らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜

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243 :以下、新鯖からお送りいたします [saga sage]:2013/09/16(月) 12:04:11.36 ID:ZO5gFmZ20
ここまでまとめた

>>242
ジャンプの「めだかボックス」かな?
ジャンプは毎週みているけどこの漫画はノーマークだったので詳細はわかりません。
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga]:2013/09/28(土) 06:53:51.86 ID:S5HSX8sD0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します
7レス位使用します。
245 :こなたの旅O 1/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 06:55:35.75 ID:S5HSX8sD0
O

 かがみの会合は終わった。今はかがみ、ひより、ゆたか、つかさ、そして私だけが残った。つかさは自分の店だから最後まで残るのは当然だ。
かがみは帰り支度をしている。つかさは後片付け、ひよりとゆたかは二人で何かを話している。私は渡されたファイルをボーと見ていた。
つかさ「えっと、お姉ちゃんに用意した軽食がまだ残っているんだけど、みんな食べていかない?」
かがみ「私はさっき食べたからいいわ」
ひより「あ、直ぐに帰りますので、お構いなく……」
ゆたか「私も直ぐに帰るので……」
皆帰るのか、私は帰っても何かする事はないしな……残った料理は捨てられちゃうのは勿体無い。
こなた「私が食べるよ……」
つかさ「それじゃ暖め直すから少しまってね……」
つかさは厨房の方に向かった。それと同時にゆたかがかがみの近くに来た。
ゆたか「あ、あの、いのりさん達と言い合いになりましたけど……」
かがみは帰り支度を止めた。
かがみ「あ、ああ、あれね、別に気にしなくていいわよ、ただの姉妹喧嘩、あんなのは日常でよくやってるから、それともちょっとムキになりすぎたかしら?」
ゆたか「いのりさん達が途中で退出したのはすすむさん達を危険に曝したくないから……」
かがみ「それは分かってるつもりよ、かえでさんもそう言っていたでしょ……でも、教えればどうなるかは予測できた……」
ゆたか「神崎さんが協力するなんて言い出したら、きっと皆も協力するね」
かがみ「そうなるかもね……」
ゆたか「私は……」
かがみ「どうするかは自由よ、ゆたか、そしてひより、もう帰ったけどみなみは私達の関係者とまではいかない、ただ事情を知っているだけ、呼ぶかどうか最後まで悩んだくらい」
ゆたか「うんん、もし呼んでくれなかったから……一生かがみさんを恨んでいたかも……」
ひより「私も……」
ひよりもかがみの近くに来た。
かがみ「ふふ、どうやら恨まれなくて済みそうね」
かがみは笑いながら再び帰り支度をした。
ひより「この一件が済んだら……私とゆたかはそれぞれの道を進もうって決めました」
かがみ「独立するつもりなの……え、もしかして二人とも結婚……」
ひより「し〜、まだ皆には内緒ですよ、泉先輩も」
こなた「へぇ、結婚するんだ」
ゆたかは厨房の方を心配そうに覗こうとしている。
こなた「大丈夫、つかさの所までは聞こえないよ」
ひよりとゆたかは鞄を持った。
ひより「それじゃ帰ります、泉先輩、結果を楽しみにしていますね」
ゆたか「お先に失礼します……」
二人は店を後にした。
かがみ「私も帰るわ、実家に寄って行くからこのまま帰るわよ、つかさにはそう言っておいて」
こなた「分かったよ」

246 :こなたの旅O 2/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 06:56:40.37 ID:S5HSX8sD0
 かがみが帰って数分した頃つかさが料理を持って来た。つかさは周りをきょろきょろと見回した。
つかさ「お姉ちゃんは、皆は?」
こなた「帰ったよ……あ、そうそう、かがみが実家に寄って行くって、実家なら帰れば会えるでしょ?」
つかさ「うん、そうだね……」
つかさは私の前に料理を置いた。
つかさ「片付けてくるね」
そう言うと厨房の方に向かって行った。会合前にかがみが食べていた料理と同じものだ。一口食べてみた。
美味しい……ちゃんとかえでさんの味もする。お菓子屋さんなのに料理の研究もしていたのか。あやのも美味しいけどかえでさんの味はしない。
やっぱりかえでさんが辞めたとしたらつかさが店長になるのが一番だよ。

そして、私が食べ終わり、片付けも終わり、帰るだけになった。
つかさ「それじゃ灯りを消すから先に出て」
つかさと二人きりか……
こなた「ちょっと待って、話がある」
つかさはスイッチを切るのを止めた。
つかさ「なぁに?」
つかさになら言ってもいいかな。バカにされる事もないし。
こなた「神崎さんについてなんだけどね……さっきの会合で気付いた点があってね……」
つかさ「気付いた事……?」
こなた「ひろしが言ったでしょ「おめでたい」って……神崎さんも言うんだよ、それも全くおなじ口調で……」
つかさ「へぇ〜面白いね」
うぐ、つかさ〜気付いてよ。鈍いのは昔のままだよ……
こなた「……神崎さんはゆたかの作ったお弁当を食べてゆたかがその時どんな気持ちだったのか言い当てた……」
つかさ「え……」
つかさの表情が変わった。やっと分かったかな。
つかさ「……まなみの演奏会が始まる前、神崎さんとカメラマンさんが取材に来てね、その時、カメラマンさんの質問で私あたふたしちゃって……そうしたら神崎さんがそっと
    緊張をほぐしてくれた……殆ど初対面だったのに、その時ねなんだか以前にも会ったような気がしたの」
こなた「神崎さんは真奈美さんの化けた人……そう思うようになってね……」
つかさ「まなちゃん……」
こなた「今度会うときにハッキリすると思うけどね」
つかさ「まなちゃんが神崎さんに化けていた、そうすると本当の神崎さんはどうしたのかな……」
こなた「本当の……?」
そこまで考えていなかった。つかさは鈍いのか鋭いのか全く分からない。
つかさ「私が初めて会った時は辻さんの姿だった……」
こなた「そうだったね……」
あれ……そうなると貿易会社に囚われているお稲荷さんって誰なんだ…… 私達の知らない人なのかな……
こなた「ありがとう、つかさのおかげでいろいろ分かった」
つかさ「ねぇ、私も一緒に行きたい、神崎さんに会いたい」
こなた「実は私も会えるかどうか分からない、彼女実家に殆ど居ないからね、携帯やメールでもダメでしょ、絶対会えるとは言えないよ」
つかさは項垂れた。
つかさ「そうだね、そうだよね……」
こなた「そんなにしょげない、きっとまた会えるよ」
つかさ「そうだね……」
笑顔になるつかさだった。
つかさ「そうだ、この話しなんだけど……お姉ちゃん達に……」
こなた「別に話しても良いよ、でもね「おめでたい」って言われるのがオチだよ」
つかさ「ははは……それじゃ帰ろう、灯りを消すから先に出て」
つかさは笑いながらスイッチの方に歩いて行った。この後つかさに家に寄って行かないかと誘われたがそのまま帰った。

247 :こなたの旅O 3/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 06:57:50.80 ID:S5HSX8sD0
 本当はつかさが神崎さんに会った方が良いような気がする。だけど私はつかさと一緒に行くのを断った。何故だろう。
このファイルを持って移動している時つくづくそう思った。私は一つの大企業を潰せるほどの情報を持って移動して。
何故か周りの人の視線が気になってしょうがなかった。もし誰かにこれを読まれたら……盗まれたら……落としたら……忘れてしまったら……
そう思うと恐くてたまらない。つまりこのファイルはそう言う物。コミケの帰りでくる視線とは次元が違う……
ふと周りを見回した……皆私が居ないかの様に通り過ぎていく。ふふ、意識しすぎだ、私以外にこの鞄に機密文章が入っているなんて知らない。
つかさはこの重荷に耐えられる訳がない。だから一緒に行くのを断った。いや……違う。そんなんじゃない。
思えばつかさはあの時、正確に言うとみゆきさんも同行していたっけ。ある意味けいこさんの計画は状況的に今の私達と同じだ。つかさもみゆきさんもあの時恐くなかったのかな。
下手をすればつかさたちが捕まっていたかもしれない。それにあの当時恋人だったひろしと会えなかったのに……
それでもつかさは最後まで諦めなかった……
あまり深く物を考えない天然だから……そう思った事もあったけどそれは違った。実際つかさは凄いよ……今になってつかさの凄さが分かった。
つかさと一緒に行けば私が今までやってきた事を直ぐにひっくり返されて先に進んでしまう。そんな気がした。
たまにはつかさより先に進んでみたい……かがみも以前そう思ったように。
これが本音だったりする。
なんてね。今更つかさと張り合ってどうする。
私は神崎家の玄関の前で悶々していた。
さて。もう心の準備はいいや。
『ピンポーン』
呼び鈴を押した。
『ガチャッ!!』
ドアが開くと思った通り母親の正子さんが出てきた。
正子「泉さん……」
こなた「あの、あやめさんは……」
正子「ごめんなさい、留守で何時帰るか分からないの……」
やっぱり空振りか……でも。このファイルは郵送とかしたくないし。持って帰りたくもない。私は鞄からファイルを取り出した。
こなた「これをあやめさんに渡してくれませんか」
正子「……何か重要な書類みいたね、良かったら上がって少し待って直接渡されてはどうです?」
こなた「実は今日、電車で来たので余り時間がありません……夕方4時まで神社で待っています」
正子さんは玄関の置時計を見た。
正子「まだ2時間以上もあるのに、どうぞ遠慮しないで……」
こなた「どうしてもあの神社で会いたくて……あやめさんが来たらそう言って下さい」
正子「そうですか……もし来なかったら……」
こなた「来なかったらそのまま帰ります、その書類は大事に仕舞っていて下さい」
正子「あやめの部屋の机の上に置いておく、一番安全だからね」
微笑む正子さん……
もし神崎さんが真奈美だったら、もしかしたらその正体に気付いているかもしれない。いくら化けたと言っても本人になった訳じゃない。親ならばその異変に気付くはずだ。
こなた「あの〜」
正子「はい?」
にっこり微笑む正子さん。
こなた「……い、いいえ、なんでもないです、それじゃ失礼します……」
正子「?……お構いもしませんで……」
やっぱり聞けないや……
私は神社に向かった。不思議そうに私を見る正子さんが印象に残った。

 幾ら待っても来ない。どうして。今日は帰らないつもりなのかな。
全く、母親に連絡もしないで留守にするなんて考えられない……ってもうそんな歳じゃないよね。それにしてもメールくらいの返事は欲しい……
って私もよくかがみからそう言われたっけ。いやいやそれはそれ。関係ない!!
腕時計を見るともう4時になろうとしている。ボーとしていたらもうそんな時間か。私は階段を見下ろした。人が登ってくる様子は全くない。
やれやれ本当の空振りだ。帰ろう。滑り下りが出来るようになったから下りるのはそんなに時間は掛からない。

 電車が来た。この電車に乗らないと特急電車に間に合わない。そうしないと今日は家に帰れなくなってしまう。電車がホームに到着した。
私はその電車に乗って空いている席に座った。電車はゆっくりと駅を離れた。
どうやって彼女と会うかな……あ、あれ……ま、待てよ。神崎さんがあのファイルを読んだら私と会う必要がないよね……もし、彼女がまだデータを分析していなかったら。
彼女はタナボタで解析済みのデータを手に入れてしまう。っとすると……神崎さんは次の行動を起こしてしまう……やばい。ダメだあのデータは直接私が渡さないとダメだった。
わわわ〜どうしよう。なにやっているのかな〜私は……ちょっとセンチメンタルになりすぎていた……ばかばかばか……
しょうがない次の駅で降りて引き返そう。私は席を立ちドアの前に立って次の駅の到着を待った。
早く次の駅に着かないかな〜
おや……ドアの窓の向こうに並走するオートバイが走っている。そのバイクは私の乗っている車両で速度を合わせた。あのバイクは……神崎さんのバイクじゃない?
ヘルメットを被っていて誰だかは判らない。ライトを何度か点滅するとライダーは片手を上げたその手に持っているのは私の持って来たファイルだった。間違いない神崎さんだ。

248 :こなたの旅O 4/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 06:59:52.11 ID:S5HSX8sD0
 次の駅で降りるて改札口を出るとバイクに跨ったままヘルメットを取った神崎さんが待っていた。神崎さんは笑っていた。
あやめ「ふふ、何も言わずに帰るつもりだったの、だとしたらよっぽどお人好しだ」
こなた「へへへ、私もそう思って引き返す所だった」
あやめ「帰ったら泉さんが来ていたって母が言ってね、このファイルを渡してくれって……急いで追いかけたけど丁度電車に乗る所だった、気付いてくれて良かった」
神崎さんは私にヘルメットを渡した。
あやめ「話があるんでしょ、乗って……」
私はヘルメットを被ると神崎さんの後ろに座った。神崎さんもヘルメットを被るとバイクはゆっくり動き出した。バイクは電車で来た方法の逆に向かっている。戻っているみたい。
暫く進むとバイクは止まった。そしてエンジンが止まった。神崎さんはヘルメットを外した。
あやめ「着いたよ」
私もヘルメットを取りバイクを降りて辺りを見回した。
こなた「公園?」
そこは公園だった。滑り台、ブランコ、ジャングルジム……どこにでもあるような在り来りの公園だった。
あやめ「よく父がここで私と遊んだらしい、全く覚えていないけどね……この時間ならもう誰も来ない、込み入った話だって出来る」
そんな昔の話しを知っているなんて……やっぱり神崎さんは神崎さんなのかな……。
神崎さんは公園に入りベンチに腰を下ろした。私も公園に入ったがベンチには座らなかった。
神崎さんは持っていたファイルを開いてペラペラと捲って見た。
あやめ「……本当に解析したんた……半年は掛かると思ったのに……一ヶ月とは……仲間のお稲荷さんが協力したみたいね」
こなた「うんん、手伝っていない、ほとんとみゆきさんとかがみがした、それにお稲荷さんはみんな人間になったから」
神崎さんの紙を捲る動きが止まった。
あやめ「人間に……そう言えばそんな事を柊さんが言っていた、泉さんの友達はよっぽど優秀みたいね……」
こなた「さて、もう話しても良いんじゃないの、神崎さん」
神崎さんはファイルを見ながら答えた。
あやめ「あのデータを解析したのなら、私がこれから何をしようとしているのか大体判ったんじゃない、そしてその危険性もね……どうなの?」
こなた「4万年前の遺跡、それはお稲荷さんの物だった、それを利用して兵器を開発して密輸している貿易会社を暴こうとしている、そして、それに協力させられている
    お稲荷さんを救おうとしている」
あやめ「……そこまで分かっているならどれだけ危険な事は分かるでしょ、これから先は私一人でする、無用な犠牲は出したくない……あの会社の不正を暴くにはこのデータだけでは
    不十分なの、確証が必要、兵器の設計図、取引先の密約の文章……」
こなた「それが貿易会社本社の25階にあるわけだね?」
神崎さんはファイルを何度も捲った。
あやめ「……驚いた……そこまで分かっているの……」
こなた「まぁね、ところで神崎さんはどこまで分かったの?」
あやめ「わ、私はもう既に全部分析した……こんなファイルは要らないくらい」
こなた「それじゃ返して」
私は神崎さんの目の前に両手を出した。しかし神崎さんはファイルを私に渡す素振りは見せなかった。この人……負けず嫌いだ……
こなた「……返さなくて良いから教えて、神崎さんの本当の目的をね」
あやめ「…………だから、さっき言ったでしょ、貿易会社の不正を暴くって、それ以上でも以下でもない」
こなた「みゆきさんが言うにはお稲荷さんの使っている文字ってかなり難解だって、お稲荷さんの文字を読める人が貿易会社に居るって……多分そのファイルにも書いてあると思うけど」
神崎さんは黙ってしまった。
こなた「あらら、神崎さんらしくないね、ダンマリなんて……」
神崎さんはファイルを私に渡した。
こなた「へ?」
あやめ「ファイルは返す、そしてもう私に姿を見せないで欲しい」
こなた「ファイルはいいのかな、こんな短時間で全部読めないでしょ?」
あやめ「そのファイルは必要ない……それに間違えが数箇所あるから、調べ直しなさい」
うそ……まさか全部読んだ……ありえない。私が神社に向かった時にすれ違いで帰ってきたとしても二時間ちょっと……そんな短時間であのファイルを全部読むなんてできっこない。
神崎さんはヘルメットを被った。
あやめ「もうこんな時間じゃ帰れないでしょ、近くの町のホテルに送るから、それでお別れね」
もし本当にデータを全部解析していたとしたら神崎さんは人間じゃない。
この人はあくまで一人で行動するつもりなのか……よ〜し、それなら。
こなた「ほんとうにそれでいいの、つかさが悲しむよ……真奈美さん」
神崎さんの動きが止まった。
あやめ「つかさ……真奈美……いきなり何を言っているの、貴女、大丈夫?」
私は続けた。間違えでも本当でも構わない。
こなた「神崎さんって本当はお稲荷さんの真奈美さんなんでしょ」
神崎さんはヘルメットを外した。そして私を呆れた顔で見ている。
あやめ「……最後の悪あがきね、そこまでして何故私を引き止める、私は貴女にとって赤の他人、私がどうなったって何も感じないでしょ、高々一ヶ月ちょっとの付き合いなのに」
赤の他人……何故か怒りが込み上げてきた。
こなた「……赤の他人……赤の他人でわざわざこんな所まで何度も来ると思う、つかさはね、つかさと真奈美さんはほんの数日の出会いだった……それなのに生まれた子供にまなみと名付けた、どれだけ慕っていると思っているの、時間なんか関係ない……」
神崎さんは一歩後ろに下がった。
あやめ「熱い事を言う…………ただの他人なら私を助けはしないか……泉さん、ただのオタクじゃないみたい……それで、何故私が真奈美なんて言うの」
こなた「おめでたい……データを解凍するとき神崎さんはそう言ったよね……つかさの旦那、真奈美の弟も全く同じ口調でそう言った、それだけじゃない、私のお弁当を食べたら作った人の気持ちを読んだよね……それにあのファイルを短時間で読んだし……」
あやめ「ふ……ふふ……ははははは〜」
神崎さんは高笑いをした。
あやめ「そ、それだけで、ははは、それだけで私がお稲荷さんだって……それだったら泉さんだって……ははは、お稲荷さんの秘術を使うじゃない、お稲荷泉さん……」
神崎さんは暫く笑った。そして笑い終わると真面目な顔になった。
あやめ「パソコンを完全に制御した時の泉さんは正直言ってお稲荷さんだと思った……」
こなた「確かにあれはお稲荷さんの物だけど、教えてもらっただけだよ……あのUSBがなければ私はただの人間だよ」
神崎さんはまた笑った。
249 :こなたの旅O 5/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 07:00:47.35 ID:S5HSX8sD0
あやめ「それなら私も説明する、私は速読方を習ったからあのファイルの内容を把握するのにそんな時間は掛からない、速読方はコツさえつかめば大抵の人なら出来るようになるから
特別じゃない、、それからあのデータはね、約八割は2年前に入手済みだった、それに解析も終わっていた訳……それからお弁当は状況から推察すれば判る、泉さんの持って来た
    お弁当はとても丁寧に作ってあった、すぐに「心が籠もっている」って判る、最後に「おめでたい」……これは確かに真奈美の口癖だった、
    私は中学を卒業するまで彼女と何度も会っていた、その間にその癖が移ってしまった……それでも私がお稲荷さんって言うの?」
こなた「い、いいえ、ごもっともです……でもさ」
神崎さんの説明だと確かに普通の人間でも出来そうな事ばかり……
あやめ「でも、まだ何かあるの?」
こなた「真奈美さんと高校生から会ってないの、どうして?」
神崎さんはすこし悲しげな表情になった。
あやめ「彼女はいきなりもう会わないと言い出した、それに神社には大人になるまでと来るなって……一方的過ぎる」
そうか……つかさの時と同じだ。
こなた「それは神崎さんを守るためだと思う……」
あやめ「守る……ため?」
こなた「そうだよ、つかさの時もそうだった、お稲荷さんの殆どが人間嫌いだからね」
あやめ「人間嫌い……それは知っている、私を守るって……いったい柊さんと真奈美に何があったの?」
それはつかさに話してもらおうと思った。だけど……
こなた「話すよ、でも聞いたからには私達の会合に参加してもらうから、いいね?」
あやめ「……分かった……」
よし、これでかがみとの約束は果たした。
私は話した。つかさの一人旅の話しを。

250 :こなたの旅O 6/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 07:01:29.09 ID:S5HSX8sD0
 もうすっかり日も落ち街灯が点いた。静かな公園。街灯の光が私達二人の座っているベンチを淡く照らしていた。
私の話が終わって数分が経つけど神崎さんは動こうとはしなかった。
あやめ「……ま、真奈美は死んだ……死んでいた……ばかな……そんな筈はない」
私に訴えかけるような目だった。
こなた「そう、私達もつい最近までそう思ってた、だけどね、神崎さんと同じ様にお稲荷さんが貿易会社に囚われているんじゃないかなってみゆきさんが言ってね、理由も
    神崎さんが最初に持って来たデータと同じだった」
あやめ「でも、さっきの話しだと彼女は首に致命的な傷を負って……絶望的じゃない」
こなた「でもね、つかさの話しだと消えちゃったって言ってた、だから誰もも本当に亡くなった所をみていないんだよ、つかさもそれは心の奥で感じていたみたいでね、
    真奈美さんからもらった葉っぱを今でも大事に財布に仕舞っているよ」
あやめ「葉っぱ……それはもしかして葉っぱをお札に見えるようにした技じゃないの」
こなた「そうだったかな……」
神崎さんは微笑んだ。
あやめ「彼女は悪戯が好きでよく私にそれを見せてくれた……家に帰ればその時の葉がまだある」
こなた「ふ〜ん」
私はまじまじと神崎さんを見た。
あやめ「な、何、その顔は、私の顔に何か付いている?」
こなた「神崎さんが真奈美さんを助けていなかったら、つかさはあの時殺されていた、つかさが居ない世界、もちろん私はレストランかえでの店員になっていない、
    うんん、働いていたかどうかも分からない、そして……かがみもこの世にいなかった」
あやめ「私が柊さん姉妹を救ったって、ふふ、私は一匹の狐を拾っただけ、仔猫を拾ったようなもの、取るに足らないもの、何の関係もない」
こなた「うんん、神崎さんが真奈美さんを助けたから真奈美さんは人間に対する憎しみが減ったんだよ、だからつかさを殺せなかった」
あやめ「本人が生きているならそれも聞けるでしょうね……」
こなた「生きているなら私も会ってみたいな〜」
神崎さんは立ち上がった。
あやめ「最初から私は貿易会社に囚われているのは真奈美だと思っていた……」
こなた「あれ、でもあのときはワールドホテルの会長だって……」
あやめ「ごめんなさい、いきなり真奈美の名前は出せなかった、貴女達が真奈美を知っていたのが分かっていたのならもう少し違った対応もあったかもしれない……」
こなた「もしかして、神崎さんの目的って、真奈美さんを助ける為?」
神崎さんが頷いた。
あやめ「何よりそれが最優先」
こなた「それなら私達と目的は同じだよ、一緒にやろうよ、一人でするより成功率が上がるよ」
神崎さんの目が厳しくなった。
あやめ「一緒にって言っているけど、これはお遊戯じゃない、分かっているの?」
こなた「神崎さんも見たでしょ、怒ったかがみのあの姿を、私だってつかさやかがみと一緒にここまで来たから分かっているつもりだけど」
神崎さんは諦めたような溜め息をついた。
あやめ「これも何かの運命ってやつかもね……」
神崎さんは公園の中央にある時計台を見た。
あやめ「もうこんな時間、もう電車じゃ帰れないでしょ……バイクで送ってあげたいけど……泉さんには少し辛いかな……」
あのバイクで家まで帰るのはきつそうだ。
こなた「……ちょっと……ね」
あやめ「それじゃ一度家に帰って車で送ってあげる、」
こなた「う〜ん、そこまでしてもらわなくても、一晩泊めてくれれば朝一番の電車で帰るよ……」
あやめ「……その方が良さそうね……」
その日私は神崎さんの家に一晩泊めてもらった。

251 :こなたの旅O 7/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 07:02:05.11 ID:S5HSX8sD0
 Eそれから丁度10日が過ぎた。今日は水曜日、つかさの店がお休みの日……と言ってもここ数日つかさの店は臨時休業になっている。
かえでさんの体の具合が芳しくなく1週間くらい前から入院している。医者の話しだと入院するほどまでではないらしいけど旦那さんが心配して入院させたそうだ。
確かにかえでさんだけの体じゃないからそれはしょうがない。かえでさんが抜けたのでつかさが臨時でかえでさんの代わりに店を手伝ってくれていた。
そのせいでつかさの店はおやすみだった。
そして今日は神崎さんが来ると約束した日。私とつかさが抜けるので夜はレストランもお休みにした。
それで集合場所はこのレストランにしたのだった。
かがみは約束の一時間も前に来ていた。
こなた「相変わらず早いね、かがみ」
かがみ「間違いがあるって言うからもう一度見直したのよ……」
かがみの目が怒っている。
こなた「直したってあのファイルを?」
かがみ「そうよ、他に何があるのよ!!」
私を睨み付けてきた。
こなた「こ、こわ〜」
かがみ「来たら一番に見せ付けてやる」
間違えを指摘されてよっぽそ悔しいのだろう。
そんなかがみを尻目につかさが私服に着替えて来た。隣にはひろしも居る。
つかさ「……あやちゃん、今日は残ってくれなかった……」
淋しそうな顔おつかさ。
かがみ「この前の会合とは違う、あやのはそれを感じたのかもしれない……まつり姉さんとまなぶさんも来ないわ、それからゆたかとみなみも来ない、
ひよりは神崎さんと一度も会っていないから来るって言っていた、みゆきは少し遅れる」
つかさ「そ、そうなんだ……い、いのりお姉ちゃんは?」
かがみ「いのり姉さん夫婦は来る」
つかさ「よかった」
ひろし「よかったじゃない、本当はつかさも来て欲しくなかった」
つかさ「大丈夫だよ、私、何も分からないから話しを聞くだけ、それと神崎さんとお話をするだけだから」
つかさは辺りを見回した。
かがみ「ひとしさんは?」
かがみ「彼は彼なりに貿易会社を調べると言って事務所にいる……」
かがみは窓から外を見た。
かがみ「……彼女が来た、早いわね……」
私も外を見ると既に入り口の直ぐ前まで歩いてきていた。服装は普段着だ。多分バイクじゃなくて車か電車で来たのだろう。つかさが扉を開けて神崎さんを店に入れた。
つかさ「こんにちは……」
神崎さんはつかさを見ると礼をしてそのまま店の奥に入った。
つかさ「あ、あの〜この前の演奏会の記事ですが……ありがとうございます、まなみも……娘も喜んでいました」
神崎さんは立ち止まりつかさの方に振り向いて微笑んだ。
あやめ「あれは私が感じた事をそのまま書いただけ、代筆だから上手く書けなかった、素晴らしい演奏だったのを表現したつもり……もう一度聴きたい」
つかさも微笑み返した。
ひろし「う、嘘だろ……神崎あやめ!」
いきなり大声を上げた。私達全員がひろしの方を向いた。神崎さんは首を傾げてひろしを見ていた。
ひろし「お、お前から姉の気配を感じる、何故だ……まさか、泉こなたの言っていたのは本当なのか!!」
ひろしが神崎さんを大きな目をして驚いている。神崎さんは否定したのに……でもひろしがそう感じたって事は、まさか……
神崎さんは再び微笑むと胸のポケットから手帳を出し開いてそこから一枚の一万円札をを出してひろしに腕を伸ばして見せた。
ひろし「そ、それは……」
つかさ「あっ!!」
つかさも思い出した様にポケットから財布を出し中から葉っぱを出して神崎さんと同じ様に腕を伸ばして神崎さんに見せた。
つかさ「同じだね!」
つかさは満面の笑みを浮かべた。神崎さんはゆっくりお札ををつかさの方に向けた。
あやめ「私に唯一真奈美が残した物……柊さんにそのお札ををどうやって渡したのか想像がつく……」
つかさ「……私も……私も分かるよ……悪戯好きの狐さんだったから……一日経つと……葉っぱに戻っちゃうから……」
微笑みながらもその目には涙が溜まっている。いまにも零れ落ちそうだった。
二人は暫くそのままの状態で止まっていた。もう二人は分かり合っている。
この二人にはこれ以上の言葉は要らないみたい。そんな気がした。

252 :こなたの旅O 8/7 [saga sage]:2013/09/28(土) 07:02:47.04 ID:S5HSX8sD0
 F神崎さんは一万円札を手帳に挟むと胸のポケットに仕舞った。
あやめ「ごめんなさい、昔話はまた今度にしましょう」
神崎さんはかがみの方に向かって歩き出した。そしてかがみの目の前で止まった。
あやめ「大事な妹さんに手荒な事をしてしまいました、すみません」
深々と頭を下げた。葉っぱを見せ合った二人を見ていたかがみは少し動揺したのかそれとも、神崎さんの素直な態度に戸惑ったのかオロオロした。
かがみ「べ、別に……もう過ぎたことだから……か、勘違いしなで、つかさが許したから大目にみただけで私は完全に許した訳じゃ……」
神崎さんはゆっくり数歩下がって私に近づいた。
あやめ「……ツンデレですか……」
こなた「流石記者……よくお分かりで……」
かがみは立ち上がった。
かがみ「ちょ、ツンデレ言うな、それにこなた、記者は関係ないでしょ、記者は!!」
神崎さんは腕を組んで頷いた。
あやめ「ふむ、ツンデレに、ツッコミも入っている、泉さん……貴重じゃない」
私も腕を組んで頷いた。
こなた「そうそう、ほらかがみ、やっぱりツンデレだ、神崎さんが証明した」
かがみ「う、うるさい、だまれ!!」
かがみは怒っている。怒ってはいるけどあの時のような気迫はない。高校時代からよく怒っているのと同じレベルだ。つまりかがみは神崎さんを許した。
神崎さんは笑った。
あやめ「ふふ、冗談はこのくらいにして、本題に入りましょうか?」
かがみは咳払いをした。気持ちを切り替えたようだ。
かがみ「まだ来る予定の人が来ていない、時間まで待って」
神崎さんは腕時計を見た。
あやめ「……少し早く来すぎたかしら……分かった、待ちましょう」
つかさ「あ、あの……少し話しませんか?」
つかさが神崎さんの近くに寄ってきた。すぐ後ろにはひろしも居た。
神崎さんは私とかがみを交互に見た。私とかがみは頷いた。神崎さんはつかさの方を向いて頷いた。
つかさはテーブル席の方に歩いていった。神崎さんとひろしもそこに移動した。

 つかさと神崎さんが話しをしている。時より笑いが混じりながら、そしてあのひろしまでがその話しに混ざっている。一見すると数年来の親友のような……
いや、家族じゃないかと思えるほど三人は自然な状態で話している。話題はもちろん真奈美の話しだ。ひろしが神崎さんを知らない所を見るとやっぱり真奈美は
神崎さんと交流があるのを他のお稲荷さんには内緒にしていた。それはそうだ、もしそれがばれたらきっと神崎さんは只では済まない。もしかしたら殺されていたかもしれない。
神崎さんが高校生になってから会わなくなったのも、神社に来させなかったのも神崎さんを守るため。神崎さんがあのまま頻繁に神社に出入りしていたらつかさと同じ様になっていた。
だから……つかさが生贄に選ばれた時、真奈美はつかさを守った。命を懸けて……
こなた「ふぅ〜」
かがみ「こなたが溜め息をつくなんて……雨でも降りそうだ」
こなた「ふんだ、私だってたまにはそんな時もあるんだよ……」
かがみ「へ〜 そんな時って何なのよ」
かがみは私の見ているつかさ達の方を見た。
かがみ「……楽しそうね……まだ全員集まっていないし時間ならまだあるわ、話したいなら行きなさいよ」
こなた「うんん、話したい訳じゃない……話しに入っても真奈美さんを知らないから……」
かがみ「そうね……それは私も同じ……」
こなた「見てかがみ、あんなに楽しそうに……ついこの間まで私は神崎さんをつかさから遠ざけようとしていたのにさ」
かがみ「それは私も同じよ……」
こなた「それなのにあんなに楽しそうにしちゃって、しかもひろしまで混ざって……私が一ヶ月以上掛けた事をたった一日で……」
かがみは私を見た。
かがみ「何よ、つかさに嫉妬してるの?」
嫉妬……
こなた「……つかさに出来て私に出来ない訳がない……そう思って勝負した……簡単な勝負、神崎さんを仲間に入れる勝負……結局勝てなかった」
かがみはつかさの方を見た。
かがみ「ふふ、やっと私の気持ちが分かったみたいね……勝負なんかしてもつかさに勝てないわよ……」
こなた「つかさのくせに……」
かがみ「勝負なんか挑んでもつかさは最初から勝負なんかしていないし自覚すらしていない、だから勝てるはずないじゃない、こなたの負け」
こなた「へぇ、分かるんだ」
かがみ「これでもつかさの双子の姉よ……考えてみて、けいこさんの依頼を受けるなんて正気じゃ考えられない、人類とお稲荷さんの共存だなんて……
    どんな大国の大統領でもできっこないにに……つかさはそれを受けた……バカよ……しかもみゆきまでその気にさせたのよ……」
こなた「……まぁ、失敗しちゃったけどね……」
かがみは私を見た。
かがみ「失敗……こなたはそう思うか、違うわよ、少なくとも私達四姉妹に関して言えば成功している……」
こなた「そりゃ全員お稲荷さんの旦那さんだもんね……でもいのりさんとまつりさんの旦那さんははつかさと関係ないでしょ……」
かがみ「つかさが真奈美さんの話しを家族や友人にしていなければそうなならなかった……あんな体験を話すなんて……信じるとは思わないから
    普通は話さないで心の奥に仕舞っておくものよ」
こなた「でもつかさは話した……」
かがみ「そう……おまけにお稲荷さんの秘薬までつくらせた、だから勝てる訳がない……」
かがみはまたつかさの方を見た。
かがみ「でもね……これから挑もうといているのはそんなのは通用しない、兵器を密輸する死の商人、正義とか良心とか常識なんかかざしても何も感じない連中……
    しかもお稲荷さんの存在を知っている、貿易会社が私達の事を知らないのが唯一の幸いだ」
こなた「貿易会社……」
かがみ「そう、こなたの持って来たデータだけじゃ証拠が不十分なのがやらしい……それにけいこさん達をいとも簡単地拘束させるなんて向こうもかなりの策士よ」
こなた「ワールドホテルの事件が貿易会社の捏造だったら……組織の力だよね……私達には手に負えないよ、ちょっと無理ゲーかもしれないね」
かがみ「その確証もデータでは得られなかったけどな……さて、みゆき達が来たみたいよ……」
かがみは深呼吸を一回すると立ち上がりつかさ達の方に歩いて行った。
かがみ「メンバーが揃ったみたい、雑談は終わりよ」
かがみの話しだとかなりやばそうな展開になりそう。

フラグがたったか……な。


つづく
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/09/28(土) 07:03:27.96 ID:S5HSX8sD0
以上です。

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga sage]:2013/10/07(月) 21:42:16.14 ID:eoyinPcH0
まとめサイトで2009年の7月以前に投下された作品には基本的にコメントフォームは付いていません。

私はページをアットウィキモードに変換出来るようになりました。

コメントフォームの付いていないページにフォームを付けようとしましたがかなりの量の作品があり重労働です。

そこで希望者があればそのページにコメントフォームを付けたいと思います。

おそらく希望者はそのページの作者だと思いますが、作者でなくても直接感想が書きたい人がいれば希望を出してください。

希望作品があればこのサイトか避難所に作品名を書いて下さい。

あまり多いと対応に時間がかかるかもしれません。

テストで自分の作品にコメントフォームを付けました。

ID:bz0WGlY0氏:道草

ID:nd1fPHA0氏:祈り

ID:Ynd8ofc0氏:喧嘩

ID:KljhCnE0氏:星のかなたへ

ID:RFBP9FGO氏:樹雨

以上5作品


お気軽にどうぞ
255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/10/20(日) 19:34:00.54 ID:Zxa35hrs0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します
7レスほど使用します
256 :こなたの旅P 1/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:35:29.86 ID:Zxa35hrs0
P

 皆が揃うとかがみが神崎さんにファイルの説明をしだした。ががみのその目は真剣そのものだった。かがみは何であのデータをこんなに真剣に調べたのだろう。
真剣なかがみの顔を見ながら考えていた。
そういば、ついさっきかがみは私がつかさに勝てるはずがないとか言っていた。まるで自分の事の様な言い方だった。
まさか、かがみも私と同じ様につかさに勝とうなんて思っているのでは。確かにかがみはつかさには出来ない事をしようとしている。貿易会社の不正を暴くなんてつかさには
出来そうにないから。それでかがみは……何もそこまでしなくてもいいのに。さっきのかがみの言い方じゃ結果は私と同じになる。かがみもつかさに勝てない。それなのに……
つかさにだってかがみに勝てない所がいっぱいあるのにね。姉としてのプライドなのか。意地なのか。見栄なのか……かがみらしいと言えばそうかもしれないけど……
 かがみの話している内容はこの前と同じなのですぐに飽きてきた。眠気覚ましにふと周りを見回した。
つかさはコックリ、コックリと睡魔と闘っている。その夫ひろしはつかさが席から落ちないように方に腕をそっと添えて支えている。まったく見せ付けてくれる。
みゆきさんはファイルを見ている。きっとかがみの説明を追ってみているに違いない。
いのりさん夫婦は真剣にかがみの話しを聞いている。特にすすむさんは食い入る様に聞いている。この前もそうだったけどお稲荷さんの中ではすすむさんが一番真剣みたい。
そういえばまつりさん夫婦は来ていない。この辺りの温度差が不思議に感じる。
最後ににひよりは……
一所懸命ノートにメモをしている。どうしてだろう……ひよりも真奈美を助けたいのかな、いや、ひよりも真奈美とは一回も会っていないはず。
まさか漫画のネタにする気じゃ……

257 :こなたの旅P 2/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:36:30.63 ID:Zxa35hrs0
 かがみの話が終わると神崎さんが立ち上がった。
あやめ「丁寧な説明でした、このファイルは大変良く纏め……」
かがみ「待った、まだ指摘された修正の説明が終わっていない」
割り込むようにかがみも立った。
あやめ「訂正したとしても結果が大きく変わるものではありません、それ以上の説明は結構です」
かがみ「な、なによ、間違ってるって言うから調べなおしたのに……」
かがみは不満そうにブツブツ言いながら座った。
あやめ「私もこのファイルと同じ結果が導き出されました、貿易会社は四万年前の遺跡、つまり墜落した宇宙船の残骸からメモリーを見つけ出して
    中身を解析してその知識と技術を独占している、しかもそれで兵器や武器を作って密輸までしている、これでいいかしら?」
かがみとみゆきさんは頷いた。
みゆき「しかもあのメモリーを解読するのは簡単ではありません、しかも解読したとしても未知の技術や理論を理解するには更に時間が掛かります、ですが彼等は実用レベルまで
    兵器を作っているようです、この事から貿易会社に協力している……いいえ、させられているお稲荷さんがいるに違いありません」
神崎さんは頷いた。
つかさ「そ、それがまなちゃんなの!?」
さっきまで夢うつつだったつかさが身を乗り出した。
みゆき「データからの推測なので確証はありません」
あやめ「そこの元お稲荷さんの意見がききたいですね」
神崎さんはひろしとすすみさんの方を見た。
ひろし「僕達4人以外に仲間が居るはずがない、でも、それでも居ると言うなら姉しかいないだろうね、姉は亡くなった事になっているから」
すすむ「……いや、仲間の死を確認出来ないで後に生存していた例が何回かある……言えるのは人間が短時間であのメモリーを
    理解出来るとは思えない、あのメモリーからデータを取り出すだけでも数百年先の技術が必要だ」
みゆき「5人目のお稲荷さんが居るのは間違いなさそうですね」
つかさ「それじゃ早く助けないと」
その先からは神崎さんも座り込み黙り込んだ、そして、誰も話さなくなった。つかさはきょろきょろと皆を見て戸惑った。
つかさ「ど、どうしたの……私、変な事言ったかな、こなちゃんと神崎さんでデータを持って来たのでしょ、だから同じ様にすればきっとまなちゃんも助かるよ」
神崎さんは首を横に振った。
つかさ「な、なんで、どうして……」
つかさは私の方を向いた。
こなた「データはメモリーに入れちゃえばポケットに入る、だけど……人はポケットに入らないからね……例え狐の姿だとしても連れて帰るなんて……」
かがみ「その様子だともう貿易会社の25階を調べたな」
さすがかがみ……
こなた「調べたと言うか……ちょっとハッキングしてみたんだけどね、あの階にはコンピュータが見つからない……この前ハッキングした35階の資料室はいつでも出来るけど
    なぜか25階だけはどうしても見つからない……これもお稲荷さんの技術なのかな……」
すすむ「いや、見つからならその25階のコンピュータは回線に繋げていないのだろう、繋げなければ繋がらない、当たり前だが確実だ、よっぽど知られたくない情報を仕舞ってあるに
    ちがいない」
オフラインなのか。どうやら私の出る幕ではなさそうだ。
こなた「そのオフラインのコンピュータの情報を得るには直接その場に行かないとね……そこのセキュリティはこの前言った通りだから、サイン会くらいじゃ揺らがないよ」
かがみは溜め息を付いた。
かがみ「さて、どうしたものかしらね……」
かがみは神崎さんを見た。
かがみ「あんたならもう何か策を考えているんじゃない?」
神崎さんはゆっくり立ち上がった。
あやめ「私は言った、これ以上は私に関わるなって、これで分かったでしょ、どれだけ危険な事なのか、親身なってくれるのはありがたいけどこれ以上の議論は無駄なようね」
神崎さんは帰り支度をしだした。
かがみ「ちょ、ちょっと何よその態度は、私達を見くびらないで、こっちには元お稲荷さんだっている」
あやめ「ワールドホテルの柊会長を助け出せなかった人がよく言う」
う、痛い所を突いてきた。やばい、かがみの目が尖ってきた。
かがみ「な、なんだと、そっちこそこなたに助けられたくせに、一人で何が出来るって言うのよ、今度どこそ捕まってしまうぞ」
あやめ「なんですって、言ってくれるじゃない」
かがみ「何度でも言うわよ!!」
二人は詰め寄って言い合いになった。やばい、
かがみが今にも手を上げそうだ。私が止めに入ろうとした時だった。
みゆき「神崎さん、かがみさん!!」
つかさはかがみの前に、みゆきさんは神崎さんの前に立って二人の言い合いを止めた。
かがみ「み、みゆき……」
あやめ「近藤さん……」
つかさ「喧嘩はだめだよ」
みゆきさんはかがみの方を向いた。
みゆき「私達がしようとしているのはとても危険です、なによりそれを知っているのは神崎さんです」
かがみはみゆきさんを見ながら座った。
かがみ「……そうね、私が悪かった、怒鳴ってすまない」
みゆきさんは神崎さんの方を向いた。
みゆき「あの当時私たちの出来る精一杯の行動でした、それでも力不足は否めません、ですから神崎さんのご協力が必要なのです、神崎さんが泉さんを必要としたように」
神崎さんはかがみの方を見た。
あやめ「……私も言い過ぎた、ごめんなさい」
神崎さんは席に着いた。

258 :こなたの旅P 3/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:37:22.57 ID:Zxa35hrs0
 二人が席に着いて数分した頃だった。みゆきさんが立ち上がった。
みゆき「すみません、意見がなさそうなので私から提案があるのですが」
かがみ「なに?」
みゆき「先ほどから再び潜入される話ばかりしていますが本当に潜入する必要があるのでしょうか?」
かがみ「当然でしょ、捕まっているお稲荷さんを助けないとならない、そのお稲荷さんが真奈美さんだったら尚更でしょ」
みゆきさんは首を横に振った。
みゆき「いいえ、そうではなく危険な潜入をする必要があるのかと言うことです」
かがみ「潜入しなければ助けられないでしょ、虎穴に入ずらんば虎子を得ず…」
みゆきさんはまた首を横に振った。
みゆき「要するに今あるデータを使えばわざわざ潜入する必要はないのでは、このデータだけでも密輸をしているのは明白の事実、これを世間に公表すれば
    貿易会社に捜査の手が及ぶでしょう、そうすれば捕らわれた真奈美さんも助かります」
かがみは目を大きく見開いた。
かがみ「そ、そう言えばそう、そうだわ、このデータを使えいいのよ、流石みゆき、これ以上危険な事をする必要はない」
かがみは得意げに神崎さんの方を見た。
あやめ「ふぅ、つくづくおめでたい……」
かがみ「な、何よ、そのムカツク言い方は!」
つかさ「……まなちゃん……」
ひろし「姉さん……」
怒るかがみを尻目につかさとひろしが懐かしそうに神崎さんを見ていた。神崎さんの「おめでたい」はそれほど真奈美の言い方にそっくりなのだろう。
神崎さんは立ち上がった。
あやめ「このデータだけでそれが出来るならとっくにそうしていた、貿易会社はね昔から密輸の噂があった会社なの、このデータだけでは不充分……それにね、
    お稲荷さんに関するデータは公表出来ない、公表したら信憑性が落ちてしまう」
みゆき「しかし、この知識はまだ私たちが到達していないものばかり、それ自体が証拠になるのでは」
あやめ「到達していない知識だからみんな理解出来ない、オカルト程度の話で終わってしまう」
みゆき「し、しかし……これ以上危険な……」
神崎さんは人差し指を立てて横に振った。みゆきさんはそれ以上言うのを止めた。
あやめ「このデータを公表して誰が捜査する、ワールドホテルの事件を忘れた訳じゃないでしょ、その捜査する側が貿易会社の息がかかっているからこの程度の証拠はもみ消されて
    しまうでしょう、それにね、もし捜査までいったとして、捕らわれている真奈美さんとお稲荷さんのデータ板はどうなるかしら……
    どこかに隠してしまうでしょうね、仮に貿易会社が解体したとしても真奈美さんとデータ板がある限り第二、第三の貿易会社が出来るだけ、いいえ
こんどは国家が、大国が関わってしまうかも、そうなったらもう私達では太刀打ちできない」
神崎さんはまた座った。みゆきんはこれ以上言っても無駄だと思ったのか俯いてしまった。
みゆき「す、すみません、私が浅はかでした」
かがみはみゆきさんの代わりとばかりに言い寄った。
かがみ「なかなかもっともらしい事を言ってくれるじゃない、それならあんたに何か策があるって言うの!?」
あやめ「ある……」
ゆっくりと答える神崎さん。
かがみ「それじゃその策とやらを話して」
神崎さんは私達を見回した。
あやめ「これは極秘事項なの、だから実際に行動を共にする人でないと話せない」
かがみ「この中に話せない人がいるって言うの?」
神崎さんは頷いた。そして神崎さんはつかさの方を向いた。

259 :こなたの旅P 4/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:39:01.09 ID:Zxa35hrs0
あやめ「柊さん夫婦には話せない」
つかさ「え、ど、どうして……」
ひろし「何故だ、自分の姉だぞ、一番助けたいにきまっているじゃないか!」
悲しそうな顔をするつかさ、怒り出すひろし。
あやめ「その身内ってのが一番危ない、今度の計画には冷静な判断、機械的な正確さが必要なの、私が話せないって言ったくらいで怒ったり悲しんだりするようじゃとてもじゃないけど
    この計画は成功しない」
二人は黙ってしまった。
かがみはつかさの方を見た。
かがみ「神崎さんの言う通りかもしれない、今回は私達に任せて」
つかさ「う、うん……」
神崎さんはかがみの方を向いた。
あやめ「いいえ、小林さん、小林さん夫婦にも話せない」
かがみは一歩後ろに下がって身を引いた。
かがみ「なっ!、ばかじゃない、あのデータの解析をしたでしょ、これ以上の適任はいない」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「貴女はワールドホテル事件の時、弁護を担当した事務所に所属していたでしょ、これを見て」
神崎さんは鞄からL版の写真をテーブルの上に置いた。そこには黒ずくめの服を着た女性が写っている。写真の風景は見覚えがある……
そうだ。私が潜入取材の時に働いていた喫茶店だ。まさかあの時のかがみを……
あやめ「私がたまたま店に居た時に隠し撮りしたものだけど、数名の人に尾行されているのに気づかなかった?」
かがみ「し、知らない……尾行……まさか」
あやめ「この後、この店を出て別の喫茶店に向かったでしょ、何をしたの、私は尾行を巻いたからその後の足取りが掴めなかった」
かがみ「こなたと会っただけ……よ」
神崎さんはため息をついた。
あやめ「それならいいけど、行動は気を付けて、私が貴女の事務所を取材しなかったのは貿易会社から監視されているから、本当は此処にも来て欲しくなかった」
かがみ「ま、まさか此処も監視されて」
かがみは窓を開けて外を見回した。
あやめ「監視されているのはあくまで貿易会社の本社に近づいた時だけ、あまり重要視はされていないみたい」
かがみ「ま、まずい、ひとしが……」
かがみは慌てて携帯電話を取り出した。
あやめ「安心して、もう彼には連絡をして調べないように言ってあるから」
かがみは携帯電話を持ったまま動かなくなった。
神崎さんは帰り支度を再び始めた。
あやめ「さっき言った4人以外で私の計画に協力できる人が居たら今度の日曜日、私の家に来て、此処に居ない人も呼んで構わない、但し、それなりのリスクは覚悟して」
帰り支度が終わるとドアに向かって歩き出した。
ひろし「まて!」
神崎さんは立ち止まった。
ひろし「姉を……頼む」
神崎さんは頷くと黙って頷くと店を出て行った。

260 :こなたの旅P 5/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:40:06.14 ID:Zxa35hrs0
 神崎さんが帰って店は静けさに包まれた。
かがみ「な、なによ……プライベートは調べないって言ったじゃない……」
ぼそっとかがみが呟いた。
みゆき「いいえ、かがみさんがけいこさんの弁護の手助けをしていたのはプライベートではありません」
かがみ「そうね、確かにその通り……」
かがみは私の方を見た。
かがみ「こなたはあの時気づいていたか、神崎さんが居たのを?」
こなた「うんん、知らなかった、知っていればもう少し違った対応をしていたかもね」
かがみ「その様子じゃ尾行も気づかなかったみたいね」
こなた「かがみが気づかなかったのに私が気づくわけがないじゃん」
ため息をつくかがみ、諦めたみたいだった。
かがみ「私はお荷物ににしかならないか……」
みゆき「神崎さんの様子から推察しますと、以前からかがみさんを調べていたみたいですね……」
かがみは帰り支度を始めた。
こなた「へぇ〜 かがみにしては珍しいね、神崎さんに言われてもう引き下がっちゃうの?」
かがみは私の方を向いた。
かがみ「引き下がる……そう、ちょっと癪にさわるわね、でも彼女の言う事は正しい、私とひとしは貿易会社からマークされている、これはおおきなハンデ
    それを挽回できる程の力は私達にない、素直に退散するしかない」
かがみはつかさの方を向いた。つかさは黙って俯いている。
かがみ「つかさ、いつまでしょげてるのよ、帰るわよ」
つかさはゆっくりかがみの方に顔を上げた。
つかさ「私……私……」
つかさは今にも泣きそうな顔になっていた。
かがみ「バカね、嘘でもいいから笑っていれば神崎さんだって少しは考慮しただろうに……でも、そんなつかさだかで良いわ」
つかさはまた俯いた。
かがみ「……ほらほらひろし、あんたの出番でしょ、あんたもいつまで落ち込んでいる」
ひろし「あ、ああ、分かってる……」
ひろしはつかさの側に寄り添った。かがみは私の方を向いた。
かがみ「あんたは行くのか」
こなた「神崎さんは来るなとは言ってないし……私が行かない理由はないかな」
かがみ「あんたにその覚悟はあるのか、私個人から言わせてもらえば行かせたくない、こなたには直接関係ないじゃない、真奈美さんだって会ったこともない、
    それにお稲荷さんのメモリー板なんて興味ないだろう」
かがみが私を止めるなんて。
こなた「乗りかかった船だし……ってかもう乗っちゃってる、それにこのまま中途半端じゃ終われない」
かがみ「そう……」
あっさり引き下がるかがみ。そしてこんどはみゆきさんの方を向いた。
みゆき「泉さんと同じです」
にっこり微笑み返した。
かがみ「……何も言っていないのに……まぁいいわ……」
かがみはひよりの方を向いた。
かがみ「ひよりも行くのか……」
ひより「それより一つ聞きたいことが……」
ひよりはすすむさんの方を向いた。
ひより「お稲荷さんのメモリー板の話が出てきてから突然態度がかわりましたよね、何故っスか?」
すすむ「態度が変わった……いや、私は何も変わっていない」
ひより「いいえ、変わった、お稲荷さんの知識を人間が得るのは肯定できでしたよね、でも今は違った」
すすむ「……人類が我々の知識を得ようが使おうが構わない、例え武器や兵器を作ったとしてもね……それが人類の総意ならばの話だ、見たところそうではなさそうだ、
    それに、あのメモリー板は私が故郷から預かった物、私はあの会社に渡したつもりはない」
ひより「そ、そっですスか……」
すすむさんが少し怒り気味になっている。ひよりが少し驚いている。
すすむさんは立ち上がった。そしていのりさんを見た。
すすむ「今度の土日は休診日にしておいてくれ、私は準備をしないといけない、先に帰る」
いのり「わ、分かった……予約はしないようにする」
すすむさんはそのまま店を出て行った。

 すすさんが出て直ぐにかがみがが話し出した。
かがみ「すすむさん……何時になく感情的になっているわね……姉さん、何か知っているの?」
かがみは帰るのを止めて座った。
いのりさんは少し話すのをためらった様にもみえたけど話し出した。
いのり「彼は昔の事故の責任を取りたいって……そう言っていた」
かがみ「どう言う事なの?」
いのり「……彼は、すすむはこの地球に来る時の調査船のパイロットだった」
すすむさんががこの地球に来たのって4万年前だった。その時の事を言っているのか。
ひより「まさかすすむさんはあの時……」
いのりさんは頷いた。
いのり「操縦ミスをしたみたいね、宇宙船が墜落した時、乗組員は全員無事だった、だけどメモリー板だけは見つからなかったみたい」
かがみ「4万年前のミスを未だに悔いているなんて……知らなかった、でも、そんなのもうとっくに時効だわ」
いのり「すすむはそうは思っていない」
かがみ「するとすすむさんも参加するのか……まなぶさんはどうなんだろう……」
いのり「すすむが関わるなって言っているみたい……」
かがみ「そう……」
かがみは立ち上がった。
かがみ「一応ここに居なかった人にもこの旨を話しておく、参加するもしないも自由、だけどそれはとても危険な事をするってことは自覚して、しかもそれで
    成功したとしても報酬は一切ない、失敗すれば命すら危ういのよ……分かったわね!!」
かがみは私に向かって話していた。私に言い聞かす様に……
そしてかがみの言葉を最後にこの会合は解散になった。

261 :こなたの旅P 6/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:41:10.61 ID:Zxa35hrs0
 私は思った。
神崎さんは最初からかがみがつかさの妹だって知っていたのかも。だからあの時つかさの手を強く握ってわざと怒らせて嫌われようとした。
でも、そんな細かいことはどうでもいいのかもしれない。神崎さんの目的が分かった。そっちの方が重要かもしれない。
彼女は捕らわれている真奈美とお稲荷さんの知識を納めたメモリー板の両方をあの貿易会社から助け出そうとしている。
どっちか一つでも大変なのに両方ともなんて……
でも考えてみればどっちか一つ残したって意味はない。やっぱり助けるなら両方ともになってしまうのかもしれない。
幸い元お稲荷さんのすすむさんが協力してくれそうだからもしかしたらなんとかなるかも。そんな淡い期待をする私だった。

 土曜日の夜。つまり神崎さんの家に行く前日。私は日直当番の日だったがつかさが代わりにやってくれると言うので一足先に店を出る準備をしていた。
つかさ「ねぇ、こなちゃん、本当に行くの?」
こなた「行くって……神崎さんの所?」
つかさ「うん、神崎さんは言ってたでしょ、覚悟が必要だって……それにお姉ちゃんもこなちゃんは行かないようにって何度も私に言うしね……」
そこまでして行かせたくないのか。
こなた「それならみゆきさんだってそうでしょ、それにすすむさんだって、彼は義理の兄だよ、多分ひよりも行くと思う、なんで私だけなの?」
つかさ「そうだけど……」
つかさはいつになく悲しげな顔になった。
こなた「もしかしてつかさもかがみと同じなの?」
つかさ「だって、こなちゃんは直接関係ないから……」
私はがっかりした表情にして見せた。
こなた「関係ないね、ふ〜ん、つかさにとって私ってその程度だったんだ」
つかさは慌てだした。
つかさ「ち、違うよ、私はこなちゃんが心配だから……」
そう言うのはだいたい想像できた。もうつかさとはかれこれ10年以上の付き合いだ。つかさがどう反応するかなんてだいたい分かってしまう。
こなた「もうそろそろこのゲームを終わらそうと思ってね」
つかさ「え、な、なに、ゲーム?」
つかさは目を大きく見開いて驚いた。私は頷いた。
こなた「つかさが始めたゲーム」
つかさ「私が……始めた?」
こなた「そう、勇者つかさは結婚して家庭を持ってしまったから代わりに私がこのゲームの続きをするよ、お稲荷さんの呪縛から皆を解き放つの」
つかさ「……こなちゃん……」
私は笑った。
こなた「ふふ、実はね、お稲荷さんの知識がどうかとか、人類の未来とかぜんぜん興味が無い、興味があるのは真奈美さん」
つかさ「まなちゃん?」
こなた「そう、つかさを180度変えてしまった真奈美さんに一度会ってみたくなった、私の目的はそれだけ、このゲームを終わらせてまた学生時代の時みたいに楽しく行こう」
つかさは笑った。
つかさ「学生の時って、こなちゃん今だって高校時代と全く変わっていないよ、それに私だって変わっていない……お姉ちゃんやゆきちゃんだって」
こなた「みゆきさんはあのまま変わってないね、かがみは凶暴なのはそのままだった」
つかさ「またそんな事言ってる」
つかさが笑った。その後、しばらく二人で話しに花を咲かせた。

262 :こなたの旅P 7/7 [saga sage]:2013/10/20(日) 19:42:30.98 ID:Zxa35hrs0
 話に夢中になりすぎてつかさの仕事がぜんぜん進まないか。それに私もそろそろ行かないと。
こなた「それじゃお先に失礼しますよ」
私は店を出ようとした。
つかさ「それじゃね、こなちゃん、がんばって……」
待て、本当にこれで良いのかな。私は立ち止まった。
こなた「神崎さんはああ言ったけど、気にすることなんかないよ、一緒に行こうよ、真奈美さんを助けたいんでしょ、さっさと戸締りしてさ、車で待ってるから」
つかさ「本当!?」
一瞬、すごく嬉しそうな顔をした。でも直ぐに首を横に振った。
こなた「どうして、私なんかよりつかさの方がずっと真奈美さんへの想いは強いよ、それさえあれば……」
つかさ「ありがとう、でもね、ひろしさんが言ってた、その想いが強いほど失敗しちゃうって」
こなた「そうかな……」
つかさ「何か、何かね作戦をしていて選択を迫られた時、そんな時、間違った方を選んじゃうって、そう言っていた、だから神崎さんの言っている事は正しいって……」
こなた「そんな選択なんて無いよ、ギャルゲーじゃあるまいし、作戦通りやってりゃ問題ないよ」
つかさ「……こなちゃんはすぐゲームに例えちゃうね……」
こなた「だって置き換えた方が分かり易い……って、そんな話なんかしていない!」
つかさ「私って運動音痴でしょ、それに要領だって悪いし、すぐにテンパッちやうでしょ……無理だよ……」
これじゃ昔のネガティブつかさに逆戻りじゃないか。
こなた「そうかな、何度も言うけどたかしにお稲荷さんの秘薬の作り方を教えてもらったのはどうなの、ひろしと結婚までしてるじゃん、なにより真奈美さんと友達になれたのは
私やかがみだって、うんん、他の誰でも出来ることじゃない」
つかさ「……」
つかさは黙って何も言わなくなった。神崎さんに来るなと言われたのがよほどショックだったのか。それとも私の励ましが逆効果だったのか。
どちらにしてもこんな状態で神崎さんの家に行ったとしても帰されるだけかもしれない。諦めるか。
もうつかさは充分すぎるくらいに活躍してきた。
こなた「それじゃ、お先に……」
つかさ「……神崎さん、まなちゃんじゃなかったの……」
ぼそっと小声だった。
こなた「そんな都合よくいかなかった、残念だね」
つかさ「……お疲れ様」
私は店を出た。

 いったい神崎さんの作戦ってどんなものなのだろう。資料室の時みたいにはいかないのは確かだ。
つかさやかがみにたいに神崎さんの家に行って突然追い返されたりしたら……
行ってみないと始まらないか。
私はそのまま駐車場に向かった。

つづく
263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/10/20(日) 19:43:20.07 ID:Zxa35hrs0
以上です。

すぐまとめるので 報告は避難所のみとします。
264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/11/08(金) 11:54:30.47 ID:YjitqEpTo
265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/11/23(土) 06:37:13.53 ID:u3YGD9hd0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

4レスくらい使用します。
266 :こなたの旅Q 1/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:40:05.15 ID:u3YGD9hd0
Q

 駐車場に向かう途中、つかさの店を横切る。もう辺りはすっかり暗くなっている。街灯がつかさの店を微かに照らし出す。そこを通り過ぎようとした時だった。
つかさの店の入り口に人影があった。店は臨時休業なのに、いや、普段だったとしてもとっくに閉店時間。あやしい。怪しすぎる。もしかして泥棒……留守なのをいいことに。
これは見逃せないな。
私は店にゆっくりと近づいていった。人影は立ち止まって動く気配はなかった。
近づいていくと目が慣れてきたのか人影の姿が見えてきた。どうやら店の入り口の臨時休業の張り紙を読んでいるみたいだった。
肩を落としため息をついた様に見える。後姿だからはっきりは分からない。つかさの店のお菓子目当てのお客さんなのかな。こんな時間に来るなんてよっぽどのファンだな。
人影が突然振り返った。私が店の前に立っていたのでバッタリと目が合った。
人影「うぁ!!」
こなた「ひぃ!!」
二人とも奇声を上げた。突然だったのでお互いに驚いてしまった。振り返って顔がはっきりと見えた。初老の男性だ。どこかで見たことがあるような……
男性「び、びっくりした……ん、あ、貴女は……?」
こなた「すぐ隣のレストランの店員ですけど……こんな時間に何かあったの?」
男性「こ、これは済まない、いつ再開するのか確認しにきましてね……帰り道だったもので……」
こなた「ここの店主は私の店で臨時に手伝ってもらっていて……」
男性「臨時……ですか?」
こなた「うちの店の店長が入院しちゃって……」
男性「入院ですか……それは大変ですね」
紳士的な対応だな……まてよ……この人……思い出した。まなみちゃんの演奏会前、つかさの店に行った時最初に来たお客さんだ。つかさがチケットを渡したから覚えている。
こなた「入院って言っても病気じゃなくて妊娠してちょっと調子を悪くしただけなので……もうすぐ退院するかな、それまでは休業すると思いますよ」
男性「そうですか……」
肩を落として残念そうな顔をした。
つかさ「どうしたの、こなちゃん?」
私の後ろからつかさの声がした。つかさが日直の仕事を終えて店から出てきたのか。私は振り返ろうとした。
男性「あ、あぁ、久しぶりですね!」
男性がつかさに駆け寄った。
つかさ「あ、どうもです……ご無沙汰しています」
やっぱりつかさと男性は顔見知りのようだ。この男性はつかさの店の常連客だな。
男性「いやぁ〜もう店仕舞いをしてしまうんじゃないかって心配しましたよ」
つかさ「すみません、知り合いの店の手伝いをしていますのでもう暫く休ませて頂きます」
男性「あぁ、さっきこの方から聞きました、すぐ隣の店なのですね、安心しました」
男性は何かつかさに会うのを待ちかねていたように喜んでいる。常連客にしては少しテンションが高すぎる。つかさのファンなのか……ま、まさか不倫なんて……ことは……
男性「ところで、演奏会、聴きましたよ、素晴らしかった……」
つかさ「あ、ありがとうございます」
つかさはこの時になって初めて笑った。
男性「貴女のお子さん……まなみさんって言いましたね……」
男性は胸ポケットから何かを出してつかさに差し出した。名刺だ。つかさはそれを受け取った。つかさは名詞を見た。
つかさ「……芸術大学……え……大学の先生?」
男性「この店から奏でるピアノの音……素晴らしい、是非私達の小学部に編入していただけませんか、私が特別推薦します、本格的にピアノを、音楽を学ばせたいと思いませんか?」
……凄い、みなみの言う通りになった。みなみはもうまなみちゃんを教えられないって言っていたし。いい機会かもしれない。
つかさは喜びながらも戸惑いの表情をした。
男性「……失礼しました、こんな夜遅くする話ではありません……つい興奮してしまって……即答できないですよね、日を改めてお伺いいたします」
男性は深々と頭を下げると店を離れて行った。つかさは名詞を胸に当てて男性が見えなくなるまで見ていた。

267 :こなたの旅Q 2/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:41:19.81 ID:u3YGD9hd0
こなた「このリア充め!!」
私の声に驚いたつかさは私の方を向いた。
つかさ「こなちゃん……私……」
こなた「なにそんな困った顔しちゃって、すごいじゃん、私も素直にそう思うよ、クラッシックやっていればどんなジャンルの音楽にだって対応できるって言うしさ」
つかさは何も言わない。外野の私が言っても始まらないか
こなた「まぁ、私がどうこう言ってもしょうがない、家族で話し合って決めるといいよ……それじゃね」
私は駐車場に向かって歩き出した。
つかさ「こなちゃん……」
私を呼び止めるつかさ。私は立ち止まって振り向いた。
こなた「なに?」
つかさ「こなちゃんは運命って信じる?」
こなた「こりゃまた重い質問を……」
つかさはいたって真面目な顔だった。占いの雑誌を見ている時のような遊び半分で聞いているのではないのは直ぐに分かった。
つかさ「私……あの時、一人旅なんかしない方が良かった……」
こなた「もし、つかさが旅に出ていなかったら、かがみの病気は誰が治したのかな」
つかさ「お姉ちゃんの病気……」
私は頷いた。
こなた「つかさが旅に出ていなかったらお稲荷さんの秘薬は手に入らなかった、今頃かがみは墓のなかだよ、そんなのやだね」
つかさ「……」
つかさは何も言ってこない。
こなた「つかさが真奈美さんに殺されていたら……さっきと同じ理由でかがみも生きていない……二人とも居ない世界なんて……それこそバットエンドだよ……
あの時、どうして旅に出たの、行かないって選択もあったんだよ」
つかさ「分かんない……」
こなた「分かんない、だけど旅に出た……そして今、この世界がある、つかさの気まぐれの選択、いつでも在りそうな選択でこんな世界になった、その選択で
    人の生死が左右されて、人生まで変わっちゃう……」
つかさ「それが運命なの?」
こなた「う〜ん、分かんない、でもちょっとした事で変わっちゃうのが運命だよ、多分、だからつかさもそんな事言わない」
つかさ「そうだね、そうだよね……」
つかさに笑顔の表情が戻った。
こなた「高校を卒業してそのまま音信不通なったりするよね、結婚なんかして子供が出来たりすると尚更だよ、でもつかさは違った、今もこうして友達じゃん」
つかさ「と、突然どうしたの、でもそれは私だけじゃないよ、お姉ちゃんやゆきちゃん、あやちゃんだって……他にも……」
こなた「うんん、私にとって始まりはつかさだった」
つかさ「そうかな……?」
つかさとこんな話をするなんて。でも言っておきたかった。
こなた「さて、もうそろそろ行かないと」
つかさ「あ、ごめん、足止めさせちゃって」
こなた「つかさ」
つかさ「なあに?」
こなた「い、いや、なんでもない……」
ここは「さよなら」じゃないよ。うん。へんなフラグは立てない。
自分にそう言い聞かせた。
 つかさの場合、過去の出来事だから選択肢の分かれ目が分かるし予想もできる。だけど私の場合は。これから起きる事なんて予想なんてできない。
それにどこに選択肢があるなんて分からない。気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない。その場合、自分の意思とは無関係に選択されてしまう。
ゲームと違ってリアルはやり直しができないから厄介だよ。
まぁゲームの場合でも最初に選択したのが大抵バットエンドなのがだが……これが運命ってやつなのかな……
ふふ、つかさの言う通りだ。私ってすぐにゲームに例えちゃうな……
つかさ「どうしたの?」
つかさが心配そうに私の顔を覗き込む。
こなた「いや、なんでもない」
あとはリアルラックを信じるか。
こなた「それじゃ行って来る」
つかさ「行ってらっしゃい……」

268 :こなたの旅Q 3/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:43:28.98 ID:u3YGD9hd0
 私はつかさと別れた……あれ?
つかさが私の後をついて来る。やっぱりなんだかんだ言ってもつかさも参加したいのだろう。でも神崎さんが言うように今回ばかりはつかさは参加しない方がいい。
つかさのもっとも苦手な「アクション」が入る可能性が高いから。今までの様にはいかないのだよ。つかさ
つかさはそれでも私の後を付いて来る。少し足を速めた。つかさも私に合わせて速度を上げる。未練だ。未練だよ……つかさ
でもつかさの気持ちも分からないわけじゃない……真奈美との再会。それに命を助けられた恩返しもしたいだろう。私は決めた。心を鬼にしないとだめだ。
私は足を止めた。ここははっきりと言っておこう。友人として……
つかさも足を止めた。私は振り返りつかさの顔を見る。キョトンと私を見ている。
こなた「つかさ、付いてきちゃ駄目だよ……」
つかさ「どうして?」
面と向かっているとやっぱり言い難い……でも言わなきゃ
こなた「つかさの気持ちは凄く分かる、だけど今度は……私に任せてくれるかな」
つかさ「任せるって……私も行かないと」
つかさが珍しく食い下がってきた。
こなた「私は友人として言っているんだよ……」
つかさ「でも、私も行かないと……」
どうしよう、つかさがこんなに食い下がるなんて。
こなた「かがみだって来ないんだよ……だから」
つかさ「うん、だから私も行かないと……駐車場……」
こなた「へ?」
駐車場って、つかさは何を言っている。
つかさ「私も車に乗って帰るから……駐車場まで一緒に行こう」
……そういえば私とつかさの車は同じ駐車場に停めてある。
こなた「……神崎さんの所に付いて行く気じゃなかったの?」
つかさはクスリと笑った。
つかさ「ふふ、もう私はこなちゃんやゆきちゃんに全て託したから……」
つかさは切り替えが早いな。少しは任される私の身になってほしい。
私は駐車場に向かって歩き出した。
こなた「そんなに託されてもねぇ……でもさ、かがみがあんなにあっさりと神崎さんの言うとおりに引き下がるとは思わなかった、もう少し反撃すると思ったんだけどね」
つかさ「うん……私もそう思って聞いてみた……ひとしさんや子供達の事を思うとこれ以上踏み出せなくなっちゃったって……そう言ってた」
こなた「ふ〜ん、それじゃさ、つかさも同じなの?」
つかさ「分かんない……」
つかさは夜空を見ながら少し早歩きになった。質問を変えてみるかな。
こなた「けいこさんの依頼、今だったらどう、受けてた、それとも断ってた?」
つかさは夜空を見ながら立ち止まった。
つかさ「あの時の私はひろしさんに逢いたくて……それしか考えていなかったから」
こなた「ヒュ〜お惚気、おのろけ!」
つかさの顔が赤くなった。
つかさ「だ、だって、こなちゃんが質問したから答えただけだよ……」
そう、今と昔じゃ状況が違う。つかさやかがみが変わった訳じゃない。廻りが変わった。
こなた「そうだった……大切なものが出来たんだね……私は独り者だからお気軽だよ、どんな危険な事だって……」
つかさ「危険、駄目だよ」
つかさが珍しく言い寄ってきた。
こなた「だめって、これからそう言う事をするから」
つかさ「でも、気軽なんて言っちゃだめ、こなちゃんに何かあったらおじさんはどうするの」
お父さんか……
つかさ「ゆたかちゃんは、成実さんは、うんん、身内だけじゃないよ、お姉ちゃんやゆきちゃんだって……私だって……私だって」
暗がりでよくは分からないけど……つかさの目から……涙? まさか。やだな死亡フラグなんて立てないでよ……
私はつかさを友達と思ってはいたけど趣味も違うし、遊ぶって言ってもゲームはいつも見ているだけで参加してこなかった。ゲームに限って言えばかがみと遊んだ方が多いかも。
それに学生時代から何か特別な事をした覚えも無い。確かに仕事を一緒にした。今だってこうして会っているけど。心配しただけで涙を流せるなんて……
皆との会合だって私やかがみが決めてきた。つかさはかがみやみゆきさんがが来るからそれに付いて来るって感じだった。
私と下らないお喋りをいつもして。それだけで……何故。
私が死んだら泣いてくれるのかつかさは……
こなた「ちょ、何も戦争に行くわけじゃあるまいし……大げさだよ……」
つかさ「だって、だって……」
私の為の涙か……別に嫌な気はしない。それどころか何故か勇気が沸いてくる。
これが友情ってやつなのか……初めて友情を感じた。かがみでもみゆきさんでもない。つかさからなんて。
でも……女の友情も捨てたものじゃない。
こなた「はいはい、リア充は早く帰ってさっきの事を話さないとね、大学からのスカウトの話をさ」
つかさは人差し指で瞼を擦って涙を振り払った。そして笑顔になった。
つかさ「うん」
なるほどね。たかしがつかさに秘薬の作り方を教えた理由が分かったような気がした。
私は車に向かった。
つかさ「待ってこなちゃん……」
こなた「ん、まだ何かあるの?」
つかさ「これから銀行に潜入して盗みにいくんだよね……」
こなた「……まぁ、まだ何も話していないけど、そうなるだろうね……」
つかさ「悪いことしちゃうんだ……他に方法は無いの、こなちゃんを悪人にしたくない……」
心配そうな顔をして私を見ている。
こなた「う〜ん、確かに他人の物を盗むのは悪いことだけど、もともとメモリー板はお稲荷さんのものだから」
つかさ「で、でも……」
269 :こなたの旅Q 4/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:44:55.59 ID:u3YGD9hd0
更に心配そうな顔になるつかさ。
こなた「私はもう悪人だよ、元気だま作戦を考えたのも実行したのも私だから、例え少しずづかも知れないけど他人に黙ってお金を盗んだ事には変わりはないからね」
つかさ「私はあれを悪いことだとは思わない、お姉ちゃんだって……」
こなた「そう、だから今回も同じ、良い事の為に悪いことをするのは許されるのだよ、つかさ」
つかさ「え……良いことの為に悪いこと……難しくて分からないよ」
こなた「例えば勇者が勝手に他人の家に入ってアイテムをゲットするのは許されるのと同じ事」
つかさ「え、あれって許されるの?」
こなた「うん、でも、イベント選択次第で別のフラグが立つと捕まっちゃう事もあるけどね」
つかさは笑った。
つかさ「ふふ、またゲームの話だね、こんな時に……でも、こなちゃんらしい」
こなた「なんて冗談、私も何が悪くて何が良いのかなんて分からない、もしかしたら悪いことかもしれない……でもね、誰も傷つけないのなら良いんじゃない?」
つかさ「こなちゃっていろいろ考えているんだね」
こなら「これは神崎さんが言った事をそのまま言っただけ、だけど私もそう思う」
つかさ「誰も……傷つけない……うん、私もそう思う」
つかさと私の意見が一致した。そういえばつかさとこんなに意気投合したのは久しぶりかも。ちょっと嬉しい。
でも、つかさの表情が少し硬い。やっぱり私が神崎さんの所に行くのが心配なのかな。
それなら親友として少し安心させるかな。
こなた「はるか四万年前の遺跡をわざわざヨーロッパからこの日本にもってきた、神崎さんの登場、そして潜入取材に真奈美さんの影がちらほらと見え隠れ……これって偶然だと思う?」
つかさ「え、突然どうしたの?」
こなた「これは偶然じゃないよ、きっとこれはつかさの言う運命ってやつじゃないかなってね……きっと何か起きるよ」
つかさ「何かって……何?」
こなた「分からないけど……きっと良いことだよ」
つかさは喜んで笑った。
そんなのは分かるはずはない。奇跡って言いたいけど言えないよ。
でもそれは私ができる精一杯だよ。
私は車に乗り込んだ。そしてつかさも自分の車に乗った。つかさが車の中から手を振った。私が手を振って答えるとつかさの車が走り出した。
車は駐車場を出ると柊家宅へと向かって行った。
さてと、私も向かうとするかな。神崎さんの所に。

 
つづく
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/11/23(土) 06:47:06.15 ID:u3YGD9hd0
以上です。

最近時間が無くて間隔が空いてしまいます。

本当はもう少し先まで書きたかったのですがここまでが精一杯。

この後すぐにまとめるので報告は省略します。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/23(土) 16:01:59.26 ID:VJpVIyU5o
過疎ってる中お疲れ
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/11/23(土) 20:07:01.31 ID:u3YGD9hd0
見に来ている人がいてよかった。

それだけでも続けてけるものです。

273 :過疎化対策 [saga sage]:2013/12/14(土) 21:29:21.27 ID:xRmwKPtU0
保守

確かにこの過疎率は凄いな。

ちなみにコンクールするって言ったら参加する人います?

自分は参加しますけど。どうでしょう?
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/31(火) 13:35:50.69 ID:JRuehyPV0
それでは「こなたの旅」のつづきを投下します 7レスくらい使用します
275 :こなたの旅Q-2 1/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:39:44.25 ID:JRuehyPV0
Q−2

 私はあの時、駐車場に行く時、つかさが私の後を付いて来て一緒に行くと思ってしまった。でもそれは直ぐに分かった。
つまり私はつかさが私と一緒に神崎さんの所に行って欲しいと思っていたって事。どうして……
つかさに今回の作戦は不向きだって。だから私は駐車場で別れる時誘わなかった。
参加しても重要な場面でオロオロして何も出来ないつかさの姿が容易に想像できる。でも私は来て欲しいと思っていた。
友人だから。一緒に仕事をしていたから。それとも一人じゃ寂しいから。
違う。そうじゃない。どれも違う。
 つかさが旅から帰って来たその時から全てが変わった。私はお稲荷さんの世界を知った。そしてその世界に入った。
その中でのつかさは別人だった。それでいて高校時代の彼女の性格はそのままだった。天然と優しさだけでまさかあそこまで出来るなんて……
もっともつかさ自身は出来る出来ないなんて考えてもいなかったに違いない。その時その時が精一杯……それは今も同じか……
 それにしてもコミケ事件の時、かがみが私を殴ろうとした時、つかさは私の前に立ってかがみを止めた。
あの時のかがみの怒りっぷりからしてつかさも叩かれていたかもしれない状況だった……それでもつかさは私の前に立った。
それはつかさが変わったと思った始めての出来事だった。正直つかさがかっこいいと思ってしまった。
つかさは真奈美の真似をしただけだったかもしれない。それでもおいそれと出来ることじゃないよ。
それから私の……いや、皆のつかさに対する見方が変わった。
勇気……そう。RPGで言えば勇者だよ。
つかさに一番相応しくないもの。つかさは真奈美との出会いでそれを得た。
笑っちゃうね。
でも……
はたして私はつかさの代わりができるかな……

 どのくらい考えていたのか。気づくと高速道路の出口に近づいていた。
276 :こなたの旅Q-2 2/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:41:13.23 ID:JRuehyPV0
 少し遅れて出たけど神崎さんの家には午前中には着いてしまった。きっと誰よりも早いに違いない。家の周りには私の車以外停まっていない。
寄り道をして時間を潰しても良かったかもしれないけどそんな気にはなれなかった。いつも待ち合わせの時間に遅れる私がこんな時には一番だなんて。
玄関の呼び鈴を押した。
ドアから出てきたのは神崎さんだった。正子さんがいつも出てきたのに。
あやめ「……泉さん、早いじゃない、貴女が一番、他に誰が来るの」
こなた「さぁあ、分からないよ、少なくとも柊夫婦と小林夫婦以外は来ると思う」
あやめ「ふふ、聞いていないのか、貴女らしいと言えばそれまでね、入って」
家に入ると私は辺りを見回した。神崎さん以外の人の気配を感じない。
こなた「正子さんは?」
あやめ「母は用事があって出かけている、これからの会合の話は誰にも聞かれたくないから好都合」
自分の母親にも話せないだなんて……とは言え、私もお父さんに話していないか。
こなた「ふ〜ん、わざわざそれに合わせたんだね」
あやめ「いや、偶然、でも母が居たなら別の場所でするつもりだった」
こなた「あの神社でするつもりだった?」
あやめ「その通り、さすが……居間で休んでいて、お茶を入れてくるから」
こなた「う、うん……」
この人、正子さんが居ないのは本当に偶然なのかな。
まぁ、本当にそうだとしても正直にはなすなんて事はなさそうだ。彼女の本当の目的は何だろう。
それはこの前の私達だけの会合で話し合った。結論は出なかった。それはそうだ。他人の思考なんて分かるわけがない。だけど今なら分かる。直接聞けばいい。
神崎さんがお茶を持って居間に入ってきた。
あやめ「まさか泉さんが一番に来るとは思わなかった」
こなた「まぁ、学生時代は授業も遊びも遅刻の常習犯だったけどね」
神崎さんは笑いながらお茶を私の前に置いた。
あやめ「へぇ〜それは初めて聞いた、今の貴女からは創造も出来ない、社会人になって変わったのかしら、それとも田中さんの教育のせいかしら」
かえでさん……
そういえば入院してから一回もお見舞いに行っていなかった。つかさの話では近々退院するって言っていたっけな……退院してもお腹が大きくなってきたから
レストランの仕事は当分できそうにない。だから今後もつかさが手伝ってくれるって……
あやめ「泉さん?」
こなた「えっ、あ、ああ、そ、そうだね、かえでさんが厳しかったのは確かだよ、うんうん」
退院すまでにお見舞いにいけるかな……なんてらしくない事を思ってみたりする。
こなた「それより、私の知らない間にかがみの写真をよく撮ったね、あの効果は絶大だった、かがみが参加を諦めるなんてよっぽどだよ」
神崎さんは少し考え込んだ。
あやめ「ああ、あれね……あれはたまたま泉さんの様子を見に行ったらその場面に遭遇しただけ」
こなた「それに尾行されていたなんて、やっぱりかがみは有名人なんだね」
神崎さんは目を閉じて微笑んだ。
かえで「尾行……ふふ、小林さんは最初から尾行なんかされていない」
私は耳を疑った。
こなた「……え……まさか嘘をついて……」
あやめ「敏腕弁護士なんて言っている割にはこんな簡単な手に引っかかるなんて、たいしたこと無い、妹の柊さんもそう、少し脅しただけですぐ引っ込んでしまう弱虫、
    つまり腰抜け姉妹、貴女も大変ね、こんな姉妹のお守りをしないといけないなんて」
いくらなんでも酷い。ここまで私達が、いや、つかさやかがみがどんな想いでここまで来たのか。
『ばかにするな〜!!!』
そう叫ぼうとした瞬間だった。脳裏に神崎さんがつかさの手を強く握った場面が浮かんだ。
同じだ……私を怒らそうとしている。私は怒鳴るのを止めた。
あやめ「……どうしたの、何か言いたいことはないの、それとも何も言えないの、貴女も腰抜けだったのかしらね、類は友を呼ぶとはよく言ったもの」
追い討ちをかけるような罵声。理由は分からないけど神崎さんは一人で解決しようとしている。それが分かった。それが分かってしまえば何も怒る気がしなくなった。
それどころか健気に思ってしまう。
こなた「ふふ……」
私が笑うと神崎さんは驚いた表情を見せた。
あやめ「な、なにが可笑しいの……」
こなた「私を怒らせて帰らせるつもりでしょ、私が帰って他の人にも同じような事を言って怒らせて帰らせるの?」
神崎さんは更に驚いたのかそわそわしだした。
あやめ「怒らせるって……本当の事を言ったまでで……」
こなた「こう言うのを何て言うのかな、ツンデレともヤンデレとも違うし……」
あやめ「ツンデレって、ふざけないで、私は本気で……」
私は首を横に振った。思い出した。神崎さんの今までの行動を。
こなた「もういいよ、確か前にも言っていたよね、一人でしたいとかって、分かっちゃった、つかさの時やかがみの時もそうだった、私の時も資料室の直前で別れたでしょ」
神崎さんは苦笑いをした。
あやめ「……あからさま過ぎたかしら」
こなた「もうばればれ、私には効かないよ」
伊達にホール長やっていない。お客さんの顔色を見て時には先を読まないといけないからね。神崎さんの場合声に感情が入っていなかった。
あやめ「……そのようね……」
こなた「なんでそんな事をするの?」
あやめ「それは私情的なものだから……これ以上巻き込みたくなかった、それが理由」
277 :こなたの旅Q-2 3/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:42:30.91 ID:JRuehyPV0
 私情ってプライベートって意味なのか。私は笑った。
こなた「私情ねぇ、そんな事言ったらこれから来る人だって同じようなもんだよ、みゆきさんとすすむさんはお稲荷さんのメモリー板の奪還が目的だよ、すすむさんの理由は
    分からないけどみゆきさんに限っていえばお稲荷さんの知識が知りたいからだよ、それにひよりは自分の作品のネタに使う取材を兼ねている、みんな私情だよ
    それで……その私情って何?」
あやめ「……だから私情」
口を噤んで話そうとしない。そんなに話したく無い事なのか。他人のプライベートの内容に触れない神崎さん。これ以上追及するのも気が引ける。
こなた「分かったもうこの話は止め」
神崎さんはボソっと小さな声で話した。
あやめ「……友との約束の為……」
こなた「友って真奈美さんの事?」
神崎さんはなにも言わず頷いた。そうか神崎さんは真奈美を助けるのが目的だったのか。それにしてもその約束ってどんな約束だったのだろう。
あやめ「それより泉さんは何故私の協力をする、特に今回は貴女に何のメリットも無いでしょ、報酬はもう出せない」
こなた「報酬はまだ手を出していないよ、私はお金じゃ動かないから」
あやめ「それじゃ何故……」
何故って……そう言われると何故だろう。
こなた「なんかぴ〜んときた、インスピレーションってやつかな、面白そうだしね、お稲荷さんの世界なんてゲームじゃ体験できない」
あやめ「選択……選んだの」
こなた「選択なんかしていないよ、選んだのはつかさ、私はそれに便乗しただけ」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「いいえ、泉さんは選んだ、柊さんの選択に付いていくって選択をね」
こなた「それ違うから、一番楽だからそうしただけで選んでなんか……他に選択肢なんかなかった」
つかさにレストランで働かないかなんて言われた時だって他に行くところなんかなかった。
神崎さんは立ち上がった。
あやめ「そうかしら、選択肢は無数にあったはず、それでも貴女はそれを選んだの」
こなた「そうかな……」
あやめ「現実はね、ゲームに出てくる選択肢とは比べ物にならなくらいの選択の場面と選択肢がある、例えそれが無意識に近いとしてもね、泉さんも私もその他の人も
    それらを選んでここまで来た、それにね、何日もかけて悩んだ選択より無意識に選んだ事の方が後に重大な結果を生じるの、良い事も悪いことも含めてね」
こなた「まさか、そんなのあるはずないじゃん……」
あやめ「当時の陵桜学園に何百人の生徒がいたの、クラスに何十人いたの、泉さんはその中から柊さんを親友として選んだ」
こなた「選んだって言うよりたまたま近くに居たから……」
あやめ「それだけ、それだけで親友になった?」
……それだけじゃない。だけど何であの時友達になれたのかと言われても直ぐには答えられない。
あやめ「理由を忘れるくらい無意識に選んだ、そしてその後の泉さんの人生は大きく変化してく、私の様にね」
こなた「神崎さんの様にって……真奈美さんとの出会いの事を言っているの、狐だった真奈美さんを助けた事を言っているの?」
あやめ「あの時、何もしないで素通りする事だってできた……」
こなた「それでも助ける方を選んだ……」
神崎さんは急須を片付けて居間を出た。
278 :こなたの旅Q-2 4/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:43:34.18 ID:JRuehyPV0
 私はつかさを選んだ……
確かに結果的はそうかもしれない。それならつかさだって私を友人に選んだ事になる。
何時からつかさと友達になった。確か高校一年からクラスは一緒だった。だけど実際に話をしたりするようになったのは二年からだったような気がする。
どうして話すようになったのかな……
思い出せない。気に留めないほど何気なかったに違いない。
そもそも陵桜学園に入らなければつかさに逢えなかった……私は陵桜学園を選んだ……数ある高校から、どうやって……
それは覚えている。お父さんとの賭けで……無意識ではないけれど神崎さんの言うように簡単に決めていた……
あんな簡単に決めていた。
つかさはどうやって決めた……
確かかがみが陵桜を受験するから……そう言っていたのを覚えている。
それならかがみはどうして……前に言っていたけどよく覚えていないな……もしそれが誰かのもしくは何かの影響なら……選択の連鎖……
……何処かの誰かが選択が変わればその後の出来事は変わってしまう……ゲームのエンディングの数なんか比較にならない。
私も選んでいた……そんな事って……私の選択……これから私はどんな選択肢があって何を選ぶのかな……
『パンパン!!』
手を叩く音がした。私はハッとして神崎さんを見た。呆れ顔の神崎さん、少し笑っているようにも見えた。
あやめ「何真剣になって考えているの、そんなのは寝る前に少し考えればいい、それよりもっと考えなきゃいけない事があるでしょ?」
寝る前って……こんなに考えさせたのは神崎さんじゃないか……いや、これも選択なのかな……もういい、考えると無限ループに入りそうだ。
暫く忘れよう。神崎さんの問いに私は答えた。
こなた「……貿易会社の銀行……」
あやめ「何とかしないと」
こなた「え、何か策があるんじゃなおの?」
あやめ「策なんかない……」
こなた「ちょ、この前あんなに息巻いていたのに〜」
あやめ「私一人なら策はある、多数だと作戦の変更が必要」
こなた「それじゃその一人の時の策を教えて」
あやめ「それは……」
『ピンポン〜』
呼び鈴の音がした。
あやめ「どうやら参加者が来たみたいね……」
神崎さんは玄関に向かった。何だろう。作戦を話したくなかった様な素振りをみせたけど……気のせいかな。

279 :こなたの旅Q-2 5/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:44:40.19 ID:JRuehyPV0
 居間のドアを神崎さんが開けるとひよりが部屋に入ってきた。
ひよりは私を見ると驚いた顔になった。私が来たのを驚いたのか。時間よりも早く来たのを驚いたのか……
ひより「外に停めてあった車はやっぱり先輩のでしたか、それにしても先輩が時間よりも早くくるなんて……」
後者の方だったか。やっぱり学生時代のイメージは払拭できないみたい。これでもかえでさんの所で働くようになってから遅刻は滅多にしなくなったのに。
こなた「そう言うひよりもかなり早くない?」
ひより「こんなチャンスはそんなにないっス」
チャンス……ネタにする気まんまんだ。神崎さんが居間のドアを閉めた。来たのはひよりだけなのか。
こなた「ゆーちゃん、ゆたかは?」
ひよりは暫く間を空けてから話した。
ひより「彼女は来ないっス」
ゆたかには特に誘いはしなかった。やっぱり危険なミッションになるのは明らかだから。ゆたか本人の意思で決めてもらいたかった。
こなた「ゆたかは来ないのは正解かもね、ゆたかも色々あったみたいだし」
ひより「まぁ〜お稲荷さんの件に関してはいろいろあったけど……それだけじゃなくて……」
ひよりがもったいぶっている。珍しい。なんだろう。
こなた「他に何があるの?」
ひよりは待っていましたとばかりに話し出した。
ひより「実は……私達の作品の映画化の話が出ていまして……その話し合いがあるのでゆたかを責任者にしたから忙しくて……」
こなた「映画化……映画化だって、そ、それで……」
こなた・あやめ「もちろんアニメでやるんでしょうね!?」
気づくと私と神崎さんは身を乗り出してひよりに迫っていた。ひよりは一歩下がって引いた。
ひより「ま、まだそこまでは決まっていません……スポンサーとかの意向もあるので」
神崎さんは私よりもさらに前に一歩出だ。
あやめ「漫画を映像化するなら迷わずアニメにする事、それ以外の選択肢はない、今までそれで失敗した作品が幾つある、漫画で描かれているキャラクターと一致する俳優が
    どれほど居ると思っているの、それに作品の世界観を表現するのは実写じゃ難しい」
神崎さんの言葉は私の言いたい事をほぼその通りに代弁しているようだった。私は腕を組んで何度も頷いた。
ひより「は、はい、仰る通りです……私も個人的にはそう思いますけど……」
はっきり言わないひよりに痺れを切らせて話し出した。
あやめ「それに貴女達の作品のキャラはどれも個性的で現存する俳優に……演じられる人なんか……私が知る限り……」
神崎さんは話すのを止めて私の方を向いて私の顔をじっと見た。
あやめ「運動神経抜群、それでいて……オタクで……背は小さい……悪戯好きな……」
こなた「ほぇ?」
私は首を傾げた。神崎さんは再びひよりの方を見ると私を指差した。
あやめ「登場人物、もしかして……泉さんがモデルじゃないでしょうね、悪戯好きを除けば泉さんそっくりじゃない」
ひより「……いやぁ、やっぱり分かってしまいすね、身近な人をモデルにするのは鉄板っス、キャラがブレないし……それに泉先輩は悪戯好きでした」
好きでしたじゃないよ、今だって好き。
あやめ「それじゃ、友人の双子の姉妹って?」
ひより「……お察しの通りです……」
あやめ「……お金持ちで、歩く知恵袋の友人も出てくるでしょ……あれって……」
こなた「それはみゆきさんだね」
あやめ「……ふ、ふふ、ふははは、まさかとは思っていたけど……実在する人物をモデルに……はは」
神崎さんは笑い始めた。
あやめ「ふふ、やられた、通りで……初めて会った時からそうだった……初めて会ったのに何処かで会った様な気がしていた……まさか実在していたなんて」
ひより「あの〜私の、私達の作品をご存知で?」
こなた「知ってるって言うか、ファンでしょ、この前のサイン会のサインも部屋に飾ってあったし」
ひよりは嬉しそうな笑顔になった。
ひより「いやぁ、神崎さんの様な人に気に入ってもらえるなんて……光栄です」
あやめ「貴女達の作品が素晴らしい、取り敢えず映画化おめでとう」
ひより「ありがとうございます……」
ひよりと神崎さんは握手をした。
『ピンポーン』
呼び鈴の音が響いた。
あやめ「また来た様ね……」

280 :こなたの旅Q-2 6/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:46:36.52 ID:JRuehyPV0
 ひよりが来てから30分もしない内にメンバーは全て揃った。
私にみゆきさん、ひより、佐々木さん夫婦……神崎さんを入れて5人が集まった。
一番驚いたのはいのりさんが来た事。すすむさんは来るのは分かっていたけどまさかいのりさんまで来るとは思わなかった。彼女はすすさんの参加するのを反対していた。
すすむさんはこの地球に来る時のパイロットだったって話は聞いたけど……いったい何があったのだろう。
あやめ「時間が来たようね、もう参加者はいないとします」
神崎さんは皆を一人、一人、見回した。
あやめ「……これから話をするのはとても危険な話、下手をすれば犯罪者になるかもしれない、その覚悟は出来ていると判断してよろしいですね」
こなた「それはこの前いったじゃん、みんなわかっているよと思うよ、私は覚悟できてるよ」
他の皆も頷いた。
あやめ「そうだった、でもやるからにはそんな事にはならない様に万全を尽くすつもり、皆もそのつもりでお願いします」
皆は頷いた。
こなた「それで、今回の最終目的は、真奈美さんの救出、それともメモリー板どっちなの」
あやめ「……真奈美の救出を最優先にしたい」
ひより「あの、メモリー板の大きさはどのくらいですか?」
すすむ「名刺より少し大きいくらいだ、重さは1グラムあるかどうかだ」
ひよりは少し考えた。
ひより「するとスマホくらいの大きさ……真奈美さんは人間になっていると仮定するとどう考えても救出の方が難しいっス……どうやって隠して脱出するか……」
すすむ「仮に彼女が生きているとしたとしても人間になっている可能性はないだろう」
ひより「……どうしてです、現にすすむさんだって人間になっているじゃないですか?」
すすむ「この地球に死ぬまで居ると決めるまではそうはしない、彼女を監禁するような人間しか回りに居ない環境で人間になるなんて在りえない」
ひよりは腕を組んで考え込んだ。
こなた「真奈美さんがお稲荷さんのままだったら隠すのは難しくないよ、狐になれば犬用のキャリーバックを持っていけば誤魔化せると思う」
『パン!!』
ひよりは片手を握ってもう片方の手を叩いた。
ひより「それはいい考えじゃないっスか、どうです皆さん?」
皆は何も言わない。
こなた「でもね〜あの貿易会社の25階って言っても1フロワーで何店舗も入れるような大きな場所でどうやって真奈美さんを探すか……」
すすむ「メモリー板を真奈美が解読しているとしたら正常に動作していると考えていいだろう、それに真奈美もメモリー版の近くにいるのは想像つく……私を連れて行くががいい、
あのメモリー版は私の脳波で3メートル以内ならリンクできる、人間になっていても私は私、脳波は変わらないからな、近くに在れば直ぐに分かるだろう」
こなた「ん〜でもね、どうやって潜入するかが問題だよ、私の時みたいに一般人は入れないみたいだしね……」
私はチラっと神崎さんの方を見た。それに神崎さんは気づいたようだ。
あやめ「そうね、泉さんの時のような分けにはいかない、無理に行こうとすれば直ぐに気づかれてしまう……」
皆は黙ってしまった。
あれ、おかしいな。神垣さんは何か策があるような感じだったけど。なんで話してくれないのかな……
ひより「あ、あの〜ちょっと良いですか?」
へぇ、今回のひよりは積極的だな……
あやめ「はい、何でしょう?」
ひより「ちょっと調べてみたのですが……」
ひよりは鞄からA4サイズの紙を出してみせた。チラシ?
ひより「清掃員の募集です……実はサイン会の時、トイレに行った際に清掃していたおばさんが着ていた作業着にこのチラシの会社と同じエンブレムが付いていたので……」
神崎さんはチラシを手に取って見た。
あやめ「……清掃員……なるほど、清掃員なら怪しまれなくていろいろな部屋に移動できる……しかし、幾つもある高層ビルの、しかも貿易会社の25階に配属される可能性は低い……」
ひより「それはどうでしょう、アルバイトの配属なんてパソコンの乱数かなんかで決めているんじゃないッスか……泉先輩の力でチョコチョコっと遠隔操作で……」
ひよりと神崎さんは私の方を向いた。
こなた「それくらいなら問題ないよ……」
神崎さんはチラシを読み始めた。
あやめ「……この募集要項によると住民票や写真の提出が必要みたい……私だと素性が分かってしまう」
私は皆を見た。
こなた「私も以前に貿易会社のビルで働いていたのがバレちゃうかもね……すすむさんは整体院の経営者だって分かっちゃうかも、ひよりは有名すぎちゃうし……みゆきさんは……」
みゆき「すみません……大学の研究員から清掃員ではおそらく怪しまれる可能性があります……」
いのり「私……私なら怪しまれない」
皆はいのりさんの方を向いた。
あやめ「確かに……しかし貴女は……」
すすむ「いのり、そこまですると言ってなかったじゃないか……」
心配そうな顔でいのりさんをみるすすむさん。
いのり「私じゃ力不足かしら、清掃なら毎日整体院でしている、外でも神社の清掃をしていたから一通りの事はできる」
あやめ「いいえ、その事を言っているのではなく……」
いのり「私がこの件に関係ないって言いたいの、私はお稲荷さんの妻、関係大有りでしょ」
あやめ「い、いえ、確かにそうですけど……」
すすむ「重要な役だ……私が行く、整体院は休業で臨時収入が必要になったとすれば問題ない……」
いのり「うんん、私にさせて……」
281 :こなたの旅Q-2 7/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:47:43.32 ID:JRuehyPV0
すすむ「しかし……」
なんだろう、反対していたいのりさんと全く違う。何が彼女をそうさせたのかな。
あやめ「佐々木さん……いのりさん、いったい何がそうさせるの?」
いのり「それは……」
すすむ「いのり!」
言いかけるいのりさんをすすむさんは首を振って止めた。
あやめ「そうですか……言いたくないのでしたら無理は言いません……それにいのりさんならこの中のメンバーの中では最適かもしれません、お願いします」
いのり「ありがとう」
神崎さんは立ち上がった。
あやめ「潜入して粗方の場所が判明すればいよいよ奪還となるが、どうやって私達が潜入か問題になる、泉さんのパソコンからの遠隔操作は期待できない、警備は厳重、
    場所が判っても実行が問題ね……」
皆はまた沈黙した。
みゆき「無断で入れば捕まってしまいます、では無断で入らなければいいのではないでしょうか?」
みゆきさんがゆっくりと話し出した。
こなた「無断で入らないと奪還なんかできないじゃん?」
みゆき「貿易会社の25階は銀行です、その客として入れば怪しまれずに中に入れるのでは?」
こなた「客?」
みゆきさんは頷いた。
みゆき「客として入り、新規口座を開いて入金すればいいのです」
こなた「さすがみゆきさん、確かに客なら誰にも怪しまれないね」
みゆきさんの顔が曇った。
みゆき「ですが……あの銀行は大口額しか扱っていません、一口最低1500万円でないと口座が開けません」
1500万円か、さすがにそんな大金は用意できない。
ひより「それなら例の元気だま作戦をしたらどうです、その程度の金額ならすぐ手にはいるのでは?」
私は引き受けようとした時だった。
みゆき「それは止めた方が良さそうです」
ひより「何故です、この前は難なく成功したじゃないッスか?」
みゆき「あの当時と状況が違っています、スイス銀行が昔ほど秘密を守ってくれるかどうか心配なので、それに泉さんは以前ハッキングに失敗しています、
    同じ方法は二回しない方がいいでしょう」
ひより「はぁ、そ、そうですか……」
失敗って、昔お稲荷さんの救助船と交信しようとしてNASAのシステムにハッキング出来なかった事を言っているのかな。
確かにあの時からもう10年以上経っている。同じ方法は通用しないかもしれない。
みゆき「私が個人的に用意できるのが1000万くらいまででです……」
500万円……あと500万円か。
こなた「私がその残りの500万円だすよ」
皆は私の方を見た。
あやめ「まさか、私の出した報酬を?」
こなた「うん」
私は頷いた。
あやめ「あれは貴女に私が個人的に出した報酬、それに佐藤さんもそんな大金を……」
みゆき「少しでもリスクは回避した方がいいです、最初に失敗してしまったら元も子もありません」
みゆきさんはにっこり微笑みながら話した。
あやめ「そ、それはそうだけど……」
神崎さんは戸惑いながら私の方を見た。
こなた「私もこの一件が済んだら報酬は全額返すつもりだったから問題なし」
あやめ「返すって……それじゃ何故受け取ったの」
こなた「……何でだろう……う〜ん……わかんない……だけど神崎さ風に言えばそう選んだからかな?」
あやめ「そう……」
すすむ「大口専用の銀行なら一口じゃ怪しまれるだろう、もう一口追加しよう、私のも使いなさい」
あやめ「さ、佐々木さん……もし」
すすむ「失敗は許されない、この程度の金額で左右されるなら多い方がいい」
あやめ「……ありがとう」
すすむ「礼は無用だ、これは私の事でもあるのだから」
いくら人気整体院で繁盛しているって言ってもあんな大金をほいほい出せるものじゃない。やっぱり佐々木さん夫婦になにかがあったんだ。

それから数時間、私達は色々と話し合った。

あやめ「作戦は至って簡単。まず清掃員になったいのりさんが真奈美とメモリー板の在り処に目星をつけたら、、私、泉さん、すすむさん、佐藤さんの4人で銀行に向かう、
3000万円の口座を開いて銀行に融資の取引を持ち出す、そうすれば銀行は交渉する為に奥の部屋に案内する、佐藤さんが融資の交渉をしている間に
残りのメンバーで真奈美とメモリー板を奪還、メモリー板と真奈美を外に待機した田村さんの車で私の家に運送……こんな感じかしら」
すすむ「大まかな段取りはそれでいいだろう、決行までにもう少し詳細を煮詰める必要がありそうだな」
あやめ「そうね……それでは最初の潜入……お願いします……いのりさん」
いのり「任せて!!」
奪還作戦が始まった。

つづく
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/12/31(火) 13:51:12.29 ID:JRuehyPV0
以上です。

本当は今年中に終わらせたかったのですが思いのほか捗っていません。
まだまだ当分続きますのでよろしくお願いします。

コンクールの件は反応が皆無だったので今回は延期します。また暫くしたら募集してみます。

まとめ報告は避難所のみといたします。

よいお年を。

283 :謹賀新年 [saga]:2014/01/01(水) 01:08:20.67 ID:TqLYuIHV0
こなた「あけおめことよろ」
かがみ「こら、省略はやめなさい!!」
こなた「いいじゃん、難い事言わない、言わない」
つかさ「あけましておめでとうございます」
みゆき「今年もよろしくお願いします」
かがみ「……つかさやみゆきの様にできないのか」
こなた「かがみ、新年早々怒ってばかりいるとロクな事ないよ」
かがみ「怒らしてるのはあんただろうが!!!」

つかさ「ねぇ、またお姉ちゃんとこなちゃんが言い合いしてる」
みゆき「そうですね、きっとこれで今年も無病息災です」
つかさ「ふふ、それだと良いね」
284 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/01/06(月) 01:36:44.56 ID:hSeygBVo0
このスレ、殆ど自分しか投下していない。
私が投下しなくなったらこのスレ終わってしまうくらいに過疎ってしまった。(乗っ取りに近い状態)
自分の投下している話が影響してるのかな。
大量投下を避けて連載方式にしたけど効果なかった。


他の作者の人は気にせず無視して投下してくださいな。
285 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 05:05:19.34 ID:CjGMlMOh0
懐かしいね…らきすた殺人事件とか読んでたなぁ。あの頃は毎週色んな人がSS投下して楽しかった。もう、SSどころか本編の方も話でないしね。
286 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 18:21:36.38 ID:I8fkjhWx0
アニメ放送終了後してかららきすたとこのスレを知った。
もっと早く知っていれば最盛期の頃のスレに参加できた。
コンクールもできれば一回から参加したかったけどね……
今となっては後の祭り。
消化不良でもどかしい。
287 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/27(月) 01:52:46.92 ID:RHYStxWb0
ふとまだこのスレあるのかなって探してみたらまだあったんだ…
アニメ放送前後よく通ってたよ
288 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/08(土) 21:02:37.76 ID:v6drKjWf0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
6レスくらい使用します。

289 :こなたの旅R 1/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:04:33.54 ID:v6drKjWf0
R

 打ち合わせが終わると佐々木さん夫婦とみゆきさんは足早に帰宅の途に就いた。特急券を既に予約してあったようだ。
私はひよりを車に乗せて彼女を家まで送って行く途中だった。
ひより「先輩、まさかいのりさんが参加するとは思わなかった、まして最初の潜入まで買って出てくるなんて、最初の会合の時と正反対……っス」
こなた「そうだね、それは私もそう思った、なにがいのりさんをそうさせたのかな?」
ひよりは暫く考え込んだ。
ひより「すすむさんが関係しているのは分かるけど……それ以上は」
ひよりは私よりも佐々木さん夫婦と親交があるのに知らないのか。
こなた「すすむさんはこの地球に来る時、調査船のパイロットだった……」
ひより「……え、それは初耳ですね」
知らなかったのか。
こなた「かがみがそう言っていた」
ひより「パイロットだった……事故で墜落したって……って事は、すすむさんが何かミスをしてしまったって?」
こなた「さぁね、その先はかがみも何も言ってなかった、話したくないのか、知らないのか」
ひより「そうっスよね、自分のミスを他人に話すなんてできない……」
こなた「いのりさんはその話を直接すすむさんから聞いたんじゃないかな?」
ひより「仰る通りっスね、メモリー板はきっとすすむさんにとって重要ななにかがあるのですよ、じゃなかったら反対していたいのりさんが参加するはずがない、その重要な
    何かって何でしょう?」
こなた「さぁ……」
私はその後何も話さなかった。興味が無かった訳じゃないけど、これ以上詮索しても結論には至らないのは分かっていたから。
ひより「それにしても、ゆたかが来なくて良かった……」
ため息交じりの小さな声で言った。いくら走行中の車の中でも直ぐ隣、囁き声でもしっかりと聞こえる。
こなた「ゆうちゃんが来なくて良かった?」
ひより「あ、ああ〜」
聞こえないと思っていたのだろう。ひよりは驚いて話題を変えようと必死になった。それが逆に私の好奇心に火を付けた。
こなた「そう言えばゆたかはすすむさんの事が好きだったよね」
ひより「え、、あ、はい……」
小さく頷くひより。ある程度予想していたけどあてずっぽうで言った。でもひよりの態度で分かってしまった。ゆたかとすすむさんの話は以前聞いた事はある。
だけど失恋の話なんて早々詳しく話すものじゃないし、こっちから聞くなんて気まずくて聞けやしない。
こなた「そってもうお互いに解決したんじゃないの?」
ひより「それはそうっスけど……やっぱり以前好きだったから……なんて言うのか、夫婦で仲が良いところを見ていると他人事ながら見ているのが辛くって……」
こなた「ふ〜ん、そんなものなのかな……」
そういえばひよりも宮本まなぶさんが好きだったって言っていた。その話も私は詳しくは聞いていない。
まてよ、それじゃ今回、すすむさんじゃなくてまなぶさんが来ていたらひよりじゃなくってゆたかが来ていたのだろうか。分からないな……
どうも惚れた腫れたの話は苦手だ……
それを察したのかひよりは話を変えてきた。
ひより「そ、それよりいのりさんは大変っス」
こなた「大変、どうして?」
ひより「先輩の潜入取材の時は一ヶ月でしたよね、でも今回は2週間、約半月で真奈美さんとメモリー板のある場所を探さないといけない」
こなた「そうだね〜やけに時間が短いよね……」
ひより「なぜそんなに急がないといけないか、あの銀号は神崎さんが調べた限りでは何も大きなイベントはないって言っていたのに、ちょっと不自然な気がして……」
こなた「それなら帰り際に本人に聞けばよかったじゃん?」
ひよりは大きく頷いた。
ひより「そうッス、先輩が車を出している時間を利用して聞いたんですよ……でもお茶を濁されてしまって、それで時間がなくて……聞けなかった」
ひよりが車に乗る時、神崎さんと何かを話していたけどその事だったのか。
こなた「まぁ、早く手に入るなら、それに越したことはないじゃん、2週間で情報が手に入らなくても私のハッキングで雇用延長ができるから問題ないよ」
ひより「そ、そうですけど……」
こなた「元々神崎さんの計画に私達が参加してるからね、その辺りは神崎さんに仕切ってもらうしかないよ……少し疲れちゃった、次のサービスエリアで休もう」
ひより「はい……」
神崎さんは急いでいる。そんな感じは無かった。
でも言われてみると私の時が一ヶ月でいのりさんが2週間。どう考えても私よりもいのりさんの方が難しいミッション。少しでも怪しまれたら最後だから慎重にしないといけないのに。
……でも、いのりさんの情報を操作する前に一度神崎さんに会う機会があるからその時でも聞けばいいか。

290 :こなたの旅R 2/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:05:38.31 ID:v6drKjWf0
 サービスエリアで休憩を取って車を走らせて暫く経った頃だった。
ひより「先輩、ちょっといいですか?」
何だろう、さっきの続きかな。それならさっき考えていた内容を話してみるか。
こなた「ん、さっきの続きの話?」
ひより「いいえ」
違うのか。助手席に座っているだけだから退屈するのはたしかだ。
こなた「景色をみているだけじゃ飽きちゃうね……ラジオでも付けようか?」
ひより「……会合の時の話ですけどいいですか?」
こなた「会合?」
ひより「はい、先輩と神崎さんで報酬の話をしてたじゃないですか」
こなた「報酬……報酬って、ああ、話さなかったっけ、神崎さんから500万円もらった」
ひより「その話は知っているのですけど、先輩と神崎先輩のやり取りですこし不思議に思った事があったので」
こなた「不思議に思うこと、なにそれ?」
ひより「神崎さんがなぜ報酬を返すのかって聞いて先輩が選んだからって答えましたよね……それって答えになっていないような気がして……
    何故って問いの答えになっていない、それなのに神崎さんはそれ以上質問してこなかった、かがみ先輩だったら即突っ込んでいましたよ」
こなた「……質問が難しいくて分かんない」
ひより「つまり選んだのは結果であって理由じゃないから……」
私は言っている事は理解できたけど答えられなかった。返す理由か。
こなた「そう言われると」
ひより「そうでしょ、それを神崎さんは聞きたかったと思うっス、特に記者をやっていればこういった中途半端を嫌うんじゃなかなって」
私もみんもスルーした話なのに、ひよりだけ気づいたのか。
こなた「でもね、はっきり言って理由を聞かれても即答できなかったよ……」
ひよりは腕を組んで考え込んだ。ひよりってこう言う所でこだわるよね……
こなた「そういえばひよりが来る少し前、神崎さんと選択について話してたからその影響かな」
ひより「せんたく……せんたくって選ぶって意味のッスか?」
こなた「うん」
ひより「選択……ゲームの話?」
こなた「まぁ、似た様なものだけど、リアルな話……ちょっと私には説明出来ない……」
ひより「リアルな選択の話……哲学ッスね……」
こなた「ははは、そんな大げさな話じゃないよ」
ひより「リアルな選択か……」
ひよりは大きくため息をついた。
こなた「何、どうかしたの?」
運転しているから彼女の表情を窺い知ることは出来なかったけど気になった。
ひより「大学を卒業してから私は選択なんかしていない……」
こなた「いや、してるじゃん、ゆたかと一緒に漫画家になった」
私としたらゆたかが漫画家になったこと自体が驚きだった。
ひより「いえいえ、私はゆたかに誘われたからそうなっただけで……言わばゆたかの選択に乗っかっているだけ……」
これって……私と同じような事を言っている。
こなた「うんにゃ、ひよりはゆたかの選択に乗っかるのを選んだんだよ」
ひよりは笑った。
ひより「はは、先輩〜選ぶのを選ぶって……それは無いっス」
こなた「いや、選んでるって、無意識のうちに」
ひよりは再び笑った。
Bひより「無意識って……先輩、選ぶって事はそこに意識が働いているから選べるっスよ、無意識じゃ何もえらべられないじゃないですか、ゲームの選択肢
291 :こなたの旅R 3/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:06:51.52 ID:v6drKjWf0
ひより「無意識って……先輩、選ぶって事はそこに意識が働いているから選べるっスよ、無意識じゃ何もえらべられないじゃないですか、ゲームの選択肢
だって選ばなきゃ先に進まないっス」
確かにその通り……だけど。
こなた「……さっきサービスエリア寄ったけど、さ今まで何箇所サービスエリアを通過したかな」
ひより「……え? 何箇所って……3箇所くらい?」
こなた「なんでさっきの所で休憩したのかな……」
ひより「何でって先輩が選んだからじゃないですか?」
こなた「でも、2箇所は通り過ぎたよね」
ひより「それはそうですよ、毎回なんか寄っていられないし、先輩といろいろ話していたし、気付かずに過ぎてしまったかもしれないし」
こなた「ほら、無意識のうちに選んでるじゃん」
ひよりは笑った。
ひより「ははは、それは車が動いているからっス……」
こなた「そうだよね、動いている、ゲームは選択するまで待ってくれるけどリアルは待ってくれない、だから選択したのに気付かないんだよ、サービスエリアを通過した時、私達は
    選んだ、通過するってね」
ひよりは黙って何も言い返してこなかった。
こなた「もし、前のサービスエリアで休んでいたら……この次だったらどうなっていたか、多分違う展開になっていた……そう思うと不思議だと思わない、
    無意識の選択が人生を変えちゃうなんてさ?」
ひより「……先輩がゲーム以外の例えをするのを初めて見たっス……」
ひよりはそのまま左を向いて景色を見た。ちょうどパーキングエリアを通過する所だった。ひよりはパーキングエリアの標識を目で追い通りすぎても暫くパーキングエリアの
方を目で追っていた。
神崎さんの言いたい事はこう言う事だったのだろうか……
こなた「ふふ、神崎さんはこんなのは寝る前に考えろなんていっていたけどね……運転している間考え込んでしまったよ」
ひよりは私の顔を見た。
ひより「先輩と神崎さん……私が来る前にそんな話をしていたっスか?」
こなた「そうだよ、きっと私がRPGやギャルゲーが好きだから合わせてくれたんだと思うけどね」
ひよりは暫く考えた。
ひより「そうでしょうか、……とっても深いと思いますよ、意識しない選択だなんて……」
ひよりはまた暫く考えた。
ひより「意識しないで選んでいるとしたらそれは私達にはどうする事も出来ないって事……言い替えるとそれって運命ってことじゃないっスか?」
こなた「運命……」
そういえばつかさもそんな言葉を言っていた。
こなた「ひよりは運命を信じる?」
ひより「運命……そんなのあるのかなって思っていましけど……さっきのサービスエリアの話を聞いたら在るんじゃないかなって思えて……」
こなた「選択が運命だとしたら、その無意識の選択に気付けば、もしかしたら運命を変えられる?」
ひより「無意識を意識するっスか……禅問答みたいで訳が分からなくなってきました……」
こなた「……うぐ」
やっぱり慣れない思考は突っ込まれるな……
ひより「運命を変えるって……先輩は何か変えたい運命があるんですか?」
こなた「別にそんなんじゃないよ……」
別に変えたいわけじゃない。でも運命は変えられないってよく言われるから聞いてみただけだった。
ひよりはそれ以上この話をしてこなかった。私も話さなかった。
それからひよりとは家に送るまで映画化の話やひよりの腐った話などをした。いわゆるいつもの話ってやつ。

292 :こなたの旅R 4/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:08:13.10 ID:v6drKjWf0
 それから一週間が過ぎた。
私はかがみの法律事務所に来ていた。私がこの事務所に行くのは初めてだ。
それもそうだ。法律事務所に用があるような事をした覚えはない。それにしてもかがみが自身の仕事場に私を呼ぶなんて。いったい何の用事なのかな。
事務所に着くと会議室に通された。暫く待っているとかがみが入ってきた。
かがみ「いろいろ忙しいのによく来てくれたわね」
こなた「それよりどうしてこんな所に呼び出したの、私の所のレストランでも、つかさの店でも良かったのに、特につかさの店は休業中だよ、それにわざわざつかさ経由で
    呼ばなくても……携帯でもメールでも呼べるじゃん」
かがみは私の対面に座った。
かがみ「ここならどんなに騒いでも他人に聞かれることは無い、私はここが一番落ち着くから……それに公共通信は使いたくなかった」
こなた「ちょ……なにそれ、どんだけシークレットなの?」
っと言ってみたけど。随分かがみも慎重になってきた。これも神崎さんの影響なのか。
かがみ「神崎さんが自分の家で会合したでしょ……それと同じよ」
こなた「かがみ〜いくらはぶられたからって、そんな大げさにする事ないでしょ」
かがみの目つきが変わり鋭く私を睨み付けた。
かがみ「あんはた全く分かっていない、事の重大さが、あんた達がしようしている事が」
こなた「分かってるって、貿易会社はお稲荷さんの知識と技術を独り占めしようとしている、しかも兵器に利用しようとしている、
差し詰め私達は悪の陰謀を阻止するヒロインってところだね」
かがみは更に声を張り上げた。
かがみ「そんな事を言ってるんじゃない!!」
こなた「まぁ、まぁ、落ち着いて、最初から話さないと分からないよ」
かがみ「あっ! そ、そうね、そうだった……お茶も出さないで……ちょっと待って……」
私の声に冷静さを取り戻したのか立ち上がると部屋を出て行った。かがみらしくない。かがみが怒る時、その理由はだいたい理解できる。
私が冗談で返したくらいであんな怒り方はしない。イライラしているみたいだったけど。何だろう……
作戦の人選から外れたのを怒っているのか。いや、本当に作戦に参加したかったらあの時もっと食い下がったはずだよ。かがみならそれが出来た。いのりさんの様に……
つかさが言っていたっけ。夫や子供が頭に過ぎったって。それが違うとしたら、じゃ何だろう……
あれこれ考えているうちにかがみが再び部屋に入ってきた。私の前にお茶を置くととゆっくりと座った。
かがみ「今から5年前の話……」
こなた「5年前?」
かがみは頷いた。
こなた「いきなりそんな前の話……」
かがみ「ヨーロッパとアメリカに二人の記者が居た、二人は不慮の事故で他界したそうよ」
こなた「不慮の事故なんて珍しくないじゃん、記者が二人……記者?」
何か嫌な予感がした。
かがみ「この二人の記者に特別の交流はなかったみたい、一人は社会、もう一人は古代遺跡を取材するのが主な仕事、不思議なのは不慮の事故ってだけで詳細がまったく
    解っていない、それに彼らの取材したデータが消えている」
こなた「それって貿易会社に抹殺されたって言いたいの……」
かがみはゆっくり立ち上がった。
かがみ「結論が早いわねこなた、まだ完全な証拠がある訳じゃないからそこまでは言えない……でもね、こなたが持ってきたデータの中にこの二人の名前が何度も出てくる、
    5年前の彼らの行動が事細かに書かれている、しかもこの二人の他に約10名の名前が載っていた、科学者、記者、高級官僚、政治家……そしてその半数がこの世に居ない……」
こなた「まさか、神崎さんの名前が載っていたとか?」
かがみは首を横に振った。
こなた「よかった」
『バンっ!!』
かがみは両手を強くテーブルに打ちつけた。
かがみ「よかったじゃない!!   いい、良く聞いて、仮にこなたの言うように彼らが抹殺、あるいは暗殺されたとして、彼らは目的の為なら命を奪っても構わないと
    思っている連中、しかもそんな事をしても秘密に出来るほどの力を持っている、見つかったら最後、あんた達も間違いなく消される、こなたはその覚悟があるのか、
    失敗したって復活の呪文もない、キャンセルボタンだってない」
確かにそうだ。でもそれはつかさとけいこさんが出会ってからなんとなく分かっていた。貿易会社の正体。
かがみ「今ならまだ間に合う、中止にしなさい」
私は首を横に振った。
かがみ「何故?」
それはそれを選んだから……なんて言ったら突っ込まれるだけだろうな。
こなた「昔、命の危険を顧みず独りで果敢に大きな力に立ち向かった人がいてね……」
かがみ「誰よそれ、その人の真似をするっていうのか、歴史上の人物を並べてたって到底あんたには真似できないわよ」
こなた「目の前に居る人、かがみ」
かがみは一歩後ろに下がって驚いた。
かがみ「え……私は……ば、ばか、なにを唐突に……私を持ち上げたって無駄」
こなた「うんん、持ち上げてないよ」
かがみは俯いた。
かがみ「私は逃げた……果敢になんか一度もしたことない……」
こなた「そうかな、かがみはお稲荷さん……えっと、たかしだっけ、その人に呪いかけられながらも誰にも言わずにつかさを守ろうとしたよね……あれは凄かった、
その勇気半分でもいいから分けて欲しいくらい」
かがみ「……結局私はその呪いにのたうち回って苦しんだだけじゃない、つかさを助けられなかった、それどころかそのつかさに命を救われた……ひとしだってつかさが居なかったら
    夫になっていなかった……何が勇気よ、いい加減なことを言うと殴るわよ」
かがみは片手を握ると私の前に握り拳を見せた。
こなた「それが凄いんだよ、私には分かる……うんうん」
そうなると分かってそれを選んだ。それが勇気なのかも。
かがみ「ばか……あれは死ぬ気だった……そんなのを真似してどうするのよ……この前のは運が良かっただけ、今度はどうなるかわからい……死ぬかもしれない」
今度は涙を流し始めた……全くいつも大げさだな。かがみは。
293 :こなたの旅R 5/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:09:12.96 ID:v6drKjWf0
こなた「死ぬつもりなんか無いよ、あの時かがみは独り、だけど今回は度独りじゃない、元お稲荷さんにその妻でかがみのお姉さん、現役漫画家に高級レストランのホール長、
    歩くWikiの研究員、 最後にお稲荷さんを助けた記者だよ、向かうところ敵なしじゃん」
かがみはまたゆっくり座り涙を拭った。
かがみ「……ふぅ、ホール長だけ頼りなさそうだけどな」
こなた「なに〜それじゃね……スーパーハッカーこなちゃんってのはどう?」
かがみ「はぁ、なんで急に名前をつけるのよ」
こなた「別にいいじゃん、あだ名だし」
かがみ「こなちゃんって歳かよ」
こなた「だってまだそう呼ばれるし」
かがみ「……つかさはお婆ちゃんになってもそう呼ぶわよ」
こなた「そうだろうね……」
かがみ「って、なんでそんな話になった、私の言いたいのは……」
かがみは言うのを止めて私の顔をじっと見た。そして苦笑いをした。
こなた「ん、なに?」
かがみ「ふふ、みゆきと同じ事を言うなんて、こなたも変わったわね……」
こなた「みゆきさんって……みゆきさんはこの話知らないの?」
かがみ「みゆきは知らなかった、英語の文章を調べるのは私が担当だった、ただの名前の羅列だったから後回しにした、だけど最初に調べるべきだったわね……」
こなた「みゆきさんが同じ事を言ったって?」
私は聞き返した。
かがみ「そう、みゆきに作戦の中止を提案した……みゆきはさっきこなたが言った内容と同じ言葉を返してきたのよ」
さっき涙を見せたのはそのせいだったのかな?
かがみ「そういえばこなたもつかさの制止を振り切ってひろしに突進して行ったわね……返り討ちの危険も省みずに」
つかさとみゆきさんと一緒にかがみを神社まで追いかけた時の事を言っているみたい。
こなた「結局かがみを呪ったのはひろしじゃなかったけどね、もしかしたらそのせいかもしれない、ひろしが今でも私を嫌っているのは」
かがみは溜め息の様な、諦めたみたいに息を吐いた。
かがみ「……どうやらこなたも止める気はなさそうだ」
こなた「も、もって言った?」
透かさず聞き返した。
かがみ「……そうよ、さっきの話はみゆきはもちろん、ひよりや姉さんやすすみさんにも話した、でも結果は誰一止めようとはしなかった、それで残ったのはあんたと神崎さんだけ」
こなた「私と、神崎さん、それじゃ……」
かがみは頷いた。
かがみ「あとは神崎さんだけ……だけど、腑に落ちない、神崎さんならもうこの話は知っているはず、姉さんに聞けば神崎さんはその話をしていないって言うじゃない、
    こなたは聞いたのか?」
私は首を横に振った。
かがみ「この期に及んで隠し事なんて、やっぱり彼女は自分の名を売りたい為に私達を利用しているだけ、そう思わない?」
かがみの話を聞いても止める気にはならなかった。
こなた「思わない……神崎さんはそんな人じゃない」
即答する私にかがみは少し驚いた顔をした。
かがみ「何故そう言い切れる、出会って一年も経っていないじゃない、彼女の何が分かったって言うの?」
こなた「何でって言われると分からないけど、直感って言うのか……かがみがそう思うなら直接聞けばいいじゃん、それが手っ取り早い」
かがみ「……い、いや、どうも彼女は苦手で……あまり……」
驚いた、かがみに苦手な人が居るなんて。でも、それは神崎さんも同じかな。だからかがみを遠ざけたのかもしれない。
こなた「そう言うけどさ、友達になる前、かがみは私の事をオタクだと思って近づかなかったでしょ、私だって、優等生でツンツンしている人なんて近寄り難くて
    話しかけるなんて出来なかった」
かがみ「な、誰ががツンツンだ!」
両手をテーブルに叩きつけて身を乗り出した。
こなた「そう、そうそう、そう言う所」
かがみ「……」
かがみは何も言わない。
こなた「そんなかがみも私とゲマズに行くようになったし、私はかがみがどんなに怒っても怖くないし」
かがみ「……少しは怖がりなさいよ……でも……そう言われるとそうね……」
神崎さんに手を握られた時のかがみは本当に怖かったけどね。
こなた「だから神崎さんもそう、話さないのは別に何か理由があるんじゃないかな?」
かがみは私をじっと見る。
かがみ「分かった、そこまで彼女を信じるならこなた自身で彼女に聞くといいわ、どんな答えが返ってくるか、神崎さんと運命を共にするならそれからでも遅くない」
こなた「もうとっくに同じ運命さ……お稲荷さんと出会った時点でね」
かがみ「そう言うなら話すも話さないもあんたの判断に任せるわ、好きになさい、私の言うべき事は全て話した」
こなた「そうするよ」
私は帰り支度を始めた。そんな私を物珍しげにかがみは見ていた。

294 :こなたの旅R 6/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:10:28.96 ID:v6drKjWf0
かがみ「どう言うことなの、あんたがみゆきと同じ事を話したと思えば、神崎さんを信じるなんて言い出して……こなたらしくない」
私は帰り支度を止めてかがみの方を向いた。
こなた「らしくない……まさかこんな時におふざけでもすると思った?」
かがみは少し焦った様だった。
かがみ「い、いや、そうは思わない、思わないけど……昔のあんたなら半分ふざけていたでしょうね……フラグが立ったとかなんか言って騒いでた」
確かにフラグが立った……何のフラグ……それは結果が分かって初めてそれがフラグだったって判る。
こなた「懐かしいね」
かがみ「懐かしい、そう言うか……何時からかしら、あんたも変わった、つかさと同じくらいに変わった……神崎さんと会ったから……」
こなた「誰かと会えば誰だって影響をうけると思うよ、つかさが変わったのは真奈美さんと会ったから」
かがみ「……私は、変わったのかしら、誰かを変えたのかしら……」
かがみは自分の両手を広げてその手を見つめた。
こなた「変わってるし変えてる」
かがみ「そうかな……」
かがみは微笑んだ。
こなた「さて、帰るかな」
かがみ「そういえば思い出した、捕まってしまったけいこさんにつかさに会わす前、つかさといろいろ話した場面がふと過ぎった」
こなた「ん、何で?」
かがみ「ふふ、何だろう、分からない、だけど今のこなたを見ると作戦が成功するように思えてきた」
こなた「あっ、それ言ったら駄目じゃん」
かがみ「……逆フラグってか?」
私達二人は笑った。

こうしてかがみと話していると最後はつかさの話になる。ただの仲の良い姉妹だと思っていたけど。それだけじゃないみたい。
あ、そうだ。
こなた「かがみ、かがみは何故陵桜学園を選んだの?」
かがみ「唐突にそんな質問を……以前に話さなかったか?」
こなた「そうかもしれないけど、忘れちゃってね、つかさはかがみと同じ高校に行きたかったって言っていた、だとしたらかがみが陵桜学園を選ばなかったら
私達はこうして話すこともなかった」
かがみ「そうね……確かに、」
かがみは暫く話さなかった。私は首を傾げた。話せない内容なのかな。
かがみ「話してなかったかもね……」
そうボソっと言うと話し始めた。
かがみ「そろそろ妹離れしようと思って陵桜を選んだ、いつまでもベッタリじゃしょうがないじゃない」
こなた「妹離れ……」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「もっと上位を狙えたけど陵桜を選んだ、どこかでまだ一緒に居たいと思っていたのかもしれない」
この姉妹はお互いに影響し合っている。どっちが先とか優位とかじゃない。
かがみ「でもこれで良かったと思っている、高校までつかさとの学生生活……掛け替えの無いものになった」
こなた「成るほどね〜」
かがみ「もう作戦決行も間近なのになんでそんな事をきくのよ」
こなた「ちょっとね」
かがみ「なによ、内緒にすることなの、それともまた何かのゲームの攻略でもしようとしているのか、言っておくけど私の話なんてまったく参考にならんぞ」
こなた「ちょっと神崎さんを攻略しようと思ってね……選択と運命について考えている」
かがみ「え、神崎さん、選択……運命……なんの話よ?」
こなた「今度の作戦が終わったら話すよ」
かがみは笑った。
かがみ「こんな時に余裕ね……せいぜい攻略すばいい」
こなた「さて、こっちもそろそろ準備とかあるんだけど」
かがみは真顔になった。
かがみ「……こなたの覚悟がよく分かった……実はね、少しでも弱気な素振りを見せたら引き止めるつもりだった」
こなた「もしかして皆に話をしたのはその為?」
かがみは頷いた。
かがみ「そう、そして皆合格、神崎さんを除いてね……神崎さんはこなた、あんたが見極めなさい、作戦を実行するその直前までなら止めることだってできる、それを忘れないで」
こなた「分かった」

 そして数日後、
つかさから渡された犬用のキャリーバック、これは捕らわれている真奈美を狐にして入れる為の物、そしてUSBメモリー……今回はあまり役に立ちそうもないけど持っておくか。
さて、作戦当日。私は待ち合わせ場所に向かった。



つづく
295 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/02/08(土) 21:12:07.81 ID:v6drKjWf0
以上です。

途中重複してしまった所があります。読みにくい方はまとめサイトをご利用下さい。
296 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/02/08(土) 21:30:51.51 ID:v6drKjWf0
>>287
このスレが出来た頃の人みたいですね。
来ない間に投下された作品を読んでみてください。


作者の人も戻ってきて欲しい。新人さんも待っています。
またコンクールをぜひやりましょう。
297 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/03(月) 00:20:16.95 ID:OFYx3dD40
繋がった
298 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/05(水) 06:36:59.39 ID:/zFA/h6V0
久々スレ訪問記念カキコ
299 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/09(日) 16:32:55.35 ID:GMz0M6/D0
>>298
来てくれる人はいるみたいですね 安心した。

それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は短く2レスで終わりです。 序章みたいなものです。
300 :こなたの旅S 1/2 [saga sage]:2014/03/09(日) 16:34:30.61 ID:GMz0M6/D0
S

 私は貿易会社本社の非常階段25階の入り口に居た。もちろん神崎さんとすすむさんも居る。
この階段には防犯カメラもセンサーも付いていない。それはこの前の潜入で既に判っていた。それにこの階段は外からは見え難くなっている。隠れるにも好都合だった。
この一週間、私達は入念な打ち合わせをしていた。もちろん私の潜入で得たこのビルの特徴等も話している。
それらを考慮に入れてもいのりさんは凄いと思った。たった一週間で私達の探しているメモリー板と真奈美が捕らわれていると思われる場所を探し当ててしまった。
私は一ヶ月も掛かったのに……
これも夫のすすむさんを想う気持ちからなのだろうけど、いったい何でメモリー板を欲しがるのかな。
あやめ「四万年前からずっと見つかっていない物を今頃になって取り返すなんて、しかも妻であるいのりさんまで巻き込んで、何故そこまでして?」
私が疑問に思っている事をストレートに聞いた。それもこんな土壇場になってから。前にも何度か聞いたけど答えてくれなかった。これも記者ならでは出来ることなのかもしれない。
私もそれを知りたい。私達はすすむさんの方をじっと見た。
すすむさんは腕時計を見た。私も時計を確認する。時間はまだたっぷりある。
25階入り口。ここは外側からは開かない。災害が無い限り内側から鍵を開けないといけないからだ。私のUSBでも停電を起こせば開けられるのだがみゆきさんに止められて
この方法になった。
鍵を開けるのはいのりさんの役目。いのりさんは既に25階の室内で掃除をしている。その合間にここの鍵を開ける手筈になっている。その時間まではまだまだ間があった。
すすむ「妻は、いのりは自分の意思で私達に協力をしている、強制はさせていない」
あやめ「意思ね……でも当初はすすむさんの参加に反対していた、どうして意思が変わったのか、私の知りたいのはそこ」
透かさず、しかも的確に知りたい所を突いてきた。すすむさんは少し困った顔をした。やっぱり話し難いのだろうか。
こなた「すすむさんは調査船のパイロットだったって?」
すすむ「な、なぜそれを知っている……」
すすむさんは驚いて私を見た。
こなた「かがみからそう聞いた」
すすむ「……かがみが話したのか、家族にはかがみ以外には話していない、他言は無用と言ったはずなのに……」
こなた「もしかしていのりさんにも話したの?」
すすむさんは私と神崎さんを見た。
すすむ「はやり話さない訳にはいかないか……」
すすむさんは溜め息をついた。
すすむ「あのメモリー板は船の航行記録も兼ねていてね、おそらく事故の当時の詳細な記録が入っているはずだ」
あやめ「飛行機で言うブラックボックスもしくはフライトレコーダーね」
すすむさんは頷いた。
すすむ「そう、それと同じ機能だ」
あやめ「どうして航行記録を……」
すすむ「あの時、私の判断が正しかったのか、それを確かめたかった……」
あやめ「4万年前の事故……例え貴方のミスだったとしても誰も貴方を責めたりはしないんじゃなかな、着陸に失敗しても生存できたのだし」
すすむ「そうかもしれない……しかし私は知りたい、自己満足だけかもしれないがな……」
あやめ「それでいのりさんは夫の貴方に協力するようになった訳か……」
すすむ「事故さえなければ地球に取り残される事もなかった」
確かに当時はそう思っていたかもしれないけど……
こなた「本当に地球に取り残されて嫌だったの?」
すすむ「そう思っていた仲間が多数だったはずだ……それより」
すすむさんは神崎さんの方を向いた。
すすむ「君はなぜこの作戦を主催した、しかも泉さんの時より急いでいる気がしてならない」
あやめ「私は捕らわれている真奈美を助けたいだけ……只それだけ、それにに急いでいる訳ではない、作戦が早いのは泉さんの経験が活かされた結果よ、だから今回も来てもらっている」
すすむさんも神崎さんが急いでいると感じているのか。私もそう思っていたけど……
すすむ「そうかな……私は人間になる前から他人心を読む事はできなかった、しかし経験である程度は推理できる……呼吸数の増加、手のひらの発汗、身体の硬直……緊張しているな、
    本当に充分な作戦を練ったのか?」
301 :こなたの旅S 2/2 [saga sage]:2014/03/09(日) 16:35:34.06 ID:GMz0M6/D0
あやめ「うっ……」
神崎さんは両手を素早く隠した。だけどもうそれは遅かった。それに神崎さんは反論してこない。図星かな。
そんな神崎さんを尻目にすすむさんは私の方を見た。
すすむ「泉さんはなぜここま協力する、なにか特別な思い入れでもあるのか、私から見ればそこまでしてもらう義理はないのだがね」
前にも同じような事聞かれたっけ。
お稲荷さんとはそんなに深い付き合いがある訳じゃないし……かといって正義とか人類の為とかそんな大げさな意識もないよ……
それじゃ何故……
強いて言えばつかさの存在があるから……つかさに出来て私にできない訳が無い。そんな気持ち……
それだけじゃない気がするけど今の所それしか思いつかない。私はそれを言おうとした。
あやめ「昨日……小林さん……小林かがみさんに呼ばれてね……」
私よりも先に神崎さんが口を開いた。
こなた「かがみが?」
思わず私は聞き返した。神崎さんは頷いた。驚いた、かがみは神崎さんが苦手って言っていたのに……
私が直接聞けばなんて言ったからなのかな。
あやめ「彼女は自分自身の秘書を通じて私の泊まっているホテルに連絡をしてきた、その慎重ぶりに私は会う気になった、落ち合い場所はとある広場」
こなた「それでいったい何を話したの?」
私は思わず身を乗り出して聞いた。
あやめ「私の覚悟を知りたかったみたいね……思えば親友が三人、身内が二人も参加している作戦だものね、それは心配になるはず」
こなた「もしかして名簿の話をしたの?」
あやめ「そう、私がそれを知らない筈はないって、何故黙っていた……返答によっては中止を切り出しかねない権幕だった」
こなた「そのリストは知っていたの?」
あやめ「もちろん、知っていた、貿易会社は自分が不利になる因子をあらゆる手段で消す……それは人も物も同じ扱い」
こなた「ってことは……」
あやめ「証拠があるわけじゃない、だけど彼らの組織の中に選り抜きの殺し屋が雇われているかも、そう私は推理している……私達の作戦がバレればそれが証明されるかもね」
○ルゴ13じゃあるまいし……うげ……
神崎さんは少し笑みを浮かべている。
半分冗談かもしれない。だけど半分は本気……なんだこれは死亡フラグじゃないか……フラグが立ちまくっている。こんな時に……
こなた「え、こ、こんな土壇場で……バレないで脱出できるの……?」
すすむ「ふふ、どうした、怖いのか……泉さんもかがみから聞いているだろう、怖いなら階段を下りていけば逃げられるぞ?」
あやめ「これでも万全は尽くしているつもり……少しでも不安があるなら降りた方がいい、作戦に支障がでる」
そ、そんな事言われても……
すすむ「なるほど、緊張はそこから来ているのか……もう何も言うまい」
神崎さんとすすむさんの顔がさらに引き締まった。そして、私は……
まてよ、まさか、かがみと神崎さんは最後に私を試しているのか……確かにメンバーの中で私は一番動機が乏しいかもしれない……
うんん。動機なんか弱くたって……私はこれを選んだから。止められない。
こなた「うんん、降りないよ……絶対に成功する、させる」
あやめ「そうこなくっちゃ!!」
……あれ、そのセリフ……久しぶりに聞いた……
すすむ「さて、もうそろそろ時間だ、雑談はこれまで、ミッションに集中しよう」
こなた・あやめ「はい!」
あれこれ考える暇もなく時間が近づいてきた。
そして……
『カチッ!!』
非常扉のドアが鳴った。鍵が開いた。
あやめ「行くわよ!!」
私達はビルの中に潜入した。

つづく
302 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/09(日) 16:41:05.21 ID:GMz0M6/D0
以上です。

もうちょっと先まで続けたかったけど。もう少し練らせて下さい。
まぁ、期待はされていないのは判っていますがw

話は変わってまとめサイトの•ID:bz0WGlY0氏の作品集の書き込みはどうですか?
長期の障害で本スレが見れなかったので書いてみました。
ネタバレにならないように書いたつもりです。

あと何か書いて欲しいお題がありましたら投下してみて下さい。私以外にも書く人が出るかもしれません。


この後すぐまとめるので報告は避難所のみにします。
303 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/09(日) 17:46:14.24 ID:GMz0M6/D0
まとめサイトの@wikiが大変な事になっていた。
まとめてしまったが大丈夫だろうか?
304 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/12(水) 00:26:55.55 ID:2t/1DQZY0
新しい情報がないですね…
私が投稿してた別のらき☆すたSSまとめサイトも@wikiなので心配です
305 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 10:55:52.42 ID:whQRMQuZo
このスレは関係ないけどらき☆すたSSのwikiって全部@wikiだよね
俺が見てるwikiもかなり過疎って本スレも落ちてるのに今でも作品投下されてたから本当に早く解決されて欲しい
306 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/13(木) 00:31:06.20 ID:UiDqDp0L0
このまま@wiki消滅とかなったら
もう管理人もいないようなwikiの作品はみんな埋もれてしまうのか
307 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/13(木) 01:09:33.33 ID:bwBdSsoP0
>>302です
誰も見ていないと思っていたけど見ている人はいるのだけは判った。嬉しい限りです。

まとめも事実上私が管理している状態(まとめを立ち上げた人とは別人です)


長期連載をしていてこのスレはそのssで埋まっている状態。
今投下しているssに興味が無い人にとっては意味の無いスレになってしまった。

他のらきすたssはこのスレに投下するようになってから殆ど見ていないからどうなっているか判らない。
このスレはらきすたの内容であるならエロ以外の縛りがないので気に入っています。

また気になる事がありましたら書き込んで下さい。
308 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 15:41:22.33 ID:5z+RssL9o
>>307
いや、投下している人がいるってだけで意味はあると思うよ
息があるってことだしそれを見て後に続く人が出るかもしれない
まとめwikiも自分は読んでるし、元々の管理人がいるのかしれないけど投下もしてまとめもしてるくれるあなたには個人的に感謝してる

らき☆すたSS好きだし、このスレのwikiや他のSSwikiが復活することを願うばかりだ
309 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/16(日) 23:20:05.93 ID:E53CGSe10
>>308
どうもです。一人きりでもアイデアが続く限り投下したいと思います。

話は変わりますが@wikにウィルスの仕込みはない事がわかりました(wikiからのメール)
とりあえず閲覧は問題なさそう。今後ともよろしくお願いします。
310 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/23(日) 23:46:48.60 ID:06t2HKq20
それでは 「こなたの旅」の続きを投下します。
今回も少なめで4レスほど使用します。
311 :こなたの旅21 1/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:48:16.82 ID:06t2HKq20
21.

 『カチッ!!』
非常扉のドアが鳴った。鍵が開いたようだ。
あやめ「行くわよ!!」
私達はビルの中に潜入した。

 私達が中に入ると神崎さんは素早く扉を閉めた。目の前には作業着姿のいのりさんが居た。
いのり「こっち」
小さく低い声で囁くと私達に背を向けてカートを押して歩き出した。カートには掃除道具が積まれている。
私達はいのりさんの後を付いて行った。
警戒厳重のはずの25階。銀行の中……だけど警備員が一人も居ない。
みゆきさんは私達から別れて一人で客として一足先にこの銀行に入った。融資の話を持ち出してVIP待遇で接待室にて交渉をしているはずだ。
PIV待遇の客がくると警備員のシフトが変わる。これはいのりさんが見つけた。それを利用していのりさんは警備員の居ない通りを歩いていく。遅くもなく速くもなく、でも確実に
歩いているいのりさん。たった一週間でこれほど構造内容を理解しているなんて。これも夫を想う心がそうさせたのか……
すすむ「まて……」
小声ですすむさんがいのりさんを引き止めた。私と神崎さんも足を止めた。
すすむ「感じる……この近くだ」
私達は周りを見回した。丁度扉があった。いのりさんは扉を確認すると懐から鍵の束を取り出しその中の一つを扉の鍵穴に差し込んだ。
いのり「この部屋は一度も入った事がないの……気をつけて、15分よ」
15分……そう、みゆきさんが銀行と交渉する時間がそのくらいだって言っていた。みゆきさんの事だからもっと時間稼ぎができるかもしれない。
だけど15分、いや、できればもっと早い方がいい。見つけられるかな……不安が過ぎる……
いのり「私は、もう、戻らないと……怪しまれる、帰りの道はわかる?」
すすむ「ああ、来た道を戻ればいいんだな?」
いのりさんは頷いた。
いのり「それじゃ……」
いのりさんはカートを押しながら去った。いのりさんがすすむさんに心配そうな顔で見つめていたのが印象に残った。
私達三人は部屋の奥へと足を進めた。
でもそこは部屋だと思っていたがそこは通路だった。そしてその通路には無数の扉がある。
どれが目的の部屋に通じる扉なのか……
いのりさんと別れてからはすすむさんが頼り。メモリー板の場所はすすむさんじゃないと分からない。
こなた「3メートル以内にあるんでしょ……見当たらないけど……扉を一つずつ開けるなんて時間がないよ、それに警報装置でもあったら……」
すすむ「待て、慌てるな……感じるのは微かだ……」
すすむさんは目を閉じて意識を集中している。私と神崎さんはすすむさんを待つしかなかった。こうしている間でも時間は刻一刻と過ぎていく。

312 :こなたの旅21 2/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:49:17.61 ID:06t2HKq20
 暫くするとすすむさんは目を開け歩き始めた。そして通路の中ほどにある扉の前で止まった。
すすむ「この扉の向こうから強い反応がある……」
すすむさんの目の前にある扉、その先にメモリー板と真奈美が……ま、待って……
こなた「ちょ……この扉の鍵はどうするの? いのりさん居ないし、強引に開けて警報でも鳴ったら終わりだよ」
すすむさんはドアのノブを掴もうとして止めた。
すすむ「そうだな、こんな所で警報は避けたいところだ……」
あやめ「ふっ……大丈夫」
不適な笑みをしながら財布から鍵を取り出した。
こなた「ま、まさかその鍵は?」
あやめ「そう、そのまさか……最高機密を扱う部屋がそこならば開くはず、そしてセキュリティもスルーできる」
私とすすむさんは顔を見合わせて首を傾げた。
こなた「いったい何時そんな鍵を……」
あやめ「この前言ったでしょ、私自身単独でこの会社を調べたって、その時に入手した鍵……もし、この鍵が複製されていると知られてしまったら鍵は付け替えられている
    可能性がある、それどころか鍵を挿した瞬間に警報が鳴るかもしれない」
すすむ「賭けか……」
あやめ「……そう、賭け、それにこの鍵は貿易会社の最高機密の鍵としか判っていない、この扉の鍵かどうかも確証はない、でもね、いのりさんが持っていた鍵の束の中には
    この鍵と同じ物は無かった……」
こなた「さっきいのりさんが持っていたやつ? 沢山あったのに、あんな一瞬で分かったの?」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「この鍵をいのりさんに渡して事前に調べてもらった」
そうか、だからいのりさんは直ぐに別れたのか。
そんな事までしていたなんて……私だったらできただろうか?
すすむ「考えていても時間の無駄だろう……」
私達は神崎さんの持っている鍵を見た。
あやめ「そうね……それじゃ挿す……二人とも祈って……合いますようにって」
神崎さんは鍵を鍵穴に近づけた。手が小刻みに震えている。緊張感が私にも伝わってきた。
鍵は吸い込まれるように鍵穴に入っていく……そして、神崎さんの手が止まった。そして鍵から手を放した。
『ふぅ〜』
神崎さんは大きく深呼吸をして私とすすむさんを見た。私達は頷いた。
神崎さんは鍵を握り捻った。
『カチッ!!』
ドアが鳴った。神崎さんは鍵を引き抜きポケットに仕舞った。そしてノブに手を掛けた。
何の抵抗もなくドアは開いた。神崎さんの読み通り鍵は合っていた。
あやめ「入るよ……」
神崎さんが部屋の中に入った。そしてその後に私達が続いた。
313 :こなたの旅21 3/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:50:36.44 ID:06t2HKq20
 部屋に入った……意外に明るい。ってか、もう明かりが付いている。広い部屋だ……20畳くらいかな……
この部屋は入ってきた扉は他にない。つまり一部屋になっていた。
こなた「ま、真奈美さん!?」
思わず私は彼女の名を呼んだ。でも空しく響くだけだった。誰も居ない部屋。この部屋は真奈美が監禁されている筈じゃなかったのか……
隠し扉でもあるのかな……私は部屋の周りを見渡した。
だけどそんなものは在りそうもない。ただの空き部屋の様だった。もしかして作戦失敗だった……
もう次の部屋をさがしている時間はなさそう。こうなったら見つかる前に逃げるしかない……
私は神崎さんとすすむさんにそう言おうとした。
すすむさんが部屋の一番奥で立ち止まっている。すぐ隣に神崎さんもいる。私は二人に近づいた。
そこには腰くらいの高さの四角い物が置いてあった。何だろう……
その四角い物から配線が数メートル離れたパソコンに繋がっている。
こなた「何これ?」
すすむ「……見つけた」
こなた「え、見つけたって……何を?」
すすむ「……メモリー板だよ……懐かしい……」
すすむさんの指差す方を見た。四角い物の上にスマホ位の大きさの板が乗っていた。
こなた「メモリー板……これが……それじゃこの四角いのは何?」
すすむ「メモリー板を読み取る装置の様だな……」
すすむさんは腰を下ろして四角い物をじっくりと見た。
すすむ「驚いた、これはオリジナルの装置じゃないか、人間は何時の間にこんな物を……」
こなた「オリジナル?」
すすむ「メモリー板は私でなければ起動できない、私の脳波が鍵になっている、しかし起動しなくても基本的な情報は読み取ることが出来ようになっていてね
    メモリー板の中央がガラスの様に透明になっているだろう、その中に情報を直接刻み込んである」
確かにメモリー板の中央が1センチ四方の大きさで透明になっていた。
すすむ「これを見てくれ」
メモリー板の直ぐ隣に銃みたいな長細い筒状の物があった。その筒の先はメモリー板の方を向いている。
すすむ「この先からレーザをメモリー板に当てて情報を読み取っていたのだろう」
こなた「分かった、その情報をこのパソコンに送っている」
すすむ「その通り……」
すすむさんはメモリー板に手を伸ばした。
こなた「え、大丈夫なの……警報とか鳴らないの?」
すすむ「この装置はパソコン意外には繋がっていない」
すすむさんはまるで分かっている様にメモリー板を四角い装置から取り外した。そしてメモリー板の表面を人差し指でスマホを操作するようになぞった。
するとメモリー板の透明な所が淡く光り始めた。どうやら起動したみたいだった。
すすむ「……壊れていない、いいぞ……」
すすむさんは夢中になってメモリー板をいじっている。私は神崎さんの方を向いた。
こなた「真奈美さんは何処なの?」
神崎さんは何も言わずすすむさんが持っているメモリー板を見ていた。
こなた「もう時間が迫っているよ、早く捜そうよ」
神崎さんは何も言わないただ立ち尽くしているだけだった。
こなた「ちょっと……神崎さん、すすむさん……」
すすむさんの操作している指が止まった。
すすむ「……このメモリー板には事故があった時から私が起動するまでの間に直接アクセスした履歴がない」
こなた「へ?……それってどう言う事なの」
すすむ「起動していなくても近くに仲間が来ればメモリー板の履歴に残るようなっている……つまり事故から4万年の間に我々の仲間がこのメモリー板に触れた事はなかった」
こなた「……真奈美さんがが捕まっていれば必ずこのメモリー板を解読させようとする筈でしょ……」
すすむ「そうだな、そうするだろう、しかしここの人間はそうしなかった、出来なかった……つまり最初から真奈美はここに居なかったのだよ……」
こなた「う、うそ……ここの会社の特許はどうやって、それってメモリー板を解読しないと出来ないでしょ?」
すすむさんは四角い装置を見た。
すすむ「その装置が読み取ったのを人間が解読して得た知識を利用したのだろう……読み取りにレーザーを使うとは考えたな……そうか、とっくに人間はその技術を得ていた、
    CDか……ふふ、音を記録する技術を利用されるとな……その発想は我々にはない」
四角い装置を見ながら笑うすすむさんだった。
つまり神崎さんとみゆきさんの推理は間違っていた……そう言う事か……真奈美はやっぱりもうこの世に居ないって……
そういえばこの部屋はあまりにも殺風景。生活の匂いがまったくしない。いくら捕らわれの身になったとは言え。生活の場くらいは用意するはず。
この部屋にはそんな感じは一切無い。このメモリー板を自動的に読ませてパソコンに保存する……ただそれだけが目的で作られた部屋。そんな感じ。
すすむ「真奈美が居ないと分かったらもうここには用はないだろう」
すすむさんはメモリー板をポケットに仕舞った。
そう、真奈美がいなければもうここには用はない。それにメモリー板を奪還できたのだから作戦は成功だ。うんん……ここから出られたらの話だけど。
こなた「そ、そうだね、出よう……ん?」
神崎さんが四角い装置を見たままボーっとしている。
こなた「神崎さん?」
私は神崎さんの顔を覗き込んだ。
あやめ「え、あ……そ、そうね……此処にはもうここには用はない……出ましょう」
私に気付いた神崎さんは慌てて扉に向かった。

314 :こなたの旅21 4/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:51:57.74 ID:06t2HKq20
 キャリーバックは役に立たなかった。それにしても今回私はは何の役にも立っていない。ただ二人に付いて来ただけだった……
まてよ……
あの四角い装置に繋がっていたパソコン……すすむさんがメモリー板を取っても何も反応しなかった。それにケーブルは装置としか繋がっていない。
それはハッキングを恐れて外部からはアクセス出来ないようにした。あのパソコンはただ装置から出たデータを受け取っているだけの物。
私が出来る事があるじゃないか。
私は腕時計を見た。まだ充分時間はある。
こなた「ちょっとまった」
神崎さんとすすむさんは立ち止まった。
こなた「せっかくだからメモリー板の証拠を消しちゃおう」
私はパソコンの方に向かった。
あやめ「時間はどうなの?」
こなた「大丈夫、1分もあれば……」
私はUSBメモリーを取り出した。
すすむ「メモリー板から読まれたデータは1%もない、仮に100%読まれたとしても今の人間では1%も理解できまい、放っておいても問題ない」
こなた「その1%未満のデータで兵器を作っちゃうでしょ、それにメモリー板があるって言う証拠が残っちゃうじゃん」
私はパソコンにUSBメモリーを挿した。そしていつもの様にパソコン内のデータを消去した。その時間は30秒。
こなた「終わったよ、さてこんな所早く出ちゃおう」
USBメモリーを引き抜くと走って二人を追い抜き扉に向かった。
こなた「ささ、早く」
私は扉を開けた。

 みゆきさんは私にUSBメモリーを使うなと言っていた。そして私が使おうとした直前にすすむさんもする必要がないって言っていた。そう、これはフラグだった。
普段の私ならそれに気付いていた。だけど私はそれに気付かなかった。何故……
功を焦っていた……それとも急いでいた。それもあったかもしれない。でもそうじゃない。多分普段の私でもそれがフラグだって気付かなかった。そんな気がする。

???「誰だ!!」
突然後ろから怒鳴り声が聞こえた。私はその声の方角に反射的に身体を向けた。警備員だ。
体付きは筋骨隆々、一目で体育会系であるのが分かった。私と目が合うと腰の警棒に手を掛け走って向かってきた。私だけなら走って逃げられそう。だけど神崎さんとすすむさんは
そうでもない。捕まってしまいそう。どうしよう。
逃げるか。それとも奇襲の一撃を食わすか。私だって少しは武道を齧っている。でも咄嗟に技が出せるか分からない。失敗したら倒されるのは私……
警備員はみるみる近づいてくる。考えている時間はない……どうしよう。何故か身体が言う事を聞かない。動かない……
警備員は警棒を抜いた。わわわ……何も出来ない。もうダメ……私は目を瞑った。
……
………
…………?
…………あれ?
何も起きない。静かだ。
私はゆっくり目を開いた。
警備員が私の直ぐ目の前に立っていた。
こなた「ひぃ〜」
思わず後ろに数歩下がった。警備員は警棒を振りかざした姿勢のまま写真の様に止まっている。この光景は見覚えがある。そうだ、お稲荷さん十八番の金縛りの術。
こなた「すすむさん、助かりました〜」
私は後ろを振り向いた。そこには……神崎さんが立っていた。
こなた「えっ!?」
私はいったい何が起きたのか直ぐには理解できなかった。神崎さんはゆっくり歩き警備員に近づくと手を警備員の顔に近づけた。そして手のひらでそっと両目を撫でるように
下ろすと警備員は目を閉じて崩れるように倒れた。催眠術?……こんなの武道じゃない。やっぱりお稲荷さんじゃないとできない……
神崎さんはお稲荷さんだった!?

つづく

315 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/23(日) 23:55:09.85 ID:06t2HKq20
以上です。

「こなたの旅」も21回目となりました。
適当に切って投下しています。
続きが気になるようには作っているつもりです。

この後直ぐにまとめるので報告は避難所のみとします。
316 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/24(月) 00:05:51.02 ID:hW2UWxD20
まとめサイトにコメントを入れてくれる人がいますね。
嬉しい限りです。
317 :消費税 [saga]:2014/03/31(月) 00:43:29.10 ID:Gf4pjY+v0


かがみ「明日から消費税が上がるわね」
つかさ「8%……だっけ」
かがみ「そうよ」
みゆき「確か17年ぶりの増税だそうですね」
こなた「え、上がるの、今まではいくつだったっけ?」
かがみ「あんた……いままで知らないで買い物していたのか!」
こなた「まぁまぁそうそう怒らないで、教えて」
みゆき「今までは5%でした」
かがみ「みゆき、甘やかしたら図にのるわよ、こいつ」
こなた「………ぶつぶつ……ぶつぶつ」
つかさ「こなちゃん、どうしたの?」
こなた「ま、まずい、今のうちに買い忘れていた漫画とか買わないと、あ、DVDもいくつかあったっけ……わ、わ、わ、
    どうしよう、どうしよう」
かがみ「まったく、普段からニュースとか見ていないからこうなるのよ」
こなた「そうだ、味噌とか醤油も買わないと」
かがみ「味噌、醤油……何でよ?」
つかさ「あ、日持ちする調味料とかは買いだめできるからでしょ?」
こなた「そうそう、普段料理をしない人は……分からないよね」
かがみ「わ、悪かったわね……」



久しぶりに1レス物を投下してみました。
318 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/31(月) 21:48:26.99 ID:Gf4pjY+v0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は7レスくらいになります。
319 :こなたの旅 22 1/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:50:38.42 ID:Gf4pjY+v0
22

 足元に大男が横たわっている。倒したのは武道の心得のない女性記者。神崎さん。蹴りや手刀で攻撃したのではない。お稲荷さんの秘術を使って倒した。
神崎さんは私と目が合うとにっこり微笑んだ。
あやめ「これで、相子ね……」
相子……それってこの前の潜入の事を言っているの……
確かにあの時と逆だ。私はさっき警備員と戦う覚悟がなかった……
こなた「お相子って……神崎さん……」
すすむさんが私の前に割り込んできた。
すすむ「神崎あやめ……お前、何者だ、さっき手をかざした時、警備員の記憶を奪ったな……何故人間のお前がそんな事が出来る」
すすむさんが神崎さんに詰め寄った。
あやめ「泉さんの顔を見られた……顔を覚えられるのは避けたい……」
記憶を奪う……もうこれは人間技じゃない。間違いない。神崎さんはお稲荷さんだった。
すすむ「ば、ばかな、我々4人以外は全て帰ったはずだ、それになぜメモリー板が反応しない……人間になったのか?」
神崎さんは倒れている警備員を見た。
あやめ「……そんな詮索をしている暇なない、見なさい……」
私とすすむさんは警備員を見た。胸のポケットに入っている手帳の様なものが赤く点滅している。
こなた「なに、点滅している……」
あやめ「転倒センサー……警備員が倒れれば何か異常があるのは明らかよね、センサーが感知して警備管理センターに通報された、間もなく大勢やってくる」
辺りは静か。警報音も人がくる気配もない。
こなた「た、ただの無線機じゃないの、警報も鳴ってないし、静かだよ」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「ここの警備員は貿易会社直属、それに警報は鳴らない、分かるでしょ、ここ他人には知られてはならない秘密の場所、彼等は侵入者に容赦しない」
あの警備員が向かって来た時の勢い、凄くて圧倒されたのはその為……
すすむ「詳しいな、神崎あやめ、以前に此処に入ったのか……」
神崎さんは何も言わず微笑み私達に背を向けた。
あやめ「もう時間がない、早く逃げて……私が引き付ける……」
こなた「引き付けるって……どうするの?」
あやめ「早く、行きなさい……」
こなた「……で、でも……」
あやめ「捕まったら命の保障はない」
こなた「わ、私がパソコンを触っていなかったら……こんな事に……ごめんなさい……」
あやめ「泉さんがそうしなくても結果は同じだった、それに小林さんと約束したから、誰も傷つけないって、逃げ切って……さぁ、早く」
かがみ……かがみのバカ……そんな約束しちゃダメだよ
こなた「で、でも……」
私の腕をすすむさんが掴んだ。
すすむ「行くぞ!」
遠くから沢山の足音が聞こえてきた。一人や二人じゃない……ぞっとしてきた。
すすむさんが力強く引っ張る。
こなた「今なら一緒に逃げられるよ」
足音はどんどん大きくなってきた。数人どころじゃない大勢の足音。すすむさんが更に強く引っ張る。
神崎さんは私に背を向けると足音がする方向に向かって走り出した。通路の曲がり角を曲がると神崎さんは見えなくなった。
『※!!#&☆』
意味の分からない怒号が飛交う。警備員は日本人だけじゃないみたいだった。足音が私達から遠ざかっていく。
すすむ「彼女の行為を無駄にする気なのか?」
……すすむさんの言葉に私はどうしようもない気持ちでいっぱいになった。
私達は思いっきり走って出口に向かった。
320 :こなたの旅 22 2/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:51:38.92 ID:Gf4pjY+v0
 どうやって出たのかは覚えていない。ただすすむさんの後を付いて行っただけだったかもしれない。
でも気付いたら非常階段の出口に立っていた。
私はすすむさんの方を向いた。
こなた「……何で、何故一緒に逃げようって言ってくれなかったの、神崎さんはお稲荷さんだよ、すすむさんの仲間だよ、あの時一緒に逃げていれば……」
すすむ「一緒に逃げていれば確実に私達は捕まっていた」
こなた「うんん、全速力で走れば……」
すすむ「そうだな、全速力で走れば泉さんは逃げ切れる、しかし、私と神崎さんは逃げ切れまい、それに泉さんは私達が遅れてそのまま置いて行く様な真似はできないだろう?」
こなた「それは……」
すすむ「それが出来るようなら泉さんはとっくにそうしていた、見つかった時逃げずにもたついていたではないか、違うか?」
こなた「いざとなったら、戦って……」
すすむさんは首を横に振った。
すすむ「あの警備員は神崎さんの言う様に特別な訓練を受けている、泉さんを何の躊躇いもなくしかも警告なしに襲ってきた、神崎さんが術をかけていなかったらその場で
    警棒の攻撃をうけていただろう、しかも全力でね」
確かにあの時動けなかった。まるで金縛りにあったみたいだった。いろいろ頭の中を過ぎったけど、動けなかったのはそれだけじゃなかったみたい。
それでも、この原因を作ったのは私。
こなた「……私……私がパソコンをいじっていなければ……こんな事にはならなかった……」
すすむ「作業に約1分……か、まったく影響が無いとは言えないな、だがパソコンの情報を消す行為自体は当然すべき内容だった、方法も手段も持っている泉さんとすれば
    選択肢の一つに入るのは当然だ、だから私は無理に止めなかった、神崎さんもそうだっただろう?」
こなた「……だ、だけど……」
私は非常階段の扉を眺めていた。
すすむ「彼女はお前たちが言うお稲荷さんだ、何故メモリー板が反応しなかったのは分からんがな、それに彼女には何の迷いも見受けられなかった、
きっと抜け道か何かを知っているのかもしれない」
確かにこの前の脱出した時の神崎さんとは違っていた。私が止めようとする前に警備員達の所に行ってしまった。
そうだよ。これはフラグだった。分かっていたのに…………
何で……バカだよ私は……

『パン!!』
突然手を叩く音が聞こえた。私は音のする方を向いた。すすむさんが立っていた。どのくらい時間が経ったのだろう。
扉が開く様子はない。
すすむ「まだ作戦は終わっていない、進行中だ」
こなた「で、でも……神崎さんが……」
すすむ「まだ捕まったと決まった訳じゃない、失敗したとは言えない、メモリー板はこの手にある、だからこのまま次の行動をする」
こなた「で、でも……」
すすむ「私はこれからいのりの無事を確認した後、約30分後の特急に乗って神崎家に向かう……泉さんの行動予定は?」
こなた「……私は……」
すすむ「どうした、忘れたのか?」
何故かここを離れたくなかった。
こなた「…………」
すすむ「泉こなた、私を見て次の行動を言いなさい」
低い声だった。私はすすむさんの目を見た。
こなた「私は……みゆきさんがビルを出るのを確認したら……待っているひよりの車に乗って神崎さんの家に……」
すすむ「よし、彼女の家で合流時間まで神崎さんを待つ、全てはそれからだ、分かったな?」
そうだった。リスクを分散する為に合流するまでの道のりはなるべくバラバラにしたのだった。
すすむ「……今の君を見ていると4万年前の私を思い出すよ……それじゃ、無事でな……」
こなた「4万年前……?」
すすむさんは周りを確認すると階段を降りた。
4万年前って、すすむさんが事故を起こした時だったよね。
私がその時を同じって……

良く分からない。だけどこのまま此処に居ても何も起きない事だけは分かった。
すすむさんが見えなくなって暫くして私は階段を降りた。

321 :こなたの旅 22 3/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:52:47.73 ID:Gf4pjY+v0
ひより「泉先輩……心配したっスよ、5分遅れです」
待ち合わせ場所に車が止めてあった。私は車のドアを軽くノックした。ひよりは電動ドアガラスを開けて初めて発した言葉がそれだった。
思ったほど時間はオーバーしていなかった。私はフロントドアを開けて助手席に座った。そしてキャリーバックを後部座席に置いた。
ひよりは無造作にキャリーバックを置いた私を少し不思議そうに見ていた。
ひより「高良……基、近藤先輩と会いましたか?」
みゆきさんが無事にビルを出たのは確認した。向こうも私を確認している。私は頷いた。
ひより「それじゃ出ますね……」
ひよりはバックミラーで後ろを確認した。その時キャリーバックに何も入っていないのに気付いたみたいだった。
ひより「あ、あの〜真奈美さんは……?」
こなた「遅れているから……早く出して……」
ひより「あ、は、はい……」
私を見て何かを感じたのだろうか。ひよりはそれ以上何も言わず車を出した。
車を出して暫くして高速道路に入ってすぐだった。
ひより「何があったのですか……」
エンジン音に消されそうなほど小さな声でそう言った。それでも私には鮮明に聞こえた。やっぱり話さなきゃいけないのかな。
作戦に参加しているひより。知る権利はあるし、話さなければならないか。
私は今までの出来事を話した。

私が話し終えると直ぐにひよりは聞き返した。
ひより「神崎さんが金縛りの術を……?」
こなた「うん……すすむさんもそう言ってた、ついでに記憶も消したって……」
ひより「それじゃ神崎さんはお稲荷さんって事じゃないですか!!」
こなた「ひより、前、前!!」
私は正面を指差した。ひよりは慌てて前を見てハンドルを操作した。少し車が揺れた。
こなた「そうなんだ……以前私もそう思って彼女に聞いた……だけど否定しされちゃってね……その時の言い訳があまりに的確だったからそれ以上追求しなかったよ……」
ひよりは何度か深呼吸して冷静さを取り戻した。
ひより「……そうですか……お稲荷さんに詳しすぎるって私も思ってはいましたけど……それじゃ真奈美さんと幼少の頃助けたって言うのも嘘だったのかな?」
こなた「それは本人じゃなくて母親の正子さんから聞いたから……正子さんまで嘘を付いているとは思えない」
ひよりは話すのを止めて運転に集中した。私も暫く何も言わなかった。
ひより「あの〜」
5、6分くらいしただろうか。ひよりが再び話し出した。
こなた「ん?」
ひより「私思ったのですけど……神崎さんは警備員の注意の全てを自分に向けて泉先輩達を逃がしましたよね……」
こなた「う、うん」
そう、それは私のせい……ひよりは私を責めるのかな……私が一番恐れていた事。だからあまり話したくなかった。
ひより「似ていませんか……お稲荷さんの人間への怒りを全て自分に向けてつかさ先輩を守った真奈美さんと……」
こなた「え、あ……!?」
そういえばそうだ。似ている。って言うより同じじゃないか。私は自分のミスに気を取られてそこまで気が回らなかった。
ひより「神崎さんは実は真奈美さん本人じゃないかなって……幼少の頃からの知り合いだから化けてしまったら身内でも気付かないッス」
こなた「そう、私も以前そう思った、だけどつかさがそれじゃ神崎さん本人は何処に居るなんて言われて……」
ひより「……それは……こう考えてみたらどうッス、あくまでこれは私の推理ですけど、貿易会社に捕らわれているのは神崎さんじゃないかなって……それなら
    真奈美さんが貿易会社に潜入する理由が出来る……」
こなた「それじゃ、貿易会社は偽者の神崎さんを消してしまうよ」
ひより「いいえ、その逆ッス、偽者であろうと神崎さんが普通に暮らしていれば貿易会社は拉致しているのを隠す事ができるじゃないですか……」
こなた「まさか……」
でもひよりの推理は納得できる。
ひより「真奈美さんが自分の正体をギリギリまで隠す理由を考えていたらそう思いまして……すみません、余計な事だったッス……」
こなた「いや、ひより、間違いないよ、神崎さんは真奈美さんだよ……」
ひより「だとしたら、真奈美さんは最初からこの作戦で捕まるつもりだったかも……神崎さんの居場所を突きとめる為に……」
こなた「わざと……」
ひより「すみません……これも余計な詮索ッス……忘れてください……」
。最後の推理は私の失敗のフォローだったかもしれない。私がそう思ったのを察知したのだろうか。ひよりは神崎さんの家に着くまでその話に触れなかった。

 ひよりの推理は全てに納得できる内容だった。
私はつかさを神崎さんから遠ざけていたけど。思えば神崎さんがつかさを遠ざけていたかもしれない。私達の中で真奈美と直接会っているのはつかさとひろしとひとしさんだ。
すすむさんとまなぶさんはどうだろう……もしかしたら……まなぶさんは真奈美を知っているかもしれない。
その四人が居れば何かの拍子に正体がバレてしまうかもしれない。だからつかさの手を強く握ったりして誤魔化した……
今回の作戦ももっともらしい理由をつけて四人を外した。そうだよ、まなぶさんは最初から作戦から外れている。
もう疑う余地はない。神崎さんは真奈美だ。

 神崎さんの家に着くまで考えていた。
真奈美が生きている。一番喜ぶのはつかさか、弟のひろしか。偶然にも二人は夫婦。
いや、偶然じゃない。二人はなるべくして夫婦になった。私はそう思う。
いくら親友を助ける為とはいってあの二人に正体を隠しつづけるのはやっぱり辛かっただろうね。
私にはそんな素振りはまったく見えなかった。それに神崎さんの母親、正子さんにバレないでいられるなんて。いったい何時から神崎さんと真奈美は入れ替わったのだろう。
少なくともつかさが一人旅をした後だよね、どうやって大怪我から生還できたのかな。それだけが謎だ。
つかさが真奈美と再会して喜ぶ姿が目に浮かぶ……
うんん、それはあのビルから逃げていればの話。
もし逃げられなかったら、命まで奪われるような……
そんな事になったらいくらつかさでも私を許さないかも……
こんな考え自体がフラグかもしれないのに……それでも考えられずには居られなかった。

322 :こなたの旅 22 4/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:54:12.58 ID:Gf4pjY+v0
『ピンポーンー』
誰も出てこない。もう一度
『ピンポーンー』
神崎さんの家に着いた私達は家のベルを押してみた。
ひより「留守みたいですね」
こなた「うん、正子さんは居るような気がしたけど、居ないみたい……」
もっとも正子さんが出てきて何て言って良いのか分からない。
ひよりは時計を見た。
ひより「集合の予定より30分は早いッス、休まずに来たせいかも」
こなた「うん……遅れた分を回収しちゃったね……」
ひより「私の車で待ちますか?」
こなた「うん……そうしよう……」
車に移動しようとした時だった。
「泉さん、田村さん?」
私達は声の方を向いた。みゆきさんが立っていた。そうだった。みゆきさんはすすむさんと一緒の電車でくるはずじゃなかったのかな。
こなた「予定より早くない……すすむさんはどうしたの?」
みゆき「はい、一度合流しまして……私が先に行く事に……」
こなた「あ、いのりさんは、いのりさんは無事なの?」
みゆき「はい、それだけを確認して急いで一本早い特急に乗りました……」
良かった。いのりさんは無事。これで神崎さん以外は大丈夫みたい。神崎さん以外は……
ひより「どうして予定を変更してまで早く来たっスか?」
みゆき「はい……ビルで泉さんを見かけた時、様子が違っていましたので……急に心配になってしまって」
みゆきさんは私をじっと見た。そして辺りを見回した。
キャリーバックを持っていないからか。空のバックは車の中に置いてある。
みゆき「あ、あの〜真奈美さんは……?」
すすむさんから聞かなかったのって言いたかった。説明するのは苦手だし……
すすむさんと話をしている時間がないのはすぐに分かった。
私はひよりの方を向いた。ひよりは首を横に振った。私はみゆきさんの方を向いて首を横に振った。
みゆき「……いったい何があったのですか?」
みゆきさんは私に近づいてきた。私は俯いてしまった。みゆきさんになんて言おう。
みゆき「泉さん……」
何度か呼ばれたけど答えられない。
ひより「あの、私で良ければ話します……良いですか泉先輩?」
私は頷いた。ある意味ひよりと一緒に車で移動したのは良かったのかもしれない。
ひよりはビルの中で起きた出来事、そして車の中で話した内容をみゆきさんに話した。

 ひよりが話していくうちに私は悔しくなってきた。もう少し早く部屋を出ていれば……パソコンをいじっていなければ……
神崎さん、真奈美をあんな事に……
みゆき「……泉さん……」
みゆきさんの優しい声が私を呼んだ。急にこみ上げてくるものを感じた。こんな気持ちになったのは初めてだ。
こなた「みゆきさん……私……」
何も言えない……これじゃつかさやひろしに会えないじゃないか。
みゆき「同じですね、あの時と全く同じです、以前いずみさんと全く同じ表情で私と話した人がいました……確か……コミケ事件があった少し前でした、彼女は
    何も出来なかったと凄く後悔をしていました……分かりますか?」
私は首を横に振った。その遠心力で涙がこぼれた。
みゆき「それは、つかささんです」
こなた「……つかさ?」
みゆき「泉さん、神崎さん、もしくは真奈美さんは未だどうなっているか分かりません、まだ後悔するのは早いとは思いませんか?」
……つかさは目の前で真奈美が倒れるのを見ていた……私は……まだ何も見ていない。
みゆき「待ちましょう……私にはそれしか言えません……」
みゆきさんは微笑んでハンカチを私に差し出した。私はハンカチを受け取った。
こなた「はははは、そうだ、そうだよね、まだ決まった訳じゃない、待とう」
今になってつかさの本当に気持ちがわかるなんて、いや、まだ本当に意味で分かったわけじゃない。

323 :こなたの旅 22 5/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:55:06.06 ID:Gf4pjY+v0
 気を取り直した私は神崎さんの家から少し離れたひよりの車の中で話をする事になった。
みゆき「田村さんの推理が正しいとしたら、私の推理は間違っていた事になります……すみませんでした」
こなた「うんん、でもそのおかげで神崎さんと話し易くなったし、潜入をする切欠になったから」
みゆき「メモリー板を解析する時間がワールドホテルの時と偶然に一致しただけでした……」
ひより「それにしても何故神崎さんが捕まってしまったか……」
みゆき「神崎さんは企業や政府の不正を調べていました、貿易会社もその対象になったのは容易に想像できます、おろらく本人が自ら潜入捜査をしていたのでは、
    メモリー板の件で真奈美さんも協力していたのではないでしょうか?」
もし、まなみも神崎さんも捕らわれてしまったら、助け出すのは私達しか居ない……
ひより「それで私達を捜し出した訳ですね、でも、正直に正体を言っていたらもっと協力できたようなきがするっス……」
みゆき「どうでしょうか、正体を教えてつかささんやひろしさんが大人しく引き下がったでしょうか、冷静な泉さんですら動揺してしまった今回の作戦……」
だから真奈美は神崎さんでなければならなかった……っか。
ひより「何となく分かりました……」
みゆき「いえ、これも詮索の域を出ていません」
何となく車から外を見た。遠くから人が歩いてくる……あれは、すすむさんだ。
こなた「すすむさんが来たよ」
時計を見るみゆきさん。
みゆき「時間通りですね、行きましょう」
私達は車から出た。

324 :こなたの旅 22 6/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:56:02.77 ID:Gf4pjY+v0
 私達は再び神崎さんの家の玄関前に居た。
すすむさんは私を見た。
すすむ「来たか」
こなた「うん、もう大丈夫だから、でも、別れ際の言葉が無かったらあのままずっと非常口に居たかも」
すすむ「そうか、それは良かった……」
こなた「それで、4万年前の事故の原因は分かったの?」
すすむさんは黙ってポケットからメモリー板を取り出した。
みゆき「……それがメモリー板、お稲荷さんの知識が詰まっている物……」
みゆきさんは身を乗り出して食い入る様にメモリー板を見ていた。
すすむ「事故の原因はメモリー板を調べるまでも無い、もう分かっていた……」
こなた「へ、それじゃ何で作戦に参加したの?」
すすむ「……もう終わった事だ……」
すすむさんはメモリー板をまたポケット仕舞った。
すすむ「神崎さんを待つとしよう」
こなた「あれ、教えてくれないの」
すすむさんは神崎さんが来るであろう方向を向いてしまった。
こなた「神崎さんは真奈美って分かったし、内緒にする必要なんかないじゃん?」
すすむ「なに、彼女が真奈美だと言うのか?」
すすむさんは驚いた顔で私の方を向いた。
こなた「他に候補者いるかな、すすむさんの方が詳しそうだけど?」
すすむ「それは……すまん、私は真奈美とは面識が無かった、神崎さんが真奈美かどうかまでは判断できない」
やっぱりそうだ。だからすすむさんを作戦メンバーに入れた。
こなた「本当の神崎さんは貿易会社に捕まっていて、真奈美さんが神崎さんに化けて貿易会社に潜入した、もちろん神座産を助ける為に、これが私達の考えなんだけど
    すすむさんはどう思う?」
すすむ「真奈美は亡くなったとつかさから聞いた、私もそれ以上詮索はしなかった、死人が蘇るなんて在りえない」
こなた「そうそう、その亡くなったって言ったのがつかさなのが問題、つかさは見ての通り天然な所があるでしょ、だからどこかで勘違いをしている……なんてね」
すすむ「確かに亡くなったと言ったのはつかさだけだが……」
すすむさんはみゆきさんとひよりの方を向いた。
ひより「ま、まぁ、後輩の私が言うのもなんですけど……つかさ先輩はそう言う所があるっス」
みゆき「誰にでも見間違いはあると思います……」
すすむさんは腕を組んで考え込んだ。
すすむ「確かに今の時点で真奈美以外考えられないか……」

325 :こなたの旅 22 7/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:57:05.97 ID:Gf4pjY+v0
 すすむさんは再びポケットからメモリー板を取り出した。
すすむ「……このメモリー板は通信機能が備わっていてね……母星と通信が出来る」
こなた「通信って、故郷に連絡を取りたい人でもいるの?」
すすむ「いや、これが見つかっていれば、私達は帰る事が出来た……当時私はこれを探した、そうだ、3メートル以内、いや、10メートル以内でも……
    あれば救助要請ができた……私はそれが出来なかったのが悔しかった……」
みゆき「そのメモリー板が見つかった遺跡はかなり深い地層から発見されたそうです、おそらく宇宙船が墜落した時、地中深く潜ってしまったのでしょう」
地中深くにあったらくら探しても見つからない。
すすむ「この地球は私達にとっては過酷すぎた……現にほとんど全ての仲間が帰ってしまった」
こなた「そうかな……それは違うと思うよ」
すすむ「何を知った風に言う、人間に何が分かる」
こなた「帰るか、残るか決めるとき、それぞれのお稲荷さんは話し合っていたってつかさが言っていたよ、ただ帰りたいだけだったら話し合いなんかしないと思う」
ひより「そうですよ、そのメモリー板をすぐに見つけて帰ってしまったら1000年前の巫女さんにも逢えなかった、もちろんその生まれ変わりのいのりさんにも」
すすむ「生まれ変わりか、確かに双子の様に似ていた……しかし彼女は病弱で子は生んでいない、彼女の子孫は居ない」
ああ、そういえば以前ひよりとゆたかが遊びに来たときそんな話をしていたっけ。
こなた「でも1000年前でしょ、お稲荷さんの巫女だから言ってみれば神様の召使いって事だよね、そんな巫女さんならその家族だって当時は特別待遇だったんじゃないの、
    きっと厳しい時代も生き抜けた、そして現代の柊家がその巫女さんの子孫、お稲荷さんが帰ってしまったらつかさやかがみも居なかったかも、私はそんな世界は嫌だよ」
みゆき「小さな出来事でも時間が重なるとその変化は多大な物になると言います」
すすむさんはメモリー板じっと眺めていた。

 どのくらい経っただろうか遠くから何か聞こえた。聞き覚えのある音……どんどん近づいてくる。間違いない。あれは……
こなた「神崎さんだ!!」
皆は私の方を向いた。そして辺りを見回した。
すすむ「……誰もこないではないか」
みゆき「見当たりませんね……」
ひより「どこですか……見間違えでは?」
うんん、間違いないあの音は。
こなた「神崎さんの乗っているバイクの音……」
私達はは耳を澄ました。バイクのエンジン音がどんどん近づいてきた。そして直ぐ近くまで来たと思うとどんどん遠ざかってしまった。
ひより「行っちゃいましたね……聞き間違えじゃないですか」
こなた「間違いないよ、あの音は絶対に神崎さんのバイクの音だよ、何度も聞いているし」
神崎さんは逃げ切った。心の底から嬉しさが湧き出した。
ひより「それじゃ何で遠ざかったのかな……何処に行ったのかな?」
私にはそれが何処かすぐに分かった。
こなた「……神社だ、あの神社に行ったんだ!!」
すすむ「神崎さんはオートバイに乗っていたのか……音だけ聞かせて去る……彼女は泉さんを呼んでいるに違いない」
こなた「私を?」
すすむ「うむ、君以外に彼女の乗っているバイクの音など区別できない、だとしたら答えは明白だ」
神崎さんは私にあの神社に来いと言っているのか。何故……
すすむさんは持っていたメモリー板をひより、みゆきさん、私の順に向けた。
ひより「な、何か?」
すすむ「これで君達の脳波をメモリーに登録した、このメモリー板は君達のものだ、そして、泉さん、君が代表して受け取りたまえ」
すすむさんは私にメモリー板を差し出した。
こなた「へ、私……もらっても使い方しらないし、それに何で私?」
すすむ「このメモリー板は脳と直接コンタクトして操作する、泉さんが考えればメモリー板がそれに答えよう」
私はメモリー板を受け取った。
すすむ「USBメモリーの使い方をずっと見ていた、泉さんなら正しく使うだろうと判断した……それに、もう私にこの装置は不要だ」
すすむさんは駅の方に体を向けた。
すすむ「会ってくるがいい、そして全てを聞いてきなさい」
ひよりとみゆきさんは車の方に体を向けた。
こなた「へ、会うのは私だけ?」
みゆき「それが神崎さんの希望らしいので」
ひより「作戦も大詰めですね、私達はこのままキャリーバックをつかさ先輩に返しにいってきます、いろいろと話す事もありますので」
こなた「え、あ、そ、そう?」
私一人で……急に寂しくなった。
すすむさんは駅に向かって歩き出した。ひよりとみゆきさんは車に乗った。
ひより「神社の入り口まで送りますよ」
こなた「あ、ありがとう……」
私は車に乗り込んだ。


つづく
326 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/31(月) 22:01:11.49 ID:Gf4pjY+v0
以上です。

今回は書く時間があったのでキーボードスムーズに動きました。

まとめサイトのいくつか自分のssにコメント入れてくれた人がいました。この場を借りてお礼をします ありがとう。


この後すぐにまとめますので報告は避難所のみとします。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/13(日) 12:00:39.39 ID:cAAiOMND0
まとめの管理者です。
まとめサイトのメニュー画面「今日の人気ページ」が更新されない不具合がありました。
(自分以外のPCでも同じ症状があったので)
修正しましたので確認してみてください。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/18(金) 17:21:49.89 ID:0uE9zz/P0
ふと思い出して読みたい作品があるんだけど
かがみの幼少期の家出の話と
こなたの生まれる前の泉家の前に住んでる人の家の犬の話ってまとめwikiにある?

その二つの話と
ID:vtqLC2YnO=ID:DaIr8zezO
ID:w6yrVqDEO
ID:+Z93F3lO
ID:yRZiGlX8O「追憶のかなたへ。」
が確か同一作者だったから、まとめて読みたくなったのよ

この人の作品は作者まとめにいれてもいいんでね?
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/18(金) 20:20:24.33 ID:kHd2duJC0
>>328
一応管理している者です。

犬のお話は「おすすめリスト」の
ID:vtqLC2YnO氏:タイトル不明 じゃないかな?

かがみの家出の話は思い当たる作品はありません。
この作者さんの特徴からタイトル無しの作品を探せばみつかるかも?

作者まとめの件ですが基本的には作者本人の希望でリストにするようにしています。
ですので、この作者さんが希望を出せばリストに載せます。

以上です。


余談ですが、おすすめリストに載るのは凄いですね。
私もそれが目的で投下しているようなものです。
かすりもしませんがw

もしおすすめリストに載せたい作品がありましたらどんどん書き込んで下さい。

っと宣伝もしましたw。

330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/05/02(金) 22:34:06.25 ID:8kzi1TIR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

7レスくらい使用します
331 :こなたの旅 23 1/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:36:27.66 ID:8kzi1TIR0
23

 神崎さんの家から神社までは歩いても行けるだから車で向かえば数分で着いてしまう。
何だろう。このへんな気持ち。神社に近づくにつれてだん気が重くなっていく。こんな気持ちになるのは初めてだ。何度もあの神社には行っているのに。
そんな話をする間もなく神社の入り口に到着した。私が車を降りるとみゆきさんとひよりも車を降りた。
ひより「泉先輩、このバイクが神崎さんのですか?」
神社入り口の鳥居のすぐ横にバイクが停めてあった。
こなた「そう、それ、それが神崎さんの」
ひより「泉先輩の言う通りでしたね、さすがッス」
みゆき「この階段を登れば……真奈美さんに……」
みゆきさんは山の頂上を見上げた。
こなた「……どっちでもいいけど、一緒に来てくれない……?」
ひより「私は別に構いませんけど、一人の方が良いのでは?」
みゆき「私は真奈美さんに会ってつかささんを助けてくれたお礼を言いたい……」
こなた「みゆきさんが一緒なら心強いよ」
みゆきさんは首を横に振った。
みゆき「やはり泉さんが行くべきです、合流の場所を外してわざわざ神社に向かったのは何か理由があるはず、泉さんだけに話したい理由が……」
こなた「何で私なの、分からないよ」
みゆき「そうですね、分かりません、会ってみないと」
私は神社の入り口を見た。
こなた「……つかさは何度この階段を登ったんだろう……つかさに出来て私に出来ないはずはない、なんて思っていた……
    すすむさんが来る前もみゆきさんがつかさの名前をだしたから空元気出してみたけど、無理だよ……今になってつかさがやって来た事の大きさがわかっちゃった……」
ひより「泉先輩、つかさ先輩と張り合っていたっスか?」
すこし驚いた顔をしたひよりだった。
こなた「張り合う……違う、私の一方的な挑戦みたいなもの……つかさのくせに……」
ひより「そのセリフ久しぶりに聞いたっス……そういえばつかさ先輩の変わりっぷりは計り知れません……変わったというより化けたと言うのか……」
みゆき「確かにつかささんにはいろいろ驚かされました、でも、泉さんも同じくらい変わっていますよ」
ひより「うんうん、今でも二人はいいコンビッスね……昔はかがみ先輩の方がいい感じでしたが……もっと別の方向で……」
こなた「良いよもう、そんなお世辞は……私、帰る……」
みゆき・ひより「え?」
私は駅の方に歩き出した。

332 :こなたの旅 23 2/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:37:38.10 ID:8kzi1TIR0
ひより「ちょ、ちょっと待って下さい……」
私の手を掴んで引き止めるひより。
こなた「放して、もう私の出番はないよ!!」
ひより「なにもこんな所で、しかもこんなタイミングでツンデレにならくても……」
ツンデレはかがみだけで沢山だ。
こなた「ツンデレじゃないもん……もう私は用済みってことだよ、あとはひよりとみゆきさんで続けて」
さすがのひよりも少し呆れ顔になっている。
ひより「ないもんって……泉先輩が呼ばれたって言っていましたよね……私達が行ってもあまり意味がないような気が……だからメモリー板を泉先輩に……」
メモリー板か……
私はメモリー板を取り出した。そしてみゆきさんに差し出した。
こなた「これはみゆきさんが持つべきだよ、以前からお稲荷さんの知識が欲しいって言ってたじゃん、それにみゆきさんなら有意義に使ってくれる、うん、そうだよ……」
みゆきさんは手をメモリー板の近くまで動かして受け取りかけたけど直ぐに止まり、首を激しく左右に振って引っ込めた。
みゆき「いいえ、これは泉さんが持つべきです」
こなた「使い方知らないし、知っていてもお稲荷さんの知識なんて……訳分からないし……」
みゆき「そうでしょうか、泉さんはUSBメモリーを使いこなしていますね、それも紛れもなくお稲荷さんの知識です」
確かにあれは木村めぐみさんからもらった物だけど……
みゆき「……元気だま作戦……誰にも気付かれず集金してしまうなんて……私がUSBメモリーを持っていても思いつかなかったでしょう……」
私は笑った。
こなた「ははは、あれは漫画のキャラクターが使う必殺技からヒントを得ただけで……下らないジョークのようなもの」
みゆき「ドラ○ンボールの○悟空が使う技ですね」
みゆきさんからその名前が出るとは思わなかった。少し間を空けてから頷いた。
みゆき「技の詳細は割愛しますが私も知識としては知っていました……一見何の関係もない物を結びつける……私には出来ません」
みゆきさんに褒められるなんて……でも……
こなた「そのUSBのせいで作戦は失敗した……」
みゆき「それは一瞬でぎりぎりの判断だったと思います、だれが責められましょう、それにまだ失敗とは決まっていません、それを確かめる為にも泉さんが行くべきです」
言っている内容は頭では理解できた。だけど体が前に行こうとしない……
さらにみゆきさんは続けた。
みゆき「オートバイの音を神崎さんのものだと言った時の泉さんの顔……とても嬉しそうでした、まるで古い親友と再会したかのようでした」
こなた「……そ、そうかな?」
みゆき「そうでしたね?」
みゆきさんはひよりの方を向いてにっこり微笑んだ。
ひより「え、あ、ああ、はい、そうです、そうでしたね、確かにとても嬉しそうでした……なんて言うか、普段表情をあまり出さない泉先輩にしては珍しいかと……」
確かに嬉しかったけど顔に出したつもりは無かった。
そうだよ。そもそも今まで会っていた神崎さんは真奈美が化けていた。本物じゃない。
それじゃ本物の神崎さんはどんな人なのだろう。母親である正子さんが気付かないくらいだから本人とほぼ同じ……なのかな……
私と同じような趣味を持って。正義感あふれる記者……まなみちゃんの演奏の記事で皆を喜ばせたりもした。
私を潜入のメンバーに選んだり、かえでさんと口論したり、かがみを怒らせたり……どこまでが神崎さんでどこからが真奈美なのか。
……神崎さん本人に会ったら私はどうすればいいのだろう……また最初から友達に……
また最初からって……私と神崎さんは友達なのか……な
彼女は私を利用していただけ。私も興味本意で付き合っただけ……それだけ?
うんん、全部が幻。狐が化かした幻だよ……
ここに来るまでの変な気持ちってこれだったのかな。
幻なら。神崎さん……うんん真奈美は無事だったしもう改めて会うことなんかない。

333 :こなたの旅 23 3/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:38:34.52 ID:8kzi1TIR0
 私は首を横に振って駅の方向に体を向けた。
みゆき「そうですか……残念です」
ひより「泉先輩……」
私はゆっくる歩き始めた。
みゆき「私は神崎さんが心配なので神社に向かいます」
ひより「近藤先輩、泉先輩を止めないッスか?」
みゆき「これは泉さんが選んだのですから……」
……選んだ。私は何を選んだって……
みゆきさんは神社に向かって歩き出した。ひよりは私とみゆきさんを何度も交互に見ている。
ひより「泉先輩らしくありません……」
ひよりはみゆきさんのを追って行った。そして私一人が残った。
歩く速度がどんどん落ちていく。まだ10メートルも進んでいないのに足が止まった。

 選んだ。みゆきさんはそう言った。ひよりは私らしくないって……私らしいって何? 分からない。
それにみゆきさんとひよりがもう向かっている。もう私が行っても何が変わる訳でもない。私は再び歩き始めた。

程なく駅に着いた私は切符を買おうと改札口に向かった。時刻表を見る。あれれ、上り電車は5分前に出たばかり……次に来るのは1時間後か……
だから田舎の鉄道は嫌いだ……
「泉さん?」
後ろから私を呼ぶ声。私は振り返った。すすむさんだった。
すすむ「やけに早いな、もう彼女と会ったのか……そうでもなさそうだな」
すすむさんと別れてから随分時間が経っている。5分前の電車に乗っていてもおかしくないのに。
こなた「うんん、会っていない……そっちこそ何で電車に乗らなかったの?」
すすむさんは苦笑いをした。
すすむ「さぁね……」
そう言うとすすむさんは待合場のベンチに腰を下ろした。どうせあと1時間も待たないといけない。私も隣の席に座った。
っと言っても何を話すわけでもなく沈黙が続いた。上りの電車が出たばかりなのか待合場には私達以外誰もいない。
すすむ「別れた時の勢いはどうした、今にでも会いたいような表情だったぞ?」
みゆきさんと同じような事を言う……
こなた「……みゆきさんとひよりが行ったから……」
すすむ「それでいいのか、神崎さんは、いや、真奈美は君と会いたがっているのではないのか?」
私は何も言えなかった。だけどすすむさんもそれ以上何も言わなくなった。

334 :こなたの旅 23 4/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:39:44.85 ID:8kzi1TIR0
 どうしてすすむさんは帰らなかったのか。もしかして私がもらったメモリー板と関係があるのかもしれない。
私にメモリー板を渡したときはスッキリした顔だった。早く帰っていのりさんと逢いたい。そんな感じだった。それなのに今のあの表情……沈んでいて……まるで……
すすむ「どうした、私の顔に何かついているのか?」
こなた「え、いいえ……」
私は目を逸らして俯いた。
いったい何があったのだろう。ここで会ってから何かあったのかな。いや、もう既に。もしかしてメモリー板の中身を見たのかな。
このメモリー板、見かけはほとんどスマホと変わらない。貿易会社からここまで電車に乗っている時間はたっぷりある。例えメモリー板を操作していても
周りからはスマホを操作している様にしか見えない。そしてすすむさんは4万年前の事故の記録を見た……そして……自分の失敗に気付いてしまった。
私にメモリー板を渡したのも忌まわしい記録から遠ざかりたかった……
なんていろいろ考えていたけど。本人に聞くのが一番早い。だけど……何故か聞けなかった。体が、口が動かない。聞くのが怖かった。
もし本当に私の思ったとおりだったら……
時間だけが過ぎていく……早く電車来ないかな……
『ガタン・ガタン』
あ、電車の来る音だ。もうそんな時間……っと思ったのもの束の間、下りの電車だった。まだ15分も経っていなかった。
何だろうこの時間の長さは。さっさと過ぎて欲しいよ。普段ならスマホで時間を潰すけどそんな気持ちにもなれない。
「みーつけた!!」
突然の声だった。私とすすむさんは同時に声のする方を向いた。いのりさん?
さっきの電車に乗っていたのかな?
いのりさんは暫く私達を交互に見た。
いのり「二人して同じような顔しちゃって、兄妹かと思った……」
すすむさんは立ち上がった。
すすむ「ば、ばか、来るなと言ったじゃないか、何故来た!!」
いのりさんはすすむさんの方に近づいた。そして自分の腕時計を見た。
いのり「来るなって、そんなの出来ない、計画では私はさっきの電車で来る様になっていたじゃない、予定は変更できないでしょ」
いのりさんはすすむさんを少しきつい目で睨んだ。
いのり「それで、もうこんな所に居るって事は既にメモリー板を神崎さんに渡したんでしょうね?」
そういえばそうだった。一度メモリー板を神崎さんに渡す事になっていた。
すすむさんは私を一度チラッと見ると首を横に振った。いのりさんは溜め息を付いた。
いのり「まだ神崎さんはまだ来ていないの?」
すすむ「い、いや、もう来ている」
いのり「それならここにこうしていて良いの、渡さないと作戦は終了しないでしょ?」
渡さないと作戦は終了しない……か。
すすむ「お前に何が分かる、私はあの時の事故で……」
いのりさんは両手を前に出してすすむさんを止めた。
いのり「4万年も前の話はもう沢山……もうとっくに解決したのかと思った」
すすむ「いや、解決なんかしていない」
いのりさんは首を横に振った。
いのり「解決した、大きな事故だったのに乗組員100人全員助かった、あなたの判断段でね、それ以上なんの解決があるの?」
すすむ「私の……」
そういえば神崎さんと別れたからのすすむさんの判断が無かったら私はここに居なかったかもしれない。
いのり「そうそう、私達の時代と比べ物にならないかもしれないけど、航空事故とか宇宙船の事故だとほぼ助からない、全員生きていたなんて奇跡、
    それから4万年後、帰りたい人だけ帰る事が出来た、なんの問題があるの?」
すすむさんは呆然といのりさんを見ていた。
生きている……確かに神崎さんは生きていた。
なんだろう。いのりさんは私に言っている様な、そんな気がした。
いのり「その間、辛かったでしょう、私達がもう少し頭が良かったら手伝えもできたけどね……私達から見ればすすむさん達はまだまだお稲荷さんだから」
いのりさんはすすむさんに近づき手を引いた。
すすむ「……何をする……」
いのり「神崎さんの家へ……明日から整体院の仕事でしょ、あなたしか治せない人が待っているから、これはあなたしか出来ないから」
いのりさんはさらにすすむさんを引っ張った。
すすむさんにしか出来ない……事。
私にしか出来ない事。
こなた「待って下さい、メモリー板を持っているのは私です……」
いのり「え?」
いのりさんは手を放した。
いのり「どう言うこと?」
いのりさんは私とすすむさんを何度もきょろきょろと見た。
私は今までの経緯を話した。

335 :こなたの旅 23 5/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:40:53.79 ID:8kzi1TIR0
いのり「神崎さんは真奈美さん……本当なの?」
こなた「もう間違いない……」
いのりさんは神社のある山の方向を見た。
いのり「私も一回だけあの神社に行った、もちろんつかさに連れられてね、夢中になって真奈美さんの話をしていたのを覚えている」
今度は私の方を見た。
いのり「彼女はつかさを助けた人、だけど殺そうともした人、そうだね、会うのも躊躇うのも分かる」
私は真奈美が怖いから会いたくない……のかな。
いのりさんはすすむさんを見た。いのりさんは溜め息をついた。
いのり「旦那もこんなだし……私が行くしかないみたいね、メモリー板を渡しに行ってくる」
私はポケットの中にあるメモリー板を取り出そうとした。
いのり「真奈美さんね……それを知っていればつかさを連れてきたのに、つかさなら誰よりも先神社にむかうかもしれない」
私の手が止まった。
つかさ……確かに、つかさならそうするかもしれない。それなのに私ときたら……
いのりさんは私を見て不思議そうな顔をした。
いのり「泉さんは昔から良く実家に遊びに来ていたよね、あまり話し合った機会は無かったけど、不思議と親近感はあった、」
こなた「え、どうして?」
いのり「つかさよ、つかさ、つかさが事ある毎に泉さんの話をするから」
こなた「どんな話を……」
いのり「よく遅刻をして変な言い訳をして先生によく怒られるとか、アルバイトを始めたとか、走るのが速いとか……仮病で休んだ事もあったって?」
最初と最後が余計な話だ……そんな話をしていたのか。想像はできるけど、そこまでだったとは。つかさらしいと言えばそれまでだけど。
つかさらしい……か。
いのり「……余計な話だった、メモリー板は?」
私は差し出しかけたメモリー板から手を放した。
こなた「私が直接渡してきます」
いのり「あら?」
すすむ「泉さん……」
こなた「神崎さん、いや、真奈美さんは私を呼んでいる、だから私が行かないと」
いのり「そう、それで良いと思う」
すすむ「待て……」
行こうとする私を呼び止めた。
いのり「折角その気になったのに呼び止めるなんて……」
ずずむ「どうして気が変わった?」
こなた「ん〜私の気まぐれ、それといのりさんの言葉もあるけど……強いて言えば……選んだから」
すすむ「選んだから……」
こなた「うん、もう私はとっくに選んでいた、つかさと出会った時から、だから行く」
すすむさんはなんか納得していない感じだった。
こなた「神崎さんと別れたからのすすむさんの選択、とっても冷静で冷酷だったけど……あれしか方法はなかったよね、きっと事故の時もそうだった、そんな気がする」
すすむさんは黙って私を見ている。
こなた「だって、神崎さんは生きているからね」
私は時計を見た。
こなた「わっと、早く行かないと遅刻しちゃう」
いのり「ふふ、変な言い訳をしないように」
すすむ「……なにも出来なくてすまない、しかも助言までされるとは……」
こなた「まだ作戦は終わっていないからまだ安心はできないよ、それじゃ」
すすむさんの表情が笑顔に戻った。そしていのりさんに寄り添っている。この二人は本当に愛し合っていると思った。
そういえばつかさとひろしも愛し合っている。かがみは人前でそんなを見せるような人じゃない。だけど家ではきっとそうにちがいない。
まつりさんとまなぶさんは……ゆたかの恋敵だったくらいだから言うまでもないか。
私は走って神社に戻った。

336 :こなたの旅 23 6/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:42:00.16 ID:8kzi1TIR0
 神社の入り口に着いた。ひよりの車と神崎さんのバイクが置いてある。みゆきさん達と別れてから1時間も経っていないから変わるわけも無いか。
さて、みゆきさん達はもうとっくに頂上に着いているはず。私が行ってもメモリー板を渡すだけで終わってしまうかもしれない。
うんん。それでいい。その為に戻ったのだから。
みゆき「田村さん、私の言った通り戻ってきました」
みゆきさんの声……私はその声の方を向いた。神社の入り口にみゆきさんとひよりが立っていた。
ひより「本当に来た……」
こなた「みゆきさん、ひより……もう行ってきたの?」
ひより「まさか、待っていたっス、近藤先輩が絶対に戻ってくるって言ったので……」
私はみゆきさんの方を見た。
みゆき「時刻表では前の電車は乗れないと思いまして、次の電車がくるまでの1時間で考え直していただけると……」
ばか、そんな保障なんかないのに。
こなた「待ちぼうけだってありえたのに」
みゆき「でも、こうして戻ってきました、バトンタッチです」
みゆきさんは右腕を上げた。私も上げてハイタッチをした。
みゆき「田村さん行きましょう」
みゆきさんはひよりの車の方に歩いて行ってしまった。そしてひよりが私に近づき耳元で囁いた。
ひより「電車が出発する10分前まで来なかったら車で駅まで行って鎖に繋いで引っ張っても連れてくるって」
こなた「え、みゆきさんが?」
ひより「そうならなくて良かったッス、それじゃこの後よろしくお願いします」
みゆきさん……変わったかな。
ひよりは小走りに車に向かった。そして車は走り出した。
そして残るは私一人。
もう後戻りは出来ない。いやもうしない。
神社の頂上を見上げた。そこに待っている人が居るから。
私は階段を登った。

 私は神崎さんに会う方を選んだ。確かに選んだけどその後どうするかまでは考えてはいなかった。
彼女がお稲荷さんってバレているのは向こうだって分かっているはず。もしかしたら神崎さんの姿じゃないかもしれない。
そんなのは会ってから考えるか。あれ?
気付くと辺りは暗くなっている。もう日は西に沈んでいた。まだ階段は中腹くらいだろうか。頂上に着くまでに真っ暗になってしまう。
そういえばつかさもこんな暗い時に登った事もあったっけな。確か携帯の明りを利用したって言っていたな。
私にはスマホがあるからもっと明るく照らせる……ん?
胸ポケットから明りが漏れている。たしかそこにはメモリー板が。私は慌てて胸ポケットからメモリー板を取り出した。
メモリー板が明るく輝いている。何でだろう。私は何も操作していないのに。
暗いから明りが欲しいなって思っただけなのに……まさか。
すすむさんは考えればいいとか言っていた。もしかして、私はもっと明りが欲しいと思った。するとメモリー板は明るさを増し、しかも私が見ている辺りを照らし出した。
私が思った事を読み取ってそれでメモリー板が自分で判断して明りを操作している。そんな感じだった。
私は片手にメモリー板を持ったまま階段を登った。

337 :こなたの旅 23 7/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:42:59.82 ID:8kzi1TIR0
 頂上に着いた。私の目線に合わせて明りが付いて来る。人影が見えた。私はそこに焦点を合わせた。
後ろを向いている。綺麗な黒い長髪、整ったスタイル……神崎さんだとすぐに分かった。明りに気付いた神崎さんは振り向いた。
神崎さんが眩しがるかなっと思った瞬間明りは弱くなった。神崎さんは私の手に持っているメモリー板を見た。
あやめ「4万年という歳月を地下深く埋まっていたと言うのに動作するのね……改めてお稲荷さんの知識と技術は驚かされる……それで、それを操作できるって事は
    佐々木さんに脳波を登録してもらった、そうでしょ?」
こなた「う、うん……今の所明り灯すくらいしかできないけどね」
あやめ「それは人間で言う五感、センサーと同じ、思い通りに感度を調節できる、お稲荷さんが人間より感覚が鋭いのはそのメモリー版の機能を遺伝子レベルで移植したものなの、
    但し、通信機能はエネルギーが沢山必要だから無理ね……」
こなた「さすがお稲荷さんだね、神崎さん……」
神崎さんはそのまま後ろを向いて景色を眺めた。
こなた「どうやって逃げてきたの」
「どうして私だけ呼んだの」って最初に聞きたかった。だけど何故かこれが最初の質問になってしまった。
あやめ「警備員は10人だった、普通にしていたら捕まっていた、丁度いい隙間を見つけた、そうよ、狐が一匹入れる隙間をね、私は急いで狐になってその隙間に逃げ込んだ、
    その隙間がダストシュートに繋がっていた、そこから1階まで直ぐに行けた……私、ゴミくさくないかしら……」
お稲荷さんじゃななければ逃げられなかった。
こなた「私のせいで捕まったら……そう思うと怖くて……」
あやめ「こうなる事は分かっていた、本来なら扉を最初に開けるのは私でなければならなかった……私も気が動転していたの、ごめんなさい、真奈美が居なかったから……」
真奈美が居なかっただって。この期に及んでまだ嘘を付くのつもりなのか。
こなた「もう演技はよそうよ!!、真奈美さん!!」
思わず叫んでしまった。気が高ぶったのかメモリー板の明りもより明るくなった。
あやめ「真奈美……前にも似た様な事があった」
こなた「そうだよ、正体を明かすチャンスは何度もあった、つかさと会った時、何度か会合を開いた時、私とこうして二人だけで居る時だって……実の弟だって居たでしょ!!」
神崎さんはゆっくり私の方を向いた。そしてポケットから何かを取り出した。私がそれを見ると神崎さんの手元をメモリー板の明りが照らした。
こなた「ボイスレコーダー?」
手に持っていたのはボイスレコーダだった。
あやめ「ボイスレコーダー……記者をやっていると何も言わなくてもこれがボイスレコーダーだと皆が勝手に思ってくれる……便利よね」
こなた「ボイスレコーダーじゃない、それじゃそれは何なの?」
あやめ「これは、私の感覚が人間の五感に近づけるため装置、つまりお稲荷さんの力を封印する物……もうその必要はないわね」
『カチッ!!』
スイッチを操作する音がした。そしてそのまままたポケットに仕舞った。
あやめ「力を封印すれば私は只の人間、仲間が近くに居たとしても気付かれない、もちろんそのメモリー板もね」
あれ……感じる……仲間のような親近感が突然私を包んだ。
私はメモリー板を見た。メモリー板が反応している。神崎さんが仲間、お稲荷さんだって教えてくれているみたいだった。
あやめ「泉さんが襲われそうになった時、一瞬だけ装置を切った、その一瞬ではメモリー板では拾い切れなかったようね……それは意外だった」
こなた「なんで……そこまでして正体を隠したの……」
あやめ「だから貴女を呼んだの……」
こなた「私を……呼んだ?」
あやめ「今から1時間……いや、30分後、私の家に来て……そうしたら全てを話す」
神崎さんは私から後ろに数歩下がった。そして目を閉じた。まさか……
そう思った瞬間彼女の体が淡く白く光った。見覚えがある。これは狐に変身する時に……
彼女の体がどんどん小さくなっていく……そして……目の前に一匹の狐が座っていた。
まてまて、この狐……ハイソックスを履いたような黒い足、尖った耳、大きさ……同じだ。あの時見た野良犬と……
こなた「もしかして、以前私の店の前を通ったでしょ?」
狐は私を見上げるとゆっくり頷いた。ゆっくり背伸びをして立ち上がると走って階段を降りて行った。そしてメモリー板からお稲荷さんの反応が消えた。
こなた「ふふふ、つかさは自分の命の恩人の姿を見間違えるのか……ははは、やっぱりつかさはつかさだよ、はははは、何が野良犬だよ……ははは」
私は思わず笑った。久しぶりにお腹が痛くなるまで笑った。

つづく
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/02(金) 22:44:30.43 ID:8kzi1TIR0
以上です。

少し間が開いてしまいました。これからも不定期ですがよろしくお願いします。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/02(金) 22:48:38.82 ID:8kzi1TIR0


−−−−−−−−−−−−−−ここまでまとめた−−−−−−−−−−−−−−−−−
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/04(日) 01:01:31.16 ID:mrO8nSSC0
「こなたの旅」の作者です。

>>335 23話の5/7の最後の方の ゆたかの恋敵→ひよりの恋敵 に修正します。

同じくまとめの方も修正します。

やっぱりダメダメだな……
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 21:40:11.82 ID:1XzrgYM3o
ここで言うべきことじゃないかもしれないけど泉こなたを自殺させるスレのまとめWIKI消えてたんだな
真面目な内容のSSとかもあったから良かったのに残念だ
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/06(火) 11:22:56.49 ID:EcD6wV+Q0
>>341

 同じらきすたSSのサイトが消えるのは残念だけどね。
昔、らきすたSS巡りをしていた頃見た覚えがある。
いい作品があってもスレタイトルがあまり良くなかった。
それが消えた原因かどうかは分からないけどね。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga ]:2014/05/12(月) 20:51:21.72 ID:Vjt6sNjH0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

5レスくらい使用します。
344 :こなたの旅 24  1/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:53:53.64 ID:Vjt6sNjH0

24

 こんなに笑ったのは久しぶりだった。
30分後か、今の私なら手摺に乗って滑って降りられるから彼女の家の行くのに30分も掛からない。
おや……神崎さんが狐に変身した場所に何かが落ちている。メモリー板の明りがそこを照らし出した。ボイスレコーダー……
レコーダーじゃないって言っていたっけ。変身したせいで落としてしまったのかな。それとももう要らないって言ったから捨てたのか。
ボイスレコーダーを拾った。
そういえばつかさと握手をした後すぐにこのレコーダーを取り出して操作をしていた。スイッチを入れ忘れたのかもしれない。
つかさの辛い記憶が神崎さんに流れてきてしまってあんな行動をしたのかも。
この装置要らないなら貰っちゃおうかな……お稲荷さんの力を封印する装置、どう考えても私には要らないもの、だけど、アイテムはいっぱい持っていた方がゲーム攻略は有利だよね。
装置を仕舞った。
さてと、ここで待っていても退屈なだけだ。降りよう。

 神社の入り口まで降りてきた。あれ、バイクが置いたままじゃないか。
と言っても狐の姿じゃ運転できるわけ無いか。それじゃなんであんな所で正体を証のかな……いや、ここで最大の疑問は本当の神崎さんは何処に?
つかさが言っていた事が現実になってしまった。
お稲荷さんを野良犬呼ばわりしたり、時々鋭い事を言ったり。長い間の付き合いだけどつかさがますます分からなくなってきた。
ひよりの推理だと貿易会社に捕らわれていって言っていた。
私の推理だと……
………
何も考え付かない……
なんだかんだ言ってひよりは凄いな。伊達に漫画家じゃない。でも……漫画家と推理は全く別物かも……
ってグダグダして全く考えが纏まらない。
私って……考えてみればいつもこんな感じか。

神垣さんのバイク。静かに寂しそうに置いてある。家にまでなら私が持って行ってもいいけど鍵を持っていない。鍵を持っていたとしても二輪の免許を持っていない。
それに勝手に持っても行けない。このまま置いて行くしかないか。

345 :こなたの旅 24  2/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:55:15.93 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんの家に着いた。丁度1時間位前にも来ている。ただ違うのは居るのは私一人だけ。スマホの時計を見ると神崎さんの言う30分になろうとしていた。
「待たせたね」
後ろから声がする。聞いたことの無い声だ。誰だろう。私は振り返った。
そこには男性が立っていた。知らない人だ。しかもその男性は神崎さんのバイクを引いている。
その男性は手馴れたように神崎さんの家の門を開けるとバイクを門の中に入れた。私はその男性の後に付いて門に入った。
バイクを駐車スペースに置くと男性は私の方を向いた。
男性「彼女のバイク、流石にこの姿で乗るわけにはいかなかった……」
こなた「なんでバイクの鍵を、それに門の鍵だって……」
男性「私が誰だかもうとっくに分かっているよね?」
こなた「誰って……真奈美さんでしょ、何でわざわざ男性に化けたの?」
男性「異性に化けると体力を余計に使ってしまう、君が今まで会ってきたお稲荷さんは化けても性までは変わらなかっただろう?」
こなた「それって……」
男性「残念だったな、私は真奈美ではない」
そんな、真奈美じゃなかった。ひよりの推理は外れた。
なぜそんな体力を使うのにこのお稲荷さんは神崎さんに化けた。そんな事より何故別のお稲荷さんが居るのか。分からない。
こなた「それじゃ、けいこさん達が帰った時何処に居たの、お稲荷さんの全員のリストを作ったのは私だよ」
男性「仲間が日本に居たのはこの日本に来るまで知らなかった、私はあの事故の遭った場所から動かなかったからね、彼らも私が生きていたとは思うまい……」
こなた「事故って4万年前の?」
男性は頷いた。
男性「佐々木すすむ……完全に日本人じゃないか、まさか彼が生きているとは思わなかった、あいつは全く変わってないな……」
こなた「なんで神崎さんに化けたの……」
男性「話が長くなる家に入ろうか」
男性はキーホルダーを取り出した。
こなた「勝手に入るのは……良くないよ」
男性「神崎正子さんは都内のホテルに避難させてある、中には誰も居ない、それに私は「神崎あやめ」でもある……」
男性はドアの鍵を開けた。
男性「どうぞ……」
神崎さんでない人からどうぞって言われても違和感がある、でも、出会った時から神崎さんじゃなかった。
346 :こなたの旅 24  3/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:56:38.14 ID:Vjt6sNjH0
 私は神崎さんの部屋に通された。男性は神崎さんの椅子に腰掛けた。
男性「さて、何から話そうか」
私は床に腰を下ろした。
こなた「名前は……何て呼べばいい?」
男性「名前か……日本に来る前はレルカンと名乗っていた……神崎でいい」
こなた「神崎さん……」
神崎「日本に来たのは10年前、それまではヨーロッパ各国を転々としていた、目的は只一つ、君の持っているメモリー板だよ、人間に渡れば私達の存在を知られてしまうからな」
こなた「メモリー板……」
神崎「そう、メモリー板を人類に渡さない為にね、在るのは分かっているが場所が分からない、でも大体の見当はついていた、
   その一帯に人類を近づけないように有りと有らゆる方法を使った、幻影、毒、呪術も織り交ぜた、そのおかげでつい最近までは呪われた土地として
   人間を寄せ付けなかった、しかし突然その呪われた土地に手を出した人間達が現れた、流石に知恵をつけてきた人間に小手先の術では追い払うのは無理だった」
こなた「その土地に手を出した人達って……」
神崎「そう、貿易会社だよ、彼らはトレジャーハンターを雇って発掘を始めた、私もその中に入り隙があればメモリー板を入手できる機会を待った、しかし結果は
   彼らに先を越された、一個人の力では組織には勝てない、そこで私は情報の集まる場所……報道関係の仕事に携わりメモリー板の所在を追った」
こなた「それで日本に?」
貿易会社か……結局あの会社にはいいようにされっぱなし、あの神社を取り戻したのが唯一の勝利。
神崎「そう、それで調べていくうちに神崎あやめに出会った……彼女は貿易会社の不正を調べていた、彼女の勘は鋭い、私がお稲荷さんであることは出会って数日で
   見抜かれてしまった、彼女は真奈美の話をし、私はメモリー板の話をした、お互いの利害が一致し協力する事になった」
こなた「それじゃ神崎さん……いや、あやめさんは真奈美さんを探していたの?」
神崎「お稲荷さんを助けるなんて公表は出来まい……それでも二人では力不足だ、もっと協力者が欲しい……そこであやめは貿易会社に反感を持っていそうな
   人達をリストアップした、ライバル会社の関係者、ワールド会社の関係者……もちろん君の働くレストランも候補だ」
こなた「レストランかえでが?」
神崎さんは頷いた。
神崎「ああ、彼女は貿易会社から神社を買い取り、町に無償提供した人物が必ずそのリストの中に居ると確信していた、その人物ならきっと力になるってね……
   それでその人物はかなりITに詳しいと考えて、IT関連会社や情報通信会社を優先して調べた、君達のレストランはリストの最後尾だ」
それでこんなに遅く来たのか……でもそんな話はどうでも良かった。私の聞きたいのはそんな話じゃない。
こなた「神崎さんは、神崎あやめさんはどこに居るの、貿易会社に居るなら早く助けないと」
神崎「余計な事はしたくなかった……君は協力さえしてくれれば良かった、しかしそれは無理だったみたいだね……」
何を言っているのかさっぱり分からない。
神崎さんは突然立ち上がった。そして彼はベッドのところまで移動した。そして徐にベッドのマットを持ち上げた。
こなた「な、なにこれ……」
マットの下は空洞になっていた。そしてそれはあった。それは人の大きさ程だった。細かい糸で包まれている……まるで、蚕の繭みたいだ。
神崎さんはカッターナイフを取り出すと繭の上のほうに切り込みを入れた。そして皮を剥ぎ取るように捲った。
その皮の下にあったのは神崎さん……神崎あやめさんの顔だった。目を閉じて眠っているよう。
神崎「まるで生きているみたいだろう、私の持てる知りうる限りの防腐処置をした、あの時のままの姿だ……」
こなた「防腐処置ってどう言う事」
神崎「彼女は、神崎あやめはもうこの世に居ない、亡くなった……」
亡くなった……ついさっきまで会っていたのに、話していたのに、作戦まで一緒に行動して、助けて助けられもしたあやめさんが……
こなた「いつ……何時なの」
神崎「言わなければならないか」
こなた「ここまで話して、それはないよ」
神崎「そうだな……」

347 :こなたの旅 24  4/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:58:13.89 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんはカッターナイフを机に置くと話し出した。
神崎「5年前……降りしきる雨だった……重要な作戦だった、目的は貿易会社の情報収集、二人同時の作戦だった、私は先に潜入し資料室からファイルを入手した、
   彼女は……あやめは警備室から鍵の型を取るはずだった……私は待った、あの神社の入り口で……そこが待ち合わせの場所だった、彼女は時間になっても
   来なかった、まさか……失敗したのか、携帯で連絡を取りたかったがそれはしないと言う約束だった……それでも私は携帯に手を掛けた、その時だった、
   彼女のバイクのエンジン音……近づいてくる……だが、突然音が止まった……私は夢中で走った、音の止まった場所を目指して……そこで私の見た光景は……
   倒れたバイク……エンジンは掛かったまま、そしてその先にあやめが倒れていた……ヘルメットは壊れいた、私は彼女に駆け寄った、見たところどこにも外傷は見当たらない、
   あやめはゆっくりと目を開けるとにっこり微笑んだ、そして私に鍵の型を取った粘土を私に渡した……そして目を閉じた……もう二度と目を開ける事はなかった……」
神崎さんが交通事故で死んでいた……
こなた「お稲荷さんだったら直ぐに治療すれば助けられたでしょ……」
神崎「……それは過大評価だ、私達は万能ではない、しかしあの時出来うる事は全てした」
こなた「それで、この事は私以外に誰かに話したの」
神崎さんあ首を横に振った。
神崎「いや、君が初めてだ……」
私はあやめさんを見た。彼女は目を閉じている。神崎さんの言うようにただ眠っているだけみたい、今にでも目を開けて起き出しそう。
こなた「あやめさんは命を懸けてまで真奈美さんに会おうとしていた……ただ逢いたいだけでそこまで……」
神崎「あやめの親友が今、死の淵に立たされている……彼女は幼少から病弱だった」
死の淵……あやめさんの友達……もしかして。
こなた「もしかしてまなみちゃんの演奏会に来るはずだった記者じゃない、えっと確か井上さんとか言っていた」
神崎「そう、井上浩子、あやめの同僚で高校時代からの友人だ……真奈美なら井上さんを治せる方法を知っている、それに賭けるしかなかった、あやめならそうしている、
   あやめは真奈美ならその方法を知っていると言っていた」
こなた「その友達って癌かなにかなの?」
神崎「脳腫瘍だ、以前摘出して再発した、もう手の施しようがないと医者は言っていた」
それでこの作戦を急いでいたのか。
それにしてもあの時のかがみと同じような状況じゃないか……
こなた「……例え真奈美さんが居たとしてもあの薬は直ぐには作れない、2年の熟成期間が必要なんだよ」
神崎「なんでそんな事を知っている……」
そうだった。私はつかさが一人旅をした話しかしていなかった。その続きを話していれば……何故話さなかった、それは私がそれを選んでいたから話さなかった……
まだ私はつかさに話させようとしていたのか。バカ……だな私って。
こなた「以前真奈美さんの婚約者のお稲荷さんとつかさが作ったから」
神崎「ふふ、どうあがいても無理だったか」
つかさが作った……あの時作った薬……まてよ、まだ全部は使っていない。
こなた「待って、まだある、その薬まだあるよ」
神崎さんは私を見て驚き少し嬉しそうだった。
神崎「本当か」
こなた「以前調子が悪かった時つかさが薬を薦めたからまだあるよ、早く行こう」
神崎「そうか」
神崎さんは微笑むと紙に何かを書い私に渡した。
こなた「何?」
神崎「井上浩子の入院している病院の名前と住所だ、念のため主治医の名前も書いておいた……」
こなた「だめだよ、一緒に来ないと……」
神崎さんは首を横に振った。
こなた「なんで、井上さんは私達から見たら赤の他人だよ、神崎さんが直接頼まないとダメ」
神崎「それは出来ない」
こなた「どうして?」
神崎「逃げるとき、警備員に顔を見られた……」
こなた「大丈夫だよ、顔を見られたくらい、分からないよ」
神崎さんは首を横に振った。
神崎「見られた人物がまずかった、彼はヨーロッパで名うての殺し屋だ……まさか日本に来ているなんて、しかも貿易会社の用心棒とはな、じきにこの家に来る、君も危ない、
   早く帰りなさい」
そういえば叫び声が日本語じゃなかった警備員がいた。
こなた「帰れって……いくら殺し屋でもこの日本で変な事なんかできないから大丈夫だよ」
再び首を横に振る神崎さん。
神崎「小林さんから聞かなかったのか、そいつにもう何人も消させている、そして裏には貿易会社の力がある、真相は闇へから闇に……この日本も例外ではない」
……私ってそんなヤバい所に手を出してしまったのか……
神崎「今更そんな顔をしても遅い……幸い消す目標は神崎あやめだけだけだ、君は関係ない」
神崎さんはじっとあやめの顔を見ている。
こなた「私が帰った後、どうするの……」
神崎「殺し屋と刺し違えてもあやめを守る」
名うての殺し屋と現役のお稲荷さんの格闘……凄まじい光景になるのはすぐに想像できる。
神崎「君は……いや、君たちはよくやってくれた、感謝している、これからは私の選んだ道だ、もう忘れてくれ」

348 :こなたの旅 24  5/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:59:33.83 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんの選択……
私はあやめさんの顔を見た。
神崎さんは最後の集合場所をここにしていた。最初からこうなるのを予測していたからそうした。
あやめさんは、彼女の選択は何処に、彼女が生きていたとしても必ず私は彼女と逢っていた。その後の展開は……神崎さんの変身が完璧ならそう変わることはないよね。
でも、あくまで神崎さんの化けた神崎あやめ……神崎さんの選択だよ。
もし、あやめさんが生きていたらどうする。
神崎「もう時間がない、早くここを離れろ……」
うんん、いくら考えてもあやめさんはあやめさん、彼女でないとどうするなんて分からない。
そんな事より私がこれからどうするかが問題。
その時だった、私の中にあるアイデアが浮かんだ。でもそれはとっても危険。これが成功するなんて分からない。成功してもどうなるか……
神崎さんは立ち上がった。
神崎「動かないなら力ずくでも帰ってもらう」
力ずく。私に金縛りの術でもかけるとでも言うのか。その後催眠術をかけて帰すつもり、そうだとしたらじっくり考えてはいられない。
すすむさんは言っていたっけ、方法も手段もあるなら選択肢の一つになるって……今の私にはその方法も手段もある。ただそれは一度も経験した事がないって事だけ。
でもそれは元気だま作戦の時だって同じだった……それなら私の選択肢は一つ。
決めた……私は決めた。
こなた「帰らない」
神崎「泉……私を見ろ……」
今、私は自分だけの選択をしようとしている。つかさでも神崎さんでもあやめさんでもない。そう、私が選んだ選択を。
『カチッ!!』
私は神崎さんの方を向いた。
……
……

 私はつかさの家の前に立っている。あれからもう一日も経っていた。
『ピンポーン』
呼び鈴を押すとつかさが飛び出してきた。
つかさ「こなちゃん!!今までなにしてたの、心配したんだから!!」
珍しく怒っている。今はその話をしている時間はない。
こなた「つかさ、今すぐお稲荷さんの秘薬が欲しいんだ」
つかさ「えっ?」
驚いた顔で私を見る。
こなた「どうしても使いたい人がいるから、良いよね?」
つかさ「どうしたの、いきなり、こなちゃんの友達にそんな重病な人居たっけ?」
こなた「つかさの知らない人なんだ、だけどどうしても助けたくて……」
つかさ「知らない人……?」
こなた「お願い……」
私は両手を合わせて頭を下げた。
つかさ「そんな……頼まれても……よして、そんな事したって」
そうだよね、見ず知らずの人に大事な物をあげるなんて早々できる事じゃない。それは分かっている。
こなた「お願い……」
私は更に頭を下げた。もうこれしか出来ない。
つかさ「頭を上げて、あげたくてもあげられないの……」
こなた「え?」
つかさ「薬は……もう使っちゃった……だからもう無いの……」
こなた「使った……まだ半分位残っていたでしょ、みゆきさんの研究用に渡してもまだ何回分は残っているよね……」
つかさは首を横に振った。
つかさ「うんん、使っちゃったの……かえでさんに……」
こなた「かえでさんって……退院したんじゃないの……そんな薬が必要だったなんて聞いてない……」
つかさ「こなちゃんが大切な仕事をしているからって……かえでさんから言わないように言われたの……本当はとっても危なくて……お腹の赤ちゃんも危なくて……
    使うしかなかった……」
そんな……私の計画が……
かがみ「こなた……あんた……」
玄関の奥から低い声……この声は怒っている……しかもこれは相当マジだ……
かがみ「いったい何をしでかした……今朝のニュースを知らないわけじゃないでしょうね」
こなた「え、何……?」


『昨日の深夜0時頃、○○県○○郡○○町神崎正子宅で火事があり、127平方メートルを全焼しました、民家から焼死体が発見され身元の確認を急いでいます、
 民家は母と娘の二人暮らしで、娘の神崎あやめさんではないかと調べを進めています……出荷原因は台所で……』

つづく
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/12(月) 21:00:46.09 ID:Vjt6sNjH0
以上です

この後すぐにまとめますので 報告は避難所のみにします。
350 :こなたの誕生日 :2014/05/28(水) 19:59:40.82 ID:nsxYzEPO0
つかさ「お姉ちゃん、今日はどうするの?」
かがみ「どうするって?」
つかさ「あれ、わすれちゃったの、こなちゃんの誕生日だよ?」
かがみ「……そうだった、みゆきは何て言っているの?」
つかさ「ゆきちゃんはもう何かを送るのは止めて食事でも招待したらっていっていたけど……」
かがみ「食事ね……あいつなにが好物だったかしら……」
つかさ「そういえばなんだろう、何でも美味しそうに食べるからね」
かがみ「まさかチョココロネなんて言わないだろうな……」
つかさ「あ、こなちゃんだ、聞いてみようよ」
かがみ「あ、バカ、聞いたら……行ってしまった」

つかさ「こなちゃん、何か食べたいものある?」
こなた「どうしていきなりそんな事聞くの?」
つかさ「こなちゃんの誕生日に食事に招待しようと思って」
こなた「やっほ〜それは嬉しいね」
かがみ「現実に食べられる物にしろよな!!」
こなた「うぐっ!!」
かがみ「今、高級食材を並べようとしてただろ!?」
こなた「むむむ……い、いや、そんなんじゃないくて……美味しいものなら何でも……いいよ」
つかさ「外食だと在り来たりだから、私達の手料理はどう?」
こなた「……いいね、つかさの作ったのなら食べたい」
つかさ「うんん、皆で作るの、それじゃゆきちゃんやみさちゃんも呼ばないと、行こう、お姉ちゃん」
かがみ「ちょっと、何で私が入るのよ」
つかさ「買い物もしないといけないし、急ごう、それじゃ後でねこなちゃん」

こなた「行っちゃった……う〜ん、かがみが参加するのは……行くのやめようかな……」



こなた、誕生日おめでとう

急いで作ったのでこんなのしか作れなかった。






351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/06/01(日) 14:20:14.08 ID:oLV7tB6i0
それでは「こなたの度」のつづきを投下します。

今回は2レスを使用します。


352 :こなたの旅 25 1/2 [saga sage]:2014/06/01(日) 14:21:47.02 ID:oLV7tB6i0
25

 ニュースは予想できた。だけど思ったより早く報道された。でもあやめさんの職業を考えればそれは当然か……
神崎「君の目論見は外れだったようだな……」
私の少し後ろにいた神崎さんがぽつりと言った。つかさとかがみがそれに気付いた。
つかさ・かがみ「誰……?」
神崎「先客がいたならもうどうにもなるまい……」
神崎さんは後ろに振り向いて去ろうとした。
こなた「待って、まだ私の計画は、作戦は終わっていないよ、神崎さん!!」
つかさ・かがみ「神崎……さん?」
つかさとかがみは顔を見合わせた。そして神崎さんは立ち止まった。
神崎「この後どうすると言うのだ、もう終わりだ、もう私の好きにさせてくれ」
こなた「うんん、まだ終わっていない」
かがみ「二人とも、ここじゃ話しにならない、家に入って」
かがみが扉を開いた。私は玄関に入り神崎さんの方を向いた。
こなた「最後まで付き合ってもらうよ」
神崎「……」
神崎さんは黙って私の後に付いた。

 家に入るとつかさの部屋に通された。そこには今回の作戦のメンバー、いのりさん夫婦、みゆきさん、ひよりの他にあやのが居た。配そうな顔で皆は私を見ている。
神崎さんはあやめさんとの関係を話した。
すすむ「ま、まさか、おまえ……い、生きていたのか……」
まるで何年も逢っていない友人の様な口ぶり、いや、何年どころじゃない。彼らは4万年ぶりの再会なのかもしれない。
すすむ「よく一人で生きてこられたな……」
神崎「それは私も同じ事、よく生きていたな、もうとっくに人間達にけされていたと思った……相変わらずだな、未だに能力を消したままだったとはな、そのおかげで
   私は正体をばれずに済んだがな……」
すすむ「私はそう決めた……それより、ひろしやまなぶに何故気付かれなかった」
神崎さんは私の方を向いた。私はポケットからボイスレコーダを取り出した。
すすむ「ボイスレ……い、いや、違う……バカな、そんな事をしていたのか……」
神崎「そう言う事だ」
少し間が空いたような気がした。しかしそう思ったのも束の間。
かがみ「すすむさん悪いけど彼にはなしがある」
かがみがすすむさんの前に立ちはだかった。
かがみ「神崎とか言ったな、あんたわざと事故に見せかけて神崎あやめさんを見殺しにしたな、神崎あやめの立場を利用する為に、そうだとしたら許せない」
神崎さんに当てるような大声だった。
神崎「いや、わざとではない」
かがみ「それなら私達がお稲荷さんの秘密を知っている時点で真実を話さなかった、私達はお稲荷さんと人間の関係も全て熟知している、もっと早く作戦だって達成できたに違いない」
神崎「知られたくなかった……出来ることなら最後まで私は神崎あやめでいたかった……」
かがみ「そんなの理由になるか!!」
かがみは立ち上がり神崎さんに詰め寄った。
みゆき「かがみさん、その話は後にしましょう、それより私は外で泉さんとつかささんが話していた事が気になります」
みゆきさんが間に割って入った。絶妙なタイミングだった。このまま放っておけばかがみは言い訳する間も与えず怒鳴り続けたに違いない。
こなた「お稲荷さんの秘薬?」
みゆき「はい、いったい誰に使おうとしたのですか?」
こなた「あやめさんの親友……かがみと同じ病気、再発してもうダメみたい……」
みゆき「そうですか」
みゆきさんは暫く目を閉じた。
みゆき「私達の研究グループが開発した新薬……臨床試験をしようとしています、どうでしょう、治験者になってみませんか」
神崎「ほ、本当か?」
みゆき「つかささんの持っていた秘薬と同じ効果があるとは断言できませんが」
神崎「構わない」
みゆき「それなら早いほうが良いですね、そのお友達が入院している病院はどこですか」
神崎「○○病院だ」
みゆき「それでは私はこれで失礼します」
神崎「私も同行していいか?」
みゆき「是非そうして下さい」
二人は慌てるように部屋を飛び出した。

353 :こなたの旅 25 2/2 [saga sage]:2014/06/01(日) 14:23:24.24 ID:oLV7tB6i0
 かがみは話の途中だったのを中断させられたせいかかがみは消化不良気味だ。これはまずいと思ったけど遅かった。かがみは私の方を向いた。
あやの「ひいちゃん……私にも教えてくれなかったんだ……」
でも口を開いたのはあやの方が先立った。
つかさ「ごめんなさい……あやちゃんにも言わないようにって言われたから……」
あやの「今はどうしているの?」
つかさ「自宅療養しているよ、多分もう大丈夫だから……」
あやの「神崎あやめさんのお友達も元気になるといいね……」
つかさ「う、うん……」
そうだった。つかさがレストランの手伝いを引き受けた時点で気付くべきだった。いや、気付かなかった。完璧じゃないか。
つかさがそんな隠し事をしていた。私やあやのに気付かれることなくつかさは隠した。
神崎さんがこのレストランにはじめて来た時、ちゃんとつかさに話していればつかさはお稲荷さんの事も真奈美の事も秘密に出来た……
そうすれば私達は無駄に構える必要も無く神崎さんだって警戒しなかったかもしれない。
そうだったらここまでこじれる事無くもっとスムーズに神崎さんは本当の事を話してくれたかもしれない……今更、ここになって気づくなんて……
かがみ「こなた、話はまだ終わっていない」
そうだ。まだ終わっていない……
私はかがみの方を向いた。
かがみ「神崎あやめの死については何も問わない……しかし、何故だ、何故家に火をつけた、死体を傷つけるのは立派な犯罪、もちろん放火も、あんたそれを知らないわけじゃないだろ?」
こなた「うんん、火をつけたのは私じゃない……」
かがみ「こなたじゃない?」
こなた「殺し屋、貿易会社の雇った殺し屋、そう神崎さんは言っていた」
かがみ「殺し屋……あんた、いったい何をしようとしている……」
こなた「前にみゆきさんが言っていたよね、最初に潜入した情報を公表すれば貿易会社は追い込めるって……でも今まで出来なかったのはメモリー板と真奈美さんが
    向こうの手にあるから、そうだったよね、だけどメモリー板は私が持っている、それから真奈美さんは居ないのが分かった、もうこれで隠している必要はないよね?」
かがみ「今回の事件とは関係ないでしょ」
こなた「あやめさんが持っていたパソコンから自動的にその情報を送るように細工をした、犯人がパソコンの電源を切ったら
起動するようにね、送り先はあやめさんの勤めている出版社、親友の井上さん、大手新聞社……」
かがみ「……まさか、ダイイングメッセージにするつもりなのか……あんた、神崎あやめさんの死を利用したのか……」
こなた「利用できるものは全て利用する……」
つかさ「こなちゃん……」
つかさがすごく悲しそうな目で私を見ている。何が言いたいのかは何となく分かった。
かがみ「少なくともこの数ヶ月行動を共にして何も感じないのか、これはゲームじゃないのよ」
かがみもつかさと同じ意見か。あの時、私と神崎さんだけじゃなかったらこの作戦は出来なかったかもしれない。でも、こうしなかったら……
こなた「あやめさんはもう5年前から既に居ない、真奈美さんと同じだよ、私は彼女と出会ったこともないし、話したことも無い、今まで会っていたのは神崎さんが化けたあやめさん、
    神崎あやめじゃない……」
かがみ「……そんな簡単に割り切れるものなのかしら……私には理解出来ない……でも、もうしてしまったのはどうしようもない、情報を受け取った側がどう動くか、
    今はそれを見守るしかないようね……」
こなた「そよれり、正子さん、神崎正子さんが何処にいるか分かる?」
かがみ「遺体の確認とかあるからきっと地元に戻っていると思うけど……何故そんな事を聞くのよ?」
私は立ち上がった。
こなた「ちょっと行ってくる」
かがみ「ちょっとって何処に行くのよ……」
こなた「まだ作戦の途中だから……」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「途中って……待ちなさ!!」
私は立ち止まった。
かがみ「話も途中よ、全て話しなさい」
私は首を横に振った。
かがみ「何故、ここに居るメンバーは知る必要がある」
私は再び首を横に振った。かがみは溜め息をついた。
かがみ「話さなくてもいずれ分かるわよ、それにこのままじゃ私達はあんたに何も協力できない、それでもいいのか?」
私は頷いた。かがみは再び溜め息を付く。
かがみ「言いたくなければ私の質問に答えて、あんた外で私達と話している時、神崎さんが去ろうとして引き止めたでしょ、
    みゆきが新薬を完成させていたのを知っていて引き止めたのか?」
以前、みゆきさんとそんな話をしていたっけ。でも完成までは知らなかった。
こなた「引き止めたのは神崎さんにあやめさんの話をさせるために止めただけ、私じゃ上手く話せないから……」
かがみ「そう、あんた、変わったわね……良い意味でね、行きなさい、もう止めない」
つかさ「お姉ちゃん……」
あやの「かがみ……」
すすむ「ばかな……いいのか」
いのり「かがみ、いいの、行かせて……」
かがみ「どちらにせよ今私達にできることは無い、それに神崎さんの作戦はもう終わった、さぁ、こなた行きなさい」
こなた「かがみ、ありがとう」
私は柊家を出た。

 私は正子さんに会うと次の住居が決まるまで私の家で過ごすように提案した。
正子さんは聞き入れてくれた。一方お父さんの方も神崎さんの母親という事で直ぐに承知してくれた。

つづく。

354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/01(日) 14:26:01.95 ID:oLV7tB6i0
以上です。

そろそろ終盤です。

もう少しお付き合いしていただけると助かります。

この後すぐにまとめます。
355 :ちょっと宣伝 [saga]:2014/06/02(月) 21:56:47.66 ID:NDyxHJGe0
2011年の23回で止まっているコンクール。

もし再会するとしたら参加できる作者さんはどのくらいいるかな。

もちろん再会するなら私も参加します。

3人くらい居ればやろうかなって思っている。

コンクールだと大袈裟って言うならお題を募集して

自由に書くのもいいかな。


とにかく作者さん大募集です。

1レスものでもギャグでもクロスオーバーでも何でも(エロ以外)

いいのでお気軽に。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/09(月) 01:26:07.92 ID:Jn0w/yWMO
懐かしいな
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/06/22(日) 14:36:31.22 ID:2B7QCnBZ0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

4スレほど使用します。
358 :こなたの旅 26 1/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:38:22.96 ID:2B7QCnBZ0
26

 私は都心のとあるホテルの入り口に居る。丁度エレベータに乗ろうとした時だった。
「すみません、お客様」
後ろから私に声をかける人がいた。振り返ると女性だ、制服からするとホテルスタッフらしい。
スタッフ「恐れ入りますが御用はなんでしょうか」
こなた「このホテルに泊まっている人に会いに行くところだけど」
スタッフは大きく頭を下げた。
スタッフ「すみませんがそのお客様とお約束はしていますか」
私は頷いた。するとスッタッフはフロントの受付の方を向いた。
スタッフ「受付でサインをお願いします」
私は受付でサインをした。さすがにこのクラスのホテルになると受付の対応が違う。あのスタッフはコンシュルジュってところかな。
うちのレストランもあのくらいの対応をすれば一流って言われるのかな。
受付でサインを済ますと再びエレベータに向かった。

『コンコンコン』
ドアをノックした。ドアが開いた。
「¿Quién es usted?」
こなた「ほえ??」
見たことの無い男性が出てきた。髭を蓄えている。
「Váyase.」
何を言っているのか分からない。私はポケットからメモリー板を出して男性に見せた。男性はメモリー板を見ると溜め息をついた。
神崎「やはり無駄だったか」
こなた「もうこのホテルに入ってから居場所は分かっているからね、こんなに便利なのに何故今まで見つからなかったの?」
やっぱり神崎さんだった。このメモリー板を持ってからお稲荷さんの居場所は直ぐに分かるようになった。例え別の人に化けていても見破るのは簡単だ。
私は部屋の中に入った。
神崎「前にも言っただろう、起動しなければ只の箱に過ぎない」
こなた「自動で起動できるようにしなかったの、そんなのお稲荷さんなら簡単にできるじゃん?」
神崎「機械に判断と選択はさせない」
こなた「へ、分かんない、もっと簡単に教えて」
神崎「私達の母星で起きた事件だ、機械が我々に反抗してしまってね」
こなた「あ、それって、よくゲームとかで出てくるネタだね」
神崎「いや、実際に起きた、私達の星ではね、それで長い戦いが起きた……」
こなた「神崎さん達が今こうして居るって事は機械に勝ったんだね?」
神崎「勝ったっと言うより我々が機械の制御を自分自身に取り込んだ、だから機械は我々の意思なしでは動かないようにした」
こなた「取り込んだって?」
神崎「機械の制御権を全て我々の中、遺伝子に組み込んだ、これで機械は我々の道具に戻った、機械は我々の脳からの命令がないと動かない、君達の細胞にいるミトコンドリアと
   同じ、ミトコンドリアの遺伝子を細胞の核に移してミトコンドリアを制御しているのとね、それに至るまで多大の犠牲を余儀なくされたがな、その副産物として
   変身と長寿、そして君達の言う超能力を得た」
こなた「ふ〜ん」
言っている意味の半分も理解できなかった。みゆきさんなら理解できただろうけど……無表情の私にちょっと不機嫌な様子の神崎さんだった。
神崎「他人事だな、君たちもいずれそれに直面するぞ、自分の作った道具に滅ぼされるなんて考えただけでも恐ろしいとはおもわんのか?」
こなた「でも私が生きている内は大丈夫でだよね」
神崎「それは、どうかな……」
神崎さんは改まって私を見た。わたしの顔を見て話を続けるのを諦めたのか話題を変えた。
神崎「ところで何の用だ?」
こなた「作戦の続きがあるでしょ、忘れちゃったの?」
神崎さんは部屋にある置時計を見た。
神崎「もうそんな時になるのか……本当にしなければならないのか?」
こなた「もちろん、その為にきたんだよ、最後まで付き合ってもらうから」
神崎「そうだったな……ちょっと待ってくれ準備する」
神崎さんはいそいそと身支度を始めた。
こなた「……その姿で行くつもりなの?」
神崎「そのつもりだが、何か問題があるか?」
こなた「ん〜、最初に私に見せた姿がいいかも……」
ひげもじゃで背が高すぎ。すごく威圧感がある。
神崎「そうか……30分ほど余計にかかるがいいか」
神崎さんは洗面所に向かった。
こなた「なんで洗面所に、変身ならここですればいいじゃん?」
神崎「君は着替えをする時見せびらかすのか?」
こなた「そ、そんな事はしないけど……」
神崎「それと同じだ、失礼する」
そのまま洗面所に入った。お稲荷さんの変身って着替えみたいなものなのか……始めて知った。
そういえばめぐみさんの時は私の前でよく変身していたけど、同性だったから気にならなかっただけなのかな……まだまだお稲荷さんについては良く分からないことだらけだ。
神崎「君の作戦はいつ思いついた?」
洗面所の更衣室のドア越しに声が聞こえた。
こなた「神崎さんが言った時、殺し屋が来るって」
神崎「そうか……」
それ以降神崎さんは話してこない。きっと狐に戻ったに違いない。
……
……
359 :こなたの旅 26 2/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:40:06.39 ID:2B7QCnBZ0
 そう、あの時……神崎さんは私に金縛りの術をかけようとしていた。
神崎「泉、私を見ろ……」
この重みのある言葉で直ぐに分かった。まともに彼をみれば術を防ぐ術はない。でも幸い私には彼が残したボイスレコーダを持っている。
はたして私が使って神崎さんの術を封じる事ができるだろうか。どのくらいの範囲で効果があるのか分からない。でも使うしかない。まずは神崎さんを止めないと私の
作戦は始まらない。
『カチ』
私は手をズボンの後ろのポケットにまわしてそっとスイッチを入れた。そしてゆっくり神崎さんの方を向いた。
神崎「どうだ、動けないか……」
うごけ……ん?……!
しめた、動けそうだ。それならここは術にかかった振りをする。私は何も言わなかった。神崎さんの隙を狙う。
神崎「お前を巻き込む分けないはいかない、このまま最終電車で帰ってもらう、特急に乗れなくても終点の駅ならホテルは沢山ある……」
私に催眠術をかけるつもりなのか私の顔に腕をゆっくり伸ばしてきた。私の額にその手が触れるか触れないかの距離まで来た瞬間、
私は一歩神崎さんの真横に移動して身体を一回転させて神崎さんの背後に回り私の腕を神崎さんの首に回してもう片方の腕で完全にロックした。俗に言う裸締めだ。
神崎「うぉ!?」
こなた「動かないで、腕にちょこっと力を加えれば頚動脈から頭に血が行かなくなるよ、そうなれば数秒で落ちるよ」
神崎「な、何故効かない……なぜ……?」
こなた「神社でボイスレコーダ拾っちゃったからね」
神崎「まさか……もっと遠くで捨てるべきだったな……なんて素早い身のこなし、見えなかった、しかも急所を的確に狙うとは……東洋の武道と言うやつか……」
こなた「武術はちょこっと齧っただけ、油断したから素早く見えただけ、だけど技の効果は本物だよ」
神崎さんは全身の力を抜いて渡しに委ねた。
神崎「そうだな、本物の様だ、抵抗はしない……それでこの状態で私に何をする気だ?」
こなた「それより私を帰した後どうするつもりだったの?」
神崎「あの殺し屋には個人的に因縁がある、ヨーロッパに居た頃友人だった人間を何人か殺されている」
こなた「敵を討つつもりなの?」
神崎「そうだ……」
思ったよりも深刻だった……
こなた「それで、その後はどうするの」
神崎「殺し屋があやめを殺した様に見せかける、殺し屋の死体が一緒ならあやめと刺し違えたと思うだろう、そして、殺し屋の雇い主が分かれば貿易会社の全貌が明らかに……」
半分は私が立てた作戦と同じ、だけど半分は全く違う。
こなた「残念でした、殺し屋の雇い主は分からないよ、神崎さんも長年貿易会社を調べている割には分かってないね?」
神崎「なんだと、何故だ!?」
神崎さんが少し暴れそうだったので腕に少し力を加えた。すると直ぐに大人しくなった。
こなた「武器の密売を隠せるくらいの力をもってるんだよ、殺し屋を雇ったなんて分かりっこない」
お稲荷さんらしくない。親友を殺されて頭に血が上って冷静な判断ができないのかもしれない。
神崎「君なら何かあるとでも言うのか」
こなた「あやめさんの死体を利用するのは全く同じ、だけどその方法が少し違う……聞いてみる?」
神崎「もしその話を聞いて私が断ったらどうする」
こなた「このまま絞め落とすよ、と言いたい所だけど、どうしても神崎さん……お稲荷さんの協力が必要なんだ……」
私は絞めていた腕を解いた。神崎さんは私から一歩離れて手で首を擦りながら振り返った。
神崎「何故放した……いくら素人でも同じ技にはかからないぞ」
こなた「そうかもしれないけど、そっちもお稲荷さんの術は使えないよ」
神崎「……そうだった、話してみろ、その作戦とやらを」
こなた「神崎さんは殺し屋に催眠術をかけてあやめさんを殺したと思い込ませて」
神崎「それで……その後はどうする」
こなた「それだけでいいよ……うんん、もしかしたらメモリー板も取り戻しにくるかもしれないから、それも奪還させたと思い込ませる必要もあるかもね」
神崎「ばかな、そうしたら彼は証拠隠滅を図るぞ……話にならん、私は私のやり方で……」
こなた「殺し屋を殺してどうするの、殺したって神崎さんの友達は帰ってこない、あやめさんだって!!」
この時、殺し屋が家に火をつけるなんて思ってもいなかった。あの時は私の作戦を説明するのでいっぱいだった。
神崎「……殺し屋を許せと言うのか?」
こなた「うんん、そうは言ってない、ただ、誰一人傷つけたくないだけ」
神崎「傷つけない……どうやって」
こなた「あやめさんのパソコンを使う、以前盗んだデータを公に知らせたらどうなるかな、それもあやめさんが亡くなった時間に合わせて送ったら?」
神崎さんは暫く考えた。
神崎「パソコンの操作はどうするつもりだ」
こなた「証拠を消す為に必ず殺し屋はパソコンに何かをするはず、それを合図に発信するようにする」
神崎「……出来るのか?」
こなた「元気だま作戦よりは簡単だと思うけど?」
神崎さんはまた考え込んだ。
こなた「真奈美さんが何故亡くなったか教えたから知っているでしょ?」
神崎「ああ、知っている、柊さんと握手をした時、彼女の意識から鮮明なイメージが飛び込んできた……装置のスイッチを入れていなかった……慌てて入れたがもう遅かった」
やっぱり私の思った通りだった。
神崎「あのイメージで真奈美が捕らわれているという推測は絶望的になった……それでも微かな希望に賭けたのだがな……」
こなた「つかさが旅をしたから亡くなったんて言わないでよ」
神崎「分かっている……」
こなた「それじゃ何をすればいいのか分かるよね?」
神崎さんはあやめさんの方をじっと見つめた。
神崎「……いいだろう、君の作戦にかけよう……」
こなた「そうこなくっちゃ!!」
神崎さんは振り返って私を見た。
神崎「そのセリフはあやめが生前よく使っていた……」
こなた「感傷に浸るのは作戦が終わってから」
神崎「そうだな……」

360 :こなたの旅 26 3/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:41:23.96 ID:2B7QCnBZ0
 って言ったみたものの実際殺し屋をどうやって催眠術にもっていく方法までは思いつかなかった。
こなた「えっと……その殺し屋さんってどんな人?」
神崎「そんなのを聞いてどうする?」
こなた「誘き出すのに参考になるかなって……」
神崎「なんだ、もうとっくに考えてあるのかと思った」
呆れ顔の神崎さんだった。
神崎「彼の対処は私がする、君はあやめが生きている様に振舞ってくれればいい」
こなた「この部屋でパソコン打ってればいいかな?」
神崎さんは頷いた。
神崎「仕掛けは出来るだけ急いでくれ」
私は部屋のカーテンを閉めて椅子に腰掛けた。カーテン越しの影が外からは長髪の女性が居る様に見える。
神崎「それでいい」
神崎さんは部屋を出た。

 これから殺し屋が来るまでの時間はどのくらいか覚えていない。夢中でパソコンを操作していた。
つかさの家に着くまでの時間から逆算すると多分1、2時間位の時間だった。

 突然部屋の明りが消えた。そしてパソコン本体の隣においてあったUPSのランプが点灯した。
1から2分くらい経っただろうか、部屋の外から神崎さんの呼ぶ声が聞こえた。メモリー板の明りを頼りに部屋を出て声のする方に向かった。
玄関の入り口に神崎さんが立っていた。その直ぐ隣に見知らぬ人影が見える。明りを向けると男性がマネキン人形の様に静止して立っていた。もう神崎さんが金縛りの術を
かけた後のようだ。
こなた「この男性が?」
神崎「そう、殺し屋だ」
身長はさほど高くない。顔つきはどう見ても東洋人系の顔……日本人にしか見えない。
こなた「ヨーロッパの殺し屋じゃないの?」
神崎「いや、彼は変装の名人だ、どんな民族にも違和感なく溶け込める」
こなた「急に停電になったけど?」
神崎「もちろん彼の仕業だ、彼は潜入するとき電源と通信を遮断する……言い忘れていたがこの状況でメッセージは送れるのか?」
こなた「幸いUPSがああったから大丈夫、メッセージもあやめさんの携帯電話経由で送るから問題ないよ」
神崎「そうか……」
ほっと一呼吸整えると神崎さんは殺し屋の額に手を添えた。
神崎「彼はもうあやめを殺した……メモリー板も回収した事にする」
こなた「それじゃこれを」
私は神崎さんに携帯電話を渡した。
神崎「これは?」
こなた「あやめさんの机の中に入っていた携帯、多分機種変更で使わなくなったやつ、これをメモリー板だと思い込ませて」
神崎「……君はあざといな……」
神崎さんは受け取った携帯電話を殺し屋のズボンのポケットに入れた。
こなた「彼をあやめさんの部屋に移動させないと……」
『パチン!!』
神崎さんが指を鳴らすと殺し屋の足が動いた。そして誘導するようにあやめさんの部屋に移動した。

 部屋に移動すると私はあやめさんの周りに張り付いている繭の様な物を引き剥がした。引き剥がすと繭の様な物は泡の様に解けて消えた。
あやめさんを抱き起こすと椅子に座らせた。
こなた「準備はいいよ」
神崎さんは殺し屋から手を放そうとしなかった。
こなた「どうしたの、もしかして催眠術がかけらないとか??」
神崎「……彼は此処を離れる際、火を放すつもりだ……台所から出火させて事故にみせつもりらしい……」
こなた「大丈夫、もうメッセージは送られているはずだから……」
神崎「いや、そうじゃない、火事になればあやめは……あやめの身体は焼け爛れるぞ……場合によっては身元が判らないほどに、それでも良いのか?」
こなた「……もう亡くなっているからあやめさんは何も感じないよ……」
神崎「……君は冷酷だな……」
神崎さんは片手を上げた。
神崎「この指を鳴らして3分後に金縛りの術が解ける、それと同時に彼はあやめを殺し、メモリー板を奪還したと思い込むはずだ……」
私は頷いた。
神崎さんは両目を閉じて全身を震わせながら指を鳴らした。
『パチン!!』
神崎さんは椅子に座っているあやめさんをじっと見ていた。
こなた「急いで出よう!!」

私は彼の手を引いて家を出た。そして次の駅まで歩いて行き始発電車でつかさの家に向かった。
これがあの時、あやめさんの家で起きた一部始終。
……
……
361 :こなたの旅 26 4/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:43:12.74 ID:2B7QCnBZ0
神崎「これでいいのか」
洗面所から出てきたのは初めて会った時の神崎さんの姿だった。いろいろ思い出していたらもう30分も経ってしまったようだ。
こなた「うん、それでいい」
神崎「本当に行くのか?」
こなた「もちろん、行かないと私の作戦は終了しないからね」
神崎「何故私が行く必要がある」
こなた「神崎さんから直接話して欲しいから」
神崎「泉さん、君の方が適任だと思うが……それに私の話を聞いて信じてくれるかどうかも分からない」
こなた「信じる信じないは向こうが決める事、真実を話すのが大事なの……」
神崎さんは黙って何も言い返してこなかった。
こなた「行こう」
私達は部屋を出た。

 ホテルを出た私達は私の車に乗って出発した。
神崎「何処に行く……」
こなた「神社だよ」
神崎「神社?」
こなた「そう、神社、つかさと真奈美さんが初めて会った場所、そしてあやめさんと真奈美も……そこが一番話すのに相応しいと思ったから」
神崎「あの神社か」
こなた「待ち合わせ時間に間に合うように少し急ぐよ」
私はアクセルを踏んだ。
362 :こなたの旅 26 5/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:44:12.76 ID:2B7QCnBZ0
 神社の頂上が見えてきた。待ち合わせをしていた人はもう既に居た。
神崎「どうしても話さなければならんのか?」
こなた「そうだよ、5年間も騙し続けたのだから、ちゃんと責任とってよ」
今日はあやめさんの四十九日。納骨を終えた正子さんと待ち合わせをした。正子さんに会わせたい人がいると約束をした。
話すには打ってつけの日。だから今日にした。
階段を登ってくる私達に気付いた。私達に微笑みかける正子さん。
こなた「どうも遅くなっちゃって……」
正子「いいえ、私もついさっき来たばかりなのよ」
正子さんは神崎さんに気付いた。私の陰に隠れているのをのど着込むように見た。
正子「彼が?」
こなた「はい、会わせたい人です……ほら、神崎さん……」
私は神崎さんの後ろに廻り彼の背中を押して正子さんの前に立たせた。そして私は2、3歩下がった。
神崎さんは正子さんに会釈をした。
正子「貴方は……確か……あやめと一緒に家に来たわよね?」
神崎「……はい、よくご存知で……」
正子「良く覚えている、なんせあやめが初めて男性を連れてきたのだから……」
神崎さんのあの姿はあやめさんの生前からの姿だったのか……変身し直させて良かったかもしれない。
神崎「実は正子さんに言わなければならない事実がありまして……」
正子「事実?」
正子さんは不思議そうな顔で私の方を向いた。私はただ頷くしかなかった。正子さんは再び神崎さんの方を向いた。
神崎「……あやめ……いや、あやめさんは……」
正子「あやめがどうかしましたか?」
神崎さんを見て首をかしげさらに不思議そうな顔をする正子さんだった。
神崎「貴女の娘さんは5年前に既に亡くなっていた、それまでの間、私が成り済ましていました……」
神崎さんはその場で深々と頭を下げた。経緯の説明がない。お稲荷さんの話もしない。あまりに短い言葉だった。これじゃ何がなんだか分らない。理解出来ないじゃないか。
最初からちゃんと説明しないと。私が話そうとした時だった。
正子「確か……あの時は土砂降りの雨だったかしら……ずぶ濡れになって小脇に壊れたヘルメットを抱えて帰って来たわね……」
私は立ち止まった。。
正子「どうしたの?……そう聞くと「何でもない」……そう言って部屋に入って言ったわね……覚えています」
神崎「土砂降り……壊れたヘルメット……ば、ばかな……入れ替わった最初の時……」
正子「悲しげなあやめの表情でしたね、なんとなく違和感があった……」
神崎「そんなはずはない、容姿はもちろんあやめの記憶は全てトレースした、幼少から亡くなる寸前までの記憶、彼女の性格も、癖も……」
正子さんは話を続けた。多分神崎さんの話を理解できていない。
正子「……そして次の日、部屋から出てきたあやめは元のあやめに戻っていた……」
どんなに正確に変身しても他人は他人。母親は騙せないか……
神崎「何故聞かなかった、何故黙っていた?」
正子さんは目を閉じながら話した。
正子「それを聞いたら……あやめがどこか遠くへ行ってしまうような……そんな気がしたから……でも、部屋から出てきたあやめはあやめだった、私の娘そのものでした……
   あれから5年……もうそんなに経つのね……」
正子さんの目から涙が一筋流れた。

 涙を流している正子さん見て急に私も悲しくなった。そして、 彼女と出逢ってから今までの出来事が走馬灯のように浮かんできた。
取材や作戦じゃくてもっといろいろ話したかった。ゲームやアニメの話、皆と軽食を食べながらバカな話でもして……
その時気付いた。私の会っていたあやめさんはあやめさんだった。少なくとも金縛りの術を使う直前までは神崎あやめだった。
私は大事な親友を一人失った……
私はあやめさんを見殺しにした。私はあざとく……冷酷だった。
こなた「正子さん、わ、私……」
この作戦を考えたのは私。だから私は正子さんに話そうとした。でも正子さんは首を振って私を止めた。
正子「もう済んだ事だから……それより二人共、あやめの墓前で手を合わせて欲しい……」
正子さんは振り返ると神社の奥の方を向いて手を合わせた。
神崎「墓前……まさか、あやめは……」
正子「そう、この地に散骨しました……幼少から此処が好きでした、そして今でも……そう思いまして」
神崎さんは正子さんのすぐ後ろに立つと手を合わせた。
私はそのままの位置で手を合わせた。
……あれ。目頭から熱い物が頬を伝った。
涙だった。
本人には一度も会っていないのに。泣く事なんて無いと思っていたのに……
祈りが終わっても私は暫くその場を動く事ができなかった。
涙で目がくもって見えなかったから。

 こうして私の作戦は終わった。
成功したのか。失敗したのか……今の私には分らなかった。


つづく
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/22(日) 14:45:35.17 ID:2B7QCnBZ0
以上です。
容量がおおくて5レスになってしまいました。

これからすぐにまとめるので報告は避難所のみとします。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/22(日) 14:55:16.23 ID:2B7QCnBZ0
>>355
何も反応がなかったので保留にします。

書き手は随時募集していますので気軽にどうぞ。

365 :作者の心理 [saga sage]:2014/06/22(日) 21:46:23.32 ID:2B7QCnBZ0
こなた「よくまぁながながと続きますな」
かがみ「唐突に何を言うか?」
こなた「いや、このスレでちょこちょこ連載している人がいるんだけどね」
かがみ「ほぅ、SSサイトなんか見ているのか、あんた文章は苦手だとか言ってなかったか?」
こなた「まぁまぁ、それは置いておいて、この作品は感想やコメントがほとんど無いのによくまぁ、こんなにズラズラ書けるなぁって……
    普通ならモチベーションが下がったり飽きたりして「やーめた!!」ってなんない?」
かがみ「まぁ、書き手にとって読み手の反応は気になるわよね」
こなた「でしょ?」
かがみ「でもね、読み手の反応は必ずしも良いものとは限らない、批判や中傷もあるわよ、もしそんなコメントがきたらそれこそモチベーションが下がるわ」
こなた「そっか……」
かがみ「コメントが無いのは寂しいけど、逆に考えて注文や批判もないから自由に作れる、期間も気にしなくて済む、ってところかしらね……」
こなた「ふ〜ん、もしかしてこのSSかがみが書いているとか?」
かがみ「な、なんでそうなるのよ!?」
こなた「やけに作者の心理を詳しく語ってるから」
かがみ「そんなの少し考えれば分るわよ」
こなた「……う〜んそうかな」
かがみ「そうなの、バカ言ってないで、早くしないとつかさと日下部に約束した時間に間に合わないわよ」
こなた「あっ! そうだった、急ごう!!」


かがみ(危ない危ない、妙に勘が鋭い所があるから油断できない)





























    
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/24(火) 23:17:52.62 ID:ElU61P1b0
>>365
一応まとめました。
367 :作者の心理2 [saga sage]:2014/06/30(月) 00:26:23.17 ID:ZdBNIBwt0
つかさ「お姉ちゃん、最近こなちゃんがSSって言うのに凝ってるみたいだね」
かがみ「みたいね……」
つかさ「お気に入りのSSが最近更新しないから早く続きが読みたいって言っていたよ」
かがみ「……なんでそんな話をするのよ?」
つかさ「何でも下手にコメントが出来ないから困ってるって、どうすれば良いかな?」
かがみ「私にそんな事聞かれても分らないわよ」
つかさ「そうなの? お姉ちゃんは作者の心理が良く分かるってこなちゃんが言ってから……」
かがみ「……悪口じゃなければ何でも良いわよ……素直に思った事を書けば」
つかさ「こんど会ったらそう言っておくね」
かがみ「お気に入り……か……」
つかさ「え、なに?」
かがみ「いや、なんでもない、独り言よ」

かがみ(……つづきを書いてみるかな……)
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga ]:2014/07/06(日) 00:01:08.05 ID:jN24m8os0
久々に「つかさの旅」シリーズじゃないものを投下します。

4レスくらい使用します。
369 :七夕 1/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:02:55.00 ID:jN24m8os0
 今日は街に出てお買い物。
外は梅雨で生憎の天気。こんな時は天気を気にしないデパートで買い物をするのが一番。
こなたお姉ちゃんは買い物を済ませて先に帰った。これだったらひよりちゃんやみなみちゃんと一緒に来た方が良かったかな……
なんて最初はそう思ったけどたまには一人で気兼ねなく、時間も気にしないで買い物をするのもたまには良いかな……
普段寄らないような店をちょっと覗いてみよう。

 少しアンティークっぽい装飾品店を見つけた。値段も手ごろで私でも買えそうな物がいくつもあった。
何気なく手を伸ばした。丁度その時同じ物を取ろうとしたのか他人の手が重なってしまった。
ゆたか「す、すみません……」
手を引っ込めて相手の方を向いた。
かがみ「ゆたかちゃん?」
ゆたか「か、かがみ先輩?」
そこに立っていたのはかがみ先輩だった。
かがみ「奇遇ね、一人でお買い物?」
ゆたか「はい……あ、いいえ、こなたお姉ちゃんと買い物に来たのですけど途中で別れて一人で買い物をしていました」
かがみ「こなたも来ていたのか……」
かがみ先輩は辺りを見回した。
ゆたか「お姉ちゃんはもう帰りました」
かがみ先輩は呆れるように溜め息をついた。
かがみ「あいつは目的を果たすと直ぐ帰るからな……」
ゆたか「かがみ先輩もお買い物ですか?」
かがみ「私? そうね、そんな所かしら……この店感じがいいから何気なく入ったのよ」
かがみ先輩は店の周りをゆっくりと見ました。
ゆたか「そうでしたか、失礼しました」
私は会釈をして店を出ようとした。
かがみ「待って、これから予定はあるの?」
店の入り口で私は立ち止まった。
ゆたか「いいえ、特にありませんけど」
かがみ「こんな所で会ったのも何かの縁、どう、この近くに美味しいスイーツの店知っているけど寄っていかない?」
かがみ先輩の誘いに断る理由はなかった。
ゆたか「はい」
かがみ「それじゃ行きましょ」


『七夕』


370 :七夕 2/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:04:09.70 ID:jN24m8os0
かがみ「どう?」
ケーキを食べる私をじっと見るかがみ先輩。
ゆたか「……美味しいです……しつこくない甘さと程よい苦味がアクセントですね……」
にっこり微笑むかがみ先輩。
かがみ「でしょっ!!」
表情が少し誇らしげの様な気がした。
ゆたか「こんなに美味しいお店があったなんて……今度みなみちゃん達にも教えます」
かがみ先輩は大きく頷いた。
ゆたか「今日はお一人なのですか?」
かがみ「そうよ……」
ゆたか「つかさ先輩は……」
かがみ先輩は少しさみしそうな顔になった。
かがみ「そうね、確かに高校まではつかさとほとんど一緒に行動していた、でも、流石に大学と専門学校じゃ時間が合わないわよ……」
ゆたか「せっかくの日曜日なのに、残念ですね」
かがみ先輩は静かにコーヒーカップを口に運んだ。
かがみ「今までが上手く行き過ぎていた、それは分っているけど……慣れるのにはもう少し時間が必要かもね……」
ゆたか「いろいろ大変ですね」
かがみ先輩はコーヒーカップを置いた。
かがみ「ところでゆたかちゃんはどう、二年目高校生活は?」
ゆたか「クラス替えしても相変わらずのメンバーは変わらなかったので……」
かがみ「……凄いわね……私は結局つかさやこなた、みゆきと同じクラスには一度も慣れなかった」
そういえばつかさ先輩は小学校から一度も同じクラスになってないって言っていたのを思い出した。
ゆたか「で、でも卒業しても頻繁に会っているのだから凄いですよ」
かがみ「そういえば担任が黒井先生なんだって?」
話が変わってしまった。あまり触れて欲しくない話だったかな……
ゆたか「え、あ、はい、そうです、とっても厳しくて……厳しくて……」
かがみ「たまに遅刻寸前で教室に飛び込んでくる?」
私は黙って俯いた。
かがみ「ふ〜ん、図星みたいね……黒井先生はまだこなたと同じネットゲームしているのかしら……」
ゆたか「……お姉ちゃんは遅くまで起きているみたい」
かがみ先輩は溜め息をついた。
かがみ「やれやれ」
かがみ先輩は再びコーヒーカップを口に運んだ。私もその合間にケーキを食べた。
371 :七夕 3/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:05:09.02 ID:jN24m8os0
 それから暫く私はみなみちゃんやひよりちゃんの話をした。
かがみ先輩はじっと私を見ている。
ゆたか「はい?」
かがみ「こうしてゆたかちゃんと二人で話すなんて初めてじゃない?」
ゆたか「……そいえば……かがみ先輩が居る時はいつかさ先輩かお姉ちゃんが居ましたね、私もみなみちゃん、ひよりちゃんが……」
かがみ「ゆたかちゃんから見て私はどう見える?」
ゆたか「どう見える……って?」
かがみ「皆と一緒だとギャーギャー言っているでしょ……知り合いは居ないから正直に」
こう言う時ってどう答えればいいのかな。
ゆたか「……とても頼りになるお姉さんって感じ……」
かがみ先輩は首を横に振った。
かがみ「そうじゃなくて……女性としてどう見える?」
ゆたか「女性として……」
私は言葉に詰まってしまった。どうしよう。何も答えられない。気を悪くしていまうかな……
かがみ先輩は溜め息をついた。
かがみ「ごめん……同性にこんな質問をしてもしょうがない……」
ゆたか「同性……気になる異性……誰か好きな人でも居るのですか?」
何気なく言った。だけどかがみ先輩の顔がみるみる真っ赤になって耳まで赤くなった。
かがみ「な、なに言っているのよ!!」
どうしよう、怒らせちゃった……
ゆたか「す、すみません……」
かがみ先輩は立ち上がるとそのまま化粧室の方に早歩きで向かった。

 かがみ先輩……
お姉ちゃんとかがみ先輩はいつも何か言い合っていてツンツンしている様な感じがしていた。
つかさ先輩や私達と一緒の時のかがみ先輩はいつも微笑んでいて良いお姉さんって感じ。
高良先輩とかがみ先輩が話している時は知的で凛として憧れの先輩って感じ。
日下部先輩や峰岸先輩と一緒の時のかがみ先輩はふざけ合って仲の良い友達って感じ。
さっき私と話していたかがみ先輩はそのどれとも違っていた……
化粧室からかがみ先輩が戻ってきた。ゆっくりと静かに歩いて来た。そして席に着いた。
かがみ「さっきはごめんね……」
普段のかがみ先輩に戻っている。
ゆたか「いいえ、私が唐突過ぎました……」
かがみ「……いや、ゆたかちゃんがそう言うのはある意味正しい……私ってこの歳になっても……浮いた話が一つも無いでしょ……女性としてどうなのかなって……」
ゆたか「そ、そうですか……私もそれは良く分かりません……普段そんな話あまりしませんし、お姉ちゃんだってそうだと思います……」
かがみ「そうよね、私達にはそんな話は似合わない……そうそう、気を取り直して何か注文しましょ、お詫びに私が奢るわよ」
かがみ先輩は店員を呼び二人分の注文をした。
似合わない……似合う似合わないは関係ないような気がした。
それにこんな話は今まで一度もした事がない。こんなチャンスはないかも。折角だから……
ゆたか「あ、あの、好きな人は居たのですか?」
かがみ「ぶっ!!」
飲みかけたコーヒーを噴出しそうになった。
かがみ「ちょっと……」
また顔が赤くなった。だけど赤くなったのは頬だけだった。
ゆたか「ついでって言ったら語弊があるかもしれませんけど……今までこんな話した事がないのでたまには良いかな……なんて……話したくなければ無理には……」
かがみ「ふぅ……」
かがみ先輩はナプキンで口を拭いた。そして私を見た。私もかがみ先輩を見た。
かがみ「たまには……こんな話をしてもいいか……」

372 :七夕 4/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:06:24.06 ID:jN24m8os0
 かがみ先輩は頼んだスィーツが来てから話し始めた。
かがみ「あれは私が中学生の頃だった、好きな人が居た、ただ何となく漠然とだった……だけどすこしずつそれが本気になっていった……」
ゆたか「デートとかですか……?」
かがみ先輩は首を横に振った。
かがみ「まさか、教室で雑談するくらいだった……彼がどんな人だったなんて今でも分らない、俗に言う片思いよ……
    ただ想いだけが積もるだけ……何も出来なかった、ただ時間だけが過ぎていく……そして」
ゆたか「そして……?」
かがみ「卒業式の日、私は決めた、彼に想いを伝えようと……」
私は身を乗り出していた。
ゆたか「告白……ですね……」
かがみ「うんん、出来なかった……」
悲しそうな顔になるかがみ先輩。ふられちゃったのかな。
かがみ「告白……それどころか呼び止める事すら出来なかった……出来なかったのよ、何も……」
ゆたか「出来なかった……」
かがみ「そう……これで私の話はお仕舞い、ふふ、ばかばかしいでしょ……」
笑顔で話すかがみ先輩……でもそれは作り笑顔だって直ぐに分った。
その時、かがみ先輩の目から光る物が一筋……涙?
伝えられなかった想い……

 かがみ先輩はスイーツを食べ始めた。
かがみ「美味しい!! ゆたかちゃん、食べてみて、これおいしわよ……
ゆたか「は、はい……」
食べてみたけどあまり味は感じなかった。
短かったけどとっても感情が入っていて私の心に響いた。

かがみ「ぶぅ〜 食べた食べた、これだけ食べたのは久しぶり……」
食べ終わったかがみ先輩はさっきまでとは打って変わって晴れ晴れとした笑顔だった。
ゆたか「私もです……」
かがみ「なんか話したら胸の奥につっかえていた物が取れたようなきがした、もっと早く話しておけば良かった、実はゆたかちゃんに話したのが初めて、つかさにも話していない」
ゆたか「つかさ先輩にも……」
かがみ「さて、すっきりしたし、出ようか?」
ゆたか「え……は、はい……」
373 :七夕 5/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:07:30.10 ID:jN24m8os0
 店を出るとかがみ先輩は空を見上げた。
かがみ「鬱陶しい天気ね……」
ゆたか「今日はご馳走様でした……すみません奢ってもらえるなんて」
かがみ「いいのよ、つまらない話に付き合ってくれたのだから」
ゆたか「つまらないなんてとんでもないです、その経験がいつかきっと役に立つと思います」
かがみ「……ふふ、そうなれば良いけどね、これからの予定は?」
ゆたか「特に無いです」
かがみ先輩は腕時計を見た。
かがみ「私はこれからつかさと会う約束をしているから帰るわ」
つかさ先輩か……
ゆたか「今度つかさ先輩に会ってさっきの質問をしたらどうなるかな……」
かがみ先輩には聞こえないと思っていたけどしっかり聞いていた。
かがみ「さぁね、私もそんあ質問をしたことないから分らない……」
ゆたか「あ、すみません独り言でした」
それでもかがみ先輩は話し続けた。
かがみ「私も興味あるわ、普通に考えて一人や二人、好きな人が居ても不思議じゃない、あとはどうしたか……」
ゆたか「告白していたりして……」
かがみ先輩はクスっと笑った。
かがみ「そうそう、ゆたかちゃん、貴女はどうなの?」
ゆたか「わ、私ですか!?」
なんだか急に身体が熱くなってきた。自分でも顔が赤くなるのが分るくらいだった。
かがみ「私に喋らせてゆたかちゃんは内緒なんてずるいぞ!」
笑いながら話すかがみ先輩。
かがみ「今度会ったら話してもらうわよ」
私もかがみ先輩と同じだった。何も出来なかった。その一言が出なかった。
再びかがみ先輩は空を見上げた。
かがみ「明日、晴れると良いわね」
ゆたか「そ、そうですね……」

 気付くともう駅の前に着いていた。
かがみ「途中まで一緒に行きましょ?」
ゆたか「あ、私、未だ買い物が終わっていないので……」
かがみ「そう……それじゃまたね」
ゆたか「はい……」
かがみ先輩は駅のホームへ消えて行った。

 本当は買い物なんて無かった。このままかがみ先輩と一緒に帰っても良かった。
だけど出来なかった。
言えなかった。かがみ先輩と同じでした……そのたった一言が言えなかった……
ずるい……笑って言っていたけど私にはとても辛かった……一緒になんか帰れない……
最初にこの話を持ち出したのは私なのに……
頭に冷たい物を感じた。雨が降ってきた。私は走って改札口へ移動した。
そして頬が濡れていた。これは雨じゃない……
かがみ先輩が店で流した涙の本当の意味が分ったような気がした。

私はしとしとと降る雨をぼんやりと眺めていた。
そういえばかがみ先輩はしきりに天気を気にしていたけど、どうしてだろう?
明日は月曜日で平日……なにかあったかな。
ふと周りを見回した。改札口の横に笹飾り……
明日は七夕……だから天気を気にしていたのか。かがみ先輩って伝説とか信じないと思っていたけど……
あれ……七夕……
思い出した。
……七夕はかがみ先輩の誕生日……
お姉ちゃんが買い物に私を誘ったのは……かがみ先輩とつかさ先輩にプレゼントを買うためだった?
そうと分れば私も二人に何か贈ろう。何がいいかな……
そうだ。
折り畳みの傘を差した。そして来た道を戻った。

 アンティーク風のお店。かがみ先輩と会った売り場へ向かった。
手にと取ろうと思っていた物はまだ置いてある。それは髪飾り。
かがみ先輩もつかさ先輩もリボンはもう似合わない。この髪飾りなら二人とも似合いそう。
私は二つの髪飾りを包んでもらった。

明日は私もお姉ちゃんと一緒に二人に会おう。それで今度こそちゃんと話そう。
私は心の中でそう誓った。


374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/06(日) 00:11:38.31 ID:jN24m8os0
以上です。 全部で5レスでした。

かがみとすかさの誕生日ネタです。
これで4作品目かな。同じ名前の作品がありますがこの作品とは何の関係もありません。

ゆたかメインは初めてかもしれない。
かがみとつかさ、どっちを出そうか悩みましたが今回はかがみを選びました。

すぐに纏めるので報告は避難所のみにします。
375 :たな☆ばた [sage]:2014/07/06(日) 06:48:22.31 ID:YwJEPO0Eo
 蒸し暑い初夏の夜。着信メロディが鳴る。
 今となっては、古くさいと言われる曲。自分にとっては、そんなに古いとは思ってはいないけれど。
 この曲を良く聴いていたあの頃と、現在との年月の隔たりを考えると、まあ、やっぱり世間的には古くさいのだろう。

 携帯端末――もう携帯電話などと呼ぶ人もいない――樹脂製の機械の画面をタッチして。
「はい、もしもし」
「あ、もしもし、おねえちゃん?」

 なつかしい、妹の声を私は聞く。

 産まれた頃から一緒だった双子の姉妹。
 進学して。就職して。結婚して。子供たちを産んで。
 幸運ながら、大過なく、姉妹揃ってそういう人並みの幸せを歩んでいる。

 ――おたがい、別々のばしょで。

 進学とか、就職とか、結婚のあいだには、引っ越しなんていうものがあったから。
 住む場所が変わる。遠くの場所へ移り住む。それもまた、よくある話しで。

「ひさしぶり、変わりない?」
「うん、なにもないよ、そっちは?」

 こっちも、なにもないよ。
 ――だったら、それはなにより。元気でいるのなら、なにも言うことはない。
376 :たな☆ばた [sage]:2014/07/06(日) 06:49:19.90 ID:YwJEPO0Eo

 お互いの、他愛のない近況報告。
 子供のころのように、長電話は、もうしなくなった私たち。
 ある程度、話しが区切れたら。
 もう家事や家族のこと、自分の居る家のことに意識が行ってしまう。

 お互い変わりなく元気なら、もうそれでいいと思えるのだから。
 だから、電話で話すことも、そんなに多くはなくなっている。

 今日。この日に、私に電話をかけている彼女の顔を思い浮かべる。

 てるてる坊主をつくったり。
 おひな様を飾ったり。
 月見団子をつくってみたり。
 クリスマスツリーを飾ってみたり。

 私たちの住む場処には、そういうお祭りごとや、おまじないごとをする機会が、一年のあいだにいくつかあって。

 そして今日も、そんな日だから。

 ――7月7日の、蒸し暑い初夏の日に、お互いの声を聞きたくなる。

 天の川の隔たりを越えて、いつか出会うふたりのお伽話というわけではないけれど。
 お互いの距離は離れていても。同じ空に浮かぶ天河を見上げて。

「プレゼント、ちゃんと届いてる?」
「うん、ありがとう。そっちには、届いてる?」
「うん、ちゃんと届いたよ、ありがとう」

 誕生日、おめでとう。
 距離を超えて。これまで生きてきた年月の道のりを噛みしめて。

 私たちは、またひとつ、歳をとってゆく。

 短冊には、ふつうに家族の幸せを願う一文を書いておいたけど。
 
 来年も、再来年も。
 変わりなく、歳をとってゆけますように。

 直接は書かない願い事を、天の川にたくして、私は彼女に語りかけた。

 じゃあ、またね。


 END.
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/06(日) 07:16:01.12 ID:YwJEPO0Eo
さすがにタイトルてきとー過ぎたので
タイトルは「7月7日の、蒸し暑い初夏の日に」
でお願いします
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/06(日) 08:47:04.33 ID:jN24m8os0
>>377

纏めました。

やっと自分以外の作品を見た。
読ませていただきました。

感動かほのぼのか迷いますね。
短編ほのぼのに決めました。
「これじゃ嫌だ」であればご希望のカテゴリーをお知らせください。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/07/13(日) 16:15:00.99 ID:KUTQmI3w0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
5レスくらい使用します。
380 :こなたの旅 27 1/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:17:18.48 ID:KUTQmI3w0
27

 あれから半年以上が過ぎた……
元に戻った。かえでさんは出産が近いので相変わらずつかさが代わりを務めている。
それ以外は普段と全く変わらない生活……
いや変わった……
つかさ「こなちゃん」
仕事が終わり、私が更衣室に入るのを呼び止めた。珍しい。
こなた「ん、今日は早番だよ?」
私のタイムシフトを間違えた。そう思った。
つかさ「知ってる……」
私がそのまま更衣室に入るとつかさも後から直ぐに入ってきた。
こなた「どうしたのさっきから、何か用でもあるの?」
つかさ「う、うん……」
もじもじしてはっきりしない。私は構わず着替え始めた。
つかさ「こなちゃん……かえでさんの事黙っていたの……怒ってる?」
こなた「……ほぇ、もう半年も経つのに何を言ってるの?」
着替えながら聞き返した。
つかさ「最近のこなちゃん……少し変わったから……」
こなた「変わった?」
つかさ「う、うん……いつもの元気がないような気がして、それに何となく……そっけない様な……」
元気がない。そっけない……
こなた「そうかな、私は普段と何も変えていないけど……つかさの気のせいだよ」
つかさ「う、うん……ごめんね、邪魔しちゃって……」
つかさは部屋を出ようとした。
こなた「ちょっと待って」
着替え終わった私はつかさを呼び止めた。
つかさは振り返った。
こなた「もし、かえでさんと井上さん、二人同だったらどっちに薬を渡した?」
つかさ「えぇ??」
つかさは凄く困った顔をした。そして目を上下左右に動かしながら考えている。
つかさの反応はだいたい想像できた。それでもこんな質問をするのだから私ってそうとうSなのかもしれない。
こなた「別に考えなくてもいいじゃん、私なら迷うことなくかえでさんを選ぶよ」
つかさは悲しそうな顔をして俯いた。
こなた「優しいね、つかさは……井上さんは会ったことも話したこともない赤の他人、かえでさんを選んでも誰も文句は言わないよ」
つかさ「で、でも……」
こなた「そうだよ、つかさは内緒にしていた、だから私は神崎さんをみゆきさんの居る所に連れてこられた」
つかさがかえでさんの容態を話していたら私はどんな作戦をしていただろうか……きっともっと冷酷な……
そんな私の思惑とは裏腹に驚いた顔で私を見るつかさだった。
こなた「ほらほら、そう言う事だから私は全然怒っていない」
つかさ「うん……でも、なんだかこなちゃん……変わったよ」
変わったって何が変った?
こなた「それよりかえでさんが出産したら戻ってくるよ、つかさはどうするの?」
つかさ「私のお店に戻りたいけど……ひろしさんがお父さんの後を継ぎたいって……」
こなた「それならもうお店畳んじゃってこのままこの店に残ればいいじゃん?」
つかさ「そうしたいけど……かえでさんが……」
こなた「かえでさんが反対するわけないじゃん、もし反対したら、私も店を辞めちゃうって言うから」
つかさ「そ、そんな事して……大丈夫なの?」
こなた「そしたらつかさと二人で新たに店を出す……」
つかさはまた驚いた顔で私を見た。
こなた「……なんちゃってね、その時になったら考えればいいじゃん?」
つかさ「ふふ……そうだね……」
つかさが笑った。そういえば半年前からつかさが笑ったのをはじめて見たような気がした。
そして私も釣られるように笑った。
つかさ「そうそう、今日お姉ちゃんと会う約束してたでしょ?」
こなた「え???」
つかさ「先週の約束をすっぽかしたから注意するように言われたの」
すっかり忘れていた。
こなた「えへへ……ゲーセン寄ろうとしてたりして」
つかさ「今日は大丈夫だね!」
こなた「それじゃお先に!!」
つかさ「お疲れ様〜」
私は店を後にした。
381 :こなたの旅 27 2/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:20:07.34 ID:KUTQmI3w0
 かがみの法律事務所……
先週もそういえば約束した場所はそこだった。いったいかがみは私に何の用があるのかな。つかさに確認させるほど大事な話なのだろうか。
約束だけして要点を言わないなんてかがみらしくない。
事務所に入るとかがみの事務室に通された。
通されたけどかがみの姿が見えない。椅子に座っても居ないし……
『ドカン!!』
もの凄い勢いでドアが開いた。顔半分が埋まるくらいの大量の書類を抱えてかがみが入ってきた。
かがみ「ちょっと、突っ立ってないで手伝え!!」
私は黙って半分くらいの書類を取った。かがみは自分の机に書類を置き、その上に残りの書類を積み重ねた。
かがみ「ふぅ〜」
かがみは自分の手で肩を揉みながら私をじっと見た。
『バシッ!!』
いきなり私の背中をひっぱ叩いた。
こなた「痛いよ!!」
かがみ「なにしけた顔してる、らしくないわよ!!」
こなた「らしくないって、私がどうしたららしくなるのさ!」
かがみは私を指差した。
かがみ「普段のあんたならそんな口答えしないわよ、動じないで「あ、そう?」なんて聞き流す」
……確かにそうかもしれない。
かがみ「そうね、この前のあんたのした事は元気だま作戦と違って数字では出てこない、人情に訴える作戦、しかも死体とは言え人間を一人傷つける……」
こなた「もうその話は止めて……」
かがみは言うのを止めた。だけど直ぐに話した。
かがみ「神崎さんを連れてきた時の勢いはどうした?」
こなた「……」
私は何も言えなかった。
かがみ「後悔しているのか……そんな感じね……」
こなた「今その作戦をしろって言われても、もう出来ない……」
かがみ「どう言う心境の変化があったか知らないけど、少し安心した」
かがみは笑顔で椅子に座った。そしてさっき持ってきた書類を一枚手に取って見た。
かがみ「あんたは貿易会社の情報をネット経由で暴露した、大手新聞社、雑誌会社、そして神崎あやめの働く出版社……だけどどれ一つとして動いた会社はなかった……そうよね?」
私は小さく頷いた。かがみは更にもう一枚書類を手に取った。
かがみ「動いたのは只一人、井上浩子さん……彼女が各界に働きかけて貿易会社の不正を告発した……そして今や何カ国も巻き込む国際問題にへと発展している……
    あんたの機転が功を奏した、やるじゃない」
こなた「それは……みゆきさんの秘薬が完成していたから、そうでなければ井上さんはそんな事できなかったよ」
かがみ「そうね……」
こなた「はは、これでみゆきさんは億万長者だよ、すごいね」
かがみは書類を置き立ち上がった。
かがみ「それがそうでもない」
こなた「そうでもないってどう言う事?」
私は耳を疑って聞き返した。
かがみ「薬は未完成品で製品として認められなかったそうよ、それでみゆきの研究チームは解散、研究員も解任された」
こなた「う、嘘……なんで?」
かがみ「みゆきが貿易会社に融資をしたのが発覚してね……」
まさか……なんで……理解出来ない。
こなた「……そんなの関係ないじゃん、それに融資したのは告発される前の話だよ……うんん、そんなのあの薬の価値と比べれば屁みないたもんだよ」
かがみ「そうね、屁みたいなもの、だけど世間は、社会はそう見なかったって事よ」
淡々と話すかがみを見て居ても立ってもいられなかった。
こなた「あの薬の効力はかがみが一番知ってるでしょ、かえでさんだって、お腹の赤ちゃんも、井上さんも救ったんだよ……」
かがみ「私の脳腫瘍を完治させた……凄い薬だわ、まさにお稲荷さんの知識と技術には敬服する以外にない」
こなた「……私だ……私がみゆきさんに融資なんかさせたから……」
かがみは首を横に振った。

382 :こなたの旅 27 3/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:21:20.53 ID:KUTQmI3w0
かがみ「いや、こなたのせいじゃない、たまたま都合の良いネタがみゆきにあっただけ、例え融資をしなくても別の理由で同じ結果になっていた」
こなた「何で、どうして?……」
まったく理解ができなかった。
かがみ「早すぎたのよ……」
こなた「早すぎた?」
かがみ「あの薬は数世紀の時間を先取りしたような物、そんな物が出回ったらどうなる、現在流通している薬の7,8割がゴミになってしまう
    製薬業界は大混乱よ、人類にあの薬を受け入れる準備はまだなかった、それだけよ」
こなた「……それだけの理由で?」
かがみ「それだけの理由があれば充分なの、人類が選んだ選択よ」
こなた「私はそんなの選んでない……」
これが無意識の、自分の意思とは関係ない選択ってやつなのか、私達だけのちからじゃ止められない選択……
かがみ「ワールドホテルのけいこさんにしても、貿易会社の経営者にしてもそれを知っていたからお稲荷さんの知識を世に出すのに選別していたのよ、、
    人類が受けいれらるような基本的な知識だけを利用していた、だから同じようなデータになったのよ」
こなた「私には理解出来ないよ……」
かがみはまた椅子に座り書類を見だした。
かがみ「だから私は貿易会社の弁護を引き受ける事にした」
こなた「へ、どうして、あんな会社の弁護を?」
かがみ「こなたが消したデータ以外にまだお稲荷さんのデータを隠し持っている……それを全て消すため、弁護を引き受ければあの会社の情報を全て閲覧できる」
こなた「そんな事して大丈夫なの……」
かがみ「もちろんバレれれば私の弁護士としての生命は絶たれるわね、だからこなたを呼んだのよ、あんたなら分からないように消せるでしょ?」
こなた「出来るけど……どうしてそんな事を」
かがみ「私達姉妹の夫は全員お稲荷さん、夫はもう人間になっている、そして子供達も居る……私達家族を守る為よ……そんな理由じゃ納得できんか?」
こなた「うんん……そうじゃないけど……」
私はポケットからメモリー板を取り出した。かがみはそれを見た。
こなた「それじゃこれも要らないって事?」
かがみ「要らない……出来れば処分して欲しい、と言っても宇宙船の墜落に耐えて更に4万年も地中に埋まって
壊れないような物を処分なんてできない、だけどあんたが持っている分には
    私はなにも言わない、めぐみさんからもらったUSBメモリーも含めてね……」
私はメモリー板を仕舞った。
かがみ「それで、返事は、引き受けるの、引き受けないの?」
こなた「引き受けるよ……かがみが捕まる所なんて見たくないよ……」
かがみ「ありがとう……」
かがみの素直なお礼を見たのは初めてかもしれない。

Bかがみ「ところでこの地球にお稲荷さんは他に居ないのか?」
こなた「うん、メモリー板に反応があるのは神崎さんだけだよ」
かがみ「力を消す装置を使っているお稲荷さんがいたら分らないじゃない?」
こなた「うんん、狐に戻った時はあの装置は意味ないって言ってから、少なくとも現役のお稲荷さんは神崎さんだけだよ」
かがみ「そうなの……ちょっとは期待していたけど、やっぱり真奈美さんは……」
こなた「微かな希望を打ち砕く訳じゃないけど、つかさと神崎さんが握手をした時、神崎さんはつかさのイメージを見たって、特に首の傷が致命的だった」
かがみ「……あの時ね……装置のスイッチを入れるの忘れたって……お稲荷さんでも忘れる事あるのね……」
こなた「それじゃ用が済んだら帰るよ」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「待て、相変わらず薄情だな……少しは付き合え」
こなた「いや、忙しそうだし……」
かがみ「今日の仕事は終わった」
かがみは書類を置いて立ち上がった。
こなた「い、いや、じゃなんでそんな大量の書類を……見る為じゃないの?」
かがみは笑いながら私よりも先に部屋を出た。

383 :こなたの旅 27 4/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:22:31.89 ID:KUTQmI3w0
 かがみに連れられて居酒屋に来た。
居酒屋だけあってレストランかえでとは雰囲気がちがっていた。
かがみ「どうこの店、個室もあって雰囲気でるでしょ?」
こなた「う、うん……それより良いの、ワインもう2杯目だよ、酔い潰れても送ってあげないよ……」
かがみ「酔っている様に見えるか、まだ2杯しかでしょ!!」
いや、もう充分酔っている……
かがみ「そうそう、神崎あやめさんを殺したとされる殺し屋が捕まったわよ、国際手配されていてかなりの大物みたいね……決め手は神崎あやめの携帯電話……」
こなた「神崎さんの仲間も殺されたって言ってた」
かがみ「ふ〜ん」
かがみ目が細くなりにやけた。
こなた「な、なに、急にそんな顔して……気持ち悪いよ……」
かがみ「事務所に来てから神崎さん、神崎さんって、よくその話をするわね」
こなた「そんな話してないよ……」
かがみ「顔が赤くなっているじゃない、白状しなさいよ」
こなた「白状ってなに、お酒が入れば赤くなるよ……」
今日はやけに絡むな……
かがみはおつまみを一口食べた後私に近づいた。
かがみ「あれから何度も会ってるんでしょ?」
こなた「会ってるけど?」
かがみ「何処までいったのよ、」
こなた「何処までって……」
かがみは私の背中を叩いた。
かがみ「なに照れてるのよ、隠すような歳かよ、あんたが神崎さんを気にしているのはバレバレだ」
こなた「……」
そんな風に見えていたのか。だけど言っている事はだいたい合っていた。
かがみ「私は別に構わないと思う、お稲荷さんなら浮気は絶対にしないし」
こなた「いや、無理だよ……」
かがみ「何が無理なのよ!!」
かがみは迫ってきた。
こなた「冷酷であざとい……って」
かがみ「冷酷、あざとい……何よそれ?」
こなた「作戦をする時、神崎さんにそう言われた……好きとか嫌いとか以前の問題だよ……」
かがみは自分の席に戻りワインを飲み干した。
かがみ「あんたギャルゲーとかしている割にまったく分かってないわね、言葉通りの意味じゃないわよ」
言い方がカチンときた。私は立ち上がった。
こなた「もう帰る……」
かがみ「まぁ、待て、分らないなら教えてあげる、神崎さんはあんたの作戦に協力したでしょ……」
こなた「したよ……それがどうかしたの」
かがみは溜め息を付いた。
かがみ「これだけ言ってまだ分らないのか……鈍いわね……とにかく彼はまんざらでも無いって事よ、諦めるな」
こなた「諦める……何を?」
かがみは私をじっと見た。
かがみ「あんたを見ていると昔のつかさ……いや、ひよりを思い出す、まったく同じだ」
こなた「さっきから何言っているのか分らないよ……」
かがみ「だったら考えろ、気付いたら手遅れになるぞ」
こなた「かがみ……酔ってるよ……」
かがみ「うるさい、今日は最後まで付き合ってもらうわよ」
こなた「わかったよ……」
なんか非常にハイテンションのかがみだ。しょうがない今日は付き合うか……

384 :こなたの旅 27 5/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:23:55.14 ID:KUTQmI3w0
 そういえばこうやって飲み会をするのは久しぶりかもしれない。
それもかがみと二人だけなんて学生時代まで遡らないとしていないかもしれない。
職場ではちょくちょくやっている。つかさやあやのは毎日のように会っているから気にもしていなかった。みゆきさんやみさきちにしてみれば一年に数回程度だ。
かがみにしてもつかさに比べれば少ない。時間が合わない。特に社会人になってからはその一言で会わなくなった。ゆたかやひより、みなみに関しても同じだ。
たまにはこんな時間が有ってもいいかな……
かがみ「みゆき……」
酔い潰れたかがみが寝言のように一言。みゆきさんの名を口にした。
もしかしたら薬が認められなかったのを一番悔しくおもっているのはかがみじゃないかな。現代の医学では治せない病気をたった一晩で完治したのを目の当たりにしている。
しかも自分の身体で……
だからこそみゆきさんもあの薬を再現しようと頑張ったのかもしれない。
今度みゆきさんと飲みにいくかな。

こなた「ここでいいよ、止まって」
車はゆっくりと止まった。
運転手「990円です……」
私は1000円を運転手に手渡した。
こなた「おつりはいいから」
私はかがみを肩に抱くとタクシーを降りた。
『ピンポーン』
呼び鈴を鳴らすとすぐに出てきた。
ひとし「泉さん……あ、かがみ、かがみじゃないか……」
私とかがみを見て少し驚いた顔をした。
こなた「よせば良いのに、飲みすぎちゃったみたいで……」
ひとしさんは呆れた顔でかがみを見たがすぐに近づいてかがみを抱き寄せた。
こなた「それじゃこれで……」
ひとし「介抱して疲れたでしょう、少し休んでいけばどうだい?」
こなた「でも、もう遅し迷惑でしょ?」
ひとし「子供達はもう寝てしまった、問題ない」
こなた「それじゃお言葉に甘えまして……」

385 :こなたの旅 27 6/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:24:54.83 ID:KUTQmI3w0
 ひとしさんはかがみを今のソファーにそっと寝かすと毛布をかけてあげた。
ひとし「少しここで休ませる……お茶でいいかな?」
こなた「え、長居する気はないので……」
ひとし「来たばっかりでそれはないだろう」
ひとしさんは台所の方に向かいすぐに戻ってきた。ひとしさんは私にお茶お出すとかがみの方を向いて心配そうな顔になった。
ひとし「普段はこんなにハメを外す事はないんだけどな……」
こなた「まぁ、いろいろあったから……」
ひとしさんは私の方を見た。
ひとし「君の方がいろいろあっただろう、仲間が迷惑をかけたみたいだな、礼を言わないといけない」
仲間って神崎さんの事を言っているのかな。
こなた「うんん、それよりかがみがいろいろやらかそうとしてるけど、良いの?」
ひとし「……貿易会社の弁護の話か?」
私は頷いた。
ひとし「さすがかがみ第一の親友だな、話したのか……私は反対したのだが彼女がどうしてもって言うから根負けしてまったよ……」
こなた「反対したの?」
ひとし「ああ、第一危険すぎる、それに情報を消さなくとも大半の人間は真実とは見ないで自然に消されるもの……」
こなた「それじゃ何で……」
ひとし「それは君だよ、泉さんが行った一連の行動が彼女を動かしたみたいだな、「こなたには負けられない」……そう言っていた」
ひとしさんは再びかがみの方を向いた。
こなた「一つ聞いていいですか?」
ひとし「ん、どうぞ?」
ひとしさんはかがみの方を向いたまま答えた。
こなた「……かがみを何で好きになったの?」
ひとし「聞いていないのか?」
こなた「ひろしに護衛を頼まれて守っているうちに好きになったって……それくらいしか、かがみはそう言う話はあまりしないから……」
ひとしさんは私の方を向いた。
ひとし「そうだな、それで正解、ほぼ全てを話していると言って良い」
こなた「……かがみのどこが気に入ったの?」
ひとし「……急にそう聞かれてもね……」
ひとしさんは困った顔をした。話を変えよう。
こなた「故郷の星に帰りたくなかったの?」
ひとし「故郷か……故郷はこの地球だ、私はここで生まれてここで育った、真に故郷と呼べるのはけいこ、めぐみ、すすむくらいだろう」
こなた「神崎さんは?」
ひとし「……ああ、彼もそう、彼は1万年前、私達の集団から離れた……そう聞いている」
こなた「他に離れた人はいたの?」
ひとし「10名程同じ頃別れた、彼らは東に向かった、恐らくシベリアから北米を経て南米に行ったと思う、そこで知識を先住していた人類に教えたに違いない」
10名も南米に……でもメモリー板には何の反応も無かった。
こなた「で、でも」
ひとし「……そう、彼らはとっくに亡くなったみたいだな……私みたいに人間になったか、争いに巻き込まれたのか、自然災害だったか……今となっては知る事はできない」
こなた「ごめんなさい、変な事聞いちゃって」
ひとし「いや、別に構わない、すべて私の生まれる前の話だ、気にしていない、そう考えると神崎が生き残ったのは奇跡に近い、たった一人で……」
こなた「そうですね……」
かがみ「う〜ん……」
かがみが唸った。
こなた「あ、かがみが起きるとまた騒ぎ出すから帰ります」
ひとし「ふふ、そうだな」
ひとしさんは玄関の外まで見送ってくれた。

呼んだタクシーが目に前に止まった。
こなた「これで失礼します」
ひとし「そうそう、かがみの何処が好きになったって話だけど……理由は無い、ただ好きになった……」
こなた「ただ好きになった……それだけ?」
ひとし「言葉では形容しにくくてね、そう言うしかない……」
タクシーのドアが開いた。もっと聞きたかった。だけど……
こなた「それじゃ……」
私はタクシーに乗り込んだ。

 かがみが言っていた。神崎さんの話ばかりするって……ひとしさんと話したときも結局神崎さんの話しになってしまった。
何でだろう……
私がひよりと同じだって……
結局それもかがみから詳しく聞けなかった。
何だろう。この変な気持ちは……

つづく
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/13(日) 16:26:55.55 ID:KUTQmI3w0
以上です。 全部で6レスでした。

行と文字数の制限が合わなくて使用レス数が合いません

またすぐに纏めるので避難所のみの報告とさせていただきます。
387 :かがみのSS講座 [saga sage]:2014/07/13(日) 22:26:56.50 ID:KUTQmI3w0
つかさ「う〜ん」
かがみ「どうしたのよ、思いつめちゃって……悩み事?」
つかさ「うんん、そうじゃなくって……小説を書こうかなって思って……」
かがみ「凄いじゃない、出来たら読ませてよ」
つかさ「う〜ん、まだ何も出来てなかったりして……」
かがみ「そうなの、でも考えているだけじゃ出来ないわよ、今何をしているのよ?」
つかさ「え、えっと、物語を、ストーリを大雑把に……」
かがみ「そうね、それも良いけど……ストーリを先に考えると詰まっちゃうわよ」
つさか「え、でも物語がないと何も進まない様な気がするけど……」
かがみ「そこそこ、そこが落とし穴なのよ、物語はどうやって進むの?」
つかさ「えっと、えっと、時間が進むから……」
かがみ「違う、物語は人が作るのよ、出会い、別れ、愛、憎悪、友情……etc.」
つかさ「人?」
かがみ「そうそう、だからストーリを作るんじゃ無くて登場人物、つまりキャラから作っちゃうのよ」
つかさ「キャラ?」
かがみ「好きな人、嫌いな人でもなんでも良いの、性格や特徴や背景を決めちゃうの、そうするとそのキャラが自然に物語を作ってくれる」
つかさ「え〜そうかな、難しいよ……」
かがみ「身近な人でも、既にある物語の登場人物でもいいわよ、特に既にある物語のキャラを使ってストーリを書くのをSS(サイドストーリ)
    って言うのよ」
つかさ「SS……」
かがみ「つかさが好きな漫画のキャラを自分の好きなように動かすのよ」
つかさ「えっと……なんとなく分かった」
かがみ「頑張れ、つかさ!」


一週間後

かがみ「出来た?」
つかさ「できた!!」
かがみ「どれどれ……かがみとみゆきが……####♡♡……むぅ……なによこれ、私とみゆき!!?」
つかさ「お姉ちゃんとゆきちゃんをモデルにしたら……こんなになっちゃった」
かがみ「こんなにって……それは百合って言ってね(まてよつかさがそんな事を知っているはず無い、っとなれば……)」
かがみ「私の他にだれか助言を受けた?」
つかさ「うん、こなちゃんとひよりちゃんに……続きが見たいって言うから考えていた所……」
かがみ「……あの二人、余計な事を……」
つかさ「お姉ちゃんの言うように自由に動かすと……」
かがみ「もう良い、やめい!! (あの二人只じゃおかない)」


こなた「うひ」
ひより「どうしました?」
こなた「い、いや、何か背筋がゾクゾクっと寒気が……」
ひより「夏風邪っスか……それよりつかさ先輩にあんな才能があるとは……」
こなた「そうでしょ、そうでしょ、私の目に狂いはないのだよ、あとはこれをひよりんが漫画にすれば……」
ひより「次回のコミケはいただきッス!!」
こなた「うんうん」
ひより「!!っひ!!」
こなた「どうした、やけに顔が青ざめてるね、ひよりんこそ夏風邪じゃない?」
ひより「う、後ろ……後ろ……」
こなた「うしろ?」
……
……
こなた「ひぃ〜か、かがみ、……何か御用でしょうか?」
かがみ「……つかさの書いた物よこしなさい!!」
こなた「あれは、も、持ってないよ……ね、ねぇひよりん?」
ひより「え、ええ、そ、その様な物は……」
かがみ『ギロリ』(ひよりを睨む眼)
ひより「あわわわ、すみませんここに有ります」
こなた「ば、ばか、そんなにあっさり……」
かがみ『ギロリ』(こなたを睨む眼)
こなた「……ごめんなさい……」

おわり
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/13(日) 22:33:25.79 ID:KUTQmI3w0
ここまで纏めた。
389 :つかさのSS講座 [saga sage]:2014/07/24(木) 22:19:03.51 ID:R5VOOiG80
こなた「う〜ん」
つかさ「どうしたの、何か考え事?」
こなた「つかさか……いや、かがみがもうつかさにSSは書かせないって言うから自分で作ろうとおもったんだけど……」
つかさ「手伝えなくてごめんね、お姉ちゃんあんなに怒ったの初めて見た……」
こなた「キャラを最初に作るなんて言ってたけどさ、自由すぎてどう動かしていいのか分らないよ……」
つかさ「それはお姉ちゃんのアドバイスだけど……私はとっても参考になったよ」
こなた「キャラを自然になんか動かないよ……」
つかさ「ストーリを考えないと続かないと思うよ」
こなた「起承転結って言うやつでしょ……よけいに難しくなる……」
つかさ「難しくかんがえるから難しくなっちゃう、もっと簡単に、起承転結って四コマ漫画だよ」
こなた「四コマって……」
つかさ「どんな長い物語も作り方は四コマ漫画と同じ」
こなた「う〜ん、難しいよ、始まりをどうする、話を続けてどんでん返し……そしてラスト……」
つかさ「いっぺんに作ろうとするから混乱しちゃう、私の場合はね物語の最後の場面を思い浮かべるの……そうするとね、
    物語が自然と浮かんでくる、山の頂上を見ればあとは登るだけ、それにね物語がどんなに脱線しても最後が分ってるから
    ゴールに向かって行ける……道がゴールに向かっているからて迷子にならないんだよ」
こなた「起承転結の桔から考える……のか」
つかさ「私の場合だから参考にならないかな……たまに最後のつもりが作っていくうちにその先が思い付いたりするから……あまり良い方法じゃな
    いかも」
こなた「まぁ……やってみるよ」
つかさ「がんばって、こなちゃん!!」

ひより「最後を最初に考える????とんちみたいッス……」
こなた「うん、つかさがそう言ってた」
ひより「……もうこの漫画途中まで作ってしまいました……」
こなた「だからラストを考えるのだよ……ひよりはもう考えているよね?」
ひより「私は……ストーリはあまり意識しないッス、それに順序だてて作らないと分からなくなってしまいます」
こなた「だから詰まっちゃんだよ!!」
ひより「……先輩がこの出出し凄く良いって言うからこのネタに決めたじゃないっすか!!」
こなた「う〜ん……最初からやり直す?」
ひより「やり直すって、ネタはどこから持ってくるっスか?」
こなた「ひよりんは漫研の現役じゃん、そんなのいくらでもあるんじゃないの?」
ひより「い、いや、湯水のようには……」
こなた・ひより「……」
ひより「つかさ先輩に頼めませんか?」
こなた「かがみの目を盗むなんて出来っこない……」
こなた・ひより「どうしよう?」

390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/24(木) 22:20:09.96 ID:R5VOOiG80
以上です。

かがみとつかさのSS講座、どちらも実際に自分がSSを作る際の考え方をまとめたものです。
もちろんどちらも我流なので邪道です。
でも、この方法が何かのヒントになればと思い投下してみました。
もし、これで何かいいSSを思いついたらぜひ投下して下さい。

このあと直ぐに纏めます。
391 :こなたのSS講座 [saga sage]:2014/07/27(日) 12:42:32.39 ID:RVbFgh740
こなた「やっふ〜かがみん」
いつもの笑顔で挨拶するこなた。こなたは徐に私の前に一冊の薄い本を差し出した。
かがみ「何よ、いきなりそんな物持ってきて」
内容は大体分っている。どうせ百合やら薔薇の内容に決まっている。
こなた「これを今度にコミケに出そうと思うんだけど読んでみて」
かがみ「なんで私が読まないといけないのよ」
こなた「この前つかさに書かせたのを否定されちゃったからね、これなら納得できるかなって思って……」
かがみ「納得しなかったらどうするのよ」
こなた「今回のコミケは参加しない」
何時になく真剣に語るこなた。しかも参加しないと言い切るにはそれなりの自信があるに違いない。
かがみ「内容が同じでキャラだけ変えても直ぐに分るわよ」
警告のつもりだった。だけどこなたは臆することなく私の顔の前に本を差し出した。わたしはその本を受け取った。
こなた「私が下地を作ってひよりんが漫画にしたものだよ」

 私はページを捲った。
田村さんの書いた絵が特徴を捉えている。主人公はこなた自身の様だ。
こなた「かがみがつかさにアドバイスしたのと、つかさが私に助言してくれたのを参考にして最初から作り直したんだよ」
私はこなたが話しているのを尻目にページを捲り続けた。
こなた「でもね、気付いたんだ、やっぱりなんだかんだ言っても結局読み手がどう感じるかが問題だってね、だから
    一部のコアな読み手じゃなくてもっと色んな人に見てもらいたいって、そう思いながら考えて作った
    面白いものを読んでもらいってね……」
漫画で薄い本、読むのにさほど時間はかからない。本を閉じてこなたに差し出した。
こなた「ど、どう……?」
心配そうに私の顔を覗き込むこなた。
かがみ「売れるかどうかは分らないけどコミケに出しても良いわよ……」
こなた「本当!?」
驚いた顔で念を押すこなた。
かがみ「こんなんで嘘をついてどうする」
こなた「やったー!!!」
本を受け取ると大喜びで何度も飛び跳ねた。こんなこなたを見るのは初めてだ。
こなたは私に背を向けると扉に方に向かって叫んだ。
こなた「ひよりん、やった、やったよ」
ひより「やったー」
田村さんがドアから飛び出してきた。そして二人は両手を上げてハイタッチをした。
ひより「ありがとうございます」
田村さんは深深と頭を下げた。
二人は喜びながら部屋を出た。

 本の内容は至って単純。幼い頃母を亡くした少女の想いが綴られている……ただそれだけの内容だった。
だけど涙を堪えるのが辛かった。
こなた自身の体験だったのだろうか。半分作ったとしてもそれは想像できる。
母が健在な私では作り得ない作品だった。
今頃になって涙が頬を伝っていく。慌てて涙を拭った。
田村さんの画力のせい……
私のアドバイスのせい……
つかさの助言のせい……
違う。
本を読んでいる時、こなたが言ったのを思い出した。
面白いものを読んでもらいたい……

 私もそんな物を作ってみたくなった。絵には自信はないけど、文章なら……
私はペンを手に取りノートを開いた。
そして考えた。
面白いものを読んでもらいたい。

終わり。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/27(日) 12:43:38.45 ID:RVbFgh740
中途半端だったのしめてみました。完結です。

この後すぐに纏めます。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/05(火) 18:48:04.32 ID:ie1qi3xSO
うおお…まだスレ生きてる…
394 :近況 [saga sage]:2014/08/05(火) 20:46:41.95 ID:Yim42x6Y0
>>393
生きていると言ってもほぼ独りでやっています。
作品がすっかり投下されなくなりました。

読んでいる人がいるかどうかも分りません(書き込みがないので)
しかしまとめサイトを見る限りゼロではなさそう。

コンクールは出来ない状態。

近況はこのくらいです。

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/08/11(月) 12:25:47.38 ID:IxmzLI8u0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します
5レスくらい使用します。
396 :こなたの旅 28 1/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:27:20.04 ID:IxmzLI8u0
28

こなた「ふぁ〜」
大きな欠伸……これで何回目だろう。
 今日は休日。
暇と言えば暇だ。
今日のかがみの依頼は休み。それでもって裁判の準備で忙しいそうだ。
あんな会社の弁護なんて適当でいいじゃん。そう言ったら、決まったからには全力で弁護するなんて言うし。
仮に無罪になったらどうするって聞いた。そうしたら
かがみは無罪にはならないって言う。それじゃ全力で弁護と矛盾するじゃん。
かがみ曰く、弁護士は無罪にするのが仕事じゃない。適正な罰をうけさせるのが仕事だって。貿易会社はもう既に社会的制裁を受けているから弁護する必要があるって……
確かにもう企業としての貿易会社は潰れたも同然だけど……
難しくて分らないや。
あやめさんの友人、井上さんと争う形なってしまった。本来なら私達は井上さんを支持する立場だけど……複雑だよね。
 
あやのやつかさは出勤日、遊びに行けない……
なんで今日に限って休みが合わないのかな……
テレビもこの時間帯に面白いのは放送していない。
何もする事がない。こんな時は溜まった留守録のアニメを観るけど、そんな気にはなれない。
オンゲー・オフゲーもする気になれない。ベッドに寝てボーと天井を見ている。
そういえば本棚に未だ読んでいない漫画がたまっているのを思い出した……何故か読む気になれない。
 かがみと会ってから一週間、それなり私は考えた。
考えた。何を。かがみは面白半分に私をからかっているだけ。そうだよ。
でも……あの時のかがみはからかっている様には見えなかった。
私がひよりと同じだって。何処が、どうゆう風に?
そういえばひよりはあれから会っていない。会えばそことなく聞けもするけど……あまり聞きたくないかな……
それでもかがみ言いたい事は分かった。私が神崎さんを好きだって。そう言っているのは分る。
私が……神崎さんを、お稲荷さんを好きだって?
ばかみたい。
仮に私が好きだとしても……
『ピンポーン』
呼び鈴の音がした。品物が届いたかな、、いや、最近ネットショップで何も買っていない。回覧板か何かな……
私は徐に身体起こした。
『ピンポーン』
こなた「はいはい今行きますよ」
独り言をいいながら玄関に向かった。
397 :こなたの旅 28 2/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:30:15.85 ID:IxmzLI8u0
 ドアを開けるとそこには……
ゆたか「こんにちは〜」
ゆたか「ゆーちゃん!!」
思わず昔の呼び名で呼んでしまった。
ゆたか「遊びにきたよ、いきなりで迷惑だったかな、急に時間が空いたから……」
こなた「うんん、そんな事ないよ、入って入って!!」
私は居間にゆたかを通した。
こなた「それにしても久しぶりだね」
ゆたか「うん、お姉ちゃんにお弁当を渡してから会っていないね」
こなた「あっ、そうそう、お弁当箱返さなきゃ!!」
ゆたか「うんん、あれは元々お姉ちゃんのもだから、私が卒業して此処を出る時間違えて持って行っちゃった」
立ち上がったけどゆたかがそう言うので直ぐに座った。
こなた「それにしても急だね、もう映画化の仕事は終わったの?」
ゆたか「うん、もう9割りくらい終わったから、昨日打ち上げして休暇をもらったの」
こなた「そなの、それならひよりも一緒に来ればよかったのに」
ゆたか「うんん、ひよりだけは今日も仕事、明日休みだって」
こなた「そうなんだ……」
ゆたかは辺りを見回した。
ゆたか「おじさんは?」
こなた「お父さん……お父さんは正子さんとお買い物に行ったよ」
ゆたか「正子さんと……」
こなた「ついでに映画も観るとか言ってたかな……」
ゆたかはにっこり微笑んだ。
ゆたか「ねぇ、これってデートじゃない?」
こなた「デートって、デート?」
ゆたかは何度も頷いた。
こなた「まさか、あの歳で?」
ゆたか「うんん、年齢なんか関係ないよ」
こなた「それはそうかもしれないけど……有り得ない……」
ゆたか「そうかな、そうでも無い様な、ゆいお姉ちゃんが言っていたけど、正子さんは不思議と懐かしい感じがするって……かなたおばさんに似ているって」
ゆい姉さんがそんな事言っていた?
確かにゆい姉さんは生前のお母さんに会っている。
こなた「でも、ゆい姉さんだって幼かったでしょ、そんなの覚えているかな?」
ゆたか「う〜ん、でもそう言ってたし、おじさんとそんな話しなかったの?」
こなた「そんな話なんかしない」
ゆたかはまた笑顔で話した。
ゆたか「でもこのまま仲が良ければ結婚だって、お姉ちゃん、新しいお母さんができるかも?」
私は笑った。
こなた「お父さんが正子さんと、あははは、まさか……それに今更お母さんなんて言われてもね……」
ゆたか「嬉しくないの?」
こなた「別に……」
嬉しいとか嬉しくないとか……でも、正子さんなら……なんて思ってみたりもする。
ゆたか「正子さんは何時まで此処に?」
こなた「新しい家も完成したし、来週には引っ越すかな……」
ゆたか「今まで一緒に暮らしているのに分らなかったの?」
こなた「……そこまで気にする余裕がなかったから」
ゆたかの顔が曇った。
ゆたか「ひよりから全部聞いたよ……いろいろあったって……」
こなた「そうだよ、いろいろあった……って、ひよりから聞いたの?」
ゆたか「うん」
話したのか。っと言ってもゆたかは知っても構わない。
ゆたか「みゆき先輩の話は……残念だったね」
ゆたかも知っていた。いや、これは結構大きく報道されたから普通なら気付くだろう。
こなた「お稲荷さんの知識を世に出すのが早すぎた、そうかがみが言ってた」
ゆたか「たかしさんがつかさ先輩のやさしさに最大限の礼を尽くしたのがあの薬、そうだとしたらあの薬は
お稲荷さんの知識の中でも特に高いものだったんだね」
こなた「それなら自分の物にしちゃえば良いのに、馬鹿だよ……」
ゆたかは呆れた私を諭すように放し始めた。
ゆたか「私も以前に調べた事があってね、お姉ちゃんは世界四大文明って知っている?」
こなた「そのくらいは、黄河、メソポタミア、インダス、エジプト……」
ゆたか「うん、それに中南米に栄えた文明……これも全部お稲荷さんが教えた知識が元になってる」
お稲荷さんは4万年前に地球に来た、それを考えれば想像できる。調べるまでも無い。
ゆたか「例えば……ピラミッドの建造方法は現代でも大きな謎の一つになってる、何千年も崩れない石の積み方は現代でもかなり難しい技術だって
    それを三つも造っているのに後世にその技術が伝わっていない……それに中米のマヤ文明に至っては高度な文字や天文学、
建築技術もあったのに全部放放棄したかのようにみんな忘れてしまった、それと同じ事がみゆき先輩にも起きた、私はそう考える」
こなた「……なんでそんなに沢山教えたのかな?」
ゆたか「メモリー板が見つからなかったから、人間に故郷までの通信をしてもらおうと思ったって言ってた……だけど、それも諦めたって」
こなた「誰がそんな話を?」
ゆたか「かがみ先輩とひとしさん」
こなた「ふ〜ん、でもゆたかに話して漫画のネタにされたらまずいんじゃないの?」
ゆたかは首を横に振った。
ゆたか「真実を知らない大多数のひとは只のネタだと思うから、だから私やひよりに話したと思う……逆に私達がネタにするから神話化される」
こなた「なんとなく分ったような気がした……」
昔話や神話をまさか本当だとは誰も思わないか……
ゆたか「かがみ先輩、お姉ちゃんの事すごく褒めてた、だから貿易会社の弁護を引き受けられたって」
かがみはそんな事までゆたかに話したのか。
こなた「私の作戦が中途半端だった、かがみがその穴埋めみたいな事をしている……」
ゆたか「だからお姉ちゃんも手伝ってるわけだね」
こなた「まぁね……」
398 :こなたの旅 28 3/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:31:37.97 ID:IxmzLI8u0
 ゆたかが急に私を見て微笑んだ。
こなた「な、何……急に……」
ゆたか「ひとしさんに何故かがみ先輩を好きになったって質問したって?」
こなた「え?」
なんでゆたかがそんな話を知っている。ひとしさんが話した?
……違う、かがみだ。まさかあの時起きていた?
こなた「かがみから聞いたの?」
ゆたか「うん」
ゆたかは大きく頷いた。
かがみめ余計な事を……かがみはつかさよりお喋りなのか?
そういえばつかさとひろしの時もかがみはよく私にあれこれ話していたっけ……
かがみの場合は親しい人には表裏を見せない。それは恋愛にしても同じって訳か……
ゆたか「お姉ちゃん!!」
ゆたかの顔が真面目になった。私は返事を忘れてゆたかを見た。
ゆたか「神崎さんとよく会ってるって?」
こなた「……会ってる」
ゆたか「会って何をしてるの?」
こなた「……何をって……メモリー板の使い方を教えてもらってる……すすむさんが教えてくれないから……」
ゆたか「それはね、彼の立場を勘得ると、未婚の女性と何度も会えないから、いのりさんに気を使っているの」
そうだったのか。全く気にもしていなかった……
ゆたか「それでその後はどうしてるの?」
まるで尋問をうけているようだ……
こなた「どうしてるって……お腹が空くから食事したり、買い物したり……」
ゆたか「おじさんと正子さんと同じだよ、それってデートって言うの」
こなた「だから……そんなんじゃないよ……」
ゆたか「お姉ちゃん!!!」
さっきよりも私を呼ぶ声が力強くなった。
こなた「な、何……」
ゆたか「お姉ちゃんは神崎さんをどう思っているの?」
どう思っている?
ゆたか「べ、別に……」
ゆたか「好きなの、嫌いなの?」
好きか嫌いか……そう言われれば答えは決まっている。
ゆたか「お姉ちゃんが神崎さんをなんとも思っていなければ話しはこれで終わり、だけどお姉ちゃんのその表情はそうじゃないって言っている」
こなた「ふふ、どっちでもいいじゃん……もう関係ないし」
ゆたか「関係ない……関係ないってどういう意味?」
こなた「私がどっちでも意味ないって事だよ」
ゆたか「だからそれじゃ分らない!!」
いつもの笑顔のゆたかじゃない。なんでそんなに構ってくるかな。
こなた「神崎さんは私の他に好きな人が居るって意味だよ」
これは言いたくなかった。ゆたかがあまりにしつこいから勢いで言ってしまった。
ゆたか「他に好きな人……それは誰なの?」
こなた「……神崎さんは井上さんが好きなんだよ」
ゆたか「井上さんって、井上浩子さん?」
こなた「そうだよ、だから、もう良いでしょ、もうこの話は終わり!!」
私は立ち上がり自分の部屋に行こうとした。しかしゆたかも立ち上がり私の前に回りこんで立ちはだかった。
こなた「どいてよ……」
ゆたか「それは直接本人から聞いたの?」
こなた「だから……どいて……」
私はゆたかを睨みつけた。ゆたかはどこうとはしなかった。
こなた「……聞かなくても分るよ、神崎さんは井上さんを助けようと必死になってたからね……」
ゆたか「本人に聞いてもいないのに決め付けるなんて、それじゃダメだよ」
こなた「聞く……聞くって神崎さんに井上さんが好きなのなんて聞けるわけないじゃん」
ゆたかは激しく首を横に振った。
ゆたか「ちがう、ちがう、そうじゃなくて、お姉ちゃんの気持ちを話すの」
こなた「私の……気持ち?」
ゆたかは頷いた。
ゆたか「相手がどう思っているなんて関係ない、まず自分の気持ちを言わなきゃ何も始まらないよ」
……ゆたかってこんなに積極的だったかな?
こなた「……話すって……そんなの言えないよ……」
ゆたか「……それは分る、すっごく分る……だから敢えて言うの、そうじゃないと手遅れになる、ひよりの様に……」
かがみも同じような事を言っていた。
こなた「ひよりがどうしたのさ?」
ゆたか「ひよりはまなぶさんが好きだった、だけどその気持ちを話すのが遅れて結果的にまつりさんに先を越された」
かがみが言いたかったのはその事なのかな……
こなた「だけど井上さんと私じゃ……比べたら私の方が……悪いに決まって……」
ゆたか「それを決めるのは神崎さんでしょ、お姉ちゃんじゃない、言うのは簡単だよ、言えないなら握手でもすれば嫌でも相手に伝わる、
    だってお稲荷さんだもんね、それともメモリー板を使う?、それってお稲荷さんの力を超えられるって聞いたよ」
こなた「もういいよ、ゆうちゃん……言いたい事は分かったから……」
ゆたか「本当?」
こなた「うんうん」
ここは嘘でも言っておこう。そうじゃないと永遠に説教されそうだ。
ゆたかは体を移動させて通りを空けてくれた。これで自分の部屋にいけるけどゆたかもこれ以上追求しそうにないので
戻って居間の椅子に座った。ゆたかも私の後に付いてきた。
そして椅子に座った。その時だった。左手の薬指に光る物を見つけた。
399 :こなたの旅 28 4/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:32:52.15 ID:IxmzLI8u0
こなた「それは?」
ゆたかは私の視線を追って自分の左手を見た。
ゆたか「これ?」
ゆたかはにっこり笑い左手の甲を私に見せた。薬指に指輪がはまっている。
こなた「それってもしかして……」
ゆたかは頷いた。
ゆたか「婚約指輪……」
こなた「やったじゃん、マネージャさんとか言ってた人?、……あれ、他の人は?」
ゆたか「両親やゆいお姉ちゃん、おじさんにも言っていない、身内ではおねえちゃんが最初だよ」
こなた「結婚式には必ず行くから」
ゆたか「式は当分お預け……かな、でも籍は入れるつもり……」
こなた「おめでとう……」
ゆたか「ありがとう」
こなた「ひよりより先立ったね」
ゆたか「うんん、ひよりの方が先だったりして……」
私は驚いて席を立った。
こなた「本当に?」
ゆたか「今日仕事って言うのは嘘で本当は結婚届を出しに行って……あっ!! これは内緒だよ」
ゆたかは慌てて口に人差し指を差し出してポーズを取った。
こなた「分ってるって、何れバレるだろうけど、それまで黙ってるよ」
ゆたか「ありがとう」
こなた「それにしてもダブルなんて……学生時代からは想像もつかない……」
ゆたか「そうかな……確かに最初はひよりは私とみなみの出会いから親友になるまでの過程を漫画のネタにしようと……
    うんん、実際にネタにしていた、ひよりはそういった想像力は凄いと思う、だけど一つ一つが断片的だから私が
    それを繋げて一つの物語にする、だから私達は二人で一人分の仕事をしている……半人前かも……」
こなた「いやいや、それで映画化できるほどの作品ができるのだから一人前だよ」
ゆたか「これもお稲荷さんのお陰だよ」
こなた「お陰って……唐突に……」
ゆたか「お稲荷さんの存在が私達の想像力を膨らませたのは確かだから……」
こなた「それならつかさがその最初の切欠を作ったようなもんだよ」
ゆたかは遠目になって上を向いた。
ゆたか「もし、宇宙船が事故を起こさなかったらお稲荷さんは4万年も地球に居なかった、きっと調べ終わったら帰ったよね?」
こなた「そうだろうね、元々のお稲荷さんの体は地球に合わなかったみたいだし……」
ゆたか「そう考えると私達とお稲荷さんが出会うって凄いことだよ、無数にある星の中から地球を見つけただけでも奇跡だよ、
それに宇宙の歴史を一年にすると人間の歴史なんて数秒にもならないって言うでしょ、その数秒の中で他の星の人間と出会えるなんて……」
こなた「まぁ、そうだね」
ゆたか「だからお姉ちゃんもその出会いを大事にね」
こなた「まぁ……そうする……」
なんだかゆたかに言い包まれた感じがしてならない。
それでも嫌な気はしなかった。

ゆたか「おじさん……遅いね……」
確かに遅い。もうとっくに帰ってきても言い時間だった。
ゆたか「せっかく報告しようかと思ったのに……」
左手の指輪を見ながら呟くゆたか……
こなた「いや、お父さんより両親が先じゃない?」
ゆたか「そうかもしれないけど、高校三年間も居させてもらっているから……」
ゆたかは立ち上がり帰り支度を始めた。
ゆたか「叔父さんを元気付けようと思ったけど、それも必要ないみたいだし、むしろそれが必要なのはお姉ちゃん……かな」
こなた「それは余計なお世話だよ」
ゆたかは笑いながら玄関に歩いて言った。
ゆたか「そうそう、さっきお姉ちゃんが言った事、あれは少し違うと思うよ」
こなた「さっき言った事、何?」
ゆたか「神崎さんが井上さんを好きだったって言ったでしょ」
こなた「そうだけど……」
ゆたか「神崎さんは約束を守るために井上さんを助けようとした、私はそう思う」
こなた「約束……誰と?」
ゆたかは溜め息を付いた。
ゆたか「だから……うんん確証はないから言えない、お姉ちゃん自身が確かめて……それに諦めたらおわりだから」
こなた「う、うん……」
ゆたか「それじゃ、おやすみなさい」
こなた「おやすみ……」
ゆたかは玄関を出た。
ゆたかは何を言いたかったのだろう。
私は首を傾げた。
400 :こなたの旅 28 5/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:34:09.37 ID:IxmzLI8u0
 もう日が替わる時間だ……お父さん遅いな。
正子さんがこの家に来る事になって直ぐだったかな。世間体が悪いって事で結局正子さんは近所のアパートを借りて住む事になった。
でも直ぐにお父さんとよく会うようになった。
ちょくちょく家に来て掃除とかお父さんの世話をやくようになった。
ゆい姉さんもよく遊びに来るからそんな二人の姿を見てお母さんに似ているなんて思ったに違いない。
私の休日は仕事の時が多いし時間も不定期……
そういえば二人が会っている所を見たことがない。いったいどんな話をしていたのだろう。
まさか本当に二人は……
その時、玄関に人の気配がした。
そうじろう「ただいま」
帰ってきた。私は自分の部屋に忍び足で向かった。
そうじろう「こなた〜」
私を呼んでいる。私はパソコンのスイッチを入れ、ヘッドホンを付けた。
暫くするとドアをノックする音が聞こえた。私は気付かない振りをした。
ドアを開ける気配がした。私はそこで初めて気付いた振りをする。
こなた「あ、お父さんお帰り……」
わざとらしくヘッドホンを外した。でもお父さんはそれに気付かない。そればかりか何か思い詰めた顔をしている。
そうじろう「こなた、折り入って話がある……」
こなた「どうしたの、改まちゃって?」
まさか……ゆたかの言う通りに……?
私は座ったままお父さんの顔を見上げた。
そうじろう「こなたももう大人だ、私の言う事は理解できると思う……後は許してくれるかどうかが……」
こなた「前置きは良いから何なの?、こっちはゲームの真っ最中だから……」
ゲームなんかしてもいないのに白々しい……
そうじろう「そ、そうか、そうだな……」
それでもお父さんは激しく動揺していた。これはマジな話に違いない。そう確信した。
そうじろう「お父さんは……」
お父さんは緊張している。こんなお父さんを見たのは初めてだ。
自然に私も体全身に力が入ってきた。手に持っているヘッドホンを強く握っているのが自分で分った。
そうじろう「お父さんは、正子さん……神崎正子さんににプロポーズをした……」
何とななくそれは分っていた。だけど改めてそう聞かれると、どう対応していいのか分らない。
なんて言ったら良いのか……


つづく
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/08/11(月) 12:35:07.16 ID:IxmzLI8u0
以上です。

この後直ぐに纏めます。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/16(土) 18:36:42.54 ID:60EY4dCO0
面白い
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/08/17(日) 16:37:23.40 ID:0xsBuS3H0
>>402
これは「こなたの旅」の事を言っているのか。
それともこのサイト全体(まとめサイト?)の事を言っているのか。
どちらにしても嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/03(水) 01:16:15.65 ID:PrxMTcjf0
保守
405 :まだ書いてない [saga sage]:2014/09/11(木) 21:23:40.50 ID:RqFM4vEx0
「こなたの旅」の作者です。
本来ならつづきを出したいところですが
忙しくてなかなか書けません。
もし待っている人がいるなら、少し時間をください。

保守兼、お知らせでした。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/24(水) 20:54:45.97 ID:czL8chPy0
まだ?
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/25(木) 21:27:27.32 ID:ttpyUtgT0
まだです
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/27(土) 17:38:11.18 ID:t1XiuLFM0
>>405
やっと書き始めました。
もう少し時間がかかりそうです。
確約はできませんが近々投下できそう

初めて催促のコメが入った。
読んでくれている人が居て嬉しいです。
最初の「つかさの一人旅」が反応薄かったので
その続きともなるとほぼ読まれないと覚悟はしていました。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/10/01(水) 00:00:01.72 ID:62i2Kr2B0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
今回は4レスくらい使用します。
410 :こなたの旅 29 1/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:02:32.59 ID:QttFb6XO0
29

 お父さんは何て言った?
ヘッドホンが壊れるくらいの力が入っていた。私はヘッドホンを机の上に置いた。
こなた「ふふ、お父さん……エープリルフールはもうとっくに過ぎたよ……そういえばずいぶん前にも似た様な嘘を……」
そうじろう「嘘じゃない……これは本当の話……」
私の話に割り込むように話してきた。
……嘘じゃない……
お父さんの顔は真剣そのものだった。
こなた「そ、それで相手は……?」
そうじろう「受けてくれなければこなたに話さない」
なんだろうこの気持ちは……
私は立ち上がると部屋を出た。
そうじろう「何処へいく……まだ話は終わっていない……」
私は制止を無視して歩いた。お父さんが後から付いてくるのが分る。
そして……お母さんの位牌の前で立ち止まった。
そうじろう「こなた……」
お父さんもすぐ後ろで止まった。
若い頃……生前のお母さんの写真……にっこり微笑んでいる。
こなた「……正子さんってお母さんに似ている……そうゆい姉さんが言ってたみたいだね……」
私はお母さんの写真を見ながら話した。
もちろん容姿はぜんぜん似ていない。似ているのは内面的な事を言っているに違いない。
そうじろう「……それを何処で?」
こなた「つい一時間くらい前までゆたかが遊びに来ていたから……」
そうじろう「そ、そうか、ゆーちゃんから聞いたのか……」
おとうさんは私の前に移動すると座り位牌に手を合わせた。
そうじろう「こなたが神崎さんの母親を連れてきた来た時正直驚いた……知るはずも無いかなたの面影を感じて俺に合わせたのかと思った」
こなた「そんなの知らない……家を焼かれてしまったから呼んだだけ、私の友達の母親だから」
そうじろう「知らなかったのか……これも何かの縁なのかもしれない……」
こなた「もしかしてお母さんの代わりで?」
お父さんは振り返って私を見た。
そうじろう「違う、違うぞこなた、それは断じてない、かなたの代わりではない、神崎正子、一人の女性として愛しているから……決して代わりではない」
愛している……か、例え娘にでもそんなに簡単にはっきり言えるなんて……
そうじろう「お母さんを……かなたを裏切ったと言いたいのか?」
裏切り……お母さんはどう思っているのだろう……亡くなっているから聞けるはず無いもない。
それなら正子さんの亡くなった旦那さんはどうなの……?
あやめさんならどうした?
皆聞けない。
そうじろう「……こなた、これは浮気でも裏切りでもない、分って欲しい」
聞けないなら生きている人で決めるしかない。
私はどう思う……
お父さんのあの真剣な態度、正子さんは受けたって言っていた。
そうじろう「こなた……」
お父さんは涙目になっているた。
こなた「……正子さんは?」
そうじろう「アパートに送って来た」
そうなのか……お父さんは私が許すかどうか試しているのか……
私の意見なんてどうでも良いのに……
こなた「正子さんが受け入れたのならもう私の出る幕はないよ、早く家に連れてきて一緒に住んだら?」
そうじろう「い、いや……あやめさんの喪が明けてから……それに妹のゆきにも相談した、やはり娘の意見も聞かないとな……」
あやめさんは本当は5年前に亡くなっている。喪がどうのこうのは当てはまらない。
って言う事は……正子さんはお稲荷さんの話をしていないのか……
今まで娘の私が話をしていないくらいだから話せないかもしれない。
そうじろう「こなた?」
お父さんは驚いた顔をした。
でも……今はその時じゃないみたい。
こなた「ん?」
そうじろう「も、もしかして、私達を許してくれるのか?」
こなた「さっきそう言わなかった?」
お父さんは私の右手を両手で握った。
そうじろう「ありがとう、ありがとう……」
ありがとう、おとうさんは何度もそう言った。
こんなに動揺したお父さんを見るのは初めてだ。
こなた「お父さんと正子さんが結婚したら……あやめさんとは姉妹ってことになるね……」
そうじろう「……歳は同だったな……誕生日は5月1日だそうだ、彼女はこなたの姉になる……本当に残念だった、
      お父さんの所に取材に来たのは代理だったが、とても楽しい子だった……」
そう、本当は井上さんが取材に来る筈だった。急病であやめさんが代わりを引き受けた。それはまなみちゃんの演奏会の時も……
こなた「それじゃ正子さんに挨拶しに行かないと……」
そうじろう「い、いや、それはもう少しまってくれ……」
こなた「どうして、私が許したならもう何も阻む者は居ないよ?」
そうじろう「時間を見ろ、もう遅い」
こなた「それじゃ明日だね、私は早番だから夕方には帰れる、どうせ家に呼ぶんでしょ?」
そうじろう「そ、そうだが……」
こなた「それじゃ決まりだね……それにしてもどうやって正子さんを落としたの、口説いたとか?」
そうじろう「こ、こら、人聞きの悪いこと言うな、別に口説いてなんかいない、ただ自然に……」
お父さんの顔が赤くなっている……これはいじり甲斐があるってもんだ。
こなた「確かに……確かにゆいの言うとおりかなたの面影があった……しかしそれだけではプロポーズなんかしない……」
411 :こなたの旅 29 2/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:04:03.05 ID:QttFb6XO0
 その後、おとうさんは正子さんと出会った時からプロポーズするまでの話をし始めた。
他人にまったく躊躇することなく、それも嬉しそうに話している。
そう、まるでお母さんの話を私に聞かせているいる時のお父さんとまったく同じだった。
それに引き換え私は……
つかさやかがみだって、いや、私以外の皆もそうやっていた。
お父さんを見ていてなんだか勇気が沸いてきた。
そうさ、簡単だ。選んでボタンを押すだけ。いつも私がゲームでやってきたじゃないか。
そうじろう「こ、こなた」
突然微笑んだ私にお父さんは話を止めた。
こなた「うん?」
そうじろう「あやめさんの件については本当に残念という他はない、だがこなた……彼女はそうとう危険な取材もしていたそうじゃないか、
      いままでよくこなたが巻き込まれなかったのが不思議なくらいだ」
いや、思いっきり巻き込まれている。二回の潜入取材、メモリー板、いのりさんの参加、みゆきさんの薬、かがみの弁護……
私の周辺も巻き込んで大騒ぎになった。
大騒ぎになったけど……何故か嫌な感じはしなかった。
そうじろう「わ、悪かった、彼女はこなたの親友だったな、悪く言うつもりはなかった」
こなた「お父さん、あやめさんの取材を受けたでしょ……」
そうじろう「そうだった、彼女と会っていなければこなたが正子さんを招こうと提案しても賛成はしなかった」
お父さんは不思議そうに私を見た。
こなた「ん?」
そうじろう「い、いや、何ていうのか、あやめさんとこなたはどうして出会ったのかって……どう見ても接点がみつからんのだよ」
接点……
こなた「片や出版社随一の記者、片やしがないレストランのホール長、まぁどう見ても接点なんかないよね……」
そうじろう「い、いや、皮肉と捉えないでくれ、ただ純粋にどう出会ったか聞きたかっただけで……」
慌てて言い訳をするお父さん。
接点、それは一言で言えばお稲荷さん。もっと限定的にいえば私のげんき玉作戦、それらをあやめさんは追っていくうちに私に出会った。
ある意味出会いべくして出会った……これって運命ってやつなのかな。
つかさが一人旅に出ていなければ、私もレストランで働くこともなかった。
それじゃ何をしていた?
ふふ、ニートになっていたかな……
そうじろう「こ、こなた?」
不思議そうに私を見るお父さん。はたしてお稲荷さんの話をした時、お父さんはどんな反応をするのだろう。
素直に受け入れてくれるのか。みさきちみたいに鼻で笑ってネタで終わってしまうのか……
そうじろう「……すまない、今はそんな話をするべきではなった、こなたが話す気になったら……それでいい」
そうじゃない、そうじゃないけど……今はそれで良いのかもしれない。
お父さんは部屋を出ようとした。
こなた「お父さん」
お父さんは立ち止まり振り向いた。
そうじろう「ん?」
こなた「結婚……おめでとう」
そうじろう「あ、ありがとう」
照れくさそうに小走りに自分の書斎に行ってしまった。

こなた「ふぅ〜」
溜め息を一回。
お母さんの写真を見た。
お父さんはお母さんにもあんな風に告白したのかな……
それにしても私って……どうして言えないのかな。
倒産はさりげなく言っていた。
私が女性でお父さんが男性だから

……いや、性別なんて関係ない。
好きなら好きって言えばいいだけじゃん。
そうだよ、普段ゲームでやっているようにカーソルで選んでエンターキーを押すだけ……簡単じゃないか。
なんか勇気が湧いてきた。
今度の休みの時神崎さんと会う。丁度メモリー板の使い方も一段落しそうだし。するならその時だ。
こなた「お父さんが出来たなら私にだって出来るよね」
お母さんの写真に向かってそう呟いて部屋を出た。


412 :こなたの旅 29 3/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:05:15.58 ID:QttFb6XO0
こなた「こうでしょ?」
つかさがひろしと一時別れた時に見たと言う光の幻想をイメージした。
もちろん実際に見たわけじゃない。あくまでイメージ。
足元がぼんやりと光りだした。
そして床も光りだす……
神崎「ほぅ、もう会得したか……これで私の教える事は全てだ」
理屈は詳しく知らないけど大気のエネルギーを制御する技術らしい。

 時間が経つのは早い。気付けばもうその時が来てしまった。
ここは柊家が管理する神社の倉庫裏。メモリー板の使い方を教えてもらうって言ったらつかさが此処を教えてくれた。
私も長年この神社に出入りしてきたけど初めて知った所だった。
ここには神社関係者以外滅多に人が来ない。メモリー板の使い方をレクチャーしてもらうには打ってつけの場所。

こなた「光だけじゃなくて熱も制御できるんでしょ?」
神崎さんは頷いた。
神崎「その気になれば爆発で辺りを吹き飛ばし一面焼け野原にさえ出来る、そして一瞬で周りを凍結することだってね」
こなた「凄いね……お稲荷さんってこのメモリー板の能力が使えるんでしょ?」
私はポケットからメモリー板を取り出した。
神崎「ああ、使えるがメモリー板ほど強力ではない……」
こなた「ふ〜ん、貿易会社ってこのメモリー板の本当の能力をしらなかったんだね、知っていたらあんな遣い方しなかったよね」
神崎「そうだな、メモリー板の情報を解析していけば何れ気付いたかもしれないがな」
私はメモリー板をじっと見た。
神崎「その技術はほんの基本にすぎない、どうだ今の人類ではとうて成しえない力を手にした感想は、地球を支配出来る力を得たんだ」
私は笑った。
こなた「ふふ、中二病じゃあるまいし……そんなの興味ないよ……うちのレストランのイベントの時とかのイルミネーションに使えそうだね」
神崎さんも笑った。
神崎「そう言う遣い方もあったか……ふふ」
あれ、これって、なんか良い雰囲気じゃない?
これってフラグが立った?
チャンス?
なんだかドキドキしてきた。
そういえば告白なんて……初めて?
うぁ、この歳になって初めて、おかしいかな……
神崎「一つ聞きたい事がある」
こなた「は、はぃ!!?」
突然の質問に声が上擦ってしまった。
神崎「メモリー板の使い方を得て何をするつもりなんだ、野心か野望か……さっきの話からするとそんな風にも思えない、真意を聞きたくてね」
真意か……
こなた「そう言うのって教える前に聞かない?」
私の質問返しに神崎さんは苦笑いをした。
神崎「……そうだな、そうかもしれない、何に使おうと君の自由、誰も君を阻むものは居ない、私でさえも」
それならどうして私に教えたのか聞きたいくらいだった。
こなた「メモリー板の持ち主としてはどんなものなのかちゃんと知っておきたかったから……答えになってるかな?」
神崎さんは頷いた。
神崎「それで、それを知った感想はどうだ?」
また難しい質問を……みゆきさんを連れてきたいくらいだ。
こなた「変身、つかさの見た光の幻想、かがみの呪いと病気を治した薬、金縛りの術に催眠術……深い原理は分らないけど、それが魔法じゃないってのが分ったよ、
    うんん、多分教えてもらう前から分っていた、だけどこれだけ進んだ現代でもお稲荷さんの知識と技術はやっぱり魔法なんだなと思った、
    これだけチートな物をつかったら反則だよ」
神崎「それで?」
まだ続きをききたそうだ。もうないのに……
こなた「……だからこのメモリー板はここに在ってはいけないんじゃなかったって、でも私はそれを持っている、私達以外の人がそれを知ったらきっと
    欲しがるよね、貿易会社みたいに、でもさ貿易会社って特別な会社じゃないよ、普通の人が経営して普通の人が働いていた普通の会社……
    私も普通の人間、私はこのメモリー板をずっと隠していく自信がない、例え隠しきれたとしても私が死んだらどうなるかな……
そう思うと誰にも渡せなくなっちゃう」
神崎「そうか……それで?」
私の言いたい事を分っているみたいだった。
こなた「貿易会社の裁判が終わったらこのメモリー板を壊そうと思ってる」
神崎「壊すのか……本当にそれでいいのか、そうしたらもう魔法はつかえなくなるぞ」
こなた「もう充分に教えてもらった、太古の時代からお稲荷さんから教えてもらった知識と技術を使って今の暮らしができているし、
    なによりかがみの病気を治してくれたのが一番嬉しかった……」
神崎さんは立ち上がった。
神崎「壊すか……賢明な判断だ」
まだ私の話は終わっていない。
こなた「それにね……」
神崎「まだあるのか?」
こなた「それに……あやめさんと逢わせてくれたらもう充分……お稲荷さんじゃないと出来ないよね」
神崎さんは寂しそうな顔になった。
神崎「私が会わせたのははい、彼女が、あやめ自身がそうさせたにすぎない、彼女の意思がなければそうはならなかった……」
こなた「それでもお稲荷さんじゃなきゃ出来なかった」
神崎さんは苦笑いをしながら帰り私宅をしだした。

413 :こなたの旅 29 4/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:06:32.80 ID:QttFb6XO0
さて……もうそろそろ時間だ。もう心の準備は出来ている。
あとは言うだけ。
神崎さんが帰りの支度をしている。言うなら今だ。
こなた「あ、あの〜」
神崎さんが支度を止めてこっちを向いた。
神崎「泉さん、メモリー板を壊す前にして欲しいことがある」
こなた「え、え、あ、な、何ですか?」
私の声が小さくて聞こえなかったのか突然の事で言葉が詰まった。
神崎「母星との交信がしたい」
こなた「あ、それなら……」
私はメモリー板を神崎さんに渡そうとした。
神崎「いや、壊す直前でいい」
神崎さんはメモリー板を受け取ろうとはしなかった。
こなた「直前って?」
神崎「私の目的は終わった、もうこの地球にいる理由がなくなった」
え、どう言うことなの。ちょっと……
こなた「無くなった……って?」
神崎「そう、無くなった、私は故郷に帰る」
ちょっ、帰るって。そんな話は聞いていない。
こなた「地球ってやっぱり人間が居て住みにくいのかな……」
神崎「住み難い、いや、もう故郷より長く此処に居る、狐に変身してしまうのを除けば快適に近い、どんなに鍛えても必ず狐の姿になってしまう期間ができてしまう、
   そんな私を助けてくれたのも人間だった」
それじゃ帰る必要なんかないじゃないか。
こなた「もしかして故郷に危機が来ていて大変だから?」
神崎「そういえば先に帰った仲間の中にはそれで帰った者もいたそうだな、それに、その危機は私が一人帰ったところでどうにか出来る問題ではないらしい」
こなた「それじゃ何で?」
神崎「あやめとの約束が終わった……」
こなた「あやめさんとの約束?」
約束って、いつ、どんな約束を。
神崎「そう、井上浩子と神崎正子をよろしく頼む……それが彼女の死に際の私へのメッセージだった」
こなた「えっ!?」
神崎「もちろんあやめはもう瀕死で言葉すら発する事はできなかった、彼女の記憶をトレースすした時に彼女の意思が私にそう伝えた」
あやめさんとの約束。違う……それじゃ違うじゃないか。
こなた「そ、それじゃ井上さんの病気を治そうとしたのは……?」
神崎「あやめとの約束を果たす為」
まさか、これってゆたかが言っていた約束した相手って……
それに言葉を交わした約束じゃない。あやめさんの意識の中のメッセージを勝手に約束にしている。
うそ、それって、まさか……
こなた「あやめさんと神崎さんって……?」
神崎「私は神崎あやめを愛していた」

 その時私の頭は真っ白になった。

神崎「此処には彼女の思い出がありすぎる……ここに残っていても辛いだけだ……」
神崎さんはあやめさんを好きだった……
私ってどんだけニブチンなの。
こなた「井上さんを必死に救おうとしていたからてっきり井上さんを……」
神崎「彼女とは直接会っていない、もちろん神崎あやめとしては会っていたが彼女には特別な感情はない、それがどうかしたのか?」
こなた「え、い、いや、な、なんでもない、何でもないよ……」
神崎さんが好きなのが井上さんからあやめさんになっただけ。何ら問題はない。そうだよ。全く問題なんか無い。
神崎「井上さんには私の話は伏せていて欲しい、あくまで神崎あやめは半年前に亡くなった、そうでなければ約束の意味が無くなってしまう」
こなた「そうだよね、うんうん、意味はないね……そ、そうだ、帰るならこのメモリー板もそのまま持って帰ってもらえればわざわざ壊す必要なんかないじゃん?」
え……私って何を言っている?
違うよ。私はそんなのを言いたいんじゃなくて……。
神崎「……なるほど、確かに壊す必要はないな……それにそれの方がより安全」
こなた「つかさもけいこさんに会いたがっていたから交信するならつかさも一緒でいかな、もう二度と通信なんか出来そうにないし」
どうして……喉元まで出掛かっているのに言えない。
言えないよ。
神崎「私に許可を取るまでも無いだろう」
こなた「はは、そうだよね、私がすればいい……」

 それから街に出て食事をして別れた。
何を話したのかはっきり覚えていない。
そして私は言おうとしていた言葉を一言も言う事が出来なかった。


つづく
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/01(水) 00:08:08.54 ID:QttFb6XO0
以上です。

期間が開いた割には短いです。

どうも忙しくてなかなか集中できません。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/01(水) 00:12:02.12 ID:QttFb6XO0


ここまで纏めた。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2014/10/16(木) 23:33:27.64 ID:8lfmC7gN0
まだ?
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/18(土) 10:38:13.83 ID:6cEZQB1j0
ちゃんと作っているので大丈夫です。

気長にお待ちください。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/10/19(日) 14:12:41.96 ID:/g8JMpBR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は4レスくらい使用します。
419 :こなたの旅30 1/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:15:15.54 ID:/g8JMpBR0
30

『カタカタ』
静寂した部屋にキーボードを叩く音だけが響く……
『ギャチャ!!』
ドアを開ける音がした。それでも私は作業を止めなかった。
かがみ「お! ちゃんとやってるわね、感心、感心」
私は振り向きもせずモニターを見ていた。
かがみ「もう家にきてからかれこれ2時間も……、小休止しなさい、お茶とお茶菓子持ってきたわよ」
ここはかがみの法律事務所の別室。私はここに来てはかがみの依頼を履行していた。
モニターの机とは別の私の後ろにあるテーブルにお皿を置く音がした。
こなた「別に疲れていないから……」
かがみ「まぁ、こなたにしならゲームをやっている時間と比べて2時間はたいした事はないかもしれないけど、根を詰めると体に毒よ」
いつになく優しい声のかがみ。普段の私なら「気持ち悪い」って言っている……だけどそんな気分ではなかった。
諦めて部屋を出るかと思ったけど椅子を動かす音が聞こえた。かがみは座ってお茶をすすりだした様だ。
確かにただモニターに向かっていても面白くない。
私は作業しながら話した。
こなた「裁判はいつ終わるの?」
かがみ「……なにしろ企業が相手だから時間はかかるのは確かよ、だから少しくらい休んでも一向に差し支えない」
こなた「かがみの依頼はもう少しで終わるよ、だからもう少しやっていくよ」
かがみ「ちょっ!! 私の見立てではあと1年はかかる作業よ……それもメモリー板の力ってやつなのか?」
かがみは相当驚いている。声を聞いてだけで分る。
こなた「そんな所……」
かがみ「それにしても早すぎるわよ」
こなた「早いに越したことはないでしょ、裁判が終わったらもう作業は出来なくなるんでしょ?」
かがみ「……それはそうだけど……」
かがみは黙ってしまった。またキーボードを叩く音が響く。
かがみ「あ、そうそう、知っているかもしれないけどあやめさんを殺した犯人が捕まったわよ、容疑はもちろんあやめさんの殺害」
一瞬手が止まった。
かがみ「なんだ、知らなかったのか?」
こなた「ふ〜ん、捕まったんだ……」
かがみ「なによその気の無い返事は……」
私は再び手を動かし始めた。かがみはそのまま話を続けた。
かがみ「出国する寸前で押さえたそうよ、決め手があやめさんが使っていた携帯電話」
また手が止まってしまった。
かがみ「あんたの機転で殺し屋が捕まったのよ、やるじゃない」
こなた「別に……」
かがみの溜め息が聞こえた。
かがみ「そうそう、ヨーロッパを中心に活動していた職業としての殺し屋よ、日本では一人だけみたいだけど、
分っているだけで10人以上の要人を手に掛けていた様ね、きっとその中に神崎さんの友人含まれているわね……」
私はかがみの話を聞きながら手を動かした。
かがみ「どうあがいても彼の極刑は免れない」
こなた「そんなの自業自得」
かがみ「そう、自業自得、この日本の裁判で判決が出ても犯人引渡し条約があるからその国々で同じような裁判をする事になるわね、
恐らく彼が生きている内には終わらないわよ、事実上の終身刑のようなものになる、これも言い換えれば因果応報ってやつ」
こなた「因果応報ね……」
かがみ「なによ言い直して、言いたい事があるなら言いなさい」
こなた「けいこさんやつかさはお稲荷さんと人間が共存できるようにしようとした」
かがみ「失敗しちゃったけどね……」
こなた「……そして今度はお稲荷さんの記録を全て消そうとしている……そんでもってその両方に私は関わっている……これって良い事なの、悪い事なの?」
かがみ「ふ〜ん、こなたもいろいろ考えるようになったわね、偉い偉い」
こなた「ふざけないでよ!!」
かがみ「ごめん……」
このあとかがみは暫くなにも話さなかった。答えを考えていたのだろうか。
420 :こなたの旅30 2/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:16:44.26 ID:/g8JMpBR0
かがみ「善悪なんて立場や状況で変わってしまう、絶対的なものじゃない、まぁ普通に私達の立場を考えれば人間を基準に考えるわね、
    つかさやけいこさんがしようとしていたのは紛れも無く良いこと、おそらく殆どの人に異論はないでしょうね、
    でも失敗した、だから今の私の行動がある、
    私はこれで良いと思っている、もともとこれは私が考えた事、こなたはそれに従っただけ、こなたは悪いと思っているわけ?」
こなた「うんん、悪いと思ったら手伝わない、だけど……」
かがみ「お稲荷さんの知識を勝手に消して良いのかって言うんでしょ、そう、そうよね、私もそれで助かった、それがあれば助かった命が幾つあるか、
    でも、貿易会社の件もある、彼らはそれを武器に利用しようとした、実際に作って使用した記録もあるわよ、それで奪われた命がいくつあるのか、
    差し引きゼロって言い方もあるかもしれない、でも命はそう言うものじゃない、
    お稲荷さんの知識ってそう言う物、お稲荷さん達は故郷でそういった知識を得てはその諸刃の剣に悩みながら克服してきた、
    そのプロセスを飛ばして得た知識は使いこなせない、それが私の結論、だからお稲荷さんの知識を消す必要があるのよ……
    まぁ、人間も自分自身の知識を使いこなしているかと言えば疑わしいけどね」
私は画面に向かって作業を続けた。
かがみ「ちょっと、人が一所懸命に話している間くらいは手を休ませなさい!!」
こなた「立て込んだ作業があって……もうちょっとだから……」
かがみ「あんたのそう言う所、全く変わっていない!!」
かがみのさっきの説明。私でも納得ができるものだった。
それに引き換え私が神崎さんにした話ときたら……全然説得力がない。ダメじゃん。
かがみみたいに頭の回転が早くて活舌だったら……
かがみ「それでこなた、折角使い方を会得して早々すまないけど、メモリー板はこの案件が解決したら……」
こなた「壊すって言いたいんでしょ?」
かがみ「えぉ!?」
意外だったのかかがみが言葉を詰まらせた。
こなた「さっきの話を聞けば分るよ、そんなに驚かなくても……」
かがみ「そ、それなら話は早いわ……壊してくれる?」
こなた「壊すのはそんなに難しくないよ、『壊れろ』って命令するだけ、だけどね残っている燃料が暴走してちょっとした爆発をするかもしれない」
かがみ「ちょっとした爆発?」
こなた「うん、たいした事じゃない、竜巻が来た位の被害だから」
かがみ「竜巻って……おい、尋常じゃないじゃない……」
こなた「うん、だから壊すのは止めて持って行ってもらう話になったから心配しなくていいよ……それにめぐみさんからもらったUSBメモリーも
    同じ燃料が使われているみたいだから一緒に持って行ってもらうから」
かがみ「……なんだもうそんな事まで考えていたのか、流石ね……っておい!!」
いつものかがみの突っ込みが始まるか……
かがみ「持って行ってもらうって何処に誰が持っていくのよ?」
その突っ込みも流石だよ。
こなた「神崎さんだよ、お稲荷さんの故郷に持って帰っるって、母星と連絡して迎いに来てもらう……」
かがみ「あぁ、なんだそう言う事なの」
こなた「うん、そう言う事……」
かがみが話さなくなったと思ったら直ぐに話し出した。
かがみ「……帰る、帰るって言ったわよね?」
こなた「うん、言ったけど……」
かがみ「帰るって、あんた、こんな所でパソコン操作していていいのか?」
こなた「……私がどうこう出来る問題じゃないし……」
かがみが私の近くに歩いてくる気配を感じた。
かがみ「出来る出来ないの問題じゃないでしょ、あんた神崎さんの事が好きじゃないのか、止めないのか……」
こなた「神崎さんはあやめさんが好きだったって……止められないよ……」
後ろから両肩を掴まれ座ったまま椅子を回された。私はかがみの正面を向いた状態になった。これじゃパソコンの操作が出来ない。
私は腰に力をいれて元に位置に回転させようとしたけどかがみが私の両肩を押さえているから動かない。
かがみは私の目を睨んだ。私は目を逸らした。
かがみ「帰る意味が分っているのか、彼の故郷がどのくらい遠いか分っているのか」
私は何も答えなかった。
かがみ「何か言いなさいよ……少なくともこなたの方から一生掛かっても会いに行けない距離……」
こなた「……そんなの知っている……」
かがみ「だったら何故……あやめさんに遠慮しているのか、彼女はもう居ない、遠慮なんか必要ないじゃない、引き止めなさいよ、
まだ告白もしていないのか、それとも神崎さんなんか好きでもなんでもないのか、二度と逢えなくなるのよ、
さようならで終わりでいいのか?」
執拗に責めて来るかがみ。最後のさようならで終わりでいいのか……
そう言われたら急に目頭が熱くなった。かがみがそれに気付いた。
かがみ「こなた……あんた……」
両肩から腕を放した。
こなた「引き止めるなんて……言えなかったよ……」
かがみ「言えなかった……」
こなた「好き……なんて……引き止めるにはそれを言わないとダメでしょ……だから」

421 :こなたの旅30 3/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:17:55.77 ID:/g8JMpBR0
かがみ「やっと言ったわね……その涙で判った……本気のようね」
そうかもしれない。この言葉を言うのは他人には初めてかもしれない。
かがみ「……でもそれは私にではなく神崎さんに言えばよかったのに……」
でもそれが本人ではくかがみに言うなんて……
こなた「……ボタンを押すだけだと思った……只それだけの簡単なものだと思ってた……でも本人が目の前に居ると……つかさみたいに出来なかった」
かがみが私から離れて席に戻った。
かがみ「……あんたもしかして告白しようとしていたの?」
私は黙って頷いた。
かがみ「つかさは自分の気持ちを後先考えずに直ぐに表に出すのよ、論外よ……
すごい、凄いわよ、こなた、しようとしただけでも凄いわ……私はそうしようとすら出来なかった……」
こなた「えっ!?」
私は始めてかがみの方を向いた。
かがみに嘲笑されるのかとおもった。思いっきり弄られるのかと思った。
かがみ「そうよね、言えるはずないわよ、言ったらどうなるのか、嫌われたどうしよう、冗談だろって言われるかもしれない、頭の中が
    ネガティブでいっぱいになっちゃうのよね……分るわ、私もそうだったからよくわかるわよ、うんん、今もそうだから」
まるで私と同じように俯いているかがみの姿がそこにあった。
こなた「今もそうって……結婚して子供までいるのに……」
かがみ「……彼……ひとしから私に近づいてきた、私は何もしていないのよ……」
こなた「何もしていないって?」
私が聞き返すとかがみはゆっくり顔を持ち上げて私を見た。
かがみ「大学時代、彼から声をかけて来たのよ、その内容までは覚えていない、他愛ない事だった……
    でも彼は次第に私の心の中が判っているような行動をし始めるのよ……将来の夢、好きな食べ物、場所……次第に彼に惹かれたわ
    そして気が付けば私の彼の腕に抱かれていた……もし彼が本気じゃなかったら……私は……私は……」
今まで一度も聞いたたことの無い恋愛の話をしている。あのかがみが……
かがみ「……だから私は一度も彼に……好きとか、愛しているなんて一度も言った事はない……」
こなた「でもさ……ひとしさんはお稲荷……」
かがみは腕を私の前に出して手を広げた。
かがみ「お稲荷さんだから私の心を読み取るって言いたいんでしょ?」
私は頷いた。
かがみ「ひとしがお稲荷さんだと知ったのはまなみちゃんが生まれてからなのよ……それまで私はずっと人間として彼と接していた……
    普通じゃとっくに愛想尽かれていたわよ……私は運が良かっただけ……」
かがみが恥ずかしがりやなのは知っていた。だけどここまでだったなんて……
だけど私はかがみとほぼ同じかそれ以上に奥手だ。
かがみはやもめの私をあまり弄らなかったのはその為だったのか……
かがみは立ち上がった。
かがみ「そうよ、神崎さんもお稲荷さんじゃない、こなたの心は分っている筈よ、それなのに帰るだなんて……もしかしたらあやめさんに遠慮しているのは
    むしろ神崎さんの方かもしれない……こなた、まだ諦めるは早いわよ!!」
かがみは再び私に近づいた。
こなた「早いって言われても……どうすれば……」
かがみ「まずははっきりとあんたの意思を伝えるのよ」
こなた「……でも……」
かがみ「わかってる、分っているわよ、それができていれば悩んでいない、いいわ私も一緒に考えるから諦めるなよ!!」
かがみは私の肩を何度か叩いた。
こなた「う、うん……」
私は椅子を回転させてパソコンの作業に戻ろうとした。
かがみ「待ちなさい」
半回転したくらいで動きを止めた。
こなた「な、なに??」
かがみ「こなた、あんたに会わせたい人がいる、今度の休日は空けておきなさいよ」
こなた「会わせたい人……誰、私の知っている人?」
かがみ「それは内緒、いろいろ勘ぐられたくないからな、只言えることは私があんたにひとしの話を出来たのはその人のおかげだと思っている」
確かに今のかがみはさっきまでとは違っていた。カウンセリングみたいなものなのかな……
こなた「空けるのはいいけど……その分作業が遅れるけどいいの?」
かがみ「別に構わない、裁判は遅れているし、それに裁判が長引いた方が良いでしょ、別れる日が延びるわよ、それに対策だって念入りにできるし」
かがみは微笑みながらウィンクをした。
こなた「え、あっ、そ、そうだね……」
もうかがみの対策は始まっているようだ。かがみがこんなに頼もしく見えたのは初めてだった。
かがみ「それじゃ、約束を忘れるなよ、あんたよくすっぽかすからな」
こなた「はは、そうだね……」
かがみ「お、今日初めて笑ったな、そうそう、それで良いのよ」
こなた「でもさ……なんで私が神崎さんを好きだって分ったの? お稲荷さんでもないのに」
かがみ「はぁ!?」
かがみは一瞬驚いた顔をして笑い出した。
かがみ「ははは、あんた、黙っていれば分からないと思ってたの、ほんとこなたって相変わらず鈍いわね……あの時神崎さんを連れてきた来た時点で
    分ったわよ、あんたが良く言うフラグってやつをビンビン立てていたわよ、多分あの時居た人の殆どがそう思ったわよ」
こなた「はは、そう、フラグね……はは自分の事だと分らないね……ははは」
私達は笑った……
422 :こなたの旅30 4/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:18:56.35 ID:/g8JMpBR0
かがみ「ポチっ!!」
『カチッ!!』
こなた「あっ!!」
突然かがみはパソコンの電源ボタンを押して強制終了させた。
こなた「ちょっ、かがみ〜今日の作業未の分のデータみんな消えちゃったよ!!」
半分起こり気味で言うとかがみは笑いながら話した。
かがみ「今日の仕事は終わりよ」
こなた「終わりって……今日の作業でどれほど手間が掛かったか分るの?」
かがみは私の話を聞こうとせずこそこそと何かの支度をし始めた。
かがみ「こなた、出かけるわよ支度しなさい」
こなた「出かけるって……何処に?」
かがみ「こんな時は飲むに限る……っと言ってもこなたはそう言うのは苦手だったわよね……ゲームセンターならどう?」
こなた「……そんな気分じゃない……」
かがみ「なに言ってるのよ、昔、私がそう言っても無理矢理に連れて行ったでしょ」
それって高校時代の話なのか……
こなた「誰かを連れ立って行く歳じゃないし……」
かがみ「そんなの気にした事ないくせに」
かがみは私の腕を掴み引っ張った。私はは渋々立った。
こなた「分ったよ……ちょっと準備するから待って」
かがみ「ふふ、ゲーセンなんて行くの久しぶりね、行っておくけど子供を相手に鍛えたから以前の様にはいかないからな!!」
なんかすっごく息巻いているし……
私がかがみを呆然と見ていると。
かがみ「どうしたの、行くの、行かないの?」
こなた「行くけど……」
かがみ「行くけど何よ?」
こなた「仕事を中断してまで何で私に構ってくれるのかなって……」
かがみ「なに水臭いこと言っているのよ、私とこなたの仲じゃない、そんなの気にするな」
こなた「う、うん」
私は周りの書類を片付けだした。かがみはもう準備が出来たのか部屋の扉の前で私を待っている。
かがみ「こなた、支度しながらでいいから聞いて、私達はお稲荷さんの痕跡を消そうとしている、だけどねどうしても消せない物があってね」
こなた「突然何を言い出すと思ったら……その消せない物って何?」
かがみ「私よ」
こなた「かがみが、何で?」
かがみ「私は現代の医学では治せない病気に掛かった、でもお稲荷さんの秘薬で治った」
こなた「そうだけどそれがどうかしたの?」
かがみ「よく考えてみて、私は今此処に居ない筈の人間なの、こなたとこうして話している筈はない、つまり私がこうして生きているのは
    お稲荷さんが居たから……」
こなた「分り易いね、その通りだけど、まさかかがみを消すわけにはいかないよ……」
かがみ「そう、だから私の言動すべてがお稲荷さんの知識がもたらした結果そのものになるのよ、良い事、悪い事、その全てがね」
こなた「……そうだとしたら、かえでさんや井上さん、みゆきさんの臨床試験で助かった人もそうなるよ……」
かがみ「そうね、だけど私がその最初の人……だから私はなるべく良いことをしようと思って……」
こなた「メンドクサイじゃん、そんなの、今まで通りのかがみで良いんじゃない、命が助かって良かった位で思っていれば、一人で背負う必要なんかないよ」
かがみ「メンドクサイっておま……」
こなた「はいはい、準備できたよ、行こうよ、見せてもらおうか子供と鍛えた実力とやらを」
かがみ「何よその言い方……何かのネタか?」
こなた「え、知らないの、これね……」
かがみ「分った、分った、語りだすと長いから行こう」
私達は部屋を出た。

今日は全てを忘れられそうだ。
昔に戻って遊びまくろう。


つつく
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/19(日) 14:23:05.11 ID:/g8JMpBR0
以上です。

今回はこなたとかがみのやり取りのみです。

基本的に日曜や休日に書き込むのが多いと思います。

投下を待っている人が居たとしたらそれを参考にして下さい。

本当はもっと投下してくれる人が居れば待つ必要もないのでしょうが

ご了承下さい。

いつものようにこのあと直ぐに纏めます。
424 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/10/28(火) 02:03:24.22 ID:DfNwEoJSO
twitterとかpixivやればいいのに
スレの宣伝も出来るだろうし(ここは2ch外部板だから転載禁じゃないはず
425 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/10/28(火) 22:23:47.53 ID:kJ6dZuTI0
>>424
ご助言ありがとうございます。
pixivってイラストなんかを投稿するサイトだよね?
SSも投下できるの?
らきすたでもOKなのかな?

このサイトの作品を載せるって意味でいいのかな?
載せるとしたら多分自分の作品になると思うけど(他の人だと許可を取りにくいから)

例えばID:bz0WGlY0氏の作品集から何かしらの作品を投下したしとして
読んでくれるだろうか
どのくらいのレベルか分らないし(自分の作品)
宣伝になるのだろうか?
426 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/11/03(月) 10:12:43.17 ID:85lYJcEe0
pixivについてはもう少し考えます。
427 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/11/23(日) 14:22:57.32 ID:R0qhAASd0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

6レスくらい使用します。
428 :こなたの旅 31 1/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:24:26.32 ID:R0qhAASd0
31

 今日は休日。かがみと約束した日。珍しく出かける準備をを終えて迎えにくるのをまつばかり。
私にかがみに旦那さんの話をする事が出来たっていったいなにが切欠なのだろうか。
私に会わせたい人。かがみのあの言い方だと私の知っている人。
やっぱり筆頭に上がるのがつかさかな……
現につかさは告白を誰の力を借りずにしている。
でも改めて会ったとして私が変わるはずない。変わるならとっくに変わっている。
つかさは職場で毎日のように会っているし……今更っ感じだよね……
かがみはつかさと会わせて私にどうしろって言うのだろうか。
分らない。
考えれば考えるほど分らなくなる。
それともひよりとかゆたかだとしたら……
ひよりやゆたかがいのりさんやまつりさんとどんなやり取りをしたのか少し興味はあるけど私の場合と
状況が違うと思うし参考になるかな……
結局今日までこんな事ばっかり考えて過ごしてしまった……

『ピンポーン』
呼び鈴の音。時計を見ると約束の時間ピッタリ。かがみに違いない。
私は玄関に向かって扉を開けた。
かがみ「オッス、こなた!!」
そこには私服姿のかがみが立っていた。私服か。そういえば最近見てなかったな、かがみの私服姿。
かがみはジロジロ私を見回した。
かがみ「出かける準備はできていそうね、行きましょ」
かがみは玄関の前に停めてある車に乗り込んだ。かがみは車できたのか。私は玄関を出てかがみの車の助手席に乗った。
かがみは私がシートベルトを付けるのを確認すると車を走らせた。
かがみ「この前は何勝したかしら……」
こなた「ほえ?」
少し考えたけどこの前、ゲーセンに行った時の話しをしているに違いない。
こなた「64戦32勝32敗……」
かがみ「どうよ、以前の私と違うでしょ?」
こなた「確かに違うけど……バージョンが上がっていたし操作性が以前のと違っていて……」
かがみ「おいおい言い訳かよ、こなたらしくない、私が強くなったって認めなさいよ」
そう言えばあれからゲーセンでかがみと格ゲーで弊店まで対戦していたっけな……
こなた「かがみが強くなったって言うより私が弱くなった……最近ゲームしてなかったし……」
かがみ「そう言うのを負け惜しみって言うのよ……」
確かにその通りかもしれない……
こなた「それより誰に会わすの、何処に行くつもりなの、内緒にするもんだからそればっかり考えて寝不足気味、もう教えてもらってもいいよね」
かがみ「寝不足って……そこまで考え込むなよ、まぁその気持ちも分らなくもないけど、ここまで来たら会うまで待ちなさい」
最後まで内緒か。
こなた「まさかつかさって落ちじゃない、言っておくけどつかさとは毎日会っているし昨日だって……」
かがみ「さぁどうかしら、でも改めて会うと違った見方も出来るわよ」
その言い方だとやっぱりつかさか……
なんだか考えて損した気分だ。つかさに会うのになんでこんな回りくどい事をしなきゃいけないのか理解に苦しむ。

429 :こなたの旅 31 2/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:25:47.19 ID:R0qhAASd0
 車の外を見ると見慣れた風景……
車は止まった。
そこはレストランかえでの駐車場だった。
かがみ「着いたわよ」
こなた「着いたって……レストランかえでだよ」
かがみは車から降りた。これじゃ話が出来ないので私も車から降りた。
私が降りるのを確認するとかがみは車のキーをロックした。
こなた「ちょっと、折角の休みなのにわざわざ何で……」
かがみ「行くわよ」
かがみは私の話しを聞かず歩き出した。
こなた「やっぱりつかさなのか……もういいや、私帰る……」
かがみは立ち止まった。
かがみ「ここまで来て帰る訳?」
こなた「ここまでって……いつも居る場所だよ、それにつかさになら毎日のように会ってる」
かがみ「それがどうかしたか」
こなた「どうしたもこうしたもないよ、誰かと思って夜も眠れなかったのに……」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「ふぅ……だから名前を言わなかったの、こうなるのは分っていた」
こなた「つかさは凄いのは分かるけど私はつかさの真似なんか出来ない」
かがみ「だからこうして……」
なんだから頭に血が上ってきた。
こなた「もういいや……」
私は帰り道に体を向けた。
かがみ「こなた」
呼び止めるかがみ。だけどもう聞く耳はもてない。私は走り出した。
かがみ「こなた、待ちなさい!!」
何時になく大きな声だった。それでいてキンキン高い声ではなくむしろ低く唸った様な重い声だった。
その威圧感のせいか思わず立ち止まってしまった。
かがみ「帰るのはいいけどその後、あんた、ちゃんと彼に言えるの?」
何も言えなかった。それを見兼ねたのかかがみは話し始めた。
かがみ「何も変わっていない、きっと結果は同じよ、その時には永遠の別れしかない……確かに会わせたい人と会っても変わらないかもしれない
    でもね、両想いでも添い遂げられない話は珍しくも無いのよ、まして片想いなら尚更、会ってみる価値はあると思う、
    別に気に入らなければその場で帰ってもいい、途中で止めてもいい、退屈だったら寝ても構わない」
こなた「ダメで元々って事?……」
かがみ「ぶっちゃけて言えばその通り、だけど全くの勝算が無い訳じゃないのよ、私は彼に告白できたのだから」
こなた「えっ」
私は車から降りてはじめてかがみの顔を見た。
かがみは私と目が合うとにっこり微笑んだ。
かがみ「ふふ、やっとその気になったからしら……」
こなた「告白って……何時?」
かがみ「あの時、ゲーセンから帰った時よ……私は始めて彼に、ひとしに私の気持ちを伝えた……」
かがみが……告白した?
かがみ「どう、会ってみたくなったでしょ?」
かがみは私に近づき鼻を指で突いた。私は思わず鼻を押さえた。
こなた「でも……つかさに会っても……」
かがみ「誰がつかさだって言った?」
こなた「……つかさじゃないの?」
かがみ「此処で四の五の言っても始まらない、行きましょ、彼が待っているから」
こなた「……彼……彼って、男性なの?」
かがみ「さぁね、でもあんたも以前会った事がある人」
以前会った事がある男性……全く検討が付かない。誰だろう……
それを聞こうとした時、かがみは歩き出し駐車場から出ようとしていた。
かがみがもったいぶるから……行かないといけなくなっちゃじゃないか。
私はかがみの後を追った。

430 :こなたの旅 31 3/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:26:53.18 ID:R0qhAASd0
 かがみに追いつこうとした時だった。かがみはレストランかえでの入り口を素通りした。
こなた「かがみ、通り過ぎちゃったよ……」
私が呼び止めてもかがみは歩き続けた。
こなた「いったい何処へ連れて行く気なの?」
かがみ「すぐそこよ……もう見えてきたわよ」
こなた「え、そこって……」
かがみの見る方を見るとそこはつかさの洋菓子店……かがみはその玄関前で立ち止まった。
かがみ「着いたわよ」
こなた「着いたって……今は休業中……」
かがみはドアに手をかけて扉を開けた。
こなた「う、そ……何で?」
かがみ「入るわよ」
こなた「え、あ、うん……」
店の中に入ると奥に人の気配がした。つかさかな……
かがみ「オッス!!」
つかさ「あ、お姉ちゃん、こなちゃん、待ってたよ」
かがみ「悪いわね、準備させちゃって」
つかさ「うんん、それよりこなちゃん、来てくれたんだね」
つかさは笑顔で私の方を向いた。
こなた「う、うん……それより店は……レストランは大丈夫なの?」
つかさ「店の鍵をあけたのとちょっと掃除しただけだから問題ないよ」
つかさは鍵をかがみに渡した。
かがみ「終わったら返すわよ」
つかさ「うん、後はお願い」
つかさは私の方を見た。
つかさ「こなちゃん、がんばって!!」
そう言うと小走りにレストランの方に戻って行った。
つかさは私が何故此処に来たのか知っているのだろうか……
もしかしたらかがみから聞いたのかもしれない。私からは一切話していないのだから。
かがみは自分の腕時計を見た。
かがみ「ちょっと早かったかな……」
そう言うとキッチンに向かい薬缶に水を入れて火にかけた。
かがみ「お茶を入れるから手伝って」
こなた「う、うん……」
私もキッチンに入った。
431 :こなたの旅 31 4/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:28:05.23 ID:R0qhAASd0
 お茶の準備が終わった頃だった。玄関に人の気配を感じた。
かがみ「あ、来たわね」
かがみが玄関に向かった。
みなみ「こんにちは」
こなた「み、みなみ……??」
かがみ「時間どおりね、今日はよろしくお願いするわ」
みなみ「はい……」
いったいどう言う事なのか理解できない。
かがみとみなみは打ち合わせしたかの様な会話をしている。みなみは私がいるのに気がついた。
私と目が合うと会釈をした。
かがみ「あれ、一緒じゃなかったの?」
みなみ「あ、いけない……」
みなみは慌てて玄関を開けた。玄関から入ってきた小さな陰……
ま、まなみちゃん?
まなみちゃんがコソコソと小さい体を余計に小さくさせて入ってきた。
かがみ「まなみちゃん、今日はありがとう」
まなみちゃんは顔を赤らめて黙って頷いた。
こなた「何……何なの……分らないよ?」
かがみ「まなみちゃん、準備お願いね」
まなみ「はい……」
小さな声で返事をするとピアノ方に向かって歩いた。
こなた「ちょっと、かがみいったい何をするつもりなの、教えてよ……」
みなみ「かがみ先輩……まだ何も教えていなかったのですか?」
かがみ「そうよ、話したら絶対に来ないからな」
こなた「……な、何で?」
かがみ「今日はまなみちゃんのピアノの演奏を聴いてもらう……」
こなた「ええ??」
いったい何を言い出すかと思ったら演奏会って……
こなた「……誰かに会わせてくれるんじゃなかったの?」
かがみ「会わすわよ、みなみ……」
かがみはみなみの方を向いて頷いた。みなみも頷いて返した。
みなみ「これからラフマニノフ前奏曲作品23−4の演奏会を行います」
こなた「演奏会……話が違う……」
かがみ「こうしないと来ないからな、よもや帰るなんて言わないわよね」
かがみは演奏の準備をしているまなみちゃんの方を向いてから私を見て睨んだ。
私もまなみちゃんを見た。ピアノの前に座り静かに目を瞑って精神統一をしていた。
これで帰ったらまなみちゃんは……
こなた「……かがみのいじわる……」
かがみ「そうそう、それでよし、でも約束は守っているわよ、セルゲイ・ラフマニノフにこなたを会わせる」
こなた「らふま……のふ……って知らないよ……そんな人」
みなみ「以前ここでまなみちゃんが演奏した曲……覚えていません?」
以前ここで……
考えた、以前此処で……そういば何か演奏していたっけ。
確か……凄く忙しそうな曲だった……
こなた「もしかしてあかずきんちゃんと狼の曲、練習曲とか言ってた?」
みなみは頷いた。
かがみ「覚えているじゃない、でも今回はその曲の事は忘れて」
こなた「……忘れてって……私に音楽、クラッシックなんか聞かせたって何も起きないよ……」
かがみ「そう構えるな、素直に聴けばいいだけよ」
こなた「素直にって……難しいよ」
かがみ「そう私だってクラッシックはそんなに聴く方じゃない、でもねまなみちゃんの演奏を聴いて変わった、それを
    こなたにも体験して欲しい」
こなた「そんな事言われても……」
みなみ「誰かがこんな事を言っていました、人が生まれて最初にする遊びは何かと……それは、絵を描く、踊る、歌う……
    でも周りの影響で次第に描かなくなり、踊らなくなって、歌わなくなる」
かがみ「つまり音楽は人間の根源にある感情表現なのよ、これはお稲荷さんには無いもの、それを使わない手はないわよ、
    こなたにだって分る」
こなた「そうかな……」
「こんにちは……」
玄関の方から声がした。
かがみ「どうぞ、待っていたわよ」
あの声は……声のする方を向いた。かえでさん……
かえで「久しぶりね……全く、一度も見舞いに来なかったのはあんただけだったわ」
こなた「え、あ、お久しぶりっス……」
かがみ「こなたはそんな奴よ」
かえで「知ってる!!」
こなた「い、いや、本当はお見舞いに行くつもりで……でもね」
かえで「もういい、あんたの言い訳は長くてたまらないわ」
かがみ「そう、その通り!!」
かがみとかえでさんが大笑いした。
むぅ、まったくもって何も言えない。
かがみ「もうお身体はいいのですか?」
かえで「つかさの薬のおかげで母子とも健康そのものよ」
かがみ「それは良かった」
かえでさんはピアノの近くの席に座った。
かえで「まなみちゃん、今日はよろしくね」
まなみちゃんは小さく頷いた。
確かにまなみちゃんの手前ここで帰るのはまずいな。何とか寝ないで済めば良いけど……
432 :こなたの旅 31 5/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:29:27.59 ID:R0qhAASd0
 覚悟を決めてはかえでさんの隣に座った……
そういえばかえでさんはどうして此処に来たのだろう。まなみちゃんの演奏会を聞きに来た。
ただそれだけなのかな。
かえでさんは多趣味だから音楽鑑賞くらいはしているだろうし、何かの楽器を演奏していても不思議じゃない。
かえで「何かしら?」
私と目が合った。
『いったい何で来たの?』
普段ならそう聞いていた。だけど何故か声が出なかった。
こなた「い、いえ……何でも」
かえで「ふふ、あんたらしくないわね、はっきり言いなさいよ」
私は黙って俯いた。かえでさんはクスリと笑うとピアノの方を向いた。
かえで「まなみちゃん、何時でもいいわよ」
まなみ「はい」

433 :こなたの旅 31 6/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:31:04.38 ID:R0qhAASd0
 まなみちゃんはゆっくりと両手を鍵盤に向けた。
ラフマニノフ前奏曲作品23−4、みなみはそう言っていた。
曲は静かにゆっくりと始まった。
この前聴いた曲とは全く違っている。ゆっくりとそして美しいメロディ……
曲は同じフレーズを繰り返しながら次第に音が力強くなっていく……まるで内に秘めた想いを何度も確かめながら膨らませていくような感じ……
そしてより力強くなりピアノ全体が震えるほど部屋全体が反響した、
そのままサビを聴かせて盛り上がると思った……でも違った。
短いフレーズが何度も続く。高音で終わってまた同じフレーズの繰り返し……
何だろう……これ……
続きが聴きたいのに繰り返す……もどかしい……先があるのに弾けないみたいじゃないか。
……まるであの時の私と同じ……
何度も言おうとしたけど言えなかったあの時の私……
そして曲はそのまま静かに終わってしまった……
434 :こなたの旅 31 7/6 [saga sage]:2014/11/23(日) 14:32:22.06 ID:R0qhAASd0
かえでさんは立ちあがっって大きな拍手をした。
かえで「素晴らしかった」
まなみちゃんは席を立つと私達に向かってお辞儀をした。
かえで「まなみちゃんの気持ちを素直に表したわね」
そう言うと私の方を向いた。
かえで「こなた、この後私の事務室に来なさい」
こなた「えっ?」
かえで「仕事の話じゃないから安心しなさい」
そしてかえでさんは店を出た。
かがみ「ありがとうまなみちゃん」
まなみちゃんはかがみのそばに寄った。そしてかがみは私に店の鍵を手渡した。
かがみ「後の戸締りよろしく!」
こなた「よろしくって……」
かがみ「あんたが何を感じたのか知らないけど私はこの曲で勇気を貰ったのよ……クラッシックなんか聴く機会なんて殆ど無いのに……
    まなみちゃんがピアノを始めたのはつかさの影響よね、そのつかさはけいこさんの影響をうけた……音楽を知らないはずのお稲荷さんが
    私達をラフマニノフに会わせてくれたのよ、何か感慨深いとは思わない?」
こなた「……」
私は何も分らない……
かがみはそんな私を見て微笑んだ。
かがみ「……それじゃ帰ろうか……まなみちゃん、」
まなみ「うん」
二人は店を出て行った。
かがみは私達二人のためだけにまなみちゃんを呼んだのだろうか?
あれこれ考えているうちに店に居るのはみなみと私の二人だけになってしまった。

 みなみはゆっくりピアノの椅子に座った。
みなみ「まなみちゃんの演奏で何を感じましたか?」
みなみはピアノを背にして私を見ている。立とうとしない私を促しているかな。
こなた「……何ていうのかもどかしかった……ためらっているみたい……もしかしてあの曲のタイトルってためらい?」
みなみは首を横に振った。
みなみ「あの曲にタイトルはありません作品23の4番……」
こなた「番号だけって、この前の練習曲にはあかずきんちゃんとかタイトルついてたじゃん?」
みなみ「彼、ラフマニノフは曲に表題をつけるのを嫌がりました、自分の作った曲を聴いてどう感じるのかは聴き手に任せたいと言う考だそうです、
    表題を付けるとそれに執着してしまい聴き手の自由な感性を妨げる……あの練習曲のタイトルは別の人が付けたそうです、
    ですから泉さんがためらいと感じたのならそれはためらいです、例え迷い、別れ、別な物に感じても間違えではないです」
こなた「だからかがみは何も言わないで私をここに呼んだ?」
みなみ「そうですね……」
みなみはピアノの方に向きを変えて微笑んだ。
みなみ「でも……泉さんが「ためらい」と言ったのは嬉しかった、まなみちゃんはおそらくそれを意識して弾いたと思う」
こなた「それってどう言う事?」
みなみ「……来週、まなみちゃんの編入試験があって、それに向かって幾つか曲を選んでいましたけど…さんtね」
こなた「編入って、もしかしてスカウトされたから?」
みなみは頷いた。
こなた「試験があるんだ、そのまますんなりっていかないの?」
みなみ「教授は頑張ってくれました、でもまなみちゃんは大きなコンクールや試験を受けていないので学校側から試験を合格しないと許可出来ないって……」
こなた「実績か……それでまなみちゃんは編入する気になったんだね」
みなみは首を横に振った。
みなみ「まだまなみちゃんから正式に受けるとは聞いていない……」
こなた「それはそうだよ、慣れた学校を離れるのはね、そこには友達だって居るだろうし別れるのは……」
その時気付いた。まなみちゃんはためらっている。その想いをさっきの曲に込めていた……
分る、分るよ。まなみちゃん。
小学3年で別の学校。新しい学校でうまくやっていけるのか。そもそも試験で合格するのか。期待と不安……想像するのには容易すぎる。
それを分らせたのはあの曲……
みなみ「それでこの演奏会で泉さん達が何かを感じたのなら、この曲を試験で演奏するようにまなみちゃんに言おうと、そう私は決めた……
    それが私の出来る最後の仕事……」
悲しそうにピアノを見つめるみなみ……
こなた「きっと合格すると思うよ、少なくとも私はあの演奏に感動したから」
みなみ「そうですか……それをまなみちゃんが聞いたらきっと試験を受ける気になってくれるかもしれない……」
みなみはピアノの鍵盤にそっと手を添えている。
こなた「もう一回あの曲聴きたいな……」
みなみ「え?」
こなた「弾けるんでしょ?」
みなみ「でも……まなみちゃんほど上手くは……」
こなた「それでも聴きたい……」
みなみは深く座りなおした。そして弾き始めた。
そして分った。みなみもまたためらっていたんだなって……

ラフマニノフの調べは部屋いっぱいに静かに、美しく響き渡った。
今は何も考えずただその調べに酔いしれた。

つづく
435 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/11/23(日) 14:34:24.53 ID:R0qhAASd0
以上です。 全部で7レスでした。

ラフマニノフ前奏曲23の4番。
こなたの心境をみごとに表現していると思い採用しました。
ソースはネットにあると思うので是非聴いてみて下さい。
自分の下手な表現より聴いた方がより分ると思います。

この後すぐに纏めます。
まとめではページを更新して「ページ7」にするつもりです。
436 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/12/06(土) 08:52:08.70 ID:ykYipwgU0
「つかさのネタノート」の作者です。
先月久々にまとめサイトに書き込みがあったと思ったら自分の作品で驚いた。
4年位前の作品なので半分忘れていました。
でもかなり苦労して書いた記憶があります。

誰か漫画にしてみませんか?
なんてね、自分に絵心があれば描いちゃうんですけどね。
437 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/12/08(月) 19:58:40.34 ID:k6kLpwfF0
とうとう読んでくれている人も居なくなってきたみたい。

更新が遅すぎたかな。

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2014/12/20(土) 22:19:06.43 ID:Sr4Z8mrv0
まとめサイトでコメントをよく書いてくれていたチャムチロさん。
最近書き込みが無くなったけどこのサイトの作品を一通り読んでしまったのかな。
自分の作品にも何作かコメントを入れてくれていたのでいろいろと参考になったしモチベーションも上がった。
スレを見ているかどうかはわかりませんが。どうもありがとう。
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2014/12/29(月) 10:54:34.54 ID:Nt1VXdG/0
「つかさのネタノート」をpixivに投下してみました。
もし良かったらどうぞ
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4721863

「こなたの旅」の続きは作成中ですのでもうしらばくお待ち下さい。
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2014/12/31(水) 19:18:09.72 ID:G3HxGJBSO
保守
441 :謹賀新年 [saga sage]:2015/01/01(木) 02:29:42.39 ID:dKyIPDXH0
こなた「あけおめことよろ」
かがみ「あけましておめどうございます」
かがみ「……」
こなた「どったの?」
かがみ「あんた去年も同じ事言っていたよな、挨拶なんだから略すなよ!」
こなた「まぁまぁ一年の計は元旦にありって言うじゃん」
かがみ「それは全く関係ないだろ!」
こなた「元日早々からそんなに怒っているとろくな事ないよ」
かがみ「怒らせてるのはこなただ!!」

つかさ「去年も同じ様な展開になった様な気がするけど……」
みゆき「気を取り直して……それでは私達もご挨拶をいたしましょう」
つかさ・みゆき「あけましておめでとうございます」


っと言う事で今年もよろしくお願いします。
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/01/02(金) 14:36:46.36 ID:C5m941lV0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
9レスくらい使用します。
443 :こなたの旅 32 1/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:38:14.94 ID:C5m941lV0

32、

 演奏が終わるとみなみは溜め息をついた。
みなみ「ふぅ〜」
こなた「すごく良かったよ」
みやみ「ありがとう……」
私の言葉を受けてみなみの表情は嬉しいようには見えなかった。
こなた「やっぱり躊躇ってるんだ?」
みなみ「はい……」
こなた「まなみちゃんの事で?」
みなみ「編入が決まれば私の手を離れてしまう」
こなた「別に良いんじゃないの、まなみちゃん学校の授業がつまらないとか言っていたし」
みなみは更に顔が曇った。
みなみ「それは私も聞いていた、だけど……授業と生活ではまた違うもの」
授業と生活……
こなた「それって学校の友達……かな?」
みなみ「小学生の行動範囲は狭いもの、学校が違えばそれは別れを意味する……」
こなた「別れ……」
まなみちゃんの演奏といいみなみの演奏といい……同じ想いなのか……
こなた「そういえば私は転校した事なかったかな、別れといえば小中高大の卒業くらい……それにこうして卒業後も皆と会えるし……泣いちゃうほどの別れなんて」
みなみ「それは私も同じ……彼女の気持ちや想いを考えると……」
こなた「それがさっきの演奏に込められているとしたら……」
暫く私達は何も話さなかった。話せなかった。
444 :こなたの旅 32 2/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:39:25.14 ID:C5m941lV0
 黙っていてもどうにもならないので店の片付けをし始めた。みなみはピアノの前に座ったまま話し出した。
みなみ「私は酷い事をしてしまったかもしれない、あの曲を試験の課題に選んでしまうなんて……」
私は片づけをしながら話した。
こなた「みなみが選んだの?」
みなみ「彼女と練習中に急用ができて暫く席を空けた、そして戻ってくる部屋からピアノの音が……教えてもいないあの曲が聞こえた、
    そのピアノの音色に私の心を貫いた……」
こなた「まなみちゃんがためらえばためらう程あの曲が映えるって訳ね……凄いじゃん、自分の感情を音楽で表現できるなんて、受かったも同然だよ」
みなみ「でもこれがまなみちゃんの為になるのか、まなみちゃんの本心はどうなのか……」
こなた「……そんなのは受かってから決めれば良いじゃん、編入が決まってからや〜めたでも良いんでしょ?」
みなみ「え?」
みなみは頭を上げて私の方を向いた。
こなた「ダメなの?」
作業を止めてみなみの方を向いた。
みなみ「……教授や学校関係者のご尽力を無にしてしまう……大変非礼で……」
こなた「それで良いジャン、どうせ子供だし、大人が謝ればいい事だし、その位でまなみちゃんの実力が下がるわけない、うんうん」
私は片づけをまた続けた。
みなみはゆっくり席を立つと私の横に来て洗った食器を拭き始めた。
みなみ「手伝います……」
こなた「どうも〜」
暫くするとみなみはクスクスと笑い始めた。
こなた「どったの?」
みなみ「い、いえ……別に」
こなた「別にって……思い出し笑いなんてやらしい〜」
みなみ「その様なものでは……」
こなた「それじゃ何で隠すの?」
ちょっとからかった感じで質問してみた。みなみは真面目な顔に戻った。
みなみ「さっきの泉先輩の話……」
こなた「私の話?」
みなみ「ええ……あんな助言が出来るのに……」
こなた「助言が出来るのに、何?」
みなみは言うのを少し躊躇ったのか少し間が空いた。
みなみ「あんな助言が出来るなら此処に来なくても……告白できたのでは?」
こなた「ほ、ほぇ、ど、どこでそんな話しを?」
みなみ「え、えっと、それは……」
言い難いのか、もう誰かは考えなくても判る。
こなた「かがみ、かがみだな!!」
みなみは黙って頷いた。
こなた「……まったく、かがみはつかさより性質(タチ)が悪い……」
みなみ「……素晴らしいと思います、そして、成功をいのっています……」
こなた「あ、ありがとう……」
こう言われるとそう言うしかないじゃないか……
445 :こなたの旅 32 3/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:40:29.62 ID:C5m941lV0
 そしてほぼ片づけが終わった頃。
こなた「捗ったね、手伝いありがとう」
みなみ「いいえ……」
私は店を出る支度をしようとした。しかしみなみはキッチンから出ようとはしなかった。
私は立ち止まりみなみの方を向いた。
みなみ「ゆたかからは止めたれていたけど……話さないといけない……」
こなた「え、どうしたの、急に改まって……」
みなみの顔がさっきよりも引き締まっている。
こなた「な、なにかな……」
みなみ「ひよりは……」
ひより……この名前が今出るとは思わなかった。
みなみ「ひよりは泉先輩が窮地におちいっているのは自分のせいだと責めている……」
こなた「責めているって……なんかやらかしたっけ……」
そういえばあの件以来、貿易会社潜入してから一度も会っていない。
みなみ「泉先輩に無責任な推理を話してしまって、それが泉先輩を傷つけてしまった」
無責任な推理って……
まさかメモリー板を運ぶときにひよりが言っていた。
こなた「まさか、神崎さんの正体は真奈美さんじゃないとか言ってたやつ?」
みなみ「はい……」
私は笑った。
こなた「はは、なに言っているの、そんなの関係ない、ひよりが言わなくても私は……」
みなみ「そう私もひよりに言った……だけどひよりはそうは思っていない」
ひよりが一度も私に会わないのは仕事や結婚だけの理由ではなかったか……ひよりらしくもない。
こなた「分った、この件が片付いたら話すよ」
みなみ「片付いたら?」
こなた「そうそう、今会ってもどうにもならないしね、結果はどうであれまず私が決めないと先に進まないよね」
みなみ「……やっぱり話してよかった……」
こなた「まなみちゃんの演奏のおかげかも」
確かにあの曲を聴いてからなにかが変わったような気がする。
みなみはキッチンから離れ店を出る準備をした。
みなみ「家まで送りますけど……」
こなた「いや、かえでさんに呼ばれているしね」
みなみ「帰りの足は?」
こなた「そういえば早番だったけな、つかさにでも送ってもらうからご心配なく、ところでかえでさんは何でこの演奏会に参加したの?」
みなみ「すみません……それは聞いていません」
なるほど、本人に直接きかないと。
こなた「今日はありがと」
みなみ「私はこのまま帰ります」
こなた「おつかれさん」
みなみは店を出た。この店に入って来た時の表情とはちがって足取りが軽やかになっているように見えた。
さてと、私も店を出るかな。
全ての戸締りをして店を出た。
446 :こなたの旅 32 4/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:41:22.35 ID:C5m941lV0
 みなみは言った。そう、その通り、私はとっくに告白をしている筈だった。
何故出来なかった。
かがみの言うような恥ずかしさが全く無かったと言えばそうでもない。それに彼の反応が怖かったのも事実かもしれない。
だけど……それだけで言えなかったのか……
あれ?
そもそも私は誰かに告白なんかした事あったっけな……
……
なんて考えているうちにレストランかえでに着いてしまった。

つかさ「いらっしゃい……あれ、こなちゃん」
店に入るとつかさがホールをしていた。つかさが接客をしていたなんて……
こなた「はいこれ」
私はつかさの店の鍵を渡した。つかさは鍵を受け取った。
こなた「帰りに私を家まで送ってくれないかな……」
つかさ「うん」
こなた「どうも……ところでかえでさんは?」
つかさ「事務所にいるよ」
私はそのまま事務所に向かった。
つかさ「こなちゃん」
こなた「ん?」
立ち止まって振り向いた。
つかさ「えっと……」
客「すみません〜」
つかさ「あっ……あとでね」
つかさは慌しくお客さんの所へと向かった。
この状況じゃ話すのは無理だよ。
さとて、こっちも呼ばれているし行こう。
447 :こなたの旅 32 5/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:42:47.07 ID:C5m941lV0
こなた「はいりますよ〜」
事務室のドアを開けた。
かえでさんは事務机に座ってなにやら作業をしていた。後ろを向いているので詳しくは見えなかった。
完全に部屋に入りドアを閉めるとかえでさんは座ったまま椅子を回転させて私の方を向いた。
そして私をじっと見た。
かえで「全く、よりによってこなた、あんたまでお稲荷さんなのか、つかさといい……」
そんな話をしているって事は、経緯をつかさかかがみから聞いたに違いない。
更にかえでさんは私をじっと見る。
かえで「こなたの勤務態度から見て、老若男女のお客様の受け答え、男性スタッフに対する反応、どれも分け隔てなくこなしている、
    それに学生時代も男子生徒と普通に会話していたってつかさが言っていた、当時のつかさはそんなこなたを羨ましがっていたそうだ……
    とても告白できないような人には見えないが……」
そう……私もそう思っていた。
こなた「好きとか嫌いとかそんな感情がなければ誰とでも話せるよ」
かえで「ほぅ、好きでも嫌いでもなければね……」
そう思っていたから直ぐに言えると思っていた。だけどいざ言おうとすると声が出なかった……
こなた「……実際、好きな人の前では全く話していなかったし……声もかけられなかった」
かえで「それは学生時代の話か、初恋?」
こなた「う、うん……」
中学生時代を思い出した。確かに好きだった記憶がある。けど結局何一つ話せなかった……
かえで「まぁ、それは理解出来ない訳じゃないけどね……」
かえでさんは立ち上がった。
かえで「それより、何故彼なの、何故好きになった、少なくともこなた、うんんあんただけじゃない、私達を翻弄して、
こなたを2回も潜入取材させえて、挙句の果てには命の危険にさえ遭った、憎む事はあっても好きになるなんて……」
こなた「……それは神崎さんじゃなくてあやめさんがやった事だから」
かえで「あやめさんって……神崎が化けていただけじゃない……」
こなた「彼女が生きていたらきっと同じ結果になっていたと思うよ……」
かえで「成るほどね……分ったわ」
かえでさんは腕組みをして頷いた。
こなた「成るほどって?」
かえで「あんたが告白出来ない理由が分ったわ、あやめ、神崎あやめのせいだ」
こなた「あやめさん……?」
かえで「あんたはあやめさんと争うのが嫌なんでしょ?」
こなた「争うって?」
かえで「恋敵って言ったら分る?」
こなた「え、あ、何でそれを……」
かえで「かがみさんから聞いたわよ」
……またかがみか……もう私のプライベートは無いのも同じだ……
かえで「折角出逢って友達になったと思ったらもうとっくに亡くなっていて、しかも恋のライバルになってしまった
    それがこなたを躊躇わせている……違う?」
こなた「違うって言われても……分んないよ」
かえで「自分自身で自覚していないだけよ……質問を変える、やめさんが生きていたとしたら何もしないで諦められたか?」
あやめさんが生きていたら……考えた事もなかった。
こなた「生きていたら……とてもじゃないけど彼女と争って勝てる気がしない、無理ゲーだよ……」
かえで「無理ゲーね……もし神崎さんが化けたあやめさんが本物と変わらないとして……私の目からはこなたは良い線行ってるわよ、悲観するな」
こなた「慰めてくれなくても……やり手の記者とレストラン店員じゃ……」
かえで「慰めているつもりはないわよ、私は私なりに客観的に言っているつもりだけど」
こなた「でも……」
『バン!!』
かえでさんは私の背中を叩いた。
こなた「ぐへ、い、痛いよ……」
背中を擦ろうとしたけど両手が背中に届かない。
かえで「焦れったいわね、こなた、あんたはあやめさんには無いものを持っているじゃない」
こなた「……私が何を持っているって……?」
かえで「こなたは生きている、それは何より強い武器じゃない」
こなた「生きている……」
かえでさんは大きく頷いた。
かえで「亡くなった人には思い出しかない、思い出でしか逢う事ができない、でもあんたはこれから思い出をつくれる」
こなた「思い出……」
お父さんと正子さんはそれで……
私は何か後ろめたさみたいなものが無かったのか、それが気になっていた。
それはそのまま私とあやめさんにもって……そう思っていた。
だけどお父さんと正子さんはそうじゃない。かえでさんの言葉と同じだったとしたら……
かえで「心の奥に仕舞っておくって方法もあるけど……それはこなたらしくない、告白しちゃいなさいよ、その後は……そうね、
    自棄酒、自棄食いの付き合いくらいはしてあげるわ、もちろんこなたのおごりでね」
こなた「……失敗前提で話すのかな……」
かえで「ふふ、その方が気は楽じゃない?」
かえでさんは笑った。
確かにそう考えると少し気が楽になったような……
448 :こなたの旅 32 6/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:44:07.47 ID:C5m941lV0
かえで「どうだ、ゲームより面白いでしょ?」
こなた「ちょ、これはゲームじゃないよ」
かえで「ほぅほぅ、こなたからそんな言葉が出るとは思わなかったわ」
こなた「私だってゲームと現実の区別くらいはできる」
かえで「それでよし、私からはもう何も言う事はない、後は好きになさい」
かえでさんは席に座ると回転させて事務仕事に戻った。
こなた「……そういえば、聞きたい事が……」
かえで「なに?」
こなた「なんでまなみちゃんの演奏を聴きにきたの?」
かえでさんの作業が止まった。
かえで「……これは……仕事の話になる、こなたは休日でしょ、仕事の話は嫌でしょ?」
こなた「確かに嫌だけど、ここはもう仕事場だし、こんな所に呼んでおいてそれはないよ」
かえで「……そうね、確かに……そう」
言いたくないのか、かえでさんもまた何かに躊躇っていたっているって事なのかな。
こなた「話せないなら無理には……」
かえで「ごめんなさい……近いうちに話す」
かえでさんが謝るなんてめずらしい。これ以上聞いてもしょうがないか。
こなた「それじゃつかさの仕事が終わるまで更衣室で待ってます」
私が事務室を出ようとした。
かえで「待ちなさい」
こなた「はい?」
かえで「まなみちゃんの演奏……どうだった?」
こなた「どうだったって……とっても良かった」
かえで「今時小学生でも難曲をスラスラ演奏するのは珍しくも無い、だけど彼女は、かえでちゃんが他とちがうのは
    叙情的な表現まで出来ている……あの曲を彼女なりに理解して更に感情も込めるなんてプロのピアニストでも難しいわよ」
こなた「きっと先生が、みなみの教え方が上手かったんだよ」
かえで「そうね先生の指導がよかったかもしれない……だけどこなた、あんた演奏が終わってから何もしないでボーとしていたじゃない?」
こなた「ボーとしていた?」
かえでさんは椅子を回転させて私の方を向いた。
かえで「演奏が終わって感動したなら拍手をするのが礼儀でしょ……」
こなた「あ、それは……あまりにもまなみちゃんの演奏が凄くて……」
かえで「まなみちゃんこなたを見ながら悲しそうにしていたわよ」
しまった……確かに私は拍手をしていなかった。
こなた「ど、どうしよう」
かえで「……どうしようって私に聞くな……つかさと帰るならやる事があるでしょ?」
こなた「まなみちゃんに会いに行く」
かえで「それで良い、同じ想いがあるならお互いに通じるものがあるかもね」
こなた「サンキュ、かえでさん」
かえで「いいえ……行ってきなさい」

 確かにかえでさんの言うとおりだ。あやめさんはもう5年も前に亡くなっている。
それに私は私、あやめさんの代わりじゃない……
449 :こなたの旅 32 7/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:45:33.72 ID:C5m941lV0
 時間的にどのくらいだっただろうか。スマホのゲームで暇つぶしをしていたせいかかもしれない。
つかさの勤務時間が終わり私はつかさの車の前に居た。
つかさ「おまたせ〜」
つかさは車のキーを取り出した。
こなた「つかさ……ちょっといいかな、私の家に送る前にまなみちゃんに会いたいんだけど……」
つかさ「別にいいけど……どうして?」
こなた「い、いや……なんて言うのか、拍手を忘れちゃってね」
つかさ「拍手を……忘れた?」
つかさは首を傾げた。
こなた「かえでさんが感動したら拍手しなきゃだめって言うから、会ってちゃんと拍手しないとね」
つかさ「そうなんだ〜」
つかさは車のドアを開けようとしたけど止めて私の方を向いた。
つかS「まなみ……編入したらどうなるかな……」
珍しくつかさが凄く悩んだ顔をしている。
こなた「……まだ試験に合格していないんでしょ、まぁ素人の私が凄いって思えるくらいだから合格はするとは思うけどね」
つかさ「まなみも悩んでいるみたいで……私、どうしようかなって……」
こなた「母親が困っちゃ子供はもっと困っちゃうんじゃないの?」
つかさ「そうだけど……」
こなた「ひろしはどう言っているの?」
つかさ「まなみの好きなようにすれば良いって……」
まぁそれはそうだなその通り。
つかさ「だけどまだ小学生なのにそんな事決められるのかなって、私が小学生の頃なんて……」
こなた「私がその頃はゲームばっかりしてたかな……」
そう考えるとまなみちゃんに決めさすのは酷かもしれない。
こなた「こうしててもどういようもないじゃん、行こうよ、会って話してみればいいと思うよ」
つかさ「う、うんそうだね」
つかさは車のドアを開けた。

 つかさの車は動き出した。
もうつかさの運転には慣れてしまった。ゆい姉さんの運転だと思えばどうって事はない。
……
見慣れた町並み……通り過ぎる景色。
何度も何日も……何年もこうしてきたけど……
そういえば私はつかさに一度も聞いていなかった事があった。
つかさも自分からは話そうとしない。だから聞かなかった。
違う、聞けなかった……聞く事ができなかった。だけど今なら……
こなた「つかさ……ひろしに告白したよね……どうやって告白したの……」
文章にしたらたった一行で済むような事なのに……
つかさ「え、え……こ、告白……」
急にどもってしまった。顔も少し赤くなっているみたいだった。
こなた「……今更照れる事なの、もう済んだ事なのに?」
つかさ「そんなの言ったって、恥ずかしいよ……」
こなた「そんなに恥ずかしくてよく告白できたね?」
つかさ「え、だって……」
そう、私はその理由が聞きたい。私はつかさをじっと見てつかさの答えを待った。
つかさ「だって、好きだから……」
こなた「好きだから?」
つかさ「うん!!」
こなた「それだけ?」
つかさ「えっ、他に何か必要なの?」
驚いた顔のつかさ。
逆に質問されてしまった。他に何が必要なのか……
私が何も言えないのを心配したのか私よりも先につかさが放し始めた。
つかさ「すっごく恥ずかしかった、だけどそれより私の想いを伝えたかったから……
    こなちゃん、神崎さんが好きなんだよね?」
こなた「え、あっ……う、うん……」
つかさ「それで神崎さんはかんざきあやめさんがすきだったんだよね?」
こなた「……う、うん……」
つかさ「私……こなちゃんだったとしてもやっぱり神崎さんに言うと思う……」
こなた「私から言えばつかさは勇者そののだよ……真似できそうにないよ」
つかさ「だったら勇者になっちゃえば?」
こなた「……はは、つかさは単純でいいよ」
……こんな話、今までした事がなかった。
もっと早くしていればもうちょっと勇気が上がったかもしれない。
確かにあの音楽を聴いていなかったらこんな話すら出来なかった。
つかさ「私、ひろしさんと一緒になるなんて考えてもなかった、こなちゃんに助けられたしね……」
でも告白をしなかったらつかさはひろしと一緒にはなれなかった。
こなた「ふふ……そうか、なるほど……」
つかさ「こなちゃん?」
こなた「こんどはつかさが私を助けてくれるかもね」
つかさ「え、もしかして告白する気になったの?」
こなた「……出来るかどうかは分らないけど……やってみる」
つかさ「すごい、すごい、がんばってね」
さて、そうとなったらまなみちゃんの件を片付けないと。
そんな私の思いを知ってか知らずかつかさはアクセルを強く踏んだ。
450 :こなたの旅 32 8/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:47:14.41 ID:C5m941lV0
つかさ「ただいま〜」
つかさの家に着いた。まずはつかさが家の中に入った。しばらくするとつかさが玄関から出てきて私を家に入れた。
こなた「おじゃましま……ってかがみ?」
玄関の中に入るとかがみが立っていた。
かがみ「来たわね、来たってことはまなみちゃんに会いに来た、ちがう?」
こなた「その通りだけど……まなみちゃんは?」
かがみは階段の方を向いた。
かがみ「私がここに住んでいた時の部屋にいるわよ、夕食を過ぎても出てこないのよ……」
つかさ「こなちゃん……」
かがみ「こなた……」
心配そうに私を見るつかさ。少し怒っている様にも見えるかがみ。
こなた「分ってる、つかさ……かがみ」
思っていたより深刻なようだ。私は階段を上がった。かがみの部屋改めまなみちゃんの部屋の前に立った。
『コンコン』
ノックをしたけど反応がない。構わずゆっくりと扉を開けた。
こなた「こなただよ……入っていいかな?」
机に座っているまなみちゃん。ゆっくりこっちを見ると黙って頷いた。
私は一歩部屋に入って扉をゆっくり閉めた。
まなみちゃんの表情が沈んでいる。この重い雰囲気……
さて、どうしたものかな……
考えても何も出てきやしない。
ここは思った通り、感じた事を言うしかないか。
こなた「さっきやった演奏会……今更なんだけど……ごめんね拍手できなくて……」
まなみは私を見た。
まなみ「……演奏、ダメだった……から」
やばい、やっぱりそう思われている。
こなた「うんん、違う、本当に拍手出来なかった、あまりに凄い演奏だったから……出来なかった……」
まなみちゃんは疑いの眼で私を見ている。どうしよう……
こんな時は……言い訳になるかもしれないけどやるしかない。
私はまなみちゃんに近づいた。
こなた「隣……座っていいかな?」
まなみ「う、うん……」
私は隣に座った。こんな状況じゃなければゲームでもしている所
……まてよ、ゲームか
こなた「編入試験受けるんだってね?」
まなみ「う、うん……」
こなた「今の学校から離れるのは嫌なの?」
まなみちゃんは何も言わなかった。
こなた「まなみちゃん、ピアノはすきなの?」
まなみちゃんはなんで今更そんな事を聞くのみたいな驚いた顔をした。
こなた「演奏会とかとっても緊張しているし、つかさとかから無理矢理習わされたとかはないの?」
まなみちゃんは激しく首を横に振った。
なるほどね……
それならもう私からは何も言う必要はない。
こなた「実はね、今ゲームをしていてね……そのラスボスが強いのなんのって」
まなみ「げーむ、なんのゲーム?」
こなた「オリジナルロールプレイング」
まなみ「お姉ちゃんでも倒せないの?」
こなた「何も出来なくて逃げて帰ったくらいだからね……」
何も出来なかった。そのラスボスの名はためらい。
まなみ「すごく強いんだね……」
こなた「そう、強い、今まで戦ってきたラスボスのどれより強い……だけどね、
    さっきのまなみちゃんの曲を聴いたらね……勇気が出てきて中ボスを2体もやっつけたよ」
そう、かえでさんとつかさに聞けない質問をする事ができた。
まなみ「ほ、本当?」
まなみちゃんが少し笑った。
こなた「うんうん、本当、あともう少しなんだよね……あともう少しでラスボスを倒せそう、
もう一度あの曲を聴いたら倒せそうだよ」
まなみちゃんは立ち上がった。
まなみ「それじゃ聴かせてあげる……えっと、えっと……良いよって言ったらピアノの部屋に来て」
こなた「うん、よろしく」
まなみちゃんは小走りに部屋を出て行った。

451 :こなたの旅 32 9/9 [saga sage]:2015/01/02(金) 14:48:21.67 ID:C5m941lV0
 少し時間を置いて部屋を出た。
かがみ「やるじゃない、見直したわよ、こなたの今の状況をゲームに例えるなんて、
    それならまなみちゃんでも理解できる」
階段を上り切った所につかさとかがみが居た。
こなた「え、聞いてたの……趣味悪いよ……」
かがみ「素直に喜びなさいよ、私がこなたを褒めるなんて滅多にない事」
こなた「そうだね……ねぇ、かがみ」
かがみ「何よ」
こなた「この前言ってた作戦……考えてくれてるかな?」
かがみ「……なによ急に……それは考えているわよ」
こなた「それじゃ私に聞かせて、その作戦」
かがみ「こなた……あんた、裁判は当分終わらない、まだ時間はあるけどいいのか?」
こなた「まなみちゃんとの話しを聞いていたなら分るでしょ、もう少しなんだ、だから
    気が変わらない今のうちに白黒はっきりさせたいから……」
かがみ「そう、それなら……」
まなみ「良いよ〜来て」
奥の方からまなみちゃんの声がする。
こなた「その前に勇気をもろらってこないとね……」
かがみ「そうね……いってきな」
つかさ「ピアノの部屋はまつりお姉ちゃんが使っていた部屋だから」
こなた「ありがとう」
さて、行こう、私の最大作戦の始まりだ。


つづく
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/01/02(金) 14:52:47.87 ID:C5m941lV0
以上です。

次の投下で多分終了となります。
少し時間を下さい。多分春までには投下できると思います。
本当は去年で完結するつもりでしたが遅筆ですみませんでした。


pixivの件はこのスレの宣伝のつもりで投下しましたが今の所反応はありません。
しばらく様子を見て反応が無いようならpixivの作品は消す予定です。

この後すぐに纏めます。
453 :保守 [saga]:2015/01/17(土) 22:03:37.20 ID:kIebeLB/0
保守です。

書き込みが無い なので書き込みます。

感想等は抜きにして、「つかさの旅」シリーズを全部読んでくれている人はいるのかな?
全部と言っても完結したわけじゃないけど……
居るのかどうかだけ知りたいです。
ちなみに居ても居なくても書き続けますけどね。


ちなみに何かお題があれば作ってみてもいいですよ。
今の所参加者は一人だけですけどねw
454 :保守 保守 [saga sage]:2015/02/01(日) 23:39:18.60 ID:wi9fNth30
つかさ「どうしたの?」
こなた「いやね、このサイトを宣伝しようと思ってね……」
つかさ「そうだよね、最近誰も来ていないもんね」
こなた「そうでしょ、いくらなんでも寂しいからね……」
つかさ「それで、どうやって宣伝するの?」
こなた「このサイトの作品を宣伝に使って呼び込む」
つかさ「え、このサイトの……勝手に使っていいの?」
こなた「それは大丈夫、私の作品を使うから誰も文句は言わないと思う」
つかさ「それなら安心だね……それで効果は?」
こなた「ん……もう一ヶ月くらい経つけどわかんない、まとめのサイトでアクセス数を見ていると若干増えた?????」
つかさ「それならもっと作品を出してみたら?」
こなた「数じゃないような気はするけど……」
つかさ「他の作品は、こなちゃんいくつも出しているでしょ?」
こなた「どうかな、自分の作品の中でもアクセス数が多い方のを選んだのだけど……」
つかさ「適当にだしたんじゃないんだね……いろいろ考えているんだね……」
こなた「もう少し様子をみるか」
つかさ「そうだね」

宣伝の効果はまだわかりません。

保守でした。
455 :節分 [saga sage]:2015/02/03(火) 21:38:44.22 ID:C2UtSWWk0
つかさ「あっ!!」
こなた「どったの?」
つかさ「豆まき用の豆を買うのをわすれてた」
こなた「ん〜ほら、丁度そこに売ってるじゃん」
つかさ「ほんとだ……えっとどれにしよっかな〜」
こなた「ん、なんでそれに?」
つかさ「豆がいっぱいあるからだけど?」
こなた「ふ〜ん、つかさの家じゃちゃんと豆まきするんだね」
つかさ「え、こなちゃんはしないの?」
こなた「後片付けが大変じゃん、タンスの裏にでも入ったら取るの苦労するよ」
つかさ「そうだよね〜」
こなた「ねね、豆まきで鬼は誰がやるの?」
つかさ「おに?」
こなた「あああ、言わなくても判るよ、かがみしかいない」
つかさ「お、お姉ちゃん??」
こなた「そそ、あのツインテールはどう見ても角を隠すためのカモフラージュだよね
    それにツンデレにツインテールが多いのは鬼が潜在意識にあるって説が……???つかさ聞いてる?」
つかさ「う、後ろ……」
こなた「うしろ……うげ……」
かがみ「潜在意識がどうしたって?」
こなた「……鬼だ逃げろ!!」
かがみ「コラ、逃げるなってもう居ないし……全く油断も隙もありゃしないわ」

456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/06(金) 21:26:31.83 ID:3o5GIWJR0
避難所が停止されました。
今の所不便はないのでこのままにいたします。
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/08(日) 21:20:04.17 ID:GYe47cgu0
ここまで纏めた

まとめを避難所に報告しなかったから
停止になってしまったようです。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/13(金) 23:26:19.93 ID:PiiUov7x0
鬱・悲劇系がかなり読まれている。
需要があるわりには作品数が少ない。
っと言っても自分自身もこのジャンルは一作も作っていない。
書いていると自分自身が鬱になりそうで作れない。

459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/02/21(土) 20:23:00.20 ID:ujHdA9SU0
まとめサイトの
「作者別作品」の利用ルールを変更しました。
利用し易くしたつもりです。
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/01(日) 17:38:04.14 ID:mA+4OjlO0
保守
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/03/03(火) 08:16:59.31 ID:OTuc29UH0
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/08(日) 20:18:55.41 ID:xiAKYQ4t0
保守です。

このサイトの宣伝でpixivにまとめサイトの「卒業」を投下しました。
自分の作品はこれ以上投下しないつもりです。

投下しても良いって人がいましたらよろしくです。
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/25(水) 21:49:48.47 ID:sN6uUazg0
保守
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/03/30(月) 18:21:18.04 ID:bT5qy34n0
pixivの宣伝効果について

 書き手も読み手も増えていないようです。
 pixivに投下した作品自体もあまり読まれていないようですね。
 このサイトはらき☆すたを知っているか好きな人が来るが、
 pixivはらき☆すたを必ずしも知っている人だけとは限らない。
 それに、イラストについてプロレベルの作品が投下されているくらいなので
 同様に小説もかなりレベルが高いのかもしれない。
  自分みたいに素人で、しかも片手間で書いているような作品は無視されてしまうのかもしれませんね。

 宣伝はこのまま放っておきます。誰かが読んでくれる可能性が少しでも増えるのを期待します。

 「こなたの旅」は書いているのですがもしかしたらまだ終わらないかもしれません。
 待っている人も居ないようなのでゆっくり書きますよ(笑)

以上保守兼お知らせ



 
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/04/10(金) 20:19:44.87 ID:jGKWyb2SO
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/04/16(木) 23:29:12.87 ID:k0Qy1ckh0
何かお題があれば書き込んでください。

少し気分転換をしたい。
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/17(金) 20:16:03.22 ID:xpned+KK0
街頭インタビュー
これなら鬱系に……ならんやろ……
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/04/22(水) 21:23:32.39 ID:C4eF5yA40
街頭インタビュー 

難しいですね。

時間がかかるかも知れませんが考えてみましょう
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/04/25(土) 13:53:59.21 ID:6jJwiiZ40
おっすお願いします
470 :あぼーん :あぼーん
あぼーん
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/05/03(日) 10:28:06.44 ID:dn3EXBV2O
テスト
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/05/14(木) 00:24:19.02 ID:Gr7It1Vj0
テスト
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/05/26(火) 20:10:00.83 ID:7H8AceKh0
保守
474 :saga :2015/06/03(水) 07:16:10.96 ID:oJmifakKO
保守
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/06/07(日) 23:50:46.98 ID:YpOAYuhg0
それでは「こなたの旅」のつづきを投下します。

半年ぶりくらいかな?

14レスくらい使用します。
476 :「こなたの旅」 33  1/14 [saga sage]:2015/06/07(日) 23:54:46.07 ID:YpOAYuhg0
33

 私は神社の入り口で待っていた。
そう、すべてが始まった神社。つかさが狐にお弁当と取られた神社。真奈美さんがつかさを守った神社。かえでさんの親友が眠る神社。
かがみが呪いと闘った神社。あやめさんを散骨して弔った場所。
そしてつかさがひろしに告白をした場所……
いろいろな事があった神社。
ここ意外に告白する場所を思いつかなかった。
『ピッ!!』
スマホの停止ボタンを押してイヤホンを耳から外した。店で買ったラフマニノフ前奏曲23の4番……
これで何回目かな……
そしてそのついでに時間を確認した。
まだ約束の時間まで30分以上ある。
まだ音楽を聴いている時間があるけど……ああ、もうスマホの電池が残り少ない。
やれやれ……ちょっと聴きすぎたかな。

今までこんなに早く待ち合わせ時間に来た事なんかなかったのに……
イヤホンをポケットの中に仕舞った。
何度聴いてもまなみちゃんの演奏はプロの演奏と比べても引けを取らない。
そういえばまなみちゃんの演奏を聴いてからもう一ヶ月も経ってしまった……
477 :「こなたの旅」 33  2/14 [saga sage]:2015/06/07(日) 23:56:14.03 ID:YpOAYuhg0
こなた「ぶらぼー!!」
私は心から拍手をした。まなみちゃんは照れくさそうにして私にちいさくお辞儀した。
こなた「やっぱり凄いや……みなみ先生のより良いよ……い、いや、これは本人には言わないでね……」
なまみちゃんは笑った。
まなみ「ふふ、どうしようっかな〜」
こなた「え、マジ?」
まなみ「うっそだよ〜」
こなた「む、むぅ……」
まなみ「どうだった、勇気出た?」
まなみちゃんは私に近づき顔を覗き込むように見た。
まなみ「私もボス倒すところみたいな〜」
こなた「あ、それは出来ないよ」
まなみ「え〜何で〜?」
どう言おうか悩んだ。下手な事を言えば余計ややこしくなる。それは分っていた。子供に誤魔化しは通用しない。
こなた「ん〜なんて言ったらいいのか……ラスボスは目に見えないから、私以外の人には見えないんだよ……だからまなみちゃんが一緒に来ても見えない」
まなみちゃんはしばらく私の顔を見ていた。
解ってくれただろうか……。
まなみ「見えない敵……あっ!! それならもっと勇気が必要だね」
何かを思いついた様に喜びながらピアノの前に座った。
片手を鍵盤に乗せると低い音から高い音へと手を滑らすように奏でた。そして最後の鍵盤で動きを止めた。
まなみ「こなたお姉ちゃんに勇気が出る曲……思いついたから……」
こなた「思いついた?」
まなみちゃんは何も返事をせず両手を鍵盤に乗せた。

 まなみちゃんはピアノを演奏し始めた。
聴いたことがない曲……
思いついた曲、まなみちゃんはそう言った。つまりまなみちゃんが即興で曲を作ったことになる。
もちろん私はそんなに音楽を聴いている訳じゃない。
今聴いている曲がオリジナルなのかどうかなんてわかるはずもなかった。
だけど……
ロールプレイングゲームでフィールドを歩いている時の様な……
行進曲みたいな……堂々としていて、それでいてわくわくするような……これから何があっても大丈夫って安心感。
標題を付けるなら『勇気』って感じ。まさしく応援歌。
そんな曲だった。
もうこの曲がオリジナルかどうかなんてどうでもよかった。それよりもまなみちゃんが私のためにピアノを弾いている。
小刻みに鍵盤をたたく小さな手、一所懸命に弾いている。それだが熱く私に語りかけてくる。
そして曲は堂々と終わった。
478 :「こなたの旅」 33  3/14 [saga sage]:2015/06/07(日) 23:57:26.79 ID:YpOAYuhg0
こなた「……すごい……凄いよ、まなみちゃん!!」
私は思わず立ち上がった。まなみちゃんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。
こなた「ありがとう、もう大丈夫」
まなみ「がんばってね……」
そう言うとピアノに置いてあったノートを手にした。
こなた「なに?」
まなみ「さっき演奏した曲を書いておかないと……忘れちゃうから……」
ノートの中身を見ると五線譜におたまじゃくしを書いていた。
これでまなみちゃんが弾いていた曲はオリジナルなんだなって判った。
まるで文章を書くみたいにスラスラと……
まなみちゃんにとっては文章を書くみたいなものかもしれない。
こなた「それじゃ私は行くよ……かがみが待っているから」
まなみ「かがみおばさん、まだ居たの?」
こなた「うん、今回は私の参謀になってもらう……」
まなみちゃんは立ち上がった。
こなた「いいよ、そのまま続けて、その曲、忘れないように、ちゃんと書いて、そして、全てが終わったらもう一回聴かせて」
まなみ「う、うん……」
まなみちゃんは座るとノートを手に取った。そして私は部屋を出た。

かがみ「いい顔になったわね、勇気を貰ったな」
部屋を出るとつかさとかがみが居た。
こなた「まぁね……お互いかもしれないけどね。」
かがみ「もう私なんか必要じゃないんじゃないのか?」
私は首を横に振った。
こなた「うんん、この前そう思っていたら全く何も出来なかった……だからお願い」
かがみは少し驚いた顔をした。
かがみ「……てっきりもう大丈夫って言うのかと思った……いいわ、それならやりがいがあるってもの」
こなた「行こう」
私は玄関に向かって歩き出した。
かがみ「その前に一つ言っておく」
こなた「ん?」
かがみ「私は恋愛経験がそんなにある方じゃない、いや、むしろこなたに近い方かもしれない、
見当違いや方向違いもあるかもしれない、それでもいいか?」
こなた「……他に誰に頼む、つかさ?」
つかさは目を真ん丸くして激しく首を横に振っていた。
こなた「私に近いなら、どうすれば良いのかわかるよね?」
かがみ「……それならもう何も言わない……あとはやるだけね……」
こなた「うん」
私達はお互いに頷き合った。
そしてかがみはいやな笑い方をした。
かがみ「まぁ、結果は目に見えている……心配するな、自棄食い、自棄酒くらいならつきあってやるから、もちろんこなたの奢りで」
つかさ「お、お姉ちゃん、そんな事言って……」
デジャブ……成るほどね、今まで気付かなかったけどつかさがかえでさんをあんなに慕っているのかかが解った。
そう思った一瞬だった。
こなた「そう思えば気が楽になる……でしょ?」
かがみ「え、あ……」
かがみの言おうとしていたのを先に言った。
かがみはキョトンとして私を見た。
こなた「さぁ行こう、一世一代の大作戦のはじまりだ」

 この後かがみは私を車で家まで送ってくれた。
そこでかがみは作戦を説明してくれるかと思った。だけどそれは違った。
その前に二人の人物と会ってほしいと言われた。
本当は作戦なんか無くて時間稼ぎしているだけじゃないのか。
そう思ったけど。今はそうは思っていない。
ゲームで例えればラスボスに戦いに挑む前に遣り残したサブイベントをクリアして
強い武器や防具を手に入れるようなもの……。
479 :「こなたの旅」 33  4/14 [saga sage]:2015/06/07(日) 23:58:57.82 ID:YpOAYuhg0
 その二人の内の一人、ひより……
演奏会から一週間後。私はひよりに会いに行った。
ひよりは潜入作戦が終わってから一回も会っていなかった。
いつもなら新しいネタを見せにどんなに忙しくとも週に一度くらいは顔を見せていた。
私の方から出向くのは滅多にない。
仕事場と兼ねているせいかひより達の家ではゆっくりと出来ないのもあったのかもしれない。
家に着くと漫画のスッタッフに案内させてひよりの部屋に向かった。
ゆたかは丁度出かけていなかった。私にとってはそっちの方がよかった。
部屋に入るとひよりは何をするわけでもなく机にすわってモニターを眺めていた。
何か絵をかいていた途中なのかボーとしている。それに私が居るのに気付いていない。
こなた「おっふぉん!!」
何度か咳払いしても気付く様子はない。よ〜し、そらなら……
こなた「それは何、新しい作品のキャラクター?」
ひよりはゆっくりと私の方を向いた。
ひより「いず……み…先輩……泉先輩!!! い、何時から此処に???」
こなた「何時からって……さっきから此処にいるよ」
ひよりは辺りを見回した。
こなた「スタッフの人に案内された、その人も出かけるって言っていたから今居るのは私達だけかな」
ひより「そ、っそっすか……」
ひよりはその場で俯いてしまった。まったくもってひよりらしくない。
こなた「それより新しいキャラクター見せてよ、最近遊びに来ないと思ったら何か企んでるな」
私はひよりを押しのけてモニターの前に立ってマウスを操作した。
こなた「可愛いね……二人並んでいるね……友人って設定なの?」
ひより「いや……双子の姉妹っス……」
こなた「双子ね〜全然似ていないじゃん、まるでかがみとつかさみたい……かがみとつかさ……もしかして?」
ひよりは頷いた。
ひより「もしかしてじゃなくその二人がモデルっス」
こなた「へぇ〜今度も私達がモデルって訳ね……」
ひより「前回は一部をちょっと貰っただけ……今回は私達とお稲荷さんの出来事をそのまま物語りに……」
こなた「そのままって……」
ひよりは私が言おうとしているのにに割り込んで話し始めた。
ひより「この話しをまともにノンフィクションだなんて誰一人思わない……当事者以外は……」
こなた「そりゃそうだけど……ゆたかはそれを承知してるの?」
ひよりは小さく頷いた。ゆたかも承知ってことはこの二人は本気だって事だな。
ひより「泉先輩は反対っスか……一人でも反対者が居たら止めようと……」
私は……どうなんだ?
こなた「……でも、かがみやかえでさん辺りが反対するんじゃないかな、それと元お稲荷さんとか?」
ひより「かがみ先輩、かえでさんは裁判が終わるのを条件で承認してくれた……元お稲荷さん達もメモリー板を処分するなら問題ないって……」
こなた「そ、そんなところまで進んでいたんだ……いやだな〜いつもならそう言う話は真っ先に私にしてたでしょ?」
ひより「え、ええ、そうでした……」
この時、ひよりの煮え切らない返事が引っかかった。その理由に心当たりが何個かあったけど教えてくれそうに無い雰囲気だった。
こなた「私がお稲荷さんと色々関わっているから?」
だから私は鎌をかけてみた。
ひより「……」
ひよりが口を閉じた。図星なのか。それなら……
こなた「もしかして潜入作戦の移動中、ひよりが私に話した事を気にしているの?」
ひよりは私の目を見たが何も話さない。
こなた「神崎あやめの正体が真奈美さんって話……違ってはいたけどお稲荷さんだったのは正解、それに随分前に私だって……」
ひより「違う」
こなた「違う?」
みなみが言っていたのと様子が違う。あの時の話しを気にしていたんじゃないのか。他にひよりが落ち込む理由が思い浮かばない。
こなた「違うって……他に何があるの?」
ひより「先輩は神崎さんを……その、何ていうのか……好意に思っていると言うのか……」
こなた「神崎さんね、うん、好きだよ、かがみからもう聞いているとおもったけど?」
ひよりはびっくりして飛び跳ねた。
こなた「なにをそんなに驚くの?」
ひより「え、い、いや、先輩から直接その様な返事が来るとは……」
こなた「返事?」
その時初めて気付いた。他人に誰かが好きなんて言ったのは。
無意識に近かった。何のためらいも無かった。
こなた「ふふ、まなみちゃんの勇気が少し効いて来たかな……」
でもそれは本当の勇気ではないって事はひよりと別れてから直ぐにわかった。本人に言わなければそれはただの会話にすぎない。
それでも私にとっては大きな飛躍だった。
ひより「好き……ですか……私はそれすら気付かなかった……」
こなた「ん、何のこと?」
ひよりはそれ以上言おうとはしなかった。
こなた「いやいや、神社の娘にお稲荷さんのカップル、どうあがいても勝てない」
ふざけ半分の私にひよりは珍しく私を睨んだ。
ひより「先輩は何を知ってるっスか?!!」
こなた「……あ……ご、ごめん、もう終わった事だから、もう済んだ事だと思って……
    まだ引きずっていたなんて……婚約したからてっきり……」
そして珍しく感情的になるひよりに謝るしかなかった。
ひより「婚約……なぜ知ってるんです?」
こなた「え、ゆたかから聞いたけど……あっ!!」
しまった。もしかしてこれは言ってはいけなかったのか。いや、それならゆたかは内緒にして言うはず……
ひよりは少し顔を赤らめた。
ひより「別に秘密にするつもりはありません、何れバレますから」
私はホッと胸を撫で下ろした。そんな私をひよりはじっと見つめた。
ひより「……今の先輩を見ていると、昔の自分を思い出してしまって……」
こなた「昔のひより? それって」
ひよりは頷くと昔の失恋の話しをしだした。
480 :「こなたの旅」 33  5/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:01:27.21 ID:b7iGww1s0
「お稲荷さん、まなぶさんとの恋、その中でゆたかとすすむさんとの恋も語られた。
もちろんこの話の大筋はかがみから聞いている。
だけど本人から聞いたのは初めてだった。
初めてのデート。かがみを助けようとした事……
私達が以前にいろいろな事件に巻き込まれていた頃、
同じようにひより達にもいろいろな事件があった。それもお稲荷さん絡みの事件……
かがみが詳しく話さなかったのは私が興味を示さなかったからもあるかもしれないけど。
かがみなりのひよりとゆたかへの配慮があったのかもしれない。
確かに失恋話は本人が語るべきもの……なのかもしれない。この時そう思った。
詳しくは「ひよりの旅」を参照
なんてね……

  話が終わっても暫く私は何も言う事はできなった。
ひより「……ふふ、おかしいでしょ、鈍感すぎでしたよね……チャンスはいくらでもあったのに……」
こなた「そうかな、結果とか時期はどうであれ……ひよりは彼に告白したんでしょ」
ひより「でも……」
こなた「でももへちまもない、それは紛れも無い事実、凄いよ、ひよりもゆたかも、勇者って言ってもいい」
ひより「そ、そうでしょうか?」
私は椅子に腰掛けた。
こなた「花言葉って知ってる?」
ひより「花言葉って……いきなりなんです?」
こなた「花に言葉を込めて人に贈る……」
ひより「……そんなの知っています……」
こなた「そう知っている、だけど何でわざわざそんなまどろっこしい事するのかなって思った事ない、
そんな事するなら直接言っちゃえば簡単じゃない?」
ひより「……そう言えばそうですけど……」
こなた「真意を相手に伝えるってのは誰にとっても大変、だから花に言葉を付けて贈るんだよ、
    これは古今東西老若男女関係ない……」
ひより「そう言われると……」
こなた「ふふ、かがみがそう説明したのをそのまま言っただけだけどね」
ひより「かがみさんとそんな話を……」
こなた「彼と……神崎さんと会う前にひよりに会えなんて言うから……」
ひより「神崎さんと会う……まさか」
こなた「そう、そのまさか、さてさてさ〜て、どうなるかな……まぁ、ひよりがとっておきの話を
    聞かせてくれたから、また少し勇気が湧いたかな……」
この時かがみが私をひよりに会わせた理由が分かった。
ひよりは少しの間黙っていたけど溜まった物を吐き出すように話し出した。
ひより「神崎さんの何処が好きなんです?」
直球できた。なら直球で返すのが礼儀。だけど、そう言われると直ぐに思いつかない。
こなた「ん〜何処だろうね……」
ひより「彼は泉先輩を騙して、命の危険に陥れたのに、憎くはならなかった?」
こなた「そのセリフ何度も聞いた……確かにその話だけなら嫌いにもなるけどね」
それだけじゃないから好きになった。
ひより「それじゃそれは何でデス?」
気付くとひよりはネタ帳を片手に私の前に立っていた。
私はひよりを指差してこう言った。
こなた「ふふ、それそれ、そうでなきゃひよりじゃない」
ひよりは自分自身の身体を見回して手に持っているネタ帳とペンに気付いた。
ひよりは慌ててネタ帳とペンを背に隠した。
ひより「こ、これは……いや、何ていうのか……習性といいますか……」
私は笑った。
こなた「別に隠さなくていいよ、今度の作品のネタにするつもりなんでしょ」
ひよりが私に会わなかったのはこれがしたかったから。それが分った。
ひより「え、ま、まぁ……」
ひよりは苦笑いをした。
こなた「私をネタにするならもう少し待って、もうすぐ結果がでるからそうしたら……」
ひより「きっといい結果になるっス、そう信じています」
私は立ち上がった。
こなた「ありがと、それまでお預けだね、それからデッサンとかネタは最初に私に報告すること、いいね!!」
ひより「は、はい」
481 :「こなたの旅」 33  6/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:02:59.92 ID:b7iGww1s0
 それから私達はひよりの彼氏の話になった。
結婚話をもちかけたのは彼の方だったそうだ。
職場結婚といっていいのかもしれない。
ひよりが彼の話しをしている姿をみていると、
リア充爆発しろ!!
言葉にこそ出さなかったけどなんて思ったりもしてみた。
だけどお稲荷さんとの出来事がなければひよりも彼に巡り逢えたかどうか分らない。
それはゆたかも同じなのかもしれない。
そして私も……
ひより「ところでまだ返事を聞いていませんが……」
こなた「ほぇ?」
ひより「神崎さんを好きなった理由っス」
こなた「理由……」
私は直ぐに答えた。
こなた「皆は私達を騙したなんていっているけどそうじゃない、彼は神崎あやめ成り切ろうとした、うんん、
    神埼あやめに本人になったんだ、だから騙していない、それに皆は私を危険な目に遭わせたなんて言ってけど
    彼は私を助けてくれた、守ってくれた」
ひよりは私をじっと見ていた。
こなた「な、なに……??」
そしてひよりはクスっと笑った。
ひより「……これは相当のお熱のようですね……聞いているこっちが恥ずかしくなるくらい」
ひよりはおもむろにネタ帳を取り出しページを開いて書き出した。
ひより「……先輩は神崎さんに大層ご執心っと……」
顔が熱くなってきた。恥ずかしさが込み上げてきた。
こなた「り、理由を話せって言ったから話したのに……」
ひよりはネタ帳を閉じた。
ひより「さっきの話、彼が聞いたら喜ぶと思いますよ」
こなた「話すって……ちょっと無理っぽ」
ひよりは笑った。
ひより「ふふ、告白するよりよっぽど楽じゃないかと?」
こなた「え〜無理だよ……」
ひより「でもさっきちゃんと言ったじゃないっスか、好きな理由」
そう確かに言えた。でもそれはひよりが自分自身の体験を話してくれたから。
だからその勢いで言えたにすぎない。
そう、勢い。勢いが大事。
その時はそう思わなかったけど、今ならはっきり分る。
ひより「でも羨ましいっス、かがみ先輩が作戦に加わって……」
こなた「いや、ひよりだってかがみが絡んでいたでしょ」
ひよりは首を横に振った。
ひより「肝心要の所で絡んでいません……私が気付くのが遅すぎたから……」
こなた「ひよりが早く気づいてその恋敵が自分の姉だって分ったらどうだろう、ちゃんと作戦立てられたかな、
    いくらかがみでもそこまで冷徹じゃない、作戦にも隙ができるかも」
ひより「流石先輩……かがみ先輩を知り尽くしています……」
こなた「……いや、今回の私だって……どうなる事やら……」
ひより「え、まだ作戦を聞いていないっスか?」
私は頷いた。
こなた「全貌はまだね……この後みゆきさんに会わないといけないし……」
ひより「え……ど、どうして?」
こなた「かがみの作戦の一環らしい……」
ひより「……そうですか……」
こなた「さてさてさ〜て、ひよりも大丈夫そうだしそろそろお暇しようかな」
ひより「あの……私と会って何か変わりました?」
こなた「変わった様な、変わらない様な……」
ひより「……そうっスか……」
私は帰り支度をした。
ひより「ところでさっきからさてさてさ〜てって何です?」
こなた「あれ、知らないの、薄い本では腐要素たっぷりの漫画なのに」
ひより「……漫画、いや、最近の漫画は忙しくてなかなか見られません」
こなた「まぁ、暇なときにでも見てみるんだね」
ひより「……何か懐かしいっスね……覚えていますか10年前」
こなた「かがみのコミケ事件でしょ」
ひよりは頷いた。
ひより「確かつかさ先輩の一人旅をした頃でした、それが始まりです」
こなた「いや、始まりはあやめさんからかもしれない、あやめさんと真奈美さんが逢ったから今のつかさが居る
    私はそう思っている」
ひより「そうだとしたら……先輩はその集大成っスね」
こなた「私が?」
ひより「はい、ですからその想いを是非神崎さんに伝えてください」
その言葉を最後にひよりと別れた。
それはそうとひよりはもう腐らなくなったのかな……

集大成。事実上地球上最後のお稲荷さんとの片想い……か。ひよりも私にプレッシャーをかけてくれたな。
こうしている間にも約束の時間は刻一刻と近づいてきている。
この胸の高鳴り……かがみの作戦を携えてきているのになんだろうこの不安な気持ちは……
落ち着け……
そうだ。
もう一人、みゆきさんと会ったんだ。
482 :「こなたの旅」 33  7/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:04:23.51 ID:b7iGww1s0
 かがみはみゆきさんとひよりの順番はどっちでも良いって言っていた。
でも結局ひよりが先に会う事になってしまった。
みゆきさんには正直いってあまり会いたくなかった。今まで会わなかったのは私の意志があったかもしれない。
みゆきさんが職を失ったのも。研究が駄目になってしまったのも一部は私が原因だから……
そう思うと会うことなんてできない。
いったいどんな顔をして会えばいいのか。それさえも戸惑ってしまう。
それを知っていてみゆきさんに会わせるかがみの気持ちがわからなかった。
それでも作戦には必須だって言われたら行かざるを得ない。

確か一週間まえだったかな。
いつも見慣れたみゆきさんの家の玄関。
これほどインターホンのボタンが重く感じた事はなかった。
ボタンを押すと本人が出てきた。家族の誰かが出てくると思っていたから驚いた。
いきなりだったので挨拶もろくに出来ずにまごまごした。
そんな私を見ると。
みゆき「泉さん、こんにちは、どうぞ」
いつもの笑顔で私を迎えてくれた。
こなた「え、あ、え〜と、こ、こんにちは……」
まるで初めて会った時みたいな受け答えだった。
居間に通されるとみゆきさんはお茶を準備しに台所に向かった。
他に人は居なかった。みゆきさんだけ、それはひよりの時と同じ。
今気付いたけどかがみがもう私が会いに来るって連絡してあった。そう違いない。
私がアポを取らないで行くのを知っていて……
まったく余計な事を……なんてね。事前に人払いが済んでいれば込み入った話もできる。
その時の私はそんな事を思っている余裕もなかった。
483 :「こなたの旅」 33  8/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:06:04.37 ID:b7iGww1s0
みゆき「どうぞ」
こなた「どうも」
みゆきさんは私の前にお茶を置いた。私はお茶を一口飲むと辺りを見回した。
みゆき「どうかしましたか?」
こなた「……い、いや、なんて言うのか、誰もいないのかなって、いつもならゆかりさんとか……」
みゆき「母は外出中です」
そういえば旦那さんはどうしたのだろう。まさかあの件で関係が悪化して別れてしまったなんて……
その時そう思った。
こなた「そ、そう……あの……」
みゆき「はい?」
聞けるわけがないよね、そんな事。でもそれが事実だったら。
こなた「ごめん……」
みゆき「どうしたのですか、急に謝るなんて……?」
こなた「なんて言ったら……巻き込んじゃって……」
みゆきさんは不思議そうに首を傾げた。
言いたくなかったけど……
こなた「作戦で使った融資したお金はあの事件で株は暴落したから1円も戻ってこない、
    貿易会社に融資したせいで研究成果も評価されず……挙句の果ては解雇……だなんて……
    一番の貧乏くじ引いちゃったよね」
みゆきさんは静かに話した。
みゆき「私が失った物は代わりがありますが泉さんの失ったものは代替がありません、気にしないで下さい」
こなた「私が……失ったもの、そんなのあったかな?」
みゆきさんはあまり言いたくなかったのか少し間が空いた。
みゆき「……神崎あやめさん…さん、違いますか?」
こなた「あやめさんは……確かにそうかもしれないけど……私の場合、あやめさんはとっくに亡くなってたし、
    神崎さんが代役をしていたから諦めもつく、だけどみゆきさんは……今回の件で旦那さんの仲だって悪くなっちゃったでしょ??」
みゆきさんは静かに立ち上がった。
みゆき「彼は……私達以外でお稲荷さんを理解してくれた数少ない一人……です」
こなた「え?」
みゆき「彼がいなければ研究すら出来なかった……」
 そういえば……お稲荷さんの秘薬はつかさの料理の技術でも出来る。それに材料にとかげの尻尾もあったような気がする。
2年間の熟成とかもあったっけ。普通考えたらそんな物をまともに研究するって言ったら冗談かなんかと笑われるくらいのレベル。
お稲荷さんの秘薬だってしらなければ私だって何かのジョークだって笑っちゃう。
それでもみゆきさんは研究をつづける事ができた。それはこの研究を本当に理解できる人が居たって事……
こなた「さすがみゆきさんだね、トカゲの尻尾とかふざけているとしか思えない」
みゆき「トカゲの尻尾は手に入れるのがかなり大変でしたので鶏の軟骨で代用できるのではないと思いまして」
こなた「まさか、それが出来るならお稲荷さんがとっくにやっていると思うけど……」
みゆきさんは微笑んだ。
みゆき「実はこの前の臨床試験で使用したのがそれです」
こなた「え、って事は?」
みゆき「トカゲの尻尾の場合と同じ効果でした」
こなた「回復した井上さんを見ればそれは分る……すごい」
私が褒めるのを気にも留めずみゆきさんは話し続けた。
みゆき「薬を作る際、恐らく鶏の軟骨が正解だったのかもしれません、これは私の憶測ですが
    つかささんに素直に薬の製法をただ教えるのが気に入らなかったのかもしれません、だからわざと手に入れ難い
    材料を言ったのではないかと……教えた本人に聞けないのできませんので確かめられませんが……」
こなた「まぁ……つかさがトカゲを捕まえるのを想像するとそれは納得できるかもね……
    みゆきさんはつかさとそんな話しをしたの?」
みゆき「いいえ、つかささんのあの当時の出来事に対して水を差すような話はしない方が……トカゲの尻尾でも
    効果は同じなのですから……」
こなた「相変わらずだね、みゆきさんは、それならもう2年の熟成は要らないとか?」
みゆきさんは更に話しを続けた。
みゆき「いいえ、それだけは省けませんでした、酵母によるアミノ酸合成で……」
こなた「いや……そこは言われても解らないから……」
みゆきさんは私にも解る言葉で言い直した。
みゆき「つかささんが残してくれた秘薬の中に酵母ありまして、それが最終的に秘薬を合成します、どこにでも居るわけでもない
    特殊な酵母です、遺伝子から見て地球由来のものではないかと推察します、おそらくたかしさん、もしくは真奈美さんが
    この日本で発見したのではないかと」
こなた「凄いね……そこまで調べつくしているなんて、しかもこのメモリー板を使わなくて……」
私はメモリー板をポケットから出した。
484 :「こなたの旅」 33  9/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:07:33.83 ID:b7iGww1s0
みゆきさんは私の持っているメモリー板をじっと見た。
みゆき「そのメモリー板にはお稲荷さんの故郷の星、途中で立ち寄った星々の知識や技術はあってもこの地球
    の知識は無いと思います、お稲荷さんの秘薬は今の人類の技術では合成できません、そして、この酵母は地球で生まれた
    ……とすれば、そのメモリー板をいくら調べても薬は出来なかったと思います」
こなた「研究員か……みゆきさん、天職って言っていいよね、かがみにしろつかさにしろ……それに引き換え私って……」
みゆきさんは首を傾げた。
みゆき「そうでしょうか?」
解っている。みゆきさんは私に気を使っている。
こなた「私は成りたくてこの仕事をしたわけじゃないし……」
みゆき「天職……ですか、神から授かりし職業……」
みゆきさんは笑った
みゆき「泉さん、天職を英語で訳すとなんでしょうか?」
こなた「え……な、何で……いきなりクイズ?」
みゆき「何て言いますか?」
みゆきさんは更に念を押した。
こなた「うんん、知らない……」
みゆき「calling……」
こなた「コーリング……?」
みゆきさんは頷いた。
みゆき「呼ばれた……神に呼ばれし職業……しかし神の声を聞けるのは預言者のみです、
そこでもう少し簡単に考えます、泉さん、今の仕事をする切欠は?」
こなた「切欠は……つかさに誘われたから……って?」
みゆきさんは再び笑った。
みゆき「はい、呼ばれましたね、泉さんの今の職業は天職です」
こなた「い、いや、つかさは神様じゃないし……」
みゆき「呼ばれたのであればそれは泉さんにとって天職と言っていいのではありませんか、
    英語圏と東洋の職業に対する考え方の違いかもしれません、でもこの件に関して言えば
    英語の方がより現実的ではないしょうか……」
こなた「……そうしたとしたら、つかさはかえでさんに誘われた、私はあやのを誘った、かがみはだんなさんのひとしさんに
    誘われて弁護士に……」
みゆき「そうですね、そして私も……」
そう、その時わたしがあやめさんに対するコンプレックスみたいなものがスーと消えたような気がした。
こなた「なんか勇気が湧いてきた」
これは全てに当てはまる訳は無い。たまたま私にうまくはまっただけの話し。言ってみれば方便みたいなもの。
私はそう理解した。だけど……なんか嬉しかった。
かがみが聖人君子と言わしめた人だけのことはあるね。
みゆき「さて、いよいよですね……」
こなた「……いよいよって……まさかかがみから聞いたの?」
みゆきさんはにっこり微笑んだ。
そうあからさまにされると照れてしまう。
こなた「本当はさっさと済ませればいいんだけどね、思うようにいかないよ……」
みゆき「躊躇うのはそれだけ泉さんが本気だと言う事です」
こなた「……そうかな、本気なのかな……」
みゆき「二度に渡る潜入……それもかなり危険で犯罪にもなりうる事でした、それを引き受けるなんて
    よっぽどの信頼と正義感がなければできません」
こなた「信頼はともかく……正義感ね〜確かに危険な作戦だったけど正義感なんてこれっぽっちもなかった、それを言うなら
    いのりさん夫婦やみゆきさんの方がよっぽど正義感あったんじゃないかな」
みゆき「それではなぜあんな危険な事を……?」
こなた「……何でかな……つかさの影響があったかもしれない、でもそれだけじゃない……それだね……
やっぱりゲーム感覚、そうそう、ゲームなんだよ……うんうん、それで決まり」
みゆき「ふふ、泉さんらしいですね」
言ってみればそれは好奇心。それだけだったかもしれない。
こなた「それはそうとこれからみゆきさんはどうするの?」
みゆき「どうするとは?」
みゆきさんは不思議そうな顔をした。
こなた「このまま秘薬を秘薬のままにしちゃうの?」
みゆきさんの顔が曇った。
みゆき「受け入れられなかった……結果は出ても認められなかった……ただそれだけが残念です……」
こなた「ふふ、諦めるのはまだ早いよ、あんな万能薬をこのまま捨てちゃうのは勿体無い、それは私でも分かる、
    百年、うんん、千年経ってもできるかどうか分らない代物だよ」
みゆき「し、しかしもうあれは認可されない、世には出せません」
みゆきさんはこうゆう考え方はしない。
こなた「そう、薬としては認められない、だけど私が知っている限りあの薬の材料はみんなただの食材、トカゲの尻尾が
    鶏の軟骨に交換できるのならそれはただの食べ物、料理だよ、なんだかんだ言って最初にそれを作ったのはつかさだからね……
    まして発酵させるのなら味噌とか醤油と同じだよ」
みゆき「はい?」
みゆきさんはキョトンとしていた。
こなた「分らないかな、薬が駄目なら食べ物で出しちゃえばいいんだよ、発酵健康食品ってね」
みゆき「発酵……食品?」
さらにキョトンとするみゆきさん。
こなた「病気を治すのは薬だけじゃないって事、目的が達成できるならなんでもいいじゃん?」
みゆき「し、しかし……」
こなた「しかしもへちまもないよ、みゆきさんは病人を助けたいたいんでしょ、それでいいじゃん、
    いざって時は私も使わせてもらいたいしね、それとも何か問題があるの、法律とか?」
485 :「こなたの旅」 33  10/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:08:51.20 ID:b7iGww1s0
みゆきさんは首を横に振った。
こなた「それなら問題ナシ」
みゆきさんの顔が悲しそうになった。
みゆき「なぜ……なぜです」
こなた「え?」
みゆき「……泉さんはどうしてそんな考えができるのですか……」
こなた「へ、なに、急に……そんな事を言われても?」
みゆき「神社の奪還、お稲荷さんの救助船の誘導……そして今回も……私には到底思い浮かびません」
こなた「いや……今回の件はともかく救助船の誘導はつかさがヒントをくれたから……」
みゆき「ヒント?」
こなた「通信ができなくてもう諦めかけた時、つかさは懐中電灯を空に向けて呼ぼうとしたんだよ……それがヒントになった」
みゆき「そんな話はつかささんはしていませんでした……」
こなた「つかさは自分が切欠になったんて気付いていないから」
みゆき「そうでしたか……ふふ、やっぱり敵いませんね……」
こなた「敵わない?」
みゆきさんは今まで見たことの無い苦笑いをした。
みゆき「けいこさんの企画に参加した時でした……つかささんの行動、態度、姿勢……どれを取っても非の打ち所がありませんでした
    私は只の傍観者でしかなかった、ですから私はせめて……せめて秘薬を再現させたいと思ったのですが、
    結局それも再現したにすぎませんでした……」
こなた「みゆきさんに「なぜ」なんて聞かれたのはじめてかもね、いつもは私がそうしていたのに、それにつかさにライバル心をもって
    いたのも意外だったかも……」
みゆき「え?」
こなた「だからみゆきさんに凄い親近感が湧いてきた、今頃になってね、もっと早く言ってくれればよかったのに、
実は本当の事言うとお稲荷さんに関して言えば私の行動は全てつかさのせいだから、
「つかさのくせに」そう思っていたけどいざやろうとするとつかさの様に
    うまく行かない、嫌になっちゃうよね……そう、つかさは本当に勇者だよ、勇者は自分が勇者だって自覚していないからね、
    本当にピンチになった時、その勇気が試される……つかさはその試練に全て勇気とやさしさだけで立ち向かった……知恵や力なんて
    ……その勇気のほんの少しでもあれば私はこんな所に居ないのに……」
みゆき「い、泉さん……」
こなた「いや、これは過大評価じゃないから、むしろそれを一番実感しているのはかがみじゃないかな?」
みゆき「そうかもしれませんね……」
こなた「ってこと」
私は立ち上がった。
みゆき「も、もうお帰りですか?」
こなた「みゆきさんの意外な一面が観られてすごく参考になった、ありがとう」
みゆき「ま、待って下さい、本当にそれだけで大丈夫なのですか?」
こなた「かえでさん、まなみちゃん、つかさ、ひよりからも勇気をもらったしね……
    いいや、みんなからいろいろ貰った
    それにかがみの作戦もあるしなんとかなるでしょ」
みゆき「あ、あの……躊躇うのは神崎さん……神崎あやめさんが原因ですか?」
私の動きが止まった。
みゆき「すみません……こんな切羽詰まった時に……」
あやめさんが一つの原因なのは分っている。
こなた「あやめさんか……神崎さんはあやめさんが好きだった……それは本人から聞いたから真実だよ、
だけどあやめさんがどうだったかは分らない、今となっては確かめようがないしそれを知ったところで
どうなるわけでもないから……」
みゆき「神崎さんはそれを知っていると思います」
こなた「……そうだよね、お稲荷さんだし、あやめさんの心を見るくらい造作もないよね……
    てか彼はあやめさん本人に成っていたくらいだから」
みゆき「もちろん泉さんの真意も……」
こなた「え?」
それは盲点だった。
みゆき「きっと既にご存知だと思います」
なんだか身体が熱くなってきた。顔が赤くなっているのが自分でも分った。
こなた「そ、そうだった……もうとっくだった……ははは、今更だよね……
    つまりもう知られているから告白は簡単だって言いたいんだね」
みゆきさんは首を横に振った。
みゆき「どうですか、神崎さんを目の前にして言えますか?」
こなた「え〜と…………」
例えそれを知られていたとしても言うのはやっぱり……
みゆき「先ほどの表情を見れば分ります、どんな状況であれ告白はそれなりに大変です
    普段感情を表に出さない泉さんが赤くなってしまったのですから」
こなた「むぅ……それじゃ何が言いたいの?」
みゆき「泉さんの告白はつまり神崎あやめさんの真意を確かめる事でもあるのです」
こなた「あやめさんの真意って……私に関係ない……」
みゆき「そうでしょうか、神崎あやめさんに何の感情もありませんか、友情とかは?」
こなた「感情って……私は彼女の死体を利用したし、もう彼女はとっくの昔に亡くなっていたから
    もうどうでもいいじゃん……」
みゆき「いいえ、亡くなっていません、彼女はまだ生きています、神崎さんの記憶の中で、
    神崎さんがお稲荷さんで居る限り彼女は行き続けている、泉さんが告白すれば
    神崎さんの中の神崎あやめさんにも伝わります、そして……脳内で二人の
    会話が始まります、そして……」
こなた「そして?」
みゆき「そして結論が出るでしょう……いえ、もう結果は出ているかもしれません、
かがみさんがどんな作戦を立てているのかは存じませんが告白する心構えとして贈りたいと思います」
こなた「あ、ありがとう……」
みゆき「いいえ、礼を言うのはこちらの方です……諦めかけていた秘薬……もう一度……挑戦してみます」
こなた「あ、あれは半分冗談のつもりだったけど……」
みゆき「冗談……冗談なのですね……泉さん、やはり敵いませんね……」
みゆきさんは大笑いした。

486 :「こなたの旅」 33  11/14 [saga sage]:2015/06/08(月) 00:10:03.69 ID:b7iGww1s0
今まで見てきたみゆきさんの笑いの中で一番の大笑いだった。
そして目から涙が出てきて、いつの間にか泣いていた。
どんな対応していいか分らなかった。なにもしないでただ
みゆきさんを見ていた。
やっぱり研究室を追われて研究成果まで反故にされたのはさすがのみゆきさんもかなりのショックだったのかな。
そんなみゆきさんに私が「冗談」なんて言ったから……
ちょっと酷すぎた……かな
っと言っても後悔先に立たずか……
こなた「ご、ごめん……」
みゆき「……到底私には泉さんのその発想には至りません、冗談……遊び心が私にはありません……」
こなた「ん……そうだよね」
私はスマホにイヤホンを付けてみゆきさんに渡した。
みゆき「これは?」
こなた「いいから、付けてみて」
みゆきさんは耳にイヤホンを取り付けた。
スマホの再生ボタンを押した。
みゆきさんはその再生された音楽を聴いていた。
そして再生が終わるとみゆきさんはイヤホンを外した。
みゆき「この曲は……誰の作曲ですか?」
こなた「みゆきさんでも曲名が分らないのか……これは本物だ」
みゆきさんは首を傾げた。
こなた「作曲、演奏とも柊まなみ、まなみちゃんだよ」
みゆき「え……?」
こなた「私のために作曲してくれた、それをかがみが録音してくれたのてね、みゆきさんが聴いた曲がそれだよ」
みゆき「泉さんのために……ですか」
こなた「ピアノの演奏が凄いのは分っていたけど、まさか作曲までできるとは思わなかった、ねぇ、作曲できるって
    凄いと思わない、ピアノの演奏が出来る人はクラスに一人はいるよね、でもさ、作曲ともなると
    学年に一人いるかどうかだと思うんだけどどうかな?」
みゆき「……もっと少ないかもしれません……オリジナルともなるとそうは居ないと思います」
こなた「みゆきさんは作曲できる?」
みゆき「いいえ……」
こなた「そうそう、私なんか作曲どころかおたまじゃくしさえ読めない」
みゆき「それは泉さんは音楽に……」
こなた「そうそう、幼少時に音楽に触れる機会がなかった、そもそも楽器に興味がなかった、才能もなかったかもしれない
    だけど、まなみちゃんの演奏を聴くといいな〜なんて思ったりもする……憧れだよね……そう、憧れ……
    でもまなみちゃんになれないし、つかさに成れる訳でもない……じれったいし、もどかしいよね、
    で、思ったんだけど……ヴァイオリンの音にあこがれてピアノでどんなに頑張ってもヴァイオリンの音は出せない、
逆もまた然り、だけどその憧れがその楽器の音色をより美しく奏でさせる……それでいいじゃん、まぁ私は
ヴァイオリンでもピアノの音色もないから差し詰め打楽器って所かな……」
みゆき「……打楽器は人類が一番初めに作った楽器……リズムを刻み時には音に破壊的な効果をもたらします、
    管楽器、弦楽器とてもそのような効果は期待できませんね……」
こなた「い、いや、これは例え話で」
みゆきさんは首を横に振った。
みゆき「たとえ話ではありません……それぞれの特色を活かして一つの大きなシンホニーを……私も参加したいです」
こなた「うんにゃ、もうとっくに参加しているよ」
みゆき「そうでしょうか……私は何も」
こなた「なにせみゆきさんはお稲荷さんを理解している数少ない一人だからね」
みゆきさんが一番理解している。私はそう思った。
みゆきさんは真剣な顔になり私の前に立った。
みゆき「それならば私も手伝わせてください」
こなた「な、何、何なの?」
こなた「それならば、私を神崎さんに見立てて告白の練習をしましょう……」
こなた「え?」
……
……
時間だけが過ぎていく。
みゆき「どうしたのですか、私の前で言えなければ本人の前にすら立てませんね」
こなた「ちょ、ちょっと待った、そんなのしなくても、子供じゃあるまいし、それにかがみだってそんな練習は一度も……」
みゆき「かがみさんは自分の出来ない事を他人に強要しません、優しすぎるのです、でもそれでは成功しません」
こなた「わ、私は本番に強いからそ、んなの、は……」
みゆきさんの目がいつになく怖く睨みつけてきた。
これは言うまで帰してもらえない。そう思った。
……
………
…………
487 :「こなたの旅」 33  12/14 12/12でした [saga sage]:2015/06/08(月) 00:11:32.38 ID:b7iGww1s0
 言えなかった。冗談でも言えなかった。
みゆきさんの言うとおり。みゆきさんの前で言えなければ本人の前でなんて言えるわけない。
そんなのは分っている。解っているけど……言えなかった。
これじゃこの前と全く同じ。何も変わっていない。
まさかこんな事って……
有り得ない。
だけどこれは現実だ。夢じゃなかった。
こなた「は、はは、はははは……」
みゆき「い、泉さん?」
笑うしかないこれは笑うしかなかった。
こなた「こりゃ傑作だね、笑っちゃうよね〜」
私は帰り支度を始めた。
みゆき「泉さん、ですから私の前で……」
こなた「いいから、もう」
みゆき「いいから……とは?」
こなた「お邪魔しちゃったね、もう帰るから」
私は部屋を出ようとした。そうしたらみゆきさんは立ち上がって素早く私の前に回り込んでドアの前に立ちはだかった。
みゆき「まだ終わっていません、このままでは本番で失敗します」
こなた「本番はもうないから……」
みゆき「無とはどう言う意味です?」
こなた「言ったままの意味だよ……もう終わり、これじゃ何をしても無駄だよ」
みゆき「……どうしてです、まだ諦めるのは早すぎます、何かの落ち度があるのでしたらかがみさんともう一度作戦を練り直す時間くらいは……」
こなた「もう何をしても同じだよ」
みゆき「いいえ、違います」
こなた「……同じだよ、もう帰るからそこを退いてくれるかな……」
みゆき「これまで協力してくれた方々の想いが……分っているのですか、つかささん、かがみさん、まなみさん、田村さん……
    ……それに、此処に来たは泉さん自身の意思ではなかったのですか」
いつになく真剣なみゆきさんだった。
こなた「うんん、かがみが行けって言うから来ただけだから……」
私はみゆきさんの向こうにあるドアのノブに手を伸ばした。
みゆきさんは私のその腕を掴んだ。
みゆき「終わりとは、そのまま神崎さんを故郷の星に帰していいと言うのですか」
私はノブの方に向けて少し力を加えた。みゆきさんの腕はは押し返す力が加わった。
みゆき「本当にそれで良いのですか、私の目を見て言って下さい」
みゆきさんの手が更に強く握る。
みゆきさんに言われなくてもそんなのは解っている。分っているけど、身体が言う事を聞かない。
私は更に力を入れてドアを握ろうとした。
みゆき「このまま帰っても何も変わりません……」
変わらない。そう何も変わらない。私は腕の力を抜いた。それに気付いたみゆきさんは腕を放した。
こなた「そう、そうだよ、何も変わっていない……可笑しい、可笑しいよね……」
みゆき「い、泉さん?」
こなた「実はね……以前にも告白しようとしたんだよ……全くその時と同じ……うんん、言い出そうしただけ
    その時の方がよかったかもしれない……まったく変わっていない」
私は顔を上げてみゆきさんの目を見た。
こなた「全く変わっていない、つかさにまなみちゃんにかがみ、ひよりにみゆきさんまで勇気を貰ったのに……
    これじゃ何をしたって同じだよ……つかさの様な勇気があれば私は今此処に居ないよ……
    まなみちゃんの様にピアノが弾けたら想いを全て音楽にできるのに……何もできない私は直接話すしかないから、
    どうしようもないよ……言えないものは言えない、弱虫って言われてもしょうがないよ、言えない、
    言いたくても言えない……言えない」
みゆき「例えそこで諦めたとして、何れ来る別れの時、泉さんはどうするのですか、会わずにそのままお別れするのですか
    その時も何もしないつもりですか」

そう、そうだった。かがみもそんな事を言っていたし今回の作戦もそれが肝になっている。
そんな事は分ってた。いずれにせよ別れの時が来る。
つかさは別れの時に会えなかった。だけどそれが結果的に再会の切欠になった。
でもつかさは必死になっていた。
私だって必死だよ。つかさ以上にやっているつもり……つもりじゃ駄目なのかな……
私の場合会えない訳じゃない。会わない……会わないのか。
こなた「考えれば考えるほど言えなくなるよ……神崎さんが好きなんて……」
みゆきさんは一歩横に移動してドアを開けた。
みゆき「……確かに聞きました、本番はその調子で行けば大丈夫です」
こなた「え?」
みゆき「しっかり聞こえました、告白」
こなた「い、いやあれは独り言みたいなものでみゆきさんに言ったわけでも神崎さんに言った訳でも……」
みゆきさんは笑った。
みゆき「どちらでも良いではありませんか、泉さん自身の口から出たのは間違えないのですから」
こなた「みゆきさん……」
みゆき「ファイトです」
みゆきさんは小さくガッツポーズを取った。
みゆき「私に出来るのはこのくらいですが」
こなた「うんん、なんかすっごく勇気が湧いた様なきがした、ありがとう」
みゆき「いいえ、勇気をくれたのは泉さん、貴女ですよ……お互い頑張りましょう」

 そしてみゆきさんと別れた。
今思えばあれは誘導だったかもしれない。だけどそれで私はこうして此処に居る。神崎さんと待ち合わせまで漕ぎ着けた。

もうそろそろ時間かな。
『ピピ』
頭の中で神崎さんの気配を感じた。メモリー板の機能が働いたみたいだ。もう彼はすぐ近くにいる。
もう後戻りは出来ない。
もうやるしかないんだ。

つづく
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/06/08(月) 00:15:28.03 ID:b7iGww1s0
以上です。 全部で12レスでしたね

忙しくて投下が遅れてしまいました。
え?これで終わりじゃないのかって?
残念でしたもう少し続きます。

お題の「街頭インタビュー」……
まったく考えていませんでした……
七夕ネタと一緒にするかもしれません。

この後すぐに纏めますので報告は省略します。

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2015/06/13(土) 13:29:20.11 ID:c1Wlv7n+0
保守
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/06/22(月) 02:36:33.80 ID:1CTQy7qSO
保守
491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga ]:2015/06/23(火) 20:45:16.34 ID:0ymscn3l0
う〜ん
何も思い浮かばない

「街頭インタビュー」
かなり難しい……
492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/06/27(土) 23:20:54.69 ID:fGhy2yEj0
保守?
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/04(土) 21:00:07.85 ID:Bf7RVCnN0
保守
494 :今日は何の日? [saga]:2015/07/06(月) 21:53:48.92 ID:1EliAjqc0
こなた「今日は何の日だか知っている?」
かがみ「唐突に何を言う」
つかさ「え、七夕……」
こなた「それは明日だね……かがみは?」
かがみ「そんな急に言われて思い浮かぶか」
みゆき「……思い当たるのは……サラダ記念日ですが……」
こなた「さっすがみゆきさん!!」
つかさ「サラダ記念日???……何でサラダなの?」
こなた「ん……何でだろう」
かがみ「問題を出した本人が知らないでどうする……「この味がいいね」と君が言ったから7月6日はサラダ記念日……俵万智さんの短歌よ」
こなた「かがみ、知ってるじゃん?」
かがみ「みゆきが言ったから思い出しただけよ」
つかさ「どう言う意味なの?」
かがみ「恋人に出したサラダ、美味しいって言われたのが嬉しかった……そんな感じ」
つかさ「恋歌なんだ……何だかかロマンチックだね」
みゆき「鶏の唐揚げを工夫して出したら思いのほか好評だったのが実際だったようです、しかし歌にするのに唐揚げでは重いのでサラダに変えたようですね」
かがみ「それは初耳だわ」
つかさ「でも唐揚げとサラダだとサラダの方がしっくりくるかも」
かがみ「そうね……さすがベストセラー作家は違うわ」
こなた「そうりゃそうだよ、かがみならローストビーフでも足りないじゃないの?」
かがみ「それどう言う意味よ」
こなた「言った通りの意味だよ」
かがみ「なんだと!!」
みゆき「かがみさん、つかささん、少し早いですがお誕生日おめでとうございます」
つかさ「あ、ありがとう……お姉ちゃん?」
かがみ「……ありがとう……」
みゆき「今日は私のおごりで夕食はどうです?」
こなた「いくいく!!」
みゆき「それでは予約をするので手伝ってくれませんか?」
こなた「うい〜」
みゆき「それでは後ほど……」


かがみ「ふぅ〜」
つかさ「どうしたのおねえちゃん?」
かがみ「さっきのみゆき……私とこなたが喧嘩するのを見越していたな……」
つかさ「え、そうなの?」
かがみ「……あのタイミングで私達の誕生日を持ち出して更にこなたを私から離した」
つかさ「そういえば……私、全然気付かなかった……」
かがみ「敵わないな……」
つかさ「敵わないって、お姉ちゃん、ゆきちゃんと争ってたの?」
かがみ「え、い、いや、私が勝手に争っているだけ、向こうはそんなの毛ほども感じていない、頭にくるわ……」
つかさ「え、でもゆきちゃんはゆきちゃんだよ」
かがみ「……そうよ、親友であるのは変わらないわよ、そんな悲しそうな顔をするな」
つかさ「……それを聞いて安心した……それで……こなちゃんは?」
かがみ「こなた……あいつは自分勝手でお調子者で遅刻をするはすぐに弄ってくるは……」
つかさ「ふふ、それでも親友なんだよね?」
かがみ「……つかさ、あんたもでしょ?」
つかさ「うん」
かがみ「永い付き合いになりそうだ」
つかさ「うん」
『ピピピ』
つかさ「あ、ゆきちゃんから着信だよ」
かがみ「……さて、行くか」
つかさ「うん」




以上です。1レス物です。

ついでに少し早いけど誕生日ネタもまぜました。

お題の方は考え中です。(っと言っても全く思いつかない)
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2015/07/06(月) 21:59:23.63 ID:1EliAjqc0
ここまで纏めた
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/07/08(水) 13:36:09.58 ID:csV16xuSO
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/07/17(金) 01:31:11.10 ID:A5rgB9oSO
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/07/26(日) 20:37:46.15 ID:gkyjtLgH0
保守
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/08/11(火) 04:41:37.22 ID:SVYntfNi0
保守
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/08/27(木) 21:41:47.77 ID:hQ4HgPRzO
保守
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/09/05(土) 06:28:49.90 ID:lF2P/prF0
保守
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2015/09/12(土) 18:19:13.27 ID:ELpSLT8SO
保守
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/09/14(月) 20:22:36.01 ID:hu+Qlw2KO
「こなたの旅」の作者です。
忙しくて書き込み出来ません。
最近やっと書き始めたばかりです。
待っている人は居ないでしょうけどもう少し時間が掛かりますので、よろしくお願いいたします  


保守を兼ねての書き込みでした。


504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/09/15(火) 06:57:53.61 ID:QSilfFdy0
乙 待ってる
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/09/23(水) 05:22:56.59 ID:rGwZU6kQ0
>>504
待っている人が居るとは思いませんでした。ありがとう
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/02(金) 18:59:18.02 ID:pVYEasBAO
保守
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/10(土) 05:15:55.17 ID:sqrTFP1/0
保守
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/18(日) 22:56:09.07 ID:KjhcMMsn0
保守
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2015/10/29(木) 21:24:40.74 ID:2bDtNU5Y0
保守
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/05(木) 05:27:04.93 ID:eUh0Q4DHO
保守
511 :どうする? [sage saga]:2015/11/09(月) 00:43:31.43 ID:+VfAkJDs0
こなた「なんか静かだね」
かがみ「そうね、静かだわ……」
つかさ「静かってレベルじゃないよ……」
こなた「いったい何時からこんなになった……」
かがみ「このスレが立ち上がったのが2013年……
    この前のスレから随分減ったわよね、コンクール参加者も0になったくらいだし」
こなた「そうだね〜」
つかさ「人気なくなっちゃたのかな……」
こなた「確かに全盛期と比べれば……」
かがみ「人気云々は置いておいて、このスレをもう少し活気付けたいわね……」
こなた「どうすればいい?」
つかさ「別のサイトで宣伝してみたら?」
こなた「それはもうやってる……」
つかさ「以前投下してくれていた作者さん達は?」
かがみ「それは向こうから来なければ私達は何もできないわよ」
つかさ「……何もできない……ね」
こなた「なんかダラダラ長編を書いている気まぐれな作者が一人いるだけっぽい」
つかさ「もしかしてその作者のせいで……他の人が書き込めないとか?」
かがみ「投下が不定期だからその間に書き込めるでしょ……批判している人も居なければ
    賞賛している人も居ないから無視すればいいだけ」
こなた「そうだよ、無視しちゃえばいいだよ!!」


現在このスレは殆ど一人が投下していますがどなたでも自由にssを投下できるスレです。
>>1 が基本なのでよろしくお願いします。

つかさ「なんかどこからか声が……誰?」
こなた「このスレを愛する一人のファンからのメッセージだね」
かがみ「何故そんな事がわかる?」
こなた「だってそれ以外に考えられる?」
かがみ「……」
こなた「っと言う事なのでよろしくお願いします」
かがみ「お、おい、勝手にまとめるなよ……」
つかさ「よろしくお願いします」
かがみ「つかさまで…………よろしくお願いします……」
こなた「結局まとめるんじゃん」
かがみ「う、うるさい……」

512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/10(火) 08:51:55.75 ID:EUYIuQec0
そんな哀しい事いうなよ(切実)
513 :ごめんなさい [sage saga]:2015/11/14(土) 03:06:28.82 ID:Fm5w/2Pu0
こなた「やったー 書き込まれたよ!!」
つかさ「……ほんとうだ、やったね」
こなた「ふっふっふ、不安を煽って書き込ませる作戦、大成功だよ」
つかさ「え? 作戦って……」
こなた「ちっちっち、つかさ、今の時代、正攻法で攻略できるほど甘くはないのだよ」
つかさ「で、でも……」
かがみ「でももへちまもないよ、現にかきこまれたじゃん?」
つかさ「たしかにそうだけど……お姉ちゃんは知ってるの?」
こなた「知らないからこそだよ、知ってたら絶対に止められてた」
つかさ「え〜」
こなた「だから……つかさ、解ってるよね」
つかさ「わ、分ってるって、何を?」
こなた「この事は絶対に内緒だから」
つかさ「内緒……」
こなた「知ってしまったからにはつかさも共犯だからね、だいたい只でさえつさはおしゃべりだから……」
つかさ「……」
かがみ「作戦の次は脅しか……」
こなた「ひぃ……その声は……か、かがみ様……いつからそこに……」
かがみ「何かおかしいと思っていたら、他にも共犯居るでしょ」
こなた「い、いいえ、私の独断と偏見で……」
かがみ「あんたがそんな回りくどい事考えるわけない」
こなた「えっと…その……あの……」

ごめんなさい

つかさ「あ、どこからか声が……」
かがみ「やっぱり、呆れたわ……これじゃファン失格ね」
こなた「ごめんなさい……もうしません」
つかさ「そうだよね、私達はもっと楽しく、面白く……時には感動を」
かがみ「そうそう」
こなた「そして、もっとゆるゆるで……」
かがみ「お前が言うな!」

514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/19(木) 06:30:06.85 ID:BNWbOzDOO
保守
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/02(水) 01:12:59.11 ID:dNHmN12u0
保守
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/10(木) 20:36:26.23 ID:cJkbksQT0
保守
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/19(土) 02:32:03.88 ID:Y1es8DR40
保守
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/27(日) 20:45:50.61 ID:QHBA//0T0
保守
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/31(木) 02:43:40.37 ID:1xzOTzkh0
もう今日で今年は終わり。
思い返せばあっと言う間に過ぎてしまったような気がします。
今年で終わらそうとした物語手付かず、そろそろ本腰をいれて書こうかなと思います。


来年は良い年でありますように。
520 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/01(金) 01:27:04.50 ID:WDWY44i50
あけおめ、ことよろ
521 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [saga]:2016/01/11(月) 19:17:13.18 ID:4AVEsaG80
保守
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/21(木) 22:19:00.57 ID:svqyhU4R0
保守
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/01/25(月) 00:22:36.52 ID:D5eWvsr20
まとめサイトが見れない?
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/01/25(月) 00:30:50.29 ID:7EhJJSbD0
すみません
スマホだと死ぬほど見づらいです
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/01/26(火) 23:35:04.31 ID:+P+T+w2n0
もともとpc用の表示だからね

スマホ表示にすれば多少は読みやすくなるのでは?

メニュー画面がないから作品を探すのがめんどいかな
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/02/01(月) 00:03:12.63 ID:1ih/slNA0
保守
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/06(土) 07:26:47.36 ID:mMx2JB8QO
保守
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/06(土) 10:03:02.28 ID:Gq+MUPQro
ガラケーの俺に隙はなかった
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/06(土) 22:06:02.21 ID:zRwKeruAo
なんかいろいろと切なくなるスレだな……
530 :無題 :2016/02/15(月) 00:25:07.91 ID:hF0TPQyv0
こなた「ねぇねぇドラ○エの天○の花嫁ってやったことある?」
かがみ「ん? 唐突になにを?」
こなた「まぁ、まぁ、それで、やったことある、つかさは?」
つかさ「あるけど……」
こなた「かがみは?」
かがみ「ある……それがどうかした?」
こなた「例の婚約シーンの選択で浮気度がわかるんだけどね……」
つかさ「婚約……って花嫁を誰にするって」
こなた「その通り!!」
かがみ「はぁ、なにを言い出すかと思えば……」
こなた「つかさは何を?」
つかさ「私は……フローラかな」
こなた「かがみは?」
かがみ「ふふ、つかさ甘いわよ、断然ビアンカ、それ以外ない
    幼馴染を選ばずして浮気なんか語るな」
つかさ「そ、そうなの、その時好きじゃなければ意味ないような……」
こなた「ほぅほぅ、お二人の恋愛観が分っちゃったね」
かがみ「そう言うあんたはどうなのよ! さしずめデポラって落ちじゃないの?」
こなた「チッチッチ、分ってないなお二人さん、あの場面で誰を選んでも
    浮気度なんて分らないよ」
つかさ「え?」
かがみ「な、なんだよ、分るって言ったじゃないか、からかってるのか!」
こなた「問題は誰を選ぶではなくその前の行動だよ」
つかさ「その前の行動って……選ぶ前に誰と話したとか?」
こなた「うんんちがう」
かがみ「もういい、どうせ下らない答えに決まってる、もう帰るわよ」
こなた「……それはね、選ぶ前にセーブをしたかどうかなんだよ」
つかさ「セーブ? どうして???」
こなた「それじゃ聞くけどどうしてセーブするの?」
つかさ「それは……電源が切れた時とか……失敗しちゃった時とか……」
こなた「はいはいそれそれ、誰かに決めて失敗しちゃったらやり直そうなんて浮気そのものじゃないの?
    一途ならセーブなんかしないで進める……でしょ?」
つかさ「そう言われると……私……セーブしちゃったかも……」
かがみ「バカバカしい、そんなんで分ったら苦労しないわよ」
こなた「で、かがみはしたの、しなかったの?」
かがみ「そんなの忘れたわよ、そう言うあんたはどうなのよ!!」
こなた「私はもちろんセーブしたよ、選択肢の前のセーブは基本」
かがみ「ほうほう、それは大した浮気性だ!!」
こなた「ふむ、正直に言わない人は影でコソコソして泥沼化する……いやいやかがみは……」
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「う、うるさ〜い!!!!」

終わり


531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/02/15(月) 20:40:05.50 ID:hF0TPQyv0
ここまでまとめた
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/02/27(土) 07:19:21.44 ID:aNTcKgCv0
保守
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/03(木) 05:26:21.28 ID:4prSPmLYO
保守
534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/11(金) 12:56:45.51 ID:X9t8e/BiO
保守
535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/03/17(木) 18:27:04.33 ID:9G3BTEjm0
hosyu
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/03/29(火) 06:28:57.14 ID:Uwx4HFhcO
保守
537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/31(木) 09:40:21.66 ID:Dn78j9i4O
http://i1.wp.com/img.grotty-monday.com/wp-content/uploads/gotokill003.jpg
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/04/02(土) 16:30:18.25 ID:zKsZvhFsO
保守
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/02(土) 17:20:26.28 ID:yEyxyGra0
>>537
グロ
540 :保守 [sage saga]:2016/04/11(月) 20:50:27.75 ID:JgJvu66p0
どうも「こなたの旅」の作者です。
最後に作品を書き込みしてからもう1年近くも経ってしまった。

読む人も居なさそうだしこのまま消滅でも……と思ったりもします。

「つかさの一人旅」のまとめで「おもしろくない」と書き込まれてヤケクソで
続きを書いた訳で……とても不純な動機でした。
よくここまでだらだら続けたなと思っている程です。


一人でも続きが読みたい人がいれば書くかもしれませんが……


保守だけだと勿体ないから書き込んでみました。
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/13(水) 19:42:09.01 ID:SkONvZoQ0
書き続けることができるなんていいことじゃないか
らき☆すたのSSは読みたいと思うしこのスレがあればまた新規の作者も現れるかもしれない
書こうと思えるなら書くべきだと思うよ
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/25(月) 23:14:08.11 ID:mzE9F7rJO
これは偽物
http://www.asyura.us/bigdata/up1/source/38552.jpg
543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/05/01(日) 21:33:28.53 ID:yeB5k04t0
「こなたの旅」の作者です。
忘れてしまった人もいるとは思いますが続きを投下します。
5スレくらい消費します。
544 :こなたの旅 34 1/5 [sage saga]:2016/05/01(日) 21:35:22.16 ID:yeB5k04t0
34

 彼が、神崎さんが近づいてくるのが分る。どうしよう……
どうしようじゃない。かがみの作戦通りやるしかない。そう心の中で何度も言う。
そうじゃないか。普段は普通に話せているじゃないか。そうの様にすればいいだけの話。
よ〜し。
神崎「待たせたかな……まさか先に来ているとは思わなかった」
こなた「あっ!!」
神崎「ん?」
不思議そうに私を見ながら首を傾げる神崎さん。私の奇声がよっぽど珍しかったのか。
そんな事を考えている暇は無かった、もう作戦は始まっている。
……もう……いやいや、まだまだ……
とにかく落ち着け、そして動作はゆっくり、慎重に。
私は徐にポケットに手に入れてメモリー板を取り出し彼に差し出した。
神崎さんはさらに首を傾げる。
こなた「はい」
神崎「どう言う意味なのか?」
こなた「もう返すよ……」
神崎さんはとても驚いた顔をした。
神崎「返す……何故だ、まだ裁判は終わっていないのに?」
こなた「裁判はどうあがいても有罪は確定しているからね、もう終わったのと同じだから」
私は一歩進んで更に彼に近づいた。
だけど神崎さんはメモリー板を受け取ろうとしない。
神崎「……裁判はいいとして、君にもそれは必要ではないのか?」
こなた「もう私の仕事は終わっちゃったしね、もうこれ以上これを持っていても意味ないし」
神崎「……貿易会社が読み取ったメモリー板の情報を全て消したと言うのか?」
私は頷いた。
こなた「敵もいろいろ工夫していて骨は折ったけどね、これでお稲荷さんの情報は少なくとも彼らのサーバには一切残っていないよ」
神崎「ばかな……君には基本的な使用方法しか教えていない」
私は人差し指を立てて舌を鳴らした。
こなた「チッチッチ……私にはもう一つの秘密兵器があるのだよ」
もう一つ、そうUSBメモリーを取り出しメモリー板の上に重ねて置いた。
神崎「それは……」
こなた「めぐみさんがくれたUSBメモリー、これでこの地球上ある全てのPCは私の手の中にあるのと同じ、それにね
    メモリー板の使い方もこのUSBメモリーが翻訳してくれてね、仕事が捗ること捗ること」
神崎「……それがあったのか……メモリー情報は確かにそれで翻訳できるな……」
私は更に一歩彼に近づいて渡そうとしたけど彼は受け取ろうとはしなかった。
神崎「本当に良いのか、私がこれを使ってあの殺し屋に復讐するとしたらどうする、それを使えば刑務所だろうが軍隊の施設だろうが
   容易に侵入できるぞ」
こなた「うんん、メモリー板が無くったって復讐する気ならとっくにやっていたでしょ?」
神崎「言い切るじゃないか、メモリー板を持った途端に気が変わるかもしれないぞ、それに今まで何もしなかったのは
   君の持っているメモリー板で私の居場所を特定されてしまうのを恐れていたからかもしれない」
こなた「そんな事言ったら私がメモリー板を渡さないよ、それにね、そう言うのは渡されてから言うもんだよ」
神崎さんは苦笑いをした。
神崎「私を試すのか、メモリー板のおかげなのか知恵がついたな……それとも誰かの入れ知恵なのか」
こなた「そんなのどっちでもいいじゃん」
確かにこのメモリー板のおかげで神崎さんと同等な話が出来るしついてもいける。
だけどこれはメモリー板でも誰かの……ましてはかがみの入れ知恵でもない。
つかさとお稲荷さんとのやり取りをずっと観ていれば出来ることだよ。
私はさらに近づいてメモリー板を彼の間の前にかざした。
神崎さんはじっと私の手にあるメモリー板を見ている。
545 :こなたの旅 34 2/5 [sage saga]:2016/05/01(日) 21:36:26.74 ID:yeB5k04t0
神崎「確かにそれは私にとってどっちでもいい……それより本当にそれでいいのか、それを私に返せば二度と
  その力を使うことは出来ない、知識も技術もすぐに忘れてしまうのだぞ、その気になれば株価の操作だって可能、
  貿易会社の様に技術を売れば富も思うがまま、それにかつて君がこの神社を買い取った様にね……惜しくないのか?」
こなた「ふふふ、今度は私を試すの……確かに惜しいと言われれば惜しいけど……やっぱりこれは私達が持つには
   危なすぎるよ……数学で1+1が2になるって理解できて始めて計算が出来るようになるよね……
   あとは掛け算、割り算、関数とか微分や積分だってその延長だよ、
   メモリー板の中身が分るようになって分っちゃった、私達ってその計算すらまだ理解出来ていないレベル
   だって……だから宝の持ち腐れになる」
神崎「確かに今の人間にはその積み重ねがなるかもしれない……それでも何人救えるか分らないぞ」
こなた「うん、同時に何人不幸にするか分らない」
神崎「……冷静な判断だな」
こなた「こう言うのはよくゲームやアニメで題材になるからね」
神崎「そこでそれが出てくるか……」
神崎さんは笑った。そして、さらに話しを続けた。
神崎「今まで永い間、人間と関わってきた、君が知っている様に私達はどんなに頑張っても一ヶ月の内数日は
  狐の姿になって生活するしかない、それで何度信頼していた人に裏切りられたか……
  一番弱くなっているところを狙われる、技術や知識を教えてもそれでいつも裏切りられ、争いが始まり、
破壊の限りを尽くし、そして……
  元に戻ってしまう、それの繰り返し、何度命を狙われ、何度生死の境を行き来したことか……」
少し間を置いて神崎さんは更に話しを続ける。
神崎「それでも助けられたのも人間だった、傷ついた私を何度救われたか、中には裏切ったはずの人物に
   助けられた事もあった……いったいどっちが人間の本性なのだ?」
何万年も生きていればいろいろな事があったのは分るけど。
私にはその問いの答えを持っていない。だけど……
こなた「何も知らない友人が一人旅で理不尽にも生贄にされそうになったよ、挙句の果てに逆恨みでもう一人の
   友人にも呪われちゃってね……何度か殺されそうになった……」
神崎「…それは……」
私は少し間を置いて更に話した。
こなた「でもね、その友人を殺そうとした人自分の命を引き換えにに友人は助けられた、
更に私達と一緒になって私達を呪おうとした人達と仲直りしようとしてくれた人もいたっけな……
お稲荷さん……一体どっちが本性なの?」
神崎「……その話しをするのか」
こなた「このメモリー板の知識だってお稲荷さんに出来たのだからきっと私達だって同じ事が出来るようになる」
神崎「私達と同じと言いたいのか……」
こなた「うん」
神崎「いや、地球での私達の行為は生きる為に止むを得ず行ってきた事だろうに」
こなた「それじゃ多分私達も同じだよ、このメモリー板の中にある歴史って殆ど戦争だよね、地球と同じじゃん?」
私を見て急に笑い出した。
神崎「メモリー板の歴史も解読したのか、ふふ、なるほど、君はもうそれを使いこなしてしまった……そう言う事か……だから見つからなかった訳だ」
こなた「ん?」
なんの事を言っているのかな?
神崎「確かに彼女の言ったとおりになったな」
こなた「へ?」
今度は私が首を傾げた。
神崎さんは黙って考えているみたいだった。
こなた「話したくない事なの、それより受け取ってくれないと腕が疲れちゃうんだけど」
神崎「そ、そうだな……」
神崎さんは腕を伸ばしてメモリー板をUSBメモリーを受け取ろうとした。
さけどさっきの話が気になってきた。
私はメモリ板とUSBメモリーをポケットに戻した。
546 :こなたの旅 34 3/5 [sage saga]:2016/05/01(日) 21:37:28.72 ID:yeB5k04t0
神崎「え?」
こなた「さっきの話の続きを聞きたい……誰の言う通りになったって?」
神崎「……そうだな言いかけてそれはないか……」
神崎さんは振り返って私に背を見せた。そして神社の下を見下ろした。
神崎「ワールドホテル社長と秘書の突然の消失……そしてこの神社の買い取りと寄付をした謎の人物……
  レストランかえでが一番怪しいと彼女は言っていた」
こなた「その彼女って……もしかして?」
神崎「そう、神崎あやめだ」
あやめさんは最初から私達の店を疑っていた。でも、そうだとしたら。
こなた「それじゃなんで今になって私達の所に来たの、もっと、もっと早く来てもおかしくないじゃん」
少なくともあやめさんが亡くなる前には会えたはず。
神崎「私にもそう言っていた、彼女の読みを信じていればこうはならなかったかもしれない……死ぬ必要もなかったかもしれない」
こなた「それじゃどうして!!」
思わず声が裏返った。
神崎「……私が反対した」
こなた「反対したって……私達は、特につかさはワールドホテルと深く関わっていたよ、少し調べればそのくらいは直ぐに……」
神崎さんは首を横に振った。
神崎「いいや、調べてもそれは分らなかった、ワールドホテルの情報は殆どあの社長と秘書が持っていたらしいからな……」
私を見る神崎さん。
神崎「その情報を消したのも君か?」
こなた「まさか、私はほとんど何もしていないよ、多分消したのは秘書の……」
神崎さんは手を私の目の前に出して止めた。
神崎「もういい……情報を消すのは私達のしてきた事を考えれば当然の事……そう、君たちはお稲荷さん仲間と協力して
   母星と交信をし、そして故郷に帰した……何千年、何万年経っても出来なかったことを君たちはやってしまった」
こなた「うんん、つかさが90%以上やったこと、そんな事よりあやめさんがよく神崎さんの反対に納得できたのか……
    あの強引な性格じゃぜったいに折れないよね?」
神崎「強引? そうだな、仕事はいつもそうだった、しかし私の言う事にはあまり反論はしなかった」
反論しなかった……?
こなた「仕事って、貿易会社の秘密を探す仕事をしてたでしょ……それに仲間を探していたって……
彼女のライフワークみたいなもんじゃなかったの?」
神崎さんは黙っていた。話そうとしないから私から言った。
こなた「ずけずけ店に入ってきたりしたしたり、私を潜入操作のメンバーにしたり……そんなの考えられないよ」
それでも神崎さんの言う事に従ったってことは……
神崎「反論はしなかったが彼女従ってはいない」
こなた「え、言っている意味が分らない……」
神崎「彼女は私と仕事をした後から自分の仕事をしていた、私に気付かれないように」
そんなまどろっこしい事を何で?
私が話しださないのを確認したのか神崎さんは話しだした。
神崎「彼女は私と大学や企業を調べている合間を見ては君達の店を調べていた、店の経歴、店長、
従業員、店の移転に至るまでね、もちろんその中に君の名前もあった、泉こなた……」
そこまで調べていたなんて……
神崎さんは一呼吸すると再び話しだした。
神崎「私との仕事と自分の仕事の両立……その負担は心身共にかなりのものとなる」
こなた「負担……」
神崎「そしてその結果があの事故だ……」
私はなんていって良いのか分らなかった。
神崎「ふふ、あいつを、あやめを死に追いやったのは私だ」
こなた「あやめさん、調べていたんだったらちゃんと言えばよかったのに……なんで……」
神崎「……さあな……」
さあなって、神崎さんはあやめさんの記憶の全てを知っているんじゃないの?
だから……それは無いよ。絶対無い。神崎さんは絶対にその理由を知っている。知ってきゃおかしいよ。
547 :こなたの旅 34 4/5 [sage saga]:2016/05/01(日) 21:38:23.83 ID:yeB5k04t0
神崎「今までの私はその償いの為にこうしてきた……それももう終わる……」
でも聞けない……その理由が怖くて聞けない。
こなた「償いって、約束じゃなかったの?」
神崎「ふふ、そう言わなかったら君は協力してくれまい?」
こなた「え……?」
神崎「貿易会社に潜入した時警備員に襲われた……本当は君を助けるつもりは無かった」
こなた「な、なにを突然……」
神崎「君が囮になれば私達は逃げられた……それだけの話だ」
こなた「それじゃなんで私を助けたの?」
神崎「神崎あやめがそれを許さなかっただけの話だ……あやめに感謝するんだな」
違う。直ぐにそう思った。
あの時、囮になって皆を逃がしてそれで自分も助かる可能性があるとしたら狐になれる神崎さんしか居ない。
こなた「……そうだね……」
それでもこう答えるしかなかった。
神崎「さて、もういいだろう」
神崎さんは手を伸ばしてきた。
メモリー板……これを渡してしまったら……もう……
こなた「ちょっ…ちょっと待って……な、何も今更母星に帰らなくたって……もう4万年もここ(地球)に居たんだし……」
神崎さんの手が止まった。
神崎「この私に留まれと言うのか?」
こなた「う、うん……」
私は力なく答えた。
神崎さんは私の手に持っているメモリー板を見ながら話した。
神崎「それを機能停止させるにはかなりの危険、それに費用が必要になる……それとも人類がそれを使うに値するまで守り続ける覚悟があるのか、
   10年、100年、1000年……君達の子々孫々……少なくとも全人類が一つに纏まるまではこれは渡せないだろう」
こなた「何もそこまで待たなくても……」
神崎「ほぅ?」
その理由を聞きたそうな目をしている。
こなた「この状況は小さい頃から擬似的に体験しているから……もっと早く分ってくれるかなって……」
神崎「小さい頃?、擬似的?……ん……具体的になんだ?」
私は小さな声で答えた。
こなた「ドラ○もん……」
嗤われる
そう思った……だけど私と思ったのと違った反応をした。
神崎「未来から来たロボットが主人公に秘密の道具を貸す漫画か……」
こなた「し、知ってるの?」
神崎「知ってるも何も、彼女が話してくれてね……」
彼女……あやめさんか……
548 :こなたの旅 34 5/5 [sage saga]:2016/05/01(日) 21:39:31.72 ID:yeB5k04t0
神崎「主人公が大失敗をして終わるのが殆どだってな……確かにあの漫画は今の状況に当てはまる内容だな……
   あの教訓が活かせれば君も私もこうして苦しむこともないのだがな……ヨーロッパでも魔法使いの弟子と言う話が……」
なんだろう神崎さんのあの表情。昔を懐かしむように……そんな風に見える。
そういえば漫画やアニメのネタの話しをしても神崎さんは嫌がらなかった。それどころか
積極的に話していたよ。
そうか……分っちゃった……
あやめさんは神崎さんの事を……
分るのが遅すぎたかな……
神崎「泉さん!?」
神崎さんの声にハットした。
こなた「あ、は、はい?」
神崎「なんだ聞いていなかったのか?」
こなた「え、えっと聞いてますよ、魔法使いの弟子……うんうん随分古いアニメだよね」
神崎「その話はしていなかったが?」
こなた「え、あ……」
神崎さんは笑った。そして私は苦笑いをした。
神崎さんは私の手に持っているメモリー板を見ている。
確かにもうこれを持っている理由はないよね。
え、
これで、終わり?
うそ……まだなのに……こっちの要件はまだ終わっていない。
でも、もう終わり?
どうしよう。
何もできなかった。
これじゃこの前とおなじじゃない。
神崎「確かにこの地球は母星よりも遥かに永く滞在している、もう第二の故郷と言ってもいいくらいだ、
   そして……最後に君に会えて良かったよ」
こなた「あ、そうだね、こっちも……」
そんな私の思いも束の間、話はどんどん進んでいく。
私はメモリー板とUSBメモリーを神崎さんに手渡した。
何故……言えない……
私って……
神崎さんはメモリー板とUSBメモリーを大事そうにポケットに仕舞った。
こなた「あれ、使わないの、仲間を呼ばないの?」
そんな事を言いたいんじゃないのに……
神崎「もう私が手にしたのなら改めてその操作をする必要はない」
こなた「そうだったね……」
神崎「それでは、さようなら」
こなた「さよう・なら……」

あっけない。これが最後の別れなの……

 神崎さんは私に背を向けると神社の階段を折り始めた。
私はその姿をずっと見ていただけだった。
彼の姿がぼやけて見える。
これって涙なのかな。

ごめん……かがみ……折角の作戦だったのに……大敗だったよ……

つづく
549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/05/01(日) 21:50:00.97 ID:yeB5k04t0
以上です。

久々に投下したのでドキドキしてしまった。初めて投下した頃を思い出す。

しかし1年もかけて書いてたったこれだけとは……


次の投下でおそらく最後になると思います。

この後こなたがどうなるのか お楽しみを。


>>541
あまりにも反応がなかったのでモチベーションが落ちていました。
プロでもない素人には反応だけが肥やしみたいなものなので……
励みになりました。
ありがとう。

この後纏めるので報告に替えさせて戴きます。
550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/05/04(水) 07:36:22.81 ID:3S1c0E5U0
まとめサイトのカウンターが機能していない
何か設定が間違っているのだろうか?
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/05/12(木) 00:24:53.10 ID:6V2ntczx0
保守
552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/05/13(金) 02:18:25.14 ID:RSTkZY+aO
553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/05/22(日) 14:09:45.05 ID:/KNv+mep0
まとめページの「メニュー」を修正しました。
554 :saga sage :2016/06/06(月) 08:58:02.51 ID:atk+5RgpO
保守
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage ]:2016/06/06(月) 09:05:11.97 ID:atk+5RgpO
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/06/15(水) 22:13:03.82 ID:ptz9vbDvo
こなた
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/06/24(金) 22:06:46.50 ID:F5mG9rAN0
保守
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/07/04(月) 21:14:06.77 ID:lGyJ67DR0
保守
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/07/15(金) 14:00:58.86 ID:EoTJwZOLO
保守
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/07/22(金) 22:18:46.65 ID:oss0WUKI0
保守
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/03(水) 09:04:12.54 ID:NIfFVqHYO
保守
562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/08/13(土) 07:02:56.71 ID:KQGA1EGl0
保守
563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/08/21(日) 00:02:03.04 ID:rFZvrIaU0
こなた「何にしようかな〜」
かがみ「さっさと決めなさいよ、あんただけだぞ!」
こなた「う〜ん、だって食べられるのは一つだけ……だけど食べたいのは二つもあるからね〜
    かがみみたいに両方なんて……迷うよ……」
かがみ「一言多いぞ……」
つかさ「そうだよね、こう言う時迷っちゃうよね」
みゆき「人間は意思決定をすると脳にかなりの負担になると聞いています」
こなた「意思決定?」
みゆき「はい、意思決定をすると脳の全ての機能を使用するので、どんな
    意思決定でも……例えば今朝はどの服を着るとか、朝食は何にしようかといった
    ものでも、仕事の結果を左右するような判断でも脳は同じ労力を使ってしまうようです、
    ですからあの有名なスティーブ・ジョブズはプレゼンテーションの時などの服装は
    同じ物にして他の重要な意思決定に脳の力を集中していたようですね」
こなた「ふ〜ん、かがみはいつも同じ色のリボンしてるけど、それを意識してたの?」
かがみ「……学校に派手なのは合わないでしょ、それだけよ
    それよりあんたはゲームに意思決定を集中しすぎだ、すこしは別のことに廻したらどうなんだ?」
こなた「私はゲームも現実も全力なのだよ、だから問題なし」
かがみ「あんたみゆきの話聞いていたのか?」
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/08/21(日) 00:56:38.08 ID:rFZvrIaU0
まとめた

久しぶりに1レスものを投下してみました。
565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/08/25(木) 05:21:20.43 ID:Xlih6YxIo
566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/03(土) 12:41:22.74 ID:V2KKGcS90
保守
567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/09/10(土) 09:03:06.95 ID:pG7d1nbp0
保守
568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/09/21(水) 23:08:31.54 ID:Y3NjDOxP0
保守
569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/09/22(木) 19:43:56.29 ID:nTHZ6Wbh0
今でもwikiを見るよ
自分では書けないけどらき☆すたのSSまた来て欲しい
570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/09/25(日) 02:45:30.88 ID:m2uJmdeE0
>>569
見てくれている人がいるとは励みになります。

ちなみにpixivから来た人はいるのかな?

宣伝してから1年過ぎたけどどんなもんかな?
571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/04(火) 14:00:26.14 ID:ksnGcA11o
おう
572 :近況は? [sage]:2016/10/06(木) 21:12:59.50 ID:52cW1qRl0
そういえばアニメ放送から10年も経ってしまった。
漫画も9巻までしか買っていないけどその後はどんな感じなのかな

自分は8巻くらいまでの内容でSS書いているけど内容は大きく変わった?



573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/08(土) 23:34:56.64 ID:Apcr4N1x0
少なくとも10巻までは特に雰囲気変わっていないけど
その10巻からもう3年近くも単行本出てないみたいで寂しい限り
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/10/23(日) 06:51:10.75 ID:viLnnVdn0
卒業後のSSは苦手。
自分は専門学校卒なので大学の雰囲気がいまいち分らない。
つかさメインならなんとかなるかな……
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/10/27(木) 08:27:51.48 ID:Ygj5FzpRO
え、なにここは........
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/11/01(火) 11:50:47.91 ID:nRei4TUYO
保守
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2016/11/13(日) 20:35:44.25 ID:e6HMKip80
保守
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/11/22(火) 06:29:20.79 ID:UnEMh2K4O
保守
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/12/01(木) 07:07:19.53 ID:3QEY3BHBO
保守
580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2016/12/10(土) 07:35:11.06 ID:ZA1qqXXtO
保守 
書き込みがない。
宣伝、効果なかったかな
581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/16(金) 14:28:09.38 ID:az/P2DWn0
原作の進展がないからね
ご新規さん来てほしいね
582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/12/17(土) 09:39:31.36 ID:PcBtTKmIO
らきすたってなあに?(新参)
583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/01/01(日) 06:58:12.46 ID:2hkFiyMp0
あけましておめでとう
584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/01/10(火) 21:53:32.63 ID:j4OaegLy0
保守
585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/01/22(日) 19:29:07.09 ID:/PLfVAGR0
保守
586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/29(日) 23:35:27.73 ID:FmDh2f+ro
587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/01/29(日) 23:41:21.45 ID:YNKbsYq4O
588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/02/03(金) 17:04:30.44 ID:U4bKvRFc0
保守
589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/14(火) 20:26:24.28 ID:KZbMBXQTO
保守しか言えねえのかこのサルゥー!

見たことないんだが、面白いのか?
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 01:14:08.06 ID:T1AGHmSzO
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/18(土) 01:22:03.07 ID:DcbTYBqeO
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/02/20(月) 23:54:41.51 ID:sCLmiysM0
a
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/03/01(水) 22:39:19.13 ID:GOZbryaO0
保守
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/03/08(水) 07:35:48.53 ID:nG/AXiGZo
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/03/23(木) 22:59:07.22 ID:yO49sz5l0

596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/02(日) 06:58:09.43 ID:8RyOzASt0

597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2017/04/13(木) 20:02:22.07 ID:r9cEVdcFO
保守
598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/04/23(日) 13:14:03.76 ID:8VAFTnIdO
保守
599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/04/30(日) 22:50:45.12 ID:JUC7poKP0
保守
600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/06(土) 16:15:14.32 ID:7yUQKwmE0
保守
601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/05/17(水) 22:01:40.11 ID:ZZYuID0m0
最近まとめサイトでコメントを入れてくれてくれる人が
増えてきた。
この調子で増えて欲しい。
602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/27(土) 15:27:08.19 ID:WAMjsAAP0
保守
603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/05/31(水) 21:04:48.63 ID:00CHEsOF0
保守
604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/31(水) 23:03:46.75 ID:f+iotg7d0
試し
605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/05/31(水) 23:06:31.28 ID:f+iotg7d0
試し
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/06/02(金) 00:01:26.90 ID:5aHyfWvJ0
 『つかさの一人旅』『つかさの旅』を読みました。
 かがみがかえでさんの店に初めて来た時、わざわざかえでさんを呼んで、料理の感想を言ったのに、こなた、みゆきと一緒に食べた時、何故けなしたのか、その理由が、つかさを連れ帰るためでも、訳を聞くと黙ってしまう場面を読んで、結構考えてしまいました。僕としては、誰かに脅されているのではないか、等を考えていましたが、まさか、つかさを狙っている者が居て、つかさを町から遠ざけるために、連れ帰ろうとしているとは、思ってもいませんでした。つかさに帰れと言う度に、相当な苦痛が襲っていたにもかかわらず、苦しい表情を見せなかったかがみの精神力に頭が下がりました。
 つかさが、本当の事を言わず、隠そうとしても、かえでさんの誘導尋問に簡単に引っかかったり、噓を言っていることをこなたに一発で見破られたりしている場面を読み、つかさが相変わらずな感じでした。また、つかさがゆいさんに車の運転の指導をしてもらい、免許皆伝だと言われたが、かえでさんに同乗を遠慮されただけでなく、みゆき、かがみ、こなたからも、口を揃えて同乗を断られたのが面白かったです。つかさは何か悪いのかと思い、つかさの「今度成実さんにもっとしっかり教えてもらおう。」という心の台詞を読んで、僕は、「いや、あかん、あかん。」と思いました。その後、こなたがつかさの運転する車に乗り、その時はゆいさんのように暴走していなかったので、きちんとした指導を受けたのかと思いきや、実はゆいさんの教えてくれた3割程度しか出していなくて、全開のつかさにびっくりしました。こなたの「隣の席に、ゆい姉さんの姿を見た……」という台詞を読んで、アニメ「らき☆すた」の、こなた達と海に行く途中の暴走時のゆいさんと同じような顔をしているつかさを想像してしまいました。
 ひろしさんとつかさとの別れの時は、感動しました。つかさの「さようなら、また会う日まで……」に続いて、ゲーム『らき☆すた 〜陵桜学園 桜藤祭〜 Portable』の最後に出てくる「またね」が出てきました。
 全体の感想としましては、読んでいて面白かったです。

 ひろしさんが「あきら」、たかしさんが「たけし」、真奈美さんが「美奈子」に変わっている部分が多々ありましたが、作者にとって、どちらも思い入れのある名前なのでしょうか?
607 :29 [sage]:2017/06/02(金) 00:02:54.87 ID:5aHyfWvJ0
試し
608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/06/02(金) 00:07:01.57 ID:KtH4y6dSO
高翌良
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/03(土) 06:22:12.46 ID:T5NVgfi50
>>606
つかさの旅の作者です。
長文での感想ありがとうございます。
 名前の間違えについては読み難くなってしまいすみませんでした。
 つかさの旅を作っている時に「つかさの旅の終わり」「ひよりの旅」「こなたの旅」の
 原案を考えていたので混乱して名前を間違えてしまったようです。
 特に名前に思い入れがあった訳ではありません。
 「こなたの旅」が完成したら修正をしたいと思います。(何時のことやら……)
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/07(水) 00:11:16.02 ID:G2/YUfkl0
高良
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/06/20(火) 01:10:50.09 ID:+pk24iqT0
保守
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/01(土) 20:50:56.02 ID:hlhiVRvZ0
保守
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/10(月) 22:58:13.44 ID:OfP8oRhS0
保守
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/07/22(土) 19:19:30.45 ID:0I7Baj840
ほしゅ
615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/01(火) 21:25:19.97 ID:TxVSXRgn0
保守
616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/05(土) 15:53:19.99 ID:ZP5o368No
AT-Xで放送してるな
1話ずつは初めて
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/05(土) 16:16:47.70 ID:eA72xx+CO
高翌良
618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/07(月) 22:39:56.51 ID:Par/i0IN0
コンクールでもやりたいけど 
書き手が集まるかどうか……
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/08/08(火) 23:28:31.81 ID:+elxBtXV0
らきすたニコ動で無料配信しても増えないなあ
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/15(火) 16:59:12.43 ID:syclmzdd0
>>619
増えないのは無料配信で見ている人が初見じゃなくて
既に見たことがある人が大半だからじゃないかな?
621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/16(水) 22:59:32.58 ID:ELWd9Hy20
まぁ らき☆すたの一挙放送もあるみたいだけど
それで初見さんがこのサイトを見つけてくれれば良いんだけどね。
622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/26(土) 23:26:43.29 ID:RFpqsgX50
保守
623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/30(水) 15:34:02.64 ID:qKPZCcoi0
らき☆すた一挙放送を見て昔VIPでやってたなーと思って、そういえばSS速報にSSとかあるのかなと思って見に来たらまさかこんな大きいのがあったとは。。。すごいなぁ、四年も続いてるんだ
624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/08/30(水) 17:37:24.85 ID:qKPZCcoi0
これって好きなようにらき☆すたSS書いちゃってもいいの?
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/08/31(木) 20:49:31.23 ID:0DMuD5Os0
>>624
好きなように書いてもいいけど
>>1は守ってね
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/08(金) 23:13:52.29 ID:+JPB2HDb0
保守
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/14(木) 19:29:40.96 ID:ic8jGCen0
>>623 
たしかにこのスレは4年続いているけど
らき☆すたSSとしては10年超えている
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2017/09/26(火) 01:41:57.16 ID:syElXTA/0
『つかさの旅の終わり』を読みました。
 つかさの住んでいる町の再開発に、世界的大企業の会長が出てくるだけでなく、その会長がお稲荷さんで、秘書もお稲荷さんだと知り、つかさがお稲荷さんにとても縁がある、と思いました。挙句の果てには、かがみ、いのりさん、まつりさんの結婚相手まで、残ったお稲荷さん達であることにびっくりしました。柊姉妹、お稲荷さんに縁ありすぎ……。ほかの方の書き込みどおり、みきさん、ただおさんのどちらかがお稲荷さんではないかと思えてきました。
 つかさの住んでいる町の再開発の目的は、お稲荷一族と人との共存であり、見返りとしてお稲荷さん達の知識を与えることが、ひいては人類の歴史に関わる事であり、つかさがそれに深く関わっている事に興味を持ちました。
 他の方の感想にあるとおり、こなたのオタクなところや、つかさの天然なところが度々出てきて、原作に出てくる彼女達と同じようでした。しかし、つかさはいまだ天然でも、ひろしさんが地球に残るかどうかの返事を聴いた後、神社の階段を降りて、神社の入り口に来た時、わざと喜んだ顔をして、みゆきを安心させて帰らせる等、そういった事をするつかさに驚きました(僕は、つかさのことを甘く見ているのかも知れません。)。
 けいこさんとつかさとの最後の対面の後、こなたが珍しくかえでさんに怒られ、しかも様子がおかしく、つかさ達の言うとおり、こなたは神社をお金で買う為に何かをしているのではないか、と思いましたが、こなたが救助船にデータを送り、お稲荷さんたちは母性に帰れるかと思いきや、実は、NASAがハッキングに気付いた為、めぐみさんの用意した10段階のプログラムを使ってもダメで、データが送信出来ず、それに加え、めぐみさんが出頭する日に、救助船から、滞在時間の短縮の連絡が来て、明日の昼までとなった為、それまでにデータを送信しないとお稲荷さんは帰れない、という状況になり、めぐみさんはすでに出頭しており、どうやってデータを送るかとドキドキしました。
 データを送り、神社まで行き、ひろしさんと会おうとするが、間に合わず、このまま終わるのかと思いきや、つかさが遅れたお陰で、ひろしさんは地球に残ることになり、結婚して終わるとは思ってもいませんでした。

 それら以外で、物語中に、特に関心を持った部分は、

壱:つかさがかえでさんと一緒に、初めてけいこさんに会いに行く際の電車内で、スーツ姿の二人の会話の、
かえで「なんか息苦しいわ、つかさは少し大きすぎじゃないの?」
つかさ「うーん、引っ越しする時に買ったスーツなんだけど……少し痩せたのかな……」
→つかさはいつの間にか痩せるのに対し、かがみはいつの間にか太りやすい、と思いました。

弐:こなたとひよりが、無断でかがみたちを主人公にした漫画を描いたことについて、「もしかして、らき☆すた?」と思いました。みゆき曰く、「現実離れしたコメディ」なので、違いますね。コメディ版らき☆すた?

参:けいこ会長が検挙され、どのチャンネルもワールドホテル会長の話題で持ち切りに対し、こなたが、「これじゃ……深夜アニメも中止かもね……」と言っている部分と、けいこ会長の検挙の後、めぐみさんと思われる狐がUSBメモリーを咥えていて、こなたが「私達……何か大きな出来事に……運命に巻き込まれようとしているような気がしてきた……」「少しワクワクしてきた、こんなのゲームの世界でしか味わえないと思っていたけど……楽しい冒険が出来そう……指名手配の人物を匿うなんて、そう出来る事じゃない」という台詞と、こなたが世界中で発生している、物を買う時、売る時の取引で切り捨てられる小数点以下の値を切り捨てないで全てスイス銀行に振り込ませるようにしたことを『元気玉作戦』と名付けたこととを読み、こなたらしさを感じました。こなたが、相変わらずアニメの心配をしている……。元気玉作戦はしっくりきました。

肆:めぐみさんとけいこさんとは、約3万年前に地球に来た調査団100人の中に入っていて、2人とも3万歳以上であることに驚きました。そりゃ、お頭だった五郎さんのことを未熟者呼ばわり出来るわけですね。

伍:けいこさんの名字が柊だったので、「何かあるのかな、それともただその名前を使っただけかな……。」と思いましたが、まさか竜太さんとつかさの親とが遠い親戚だという設定にしていたとは思ってもいませんでした。面会の場面の為に、柊という名字にしたのでしょうか?
629 :93 [sage]:2017/09/26(火) 01:43:51.14 ID:syElXTA/0
追加
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/09/28(木) 00:50:07.99 ID:GJA+Ndkv0
>>628
つかさの旅の終わりの作者です。

長文の感想ありがとうございます。
まさかこのシリーズを読んでくれる人がいるとは思いませんでした。

もう数年前に作ったものなので細かい事はおぼえていないけど
けいこの名字を柊にした意図は特になかったと思います。
でも、いろいろ読者が考えるかな的な狙いはあったかもしれません。

らき☆すたは話題にならないのが残念です。

最近ではけものフレンズが好きですね
物語の構成が巧みだと思います。 でも……残念です としか今は言えませんね。

最近のアニメは残念ばかりで寂しい。

631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/02(月) 22:07:37.24 ID:/fjPA8CD0
保守
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/10/12(木) 21:15:53.98 ID:59K/JbIo0
保守
633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/10/20(金) 01:05:37.41 ID:Ks3JF7L50
保守
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/03(金) 16:39:10.32 ID:vSOnqmAEO
保守
635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/11/17(金) 22:05:17.44 ID:5luhyNBs0
保守
636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2017/11/25(土) 00:37:45.57 ID:FAScAJKv0
保守
637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/02(土) 20:34:05.26 ID:FsjX6n8W0
保守
638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/10(日) 06:05:39.60 ID:y+H1Qrot0
639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2017/12/16(土) 09:13:57.22 ID:56NkuOpY0
しゅ
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/01(月) 00:07:42.80 ID:W16mwjEl0
あけましておめでとうございます
641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/01/07(日) 23:27:34.10 ID:lDVon3sko
おめでとうございます
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/01/17(水) 18:37:21.66 ID:u7Wfaa9p0
保守
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/01/23(火) 00:11:21.16 ID:fborxs+v0
保守
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/02(金) 00:06:04.00 ID:wyKNFNuf0
hosyu
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/02/11(日) 13:11:26.64 ID:eGUlAqA00
ho
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/04(日) 23:04:51.55 ID:P6QmXwdP0
syu
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/03/18(日) 19:19:38.51 ID:1b4nSUrJ0
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/31(土) 21:41:00.45 ID:s/Jd1dg40
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/01(日) 00:10:57.85 ID:hVuSugXk0
まとめサイトで人気ページ順に並べる項目があるけど
今日、昨日じゃなくて総数順になってしまっている。
いろいろやったけど改善しない。
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/01(日) 10:22:37.09 ID:hVuSugXk0
>>649
@Wikiに問合せ中
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/02(月) 19:08:35.09 ID:KXiu9HsN0
>>649
サーバーの不具合だったそうです。
現在は正常に復帰。
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/04/28(土) 15:54:58.85 ID:g0bA124w0
653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/05/14(月) 19:12:27.73 ID:FzIo3G9L0
保守です。
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/01(金) 01:17:06.73 ID:to4m3ksJ0
こなたの旅の作者です。
まとめサイトにも書いたけど。

続きが読みたい人はいるかな?
個人的には惰性で作った気がしてあまり自信がない。
8割くらいは出来ているけど……
何か書き込んでくれればモチベーションが上がるかも
よろしくお願いいたします。
655 :teru :2018/06/25(月) 20:10:26.77 ID:ODnquCH00
こなたの旅読みたいです。お願いします
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/30(土) 21:22:37.11 ID:LLp66kqI0
めっさ読みたい
ワイの誕生日近いからおなしゃす
657 :217 :2018/07/01(日) 00:02:27.60 ID:pAfN1ZRC0
 『ひよりの旅』を読みました。
 ひより達が、佐々木すすむさんとコンと出会って、正体がお稲荷さんであると突き止め、そこからまつりさん、いのりさんとお稲荷さん達と結ばせようとしているのを読み、「相変わらず、『らき☆すた』の登場人物達はお稲荷さんに縁があるなぁ。」と思いました。『つかさの旅の終わり』ではちらっとしか出てこなかった、その2人のお稲荷さんの話を詳しく読め、また、『つかさの旅の終わり』の時に、ひより達が柊姉妹とお稲荷さんとの恋愛に関することで動いていた事、つかさがたかしさんから教わった薬をかがみに飲ませて、かがみの病気を治している頃、ひより達は、かがみを救う為にたかしさんを探し、奔走していた事に興味 を持ち、読んでいて楽しかったです。
 しかし、まさかひよりがまなぶさんを、ゆたかがすすむさんを好きになってしまい、二人が恋に苦しむ展開に驚きました。
 全部を読んで、印象に残った事は、

壱:ひよりの描いた漫画に対して、みなみが、「かがみ先輩に焼かれた本……私達が題材になっていた、だから皆が怒った、それを除けばとても良い作品だった、続きが見たい」と、みゆき同様、良い評価を出すとは思ってもいませんでした。てっきり、良くないという印象しか持っていないと思っていました。さすがにみさお、かがみまで、そういった評価は出さないでしょうね。

弐:『つかさの旅』で、かがみがかえでさんに喧嘩を売ったことについて、かがみ「つかさを守るため、そう 、それが大義名分だわ、でもね、それはあくまで表向き、本当は悔しかった……つかさとあれほどうまくやって行けるなんて、つかさを知っているのは私意外にいないと思っていた、思い上がりだったわね……これが嫉妬ってやつだった、』→まさかあの時、悔しさのほうが強かったとは思ってもいませんでした。

参:お稲荷さんと人との寿命について、「生きている時間の幅が違うだけで一緒に居られないなんて、同じ種で寿命が殆ど同じなのはそういう意味もあるのかもしれない。」→その発想は無かったです。

肆:「お稲荷さんは約二十名が生き残って細々と暮らしている。殆どはつかさ先輩の居る町の神社に住んでいると。」→つかさの周りにそんなに居たんですね……。

伍:ひよりがゆたかの運転する車に乗った時、ゆたかが成実さんのような運転をしたのは、成実さんの影響かと思いましたが、実は、つかさに憧れていたから、つかさの真似をしていた事。

陸:かがみ「つかさといい、姉さん達といい、あんな狐に化けるお稲荷さんのどこが良いのよ」→よく言うよ、後にお稲荷さんと結婚するくせに。かがみのこういった台詞を読む度に面白かったです。

漆:かがみがつかさの一歩先に居たかったことは、つかさは数値や目に見えるものでは測れない物を持っていた為、普通じゃつかさに勝てないから、つかさと釣り合うようにする為に、学年でトップクラスの成績を取っていた事と、
  ゆたか「(ちゅうがくせいじだい、)みなみちゃんは二通のラブレターを書いた、一通は代筆を頼まれた親友の分、もう一通は自分が書いた本当のラブレター……出すつもりはなかった、だけど親友にその手紙が見つかってしまって、それからは親友と話すこともなくなって……ラブレターも渡される事はなかった……」という、原作には無い設定は、僕は好きです。

捌:ゆたかとみなみとが喧嘩している時、すすむさんといのりさんとを結ばせるにはどう したら良いか分からず、みなみの考えを聞く為に、ひより・ゆたかがみなみの家に行った時、みなみがピアノを弾いていて、「もしかして、『亡き王女のためのパヴァーヌ』かな。」と思いましたが、当たりました。

玖:ゆたかが、佐々木さんが狐になるところを見たひよりの記憶を、佐々木さんに消すように頼んだ本当の理由が、ひよりも自分と同じように佐々木さんを好きになり、ライバルが増えるかもしれないから、という事に、ゆたかに対して恐れを感じました。

拾:十年後に、つかさのピアノの演奏を皆に聴かせるために、洋菓子店つかさに学園祭のチアリーディングメンバー全員が呼ばれ、みさおが「これで全員だよな……早く始めようぜ」と言っていましたが、パトリシアはアメリカに帰ったのでしょうか?
  10年経っても、みんな相変わらずで、らき☆すたな感じでした。

拾壱:つかさの演奏会から数週間後に、ひよりがまつりさんに話をして、その後のゆたかの「これで全てのミッションが終わったね」という台詞を読んで、「10年越しにやっと終わった!?」と思いました。なげえ……。

鷲宮神社でひより・ゆたか(・パトリシア)が描かれた絵馬を見て、『ひよりの旅』を読み終えた後だったので、筆舌に尽くしがたい感情が出てきました。
658 :217 :2018/07/01(日) 00:02:58.20 ID:pAfN1ZRC0
 『ひよりの旅』を読みました。
 ひより達が、佐々木すすむさんとコンと出会って、正体がお稲荷さんであると突き止め、そこからまつりさん、いのりさんとお稲荷さん達と結ばせようとしているのを読み、「相変わらず、『らき☆すた』の登場人物達はお稲荷さんに縁があるなぁ。」と思いました。『つかさの旅の終わり』ではちらっとしか出てこなかった、その2人のお稲荷さんの話を詳しく読め、また、『つかさの旅の終わり』の時に、ひより達が柊姉妹とお稲荷さんとの恋愛に関することで動いていた事、つかさがたかしさんから教わった薬をかがみに飲ませて、かがみの病気を治している頃、ひより達は、かがみを救う為にたかしさんを探し、奔走していた事に興味 を持ち、読んでいて楽しかったです。
 しかし、まさかひよりがまなぶさんを、ゆたかがすすむさんを好きになってしまい、二人が恋に苦しむ展開に驚きました。
 全部を読んで、印象に残った事は、

壱:ひよりの描いた漫画に対して、みなみが、「かがみ先輩に焼かれた本……私達が題材になっていた、だから皆が怒った、それを除けばとても良い作品だった、続きが見たい」と、みゆき同様、良い評価を出すとは思ってもいませんでした。てっきり、良くないという印象しか持っていないと思っていました。さすがにみさお、かがみまで、そういった評価は出さないでしょうね。

弐:『つかさの旅』で、かがみがかえでさんに喧嘩を売ったことについて、かがみ「つかさを守るため、そう 、それが大義名分だわ、でもね、それはあくまで表向き、本当は悔しかった……つかさとあれほどうまくやって行けるなんて、つかさを知っているのは私意外にいないと思っていた、思い上がりだったわね……これが嫉妬ってやつだった、』→まさかあの時、悔しさのほうが強かったとは思ってもいませんでした。

参:お稲荷さんと人との寿命について、「生きている時間の幅が違うだけで一緒に居られないなんて、同じ種で寿命が殆ど同じなのはそういう意味もあるのかもしれない。」→その発想は無かったです。

肆:「お稲荷さんは約二十名が生き残って細々と暮らしている。殆どはつかさ先輩の居る町の神社に住んでいると。」→つかさの周りにそんなに居たんですね……。

伍:ひよりがゆたかの運転する車に乗った時、ゆたかが成実さんのような運転をしたのは、成実さんの影響かと思いましたが、実は、つかさに憧れていたから、つかさの真似をしていた事。

陸:かがみ「つかさといい、姉さん達といい、あんな狐に化けるお稲荷さんのどこが良いのよ」→よく言うよ、後にお稲荷さんと結婚するくせに。かがみのこういった台詞を読む度に面白かったです。

漆:かがみがつかさの一歩先に居たかったことは、つかさは数値や目に見えるものでは測れない物を持っていた為、普通じゃつかさに勝てないから、つかさと釣り合うようにする為に、学年でトップクラスの成績を取っていた事と、
  ゆたか「(ちゅうがくせいじだい、)みなみちゃんは二通のラブレターを書いた、一通は代筆を頼まれた親友の分、もう一通は自分が書いた本当のラブレター……出すつもりはなかった、だけど親友にその手紙が見つかってしまって、それからは親友と話すこともなくなって……ラブレターも渡される事はなかった……」という、原作には無い設定は、僕は好きです。

捌:ゆたかとみなみとが喧嘩している時、すすむさんといのりさんとを結ばせるにはどう したら良いか分からず、みなみの考えを聞く為に、ひより・ゆたかがみなみの家に行った時、みなみがピアノを弾いていて、「もしかして、『亡き王女のためのパヴァーヌ』かな。」と思いましたが、当たりました。

玖:ゆたかが、佐々木さんが狐になるところを見たひよりの記憶を、佐々木さんに消すように頼んだ本当の理由が、ひよりも自分と同じように佐々木さんを好きになり、ライバルが増えるかもしれないから、という事に、ゆたかに対して恐れを感じました。

拾:十年後に、つかさのピアノの演奏を皆に聴かせるために、洋菓子店つかさに学園祭のチアリーディングメンバー全員が呼ばれ、みさおが「これで全員だよな……早く始めようぜ」と言っていましたが、パトリシアはアメリカに帰ったのでしょうか?
  10年経っても、みんな相変わらずで、らき☆すたな感じでした。

拾壱:つかさの演奏会から数週間後に、ひよりがまつりさんに話をして、その後のゆたかの「これで全てのミッションが終わったね」という台詞を読んで、「10年越しにやっと終わった!?」と思いました。なげえ……。

鷲宮神社でひより・ゆたか(・パトリシア)が描かれた絵馬を見て、『ひよりの旅』を読み終えた後だったので、筆舌に尽くしがたい感情が出てきました。
659 :217 :2018/07/01(日) 00:03:28.15 ID:pAfN1ZRC0
 『ひよりの旅』を読みました。
 ひより達が、佐々木すすむさんとコンと出会って、正体がお稲荷さんであると突き止め、そこからまつりさん、いのりさんとお稲荷さん達と結ばせようとしているのを読み、「相変わらず、『らき☆すた』の登場人物達はお稲荷さんに縁があるなぁ。」と思いました。『つかさの旅の終わり』ではちらっとしか出てこなかった、その2人のお稲荷さんの話を詳しく読め、また、『つかさの旅の終わり』の時に、ひより達が柊姉妹とお稲荷さんとの恋愛に関することで動いていた事、つかさがたかしさんから教わった薬をかがみに飲ませて、かがみの病気を治している頃、ひより達は、かがみを救う為にたかしさんを探し、奔走していた事に興味 を持ち、読んでいて楽しかったです。
 しかし、まさかひよりがまなぶさんを、ゆたかがすすむさんを好きになってしまい、二人が恋に苦しむ展開に驚きました。
 全部を読んで、印象に残った事は、

壱:ひよりの描いた漫画に対して、みなみが、「かがみ先輩に焼かれた本……私達が題材になっていた、だから皆が怒った、それを除けばとても良い作品だった、続きが見たい」と、みゆき同様、良い評価を出すとは思ってもいませんでした。てっきり、良くないという印象しか持っていないと思っていました。さすがにみさお、かがみまで、そういった評価は出さないでしょうね。

弐:『つかさの旅』で、かがみがかえでさんに喧嘩を売ったことについて、かがみ「つかさを守るため、そう 、それが大義名分だわ、でもね、それはあくまで表向き、本当は悔しかった……つかさとあれほどうまくやって行けるなんて、つかさを知っているのは私意外にいないと思っていた、思い上がりだったわね……これが嫉妬ってやつだった、』→まさかあの時、悔しさのほうが強かったとは思ってもいませんでした。

参:お稲荷さんと人との寿命について、「生きている時間の幅が違うだけで一緒に居られないなんて、同じ種で寿命が殆ど同じなのはそういう意味もあるのかもしれない。」→その発想は無かったです。

肆:「お稲荷さんは約二十名が生き残って細々と暮らしている。殆どはつかさ先輩の居る町の神社に住んでいると。」→つかさの周りにそんなに居たんですね……。

伍:ひよりがゆたかの運転する車に乗った時、ゆたかが成実さんのような運転をしたのは、成実さんの影響かと思いましたが、実は、つかさに憧れていたから、つかさの真似をしていた事。

陸:かがみ「つかさといい、姉さん達といい、あんな狐に化けるお稲荷さんのどこが良いのよ」→よく言うよ、後にお稲荷さんと結婚するくせに。かがみのこういった台詞を読む度に面白かったです。

漆:かがみがつかさの一歩先に居たかったことは、つかさは数値や目に見えるものでは測れない物を持っていた為、普通じゃつかさに勝てないから、つかさと釣り合うようにする為に、学年でトップクラスの成績を取っていた事と、
  ゆたか「(ちゅうがくせいじだい、)みなみちゃんは二通のラブレターを書いた、一通は代筆を頼まれた親友の分、もう一通は自分が書いた本当のラブレター……出すつもりはなかった、だけど親友にその手紙が見つかってしまって、それからは親友と話すこともなくなって……ラブレターも渡される事はなかった……」という、原作には無い設定は、僕は好きです。

捌:ゆたかとみなみとが喧嘩している時、すすむさんといのりさんとを結ばせるにはどう したら良いか分からず、みなみの考えを聞く為に、ひより・ゆたかがみなみの家に行った時、みなみがピアノを弾いていて、「もしかして、『亡き王女のためのパヴァーヌ』かな。」と思いましたが、当たりました。

玖:ゆたかが、佐々木さんが狐になるところを見たひよりの記憶を、佐々木さんに消すように頼んだ本当の理由が、ひよりも自分と同じように佐々木さんを好きになり、ライバルが増えるかもしれないから、という事に、ゆたかに対して恐れを感じました。

拾:十年後に、つかさのピアノの演奏を皆に聴かせるために、洋菓子店つかさに学園祭のチアリーディングメンバー全員が呼ばれ、みさおが「これで全員だよな……早く始めようぜ」と言っていましたが、パトリシアはアメリカに帰ったのでしょうか?
  10年経っても、みんな相変わらずで、らき☆すたな感じでした。

拾壱:つかさの演奏会から数週間後に、ひよりがまつりさんに話をして、その後のゆたかの「これで全てのミッションが終わったね」という台詞を読んで、「10年越しにやっと終わった!?」と思いました。なげえ……。

鷲宮神社でひより・ゆたか(・パトリシア)が描かれた絵馬を見て、『ひよりの旅』を読み終えた後だったので、筆舌に尽くしがたい感情が出てきました。
660 :217 :2018/07/01(日) 00:05:43.91 ID:pAfN1ZRC0
戻るボタンと進むボタンと交互にいじっていたせいで、二回投稿してしまいました。すみません。
661 :217 :2018/07/01(日) 00:06:22.23 ID:pAfN1ZRC0
戻るボタンと進むボタンと交互にいじっていたせいで、二回投稿してしまいました。すみません。
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/07(土) 00:09:47.95 ID:nImt0yL30
かがみんとつかさ誕生日おめでとう!
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/07/07(土) 16:13:19.81 ID:g1muigzw0
>>654  です。

読みたい人が居たとは思いませんでした。
続きはそのまま書きたいと思います。
…とはいえ、しばらく書いていなかったので創作モードに切り替えるのにしばらく時間を下さい。

頭の中では完結しているんですけど。文章にするに手間取っています。

そういえば柊姉妹の誕生日でしたね。
誕生日ネタは何作か作っているのでネタ切れです。

それではまた。
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/03(金) 23:38:40.13 ID:zALwAQ2F0
>>663

気長に待ってるで
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/09/01(土) 14:54:53.28 ID:rbnwX0Jo0
ほしゅっぽ
666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/10/18(木) 19:11:03.43 ID:gYcxrLf60
随分長く入れなかった。
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/11/12(月) 00:31:23.72 ID:0R9ri0010
保守
668 :母の夢の戻り道 1/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:46:35.10 ID:tkcstJKX0

 ―――背はわたしに似ず、性格はそう君に似ませんように。

 わたしを抱いたひとが、そんなことを言う。
 そこには、とてもやさしい、親愛のこもった微笑の表情が浮かんでいた。

「――……?」
 ベッドのうえで息を漏らす。
 わたしをのぞき込んでいた女性の顔から、白い天井へと、いつ、視界が変わったのか。
 もう一度、目を閉じてみても。夢に、立ち戻るなんてことはなく。
 白だか青だか緑だか、なんともいえない色の粒子がまざる、暗い世界が広がるだけ。

 母親の夢をみていたのか、と。自分を振り返った。
 夢に出てきたのは、わたしに似ているひと。
 おかあさん、やっぱり若いひとだなあ。おとうさんには、苦労させられたんだなあ。
 と、ニヤニヤするいっぽうで、珍しいなとも思った。
 さっきまでみていた、夢の内容。それを、目を開けたあとでも、鮮明に覚えている。


「……まあ、あれだよね。あの父(おや)にしてこの娘あり」

 夢の内容を反芻して。自分と父を、省みてみる。
 わたしの将来を想い、しあわせそうに微笑むおかあさん。
 だけれど、現実に、おとうさんが施した情操教育の結果。できあがったわたしはこんなんで……。
 よくよく考えてみると、おかあさんへの良心が、痛まないでも、ないような。しないような……?

 苦笑いとともに、ふう。と息をついた。
 ……線香あげておこうか。 
 ベッドから足を降ろしながら、わたしはひとりごちた。
669 :母の夢の戻り道 2/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:47:01.07 ID:tkcstJKX0

 リビングにて朝食。
 おかあさんは、どんな娘が欲しかったんだろう。そんなことを、考えてみる。
 はむはむとトーストをかじる対面のゆーちゃんに目を移しつつ。

 もしも、わたしがゆーちゃんのようであったなら。そんな、ifがあったなら。

 病弱は、わたしにとっては萌え要素だけれど。現実に、母の立場から見た病弱の子、なんてのは。
 そんなふうに茶化していいものではないだろうと察することは容易いもので。
 だから、おかあさんの理想にしっくりくる娘像が、なかなか、できあがらない。
 それはゆーちゃんであっても。
 ――――わたしで、あっても。
 
「……うん、家系かな」 
 ひとことで言い表せる、性格・外見のことだけではなく、おかあさんと一緒に、大過なく日々を送れそうな娘像。
 彼女が望んだ、娘像は。残念ながら、泉家の血縁からできあがる可能性は低いようだ。

 ゆーちゃんが、わたしの視線に気づく。なんでもない、と食の進みを再開する。
 テレビの天気予報が、今日は雨だと告げていた。
 
 窓から見える空は、いまは、快晴のかたちをしているのに。
670 :母の夢の戻り道 3/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:47:32.98 ID:tkcstJKX0

「人格改造セミナーに行こうと思うんだけど、どう思う?」
 かがみとつかさと合流した通学の道中。そんな言葉を放り投げる。
「なんだそれ」
「いきなりどうしたの? 昨日そんなテレビやってたっけ?」
 それぞれに、ふたりが言葉を返してくる。
「わたしもそろそろ丸くならなきゃなって、突然思ったんだ」
「不良を止めようとするヤンキーか」
「いやさ、今日の朝、ふいに胸に衝動がね?」
 肩をすくめてみるわたしに、またばかばかしいことを、と。
 今日もかがみは、ジト目かわいい。
 
「でも、ほんとに簡単に変われたら、いいよね」

 険しい視線を向けるかがみに対して。つかさの、和やかな表情。
 そのなにげないひとことが、胸をついた。
 すくなくとも今日のわたしは、つかさのことばをそう受け取るきぶん。
 むう、とうなって。わたしはそれに、すぐには言葉を返さない。
 変わりたい。それはつまり、現在の自分を否定してるってことで。

 いつもより、すこし口数が少なくて。
 でも、黙り込む気まずさがあるというほどでもない、穏やかな登校の途。
 快晴の空の地平に、ぶ厚い雲が見える。
 雨の予兆が、なんだか、いちいち、気に障る。

 今日の自分は、どこか集中力散漫で。
 ちょっと、神経質になってるかもしれないと、感じた。

 たまたま見た、おかあさんの夢が。意外と長く、わたしの心を占め続ける。

 ―――なんだか、今日はそんな日。
671 :母の夢の戻り道 4/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:47:59.88 ID:tkcstJKX0

 みっつ、授業を終えて。みっつめの、休み時間。
 昼休みまで、あとひとつ。朝と比べて、空が暗くなっている。
 朝にはずっと向こうにあった雲が、いつしかこちらにやってきて。
 わたしたちの上で、空を鎖じている。
 
「こんな天気の日はテンション下がるねえ」
 休み時間の雑談。みゆきさんに話しを振る。そうしたら、
「……そうですね。でも」
「でも?」
「でも、今日はとくに、元気がないみたいですね?」

 みゆきさんはわたしをみつめて、そう問いかけた。
 口もとには、微笑みの色が浮かんでいる。
 わたしを深刻に心配しているというのではなく、たまにはこんな気分になる日もあるよねと、共感を示す色。
 きっとかがみだったら、いつものアンタの脳天気はどうしたんだと意外に思うのだろうに。
 みゆきさんは、わたしのそんなテンションの上下を、当然のように受け止めてくれて。

「そう? そんなことは――あるかな」

 だからわたしも、当然のようにうなずいてしまった。

 元気がないことを肯定したわたしに、彼女は言う。
「その理由を、教えてください」
672 :母の夢の戻り道 5/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:48:30.87 ID:tkcstJKX0

 え、と思って、みゆきさんをまじまじとみる。
 理由を聞いてもいいですか? と、彼女らしい、謙虚な会話に繋がると思っていた。
 きっと、わたしが同じ立場でも、そうやってワンクッション置くと思う。
 そうではなくて、教えてほしいと断定する返事が来るとは、思っていなかった。
 他人の心に、そうやって強く踏み込んでくる彼女が、ちょっと意外で。

 声をつぐんでしまったわたしに、みゆきさんは、まっすぐ視線を向ける。

 ――――そこには、とてもやさしい、親愛のこもった微笑の表情が浮かんでいた。


「みゆきさんになりたいから」


 口走ったその言葉が彼女に浸透するまでに、少しの間が空く。
 口走ったその言葉が、わたしに、浸透するまでに、少しの間が空く。

 わたしの顔面に、赤い熱が昇って。
 背中に、イヤな冷たい汗が浮かぶ。

「い、いやいや、そのね」

 こんなわけのわからないことを口走るわたしの精神状態を大げさにとられたくなくて。
 そもそもなんでこんなことを言い出したのかも自分では不可解で。

 だから、びっくりしたように目を見開いて、そんな疑問の表情を浮かべたあなたに、わたしが言えることはわたしの中にはなくて。

 授業のチャイムが鳴った。瞬間で、沈静されるよう。みゆきさんだけに固定された視界が広がるよう。
「あー……」

 大きく、息をついて、わたしはみゆきさんからきびすを返した。「あとで、話すかも」。
 そう言い置いて、彼女のそばから去る。ああ、ゴングに、救われたな。


 昼休みにはつかさたちが来るから。ふたりで真剣に話し合うなんてことは出来なくて。
 というかべつにシリアスな空気なんてものは、いつもあるわけがなくて。
 たまたま気持ちがアガっていかないだけの日常のひとつが、私のローテンションなどおかまいなしに過ぎていく。
 ヘンなことを口走ったことも。たかが休み時間の談笑の中のひとつまみにもならないできごとでしか、なくなっていく。
 そう、思うようにしながら。
673 :母の夢の戻り道 6/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:49:23.35 ID:tkcstJKX0

 玄関に立つ。グラウンドを雨が叩く放課後。
 運動部のひとたちが、廊下や空き教室でそれぞれなにかのトレーニングをはじめようとするざわめきが、いつもより放課後の校舎を満たしている。
 けれど、うるさいはずのそれは、雨の雰囲気のせいか、それほどおおきなかたまりだとも思えなくて。
 生徒たちのにぎやかさは、背中越しに遠く。私は立ちほうけている。

 傘を持っていない、ということはなかった。鞄に入れっぱなしなだけの折りたたみ傘。
 それでも、雨が降る外に足を踏み出すのが、なんでか、おっくうで。

 いっしょに帰るはずのつかさとかがみには、なんとなく嘘をついた。先生に呼ばれているから、雨宿りがてらわざと遅れて帰ると。
 身体の弱いゆーちゃんの身内として、学校側から簡単な確認事項があるんだってさー。なんて。
 
「泉さん」

 私をみつけたみゆきさんが、笑いかける。待ち合わせの約束なんて、していないけれど。
 みゆきさんも、きっと、嘘をついた。別のクラスの委員のひとたちと、ちょっと集まって話すことが今日、あるんです。なんて。

 ああ、帰りたくないのは。
 もうすこしだけ、あなたとふたりで居たかったからか。
674 :母の夢の戻り道 7/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:50:07.93 ID:tkcstJKX0

 特に部活や委員の用事が無くったって。放課後にだらだらおしゃべりを続けるグループなんて珍しくもない。
 だからてくてくと、ふたりで話せるてきとーな場処を探して歩いたって、べつにうしろめたくもなんともなくて。
 校舎の隅っこ。壁を背に腰をおろす。階段の踊り場のひとつにたむろして、ふたりきり。

「なんで今日、わたしに元気がないのかは、わからないんだ」

 ええ。と隣で頷いてくれる声。
 ただ、話を聞いてくれようとする、やさしい声。

「死んだお母さんの夢を見たんだけどね」

 わたしが放つには、なかなかシリアスなパワーワード。
 ちょっとだけ、隣の彼女はびっくりしただろうか。

「でも、そもそもお母さんを恋しいだなんて言う気持ちを抱いたことはないんだよね」

 物心つく前からお父さんしかいなかったわけだし。

「――それでも母親の夢というやつは、そんなわたしすらも浮かなくさせる何かがあるんだろーねー」

 そんなふうに呆れて。天井を仰いで、笑ってみると。
 みゆきさんはわたしに視線を向けて。

「――それはお母さんを想う、泉さんのやさしさですね」
「ええ……? そういうリアクションなの?」

 微笑みかけてくるみゆきさんの視線が面映ゆい。
 というかなにがどうなってそんな感想に行き着いたのか。

「家族を失う、だなんていうことに、軽々しく言及できないですけれど」
「いやいやわたしだって失ってない失ってない」

 深刻に考えてくれるなと、ぱたぱたと手を振って。
 そんなふうに考えて欲しくなかったから、話したくなかったのに。

 それでもどうして、わたしはみゆきさんに話を聞いてもらいたかったんだろう?
675 :母の夢の戻り道 8/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:50:39.28 ID:tkcstJKX0

「……じゃあ、聞いても、いいですか?」
「う、うん、なんでもどうぞ」

 すこしだけ、もじもじとわくわくが入り交じったように。おそるおそると。わたしの内面を知りたがることを、申し訳なさそうに。
 そんな表情すらもかわいいこのひとはホントなんなんだろうと、頭の片隅でぼんやり思いながら返事をする。

「――その夢は、どんな夢だったんですか?」
「どんなって」

 どんなのって、言われても。

「おかあさんが、赤ちゃんのわたしを抱っこしてて、なんか、話しかけてる感じの夢。
 しあわせに笑ってる感じの、いい夢だった、と思う」
「やっぱり、やさしい夢じゃないですか」

 手を合わせて、うれしそうに。
 ああ、だからそういうリアクション……。
 けれどそう思うのは、みゆきさんの方こそが、やさしいひとだからでしかないと思うよ?
 そう、わたしなんかとはちがう、やさしくてやわらかくてまっすぐで。

 ――背はわたしに似ず、性格はそう君に似ないことが――

 ああ。
 だから、わたしは。

「みゆきさんに、なってみたいなあ」

 思わず口走ったのではなく、自分の意思で、つぶやく。
 彼女も今度はおどろかないで、ゆっくり、そして深刻すぎずに受け止めてくれるのがわかって、とてもあたたかい気持ちになる。

「――おかあさんの理想は、きっとみゆきさんのようなひとだっただろうから」
676 :母の夢の戻り道 9/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:51:59.71 ID:tkcstJKX0

 おかあさんの理想は、きっとみゆきさんのようなひとだったんじゃないかって。教室に着いた朝から、ずっと考えてた。
 べつに、自分のことを嫌いになったとか、こんなふうに育ってしまって、母親に申し訳ないと思っているとか、そういうことじゃない。
 ただ、みゆきさんが、おかあさんの娘だったなら。そんな想像が、今日はずっとぽわぽわわいておさまらないだけの話しで。
 なんだか今日は、そんな不安定な気分だったんだと、わたしは自嘲する。

 そんなわたしに向かって、みゆきさんは。

「わたしは、泉さんになりたいって、いつも思っているのに」

 ふしぎな気持ちですね。なんて、彼女は続ける。

「なんでまた、わたしなんか」
「泉さんだって、なんでまた、わたしなんか、ですよ?」

 困ったように、首をかしげて。
 
「わたしも、泉さんに、なりたいです」

 けれど彼女は、そう、断言するから始末が悪い。

「明るくて、やさしくて、主体的に行動する意志の強さがあって」
「待って待って待ってほめるのやめて」

 恥ずかしいし割と見当違いな過大評価だし。

「だって。泉さんが私になりたいというのは、わたしをうらやんでいるのではなくて、おかあさんを想うやさしさから来ているだけですけれど」
 だけ、という言い方は失礼だったでしょうか、と前置きしながらも。そっと自分の胸に手を置いて、瞑目しながら。

「わたしが泉さんになりたい、と思うのは、わたしが泉さんをうらやんで、尊敬しているからです」

 顔を上げて、その視線と言葉は、わたしの心の真ん中を、まっすぐに打ち抜いて。

「そんなふうに尊敬される泉さんに育ったことを、お母様が喜ばないはずがないと、わたしは思います」

 だなんて。わたしが尊敬するみゆきさんは微笑みかけるものだから。
 こみ上げてくる何かに、涙腺を刺激してくる何かに、耐え切れそうになかったから。

 おかあさんに甘えるように、みゆきさんの袖をぎゅっとつかんで彼女を引きよせておでこをあずけて。
 ちょっとだけ、彼女にわたしの顔を見られないようにしたんだ。

 わたしの髪を撫でるてのひらは、夢のなかのおかあさんのように、とってもあたたかった。

677 :母の夢の戻り道 10/10 [sage saga]:2018/12/04(火) 01:52:44.21 ID:tkcstJKX0

「……いやはやお恥ずかしいところを」
「いえいえ、ぜんぜん」

 そんなことを言いあいながら、雨上がりの虹のしたを歩く。
 べちょべちょした地面なんかどうでもいいくらいに、青空は華やいでいるようにみえて。
 それだけ、おかあさんの夢でダウンしていた精神が立ち直って、視界が広がっているのだろう。

 晴れた空のしたを、ふたりで歩く。
 胸のうちも、すっかり晴れたような気分。帰ったら、何か、家事をしたくなる。

「家族の話をしたせいか、帰ったら、何か、家事をしたくなってきました」

 おんなじことを考えていた彼女の言葉に、苦笑が浮かぶ。

「みゆきさんはもうお母さんより料理上手いんだっけ」
「まあ……上手というか、わたしが担当しているというか」

 自分の母に向かってヘタと言い切らないあたりの育ちの良さが微笑ましい。

「お母さんも見た目はみゆきさんとそっくりなのに、中身ぜんぜんちがうよねえ」
「はい、――泉さんのところと、同じですね」

 母の話をきっかけに、すこしだけ、わたしたちの距離が変わった放課後のひととき。
 中身は、ちがうけれど。あなたの姿と父親の性格はしっかり受け継いで、ちゃんと育っているよ。

 笑いかける彼女に、わたしも笑う。


 ――そうだね、おんなじだねえ――


 あなたになりたいわたしとわたしになりたいあなたと。
 すでにおなじふたりで、母の夢の戻り道を歩いた、ある雨の日のこと。

678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/12/08(土) 16:06:12.46 ID:SrWhn7CC0
投稿乙です。
まとめさせていただきました。

最後にコメント書いてくれるとうれしいです。
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/01(火) 22:50:01.07 ID:wy/s3BEr0
あけましておめでとうございます
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/31(木) 23:10:21.85 ID:ggsxsjBR0
あけおめ
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/04(月) 22:53:14.38 ID:1BD8f55b0
保守
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/02/24(日) 17:18:55.74 ID:y12luoF20
保守
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/03/12(火) 23:52:43.87 ID:mEHB3pkw0
保守
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/02(火) 23:42:38.87 ID:llAW3AOP0
保守
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/04/25(木) 22:12:59.83 ID:KJHTxZg50
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/05/03(金) 18:06:56.03 ID:emOHSI6p0
保守
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/02(日) 11:21:16.50 ID:4npSVYMq0
保守
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/28(金) 22:09:26.67 ID:hzOrfwOv0
保守
689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/07/14(日) 16:18:32.63 ID:7Vb7uFoA0
ho
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/01(木) 23:41:34.99 ID:7X1dLKoh0
保守
691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/08/25(日) 08:18:27.91 ID:llY4L4In0
保守
692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/09/14(土) 16:58:16.77 ID:D8zck/270
693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/10/02(水) 02:18:50.94 ID:Nvnl2zs60
ほしゅ
694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/11/02(土) 00:00:51.52 ID:71Gskja60
保守
695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/12/02(月) 20:12:20.34 ID:lRtiGNnD0
保守
696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/05(日) 09:57:01.15 ID:Wt//fdzp0
あけおめ
697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/02(日) 09:39:57.43 ID:P/HQDg9D0
保守
698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/02(日) 14:49:53.60 ID:P/HQDg9D0
保守
699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/03/04(水) 09:02:01.73 ID:AaZGO2IBO
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/01(水) 15:24:16.56 ID:ZgmQYp1+0
保守
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/04/23(木) 08:19:10.44 ID:A2gB7/a20
ほしゅうううううううう
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/04/30(木) 17:28:27.62 ID:8iflk/o80
タイトル 遅刻すな



かがみ「おーっすこなたー、久しぶりー」
こなた「おーっす、大学違うとなかなか会えないねー」
かがみ「仕方ないよ、学部だって全然違うんだしさ。コロナが流行って顔見に来る機会ができるなんて思わなかったよ」
こなた「ぐあーっ、今はその名前言わないでおくれーっ。楽しみにしてたアニメがー……ちくせう(´=ω=.)」
かがみ「ああ、そういや色々ダメになってんだってね? でも声優さんやスタッフになにかあっても大変だしさー」
こなた「皆まで言うなーわかってるんだよぅそんなことー。でもさー、好きな漫画家がキャラデザしてるアニメが7月にやる予定だったんだけど、このままだとそっちまで延期になっちゃうかもなんだよね……」
かがみ「美水かがみだっけ? あんたそんなにあの作者の絵好きだったっけ?」
こなた「いやあ、我ながら変な話なんだけど、このアニメにはなーんかシンパシー感じちゃうんだよねーっ」
かがみ「へ、へー、なんでだろうなー。しかしまあ、『まえせつ!』なのに放送遅れちゃったらマズイよな色んな意味で」
こなた「前説なんて変えがいくらでもいるだろうしねー……、もしかしてこのアニメも変えられちゃったりして」
かがみ「縁起でもないこと言うなよ……」
こなた「ま、なにはともあれ私達にできることは待つことだけだよねー」
かがみ「おう、気も落とさず、スレも落とさず、気長に待とう!」


そんなわけで保守
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/05/13(水) 21:35:06.80 ID:yVDFqIFr0
↓この作品を作った人は天才だと思います。一つの作品に複数の縦読みを入れていて、驚きです。
https://w.atwiki.jp/luckystar-ss/pages/416.html


704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/07/10(金) 08:45:46.37 ID:owYZSTaZO
保守
705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/08/02(日) 07:49:33.56 ID:YB+i3T+L0
保守
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/10/10(土) 23:25:21.90 ID:oC7bj6vQ0
保守
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/10/10(土) 23:26:05.47 ID:oC7bj6vQ0
保守
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/11/03(火) 09:02:24.04 ID:gDcgIsmg0
じゃがおか
709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/01/17(日) 17:13:26.19 ID:7xM0DORu0
保守
710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/02/20(土) 09:07:42.33 ID:S/r+cjZo0
保守
711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/04/14(水) 06:04:57.31 ID:vVUUboOeO
保持
712 :じゃがおか :2022/08/28(日) 21:29:41.03 ID:3FxWnq3Q0
 『こなたの旅』を読みました。
 『つかさの旅』『ひよりの旅』から10年後の内容にもかかわらず、また新たなお稲荷さんが登場したり、貿易会社内にも侵入したりと、読みごたえがありました。
 『つかさの一人旅』でしか出てこなかった真奈美が、まだ生きている可能性が示唆された事から始まり、その真奈美が、貿易会社に囚われていると推測され、貿易会社に潜入したり、その後で、あやめ=真奈美で間違いない、となったり…。結局、神崎あやめは本物のあやめに扮したお稲荷さんだったとは…。「真奈美がまだ生きているのか!」と思い、ドキドキしながら読めました。
 つかさ自身、真奈美に対して思い入れが強く、娘を「真奈美」と名付けたことにも興味を持ちました。
 『こなたの旅』自体、まだ途中ですが、それでも読んで満足したほどです。
 こなたの恋が成就しますように。
713 :294 :2022/08/28(日) 21:41:49.71 ID:3FxWnq3Q0
試し
714 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/30(火) 03:01:45.80 ID:m63ZmH8q0
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715 :じゃがおか :2022/09/04(日) 12:17:01.41 ID:ybsxgZdz0
『つかさの旅』から始まる旅シリーズだけでなく、色々なSSがかつて投稿されていたようだけれど、これより前のスレッド(特に初期のころのスレッド)はもうインターネット上には無いのかな?
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/26(金) 21:31:30.48 ID:PPoB1CZK0
らき☆すたSSと検索すると今までのSS一覧が出てきますよ。
個人的にホラー作品の怨霊サイトが好きです。(隙自語)
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/27(土) 14:08:45.91 ID:k1xSb2Uu0
上げてまで構って欲しいのか?
数ヵ月前の書き込みにレスしてる点も頭おかしいわ
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/05/28(日) 22:45:34.25 ID:VRztq6x/0
Happy birthday dear Konata?
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/05/31(水) 22:26:30.53 ID:zVp0fy3u0
保守
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/06/10(土) 21:43:05.80 ID:laxifngI0
保守
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/06/20(火) 21:55:06.57 ID:xL0xcSLg0
保守
722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/07(月) 00:44:02.00 ID:I9cCGr7P0
保守
723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/08/11(金) 00:19:29.98 ID:awnJmNVj0
保守
724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [715のじゃがおかです。]:2023/10/21(土) 18:20:55.21 ID:hTeYGeB50
>>716
ありがとうございます!1年振りに見たら、書き込みしてくれていたとは…。
SSはまとめ@ウィキで見られるけれど、出来れば過去のスレッドも見てみたいなー。
725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2023/10/26(木) 14:31:45.29 ID:YfTiSUE2O
イ呆守
726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/11/23(木) 21:46:09.44 ID:ARyhopme0
保守
727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2024/01/08(月) 10:45:58.58 ID:SNmc0i4s0
??ュ
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