このスレッドは950レスを超えています。そろそろ次スレを建てないと書き込みができなくなりますよ。

風俗嬢と僕

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434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/06(火) 01:37:18.34 ID:jSRYqsLZ0
相手は前半通り、イヌイを起点にゲームを作ってきた。

後手の対応と言われたらそれまでだけど、前半以上にうちのチームも右サイドを固めてそれを迎え撃つ。

イヌイにボールが渡ると、まずディレイさせて人数を増やす。僕が抜かれてもカバーに入った選手が彼を再び足止めして、逃げのパスを流させる。

そのボールをカットできたらチャンスになるんだろうけど、安全なバックパスが多かったり、フォローするポジションが的確なせいだったりで、なかなか上手く攻撃に結び付けられない。

イヌイのドリブルがゴールラインを割って得たボールで、自陣後方からのビルドアップを始める。僕も右サイドいっぱいに張ってポジションを取って、そのボールを受ける準備を始めた。

センターバックが僕に出した緩いパス。それを狙われていた。

少しルーズに僕を見ていたイヌイが、全力でボールに向かって走り始めた。パススピードが速くないうえに、ルーズに見られているという油断から、それを一気にインターセプトされてしまう。

僕とセンターバックの間で奪った勢いそのままに、イヌイは縦に向かって突き進んでいく。
435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/12(月) 01:15:38.37 ID:0QhTXijCo
まだぁ?
436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/12(月) 01:48:55.67 ID:LGn0J9Z6o
サッカー描写がつまらない訳ではないのだけどどうしても話が進んでる気がしなくてむず痒い
437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/10/14(水) 01:27:44.89 ID:QrrWVCEo0
更新が停滞していてすみません……!
来月中には完結するように書きためているので、まだ読んでいただけているならもう少々お待ちいただけると幸いです。
438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/14(水) 01:34:27.98 ID:8QRClpKAO
了解
面白いから端折らずに完結させてくれ
439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/10/14(水) 12:29:47.56 ID:ElCLbAoJO
面白い 読んでるよー
楽しみに待ってるよー
440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/14(水) 15:41:14.91 ID:V0ry4sJ5o
ゆっくりで構わんよ〜
なんだかサッカーしたくなってきた
441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/15(木) 04:49:17.40 ID:xFlmpDoBO
サッカーの展開描写とプレイヤーの心理描写がうまくて恐れ入る。映像でイメージできるくらい。
カズには『お前ン中のジャイアントキリングを起こせ』って言葉、ピッタリだ。

続き楽しみにしてます。
442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 10:39:46.60 ID:FVxKr9drO
まだかな
443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/10/24(土) 11:14:38.31 ID:4DXpHg6Fo
まだ書き溜め途中なんだろ
444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/07(土) 20:45:47.84 ID:7AKl9qgs0
まだか
445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/12(木) 22:27:05.96 ID:jQRfb6+AO
まもなく1ヶ月だのぉ
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/15(日) 18:24:26.97 ID:KxOAOxjkO
書き溜めファイトです
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/16(月) 01:21:48.33 ID:yyh9YrbO0
スピードに乗ってパスカットをした彼と、ボールを待っていた僕。

速さの差は歴然で、僕より後方にいたパスを出してきたセンターバックでさえ、フォローに間に合いそうもない。

少しずつ、中央に向かって角度をつけながらイヌイはボールを運ぶ。

逆サイドのセンターバックもカバーに入っているけど、枚数が足りていない。足りない枚数を埋めに僕もダッシュはしているけど、ポジション取りを高くしていたせいでどうしても間に合いそうにない。

ペナルティエリアに侵入されたあたりで、キーパーが我慢できずに前へ飛び出した。イヌイのシュートコースはかなり限定されたけど、当然ゴールはガラ空きになっている。

前半とは違い、今度はキックモーションを入れるまでもなく、彼はフォワードにパスを出した。

カバーに入っているセンターバックが体を寄せて守ろうとしたけど、無人のゴールに向けてボールを流し込むだけの、簡単な仕事だ。

相手フォワードはそれを完遂してみせた。

誰にも邪魔をされることはなく、そのボールはゴール内側の白線を越えた。
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/16(月) 02:27:50.04 ID:M7Z2mC2Go
待ってた!
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/20(金) 00:03:20.43 ID:ZPJwTbbK0
試合が再開すると、一層激しさは増してきた。
イヌイサイド偏重の攻撃を繰り広げてくる彼らに対抗するように、うちのチームも僕にボールを預ける。
一緒にプレーをしてわかったイヌイのすごいところはプレー自体に限らない。仲間に絶大な信頼を受けているところだ。
イヌイなら組み立てられる、イヌイならマークが厳しくてもどうにかしてくれる。そんな信頼関係がなければ、これほど彼にボールは集まらない。
僕はというと、失点もしたし、得点に繋げられてもいない。信用してくれという方が難しいはずだ。
それなのに、皆は僕にボールを預けてくれる。任せてくれる。
その信用に応えたくて、僕は自分に出来るプレーを最大限に活かせるように頭を回転させる。ベストな選択、ミスのない、迷惑をかけないプレー。それこそが最善だと、僕に求められるものだと信じて。
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/20(金) 00:04:30.39 ID:ZPJwTbbK0
ゴールを決めた選手とイヌイが抱き合いながらゴールを喜ぶ。それを横目に、僕は両手を叩いて仲間を鼓舞する。
「切り替え! 次とるぞ、次!」
その言葉は、自分に言い聞かせるためでもある。ここ最近、先制点を取られる試合が多すぎる気がする。予選初戦、決勝、今日。重要な試合で立ち上がりが悪いのはうちのチームの課題でもある。
審判に促されて、イヌイたちは自陣に戻っていく。一瞬、彼と目があった。イヌイは不適な笑みを浮かべて、僕に一本指を立てて見せた。
『まずは一点、お前から奪った』
そんな、挑発じみたサインだろうか。悔しいことに、失点は僕のサイドからだし、何も言い返せやしないんだけど。



※投下順を間違えました、すみません。
先程の投稿より、こちらを先に投下予定でした。
451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/20(金) 00:05:03.00 ID:ZPJwTbbK0
残り時間が15分ほどになったところで、イヌイがボールを持った。
ドリブルを始めた彼に、予選よりは多く入った観客が歓声をあげる。イヌイが何かをしてくれそうな期待を、観客が抱いている。
彼がヒールリフトを仕掛けてきた。僕はどうにかボールを頭にかすらせて、タッチラインの外に追いやった。観客は溜め息を漏らす。
くそっ、雰囲気までイヌイに持っていかれてる。これが華のあるイヌイと、僕程度の選手の差なんだろうか。
色んなものに押し潰されそうになる。マッチアップする相手とのレベル差に、僕に任せられた仕事の重さに。
それでも、それでも。
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/20(金) 00:05:33.25 ID:ZPJwTbbK0
「カズヤー! ナイスカット!」
そんな声が、スタンドから聞こえてしまった。今までは、聞こえなかったのに。声色だけで、誰か分かってしまう。
「カズ、いいぞ! 次だ、次!」
「これ凌いでカウンターいくぞ!」
ピッチの上からも、声が聞こえてくる。
これだけもて遊ばれると、自分では僕がイヌイに勝てるなんて思えない。期待もできない。
それでも、応援してくれてる人がいる。信じてパスを出してくれる仲間がいる。
応援してくれる人、信じてくれる仲間がいるから、諦めることができない。そんなかっこいいことは、僕には言えない。
ただ僕は、信用されたい。認められたい。
イヌイみたいに、プレーでチームを引っ張れる存在に。ヒロさんみたいに、うちのチームの中心に。
華やかな彼らのようにはなれないと言い聞かせてはある。それでも結局は、その望を捨て去ることなんて出来ていない。
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/20(金) 00:06:11.87 ID:ZPJwTbbK0
どんな形でも良いから、僕は僕で認められたいと強く願う。
泥臭くても、みっともなくても、下手くそでも。イヌイみたいに、僕はなりたい。
でも、そのためにはどうすれば良いんだろう。華麗な足技を持つことが、彼みたいになれるということなのだろうか。それとも、ヒロさんみたいにリーダーシップを伴った存在感を持てば良いのか。
残り時間も短く、徐々に焦りが出てきている。くそっ、こんなところで負けるわけにはいかないのに。
恨めしい、惜しい、悲しい、焦り、そんな感情が顔に出ていたのか、マッチアップをしているイヌイに声をかけられる。
「アンタさぁ、勿体ないよね」
そんな、どういうことなのかも掴めない言葉。
意味がわからないという目で彼を見つめ返すと、言葉を続けた。
「せっかく上手いのにさ、無難なプレーばかりだし。それに、今もそんな顔してる」
「そんな顔って?」
オウム返しのように問い返すと、それには答えず彼は言った。
「もっとやりたいようにやってみろよ。せっかく楽しい試合をしてるんだぜ?」
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/20(金) 00:07:49.69 ID:ZPJwTbbK0
今日から再び、書き貯め分を少しずつ投下していきます。
今月内とは言っていましたが、年内一杯くらいまでかかるかもしれません……!

改行し損ねていたのは自分のミスです。
色々とすみません…!
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/20(金) 00:13:38.02 ID:JtRzB8rAO
おっ、大量投下か
書きたいコト全部書いてくれ
最後まで付き合うぞ
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/21(土) 16:02:18.32 ID:brc2+gEoO
「楽しい、試合」

一言、僕は呟いた。

後半が始まる頃の胸の高鳴りを、僕は忘れてしまっていたのだろうか。

試合を任された重さに、押し潰されそうになっていた。イヌイにやられ続けて、勝てないとも思った。それでも僕を信じてくれる仲間の信用を失いたくなくて。

そんなことをごちゃごちゃと考えるのが、僕のやりたいサッカーだったんだろうか。

サッカーを始めた頃は、ただただ楽しくて仕方がなかった。失敗してもボールを蹴ることが楽しくて、上手くいくともっと気持ちが良い。

その気持ちを、今の僕はなくしているんじゃないのか。

サッカーは、自分の存在意義を認めさせる道具じゃない。自分の価値を見いだすためのものじゃない。もしそうだったとしても、一番根底にあるべきものはそれじゃない。

僕は、サッカーが好きだ。

ハッと目が覚めた気がした。彼に目を合わせると、彼は満足げに頷いた。

「さぁ、もっと楽しもうぜ」

そんな一言を、言い残して。
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/21(土) 16:05:54.01 ID:brc2+gEoO
「カズ!」

オーバーラップを仕掛けた僕に、ヒロさんがボールを供給する。前にボールを運ぶと、相手ディフェンダーが目の前に立ちふさがった。

……ここで、いつも逃げてたんだな。

今まで通り、フォローに入ったボランチにパスを出す。そんな単純なパスフェイント。

それでも、今までパス一辺倒だった僕のそれは、効果が絶大だ。

完全にそちらへ重心が傾いていたディフェンダーを置き去りにして、相手陣地を抉っていく。

そのままクロスをあげようとしたところで、ヒロさんがやや後方から走り込んできているのが目に入った。

強いゴロでマイナス方向にパスを出し、ヒロさんの足下にそれが届いた。

ワントラップを入れて、シュートを放とうとする。

その瞬間、スライディングにいく相手選手の脚が、後ろからヒロさんの軸足ふくらはぎに入った。
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/21(土) 16:06:37.97 ID:brc2+gEoO
強い笛が鳴って、レフェリーがその選手にレッドカードを提示した。

「おいっ、お前! わざと削りやがったな!」

「うっせぇ! レッド貰ってんだからお互い様だろ!」

「割にあわねぇんだよ!」

相手と仲間がもみくちゃになって争っている中、ヒロさんは踞ったまま立ち上がれない。

「ヒロさん!」

声をかけながら近づいても、ヒロさんは反応がない。

「大丈夫ですか?」

審判が担架をピッチ内に呼び寄せても、ヒロさんに反応がない。

削られたとはいえ、そこまでの痛むほどの強い接触では無かったと思う。それでも、ヒロさんは立ち上がれない。

左足を押さえたまま、彼は声も漏らさない。

何度か、首を左右にふった。

「無理そう、ですか?」

その問い掛けにも、彼は、左右に首を振った。何にせよ、一旦は外に出ないと試合が再開できない。
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/21(土) 16:07:25.54 ID:brc2+gEoO
担架に乗るように審判に指示されると、ヒロさんはそれを拒否して自分で立ち上がった。

その頃には争いも一段落していて、スライディングを仕掛けた相手はピッチを退こうとしている。

ピッチの外に向かう前、ヒロさんは僕を呼び寄せた。小走りに彼に向かうと、一言だけ僕に告げた。

「悪い、昔を思い出しただけだ。すぐに戻る」

そのまま、ヒロさんは歩き始めた。

昔……あぁ、そうか。そうだった。

ヒロさんのかつての悩みに繋がっていた、プロ時代の怪我。

それは確か、後ろから受けたスライディングが原因だったと、彼は言っていた。

だからか。僕は一人で納得する。

前半、イヌイからスライディングを受けたときにオーバー気味に心配していたのは、自身に置き換えていたのかもしれない。

何にせよ、これはチャンスだ。残り時間が少ないとはいえ、数的有利に立った。しかも、相手ゴール前でフリーキック。
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/21(土) 16:07:58.97 ID:brc2+gEoO
いつもは、セットプレーのキッカーはヒロさんの仕事だ。でも彼は、今はいない。

「俺、蹴ります」

無意識に、その言葉が出てきた。

周りにいたチームメイトは驚いた目で僕を見る。当然だよね、今までなら絶対に自分からそんなことは言わなかったから。

「いけるか?」

「大丈夫か?」

問いかけに、僕は頷いて答える。心配はされても、誰も否定はしないでくれた。

各々がポジションに散っていき、僕はボールをセットする。

サッカーを始めたのは、あるサッカー選手に憧れたからだった。

親が見ていた、日本代表の試合。背番号10の左足から繰り出されるフリーキックは、サッカーのことなんて何も知らない僕にさえ、感動を覚えさせた。

それから彼に憧れて、何度も何度もボールを蹴った。今のチームではヒロさんがいるから、フリーキックを蹴る機会なんて無かったけど。それでも、一人で自主練習は続けてきた。

あの頃の気持ちを思い出せ。彼みたいになりたいと、日が暮れてもボールを蹴るのが楽しくて仕方がなかった、あの頃を。
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/21(土) 16:09:17.58 ID:brc2+gEoO
狙うのは、ゴール左上。

相手キーパーとの駆引きは、特にしない。コースを読まれていても、必ず決まるコースに蹴ってやる。

助走を始めても、その自信は無くならない。左足で踏み込んで、右足のインフロントで擦るようにボールを叩いた。

キーパーの動きも、ボールの動きもスローに見える。こぼれ球を狙う選手は、ゴール前に雪崩れていく。

そうだ、そのコースだ。キーパーの動きは適切だった。それでも、止められはしないという確信がある。

僕の右足に打たれたボールは放物線を描いて、キーパーの指先から数センチ先を通りすぎた。

一瞬の静寂が、ネットを揺らす音を伝えてくれた。その次に聞こえたのは、歓声とホイッスル。
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/21(土) 22:47:16.93 ID:E7kJAwMKo
ゴール来た乙乙
年跨いだとしても構わんのでいつも楽しみにしてるよ
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/21(土) 23:13:59.26 ID:HY+nLm4mO
少し内容とんでたから読み直してきたわ
乙です
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/22(日) 01:31:57.73 ID:5bAiqOqO0
すげえ
まさかFKという形で決めてくるとは
期待
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/23(月) 12:26:10.33 ID:2l4yraE0O
左足の痛みは大したことは無かった。ただ、メンタルには強いダメージ。

後ろからスライディングを受けた俺は、立ち上がることもできないままに足を押さえる。

カズが名前を呼びながら近づいて来たのは分かったけど、それに返すこともできない。

大したことはない、はずなのに。どうしても立ち上がってすぐにプレー再開へ向かうことはできなかった。

残り時間わずかで、セットプレーのチャンス。それも、俺の得意な位置だ。それなのに、今すぐそのボールを蹴れるようなメンタルではない。

いくつかの問い掛けに首を振って答えると、落ち込んだ気持ちを震い立たせて、どうにか立ち上がってピッチの外に出ることにした。

足は……うん、大丈夫だ。

カズを呼び寄せて、一言伝える。心の機微に敏感なやつだ、あれできっと分かってくれるだろう。

ピッチの外に座って冷却スプレーを当てながら、プレーが再開されるのを見守る。

キッカーは……カズか。実力的には妥当、だけど意外でもある。

勝負がかかった場面、あいつは逃げがちだったから。普段のプレーもそうだし、こういう場面でもそうだ。プレッシャーがかかる場面で、あいつは無難で妥当、みんなと同じ。そんな選択が多かった。自信がないとか、遠慮してるとか、性格的なものもあったんだとは思う。

近くにいない俺には、その選択がカズ自身のものなのか、それとも任されたものなのかは分からない。

それでも、あいつはそこに立つことを選んだ。逃げ出さないことを、選んだんだ。

このフリーキックの結果を問わず、それは成長であると、俺は信じている。だから今は、成長したカズを信じる。

あいつの蹴るフリーキックは、きっと決まる。
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/23(月) 12:26:59.60 ID:2l4yraE0O
カズが助走に入った時点で、ボールの軌道の予想はついた。

小細工は入れずに、俺のその予想のままにボールが放たれる。

文句のつけようもなかった。プロでも触れそうにない、完璧なコースに完璧な速度でそれは向かった。

「やりやがったな!」

「すげぇ、すげぇよ!」

そんな声に追われながら、カズはピッチの外にいる俺の元に向かってくる。

「カズ!」

「ヒロさん!」

そのまま俺に飛び付いてきて、返すように強く抱き締める。そして、遅れてきたやつらも集まると、みんなでカズをもみくちゃにする。

でっかくなったな、と父親のような気持ちにすらなってしまった。

俺がこのチームに入ったときは、ちょっと上手いだけのガキだったのに。今となっては、みんながこいつに信用をおいている。昔のブラジル代表じゃないけど、『戦術はカズだ』って言いたくなるほど、こいつはうちの真ん中にいる。

本人にその自覚はなかっただろうけど、さっきのフリーキックでそれは一段と強くなった。

審判に促され、ポジションに戻るあいつらと一緒に、俺も許可をもらって再びピッチに入った。

「さっきのフリーキック、カズが蹴るって誰が決めたんだよ」

ジョギングで戻りながら、隣を走るカズに問いかけてみた。

照れ臭そうに笑って、「僕が蹴りたいって言いました」と答えるこいつは、これからきっともっと上手くなる。

でも、それを口に出すのは同じサッカー選手として少し悔しさもあって、言葉の代わりにあいつの背中を強く叩いてやった。

俺も、変わらないとな。
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/23(月) 12:27:36.09 ID:2l4yraE0O
残りわずかな後半はあっという間に終了を迎えた。

うちのチームにとって、予選を含めて延長戦は初めてだ。体力面に不安が残るけど、カズはむしろ後半から動きがキレてきた。この調子なら、初めての延長でも、むしろうちが有利かもしれない。

延長が始まる前に、俺はカズに話しかけた。

「カズさ、何でフリーキック蹴ろうと思ったの? いや、すげぇ良いボールだったよ。でも、そういう主張するの、珍しいじゃん」

その問い掛けに、カズはこんな答えをくれた。

「イヌイに言われたんです。楽しめって。試合は楽しいのに、サッカーって楽しいのに、そんなプレーばかりで楽しいのかって」

イヌイ……あの、カズのマッチアップの相手か。

「俺、サッカー好きです。楽しいし、上手くなりたい。でも、ミスが怖いからチャレンジもできてなくて。イヌイにそれを言われて、サッカーを始めた頃のことを思い出して」

「始めた頃って?」

「その頃って失敗してもボールを蹴るのって楽しかったな、って。上手くいく方がもちろん楽しいけど、失敗しても楽しい。だから、失敗を怖がらずにボールを蹴れたんだって。それを思い出したら、今の僕って本当に楽しめてるのかなって思って……」

「だから、失敗を恐れずにフリーキックを蹴れた?」

その言葉に、カズは頷いた。

「はい。だって、ミスするかもしれないから、成功したら嬉しいんだなって気づいたんです。だから今、めちゃくちゃ嬉しいです!」

「今さらかよ!」

そんな突っ込みが、横のヤマさんから入った。「あの時はびびったぜ、急に俺って一人称になるしさ」「かっこつけやがって!」そんな茶化しを入れられながら、カズは赤面して話をまとめようとする。

「とにかく! 延長はもっと仕掛けていくんで、フォローお願いします!」
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/11/23(月) 12:28:27.37 ID:2l4yraE0O
サッカーの楽しさ、か。

延長前半が始まったピッチ上で、ポジションを取りながら俺は考えていた。

楽しいとは、いつも思う。好きだなってことも自覚している。ただ、その本質が何なのか、俺は言葉には出来ない。

カズの言っていることもサッカーの本質の一部ではあり、そして全体でもあると思う。

上手くいかなくても楽しいし、上手くいくともっと楽しい。

サッカーに対する感情は、とてもシンプルだ。

今までの俺は、余計なことばかり考えていたのかもしれない。

シンヤに対する嫉妬。カズに対する希望。怪我に対する恐怖。

それら全てを、サッカーに結びつけて考えていた。サッカーをする上で、それは切り離すことが出来ないことだと思っていた。だから、プレーしながら考えてしまう。

「ヒロさん!」

俺の名前を呼んでパスを求める、弟みたいな後輩に教えられた。

「カズ!」

答えて、あいつの求めるパスを出してやった。何とも嬉しそうに、そのパスをトラップしている。

楽しいから、俺はサッカーをする。楽しいから、上手くなりたい。

「カズ、中!」

楽しいからこそ、俺は勝ちたい。もっとこいつらと上にいきたい。
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/11/23(月) 12:29:03.98 ID:2l4yraE0O
仕掛けるフェイントでイヌイの重心をサイド方向にかけさせると、逆をついて中を向いたカズが、バイタルエリアに強いパスを出した。

そこに走り込んだ俺は、ゴールに向かってボールをコントロールする。

ゴールが……見えた!

後半終了間際と同様に、右足を振り上げてキックモーションに入る。

そうはさせぬとセンターバックがゴールを隠しにきた。振り上げた足をそのまま振り降ろし、キックフェイント変更すると、体を硬直させていたディフェンダーは反応ができずにぽっかりとゴールが開いて見えた。

ここしかないというコースが見えて、今度こそと左足を振り上げた。そこで、俺の危機察知能力みたいなものが警鐘を鳴らし始める。

「後ろ!」

カズの声が聞こえた。何だ、そういうことか。

ボールを左足で軽く浮かせ、俺自身もジャンプする。後ろからスライディングを仕掛けていた相手のボランチは、信じられないという目で俺を見上げているのが視界の端に映った。

悪いけど、もう立ち止まるわけにはいかないんだ。これ以上カズに置いていかれないためにも、俺も進まないといけない。

ジャンプした体を寝かせながら、右足ボレーでボールを叩いた。

「すげぇ! スーパーゴール! さすがヒロさん!」

そんな声をあげながら近づいてくる後輩に、わざとらしく作ったドヤ顔で言ってやった。

「上手くいくと、やっぱり楽しいな」
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/24(火) 01:31:51.77 ID:MMYeZfBq0
相手のボランチクズすぎワロタ
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/11/29(日) 18:27:28.72 ID:OcIneAh7o
はよ
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/09(水) 18:48:42.87 ID:zu3LmgmAO
まだ?
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/12(土) 09:12:58.54 ID:4MW3xV2O0
終わらないなら終わらないでいいから11月中とか年内とか期待させないでくれ…
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage ]:2015/12/12(土) 12:54:57.69 ID:+wRvbLP70
がんばってクレー
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/21(月) 17:20:30.41 ID:RlPiLd3JO
左利きのフリーキッカー…背番号10…俊さんはすごいもんな……わかる……

続き楽しみにしてます
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/22(火) 00:54:16.28 ID:LopFddMV0
サッカーの醍醐味はドリブルで相手を抜き去ること。

そう信じて疑っていなかった。それは今も変わっていない。

子供のころはひたすら上手くなりたい一心で、周りの誰よりもボールを蹴り続けた。そして、周りの誰よりも上手くなった。 

無名の公立中学で県ベスト4まで勝ち進んだところで、スカウトされたんだ。それがきっかけで、俺の環境は一変した。

専用のグラウンドがあって、サッカー部ってだけで注目をされる、応援もされる。中学までとは大違いの環境だ。

そんな学校でも、俺は一年の頃から試合に出ることが出来た。何となくだけど、プロになるのかなって気もしていた。

大きな勘違いだった。

一年の冬に出た全国高校選手権、一回戦で俺達は大敗を喫して、そこで気づいた。

俺みたいな選手は全国に大勢いる。ちょっと強いチームで、ちょっと上手い選手。俺なんて、そんな程度の評価だ。

そりゃそうだ。一年前まで無名中学にいた俺が、そんなに簡単に全国トップレベルまで駆け上れるほど、サッカーは甘くない。

それでも、諦められなかった。理由なんて無い。俺はサッカーが好きだ。それだけで、負けたくない理由、下手だと認めたくない理由には十分だろう。

昔みたいに誰よりもボールを蹴った。誰よりも上手くなろうともがいた。

足技に磨きをかけて、得意なフェイントが出来て、今までよりもっと色んな方法でディフェンダーをかわせるようになった。

その結果が、最後の冬の全国四強だ。途中では、一年の冬に負けた相手にも勝つことが出来た。成長していることを実感できたし、いよいよ俺もプロの道が見えてきたと思った。

けれども、現実っていうのは甘くない。
477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/22(火) 00:54:48.70 ID:LopFddMV0
『軽いプレーが多すぎる』

『ドリブルに偏重しすぎていて、怖さが無い』

こんな評価が積み重なって、俺を獲得しようとするチームは現れなかった。

有名大学からの推薦の話があったのは素直に嬉しかったけれど、そんな評価をされてしまった俺はどこを目指せば良いのだろうか。

だって、軽いと評されてしまったプレーは、俺にとってサッカーの醍醐味だ。楽しい事を我慢しなければいけないものなんだろうか、サッカーって。

そんな哲学的な悩みを抱えながらも、俺はプレースタイルを変えなかった。

俺は好きなサッカーをしたい。好きなプレーで、サッカーを楽しみたい。

けれども、大学でもその評価は変わらなかった。チームでは主力。ユニバ代表にも選ばれた。でも、プロクラブからは扱いが難しいという理由で敬遠される。

プロにはなれないと漠然と気づき始めた時に、進路についてどうすべきか考え始めた。

478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/22(火) 01:06:43.42 ID:LopFddMV0
サッカーをやめることは、きっとできない。

でもプロになることもできない。俺は何でサッカーを始めたんだったっけ。

そんな堂々巡りの思考を繰り返すうちに、一つの結論が導き出せた。

高校に入って以降、俺はサッカーでプロを目指すこと、上に昇り詰めていくことばかりを気にしていたんじゃないかなって。

プレースタイルを変えないで、周りに認めさせてやる。

気づかぬうちにそんな意地が出来てしまっていたんじゃないかと、その時に初めて気がついた。

上手くなりたいのはサッカーを楽しむためじゃなくて、周りを認めさせるために変わっていたんだ。

そこで、俺は中学時代までの仲間とサッカーをする道を選んだ。こいつらとサッカーをしていた頃が、一番純粋にサッカーを楽しめていた。そんな気がした。

大学の名前のおかげか、Uターン就職もあまり困らずにできたのは幸いだったね。 

地元の社会人チームに声をかけて集まって、リーグ戦を戦って。昔取った杵柄ってやつかな、気がついたら、天皇杯本戦に出場が決まっていた。

社会人チームも高校もそれほど強いところがない県だったっていうのもあるんだろうけどね。

元々楽しみたくて帰って来たはずなんだけど、勝ってしまうといけるところまでいってやりたいと思うのがサッカー選手ってやつだ。

どうせならプロクラブに勝って、俺を取らなかったことを後悔させてやる。

逆恨みみたいな感情だけど、ドロドロした気持ちでもない。ただ、俺は自分のプレーを、評価してくれなかった人たちに見せてやりたかっただけだ。

ただ、俺以上にその感情を抱いていたのはチームメイトだった。
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/22(火) 01:15:47.87 ID:LopFddMV0

予選の準決勝くらいからかな。ラフプレーだったり、プロフェッショナルファールだったりがちらほら見え始めた。

昔からずっと、俺のことを認めてくれてる。プロのスカウトに、今の俺を見せる機会を与えようとしてくれている。

これを自分で言うのはかなり恥ずかしいんだけど。でもたぶん、俺ってこいつらにとっての希望でもあったんだと思う。

このチームの中で言えば、客観的に見て俺の実力はずば抜けて高いところにいる。実績も、能力も。

だから、俺を陽のあたるところまで連れて行ってやるって気持ちを持ってくれていたんだと思うんだ。

でも、それは間違った方向で現れ始めてしまった。そしてそれを止めることも、俺にはできない。

だってこいつらがラフプレーをしてしまっているのは、俺のためでもある。それを止めることなんて、俺にはできない。
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/23(水) 04:14:11.15 ID:P/5RBRBLo
ここにきて相手視点?
どこに向かってるんだ
481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/23(水) 09:20:40.16 ID:hdPfqgmBO
いいんだけどねー
ちょっとサッカーに寄りすぎ感ある
更新頻度が少ないからからサッカーのSSに見える
482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/23(水) 10:59:57.31 ID:7nBENF/AO
メインはサッカーだから当たり前だろ
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/23(水) 13:38:07.36 ID:Io/8rHTco
サッカーよりでもいいじゃないか乙
484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 10:18:52.12 ID:3FX2hNFY0
進み方がカイジとハンターハンターを足して2で割ったような感じ
485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/26(土) 12:51:50.68 ID:MjRinK8MO
完走すれば名作なんだけど、これは尻切れになるパターンだなあ。もったいない
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 14:39:24.62 ID:qBRiKrdAO
完走はしてくれそうだけどここからじゃ最初のイメージとは違うゴールになりそうだな
例えば日本代表に選ばれるとか
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2015/12/26(土) 22:26:31.67 ID:+mvL8o3AO
ここからスペインに渡って未完に…
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/29(火) 01:25:33.20 ID:3ku3vfCK0
俺は、正しい道を歩けているのだろうか。

楽しいサッカー、自分がしたいサッカーをするために俺はこのチームに入った。それなのに、仲間は勝つために楽しさを犠牲にしているんじゃないのか。

漠然とそんな不安が脳裏を過るけど、そんな自問の答は出るはずもない。

『つまらないサッカーだけど試合には強い』と評されるチームと、『面白いサッカーをするけど弱い』チーム。どちらが正しいかなんて、それを考える人の主観によるものだ。
 
勝つことに重点を置く人なら前者が魅力的に映るだろうし、そうでなければ後者になる。

もちろん両立できるのが最高なんだろうけれど、それができるチームなんて世界中を探してもほとんど存在していない。ヨーロッパのトップリーグの、更に選ばれたチームくらいのものだろう。

俺だってサッカー選手なんだから、試合には勝ちたい。でも、だからと言って楽しさを捨てるのであれば、このチームに来た意味が無くなってしまう。

やりたいサッカーと、勝つために必要なこと。その取捨選択ができないままに、本戦まで勝ち進んでしまった。
489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2015/12/29(火) 01:27:15.50 ID:3ku3vfCK0
俺のマッチアップの相手は、実力としては相手にとって不足無し、といった感じだ。

予選決勝のビデオを一度見てはいたんだけど、仮にもユニバ代表やってきた俺からしてみると、ずば抜けて上手いわけじゃない。ただ、たまに魅せるプレーをするタイプだ。

ポジション的にはこういう呼び方をするのは相応しくないのかもしれないけれど、ファンタジスタって感じ。

ただ、そのプレー以外には怖さが全くない。なぜか分からないけど、仕掛ける姿勢がほとんど無いのがその原因だろう。サイドバックってことを考慮しても、あまりに攻撃参加する頻度が低すぎる。

ディフェンスは普通に上手いし、技術だって無いわけじゃない。ただ、怖くない選手であれば、ボールをロストしてもそこまで危険なことにはならない。そういう意味では、やりやすい相手かもしれない。

前半から、俺はいつも通り自分で仕掛けるプレーを中心に選択をしていく。

気持ちよく相手を抜けると、快感だ。相手が上手ければ上手いほどその気持ちよさは強くなる。
490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/12/29(火) 01:49:00.44 ID:eidosOcSO

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこのチキンを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450628050/


>>1を守りたい信者君が取った行動
障害者は構って欲しいそうです
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451265659/
491 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/10(日) 08:58:20.91 ID:7XSGdD8xo
まぁだぁ?
492 :以下、2015年にかわりまして2016年がお送りします [sage]:2016/01/19(火) 19:49:51.12 ID:zJtBZeUBO
誰かが定期的に発言しないとスレ落ちそうで怖い!ww
それだけ期待ということで
493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [age]:2016/01/31(日) 20:16:32.41 ID:JnZBlC6vO
保守
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/07(日) 02:15:36.34 ID:xR6Pu0Iw0
今までにこいつより上手いやつとは何人もマッチアぬプをしてきた。

それでも、こいつからはそいつらから感じなかった何かを感じる。

それが何か、言葉にするのは難しいんだけれど。華があるとか、チームのエースとか、そんなんじゃない。もっと抽象的で、でもきっと凄く大切な何か。

だからかな、こいつを抜いた時の快感は今までにないくらい気持ちいい。

俺がノってプレーできているとか、天皇杯本戦という高揚感を抜きにしても、今日の試合は楽しい。気持ちいい。

こいつも楽しんでるのかな。そう思って、つい顔色を窺っちゃったよ。活き活きした顔で、俺を見返してきてやがる。

本当に、楽しそうにサッカーをするやつだな。でも、それこそが一番大切なことだよ、なぁ。

俺たちは好きでサッカーをやってるんだ。楽しまなきゃ嘘だって。
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/07(日) 03:50:42.52 ID:Eyq9NdrAO
久しぶりに来たか
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/24(水) 01:10:59.14 ID:R8fico+d0
ほしゅ
497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/24(水) 05:09:03.25 ID:QQGqfNez0
一夜漬けで追いついた
次楽しみにしてるぜ
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/25(木) 00:12:13.79 ID:dj3qTM8a0
面白い。サッカーしないけど屑な人間に感情移入しちゃってます。おつ!
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/25(木) 19:01:25.53 ID:aAPZ0TlCO
天皇杯本戦という緊張感からか、スコアはなかなか動かない。試合自体はうちのペースになってるんだけど、最後のところで決めきれない。

良い位置で貰ったフリーキックも、相手センターバックに跳ね返されてしまった。そしてそのボールは、相手のエース、10番の選手に拾われた。

……やばいっ。

守備が得意じゃない俺でも、あの10番が相手チームでキープレーヤーの一人なのは理解している。今まではうちのマーカーの頑張りで自由にさせていなかったけど、今回はそうもいかなさそうだ。

自陣に向かって走り始めたところで、俺のマーカーだったサイドバックを確認……もうあんなところにいるのか!

気がつけば、あいつはもうハーフウェーライン手前まで既に辿り着いている。単に切替が早いのか、それともチームメイトがパスをくれると信じているからなのか。

何にせよ、俺も戻らないと枚数が足りない。パスを受けたあいつを全力で追いかけるけど、間に合わない。アーリークロスをあげようとした瞬間、スライディングで足を伸ばす。

ボールにギリギリ間に合わなかった俺の足は、振り抜かれた相手の足を掠めていく。

悪い、怪我はしないでくれよ。久しぶりに楽しいマッチアップなんだ。こんなことで途切れさせたら、色んな意味でモヤモヤしてしまう。
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/25(木) 19:02:05.35 ID:aAPZ0TlCO
倒れていたから見えはしなかったけど、シュートはゴールを外れたみたいだ。

審判からの注意をハイハイと聞き流しつつ、倒してしまった選手も怪我はなかったのが分かって安心した。

相手のエースの心配する声が聞こえてくる。そっか、カズっていうんだね、こいつ。

その後も、スコアは動かないまま時間が進んでいく。前半のうちに一点は欲しい。これだけ攻勢に出ていてノーゴールなのは、後半の士気に関わってくる。

恐らく前半のラストプレー。ボランチからパスを受けた俺は、カズと向かい合う。

さあ、いくぜ。

フットサルよろしく、足裏でボールを運んで仕掛けるタイミングを計る。軽くカットインを仕掛ける仕草を見せて、重心移動の瞬間……ここだ!

イメージ通り、俺のフェイントに引っ掛かってくれた。そのまま勢いをもって相手陣地を切り裂いていく。
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/26(金) 02:23:24.40 ID:NWDL864u0
後ろから追いかけてくる気配を感じる。綺麗に抜き去ったとはいえ、このままカットインを狙うと追い付かれるかもしれない。

敢えてそのまま縦に縦にと切り込んでいく。そして、カズの体が俺に並んだ瞬間、ボールをアウトサイドで引っかけて急ブレーキ。

ここまで全力で追いかけてきたところで、この切り返しには耐えられないだろう。予想通り、もう一度綺麗に抜き去った。しかもそれは、ゴール近くの絶好の位置。

今度こそ、そのままカットインしてゴールを見据える。相手センターバックがつられてコースを消しに来る。そこだっ!

元々そいつがいたところが、ぽっかりとスペースになっていた。そこに走り込むフォワードに、寸分の狂いも無いようにインサイドで優しくパスを出す。

キーパーが飛び出してシュートコースを消そうとする。でも、ペナルティエリアど真ん中では限定すると言ってもたかが知れてる。もらった!

俺のパスを受けたフォワードが慎重にワントラップをして、シュートを打つ……瞬間。ボールは、ゴールとは逆側から伸ばされた足にクリアされた。

まさか。そこはスペースになってたはずなのに。

前半終了を告げる笛と共に見えたのは、相手の10番だった。こいつ、危機察知して戻ってきたのか? ボランチより先に、トップ下が?

ナイスカバーとしか言いようがない。これでダメなら、点が取れるまで攻め続けるまでだ。

こいつらからゴールを奪えたら、どんなに気持ちが良いだろうか。

「お前、やるね」

そんな言葉がつい漏れちゃったよ。ふざけてるわけじゃないんだけどね。
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/02/26(金) 02:26:50.85 ID:I9IDs+iAO
やっと来てくれたか
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/02/27(土) 16:17:18.67 ID:sRceBnDvO
なかなかゴールが奪えないけれど、試合はうちのペースで進められている。ハーフタイムのベンチの空気も悪くない。

「あとは決めるだけなんだよなぁ」

「一点は決めときたかったわ」

「やっぱりオオタは凄いわ、最後のカバーとか」

そんな雑談を挟みながら、後半の戦術を話し合う。

相手のストロングポイントとうちのストロングポイントが、偶然にも被っている。

自分で言っちゃうけど、俺とカズのことだ。となれば、ここは引いてはいけない。

「前半通りだ。イヌイのサイドを起点にして、相手を折る」

いけるな? と、確認するように監督が俺の顔を確認してきた。

自信を込めて頷くと、おおっと盛り上がる。

「良いか、あとはゴールだけだ! さっさと一点取って、勝ちにいくぞ!」

その声に応えて、俺たちは前半通りのメンバーでピッチに向かって行く。

ふと、カズを探してしまった。後半こそ、お前を完全に抜き去って得点を決めてやる。

そのシーンを想像すると、つい笑みがこぼれちゃったよ。

さあ、まだまだ楽しもうぜ。
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/15(火) 05:09:04.23 ID:1al7nlk3o
風俗嬢どこいった
飽きたのか?
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/03/22(火) 22:03:11.60 ID:ugzuBINt0
ほしゅ
506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/05(火) 11:35:33.42 ID:ZmVq3t6V0
>>504
諦めろ
もう>>1には無理だろ
507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/16(土) 22:02:51.97 ID:zZDo6jA6o
待ってる
508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/21(木) 01:32:30.07 ID:3JoCPVs60
後半も俺とカズのマッチアップは続く。

絶対抜いて決めてやるって気持ちと、中々そこまでいけないことが嬉しいっていう相反した気持ちが俺の中に湧いてくる。簡単にやらせてくれないからこそ、挑み甲斐がある。

それにしても、一対一強いなコイツ。楽に仕事をさせてくれないのは前半で分かっていたけど、本当に骨が折れる。

……個人技で魅せるっていうのが俺のプレースタイルだけど、それだけで挑んで勝てるほどサッカーは甘くない。それは、挫折と言って良いのか分からないけど、ユニバ代表の時にも学んだことだ。

それなら、違った形の駆け引きをすればいい。

前半からカズのケアを意識してはいたけれど、意識的にマークを緩めた。コイツにパスが渡されるように、絶妙な間合いで。

その餌に、相手センターバックが釣られてくれた。

俺との間合いが広くなっているカズに、緩い横パスを出した。最初からそれを狙っていた俺は、ボールに向かって全力でダッシュを仕掛ける。

それにいち早くカズも気づいたみたいだけれど、もう遅い。
509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/21(木) 01:40:31.54 ID:3JoCPVs60
カズを振り切るように、普段の細かいタッチとは違ってランウィズザボールのように大きく蹴り出して前に進む。

センターバックがスライドして対応しにきたところで、俺は中を確認する。g

俺のドリブルコース、パスコース、シュートコース、その全てを消そうと中途半端なポジショニングでプレッシャーをかけてきた相手センターバック。そいつの足がギリギリ届かないコースを狙って、俺はボールをゴール前に転がした。

逆サイドのセンターバックもうちのフォワードを捕まえきれていなくて、そのパスは見事にゴールに繋がった。

予選とは違い、結構な数が入っている観衆が沸いた。

「ナイスパス!」

ゴールを決めたフォワードが勢いそのままに俺に向かって飛びついてきた。後ろからチームメイトも重なってくる。

まず、一点だ。

自陣に戻ろうとしたところで、チラッとカズを見てみると目が合った。良いね、闘志を向けられてる感じがする。

今の勝負は俺の勝ちだ。今度こそは、個人技で勝ってやる。そんな決意を込めた笑みを浮かべてやった。
510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/21(木) 01:55:50.70 ID:3JoCPVs60
再開後、先制点を決めて余裕を感じるようになったからかな。今まで以上に俺は個人技で抜くことに固執し始めた。

見る人によってはスタンドプレー、軽いプレーと言われても仕方がないのかもしれない。それでも、うちのチームはそれを認めてくれている。そして、期待してくれている。だからこそ、俺はカズを個人技で抜き去らないといけない。

勝負を仕掛けて止められる。抜けそうで抜けない。綺麗な形は作らせてくれない。その繰り返しだ。

それでも楽しい。俺はやりたいサッカーをやらせてもらえている。他でもないこのチームで、俺は俺のしたいサッカーをできている。

ヒールリフトで頭を超えさせようとすると、カズの頭に掠ったボールはタッチラインを割った。くそ、これも反応するか。

それにしても、こいつ、サッカー好きなのは感じられるのに、本当に窮屈そうなプレーばかりだね。

「アンタさぁ、勿体ないよね」

そんな言葉が、つい口から漏れてしまうくらいには。

必死なのも、勝ちたいのも分かる。でも、何かに怯えているように見えるのは、それが理由じゃないはずだ。

楽しい試合、楽しいサッカー。好きでやってることなのに、何がそんなに怖いんだろう。

俺たちはプロじゃない。負けたらクビになるわけでも無ければ、生活に困ることだってない。そこは、俺たちがアマである所以だけれど。

こんなに俺が楽しんでいるのに、カズがそんなに窮屈そうだったら悲しいよ。お前っていうライバルがいるからこそ、俺はこの試合を楽しめているんだから。

「もっとやりたいようにやってみろよ。せっかく楽しい試合をしてるんだぜ?」

相手チームの選手にしてみたら、余計なお世話かもしれないけど。それでも、俺はカズにも楽しんでいて欲しいんだ。

不思議な気持ちだけど、こんな好ゲームは滅多にできるものじゃない。敵とか味方とか関係なく、俺は単に良い気持ちでこの試合を終えてほしい。勝敗はあるんだろうけど、それを超えた感覚だ。当事者になってみないと、説明するのは難しい。

「楽しい、試合」

そう呟いた後に、俺を見返してきた目は、何だかそれまでの視線とは変わっている気がした。勿論、いい意味で。

そうだよ、その目をしたお前に俺は勝ちたいんだ。
511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/21(木) 07:11:49.83 ID:WgjDeHmcO
ジャイキリ
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/21(木) 17:01:31.30 ID:b+pkpX02o

待ってた
513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/21(木) 21:39:55.93 ID:6Uda+VTAO
お久しぶりだな忙しいのかな?
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/21(木) 23:39:52.55 ID:3JoCPVs60
もしかしたら、俺は余計な一言を漏らしたのかもしれない。

そんな後悔をしそうなくらい、こいつのプレーは変わってしまった。今まで以上に積極的にプレーに絡んで、挑戦してくる。

今までは俺の突破を防ぐことに重きを置いていたようなプレーだったのに、今度は攻撃にも顔を出すようになってきた。

ただでさえ手強い相手だったのに、更に強くなっちゃったよ。でも、嫌じゃない。

ワクワクした気持ちはそれまでより高まっていて、コイツとの勝負がますます楽しみになってきた。

一進一退の攻防が続き、試合終了が近づいてきた。勝負で完勝はできなくても、試合は貰ったな。次に戦う時は、個人技でも抜き去ってやる。

そんな油断が災いした。

ギアを上げてオーバーラップを仕掛けたカズに、振り切られてしまった。オオタからのパスが、カズに渡った。

俺には守備に欠けているということは、悲しいことにチームメイトも承知していることだ。だから、うちのディフェンダーもすぐに対応してカバーに入ってきた。

残り時間もあと僅か。ここは大事に行きたい場面のはずだ。

一旦預け返して、裏を狙いに来るか? それなら挟み撃ちにするより、正確なパスを出せるオオタのマークを厚くしたい。

「10! 10のケアしろ!」

オオタの背番号を叫んで、チームメイトに意思を伝える。

そして俺の読み通り、カズは横パスを出した。かと思った。

「えっ」

驚きのあまり、一瞬止まってしまうくらい、それは見事なフェイントだった。たぶん、あの場にいたやつら全員がつられてしまったとしまったと思うくらいには。

気が付いた時には、アイツはうちのディフェンダーを置き去りに、サイドを独走していた。
515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/21(木) 23:48:38.28 ID:3JoCPVs60
サイドを独走したカズは、そのままうちのセンターバックを引っぱり出したところでマイナスのクロスを上げた。

そこには誰も……いた。オオタだ。こいつだけ、さっきのキックフェイントを理解して一早く走り出していたんだ。何なんだよ、お前らの信頼関係は。

うちのディフェンダーは振り切られてしまっている。……間に合わない。

オオタがボールを綺麗にコントロールして、シュートモーションに入った瞬間。やられたと思った。

その瞬間、後ろから追いかけていたうちの選手がオオタの足を削った。

……またか。

勝つためには仕方のないプレーかもしれない。それでも、これは果たして正しいのか? 止められない俺は、これで良いのか?

そんな自問とは関係なく、ファールを犯したチームメイトは退場、オオタは負傷で一時離脱。フリーキックはカズが蹴るみたいだ。

嫌な予感がする。とんでもない瞬間に出くわしているような気もする。理由なんて無いけど、ただ何となく。

このフリーキックは決まる。そんな、嫌な確信だ。

さっきのカズのキックフェイントから、そんな嫌な雰囲気があったんだ。今までにも何度か経験したことがある。

そしてその予感は的中してしまった。ビューティフルゴールだ。敵ながら天晴と言いたくなるくらい。

喜びを爆発させているアイツらが何だかまぶしいよ。さっき、俺が言った言葉は何だっけな。

本当に、嫌になるくらい楽しんでやがるぜ。
516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/22(金) 00:02:33.61 ID:XIUN+/Ro0
「ラフプレー、やめようぜ」

その一言を言えないまま、延長が始まった。

簡単に言えるんだったら、もっと前から言ってるよ。そんな、勇気が出せなかった言い訳を自分に言い聞かせながら。

オオタへのプレッシャーは相変わらず厳しいし、カズに対するディフェンスも今まで以上に強くなった。

それでも、こいつらの勢いはなかなか止められない。ゴールまでは結び付かなくとも、決定機の数はこれまでとは段違いに増やされてしまっている。

向かい合ったカズは、輝いた目で俺に仕掛けてきた。止めるっ。

同点フリーキックのきっかけとなった、カズの仕掛け。それを意識しすぎたあまり、今度はそれがフェイントとして有効になってしまっていた。

仕掛けるような重心移動はフェイクで中を向かれてしまった。スイッチを入れるパスがカズからオオタに渡る。

……ヤバい。ただでさえ一人少ないうちが、ここで決められてしまえば逆転はかなり難しい。

オオタのシュートコースを潰したセンターバックはあっさりかわされて。そしてうちの選手が、またオオタの足に向かってスライディングしている。

勝つためには仕方のないことだ。ここで止めないと、さすがに厳しい……。

あのフリーキックと同じように、オオタが倒れる光景を思い浮かべた。でも、それは現実のものとは違って。

後ろからのスライディングを察知したオオタは、見事にそれをジャンプでかわした。そして浮かせたボールをそのまま叩き、ゴールネットに吸い込まれていく。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/22(金) 00:10:33.36 ID:XIUN+/Ro0
目に見えて、うちのチームの士気は落ちてしまった。

一人少なく、残り時間もあと僅か。勢いも相手チームにある。スーパフリーキックに、ビューティフルゴール。あんなゴールを見せられて、意気消沈するなという方が難しい。

……ここまでかな。

諦めているわけじゃない。それでも、厳しい状況であるのは間違いない。

試合は再開したけれど、うちのチームは動きが悪い。それは俺を含めてなんだけど。

防戦一方な展開になって、どうにか得点だけは許していない。そんな状況。

相手チームのシュートが外れて、うちのゴールキック。たぶんこれが途切れたら終わってしまうのかな。

ポジションを取っていると、俺のマークについてきたカズが一言呟いた。

「楽しめてます?」

普通に考えると、煽ってるように聞こえるんだろうだけど。こいつの目は純粋に俺を見てきている。

楽しめよって言った俺の気持ちと一緒だと思う。こいつは今、この試合を楽しんでいる。

それなら、俺も楽しまないといけない。いや、違った。負けそうになって悔しくて、プロフェッショナルファールへのモヤモヤがあって忘れていただけだ。

この試合は、楽しい。そして俺はカズを抜きたい。勝負に勝ちたい。試合にも勝ちたい。まだ試合は終わっていない。

ゴールキックの競り合いのこぼれ球を拾ったボランチに、大声でパスを要求する。

足元に届いたそれを、自分の間合いでコントロールする。

さぁ、最後の勝負だ。いくぜ。
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/22(金) 00:19:55.27 ID:XIUN+/Ro0
最後は俺の一番得意な形で勝負してやる。

縦にじわじわとドリブルを仕掛けていくと、ゆっくりとコースを限定するかのように間合いを詰めてきた。

わざと少しボールタッチを大きくして、餌のようにカズの目の前に差し出す。

そして、一気にプレッシャーを強くしてきた、その瞬間。

ギリギリのところで自分が先にタッチできるところに置いていたボールを、左足裏で引いてクライフターンをきめる。

よし、かわした。

そのまま中を向いてカットイン。斜め45度が俺の一番得意な角度だ。憧れていたイタリア代表の選手が、この角度からのシュートを得意としていたから、俺も真似して練習していたらいつの間にかそうなっていた。

チームメイトいわく、イヌイゾーン。ここで決めて、PK戦までもっていってやる。

右のインフロントで擦るようにインパクト。

その瞬間、抜き去ったはずのカズの足が視界の端からすっと入り込んできた。

俺のキックの直後、カズの足にあたったボールはコロコロと転がり、相手センターバックのもとに向かう。それが強く蹴り返された瞬間、俺の天皇杯本戦は終わりを告げた。
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/22(金) 00:25:56.68 ID:XIUN+/Ro0
チームメイトはピッチの上に倒れて泣いたりしているけど、不思議とそんな悲しさはない。

それより、スライディングで倒れたままのカズに手を伸ばしてやった。俺の手をつかんだこいつは、まっすぐに俺の目を見返してくる。

「何で、最後間に合ったんだ?」

それが一番の疑問だった。完全につり出してやったと思ったのに。

「イヤらしいなって思ったから」

「は?」

どういうことだろう。イヤらしい?

「うちの失点シーン。あれ、わざと自分のマークを弱くしてつってきたじゃないっすか。だから、ああいうイヤらしいプレーがあるかもしれないっていうのは、頭の中にあって」

「それだけで?」

「あと、あれだけ個人技を持ってるのに不自然にボールタッチが大きかったから。たぶん何かやってくるなとは思ってたんで」

……ははっ、大したもんだ。そこまで読まれていたんなら、ぐうの音も出ない。

「完敗だよ。すごいのな、お前。カズって言うんだっけ?」

「どうも。イヌイさんですよね? 高校選手権、テレビで見てて覚えてます。見てて面白い選手だなって、印象的だったから」

そんな風に褒められるとむずがゆいし、でもやっぱり悔しいね。
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/22(金) 07:09:51.12 ID:5jEWXpSoo
待ってた
イヌイ視点も面白いな
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/22(金) 10:27:13.91 ID:HkSmZAf3O
やっと追いついた
一筋縄でいかないキャラばかりで面白い
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/22(金) 23:37:54.78 ID:XIUN+/Ro0
「光栄だな。楽しかったよ、サンキューな。ナイスゲーム!」

そう言って、改めて右手を差し出した。今度は立ち上がらせるためじゃなくて、健闘を称えるために。

「こちらこそ、ありがとうございました」

握り返された手は、熱を感じる。サッカー選手の熱だ。今の今まで、死闘を繰り広げていた熱だ。

それに勝てなくとも、胸を張れる程度には応えることができた自分を誇りに思う。次は、負けない。

手を放し、肩をぽんっと叩いて背中を向けたところで、最後に言い足された。

「『楽しめよ』って言われたの、忘れません! イヌイさんとのマッチアップ、めちゃくちゃ楽しかったです!」

真っ正面から、こんな恥ずかしくなるようなことを言われたのは初めてだ。それでも、嫌じゃない。こいつ、良いやつだな。

「次は負けねぇから」

振り向かずに、そう言い返してやった。今度はカズ以上に俺が楽しんでやる。そして、試合に勝ってやる。

まだ泣いているチームメイトのところに向かって、整列するように促した。

「ほら、行くぞ」

「悪い、悪いな……」

どうした? 何が悪いんだろう。負けたのは俺がカズに勝てなかったからであって、こいつらのせいじゃない。

「お前をプロに勝たせてやりたかった、なのに、なのに……」

漏らした言葉は嗚咽交じり。

間違ってたんだと思うんだ。俺が楽しいサッカーをできていたのは、こいつらのおかげ。それなのに、ラフプレーとか汚いプレーをこいつらにさせてしまっていた。苦しいところを、他人に投げてしまっていた。

悪いのは俺であって、こいつらじゃない。もっと上手くなって、正々堂々としたプレーでチームを勝たせてみせよう。こいつらにも、サッカーを楽しませてやろう。

それが俺なりの贖罪であって、チームメイトの恩返しだ。

だから。

ああ、畜生。今日はいい天気だ。負けたことすら、何だか正しく思えるくらいには。
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/25(月) 00:00:51.31 ID:tA41QsajO
デルピエロゾーン懐かしい
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/25(月) 02:31:15.82 ID:APYXR6N70
『お疲れさま。一回戦突破おめでとう! カズヤのシュート、すごかった!』

そんな、素人みたいな感想のメールをカズヤに送りながら、家路を辿る。素人みたいっていうか、素人なんだけどね。

一点目のシーンを思い出す。ううん、正確にはその前のカズヤのドリブルのシーンから。

あそこから、何かが変わった気がする。外から見てる、それもサッカーのことを詳しく分からない私じゃ、言葉にするのは難しいんだけど。

でも、あれが何か大切なプレーだったことだけは分かる。

このまま帰ろうかな、とは思ったけど、少しお腹が空いてしまった。15時開始って、微妙な時間だからお昼も軽くしか食べなかったし。

外食して帰ろうかな……そんな考えが頭に浮かぶと、行きたいお店はヤギサワさんのところしか思いつかなかった。あそこのオムライス、本当に美味しかったんだもの。

そうと決まれば私の行動は早い。少し遠回りにはなるけど、散歩で行けない距離でもない。

暑さは気になるけど、ダイエットだと思って歩くことにした。

カズヤたちが勝ったからかな、私も嬉しくて足取りは軽い。

浮かれた気持ちで歩いていたら、携帯から着信音が鳴り始めた。画面を確認すると、カズヤから。

『ありがとう! あのシュートは自分でも会心だったよ! 今日、忙しい?』

『ううん、今日は空いてるよ。お休みだから』

もしかして、お誘いかな? どうしよう、急にドキドキしてきた。
525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/25(月) 02:39:30.71 ID:APYXR6N70
その返事はすぐに返ってきた。

『もしよかったら、ご飯行かない?』

何だろう、緊張してくれてるのがその文面だけで伝わってきて、可愛いような、こっちまで照れてしまうような。

私に断る理由なんてもちろんなくて、快諾の返事を送っておいた。

うーん、どうしよう。会場に引き返したほうがいいのかな。

さっきとは違う着信音が鳴り始めた……っと、電話。どうしよう、それはまだ心の準備ができていない。

とはいえ、出ないわけにもいかなくて。どうか可愛い声で出られるようにと思いながら、画面をスライドさせて電話を受ける。

「もしもし……カズヤ?」

「あっ、よかった、ごめんね、急に」

「ううん、誘ってくれて嬉しかった。お疲れさま」

彼の声の後ろは、まだ少しガヤガヤしてる。チームメイトの人とかと一緒なのかな?

「今、大丈夫なの? 後でかけなおそうか?」

「あ、いや、もう外に出てるから。ダウンとシャワーでこんな時間になったけど」

「そっか。えっと、どうすれば良い? どこに行けば良いかな?」

その問いには、会場最寄りの駅を告げられた。うん、それならここからそう遠くはない。

了解の返事をして、電話を切った。

……待って、これってデート?
526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/25(月) 02:52:25.90 ID:APYXR6N70
待ち合わせ場所に着いても私のドキドキは収まらなくて、どうしようどうしようって一人で頭の中を騒がせている。

もっと可愛い服を着て来れば良かった。貰ったハットを被ってるのは当然だけど……暑い、あんまり気合を入れた服を着て行ったらああいう競技場で浮くって分かってきたから、結構ラフでカジュアルな服しか着てない。

うわー、一回帰りたい。

どれくらい時間かかるのかな。今から近くのお店で適当に見繕う?

そんな現実的じゃない案さえ頭の中に浮かんでくる。ああ、どうしよう。

悩んでいれば悩んでいるだけでカズヤの到着が近づいてくる。

カズヤ、オシャレだし。女の子のファッションにも色々好みがありそう。本当の私はもっと……いやもっととは言えないけど、もうちょっとは可愛いの。いつもの私はもう少しマシなの。分かってくれるかな。

そんな言い訳染みたことを考えていたら、後ろから声をかけられた。

「ごめん、待ったよね」

「ううん、全然……」

心の準備すらできてませんでした、とは言えなくて。

振り向いた先にはカズヤがいた。ジャージ姿で。一瞬驚いて言葉が止まったけど、そっか、試合帰りだもんね、よくよく考えると当然だ。

「? どうかした?」

その私の反応に、不思議そうに問い返してきた。

「いや、ジャージ姿って新鮮だなって。さっきまで悩んでたのがバカみたい」

「悩んでたって?」

「今日、かなりラフな格好で来ちゃったから。カズヤはおしゃれだから、幻滅されないかなって」

そういうと、彼は一瞬止まった。そして、顔を真っ赤にした。

「……僕、着替えて来ようか?」

小声で、そっかジャージ姿じゃんそういえば……ダメじゃん……なんて呟いている。

私が盲目なのかもしれないけど、そんなところすら可愛く思えてくる。そういうことが頭に浮かばないくらい、私に会いたいって思ってくれてた……っていうのは、私の勘違いかしら。

「ううん、全然。そのままが良い。私だってこんな感じだしさ。ほら、行こうよ」
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 04:59:27.40 ID:BVWSEUgC0
面白いかも
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 06:31:51.99 ID:YlFsOuKb0
ねーちゃんの登場待ってた!
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/25(月) 12:45:38.09 ID:bN+G/w9+O
なんかねーちゃん超久しぶりじゃね?
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/25(月) 20:33:22.99 ID:APYXR6N70
決まり悪そうに頷いて、カズヤは歩き始めた。それが何だかおかしくて、つい笑ってしまいそうになる。

アキラといたときには、考えられなかったことだ。見返りを求めず、求められずにご飯に行くだけでこんなに嬉しい気持ちになるなんて。ラフな格好で出かけて、それをお互いに恥ずかしがるなんて。中高生みたいな気持ちかもしれないけど、それでも私は嬉しい。

……手、繋ぎたいな。嫌じゃないかな。図々しいかな。

そんな、甘酸っぱい気持ちを抱いてしまう程度には。

彼の歩幅に合わせて手を伸ばそうとして、でもちょっと遠慮しちゃって。

私の好きと、カズヤの好きが違ったらどうしよう。そんな心配をしてしまうと、どうしてもあとちょっとの指先を触れ合わせることができない。

「ね、どこ行くの?」

信号待ちで止まった時に、ドキドキを抑えるために話しかけてみた。

「あ、ごめん。食べたいものある?」

「ううん、初デート、どこに連れて行ってくれるんだろうって」

私自身の緊張を誤魔化すために、カズヤにもわざと意地悪っぽくデートって言ってみた。良いよね、そう言ってしまっても。少なくとも、私はデートだと思っているし。

「デートって」

冗談っぽく復唱してきたけど、顔が赤くなっているのは誤魔化せていない。こういうところが可愛いんだよね。

「この間、ヒロさんといたレストランあるじゃん。あそこで良い? っていうか、あそこに行きたいなって思って」

「うん、行こ行こ。私もあそこ、また行きたいなって思ってたから」

カズヤと一緒に、とは言い足せなかったのは恥ずかしかったから。それにしても行きたいところが被ってるのって嬉しいね。軽く運命感じちゃった。

信号が変わって、周りの人が歩き出した。そして、私の手にはカズヤの手が触れてきて。

「デート、でしょ?」

さっきの恥ずかしそうな顔とは打って変わって、悪戯っぽい笑みを浮かべている。本当に、彼はズルい。

今度は私が赤面を誤魔化して、俯き気味になってしまう。それでも触れあった指先の力は緩められない。できるだけゆっくり歩きながら、私は幸せを噛みしめ
る。

……好きだなぁ。
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 22:19:54.61 ID:bvLxxHXAO
仲が進展してるな
出会いはともあれ初々しいなww
532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2016/04/25(月) 22:39:49.04 ID:YlFsOuKb0
いいね!
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2016/04/26(火) 02:50:50.62 ID:KnibPy4h0
「いらっしゃいませ」

お店に着かなきゃいいのに、なんて私の惚気た願い事なんて叶うはずもなく、あっという間にヤギサワさんのお店に着いた。

声をかけてくれたのは女性だった。ヤギサワさんは今日はいないのかな。そういえば、奥様の実家のお店って言ってたっけ。

案内された席に座って、メニューを開いた。

「前、何食べてたんだっけ?」

「オムライス。お勧めらしいよ、ヤギサワさんが言ってた」

水を持ってきた店員さんが、私の話し声に反応した。

「あら、旦那の知り合い? ……君たち、何か見たことあるわね」

そう言って、私たちの顔を交互に見返す。そして視線はカズヤのジャージに向かって。

「あ、わかった。この間試合してたよね、うちの旦那と。ジャージで分かったわ」

ジャージと言われて、またカズヤが恥ずかしそうになってしまう。

「あ、はい。その節はお世話に……。すみません、こんな服装で」

「あはは、良いのよ。そんなにお高いお店でも無いんだし、気軽に来てよ気軽に」

ありがとうございます、と二人でぺこっと頭下げてしまった。

「で、ご注文はお決まりかしら? 仕事もしないとね」

その問いかけには二人でオムライスと答えた。

「かしこまりました。旦那も好きなのよ、オムライス。たぶん、後で来ると思うから」
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