手に出れる
154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/14(水) 22:42:43.41 ID:2T/C69MSO
…残念ながら、その短絡的な欲望では私の興味は惹けない

だが境遇に同情を感じる。私のクイズに答えてくれたら教えよう。

貴女は、扉の前にたっている。
貴女はその扉を開けなければならない。
その扉は、左右に天使が描かれており、右側と左側、どちら側の天使の数が多いかを答えた場合のみ開かれる。
貴女から見て、右に3体の天使、左に4体の天使が描かれている。
答え方は『右』か『左』のみ。

但し、『左』と答えれば、「貴女の言う左とは、扉側からみると右側になる。天使の数は3体、左側は4体。故に扉は開かない」

『右』と答えれば、「貴女から見て天使の数は左側の天使の数より少ないので扉は開かない。」

と言われる。尚、『扉からみて右』、もしくは左、『自分からみて〜』では、ルールである『右か左で答える』を破る事になり扉は開かない。

さて、どう答えれば扉は開く?
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 02:35:01.50 ID:ZUT9LEhSO
訂正。
>>但し、『左』と答えれば、「貴女の言う左とは、扉側からみると右側になる。天使の数は3体、左側は4体。故に扉は開かない」

貴女の言う左とは、扉からみると右側になる。よって貴女が指した側の天使の数は3体、左側が4体

すまん
156 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 02:40:47.65 ID:ZUT9LEhSO
治ってないし…

貴女の言う左とは、扉側からみると右側になる。よって貴女が指した、扉にとっての左側の天使の数は3体、右側が4体。よって開かない

157 :小ネタ:救済  ◆2/3UkhVg4u1D [saga ]:2012/11/15(木) 15:32:48.05 ID:tEqhsQRQ0
>>135の空白部分での出来事。      支援をお願いします》


『死者の軍勢』。
その元は、本物の、人間の死体。
すぐ傍に大天使を有し、全てを蘇らせることを赦された少女は、そんな死体の中の一つに近寄る。
そして、膝を折り、ぬかるんだ地面に跪くと、右手を翳した。
意識の戻ったマリアンが、疲れ果て、体力の失せた身体、その指先で地面を掻く。

ベルシは死んでいる、という事実と。
ベルシに生きて欲しい、という願望が、曖昧に交差し、混濁する。

「ベル、シ…に…触る、な…」

傷つけないで。
敵意と懇願の混ざった言葉に、フィアンマはそちらへ視線をやった。
そしてこくりと頷いたかと思えば、何事かを呟く。





「……、? …此処は、…私は死んだ筈だが…」
「…確かにお前は一度死んだ。そして、甦った。……だから、生きる目的を変えろ」

蘇生の、奇跡の右手。
その手を引いて。
ベルシを―――木原加群を蘇らせたフィアンマは、端的にそう言い放った。
息を吹き返したのを確認しつつ、人肉の要所にあった黄金を抜き取り、離散させる。
これで、普通の人間へ、元通り。

復讐にならない、自分も死ななければならない、といった事を呟く彼に対し、彼女は首を横に振る。

「死ななければならない人間など、一人も居ない。居るとすれば、死んだところで誰にも悲しんでもらえない人間だけだ」
「…私が死んで、誰かが悲しむ…?」
「少なくとも、俺様はお前が甦った事実に泣き出しそうな程喜んでいる女を、知っている。お前の生を手放しで喜べる人間は、お前の死に心底から嘆く人間だ」

指差した先。
横たわる黒小人の少女は、目の前の光景に呆然として。
事実を確認し、頭の中で自分自身に状況を説明すると、泣きそうな顔をした。

「……、」
「……お前がどのようにして生き、死んだのかは知らんが。…自分を大切に思っている人間の為に、現在を見据え、苦しんで生きろ」

ともすれば、残酷な。
復讐に生きた木原加群を無理やり生き還らせるなど、悪魔の所業にも等しい。
だが、フィアンマは上条当麻とは違い、物事の本質的な正しさは追求しない。
救うと決めたものは、如何に堕落させようと、苦しませようと、絶対に救う。

『世界を救える程の力』と、巨大な『天使の力』。

それらを応用して、死者を蘇らせ、生を説いてふらつきながら歩く様は、救世主のさま。
何人もが生を与えられた喜びに笑みを浮かべ、礼の言葉を口にする。
感謝の言葉に声を出して泣きそうになったが、唇を噛み締めて我慢した。

「…私はもう、無力じゃない」

上条当麻のように、全てを壊す右手など持っていない。
幻想殺しのように、全ての幻想を殺す能力なんて無い。

だから、幻想も理想も命も世界も全てを含め、救う。
強欲ながらも、彼女にはそれが赦された。
158 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 15:48:43.50 ID:ZUT9LEhSO
I need you.
159 :小ネタ:救済  ◆2/3UkhVg4u1D [saga ]:2012/11/15(木) 15:49:35.07 ID:tEqhsQRQ0

「…神、様」

歩く。
癒す。
彼女だけは、癒されることの決して無いままに。


「…私のこれまでの生、行い、全てが間違いだったというのなら」

魔術の範疇に収まるかどうかさえ不明な正真正銘の奇跡の力を連続して用い、蘇生を行い。
伸し掛ってくる疲労に耐えながら、彼女はもう神に祈ること無く、ただ、願う。

「…これらえの救いで、…贖いを。私に、……自由をください。全てが狂い、奪われた"あの日のクローゼット"から、私を解放して…」

ただ一人無意味に生き残り、誰も救えなかったあの日から、どうか。

大きな世界を神話的破滅から救っただけでなく。
『一人分の世界』を幾つも救い。
自らに宿る力を再確認した。
だが、もはや救う義務という呪縛に恐ろしい程囚われることは無い。
救わなければならない、という義務感から、ようやく掬われた気が、した。
何かに追い立てられるような苦しみは、もう必要無い。

命を賭けてかつての過ちを、誤ちを贖う彼女に、神は緩やかに微笑みかけた。







そして彼女は最後に、自らを庇って死んだ哀れな男を、優しく魔神へと祀る。
160 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 16:02:03.75 ID:ZUT9LEhSO
relieve
161 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 16:03:04.94 ID:tEqhsQRQ0
>>152 ×引くとも ○惹くとも >>159 ×これらえ ○これら  支援ありがとうございます》


エイワス「…残念ながら、その短絡的な欲望では私の興味は惹けない」

フィアンマ(今この状況で高尚な欲望など発露するものか)

エイワス「だが境遇に同情を感じる。私のクイズに答えてくれたら教えよう」

フィアンマ「クイズ?」

両足が折れている為にロクに動けないオティヌスをしっかりと抱え直し、フィアンマはエイワスを見つめる。

エイワス「貴女は、扉の前にたっている。貴女はその扉を開けなければならない。その扉は、左右に天使が描かれており、右側と左側、どちら側の天使の数が多いかを答えた場合のみ開かれる。貴女から見て、右に3体の天使、左に4体の天使が描かれている。答え方は『右』か『左』のみ」

フィアンマ(『右』か、『左』)

エイワス「但し、『左』と答えれば、"貴女の言う左とは、扉側からみると右側になる。よって貴女が指した、扉にとっての左側の天使の数は3体、右側が4体。よって開かない"と言われる」

フィアンマ「ほう」

エイワス「『右』と答えれば、"貴女から見て天使の数は左側の天使の数より少ないので扉は開かない"と言われる」

フィアンマ「屁理屈を並べ立てる余地は?」

エイワス「尚、『扉からみて右』、もしくは左、『自分からみて〜』では、ルールである『右か左で答える』を破る事になり扉は開かない。さて、どう答えれば扉は開く?」

オティヌス(論理問題…か?)

フィアンマ「…論理が破綻しているな」

混沌とした思考で十分程考え。
首を横に振り、ついでに自らの腹部の治療を終え、片手間にフィアンマは答える。

フィアンマ「問題の前提が間違っているぞ。『左右に天使が描かれており、右側と左側、どちら側の天使の数が多いかを答えた場合のみ開かれる』のだろう? ならば、それ以降如何にどのような文句を並べ立てられようと、どちらを答えようと開く訳だ。後半で考えさせられたが、何のことは無い。どうせだから『右側の天使の数が多いです』、と解答しておこうか」

つまらない結果だ、と思いながら答える。
だいぶ意地の悪い、難しい問題だったが、激しく悩むには及ばない。
煙に巻くつもりがあっさりと答えられ、守護天使は楽しそうな笑顔を見せた。
エイワスは自分のクイズに答えろと言っただけで、正解しろと言った訳ではない。
無駄に苦悶せず、もし間違えば一生此処から出られない恐れがあるにも関わらず、決断力のある素早い返答。
垣根帝督と同じく自らが興味を持てただけはある、と思いながら、エイワスは彼女の瞳を見た。

フィアンマ「俺様は答えたぞ。さぁ、今度はそっちが応える番だ」

エイワス「…この先に二手に分かれる道がある。それを右側に進み、その先の坂を登れば良い」

フィアンマ「俺様から見て右側だろうな?」

エイワス「思考上のクイズと現実は別問題だ。勿論、君から見て右側だ」

一応の確認にそう答え、エイワスは姿を消す。

オティヌス「……あの天使を前にして臆す事無く、か。…大したものだな」

フィアンマ「>>163
162 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 16:09:11.31 ID:ZUT9LEhSO
なるほど。
ちなみに一応正解はある。
正解:扉に背を向けて、扉と自分の右側と左側を一致させて、『右』と答える。
安価↓
163 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 16:24:37.39 ID:ZUT9LEhSO
……バタリ
164 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 16:37:52.11 ID:tEqhsQRQ0

フィアンマ「……」

何か言葉を返そうとして、フィアンマはバタリと倒れた。
細身の彼女にはあまり脂肪が無い。
脂肪が無いということは、つまり、エネルギーに変換出来るものがない。
オティヌスは唐突な展開に目を瞬かせ、次いでフィアンマを見下ろした。

オティヌス「…おい」

フィアンマ「…空腹だ」

オティヌス「それは私も同じことだ。わかりきっている。…まさか、ここまで来て行き倒れるというのか?」

フィアンマ「…どうやらそのようだ。…まぁ、お前は先に行け。俺様はもう這う体力すら無いが、今まであまり動かずに…いや、正確には動けずに体力を温存していたお前ならば進める筈だ。話は聞いていただろう? この先の分かれ道を右へ、そして坂を登れ。這って進めばどうにか地上へたどり着ける」

息絶え絶え、といった様子でフィアンマは言う。
そこまで空腹で動けないのであれば、いっそオティヌスを殺し、その身体を喰らって進むという案もあるというのに、彼女はそれをしない。
あまりにも非効率的で、自己犠牲的で、オティヌスは意味がわからなかった。

オティヌス「…此処で、本当に死ぬつもりか?」

自殺するつもりで自ら堕ちた自分を救って、わざわざ。
そんなニュアンスを籠めての言葉に、フィアンマは残念そうな笑みを浮かべて頷く。

フィアンマ「…仕方があるまい。もう、一歩たりとも進めんのだから」

オティヌス「…、…」

フィアンマ「………帝督」

小さい声で呟き、彼女は目を閉じる。
体に力が入らないということが見ていて明らかだった。
無理も無い。一週間飲まず食わずで、オティヌスを運びながら歩いていたのだから。

オティヌス「…何故そこまでする。何故、私を殺して喰らうだとか、そういった発想には至らない。何故私を生かそうとする」

わからないままに、オティヌスは疑問を口にする。
かつてフィアンマが、上条当麻のあまりにも自己犠牲的な行動に不可解さを覚えたように。

フィアンマ「………>>166
165 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 16:39:23.96 ID:ZUT9LEhSO
Kskなのだよ
166 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/15(木) 16:46:21.67 ID:KX2cTDGe0
今はわからないだろう。だが世界をよく見てみろ。魔神といえど知らないことはたくさんある。……俺様でさえまだ上条当麻の半分も理解できない、がそれでも見るんだ。俺様にもお前にもその義務、責任、そして権利がある
167 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 16:59:09.94 ID:tEqhsQRQ0

フィアンマ「今はわからないだろう。だが、世界をよく見てみろ。魔神といえど知らないことはたくさんある」

オティヌス「…、」

フィアンマ「……俺様でさえまだ上条当麻の半分も理解できない。が、それでも見るんだ。俺様にもお前にもその義務、責任、そして権利がある」

だから、殺さない。
生きて学ぶことはこの世界で最も貴い。
フィアンマは上条当麻の手によって無理やり生かされ、しかし、それで少し世界を知ることが出来た。

垣根と出会い、愛することを知った。愛されることも、幸せになるということも。
オッレルスと出会い、助けられることを知った。たった一つの大切なものの為に何故人が命を賭けるのかも。
トールやフロイラインと出会い、生きることを知った。どれだけ理不尽な運命に縛られようと、自らが追求する幸福を捜すことが一番だと。

上条はきっと、もっと、世界を知っているのだろう。
書物なんかでは学ぶことの出来ない、笑顔と善意と、そういった言葉では表現出来ない素晴らしいものを。
自分はそれを知りたかった。片鱗を掴んだ。そして、オティヌスにもどうか、掴んで欲しい。
傷つけられ殺されかけて尚、フィアンマは他人の幸せを祈れる程、聖女のような人間になれたのだ。

フィアンマ「…だからお前は、…?」

行け、と促そうとした彼女の身体を、誰かがおぶる。
両足を魔術で辛うじて歩ける程度に修復したオティヌスが、フィアンマの身体を背負っている。

オティヌス「……、」

フィアンマ「…、……」

オティヌス「…そんなに。…世界とは、良いものなのか」

フィアンマ「…壊そうとしたことをお前が酷く悔いる程に、良いものだと…俺様は、思えるようになった。まだまだ知らないことは沢山あるが」

オティヌス「…そうか」

フィアンマ「…体力は」

オティヌス「どこぞの馬鹿馬鹿しく非効率的に動く魔術師の御蔭で温存出来た、問題は無い」

フィアンマ「…ならば、一緒に出るとしようか」

砂の城を壊すことが楽しい、とオティヌスは言った。
そして砂の城を壊された人間達は、それでも彼女を誘うことをしなかった。
一緒にやり遂げよう。裏切っても構わない。そんなことを言わなかった。
もしもそんな、優しい自己犠牲を行える人間が居たのなら。彼女に、『何度でも一緒にやろう』と笑いかけられる人間が居たのなら。
オティヌスもまた、歪みをそのままに成長せず、違う人生を送れたのではなかろうか。
これはあくまで想像の話で、ifの話で。しかし。






―――オティヌスという少女にだって、救いは必要だ。




ふらつきながら歩くオティヌスに体重を任せる形で、フィアンマは移動する。
二人はエイワスに教えられた通り分かれ道を右に進み、その先の坂を、頂上の見えない山を登った。


たどり着いたのは、アルゼンチンの泥の上。
此処で倒れる訳にはいかない、と、オティヌスは移動する。


イタリアまでどうにか到着して。
フィアンマに言われるがまま、オティヌスはアパートメントまで向かった。
その建物の前まで行ったところで、魔神オーディン―――オッレルスが出てきた。
偶然。オティヌスにとっては、不幸にも。フィアンマにとっては、幸運にも。
オッレルスは、ズタボロになった二人の少女を見比べる。背負っている側のオティヌスと、背負われているフィアンマと。

オティヌス「………」

オッレルス「…>>169
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 17:03:37.68 ID:ZUT9LEhSO
…彼女を助けてくれたのかい?

ありがとう。君も疲れたろう…立ち話もなんだから、上がって、ゆっくり休んでいってくれ
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 18:20:15.26 ID:ZUT9LEhSO



誰かとってもいいのよ?
170 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 18:31:40.20 ID:tEqhsQRQ0

オッレルス「……彼女を助けてくれたのかい?」

オティヌス「…、…」

否定も出来ないまま、沈黙するオティヌスに対し。
オッレルスは何の悪意も見せず、潜めず、言葉をかける。
完全なる魔神となった今、オティヌスを恨む必要性は無い。

オッレルス「ありがとう。君も疲れたろう…立ち話も何だから、上がって、ゆっくり休んでいってくれ」

オティヌス「…私を殺さんのか、出来損…オーディン」

オッレルス「殺さないさ。彼女が殺していない時点で、お前には生きる権利がある。そして、私にそれを阻害する権利は無い」

刺々しさや堅苦しさは残れど、そこに悪意や敵意は無く。
通されたまま、オティヌスとフィアンマはアパートメントに入った。
オッレルスが完全な魔神になったことで何か納得でもしたのか、シルビアはイギリスに帰った為、アパートメントには垣根とオッレルスしか居なかった。
垣根は精神的疲労から、ぐったりと眠っている。
フィアンマは話しかけたい気分でいっぱいだったが、真夜中に起こすのはあまりにも酷だと自分に言い聞かせ、まずは衣食住の確保を先んじる。

まずは大量の食事を摂り。
風呂に入って身を清め。
フィアンマの衣服を借りたオティヌスは魔神の風格をなくしており、細い少女でしか無かった。
悪意があったのか無かったのか、彼女は現在、ゴシックな、それでいて甘めのデザインのワンピースを着ている。
色白でほっそりとしたオティヌスがそういった服を着ると、まるで人形のようだ。
対して、男性服を着ているフィアンマはまだ空腹が癒えないのか、オッレルスから貰ったクッキーを口に含む。
衣食住と、人間に必要な環境を整えた二人の少女は、それなりに元気を取り戻した。
尚、オティヌスの両脚の骨が曲がらないよう、テーピングがなされている。魔術で多少治療をしても、骨折は骨折である。

フィアンマ「…オッレルス、…いや、オーディン。頼みがある」

オッレルス「呼び名はどちらでも構わないよ。…頼み?」

フィアンマ「俺様は帝督が目を覚ましたら、謝り、共に帰る。…オティヌスの面倒を看てはくれないか。お前の地位を横から掠め攫った女だ、さぞ憎かろうとは思うが…殺さないでやってくれ」

オッレルス「……」

オティヌス「勝手なことを「頼む」ッ、」

医療用眼帯を、指先でなぞり。
オッレルスはしばらく考え込んだ後、返答する。

オッレルス「…>>172
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/15(木) 18:33:09.01 ID:CLOtEAa20
SOの安価が凄まじいので無理 kskst
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/15(木) 18:36:37.88 ID:KX2cTDGe0
構わない、君がそう言うならそれに従うだけだ
173 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 18:46:01.95 ID:tEqhsQRQ0

オッレルス「…構わない、気味がそう言うならそれに従うだけだ」

フィアンマ「……、…」

オッレルス「…それに、…もう、目の敵にする必要も無くなった」

フィアンマ「…馴染んだか?」

オッレルス「馴染んだよ」

頷いて、オッレルスは前髪越しに左目、それを覆う医療用眼帯を撫でる。
戦闘に赴く訳ではないので、魔神らしい装いはしていない。
しかし、彼はもう純粋な魔神だ。

オッレルス「そもそも、俺とオティヌスは相打ちになる。俺が魔神になっても、オティヌスが魔神になっても、その結果は変わらない。50%のジレンマで」

フィアンマ「無限の可能性、か」

なるほど、と頷いて、フィアンマはオティヌスを見やる。
彼女は自分の腹部を適度に締めるコルセットのリボンを触っていた。
どうやら気まずいようだ。
格下、出来損ないと散々罵っていた男に、結果的には自ら魔神の座を渡してしまった上、これから養われ、守られるのだから、当たり前なのだが。

フィアンマ「…殺すなよ」

オッレルス「そんなに疑わないでくれ。…、…仮に殺したらどうなるんだ?」

フィアンマ「泣きながら『オッレルスなんて大嫌い』と言ってやる」

オッレルス「それは…困るな」

苦く笑って、オッレルスは扉を指差す。
その扉の向こう、ベッドには垣根が眠っている。

オッレルス「起こす起こさないは君の自由だが、傍に居てあげる位はいいんじゃないか? 彼はずっと、君に会いたがっていたんだ」

フィアンマ「…あぁ」

頷いて、フィアンマは立ち上がるとその部屋へと消えた。
ややふらついた足取りからして、あのまま二人一緒に眠るのであればそれでも構わない、とオッレルスは思う。

オティヌス「……お前はあの女が好きなのか」

オッレルス「好きだよ」

オティヌス「恋人から掠め盗ることはしないのか。臆病だな」

オッレルス「>>175
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 19:00:23.72 ID:ZUT9LEhSO
…彼女がね、本当に幸せそうに笑うんだよ。垣根君と一緒にいる時にね…

俺と一緒にいる時、あんな顔をしてくれないんだよ。悔しい事に。

…俺の行動原理は『彼女の幸福』だ。彼女が一番幸せであるのが、俺の望みだ。
だから、彼女の幸福が垣根君の隣にいる事であるのなら…俺は…
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/15(木) 19:06:55.29 ID:I4gvcKeJ0
安価取ってやろうじゃないか!!

安価は↑
176 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 19:20:33.08 ID:tEqhsQRQ0

オッレルス「…彼女がね、本当に幸せそうに笑うんだよ。垣根君と一緒にいる時にね…」

オティヌス「……」

オッレルス「俺と一緒にいる時、あんな顔をしてくれないんだよ。悔しい事に」

オティヌス「……」

オッレルス「…俺の行動原理は『彼女の幸福』だ。彼女が一番幸せであるのが、俺の望みだ。だから、彼女の幸福が垣根君の隣にいる事であるのなら…俺は…」

悲哀と苦悶があった。
勿論、好きな人と幸せになりたいという思いはどんな人間にもある。
だが、オッレルスは自分の感情を優先して、フィアンマの幸せを壊したくなかった。
それ程までに、馬鹿馬鹿しいまでに、臆病にしか見えない程に、優しいのだ。

オッレルス「…勿論、彼女を幸せにする自信は、ある。あるが、…それは、現状を上回る程のものじゃない」

垣根が病か何かで死んでしまったのであれば。
助けようがなく死んでしまったのであれば、後釜に座る可能性は否定出来ない。
だが、垣根を意図的に死に至らしめてまで欲しい訳じゃない。垣根と一緒に笑い合っている彼女の笑顔こそ、最優先だった。

オッレルス「……、…どんなに力を得ても、うまくいかないものだな」

オティヌス「…ふん」

くだらない、とばかりに鼻で笑い。
フィアンマに感化されたオティヌスは、一言だけ呟きを漏らした。

オティヌス「……ヤツを大切な人間にして。恋心は、他の人間に抱けば良いんだ」

明らかな、慰めだった。






眠る垣根の顔を見つめ、フィアンマはようやく戻ってきた実感を得た。
手を伸ばし、垣根の頬に触りかけ…やめる。起こすのは可哀想だ。

フィアンマ「…帝督。…ただいま」

こしょこしょ声。ささやき声。
ボリュームの低い声ながらも、垣根は目を醒ました。

垣根「……」

起き上がり、フィアンマを視界に捉える。
彼は自分の頬を勢い良く抓り、その痛みに眉を寄せ、言葉に悩んでいるようだった。

フィアンマ「…帝、督」

垣根「>>178
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 19:21:08.77 ID:ZUT9LEhSO
ぶっちゃけオッさんのこういう時の内容がワンパになってるちくせう

安価↓
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/15(木) 19:22:29.27 ID:DEh4bIVO0
おかえり
179 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/15(木) 19:39:07.83 ID:tEqhsQRQ0
《オッレヌスっていうのも、悪く、ないな…》






垣根「おかえり」

夢じゃない。幻想じゃない。
彼女の頬へ手を伸ばし、垣根は笑みを浮かべる。
格好をつける様子なんてどこにも無い、優しい、彼本来の少年らしい笑顔。

垣根「…遅いんだよ、お前。…どれだけ待ってたと、思ってやがる」

嘘でないことを確かめるように、確定するために、垣根はフィアンマを抱きしめた。
流れる金髪も、金色の瞳も、細い身体も、全部、夢なんかじゃない。
紛れもない、現実。
痛い程に強く抱きしめられ、フィアンマは困った顔をする。

うまく言葉が出てこない。話したいことがあったはずだ。
ただいまと、お帰り。たったこれだけの交わした言葉じゃ、気持ちを表現するには足りない筈なのに。
もっと話しかけたい、言葉のやり取りをしたい、思って口を開くと、しょっぱい味がした。

フィアンマ「…ただい、ま…ただいま、帝督…」

垣根「お帰り…」

フィアンマ「…、」

暗かった。怖かった。寂しかった。会いたかった。
色々な感情が混ざって言葉にならない。
情けない涙声に感情が溶けるばかりで、垣根に何ら思いを伝えられない。
ぼろぼろと涙を流し、強く抱きしめ返しながら、フィアンマは何度も垣根の存在を確かめる。
声を出して泣く彼女からもらい涙を受けたのか、垣根もぐすぐすと泣く。
二人してしばらく泣いた後、濡れた顔の後始末をして、ちゃんと向き合った。

垣根「……、」

フィアンマ「…怒っているか」

身勝手だった自分のことを。

垣根「>>181
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/15(木) 19:41:20.25 ID:DEh4bIVO0
オッレヌス?
オティヌスとオッレルスの子供なのか
オッレルスとオティヌスのカップリングなのか
オッレルスとオティヌスがフュージョン!はっ!
ってやったのかどれだ
kskst
181 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 19:43:33.94 ID:ZUT9LEhSO
>>1の妄想がたくましすぎるww

安価↓
182 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage saga]:2012/11/15(木) 21:20:46.36 ID:26chjBAj0
>>180様 二行目です。カップリング的な意味です。多分フュージョンは難しいと思います。
>>181様 このスレの設定なら或いは可能じゃないか、と。それを除いても、新約4巻を読めば読む程オティヌスちゃんマジかわいい、となりまして。焦ってる時とか。

男の娘なオティヌスちゃん(無限の可能性)を「出来損ないが、」「お前だって似たようなものじゃないか。決定的な部分が足りない、…いや、むしろ余分に付いている"出来損ない"だ」「ッ、やめ…!」なんて流れでれいぽぅするゲスレルスさん見てみたいです エロ同人みたいに



今日は寝ます。支援ありがとうございました。
お疲れ様でした。

安価下でお願いします》
183 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/15(木) 21:31:29.86 ID:ZUT9LEhSO
スゲーよ…ww
乙。安価↓
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/11/15(木) 22:57:55.12 ID:3V5pZgIu0
無言でデコピン
185 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 17:36:06.62 ID:J+UtxTfG0

垣根「……」

フィアンマ「痛、」

ぺちこん、と額を指で弾き、要するにデコピンという制裁を下した垣根は、深く深くため息を吐きだした。
怒っている、とはっきり言える程、憤怒の念を感じている訳ではなく。
とてつもない安堵感は感じているが、彼女が戻ってきた以上、もう悲しいことは無い。

垣根「…バーカ」

フィアンマ「……」

垣根「…本気で死んだと思っただろうが」

フィアンマ「…、痩せたな」

垣根「不健康にな」

フィアンマ「食事を摂っていなかったのか?」

垣根「心情のせいで飯がロクに喉を通らないって初体験はしたな」

フィアンマ「…そうか」

垣根「…何か言うことねえの?」

フィアンマ「…不安にさせたことは、すまなかった」

垣根「……もうあんな無謀なことしねえか?」

フィアンマ「保証や約束は出来ん」

垣根「……」

フィアンマ「…痛、」

再びデコピンをされ、ひりひりと痛む額をぱっと手で押さえ、フィアンマは垣根を睨む。

フィアンマ「…地味な攻撃を重ねるな」

垣根「>>187
186 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 17:50:54.34 ID:lt4hCoDK0
ksk
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/16(金) 17:52:27.60 ID:kz621ofH0
もう俺の前から勝手にいなくなるな
188 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 18:11:13.57 ID:J+UtxTfG0

垣根「もう俺の前から勝手にいなくなるな」

フィアンマ「……、」

吐き捨てるような。
ともすれば叫びを堪えるような低い声。
垣根がどれだけ不安だったか、怖かったか、絶望したか、フィアンマにはうまく予測がつかない。
だから、彼女は、垣根の頭をそっと撫でて頷いた。

フィアンマ「…、…守れない約束は出来ないが、…きっと、もう居なくなりはしない」

垣根「…本当だろうな」

フィアンマ「俺様を信じろ」

垣根「……」

垣根は無言で、彼女を引っ張る。
腕を引っ張られ、体勢を崩すまま、フィアンマはベッドへと引き込まれた。
隣に横たわる彼女の身体を再度抱きしめ直し、垣根は目を瞑る。
まだ少し、夜明けが来るまでに時間がある。

垣根「……寝ろ」

フィアンマ「…おやすみ」

垣根「……、…おやすみ」

この一週間で不健康に細くなってしまった垣根の身体を抱きしめ返し、フィアンマも目を瞑る。
久々の添い寝に、二人で眠れる環境に、良い夢が見られそうだった。





一方。
オティヌスに散々フィアンマへの想いを揶揄されたオッレルスは、やけ酒に走っていた。
恋心の叶わない男の悪酔いは非常に厄介だ。
両足が骨折している以上面倒な絡みから逃れられないままに、オティヌスは話を聞いていた。

オッレルス「何で俺じゃないんだ…うぅ…」

オティヌス「そういうところが駄目なんじゃないか」

オッレルス「お前は恋なんてしたことが無いからわからないんだ…」

言って、ワインを煽る。
非常に酒臭い部屋の中、オティヌスは気まぐれにオッレルスの話し相手を引き受けることをしっかりと決めた。

オティヌス「…>>190
189 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 18:25:25.04 ID:/6ovKZwSO
Ksk
190 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/16(金) 18:27:44.19 ID:kz621ofH0
全て私にさらけ出してしまえ。少しは楽になるぞ? 話は全て聞くししてほしいことがあるなら何でもしてやる
191 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 18:50:36.09 ID:J+UtxTfG0

オティヌス「…全て私にさらけ出してしまえ。少しは楽になるぞ? 話は全て聞くししてほしいことがあるなら何でもしてやる」

優しい声音。
だが、そこには密かな悪意が篭っている。
否、オッレルスにとっては善意だが、垣根にとっては悪意といったところか。
オティヌスは元々、オッレルスの異常とも言える優しさがどうにも気に喰わなかった。
まるで聖人か(魔術的なそれではなく本来の意味で、だ)何かのように、妙なところで自己犠牲的なところが嫌いだったのだ。
勿論、好きな人の幸せを願って身を引くというのは、恋という情動を思いやりという理性で止めた結果。決して悪いことではない。
が、それで苦しいのなら、悲しいのなら、焦がれるのなら、奪えば良い。
魔神をやめて尚、オティヌスは自分が思うがまま、善悪関係なく気まぐれに囁く。

オティヌス「お前の指摘した通り、私は恋をしたことは無い。だが、問題に対して案を考えることには慣れている」

そして。
オッレルスは、オティヌスの考えを予想出来る程に、彼もまた、歪んでいた。
勿論、オティヌスのような破壊願望は無いし(現在、オティヌスにももうありはしないが)、破滅するつもりも無い。
普段は、自らの醜い恋心でフィアンマを傷つけまいと必死にセーブする程の大変な理性もある。
しかし。
本来、ここまで我慢出来ることは異常なのだ。
本当に人間らしい人間であれば、寝盗ろうと、奪い取ろうと思う。
それが普通で、一般的で、仕方のないことだ。

オッレルス「……彼女が欲しい」

呟く。
恋人という意味で、ではない。『彼女』と呼べるのなら誰でも良いという訳ではない。
恋心という甘いプラスの感情は、時に酷くマイナスな感情へとなり得る。

オッレルス「…俺を好きになって欲しい」

呪いのような言葉。願望。
魔神となったから歪んだのか、魔神になる前から歪んでいたのか、或いはその両方か。
オッレルスは決して、人間味を喪った男ではない。

オッレルス「だが、垣根くんを殺す訳にもいかない…どうすればいいのか、俺にはわからない…」

フィアンマを不幸にしたくない。
そして、垣根を殺したということで嫌われたくない。

オティヌス「…>>193
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 19:03:56.88 ID:/6ovKZwSO
そんなに傷つけるのが嫌なら、代わりを見つけるか、誤魔化しつづけるかの2択になるだろうよ。
お前がどっちを選ぶかは知らんがな
193 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 19:12:13.20 ID:/6ovKZwSO
ぶっちゃけまさかオッレヌスがここまで露骨にくるとは思わんかったww安価↓
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/16(金) 19:14:39.87 ID:kz621ofH0
殺さないで説得するのはどうだ? 垣根などより自分の方がフィアンマにふさわしいと認めさせればいいだろう
195 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 19:27:12.12 ID:p842zGbl0
>>193様 違うんです、その……違うんです…! 魔(法少)女(まじん☆)オティヌスちゃんは単独でも好きです!》


オティヌス「…殺さないで説得するのはどうだ? 垣根などより自分の方がフィアンマにふさわしいと認めさせればいいだろう」

オッレルス「…それだけの説得力があるだろうか」

オティヌス「それは知らないが。どうせ駄目だと思うなら、思い切り撃沈してきた方が気分も楽になるだろう」

無責任にそう追い立て、オティヌスは肩を竦める。
説得が上手くいく可能性は極めて低い。50%なんてものじゃない。
ただ、99%駄目だとしても、そこまで思いつめるならいっそ挑めば良い。

オティヌス「どうせやけ酒するなら失敗してからまたやれ」

オッレルスの手からワインボトルを攫い、オティヌスは深くため息を漏らした。
フィアンマを惑わせる言葉など、考えればいくらでも浮かぶだろうにと思いながら。
まだ中身の七割程あるそれをミネラルウォーターか何かのように飲み干してゴミ箱に放り、オティヌスはふらふらと立ち上がる。
魔術的に自己治癒力を高めている為、この数時間で再び立てるようになった。

オティヌス「少しは楽になったな。寝ろ」

オッレルス「…>>197
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) [saga sage]:2012/11/16(金) 19:45:19.38 ID:kz621ofH0
ありがとう。感謝する
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 19:46:53.54 ID:/6ovKZwSO
>>1はオティヌスちゃんをどうしたいんだよww安価↓
198 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 20:36:37.53 ID:/6ovKZwSO
なぁ、君はこれからどう生きるつもりなんだ?
199 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 20:51:05.99 ID:p842zGbl0
>>197様 性的ないたず        彼女にも幸せになって欲しい、一般的な感覚を持って欲しいと思っています》




オッレルス「…なぁ、君はこれからどう生きるつもりなんだ?」

オティヌス「……わからない」

物理的に言えば、傷が癒えるまで、体調が整うまで、オッレルスと同居する。
だが、彼が問いかけたことはそんなことではなく。
わかりきったことではなく、精神面においての話。
魔神の座を捨て、強力な魔術師とはいえ、か細い少女へ逆戻りしたオティヌスが、これから何を指針にして生きていくのか。
破壊に走ることは、もうしない。だからといって人助けなどと、考えが逆転する訳もない。

オティヌス「………」


『…何故そこまでする。何故、私を殺して喰らうだとか、そういった発想には至らない。何故私を生かそうとする』
『今はわからないだろう。だが、世界をよく見てみろ。魔神といえど知らないことはたくさんある』

『…、』
『……俺様でさえまだ上条当麻の半分も理解できない。が、それでも見るんだ。俺様にもお前にもその義務、責任、そして権利がある』

『…そんなに。…世界とは、良いものなのか』
『…壊そうとしたことをお前が酷く悔いる程に、良いものだと…俺様は、思えるようになった。まだまだ知らないことは沢山あるが』

『…ならば、一緒に出るとしようか』


死んでも助ける、と、その命を張った彼女の言葉を無視することは、どうしてだか、出来なかった。

オティヌス「…世界を見る。…そして、私が間違っていたことを自覚するまでは、生きる」

オッレルス「……そうか」

過去。
最初に彼女が砂の城を偶然に壊した時、酷く責め立てた子供が居た。
あまりの責め苦に耐えかね、オティヌスは自らの狼藉を良いものだと思い込んで、望んで生きてきた。歪んだ。
それがどれだけ罪深いことかを理解するまでは、前を向いて、周りを見て、生きる。
もしその後に死のうとすれば、またフィアンマは自分を救おうとするのだろうか、とオティヌスはぼんやりと思った。

オッレルス「殉じるべき理想が生まれるまで、世界を知ると良い」

オティヌス「言われずとも、そうするつもりだ」




翌朝。
垣根とオティヌスはまだ眠る中、フィアンマはやや寝覚め悪く目を覚まし、リビングへ出てきた。
酒瓶を片付け、眠ったはいいものの眠り浅く早くに目を覚ましていたオッレルスは、挨拶をする。
機嫌が悪い訳ではないので、普通に返事をする彼女に対し、コーヒーを振る舞い。
自分もコーヒーを啜りながら、夜の内にオティヌスに言われた通り、口説きという名の説得をしよう、と口を開いた。

オッレルス「…フィアンマ」

フィアンマ「…ん?」

オッレルス「>>201
200 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 21:05:22.97 ID:/6ovKZwSO
決して一般的じゃない感覚の本音が漏れとるww安価↓
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 21:56:42.94 ID:/6ovKZwSO
もしよければ、もうしばらくここに泊まっていかないか?
俺はまだ君といたいし、垣根くんや君はまだ万全、とはいえないだろう?

今夜、二人きりで話したい事がある。頼むよ(耳元で)
202 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 22:09:22.05 ID:p842zGbl0
>>200様 色白ほっそり毛皮前開きコート黒装束娘(見た目13〜14)ですよ、いたずらしたいじゃないですか…》



オッレルス「もしよければ、もうしばらくここに泊まっていかないか?」

フィアンマ「……」

未だ疲れの取れていないフィアンマとしては、まあまあありがたい提案であり。
きょとん、とまではいかないものの不思議そうな表情を浮かべる彼女に向かって、オッレルスは言葉を続けた。

オッレルス「俺はまだ君と居たいし、垣根くんや君はまだ万全、とはいえないだろう?」

フィアンマ「…それは、…そうだが。…しかし、迷惑…は無いまでも、少々億劫じゃないか?」

オッレルス「いや、そんなことはないよ」

否定して、オッレルスは立ち上がる。
キッチンへ行くのだろうかと彼に視線をやるフィアンマの耳元で、静かな声で言う。

オッレルス「今夜、二人きりで話したい事がある。頼むよ」

囁きに対し、照れるでも嫌がるでもなく、フィアンマはこくりと頷いた。
『話したい事』の内容に見当がついているのかいないのか、その様子から窺い知ることは出来ない。

フィアンマ「構わんが」

相槌を打って、フィアンマはオッレルスを見つめた。

フィアンマ「大切な話か?」

オッレルス「大事な話だ」

フィアンマ「そうか」

その返答で何か納得したらしく、腑に落ちたといった様子で彼女は一度頷く。
それ以上話を深めることはせずに、コーヒーを啜った。高揚していない時のフィアンマは割と無口である。




起き出してきた垣根は、フィアンマが戻ってきたことで食欲を取り戻したらしく、定量をまともに食べていた。
そんな彼の様子に安堵の表情をうっすらと浮かべ、フィアンマは食事を進める。

オティヌス(勝目は無さそうだな)

思いながら、オッレルスを見やる。
珍しく寂しそうな、諦めた様子は窺えない。本日のオッレルス―――オーディンは本気である。



フィアンマがオッレルスから一週間の間の変化や近況報告を聞いている昼過ぎ。
退屈だったオティヌスは、垣根に話しかけてみることにした。

オティヌス「垣根帝督、だったか」

垣根「……」

オティヌスの顔を忘れた訳ではない垣根は、敵意を表しつつ彼女を見る。
オッレルスと違い、彼はフィアンマが許した人間全員を赦す訳ではない。

垣根「…何だよ」

オティヌス「>>204
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 22:11:41.81 ID:/6ovKZwSO
そら気持ちはわかるけどもww安価↓
204 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/16(金) 22:13:07.55 ID:dmOl7wFD0
可愛いな、食べて良いか?
205 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 22:23:15.19 ID:p842zGbl0

オティヌス「可愛いな、食べて良いか?」

垣根「食べ、ッ…どういう意味だ」

オティヌス「そのままの意味だよ。…北欧神話を知らないのか?」

ふふ、と含み笑いを零し、オティヌスは垣根の目を見る。
魔神をやめて尚、彼女にはどことなく不可解な雰囲気が漂っている。
如何に暗部に浸っていたとはいえ、魔術を学んだとはいえ、所詮は学園都市で暮らしてきた子供。
世界の頂点に立っていた人間の視線に、気圧される。

垣根「…『ユグドラシルの根元にあるミーミルの泉の水を飲むことで知恵を身に付け、魔術を会得する。片目はその時の代償として失ったとされる』、だろうが」

オティヌス「それも正解だが…『オーディン。別名をオティヌスは、神々の世界アースガルズにあるヴァーラスキャールヴに住み、フリズスキャールヴに座り、世界を見渡している。 また、非常に性行為好きな性格で、リンドを犯したとされる』…知らないか?」

くすくすくす。
少女らしい、しかし、どこか恐ろしい魔女の笑い声に、垣根は身を竦ませる。
やられる。というよりも、犯られる。

オティヌス「…見たところ、まだそういった行為に手を出したことはないんだろう?」

オッレルスを支援している訳ではない。
否、興味本位から支援はしているが、オッレルスの為に垣根を誘惑している訳ではない。
オティヌスはただ気まぐれに、自分がやりたいようにやる。やりたいように誘う。
自分よりも遥かに年下な、精々十四歳程度の見目の少女からの誘惑にも関わらず、それは垣根の背筋と下半身へ響いた。
垣根は年下を恋愛、及び性的興奮対象と認めない。それにも関わらず。
実際のところ、オティヌスの年齢は誰にもわからない。もしかすると、垣根より年上なのかもしれないが。

細い指先が垣根の顎にかかる。
ほっそりとした女性の手だ。フィアンマとはまた違う。色白の、手。

オティヌス「…教えてやろうか。手取り、……足取り」






垣根はどうする?>>+2
206 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 22:32:42.52 ID:/6ovKZwSO
おもしれーじゃねーかやってみろやぁああ、とホイホイ誘いにのってしまう

安価↓
207 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) [sage]:2012/11/16(金) 22:36:27.28 ID:K+CPWkZH0
【嫌だ】と言えば、ベッドに縛り付けてでもヤる気か?……ひっでぇな、そしてムカついた。
208 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/16(金) 22:47:15.76 ID:p842zGbl0

垣根「"嫌だ"と言えば、ベッドに縛り付けてでもヤる気か?」

オティヌス「視野に入れていなかった訳ではないが」

垣根「……ひっでぇな、そしてムカついた」

ギロ、と睨み付け、垣根が手を払おうとした直前、オティヌスは手を引く。
何とも退屈そうな声音で言葉を返してきた。

オティヌス「男は快楽を優先するものだと思っていたのだが…存外堅いな」

垣根「生憎、付き合ってる女も堅いもんでな」

オティヌス「見目に似合わない重さだ」

垣根「悪かったな、見た目がチャラくて」

侮られている、と憤りを見せ、垣根は敵意を向け続ける。
オティヌスはその程度の悪意に反応するまでもなく、ため息を吐きだした。
遊ぼうと思って投げた紙飛行機が水に濡れてしまって使い物にならない、そんなような軽さ。

オティヌス「敵意をやたらと向けるのは感心しないな。相手を見てからした方が良い」

魔神をやめたとはいっても、魔術師は魔術師。
まして、不純物に堕ちたとはいえ、それはかつてのオッレルスと同じ強さ。
到底垣根が敵うものではない。

垣根「テメェが先にムカつくこと言いやがったんだろうが」

オティヌス「女から誘われてムカつくという感覚が理解出来ないな」

理解出来ない、という発言の割には、その笑顔に遊興の色。
自分の愛する人間に散々酷いことをされ、垣根がオティヌスを好く筈も無い。
それをわかっていての、誘惑。どちらに転んでも、オティヌスはその垣根の様子を愉しむ。

オティヌス「それより、良いのか?」

垣根「…あ?」

オティヌス「オッレルス…いいや、オーディンを警戒しなくても」

垣根「……、」

悪意を誘おうとしているのか、と垣根は勘ぐる。
何事も気まぐれに行うオティヌスは、かえってその本心や本質が、見えない。

オティヌス「右方のフィアンマの意思が、絶対に揺らがない自信はあるのか?」

垣根「>>210
209 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/16(金) 22:50:28.97 ID:/6ovKZwSO
あるますケドぉ?
210 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/16(金) 23:40:30.02 ID:p842zGbl0
《オティヌスちゃんに向かって殺せたら殺してる発言を繰り返すオッレルスさんが物騒ですごく好きです

今日は寝ます お疲れ様でした 明日は昼過ぎに来ます

安価下でお願いします》
211 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/16(金) 23:42:40.06 ID:eVasC7+b0
あるとも
212 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 00:05:07.12 ID:tMiW+JaSO
乙ィヌス
213 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/17(土) 12:27:13.76 ID:oBgqLpRE0

垣根「あるとも」

垣根は、フィアンマの意思を信じている。
何せ、自分がどんなに逃げようと言っても、決して逃げなかったのだから。
それだけの鋼鉄の意思が、多少のことでは揺らがないとも、思いたい。
もしそう簡単に揺らがれてしまうと、自分の言葉には、説得には、意味がなかったということの証明になってしまうから。

オティヌス「大した自信だな」

垣根「…さっきから何が言いてえんだよ」

オティヌス「いや、別に何も無いさ」

多少、フィアンマに救われて改心したといっても。
やはり、オティヌスは悲しみ、嘆き、絶望する人間の顔がたまらなく好きなので、垣根には加勢しない。
少女の様子に訝しがりながらも、垣根は気にしないことにした。




フィアンマはオッレルスの顔をぺたぺたと触っていた。
正確には、魔神となる為にはどうしても捨てることを強要される左目を。
そこには『瞳』―――霊装が嵌っており、医療用眼帯を外すと少々見目が痛々しい。
儀式を執り行うべく『あの時』自分が潰した感触を思い出し、苦い顔でフィアンマは問いかける。

フィアンマ「…痛みは無いのか」

オッレルス「>>215
214 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 12:43:12.35 ID:tMiW+JaSO
Ksk
215 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/17(土) 13:08:22.64 ID:jLGR9vWz0
痛覚は無いからな
216 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/17(土) 13:19:51.63 ID:oBgqLpRE0
>>213 ×強要される ○強要され、実際に捨てた ×自分が潰した ○自分がこの瞳を潰した》


オッレルス「痛覚は無いからな」

意識朦朧としていた時に瞳を潰され。痛みは無く。
目を覚まし、普通に生活している現在、オッレルスの左目に限っては痛覚が無かった為、痛くない。
彼はフィアンマの苦々しい表情に苦笑して、思い出したように礼を言う。

オッレルス「言いそびれていた。…ありがとう」

フィアンマ「…何の話だ」

オッレルス「俺を…蘇らせたのもそうだが、魔神にしてくれて」

フィアンマ「…幾つもの偶然が重なったからだ」

破滅的世界環境。
周囲に並々ならぬ『天使の力』の塊。
あれだけの、どのような奇跡でも起こせるであろう環境が整わなければ、不可能だった。
オッレルス含む、死者を蘇らせることも、人を魔神にする儀式を成功させることも。
『神の子』と同様の『世界を救える程の力』を持っていながらも、彼女は完璧ではない。
自分が思うままに奇跡を行使出来る訳ではない。あくまで恩恵を受けるだけ。
そもそも、自分を守る為に死んでくれたオッレルスからありがとうと言われる必要は無いと、フィアンマは思っている。

オッレルス「それでも、君はあの行動をする必要は無かっただろう」

フィアンマ「……大天使を消滅させるには手っ取り早かったからだ」

あの大天使達を『座』に還すには、その力を使い切って消滅させる必要があった。だから、蘇生させた。
確かにそれも一因ではあるのだが、彼女はそれだけを目的に人を蘇らせた訳ではない。
それでも尚、何故だか言い訳を口にする彼女の様子が少し面白くて、オッレルスは小さく笑った。

フィアンマ「…今夜話したい事と言っていたが、何時頃に何処へ行けばいい。お前の部屋で良いのか?」

オッレルス「>>218
217 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 17:31:06.58 ID:tMiW+JaSO
18:00頃に一緒にホテルで夕食でも、と考えているが…どうかな?
218 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 17:41:42.47 ID:tMiW+JaSO
219 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/17(土) 17:56:42.45 ID:oBgqLpRE0

オッレルス「18:00頃に一緒にホテルで夕食でも、と考えているが…どうかな?」

フィアンマ「…帝督とオティヌスを放置していても問題無いか?」

オッレルス「少し、術式を施していくよ。昏倒させても良い」

自分の目的のために、どんなことでもする。
それが魔術師の本分ではあるのだが、自分と落ち着いて会話したいが為に垣根もオティヌスも昏倒させるとはまた乱暴な、とフィアンマは苦く笑う。
別にそれが悪いこととは思わないが。

オッレルス「それに、ヤツだって垣根くんを傷つければ自分がどうなるか位、わかっているだろう」

フィアンマ「…それもそうか」

犬猫を置いていくのではないのだから問題無いと考え、フィアンマはこくりと頷く。
ほんの少しだけ、オッレルスの話したい内容に見当がついたというのもある。





夕方。17時過ぎ。
適当な(正装という程でもない、綺麗な服だ)に着替えるフィアンマを見つつ、垣根は言葉をかける。
釘を刺すとまではいかないが、少々不安な気持ちが心中を満たしていた。

垣根「…なぁ」

フィアンマ「ん?」

垣根「早く帰って来いよ」

フィアンマ「心配せずとも、早く帰ってくるよ」

女々しい、と自らを評しながらも、どうしても垣根は不安そうな表情を浮かべてしまう。
そんな彼の肩をぽんと軽く叩き、フィアンマは安心させるべく何度か言葉を口にした。




予定通り、約束通り、18時ぴったりに。
美男美女の恋人同士といった体で(真実かどうかではなく、あくまで見目の印象の話である)、オッレルスとフィアンマは食事を開始した。
食事の邪魔にならないよう緩く結われた髪は、彼女の怜悧な印象を和らげる。
オティヌスと垣根はアパートメントに残してきたが、二人共お互いに興味の無い様子だった為、問題は無いだろう。

フィアンマ「…それで、…」

ワイングラスに指を引っ掛け、ちびりと呑む。
酒に弱すぎるといったことはなく、むしろ慣れた様子で紫の液体を呑み。
フィアンマは、一体何なのかといった語調で切り出した。

フィアンマ「…大事な話、だったか。………何だ」

オッレルス「……」

魔神になったとはいえ、オッレルスの性格が豹変した訳ではない。
言葉を練る彼の表情に、戸惑いや悲しみは無かった。かといって自信満々といった雰囲気でもない。
どう告白したら、言葉をかければ、自分を好きに…恋人として隣に立ってもいいと選んでもらえるのか。

オッレルス「…大切な話だ」

フィアンマ「…話してみろ」

外の夜景はそれなりの美しさを呈している。
告白というよりはプロポーズといった雰囲気の中、彼はようやく言葉を口にした。


今まで何度もしてきた告白を。 一生懸命な言葉で。


オッレルス「>>221
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 22:06:21.51 ID:tMiW+JaSO
オッレルスの本気がこれだ…1、2、3。

Ksk
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 22:11:30.51 ID:tMiW+JaSO
…君は、覚えているかわからないが…俺達が初めて会ったのは、君がまだ修道女で、俺がまだ貴族だった頃だ。退屈な習い事から逃げて、公園でふて腐れてた時。
初めて君を見た時、実は本当に天使か何かではないのか、と疑ったよ…そのくらい美しいと思ったんだ。今だから言うが、あの時君のフードを飛ばした突風は俺がやったんだ。…どうしても君の気がひきたくて、君と話すきっかけが欲しくて。
そして、俺がフードを渡し、君がおずおずといじらしい返答をしてくれた時から、もうノックアウトだった。その時から、君は俺の心に住み始めた。俺の根底と人格を作ったのは君なんだ。
君が垣根くんと恋人の関係にあると知った時、あれほど神を憎んだ事もなかった。
いつだったか、一緒に丘で☆を見た時、俺は君が幸せならば、と身を引こう、と思っていた。。それが、君が一番幸せであると思ったし、俺にとってもそれが望みだ。君が幸せならば、俺は何もいらないと思っていた。
だが、今回の件で…君が俺を甦らせてくれた時に見せてくれた美しい笑顔を見た時、君へのこの気持ちは、もう押さえられないと痛感した。君にメロメロなんだ。
…君の帰還を信じられなかった、肝心な時に君を守る事ができなかった垣根くんより、俺は君を信じ、守り、愛することができる。
…今まで何度も、ずっと言ってきたが、俺は君が好きだ。愛している。心から。

俺と共に生きよう。カンパーナ。

222 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/17(土) 23:21:31.97 ID:t9ULAm1f0

オッレルス「…君は、覚えているかわからないが…俺達が初めて会ったのは、君がまだ修道女で、俺がまだ貴族だった頃だ。退屈な習い事から逃げて、公園でふて腐れていた時」

フィアンマ「…覚えている。…というよりも、正確には、最近思い出した」

オッレルス「初めて君を見た時、実は本当に天使か何かではないのか、と疑ったよ…そのくらい美しいと思ったんだ」

フィアンマ「…、」

オッレルス「今だから言うが、あの時君のフードを飛ばした突風は俺がやったんだ。…どうしても君の気がひきたくて、君と話すきっかけが欲しくて」

フィアンマ「…俺様、と?」

オッレルス「ああ、君と。…そして、俺がフードを渡し、君がおずおずといじらしい返答をしてくれた時から、もうノックアウトだった。その時から、君は俺の心に住み始めた。俺の根底と人格を作ったのは君なんだ」

フィアンマ「……」

目を閉じればすぐさま思い出せる。
名前。金の髪。修道女であった自分になるべく触れまいとしていた、手。

オッレルス「………君が垣根くんと恋人の関係にあると知った時、あれほど神を憎んだ事もなかった」

フィアンマ「……」

『あつくないの?』
『なれてるからあつくないよ』

オッレルス「いつだったか、一緒に丘で星を見た時、俺は君が幸せならば、と身を引こう、と思っていた。それが、君が一番幸せであると思ったし、俺にとってもそれが望みだ。君が幸せならば、俺は何も要らないと思っていた」

『そと、きらい?』
『…あんまりすきじゃないだけだもん。うんどうできないわけじゃない…もん』

オッレルス「だが、今回の件で…君が俺を甦らせてくれた時に見せてくれた美しい笑顔を見た時、君へのこの気持ちは、もう押さえられないと痛感した。君にメロメロなんだ」

『…フィアン、マ…?』
『お前を魔神にしてやる。…それで、報いる』

オッレルス「…君の帰還を信じられなかった、肝心な時に君を守る事ができなかった垣根くんより、俺は君を信じ、守り、愛することができる」

フィアンマ「……」

自分をただ窓わせようとして言っている訳ではないこと位、フィアンマはわかっている。
痛々しい程に一生懸命に、ただひたすら自分から好かれようとしているのだと、感じる。

オッレルス「…今まで何度も、ずっと言ってきたが、俺は君が好きだ。愛している。心から」

垣根を裏切っていいのか。しかし、断ってこの男を悲しませることも果たして良いことか。
自分の幸せの為に命を実際に捨てたこの人間を、そう容易に見捨てて良いのか。
しかし、受け入れればどちらに対しても不誠実なのではないか。否、誠実さを求めて嘆かせるべきなのか?
考えれば考える程、思考は渦巻く。沈む。

オッレルス「俺と共に生きよう。カンパーナ」

フィアンマ「……、」

魔術師、右方のフィアンマとしてではなく。
少女、カンパーナ=フェリーチとして、一つの選択を迫られている。




フィアンマの台詞決定投票安価区間は>>223-225です。
選択肢は以下のみ。

1.「…俺様は、帝督しか選べない。それ以外を、選ぶ訳にはいかない。…お前が如何に俺様を愛していようとも、…愛して、くれていても。……お前は、俺様の良き友人だ。戦友だ。…だから、…だから、それで我慢しては、くれないか」(垣フィアルート)

2.「お前の気持ちは、…わかった。…実際、力量的に考慮すれば、お前の方が帝督より上ではある。………少し、……考えさせてくれ」((オレ+垣)フィア、所謂ハーレムルート)


番号で投票してください。
同IDにつき一票です。(=連投無効)
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
223 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/17(土) 23:24:45.89 ID:l+idX+Hh0
1
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 23:25:27.63 ID:tMiW+JaSO
1
225 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/17(土) 23:29:10.73 ID:tMiW+JaSO
正に哀れな魔神ww
226 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/17(土) 23:56:12.89 ID:t9ULAm1f0
《投票結果:3票中2票が『1』の為垣フィアルート。
>>225様 可哀想過ぎて>>1が泣きそうです》



「…俺様は、帝督しか選べない。それ以外を、選ぶ訳にはいかない。…お前が如何に俺様を愛していようとも、…愛して、くれていても。……お前は、俺様の良き友人だ。戦友だ。…だから、…だから、それで我慢しては、くれないか」

不誠実は、いつか悲劇をもたらす。
そして、彼女はそんな姑息な手段で一時的な、表面的な円満を望みたくは無かった。
時に曖昧な態度が人を傷つけるであれば、きっぱりと断るべきなのだ。

「………」
「…すまない」

両方を同等に愛せる程の適当さ、不誠実さは、無い。
フィアンマは欲張りだが、こういった局面ではいたく生真面目だった。
でも、だからこそ、彼女を好きになる人間が居るのだろう。

「……、…やっぱり、俺じゃ勝てない…か」
「…、」
「……仕方ない」

もし、フィアンマが苦しんでいた時期に、何が何でも傍に居たら。
ロシア。彼女が倒れた場に、垣根よりも早くたどり着いたのなら。
また、違っていたのかもしれない。しかし、そんなことを悔いても今更のこと。

「……、…オーディン」

彼を呼んで、フィアンマは手を伸ばす。
白く細い腕、その手で、彼の髪をそっと撫でる。
慰め、宥め、愛で、諌めるように。

「………でも、……俺様の様な人間を愛してくれて、ありがとう」
「…君はズルいな。……優しいから、…………狡い」

笑って、彼は彼女の手を握る。離さないといった拘束のそれではなく、祈るような柔らかな握り方。
誠実と正義の下に、一人の男の恋が、終わった。








フィアンマ「ただいま」

垣根「お帰り」

フィアンマ「あの魔神…ではなかったな、オティヌスには何もされていないか?」

垣根「>>228
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/17(土) 23:57:17.81 ID:l+idX+Hh0
逆レイプされかけたけど頑張った
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/18(日) 00:28:49.21 ID:1ZBnuuxSO
ナニモサレテナイヨ!
229 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/18(日) 01:09:38.19 ID:iQzoLrWR0

垣根「ナニモサレテナイヨ!」

見事なまでの棒読み。
何かを隠しているのだろうか、とは思いながらも。
自分もオッレルスから告白されたことを告げはしないのだから、とフィアンマは詮索しない。
口が災いの元、知らない方が良いということも多々あるから、というのもあるが。

フィアンマ「…そうか」

垣根「…そっちは何の話してた訳?」

フィアンマ「…ちょっとした、…世間話のようなものだよ」

適当に誤魔化し、フィアンマはやや身軽な服装へと着替える。
まだ体調が全回復した訳ではない為、そのままベッドへと横たわった。
どこか落ち着かない様子の垣根の手を引いて、ベッドに誘う。

フィアンマ「…疲れた」

垣根「…ん、」

俺も練る、と呟いて、垣根は彼女の隣へ横たわる。
そして、フィアンマの身体を抱きしめて目を閉じた。安定感に、包まれる。
やはり垣根でなくては駄目なのだ、と再確認しながら、フィアンマは目を瞑った。




オッレルス、もといオーディンは再びやけ酒を始めた。
オティヌスはというと、そんな彼の様子を見て最初は愉快に思っていたものの、再び絡まれている。

オッレルス「…フラれた…」

オティヌス「だろうとは思っていたが」

オッレルス「……死にたい…」

どん底まで落ち込み、めそめそと泣く彼の様子に、オティヌスはやれやれとため息をついた。
情が湧いている訳ではないが、適当に、気まぐれに、片手間に、慰め(?)の言葉をかける。

オティヌス「…>>231







《今日は寝ます。
お疲れ様でした》
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/18(日) 01:13:54.96 ID:1ZBnuuxSO
231 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) [sage]:2012/11/18(日) 02:42:05.06 ID:2Yv7xs96o
しょうがない、私が食べてやろうか?
232 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/18(日) 13:46:25.43 ID:2QG0x5Kd0

オティヌス「…しょうがない、私が食べてやろうか?」

オッレルス「…何が言いたい」

オティヌス「慰めてやろうと言っているんだよ」

体で、と適当な調子で付け加え、彼女は首を傾げる。
見目は可愛らしい細身の少女だが、元は魔神。
オッレルスと違い、表面的にも出ている程、歪んでいる。
そして非常に気まぐれな性格をしている。読めない。
オッレルスはそんな彼女の提案に、口を噤んで酒を煽る。
ひとまず考えを先送りにしたようだが、その時点で答えは肯定の形に出ているようなものだ。
性欲旺盛なのか退屈を紛らわしたいのか刹那主義なのか。
オティヌスは垣根を蹂躙しただけでは、とてもではないが足りないようだった。
妙な提案に少々酔いが醒めたのか、酒瓶を空にして片付けつつ、アルコールの香る吐息を混ぜて、オッレルスは軽く叱った。

オッレルス「…お前を殺すと息巻いていた俺が言うのも妙な話だが、…もう少しその身体を大事にしたらどうだ?」

オティヌス「>>234
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/18(日) 15:27:25.59 ID:1ZBnuuxSO
今までのを読み返してみて自分の安価の文の長さとのめり込みすぎのキモさにワロタww
おらにそんな安価をさせる>>1の文章力が悪いんだ!俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!安価↓
234 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/18(日) 22:14:32.64 ID:AoqSEm720

《台詞に関しては長文安価くださると実はすごくやり易いです

今日は寝ます。お疲れ様でした。
明日は夜に来ます》
235 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 13:54:19.77 ID:8e3rhn/SO
この体に大事にするだけの価値があるとは思わんが

お前はセックスを重く考えすぎじゃないのか?体を重ねるのは気持ちーぞー?相手にもよるがな。
お前の年頃なら性欲は押さえきれんくらいだろうに。シたいとは思わんのか?
236 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/19(月) 19:55:36.53 ID:FxmmaRiJ0
>>234に安価下と書き忘れました》



オティヌス「この体に大事にするだけの価値があるとは思わんが」

オッレルス「そういう問題じゃ、」

オティヌス「お前はセックスを重く考えすぎじゃないのか?体を重ねるのは気持ちーぞー? 相手にもよるがな」

下手で初々しくない相手は一番最悪だ、などと笑い。
オティヌスは手を伸ばし、ほっそりとした冷たい指先でオッレルスの首筋をなぞる。
彼女はオッレルスを好いている訳ではない。どちらかといえば嫌いだ。

オティヌス「お前の年頃なら性欲は押さえきれんくらいだろうに。シたいとは思わんのか?」

オッレルス「…無闇矢鱈にしたいとは思わないな」

オティヌス「聖職者でもあるまいし」

北欧神話の名を冠する時点で、聖職者とは程遠く。
男が何に貞操を貫く必要があるのか、と少女は嘲笑する。
別にオッレルスはフィアンマの為に貞操を堅く守っていただとかそういう訳ではなく、必要性を感じなかっただけなのだが。
まして、適当な性行為で種をバラ撒き、孕まれてはたまったものではない。
むに、と頬を摘まれ、余計な肉がさほど無いが故の痛みに僅かながら眉をひそめ、オッレルスは少女を見やる。

オッレルス「お前の考えが軽すぎるんだ。……、>>238(数字)歳だからかは知らないが」

237 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/19(月) 19:57:38.49 ID:bzLoSbJj0
15
238 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 20:11:48.01 ID:O+DNYjmDO
14
239 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/19(月) 20:24:42.54 ID:FxmmaRiJ0

オッレルス「オッレルス「お前の考えが軽すぎるんだ。……、15歳だからかは知らないが」

オティヌス「年齢は関係無いだろう」

15、と年齢を指摘されれば、やや憮然とした様子。
魔神であった頃では、彼女はこんな反応はしなかっただろう。
生意気で気が強く、貞操観念は薄く。正義に魅せられることもあれば、悪をも演じる。
とことん気まぐれで、少し茶目っ気があるのが、オティヌスの本当の姿である。
そんな彼女の拗ねっぷりに笑い、オッレルスは酒瓶を片付けた。今日はさほど酔っていない。
先ほど彼女が誘った通り、行為に及ぼうかと手を伸ばし、彼女の服に手をかけ。

一秒、五秒、三十秒。

手を引いた。
てっきり性行為へ及ぶと思っていたオティヌスは、表情にこそ出さないものの不可解さを覚える。

オティヌス「…何だ、シないのか?」

オッレルス「…子供を抱く気にはなれないな」

苦い笑みを浮かべ、オッレルスは立ち上がると壁に手をつきつつ寝室へと消えた。
一人リビングへ取り残されたオティヌスはというと、拗ねに拗ねた。

オティヌス「………勃起不全になってしまえ」

男性にとっては非常に恐ろしい呪いを投げかけるまでに。





朝早くに目を覚まし。
シャワーを浴びたフィアンマは、暇そうに垣根の寝顔を眺めていた。
昨日あんな流れがあったのだ。これ以上此処に留まって甘えるのは、残酷だと言えよう。

フィアンマ「……」

垣根「…すー」






フィアンマはどうする?>>+2
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 20:26:19.54 ID:8e3rhn/SO
Kskする
241 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/19(月) 20:28:35.84 ID:FxmmaRiJ0
>>239 ×15歳 ○14歳 完全な凡ミスです、大変失礼しました…… 安価下でお願いします》
242 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 20:28:46.40 ID:uFzScOD/0
子守歌にチチをもげを熱唱する
243 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/19(月) 20:37:12.23 ID:FxmmaRiJ0

フィアンマ「チッチッチッチ おっぱい ぼいんぼい〜ん チッチッチッチ おっぱい ぼいんぼい〜ん もげもげもげ〜♪」

ささやかな殺意と愛の籠った子守唄。の、熱唱。
当然、それを聞かされている垣根はその歌に込められた怨念に魘されることとなる。
何故この歌に殺意が込められるのか、彼女の薄い、慎ましやか過ぎる胸元を見れば理由は一目瞭然である。

垣根「…ッ!」

がばっ、と起き上がった垣根と額がぶつからないよう咄嗟に顔を引き、フィアンマはしれっと挨拶をする。

フィアンマ「おはよう」

垣根「……はよ」

恐ろしい内容へと変わった悪夢によって無理やり起こされた垣根は、非常にローテーションで挨拶を返した。
フィアンマはそんな垣根の様子を眺めて口元を緩ませ、どこか満足そうな様子で部屋から出た。
手紙に近いメモ書きを残すと、垣根を連れて家から出る。長居をするつもりは無かった。




少し礼を欠きながらも別れを告げ。
ホテルの部屋へ戻ってくると、垣根は再び眠気が押し寄せてきたらしく、眠そうな顔をしていた。

フィアンマ「俺様は出かけるが、帝督は寝るか?」

垣根「…>>」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 20:45:32.72 ID:8e3rhn/SO
Ksk
245 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/19(月) 20:46:35.79 ID:FxmmaRiJ0
《指定抜けてました。 >>247でお願いします》
246 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 20:47:49.87 ID:8e3rhn/SO
Ksk
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/19(月) 20:57:25.60 ID:bNwaIbFz0
眠気覚ましについてく
248 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/19(月) 21:04:22.09 ID:FxmmaRiJ0

垣根「…眠気覚ましについてく」

フィアンマ「そうか。少々退屈させるかもしれんが」

垣根「あん?」

不思議そうに首を傾げる垣根を見やりつつ、フィアンマは外出着に着替えた。
女物ではなく、慣れ親しんだ男物である。
何処に行くのか、という問いかけにロクに答えないまま、フィアンマは垣根の手を引く。
手を引いたままてくてくと歩いて向かった先は、ジュエリー店。

垣根「…何買うんだよ」

フィアンマ「…結婚指輪だが」

垣根「…、」

一気に垣根帝督の意識が浮上する。
冗談半分に強請った誕生日プレゼント、その内容である結婚指輪をどうやら買うらしい。

垣根「……え、マジで買うの?」

フィアンマ「要らないのか?」

垣根「>>250
249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 21:08:00.09 ID:8e3rhn/SO
Ksk
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/19(月) 21:08:01.67 ID:bNwaIbFz0
婚約指輪俺渡したっけ?
251 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/19(月) 21:16:07.94 ID:FxmmaRiJ0

垣根「婚約指輪、俺、渡したっけ?」

フィアンマ「? 貰っていないが。必要か?」

垣根「…いや、そんなこと言ったら衣食住以外必要無い事になっちまうだろうが」

言いながら、垣根は婚約指輪が先だと釘を刺す。
あの時は深く考えていなかったが、正直、垣根はもらうよりも贈りたい派である。
そして口に出してみたというだけで、結婚指輪だとか、そういうものは自分から贈りたかった。
先ほどとは違い、垣根に手を引かれる形で宝石店に入り。
男物を着ていると髪の長さが相まって中性的なフィアンマはさほど店員の視線を集めることも無く、垣根を見やる。

フィアンマ「婚約指輪など、女がするものだろう」

確かに、男性はしていないことが多い。

垣根「結婚指輪は今年じゃなくて来年だろうが。…、…婚約指輪は、その、」

フィアンマ「……くれるのか?」

垣根「…>>253
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 21:17:24.95 ID:8e3rhn/SO
Ksk
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 21:20:52.12 ID:awxpHbsDO
くれるとかあげるじゃない、対等に愛し合いたいって気持ちを形にしたいんだよ。
254 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/19(月) 21:32:59.64 ID:FxmmaRiJ0

垣根「…くれるとかあげるじゃない、対等に愛し合いたいって気持ちを形にしたいんだよ」

だから、今年は自分が。
そして、来年は恐らくフィアンマから。

あげる、貰う、そんな関係ではなく。
結ばれているという精神的状態を目に見えるようにするために。
垣根は、恋というものが脳の誤作動だと知っている。
その勘違いを、それでも甘いその感覚の心地よさを深める為に、形にしたいのだ。
垣根の言葉を何となく感覚として理解したのか、フィアンマはこくんと頷いた。

フィアンマ「…それなら、来年は俺様から贈るとする」

垣根「ん。…今年は俺な」

約束、という重みは無い。
それが叶わないならそれはそれで構わない。
問題は、こうして言葉にすることで、想いを交わすことで、柔らかな気持ちになるかどうか。

垣根「……で、何か気になるデザインとか、宝石とかねえの?」

垣根の金の出処は、学園都市で凍結されていた、最近になってようやく解放された銀行口座から。
なので、何も後ろめたいことはなく。また、巨額を何なく引き出せる。

フィアンマ「…>>256
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 21:41:11.90 ID:awxpHbsDO
少し意地悪いとは思うが、黒い宝石なんてものは無いのかな?…もちろん来年は黒くない指輪を贈るぞ、ただちょっと私には他の色は思いつかんのだよ…
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 22:42:00.97 ID:8e3rhn/SO
>>1に任す
257 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/19(月) 22:45:08.86 ID:czQbtToU0

《…何…だと? 


今日は寝ます、お疲れ様でした。明日も夜に来ると思います》
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 22:45:51.58 ID:8e3rhn/SO
259 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/19(月) 22:55:26.65 ID:awxpHbsDO
乙〜
260 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/20(火) 19:46:27.29 ID:9lpUpEdP0

フィアンマ「…これだ」

細い指先。
その爪の先へ視線を移動させれば、ディスプレイされた指輪が二つ。
婚約指輪というだけに、ペアリングのようで。

右側の男性用<メンズ>は全体的にダイヤが施された無駄な装飾の無いリング。
左側の女性用<レディス>は中央にハート型のダイヤ。他に無駄な装飾は無い。
シンプル故に美しく、そのダイヤはカットの仕方が良いのか、店内の照明の光によって煌めいている。

垣根「…あんまり豪華じゃねえな。これで良いのかよ?」

もっと可愛らしいデザインだとか。
もっと沢山の宝石が使われているだとか。
値段も比較的安いこれでいいのかと、垣根は一応聞き返す。

フィアンマ「これが良いんだ」

ハート型のダイヤは薄く赤みがかっている。
ダイヤの向こう側にルビーを置くことで赤みを足しているようだ。
一見しての美しさ、その向こうに透ける更なる美しさと、その見目の可愛らしさ。

垣根(…何かフィアンマっぽいな)

口に出せば確実に惚気となるそんなことを心中でぼやき、垣根は彼女の左手薬指を触ってサイズを測る。
超能力者ともなれば演算の為に異常な程の理数系知識を詰め込まれる為、数学の応用によって指の太さを測るなど目測や数度触れるだけで充分だ。



指輪を購入し。
店の外ではいどうぞと渡すのも何だか色気が無い為、垣根は迷っていた。
そのまま渡したところで彼女は普通に受け取るのだろうが。
指輪をもらえることが確定しているからか、いたく上機嫌のようである。
どう渡すか。





婚約指輪をどうやって渡す?(台詞のみ等・アバウト可)>>+2
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 19:47:27.36 ID:0G2jdrjSO
Kskにゃー
262 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 20:18:49.92 ID:0G2jdrjSO
部屋にピタゴラスイッチみたいなギミックを組んで、最終的に垣根の口から飛び出す形で渡す


安価↓
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 21:00:37.39 ID:0G2jdrjSO
1、フィアンマ就寝後、こっそり指輪をつけさせて朝起きたら…みたいな

2、ホテル最上階でディナーしつつ

3、突如深いキスをかまし、どさくさに紛れて指輪をつける

4、ぬいぐるみをプレゼント、そのぬいぐるみの指に指輪装着しておく

5、誕生日にプロポーズの言葉と共に

の内からお好みで
264 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/20(火) 21:17:11.20 ID:9lpUpEdP0
《Webサイコロの結果4に決まりました》


垣根「そういや、これはクリスマスプレゼントって良い名目にしても。お前の誕生日プレゼントまだだったな」

フィアンマ「一緒で構わんよ」

垣根「そうはいかねえ」

フィアンマ「? 何故だ」

垣根「…祝わせろよ。今まで、人の誕生日なんざ祝ったことねえんだから」

家族なんて居なかった。
友達など、居なかった。
だから、祝いたいと思っても良いだろう。
そんな発言に薄く笑んで、無欲ながらも彼女は頷く。




そういった訳で不足分を補充すべく金を銀行から下ろした垣根は、彼女と共に小物屋まで来ていた。
フィアンマは既に辺りを見回している。
甘そうな、そして形の面白いチョコレートだとか。
ラッピング用品だとか、色々なもの。
日本とイタリアでは感覚が違う為、華美過ぎる安っぽいものは無いようだ。

フィアンマ「…ところで、何をくれるんだ?」

垣根「ぬいぐるみはどうだ? 欲しいモンあるならそっちにするが」

フィアンマ「特にこれといっては。…ぬいぐるみか」

手触りの良いものを、と、フィアンマは楽しそうに探す。
大きなテディベアから小さなリスの人形まで、沢山のものが並んでいる。

フィアンマ「……ん、…」

垣根「何のぬいぐるみが良いんだ?」

フィアンマ「……、」





何のぬいぐるみ?(例:熊、兎、猫…等)>>+2
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 21:20:20.93 ID:0G2jdrjSO
これでマカロンとかだと困るなww安価↓
266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 21:31:04.46 ID:BNTGBb9A0
ゲコ太
267 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/20(火) 21:58:40.16 ID:9lpUpEdP0

彼女が指差したのは、ゲコ太のぬいぐるみ。
以前ストラップについて話し合った時のものとは違う、ヒゲの生えていないカエル。
可愛いのか可愛くないのかは不明だが、ひとまず子供趣味に思える。
思いつつも垣根は今回は何も言葉を挟まず、素直に購入した。
大きすぎず、小さすぎず。そんな大きさのカエルの指先は細く。
すっぽ抜けてしまわないかどうかが不安だったが、どうやらそんなこともなく。
ラッピングを終えた箱の中に、指輪を嵌められたカエル。
そんな箱の入った袋片手に、垣根は彼女の手を引いて外へ出た。
気付けば夕方になっていた。すっかりと陽が暮れてしまっている。

フィアンマ「随分と遅かったな」

垣根「ま、色色やっててな」

言って、ゆっくりと歩く。
何かした訳ではないのに、大きな充足感に満たされていた。



ホテルへと戻り。
袋の中から箱を取り出し、垣根は差し出した。
中身がわかっていても、プレゼントのラッピングを解く作業とは楽しいもので。
するするとリボンを解き、ぱかりと開けて、中身を取り出す。
彼女はゲコ太のぬいぐるみを抱きしめた後、その指先に嵌っているものに気がついた。
そして口元を緩ませ、迷うことなく左手の薬指へと嵌める。
左手の薬指は、心臓につながる神聖な指。

フィアンマ「…、」

垣根「あんまり色気無い渡し方だとつまんねえだろ」

フィアンマ「そうだな」

指輪を右手指先でなぞり、フィアンマは薄く微笑む。
垣根は思い出したように、自分の分を嵌めた。
十代で婚約指輪というのは少々身に余る感じもあったが、存外、両者共指輪は似合っていた。

垣根「……」

感慨深い。
そうとしか言い様の無い感覚に口を閉じて、垣根は彼女の指先を見た。
自分と揃いの、飾りはあるが、可愛らしい指輪。同じ色合い。

フィアンマ「……」

垣根「……」

フィアンマ「…、…お嫁さん、……か」

呟いて、フィアンマは目を伏せた。
何事かを迷うような様子だった。
揺らぐ口調で、問いかけのような呟きを漏らした。

垣根「?」

フィアンマ「…俺様は。……私は、……お前の良き妻に、………なれるのかな。…こんな、…私でも、…」

垣根「…>>269
268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 22:08:30.82 ID:0G2jdrjSO
Ksk
269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 22:13:35.06 ID:FppPErxDO
必要しあってるから好きになったんだろ?
体が弱い訳でも能力者が襲い掛かって来る訳でも無いんだから、出来ない事なんていくらでもやり切れるさ
270 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/20(火) 22:32:05.23 ID:9lpUpEdP0

垣根「必要とし合ってるから好きになったんだろ?」

フィアンマ「……、」

垣根「お前の中でどんなのが良き妻ってヤツなのか、俺にはわからねえ。多分、俺が考えてるのとは一緒じゃねえ。…身体が弱い訳でも、能力者が襲いかかってくる訳でも無いんだから、出来ないことなんていくらでもやりきれるさ」

フィアンマ「………」

垣根「…偉そうでも、強気でも、弱くても、何を言っても自分のやりたいようにしか、やらなくても。お前がどんな女だって、俺は後悔しねえ。心配なら言い直してやってもいいけどな。多分、後悔しねえ。…出来ないことがあるならやれとは言わねえ。俺がやってやる。だから、俺が何か出来なくてムカついてる時は、それとなく助けてくれ。俺は家族なんて居なかったし、どんなモンなのか、理想もあやふやだが、夫婦ってそういうモンじゃねえの。少なくとも、日本の法律見る限りじゃそういうことみたいだけどな。相互扶助ってヤツ」

夫にしろ妻にしろ、無理をしてなるものではないと垣根は思う。
恋はまやかし、愛は再検証などと言う時もあるが、自分達については何度再検証しようと愛情が揺らぐことは無いだろう。
自分の中で優先順位がひっくり返ることは無い。
彼女は生粋の魔術師で、世界の為に生きているのだからそれは仕方が無い。
だが、人間の中での優先順位は自分が上位だと、垣根は信じている。そして、それは事実だ。

垣根「…正直、俺は理想の夫とやらになれる気がしないからな。お前にも多くを求めはしねえよ。カカア天下だ亭主関白だのいう言葉もあるが、俺達にはいまいちどっちも当てはまらねえしな」

ややカカア天下寄りというやつだろうか、と首を傾げつつ。
そう思うままに、言葉を無駄に取り繕わずに話され、フィアンマは笑みを浮かべたまま、垣根にくっついた。

フィアンマ「……そうだな。……そう思いつめることも、無いか」

垣根「何かと思いつめ過ぎなんだよ、お前は。…もっと軽く考えろ」

フィアンマ「癖だよ」

垣根「知ってる」

軽口で返し、垣根はフィアンマの頬を触る。
そして顔を近づけると、頬に口づけた。
唇にしないのは照れからか。

フィアンマ「…よくよく考えれば、帝督にも欠点は多いしな」

垣根「あ? 欠点?」

たとえば、とばかりの口ぶりに、フィアンマは彼の欠点を挙げて返す。

フィアンマ「>>272







《今日は寝ます。お疲れ様でした。
明日も夜に来ます。来れないかもしれません。来られなかったら申し訳ないです。




全然関係無いのですが、今度上フィア(♀)安価スレをやる予定です》
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/20(火) 22:45:43.53 ID:0G2jdrjSO
乙。まさか無視のやつか安価↓
272 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/21(水) 00:29:36.38 ID:XsLEbFum0
>>271様 いえ、無視条さんではなく新ネタです。とはいっても使い古されてる再構成ネタ的なアレですが… 安価下でお願いします》
273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 01:34:04.15 ID:4IUGgRtSO
ほほう、神浄スレ越えれるといいですな。楽しみにしとります安価↓
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 15:41:22.96 ID:SDrK/XKG0
お前は早漏だ
275 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/21(水) 19:44:05.48 ID:SObHY+ml0
>>273様 流れ次第では或いは…明日立てます》


フィアンマ「お前は早漏だ」

垣根「」

垣根(な、なな何で知って、)

致命的な欠点を挙げられ動揺する垣根に対し、彼女は言葉を続けた。

フィアンマ「別の言い方をすると、短気だ」

垣根「…まあな」

フィアンマ「…直情的に取り組めるということは、ある面において良いことだよ。…俺様には出来ない。思索を脳内で成功させなければ行動を起こせない俺様には」

本当の意味で勇気の無い自分には無いものを、垣根は持っている。
だから、好ましい。欠点さえ愛おしい。
垣根は自分が戻ってくることはないだろうと、生還を信じられなかったことを、オッレルスから聞かされた時。
それは自分を好いていてくれるからこそだろうな、と思った。
愛を唱えるには、垣根はまだ幼い部分が多い。でも、好きだからこそ、絶望してくれたのだと、思う。

垣根「お前が意気地なしとは思わないけどな」

世界を救う。
そんな目的の為に、見知らぬ他人の為に、本気で命を賭ける。
聖人と呼ばれてもおかしくない行い。
垣根にとってみれば、自分には絶対に出来ないし、したくも行いを信念として真っ直ぐに生きる彼女は自分に無い部分を持っている。
愛とは、欠けているものを満たす為に出来上がるもの。

フィアンマ「……帝督に一言言っておくことがある」

垣根「あ? 何だよ」

フィアンマ「>>277
276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 20:19:46.05 ID:4IUGgRtSO
私は…帝督が思ってるより、皆が思ってるより、強くない。
いつだって倒れそうなんだ。
277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/21(水) 21:09:14.45 ID:nHxvKyy80
>>276

278 : ◆2/3UkhVg4u1D [saga]:2012/11/21(水) 21:37:30.19 ID:SObHY+ml0

「私は…帝督が思ってるより、皆が思ってるより、強くない。いつだって倒れそうなんだ」

ぎゅう、とゲコ太を抱きしめ。
垣根からのプレゼントであるぬいぐるみを強く抱きしめ、顔を埋めながら。
彼女には心の支えが自分しかないことを、垣根は何となく察している。

「知ってる。……だから、俺には弱み見せとけよ」

沢山、と言われ、頭を撫でられ。
気まずそうに顔を上げる彼女を抱きしめ、その頭に垣根は顎を置く。
強めに抱き込む形で、安心感を与える。

「…ん」
「……」
「…帝督は」
「…俺が、何だよ?」
「……俺様の天使様だな」
「…その天使ってのどうにかなんねえの?」
「…守護天使は、そうだな。日本でいうところの守り神だぞ?」

良いじゃないか、と柔らかく笑み。
フィアンマは軽く体重をかけて垣根に甘えた。
心から甘えられるのはこれから先も彼だけだろう、と彼女は思う。

「…なら、悪くねえか」
「だろう?」
「…お前が倒れそうになったら、支えられる程の力があるかどうかは別として。…お前が地面に直接倒れないように、先に下に倒れる位なら、してやるよ」
「…そうか」

くすりと笑い、垣根のプライドの高さを知った上で下敷きになっても構わないとの発言に、心地よさを覚え。
優越感にも似たそれを刻み付けるように、婚約指輪を指先で撫でた。

「だから、」
「…?」
「……俺の手の届く範囲内だとか。…俺の視界に、居ろよ」
「…いつまで居れば、いいんだ?」
「いつまでもに、決まってんだろうが」

来年も、再来年も、その先も。
世界が何度危機を迎えても。
その度に救って、こうやって元の状態に戻る。
それが一番で、最上で、すべきことなのだから。

「…私が馬鹿なことをしても。……ずっと、好きでいてください」
「嫌いにも、曖昧な状態にもならねえ。ずっと、好きでいるから安心しやがれ。…カンパーナ」









おわり
279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/21(水) 21:39:02.10 ID:iP+qs65O0
乙 さぁ次のスレを立てる準備に戻るんだ
280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 21:40:10.73 ID:4IUGgRtSO
お、おわりよったああ!!!毎度毎度終わり唐突ゥゥゥ!!!乙。

オッレヌスとかその他はどうなったのか…
281 : ◆2/3UkhVg4u1D [sage]:2012/11/21(水) 22:36:17.18 ID:kQC9pBu40
《次のスレを立てる準備は終わったよ! でも明日だよ! スレタイで丸分かりと思います。
オッレヌスどうなったんでしょう。でも何だかんだでくっつかないんじゃないでしょうか。エロ同人みたいに事は運ばれませんね。
唐突な終わりどうにかしたいのですが何分>>1の脳内に唐突にストーリーの終わりが訪れるもので、申し訳ないです。

お付き合い、ありがとうございました》
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 22:45:32.16 ID:4IUGgRtSO
神裂さんじゅうはっさい「………………。」

フィアンマさんをフラーメ呼びしてるオッレルス「…………。」
283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/21(水) 23:44:02.84 ID:fcvjIqHDO
乙です
これはホモが好きそうだな奴だな!と思ってから気づけばフィアンマちゃんが次スレの予約まで入れる様になるとは…………
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