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優「姉ちゃん」千早「あら、優」 - SS速報VIP 過去ログ倉庫

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1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:17:39.21 ID:jRvAAJrS0
これはアイドルマスターに登場する如月千早の弟、如月優が生きていたらというパラレルSSです。

なので、若干登場人物のキャラが原作とは違ったりします。

それと、自分はアイドルマスターをアニメしか知らないので間違っている所があったりするので、その時は指摘お願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1353773859
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旅にでんちう @ 2024/04/17(水) 20:27:26.83 ID:/EdK+WCRO
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木曜の夜には誰もダイブせず @ 2024/04/17(水) 20:05:45.21 ID:iuZC4QbfO
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いろは「先輩、カフェがありますよ」【俺ガイル】 @ 2024/04/16(火) 23:54:11.88 ID:aOh6YfjJ0
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【MHW】古代樹の森で人間を拾ったんだが【SS】 @ 2024/04/16(火) 23:28:13.15 ID:dNS54ToO0
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こんな恋愛がしたい  安部菜々編 @ 2024/04/15(月) 21:12:49.25 ID:HdnryJIo0
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【安価・コンマ】力と魔法の支配する世界で【ファンタジー】Part2 @ 2024/04/14(日) 19:38:35.87 ID:kch9tJed0
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アテム「実践レベルのデッキ?」 @ 2024/04/14(日) 19:11:43.81 ID:Ix0pR4FB0
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2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:18:30.88 ID:jRvAAJrS0
‐11月某日・765プロ‐

その日、プロデューサーは事務所で机に向かっていた。

普段なら担当アイドルに付いて回るのが彼の仕事だが、溜めこんでいた書類を整理しろと同僚の秋月律子に言われてしまい、事務所に居るのだった。

時刻は夕方。

事務所の外は日が暮れ始め、更には風まで吹き始めていた。

最近、めっきり寒くなって来たな……と窓の外を見ながらプロデューサーが季節の移り変わりを感じていると、彼の耳に聞きなれた声が入ってきた。


「プロデューサーさん、ちょっと休憩にしませんか?」


声のした方を見ると、事務員の音無小鳥がプロデューサーの傍に立っていた。

彼女の両手にはマグカップが一つずつ。

左手には彼女のお気に入りであるヒヨコの絵が描かれた可愛らしいマグカップ、そして反対の右手にはプロデューサー愛用の赤色のマグカップ。

P「ありがとうございます、音無さん」

お礼を言うと、彼は彼女の手からマグカップを受け取った。
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:19:16.96 ID:jRvAAJrS0
マグカップの中身はコーヒーだった。

豆の良い香りとマグカップを持つ手から伝わる温かさが五感を刺激する。

コーヒーを一口含むと、体の内側から生まれる温かさがデスクワークで凝り固まったプロデューサーの疲れをほぐしていく。

P「美味しい……」

思わず口から感嘆が漏れる。

コーヒー好きで自分でもよく淹れるプロデューサーだが、小鳥が淹れるのは格別に美味いと常日頃から思っていた。

小鳥「ふふっ、そんな風に言われたら淹れた甲斐があります」

独白を聞かれた恥ずかしさと彼女の笑顔に思わず居住まいを正すプロデューサー。

小鳥「風、強くなってきましたね」

そんなプロデューサーの内心に気付かずに、小鳥が外を見て呟く。

P「そうですね、寒さも殆ど冬みたいなモンです
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/11/25(日) 01:19:23.51 ID:snKDiuy80
常に明るいちーたん見れる?
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:20:05.82 ID:jRvAAJrS0
小鳥「こんな寒いと熱燗におでんですよね」

P「良いですね、やっぱり冬にはその組み合わせが一番ですね」

小鳥の言葉にプロデューサーが頷く。

プロデューサーが765プロに入社したのは数か月前。

大学を卒業して就職浪人だった所を社長である高木順二朗氏がスカウトしたのが、彼が765プロに入ったきっかけ。

何故、プロデューサーをスカウトしたか高木社長に聞いたら『ティン!』と来たからだとかなんとか。

そんなこんなで芸能界という一般人には右も左も分からない世界に飛び込んだプロデューサーに対して小鳥は色々なアドバイスをした。

そのおかげかどうかは分からないが、プロデューサーはメキメキと力を着けていき、765プロに所属するアイドルはテレビでは見ない日が無いと言われるほどの売れっ子になっていた。

アドバイスを受ける中で、プロデューサーは小鳥を食事に誘うようになり、最近では頻繁に飲みに行ったりする仲になっていた。
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:21:18.52 ID:jRvAAJrS0
小鳥「あら、じゃあ今日飲みに行きませんか?」

P「はい、行きましょう」

小鳥の誘いを一つ返事で受けるプロデューサー。

表情は平静を装って入るが、内心でガッツポーズをしていた。

小鳥「でも、その前に仕事終わらせなきゃダメですよ」

律子さんに怒られちゃいます、とマグカップを置いて自分の机に向かう小鳥が言った。

同僚の怒った顔を思い浮かべながらも、モチベーションが上がったプロデューサーも机に向ったとき。

ガチャ、と事務所の扉が開く音がした。

その音を聞いて時計を確認するプロデューサーだが、アイドルの少女達が帰ってくるにはまだ早かった。

予定に無い訪問者。

「すみません、765プロはここで合ってますか?」

男の声がした、それもまだ若い。

アイドルのファンかな?と思い、プロデューサーは椅子から腰を上げて顔を出した。

入り口には少年が立っていた。

学ランに防寒着を着た少年は顔を出したプロデューサーを見て頭を下げた。

「突然訪ねてすみません、如月千早の弟の如月優です」

顔を上げた、少年は笑顔でそう言うのだった。
7 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:22:24.94 ID:jRvAAJrS0
とりあえず、今日はここまでです
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 01:27:39.31 ID:tOBWtJ+20
乙。男の娘アイドル来るか?
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(群馬県) :2012/11/25(日) 01:57:05.14 ID:7iMvArw+0
ほう、支援
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/25(日) 19:34:59.74 ID:bOO8zdwDO
P×小鳥さんなのかP×千早なのかそれはすごく重要
11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:18:17.97 ID:m5jHWnZY0
小鳥「はい、コーヒーどうぞ」

優「ありがとうございます」

応接用のソファーに座り、来客用のカップに注がれたコーヒーを小鳥から渡された優はお礼を言った。

寒い外を歩いたからか、コーヒーは飲まずにカップの温かさでかじかんだ手を戻そうとしている。

そんな優に対して、プロデューサーは反対側のソファーに腰掛けながら見ている。

765プロに所属するアイドル、如月千早に弟が居るのは彼も知っていた。

知っていたと言っても直接の面識がある訳ではなく、千早のプロフィールに書いてあったのを読んだだけに過ぎない。

つまり、この如月優という少年がどんな人物なのかはまだ知らないのである。

そんな彼が何故事務所を訪ねて来るのだろう。

プロデューサーの頭の中は先程からその疑問でいっぱいだった。

まさか、今世間を賑わせている男性アイドルユニット、ジュピターのようなアイドルになりたいとでも思って事務所の扉を叩いたのだろうか?

プロデューサーの頭の中では様々な憶測が飛び交っていた。
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:19:40.93 ID:m5jHWnZY0
小鳥「それで、今日はどうして事務所を訪ねて来たの?」

そんなプロデューサーの疑問を断ち切るかの如く、小鳥は優に問う。

しかし、問いに対する答えは意外なものだった。

優「いやぁ、姉ちゃんが忘れ物したから届けろって母ちゃんに言われちゃって」

そう言うと優は自分の横に置いてある通学カバンの中から届け物を取り出すとテーブルの上に置く。

それは台本だった。

来週千早が出演する生放送のバラエティ番組の。

昨日、帰ろうとしていた千早に渡した物。

優「姉ちゃん昨日、ウチに泊まったから忘れたみたいで」

そう言って少しぬるくなったコーヒーを飲む。

千早は実家を出て一人暮らしをしている、プロデューサーも仕事終わりに何回か送って行ったことがあるから場所は覚えていた。

アイドルの仕事を始めたばかりの頃は実家から通っていたらしいが、不便だったらしく家を出たとのこと。

それでも月に何回かは実家の方に帰っているらしく、仲の良いアイドルに話しているのを小耳に挟んだことがある。
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:20:13.52 ID:m5jHWnZY0
優「親父は姉ちゃんが出る番組全部録画したり、母ちゃんはCDが出たら発売日に買いに行ったりしてるんですよ」

小鳥「あら、素敵なご両親じゃないの」

優「あれは、ただの親馬鹿ですよ」

いつの間にか、千早の家族の話で盛り上がっている二人。

そんな二人の話を聞きながらプロデューサーは書類整理の続きをしていた。

最初は三人で話していたのだが、途中で抜けたのだ。

P「よーし、終わったぁ……」

溜まっていた仕事が終わり、伸びをするプロデューサー。

時間を確認すると優が事務所を訪ねて来てから既に一時間以上が過ぎていた、その証拠に窓の外は暗幕を下ろしたみたいに暗くなっている。

立ち上がり、壁に掛けてあるホワイトボードを確認する。

そこにはアイドルの達の予定がびっしりと書き込まれていた。

誰がどこへ行ってどんな仕事をするか。

もし熱狂的なファンに知られでもしたら大変なことになるな、なんてことを思いながらプロデューサーは二人の元へ行く。
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:21:08.22 ID:m5jHWnZY0
P「優君、千早そろそろヴォーカルレッスンから戻ってくるよ」

優「レッスンですか……?」

P「そう、レッスン。アイドルだって練習するんだよ」

テレビに出て歌を歌うという華やかなイメージを持たれるアイドル達だが、実はその裏では血の滲むような努力をしている。

例えばの話だが、新曲を出すとなると歌詞を覚えるだけでなく振り付けや歌い方等、様々なレッスンをしなければならない。

更に、ライブをするとなると新しい振り付けを覚える必要がある。

きらめくステージに立つ為に、みんな努力を重ねているのだ。

優「そんなこと知らなかったな……姉ちゃん、家に来たときはそんなこと一言も言わないから」

プロデューサーから聞いたアイドルの影の部分に思わず驚きの声を漏らす優。

驚くのも無理はない、説明しているプロデューサーですら最初の頃は驚かされたりしていたのだから。

小鳥「ふふっ、アイドルは夢を与える職業だから。そんな辛いことは秘密にしてるのよ」

ずっとアイドルを見守ってきたから言えるのか、それとも別の理由があるのかは分からないが、小鳥は笑っていた。
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:21:55.12 ID:m5jHWnZY0
「ただいまー!」

「ただいま、戻りました」

事務所に響く二色の声。

明るい声と落ち着いた声、色で例えるとしたら赤と青。

外の寒さから逃げるような勢いで事務所に入ってきたのはヴォーカルレッスンを終えてきた天海春香と如月千早の二人だった。

小鳥「お帰りなさい」

P「二人ともお帰り」

帰って来た二人を労う為にプロデューサーと小鳥は顔を出す。

二人は事務所の暖房の暖かさを感じる為に着ていたコートを脱ぎながらプロデューサー達に笑みを返す。

外を走ってきたのだろうか、顔を僅かに上気させながら荒い息を吐いていた。

小鳥「外、寒かったでしょう?」

春香「はい、もう寒くて寒くて」

千早「すっかり、冬になってきましたよ」

そのままの流れで談笑を始めてしまう。

女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、すっかり事務所には華やいだ空気が充満していた。
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:23:11.74 ID:m5jHWnZY0
話が盛り上がる寸前、タイミングを見計らったプロデューサーは千早に話しかける。

P「そうだ、千早にお客さんが来てるんだ」

千早「えっ?私にですか?」

予定の無い突然の来訪者、それも想像つかない人物が現れたとするとこの少女はどんな反応を示すのだろうか。

P「ああ、ほら出てきなよ」

そんなことを考えながら、プロデューサーは彼を手招く。


優「姉ちゃん」

千早「あら、優。どうしたの?」


プロデューサーが初めて見る表情(かお)。

仕事をしているときのアイドルでもない、友人と仲良く話しているときの少女の顔でもない。

顔を綻ばせ、ある種の愛情を表したそれは間違いなく姉としての表情だった。
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/26(月) 00:23:43.94 ID:m5jHWnZY0
今日はここまで
18 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/26(月) 01:22:21.16 ID:FV3mptCWo


凄い見やすくなったし面白い
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:34:09.72 ID:M5+CwzLI0
姉としての表情を浮かべる千早、だが状況は呑み込めないでいた。

千早「あれ?どうして優が事務所に居るの?」

優「どうしてって、姉ちゃんが忘れ物したからだろ?」

問いに答えながら優は手に持っていた台本を千早へと差し出す。

出された物が何か把握した彼女は得心したような表情を浮かべた。

千早「そっか、昨日家に忘れちゃったのね。わざわざ届けに来てくれてありがとう」

寒い中、わざわざ弟が届けに来てくれたという事実に喜びながら、千早は台本を受け取る。

優「別に、どうってことねーよ」

恥ずかしいのだろう、お礼の言葉にぶっきらぼうな返事で返す。

春香「優君みたいな姉思いの弟を持って千早ちゃんは幸せ者だね!」

二人のやり取りを見ていた春香が笑いながら言う。一人っ子の彼女からしたら羨ましく思えたのだろう。

千早「もう、春香ったら。からかわないの」

優「そうですよ、春香さん」
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:34:50.81 ID:M5+CwzLI0
P「あれ?春香は優君と面識があるのか?」

親しげに話す三人、不思議に思ったプロデューサーが聞くと春香は笑顔で返した。

春香「千早ちゃんの家に泊まったときに会って、それから何回か顔を合わせたことあるんですよ」

その言葉にプロデューサーは納得する。

春香と千早の仲の良さは親友と言っても過言ではない程だった。

家が遠い春香は夜遅くにテレビ収録が終わり、帰りの電車が無いときはよく千早の家に泊まったりすることが多い。

つい先日も泊まったという話をしたのをプロデューサーは思い出していた。

優「そういえば、コレ母ちゃんが姉ちゃんに持って行けって」

なにかを思い出したように言うと、通学カバンとは別に持っていた袋を千早に渡す。

中にはタッパーに入った数種類の料理があった。

優「姉ちゃん、どうせロクなモン食ってないだろうからって。コレを取りに学校終わってからわざわざ家に取りに帰ったんだぜ?」
21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:36:14.49 ID:M5+CwzLI0
姉を心配しながらも叩く軽口、だが千早はそんな優に対して胸を張って答える。

千早「最近ではそうでもないのよ?春香や響ちゃん、後はやよいちゃんとか料理の出来る人に習ったりしてるんだから」

優「姉ちゃんが料理!?家に居た頃からじゃあ信じらんないぜ……」

姉の言葉に弟は目を丸くする。

自分の知らない姉の姿は想像がつかないのだろう、千早の言葉に優は驚きを隠せないようだった。

春香「本当だよ、千早ちゃんメキメキと料理の腕が上がってるんだよ?」

P「そうそう、この間なんか俺にパスタをご馳走してくれたんだよ」

先日のこと、仕事帰りに千早を家に送って行ったら晩御飯に招待されたプロデューサー。

遅い時間で悪いからと一度は断ったが、日頃お世話になっているお礼だと言われてご馳走になった。

だが、以前ケーブルテレビの料理番組に春香達と一緒に出たことがある千早だが、その時の料理の腕はお粗末にも上手とは言えないものだった。

しかし、出てきたパスタはそれまでの評価を変える。

それほどまでに千早の料理の腕は向上していた
22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:37:20.36 ID:M5+CwzLI0
千早「ぷ、プロデューサー!それは秘密って言ったじゃないですか!」

プロデューサーの暴露に顔を真っ赤にして訴える千早。

まるで熟れたトマトのように赤くなる千早に対して、三人は揃ってある行動を取る。

小鳥「プロデューサーさんを自宅になんて大胆ピヨ!?」

春香「千早ちゃんったらだいたーん♪」

優「姉ちゃんって結構行動的なんだなぁ……」

ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる三人。

その笑みはまるでイタズラを思いついた双海姉妹の様。

三人から言われて更に熟していく千早トマト。

千早「ち、ちが!ホントに違うんだから!そんな!別に他意なんて無いんだから!」

慌てて否定する千早だが、むしろ認めているようなもの。

コレでは気があるのがバレてしまう。

P「そうそう、ただ晩飯をご馳走になっただけだぞ。それになんかある訳無いだろ?」

まぁ、プロデューサーが、ドが付く程の鈍感でなければの話だが……
23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:38:07.43 ID:M5+CwzLI0
千早「ある訳無い……」

プロデューサーの言葉にズーンと効果音が付きそうなほど落ち込む千早。

春香「ち、千早ちゃん?元気出そうよ!」

小鳥「温かい紅茶でも飲みましょう?」

慌ててフォローに入る春香と小鳥。

二人に連れられて千早は給湯室に消えてく。

取り残される男二人。

そんな三人の姿を見ながらプロデューサーは首を傾げる。

P「千早の奴どうしたんだ?」

優「……プロデューサーさん、今彼女とか居る?」

分からないといった表情を浮かべるプロデューサーに、優はなにかを確信した表情で訪ねる。

優の表情には気付かずに、苦笑いを浮かべながらプロデューサーは答える。

P「いや、前は居たことあったけど、今は居ないよ。それに仕事が忙しいから出会いとかも無いし」

優「ふぅん、成程ね……」

その言葉でなにかを納得した優は笑う。
24 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:39:17.97 ID:M5+CwzLI0
P「そんなことを聞いてどうするんだい?」

優「いえ、別に。ただ姉ちゃんは大変そうだなと思っただけですよ」

プロデューサーの問いに笑って誤魔化す優。

その顔は姉の頑張りが無意味だったことを理解し笑っていた。

P「?」

対照的に、プロデューサーは更に首を傾げた。

給湯室のついたての向こうからは女性陣の声は聞こえたが、なにを話しているかまで二人には聞こえない。

優「プロデューサーさん、姉ちゃんと春香さんってもう帰っても良いですか?」

P「ああ、もう予定は無いし良いけど?」

優「そうですか、じゃあ」

そう言うと自分の荷物を持ち給湯室へと歩みを向ける優。

中へ入りなにかを伝えると顔を出す。

優「プロデューサーさん、俺が姉ちゃん達を送って行きますね」

P「ああ、よろしく頼むよ」
25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/27(火) 00:39:45.93 ID:M5+CwzLI0
今日はここまで
26 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/27(火) 00:43:31.22 ID:BQDvgqhDo


優は優男系ぼっちゃんな感じがしてたがこれはこれは
27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県) [sage]:2012/11/27(火) 07:42:10.19 ID:0Gw+KPFno
千早は我那覇さん、高槻さんよびじゃなかった?
28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府) [sage]:2012/11/27(火) 19:32:23.29 ID:UwpLUVOso
弟生きてるから心境も違うという表現か、単純に素で間違えてるかどちらかだろ
29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:26:47.47 ID:Nq/L6bGx0
>>1です

呼び方はわざと変えています

優が生きていることで、千早の性格は多少変わっているということです
30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:27:34.24 ID:Nq/L6bGx0
‐駅‐

春香「千早ちゃんまたね、優君送ってくれてありがとう」

事務所の最寄り駅の入り口に三人は居た。

既に春香は改札機を通った後で、千早達姉弟に向かって笑顔で手を振っていた。

千早「また、明日」

優「いえいえ、どーいたしまして」

そんな春香に姉弟も手を振り返す。

手を振り終えると春香はホームの方へと歩き出す。

その後ろ姿を見送っていた二人だが、姿が見えなくなると優が口を開いた。

優「それじゃあ、俺達も帰ろうぜ」

そう言って駅に設置してある時計を見る。

既に時間は19時を回っていて、周囲は真っ暗。

改札口からは電車を降りた帰宅途中のサラリーマン達で溢れており、帽子や眼鏡で多少は変装しているとはいえアイドルが居るには好ましくない。

千早「そうね、帰ろっか」

弟に促されて家へと歩き出した。
31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:28:21.42 ID:Nq/L6bGx0
‐帰り道‐

千早「優、今日はもう私の方に泊まったら?家の方には私から連絡するから」

自分が住むマンションまで後少しという所で、千早がそんなことを言い出した。

暗い中帰すのは危険だと思う姉心だろう。

うーんと少し考えた後、優も頷く。

優「そうしよっかなぁ、プロデューサーさんにご馳走したパスタも食ってみたいし」

姉の提案に賛成しつつも、笑いながら姉をからかう。

千早「もう! そんなこと言って!」

弟の言葉に薄暗い街灯の下でも分かるくらいに顔を赤くして否定する千早。

優「いや、バレバレだって! それに隠しきれてないし……」

そんな姉に対して苦笑いを浮かべながら言う優。

思わず足を止めて俯く千早だが、弟の言葉を頭の中で数回反芻した後、顔を上げた。

千早「そんなに、バレバレだった……?」

優「まぁ、プロデューサーさん鈍感そうだから気付いてないとは思うけど……」

姉の質問に、先程事務所でした会話を思い出しながら答える。
32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:29:11.74 ID:Nq/L6bGx0
千早「そうだよね……」

弟の答えに頷いて返す千早。

普段も他のアイドルがプロデューサーに対してアプローチをしているが、それが功を奏している所は見たことがない。

いくら鈍感だからと言っても、あまりに靡かないでいると色々と心配になってくる。

もしかしたら、靡かない理由でもあるのか……


優「頑張れば?」


考えることに没頭していた姉に弟は投げかける。

千早「えっ?」

弟の言葉が理解できずにいる千早。

そんな千早に対して明後日の方向を見ながら続ける。

優「だからさ、姉ちゃんが頑張ってプロデューサーさんにアプローチすれば振り向いてもらえるんじゃないの? 姉ちゃん美人だしさ……」

千早「優……」

顔を赤くし照れながらも自分を励ましてくれる弟。

そんな優しい弟に千早は笑う。

千早「ありがとう、優」
33 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:30:38.90 ID:Nq/L6bGx0
気恥ずかしさからか、唐突に頭をガリガリと掻いた優は勢い良く千早の方を向く。

その顔に笑みを浮かべると元気に言った。

優「あー! 腹減った! 姉ちゃん早く帰ろうぜ?」

照れ臭いのを誤魔化す為とはいえ、あまり上手とは言えない演技。

千早「そうね、帰りましょう」

だけど、そんな演技も悪くないなと千早は思った。

優しさが伝わってきて顔が綻ぶのを感じる。

優「なに笑ってんのさ?」

千早が笑っていることに気付いたのだろう。

ジーっと千早を見ながら優が文句を言う。

千早「別に、なんでもないよ」

そう言うと千早は歩き出す。

優「むぅ……」

歩き出した後ろ姿を見て、優も千早に見えないように笑った。
34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:31:24.90 ID:Nq/L6bGx0
‐千早のマンション‐

優「姉ちゃんの部屋久しぶりだなー」

リビングでくつろぎながら優は言う。

以前は、よく訪ねていた優だが、千早が売れ始めてからは訪ねる機会が減っていた。

この日は実に二ヶ月ぶりの訪問だった。

千早「すぐに作るから、ちょっと待っててね」

くつろぐ優に対してエプロンを着けた千早は料理の準備を始める。

そんな姉の姿を物珍しそうに見る優。

実家で一緒に住んでいるときは見ることはなかった。

優「姉ちゃんが料理してる……さっきのはホントだったんだなぁ」

千早「もう、やっぱり信じてなかったのね。それじゃあ美味しい料理作ってビックリさせちゃおうかな」

目を丸くしている弟に向かってニッコリと笑う姉。

優「期待して待ってるよ」

その言葉を背中に受けて千早は調理を始めた。
35 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:32:29.36 ID:Nq/L6bGx0
しばらくすると、優の所へ食欲をそそる匂いがしてきた。

キッチンへと視線を向けるとパスタを茹でながら、フライパンでソースを作っている千早の後ろ姿が見える。

プロデューサーさんもコレを見たのかな、なんて思う優。

男は料理をしている女の姿に惹かれるというのは本当だろう。

そんなことを考えながら、優は重い腰を上げる。

料理をしている姉の背中へと声を掛ける。

優「姉ちゃん、なんか手伝うことある?」

姉一人にやらせるのは、なにか居心地の悪さを感じたのだ。

千早「そうね……お皿並べてくれるかしら?」

背中を向けたまま指示を出す千早。

優「んー、分かった」

そう答えると食器棚から皿を取り出しテーブルに置く。

千早「よし、ソース出来た」

そう言うとパスタを鍋から取り出し、皿に盛り始めた。
36 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/28(水) 00:33:05.24 ID:Nq/L6bGx0
今日はここまで
37 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:51:19.34 ID:iBjLlxB20
リビングに置いてあるミニテーブル。

その上には皿に盛り付けされたパスタが二つ。

それぞれの皿の前には千早と優が座っている。

向かい合って座る二人。

優は自分の目の前にある料理に驚いていた。

トマトソースのパスタは少し唐辛子の香りがして食欲をそそる、更に付け合せとしてサラダも作られている。

家に居る間は全く料理をしていなかった姉がここまで作れるようになるとは思ってもいなかった。

優「いただきます!」

手を合わせて言うと、フォークを取りパスタに伸ばす。

口に入れると唐辛子の辛さが来るが、それが勢いを増加させる。

優「美味い! コレなんてパスタ!?」

千早「アラビアータってパスタよ。イタリア語で“怒り”って意味。辛さで怒ってる顔みたいになるからだって」

弟の食べっぷりを嬉しく思いながら答える千早。
38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:51:45.97 ID:iBjLlxB20
そんな光景を見ながらも、千早はあることを思い出してしまっていた。

如月優は十年以上前、まだ幼い頃に交通事故に遭っている。

一時は生死の境をさまよう程だったが、奇跡的に回復し今では健康そのもの。

だが、千早は未だに夢に見てしまう。


事故の時ことを。


あの時、千早も傍に居た。

車に撥ねられて血を流す弟の姿をその目で見てしまっていた。

血の赤、周りの人達の絶叫。

全てが鮮明に覚えている。

それらを忘れることは出来ず、夢を見た朝は嫌な汗を掻いていることが殆ど。

たまに思ってしまう。

もし、あの時の事故で優が死んでしまっていたら……

今のようにアイドルをしていただろうか?

明るく笑えていただろうか?
39 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:52:16.41 ID:iBjLlxB20
優「姉ちゃん……?」

パスタを食べていた優は、姉が食べていないことに気付き声を掛けた。

暗い表情でなにかを考えている千早。

その表情でなにを考えているか分かってしまった。


自分の事故のこと。


一時は命が危なかったと聞いたことがあるが、もうケガは治っている。

額に傷が残ってはいるが、気にはならない。

以前、まだ千早が実家に住んでいた頃。

夜中、泣きながら優の部屋に来たことがある。

両親が起きないように姉をなだめ、理由を聞くと自分が死ぬ夢を見たと言った。

勝手に自分を[ピーーー]なと優は思ったが、姉としては怖かったのだろう。

その時の表情と、今の表情が似ているのだ。

優「姉ちゃん」

だから、姉を呼ぶ。

自分は生きて、ちゃんと目の前に居ると姉に分からせる為に。
40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:52:45.30 ID:iBjLlxB20
千早「ッ!?」

弟に呼ばれて千早はハッとする。

目の前には心配そうに自分を見つめる弟の姿。

記憶の中にある姿と比較し、無事なことに涙が出そうになる。

慌てて涙をこらえ、平静を装う。

千早「ど、どうしたの?」

少し、声が上ずったがバレてはいないはずだ。

千早の言葉に優は答える。

優「食わないとせっかくの料理が冷めちゃうぜ?」

そう言ってまだ手のつけられていないパスタを指差す。

千早「そ、そうね。なにボーっとしちゃってたんだろ」

弟の言葉を笑って誤魔化す姉。

気を取り直すと、フォークを手に取りパスタを絡めると口に運ぶ。

トマトの酸味と唐辛子の辛さが口の中に広がる。
41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:55:11.61 ID:iBjLlxB20
千早「うん、良く出来てる」

パスタの出来に笑みを浮かべ、頷いて納得する。

料理始めた頃は散々だったが、他のアイドルに教えられて上達することが出来た。

料理を教えてくれたことに感謝しなければならない。

優「ホント美味いよ」

姉が笑ったことに安心した優は再び感想を言う。

千早「ありがと、嬉しい」

弟の素直な感想に千早は笑った。

優「これなら、プロデューサーさんの胃袋を掴んだも同然だよ!」

千早「こら! その話題を蒸し返さないの!」

優のからかいに再び顔を赤くさせる千早

だが、それと同時に本当にプロデューサーが自分の料理を気に入ってくれたら良いなとも思った。
42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/11/29(木) 11:55:43.69 ID:iBjLlxB20
“男は胃袋で捕まえろ”

昔から言われている言葉だ。

相手の好きな味を覚えて、自分の料理が一番だと思ってもらう。

それが、男を落とすのに効果的らしい。

千早「そうね、プロデューサーが好きな味付けを覚えるのも良いかも」

赤くなりながらも言う千早。

そんな姉に弟は笑う。

優「そう、その意気だって! 頑張れ姉ちゃん!」

小さなガッツポーズをして応援する優。

千早「うん、頑張ってみるわ!」

同じようにガッツポーズをする千早。

千早・優「あはは♪」

そんな姿に二人は笑う。

姉弟の楽しい食事はまだまだ続く。
43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/29(木) 11:58:52.59 ID:iBjLlxB20
>>39訂正

優「姉ちゃん……?」

パスタを食べていた優は、姉が食べていないことに気付き声を掛けた。

暗い表情でなにかを考えている千早。

その表情でなにを考えているか分かってしまった。


自分の事故のこと。


一時は命が危なかったと聞いたことがあるが、もうケガは治っている。

額に傷が残ってはいるが、気にはならない。

以前、まだ千早が実家に住んでいた頃。

夜中、泣きながら優の部屋に来たことがある。

両親が起きないように姉をなだめ、理由を聞くと自分が死ぬ夢を見たと言った。

勝手に自分を殺すなと優は思ったが、姉としては怖かったのだろう。

その時の表情と、今の表情が似ているのだ。

優「姉ちゃん」

だから、姉を呼ぶ。

自分は生きて、ちゃんと目の前に居ると姉に分からせる為に。
44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage saga]:2012/11/29(木) 12:02:01.25 ID:iBjLlxB20
昨日、投下出来なかった分です

今日の分はまた夜に投下します
45 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/29(木) 17:22:39.43 ID:108ikYzYo
>>39
[ピー]入ってるな コ、ロ、スかな?saga入れたらどうでしょう
46 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 03:59:06.78 ID:8UukX1K20
>>1です

>>45
ありがとうございます、そうします
47 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 03:59:45.42 ID:8UukX1K20
‐居酒屋‐

千早と優が楽しく食事をしている同時刻。

プロデューサーと小鳥は事務所近くの居酒屋に来ていた。

P・小鳥「かんぱーい!」

ビールの入ったグラスをぶつけると、そのままの勢いでビールを飲む。

P「あー! やっぱり仕事の後のビールは美味い!」

小鳥「そうですね。これの為に一日仕事を頑張っていると言っても過言じゃないです!」

そのままの流れで、プロデューサーはおでんを、小鳥は焼き鳥に手を伸ばす。

小鳥「別に共食いじゃないですから!」

P「誰もそんなこと言いませんよ」

焼き鳥を頬張りながら言う小鳥にプロデューサーはツッコミを入れる。

汁の染みた大根を食べながらビールを口に含むプロデューサー。

小鳥「あずささんも来れたら良かったのに……」

P「仕方ないですよ。明日は竜宮小町早いですから」
48 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 04:00:17.54 ID:8UukX1K20
千早達が事務所を出た後、竜宮小町とプロデューサーの秋月律子が帰ってきた。

その時に飲み仲間である三浦あずさを誘ったが断られてしまった。

ならば仕方ないと、小鳥とプロデューサーの二人で行くことに。

小鳥「あずささんの代わりに私が飲みます!」

P「程々にしてくださいよ? この間みたいに飲み過ぎで二日酔いになったらまた律子に怒られますよ」

ビールを勢い良く飲み始めた小鳥に対して、自分のペースで飲みながら言うプロデューサー。


怒った秋月律子は怖い。


どれくらい怖いかと言うと、年上のプロデューサー達が怒られてなにも言えなくなるほど。

小鳥「ピヨォ……律子さんに怒られるのは嫌です……」

怒っている姿を思い出したのか、プルプル震える小鳥。

イタズラっ子な双海姉妹、律子を呼び捨てにする星井美希に次いで怒られる回数が多いのが小鳥だ。

まぁ、仕事中に妄想する小鳥が悪いのだが……
49 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 04:01:09.26 ID:8UukX1K20
P「仕事中に妄想するのを止めれば怒られる回数も減ると思いますけど?」

小鳥「妄想は私の生きる糧なんですぅ……」

プロデューサーの言葉にうなだれる小鳥。

既に彼女は呼吸をするように妄想をする域にまで達している。

つまり、自分では止められないのだ。

小鳥「嫌いですか?」

俯いたまま彼女が呟いた。

P「なにがです?」

食べようとしていたおでんを戻しながら訪ねる。

小鳥「……」

その言葉に無言で顔を上げる小鳥。

酔い始めたのか、顔は真っ赤だが目はしっかりしている。

その目で見られ、思わず背筋を正すプロデューサー。

その姿を見て彼女は言う。

小鳥「妄想する女は嫌いですか?」
50 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 04:02:10.65 ID:8UukX1K20
真剣な眼差し。

言われた言葉の意味を頭の中で反芻する。

どういう意味で言ったのか。

少し考えた後、彼は答える。

P「……嫌いじゃないですよ」

小鳥「ッ!?」

その答えに小鳥は目を見開いた。

それに気付きながらも喋るのを続ける。

P「良いじゃないですか妄想、好きなこと考えるののなにがいけないんです? まぁ、ちょっとは抑えられたら良いとは思いますけど」

そう言って苦笑いを浮かべるプロデューサー。

言った後に照れが来て、アルコールじゃない顔の熱さを感じる。

反対に小鳥はプロデューサーの言葉を聞いてから、再び俯いてしまった。

P「小鳥さん?」

小鳥「……」

その姿に不安を感じながら声を掛けるも返事は無い。
51 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 04:02:48.71 ID:8UukX1K20
小鳥「……」

P「……」

小鳥が俯いて数分。

無言の彼女を前にして、プロデューサーも無言になっていた。

周囲の話し声もどこか遠くに聞こえるほどに、二人の間には沈黙があった。

もしかしたら、寝ているのだろうか?

そんな疑問すら思い浮かんだ頃。


小鳥「よっしゃあ!!」


いきなり立ち上がって、大きなガッツポーズをした。

P「え……?」

いきなりのことにびっくりして状況が飲み込めないプロデューサー。

そんな彼とは裏腹に、小鳥はグラスに入っていたビールを勢い良く飲み干す。

小鳥「ビールもう一本!!」

瓶を飲み干した彼女はおかわりを求めた。
52 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 04:03:35.91 ID:8UukX1K20
‐一時間後‐

プロデューサーは夜道を一人歩いていた。

あの後、ハイペースで飲み始めた小鳥を止めようとしたが止まらず、遂には酔い潰れてしまった。

代金を払って店を出たまでは良いが、酔い潰れた小鳥のことが問題だった。

酔った女性を自分の部屋には連れて行けない、かと言って彼女の部屋には行けない。

考えた末に出した結論は律子に電話することだった。

簡単に事情を説明すると律子が家で預かると言った。

そして先程、律子に小鳥を引き渡したのだった。

その時に詳しく説明すると。

律子「プロデューサーに言われたことが嬉しかったんじゃないですか?」

そんな風に言われてしまった。

P「嬉しかったか……」

思わず、律子が言っていたことを復唱する。

おそらく、自分が答えたあのことだろう。

そんなことを考えていると体を冷たい風が吹き付ける。

P「……早く帰るとするか」

そう呟き、プロデューサーは家路を急いだのだった。
53 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/11/30(金) 04:04:40.73 ID:8UukX1K20
今日はここまでです
54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(不明なsoftbank) [sage]:2012/11/30(金) 05:48:06.39 ID:3Rna61Gmo
55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) [sage]:2012/12/01(土) 19:02:41.50 ID:AwuQg34g0

千早さんったらまん丸ですやん
56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 03:21:10.22 ID:jw/59nPl0
‐翌日・事務所‐

朝早く出社したプロデューサーは机に向かって新しいライブの企画書を書いていた。

三ヶ月後に行われるファン感謝イベント。

既にだいたいの枠組みは出来ているが、微調整はしなければならない。

それに事務所での仕事だけではなく、外回りもある。

場所を手配したり、イベントスタッフとの打ち合わせ等やることは沢山ある。

そのせいで書類整理が溜まり、昨日のようになってしまう。

今日も打ち合わせの予定があるが、その前に企画書の手直しをしようと早めに出社したのだ。

P「んー、ちょっと休憩するか……」

手直しが一段落した所で、休憩しようとコーヒーを淹れる為に席を立つ。

社長は出張で留守、律子と小鳥はまだ。

ゆっくりコーヒーでも飲むかなんて思った時。


律子「おはようございます!」

小鳥「おはようございまーす……」


気合を入れた声の律子と、元気の無い小鳥が事務所に入ってきた。
57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 03:22:13.21 ID:jw/59nPl0
P「二人とも、おはようございます」

挨拶を返すと自分の分だけじゃなく、二人の分のコーヒーを淹れる。

淹れていると、律子がプロデューサーに近寄る。

律子「プロデューサー、おはようございます」

P「ああ、おはよう。昨日は悪かったな」

律子に挨拶を返しながら、淹れたコーヒーを渡す。

コーヒーを受け取る律子。

香りを嗅ぎ、ホッとした表情で一口飲む。

律子「いえ、気にしないでください。お説教はもうしましたから」

そう言って小鳥の方を見る。

自分の机で腕を枕にして、グロッキー状態な小鳥。

二日酔いとお説教のダブルパンチが効いているのだろう。

ぐったりして、元気が無かった。
58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 03:22:58.44 ID:jw/59nPl0
音無小鳥は頭を抱えていた。

理由は三つ。

一つ目は、飲み過ぎて二日酔いだから。

コレは頭痛という形で物理的に頭を抱えてしまう。

二つ目は、朝起きたら同僚の秋月律子の家に泊まっていたから。

プロデューサーが律子に自分を託したかららしい。

あまり、飲み過ぎるなと怒られてしまった。

そして三つ目、酔っ払ってプロデューサーに変なことを口走ったから。

小鳥「(なんで、あんなこと言っちゃったんだろ……)」

思い返して反省するが、既に後の祭り。

タイムマシンがあるのなら昨日に戻りたいと思える程。

萩原雪歩じゃないが、穴掘って埋まりたい。


小鳥「(あんなこと言ったら、プロデューサーさんに気があるって言ってるようなものじゃない!)」
59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/02(日) 03:23:32.35 ID:jw/59nPl0
音無小鳥はプロデューサーのことが“好き“。

でも、それは自分の中に秘めておかなければならない。


その理由は、アイドルのみんながプロデューサーのことが好きだから。


彼の周りには若くて可愛いアイドルが居る。

その中には強烈なアプローチをする子もいる。

しかし、プロデューサーと小鳥の間は五歳以上も年が離れてしまっている。

そうなると、アイドルの子達みたいなアプローチは出来ない。

アプローチをしてプロデューサーから呆れた表情をされるのが怖い。

プロデューサーに嫌われたくない。

小鳥「(まるで、少女マンガのヒロインみたいね……)」

自分の考えに思わず笑ってしまう。

いい年した女がなにを言ってるのだろうか。

いっそ、妄想に逃げてしまおうか……

妄想の中なら自分の思い通りにすることが出来る。
60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/02(日) 03:24:38.45 ID:jw/59nPl0
P「小鳥さん、コーヒーどうですか?」

ネガティブな考えに至ろうとしていた小鳥。

そんな彼女の意識を現実に戻したのはプロデューサーの声だった。

顔を上げた先にあったのは彼の笑顔。

太陽のような、見た人を優しい気持ちにする笑顔。

思えば、コレだった。

最初に見たのは、プロデューサーが初めて事務所に来た日。

P『よろしくお願いします!』

元気な挨拶と笑顔。

その笑顔に一目惚れしたんだった。

思い出し、顔が真っ赤になるのを感じる。

手で顔を隠しながら答える。

小鳥「ど、どうしたんですか?」

P「コーヒーが淹れたんでどうぞ。音無さんが淹れたのには負けますけど……」
61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/02(日) 03:25:16.45 ID:jw/59nPl0
受け取ったコーヒーを飲む。

砂糖とミルクが適量入った好みの味。

自分の好みを覚えていたことに嬉しさを感じる。

小鳥「美味しいですよ、プロデューサーさんの淹れたコーヒー」

自分の素直な感想を伝える。

その言葉を聞いたプロデューサーはホッとした表情を浮かべる。

P「良かった。音無さんにそう言ってもらえると嬉しいです」

そんなプロデューサーを見ながら口を開く。

小鳥「プロデューサーさん、昨日はすみません。お金半分払います」

本当に聞きたいことは隠す。

P「大丈夫です、それくらい奢らせてください」

プロデューサーの答えを聞くのが怖いから。

小鳥「じゃあ、今度食事奢りますよ。それなら良いですよね?」

ああ、いつからだろう。

P「分かりました、また今度行きましょう」

こんなに憶病になったのは……
62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/02(日) 03:25:58.12 ID:jw/59nPl0
今日はここまでです

昨日は投下出来なくてすみませんでした
63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 06:59:46.59 ID:E5EmKt/lo
やっぱ小鳥さんは大人やで
64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 17:10:47.93 ID:8WV/v1d0o
アイドルにコンプ有りの小鳥さん可愛い
65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/02(日) 19:00:05.78 ID:Mt0q4AG10

ピヨちゃんより真美って娘の方が可愛いと思いま→す!
66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:23:17.45 ID:ULUu+VgN0
再び自己嫌悪に陥りそうになった小鳥の耳に入ったのは、事務所の扉が開く音と一際元気な挨拶。

亜美「おっはよ→!!」

伊織「おはよう、律子は居る?」

事務所に入ってきたのは二人のアイドル。

トリオユニットである竜宮小町で活躍中双海亜美と水瀬伊織。

しかし、三人目のアイドル、三浦あずさが居ない。

小鳥「亜美ちゃん、伊織ちゃん、おはよう」

P「二人ともおはよう、あずささんは一緒じゃないのか?」

挨拶を返しながらあずさのことを聞く。

三浦あずさは極度の方向音痴。

テレビ局から事務所へ帰ろうとして、他の県まで行ってしまったこともある。

迷子になったと電話を受けて、迎えに行ったことが何回もある。

まさか、今回もなのかと身構えるプロデューサー。
67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:23:58.26 ID:ULUu+VgN0
律子「プロデューサー、あずささんなら大丈夫ですよ」

身構えていたプロデューサーに声を掛ける律子。

P「えっ?」

どういう意味か分からずに首を傾げるプロデューサー。

そんな彼に対して律子は笑みを浮かべる。

律子「あずささんには自宅で待っててもらってるんです」

迷子になるならば、外出しなければいい。

そう考えた律子はあずさに家を出ないよう予め言っておいたのだ。

P「なるほど、そういうことか……」

律子の説明に納得するプロデューサー。

伊織「そういうことだから、律子早くあずさを迎えに行くわよ!」

亜美「りっちゃ→ん、早くしよ→」

律子「はいはい、分かってるから急かさないの」
68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:24:47.49 ID:ULUu+VgN0
律子「そういう訳で、プロデューサー、小鳥さん。行ってきますね」

必要な物をカバンに詰めると、二人の方を向いて言う。

小鳥「はい、分かりました」

P「伊織、亜美。しっかりな」

律子に返事をしながら、伊織たちにエールを送るプロデューサーと小鳥。

伊織「私が仕事で手を抜くわけないでしょ? スーパーアイドルの伊織ちゃんはいつも完璧よ!」

自信満々といった風に胸を張る伊織。

見えない所で努力している彼女だからこそ、言える言葉だ。

亜美「ダイジョ→ブ! いつもみたいに楽しくやるから!」

笑顔いっぱいの表情でVサインをする亜美。

亜美はどんな仕事でも楽しんでやっている。

だから、いつも笑顔だ。

その笑顔はテレビを通してみんなを元気にさせる。
69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:25:22.60 ID:ULUu+VgN0
律子「ほら、あずささんが待ってるから早く行くわよ」

そんな二人を促し事務所から出ようとする律子。

亜美「は→い」

伊織「分かってるわよ」

律子の言葉に促され、玄関へと向かう二人。

律子「じゃあ、行ってきます」

伊織「行ってきます」

亜美「行ってくるね→」

先に出る律子、そのあとに続く伊織、手を振りながら出ていく亜美。

あっという間に来て、あっという間に出かけたのだった。

P「あっという間に行っちゃいましたね……」

小鳥「そうですね、竜宮小町は忙しいですから」

そう言うと目を合わせて、笑う二人だった。
70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:25:55.09 ID:ULUu+VgN0
‐数時間後‐

律子達三人が事務所を出て行ってから、来るアイドルは一人もいない。

小鳥「…………」

そんな事務所で小鳥は一人。

プロデューサーは打ち合わせに行ったから居ない。

普段なら妄想をしたりしてるのだが、今日はそんな気になれない。

だから、仕事をする。

そうしていれば、色々浮かんでくる嫌なことも消える。

小鳥「…………」

黙々と仕事をすれば消える。

いや、消せる。


「小鳥嬢」


不意に声を掛けられた。
71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:26:30.19 ID:ULUu+VgN0
小鳥「ッ!?」

驚き慌てて顔を上げる。

目の前に居たのは765プロ所属のアイドル。

貴音「大丈夫ですか、小鳥嬢? なにやら暗い顔をしていますが……」

銀色の王女、四条貴音が心配そうな表情で小鳥を見ていた。

小鳥「た、貴音ちゃん? いつ来たの?」

突然、貴音が現れたことに驚く小鳥。

貴音「今しがた来たところです。挨拶をしたのですが、どうやら聞こえてなかったようですね……」

小鳥の問いに落ち着いた様子で答える貴音。

小鳥「そ、そう。集中してたから聞こえなかったみたい……」

貴音の答えに内心ショックを受けながらも、表情は平静を保とうとする。

アイドルが来たら笑顔で迎え入れようって、自分で決めていたはずなのに、それすらも守れなくなっている。

それも、自分のことが原因でなんて……
72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/03(月) 03:27:05.78 ID:ULUu+VgN0
今日はここまでです
73 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/03(月) 07:44:25.54 ID:F869uABk0

>>72で投下締めるとは・・・やるな

74 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:44:39.97 ID:y2kZMLQV0
またしても自己嫌悪に陥りかけた小鳥だが、あることに気付く。

小鳥「……貴音ちゃん、どうして事務所に来てるの? 今日はオフのはずでしょ?」

そう、今日の貴音はオフ。

本来なら事務所に来なくてもいいはず。

それがどうして来ているのだろうか。

そんな小鳥の疑問に貴音は不思議そうに答える。

貴音「それが、私にも謎なのです。今日は一日らぁめんを食べ歩く予定だったのですが、不意に何故か小鳥嬢に会わなければいけない気がして……」

その言葉に小鳥は驚く。

貴音は以前からどこか浮世離れした感じだった。

そんな彼女の第六感が、小鳥が悩んでいるのを察知したのだろうか。

そんな突飛な考えなんて普通ならありえないが、貴音ならありえるかもしれない。

小鳥「だったら、お茶淹れるわね」

そう言うと立ち上がり、給湯室に向かう小鳥。

そんな彼女の背中を見ながら貴音は呟く。

貴音「杞憂かと思いましたが、どうやらそうでもないようですね……」
75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:45:24.91 ID:y2kZMLQV0
小鳥と貴音はテーブルを挟み、ソファーに向かい合って座っていた。

テーブルの上にはせんべいの入った容器と、お茶が入った湯呑みが二人分。

貴音「では、いただきます」

そう言うと湯呑みを持ち、お茶を飲む貴音。

喉がゴクリと鳴り、ホッと一息つく。

貴音「誠に美味です。このお茶は萩原雪歩が持ってきたものですか?」

湯呑みをテーブルに置くと小鳥に訪ねる。

765プロ所属アイドル、萩原雪歩の趣味は日本茶。

だから、事務所にある日本茶は雪歩が持ってきたこだわりの物が多い。

そのこだわりっぷりは、わざわざ自分で専門店まで買いに行くほど。

小鳥「ええ、この間持ってきてくれたの。このおせんべいもお茶に合うからって雪歩ちゃんが」

貴音「なるほど、ではいただきましょう」

小鳥の言葉にせんべいに手を伸ばす貴音。
76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:46:02.40 ID:y2kZMLQV0
せんべいを一枚掴み、口に運ぶ。

一口齧るとパリッと小気味良い音がする。

目を閉じたままで歯応えと味を感じる。

お茶を飲み、一息つくと目を開く。

貴音「なるほど、コレは確かにお茶に合いますね」

そう言って二枚目に手を伸ばす。

そんな貴音を見ながら、小鳥もお茶を飲む。

日本茶特有の心地良い苦みを感じる。

その苦さに落ち着く。

貴音「ところで、小鳥嬢」

小鳥が落ち着いたのを見計らってか、貴音が話しかける。

小鳥「なに?」

その言葉に務めて平静に返す。

自分より十歳も年下の少女に悩みを悟られないように……
77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:46:57.43 ID:y2kZMLQV0
真剣な眼差しで小鳥を見つめ、貴音は言う。


貴音「なにか、悩んではいませんか?」


とてもストレートな言葉。

小鳥「えっ……?」

思わず聞き返してしまう。

否定の言葉が出ない。

遠回しに言われたなら、いくらでも言い訳を言えた。

でも、意味は無いだろう。

小鳥を見つめる貴音の目。

心の奥まで見透かされそうな目で見られてしまっている

もう、嘘は吐けない。

言われた時点で否定しないということは認めてしまったようなもの。

小鳥「さすが、貴音ちゃんね……」

諦めて、小鳥は貴音に話すことにした。
78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:47:32.47 ID:y2kZMLQV0
小鳥「貴音ちゃんは、自分の中に知らない自分が居たらどうする?」

自分の中の知らない自分。

小鳥はそういう表現を使った。

恋に臆病な自分。

アイドルに嫉妬する自分。

嫌なことから逃げようとする自分。

そんな自分は知りたくなかった。

貴音「自分の知らない自分……」

小鳥の言葉に考える貴音。

小鳥「そう、貴音ちゃんにもそういうのあるでしょ?」

人間誰にでもある部分。

心の闇と言われるソレ。

気付きたくないのに、気付いてしまった。
79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:48:02.73 ID:y2kZMLQV0
貴音「……それは心の闇ということでしょうか?」

考えていた貴音が口を開く。

小鳥「ええ、そういう意味よ」

貴音の言葉に頷いて答える。

小鳥の言葉に再び考え出す貴音。

しばらく考えていたが、答えが出たのか顔を上げる。

貴音「これは私の考えということで聞いていただきたいのですが」

そう前置きを言って本題に入ろうとする。

その言葉を聞いて小鳥も居住まいを正す。

小鳥のその姿を見て口を開く。


貴音「私ならその闇を受け入れます」
80 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/04(火) 21:50:03.13 ID:y2kZMLQV0
昨日、投下出来なかった分です

今日の分も投下したいですが、もしかしたら出来ないかもしれないです
81 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/05(水) 12:35:47.03 ID:KaVpMpPO0

とりあえず期待して待ってる
82 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:25:30.92 ID:5TaFD4Cv0
『受け入れる』

小鳥の問いに貴音はそう答えた。

意味が分からない。

いや、違う。

言っている言葉は分かるが、何故そう言えるのか分からなかった。

心の闇なんて受け入れたくない。

そんなものは知らないままでいたい。

なのに、なんで。

小鳥「どうして……?」

自分は消そうとしたのに、受け入れると言った。

その理由を知りたい。

だから、小鳥は尋ねる。

小鳥「どうして、受け入れるなんて言えるの……?」
83 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:26:35.96 ID:5TaFD4Cv0
小鳥「心の闇なのよ? そんな汚い部分なんて本来なら見たくもないはずよ? それなのにどうして……?」

動揺しながら問う小鳥。

理解の出来ないことに頭がパニックになってしまう。

目線は貴音に向いている。

だが、その目は貴音を捉えながらも見ていない。

そんな姿を見て、席を立ち小鳥の隣に座る貴音。


貴音「小鳥嬢」


優しく声を掛ける。

所在無い動きをしていた小鳥の手を両手で、慈しむように包み込む。

包まれた手の温かさに顔を上げる小鳥。

小鳥「たがねぢゃん……」

ボロボロと泣いている小鳥。

両目から涙を流し、顔は既にぐちゃぐちゃになっている。
84 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:27:07.19 ID:5TaFD4Cv0
泣き顔を見ると、貴音は小鳥を抱きしめる。

力強く両手で体を包み込む。

小鳥「たがねぢゃん……?」

泣きながら問いかける小鳥。

何故、自分が抱きしめられているのか。

その理由が分からないが、自分を抱きしめる少女の温かさで更に涙がこみ上げる。

貴音「小鳥嬢、自分を受け入れるのです。否定してはいけません」

抱きしめながら優しく、耳元で語りかける。

貴音「陰陽という中国の古い思想があります」

小鳥「いんよう?」

聞きなれない言葉。

その言葉の意味なんて小鳥は知らない。

貴音「ええ、万物には陰と陽。つまり光と闇があるという意味です。どちらが欠けても完全ではないのです」
85 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:28:04.99 ID:5TaFD4Cv0
そう言って抱きしめる力を強くする。

貴音「小鳥嬢が普段私達に見せるのが陽の部分だとするならば、暗い闇の自分が陰。どちらも小鳥嬢にとっては大事なのです」

更に貴音は続ける。

貴音「陰の部分があるのは小鳥嬢だけではありません。私も、ぷろでゅーさーも、響も、他のみんなも、いえこの世界に居る全員に陰の部分があるのです」

そこまで言うと貴音は小鳥を離す。

そして、真正面から小鳥の目を見て言う。

貴音「この世に陽の部分しか持っていない人間などおりません。だから、陰の部分を持っているからといって自分自身を嫌いにならないで下さい」

力強い言葉。

その言葉を聞くと涙が止まらなくなる。

小鳥「でも、わだじみんなよりもどじうえなんだよ? りづこざんにはめいわぐがげるじ、たがねぢゃんのまえでみっどもなくなぐじ……」

その言葉を聞いて貴音は優しく微笑む。

貴音「泣くことのなにがいけないのですか? 泣くということは自分の中にあるものを吐き出しているのですよ?」
86 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:29:47.74 ID:5TaFD4Cv0
貴音の言う通りだった。

泣いていると心がスッキリとするような感じがする。

まるで、心の奥底に溜まっていた淀みを涙が押し出してくれているようだ。

小鳥「泣いでもいいのがな……?」

泣きながら貴音に聞く。

その答えは言う前から分かる。

貴音「ええ、思いっきり泣きなさい。涙が心を洗い流してくれるまで私が傍にいます」

予想通りの答え。

その言葉が返って来た嬉しさで涙が止まらない。

小鳥「たがねぢゃ〜ん」

抱きしめる。

でも、今度は貴音ではなく小鳥からだった……
87 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:30:47.48 ID:5TaFD4Cv0
‐十数分後‐

小鳥「……ありがとう、貴音ちゃん」

貴音「礼は不要です小鳥嬢」

既に泣き止んでいる小鳥。

ソファーに腰掛け、その隣には貴音がいる。

泣き腫らした目は赤いが、口元には笑顔が浮かんでいる。

小鳥は受け入れることを決めた。

それを優しく見守ってくれていた貴音。

心の中ではずっと礼を言い続けている。

貴音「やはり小鳥嬢には笑顔が一番似合っています」

小鳥の笑みを見て貴音も笑う。

ソファーから腰を上げると貴音の方を見る。

小鳥「泣いたらお腹が空いちゃった。お昼食べに行きましょ? 私が奢るわ」

貴音「そうですね、ではらぁめんにしましょう!」

小鳥の誘いに、立ち上がり強く言う貴音。

二人は連れ立って事務所から出て行った。


貴音の食べた量に小鳥が再び涙目になるのだが、それはまた別の話。
88 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/06(木) 04:31:20.63 ID:5TaFD4Cv0
今日はここまでです
89 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/06(木) 07:39:43.52 ID:jbRpBnDP0
90 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:23:53.01 ID:a7ptpMya0
‐喫茶店‐

小鳥が貴音の食べるラーメンの量に悲鳴を上げている頃。

プロデューサーは喫茶店に来ていた。

と言っても、彼一人ではない。

千早「すいませんプロデューサー、ご馳走になっちゃって」

プロデューサーの反対の席に座ってお礼を言うのは千早。

ライブスタッフとの打ち合わせが予定よりも早く終わったので、千早が新曲のレコーディングをしているスタジオに顔を出したプロデューサー。

そこでも早く終わった為に、少し遅めの昼食と思って千早を喫茶店に連れて来たのだ。

P「気にしなくて良いさ、レコーディングが上手くいったご褒美だよ」

千早の言葉に笑って答えるプロデューサー。

今回のレコーディングはお世辞抜きで良かった。

リハーサルと本番の二回でOKを出した千早を、スタッフが褒めていたのを覚えている。

千早「じゃあ、ありがたくご馳走になりますね」
91 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:24:30.02 ID:a7ptpMya0
P「なんか、千早とこうしてると面談のことを思い出すな」

注文した料理を待っている時、プロデューサーがそんなことを言い出した。

千早「面談って、プロデューサーが事務所に入った時にみんなとやったアレですか?」

P「そう、その時のこと。アレはまだみんなが売れる前だったなぁ」

まだ、数ヶ月前のこと。

765プロに入ったプロデューサーは、アイドル一人ずつとマンツーマンで面談をした。

面談を行った理由について、プロデューサーはこう言う。

『自分がこれから担当するアイドルがどんな人か知りたいから』

その時のプロデューサーはアイドルについて、書類上の知識しかなかった。

それだけでは、表面上のことしか分からない。

どういう個性を持っていて、どういう風に売っていけばいいか。

それを判断する為の面談だったが、やった意味はあった。

そこでアイドル全員と話したおかげで、プロデュースの仕方が決まりアイドルは方向性が決まった。
92 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:25:00.06 ID:a7ptpMya0
P「あの時は色々と話したなぁ、アイドルになった理由とかどうやって事務所に応募したとか」

懐かしむように言うプロデューサー。

まるで、面談をしてから何年も経っているみたいに。

千早「そうですね、なんか懐かしいです」

そんなプロデューサーを見て千早も笑う。

P「千早が面談のときに言ったアイドルになった理由覚えてるか?」

なにかを思い出したのか笑みを浮かべたまま千早に言う。

千早「面談のときですか?」

プロデューサーの言葉を聞いて、面談のときの記憶を手繰り寄せる。

すると、思い付くものがあった。

千早「“自分の歌を色んな人に聞いてもらいたいから”でしたよね?」

P「ああ、そうだ」
93 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:25:31.61 ID:a7ptpMya0
P「その言葉を聞いた時に俺はこう思ったよ“ああ、この子は本当に歌が好きなんだな”って」

そう言って思い出すのは、先程のレコーディングのこと。

千早に気付かれないように、ブースを見たプロデューサー。

そんな彼が見たのは、とても楽しそうに歌う千早の姿。

彼女の歌う姿は、見ている人に元気を与える。

千早「確かに、昔から歌うのは好きでしたよ。優がお客さん役、私が歌手役のコンサートごっことかやってましたから」

昔のことを思い出しながら千早は語る。

小さい頃は、優にせがまれてよく歌っていたのだ。

P「今や、みんなが聞き惚れる歌姫を独占してたなんて優君が羨ましいな」

千早「そんな、歌姫だなんて恥ずかしいです……」

プロデューサーの言葉に頬を赤く染める千早。

歌姫と言われるのに慣れてないのだろう。

でも、満更ではないようで、歌姫と言われて嬉しそうにもしている。
94 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:25:59.81 ID:a7ptpMya0
千早「アイドルになった切っ掛けは優なんですよ」

P「へぇ、そうだったのか。それは知らなかったな」

千早の言葉に関心を示すプロデューサー。

765プロに居るアイドルは、社長がスカウトした子以外は自薦が大半だ。

それなのに千早は珍しく他薦。

千早「ある日、優が読んでいる雑誌を私の所に持ってきたんです。そこには765プロのオーディションの記事が載ってまして、受けたらどうだって勧めて来たんです」

あの日、弟が言った言葉が千早の運命を変えた。


『姉ちゃん受けてみたら? 昔から歌うの好きじゃん』


そんな何気無い言葉に背中を押されたのだ。

両親に相談したら母親は賛成したが、父親が難色を示した。

あまり芸能界に良いイメージが無かったらしい。

なんとか母親と優と自分の三人で説得し、父親を納得させたのだ。
95 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:27:44.88 ID:a7ptpMya0
千早「アイドルになるって時もですけど、私が一人暮らしするって決めた時なんか、物凄い反対したんですよ?」

P「でも、お父さんは千早のことを応援してるんだろう? 千早が出たテレビ番組は全部録画してるらしいじゃないか」

千早の愚痴っぽい言葉に、プロデューサーは笑いながらフォローする。

プロデューサーの言ったことに千早は『優が言ったんですね?』と聞く。

P「昨日、音無さんと優君が話してる内容を小耳に挟んでね」

その言葉に千早は小さくため息を吐く。

自分の親がやっていることを、知られて恥ずかしいのだろう。

その証拠にため息は吐いても、顔は嫌がっていない。

千早「私が出たテレビを見るとすぐに電話してくるんですよ? あそこが良かっただの、アレは良くないぞとか言ってくるんです」

P「面白いお父さんだな、ウチの親父とは全然違うな」

千早の言葉にプロデューサーは笑う。

自分の父親とは、実家に帰省した時しか話さないからだ。

母親の方は元気かどうか聞いてくる電話をたまに寄越すが、父親から来たことは一度も無い。

不器用な人だと分かっているので、あまり気にはしない。

だけど、千早の話を聞くと若干羨ましくも思える。
96 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/08(土) 03:28:03.38 ID:a7ptpMya0
ここまでです
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/08(土) 07:25:32.00 ID:NaIiejCD0
98 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:09:20.71 ID:wzSnQBn/0
店員「お待たせしました〜ハンバーグセットとナポリタンです」

話していると、料理を持った店員が二人のテーブルに来る。

プロデューサーの前にはハンバーグセット。

千早の前にはナポリタンが置かれる。

店員「ごゆっくりどうぞ〜」

間延びした声で言うとテーブルから離れる店員。

P「おー、メニューの写真よりも美味そうだな」

目の前に置かれた料理にテンションが若干上がるプロデューサー。

そんな彼を見て、千早は自分の家でプロデューサーに夕飯をご馳走したときのことを思い出す。

その時も今と同じように嬉しそうだった。

千早「プロデューサーって食事の時に元気になりますね」

P「腹が減ってるからかな、料理を前にすると楽しくなるんだ」

千早の言葉に笑って答えるプロデューサー。

その姿が食事をする時の優と重なる。
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:10:00.90 ID:wzSnQBn/0
千早「ふふっ」

思わず笑ってしまう千早。

そんな姿を見てプロデューサーは首を傾げる。

P「どうしたんだ?」

不思議そうな表情のプロデューサー。

そんな彼を見て笑う千早。

千早「いえ、プロデューサーと優が似てるなと思って」

P「俺と優君が?」

千早の言葉に更に分からないと言った顔をする。

そんな彼に笑みを浮かべながら説明する。

千早「ええ、料理を食べる前の表情や仕草が似てるんですよ」

P「そういうことか」

千早の言葉に納得したように頷くプロデューサー。
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:10:27.93 ID:wzSnQBn/0
P・千早「いただきます」

手を合わせて言うと料理を食べ始める。

フォークとナイフを使ってハンバーグを食べるプロデューサー。

P「うん、美味い」

ハンバーグを食べて嬉しそうな表情をする。

そんなプロデューサーを見る千早。

以前、自分の家で食事をした時。

あの時も出したパスタを美味しそうに食べてくれた。

自分が作った料理を美味しいと言ってくれると嬉しい。

そういう人と結婚出来たら幸せだろう。

プロデューサーと結婚出来たら……

P「んっ? どうかしたのか?」

千早が見ているのに気付いたのか、プロデューサーが顔を上げる。
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:11:01.97 ID:wzSnQBn/0
千早「いえ、あの……」

聞かれて返答に困る千早。

それもそうだろう。

プロデューサーと結婚出来たら。

そんなことを考えていたなんて言えない。

視線を彷徨わせていると、プロデューサーが食べているハンバーグが目につく。

千早「そ、そのハンバーグが美味しそうだなと思って!」

とっさに思い付いたことを口走る。

流石に無理があるかと思ったが。

P「なんだ、それなら食べてみるか?」

鈍感なプロデューサーはそれで納得してしまった。

千早の方へ差し出されるハンバーグ。

千早「……いただきます」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:11:57.12 ID:wzSnQBn/0
ハンバーグを食べる為にフォークを取ろうとするが、優に言われたことを思い出す。

『姉ちゃんが頑張ってプロデューサーさんにアプローチすれば振り向いてもらえるんじゃないの?』

自分が頑張れば……

フォークに伸ばした手を止める。

千早「ぷ、プロデューサーが食べさせて下さい」

P「えっ?」

千早の言葉にポカンとした表情を浮かべるプロデューサー。

それに返事をせず、ある行動を取る。

千早「あ、あーん」

目をつむり、顔を赤くしながら口を開ける千早。

いくら鈍感なプロデューサーでもなにをして欲しいかは分かる。

食べさせて欲しいと千早は無言で訴えている。
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:12:45.86 ID:wzSnQBn/0
目をつむり、プロデューサーを待つ千早。

千早「(コレは思ったより恥ずかしい……)」

流石に大胆過ぎた。

自分の取った行動で、更に顔を赤くする。

P「……分かった」

なにかを覚悟したのか、決意したように言うプロデューサー。

P「ほら、あーん」

プロデューサーの声。

それに合わせて口をもう少し開ける。

次の瞬間、口の中にハンバーグが入る。

咥えるとフォークが抜かれた。

噛むとデミグラスソースと肉汁を感じる。

目を開けてプロデューサーを見る。

千早「ふふっ、美味しいです」
104 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2012/12/09(日) 23:13:12.19 ID:wzSnQBn/0
今回はここまでです
105 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 00:58:18.28 ID:iiSbj3IMo
乙です
なんか読んでてニヤニヤしちまった
106 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 07:58:44.73 ID:tfC3OMDi0

>>106こいつ気持ち悪い顔になってる

107 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/10(月) 08:47:38.94 ID:AM+SHdWDO
>>106
お前…
108 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 07:14:38.92 ID:CHNtfK/L0
安価先自分じゃねーか
死にたい
109 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/12(水) 09:32:17.69 ID:cW8JM11IO
気持ち悪い顔した>>106がいると聞いて
110 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/26(水) 02:50:23.48 ID:byomyVPDO
まだ?
111 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2012/12/30(日) 10:27:22.36 ID:veZSBH7V0
消えたか?
112 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/01/07(月) 01:02:39.29 ID:qUYVJ0JS0
>>1です

更新が中々出来なくてすみません

バイトが忙しくて時間があまり取れません

近い内には必ず更新しますので

それまで待ってて頂きたいです
113 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/07(月) 03:12:09.94 ID:gQlxZd/p0
ずっと待ってる
114 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/11(金) 01:00:38.37 ID:sFDBEgzDO
私ま〜つ〜わ
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/13(日) 11:18:06.97 ID:vSBiaARYo
いつまでもまーつーわ
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/15(火) 21:08:22.80 ID:Ki+hD4h3o
たとえあなたーがふーりむいてくれなくてえぇも
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/16(水) 23:30:47.19 ID:SRZ/pK/Jo
はい
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/01/25(金) 21:17:38.59 ID:APOzsEWDO
以上あみんでした
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/02/09(土) 13:42:47.47 ID:cfjpleDDO
(^ω^)
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:49:45.34 ID:ftZWAbT70
お久しぶりです>>1です

更新すると言ってから時間が空いてしまいましたが、投下させていただきます。
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:50:23.10 ID:ftZWAbT70
P「あー……」

恥ずかしさで真っ赤に染まった顔を片手で覆いながら、プロデューサーは息を吐く。

いい大人がアーンをした。

それも未成年の少女、しかも自分の担当アイドルに。

幸いなことに、喫茶店には二人以外に客は居ない。

トップアイドルと言っても過言ではない程になった千早。

そんな彼女がアーンをされている場面。

パパラッチに見られでもしたら絶好のスキャンダルだろう。

気付かれないように、指の間から千早を見る。

プロデューサーと同じく顔を赤くしながらも、嬉しそうな表情で笑う彼女。

それを見ると、恥ずかしくてもいいかと思う。

だが、彼の恥ずかしい思いはまだ終わらない。
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:51:06.34 ID:ftZWAbT70
千早「それじゃぁ、プロデューサーも、あーん」

千早の声。

差し出されたフォーク。

その先にはナポリタンが巻かれている。

この三つから弾き出される答え。

P「(千早が俺にアーンをしている!?)」

予想外の展開にプロデューサーは驚く。

先程千早がアーンを求めたのも驚いたが、コレは更に驚く。

普段はこんなことをしない千早がしてくる。

P「お、俺もか?」

アイドルがアーンされるのと、いい年した男がされるのは雲泥の差がある。

誰だって前者の方が見たいはずだ。
123 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:51:49.80 ID:ftZWAbT70
千早「はい、プロデューサーもです」

プロデューサーの問いに笑顔で応える千早。

柔らかい幸せそうな笑顔。

そんな笑顔で言われてしまっては断ることも出来ない。

P「(これは、腹を括るしかないな……)」

頭の中で逡巡した後、答えを出す。

P「あ、あーん……」

千早「はい、アーン」

大きく口を開けるプロデューサーと、語尾に音符が付きそうな程に嬉しそうに差し出す千早。

差し出されたナポリタンを口に含む。

千早「美味しいですか?」

P「ああ、美味いよ」

そんなこんなで恥ずかしい思いをしながらも、楽しい食事は終わったのだった。
124 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:52:21.07 ID:ftZWAbT70
‐夜・如月家‐

優「へぇ、そんなことがあったんだ」

勉強が一段落した優は、自分の部屋にあるベッドの上で電話をしていた。

その相手とは‐‐

千早『ええ、プロデューサーったら真っ赤になっちゃったのよ』

‐‐他でもない姉の千早だった。

以前から千早とは、彼女が仕事で失敗して落ち込んだ時に電話がかかって来たりしていた。

しかし、最近では失敗もしなくなり電話することも減っていたのだが。

千早『優がアドバイスしてくれたように頑張ったらプロデューサーと近付けた気がするわ』

プロデューサーとどう過ごしたかという結果報告の電話だった。

優「まぁ、姉ちゃんにしては頑張った方だよね」

姉の言葉に少しからかうように答えた。
125 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:52:57.14 ID:ftZWAbT70
千早は恋愛に関しては非常に奥手だと優は感じている。

今日び、好きな異性と一緒に食事に行くなんてのは中学生がやるようなことだ。

優(まぁ、今まで好きな人も居なかったんだから当然か……)

アイドルをやるまで千早に浮いた話があるのを優は聞いたことが無かった。

いや、アイドルを始めてからも無かっただろう。

それは千早がモテないからとかでは無い。

中学の頃は男子から告白されていることもあったし、姉を紹介してくれと言われたことは一度や二度の話じゃない。

だが、告白されて千早がOKを出したことは一度も無い。

もしかして異性に興味が無いんじゃないかと心配になって一度姉に訪ねたことすらある程だ。

その時は『なに馬鹿なこと言ってるの』というひとことで済ませられてしまったが。

そんな姉が男の話をするようになったのはいつからだろうか。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:53:27.30 ID:ftZWAbT70
最初は確か数ヶ月前、事務所に新しいプロデューサーが入ったと聞いた。

新人で右も左も分からないプロデューサーが、少し頼りないとぼやいてた気がする。

それからしばらくして、歌の仕事や曲を出すという話を聞いた。

やっと、色んな人に自分の歌が聞いてもらえる。

そう嬉しそうに語った姉の表情を今でも覚えている。

どうやらその仕事を取って来たのがプロデューサーらしく、頼りになると言っていた。

最初に言ったことと違うじゃんと笑って皮肉ってやった。

それから、千早がテレビに出る回数はどんどん増えて行った。

姉が出ている番組は父親が全て録画しているから、自分も欠かさず見ている。

電話の内容が変わったのはその辺りからだった。

仕事の失敗を聞いて励ますのが、プロデューサーのことを話すことが多くなった。

優は気付いた。

ああ、姉はプロデューサーのことが好きなんだと。
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/02/19(火) 01:54:35.63 ID:ftZWAbT70
今回はここまでです

また、近い内に投下します
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/02/19(火) 02:27:43.79 ID:pb6yz4D50
縺翫▽
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/13(水) 00:56:14.13 ID:rznl+IuDO
近いうち?
130 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/03/28(木) 00:04:46.85 ID:c0UVUFNDO
1月たったら近いうちではないな
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