らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜

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266 :こなたの旅Q 1/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:40:05.15 ID:u3YGD9hd0
Q

 駐車場に向かう途中、つかさの店を横切る。もう辺りはすっかり暗くなっている。街灯がつかさの店を微かに照らし出す。そこを通り過ぎようとした時だった。
つかさの店の入り口に人影があった。店は臨時休業なのに、いや、普段だったとしてもとっくに閉店時間。あやしい。怪しすぎる。もしかして泥棒……留守なのをいいことに。
これは見逃せないな。
私は店にゆっくりと近づいていった。人影は立ち止まって動く気配はなかった。
近づいていくと目が慣れてきたのか人影の姿が見えてきた。どうやら店の入り口の臨時休業の張り紙を読んでいるみたいだった。
肩を落としため息をついた様に見える。後姿だからはっきりは分からない。つかさの店のお菓子目当てのお客さんなのかな。こんな時間に来るなんてよっぽどのファンだな。
人影が突然振り返った。私が店の前に立っていたのでバッタリと目が合った。
人影「うぁ!!」
こなた「ひぃ!!」
二人とも奇声を上げた。突然だったのでお互いに驚いてしまった。振り返って顔がはっきりと見えた。初老の男性だ。どこかで見たことがあるような……
男性「び、びっくりした……ん、あ、貴女は……?」
こなた「すぐ隣のレストランの店員ですけど……こんな時間に何かあったの?」
男性「こ、これは済まない、いつ再開するのか確認しにきましてね……帰り道だったもので……」
こなた「ここの店主は私の店で臨時に手伝ってもらっていて……」
男性「臨時……ですか?」
こなた「うちの店の店長が入院しちゃって……」
男性「入院ですか……それは大変ですね」
紳士的な対応だな……まてよ……この人……思い出した。まなみちゃんの演奏会前、つかさの店に行った時最初に来たお客さんだ。つかさがチケットを渡したから覚えている。
こなた「入院って言っても病気じゃなくて妊娠してちょっと調子を悪くしただけなので……もうすぐ退院するかな、それまでは休業すると思いますよ」
男性「そうですか……」
肩を落として残念そうな顔をした。
つかさ「どうしたの、こなちゃん?」
私の後ろからつかさの声がした。つかさが日直の仕事を終えて店から出てきたのか。私は振り返ろうとした。
男性「あ、あぁ、久しぶりですね!」
男性がつかさに駆け寄った。
つかさ「あ、どうもです……ご無沙汰しています」
やっぱりつかさと男性は顔見知りのようだ。この男性はつかさの店の常連客だな。
男性「いやぁ〜もう店仕舞いをしてしまうんじゃないかって心配しましたよ」
つかさ「すみません、知り合いの店の手伝いをしていますのでもう暫く休ませて頂きます」
男性「あぁ、さっきこの方から聞きました、すぐ隣の店なのですね、安心しました」
男性は何かつかさに会うのを待ちかねていたように喜んでいる。常連客にしては少しテンションが高すぎる。つかさのファンなのか……ま、まさか不倫なんて……ことは……
男性「ところで、演奏会、聴きましたよ、素晴らしかった……」
つかさ「あ、ありがとうございます」
つかさはこの時になって初めて笑った。
男性「貴女のお子さん……まなみさんって言いましたね……」
男性は胸ポケットから何かを出してつかさに差し出した。名刺だ。つかさはそれを受け取った。つかさは名詞を見た。
つかさ「……芸術大学……え……大学の先生?」
男性「この店から奏でるピアノの音……素晴らしい、是非私達の小学部に編入していただけませんか、私が特別推薦します、本格的にピアノを、音楽を学ばせたいと思いませんか?」
……凄い、みなみの言う通りになった。みなみはもうまなみちゃんを教えられないって言っていたし。いい機会かもしれない。
つかさは喜びながらも戸惑いの表情をした。
男性「……失礼しました、こんな夜遅くする話ではありません……つい興奮してしまって……即答できないですよね、日を改めてお伺いいたします」
男性は深々と頭を下げると店を離れて行った。つかさは名詞を胸に当てて男性が見えなくなるまで見ていた。

267 :こなたの旅Q 2/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:41:19.81 ID:u3YGD9hd0
こなた「このリア充め!!」
私の声に驚いたつかさは私の方を向いた。
つかさ「こなちゃん……私……」
こなた「なにそんな困った顔しちゃって、すごいじゃん、私も素直にそう思うよ、クラッシックやっていればどんなジャンルの音楽にだって対応できるって言うしさ」
つかさは何も言わない。外野の私が言っても始まらないか
こなた「まぁ、私がどうこう言ってもしょうがない、家族で話し合って決めるといいよ……それじゃね」
私は駐車場に向かって歩き出した。
つかさ「こなちゃん……」
私を呼び止めるつかさ。私は立ち止まって振り向いた。
こなた「なに?」
つかさ「こなちゃんは運命って信じる?」
こなた「こりゃまた重い質問を……」
つかさはいたって真面目な顔だった。占いの雑誌を見ている時のような遊び半分で聞いているのではないのは直ぐに分かった。
つかさ「私……あの時、一人旅なんかしない方が良かった……」
こなた「もし、つかさが旅に出ていなかったら、かがみの病気は誰が治したのかな」
つかさ「お姉ちゃんの病気……」
私は頷いた。
こなた「つかさが旅に出ていなかったらお稲荷さんの秘薬は手に入らなかった、今頃かがみは墓のなかだよ、そんなのやだね」
つかさ「……」
つかさは何も言ってこない。
こなた「つかさが真奈美さんに殺されていたら……さっきと同じ理由でかがみも生きていない……二人とも居ない世界なんて……それこそバットエンドだよ……
あの時、どうして旅に出たの、行かないって選択もあったんだよ」
つかさ「分かんない……」
こなた「分かんない、だけど旅に出た……そして今、この世界がある、つかさの気まぐれの選択、いつでも在りそうな選択でこんな世界になった、その選択で
    人の生死が左右されて、人生まで変わっちゃう……」
つかさ「それが運命なの?」
こなた「う〜ん、分かんない、でもちょっとした事で変わっちゃうのが運命だよ、多分、だからつかさもそんな事言わない」
つかさ「そうだね、そうだよね……」
つかさに笑顔の表情が戻った。
こなた「高校を卒業してそのまま音信不通なったりするよね、結婚なんかして子供が出来たりすると尚更だよ、でもつかさは違った、今もこうして友達じゃん」
つかさ「と、突然どうしたの、でもそれは私だけじゃないよ、お姉ちゃんやゆきちゃん、あやちゃんだって……他にも……」
こなた「うんん、私にとって始まりはつかさだった」
つかさ「そうかな……?」
つかさとこんな話をするなんて。でも言っておきたかった。
こなた「さて、もうそろそろ行かないと」
つかさ「あ、ごめん、足止めさせちゃって」
こなた「つかさ」
つかさ「なあに?」
こなた「い、いや、なんでもない……」
ここは「さよなら」じゃないよ。うん。へんなフラグは立てない。
自分にそう言い聞かせた。
 つかさの場合、過去の出来事だから選択肢の分かれ目が分かるし予想もできる。だけど私の場合は。これから起きる事なんて予想なんてできない。
それにどこに選択肢があるなんて分からない。気づかずに通り過ぎてしまうかもしれない。その場合、自分の意思とは無関係に選択されてしまう。
ゲームと違ってリアルはやり直しができないから厄介だよ。
まぁゲームの場合でも最初に選択したのが大抵バットエンドなのがだが……これが運命ってやつなのかな……
ふふ、つかさの言う通りだ。私ってすぐにゲームに例えちゃうな……
つかさ「どうしたの?」
つかさが心配そうに私の顔を覗き込む。
こなた「いや、なんでもない」
あとはリアルラックを信じるか。
こなた「それじゃ行って来る」
つかさ「行ってらっしゃい……」

268 :こなたの旅Q 3/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:43:28.98 ID:u3YGD9hd0
 私はつかさと別れた……あれ?
つかさが私の後をついて来る。やっぱりなんだかんだ言ってもつかさも参加したいのだろう。でも神崎さんが言うように今回ばかりはつかさは参加しない方がいい。
つかさのもっとも苦手な「アクション」が入る可能性が高いから。今までの様にはいかないのだよ。つかさ
つかさはそれでも私の後を付いて来る。少し足を速めた。つかさも私に合わせて速度を上げる。未練だ。未練だよ……つかさ
でもつかさの気持ちも分からないわけじゃない……真奈美との再会。それに命を助けられた恩返しもしたいだろう。私は決めた。心を鬼にしないとだめだ。
私は足を止めた。ここははっきりと言っておこう。友人として……
つかさも足を止めた。私は振り返りつかさの顔を見る。キョトンと私を見ている。
こなた「つかさ、付いてきちゃ駄目だよ……」
つかさ「どうして?」
面と向かっているとやっぱり言い難い……でも言わなきゃ
こなた「つかさの気持ちは凄く分かる、だけど今度は……私に任せてくれるかな」
つかさ「任せるって……私も行かないと」
つかさが珍しく食い下がってきた。
こなた「私は友人として言っているんだよ……」
つかさ「でも、私も行かないと……」
どうしよう、つかさがこんなに食い下がるなんて。
こなた「かがみだって来ないんだよ……だから」
つかさ「うん、だから私も行かないと……駐車場……」
こなた「へ?」
駐車場って、つかさは何を言っている。
つかさ「私も車に乗って帰るから……駐車場まで一緒に行こう」
……そういえば私とつかさの車は同じ駐車場に停めてある。
こなた「……神崎さんの所に付いて行く気じゃなかったの?」
つかさはクスリと笑った。
つかさ「ふふ、もう私はこなちゃんやゆきちゃんに全て託したから……」
つかさは切り替えが早いな。少しは任される私の身になってほしい。
私は駐車場に向かって歩き出した。
こなた「そんなに託されてもねぇ……でもさ、かがみがあんなにあっさりと神崎さんの言うとおりに引き下がるとは思わなかった、もう少し反撃すると思ったんだけどね」
つかさ「うん……私もそう思って聞いてみた……ひとしさんや子供達の事を思うとこれ以上踏み出せなくなっちゃったって……そう言ってた」
こなた「ふ〜ん、それじゃさ、つかさも同じなの?」
つかさ「分かんない……」
つかさは夜空を見ながら少し早歩きになった。質問を変えてみるかな。
こなた「けいこさんの依頼、今だったらどう、受けてた、それとも断ってた?」
つかさは夜空を見ながら立ち止まった。
つかさ「あの時の私はひろしさんに逢いたくて……それしか考えていなかったから」
こなた「ヒュ〜お惚気、おのろけ!」
つかさの顔が赤くなった。
つかさ「だ、だって、こなちゃんが質問したから答えただけだよ……」
そう、今と昔じゃ状況が違う。つかさやかがみが変わった訳じゃない。廻りが変わった。
こなた「そうだった……大切なものが出来たんだね……私は独り者だからお気軽だよ、どんな危険な事だって……」
つかさ「危険、駄目だよ」
つかさが珍しく言い寄ってきた。
こなた「だめって、これからそう言う事をするから」
つかさ「でも、気軽なんて言っちゃだめ、こなちゃんに何かあったらおじさんはどうするの」
お父さんか……
つかさ「ゆたかちゃんは、成実さんは、うんん、身内だけじゃないよ、お姉ちゃんやゆきちゃんだって……私だって……私だって」
暗がりでよくは分からないけど……つかさの目から……涙? まさか。やだな死亡フラグなんて立てないでよ……
私はつかさを友達と思ってはいたけど趣味も違うし、遊ぶって言ってもゲームはいつも見ているだけで参加してこなかった。ゲームに限って言えばかがみと遊んだ方が多いかも。
それに学生時代から何か特別な事をした覚えも無い。確かに仕事を一緒にした。今だってこうして会っているけど。心配しただけで涙を流せるなんて……
皆との会合だって私やかがみが決めてきた。つかさはかがみやみゆきさんがが来るからそれに付いて来るって感じだった。
私と下らないお喋りをいつもして。それだけで……何故。
私が死んだら泣いてくれるのかつかさは……
こなた「ちょ、何も戦争に行くわけじゃあるまいし……大げさだよ……」
つかさ「だって、だって……」
私の為の涙か……別に嫌な気はしない。それどころか何故か勇気が沸いてくる。
これが友情ってやつなのか……初めて友情を感じた。かがみでもみゆきさんでもない。つかさからなんて。
でも……女の友情も捨てたものじゃない。
こなた「はいはい、リア充は早く帰ってさっきの事を話さないとね、大学からのスカウトの話をさ」
つかさは人差し指で瞼を擦って涙を振り払った。そして笑顔になった。
つかさ「うん」
なるほどね。たかしがつかさに秘薬の作り方を教えた理由が分かったような気がした。
私は車に向かった。
つかさ「待ってこなちゃん……」
こなた「ん、まだ何かあるの?」
つかさ「これから銀行に潜入して盗みにいくんだよね……」
こなた「……まぁ、まだ何も話していないけど、そうなるだろうね……」
つかさ「悪いことしちゃうんだ……他に方法は無いの、こなちゃんを悪人にしたくない……」
心配そうな顔をして私を見ている。
こなた「う〜ん、確かに他人の物を盗むのは悪いことだけど、もともとメモリー板はお稲荷さんのものだから」
つかさ「で、でも……」
269 :こなたの旅Q 4/4 [saga sage]:2013/11/23(土) 06:44:55.59 ID:u3YGD9hd0
更に心配そうな顔になるつかさ。
こなた「私はもう悪人だよ、元気だま作戦を考えたのも実行したのも私だから、例え少しずづかも知れないけど他人に黙ってお金を盗んだ事には変わりはないからね」
つかさ「私はあれを悪いことだとは思わない、お姉ちゃんだって……」
こなた「そう、だから今回も同じ、良い事の為に悪いことをするのは許されるのだよ、つかさ」
つかさ「え……良いことの為に悪いこと……難しくて分からないよ」
こなた「例えば勇者が勝手に他人の家に入ってアイテムをゲットするのは許されるのと同じ事」
つかさ「え、あれって許されるの?」
こなた「うん、でも、イベント選択次第で別のフラグが立つと捕まっちゃう事もあるけどね」
つかさは笑った。
つかさ「ふふ、またゲームの話だね、こんな時に……でも、こなちゃんらしい」
こなた「なんて冗談、私も何が悪くて何が良いのかなんて分からない、もしかしたら悪いことかもしれない……でもね、誰も傷つけないのなら良いんじゃない?」
つかさ「こなちゃっていろいろ考えているんだね」
こなら「これは神崎さんが言った事をそのまま言っただけ、だけど私もそう思う」
つかさ「誰も……傷つけない……うん、私もそう思う」
つかさと私の意見が一致した。そういえばつかさとこんなに意気投合したのは久しぶりかも。ちょっと嬉しい。
でも、つかさの表情が少し硬い。やっぱり私が神崎さんの所に行くのが心配なのかな。
それなら親友として少し安心させるかな。
こなた「はるか四万年前の遺跡をわざわざヨーロッパからこの日本にもってきた、神崎さんの登場、そして潜入取材に真奈美さんの影がちらほらと見え隠れ……これって偶然だと思う?」
つかさ「え、突然どうしたの?」
こなた「これは偶然じゃないよ、きっとこれはつかさの言う運命ってやつじゃないかなってね……きっと何か起きるよ」
つかさ「何かって……何?」
こなた「分からないけど……きっと良いことだよ」
つかさは喜んで笑った。
そんなのは分かるはずはない。奇跡って言いたいけど言えないよ。
でもそれは私ができる精一杯だよ。
私は車に乗り込んだ。そしてつかさも自分の車に乗った。つかさが車の中から手を振った。私が手を振って答えるとつかさの車が走り出した。
車は駐車場を出ると柊家宅へと向かって行った。
さてと、私も向かうとするかな。神崎さんの所に。

 
つづく
270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/11/23(土) 06:47:06.15 ID:u3YGD9hd0
以上です。

最近時間が無くて間隔が空いてしまいます。

本当はもう少し先まで書きたかったのですがここまでが精一杯。

この後すぐにまとめるので報告は省略します。
271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2013/11/23(土) 16:01:59.26 ID:VJpVIyU5o
過疎ってる中お疲れ
272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/11/23(土) 20:07:01.31 ID:u3YGD9hd0
見に来ている人がいてよかった。

それだけでも続けてけるものです。

273 :過疎化対策 [saga sage]:2013/12/14(土) 21:29:21.27 ID:xRmwKPtU0
保守

確かにこの過疎率は凄いな。

ちなみにコンクールするって言ったら参加する人います?

自分は参加しますけど。どうでしょう?
274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2013/12/31(火) 13:35:50.69 ID:JRuehyPV0
それでは「こなたの旅」のつづきを投下します 7レスくらい使用します
275 :こなたの旅Q-2 1/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:39:44.25 ID:JRuehyPV0
Q−2

 私はあの時、駐車場に行く時、つかさが私の後を付いて来て一緒に行くと思ってしまった。でもそれは直ぐに分かった。
つまり私はつかさが私と一緒に神崎さんの所に行って欲しいと思っていたって事。どうして……
つかさに今回の作戦は不向きだって。だから私は駐車場で別れる時誘わなかった。
参加しても重要な場面でオロオロして何も出来ないつかさの姿が容易に想像できる。でも私は来て欲しいと思っていた。
友人だから。一緒に仕事をしていたから。それとも一人じゃ寂しいから。
違う。そうじゃない。どれも違う。
 つかさが旅から帰って来たその時から全てが変わった。私はお稲荷さんの世界を知った。そしてその世界に入った。
その中でのつかさは別人だった。それでいて高校時代の彼女の性格はそのままだった。天然と優しさだけでまさかあそこまで出来るなんて……
もっともつかさ自身は出来る出来ないなんて考えてもいなかったに違いない。その時その時が精一杯……それは今も同じか……
 それにしてもコミケ事件の時、かがみが私を殴ろうとした時、つかさは私の前に立ってかがみを止めた。
あの時のかがみの怒りっぷりからしてつかさも叩かれていたかもしれない状況だった……それでもつかさは私の前に立った。
それはつかさが変わったと思った始めての出来事だった。正直つかさがかっこいいと思ってしまった。
つかさは真奈美の真似をしただけだったかもしれない。それでもおいそれと出来ることじゃないよ。
それから私の……いや、皆のつかさに対する見方が変わった。
勇気……そう。RPGで言えば勇者だよ。
つかさに一番相応しくないもの。つかさは真奈美との出会いでそれを得た。
笑っちゃうね。
でも……
はたして私はつかさの代わりができるかな……

 どのくらい考えていたのか。気づくと高速道路の出口に近づいていた。
276 :こなたの旅Q-2 2/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:41:13.23 ID:JRuehyPV0
 少し遅れて出たけど神崎さんの家には午前中には着いてしまった。きっと誰よりも早いに違いない。家の周りには私の車以外停まっていない。
寄り道をして時間を潰しても良かったかもしれないけどそんな気にはなれなかった。いつも待ち合わせの時間に遅れる私がこんな時には一番だなんて。
玄関の呼び鈴を押した。
ドアから出てきたのは神崎さんだった。正子さんがいつも出てきたのに。
あやめ「……泉さん、早いじゃない、貴女が一番、他に誰が来るの」
こなた「さぁあ、分からないよ、少なくとも柊夫婦と小林夫婦以外は来ると思う」
あやめ「ふふ、聞いていないのか、貴女らしいと言えばそれまでね、入って」
家に入ると私は辺りを見回した。神崎さん以外の人の気配を感じない。
こなた「正子さんは?」
あやめ「母は用事があって出かけている、これからの会合の話は誰にも聞かれたくないから好都合」
自分の母親にも話せないだなんて……とは言え、私もお父さんに話していないか。
こなた「ふ〜ん、わざわざそれに合わせたんだね」
あやめ「いや、偶然、でも母が居たなら別の場所でするつもりだった」
こなた「あの神社でするつもりだった?」
あやめ「その通り、さすが……居間で休んでいて、お茶を入れてくるから」
こなた「う、うん……」
この人、正子さんが居ないのは本当に偶然なのかな。
まぁ、本当にそうだとしても正直にはなすなんて事はなさそうだ。彼女の本当の目的は何だろう。
それはこの前の私達だけの会合で話し合った。結論は出なかった。それはそうだ。他人の思考なんて分かるわけがない。だけど今なら分かる。直接聞けばいい。
神崎さんがお茶を持って居間に入ってきた。
あやめ「まさか泉さんが一番に来るとは思わなかった」
こなた「まぁ、学生時代は授業も遊びも遅刻の常習犯だったけどね」
神崎さんは笑いながらお茶を私の前に置いた。
あやめ「へぇ〜それは初めて聞いた、今の貴女からは創造も出来ない、社会人になって変わったのかしら、それとも田中さんの教育のせいかしら」
かえでさん……
そういえば入院してから一回もお見舞いに行っていなかった。つかさの話では近々退院するって言っていたっけな……退院してもお腹が大きくなってきたから
レストランの仕事は当分できそうにない。だから今後もつかさが手伝ってくれるって……
あやめ「泉さん?」
こなた「えっ、あ、ああ、そ、そうだね、かえでさんが厳しかったのは確かだよ、うんうん」
退院すまでにお見舞いにいけるかな……なんてらしくない事を思ってみたりする。
こなた「それより、私の知らない間にかがみの写真をよく撮ったね、あの効果は絶大だった、かがみが参加を諦めるなんてよっぽどだよ」
神崎さんは少し考え込んだ。
あやめ「ああ、あれね……あれはたまたま泉さんの様子を見に行ったらその場面に遭遇しただけ」
こなた「それに尾行されていたなんて、やっぱりかがみは有名人なんだね」
神崎さんは目を閉じて微笑んだ。
かえで「尾行……ふふ、小林さんは最初から尾行なんかされていない」
私は耳を疑った。
こなた「……え……まさか嘘をついて……」
あやめ「敏腕弁護士なんて言っている割にはこんな簡単な手に引っかかるなんて、たいしたこと無い、妹の柊さんもそう、少し脅しただけですぐ引っ込んでしまう弱虫、
    つまり腰抜け姉妹、貴女も大変ね、こんな姉妹のお守りをしないといけないなんて」
いくらなんでも酷い。ここまで私達が、いや、つかさやかがみがどんな想いでここまで来たのか。
『ばかにするな〜!!!』
そう叫ぼうとした瞬間だった。脳裏に神崎さんがつかさの手を強く握った場面が浮かんだ。
同じだ……私を怒らそうとしている。私は怒鳴るのを止めた。
あやめ「……どうしたの、何か言いたいことはないの、それとも何も言えないの、貴女も腰抜けだったのかしらね、類は友を呼ぶとはよく言ったもの」
追い討ちをかけるような罵声。理由は分からないけど神崎さんは一人で解決しようとしている。それが分かった。それが分かってしまえば何も怒る気がしなくなった。
それどころか健気に思ってしまう。
こなた「ふふ……」
私が笑うと神崎さんは驚いた表情を見せた。
あやめ「な、なにが可笑しいの……」
こなた「私を怒らせて帰らせるつもりでしょ、私が帰って他の人にも同じような事を言って怒らせて帰らせるの?」
神崎さんは更に驚いたのかそわそわしだした。
あやめ「怒らせるって……本当の事を言ったまでで……」
こなた「こう言うのを何て言うのかな、ツンデレともヤンデレとも違うし……」
あやめ「ツンデレって、ふざけないで、私は本気で……」
私は首を横に振った。思い出した。神崎さんの今までの行動を。
こなた「もういいよ、確か前にも言っていたよね、一人でしたいとかって、分かっちゃった、つかさの時やかがみの時もそうだった、私の時も資料室の直前で別れたでしょ」
神崎さんは苦笑いをした。
あやめ「……あからさま過ぎたかしら」
こなた「もうばればれ、私には効かないよ」
伊達にホール長やっていない。お客さんの顔色を見て時には先を読まないといけないからね。神崎さんの場合声に感情が入っていなかった。
あやめ「……そのようね……」
こなた「なんでそんな事をするの?」
あやめ「それは私情的なものだから……これ以上巻き込みたくなかった、それが理由」
277 :こなたの旅Q-2 3/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:42:30.91 ID:JRuehyPV0
 私情ってプライベートって意味なのか。私は笑った。
こなた「私情ねぇ、そんな事言ったらこれから来る人だって同じようなもんだよ、みゆきさんとすすむさんはお稲荷さんのメモリー板の奪還が目的だよ、すすむさんの理由は
    分からないけどみゆきさんに限っていえばお稲荷さんの知識が知りたいからだよ、それにひよりは自分の作品のネタに使う取材を兼ねている、みんな私情だよ
    それで……その私情って何?」
あやめ「……だから私情」
口を噤んで話そうとしない。そんなに話したく無い事なのか。他人のプライベートの内容に触れない神崎さん。これ以上追及するのも気が引ける。
こなた「分かったもうこの話は止め」
神崎さんはボソっと小さな声で話した。
あやめ「……友との約束の為……」
こなた「友って真奈美さんの事?」
神崎さんはなにも言わず頷いた。そうか神崎さんは真奈美を助けるのが目的だったのか。それにしてもその約束ってどんな約束だったのだろう。
あやめ「それより泉さんは何故私の協力をする、特に今回は貴女に何のメリットも無いでしょ、報酬はもう出せない」
こなた「報酬はまだ手を出していないよ、私はお金じゃ動かないから」
あやめ「それじゃ何故……」
何故って……そう言われると何故だろう。
こなた「なんかぴ〜んときた、インスピレーションってやつかな、面白そうだしね、お稲荷さんの世界なんてゲームじゃ体験できない」
あやめ「選択……選んだの」
こなた「選択なんかしていないよ、選んだのはつかさ、私はそれに便乗しただけ」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「いいえ、泉さんは選んだ、柊さんの選択に付いていくって選択をね」
こなた「それ違うから、一番楽だからそうしただけで選んでなんか……他に選択肢なんかなかった」
つかさにレストランで働かないかなんて言われた時だって他に行くところなんかなかった。
神崎さんは立ち上がった。
あやめ「そうかしら、選択肢は無数にあったはず、それでも貴女はそれを選んだの」
こなた「そうかな……」
あやめ「現実はね、ゲームに出てくる選択肢とは比べ物にならなくらいの選択の場面と選択肢がある、例えそれが無意識に近いとしてもね、泉さんも私もその他の人も
    それらを選んでここまで来た、それにね、何日もかけて悩んだ選択より無意識に選んだ事の方が後に重大な結果を生じるの、良い事も悪いことも含めてね」
こなた「まさか、そんなのあるはずないじゃん……」
あやめ「当時の陵桜学園に何百人の生徒がいたの、クラスに何十人いたの、泉さんはその中から柊さんを親友として選んだ」
こなた「選んだって言うよりたまたま近くに居たから……」
あやめ「それだけ、それだけで親友になった?」
……それだけじゃない。だけど何であの時友達になれたのかと言われても直ぐには答えられない。
あやめ「理由を忘れるくらい無意識に選んだ、そしてその後の泉さんの人生は大きく変化してく、私の様にね」
こなた「神崎さんの様にって……真奈美さんとの出会いの事を言っているの、狐だった真奈美さんを助けた事を言っているの?」
あやめ「あの時、何もしないで素通りする事だってできた……」
こなた「それでも助ける方を選んだ……」
神崎さんは急須を片付けて居間を出た。
278 :こなたの旅Q-2 4/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:43:34.18 ID:JRuehyPV0
 私はつかさを選んだ……
確かに結果的はそうかもしれない。それならつかさだって私を友人に選んだ事になる。
何時からつかさと友達になった。確か高校一年からクラスは一緒だった。だけど実際に話をしたりするようになったのは二年からだったような気がする。
どうして話すようになったのかな……
思い出せない。気に留めないほど何気なかったに違いない。
そもそも陵桜学園に入らなければつかさに逢えなかった……私は陵桜学園を選んだ……数ある高校から、どうやって……
それは覚えている。お父さんとの賭けで……無意識ではないけれど神崎さんの言うように簡単に決めていた……
あんな簡単に決めていた。
つかさはどうやって決めた……
確かかがみが陵桜を受験するから……そう言っていたのを覚えている。
それならかがみはどうして……前に言っていたけどよく覚えていないな……もしそれが誰かのもしくは何かの影響なら……選択の連鎖……
……何処かの誰かが選択が変わればその後の出来事は変わってしまう……ゲームのエンディングの数なんか比較にならない。
私も選んでいた……そんな事って……私の選択……これから私はどんな選択肢があって何を選ぶのかな……
『パンパン!!』
手を叩く音がした。私はハッとして神崎さんを見た。呆れ顔の神崎さん、少し笑っているようにも見えた。
あやめ「何真剣になって考えているの、そんなのは寝る前に少し考えればいい、それよりもっと考えなきゃいけない事があるでしょ?」
寝る前って……こんなに考えさせたのは神崎さんじゃないか……いや、これも選択なのかな……もういい、考えると無限ループに入りそうだ。
暫く忘れよう。神崎さんの問いに私は答えた。
こなた「……貿易会社の銀行……」
あやめ「何とかしないと」
こなた「え、何か策があるんじゃなおの?」
あやめ「策なんかない……」
こなた「ちょ、この前あんなに息巻いていたのに〜」
あやめ「私一人なら策はある、多数だと作戦の変更が必要」
こなた「それじゃその一人の時の策を教えて」
あやめ「それは……」
『ピンポン〜』
呼び鈴の音がした。
あやめ「どうやら参加者が来たみたいね……」
神崎さんは玄関に向かった。何だろう。作戦を話したくなかった様な素振りをみせたけど……気のせいかな。

279 :こなたの旅Q-2 5/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:44:40.19 ID:JRuehyPV0
 居間のドアを神崎さんが開けるとひよりが部屋に入ってきた。
ひよりは私を見ると驚いた顔になった。私が来たのを驚いたのか。時間よりも早く来たのを驚いたのか……
ひより「外に停めてあった車はやっぱり先輩のでしたか、それにしても先輩が時間よりも早くくるなんて……」
後者の方だったか。やっぱり学生時代のイメージは払拭できないみたい。これでもかえでさんの所で働くようになってから遅刻は滅多にしなくなったのに。
こなた「そう言うひよりもかなり早くない?」
ひより「こんなチャンスはそんなにないっス」
チャンス……ネタにする気まんまんだ。神崎さんが居間のドアを閉めた。来たのはひよりだけなのか。
こなた「ゆーちゃん、ゆたかは?」
ひよりは暫く間を空けてから話した。
ひより「彼女は来ないっス」
ゆたかには特に誘いはしなかった。やっぱり危険なミッションになるのは明らかだから。ゆたか本人の意思で決めてもらいたかった。
こなた「ゆたかは来ないのは正解かもね、ゆたかも色々あったみたいだし」
ひより「まぁ〜お稲荷さんの件に関してはいろいろあったけど……それだけじゃなくて……」
ひよりがもったいぶっている。珍しい。なんだろう。
こなた「他に何があるの?」
ひよりは待っていましたとばかりに話し出した。
ひより「実は……私達の作品の映画化の話が出ていまして……その話し合いがあるのでゆたかを責任者にしたから忙しくて……」
こなた「映画化……映画化だって、そ、それで……」
こなた・あやめ「もちろんアニメでやるんでしょうね!?」
気づくと私と神崎さんは身を乗り出してひよりに迫っていた。ひよりは一歩下がって引いた。
ひより「ま、まだそこまでは決まっていません……スポンサーとかの意向もあるので」
神崎さんは私よりもさらに前に一歩出だ。
あやめ「漫画を映像化するなら迷わずアニメにする事、それ以外の選択肢はない、今までそれで失敗した作品が幾つある、漫画で描かれているキャラクターと一致する俳優が
    どれほど居ると思っているの、それに作品の世界観を表現するのは実写じゃ難しい」
神崎さんの言葉は私の言いたい事をほぼその通りに代弁しているようだった。私は腕を組んで何度も頷いた。
ひより「は、はい、仰る通りです……私も個人的にはそう思いますけど……」
はっきり言わないひよりに痺れを切らせて話し出した。
あやめ「それに貴女達の作品のキャラはどれも個性的で現存する俳優に……演じられる人なんか……私が知る限り……」
神崎さんは話すのを止めて私の方を向いて私の顔をじっと見た。
あやめ「運動神経抜群、それでいて……オタクで……背は小さい……悪戯好きな……」
こなた「ほぇ?」
私は首を傾げた。神崎さんは再びひよりの方を見ると私を指差した。
あやめ「登場人物、もしかして……泉さんがモデルじゃないでしょうね、悪戯好きを除けば泉さんそっくりじゃない」
ひより「……いやぁ、やっぱり分かってしまいすね、身近な人をモデルにするのは鉄板っス、キャラがブレないし……それに泉先輩は悪戯好きでした」
好きでしたじゃないよ、今だって好き。
あやめ「それじゃ、友人の双子の姉妹って?」
ひより「……お察しの通りです……」
あやめ「……お金持ちで、歩く知恵袋の友人も出てくるでしょ……あれって……」
こなた「それはみゆきさんだね」
あやめ「……ふ、ふふ、ふははは、まさかとは思っていたけど……実在する人物をモデルに……はは」
神崎さんは笑い始めた。
あやめ「ふふ、やられた、通りで……初めて会った時からそうだった……初めて会ったのに何処かで会った様な気がしていた……まさか実在していたなんて」
ひより「あの〜私の、私達の作品をご存知で?」
こなた「知ってるって言うか、ファンでしょ、この前のサイン会のサインも部屋に飾ってあったし」
ひよりは嬉しそうな笑顔になった。
ひより「いやぁ、神崎さんの様な人に気に入ってもらえるなんて……光栄です」
あやめ「貴女達の作品が素晴らしい、取り敢えず映画化おめでとう」
ひより「ありがとうございます……」
ひよりと神崎さんは握手をした。
『ピンポーン』
呼び鈴の音が響いた。
あやめ「また来た様ね……」

280 :こなたの旅Q-2 6/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:46:36.52 ID:JRuehyPV0
 ひよりが来てから30分もしない内にメンバーは全て揃った。
私にみゆきさん、ひより、佐々木さん夫婦……神崎さんを入れて5人が集まった。
一番驚いたのはいのりさんが来た事。すすむさんは来るのは分かっていたけどまさかいのりさんまで来るとは思わなかった。彼女はすすさんの参加するのを反対していた。
すすむさんはこの地球に来る時のパイロットだったって話は聞いたけど……いったい何があったのだろう。
あやめ「時間が来たようね、もう参加者はいないとします」
神崎さんは皆を一人、一人、見回した。
あやめ「……これから話をするのはとても危険な話、下手をすれば犯罪者になるかもしれない、その覚悟は出来ていると判断してよろしいですね」
こなた「それはこの前いったじゃん、みんなわかっているよと思うよ、私は覚悟できてるよ」
他の皆も頷いた。
あやめ「そうだった、でもやるからにはそんな事にはならない様に万全を尽くすつもり、皆もそのつもりでお願いします」
皆は頷いた。
こなた「それで、今回の最終目的は、真奈美さんの救出、それともメモリー板どっちなの」
あやめ「……真奈美の救出を最優先にしたい」
ひより「あの、メモリー板の大きさはどのくらいですか?」
すすむ「名刺より少し大きいくらいだ、重さは1グラムあるかどうかだ」
ひよりは少し考えた。
ひより「するとスマホくらいの大きさ……真奈美さんは人間になっていると仮定するとどう考えても救出の方が難しいっス……どうやって隠して脱出するか……」
すすむ「仮に彼女が生きているとしたとしても人間になっている可能性はないだろう」
ひより「……どうしてです、現にすすむさんだって人間になっているじゃないですか?」
すすむ「この地球に死ぬまで居ると決めるまではそうはしない、彼女を監禁するような人間しか回りに居ない環境で人間になるなんて在りえない」
ひよりは腕を組んで考え込んだ。
こなた「真奈美さんがお稲荷さんのままだったら隠すのは難しくないよ、狐になれば犬用のキャリーバックを持っていけば誤魔化せると思う」
『パン!!』
ひよりは片手を握ってもう片方の手を叩いた。
ひより「それはいい考えじゃないっスか、どうです皆さん?」
皆は何も言わない。
こなた「でもね〜あの貿易会社の25階って言っても1フロワーで何店舗も入れるような大きな場所でどうやって真奈美さんを探すか……」
すすむ「メモリー板を真奈美が解読しているとしたら正常に動作していると考えていいだろう、それに真奈美もメモリー版の近くにいるのは想像つく……私を連れて行くががいい、
あのメモリー版は私の脳波で3メートル以内ならリンクできる、人間になっていても私は私、脳波は変わらないからな、近くに在れば直ぐに分かるだろう」
こなた「ん〜でもね、どうやって潜入するかが問題だよ、私の時みたいに一般人は入れないみたいだしね……」
私はチラっと神崎さんの方を見た。それに神崎さんは気づいたようだ。
あやめ「そうね、泉さんの時のような分けにはいかない、無理に行こうとすれば直ぐに気づかれてしまう……」
皆は黙ってしまった。
あれ、おかしいな。神垣さんは何か策があるような感じだったけど。なんで話してくれないのかな……
ひより「あ、あの〜ちょっと良いですか?」
へぇ、今回のひよりは積極的だな……
あやめ「はい、何でしょう?」
ひより「ちょっと調べてみたのですが……」
ひよりは鞄からA4サイズの紙を出してみせた。チラシ?
ひより「清掃員の募集です……実はサイン会の時、トイレに行った際に清掃していたおばさんが着ていた作業着にこのチラシの会社と同じエンブレムが付いていたので……」
神崎さんはチラシを手に取って見た。
あやめ「……清掃員……なるほど、清掃員なら怪しまれなくていろいろな部屋に移動できる……しかし、幾つもある高層ビルの、しかも貿易会社の25階に配属される可能性は低い……」
ひより「それはどうでしょう、アルバイトの配属なんてパソコンの乱数かなんかで決めているんじゃないッスか……泉先輩の力でチョコチョコっと遠隔操作で……」
ひよりと神崎さんは私の方を向いた。
こなた「それくらいなら問題ないよ……」
神崎さんはチラシを読み始めた。
あやめ「……この募集要項によると住民票や写真の提出が必要みたい……私だと素性が分かってしまう」
私は皆を見た。
こなた「私も以前に貿易会社のビルで働いていたのがバレちゃうかもね……すすむさんは整体院の経営者だって分かっちゃうかも、ひよりは有名すぎちゃうし……みゆきさんは……」
みゆき「すみません……大学の研究員から清掃員ではおそらく怪しまれる可能性があります……」
いのり「私……私なら怪しまれない」
皆はいのりさんの方を向いた。
あやめ「確かに……しかし貴女は……」
すすむ「いのり、そこまですると言ってなかったじゃないか……」
心配そうな顔でいのりさんをみるすすむさん。
いのり「私じゃ力不足かしら、清掃なら毎日整体院でしている、外でも神社の清掃をしていたから一通りの事はできる」
あやめ「いいえ、その事を言っているのではなく……」
いのり「私がこの件に関係ないって言いたいの、私はお稲荷さんの妻、関係大有りでしょ」
あやめ「い、いえ、確かにそうですけど……」
すすむ「重要な役だ……私が行く、整体院は休業で臨時収入が必要になったとすれば問題ない……」
いのり「うんん、私にさせて……」
281 :こなたの旅Q-2 7/7 [saga sage]:2013/12/31(火) 13:47:43.32 ID:JRuehyPV0
すすむ「しかし……」
なんだろう、反対していたいのりさんと全く違う。何が彼女をそうさせたのかな。
あやめ「佐々木さん……いのりさん、いったい何がそうさせるの?」
いのり「それは……」
すすむ「いのり!」
言いかけるいのりさんをすすむさんは首を振って止めた。
あやめ「そうですか……言いたくないのでしたら無理は言いません……それにいのりさんならこの中のメンバーの中では最適かもしれません、お願いします」
いのり「ありがとう」
神崎さんは立ち上がった。
あやめ「潜入して粗方の場所が判明すればいよいよ奪還となるが、どうやって私達が潜入か問題になる、泉さんのパソコンからの遠隔操作は期待できない、警備は厳重、
    場所が判っても実行が問題ね……」
皆はまた沈黙した。
みゆき「無断で入れば捕まってしまいます、では無断で入らなければいいのではないでしょうか?」
みゆきさんがゆっくりと話し出した。
こなた「無断で入らないと奪還なんかできないじゃん?」
みゆき「貿易会社の25階は銀行です、その客として入れば怪しまれずに中に入れるのでは?」
こなた「客?」
みゆきさんは頷いた。
みゆき「客として入り、新規口座を開いて入金すればいいのです」
こなた「さすがみゆきさん、確かに客なら誰にも怪しまれないね」
みゆきさんの顔が曇った。
みゆき「ですが……あの銀行は大口額しか扱っていません、一口最低1500万円でないと口座が開けません」
1500万円か、さすがにそんな大金は用意できない。
ひより「それなら例の元気だま作戦をしたらどうです、その程度の金額ならすぐ手にはいるのでは?」
私は引き受けようとした時だった。
みゆき「それは止めた方が良さそうです」
ひより「何故です、この前は難なく成功したじゃないッスか?」
みゆき「あの当時と状況が違っています、スイス銀行が昔ほど秘密を守ってくれるかどうか心配なので、それに泉さんは以前ハッキングに失敗しています、
    同じ方法は二回しない方がいいでしょう」
ひより「はぁ、そ、そうですか……」
失敗って、昔お稲荷さんの救助船と交信しようとしてNASAのシステムにハッキング出来なかった事を言っているのかな。
確かにあの時からもう10年以上経っている。同じ方法は通用しないかもしれない。
みゆき「私が個人的に用意できるのが1000万くらいまででです……」
500万円……あと500万円か。
こなた「私がその残りの500万円だすよ」
皆は私の方を見た。
あやめ「まさか、私の出した報酬を?」
こなた「うん」
私は頷いた。
あやめ「あれは貴女に私が個人的に出した報酬、それに佐藤さんもそんな大金を……」
みゆき「少しでもリスクは回避した方がいいです、最初に失敗してしまったら元も子もありません」
みゆきさんはにっこり微笑みながら話した。
あやめ「そ、それはそうだけど……」
神崎さんは戸惑いながら私の方を見た。
こなた「私もこの一件が済んだら報酬は全額返すつもりだったから問題なし」
あやめ「返すって……それじゃ何故受け取ったの」
こなた「……何でだろう……う〜ん……わかんない……だけど神崎さ風に言えばそう選んだからかな?」
あやめ「そう……」
すすむ「大口専用の銀行なら一口じゃ怪しまれるだろう、もう一口追加しよう、私のも使いなさい」
あやめ「さ、佐々木さん……もし」
すすむ「失敗は許されない、この程度の金額で左右されるなら多い方がいい」
あやめ「……ありがとう」
すすむ「礼は無用だ、これは私の事でもあるのだから」
いくら人気整体院で繁盛しているって言ってもあんな大金をほいほい出せるものじゃない。やっぱり佐々木さん夫婦になにかがあったんだ。

それから数時間、私達は色々と話し合った。

あやめ「作戦は至って簡単。まず清掃員になったいのりさんが真奈美とメモリー板の在り処に目星をつけたら、、私、泉さん、すすむさん、佐藤さんの4人で銀行に向かう、
3000万円の口座を開いて銀行に融資の取引を持ち出す、そうすれば銀行は交渉する為に奥の部屋に案内する、佐藤さんが融資の交渉をしている間に
残りのメンバーで真奈美とメモリー板を奪還、メモリー板と真奈美を外に待機した田村さんの車で私の家に運送……こんな感じかしら」
すすむ「大まかな段取りはそれでいいだろう、決行までにもう少し詳細を煮詰める必要がありそうだな」
あやめ「そうね……それでは最初の潜入……お願いします……いのりさん」
いのり「任せて!!」
奪還作戦が始まった。

つづく
282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2013/12/31(火) 13:51:12.29 ID:JRuehyPV0
以上です。

本当は今年中に終わらせたかったのですが思いのほか捗っていません。
まだまだ当分続きますのでよろしくお願いします。

コンクールの件は反応が皆無だったので今回は延期します。また暫くしたら募集してみます。

まとめ報告は避難所のみといたします。

よいお年を。

283 :謹賀新年 [saga]:2014/01/01(水) 01:08:20.67 ID:TqLYuIHV0
こなた「あけおめことよろ」
かがみ「こら、省略はやめなさい!!」
こなた「いいじゃん、難い事言わない、言わない」
つかさ「あけましておめでとうございます」
みゆき「今年もよろしくお願いします」
かがみ「……つかさやみゆきの様にできないのか」
こなた「かがみ、新年早々怒ってばかりいるとロクな事ないよ」
かがみ「怒らしてるのはあんただろうが!!!」

つかさ「ねぇ、またお姉ちゃんとこなちゃんが言い合いしてる」
みゆき「そうですね、きっとこれで今年も無病息災です」
つかさ「ふふ、それだと良いね」
284 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/01/06(月) 01:36:44.56 ID:hSeygBVo0
このスレ、殆ど自分しか投下していない。
私が投下しなくなったらこのスレ終わってしまうくらいに過疎ってしまった。(乗っ取りに近い状態)
自分の投下している話が影響してるのかな。
大量投下を避けて連載方式にしたけど効果なかった。


他の作者の人は気にせず無視して投下してくださいな。
285 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/12(日) 05:05:19.34 ID:CjGMlMOh0
懐かしいね…らきすた殺人事件とか読んでたなぁ。あの頃は毎週色んな人がSS投下して楽しかった。もう、SSどころか本編の方も話でないしね。
286 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/13(月) 18:21:36.38 ID:I8fkjhWx0
アニメ放送終了後してかららきすたとこのスレを知った。
もっと早く知っていれば最盛期の頃のスレに参加できた。
コンクールもできれば一回から参加したかったけどね……
今となっては後の祭り。
消化不良でもどかしい。
287 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/01/27(月) 01:52:46.92 ID:RHYStxWb0
ふとまだこのスレあるのかなって探してみたらまだあったんだ…
アニメ放送前後よく通ってたよ
288 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/02/08(土) 21:02:37.76 ID:v6drKjWf0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
6レスくらい使用します。

289 :こなたの旅R 1/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:04:33.54 ID:v6drKjWf0
R

 打ち合わせが終わると佐々木さん夫婦とみゆきさんは足早に帰宅の途に就いた。特急券を既に予約してあったようだ。
私はひよりを車に乗せて彼女を家まで送って行く途中だった。
ひより「先輩、まさかいのりさんが参加するとは思わなかった、まして最初の潜入まで買って出てくるなんて、最初の会合の時と正反対……っス」
こなた「そうだね、それは私もそう思った、なにがいのりさんをそうさせたのかな?」
ひよりは暫く考え込んだ。
ひより「すすむさんが関係しているのは分かるけど……それ以上は」
ひよりは私よりも佐々木さん夫婦と親交があるのに知らないのか。
こなた「すすむさんはこの地球に来る時、調査船のパイロットだった……」
ひより「……え、それは初耳ですね」
知らなかったのか。
こなた「かがみがそう言っていた」
ひより「パイロットだった……事故で墜落したって……って事は、すすむさんが何かミスをしてしまったって?」
こなた「さぁね、その先はかがみも何も言ってなかった、話したくないのか、知らないのか」
ひより「そうっスよね、自分のミスを他人に話すなんてできない……」
こなた「いのりさんはその話を直接すすむさんから聞いたんじゃないかな?」
ひより「仰る通りっスね、メモリー板はきっとすすむさんにとって重要ななにかがあるのですよ、じゃなかったら反対していたいのりさんが参加するはずがない、その重要な
    何かって何でしょう?」
こなた「さぁ……」
私はその後何も話さなかった。興味が無かった訳じゃないけど、これ以上詮索しても結論には至らないのは分かっていたから。
ひより「それにしても、ゆたかが来なくて良かった……」
ため息交じりの小さな声で言った。いくら走行中の車の中でも直ぐ隣、囁き声でもしっかりと聞こえる。
こなた「ゆうちゃんが来なくて良かった?」
ひより「あ、ああ〜」
聞こえないと思っていたのだろう。ひよりは驚いて話題を変えようと必死になった。それが逆に私の好奇心に火を付けた。
こなた「そう言えばゆたかはすすむさんの事が好きだったよね」
ひより「え、、あ、はい……」
小さく頷くひより。ある程度予想していたけどあてずっぽうで言った。でもひよりの態度で分かってしまった。ゆたかとすすむさんの話は以前聞いた事はある。
だけど失恋の話なんて早々詳しく話すものじゃないし、こっちから聞くなんて気まずくて聞けやしない。
こなた「そってもうお互いに解決したんじゃないの?」
ひより「それはそうっスけど……やっぱり以前好きだったから……なんて言うのか、夫婦で仲が良いところを見ていると他人事ながら見ているのが辛くって……」
こなた「ふ〜ん、そんなものなのかな……」
そういえばひよりも宮本まなぶさんが好きだったって言っていた。その話も私は詳しくは聞いていない。
まてよ、それじゃ今回、すすむさんじゃなくてまなぶさんが来ていたらひよりじゃなくってゆたかが来ていたのだろうか。分からないな……
どうも惚れた腫れたの話は苦手だ……
それを察したのかひよりは話を変えてきた。
ひより「そ、それよりいのりさんは大変っス」
こなた「大変、どうして?」
ひより「先輩の潜入取材の時は一ヶ月でしたよね、でも今回は2週間、約半月で真奈美さんとメモリー板のある場所を探さないといけない」
こなた「そうだね〜やけに時間が短いよね……」
ひより「なぜそんなに急がないといけないか、あの銀号は神崎さんが調べた限りでは何も大きなイベントはないって言っていたのに、ちょっと不自然な気がして……」
こなた「それなら帰り際に本人に聞けばよかったじゃん?」
ひよりは大きく頷いた。
ひより「そうッス、先輩が車を出している時間を利用して聞いたんですよ……でもお茶を濁されてしまって、それで時間がなくて……聞けなかった」
ひよりが車に乗る時、神崎さんと何かを話していたけどその事だったのか。
こなた「まぁ、早く手に入るなら、それに越したことはないじゃん、2週間で情報が手に入らなくても私のハッキングで雇用延長ができるから問題ないよ」
ひより「そ、そうですけど……」
こなた「元々神崎さんの計画に私達が参加してるからね、その辺りは神崎さんに仕切ってもらうしかないよ……少し疲れちゃった、次のサービスエリアで休もう」
ひより「はい……」
神崎さんは急いでいる。そんな感じは無かった。
でも言われてみると私の時が一ヶ月でいのりさんが2週間。どう考えても私よりもいのりさんの方が難しいミッション。少しでも怪しまれたら最後だから慎重にしないといけないのに。
……でも、いのりさんの情報を操作する前に一度神崎さんに会う機会があるからその時でも聞けばいいか。

290 :こなたの旅R 2/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:05:38.31 ID:v6drKjWf0
 サービスエリアで休憩を取って車を走らせて暫く経った頃だった。
ひより「先輩、ちょっといいですか?」
何だろう、さっきの続きかな。それならさっき考えていた内容を話してみるか。
こなた「ん、さっきの続きの話?」
ひより「いいえ」
違うのか。助手席に座っているだけだから退屈するのはたしかだ。
こなた「景色をみているだけじゃ飽きちゃうね……ラジオでも付けようか?」
ひより「……会合の時の話ですけどいいですか?」
こなた「会合?」
ひより「はい、先輩と神崎さんで報酬の話をしてたじゃないですか」
こなた「報酬……報酬って、ああ、話さなかったっけ、神崎さんから500万円もらった」
ひより「その話は知っているのですけど、先輩と神崎先輩のやり取りですこし不思議に思った事があったので」
こなた「不思議に思うこと、なにそれ?」
ひより「神崎さんがなぜ報酬を返すのかって聞いて先輩が選んだからって答えましたよね……それって答えになっていないような気がして……
    何故って問いの答えになっていない、それなのに神崎さんはそれ以上質問してこなかった、かがみ先輩だったら即突っ込んでいましたよ」
こなた「……質問が難しいくて分かんない」
ひより「つまり選んだのは結果であって理由じゃないから……」
私は言っている事は理解できたけど答えられなかった。返す理由か。
こなた「そう言われると」
ひより「そうでしょ、それを神崎さんは聞きたかったと思うっス、特に記者をやっていればこういった中途半端を嫌うんじゃなかなって」
私もみんもスルーした話なのに、ひよりだけ気づいたのか。
こなた「でもね、はっきり言って理由を聞かれても即答できなかったよ……」
ひよりは腕を組んで考え込んだ。ひよりってこう言う所でこだわるよね……
こなた「そういえばひよりが来る少し前、神崎さんと選択について話してたからその影響かな」
ひより「せんたく……せんたくって選ぶって意味のッスか?」
こなた「うん」
ひより「選択……ゲームの話?」
こなた「まぁ、似た様なものだけど、リアルな話……ちょっと私には説明出来ない……」
ひより「リアルな選択の話……哲学ッスね……」
こなた「ははは、そんな大げさな話じゃないよ」
ひより「リアルな選択か……」
ひよりは大きくため息をついた。
こなた「何、どうかしたの?」
運転しているから彼女の表情を窺い知ることは出来なかったけど気になった。
ひより「大学を卒業してから私は選択なんかしていない……」
こなた「いや、してるじゃん、ゆたかと一緒に漫画家になった」
私としたらゆたかが漫画家になったこと自体が驚きだった。
ひより「いえいえ、私はゆたかに誘われたからそうなっただけで……言わばゆたかの選択に乗っかっているだけ……」
これって……私と同じような事を言っている。
こなた「うんにゃ、ひよりはゆたかの選択に乗っかるのを選んだんだよ」
ひよりは笑った。
ひより「はは、先輩〜選ぶのを選ぶって……それは無いっス」
こなた「いや、選んでるって、無意識のうちに」
ひよりは再び笑った。
Bひより「無意識って……先輩、選ぶって事はそこに意識が働いているから選べるっスよ、無意識じゃ何もえらべられないじゃないですか、ゲームの選択肢
291 :こなたの旅R 3/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:06:51.52 ID:v6drKjWf0
ひより「無意識って……先輩、選ぶって事はそこに意識が働いているから選べるっスよ、無意識じゃ何もえらべられないじゃないですか、ゲームの選択肢
だって選ばなきゃ先に進まないっス」
確かにその通り……だけど。
こなた「……さっきサービスエリア寄ったけど、さ今まで何箇所サービスエリアを通過したかな」
ひより「……え? 何箇所って……3箇所くらい?」
こなた「なんでさっきの所で休憩したのかな……」
ひより「何でって先輩が選んだからじゃないですか?」
こなた「でも、2箇所は通り過ぎたよね」
ひより「それはそうですよ、毎回なんか寄っていられないし、先輩といろいろ話していたし、気付かずに過ぎてしまったかもしれないし」
こなた「ほら、無意識のうちに選んでるじゃん」
ひよりは笑った。
ひより「ははは、それは車が動いているからっス……」
こなた「そうだよね、動いている、ゲームは選択するまで待ってくれるけどリアルは待ってくれない、だから選択したのに気付かないんだよ、サービスエリアを通過した時、私達は
    選んだ、通過するってね」
ひよりは黙って何も言い返してこなかった。
こなた「もし、前のサービスエリアで休んでいたら……この次だったらどうなっていたか、多分違う展開になっていた……そう思うと不思議だと思わない、
    無意識の選択が人生を変えちゃうなんてさ?」
ひより「……先輩がゲーム以外の例えをするのを初めて見たっス……」
ひよりはそのまま左を向いて景色を見た。ちょうどパーキングエリアを通過する所だった。ひよりはパーキングエリアの標識を目で追い通りすぎても暫くパーキングエリアの
方を目で追っていた。
神崎さんの言いたい事はこう言う事だったのだろうか……
こなた「ふふ、神崎さんはこんなのは寝る前に考えろなんていっていたけどね……運転している間考え込んでしまったよ」
ひよりは私の顔を見た。
ひより「先輩と神崎さん……私が来る前にそんな話をしていたっスか?」
こなた「そうだよ、きっと私がRPGやギャルゲーが好きだから合わせてくれたんだと思うけどね」
ひよりは暫く考えた。
ひより「そうでしょうか、……とっても深いと思いますよ、意識しない選択だなんて……」
ひよりはまた暫く考えた。
ひより「意識しないで選んでいるとしたらそれは私達にはどうする事も出来ないって事……言い替えるとそれって運命ってことじゃないっスか?」
こなた「運命……」
そういえばつかさもそんな言葉を言っていた。
こなた「ひよりは運命を信じる?」
ひより「運命……そんなのあるのかなって思っていましけど……さっきのサービスエリアの話を聞いたら在るんじゃないかなって思えて……」
こなた「選択が運命だとしたら、その無意識の選択に気付けば、もしかしたら運命を変えられる?」
ひより「無意識を意識するっスか……禅問答みたいで訳が分からなくなってきました……」
こなた「……うぐ」
やっぱり慣れない思考は突っ込まれるな……
ひより「運命を変えるって……先輩は何か変えたい運命があるんですか?」
こなた「別にそんなんじゃないよ……」
別に変えたいわけじゃない。でも運命は変えられないってよく言われるから聞いてみただけだった。
ひよりはそれ以上この話をしてこなかった。私も話さなかった。
それからひよりとは家に送るまで映画化の話やひよりの腐った話などをした。いわゆるいつもの話ってやつ。

292 :こなたの旅R 4/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:08:13.10 ID:v6drKjWf0
 それから一週間が過ぎた。
私はかがみの法律事務所に来ていた。私がこの事務所に行くのは初めてだ。
それもそうだ。法律事務所に用があるような事をした覚えはない。それにしてもかがみが自身の仕事場に私を呼ぶなんて。いったい何の用事なのかな。
事務所に着くと会議室に通された。暫く待っているとかがみが入ってきた。
かがみ「いろいろ忙しいのによく来てくれたわね」
こなた「それよりどうしてこんな所に呼び出したの、私の所のレストランでも、つかさの店でも良かったのに、特につかさの店は休業中だよ、それにわざわざつかさ経由で
    呼ばなくても……携帯でもメールでも呼べるじゃん」
かがみは私の対面に座った。
かがみ「ここならどんなに騒いでも他人に聞かれることは無い、私はここが一番落ち着くから……それに公共通信は使いたくなかった」
こなた「ちょ……なにそれ、どんだけシークレットなの?」
っと言ってみたけど。随分かがみも慎重になってきた。これも神崎さんの影響なのか。
かがみ「神崎さんが自分の家で会合したでしょ……それと同じよ」
こなた「かがみ〜いくらはぶられたからって、そんな大げさにする事ないでしょ」
かがみの目つきが変わり鋭く私を睨み付けた。
かがみ「あんはた全く分かっていない、事の重大さが、あんた達がしようしている事が」
こなた「分かってるって、貿易会社はお稲荷さんの知識と技術を独り占めしようとしている、しかも兵器に利用しようとしている、
差し詰め私達は悪の陰謀を阻止するヒロインってところだね」
かがみは更に声を張り上げた。
かがみ「そんな事を言ってるんじゃない!!」
こなた「まぁ、まぁ、落ち着いて、最初から話さないと分からないよ」
かがみ「あっ! そ、そうね、そうだった……お茶も出さないで……ちょっと待って……」
私の声に冷静さを取り戻したのか立ち上がると部屋を出て行った。かがみらしくない。かがみが怒る時、その理由はだいたい理解できる。
私が冗談で返したくらいであんな怒り方はしない。イライラしているみたいだったけど。何だろう……
作戦の人選から外れたのを怒っているのか。いや、本当に作戦に参加したかったらあの時もっと食い下がったはずだよ。かがみならそれが出来た。いのりさんの様に……
つかさが言っていたっけ。夫や子供が頭に過ぎったって。それが違うとしたら、じゃ何だろう……
あれこれ考えているうちにかがみが再び部屋に入ってきた。私の前にお茶を置くととゆっくりと座った。
かがみ「今から5年前の話……」
こなた「5年前?」
かがみは頷いた。
こなた「いきなりそんな前の話……」
かがみ「ヨーロッパとアメリカに二人の記者が居た、二人は不慮の事故で他界したそうよ」
こなた「不慮の事故なんて珍しくないじゃん、記者が二人……記者?」
何か嫌な予感がした。
かがみ「この二人の記者に特別の交流はなかったみたい、一人は社会、もう一人は古代遺跡を取材するのが主な仕事、不思議なのは不慮の事故ってだけで詳細がまったく
    解っていない、それに彼らの取材したデータが消えている」
こなた「それって貿易会社に抹殺されたって言いたいの……」
かがみはゆっくり立ち上がった。
かがみ「結論が早いわねこなた、まだ完全な証拠がある訳じゃないからそこまでは言えない……でもね、こなたが持ってきたデータの中にこの二人の名前が何度も出てくる、
    5年前の彼らの行動が事細かに書かれている、しかもこの二人の他に約10名の名前が載っていた、科学者、記者、高級官僚、政治家……そしてその半数がこの世に居ない……」
こなた「まさか、神崎さんの名前が載っていたとか?」
かがみは首を横に振った。
こなた「よかった」
『バンっ!!』
かがみは両手を強くテーブルに打ちつけた。
かがみ「よかったじゃない!!   いい、良く聞いて、仮にこなたの言うように彼らが抹殺、あるいは暗殺されたとして、彼らは目的の為なら命を奪っても構わないと
    思っている連中、しかもそんな事をしても秘密に出来るほどの力を持っている、見つかったら最後、あんた達も間違いなく消される、こなたはその覚悟があるのか、
    失敗したって復活の呪文もない、キャンセルボタンだってない」
確かにそうだ。でもそれはつかさとけいこさんが出会ってからなんとなく分かっていた。貿易会社の正体。
かがみ「今ならまだ間に合う、中止にしなさい」
私は首を横に振った。
かがみ「何故?」
それはそれを選んだから……なんて言ったら突っ込まれるだけだろうな。
こなた「昔、命の危険を顧みず独りで果敢に大きな力に立ち向かった人がいてね……」
かがみ「誰よそれ、その人の真似をするっていうのか、歴史上の人物を並べてたって到底あんたには真似できないわよ」
こなた「目の前に居る人、かがみ」
かがみは一歩後ろに下がって驚いた。
かがみ「え……私は……ば、ばか、なにを唐突に……私を持ち上げたって無駄」
こなた「うんん、持ち上げてないよ」
かがみは俯いた。
かがみ「私は逃げた……果敢になんか一度もしたことない……」
こなた「そうかな、かがみはお稲荷さん……えっと、たかしだっけ、その人に呪いかけられながらも誰にも言わずにつかさを守ろうとしたよね……あれは凄かった、
その勇気半分でもいいから分けて欲しいくらい」
かがみ「……結局私はその呪いにのたうち回って苦しんだだけじゃない、つかさを助けられなかった、それどころかそのつかさに命を救われた……ひとしだってつかさが居なかったら
    夫になっていなかった……何が勇気よ、いい加減なことを言うと殴るわよ」
かがみは片手を握ると私の前に握り拳を見せた。
こなた「それが凄いんだよ、私には分かる……うんうん」
そうなると分かってそれを選んだ。それが勇気なのかも。
かがみ「ばか……あれは死ぬ気だった……そんなのを真似してどうするのよ……この前のは運が良かっただけ、今度はどうなるかわからい……死ぬかもしれない」
今度は涙を流し始めた……全くいつも大げさだな。かがみは。
293 :こなたの旅R 5/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:09:12.96 ID:v6drKjWf0
こなた「死ぬつもりなんか無いよ、あの時かがみは独り、だけど今回は度独りじゃない、元お稲荷さんにその妻でかがみのお姉さん、現役漫画家に高級レストランのホール長、
    歩くWikiの研究員、 最後にお稲荷さんを助けた記者だよ、向かうところ敵なしじゃん」
かがみはまたゆっくり座り涙を拭った。
かがみ「……ふぅ、ホール長だけ頼りなさそうだけどな」
こなた「なに〜それじゃね……スーパーハッカーこなちゃんってのはどう?」
かがみ「はぁ、なんで急に名前をつけるのよ」
こなた「別にいいじゃん、あだ名だし」
かがみ「こなちゃんって歳かよ」
こなた「だってまだそう呼ばれるし」
かがみ「……つかさはお婆ちゃんになってもそう呼ぶわよ」
こなた「そうだろうね……」
かがみ「って、なんでそんな話になった、私の言いたいのは……」
かがみは言うのを止めて私の顔をじっと見た。そして苦笑いをした。
こなた「ん、なに?」
かがみ「ふふ、みゆきと同じ事を言うなんて、こなたも変わったわね……」
こなた「みゆきさんって……みゆきさんはこの話知らないの?」
かがみ「みゆきは知らなかった、英語の文章を調べるのは私が担当だった、ただの名前の羅列だったから後回しにした、だけど最初に調べるべきだったわね……」
こなた「みゆきさんが同じ事を言ったって?」
私は聞き返した。
かがみ「そう、みゆきに作戦の中止を提案した……みゆきはさっきこなたが言った内容と同じ言葉を返してきたのよ」
さっき涙を見せたのはそのせいだったのかな?
かがみ「そういえばこなたもつかさの制止を振り切ってひろしに突進して行ったわね……返り討ちの危険も省みずに」
つかさとみゆきさんと一緒にかがみを神社まで追いかけた時の事を言っているみたい。
こなた「結局かがみを呪ったのはひろしじゃなかったけどね、もしかしたらそのせいかもしれない、ひろしが今でも私を嫌っているのは」
かがみは溜め息の様な、諦めたみたいに息を吐いた。
かがみ「……どうやらこなたも止める気はなさそうだ」
こなた「も、もって言った?」
透かさず聞き返した。
かがみ「……そうよ、さっきの話はみゆきはもちろん、ひよりや姉さんやすすみさんにも話した、でも結果は誰一止めようとはしなかった、それで残ったのはあんたと神崎さんだけ」
こなた「私と、神崎さん、それじゃ……」
かがみは頷いた。
かがみ「あとは神崎さんだけ……だけど、腑に落ちない、神崎さんならもうこの話は知っているはず、姉さんに聞けば神崎さんはその話をしていないって言うじゃない、
    こなたは聞いたのか?」
私は首を横に振った。
かがみ「この期に及んで隠し事なんて、やっぱり彼女は自分の名を売りたい為に私達を利用しているだけ、そう思わない?」
かがみの話を聞いても止める気にはならなかった。
こなた「思わない……神崎さんはそんな人じゃない」
即答する私にかがみは少し驚いた顔をした。
かがみ「何故そう言い切れる、出会って一年も経っていないじゃない、彼女の何が分かったって言うの?」
こなた「何でって言われると分からないけど、直感って言うのか……かがみがそう思うなら直接聞けばいいじゃん、それが手っ取り早い」
かがみ「……い、いや、どうも彼女は苦手で……あまり……」
驚いた、かがみに苦手な人が居るなんて。でも、それは神崎さんも同じかな。だからかがみを遠ざけたのかもしれない。
こなた「そう言うけどさ、友達になる前、かがみは私の事をオタクだと思って近づかなかったでしょ、私だって、優等生でツンツンしている人なんて近寄り難くて
    話しかけるなんて出来なかった」
かがみ「な、誰ががツンツンだ!」
両手をテーブルに叩きつけて身を乗り出した。
こなた「そう、そうそう、そう言う所」
かがみ「……」
かがみは何も言わない。
こなた「そんなかがみも私とゲマズに行くようになったし、私はかがみがどんなに怒っても怖くないし」
かがみ「……少しは怖がりなさいよ……でも……そう言われるとそうね……」
神崎さんに手を握られた時のかがみは本当に怖かったけどね。
こなた「だから神崎さんもそう、話さないのは別に何か理由があるんじゃないかな?」
かがみは私をじっと見る。
かがみ「分かった、そこまで彼女を信じるならこなた自身で彼女に聞くといいわ、どんな答えが返ってくるか、神崎さんと運命を共にするならそれからでも遅くない」
こなた「もうとっくに同じ運命さ……お稲荷さんと出会った時点でね」
かがみ「そう言うなら話すも話さないもあんたの判断に任せるわ、好きになさい、私の言うべき事は全て話した」
こなた「そうするよ」
私は帰り支度を始めた。そんな私を物珍しげにかがみは見ていた。

294 :こなたの旅R 6/6 [saga sage]:2014/02/08(土) 21:10:28.96 ID:v6drKjWf0
かがみ「どう言うことなの、あんたがみゆきと同じ事を話したと思えば、神崎さんを信じるなんて言い出して……こなたらしくない」
私は帰り支度を止めてかがみの方を向いた。
こなた「らしくない……まさかこんな時におふざけでもすると思った?」
かがみは少し焦った様だった。
かがみ「い、いや、そうは思わない、思わないけど……昔のあんたなら半分ふざけていたでしょうね……フラグが立ったとかなんか言って騒いでた」
確かにフラグが立った……何のフラグ……それは結果が分かって初めてそれがフラグだったって判る。
こなた「懐かしいね」
かがみ「懐かしい、そう言うか……何時からかしら、あんたも変わった、つかさと同じくらいに変わった……神崎さんと会ったから……」
こなた「誰かと会えば誰だって影響をうけると思うよ、つかさが変わったのは真奈美さんと会ったから」
かがみ「……私は、変わったのかしら、誰かを変えたのかしら……」
かがみは自分の両手を広げてその手を見つめた。
こなた「変わってるし変えてる」
かがみ「そうかな……」
かがみは微笑んだ。
こなた「さて、帰るかな」
かがみ「そういえば思い出した、捕まってしまったけいこさんにつかさに会わす前、つかさといろいろ話した場面がふと過ぎった」
こなた「ん、何で?」
かがみ「ふふ、何だろう、分からない、だけど今のこなたを見ると作戦が成功するように思えてきた」
こなた「あっ、それ言ったら駄目じゃん」
かがみ「……逆フラグってか?」
私達二人は笑った。

こうしてかがみと話していると最後はつかさの話になる。ただの仲の良い姉妹だと思っていたけど。それだけじゃないみたい。
あ、そうだ。
こなた「かがみ、かがみは何故陵桜学園を選んだの?」
かがみ「唐突にそんな質問を……以前に話さなかったか?」
こなた「そうかもしれないけど、忘れちゃってね、つかさはかがみと同じ高校に行きたかったって言っていた、だとしたらかがみが陵桜学園を選ばなかったら
私達はこうして話すこともなかった」
かがみ「そうね……確かに、」
かがみは暫く話さなかった。私は首を傾げた。話せない内容なのかな。
かがみ「話してなかったかもね……」
そうボソっと言うと話し始めた。
かがみ「そろそろ妹離れしようと思って陵桜を選んだ、いつまでもベッタリじゃしょうがないじゃない」
こなた「妹離れ……」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「もっと上位を狙えたけど陵桜を選んだ、どこかでまだ一緒に居たいと思っていたのかもしれない」
この姉妹はお互いに影響し合っている。どっちが先とか優位とかじゃない。
かがみ「でもこれで良かったと思っている、高校までつかさとの学生生活……掛け替えの無いものになった」
こなた「成るほどね〜」
かがみ「もう作戦決行も間近なのになんでそんな事をきくのよ」
こなた「ちょっとね」
かがみ「なによ、内緒にすることなの、それともまた何かのゲームの攻略でもしようとしているのか、言っておくけど私の話なんてまったく参考にならんぞ」
こなた「ちょっと神崎さんを攻略しようと思ってね……選択と運命について考えている」
かがみ「え、神崎さん、選択……運命……なんの話よ?」
こなた「今度の作戦が終わったら話すよ」
かがみは笑った。
かがみ「こんな時に余裕ね……せいぜい攻略すばいい」
こなた「さて、こっちもそろそろ準備とかあるんだけど」
かがみは真顔になった。
かがみ「……こなたの覚悟がよく分かった……実はね、少しでも弱気な素振りを見せたら引き止めるつもりだった」
こなた「もしかして皆に話をしたのはその為?」
かがみは頷いた。
かがみ「そう、そして皆合格、神崎さんを除いてね……神崎さんはこなた、あんたが見極めなさい、作戦を実行するその直前までなら止めることだってできる、それを忘れないで」
こなた「分かった」

 そして数日後、
つかさから渡された犬用のキャリーバック、これは捕らわれている真奈美を狐にして入れる為の物、そしてUSBメモリー……今回はあまり役に立ちそうもないけど持っておくか。
さて、作戦当日。私は待ち合わせ場所に向かった。



つづく
295 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/02/08(土) 21:12:07.81 ID:v6drKjWf0
以上です。

途中重複してしまった所があります。読みにくい方はまとめサイトをご利用下さい。
296 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/02/08(土) 21:30:51.51 ID:v6drKjWf0
>>287
このスレが出来た頃の人みたいですね。
来ない間に投下された作品を読んでみてください。


作者の人も戻ってきて欲しい。新人さんも待っています。
またコンクールをぜひやりましょう。
297 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/03(月) 00:20:16.95 ID:OFYx3dD40
繋がった
298 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/05(水) 06:36:59.39 ID:/zFA/h6V0
久々スレ訪問記念カキコ
299 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/09(日) 16:32:55.35 ID:GMz0M6/D0
>>298
来てくれる人はいるみたいですね 安心した。

それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は短く2レスで終わりです。 序章みたいなものです。
300 :こなたの旅S 1/2 [saga sage]:2014/03/09(日) 16:34:30.61 ID:GMz0M6/D0
S

 私は貿易会社本社の非常階段25階の入り口に居た。もちろん神崎さんとすすむさんも居る。
この階段には防犯カメラもセンサーも付いていない。それはこの前の潜入で既に判っていた。それにこの階段は外からは見え難くなっている。隠れるにも好都合だった。
この一週間、私達は入念な打ち合わせをしていた。もちろん私の潜入で得たこのビルの特徴等も話している。
それらを考慮に入れてもいのりさんは凄いと思った。たった一週間で私達の探しているメモリー板と真奈美が捕らわれていると思われる場所を探し当ててしまった。
私は一ヶ月も掛かったのに……
これも夫のすすむさんを想う気持ちからなのだろうけど、いったい何でメモリー板を欲しがるのかな。
あやめ「四万年前からずっと見つかっていない物を今頃になって取り返すなんて、しかも妻であるいのりさんまで巻き込んで、何故そこまでして?」
私が疑問に思っている事をストレートに聞いた。それもこんな土壇場になってから。前にも何度か聞いたけど答えてくれなかった。これも記者ならでは出来ることなのかもしれない。
私もそれを知りたい。私達はすすむさんの方をじっと見た。
すすむさんは腕時計を見た。私も時計を確認する。時間はまだたっぷりある。
25階入り口。ここは外側からは開かない。災害が無い限り内側から鍵を開けないといけないからだ。私のUSBでも停電を起こせば開けられるのだがみゆきさんに止められて
この方法になった。
鍵を開けるのはいのりさんの役目。いのりさんは既に25階の室内で掃除をしている。その合間にここの鍵を開ける手筈になっている。その時間まではまだまだ間があった。
すすむ「妻は、いのりは自分の意思で私達に協力をしている、強制はさせていない」
あやめ「意思ね……でも当初はすすむさんの参加に反対していた、どうして意思が変わったのか、私の知りたいのはそこ」
透かさず、しかも的確に知りたい所を突いてきた。すすむさんは少し困った顔をした。やっぱり話し難いのだろうか。
こなた「すすむさんは調査船のパイロットだったって?」
すすむ「な、なぜそれを知っている……」
すすむさんは驚いて私を見た。
こなた「かがみからそう聞いた」
すすむ「……かがみが話したのか、家族にはかがみ以外には話していない、他言は無用と言ったはずなのに……」
こなた「もしかしていのりさんにも話したの?」
すすむさんは私と神崎さんを見た。
すすむ「はやり話さない訳にはいかないか……」
すすむさんは溜め息をついた。
すすむ「あのメモリー板は船の航行記録も兼ねていてね、おそらく事故の当時の詳細な記録が入っているはずだ」
あやめ「飛行機で言うブラックボックスもしくはフライトレコーダーね」
すすむさんは頷いた。
すすむ「そう、それと同じ機能だ」
あやめ「どうして航行記録を……」
すすむ「あの時、私の判断が正しかったのか、それを確かめたかった……」
あやめ「4万年前の事故……例え貴方のミスだったとしても誰も貴方を責めたりはしないんじゃなかな、着陸に失敗しても生存できたのだし」
すすむ「そうかもしれない……しかし私は知りたい、自己満足だけかもしれないがな……」
あやめ「それでいのりさんは夫の貴方に協力するようになった訳か……」
すすむ「事故さえなければ地球に取り残される事もなかった」
確かに当時はそう思っていたかもしれないけど……
こなた「本当に地球に取り残されて嫌だったの?」
すすむ「そう思っていた仲間が多数だったはずだ……それより」
すすむさんは神崎さんの方を向いた。
すすむ「君はなぜこの作戦を主催した、しかも泉さんの時より急いでいる気がしてならない」
あやめ「私は捕らわれている真奈美を助けたいだけ……只それだけ、それにに急いでいる訳ではない、作戦が早いのは泉さんの経験が活かされた結果よ、だから今回も来てもらっている」
すすむさんも神崎さんが急いでいると感じているのか。私もそう思っていたけど……
すすむ「そうかな……私は人間になる前から他人心を読む事はできなかった、しかし経験である程度は推理できる……呼吸数の増加、手のひらの発汗、身体の硬直……緊張しているな、
    本当に充分な作戦を練ったのか?」
301 :こなたの旅S 2/2 [saga sage]:2014/03/09(日) 16:35:34.06 ID:GMz0M6/D0
あやめ「うっ……」
神崎さんは両手を素早く隠した。だけどもうそれは遅かった。それに神崎さんは反論してこない。図星かな。
そんな神崎さんを尻目にすすむさんは私の方を見た。
すすむ「泉さんはなぜここま協力する、なにか特別な思い入れでもあるのか、私から見ればそこまでしてもらう義理はないのだがね」
前にも同じような事聞かれたっけ。
お稲荷さんとはそんなに深い付き合いがある訳じゃないし……かといって正義とか人類の為とかそんな大げさな意識もないよ……
それじゃ何故……
強いて言えばつかさの存在があるから……つかさに出来て私にできない訳が無い。そんな気持ち……
それだけじゃない気がするけど今の所それしか思いつかない。私はそれを言おうとした。
あやめ「昨日……小林さん……小林かがみさんに呼ばれてね……」
私よりも先に神崎さんが口を開いた。
こなた「かがみが?」
思わず私は聞き返した。神崎さんは頷いた。驚いた、かがみは神崎さんが苦手って言っていたのに……
私が直接聞けばなんて言ったからなのかな。
あやめ「彼女は自分自身の秘書を通じて私の泊まっているホテルに連絡をしてきた、その慎重ぶりに私は会う気になった、落ち合い場所はとある広場」
こなた「それでいったい何を話したの?」
私は思わず身を乗り出して聞いた。
あやめ「私の覚悟を知りたかったみたいね……思えば親友が三人、身内が二人も参加している作戦だものね、それは心配になるはず」
こなた「もしかして名簿の話をしたの?」
あやめ「そう、私がそれを知らない筈はないって、何故黙っていた……返答によっては中止を切り出しかねない権幕だった」
こなた「そのリストは知っていたの?」
あやめ「もちろん、知っていた、貿易会社は自分が不利になる因子をあらゆる手段で消す……それは人も物も同じ扱い」
こなた「ってことは……」
あやめ「証拠があるわけじゃない、だけど彼らの組織の中に選り抜きの殺し屋が雇われているかも、そう私は推理している……私達の作戦がバレればそれが証明されるかもね」
○ルゴ13じゃあるまいし……うげ……
神崎さんは少し笑みを浮かべている。
半分冗談かもしれない。だけど半分は本気……なんだこれは死亡フラグじゃないか……フラグが立ちまくっている。こんな時に……
こなた「え、こ、こんな土壇場で……バレないで脱出できるの……?」
すすむ「ふふ、どうした、怖いのか……泉さんもかがみから聞いているだろう、怖いなら階段を下りていけば逃げられるぞ?」
あやめ「これでも万全は尽くしているつもり……少しでも不安があるなら降りた方がいい、作戦に支障がでる」
そ、そんな事言われても……
すすむ「なるほど、緊張はそこから来ているのか……もう何も言うまい」
神崎さんとすすむさんの顔がさらに引き締まった。そして、私は……
まてよ、まさか、かがみと神崎さんは最後に私を試しているのか……確かにメンバーの中で私は一番動機が乏しいかもしれない……
うんん。動機なんか弱くたって……私はこれを選んだから。止められない。
こなた「うんん、降りないよ……絶対に成功する、させる」
あやめ「そうこなくっちゃ!!」
……あれ、そのセリフ……久しぶりに聞いた……
すすむ「さて、もうそろそろ時間だ、雑談はこれまで、ミッションに集中しよう」
こなた・あやめ「はい!」
あれこれ考える暇もなく時間が近づいてきた。
そして……
『カチッ!!』
非常扉のドアが鳴った。鍵が開いた。
あやめ「行くわよ!!」
私達はビルの中に潜入した。

つづく
302 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/09(日) 16:41:05.21 ID:GMz0M6/D0
以上です。

もうちょっと先まで続けたかったけど。もう少し練らせて下さい。
まぁ、期待はされていないのは判っていますがw

話は変わってまとめサイトの•ID:bz0WGlY0氏の作品集の書き込みはどうですか?
長期の障害で本スレが見れなかったので書いてみました。
ネタバレにならないように書いたつもりです。

あと何か書いて欲しいお題がありましたら投下してみて下さい。私以外にも書く人が出るかもしれません。


この後すぐまとめるので報告は避難所のみにします。
303 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/09(日) 17:46:14.24 ID:GMz0M6/D0
まとめサイトの@wikiが大変な事になっていた。
まとめてしまったが大丈夫だろうか?
304 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/12(水) 00:26:55.55 ID:2t/1DQZY0
新しい情報がないですね…
私が投稿してた別のらき☆すたSSまとめサイトも@wikiなので心配です
305 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/12(水) 10:55:52.42 ID:whQRMQuZo
このスレは関係ないけどらき☆すたSSのwikiって全部@wikiだよね
俺が見てるwikiもかなり過疎って本スレも落ちてるのに今でも作品投下されてたから本当に早く解決されて欲しい
306 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/13(木) 00:31:06.20 ID:UiDqDp0L0
このまま@wiki消滅とかなったら
もう管理人もいないようなwikiの作品はみんな埋もれてしまうのか
307 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/13(木) 01:09:33.33 ID:bwBdSsoP0
>>302です
誰も見ていないと思っていたけど見ている人はいるのだけは判った。嬉しい限りです。

まとめも事実上私が管理している状態(まとめを立ち上げた人とは別人です)


長期連載をしていてこのスレはそのssで埋まっている状態。
今投下しているssに興味が無い人にとっては意味の無いスレになってしまった。

他のらきすたssはこのスレに投下するようになってから殆ど見ていないからどうなっているか判らない。
このスレはらきすたの内容であるならエロ以外の縛りがないので気に入っています。

また気になる事がありましたら書き込んで下さい。
308 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/13(木) 15:41:22.33 ID:5z+RssL9o
>>307
いや、投下している人がいるってだけで意味はあると思うよ
息があるってことだしそれを見て後に続く人が出るかもしれない
まとめwikiも自分は読んでるし、元々の管理人がいるのかしれないけど投下もしてまとめもしてるくれるあなたには個人的に感謝してる

らき☆すたSS好きだし、このスレのwikiや他のSSwikiが復活することを願うばかりだ
309 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage saga]:2014/03/16(日) 23:20:05.93 ID:E53CGSe10
>>308
どうもです。一人きりでもアイデアが続く限り投下したいと思います。

話は変わりますが@wikにウィルスの仕込みはない事がわかりました(wikiからのメール)
とりあえず閲覧は問題なさそう。今後ともよろしくお願いします。
310 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/23(日) 23:46:48.60 ID:06t2HKq20
それでは 「こなたの旅」の続きを投下します。
今回も少なめで4レスほど使用します。
311 :こなたの旅21 1/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:48:16.82 ID:06t2HKq20
21.

 『カチッ!!』
非常扉のドアが鳴った。鍵が開いたようだ。
あやめ「行くわよ!!」
私達はビルの中に潜入した。

 私達が中に入ると神崎さんは素早く扉を閉めた。目の前には作業着姿のいのりさんが居た。
いのり「こっち」
小さく低い声で囁くと私達に背を向けてカートを押して歩き出した。カートには掃除道具が積まれている。
私達はいのりさんの後を付いて行った。
警戒厳重のはずの25階。銀行の中……だけど警備員が一人も居ない。
みゆきさんは私達から別れて一人で客として一足先にこの銀行に入った。融資の話を持ち出してVIP待遇で接待室にて交渉をしているはずだ。
PIV待遇の客がくると警備員のシフトが変わる。これはいのりさんが見つけた。それを利用していのりさんは警備員の居ない通りを歩いていく。遅くもなく速くもなく、でも確実に
歩いているいのりさん。たった一週間でこれほど構造内容を理解しているなんて。これも夫を想う心がそうさせたのか……
すすむ「まて……」
小声ですすむさんがいのりさんを引き止めた。私と神崎さんも足を止めた。
すすむ「感じる……この近くだ」
私達は周りを見回した。丁度扉があった。いのりさんは扉を確認すると懐から鍵の束を取り出しその中の一つを扉の鍵穴に差し込んだ。
いのり「この部屋は一度も入った事がないの……気をつけて、15分よ」
15分……そう、みゆきさんが銀行と交渉する時間がそのくらいだって言っていた。みゆきさんの事だからもっと時間稼ぎができるかもしれない。
だけど15分、いや、できればもっと早い方がいい。見つけられるかな……不安が過ぎる……
いのり「私は、もう、戻らないと……怪しまれる、帰りの道はわかる?」
すすむ「ああ、来た道を戻ればいいんだな?」
いのりさんは頷いた。
いのり「それじゃ……」
いのりさんはカートを押しながら去った。いのりさんがすすむさんに心配そうな顔で見つめていたのが印象に残った。
私達三人は部屋の奥へと足を進めた。
でもそこは部屋だと思っていたがそこは通路だった。そしてその通路には無数の扉がある。
どれが目的の部屋に通じる扉なのか……
いのりさんと別れてからはすすむさんが頼り。メモリー板の場所はすすむさんじゃないと分からない。
こなた「3メートル以内にあるんでしょ……見当たらないけど……扉を一つずつ開けるなんて時間がないよ、それに警報装置でもあったら……」
すすむ「待て、慌てるな……感じるのは微かだ……」
すすむさんは目を閉じて意識を集中している。私と神崎さんはすすむさんを待つしかなかった。こうしている間でも時間は刻一刻と過ぎていく。

312 :こなたの旅21 2/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:49:17.61 ID:06t2HKq20
 暫くするとすすむさんは目を開け歩き始めた。そして通路の中ほどにある扉の前で止まった。
すすむ「この扉の向こうから強い反応がある……」
すすむさんの目の前にある扉、その先にメモリー板と真奈美が……ま、待って……
こなた「ちょ……この扉の鍵はどうするの? いのりさん居ないし、強引に開けて警報でも鳴ったら終わりだよ」
すすむさんはドアのノブを掴もうとして止めた。
すすむ「そうだな、こんな所で警報は避けたいところだ……」
あやめ「ふっ……大丈夫」
不適な笑みをしながら財布から鍵を取り出した。
こなた「ま、まさかその鍵は?」
あやめ「そう、そのまさか……最高機密を扱う部屋がそこならば開くはず、そしてセキュリティもスルーできる」
私とすすむさんは顔を見合わせて首を傾げた。
こなた「いったい何時そんな鍵を……」
あやめ「この前言ったでしょ、私自身単独でこの会社を調べたって、その時に入手した鍵……もし、この鍵が複製されていると知られてしまったら鍵は付け替えられている
    可能性がある、それどころか鍵を挿した瞬間に警報が鳴るかもしれない」
すすむ「賭けか……」
あやめ「……そう、賭け、それにこの鍵は貿易会社の最高機密の鍵としか判っていない、この扉の鍵かどうかも確証はない、でもね、いのりさんが持っていた鍵の束の中には
    この鍵と同じ物は無かった……」
こなた「さっきいのりさんが持っていたやつ? 沢山あったのに、あんな一瞬で分かったの?」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「この鍵をいのりさんに渡して事前に調べてもらった」
そうか、だからいのりさんは直ぐに別れたのか。
そんな事までしていたなんて……私だったらできただろうか?
すすむ「考えていても時間の無駄だろう……」
私達は神崎さんの持っている鍵を見た。
あやめ「そうね……それじゃ挿す……二人とも祈って……合いますようにって」
神崎さんは鍵を鍵穴に近づけた。手が小刻みに震えている。緊張感が私にも伝わってきた。
鍵は吸い込まれるように鍵穴に入っていく……そして、神崎さんの手が止まった。そして鍵から手を放した。
『ふぅ〜』
神崎さんは大きく深呼吸をして私とすすむさんを見た。私達は頷いた。
神崎さんは鍵を握り捻った。
『カチッ!!』
ドアが鳴った。神崎さんは鍵を引き抜きポケットに仕舞った。そしてノブに手を掛けた。
何の抵抗もなくドアは開いた。神崎さんの読み通り鍵は合っていた。
あやめ「入るよ……」
神崎さんが部屋の中に入った。そしてその後に私達が続いた。
313 :こなたの旅21 3/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:50:36.44 ID:06t2HKq20
 部屋に入った……意外に明るい。ってか、もう明かりが付いている。広い部屋だ……20畳くらいかな……
この部屋は入ってきた扉は他にない。つまり一部屋になっていた。
こなた「ま、真奈美さん!?」
思わず私は彼女の名を呼んだ。でも空しく響くだけだった。誰も居ない部屋。この部屋は真奈美が監禁されている筈じゃなかったのか……
隠し扉でもあるのかな……私は部屋の周りを見渡した。
だけどそんなものは在りそうもない。ただの空き部屋の様だった。もしかして作戦失敗だった……
もう次の部屋をさがしている時間はなさそう。こうなったら見つかる前に逃げるしかない……
私は神崎さんとすすむさんにそう言おうとした。
すすむさんが部屋の一番奥で立ち止まっている。すぐ隣に神崎さんもいる。私は二人に近づいた。
そこには腰くらいの高さの四角い物が置いてあった。何だろう……
その四角い物から配線が数メートル離れたパソコンに繋がっている。
こなた「何これ?」
すすむ「……見つけた」
こなた「え、見つけたって……何を?」
すすむ「……メモリー板だよ……懐かしい……」
すすむさんの指差す方を見た。四角い物の上にスマホ位の大きさの板が乗っていた。
こなた「メモリー板……これが……それじゃこの四角いのは何?」
すすむ「メモリー板を読み取る装置の様だな……」
すすむさんは腰を下ろして四角い物をじっくりと見た。
すすむ「驚いた、これはオリジナルの装置じゃないか、人間は何時の間にこんな物を……」
こなた「オリジナル?」
すすむ「メモリー板は私でなければ起動できない、私の脳波が鍵になっている、しかし起動しなくても基本的な情報は読み取ることが出来ようになっていてね
    メモリー板の中央がガラスの様に透明になっているだろう、その中に情報を直接刻み込んである」
確かにメモリー板の中央が1センチ四方の大きさで透明になっていた。
すすむ「これを見てくれ」
メモリー板の直ぐ隣に銃みたいな長細い筒状の物があった。その筒の先はメモリー板の方を向いている。
すすむ「この先からレーザをメモリー板に当てて情報を読み取っていたのだろう」
こなた「分かった、その情報をこのパソコンに送っている」
すすむ「その通り……」
すすむさんはメモリー板に手を伸ばした。
こなた「え、大丈夫なの……警報とか鳴らないの?」
すすむ「この装置はパソコン意外には繋がっていない」
すすむさんはまるで分かっている様にメモリー板を四角い装置から取り外した。そしてメモリー板の表面を人差し指でスマホを操作するようになぞった。
するとメモリー板の透明な所が淡く光り始めた。どうやら起動したみたいだった。
すすむ「……壊れていない、いいぞ……」
すすむさんは夢中になってメモリー板をいじっている。私は神崎さんの方を向いた。
こなた「真奈美さんは何処なの?」
神崎さんは何も言わずすすむさんが持っているメモリー板を見ていた。
こなた「もう時間が迫っているよ、早く捜そうよ」
神崎さんは何も言わないただ立ち尽くしているだけだった。
こなた「ちょっと……神崎さん、すすむさん……」
すすむさんの操作している指が止まった。
すすむ「……このメモリー板には事故があった時から私が起動するまでの間に直接アクセスした履歴がない」
こなた「へ?……それってどう言う事なの」
すすむ「起動していなくても近くに仲間が来ればメモリー板の履歴に残るようなっている……つまり事故から4万年の間に我々の仲間がこのメモリー板に触れた事はなかった」
こなた「……真奈美さんがが捕まっていれば必ずこのメモリー板を解読させようとする筈でしょ……」
すすむ「そうだな、そうするだろう、しかしここの人間はそうしなかった、出来なかった……つまり最初から真奈美はここに居なかったのだよ……」
こなた「う、うそ……ここの会社の特許はどうやって、それってメモリー板を解読しないと出来ないでしょ?」
すすむさんは四角い装置を見た。
すすむ「その装置が読み取ったのを人間が解読して得た知識を利用したのだろう……読み取りにレーザーを使うとは考えたな……そうか、とっくに人間はその技術を得ていた、
    CDか……ふふ、音を記録する技術を利用されるとな……その発想は我々にはない」
四角い装置を見ながら笑うすすむさんだった。
つまり神崎さんとみゆきさんの推理は間違っていた……そう言う事か……真奈美はやっぱりもうこの世に居ないって……
そういえばこの部屋はあまりにも殺風景。生活の匂いがまったくしない。いくら捕らわれの身になったとは言え。生活の場くらいは用意するはず。
この部屋にはそんな感じは一切無い。このメモリー板を自動的に読ませてパソコンに保存する……ただそれだけが目的で作られた部屋。そんな感じ。
すすむ「真奈美が居ないと分かったらもうここには用はないだろう」
すすむさんはメモリー板をポケットに仕舞った。
そう、真奈美がいなければもうここには用はない。それにメモリー板を奪還できたのだから作戦は成功だ。うんん……ここから出られたらの話だけど。
こなた「そ、そうだね、出よう……ん?」
神崎さんが四角い装置を見たままボーっとしている。
こなた「神崎さん?」
私は神崎さんの顔を覗き込んだ。
あやめ「え、あ……そ、そうね……此処にはもうここには用はない……出ましょう」
私に気付いた神崎さんは慌てて扉に向かった。

314 :こなたの旅21 4/4 [saga sage]:2014/03/23(日) 23:51:57.74 ID:06t2HKq20
 キャリーバックは役に立たなかった。それにしても今回私はは何の役にも立っていない。ただ二人に付いて来ただけだった……
まてよ……
あの四角い装置に繋がっていたパソコン……すすむさんがメモリー板を取っても何も反応しなかった。それにケーブルは装置としか繋がっていない。
それはハッキングを恐れて外部からはアクセス出来ないようにした。あのパソコンはただ装置から出たデータを受け取っているだけの物。
私が出来る事があるじゃないか。
私は腕時計を見た。まだ充分時間はある。
こなた「ちょっとまった」
神崎さんとすすむさんは立ち止まった。
こなた「せっかくだからメモリー板の証拠を消しちゃおう」
私はパソコンの方に向かった。
あやめ「時間はどうなの?」
こなた「大丈夫、1分もあれば……」
私はUSBメモリーを取り出した。
すすむ「メモリー板から読まれたデータは1%もない、仮に100%読まれたとしても今の人間では1%も理解できまい、放っておいても問題ない」
こなた「その1%未満のデータで兵器を作っちゃうでしょ、それにメモリー板があるって言う証拠が残っちゃうじゃん」
私はパソコンにUSBメモリーを挿した。そしていつもの様にパソコン内のデータを消去した。その時間は30秒。
こなた「終わったよ、さてこんな所早く出ちゃおう」
USBメモリーを引き抜くと走って二人を追い抜き扉に向かった。
こなた「ささ、早く」
私は扉を開けた。

 みゆきさんは私にUSBメモリーを使うなと言っていた。そして私が使おうとした直前にすすむさんもする必要がないって言っていた。そう、これはフラグだった。
普段の私ならそれに気付いていた。だけど私はそれに気付かなかった。何故……
功を焦っていた……それとも急いでいた。それもあったかもしれない。でもそうじゃない。多分普段の私でもそれがフラグだって気付かなかった。そんな気がする。

???「誰だ!!」
突然後ろから怒鳴り声が聞こえた。私はその声の方角に反射的に身体を向けた。警備員だ。
体付きは筋骨隆々、一目で体育会系であるのが分かった。私と目が合うと腰の警棒に手を掛け走って向かってきた。私だけなら走って逃げられそう。だけど神崎さんとすすむさんは
そうでもない。捕まってしまいそう。どうしよう。
逃げるか。それとも奇襲の一撃を食わすか。私だって少しは武道を齧っている。でも咄嗟に技が出せるか分からない。失敗したら倒されるのは私……
警備員はみるみる近づいてくる。考えている時間はない……どうしよう。何故か身体が言う事を聞かない。動かない……
警備員は警棒を抜いた。わわわ……何も出来ない。もうダメ……私は目を瞑った。
……
………
…………?
…………あれ?
何も起きない。静かだ。
私はゆっくり目を開いた。
警備員が私の直ぐ目の前に立っていた。
こなた「ひぃ〜」
思わず後ろに数歩下がった。警備員は警棒を振りかざした姿勢のまま写真の様に止まっている。この光景は見覚えがある。そうだ、お稲荷さん十八番の金縛りの術。
こなた「すすむさん、助かりました〜」
私は後ろを振り向いた。そこには……神崎さんが立っていた。
こなた「えっ!?」
私はいったい何が起きたのか直ぐには理解できなかった。神崎さんはゆっくり歩き警備員に近づくと手を警備員の顔に近づけた。そして手のひらでそっと両目を撫でるように
下ろすと警備員は目を閉じて崩れるように倒れた。催眠術?……こんなの武道じゃない。やっぱりお稲荷さんじゃないとできない……
神崎さんはお稲荷さんだった!?

つづく

315 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/23(日) 23:55:09.85 ID:06t2HKq20
以上です。

「こなたの旅」も21回目となりました。
適当に切って投下しています。
続きが気になるようには作っているつもりです。

この後直ぐにまとめるので報告は避難所のみとします。
316 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/24(月) 00:05:51.02 ID:hW2UWxD20
まとめサイトにコメントを入れてくれる人がいますね。
嬉しい限りです。
317 :消費税 [saga]:2014/03/31(月) 00:43:29.10 ID:Gf4pjY+v0


かがみ「明日から消費税が上がるわね」
つかさ「8%……だっけ」
かがみ「そうよ」
みゆき「確か17年ぶりの増税だそうですね」
こなた「え、上がるの、今まではいくつだったっけ?」
かがみ「あんた……いままで知らないで買い物していたのか!」
こなた「まぁまぁそうそう怒らないで、教えて」
みゆき「今までは5%でした」
かがみ「みゆき、甘やかしたら図にのるわよ、こいつ」
こなた「………ぶつぶつ……ぶつぶつ」
つかさ「こなちゃん、どうしたの?」
こなた「ま、まずい、今のうちに買い忘れていた漫画とか買わないと、あ、DVDもいくつかあったっけ……わ、わ、わ、
    どうしよう、どうしよう」
かがみ「まったく、普段からニュースとか見ていないからこうなるのよ」
こなた「そうだ、味噌とか醤油も買わないと」
かがみ「味噌、醤油……何でよ?」
つかさ「あ、日持ちする調味料とかは買いだめできるからでしょ?」
こなた「そうそう、普段料理をしない人は……分からないよね」
かがみ「わ、悪かったわね……」



久しぶりに1レス物を投下してみました。
318 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga]:2014/03/31(月) 21:48:26.99 ID:Gf4pjY+v0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は7レスくらいになります。
319 :こなたの旅 22 1/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:50:38.42 ID:Gf4pjY+v0
22

 足元に大男が横たわっている。倒したのは武道の心得のない女性記者。神崎さん。蹴りや手刀で攻撃したのではない。お稲荷さんの秘術を使って倒した。
神崎さんは私と目が合うとにっこり微笑んだ。
あやめ「これで、相子ね……」
相子……それってこの前の潜入の事を言っているの……
確かにあの時と逆だ。私はさっき警備員と戦う覚悟がなかった……
こなた「お相子って……神崎さん……」
すすむさんが私の前に割り込んできた。
すすむ「神崎あやめ……お前、何者だ、さっき手をかざした時、警備員の記憶を奪ったな……何故人間のお前がそんな事が出来る」
すすむさんが神崎さんに詰め寄った。
あやめ「泉さんの顔を見られた……顔を覚えられるのは避けたい……」
記憶を奪う……もうこれは人間技じゃない。間違いない。神崎さんはお稲荷さんだった。
すすむ「ば、ばかな、我々4人以外は全て帰ったはずだ、それになぜメモリー板が反応しない……人間になったのか?」
神崎さんは倒れている警備員を見た。
あやめ「……そんな詮索をしている暇なない、見なさい……」
私とすすむさんは警備員を見た。胸のポケットに入っている手帳の様なものが赤く点滅している。
こなた「なに、点滅している……」
あやめ「転倒センサー……警備員が倒れれば何か異常があるのは明らかよね、センサーが感知して警備管理センターに通報された、間もなく大勢やってくる」
辺りは静か。警報音も人がくる気配もない。
こなた「た、ただの無線機じゃないの、警報も鳴ってないし、静かだよ」
神崎さんは首を横に振った。
あやめ「ここの警備員は貿易会社直属、それに警報は鳴らない、分かるでしょ、ここ他人には知られてはならない秘密の場所、彼等は侵入者に容赦しない」
あの警備員が向かって来た時の勢い、凄くて圧倒されたのはその為……
すすむ「詳しいな、神崎あやめ、以前に此処に入ったのか……」
神崎さんは何も言わず微笑み私達に背を向けた。
あやめ「もう時間がない、早く逃げて……私が引き付ける……」
こなた「引き付けるって……どうするの?」
あやめ「早く、行きなさい……」
こなた「……で、でも……」
あやめ「捕まったら命の保障はない」
こなた「わ、私がパソコンを触っていなかったら……こんな事に……ごめんなさい……」
あやめ「泉さんがそうしなくても結果は同じだった、それに小林さんと約束したから、誰も傷つけないって、逃げ切って……さぁ、早く」
かがみ……かがみのバカ……そんな約束しちゃダメだよ
こなた「で、でも……」
私の腕をすすむさんが掴んだ。
すすむ「行くぞ!」
遠くから沢山の足音が聞こえてきた。一人や二人じゃない……ぞっとしてきた。
すすむさんが力強く引っ張る。
こなた「今なら一緒に逃げられるよ」
足音はどんどん大きくなってきた。数人どころじゃない大勢の足音。すすむさんが更に強く引っ張る。
神崎さんは私に背を向けると足音がする方向に向かって走り出した。通路の曲がり角を曲がると神崎さんは見えなくなった。
『※!!#&☆』
意味の分からない怒号が飛交う。警備員は日本人だけじゃないみたいだった。足音が私達から遠ざかっていく。
すすむ「彼女の行為を無駄にする気なのか?」
……すすむさんの言葉に私はどうしようもない気持ちでいっぱいになった。
私達は思いっきり走って出口に向かった。
320 :こなたの旅 22 2/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:51:38.92 ID:Gf4pjY+v0
 どうやって出たのかは覚えていない。ただすすむさんの後を付いて行っただけだったかもしれない。
でも気付いたら非常階段の出口に立っていた。
私はすすむさんの方を向いた。
こなた「……何で、何故一緒に逃げようって言ってくれなかったの、神崎さんはお稲荷さんだよ、すすむさんの仲間だよ、あの時一緒に逃げていれば……」
すすむ「一緒に逃げていれば確実に私達は捕まっていた」
こなた「うんん、全速力で走れば……」
すすむ「そうだな、全速力で走れば泉さんは逃げ切れる、しかし、私と神崎さんは逃げ切れまい、それに泉さんは私達が遅れてそのまま置いて行く様な真似はできないだろう?」
こなた「それは……」
すすむ「それが出来るようなら泉さんはとっくにそうしていた、見つかった時逃げずにもたついていたではないか、違うか?」
こなた「いざとなったら、戦って……」
すすむさんは首を横に振った。
すすむ「あの警備員は神崎さんの言う様に特別な訓練を受けている、泉さんを何の躊躇いもなくしかも警告なしに襲ってきた、神崎さんが術をかけていなかったらその場で
    警棒の攻撃をうけていただろう、しかも全力でね」
確かにあの時動けなかった。まるで金縛りにあったみたいだった。いろいろ頭の中を過ぎったけど、動けなかったのはそれだけじゃなかったみたい。
それでも、この原因を作ったのは私。
こなた「……私……私がパソコンをいじっていなければ……こんな事にはならなかった……」
すすむ「作業に約1分……か、まったく影響が無いとは言えないな、だがパソコンの情報を消す行為自体は当然すべき内容だった、方法も手段も持っている泉さんとすれば
    選択肢の一つに入るのは当然だ、だから私は無理に止めなかった、神崎さんもそうだっただろう?」
こなた「……だ、だけど……」
私は非常階段の扉を眺めていた。
すすむ「彼女はお前たちが言うお稲荷さんだ、何故メモリー板が反応しなかったのは分からんがな、それに彼女には何の迷いも見受けられなかった、
きっと抜け道か何かを知っているのかもしれない」
確かにこの前の脱出した時の神崎さんとは違っていた。私が止めようとする前に警備員達の所に行ってしまった。
そうだよ。これはフラグだった。分かっていたのに…………
何で……バカだよ私は……

『パン!!』
突然手を叩く音が聞こえた。私は音のする方を向いた。すすむさんが立っていた。どのくらい時間が経ったのだろう。
扉が開く様子はない。
すすむ「まだ作戦は終わっていない、進行中だ」
こなた「で、でも……神崎さんが……」
すすむ「まだ捕まったと決まった訳じゃない、失敗したとは言えない、メモリー板はこの手にある、だからこのまま次の行動をする」
こなた「で、でも……」
すすむ「私はこれからいのりの無事を確認した後、約30分後の特急に乗って神崎家に向かう……泉さんの行動予定は?」
こなた「……私は……」
すすむ「どうした、忘れたのか?」
何故かここを離れたくなかった。
こなた「…………」
すすむ「泉こなた、私を見て次の行動を言いなさい」
低い声だった。私はすすむさんの目を見た。
こなた「私は……みゆきさんがビルを出るのを確認したら……待っているひよりの車に乗って神崎さんの家に……」
すすむ「よし、彼女の家で合流時間まで神崎さんを待つ、全てはそれからだ、分かったな?」
そうだった。リスクを分散する為に合流するまでの道のりはなるべくバラバラにしたのだった。
すすむ「……今の君を見ていると4万年前の私を思い出すよ……それじゃ、無事でな……」
こなた「4万年前……?」
すすむさんは周りを確認すると階段を降りた。
4万年前って、すすむさんが事故を起こした時だったよね。
私がその時を同じって……

良く分からない。だけどこのまま此処に居ても何も起きない事だけは分かった。
すすむさんが見えなくなって暫くして私は階段を降りた。

321 :こなたの旅 22 3/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:52:47.73 ID:Gf4pjY+v0
ひより「泉先輩……心配したっスよ、5分遅れです」
待ち合わせ場所に車が止めてあった。私は車のドアを軽くノックした。ひよりは電動ドアガラスを開けて初めて発した言葉がそれだった。
思ったほど時間はオーバーしていなかった。私はフロントドアを開けて助手席に座った。そしてキャリーバックを後部座席に置いた。
ひよりは無造作にキャリーバックを置いた私を少し不思議そうに見ていた。
ひより「高良……基、近藤先輩と会いましたか?」
みゆきさんが無事にビルを出たのは確認した。向こうも私を確認している。私は頷いた。
ひより「それじゃ出ますね……」
ひよりはバックミラーで後ろを確認した。その時キャリーバックに何も入っていないのに気付いたみたいだった。
ひより「あ、あの〜真奈美さんは……?」
こなた「遅れているから……早く出して……」
ひより「あ、は、はい……」
私を見て何かを感じたのだろうか。ひよりはそれ以上何も言わず車を出した。
車を出して暫くして高速道路に入ってすぐだった。
ひより「何があったのですか……」
エンジン音に消されそうなほど小さな声でそう言った。それでも私には鮮明に聞こえた。やっぱり話さなきゃいけないのかな。
作戦に参加しているひより。知る権利はあるし、話さなければならないか。
私は今までの出来事を話した。

私が話し終えると直ぐにひよりは聞き返した。
ひより「神崎さんが金縛りの術を……?」
こなた「うん……すすむさんもそう言ってた、ついでに記憶も消したって……」
ひより「それじゃ神崎さんはお稲荷さんって事じゃないですか!!」
こなた「ひより、前、前!!」
私は正面を指差した。ひよりは慌てて前を見てハンドルを操作した。少し車が揺れた。
こなた「そうなんだ……以前私もそう思って彼女に聞いた……だけど否定しされちゃってね……その時の言い訳があまりに的確だったからそれ以上追求しなかったよ……」
ひよりは何度か深呼吸して冷静さを取り戻した。
ひより「……そうですか……お稲荷さんに詳しすぎるって私も思ってはいましたけど……それじゃ真奈美さんと幼少の頃助けたって言うのも嘘だったのかな?」
こなた「それは本人じゃなくて母親の正子さんから聞いたから……正子さんまで嘘を付いているとは思えない」
ひよりは話すのを止めて運転に集中した。私も暫く何も言わなかった。
ひより「あの〜」
5、6分くらいしただろうか。ひよりが再び話し出した。
こなた「ん?」
ひより「私思ったのですけど……神崎さんは警備員の注意の全てを自分に向けて泉先輩達を逃がしましたよね……」
こなた「う、うん」
そう、それは私のせい……ひよりは私を責めるのかな……私が一番恐れていた事。だからあまり話したくなかった。
ひより「似ていませんか……お稲荷さんの人間への怒りを全て自分に向けてつかさ先輩を守った真奈美さんと……」
こなた「え、あ……!?」
そういえばそうだ。似ている。って言うより同じじゃないか。私は自分のミスに気を取られてそこまで気が回らなかった。
ひより「神崎さんは実は真奈美さん本人じゃないかなって……幼少の頃からの知り合いだから化けてしまったら身内でも気付かないッス」
こなた「そう、私も以前そう思った、だけどつかさがそれじゃ神崎さん本人は何処に居るなんて言われて……」
ひより「……それは……こう考えてみたらどうッス、あくまでこれは私の推理ですけど、貿易会社に捕らわれているのは神崎さんじゃないかなって……それなら
    真奈美さんが貿易会社に潜入する理由が出来る……」
こなた「それじゃ、貿易会社は偽者の神崎さんを消してしまうよ」
ひより「いいえ、その逆ッス、偽者であろうと神崎さんが普通に暮らしていれば貿易会社は拉致しているのを隠す事ができるじゃないですか……」
こなた「まさか……」
でもひよりの推理は納得できる。
ひより「真奈美さんが自分の正体をギリギリまで隠す理由を考えていたらそう思いまして……すみません、余計な事だったッス……」
こなた「いや、ひより、間違いないよ、神崎さんは真奈美さんだよ……」
ひより「だとしたら、真奈美さんは最初からこの作戦で捕まるつもりだったかも……神崎さんの居場所を突きとめる為に……」
こなた「わざと……」
ひより「すみません……これも余計な詮索ッス……忘れてください……」
。最後の推理は私の失敗のフォローだったかもしれない。私がそう思ったのを察知したのだろうか。ひよりは神崎さんの家に着くまでその話に触れなかった。

 ひよりの推理は全てに納得できる内容だった。
私はつかさを神崎さんから遠ざけていたけど。思えば神崎さんがつかさを遠ざけていたかもしれない。私達の中で真奈美と直接会っているのはつかさとひろしとひとしさんだ。
すすむさんとまなぶさんはどうだろう……もしかしたら……まなぶさんは真奈美を知っているかもしれない。
その四人が居れば何かの拍子に正体がバレてしまうかもしれない。だからつかさの手を強く握ったりして誤魔化した……
今回の作戦ももっともらしい理由をつけて四人を外した。そうだよ、まなぶさんは最初から作戦から外れている。
もう疑う余地はない。神崎さんは真奈美だ。

 神崎さんの家に着くまで考えていた。
真奈美が生きている。一番喜ぶのはつかさか、弟のひろしか。偶然にも二人は夫婦。
いや、偶然じゃない。二人はなるべくして夫婦になった。私はそう思う。
いくら親友を助ける為とはいってあの二人に正体を隠しつづけるのはやっぱり辛かっただろうね。
私にはそんな素振りはまったく見えなかった。それに神崎さんの母親、正子さんにバレないでいられるなんて。いったい何時から神崎さんと真奈美は入れ替わったのだろう。
少なくともつかさが一人旅をした後だよね、どうやって大怪我から生還できたのかな。それだけが謎だ。
つかさが真奈美と再会して喜ぶ姿が目に浮かぶ……
うんん、それはあのビルから逃げていればの話。
もし逃げられなかったら、命まで奪われるような……
そんな事になったらいくらつかさでも私を許さないかも……
こんな考え自体がフラグかもしれないのに……それでも考えられずには居られなかった。

322 :こなたの旅 22 4/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:54:12.58 ID:Gf4pjY+v0
『ピンポーンー』
誰も出てこない。もう一度
『ピンポーンー』
神崎さんの家に着いた私達は家のベルを押してみた。
ひより「留守みたいですね」
こなた「うん、正子さんは居るような気がしたけど、居ないみたい……」
もっとも正子さんが出てきて何て言って良いのか分からない。
ひよりは時計を見た。
ひより「集合の予定より30分は早いッス、休まずに来たせいかも」
こなた「うん……遅れた分を回収しちゃったね……」
ひより「私の車で待ちますか?」
こなた「うん……そうしよう……」
車に移動しようとした時だった。
「泉さん、田村さん?」
私達は声の方を向いた。みゆきさんが立っていた。そうだった。みゆきさんはすすむさんと一緒の電車でくるはずじゃなかったのかな。
こなた「予定より早くない……すすむさんはどうしたの?」
みゆき「はい、一度合流しまして……私が先に行く事に……」
こなた「あ、いのりさんは、いのりさんは無事なの?」
みゆき「はい、それだけを確認して急いで一本早い特急に乗りました……」
良かった。いのりさんは無事。これで神崎さん以外は大丈夫みたい。神崎さん以外は……
ひより「どうして予定を変更してまで早く来たっスか?」
みゆき「はい……ビルで泉さんを見かけた時、様子が違っていましたので……急に心配になってしまって」
みゆきさんは私をじっと見た。そして辺りを見回した。
キャリーバックを持っていないからか。空のバックは車の中に置いてある。
みゆき「あ、あの〜真奈美さんは……?」
すすむさんから聞かなかったのって言いたかった。説明するのは苦手だし……
すすむさんと話をしている時間がないのはすぐに分かった。
私はひよりの方を向いた。ひよりは首を横に振った。私はみゆきさんの方を向いて首を横に振った。
みゆき「……いったい何があったのですか?」
みゆきさんは私に近づいてきた。私は俯いてしまった。みゆきさんになんて言おう。
みゆき「泉さん……」
何度か呼ばれたけど答えられない。
ひより「あの、私で良ければ話します……良いですか泉先輩?」
私は頷いた。ある意味ひよりと一緒に車で移動したのは良かったのかもしれない。
ひよりはビルの中で起きた出来事、そして車の中で話した内容をみゆきさんに話した。

 ひよりが話していくうちに私は悔しくなってきた。もう少し早く部屋を出ていれば……パソコンをいじっていなければ……
神崎さん、真奈美をあんな事に……
みゆき「……泉さん……」
みゆきさんの優しい声が私を呼んだ。急にこみ上げてくるものを感じた。こんな気持ちになったのは初めてだ。
こなた「みゆきさん……私……」
何も言えない……これじゃつかさやひろしに会えないじゃないか。
みゆき「同じですね、あの時と全く同じです、以前いずみさんと全く同じ表情で私と話した人がいました……確か……コミケ事件があった少し前でした、彼女は
    何も出来なかったと凄く後悔をしていました……分かりますか?」
私は首を横に振った。その遠心力で涙がこぼれた。
みゆき「それは、つかささんです」
こなた「……つかさ?」
みゆき「泉さん、神崎さん、もしくは真奈美さんは未だどうなっているか分かりません、まだ後悔するのは早いとは思いませんか?」
……つかさは目の前で真奈美が倒れるのを見ていた……私は……まだ何も見ていない。
みゆき「待ちましょう……私にはそれしか言えません……」
みゆきさんは微笑んでハンカチを私に差し出した。私はハンカチを受け取った。
こなた「はははは、そうだ、そうだよね、まだ決まった訳じゃない、待とう」
今になってつかさの本当に気持ちがわかるなんて、いや、まだ本当に意味で分かったわけじゃない。

323 :こなたの旅 22 5/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:55:06.06 ID:Gf4pjY+v0
 気を取り直した私は神崎さんの家から少し離れたひよりの車の中で話をする事になった。
みゆき「田村さんの推理が正しいとしたら、私の推理は間違っていた事になります……すみませんでした」
こなた「うんん、でもそのおかげで神崎さんと話し易くなったし、潜入をする切欠になったから」
みゆき「メモリー板を解析する時間がワールドホテルの時と偶然に一致しただけでした……」
ひより「それにしても何故神崎さんが捕まってしまったか……」
みゆき「神崎さんは企業や政府の不正を調べていました、貿易会社もその対象になったのは容易に想像できます、おろらく本人が自ら潜入捜査をしていたのでは、
    メモリー板の件で真奈美さんも協力していたのではないでしょうか?」
もし、まなみも神崎さんも捕らわれてしまったら、助け出すのは私達しか居ない……
ひより「それで私達を捜し出した訳ですね、でも、正直に正体を言っていたらもっと協力できたようなきがするっス……」
みゆき「どうでしょうか、正体を教えてつかささんやひろしさんが大人しく引き下がったでしょうか、冷静な泉さんですら動揺してしまった今回の作戦……」
だから真奈美は神崎さんでなければならなかった……っか。
ひより「何となく分かりました……」
みゆき「いえ、これも詮索の域を出ていません」
何となく車から外を見た。遠くから人が歩いてくる……あれは、すすむさんだ。
こなた「すすむさんが来たよ」
時計を見るみゆきさん。
みゆき「時間通りですね、行きましょう」
私達は車から出た。

324 :こなたの旅 22 6/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:56:02.77 ID:Gf4pjY+v0
 私達は再び神崎さんの家の玄関前に居た。
すすむさんは私を見た。
すすむ「来たか」
こなた「うん、もう大丈夫だから、でも、別れ際の言葉が無かったらあのままずっと非常口に居たかも」
すすむ「そうか、それは良かった……」
こなた「それで、4万年前の事故の原因は分かったの?」
すすむさんは黙ってポケットからメモリー板を取り出した。
みゆき「……それがメモリー板、お稲荷さんの知識が詰まっている物……」
みゆきさんは身を乗り出して食い入る様にメモリー板を見ていた。
すすむ「事故の原因はメモリー板を調べるまでも無い、もう分かっていた……」
こなた「へ、それじゃ何で作戦に参加したの?」
すすむ「……もう終わった事だ……」
すすむさんはメモリー板をまたポケット仕舞った。
すすむ「神崎さんを待つとしよう」
こなた「あれ、教えてくれないの」
すすむさんは神崎さんが来るであろう方向を向いてしまった。
こなた「神崎さんは真奈美って分かったし、内緒にする必要なんかないじゃん?」
すすむ「なに、彼女が真奈美だと言うのか?」
すすむさんは驚いた顔で私の方を向いた。
こなた「他に候補者いるかな、すすむさんの方が詳しそうだけど?」
すすむ「それは……すまん、私は真奈美とは面識が無かった、神崎さんが真奈美かどうかまでは判断できない」
やっぱりそうだ。だからすすむさんを作戦メンバーに入れた。
こなた「本当の神崎さんは貿易会社に捕まっていて、真奈美さんが神崎さんに化けて貿易会社に潜入した、もちろん神座産を助ける為に、これが私達の考えなんだけど
    すすむさんはどう思う?」
すすむ「真奈美は亡くなったとつかさから聞いた、私もそれ以上詮索はしなかった、死人が蘇るなんて在りえない」
こなた「そうそう、その亡くなったって言ったのがつかさなのが問題、つかさは見ての通り天然な所があるでしょ、だからどこかで勘違いをしている……なんてね」
すすむ「確かに亡くなったと言ったのはつかさだけだが……」
すすむさんはみゆきさんとひよりの方を向いた。
ひより「ま、まぁ、後輩の私が言うのもなんですけど……つかさ先輩はそう言う所があるっス」
みゆき「誰にでも見間違いはあると思います……」
すすむさんは腕を組んで考え込んだ。
すすむ「確かに今の時点で真奈美以外考えられないか……」

325 :こなたの旅 22 7/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:57:05.97 ID:Gf4pjY+v0
 すすむさんは再びポケットからメモリー板を取り出した。
すすむ「……このメモリー板は通信機能が備わっていてね……母星と通信が出来る」
こなた「通信って、故郷に連絡を取りたい人でもいるの?」
すすむ「いや、これが見つかっていれば、私達は帰る事が出来た……当時私はこれを探した、そうだ、3メートル以内、いや、10メートル以内でも……
    あれば救助要請ができた……私はそれが出来なかったのが悔しかった……」
みゆき「そのメモリー板が見つかった遺跡はかなり深い地層から発見されたそうです、おそらく宇宙船が墜落した時、地中深く潜ってしまったのでしょう」
地中深くにあったらくら探しても見つからない。
すすむ「この地球は私達にとっては過酷すぎた……現にほとんど全ての仲間が帰ってしまった」
こなた「そうかな……それは違うと思うよ」
すすむ「何を知った風に言う、人間に何が分かる」
こなた「帰るか、残るか決めるとき、それぞれのお稲荷さんは話し合っていたってつかさが言っていたよ、ただ帰りたいだけだったら話し合いなんかしないと思う」
ひより「そうですよ、そのメモリー板をすぐに見つけて帰ってしまったら1000年前の巫女さんにも逢えなかった、もちろんその生まれ変わりのいのりさんにも」
すすむ「生まれ変わりか、確かに双子の様に似ていた……しかし彼女は病弱で子は生んでいない、彼女の子孫は居ない」
ああ、そういえば以前ひよりとゆたかが遊びに来たときそんな話をしていたっけ。
こなた「でも1000年前でしょ、お稲荷さんの巫女だから言ってみれば神様の召使いって事だよね、そんな巫女さんならその家族だって当時は特別待遇だったんじゃないの、
    きっと厳しい時代も生き抜けた、そして現代の柊家がその巫女さんの子孫、お稲荷さんが帰ってしまったらつかさやかがみも居なかったかも、私はそんな世界は嫌だよ」
みゆき「小さな出来事でも時間が重なるとその変化は多大な物になると言います」
すすむさんはメモリー板じっと眺めていた。

 どのくらい経っただろうか遠くから何か聞こえた。聞き覚えのある音……どんどん近づいてくる。間違いない。あれは……
こなた「神崎さんだ!!」
皆は私の方を向いた。そして辺りを見回した。
すすむ「……誰もこないではないか」
みゆき「見当たりませんね……」
ひより「どこですか……見間違えでは?」
うんん、間違いないあの音は。
こなた「神崎さんの乗っているバイクの音……」
私達はは耳を澄ました。バイクのエンジン音がどんどん近づいてきた。そして直ぐ近くまで来たと思うとどんどん遠ざかってしまった。
ひより「行っちゃいましたね……聞き間違えじゃないですか」
こなた「間違いないよ、あの音は絶対に神崎さんのバイクの音だよ、何度も聞いているし」
神崎さんは逃げ切った。心の底から嬉しさが湧き出した。
ひより「それじゃ何で遠ざかったのかな……何処に行ったのかな?」
私にはそれが何処かすぐに分かった。
こなた「……神社だ、あの神社に行ったんだ!!」
すすむ「神崎さんはオートバイに乗っていたのか……音だけ聞かせて去る……彼女は泉さんを呼んでいるに違いない」
こなた「私を?」
すすむ「うむ、君以外に彼女の乗っているバイクの音など区別できない、だとしたら答えは明白だ」
神崎さんは私にあの神社に来いと言っているのか。何故……
すすむさんは持っていたメモリー板をひより、みゆきさん、私の順に向けた。
ひより「な、何か?」
すすむ「これで君達の脳波をメモリーに登録した、このメモリー板は君達のものだ、そして、泉さん、君が代表して受け取りたまえ」
すすむさんは私にメモリー板を差し出した。
こなた「へ、私……もらっても使い方しらないし、それに何で私?」
すすむ「このメモリー板は脳と直接コンタクトして操作する、泉さんが考えればメモリー板がそれに答えよう」
私はメモリー板を受け取った。
すすむ「USBメモリーの使い方をずっと見ていた、泉さんなら正しく使うだろうと判断した……それに、もう私にこの装置は不要だ」
すすむさんは駅の方に体を向けた。
すすむ「会ってくるがいい、そして全てを聞いてきなさい」
ひよりとみゆきさんは車の方に体を向けた。
こなた「へ、会うのは私だけ?」
みゆき「それが神崎さんの希望らしいので」
ひより「作戦も大詰めですね、私達はこのままキャリーバックをつかさ先輩に返しにいってきます、いろいろと話す事もありますので」
こなた「え、あ、そ、そう?」
私一人で……急に寂しくなった。
すすむさんは駅に向かって歩き出した。ひよりとみゆきさんは車に乗った。
ひより「神社の入り口まで送りますよ」
こなた「あ、ありがとう……」
私は車に乗り込んだ。


つづく
326 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/31(月) 22:01:11.49 ID:Gf4pjY+v0
以上です。

今回は書く時間があったのでキーボードスムーズに動きました。

まとめサイトのいくつか自分のssにコメント入れてくれた人がいました。この場を借りてお礼をします ありがとう。


この後すぐにまとめますので報告は避難所のみとします。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/13(日) 12:00:39.39 ID:cAAiOMND0
まとめの管理者です。
まとめサイトのメニュー画面「今日の人気ページ」が更新されない不具合がありました。
(自分以外のPCでも同じ症状があったので)
修正しましたので確認してみてください。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/18(金) 17:21:49.89 ID:0uE9zz/P0
ふと思い出して読みたい作品があるんだけど
かがみの幼少期の家出の話と
こなたの生まれる前の泉家の前に住んでる人の家の犬の話ってまとめwikiにある?

その二つの話と
ID:vtqLC2YnO=ID:DaIr8zezO
ID:w6yrVqDEO
ID:+Z93F3lO
ID:yRZiGlX8O「追憶のかなたへ。」
が確か同一作者だったから、まとめて読みたくなったのよ

この人の作品は作者まとめにいれてもいいんでね?
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/18(金) 20:20:24.33 ID:kHd2duJC0
>>328
一応管理している者です。

犬のお話は「おすすめリスト」の
ID:vtqLC2YnO氏:タイトル不明 じゃないかな?

かがみの家出の話は思い当たる作品はありません。
この作者さんの特徴からタイトル無しの作品を探せばみつかるかも?

作者まとめの件ですが基本的には作者本人の希望でリストにするようにしています。
ですので、この作者さんが希望を出せばリストに載せます。

以上です。


余談ですが、おすすめリストに載るのは凄いですね。
私もそれが目的で投下しているようなものです。
かすりもしませんがw

もしおすすめリストに載せたい作品がありましたらどんどん書き込んで下さい。

っと宣伝もしましたw。

330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/05/02(金) 22:34:06.25 ID:8kzi1TIR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

7レスくらい使用します
331 :こなたの旅 23 1/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:36:27.66 ID:8kzi1TIR0
23

 神崎さんの家から神社までは歩いても行けるだから車で向かえば数分で着いてしまう。
何だろう。このへんな気持ち。神社に近づくにつれてだん気が重くなっていく。こんな気持ちになるのは初めてだ。何度もあの神社には行っているのに。
そんな話をする間もなく神社の入り口に到着した。私が車を降りるとみゆきさんとひよりも車を降りた。
ひより「泉先輩、このバイクが神崎さんのですか?」
神社入り口の鳥居のすぐ横にバイクが停めてあった。
こなた「そう、それ、それが神崎さんの」
ひより「泉先輩の言う通りでしたね、さすがッス」
みゆき「この階段を登れば……真奈美さんに……」
みゆきさんは山の頂上を見上げた。
こなた「……どっちでもいいけど、一緒に来てくれない……?」
ひより「私は別に構いませんけど、一人の方が良いのでは?」
みゆき「私は真奈美さんに会ってつかささんを助けてくれたお礼を言いたい……」
こなた「みゆきさんが一緒なら心強いよ」
みゆきさんは首を横に振った。
みゆき「やはり泉さんが行くべきです、合流の場所を外してわざわざ神社に向かったのは何か理由があるはず、泉さんだけに話したい理由が……」
こなた「何で私なの、分からないよ」
みゆき「そうですね、分かりません、会ってみないと」
私は神社の入り口を見た。
こなた「……つかさは何度この階段を登ったんだろう……つかさに出来て私に出来ないはずはない、なんて思っていた……
    すすむさんが来る前もみゆきさんがつかさの名前をだしたから空元気出してみたけど、無理だよ……今になってつかさがやって来た事の大きさがわかっちゃった……」
ひより「泉先輩、つかさ先輩と張り合っていたっスか?」
すこし驚いた顔をしたひよりだった。
こなた「張り合う……違う、私の一方的な挑戦みたいなもの……つかさのくせに……」
ひより「そのセリフ久しぶりに聞いたっス……そういえばつかさ先輩の変わりっぷりは計り知れません……変わったというより化けたと言うのか……」
みゆき「確かにつかささんにはいろいろ驚かされました、でも、泉さんも同じくらい変わっていますよ」
ひより「うんうん、今でも二人はいいコンビッスね……昔はかがみ先輩の方がいい感じでしたが……もっと別の方向で……」
こなた「良いよもう、そんなお世辞は……私、帰る……」
みゆき・ひより「え?」
私は駅の方に歩き出した。

332 :こなたの旅 23 2/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:37:38.10 ID:8kzi1TIR0
ひより「ちょ、ちょっと待って下さい……」
私の手を掴んで引き止めるひより。
こなた「放して、もう私の出番はないよ!!」
ひより「なにもこんな所で、しかもこんなタイミングでツンデレにならくても……」
ツンデレはかがみだけで沢山だ。
こなた「ツンデレじゃないもん……もう私は用済みってことだよ、あとはひよりとみゆきさんで続けて」
さすがのひよりも少し呆れ顔になっている。
ひより「ないもんって……泉先輩が呼ばれたって言っていましたよね……私達が行ってもあまり意味がないような気が……だからメモリー板を泉先輩に……」
メモリー板か……
私はメモリー板を取り出した。そしてみゆきさんに差し出した。
こなた「これはみゆきさんが持つべきだよ、以前からお稲荷さんの知識が欲しいって言ってたじゃん、それにみゆきさんなら有意義に使ってくれる、うん、そうだよ……」
みゆきさんは手をメモリー板の近くまで動かして受け取りかけたけど直ぐに止まり、首を激しく左右に振って引っ込めた。
みゆき「いいえ、これは泉さんが持つべきです」
こなた「使い方知らないし、知っていてもお稲荷さんの知識なんて……訳分からないし……」
みゆき「そうでしょうか、泉さんはUSBメモリーを使いこなしていますね、それも紛れもなくお稲荷さんの知識です」
確かにあれは木村めぐみさんからもらった物だけど……
みゆき「……元気だま作戦……誰にも気付かれず集金してしまうなんて……私がUSBメモリーを持っていても思いつかなかったでしょう……」
私は笑った。
こなた「ははは、あれは漫画のキャラクターが使う必殺技からヒントを得ただけで……下らないジョークのようなもの」
みゆき「ドラ○ンボールの○悟空が使う技ですね」
みゆきさんからその名前が出るとは思わなかった。少し間を空けてから頷いた。
みゆき「技の詳細は割愛しますが私も知識としては知っていました……一見何の関係もない物を結びつける……私には出来ません」
みゆきさんに褒められるなんて……でも……
こなた「そのUSBのせいで作戦は失敗した……」
みゆき「それは一瞬でぎりぎりの判断だったと思います、だれが責められましょう、それにまだ失敗とは決まっていません、それを確かめる為にも泉さんが行くべきです」
言っている内容は頭では理解できた。だけど体が前に行こうとしない……
さらにみゆきさんは続けた。
みゆき「オートバイの音を神崎さんのものだと言った時の泉さんの顔……とても嬉しそうでした、まるで古い親友と再会したかのようでした」
こなた「……そ、そうかな?」
みゆき「そうでしたね?」
みゆきさんはひよりの方を向いてにっこり微笑んだ。
ひより「え、あ、ああ、はい、そうです、そうでしたね、確かにとても嬉しそうでした……なんて言うか、普段表情をあまり出さない泉先輩にしては珍しいかと……」
確かに嬉しかったけど顔に出したつもりは無かった。
そうだよ。そもそも今まで会っていた神崎さんは真奈美が化けていた。本物じゃない。
それじゃ本物の神崎さんはどんな人なのだろう。母親である正子さんが気付かないくらいだから本人とほぼ同じ……なのかな……
私と同じような趣味を持って。正義感あふれる記者……まなみちゃんの演奏の記事で皆を喜ばせたりもした。
私を潜入のメンバーに選んだり、かえでさんと口論したり、かがみを怒らせたり……どこまでが神崎さんでどこからが真奈美なのか。
……神崎さん本人に会ったら私はどうすればいいのだろう……また最初から友達に……
また最初からって……私と神崎さんは友達なのか……な
彼女は私を利用していただけ。私も興味本意で付き合っただけ……それだけ?
うんん、全部が幻。狐が化かした幻だよ……
ここに来るまでの変な気持ちってこれだったのかな。
幻なら。神崎さん……うんん真奈美は無事だったしもう改めて会うことなんかない。

333 :こなたの旅 23 3/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:38:34.52 ID:8kzi1TIR0
 私は首を横に振って駅の方向に体を向けた。
みゆき「そうですか……残念です」
ひより「泉先輩……」
私はゆっくる歩き始めた。
みゆき「私は神崎さんが心配なので神社に向かいます」
ひより「近藤先輩、泉先輩を止めないッスか?」
みゆき「これは泉さんが選んだのですから……」
……選んだ。私は何を選んだって……
みゆきさんは神社に向かって歩き出した。ひよりは私とみゆきさんを何度も交互に見ている。
ひより「泉先輩らしくありません……」
ひよりはみゆきさんのを追って行った。そして私一人が残った。
歩く速度がどんどん落ちていく。まだ10メートルも進んでいないのに足が止まった。

 選んだ。みゆきさんはそう言った。ひよりは私らしくないって……私らしいって何? 分からない。
それにみゆきさんとひよりがもう向かっている。もう私が行っても何が変わる訳でもない。私は再び歩き始めた。

程なく駅に着いた私は切符を買おうと改札口に向かった。時刻表を見る。あれれ、上り電車は5分前に出たばかり……次に来るのは1時間後か……
だから田舎の鉄道は嫌いだ……
「泉さん?」
後ろから私を呼ぶ声。私は振り返った。すすむさんだった。
すすむ「やけに早いな、もう彼女と会ったのか……そうでもなさそうだな」
すすむさんと別れてから随分時間が経っている。5分前の電車に乗っていてもおかしくないのに。
こなた「うんん、会っていない……そっちこそ何で電車に乗らなかったの?」
すすむさんは苦笑いをした。
すすむ「さぁね……」
そう言うとすすむさんは待合場のベンチに腰を下ろした。どうせあと1時間も待たないといけない。私も隣の席に座った。
っと言っても何を話すわけでもなく沈黙が続いた。上りの電車が出たばかりなのか待合場には私達以外誰もいない。
すすむ「別れた時の勢いはどうした、今にでも会いたいような表情だったぞ?」
みゆきさんと同じような事を言う……
こなた「……みゆきさんとひよりが行ったから……」
すすむ「それでいいのか、神崎さんは、いや、真奈美は君と会いたがっているのではないのか?」
私は何も言えなかった。だけどすすむさんもそれ以上何も言わなくなった。

334 :こなたの旅 23 4/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:39:44.85 ID:8kzi1TIR0
 どうしてすすむさんは帰らなかったのか。もしかして私がもらったメモリー板と関係があるのかもしれない。
私にメモリー板を渡したときはスッキリした顔だった。早く帰っていのりさんと逢いたい。そんな感じだった。それなのに今のあの表情……沈んでいて……まるで……
すすむ「どうした、私の顔に何かついているのか?」
こなた「え、いいえ……」
私は目を逸らして俯いた。
いったい何があったのだろう。ここで会ってから何かあったのかな。いや、もう既に。もしかしてメモリー板の中身を見たのかな。
このメモリー板、見かけはほとんどスマホと変わらない。貿易会社からここまで電車に乗っている時間はたっぷりある。例えメモリー板を操作していても
周りからはスマホを操作している様にしか見えない。そしてすすむさんは4万年前の事故の記録を見た……そして……自分の失敗に気付いてしまった。
私にメモリー板を渡したのも忌まわしい記録から遠ざかりたかった……
なんていろいろ考えていたけど。本人に聞くのが一番早い。だけど……何故か聞けなかった。体が、口が動かない。聞くのが怖かった。
もし本当に私の思ったとおりだったら……
時間だけが過ぎていく……早く電車来ないかな……
『ガタン・ガタン』
あ、電車の来る音だ。もうそんな時間……っと思ったのもの束の間、下りの電車だった。まだ15分も経っていなかった。
何だろうこの時間の長さは。さっさと過ぎて欲しいよ。普段ならスマホで時間を潰すけどそんな気持ちにもなれない。
「みーつけた!!」
突然の声だった。私とすすむさんは同時に声のする方を向いた。いのりさん?
さっきの電車に乗っていたのかな?
いのりさんは暫く私達を交互に見た。
いのり「二人して同じような顔しちゃって、兄妹かと思った……」
すすむさんは立ち上がった。
すすむ「ば、ばか、来るなと言ったじゃないか、何故来た!!」
いのりさんはすすむさんの方に近づいた。そして自分の腕時計を見た。
いのり「来るなって、そんなの出来ない、計画では私はさっきの電車で来る様になっていたじゃない、予定は変更できないでしょ」
いのりさんはすすむさんを少しきつい目で睨んだ。
いのり「それで、もうこんな所に居るって事は既にメモリー板を神崎さんに渡したんでしょうね?」
そういえばそうだった。一度メモリー板を神崎さんに渡す事になっていた。
すすむさんは私を一度チラッと見ると首を横に振った。いのりさんは溜め息を付いた。
いのり「まだ神崎さんはまだ来ていないの?」
すすむ「い、いや、もう来ている」
いのり「それならここにこうしていて良いの、渡さないと作戦は終了しないでしょ?」
渡さないと作戦は終了しない……か。
すすむ「お前に何が分かる、私はあの時の事故で……」
いのりさんは両手を前に出してすすむさんを止めた。
いのり「4万年も前の話はもう沢山……もうとっくに解決したのかと思った」
すすむ「いや、解決なんかしていない」
いのりさんは首を横に振った。
いのり「解決した、大きな事故だったのに乗組員100人全員助かった、あなたの判断段でね、それ以上なんの解決があるの?」
すすむ「私の……」
そういえば神崎さんと別れたからのすすむさんの判断が無かったら私はここに居なかったかもしれない。
いのり「そうそう、私達の時代と比べ物にならないかもしれないけど、航空事故とか宇宙船の事故だとほぼ助からない、全員生きていたなんて奇跡、
    それから4万年後、帰りたい人だけ帰る事が出来た、なんの問題があるの?」
すすむさんは呆然といのりさんを見ていた。
生きている……確かに神崎さんは生きていた。
なんだろう。いのりさんは私に言っている様な、そんな気がした。
いのり「その間、辛かったでしょう、私達がもう少し頭が良かったら手伝えもできたけどね……私達から見ればすすむさん達はまだまだお稲荷さんだから」
いのりさんはすすむさんに近づき手を引いた。
すすむ「……何をする……」
いのり「神崎さんの家へ……明日から整体院の仕事でしょ、あなたしか治せない人が待っているから、これはあなたしか出来ないから」
いのりさんはさらにすすむさんを引っ張った。
すすむさんにしか出来ない……事。
私にしか出来ない事。
こなた「待って下さい、メモリー板を持っているのは私です……」
いのり「え?」
いのりさんは手を放した。
いのり「どう言うこと?」
いのりさんは私とすすむさんを何度もきょろきょろと見た。
私は今までの経緯を話した。

335 :こなたの旅 23 5/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:40:53.79 ID:8kzi1TIR0
いのり「神崎さんは真奈美さん……本当なの?」
こなた「もう間違いない……」
いのりさんは神社のある山の方向を見た。
いのり「私も一回だけあの神社に行った、もちろんつかさに連れられてね、夢中になって真奈美さんの話をしていたのを覚えている」
今度は私の方を見た。
いのり「彼女はつかさを助けた人、だけど殺そうともした人、そうだね、会うのも躊躇うのも分かる」
私は真奈美が怖いから会いたくない……のかな。
いのりさんはすすむさんを見た。いのりさんは溜め息をついた。
いのり「旦那もこんなだし……私が行くしかないみたいね、メモリー板を渡しに行ってくる」
私はポケットの中にあるメモリー板を取り出そうとした。
いのり「真奈美さんね……それを知っていればつかさを連れてきたのに、つかさなら誰よりも先神社にむかうかもしれない」
私の手が止まった。
つかさ……確かに、つかさならそうするかもしれない。それなのに私ときたら……
いのりさんは私を見て不思議そうな顔をした。
いのり「泉さんは昔から良く実家に遊びに来ていたよね、あまり話し合った機会は無かったけど、不思議と親近感はあった、」
こなた「え、どうして?」
いのり「つかさよ、つかさ、つかさが事ある毎に泉さんの話をするから」
こなた「どんな話を……」
いのり「よく遅刻をして変な言い訳をして先生によく怒られるとか、アルバイトを始めたとか、走るのが速いとか……仮病で休んだ事もあったって?」
最初と最後が余計な話だ……そんな話をしていたのか。想像はできるけど、そこまでだったとは。つかさらしいと言えばそれまでだけど。
つかさらしい……か。
いのり「……余計な話だった、メモリー板は?」
私は差し出しかけたメモリー板から手を放した。
こなた「私が直接渡してきます」
いのり「あら?」
すすむ「泉さん……」
こなた「神崎さん、いや、真奈美さんは私を呼んでいる、だから私が行かないと」
いのり「そう、それで良いと思う」
すすむ「待て……」
行こうとする私を呼び止めた。
いのり「折角その気になったのに呼び止めるなんて……」
ずずむ「どうして気が変わった?」
こなた「ん〜私の気まぐれ、それといのりさんの言葉もあるけど……強いて言えば……選んだから」
すすむ「選んだから……」
こなた「うん、もう私はとっくに選んでいた、つかさと出会った時から、だから行く」
すすむさんはなんか納得していない感じだった。
こなた「神崎さんと別れたからのすすむさんの選択、とっても冷静で冷酷だったけど……あれしか方法はなかったよね、きっと事故の時もそうだった、そんな気がする」
すすむさんは黙って私を見ている。
こなた「だって、神崎さんは生きているからね」
私は時計を見た。
こなた「わっと、早く行かないと遅刻しちゃう」
いのり「ふふ、変な言い訳をしないように」
すすむ「……なにも出来なくてすまない、しかも助言までされるとは……」
こなた「まだ作戦は終わっていないからまだ安心はできないよ、それじゃ」
すすむさんの表情が笑顔に戻った。そしていのりさんに寄り添っている。この二人は本当に愛し合っていると思った。
そういえばつかさとひろしも愛し合っている。かがみは人前でそんなを見せるような人じゃない。だけど家ではきっとそうにちがいない。
まつりさんとまなぶさんは……ゆたかの恋敵だったくらいだから言うまでもないか。
私は走って神社に戻った。

336 :こなたの旅 23 6/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:42:00.16 ID:8kzi1TIR0
 神社の入り口に着いた。ひよりの車と神崎さんのバイクが置いてある。みゆきさん達と別れてから1時間も経っていないから変わるわけも無いか。
さて、みゆきさん達はもうとっくに頂上に着いているはず。私が行ってもメモリー板を渡すだけで終わってしまうかもしれない。
うんん。それでいい。その為に戻ったのだから。
みゆき「田村さん、私の言った通り戻ってきました」
みゆきさんの声……私はその声の方を向いた。神社の入り口にみゆきさんとひよりが立っていた。
ひより「本当に来た……」
こなた「みゆきさん、ひより……もう行ってきたの?」
ひより「まさか、待っていたっス、近藤先輩が絶対に戻ってくるって言ったので……」
私はみゆきさんの方を見た。
みゆき「時刻表では前の電車は乗れないと思いまして、次の電車がくるまでの1時間で考え直していただけると……」
ばか、そんな保障なんかないのに。
こなた「待ちぼうけだってありえたのに」
みゆき「でも、こうして戻ってきました、バトンタッチです」
みゆきさんは右腕を上げた。私も上げてハイタッチをした。
みゆき「田村さん行きましょう」
みゆきさんはひよりの車の方に歩いて行ってしまった。そしてひよりが私に近づき耳元で囁いた。
ひより「電車が出発する10分前まで来なかったら車で駅まで行って鎖に繋いで引っ張っても連れてくるって」
こなた「え、みゆきさんが?」
ひより「そうならなくて良かったッス、それじゃこの後よろしくお願いします」
みゆきさん……変わったかな。
ひよりは小走りに車に向かった。そして車は走り出した。
そして残るは私一人。
もう後戻りは出来ない。いやもうしない。
神社の頂上を見上げた。そこに待っている人が居るから。
私は階段を登った。

 私は神崎さんに会う方を選んだ。確かに選んだけどその後どうするかまでは考えてはいなかった。
彼女がお稲荷さんってバレているのは向こうだって分かっているはず。もしかしたら神崎さんの姿じゃないかもしれない。
そんなのは会ってから考えるか。あれ?
気付くと辺りは暗くなっている。もう日は西に沈んでいた。まだ階段は中腹くらいだろうか。頂上に着くまでに真っ暗になってしまう。
そういえばつかさもこんな暗い時に登った事もあったっけな。確か携帯の明りを利用したって言っていたな。
私にはスマホがあるからもっと明るく照らせる……ん?
胸ポケットから明りが漏れている。たしかそこにはメモリー板が。私は慌てて胸ポケットからメモリー板を取り出した。
メモリー板が明るく輝いている。何でだろう。私は何も操作していないのに。
暗いから明りが欲しいなって思っただけなのに……まさか。
すすむさんは考えればいいとか言っていた。もしかして、私はもっと明りが欲しいと思った。するとメモリー板は明るさを増し、しかも私が見ている辺りを照らし出した。
私が思った事を読み取ってそれでメモリー板が自分で判断して明りを操作している。そんな感じだった。
私は片手にメモリー板を持ったまま階段を登った。

337 :こなたの旅 23 7/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:42:59.82 ID:8kzi1TIR0
 頂上に着いた。私の目線に合わせて明りが付いて来る。人影が見えた。私はそこに焦点を合わせた。
後ろを向いている。綺麗な黒い長髪、整ったスタイル……神崎さんだとすぐに分かった。明りに気付いた神崎さんは振り向いた。
神崎さんが眩しがるかなっと思った瞬間明りは弱くなった。神崎さんは私の手に持っているメモリー板を見た。
あやめ「4万年という歳月を地下深く埋まっていたと言うのに動作するのね……改めてお稲荷さんの知識と技術は驚かされる……それで、それを操作できるって事は
    佐々木さんに脳波を登録してもらった、そうでしょ?」
こなた「う、うん……今の所明り灯すくらいしかできないけどね」
あやめ「それは人間で言う五感、センサーと同じ、思い通りに感度を調節できる、お稲荷さんが人間より感覚が鋭いのはそのメモリー版の機能を遺伝子レベルで移植したものなの、
    但し、通信機能はエネルギーが沢山必要だから無理ね……」
こなた「さすがお稲荷さんだね、神崎さん……」
神崎さんはそのまま後ろを向いて景色を眺めた。
こなた「どうやって逃げてきたの」
「どうして私だけ呼んだの」って最初に聞きたかった。だけど何故かこれが最初の質問になってしまった。
あやめ「警備員は10人だった、普通にしていたら捕まっていた、丁度いい隙間を見つけた、そうよ、狐が一匹入れる隙間をね、私は急いで狐になってその隙間に逃げ込んだ、
    その隙間がダストシュートに繋がっていた、そこから1階まで直ぐに行けた……私、ゴミくさくないかしら……」
お稲荷さんじゃななければ逃げられなかった。
こなた「私のせいで捕まったら……そう思うと怖くて……」
あやめ「こうなる事は分かっていた、本来なら扉を最初に開けるのは私でなければならなかった……私も気が動転していたの、ごめんなさい、真奈美が居なかったから……」
真奈美が居なかっただって。この期に及んでまだ嘘を付くのつもりなのか。
こなた「もう演技はよそうよ!!、真奈美さん!!」
思わず叫んでしまった。気が高ぶったのかメモリー板の明りもより明るくなった。
あやめ「真奈美……前にも似た様な事があった」
こなた「そうだよ、正体を明かすチャンスは何度もあった、つかさと会った時、何度か会合を開いた時、私とこうして二人だけで居る時だって……実の弟だって居たでしょ!!」
神崎さんはゆっくり私の方を向いた。そしてポケットから何かを取り出した。私がそれを見ると神崎さんの手元をメモリー板の明りが照らした。
こなた「ボイスレコーダー?」
手に持っていたのはボイスレコーダだった。
あやめ「ボイスレコーダー……記者をやっていると何も言わなくてもこれがボイスレコーダーだと皆が勝手に思ってくれる……便利よね」
こなた「ボイスレコーダーじゃない、それじゃそれは何なの?」
あやめ「これは、私の感覚が人間の五感に近づけるため装置、つまりお稲荷さんの力を封印する物……もうその必要はないわね」
『カチッ!!』
スイッチを操作する音がした。そしてそのまままたポケットに仕舞った。
あやめ「力を封印すれば私は只の人間、仲間が近くに居たとしても気付かれない、もちろんそのメモリー板もね」
あれ……感じる……仲間のような親近感が突然私を包んだ。
私はメモリー板を見た。メモリー板が反応している。神崎さんが仲間、お稲荷さんだって教えてくれているみたいだった。
あやめ「泉さんが襲われそうになった時、一瞬だけ装置を切った、その一瞬ではメモリー板では拾い切れなかったようね……それは意外だった」
こなた「なんで……そこまでして正体を隠したの……」
あやめ「だから貴女を呼んだの……」
こなた「私を……呼んだ?」
あやめ「今から1時間……いや、30分後、私の家に来て……そうしたら全てを話す」
神崎さんは私から後ろに数歩下がった。そして目を閉じた。まさか……
そう思った瞬間彼女の体が淡く白く光った。見覚えがある。これは狐に変身する時に……
彼女の体がどんどん小さくなっていく……そして……目の前に一匹の狐が座っていた。
まてまて、この狐……ハイソックスを履いたような黒い足、尖った耳、大きさ……同じだ。あの時見た野良犬と……
こなた「もしかして、以前私の店の前を通ったでしょ?」
狐は私を見上げるとゆっくり頷いた。ゆっくり背伸びをして立ち上がると走って階段を降りて行った。そしてメモリー板からお稲荷さんの反応が消えた。
こなた「ふふふ、つかさは自分の命の恩人の姿を見間違えるのか……ははは、やっぱりつかさはつかさだよ、はははは、何が野良犬だよ……ははは」
私は思わず笑った。久しぶりにお腹が痛くなるまで笑った。

つづく
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/02(金) 22:44:30.43 ID:8kzi1TIR0
以上です。

少し間が開いてしまいました。これからも不定期ですがよろしくお願いします。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/02(金) 22:48:38.82 ID:8kzi1TIR0


−−−−−−−−−−−−−−ここまでまとめた−−−−−−−−−−−−−−−−−
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/04(日) 01:01:31.16 ID:mrO8nSSC0
「こなたの旅」の作者です。

>>335 23話の5/7の最後の方の ゆたかの恋敵→ひよりの恋敵 に修正します。

同じくまとめの方も修正します。

やっぱりダメダメだな……
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 21:40:11.82 ID:1XzrgYM3o
ここで言うべきことじゃないかもしれないけど泉こなたを自殺させるスレのまとめWIKI消えてたんだな
真面目な内容のSSとかもあったから良かったのに残念だ
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/06(火) 11:22:56.49 ID:EcD6wV+Q0
>>341

 同じらきすたSSのサイトが消えるのは残念だけどね。
昔、らきすたSS巡りをしていた頃見た覚えがある。
いい作品があってもスレタイトルがあまり良くなかった。
それが消えた原因かどうかは分からないけどね。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga ]:2014/05/12(月) 20:51:21.72 ID:Vjt6sNjH0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

5レスくらい使用します。
344 :こなたの旅 24  1/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:53:53.64 ID:Vjt6sNjH0

24

 こんなに笑ったのは久しぶりだった。
30分後か、今の私なら手摺に乗って滑って降りられるから彼女の家の行くのに30分も掛からない。
おや……神崎さんが狐に変身した場所に何かが落ちている。メモリー板の明りがそこを照らし出した。ボイスレコーダー……
レコーダーじゃないって言っていたっけ。変身したせいで落としてしまったのかな。それとももう要らないって言ったから捨てたのか。
ボイスレコーダーを拾った。
そういえばつかさと握手をした後すぐにこのレコーダーを取り出して操作をしていた。スイッチを入れ忘れたのかもしれない。
つかさの辛い記憶が神崎さんに流れてきてしまってあんな行動をしたのかも。
この装置要らないなら貰っちゃおうかな……お稲荷さんの力を封印する装置、どう考えても私には要らないもの、だけど、アイテムはいっぱい持っていた方がゲーム攻略は有利だよね。
装置を仕舞った。
さてと、ここで待っていても退屈なだけだ。降りよう。

 神社の入り口まで降りてきた。あれ、バイクが置いたままじゃないか。
と言っても狐の姿じゃ運転できるわけ無いか。それじゃなんであんな所で正体を証のかな……いや、ここで最大の疑問は本当の神崎さんは何処に?
つかさが言っていた事が現実になってしまった。
お稲荷さんを野良犬呼ばわりしたり、時々鋭い事を言ったり。長い間の付き合いだけどつかさがますます分からなくなってきた。
ひよりの推理だと貿易会社に捕らわれていって言っていた。
私の推理だと……
………
何も考え付かない……
なんだかんだ言ってひよりは凄いな。伊達に漫画家じゃない。でも……漫画家と推理は全く別物かも……
ってグダグダして全く考えが纏まらない。
私って……考えてみればいつもこんな感じか。

神垣さんのバイク。静かに寂しそうに置いてある。家にまでなら私が持って行ってもいいけど鍵を持っていない。鍵を持っていたとしても二輪の免許を持っていない。
それに勝手に持っても行けない。このまま置いて行くしかないか。

345 :こなたの旅 24  2/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:55:15.93 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんの家に着いた。丁度1時間位前にも来ている。ただ違うのは居るのは私一人だけ。スマホの時計を見ると神崎さんの言う30分になろうとしていた。
「待たせたね」
後ろから声がする。聞いたことの無い声だ。誰だろう。私は振り返った。
そこには男性が立っていた。知らない人だ。しかもその男性は神崎さんのバイクを引いている。
その男性は手馴れたように神崎さんの家の門を開けるとバイクを門の中に入れた。私はその男性の後に付いて門に入った。
バイクを駐車スペースに置くと男性は私の方を向いた。
男性「彼女のバイク、流石にこの姿で乗るわけにはいかなかった……」
こなた「なんでバイクの鍵を、それに門の鍵だって……」
男性「私が誰だかもうとっくに分かっているよね?」
こなた「誰って……真奈美さんでしょ、何でわざわざ男性に化けたの?」
男性「異性に化けると体力を余計に使ってしまう、君が今まで会ってきたお稲荷さんは化けても性までは変わらなかっただろう?」
こなた「それって……」
男性「残念だったな、私は真奈美ではない」
そんな、真奈美じゃなかった。ひよりの推理は外れた。
なぜそんな体力を使うのにこのお稲荷さんは神崎さんに化けた。そんな事より何故別のお稲荷さんが居るのか。分からない。
こなた「それじゃ、けいこさん達が帰った時何処に居たの、お稲荷さんの全員のリストを作ったのは私だよ」
男性「仲間が日本に居たのはこの日本に来るまで知らなかった、私はあの事故の遭った場所から動かなかったからね、彼らも私が生きていたとは思うまい……」
こなた「事故って4万年前の?」
男性は頷いた。
男性「佐々木すすむ……完全に日本人じゃないか、まさか彼が生きているとは思わなかった、あいつは全く変わってないな……」
こなた「なんで神崎さんに化けたの……」
男性「話が長くなる家に入ろうか」
男性はキーホルダーを取り出した。
こなた「勝手に入るのは……良くないよ」
男性「神崎正子さんは都内のホテルに避難させてある、中には誰も居ない、それに私は「神崎あやめ」でもある……」
男性はドアの鍵を開けた。
男性「どうぞ……」
神崎さんでない人からどうぞって言われても違和感がある、でも、出会った時から神崎さんじゃなかった。
346 :こなたの旅 24  3/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:56:38.14 ID:Vjt6sNjH0
 私は神崎さんの部屋に通された。男性は神崎さんの椅子に腰掛けた。
男性「さて、何から話そうか」
私は床に腰を下ろした。
こなた「名前は……何て呼べばいい?」
男性「名前か……日本に来る前はレルカンと名乗っていた……神崎でいい」
こなた「神崎さん……」
神崎「日本に来たのは10年前、それまではヨーロッパ各国を転々としていた、目的は只一つ、君の持っているメモリー板だよ、人間に渡れば私達の存在を知られてしまうからな」
こなた「メモリー板……」
神崎「そう、メモリー板を人類に渡さない為にね、在るのは分かっているが場所が分からない、でも大体の見当はついていた、
   その一帯に人類を近づけないように有りと有らゆる方法を使った、幻影、毒、呪術も織り交ぜた、そのおかげでつい最近までは呪われた土地として
   人間を寄せ付けなかった、しかし突然その呪われた土地に手を出した人間達が現れた、流石に知恵をつけてきた人間に小手先の術では追い払うのは無理だった」
こなた「その土地に手を出した人達って……」
神崎「そう、貿易会社だよ、彼らはトレジャーハンターを雇って発掘を始めた、私もその中に入り隙があればメモリー板を入手できる機会を待った、しかし結果は
   彼らに先を越された、一個人の力では組織には勝てない、そこで私は情報の集まる場所……報道関係の仕事に携わりメモリー板の所在を追った」
こなた「それで日本に?」
貿易会社か……結局あの会社にはいいようにされっぱなし、あの神社を取り戻したのが唯一の勝利。
神崎「そう、それで調べていくうちに神崎あやめに出会った……彼女は貿易会社の不正を調べていた、彼女の勘は鋭い、私がお稲荷さんであることは出会って数日で
   見抜かれてしまった、彼女は真奈美の話をし、私はメモリー板の話をした、お互いの利害が一致し協力する事になった」
こなた「それじゃ神崎さん……いや、あやめさんは真奈美さんを探していたの?」
神崎「お稲荷さんを助けるなんて公表は出来まい……それでも二人では力不足だ、もっと協力者が欲しい……そこであやめは貿易会社に反感を持っていそうな
   人達をリストアップした、ライバル会社の関係者、ワールド会社の関係者……もちろん君の働くレストランも候補だ」
こなた「レストランかえでが?」
神崎さんは頷いた。
神崎「ああ、彼女は貿易会社から神社を買い取り、町に無償提供した人物が必ずそのリストの中に居ると確信していた、その人物ならきっと力になるってね……
   それでその人物はかなりITに詳しいと考えて、IT関連会社や情報通信会社を優先して調べた、君達のレストランはリストの最後尾だ」
それでこんなに遅く来たのか……でもそんな話はどうでも良かった。私の聞きたいのはそんな話じゃない。
こなた「神崎さんは、神崎あやめさんはどこに居るの、貿易会社に居るなら早く助けないと」
神崎「余計な事はしたくなかった……君は協力さえしてくれれば良かった、しかしそれは無理だったみたいだね……」
何を言っているのかさっぱり分からない。
神崎さんは突然立ち上がった。そして彼はベッドのところまで移動した。そして徐にベッドのマットを持ち上げた。
こなた「な、なにこれ……」
マットの下は空洞になっていた。そしてそれはあった。それは人の大きさ程だった。細かい糸で包まれている……まるで、蚕の繭みたいだ。
神崎さんはカッターナイフを取り出すと繭の上のほうに切り込みを入れた。そして皮を剥ぎ取るように捲った。
その皮の下にあったのは神崎さん……神崎あやめさんの顔だった。目を閉じて眠っているよう。
神崎「まるで生きているみたいだろう、私の持てる知りうる限りの防腐処置をした、あの時のままの姿だ……」
こなた「防腐処置ってどう言う事」
神崎「彼女は、神崎あやめはもうこの世に居ない、亡くなった……」
亡くなった……ついさっきまで会っていたのに、話していたのに、作戦まで一緒に行動して、助けて助けられもしたあやめさんが……
こなた「いつ……何時なの」
神崎「言わなければならないか」
こなた「ここまで話して、それはないよ」
神崎「そうだな……」

347 :こなたの旅 24  4/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:58:13.89 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんはカッターナイフを机に置くと話し出した。
神崎「5年前……降りしきる雨だった……重要な作戦だった、目的は貿易会社の情報収集、二人同時の作戦だった、私は先に潜入し資料室からファイルを入手した、
   彼女は……あやめは警備室から鍵の型を取るはずだった……私は待った、あの神社の入り口で……そこが待ち合わせの場所だった、彼女は時間になっても
   来なかった、まさか……失敗したのか、携帯で連絡を取りたかったがそれはしないと言う約束だった……それでも私は携帯に手を掛けた、その時だった、
   彼女のバイクのエンジン音……近づいてくる……だが、突然音が止まった……私は夢中で走った、音の止まった場所を目指して……そこで私の見た光景は……
   倒れたバイク……エンジンは掛かったまま、そしてその先にあやめが倒れていた……ヘルメットは壊れいた、私は彼女に駆け寄った、見たところどこにも外傷は見当たらない、
   あやめはゆっくりと目を開けるとにっこり微笑んだ、そして私に鍵の型を取った粘土を私に渡した……そして目を閉じた……もう二度と目を開ける事はなかった……」
神崎さんが交通事故で死んでいた……
こなた「お稲荷さんだったら直ぐに治療すれば助けられたでしょ……」
神崎「……それは過大評価だ、私達は万能ではない、しかしあの時出来うる事は全てした」
こなた「それで、この事は私以外に誰かに話したの」
神崎さんあ首を横に振った。
神崎「いや、君が初めてだ……」
私はあやめさんを見た。彼女は目を閉じている。神崎さんの言うようにただ眠っているだけみたい、今にでも目を開けて起き出しそう。
こなた「あやめさんは命を懸けてまで真奈美さんに会おうとしていた……ただ逢いたいだけでそこまで……」
神崎「あやめの親友が今、死の淵に立たされている……彼女は幼少から病弱だった」
死の淵……あやめさんの友達……もしかして。
こなた「もしかしてまなみちゃんの演奏会に来るはずだった記者じゃない、えっと確か井上さんとか言っていた」
神崎「そう、井上浩子、あやめの同僚で高校時代からの友人だ……真奈美なら井上さんを治せる方法を知っている、それに賭けるしかなかった、あやめならそうしている、
   あやめは真奈美ならその方法を知っていると言っていた」
こなた「その友達って癌かなにかなの?」
神崎「脳腫瘍だ、以前摘出して再発した、もう手の施しようがないと医者は言っていた」
それでこの作戦を急いでいたのか。
それにしてもあの時のかがみと同じような状況じゃないか……
こなた「……例え真奈美さんが居たとしてもあの薬は直ぐには作れない、2年の熟成期間が必要なんだよ」
神崎「なんでそんな事を知っている……」
そうだった。私はつかさが一人旅をした話しかしていなかった。その続きを話していれば……何故話さなかった、それは私がそれを選んでいたから話さなかった……
まだ私はつかさに話させようとしていたのか。バカ……だな私って。
こなた「以前真奈美さんの婚約者のお稲荷さんとつかさが作ったから」
神崎「ふふ、どうあがいても無理だったか」
つかさが作った……あの時作った薬……まてよ、まだ全部は使っていない。
こなた「待って、まだある、その薬まだあるよ」
神崎さんは私を見て驚き少し嬉しそうだった。
神崎「本当か」
こなた「以前調子が悪かった時つかさが薬を薦めたからまだあるよ、早く行こう」
神崎「そうか」
神崎さんは微笑むと紙に何かを書い私に渡した。
こなた「何?」
神崎「井上浩子の入院している病院の名前と住所だ、念のため主治医の名前も書いておいた……」
こなた「だめだよ、一緒に来ないと……」
神崎さんは首を横に振った。
こなた「なんで、井上さんは私達から見たら赤の他人だよ、神崎さんが直接頼まないとダメ」
神崎「それは出来ない」
こなた「どうして?」
神崎「逃げるとき、警備員に顔を見られた……」
こなた「大丈夫だよ、顔を見られたくらい、分からないよ」
神崎さんは首を横に振った。
神崎「見られた人物がまずかった、彼はヨーロッパで名うての殺し屋だ……まさか日本に来ているなんて、しかも貿易会社の用心棒とはな、じきにこの家に来る、君も危ない、
   早く帰りなさい」
そういえば叫び声が日本語じゃなかった警備員がいた。
こなた「帰れって……いくら殺し屋でもこの日本で変な事なんかできないから大丈夫だよ」
再び首を横に振る神崎さん。
神崎「小林さんから聞かなかったのか、そいつにもう何人も消させている、そして裏には貿易会社の力がある、真相は闇へから闇に……この日本も例外ではない」
……私ってそんなヤバい所に手を出してしまったのか……
神崎「今更そんな顔をしても遅い……幸い消す目標は神崎あやめだけだけだ、君は関係ない」
神崎さんはじっとあやめの顔を見ている。
こなた「私が帰った後、どうするの……」
神崎「殺し屋と刺し違えてもあやめを守る」
名うての殺し屋と現役のお稲荷さんの格闘……凄まじい光景になるのはすぐに想像できる。
神崎「君は……いや、君たちはよくやってくれた、感謝している、これからは私の選んだ道だ、もう忘れてくれ」

348 :こなたの旅 24  5/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:59:33.83 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんの選択……
私はあやめさんの顔を見た。
神崎さんは最後の集合場所をここにしていた。最初からこうなるのを予測していたからそうした。
あやめさんは、彼女の選択は何処に、彼女が生きていたとしても必ず私は彼女と逢っていた。その後の展開は……神崎さんの変身が完璧ならそう変わることはないよね。
でも、あくまで神崎さんの化けた神崎あやめ……神崎さんの選択だよ。
もし、あやめさんが生きていたらどうする。
神崎「もう時間がない、早くここを離れろ……」
うんん、いくら考えてもあやめさんはあやめさん、彼女でないとどうするなんて分からない。
そんな事より私がこれからどうするかが問題。
その時だった、私の中にあるアイデアが浮かんだ。でもそれはとっても危険。これが成功するなんて分からない。成功してもどうなるか……
神崎さんは立ち上がった。
神崎「動かないなら力ずくでも帰ってもらう」
力ずく。私に金縛りの術でもかけるとでも言うのか。その後催眠術をかけて帰すつもり、そうだとしたらじっくり考えてはいられない。
すすむさんは言っていたっけ、方法も手段もあるなら選択肢の一つになるって……今の私にはその方法も手段もある。ただそれは一度も経験した事がないって事だけ。
でもそれは元気だま作戦の時だって同じだった……それなら私の選択肢は一つ。
決めた……私は決めた。
こなた「帰らない」
神崎「泉……私を見ろ……」
今、私は自分だけの選択をしようとしている。つかさでも神崎さんでもあやめさんでもない。そう、私が選んだ選択を。
『カチッ!!』
私は神崎さんの方を向いた。
……
……

 私はつかさの家の前に立っている。あれからもう一日も経っていた。
『ピンポーン』
呼び鈴を押すとつかさが飛び出してきた。
つかさ「こなちゃん!!今までなにしてたの、心配したんだから!!」
珍しく怒っている。今はその話をしている時間はない。
こなた「つかさ、今すぐお稲荷さんの秘薬が欲しいんだ」
つかさ「えっ?」
驚いた顔で私を見る。
こなた「どうしても使いたい人がいるから、良いよね?」
つかさ「どうしたの、いきなり、こなちゃんの友達にそんな重病な人居たっけ?」
こなた「つかさの知らない人なんだ、だけどどうしても助けたくて……」
つかさ「知らない人……?」
こなた「お願い……」
私は両手を合わせて頭を下げた。
つかさ「そんな……頼まれても……よして、そんな事したって」
そうだよね、見ず知らずの人に大事な物をあげるなんて早々できる事じゃない。それは分かっている。
こなた「お願い……」
私は更に頭を下げた。もうこれしか出来ない。
つかさ「頭を上げて、あげたくてもあげられないの……」
こなた「え?」
つかさ「薬は……もう使っちゃった……だからもう無いの……」
こなた「使った……まだ半分位残っていたでしょ、みゆきさんの研究用に渡してもまだ何回分は残っているよね……」
つかさは首を横に振った。
つかさ「うんん、使っちゃったの……かえでさんに……」
こなた「かえでさんって……退院したんじゃないの……そんな薬が必要だったなんて聞いてない……」
つかさ「こなちゃんが大切な仕事をしているからって……かえでさんから言わないように言われたの……本当はとっても危なくて……お腹の赤ちゃんも危なくて……
    使うしかなかった……」
そんな……私の計画が……
かがみ「こなた……あんた……」
玄関の奥から低い声……この声は怒っている……しかもこれは相当マジだ……
かがみ「いったい何をしでかした……今朝のニュースを知らないわけじゃないでしょうね」
こなた「え、何……?」


『昨日の深夜0時頃、○○県○○郡○○町神崎正子宅で火事があり、127平方メートルを全焼しました、民家から焼死体が発見され身元の確認を急いでいます、
 民家は母と娘の二人暮らしで、娘の神崎あやめさんではないかと調べを進めています……出荷原因は台所で……』

つづく
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/12(月) 21:00:46.09 ID:Vjt6sNjH0
以上です

この後すぐにまとめますので 報告は避難所のみにします。
350 :こなたの誕生日 :2014/05/28(水) 19:59:40.82 ID:nsxYzEPO0
つかさ「お姉ちゃん、今日はどうするの?」
かがみ「どうするって?」
つかさ「あれ、わすれちゃったの、こなちゃんの誕生日だよ?」
かがみ「……そうだった、みゆきは何て言っているの?」
つかさ「ゆきちゃんはもう何かを送るのは止めて食事でも招待したらっていっていたけど……」
かがみ「食事ね……あいつなにが好物だったかしら……」
つかさ「そういえばなんだろう、何でも美味しそうに食べるからね」
かがみ「まさかチョココロネなんて言わないだろうな……」
つかさ「あ、こなちゃんだ、聞いてみようよ」
かがみ「あ、バカ、聞いたら……行ってしまった」

つかさ「こなちゃん、何か食べたいものある?」
こなた「どうしていきなりそんな事聞くの?」
つかさ「こなちゃんの誕生日に食事に招待しようと思って」
こなた「やっほ〜それは嬉しいね」
かがみ「現実に食べられる物にしろよな!!」
こなた「うぐっ!!」
かがみ「今、高級食材を並べようとしてただろ!?」
こなた「むむむ……い、いや、そんなんじゃないくて……美味しいものなら何でも……いいよ」
つかさ「外食だと在り来たりだから、私達の手料理はどう?」
こなた「……いいね、つかさの作ったのなら食べたい」
つかさ「うんん、皆で作るの、それじゃゆきちゃんやみさちゃんも呼ばないと、行こう、お姉ちゃん」
かがみ「ちょっと、何で私が入るのよ」
つかさ「買い物もしないといけないし、急ごう、それじゃ後でねこなちゃん」

こなた「行っちゃった……う〜ん、かがみが参加するのは……行くのやめようかな……」



こなた、誕生日おめでとう

急いで作ったのでこんなのしか作れなかった。






351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/06/01(日) 14:20:14.08 ID:oLV7tB6i0
それでは「こなたの度」のつづきを投下します。

今回は2レスを使用します。


352 :こなたの旅 25 1/2 [saga sage]:2014/06/01(日) 14:21:47.02 ID:oLV7tB6i0
25

 ニュースは予想できた。だけど思ったより早く報道された。でもあやめさんの職業を考えればそれは当然か……
神崎「君の目論見は外れだったようだな……」
私の少し後ろにいた神崎さんがぽつりと言った。つかさとかがみがそれに気付いた。
つかさ・かがみ「誰……?」
神崎「先客がいたならもうどうにもなるまい……」
神崎さんは後ろに振り向いて去ろうとした。
こなた「待って、まだ私の計画は、作戦は終わっていないよ、神崎さん!!」
つかさ・かがみ「神崎……さん?」
つかさとかがみは顔を見合わせた。そして神崎さんは立ち止まった。
神崎「この後どうすると言うのだ、もう終わりだ、もう私の好きにさせてくれ」
こなた「うんん、まだ終わっていない」
かがみ「二人とも、ここじゃ話しにならない、家に入って」
かがみが扉を開いた。私は玄関に入り神崎さんの方を向いた。
こなた「最後まで付き合ってもらうよ」
神崎「……」
神崎さんは黙って私の後に付いた。

 家に入るとつかさの部屋に通された。そこには今回の作戦のメンバー、いのりさん夫婦、みゆきさん、ひよりの他にあやのが居た。配そうな顔で皆は私を見ている。
神崎さんはあやめさんとの関係を話した。
すすむ「ま、まさか、おまえ……い、生きていたのか……」
まるで何年も逢っていない友人の様な口ぶり、いや、何年どころじゃない。彼らは4万年ぶりの再会なのかもしれない。
すすむ「よく一人で生きてこられたな……」
神崎「それは私も同じ事、よく生きていたな、もうとっくに人間達にけされていたと思った……相変わらずだな、未だに能力を消したままだったとはな、そのおかげで
   私は正体をばれずに済んだがな……」
すすむ「私はそう決めた……それより、ひろしやまなぶに何故気付かれなかった」
神崎さんは私の方を向いた。私はポケットからボイスレコーダを取り出した。
すすむ「ボイスレ……い、いや、違う……バカな、そんな事をしていたのか……」
神崎「そう言う事だ」
少し間が空いたような気がした。しかしそう思ったのも束の間。
かがみ「すすむさん悪いけど彼にはなしがある」
かがみがすすむさんの前に立ちはだかった。
かがみ「神崎とか言ったな、あんたわざと事故に見せかけて神崎あやめさんを見殺しにしたな、神崎あやめの立場を利用する為に、そうだとしたら許せない」
神崎さんに当てるような大声だった。
神崎「いや、わざとではない」
かがみ「それなら私達がお稲荷さんの秘密を知っている時点で真実を話さなかった、私達はお稲荷さんと人間の関係も全て熟知している、もっと早く作戦だって達成できたに違いない」
神崎「知られたくなかった……出来ることなら最後まで私は神崎あやめでいたかった……」
かがみ「そんなの理由になるか!!」
かがみは立ち上がり神崎さんに詰め寄った。
みゆき「かがみさん、その話は後にしましょう、それより私は外で泉さんとつかささんが話していた事が気になります」
みゆきさんが間に割って入った。絶妙なタイミングだった。このまま放っておけばかがみは言い訳する間も与えず怒鳴り続けたに違いない。
こなた「お稲荷さんの秘薬?」
みゆき「はい、いったい誰に使おうとしたのですか?」
こなた「あやめさんの親友……かがみと同じ病気、再発してもうダメみたい……」
みゆき「そうですか」
みゆきさんは暫く目を閉じた。
みゆき「私達の研究グループが開発した新薬……臨床試験をしようとしています、どうでしょう、治験者になってみませんか」
神崎「ほ、本当か?」
みゆき「つかささんの持っていた秘薬と同じ効果があるとは断言できませんが」
神崎「構わない」
みゆき「それなら早いほうが良いですね、そのお友達が入院している病院はどこですか」
神崎「○○病院だ」
みゆき「それでは私はこれで失礼します」
神崎「私も同行していいか?」
みゆき「是非そうして下さい」
二人は慌てるように部屋を飛び出した。

353 :こなたの旅 25 2/2 [saga sage]:2014/06/01(日) 14:23:24.24 ID:oLV7tB6i0
 かがみは話の途中だったのを中断させられたせいかかがみは消化不良気味だ。これはまずいと思ったけど遅かった。かがみは私の方を向いた。
あやの「ひいちゃん……私にも教えてくれなかったんだ……」
でも口を開いたのはあやの方が先立った。
つかさ「ごめんなさい……あやちゃんにも言わないようにって言われたから……」
あやの「今はどうしているの?」
つかさ「自宅療養しているよ、多分もう大丈夫だから……」
あやの「神崎あやめさんのお友達も元気になるといいね……」
つかさ「う、うん……」
そうだった。つかさがレストランの手伝いを引き受けた時点で気付くべきだった。いや、気付かなかった。完璧じゃないか。
つかさがそんな隠し事をしていた。私やあやのに気付かれることなくつかさは隠した。
神崎さんがこのレストランにはじめて来た時、ちゃんとつかさに話していればつかさはお稲荷さんの事も真奈美の事も秘密に出来た……
そうすれば私達は無駄に構える必要も無く神崎さんだって警戒しなかったかもしれない。
そうだったらここまでこじれる事無くもっとスムーズに神崎さんは本当の事を話してくれたかもしれない……今更、ここになって気づくなんて……
かがみ「こなた、話はまだ終わっていない」
そうだ。まだ終わっていない……
私はかがみの方を向いた。
かがみ「神崎あやめの死については何も問わない……しかし、何故だ、何故家に火をつけた、死体を傷つけるのは立派な犯罪、もちろん放火も、あんたそれを知らないわけじゃないだろ?」
こなた「うんん、火をつけたのは私じゃない……」
かがみ「こなたじゃない?」
こなた「殺し屋、貿易会社の雇った殺し屋、そう神崎さんは言っていた」
かがみ「殺し屋……あんた、いったい何をしようとしている……」
こなた「前にみゆきさんが言っていたよね、最初に潜入した情報を公表すれば貿易会社は追い込めるって……でも今まで出来なかったのはメモリー板と真奈美さんが
    向こうの手にあるから、そうだったよね、だけどメモリー板は私が持っている、それから真奈美さんは居ないのが分かった、もうこれで隠している必要はないよね?」
かがみ「今回の事件とは関係ないでしょ」
こなた「あやめさんが持っていたパソコンから自動的にその情報を送るように細工をした、犯人がパソコンの電源を切ったら
起動するようにね、送り先はあやめさんの勤めている出版社、親友の井上さん、大手新聞社……」
かがみ「……まさか、ダイイングメッセージにするつもりなのか……あんた、神崎あやめさんの死を利用したのか……」
こなた「利用できるものは全て利用する……」
つかさ「こなちゃん……」
つかさがすごく悲しそうな目で私を見ている。何が言いたいのかは何となく分かった。
かがみ「少なくともこの数ヶ月行動を共にして何も感じないのか、これはゲームじゃないのよ」
かがみもつかさと同じ意見か。あの時、私と神崎さんだけじゃなかったらこの作戦は出来なかったかもしれない。でも、こうしなかったら……
こなた「あやめさんはもう5年前から既に居ない、真奈美さんと同じだよ、私は彼女と出会ったこともないし、話したことも無い、今まで会っていたのは神崎さんが化けたあやめさん、
    神崎あやめじゃない……」
かがみ「……そんな簡単に割り切れるものなのかしら……私には理解出来ない……でも、もうしてしまったのはどうしようもない、情報を受け取った側がどう動くか、
    今はそれを見守るしかないようね……」
こなた「そよれり、正子さん、神崎正子さんが何処にいるか分かる?」
かがみ「遺体の確認とかあるからきっと地元に戻っていると思うけど……何故そんな事を聞くのよ?」
私は立ち上がった。
こなた「ちょっと行ってくる」
かがみ「ちょっとって何処に行くのよ……」
こなた「まだ作戦の途中だから……」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「途中って……待ちなさ!!」
私は立ち止まった。
かがみ「話も途中よ、全て話しなさい」
私は首を横に振った。
かがみ「何故、ここに居るメンバーは知る必要がある」
私は再び首を横に振った。かがみは溜め息をついた。
かがみ「話さなくてもいずれ分かるわよ、それにこのままじゃ私達はあんたに何も協力できない、それでもいいのか?」
私は頷いた。かがみは再び溜め息を付く。
かがみ「言いたくなければ私の質問に答えて、あんた外で私達と話している時、神崎さんが去ろうとして引き止めたでしょ、
    みゆきが新薬を完成させていたのを知っていて引き止めたのか?」
以前、みゆきさんとそんな話をしていたっけ。でも完成までは知らなかった。
こなた「引き止めたのは神崎さんにあやめさんの話をさせるために止めただけ、私じゃ上手く話せないから……」
かがみ「そう、あんた、変わったわね……良い意味でね、行きなさい、もう止めない」
つかさ「お姉ちゃん……」
あやの「かがみ……」
すすむ「ばかな……いいのか」
いのり「かがみ、いいの、行かせて……」
かがみ「どちらにせよ今私達にできることは無い、それに神崎さんの作戦はもう終わった、さぁ、こなた行きなさい」
こなた「かがみ、ありがとう」
私は柊家を出た。

 私は正子さんに会うと次の住居が決まるまで私の家で過ごすように提案した。
正子さんは聞き入れてくれた。一方お父さんの方も神崎さんの母親という事で直ぐに承知してくれた。

つづく。

354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/01(日) 14:26:01.95 ID:oLV7tB6i0
以上です。

そろそろ終盤です。

もう少しお付き合いしていただけると助かります。

この後すぐにまとめます。
355 :ちょっと宣伝 [saga]:2014/06/02(月) 21:56:47.66 ID:NDyxHJGe0
2011年の23回で止まっているコンクール。

もし再会するとしたら参加できる作者さんはどのくらいいるかな。

もちろん再会するなら私も参加します。

3人くらい居ればやろうかなって思っている。

コンクールだと大袈裟って言うならお題を募集して

自由に書くのもいいかな。


とにかく作者さん大募集です。

1レスものでもギャグでもクロスオーバーでも何でも(エロ以外)

いいのでお気軽に。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/09(月) 01:26:07.92 ID:Jn0w/yWMO
懐かしいな
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/06/22(日) 14:36:31.22 ID:2B7QCnBZ0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

4スレほど使用します。
358 :こなたの旅 26 1/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:38:22.96 ID:2B7QCnBZ0
26

 私は都心のとあるホテルの入り口に居る。丁度エレベータに乗ろうとした時だった。
「すみません、お客様」
後ろから私に声をかける人がいた。振り返ると女性だ、制服からするとホテルスタッフらしい。
スタッフ「恐れ入りますが御用はなんでしょうか」
こなた「このホテルに泊まっている人に会いに行くところだけど」
スタッフは大きく頭を下げた。
スタッフ「すみませんがそのお客様とお約束はしていますか」
私は頷いた。するとスッタッフはフロントの受付の方を向いた。
スタッフ「受付でサインをお願いします」
私は受付でサインをした。さすがにこのクラスのホテルになると受付の対応が違う。あのスタッフはコンシュルジュってところかな。
うちのレストランもあのくらいの対応をすれば一流って言われるのかな。
受付でサインを済ますと再びエレベータに向かった。

『コンコンコン』
ドアをノックした。ドアが開いた。
「¿Quién es usted?」
こなた「ほえ??」
見たことの無い男性が出てきた。髭を蓄えている。
「Váyase.」
何を言っているのか分からない。私はポケットからメモリー板を出して男性に見せた。男性はメモリー板を見ると溜め息をついた。
神崎「やはり無駄だったか」
こなた「もうこのホテルに入ってから居場所は分かっているからね、こんなに便利なのに何故今まで見つからなかったの?」
やっぱり神崎さんだった。このメモリー板を持ってからお稲荷さんの居場所は直ぐに分かるようになった。例え別の人に化けていても見破るのは簡単だ。
私は部屋の中に入った。
神崎「前にも言っただろう、起動しなければ只の箱に過ぎない」
こなた「自動で起動できるようにしなかったの、そんなのお稲荷さんなら簡単にできるじゃん?」
神崎「機械に判断と選択はさせない」
こなた「へ、分かんない、もっと簡単に教えて」
神崎「私達の母星で起きた事件だ、機械が我々に反抗してしまってね」
こなた「あ、それって、よくゲームとかで出てくるネタだね」
神崎「いや、実際に起きた、私達の星ではね、それで長い戦いが起きた……」
こなた「神崎さん達が今こうして居るって事は機械に勝ったんだね?」
神崎「勝ったっと言うより我々が機械の制御を自分自身に取り込んだ、だから機械は我々の意思なしでは動かないようにした」
こなた「取り込んだって?」
神崎「機械の制御権を全て我々の中、遺伝子に組み込んだ、これで機械は我々の道具に戻った、機械は我々の脳からの命令がないと動かない、君達の細胞にいるミトコンドリアと
   同じ、ミトコンドリアの遺伝子を細胞の核に移してミトコンドリアを制御しているのとね、それに至るまで多大の犠牲を余儀なくされたがな、その副産物として
   変身と長寿、そして君達の言う超能力を得た」
こなた「ふ〜ん」
言っている意味の半分も理解できなかった。みゆきさんなら理解できただろうけど……無表情の私にちょっと不機嫌な様子の神崎さんだった。
神崎「他人事だな、君たちもいずれそれに直面するぞ、自分の作った道具に滅ぼされるなんて考えただけでも恐ろしいとはおもわんのか?」
こなた「でも私が生きている内は大丈夫でだよね」
神崎「それは、どうかな……」
神崎さんは改まって私を見た。わたしの顔を見て話を続けるのを諦めたのか話題を変えた。
神崎「ところで何の用だ?」
こなた「作戦の続きがあるでしょ、忘れちゃったの?」
神崎さんは部屋にある置時計を見た。
神崎「もうそんな時になるのか……本当にしなければならないのか?」
こなた「もちろん、その為にきたんだよ、最後まで付き合ってもらうから」
神崎「そうだったな……ちょっと待ってくれ準備する」
神崎さんはいそいそと身支度を始めた。
こなた「……その姿で行くつもりなの?」
神崎「そのつもりだが、何か問題があるか?」
こなた「ん〜、最初に私に見せた姿がいいかも……」
ひげもじゃで背が高すぎ。すごく威圧感がある。
神崎「そうか……30分ほど余計にかかるがいいか」
神崎さんは洗面所に向かった。
こなた「なんで洗面所に、変身ならここですればいいじゃん?」
神崎「君は着替えをする時見せびらかすのか?」
こなた「そ、そんな事はしないけど……」
神崎「それと同じだ、失礼する」
そのまま洗面所に入った。お稲荷さんの変身って着替えみたいなものなのか……始めて知った。
そういえばめぐみさんの時は私の前でよく変身していたけど、同性だったから気にならなかっただけなのかな……まだまだお稲荷さんについては良く分からないことだらけだ。
神崎「君の作戦はいつ思いついた?」
洗面所の更衣室のドア越しに声が聞こえた。
こなた「神崎さんが言った時、殺し屋が来るって」
神崎「そうか……」
それ以降神崎さんは話してこない。きっと狐に戻ったに違いない。
……
……
359 :こなたの旅 26 2/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:40:06.39 ID:2B7QCnBZ0
 そう、あの時……神崎さんは私に金縛りの術をかけようとしていた。
神崎「泉、私を見ろ……」
この重みのある言葉で直ぐに分かった。まともに彼をみれば術を防ぐ術はない。でも幸い私には彼が残したボイスレコーダを持っている。
はたして私が使って神崎さんの術を封じる事ができるだろうか。どのくらいの範囲で効果があるのか分からない。でも使うしかない。まずは神崎さんを止めないと私の
作戦は始まらない。
『カチ』
私は手をズボンの後ろのポケットにまわしてそっとスイッチを入れた。そしてゆっくり神崎さんの方を向いた。
神崎「どうだ、動けないか……」
うごけ……ん?……!
しめた、動けそうだ。それならここは術にかかった振りをする。私は何も言わなかった。神崎さんの隙を狙う。
神崎「お前を巻き込む分けないはいかない、このまま最終電車で帰ってもらう、特急に乗れなくても終点の駅ならホテルは沢山ある……」
私に催眠術をかけるつもりなのか私の顔に腕をゆっくり伸ばしてきた。私の額にその手が触れるか触れないかの距離まで来た瞬間、
私は一歩神崎さんの真横に移動して身体を一回転させて神崎さんの背後に回り私の腕を神崎さんの首に回してもう片方の腕で完全にロックした。俗に言う裸締めだ。
神崎「うぉ!?」
こなた「動かないで、腕にちょこっと力を加えれば頚動脈から頭に血が行かなくなるよ、そうなれば数秒で落ちるよ」
神崎「な、何故効かない……なぜ……?」
こなた「神社でボイスレコーダ拾っちゃったからね」
神崎「まさか……もっと遠くで捨てるべきだったな……なんて素早い身のこなし、見えなかった、しかも急所を的確に狙うとは……東洋の武道と言うやつか……」
こなた「武術はちょこっと齧っただけ、油断したから素早く見えただけ、だけど技の効果は本物だよ」
神崎さんは全身の力を抜いて渡しに委ねた。
神崎「そうだな、本物の様だ、抵抗はしない……それでこの状態で私に何をする気だ?」
こなた「それより私を帰した後どうするつもりだったの?」
神崎「あの殺し屋には個人的に因縁がある、ヨーロッパに居た頃友人だった人間を何人か殺されている」
こなた「敵を討つつもりなの?」
神崎「そうだ……」
思ったよりも深刻だった……
こなた「それで、その後はどうするの」
神崎「殺し屋があやめを殺した様に見せかける、殺し屋の死体が一緒ならあやめと刺し違えたと思うだろう、そして、殺し屋の雇い主が分かれば貿易会社の全貌が明らかに……」
半分は私が立てた作戦と同じ、だけど半分は全く違う。
こなた「残念でした、殺し屋の雇い主は分からないよ、神崎さんも長年貿易会社を調べている割には分かってないね?」
神崎「なんだと、何故だ!?」
神崎さんが少し暴れそうだったので腕に少し力を加えた。すると直ぐに大人しくなった。
こなた「武器の密売を隠せるくらいの力をもってるんだよ、殺し屋を雇ったなんて分かりっこない」
お稲荷さんらしくない。親友を殺されて頭に血が上って冷静な判断ができないのかもしれない。
神崎「君なら何かあるとでも言うのか」
こなた「あやめさんの死体を利用するのは全く同じ、だけどその方法が少し違う……聞いてみる?」
神崎「もしその話を聞いて私が断ったらどうする」
こなた「このまま絞め落とすよ、と言いたい所だけど、どうしても神崎さん……お稲荷さんの協力が必要なんだ……」
私は絞めていた腕を解いた。神崎さんは私から一歩離れて手で首を擦りながら振り返った。
神崎「何故放した……いくら素人でも同じ技にはかからないぞ」
こなた「そうかもしれないけど、そっちもお稲荷さんの術は使えないよ」
神崎「……そうだった、話してみろ、その作戦とやらを」
こなた「神崎さんは殺し屋に催眠術をかけてあやめさんを殺したと思い込ませて」
神崎「それで……その後はどうする」
こなた「それだけでいいよ……うんん、もしかしたらメモリー板も取り戻しにくるかもしれないから、それも奪還させたと思い込ませる必要もあるかもね」
神崎「ばかな、そうしたら彼は証拠隠滅を図るぞ……話にならん、私は私のやり方で……」
こなた「殺し屋を殺してどうするの、殺したって神崎さんの友達は帰ってこない、あやめさんだって!!」
この時、殺し屋が家に火をつけるなんて思ってもいなかった。あの時は私の作戦を説明するのでいっぱいだった。
神崎「……殺し屋を許せと言うのか?」
こなた「うんん、そうは言ってない、ただ、誰一人傷つけたくないだけ」
神崎「傷つけない……どうやって」
こなた「あやめさんのパソコンを使う、以前盗んだデータを公に知らせたらどうなるかな、それもあやめさんが亡くなった時間に合わせて送ったら?」
神崎さんは暫く考えた。
神崎「パソコンの操作はどうするつもりだ」
こなた「証拠を消す為に必ず殺し屋はパソコンに何かをするはず、それを合図に発信するようにする」
神崎「……出来るのか?」
こなた「元気だま作戦よりは簡単だと思うけど?」
神崎さんはまた考え込んだ。
こなた「真奈美さんが何故亡くなったか教えたから知っているでしょ?」
神崎「ああ、知っている、柊さんと握手をした時、彼女の意識から鮮明なイメージが飛び込んできた……装置のスイッチを入れていなかった……慌てて入れたがもう遅かった」
やっぱり私の思った通りだった。
神崎「あのイメージで真奈美が捕らわれているという推測は絶望的になった……それでも微かな希望に賭けたのだがな……」
こなた「つかさが旅をしたから亡くなったんて言わないでよ」
神崎「分かっている……」
こなた「それじゃ何をすればいいのか分かるよね?」
神崎さんはあやめさんの方をじっと見つめた。
神崎「……いいだろう、君の作戦にかけよう……」
こなた「そうこなくっちゃ!!」
神崎さんは振り返って私を見た。
神崎「そのセリフはあやめが生前よく使っていた……」
こなた「感傷に浸るのは作戦が終わってから」
神崎「そうだな……」

360 :こなたの旅 26 3/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:41:23.96 ID:2B7QCnBZ0
 って言ったみたものの実際殺し屋をどうやって催眠術にもっていく方法までは思いつかなかった。
こなた「えっと……その殺し屋さんってどんな人?」
神崎「そんなのを聞いてどうする?」
こなた「誘き出すのに参考になるかなって……」
神崎「なんだ、もうとっくに考えてあるのかと思った」
呆れ顔の神崎さんだった。
神崎「彼の対処は私がする、君はあやめが生きている様に振舞ってくれればいい」
こなた「この部屋でパソコン打ってればいいかな?」
神崎さんは頷いた。
神崎「仕掛けは出来るだけ急いでくれ」
私は部屋のカーテンを閉めて椅子に腰掛けた。カーテン越しの影が外からは長髪の女性が居る様に見える。
神崎「それでいい」
神崎さんは部屋を出た。

 これから殺し屋が来るまでの時間はどのくらいか覚えていない。夢中でパソコンを操作していた。
つかさの家に着くまでの時間から逆算すると多分1、2時間位の時間だった。

 突然部屋の明りが消えた。そしてパソコン本体の隣においてあったUPSのランプが点灯した。
1から2分くらい経っただろうか、部屋の外から神崎さんの呼ぶ声が聞こえた。メモリー板の明りを頼りに部屋を出て声のする方に向かった。
玄関の入り口に神崎さんが立っていた。その直ぐ隣に見知らぬ人影が見える。明りを向けると男性がマネキン人形の様に静止して立っていた。もう神崎さんが金縛りの術を
かけた後のようだ。
こなた「この男性が?」
神崎「そう、殺し屋だ」
身長はさほど高くない。顔つきはどう見ても東洋人系の顔……日本人にしか見えない。
こなた「ヨーロッパの殺し屋じゃないの?」
神崎「いや、彼は変装の名人だ、どんな民族にも違和感なく溶け込める」
こなた「急に停電になったけど?」
神崎「もちろん彼の仕業だ、彼は潜入するとき電源と通信を遮断する……言い忘れていたがこの状況でメッセージは送れるのか?」
こなた「幸いUPSがああったから大丈夫、メッセージもあやめさんの携帯電話経由で送るから問題ないよ」
神崎「そうか……」
ほっと一呼吸整えると神崎さんは殺し屋の額に手を添えた。
神崎「彼はもうあやめを殺した……メモリー板も回収した事にする」
こなた「それじゃこれを」
私は神崎さんに携帯電話を渡した。
神崎「これは?」
こなた「あやめさんの机の中に入っていた携帯、多分機種変更で使わなくなったやつ、これをメモリー板だと思い込ませて」
神崎「……君はあざといな……」
神崎さんは受け取った携帯電話を殺し屋のズボンのポケットに入れた。
こなた「彼をあやめさんの部屋に移動させないと……」
『パチン!!』
神崎さんが指を鳴らすと殺し屋の足が動いた。そして誘導するようにあやめさんの部屋に移動した。

 部屋に移動すると私はあやめさんの周りに張り付いている繭の様な物を引き剥がした。引き剥がすと繭の様な物は泡の様に解けて消えた。
あやめさんを抱き起こすと椅子に座らせた。
こなた「準備はいいよ」
神崎さんは殺し屋から手を放そうとしなかった。
こなた「どうしたの、もしかして催眠術がかけらないとか??」
神崎「……彼は此処を離れる際、火を放すつもりだ……台所から出火させて事故にみせつもりらしい……」
こなた「大丈夫、もうメッセージは送られているはずだから……」
神崎「いや、そうじゃない、火事になればあやめは……あやめの身体は焼け爛れるぞ……場合によっては身元が判らないほどに、それでも良いのか?」
こなた「……もう亡くなっているからあやめさんは何も感じないよ……」
神崎「……君は冷酷だな……」
神崎さんは片手を上げた。
神崎「この指を鳴らして3分後に金縛りの術が解ける、それと同時に彼はあやめを殺し、メモリー板を奪還したと思い込むはずだ……」
私は頷いた。
神崎さんは両目を閉じて全身を震わせながら指を鳴らした。
『パチン!!』
神崎さんは椅子に座っているあやめさんをじっと見ていた。
こなた「急いで出よう!!」

私は彼の手を引いて家を出た。そして次の駅まで歩いて行き始発電車でつかさの家に向かった。
これがあの時、あやめさんの家で起きた一部始終。
……
……
361 :こなたの旅 26 4/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:43:12.74 ID:2B7QCnBZ0
神崎「これでいいのか」
洗面所から出てきたのは初めて会った時の神崎さんの姿だった。いろいろ思い出していたらもう30分も経ってしまったようだ。
こなた「うん、それでいい」
神崎「本当に行くのか?」
こなた「もちろん、行かないと私の作戦は終了しないからね」
神崎「何故私が行く必要がある」
こなた「神崎さんから直接話して欲しいから」
神崎「泉さん、君の方が適任だと思うが……それに私の話を聞いて信じてくれるかどうかも分からない」
こなた「信じる信じないは向こうが決める事、真実を話すのが大事なの……」
神崎さんは黙って何も言い返してこなかった。
こなた「行こう」
私達は部屋を出た。

 ホテルを出た私達は私の車に乗って出発した。
神崎「何処に行く……」
こなた「神社だよ」
神崎「神社?」
こなた「そう、神社、つかさと真奈美さんが初めて会った場所、そしてあやめさんと真奈美も……そこが一番話すのに相応しいと思ったから」
神崎「あの神社か」
こなた「待ち合わせ時間に間に合うように少し急ぐよ」
私はアクセルを踏んだ。
362 :こなたの旅 26 5/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:44:12.76 ID:2B7QCnBZ0
 神社の頂上が見えてきた。待ち合わせをしていた人はもう既に居た。
神崎「どうしても話さなければならんのか?」
こなた「そうだよ、5年間も騙し続けたのだから、ちゃんと責任とってよ」
今日はあやめさんの四十九日。納骨を終えた正子さんと待ち合わせをした。正子さんに会わせたい人がいると約束をした。
話すには打ってつけの日。だから今日にした。
階段を登ってくる私達に気付いた。私達に微笑みかける正子さん。
こなた「どうも遅くなっちゃって……」
正子「いいえ、私もついさっき来たばかりなのよ」
正子さんは神崎さんに気付いた。私の陰に隠れているのをのど着込むように見た。
正子「彼が?」
こなた「はい、会わせたい人です……ほら、神崎さん……」
私は神崎さんの後ろに廻り彼の背中を押して正子さんの前に立たせた。そして私は2、3歩下がった。
神崎さんは正子さんに会釈をした。
正子「貴方は……確か……あやめと一緒に家に来たわよね?」
神崎「……はい、よくご存知で……」
正子「良く覚えている、なんせあやめが初めて男性を連れてきたのだから……」
神崎さんのあの姿はあやめさんの生前からの姿だったのか……変身し直させて良かったかもしれない。
神崎「実は正子さんに言わなければならない事実がありまして……」
正子「事実?」
正子さんは不思議そうな顔で私の方を向いた。私はただ頷くしかなかった。正子さんは再び神崎さんの方を向いた。
神崎「……あやめ……いや、あやめさんは……」
正子「あやめがどうかしましたか?」
神崎さんを見て首をかしげさらに不思議そうな顔をする正子さんだった。
神崎「貴女の娘さんは5年前に既に亡くなっていた、それまでの間、私が成り済ましていました……」
神崎さんはその場で深々と頭を下げた。経緯の説明がない。お稲荷さんの話もしない。あまりに短い言葉だった。これじゃ何がなんだか分らない。理解出来ないじゃないか。
最初からちゃんと説明しないと。私が話そうとした時だった。
正子「確か……あの時は土砂降りの雨だったかしら……ずぶ濡れになって小脇に壊れたヘルメットを抱えて帰って来たわね……」
私は立ち止まった。。
正子「どうしたの?……そう聞くと「何でもない」……そう言って部屋に入って言ったわね……覚えています」
神崎「土砂降り……壊れたヘルメット……ば、ばかな……入れ替わった最初の時……」
正子「悲しげなあやめの表情でしたね、なんとなく違和感があった……」
神崎「そんなはずはない、容姿はもちろんあやめの記憶は全てトレースした、幼少から亡くなる寸前までの記憶、彼女の性格も、癖も……」
正子さんは話を続けた。多分神崎さんの話を理解できていない。
正子「……そして次の日、部屋から出てきたあやめは元のあやめに戻っていた……」
どんなに正確に変身しても他人は他人。母親は騙せないか……
神崎「何故聞かなかった、何故黙っていた?」
正子さんは目を閉じながら話した。
正子「それを聞いたら……あやめがどこか遠くへ行ってしまうような……そんな気がしたから……でも、部屋から出てきたあやめはあやめだった、私の娘そのものでした……
   あれから5年……もうそんなに経つのね……」
正子さんの目から涙が一筋流れた。

 涙を流している正子さん見て急に私も悲しくなった。そして、 彼女と出逢ってから今までの出来事が走馬灯のように浮かんできた。
取材や作戦じゃくてもっといろいろ話したかった。ゲームやアニメの話、皆と軽食を食べながらバカな話でもして……
その時気付いた。私の会っていたあやめさんはあやめさんだった。少なくとも金縛りの術を使う直前までは神崎あやめだった。
私は大事な親友を一人失った……
私はあやめさんを見殺しにした。私はあざとく……冷酷だった。
こなた「正子さん、わ、私……」
この作戦を考えたのは私。だから私は正子さんに話そうとした。でも正子さんは首を振って私を止めた。
正子「もう済んだ事だから……それより二人共、あやめの墓前で手を合わせて欲しい……」
正子さんは振り返ると神社の奥の方を向いて手を合わせた。
神崎「墓前……まさか、あやめは……」
正子「そう、この地に散骨しました……幼少から此処が好きでした、そして今でも……そう思いまして」
神崎さんは正子さんのすぐ後ろに立つと手を合わせた。
私はそのままの位置で手を合わせた。
……あれ。目頭から熱い物が頬を伝った。
涙だった。
本人には一度も会っていないのに。泣く事なんて無いと思っていたのに……
祈りが終わっても私は暫くその場を動く事ができなかった。
涙で目がくもって見えなかったから。

 こうして私の作戦は終わった。
成功したのか。失敗したのか……今の私には分らなかった。


つづく
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/22(日) 14:45:35.17 ID:2B7QCnBZ0
以上です。
容量がおおくて5レスになってしまいました。

これからすぐにまとめるので報告は避難所のみとします。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/22(日) 14:55:16.23 ID:2B7QCnBZ0
>>355
何も反応がなかったので保留にします。

書き手は随時募集していますので気軽にどうぞ。

365 :作者の心理 [saga sage]:2014/06/22(日) 21:46:23.32 ID:2B7QCnBZ0
こなた「よくまぁながながと続きますな」
かがみ「唐突に何を言うか?」
こなた「いや、このスレでちょこちょこ連載している人がいるんだけどね」
かがみ「ほぅ、SSサイトなんか見ているのか、あんた文章は苦手だとか言ってなかったか?」
こなた「まぁまぁ、それは置いておいて、この作品は感想やコメントがほとんど無いのによくまぁ、こんなにズラズラ書けるなぁって……
    普通ならモチベーションが下がったり飽きたりして「やーめた!!」ってなんない?」
かがみ「まぁ、書き手にとって読み手の反応は気になるわよね」
こなた「でしょ?」
かがみ「でもね、読み手の反応は必ずしも良いものとは限らない、批判や中傷もあるわよ、もしそんなコメントがきたらそれこそモチベーションが下がるわ」
こなた「そっか……」
かがみ「コメントが無いのは寂しいけど、逆に考えて注文や批判もないから自由に作れる、期間も気にしなくて済む、ってところかしらね……」
こなた「ふ〜ん、もしかしてこのSSかがみが書いているとか?」
かがみ「な、なんでそうなるのよ!?」
こなた「やけに作者の心理を詳しく語ってるから」
かがみ「そんなの少し考えれば分るわよ」
こなた「……う〜んそうかな」
かがみ「そうなの、バカ言ってないで、早くしないとつかさと日下部に約束した時間に間に合わないわよ」
こなた「あっ! そうだった、急ごう!!」


かがみ(危ない危ない、妙に勘が鋭い所があるから油断できない)





























    
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