らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜

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324 :こなたの旅 22 6/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:56:02.77 ID:Gf4pjY+v0
 私達は再び神崎さんの家の玄関前に居た。
すすむさんは私を見た。
すすむ「来たか」
こなた「うん、もう大丈夫だから、でも、別れ際の言葉が無かったらあのままずっと非常口に居たかも」
すすむ「そうか、それは良かった……」
こなた「それで、4万年前の事故の原因は分かったの?」
すすむさんは黙ってポケットからメモリー板を取り出した。
みゆき「……それがメモリー板、お稲荷さんの知識が詰まっている物……」
みゆきさんは身を乗り出して食い入る様にメモリー板を見ていた。
すすむ「事故の原因はメモリー板を調べるまでも無い、もう分かっていた……」
こなた「へ、それじゃ何で作戦に参加したの?」
すすむ「……もう終わった事だ……」
すすむさんはメモリー板をまたポケット仕舞った。
すすむ「神崎さんを待つとしよう」
こなた「あれ、教えてくれないの」
すすむさんは神崎さんが来るであろう方向を向いてしまった。
こなた「神崎さんは真奈美って分かったし、内緒にする必要なんかないじゃん?」
すすむ「なに、彼女が真奈美だと言うのか?」
すすむさんは驚いた顔で私の方を向いた。
こなた「他に候補者いるかな、すすむさんの方が詳しそうだけど?」
すすむ「それは……すまん、私は真奈美とは面識が無かった、神崎さんが真奈美かどうかまでは判断できない」
やっぱりそうだ。だからすすむさんを作戦メンバーに入れた。
こなた「本当の神崎さんは貿易会社に捕まっていて、真奈美さんが神崎さんに化けて貿易会社に潜入した、もちろん神座産を助ける為に、これが私達の考えなんだけど
    すすむさんはどう思う?」
すすむ「真奈美は亡くなったとつかさから聞いた、私もそれ以上詮索はしなかった、死人が蘇るなんて在りえない」
こなた「そうそう、その亡くなったって言ったのがつかさなのが問題、つかさは見ての通り天然な所があるでしょ、だからどこかで勘違いをしている……なんてね」
すすむ「確かに亡くなったと言ったのはつかさだけだが……」
すすむさんはみゆきさんとひよりの方を向いた。
ひより「ま、まぁ、後輩の私が言うのもなんですけど……つかさ先輩はそう言う所があるっス」
みゆき「誰にでも見間違いはあると思います……」
すすむさんは腕を組んで考え込んだ。
すすむ「確かに今の時点で真奈美以外考えられないか……」

325 :こなたの旅 22 7/7  [saga sage]:2014/03/31(月) 21:57:05.97 ID:Gf4pjY+v0
 すすむさんは再びポケットからメモリー板を取り出した。
すすむ「……このメモリー板は通信機能が備わっていてね……母星と通信が出来る」
こなた「通信って、故郷に連絡を取りたい人でもいるの?」
すすむ「いや、これが見つかっていれば、私達は帰る事が出来た……当時私はこれを探した、そうだ、3メートル以内、いや、10メートル以内でも……
    あれば救助要請ができた……私はそれが出来なかったのが悔しかった……」
みゆき「そのメモリー板が見つかった遺跡はかなり深い地層から発見されたそうです、おそらく宇宙船が墜落した時、地中深く潜ってしまったのでしょう」
地中深くにあったらくら探しても見つからない。
すすむ「この地球は私達にとっては過酷すぎた……現にほとんど全ての仲間が帰ってしまった」
こなた「そうかな……それは違うと思うよ」
すすむ「何を知った風に言う、人間に何が分かる」
こなた「帰るか、残るか決めるとき、それぞれのお稲荷さんは話し合っていたってつかさが言っていたよ、ただ帰りたいだけだったら話し合いなんかしないと思う」
ひより「そうですよ、そのメモリー板をすぐに見つけて帰ってしまったら1000年前の巫女さんにも逢えなかった、もちろんその生まれ変わりのいのりさんにも」
すすむ「生まれ変わりか、確かに双子の様に似ていた……しかし彼女は病弱で子は生んでいない、彼女の子孫は居ない」
ああ、そういえば以前ひよりとゆたかが遊びに来たときそんな話をしていたっけ。
こなた「でも1000年前でしょ、お稲荷さんの巫女だから言ってみれば神様の召使いって事だよね、そんな巫女さんならその家族だって当時は特別待遇だったんじゃないの、
    きっと厳しい時代も生き抜けた、そして現代の柊家がその巫女さんの子孫、お稲荷さんが帰ってしまったらつかさやかがみも居なかったかも、私はそんな世界は嫌だよ」
みゆき「小さな出来事でも時間が重なるとその変化は多大な物になると言います」
すすむさんはメモリー板じっと眺めていた。

 どのくらい経っただろうか遠くから何か聞こえた。聞き覚えのある音……どんどん近づいてくる。間違いない。あれは……
こなた「神崎さんだ!!」
皆は私の方を向いた。そして辺りを見回した。
すすむ「……誰もこないではないか」
みゆき「見当たりませんね……」
ひより「どこですか……見間違えでは?」
うんん、間違いないあの音は。
こなた「神崎さんの乗っているバイクの音……」
私達はは耳を澄ました。バイクのエンジン音がどんどん近づいてきた。そして直ぐ近くまで来たと思うとどんどん遠ざかってしまった。
ひより「行っちゃいましたね……聞き間違えじゃないですか」
こなた「間違いないよ、あの音は絶対に神崎さんのバイクの音だよ、何度も聞いているし」
神崎さんは逃げ切った。心の底から嬉しさが湧き出した。
ひより「それじゃ何で遠ざかったのかな……何処に行ったのかな?」
私にはそれが何処かすぐに分かった。
こなた「……神社だ、あの神社に行ったんだ!!」
すすむ「神崎さんはオートバイに乗っていたのか……音だけ聞かせて去る……彼女は泉さんを呼んでいるに違いない」
こなた「私を?」
すすむ「うむ、君以外に彼女の乗っているバイクの音など区別できない、だとしたら答えは明白だ」
神崎さんは私にあの神社に来いと言っているのか。何故……
すすむさんは持っていたメモリー板をひより、みゆきさん、私の順に向けた。
ひより「な、何か?」
すすむ「これで君達の脳波をメモリーに登録した、このメモリー板は君達のものだ、そして、泉さん、君が代表して受け取りたまえ」
すすむさんは私にメモリー板を差し出した。
こなた「へ、私……もらっても使い方しらないし、それに何で私?」
すすむ「このメモリー板は脳と直接コンタクトして操作する、泉さんが考えればメモリー板がそれに答えよう」
私はメモリー板を受け取った。
すすむ「USBメモリーの使い方をずっと見ていた、泉さんなら正しく使うだろうと判断した……それに、もう私にこの装置は不要だ」
すすむさんは駅の方に体を向けた。
すすむ「会ってくるがいい、そして全てを聞いてきなさい」
ひよりとみゆきさんは車の方に体を向けた。
こなた「へ、会うのは私だけ?」
みゆき「それが神崎さんの希望らしいので」
ひより「作戦も大詰めですね、私達はこのままキャリーバックをつかさ先輩に返しにいってきます、いろいろと話す事もありますので」
こなた「え、あ、そ、そう?」
私一人で……急に寂しくなった。
すすむさんは駅に向かって歩き出した。ひよりとみゆきさんは車に乗った。
ひより「神社の入り口まで送りますよ」
こなた「あ、ありがとう……」
私は車に乗り込んだ。


つづく
326 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [saga sage]:2014/03/31(月) 22:01:11.49 ID:Gf4pjY+v0
以上です。

今回は書く時間があったのでキーボードスムーズに動きました。

まとめサイトのいくつか自分のssにコメント入れてくれた人がいました。この場を借りてお礼をします ありがとう。


この後すぐにまとめますので報告は避難所のみとします。
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/13(日) 12:00:39.39 ID:cAAiOMND0
まとめの管理者です。
まとめサイトのメニュー画面「今日の人気ページ」が更新されない不具合がありました。
(自分以外のPCでも同じ症状があったので)
修正しましたので確認してみてください。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/04/18(金) 17:21:49.89 ID:0uE9zz/P0
ふと思い出して読みたい作品があるんだけど
かがみの幼少期の家出の話と
こなたの生まれる前の泉家の前に住んでる人の家の犬の話ってまとめwikiにある?

その二つの話と
ID:vtqLC2YnO=ID:DaIr8zezO
ID:w6yrVqDEO
ID:+Z93F3lO
ID:yRZiGlX8O「追憶のかなたへ。」
が確か同一作者だったから、まとめて読みたくなったのよ

この人の作品は作者まとめにいれてもいいんでね?
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/04/18(金) 20:20:24.33 ID:kHd2duJC0
>>328
一応管理している者です。

犬のお話は「おすすめリスト」の
ID:vtqLC2YnO氏:タイトル不明 じゃないかな?

かがみの家出の話は思い当たる作品はありません。
この作者さんの特徴からタイトル無しの作品を探せばみつかるかも?

作者まとめの件ですが基本的には作者本人の希望でリストにするようにしています。
ですので、この作者さんが希望を出せばリストに載せます。

以上です。


余談ですが、おすすめリストに載るのは凄いですね。
私もそれが目的で投下しているようなものです。
かすりもしませんがw

もしおすすめリストに載せたい作品がありましたらどんどん書き込んで下さい。

っと宣伝もしましたw。

330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/05/02(金) 22:34:06.25 ID:8kzi1TIR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

7レスくらい使用します
331 :こなたの旅 23 1/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:36:27.66 ID:8kzi1TIR0
23

 神崎さんの家から神社までは歩いても行けるだから車で向かえば数分で着いてしまう。
何だろう。このへんな気持ち。神社に近づくにつれてだん気が重くなっていく。こんな気持ちになるのは初めてだ。何度もあの神社には行っているのに。
そんな話をする間もなく神社の入り口に到着した。私が車を降りるとみゆきさんとひよりも車を降りた。
ひより「泉先輩、このバイクが神崎さんのですか?」
神社入り口の鳥居のすぐ横にバイクが停めてあった。
こなた「そう、それ、それが神崎さんの」
ひより「泉先輩の言う通りでしたね、さすがッス」
みゆき「この階段を登れば……真奈美さんに……」
みゆきさんは山の頂上を見上げた。
こなた「……どっちでもいいけど、一緒に来てくれない……?」
ひより「私は別に構いませんけど、一人の方が良いのでは?」
みゆき「私は真奈美さんに会ってつかささんを助けてくれたお礼を言いたい……」
こなた「みゆきさんが一緒なら心強いよ」
みゆきさんは首を横に振った。
みゆき「やはり泉さんが行くべきです、合流の場所を外してわざわざ神社に向かったのは何か理由があるはず、泉さんだけに話したい理由が……」
こなた「何で私なの、分からないよ」
みゆき「そうですね、分かりません、会ってみないと」
私は神社の入り口を見た。
こなた「……つかさは何度この階段を登ったんだろう……つかさに出来て私に出来ないはずはない、なんて思っていた……
    すすむさんが来る前もみゆきさんがつかさの名前をだしたから空元気出してみたけど、無理だよ……今になってつかさがやって来た事の大きさがわかっちゃった……」
ひより「泉先輩、つかさ先輩と張り合っていたっスか?」
すこし驚いた顔をしたひよりだった。
こなた「張り合う……違う、私の一方的な挑戦みたいなもの……つかさのくせに……」
ひより「そのセリフ久しぶりに聞いたっス……そういえばつかさ先輩の変わりっぷりは計り知れません……変わったというより化けたと言うのか……」
みゆき「確かにつかささんにはいろいろ驚かされました、でも、泉さんも同じくらい変わっていますよ」
ひより「うんうん、今でも二人はいいコンビッスね……昔はかがみ先輩の方がいい感じでしたが……もっと別の方向で……」
こなた「良いよもう、そんなお世辞は……私、帰る……」
みゆき・ひより「え?」
私は駅の方に歩き出した。

332 :こなたの旅 23 2/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:37:38.10 ID:8kzi1TIR0
ひより「ちょ、ちょっと待って下さい……」
私の手を掴んで引き止めるひより。
こなた「放して、もう私の出番はないよ!!」
ひより「なにもこんな所で、しかもこんなタイミングでツンデレにならくても……」
ツンデレはかがみだけで沢山だ。
こなた「ツンデレじゃないもん……もう私は用済みってことだよ、あとはひよりとみゆきさんで続けて」
さすがのひよりも少し呆れ顔になっている。
ひより「ないもんって……泉先輩が呼ばれたって言っていましたよね……私達が行ってもあまり意味がないような気が……だからメモリー板を泉先輩に……」
メモリー板か……
私はメモリー板を取り出した。そしてみゆきさんに差し出した。
こなた「これはみゆきさんが持つべきだよ、以前からお稲荷さんの知識が欲しいって言ってたじゃん、それにみゆきさんなら有意義に使ってくれる、うん、そうだよ……」
みゆきさんは手をメモリー板の近くまで動かして受け取りかけたけど直ぐに止まり、首を激しく左右に振って引っ込めた。
みゆき「いいえ、これは泉さんが持つべきです」
こなた「使い方知らないし、知っていてもお稲荷さんの知識なんて……訳分からないし……」
みゆき「そうでしょうか、泉さんはUSBメモリーを使いこなしていますね、それも紛れもなくお稲荷さんの知識です」
確かにあれは木村めぐみさんからもらった物だけど……
みゆき「……元気だま作戦……誰にも気付かれず集金してしまうなんて……私がUSBメモリーを持っていても思いつかなかったでしょう……」
私は笑った。
こなた「ははは、あれは漫画のキャラクターが使う必殺技からヒントを得ただけで……下らないジョークのようなもの」
みゆき「ドラ○ンボールの○悟空が使う技ですね」
みゆきさんからその名前が出るとは思わなかった。少し間を空けてから頷いた。
みゆき「技の詳細は割愛しますが私も知識としては知っていました……一見何の関係もない物を結びつける……私には出来ません」
みゆきさんに褒められるなんて……でも……
こなた「そのUSBのせいで作戦は失敗した……」
みゆき「それは一瞬でぎりぎりの判断だったと思います、だれが責められましょう、それにまだ失敗とは決まっていません、それを確かめる為にも泉さんが行くべきです」
言っている内容は頭では理解できた。だけど体が前に行こうとしない……
さらにみゆきさんは続けた。
みゆき「オートバイの音を神崎さんのものだと言った時の泉さんの顔……とても嬉しそうでした、まるで古い親友と再会したかのようでした」
こなた「……そ、そうかな?」
みゆき「そうでしたね?」
みゆきさんはひよりの方を向いてにっこり微笑んだ。
ひより「え、あ、ああ、はい、そうです、そうでしたね、確かにとても嬉しそうでした……なんて言うか、普段表情をあまり出さない泉先輩にしては珍しいかと……」
確かに嬉しかったけど顔に出したつもりは無かった。
そうだよ。そもそも今まで会っていた神崎さんは真奈美が化けていた。本物じゃない。
それじゃ本物の神崎さんはどんな人なのだろう。母親である正子さんが気付かないくらいだから本人とほぼ同じ……なのかな……
私と同じような趣味を持って。正義感あふれる記者……まなみちゃんの演奏の記事で皆を喜ばせたりもした。
私を潜入のメンバーに選んだり、かえでさんと口論したり、かがみを怒らせたり……どこまでが神崎さんでどこからが真奈美なのか。
……神崎さん本人に会ったら私はどうすればいいのだろう……また最初から友達に……
また最初からって……私と神崎さんは友達なのか……な
彼女は私を利用していただけ。私も興味本意で付き合っただけ……それだけ?
うんん、全部が幻。狐が化かした幻だよ……
ここに来るまでの変な気持ちってこれだったのかな。
幻なら。神崎さん……うんん真奈美は無事だったしもう改めて会うことなんかない。

333 :こなたの旅 23 3/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:38:34.52 ID:8kzi1TIR0
 私は首を横に振って駅の方向に体を向けた。
みゆき「そうですか……残念です」
ひより「泉先輩……」
私はゆっくる歩き始めた。
みゆき「私は神崎さんが心配なので神社に向かいます」
ひより「近藤先輩、泉先輩を止めないッスか?」
みゆき「これは泉さんが選んだのですから……」
……選んだ。私は何を選んだって……
みゆきさんは神社に向かって歩き出した。ひよりは私とみゆきさんを何度も交互に見ている。
ひより「泉先輩らしくありません……」
ひよりはみゆきさんのを追って行った。そして私一人が残った。
歩く速度がどんどん落ちていく。まだ10メートルも進んでいないのに足が止まった。

 選んだ。みゆきさんはそう言った。ひよりは私らしくないって……私らしいって何? 分からない。
それにみゆきさんとひよりがもう向かっている。もう私が行っても何が変わる訳でもない。私は再び歩き始めた。

程なく駅に着いた私は切符を買おうと改札口に向かった。時刻表を見る。あれれ、上り電車は5分前に出たばかり……次に来るのは1時間後か……
だから田舎の鉄道は嫌いだ……
「泉さん?」
後ろから私を呼ぶ声。私は振り返った。すすむさんだった。
すすむ「やけに早いな、もう彼女と会ったのか……そうでもなさそうだな」
すすむさんと別れてから随分時間が経っている。5分前の電車に乗っていてもおかしくないのに。
こなた「うんん、会っていない……そっちこそ何で電車に乗らなかったの?」
すすむさんは苦笑いをした。
すすむ「さぁね……」
そう言うとすすむさんは待合場のベンチに腰を下ろした。どうせあと1時間も待たないといけない。私も隣の席に座った。
っと言っても何を話すわけでもなく沈黙が続いた。上りの電車が出たばかりなのか待合場には私達以外誰もいない。
すすむ「別れた時の勢いはどうした、今にでも会いたいような表情だったぞ?」
みゆきさんと同じような事を言う……
こなた「……みゆきさんとひよりが行ったから……」
すすむ「それでいいのか、神崎さんは、いや、真奈美は君と会いたがっているのではないのか?」
私は何も言えなかった。だけどすすむさんもそれ以上何も言わなくなった。

334 :こなたの旅 23 4/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:39:44.85 ID:8kzi1TIR0
 どうしてすすむさんは帰らなかったのか。もしかして私がもらったメモリー板と関係があるのかもしれない。
私にメモリー板を渡したときはスッキリした顔だった。早く帰っていのりさんと逢いたい。そんな感じだった。それなのに今のあの表情……沈んでいて……まるで……
すすむ「どうした、私の顔に何かついているのか?」
こなた「え、いいえ……」
私は目を逸らして俯いた。
いったい何があったのだろう。ここで会ってから何かあったのかな。いや、もう既に。もしかしてメモリー板の中身を見たのかな。
このメモリー板、見かけはほとんどスマホと変わらない。貿易会社からここまで電車に乗っている時間はたっぷりある。例えメモリー板を操作していても
周りからはスマホを操作している様にしか見えない。そしてすすむさんは4万年前の事故の記録を見た……そして……自分の失敗に気付いてしまった。
私にメモリー板を渡したのも忌まわしい記録から遠ざかりたかった……
なんていろいろ考えていたけど。本人に聞くのが一番早い。だけど……何故か聞けなかった。体が、口が動かない。聞くのが怖かった。
もし本当に私の思ったとおりだったら……
時間だけが過ぎていく……早く電車来ないかな……
『ガタン・ガタン』
あ、電車の来る音だ。もうそんな時間……っと思ったのもの束の間、下りの電車だった。まだ15分も経っていなかった。
何だろうこの時間の長さは。さっさと過ぎて欲しいよ。普段ならスマホで時間を潰すけどそんな気持ちにもなれない。
「みーつけた!!」
突然の声だった。私とすすむさんは同時に声のする方を向いた。いのりさん?
さっきの電車に乗っていたのかな?
いのりさんは暫く私達を交互に見た。
いのり「二人して同じような顔しちゃって、兄妹かと思った……」
すすむさんは立ち上がった。
すすむ「ば、ばか、来るなと言ったじゃないか、何故来た!!」
いのりさんはすすむさんの方に近づいた。そして自分の腕時計を見た。
いのり「来るなって、そんなの出来ない、計画では私はさっきの電車で来る様になっていたじゃない、予定は変更できないでしょ」
いのりさんはすすむさんを少しきつい目で睨んだ。
いのり「それで、もうこんな所に居るって事は既にメモリー板を神崎さんに渡したんでしょうね?」
そういえばそうだった。一度メモリー板を神崎さんに渡す事になっていた。
すすむさんは私を一度チラッと見ると首を横に振った。いのりさんは溜め息を付いた。
いのり「まだ神崎さんはまだ来ていないの?」
すすむ「い、いや、もう来ている」
いのり「それならここにこうしていて良いの、渡さないと作戦は終了しないでしょ?」
渡さないと作戦は終了しない……か。
すすむ「お前に何が分かる、私はあの時の事故で……」
いのりさんは両手を前に出してすすむさんを止めた。
いのり「4万年も前の話はもう沢山……もうとっくに解決したのかと思った」
すすむ「いや、解決なんかしていない」
いのりさんは首を横に振った。
いのり「解決した、大きな事故だったのに乗組員100人全員助かった、あなたの判断段でね、それ以上なんの解決があるの?」
すすむ「私の……」
そういえば神崎さんと別れたからのすすむさんの判断が無かったら私はここに居なかったかもしれない。
いのり「そうそう、私達の時代と比べ物にならないかもしれないけど、航空事故とか宇宙船の事故だとほぼ助からない、全員生きていたなんて奇跡、
    それから4万年後、帰りたい人だけ帰る事が出来た、なんの問題があるの?」
すすむさんは呆然といのりさんを見ていた。
生きている……確かに神崎さんは生きていた。
なんだろう。いのりさんは私に言っている様な、そんな気がした。
いのり「その間、辛かったでしょう、私達がもう少し頭が良かったら手伝えもできたけどね……私達から見ればすすむさん達はまだまだお稲荷さんだから」
いのりさんはすすむさんに近づき手を引いた。
すすむ「……何をする……」
いのり「神崎さんの家へ……明日から整体院の仕事でしょ、あなたしか治せない人が待っているから、これはあなたしか出来ないから」
いのりさんはさらにすすむさんを引っ張った。
すすむさんにしか出来ない……事。
私にしか出来ない事。
こなた「待って下さい、メモリー板を持っているのは私です……」
いのり「え?」
いのりさんは手を放した。
いのり「どう言うこと?」
いのりさんは私とすすむさんを何度もきょろきょろと見た。
私は今までの経緯を話した。

335 :こなたの旅 23 5/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:40:53.79 ID:8kzi1TIR0
いのり「神崎さんは真奈美さん……本当なの?」
こなた「もう間違いない……」
いのりさんは神社のある山の方向を見た。
いのり「私も一回だけあの神社に行った、もちろんつかさに連れられてね、夢中になって真奈美さんの話をしていたのを覚えている」
今度は私の方を見た。
いのり「彼女はつかさを助けた人、だけど殺そうともした人、そうだね、会うのも躊躇うのも分かる」
私は真奈美が怖いから会いたくない……のかな。
いのりさんはすすむさんを見た。いのりさんは溜め息をついた。
いのり「旦那もこんなだし……私が行くしかないみたいね、メモリー板を渡しに行ってくる」
私はポケットの中にあるメモリー板を取り出そうとした。
いのり「真奈美さんね……それを知っていればつかさを連れてきたのに、つかさなら誰よりも先神社にむかうかもしれない」
私の手が止まった。
つかさ……確かに、つかさならそうするかもしれない。それなのに私ときたら……
いのりさんは私を見て不思議そうな顔をした。
いのり「泉さんは昔から良く実家に遊びに来ていたよね、あまり話し合った機会は無かったけど、不思議と親近感はあった、」
こなた「え、どうして?」
いのり「つかさよ、つかさ、つかさが事ある毎に泉さんの話をするから」
こなた「どんな話を……」
いのり「よく遅刻をして変な言い訳をして先生によく怒られるとか、アルバイトを始めたとか、走るのが速いとか……仮病で休んだ事もあったって?」
最初と最後が余計な話だ……そんな話をしていたのか。想像はできるけど、そこまでだったとは。つかさらしいと言えばそれまでだけど。
つかさらしい……か。
いのり「……余計な話だった、メモリー板は?」
私は差し出しかけたメモリー板から手を放した。
こなた「私が直接渡してきます」
いのり「あら?」
すすむ「泉さん……」
こなた「神崎さん、いや、真奈美さんは私を呼んでいる、だから私が行かないと」
いのり「そう、それで良いと思う」
すすむ「待て……」
行こうとする私を呼び止めた。
いのり「折角その気になったのに呼び止めるなんて……」
ずずむ「どうして気が変わった?」
こなた「ん〜私の気まぐれ、それといのりさんの言葉もあるけど……強いて言えば……選んだから」
すすむ「選んだから……」
こなた「うん、もう私はとっくに選んでいた、つかさと出会った時から、だから行く」
すすむさんはなんか納得していない感じだった。
こなた「神崎さんと別れたからのすすむさんの選択、とっても冷静で冷酷だったけど……あれしか方法はなかったよね、きっと事故の時もそうだった、そんな気がする」
すすむさんは黙って私を見ている。
こなた「だって、神崎さんは生きているからね」
私は時計を見た。
こなた「わっと、早く行かないと遅刻しちゃう」
いのり「ふふ、変な言い訳をしないように」
すすむ「……なにも出来なくてすまない、しかも助言までされるとは……」
こなた「まだ作戦は終わっていないからまだ安心はできないよ、それじゃ」
すすむさんの表情が笑顔に戻った。そしていのりさんに寄り添っている。この二人は本当に愛し合っていると思った。
そういえばつかさとひろしも愛し合っている。かがみは人前でそんなを見せるような人じゃない。だけど家ではきっとそうにちがいない。
まつりさんとまなぶさんは……ゆたかの恋敵だったくらいだから言うまでもないか。
私は走って神社に戻った。

336 :こなたの旅 23 6/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:42:00.16 ID:8kzi1TIR0
 神社の入り口に着いた。ひよりの車と神崎さんのバイクが置いてある。みゆきさん達と別れてから1時間も経っていないから変わるわけも無いか。
さて、みゆきさん達はもうとっくに頂上に着いているはず。私が行ってもメモリー板を渡すだけで終わってしまうかもしれない。
うんん。それでいい。その為に戻ったのだから。
みゆき「田村さん、私の言った通り戻ってきました」
みゆきさんの声……私はその声の方を向いた。神社の入り口にみゆきさんとひよりが立っていた。
ひより「本当に来た……」
こなた「みゆきさん、ひより……もう行ってきたの?」
ひより「まさか、待っていたっス、近藤先輩が絶対に戻ってくるって言ったので……」
私はみゆきさんの方を見た。
みゆき「時刻表では前の電車は乗れないと思いまして、次の電車がくるまでの1時間で考え直していただけると……」
ばか、そんな保障なんかないのに。
こなた「待ちぼうけだってありえたのに」
みゆき「でも、こうして戻ってきました、バトンタッチです」
みゆきさんは右腕を上げた。私も上げてハイタッチをした。
みゆき「田村さん行きましょう」
みゆきさんはひよりの車の方に歩いて行ってしまった。そしてひよりが私に近づき耳元で囁いた。
ひより「電車が出発する10分前まで来なかったら車で駅まで行って鎖に繋いで引っ張っても連れてくるって」
こなた「え、みゆきさんが?」
ひより「そうならなくて良かったッス、それじゃこの後よろしくお願いします」
みゆきさん……変わったかな。
ひよりは小走りに車に向かった。そして車は走り出した。
そして残るは私一人。
もう後戻りは出来ない。いやもうしない。
神社の頂上を見上げた。そこに待っている人が居るから。
私は階段を登った。

 私は神崎さんに会う方を選んだ。確かに選んだけどその後どうするかまでは考えてはいなかった。
彼女がお稲荷さんってバレているのは向こうだって分かっているはず。もしかしたら神崎さんの姿じゃないかもしれない。
そんなのは会ってから考えるか。あれ?
気付くと辺りは暗くなっている。もう日は西に沈んでいた。まだ階段は中腹くらいだろうか。頂上に着くまでに真っ暗になってしまう。
そういえばつかさもこんな暗い時に登った事もあったっけな。確か携帯の明りを利用したって言っていたな。
私にはスマホがあるからもっと明るく照らせる……ん?
胸ポケットから明りが漏れている。たしかそこにはメモリー板が。私は慌てて胸ポケットからメモリー板を取り出した。
メモリー板が明るく輝いている。何でだろう。私は何も操作していないのに。
暗いから明りが欲しいなって思っただけなのに……まさか。
すすむさんは考えればいいとか言っていた。もしかして、私はもっと明りが欲しいと思った。するとメモリー板は明るさを増し、しかも私が見ている辺りを照らし出した。
私が思った事を読み取ってそれでメモリー板が自分で判断して明りを操作している。そんな感じだった。
私は片手にメモリー板を持ったまま階段を登った。

337 :こなたの旅 23 7/7 [saga sage]:2014/05/02(金) 22:42:59.82 ID:8kzi1TIR0
 頂上に着いた。私の目線に合わせて明りが付いて来る。人影が見えた。私はそこに焦点を合わせた。
後ろを向いている。綺麗な黒い長髪、整ったスタイル……神崎さんだとすぐに分かった。明りに気付いた神崎さんは振り向いた。
神崎さんが眩しがるかなっと思った瞬間明りは弱くなった。神崎さんは私の手に持っているメモリー板を見た。
あやめ「4万年という歳月を地下深く埋まっていたと言うのに動作するのね……改めてお稲荷さんの知識と技術は驚かされる……それで、それを操作できるって事は
    佐々木さんに脳波を登録してもらった、そうでしょ?」
こなた「う、うん……今の所明り灯すくらいしかできないけどね」
あやめ「それは人間で言う五感、センサーと同じ、思い通りに感度を調節できる、お稲荷さんが人間より感覚が鋭いのはそのメモリー版の機能を遺伝子レベルで移植したものなの、
    但し、通信機能はエネルギーが沢山必要だから無理ね……」
こなた「さすがお稲荷さんだね、神崎さん……」
神崎さんはそのまま後ろを向いて景色を眺めた。
こなた「どうやって逃げてきたの」
「どうして私だけ呼んだの」って最初に聞きたかった。だけど何故かこれが最初の質問になってしまった。
あやめ「警備員は10人だった、普通にしていたら捕まっていた、丁度いい隙間を見つけた、そうよ、狐が一匹入れる隙間をね、私は急いで狐になってその隙間に逃げ込んだ、
    その隙間がダストシュートに繋がっていた、そこから1階まで直ぐに行けた……私、ゴミくさくないかしら……」
お稲荷さんじゃななければ逃げられなかった。
こなた「私のせいで捕まったら……そう思うと怖くて……」
あやめ「こうなる事は分かっていた、本来なら扉を最初に開けるのは私でなければならなかった……私も気が動転していたの、ごめんなさい、真奈美が居なかったから……」
真奈美が居なかっただって。この期に及んでまだ嘘を付くのつもりなのか。
こなた「もう演技はよそうよ!!、真奈美さん!!」
思わず叫んでしまった。気が高ぶったのかメモリー板の明りもより明るくなった。
あやめ「真奈美……前にも似た様な事があった」
こなた「そうだよ、正体を明かすチャンスは何度もあった、つかさと会った時、何度か会合を開いた時、私とこうして二人だけで居る時だって……実の弟だって居たでしょ!!」
神崎さんはゆっくり私の方を向いた。そしてポケットから何かを取り出した。私がそれを見ると神崎さんの手元をメモリー板の明りが照らした。
こなた「ボイスレコーダー?」
手に持っていたのはボイスレコーダだった。
あやめ「ボイスレコーダー……記者をやっていると何も言わなくてもこれがボイスレコーダーだと皆が勝手に思ってくれる……便利よね」
こなた「ボイスレコーダーじゃない、それじゃそれは何なの?」
あやめ「これは、私の感覚が人間の五感に近づけるため装置、つまりお稲荷さんの力を封印する物……もうその必要はないわね」
『カチッ!!』
スイッチを操作する音がした。そしてそのまままたポケットに仕舞った。
あやめ「力を封印すれば私は只の人間、仲間が近くに居たとしても気付かれない、もちろんそのメモリー板もね」
あれ……感じる……仲間のような親近感が突然私を包んだ。
私はメモリー板を見た。メモリー板が反応している。神崎さんが仲間、お稲荷さんだって教えてくれているみたいだった。
あやめ「泉さんが襲われそうになった時、一瞬だけ装置を切った、その一瞬ではメモリー板では拾い切れなかったようね……それは意外だった」
こなた「なんで……そこまでして正体を隠したの……」
あやめ「だから貴女を呼んだの……」
こなた「私を……呼んだ?」
あやめ「今から1時間……いや、30分後、私の家に来て……そうしたら全てを話す」
神崎さんは私から後ろに数歩下がった。そして目を閉じた。まさか……
そう思った瞬間彼女の体が淡く白く光った。見覚えがある。これは狐に変身する時に……
彼女の体がどんどん小さくなっていく……そして……目の前に一匹の狐が座っていた。
まてまて、この狐……ハイソックスを履いたような黒い足、尖った耳、大きさ……同じだ。あの時見た野良犬と……
こなた「もしかして、以前私の店の前を通ったでしょ?」
狐は私を見上げるとゆっくり頷いた。ゆっくり背伸びをして立ち上がると走って階段を降りて行った。そしてメモリー板からお稲荷さんの反応が消えた。
こなた「ふふふ、つかさは自分の命の恩人の姿を見間違えるのか……ははは、やっぱりつかさはつかさだよ、はははは、何が野良犬だよ……ははは」
私は思わず笑った。久しぶりにお腹が痛くなるまで笑った。

つづく
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/02(金) 22:44:30.43 ID:8kzi1TIR0
以上です。

少し間が開いてしまいました。これからも不定期ですがよろしくお願いします。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/02(金) 22:48:38.82 ID:8kzi1TIR0


−−−−−−−−−−−−−−ここまでまとめた−−−−−−−−−−−−−−−−−
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/04(日) 01:01:31.16 ID:mrO8nSSC0
「こなたの旅」の作者です。

>>335 23話の5/7の最後の方の ゆたかの恋敵→ひよりの恋敵 に修正します。

同じくまとめの方も修正します。

やっぱりダメダメだな……
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/05(月) 21:40:11.82 ID:1XzrgYM3o
ここで言うべきことじゃないかもしれないけど泉こなたを自殺させるスレのまとめWIKI消えてたんだな
真面目な内容のSSとかもあったから良かったのに残念だ
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/06(火) 11:22:56.49 ID:EcD6wV+Q0
>>341

 同じらきすたSSのサイトが消えるのは残念だけどね。
昔、らきすたSS巡りをしていた頃見た覚えがある。
いい作品があってもスレタイトルがあまり良くなかった。
それが消えた原因かどうかは分からないけどね。
343 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga ]:2014/05/12(月) 20:51:21.72 ID:Vjt6sNjH0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

5レスくらい使用します。
344 :こなたの旅 24  1/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:53:53.64 ID:Vjt6sNjH0

24

 こんなに笑ったのは久しぶりだった。
30分後か、今の私なら手摺に乗って滑って降りられるから彼女の家の行くのに30分も掛からない。
おや……神崎さんが狐に変身した場所に何かが落ちている。メモリー板の明りがそこを照らし出した。ボイスレコーダー……
レコーダーじゃないって言っていたっけ。変身したせいで落としてしまったのかな。それとももう要らないって言ったから捨てたのか。
ボイスレコーダーを拾った。
そういえばつかさと握手をした後すぐにこのレコーダーを取り出して操作をしていた。スイッチを入れ忘れたのかもしれない。
つかさの辛い記憶が神崎さんに流れてきてしまってあんな行動をしたのかも。
この装置要らないなら貰っちゃおうかな……お稲荷さんの力を封印する装置、どう考えても私には要らないもの、だけど、アイテムはいっぱい持っていた方がゲーム攻略は有利だよね。
装置を仕舞った。
さてと、ここで待っていても退屈なだけだ。降りよう。

 神社の入り口まで降りてきた。あれ、バイクが置いたままじゃないか。
と言っても狐の姿じゃ運転できるわけ無いか。それじゃなんであんな所で正体を証のかな……いや、ここで最大の疑問は本当の神崎さんは何処に?
つかさが言っていた事が現実になってしまった。
お稲荷さんを野良犬呼ばわりしたり、時々鋭い事を言ったり。長い間の付き合いだけどつかさがますます分からなくなってきた。
ひよりの推理だと貿易会社に捕らわれていって言っていた。
私の推理だと……
………
何も考え付かない……
なんだかんだ言ってひよりは凄いな。伊達に漫画家じゃない。でも……漫画家と推理は全く別物かも……
ってグダグダして全く考えが纏まらない。
私って……考えてみればいつもこんな感じか。

神垣さんのバイク。静かに寂しそうに置いてある。家にまでなら私が持って行ってもいいけど鍵を持っていない。鍵を持っていたとしても二輪の免許を持っていない。
それに勝手に持っても行けない。このまま置いて行くしかないか。

345 :こなたの旅 24  2/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:55:15.93 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんの家に着いた。丁度1時間位前にも来ている。ただ違うのは居るのは私一人だけ。スマホの時計を見ると神崎さんの言う30分になろうとしていた。
「待たせたね」
後ろから声がする。聞いたことの無い声だ。誰だろう。私は振り返った。
そこには男性が立っていた。知らない人だ。しかもその男性は神崎さんのバイクを引いている。
その男性は手馴れたように神崎さんの家の門を開けるとバイクを門の中に入れた。私はその男性の後に付いて門に入った。
バイクを駐車スペースに置くと男性は私の方を向いた。
男性「彼女のバイク、流石にこの姿で乗るわけにはいかなかった……」
こなた「なんでバイクの鍵を、それに門の鍵だって……」
男性「私が誰だかもうとっくに分かっているよね?」
こなた「誰って……真奈美さんでしょ、何でわざわざ男性に化けたの?」
男性「異性に化けると体力を余計に使ってしまう、君が今まで会ってきたお稲荷さんは化けても性までは変わらなかっただろう?」
こなた「それって……」
男性「残念だったな、私は真奈美ではない」
そんな、真奈美じゃなかった。ひよりの推理は外れた。
なぜそんな体力を使うのにこのお稲荷さんは神崎さんに化けた。そんな事より何故別のお稲荷さんが居るのか。分からない。
こなた「それじゃ、けいこさん達が帰った時何処に居たの、お稲荷さんの全員のリストを作ったのは私だよ」
男性「仲間が日本に居たのはこの日本に来るまで知らなかった、私はあの事故の遭った場所から動かなかったからね、彼らも私が生きていたとは思うまい……」
こなた「事故って4万年前の?」
男性は頷いた。
男性「佐々木すすむ……完全に日本人じゃないか、まさか彼が生きているとは思わなかった、あいつは全く変わってないな……」
こなた「なんで神崎さんに化けたの……」
男性「話が長くなる家に入ろうか」
男性はキーホルダーを取り出した。
こなた「勝手に入るのは……良くないよ」
男性「神崎正子さんは都内のホテルに避難させてある、中には誰も居ない、それに私は「神崎あやめ」でもある……」
男性はドアの鍵を開けた。
男性「どうぞ……」
神崎さんでない人からどうぞって言われても違和感がある、でも、出会った時から神崎さんじゃなかった。
346 :こなたの旅 24  3/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:56:38.14 ID:Vjt6sNjH0
 私は神崎さんの部屋に通された。男性は神崎さんの椅子に腰掛けた。
男性「さて、何から話そうか」
私は床に腰を下ろした。
こなた「名前は……何て呼べばいい?」
男性「名前か……日本に来る前はレルカンと名乗っていた……神崎でいい」
こなた「神崎さん……」
神崎「日本に来たのは10年前、それまではヨーロッパ各国を転々としていた、目的は只一つ、君の持っているメモリー板だよ、人間に渡れば私達の存在を知られてしまうからな」
こなた「メモリー板……」
神崎「そう、メモリー板を人類に渡さない為にね、在るのは分かっているが場所が分からない、でも大体の見当はついていた、
   その一帯に人類を近づけないように有りと有らゆる方法を使った、幻影、毒、呪術も織り交ぜた、そのおかげでつい最近までは呪われた土地として
   人間を寄せ付けなかった、しかし突然その呪われた土地に手を出した人間達が現れた、流石に知恵をつけてきた人間に小手先の術では追い払うのは無理だった」
こなた「その土地に手を出した人達って……」
神崎「そう、貿易会社だよ、彼らはトレジャーハンターを雇って発掘を始めた、私もその中に入り隙があればメモリー板を入手できる機会を待った、しかし結果は
   彼らに先を越された、一個人の力では組織には勝てない、そこで私は情報の集まる場所……報道関係の仕事に携わりメモリー板の所在を追った」
こなた「それで日本に?」
貿易会社か……結局あの会社にはいいようにされっぱなし、あの神社を取り戻したのが唯一の勝利。
神崎「そう、それで調べていくうちに神崎あやめに出会った……彼女は貿易会社の不正を調べていた、彼女の勘は鋭い、私がお稲荷さんであることは出会って数日で
   見抜かれてしまった、彼女は真奈美の話をし、私はメモリー板の話をした、お互いの利害が一致し協力する事になった」
こなた「それじゃ神崎さん……いや、あやめさんは真奈美さんを探していたの?」
神崎「お稲荷さんを助けるなんて公表は出来まい……それでも二人では力不足だ、もっと協力者が欲しい……そこであやめは貿易会社に反感を持っていそうな
   人達をリストアップした、ライバル会社の関係者、ワールド会社の関係者……もちろん君の働くレストランも候補だ」
こなた「レストランかえでが?」
神崎さんは頷いた。
神崎「ああ、彼女は貿易会社から神社を買い取り、町に無償提供した人物が必ずそのリストの中に居ると確信していた、その人物ならきっと力になるってね……
   それでその人物はかなりITに詳しいと考えて、IT関連会社や情報通信会社を優先して調べた、君達のレストランはリストの最後尾だ」
それでこんなに遅く来たのか……でもそんな話はどうでも良かった。私の聞きたいのはそんな話じゃない。
こなた「神崎さんは、神崎あやめさんはどこに居るの、貿易会社に居るなら早く助けないと」
神崎「余計な事はしたくなかった……君は協力さえしてくれれば良かった、しかしそれは無理だったみたいだね……」
何を言っているのかさっぱり分からない。
神崎さんは突然立ち上がった。そして彼はベッドのところまで移動した。そして徐にベッドのマットを持ち上げた。
こなた「な、なにこれ……」
マットの下は空洞になっていた。そしてそれはあった。それは人の大きさ程だった。細かい糸で包まれている……まるで、蚕の繭みたいだ。
神崎さんはカッターナイフを取り出すと繭の上のほうに切り込みを入れた。そして皮を剥ぎ取るように捲った。
その皮の下にあったのは神崎さん……神崎あやめさんの顔だった。目を閉じて眠っているよう。
神崎「まるで生きているみたいだろう、私の持てる知りうる限りの防腐処置をした、あの時のままの姿だ……」
こなた「防腐処置ってどう言う事」
神崎「彼女は、神崎あやめはもうこの世に居ない、亡くなった……」
亡くなった……ついさっきまで会っていたのに、話していたのに、作戦まで一緒に行動して、助けて助けられもしたあやめさんが……
こなた「いつ……何時なの」
神崎「言わなければならないか」
こなた「ここまで話して、それはないよ」
神崎「そうだな……」

347 :こなたの旅 24  4/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:58:13.89 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんはカッターナイフを机に置くと話し出した。
神崎「5年前……降りしきる雨だった……重要な作戦だった、目的は貿易会社の情報収集、二人同時の作戦だった、私は先に潜入し資料室からファイルを入手した、
   彼女は……あやめは警備室から鍵の型を取るはずだった……私は待った、あの神社の入り口で……そこが待ち合わせの場所だった、彼女は時間になっても
   来なかった、まさか……失敗したのか、携帯で連絡を取りたかったがそれはしないと言う約束だった……それでも私は携帯に手を掛けた、その時だった、
   彼女のバイクのエンジン音……近づいてくる……だが、突然音が止まった……私は夢中で走った、音の止まった場所を目指して……そこで私の見た光景は……
   倒れたバイク……エンジンは掛かったまま、そしてその先にあやめが倒れていた……ヘルメットは壊れいた、私は彼女に駆け寄った、見たところどこにも外傷は見当たらない、
   あやめはゆっくりと目を開けるとにっこり微笑んだ、そして私に鍵の型を取った粘土を私に渡した……そして目を閉じた……もう二度と目を開ける事はなかった……」
神崎さんが交通事故で死んでいた……
こなた「お稲荷さんだったら直ぐに治療すれば助けられたでしょ……」
神崎「……それは過大評価だ、私達は万能ではない、しかしあの時出来うる事は全てした」
こなた「それで、この事は私以外に誰かに話したの」
神崎さんあ首を横に振った。
神崎「いや、君が初めてだ……」
私はあやめさんを見た。彼女は目を閉じている。神崎さんの言うようにただ眠っているだけみたい、今にでも目を開けて起き出しそう。
こなた「あやめさんは命を懸けてまで真奈美さんに会おうとしていた……ただ逢いたいだけでそこまで……」
神崎「あやめの親友が今、死の淵に立たされている……彼女は幼少から病弱だった」
死の淵……あやめさんの友達……もしかして。
こなた「もしかしてまなみちゃんの演奏会に来るはずだった記者じゃない、えっと確か井上さんとか言っていた」
神崎「そう、井上浩子、あやめの同僚で高校時代からの友人だ……真奈美なら井上さんを治せる方法を知っている、それに賭けるしかなかった、あやめならそうしている、
   あやめは真奈美ならその方法を知っていると言っていた」
こなた「その友達って癌かなにかなの?」
神崎「脳腫瘍だ、以前摘出して再発した、もう手の施しようがないと医者は言っていた」
それでこの作戦を急いでいたのか。
それにしてもあの時のかがみと同じような状況じゃないか……
こなた「……例え真奈美さんが居たとしてもあの薬は直ぐには作れない、2年の熟成期間が必要なんだよ」
神崎「なんでそんな事を知っている……」
そうだった。私はつかさが一人旅をした話しかしていなかった。その続きを話していれば……何故話さなかった、それは私がそれを選んでいたから話さなかった……
まだ私はつかさに話させようとしていたのか。バカ……だな私って。
こなた「以前真奈美さんの婚約者のお稲荷さんとつかさが作ったから」
神崎「ふふ、どうあがいても無理だったか」
つかさが作った……あの時作った薬……まてよ、まだ全部は使っていない。
こなた「待って、まだある、その薬まだあるよ」
神崎さんは私を見て驚き少し嬉しそうだった。
神崎「本当か」
こなた「以前調子が悪かった時つかさが薬を薦めたからまだあるよ、早く行こう」
神崎「そうか」
神崎さんは微笑むと紙に何かを書い私に渡した。
こなた「何?」
神崎「井上浩子の入院している病院の名前と住所だ、念のため主治医の名前も書いておいた……」
こなた「だめだよ、一緒に来ないと……」
神崎さんは首を横に振った。
こなた「なんで、井上さんは私達から見たら赤の他人だよ、神崎さんが直接頼まないとダメ」
神崎「それは出来ない」
こなた「どうして?」
神崎「逃げるとき、警備員に顔を見られた……」
こなた「大丈夫だよ、顔を見られたくらい、分からないよ」
神崎さんは首を横に振った。
神崎「見られた人物がまずかった、彼はヨーロッパで名うての殺し屋だ……まさか日本に来ているなんて、しかも貿易会社の用心棒とはな、じきにこの家に来る、君も危ない、
   早く帰りなさい」
そういえば叫び声が日本語じゃなかった警備員がいた。
こなた「帰れって……いくら殺し屋でもこの日本で変な事なんかできないから大丈夫だよ」
再び首を横に振る神崎さん。
神崎「小林さんから聞かなかったのか、そいつにもう何人も消させている、そして裏には貿易会社の力がある、真相は闇へから闇に……この日本も例外ではない」
……私ってそんなヤバい所に手を出してしまったのか……
神崎「今更そんな顔をしても遅い……幸い消す目標は神崎あやめだけだけだ、君は関係ない」
神崎さんはじっとあやめの顔を見ている。
こなた「私が帰った後、どうするの……」
神崎「殺し屋と刺し違えてもあやめを守る」
名うての殺し屋と現役のお稲荷さんの格闘……凄まじい光景になるのはすぐに想像できる。
神崎「君は……いや、君たちはよくやってくれた、感謝している、これからは私の選んだ道だ、もう忘れてくれ」

348 :こなたの旅 24  5/5 [saga sage]:2014/05/12(月) 20:59:33.83 ID:Vjt6sNjH0
 神崎さんの選択……
私はあやめさんの顔を見た。
神崎さんは最後の集合場所をここにしていた。最初からこうなるのを予測していたからそうした。
あやめさんは、彼女の選択は何処に、彼女が生きていたとしても必ず私は彼女と逢っていた。その後の展開は……神崎さんの変身が完璧ならそう変わることはないよね。
でも、あくまで神崎さんの化けた神崎あやめ……神崎さんの選択だよ。
もし、あやめさんが生きていたらどうする。
神崎「もう時間がない、早くここを離れろ……」
うんん、いくら考えてもあやめさんはあやめさん、彼女でないとどうするなんて分からない。
そんな事より私がこれからどうするかが問題。
その時だった、私の中にあるアイデアが浮かんだ。でもそれはとっても危険。これが成功するなんて分からない。成功してもどうなるか……
神崎さんは立ち上がった。
神崎「動かないなら力ずくでも帰ってもらう」
力ずく。私に金縛りの術でもかけるとでも言うのか。その後催眠術をかけて帰すつもり、そうだとしたらじっくり考えてはいられない。
すすむさんは言っていたっけ、方法も手段もあるなら選択肢の一つになるって……今の私にはその方法も手段もある。ただそれは一度も経験した事がないって事だけ。
でもそれは元気だま作戦の時だって同じだった……それなら私の選択肢は一つ。
決めた……私は決めた。
こなた「帰らない」
神崎「泉……私を見ろ……」
今、私は自分だけの選択をしようとしている。つかさでも神崎さんでもあやめさんでもない。そう、私が選んだ選択を。
『カチッ!!』
私は神崎さんの方を向いた。
……
……

 私はつかさの家の前に立っている。あれからもう一日も経っていた。
『ピンポーン』
呼び鈴を押すとつかさが飛び出してきた。
つかさ「こなちゃん!!今までなにしてたの、心配したんだから!!」
珍しく怒っている。今はその話をしている時間はない。
こなた「つかさ、今すぐお稲荷さんの秘薬が欲しいんだ」
つかさ「えっ?」
驚いた顔で私を見る。
こなた「どうしても使いたい人がいるから、良いよね?」
つかさ「どうしたの、いきなり、こなちゃんの友達にそんな重病な人居たっけ?」
こなた「つかさの知らない人なんだ、だけどどうしても助けたくて……」
つかさ「知らない人……?」
こなた「お願い……」
私は両手を合わせて頭を下げた。
つかさ「そんな……頼まれても……よして、そんな事したって」
そうだよね、見ず知らずの人に大事な物をあげるなんて早々できる事じゃない。それは分かっている。
こなた「お願い……」
私は更に頭を下げた。もうこれしか出来ない。
つかさ「頭を上げて、あげたくてもあげられないの……」
こなた「え?」
つかさ「薬は……もう使っちゃった……だからもう無いの……」
こなた「使った……まだ半分位残っていたでしょ、みゆきさんの研究用に渡してもまだ何回分は残っているよね……」
つかさは首を横に振った。
つかさ「うんん、使っちゃったの……かえでさんに……」
こなた「かえでさんって……退院したんじゃないの……そんな薬が必要だったなんて聞いてない……」
つかさ「こなちゃんが大切な仕事をしているからって……かえでさんから言わないように言われたの……本当はとっても危なくて……お腹の赤ちゃんも危なくて……
    使うしかなかった……」
そんな……私の計画が……
かがみ「こなた……あんた……」
玄関の奥から低い声……この声は怒っている……しかもこれは相当マジだ……
かがみ「いったい何をしでかした……今朝のニュースを知らないわけじゃないでしょうね」
こなた「え、何……?」


『昨日の深夜0時頃、○○県○○郡○○町神崎正子宅で火事があり、127平方メートルを全焼しました、民家から焼死体が発見され身元の確認を急いでいます、
 民家は母と娘の二人暮らしで、娘の神崎あやめさんではないかと調べを進めています……出荷原因は台所で……』

つづく
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/05/12(月) 21:00:46.09 ID:Vjt6sNjH0
以上です

この後すぐにまとめますので 報告は避難所のみにします。
350 :こなたの誕生日 :2014/05/28(水) 19:59:40.82 ID:nsxYzEPO0
つかさ「お姉ちゃん、今日はどうするの?」
かがみ「どうするって?」
つかさ「あれ、わすれちゃったの、こなちゃんの誕生日だよ?」
かがみ「……そうだった、みゆきは何て言っているの?」
つかさ「ゆきちゃんはもう何かを送るのは止めて食事でも招待したらっていっていたけど……」
かがみ「食事ね……あいつなにが好物だったかしら……」
つかさ「そういえばなんだろう、何でも美味しそうに食べるからね」
かがみ「まさかチョココロネなんて言わないだろうな……」
つかさ「あ、こなちゃんだ、聞いてみようよ」
かがみ「あ、バカ、聞いたら……行ってしまった」

つかさ「こなちゃん、何か食べたいものある?」
こなた「どうしていきなりそんな事聞くの?」
つかさ「こなちゃんの誕生日に食事に招待しようと思って」
こなた「やっほ〜それは嬉しいね」
かがみ「現実に食べられる物にしろよな!!」
こなた「うぐっ!!」
かがみ「今、高級食材を並べようとしてただろ!?」
こなた「むむむ……い、いや、そんなんじゃないくて……美味しいものなら何でも……いいよ」
つかさ「外食だと在り来たりだから、私達の手料理はどう?」
こなた「……いいね、つかさの作ったのなら食べたい」
つかさ「うんん、皆で作るの、それじゃゆきちゃんやみさちゃんも呼ばないと、行こう、お姉ちゃん」
かがみ「ちょっと、何で私が入るのよ」
つかさ「買い物もしないといけないし、急ごう、それじゃ後でねこなちゃん」

こなた「行っちゃった……う〜ん、かがみが参加するのは……行くのやめようかな……」



こなた、誕生日おめでとう

急いで作ったのでこんなのしか作れなかった。






351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/06/01(日) 14:20:14.08 ID:oLV7tB6i0
それでは「こなたの度」のつづきを投下します。

今回は2レスを使用します。


352 :こなたの旅 25 1/2 [saga sage]:2014/06/01(日) 14:21:47.02 ID:oLV7tB6i0
25

 ニュースは予想できた。だけど思ったより早く報道された。でもあやめさんの職業を考えればそれは当然か……
神崎「君の目論見は外れだったようだな……」
私の少し後ろにいた神崎さんがぽつりと言った。つかさとかがみがそれに気付いた。
つかさ・かがみ「誰……?」
神崎「先客がいたならもうどうにもなるまい……」
神崎さんは後ろに振り向いて去ろうとした。
こなた「待って、まだ私の計画は、作戦は終わっていないよ、神崎さん!!」
つかさ・かがみ「神崎……さん?」
つかさとかがみは顔を見合わせた。そして神崎さんは立ち止まった。
神崎「この後どうすると言うのだ、もう終わりだ、もう私の好きにさせてくれ」
こなた「うんん、まだ終わっていない」
かがみ「二人とも、ここじゃ話しにならない、家に入って」
かがみが扉を開いた。私は玄関に入り神崎さんの方を向いた。
こなた「最後まで付き合ってもらうよ」
神崎「……」
神崎さんは黙って私の後に付いた。

 家に入るとつかさの部屋に通された。そこには今回の作戦のメンバー、いのりさん夫婦、みゆきさん、ひよりの他にあやのが居た。配そうな顔で皆は私を見ている。
神崎さんはあやめさんとの関係を話した。
すすむ「ま、まさか、おまえ……い、生きていたのか……」
まるで何年も逢っていない友人の様な口ぶり、いや、何年どころじゃない。彼らは4万年ぶりの再会なのかもしれない。
すすむ「よく一人で生きてこられたな……」
神崎「それは私も同じ事、よく生きていたな、もうとっくに人間達にけされていたと思った……相変わらずだな、未だに能力を消したままだったとはな、そのおかげで
   私は正体をばれずに済んだがな……」
すすむ「私はそう決めた……それより、ひろしやまなぶに何故気付かれなかった」
神崎さんは私の方を向いた。私はポケットからボイスレコーダを取り出した。
すすむ「ボイスレ……い、いや、違う……バカな、そんな事をしていたのか……」
神崎「そう言う事だ」
少し間が空いたような気がした。しかしそう思ったのも束の間。
かがみ「すすむさん悪いけど彼にはなしがある」
かがみがすすむさんの前に立ちはだかった。
かがみ「神崎とか言ったな、あんたわざと事故に見せかけて神崎あやめさんを見殺しにしたな、神崎あやめの立場を利用する為に、そうだとしたら許せない」
神崎さんに当てるような大声だった。
神崎「いや、わざとではない」
かがみ「それなら私達がお稲荷さんの秘密を知っている時点で真実を話さなかった、私達はお稲荷さんと人間の関係も全て熟知している、もっと早く作戦だって達成できたに違いない」
神崎「知られたくなかった……出来ることなら最後まで私は神崎あやめでいたかった……」
かがみ「そんなの理由になるか!!」
かがみは立ち上がり神崎さんに詰め寄った。
みゆき「かがみさん、その話は後にしましょう、それより私は外で泉さんとつかささんが話していた事が気になります」
みゆきさんが間に割って入った。絶妙なタイミングだった。このまま放っておけばかがみは言い訳する間も与えず怒鳴り続けたに違いない。
こなた「お稲荷さんの秘薬?」
みゆき「はい、いったい誰に使おうとしたのですか?」
こなた「あやめさんの親友……かがみと同じ病気、再発してもうダメみたい……」
みゆき「そうですか」
みゆきさんは暫く目を閉じた。
みゆき「私達の研究グループが開発した新薬……臨床試験をしようとしています、どうでしょう、治験者になってみませんか」
神崎「ほ、本当か?」
みゆき「つかささんの持っていた秘薬と同じ効果があるとは断言できませんが」
神崎「構わない」
みゆき「それなら早いほうが良いですね、そのお友達が入院している病院はどこですか」
神崎「○○病院だ」
みゆき「それでは私はこれで失礼します」
神崎「私も同行していいか?」
みゆき「是非そうして下さい」
二人は慌てるように部屋を飛び出した。

353 :こなたの旅 25 2/2 [saga sage]:2014/06/01(日) 14:23:24.24 ID:oLV7tB6i0
 かがみは話の途中だったのを中断させられたせいかかがみは消化不良気味だ。これはまずいと思ったけど遅かった。かがみは私の方を向いた。
あやの「ひいちゃん……私にも教えてくれなかったんだ……」
でも口を開いたのはあやの方が先立った。
つかさ「ごめんなさい……あやちゃんにも言わないようにって言われたから……」
あやの「今はどうしているの?」
つかさ「自宅療養しているよ、多分もう大丈夫だから……」
あやの「神崎あやめさんのお友達も元気になるといいね……」
つかさ「う、うん……」
そうだった。つかさがレストランの手伝いを引き受けた時点で気付くべきだった。いや、気付かなかった。完璧じゃないか。
つかさがそんな隠し事をしていた。私やあやのに気付かれることなくつかさは隠した。
神崎さんがこのレストランにはじめて来た時、ちゃんとつかさに話していればつかさはお稲荷さんの事も真奈美の事も秘密に出来た……
そうすれば私達は無駄に構える必要も無く神崎さんだって警戒しなかったかもしれない。
そうだったらここまでこじれる事無くもっとスムーズに神崎さんは本当の事を話してくれたかもしれない……今更、ここになって気づくなんて……
かがみ「こなた、話はまだ終わっていない」
そうだ。まだ終わっていない……
私はかがみの方を向いた。
かがみ「神崎あやめの死については何も問わない……しかし、何故だ、何故家に火をつけた、死体を傷つけるのは立派な犯罪、もちろん放火も、あんたそれを知らないわけじゃないだろ?」
こなた「うんん、火をつけたのは私じゃない……」
かがみ「こなたじゃない?」
こなた「殺し屋、貿易会社の雇った殺し屋、そう神崎さんは言っていた」
かがみ「殺し屋……あんた、いったい何をしようとしている……」
こなた「前にみゆきさんが言っていたよね、最初に潜入した情報を公表すれば貿易会社は追い込めるって……でも今まで出来なかったのはメモリー板と真奈美さんが
    向こうの手にあるから、そうだったよね、だけどメモリー板は私が持っている、それから真奈美さんは居ないのが分かった、もうこれで隠している必要はないよね?」
かがみ「今回の事件とは関係ないでしょ」
こなた「あやめさんが持っていたパソコンから自動的にその情報を送るように細工をした、犯人がパソコンの電源を切ったら
起動するようにね、送り先はあやめさんの勤めている出版社、親友の井上さん、大手新聞社……」
かがみ「……まさか、ダイイングメッセージにするつもりなのか……あんた、神崎あやめさんの死を利用したのか……」
こなた「利用できるものは全て利用する……」
つかさ「こなちゃん……」
つかさがすごく悲しそうな目で私を見ている。何が言いたいのかは何となく分かった。
かがみ「少なくともこの数ヶ月行動を共にして何も感じないのか、これはゲームじゃないのよ」
かがみもつかさと同じ意見か。あの時、私と神崎さんだけじゃなかったらこの作戦は出来なかったかもしれない。でも、こうしなかったら……
こなた「あやめさんはもう5年前から既に居ない、真奈美さんと同じだよ、私は彼女と出会ったこともないし、話したことも無い、今まで会っていたのは神崎さんが化けたあやめさん、
    神崎あやめじゃない……」
かがみ「……そんな簡単に割り切れるものなのかしら……私には理解出来ない……でも、もうしてしまったのはどうしようもない、情報を受け取った側がどう動くか、
    今はそれを見守るしかないようね……」
こなた「そよれり、正子さん、神崎正子さんが何処にいるか分かる?」
かがみ「遺体の確認とかあるからきっと地元に戻っていると思うけど……何故そんな事を聞くのよ?」
私は立ち上がった。
こなた「ちょっと行ってくる」
かがみ「ちょっとって何処に行くのよ……」
こなた「まだ作戦の途中だから……」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「途中って……待ちなさ!!」
私は立ち止まった。
かがみ「話も途中よ、全て話しなさい」
私は首を横に振った。
かがみ「何故、ここに居るメンバーは知る必要がある」
私は再び首を横に振った。かがみは溜め息をついた。
かがみ「話さなくてもいずれ分かるわよ、それにこのままじゃ私達はあんたに何も協力できない、それでもいいのか?」
私は頷いた。かがみは再び溜め息を付く。
かがみ「言いたくなければ私の質問に答えて、あんた外で私達と話している時、神崎さんが去ろうとして引き止めたでしょ、
    みゆきが新薬を完成させていたのを知っていて引き止めたのか?」
以前、みゆきさんとそんな話をしていたっけ。でも完成までは知らなかった。
こなた「引き止めたのは神崎さんにあやめさんの話をさせるために止めただけ、私じゃ上手く話せないから……」
かがみ「そう、あんた、変わったわね……良い意味でね、行きなさい、もう止めない」
つかさ「お姉ちゃん……」
あやの「かがみ……」
すすむ「ばかな……いいのか」
いのり「かがみ、いいの、行かせて……」
かがみ「どちらにせよ今私達にできることは無い、それに神崎さんの作戦はもう終わった、さぁ、こなた行きなさい」
こなた「かがみ、ありがとう」
私は柊家を出た。

 私は正子さんに会うと次の住居が決まるまで私の家で過ごすように提案した。
正子さんは聞き入れてくれた。一方お父さんの方も神崎さんの母親という事で直ぐに承知してくれた。

つづく。

354 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/01(日) 14:26:01.95 ID:oLV7tB6i0
以上です。

そろそろ終盤です。

もう少しお付き合いしていただけると助かります。

この後すぐにまとめます。
355 :ちょっと宣伝 [saga]:2014/06/02(月) 21:56:47.66 ID:NDyxHJGe0
2011年の23回で止まっているコンクール。

もし再会するとしたら参加できる作者さんはどのくらいいるかな。

もちろん再会するなら私も参加します。

3人くらい居ればやろうかなって思っている。

コンクールだと大袈裟って言うならお題を募集して

自由に書くのもいいかな。


とにかく作者さん大募集です。

1レスものでもギャグでもクロスオーバーでも何でも(エロ以外)

いいのでお気軽に。
356 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/09(月) 01:26:07.92 ID:Jn0w/yWMO
懐かしいな
357 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/06/22(日) 14:36:31.22 ID:2B7QCnBZ0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

4スレほど使用します。
358 :こなたの旅 26 1/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:38:22.96 ID:2B7QCnBZ0
26

 私は都心のとあるホテルの入り口に居る。丁度エレベータに乗ろうとした時だった。
「すみません、お客様」
後ろから私に声をかける人がいた。振り返ると女性だ、制服からするとホテルスタッフらしい。
スタッフ「恐れ入りますが御用はなんでしょうか」
こなた「このホテルに泊まっている人に会いに行くところだけど」
スタッフは大きく頭を下げた。
スタッフ「すみませんがそのお客様とお約束はしていますか」
私は頷いた。するとスッタッフはフロントの受付の方を向いた。
スタッフ「受付でサインをお願いします」
私は受付でサインをした。さすがにこのクラスのホテルになると受付の対応が違う。あのスタッフはコンシュルジュってところかな。
うちのレストランもあのくらいの対応をすれば一流って言われるのかな。
受付でサインを済ますと再びエレベータに向かった。

『コンコンコン』
ドアをノックした。ドアが開いた。
「¿Quién es usted?」
こなた「ほえ??」
見たことの無い男性が出てきた。髭を蓄えている。
「Váyase.」
何を言っているのか分からない。私はポケットからメモリー板を出して男性に見せた。男性はメモリー板を見ると溜め息をついた。
神崎「やはり無駄だったか」
こなた「もうこのホテルに入ってから居場所は分かっているからね、こんなに便利なのに何故今まで見つからなかったの?」
やっぱり神崎さんだった。このメモリー板を持ってからお稲荷さんの居場所は直ぐに分かるようになった。例え別の人に化けていても見破るのは簡単だ。
私は部屋の中に入った。
神崎「前にも言っただろう、起動しなければ只の箱に過ぎない」
こなた「自動で起動できるようにしなかったの、そんなのお稲荷さんなら簡単にできるじゃん?」
神崎「機械に判断と選択はさせない」
こなた「へ、分かんない、もっと簡単に教えて」
神崎「私達の母星で起きた事件だ、機械が我々に反抗してしまってね」
こなた「あ、それって、よくゲームとかで出てくるネタだね」
神崎「いや、実際に起きた、私達の星ではね、それで長い戦いが起きた……」
こなた「神崎さん達が今こうして居るって事は機械に勝ったんだね?」
神崎「勝ったっと言うより我々が機械の制御を自分自身に取り込んだ、だから機械は我々の意思なしでは動かないようにした」
こなた「取り込んだって?」
神崎「機械の制御権を全て我々の中、遺伝子に組み込んだ、これで機械は我々の道具に戻った、機械は我々の脳からの命令がないと動かない、君達の細胞にいるミトコンドリアと
   同じ、ミトコンドリアの遺伝子を細胞の核に移してミトコンドリアを制御しているのとね、それに至るまで多大の犠牲を余儀なくされたがな、その副産物として
   変身と長寿、そして君達の言う超能力を得た」
こなた「ふ〜ん」
言っている意味の半分も理解できなかった。みゆきさんなら理解できただろうけど……無表情の私にちょっと不機嫌な様子の神崎さんだった。
神崎「他人事だな、君たちもいずれそれに直面するぞ、自分の作った道具に滅ぼされるなんて考えただけでも恐ろしいとはおもわんのか?」
こなた「でも私が生きている内は大丈夫でだよね」
神崎「それは、どうかな……」
神崎さんは改まって私を見た。わたしの顔を見て話を続けるのを諦めたのか話題を変えた。
神崎「ところで何の用だ?」
こなた「作戦の続きがあるでしょ、忘れちゃったの?」
神崎さんは部屋にある置時計を見た。
神崎「もうそんな時になるのか……本当にしなければならないのか?」
こなた「もちろん、その為にきたんだよ、最後まで付き合ってもらうから」
神崎「そうだったな……ちょっと待ってくれ準備する」
神崎さんはいそいそと身支度を始めた。
こなた「……その姿で行くつもりなの?」
神崎「そのつもりだが、何か問題があるか?」
こなた「ん〜、最初に私に見せた姿がいいかも……」
ひげもじゃで背が高すぎ。すごく威圧感がある。
神崎「そうか……30分ほど余計にかかるがいいか」
神崎さんは洗面所に向かった。
こなた「なんで洗面所に、変身ならここですればいいじゃん?」
神崎「君は着替えをする時見せびらかすのか?」
こなた「そ、そんな事はしないけど……」
神崎「それと同じだ、失礼する」
そのまま洗面所に入った。お稲荷さんの変身って着替えみたいなものなのか……始めて知った。
そういえばめぐみさんの時は私の前でよく変身していたけど、同性だったから気にならなかっただけなのかな……まだまだお稲荷さんについては良く分からないことだらけだ。
神崎「君の作戦はいつ思いついた?」
洗面所の更衣室のドア越しに声が聞こえた。
こなた「神崎さんが言った時、殺し屋が来るって」
神崎「そうか……」
それ以降神崎さんは話してこない。きっと狐に戻ったに違いない。
……
……
359 :こなたの旅 26 2/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:40:06.39 ID:2B7QCnBZ0
 そう、あの時……神崎さんは私に金縛りの術をかけようとしていた。
神崎「泉、私を見ろ……」
この重みのある言葉で直ぐに分かった。まともに彼をみれば術を防ぐ術はない。でも幸い私には彼が残したボイスレコーダを持っている。
はたして私が使って神崎さんの術を封じる事ができるだろうか。どのくらいの範囲で効果があるのか分からない。でも使うしかない。まずは神崎さんを止めないと私の
作戦は始まらない。
『カチ』
私は手をズボンの後ろのポケットにまわしてそっとスイッチを入れた。そしてゆっくり神崎さんの方を向いた。
神崎「どうだ、動けないか……」
うごけ……ん?……!
しめた、動けそうだ。それならここは術にかかった振りをする。私は何も言わなかった。神崎さんの隙を狙う。
神崎「お前を巻き込む分けないはいかない、このまま最終電車で帰ってもらう、特急に乗れなくても終点の駅ならホテルは沢山ある……」
私に催眠術をかけるつもりなのか私の顔に腕をゆっくり伸ばしてきた。私の額にその手が触れるか触れないかの距離まで来た瞬間、
私は一歩神崎さんの真横に移動して身体を一回転させて神崎さんの背後に回り私の腕を神崎さんの首に回してもう片方の腕で完全にロックした。俗に言う裸締めだ。
神崎「うぉ!?」
こなた「動かないで、腕にちょこっと力を加えれば頚動脈から頭に血が行かなくなるよ、そうなれば数秒で落ちるよ」
神崎「な、何故効かない……なぜ……?」
こなた「神社でボイスレコーダ拾っちゃったからね」
神崎「まさか……もっと遠くで捨てるべきだったな……なんて素早い身のこなし、見えなかった、しかも急所を的確に狙うとは……東洋の武道と言うやつか……」
こなた「武術はちょこっと齧っただけ、油断したから素早く見えただけ、だけど技の効果は本物だよ」
神崎さんは全身の力を抜いて渡しに委ねた。
神崎「そうだな、本物の様だ、抵抗はしない……それでこの状態で私に何をする気だ?」
こなた「それより私を帰した後どうするつもりだったの?」
神崎「あの殺し屋には個人的に因縁がある、ヨーロッパに居た頃友人だった人間を何人か殺されている」
こなた「敵を討つつもりなの?」
神崎「そうだ……」
思ったよりも深刻だった……
こなた「それで、その後はどうするの」
神崎「殺し屋があやめを殺した様に見せかける、殺し屋の死体が一緒ならあやめと刺し違えたと思うだろう、そして、殺し屋の雇い主が分かれば貿易会社の全貌が明らかに……」
半分は私が立てた作戦と同じ、だけど半分は全く違う。
こなた「残念でした、殺し屋の雇い主は分からないよ、神崎さんも長年貿易会社を調べている割には分かってないね?」
神崎「なんだと、何故だ!?」
神崎さんが少し暴れそうだったので腕に少し力を加えた。すると直ぐに大人しくなった。
こなた「武器の密売を隠せるくらいの力をもってるんだよ、殺し屋を雇ったなんて分かりっこない」
お稲荷さんらしくない。親友を殺されて頭に血が上って冷静な判断ができないのかもしれない。
神崎「君なら何かあるとでも言うのか」
こなた「あやめさんの死体を利用するのは全く同じ、だけどその方法が少し違う……聞いてみる?」
神崎「もしその話を聞いて私が断ったらどうする」
こなた「このまま絞め落とすよ、と言いたい所だけど、どうしても神崎さん……お稲荷さんの協力が必要なんだ……」
私は絞めていた腕を解いた。神崎さんは私から一歩離れて手で首を擦りながら振り返った。
神崎「何故放した……いくら素人でも同じ技にはかからないぞ」
こなた「そうかもしれないけど、そっちもお稲荷さんの術は使えないよ」
神崎「……そうだった、話してみろ、その作戦とやらを」
こなた「神崎さんは殺し屋に催眠術をかけてあやめさんを殺したと思い込ませて」
神崎「それで……その後はどうする」
こなた「それだけでいいよ……うんん、もしかしたらメモリー板も取り戻しにくるかもしれないから、それも奪還させたと思い込ませる必要もあるかもね」
神崎「ばかな、そうしたら彼は証拠隠滅を図るぞ……話にならん、私は私のやり方で……」
こなた「殺し屋を殺してどうするの、殺したって神崎さんの友達は帰ってこない、あやめさんだって!!」
この時、殺し屋が家に火をつけるなんて思ってもいなかった。あの時は私の作戦を説明するのでいっぱいだった。
神崎「……殺し屋を許せと言うのか?」
こなた「うんん、そうは言ってない、ただ、誰一人傷つけたくないだけ」
神崎「傷つけない……どうやって」
こなた「あやめさんのパソコンを使う、以前盗んだデータを公に知らせたらどうなるかな、それもあやめさんが亡くなった時間に合わせて送ったら?」
神崎さんは暫く考えた。
神崎「パソコンの操作はどうするつもりだ」
こなた「証拠を消す為に必ず殺し屋はパソコンに何かをするはず、それを合図に発信するようにする」
神崎「……出来るのか?」
こなた「元気だま作戦よりは簡単だと思うけど?」
神崎さんはまた考え込んだ。
こなた「真奈美さんが何故亡くなったか教えたから知っているでしょ?」
神崎「ああ、知っている、柊さんと握手をした時、彼女の意識から鮮明なイメージが飛び込んできた……装置のスイッチを入れていなかった……慌てて入れたがもう遅かった」
やっぱり私の思った通りだった。
神崎「あのイメージで真奈美が捕らわれているという推測は絶望的になった……それでも微かな希望に賭けたのだがな……」
こなた「つかさが旅をしたから亡くなったんて言わないでよ」
神崎「分かっている……」
こなた「それじゃ何をすればいいのか分かるよね?」
神崎さんはあやめさんの方をじっと見つめた。
神崎「……いいだろう、君の作戦にかけよう……」
こなた「そうこなくっちゃ!!」
神崎さんは振り返って私を見た。
神崎「そのセリフはあやめが生前よく使っていた……」
こなた「感傷に浸るのは作戦が終わってから」
神崎「そうだな……」

360 :こなたの旅 26 3/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:41:23.96 ID:2B7QCnBZ0
 って言ったみたものの実際殺し屋をどうやって催眠術にもっていく方法までは思いつかなかった。
こなた「えっと……その殺し屋さんってどんな人?」
神崎「そんなのを聞いてどうする?」
こなた「誘き出すのに参考になるかなって……」
神崎「なんだ、もうとっくに考えてあるのかと思った」
呆れ顔の神崎さんだった。
神崎「彼の対処は私がする、君はあやめが生きている様に振舞ってくれればいい」
こなた「この部屋でパソコン打ってればいいかな?」
神崎さんは頷いた。
神崎「仕掛けは出来るだけ急いでくれ」
私は部屋のカーテンを閉めて椅子に腰掛けた。カーテン越しの影が外からは長髪の女性が居る様に見える。
神崎「それでいい」
神崎さんは部屋を出た。

 これから殺し屋が来るまでの時間はどのくらいか覚えていない。夢中でパソコンを操作していた。
つかさの家に着くまでの時間から逆算すると多分1、2時間位の時間だった。

 突然部屋の明りが消えた。そしてパソコン本体の隣においてあったUPSのランプが点灯した。
1から2分くらい経っただろうか、部屋の外から神崎さんの呼ぶ声が聞こえた。メモリー板の明りを頼りに部屋を出て声のする方に向かった。
玄関の入り口に神崎さんが立っていた。その直ぐ隣に見知らぬ人影が見える。明りを向けると男性がマネキン人形の様に静止して立っていた。もう神崎さんが金縛りの術を
かけた後のようだ。
こなた「この男性が?」
神崎「そう、殺し屋だ」
身長はさほど高くない。顔つきはどう見ても東洋人系の顔……日本人にしか見えない。
こなた「ヨーロッパの殺し屋じゃないの?」
神崎「いや、彼は変装の名人だ、どんな民族にも違和感なく溶け込める」
こなた「急に停電になったけど?」
神崎「もちろん彼の仕業だ、彼は潜入するとき電源と通信を遮断する……言い忘れていたがこの状況でメッセージは送れるのか?」
こなた「幸いUPSがああったから大丈夫、メッセージもあやめさんの携帯電話経由で送るから問題ないよ」
神崎「そうか……」
ほっと一呼吸整えると神崎さんは殺し屋の額に手を添えた。
神崎「彼はもうあやめを殺した……メモリー板も回収した事にする」
こなた「それじゃこれを」
私は神崎さんに携帯電話を渡した。
神崎「これは?」
こなた「あやめさんの机の中に入っていた携帯、多分機種変更で使わなくなったやつ、これをメモリー板だと思い込ませて」
神崎「……君はあざといな……」
神崎さんは受け取った携帯電話を殺し屋のズボンのポケットに入れた。
こなた「彼をあやめさんの部屋に移動させないと……」
『パチン!!』
神崎さんが指を鳴らすと殺し屋の足が動いた。そして誘導するようにあやめさんの部屋に移動した。

 部屋に移動すると私はあやめさんの周りに張り付いている繭の様な物を引き剥がした。引き剥がすと繭の様な物は泡の様に解けて消えた。
あやめさんを抱き起こすと椅子に座らせた。
こなた「準備はいいよ」
神崎さんは殺し屋から手を放そうとしなかった。
こなた「どうしたの、もしかして催眠術がかけらないとか??」
神崎「……彼は此処を離れる際、火を放すつもりだ……台所から出火させて事故にみせつもりらしい……」
こなた「大丈夫、もうメッセージは送られているはずだから……」
神崎「いや、そうじゃない、火事になればあやめは……あやめの身体は焼け爛れるぞ……場合によっては身元が判らないほどに、それでも良いのか?」
こなた「……もう亡くなっているからあやめさんは何も感じないよ……」
神崎「……君は冷酷だな……」
神崎さんは片手を上げた。
神崎「この指を鳴らして3分後に金縛りの術が解ける、それと同時に彼はあやめを殺し、メモリー板を奪還したと思い込むはずだ……」
私は頷いた。
神崎さんは両目を閉じて全身を震わせながら指を鳴らした。
『パチン!!』
神崎さんは椅子に座っているあやめさんをじっと見ていた。
こなた「急いで出よう!!」

私は彼の手を引いて家を出た。そして次の駅まで歩いて行き始発電車でつかさの家に向かった。
これがあの時、あやめさんの家で起きた一部始終。
……
……
361 :こなたの旅 26 4/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:43:12.74 ID:2B7QCnBZ0
神崎「これでいいのか」
洗面所から出てきたのは初めて会った時の神崎さんの姿だった。いろいろ思い出していたらもう30分も経ってしまったようだ。
こなた「うん、それでいい」
神崎「本当に行くのか?」
こなた「もちろん、行かないと私の作戦は終了しないからね」
神崎「何故私が行く必要がある」
こなた「神崎さんから直接話して欲しいから」
神崎「泉さん、君の方が適任だと思うが……それに私の話を聞いて信じてくれるかどうかも分からない」
こなた「信じる信じないは向こうが決める事、真実を話すのが大事なの……」
神崎さんは黙って何も言い返してこなかった。
こなた「行こう」
私達は部屋を出た。

 ホテルを出た私達は私の車に乗って出発した。
神崎「何処に行く……」
こなた「神社だよ」
神崎「神社?」
こなた「そう、神社、つかさと真奈美さんが初めて会った場所、そしてあやめさんと真奈美も……そこが一番話すのに相応しいと思ったから」
神崎「あの神社か」
こなた「待ち合わせ時間に間に合うように少し急ぐよ」
私はアクセルを踏んだ。
362 :こなたの旅 26 5/4 [saga sage]:2014/06/22(日) 14:44:12.76 ID:2B7QCnBZ0
 神社の頂上が見えてきた。待ち合わせをしていた人はもう既に居た。
神崎「どうしても話さなければならんのか?」
こなた「そうだよ、5年間も騙し続けたのだから、ちゃんと責任とってよ」
今日はあやめさんの四十九日。納骨を終えた正子さんと待ち合わせをした。正子さんに会わせたい人がいると約束をした。
話すには打ってつけの日。だから今日にした。
階段を登ってくる私達に気付いた。私達に微笑みかける正子さん。
こなた「どうも遅くなっちゃって……」
正子「いいえ、私もついさっき来たばかりなのよ」
正子さんは神崎さんに気付いた。私の陰に隠れているのをのど着込むように見た。
正子「彼が?」
こなた「はい、会わせたい人です……ほら、神崎さん……」
私は神崎さんの後ろに廻り彼の背中を押して正子さんの前に立たせた。そして私は2、3歩下がった。
神崎さんは正子さんに会釈をした。
正子「貴方は……確か……あやめと一緒に家に来たわよね?」
神崎「……はい、よくご存知で……」
正子「良く覚えている、なんせあやめが初めて男性を連れてきたのだから……」
神崎さんのあの姿はあやめさんの生前からの姿だったのか……変身し直させて良かったかもしれない。
神崎「実は正子さんに言わなければならない事実がありまして……」
正子「事実?」
正子さんは不思議そうな顔で私の方を向いた。私はただ頷くしかなかった。正子さんは再び神崎さんの方を向いた。
神崎「……あやめ……いや、あやめさんは……」
正子「あやめがどうかしましたか?」
神崎さんを見て首をかしげさらに不思議そうな顔をする正子さんだった。
神崎「貴女の娘さんは5年前に既に亡くなっていた、それまでの間、私が成り済ましていました……」
神崎さんはその場で深々と頭を下げた。経緯の説明がない。お稲荷さんの話もしない。あまりに短い言葉だった。これじゃ何がなんだか分らない。理解出来ないじゃないか。
最初からちゃんと説明しないと。私が話そうとした時だった。
正子「確か……あの時は土砂降りの雨だったかしら……ずぶ濡れになって小脇に壊れたヘルメットを抱えて帰って来たわね……」
私は立ち止まった。。
正子「どうしたの?……そう聞くと「何でもない」……そう言って部屋に入って言ったわね……覚えています」
神崎「土砂降り……壊れたヘルメット……ば、ばかな……入れ替わった最初の時……」
正子「悲しげなあやめの表情でしたね、なんとなく違和感があった……」
神崎「そんなはずはない、容姿はもちろんあやめの記憶は全てトレースした、幼少から亡くなる寸前までの記憶、彼女の性格も、癖も……」
正子さんは話を続けた。多分神崎さんの話を理解できていない。
正子「……そして次の日、部屋から出てきたあやめは元のあやめに戻っていた……」
どんなに正確に変身しても他人は他人。母親は騙せないか……
神崎「何故聞かなかった、何故黙っていた?」
正子さんは目を閉じながら話した。
正子「それを聞いたら……あやめがどこか遠くへ行ってしまうような……そんな気がしたから……でも、部屋から出てきたあやめはあやめだった、私の娘そのものでした……
   あれから5年……もうそんなに経つのね……」
正子さんの目から涙が一筋流れた。

 涙を流している正子さん見て急に私も悲しくなった。そして、 彼女と出逢ってから今までの出来事が走馬灯のように浮かんできた。
取材や作戦じゃくてもっといろいろ話したかった。ゲームやアニメの話、皆と軽食を食べながらバカな話でもして……
その時気付いた。私の会っていたあやめさんはあやめさんだった。少なくとも金縛りの術を使う直前までは神崎あやめだった。
私は大事な親友を一人失った……
私はあやめさんを見殺しにした。私はあざとく……冷酷だった。
こなた「正子さん、わ、私……」
この作戦を考えたのは私。だから私は正子さんに話そうとした。でも正子さんは首を振って私を止めた。
正子「もう済んだ事だから……それより二人共、あやめの墓前で手を合わせて欲しい……」
正子さんは振り返ると神社の奥の方を向いて手を合わせた。
神崎「墓前……まさか、あやめは……」
正子「そう、この地に散骨しました……幼少から此処が好きでした、そして今でも……そう思いまして」
神崎さんは正子さんのすぐ後ろに立つと手を合わせた。
私はそのままの位置で手を合わせた。
……あれ。目頭から熱い物が頬を伝った。
涙だった。
本人には一度も会っていないのに。泣く事なんて無いと思っていたのに……
祈りが終わっても私は暫くその場を動く事ができなかった。
涙で目がくもって見えなかったから。

 こうして私の作戦は終わった。
成功したのか。失敗したのか……今の私には分らなかった。


つづく
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/22(日) 14:45:35.17 ID:2B7QCnBZ0
以上です。
容量がおおくて5レスになってしまいました。

これからすぐにまとめるので報告は避難所のみとします。
364 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/22(日) 14:55:16.23 ID:2B7QCnBZ0
>>355
何も反応がなかったので保留にします。

書き手は随時募集していますので気軽にどうぞ。

365 :作者の心理 [saga sage]:2014/06/22(日) 21:46:23.32 ID:2B7QCnBZ0
こなた「よくまぁながながと続きますな」
かがみ「唐突に何を言うか?」
こなた「いや、このスレでちょこちょこ連載している人がいるんだけどね」
かがみ「ほぅ、SSサイトなんか見ているのか、あんた文章は苦手だとか言ってなかったか?」
こなた「まぁまぁ、それは置いておいて、この作品は感想やコメントがほとんど無いのによくまぁ、こんなにズラズラ書けるなぁって……
    普通ならモチベーションが下がったり飽きたりして「やーめた!!」ってなんない?」
かがみ「まぁ、書き手にとって読み手の反応は気になるわよね」
こなた「でしょ?」
かがみ「でもね、読み手の反応は必ずしも良いものとは限らない、批判や中傷もあるわよ、もしそんなコメントがきたらそれこそモチベーションが下がるわ」
こなた「そっか……」
かがみ「コメントが無いのは寂しいけど、逆に考えて注文や批判もないから自由に作れる、期間も気にしなくて済む、ってところかしらね……」
こなた「ふ〜ん、もしかしてこのSSかがみが書いているとか?」
かがみ「な、なんでそうなるのよ!?」
こなた「やけに作者の心理を詳しく語ってるから」
かがみ「そんなの少し考えれば分るわよ」
こなた「……う〜んそうかな」
かがみ「そうなの、バカ言ってないで、早くしないとつかさと日下部に約束した時間に間に合わないわよ」
こなた「あっ! そうだった、急ごう!!」


かがみ(危ない危ない、妙に勘が鋭い所があるから油断できない)





























    
366 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/06/24(火) 23:17:52.62 ID:ElU61P1b0
>>365
一応まとめました。
367 :作者の心理2 [saga sage]:2014/06/30(月) 00:26:23.17 ID:ZdBNIBwt0
つかさ「お姉ちゃん、最近こなちゃんがSSって言うのに凝ってるみたいだね」
かがみ「みたいね……」
つかさ「お気に入りのSSが最近更新しないから早く続きが読みたいって言っていたよ」
かがみ「……なんでそんな話をするのよ?」
つかさ「何でも下手にコメントが出来ないから困ってるって、どうすれば良いかな?」
かがみ「私にそんな事聞かれても分らないわよ」
つかさ「そうなの? お姉ちゃんは作者の心理が良く分かるってこなちゃんが言ってから……」
かがみ「……悪口じゃなければ何でも良いわよ……素直に思った事を書けば」
つかさ「こんど会ったらそう言っておくね」
かがみ「お気に入り……か……」
つかさ「え、なに?」
かがみ「いや、なんでもない、独り言よ」

かがみ(……つづきを書いてみるかな……)
368 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga ]:2014/07/06(日) 00:01:08.05 ID:jN24m8os0
久々に「つかさの旅」シリーズじゃないものを投下します。

4レスくらい使用します。
369 :七夕 1/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:02:55.00 ID:jN24m8os0
 今日は街に出てお買い物。
外は梅雨で生憎の天気。こんな時は天気を気にしないデパートで買い物をするのが一番。
こなたお姉ちゃんは買い物を済ませて先に帰った。これだったらひよりちゃんやみなみちゃんと一緒に来た方が良かったかな……
なんて最初はそう思ったけどたまには一人で気兼ねなく、時間も気にしないで買い物をするのもたまには良いかな……
普段寄らないような店をちょっと覗いてみよう。

 少しアンティークっぽい装飾品店を見つけた。値段も手ごろで私でも買えそうな物がいくつもあった。
何気なく手を伸ばした。丁度その時同じ物を取ろうとしたのか他人の手が重なってしまった。
ゆたか「す、すみません……」
手を引っ込めて相手の方を向いた。
かがみ「ゆたかちゃん?」
ゆたか「か、かがみ先輩?」
そこに立っていたのはかがみ先輩だった。
かがみ「奇遇ね、一人でお買い物?」
ゆたか「はい……あ、いいえ、こなたお姉ちゃんと買い物に来たのですけど途中で別れて一人で買い物をしていました」
かがみ「こなたも来ていたのか……」
かがみ先輩は辺りを見回した。
ゆたか「お姉ちゃんはもう帰りました」
かがみ先輩は呆れるように溜め息をついた。
かがみ「あいつは目的を果たすと直ぐ帰るからな……」
ゆたか「かがみ先輩もお買い物ですか?」
かがみ「私? そうね、そんな所かしら……この店感じがいいから何気なく入ったのよ」
かがみ先輩は店の周りをゆっくりと見ました。
ゆたか「そうでしたか、失礼しました」
私は会釈をして店を出ようとした。
かがみ「待って、これから予定はあるの?」
店の入り口で私は立ち止まった。
ゆたか「いいえ、特にありませんけど」
かがみ「こんな所で会ったのも何かの縁、どう、この近くに美味しいスイーツの店知っているけど寄っていかない?」
かがみ先輩の誘いに断る理由はなかった。
ゆたか「はい」
かがみ「それじゃ行きましょ」


『七夕』


370 :七夕 2/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:04:09.70 ID:jN24m8os0
かがみ「どう?」
ケーキを食べる私をじっと見るかがみ先輩。
ゆたか「……美味しいです……しつこくない甘さと程よい苦味がアクセントですね……」
にっこり微笑むかがみ先輩。
かがみ「でしょっ!!」
表情が少し誇らしげの様な気がした。
ゆたか「こんなに美味しいお店があったなんて……今度みなみちゃん達にも教えます」
かがみ先輩は大きく頷いた。
ゆたか「今日はお一人なのですか?」
かがみ「そうよ……」
ゆたか「つかさ先輩は……」
かがみ先輩は少しさみしそうな顔になった。
かがみ「そうね、確かに高校まではつかさとほとんど一緒に行動していた、でも、流石に大学と専門学校じゃ時間が合わないわよ……」
ゆたか「せっかくの日曜日なのに、残念ですね」
かがみ先輩は静かにコーヒーカップを口に運んだ。
かがみ「今までが上手く行き過ぎていた、それは分っているけど……慣れるのにはもう少し時間が必要かもね……」
ゆたか「いろいろ大変ですね」
かがみ先輩はコーヒーカップを置いた。
かがみ「ところでゆたかちゃんはどう、二年目高校生活は?」
ゆたか「クラス替えしても相変わらずのメンバーは変わらなかったので……」
かがみ「……凄いわね……私は結局つかさやこなた、みゆきと同じクラスには一度も慣れなかった」
そういえばつかさ先輩は小学校から一度も同じクラスになってないって言っていたのを思い出した。
ゆたか「で、でも卒業しても頻繁に会っているのだから凄いですよ」
かがみ「そういえば担任が黒井先生なんだって?」
話が変わってしまった。あまり触れて欲しくない話だったかな……
ゆたか「え、あ、はい、そうです、とっても厳しくて……厳しくて……」
かがみ「たまに遅刻寸前で教室に飛び込んでくる?」
私は黙って俯いた。
かがみ「ふ〜ん、図星みたいね……黒井先生はまだこなたと同じネットゲームしているのかしら……」
ゆたか「……お姉ちゃんは遅くまで起きているみたい」
かがみ先輩は溜め息をついた。
かがみ「やれやれ」
かがみ先輩は再びコーヒーカップを口に運んだ。私もその合間にケーキを食べた。
371 :七夕 3/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:05:09.02 ID:jN24m8os0
 それから暫く私はみなみちゃんやひよりちゃんの話をした。
かがみ先輩はじっと私を見ている。
ゆたか「はい?」
かがみ「こうしてゆたかちゃんと二人で話すなんて初めてじゃない?」
ゆたか「……そいえば……かがみ先輩が居る時はいつかさ先輩かお姉ちゃんが居ましたね、私もみなみちゃん、ひよりちゃんが……」
かがみ「ゆたかちゃんから見て私はどう見える?」
ゆたか「どう見える……って?」
かがみ「皆と一緒だとギャーギャー言っているでしょ……知り合いは居ないから正直に」
こう言う時ってどう答えればいいのかな。
ゆたか「……とても頼りになるお姉さんって感じ……」
かがみ先輩は首を横に振った。
かがみ「そうじゃなくて……女性としてどう見える?」
ゆたか「女性として……」
私は言葉に詰まってしまった。どうしよう。何も答えられない。気を悪くしていまうかな……
かがみ先輩は溜め息をついた。
かがみ「ごめん……同性にこんな質問をしてもしょうがない……」
ゆたか「同性……気になる異性……誰か好きな人でも居るのですか?」
何気なく言った。だけどかがみ先輩の顔がみるみる真っ赤になって耳まで赤くなった。
かがみ「な、なに言っているのよ!!」
どうしよう、怒らせちゃった……
ゆたか「す、すみません……」
かがみ先輩は立ち上がるとそのまま化粧室の方に早歩きで向かった。

 かがみ先輩……
お姉ちゃんとかがみ先輩はいつも何か言い合っていてツンツンしている様な感じがしていた。
つかさ先輩や私達と一緒の時のかがみ先輩はいつも微笑んでいて良いお姉さんって感じ。
高良先輩とかがみ先輩が話している時は知的で凛として憧れの先輩って感じ。
日下部先輩や峰岸先輩と一緒の時のかがみ先輩はふざけ合って仲の良い友達って感じ。
さっき私と話していたかがみ先輩はそのどれとも違っていた……
化粧室からかがみ先輩が戻ってきた。ゆっくりと静かに歩いて来た。そして席に着いた。
かがみ「さっきはごめんね……」
普段のかがみ先輩に戻っている。
ゆたか「いいえ、私が唐突過ぎました……」
かがみ「……いや、ゆたかちゃんがそう言うのはある意味正しい……私ってこの歳になっても……浮いた話が一つも無いでしょ……女性としてどうなのかなって……」
ゆたか「そ、そうですか……私もそれは良く分かりません……普段そんな話あまりしませんし、お姉ちゃんだってそうだと思います……」
かがみ「そうよね、私達にはそんな話は似合わない……そうそう、気を取り直して何か注文しましょ、お詫びに私が奢るわよ」
かがみ先輩は店員を呼び二人分の注文をした。
似合わない……似合う似合わないは関係ないような気がした。
それにこんな話は今まで一度もした事がない。こんなチャンスはないかも。折角だから……
ゆたか「あ、あの、好きな人は居たのですか?」
かがみ「ぶっ!!」
飲みかけたコーヒーを噴出しそうになった。
かがみ「ちょっと……」
また顔が赤くなった。だけど赤くなったのは頬だけだった。
ゆたか「ついでって言ったら語弊があるかもしれませんけど……今までこんな話した事がないのでたまには良いかな……なんて……話したくなければ無理には……」
かがみ「ふぅ……」
かがみ先輩はナプキンで口を拭いた。そして私を見た。私もかがみ先輩を見た。
かがみ「たまには……こんな話をしてもいいか……」

372 :七夕 4/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:06:24.06 ID:jN24m8os0
 かがみ先輩は頼んだスィーツが来てから話し始めた。
かがみ「あれは私が中学生の頃だった、好きな人が居た、ただ何となく漠然とだった……だけどすこしずつそれが本気になっていった……」
ゆたか「デートとかですか……?」
かがみ先輩は首を横に振った。
かがみ「まさか、教室で雑談するくらいだった……彼がどんな人だったなんて今でも分らない、俗に言う片思いよ……
    ただ想いだけが積もるだけ……何も出来なかった、ただ時間だけが過ぎていく……そして」
ゆたか「そして……?」
かがみ「卒業式の日、私は決めた、彼に想いを伝えようと……」
私は身を乗り出していた。
ゆたか「告白……ですね……」
かがみ「うんん、出来なかった……」
悲しそうな顔になるかがみ先輩。ふられちゃったのかな。
かがみ「告白……それどころか呼び止める事すら出来なかった……出来なかったのよ、何も……」
ゆたか「出来なかった……」
かがみ「そう……これで私の話はお仕舞い、ふふ、ばかばかしいでしょ……」
笑顔で話すかがみ先輩……でもそれは作り笑顔だって直ぐに分った。
その時、かがみ先輩の目から光る物が一筋……涙?
伝えられなかった想い……

 かがみ先輩はスイーツを食べ始めた。
かがみ「美味しい!! ゆたかちゃん、食べてみて、これおいしわよ……
ゆたか「は、はい……」
食べてみたけどあまり味は感じなかった。
短かったけどとっても感情が入っていて私の心に響いた。

かがみ「ぶぅ〜 食べた食べた、これだけ食べたのは久しぶり……」
食べ終わったかがみ先輩はさっきまでとは打って変わって晴れ晴れとした笑顔だった。
ゆたか「私もです……」
かがみ「なんか話したら胸の奥につっかえていた物が取れたようなきがした、もっと早く話しておけば良かった、実はゆたかちゃんに話したのが初めて、つかさにも話していない」
ゆたか「つかさ先輩にも……」
かがみ「さて、すっきりしたし、出ようか?」
ゆたか「え……は、はい……」
373 :七夕 5/4 [saga sage]:2014/07/06(日) 00:07:30.10 ID:jN24m8os0
 店を出るとかがみ先輩は空を見上げた。
かがみ「鬱陶しい天気ね……」
ゆたか「今日はご馳走様でした……すみません奢ってもらえるなんて」
かがみ「いいのよ、つまらない話に付き合ってくれたのだから」
ゆたか「つまらないなんてとんでもないです、その経験がいつかきっと役に立つと思います」
かがみ「……ふふ、そうなれば良いけどね、これからの予定は?」
ゆたか「特に無いです」
かがみ先輩は腕時計を見た。
かがみ「私はこれからつかさと会う約束をしているから帰るわ」
つかさ先輩か……
ゆたか「今度つかさ先輩に会ってさっきの質問をしたらどうなるかな……」
かがみ先輩には聞こえないと思っていたけどしっかり聞いていた。
かがみ「さぁね、私もそんあ質問をしたことないから分らない……」
ゆたか「あ、すみません独り言でした」
それでもかがみ先輩は話し続けた。
かがみ「私も興味あるわ、普通に考えて一人や二人、好きな人が居ても不思議じゃない、あとはどうしたか……」
ゆたか「告白していたりして……」
かがみ先輩はクスっと笑った。
かがみ「そうそう、ゆたかちゃん、貴女はどうなの?」
ゆたか「わ、私ですか!?」
なんだか急に身体が熱くなってきた。自分でも顔が赤くなるのが分るくらいだった。
かがみ「私に喋らせてゆたかちゃんは内緒なんてずるいぞ!」
笑いながら話すかがみ先輩。
かがみ「今度会ったら話してもらうわよ」
私もかがみ先輩と同じだった。何も出来なかった。その一言が出なかった。
再びかがみ先輩は空を見上げた。
かがみ「明日、晴れると良いわね」
ゆたか「そ、そうですね……」

 気付くともう駅の前に着いていた。
かがみ「途中まで一緒に行きましょ?」
ゆたか「あ、私、未だ買い物が終わっていないので……」
かがみ「そう……それじゃまたね」
ゆたか「はい……」
かがみ先輩は駅のホームへ消えて行った。

 本当は買い物なんて無かった。このままかがみ先輩と一緒に帰っても良かった。
だけど出来なかった。
言えなかった。かがみ先輩と同じでした……そのたった一言が言えなかった……
ずるい……笑って言っていたけど私にはとても辛かった……一緒になんか帰れない……
最初にこの話を持ち出したのは私なのに……
頭に冷たい物を感じた。雨が降ってきた。私は走って改札口へ移動した。
そして頬が濡れていた。これは雨じゃない……
かがみ先輩が店で流した涙の本当の意味が分ったような気がした。

私はしとしとと降る雨をぼんやりと眺めていた。
そういえばかがみ先輩はしきりに天気を気にしていたけど、どうしてだろう?
明日は月曜日で平日……なにかあったかな。
ふと周りを見回した。改札口の横に笹飾り……
明日は七夕……だから天気を気にしていたのか。かがみ先輩って伝説とか信じないと思っていたけど……
あれ……七夕……
思い出した。
……七夕はかがみ先輩の誕生日……
お姉ちゃんが買い物に私を誘ったのは……かがみ先輩とつかさ先輩にプレゼントを買うためだった?
そうと分れば私も二人に何か贈ろう。何がいいかな……
そうだ。
折り畳みの傘を差した。そして来た道を戻った。

 アンティーク風のお店。かがみ先輩と会った売り場へ向かった。
手にと取ろうと思っていた物はまだ置いてある。それは髪飾り。
かがみ先輩もつかさ先輩もリボンはもう似合わない。この髪飾りなら二人とも似合いそう。
私は二つの髪飾りを包んでもらった。

明日は私もお姉ちゃんと一緒に二人に会おう。それで今度こそちゃんと話そう。
私は心の中でそう誓った。


374 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/06(日) 00:11:38.31 ID:jN24m8os0
以上です。 全部で5レスでした。

かがみとすかさの誕生日ネタです。
これで4作品目かな。同じ名前の作品がありますがこの作品とは何の関係もありません。

ゆたかメインは初めてかもしれない。
かがみとつかさ、どっちを出そうか悩みましたが今回はかがみを選びました。

すぐに纏めるので報告は避難所のみにします。
375 :たな☆ばた [sage]:2014/07/06(日) 06:48:22.31 ID:YwJEPO0Eo
 蒸し暑い初夏の夜。着信メロディが鳴る。
 今となっては、古くさいと言われる曲。自分にとっては、そんなに古いとは思ってはいないけれど。
 この曲を良く聴いていたあの頃と、現在との年月の隔たりを考えると、まあ、やっぱり世間的には古くさいのだろう。

 携帯端末――もう携帯電話などと呼ぶ人もいない――樹脂製の機械の画面をタッチして。
「はい、もしもし」
「あ、もしもし、おねえちゃん?」

 なつかしい、妹の声を私は聞く。

 産まれた頃から一緒だった双子の姉妹。
 進学して。就職して。結婚して。子供たちを産んで。
 幸運ながら、大過なく、姉妹揃ってそういう人並みの幸せを歩んでいる。

 ――おたがい、別々のばしょで。

 進学とか、就職とか、結婚のあいだには、引っ越しなんていうものがあったから。
 住む場所が変わる。遠くの場所へ移り住む。それもまた、よくある話しで。

「ひさしぶり、変わりない?」
「うん、なにもないよ、そっちは?」

 こっちも、なにもないよ。
 ――だったら、それはなにより。元気でいるのなら、なにも言うことはない。
376 :たな☆ばた [sage]:2014/07/06(日) 06:49:19.90 ID:YwJEPO0Eo

 お互いの、他愛のない近況報告。
 子供のころのように、長電話は、もうしなくなった私たち。
 ある程度、話しが区切れたら。
 もう家事や家族のこと、自分の居る家のことに意識が行ってしまう。

 お互い変わりなく元気なら、もうそれでいいと思えるのだから。
 だから、電話で話すことも、そんなに多くはなくなっている。

 今日。この日に、私に電話をかけている彼女の顔を思い浮かべる。

 てるてる坊主をつくったり。
 おひな様を飾ったり。
 月見団子をつくってみたり。
 クリスマスツリーを飾ってみたり。

 私たちの住む場処には、そういうお祭りごとや、おまじないごとをする機会が、一年のあいだにいくつかあって。

 そして今日も、そんな日だから。

 ――7月7日の、蒸し暑い初夏の日に、お互いの声を聞きたくなる。

 天の川の隔たりを越えて、いつか出会うふたりのお伽話というわけではないけれど。
 お互いの距離は離れていても。同じ空に浮かぶ天河を見上げて。

「プレゼント、ちゃんと届いてる?」
「うん、ありがとう。そっちには、届いてる?」
「うん、ちゃんと届いたよ、ありがとう」

 誕生日、おめでとう。
 距離を超えて。これまで生きてきた年月の道のりを噛みしめて。

 私たちは、またひとつ、歳をとってゆく。

 短冊には、ふつうに家族の幸せを願う一文を書いておいたけど。
 
 来年も、再来年も。
 変わりなく、歳をとってゆけますように。

 直接は書かない願い事を、天の川にたくして、私は彼女に語りかけた。

 じゃあ、またね。


 END.
377 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/06(日) 07:16:01.12 ID:YwJEPO0Eo
さすがにタイトルてきとー過ぎたので
タイトルは「7月7日の、蒸し暑い初夏の日に」
でお願いします
378 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/06(日) 08:47:04.33 ID:jN24m8os0
>>377

纏めました。

やっと自分以外の作品を見た。
読ませていただきました。

感動かほのぼのか迷いますね。
短編ほのぼのに決めました。
「これじゃ嫌だ」であればご希望のカテゴリーをお知らせください。
379 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/07/13(日) 16:15:00.99 ID:KUTQmI3w0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
5レスくらい使用します。
380 :こなたの旅 27 1/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:17:18.48 ID:KUTQmI3w0
27

 あれから半年以上が過ぎた……
元に戻った。かえでさんは出産が近いので相変わらずつかさが代わりを務めている。
それ以外は普段と全く変わらない生活……
いや変わった……
つかさ「こなちゃん」
仕事が終わり、私が更衣室に入るのを呼び止めた。珍しい。
こなた「ん、今日は早番だよ?」
私のタイムシフトを間違えた。そう思った。
つかさ「知ってる……」
私がそのまま更衣室に入るとつかさも後から直ぐに入ってきた。
こなた「どうしたのさっきから、何か用でもあるの?」
つかさ「う、うん……」
もじもじしてはっきりしない。私は構わず着替え始めた。
つかさ「こなちゃん……かえでさんの事黙っていたの……怒ってる?」
こなた「……ほぇ、もう半年も経つのに何を言ってるの?」
着替えながら聞き返した。
つかさ「最近のこなちゃん……少し変わったから……」
こなた「変わった?」
つかさ「う、うん……いつもの元気がないような気がして、それに何となく……そっけない様な……」
元気がない。そっけない……
こなた「そうかな、私は普段と何も変えていないけど……つかさの気のせいだよ」
つかさ「う、うん……ごめんね、邪魔しちゃって……」
つかさは部屋を出ようとした。
こなた「ちょっと待って」
着替え終わった私はつかさを呼び止めた。
つかさは振り返った。
こなた「もし、かえでさんと井上さん、二人同だったらどっちに薬を渡した?」
つかさ「えぇ??」
つかさは凄く困った顔をした。そして目を上下左右に動かしながら考えている。
つかさの反応はだいたい想像できた。それでもこんな質問をするのだから私ってそうとうSなのかもしれない。
こなた「別に考えなくてもいいじゃん、私なら迷うことなくかえでさんを選ぶよ」
つかさは悲しそうな顔をして俯いた。
こなた「優しいね、つかさは……井上さんは会ったことも話したこともない赤の他人、かえでさんを選んでも誰も文句は言わないよ」
つかさ「で、でも……」
こなた「そうだよ、つかさは内緒にしていた、だから私は神崎さんをみゆきさんの居る所に連れてこられた」
つかさがかえでさんの容態を話していたら私はどんな作戦をしていただろうか……きっともっと冷酷な……
そんな私の思惑とは裏腹に驚いた顔で私を見るつかさだった。
こなた「ほらほら、そう言う事だから私は全然怒っていない」
つかさ「うん……でも、なんだかこなちゃん……変わったよ」
変わったって何が変った?
こなた「それよりかえでさんが出産したら戻ってくるよ、つかさはどうするの?」
つかさ「私のお店に戻りたいけど……ひろしさんがお父さんの後を継ぎたいって……」
こなた「それならもうお店畳んじゃってこのままこの店に残ればいいじゃん?」
つかさ「そうしたいけど……かえでさんが……」
こなた「かえでさんが反対するわけないじゃん、もし反対したら、私も店を辞めちゃうって言うから」
つかさ「そ、そんな事して……大丈夫なの?」
こなた「そしたらつかさと二人で新たに店を出す……」
つかさはまた驚いた顔で私を見た。
こなた「……なんちゃってね、その時になったら考えればいいじゃん?」
つかさ「ふふ……そうだね……」
つかさが笑った。そういえば半年前からつかさが笑ったのをはじめて見たような気がした。
そして私も釣られるように笑った。
つかさ「そうそう、今日お姉ちゃんと会う約束してたでしょ?」
こなた「え???」
つかさ「先週の約束をすっぽかしたから注意するように言われたの」
すっかり忘れていた。
こなた「えへへ……ゲーセン寄ろうとしてたりして」
つかさ「今日は大丈夫だね!」
こなた「それじゃお先に!!」
つかさ「お疲れ様〜」
私は店を後にした。
381 :こなたの旅 27 2/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:20:07.34 ID:KUTQmI3w0
 かがみの法律事務所……
先週もそういえば約束した場所はそこだった。いったいかがみは私に何の用があるのかな。つかさに確認させるほど大事な話なのだろうか。
約束だけして要点を言わないなんてかがみらしくない。
事務所に入るとかがみの事務室に通された。
通されたけどかがみの姿が見えない。椅子に座っても居ないし……
『ドカン!!』
もの凄い勢いでドアが開いた。顔半分が埋まるくらいの大量の書類を抱えてかがみが入ってきた。
かがみ「ちょっと、突っ立ってないで手伝え!!」
私は黙って半分くらいの書類を取った。かがみは自分の机に書類を置き、その上に残りの書類を積み重ねた。
かがみ「ふぅ〜」
かがみは自分の手で肩を揉みながら私をじっと見た。
『バシッ!!』
いきなり私の背中をひっぱ叩いた。
こなた「痛いよ!!」
かがみ「なにしけた顔してる、らしくないわよ!!」
こなた「らしくないって、私がどうしたららしくなるのさ!」
かがみは私を指差した。
かがみ「普段のあんたならそんな口答えしないわよ、動じないで「あ、そう?」なんて聞き流す」
……確かにそうかもしれない。
かがみ「そうね、この前のあんたのした事は元気だま作戦と違って数字では出てこない、人情に訴える作戦、しかも死体とは言え人間を一人傷つける……」
こなた「もうその話は止めて……」
かがみは言うのを止めた。だけど直ぐに話した。
かがみ「神崎さんを連れてきた時の勢いはどうした?」
こなた「……」
私は何も言えなかった。
かがみ「後悔しているのか……そんな感じね……」
こなた「今その作戦をしろって言われても、もう出来ない……」
かがみ「どう言う心境の変化があったか知らないけど、少し安心した」
かがみは笑顔で椅子に座った。そしてさっき持ってきた書類を一枚手に取って見た。
かがみ「あんたは貿易会社の情報をネット経由で暴露した、大手新聞社、雑誌会社、そして神崎あやめの働く出版社……だけどどれ一つとして動いた会社はなかった……そうよね?」
私は小さく頷いた。かがみは更にもう一枚書類を手に取った。
かがみ「動いたのは只一人、井上浩子さん……彼女が各界に働きかけて貿易会社の不正を告発した……そして今や何カ国も巻き込む国際問題にへと発展している……
    あんたの機転が功を奏した、やるじゃない」
こなた「それは……みゆきさんの秘薬が完成していたから、そうでなければ井上さんはそんな事できなかったよ」
かがみ「そうね……」
こなた「はは、これでみゆきさんは億万長者だよ、すごいね」
かがみは書類を置き立ち上がった。
かがみ「それがそうでもない」
こなた「そうでもないってどう言う事?」
私は耳を疑って聞き返した。
かがみ「薬は未完成品で製品として認められなかったそうよ、それでみゆきの研究チームは解散、研究員も解任された」
こなた「う、嘘……なんで?」
かがみ「みゆきが貿易会社に融資をしたのが発覚してね……」
まさか……なんで……理解出来ない。
こなた「……そんなの関係ないじゃん、それに融資したのは告発される前の話だよ……うんん、そんなのあの薬の価値と比べれば屁みないたもんだよ」
かがみ「そうね、屁みたいなもの、だけど世間は、社会はそう見なかったって事よ」
淡々と話すかがみを見て居ても立ってもいられなかった。
こなた「あの薬の効力はかがみが一番知ってるでしょ、かえでさんだって、お腹の赤ちゃんも、井上さんも救ったんだよ……」
かがみ「私の脳腫瘍を完治させた……凄い薬だわ、まさにお稲荷さんの知識と技術には敬服する以外にない」
こなた「……私だ……私がみゆきさんに融資なんかさせたから……」
かがみは首を横に振った。

382 :こなたの旅 27 3/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:21:20.53 ID:KUTQmI3w0
かがみ「いや、こなたのせいじゃない、たまたま都合の良いネタがみゆきにあっただけ、例え融資をしなくても別の理由で同じ結果になっていた」
こなた「何で、どうして?……」
まったく理解ができなかった。
かがみ「早すぎたのよ……」
こなた「早すぎた?」
かがみ「あの薬は数世紀の時間を先取りしたような物、そんな物が出回ったらどうなる、現在流通している薬の7,8割がゴミになってしまう
    製薬業界は大混乱よ、人類にあの薬を受け入れる準備はまだなかった、それだけよ」
こなた「……それだけの理由で?」
かがみ「それだけの理由があれば充分なの、人類が選んだ選択よ」
こなた「私はそんなの選んでない……」
これが無意識の、自分の意思とは関係ない選択ってやつなのか、私達だけのちからじゃ止められない選択……
かがみ「ワールドホテルのけいこさんにしても、貿易会社の経営者にしてもそれを知っていたからお稲荷さんの知識を世に出すのに選別していたのよ、、
    人類が受けいれらるような基本的な知識だけを利用していた、だから同じようなデータになったのよ」
こなた「私には理解出来ないよ……」
かがみはまた椅子に座り書類を見だした。
かがみ「だから私は貿易会社の弁護を引き受ける事にした」
こなた「へ、どうして、あんな会社の弁護を?」
かがみ「こなたが消したデータ以外にまだお稲荷さんのデータを隠し持っている……それを全て消すため、弁護を引き受ければあの会社の情報を全て閲覧できる」
こなた「そんな事して大丈夫なの……」
かがみ「もちろんバレれれば私の弁護士としての生命は絶たれるわね、だからこなたを呼んだのよ、あんたなら分からないように消せるでしょ?」
こなた「出来るけど……どうしてそんな事を」
かがみ「私達姉妹の夫は全員お稲荷さん、夫はもう人間になっている、そして子供達も居る……私達家族を守る為よ……そんな理由じゃ納得できんか?」
こなた「うんん……そうじゃないけど……」
私はポケットからメモリー板を取り出した。かがみはそれを見た。
こなた「それじゃこれも要らないって事?」
かがみ「要らない……出来れば処分して欲しい、と言っても宇宙船の墜落に耐えて更に4万年も地中に埋まって
壊れないような物を処分なんてできない、だけどあんたが持っている分には
    私はなにも言わない、めぐみさんからもらったUSBメモリーも含めてね……」
私はメモリー板を仕舞った。
かがみ「それで、返事は、引き受けるの、引き受けないの?」
こなた「引き受けるよ……かがみが捕まる所なんて見たくないよ……」
かがみ「ありがとう……」
かがみの素直なお礼を見たのは初めてかもしれない。

Bかがみ「ところでこの地球にお稲荷さんは他に居ないのか?」
こなた「うん、メモリー板に反応があるのは神崎さんだけだよ」
かがみ「力を消す装置を使っているお稲荷さんがいたら分らないじゃない?」
こなた「うんん、狐に戻った時はあの装置は意味ないって言ってから、少なくとも現役のお稲荷さんは神崎さんだけだよ」
かがみ「そうなの……ちょっとは期待していたけど、やっぱり真奈美さんは……」
こなた「微かな希望を打ち砕く訳じゃないけど、つかさと神崎さんが握手をした時、神崎さんはつかさのイメージを見たって、特に首の傷が致命的だった」
かがみ「……あの時ね……装置のスイッチを入れるの忘れたって……お稲荷さんでも忘れる事あるのね……」
こなた「それじゃ用が済んだら帰るよ」
私は部屋を出ようとした。
かがみ「待て、相変わらず薄情だな……少しは付き合え」
こなた「いや、忙しそうだし……」
かがみ「今日の仕事は終わった」
かがみは書類を置いて立ち上がった。
こなた「い、いや、じゃなんでそんな大量の書類を……見る為じゃないの?」
かがみは笑いながら私よりも先に部屋を出た。

383 :こなたの旅 27 4/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:22:31.89 ID:KUTQmI3w0
 かがみに連れられて居酒屋に来た。
居酒屋だけあってレストランかえでとは雰囲気がちがっていた。
かがみ「どうこの店、個室もあって雰囲気でるでしょ?」
こなた「う、うん……それより良いの、ワインもう2杯目だよ、酔い潰れても送ってあげないよ……」
かがみ「酔っている様に見えるか、まだ2杯しかでしょ!!」
いや、もう充分酔っている……
かがみ「そうそう、神崎あやめさんを殺したとされる殺し屋が捕まったわよ、国際手配されていてかなりの大物みたいね……決め手は神崎あやめの携帯電話……」
こなた「神崎さんの仲間も殺されたって言ってた」
かがみ「ふ〜ん」
かがみ目が細くなりにやけた。
こなた「な、なに、急にそんな顔して……気持ち悪いよ……」
かがみ「事務所に来てから神崎さん、神崎さんって、よくその話をするわね」
こなた「そんな話してないよ……」
かがみ「顔が赤くなっているじゃない、白状しなさいよ」
こなた「白状ってなに、お酒が入れば赤くなるよ……」
今日はやけに絡むな……
かがみはおつまみを一口食べた後私に近づいた。
かがみ「あれから何度も会ってるんでしょ?」
こなた「会ってるけど?」
かがみ「何処までいったのよ、」
こなた「何処までって……」
かがみは私の背中を叩いた。
かがみ「なに照れてるのよ、隠すような歳かよ、あんたが神崎さんを気にしているのはバレバレだ」
こなた「……」
そんな風に見えていたのか。だけど言っている事はだいたい合っていた。
かがみ「私は別に構わないと思う、お稲荷さんなら浮気は絶対にしないし」
こなた「いや、無理だよ……」
かがみ「何が無理なのよ!!」
かがみは迫ってきた。
こなた「冷酷であざとい……って」
かがみ「冷酷、あざとい……何よそれ?」
こなた「作戦をする時、神崎さんにそう言われた……好きとか嫌いとか以前の問題だよ……」
かがみは自分の席に戻りワインを飲み干した。
かがみ「あんたギャルゲーとかしている割にまったく分かってないわね、言葉通りの意味じゃないわよ」
言い方がカチンときた。私は立ち上がった。
こなた「もう帰る……」
かがみ「まぁ、待て、分らないなら教えてあげる、神崎さんはあんたの作戦に協力したでしょ……」
こなた「したよ……それがどうかしたの」
かがみは溜め息を付いた。
かがみ「これだけ言ってまだ分らないのか……鈍いわね……とにかく彼はまんざらでも無いって事よ、諦めるな」
こなた「諦める……何を?」
かがみは私をじっと見た。
かがみ「あんたを見ていると昔のつかさ……いや、ひよりを思い出す、まったく同じだ」
こなた「さっきから何言っているのか分らないよ……」
かがみ「だったら考えろ、気付いたら手遅れになるぞ」
こなた「かがみ……酔ってるよ……」
かがみ「うるさい、今日は最後まで付き合ってもらうわよ」
こなた「わかったよ……」
なんか非常にハイテンションのかがみだ。しょうがない今日は付き合うか……

384 :こなたの旅 27 5/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:23:55.14 ID:KUTQmI3w0
 そういえばこうやって飲み会をするのは久しぶりかもしれない。
それもかがみと二人だけなんて学生時代まで遡らないとしていないかもしれない。
職場ではちょくちょくやっている。つかさやあやのは毎日のように会っているから気にもしていなかった。みゆきさんやみさきちにしてみれば一年に数回程度だ。
かがみにしてもつかさに比べれば少ない。時間が合わない。特に社会人になってからはその一言で会わなくなった。ゆたかやひより、みなみに関しても同じだ。
たまにはこんな時間が有ってもいいかな……
かがみ「みゆき……」
酔い潰れたかがみが寝言のように一言。みゆきさんの名を口にした。
もしかしたら薬が認められなかったのを一番悔しくおもっているのはかがみじゃないかな。現代の医学では治せない病気をたった一晩で完治したのを目の当たりにしている。
しかも自分の身体で……
だからこそみゆきさんもあの薬を再現しようと頑張ったのかもしれない。
今度みゆきさんと飲みにいくかな。

こなた「ここでいいよ、止まって」
車はゆっくりと止まった。
運転手「990円です……」
私は1000円を運転手に手渡した。
こなた「おつりはいいから」
私はかがみを肩に抱くとタクシーを降りた。
『ピンポーン』
呼び鈴を鳴らすとすぐに出てきた。
ひとし「泉さん……あ、かがみ、かがみじゃないか……」
私とかがみを見て少し驚いた顔をした。
こなた「よせば良いのに、飲みすぎちゃったみたいで……」
ひとしさんは呆れた顔でかがみを見たがすぐに近づいてかがみを抱き寄せた。
こなた「それじゃこれで……」
ひとし「介抱して疲れたでしょう、少し休んでいけばどうだい?」
こなた「でも、もう遅し迷惑でしょ?」
ひとし「子供達はもう寝てしまった、問題ない」
こなた「それじゃお言葉に甘えまして……」

385 :こなたの旅 27 6/5 [saga sage]:2014/07/13(日) 16:24:54.83 ID:KUTQmI3w0
 ひとしさんはかがみを今のソファーにそっと寝かすと毛布をかけてあげた。
ひとし「少しここで休ませる……お茶でいいかな?」
こなた「え、長居する気はないので……」
ひとし「来たばっかりでそれはないだろう」
ひとしさんは台所の方に向かいすぐに戻ってきた。ひとしさんは私にお茶お出すとかがみの方を向いて心配そうな顔になった。
ひとし「普段はこんなにハメを外す事はないんだけどな……」
こなた「まぁ、いろいろあったから……」
ひとしさんは私の方を見た。
ひとし「君の方がいろいろあっただろう、仲間が迷惑をかけたみたいだな、礼を言わないといけない」
仲間って神崎さんの事を言っているのかな。
こなた「うんん、それよりかがみがいろいろやらかそうとしてるけど、良いの?」
ひとし「……貿易会社の弁護の話か?」
私は頷いた。
ひとし「さすがかがみ第一の親友だな、話したのか……私は反対したのだが彼女がどうしてもって言うから根負けしてまったよ……」
こなた「反対したの?」
ひとし「ああ、第一危険すぎる、それに情報を消さなくとも大半の人間は真実とは見ないで自然に消されるもの……」
こなた「それじゃ何で……」
ひとし「それは君だよ、泉さんが行った一連の行動が彼女を動かしたみたいだな、「こなたには負けられない」……そう言っていた」
ひとしさんは再びかがみの方を向いた。
こなた「一つ聞いていいですか?」
ひとし「ん、どうぞ?」
ひとしさんはかがみの方を向いたまま答えた。
こなた「……かがみを何で好きになったの?」
ひとし「聞いていないのか?」
こなた「ひろしに護衛を頼まれて守っているうちに好きになったって……それくらいしか、かがみはそう言う話はあまりしないから……」
ひとしさんは私の方を向いた。
ひとし「そうだな、それで正解、ほぼ全てを話していると言って良い」
こなた「……かがみのどこが気に入ったの?」
ひとし「……急にそう聞かれてもね……」
ひとしさんは困った顔をした。話を変えよう。
こなた「故郷の星に帰りたくなかったの?」
ひとし「故郷か……故郷はこの地球だ、私はここで生まれてここで育った、真に故郷と呼べるのはけいこ、めぐみ、すすむくらいだろう」
こなた「神崎さんは?」
ひとし「……ああ、彼もそう、彼は1万年前、私達の集団から離れた……そう聞いている」
こなた「他に離れた人はいたの?」
ひとし「10名程同じ頃別れた、彼らは東に向かった、恐らくシベリアから北米を経て南米に行ったと思う、そこで知識を先住していた人類に教えたに違いない」
10名も南米に……でもメモリー板には何の反応も無かった。
こなた「で、でも」
ひとし「……そう、彼らはとっくに亡くなったみたいだな……私みたいに人間になったか、争いに巻き込まれたのか、自然災害だったか……今となっては知る事はできない」
こなた「ごめんなさい、変な事聞いちゃって」
ひとし「いや、別に構わない、すべて私の生まれる前の話だ、気にしていない、そう考えると神崎が生き残ったのは奇跡に近い、たった一人で……」
こなた「そうですね……」
かがみ「う〜ん……」
かがみが唸った。
こなた「あ、かがみが起きるとまた騒ぎ出すから帰ります」
ひとし「ふふ、そうだな」
ひとしさんは玄関の外まで見送ってくれた。

呼んだタクシーが目に前に止まった。
こなた「これで失礼します」
ひとし「そうそう、かがみの何処が好きになったって話だけど……理由は無い、ただ好きになった……」
こなた「ただ好きになった……それだけ?」
ひとし「言葉では形容しにくくてね、そう言うしかない……」
タクシーのドアが開いた。もっと聞きたかった。だけど……
こなた「それじゃ……」
私はタクシーに乗り込んだ。

 かがみが言っていた。神崎さんの話ばかりするって……ひとしさんと話したときも結局神崎さんの話しになってしまった。
何でだろう……
私がひよりと同じだって……
結局それもかがみから詳しく聞けなかった。
何だろう。この変な気持ちは……

つづく
386 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/13(日) 16:26:55.55 ID:KUTQmI3w0
以上です。 全部で6レスでした。

行と文字数の制限が合わなくて使用レス数が合いません

またすぐに纏めるので避難所のみの報告とさせていただきます。
387 :かがみのSS講座 [saga sage]:2014/07/13(日) 22:26:56.50 ID:KUTQmI3w0
つかさ「う〜ん」
かがみ「どうしたのよ、思いつめちゃって……悩み事?」
つかさ「うんん、そうじゃなくって……小説を書こうかなって思って……」
かがみ「凄いじゃない、出来たら読ませてよ」
つかさ「う〜ん、まだ何も出来てなかったりして……」
かがみ「そうなの、でも考えているだけじゃ出来ないわよ、今何をしているのよ?」
つかさ「え、えっと、物語を、ストーリを大雑把に……」
かがみ「そうね、それも良いけど……ストーリを先に考えると詰まっちゃうわよ」
つさか「え、でも物語がないと何も進まない様な気がするけど……」
かがみ「そこそこ、そこが落とし穴なのよ、物語はどうやって進むの?」
つかさ「えっと、えっと、時間が進むから……」
かがみ「違う、物語は人が作るのよ、出会い、別れ、愛、憎悪、友情……etc.」
つかさ「人?」
かがみ「そうそう、だからストーリを作るんじゃ無くて登場人物、つまりキャラから作っちゃうのよ」
つかさ「キャラ?」
かがみ「好きな人、嫌いな人でもなんでも良いの、性格や特徴や背景を決めちゃうの、そうするとそのキャラが自然に物語を作ってくれる」
つかさ「え〜そうかな、難しいよ……」
かがみ「身近な人でも、既にある物語の登場人物でもいいわよ、特に既にある物語のキャラを使ってストーリを書くのをSS(サイドストーリ)
    って言うのよ」
つかさ「SS……」
かがみ「つかさが好きな漫画のキャラを自分の好きなように動かすのよ」
つかさ「えっと……なんとなく分かった」
かがみ「頑張れ、つかさ!」


一週間後

かがみ「出来た?」
つかさ「できた!!」
かがみ「どれどれ……かがみとみゆきが……####♡♡……むぅ……なによこれ、私とみゆき!!?」
つかさ「お姉ちゃんとゆきちゃんをモデルにしたら……こんなになっちゃった」
かがみ「こんなにって……それは百合って言ってね(まてよつかさがそんな事を知っているはず無い、っとなれば……)」
かがみ「私の他にだれか助言を受けた?」
つかさ「うん、こなちゃんとひよりちゃんに……続きが見たいって言うから考えていた所……」
かがみ「……あの二人、余計な事を……」
つかさ「お姉ちゃんの言うように自由に動かすと……」
かがみ「もう良い、やめい!! (あの二人只じゃおかない)」


こなた「うひ」
ひより「どうしました?」
こなた「い、いや、何か背筋がゾクゾクっと寒気が……」
ひより「夏風邪っスか……それよりつかさ先輩にあんな才能があるとは……」
こなた「そうでしょ、そうでしょ、私の目に狂いはないのだよ、あとはこれをひよりんが漫画にすれば……」
ひより「次回のコミケはいただきッス!!」
こなた「うんうん」
ひより「!!っひ!!」
こなた「どうした、やけに顔が青ざめてるね、ひよりんこそ夏風邪じゃない?」
ひより「う、後ろ……後ろ……」
こなた「うしろ?」
……
……
こなた「ひぃ〜か、かがみ、……何か御用でしょうか?」
かがみ「……つかさの書いた物よこしなさい!!」
こなた「あれは、も、持ってないよ……ね、ねぇひよりん?」
ひより「え、ええ、そ、その様な物は……」
かがみ『ギロリ』(ひよりを睨む眼)
ひより「あわわわ、すみませんここに有ります」
こなた「ば、ばか、そんなにあっさり……」
かがみ『ギロリ』(こなたを睨む眼)
こなた「……ごめんなさい……」

おわり
388 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/13(日) 22:33:25.79 ID:KUTQmI3w0
ここまで纏めた。
389 :つかさのSS講座 [saga sage]:2014/07/24(木) 22:19:03.51 ID:R5VOOiG80
こなた「う〜ん」
つかさ「どうしたの、何か考え事?」
こなた「つかさか……いや、かがみがもうつかさにSSは書かせないって言うから自分で作ろうとおもったんだけど……」
つかさ「手伝えなくてごめんね、お姉ちゃんあんなに怒ったの初めて見た……」
こなた「キャラを最初に作るなんて言ってたけどさ、自由すぎてどう動かしていいのか分らないよ……」
つかさ「それはお姉ちゃんのアドバイスだけど……私はとっても参考になったよ」
こなた「キャラを自然になんか動かないよ……」
つかさ「ストーリを考えないと続かないと思うよ」
こなた「起承転結って言うやつでしょ……よけいに難しくなる……」
つかさ「難しくかんがえるから難しくなっちゃう、もっと簡単に、起承転結って四コマ漫画だよ」
こなた「四コマって……」
つかさ「どんな長い物語も作り方は四コマ漫画と同じ」
こなた「う〜ん、難しいよ、始まりをどうする、話を続けてどんでん返し……そしてラスト……」
つかさ「いっぺんに作ろうとするから混乱しちゃう、私の場合はね物語の最後の場面を思い浮かべるの……そうするとね、
    物語が自然と浮かんでくる、山の頂上を見ればあとは登るだけ、それにね物語がどんなに脱線しても最後が分ってるから
    ゴールに向かって行ける……道がゴールに向かっているからて迷子にならないんだよ」
こなた「起承転結の桔から考える……のか」
つかさ「私の場合だから参考にならないかな……たまに最後のつもりが作っていくうちにその先が思い付いたりするから……あまり良い方法じゃな
    いかも」
こなた「まぁ……やってみるよ」
つかさ「がんばって、こなちゃん!!」

ひより「最後を最初に考える????とんちみたいッス……」
こなた「うん、つかさがそう言ってた」
ひより「……もうこの漫画途中まで作ってしまいました……」
こなた「だからラストを考えるのだよ……ひよりはもう考えているよね?」
ひより「私は……ストーリはあまり意識しないッス、それに順序だてて作らないと分からなくなってしまいます」
こなた「だから詰まっちゃんだよ!!」
ひより「……先輩がこの出出し凄く良いって言うからこのネタに決めたじゃないっすか!!」
こなた「う〜ん……最初からやり直す?」
ひより「やり直すって、ネタはどこから持ってくるっスか?」
こなた「ひよりんは漫研の現役じゃん、そんなのいくらでもあるんじゃないの?」
ひより「い、いや、湯水のようには……」
こなた・ひより「……」
ひより「つかさ先輩に頼めませんか?」
こなた「かがみの目を盗むなんて出来っこない……」
こなた・ひより「どうしよう?」

390 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/24(木) 22:20:09.96 ID:R5VOOiG80
以上です。

かがみとつかさのSS講座、どちらも実際に自分がSSを作る際の考え方をまとめたものです。
もちろんどちらも我流なので邪道です。
でも、この方法が何かのヒントになればと思い投下してみました。
もし、これで何かいいSSを思いついたらぜひ投下して下さい。

このあと直ぐに纏めます。
391 :こなたのSS講座 [saga sage]:2014/07/27(日) 12:42:32.39 ID:RVbFgh740
こなた「やっふ〜かがみん」
いつもの笑顔で挨拶するこなた。こなたは徐に私の前に一冊の薄い本を差し出した。
かがみ「何よ、いきなりそんな物持ってきて」
内容は大体分っている。どうせ百合やら薔薇の内容に決まっている。
こなた「これを今度にコミケに出そうと思うんだけど読んでみて」
かがみ「なんで私が読まないといけないのよ」
こなた「この前つかさに書かせたのを否定されちゃったからね、これなら納得できるかなって思って……」
かがみ「納得しなかったらどうするのよ」
こなた「今回のコミケは参加しない」
何時になく真剣に語るこなた。しかも参加しないと言い切るにはそれなりの自信があるに違いない。
かがみ「内容が同じでキャラだけ変えても直ぐに分るわよ」
警告のつもりだった。だけどこなたは臆することなく私の顔の前に本を差し出した。わたしはその本を受け取った。
こなた「私が下地を作ってひよりんが漫画にしたものだよ」

 私はページを捲った。
田村さんの書いた絵が特徴を捉えている。主人公はこなた自身の様だ。
こなた「かがみがつかさにアドバイスしたのと、つかさが私に助言してくれたのを参考にして最初から作り直したんだよ」
私はこなたが話しているのを尻目にページを捲り続けた。
こなた「でもね、気付いたんだ、やっぱりなんだかんだ言っても結局読み手がどう感じるかが問題だってね、だから
    一部のコアな読み手じゃなくてもっと色んな人に見てもらいたいって、そう思いながら考えて作った
    面白いものを読んでもらいってね……」
漫画で薄い本、読むのにさほど時間はかからない。本を閉じてこなたに差し出した。
こなた「ど、どう……?」
心配そうに私の顔を覗き込むこなた。
かがみ「売れるかどうかは分らないけどコミケに出しても良いわよ……」
こなた「本当!?」
驚いた顔で念を押すこなた。
かがみ「こんなんで嘘をついてどうする」
こなた「やったー!!!」
本を受け取ると大喜びで何度も飛び跳ねた。こんなこなたを見るのは初めてだ。
こなたは私に背を向けると扉に方に向かって叫んだ。
こなた「ひよりん、やった、やったよ」
ひより「やったー」
田村さんがドアから飛び出してきた。そして二人は両手を上げてハイタッチをした。
ひより「ありがとうございます」
田村さんは深深と頭を下げた。
二人は喜びながら部屋を出た。

 本の内容は至って単純。幼い頃母を亡くした少女の想いが綴られている……ただそれだけの内容だった。
だけど涙を堪えるのが辛かった。
こなた自身の体験だったのだろうか。半分作ったとしてもそれは想像できる。
母が健在な私では作り得ない作品だった。
今頃になって涙が頬を伝っていく。慌てて涙を拭った。
田村さんの画力のせい……
私のアドバイスのせい……
つかさの助言のせい……
違う。
本を読んでいる時、こなたが言ったのを思い出した。
面白いものを読んでもらいたい……

 私もそんな物を作ってみたくなった。絵には自信はないけど、文章なら……
私はペンを手に取りノートを開いた。
そして考えた。
面白いものを読んでもらいたい。

終わり。
392 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/07/27(日) 12:43:38.45 ID:RVbFgh740
中途半端だったのしめてみました。完結です。

この後すぐに纏めます。
393 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/08/05(火) 18:48:04.32 ID:ie1qi3xSO
うおお…まだスレ生きてる…
394 :近況 [saga sage]:2014/08/05(火) 20:46:41.95 ID:Yim42x6Y0
>>393
生きていると言ってもほぼ独りでやっています。
作品がすっかり投下されなくなりました。

読んでいる人がいるかどうかも分りません(書き込みがないので)
しかしまとめサイトを見る限りゼロではなさそう。

コンクールは出来ない状態。

近況はこのくらいです。

395 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/08/11(月) 12:25:47.38 ID:IxmzLI8u0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します
5レスくらい使用します。
396 :こなたの旅 28 1/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:27:20.04 ID:IxmzLI8u0
28

こなた「ふぁ〜」
大きな欠伸……これで何回目だろう。
 今日は休日。
暇と言えば暇だ。
今日のかがみの依頼は休み。それでもって裁判の準備で忙しいそうだ。
あんな会社の弁護なんて適当でいいじゃん。そう言ったら、決まったからには全力で弁護するなんて言うし。
仮に無罪になったらどうするって聞いた。そうしたら
かがみは無罪にはならないって言う。それじゃ全力で弁護と矛盾するじゃん。
かがみ曰く、弁護士は無罪にするのが仕事じゃない。適正な罰をうけさせるのが仕事だって。貿易会社はもう既に社会的制裁を受けているから弁護する必要があるって……
確かにもう企業としての貿易会社は潰れたも同然だけど……
難しくて分らないや。
あやめさんの友人、井上さんと争う形なってしまった。本来なら私達は井上さんを支持する立場だけど……複雑だよね。
 
あやのやつかさは出勤日、遊びに行けない……
なんで今日に限って休みが合わないのかな……
テレビもこの時間帯に面白いのは放送していない。
何もする事がない。こんな時は溜まった留守録のアニメを観るけど、そんな気にはなれない。
オンゲー・オフゲーもする気になれない。ベッドに寝てボーと天井を見ている。
そういえば本棚に未だ読んでいない漫画がたまっているのを思い出した……何故か読む気になれない。
 かがみと会ってから一週間、それなり私は考えた。
考えた。何を。かがみは面白半分に私をからかっているだけ。そうだよ。
でも……あの時のかがみはからかっている様には見えなかった。
私がひよりと同じだって。何処が、どうゆう風に?
そういえばひよりはあれから会っていない。会えばそことなく聞けもするけど……あまり聞きたくないかな……
それでもかがみ言いたい事は分かった。私が神崎さんを好きだって。そう言っているのは分る。
私が……神崎さんを、お稲荷さんを好きだって?
ばかみたい。
仮に私が好きだとしても……
『ピンポーン』
呼び鈴の音がした。品物が届いたかな、、いや、最近ネットショップで何も買っていない。回覧板か何かな……
私は徐に身体起こした。
『ピンポーン』
こなた「はいはい今行きますよ」
独り言をいいながら玄関に向かった。
397 :こなたの旅 28 2/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:30:15.85 ID:IxmzLI8u0
 ドアを開けるとそこには……
ゆたか「こんにちは〜」
ゆたか「ゆーちゃん!!」
思わず昔の呼び名で呼んでしまった。
ゆたか「遊びにきたよ、いきなりで迷惑だったかな、急に時間が空いたから……」
こなた「うんん、そんな事ないよ、入って入って!!」
私は居間にゆたかを通した。
こなた「それにしても久しぶりだね」
ゆたか「うん、お姉ちゃんにお弁当を渡してから会っていないね」
こなた「あっ、そうそう、お弁当箱返さなきゃ!!」
ゆたか「うんん、あれは元々お姉ちゃんのもだから、私が卒業して此処を出る時間違えて持って行っちゃった」
立ち上がったけどゆたかがそう言うので直ぐに座った。
こなた「それにしても急だね、もう映画化の仕事は終わったの?」
ゆたか「うん、もう9割りくらい終わったから、昨日打ち上げして休暇をもらったの」
こなた「そなの、それならひよりも一緒に来ればよかったのに」
ゆたか「うんん、ひよりだけは今日も仕事、明日休みだって」
こなた「そうなんだ……」
ゆたかは辺りを見回した。
ゆたか「おじさんは?」
こなた「お父さん……お父さんは正子さんとお買い物に行ったよ」
ゆたか「正子さんと……」
こなた「ついでに映画も観るとか言ってたかな……」
ゆたかはにっこり微笑んだ。
ゆたか「ねぇ、これってデートじゃない?」
こなた「デートって、デート?」
ゆたかは何度も頷いた。
こなた「まさか、あの歳で?」
ゆたか「うんん、年齢なんか関係ないよ」
こなた「それはそうかもしれないけど……有り得ない……」
ゆたか「そうかな、そうでも無い様な、ゆいお姉ちゃんが言っていたけど、正子さんは不思議と懐かしい感じがするって……かなたおばさんに似ているって」
ゆい姉さんがそんな事言っていた?
確かにゆい姉さんは生前のお母さんに会っている。
こなた「でも、ゆい姉さんだって幼かったでしょ、そんなの覚えているかな?」
ゆたか「う〜ん、でもそう言ってたし、おじさんとそんな話しなかったの?」
こなた「そんな話なんかしない」
ゆたかはまた笑顔で話した。
ゆたか「でもこのまま仲が良ければ結婚だって、お姉ちゃん、新しいお母さんができるかも?」
私は笑った。
こなた「お父さんが正子さんと、あははは、まさか……それに今更お母さんなんて言われてもね……」
ゆたか「嬉しくないの?」
こなた「別に……」
嬉しいとか嬉しくないとか……でも、正子さんなら……なんて思ってみたりもする。
ゆたか「正子さんは何時まで此処に?」
こなた「新しい家も完成したし、来週には引っ越すかな……」
ゆたか「今まで一緒に暮らしているのに分らなかったの?」
こなた「……そこまで気にする余裕がなかったから」
ゆたかの顔が曇った。
ゆたか「ひよりから全部聞いたよ……いろいろあったって……」
こなた「そうだよ、いろいろあった……って、ひよりから聞いたの?」
ゆたか「うん」
話したのか。っと言ってもゆたかは知っても構わない。
ゆたか「みゆき先輩の話は……残念だったね」
ゆたかも知っていた。いや、これは結構大きく報道されたから普通なら気付くだろう。
こなた「お稲荷さんの知識を世に出すのが早すぎた、そうかがみが言ってた」
ゆたか「たかしさんがつかさ先輩のやさしさに最大限の礼を尽くしたのがあの薬、そうだとしたらあの薬は
お稲荷さんの知識の中でも特に高いものだったんだね」
こなた「それなら自分の物にしちゃえば良いのに、馬鹿だよ……」
ゆたかは呆れた私を諭すように放し始めた。
ゆたか「私も以前に調べた事があってね、お姉ちゃんは世界四大文明って知っている?」
こなた「そのくらいは、黄河、メソポタミア、インダス、エジプト……」
ゆたか「うん、それに中南米に栄えた文明……これも全部お稲荷さんが教えた知識が元になってる」
お稲荷さんは4万年前に地球に来た、それを考えれば想像できる。調べるまでも無い。
ゆたか「例えば……ピラミッドの建造方法は現代でも大きな謎の一つになってる、何千年も崩れない石の積み方は現代でもかなり難しい技術だって
    それを三つも造っているのに後世にその技術が伝わっていない……それに中米のマヤ文明に至っては高度な文字や天文学、
建築技術もあったのに全部放放棄したかのようにみんな忘れてしまった、それと同じ事がみゆき先輩にも起きた、私はそう考える」
こなた「……なんでそんなに沢山教えたのかな?」
ゆたか「メモリー板が見つからなかったから、人間に故郷までの通信をしてもらおうと思ったって言ってた……だけど、それも諦めたって」
こなた「誰がそんな話を?」
ゆたか「かがみ先輩とひとしさん」
こなた「ふ〜ん、でもゆたかに話して漫画のネタにされたらまずいんじゃないの?」
ゆたかは首を横に振った。
ゆたか「真実を知らない大多数のひとは只のネタだと思うから、だから私やひよりに話したと思う……逆に私達がネタにするから神話化される」
こなた「なんとなく分ったような気がした……」
昔話や神話をまさか本当だとは誰も思わないか……
ゆたか「かがみ先輩、お姉ちゃんの事すごく褒めてた、だから貿易会社の弁護を引き受けられたって」
かがみはそんな事までゆたかに話したのか。
こなた「私の作戦が中途半端だった、かがみがその穴埋めみたいな事をしている……」
ゆたか「だからお姉ちゃんも手伝ってるわけだね」
こなた「まぁね……」
398 :こなたの旅 28 3/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:31:37.97 ID:IxmzLI8u0
 ゆたかが急に私を見て微笑んだ。
こなた「な、何……急に……」
ゆたか「ひとしさんに何故かがみ先輩を好きになったって質問したって?」
こなた「え?」
なんでゆたかがそんな話を知っている。ひとしさんが話した?
……違う、かがみだ。まさかあの時起きていた?
こなた「かがみから聞いたの?」
ゆたか「うん」
ゆたかは大きく頷いた。
かがみめ余計な事を……かがみはつかさよりお喋りなのか?
そういえばつかさとひろしの時もかがみはよく私にあれこれ話していたっけ……
かがみの場合は親しい人には表裏を見せない。それは恋愛にしても同じって訳か……
ゆたか「お姉ちゃん!!」
ゆたかの顔が真面目になった。私は返事を忘れてゆたかを見た。
ゆたか「神崎さんとよく会ってるって?」
こなた「……会ってる」
ゆたか「会って何をしてるの?」
こなた「……何をって……メモリー板の使い方を教えてもらってる……すすむさんが教えてくれないから……」
ゆたか「それはね、彼の立場を勘得ると、未婚の女性と何度も会えないから、いのりさんに気を使っているの」
そうだったのか。全く気にもしていなかった……
ゆたか「それでその後はどうしてるの?」
まるで尋問をうけているようだ……
こなた「どうしてるって……お腹が空くから食事したり、買い物したり……」
ゆたか「おじさんと正子さんと同じだよ、それってデートって言うの」
こなた「だから……そんなんじゃないよ……」
ゆたか「お姉ちゃん!!!」
さっきよりも私を呼ぶ声が力強くなった。
こなた「な、何……」
ゆたか「お姉ちゃんは神崎さんをどう思っているの?」
どう思っている?
ゆたか「べ、別に……」
ゆたか「好きなの、嫌いなの?」
好きか嫌いか……そう言われれば答えは決まっている。
ゆたか「お姉ちゃんが神崎さんをなんとも思っていなければ話しはこれで終わり、だけどお姉ちゃんのその表情はそうじゃないって言っている」
こなた「ふふ、どっちでもいいじゃん……もう関係ないし」
ゆたか「関係ない……関係ないってどういう意味?」
こなた「私がどっちでも意味ないって事だよ」
ゆたか「だからそれじゃ分らない!!」
いつもの笑顔のゆたかじゃない。なんでそんなに構ってくるかな。
こなた「神崎さんは私の他に好きな人が居るって意味だよ」
これは言いたくなかった。ゆたかがあまりにしつこいから勢いで言ってしまった。
ゆたか「他に好きな人……それは誰なの?」
こなた「……神崎さんは井上さんが好きなんだよ」
ゆたか「井上さんって、井上浩子さん?」
こなた「そうだよ、だから、もう良いでしょ、もうこの話は終わり!!」
私は立ち上がり自分の部屋に行こうとした。しかしゆたかも立ち上がり私の前に回りこんで立ちはだかった。
こなた「どいてよ……」
ゆたか「それは直接本人から聞いたの?」
こなた「だから……どいて……」
私はゆたかを睨みつけた。ゆたかはどこうとはしなかった。
こなた「……聞かなくても分るよ、神崎さんは井上さんを助けようと必死になってたからね……」
ゆたか「本人に聞いてもいないのに決め付けるなんて、それじゃダメだよ」
こなた「聞く……聞くって神崎さんに井上さんが好きなのなんて聞けるわけないじゃん」
ゆたかは激しく首を横に振った。
ゆたか「ちがう、ちがう、そうじゃなくて、お姉ちゃんの気持ちを話すの」
こなた「私の……気持ち?」
ゆたかは頷いた。
ゆたか「相手がどう思っているなんて関係ない、まず自分の気持ちを言わなきゃ何も始まらないよ」
……ゆたかってこんなに積極的だったかな?
こなた「……話すって……そんなの言えないよ……」
ゆたか「……それは分る、すっごく分る……だから敢えて言うの、そうじゃないと手遅れになる、ひよりの様に……」
かがみも同じような事を言っていた。
こなた「ひよりがどうしたのさ?」
ゆたか「ひよりはまなぶさんが好きだった、だけどその気持ちを話すのが遅れて結果的にまつりさんに先を越された」
かがみが言いたかったのはその事なのかな……
こなた「だけど井上さんと私じゃ……比べたら私の方が……悪いに決まって……」
ゆたか「それを決めるのは神崎さんでしょ、お姉ちゃんじゃない、言うのは簡単だよ、言えないなら握手でもすれば嫌でも相手に伝わる、
    だってお稲荷さんだもんね、それともメモリー板を使う?、それってお稲荷さんの力を超えられるって聞いたよ」
こなた「もういいよ、ゆうちゃん……言いたい事は分かったから……」
ゆたか「本当?」
こなた「うんうん」
ここは嘘でも言っておこう。そうじゃないと永遠に説教されそうだ。
ゆたかは体を移動させて通りを空けてくれた。これで自分の部屋にいけるけどゆたかもこれ以上追求しそうにないので
戻って居間の椅子に座った。ゆたかも私の後に付いてきた。
そして椅子に座った。その時だった。左手の薬指に光る物を見つけた。
399 :こなたの旅 28 4/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:32:52.15 ID:IxmzLI8u0
こなた「それは?」
ゆたかは私の視線を追って自分の左手を見た。
ゆたか「これ?」
ゆたかはにっこり笑い左手の甲を私に見せた。薬指に指輪がはまっている。
こなた「それってもしかして……」
ゆたかは頷いた。
ゆたか「婚約指輪……」
こなた「やったじゃん、マネージャさんとか言ってた人?、……あれ、他の人は?」
ゆたか「両親やゆいお姉ちゃん、おじさんにも言っていない、身内ではおねえちゃんが最初だよ」
こなた「結婚式には必ず行くから」
ゆたか「式は当分お預け……かな、でも籍は入れるつもり……」
こなた「おめでとう……」
ゆたか「ありがとう」
こなた「ひよりより先立ったね」
ゆたか「うんん、ひよりの方が先だったりして……」
私は驚いて席を立った。
こなた「本当に?」
ゆたか「今日仕事って言うのは嘘で本当は結婚届を出しに行って……あっ!! これは内緒だよ」
ゆたかは慌てて口に人差し指を差し出してポーズを取った。
こなた「分ってるって、何れバレるだろうけど、それまで黙ってるよ」
ゆたか「ありがとう」
こなた「それにしてもダブルなんて……学生時代からは想像もつかない……」
ゆたか「そうかな……確かに最初はひよりは私とみなみの出会いから親友になるまでの過程を漫画のネタにしようと……
    うんん、実際にネタにしていた、ひよりはそういった想像力は凄いと思う、だけど一つ一つが断片的だから私が
    それを繋げて一つの物語にする、だから私達は二人で一人分の仕事をしている……半人前かも……」
こなた「いやいや、それで映画化できるほどの作品ができるのだから一人前だよ」
ゆたか「これもお稲荷さんのお陰だよ」
こなた「お陰って……唐突に……」
ゆたか「お稲荷さんの存在が私達の想像力を膨らませたのは確かだから……」
こなた「それならつかさがその最初の切欠を作ったようなもんだよ」
ゆたかは遠目になって上を向いた。
ゆたか「もし、宇宙船が事故を起こさなかったらお稲荷さんは4万年も地球に居なかった、きっと調べ終わったら帰ったよね?」
こなた「そうだろうね、元々のお稲荷さんの体は地球に合わなかったみたいだし……」
ゆたか「そう考えると私達とお稲荷さんが出会うって凄いことだよ、無数にある星の中から地球を見つけただけでも奇跡だよ、
それに宇宙の歴史を一年にすると人間の歴史なんて数秒にもならないって言うでしょ、その数秒の中で他の星の人間と出会えるなんて……」
こなた「まぁ、そうだね」
ゆたか「だからお姉ちゃんもその出会いを大事にね」
こなた「まぁ……そうする……」
なんだかゆたかに言い包まれた感じがしてならない。
それでも嫌な気はしなかった。

ゆたか「おじさん……遅いね……」
確かに遅い。もうとっくに帰ってきても言い時間だった。
ゆたか「せっかく報告しようかと思ったのに……」
左手の指輪を見ながら呟くゆたか……
こなた「いや、お父さんより両親が先じゃない?」
ゆたか「そうかもしれないけど、高校三年間も居させてもらっているから……」
ゆたかは立ち上がり帰り支度を始めた。
ゆたか「叔父さんを元気付けようと思ったけど、それも必要ないみたいだし、むしろそれが必要なのはお姉ちゃん……かな」
こなた「それは余計なお世話だよ」
ゆたかは笑いながら玄関に歩いて言った。
ゆたか「そうそう、さっきお姉ちゃんが言った事、あれは少し違うと思うよ」
こなた「さっき言った事、何?」
ゆたか「神崎さんが井上さんを好きだったって言ったでしょ」
こなた「そうだけど……」
ゆたか「神崎さんは約束を守るために井上さんを助けようとした、私はそう思う」
こなた「約束……誰と?」
ゆたかは溜め息を付いた。
ゆたか「だから……うんん確証はないから言えない、お姉ちゃん自身が確かめて……それに諦めたらおわりだから」
こなた「う、うん……」
ゆたか「それじゃ、おやすみなさい」
こなた「おやすみ……」
ゆたかは玄関を出た。
ゆたかは何を言いたかったのだろう。
私は首を傾げた。
400 :こなたの旅 28 5/5 [saga sage]:2014/08/11(月) 12:34:09.37 ID:IxmzLI8u0
 もう日が替わる時間だ……お父さん遅いな。
正子さんがこの家に来る事になって直ぐだったかな。世間体が悪いって事で結局正子さんは近所のアパートを借りて住む事になった。
でも直ぐにお父さんとよく会うようになった。
ちょくちょく家に来て掃除とかお父さんの世話をやくようになった。
ゆい姉さんもよく遊びに来るからそんな二人の姿を見てお母さんに似ているなんて思ったに違いない。
私の休日は仕事の時が多いし時間も不定期……
そういえば二人が会っている所を見たことがない。いったいどんな話をしていたのだろう。
まさか本当に二人は……
その時、玄関に人の気配がした。
そうじろう「ただいま」
帰ってきた。私は自分の部屋に忍び足で向かった。
そうじろう「こなた〜」
私を呼んでいる。私はパソコンのスイッチを入れ、ヘッドホンを付けた。
暫くするとドアをノックする音が聞こえた。私は気付かない振りをした。
ドアを開ける気配がした。私はそこで初めて気付いた振りをする。
こなた「あ、お父さんお帰り……」
わざとらしくヘッドホンを外した。でもお父さんはそれに気付かない。そればかりか何か思い詰めた顔をしている。
そうじろう「こなた、折り入って話がある……」
こなた「どうしたの、改まちゃって?」
まさか……ゆたかの言う通りに……?
私は座ったままお父さんの顔を見上げた。
そうじろう「こなたももう大人だ、私の言う事は理解できると思う……後は許してくれるかどうかが……」
こなた「前置きは良いから何なの?、こっちはゲームの真っ最中だから……」
ゲームなんかしてもいないのに白々しい……
そうじろう「そ、そうか、そうだな……」
それでもお父さんは激しく動揺していた。これはマジな話に違いない。そう確信した。
そうじろう「お父さんは……」
お父さんは緊張している。こんなお父さんを見たのは初めてだ。
自然に私も体全身に力が入ってきた。手に持っているヘッドホンを強く握っているのが自分で分った。
そうじろう「お父さんは、正子さん……神崎正子さんににプロポーズをした……」
何とななくそれは分っていた。だけど改めてそう聞かれると、どう対応していいのか分らない。
なんて言ったら良いのか……


つづく
401 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/08/11(月) 12:35:07.16 ID:IxmzLI8u0
以上です。

この後直ぐに纏めます。
402 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/08/16(土) 18:36:42.54 ID:60EY4dCO0
面白い
403 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/08/17(日) 16:37:23.40 ID:0xsBuS3H0
>>402
これは「こなたの旅」の事を言っているのか。
それともこのサイト全体(まとめサイト?)の事を言っているのか。
どちらにしても嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします。
404 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/03(水) 01:16:15.65 ID:PrxMTcjf0
保守
405 :まだ書いてない [saga sage]:2014/09/11(木) 21:23:40.50 ID:RqFM4vEx0
「こなたの旅」の作者です。
本来ならつづきを出したいところですが
忙しくてなかなか書けません。
もし待っている人がいるなら、少し時間をください。

保守兼、お知らせでした。
406 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/24(水) 20:54:45.97 ID:czL8chPy0
まだ?
407 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/25(木) 21:27:27.32 ID:ttpyUtgT0
まだです
408 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/09/27(土) 17:38:11.18 ID:t1XiuLFM0
>>405
やっと書き始めました。
もう少し時間がかかりそうです。
確約はできませんが近々投下できそう

初めて催促のコメが入った。
読んでくれている人が居て嬉しいです。
最初の「つかさの一人旅」が反応薄かったので
その続きともなるとほぼ読まれないと覚悟はしていました。
409 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/10/01(水) 00:00:01.72 ID:62i2Kr2B0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。
今回は4レスくらい使用します。
410 :こなたの旅 29 1/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:02:32.59 ID:QttFb6XO0
29

 お父さんは何て言った?
ヘッドホンが壊れるくらいの力が入っていた。私はヘッドホンを机の上に置いた。
こなた「ふふ、お父さん……エープリルフールはもうとっくに過ぎたよ……そういえばずいぶん前にも似た様な嘘を……」
そうじろう「嘘じゃない……これは本当の話……」
私の話に割り込むように話してきた。
……嘘じゃない……
お父さんの顔は真剣そのものだった。
こなた「そ、それで相手は……?」
そうじろう「受けてくれなければこなたに話さない」
なんだろうこの気持ちは……
私は立ち上がると部屋を出た。
そうじろう「何処へいく……まだ話は終わっていない……」
私は制止を無視して歩いた。お父さんが後から付いてくるのが分る。
そして……お母さんの位牌の前で立ち止まった。
そうじろう「こなた……」
お父さんもすぐ後ろで止まった。
若い頃……生前のお母さんの写真……にっこり微笑んでいる。
こなた「……正子さんってお母さんに似ている……そうゆい姉さんが言ってたみたいだね……」
私はお母さんの写真を見ながら話した。
もちろん容姿はぜんぜん似ていない。似ているのは内面的な事を言っているに違いない。
そうじろう「……それを何処で?」
こなた「つい一時間くらい前までゆたかが遊びに来ていたから……」
そうじろう「そ、そうか、ゆーちゃんから聞いたのか……」
おとうさんは私の前に移動すると座り位牌に手を合わせた。
そうじろう「こなたが神崎さんの母親を連れてきた来た時正直驚いた……知るはずも無いかなたの面影を感じて俺に合わせたのかと思った」
こなた「そんなの知らない……家を焼かれてしまったから呼んだだけ、私の友達の母親だから」
そうじろう「知らなかったのか……これも何かの縁なのかもしれない……」
こなた「もしかしてお母さんの代わりで?」
お父さんは振り返って私を見た。
そうじろう「違う、違うぞこなた、それは断じてない、かなたの代わりではない、神崎正子、一人の女性として愛しているから……決して代わりではない」
愛している……か、例え娘にでもそんなに簡単にはっきり言えるなんて……
そうじろう「お母さんを……かなたを裏切ったと言いたいのか?」
裏切り……お母さんはどう思っているのだろう……亡くなっているから聞けるはず無いもない。
それなら正子さんの亡くなった旦那さんはどうなの……?
あやめさんならどうした?
皆聞けない。
そうじろう「……こなた、これは浮気でも裏切りでもない、分って欲しい」
聞けないなら生きている人で決めるしかない。
私はどう思う……
お父さんのあの真剣な態度、正子さんは受けたって言っていた。
そうじろう「こなた……」
お父さんは涙目になっているた。
こなた「……正子さんは?」
そうじろう「アパートに送って来た」
そうなのか……お父さんは私が許すかどうか試しているのか……
私の意見なんてどうでも良いのに……
こなた「正子さんが受け入れたのならもう私の出る幕はないよ、早く家に連れてきて一緒に住んだら?」
そうじろう「い、いや……あやめさんの喪が明けてから……それに妹のゆきにも相談した、やはり娘の意見も聞かないとな……」
あやめさんは本当は5年前に亡くなっている。喪がどうのこうのは当てはまらない。
って言う事は……正子さんはお稲荷さんの話をしていないのか……
今まで娘の私が話をしていないくらいだから話せないかもしれない。
そうじろう「こなた?」
お父さんは驚いた顔をした。
でも……今はその時じゃないみたい。
こなた「ん?」
そうじろう「も、もしかして、私達を許してくれるのか?」
こなた「さっきそう言わなかった?」
お父さんは私の右手を両手で握った。
そうじろう「ありがとう、ありがとう……」
ありがとう、おとうさんは何度もそう言った。
こんなに動揺したお父さんを見るのは初めてだ。
こなた「お父さんと正子さんが結婚したら……あやめさんとは姉妹ってことになるね……」
そうじろう「……歳は同だったな……誕生日は5月1日だそうだ、彼女はこなたの姉になる……本当に残念だった、
      お父さんの所に取材に来たのは代理だったが、とても楽しい子だった……」
そう、本当は井上さんが取材に来る筈だった。急病であやめさんが代わりを引き受けた。それはまなみちゃんの演奏会の時も……
こなた「それじゃ正子さんに挨拶しに行かないと……」
そうじろう「い、いや、それはもう少しまってくれ……」
こなた「どうして、私が許したならもう何も阻む者は居ないよ?」
そうじろう「時間を見ろ、もう遅い」
こなた「それじゃ明日だね、私は早番だから夕方には帰れる、どうせ家に呼ぶんでしょ?」
そうじろう「そ、そうだが……」
こなた「それじゃ決まりだね……それにしてもどうやって正子さんを落としたの、口説いたとか?」
そうじろう「こ、こら、人聞きの悪いこと言うな、別に口説いてなんかいない、ただ自然に……」
お父さんの顔が赤くなっている……これはいじり甲斐があるってもんだ。
こなた「確かに……確かにゆいの言うとおりかなたの面影があった……しかしそれだけではプロポーズなんかしない……」
411 :こなたの旅 29 2/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:04:03.05 ID:QttFb6XO0
 その後、おとうさんは正子さんと出会った時からプロポーズするまでの話をし始めた。
他人にまったく躊躇することなく、それも嬉しそうに話している。
そう、まるでお母さんの話を私に聞かせているいる時のお父さんとまったく同じだった。
それに引き換え私は……
つかさやかがみだって、いや、私以外の皆もそうやっていた。
お父さんを見ていてなんだか勇気が沸いてきた。
そうさ、簡単だ。選んでボタンを押すだけ。いつも私がゲームでやってきたじゃないか。
そうじろう「こ、こなた」
突然微笑んだ私にお父さんは話を止めた。
こなた「うん?」
そうじろう「あやめさんの件については本当に残念という他はない、だがこなた……彼女はそうとう危険な取材もしていたそうじゃないか、
      いままでよくこなたが巻き込まれなかったのが不思議なくらいだ」
いや、思いっきり巻き込まれている。二回の潜入取材、メモリー板、いのりさんの参加、みゆきさんの薬、かがみの弁護……
私の周辺も巻き込んで大騒ぎになった。
大騒ぎになったけど……何故か嫌な感じはしなかった。
そうじろう「わ、悪かった、彼女はこなたの親友だったな、悪く言うつもりはなかった」
こなた「お父さん、あやめさんの取材を受けたでしょ……」
そうじろう「そうだった、彼女と会っていなければこなたが正子さんを招こうと提案しても賛成はしなかった」
お父さんは不思議そうに私を見た。
こなた「ん?」
そうじろう「い、いや、何ていうのか、あやめさんとこなたはどうして出会ったのかって……どう見ても接点がみつからんのだよ」
接点……
こなた「片や出版社随一の記者、片やしがないレストランのホール長、まぁどう見ても接点なんかないよね……」
そうじろう「い、いや、皮肉と捉えないでくれ、ただ純粋にどう出会ったか聞きたかっただけで……」
慌てて言い訳をするお父さん。
接点、それは一言で言えばお稲荷さん。もっと限定的にいえば私のげんき玉作戦、それらをあやめさんは追っていくうちに私に出会った。
ある意味出会いべくして出会った……これって運命ってやつなのかな。
つかさが一人旅に出ていなければ、私もレストランで働くこともなかった。
それじゃ何をしていた?
ふふ、ニートになっていたかな……
そうじろう「こ、こなた?」
不思議そうに私を見るお父さん。はたしてお稲荷さんの話をした時、お父さんはどんな反応をするのだろう。
素直に受け入れてくれるのか。みさきちみたいに鼻で笑ってネタで終わってしまうのか……
そうじろう「……すまない、今はそんな話をするべきではなった、こなたが話す気になったら……それでいい」
そうじゃない、そうじゃないけど……今はそれで良いのかもしれない。
お父さんは部屋を出ようとした。
こなた「お父さん」
お父さんは立ち止まり振り向いた。
そうじろう「ん?」
こなた「結婚……おめでとう」
そうじろう「あ、ありがとう」
照れくさそうに小走りに自分の書斎に行ってしまった。

こなた「ふぅ〜」
溜め息を一回。
お母さんの写真を見た。
お父さんはお母さんにもあんな風に告白したのかな……
それにしても私って……どうして言えないのかな。
倒産はさりげなく言っていた。
私が女性でお父さんが男性だから

……いや、性別なんて関係ない。
好きなら好きって言えばいいだけじゃん。
そうだよ、普段ゲームでやっているようにカーソルで選んでエンターキーを押すだけ……簡単じゃないか。
なんか勇気が湧いてきた。
今度の休みの時神崎さんと会う。丁度メモリー板の使い方も一段落しそうだし。するならその時だ。
こなた「お父さんが出来たなら私にだって出来るよね」
お母さんの写真に向かってそう呟いて部屋を出た。


412 :こなたの旅 29 3/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:05:15.58 ID:QttFb6XO0
こなた「こうでしょ?」
つかさがひろしと一時別れた時に見たと言う光の幻想をイメージした。
もちろん実際に見たわけじゃない。あくまでイメージ。
足元がぼんやりと光りだした。
そして床も光りだす……
神崎「ほぅ、もう会得したか……これで私の教える事は全てだ」
理屈は詳しく知らないけど大気のエネルギーを制御する技術らしい。

 時間が経つのは早い。気付けばもうその時が来てしまった。
ここは柊家が管理する神社の倉庫裏。メモリー板の使い方を教えてもらうって言ったらつかさが此処を教えてくれた。
私も長年この神社に出入りしてきたけど初めて知った所だった。
ここには神社関係者以外滅多に人が来ない。メモリー板の使い方をレクチャーしてもらうには打ってつけの場所。

こなた「光だけじゃなくて熱も制御できるんでしょ?」
神崎さんは頷いた。
神崎「その気になれば爆発で辺りを吹き飛ばし一面焼け野原にさえ出来る、そして一瞬で周りを凍結することだってね」
こなた「凄いね……お稲荷さんってこのメモリー板の能力が使えるんでしょ?」
私はポケットからメモリー板を取り出した。
神崎「ああ、使えるがメモリー板ほど強力ではない……」
こなた「ふ〜ん、貿易会社ってこのメモリー板の本当の能力をしらなかったんだね、知っていたらあんな遣い方しなかったよね」
神崎「そうだな、メモリー板の情報を解析していけば何れ気付いたかもしれないがな」
私はメモリー板をじっと見た。
神崎「その技術はほんの基本にすぎない、どうだ今の人類ではとうて成しえない力を手にした感想は、地球を支配出来る力を得たんだ」
私は笑った。
こなた「ふふ、中二病じゃあるまいし……そんなの興味ないよ……うちのレストランのイベントの時とかのイルミネーションに使えそうだね」
神崎さんも笑った。
神崎「そう言う遣い方もあったか……ふふ」
あれ、これって、なんか良い雰囲気じゃない?
これってフラグが立った?
チャンス?
なんだかドキドキしてきた。
そういえば告白なんて……初めて?
うぁ、この歳になって初めて、おかしいかな……
神崎「一つ聞きたい事がある」
こなた「は、はぃ!!?」
突然の質問に声が上擦ってしまった。
神崎「メモリー板の使い方を得て何をするつもりなんだ、野心か野望か……さっきの話からするとそんな風にも思えない、真意を聞きたくてね」
真意か……
こなた「そう言うのって教える前に聞かない?」
私の質問返しに神崎さんは苦笑いをした。
神崎「……そうだな、そうかもしれない、何に使おうと君の自由、誰も君を阻むものは居ない、私でさえも」
それならどうして私に教えたのか聞きたいくらいだった。
こなた「メモリー板の持ち主としてはどんなものなのかちゃんと知っておきたかったから……答えになってるかな?」
神崎さんは頷いた。
神崎「それで、それを知った感想はどうだ?」
また難しい質問を……みゆきさんを連れてきたいくらいだ。
こなた「変身、つかさの見た光の幻想、かがみの呪いと病気を治した薬、金縛りの術に催眠術……深い原理は分らないけど、それが魔法じゃないってのが分ったよ、
    うんん、多分教えてもらう前から分っていた、だけどこれだけ進んだ現代でもお稲荷さんの知識と技術はやっぱり魔法なんだなと思った、
    これだけチートな物をつかったら反則だよ」
神崎「それで?」
まだ続きをききたそうだ。もうないのに……
こなた「……だからこのメモリー板はここに在ってはいけないんじゃなかったって、でも私はそれを持っている、私達以外の人がそれを知ったらきっと
    欲しがるよね、貿易会社みたいに、でもさ貿易会社って特別な会社じゃないよ、普通の人が経営して普通の人が働いていた普通の会社……
    私も普通の人間、私はこのメモリー板をずっと隠していく自信がない、例え隠しきれたとしても私が死んだらどうなるかな……
そう思うと誰にも渡せなくなっちゃう」
神崎「そうか……それで?」
私の言いたい事を分っているみたいだった。
こなた「貿易会社の裁判が終わったらこのメモリー板を壊そうと思ってる」
神崎「壊すのか……本当にそれでいいのか、そうしたらもう魔法はつかえなくなるぞ」
こなた「もう充分に教えてもらった、太古の時代からお稲荷さんから教えてもらった知識と技術を使って今の暮らしができているし、
    なによりかがみの病気を治してくれたのが一番嬉しかった……」
神崎さんは立ち上がった。
神崎「壊すか……賢明な判断だ」
まだ私の話は終わっていない。
こなた「それにね……」
神崎「まだあるのか?」
こなた「それに……あやめさんと逢わせてくれたらもう充分……お稲荷さんじゃないと出来ないよね」
神崎さんは寂しそうな顔になった。
神崎「私が会わせたのははい、彼女が、あやめ自身がそうさせたにすぎない、彼女の意思がなければそうはならなかった……」
こなた「それでもお稲荷さんじゃなきゃ出来なかった」
神崎さんは苦笑いをしながら帰り私宅をしだした。

413 :こなたの旅 29 4/4 [saga sage]:2014/10/01(水) 00:06:32.80 ID:QttFb6XO0
さて……もうそろそろ時間だ。もう心の準備は出来ている。
あとは言うだけ。
神崎さんが帰りの支度をしている。言うなら今だ。
こなた「あ、あの〜」
神崎さんが支度を止めてこっちを向いた。
神崎「泉さん、メモリー板を壊す前にして欲しいことがある」
こなた「え、え、あ、な、何ですか?」
私の声が小さくて聞こえなかったのか突然の事で言葉が詰まった。
神崎「母星との交信がしたい」
こなた「あ、それなら……」
私はメモリー板を神崎さんに渡そうとした。
神崎「いや、壊す直前でいい」
神崎さんはメモリー板を受け取ろうとはしなかった。
こなた「直前って?」
神崎「私の目的は終わった、もうこの地球にいる理由がなくなった」
え、どう言うことなの。ちょっと……
こなた「無くなった……って?」
神崎「そう、無くなった、私は故郷に帰る」
ちょっ、帰るって。そんな話は聞いていない。
こなた「地球ってやっぱり人間が居て住みにくいのかな……」
神崎「住み難い、いや、もう故郷より長く此処に居る、狐に変身してしまうのを除けば快適に近い、どんなに鍛えても必ず狐の姿になってしまう期間ができてしまう、
   そんな私を助けてくれたのも人間だった」
それじゃ帰る必要なんかないじゃないか。
こなた「もしかして故郷に危機が来ていて大変だから?」
神崎「そういえば先に帰った仲間の中にはそれで帰った者もいたそうだな、それに、その危機は私が一人帰ったところでどうにか出来る問題ではないらしい」
こなた「それじゃ何で?」
神崎「あやめとの約束が終わった……」
こなた「あやめさんとの約束?」
約束って、いつ、どんな約束を。
神崎「そう、井上浩子と神崎正子をよろしく頼む……それが彼女の死に際の私へのメッセージだった」
こなた「えっ!?」
神崎「もちろんあやめはもう瀕死で言葉すら発する事はできなかった、彼女の記憶をトレースすした時に彼女の意思が私にそう伝えた」
あやめさんとの約束。違う……それじゃ違うじゃないか。
こなた「そ、それじゃ井上さんの病気を治そうとしたのは……?」
神崎「あやめとの約束を果たす為」
まさか、これってゆたかが言っていた約束した相手って……
それに言葉を交わした約束じゃない。あやめさんの意識の中のメッセージを勝手に約束にしている。
うそ、それって、まさか……
こなた「あやめさんと神崎さんって……?」
神崎「私は神崎あやめを愛していた」

 その時私の頭は真っ白になった。

神崎「此処には彼女の思い出がありすぎる……ここに残っていても辛いだけだ……」
神崎さんはあやめさんを好きだった……
私ってどんだけニブチンなの。
こなた「井上さんを必死に救おうとしていたからてっきり井上さんを……」
神崎「彼女とは直接会っていない、もちろん神崎あやめとしては会っていたが彼女には特別な感情はない、それがどうかしたのか?」
こなた「え、い、いや、な、なんでもない、何でもないよ……」
神崎さんが好きなのが井上さんからあやめさんになっただけ。何ら問題はない。そうだよ。全く問題なんか無い。
神崎「井上さんには私の話は伏せていて欲しい、あくまで神崎あやめは半年前に亡くなった、そうでなければ約束の意味が無くなってしまう」
こなた「そうだよね、うんうん、意味はないね……そ、そうだ、帰るならこのメモリー板もそのまま持って帰ってもらえればわざわざ壊す必要なんかないじゃん?」
え……私って何を言っている?
違うよ。私はそんなのを言いたいんじゃなくて……。
神崎「……なるほど、確かに壊す必要はないな……それにそれの方がより安全」
こなた「つかさもけいこさんに会いたがっていたから交信するならつかさも一緒でいかな、もう二度と通信なんか出来そうにないし」
どうして……喉元まで出掛かっているのに言えない。
言えないよ。
神崎「私に許可を取るまでも無いだろう」
こなた「はは、そうだよね、私がすればいい……」

 それから街に出て食事をして別れた。
何を話したのかはっきり覚えていない。
そして私は言おうとしていた言葉を一言も言う事が出来なかった。


つづく
414 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/01(水) 00:08:08.54 ID:QttFb6XO0
以上です。

期間が開いた割には短いです。

どうも忙しくてなかなか集中できません。
415 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/01(水) 00:12:02.12 ID:QttFb6XO0


ここまで纏めた。
416 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [age]:2014/10/16(木) 23:33:27.64 ID:8lfmC7gN0
まだ?
417 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/18(土) 10:38:13.83 ID:6cEZQB1j0
ちゃんと作っているので大丈夫です。

気長にお待ちください。
418 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga]:2014/10/19(日) 14:12:41.96 ID:/g8JMpBR0
それでは「こなたの旅」の続きを投下します。

今回は4レスくらい使用します。
419 :こなたの旅30 1/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:15:15.54 ID:/g8JMpBR0
30

『カタカタ』
静寂した部屋にキーボードを叩く音だけが響く……
『ギャチャ!!』
ドアを開ける音がした。それでも私は作業を止めなかった。
かがみ「お! ちゃんとやってるわね、感心、感心」
私は振り向きもせずモニターを見ていた。
かがみ「もう家にきてからかれこれ2時間も……、小休止しなさい、お茶とお茶菓子持ってきたわよ」
ここはかがみの法律事務所の別室。私はここに来てはかがみの依頼を履行していた。
モニターの机とは別の私の後ろにあるテーブルにお皿を置く音がした。
こなた「別に疲れていないから……」
かがみ「まぁ、こなたにしならゲームをやっている時間と比べて2時間はたいした事はないかもしれないけど、根を詰めると体に毒よ」
いつになく優しい声のかがみ。普段の私なら「気持ち悪い」って言っている……だけどそんな気分ではなかった。
諦めて部屋を出るかと思ったけど椅子を動かす音が聞こえた。かがみは座ってお茶をすすりだした様だ。
確かにただモニターに向かっていても面白くない。
私は作業しながら話した。
こなた「裁判はいつ終わるの?」
かがみ「……なにしろ企業が相手だから時間はかかるのは確かよ、だから少しくらい休んでも一向に差し支えない」
こなた「かがみの依頼はもう少しで終わるよ、だからもう少しやっていくよ」
かがみ「ちょっ!! 私の見立てではあと1年はかかる作業よ……それもメモリー板の力ってやつなのか?」
かがみは相当驚いている。声を聞いてだけで分る。
こなた「そんな所……」
かがみ「それにしても早すぎるわよ」
こなた「早いに越したことはないでしょ、裁判が終わったらもう作業は出来なくなるんでしょ?」
かがみ「……それはそうだけど……」
かがみは黙ってしまった。またキーボードを叩く音が響く。
かがみ「あ、そうそう、知っているかもしれないけどあやめさんを殺した犯人が捕まったわよ、容疑はもちろんあやめさんの殺害」
一瞬手が止まった。
かがみ「なんだ、知らなかったのか?」
こなた「ふ〜ん、捕まったんだ……」
かがみ「なによその気の無い返事は……」
私は再び手を動かし始めた。かがみはそのまま話を続けた。
かがみ「出国する寸前で押さえたそうよ、決め手があやめさんが使っていた携帯電話」
また手が止まってしまった。
かがみ「あんたの機転で殺し屋が捕まったのよ、やるじゃない」
こなた「別に……」
かがみの溜め息が聞こえた。
かがみ「そうそう、ヨーロッパを中心に活動していた職業としての殺し屋よ、日本では一人だけみたいだけど、
分っているだけで10人以上の要人を手に掛けていた様ね、きっとその中に神崎さんの友人含まれているわね……」
私はかがみの話を聞きながら手を動かした。
かがみ「どうあがいても彼の極刑は免れない」
こなた「そんなの自業自得」
かがみ「そう、自業自得、この日本の裁判で判決が出ても犯人引渡し条約があるからその国々で同じような裁判をする事になるわね、
恐らく彼が生きている内には終わらないわよ、事実上の終身刑のようなものになる、これも言い換えれば因果応報ってやつ」
こなた「因果応報ね……」
かがみ「なによ言い直して、言いたい事があるなら言いなさい」
こなた「けいこさんやつかさはお稲荷さんと人間が共存できるようにしようとした」
かがみ「失敗しちゃったけどね……」
こなた「……そして今度はお稲荷さんの記録を全て消そうとしている……そんでもってその両方に私は関わっている……これって良い事なの、悪い事なの?」
かがみ「ふ〜ん、こなたもいろいろ考えるようになったわね、偉い偉い」
こなた「ふざけないでよ!!」
かがみ「ごめん……」
このあとかがみは暫くなにも話さなかった。答えを考えていたのだろうか。
420 :こなたの旅30 2/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:16:44.26 ID:/g8JMpBR0
かがみ「善悪なんて立場や状況で変わってしまう、絶対的なものじゃない、まぁ普通に私達の立場を考えれば人間を基準に考えるわね、
    つかさやけいこさんがしようとしていたのは紛れも無く良いこと、おそらく殆どの人に異論はないでしょうね、
    でも失敗した、だから今の私の行動がある、
    私はこれで良いと思っている、もともとこれは私が考えた事、こなたはそれに従っただけ、こなたは悪いと思っているわけ?」
こなた「うんん、悪いと思ったら手伝わない、だけど……」
かがみ「お稲荷さんの知識を勝手に消して良いのかって言うんでしょ、そう、そうよね、私もそれで助かった、それがあれば助かった命が幾つあるか、
    でも、貿易会社の件もある、彼らはそれを武器に利用しようとした、実際に作って使用した記録もあるわよ、それで奪われた命がいくつあるのか、
    差し引きゼロって言い方もあるかもしれない、でも命はそう言うものじゃない、
    お稲荷さんの知識ってそう言う物、お稲荷さん達は故郷でそういった知識を得てはその諸刃の剣に悩みながら克服してきた、
    そのプロセスを飛ばして得た知識は使いこなせない、それが私の結論、だからお稲荷さんの知識を消す必要があるのよ……
    まぁ、人間も自分自身の知識を使いこなしているかと言えば疑わしいけどね」
私は画面に向かって作業を続けた。
かがみ「ちょっと、人が一所懸命に話している間くらいは手を休ませなさい!!」
こなた「立て込んだ作業があって……もうちょっとだから……」
かがみ「あんたのそう言う所、全く変わっていない!!」
かがみのさっきの説明。私でも納得ができるものだった。
それに引き換え私が神崎さんにした話ときたら……全然説得力がない。ダメじゃん。
かがみみたいに頭の回転が早くて活舌だったら……
かがみ「それでこなた、折角使い方を会得して早々すまないけど、メモリー板はこの案件が解決したら……」
こなた「壊すって言いたいんでしょ?」
かがみ「えぉ!?」
意外だったのかかがみが言葉を詰まらせた。
こなた「さっきの話を聞けば分るよ、そんなに驚かなくても……」
かがみ「そ、それなら話は早いわ……壊してくれる?」
こなた「壊すのはそんなに難しくないよ、『壊れろ』って命令するだけ、だけどね残っている燃料が暴走してちょっとした爆発をするかもしれない」
かがみ「ちょっとした爆発?」
こなた「うん、たいした事じゃない、竜巻が来た位の被害だから」
かがみ「竜巻って……おい、尋常じゃないじゃない……」
こなた「うん、だから壊すのは止めて持って行ってもらう話になったから心配しなくていいよ……それにめぐみさんからもらったUSBメモリーも
    同じ燃料が使われているみたいだから一緒に持って行ってもらうから」
かがみ「……なんだもうそんな事まで考えていたのか、流石ね……っておい!!」
いつものかがみの突っ込みが始まるか……
かがみ「持って行ってもらうって何処に誰が持っていくのよ?」
その突っ込みも流石だよ。
こなた「神崎さんだよ、お稲荷さんの故郷に持って帰っるって、母星と連絡して迎いに来てもらう……」
かがみ「あぁ、なんだそう言う事なの」
こなた「うん、そう言う事……」
かがみが話さなくなったと思ったら直ぐに話し出した。
かがみ「……帰る、帰るって言ったわよね?」
こなた「うん、言ったけど……」
かがみ「帰るって、あんた、こんな所でパソコン操作していていいのか?」
こなた「……私がどうこう出来る問題じゃないし……」
かがみが私の近くに歩いてくる気配を感じた。
かがみ「出来る出来ないの問題じゃないでしょ、あんた神崎さんの事が好きじゃないのか、止めないのか……」
こなた「神崎さんはあやめさんが好きだったって……止められないよ……」
後ろから両肩を掴まれ座ったまま椅子を回された。私はかがみの正面を向いた状態になった。これじゃパソコンの操作が出来ない。
私は腰に力をいれて元に位置に回転させようとしたけどかがみが私の両肩を押さえているから動かない。
かがみは私の目を睨んだ。私は目を逸らした。
かがみ「帰る意味が分っているのか、彼の故郷がどのくらい遠いか分っているのか」
私は何も答えなかった。
かがみ「何か言いなさいよ……少なくともこなたの方から一生掛かっても会いに行けない距離……」
こなた「……そんなの知っている……」
かがみ「だったら何故……あやめさんに遠慮しているのか、彼女はもう居ない、遠慮なんか必要ないじゃない、引き止めなさいよ、
まだ告白もしていないのか、それとも神崎さんなんか好きでもなんでもないのか、二度と逢えなくなるのよ、
さようならで終わりでいいのか?」
執拗に責めて来るかがみ。最後のさようならで終わりでいいのか……
そう言われたら急に目頭が熱くなった。かがみがそれに気付いた。
かがみ「こなた……あんた……」
両肩から腕を放した。
こなた「引き止めるなんて……言えなかったよ……」
かがみ「言えなかった……」
こなた「好き……なんて……引き止めるにはそれを言わないとダメでしょ……だから」

421 :こなたの旅30 3/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:17:55.77 ID:/g8JMpBR0
かがみ「やっと言ったわね……その涙で判った……本気のようね」
そうかもしれない。この言葉を言うのは他人には初めてかもしれない。
かがみ「……でもそれは私にではなく神崎さんに言えばよかったのに……」
でもそれが本人ではくかがみに言うなんて……
こなた「……ボタンを押すだけだと思った……只それだけの簡単なものだと思ってた……でも本人が目の前に居ると……つかさみたいに出来なかった」
かがみが私から離れて席に戻った。
かがみ「……あんたもしかして告白しようとしていたの?」
私は黙って頷いた。
かがみ「つかさは自分の気持ちを後先考えずに直ぐに表に出すのよ、論外よ……
すごい、凄いわよ、こなた、しようとしただけでも凄いわ……私はそうしようとすら出来なかった……」
こなた「えっ!?」
私は始めてかがみの方を向いた。
かがみに嘲笑されるのかとおもった。思いっきり弄られるのかと思った。
かがみ「そうよね、言えるはずないわよ、言ったらどうなるのか、嫌われたどうしよう、冗談だろって言われるかもしれない、頭の中が
    ネガティブでいっぱいになっちゃうのよね……分るわ、私もそうだったからよくわかるわよ、うんん、今もそうだから」
まるで私と同じように俯いているかがみの姿がそこにあった。
こなた「今もそうって……結婚して子供までいるのに……」
かがみ「……彼……ひとしから私に近づいてきた、私は何もしていないのよ……」
こなた「何もしていないって?」
私が聞き返すとかがみはゆっくり顔を持ち上げて私を見た。
かがみ「大学時代、彼から声をかけて来たのよ、その内容までは覚えていない、他愛ない事だった……
    でも彼は次第に私の心の中が判っているような行動をし始めるのよ……将来の夢、好きな食べ物、場所……次第に彼に惹かれたわ
    そして気が付けば私の彼の腕に抱かれていた……もし彼が本気じゃなかったら……私は……私は……」
今まで一度も聞いたたことの無い恋愛の話をしている。あのかがみが……
かがみ「……だから私は一度も彼に……好きとか、愛しているなんて一度も言った事はない……」
こなた「でもさ……ひとしさんはお稲荷……」
かがみは腕を私の前に出して手を広げた。
かがみ「お稲荷さんだから私の心を読み取るって言いたいんでしょ?」
私は頷いた。
かがみ「ひとしがお稲荷さんだと知ったのはまなみちゃんが生まれてからなのよ……それまで私はずっと人間として彼と接していた……
    普通じゃとっくに愛想尽かれていたわよ……私は運が良かっただけ……」
かがみが恥ずかしがりやなのは知っていた。だけどここまでだったなんて……
だけど私はかがみとほぼ同じかそれ以上に奥手だ。
かがみはやもめの私をあまり弄らなかったのはその為だったのか……
かがみは立ち上がった。
かがみ「そうよ、神崎さんもお稲荷さんじゃない、こなたの心は分っている筈よ、それなのに帰るだなんて……もしかしたらあやめさんに遠慮しているのは
    むしろ神崎さんの方かもしれない……こなた、まだ諦めるは早いわよ!!」
かがみは再び私に近づいた。
こなた「早いって言われても……どうすれば……」
かがみ「まずははっきりとあんたの意思を伝えるのよ」
こなた「……でも……」
かがみ「わかってる、分っているわよ、それができていれば悩んでいない、いいわ私も一緒に考えるから諦めるなよ!!」
かがみは私の肩を何度か叩いた。
こなた「う、うん……」
私は椅子を回転させてパソコンの作業に戻ろうとした。
かがみ「待ちなさい」
半回転したくらいで動きを止めた。
こなた「な、なに??」
かがみ「こなた、あんたに会わせたい人がいる、今度の休日は空けておきなさいよ」
こなた「会わせたい人……誰、私の知っている人?」
かがみ「それは内緒、いろいろ勘ぐられたくないからな、只言えることは私があんたにひとしの話を出来たのはその人のおかげだと思っている」
確かに今のかがみはさっきまでとは違っていた。カウンセリングみたいなものなのかな……
こなた「空けるのはいいけど……その分作業が遅れるけどいいの?」
かがみ「別に構わない、裁判は遅れているし、それに裁判が長引いた方が良いでしょ、別れる日が延びるわよ、それに対策だって念入りにできるし」
かがみは微笑みながらウィンクをした。
こなた「え、あっ、そ、そうだね……」
もうかがみの対策は始まっているようだ。かがみがこんなに頼もしく見えたのは初めてだった。
かがみ「それじゃ、約束を忘れるなよ、あんたよくすっぽかすからな」
こなた「はは、そうだね……」
かがみ「お、今日初めて笑ったな、そうそう、それで良いのよ」
こなた「でもさ……なんで私が神崎さんを好きだって分ったの? お稲荷さんでもないのに」
かがみ「はぁ!?」
かがみは一瞬驚いた顔をして笑い出した。
かがみ「ははは、あんた、黙っていれば分からないと思ってたの、ほんとこなたって相変わらず鈍いわね……あの時神崎さんを連れてきた来た時点で
    分ったわよ、あんたが良く言うフラグってやつをビンビン立てていたわよ、多分あの時居た人の殆どがそう思ったわよ」
こなた「はは、そう、フラグね……はは自分の事だと分らないね……ははは」
私達は笑った……
422 :こなたの旅30 4/4 [saga sage]:2014/10/19(日) 14:18:56.35 ID:/g8JMpBR0
かがみ「ポチっ!!」
『カチッ!!』
こなた「あっ!!」
突然かがみはパソコンの電源ボタンを押して強制終了させた。
こなた「ちょっ、かがみ〜今日の作業未の分のデータみんな消えちゃったよ!!」
半分起こり気味で言うとかがみは笑いながら話した。
かがみ「今日の仕事は終わりよ」
こなた「終わりって……今日の作業でどれほど手間が掛かったか分るの?」
かがみは私の話を聞こうとせずこそこそと何かの支度をし始めた。
かがみ「こなた、出かけるわよ支度しなさい」
こなた「出かけるって……何処に?」
かがみ「こんな時は飲むに限る……っと言ってもこなたはそう言うのは苦手だったわよね……ゲームセンターならどう?」
こなた「……そんな気分じゃない……」
かがみ「なに言ってるのよ、昔、私がそう言っても無理矢理に連れて行ったでしょ」
それって高校時代の話なのか……
こなた「誰かを連れ立って行く歳じゃないし……」
かがみ「そんなの気にした事ないくせに」
かがみは私の腕を掴み引っ張った。私はは渋々立った。
こなた「分ったよ……ちょっと準備するから待って」
かがみ「ふふ、ゲーセンなんて行くの久しぶりね、行っておくけど子供を相手に鍛えたから以前の様にはいかないからな!!」
なんかすっごく息巻いているし……
私がかがみを呆然と見ていると。
かがみ「どうしたの、行くの、行かないの?」
こなた「行くけど……」
かがみ「行くけど何よ?」
こなた「仕事を中断してまで何で私に構ってくれるのかなって……」
かがみ「なに水臭いこと言っているのよ、私とこなたの仲じゃない、そんなの気にするな」
こなた「う、うん」
私は周りの書類を片付けだした。かがみはもう準備が出来たのか部屋の扉の前で私を待っている。
かがみ「こなた、支度しながらでいいから聞いて、私達はお稲荷さんの痕跡を消そうとしている、だけどねどうしても消せない物があってね」
こなた「突然何を言い出すと思ったら……その消せない物って何?」
かがみ「私よ」
こなた「かがみが、何で?」
かがみ「私は現代の医学では治せない病気に掛かった、でもお稲荷さんの秘薬で治った」
こなた「そうだけどそれがどうかしたの?」
かがみ「よく考えてみて、私は今此処に居ない筈の人間なの、こなたとこうして話している筈はない、つまり私がこうして生きているのは
    お稲荷さんが居たから……」
こなた「分り易いね、その通りだけど、まさかかがみを消すわけにはいかないよ……」
かがみ「そう、だから私の言動すべてがお稲荷さんの知識がもたらした結果そのものになるのよ、良い事、悪い事、その全てがね」
こなた「……そうだとしたら、かえでさんや井上さん、みゆきさんの臨床試験で助かった人もそうなるよ……」
かがみ「そうね、だけど私がその最初の人……だから私はなるべく良いことをしようと思って……」
こなた「メンドクサイじゃん、そんなの、今まで通りのかがみで良いんじゃない、命が助かって良かった位で思っていれば、一人で背負う必要なんかないよ」
かがみ「メンドクサイっておま……」
こなた「はいはい、準備できたよ、行こうよ、見せてもらおうか子供と鍛えた実力とやらを」
かがみ「何よその言い方……何かのネタか?」
こなた「え、知らないの、これね……」
かがみ「分った、分った、語りだすと長いから行こう」
私達は部屋を出た。

今日は全てを忘れられそうだ。
昔に戻って遊びまくろう。


つつく
423 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [saga sage]:2014/10/19(日) 14:23:05.11 ID:/g8JMpBR0
以上です。

今回はこなたとかがみのやり取りのみです。

基本的に日曜や休日に書き込むのが多いと思います。

投下を待っている人が居たとしたらそれを参考にして下さい。

本当はもっと投下してくれる人が居れば待つ必要もないのでしょうが

ご了承下さい。

いつものようにこのあと直ぐに纏めます。
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