忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」

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285 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/10(金) 21:34:46.10 ID:bWR2u9SM0

シノ達は何処までやったんですかね
286 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/11(土) 00:20:57.87 ID:fcW/ODXGo
287 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/12(日) 01:27:20.88 ID:LRXi86cuo
乙!
288 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/01/12(日) 23:25:51.35 ID:jBUzXUV7o

このシノは自分を女だと思ってるレズなの?
289 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/01/14(火) 01:44:29.79 ID:9SihSa360
感想ありがとうございます。

>>288
その解釈で、大体当たりかと。
自分が男ということは自覚しながらも、女でありたいと振舞っている大宮忍さんが、このSSの主人公です。
そして、そんな彼(女)に翻弄されながらも、親しく付き合っている少女たちのお話という感じです。


今回は投下はありませんが、次回はもしかしたら文化祭の準備編になるかもしれません。
もうしばらくお待ちください。
……何か良い案がありましたら、採用したいとも考えています。
290 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/14(火) 14:17:10.71 ID:t+wUFjKQ0
オカマだったか
291 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/01/30(木) 14:57:27.67 ID:f/jmyaPJ0
提案
ラッキースケベ的な展開を見たい
292 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/02/04(火) 00:54:58.51 ID:9OpMIHC20
>>291
提案、ありがとうございます。
今、文化祭の話を執筆しています。役立てられるよう、頑張ります。

恐らくですが、このSSは1年次で一旦区切りということになるかもしれません。
というのも、リアルが忙しかったり、久世橋先生を上手く書けるか分からないためです。
予めご了承下さい。

いつもレスして頂き、本当に感謝です。
293 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/02/04(火) 10:20:15.63 ID:RVNvywgmO
俺は待つぜ
294 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/03/03(月) 08:27:54.35 ID:23WYE10o0
申し訳ありません。
ようやく復活しましたが、もうしばらくお待ちを……。
295 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/03(月) 19:51:57.58 ID:jy1HndATo
まってるよー
296 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/05(水) 12:27:36.81 ID:ia6NLGdlo
いつまでもまーつーわー
297 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします [sage]:2014/03/22(土) 10:22:10.88 ID:/h+SNKFuo
待ってる
298 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/04/04(金) 12:08:10.50 ID:lsIURwo30
二期、やるみたいですね。
嬉しいものです。

しかし、未だに復調ならず……せっかくの朗報なのに。
今しばらくお待ちください。
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/07(月) 21:29:20.39 ID:7wHCs5Kt0
おk
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/13(日) 01:41:08.61 ID:YIK/hs4f0
待つよ
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/16(水) 20:11:49.16 ID:URJSDT9F0
まだですか?
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/04/19(土) 01:17:23.49 ID:c4bTDPmr0
2期おめ
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/19(土) 06:00:01.84 ID:lomnAXNRo
続編・・・

二期なのかなぁ・・・
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/19(土) 10:44:48.53 ID:mmJI8PsAO
正式に二期と決まったらしい
ソースはアニメ公式のTwitter
305 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/04/29(火) 00:01:28.59 ID:iwt86xj20
文化祭。
 私たちのような高校生にとって、何とも胸が躍るイベントではないでしょうか。
 中学の頃は綾ちゃんと陽子ちゃんと、楽しんだ記憶があります。
 そして、高校では――

「……? シノ、どうかしたの?」
「いえいえ」


 いけません、ついつい凝視してしまっていました。
 朝の光を浴びて、視界の中で映える金色の髪。
 それはまるで、奇跡のようなバランスで――


「こらこら、シノ」
「わっ」


 ポンッと肩を叩いたのは、大切な私の友達でした。
 陽子ちゃんは溜息をつきながら、


「公道で、あんまりジーッと見ちゃダメだろ?」
「うう……すみません、陽子ちゃん」
「――ま、聞き分けのいいのは、シノの良い所だけどな」


 そう冗談っぽく言って、ヘヘッと笑う陽子ちゃん。
 そんな彼女に、私は何度助けられてきたでしょうか……。






 ――少し離れた所から、私は先を行く三人を見つめていた。
 シノの冗談にアリスが顔を赤らめ、それを陽子が優しくたしなめる。
 そんな、どこまでも仲睦まじい三人組を。


「――うーん」
「どうかしマシタ、アヤ?」
「ひゃっ!? カレン?」


 ビックリした。
 その特徴的なカタコト口調に反応してそちらを見れば、予想通りそこにいたのはカレンだった。
 カレンは、相変わらず可愛らしいキョトンとした表情を浮かべながら、私を見つめている。


「うーんと、ね……その」
「シノとヨウコ、デスカ?」
「……わかっちゃうの?」
「バレバレデス」


 そう言って、クスクスと笑ってみせる。
 相変わらず、憎めない英国少女だ。


「But……アヤは心配しスギデス」
「そう、思う?」
「ハイ」


 そう言って、腕を広げてターンし、笑顔を浮かべてみせる英国少女。
 そんな彼女は本当に自由で、その奔放さが私はちょっと羨ましい。


「私とアリスは、シノが好きデス」


 ほんの少しボリュームを落として、カレンは私に言った。
 さっきまで浮かべた満面の笑みを浮かべながら、はっきりと。
306 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/04/29(火) 00:02:02.26 ID:iwt86xj20
「うん、知ってるわ」
「アヤは、どうなのデスカ?」
「――そう、来るのね」


 そっか、私の気持ちか。
 前方を見れば、彼女は二人の友人と喋りながら、屈託のない笑顔を見せている。


 ――どうして、陽子は……私の、こと――


 ふと思い出した記憶は、私の体温を上げるのには十分すぎた。
 いけない、まだあの時のことを忘れられていない……。
 

 でも、あの時の問いかけを、本当に忘れていいのか。
 そのことを、帰った後で考えた。
 その結果……私は、「ちょっとした」答えを出したのだった。


「……ありがと、カレン」
「What?」
「思い出させて、くれて」


 そう言って、私は空を見上げる。
 本日は晴天なり――
 文化祭初日に、おあつらえ向きの天気だ。



「わぁ……」
「ついに、って感じだな」
「すごーい……」


 校門には、色とりどりのデコレーションが施されており、観る人の気分を上げていた。
 一方から一方へかけられたアーチが掲げるは、「ようこそ! 〇〇高校文化祭へ!」というアート。
 後からやって来た綾とカレンも、それを見てウットリとしている様子だった。


「――綾は、こういうロマンチックなの好きだもんな」
「……陽子」
「? どした?」
307 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/04/29(火) 00:03:06.72 ID:iwt86xj20
おや、おかしい。
 いつもならこんな風にからかったら、「そ、そんなこと!」とか言って顔を赤らめるようなものだけど……。


「――そ、その」
「……」


 モジモジとする友人は、何を思っているんだろう。
 付き合いの長い方の私も、時々分からなくなってしまう。


「……や、やっぱり、なんでもない!」


 逡巡した末に、綾はピューッと昇降口へ走って行ってしまった。
 しかしまぁ、後ろから見ても耳が真っ赤だ。
 まるで、カレンの家での「前日祭」の時みたいに――



 ――私だって、陽子が……!――


(……な、何を思い出してるんだ、私は!)


 いかんいかん、これはマズい。
 どうして、あの光景がフラッシュバックするんだ!


「……陽子ちゃん」
「シノ?」
「あ、大丈夫ですよ、アリス。今日も可愛いですね」
「……それ、寝起きから10回くらい聞いたよ」
308 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/04/29(火) 00:04:25.55 ID:iwt86xj20
短いですがここまでです。
リハビリ兼プロローグ的な何か。
本番の方は、しばしお待ちを。

ここ最近、体調を思いっきり壊してしまっていたため、遅れてしまい申し訳ありませんでした。
あぁ、二期が楽しみだ……(遠い目)
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/04/29(火) 05:32:05.24 ID:2fAsEGdso
310 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:14:18.35 ID:z5gCSS+c0
 ――で。

 私たちの出し物は何かというと、少し説明に困る。


「甘味処!」
「メイド喫茶!」


 こんなやり取りと睨み合いの末、えらく変則的な結論に落ち着いた。
 すなわち、2つを同時並行する、ということに。
 この提案への決を採った時の委員長の困惑顔は、未だに忘れられない……。

 そして、もう一つ。
 私たちにとっては、とても重要なことがまだ残っていた。
 2つの出し物を並行して進めることはともかく、そこには「役割」というものがある。
 例えば、男子なら看板を作ったり、買い出しにすすんで行ったり。
 そして、提案の都合上、女子が目立つ役割――すなわち、メイドさんだったりを担当することになる。


「……ええと、その」


 壇上の委員長が困惑した。同時に、烏丸先生も最前列を見つめる。
 クラスメイトの視線も、「その子」に集中することになる――


「……ど、どうしますか、その」
「そ、そうですねぇ――」


 委員長と先生が困惑を声に混ぜながら、協議する。
 それはまぁ、しょうがないことなんだろう。


 なぜなら――


「……シノは、どうなるんだろう?」


 私の友人――陽子がポツリと呟いた。
 それはきっと、クラスの皆が思っていることだったと、私は思った。


「皆さんは、どう思いますか?」


 先生と簡単な話し合いを終えて、委員長が私たちに視線を移す。
 周囲を見てみれば、ある人は顔を赤らめているし、ある人はどこかにやけているようにも見える。
 十人十色の反応を見て、委員長は最後に、「本人」と目を合わせた。


「……大宮さんは?」
「私、メイドさんやりたいです!」


 そうして当人――シノがハキハキと応えた時、クラス全体が妙に脱力したことは言うまでもないことだろう。
311 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:14:53.73 ID:z5gCSS+c0
「とはいえ……大宮さんは、ええと」
「そうだよシノ。シノは……その」


 逡巡する委員長の言葉を、シノの隣にいるアリスが継いだ。
 二人とも、顔が真っ赤になっている。無理もない。

 そう、何といっても、シノは――


「……よう、お前どう思う?」
「ええと俺は――」


 耳に入ってきたのは、いつだったかシノと話していた二人の男子生徒の声。
 私がそっちを向くと、二人もまた顔を赤らめながら、ひそひそと話していた。


「常識的には……無し、だけど」
「俺からすれば――有り、かなぁ」


 聞き耳を立てながら、もしかしたらこれがある意味、クラスの総意なのかもしれないと、私は思った。
 しばらく時間が経ってから、


「皆さん」


 委員長がコホンと咳払いをして、言う。


「――臨機応変に、いきましょう」


 明快な回答を好む委員長らしからぬ結論だったけれど、クラスは全員が頷いた、ように見えた。
 委員長、お疲れ様……。
312 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:15:34.49 ID:z5gCSS+c0
――学校祭当日・校門前


綾「……なんてやり取りもあったけれど」

陽子「結局、どうなるんだろうなぁ」

アリス「……」

アリス(シノからすれば、メイドさんをやりたいのは当たり前、なんだろうけど……)

忍「えへへ……」

忍「メイドさん……」パァァ

アリス(あまりにも嬉しそうなシノの表情を見てると、何も言えないよぉ……)


綾「あら、そういえばカレンは?」

陽子「あぁ、さっき『OH! 待ち合わせ時間に遅れてしまいマス!』って、走っていった」

綾(い、いつの間に……)



――教室前


アリス「あっ、委員長さん」

委員長「……あぁ、カータレットさん」

委員長「そして――大宮さんたち」

忍「あの! それで、メイド服は、どちらに!?」ハァハァ

陽子「シノ、落ち着け」

綾(あぁ、ここまで嬉しそうなシノを見ると、辛い……)キュッ


委員長「……ちょっと、いいかしら」ヒソヒソ

陽子・綾「?」

委員長「結局」

委員長「……色々と、職員会議で協議された結果」

委員長「『男子』は、裏方作業に徹するべきだ、って結果になったみたい」

二人「」
313 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:16:14.75 ID:z5gCSS+c0
忍「メイドさん、メイドさん〜♪」

アリス「シ、シノが歌を……」

委員長「……それで」

委員長「そのことを、その――大宮さんに言っていいもの、なのか」チラチラ

委員長「……」キュッ

綾(委員長、苦しそう……)

陽子(色々と苦労してたもんなぁ……)


男子A「……ん?」

男子B「あれ、委員長たち、どうした?」

委員長「!」

陽子「よ、よぅ、二人とも」

綾(だ、男子……!)アセアセ


男子A「……あぁ」

男子B「もしかして委員長――あのこと?」

委員長「……えぇ」

男子A「ふーん」


男子A「おはよ、大宮さん」

忍「あっ、おはようございます!」ペコリ

アリス(シ、シノが男の子と……)

アリス(あれ、でもシノ自体、『女の子』じゃないから、これは自然で、ええと……)グルグル


男子B「……」

男子B「今、女子なら別のあそこの空き教室で着替えてるよ」

委員長「!?」

忍「わぁ、そうなんですか! 綾ちゃん、陽子ちゃん、早く行きましょう!」

男子A「待った」ポンッ

忍「はい?」


男子A「いいか、大宮さん」

男子A「……今、この教室の中に烏丸先生がいる」

男子A「話してから――そことは別のトコで着替えることになりそうなんだ」

委員長(……先生!?)

陽子「お、おい、それどういう――」

綾(ど、どうなってるの……?)
314 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:16:54.79 ID:z5gCSS+c0
忍「……あ」

忍「そう、でしたね――私としたことが」

忍「お二人とも、ありがとうございます」ペコリ

忍「それじゃ陽子ちゃん、綾ちゃん、アリス、また後ほど」タタタッ



委員長「……どういうこと?」

男子A「ん、簡単なこと」

男子B「俺たちがカラスちゃんに、『大宮さんには、何としてでもメイドさんをやらせてあげてほしい』ってお願いしただけ」

陽子「……それ、って」

男子A「職員会議だか何だか知らないけど」

男子B「大宮さんが、マズいこととか起こしそうにないことくらいは、わかってるつもりだし」

綾(……こ、この人たち)


アリス「あ、あの……」

アリス「それじゃシノは――メイドが出来るってことに?」

委員長「……いいの? 烏丸先生は、それで」

男子A「先生はかなり迷ったけど、最後は俺たちの提案に乗ってくれた」

男子B「まぁ、『久世橋先生に怒られちゃいますねぇ』とか溜息はついてたけど」

委員長「――バレたら、あなたたちだって危ないんじゃないの?」

男子A「ま、別に」

男子B「中学とかと違って、内申なんて無いしなぁ……」

男子B「それに、生徒がやりたいことできない学校祭って、どう思うよ?」

委員長「……それは」


陽子「……ま、いっか」

綾「ちょ、ちょっと、陽子?」

陽子「そんじゃ綾、アリス、私たちはそこの教室に着替えに行こう」

アリス「……シノ、大丈夫なのかな?」

陽子「いいっていいって」

陽子「なにかあった時はカラスちゃんと、そこの二人が責任取ってくれそうだし」

男子A「おお、プレッシャーだぞ」

男子B「ま、なんとかなるだろ」

陽子「それじゃ……委員長も、お疲れ様」

陽子「また後でなー」タタタッ

綾「あ、ま、待ちなさいって陽子!」

アリス「ヨウコー!」
315 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:17:21.40 ID:z5gCSS+c0
委員長「……」

委員長「で?」

男子A「なにか?」

委員長「正直なところは?」

男子A「……」

男子B「……」


男子AB「大宮さんのメイド服姿に、めちゃくちゃ興味があったから」


委員長「……後で大宮さんが問題にならなくても、あなた達は職員室に突き出すことにしましょう」アキレ

男子A「おいっ!」

男子B「委員長はマジメだなぁ」
316 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/05/22(木) 02:19:47.67 ID:z5gCSS+c0
今回はここまで。

結局、欲望に人は勝てないというお話(嘘はついていない)。
ちょっとオリキャラがでしゃばり過ぎた感がありますね……次回は、主人公勢中心で回したいと思います。
あ、次回はカレンも登場予定です。

今更ながら原作をちょこちょこと読み始めてみると、シノたちの学校祭にイサ姉たちは来てないんですね。
アニメスタッフは、本当に素晴らしい改変をしたんだなぁと改めて感嘆しました。


それでは、また。
317 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/22(木) 02:40:28.55 ID:aOkWEbu1o
乙デース!
318 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/05/23(金) 16:47:16.79 ID:ErQ3IUlAO
あのスタッフなら二期も安心だ
というか(ごちうさなど)最近のきららアニメは原作愛のある良作ばかりで嬉しい
319 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/06/15(日) 20:23:13.75 ID:TrJbYPzW0
ごめんなさい、もうしばらくかかりそうです。




小ネタ



忍「……」ズーン

アリス「だ、大丈夫だよシノ!」アセアセ

アリス「つ、次のGreeceには勝てる確立高いよ?」

忍「――その、次は?」

アリス「……」

アリス「こ、Columbiaは、うぅ……」

忍「……」


忍「あぁ」タメイキ

忍「私たちのチームも、アリスの所と当たれればいいんですけどねぇ……」

忍「そう、夢の英国!」パァァ

アリス「……」

アリス(シノ、EnglandとUnited Kingdomの区別ついてる、よね……?)ドキドキ





書いてて、シノはスポーツに興味持ってる姿が想像つかないことに気づきました……。
320 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/06/15(日) 20:24:08.78 ID:TrJbYPzW0
訂正:☓立→○率

GL突破は難しいかもしれませんが、応援したいです。
321 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/06/15(日) 20:35:46.55 ID:dIPIQskOo
乙です。
たしかにスポーツに持っている忍は想像できない
322 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/07/08(火) 23:30:54.85 ID:Y2tta9Es0
体調が崩れて治らないので、もう少しお待ちください。
……完結しないうちに、二期になるかもしれないと思うと、何だか焦りますね。
323 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/07/11(金) 09:49:31.69 ID:/uj2PW3AO
まってる
324 : ◆iw8u0HxUVRB3 [sage]:2014/08/03(日) 23:16:14.27 ID:KDVSM3KW0
すいません、もう少し……
二期タイトル決まったのに、申し訳ないです。
325 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/08/03(日) 23:17:45.52 ID:KDVSM3KW0
あれ、トリップの様子が……
これで間違えてたらごめんなさい。
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/08/04(月) 08:10:46.61 ID:XnDCp2mAO
意図的にHTML化寸前まで放置してるのでなければいくらかかってもいいと思う
327 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/09/01(月) 21:42:36.61 ID:x7SH0rEF0
すいません……もう少し。
我ながら、虚弱体質ですね。
328 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:02:34.43 ID:h7ZtWU6Z0
少し書けたので、投下したいと思います。
地の文ばかりで読みにくいかもしれません。

あと本当に今更ですが、>>32の時点でシノとアリスのコミュニケーションが成立するはずありませんね……ミスでした。
それでは、小出しにしていきます。
329 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:03:30.88 ID:h7ZtWU6Z0
 ――AM9:00


「わー、そっちの服、可愛い」
「ありがと。でも、そっちも凄く似合ってるよ」


 教室のあちこちで、互いに互いを褒め合う声が聞こえてくる。
 ワイワイガヤガヤと、本番は始まっていないのに、もう学園祭のような感覚だった。


「……みんな、キレイ」
「いやー、アリスが和装してると、面白いなぁ」


 私が呟くと、ふんふんと納得したように頷く陽子がすぐ近くにいた。
 そちらの方へ目を向ければ、いやはやなんとも――


「陽子、凄く似合うね」
「そっか? へへ、ありがと。アリスも可愛いな」
「うん! 何か、『頼れるアネキ!』って感じ」
「……実の弟たちにも、そんな風に思われたらいいんだけどなぁ」


 素直に思ったことを言うと、陽子はクルッと後ろを向いて、頭を掻いていた。
 おそらく、照れ隠しだろう。
 察した私は、メイド服組の方へと目を転じる。


「綾!」
「……うぅ」


 声をかけると、綾は恥ずかしそうにモジモジとしていた。
 しかし、陽子が「頼れるアネキ」なら、綾は「花畑の百合」みたいだった。
 たおやかで、折ってはいけない雰囲気、というか……要するに、


「綾も凄く似合う!」


 ということだった。


「ア、アリス! そ、そんな大声出さないでぇ……」


 私が笑顔で呼びかけると、綾はガクガクと震えてしまった。
 元来、恥ずかしがり屋の性分の綾にとって、物凄く大変なんだなぁ、と一人頷く私だった。
330 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:04:34.07 ID:h7ZtWU6Z0
 実のところ、前日に実物を着てみる人もいたりした。
「着たい人はどうぞ」というノリで。
 私たちは、採寸だけして、そのまま下校するという感じで、今日を迎えた。


 何故かといえば、そこでプルプルとしている彼女が身をもって証明してくれているし、
「あぁ、あいつらも、もーすこし嘘をだな……」とか未だに後ろを向いて呟いている彼女もいる。


(……みんなカワイイ)


 そんな人たちを見て、嬉しくなっていると――


「はい、みんな! そろそろ着替え終わった?」


 あっ、壇上に委員長の姿が。
 パンパンと手を叩き、さながら教師のように見える。


(……委員長も甘味処)


 そういえば、私はシノたちと以外、あまりお話をしたことがないような気がした。
 メイド喫茶と甘味処で別々に別れちゃうけど……それは、裏を返せば、


(色んな人と沢山お話する機会!)


 ということになる。
 私は、今更ながらそんなことに気づき、一人胸を躍らせた――


「……うぅ、慣れないわね」
「もう、そろそろちゃんと立てって。綾も凄く似合ってるぞ」
「――あ、あなたのそういう所が!」
「またか!」


 ――後で、二人の会話を耳に挟み、「綾は大丈夫かな……」と思うのだった。
 楽しくないと「お祭り」にならないから。


「……そーいえば」
「な、なによ」
「シノ、どーしたかなーって」
「あっ」
「あっ」


 私と綾の声は、ピタリと重なった。
331 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:05:46.03 ID:h7ZtWU6Z0
 そうだ、シノはあれから――!


「……うん、全員、着替え終わってるみたいだし」


 委員長はそう言うと、扉の方を見て、


「入っていいわよ」


 と、優しく言った。


「わぁ、皆さんよくお似合いで」


 ほんわかとした口調で入ってきたのは、シノその人だった。


「……」
「へぇ……甘味処って、こういう感じなんですねぇ」


 女子の視線を一身に浴びせられながら、シノはどこまでもマイペースだ。
 さっきまでのザワついた感じは一瞬で立ち消え、全員が黙りこんでいた。ゴクリと唾を飲み込む音も聞こえる。
 きっと、シノは気づいていない。


「――改めまして、大宮忍です!」


 ニッコリと微笑んで、壇上でペコリと頭を下げるシノ。
 そんな彼女に、誰もが心奪われているなんて――



「……嘘、でしょ」
「あれが――おとk」
「シッ! 悲しくなるから言わないの!」


 静寂の後で、さっきまでのザワつきが戻ってきた。
 けれど、そこにあるのはさっきまでと、ちょっぴり違う感じもする。


「私たちは私服姿を見慣れてるから何だけど……」
「シノって、本当に恐ろしいのね……」


 改めて感じ入った、とばかりに友人二人が頷いた。
 私も便乗させてもらう。
332 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:07:45.95 ID:h7ZtWU6Z0
「ええと、こういう格好で接客をするのは初めてなので……」


 にこやかな表情は全く崩さないままで、少しばかり頬を赤らめてモジモジとしてみせるシノ。
 何という反則級。しかし、当のかr――いや、敢えて――「彼女」は、それに気づきもしない。


「皆さん、よろしくお願いします!」


 そう言って、シノは再度頭を下げた。
 再び顔を上げると、視線が私とバッチリ合った。


「……」
「――!」


 その柔和な笑みを、私は忘れられないだろう。
 今まで見たシノの顔の中で、一番キレイで、奥底にまで引きこまれそうな、その微笑みを。
 つい気恥ずかしくなって、プイッと横を向いてしまう。顔が赤らんだのを確かに感じた。


「はーい、それじゃ大宮さんの挨拶はおしまい、ってことで」


 いいわね? と、委員長が皆に確認を取る。
 再び黙りこむ一同は、どこか困惑気味ではあった。
 それはそうだろう、事前に決を採ったとはいえ、実際に見るのとそうでないのとでは大違いだ……。


「……」
「よ、陽子?」


 静寂の中、隣の女の子が「パチパチ」と手を叩き始めた。
 たった一人だけの拍手は、しかし、静かな教室内によく響いた。
 それに倣って、私も同じ音を鳴らす。
 困惑気味だった綾が、私たちの後についてくる。
 そして、最後には全員を巻き込み、大きな輪になった――
333 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:08:53.40 ID:h7ZtWU6Z0
 ――AM9:30


 シノを迎えた後、最後の調整に向かっていた男子たちも戻ってきていた。
 全ての席が埋まる――おお、何だかんだで皆、楽しみなんだなぁ。
 そうして、隣同士でワイワイとやってると、カラスちゃんがゆっくりと入ってきた。


「はい、皆さん! 今日までお疲れ様でした」


 そして響く、優しい声。あぁ、これだけで癒される……。
 周りを見れば、例えば「ホントきつかったよねー」なんて言いながら、頬が緩みきった女子の姿がある。
「もうこんな力仕事、二度とやりたくねー」なんて言う男子も、素晴らしい笑顔だった。


 私は、そんな皆を見てしみじみと思う。
 学園祭ってのは、そういう行事だよなぁ、と。


「そして、今日からが本番です!」


 教壇上で満面の笑みを浮かべるカラスちゃんは、本当に楽しそうだ。
 その気持ちは、きっと全員が持ち合わせているんだろう。


「皆さん、楽しみましょう!」
「おおーっ!」


 カラスちゃんがガッツポーズを取るのと同時に、私たちも腕を大きく上げた。
 いやぁ、始まる前からワクワクするね!


「この服で、接客、なんて……」


 ちょいと近くのお嬢さんは、振り上げた腕がプルプルと震えてますけど……。



 さてと。
 何か色々なおカタい注意事項とかを言った後で、カラスちゃんは「それでは!」と教室を出て行った。
 チラッと時計を見れば、9時40分。うん、まだちょっと余裕アリ。


「陽子、私、ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「ん、行ってらっしゃい」
「うん!」


 律儀にそう言ってくれたアリスに返事をし、私は机に頬杖をついた。
 少し、この余韻みたいな感覚に浸っていたい……。
334 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:10:51.33 ID:h7ZtWU6Z0
「あ、あのさ、大宮さん……」


 ん? 聞き覚えのある声だな。
 見れば、シノが今朝私が話した二人の男子といる。


「はい、なんでしょう?」
「……えぇと、その」
「一緒に写真、撮ってくれるかな?」


 モジモジとした様子の二人は、こっちから見る限り、頬の赤みがバレバレだった。


「はい、いいですよ」


 キョトンとした様子のまま、シノは立ち上がった。


「それじゃまず、俺からでいいか?」
「おう……3、2、1」


 パチリ、とケータイの音が鳴る。
 ちなみにポーズは、シノと男子が近くで一緒に立っているというごくごくシンプルなもの。


「終わったぞ」
「そんじゃ次な……いいか、大宮さん?」
「えぇ、大丈夫ですよ」


 再度確認する男子に、晴れ晴れとした笑顔を見せるシノ(メイド服Ver)。
 自分の望んだ服を着られて、ご満悦といった風だ。


「そ、そっか」


 おいおい、自分から声掛けといて、そんな顔赤くするなって……。
 やれやれ、と私は溜息をついた。
 中学時代まで、シノと個人的に写真を撮ろうなんて言い出す男子はいなかった。
 あの二人が特殊なのか、はたまた――


(シノが、私たちの想像以上に「女っぽさ」に磨きをかけているのか……)



 と、机に頬杖を付きながら、何となく時計を見れば――9時50分!?
 ヤバい、そろそろ最後の打ち合わせを甘味処班で行わないと……!


「い、委員長! そろそr」
「そこの二人、何してるの!」
「……あれ〜?」


 当の委員長、何やら男子二人組にご不満の様子。


「まったく、学園祭直前なのに、そんなにほうけて……」


 委員長が呆れた様子で溜息をつく一方で、シノたちは、


「……」
「……」
「わぁ……」
「な、なによ?」


 委員長を静かに見つめていた。
 キョドった様子の委員長は、なかなかレアだ。
335 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:11:50.00 ID:h7ZtWU6Z0
「いや、お前さ」
「なんというか――似合うな」
「はい! とてもお似合いです!」
「……な、ななっ」


 何言ってるの! と、震えた声が私に届く。
 あちゃー、あの三人……直前だってのに、ややこしいことしてる場合かっての。


「おい、委員長! そろそろ」


 私が声を張り上げ、呼ぶ――


「……あ、あの」


 ――前に小さな声が、届いた。
336 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/16(火) 01:15:28.55 ID:h7ZtWU6Z0
尻切れトンボ感が半端じゃありませんが、今回はここまでです。
気づけば、放送終了から一年経ちそうなんですね……時の流れは、あっという間です。

それでは。
久世橋先生、誰になるのかなー、などと思いながら。
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/16(火) 12:01:54.64 ID:1PVDw4Suo
乙でした
最近シノが女装ということを忘れそうになって困る
338 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/16(火) 22:24:53.47 ID:L+BZ0Ew0O
おつ
339 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:09:23.50 ID:6tdc02e90
それじゃ、今回も地の文付きで投下します。
少し、雰囲気が変わりました。とはいえ、シリアスになったというわけではない、と思います。
どちらかというと少女漫画のような……まあ、投下しましょう。
340 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:10:22.06 ID:6tdc02e90
 

 ――AM9:48


(あぁ、そろそろ時間が……)


 私は焦った。
 昔から、時間通りに事が運ばないと、すぐに困ってしまう性分だった。
 予定通りにやるべきことをテキパキとこなす。
 その流れが崩れると、途端にポツンとしてしまう。


 10分前になるまで、2分足らず。
 シノの元へ男子二人が行ってから、ハラハラと見ていたけど、そろそろ時間だ。
 シノを呼んで、メイド喫茶側も最後の打ち合わせを行わないといけない――


(……どう、すれば)


 チラッと見れば、和装をした「彼女」は、どこかボンヤリとしている。
 ダメだ。こういう時のあの子は、あまり頼りにならない……。


「……うぅ」


 ゆっくりと、私は立ち上がった。
 ただでさえ衣装のせいで恥ずかしかったのに、心臓の鼓動は倍加したようにすら感じる。
 どうすればいい? 「男子」となんて、話したこともない気さえする。シノは例外中の例外で。



 ――綾、変わったよな――



(……陽子)


 電流が、身体に走ったような気がした。
 「図書室に行こう」と提案した私に、彼女はそんなことを言った。
 その名の通り、太陽のような笑顔で。
 その言葉が、私の中でずっと響き続けている。


「……」


 ゆっくりと、彼らに向かう。
 少しばかり逡巡していた間に委員長まで加わり、どうやら事態はよりややこしいことになっているようだ。
 ……それでも。


(足は、止めない……)


 そう、私は「変わった」はず。
 大丈夫だ、落ち着くのよ私。
 もう、中学時代の私は、いない――!
 四人の近くにまで行き、スゥっと息を吸い、


「……あ、あの」


 我ながら何て、か細い声。
 ちゃんと伝わっただろうか?
341 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:11:18.62 ID:6tdc02e90
「……?」
「あ、綾ちゃん」


 三人の疑問符を浮かべた顔と、シノのほんわかとした表情。
 一瞬、萎縮する。けれど、踏みとどまった。
 私は、ゆっくりと話す。噛まないように、噛まないように……。


「そ、そろそろ……時間といいますか、その」


 え、なにこれ? 
 私の口からちゃんと出ているわよね?
 ダメだ、言いたいことはまとまっているはずなのに、頭がグルグルして――


「……あ、集まって、ですね、あの」


 ――言葉が、上手く出ない。


 すぐ近くにいる男子は、キョトンとしている。
 うっ、男の人の視線……どうしよう、なんでこんなに怖いんだろう。
 陽子やカレンなんて、あんなに当たり前のように男子とも会話している。
 シノは別としてもアリスだって、支障をきたしてない、のに。


 私だけ、取り残されたの?


 なんてことだろう。
 結局、私は変われていない……。




「時間……あぁっ!」


 ビクッとした。
 眼前の委員長が大きな声を出したからだ。
 そして、キッと男子たちの方へ視線を向ける。


「あなたたち、もう直前も直前じゃないの!」
「うわ、ホントだ」
「そろそろ男子組の方へ向かうか」
「おう」


 大宮さん、ついでに委員長もガンバ! 
 そんなことを言いながら、男子たちは去っていく。
 ……あぁ、良かった。とりあえず、「男の人」はいなくなった。
 何だかよくわからないままホッと息をつくや否や――


「小路さん、サンキュー!」


 ……え?
 完全に、油断していた。
 もう、「責務」は終わったのだとばかり思っていた。
342 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:12:51.44 ID:6tdc02e90
 声に反応し振り向いてしまうと、二人の男子が笑っていた。
 視線はバッチリ合ってしまう。
 でも何故か、私は震えてもいない。ピクッときたものの、すぐに止まった。
 すぐさまペコリ、と頭を下げる。
 そうするのがベスト、という気がして。


「全く、最後まで……」


 顔をあげると、呆れ顔で呟く委員長の姿があった。ほんの少し、顔が赤くなっている。
 きっと、時間のことを失念していたからだろう。
 私は――今、どんな表情をしているのだろう。分からない。
 少しだけ頬が熱いけれど、気恥ずかしさはあまり感じられなかった。


「それじゃ、私も甘味処班へ……っと、小路さん。ありがとね」
「い、いや、その……どういたしまして?」


 再びペコリ。
 顔を上げれば、クスクスと笑いながら委員長が去っていこうとしていた――


「初めて見たわ。小路さんが男子と話した所」


 ――!?
 またしても、不意打ち。
 私がクルッと振り向けば、委員長は甘味処班の人たちを集めていた……。
 
 
(……からかわれた?)


 いや、さすがに考え過ぎか。委員長にも悪いだろうし。
 思い返してみて、普段、アリスが異性と話すレベルの10分の1位だと分析する。
 陽子やカレンと比べるのは、まだまだ無理だけど……。


「……あれ?」
 

 何を「分析」しているんだろう、私は。
 そもそも、何をやらかしていたんだろう。
 ――思い返しても、赤面しない。
 「しっくりときた」という文章表現が、これほどピッタリ当てはまる状況はあっただろうか。
 当たり前のことを、当たり前にしただけなんだから……。



 「……綾」


 ハッと振り向けば、そこには陽子の姿。
 浮かべている表情は、今まで見たこともないほどの優しさを湛えていた。
 穏やかに、彼女は言う。


「おめでと」
「!?」


 そして気づけば、頭を撫でられている……。
 へぇ、陽子の手は、「女の子」してるのね。綺麗で心地いい……あれ?
 な、何をしているの、この子は!


「よ、陽子!」
「昔からの『親友』が変われた記念だ。少し、許してよ」


 私が顔を真っ赤に染め上げて抗議しても、意にも介さない陽子。
 ど、どうすれば……あっ、そうだ!
 甘味処班に、この子を送り込めば――!
343 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:15:01.31 ID:6tdc02e90


「……」


「変われたんですね。綾ちゃん」


 私が黙りこくっていると、これまた優しい声が聞こえてくる。
 さっきの「男子」と比べると、全く声のトーンが違う。声変わり、という現象がシノには起こらなかったとしか思えない。
 そう。だから私は、この子をある意味で「女の子」と見なすことが出来ている。


「私、初めて見ました。綾ちゃんが勇気を出して、踏みだそうってした所……そして、実際に踏み出した所も。凄いです」


 私も、考えないといけないのかもしれませんね――
 シノはそう言った後で、ポツリと意味深なことを呟いた。
 この子は何を「考える」のだろうか?
 私たちのグループは、今のところ良好な関係としか考えられないけれど……。


「もうっ、猪熊さん! 早く来ないと、話し合いが出来ないわよ!」
「あ、ごめん委員長!」


 あっ、陽子の手が頭から離れる。
 何も感触が無くなった頭は、熱を帯びていることが感じられた。
 陽子の手は、太陽のように温かい――名は体を表すというのは本当らしい。


「そんじゃな、二人とも! 楽しもう!」


 そう言うと、ピューッと甘味処班へと向かっていくのだった。


「……」
「ねぇ、シノ?」


 私は、どこかボンヤリとしている「彼女」に呼びかけた。
 どういうことなんだろう? もしかして、見えない所で軋轢が生じていたとか?
 ……まさか、ねぇ。


「――メイド喫茶班の所、行かなきゃ」
「……あっ」


 何か考え込んでいたようなシノは、パッと顔を上げた。


「そうですね、ありがとうございます綾ちゃん!」


 そう言うと彼女もまた淑やかに、メイド喫茶班に合流した。
344 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:16:05.88 ID:6tdc02e90


「……」


 勿論、本当に言いたかったことはこれじゃない。
 けれど今は――


「学園祭、楽しまないとね!」


 そして、私もシノを追うような形で、メイド服班に向かうのだった。



 その頃になると、メイド服でいる自分というものがあまり気にならなくなっていた。
 さっきまでの気恥ずかしさが、嘘のように雲散霧消した。
 思い返すのは、「ありがとな!」と言ってくれた男子たちと、「初めて見た」と優しく言ってくれた委員長――


(……神様がくれたご褒美?)


 そうならいいな、とロマンチックなことを考えながら、私は時計をチラリと見る。
 AM9時53分――いよいよ、なのね。
345 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/09/19(金) 06:24:57.25 ID:6tdc02e90
ここまでになります。
……いや、ここまで書いて、まだ肝心の本番が始まっていないことは凄いですね。
次回は台本形式(?)中心で行っていく感じになる予定なので、トントンと進めば……いいですね。

「少女漫画的」といっても、別に綾が件の男子に好意を抱くとか、そういう展開は考えていません。
ただ少女漫画って、主人公の女の子も成長していく側面があるので、そう評しました。
そもそも「きんモザにそんな要素いるかな……」とか考えていましたが、書いていたら筆が乗ったので、綾の心情描写に特に文章を割きました。
もしかしたら自分の無知で、綾も男子と普通に話していたりする、のかなぁ……。
陽子やカレンはそういうイメージが強いのですが、皆さんはどうでしょう?

おっと、長くなりすぎました。
それじゃ、ここまで。次回から、本番スタートです。
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/09/19(金) 08:16:21.77 ID:Ws7PLUN0O
乙です

綾が男子と普通に話す・・・

うん、ないな
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) [sage]:2014/09/19(金) 22:03:00.25 ID:fK4wGA+n0
乙 次回も待ってる
348 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/10/15(水) 22:09:25.62 ID:AaWl9qVv0
やばい、もうすぐ一ヶ月でした……。
もうしばらくお待ちを。
349 : ◆jOsNS7W.Ovhu [sage]:2014/11/12(水) 22:09:37.95 ID:J2hzzMiP0
すみません、まだかかりそうです……。
350 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:37:59.15 ID:Kn2Q0xzu0



――開演


男子A「さぁ、いらっしゃいいらっしゃい!」

男子B「とびきりのメイドさんと……えっと」

男子B「和装姿の人? が接客してくれますよー」

男子A「……お前、なんか他に言いようはないのか?」アキレ

男子B「それじゃ、そっちは思いつくのか?」

男子A「悪い、無理だ」




――甘味処班



委員長「あ、あの二人は……」プルプル

陽子「まぁまぁ委員長」

陽子「受付なら、あんな感じのお調子者の方がいいと思うよ」

陽子「堅苦しいのは、お祭りに似合わないだろうし」

委員長「……まぁ、猪熊さんの言うことも一理あるわね」

委員長「それじゃ、私たちは臨機応変に接客といきましょうか」

陽子「おー」ニコニコ


アリス「……」

陽子「ん、どうかしたアリス?」キョトン

アリス「う、ううん」

アリス「……陽子って、あの二人と仲良しなのかなーって」

陽子「えっ」

アリス「……」ジッ

陽子(受付のヤツらのこと、だよね……?)

陽子「いやまぁ、普通に話す程度だって」

アリス「……」

アリス「そっか」クスッ

アリス「それじゃ陽子、そっちの班も頑張ってね!」ニコニコ

陽子「……」


陽子(……アリス?)

陽子(今の問いかけはなんだろう?)

陽子(うまく言えないんだけど、なんだか)

陽子(少しだけ、私とあの二人が仲良しであってほしいなー、って)

陽子(そんな感じが……)

陽子(ま、いっか)
351 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:39:29.50 ID:Kn2Q0xzu0


――メイド喫茶班


綾「……あぁ」

綾「ついに、この時が」プルプル

忍「綾ちゃん、大丈夫ですか?」

綾「あ、あぁ、シノ……」

綾「大丈夫よ。さっき何とか――」

綾「……」ガクガク

忍「ホ、ホントに大丈夫ですか?」


綾(……男子とまともに話したことなんて久しぶりだった)

綾(小学生の頃以来かもしれない……ああ、だからこんなに緊張を)

綾(いや、きっと違う)

綾(その後、大切な友達……陽子が起こした行動のせい、よね)


綾(おかしいわね、まるで)

綾(カレンの家で、間違ってお酒を飲んだあの時みたいに考えが回らない……)

忍(綾ちゃん……心配です)キュッ



――数分後



男子A「いらっしゃいませー!」

男子B「お客さま二名、来店!」

忍「!」

綾「!」


客A「へぇ、なかなか凝ってるな」

客B「文化祭に本格的なのっていいわねー」

綾(お、男の人と女の人……)

綾(どうして、二人とも女性じゃないのよ……)アセアセ

忍「……あっ」

忍「いらっしゃいませ、お客様!」ニコッ

忍「こちらへどうぞ!」

客A「ああ、ありがとう」

客B「ふふっ、可愛いわね」

忍「ありがとうございます!」ペコリ


綾「……」

綾(ああ、私が動けないうちに、シノが案内を……)

綾(どうしてこう、身体が動かないんだろう)

綾(どうしても萎縮するこの身体が恨めしい――)
352 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:41:19.40 ID:Kn2Q0xzu0


――昔からの親友が変われた記念だ――


綾(……あの言葉)

綾(嬉しかったはず、なのに)

綾(私は全然、それに見合うようなことを――)


忍「考え過ぎちゃダメです、綾ちゃん」


綾「……!」ハッ

忍「実は私も、色々考えてしまってます」

忍「――多分、綾ちゃんにも想像が付くようなあれこれを」

綾「……シノ?」

綾(なんだろう――)

綾(さっき、私に声をかけてくれた時も、今のように意味深長な表情をしていた……)

綾(優しさと愛しさがいっぱいの顔つきに――迷い?)


忍「私は」

忍「綾ちゃんが『踏み出した』所を、この目でしっかり見ました」

忍「そして私は、今の綾ちゃんなら今まで出来なかったことだってなんでも出来ると思ってます」

綾「!」

忍「……綾ちゃんは、私の言うことが信じられませんか?」ジッ

綾「……」


綾(そう、よね)

綾(私と陽子とシノ、三人)

綾(中学の頃に知り合って、これまでずっと一緒だった)

綾(……私が、シノの言うことを信じられない?)


綾「そんなわけ、ないじゃない」

忍「ふふっ、それでこそ綾ちゃんです!」ニコッ

綾「……」

綾「もう、シノったら」

綾「私を励ましてくれるのはとても嬉しいけど」

綾「お客様にお水を出すの、忘れてるでしょ?」

忍「あっ!」ハッ


綾(まったく)

綾(妙な所で鋭くて、おかしな所で抜けている)

綾(そんな、この子が――)

綾「大丈夫、私がやるから」クスッ

綾(こんなに大きな存在だった、なんてね……)
353 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:42:53.75 ID:Kn2Q0xzu0
忍「……」

綾「す、すみません、お客様! 遅れてしまいまして……」プルプル

客A「ああ、大丈夫。そう緊張しないで」

客B「いいのよ、気にしてないから」

綾「あ、ありがとう、ございます……」アセアセ

忍(――綾ちゃん)


忍(大丈夫です、綾ちゃんなら)

忍(きっと、これからもどんどん変わって行けます)

忍(――私、も)



――甘味処班


陽子「いらっしゃーい!」

アリス「お茶ですっ!」

客C「おお、綺麗な金髪……」

客D「留学生?」

アリス「い、いえ! ここの生徒です!」

客C「すげー、日本語上手いね……」

客D「もう立派なバイリンガルね」

アリス「あ、ありがとうございます!」


陽子「……」

陽子(そういや、アリスはバイリンガルになるのか)

陽子(カレンはお父さんが日本人だし、そう考えるとアリスって何気に凄いな……)

陽子「今更か」

アリス「陽子! お客さま!」

陽子「ん、おう」

陽子「いらっしゃいませー!」
354 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:44:57.42 ID:Kn2Q0xzu0
 ――接客に追われながら、私は充実した気分に満たされていた。
 少なくともうちのクラスは、全員やってきて文化祭に参加している。
 このことだけでも、何故か嬉しくなるんだよね。
 それに、こうして人と接していると、
 やっぱり私は人と話すのが好みだということがアリアリと分かって、嬉しくなったり。


(……祭り、かぁ)


 なるほど、大昔から今まで、多くの人に親しまれてきたわけだ。
 ホントはこういうあれこれを考えるのは綾の役目なんだけど、アイツはそれどころでもなさそうだし。


「い、いい、いらっしゃいませ」
「綾ちゃん、ファイトですっ」


 ほら、声も手も震えている。
 でも、縮こまってないし、しっかり目の前を向いている。
 近くには、お互いにとって大切な友達だって付いている。


「人は変われる」なんて、CMとかではよく聞くフレーズだけど、大切な友達がそれを実践したなんて格別だ。
 私まで、何だか熱くなってくる。


「お客様、二名!」


 おっと、外のお調子者たちが声を上げた。
 どうやら、客足は途絶えることもないらしい。
 まぁ――休みたいなんて、全く思わないんだけどさ。


「いらっしゃいま……」


 そして――



――同時刻


男子A「……うーん」

男子B「なんだよ?」

男子A「いや――今のサングラスの人、どっかで」

男子B「ああ、あの人か。あのスタイルとか、モデルみたいだよな」

男子A「……モデル?」

男子A「ああ、そっか」

男子B「悩んだと思えばあっさり納得するのな……」




 ――やってきたのは。


「やっほー、陽子ちゃん」


 耳に響く、陽気な声。
 私にとっては、シノと同じくらい長い付き合いになる人。
 サングラスをかけていても、そのスタイルの良さとか諸々が突出している。


「イ、イサ」
「ストップストップ。一応、内緒ってことで」


 つと、私の唇に綺麗な指が当てられた。
 絹のようにつややかなその指に、私の声帯は参ってしまったとみえる。
355 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:46:55.83 ID:Kn2Q0xzu0
「もう……正直、隠すつもりないでしょ?」
「ふふっ、まぁバレたらちょっと困るし」
「バレたらバレたでいい、とか思ってるわね……」
「お客様ー! こちらに空き席がございます!」


 お客様――イサ姉とお友達は、そんなことを言いながら、空いた席に案内されていく。
 メイド喫茶側も含めて、店内の視線がイサ姉に集中していた。
 いや、分からないでもないけどさ。というか、妥当?


「あっ、お姉ちゃん!」


 イサ姉が席につくと、すかさず動き出そうとするメイド喫茶側の住人。
 おいおい、こっちに来ちゃダメだろ。メイド喫茶側に、お客さんが来店してるし。


「シノ。イサ姉は、甘味処班の席だから」
「えぇ〜……陽子ちゃんはケチンボですね」


 こっちに来ようとするシノの頭に、私は軽く手を載せて通せんぼする。
 すると上目遣いで、シノは膨れ面をしてみせた。
 うん、全く迫力がないし、むしろ……。

 
「――あ、後で何かおごってあげるよ」


 やばい、ついドギマギとしてしまった。
 正直、シノの不意打ちほど卑怯なものはないと思う。
 

「わぁ、本当ですか?」
「……100円くらいまでなら」
「やっぱり、ケチンボです」


 私がそう返すと、シノは嬉しそうに破顔する。
 そのままクルッと身を翻し、すぐさまお客さんの元へと向かっていった。


「はぁ……」
「おーい陽子ちゃーん、注文おねがーい」


 私が軽く溜息をつくと、図ったかのようなタイミングで聞き慣れた声が響いた。
 顔は見えないけれど、絶対ニヤニヤしてる。間違いない。


「さて、と……」


 それじゃ私も、本業に戻りますか。
 せめて、イサ姉に負けないくらいの笑顔で仕返ししてやろう……。


「……陽子」
「全く、あの子ったら」


 ……背中に感じる二人分くらいの視線は、敢えて無視。ごめんね。




「はいお客様、ご注文の宇治抹茶になります」
「わぁ、美味しそう」
「ありがとう」


 私が注文品を差し出すと、さっきやって来た二人は美味しそうに飲んでくれた。
 正直、高校の文化祭で出せる品物は知れたものだけれど、何か良い気分だ。
 やっぱり、お祭りが好きなんだな、私は。
356 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:48:48.58 ID:Kn2Q0xzu0
「前よりずっと、仲良さそう」
「昔から仲良いだろ? だからイサ姉も、私にシノの保護者役みたいなものを任せたんだし」
「何だか、心から信頼し合ってるような……」
「――漫画の読み過ぎだって」


 溜息をつくと、外から「お客様一名!」の声がした。
 それがまたいかにも男子って感じで、またしてもさっきのシノの表情が脳裏をよぎる。
 いけないいけない、これじゃ接客が出来ないって。
 

「それじゃ私、お客さんの所に行かないと……」
「へぇ、あなたが『陽子ちゃん』ね?」


 へ? なんだなんだ?
 声のした方を見れば、そこにはイサ姉のお友達の姿が。
 興味深そうに私を見つめながら、彼女は言う。


「いつも勇から聞かされてるわ。『かっこいい、けれど凄く可愛い子なのよ』ってね」
「……」


 おいおい。
 困ったな。
 動揺するようなことでも、何でもないはずなのに。
 どうして顔が熱いんだろうね?


「あ、ええと――ありがとう、ございます?」


 なんだこの尻切れトンボな挨拶は!
 内心で自分を罵倒する私は、フラフラと新規のお客さんの元へと向かおうとする。


「ちょっと猪熊さん! 足、フラついてるわよ!」
「あ、ああ、ごめん……委員長」
「顔も赤いわね? 大丈夫?」
「……な、なんとか」


 ああ、もう……。
 イサ姉だけでも大変だってのに、お友達まで――!
 これじゃ、綾のことを励ます権利なんて……ない、のかな?






「……なかなか性悪ね?」
「勇ほどじゃないわよ。あんた、いつも年下をあんな風にからかってるの?」
「まぁ、程々に?」
「――はぁ」


 つい、ため息をついてしまった。
 目の前のモデル兼友人は、どこまでも飄々としている。
 この子と話してると、いつも「狐につままれた」ような気がするのは何故だろう。
 私のことはともあれ、今しがた話していたあの子は不憫だ。
 というか、この子の「きょうだい」って――


「……あの子が」
「そう、『妹』よ」
「世の中って、広いねぇ……」


 メイド喫茶側へと目を転じれば、そこでは喜色満面といった風に接客に励む少女の姿が。
 ……うん、どう見ても立派な女の子だ。
357 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:50:25.08 ID:Kn2Q0xzu0
「勇。おと……妹さん、大事にしなさいよ?」
「あら、心配するなんて珍しい」
「はぁ……」


 目の前ではしゃぐ「お姉ちゃん」は、「きょうだい」のことを心配してはいないらしい。
 今日ここへ来たのも、ただ単純に、楽しみたかっただけというのは嘘じゃないとみた。
 まぁ、こういう「お姉ちゃん」の方が、下の子は楽しめたりするんだろう。きっと。


「……思ったより、ずっと本格的ね」


 そんなあれこれを思いながら、私は教室内を見回した。
 喫茶店の看板も、飾り付けも、なかなか気合が入っている。
 ……私も、もっと本気を出せば、文化祭に燃えられたのかもしれない。


「受験生でさえなければ、とか思ってる?」
「……モデル兼占い師?」
「褒め言葉と受け取っておくわね」


 目の前で、楽しそうにはしゃいでいる友人を見て、つい笑ってしまった。
 まぁ、過ぎていった日々に後悔するのは意味もないことだし、無粋ってものかも。
 今日は、せっかくの「お祭り」なんだから――
358 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/11/29(土) 02:56:42.81 ID:Kn2Q0xzu0
とりあえず、ここまでです。
散々遅れて、申し訳ありません。

今回からやっと、文化祭に入りました。
どこか意味深な描写が多かったと思います。
けれども、伏線として活かされるのかは決めていないという場当たり的な思考の中で書いています。
手探り状態ですね……。

次回は、ほんの少し波乱があるかと思います。
相変わらず冗長ですが、読んで下さる方々には本当に感謝しています。

それでは、また。
漫画も5巻が発売しましたね。
359 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/30(日) 15:58:49.31 ID:JYRn1Uibo
乙でした
360 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/11/30(日) 22:15:46.83 ID:pvXAKw7YO


漫画買わないと・・・
361 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/01(月) 08:43:05.99 ID:LgNBIv8AO
おお
続ききてた
362 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 01:52:09.55 ID:5/HVdI+M0



――受付


男子A「いやー、まさか本物のモデルがここにいるとは……」

男子B「たしかに……どこかで見たことがあるとは思ったけど」

男子B「まさか、お前の家で見た週刊誌の表紙だったなんて」

男子A「妹が置きっぱなしにしてたんだな、あの雑誌」

男子B「……世間は狭いってヤツ?」

男子A「どうだろうな――正直、あの人が大宮さんのお姉さんだって方が」

男子B「コメントしにくいな……」


男子B「――っと、いらっしゃいまs」

カレン「女子高生一名、入りマース!」

男子A「……」

男子B「……」


カレン「どうかしたデスカ?」

男子A「あ、いや――たしか」

男子B「たしか編入生、だよね?」

カレン「ハイ! 九条カレンと申すデス!」

男子A「……いつも、大宮さんたちと一緒にいる」

カレン「Yes!」

男子B「ああ、いつもお菓子を恵まれてる……」

カレン「皆さん、親切デス!」

男子AB「……」

男子AB(明るい子だなぁ)


男子A「ま、気を取り直して」

男子A「いらっしゃい、ようこ、そ……」

男子A「――!?」

男子B「お、おいおい……あれって」


カレン「?」

カレン「Classroomで、何か――」

カレン「!」
363 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 01:53:58.78 ID:5/HVdI+M0


(あぁ……やっと、少し慣れてきた、かも)


 相次ぐお客様の対応に追われてとても疲れたけれど、それ以上に充実感がある。
 何だ、私も意外と出来るものだ。


(後はこのまま、何も起こらずに終われば――)


 そう、私がゆっくりと呼吸をしていると、


「あ、あの! これ俺のメアド、なんですけど……」
「――へ?」


 唐突な異変に、私の口からつい、呆けた声が出てしまった。
 何があったの?


「……私、ですか?」
「はい! あの……凄く、可愛いですっ」


 緊張しきった男子の声に対し、当惑気味な「女子」の声がする。
 その声は、私がいつも近くで聞いていて、ついさっき私を精一杯励ましてくれたものだった。
 私は頭をクラクラとさせながら「現場」へと視線を転じる。

 
 何やら、面倒事が起きているようだった。
 クラス中の視線が、当人たちに集まっているように感じられる。


 メモのようなものを渡す私たちと同い年くらいの男子は、
 顔を真っ赤に染めながらメイド服に身を包んだ相手を褒め称えている。
 刈り上げたヘアスタイルから見るに、どこかの運動部員かしら? この学校の生徒じゃないみたいだけれど……。
 もう一人の方はこの位置からではよく見えなかったので、私は静かに移動した。
 果たして、そんな彼と相対しているのは――


「……シノ!?」


 愕然とした。
 メモに目を落とすお相手は、いつも一緒にいる大切な友達だった。


「――そう、ですか。私に」
「はい! メチャ可愛くて……付き合って、くれませんか?」
「……」


 シノはペコペコと頭を下げる男子を静かに見つめている。


 いつのことだったろう。
 私たちは、カレンが男子に告白されている場面を覗き見してしまったことがある。
 その時は、私の好きな少女漫画のワンシーンみたいだ、と感じた。


 そうだ、と私の中に、ある意味で理不尽な思いが湧く。
 ここは共学で、こういったイベントがあるのは構わない。きっと、他のクラスか上級生の教室でも、似たようなことがあったりもするのだろう。
 でも――と、私はそこで思う。


 でも、よりによって、どうしてシノなんだ、と。


 ある意味、八つ当たりなのかもしれない。
 私の視線にある見覚えのない男子生徒は、きっと一生懸命なのだろう。
 その懇願の様子からすると、決して軽い気持ちではないことがありありと分かった。
 だから――私の胸も、キュッとしてしまう。
 どうして……どうして、シノなの?
364 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 01:55:43.94 ID:5/HVdI+M0


「……」


 気づけば、身体が勝手に動き出していた。
 男の人がいる、といったような考えは働かなかった。
 それ以上に、どこか放心しているように見えるシノのことが心配だった。


(待ってて、シノ――!)


 静かに、けれど急いで二人の元へ向かおうとすると、


「ごめんなさい、少しいいかしら?」


 聞き馴染みのある声が、した――
 






 
 ――ずっと昔から。
 それこそ、陽子ちゃん以上に馴染み深い声が聞こえました。
 

「私、ここの高校のOGなんだけれど……」
「は、はぁ……」


 その声につられて、私は目の前の方から頂いたメモから目を離しました。
 見れば、すぐ近くに大切な人がいます。
 長い髪。昔から憧れていた、綺麗でどこまでも女の子らしいスタイル。
 そこにいたのは、何を隠そう、私のお姉ちゃんでした。


「実は今、うちの高校、いわゆるナンパ活動に厳しくなっちゃったみたいで」
「……へ?」


 呆ける男性の前で、お姉ちゃんはゆっくりと言葉を紡ぎます。
 そのすぐ後ろには、こっちに来ようとしてくれた綾ちゃんの姿がありました。
 男性がいるのにも関わらず、こちらに来て私を助けようとしてくれたのでしょうか。
 どうやら私の考えていた以上に、綾ちゃんは変わっているようです――
 

「それでね、ええと……今、怖い先生がこの階を見まわってるのよ」
「……?」


 お姉ちゃんの言葉に相手の男性は、ほんの少し訝しげな視線を向けました。
 無理もありません。お姉ちゃんは、この高校のOGではないのですから。
 だから今、お姉ちゃんが言い淀んだことに疑問を持ったのでしょう。


「だから、その――」


 尚も歯切れの悪いお姉ちゃんは、こちらから見ていてもドギマギとした様子でした。
 ああ、そろそろまずいかもしれません。
 このままでは――ちょっと、ややこしいことになってしまいそうです。
 これ以上、お姉ちゃんに任せきりではいけません。


「あ、あの」


 私がそう、口を挟もうとすると――
365 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 01:57:28.10 ID:5/HVdI+M0


「あ、烏丸先生!」
「見回りですか!?」


 外から、男の人の声がしました。
 見れば、受付係のお二人が椅子から立ち上がっています。
 ……あ。あの、金髪は。
 近くにいるのは、私たちの大切なお友達のようでした。


「……あ、そうそう! この烏丸先生っていうのがその怖い先生でね」


 彼らの声にひかれるような形で、お姉ちゃんは再び、ゆっくりと話し始めました。


「見つかると面倒なことになっちゃう、かも――」
「……マジすか」


 参ったな、と目の前の方は呟きました。
 見るからに残念そうな表情です。
 そんなことを思っていると、クルッと私の方へと視線を向けました。


「それじゃ、今日は帰ります。連絡先、気が向いたら……」


 ドギマギしながらそう言って、ペコリと頭を下げます。
 そして荷物をまとめると、教室から急いで出て行きました。


「……」
「シノ」


 その声に、ハッとしました。
 見れば、目の前でお姉ちゃんが複雑そうな表情を浮かべていました。


「――その、メモ」
「あ、これ、ですか……」


 お姉ちゃんが指摘したのは、やはりこのメモでした。


「……どうするの?」


 私が目を落としていると、お姉ちゃんが問うてきます。
 その声は――どこまでも複雑そうでした。
 非難しているわけでもなければ、歓迎しているわけでもない。
 お姉ちゃんにしてみても、今回の「一件」は予想外だったのでしょう。無理はありません。


「……一応、持っておこうと思います」


 声がつっかえないように、私はゆっくりと声にします。
 そのメモを大切にポケットの中に入れて、お姉ちゃんと視線を合わせます。


「……そう」


 お姉ちゃんはそう言うと、身を翻しました。


「――私は、シノがどう対処しても、いいと思うわ」


 もう高校生なんだし。
 そう言いながら、お友達の座るテーブルの所へと戻って行きました――
366 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 01:59:16.86 ID:5/HVdI+M0
 

 ――シノが、告白された。
 カレンが告白されている所は私も皆と一緒に見て、「ああ、そっか」と納得していた。
 イギリスにいた頃から、カレンはどこか異性からモテやすいのかも、と思っていたからかもしれない。
 けれど……シノは。


「……ビックリしたぁ」


 近くで見ていた陽子は、そう言いながら脱力していた。
 私は、どこか遠くで起こった出来事のように、未だに実感が持てずにいた。


 シノが男子生徒に告白される。
 これは、ある意味でとんでもないことだった。
 ホームステイの日々を送っていても、納得できていない事実として――


 やっぱり、シノが「男の子」だということがあるから。


「……なぁ、アリス?」
「なぁに、陽子?」


 声を震わせながら、陽子が私に問うてくる。いや、きっと私の声も同じだったと思う。
 目の前の友人は、私と視線を合わせながら、


「――シノって、やっぱり『女の子』なんだな」


 と、恥ずかしそうに言った。


「……うん。そうだね、陽子」


 私も、どこまでも恥ずかしくなりながら、そう返事をする。
 そして、私は再び「現場」に目を転じながら思う。


(……シノ)


 私は、シノのことが「好き」なんだよ、と想い続けながら。
367 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 02:02:17.35 ID:5/HVdI+M0





 ――とんでもない所を見てしまいマシタ。
「Amazing!」と、私の故郷では言うのでショウ。
 ただ……目の前で、私が見た光景は、『信じられない!』というレベルを遥かに超えていマシタ。


「……はぁ。びっくりした」
「でまかせでカラスちゃんの名前出しちゃったけど……ま、いっか」


 呆けた頭のままでいると、目の前の男子二人はそんなことを言っていマス。
 私はそれを見ながら「あぁ、『男子』ってこういう声だった」と実感しマシタ。


(……シノが)


 そう思いながら、私の頭の中ではいつかのあの光景がフラッシュバックしマス。
 人気のない校舎裏。目の前で深々と頭を下げる男子生徒。
 それに対し私は、嬉しく思ったのは事実デシタ。
 ……デモ。


(私は、ヤッパリ)


 あの時、頭の中をよぎったのは、いつも見ているオカッパ頭の「女のコ」。
 だから私は、あの時断りマシタ。
 今、私の頭はグルグルしていマス。
 例の男の人が出て行ってから、教室内はどこかざわついていマシタ。
 それも、イサミがテーブルに戻ってからは消えてしまったようデス――



「……私、戻りマス」
「ん? あ、あぁ、そっか」


 近くにいる受付係の男子生徒二人にそう言って、私はフラフラと廊下を歩き出しマシタ。
 どこへ向かうといえば――


(……私、は)


 今日、『あの』お芝居をブジに終えられるのでショウカ?
 目の前であんな光景を見せられても、私はあのシーンを演じられるのでショウカ?


 不安ですが、仕方がありマセン――そう、自分に言い聞かせマス。


 今日のお芝居の内容は、アリスを含めて誰にも伝えませんデシタ。
 かえって、良かったのかもしれマセン。
 ――だって。


(こんな気分のまま、お芝居ナンテ……)


 まともに出来る気がしないのですカラ――
368 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/05(金) 02:08:12.76 ID:5/HVdI+M0
とりあえず、ここまでです。
「一波乱」のお話でした。
今回のような展開は、このSSを書き始めてから、どこかで絡めようと思っていました。

次回は、カレンの演劇の話になると思います。
原作とはかなり異なったものになると考えていますが――ご容赦頂ければ、と思います。
このような設定で、読んで下さる方がいるだけで嬉しいものです。
……原作も、もしかしたらこうした設定(もちろん、違いはあるにせよ)で始まっていたのかもしれませんね。
見てみたいものですが、無理でしょうね……(諦め)。

それでは、また。
いつもありがとうございます。
369 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/05(金) 03:46:50.75 ID:36bASjDu0
おつです!
370 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2014/12/05(金) 17:08:32.30 ID:IQr+smSbO
371 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:28:34.75 ID:c4dYWrVV0
カレンの演劇の話は、次回以降になると思います。ごめんなさい。
372 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:29:29.14 ID:c4dYWrVV0


「それじゃ、陽子ちゃん。後はよろしくね」


 お友達との一服を終えてから、席を立ったイサ姉はそんなことを言った。
 口元は笑っているんだけど、どこか複雑そうな目つきをしている。


「……ん。まぁ、大丈夫だと思う、よ」


 頭をかきながら、私はそう返事をする。
 いけない、軽く流そうとしたのにどこか歯切れの悪い返事になってしまった。
 ……いやまぁ、無理もないんだろう。多分。


「うん。陽子ちゃんなら、あの子を任せてもいいと思えるわ」
「……だ、だからさぁ」


 あぁ、どうしてこういうことを言われると、瞬時に顔が赤らむのか。
 以前――そう、少なくとも一学期の間には決してなかった。
「あの子」絡みのことでからかわれた時に、こんな反応をすることなんて。


「――シノのサポート、ホント頼むわね」
「……あ」


 ポンっと肩を叩かれた。
 フワッとした風と共に、イサ姉は出口へと向かっていく。
 私の見た後ろ姿は、相変わらず綺麗なものだった。


「……」
「応対、ありがとね」


 おっと、見とれてしまっていた。
 声のした方へ振り向けば、イサ姉のお友達の姿がある。


「まぁ、えぇと……あまり緊張しないで。なんとかなると思うから」


 それじゃね、と手を振りながら去っていく彼女を見ながら思った。


(……励まされた、のかな?)


 疑問符つきの思いのまま、私は店内を見渡した。
 さっきの「一件」が起きてから、それほど時間は経っていない。
 店内は和洋入り混じった様子で、まぁ人入りはそこそこってとこか。
 ……ただ。
373 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:30:56.73 ID:c4dYWrVV0

「……シノ、が」
「わ、私が、しっかりしない、と」


 私の大切な友達は、どうやらショックから立ち直れてはいないらしい。
 まぁ、無理もない。
 恐らく、アリスと綾で受けているショックの質みたいなものは違うんだろうけど。
 ――そして。


「お待たせしました! カフェラテになります!」
「おお、美味そう!」
「へぇ、学祭のものにしてはなかなか凝ってるわね……」
「ありがとうございます!」


 ペコリと一礼する「アイツ」は、さっきのこともどこへやら、完璧な接客をこなしていた。
 お客様に対する態度も良く、こっちから見る限り笑顔もしっかりしている。
 ……そう、だからきっと。


(――そっか)


 私とイサ姉しか気づけなかっただろう。
 付き合いの長さでいえば、あの人の次くらいに長い私くらいしか。


「……ねぇ、委員長?」
「どうかした、猪熊さん?」


 甘味処班のリーダーたる委員長に、私は声をかけた。


「少し、休憩してもいいか?」
「――ん、そうね」


 チラッと時計を見る委員長。
 次いで彼女は、店内を見回す。
 そしてまた私と向き合うと、


「実は、そろそろ節目としてはアリかな、と思ってたのよ」
「……そっか」
「今、来店しているお客様が出て行かれたら、休憩にしましょうか」


 委員長はそう言うと、クスっと微笑む。
「どうかした?」と私が聞くと、こう返した。


「……大宮さんのこと、心配?」
「っておいおい、委員長までそれか?」
「あなたが一番、付き合いの長いことは聞いてるしね」


 笑みを浮かべながら、委員長はゆっくりと言う。


「だから、他の子が気づかないことも……気づけちゃうんでしょう?」
「……」


 鋭い。
 ただの「真面目系キャラ」じゃないとは前から思っていたけど、やるな。


「さ、そうと決まれば休憩までベストを尽くしましょう」


 最後まで優しげな表情のままで、委員長は元の業務へと戻っていった。
 

「……うん」


 私もそう返事をして、接客対応へと足を向ける――
374 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:32:32.01 ID:c4dYWrVV0
 

 ――AM12:00


「それじゃ、休憩ー!」


 ……あ。
 どうやら、一旦おしまいのようです。
 パンパンと手を叩く委員長の姿も、やりきったという充実感でいっぱいのように思えます。
 ――当然、私も。


「や、やっと……終わりなのね」
「お疲れ様、綾ちゃん」


 声を震わせながら言う綾ちゃんに、私は笑いながら返しました。


「今日は凄かったです、綾ちゃん。本当に、間違いなく『変わった』と思います!」
「……あ、ありがとう。でも、シノ」


 はしゃぎながら言う私に対して、綾ちゃんはどこか複雑そうでした。


「あ、あなたは……その」
「あっ! 甘味処班のお二人も!」


 今度は甘味処班の方へと目を向けて、私はそう口に出していました。
 陽子ちゃんもアリスも、やり遂げたという感じで、こちらへと向かってこようとしています。
 私は、そちらへ視線を転じながら、お二人の姿を待っていました――







 ――「その」の後、何を言おうとしていたのだろう。
 考えなしに私の口から飛び出した言葉に、当の私自身が驚いてしまった。


 とはいえ、具体的な内容なんてどうでもよかったのかもしれない。
 当然、さっきのことについて聞こうとしていたに決まっているのだから。


 相手の男子生徒は、シノの連絡先を知らない。
 つまり、シノが連絡しない限り、よほどのことがない限り二人はもう接触しない――


(……どうして)


 さっきの、やるせない気持ちが、また蘇る。
 どうしてシノなんだろう、と。
 仮にシノが正真正銘の「女の子」なら、私はこんなことは考えなかったはずだ。
 この行き場のない思いに、私はどう対処すればいいのだろう……。
375 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:33:51.66 ID:c4dYWrVV0


「それじゃ、食べ物屋回ろうか!」


 私のすぐ隣で、陽子は満面の笑顔で言う。
 いつも「早弁」をしている彼女は、食べ物のことになると一味違う。
 それは、普段の付き合いの中でよく分かっていた。


「わぁ陽子ちゃん、私、おごられちゃうんでしょうか?」


 私の二つ隣にいるシノは、手を叩いてそんなことを言う。
 ポワポワとした笑顔は、いつも私の見るものだった。
 ……まるでさっきのことなんて、なかったことみたいな。


「……アリス」


 ハッとした。
 見れば、綾が私に顔を向けていた。
 その評定は、どこまでも複雑そうで。
 ……今の私も、同じような表情をしているのだろう。


「ど、どうしたの綾?」


 慌てて、私は応じる。
 目の前の彼女は、逡巡する様子の後で、私に言う。
 そして、私の耳元に口を寄せて、


「……さっきのこと、どう思う?」
「――!」


 驚いた。
 どうやら綾は、私と全く同じことを考えていたらしい。
 陽子とシノの二人はどこ吹く風で、おいしいクレープ屋のこととかを話していた。


「……綾」


 今度は私が綾の耳元に口を寄せて、ボソボソと言う。
 それに対し、綾はコクリと返事をすると、


「よ、陽子! シノ!」
「ん? どうかした、綾?」
「そ、その――ちょ、ちょっとアリスとお手洗いに行ってきたい、んだけど……」


 顔を赤らめながら、綾はそう続ける。
376 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:34:41.33 ID:c4dYWrVV0


 ここで、私は驚いた。二回目だ。
 こういう、いかにも恥ずかしくなりがちなことを、綾が即座に言い出したことに。
 ……綾も、間違いなく変わっているんだ。
 そんなことを感じた。


「ん、わかった。それじゃ、待ち合わせ場所は――そうだな、中庭でいいか?」


 対する陽子は、いつものように気さくな調子で綾に返す。
「わ、わかった!」と綾は応じた。


「アリス、行きましょう」
「う、うん。わかった」


 綾に連れて行かれる格好で、私は二人から離れていった。
 その合間にチラッと、視線を向ける。


「行ってらっしゃい、お二人とも」


 そこには、いつものように、私の大好きな笑顔を浮かべるシノがいて――


「……」


 それを見てから私は、ゆっくりとそこから離れていった。
377 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2014/12/22(月) 00:37:44.20 ID:c4dYWrVV0
ここまでになります。

カレンの演劇に一気に話を飛ばそうと考えていたのですが、いざ書いてみると思いました。
一旦、その場面に至るまでにある程度の決着みたいなものを付けておいたほうがいいのではないか、と。
とはいえ、読者の方によっては冗長に感じられるかもしれませんが……。

次回は、とりあえず分かれた二人組同士で、あの「一件」について色々と語ってもらう予定です。
進捗次第では、次回にカレンの演劇の話が書けるかもしれません。

それでは。
いつも読んで下さる皆様に感謝を。
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2014/12/22(月) 10:01:28.53 ID:weX5eX0SO
おつ
379 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/01/21(水) 00:03:09.20 ID:IqDtd8Jf0




――廊下・ベンチ


陽子「おまたせ、シノ」スッ

忍「わぁ、ありがとうございます!」パァァ

陽子「わたあめだけど、良かったかな?」

忍「はい、嬉しいで……」ピタッ

陽子「私とお揃いってことで……ああ、美味しー」モグモグ

陽子「ん? どうかした?」

忍「よ、陽子ちゃん……」フルフル


忍「これ、おいくらでした?」

陽子「ん……そうだな」

陽子「500円だったよ」パクッ

忍「――わ、私、払いますね」アセアセ

陽子「ちょい待った。シノ、本気にしてる?」

忍「??」キョトン


忍「で、ですが」

忍「お祭りとかだとわたあめって……」

陽子「あれ実際、かなり高めにしてるんだってさ」

陽子「で、かなり儲けられるんだって」パクッ

忍「……」

陽子「だから、ホントは100円だよ」

忍「――おごって、くれるんですか?」ジッ

陽子「さっき約束しただろ?」

忍「……ありがとうございます」ニコッ

忍「やっぱり、陽子ちゃんはイジワルですね」クスクス

陽子「褒め言葉?」

忍「はい」パクッ


陽子「ああ、美味しかった」

忍「はい、とても……」ウットリ

陽子「あの二人、どうしてんのかな」

忍「もう、陽子ちゃん? お手洗いに行ったことを気にするなんてはしたないですよ」

陽子「ねぇ、シノはどうしてると思う?」

忍「そうですね。きっと、人気のない裏庭辺りで……」ハッ

忍「――本当に、イジワルですね」クスッ

陽子「引っかかるシノが悪い」ニコッ
380 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/01/21(水) 00:04:30.99 ID:IqDtd8Jf0
忍「お二人に心配をかけてしまったのでしょうか」

陽子「そりゃそう思うよ」

陽子「……シノが悪いんじゃなくて」

忍「……」

陽子「あー、あの男子が悪いわけでもないよ」

陽子「そうだな、誰も悪くない。で、シノがそうなるのも仕方ない」

陽子「そんな感じじゃないかな」

忍「何だか納得いかないような……」

陽子「こらこらシノ」


陽子「私はずっと一緒にいて、シノがどれだけ優しいのか知ってるよ」

忍「……陽子ちゃん」

陽子「で、我慢するタイプだってのも」

忍「――」ギュッ

陽子「右手」

忍「!」ハッ

陽子「大丈夫? 長い間、握ってただろ?」


忍「……気づいちゃいましたか」

陽子「まぁ、ね」

陽子「ずっと一緒にいた私やイサ姉が気づかないわけがないよ」

忍「実は、ちょっと赤くなってしまいました」

陽子「やっぱり……」ハァ

陽子「昔から」

陽子「緊張したりパニクったりすると、それやっちゃうんだよね」

忍「これは、癖みたいなものですね……」

陽子「まぁ、それで感情を抑えられるシノは強いと思うよ」

忍「ありがとうございます」

陽子「けど……」

陽子「たまには、シノから頼ってほしいかな」

忍「ごめんなさい」ペコリ

陽子「謝らない謝らない」

陽子「――シノは凄いよ」

忍「……ありがとうございます」
381 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/01/21(水) 00:05:35.42 ID:IqDtd8Jf0
忍「それでは、お言葉に甘えて」ヨッコラセ

陽子「わっ、ちょ、シノ!?」アセアセ

忍「膝枕、してもいいですか?」ジッ

陽子(うっ、上目遣い……)

陽子(しかも、こういう時だけ色っぽく赤面までしてみせるって)

陽子「たまに、シノが怖いって思うことがあるよ」

忍「ふふっ、陽子ちゃんってば」コロン

陽子「……」

陽子(傍からだと、どう見えるんだろ?)カァァ


陽子(ま、まぁ、あれだ……)

陽子(シノを膝枕してあげたことなんて、それこそ――)

陽子「記憶にないぞ」

忍「ええ、私も驚いてます」ウットリ

陽子「……知ってただろ?」

忍「ご想像にお任せします」

陽子「シノはイジワルだ」

忍「陽子ちゃんには言われたくありません」クスッ


忍「……」

忍「陽子ちゃん」

陽子「な、なに、シノ?」ドギマギ

忍「――私」


忍「どうしたらいいんでしょうか?」


陽子「……」

忍「あんな風に、気持ちを伝えられたのは初めてです」

忍「男性の方と一緒にお話ししたりすることは、もちろんありましたけれど」

忍「……まさか、自分がこうなるとは思ってもみませんでした」キュッ

陽子(そりゃまぁ――)

陽子(カレンが告白されるのとは、色々と意味合いが違うからなぁ)

陽子「……」

忍「陽子ちゃん」

陽子「――私は」

陽子「そうだな……シノが自分なりに行動すればいい、と思うよ」

忍「……そう、ですよね」
382 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/01/21(水) 00:06:30.86 ID:IqDtd8Jf0
陽子「でもね」


陽子「私はシノがどんな行動をしても、それを全力で応援するよ」


忍「――!」ハッ

陽子「それだけはホントだから」ニコッ

忍「……もう」


忍「本当にイジワルで……お優しいんですから」

陽子「まったく……」


忍「……」

忍「ねぇ、陽子ちゃん?」

陽子「ん? なに?」キョトン

忍「――いえ、なんでもありません」フルフル

陽子「もう、なんだよ。気になるぞ?」

忍「ふふっ、内緒です」

陽子「隠し事、か?」

忍「……」キュッ


忍「ご想像にお任せします」ニコッ



――裏庭


綾「……シノは、どうするのかしら?」

アリス「まさか相手の人は、シノのことを……」アセアセ

綾「いや、それはないと思うわ」

綾「――さすがにシノの『素性』を知っていて、告白したとすれば」

アリス「もう、私たちの手に負える範囲を超えてるもんね……」

アリス(ただでさえ混乱してるのに……)

綾(ああ、もう……どうしてシノなのよ)

綾(カレンが告白された時とは、わけが違うのよ……)ハァ


綾「……ええとね、アリス」

アリス「なに、綾?」

綾「アリスは、どう思った?」

アリス「……」

綾「シノが、そ、その……告白、された時」

アリス「――カレンに続いて、シノまで遠くに行っちゃったなぁって」

綾「ええ。正直、私も同じようなことを考えたのは否定できないわね……」

綾「でも、それだけじゃないんでしょう?」

アリス「……うん」コクリ
383 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/01/21(水) 00:07:29.14 ID:IqDtd8Jf0
綾「そうよね」

綾「私もビックリしたもの」

綾「……シノが告白される、なんて」

アリス「考えたこともなかったよ」

綾「ええ」


アリス「……綾は、どう思った?」

綾「今度は私の番、ね」

綾「そうね……私もホントは、今も気が気じゃないのよ」

綾「色々と考えが走っちゃってて、抑えられない状態というか……」

アリス「わかるよ、それ」コクコク

綾「――シノは、本当に大切なお友達で」

綾「あの子がいなかったら、私も今日、乗り切れたかどうか……」

アリス「うん、シノは凄いよ」

アリス「無理してないか心配だけど……」キュッ

綾「そうよね……」


アリス「そっか。綾もシノが好きなんだもんね」

綾「も、もちろん」カァァ

綾(アリスの『好き』とは、きっと意味合いが違うけれど……)

綾(きっと、この子もそれを分かっているんでしょうね)

綾「ねぇ、アリス?」

アリス「ん? なぁに?」

綾「戻ったら、シノに何て声を掛けましょうか?」

アリス「……もう、綾ってば」クスッ

アリス「いちいち考えなくても、私たちは大丈夫だよ」

アリス「――いつも通りにしてれば」ニコッ

綾「アリス……」

綾(気丈に言うアリスを見ながら、私は気づいてしまった)

綾(彼女の笑顔が、翳ってしまっていることに)
384 : ◆jOsNS7W.Ovhu [saga]:2015/01/21(水) 00:09:54.00 ID:IqDtd8Jf0
綾(それなら――)

綾「そうね、アリスの言うとおりね」

綾「それじゃ、そろそろ戻りましょうか」ニコッ

アリス「うん!」

アリス「……良かった。綾が笑って」

綾「アリスのおかげで、ね」

アリス「ふふっ、綾ってば」クスクス


綾(それなら、私もそれに倣おう)

綾(アリスも私の表情に気づいてるのだろうし……それならそれで)


綾(お互い様、ということで)







 ――さて。
 二人が戻ってきた所で、私たちはその場を移動した。
 行き先は、講堂だ。
 そこで私たちの友達が劇をする、ということは知っていた……けど。


「そういえば……」
「な、なによ、陽子」


 講堂の目の前で、立ち止まる。
 ふと、思いついたことがあった。
 近くの綾に視線を向ければ、何故か綾が照れ出した。
 それに気づかない振りをしながら、私は、


「なぁ、カレンって何の劇をやるんだ?」
「……そういえば」


 私の質問に応えて、綾は鞄から冊子を取り出す。
 言うまでもなく、文化祭のパンフレットだ。
 手際よく、該当のページを綾は見つけ出した。


「あったわ、カレンのクラス」
「そっか。で、演目は?」
「……演劇、としか」
「マジか」


 綾に促される形でパンフに目を通した私は、呆気にとられてしまった。
 たしかに綾の言うとおりだった。


「カレン……一体、何をするんだろう?」
「そもそも、何の役をするのかしら……」


 腕を組み、考えこんでしまう。
 そういえば、カレンは「劇やりマス! ショーデス!」としか言っていなかった。
 なんやかんやで、今日まで詳細は明かされなかった、ってわけか。


「ねぇ、アリス? アリスは何か聞いていませんか?」
「うーん……私も何も聞いてないよ」


 先頭を行く私と綾の後方で、シノがアリスに訊ねていた。
 私たちだけでなく、シノとアリスまでも聞いていない、という。
 ……なんだろう。
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